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ESSE6月号 夏はぜったい軽快ボブ!! その4

その1その2その3その5その6その7その8

<前回までのあらすじ>

鈴木あみがモーニング娘。に加入して、はや1年半。

辻加護による家宅の占拠、破壊、あげくに同居、
プッチモニ加入、サイパンロケでの飯田地獄、
コードネームとみこ&リーダー争奪戦、
ミッドナイト娘。との戦いの日々…。

いろんな苦難を乗り越えて今、ヤンジャンこと鈴木あみは
モーニング娘。の大事な一員となりつつあった。

そんな時、プロデューサーつんくから
ソロ復帰&モー娘。卒業の話をもちかけられたヤンジャン。

ヤンジャンの決断はいかに…!?


鈴木「…通信が切れた…。」(…いったい何があったんだよ、辻…!)
飯田「なにヤンジャン…!? あのコなんて言ってたのッ!?」
矢口「もちろんあのガキ、今こっち向かっているんだろうなぁ!?」
鈴木「なんつーか…私の予感だと… 辻…アイツ、みずからの意志で
   仕事ボイコットする気みたいだ…。 やべえぞコリャ…!」
安倍「ええええええーッ!! どうするべさ、どうするべさァッ!!
   さっき雑誌の編集者が、撮影のスタンバイできたって菓子折り
   持って挨拶に来たべさッ!! もう待ってる時間ないべッ!!」
保田「と…とにかく落ち着けよ、なっち! オラ、水でも飲んでよ…」
安倍「ハァ…ハァ…!」(ングッ ングッ プハーッ! ガサガサ…)
矢口「なにドサクサにまぎれて菓子折りの包みあけてんだよ豚ッ!!」
新垣「あ、ズルーイ! リサたんもほおばるッ!!」
高橋「便乗ッ!!」
飯田「駄菓子食ってる場合じゃないでしょォオーッ!! よこせッ!」
 バッ! ダダダッ! ガチャッ!! ブゥンッ!! バンッ!!
  「…と、とにかく辻がいないと撮影できないわよ! もうこれ以上
   仕事関係者に迷惑かけて、泣かせるようなマネはできないわ!」
吉澤「あの… 菓子折りをくださった仕事関係者の待機室に、菓子を
   ブチまける行為はOKなんスか? 向こうで泣いてましたよ?」
飯田「菓子ぐらいで大の大人が泣くなッ!!」
小川「辻ちゃんがどこかさえわかれば… 少し待ってもらってでも…」
後藤「…あッ! も、もしかして…!」

飯田「え…!? ごっつぁん、何か知ってるの!?」
後藤「いや…あの…!」(でも…これは秘密の約束だし…!)
鈴木「なあ…何か言いにくい事だったら、私にだけでも教えてくれよ?
   ホラ、私シャッフルに入ってねえし、アイツ探してくるのは
   手があいている私の役目だからさ。 …な?」
矢口「何でヤンジャンにだけなんだよッ!! 言えよごっつぁん!!
   アンタ最近なんかコソコソしてるぞ!? この前のつんくさん
   への相談の件といい… みんなからの信用なくすぞオマエ!?」
後藤「…ッ!!」(どうしよう… 辻からの信用もなくしたくない!)
吉澤「しッ…信用なんて…! こっちが信じ続けてあげればいいだけの
   事じゃないですかッ!! ゴ…ゴッチンを…責めないでください
   矢口さん…。 わ、私が言えた義理じゃ…ないけど…。」
後藤「ヨッスィ…!」
矢口「いや…私がごっつぁんを信じてねえとか、そういう話じゃ…! 
   と、とにかく! 何とか辻見つけないとダメだって事だよッ!」
吉澤「うん…。 あのさゴッチン。なにか理由があるんだと思うけど
   私達には後でいいから、ヤンジャンだけには教えてやってくれな   
   いかな…? ホラ…ヤンジャンは辻の母親みたいなもんだし…」
鈴木「は、母親ァ!? あ…ああ! そ、そうだよッ! 母親さッ!!
   アイツが寄生するエイリアンなら、私はリプリーさッ!!」
後藤「うん…じゃあヤンジャンに話す。たぶん辻そこにいると思う…」
飯田「うし! 捜索はヤンジャンに頼むとして…。 問題は…!」

飯田「ねえ、ごっつぁん。 もしアンタが知っている場所に辻がいると
   してさ、そこからここまで連れてくるのにどれくらい時間かかり
   そう? それだけでもいいから教えてくれない…?」
後藤「たぶん…2時間ぐらい。 素直についてきてくれればだけど。」
安倍「ダメだべ… 午後からの歌収録にかぶってしまうべさ…。」
小川「間に合いませんね…。 あ! ヤンジャン先輩、ルーラとか唱え
   られますぅ? そうすれば移動の時間短縮に…!」
鈴木「そんなアビリティあったら、まずバシルーラでお前トバすよ…」
石川「ハゥッ!! チャーミーひらめいたッ♪」
矢口「却下。」
石川「き…聞いてからにしてくださいよぉ! これホント名案ですぅ♪
   ようはグラビアに辻らしき人が写っていればいいんですよね?」
飯田「らしき?」
石川「動いてればバレそうですけど、人物が止まっている写真なら
   代役でゴマかせませんか? ホラ、カツラもかぶっているし!
   しかもおどるイレブンはメンバー多いおかげで小さく写るじゃ
   ないですか♪ もう絶対バレませんって! あったまいい〜♪」
矢口「バレるよッ!! どうやってアイツに似た代役さがすんだよ!」
保田「…いや、けっこう名案かもしれねえぞ? 代役なら例えば…」
 ゴニョ ゴニョ…
飯田「へっ…!? ハ、ハロプロキッズを使うですってぇ!?」
保田「そっ♪ アイツらの初仕事は…『影武者』♪」

飯田「はーい! ハロプロキッズのみなさん、オーディション合格した
   ばかりのところ悪いんだけど、これからまたオーディションを
   させてもらいまーす! オルァ!! サクサク並べやガキ共!」
矢口「うまくいきゃ辻のかわりにモー娘。に入れるかもしれないぞ〜?
   それじゃ、1人づつオイラの横に立ってみてくださーい♪」
安倍「はい!マリッペより背の高い人は不合格! 帰っていいべさ!」
 ザワザワ… ガヤガヤ…
鈴木「…うわ。 シャッフル総メンバーに、ハロプロキッズの15人が
   加わって物凄い人ごみになってるぞ? 宝塚の入試会場か?」
後藤「大丈夫かなぁ? 代役なんて絶対バレると思うんだけど…。」
鈴木「それより…辻はなにか? その市井の事務所にやっかいになって
   いるってワケか? なんでまたアイツ、そんなバカな話に乗っち
   まいやがったんだ? からかわれているのモロわかりじゃん…」
後藤「あのコも必死だったのよ…。 いつも加護と比べられて、心の内
   ではすごいプレッシャーと劣等感を抱えていたんだと思う…。」
鈴木「アイツいつもテヘテヘ笑ってばかりいたからさ… 一緒に住んで
   いながら全然気付いてやれなかったよ…。 ダメだなぁ私…。」
後藤「たぶん辻が無線で泣いてたって事は…まことさんや市井ちゃんに
   ダマされていた事に気付いちゃったんだと思う…。」
鈴木「なんでお前もそれ知りながら何とかしなかったんだよォッ!!」
後藤「やんわりとは注意したんだけど…でもあのコ、本気で喜んでいた
   から…! 私… それ以上なんにも言えなかったのよぉ…!」

小川「あらら、誰も辻ちゃんに似てませんね… どうするんスか?」
飯田「もういい、矢島舞美! お前、今から辻希美なッ!決定ッ!!」
矢島「ホントですか!? キャー!今からママに電話してきますぅ♪」
保田「う…嬉しいか? お前、坂本一生みたいなガキだな…。」
矢口「はいゴメンね舞美ちゃん。 ママに報告してるヒマねえんだよ。
   とにかくこの入れ歯ハメてくれ。 そうそう。」
高橋「八重歯になって、ちょっとだけ辻ちゃんに近付いたダスな♪」
紺野「保田さんッ!! 楽屋から座ぶとん持ってきましたッ!!」
保田「うっし…じゃあ矢島、これを服の中にツメこめ。」
安倍「あ、いい感じに小太りになったべ♪ 遠目に見れば辻だべ♪」
矢島「…ヒック う…うう… うぇええええ……ん」
小川「あ、泣いた。」
石川「このコやっと、話が見えてきたみたいですね…。」
飯田「ホラ泣いてる場合じゃないよ! 芸能界の厳しさやっとわかって
   来たようね? はい次は、このファンデーションを顔に塗って!
   もっと色が黒くないと辻にゃならないわよッ! ホラ早くッ!」
吉澤「心暖まる幼児虐待の風景ですねー… あ、もう時間ですよ!」
矢口「OKッ! それじゃ舞美ちゃんね、これから撮影の間はずっと
   だらしない笑い顔で通す事! おらッ! 泣くな!笑えッ!!」
矢島「ウ… て…てへてへぇ〜… ヒック…!」
飯田「カンペキッ♪ さあみんな元気に撮影へ入るわよぉーッ!!」

後藤「撮影に入るみたいだから、私もう行くね…! ごめんなさい
   ヤンジャン…。結局ヤンジャンに頼る事になっちゃうのよね…」
鈴木「心配すんなよ、後はまかせとけって! ちゃんと午後の歌収録
   までには、笑顔の辻をお前の横に並べてやるからさ!」
後藤「あ…! ね、ねえヤンジャン!」
鈴木「なんだよ? 時間ねえんだからよ。 私もう行くぜ?」
後藤「本当に… 本当にモー娘。から卒業していっちゃうの…!?
   ヤンジャンがいなくなると、私この先心配だよ…。 辻や加護、
   カオリとか圭ちゃんとか、みんなをしっかりフォローできるの
   ヤンジャンしかいないんだもん…!」
鈴木「ハハッ! 私だって心配だよッ! 私が安心して卒業できるよう
   お前もパンチラと仲良くやってくれよ? …じゃあなッ!!」
後藤「ヤンジャン……。」
 タッ タッ タッ…
鈴木「うう〜…とにかく市井の事務所に向かってみるか…。だまされた
   と知って、辻がまだ事務所にいるとは思えないけどよぉ…!」
加護「ゼェゼェ…! 市井はんをブン殴ってでも居場所探さなッ!」
鈴木「ブッ!!!
   か、加護ォーッ!? お、お前、何ついて来てるんだよォッ!!
   撮影があるだろうがバカッ!! は、早くスタジオ戻れよッ!」
加護「ウ、ウチのせいや! ウチがあいつの気持ち、なんも考えずに
   傷つけてしもうたんやッ! 謝らな…謝らなアカンのやッ!!」


市井「ただいまぁー。 辻ぃ〜? 起きてるんでしょ?」
辻 「…ふぁい。 おとなしくテレビ見ていまひた。」
市井「この時間はワイドショーも終わって、テレビつまらないでしょ?
   コンビニでゴハン買ってきたから食べ… ッて、アンタッ!
   な…なに見てるのよッ!! やめてよぉおおおおーッ!!!」
辻 「クスクスクス…モーニング刑事面白いのれすぅ♪ 安倍しゃんは
   ガリガリれすし、いいらさんはブリブリらし、矢口しゃんは違う
   顔れすし、オバちゃんは勘違いしてまふし、中澤しゃんはもっと
   勘違いしてまふし、なにより主人公がみっちゃんなのれす。
   市井しゃんのダダッコパンチも可愛いれすよ? クスクス…♪」
市井「いやぁもう! 勝手に人のビデオ観ないでよぉ! …ったく!
   私、別に大事にとっておいたワケじゃないからね、このビデオ!
   処分するの忘れていただけなんだから! あ〜恥ずかしッ!!」
辻 「れも他にもたくさんモー娘。のビデオがしまってありまひたよ?
   昔のアサヤンの録画、全部そろっているじゃないれすか〜♪」
市井「それも観ちゃったの!? はぁあ〜…。 なによ目を真っ赤に
   させちゃって? 泣くほど笑ったっていうワケ? ハイハイ…」
辻 「ののが知らない頃のヤンジャンも観れて楽しかったのれす…。」
市井「鈴木はあの頃、私達モーニング娘。の宿敵だったからねぇ〜。
   それがまさか私と立場が逆転する事になるだなんてさ。フッ…。
   それよりアンタさ、今日仕事があるんじゃなかったの?」
辻 「ののは…役立たずなのれ、いなくてもいいんれすよ… ハイ。」


鈴木「アホかぁ加護ォ!! せっかく辻の代役立ててゴマかしたのに、
   今度はお前がスタジオにいないんじゃ意味ねえだろうがッ!!」
加護「なに言うとんねんッ!! 辻の代わりなんて誰もでけへんのや!
   辻がおらんのも、ウチがおらんのも同じや! 娘。14人が
   そろってはじめてモーニング娘。やッ!! 違うかッ!?」
鈴木「わ…わかるけどッ! わかるけど、今は仕方ねえだろうがッ!!
   とにかく戻れッ!! 仕事に穴をあけるわけいかんだろうが!」
加護「ウチと辻の心の穴を埋める方が大事やッ!! なんやオマエッ!
   このままウチがスタジオ戻って、どんな顔で写真に写ればええと
   思うとるんや? ウチきっと泣くでッ! 顔クシャクシャにして
   泣きじゃくるでッ! どのみち撮影ならんがな!そやろォ!?」
鈴木「…お前…さっきの私と後藤の話を聞いていたのか…?」
加護(コクッ…)
鈴木「……ど、どこまで?」(もしかして私の卒業の話も…!?)
加護「どこまでって、なにがや!? 辻の話は全部聞いたでぇッ!!」
鈴木「そっか…。 じゃあ言っても止まらんなオマエ…。」
加護「止まらへんわいッ!!」
鈴木「……OKッ!! ついて来い加護ッ!!辻を迎えに行くぞ!!」
加護「おうッ!! 行くでヤンジャンッ!! あのバカ、意地でも探し
   出してギュッと抱き締めたらなアカンッ!! そしてッ…!」
鈴木「そして…!?」
加護「またひとつ屋根の下やッ!!!」


カメラマン「あ…あのぉ…!」
飯田「え? な、なんですか? 今みんな最高のスマイルフェイスして
   ますんで、早いとこシャッター切っちゃってくださ〜い♪」
カメ「いや…なんか知らない人が混ざっているんですけど…。」
安倍「アハハハハ♪ そ、それはたぶん石井ちゃんだべ!」
石井「いッ…石井リカで〜す♪ よろしくお願いしま〜す♪」
カメ「いや、なんていいますか… そこの小学生は誰ですか…?」
矢島「テ…テヘテヘ〜… の…の〜のタンれぇ〜す♪」
保田「どっからどう見ても辻じゃないですかあーッ! そこから30m
   離れてから見てみてくださいッ! 絶対に辻ですからッ!」
カメ「ハハハハ、ナイスジョーク! やっぱり面白いなあ保田さん♪
   あの、ホント時間押してますんで、早く撮影したいんですけど…
   辻さんはどこにいらっしゃるんですかねぇ?」
保田「……ッ!」
飯田「……ッ!」
カメ「………。」
矢島「あ…うう…! あッ…つっじ・ちゃん・デスッ!!」(ピッ!)
 ガスガスガスガスッ!! ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!
飯田「てッ…てめえッ!! どこから紛れ込んだこのガキィーッ!!」
保田「辻になりすますなんてフテェ小娘だなオーイッ!!」
安倍「あ、あの!ちょっと辻ちゃん呼んできますので、先にハッピー7
   の方の撮影をしてくださーい♪ し…失礼しましたぁーッ♪」


安倍「やっばーい! 超やばいべさッ! 電光石化でバレたべさぁ!
   ドキドキしたと同じ分だけ、窮地におちいったべさッ!!」
小川「あのぉ〜…」
飯田「アンタらハッピー7は撮影でしょ! 向こうもイライラしてきた
   みたいだから早く行きなさい!  ハァ〜…まずいなぁ…。」
小川「つーか、加護ちゃんがいないんスよぉ。」
矢口「だったら便所でも石川の股の間でも、サッサと探してこいや!」
高橋「両方探したけんど、キノコとカビしか生えてなかったダス…」
石川「イヤァーン!違う違う! カビじゃなく白癬菌ですぅッ!」
吉澤「同じようなモンじゃねえか、カビも白癬菌も。 オマエも。」
保田「じゃあ加護どこ行ったんだよ? 黄泉の世界にでも帰ったか?」
飯田「アンタが帰れよ、このヨモツシコメッ!! ふざけてる場合じゃ
   ないでしょ! 誰か加護と一緒にいた人いないの!?」
新垣「加護ちゃんならヤンジャンさんと一緒にいたよー。」
飯田「で、その後は?」
新垣「そのまま一緒にランナウェイ。」
矢口「ブッ!! お、お前なんでそれ早く言わねえんだよ歯茎ッ!!
   じゃあなにか? 加護のバカ、ヤンジャンにくっついて辻探しに
   行っちゃったのかよッ!! なんで引き止めねえんだよッ!?」
新垣「加護ちゃん泣いてたから。」
矢口「はぁ!?」
飯田「いやーんもうッ!! しまいにゃリーダー辞めるわよカオリ!」

飯田「だって問題が連発で、リーダー肩の荷が重すぎるんだもん!」
矢口「リーダー辞めるぅ? マジで?」
高橋「……マジで?」
小川「マジでッ!?」
新垣「マジでぇ〜〜〜〜〜ッ!?」
 マジデ♪ デジマ♪ マジ出島♪ マジデ♪ デジマ♪ マジ出島♪
飯田「シクシク… こんな脳天気なバカグループに育っちゃったのも、
   リーダーのカオリがふがいないからだ… 裕ちゃんゴメ〜ン!」
矢口「それよりどうする? またハロプロキッズで代役立てるか?」
保田「…よし!そこのチビ!嗣永桃子! お前今から加護の代わりな!
   じゃあこれから前歯1本折らせてもらうけど…イヤイヤ大丈夫!
   どうせ乳歯だろ? ドンマイまた生えてくる♪ いくどぉ〜!」
後藤「ていうか、このコもう歯が抜けてるけど…? 下の歯だけど。」
保田「おおおッ! お前メチャ準備いいな! 加護の才能あるよッ!!
   ちょっと河村隆一のモノマネやってみ?」
嗣永「ピ〜ア〜ノをひこぉ〜お♪」
保田「グッジョブ! 似てねえとこもそっくり! こりゃイケるぜ!
   なあカオリ、こいつ筋金入りのダミーだ! どうよコイツ!?」
飯田「ううう… サブリーダーがこれだもん… もうだめぽ…」
矢口「なあカオリ… 頼りなくてもカオリがオレらのリーダーなんだ
   からよ? どんな結果になろうがカオリについていくからさ!」
安倍「そうだべ! カオリの決断をみんな待ってるべ! ホラ♪」

 ダダダダダダダダダ〜〜〜ッ!!
矢口「ウッヒャ〜! 結局また仕事ボイコットしてるよオイラ達♪」
石川「娘。全員で抜け出してきて、後でマネージャーに死ぬほど怒られ
   ちゃいますね〜♪ アハハハ、なんで私、笑ってるんだろ♪」
飯田「ハァハァ…! まったく笑えないわよ! 後で一番怒られるのは
   リーダーのカオリなんだからねッ! …うう、ヤッバいなあ…」
新垣「ゼハーゼハー… 吉澤さ〜ん!もう走れない〜! オンブ〜!」
吉澤「ったく! ホラおぶされ… ッてオイ! これ肩車だろッ!!」
小川「やだぁッ!! マネージャー達が鬼の剣幕で追って来たよ!!」
保田「紺野ッ!! シンガリのお前が囮になって捕まれッ!!」
紺野「いッ…いやですよぉ!私もみんなと辻ちゃん探しに行きます!」
飯田「ごっつぁん! ヤンジャン達はサヤカの事務所に向かっているの
   よねぇ!? OK! みんなそこの地下鉄に入るわよぉッ!!」
高橋「タッ…タクシーじゃダメなんだすかぁ〜ッ!?」
飯田「タクシーに11人も乗れるかヴォケーッ!! てめえの田舎の
   馬車とは違うんだよッ!! オルァ!みんな改札飛び越えろ!」
 ピョピョピョピョピョピョピョピョピョピョピョーーーーン!!
飯田「…あああ、無銭乗車までしちゃったよぉ… 最悪のリーダーよね
   カオリって… こら新メン!若いんだからジジババに席譲れ!」
安倍「でも、カオリが『みんなで辻を探そう!』って決断をした時に
   なっちはカオリがリーダーで良かったな〜って思ったべさ♪」
飯田「…私ってきっとリーダーより羊飼いが似合ってるのよねー…」

 ガタガタガタ バターンッ!!
加護「辻ィーッ!! おるかぁーッ!!?」
まこ「うッ…うわッ!! なんや!?」
鈴木「すみません、うちの辻がこちらにお邪魔してるって聞いたん
   ですけどぉ…? 今どこにいるか知りませんか…?」
たい「…あんなクソガキ知るかい! オレの指ポッキリ折りやがって!
   ウチで世話しとったが、昨日付けでクビや! 出入り禁止や!」
加護「なんやとッ! ワレの鼻ほじる役しか立たん指以上に、辻の心は
   傷ついとるんやッ! なめたクチきくと加護ちゃん跳ぶどぉ!?
   シャイニング加護ウィザード、ワレのアゴに決めたるでぇ!?」
鈴木「お、落ち着け加護…! 辻の居場所を聞き出す事が先決だろ?
   必殺技かまして、死人に口なし状態にしてどうすんだよバカ…!
   私だって、ヤンジャン・ヤリ投げトルネード決めてえよ…!」
まこ「辻ちゃんなら昨夜、市井と帰ったで? オレらそれ以上は何も
   知らへんわい。 もうええやろ? サッサと帰ってくれや!!」
鈴木「…そうですか。じゃ、後は市井に聞きますんでもういいですよ。
   ホレ、加護。 もう我慢しなくていいってよ?」
加護(シュオオオオ…!!)「あいぼんッ!! 必殺技発動ーッ!!」
鈴木(ゴォオオオオ…!!)「ヤンジャン!! 必殺技発動ーッ!!」
たい「わッ…!! お前ら何するつもりやッ!! やッ…やめ…!!」
加護・鈴木 『合成技ッ!! シャイニング加護投げトルネード!!』
 ブォオオンッ!! バゴォオオオンッ!!! ぎゃああああーッ!!


市井「…ねえ辻…仕事戻った方がいいよ。 みんな困ってるわよ?」
辻 「みんなにどんな顔して会えばいいんれすか?」
市井「なに食わぬ顔で笑ってりゃいいのよ。」
辻 「なにも食べなかったら、のの死んじゃうのれす…。」
市井「そんだけ脂肪ありゃ、2週間ぐらい絶食しても死なないわよ…。
   そういう事じゃなくてさ! 早く仕事戻りなさいって!!」
辻 「また役立たずの辻希美の日常の始まりれすか? 耐えられないの
   れす…。 みんなにバカにされますぅ…。 それに役立たずの
   うえに仕事にも穴あけちゃって… もう帰る場所ないのれす…」
市井「モーニング娘。がアンタの帰る場所でしょ! どんなに失敗して
   怒られてもバカにされても、アンタはモーニング娘。に帰る事が
   できるんだからねッ!? わ、私なんてッ…!!」
辻 「市井しゃん…?」
市井「いや…と、とにかくね、私もついてってあげるから帰りましょ?
   ちゃんとみんなに説明もするし、アンタをウソつきになんか絶対
   させないから! 辻がどんなに頑張っていたかも話してあげる!
   ね? 私もアイツらにちゃんと…謝らなきゃいけないし…さ。」
辻 「………。」
市井「ほら、下唇つき出さないで… おいで。 あのね…あせらなくて
   いいのよアンタは。 地道に頑張ってれば、あの大勢の才能の中
   でアンタが輝く日はきっとくる! あせってそこから逃げ出して
   後悔する事だけはして欲しくないの。 わかって辻…。」


 ガタガタガタガタガタ バターンッ!! ゴンッ!!
新垣「ムキィーッ!! いったぁーいッ!! 頭ぶつけたぁーッ!!」
吉澤「オメェがいつまでも肩車から降りないからだろォーッ!!」
まこ「なんやなんやなんやーッ!? 今度はまたなんやぁーッ!!」
飯田「すみません、うちの辻がこちらに… あれ? なに鼻血出して
   いるんですか、まことさん達?」
たい「オマエんとこの若いモンにドツかれたんやッ!! どういう教育
   しとるんや飯田ッ!! リーダーしっかりせんとアカンやろ!」
小川「へっ! ヤンジャン先輩にやられたのね。 いい気味♪」
矢口「コラ小川ッ! 目上の人になんてクチきいてるのよッ!!」
小川「だってぇ…!」(なんだよ矢口さん… 納得いかねぇ〜!)
飯田「それであのバカ2人は…? あ、そうですか。サヤカの家に…。
   見つけてしっかり注意しときますので…ハイ。 それじゃ失礼
   します。 ハイ、みんな行くよッ!!」
小川「ちぇっ! なんだよ飯田さんまで…!」
安倍「カオリは我慢してるの…。それがリーダーという立場だべさ。」
矢口「はいはい、みんなちゃんと頭下げてサッサと出て行きなさい!」
まこ「…ったくぅ! 矢口、この事はつんくに報告するさかいな!
   とんでもないクソグループやモーニング娘。は!早よ消えろ!」
矢口「…あのぉ〜まことさん、ご一緒に。 パッパラパ〜の♪」
まこ「パッパラパ〜の?」
矢口『アチョォオオオオオオーッ!!!』 (ガコォオオーンッ!!)

 ダダダダダダッ!!
吉澤「ゼハーゼハーッ!! ゴッチン、市井さんちってまだなのぉ!?
   ていうかマメェーッ!! お前いい加減降りてくれよぉーッ!」
新垣「リサたんはキャラメルでグリコーゲンの補給中でーす♪」
吉澤「お前が補給してどうすんだよッ!!エンジンは私だろうがッ!」
後藤「もうすぐよッ! ヨッスィ頑張ってッ!!」
吉澤「頑張れじゃなくて、コイツ降ろすの手伝ってくれよォ!!」
矢口「…ツツツツ。 ヒサブリに跳んだから腰が…!」
小川「えへへへー… 矢口さん見てましたよぉー♪」
矢口「…ちっ! トビ蹴りかました事はみんなに言うなよぉ〜?」
小川「矢口さんって冷たい人かと思ったら、そうでもないんですね。」
矢口「…あのなあ。みんなヤンジャンが辻加護の母親役だって言うけど
   オイラはアイツよりもっと前からガキ達の面倒みてるんだぜ?」
小川「はい。」
矢口「父親役はオイラなんだ…!大人らしい威厳のある態度とらなきゃ
   いけねえけどよ… てめえのガキいじめられて、跳ばねえ親父が
   どこにいるかっつーんだよ。 文句あるか、小川?」
小川「ないですッ♪」
  (今気付いた…! 私…! 私、モーニング娘。が大好きッ…!!
   ヤンジャン先輩に会ったら、あの日の言葉を撤回しなくちゃ!)
保田「お! あそこにいるのヤンジャン達だ! オーイッ!!」
飯田「さあみんな、ヤンジャン達と合流するわよッ!!」(オーッ!)

鈴木「ブッ!! おい!なんでオメーラがこんなとこにいるんだよ!?
   まさか全員で仕事抜け出して来たんじゃねえだろうな…?」
保田「ぶっひゃひゃひゃ! 馬鹿だなぁ、そんなワケねえだろォ〜?
   さて、それではこの汗だくの11人はなぜここにいるのでしょ?
   <1>ネコバスに乗って迷子のメイを探している途中だったが、
      乗車態度があまりにも悪かったため、ここで降ろされた。
      特に紺野が車内でゲロを吐いたのが一番の原因と思われ。
   <2>血迷って正月映画ピンチランナー2がクランク・イン。
      こりずに設定がまた駅伝。これまたこりず主人公がデブ。
      もちろん主演は吉澤ひとみ。ランニング・デブin箱根。」
   <3>サウナの温度調整に、ついつい私がまた…(略
加護「…2番が正解なら腰くだけるけどな。 みんな… おおきに。」
飯田「どうせヤンジャン達、サヤカの家がどこかわからなくてウロウロ
   してたんでしょ〜? 図星?」
鈴木「まあそんなとこだけど… でもリーダー達とこうやって出会った
   つーことは、あながち加護のハナもきいてたって事だよな。」
石川「アナベベ加護のハロモニアフターバーナー?」
加護「なんや辻がスンスン泣いとる声が聞こえたような気がしたんや。
   アイツがウチらを待っとるで! 早よ行ったらなアカンわ!」
矢口「そうね! オイラからもガツンと叱ってやらなくちゃね!」
鈴木「うっしゃ! みんなで辻御輿を担いで帰ろうぜぇ!! おっと…
   その前に石川にツっこんでやれよ矢口。 役目だろオメエの。」


辻 「スンスンスーン♪」
市井「スススススーン♪ …いやだからね、CMソング鼻歌でのんきに
   ジョイントしてる場合じゃなくてさ。 アンタ仕事に戻りなさい
   ってば! みんなに謝る気持ちの準備はできてるんでしょ?」
辻 「らってぇ… 自分れ〜伝えるの〜♪ 恥ずかしいじゃな〜い♪」
市井「じゃないッ♪    …じゃなくてぇ-ッ!!」
辻 「うん…もう少し。 あともう少し、市井しゃんの昔の話を聞いて
   いたいのれす。 もうちょっとで元気になれそうれすから…。」
市井「もう十分元気でしょ? 人んちの冷蔵庫開けて食料食いつくすわ
   タンス開けて私のセクシー下着を勝手に試着するわ…ってオイ。
   このテメエのデカ尻が引き裂いた高級下着の請求書は、鈴木宛に
   郵送すればいいのか? なあ、もう帰ってちょうだいよぉ…!」
辻 「クスクス… ヤンジャンみたいな口ぶりれすね。」
市井「アンタさっきから仲間の話ばっかりしてるじゃん。楽しそうに。
   怖がらずに大好きなみんなの元に帰りなさいな。 ね?」
辻 「昔のモーニング娘。の話をしてる市井しゃんも、とても楽しそう
   らったれすよ? …そうら!市井しゃんも一緒に帰りません?」
市井「ハァ? 帰るってモーニング娘。に? バ…バッカじゃないの!
   私は前に進まなきゃいけないのよ!後戻りしてどうすんの…!」
辻 「じゃあ、ののはみんなの所へこのまま帰ったら、後戻りになって
   しまうんれすか? らったら戻らない方がいいのれすかね…?」
市井「だからそういう意味じゃ…! …ん? 何か外から声が…!?」


飯田「こらぁ辻ィーッ!! アンタそこにいるんでしょーッ!!」
保田「サボリ犯ッ!! お前は完全に包囲されているッ!!」
石川「チャーミーは完全に放置されてます! ホイッ!!ホイッ!!」
吉澤「ゴルァ! 市井センパイよぉ!? うちのガキ返さんかい!!」
後藤「市井ちゃーんッ!? 辻ィーッ!? 顔を見せてよぉーッ!!」
矢口「オラァーッ!! 心配かけさせてんじゃねえよ辻ィーッ!!」
紺野「つ…辻ちゃーん! お願いですから出て来てくださーい!」
高橋「ま、まるで…ビルマの竪琴みたいダスなぁ…!」
安倍「辻ちゃぁーん!! 誰も怒ってないべ! 一緒に帰るべさ!!」
新垣「そいつは大きなミステイク! リサたん大激怒してまーす♪」
鈴木「出てくる気ねえなら、壁登ってベランダから侵入するぞォー!!
    小川がッ!!」
小川「ぶッ!?? わッ…私がですかぁあああああーッ!?」
鈴木「オメエ得意じゃねえかよ侵入行為ッ!! GOッ!!」
加護「ええーい! ウチが登ったるゥ!! 待っとれよ辻ィーッ!!」
 ザワザワ ワーワー!  
辻 「みッ…みんな!! みんなが下にいるのれすッ!!! 」
市井「あら?アッチから迎えに来てくれたじゃない。良かったわね。」
辻 「でも…みんな仕事がある時間れすよッ!? な、何れッ…!?」
市井「たぶんアンタのために、仕事抜け出して来たんでしょうよ…。
   優しい仲間達に囲まれて幸せねぇ? フン…ほらサッサと下に
   降りてってさ。後は抱き合うなり涙流すなり好きにすればぁ?」

加護「ううう〜…辻ぃ〜…! 今行ってやるさかいな!…うわッ!?」
鈴木「バカ危ねぇッ!! 加護、無理だって!! 降りてこいッ!!」
加護「ぐっ… なんのこれしき! ギアナ高地をザイルで登ることと
   比べれば、都心のマンションの5階や6階ぐらい…!」
鈴木「南米の秘境と比べてどうすんだよッ!! 落ちたら死ぬぞ!!」
小川「先輩、私には行けっていったじゃないッスかぁ! ブゥ〜!」
保田「くそぉ…このマンション入り口が開かねえぞ! おいッ!誰か
   アバカムの呪文となえられるヤツ、1歩前に出ろッ!!」
矢口「ここオートロックだからだよ。サヤカに連絡入れてロック解除
   してもらわないと中に入れないんだ。」
保田「セ…セコムしてたのかアイツ! 上級セコマーなんだなッ!?」
後藤「わ、私が市井ちゃんにお願いしてみるッ!」
 プルルルル… プルルルル… ガチャ!
後藤「あ、市井ちゃん!? あ…あのね、そこに辻がお邪魔してると
   思うんだけど、返して欲しいから表のドア開けて欲しいの!」
市井((( …返してって、まるでアタシが辻を監禁してるみたいな
      言い方しないでよ。 そうちあのコから勝手に出ていく
      でしょ? ドア開けてアンタ達が私の部屋になだれ込む
      なんてコッチは迷惑なのよね。 じゃッ! )))
 ツー ツー ツー…
市井「ほら辻! アイツラがうるさいから早く出て行きなさいよ!」
辻 「あの… 市井しゃんも一緒に行きません…か?」

市井「はぁ? なんで私まで一緒に行かなくちゃいけないのよ!?
   あんな殺気だったハイエナの群れの所に降りて行けるわけない
   でしょ! 白骨化したシマウマみたくされちゃうじゃない!」
 ワー ワー ワーッ!!
吉澤「市井ゴルァーッ!! 話はゴッチンから全部聞いたぜオウッ!
   辻を傷つけた分だけ、てめえのムチムチの太ももに歯形つけて
   やっからなぁッ!! 新垣ッ!お前からも何か言ってやれ!」
新垣「デブッ!!」
吉澤「んだとコノヤロウッ!!」
 ワー ワー ワーッ!!
市井「なんかもうみんな事情知ってるみたいだしさ…。 誰もアンタを
   責めるヤツなんていないわよ。 アタシがわざわざ一緒に出て
   いって説明なんかしなくても大丈夫。安心して行きなさいな。」
辻 「うん… れも… ののがこのまま出ていったら…」
市井「いったら?」
辻 「市井しゃんが… 悪者のままになっちゃうのれすぅ!」
市井「バッ…バッカあんた! アタシの心配してどうするのさァ!?
   い、いいのよアタシは悪者で…。アンタをけしかけたのは確かに
   このアタシなんだし…さ。 いいのよ! アタシはアイツラに
   嫌われたって! アタシだってアイツラ大嫌いだしさぁー?」
辻 「うそれす! 市井しゃんはモーニング娘。がッ…!」
 ゴンゴンッ! ゴンゴンッ! 辻! ウチや! ここ開けぇやッ!!

加護「辻ぃ!早よ開けぇや! つーか、開けてくださいッ!落ちる!
   加護ちゃん足カクカクいうとるから!  お願いやぁ〜ッ!」
市井「なんか窓の外に出来の悪いスチュアート・リトルみたいなのが
   はりついてるわよ?」
辻 「あ、ホンとれすね。気持ち悪いので棒で突き落とすのれす。」
 ガララッ!
加護「おおおっ辻ぃ♪ 何してたんや、心配させおっ…!うおッ!?」
 ドンッ! ウワァアアアアアアアアアアアアーッ!!!
辻 「ふぇ? …あ、あいぼんじゃないれすかッ!? 大変れすッ!!
   あいぼーん!! 早くこの棒につかまってくらさーいッ!!」
加護「ハァハァ…! も、もうすぐで愉快なヒモ無しバンジーかます
   とこやったわ…! 享年15才じゃ伝説にもほどがあるで…!」
辻 「ヒュウ〜… この棒のおかげれ九死に一生を得ましたね♪」
加護「ア…アホかボケェ!!カスッ!! その棒とキサマのおかげで
   アスファルトに赤い花咲かすとこやったろうがァアアーッ!」
辻 「涙ぁ〜の数だ〜け 強くなれるよぉ〜♪」
加護「アスファルトに咲〜く 花の〜よぉ〜に♪ …ってオーイ!!
   全然笑えんがなッ!!ここ何階やと思うとるんやヴォケッ!」
辻 「あいぼん…のののために2階まれ登ってきてくれたんれすね…」
加護「6階やドアホッ!! 下見てみぃ! ちっこく見えとるんが
   メンバー達や! 飯田はんがあんなちっこく見えるこの高さで
   ワレなに気の抜けたボケかましとんねん!早よ上げんかいッ!」

保田「すげえな加護。和製クリフハンガーだな…。」
鈴木「今度から加護を『気違いのわかるアルピニスト』と呼ぼう。」
高橋「ダバダー ダバダー バー」
 ゼハー… ゼハー…
加護「い、一瞬にして今までの人生が走馬灯のようにめぐったわ…!
   走馬灯って何か知らんけどな。まるでビデオの倍速早送りの
   ようにキュルキュル〜…とマイライフのダイジェスト見て、
   ちょうど棒つかんだ時に一時停止された画像が、映画の101の
   CM撮影で犬の着ぐるみをかぶらされた場面やったわ…。」
辻 「ご、ごめんらさい…!」
加護「…何に対して謝っとるんや?」
辻 「いろいろ心配かけちゃって…。 ののね、ののね…!」
加護「その事については謝らんでええ…。後藤はんから話は聞いたわ。
   謝るのはウチの方や。オマエの気持ち、ぜんぜん気付いてやれ
   へんかったわ…。 さっきの殺害未遂についてだけは…謝れ。」
辻 「うん…。」
加護「つーかオマエッ…! なにくだらん事で悩んどるねんな!!
   天下のモー娘。の辻希美やでぇ!? くだらん劣等感やで!!」
辻 「らけど… ののは歌もイマイチれすし、あいぼんみたく可愛く
   ないし…。いいらさんや後藤しゃんみたくカッコよくなる自信
   もないのれす。このまま何もしないと、ただのお荷物れす…。
   今度もみんなに迷惑かけちゃったれすし…! ひぃい…ん…!」

加護「泣くなや、泣くなや! ほら市井はん、アンタ先輩なんやから
   後輩泣いとんのボーと見とんなや! タオルかなんか持って
   きなさいや! お茶の一つも出ぇへんのかいな、この家は!」
市井「お…おう。」
辻 「うぇえええ…ん! ヒック… うぐっ!」
加護「あのな、辻…。 ウチもな劣等感…人並みに持っとるんよ?
   いつもウチ、抜けた歯ぁ見せてケラケラ笑っとるからわからへん
   かったやろ? ん? どうや辻?」
辻 (コクッ…)
加護「せやったら、オマエの気持ちに気付かへんかったウチの事も
   おあいこで許したってくれな? ウハハハハ♪」
市井「これ…タオル。 あと、紅茶入れたけど…下のヤツラの分も
   入れたほうがいいか…な?」
加護「すぐ帰るさかい、ええわ。 ズズッ…。ぬるすぎるなコレ!」
市井「う、悪い…。 入れなおしてくる…。」
加護「…辻な。ウチら若いんや。ウチもな、なっちはんや矢口はんの
   ステージで歌う姿見とってな、まだまだウチ半人前やってヘコむ
   事もあるんよ。歌唱力もオバちゃんみたく天賦の才はないしな。
   せやけどな、半人前のウチが半人前のオマエと一緒におれば、
   2人で一人前や。 そういう気持ちで劣等感ば打ち消してな、
   何食わぬ顔で先輩共と肩並べてたんや。ハハッ!あせらんでええ
   やんか! 2人でゆっくり一人前になっていこうがなぁ〜♪」

市井「…入れなおしたけど。」
加護「ズズッ…。砂糖入ってないやんかコレ。 やり直しッ!!」
市井「オマエは京都の大女将かッ!! …わ、わかったわよ…!」
加護「へへ…少しイジめたってん♪ 辻、ウチな、最近コーヒーに
   砂糖入れへんで飲み始めたんやでぇ? せやけど…少し背伸び
   しすぎとったわ♪ ウチにはまだ、ちょっと苦すぎるねん♪」
辻 「…てへへへ。」
加護「ウチな、今『警察署長』ゆうドラマ出とるやろ? あの原作
   描いた『たかもちげん』という漫画家さんな、ごっつ下積み
   長かった作家さんやったねんて。 一人前に連載持って食える
   ようになった頃には10何年もたっとったそうや。 妻も子も
   おる貧乏な中、自分の才能を信じてひたすら地道に頑張って
   ゆっくりと花を開かせていったんや。 …わかるやろ?」
辻 「うん。」
加護「オマエはつんくさんが認めた才能や。 自分を信じてお互い
   ゆっくり堅実に頑張ろうや。 な?」
辻  「…はい♪」
加護「OK! ナイススマイル、それでこそウチの相棒・辻希美や!
   元気でたらホラ行くでぇ! みんな下で待っとるんや!」
辻 「あッ…! ちょっと待ってくらさい! あの…!」
加護「なんや、みんな心配しとるで! 早よ顔見せたらなッ♪」
 グイッ! ダダダダダッ バタンッ!


市井「砂糖入れてきたわよ? 苦手かもしれないけどミルクも…
   ていうか、いないしッ!!一口ぐらい飲んで行きなさいよ!」
 ズズズッ… ブハッ!!
市井「アチッ!! 熱いじゃないッ!! 私、ソロの歌手なのよッ!!
   舌火傷して歌えなくなったらどうするのさッ!! バカッ!!
   私には代わりに歌ってくれる仲間もいないいんだからァ!!」
 ガチャーンッ!!
市井「ハァハァ…わかってるわよ… 私があせりすぎてた事ぐらい…
   マリッペはちっこくて可愛かったし、圭ちゃんは歌うまいし…
   後輩のマキは先輩の私なんかより…! だから私ッ…!!」


鈴木「おお〜う辻、戻って来たなぁ? ウハハ! 泣いたなオマエ?」
紺野「おかえりなさいですぅ! みんな心配してたんですよぉ…!?」
辻 「てへてへぇ… ごめんなさいなのれすぅ…。」
飯田「お、なんだオマエ? 笑う余裕あるの? だったらこれから
   カオリ、タップリと説教始めちゃうわよ? 長いぞぉ〜?」
矢口「ぶぅ…ぶわっかぁ〜つじぃいい…! じんぱいざぜでぇえ〜!」
保田「オマエが泣くんかい。」
小川「あの…いい場面のとこすみませんが、時間は大丈夫ッスかぁ?」
石川「大丈夫、大丈夫♪」
飯田「なんでテメェがそのセリフ吐くんだよッ! 笑顔でッ!」
鈴木「とりあえず電話すっか、マネージャー達に。   …小川が。」


飯田「ハイ!スミマセンッ! ハイ!スミマセンッ!  わかりました!
   午後には必ずッ…ハイッ! いえいえいえッ! 天狗になんか
   なっていませんよぉ! もう鼻は小川みたくペチャンコで…
   いえいえいえ! ふざけてませんッ! 反省してますぅッ!!」
小川「うわぁ〜…今、明智光秀の気分。 寺、燃やしてぇ〜!」
矢口「で、なんだってカオリ? やっぱ怒ってた?」
飯田「ふぅ〜…。 とりあえず雑誌の撮影は後日に先延ばしだって。
   おわびに石川の水着グラビア追加があちらの条件だってさ。」
石川「ヤッタァ〜〜♪ ストップ・ザ・シーズンインザサーン♪」
保田「そうか…。 なんなら一緒に私も脱ぐか? シッポリと?」
吉澤「せっかくまとまった話をこじらせてどーすんスか…。」
飯田「そんでもって、MUSIXの歌収録は今からじゃ時間に戻れない
   から、次のスタジオ空きの4時に予定変更だってさ。」
安倍「4時かぁ〜。 逆に時間あまっちゃったわね。…どうするべ?」
加護「辻、ハラすいとるんとちゃうか? 飯田はんの説教もかねて
   メシでもみんなで食いにいきましょか〜?」
飯田「こっちはゴハン食べる気力もないわよぉ〜! …もう。
   仕方ないわね、どっか人気のないメシ屋にでもシケこもっか?
   こんなモーニング娘。総勢でファミレスなんか入っちゃったら
   大騒ぎになっちゃうしね。 辻、アンタおなかすいたっしょ?」
辻 「あのッ…! その前にみんなに聞いて欲しい事があるのれす!」
全員「…?」


 ザザザザー… サワサワサワー…
吉澤「ボハハハハ♪ さっきまでの騒動がウソみたいだねぇ〜♪」
石川「ホントねー こうやってみんなで、埠頭で海眺めてるなんて♪」
安倍「カモメがニャーニャーないてるねー…」
矢口「ウミネコだよ! てめえでニャー言ってるじゃねえか!」
紺野「おまたせしましたぁ! はいカツオのおにぎりが飯田さんでぇ… 
   あの、このケーキはどなたの注文ですかぁ〜?」
新垣「はーい! それリサた〜ん♪」
小川「ハァハァ…てめえコネガキ、なんで一番若いのに、買い出しに
   つき合わねえで、ショコラケーキなんか注文してんだよオイッ!
   このまま海につき落とすぞッ! このフナムシがッ!!」
鈴木「おう小川、買い出し御苦労。 大変だったな、ゆっくり休めよ。
   …ん? 私のオーダーしたのはアサヒのビールだぞ? こりゃ
   キリンの発泡酒じゃねえかよッ! もう一回行って来いッ!!」
高橋「この魚肉ソーセージは保田さんのダスよねぇ? サンドイッチは
   後藤さん…。 あれ? お二人は今どこにいるダスかぁ?」
辻 「くふッ♪ あっちにいるのれすう♪」
加護「…邪魔すんやないど? 静かにメシ置いてきてやれや…。」
 キャッ キャッ♪
後藤「久しぶりだねー♪ 旧プッチメンの3人で話すのって♪」
保田「サヤカ全然連絡くれねえんだもん! まさか姫を嫌ってるぅ?」
市井「ううん。ちょっと照れくさくてさ…。 大好きだよ…みんな。」

辻 「市井しゃん、笑ってるね…」
矢口「さみしかったなら、そう言えばいいのによぉー! つれねえな!
   オイラなんか同期だぜ? ウチに泊まりに来いっつーの!」
安倍「プライドと芯の強さがサヤカの魅力だべ♪」
飯田「…さみしーいと感じはーじめたのはぁ〜♪ いつからか〜♪」
加護「なんですの飯田はん? その歌?」
飯田「バッカあんた! さては加護ウチらのファーストアルバム聴いて
   ないなぁ!? 最後に収録してある『さみしい日』って曲よ!」
安倍「勇気〜と同〜じ分だけ さみしいと思う〜♪ …懐かしいべ。」

 夢をつかむために 何かをすてたわ  つかめる保証もないのに
  少しずつだけれど 進んでるみたいね 
 強く信じたおかげかな…
  あの日涙流し 一人旅立った  Ah… 長い夜だった
 さみしいと感じはじめたのは いつからか
        勇気と同じ分だけ  さみしいと思う…

飯田「あ、そういえばヤンジャン。 つんくさんがアンタを呼んでる
   みたいよ? ウチらの歌収録の合間に事務所へ来いだってさ。」
鈴木「ああ、うん…。 わかった。」
小川「…どうしたんスか先輩? 遠い目をして、みんなを眺めて?」
鈴木「んー? なんつーか、コイツらはもう大丈夫だなって…さ。」


 ガヤガヤ…
安倍「ふう…無事に歌収録終わったし、後は晩御飯食べてカラオケして
   夜食食べて、3時(深夜)のオヤツ食べて、寝るだけだべ♪」
保田「…そんな有意義な午後を許してくれなさそうな面々が、あちらで
   腕組みして待ってるぞ? 紺野、お前代表して一歩前出ろよ…」
紺野「いッ…いやですよぉ! 保田さん先に行ってください…!」
高橋「まんずマネージャーさん達、アフガン激戦地の傭兵みたいな目を
   しているダス。 捕獲される直前のロシア兵の気分ダスよ…。」
AD「すみませーん! モーニング娘。の皆さん、スタジオから出て
   くださーいッ! 次の方が収録ひかえてますので〜!」
マネ「早く来なさいッ!! まだ迷惑かけるつもりなのアナタ達ッ!?
   今日の一件、膝を合わせてゆっくりワケ聞かせてもらうわよ!」
吉澤「そのヒザをどこに合わせる気だろうねえ? …照準はミゾか?」
石川「アゴかも…!?」
飯田「もうやってしまった事は仕方ないんだから、覚悟決めてガッツリ
   怒られましょ。 みんなで怒られれば怖くないって…ハァ…。」
加護「そうそう♪ 『赤信号 みんなで渡れば 関西人』って言うや
   ないけ? のほほ〜んと鼻ほじって叱られとればええんや♪」
矢口「おうおう… 言ったそばからグリグリ鼻ほじってるよ新垣が…」
新垣「あ、鼻血出てもうた…。 すみませーん、マネージャーさーん!
   ティッシュ持って来てくださーい! 服がよごれちゃう!」
小川「いいなぁ、ヤンジャン先輩だけ修羅場回避しちゃってさぁー…」


つん「おう…何か今回もまた騒ぎ起こしたみたいやけど、オレの方から
   あんま叱らんよう言うたったから、安心せえや鈴木。 せやけど
   アレやな? あんまり仲間や後輩達が、問題ばっか起こしとると
   お前も安心して卒業でけへんやろ〜? ハハハ!」
鈴木「はあ…。 ホントですよ…。」
つん「おっと冗談やさかい、そんな理由であの話断られたら困るで!?
   今日は鈴木から、ええ返事もらえる事を期待しとるんやから!」
杉本「お返事は… 今日聞かせていただけるんですか、鈴木さん…?」
鈴木「…ハイ。」


 ガミガミ! ガミガミ!
辻 (くふん…。 いつになったら、お説教終わるんれすかねえ…?)
加護(…ホンマやな。 オカンに叱られてウンザリしとる、のび太の
   気持ちがようわかるわ…。 よくもまあこんなに罵倒のセリフが
   次から次へと繰り出されるもんや。 マネージャー職にそんな
   ボキャブラリーの才能いらんやろ…  小川、なんとかせえ!)
小川(ハァ!? 私みたいなペーペーじゃ何もできないッスよ!)
吉澤(おい誰か、気のきいたギャグでもかまして空気やわらげろよ?)
石川「…もみじ饅頭ッ♪」
 ガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミッ!!!!
矢口(…火に油どころか、アラビア油田にトマホークぶちこんだな。)
辻 (早くヤンジャンちに帰りたいのれすぅ…。)

マネ「…とまあ、叱り足りないけどこのへんでカンベンしてあげるわ。
   それじゃあ今度は仕事の話よ? 次の新曲のデモテープができた
   から、各自家に持ち帰って、パートのチェックよろしくね!」
安倍「ふむふむ『Do it! now』 まさにナウな感じのタイトルだべ♪」
矢口「なあなっち…今どきナウって… いや、なんでもない…。」
保田「いや、ちゃんとツッコむのが優しさってっもんだぜマリッペ。
   …なっち、これは『ナウ』じゃなくて『ニュウ』って読むんだ!
   『ドイツ! ニュウ』…これがタイトル。 紺野、訳せ!」
紺野「ゲルマン女性は牛乳ビンがお好き…という意味です。」
保田「わかったか、なっち?」
安倍「何か感情移入しにくいべ…。でもドイツ人の気持ちで歌うべ!」
飯田「よく言ったなっち! そうよ、みんなもなっちを見習ってッ!」
加護「せやけどウチ牛乳嫌いやしなあ…。ドイツがどこかも知らんし」
吉澤「ブラジルの下だよ。」
小川「それワールドカップの順位! ドイツはモンゴルの首都ですよ」
高橋「モンゴルは牛乳よりも馬乳じゃないダスか?ほら馬乳酒とか…」
後藤「そこはきっと、つんくさん流のアレンジなのよ。」
辻 「ののはオレンジよりバレンシアが好きれす。」
石川「バッカねえ辻♪ バレンシアもオレンジも同じミカンでしょ?」
新垣「違うよ〜? バレンシアは地名だよ? 確かモンゴルの首都…」
保田「モンゴルの首都はドイツだってさっき言っただろォーッ!!」
矢口「あーあーあー… 死んでくれー…死んでくれー…」


鈴木「はい… その… よろしくお願いします。」
杉本「え? そ…それは… つまり…!」
鈴木「ええ…。 私が杉本さんのお役に立てるか、つんくさんの期待に
   答えられるか、ちょっと自信はないんですけど…。」
つん「…卒業の決意を固めてくれたっていう事やな?」

鈴木「はい。 私、モーニング娘を卒業します。」
   
杉本「〜〜〜〜ッ♪  あッ… ありがとうございますぅッ!!!」
鈴木「………。」
つん「いや…喜ぶのはまだや杉本…。 なあ、鈴木…最後の確認をさせて
   もらうで? 『笑顔で卒業できるか?』 …これだけ聞かせてや。
   もし、モーニング娘。に残っていたいとお前が切望するのなら…
   この話は杉本にあきらめてもらわなアカン事になるさかいな。」
杉本「せッ… 先輩そんなぁッ…!!」
つん「モーニング娘。に何かを残して卒業されても困るがな。 杉本…
   お前は鈴木あみの全ての才能を欲しいのやろ? もし残した思いが
   ほんのわずかなモンでも… 鈴木の0.何パーセントだとしても…
   それが鈴木の大事な部分、核やったりするもんや。…どうや鈴木?
   ええんか? 仲間達に笑顔でバイバイ言って卒業できそうか?」
鈴木「…ちょっと前までは無理だったかもしれません。 でも…
   今は笑って、安心して夢に向かっていけると思います…。ハイ。」


小川「だからモンゴルマンの正体はラーメンマンですってばぁ!!」
吉澤「違うつってんだろッ!! それはバラクーダの正体だよッ!!」
辻 「バラクーダは、ぽんジュースの原料れすぅッ!!」
保田「原料より減量しろテメェエエエエエエーーーーッ!!!!!」
矢口「ちょッ…ちょっと待ってみんなッ!! この新曲のパート…!!」
新垣「パートなんてナメック星人おるわけないやろォッ!!」
矢口「なんの話だよッ!? オイラをキチガイ論争に巻き込まんでくれ!
   それよりこのパート割り見てくれよ! 何か…おかしくないか?」
飯田「え〜? どれどれ… あッ!! 本当だ…!」
紺野「私の… ソロパートがある…!」
保田「やったじゃん紺野ッ!! 何か金でも積んだんだろテメエ!?」
新垣「うそぉ! もしかしてリサたんのパパより積んだのォ!?」
矢口「違ァアアアアアアアアアアアアアアアアーうッ!! 死ねェッ!!
   今回、ソロパートもコーラスパートも、何もないヤツが一人いるん
   だってばッ!! 気付かねえのかよオメェらッ!?」
吉澤「…とうとう石川が消されたか。聴くに耐えられなかったからな。」
石川「マジかよオイッ!?  …いや〜ん、あるじゃないヨッスィ〜♪」
安倍「あ… 本当だべ…   一人だけ新曲に参加してないべ…」
小川「ヤンジャン先輩ッ…!!」
辻 「ほ… 本当れすッ!! ヤンジャンだけ名前がないのれすッ!!」
後藤「や…やっぱりヤンジャン…。」
飯田「ごっつぁん…? アンタ、まだ何か… 知ってる事あるの…?」


鈴木「私… モーニング娘。に入れられたばかりの時、いつかはゲラゲラ
   大笑いしてソロに復帰してやるって… その時が来る事を、ずっと
   夢見ていたんです。 『てめえら、そこでいつまでも群れてろ!』
   って捨てゼリフ吐いて、大舞台に帰る日の事を…ずっと。」
つん「捨てゼリフ吐いて、ゲラゲラ笑えそうか?」
鈴木「今は… そうおどけて見せて… ニッコリと笑えそうかな?」
つん「そっか…。安心したわ…。」
鈴木「みんなも『早く消えちまえーッ!』って、笑顔で見送ってくれると
   思います。 小川なんてきっと『先輩おめでとう!』って、すごく
   喜んでくれると思うし…。大爆笑の渦の中、旅立っていけます♪」
つん「泣くやつきっとおるで? ドタンバで心揺れ動かへんかぁ?」
鈴木「泣く子…ハハ…いるかなぁ〜? とにかく…大丈夫です! みんな
   とてもたくましくて…私がいなくなって崩れるようなヤワな集まり
   じゃないですよ。 なんでモーニング娘。がウザいほどのパワーを
   持続できるのか、その理由が加入して一緒に過ごしてみて、良〜く
   わかったんです。 タケヤブなんですね、モーニング娘。って。」
つん「竹ヤブ?」
鈴木「ええ…タケヤブって、竹の集まりで、それぞれが我先にって感じで
   背比べするように伸びていくじゃないですか? グングンと。
   成長も早くて、まるでケンカしてるみたいに生い茂りますけど…
   だけど竹ヤブって、根っこはみんなつながっているんですよ?
   土の中ではお互い手をつなぎ合ってる…。 だから強いんです。」

つん「竹ヤブ…か。 地震が起きたら竹ヤブに逃げろって、昔聞いた事
   あったなあ。 とにかく丈夫なんやと、竹ヤブは地盤がな。
   確かにあのコらは頑丈や。 けなげなほどに丈夫な娘達やわ。」
杉本「じゃあ僕は、そのヤブの中から鈴木さんを切りとってしまう奴に
   なるんですよね…? なんか悪い事をしてる気になっちゃうな…」
鈴木「アハハ! でも竹がグングン大きくなるのは、いつかヤブの中から
   切り取られ、立派な竹材として役に立てる日を待ってるんからなん
   ですよ? 自分が高価で綺麗な竹細工になるか、物干竿になるか、
   そうめんを流されるかはわかりませんが、みんなその時が来る事を
   待ち望んで伸びているんです。 私だけじゃなく、そりゃ姫だって
   ゴッチンだって…。 みんないつかその時が来る。 だから仲間が
   切り取られても枯れないよう、竹ヤブはガッシリ手をつないでるん 
   ですよ。 それがモーニング娘。なんだ…って気付いたんです!」
つん「安心して、切り取られて行けるんやな?」
鈴木「はい! それがわかった以上、もう迷いはありません。」
つん「…これでオレも安心したわ。 実はオマエがOKしてくれるはずや
   と思うとったから、次のシングルから名前はずしとったんや。
   スマンが急ぎの状態なんでカンベンしてや。…歌いたかったか?」
鈴木「みんなにたくします。」
つん「杉本ッ! うちの立派な竹を1本くれたるわ! 大事にせえや!」
杉本「はいいッ♪ 鈴木さん、どんな竹細工になる事をお望みで…!?」
鈴木「…そうですね。 ぶっとい竹ヤリにしてください♪」


加護「いややぁ〜ッ!! そんなんウソやぁッ!! ウ…ウソやって
   言っとくれや後藤はんッ! 今なら逆水平チョップ2回で済まし
   たるさかいッ!! ヤンジャンが卒業するなんて悪い冗談や!」
辻 「なんれ…なんれ、のの達に黙ってたんれすかぁッ!!
   答えようによっては、ココナッツクラッシュに河津落とし、
   4文キックと、あいぼんと合わせての16文ダブルロケット砲が
   そのたわわな胸板に飛ぶことになるのれすゥーッ!!」
後藤「だって…ヤンジャンに、みんなにはまだ黙っていてくれって…!
   私だってイヤだよぅ! でも、これはヤンジャンの問題だし…」
飯田「ごっつぁんを責めても仕方がないでしょ! 秘密かかえてた
   ごっつぁんが一番辛かったんだよ! それにまだこれは本決まり
   の話じゃないんだから…! とにかく落ち着きなさいッ!!」
ユウ「そうだ! 姉ちゃんをイジめると許さないぞッ!!」
吉澤「で…でも、新曲のパートには…!」
矢口「うん… もしかしたら、もう決まってた事なのかもしれない…」
保田「クッソォ…なんでアイツ、姫に何の相談もしねえんだよッ!!」
紺野「相談されてたら、もちろん保田さん止めてくれましたよね…?」
保田「当たり前じゃねえかッ!! プッチモニどうなるんだよッ!?」
市井「あら? そんな理由で鈴木のチャンスを奪っちゃうわけ〜?」
ソニ「なあ…悪いけど少し静かにしてくれニダ。 近所の迷惑ニダ。」
小川「ギャラリーは黙ってろよォッ!!」
ソニ「ここは私んちニダァアアアアアアアアアアーッ!!!!」

ソニ「せっかくユウキと2人で夕食のカレーライスを、熱々フーフー
   食べようとしてたところに、こんなクソ大勢で…! 迷惑ニダ!
   うちは村の青年団の集会所じゃないニダよッ!!」
市井「フーフー♪」
ソニ「なんでお前まで、この群れの中に溶け込んでいるニダか…?
   一晩たったカレー鍋のジャガイモかキサマは? 帰れニダッ!」
加護「そうや!こんな裸エプロンの馬鹿女の家で、福神漬けつまんどる
   場合やあらへんでッ!! 早よヤンジャンちに戻って、アイツ
   引き止めなアカンがなッ!! 行くでぇ辻ィ!!」
辻 「あいあいさーなのれすッ!!」
小川「あッ!! 私も行くゥーッ!!」
飯田「待・ち・な・さ・いッ!! 落ち着けっていってるだろォッ!」
加護「なんで止めるんや飯田はんッ!! 一大事やないかッ!!」
飯田「わかってるわよッ!! でもみんなで押しかけて、ヤンジャンに
   つめよってもアイツが困るでしょ!? 私達がどういう態度で
   アイツに対すればいいか、まずはしっかり話し合ってからよ!」
加護「卒業なんて絶対させんがなッ!! 無理矢理でも引き止める他に
   選択肢があるんかいッ!? 飯田はんはヤンジャンがいなくなる
   事が寂しくないんか!? 相変わらず冷たいズベ公やのぉ!?」
辻 「このビンス=マクマホンッ!!」
飯田「いい加減にしなさいッ!! 一番大事なのは何? アンタ達の
   都合なの!? 違うでしょッ! ヤンジャンの気持ちでしょ!」

 ズズッ… シクシク… ウッ… ウッ…
ソニ「なあ…人の家に押し掛けてきて、勝手にアットホームな食卓を
   お通夜みたいな空気に変えるんじゃないニダよ…。まださっきの
   発情期の馬小屋みたいな騒ぎのほうがマシだったニダ。
   ホラ、辻、加護。 カレーのおかわりするニダろ?」
加護「ズズ… アホか。 メシがのど通る気分やあらへんわい…。」
辻 「食欲なんかないのれす…。 らから、半盛りれいいのれす…。」
新垣「リサたんオカワリ〜♪ あとね、ソース持ってきてソース!
   味薄すぎるもんコレ! しかも小麦粉をいためてルゥ作ってない
   でしょ? ダメよね〜ウチのママみたく本格的に作らなきゃ!」
小川「オマエよくそんなに明るくしてられるよなッ!! 薄情者ッ!」
ソニ「みんな暗い割にはカレーの減りが早いニダな。」
吉澤「うっせぇな! 一日中走りまわってカロリー消費してんだよ!」
ソニ「それは良かったニダな。 特にお前は運動しとくニダ。マジで。
   なんニダかもぉ〜? せっかくの鈴木のめでたい門出ニダろ〜?
   みんなで万歳して送りだすべきじゃないニダか?」
新垣「そうそう、良かったじゃないのヤンジャン先輩♪ だってあの人
   ソロに復帰するのが夢だったんでしょ? 問題ないじゃない♪
   ムキーッ!! このソース、ウスターじゃないのさッ!!」
加護「なんやオマエ、そしたら何か? ヤンジャンは今頃、ウチらから
   離れる事を喜んでいるとでも言うのかいな?」
新垣「え、そうじゃないの? 加護ちゃんのほうがくわしいでしょ?」


 ガチャッ… ただいまぁ…
鈴木「あれ…? 何でぇ、まだ誰も帰ってきてねえのかよ? みんな仕事が
   長引いてるのかな? まあメシの支度の最中にウルセエのがいない
   のは好都合だけどな。 サッサと奴らの分のエサ作っちまうべ♪」
 コトコトコトッ… サクサク グツグツグツ…
鈴木(……いつ打ち明けようかな… 卒業の話…)
 グツグツグツ… プシュゥッ! ジュワァアアアアーッ!!
鈴木「うわわッ鍋がッ! ふぅ…ダメだな、考え事しながら料理しちゃ。
   次はニンジン切らなきゃ… こういう時は明るい歌でも歌ってと♪
   1本で〜もニンジン♪ 2本で〜もサンダル♪ 3本で〜も…
   あれ? 歌詞なんだったっけ? まいっか、替え歌でも何でも♪」
  (……いつ打ち明けようかな… 卒業の話…)
鈴木「えええ〜いッ!! 料理に集中ッ!! エンジョイクッキングッ!
   1本で〜も新垣♪ 2本で〜も中澤サン♪ 3本で〜もヨッスィ♪
   4本で〜もゴッチン♪ 5本でもロリ加護♪ 6本で〜もナッチ♪
   7本で〜もヤグ助♪ 8本で〜もココノッツ娘。♪ 9本で〜も…
   じゅ〜よんにんがかり〜の〜ク〜リスマスゥ〜♪ 10本でも…」
  (もう時間がないんだ… 早く話さなくちゃ…)
鈴木「10本でェ〜〜もッ…市井ッ!! おらぁ! ニンジン終了ッ!!
   次にブッ斬られてぇ野菜はどいつだ!? よし玉ネギこっち来い!
   ネギの分際で頭とんがらせやがって! 今頃ベッカム気取りか!?
   クッ…目にしみるぜ! 涙ボロボロでてきたじゃねえかよォ…!」

加護「ヤンジャンの部屋に明かりついとるな…。」
辻 「帰ってきてまふね… ヤンジャン。」   
小川「ねえねえ!どうするの!? 私、顔見た瞬間泣いちゃいそうだよ!」
辻 「我慢しなくちゃダメれすッ! 何も知らないフリをするのれすッ!」
加護「そうや… ウチらはヤンジャンのホンマの気持ちを聞かなアカン…!
   ウチらがベソかきながら問いつめたらアイツ、気をつかったセリフ
   吐こうとするやろ? ほら… アイツ、優しい奴やさかい…。」
辻 「だから…泣いちゃダメなのれす! ヤンジャンが本当の気持ちを話し
   やすいように、いつもの態度で今夜は接するのれすよ!」
小川「本当の気持ちなんか聞けなくたっていいもんッ! ウソでもいいから
   『卒業なんてしないよ』って言って欲しいもんッ!!」
加護「せやったら帰れや!ジャマやッ! 新垣との相部屋に帰って、コネの
   ブサイクな寝顔でも眺めながら、富士登山の夢でも見とれやボケ!」
辻 「そうれす! 小デブの群れとランデブーする夢でも見るのれすッ!」
小川「グスンッ… なんでごんな時にばでイジワルずるのぉおお…!?」
加護「…すまん、泣くなや小川。 泣くならカメラまわってる時にせえ…。
   ウチもな、ホンマ言うたらオマエと同じ気持ちや。 気持ちのまんま
   ダダこねて、アイツに『卒業したら、実家の兄貴にプラスチック爆弾
   仕掛けるでぇ〜!!』…って言えたらずいぶん楽やがな…。
   せやけどな? お前と違ってウチと辻は… その、アレや…。」
辻 「今までたくさんワガママ言って、いっぱい迷惑かけてきたのれす。」
加護「今度は… ウチらがアイツのワガママを聞く番かもしれへんわ…。」

小川「また迷惑かけちゃえばいいじゃないスか! 私達で高橋を新垣…ッ!  
   じゃなく、ダダをコネてッ!! 卒業なんて阻止しましょうよッ!」
加護「小川…ウチらな、 飯田はんにキツく言われて気付いたんや…。 
   ヤンジャンと暮らしてもう1年半。 この18ヶ月間、甘えっぱなし
   やったなぁ〜…って。 そらもう楽しかったわ、この一年半…。」
辻 「あいぼんもののもね、昔より背丈が2センチも伸びたんれすよ?
   これね、ヤンジャンの作ったゴハンれ育ったんれすぅ♪」
小川「…?」
加護「とはいえ、まだまだ子供やけどな〜。相変わらずチンチクリンやし♪
   …せやけどな、この伸びた2センチの分だけ、素直にアイツへ感謝
   できるぐらいには、大人になったと思うとるんや…!」
辻 「もしのの達が今、ヤンジャンの夢をジャマしちゃったら、この先
   一生お返しができなくなっちゃうのれすッ!」
加護「いつもジャマばかりしとったウチらが、アイツの一度だけのワガママ
   をジャマしない。…ウチらにしては、上出来のお返しと思わへん?」
小川「グスッ… じゃあ何も言わず見送っちゃうつもりですかぁ〜ッ!?」
加護「せやから、アイツのホンマの気持ちを聞きたい言うとるやんけッ!
   もしアイツが、本音は卒業したぁないと思ぅとるてわかった時は…
   そらもう止めるッ!必死に引き止める! 小川、お前の出番やで!?
   3人でダダこねて、ヤンジャンにホールドかけたるんやァッ!!」
小川「ズズ…  はい…♪」
加護「…涙が乾いたら帰るで? アイツが待つウチらのマイホームに…。」

 ヒソヒソ… ヒソヒソ…
加護(…ええか? ドア開けて入るでぇ? いつもの態度で頼むどぉ?)
辻 (元気よく行きましょう…! 小川ちゃん泣いたらダメれすよ?)
小川(ハ…ハイ! 涙腺にセメダイン埋め込んでおきましたッ!)
加護(ホンマ頼むで小川…? じゃあ…行くどぉ〜〜〜ッ!!)
 ガチャッ!!
辻 「ヤンジャンたらいまぁ〜ッ!! おなかすいたのれすぅーッ♪」
小川「センパァ〜イ♪ 小川、また遊び来ちゃいましたァ〜ッ!!」
鈴木「オイオイ、遅いよテメエら! メシ冷めちゃったじゃねえか!」
加護「びぃぇえええ〜〜〜ンッ!! ヤ〜ン〜ジャ〜ア〜アァアア〜…!」
 ボカボカボカボカボカボカボカボカッ! ペキッ! ポキッ! 
小川(アッ…アンタが先頭きってダム崩壊させてどうすんスかァッ!!)
辻 (あんまりハラたったから、勢いで頚椎ズラしちゃったのれすッ!!)
鈴木「…か、加護どうしたんだ? 首が変な角度に傾いてるぞ…?」
加護「ウ…ウハハハ♪ 何でもあらへん! 斜に構えたい年頃なんや♪」
  (す、すまんみんなッ…! 隊長いきなりスイッチ入れてもたッ!)
小川(これがベトナム戦争だったら、一小隊全滅だぞチビがぁッ!!)
鈴木「みんなハラすかせてるんだろ? カレーたっぷり作ったからな♪」
小川「ゲッ…! またカレーですかぁッ!? さっき食べたばか…」
 ボカボカボカボカボカボカボカボカッ! ドスッ!! ベキンッ!!
加護(みんなで集まって会議しとったのバレるやないけ、この犬ゥッ!!)
辻 (あんまりハラたったから、勢いで骨盤割っちゃったのれすッ!!)

鈴木「…収録中、矢口の調子どうだったぁ? 最近、ハードワーク続きで
   体ちっちゃいアイツが一番キツいだろ? 疲れた顔してたもんな…」
 シーン…
鈴木「…オイ、おまえら。」
辻 「へっ!? あ、いや、そうれすね! 矢口しゃんがハローワークで
   頭突きした侍ジャイアンツは、キツネに憑かれたカオリれすね♪」
加護「そッ…そうそう! あの飯田はんがイタコと殴り合いしたもんなら
   恐山名物・油風呂で、冨樫源次も鼻血出すっつー話やがなッ♪」
小川「うんうんッ! 依託販売って譲り合いの精神ですよねぇ〜ッ♪
   東京銘菓ひよこって、やっぱりジャイアンツファンの新垣ッスよ!」
鈴木「ハァ? おいおいオマエら大丈夫かぁ? さっきからキョドキョド
   してるし、何か様子おかしいぞ? 悪い事でもたくらんでるのか?」
小川「あの… そういうヤンジャン先輩も… そのぉ…」
鈴木「…なんだよ?」
小川「先輩がカレーに一生懸命のせてる赤い物… それ福神漬じゃなくて
   モー娘。ドンジャラの赤チップですよ…?」
鈴木「あッ…!」
加護(アカン… ウチら完全に浮き上がっとる… 緊張で吐きそうや…)
鈴木(あうぅ… コイツラまで何か様子おかしくて、話し出すタイミング
   全然つかめねえ…! 談笑の合間に聞いてもらいたかったのに…)
小川(こんな事なら、家で新曲のパートチェックしてりゃ良かった…)
辻 (くふんッ!? そ、そうれすッ! 新曲の話をするのれすッ…!)

辻 「あ…今日れすね、マネージャーさん達からデモテープもらったん
   れすよ。 その… 次のシングル曲の。」
加護(つッ…辻ィ! それは少し直球すぎやしないかぁ…!?)
小川(でも先輩には、話し出すいいキッカケになりそうッスよ…!)
鈴木「あ…本当か。 いや、私もつんくさんにタイトルだけは聞いては
   いたんだけどね。 まだ音は聞いてねえからなー…。」
小川「き、聞きますか先輩…!? 小川、今デモテープ持ってますッ!」
鈴木「え? あ、そうだな…。 聞きたいな…やっぱり。」
加護「…よっしゃあッ! 辻! 急いでラジカセちゃんの用意やッ!!」
辻 「あいあいさーなのれすッ!」(タッタッタ… ササッ! ドンッ!)
  「持って来ましたッ! 早速テープを入れるのれすッ!!」
加護「OK! ナイスボケや辻ッ! それは電子レンジやッ!!」
小川「はい! これデモテープですッ!」
加護「OK! ナイスブスや小川ッ! それはクノールのスープやッ!!
   ええから早よ用意せんかいッヴォケ共がぁああああああーッ!!」
辻 「しくしく… ラジカセはあいぼんが家に持っていってるのれす…。」
小川「しくしく… デモテープは、私のウォークマンに入れたまんまで
   新垣が聞きながら帰ってしまいましたあ…。 あッ…でも代わりに
   アイツから交換で借りたキッスサイトがありますけどッ…!?」
加護「カラオケ歌ってどないするんッ!! そもそもタカラ社のe-karaが
   うちにあるやろッ!! 何お前までトミー派になっとんのやッ!!」
鈴木「プッ… アッハッハッハ! お前らがそろうとホント面白えなあ♪」

辻 「よく考えたら、のの達もデモテープ持っているのれす… けど…」
加護「ソフトがあってもハードがあらへん…。 どないする?」
小川「ドンキホーテで手に入れてきましょっか? 私、パクってきます!」
鈴木「コラコラコラ! いいよいいよ、もう。 …そうだ! お前らさぁ
   少しは新曲聞いたんだろ? ちょっとでいいから覚えてるところ
   口ずさんでみてくれねえ? メロディだけでもいいからさ♪」
小川「くださーい! 愛をくださーい! うう…ここしか覚えてない…」
加護「歌詞はあんまり覚えてないんやけど、メロディはなんとなく…
   ドゥーイッナゥッ♪ フフフン フフフン フフフーンフフフン♪」
辻 「愛の形はイメージロリれす♪ フフンフフフン フフフフフフフン」
小川「くださーい! 愛をくださーい! うう…ここしか覚えてない…」
鈴木「なんとなく雰囲気は伝わったよ。 今までみたいな明るい曲調の歌
   じゃねえんだな。 なんかシットリつーか、大人っぽいつーか…」
辻 「ヤンジャン向きの曲なのれす…。」
鈴木「……そか。」
小川「あッ! 小川、まだ覚えてるとこあった! メロディは忘れたけど
  『あなたが持ってる未来行きの切符 夢はかなうよ絶対かなうから』
   …ここだけ歌詞がハッキリ… なぜか印象的に残ってます…。」
鈴木「未来行きのキップ… か…。」
加護「…な、なあヤンジャン… お前の夢って… ん? どないした?」
鈴木「ズズッ… ええ? いやぁ…何でもねえよ。 ハハッ! 今日は
   何か疲れたなって…。 みんなクタクタだし、もう寝よっか…。」

 ゴソゴソ… ゴソゴソ…
鈴木「オイオイオイッ!! 真夏だぞ!熱帯夜だぞ!? なんでこんな夜
   まで私のベッドに潜りこんでくるんだよッ!!」
加護「ええやないか… 久しぶりなんやし、3人で寝るんわ…」
辻 「その分、エアコンの温度を下げればいいのれす…」
鈴木「エアコンはてめえらがブッ壊したじゃねえか! 暑いってオイッ!
   お〜が〜わぁ〜… テメエは床に寝床があるだろうがァーッ!!
   どけッ!! 降りろ小川、ムサ苦しいッ!!」 (ドカッ!!)
小川「う〜う〜うぅ〜… 小川も先輩と寝るゥ〜〜〜〜…」
鈴木「お? なんだテメエ、今日はやけにネバるな? いつもは2回ほど
   ケリ入れたら素直に床で寝るのによぉ? グッ…ブゥワハハハッ!
   や、やめろ辻ッ! 脇に顔うずめるなよ、くすぐったいってばァ!
   痛ッ…イタタタッ! 加護、お前ツメ立てすぎだよ! そんな力
   いっぱいしがみつくなってッ…! なあ、オマエらいったい…!」
加護「………はなさへんもん…。」
辻 「いつまれも、川の字で寝るのれすぅ…。」
鈴木「オマエら…。」 
  (…知って…たんだな…。)
小川「うっ… うっ… うぐッ…」
鈴木「…ハァ〜〜ア…。 悪い辻…そこ、ちょっとだけ場所あけてくれ。
   ホラ…来いよ小川。 床の方が冷たくて寝やすいと思うけどなぁ?」
小川「うぇえええええええ…んんん…!」(ドタドタドタ… ガシッ…!)

 クスクス クスクス… キャッ キャッ♪
加護「なあなあヤンジャン♪ 卒業したら、またファンからアミーゴって
   呼んでもらうんかいな? さすがにもう恥ずかしい年やろ〜?」
鈴木「あー…どうなんだろうなぁ? アミーゴって呼んでた昔のファンは
   私がモーニング娘。に加入したとたん、ドッと離れていっちゃった
   からねー…。 戻ってきてくれるのかなぁ…昔のファン。
   …少し恐いんだよ。 卒業した後の私のソロライブに、どれだけの
   ファンが会場へ足を運んでくれるのかなって…。」
辻 「離れていった薄情なファンなんて、来なくていいのれす! きっと
   今のヤンジャンファンが会場にたくさんつめかけてくれますよ!」
鈴木「そうかなぁ? だって私、モーニング娘。じゃなくなるんだぜ?」
小川「そんなに心配なら、卒業なんてヤメちゃいましょうよ〜ぉ?」
加護「ハイ! 小川が今いい事をいいました! …ご褒美に氷1個やる。」
小川「モゴモゴ… むふふふぅ〜ちべたくてオイチイ…♪」
鈴木「暑い〜〜〜…私にも、氷1個くれ…。 ん、あんがと。 
   いや、もう覚悟はできてるんだ。 例えゼロからのスタートでも
   1人で頑張ろうって。 たとえお客さんがゼロのライブでも、私が
   モーニング娘。に入れられた時の屈辱と比べれば全然平気さぁー…。
   オイオイ、そういう意味じゃねえよ! 当時は、の話だって!
   今ではモー娘。も、そう悪くはなかったって思ってるんだからさ…」
加護「オマエをたくましく育てたのはウチらやからな! 感謝せえよ!?」

鈴木「感謝ァ? ハハッ! される覚えがあっても、する覚えはねえよ!
   お前らにメシ作ったり、お前らが開通させた壁の穴をコンクリで
   埋めたり、勝手に緑に塗り替えられたシャアザクを元に戻したり、
   クリスマスツリー作るって言って、勝手に伐採してきた大家さんの
   梅の木を埋め戻したり、傷だらけになりながら寝起きの加護を毎朝
   起こしてやったのは私だぞ? わかってんのかァ?」
加護「朝なら1人で起きれるようになったがな! だてにウチ、最近まで
   一人暮らししてたワケやないんやで? これからまたオマエと
   離れて生活する事になっても… だッ…大丈夫やでウチはッ!!」
辻 「くふん… ののもあいぼんと2人で頑張るのれす。」
小川「ええーッ!! 別にいいじゃないッスかぁ!? 卒業しちゃっても
   ここで変わらず4人で暮らせばぁーッ!! ダメなのォッ!?」
鈴木「…ツッコミたい箇所が1つあったけど、暑いからいいや…。」
辻 「小川ちゃん、それはさっき話し合ったじゃないれすか。
   ヤンジャンが卒業するのと一緒に、のの達も巣立たなきゃいけない
   のれす。 イヤれすけど…寂しいけど… ケジメなのれす。」
加護「スマン… ウチ、もう一度泣く…。」
小川「ヤンジャン先輩は寂しくないんですかぁーッ!? ねえッ!?」
鈴木「…夏はいいけど…冬、1人で寝るのは肌寒いかもな…。 ゴハンも
   1人分だと野菜買いだめ出来ねえし… ファミコンもツーコンが
   いらなくなっちゃうな。あー…氷を目に当てると気持ちいいや…」
辻 「ごめんらさい… ののも…もう一回泣くのれす…」

辻 「てへてへ… 涙と汗と、溶けた氷でみんなグショグショなのれす。」
鈴木「明日シーツ干さなきゃいけねえな。 たまってる洗濯物もついでに
   洗っちまお…。 加護、家にためてある洗濯物、明日ここに持って 
   帰ってこいよ? どうせ、ためっぱなしなんだろオメェ?」
加護「平気や! 自分で洗えるわいッ!」
鈴木「ずっと前オメェに洗濯やらせた時、ザブと間違えてバブ入れたべ?
   服の血行を良くしてどうするんだよ。 便所掃除しろって言ったら
   辻なんか自作リモコン爆弾で、下のフロアごと破壊しやがるしよ…
   汚れを消せって言ってるのに、便所ごと消してどうすんだよ…?
   ここ出ていく前に、常識的な事だけはしっかりしこんどくからな!」
辻 「じゃあののもヤンジャンに、東南アジアのブラックマーケットで
   悪い銃を買わないように、AKMのマズルサプレッサーのチェック
   の仕方をしこんでいくのれす…。特に旧ソ連製の…」
鈴木「いらんいらん買わんッ!! …とにかくもう寝ろよ。 卒業まで
   まだ日にちはあるんだからさ。 あ、小川。 その私のヘソに氷を
   すべらす遊び、2秒以内にやめねえと前歯が全部なくなるぞ?」
小川「だって… 先輩のオヘソが私に『イジって、イジって』と…」
鈴木「はい2秒、ドカーン! そのまま、いつもの床に戻って寝てろ。
   サァ寝た寝たッ! 明日、4人で寝坊なんてシャレになんねえよ!」
加護「ヤンジャン… 最後にひとつ聞かせてや…
   お前の… 夢なんやもんな…? ソロで歌を歌っていくんは…?」
鈴木「……うん。 そう… たぶん… きっと…。」


 チュン… チュチュン… チチチ…   
鈴木(ガバッ!!)「ブハァーッ!! ゼェ…ゼェ… みッ…水ッ…!!」
 ダダダダダダダッ!! ガチャッ!! ダダダダダダダッ!!
加護「まッ…待てやヤンジャンッ!! ハッ…ハッ…! ウ…ウチの方が
   先やッ!! ウチが先に水飲むんやッ…!! どッ…どけッ!!」
辻 「はひッ…はひッ!! あいぼんッ… ののにも水ゥーッ!!」
鈴木「あ、当たり前じゃねえか…! ハァハァ…! あんな熱帯夜に4人
   抱き合って寝てたら、シャレにならねえ脱水症状起こすよそりゃ!
   クソッ…小川がパジャマのズボンにからまってるッ!!」
小川「ムニャムニャ… あう…? な、なんか苦しい…。 ここ9合目?」
辻 「あいぼん、あいぼ〜んッ!! 蛇口から口を離してくらさいッ!!」
加護「ゴボボボボボッ…!! ゴポォ! ゴボベボォベボビバーッ!!」
  (水はやらんでッ…!! 水なら! 便所で飲んでこいやーッ!!)
鈴木「くぅッ! 水道は加護に独占されたか…! でも確か冷蔵庫に…!」
辻 「ゴキュッ ゴキュッ ゴキュッ…!」
鈴木「あああああああーッ!! 辻てめえッ何で牛乳飲んでるんだよッ!?
   オマエ牛乳飲めないんじゃなかったのかァッ!? よ、よこせッ!」
辻 「んン〜〜…まずいッ! もう一杯ッ! あり? もうないのれす…」
鈴木「やっべぇ…マジ早く水分とらないと死ぬ… ふ…風呂場の水を…」
 ザザザザザァーッ!!   ガチャッ… ガチッ! ガチャガチャッ!
鈴木「お…小川…早くここのカギを開けろ… お前、私と一緒に風呂入り
   たいっていつも言ってたじゃねえか… なあ…小川ちゃんよぉ…」
小川「ゴボボボボッ…先輩ゴメンナサイッ!…ゴポッ…ゴキュゴキュ…」
鈴木「あ〜… もう… ダ…メ…」(バタッ…)

 コトコト… ウィ〜〜〜…ン  チーン!
加護「小川ァ! 冷やゴハン、チン終わったでぇ!? 皿に盛れやッ!」
小川「辻ちゃ〜ん? カレーの鍋、もう火を消していいんじゃな〜い?」
辻 「ねえねえ? 小川ちゃんってカレーとお味噌汁、一緒に食べる派?
   昨夜は小川ちゃん、お味噌汁遠慮してたみたいだったけろ…?」
小川「実家じゃカレーと一緒には出さないけど… でも平気だよ私♪
   昨夜はホラ、ここ来る前にもう、おなかイッパイだったから。」
加護「ウチは最初ダメやったんけどな。 ホラあれや、カレーっていわゆる
   スープ料理やろ? スープ料理にスープつける必要あらへんがな。
   でも2人がつける言うから、ウチは仕方なく郷に従ったワケや。」
辻 「今じゃあいぼんTBSの地下食堂れ、カレーと一緒に必ずお味噌汁
   の食券買ってまふよ? 小川ちゃんもヤンジャン家の流儀に従うの
   れす♪ じゃあのの、急いでお味噌汁作りますね〜!」
小川「急いで作るなら、具は豆腐がいいですよぉ〜? 煮えるの早いし。」
鈴木「………昨日の油揚げの残り使えよ…。 場所は冷蔵庫の2段目の…」
加護「いやいやいやッ…! ヤンジャンさんは座っててくださいなッ!!
   2段目やね? ハイありましたがな! のの、早よ作ってやぁ〜♪
   ヤンジャンさんがごっつオナカすかしとるさかいのぉ〜♪」
辻 「あ…あいあいさ〜なのれすッ…!!」
小川「ヤ…ヤンジャン先輩! お水…おかわりもう一杯いかがで…す?」
鈴木「………今日のことは一生忘れねえからな…。」
小川「ひぃ〜…だから反省して朝ゴハン作ってるじゃないですかぁ〜!」
鈴木(一生忘れないよ… オマエらの台所での、この光景… 背中…。
   辻… 加護… ちゃんとゴハン作れるようになったんだな……。)

鈴木「…ちょっとお味噌汁、味が薄いかな? ああ、でもアレだよな。
   寝汗たっぷりかいたから、体が塩分を欲しがっているだけかもね。」
小川「先輩! この目玉焼き私が作ったんですよぉ♪ 食べて食べて!」
鈴木「あーあ、勝手に塩コショウふりかけやがって。 私は醤油オンリー
   なんだよ。…でもいいか、塩気は欲しかったし。ウンうまいよ…」
加護「なあヤンジャン、今日から新曲の練習が連日続くと思うんやけど…。
   ホラ…その、ヤンジャン…今回新曲に参加せえへんやろ…?」
辻 「ヤンジャンのお仕事… 卒業の日までオヤスミが続くんれすか?」
鈴木「うん、まあみんなよりヒマになっちゃうけど… でも番組収録とか
   一緒にする仕事はあるワケだしね。今日は私何もないけど、ちゃんと
   練習場には顔出すぜぇ? 家でボーっとしててもアレだしさー。」
小川「そうですよぉ〜! 一緒にいれる日はもう残り少ないんですから、
   毎日顔出してくださいッ! 先輩もみんなと一緒にいたいでしょ?」
加護「そうやそうや! 思い残す事のないよう、今のうちムカツクやつに
   お礼参りでもしとけや♪ プッ…クスクス、飯田はんあたりに。」
鈴木「アハハハハ! …うん、でも私ね。 思い残しっつーか、卒業する
   までに、メンバーみんな1人ずつに会って聞きたいことがあるんだ。
   けっこう長く一緒にいたクセに、まだ知らない事があって、さ。」
辻 「なんれすか、なんれすかッ!? 聞きたい事って…?」
加護「ウチらの生態や性格なんて、十分知りつくしてるんとちゃう?」
小川「先輩の知りたい事ってなんですかぁ!? 私何でも答えますよッ!」
鈴木「うん…   夢。 夢だよ…  みんなの… 夢。」


飯田「みんなオハヨー… あっちゃあー、目の下のクマがすっごい事に
   なってるわ。真っ黒…。デイゲームの野球選手じゃあるまいし…」
矢口「おあよぉ〜…ファアア…。カオリもやっぱ寝てないんだねー。」
飯田「いやぁ…仕事に影響あるといけないから少しは寝たんだけどさー…」
安倍「どんな顔してあみちゃんに会えばいいか一晩中悩んだべさ…」
矢口「…その割には血色いいなオイ。お前のホルモン少し分けてくれよ。」
紺野「お…おはようござ…キャッ! しっかり歩いてください保田さん!」
保田「ハムのため…ハムとしてハムならずとも、ハムスターな私ですが…
   ヒック! このたびハムスターの座を辞任する事に致しました…」
矢口「どこにそんな可愛くねえ、赤ら顔のハムスターがいるんだよ…?
   なんだ紺野? もしかしてヤケ酒でもかましてたの圭ちゃん?」
高橋「ワタス達の部屋で朝までクダまいとったダスよぉ…。 やっぱす
   ヤンジャンさんの卒業がショックらしくて…。 仕方ないダス…。」
吉澤「オアヨ〜スッ! スンマセーン、練習初日から怪我しましたぁ〜!」
飯田「どうしたのアンタッ!? ズボン血だらけじゃないッ!?」
後藤「あの後ヨッスィうちに泊まっていったんだけど、トイレの水洗レバー
   にセットされてある毒矢トラップにひかかっちゃって…。」
吉澤「慣れたトラップだったんだけどなあ…。ゴッチンの家のトイレで
   ビデを押す事は死を意味するって知ってたんだけど…。 やっぱり
   ヤンジャンの事考えてて、ボーッとしてたんだな私…。」
矢口「…それよりケツに刺さった矢を抜けよ。」
安倍「それより…今日はあみちゃん来るんだべか…?」

飯田「ハイみんな、良く聞いてー! ヤンジャンが卒業するからといって
   変によそよそしい態度はとらない事! いろんな思いを抱えて、
   一番落ち着かないのはヤンジャンなんだからね? こういう時こそ
   まわりの私達が、いつもどおりの態度で明るく接してあげるのよ?」
吉澤「特にヤギ、お前ヤンジャンからいろいろゲームソフトとか借りてる
   だろ。 急にあわただしく返却し始めたりとかするんじゃねえぞ?
   そういう何気ない態度がけっこう傷付けたりするんだからな?」
石川「大丈夫♪ すべて売却済みだもん♪」
保田「ヒック… 姫の… 姫の可愛い兵隊ヤンジャンが逝っちまう〜〜…
   なごぉ〜り雪〜もぉ〜… 降る時を知りぃ〜 ふざ〜けすぎ〜た…」
矢口「とりあえず紺野、そこの辛気くさい歌うたってるフザけた生き物を   
   猿ぐつわ噛ませてロッカーにぶち込んどいてくれ。 マジで。」
安倍「昨日は加護達、あみちゃんとこに帰ったんだよね? …いったい
   どんな夜を過ごしたんだべ? 辻も加護もえらく落ち込んでたし…」
高橋「マコッちゃんも含め4人、ドンヨリした空気で現われそうダスな…」
紺野「どうしよう… そんな顔見たら私、明るく振る舞える自信ない…!」
飯田「だッ…だからこそ私達が明るい雰囲気作りを頑張るんでしょッ!?
   ホラもうすぐヤンジャン達が来るわよ!? 笑顔で出迎え準備ッ!!
   サァなっち! いつものなっちスマイル発動ッ!! ヨッスィも    
   ホッペふくらませて得意の布袋様スマイルッ! OK、そのまま!」
 タッ タッ タッ タッ… 
矢口「廊下から足音がッ…! きッ…来たぞォッ!!」

 ガチャッ!! キィ〜…
飯田「せ〜のッ…!」
全員『ヤンジャン、おっはよォ〜〜〜ッ!! イェ〜〜〜イッ♪』
松浦「イェーイ♪ おはようございますぅ♪ イェイイェ〜イッ!!」
 ボカボカボカボカボカッ!てめえかぁ!!ベキッ!!ゴッ!!ドコッ!!
矢口「ハァハァ…! よ…余計なフライングさせやがって、この猿ッ…!」
飯田「ハイハイみんな落ち着いてッ! 予行練習として今の感じでOKよ!
   ほら新垣、もう蹴らないの! 亜弥ちゃん白目むいてるからッ!」
吉澤「白目むかせたの、最後にキメた飯田さんのロシアンフックだろ…」
高橋「首がグリンと半回転したダスからなぁ…。」
飯田「コラやめなさいって新垣ッ!! 気絶した人間の後頭部を蹴らない!
   辻もシメ技ほどきなさいってばッ! アンタらいい加減にッ…」
安倍「へ? 辻…?」
辻 「このチンパンジーめッ!! 桃缶は人間様の食べ物なのれすッ!!」
矢口「辻ィーッ!? いつの間にオマエ… ヤ、ヤンジャンは!?」
鈴木「ん? 私がどうしたって? オオッ!? 松浦の背中がガラ空きッ♪
   小川、早く私のヤリ持ってこいッ! こんなチャンス2度とねえ!」
加護「なんや朝からみんな元気ええなあ〜? 家にクーラーあるからか?  
   あ、そういえばリカちゃんな。 ワレがパクったファミコンソフト、
   ヤンジャンが卒業する前に全部ちゃんと返さなアカンでぇ〜?」
鈴木「盗難品はしっかりリストアップしてあるからなコラ!?」
石川「うっわぁ〜…。 げ、元気そうじゃないですかヤンジャンさん…」


 ズンチャズンチャ…♪ 最初のデートの帰り道…♪
  口づけしたこと覚えてる…♪ ほんの1秒足らずでも… Ah…
夏 「はいッ!そこで紺野センター出るッ!! 遅いッ! 遅いよッ!!」
鈴木「…フフフンフフフン フフフフフーン…♪ フフフン…フンフン…」
夏 「やめやめやめ〜ッ! 初日だからフリ間違えるのは仕方ないとして、
   せめて自分が動きだすパートぐらいしっかり覚えておかないとッ!
   昨日何やってたのアンタ達!? あーもうッ!今から30分休憩ッ!
   この30分で自分のパート完璧に覚え直しなさいよォッ!?」
 ザワザワ ガヤガヤ…
加護「アカンわぁ… 昨夜デモテープ聞かんかったさかい、どこで動けば
   ええかまったくわからへん…。夏はんが怒るんもしゃあないわ。」
鈴木「叶うから〜…で、オマエが振り向いて、行こぉう〜♪ …だよ。」
辻 「ヤンジャン覚えるの早いれすね… ののはもうヒイヒイれす…。」
鈴木「つーか、ここで座って見てたら全体が見渡せるからな。もともと私
   フリの覚えは早いほうだし。 いい歌じゃねえか? 頑張れよ…」
小川(先輩、寂しそうな顔…。 やっぱり一緒に踊りたいですよね…。)
夏 「辻ッ加護ッ小川ッ!! くっちゃべってる余裕あるのかァッ!?」
鈴木「ほらほら私と喋ってると怒られるから…。 あっち行ってろよ。」
夏 「それと鈴木ッ!! オマエも何やってんのさッ!!早く行きな!」
鈴木「へ!? あの…なんスか?」
夏 「紺野が向こうでフリわかんなくて困ってる顔してるでしょッ!? 
   先輩のオマエがこういう時に教えてやらないでどうするのッ!!
   自分が踊ってる所を想像するヒマあったら、座ってないで動けよ!」
鈴木「は、はいッ!」

鈴木「ハイ! あなた〜が持ってる、ズンチャズンチャ…♪ あー…
   ダメダメ紺野。位置もっと左だって! グイッと大きく移動しろよ?
   高橋が右に動いた分だけオマエも動かないと、センターがズレて
   見えちゃうんだぜ? わかるか?」
紺野「は、はい! もう一度お願いします!」
鈴木「ズンタズンタズンタズンタ…♪ あーあーオマエな、フリはちゃんと
   覚えて合ってるんだけどさ、手足の動きがえらく小せえんだよ!
   脇の下に豆腐でもはさんでるのか? 腕を大きく振ると、その豆腐が
   落ちて番頭さんに怒られるのか? 高橋と対になって踊るんだから
   同じぐらい激しく揺れないと! ダメダメ…もっと!まだ小さい!」
 ズンチャ ズンチャ…♪
小川「…いいなぁ紺ちゃん。 ヤンジャン先輩の直接指導だよぉ〜…」
矢口「ハァァ〜…すげえなアイツ。 なんでもうフリ覚えてるんだよ?」
保田「バッカ、これくらいすぐ覚えられなくて何がモーニング娘。だよ?
   ホラ私なんて覚えたのを通り越してアドリブで踊れちゃうもんね♪」
矢口「アドリブかましてどうするんだよ? つーかアンタも朝まで酒飲ん
   でたクセに、何でフリもうマスターしてるんだ…? 化け物だな…」
 ズンチャ ズンチャ…♪
紺野「ハァハァ…。 あ…ありがとうございました…。」
鈴木「できてるできてる。初日にしては十分だよ。 あと休憩残り10分、
   しっかり休んどけ。 ほい水。 ちゃんと水分補給だけはしないと
   マジ倒れるぞ? 私は今朝、実体験でその怖さ味わったからよ…。」
紺野「…やっぱり…スゴいです、ヤンジャンさん…。 だって…」
鈴木「…ん?」

紺野「ヤンジャンさんって… 誰にも寄りかかってないから…。」
鈴木「…んあ? 言ってる意味がわかんないんだけど…?」
紺野「いや、あの…! なんかうまく言えないんですけど…。
   わ、私っていつも誰かにフォローされているじゃないですか…?
   今もこうやってヤンジャンさんにご面倒おかけしてますし、保田さん
   には特にお世話になりっぱなし。 先輩達どころか、同期の愛ちゃん
   にまで助けてもらってるし…。私っていつも必ず誰かに寄り掛かって
   生きているんです…。 寄り掛かって、いつも誰かのお荷物に…」
鈴木「今朝は姫がお前に寄り掛かってたけどな。デロ〜ンと二日酔いで。」
紺野「前に飯田さんが言ってました。 ヤンジャンさんは新入りのクセに
   一人前に全てをこなすから可愛くなかったって。 だからついつい
   昔はイジメちゃったって…。」
鈴木「…イジメのレベルじゃなかったけどなぁ? 総合病院の外科医さんと
   今じゃ年賀状かわす仲なんだぜ? あまりにも私が毎日通うから、
   鈴木あみ専用のカルテが大量にコピーで用意されててさ、怪我の
   理由の欄に最初っから『飯田』って印刷されてるんだから。」
紺野「でも、モーニング娘。という新天地に足を降ろして、それからずっと
   心細い環境の中、誰にも寄りかからず1人で立ってこられたんです
   よね…? そのたくましさに… 私、憧れちゃうんです…!」
鈴木「ローキックくらいまくりで、立ってる時よりダウンしてる事の方が
   多かったけどな。 アイツらに寄り掛かるぐらいなら、犬のウンコ
   食べる方がマシだと考えてたからさ、当時は。 プライドかな?」
紺野「私…夢があるんです。 聞いてくださいますか…?」

鈴木「夢? いや…聞くけど。 …何で私に?」
紺野「ヤンジャンさんは夢をかなえて旅立たれる方ですから…。
   いつか夢をかなえた私の姿を、遠くからほめてやって欲しいんです。
   他のみんなにはまだ、恥ずかしくて言えないから…。
   あ、みなさんには内緒にしていてくださいね? お願いします…!」
鈴木「…うん、いいよ。 実はね… 私も卒業する前に、みんなが持ってる
   夢ってやつを聞いておきたかったんだ。 話してくれよ?」
紺野「ハ、ハイ…。 あの…私…  大きな『木』になりたいんです!」
鈴木「いや…光合成はけっこう難しいぞ? 私も挑戦した事あるけど…」
紺野「ちっ…違いますぅ! 植物になりたいんじゃなくて…!
   あのですね、私が北海道の中学校に通っていた頃、グラウンドの
   すみに大きなポプラの木が1本だけ立っていたんですよ。」
鈴木「大きなポプラ…ね。 大きなポリープだったら怖いけどな。」
紺野「私が部活練習でヘロヘロになった時、よくその木陰で休んだんです。
   幹に背中をもたれていると、涼しくて木漏れ日もキラキラきれいで
   とても気持ちよくって…。とても居心地のいい場所だったんですよ。
   ヤンジャンさんにも、そういう場所ってありません?」
鈴木「まあ、辻と加護がいない場所と時間は、とりあえず心が休まるね。」
紺野「クスクス… 私、辻ちゃんと加護ちゃんがよくヤンジャンさんの体に
   寄りかかって休んでいるのを見ると、そのポプラの木を思いだすん
   です。 あの2人にとって、ヤンジャンさんは居心地のいい場所…
   大きな木の木陰なんだなって。 私もそんな木になりたいんです♪」

鈴木「体をベタ〜ともたれかけて欲しいの? 加護も辻も重いぜ〜?」
紺野「いえいえ、そういう事じゃなく…。 それに辻さんも加護さんも私の
   先輩ですし、もたれかかってるのはいつも私の方ですから…。
   …あのですね、こんな私もいつか先輩になると思うんです。 次の
   第6期新メンバー達が入ってきた時に。 その新人達にとって、私が
   大きな木のような先輩になれたらいいなって。 まだそんな自信も
   みんなに見上げてもらえるような実力もないけど…。」
鈴木「それが紺野の夢か…。 なんか若いわりにはちっこい夢…かな?
   OK、応援するよ! つーか後輩ができたら、そいつらにとっては
   少なくとも小川や新垣よりは慕われる先輩になると思うぜオマエ?
   顔もポワ〜と癒し系だし、つまみたくなるホッペしてるしよぉ?
   ちっとつまんでいい? うわ!メチャ気持ちいい〜♪」(プニプニ)
紺野「ムギュ〜〜わたひ、ヤンジャンひゃんみたふなれまふかぁ?」
鈴木「なれるなれる! つーか、このホッペ最強ッ!! お〜いパンチラ!
   とうとうオメェの頬袋の時代が終わったぞッ!? 下克上ッ!!」
紺野「…その中学校のポプラ、今年で切り倒される事になったんです…。
   きっとあのポプラ、春になるたび訪れる新入生達を、この先もずっと
   木陰で休ませてあげたかったんだろうな…。 いつまでもいつまでも
   あのグラウンドの片隅に残って…。」
鈴木「……だろうね。」
紺野「…ヤ、ヤンジャンさんも… そ、そのッ…!」
鈴木「お、なんか練習再開するみたいだぞ? …よっしゃ!行ってこい!」
紺野「ヤンジャンさん…。」
鈴木「卒業しても… ちょくちょくそのホッペつまみに来るからな♪」


加護「…へ? なんでやねんヤンジャン。 なんでウチら今夜はオマエんち
   帰ったらアカンねん? 今朝の一件、まだ根に持っとるんかぁ?」
鈴木「だーかーらー! ベッドが昨日のアレでグチョグチョムレムレで、          
   とてもじゃねーが臭いし気持ち悪いわで、寝られないんだってばッ!
   だからしばらくは自分の家で寝泊まりしてくれって言ってるのッ!」
辻 「じゃあ今夜はヤンジャン、ののとあいぼんちに泊まるんれすねッ♪」
加護「そらええわ! しばらくヤンジャン、ウチの家に居候せえやッ!
   ウチがメシの世話からシモの世話まで、み〜んな面倒みたるさかい。
   今まで居候させてもらった恩返しがやっとできるがな〜♪」
鈴木「残念でしたぁ〜! しばらくは私、他のメンバーの家に日替わりで
   泊めてもらう事にしたんだも〜ん♪ そんでもって今夜はねぇ…」
矢口「オイラがヤンジャンを持って帰りま〜す♪ テイクアウト鈴木ッ!」
加護「なッ、なんやそれぇ〜ッ!? そッ…そんならウチも行くがなッ!」
矢口「ダ〜メッ! 今夜はヤンジャン、オイラが独り占めなのぉ〜〜〜♪
   辻加護は家でダンスの復習やらにゃダメだろ? また明日、夏先生に
   怒られたくないでしょーが。 サァサァ! おうちに帰れホラッ!」
小川「もッ、もちろん私はついてっていいんですよねぇッ!?」
矢口「横浜市長が、住基ネットと小川麻琴に懸念を抱いてるからダメ。」
鈴木「今夜はアミー&マリー、オトナの2人がシッポリと濡れる夜なのッ!
   お前らガキ共はハウス食品劇場でも見てなさいってこった♪」
矢口「いや〜んヤンジャ〜ン♪ アンソニーのように抱いてぇ〜ん…♪」
 ブハハハハハッ!! ギャハハハハハッ!! キャッ♪ キャッ♪
加護「…腕を大〜きくまわして、バカ2人に背筋が寒くなる運動ゥ〜…」
辻 「行っちゃったのれす…。 あの2人って仲良かったれすかねぇ…?」


矢口「ただいまぁーッ!! 今夜うちにヤンジャン泊めるからぁーッ!!」
 ダダダダダダダッ!! ズザァーッ!! パシャッ!!
鈴木「うわッ…!? な、なんスか!?」
父 「いいからいいから、そのまま笑って♪ そうそう、私の腕をまわして…
   今だママ、ベストアングル!シャッター切ってくれ! …オッケェ〜♪
   イェーイッ!! モーニング娘。とのペア写真、コンプリートッ!!」
矢口「お父さーんッ!! いやだもう、恥ずかすぃ〜〜ッ!!」
父 「だって麻里、あみちゃんだけ全然ウチにつれてこないんだもの〜!
   ああ…これで念願がかなった… 明日、会社の同僚に自慢できるぅ♪
   この前、リサちゃんとのペア写真持っていったらウケ悪くてさ〜?
   でも今度は天下の鈴木あみちゃんッ!! あ、もう一枚撮っていい?」
矢口「ヤ、ヤンジャン2階行こうッ! このまま調子乗せると、明日会社に
   まで連れていかれるから…! あ、殴ったらちゃんと手を離すから!」
鈴木「アハハ… す、すみませんお父さん、歯を食いしばってくださ〜い♪」
父 「グパァ… イ、イェーイッ! 鈴木あみちゃんに歯を折られたぁ〜♪
   明日、会社の同僚に自慢しよ〜ッ!! うちの経理の田中クンが真性の
   Mでさぁ〜、アミーゴに殴ってもらったなんて聞いた日にゃ…ププ♪」
 ガチャッ…
矢口「ごめんねー? うちのお父さん、バカで。」
鈴木「いいお父さんじゃない。素直に人気アイドルの娘が自慢なんだろ?
   うちのクソ親父にもそんな頃があったよ…。 私の元気な姿をテレビで
   見られたら、もうそれだけでいいって言ってくれた頃がさ…。」
矢口「…どんな親が立派な親かって、一概にいえないものだよねぇ…。」

鈴木「うわぁ… オマエの部屋って写真だらけだな? …で、どれだよ?
   あのブブカに流出した例のニャンニャン写真って…?」
矢口「そんな香ばしいポラ、とっておくわけねーだろッ!!」
鈴木「ブハハハハッ!! これ懐かしいな! アサヤン収録で初めて私らが
   テレ東で顔合わせた時に、スタッフが記念にって無理矢理撮った写真
   だよな? プッ…私もお前らも、全員顔がひきつってるよ!」
矢口「ウケるっしょ? 机の引き出しでそれ見つけてさ、今じゃ笑える写真
   だから壁に貼っておいたんだ♪ カオリなんて露骨にムカ入った表情
   してるだろ? 火花バチバチ散らしてたもんなぁ、その頃は。」
鈴木「あれ? この私が一人で写ってる写真、いつ撮ったんだ?」
矢口「ヤンジャンの部屋でアヤッペ達とハムパーティした時のヤツだよ。
   圭ちゃんがこっそり撮った一枚。 ノーメイクだけど、なかなか可愛い
   表情してるからさ、アンタに黙ってもらってきちゃった。」
鈴木「なんで笑ってたんだろ私? この日は怒ったりヘコんだりした記憶しか
   ないんだけど? 私の部屋でみんなが大暴れしやがったからさぁ…」
矢口「ヤンジャン自分では気付いてないかもしれないけど、みんなが集まって
   大騒ぎしてる時、アンタすっごく楽しそうな表情見せる時あるんだよ?
   口では怒鳴っていても、顔はなんか楽しげでさぁ…。」
鈴木「私がぁ? まっさか…。 矢口ひとりだけの気のせいだろ?」
矢口「みんな知ってるよ? でね、アンタが時折見せるそんな表情を見てる
   うちにさぁ… オイラ、もしかしてアンタと仲良くなれるかなって
   思い始めたんだー…。 でも気付いたらオイラんちに呼ぶの、こんなに
   遅くなっちゃった。 だからさ、今日はとっとも嬉しいんだオイラ♪」

鈴木「オイオイ… オマエがコップについでる琥珀色の液体って… 麦茶?」
矢口「バーカ。なんでこんな夜にそんなシミったれたモン客に出すんだよ?
   ウイスキーよウイスキー♪ お父さんがヤンジャンに持ってけって。」
鈴木「そういやヤグ助と酒飲むのも初めてだな? 飲み会こねーしオマエ。」
矢口「いやオイラ酒グセ悪いんだよ。 知ってるだろ?リーダー争奪戦前夜に
   裕ちゃんと酒飲んで失敗したのを。 酔っぱらって巷で騒ぎ起こして、
   ゴシップ誌にさらされた日にゃ、ウチのガキ共の教育担当としてシメシ
   つかないじゃん? 未成年つーこともあって、酒はひかえてるんだ。」
鈴木「えらいとこあるんだなぁ〜オマエ。 そういや、私が加入する前まで
   辻加護の世話は一人でこなしていたんだもんな。 …大変だったろ?」
矢口「ま〜ね〜。 だからヤンジャンがモー娘。に来てくれて、肩の荷が半分
   軽くなったさそりゃ。 アイツらも当時は自分達が一番後輩って事で
   ストレスのはけ口がなかったからね。 アンタにゃ感謝してるよ♪」
鈴木「やな時期に加入したな私も…。 5期メン達は命拾いしたな。」
矢口「ヤンジャンがいなくなると、またオイラの苦労が増えちまうよぉ〜ッ!
   なあ、卒業なんてやめちまわない? まだ十分間に合うって♪」
鈴木「ハハハ… 片親になってアイツらも寂しがるかな?」
矢口「…そういえばヤンジャンさ、ここ来る途中でオイラにどんな夢を持って
   いるか聞きたいって言ってたじゃん?」
鈴木「ああ、うん。 オマエとは私、あんまり一緒にツルまなかったせいか
   知らない事がまだ山ほどあって…。 あ!私の想像だとね〜、オマエは
   まだモーニング娘。のリーダーの座を狙っていると見たね! 違う?」
矢口「惜しいッ!! それはちょっと前までのオイラの夢♪ 今はねぇ…」

矢口「…へへっ! お母さん♪」
鈴木「お母…さん?」
矢口「そっ♪ お母さんになりたいッ!! …意外だったぁ?」
鈴木「意外っつーか、なんちゅうか…。 け、結婚したいわけ?」
矢口「結婚ていうか、とにかくオイラの子供が欲しいの♪ 可愛い女の子♪
   メッチャ熱い恋をして、最高に素敵な彼氏と結婚して、ポンポンって
   子供を産みたいのさー♪ しかも女の子ばかりだったら幸せ絶頂ッ!」
鈴木「なによオマエ…? 歌手の仕事から離れて家庭に入りたいワケ…!?」
矢口「そりゃ前まではねぇ、40になっても50になってもチッコイおばさん
   シンガーとして、バリバリ歌ってる自分を想像したりしたわよ?
   和田アキ子さんのような芸能界のボスになって、アッコさんがまわりに
   「でっかい、でっかい」と言われてるように「ちっこい、ちっこい」と
   からかわれながらも尊敬を集めちゃうボスになれたらいいなって…。」
鈴木「いや、その夢の方がメチャ矢口らしいんだけど…。」
矢口「ギャハハハ!やっぱりぃ〜? オイラそういうキャラに見られてる?」
鈴木「なんだよ…仕事に疲れちゃったのか? 最近、働き過ぎだし…。」
矢口「んー…確かにバテてるけどねー。 でも仕事は楽しいよ、相変わらず。
   でもこの勢いで頑張り続けたら、3年後には歌でやりたかった事は全部
   やり終えてるかなって…。芸能界、十分に楽しませてもらったしね。」
鈴木「でもお母さんって大変だと思うぜ? 女の子が欲しい?とんでもない!
   普段、辻加護や5期達の世話してて、その扱いの大変さは十分わかって
   いるだろぉ? 辻加護みたいなガキに育ったらどうするのよ?」
矢口「最高じゃん♪ オイラさぁ、辻加護みたいな娘が欲しいんだぁー…。」

鈴木「まさかもう酔ったのか? オマエの親父、安い酒持たせやがったな?」
矢口「マジで言ってるのッ!! まだ8杯目なのに、酔わねえっつーの!」
鈴木「ブッ…! いつのまにこんなに減ったんだ、酒ビンの中身ッ!?」
矢口「ヒック… オイラさぁ〜、3流アイドルの自分から、セクシービームの
   国民的アイドルに進化していく自分に、酔ってた時期があったのよ…。
   …んあ? 酔ってねえよッ! まだ9杯目だって言ってるだろボケ!」
鈴木「いや、府中競馬場のワンカップオヤジぐらい酔ってるぞオマエ…」
矢口「人の話聞けよヤンジャンッ!  鎌倉アルプスに捨ててくるぞコラ?
   …だからさ、オイラって今まで自分を、理想の自分に育てることに夢中
   だったんだよ。 え? 楽しかったよ? 頑張って売れれば売れるほど
   自分がお姫さまになっていく気分でさ。化粧で綺麗になっていく過程を
   鏡でウットリ眺めてる気分だったよ。 あ、オイラ育ってるなって…」
鈴木「背は育たなかったけどな。」
矢口「…でもよぉ〜 でもよヤンジャン? なあ、ヤンジャンってばよぉ〜?
   自分が育つ様を見るより、ガキ共が立派に育ってく姿を見てる方がさ?
   そりゃぁあああ〜〜〜〜もう、楽しいってわかっちまったんだよッ!!
   もうダメ。ガキ共が可愛くて可愛くて。 だってよぉ、あんなビクビク
   震えながらステージ立ってたアイツらがだよ? 今じゃ大声はりあげて
   ライブを盛り上げようと舞台いっぱい走りまわってるんだぜぇ?」
鈴木「…うんうん。 ホラ、まだ酒が残ってるぞ? 飲めよ…。」
矢口「もうオイラ、そんなクソガキのピンと立った背中を見つめてたらさ…
   力いっぱいギュゥ〜〜〜と抱き締めたくなって、たまらないのよぉ…。
   なんかね、裕ちゃんがすぐ抱きついてきた理由が最近よくわかってさ。
   年とっちゃったのかなぁ… オイラも…。」

鈴木「私ももっと飲むかな…。 いいやもう、ロックで。」
矢口「オイラさ、歌でやりたい事やりつくして、この業界を去った後はさ…。
   自分の産んだ可愛い娘達と一緒にソファーでケツ並べてね、テレビで
   モーニング娘。のライブなんか見たりしたいんだ…。
   辻加護によく似た娘にさ、『あれがママがいたグループだよ』って。
   『あれがあなた達のお姉さんだよ』って…そう話してあげたいの。」
鈴木「…いいね。」
矢口「もうその頃はモーニング娘。が第何期になってるかわかんないけどさ、
   ブラウン管のむこうで、自分達の後輩の背中を見つめながら、今にも
   抱きしめたそうな顔してる辻加護の姿なんかを見て、クスクス笑って
   いたいな〜って。 それが… オイラの…夢。 夢だなぁー…。」
鈴木「なんつーか… 今、オマエを抱き締めたいよ私。」
矢口「ギャハハハハハッ!! やめろよヤンジャン、恥ずかすぃ〜ッ♪
   飲も飲も♪ とことん肝臓をイジめようぜ今夜はッ!」
鈴木「OKッ! オマエが意外と気が合うヤツだってわかって嬉しいわ!」
矢口「ヤンジャンの、ソロ復帰成功を祈って乾杯ッ!」
鈴木「矢口の、子だくさんを願って乾杯!」
矢口・鈴木 『私達の育てた子供達の未来に… 乾杯ッ!!』
 チンッ…♪
鈴木「さてと… 夜もふけてきたことだしな…。」
矢口「お決まりのエロトーク大会を始めるとすっかぁ?」
 ブハハハハッ!! ギャハハハハッ!! お、お前マジかよーッ!?


 ガヤガヤ… いらっしゃいませー
石川「どれにしようかな〜? えーと… じゃあ私、親子丼で♪」
鈴木「…ヤギちゃんよぉ? なあ、家畜ちゃんってばよぉ?
   初めて入るソバ屋で、ソバ以外のモン注文するなって、あれほど
   口スッパクして言ったのにまだわかんねえのかよ? 第一オマエ
   ソバが食いたくて、私についてきたんじゃねえのか?」
石川「だってぇ〜、最初はソバの気分だったんだけど、メニューみたら
   頭の中が、憎きチキンちゃんの味でいっぱいになっちゃって…。
   でもヤンジャンさんって、本当にソバ大好きですよね〜?
   きっと前世がソバだったんですよ、ソバ。 穀物。」
鈴木「じゃあお前の前世はニワトリだな。 きっと前世でも、群れの中で
   イジメられてたから、生まれつきニワトリ恐怖症なんだわオマエ。
   いやさ、別にソバが好きなんじゃなくて、昨夜矢口と飲み過ぎて、
   胃の調子が悪いだけなんだ。 ホラ、ソバなら消化にいいべ?」
石川「矢口さんも具合悪そうでしたからね〜。 ダンス練習もヘロヘロで、
   怒ってる夏先生に『鈴木さんにムリヤリお酒飲まされました』って
   言い訳してましたよ?」
鈴木「あ…あの野郎ッ…! やっぱ少し距離おいた方がいいなアイツ…!」
石川「それにしても、ヤンジャンさんと2人っきりでゴハンだなんて
   ホンと久しぶりですよねぇ〜♪ …どうですか、仕事の景気は?」
鈴木「景気もクソも、お前と職場一緒じゃねえかッ!!」
石川「でも… もうすぐ転職されるんですもんね、ヤンジャンさん…。」 
鈴木「転職じゃねえよッ! お前、わざと言葉間違えてるだろオイ?
   私に山梨でペンションでも始めろとでも言いたいのかオマエ…!?」

石川「夢…ですか? このチャーミーの夢をぜひ聞きたいと…?」
鈴木「別にオマエの夢なんてどうでもいいんだけどよ… ヤギの夢だけ
   聞かねえのもなんだからな。 つーかオマエ、なんでトリ肉しか
   箸つけてないんだよッ!?」
石川「だってぇ〜…『トリ肉』が食べたかったんですもん。」
鈴木「あーあーわかったよ…。 頭の中に0と1しかない世界のお前に
   常識求めた私が悪い。 残りは私が食うからよ…。
   んで、夢は? アレか? 肛門で腹話術できるようになる事か?」
石川「それもいいんですけどぉー、そうだなぁ、最近の夢はぁ〜〜…」
鈴木「最近?」
石川「森の動物達と、クルミがたっぷり入ったケーキを食べながら暮らす
   事かな? 朝はウサちゃんが起こしてくれてー… クマさんの背中
   に乗って森をお散歩して、鳥の歌をきいたりするの♪」
鈴木「すみませーん、おあいそお願いしまーす。 あ、領収書も!」
石川「昼寝は木の上で、夜はムササビさんの背中に乗って月夜を…って、
   ヤンジャンさん! 何かリアクションしてくださいよォーッ!!」
鈴木「あ、領収書の宛名はUFAで。 はい…ども。」
石川「あ、さてはバカにしてますねぇ!? 感じ悪ーいッ!!」
鈴木「オマエさあ… いくつになったんだよ? 何が森の動物達だよ?
   クマさんと散歩? 熊の目にはオマエなんて食いごたえのある虫に
   しか見えねえよ。 ムササビ? オマエ…あの生き物のハラの中に
   どれほど寄生虫が蠢いているか知ってるの? 木の上? 蟻が顔に
   たかって寝れたもんじゃねえよバカ!」
石川「マジ…? あーあ、夢がくずれちゃった…。また次の夢探すかぁ〜」

鈴木「なあ、お前さ? それって最近思い描いた絵空事だろ? そういうの
   じゃなくて、将来の夢を聞きたいんだよ! 現実味のある!
   もっと昔から目標にしている、到達点とか何とかねえのかよ?」
石川「そんな事言われてもなあ… 夢なんて毎日変わっちゃうし…。」
鈴木「だからそれは夢じゃないって! 空想の世界で、自分に都合のよい
   マイワールドを想像して楽しんでいるだけじゃねえかよッ!」
石川「でも、夢ってそういうもんじゃないのかなあ? 違いますぅ?
   自分が最高にハッピィーッ♪…と思う環境。 そこを目指す事が
   夢を目指すって事でしょう? さっきまでの私にとっては、森で動物
   と暮らすのが、最高にハッピィーッ♪…な環境だったんだもん。
   それを否定されちゃったら、チャーミー困っちゃうなぁ〜!」
鈴木「い、いやまあ、そうだけど…そうだけどよぉ! でもッ…!」
石川「ヤンジャンさんがソロ復帰を目指したのは、そこにある未来が自分に
   とって、一番幸せな環境だと思ったからですよねぇ?」
鈴木「え? ま、まあ…そうだよ。 夢だったからな、私の。」
石川「ヤンジャンさんが卒業するのも、モーニング娘。として活動してる
   今よりも、ソロで活動するほうがハッピーで楽しいって思っている
   からなんですよね? …それは、ちょっとくやしいなぁ。」
鈴木「あ…いや…! そ、それは違うよォッ!! 今のオマエらとの仕事や
   生活は最高に楽しいし、ソロ活動が楽しいかどうかなんてまだ…!
   でも…ソロ復帰は夢だったし私の…。 だからそっちを選んで…。」
石川「あれ? ヤンジャンさん、さっきから言ってる事おかしいですよ…?
   楽しいかどうかわかんないものを、自分の夢だなんてさ。」
鈴木「ああーッもうッ!! お前と会話すると頭がこんがらがるわッ!!」

 テクテク… スタスタ…
石川「あーあー、今日は仕事めんどくさいなー。 こんな天気のいい日は、
   潮騒が聞こえる海辺の白い家で、ガリガリ君のソーダ味を食べながら
   プードルと庭でたわむれてたいなー♪」
鈴木「…アホなこと言ってるよ。 まさかそれが、お前の次の新しい夢に
   なったりするんじゃねえだろうな?」
石川「えー? 夢ですよ? 今できたてホヤホヤのチャーミーの夢♪
   1時間後には変わってそうですけどね♪ アハハハハ♪」
鈴木「いいよな、バカって。 人生が楽しそうだよ…ホント。」
石川「なんかさっきから口数が少ないですねえ? 私の言った事について
   まだ考えているんですかぁ? 気にしない、気にしない♪ 夢が何か
   なんて、そんな考えこむような事じゃないですよぉ〜♪」
鈴木「べ、別に考えていねえよ! テメエの発言なんか気にするかよッ…!」
石川「自分の夢なんて、毎日どころか、瞬きするだけでも変わっちゃうもの
   ですよ? 難しく考えないで、今の自分が想像できる最高にハッピー
   なものを、夢にしちゃえばいいんです♪」
鈴木「……うるせえな、わかってるよ…。 少し黙っていてくれよ…。
   あッ! それよりオマエ、私んちからパクってったゲームソフト
   いつになったら返してくれるんだよッ! 家まで取りに行くぞ!?」
石川「あッいや…それは…! ああああッ!! そうだっ! 私ヤンジャン
   さんにゲーム作ったんです! RPGツクールでッ!
   こ、これ貸してあげますから、ちょっと遊んでみてくださいよお♪」
鈴木「貸すもなにも、このRPGツクール、私の物だろうがァッ!!」


加護「ホンマ臭いなこのベッド…。 すえた臭いっつーか、獣の臭いって
   こういう臭いのことを言うんやろうな…。」
鈴木「…姫臭いだろ? どうすっかな? 粗大ゴミに出しちまおうか?
   このマンション引き払うのも、もうすぐだし…さ。」
辻 「3人の思い出がつまったベッド、捨てて欲しくないのれす…」
鈴木「…インテリア業者にクリーニングできるか相談してみるよ。」
小川「センパーイ! 今夜は誰の家に泊まるんですかぁ? 何ならここで
   私と一緒に床に寝ちゃいません? 慣れると寝心地いいッスよ♪」
鈴木「えー? 今夜は後藤が泊めてくれるんだ。 とりあえずあの家の
   トラップが怖いけどね。 昨日、パンチラも死にかけてたし。」
加護「あそこんちのバカ長男が、家に帰らん気持ちもようわかるわ…。」
鈴木「だからさ、危険度A級のトラップだけは解除しといてって頼んだよ。
   解除終了の電話があるまで、こうやって家で時間潰しさ。」
辻 「さっきから何のゲームをしているとれすか? 全然楽しそうな顔
   してないれすけどヤンジャン…。 音楽も気持ち悪いし…。」
鈴木「あー… これな、石川が作ったゲームだとよ。 ありがたくも
   主人公の名前がヤンジャンなんだけどさ、ゲーム開始いきなり王様に
   『飯田さんをどう思うかね?』って聞かれちゃってさ。」
小川「ファンタジーの世界観をブチ壊す、キナ臭い質問ですね…。」
鈴木「しかも、選択肢が『1・ムカつく 2・なんとかしてやりたい』しか
   ねえんだよ…。で、どっちを選んでも『勇者よ、ならば倒して来い』
   って、ホザきやがるんだ、このヒゲが。」
加護「クソゲーどころか、ゲームにすらなっとらんな。データ消したれ!」
鈴木「でも私のために作ってくれたゲームだからな…。何とか最後まで…」

 ピコピコピコ…
加護「…ていうか、さっき王様のすぐうしろに飯田はんのキャラがおったな。
   ラスボスって普通、どっか遠いモンスターだらけの城におらんか?」
小川「このゲームの世界の、権力構造がよくわかりますね…。」
鈴木「早く終わりたいからすぐ挑戦したんだけど、やっぱメチャ強くてよぉ。
   ゲームの中でまでボコボコにされると、何か妙な気分になるよ。」
辻 「あり…? 開始1時間たったのに、まだレベル1じゃないれすか?」
鈴木「だってよお! モンスターが『ニイガキ』しか出てこないんだよ!
   しかもコイツ、攻撃全部よけやがるんだよ。 スカッ!スカッ!って。
   メタルスライムみたいに、たくさん経験値持ってるのかなぁ…?」
小川「うわ…本当だ、当たらない! ゲームでも、ムカつきますねコイツ。」
加護「なんかコツあるんとちゃうか? 町の人間とかと話したら、なんか
   攻略のヒントもらえるかもしれへんで?」
鈴木「城の外に一応モーニング・タウンつーのがあったけど、住人が全部
   うちのメンバーどもでさ。 『今日、なんの収録だっけぇ〜?』とか
   『ハマ、殺したいよね〜』とか『今夜はハンバーグ食べたいれす』とか
   たわいもない会話しかしやがらねえんだよ…。」
辻 「マップ見ても、この国がある小さな島が一つあるらけれすねぇ。」
小川「石川さん何を考えて作ったんだろコレ? いい加減な作りだなぁ。」
加護「ゲームにバグがあるか、作ったヤツがバグなのか、どっちかやな。」
鈴木「じゃあ一生、終わらないじゃねえかコレッ!! あのバカッ…!」
辻 (くふん… ののにはリカちゃんの気持ちがよくわかったれすよ…♪)


鈴木「あ、もしもし後藤? 今、オマエんちの玄関の外に立ってるんだけど
   助けてくれないかな? チャイムボタン押したら鉄オリが落ちてきて
   閉じ込められたまんま出られないんだよ。 頼むわ。」
 ガチャッ
後藤「ヤンジャン、何度ひっかかったら気がすむのぉ? 得体のわからない
   ボタンは不注意に押さない事! トラップ回避の基本でしょう?」
鈴木「いや、得体しれてるだろコレ。チャイムだもん。 …普通押すぞ?」
後藤「敵はそういう油断を狙って、罠をしかけるものなのよ?」
鈴木「得意げな顔してないで、早く出せよッ!! 動物園のサルじゃないん
   だからよッ! 隣の家のジイさんが、垣根からこっちのぞいて笑って
   やがるじゃねえか! ジジイッ! 見せ物じゃねえぞコラッ!!」
後藤「ていうか、あのお爺ちゃんも5回ぐらいコレひかかってるけどね。」
鈴木「ハハッ! バーカ! ジイさんバーカ! うはは、怒ってやんの♪」
後藤「こらこら、お年寄りをバカにしないの! 老人福祉の精神よ?」
鈴木「その老人に5回もトラップかましたの、どこの一家だよオイ?
   …まあいいや。 おじゃましまー…」(ヒュゥ…)
後藤「だーかーらー気を抜いちゃダメだって! 前にヤンジャンが泊まった
   時よりもトラップ増えてるんだから! あ、ちなみにこの落とし穴は
   ベトナム戦争でベトコンが使ったやつね。 でも危ないから、汚物を
   先に塗り付けた竹ヤリは、オプションとして使わなかったけどさ。」
鈴木「じゅッ…十分危ないわボケェッ!!」
母 「あら、あみちゃんいらっしゃい♪ 今夜はゆっくりしてってね♪」
鈴木「ゆっくりできるかァアアアーッ!! 目を覚ませ、バカ親子ッ!!」

後藤「私の部屋、模様替えしたんだ♪ どう? キレイになったでしょ?」
鈴木「その模様替えが怖いんだよ…。 物の配置とかが前と変わってると、
   落ちつかねえんだよ、こっちは。 今度は何を仕掛けたんだ…?」
後藤「あ、大丈夫。 自分の部屋のトラップは解除しておいたから。」
鈴木「そりゃ安心だ…。 うん、でもずいぶんキレイに片付けてるな。」
後藤「昔一度アサヤンで、自分の部屋でプッチの練習しているところを
   放送で流されたからね。 すっごく汚い部屋が全国にオンエアー。
   あれでこりたから、日々部屋の整頓は心がけるようにしてるんだ。
   インテリアも大人っぽくなって、いい感じでしょ♪」
鈴木「でも、このクマのヌイグルミは少し…」(ボォンッ!!)
後藤「ごッ…ごめーんッ!! それの信管抜いておくの忘れてたぁッ!!」
鈴木「ゲホッ… いッ…! 今すぐこの家を燃やせェエエエエエーッ!!
   こ、この町内に住む、善良な市民達の安全のためにッ…!!」
後藤「いや…ホントもう大丈夫だから! アハハ♪ それより何か飲み物
   用意するねっ! え〜と…シアン化カリウムが入ってないのは…」
鈴木「ごめん… 飲み物いらない…。」
後藤「えー? なんで?」
鈴木「シアン化カリウムって、通称・青酸カリだろうがッ!! そんな毒物
   混じってる恐れあるモン、根性試しで飲む必要どこにあるんだよ!」
後藤「クンクン…OK。 このアーモンドココアなら大丈夫だと思うよ?
   危険な香りは感じられないし…。 ママも毒入れてないと思う。」
鈴木「青酸カリは、アーモンド臭がするもんなんだよッ!! 何がOKだッ!
   マ…マジで帰るッ!! ぜ、絶対私を殺す気だオマエ…!」

 チャポン…
鈴木「なあ…ちょっと恥ずかしいから、くっつかないでくれないかな…?」
後藤「仕方ないじゃない。 うちのお風呂、湯舟が小さいんだもん。」
鈴木「な…何も一緒に、湯舟に入らなくたっていいだろぉ〜?」
後藤「いいじゃなーい! ヤンジャンだって、家では辻加護達と仲良く
   湯舟に入ってるんでしょ〜? 3人でギュウギュウになってさぁ?」
鈴木「だってアイツら無理矢理入ってくるんだものッ! 昔はさ、まだ3人で
   入っても少しは余裕あったんだけど、最近アイツら幅が増えたからさ。
   そりゃもう湯舟で私、バッテラのサバになった気分だよ…!」
後藤「いいよねー… 辻や加護は、そうやって甘える事ができてさぁー…」
鈴木「…ん?」
後藤「私ってさ、こういう厳しい環境の家で鍛えられたせいか、人に甘える
   ことがうまくできないのよねー…。 辻加護みたく、本能のまんま
   無邪気に甘える事ができたらなって。 そう、うらやましく思うの。」
鈴木「アイツらは『遠慮』っていうアビリティを拾得してないだけだよ。」
後藤「違うよぉ。 ヤンジャンの『包容力』というステータスが高いからよ。
   あのコ達、カオリンや圭ちゃん達には、そんなに甘えないもん。」
鈴木「リーダー達やら矢口までが甘えさせてたら、あのガキ共調子乗り過ぎて
   仕事に使えなくなってるよ今頃。 キビしく扱って調度いいんだよ。」
後藤「それは…わかってるけどさ。 でもなぁー… 私がもう少し遅く
   モーニング娘。に入ってたらさ、今頃ヤンジャンにタップリ甘える事が
   できたかもしれないのに…。 そう思ってさぁー…。」
 チャポン…

鈴木「誰にも甘えられないまま、先輩になっちゃったわけだもんな…。
   今、メンバー先輩番付は上から数えて… えっと…電波山・ポテト丸
   汗大海・チビ龍・デカ乃鼻…5番目か。 前頭筆頭だな。」
後藤「そうなの…14人の中で、上から5番目。 大先輩になっちゃった。
   でも、私がモーニング部屋に新弟子入門した時は1人だったからね…。
   上に7人、下も同列もナシ。 すっごく心細かったなあ…あの頃は。
鈴木「私とオマエだけだもんなぁ。 たった1人で加入してきたのは…。」
後藤「わかるでしょ? 早く先輩達に追い付かなきゃいけないプレッシャー
   があるから、とてもじゃないけど甘えてる余裕なんかなかったもん。
   傷をなめあえる同期もいないしさ…。」
鈴木「まあ私は、追い付くどころか、すでに追い抜いた状態で加入したから
   ちょっと後藤とは気持ち違うとこもあるけどな。 へへっ♪」
後藤「誰かに甘えるタイミングを逃して、そのまま4期達が入って先輩に…。
   そうなったらもう、先輩としてシャンとしなくちゃいけないもん。」
鈴木「リーダー達はともかく、安倍や市井には甘えられなかったの?」
後藤「ナッチにはセンター争いの微妙な関係で、一歩踏み出せなかったな…。
   市井ちゃんは、やっと甘えてもいいかな?…って頃に卒業しちゃうし。
   あの時はホント寂しかったな…。 うん…寂しかった。」
鈴木「今からでもいいじゃん! 誰かにゴロニャ〜ンって甘えちゃえよ♪」
後藤「今さら私が『クゥ〜ン、矢口すゎ〜ん♪』とかできると思うの…?
   1人で今まで頑張ってきた結果、自然に出来上がったキャラがコレ。
   クールなゴッチン…。 今じゃもう、仕方ないなってあきらめたよ。」
鈴木「そんな自分で作ったキャラに、縛られる事ねえだろうによぉ…?」

後藤「そんな事言ったら、ヤンジャンだってそうじゃーん!」
鈴木「なッ…なにがだよ?」
後藤「モーニング娘。が好きなクセにさ。 いまだに一匹狼のヨソ者気取りを
   演じてるじゃない? 素直に好きだって言っちゃえばいいのにぃ〜♪」
鈴木「バッ…バッカおめぇ! そ、そりゃ嫌いではなくなったけど、好きとは
   全然違うぜ? 痛ッ…イテテテッ! ケツつねるんじゃねーよッ!」
後藤「ヤンジャンも私もさ… 素直に気持ちを出せるようになればいいね。」
鈴木「んー?」
後藤「私の夢はね… 可愛い女の子になること♪」
鈴木「はぁ!? 今でも十分可愛いじゃんか? なんかパーツは変だけどさ、
   何のマジックか知らないが、うまいことカワイイ顔になってるぜぇ?
   もしかしたら顔パーツのバランスが、ピラミッドの黄金率なのかも♪」
後藤「顔じゃないのッ!! 私が言ってる可愛い女の子っていうのはね、
   そうだなぁ〜… マリッペみたいな女の子♪ あと辻とヨッスィも♪」
鈴木「ヤグ助がぁ? そ…そりゃ背丈だけはチンチクリンで可愛いがよぉ…」
後藤「だってさ、マリッペって自分の感情を、素直に表へ出しちゃうでしょ?
   ギャハハハって大声で笑ったかと思えば、露骨にスネてみたりさ。
   そういう女の子って、すっごく可愛いと思わない? 魅力的だよぉ!
   辻とヨッスィにいたっては、感情制御パネルそのものがないし♪」
鈴木「まあ… よく言えば天真爛漫ってヤツだよな。 確かにね。」
後藤「私ね…憧れちゃう。 自分の感情を素直に出せる女の子になりたいよ。
   少なくとも、信頼してる仲間達の前ぐらいでは、素直な自分の姿を
   さらけ出せるようにね。 可愛くないもん、今の私ってさー…。
   本当はすごく子供っぽい女の子なのよ私? 知らなかったでしょ〜?」

後藤「…いつか私もヤンジャンみたく卒業する日が来るかもしれない。
   それがいつかわかんないけど、その時までに私の本当の姿を、大好きな
   メンバー達に知ってもらえたらいいな… そう思ってるの♪
   みんなに無邪気で甘えんぼな、ゴッチンを見てもらえたらなぁー…て。
   それが後藤真希16才の夢♪ アハハハハ♪ 恥ずかすぃーッ!」
 バチャバチャバチャッ!
鈴木「うぷっ! 水しぶきたてるなよ! …ハハハ、お前が子供っぽいのは
   みんな十分知ってるよ。 甘えベタなところだってな。
   飯田あたりなんて、何で甘えてこないのかイライラしてると思うぜぇ?
   姫なんか、オマエに甘えられた日にゃ、酒樽ハンマーで割っちゃうぞ?
   まあ、あせらずじっくり、ガキっぽい自分を見せてけばいいさ♪」
後藤「………。」
鈴木「な、なんだよ…? 人の顔をジーと見て、気持ち悪いな…。」
後藤「まず慣れへの第一歩に… 今、ヤンジャンに甘えてみても…いい?」
鈴木「な… なにして欲しいんだよ…?」
後藤「えっとね… こうやって… そう… 両足の間に私をはさんで…」
鈴木「オ…オイ! やめろよこんな座り方ッ! ガキじゃあるまいしッ…!」
後藤「ガキっぽい自分を見せてけって言ったの、ヤンジャンでしょおッ!
   辻がよくこうやってヤンジャンが座らせてくれるって言ってたもん!」
鈴木「サルの子供みたいな辻ならともかく、オマエが相手だと、変な気分に
   なっちまうんだよッ!! …ただでさえのぼせてるって言うのによ…!
   わ、私、髪の毛洗うわ。 どれがシャンプーだ? 借りるぞ?」
後藤「あああああッ!! ヤンジャンッ! それ違ッ…!!」
 ギャアアアアアアーッ!!
後藤「それ、硫酸…。」

 チュン チュチュン…
後藤「え〜ヤンジャン、こんな朝早くにもう帰っちゃうのぉ?
   朝ゴハンぐらい、ゆっくり食べてから帰ればいいのにぃ…。」
鈴木「いやあ、ゆっくりしたいんだけどさ。 仕事のない午前中のうちに、
   家に戻って、いろいろ用事をすませておきたいんだよ。」
後藤「…そう、残念だなぁ。 でもねヤンジャン、卒業しても私の家には
   いつだって気軽に泊まりに来ていいんだからね!? ねっ!?」
鈴木「…うん、ありが…」(ヒュゥ…)
後藤「もうッ! だからそこは落とし穴があるって言ったでしょおッ!?」
鈴木「きッ…気軽に来れるかァッ!! こんなカラクリ忍者屋敷ッ!!」


 ガチャッ…
鈴木「うわぁ…すげえムシムシしてるな、私の部屋。 エアコンあるだけ
   後藤の部屋の方が、寝るにはまだ良かったかもなぁ…。
   さてと… ベッドの汚れと臭いを何とかできねえか、いろいろ業者に
   あたってみるか。 電話帳はどこだっけ…? え〜と…」
小川「あ、タウンページならここですよぉ〜♪」
鈴木「おうサンキュー。 インテリア業者より清掃業者で探したほうが…
   ってオイッ!! なんでオマエがここにいるんだよォッ!?」
小川「だってぇ…誰かが留守番してないと、危ないじゃないですかぁ?
   ホラ、お風呂場の壁も壊れているし、何よりここはアイドルの自宅
   ですよ? どんな変質者が空き巣に入るか、わかんねッスから。」
鈴木「オマエだよッ!! 壁を壊したのも、変質者の空き巣もッ!!」

鈴木「…あ、クリーニングできますか! ああ、そうですか、良かったぁ…
   すいません、それではウチのベッド、よろしくお願いしますぅ…!
   え、いや、特に何かをこぼしたってワケじゃ…。 しいて言うなら、
   青春の涙をこぼしたっていうか…。 私は愚痴こぼしましたけどね。
   いえいえ! 冗談ですッ! それでは家で待っておりますので…!」
 ガチャッ! ツー ツー ツー…
小川「ベッドのクリーニングOKッスか!? きゃあ、やったぁッ♪」
鈴木「やれやれ…けっこうな出費だよ。 買った方が安いんじゃねーの?
   とりあえずコーヒーでも入れてくれ小川。 昨日の夜から、一度も
   一息つけてないんだよ…。 あ〜疲れたぁ…。」
小川「コーヒーですね? 了解いたしましたぁーッ!! 今すぐッ♪
   …先輩、疲れてるんでしたら、少し仮眠とっていかれたらどうスか?
   私の床の寝床でいいんでしたら、どうぞ遠慮なさらずお使いに…」
鈴木「アホか。 仮眠とるなら、このソファーで十分だよ…。」
小川「ダメですよ! そのソファー小さくて、足が飛び出ちゃいますもん!
   疲れをとるには、ちゃんと足を楽にさせないと、むくみは取れないん
   ですから! 騙されたと思って、ちっと寝床試してみてください!」
 グイッ! スタスタ…
鈴木「…あー、なんじゃコレ? 何でうちに、ネコのトイレがあるんだ?」
小川「アルプスの少女ハイジが、ワラで作ったベッドで寝るじゃないスか?
   あれをマネて作ったんですよ♪ ワラがないから、細かくちぎった
   新聞紙で♪ こんもりしてて、可愛いでしょ〜? エヘヘ♪」
鈴木「可愛いも何も、な…なんでオマエ、こんな悲しいベッド作ってまで、
   ウチに泊まりたがるんだよ…!? 怖すぎるぞ?」

小川「だって、ヤンジャン先輩のこと好きなんですもーん!」
鈴木「…なんで私なんか好きになったのよ? HEY!HEY!HEY!の収録の時、
   私が話をふってやった事が嬉しかったって話は、前に聞いたけど…」
小川「あれはただのキッカケですぅ♪ ちょっと気にいって、ずっと先輩を
   観察しているうちに、どんどん好きになっちゃって〜♪」
鈴木「ああ、なんかいつもこっちをジッとみてるから、最初ガンとばしてる
   のかと思ってたよ…。 オマエは目が細いから、なおさらな。
   でも…オマエってさ、そういうキャラだったっけ…?」
小川「そういうキャラって?」
鈴木「はじめの頃、『モーニング娘。に憧れているわけじゃない。 自分の
   実力を世間に見せつけられたら、どこでも良かった。』とかホザいて
   ツッパった態度みせてたじゃねーか? 最近じゃ辻加護とも仲いいし
   やけにしおらしくなったし… どういう気持ちの変化だよ?」
小川「そんな事言いましたっけ? 先輩の記憶違いじゃないッスか?」
鈴木「言ったよ!言った! 私、しっかり覚えてるもん!」
小川「ホント先輩って、私のすみずみまで覚えてくれてるんですね♪」
鈴木「……とりあえず、寝床借りるわ。 気持ち悪いから、オマエ早く
   コーヒー入れにキッチン戻れよ。 唾液とか入れるなよ?」
小川「ハーイ! あ…いっておきますけど、私は別に昔と変わっていない
   ですよ? ただ先輩の前だけでは、あまのじゃくな自分を見せずに
   素直になれるってだけです♪  仲間意識…みたいなものかな?
   先輩と私って、実はけっこう性格そっくりなんですよぉ〜?」
 タッタッタッ… ああ〜♪ なぜか、あまのじゃくぅ〜…♪
鈴木「素直〜な子に〜なれません♪…か。 フッ…勝手に仲間にすんな。」

 ウトウト…  フッ…
鈴木「ン… んあ…? ………なんだ、寝てたのか… 知らないうちに。
   思った以上に寝心地がいいんだもんなぁ、この新聞紙ベッド…。
   あれ? 小川? アイツどこいきやが… ブッ!!」
小川「スー… スー…」
鈴木「なんか腕が重いなと思ったらコイツ…! おい小川ッ! 起きッ…」
小川「ムニャムニャ… 先輩… スー… スー…」
鈴木「…まだ10時か。 仕方ねえなあ…しばらくこのままでいてやるか。
   こんなクーラーもない暑苦しい部屋で、夜まともに寝られるわけが
   ねえじゃねーかバーカ。 新垣との相部屋に帰りゃ、涼しい寝床が
   待ってるっつーのによぉ…。 ホンと馬鹿だよな、この生き物…。」
 スー… スー…
鈴木「…確かにさ、オマエとはなんか似ているなぁーって思ったよ、最初。
   強がりなとこと、不器用なところが…さ。 でも、そこだけだぜ…?
   あとは全然似てないからな? 勘違いすんなよテメェ? ん〜?
   私はオマエと違って…うりッ!こんな鼻ペチャじゃねえしよぉ〜?」
 ツン… ツン… 
小川「…でへ でへでへ… スー… スー…」
鈴木「お? 笑ったコイツ、気持ち悪い。 でもちょっと面白いな…。」
 ツンツン… ツンツン… うりうりッ! ツンツンツンッ!
小川「でへへへへ… いやだぁ〜先輩〜… でへへ… スー… スー…」
鈴木「私が卒業しても… ちゃんと先輩って呼べよコラ? わかったか?」
  (オマエが可愛いくてたまんないよ… 口には一生ださないけどね…)

鈴木「ゴルァッ!! 冬眠から目を覚ませアマガエルッ!! 春だぞッ!!」
小川「フニャ? …んあ? あ、オハヨウゴザイマス、先輩…」
 ズゴンッ!!
小川「痛ァーッ!! 超イタァーイッ!! な、なんスか…!?」
鈴木「ナンスカも、ナスカの地上絵もねーよボケッ!! 今、何時だと
   思ってるんだッ! 11時だぞッ!? コーヒーどうしたんだよ!?」
小川「あ、入れたんですけど、先輩寝てたから起こすの悪いと思って…!」
鈴木「……で、添い寝してたってワケかよ? 腕まくらしてたせいで、私の
   腕がメチャしびれてるじゃねーかッ! もうすぐ仕事だぞッ!?」
小川「スミマセーン! あ、コーヒーすぐ入れ直しますねッ!」
鈴木「いいよ、冷めたコーヒーで…。 暑いから氷入れてアイスで飲むよ。」
小川「んじゃ小川、軽く朝食作りますね♪ トーストでいいッスか〜?」
鈴木「ああうん… 時間ねえから早くしろよぉ?」
 カッ…
小川「…うわ、日射しキツッ! 今日も炎天下ですね…。」
鈴木「オマエさ、たまには自分の部屋に帰れよ? 新垣寂しがってるぞ?」
小川「あ、そういえば先輩! 私の夢って、いつ聞いてくれるんですか?」
鈴木「ああん? …どうせ実現しそうもない、野心でも抱いてるんだろ?
   聞くだけは聞いてやるよ…。 暑いから、簡潔に話せよ?」
小川「先輩の夢は、私の夢。 私の夢は、先輩の夢。 …以上ッ!」
鈴木「なんだそりゃ? つまりオマエもソロで歌うのが夢だって事かぁ?」
小川「それが本当に先輩の夢だったらね〜♪ ホラ急がないと遅れちゃう!」
鈴木「ああ〜もうッ!! 暑いんだから、腕組んでくるなよぉッ!!」


 パ〜ヤ〜ヤ〜ヤ〜ヤ〜ヤ〜ヤ〜ヤァ〜〜〜♪ パ〜 ヤ〜♪
NHK高山アナ「ニッポン! 再発見クエアスチョ〜〜ンッ! 
        今回は鈴木あみさんにお聞きしま〜す!」
高山「ニッポンの好きな食べ物はな〜に?」
鈴木「ビックリマンチョコのチョコ? あれ、けっこうイケますね。
   小学校の頃、男子生徒がシールだけ取って捨てるじゃないですか?
   それで、地面とかに落ちているチョコを拾っては食べていましたね。
   群がってるアリをはらってから食べないと、スッパイんですよ。」
高山「ニッポンの好きな場所は、どこ?」
鈴木「深夜のロイターまわり? よく免許取り立ての、金のない小僧が、
   親の車に彼女乗っけては、暗がりに車停めてギッコンバッタン
   してるんですよ。 冬なんか、ガラスやけにくもってるから、すぐ
   わかっちゃう。それを男友達とかと「ちゃんと避妊しろよーッ!」
   とか、からかうのが大好きでしたね。 ええ。
   …でも今は… 自分の家かな? 好きな場所というか愉快な場所♪」
高山「ニ…ニッポンのイメージって、どんな感じ?」
鈴木「アメリカの奴隷? ワンモア・パールハーバーって感じで、もう
   一度ヤツらには、一発食らわさなくちゃいけないッスよね。
   アジア各国が団結してさ。 だからよく、ソニンちゃんと一緒に
   ココナッツ娘のミカから、金まきあげたりしてますけど♪」
高山「20年後…なにをしてると思いますか?」
鈴木「………20年後…ですか…。 そうですね…。」

鈴木「歌を…歌っていると思います。 どこかは、わかんないけれど
   私を好きだって言ってくれる人達に囲まれて、オバさんになっても
   元気に歌っていられたら…幸せかな? ヘアヌード写真集はなるべく
   出さない方向で♪ オケケは出したら…負けッスよ!」
高山「好きな季節と、好きな理由を教えてくださ〜い!」
鈴木「夏…は、嫌いですね。いい思い出がないし。 サイパンロケとか。
   冬がいいかな? うちのオフトン、冬はポカポカしてるんです…。
   ダッチワイフ型のカイロが二つあって、とても暖かいんですよ♪」
高山「家族の好きなところは?」
鈴木「ねえよ。 誰かうちの親父を、戸塚ヨットスクールに入れてくれ。」
高山「好きな童謡と、思い出を教えてください!」
鈴木「そうだな〜…。キン肉マンの主題歌かな?
   あ〜心に、愛がなければぁ〜、スーパーヒーローじゃないのさ〜♪
   歌詞がなにげに素敵ですね。 やっぱ愛ッスよ愛ッ!
   思い出は…私の小さい頃、飼っいた犬にキン肉バスターをかけて
   遊んでいたら、家に帰って来なくなった事ですかねぇ?」
高山「小さい頃はどんな遊びをしていましたか?」
鈴木「万引き♪ 学校のそばの商店で、習字セットの墨汁とか、あまり
   欲しくないものばかりパクってました♪ 一番のでっかい獲物は…
   レジ? 親父に『レジごとパクってくるヤツがいるかッ! 金だけ
   抜いてこいッ!」って怒られましたけどねー…。」
高山「………。」

高山「お祭りの思い出を教えて!」
鈴木「テキ屋のオッサンに、新聞配達員の人身売買の仕組を教えてもらい
   ましたねー…。中1の頃。 近所の役立たずフリーター数人、名簿に
   して教えてあげたら、お礼に紫色のヒヨコを買ってくれました♪」
高山「おばけ・妖怪を信じますか?」
鈴木「リアルにまわりにいますからね。 うちのメンバー共がまさにソレ。
   飯田大入道に、こなきじじい。コロポックル矢口、あかなめ小川。
   卒業してった東京火消しババアに、そうでガンスの高橋愛。
   キジムナー新垣に、半魚人。 泥田坊石川に、まくらがえしの加護。
   二口女の大食らい辻。ケサランパサラン紺野に、ぬ〜り〜あ〜べ〜。
   そしてモーニング娘。のセイレーンこと、鈴木あみ♪ …痛ッ!
   こらオマエら! 収録中なんだから、物投げてくんなよッ!!」
高山「ニッポンのえらい人って、だ〜れ?」
鈴木「百姓ッ!! …え? 百姓って、放送禁止用語なの? なんで?
   関係ないよ、そんなの。 日本は瑞穂の国。言葉通り、水に穂を
   実らせて、日本の食料事情を縁の下で支えている、お百姓さんが
   一番えらいです! 米1粒に88人の神様っていうじゃない?
   お百姓さんに感謝して、ありがたくゴハンをいただきましょう!」
高山「…い、今のニッポンに一言お願いします…!」
鈴木「エイベックスに金使ってんじゃねえよッ!」
高山「それでは… モーニング娘。になって良かったことは!?」
鈴木「え…!?」

高山「モーニング娘。になって、良かったことって…どんなこと?」
鈴木「そ、そうだな〜… つんくさんというプロデューサーに出会って、
   今まで歌ったことのない楽曲を歌えた事かな? いい経験になり
   ました♪ …アハハ♪」
高山「それでは次の質問!」
鈴木「あッ!待ってくださいッ! そ、それとですねッ…!」
高山「…はい?」
鈴木「…あ、いや…。 何でもないです…。」
高山「次の質問! もしモーニング娘。になってなかったら!?」
鈴木「…今みたく、笑ってる自分は…いなかったと思います。 ハイ。」
 フィヨヨヨヨヨヨヨ…♪ フィヨヨヨヨヨヨ…♪
高山「ニッポンの風景にごく普通にあった様々な物ッ!
   あみちゃんはどこまで、知っているでしょう!
   さ〜て、これはいったい何でしょ〜かッ!?」
鈴木「アハハハハ! 知ってますコレ、あれでしょう? せ…」
 ヤンジャン! 洗濯板やで、それッ! 間違えたらアカンでッ!
鈴木「知ってるわいッ! 加護ォ! オマエが答えを言うなよバカッ!」
高山「さぁ、最後はこちらです! 頑張って当ててね! 何でしょう?」
鈴木「あ〜ハイハイ、コレね。 これは…」
 ヤンジャンさん…! そ、それは、ところてん突きですよぉ〜…!
鈴木「こ…紺野ぉ〜…。 まったくオメエら、余計な世話ばかりッ…!」
AD「ハーイお疲れさまでしたぁ! 収録終わりでーすッ!」
 ザワザワ… ザワザワ…
鈴木「ギャラリーは黙って見ててくれよぉ! 恥ずかしいなぁ、お前ら!」
保田「心配すんな。 絶対使われないから、このインタビュー。」


加護「あのなヤンジャン、今日これからウチと新垣、BSの取材ロケで
   沖縄飛ばなアカンねん。 せやから今夜、ウチの家に泊まって
   くれへんか? 辻のアホォ一人、部屋に置いとくの心配やねん。」
鈴木「ああ、うん。 そうだな、じゃあお言葉に甘えっかな?」
加護「ホラ、これがカギや。 オーイ辻ィッ!! 今夜はヤンジャンと
   二人っきりの夜やでぇ!? うらやましいやっちゃのぉッ!?」
辻 「…ッ!!!」(ドタバタドタバタッ!)
加護「ブハハッ! 嬉しくて言葉が出ないようやなアイツ♪」
鈴木「気をつけて言ってこいよ? 珊瑚礁のカニは、ガザミ以外は毒を
   持っている事が多いから、不注意に食ったりするんじゃねーぞ?」
加護「心配しなはんな。毒味はマメに頼むさかい。 …それより
   ヤンジャンだけ何もロケがないのは寂しいなあ?」
鈴木「NHKの生放送のオンエアー時には、私もう卒業してるからなー…
   まあ仕方ねえさ。 …あ、新垣! 加護をよろしくな!」
新垣「…フン!」
加護「なんやアイツ、あの態度? ニライカナイまで海に流したろか?」
鈴木「ハハハ…まあまあ。 イキが良くていいじゃねーか! 私も中澤が
   卒業する時は、あんな態度とったりしちゃったもん。 それより
   お土産忘れるなよ? キジムナーの歯ブラシとかいらんからな?」
加護「おうッ! 米軍基地まるごと、ジャパンマネーで買ってきたるわ!」
保田「おぅいヤンジャン! 今夜久しぶりにサウナ行かねえかサウナ♪」
鈴木「え…? そうだなぁ… 辻も一緒だけどいいか?」
辻 「あう… のの、サウナは遠慮しておくのれすぅ…!」
保田「バッカ、なに遠慮してんだよ! 今夜は3人で青春の汗流そうぜ♪」

 シュオオオオオ… プシュウゥウ…
辻 「むふぅ… これで本当にやせるとれすね? やせるとれすね?」
保田「痩せるやせる♪ ここで30分我慢したあかつきには、あら不思議!
   サウナから出た頃には、ハリウッド女優みたくスリムな体と美貌に♪
   そうだなぁ…例えばウーピー・ゴールドバーグのごとくッ!!」
辻 「…もう、出るのれす。」(スタスタ… ガチャッ バタンッ!)
保田「ちっと赤道小町の姫には、温度が生ヌルいなぁ…。少し上げるか…」
鈴木「今すぐ、その濡れタオルを絞ろうとする手を下ろせ…。 2度も同じ
   殺害方法で、私を黄泉へと送るつもりか? フィンランドの古い文献
   を探しても、そんなサウナの使用方法は紹介されてねぇぞコラ!」
保田「だって、ここまでタオルに汗を集めたんだぜ? 蒸気にでも変えて、
   有効利用しないともったいないじゃん? そう思わん?」
鈴木「アンタの体液は、いうなれば毒性の高い産業廃棄物なんだよッ!!
   リサイクルどころか、ネバダ州の核廃棄物保管所ですら受け取って
   くれねえよッ!! …ったく! 温度なら私が上げてやるから!」
 ジャァアア! シュオオオオオオ…!
保田「あー…いい感じに蒸してきたなぁ…。 蒸され無視され、保田圭。」
鈴木「…最近どうよ姫? リーダー達とうまくいってんの…?」
保田「まあ、向こうからは相変わらず、かまってきてはくれないけどな。
   こっちからアクションかませば、昔通りツッコミは返してくれるよ?」
鈴木「…別にアイツら、姫が嫌いでかまってこないのとは違うからな…?」
保田「んなこと、わかっとるわい。 みずから姫をかまいにくるほど、
   体力と根性があるのは、ヤンジャンぐらいなもんだからなー…。」
鈴木「へへっ! まあね♪ だてに辻加護と、同居してねえよ私?」

 シュオオオオオ…
保田「…だからさ、ヤンジャンの場合、低音がまだ安定してないんだよね。
   ちゃんと腹筋鍛えてるか? 歌ってる最中に『声出すの苦しい』って
   表情をお客さんに見せてたら、そりゃ歌手としてアウトだぜ?」
鈴木「まだハラ弱いのかも…。 声のばそうとしたらプルプル震えるもん。」
保田「腹に手を置くよりは、脇をギュッとしめた方が、力は入るんだぞ?
   フリでどうしても脇をしめれない時はだなー… って、ダメだな私。
   もうすぐお別れだっつーのに、また口うるさい説教しているよ。」
鈴木「…それが嬉しいんだよ私には。 私を一番最初に、仲間らしく扱って
   くれたのは姫だったからな。 そうやってさ、プッチの精神がどーの、
   ユニットでの歌い出しのコツがどーの…。 当時はそれをウゼェなぁ
   って思ってたんだけどさ、今となっちゃぁ感謝してるんだぜ私?」
保田「仕事に私情は関係ないからな。 姫だって、最初の頃ヤンジャンが
   ノコノコとモーニング娘。に入ってきた時は、さすがにムカムカきて
   トゥーシューズに五寸釘でも入れようかなって考えてたんだぜ?」
鈴木「いや…バレェしてねえし。 しかも、画鋲じゃなく五寸釘かよ?
   靴をはく前に、確実にバレるな。」
保田「でも事情はどうあれ、プッチの仕事はしっかりやりたかったからさ。」
鈴木「うん…。 私さ、入ったのがプッチで良かったなって思ってるんだ。
   もしタンポポに入ってたら、そりゃ最悪の日々だったぜ? 私の天敵、
   雷人・風神・鬼神がセットでついてるんだもん。 今頃こっちは廃人
   だよ。 姫のおかげで、モーニング娘。としての自覚はともかく、
   自分が責任ある歌手だっていう自覚は、失わずにすんだもの…。」
保田「ズズッ… へへ…汗以外の体液まで吹き出してきやがった…。」

鈴木「…そろそろ私、ギブアップ! 先に出させてもらうわ。」
保田「置いていくなよ…。」
鈴木「え?」
保田「あ、いや…。 サウナに私を置いていくなよ。 いつも私が最後まで
   残ってるじゃん? たまには、私よりねばってみせてくれよ?」
鈴木「無理いうなよぉ〜? アンタは生き物でいうなれば、砂漠で2週間
   水を飲まなくても生きられるラクダだぜ? 枯れ木もバリボリ食える
   砂漠の幽霊船だぜ? 人間様に同じ耐久レベル求めるなよ?」
保田「イヤなんだよ。 いつも最後まで残って、みんなの背中を見送るのは。
   …寂しいんだよ。 もう少し隣にいてくれよ、頼むよ…。」
鈴木「はぁあ…。 …わかったよ。 ギリギリまで、頑張ってみるよ。」
 プシュウウウ… シュオオオオオ…
鈴木「暑ィ〜… 週に2回も脱水症状で倒れたくねえな…。 いったい何の
   仕事してる人だって話だよ。 ラマダンの断食じゃあるまいし…。」
保田「いいんだぞ… そこまで無理しなくても?」
鈴木「うんにゃ! どうせなら卒業する前に、アンタに勝ってやるさッ!」
保田「う〜ん、たくましいねぇ! 夢をつかんだヤツの強さだな!」
鈴木「ブハァ… そういえばさ…姫の夢って何なの? ガンダーラ遺跡の
   顔を破壊された仏像に、自分のフェイスを彫り込む事か?
   それとも4人のアメリカ大統領の顔が彫られた、マウントラッシュモア
   に、ひときわ大きい保田圭モニュメントを彫り込む事…?」
保田「ブヒャッ! 姫は崇高な仏様でも、偉大な大統領でもないんだぜ? 
   …そんなものより、ずっとずっと誇り高いものだと思ってるんだ。
   モーニング娘。の一員である、自分の事をね!」

保田「パキスタンの巨大な仏像が、日本人に慈悲をくれたか? アメリカの
   歴代大統領が日本人に自由をくれたか? …少なくとも、私がいる
   モーニング娘。は、日本人に笑顔と感動を与えているんだぜぇ?
   姫な、その事を誇りに思っているんだよ。 大好きな歌で、大好きな
   日本のみんなを楽しませてあげる事ができる! …最高じゃん?」
鈴木「…そうか。 姫はもう、夢をかなえてしまったんだね。」
保田「うん…だから今、わたしゃ幸せさ!」
鈴木「つーことは、姫はずっとモーニング娘。で頑張っていくんだな…。」
保田「いつまで私がモーニング娘。に、必要とされるかわかんないけどね…
   でも、このサウナのように、限界ギリギリまでねばるつもりさッ!
   みんなの背中を見送るのは寂しいけどね… うん、寂しいけど…。」
鈴木「ごめんな…。 私もその寂しい思いをさせる一人なんだもんな…。」
保田「なーに言ってるんだよ! 夢にむかって旅立っていくんだろッ!?
   サウナの暑さにギブアップして、出て行くのとは全然違うんだ…。
   胸をはって出て行けばいいッ! 姫はバンザイして、オマエの背中を
   見送るさ…! 寂しいのは、もう… 慣れっこだもんねッ♪」
鈴木「…うっしッ! じゃあ今日は、私が姫の背中を見送ってやるよッ!!
   このサウナでな。 意地でも今日はアンタに背中を見せないぜッ!」
保田「ブヒャヒャッ! 無理すんなって。 気持ちだけありがとうよ…。
   ホラ、辻がつまんなそうにロビーで待ってるぞ? 限界なんだろ?
   つまらん意地はらないで、もう出てけよ。 倒れちまうぞぉ〜?」
鈴木「…出ないよ。 今日は姫に背中を見せない! 見させないッ!!」
保田「ヤンジャン…。」

 ブシュオオオオ…
鈴木「〜〜〜〜ッ!!!」
保田「…な、なあ! もういいよ、ヤンジャン! 顔中に血管が浮き出て
   きてるぞオマエ? 東京医大の人体標本じゃねえんだからよ?」
鈴木「…まだまだぁ…! ひ、姫こそ、そろそろ危ないんじゃねーの…?」
保田「こうなったら、禁じ手を使ってやるッ!!」
 ギュギュギュッ!! ジョボジョボッ! ブッシャァアアアアアーッ!!
鈴木「ゲホォッ!? ブゥオッ…ンゲェッ!! オェエエエ〜〜ッ!!」
保田「…どうでぇ? 私の体臭タップリ、酸性クマ殺しスチームの味はッ!
   オラオラァッ!! 意識があるうちにガス室から逃げ出すんだなッ!
   うッ… 量が多すぎた…! わ、我ながらこりゃキツイわ…!!」
鈴木「…こんな…! こんな臭いでも、もうすぐ嗅げなくなるかと思えば…
   鼻孔おっぴろげて、全部吸い込みたい気分だぜッ…! ウプッ…!」
保田「オゲェエエエ…! ゲヒョッ! …ヤ、ヤンジャン、おまえ…!?」
鈴木「…私が…! 私が姫の背中を見送るんだ…! 今まで私の背中を…
   仲間として優しく、最後まで支えてくれた姫の背中を…ッ!!」
保田「バッ…バカヤロウッ!! オエッ…! も、もうダメだッ…!!」
 ダダダダダダッ! ガチャッ!
鈴木「へ…へへ… ドアノブに手をかけたな…? 姫… 私の勝ちだぜ…?」
保田「………どうよ、姫の背中は…? 負け犬の…背中か?」
鈴木「立派な後背筋が見えるよ…。 過酷なダンス練習で鍛え上げられた、
   姫の… 頑張ってきた姫の… たくましい背中がね…。」
 バタンッ!!
辻 「あり!? ヤンジャンより先にオバチャンが出てきたのれすッ!?」
保田「へへ… 見送られるのって… いい気分だな…」(バタッ…!)


 スタ スタ スタ…
辻 「ののにはまったく、サウナってものがわからないのれす…。
   暑苦しい思いまでして飲むビールって、そんなに美味しいのれすか?」
鈴木「ハハッ♪ 今日は姫と私、一段と美味しそうに飲んでいただろ〜?」
辻 「はいー。 悪酔いしないで帰るオバチャンを、初めて見たのれす。」
鈴木「サウナってのはね、いろんな物を吐き出させてくれるんだー…。
   汗やら毒やら想いやら、体や心にたまってる、いろんな物をね。
   吐きつくして、何もなくなったスキマに注ぎ込む、冷たいビール!
   これが最高なのさ…。 今日は長く入っていた分、なおさらね♪」
辻 「大人の言う事はチンプンカンプンなのれす。」
鈴木「お前もあと5年もすれば、加護とサウナ上がりのビールを美味しく
   味わえるようになるよ。 あいぼ〜んカンパ〜イ♪…ってさ。」
辻 「あんな苦い物、美味しいと思うようになるワケないれすよッ!!
   大人になっても、お風呂上がりに凍らせたヤクルト食べるんらもん!
   ののはずっと、のののまま大人になるんれすよーだ!」
鈴木「まあな。 大人になって、耳に赤ペンはさんで競馬新聞を読みながら
   ワンカップ大関すすってる、お前の姿は想像できないけどさー。」
辻 「それ中澤さんじゃないれすか…。給料日の。」
鈴木「いや… でも待てよ? …そうだァーッ!!」
辻 「なんれすか? 肛門から座薬が出戻ったような声出しちゃって?」
鈴木「オマエ今夜さ…、ちょっと変身してみないか?」
辻 「変身? …カッパにれすか?」
鈴木「違う違う! スクーターのCM、またやってどうするんだよッ!!
   あのね辻、今夜さぁ… 一晩だけ、大人になってみな〜い?」

 ガチャッ!
鈴木「家に戻って、変身グッズ持って来てやったぞぉ〜ッ♪」
辻 「大人に変身させるって言われても、目的が全然わかんないれすよ…。」
鈴木「なに、簡単な事さ。 ちっくら、いつもとメイクやファッションを
   変えてみて、大人っぽくなった辻の姿を見てみたいだけだよん♪」
辻 「ののはそんな変身したくないのれすぅ〜ッ! いやだいやだぁ!」
鈴木「…とか言いながら、さっそく私のセクシー下着を物色してるじゃん?
   ブッ…その穴のあいたヤツはやめろッ!! すでにパンツと言えん!」
辻 「でも市井しゃんの方が、たくさん派手なの持ってましたけどね〜。」
鈴木「いいのアイツは! 頭の中に、農薬でも死なないムシ飼ってるから!
   2期メンは頭に寄生虫を飼ってるんだよ。 矢口見りゃわかるだろ?
   脳内のバオーが、宿主が派手になるよう、分泌液を出してるんだ。」
辻 「保田しゃんは?」
鈴木「あの化け物に寄生できる生き物はいねーよ! アイツの腸内の大腸菌
   全て死滅してるんだぜ? 姫の体から、癌細胞を殺すワクチンを作り
   たいって、ドイツの医学会からオファーが来たぐらいなんだから!」
辻 「そ、それで、どうなったんれすか?」
鈴木「ドイツ国内の、実験用ハツカネズミとモルモットが全滅したさ…。
   …ホラホラ! 下着なんかいいから、服をいろいろ試してみようぜ?
   カボチャパンツのままでいいよ、どうせ外からは見えないんだし。」
辻 「ずいぶんヤンジャン、ノリ気れすねぇ? どうしたんれすか?」
鈴木「…オマエが大人っぽくなった姿を、…いつか前ぶれもなくテレビで
   見せられるなんてマッピラごめんだもん…。 この1年半、母親の
   ようにゴハン作って、辻を大きくしたのは私なんだもん…!」

辻 「ヤンジャン…」
鈴木「アハハハ♪ だからさー、誰よりも先に、大人っぽくなった辻の姿を
   見る権利が私にあると思わな〜い? ねっ? 見せて見せて〜♪」
辻 「…うん、いいれすよ。」
鈴木「…ホント?」
辻 「はい♪ ヤンジャンが喜んでくれるなら、ののはマリリン・モンロー
   にだって、モロ師岡にだってなるのれすッ! だから… だから…
   やっぱり! パンツも気合い入れなくちゃいけませんッ!」
鈴木「いや、パンツはいい! ていうか、オマエのデカ尻がおさまるような
   パンツは一枚もねえ! そういやオマエ、市井のヒモパンを無理矢理
   はいて引き裂いただろ? ウチに請求書が送られてきたぞッ!!」
辻 「ドンマイ! 内容証明郵便じゃないなら、捨てちゃえばいいのれす!
   それよりれすね、そこの赤いスケスケレースパンツを一つ…」
鈴木「パンツパンツうるせえわッ! それよりちっとこのドレス着てみ?」
辻 「…およ? ス…スゴーイ! ののにピッタリなのれすぅッ!?
   どうしたんれすコレ!? 伊勢丹からまたパクってきたのれすか…?」
鈴木「またって何だよまたって! 伊勢丹じゃ一度もねえよ! これはね…
   私の手作り♪ 自分用に作ろうと思って布買ってきたら、寸法が全然
   足りなくてさ。 仕方ないから、アンタら用に作っちまったんだ♪」
辻 「うっそらぁーッ!ヤンジャンにこんなドレス作れるワケないもん!」
鈴木「バッカ、なに疑ってるんだよ? 私がソロの頃は、ライブの衣装や
   バャリースのCMの白いワンピとかも、自分で作ったんだぜぇ?」 
辻 「くふふ…♪ なんか体のラインがくっきり出て恥ずかしいのれす…♪
   でも… キレイ〜〜〜〜ッ!!」(クルクルクルッ)

鈴木「気にいってくれた? でも、真っ黒だから好みじゃないでしょ…?
   辻、ピンクとか黄色とか、明るい色が好きだもんな…。」
辻 「ホントはのの、黒は好きじゃないれすけど、これは好きれすよ♪
   なんかまわるたびにキラキラ光って… アゲハ蝶の気分なのれす♪」
鈴木「地味に見えるけど、ビロード生地にワンポイントの刺繍が素敵だろ?
   こういう服の良さがわかれば、お前も一人前の大人なんだけどね。」
辻 「地味だけどキレイ…。 着ているののは、地味なだけれすけどね…」
鈴木「…お前は全然、地味なんかじゃねえからな? 十分目立ってるよ。」
辻 「トークで目立ってもダメなんれす。 ののは歌手れすから…。」
鈴木「…ホラ、こっち来いよ。 せっかくのドレスに、そのダンゴヘアーは
   似合わないだろ? はいはい、髪の毛下ろして…。」
辻 「のの、髪の毛下ろすと、暗い顔に見えちゃうのれす…。」
鈴木「そりゃオマエが今、暗い表情してるからだよ。 ハイ、鏡に笑って〜
   うん可愛い可愛い♪ じゃあクシでとかすから、そのまんま笑顔!」
辻 「いいらさんみたくしてくらさい♪」
鈴木「そうだな〜…オデコ出してみるか? オイオイ、出しすぎ出しすぎ!
   I WISH の眉無しデコッパチのオマエを思い出したじゃねーか!」
辻 「セクシー8の梨華ちゃんみたく、髪の毛クルクルにしてくらさい♪」
鈴木「セクシー8の石川がクルクルパァー? …知ってるよ、そんな事。」
辻 「…てへへ♪ このあと、お化粧もしてくれるとれすか?」
鈴木「うん、いやらすぃ〜〜深いレッドの口紅、塗りたくってあげるよ。」
辻 「矢口しゃんみたく、パッチリした、つけまつげもプリーズ♪」
鈴木「誰々みたくお願いって… ずいぶんメンバーを意識してるんだなぁ?」
辻 「はい… ののはね、メンバー全員に憧れているんれす♪」

辻 「ののね、みんなみたくなりたいの。 ののはみんなより何か一つ足り
   ないの。 だから、みんなに憧れてるのれすよ♪」
鈴木「辻ぃ…」
辻 「いいらさんみたくスタイル良くないし、安倍しゃんみたくセンターに
   立てないし、オバチャンみたく踊れない。 矢口しゃんみたくオシャレ
   じゃないし、後藤しゃんみたく上手に歌えない。 梨華ちゃんみたく
   可愛くないし、ヨッスィみたく美人じゃない。 あいぼんなんか、全て
   に憧れちゃう。 みんなみんな素敵で、大好きな仲間達なのれす♪」
鈴木「あのなぁ! 辻はすぐそういうこと言うけど、オマエだって…!」
辻 「ヤンジャンみたく強くないもん…!」
鈴木「…やめろよ、寂しい事言うの。」
辻 「てへてへ♪ でもね、ののはイジけてるワケじゃないれすよ? 
   今回はアセって失敗して、みんなに迷惑かけちゃったれすけどね…。  
   ののはゆっくりでいいんらって、市井しゃんが教えてくれたんれす♪
   今に見ててくらさいよ? ののはみんなに追いついて、素敵で立派な
   辻希美になってみせるのれすよ! このドレスみたいにね〜♪」
鈴木「………辻さ、この歌知ってる?」

 野に咲く花のように 風に吹かれて♪
野に咲く花のように 人をさわやかにして♪
 そんなふうに 僕達も 生きていければ素晴らしい♪
 時には暗い人生も トンネル抜ければ 夏の海♪
 そんな時こそ 野の花の けなげな心を 知るのです♪

辻 「いい歌れすね…。のの大好きれす♪ …で、誰の歌れすか?」
鈴木「お前の事を歌ってる歌だよ。 のの花…って歌ってるだろ?
   辻みたく生きていければいいなって、お前に憧れてる歌なんだよ…。」

辻 「ののなんかに憧れる人なんていないのれすッ!!」
鈴木「ホラ…そんなに唇とんがらせてたら、うまく口紅塗れないだろ〜?
   …お前は気がついてないだけなんだよ。 お前には、まわりの人を
   さわやかに、なごやかにさせる、不思議な魅力があるって事をね。
   だからこそ、つんくさんはモーニング娘。に辻が必要と考えたんだ。」
辻 「そんなことないもん。 ののの事は、ののが良く知ってるもん!」
鈴木「お前に憧れているヤツ、メンバーで1人知ってるぜ? 何を隠そう…
   実はあの後藤! アイツ、辻みたく可愛い女の子になりたいってさ♪」
辻 「えッ…!? 後藤しゃんがッ…!?」
鈴木「ハイできた! ホラ辻、まわり右して、鏡に映った自分の姿見てみ?」
 クルッ…
辻 「はうッ…!?」
鈴木「いつもダンゴヘアーで、子供っぽくはしゃいでるのも、辻希美。
   今、鏡のむこうで立ってるキレイなお姉さんも、辻希美。
   まだまだ、お前の知らない辻希美が、お前の中に隠されているんだよ。
   今の自分はこんなもんだって決めつけないでさ。 たくさんの可能性と
   才能を秘めている自分に、自信を持って頑張っていかないとね?」
辻 「くふっ… くぅ… う… うぇええ…ん……」
鈴木「あああ〜ッ!! マスカラ流れちまうだろぉ、辻ぃ〜ッ!!」

鈴木「…辻? もう寝たかぁ〜?」
辻 「ううん…。 まだ起きているのれす…。」
鈴木「眠りにつく前に、一つ聞いてもいいかな? お前の夢って…何?
   『みんなみたくなりたいのれすぅ〜』とか、またホザきやがったら、 
   ベッドから蹴り落とすからな? 小川みたいに。」
辻 「てへ♪ ののの今の夢は、プリンで出来たお風呂に入ることれす♪」
鈴木「バ〜カ…。 じゃあ私の夢は、サリンの出ないサウナに入る事だな…」
 クスクス… クスクス…♪

その1その2その3その5その6その7その8