生ガキ試食中
- 1 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 18:53
 
-  はじめまして。ゐくまと申します。 
  
 基本は生ガキメイン。 
 他つらつらとガキさん絡みで書いていく予定です。  
- 2 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 18:55
 
-   
 生ガキ 【不思議なあの子】 
   
- 3 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 18:57
 
-   
 最近生田と一緒にいることが多い気がする。 
 たぶん、他のメンバーの誰よりも話して笑って。 
 舞台があるからとかそんなのではなくて、きっと無意識のうちに生田と一緒にいて、生田も私に構うのだろう。 
  
 でもなぜ私なんだろう? 
 同期の9期もいて、先輩なら田中っちだっているのに。 
 それを生田が寄ってくるたびにいつもその疑問がよぎって、前までは生田本人に聞いたりもしたのだが「秘密です!」と勢いよく返されてしまった。 
  
 もともと世話好きな自分は困ったちゃんをよく構っていたものだ。 
 過去でいえば、ひょうひょうとした小春やPPPなカメなど。 
 生田は果たしてこの類のものなんだろうか? 
 疑問はさらに増えるばかりで、でも確実に生田との距離は近くなっていった。 
   
- 4 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:00
 
-  3回目の公演が終わった。 
 今日も今日とてやってくる不思議な後輩、生田。 
 携帯を片手にニコニコしながら「にいがきさーん」と呼んでくる。 
 私はメイク道具を片づけながら返事をした。 
  
 生田は毎日私に一緒に写真を撮ることを頼むようになった。 
 つい最近「毎日撮ってるよ」と言ったこともある。 
 でも嬉しそうに「はい!」と言っただけで理由は話す気はなかったよう。 
 またまた深まる生田の謎。 
  
  
 「今日はですね!今日は!」 
 「はいはい、落ち着いてから話しなさい。」 
  
  
 生田は公演が終わるといつもこうやって興奮気味になるから若干厄介だったりする。 
 しかも彼女が話す内容はいつも私に関してのことで。 
 聞いている方は嬉しいけど恥ずかしいし、そんな毎日毎日言われても…と思うのだが、結局は根負けしておとなしく聞くことになるのだ。 
 私が困った顔をしても今日のことを一生懸命話そうとする生田。 
 その姿がなんだか小さな子供みたいで少し笑ってしまった。 
   
- 5 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:02
 
-   
 「あっ!なんで笑うんですかー」 
 「別になんでもないよ」 
 「嘘だぁー!」 
  
  
 意地悪く笑って見せるとオーバーに指をさしてそう言った。 
 でもなぜかその顔はとびきりの笑顔で。 
 やっぱりこの子は不思議な子だと再確認する。 
  
 生田は私のことをひとしきり褒めたあと、ここに来た最大の目的であるであろう携帯を取り出して私に撮るように頼んできた。 
 自分ではなかなか2ショットが撮れないらしい。 
 最初に頼まれたときに生田がとった2ショットはほとんど私しか映っていなかった。 
 そのときから写真担当は私になったのだ。 
  
  
 「はい、撮るよー」 
 「はぁーい!」 
  
  
 なるべく画面に収まるように片手で生田の腰を引き寄せると少し驚いた顔をする。 
 それでも私がカメラしか見ずにいると、すぐにカメラのほうを向いてピースする生田。 
 それを確認して私はシャッターを押した。 
   
- 6 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:04
 
-  ピロリンという携帯ならではのシャッター音が鳴って生田に携帯を渡す。 
 生田は嬉しそうにそれを受け取って、確認画面をちゃんと私にも見せてくれた。 
 覗き込むように顔を近づける。うん、ブレてない。大丈夫。 
 保存しないのかな、と思いながら確認画面をしばらく見ていたら小さな声で「に、新垣さん」と呼ばれて、そのままの距離で生田の方に顔を向けるとまじかで目をまんまるくした生田がいた。 
  
  
 「ん?」 
 「ち、近いです」 
  
  
 言いにくそうにか細い声を出した生田にあぁ、とつぶやいて離れた。 
 自分が近いと言ったくせに、当の本人は離れていった私を寂しそうな目で見てくる。 
  
 なんで、そんな目で見てくるの? 
 近くて気まずかったからそう言ったんじゃないの? 
  
 言いたいことはいっぱいあったけどとりあえずいつもみたく「それ、後で送ってね」と言って片づけの途中であるメイク道具に手を伸ばす。 
   
- 7 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:05
 
-  我に返ったように大きく返事をしてそそくさと携帯を操作し始めた生田。 
 なんだか変な空気になってしまったけどあえて気にせずに片づけの手を早めていると「新垣さん写真撮ってください!」とフクちゃんに呼ばれた。 
 生田は気になったけど一応今日の写真は撮ったしいいよね、と思ってフクちゃんのもとへ向かおうとした。 
  
 その時、 
  
  
 「待ってください」 
  
  
 不意に右腕を掴まれて、いつになく真剣な顔で呼び止められた。 
 その黒目がちな瞳に吸い込まれそうで、でもその目を逸らしちゃいけない気がして圧迫されるような胸を左手で押さえる。 
  
  
 「何?」 
  
 そう答えるのが精一杯なくらい息のスピードが速くて。 
 なんだかわからないこの感じから逃げたくなる。	 
 でもこの生田の視線からは逃げられないんだと直感した。 
   
- 8 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:06
 
-   
 「…な、何でもないです」 
  
  
 私の質問の回答は気が張り詰めていたさきほどの空気を一変して返ってきた。 
 その回答に思わずポカンとしてしまう。 
  
 ――だってアンタさっきまであんな真剣な顔でいたじゃない。 
  
 その先ほどの真剣な表情からこっちを遠慮がち見てくる生田がなんだか可愛く思えて、引き締めていた顔の筋肉をふ、と緩めた。 
 私の緩んだ頬に気付いたのか生田も少し笑顔になったと同時に、掴まれていた腕にかすかに力が込められる。 
  
  
 「行っちゃダメです!聖に新垣さん渡しちゃったら長い間返してくれないもん」 
  
  
 私は物か!とツッコみたくもなったが今までのフクちゃんとの記憶を思い出してみると、長い間写真を撮らされて褒められて、挙句の果てにハロプロ愛について語りだされた日もあるので一応まぁね、と一言だけ返した。 
   
- 9 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:07
 
-  でも呼ばれて返事をして行かないわけにはいかない。 
 だからその手を離してほしいんだけど…。 
  
 いつの間にかひっぱり合いになってお互いうりゃうりゃと攻撃をしていた。 
 少しの間それを楽しんで私は生田の腕を逆に掴んで引き寄せる。 
 それは予想してなかったのかまた目をまんまるくして私を見た生田の頭に、ポンポンと手をのせて生田の顔を覗き込んだ。 
 真正面だからさっきよりも近い距離。鼻と鼻がくっつかくっつかないかの距離でじっと目を見つめる。 
 ほんのりと生田の頬が赤くなった気がした。 
  
  
 「生田がまだ私と話したいなら呼んでいいから。だからちょっとの間待ってなさい」 
  
  
 そう言ってにっこり笑ってみせると今日見せたどの笑顔よりも弾ける笑顔でうなずかれた。 
 頭にのせた手を動かして髪の毛をぐしゃぐしゃにして手をふってこの場を後にした。 
   
- 10 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:09
 
-  さっきまで離してほしいと思っていたのに、自然と離れていく生田の手を名残惜しいと思う。 
 これはさっき生田が見せた寂しそうな顔と同じ理由なのだろうか。 
 掴まれていた腕を自分でさすってみると、なんだか胸がぎゅってなって切なくなった。 
 理由はわからないけど生田と離れて少し寂しくなったのは確かで。 
  
 私は寂しさを紛らわすようにさすっていた腕を軽く上げてフクちゃんのもとへかけよっていった。 
  
  
  
  
 終わり  
- 11 名前:ゐくま 投稿日:2011/10/16(日) 19:14
 
-  >>2->>10 リボーンブログの毎日撮っている写真ネタ。 
 生ガキが仲良しで何よりです。  
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/10/17(月) 18:54
 
-  うぉぉぉう!! 
 生ガキは最近旬ですよね! 
 更新楽しみにしてます!  
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/10/19(水) 13:43
 
-  生ガキ楽しみにしてます 
 
- 14 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 19:57
 
-   
 更新します。  
- 15 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:01
 
-  生ガキ【わがまま】 
 
- 16 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:01
 
-   
 お昼休憩中、新垣さんが隣に座った。 
 えりなは新垣さんのことが大好きだからすごく嬉しくて。 
 ずーっと新垣さんを見ながらくばられたお弁当を食べてた。 
 他の9期に色々ツッコまれたけど、遥ちゃんに変な目で見られたけど、そんなの全然気にしない。 
  
 だって新垣さん、食べ方がリスみたいなんだもん。 
 普段はカッコいいのにちょっとした所がすごく可愛くて。 
 そういうギャップみたいなのが、すごい好き。 
  
 食べ終わった新垣さんはえりなの隣から立ち去ろうとする。 
 ――やだっ!行かないでっ! 
 そう思ったら、無意識に新垣さんの手を掴んででた。 
   
- 17 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:03
 
-   
  
 「ん?どうかした?」 
 「あっ…えっとぉ」 
  
  
 掴んだ手をパッと離す。 
 うろたえるえりなに新垣さんは怒ったりせずに優しく聞いてくれた。 
 胸がきゅんってなって、思うように言葉が出ない。 
  
 新垣さんは座ったままなえりなに視線を合わせるようにしてしゃがみこんだ。 
  
 少し低い位置にきた新垣さんの顔。 
 瞳にはえりなが映っている。 
  
 ただそんな単純なことが、えりなにとってはすごくすごく嬉しくて。 
 ドキドキしながら咄嗟に出た言葉がこれだった。 
  
  
 「…い、一緒に行きます!」 
  
  
 新垣さんは一瞬目を丸くしたけど、でもやわらかく笑った。 
 その笑顔にまたきゅんとする。 
 自腹で買った生写真の中の笑顔とは違う、優しくてお母さんみたいな笑み。 
  
  
 「飲み物買ってくるだけだよ?」 
 「それでも行きたいです!」 
  
  
 ちょっと前のめりになったえりなに仕方ないなぁ、と言って立ち上がる新垣さん。 
 そのあとを追うようにえりなも立ち上がると、頭にふわっと新垣さんの手が降りてきた。 
   
- 18 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:03
 
-  それを目で追ってまた少し下げて新垣さんの顔を見る。 
 視線がぶつかってトクンと胸が鳴る音が聞こえたと同時に、頭にある手がえりなの髪をすいてその手が少しずつ下がってきて。 
  
 ドキドキして顔が熱くなってくるのがわかる。 
 でも下がってきたその手は頬に行きつく前にすっと抜かれてしまった。 
  
  
 「じゃあお金取ってくるから、先に外に行ってなさい」 
  
  
 抜かれてしまったことに寂しさを感じていたら、ふいにそう言われてデコピンをされた。 
 おでこを押さえつつも元気に返事をする。 
 その返事に勢いがありすぎたのか新垣さんは少し苦笑しながら頭をぽんぽんって軽く叩いてカバンの方向に行った。 
   
- 19 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:05
 
-  デコピンは痛かったけど、そのおかげで我に返れた。 
 あのまま何も言われずにいたら周りの音も視線も気付かなかったと思うから。 
 我に帰っても新垣さんの手の感触はなんとなく残っていて。 
 自分で頭を撫でてみても全然違うんだけど、でも胸の奥がまたきゅんとする。 
 それでまたにやけていたら近くにいた里保に早く行かないとえりぽんが遅れるよ、と言われた。 
  
 その言葉にハッとして急いで楽屋を出たら、すでに新垣さんが立っていて。 
 速さにびっくりしつつも頭を下げて謝ったらふふ、と笑う声が聞こえた。 
  
  
 「いいんだけどさ。でもさっき何やってたの?頭触ってにやにやしちゃって。 
 結構長い間にやにやしてたからあえて声はかけなかったんだけど」 
 「えっ…いやぁそのぉ…」 
  
  
 そっか。新垣さんが早かったわけじゃなくて、えりなが思ってたより時間が 
 経ってただけなんだ。 
   
- 20 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:05
 
-  という納得もつかの間、ぐいっと距離を詰められて何よー、なんて聞かれながらうりゃうりゃされる。 
 顔の近さにドキドキしながらもにやにやしちゃうえりなって、本当に重症だと思う、自分でも。 
  
 教えませんよー、なんてごまかしながらその攻撃をよけると、新垣さんは面白くなさそうに少し離れる。 
  
  
 「もー、遅れてきたくせにぃ」 
 「…すみません」 
 「アハハ、嘘だよ。冗談だからー」 
  
  
 ほら行くよ、ってえりなの少し前を歩きだした新垣さんの背中に追いつくように少し小走りをした…――― 
  
  
  
  
 終わり  
- 21 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/08(火) 20:11
 
-  >>14->>20 
 生田がこんなわがままを言ってたら可愛いなぁと思って書きました 
  
 >>12>>13 
 まとめて失礼します。 
 ありがとうございます! 
   
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/08(火) 20:26
 
-  萌えますた(*´д`*) 
 
- 23 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:42
 
-   
 更新します。  
- 24 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:43
 
-  生ガキ 【気付けば】 
 
- 25 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:45
 
-   
 「あれ?生田?」 
  
 	 
 私が楽屋に戻ると目を真っ赤にして涙を流す生田がそこにいた。 
 思わず声をかけたら体をビクッと震わせて背中を向けられてしまう。 
  
 本番だって終わったばかり。 
 何があったのか、記憶を巡らせてみても泣いている理由らしきことはなくて。 
 私はゆっくり生田の背中に近付いてそのか弱そうなそれに手を当ててみた。 
 そのまま生田の座ってる隣の椅子に座ると、さらに顔を俯けて私に顔を見せないようにされてしまった。 
 …本当に何があったのだろうか。 
  
  
 「生田?どうしたの?」 
 「…ッなんでもない、です…っ」 
 「なんでもなかったら泣かないでしょーが」 
  
  
 私が無理矢理顔を覗き込もうとしても生田は首を横にぶんぶんと振るだけで、理由を話そうとしない。 
 背中に当てた手を動かして落ち着かせようとすると、少しだけ顔をあげてくれて、ほっとする。 
 でもこっちの様子をうかがってくるようなおびえた表情をする生田。 
   
- 26 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:46
 
-  そんな生田を安心させようとにっこりと笑ってみせるとなんだか余計に目がうるんできている気がして、慌てて背中にある手を頭へ移動させて優しくなでてやると、何故かもっと顔を歪めて。 
  
 そうして。 
  
  
 「ちょ、…え、あの…生田?」 
  
  
 いきなり目の前から生田が消えて、代わりに私の首らへんに生田の頭が見えて。 
 背中にまわされた両腕に強く、強く力を込められて。 
 ついていけていなかった頭がやっと‘生田に抱きつかれた’と認識したときにはもう生田がわんわんと泣きだしていた。 
   
- 27 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:46
 
-   
 生田は理由を話すわけでもなくただただ子供のようにうわーんと泣くばかりで。 
 私は少し困惑しながらも背中を撫でて、耳元で「大丈夫」を繰り返した。 
 何が大丈夫なのか、そんなのわからないけど、今の生田にはその言葉が一番だと思ったから。 
 少しだけ腕に力を込めて抱きしめてあげると、生田の力も増してくる。 
 頼ってくれてるんだってゆう嬉しさがやってきたけど、その前に体勢が体勢なせいで椅子から転げ落ちてしまった。 
  
  
 「いった…ちょっと生田?」 
 「もうちょっと…」 
 「え?」 
 「もうちょっとだけ、このままでいちゃダメですか?」 
  
  
 か細い声でぎゅって抱きついて、それでも落ちたせいで当たった私の背中を撫でてくれる生田。 
 いつも甘えてくる感じとは違う甘え。 
 痛いのは嫌だけど、こんな生田を突き放すのはもっと嫌で。 
 結局私はいいよ、と一言言ってしまった。 
   
- 28 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:47
 
-   
 微妙だった体勢を整えて、本人の希望通りしばらくそうさせてあげる。 
 グズグズと鼻を啜るような音は聞こえてきたけど、さっきの子供のような泣く声はなくなった。 
  
 なんだか自分の子供を抱き締めてるみたいで思わずにやけてしまう。 
 まだ結婚だってしていないのに、ましてやまだ23歳になったばかりなのに。 
 9期や10期のおかげですっかりお母さんな気分だ。 
 元気な新メンバーを見ていると、あぁ若いなぁ、なんて。 
  
 そんなこと考えていたら背中にまわっていた力がふっと抜けて、生田が離れていくのがわかった。 
 少し寂しい気もしたけど、落ち着いたならよかったとほっとする気持ちもあって。 
   
- 29 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:47
 
-  涙でぐちゃぐちゃな顔を覗き込んで、ほっぺに手を当て涙を拭ってやると少しだけ笑顔になった。 
 	 
  
 「もう大丈夫?」 
 「はい!ええと…すいませんでした」 
 「いいよ、謝んなくて。 
  それよりどうしたのさ、あんなに泣いて」 
  
  
 私の質問にちょっと顔を強張らせる生田。 
 ここまできて、話せないようなことなのか。 
 首をかしげてまだうるんでいる生田の目をじっと見つめると、生田の目に映る私が少し揺れ動いて。 
 手を当てていたほっぺが熱くなったような気がした。 
 熱でもあるのか、それとも泣いていたせいで体温が高まっているのか、生田の表情からは読み取れない。 
  
 しばらく黙って次の反応を待っていたら、小さく生田の口が開いた。 
  
  
 「さ、さみしくて…」 
 「さみしい?」 
 「えっと…10期メンバーとか入ってきたし、えりなが甘えるのっていいのかなって…」 
   
- 30 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:48
 
-   
 どんどん語尾の小さくなるその言葉の意味に、またにやけていくのがわかる。 
  
 生田はつい最近先輩になったばっかりだもんね。 
 誰かに甘えたくても先輩だからって悩んじゃったんだろうなぁ。 
  
 そんな生田がなんだかものすごく可愛く思えて、くふふと笑って思い切り頭を撫でた。 
  
  
 「いつだって甘えてきていいんだよ」 
 「でも…」 
 「‘『でも』はナシ’って愛ちゃんから言われたでしょ」 
  
  
 そう言って笑いかければ、強張らせた顔を緩めて小さくうなずいた。 
 えへへーと笑う姿が可愛くて、撫でていた手を再開させる。 
  
 KYで泣き虫で、可愛い後輩。 
 気付けば私の頭の中には生田が住み着いていて。 
 よくわからないけど、すごくあったかい気持ちになった。 
   
- 31 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:49
 
-   
 「えへへ、新垣さん好きですぅ」 
 「ハイハイ、私も好きだよー」 
  
  
 軽く返した言葉の意味が生田にとってどれだけの意味を持っているのか私は知らずに生田とじゃれあう。 
 それからどうするでもなくそのまま笑いあっていたら、戻ってきたメンバーに勘違いされたのは言うまでもない。 
  
  
  
  
  
 終わり 
   
- 32 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/13(日) 20:52
 
-  >>24->>31 
 生田が泣き虫と聞いて 
 まぁさみしいくらいでこんな泣かないと思いますけどw 
  
 >>22 
 萌えていただきありがとうございます!w  
- 33 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/13(日) 21:25
 
-  素晴らしい!! 
 もうたまらん!!  
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/14(月) 00:32
 
-  生田が佐藤ちゃんに嫌われちゃったのかなって心配したらしい 
 先輩になった、色々大変だな  
- 35 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 19:59
 
-   
 更新します。  
- 36 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 19:59
 
-  ダンスレッスンの休憩中。 
 床に座り込んで、水を飲む。 
 ボーっと周りを見渡すと、他のメンバーもぼんやりしていたり、ぐったりしていたり。 
  
 なのに。 
  
 「新垣さん聞いてくださぁーい!」 
  
 そんな静かな空間を壊すかのような元気のいい声でやってくる生田。 
 いや、元気なのはいいことなんだけど。 
 生田としゃべるのって結構体力使うんだよね。 
  
 私が苦笑いでもテキトーに流しても生田はしゃべり続ける。 
 それもとっても嬉しそうに。 
 そんな顔されたら、止めるにも止められないじゃない。 
 だいたい、話し相手なら私じゃなくてもいいのに、まったく。 
 心で文句を言いつつも、本当は私を選んでくれたことが嬉しかったり。 
 結局なんだかんだ言って、私も結構生田の話を聞くのが好きなのだ。 
   
- 37 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 20:00
 
-   
 軽く相槌を打っていると、突然生田が私の前から去って行った。 
 ちゃんと話を聞いていなかった私は、生田がなぜいなくなったのかわからないまま、ただ呆然とするばかりで。 
 何かしちゃったかな?とか怒らせちゃったかなとか不安になっていると、その不安をかき消すようにまた生田が元気な声で現れた。 
  
 そして手の中にあるものを見せてきて、 
  
 「買っちゃいました!」 
  
 と、とびきりの笑顔で言ってきた。 
  
  
 「アンタ、また買ったの?コレ」 
 「ハイ!当り前じゃないですかぁー。えりなは新垣さんを応援する会の会員で…」 
 「え、それってまだ続いてたわけ?」 
 「続いてますよぉー」 
  
  
 何言ってるんですかー、と今度はふてくされる生田。 
 私はおでこに手をついて溜息をつく。 
   
- 38 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 20:02
 
-   
 生田の手の中にあるのは紛れもなく私の生写真で。 
 舞台をやってきた時もバースデイtTシャツや生写真を買って私に自慢してきては「サインください!」なんて言ってきたのも今ではいい思い出となっていたのだけど…。 
  
 目の前の生田は「この写真がお気に入りなんですー」とか言って何枚かあるうちの写真をぴらぴらと見せている。 
 私は何にも言ってないのに、勝手に一人盛り上がってテンションが上がっちゃって。 
  
  
 「舞台が終わってもえりなは新垣さんのファンですよ!」 
 「あぁ…うん…」 
 「今度のツアーグッツも買いますから!」 
  
  
 えっへんと胸を張る生田。 
  
 そんなのスタッフさんに言えばもらえるのに。 
 ファンってアンタは私とメンバー同士でしょーが。 
 私の写真なんかにお金使わないでもっと他のことに使えばいいのに、中学生なんだから。 
 ふつふつと言葉はわいてくるけど、どれも皮肉めいたもので。 
 いつもならこんな可愛くな言葉を容赦なくぶつけるのだけれど。 
  
 今は、 
  
   
- 39 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 20:03
 
-   
 「…ありがとう、生田」 
 「へっ?」 
  
  
 予想していなかった言葉じゃなかったのか驚いた顔をした生田に笑いかけた。 
  
 私がリーダーになって数ヶ月経つ。 
 慣れたこともあるけれど、まだまだ不安は抜けきらない。 
 数ヶ月前に卒業していった同期の存在は大きくて。 
 頑張ろうって思いはもちろんあるけど、どうしても負けそうになる時があった。 
 そんなとき、無理に気を遣うわけでなくただ単純に、純粋に私を応援してくれる生田にどうしようもなく助けられるのだ。 
  
 だから、いつも言わない言葉を、今。 
  
   
- 40 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 20:03
 
-   
 「今…新垣さん、ありがとうって…」 
 「んー?そんなこと言ったっけ?」 
 「えっ!?言ったじゃないですかぁー!」 
 「ふふっ、しーらないっ」 
  
  
 もーとか新垣さぁんとか言ってる生田を無視して立ち上がる。 
 静かだった空間はいつの間にかうるさいくらいに明るくなっていた。 
 げんなりしている空気だったら、上手くいくものもいかない。 
 うるさいのは困るけど、空気が明るくなることはいいことだ。 
 日頃はKYと呼ばれているけど、もしかしたら場を和ませてくれるのもこの子のおかげかな、なんて思いながら大きく息を吸う。 
  
 明日も明後日も、生田のくだらない話を聞いてあげよう。 
 それをこっそり、心の支えにして。 
  
  
  
  
 終わり 
   
- 41 名前:ゐくま 投稿日:2011/11/22(火) 20:09
 
-  題名を忘れました。すいません。 
 誤字もありましたね。グッツ→グッズ 
 ほんとすいません。 
  
 生ガキ【私があの子に思うこと】 
 >>35->>40 
 生田がハロショでガキさんのグッズ大量に買ってると聞いて。 
 さすがガキさんヲtry 
  
 >>33 
 レスありがとうございます! 
 うれしいっす! 
 >>34 
 レスありがとうございます! 
 そのようですな。 
 挫けずに頑張ってほしいものですね。 
   
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/09(金) 22:23
 
-  なんだかニヤニヤしちゃうね 
 
- 43 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 10:58
 
-   
 他にも誤字ってましたね。 
 tTシャツ→Tシャツ 
 予想していなかった言葉じゃなかったのか→予想していなかった言葉だったのか 
 すいません。 
  
 更新します。 
   
- 44 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 10:58
 
-   
 9期【スタート】 
   
- 45 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 10:59
 
-   
 楽屋に戻ったらえりぽんと里保ちゃんがあーだこーだ言い合っていた。 
 普段こんな風に喧嘩したりしないのに、急にどうしたんだろう。 
 聞き耳を立ててみるけど内容まではわからない。 
 とりあえず先輩たちが戻って来るまでになんとかしとかないと。 
 あたしは二人を横目で見ているらしき聖ちゃんに聞いてみることにした。 
  
  
 「ねぇ聖ちゃん」 
 「ごめん、聖もわかんないんだよね」 
 「あ…そうなの」 
  
  
 話しかけた途端謝られたら何も言い返せない。 
 ため息をついて二人を見れば今度は目も合わせないで反対向きに座ってた。 
 うるさかった楽屋が急に静かになってなんとかしようとは思うんだけど。 
 えりぽんは携帯取り出していじいじしてるし、里保ちゃんは話しかけるなオーラ出しまくりだし、聖ちゃんはなんだか気まずそうにはしてるけど関わりたくなさそうな顔してるし…。 
  
 これじゃあ先輩どころか後輩にも呆れられちゃうよ。 
   
- 46 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:00
 
-   
  
 「ねぇえりぽん」 
 「後にしてくれると?今忙しいっちゃん」 
 「あ…うん」 
  
 「ねぇ里保ちゃ」 
 「何?」 
 「…なんでもない」 
  
  
 楽屋にあたしのため息が一つ。 
 有無を言わせない沈黙が三つ。 
  
 はぁ…なんでこうなったんだよー。 
 言い合うようなことで喧嘩なんてあんまりないじゃん。 
  
 あたしが項垂れていると、さっきまで話しかけないでオーラを出していた里保ちゃんが口を開いた。 
  
  
 「衣梨ちゃんが悪い」 
 「はぁ?衣梨奈のどこが悪いと!?そっちが悪いやん!」 
 「あぁー!!また言い合うのはダメー!!」 
  
  
 座っていたえりぽんは音を立てて立ち上がって、里保ちゃんは知らん顔して未だに座ったまま。 
 その間にある机にあたしと聖ちゃん。 
  
 なんなんだ、この対立は。 
   
- 47 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:01
 
-   
  
 「…とりあえず言い合いはなし。話し合いしよう?」 
  
  
 今にもつっかかりそうなえりぽんをなんとか押さえて言った。 
 そうしたら嫌な顔されたけど元の位置に戻ってくれて…いや戻られると遠いんだけど。 
 それでももうこれ以上時間をかける訳にはいかないと思って話を切り出した。 
  
  
 「まずえりぽんはなにが嫌なの?」 
 「全部」 
 「それはなしだよ」 
 「だって本当のことだし」 
  
  
 えりぽんはこれ以上何を聞かれても答えませんみたいな顔してそっぽを向いてしまった。 
 仕方なく今度は里保ちゃんに目を向ける。 
 里保ちゃんは当然こっちなんて見てなくて、むしろ背を向けて座ってる。 
 その背中に問いかけた。 
  
  
 「里保ちゃんは?」 
 「甘く考えてるとこ」 
 「例えば?」 
 「10期のこととか」 
  
  
 里保ちゃんはえりぽんと違って明確な答えを言ってくれた。 
   
- 48 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:01
 
-  でもあたしの理解能力が足りないのか、あたしには「10期のことを甘く考えてる」という意味がよくわからない。 
 「どうゆうこと?」と聞けば「香音ちゃんも甘いんじゃない」と言われてちょっと傷ついた。 
  
  
 「10期がすぐに入ってきて9期が抜かされるかもしれないから意識を持てってことでしょ」 
  
  
 今までずっと口を開かなかった聖ちゃんがいきなり喋りだしたからちょっと驚いた。 
 でもすぐに言葉の意味を噛み砕いて理解していく。 
  
 10期が入ってきて2ヶ月ほど。 
 イベントも一緒にやったし撮影もしてる。 
 お喋りして仲良くなったり、ダンスを教えたりもした。 
 その中でもやっぱり負けたくないし、抜かれたくない。 
 そうゆう意識が足りない、とそういうことを言ってたのか。 
   
- 49 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:02
 
-   
 その意識ならあたしだってある。 
 そんなの9期みんな思ってるだろうと思ってた。 
 でもえりぽんは? 
  
  
 「衣梨奈は意識してない訳じゃないと。 
  ただ里保が「10期に負けない」とか「10期はライバル」とかずっとそんな風に言ってるから…」 
 「だから衣梨ちゃんはライバルだって思ってないんでしょ」 
 「そうじゃなくて!確かにライバルだけど、一緒に頑張るってゆうのも大切にした方が良いって言ったと! 
  なのに里保は「それは考えが甘い」って…」 
  
  
 確かにえりぽんの言ってることはわかる。 
 最近の里保ちゃんは余裕がないってゆうか、ライバル精神があるのは良いことだけどちょっとそうゆう所が欠けてるって感じがしてた。 
 意識が高くて頑固な里保ちゃんはきっとそれを忘れてる。 
 いや、忘れてる訳じゃないけど、見逃してる?のかも。 
   
- 50 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:02
 
-   
 またしばらくの沈黙が続く。 
 どう言ったらいいのか、どう説得させればいいのか。 
 沈黙の間、ずっと考えてたけど、あたしには気の利いた言葉なんて見つからなくてなかなか話を再開させれなかった。 
  
 そんな中、聖ちゃんがまた口を開いた。 
  
  
 「初心忘れるべからず…」 
 「え?」 
 「ってなんかの番組で言ってたよ」 
  
  
 確かに聞いたことはあるけど、なんでそれを? 
 聖ちゃんはまたそれきり話さなくなっちゃった。 
  
 あたしはその言葉の意味をとりあえず考える。 
 初心忘れるべからず…あたしたちの初心ってなんだっけ。 
 ただついていくのに必死でがむしゃらに目標に向かって…。 
  
 あたしの目標は、先輩みたく、かっこいいダンスを踊りたい。歌が楽しく歌いたい。 
 そう思ってずっと頑張ってきた。 
 それは今も変わらない。たとえ、ライバルがいても。 
   
- 51 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:03
 
-   
 えりぽんや里保ちゃん、聖ちゃんもそうゆう目標を持っていたはずだよね。 
  
 だったら……… 
  
  
 「初心に返ってみよう!」  
 「初心初心ってさぁ…よくわからんっちゃけど」  
 「すぐ後ろに10期はいるのに、なんでスタート地点に戻らなきゃいけないの?」  
 「スタート地点に戻るって訳じゃなくて、スタート地点の気持ちを思い出すってことだよ!」 
  
  
 えりぽんも里保ちゃんも全然考えてくれない。 
 どうしてそうなんだよ。 
 変な所二人して頑固でわからず屋なんだから。 
  
  
 「もー!ちゃんと二人も考えて!」 
 「ちょ、香音ちゃん!?」 
  
  
 あたしは里保ちゃんを引っ張って無理矢理立たせて、えりぽんの所まで行った。  
 何度も叩かれたり抵抗されたけど痛くない。 
 二人がこんな雰囲気でいられる方がずっとずっと心が痛いもん。 
   
- 52 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:04
 
-   
 えりぽんも無理矢理立たせて、二人の腕を引っ張った。 
 さすがに二人からの抵抗には力が必要で大変だったけど途中聖ちゃんが手伝ってくれて、なんとか二人を真ん中の机に座らせることが出来た。 
  
  
 「えりぽんも里保ちゃんも、目標とかあったでしょ」 
 「目標?」 
 「そう、目標。モーニング娘。に入った時の最初の目標」 
  
  
 あたしが二人の目をじっと見つめていると観念したように二人は考え出した。 
  
 えりぽんの目標、里保ちゃんの目標、聖ちゃんの目標、あたしの目標。 
 それぞれだけど、必ず共通点はある。 
 だってみんな最初は思ったはずだもん。 
  
  
 「…ひたすら頑張ってた記憶しかないっちゃん」 
 「うん。頑張って先輩たちに追い付こうって」 
 「それだよ、きっと」 
 「え?」 
 「どうゆうこと?」 
  
  
   
- 53 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:05
 
-  がむしゃらにやって頑張って頑張って、成長出来たあたしたち。 
 でも慣れと共に馴れ合いになってしまうこともある。 
 えりぽんはそうゆう所があるのかもしれない。 
  
 今は下の子達から逃げるばっかりだけど、加入したてのころは「早く先輩に追い付かないと」って焦りがあって、でもそれのお陰で今まで成長してきたんだ。  
 上を目指すことを、里保ちゃんは忘れてる。 
 ライバルに気をとられ過ぎて。 
  
 みんないっぱいいっぱいだからわかる。 
 考えてることも違うし、行動も歌もダンスも個性も違うけど。 
 でもみんなスタートは一緒だった。 
 みんなひたすら頑張ってた。ひたすら先輩を追いかけてた。 
 今のあたしたちにはそれが足りない。 
  
 そう説明したら、二人はちょっとうつむいて頷いてくれた。 
   
- 54 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:06
 
-   
  
 「そうかもしれないとね」 
 「自分のことしか見えてなかった」 
  
 「二人の気持ちはさ、すごく良いことだと思うけどそれだけじゃいけないってことなんだよ、きっと」  
  
  
 二人はちょっと申し訳なさそうに、でもやっと笑ってくれた。 
 そんな二人を見てほっとする。 
 ちょっと良いこと言ったかな?なんて思っちゃったりして。 
  
 「頑張ろー!」って言ったら「おー!」って言って騒ぎだした。 
 その感じが楽しくて嬉しくて、自然と笑顔になれる。 
  
 しばらくして帰ってきた先輩たちに怒られたけど、えりぽんと里保ちゃんはそのまま帰ってきた10期メンバーと一緒に騒いでた。 
   
- 55 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:06
 
-   
 うんうん、良かった良かった。 
 そんな気持ちで見ていると聖ちゃんが隣に来て言ってきた。 
  
  
 「香音ちゃん大人になったね」 
  
  
 なんだか恥ずかしくなって、二の腕あたりを叩く。 
 そしたら急に腕を引っ張って里保ちゃんたちの所へ向かわされた。 
  
 一緒になって騒いで、でもライバルで。 
 それでも上を目指すことをやめない。 
  
 初心忘れるべからず。 
 忘れたならば初心に返って思いだそう。 
  
 スタート地点には必ずあの日の思いが詰まっているから。 
  
  
  
 終わり  
- 56 名前:ゐくま 投稿日:2011/12/22(木) 11:10
 
-  >>44->>55 
 まさかの9期メイン。 
 最近9期メンバーがいとおしいこの頃です。 
 フクちゃんのキャラが謎キャラになってしまいました。 
  
 >>42 
 レスありがとうございます。 
 にやにやしていただいて嬉しいです。  
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/22(木) 11:32
 
-  生ガキ好きです 
 
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/12/22(木) 23:01
 
-  9期メンいいですねー 
 ほんわかさせていただきましたw  
- 59 名前:ゐくま 投稿日:2012/01/09(月) 13:55
 
-  更新します。 
   
- 60 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 13:56
 
-  愛ガキ 【おねーちゃん】 
 
- 61 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 13:58
 
-   
  
 里沙ちゃんが久々に家に泊まりに来た。 
 他愛のない会話も、娘。のことについても話した。 
 すっかり日は落ちて窓の外は暗く、その中でちらちらと雪が白く降っている。 
  
 夕飯を食べ終えてテレビも楽しくなくなってきて電源を切ったら、夕飯からさほど水分を取っていないのに気付いて、何か飲もうと立ち上がった。 
 あたしが「あたし紅茶飲むけどアンタもそれでいい?」と聞くと「えーコーヒーがいいなぁ、里沙は」と返ってきた。 
  
 久々に聞く一人称に少し驚きながらもそのまま「わかった」と小さく頷いてキッチンへ向かう。 
 マグカップを取り出して、紅茶とコーヒーの用意をしながら昔のことを思い出した。 
   
- 62 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 13:59
 
-   
 加入したての頃によく聞いていた一人称。 
 先輩の前や雑誌のコメントなどでは「私」と言っていたし、歳の割りにしっかりしていると言われていた彼女だけど。 
 同期の前では一番年下の甘えん坊で、「里沙はね」と言いながら楽しそうに話しかけてくれたのを覚えてる。 
  
 今ではそれを家族の前でしか見せない。 
 今日みたいにたまにうっかりこぼれるのが聞けるくらいで、もうずっと甘えん坊な里沙ちゃんは見ていない。 
  
 いつの間にか甘え下手になってしまった彼女。 
 ギリギリまで頑張る彼女を見ていると甘えさせたい気持ちになる。 
 だから今日の彼女の失態を上手く利用した作戦を立てる。 
  
 頬が自然に緩むのを感じながら、紅茶とコーヒーを入れたマグカップを持って彼女の元へと向かった。 
   
- 63 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 13:59
 
-   
  
 「はい、どーぞ」 
 「ありがとー」 
  
  
 コーヒーの入ったマグカップを渡すと、先ほどの失態を気にしているのか少しぎこちない動きをして受け取った。 
 あたしが隣に座ってじっと見つめてもそれに気付いてないかのように真っ直ぐ前を見てコーヒーを飲む里沙ちゃん。 
 でもしばらく見つめていれば耐えきれなくなって「な、何?」とこっちを向く。 
 目線を合わせないようにして、悟られまいとする姿がいかにも彼女らしい。 
 今がチャンスだと思ってさっきの作戦を実行する。 
 マグカップを机に置いて彼女の頭に手を伸ばす。 
 そしてニッと笑ってやった。 
  
  
 「“里沙ちゃん”」 
 「なっ…何よ、急に…そんな呼び方」 
 「嫌かぁ?」 
 「い、嫌ってゆうか…だから今更そんな風に呼ばれても気持ち悪いんだってばっ」 
   
- 64 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 14:00
 
-   
  
 昔呼んでいた名前を口にすれば、異様に口数が多くなって慌てる彼女。 
 こんな風に名前を呼ぶたびに彼女は「それは気持ち悪いから“里沙”って呼んでよ」と文句を言ってくる。 
 そう言われても結局“ガキさん”に慣れちゃって口にするのはいつもそれだけど。 
 本当は“里沙ちゃん”って呼びたい。 
 いくらしっかり者でもあたしの中では2歳年下の妹のような存在だから。 
  
  
 「だってさっき里沙ちゃんが自分のこと名前で呼ぶから」 
 「あっ、れは違うから!愛ちゃんの聞き間違えだから! 
  てゆうか年上なんだからちゃん付けしないでよっ」 
  
  
 一気に文句を言ったからなのか、あたしに隙を突かれたからなのか、里沙ちゃんは顔を真っ赤にしてあたしを睨んできた。 
 あたしはそんな視線にも笑って応えるだけ。 
 サラサラな髪の毛をぐしゃぐしゃにするくらい撫でれば「もぉー、やぁだぁ」と抵抗してくる。 
 それでも拒絶というほどの抵抗ではなくて、恥ずかしがっているだけというのはわかる。 
   
- 65 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 14:00
 
-   
 あたしたちの過ごした年月は、お互いの行動の意味さえも理解出来るほど深くなった。 
 里沙ちゃんだってあたしがしたいことをわかってるはずだ。 
 だからなのか抵抗も少しずつ弱まってきて、恥ずかしそうに頬を染めているけど嬉しそうにも見えるような穏やかな表情をする。 
 あたしは撫でるのをやめてその手を彼女の膝に置かれている手に重ねた。 
  
  
 「今日くらい甘えたら?」 
 「私甘えたいなんて一言も言ってないんですけど」 
 「でもさぁ、たまには息抜きせんと」 
 「…そうかな」 
 「うん。だからうんとお姉さんに甘えなよ」 
 「えー、愛ちゃんがお姉さん?」 
  
  
 クスクスと笑う態度に腹立たしくなったけど、言い返せないほどあたしは彼女よりしっかりしていないからちょっと睨むだけの仕返しをする。 
 そうしたら罰が悪そうな顔をして「嘘だよ」と言われた。 
 意外な言葉に目をぱちくりさせると、彼女は少し目線を下げて重ねた手を握ってきた。 
   
- 66 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 14:01
 
-   
  
 「愛ちゃんは私のお姉ちゃんだもんね」 
 「里沙ちゃんの?」 
 「うん。昔から愛ちゃんに頼ってきたし」 
 「そんなん、あたしやって」 
 「私がお喋りしたいときもほとんど聞き流してたけど聞いてくれたし、 
  部屋が汚いのも早口で何言ってるかわかんなかったけど怒ってくれたし」 
 「なんかあんま良く言われてない気がするんやけど」 
  
  
 里沙ちゃんはあたしの言葉を聞いているのかいないのか、懐かしそうに笑って話した。 
   
- 67 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 14:02
 
-   
 そうしたら不意に肩に頭を乗せてきて、 
  
 「おねーちゃん、ありがとう」 
  
 と呟いた。 
   
- 68 名前:おねーちゃん 投稿日:2012/01/09(月) 14:02
 
-   
  
 なんで、なんでそんなこと言うんだ。 
  
 昔のまだあどけない顔立ちの里沙ちゃんがそのままあたしに言っているように見えて、 
 甘やかそうと作戦を立てたのはあたしのはずなのにそんなこと言われたら涙腺が緩んできて、 
 あたしは涙を見られないように里沙ちゃんの頭に手を回して無理矢理胸の方へ引き寄せた。 
  
 「もぉー、痛いよー」と言いながらもどこか嬉しそうな音色にあたしも頬が緩む。 
 堪えきれなかった涙を少し乱暴に拭いて、その小さい頭をグリグリと撫でまわす。 
 口では文句を言いながらも何一つ抵抗しない姿に、作戦は成功したなと思った。 
  
 腑に落ちないことも言われたけど、 
 言い負かされた部分もあったけど、 
 里沙ちゃんが今、甘えん坊になっているならそれでいい。 
  
 いつかまた里沙ちゃんが甘えたくになるときがあったら、その時はうざかられるくらいに甘やかそう。 
 あたしは里沙ちゃんの“おねーちゃん”なんだから。 
  
  
 終わり 
   
- 69 名前:ゐくま 投稿日:2012/01/09(月) 14:07
 
-  >>60->>68 
 ガキさんの卒業ショックでしばらく寝込んでいました。 
 愛ちゃんの前だけの甘えん坊なガキさんが大好きです。 
 遅くなりましたが明けましておめでとうございます。 
  
 >>57 >>58 
 レスありがとうございます。 
 まとめて失礼しました。 
   
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/01/13(金) 02:12
 
-  この二人の空気感いいですねえ 
 じゃれる二人にすごくあったかい気持ちになりました 
  
 (ガキさんリーダーも生ガキも、もっともっと見ていたかったですよね…涙)  
- 71 名前:ゐくま 投稿日:2012/01/16(月) 18:11
 
-  更新します。 
   
- 72 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:12
 
-  生ガキ【些細な変化】 
 
- 73 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:12
 
-   
  
 今日はスタッフさんやカメラマンさん、マネージャーさんによく怒られる。 
 なんか頭がボーッとして、慣れてきた撮影も上手くきまらない。 
 廊下を歩いていたらスタッフさんとぶつかって、 
 マネージャーさんの話もあやふやなまま時間を間違えてしまったり…。 
 集中力がないのはいつものことだけどこんなに集中出来ないのは初めてに近いくらいだ。 
 それを指摘されて色んな大人に怒られた。 
  
 聖には「大丈夫?」と聞かれたけど体調は悪いわけじゃないから首を横に振って、 
 里保や香音には「しっかりしなよ」なんて笑われたのに言い返せなかった。 
   
- 74 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:14
 
-   
  
 楽屋で一人、また次の撮影の順番を待つ。 
 なんでこんなボーッとするっちゃろ? 
 自分でもわからないまま、備え付けの鏡を見つめてみる。 
 そこにはいつもと変わらない、ちょっとしまりのない顔をした衣梨奈が居るだけ。 
 うーん、と唸って頬を手でぐにゃぐにゃと動かしてみても頭のボーッとした感じは抜けなくてため息をついた。 
  
  
 「なんか、疲れたかも…」 
  
  
 いつもはそんなに感じない疲れも今日はどっと出ている気がする。 
 口に出してみれば余計に自分が疲れてるような気がして肩が重くなった。 
   
- 75 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:15
 
-  しばらく頬杖をついて鏡をぼんやりと見つめていると、鏡のはしっこに誰かが入って来るのが見えた。 
 でもぼんやりとしか見ていないから焦点は定まらなくて、誰だかはわからない。 
 振り向くのも億劫でそのままの状態でいると、入ってきた人が声をかけながら近付いてきた。 
  
  
 「生田ぁー、何してんの?」 
  
  
 衣梨奈の大好きな声が耳を通って億劫だったことなんて忘れるかのように、思い切り振り向いた。 
 そこには不思議そうな顔をした新垣さんがいて、自然と口元がにやける。 
 そんな衣梨奈をいつもは「なにー、その顔ー」と言ってからかってくるのに、今日の新垣さんは何も言ってこない。 
 ただ衣梨奈をじっと見つめているだけ。 
   
- 76 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:16
 
-  不安になってにやけた口元を引き結ぶと、新垣さんの手が衣梨奈の頬に触れた。 
  
  
 「あんた、あんまり寝れてないでしょ」 
 「えっ…」 
 「顔色悪い」 
  
  
 新垣さんはそう言うと頬を一撫でしてから衣梨奈の腕を引っ張った。 
 えっ、えっ、なんて間抜けな声を出しながら引っ張られる感覚に素直に従う。 
 メイク台の椅子から立ち上がらされた衣梨奈は少しだけふらっとして、思わず新垣さんの腕にしがみついてしまった。 
 慌てて手を引こうとすると、新垣さんがそれを遮った。 
  
  
 「やっぱり」 
 「あのっ…違うんです」 
 「あのね、辛いときは我慢だけするんじゃなく、ちゃんと自分で改善しようと思わなきゃダメなんだよ」 
  
  
 自分の身体なんだから ―― 
 そう言った新垣さんの声色はなんだか怒ってるようにも心配しているようにも聞こえて、衣梨奈は反応出来なかった。 
 でも反応なんてしなくても新垣さんは再び腕を引っ張って、大きめのソファーの上に導いてくれた。 
   
- 77 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:16
 
-  新垣さんが奥の方に座って、隣をぽんぽんと叩く。 
 ここに座れ、と言われたようなので素直に座ると、今までとは比べ物にならないくらい強い力で引っ張られて、必然的に新垣さんの膝の上に頭が乗るような形になってしまった。 
 動こうとしたら優しく頭を撫でられて、急に睡魔が襲ってきた。 
 でも一度新垣さんの表情を確認したくて仰向けに転がる。 
 新垣さんは眉を八の字にして衣梨奈を見下ろしていた。 
  
  
 「順番までまだ時間あるから、それまで寝てなさい」 
 「でも…」 
 「“でも”はナシ」 
  
  
 ふふふっと笑って頭を撫で続ける新垣さん。 
 その感覚が心地よくて睡魔が更に襲ってきた。 
   
- 78 名前:些細な変化 投稿日:2012/01/16(月) 18:17
 
-   
 そう言えば、おはスタの収録やラジオの立て続けの収録であんまり寝れてなかったかもしれない。 
 さっき鏡で見たときは全然気付かなかったし、周りも気付てないみたいだったのに、なんで新垣さんはわかったんやろ。 
  
 新垣さんはやっぱりスゴい人。 
 可愛くてかっこよくて優しくて、ちょっとの変化も気付いてくれる大好きな人。 
  
 あぁ…衣梨奈ばり幸せ。 
 口元がまたにやけるのを感じながらゆっくりと瞼を下げていく。 
 目を瞑る瞬間、新垣さんの口元が「おやすみ」と動いていたのが見えた。 
  
  
 終わり 
   
- 79 名前:ゐくま 投稿日:2012/01/16(月) 18:23
 
-  >>72-78 
 生田だって疲れることもあるだろうと思って書きました( 
 生田が日々ヲタヲタしくなっていくのを見てにやついています。 
  
 >>70 
 レスありがとうございます。 
 そう言っていただけて嬉しい限りです。 
 新垣リーダーが短く終わってしまうのは非常に惜しいですが、生ガキは不滅!!と思ってなんとか乗り切っている毎日です。 
   
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/01/16(月) 21:03
 
-  おはスタは大変そうですもんね〜 
  
 個人的に文末の生ガキの画を妄想していたので 
 今読み終わって更にニヤニヤしておりますw  
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/01/16(月) 23:37
 
-  生田ちゃんのツアー日記ヲタヲタしすぎ 
 どこのキモヲタブログだと思ったw  
- 82 名前:ゐくま 投稿日:2012/02/13(月) 17:11
 
-  更新します。 
 
- 83 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:13
 
-  生ガキ【好きスキすき】 
 
- 84 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:13
 
-   
 「生田、ちょっとどっか行かない?」 
  
  
 待ち時間が余って暇をしていたメンバー。 
 何人かは楽屋から出ていったり、寝てたり。 
 えりなはその間にもじっと新垣さんを見つめてたから、そんなに暇じゃなかったけど、新垣さんに誘われたら行くしかない。 
 行く場所なんて撮影中だからたかがしれてるけど。 
 それでも新垣さんに誘われたことが嬉しくて、楽屋から出た時にはもう顔のにやつきがMAXになっていた。 
 左腕にべったりくっついて歩き出したえりなに新垣さんはいつもみたく眉を八の字に下げて笑った。 
  
  
 「もぉー、歩きにくいんだけどー」 
 「離れたくないんですぅー、んふふ」 
  
  
 また今日も「くっつきすぎてごめんなさい」ってメールしなくちゃいけないかもしれない。 
 でもくっついてる間は幸せだからそれでいい。えりな幸せ。 
   
- 85 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:14
 
-   
 くっつくたびにわかる新垣さんのすべすべな肌が好き。 
 くっつくたびに微かに香る新垣さんの甘い匂いが好き。 
 もう最近じゃ年下の同期二人からは「ファンの域を越えて変態じゃん」なんて言われるようになった。 
 それでも仕方ない。好きなんだもん。 
  
  
 しばらく歩いていたら後ろから大きい声で「にぃーがぁきさぁぁん」と呼ぶ声が聞こえた。 
 振り向こうとした頃には時すでに遅し。 
 新垣さんの右側に優樹ちゃんがくっついてた。 
  
  
 「えへへ、新垣さん見ぃつけた」 
 「何ー、今かくれんぼしてる覚えはないよー」 
 「でも探してたんです」 
  
  
 優樹ちゃんが嬉しそうにくっつきながらぴょんぴょん跳び跳ねる。 
 そんな優樹ちゃんを落ち着かせるように、ハイハイとあしらいながら頭を撫でる新垣さん。 
   
- 86 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:15
 
-   
 むくむくと沸き上がる嫉妬心。 
 さっきまで天国だったのに、一気に地獄に落とされた気分になった。 
  
 優樹ちゃんも新垣さんが好きだと言っていた。 
 可愛い、憧れ、とも言っていた。 
 だから去年あった舞台で出来た“新垣さんを応援する会”に誘ったこともあった。 
 でもこうやって新垣さんにくっついてたり、新垣さんに頭を撫でられてたりするのを見ると、なんか寂しくなって構ってほしくなって、ついそれを邪魔してしまう。 
  
 今日も新垣さんを横からぎゅっと抱き締めて優樹ちゃんに対抗してしまった。 
  
  
 「今の新垣さんは、えりなのものなの」 
 「えー?」 
 「だから離してよう」 
 「ふふふ、嫌ですぅ」 
  
  
 えりながどれだけ真剣に言ってるのか、天然な優樹ちゃんにはいつも伝わらない。 
 それどころか反対側から同じようにぎゅっとしてくる。 
 負けたくなくて力を込めてこっち側に引っ張ると同じように引っ張る。 
   
- 87 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:16
 
-  優樹ちゃんには何をしても効かない。 
 それはここ数ヶ月で学んだけど、何もしないままでいるのは嫌で、つい長々と対抗してしまう。 
 これ優樹ちゃんの作戦じゃないとね? 
  
 新垣さんもどちらかといえば優樹ちゃんの方を向いて、笑ってた。 
 いつも新垣さんはえりなをおちょくってくるから、たぶんそれなんだろうけど、やっぱり寂しかった。 
  
  
 えりなだって抱きついてるのに。 
 えりなだって見てほしいのに。 
  
   
- 88 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:16
 
-   
 こんなに新垣さんのこと、好きなのに。 
  
   
- 89 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:17
 
-   
 もともと緩い涙腺が緩みそうになって新垣さんの肩に額を擦りつけると、えりなの頭に新垣さんの手が降りてきた。 
 ぽんぽんと優しく叩かれると、どうしようもなく好きが溢れちゃって。 
 気持ち悪がられてもうざがられてもいいから、もっともっと近くにいたくなっちゃって。 
 優樹ちゃんがいるはずの右腕まで巻き込んでぎゅぅうっと抱き締めた。 
  
 するとそんなえりなに気付いたのか「まーちゃんくどぅが待ってるので帰ります」と言って優樹ちゃんはその場から去って行った。 
  
  
 「いーくた」 
  
  
 新垣さんは低く優しい声で呼んだ。 
 出てきそうだった涙はなんとか留まってくれたから、ゆっくり顔をあげる。 
 新垣さんは優しく笑ってまた頭をぽんぽんと叩いた。 
   
- 90 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:18
 
-   
  
 「あはは、目真っ赤」 
  
  
 新垣さんはそう言ってえりなの目元を撫でた。 
 するとさっきまで我慢していた分の涙が導かれるかのように自然と出てくる。 
 もう悲しくないのに、もう寂しくないのに。 
 新垣さんの笑顔を見ると、心臓が掴まれたようにぎゅってなって。 
  
  
 「もう可愛いなぁ」 
 「ふぇっ?」 
  
  
 いきなりそんなこと言われてびっくりしてすっとんきょうな声が出る。 
 それにも笑って頭を撫でる新垣さん。 
 恥ずかしくなって俯いたら、頭にある手が離れてえりなの腰に巻き付いた。 
 そのままさっきえりながしたようにぎゅっと抱き締められる。 
  
 一瞬何が起こってるかわからなくてそのままでいると、新垣さんが耳元でつぶやいた。 
  
  
 「こんなくっつかなくても、離れたりしないから」 
  
  
 ぽつり。 
 新垣さんの洋服に、えりなの涙が染みていった。 
   
- 91 名前:好きスキすき 投稿日:2012/02/13(月) 17:19
 
-   
 抱き締められるだけでお腹いっぱいなのに、そんなこと言われたらもっともっとほしくなってしまう。 
 でも反応することは出来なくて、ずっと固まったままだった。 
  
 すぅ、と息の吸う感覚がして少しだけ身をよじると、新垣さんは離れていった。 
 また少しだけ寂しくなって眉をひそめて新垣さんを見つめる。 
 そしたら新垣さんはにっこり笑ってえりなの腕を引っ張った。 
  
  
 「ほら、行くよ」 
 「えっ?行くって…」 
 「楽屋。そろそろ生田の出番でしょ」 
  
  
 えりながすっかり忘れていたことを言い当てて新垣さんはまた腕を引っ張った。 
 そのままされるがままになってついていく。 
 しばらくしたら我慢出来なくなってまた左腕にべったりくっついた。 
  
  
 今日も再確認する。えりなは新垣さんが好き。 
 ずっと推していくのはもちろん変わらないけど、 
  
  
 「暑苦しいなぁー」 
 「冬だからいいじゃないですかぁー」 
  
  
 心の奥にある特別な想いもきっと、変わらないんだろうなと思った。 
  
  
  
  
 終わり  
- 92 名前:ゐくま 投稿日:2012/02/13(月) 17:28
 
-  >>83-91 
 最近新垣さんにべったりなキモヲタ生田に軽くジェラシーなゐくまです。 
 今回はもう生田はキモヲタ通り越して恋してると思うんだ!とゆう勝手な解釈から() 
  
 >>80 
 レスありがとうございます。 
 にやにやしていただけて嬉しいです。にやにや() 
  
 >>81 
 レスありがとうございます。 
 キモヲタすぎですよねwそんな彼女がいとおしいものです。  
- 93 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/02/13(月) 21:20
 
-  生ガキ最高!ゐくまさんの生ガキ最高! 
 にやにやが止まりません!w  
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/02/14(火) 11:31
 
-  えりぽんキャワ! 
 
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/02/14(火) 19:19
 
-  キモヲタ生田さんは恋慕の情を抱いていると思われます 
 この小説でも、リアルでもw  
- 96 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/02/15(水) 05:22
 
-  最近の生田ちゃんは恋する乙女ですねw 
 ゐくまさんの生ガキ本当に最高!  
- 97 名前:ゐくま 投稿日:2012/05/04(金) 10:28
 
-   
 更新します。 
   
- 98 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:31
 
-   
 ガキさゆ【happiness for you.】 
   
- 99 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:31
 
-   
  
  
 「今日、新垣さんどうかしたんですか」 
  
  
 目の前にやってきた後輩はさぞ心配そうな面持ちで私に聞いてきた。 
 さぁ?眠いんじゃないの?と軽く返す私に何度も何度も聞いてくる後輩。 
 しまいには同期に道重さんに触らないで!なんて言われちゃって。 
 でも負けじと、えりなは新垣さんの情報が聞きたいんです!とか聖にはカンケーない!とか言い返して同期と張り合う。 
 なんだか面倒なことになりそうだったので、私は二人の後輩に気付かれないようにそっと楽屋を出た。 
  
 楽屋のうるささとは対照的に静かな廊下。 
 ヒールがたてるカツカツ、という音がやけに耳につく。 
 私は息をふぅと吐いて、壁に寄りかかった。 
 目をつぶると思い浮かぶ一人の人物。 
 記憶の中のその人は笑顔で。 
 でも現実のその人はきっと笑顔じゃない。 
 目をあけてため息をつくと、その人は消えていった。 
   
- 100 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:34
 
-   
 確かに後輩の言ってることは私自身気になっていることだった。 
 朝からなんとなく元気なさげで、返ってくる返事もどこかふわふわとしていて。 
 彼女らしくない、地に足が着いてないような、そんな雰囲気を放っていた。 
 別の楽屋にいるれいなに話そうかと思ったけど、れいなはこういう話するような人じゃない。決して悪い意味じゃなく。 
 同じく別の楽屋にいる愛佳にも…と思ったのだけど、後輩に言うのはなんだか彼女に悪い気がしてやめた。 
 結局一人でお得意の人間観察をしていたら、彼女のことが大好きな後輩に聞かれた、という事だ。 
 	 
  
 約10年一緒にいる彼女の変化を、気付かない訳がない。 
 そして今の立場からして彼女のことを支えてあげるのは私だ、と思っている。 
 でも全く見当がつかないのだ。 
 仕事のことで悩んでるなら、なんとなくわかる。 
 些細な変化でも、気付いてあげられるのに。 
   
- 101 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:35
 
-   
 もしお家のことや、何かプライベート的なことなら深くはつっこまない方がいいかな、とは思うんだけど。 
 それでも支えてあげたかった。頼りになりたかった。 
 弱音を吐かない彼女だから、さゆみが支えてあげないといけない。 
 そんな使命感が勝手に私の中で渦巻く。 
  
  
 「そういえば、ガキさんどこにいるんだろ」 
  
  
 ずっと見ていない彼女の姿。 
 いつの間にか楽屋から消えていた。 
  
 最後に見た焦点の合っていないような目をした彼女を思い出して、壁から背を離し歩き出す。 
 私の足が勝手に動いていた。 
 見つからないかもしれないけど、お仕事始まる前に元気になってほしいから。 
   
- 102 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:36
 
-   
  
 ヒールの音も気にならないくらい必死だった。 
 走ってはいないけど、鼓動は急速に速まっている。 
  
 ――右に曲がる。左に曲がる。 
 きっと仕事前にはそんなに遠くにはいかないはず。 
  
 ――部屋を覗く。死角を覗く。 
 早く会いたかった。姿を見たかった。 
 なぜだかわからないけど、凄く胸が締め付けられて。 
  
 ――引き返す。別の場所を探す。 
 ぐるぐると会社中を歩き回って、行く人行く人に挨拶をして。 
  
 自動販売機のコーナーに差し掛かった時、 
 いつもより小さく見える彼女の姿を見つけた。 
  
  
 私から見える彼女の横顔は涙で濡れていて。 
 やっぱりどこか焦点の合っていないような目で一点を見つめていた。 
  
  
 また胸が締め付けられる。 
 ああ、どうして彼女はこんなにも、――― 
   
- 103 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:37
 
-   
 「ガキさん、」 
  
  
 静かに近づいて呼びかける。 
 ぴくっと体を跳ねて、焦るように頬を拭う彼女。 
  
 気付かれたくないんだろうな、自分の弱っている姿を。 
 そのことに少し寂しくなって、でも近づいて。 
 座っている彼女の隣に腰をおろした。 
  
  
 「探したんですよ。急にいなくなっちゃうから」 
 「あー…ごめんね」 
 「いやいいんです。ガキさんの行動範囲はさゆみが口出しすることじゃないし」 
  
  
 ただ心配で、と目を見て言うとまた、ごめんね、と謝られた。 
 謝らなくていいから、思いの丈を吐き出してほしい。 
 もどかしい気持ちになりながら、頭を回転させて口を開く。 
  
  
 「何かありました?」 
 「うーん…まぁちょっと」 
 「ちょっと?」 
 「…時々、あるじゃない。気分が乗らないなー、とか。そんな感じ」 
  
  
 五月病かなあ、なんて弱々しく笑う彼女に私は何も言ってあげられなかった。 
 まだまだ五月は先ですよ、ぐらい返せたら彼女の気持ちも少しは晴れたかもしれないのに。 
   
- 104 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:38
 
-   
  
 「でも大丈夫だよ。お仕事までにはなんとかする」 
 「そう言ったって…」 
 「だぁいじょうぶ。もう少しで整理がつきそうだから、さ」 
  
  
 何の、とは言わなかった。 
 やっぱり先走った五月病じゃない。 
 何かがあったからこうして悲しい顔をしてる。 
  
 些細な言葉の片隅にある引っ掛かりに気付くことを、彼女は知ってるだろうか。 
 きっと知ってるはず。 
 だって彼女も私のことを、充分にわかってくれているから―― 
   
- 105 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:39
 
-   
  
 「…さゆみん?」 
  
  
 急に手を取った私に、戸惑いの視線を投げかける彼女。 
 私は前を向いて、少し深呼吸してから言葉を音にした。 
  
  
 「じゃあ早く元気になるように、悲しみ半分こしましょ」 
 「さゆみん…」 
 「ガキさんが早くさゆみの話聞いてくれるように」 
  
  
 ふふっと笑って彼女の方を向いたら、何か言いたげな目でこちらを見られて。 
 それでもにっこり笑って返したら、弱々しいけれど、少しだけいつもの彼女の笑顔が見れた。 
  
  
 「ごめんね、さゆみん…ありがとう」 
 「――…いいえ」 
  
   
- 106 名前:happiness for you. 投稿日:2012/05/04(金) 10:40
 
-  最後まで何かは話してくれなかったけど、そんなもどかしさはどこかへ消えた。 
  
  
 何も言わなくてもわかっちゃうあなたの同期には敵わないけれど、 
  
 あなたが、少しでも楽になれたら。 
 あなたが、少しでも笑顔になってくれたら。 
  
 それだけで、私の役目は果たせた、と思う。 
 それだけで、私も喜ぶことができる、と思う。 
  
  
 静かな空間に、暖かな手のひら。 
 弱々しく握られる彼女の指たち。 
  
 彼女の横顔はもう濡れていなかった。 
 少しだけホッとしたような顔をして。 
  
  
 あなたが卒業するその日まで、あなたが幸せでありますように―― 
 その横顔を見つめたまま、握った手に力を込めて、そう強く願った。 
  
  
   
- 107 名前:ゐくま 投稿日:2012/05/04(金) 10:47
 
-  >>98-106 
 お久しぶりです。仕事の関係でバタバタしていたゐくまです。 
 さゆみんのガキさん思いな所が大好きです。 
  
 >>93-96 
 まとめて失礼します。レスありがとうございます。 
 恋する生田は若干うざいですけど可愛いもんですねw 
   
- 108 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/05/05(土) 10:42
 
-  ハロプロTIMEのこの話面白かったですね 
 生田もガキさん大好きだけど実はさゆもガキさん大好きなんですよね  
- 109 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/05/07(月) 09:57
 
-  気の置けない仲間でありながら、先輩後輩の関係である感じがいいですよね。 
 
- 110 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 10:58
 
-   
 更新します。 
   
- 111 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 10:59
 
-   
 鞘ガキ【好きな先輩】 
   
- 112 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:00
 
-   
  
  
 仕事が終わって事務所の廊下を一人で歩いていると、偶然にも新垣さんに会った。 
  
  
 「あ、鞘師だー」 
 「こんにちは、新垣さん」 
  
  
 にこにこと花が咲くような笑顔で私を見る新垣さん。 
 私たちのリーダーだったころの新垣さんとはまた違った、“一人の女性”としての可愛らしさがあった。 
  
 どうやら髪を切ったらしい。肩まであった栗色の髪の毛は、耳あたりまで短くなっていた。 
 そう言えばえりぽんが楽屋でフクちゃんと騒いでいた気がする。 
  
  
 「ひとりなの?」 
 「はい。ちょっと会社の方に呼ばれて」 
 「あー、忙しいんだねぇ」 
  
  
 お疲れさま、と頭を撫でてくれる。 
 久しぶりの感覚に頬が緩んだ。 
  
 新垣さんがこれから暇?と聞いてきたので頷くと、じゃあ食事していかない?と言われたので二つ返事でOKした。 
 嬉しい。先輩とご飯に行くなんてもう随分になるな。 
  
 そのまま事務所にあるカフェでお茶することをした。 
  
   
- 113 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:01
 
-  * * * * * * * * * 
 
- 114 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:03
 
-   
  
  
 新垣さんはこの前に卒業したばかり。 
 メンバーはそれに慣れ始めたばかり。 
 でも私は慣れる慣れないの前に覚えること、求められるものが多すぎて、なんとなく流れていってしまった。 
 でもこうやって随分会っていない時に会うと、“ああ、もう同じグループじゃないんだ”と実感する。 
 こうやって顔を合わせることより、テレビで見ることの方が多いなんて。 
 せっかく距離が近付いたのに、なんだかまた離れた気がして寂しくなった。 
  
 高橋さんも新垣さんも光井さんも、 
 一年前は一緒にステージに立っていたのに。 
 なんだか不思議だ。 
  
  
 テキトーに注文した私と新垣さんは、近くの席についた。 
   
- 115 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:04
 
-   
 「髪、切ったんですね」 
 「うん。思いきってバッサリ」 
 「似合ってます、うふふ」 
  
  
 少し頬を染めてありがと、とお礼を言う新垣さん。 
 メンバーでいる時はお母さんみたいだったのに、今の新垣さんは本当に一人の女性。 
 女性というか、なんというか。実年齢よりも若くみえる。 
 はるなんやフクちゃんの方が大人にみえなくもない。 
 でもそんな風に言ったら失礼だから、それは心にしまっておく。 
  
  
 注文したものがきて、いただきますをして食べ始める。 
 おやつにはぴったりな時間帯だったから頼んだのはデザート。 
 私はガトーショコラとサイダー。 
 新垣さんはイチゴのムースとアイスティー。 
 スプーンでムースを口に運び、口元でモグモグする新垣さんはやっぱり小動物みたいだ。 
 見た目は変わっても、食べ方は変わってないらしい。 
   
- 116 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:05
 
-  ふっくらした頬っぺたが普段よりぷくぷくして、突っつきたくなる。 
 前にテレビ番組で引っ張らせてもらったけど、ふにふにでやわやわだった。 
 遠慮がちに触る私に痛くないからおもいっきり引っ張っていいよ、と笑って言ってくれたのを覚えてる。 
 結局テレビでは使われなかったけど、今ではいい思い出だ。 
  
  
 「最近どう?みんな元気?」 
 「はい。みんな頑張ってると思います」 
 「あはは、鞘師らしーね」 
  
  
 何が私らしいのかわからずに困惑の目線を注いでいると、気にしなくていいよ、と苦笑された。 
 はて?また失言をしてしまっただろうか。 
  
  
 「さゆみん大丈夫?」 
 「あっ、道重さんですか?んー…」 
  
   
- 117 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:06
 
-  私から見てわかる範囲では一生懸命まとめようとしてる、としか言いようがない。 
 でもこの前フクちゃんに言われたのは道重さんは無理してるかもしれない、ということ。 
 『だから聖たちがしっかりしなきゃ!』と目を輝かせていたのを忘れてはいない。 
  
 その事をそのまま伝えると、新垣さんは眉を下げてそっか、と呟いた。 
 新垣さん気にかけてたから心配なんだろうな。 
 私たち9期メンバーに色々と言ってくれてたのは、道重さんの負担を少なくするためだと思う。 
 だからそれに応えようと私たちも頑張っている。 
  
  
 「そっかー。…鞘師は大丈夫?」 
 「えっ」 
  
  
 自分に質問がくると思ってなかったからちょっと変な声が出た。 
 そんな私にも優しく笑って答えを待っていてくれる。 
 色々と思考を巡らせて気持ちを落ち着かせる。 
   
- 118 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:07
 
-   
 どういう意味の「大丈夫」なんだろうか。 
 んー今は特に何も………あっ。 
  
  
 「だいじょぶですけど」 
 「けど?」 
 「……寂しい、です」 
  
  
 なんだか恥ずかしくて俯ける。 
 寂しいなんて子供じみてること、新垣さんは聞きたいわけじゃなかったかもしれないのに。 
 頬に熱が集まって、口が乾く。 
 恥ずかしいだけでこんな風になるんだ。一つ学んだ身体の変化。 
  
  
 「さやし」 
  
  
 俯いた私に届く、柔らかな音。 
 私は恥ずかしさを頬に残しながらも、顔を上げた。 
   
- 119 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:08
 
-   
 「寂しいなら、いつでも言っておいでって言ったじゃん」 
  
  
 にこり、右に首を傾げて笑う。 
 さらさらな短い髪が揺れ、頬にかかる。 
  
 胸がとくんと動く。 
 乾いた唇が、空気を求めて隙間を作った。 
  
  
 見とれている私を不思議に思ったのか新垣さんはきょとんとした顔をしてもう一度「さやし?」と呼んだ。 
 顔がさらに熱くなってきて、あわててサイダーを飲み込む。 
 そんな私を見て新垣さんはあははと笑った。 
  
 私の中で一段落して、新垣さんと目線を合わせると、また優しい笑みで私を見てくれた。 
   
- 120 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:09
 
-   
  
 「鞘師にはたくさんいるよ。鞘師を見てくれる人が」 
  
  
 力強い言葉。心地よいアルトの音。 
 その柔らかな音にきゅ、と掴まれる何か。 
  
  
 「私もずっと見てるしね」 
  
  
 細められた瞳、揺れる睫毛。 
 熱くなるのは頬だけではなかった。 
  
  
 「まあ、そうゆー問題じゃないか」 
  
  
 新垣さんはそう言ってから、アイスティーのストローを手に取り、かき混ぜ始めた。 
 からからと氷のぶつかる音がする。 
  
 音は涼しいのに私は熱くなるばかりで。 
 新たに熱くなった目頭と、それによって出てきそうな鼻水を抑えるのに必死だった。 
 こんなところで涙を流すなんて嫌だった。私泣き方が変だし、鼻水いっぱい出てくるし。 
 それに新垣さんに迷惑かけちゃう。 
 あまり泣かないはずなのに、こんなことで目頭が熱くなるのはなぜなのか。そんなに辛かった?自分が思ってるほど心は疲れていたのかな。 
   
- 121 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:11
 
-   
 とりあえず落ち着かせるために、またサイダーを喉に流す。 
 しゅわしゅわした感覚が、口の中で弾けた。 
 ふぅ、と息を吐いてまた息を吸い込む。そして思っていることを伝えた。 
  
  
  
 「…あ、ありがとうございます」 
  
  
 急にお礼を言った私に、新垣さんはまたきょとんとした顔をして、それからすぐに笑顔で頷いてくれた。 
  
 伝わっただろうか、私の感謝の気持ち。 
 いつもポーカーフェイスとか、上っ面だけとか思われるから不安だった。 
 でも新垣さんはまた優しく笑って、 
  
  
 「だいじょうぶ。信じてるよ、鞘師のこと」 
  
  
 そう言って頭を撫でてくれた。 
  
 そこですとんと落ちる何か。安心する心。 
 自然と私も笑顔になってた。 
   
- 122 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:12
 
-   
 こんなに好きな先輩が見てくれているんだから、信じてくれているんだから。 
 私は期待に応えたい。もっと見てもらいたい。 
  
 また頑張れるような、そんな気がする。 
  
  
 それからちょっとして新垣さんの方がお仕事で行かなきゃいけなくなり、さよならした。 
 会社の前でまた頭を撫でて、「いつでも連絡してね」という言葉をくれた。 
  
  
 新垣さんの言葉が、笑顔が、空気が。 
 暖かくて柔らかくて、少しだけ懐かしく感じた、そんな一日…―― 
  
  
  
 終わり 
   
- 123 名前:ゐくま 投稿日:2012/06/24(日) 11:20
 
-  >>111-122 鞘師がガキさんのことを好きと聞いて。これ書いたの6月上旬です。なぜこうなった。 
 そしてタイトルを入れ忘れた。 
 最近生ガキが食えなくなってきました。生田ごめんよ。 
  
 >>108 >>109 
 まとめて失礼します。レスありがとうございました。 
 さゆみんの心遣いが素敵ですよね。 
   
- 124 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/25(月) 08:44
 
-  生ガキも鞘ガキも大好きなんで嬉しいッス! 
 ガキさんショートいい!色もいい! 
 また時間が出来た時でいいので更新お待ちしております。  
- 125 名前:ゐくま 投稿日:2012/08/06(月) 15:06
 
-   
 更新します。 
   
- 126 名前:夏休み 投稿日:2012/08/06(月) 15:07
 
-   
 10期【夏休み】 
   
- 127 名前:夏休み 投稿日:2012/08/06(月) 15:08
 
-   
  
 ジリジリと暑い夏に、冷えた炭酸とかき氷。 
 目の前にはエメラルドグリーンの海が広がっている。その美しさに春菜は思わずため息をついた。 
  
   
- 128 名前:夏休み 投稿日:2012/08/06(月) 15:09
 
-   
 夏休み真っ只中、仲良し四人で沖縄に遊びにきた。 
 もちろん親も同伴で来ているが、行動するにあたっては自由。 
 四人でいたり、二人に分かれたり、一人で歩いたり。 
 都会では感じられないゆっくりとした時間の中、四人はきゃっきゃきゃっきゃとはしゃいでいた。 
  
 沖縄旅行三日目の今日は海。 
 はしゃぐ中学一年生コンビに紛れ、負けじとはしゃぐ高校一年生。それをビーチパラソルから見守る最年長。 
 春菜の心はすっかり親気分だ。 
  
  
 「あゆみんやめてよー」 
 「だーいし最悪ー」 
 「くどぅーがかけたんでしょー!!」 
 「きゃー!!」「うわぁー!!」 
  
  
 水泳が得意な遥は優樹を連れて深い所までやってきたのだが、それを追いかけた亜佑美はカナヅチで浅い所で立ち止まった。 
 そんな亜佑美をからかって遥が水かけをしたところ、亜佑美の負けず嫌いが発動し、半端ない量を二人に浴びせさてたらしい。 
   
- 129 名前:夏休み 投稿日:2012/08/06(月) 15:11
 
-   
 一方春菜はそんな三人を見て笑いつつ、一人かき氷を食べている。 
 チョコレート味はなかったので文字数が似ているブルーハワイ。 
 しゃりしゃりと音を立てていたが、あまりにもまったりと食べるので、ブルーハワイ水と化していた。 
 それを見て特に焦る訳でもなく、すすっとお茶のように飲んでしまった。 
 と、その時、遠くから子供たちの声が。 
  
  
 「はるなん助けてー!!」 
 「はるなんも水かけよー!!」 
 「飯窪ちゃんもおいでよー!」 
  
  
 優樹は水をかけられながら、亜佑美は水をかけながら、遥はそれを避けながら、春菜を呼んだ。 
 春菜はゆっくりと立ち上がり、パラソルから出て砂浜を歩く。 
 せかす三人の声も聞かず非常にマイペースに。 
 でもこの声がこれからもずっと聞けたらいいな、と春菜は微笑むのだった。 
  
  
   
- 130 名前:夏休み 投稿日:2012/08/06(月) 15:12
 
-   
 ハo´ 。`ル<飯窪ちゃん遅いー! 
 ノハ*゚ ゥ ゚)<ごめーん 
  
 終わり  
- 131 名前:ゐくま 投稿日:2012/08/06(月) 15:16
 
-  >>126-130 小ネタ失礼しました。最近10期が好きです。 
  
 >>124 レスありがとうございます。 
 ショートいいですよね! 
 時間が出来たら生ガキも書こうと思ってます。 
   
- 132 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/08(水) 12:32
 
-  素敵な夏の一コマですね。 
 10期が仲良さそうなお話が読めてうれしいです。  
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/09(木) 05:36
 
-  だーちゃんって年の割に子供っぽいですよねー末っ子でしたっけ? 
 10期のキャラがまんまで読みやすかったです! 
 またいろんな組み合わせでも書いて下さい。  
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