世界はあたしとあなただけA
1 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/23(水) 00:05

こちら森板で書かせていただいていた同タイトルの続きとなります。

2 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:16

よっちゃんから連絡が来たのはその翌年の秋だった。
その年は美貴、もう働いてたから夏に実家もいかなかったしね。

ちょっとこっちに遊びにくるから時間あったらご飯行かない?って
メールでさ、そんでご飯行って話したの。
来年、よっちゃんが二十歳過ぎたら親が一人暮らししてもいいって
OK出してくれたから、こっちに戻ってくる予定だって言ってた。
じゃ、そしたら今度は飲もうとかそんな話しをしたんだ。

3 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:18

んでよっちゃんがこっち来て、どんくらい? 
うーん、まぁ1年は経ってたかな?
飲んでるときにふいにさ、よっちゃんが聞くの。
「高校の同級生と付き合いないの?」って、

美貴ってちょっとクラスで浮いてたじゃん?
連絡取るほど仲良かったコいないよって言ったら、明らかに
がっかりしてるから、
連絡取りたいコいるなら梨華ちゃんに聞けばいいじゃんって
言ったんだ。

4 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:19

それまでさ、梨華ちゃんの話題って出てなかったんだよね、
美貴から振るほど、梨華ちゃんと親しかった訳じゃないしさ、

だから美貴は当然、二人はあのまんまなんだろうと思ってたし…

したらさ、
「全然、連絡取ってないから」そう言って、その後、急に
よっちゃんのピッチが上がって酔いつぶれちゃってさ、
それまでこいつ酔うことあんの?ってくらい酒に強かったから、
ビックリしてさ、で、こう思ったんだ。

連絡の取りたい相手が梨華ちゃんなんじゃないの?って。

5 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:19

そんとき、よっちゃん寝ちゃったからさ、
もうオールで付き合ってやろうって、美貴、腹括ってさ?
で、どれくらいだったかな? 
まぁ、とにかく数時間たってよっちゃんが起きたから言ったの。

梨華ちゃんと会いたいんでしょ?
アドレスとかが変わっちゃってんなら家行くとかあるじゃん?
何があったのか知らないけど、あんなに仲良かったんだし
きっとまたうまく行くよって。


そうしたらよっちゃん泣くんだ……

なんか自分が泣いてるって気がついてないみたいで普通の顔してさ
なのに涙だけがぼろぼろ零れてくの。んで、
「一回振られてるから、いまさら会いになんて行けない」って
そう言ったんだ。

6 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:20

あのときのよっちゃんの顔、美貴、いまだに忘れられなくてさ……
あんなに静かで哀しい泣き方、見たの初めてだったから。

だから美貴、言ったんだ。今夜は二人とも酔ってる。
明日になったらきっと忘れてる、だから全部ぶちまけろって。

よっちゃんは最初躊躇してたけど、酒の酔いもあっただろうし
それに誰かに話したかったんだと思う、自分の恋の話を…


7 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:20

ウチらの卒業式の数日後に引っ越したみたいなんだけど、
オヤジさんの転勤が決まったの自体急な話だったらしいんだ。

北海道は本州と陸続きじゃないし、まだ高校生だったよっちゃんが
気軽に行き来できる場所じゃない。
引越しのこと、
早く言わなきゃって思えば思うほど言えなくなったんだって。
梨華ちゃんが特別な存在だったから。

で、結局、告った後で話そうって思ってたみたいだよ?
よっちゃんさ、結構、自信あったみたいなんだ。
梨華ちゃんも自分を好きなんじゃないかって───

でもそこは実際わかんないからね、告る前までは振られても
引越しのことは言うつもりだったみたいだし、
そん時は気まずさも残んなくていんじゃね、くらいに思ってたって、
甘かったって言ってた。

8 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:21

よっちゃんだってまだ高校生だったからさ、

梨華ちゃんが
自分の運命の女だなんて、そのときは気がつかなかったんだよ。

時間が経つことでしか見えてこないことって世の中にあるじゃん?
そういうの、タイミングの問題っていうのかも知んないけど…

時間が経てば胸の痛みも、喪失感や梨華ちゃんを愛しく想う気持ちも
すべてが薄れていくもんだろうって思ってたんだって、
ましてや、相手がどうしてんのかもわかんない状況だしね。

9 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:21

いまはね、別に梨華ちゃんを責める気はないんだ……

ずっと後悔してたの、美貴、知ってるし、
でも最初によっちゃんから話を聞いたときはなんて酷いこと
言う女なんだって腹立ったよ。

梨華ちゃんさ、よっちゃんに勘違いだって言ったんでしょ?
よっちゃんの想いを受け取った上で答えられないって断るんじゃなくって
想いそのものを否定したんだ。

よっちゃん、確かこんなふうに言ってた。


10 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:22


同じだけの想いを返して欲しいなんて、思ってなかった。
だけど、好きでいることだけは認めて欲しかった。

本当に辛かったのは、想いが叶わなかったことじゃなくて、
想いを自分が梨華ちゃんを想ってきた心を無かったことにされたことだって。



11 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:22

そんなに傷付いたのに、その上三年以上経ってんのにまだ好きみたいでさ、
てかあれもう、好きってレベル超越してて
でもそこには誰もが納得する理由なんてないじゃん?
だからさ……

よっちゃんて、
梨華ちゃんを愛する為だけに生まれてきたんじゃないのって、
まぁ美貴も、ちょっとは酔ってたからそんなふうに感じたりして
正直、そんなの美貴なら勘弁だなって思っちゃったけどね……


12 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:23




「あーーぁ、泣かせちゃったぁー」


大きくしゃくり上げながら、震えが止まらないからだを
どうすることもできなかった。

今日くらいは許されるよねぇ、苦笑混じりの美貴ちゃんの声がして
緩く頭を抱えられる。

「もういいじゃん?
 誰だって間違うことってあるよ…
 次のチャンスで間違わなければそんでいいじゃん?
 美貴もさ、一回失敗しちゃったから
 今回は積極的にお節介することにしたんだから」

13 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:23


……ご、ごめ…ぐ、ぅ…



声にならない呻き声しか出せないあたしの頭を美貴ちゃんが少し
乱暴に撫でる。

「あーやまぁんなぁ〜」変な調子の声で言う、美貴ちゃんは優しい。



 ─── あの後、


よっすぃ〜に告白された後数日間、
マンション内でも会ったら、どうしよう、どんな顔しようって
ビクビクしてた。

14 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:24

一ヶ月経つ頃、
さすがにこのままっていうのは寂しいし嫌だな、
そう思って駅前に新しく出来た洋菓子屋さんでケーキを買って
よっすぃ〜の家に行った。

あたしの目に映ったのは、他人の顔したよく知る家。
外された表札、玄関の横がよっすぃ〜の部屋だったのにその窓には
あったはずのカーテンがない。
ドアの脇にあったはずのエアコンの室外機もなくなっていた。

この状況を見てどういうことなのか、
頭はすぐに理解したと思う、だけど気持ちは納得してくれなくて、
インターフォンを続けて押して、
気がついたらドアを叩き、名前を呼んでいた。


15 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:24


そう、あの日、
あたしの世界からよっすぃ〜がいなくなったことを知った…




16 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:25


ドンドンドンッ!
「…よっすぃ〜っ よっすぃ〜!!」


ガチャリと、
隣りの家のドアが空いて、女の人が顔を出した。

「……吉澤さんなら引越しましたよ?」
「い、いつですか?」

あたしの剣幕に圧倒されたように、少し顎を引いて考える顔をすると
「…一ヶ月経つかしら?」と自信なさそうに教えてくれた。

「ありがとうございました」と頭を下げると、いいえ、と首を振りながら
女の人はドアを閉めた。

その場で携帯を取り出して、よっすぃ〜をコールしようとした───でも、


指が動かなくなった……あたし……


17 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:26


───なんて言う気なの?

引越しを教えてくれなかったって責めるの?



18 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:26


『……離れたくないんだ、付き合って欲しい』


ふいにあの日のよっすぃ〜の姿が浮かぶ、

(……離れたくないんだ)そう言ったとき、とても頼り無さそうに
瞳が揺れていた。

あたしの方が年上だけど、よっすぃ〜はあたしの前ではいつも
余裕ぶった態度をしていた。
自信の無さそうな表情なんて見たことがなかった。
年下だからって甘えてくることもしなかった。

あんなに緊張してる顔、見たことなかった……
唇が微かに震えていてただでさえ白い顔が色をなくしていて……


本気、だったんだ─── 唐突に気がついた


19 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:26



 ───── だったら、


あたしは俯いて唇を咬んだ。
これはよっすぃ〜の意志なんだ。

あの日、恋人にならなかったあたしは
よっすぃ〜という人を、大切に思っていた友達を失くしたんだ…


20 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:27

あのときはまだ、そんなふうに思ってた。

よっすぃ〜のことは大切に思っていたけれど、
それはあくまで大切な人の中の一人だった。

この世界中どこを探しても、よっすぃ〜の他によっすぃ〜はいない
同じ人間はどこにもいない。

その本当の意味にまだあたしは気がついていなかった……






                     ++───つづく++


21 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:27



22 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 00:27



23 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/23(水) 00:29


今回分の更新は途中まで前スレに上がっています。
ややこしいことをしてしまいすみません…


24 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/23(水) 00:34
り、リアルタイム…ゴクリ。
新スレでもついて行きます!
>>8の藤本さんの言い回しがなんだか嵌りました
淡々としていてどこか格好いい
そして最後の一文がまたもや意味深…
気になります
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/23(水) 10:27
いやぁぁぁぁぁぁぁぁ
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/23(水) 22:15
梨華ちゃん、あなたって人は…って思っちゃいましたが
どちらの気持ちを考えても切ないって言うより痛い…
5年の月日に何があったんだろう
27 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/23(水) 23:44

レスありがとう。

24さん
リアルタイムってテンション上がるよね〜(自分だけ?)
8の言い回し?どこだろ…ひょっとしたら胆かもw

25さん
ご、ごめんっ

26さん
この話しは一人称だから、よっすぃ〜サイドが見えないよねぇ
すまん…

28 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:45



29 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:45

その春、
とくにしたい仕事もなかったあたしはビジネス総合の
短大に進学した。

女子高のあと、短大に進学したあたしは周りに男の人が
いるという環境にいたことがない。
だから、それまでは男の人の目を気にしたこともなかった。

短大に通ってしばらくすると、週末には誰かが合コンの話を
持ってきた。
みんなと早く打ち解けたい気持ちもあって、誘ってもらったら
参加するようにしていた。

30 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:46

そして、あたしは気がつくのだった。

どうやら自分は男の人に好かれやすい、と、いうことを、

顔を褒められた
スタイルを褒められた
声も褒められた

みんなチヤホヤしてくれた。
嬉しくない訳じゃない、だけど、誰もがピンとこない。
そういう時間が楽しくない訳でもない、それでも自分からもっと
近づきたいと思うような人は現れなかった。

なんとなく空虚だった。
周りにひとはいた、それなのにひとりでいるような気がしていた。

31 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:46

そんなときに、とても熱心に誘ってくる人がいて
見た目も悪くなかったし、優しかったから何回かデートをした。

でも二人で会うようになると、あたしを思ってくれている優しさだと
思っていた行動が、臆病で自分を出せないから言うことを聞いてくれて
いるように見えてきた。

何より、
彼の思うあたしと現実のあたしが違うと裏切られた被害者みたいな目で
見られるのが苦痛でしかたなかった。

結局、この人はあたしのこと全然わかってない、というよりも
わかろうとすら思ってないから、わかったつもりでいられるんだ
そう感じた。
だからもちろん、付き合おうと言われたときには断った。

32 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:46

年齢的なものなのか、それともあたしが出会った人がそうなのかは
わからないけど、その後も何回か同じようなことがあった。

愛してるって言われたこともある、
だけど全然ピンと来なかった ────── 愛ってなに?

よく与えるのが愛だとかいうけど、
いろんな難しいこと言う人たちもいるけど、

愛って……本当はただその相手を大切に想うことなんじゃないのかな?
ただありのままの相手を大切に想う、そんな単純なことじゃないのかな?

33 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:47


あたしは──────

そんなふうに想ってもらったことがある。
それは、いまも胸の中で温かく息づいて自分への自信になってる。


ダメでもワガママでもそのままの梨華ちゃんでいいよ───
梨華ちゃんが、いいよ───

それは盲目的に傅くのとは違って
あたしに悪いところがないなんて露ほども思っていない瞳、
それでもあたしを見守り続ける瞳は、自分の善悪であたしを
ジャッジしたりはしなかった。

あたしがあたしという存在であることへの全肯定
あたしがあたしのままで在り続けることを許されているあの感覚

その瞳をあたしに向けてくれたのは、当時まだ十代の女のコだった。

34 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:47


 ─── よっすぃ〜、あなたに会いたいよ…


いつでもあたしと向かい合っていてくれたよっすぃ〜


大勢の中のひとりなんかじゃない、


唯ひとりの人が傍にいてくれてたのに───


35 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:48

ありがちな本当によくありがちな話だった。

大切なものは失くしてから気づく?
本当に大切なら気づかない訳ないじゃない?
どこかであたしはそう思っていた。

だけど本当に大切なものは自分が特別だなんて、けして
教えてはくれない。
たまたま偶然そこにいただけです、という顔をする。

あまりに自然に、影のように傍にいるから
そこに在ることが当たり前だと錯覚してしまう。
なくなる筈のないものだと思わされてしまう。

36 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:48

本当は、あたしの心の中にはあなたが住み着いていて、
その想いに気づかない振りをしているから、全てが虚しいんだと

あなたがあたしを想ってくれた気持ちの大きさを超える人なんて
この先、もう現れないかも知れないんだと

そういうことがわかり始めたあたしは、その頃、もう学生では
なくなっていた……

37 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:49


38 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:49

いつからか、
背中を優しく撫でてくれてる美貴ちゃんにからだを預けて
昔の自分のことをぼんやりと思い出していた。


早すぎた出会いだったからとか、相手が同性だったからとか
だから気がつかなかったなんてそんなのは言い訳で、
ただ単純に、
あたしにはそれがどれほど大事で特別なことなのか、そのことに
気づける時期ではなかったってことなんだと思う。


それであの後、あたしは決めたのだ。
何をどうしようとしたところで、あるものはなくならないし、
ないものはないままだ。

だから、よっすぃ〜が心に住んでるならそのままでいい
ずっと想っていようって。

39 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:49

報われるとか、報われないとか、
この先どうするとか、そんなの全然わからないことだし、

仮に頭で決めたって心はきっと言うことをきかない、
だったらもういいんだ───

あの春の日に、
よっすぃ〜があたしの前から突然いなくなってしまったように
この想いがなくなるその日まで、あたしはこの想いを抱えていく。

たぶんそれがあたし、
自分を好きだと思える、あたしらしいあたしなんだ───

そう心を決めてからはあまりブレなくなった。

40 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:50


そしてあたしの平凡な日々は淡々と過ぎた、
二十三歳の春の始まりまで───




41 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:50



42 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:50

鼻を啜りながら、身動ぎして美貴ちゃんから離れた。

「……ありがとう」
「ん、いいよ
 涙とまったね、よしよし」

今度はグチャグチャッと乱暴に頭を撫でられる。

「もーー、髪ぐちゃぐちゃになっちゃうよぉ〜」
「顔もグチャグチャだからちょうどいんじゃん?」
「……美貴ちゃんって何げに酷いよね?」
「なに言ってんだか、美貴に弄られたいクセに」

そう言って笑う美貴ちゃんに、あたしも、もー、と
不満げな顔をしながらも笑ってしまった。

43 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:51

「……よっちゃんはたぶんさ、
 この先も梨華ちゃんに辛かったーとか苦しかったーとか、
 言わないと思うんだよね。
 それを言っちゃったら、今度は梨華ちゃんが苦しんじゃうって
 わかるからさ。けど美貴は……梨華ちゃんは知るべきだって
 思ったから…」
「うん、ありがとう……大丈夫だよ、あたし」

ん、あたしを見て頷きながら美貴ちゃんが笑う。

「まぁ、梨華ちゃんは強いからねぇ、心配してないけど」

44 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:51

 ───良かった、あたしが心からそう思いながら口にすると
「ん?」美貴ちゃんが、何が?という顔をする。

「……あの日、美貴ちゃんに会えて」
「あぁ、………なんかさ、やっぱ運命とかってあんのかなって
 思っちゃうよね」
「……うん」
「ぶっちゃけさ、一時期、街歩いてるときとかに、梨華ちゃんが
 都合よく偶然いたりしないかなって思ったりしてたから、
 最初、似たコがいんなーって思って見てたんだ。
 で、あんとき、梨華ちゃん携帯に向かって(もぉ!)って甲高い声でさー
 こりゃ、間違いない本人じゃんって思ってさぁ…」
「え? 声出てたんだ、あたし? あれ真希ちゃんからのメールだったんだよね…」
「振り回されてたよねぇ、梨華ちゃん……」

美貴ちゃんのシミジミした言い方にあたしは苦笑した。

45 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:51

真希ちゃん───あの日、あの時刻のあの場所に行かなければ
あたしは真希ちゃんと会うことはなかった。

そうしたら、
真希ちゃんに呼び出され、真希ちゃんの学校の最寄り駅にある
あの交差点付近に行くこともなかった。

すべては不思議な廻り合わせで、
時がくると成るべくように歯車が合わさり運ばれて行く、

あたし達の何げない日々の積み重ねは、
案外そんなふうに出来ているのかも知れない、
そう思った。







                    ++───つづく++

46 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:52


47 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:52


48 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/23(水) 23:52


49 名前:名無し飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 00:13
このまま終わってくれるの?
でも終わって欲しくない…
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 00:53
そうだったのか〜…
それにしてもりかみきのやりとりが微笑ましくて
暫しほのぼのとした気持ちになりましたw
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 06:37
あぁ、やっぱりななしーくさんのお話が好きです
とてもとても好きです
読んでてすーっと胸の中に入ってくるというか
うん、そして相変わらず続きが気になります
52 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/24(木) 17:13

レスありがとう。


49さん
うーん……答えるのが難しいw

50さん
そうだったんだよ〜w

51さん
あー、なんか嬉しいよ。書いてよかったな、とw

53 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:14



54 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:14

真希ちゃんと出会ったのは三月十日、夜の海浜公園だった。


よっすぃ〜が告白してくれた三月十日は、
あたしにとって特別な日で、少しでもあの展望台に繋がってる
場所に行きたくて、会社帰りにあの公園に寄った。

暗くて近づかないと見えないとは言え、
制服姿であんなところで酔っ払ってる真希ちゃんには度肝を抜かれたし
見て見ぬ振りなんて出来ないと思った。

ふらふらと足元の覚束無い真希ちゃんに付き添っておうちまで行って
また違う意味で驚いたけど…

55 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:14

昏々と眠る様子を見て大丈夫だとは思ったけど、未成年だし、
万が一のことがあったら困るから
おうちの人が帰ってくるまで付き添っていた方がいいのかな?

そんなことを考えてるうちに、
お部屋の温かい温度と、真希ちゃんを無事におうちに連れて帰れて
気が緩んだのか、つかの間ウトウトしちゃってたみたいで…

目が覚めたら、もう酔いから醒めてたらしい真希ちゃんがあたしを
ジッと見ていて驚いた。
人形みたいに綺麗で温度のない眼に思わずぞっとして、からだが
ビクッと反応してしまった。

そんなあたしを無言で見ていた真希ちゃんが、ふらりと立ち上がり
近寄ってきたかと思ったら、突然キスされて───

56 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:15

あの日は三月十日で、
あたしにとっては特別な日で、まだ誰ともキスしたことなかったあたしは
パニックになって号泣した。

─── いつか、よっすぃ〜と、

そんなこと現実には起こりっこないってわかってた筈だし、夢見てるつもりも
なかったんだけど……

真希ちゃんは白けた顔で、
なんでキスひとつで騒ぐんだよ、いい歳してバカじゃねーのって、
吐き捨てるみたいに言ったけど、

あの日は特別な日だったし、
突然キスされたりで、ちょっと気持ちが不安定になっていたみたいで
あたしはつい好きな人がいるって言っちゃって……

57 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:15

あとはもう堰を切ったように、いままで抱えてきたよっすぃ〜への
想いのすべてを語ってしまっていた。

高校の卒業式の日に告白をされて、断ってしまったこと、

そのあと、自分の本当の気持ちに気づいて後悔して、後悔して…
それでも好きだから、ずっと想っていること、

いまどこにいるかもわからない、今度いつ会えるかもわからない
そんな相手をただ想ってる、そのことに
真希ちゃんは絶句して、寂しくないのって聞いてきた。

その時はそれだけだったけど、
その後、何回も寂しくないのって聞いてきて、
いつからか、
寂しくなったら自分に言えって、自分がいるからって
そう言ってくれるようになった。

58 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:16

初対面なのに大泣きして過去を語るという、いつもだったら絶対に
有り得ない行動をしているうちに三月十日は十一日になっていた。

朝になって電車が動くまで、おうちにいさせてもらっても
誰も帰ってこなくて、
そのときになって真希ちゃんが一人暮らしだってことを知った。

顔色も悪いし、ご家族もいないし、やっぱりちょっと心配で
「具合悪くなるようなら電話して」あたしはそう言って連絡先を
交換して一度家に帰った。


会社が終って、ふと
真希ちゃんはあのあと大丈夫だったかな?そう思って、
あんまり深入りしない方がいいって思う自分がいる半面……


早朝の玄関で見送ってくれた表情が───

59 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:16

あまりに孤独で、
そのことを感じる感情すら残ってない、そんな眼をしていて、

だからあたしは
ここでその眼に気づかなかったフリをしてはいけない、
漠然とそう思って、真希ちゃんに電話をした。

真希ちゃんは街に出てたみたいで、
「これから○○って店に行くんだけど、迎えに来るっていうなら
家に帰ってもいいよ?」って、どこか挑発するみたいな声で言われて
あたしは迎えに行った。

そんなやり取りを繰り返して、
あのお店では怖い思いを何回もしたけど、必ず真希ちゃんは助けてくれて
そのたび呆れた顔をされた。

60 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:16

何回目かに迎えに行ったとき
「梨華ちゃん、いっつも男に絡まれるし、もう助けるの面倒だから行かないよ」
そう言ってくれた。
それが真希ちゃんがあたしを梨華ちゃんて呼んでくれた最初だった気がする。

迎えに行くのを止めると、呼び出しがかかるようになった。
それに答えないと真希ちゃんは無茶をする。

売られた喧嘩は全部買うし、本当にムチャクチャなことをする。

私服の真希ちゃんはあたしより大人びて見えるくらいだったし、
いつも堂々としていたから、どんなところへ行っても未成年には
見えなかった。お酒も恐ろしいほど強かった。

61 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:17

真希ちゃんはあたしと二人のときにはお酒を飲まない。
あたしが怒るからじゃなくって、本当は好きじゃないんだって
言っていた。
じゃ、なんであんなに飲むのって聞いたら、
「外で売れらた喧嘩を買わなかったら、ナメられるからだよ」って
苦笑いする顔は辛そうだった。

真希ちゃんの噂もいっぱい聞いた。
一緒にいるときにヒソヒソ言う人たちもいれば、真希ちゃんが
あたしから離れた隙にわざわざ教えに来る人もいた。

自分や人を傷つけるのはよくないことだと思うけど、
面白おかしく、人を中傷したり、卑下したりする噂話なんか
あたしにはどうでもいいことだった。

62 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:19

だけど、そこまで人の恨みを買いやすい真希ちゃんにも問題がある
そう思っていた。

あたしは真希ちゃんが抱えている闇や孤独を知らなかったから…


真希ちゃんは喧嘩さえもが強かった。
喧嘩慣れしていない相手なら数人の男の人に絡まれても平気だった。

真希ちゃんって何者?そんなふうに聞くと、
「バケモノの娘だからバケモノなんじゃないの?」って軽い調子で
言っていた。
お父さんがどんな人でどんな仕事をしてるのか、真希ちゃんは
あたしには教えてくれなかった。
後藤という苗字も亡くなったお母さん方だったようだし…

63 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:20

真希ちゃん曰く、オヤジはごとーをペットだと思ってるから

基本放し飼いで面倒なんてみなくても、勝手に大きくなるだろうって
思ってるみたいだし?
自分の気の向いたときだけ呼んで頭を撫でて、
飼主は誰だ? 尻尾を振れって強要して、無視したら殴って
高いエサを食わして、立派な小屋を用意して───

 ───そうだ、ペットは大切な家族だっていうからなぁ、
それならごとーはペット以下の家畜だな、
なのにさ、世間的には愛娘らしいよ、笑えるね。

だからかな、昔何回か誘拐されたんだ───そう言って肩を竦めた。
まぁ、いまは自分は自分で守れるから問題ないよ。

64 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:20

そんなふうに、
他人どころか、家族も、自分さえも
全くどうでもよさそうにしている真希ちゃんの態度に
なんでそうなってしまったのかを考えるとあたしは何も言えなくなった。


65 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:21

外にいるときの真希ちゃんは、
いつでも敵と戦える俊敏な肉食獣みたいに隙がなくて、尊大だった。
それでも、あたしには笑い顔を向けてくれたし、一緒にいるときには
無茶をしなくなった。

真希ちゃんの家にも何回か言ったことがある。
自分の部屋に篭ってるときはベタベタ纏わりついて子供みたいに甘えてきた。

66 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:21

ある夜、
赤い満月がやけに大きく見えた晩に今日だけは泊まって欲しいと言われて、
縋ってくるような眼差しに、あたしは断ることが出来なかった。

真希ちゃんのセミダブルのベッドで一緒に横になって、


深夜、ふと喉の渇きに目が覚めて起き上がろうとしたら、何かが髪に絡まっていて
あたしは思わず…痛っ!と声を上げた。

こっちを向いて寝ていた真希ちゃんの瞼がゆっくりと上がる。
暗闇の中、
ガラス球みたいな透明度の瞳は作り物みたいに美しかった。

67 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:22



 ─── どこいくの? 遠くにあるものになげかけるような声、


「喉渇いたから、お水飲みたくて」あたしがちょっと照れ笑いしながら言うと
数回瞬きした真希ちゃんの眼に精気が宿る。

「あぁ、ゴメン」あたしの髪に絡まった指先を外しながら苦笑して
「なんなんだよ、これ?───いまさら…」悔しそうに呟いた。

どうしたの?そう聞くと、「コレはさ…ガキの頃のクセだったんだ…」
真希ちゃんは力なくそう言った。

68 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:22

クセ?あたしが小首を傾げて聞くと、真希ちゃんは話しだした。

母親がさ、まぁ父親に飽きられてからはほとんどこの家に
いなかったんだけど…
たまーに夜中帰ってくると、なぜかごとーんトコ来て寝てるんだ。

最初はたまたまだったと思うんだけど、
髪の長い女だったから指先に髪が絡んでてさ?
母親が起き出したとき、髪が引っ張られて痛いって騒ぐから、ごとーも
目が覚めたんだ。

ほら、ガキだからさ、
こうすれば……そう言って向き合って座ってるあたしの耳の横の髪を
くるくると自分の人差指に巻き付けて、

母親がまた自分を置いていこうとしたらわかるって思ったんだ。

69 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:22

「わかったって、止めたって出ていっちゃうんだから意味ねーのに……」


そう言って静かに笑いながら、あたしの髪の毛を外した。

真希ちゃんは普段はほとんど無表情なのに、寂しいときには笑うんだ、
そう思ったあたしは思わず真希ちゃんを抱きしめていた。
なに?
冷かすような声で聞かれて、あたしは真希ちゃんの肩先でくぐもる声を出す。

「あたし、真希ちゃんのママだったら良かったのに……
 そうしたら、こんなに可愛い娘が寝てるときにひとりにしたりしない…」

 ───そう、真希ちゃんが、ぽつり、と答えた。

「……ごとーも梨華ちゃんが家族だったら良かった。そしたら他に誰も
 いらなかったのに………」

真希ちゃんはただあたしに抱きしめられたまま、小さな声でそう言った。

70 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:23

真希ちゃんは出会った直後からよく迫ってくるコだった。

でもそれは明らかに冗談だとわかるものだったし、
その眼に浮かぶどこか幼い色が自分に注目してと訴えているようで、
邪険にすることは出来なかった。

そうは言っても毎回、
そんな気はないとガードを張り続けるのは結構疲れることだった。

だけどあたしは真希ちゃんを避けたりしなかった。
真希ちゃんってコの
いいとこも悪いとこも全部があっての真希ちゃんだから、
それでいいんだよ、そんな真希ちゃんが好きだよって、伝えたかったから


それは誰かが絶対に伝えてあげないといけないことだと知っていたから…

71 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:24


そんな日々が四ヶ月ばかり過ぎ、
真希ちゃんが迫ってくるのがヒートアップしてきて
「ジョーダンだって」と手を離されても、あたしは笑い返せなくなっていた。

それだけじゃなく、連絡してくる回数も日に日に増えるようだった。
出足の遅い梅雨の真っ只中、あたしは溜息ばかりついていた。



  





                     ++───つづく++

72 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:24


73 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:24


74 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/24(木) 17:24


75 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 19:02
はああぁぁぁぁあぁ
苦しいです・・・
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 20:15
遅くなりましたけど
>>35
ここの表現すごいです
77 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 21:12
ストーリー展開が凄いです
引き込まれます
78 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/24(木) 22:53
ごっちん・・・( ´Д⊂
みんな幸せになって欲しいなぁ・・・
79 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/25(金) 09:31

レスありがとう。


75さん
えぇーっと、……ゴメンw

76さん
ありがとう。あるあるだった?w

77さん
ありがとう。気に入って貰えてるならよかったw

78さん
( ´ Д `)<…ごとー、呼んだ?

80 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:32



81 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:32

「……あれって、梅雨の頃だったね」

まるで、
あたしと同じことを思い出していたのかと思うタイミングで
美貴ちゃんが言う。
「え?」あたしは咄嗟に驚いた声を出していた。

「ほら、梨華ちゃんが溜息ばっかついてたの。あの、後藤ってコに
 手を焼いて疲れ切ってた。あの頃、美貴が言ったこと覚えてる?」
 
そう言って美貴ちゃんは、
深呼吸のように大きく息を吸って細く全てを吐き出すと、話し始めた。

82 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:33



『あのコとは距離を置いた方がいい……
 人の想いに振り回されるのはもうやめな。
 そしたら、美貴、協力出来ることがあるかも知れないから…』




83 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:33

梨華ちゃんと再開して、
そりゃ最初は高校んときの印象とか、よっちゃんの話しとかが
あったから、ちょっとは構えてたんだけど……

つか、そもそも、
可愛い女じゃなかったら、あそこまでよっちゃんがハマる訳も
ないんだし…
まぁ、一緒に飯行ったりとかして、
話すことが増えると美貴は梨華ちゃんを気に入ってたんだ。

84 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:34

てかさ、
よっちゃんのあの打ち明け話を聞いたあと、どうにか美貴が梨華ちゃんと
会わせてあげらんないかなって思ってた時期があって……

けど美貴は、クラスに友達って言えるヤツいなかったし、
梨華ちゃんの家とかも知んないし、
よっちゃんの携帯盗み見るのもどうかと思うし、

そもそも梨華ちゃんに男とかいたら目もあてらんないし、
でもそれが、フツー、一番確立高いだろうしって悩んでたんだよ。

85 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:34

結局、
悩んでたって方法ないし、あのあと、よっちゃんも美貴もまったく
そのことに触れなかったし、さ。

まだかなりな時間が必要かも知れないけど、このまま、よっちゃんの
長い長い恋もいつかは終る時が来んのかなって思ったりしてたんだ。

よっちゃんてモテてたからさー
まぁ、お客さんに惚れられることが多かったから、一線は引いてるように
見えたし、惹かれてるコがいるようには見えなかったけど…

86 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:35

そんな時期がどんくらい? 1年?……1年半くらいか、あって、
三月の終わりだったよね、梨華ちゃんに会ったのって、四月になってたっけ?

まぁいいや、で、
何回かご飯行って、だんだん仲良くなってくると
男の影がないのはわかったんだけど、好きなヤツはいるかも知れないしって
美貴は結構慎重に梨華ちゃんをリサーチしてたんだ。

んでいつだっけ?
あー、梨華ちゃんの溜息が増えるちょっと前だから、梅雨入り前だね。
飲みに行ったときさ、
美貴が恋バナ振ったら、ずっと想ってる人がいるって話してくれたじゃん?

87 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:35

卒業式の日に告白してくれたのに一度断っちゃって、けど傍にいなくなってから
大切さがわかって、ずっと好きでい続けてる人。

そんな好きなら告白すりゃいいじゃんって言ったとき、
実は美貴かなりドキドキしてた。

したら梨華ちゃん、いまはどこにいるかもわからないからムリだよって
そんな状態なのに悲壮感も気負いもなくってさ?

そんなヤツ想っててどうすんの?もう誰かと付き合ってるかもよって
美貴が言っても、
笑って、だって好きで想ってるんだもんって言ったよね。

88 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:35


例えば、
遠距離とかなにか事情があるからムリに納得してるわけでもなく
恋人だから想ってなきゃいけないって約束事に縛られてるわけでもなく
それでも心がその人から離れないんだよ?

だからいいの、それにいつかまた会える気がするし…
って、あたし、都合良すぎかなぁ……


89 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:36

笑顔でそういう梨華ちゃんを見て、なんて強いコなんだろうって
美貴、思ってさ。
んで、その相手は間違いなくよっちゃんじゃんって。

よくさ、ずっと強く、想い続けると叶うって言われてたりするけど
それって本当なのかも知れないって、あのとき思ったよ。

そのあと、
今度は、よっちゃんを注意深く見てても誰かに心を動かされてる様子はないし
さてどうやって二人を引き合わせよう、そう思ってるときにあのコ、
後藤ってコの存在を知ったんだ。

90 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:36

美貴と会ってるときに、
梨華ちゃんの携帯が鳴ることが増えて、画面見ると溜息つくからさ?

一瞬、変な男にでも付きまとわれてるのかと思って「何?揉め事」って
聞いたら、梨華ちゃんは首を横に振って、
「ううん、妹みたいに思ってるコ、ちょっとヤンチャなの。あたしが
見てないとムチャばっかりするから…」そんなふうに言って笑ってたけど、
明らかに困ってる感じだった。

91 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:36

そんで、そうあの日───、

せっかくの休みなのに雨が降ってて、ひとりで昼飯も冴えないなって思って、
ちょうど日曜だったから梨華ちゃんを呼び出して一緒に飯食ったよね。

美貴が、このあとヒマだったらどっか遊び行こうよって誘ったら、
梨華ちゃんはゴメンねって眉を下げて、
「ちょっと予定が入っちゃって……」歯切れ悪くそう言って、駅まで一緒に
戻ったんだ。

92 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:37


改札の前で、あのコが傘もささずに立ってた。


梨華ちゃんはその姿を見るとビックリして走り寄って行ったよね。

バックからハンドタオルを出して、拭いてあげようとして、そうしたらあのコは
目深に被ってたキャップをわざわざ外して、わざと濡れて見せて……

後姿だったから表情は見えなかったけど、
あー、梨華ちゃんがむくれてんだろうなってそれがわかるくらい楽しそうに笑って
頭を振って雨粒を飛ばして、仕草のひとつひとつがヤケに様になってるコだった。

93 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:37

だから余計に傍によることもできない雰囲気で、
少し離れたところから見るふたりはまるでイチャイチャしてるみたいでさ、
梨華ちゃんの気持ちは違ったとしても、傍目には恋人みたいに見えた。

美貴が、ジッと見てたから視線に気づいたんだろうね、
ちょっと顎を上げるようにして、こっちを見据えて口角の片側だけを
僅かに上げて鼻で笑ってきた。

あんな挑発的でムカつく笑い方されたのって、あんときだけだよ。

梨華ちゃんは振り返るとあのコの視線の先にいる美貴を見て眉を下げた。
「ゴメンね美貴ちゃん、今日はありが…」
その言葉の途中であのコは梨華ちゃんの肩に手を回して「冷てー、風邪ひくー」
聞こえよがしにそう言って歩き出した。

94 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:38

肩を抱かれた梨華ちゃんはもう一度美貴を振り返って、ゴメンねって言ってた。
ふたりが見えなくなったあと、美貴は暫く動けなかったんだ。


あの目───

アレは妹なんかじゃない、
アイツ、全部わかってやってる、そう思ってすごくヤな感じがしたんだ。


よっちゃんと梨華ちゃんを引き合わせても、あんなのが梨華ちゃんの傍にいたら
話がややこしくなる。

まっさらな状態だったとしても、あのコは結構強烈だろう、
なのにふたりの間には一度溝が出来ている。何よりも相手の想いを信じられる
状況じゃないと上手くいく話もいかなくなりそうだ…

95 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:38


───梨華ちゃんにあのコから離れてもらおう、


よっちゃんに引き合わせるのはそれからだ。
離れてても五年も想い合っていられたふたりなんだから、ここでそれが数ヶ月
伸びたって問題ないだろうし……


美貴はあのとき、そう思ったんだ。
それが今度こそふたりが上手くいく最良の方法だと思ったから……


96 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:39

「……でもいまとなっては、それが失敗だったって、
 すぐにふたりを合わせておけば、こんなややこしいことになんなかったのにって
 後悔したけどさ」

俯いてた顔を上げて、ゴメン、美貴ちゃんが呟く。
あたしは大きく首を横に振った。

「ううん、ううん、いいの…
 美貴ちゃんはあたし達のこと、真剣に心配してくれてたんだもん…」

あたしは微笑んで、嬉しい美貴ちゃんの気持が…そう思って言った。

「ありがとう…」

美貴ちゃんも僅かに目元を微笑ませながら首を横に振った。

97 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:39

「…美貴、ひとつ気になってたことがあって……
 聞いてもいい?……あの日、あの火事の夜、あの後何があったの?」


あたしは美貴ちゃんの目線を受け止めて、大きくひとつ頷くと
あの日の記憶を辿り始めた









                    ++───つづく++


98 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:39


99 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:40


100 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/25(金) 09:40


101 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/25(金) 12:39
固唾を飲んで見守っております
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/25(金) 16:50
おぉー連日の更新ありがとうございます
ここを見るのが今の私の生きがいw
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/25(金) 17:55
更新お疲れさまです
更新あると一気にテンションあがります
あの夜、何があったんだろう…
104 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/25(金) 22:00
いしよし、いしごま、りかみき。
本当に85年組は魅力的ですね。
ななしーく様のやさしくてせつない物語
大好きです。
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/25(金) 22:29
次のお話でどんな事実が明らかになるのか…
気になります!
106 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/27(日) 23:34

レスありがとう。かなり嬉しい↑↑


101さん
はい、よろしくですw

102さん
生きがいw あ、1日抜けたゴメン…

103さん
あの夜…… ジャジャジャンッw

104さん
自分が85年組すきだからなぁ…バレバレだと思われるがw

105さん
こんなカンジ?w

107 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:34



108 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:34

「……あの日、真希ちゃんからメールが着て、
 学校のあの駅でいいビストロを見つけたから夕飯一緒に食べようって、
 仕事終ったら来てって言われてあの場所に行ったの」

あたしが思い出しながらゆっくり話し出すと、美貴ちゃんは
椅子に深く座りなおしながら相槌を打った。


109 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:35

改札に着くと私服に着替えた真希ちゃんが待っていた。

真希ちゃんて学校に私服を置いていて、着替えてしまうといつでも高校生には
見えなかったし、お店もいろいろと知っていて、あそこの飲食店が並ぶ大通りの
お店にもいままでも行ったことがあったんだ。

それで、あの日も大通りに出て歩いていると、通りの先のお店の前から
賑やかな声がして、なんとなく目が行っちゃって見てたら、

すごく華やかで綺麗な人が数人いて、
わぁ、目を惹くなぁ、なんて思いながら近づいて行ったとき───


 
110 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:35



 ……よっすぃ〜が、……よっすぃ〜にしか見えない人がいて、



あたしは心臓が止まりそうなくらい驚いて思わず足が止まってた。



111 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:36


 ─── よっすぃ〜?……よっすぃ〜、なの?


声になるかならないかの呟きが思わず口から漏れていて、あたしの喉は
ゴクリ、と鳴って、そのまま立ち尽くしていた。


「どうしたの?梨華ちゃん…」

真希ちゃんの訝しげな声があたしを呼んだとき、よっすぃ〜が辺りを見回すように
首を回してこっちを向いてすごく驚いた顔をした。唇が少し動いたみたいに見えた。

そのとき、
横にいた綺麗な人がよっすぃ〜に寄りかかるようにして腕を組んだの。色っぽい声で
「今夜は返さないから」って笑いながら言ってて……

あたしはすごく動揺してるのに、その光景がコマ送りされてる映像みたいにやけに
はっきり見えて、奥のドアがまた開いたのがわかった。
そうしたら、今度は美貴ちゃんが出てきて…

112 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:36

美貴ちゃんは、呆然と立ってるあたしに気がついて
やっぱりすごく驚いた顔になって「梨華ちゃん」ってあたしの名前を呼んだ。
よっすぃ〜はさらに大きく目を見開きながら美貴ちゃんの方を向いた。

そのときも、よっすぃ〜の腕にはさっきからずっと綺麗な人の腕が
巻き付いたままで───


あたしの目に映ってるものが、いま目の前で起こってるひとつの現実だなんて
理解できなかった。

なんでここによっすぃ〜がいるのか、
なんでそこに美貴ちゃんまでいるのか、
なんでよっすぃ〜がたくさんの綺麗な人に囲まれてるのか、
「今夜は返さないから」ってどういう意味なんだろうとか、


113 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:37

いろんなことで頭がグチャグチャになって、あたしは咄嗟に踵を返すと
走りだしていた。
美貴ちゃんのあたしを呼ぶ声が聞えた気がしたけど振り返れなかった。

とにかく走って、走って、息が切れて、足が縺れそうになって、
ようやく立ち止まって、肩で息をしてたら腕を掴まれて「どこ行くのっ」て
真希ちゃんの声だった。

腕を捕られたら、急にからだに力が入らなくなって、座り込みたくなった。
ひとりでたっていられないあたしを、真希ちゃんはそのまま半分抱えるようにして
少し歩いた先にあるお店に入った。

114 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:37

奥の個室になってる席に通されて、お店の人に飲み物を聞かれた。

「ぺリエある?」って、真希ちゃんが聞いてる横から、あたしがお酒が
いいって言うと、「じゃなんか喉越しよくてアルコール低いの作って」
そんなふうに真希ちゃんが言ってたと思う。

あたしは、とにかくなんでもいいからお酒が飲みたい気分だったの。
少し麻痺しないとからだ中がピリピリしてて、
何かを考えるどころか、息をするのさえもしんどく感じてたから。

115 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:37

カクテルがきたらそれを飲んで、お代わりしてって、どれくらいかな、
三〜四杯くらい飲んで、もう一杯頼もうとしたら真希ちゃんに止められた。

あたしそんなに弱くないからほっといてって睨んだら、
「明らかにフツーじゃねぇんだよ」ってスゴまれて…

その迫力に怯んじゃって、グラスから手を離してたの。そうしたら今度は
涙が出てきちゃって……

もう、自分が何に動揺してるのかもわからなくて、ただしゃくり上げてたら
真希ちゃんが言ったの。

「さっきの、女に囲まれてたスラッとしたキレーな顔したヤツ、アイツだろ?
 梨華ちゃんがずっと言ってた想い人ってさ、
 アイツさぁ、こっち見てたけど追いかけてもこなかったね」

116 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:38

「ごとーはね、女と遊んでたこともある、だからよくわかるんだ。
 女にモテる女が、ね? ……まさにアイツがそうだよ、
 あの色気じゃ周りの女、ほっとかないだろうなぁ…
 てか、もうすでにあの中にいた誰かとデキてるかも……ね」

真希ちゃんの言葉のすべてがあたしの心に突き刺さってきた。

『今夜は帰さないから』そう言われていた…腕を組まれていた…
追いかけてきてくれなかった…


でもそんなの、全部当たり前のこと、
頭の隅では冷静な自分の声がして、あの告白から五年も経ってるんだから
それより何より、あの日、あたしはよっすぃ〜を拒んだんだから…

なのに、どうしても涙が止まらなかった。
ただただ、胸が苦しくて───


117 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:38

「…想ってるだけでよかったんじゃないの?
 何も期待してなかったんでしょ?…じゃ、なんで泣くのさ」


ズシンッ───
真希ちゃんの声が胸を大きく貫いた、穴が開くくらいに───

本気でそう思っていた筈だった、綺麗ごとを言ってるつもりなんてなかった。
あたしのよっすぃ〜への想いは……揺るがないものだと思ってた。

それなのに─── こんなに簡単に傷付いてる自分が情けなかった。

自分の想いを信じていられる要が崩れていきそうになったとき、真希ちゃんの
優しい声が言った。

「それはさ、当たり前のことなんだ。
 梨華ちゃんは悪くない、なんにも悪くない、ちょっと寂しかっただけだよ?
 心を痛める必要なんてない……」

118 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:39

「ねぇ…顔を上げて?目の前には誰がいる?
 あーゆーのがタイプなら、ごとーがああなるよ?
 完璧に梨華ちゃんの望むままになってみせる、ごとーは上手くやれるよ?」
 
真希ちゃんはそう言いながら、あたしの腕を掴んで引き寄せた。
そして耳元で囁く声「アイツの代わりでいいんだ、梨華ちゃんを愛させて…」

いつもだったら、なに言ってるの?って笑いながら簡単に外せた腕だった。

なのに、
あの日のあたしは心の奥底で、この腕に縋りたがってるって感じて、
そんな自分の気持ちを、流されたがってる自分を怖いと思った。
そう思ったら、とっさに立ち上がっていた。

119 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:39

「帰るっ!」叫ぶように行って個室を出ようとしたら、また腕を掴まれて
「じゃ、送る」強い声でそう言われた。
あたしは真希ちゃんの顔を見ることが出来なくて、俯いたまま呟いた。
「……いまは真希ちゃんといたくない」


……っ、
憤りを押し殺しながら息を吐く気配がして、いつもより低い声がした。

「タクシー呼ぶからそれ乗って帰って、…これ以上は譲れないから」


120 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:40

真希ちゃんの呼んでくれたタクシーで家まで帰ってきて、玄関に入った瞬間に
あたしはその場で泣き崩れた。

ずっと想ってられるって、想ってるだけでいいなんてそんなのは詭弁だった。
自分で自分を誤魔化してきたんだ。

想い続けてさえいれば、
いつかよっすぃ〜がもう一度手を差し伸べてくれる気がしていた。
差し出してくれた手を跳ね除けたのは自分なのに、そんな都合のいいことを
ずっと考えていた。

携帯もずっと変えていなかったし、
お父さんの転勤で、あのマンションにはいまは他の人が住んでいるのに、
連絡が取れない友人がいるんで、もし自分を訪ねてくる人がいたら連絡先を伝えて欲しい
そんな伝言を残すことまでしていたクセに…


121 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:40

自分の醜さに吐き気がした。
泣いて泣いて泣き続ければ自分の汚さが少しは吐き出される気がして、
やっぱりすぐに、自分を甘やかすことを考える自分が嫌で嫌で───

それがどんなよっすぃ〜だったとしても、ずっと想っていられると思ってた。
かけがえのない唯ひとりの人なんだから───もうそのことに気がついてるんだから、

よっすぃ〜が想ってくれたみたいに……今度はあたしが……
それなのにその想いを貫けなかった自分にあたしは失望した。

それはよっすぃ〜が想ってくれた昔のあたしを失うことのようで、いまここにいる
あたしも消えていなくなってしまえばいいと思った。

あんなに激しく自分を嫌悪したのは、あれがたぶん始めてだった。


122 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:40

「それで目が覚めたら、本当に忘れていたの、そんな自分を…
 だからあたしは、美貴ちゃんが思ってくれるみたいな見返りを求めない程の
 真っ直ぐな想いもそういられる強さもなかった……ただの卑怯者なの」

あたしは滲んできた涙を笑って誤魔化しながら、鼻を啜った。
美貴ちゃんは呆れた声でバーカって言って優しく微笑んだ。

「あの、後藤ってコは虫が好かないけど…ひとつだけその通りだって
 思うことがある。
 梨華ちゃんが感じた気持ちは当たり前のことだよ。
 自分の好きなヤツに、自分を想って欲しいって誰もが願うことさ…
 梨華ちゃんはあの日あのコに逃げなかった。 目を逸らさないで最後まで
 自分の想いと向き合って、ちゃんと傷付いた。
 それだけで十分、真っ直ぐだし強いんだよ」

美貴ちゃん……
我慢しようとしたけれど、思いがけない言葉が嬉しくて嬉しくて
溢れ出してくる涙を止められなかった。

123 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:41

「……なんか美貴は梨華ちゃんの泣き顔ばっか見てる気がする」
「ごめん、ね…」
「美貴はさー、泣き顔より、ムッとした顔で突っかかってくるコのが
 モエなんだよねぇ……だからどうせならそっち見してくんない?」

思わず、なにそれ?と苦笑してしまって、
「…もぉ、美貴ちゃんは」そう呆れたように言いながらあたしがぎこちなく浮かべた
泣き笑いの顔を見て、鼻に皺を寄せるようにして笑うとこう言った。

「もう今更って気がするけど……
 この際だから、今度は美貴の知ってることを全部話すよ」









                       ++───つづく++

124 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:41



125 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:41



126 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/27(日) 23:42



127 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/27(日) 23:45
ほぉぅっ
リアルタイムに遭遇してしまったうえ、呼吸するのも忘れてました
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/28(月) 02:11
そんなことがあったのかー
次の独白も気になりすぎます
129 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/28(月) 14:04

レスありがとう!


127さん
息はしよ?キケンだからw

128さん
始まり、始まり〜w

130 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:04



131 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:04

あの日は、裕ちゃんの… あー、知ってるよね?
そう、よっちゃんとこのオーナーでもある裕ちゃんね、

その裕ちゃんが経営してる店があの通りに何軒かあって、美貴たちが
出てきたのもその中の一件なんだ。
そこで、待ち合わせがてら食前酒を一、二杯飲んでた。

裕ちゃんはクラブも経営してて、あの日はそこの女のコの誕生日でさ、
お店の女のコの誕生日には、その本人とあとはシフトが休みのコを適当に
飲み食いに連れてくんだ。
あの場にもいたよ?
押しが強そーでハデなカンジの関西弁のねーちゃんなんだけど、

132 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:05

よっちゃんはリフレ絡みで店のコと顔見知りだし、美貴の仕事が
ネイリストだって前に話したよね?

前の職場が潰れて、
職探ししてるときによっちゃんが裕ちゃんを紹介してくれたんだ。

美貴は専門学校のときはメイクとかもトータルで勉強してたし、水商売の
お姉さま方は爪にもお金かけてくれるからね。

お店始まる前に裕ちゃんとこに出張でネイルやらせてもらったり
新人のコなら映えるメイクのレクチャーしたりとかしてたの。

ま、いまもやらせてもらってるからあの辺りによく出入りしてたんだ。

133 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:05

で、美貴とよっちゃんもヒマなら来いって、裕ちゃんに呼ばれててさ、
よっちゃんに腕組んでたのがその日の主役のコ。

よっちゃんてさ、付き合いいいようでいつも二次会の途中とかで消えちゃうんだよ。
つっても、
あの姉さん達にガチで付き合ってたら肝臓がいくつあっても足りないって
カンジだから、それで正解なんだけど、
だからまぁ、あんな言い方してたんだと思うよ?

134 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:06

けど実際あのあとは
よっちゃん、魂抜けたみたいになっちゃって全く使い物にならなくて、

「なんやなんや、おもろそうなことになっとるやないか〜、どないしたんや?」って
抜け殻みたいなよっちゃんを見てウハウハ喜びだす裕ちゃんから、どうにか美貴が
よっちゃんを強奪して連れて帰ったんだ。

家に帰ってからも、あまりに衝撃がデカすぎたらしくて
コイツ、石像になったんじゃねーの?ってくらい、よっちゃんは動かなかった、いや、
動けなかったんだと思う。

しばらくの間、
呆けた顔で座り込んでて、それからやっと現実に感情が追いついてきたみたいで、
美貴に「梨華ちゃんと連絡とってたの?」って聞いてきた。
もうここまできたら、ヘタに隠さないで全部言っちゃった方がいいと思って
話したんだ。

135 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:06

で、美貴は話しの終わりに言ったわけ、
「梨華ちゃんもよっちゃんを好きだったんだから、もうさ、くっついちゃいなよ」って、
したらよっちゃんは「でも美貴は、私だって聞いたわけじゃないんでしょ」とかいうから
「オマエ以外に卒業式の日に告ったヤツがいんの?」って言い返したんだ。

もうとにかくさ、煮え切らなくて、
美貴はイライラしてきちゃって「結局、よっちゃんはどうしたいわけ?」って聞いたら、
「わからない、わからないけど会いたい」っていうから住所を教えたんだ。

それでもまだ、いつまでも愚図愚図してるから「オマエが行かないなら美貴が行く」って
もうマジでそうしようかと思ってたら、まぁ、ちゃんと行くっていうからさ、譲ったの。

136 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:06

よっちゃんが梨華ちゃんちに着いたとき、
一階の奥の部屋から火が出てて、梨華ちゃんの部屋は二階の階段から二つ目だったから
部屋は離れてたんだけど煙は結構上がってたみたいでさ、

逃げ出した住人か野次馬かわからないけど人も集まり出してて、消防車はまだかとか
声が上がってたんだって。

よっちゃんは周りを見回してみたんだけど、梨華ちゃんがいないから部屋に行って
みたらしいんだ。で、ドアノブを回してみたら、簡単にドアが開いて、

部屋の奥の方は結構煙で充満してたみたいなんだけど、なぜだか梨華ちゃんは玄関に
コートを着て、靴を履いたまま座り込んでたんだって、
だからよっちゃんはそのまま梨華ちゃんを担いで部屋から逃げたんだって言ってた。

美貴はあの夜、
その場にいた訳じゃないから、状況が詳しくわかんないんだけど…
まぁ、こんなカンジの話しをよっちゃんから聞いてたんだ。


137 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:07

んで次の日、
美貴が仕事のあと梨華ちゃんとこに行こうと思ってたらよっちゃんから留守電が入ってて、

梨華ちゃんは大丈夫だから、今日は仕事上がりに直接お見舞い行かないで欲しい、
その前に美貴と会って話したいことがあるって、そんで会ったら、こういうのよ、

卒業式の日から付き合ってたってことになってるから、話合わせてくれって、
もう美貴は───ハァ?ってカンジだったよ。

で、話を詳しく聞いて、なんでそんなややこしいことしちゃうんだよ、もう全部話して
ちゃんと付き合えって言ったら、

「梨華ちゃんが私を好きだと思ってたのは急にいなくなったから、寂しいのを
 好きだからって勘違いしてるのかも知れないじゃない?」とか言い出すからさ、

なんで、自分が言われて辛かったことをわざわざリピートさせんだよって思って
「勘違いで五年も好きでいるかよ」って言ってやったんだけど…

138 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:07

結局、
梨華ちゃん本人から聞いたわけじゃないし、信じきれないんだろうなって思ってさ、

人道的にはどうかわかんないけど、基本両想いなわけだし、
そうやってしばらく恋人として過ごしたら梨華ちゃんの気持ちを信じられるように
なるかも知れないって思って、わかった美貴は黙ってるって言ったんだ。

それでさ、
すぐに梨華ちゃんの記憶が戻るだろうと思ったら全然でさぁ、

でもまぁ、一緒に住むうちに梨華ちゃんの想いが伝わるだろうって、とりあえず
見守ることにしたんだ。

139 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:08

そんで暫くして、
梨華ちゃんの記憶が戻りそうなカンジはないし、会わせろって言ってもちっとも
会わせてくれないし「じゃ、いまどうなってんの?」って聞くと、好きだって
言ってくれるっていうからさ「良かったじゃん、もう無問題だろ」って言ったんだ。

したら今度は
「…付き合ってるって信じてるから、好きだって思い込んでるだけなんじゃないのかな」
とか言い出すし…

結局、よっちゃんが自分で覚悟を───
この先だって何があるかわからない訳だし、また泣かされることが起こるかも知れない、
それでも梨華ちゃんを愛していくっていう覚悟を決めない限り周りはどうにもできないんだと
思ったんだ。


140 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:08

「……でも美貴はどっかでさ、信じてたんだ。
 今回梨華ちゃんが記憶を失くしたのは、それが卒業式の日を堺だったっていうのが
 梨華ちゃんの強い気持ちの表れな気がして、だからきっとよっちゃんにその想いは
 届くだろうって。
 確かに、あの卒業式の日の梨華ちゃんがよっちゃんを哀しみで捉えて、その過去から
 抜け出せなくさせてしまっていたかも知れない。
 でも今度はいま一緒に過ごしてる梨華ちゃんがよっちゃんをその過去から抜け出して
 前を向いて進んで行けるようにきっとしてくれるって…」

美貴ちゃんは優しく微笑みながら、あたしを見て頷いた。
見てたら力が湧いてくるような励まされる笑顔だった。


「ありがとう美貴ちゃん…」あたしがそう言ったとき、

141 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:08

「石川さーん、入ります」ハキハキした声と一緒にドアがガラガラと音をたてて開いて
入ってきた看護士さんが驚いた顔をした。

「石川さん?!
 目が覚めてたならすぐにナースコールしていただかないと困ります。……気分は?
 大丈夫ですか?」

詰問調でそう言う看護士さんに、大丈夫です、と頷くと「先生を呼んできます」そう
言いながら忙しなく病室から出て行った。

142 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:09

「怒られちゃった」

あたしが舌をちょっと出して笑うと、美貴ちゃんもタハハと眉を下げて笑った。

「失敗したぁー、しゃべりすぎたな、疲れてない?」

美貴ちゃんの気遣ってくれる声にあたしは首を横に振る。寧ろ気分はスッキリしていた。


ふと、
あたしと美貴ちゃんの間に沈黙が落ちて、

何気なく、窓の外を見ればもう夕闇が濃くなっていく時間───


143 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:09

あたしと美貴ちゃんは示し合わせたわけではないけど、あえていまここによっすぃ〜が
いないことに触れないで話しを続けていた。


あのヤロウ…、
美貴ちゃんが小さな苛立ちの声を上げたのは、あたしと同じように窓の外が日暮れて
刻々と薄闇が広がって行くのに目がいったからだと思った。

勢いをつけて立ち上がった美貴ちゃんがあたしを見た。

「面会時間もじき終わりだし、美貴も今日は帰るよ。明日また来るから」

笑顔で頷いて「ありがとう、気をつけて」そう言うと、美貴ちゃんもニヤリと
笑って「お大事に」そう言いながら病室の外へ出て行った。


144 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:10

それから看護士さんが戻ってくるまで、
あたしはぼんやりと今日という日の終わり支度をし続ける空を見ていた。











                     ++───つづく++

145 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:10


146 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:10


147 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/28(月) 14:10


148 名前:名無し飼育さん 投稿日:2011/11/28(月) 14:13
よっすぃ!!
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/28(月) 17:41
色々なことの辻褄が合っていくわけですね
藤本さんいい人だなー
150 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/28(月) 18:01
事実がわかって最初から読み直すと更に味わい深いです
んで、もうよっすぃ〜!!!
ここから先の着地点がまだ見えないのでヤキモキしちゃいます
151 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/28(月) 19:04
こ、混乱してきた
152 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/29(火) 10:50

レス、ありがとう!


148さん
ハ…ハイ…>(^〜^;)

149さん
藤本サンがいーひとなのは当事者じゃないからかもw

150さん
到着〜w

151さん
ゴメン、吹いたw

153 名前:ななしーく 投稿日:2011/11/29(火) 10:50

今回で最終回です。
完結までずいぶん長い間お待たせしてしまいすみませんでした。

自分にとってこの十一月はいしよし小説のことだけ考えていたと言っても
過言ではない一ヶ月になりました。久しぶりの楽しい感覚でした。
それを思い出せたのも皆さんのお陰です。

この話は設定上、レスが難しかったと思います。
そんな中でレス下さった方々ありがとう。
書こうと思うモチベーションを支えていただいたと思っています。

こうして、無事最終回がお届けできることにホッとしてます。
お付き合いして下さった皆様、ありがとうございました!

154 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:50



155 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:51

翌日の午前中もまだ早い時間にひょっこりと美貴ちゃんが病室に
顔を出した。

「おはよう、まだ面会時間じゃないし、ちょっとだけ顔見にきた。
 コレ、お見舞い」

そう言って雑誌を渡してくれる。
受け取りながら「ありがとう」と微笑んだ。

「で、どんなカンジ?」
「うん、今日ね、一応脳波とか検査をして一日様子見て、何もなければ
 明日退院でいいって」
「そっか、良かった。一安心だ。で何時ごろ退院するの?」
「それは別に言われてないけど…」
「明日は…シフト早番だから、夕方なら美貴来れるよ?」
「いいよー、体調が悪いわけじゃないんだし、それに…」
 
ふざけた調子で「…もう二十四歳だし?」と付けくわえると
そりゃそっか、と美貴ちゃんは笑ってこう言った。
「んじゃ、明日の夜、また連絡するよ」

156 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:51


翌日、あたしはひとりで退院手続きを終えて病院を後にした。


病院の外に出て携帯を確認したけど、やっぱりよっすぃ〜からの
連絡はなかった。


 ─── どうしよう…… どうしたらいいんだろう……
     もしまた、よっすぃ〜がいなくなっちゃってたら……


考えないようにしていたこと…
恐怖感がじわりと這い上がってきて足が竦みそうになる。


 ─── ううん、大丈夫!

あたしは首を横に大きく振って、不安な気持ちを追い払い歩き出した。

157 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:52

鍵を開け、部屋のドアに手をかけたとき、

この開けたドアの先がからっぽになっている映像が頭に浮かんで慌てて追い払う。
そんなことは起こらない……自分に言い聞かせてドアを開ける。


ごくり、と喉がなった。
廊下からリビングの先、目に映る部屋は何ひとつ変わりがなかった。

……ふぅ、

いつの間にか詰めていた息を吐いて、リビングダイニングに入ると、
テーブルの上に置いてあるものに気がついた。
手を伸ばし持ち上げる。そこには一文字一文字丁寧に書かれたメッセージ。


 いろいろごめん、気持ちの整理がついたら帰ってくる。


じわり、と、目の奥に熱いものが浮かびそうになり、
あたしは天井を見上げて、数回瞬きしながらそれをやり過ごす。
 
 
158 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:52


 ───大丈夫、よっすぃ〜は帰ってきてくれる


もうひとつ、テーブルに乗っていたのは銀行のキャッシュカードだった。
ヨシザワヒトミと名前のかかれたカード……

さっきのメモをもう一度見てみると、下の方に小さな文字で0119と
書かれていた。


 ───よっすぃ〜……


大丈夫、絶対によっすぃ〜は帰ってきてくれる。
あたしは自分を励ますようにひとり大きく頷いた。

胸に熱いものが込み上げてきて、今度は我慢せずにそれを吐き出すと
0119の文字が滲んで見えた。
ぽとぽと、とあたしの目から涙が落ちてメモに染みを作っていった。

159 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:52

その夜、美貴ちゃんと電話で話した。
よっすぃ〜の置手紙のことを話すと「まぁ、想定内だな」と鼻で笑う気配がした。

「梨華ちゃん、携帯には連絡いれた?」
「…一応ね、退院したことは」
「美貴も。生きてはいたよね、携帯。電源入ってないみたいだけどさ…」

美貴ちゃんは投げやりなカンジで乾いた笑い声をたてた。

「ハハ、ハ……アイツ、マジでヘタレ王子だよ。もうー、梨華ちゃん
 美貴にしてもいいよ?」
「あははっ もぉ、美貴ちゃんってば何言ってんの!」

あたしが笑い飛ばすと、姫はつええなぁーと揶揄する口調で言って笑う。

160 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:53

笑い声が途切れたあと、少しの沈黙、そして美貴ちゃんが静かな声でいう。

「……帰ってくるよ……帰ってくるに決まってる。
 何があったって、結局ヤツが帰るとこは梨華ちゃんのとこしかないから
 この先だって何回離れることがあったとしても、それがどんな理由でも
 梨華ちゃんとこに帰ってくるんだ、何度でもね。
 だってさ、よっちゃんは梨華ちゃんがいないと幸せでいれないんだから
 美貴はそう思う……絶対大丈夫だから」
「うん、ありがとう……美貴ちゃんっていい女だよね…」

あたしがしみじみと思ったことを口にすると、笑いを含んだ軽い調子の声が答える。

「何?やっぱ美貴に惚れちゃう?」
「ううん違うの……なのになんで恋人がいないのかなって思って」
「………梨華ちゃんてさ、何げにいい性格してるよね」
「うふっ、ありがとう♪」
「あーあー、心配して損したぁー」

携帯越しの不満げな声にあたしはくすくす笑って、
「美貴ちゃん、大好きだよ」そう言ってから通話を終らせた。

161 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:53

いままでよっすぃ〜とふたりでいた部屋

そこにひとりでいると、いま、自分はひとりだと、よっすぃ〜がいないんだと
いうことを強く感じて、
ふと、よっすぃ〜はもうここに帰ってくる気はないんじゃないか?

部屋がそのままなのも、キャッシュカードを置いて行ったのも、あたしが生活に
困らないようにという優しさで、

待っていてという言葉のついてない、気持ちの整理がついたら帰ってくるは
整理がつかなかったら帰ってこないと言われているようで……


 ─── だけど違う、とあたしは思った。

あたしはよっすぃ〜にいつになるかわからないから、待たなくていいと言われたとしても
待つだろう。だって好きだから、あたしが待っていたいから。

よっすぃ〜がどう思おうと、あたしはよっすぃ〜を好きでいる。
そう、あたしの想いは我がままだから───


162 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:53


163 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:54


退院してから一週間が経った。


あたしはクリーニング屋さんの袋を持って、校門近くの並木道で
今日はすっごく青く見えるなぁ、そんなことを思って空を見上げていた。


「……なにしてんの?」
「あっ、真希ちゃん!」

困惑した表情を浮かべて、すこし離れたところで立ち止まっていた真希ちゃんの下に
駆け寄りあたしは微笑んだ。

「これありがとう!」

あたしがクリーニング屋さんの袋を渡すと「律儀だねぇ」と呆れたような声で言う。

「借りたものはちゃんと返さないと!」

あたしはスッキリした気分で微笑んで、歩き出した真希ちゃんの横に並んだ。

164 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:54

真希ちゃんはあたしの顔を見ながら、フッ、と小さく息を吐くように笑う。

「……もうごとーの前には現れないと思ってた」
「なんで?」

あたしが小首を傾げて聞くと、なんでって…と、面食らったように言ってから
空を仰いで「はーーぁ」と息を吐いて、またあたしを見ると軽く笑った。

「で、どうなの?上手くいってんでしょ?」
「…あたしの…記憶が戻ったのかって聞かないの?」

不思議に思ってそう聞くと「……わかるよ」真希ちゃんがポツリと言う。
「そうなんだ?」あたしは真希ちゃんを見て微笑んでから口を開いた。

「…よっすぃ〜はねぇ、いま自己確認の旅に出てるの」
「は?何それ?……梨華ちゃんを置いてどっかに行ってるってこと?」

うん、あたしが頷くと、真希ちゃんはドスの効いた低い声で「へぇー」と相槌を
打ってから首を傾げてあたしを見た。

165 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:55

「そいつ帰ってきたら、一発殴りにいっていい?」
「…真希ちゃんが殴ったら、洒落にならないと思うんだけど…」
「そんな弱いの?!」
「うぅ〜ん、弱いとか強いとかじゃなくって、普通の女のコだし…」
「ごとーだって女のコだよ!
 心意気の問題じゃんか、惚れた女くらい守れないとか有り得ない…」

ムスッと仏頂面をする真希ちゃんを見てあたしは笑った。

「ていうかね、街を歩いてたり、お店に入るくらいで絡まれる女のコって
 真希ちゃんくらいだと思うよ?」
「え、そうなの?!……ふぅ〜ん…」

納得いかなそうに鼻を鳴らす横顔を見て、あたしはまた笑った。

166 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:55

「ねぇ真希ちゃん?」
「んー?」
「……好きだよ」
「知ってる……知ってるし、わかってる。
 …ずっと考えてた、梨華ちゃんのこと……んで、いまはお休み中」

真希ちゃんは足を止めるとあたしを見て、ニヤリと笑った。

「……少し前まではさ、汚い手使ってでも、梨華ちゃんをごとーの横に置いて
 おきたいって思ってたんだけどねぇ
 無理矢理ヤっちゃって、体が離れられなくするとかさ?
 情に縋って泣き落として、罪悪感植えつけるとかもありかなとか…
 けど、何したって心は縛っておけないし、思い通りにはならない。
 ……マジになったら自分の記憶失くしてまでやり直そうとする女だよ?
 んなの、敵うわけないって思うじゃん?」

167 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:56


ごとーはきっと、梨華ちゃんにだけはずっと勝てないから、


消えそうに小さな声でそう言いながら僅かに微笑む。
そのあと真希ちゃんはしっかり前を向いてゆっくりと歩き出した。
その背中を追いかけてあたしも横に並ぶ。

駅までの道、その後、会話らしい会話はなかった。
それでも真希ちゃんの横顔は穏やかで以前より大人びたように
あたしには見えた。


168 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:56

日課のように夜になると美貴ちゃんからの電話が鳴る。

美貴ちゃんは心配しているとか、大丈夫?とか直接的なことは言わない。
今日はどうしてた〜?なんて話しから始まって、少し他愛ない話しをして
最後は笑い合って終る。

今日は真希ちゃんと会ったことを話しておこう…
美貴ちゃん、前にそのことを気にしていたし、


「ねぇ、美貴ちゃん、あたしね今日真希ちゃんに会ったの」
「……ふぅ〜ん」
「前にね、美貴ちゃんが言ったでしょう?
 真希ちゃんと距離を置いた方がいい、あたしの気持ちがどうであれ
 恋人みたいに見えちゃうからって…」
「うん」
「だけどあの時、あたし美貴ちゃんの言うことを聞かなかったよね?」
 
169 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:56

あたしね……
少し、考えながら続けると、んー、と相槌のような息遣いがした。

「……自分がどこかで制服姿の真希ちゃんの中に高校生の頃の、よっすぃ〜を
 探してたのかも知れないって思ったの。
 ふたりは顔つきなんかは全然違うのに、ときどきね?表情とか仕草とか口調なんかが
 似てるときがあって、 そんな真希ちゃんの世話を焼くことで、あたしは自分の寂しさを
 紛らわしていたんじゃないかって思ったんだ。
 ……それに、よっすぃ〜にはさせてしまった寂しい顔を、この制服姿の女のコには
 させちゃいけないって気がして、
 ……結局、それを自分の贖罪にしたかっただけなのかも知れないけど……
 でもね、だからこそ、真希ちゃんを誰かの代わりにすることだけはしたくないって
 思ったんだ……」

170 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:57

考え考え途中でその時の光景に確認を取るようにして、ゆっくりと話し続ける
あたしの言葉を美貴ちゃんは黙ったまま聞いていてくれる。

「……それに真希ちゃんがあたしを想ってくれる気持ちは恋愛感情とは
 微妙に違うんじゃないかって感じてたし。
 会うたび迫ってきたりするから、錯覚しそうになるけど、
 ……なんていうのかな?
 あの行動は自分が目の前にいるっていうアピールで…
 本当はただ、何があっても自分から離れない人、味方でいてくれる誰かが
 欲しかったんじゃないかって思ってたの。
 それは家族でも、恋人でも親友でも良かったのかも知れない。
 だけど、真希ちゃんにとって自分が求めてるイメージに一番近かったのが
 恋人だったんじゃないのかなって、
 だからあたしを自分のものにしようとしたんじゃないのかなって……」


あたしの言葉が途切れると、ハァァー、深い溜息が受話器越しから聞えてきた。

171 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:57

「……いまさ?マジで美貴、梨華ちゃんに惚れるかと思った」

もぉ〜美貴ちゃんは、あたしが溜息が混じった呆れ声を出すとククッと笑う。

「……そっか、あのコはやっぱシスコンみたいなもんだったんだなー
 しかも病的に重度の」
「そうそう、真希ちゃんね?
 よっすぃ〜が帰ってきたら、一発殴りにくるって言ってたよ」

あたしが可笑しそうに笑いながら言うと、美貴ちゃんが鼻を鳴らした。

「それ、美貴も便乗する!」
「……美貴ちゃぁん、お願い止めてね?」
「梨華ちゃん…」

172 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:58

「……顔だけは」
「そこかよっ!」

笑い合って、また少し違う話をしてから通話を終らせた。


電話を切った後は、その前までより部屋が広く感じる。


いろんな感情は、
比べるものがあって、余計に大きく感じるものなのかも知れないなぁ……
そんなことを思って───

だったら、今度よっすぃ〜に会えたとき、
きっときっとかなりかなり、どうしようないくらい嬉しいに違いない
すごくすごく、天国かと思っちゃうくらい幸せになっちゃう!

うん、あたしはひとつ頷いて、

明日は何をしようかな〜?鼻歌を歌いながらシャワーを浴びることにした。

173 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:58

さらに一週間が経ったころ、
よく行く駅前の小さな手作りパン屋さんでアルバイト募集の広告を見つけた。

数席だけのこじんまりした喫茶コーナーが併設されているそのお店は朝も早い。
一瞬躊躇したけど、
ひとりだとだらだらしてしまうことがわかったあたしは、うん。決めた!
ひとり頷いてそのまま履歴書を買いに行った。

店長さんは、急に人が辞めてしまってとても困っていたということで、
「いますぐでも働けます!」あたしが張り切ってそういうと、その場で採用して
貰えることになった。

174 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:59

バイトの初日、休憩時間に魂が抜けたようになって、のびきっているところに
真希ちゃんから電話がかかってきた。

「……はい、もしもし」
「…?……梨華ちゃん?なにその憔悴しきった声…なんかあった?
 あっ、アイツが帰ってきてなんかされたっ?!」
「違ぃがうよぉ……バイト始めて今日初日なのぉ…」


それはどんな仕事なんだ?とか、場所はどこだ?とか聞かれて
答えてくるうちに休憩時間が終ってしまった……

そのあと、一時間もしないうちに真希ちゃんがやってきて、いったい誰が食べるんだろう?と
首を傾げたくなるような量のパンを買って行った。

175 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:59

三月に入る頃には、常連さんの顔も覚えた。
そして新たに常連に仲間入りした人もいる。

今月のオススメとバナナマフィンをトレーに乗せた真希ちゃんがあたしを見て微笑む。

「おはよう、梨華ちゃん、ごとードリンクはいつものね!」
「おはよう、真希ちゃん、
 カフェオレは出来たらテーブルに持っていくから待ってってね
 ¥860になります」

お会計をして、奥に居る店長にカフェオレをオーダーする。
店長はとにかくこだわりの人で、自分の作ったパンに合うコーヒーは自分で淹れる主義らしい。

そのお味はとっても絶品で、一度味わってしまうと
ココのパンにはココのコーヒーしかない、と思うくらいの絶妙さらしい。
正直、あたしにはそこまでコーヒーの味の違いがわからないんだけど、店長の入れてくれる
カフェオレは優しく円やかで美味しいなと思う。

176 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 10:59

出来上がったカフェオレを乗せたトレーをあたしに渡しながら店長が微笑んだ。

「石川さんが来てから喫茶のお客さん増えたよねぇ…
 いままで決まった常連さんにしか利用して貰えてなかったから嬉しいよ。
 それに美人の常連さんが増えたのが嬉しいなぁ
 もうすぐ来るんじゃない?もうひとりの…」

店長がそこまで言いかけたとき、ドアチャイムが鳴って、そこには美貴ちゃんが
立っていた。

「おはよう、梨華ちゃん!」
「おはよう美貴ちゃん」

あのふたり、いっそのことココで働いてくれないかなぁ…
店長のひとりごとみたいな呟きを、あたしは気づかない振りをした。

177 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:00

「お待たせしました」そう言って、真希ちゃんのテーブルにカフェオレを置くと、
その後ろの席で、真希ちゃんに背中を向けるように座ってた美貴ちゃんが
「今日のブレンドって何だろう?」と首をまわしてあたしを見た。

「モカだよ」
「じゃ、それ、…えーと350円か、あ、ちょうどあるからはい」
「350円、ちょうどいただきます」

あたしは美貴ちゃんの手から小銭を受け取って、「少々、お待ち下さい」笑顔で
そう言ってレジカウンターに戻る。

オーダーを通して、出来上がったモカを「お待たせしました」と美貴ちゃんの
テーブルに置いたとき、背中越しに真希ちゃんが言った。

「美貴さぁ、パン食べないならココじゃなくってどっか他の喫茶店行けばぁ?」
「おいコラ、五歳も年上のおねー様を呼び捨てにすんな、美貴様って呼べ」

間髪入れずに美貴ちゃんが答えると、真希ちゃんがくるりと振り返った。

178 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:00

「だぁれが。美貴なんか呼び捨てで十分だ、美貴美貴美貴…」
「おぉーまぁーえぇーなぁぁーー」

美貴ちゃんが不機嫌そうに目を細めて睨むと、真希ちゃんは片側の口角だけを
微妙に上げて不敵に笑う。

なんだかとっても楽しそうに見える…
そう思ったあたしは二人の顔を交互に見ながら微笑んだ。

「美貴ちゃんと真希ちゃんって気が合ってるよね!」
「「どこがっ?!」」

綺麗にハマった声がして、あたしは思わず噴出した。

あたしがレジカウンターの周りと整えたり、パンの補充をしている間も
二人の不機嫌そうな言い合いに収まりそうな気配はなかった。

179 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:01

焼きたてのパンのいい匂いに包まれて、大好きなふたりの賑やかな声を聞く、
あたしの今日という一日はこんなふうに始まる。
結構、あたしって幸せだ───


そう感じてるそのときでさえ、あたしの胸の真ん中には空白があって
どんなに幸せな気分もそこだけは埋められなかった。


 ───よっすぃ〜、あなたはどんな朝を迎えましたか?
 朝ごはんはちゃんと食べた?
 そこからはどんな景色が見えるの?
 そして、……あなたはいま何を考えていますか?


180 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:01


181 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:01

その日は朝から予感がしていた。
浅い眠りを繰り返して、寝返りをうちながら街が目覚めるのを待った。

バイトもお休みにしてもらっていたあたしは、
朝の柔らかな日差しで満たされてきた部屋の中で、ベッドから起き上がり
ゆっくりとお風呂に浸かる。

落ち着かなく騒ぐ胸を宥めながら、よっすぃ〜が淹れてくれたように
ミルクを沸かして、丁寧にミルクティーを淹れてそれを味わった。

髪をブローして整えて、ちょっとアレンジしてみて似合わなくて止める、
メイクにもたっぷり時間をかけて、少ないワードロープの中からどれとどれを
合わせたら、とびっきり可愛く見えるかな?
なんて思いながら鏡とにらめっこして───

182 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:02

あたしは最終確認に鏡で自分をあちこちからチェックして最後は最上級のスマイル。
うん、上出来!

ずっとドキドキいい続けてる胸を少し押さえながら、

こんなんじゃあたし、早死にしちゃう……そんなことを思ってカレンダーを確認する。
今日は三月十日、展望台に行ってみようと決めていた日───


183 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:02

火の元を確認して、玄関を出る。
ドアに鍵をかけたそのとき、メールを知らせるメロディーが鳴った。


 ( 遅くなってゴメン、展望台で待ってる )



─── やっと、やっと…やっと会える!

なんて素っ気無い文章、
だけどその短い文面だけでどんなに素敵な恋愛小説よりもあたしの胸を高鳴らせる。


あたしは駅までの道を夢中で走り出した。


184 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:02

展望台へ続く階段を上りながら、ビュッと風が吹くとヒッと肩を竦めた。

今日は春めいた温かい日だったけど、それでも海風は冷たい。
それよりなにより、ところどころ崩れてる階段が怖い。

よっすぃ〜と一緒のときは怖いなんて思わなかったのに…
そう思いながら、手すりにしっかり捕まって最後の数段を慎重に上りきる。



─── 景色が開けた、


あぁ、世界はそのままで美しい、唐突にそんな大袈裟なことを感じて、

その風景の真ん中に浮かび上がって見える人影─── 見つけた…


185 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:03


「……よっすぃ〜!」


走り出そうとしたあたしに、よっすぃ〜は咲き誇る花のように大きく笑んで、
「待って」と言った。

よっすぃ〜?
あたしはその場に立ち止まると小首を傾げて、春の陽光が柔らかく降り注ぐその姿を
眩しいなと思いながら見詰めた。


「もう一度、告白したいんだ…」

よっすぃ〜の優しく穏やかな声が静かに響く───
「聞いてくれる?」微笑みながら聞かれて、あたしはゆっくりと大きく一度頷いた。

186 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:03


「───愛してる」



よっすぃ〜… あなたの ───その声もその表情も、
すべてを優しく包み込んでくれるような───こんな声をしてるひと、こんな表情をしてるひと、
あたしはいままで会ったことがないよ?


187 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:04

「いろいろ考えたんだけど、
 ……言いたいことってこれしかないみたいでさ…」

少し、情け無さそうに下がる目尻を見て堪らず走り出すと、両腕が大きく広げられて
あたしはその中に夢中で飛び込んだ。


「あたしも───愛してる」

背中に両腕を回して、ぎゅっとしがみ付くと、力強く抱き返してくれて囁き声がする。


「───ありがとう」

あたしは腕の中でふるふると首を振った。

188 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:04


暫くそのまま抱き合っていた


このあと、どうしたらいいんだろう?… 
あたしがそう思い始めたとき、
よっすぃ〜が少しづつからだを離して手を繋いでくれた。

指先を交互に絡めていく様子を見ながら、あたしは、ふふっ、と笑った。

「…なに?」

よっすぃ〜が蕩けそうに優しく微笑んであたしを見た。

「恋人繋ぎだーって思って」

少し照れながら答えると、よっすぃ〜が笑みを深くした。

「あれ?私たち恋人じゃなかったっけ?……違うの?」

最後は少し、含みがあるような意地悪な声で聞く。
「…違わないよ」そう答えながら、なんだか恥ずかしくなってきて俯くと、
よっすぃ〜が少し屈むようにして顔を覗き込んできた。

189 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:04

「あんま可愛い顔しないで……、いま私、梨華ちゃんに飢えてるから」

そんなこと言われると思っていなかった驚きに、目だけを上げて顔を見ると
こめかみに唇が触れた。

その瞬間、どうしていいかわからない恥ずかしさに身もだえしたくなって、
ボッと燃えそうに頬が熱を持ったのがわかった。

「記憶戻っても、この間までと反応が一緒だ ……あ、当たり前かぁ……
 何もかもこれからだもんね、私たち」

あたしがコクンと頷くと、少し散歩しよう、そう言ってよっすぃ〜は展望台を
後にすると砂浜を歩き出した。

190 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:05

繋いだ手をぶらぶら振りながら波打ち際に近いところをゆっくりと歩く。
平日の午前中、まだ肌寒い静かな海辺にはあたし達以外の人影はなかった。

よっすぃ〜とこうしてただ手を繋いで歩いていける、それは何よりも幸せで
贅沢なことの気がした。

「フッ…それにしても、梨華ちゃんってチャレンジャーだよね、
 私って恋人にするには、かなり最悪な部類でしょ?
 犯罪者みたいなもんだからね」

自嘲的に響く、僅かな笑みを含んだ言い方を聞きながら、そうかな? 小首を傾げて、
それでもやっぱりあたしは、どんなよっすぃ〜でも───

「愛してるっ!」

とびきりの笑顔で微笑んで見上げたら、
真っ赤になったよっすぃ〜が口元を片手で隠しながら…そっか、ありがとう、と
消え入りそうな声で言った。

191 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:06

「…最初の頃は、ね、梨華ちゃんの記憶が戻ったら消えようと思ってた。
 今回のことで、私は梨華ちゃんを手に入れる為ならなんだってするんだって気づいたとき、
 自分が怖くなったんだ。狂ってるんじゃないかと思った……
 だからこそ、一緒にいれる間はいまだけを見て幸せな想いでを作りたいって思ってた」

ポツリポツリと気持ちを話してくれる口元を見上げながら、ずっと言わなくては
いけないと思っていたことを口にした。

「……ごめんなさい…あたしがバカだったの。あの頃は気づけなかったから。
 よっすぃ〜のこと、たまたま傍にいてくれた人だと思ってた…」

192 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:06

違うのにね、
そう言って、あたしがよっすぃ〜の瞳を見詰めると緩やかに首を横に振った。

「私こそゴメン。私は逃げてばかりいた。
 心のどこかで梨華ちゃんの言葉を信じないようにしようとしてた。
 恐れて、怯えていたんだ。もしまた拒否されたら耐えられないって…
 だけど、梨華ちゃんと一緒に過ごした毎日が気づかせてくれたんだ。
 本当の気持ちはいつでもひとつしかなくて、ずっと梨華ちゃんを愛してた。
 ずっとずっと愛し続けてたんだって。」
 
 
193 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:07


 ─── よっすぃ〜…


あたしもずっとあなたを想っていたよ?
長い長いひとりきりの時間だと思っていた。
だけど、ふたりはずっと同じ想いでいたんだ…

そのひとりづつの想いのときがあったからこそ、いまここでひとつになれるんだとしたら
その時間を持てたことは幸せだったのかも知れないね。

194 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:07

あたしはよっすぃ〜の瞳を見つめたまま、微笑んだ。
よっすぃ〜が嬉しそうに微笑み返してくれるから、あたしはもっと嬉しくなって、
また微笑み返す。

あなたが愛してくれるからあたしはこんなにも幸せなんだって、
そう、伝えたくて───


その瞳のずっと奥、そこになにがあるのかわからないけど、
そのずっとずっと奥にまで、届くように願いを込めて口を開いた。

195 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:07

「あたしはよっすぃ〜に愛されるためだけに生まれてきたの。だから愛して?
 どんな時も、どんなあたしでも、どんなふうでもいいから、
 ずっと愛───」

言葉の途中で、
強い力で抱きしめられてそのまま唇を塞がれた。



頭の芯が震えるような甘い声が、愛してるよ、とあたしに囁いた。
梨華ちゃんだけをずっとずっと愛していくよ───


196 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:08

人はひとりで生まれて、ひとりで死ぬから
結局は孤独だなんて、そんなのはたぶんウソだよ───


よっすぃ〜に強く強く抱きしめられながら、あたしはそう思った。


ひとりの想いと、ひとりの想い、それが重なったら、
それは大きな愛になる。


あなたを愛して、
あなたに愛されて、

あたしとあなた、ひとつの愛になる───

197 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:08


きっとこの世界は───
あたしとあなたがいる世界、そこは愛に満ちている。
いまこの世界は愛だけで出来ている。



  
  だから愛して───
     ずっと愛して───



198 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:09



       世界はあたしとあなただけ




199 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:10



         ++──END──++



200 名前:世界はあたしとあなただけ 投稿日:2011/11/29(火) 11:10



201 名前:名無し飼育さん 投稿日:2011/11/29(火) 11:15
こんなに愛って言葉が普通に感じらるなんて…
さすがいしよし
次回作も期待しています。
202 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/29(火) 13:03
完結おめでとうございます
そしてありがとうございます
85年組最高や
203 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/29(火) 14:56
未完の時から何度も読み返していて
今回完結してくださって感無量です。
私も梨華ちゃんと一緒に混乱しまくりで
作品にかなり引き込まれましたよ。
更新に毎回ワクワクドキドキして楽しかったな。
最後はいしよしの強い強い絆とタイトルの意味に感動。
なんだか私の生きがいがなくなり少し残念な気もします。
単発でもいいから続編とかあればいいなぁ。
いやいや完結だけで十分でした、本当にありがとうございました。
204 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/29(火) 19:02
実はタイトルを読んだ瞬間からうっとりしてました。
すばらしいお話、感動的な最終回でした。
ななしーく様、ありがとうございました。
そしてなにより、帰ってきてくれてありがとうございました。
205 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/29(火) 19:12
あぁ、完結してしまった…
この物語の結末を知りたい、とにかく続きが読みたいと休止以降、願い続けていたのに
再開されてからは、このままこの物語に浸っていたい、続いて欲しいって気持ちになってました
でもすごく、すごーく良かったです、もう何もかも含めてななしーくさん!やっぱりあなたが大好きです!
とても素敵な物語をありがとうございました
そして最後に読者のわがままをひとつ…またななしーくさんのお話が読みたいです!
206 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/30(水) 02:50
脱稿お疲れ様でした
梨華ちゃん視点だったお陰で
最後の最後までよっすぃーの心が謎に包まれていて
何度ももどかしい気持ちになったのですがそこがまたよかったと思います
面白かったです
ありがとうございました
207 名前:ななしーく 投稿日:2011/12/01(木) 00:33

201さん
レスありがとう。
いしよしには愛が似合うw

ところでお願いがあります。もしまたレスをいただけるなら
これからは頻繁に更新はしないのでsageで下さると嬉しいです。
E-mail:の欄に半角でsageと入力するだけですのでお試しをw
ご協力をお願いします。

202さん
レスありがとう。
85年組って吸引力があるんだなぁ〜、自分にはw

203さん
レスありがとう。
結局さ、自分の場合シリアス路線の連載モンはワンパに
なっちゃうんだよねー
二人の絆は絶対よっ!的なw

208 名前:ななしーく 投稿日:2011/12/01(木) 00:34

204さん
レスありがとう。
うっとりかぁ〜 …女性的だねw
自分的にも未完にしないですんで良かったよ。
一応、ずっと気になっていたので…

205さん
レスありがとう。
待たせてしまってゴメンね。
いしよしのお二人はほんとドラマチックが様になると
思うんだよねぇ。大好きと言ってくれてありがとう。

206さん
レスありがとう。
一人称ってさ、相手サイドがわからないからねー
もどかしさがOKで良かったよ〜w

209 名前:ななしーく 投稿日:2011/12/01(木) 00:34

世界は〜を書いてるときに、反動でくだらねー話が書きたくなり
ふざけた話を大マジメに書きましたw
出し惜しみするほどのモンでもないので、暇つぶし程度にお楽しみ
いただけたら本望です。
世界は〜とはまったく違うのでクレームは無しの方向でお願いしますw


ななしの一言、ベスアの梨華ちゃんの髪型スキ〜♪(個人的趣味w)

 
210 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:35



211 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:36

 ───満月の夜

時刻は日付けが変わってもう少し進んだ頃
もちろん、通常そんな時間の公園に人影などない
しかし、
この夜は違ったようで足早に公園を横切っていく男がいた
その表情は喜色満面
足取りは羽がはえたかのように軽い

男は明るく灯る街灯の下で、ふいに何かを思案するように足を止めると
上着のポケットから分厚い封筒を取り出した
舌舐めづりをして、男が封筒からつまみ出したのは帯のついたままの札束だった

「ヒャッハハハハッ!
 やっぱ年増女落とすのは簡単だよなぁ…結婚チラつかせたら一発だぜ!」

男の高笑いが公園に響き渡ったその時───


212 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:36

「待ちなさぁーいっ!
 愛することを貶めるような卑劣な行為は、コードネームLこと
 このLoveちゃんが許しません!
 愛のお仕置き、してあげる!!!」

甘ったるいアニメ声が男の頭でキンキンと響いた
正面にはいつの間にいたのだろう、仁王立ちでびしっ、と、自分を指差す
ロリータファッションの女がいた

 ……ハァ?

頭の残念なコ?
係わり合いになるべきではない、と、瞬時に判断した男はロリータ女の前を
通り過ぎることにした


「待ちなさいってば!」


再度、自分の前に回ってきて足止めしようとするロリータ女に目を向けると
吃驚するほど上玉だった
夜風にそよぐ黒髪も、キッと睨みつけてくる眦も、弾力のありそうな唇も……
そのまま目線を下にさげれば、イカれた格好はさておいてとにかくすべてが
美味しそうに整っていた───ごくっ、男は思わず生唾を飲み込んだ

213 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:37

金の為とは言え、冴えないオバサンの相手に明け暮れていた数ヶ月
ここらで一発自分の為のお楽しみもいいだろう

男は好色そうな卑しい笑いを顔に浮かべると、ロリータ女の腕に手を伸ばした


「イヤ〜イヤイヤ〜、そりゃーダメッすよー」


およそこの場に不釣合いな朗らかな声がして、男が声のした方角を見ると
滑り台の上に髪をトサカのように立てたパンクファッションの女がいた

パンク女は男と目が合うと右手の人差指と中指を額にかざして振った


「ちぃーすっ! 
 Pちゃん、どぉえーす LoveのあるところにPeaceあり、よろしくねー」


 …………。
 なんだ……いったいなんなんだ…

そ、そうかっ、わかったぞ!
こいつらは自分達の存在をかけて、
突っ込み待ちする新手のパフォーマンスグループだな?!
男が他の仲間はどこにいる?そう思って辺りを見回した時、

214 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:37

「トォッ!」戦隊ヒーローものの被りのようなポーズと掛け声で
滑り台の上から軽々と飛び降りて(!?)パンク女が近づいてきた


「Pちゃん、おっそーーーいっ!」
「えっマジ?ちょうどよくなかった?」
「あたしがぁ、攫われちゃったら、どうする気っ!」
「そうだよねぇ、Lちゃん、超可愛いからね 
 怒った顔も超超可愛いけど……ゴメンね、遅れて……許してくれる?」
「もぉ、Pちゃんてばー、あたしが可愛いのはいつものことだけどぉ
 …仕方ないなぁー、今回だけだぞ♪」


男の存在をすっかり忘れたように、ロリータ女は男と自分の間に割って
入ってきたパンク女といちゃいちゃしだした

男はなんとなく腑に落ちない表情になって、パンク女の肩を掴んだ


「おいっ」
「いま取り込み中! ちょっと待ってて」
「……てっめぇら、ふざけんのも大概にしろっ!」


男は掴んでいだパンク女の肩を引きながら拳を繰り出した

215 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:38

パンク女は片手で繰り出されてきた拳を遮ると、瞬時に腰を落として
片足を伸ばすと男の足に引っ掛けた
見事、男の体制を崩したところに飛び蹴りを見舞う「チェーーーストぉぉぉ!」
男の体が地面に倒れ、ロリータ女が歓声を上げた


「Pちゃんカッコイイッ!」
「…フッ」
「Pちゃんステキぃ!」
「…もっと言って」
「Pちゃん……後ろ…」


振り返る暇はなかった。いつの間にか立ち上がっていた男の拳でパンク女は叩きのめされる
その場に崩れ落ちる姿を見ながら、ロリータ女は…チッ、と舌打ちした


「んもぉ、Pちゃんってほんと弱いんだからー」


怒りで目をギラつかせながら、男がふたたび自分へと伸ばしてきた腕を後飛びして
避けながら、ロリータ女は手に持つ物を天に掲げた
それは月の光をキラキラと反射する輝くばかりにデコられた手錠だった

216 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:38

「…Loveパワーーーッ!MAXホールドッ いっくよーーー!」


ロリータ女は高らかに叫ぶと手錠を投げた
手錠は有り得ない高速回転をしながら、男の片側の手首に嵌まるとそのまま男の体を
鉄棒まで引き摺り、カチャリと音を立てて嵌まり動かなくなった


「な、なにすんだー!外せー!」
「いまお迎え呼んであげるね♪」


真っ赤な顔でジタバタ暴れる男に向かって、ニッコリと微笑むとロリータ女は携帯を
取り出した


「…あ。もしもぉし、おまわりさんですかぁ?
 悪い人捕まえたんでー、引き取りに来てくださぁい…場所はぁ…」


ロリータ女は携帯を仕舞うと「お前らなんなんだーーっ」と狂ったように暴れてる男を
綺麗に無視して、倒れているパンク女の許へ向かうと「よーいしょっと!」そう掛け声を
かけながら軽々とお姫様だっこで抱き上げる

217 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:39

「ん…んん」抱き上げられた振動でパンク女が目覚めたらしい
「あ、Pちゃん、起きたの?」
「…コレは夢?……目の前に…女神が…」
「それは夢じゃないからだいじょうぶ、安心して?
 それより、目が覚めたなら変わってね」
「ラジャ!」


ロリータ女がパンク女を下ろすと、今度はパンク女がロリータ女を抱き上げた
ロリータ女はパンク女の首に腕を回すと、むくれた表情をして目の前の顔を覗き込む


「Pちゃん、ヘタレなんだもぉん!Lちゃん、疲れちゃったぁ!」
「ゴメン、ゴメン… でもほら、Lちゃん最強だから
 人にはそれぞれ得意分野ってあるでしょ?」
「じゃさ、Pちゃんの得意分野ってなによ?」
「知ってるくせに〜 今晩はさ、サービスするよ」
「……スペシャルなのにして」

ロリータ女は上目遣いで熱くパンク女を見詰めながら、その鼻先をちょんっと突付いた
パンク女はとたんにでれでれと鼻の下を伸ばしだす
そしてロリータ女を抱く腕に力を込めると夜の街を駆け出した

218 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:40


   
      L&P!L&P!L&P!




219 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:41


進め、進めL&P、今日も行くんだL&P
この惑星を愛と平和で満たす為
愛なき人にはお仕置きを、平和の歌を唇に



220 名前:L&P見参! 投稿日:2011/12/01(木) 00:42


行け行けボクらのL&P!!
行け行けボクらのL&P!!!



   ─── L&P見参!終 ───

221 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/01(木) 05:49
おもしろすぎるんですけどっ!!
まさかのアレとアレのコラボですねっ!!
222 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/01(木) 06:27
前作と違いすぎてw
へたれなLちゃんかわいいわぁ〜
223 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/02(金) 20:15
おもしれぇぇ!!
テンポよすぎでサクサク読めました
これ漫画で読みたいわw
224 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/05(月) 01:10
前作最終回からここまで一気に読みました
最終回でジーンとしてからのこの違いが最高です
バカっぽすぎてテンション高すぎて面白すぎる!!!

遅くなりましたが「世界は〜」の完結おめでとうございました
そして本当に素敵な作品どうもありがとうございます
こんなお礼しか書けなくて申し訳ない

ログ一覧へ


Converted by dat2html.pl v0.2