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カオリンクエスト 2-1 / 2-2 / 2-3 / 2-4 / 2-5 / 2-6 / 2-7 / 2-8 / 2-9 / 2-10

カオリンクエスト

カオリンクエスト2-10

ごま「さあ、いっくよー!」
ごまは詠唱を始めた。
貴子「ま、ええか。石川ちゃんはもう駄目みたいやし」
貴子をごまの方を向き、召還を始めようとした。
と、その時、貴子は急に召還を止めた。
ごま「?」
貴子「あんた…ホントに注意力が散漫しとるなぁ」
ごま「へっ?」
ガシッ
ごまは背後から首根っこを強く掴まれた!
美帆「無視するなんて酷いんじゃないの、大魔導師のお嬢ちゃん?」
ごま「グ…がっ…」
ごまは首を掴まれたまま持ち上げられている。
美帆「じゃあ、連れてくから。そっちよろしくね」
貴子「任しとき」
美帆はそのままごまと共に森の奥へ消えていった。

貴子「…駄目やと思ってたけど、まだまだ行けるみたいやん」
貴子は石川に向かって言う。
石川「…もう二度と、過ちは犯しません。全力であなたを倒します!」
石川の周りに今までと違った冷気が流れた。
貴子「ふぅん…さっきよりいい感じやんか。これならもう少し楽しめそうやな」

Д<「ほーら、効いたで。やっぱり梨華ちゃんにはあれが一番やな」
サイトー「へぇ、たった一言で…。でもこれで勝てると決まったわけじゃないよ」
Д<「きびしぃなぁ…」


二人は互いに構えたまま動かない。
保田「……」
よっすぃー「…行きますよ」
美和「どうぞ」
美和が言い終わらないうちに、よっすぃーはその場から姿を消した!
保田「(めちゃくちゃ速いっ!)」
美和「…後ろぉっ!」
美和は背後に向かって扇子で斬りかかる!
しかし、美和の攻撃は空を斬った。
よっすぃー「そう何度も後ろばかり取りませんよ」
美和「!」
よっすぃーは美和の動きの裏をかき、高速移動で正面へ現れていた!
つまり事実上、美和の背後を取る形となった。
よっすぃー「覚悟っ!」
美和「ちぃっ!」
美和は素早く振り向き、二人は向かい合う。そして連打の打ち合いになった!
よっすぃー「それそれそれそれそれそれっ!!」
美和「ほらほらほらほらほらほらっ!!」
ガガッガッガガガガガガガガッ!!
保田「(うっわ〜…刀も扇子も見えないよ)」
しばらくすると打ち合いは終わり、つばぜり合いとなった。
競り合いながらも、二人は会話を楽しんでいる」
よっすぃー「ははっ…何で当たっても少しも怯まないんですか?」
美和「それはこっちの台詞だよ、一本の刀で二つの扇子のラッシュと互角に渡り合ってるんだから…」
会話を終えると、二人はバックステップで距離を取った。
二人とも体の各所から出血している。
保田「(いい勝負になってるじゃん。ひょっとしたら、互角…?)」
美和「さ、続けようか」
よっすぃー「そう…ですね」
二人はまた構えを取ったまま向かい合い、動きを止めた。

その頃、勇者飯田チーム。
つじ「さっき、ものすごいおとがしてたのれす」
勇者飯田「多分よっすぃーが戦ってるんだと思う。後少しだ、急ごう!」


ドオオン!!
ナッチー「ひえええぇえっ」
アーケロンの足を避けながらごまの逃げた方向へ自分も逃げるナッチー。
アーケロンはナッチーを追いながら、足を踏み降ろし、攻撃を仕掛ける。
ナッチー「ハッソートビ!」
ピョンッ
ドシーーーン!!!
ナッチー「あたらないっしょ。おーにさーんこーちら♪」
ズシーーーン!!
アーケロンの動きでは、ナッチーを捉える事はできない?
その時、
ピシピシピシ、、
ナッチー「!?」
ピシピシピシ、、、ピシピシ、、、、、
ナッチー「なんだべ?この音??」
ガツッ!ドテ。
ナッチーはつまずいて転んだ。
ナッチー「あたたたた、、、痛いべさ。」
その拍子に膝を擦り剥いてしまった。膝を抱えて座りこむ。
ナッチー「ふー、ふー、」
涙目になって、膝に息を吹きかける。
アーケロン「・・・・・・」
ナッチー「!、あわわ、、、」

ズドオオン!!
ナッチー「間一髪だべ。」
這いながら避けたナッチー。
ビシビシビシビシ、、、
さっきより大きい音がする。
ナッチー「!?」
ナッチーの足元に亀裂が入っていく、、
ナッチー「地割れってことかい?」
良く見ると、あたり一面にひびが入っている。
ナッチー「危ないべさ。ナッチーみたいなか弱い乙女が躓いたらどうすんだべ?
   一生もんの傷がついたら責任とれねえっしょ。。。!?、」
何か思いつきそうだ。地面を見ながらしばし考える。
ナッチー「!!、思いついたべさ。ナッチーとっても頭がいいべ。」
ドオオォン!!ビシビシ、、、
次の一撃を避けると、ナッチーはアーケロンの方に向き直った。
ナッチー「覚悟するっしょ。」

股を開き、手でおさえながら膝を90度に曲げる。
ナッチー「本物の四股の踏み方ば教えちゃるべさ!!」
左足に体重をかけ、左足を伸ばしながら右足を天高く上げ、
ナッチー「ハッ!!」
勢い良くおろす。
ドゴオオオォオオォオォンン!!!!
その一撃で、
ビシビシ、、ビキビキビキ、、、バキバキバキ、、、バリバリ、、バリーーーーン!!
大きな音を立てて地盤が崩れる。
ナッチーはニコッと笑う。
ズドドドドドド、、、
アーケロン「!!、ギアアアァア!!!」
動きが遅く、体の重いアーケロンは崩れた地面の割れ目にはまっていく。
断末魔の叫びをあげながら。
ナッチー「うーん。決まったべさ。」
ナッチーは満足げに、右手を横に広げ、左手は左のわき腹より少し上に当ててせり上げる。
ナッチー「って、ウンリュー型やってる場合じゃないべ。逃げねば。」
身動き取れないアーケロンを見て
ナッチー「バーカバーカ!!
   体が重すぎるからそういうことになるんだべ。ダイエットした方がいいっしょ。」
というとナッチーは、
タッ、タッ、タッ、
ガタガタな地面を注意深く渡りながら、ごまの進んだ方向へ走った。

貴子「(アーケロンが限界?もう一人くらいこっちに来るんかいな??
   せやけどまあこれで、あれの分の霊力をこっちの戦いに使えるで。)」


ユウキ「ちっ、勇者めっ」

ソニン「それにしても本当に博士見つからないよ。どーなってんの?」
ユウキ「声も聞こえなくなっちまったし、音もしやがらねえ。逃げられたか?
   くっそう。だからあの勇者にも言ってやったってのによ。」
ソニン「あーあ、せっかく追い詰めたのに、、」

博士は草による保護色を利用し、バブルスライムの姿をしていた。
音が出ないのは、単に博士が気絶しているからである。

ユウキ「ちきしょー。ぜってー息の音を止めてやる。あいつだけはっ。」
ソニン「うん絶対に。ま、でも今回はしょーがないね。
   とりあえずリターンマッチをするためにも、勇者達を追い掛ける?」
ユウキ「うわ!切りかわりはや!」
ソニン「まあね。作者がうちら二人でだらだら書く気が無いらしいから。で、どうする?」
ユウキ「いや、さすがにそんなテンションじゃない。ちっとは消耗しちまったし、
   あいつらも忙しそうだし、、、、っていうかたぶん、ボンバー四天王が来てるんだろ。
   万全な状況で戦いたい。」
ソニン「え、そうなの?、、それじゃあいつら、負けちゃうかもよ?」
ユウキ「それは無いね。」
ソニン「おぉー。言い切るね。」
ユウキ「まあな。姉貴が負ける所を想像できないのさ。残念ながら。
   俺達は先に進んで、修行でもしながら待っていよう。」
ソニン「?、先で待つって、確実にあいつらが来るような場所でも知ってるの?」
ユウキ「あ、ああ、まあな。これからあいつらは南へ向かう。その途中、絶対に立ち寄るね。」
ソニン「どこよそれは?」
ユウキ「チラッと聞いたんだが、海を渡った先に、あの店の支店がまたできんだよ。」
ソニン「んー、なるほど。納得。あそこは強い奴も集まりやすいし、
   先行って、かたっぱしから喧嘩売ろうか?」
ユウキ「そーいうこと。」
ワーダ博士「・・・・・・」(気絶中)

歩きだすユウキとソニン
グチャッ
ユウキ「うわ?なんか踏んづけた!」
ソニン「何その緑の?きったない。」
ユウキ「ちっきしょーーー!なんて今日はついてねーーんだ!?ゲロか?」
ゲシッゲシッ!
そこいらに残っている雪に蹴りつけ、汚れを落そうとするユウキ。
ユウキ「全部あのばか勇者のせーだ!」
ソニン「あははっ、、それはさすがに逆恨みでしょー。」

ソニンとユウキは南へ。

・・・ワーダ博士=再再起不能


貴子「アーケロンもやられてまったし、そろそろ本気でいこか?」
そう言うと貴子は魔法を詠唱しはじめる。
手に気をためているように見えることから、おそらく普通の攻撃魔法であると思われる。
石川も対抗魔法を詠唱しはじめる。

貴子がどのような攻撃魔法を使うかはとんと予想がつかない。
召還魔法が使えるのなら、通常の中位魔法位いとも簡単に唱えられるはずだが。
冷気だろうか、炎だろうか。どれがくる可能性も考えられる。
何がこようと今の石川は本気でいくだけだ。
詠唱時間がよめないのですぐにはシヴァの力を使えないが、必ずやこの戦いに勝利する。
そんな決意を胸に石川は貴子を真にみつめ、出方をうかがう。

しかし、それからの貴子の行動は石川の予想には全くないものだった。
貴子は詠唱を続けながら両手を構える。

Д<「んなっ、何をっっ!」
思わずアイボンが声をあげる。

一瞬メラゾーマかと思った。
行く筋の気の固まりが光ながら放たれる。
しかしそんな単純なものではなかった。
貴子はそれを自ら召還したリザードマンに向かって放ったのだ。

数筋の光線は貴子の掌から放たれ、緑色のリザードマンにぶちあたる。
刹那、音も無くリザードマンが光りに包まれる。

Д<「なななな、なんや。いったいなんなんや」
サイトー「召還術とは本来精霊獣の類いを呼び出す行為。
     簡易化されて召還された猛獣でも更に力を与えることにより、
     高位精霊に少しは近付けるととができる。」
貴子「そういうこと」

あの大魔導師ごまと対等に戦ったモンスター達の一匹が更に強化されてあらわれる。
その恐怖におののきつつも石川はリザードマン向かって呪文をうちつける。

石川「ヒャダルコッ」

石川の放った冷気が光りの中に突き刺さる。

光が通り過ぎた後、そこには進化し、なおかつ無傷のリザードマンが立ちはだかっていた。
リザードマンは進化前に比べ肉体が肥大化し、歯は攻撃のためか長大となっている。
獣を感じさせた前傾姿勢ではなく、見事なまでの直立二足歩行である。
魔力の増大の象徴なのだろうか、腹部の虹色の模様は明度の高い色が彩色豊かに光り輝く。
その様相はまさに・・・・・・

Д<「ガ、ガ、ガ、、、ガチャピン!!!」

クリクリっとした目。
他のアウトパーツはドラゴンに近いにも関わらず、そうとは思えないほど短い足。
そしてアイボンが叫んだ名から、サイトーは進化させられたリザードマンの正体を思い出す。

サイトー「あれは、マスター・オブ・アウトドアとして名高い中級精霊獣、
     虹色の龍・ガチャピン!」
Д<「なんや、ガキの使いやあらへんのか?」
サイトー「ガチャピンをなめたらいけないわ。
     ヤツはロッククライミング、スキューバダイビング、スカイダイビング、と
     アウトドアスポーツは陸・海・空、全て制覇したつわものよ。」
Д<「で、でも、あっちは中級で、梨華ちゃんのほうはもっとエライんやろ。」
サイトー「たしかにシヴァのほうが高位ではあるけど、彼女はイフリートだけでも対等に戦えるかどうか…」
Д<「そうやってん!」

ガチャピンが石川にせまってくる。
石川は冷気の刃を打ちつける。
十分な間合いをとれずに放たれたただ一筋の氷の刃は、あの巨体で耐久オートレースを走破した程のガチャピンの神業的バランス感覚に、いとも容易くかわされてしまう。

貴子「イフリート」

ガチャピンに気をとられていた石川は魔法壁をはるスキさえ与えられずに炎の渦にのみこまれる。

Д<「梨華ちゃんっ!」

Д<「・・・はさておき、カオリンクエスト2、どん!どん!、盛り上がってますねぇ〜。」

周囲の木々と同じ高さまでのびた炎の中心から石川がでてくる。
すると炎は一時的なものであったらしく、すぐに弱まる。

石川「ケホッ・・ケホッ・・」
Д<「梨華ちゃん」
石川「ん・・・大丈夫」

物凄い冷気が石川を取り囲んでおり、一見炎の被害はないようだが、よく見るとチャーミースーツの所々がすすけている。

貴子「しぶといのね。
   直接攻撃でさっとかたをつけよっかな。」

そう言うと貴子は護符を懐からとりだす。
その間にガチャピンが再度石川に突っ込んでくる。

石川「イエティ!」

主の声とともに石川が先程召還したイエティがガチャピンの進路を阻む。
しかし、あっさりとガチャピンにかわされてしまう。

Д<「なんやアイツ、全然役にたたへんやん。」
サイトー「マズイ、接近戦に持ち込まれたらこっちが圧倒的に不利だわ。」


備前国友安造合戦用斬馬刀
一文字流免許皆伝

中澤「矢口、落ち着きぃ
   相手さんは瞬発力と回避能力にたよるだけで、攻撃は小手先だけの暗器程度やで。」
矢口「でも格闘術も油断ならないよ。」
中澤「冷静に間合いをとれば大丈夫や。」
そう言うと中澤は一歩前にでる。

ルル「そんなこと言ってるようじゃまだまだチャイナ人の暗器術は理解できてないアルよ。」
中澤「どうかな、私も手の内は全然見せてへんで。」
二人はジリジリと間合いを詰めはじめる。

先に動いたのは中澤だったのだろうか。
即座にルルの袖の内からボール程の大きさの物が幾つか飛んでくる。
中澤は直線に飛んでくるそれらを弧を描くような動きでかわすと、そのままの体勢で低く構えていた斬馬刀に力をこめる。
ルルの振り上げた右手に中華鍋が握られていることが、静観していた矢口にはかろうじて見えた。
まだ間合いが詰めきられていないのに、中澤が低い体勢から斬馬刀に弧を描かせる。
いくら斬馬刀が長いリーチを誇ると言えども、これではすぐにかわされてカウンターをくらってしまう。
矢口の思いに反するように中澤は愛刀を棍棒のように振り回し、直線的に降りおろうようなモーションをとる。

中澤「一文字流 潜牙撃」

ルルは今まで何人もの棍棒使いと戦ってきた。
棍はチャイナ大陸ではメジャーな武器の一つだった。
中澤のフォームはよくある棍術の上段、又は突きのスタイルに酷似している。
経験からとっさに防御のための中華鍋を構え、左手に暗器を用意する。
しかし、中澤の攻撃は今までルルが受けたことのない未知なる技だった。
振り回していた斬馬刀の柄のほうを中華鍋にあて、反転させるようにして低い体勢から下段攻撃に持ち込む。
足下がすくわれ、とっさに攻撃をさけようとしたが、足に多少ダメージをうけてしまった。
ダウンを奪われながらも反転し、なんとか追撃をかわす。

ルル「なかなかやるアル。」
中澤「まだまだや。そちらさんもそろそろチャイナ人の技量を見せてもらおうか。」

互いのカードを隠しながらのテクニカルな一戦に、矢口はもはや手をだすことができなくなっていた。


森の奥

ごま「んー、んー、んー!」
ごまは、ごまを掴む信田の腕を思いっきり掴んだ。
美帆「魔道士ごときの、、、!っ」
ぱっと信田は手を離した。
ごま「う゛ぇーーーーっほうぇっほ。。あ゛〜、、」
美帆「いたた、、、あんたなんでそんなに力あるの?」
ごま「う゛〜、、そっちこそ何すんのよー?あ、美帆さん?」
美帆「やっと気づいたの?」
ごま「??」
ごまは首をかしげた。
美帆「あのねー、あっちゃんはあの子とやりたいんだって。
   だから、あんたは私が相手するってこと。別にいいでしょ?」
ごま「んあ?、ああ、いいけど・・・・・・うーん、うーん、いいのかなぁ?」
ごまはなんだか腑に落ちない、、ような気がしないでも無い。
美帆「いいのいいの。(この子はさっきの子より、もっと単純そう。)」


ごま「なんだかなぁ、、、。じゃあいきますよ。イオラ!」
美帆「!?」
半径20センチくらいの光球が信田めがけて飛ぶ。
ドカーン!
驚きはしたが信田があっさりかわすと、地面に着弾し、破裂する。
ごま「イオラ、イオラ、イオラ、イオラ、、、、」
ドカーンドカーンドカーンドカーン!!
美帆「そう簡単にはあたらないよ。」
ごまを中心に回転するように信田は避ける。
しかし、ごまはイオラを撃ち続ける。
美帆「(??、、、魔力の無駄。)」
爆発により、もうもうと煙が上がりはじめる。気づいた瞬間、
美帆「!っ、視界が、、これが狙いか。私としたことが。。。どこだ?」
信田ははごまを見失った。少し焦る。
美帆(いや、落ちつけ。
   むこうもこっちにギリギリ近づくまでは場所がわからないはず。
   ならば、動くのは得策じゃない。先に姿を見つけてやる。)
美帆(気配を感じるんだ。私にはそれができるはずだ。)

・・・・・・・・・・、、、カタッ、、、

美帆「そこか?」

コンマ何秒で数メートルの間合いを詰める。
ボグッ
思ったほど、柔らかくない感触。
美帆「え?木?」
1本の大木が、魔法拳で文字どおり木っ端微塵に吹き飛ぶ。
美帆「くっ、、、どこだ?」
あわててあたりを見まわし、後ろを振り向く。
ごま「メラゾーマッ!」
ごっ、、、
ドン!、ゴオオオォ!!
信田の背中に炎の塊が直撃。燃え広がる。
美帆「あ!、、がぁあ!、、、くっ、、いったいどこから??」
信田は背中を隣の木に押し付け。消火をはかった。

ごま「あはっ、あたったあたった!」
木のあった位置からごまが顔を出す。信田はそれに気づいた。
美帆「え?何故?、、どうしてそこに??」
ごま「あ、気づかれた。レムオル切れちゃった。」
美帆「!!、2重の迷彩だったのか、、、」
悔しそうにというよりは、驚いて言う信田。
ごま「そう。へっへっへー。ひっかかったでしょ?作戦どおおおおり。」
得意げに言うごま。
美帆「くぅ、まずめくらまし、気配を読んで切りかかられることを読んで、
   透明になり、木に隠れる。私がそれに殴りつけたら、
   混乱して後ろを向くまでじっと待って攻撃。
   人間の心理を逆手にとって、、実に巧妙な作戦じゃない。
   さすがね。あんまり頭使って無さそうなのに、さすがは歴戦の勇者パーティーの一員」
ごま「でしょ?やる時はやるのよ。(やったねっ。さやか様)」

スピーディーな格闘家タイプと一対一でやりあうのは魔法使いには分が悪い。
そんなときのために、勇者さやかが考え、ごまに提案した奇策の一つだった。

美帆「まあ、良く考えたら、あんたに気配無しでの移動なんて出来るわけ無いから、
   最初に気配を感じた場所にいるに決まってるんだけどね。
   レムオルとは上手いね。騙された。」
ごま「勝ちぃ!」
美帆「まだまだぁ、、、もういっちょ。。」
嬉しそうにニヤッとわらう信田。
美帆「これでこそ面白い。あっちゃんが交代してくれてラッキーだよ。
   今度はこっちの番だな。」
しかしそれを見て、対象的にまゆをしかめるごま。
ごま「え、もうやだー。あっち行きたい。」
今さっき連れてこられた道を指差した。
美帆「?、そんなこと言わずにもっとやらない?。。蹴りがついたら、行くがいいさ。」
ごま「えー!今の私の勝ちでしょーー??
   べつに、さっきひるんだ所にあとメラゾーマ30発重ねてもよかったんだよぉ。
   だから私、あっち行くから。」
美帆「ぐっ、、、それじゃあ私の気が、、」
信田は言葉を飲みこんだ。
確かに勝負には負けたと認めるしかない。自分達も、殺しあいたいというわけでは無い。
あの決定的な状況では、自分もそうしているであろう。
ごま「!!、
   そっか!さっきからもやもやしてた気持ち。
   私がなんて言いたかったのかわかった。
   そーだよ。私も同じだよぉ。気がすまないんだよ。
   だってつまり、私じゃ役不足だから梨華ちゃんとやってるわけでしょ?
   納得いかなーい。貴子さんにも一泡吹かせてやるんだから。」
胸のつかえが取れたように、晴れ晴れと語るごま。
その時、
??「ああ!!いたぁーーー!」

ごま「あ!ナッチーだ!」
凄い勢いでナッチーがこちらに走ってくる。
ごま「おーーーい!!こっちこっち〜!!」
大声をだし、ぶんぶんと手を振るごま。
ナッチー「はぁはぁ、、、ごまのバカーー!!大変だったべさ。」
ごま「いいとこに来た!ナッチー、たっち!」
ナッチー「??」
ごま「この人もよろしく〜。」
ナッチー「ほぇええ?なんのことだべ?」
ごま「とりあえず、ナッチーに勝ったらまた相手するよ。またね。美帆さん。ルーーーラッ!」
ナッチー「あぁっ!!バカーバカー!!待つべさー!!」

美帆「あ〜あっ。同じことやられちゃったよ。」


ルル「遠慮無くこっちから行くアルよ。」
中澤の間合いより2メートルほど離れた位置から、ルルは手から上空に何かを放り投げた。
ちょうど、中澤の真上付近で
ブワッ!!
大きく広がる。
矢口「網?」
中澤「漁師や無いんやから。」
ズパッ!!
中澤は自分の上に広がる網を切る。矢口は大きく動いて、なんとかかわす。
網が中澤の体をすりぬけようとすると、
カチッ!
中澤「?」
ルルが何かのスイッチを押す。

パン、、パン、、スパパパパパパン!!

中澤「うわっ」
網の表面が爆発する。正確には、網がに着いた火薬が次々と破裂していく。

中澤「あたたた、、」
矢口「裕ちゃん!」
矢口は手を伸ばし、中澤に駆け寄ろうとする。
中澤「あ!馬鹿!」
シュパッ!クルルッ
矢口「!!」
その手に、ルルから投げられた鎖が巻き付いた。
ルルは左手でぐいと引っ張りながら、
右手に出したヌンチャクをサイドから振り、
ドス!!
矢口の腹を攻撃。
矢口「んぐっ、、」
中澤「矢口っ!」
中澤は火薬の破裂による皮膚の痛みを無視し、二人に走り寄る。
ドカ!
ルルは矢口を蹴り飛ばす。
中澤「(受け止めたいところやけど、)ごめんな」
中澤は矢口を避けた。矢口はその場に転がる。
中澤「(この間合いじゃ使いにくい武器で、両手がふさがっているはず。)」
中澤は近付きすぎず、刀を上げる。
中澤「隙ありや!」
真上から切りかかる。

ガイーーーン!

中澤「!」
既にルルの手にはヌンチャク、チェーンはなく、
中澤の攻撃は、両手で持たれたやや長めの棍棒の中心に受け止められた。
中澤「くっ、でもそんな棒きれで、この斬馬刀が受けきれると思うか?」
力をこめる。
ルルの右手の近くで棒が折れる。
中澤「へっ、どんなもん、、」
ガッ!
ルルは折れた棒をその方向に回転させるように振り、中澤の横っ面に一撃。
ガッ!!
ついで、棒の左手側にも亀裂が入り、同様に一撃。
中澤「!?」
中澤は頭が左右に振られ体勢を崩す。
ルルは受け止めていた刀の力が緩まると、小さく動いて刀をすかしながら前進。
中澤「(やられる!)」
とっさに刀から右手を離し、脇をしめるように体を守ろうとする。
バン!!
中澤「ぐあっ、、」
腕に予想通りの激痛が走る。
ズザザッ、
中澤は数メートル飛ばされた。

倒れた中澤に矢口が駆け寄るのを確認し、ルルは追うのを止める。
ルル「最後、身を守れたのは誉めるアル。普通ならここで肋骨が折れて終了アル。」
矢口「だ、、、大丈夫?裕ちゃん??」
中澤「うっ、、、いたたた、、、三節根か。そんなものまで、、」
ルル「・・・・・、わかったアルか?」
中澤「そやな。騙し騙しなんかやない。あんたは強い。」
2桁はある武器数。それによる戦法の組み合わせは、、、、
ルル「無限アル。」
次の動きは読めない。かつ、ルル本人の身体能力も非常に高い。

中澤「矢口、うちならまだまだ平気や。」
矢口にだけ聞こえるように話す。
中澤「攻めさせるのは得策やないな。こっちが攻め続けるんや。
   コンビネーションや。最初に言ってた方針どおりにやるで。
   それなら隙はないはずなんや。」
矢口「う、、、うん。」
中澤「自信無いんか?矢口が提案したやつやで。
   ええな?こっちは相手の動きがよめへん。相手に攻めさせたらあかん。
   押し続けるんや。」
矢口「・・・わかった。」

二人は立ちあがった。

矢口はスピーディーに間合いを詰め、至近距離に潜りこみ、
バシバシバシ、
新しい暗器を出させないよう、手数で押す。
中澤は矢口のやや斜め後ろに立ち、矢口の息継ぎの際にフォローを入れる。
ルルはちょっとずつ後退する。
中澤「(ええで。押されて大きく体勢を崩した所に、長距離砲で狙い討ちや。)」
矢口「はぁ、はぁ、」
しばしその状況が続く。

ルル「!」
ルルが下がり際に石に足を取られ、少しリズムを崩す。
中澤「(ここや!)」
矢口「超龍拳!!」
中澤「!」
ルルがちょっと大きめに後退する。
矢口「やった!」
中澤「ドッカーーン!!」
ブオン!
空振り。
中澤「ちっ。(1発目ははずれか。)、、、矢口!!」
ルルは両手に2本ずつ剣を出しながら、矢口に近寄る。
中澤「!?、、危ない!」
ブンブン
矢口の動きが止まってる?中澤はあわてて長剣を振り回す。あたると思ってはいない。
トンットンッ
軽くステップして間合いを離すルル。
しかし膝を着いている矢口の肩に、新しい赤い線が現れた。

中澤「矢口っ、大丈夫か?」
矢口「へ、、平気だよ。深くないから」
確かに、皮膚が切れただけのようだ。
中澤「ほ。、、、にしても自分、動きおかしいで!どーしたんやいったい?」
矢口「はぁ、、はぁ、、、」
中澤「攻撃休めたやろ?それじゃ作戦どおりにいかんで。
   そもそも、、、あそこで焦って超龍拳やってどないすんねん?」
矢口「ごめ、、、ん、、裕ちゃん。足、、引っ張っちゃって、、」
矢口の顔色が悪い。
中澤「!、、辛いんやな。」
矢口「はぁ、、、はぁ、、、平気。」
中澤「あんた、昨日の今日で病みあがりなんやから、ちょっと休んでたらどや?
   なんなら、城に戻っててええで。」
矢口「!!、やだよ!ピンチな時こそ活躍、、、」
矢口は中澤の言葉に驚き、むきになって言った。しかし息が乱れ、最後まで続かない。
ちょっと考えこんでから中澤が続けた。
中澤「・・・・・、いいや、今回は許さんで。
   そうやっていつまでも病が尾を引いたり、怪我は癖になったりするんや。
   1回きっちりなおしや!」
矢口「やだってば!一人で戦わせるわけにはいかないよっ!」
立ちあがる矢口、、、、すぐに中澤が支えに入る。
中澤「ほらっ!ろくに立ってられへんやないか。
   今も随分無理してたんやな?もう超必殺技使うくらいしか動けへんのやろ?
   それも避けられたらお終い。力尽きたらばったり倒れるだけやん。
   ええな。うちが一人でやる。」
中澤は矢口をその場に座らせた。

矢口「二人がかりでも通用し、、、ないんだよ?、、、一人で、、どうするんだよ?」
中澤「平気や。なんとかする。、、一人の方が、戦いやすいってときもあるんや。」
中澤は矢口に後ろを向けながら言った。
矢口「!!、裕ちゃん、、、それって、、、、(矢口が、、、)」
中澤は長剣を持ち、ルルの方へ向かう。
中澤「ええか?落ちついたら城に戻るんやで。」

矢口「(私が、、、いらないってこと??)」
矢口は中澤から目をそらしていた。

中澤は自分自身に言い聞かせるように、また、ルルにも聞こえる様に叫ぶ。
中澤「1本の武器だって、、、煮詰めれば煮詰めるほど強くなる。可能性は無限なんや!」
ルル「・・・・自分自身は、どうアルか?」
ルルは一秒くらい間をあけて、突然目を細めてつぶやいた。
中澤「?、・・・・・。」
中澤には、今一その発言の意味が飲みこめなかった。

矢口「(最初っから手出ししなければ良かったってこと??)」

ルルが間合いを詰めてくる。

中澤「(大切なのは、間合いの維持や。うちの武器が強い位置で戦う。
   そして今度はこっちが騙し騙しや。
   策は向こうに比べたら多く無い。一つでも引っかかってくれると、、、ええな。
   まずは、先手を取ることやな。)」

斬馬刀は数々の武器類のなかでもリーチの長い部類に入る武器である。
中距離から直接ヒットが狙える程の長さを誇る。
棒状突き型の武器類の中では最長の刃を持つことも特徴の一つだろう。
棍棒に長い刃をつけたとも言えるし、薙刀の軽量化を意識し刃を長くしたとも言える。
そのため突き型の武器であるにも関わらず、武器名の通り斬撃が有効にはたらく。

戦闘スタイルもその両者の中間と呼べる形状である。
遠心力に重きをおく棍術と間合いに特に気をつける薙刀の両方の特性を持っているのである。
そのため斬馬刀は握り方で戦闘スタイルを変化させることができる。
間合いを維持したり様子を見る時は両手持ち。基本動作は突きとなる。
渾身の一撃を加える時は片手端持ち。基本動作は馬首をも落とす斬りである。
間合いをつめに行く時は片手中央持ち。基本動作は蹴りや牽制からの連係を狙う。
以上が外的要因の小さい時の斬馬刀戦闘セオリーとなる。

先手をとるために、中澤はルルの移動に合わせて中長距離から間合いを変動させない。
ルルの視線が自分と後ろで足を抱えている矢口の両方にいっていることを視認し、中澤は斬馬刀の持ち位置を中心よりやや端よりにずらす。
長いものを振り回していた右腕筋肉が少し痛んできた。
斬馬刀は薙刀よりは軽くとも棍棒よりは思いため、女性の体には負担が思いのである。

二つの武器の特性を活かした斬馬刀だが、意外に応用力は低い。
刃がついているために、バランスを最大限に引き出さねば近距離戦では遠心力がアダになってしまう。
その大きさから攻撃の出が遅いため、多くの武器の得意である中近距離戦では先手をとられてしまう。
間合いをつめきる事が出来ないため、大鎌・大金槌や銃器をはじめ飛び道具を相手に遠距離戦を戦える程得意ではなく必然的に間合いを詰める他ない。
近〜中長距離向きとされる棍棒と中〜長距離向きとされる薙刀の重なった限られた間合いのみが斬馬刀の得意とする間合いなのだ。

限られた間合い故、戦闘も単調になりがちだ。
中長距離で様子を見、徐々に間合いを詰めていく。
中距離まで来たら相手の様子を見て一気に近距離戦に持ち込む。
そのまま連撃へとつなげて致命傷を与える。
もし与えられなければ近距離戦を守りきることは大変難しくなってしまう。

中澤は“罠”をはりめぐらそうとあらゆる状況や戦術を仮想する。
この距離から普通に間合いを詰めても、相手の防御等に阻まれて詰めきれない。
そうなったが最後、近距離戦で相手の攻撃のエジキになってしまう

遠距離に一度回避してはどうだろうか。
いやいやルルは先程チェーン状の暗記を出してきた。
鞭類は攻撃性能は低いが応用力は非常に高い。
下手をすれば矢口まで巻き込んでしまうことになる。

それではやはりこのリーチで一撃後、スキを作らせ蹴り技で近距離戦だろうか。
しかし自分の格闘センスは格闘家である矢口やルルに比べ数段低い。
間合いは・・・結局のところ保つことしかできない。

斬馬刀が棍や薙刀に劣る理由のもう一つは、修練環境にある。
棍は急所を狙わなければ致命傷になることはないことから、僧に多く用いられる。
それ故棍棒使いには人体医学に精通しているものが多く、精神鍛練も行われている。
薙刀は筋力があまりなくとも高い防御性能の誇ることから、女性が用いることが多い。
護身術的な価値が確立しているため、古武術として大変儀礼を重んじる。
共に精神鍛練を積んだものが、防戦を主目的として用いる武器なのだ。

ところが、斬馬刀は荒くれ者たちにその長さだけで気に入られ、力任せに振り回されてばかりいるのが現状である。結果、本来シビアな間合い展開を必要とする武器にも関わらず、防戦よりも攻撃を意識した技ばかりが開発されている。
これらの技はある程度以上のレベルになると、大方相手に受け止められてしまう。
相手のスキを見ての攻撃が肝要となるのだが、精神鍛練もへったくれもない荒くれ者達は勘などあてにならないため、経験や戦闘センスに頼らざるをえない。
スキをつくことができなければ、守ることもできない。
防戦用の武器の掛合わせにも関わらず、斬馬刀の実質的な防御性能はとても低いのだ。

自分のスタイルの特徴と言えばやはり酔拳なのだろうか。
酔いに任せて天性であるらしいバランス感覚のみに頼れることで、この武器が気に入った。
その後経験を積み、素面でも十分扱える程の技功派にはなったものの、この武器の応用能力には限界も感じていた。しかし、この戦いで考え方がかわった。

精神面で自分が相手に劣るのは致し方ない。
それならば酔拳で培ったフェイントテクニックで相手の裏をかこう。

外的要因を省いた状況下でこの武器の真価が発揮されないことも身にしみた。
それならば自らこちらにプラスになるコンディションに持ち込めばいい。

荒くれ者であることは変えようのない事実だ。
自分は限られた星の下に生まれた勇者でも、天才の魔導師でも、しかるべき環境に育った大神官でもない。
それならばせめてこの戦いに勝利しようではないか。

「うちは‥‥‥世界一の斬馬刀使いやで」


牧城。
りんね「さて、乳搾りでもしよっか。」
あさみ「うん。」
牛舎へ。

りんね「はーい、お乳搾るからおとなしくしてね〜・・・ん?」
あさみ「りんねちゃん、どうしたの?」
りんね「この牛、ブルブル震えてる、、、」
あさみ「・・・おびえてるの?」
りんね「体もすごい乾いてるし」
あさみ「そういえば、時々遠くから変な音が、、、」
りんね「何かあるのかな・・・」

ふたりは牛をなだめたあと、こっそり牧城を抜け出した。

-------
ヨシターケ「あのバカたち!仕事もすねえでなーにやってんだべ!!」
一人で乳搾り・農作業に追われるヨシターケ。


ルーラで飛ぶごま、走る勇者飯田&つじを発見。
ごま「おーい、かおりー」
勇者飯田「ごま!」
つじ「たすけてほしいのれす・・・」
勇者飯田とつじは事情を話した

ごま「ユウキのやつ、また来たの!?信じらんなーい!」
勇者飯田「とりあえず、この子を助けたいんだけど」
ごま「でも、あたしは簡単な回復呪文ならできるけど、呪いは圭ちゃんじゃないと」
勇者飯田「じゃ、圭ちゃんのところに行く!」
ごま「オッケー。」

すっかり戦いを忘れてしまったごま&勇者飯田、ルーラで保田のところへ。


よっすぃー「もらったっ!」
美和「まだまだぁ!」
二人は少しも休むことなく攻撃を続け合う。
そしてその衝撃で周囲の木々は折れ、地面には無数の斬撃の跡がつけられている。
保田「(戦争レベルの荒れっぷりね…。一対一なのに)」
保田は二人を必死に目で追っている。その時…

ドカーーーン!!

3人「!!!」
突然の爆音に、二人も戦いを止めて音のした方向を見る。
その音のした方向には…。
保田「やっぱり…ごま!なんでここに来てんの!?」
ごま「あ、圭ちゃん。なんだか久しぶりな感じがするね〜」
勇者飯田「けけ、圭ちゃん!この子が!この子が!」
保田「ああもう、順を追って説明してよ!」

よっすぃーVS小湊美和、一時休戦

勇者飯田とごま、説明中…

保田「なるほど…。そういう理由ね」
美和「へぇ〜、美帆が負けちゃったんだ。こりゃあ気合入れないと」
勇者飯田「だから圭ちゃん、早く!」
つじ「このこをたすけたいのれす!」
保田「…わかった。じゃあとりあえずここを離れよう」
ごま「なんで離れるの?急いでるならこの辺でやってもいいのに」
保田「…あんただって戦場で怪我人を見つけたら先に安全なところに運ぶでしょ?そういうこと」
ごま「???」
保田「ほら、ボーっとしてないであんたもついて来る!」
ごま「はぁーい…。それじゃよっすぃー頑張ってね〜!」
勇者飯田たちはルーラで姿を消した。

美和「…なんかしらけちゃったね…」
よっすぃー「はい…」
美和はよっすぃーと距離を取りながら言葉を続ける。
美和「次の一撃で…決めちゃおっか?」
よっすぃー「そうですね。このまま持久戦を続けてもいつ終わるかわからないし…」
美和は微笑んで、改めて構えをとる。
美和「じゃあ決定。次の一撃にお互いの全ての力を賭けて、決着をつけよう」
よっすぃー「…そのつもりです」

ついさっきまでとは全く違う、静かな空気が二人の間を流れた。


保田「とりあえず生体反応はあったわ。
   ただ神獣でなければ野獣でもないから、どうなるかはなんとも・・・」
飯田「そう、、、
   ありがと、圭ちゃん。」

サイクロプスは横にされていて、一見するとただ寝ているようにも見える。
もちろん寝息などたてていない。
彼の生命がそんな状態にあるのかは全くもってわからない。
神官と言っても肉体までも司るわけではないからだ。

保田「神官技能でもこれが精一杯よ。
   医療技術や魔術の応用も効かないみたいだし。
   とりあえず今後は経過次第だから、ちゃんと見張っててよ。」

そう言うと保田は神官のローブに肩当てを身につけ、ルーラで飛んでいってしまった。

飯田「圭ちゃんは何処いったの?」
つじ「ひとみさんのところじゃないれすか?」
後藤「圭ちゃんなら梨華ちゃんのとこの様子見に行くって」
飯田「ふーん」

飯田がふとつじのほうを見向くと、つじはニコっと微笑みかえした。


サイトー「どうにかして攻撃の一翼を封じ込めなくちゃ。」
Д<「こっちも雪男を強くすることはできへんのか?」
サイトー「召還獣の強化は術師の必勝パターン。
     そう簡単に方法は見つからないのよ。」

そう言っている間にも貴子の攻撃は緩むことなく続いている。
近距離と遠距離の両方から一斉攻撃をうけ、石川は満足に受け身もとれない。

シバタ「キャッ」

途端、シンクロが解けてシバタが嬌声とともに地面に墜落する。
フェアリーが地に落ちる。
それはつまり限界をあらわしていた。

Д<「大丈夫かっ!!」

慌ててアイボンがかけよるが、シバタは肩から鮮血を滴らせていた。

サイトー「じっとしてて」
Д<「直るん?」

サイトーが能力でシバタの傷の一部を自分の身に移す。
もはや妖精の治癒能力でなおせる範疇を超えた外傷になっていた。

サイトー「くっ」
シバタ「サイトーさん、すいません」
サイトー「いいから、早くあのこを助けてあげて。」
シバタ「でも、もうこれ以上どうしたらいいか・・・・」
Д<「なんや方策はないんか?」
サイトー「‥‥‥‥」

サイトーは目をつぶり、必死にシヴァの能力についての知識を思い出そうとする。
そうしている間にも石川はガチャピンの直接攻撃をうけている。
攻撃をうけた杖がひん曲がる。
間合いをあけて一時的に逃げきれたと思っていたら、貴子とガチャピンの双方から飛び道具がくる。
シバタの力を使うことも出来ず、完全に2対1の構図で劣勢にたたされていた。

サイトー「そう言えば..」
Д<「なんや!!」
サイトー「シヴァは本来は破壊と生殖の神。
     それが精霊となったのが高位精霊シヴァ。
     それならば破壊神としての力がシヴァの真価のはず。」
Д<「その真価発揮するにはどうしたらいいんか?」
サイトー「・・・・・」

アイボンの質問にサイトーは一瞬答えるのをためらい、結局口を開く。

サイトー「ねえ、あの娘を狂わせることができる?」

Д<「そんなんやったら、うちに任しときぃ」
Д<「モシャス」

保田「石川、もういいよ。
   アンタには他人を守ることなんてできやしないって。
   はじめからアンタには期待なんかしてないから」

保田(アイボン)の言葉に一瞬周りの空気が凍り付く。
次の瞬間、貴子が放った火炎が空中で擦り切れる。
悪寒がした、とでも言うべきなのだろうか。
石川の周りに渦巻いているのはたんなる寒気とは違う。

その時、サイトーの指示とおりにシバタが意識をシンクロさせる。
シンクロさせたからといって意識が共有されるわけではない。
シバタの思いがどこまで石川に届くか、賭けにでたのだ。

すると石川は一瞬おくれて発狂する。
そのまま涙目で恨みがましく貴子をみつめる。
そして信じられないことに、石川は自分の指の先を噛みちぎる。

貴子「クレイジーだわ」

貴子もガチャピンも動きがとまる。
石川は涙目のまま、指を噛んだまま、歩き出す。
そして、指を口からはなし、イエティーのほうに指を突き出す。

石川『破壊神・シヴァの血をもって、、、蘇れ!野生の心!!』


二人の間に緊張が走る。
次の一撃で決着がつく、そう思えば当然のことだろう。
美和「…行くよ。最後の最後だし、とっておきを見せてあげる」
よっすぃー「こちらこそ、秘剣をお見せしますよ」

一瞬間を置いた後、二人は同時に正面に向かって駆け出した!
美和「陰陽扇っ!!」
よっすぃー「八刹剣奥義っ!!」

カッ!

二人の攻撃がぶつかり、その衝撃によって周りの空気が大きく振動する!!

衝撃が収まる。周りは廃墟のように荒れ果てていた。
そして、その時そこに立っていたのは美和だった。
よっすぃーは空高くへ投げ出されている。

よっすぃー「(負けた…のか…)」
よっすぃーは受身が取れず、そのまま地面に叩き付けられた。

よっすぃー「う…っ」
それでもよっすぃーはかろうじて立ち上がる。
刀を地面に突き立て、それによりかかった状態ではあるが。

よっすぃー「…もう、動けません。美和さんの…勝ちですね」
よっすぃーは美和に向けて言う。
しかしそこで、予想外の言葉がよっすぃーに返ってくる。
美和「…立っていられるんなら…ひとみちゃんの勝ちだね」
よっすぃー「えっ?」
美和はそう言うと、そのまま倒れ伏した。

美和は体に大きな刀傷を作っていた。ひどく出血しているようだ。
美和「見事だね…。秘剣がまさか二段技だったとは思わなかったよ」
よっすぃー「はい…。美和さんは恐らく片方の扇子で払い、もう片方で穿つという戦法を取ると思いました。
       だからあの技を使ったんです、『霧撃ち』と『雲斬り』を。
       そしたら案の定成功…。でも、あの破壊力は計算してませんでした」
美和「…『陰』が封じ、『陽』が払う。うまくいくと思ったのになー」
美和は左側の受けを担当した扇子を見る。その扇子は真っ二つに切り裂かれている。
美和「こいつでも…流石に名刀から繰り出される秘剣を二発は受けきれないか…」
よっすぃー「とりあえず、勝負は引き分けですかね…」
美和「立っていられるんでしょ?ひとみちゃんの勝ちだよ」
よっすぃー「試合では…そうかもしれません。でもこれは『勝負』ですから。
       互いに動けないんですし、引き分けですよ」
美和はよっすぃーの言葉を聞き、笑いながら応える。
美和「……あはははっ!私としたことが、こんな若い子に勝負について諭されるなんて…。
    私もまだまだ修行不足かな?」
美和は言葉を続ける。
美和「…うん、引き分けだね。なんかすっごい負けた気がするけど…」

倒れている美和に向かって、よっすぃーが一言告げる。
よっすぃー「本当に…ありがとうございます。美和さんが居なかったら…」
美和「気にしないの。私だって好きでやったんだし…。それじゃあ、おやすみ」
そう言って美和は、その場で眠りについた。
よっすぃー「…もう…立ってるのも辛いな…。私も寝よっと…」
よっすぃーもそのまま倒れ伏し、うつぶせで眠った。


それはともすれば偉くグロテスクな光景だった。
少女の指先から流れる鮮血は赤い雪男の体毛を更に赤く染めあげていく。
目は小さく丸くなる。
体毛は痺れるように逆立っている。
そして何よりの特徴は頭から生えていく黄色い物体だった。
ヘリコプター、と言ってよいのだろうか。
その様相はまるでドラ○もんのタ○コプターのようでもあった。

貴子「あっあれはっっっ!」
Д<「やっぱし」
サイトー「あれは、ピエロ・ダ・ジャイアントとして名高い中級精霊獣、
     外斜視の巨漢・ムック!」
Д<「なんや、ガキの使いやあらへんのか?」
サイトー「ムックをなめたらいけないわ。
     ヤツはその巨体に似合わない声と行動で子供に意図的に同等に見せ、
     その実、視線からもなにを考えているのかわからないつわものよ。」
Д<「ようはテリー伊藤なみに狂っとるっちゅうことやな。」
サイトー「でも、これで2対2の戦闘が実現するわ」

石川の狂的な行動とイエティの狂った視線におののきつつも、貴子はガチャピンに指示をだす。
ガチャピンがスマートなスタイルからムックに近づくと、ムックは狂おしい目でガチャピンを見つめる。
ムックが攻勢に入ろうとしたところを貴子が火球をヒットさせる。
ガチャピンはその直後に石川が放ったマヒャドをよけるも、火球を突き破って突進してきたムックにぶち当たる。
石川はガチャピンにルカニをかけるが、貴子はすぐにスカラでカバーする。

サイトー「互いに中級召還獣1匹に賭けての戦い。
     いかにして相手の術師本人に高位精霊の一撃をヒットさせるかがポイントね。」
Д<「でも梨華ちゃんのほうがダメージくらってるし圧倒的に不利やで」
サイトー「はたしてそうかしら」
Д<「そうやろ、もう立ってるのが不思議な位やない」
サイトー「さっきからあの娘の周りの空気が徐々に変化しているのに気付いた?」
Д<「空気・・・?」
サイトー「今まで彼女から発せられてたのは霊力素質からの冷気。
     でも先程から彼女の発している狂気が、空間に渦巻く程にまでなっている。」
Д<「どういうことなんか?」
サイトー「おそらくこの長丁場に精神の安定が保てなくなってきたんだわ。
     でもシヴァの本来の力を発揮するにはかえって都合が良かった。」

石川「許せない、アナタが、、、
   でもこんなに私が気を吐いているのに、何故私はアナタを倒せない?」
虚ろな目で石川が小さな声で、噛み締めるように呟く。
自問自答?いや、そんなもんじゃない。
貴子へではなく、自分への怒りなのだろうか。
その形相はヒステリックな昂りでもあった。

貴子「召還獣への冷静な指示がなければ、召還獣も意味がないわよ。」
貴子も冷静を装っているが、徐々に長期戦の疲れが見てとれた。
もとより召還は気力をひどく消費する魔法なのだ。
ひさしぶりの実戦、それも連戦に流石の四天王稲葉貴子もこれ以上の新たなる召還はできずにいた。

ガチャピン「オマエばっかり子供と呑気に遊んでやがって。
      体はって人気を保ってるのはオレだぞ。
      おまえはスタジオでガキをあやしているだけじゃないか。」
ガチャピンの鍛えられた肉体からくりだされる連続攻撃に、ムックは防戦一方となっている。

ムック「はっ、笑わせるな。
    Cカード(ダイビングライセンス)持ってて、ロッククライミングの心得があるオートレーサーがどこにいるんだよ。
    体はってんのは毎回別の人ってこと位わかってんだよ。
    視聴者バカにすんのもいい加減にしろよ。」
一瞬の反撃だが、ムックがピンポイントに攻撃をヒットさせる。

Д<「・・・なんや1対1が二組あるだけやない。」
サイトー「そうでもないわよ」


美帆「あーあっ。さっさと蹴散らして追いかけるか。」
ナッチー「あら、美帆さんでないかい?」
目をぱちくりさせるナッチー。
美帆「そうだけど?」
ナッチー「なんでまた、こんなところに?」
美帆「は?、まだわかってない人がいたの?なんか似たようなリアクション、三度目なんだけど。」
ナッチー「?」
美帆「あのね、私達がボンバー四天王なの。だから戦うの。わかった?」
ナッチー「は!、、、ほへえええええ。あれまぁ、、、」
今度は口を開けたまま、目をぱちくりさせる。
美帆「聞いた後の反応は三者三様ね。ま、戦う理由はこれだけで十分でしょ。私達は敵同士。」
ナッチー「はれ?ってことはナッチー、またごまに敵を押しつけられたんだべ?」
美帆「そういうこと。私はあんたをのさないと、あの子とまた戦えないみたいだから、
   とっとと始めよう。」
ナッチー「むっ、ナッチーが簡単に負けると思ったら大間違いだべ。
   ごまが勝ったんならナッチーも勝つっしょ。ごまを追いかけるのはナッチーだべさ。」
美帆「んじゃ、最初っから全力で行くよ。さっきみたいに小細工に引っかかりたくもないし。
   ハッ!」
7メートル程度離れた場所から、信田が一歩を踏み出す。

ナッチー「!、き、、消えたべさ!」
美帆「ハィ!」
どか!
ナッチー「!」
信田の蹴りがナッチーの腹に直撃。
ナッチー「イタタタ」
ナッチーはたたらを踏んだ。
美帆「悪いけどこのままかたをつけるよ。魔法拳」
信田は離れずに
バキッバキッドカ!
左手、右手、左足と連続攻撃でたたみかける。
ナッチー「は、、速いべさ。」
続けざまにダメージを受けるナッチー。

・・・・・・・・・・

戦いが始まって3分もたっていないが、ナッチーには随分長いことやられている様に感じられる。
ナッチーは信田の速さについていけず、
最初にあっと言う間に捉えられて以来、サンドバッグ状態である。
ナッチー「(い、いつまでもこのままじゃまずいっしょ。)ハッソート、」
美帆「甘い!」
信田はナッチーの斜め前方へのステップと同じ方向にステップして追い掛ける。逃がさない。
ドカッ
また蹴りを貰う。
ナッチー「くっ、、ハリテッ!」
美帆「遅い!」
ブンブンッ
信田は華麗にばくてんしてナッチーの攻撃をすかす。ナッチーの張り手は空を切る。
そして再度信田の連続攻撃。ガードさせる隙間なく
バンバンバン!
魔法拳で顔面に三発。ナッチーが顔を守ろうと腕を上げると
ドン!
あいた腹にミドルキックを一発、そして足払い。
ガツッ

そこでいったん信田は間合いをとった。
ナッチー「ぐっ、、、ふん!」
ぐらつくナッチー。股を開いて踏ん張る。
美帆「あれ、立ってるか。よくこらえたね。」
別段驚いたという表情でもなく信田が言う。
ナッチー「ハァハァ、、、転んじまったら力士は終わりだべさ。」
辛そうにナッチーが答える。
美帆「顔、腫れ上がってるよ。」
ナッチー「むっ、もともと丸顔なだけっしょ。ハァハァ、、」

美帆「まあ思ったよりは手ごたえがあって嬉しいよ。
   でも、攻撃がまったくあたらなんじゃ、そっちに勝ち目はないと思うけど、、、
   いや、まだ何か隠してる?」
信田は余裕で続ける。ナッチーは信田を睨みつつ、
ナッチー「ハァ、、ハァ、、、
   (どうすべどうすべ?雷は使えないし、強引に流れを変えようとしても駄目。)」
しかけて来ないうちにと呼吸を整えながら、考える。
ナッチー「(しょーがない、奥の手を使うときっしょ。本来の使い方じゃない。
   したっけやるしかないべさ。)」
信田はナッチーの表情の微妙な変化に気づいた。
美帆「ん、何か考えついた?その隠してる奥の手ごと、叩き潰すから。」
ナッチーは信田の声に特に反応せず、落ちつくことに専念している。
ナッチー「ハァ、、フゥ。。(あのスピードではここまで1秒、、)」
美帆「ハッ!」
信田が地面を蹴り、前進する。やはりナッチーは動きを目で追えないが、
ナッチー「来る!1、ここだっ!」
パァン!!
ナッチーは目の前で手を強く叩いて大きな音をだした。
美帆「?」
ナッチー「止まった!見えた!!」
1メートル先に信田がいる。

ガシッ!
ナッチー「もう逃がさないっしょ!!」
ナッチーは信田の腕を掴み、会心の笑みを浮かべる。
美帆「しまった、、、猫騙し?」
ナッチー「相撲の投げ技の餌食になるべさ!」
美帆「うあ、、っ」
ナッチーは素早く信田をひっくり返すと、片足ずつを両脇に抱えた。
ブンブンブン、、
勢いよく回転する。
美帆「何ー?なんなのこれ?全然相撲技じゃないじゃん?!」
信田は頭を抱えた。
ナッチー「ジャイアントスウィーーーーングッ!!
   ぐーるーぐーるーまーわーあーてーーーー!」
美帆「あぁっ、しかもその歌もあんたのじゃないって!」
ブォンブォンブォン、、
回転速度を上げて、
ポイッ
ギューーーーン!!
岩にめがけて勢いよく飛んで行く。
美帆「キャーーーーーー!」
ナッチー「やった!ざまみろだべ。」
クラクラクラ、、、
自分も目が回る。

美帆「なんちゃって。」
ナッチー「?、、あああっ!」
ナッチーはくらくらしたまま信田の方を見た。
岩に激突する瞬間、岩に手を着き、ひらりと、、、
美帆「受身が取れちゃったりするのよ。」
スタッ
信田は岩の頂点に降り立った。
ナッチー「・・・・・」
ぽかーんとするナッチー。
美帆「毎回奇策を食らってジエンドってわけにはいかないのよ。
   こっちも、ボンバー四天王の看板背負ってるからね。」
ナッチー「・・・え、えぇえーーーー!?、そ、、、そんなぁ。嘘だベさー!?」
美帆「ははっ。ナイスリアクション。
   さて、二度同じ手は食わない。もうつかまる事は無い。私の勝ちかな?」
ナッチー「はららら、、どどどど、、、どうすべ?」
美帆「降参するなら、これ以上時間裂きたくもないし、終りにしといてあげるけど?」
ナッチー「んなな、なーにいってるべさ?降参なんかしないっしょ。バーカバーカッ!」
美帆「そう?じゃ、ほんとに終わらせてあげる。とどめっ」

ダッシュから、ロンダート、バク転、バク宙、
ダンダン!
ナッチーの脳天に綺麗に2発の蹴りが入った。
ナッチー「・・・・・・・、?」
ナッチーは何が起こったか一瞬理解出来ず、気絶しそうになる。
それでも倒れないナッチーを見ると、
バンバン、ドカッ、、バキッ
信田はラッシュをかける。逆にそれで意識が戻るも、再びサンドバッグ状態のナッチー。
かろうじて立っているまま、徐々に後退する。
美帆「よく頑張ってるけど、、、後が無いよ。」
ナッチー「?」
美帆「後ろは崖」
ナッチー「ひっ、」
ナッチーが少し後ろを振り向くと、確かに完全に追い詰められている。
崖といっても下まで4〜5メートルほど。とはいえ、この状態で落とされたら只では済まない。
ワシッ!
信田はナッチーの首を掴んだ。
美帆「落ちなさい。」
そして押す。
ナッチー「むむぐぐぐ(ひぃええええええ)」
ぐいぐい
美帆「ほらほら、、」
今にも落ちそうだ。

ナッチー「う、、、ぐ、、ふぬぬぬ、、、(ここで耐えねば)」
美帆「ふふふ、私の勝ちだろ?諦めな。」
が、まだ落ちない。苦しさでナッチーの目に涙がにじむ。
美帆「!?、早く落ちろって!」
ぐっと力を入れる信田。落ちない。
美帆「?、(あれ?おかしいな)」
更に力を込める。
美帆「お、、、、落ちない?」
ナッチーは崖っぷちに追い詰められてから、まったく動いていない。
ナッチー「うぐうぐうぐぐ(ど、、、土俵際の、、、踏ん張りだべさ!)」
美帆「(なんで?いきなりびくともしなくなった、、、まるで巨大な岩の様、、)」
疑問を持った事により、一瞬信田の力が緩む。
ナッチー「むぐぐっ!(つかまえた!)」
ナッチーは首を押さえてる信田の腕を両手で掴み、首から離した。

美帆「あ!、しまっ、、、ふ、ふんっ!、投げられたって受身を」
ナッチー「ゲホッ、、いやあ、もうナッチーの勝ちさ!」
信田はナッチーの声に自信を感じる。手が無いと思われるが、、、
美帆「?、どうするつもり?例えこの崖から落されたって私は平気だ!」
ナッチー「捻り手奥義っ!」
ナッチーは胴に手を回した。
美帆「?、抱え上げて何するつもり?抱きしめてくれるのかしら?」
ナッチー「サバオリッ!!」
ギュゥウウウウゥウウ、、、
ナッチーは信田を抱きしめた。
美帆「!!、な、、何これ?あ、、」
メりメり
美帆「ぐ、、がぁああ、、やめ、、、私は、、(腰が、、)」
ナッチー「ふんふんふん!」
ミリミリミリ、
更に強く締め付ける。
美帆「があぁ!(やばい、、、くっ、負けるわけには、、)魔法拳!」
ドンドン
信田は抱えられた状態のままナッチーの背中を叩いた。

ナッチー「ううっ、、、負けないっしょ。こ!れ!で!も!かーーー!」
メキメキ、、バキッ
美帆「ぐはっ!」
鈍い音がした。信田の腕がだらりとさがる。
信田の体から力が抜けたのがナッチーにもわかる。
ナッチー「やったっ!」
ナッチーは信田を離した。信田はフラフラと倒れかかる。
ナッチーもフラフラしている。
そこをもう一度グッと踏ん張って、
ナッチー「とどめいくっしょ!!、はぁあああっ!千連鉄砲っ!!!」
バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ!
美帆「あぁーー、、」

ナッチーの張り手全段ヒット!信田なすすべ無し。気絶でK.O.
ナッチー勝利!!


馬で移動するりんね&あさみ
祠に向かって進んでいく。

りんね「・・・なんか、燃えてる音がする」
あさみ「うん・・・暑くて寒い・・・変な感じ」
りんね「あ、あれ!」
あさみ「梨華ちゃん!!!」

二人が目にしたのは、炎と氷に包まれる石川と稲葉、
それにガチャピンとムックの姿だった

あいぼん、りんねとあさみを発見。
Д<「おーい!」

Д<「なんや、あんたら来たんかいな?」
りんね「・・・・・・・」
あさみ「・・・・・・・(涙)」
Д<「ん?、どないしたん?」
りんね「・・・・ここまだうちの敷地。。(泣)」
あさみ「・・・・・・牧場がしっちゃかめっちゃか、、、(涙)」
Д<「そ、、そらすまんことしたな。(意外と広いんやな。)」
りんね「うっ・・・・・・・(涙)」
あさみ「ぐすっ・・・・・・」
Д<「(うっ、、、めっちゃ心苦しいで。せやけどうち、もう肉体労働は勘弁やで。
   前も柵とか直すのごっつう大変やったんや。)」
あいぼんは石川を指差した。
Д<「な、、、なあ、あんたら、しっかり本人が責任取るいうてるから、許してやってや。」
あさみ「え?そうなの?もう行っちゃうんじゃなかったの?」
Д<「うちらはこの戦いの後旅立つけど、彼女はなんや、牧場がえらい気に入ったらしいし。
   ここでしっかり使ってやってや。」
りんね「よかった。これであたしらだけ怒られずにすむよ。」
あさみ「良かったね。りんねちゃん。3人で頑張ろう。」

Д<「(う、ごめんな。梨華ちゃん。こうするしかなかったんや。ほんまに頑張ってな。梨華ちゃん。)」

あさみ「・・・にしても梨華ちゃん、ずいぶんと苦戦してません?」
りんね「ほんと、もうバテバテ」
サイトー「こうなったらワンチャンスに賭けるしかないね」
Д<「これ以上どうするん?」
りんね「梨華ちゃんてそんなに実力あるのかな」
サイトー「大丈夫、破壊神シヴァの力があれば...」
Д<「なこと言ったって攻撃するチャンスすらあらへんで」

たしかに梨華の攻撃はなかなかヒットしない。
一方の貴子もだいぶ疲れが見てとれるのだが・・・

サイトー「でもね、、、、、
     だからこそのタッグ戦なのよ。」

Д@石川<「ムック、カットに入って」

石川(アイボン)の声に反応してムックがガチャピンを振りきり、貴子に向かっていく。
しかしふいにされたガチャピンもすぐにムックを追う。
石川もそれに気付き、アイボン太達を見向く。
するとアイボンもサイトーも黙ってうなずく。
石川の狂おしいばかりの波長が次の一撃に集中する。

貴子「チッ」

イフリートの詠唱を止められた貴子は肩当ての宝石に触れ、ガチャピンに念を送る。
ガチャピンが一瞬光に包まれ、また一段階パワーアップされる。
こうなってしまった以上、つぎで決めなければ石川の敗戦は必至だ。
両者ともそれを理解し万全の状態に備える。
ムックは貴子のカットに入ってすぐにガチャピンに捕まってしまった。
貴子は幾重にも魔法防御壁をはりめぐらせる。
石川はただひたすら神経を集中させ、周囲にはにわかに冷気がただよう。

・・・・・・・・時は来た・・・・・・・・・・

石川『破壊神シヴァよ、チャーミーに力を!氷の衝撃を!!』

生物にとってこれほど死を感じさせる環境があるだろうか。
まさに悪寒という言葉にふさわしい冷気。
それが鋭利な刃物のように突き刺さる。
しかしその勢いは貴子の魔法壁の前に消えゆく。
数枚の魔法壁を破ったところで氷の刃はつきていく。

先程からの戦闘で周囲の水分はことごとく消え失せていったのだ。
氷をあたえようとも思い通りにいかない。

徐々に手が痺れてくる。
このまま勢いが尽きれば、もう太刀打ちができない。
絶体絶命だろうと石川は力の限りシヴァを力を引き出す。
しかし、もう彼女も限界を超えてきているだろう。

Д<「‥‥ダメか‥‥」

そして冷たい空気の中、耳に劈くようにその声が響いたのは、アイボンがうなだれてすぐ直後のことだった。

『我らが神よ、いにしえより封じたその怪物の力を今解き放たれんことを!
 リヴァイアサン!!!』

突如響いた声とともに荒くれる海の支配者である怪物が姿をあらわし、あたりに水がおしよせる。
その一瞬のチャンスによって冷気が塊となって空気をおしのけていく。
石川が手を大きく掲げ懇親の力を込める。

石川『ダイヤモンド・ダストッッッッッッッッ』

疾風のごとく駆け抜ける一撃。
準備万端とはいえ疲労困憊の貴子の魔法壁が一瞬で裂けていく。

貴子『ウワアアアアアアア』

貴子は氷の圧力におしやられ、背後の気に激突した。
声が響いてから数秒とたたぬうちに決した勝敗だった。

石川「や、、、、やった、、、」

石川の足下がぐらつき、倒れこんでいく。
そして石川は彼女の腕の中に吸い込まれていくように包まれたのだった。

石川「お師匠、様、、」
保田「よくやったね、石川。
   よく頑張った。」

そして彼女は尊敬する大神官の腕のなかで瞳を閉じ、深い眠りに包まれていった。
こうして召還士チャーミー石川としての初めての戦いは幕を閉じた。

保田「よくやった石川、偉いよ。よく頑張った…」
保田は石川を抱いたまま、同じ言葉を何度も繰り返す。

Д<「感動やなぁ…」
サイトー「うん、師弟って素晴らしいね…」
貴子「ほんまや…。涙が止まらへん」
Д<「……」
サイトー「……」
貴子「…ん?」
Д<「なんでアンタ起きてるんやっ!」
サイトー「さっき吹っ飛んだばかりでしょ!」
貴子「なんや、つれないなぁ…。うちにも感動に浸る時間くらい与えてぇや」
Д<「…で、アンタ…。まだ戦うんか?」
貴子「はは、アホな。この通り、もう魔力は一握りも残ってへん」
と言いながら、貴子は手の中に炎を作り出す。しかしその炎はすぐに消えてしまった。
貴子「それにここでまだ戦えるなんて言ったら、またあの子起き上がるやろ?」
そう言いながら、保田に抱かれた石川の方を見る。
Д<「ふーん…。まぁ、違いないわ」

貴子「(それにしても、わからんなぁ…。美帆はどうやって石川ちゃんを怒らせたんやろ…)」


後藤「さーてそろそろ私も追いかけようかな」
つじ「どこいくのれすか?」
ごま「梨華ちゃんのとこ」
飯田「圭ちゃんがいったんなら梨華ちゃんも無事じゃないかな」
ごま「そうは言っても圭ちゃんも戦う気なさそうだし、やっぱもう一度貴子さんとやってさっきの借りを返さなきゃね」
ごまはそういうとルーラで保田と同じ方へ飛んでいった。

つじ「いいらさんいいらさん」
飯田「何?」
つじ「ごまさんはなにをかりたんですかね」
つじの無垢な質問にカオリは頭を悩ませる。

飯田「う〜〜〜〜んとね、、、、、、、、」
   ごまちゃんは《命だけは助けてあげます》っていう言葉を借りたんだよ。」
つじ「ことばをかりる・・???
   ・・・ってなんれすか?」
飯田「えーとつまりね、、、
   そう言ってもらったの」
つじ「じゃあどうやってかえすのれすか?」
飯田「今度はね言ってあげるの」
つじ「???」
飯田「だからね、《命だけは助けてあげます》って言ってあげるの。
   わかった?」
つじ「へい!わかりました。
   ごまさんはおしゃべりにいったのれすね。」
飯田「、、、そう、、、なのかな、、、、」


中澤「この勝負…負けるわけにはいかんのや!」
そう叫びながら、中澤はルルに向かって大きな一撃を放つ。
ルル「そんなぶっきらぼうな攻撃は当たらないアル」
暗器を駆使しながら、ルルは中澤との距離を保つ。
しかしルルのその言葉とは裏腹に、中澤は冷静にその状況を判断していた。
中澤「(そうや、そこでバックステップするのは読めている…。その隙を突ければ…)」
と、中澤が思うや否や、ルルはバックステップで距離を取る。
中澤「そこやぁっ!!」
中澤はその瞬間を見逃すことなく、一気にルルにラッシュをかける!
ルル「…無理アル。あなたでは…勝てないアル…」
ルルは体勢の整っていない状態で中澤の怒涛の攻撃を受け続ける。
中澤「(勝機!)」
そう思い、中澤は更に激しく攻撃を続ける。
ルル「くっ…」
ルルは中澤の攻撃の一瞬の隙を突いて、素早く体勢を立て直した。
中澤「逃がすかっ!」
うまくラッシュから抜け出したルルにすぐさま向き直る中澤。
中澤「(このままいけば終わりや…。これが最後の…)」

パン

中澤「!!!」
突然の破裂音のような音に、中澤は思わず動きを止めた。
しかし、実際はルルが手を叩いて音を鳴らしただけだった。
中澤「…この期に及んで猫騙しとは…。カッコがつかんで、四天王っ!」
中澤は再び攻撃を仕掛ける!

立場は逆転し、中澤が優勢のまま戦いが続く。
中澤「(ホンマに…ホンマにうちが四天王を押してる…)」
ルルは防戦一方で、まったく攻めることができない。
中澤「(勝てるっ!!)」
中澤は更に攻撃の手を速める!
その時ふいに、中澤の耳に矢口の声がかすかに聞こえた。
矢口「ゆうこっ…!」
中澤「(矢口…。大丈夫や、すぐ終わる。あと少しで…)」
中澤はそれ以上矢口の声を聞こうとはしなかった。

中澤「うおぉらぁっ!!」
刀を大きく振りかぶり、ルルに向かってそれを振り下ろす!
『バキィッ!』
その一撃は、ルルの防御に使用していたトンファーを粉砕した!
中澤「終わりやっ!」
これで最後と言わんばかりに、もう一度大きく振りかぶり一撃を加えようとする!
中澤「おおおおっ!」

パン

中澤「…えっ?」
次の瞬間、中澤の視界にルルの姿はなかった。

ルル「思った通りだったアル…」
中澤「なっ!?」
中澤は声のした方に向き返る。
そこに居るのは、紛れもなくさっきまで自分の目の前に居たルルだった。

中澤「さっきまで…そこに…。え?何で…トンファーも…持って…」
中澤は状況が掴めない。ただ、矢口は全てを知っているような表情をしている。
ルル「今のは…あなたの作り出した虚像アル」
中澤「虚…像?」
ルルは説明を続ける。
ルル「恐らくはワタシを圧倒し、暗器を破壊し、存分に痛めつけたんだと思うけど、
    全てはあなたの作り出した虚構の映像…。真実ではないアル」
中澤「なっ…」
ルル「あなたのその勝利に飢えた精神構造は喜んでワタシの術にかかると踏んだアル。
    そしたら案の定、あなたは待ちかねたかのようにワタシの簡単なトリックにかかったアル」
中澤「……」
ルル「あなたの欲求はこうあって欲しいという自分より劣ったワタシの姿を造り出し…
    思うままにワタシにラッシュを叩き込んだはずアルね。
    でも、気の毒なことに…現実のワタシはここに居るアル」
中澤「……」

中澤は放心状態でその説明に聞き入っていた。
ルル「術にかかっていなくてもそこのお友達の声が聞こえなかったくらいじゃあ…当然アルね」
中澤「!!」
ふと気付いて、中澤は矢口の方を見る。
矢口「バカ…。だから一人で戦うのは無理だって言ったじゃんか…」
中澤「すまんかった、矢口…。でもうちは矢口の体が…」
ルル「心配だったんなら、なんで一人にさせたアルか?」
中澤「…!」
ルル「そこの小さい娘も、あなたと同じように覚悟を持って戦場に立っていたはずアル。
    でもあなたは…そこまで考えられなかったみたいアルね」
矢口「小さいっていうのは余計だぞっ!」
ルル「あ、すまないアル。ちょっとした言葉のあやアル」

中澤「さて…こりゃあうちらの負けやな。完全に手の中で踊らされとった…」
ルル「…まだ、終わらないアルよ」
2人「へっ?」

つじ「いいらさん、なんでこっちにきたんれすか?」
勇者飯田「こっちは確か裕ちゃんと矢口が来てるはずなんだ。負けてなければいいけど…」
飯田とつじが目的の場所に着くと、何やら話し声と物音が聞こえてきた。
勇者飯田「こっちだっ!」
飯田とつじはその場所へ駆け足で向かう!そしてそこには…

ルル「そうじゃなくて、ここで刀身に手を添えてこっちの腕をこうヒネれば…」
中澤「おお、なるほど!これなら至近距離でも振れるわ」
矢口「ルルさーん、これくらいの距離だとさー…」
ルル「そこは牽制を控えるべきアルね。一気に距離を詰めるか、フェイントをかけるか…」
中澤「なあなあ、こんなんどうや?さっきのを応用して、ここを軸に変えて…」
ルル「確かにそれならガードも難しいアルね…。でも距離を取られたらまずいアルよ?」
矢口「その辺はおいらがサポートするから大丈夫!」
中澤「ははっ、ありがとうな矢口」
ルル「で、次にこの距離アルね。やっぱりここでは…」

勇者飯田「…」
つじ「…」
勇者飯田「…帰ろっか…」
つじ「へい…」


ルーラでごまが彩の祠の方向に進んでいると先程石川達が戦っていた辺りの木には霜がおりていた。
アイボンをはじめ貴子やカントリーもそろっており、ごまはアイボンに話を聞いた。

ごま「え〜〜、もう勝負ついちゃってたのー」
Д<「もうすごかったでぇ
   ガチャピンとかムックとかしっちゃかめっちゃか出てきて。
   そんで最後は梨華ちゃんの魔法がめっちゃここら寒くしてんねんけど途中まであの姉ちゃんにはきけへんで、結局大神官さんがなんやしたかで梨華ちゃんの魔法が効いてんねん。」
ごま「なあんだ最後はやっぱ圭ちゃんがちょっとは手助けしちゃったんだ。」
貴子「ちょっとどころじゃないわよ。
   リヴァイアンサンが召還されてね、シヴァとの複合技ときたもんだ」
Д<「そうそう、なんか大きな龍はでてきてん。」
ごま「うそ〜、圭ちゃん召還なんかしたの〜!!」

ごまは木陰で石川を休ませていた圭のところにいった。
石川はスヤスヤ寝息をたてている。

ごま「聞いたよー、圭ちゃん召還やったんだってね。」
保田「ん、まあね」
ごま「『召還なんてようやらん』って言ってたくせに」
保田「事情が事情だったし」
ごま「でも圭ちゃんが召還できるなんて知らなかった。」
保田「バイブルに登場するモンスター位は召還できるんだけどね、そんなのめったに使わないから。」
ごま「じゃどうして使ったの?」
保田「それは……ひとつは相手が召還士だからかな。目には目をってヤツ?
   あとは、、、コイツのため。」

そう言って保田は石川の頬をプニプニとつつく。
石川は顔をしかめていやいやをする。

ごま「梨華ちゃんのためって?」
保田「この娘はイマイチ自分に自信が持てないからね。
   ここでボンバー四天王を倒せたら少しは自信がつくと思って。」
ごま「それと召還とどう関係があるの?」
保田「私はあくまでこの娘を補助しただけ。
   リヴァイアサンは攻撃魔法じゃないの。
   私は石川自身に貴子さんを倒してほしかったんだ。」
ごま「そう・・・」

圭がやさしく髪をなでると石川は子供のような笑顔を浮かべた。

保田「楽しい夢でも見てるのかな。」
ごま「そうかもね」


美帆「う、、、つつつ」
信田は目を覚ました。
美帆「あっ、」
起き上がろうとするとビリッと腰に激痛が走る。
足を見る。手を見る。周りを見渡す。やっと頭が働きだす。
美帆「あっ、、、私、また負けちゃったのか。あーあっ、なんか負けキャラだったなあ。」
信田は空を見上げた。雲一つ無い(石川のせい)が、既に暗くなり始めている。
美帆「(ボンバー四天王は既に魔王軍を辞め、この戦いの後は一人一人が別々の道を歩く。
   私には弱点がある。だから、解散にも賛成した。
   いつか、、足を引っ張ることが怖かった。
   やっぱり負けっちゃったか。こりゃ大人しく、引退するしか無いかな。。)」
美帆「ふう。。(あの子はごまを追い掛けたのかな?)」
腰の痛みに耐えながら、信田は立ちあがった。
美帆「(とにかく、なんとか回復してもらいに行かないと。
   あっちゃんは勝てた?それともまだ戦い中?)」
信田はよろよろと歩きだした。しかし、10歩も行かないうちに、
美帆「あ!あんた!!」
信田の目の前に肉の塊、、もといナッチーがぐったりと倒れている。
信田はすぐにかけよった。
美帆「!!、白目むいてる!、おい!生きてるか?、しっかりしろ!!」
ナッチー「・・・・・・」
ペチペチ
頬を叩く。

美帆「おい!私に勝ったくせに、こんな所で死ぬなよ!!」
ナッチー「う、、うーーーん、、、、」
美帆「ほ。気づいたか。。大丈夫?」
ナッチー「・・・・は、、腹が、、、」
美帆「何?、腹?、ミドルキックが効いてた?」
ナッチー「減ったべさ。」
美帆「ええっ?、腹が減ったって?、それで倒れてるわけ??
   私があれだけ打ちこんでもちっとも倒れなかったくせに??」
ナッチー「うーん、、いーなーいーなー。しどいなーこれ。裕ちゃんばっかり。
   ナッチーも特上寿司食べたいべさ。」
美帆「ん?何言って?はっ、、寝てんのあんた?目あけたまま。なんだよ、慌てさせて。
   ・・・・寝ごとか。どんな夢を見てるんだろうねえ?ったく。
   しゃーない。運んでってあげるよ。仲間のところまで。」
信田はナッチーの服の襟の後ろをつかんだ。
美帆「(って言っても腰が痛いから、引きずってだけどね。)」

ずるずるずるずる・・・・・・・

ナッチー「ナッチーはルイベが好きなんだべさ。」
美帆「お、、、重い。」


ごま「でも悔しい!くーやーしーいー!!私も貴子さんと決着つけたかったよー!!
   くやしいよーー!!」
ぶんぶんぶんぶん!!
ごまは隣にいたあいぼんの首を両手で掴み、振りまわした。
Д<「ぐえぇ。やめーやーー!氏ぬ氏ぬーー!!」