10期メンバー
1 名前:肉団子 投稿日:2011/08/18(木) 16:09
はじめまして!肉団子っていいます。
なんだか9期メンの話が書かれ始めているので、先取りして10期メンバー
が登場する話を書きます。
2 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:10



第一話 寺田、閃く


3 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:12



時は西暦2011年。
モーニング娘。を擁するハロー・プロジェクトは今まさに危機的状況を迎えていた。起死
回生を狙って投入した娘。9期メンバー、スマイレージの新メンバー。素材は悪くなかっ
たが、何もかもが遅すぎた。このまま、終焉を迎えるまで細々とやっていかなければいけ
ないのか。誰もが、絶望していた。

しかしこの男だけは諦めてはいなかった。
アップフロントが生んだ天才、しかしながら本人曰く度重なる不運によってハロヲタから
は天災扱いされているプロデューサーであるつんくだった。
4 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:14
「10期メンバーが、10期メンバーさえ入れば…ハロプロは大復活や」

と、どこぞの狼の書き込みのような戯言を未だに口にしているのは、この40過ぎたいい
おっさんだけであった。がしかし、つんくは信じていた。自分の理想の10期メンさえ入
れば文字通りハロプロは大復活を遂げると。

しかしながら7期が入れば、いや8期が入れば、いやいやさすがに9期が入れば…と狼少
年さながらの大ボラを吹き続けてきた男の言葉の価値など、周りからすれば無意味に等し
かった。ヲタに至っては彼の審美眼や能力自体に疑問を抱きはじめていた。
5 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:15
「くっそう…せやかてせっかくエエ10期メンが入っても、ヲタどもはやれセミプロだの
やれビッチ臭がひどいだの叩くんやろうな。でもそれも全部俺が理想に100%適った人
材を探しきれてないからやろ。じゃあもし俺の理想に100%当てはまる人材を捜し当て
たとしたら」

ピコーン!

おなじみの効果音とともにつんくの脳裏には、すでに大逆転の一手が浮かんでいた。
6 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:15



                    ※



7 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:17



翌日、事務所の一室にてつんくから衝撃的な事実が娘。メンバーに告げられる。
10期メンバー、今日から入ります。イェイ!
内容にそぐわない、あまりにも軽い口調は高橋を含む全娘。メンをいらっとさせたが、い
つものことだったので我慢した。

「で、誰なんですか、その子は」
「この前のオーディションで採った子ですか?」
「さゆよりかわいい? りほりほよりかわいい?」
「こなぷんとか好きな子ですか?」
「虫のものまねとかできます?」
「亀井さんのことは好きですか?」
「あのーえーけー…ぱぴゅ?!」
8 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:19
何故か裏拳で新垣に殴られる生田。
しかし新垣はまったく別なことを考えていた。普通新メンバーが決まったらその前にテレ
ビで放送するでしょーが。新メンバーが大大大決定なんですぅ!(アサヤンのナレーショ
ン風)とか言って。て言うか寺合宿は?菅井のりりんのボイトレは?そんなのも経験して
ない新メンバーなんて、認めるわけにいかないのだ!!

「まあまあ慌てるなや。ものには準備っちゅうもんがあってなあ。っと。俺はこれから家
庭菜園の稲の調子見ないとあかんから、後は頼んだで」

そんな誰も興味の無いような情報を披露しつつ、部屋を出るつんく。
9 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:20
「あれ、そっちは出口やないけん。つんくさんどこ行くっちゃろ」
「トイレですやろ。男も40過ぎるとおしっこの切れ悪ぅなるらしいですよ」

そんな暢気なことを言っている場合ではなかった。
娘。メンバーの前に、今まさに空前絶後の新メンバーが登場する。


「はじめましてぇ。おれ…じゃなくてあたし10期メンバーに選ばれた寺川みつよです。
よろしくね〜」
10 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:27



その場にいた誰もが目が点になった。
目の前の汚物は、くねくねと体を動かしながら、まるで楽しんごのように手を振っている。
目を、目を合わせたら負けだ! メンバーたちの顔がそんな表情になっていた。そう、ど
こからどう見ても40過ぎの小汚いおっさんが女装しただけの姿に見えない物体がだ。
ピンクのワンピース、そして頭にはピンクのバカリボン。メイクは菅谷梨沙子のあれを1
00倍ひどくしたようなパンダメイク。おそらく今の中高生の間ではああいうメイクが流
行していると勘違いしてるのだろう。
11 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:29
まさかの展開。
確かにglobeに小室哲哉加入とか、東京事変に亀田誠治がいるとか、そういうのはあったが。
娘。メンバー全員が突然やってきた悲劇に頭を抱える中、光井愛佳ただ一人が諦めにも似た
表情を浮かべていた。

そう言えば先週あたりに週刊少年マガジンのアレ読んで「おお、これええなあ。ロックやなあ」
とかアホみたいに呟いてたもんなあ…
アレというのはもちろん、AKBの中に男子高校生が女装して加入、誰にも正体を気づかれる
ことなくムフフデヘヘなファンタジー漫画のことである。
12 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:30
「にしても。出来なさ過ぎるよね(メイクとかすね毛とか)。練習してきたん?」
「なんや…って間違えた。なんか言いましたかぁ?光井センパ〜イ」

しかも東京人設定かい。台詞運びが昔やってた赤井英和と鈴木紗理奈がカタコトの標準語
で繰り広げるドラマみたいになってるし。
最早光井には掛ける言葉すら見当たらなかった。
13 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:31
そんなみんなの気持ちを他所に、つんくは心の中でガッツポーズ。

おっしゃあ、誰も気づいてへん。俺ってリアル浦川みのりやん。まあ若い頃はビジュアル系
で鳴らしてたし、出来る子の素地はあったんやなあ。にしても俺って天才過ぎるやろ。理想
の新メンがおらんかったら、自分がなればええ。自分自身やったら、理想を100%実現す
ることも可能やからなあ、はっはっは。
さすがは人気低迷後も恥ずかしげも無く堂々とプロデューサーを名乗り続けているだけあって、
まったく空気が読めない。生田に付けられているKYという冠号を、むしろこの男に禅譲し
てはどうだろうか。
14 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:32
「ちょっとみんな、集合」

リーダーの高橋が号令をかける。
ひそひそと何やら話した後に、がんばっていきまっしょーい! の掛け声。
つんく、いや新メンバー寺川みつよはそれを微笑ましく見つめていた。後に訪れる出来事
など、まるで知らずに。
15 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:33
「ねえみつよちゃん」
「おう、なんや…じゃなかった、なんですかぁ?」

声をかけた道重が思わず身震いするほどに、つんくの演技はひどかった。
かわいくない!かわいくないの!!今すぐ屠殺して二度と復活しないよう火にかけて灰を
エアーズロックの頂上から撒き散らしたいの!!!
おそらくかつての娘。メンである久住小春のしゃべり方をそれなりに模倣しているのだろ
う。しかしながら皺枯れた中年の声にあのトーンはまさにとんかつにジャム、ひんやりめ
ぬー、とか言った日にはヤ●ザキパンの株価がすごいことになりそうだ。
16 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:34
折れそうになる心をうさちゃんピースで支え、みつよを質問攻め。

「みつよちゃんの好きなものって、何?」
「そりゃもちろん、お米! 日本のお米は世界で一番!!」
「座右の銘は?」
「やっちゃえ、まずやっちゃえ!」
「今日は友達の誕生日です。あなたが最初にかける言葉は?」
「おめでとう、イェイ!」

質問に答え終わってから、はっとするつんく。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
瞬く間に、18の白い目に囲まれる。
17 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:35
「…つんくさん、何してるんですか?」
「そ、それはやなあ、新しいプロデュースの形ってやつや。いや、マジで」
「ひとつだけ質問。もし私たちがつんくさんってわからなくて(ありえんっちゃけど)、一
緒に着替えとかシャワーとかってことになったら、どうするつもりやったと?」
「そりゃあもちろん、俺のプロデュースがお前らの成長にどんだけ寄与してるか確かめるた
めに…はっ!」

つんくの前には、荒ぶる9匹の猛獣がいた。

「ギニャァァァァァ!!!!!!!」
18 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:37



               ※



19 名前:第一話 寺田、閃く 投稿日:2011/08/18(木) 16:38



満足そうな表情で、部屋を出るメンバーたち。
そして部屋の中には、全裸の状態で逆さ吊りにされた哀れな中年が一人。ご丁寧にも、つ
んくの♂の部分には頭にしていたリボンが結ばれて、おまけに「粗」とマジックで書かれ
ていた。後日、この画像がインターネットを通じて全世界に閲覧されることになるが、つ
んくサイドはあくまでも他人の空似と言い張ったという。
20 名前:肉団子 投稿日:2011/08/18(木) 16:41



21 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/08/21(日) 22:50
おもしろいっす
22 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 21:55



つんくの理想の10期メンバー加入作戦が失敗してから、数日。
娘。メンバーたちの心無い行動によって全世界に晒された粗末なモノを巡ってあれやこれやの
大騒ぎ、しかしつんくは理想の10期メンバーを諦めてはいなかった。
23 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 21:59
前回の事はさておき、や。あれはまあちょっと安易やったな。金もかけ
てへんし。やっぱ一大プロジェクトを成功させるには金かけな。そうそ
う、だから今のハロプロは…って余計なお世話やっちゅうねん。とにか
く、もう準備はできてる。あとは「アレ」が届くのを待つだけ…

どうやらまた気まぐれピコーンおじさんが良からぬことを考えているようだ。
まさかまたオネエマンズになって娘。内に潜入する気か?そんなのがバ
レたら今度は腐れナマコを晒されるだけじゃ済まないぞ!まあ、この阿呆
な中年男の動向を今しばらく見守るとしよう。
24 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:00



「えー、突然やけど、10期メンバー…緊急加入します。イェイ!」

つい先日も同じ台詞を聞いているだけに、メンバーの疑心暗鬼っぷりと言ったら半端
ではない。

「おい、なんちゃって上沼恵美子。もしこの前みたいにお前の女装だったら…殺す」
「中洲に簀巻きにして流しちゃるけんね」

娘。のツートップにここまで言わせるつんくもつんくだが、アイドルが殺すだの簀巻
きにするだのという発言をするのもいかがなものか。今娘。は色んな意味で危機に瀕
していた。

「ははは、この前のはジョークやで、ジョーク。今度はほんまもんの10期メンや。
今呼んだる。おい藤井、入ってこいや」

ガチャリという音ともに入ってきたのは…
娘。メンバー全員が驚愕する。
25 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:01
須藤茉麻よりも太く、そして熊井友里奈よりもでかい。
一言で言えば、そんな少女だった。具体的な数値はここでは言えない。特に熊井ちゃん
の身長が既にひゃくはち…おっと誰かが来たようだ(以下省略)。

「はじめましてぇ。新メンバーの藤井茉里奈ですぅ。よぉろぉしぃくぅねぇ」

まるで録音テープを思いっきりゆっくり回したかのような、もっさりとした声で少女は
自己紹介を始めた。人間身長が高くなればなるほど、声がスローになっていくという。
今は亡きジャイアント馬場もそうだったし、熊井ちゃんがボエーな歌声なのもそう言っ
た理由があるからなのであった。
26 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:02
「茉里奈ちゃん大きいねえ」
「熊井ちゃんより大きいんじゃない?」

口々にそんなことを言いながら、藤井の周りを取り囲むメンバーたち。鞘師里保など
は、さながら鉄人28号に対する正太郎くんのようだった。

「さてと。俺はちょっと隣の部屋でタバコ吸ってくるわ」

さりげなく、その場を立ち去るつんく。

一方、メンバーたちはつんくがいなくなったことなどどうでもいいとばかりに、話し
かけたりスキンシップをはかったりしていた。
27 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:03
「ねえ、茉里奈ちゃんはいくつ?」
「…」
「どこ出身?」
「…」
「好きな食べ物は?」
「…」

緊張しているのか、藤井は一言も喋らない。表情も、何となく堅い。まるでダッ●ワイフ
のように、視線を宙に向けたまま、微動だにしない。

「さゆのかわいさに思わず固まってるの。でもしょうがないの。みんなそうだったから」

しかし道重以外のメンバーは目の前のビッグダディの存在に対して何らかの疑いを持ち始め
ていた。その疑問を言葉にしようと、リーダーの高橋が口を開こうとしたその時だった。
28 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:04
暗くなる室内。
何も見えない。
この状況をいいことに、ある一人の人物が行動を開始した。

これだけ暗ければ、りほりほにいたずらしてもバレないの!
そう、娘。ロリペド代表こと道重さゆみだった。例え視界が塞がれても、匂いでりほりほ
の位置は把握できるのっ!! 今道重の嗅覚は、かつてのクンカクンカクイーンである有
原栞菜並みの鋭さになっていた。りほりほにいたずらできるなら、いつ外反母趾で脱退に
なってもいいの。そんな決意のもと手を伸ばした道重だったが、思わぬ邪魔が。
29 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:06
「道重さん何してるんですか?」

その声は、ズッキ!!
何でこの暗闇の中で…もしかしたら、オケラの目のモノマネをすることでさゆみの動き
を捉えてるとでもいうの?!
そして鈴木の背後にはいつの間にか赤外線スコープを装着している譜久村、そして鼻を
ほじっている生田。道重の野望は今まさに潰えようとしていた。
30 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:07
そんな騒動を他所に、もう一つの影が。
それは何食わぬ顔をして「アレ」の中にもぞもぞと入り込んだ。
照明が再点灯される。

「あ、電気ついた」
「…残念なの」

ダブルの意味でほっとする鞘師。そしてそれまで沈黙を通してきたあの少女が
口を開く。

「いやあ、こわかったですねえ」

まるでリアルドールのようにだんまりを決め込んでいた、藤井茉里奈であった。
31 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:08
あれ、この子喋れるんだ。
キモヲタが押入れの中に隠してるアレじゃないんだ。
新メンバーだ、新メンバーだ!

それぞれの胸に抱いていた疑念が、嘘のように晴れる。ついに、モーニング娘。に
10期メンバーが加入したのだ。

そんな様子を、遠巻き?に見ている男が、一人。
今度こそ大成功や。ここにおればバレることもないやろ。
つんくがどこにいるのか。向かいのホーム、路地裏の窓、こんな所にいるはずもな
いのに。とまさよし山崎になってもしょうがない。つんくがいるのは、ずばり新メ
ンバー藤井茉里奈の中であった。
中と言っても「のんは中に出すのが好きなんれす」や「うわぁ…勉三さんの中、と
てもあたたかいナリ」の中ではない。文字通り、藤井の中につんくはいるのだった。
32 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:09
大枚叩いてオリエント工業に発注しといてよかったわぁ。俺も何体か持ってるけど、
あそこの再現度は半端ないで?いやあそこ言うても、この場合のあそこは「オリエ
ント工業」を指すんであって、そっちの意味とちゃうで。まあそっちの意味でもえ
えんやけど。

つんくが注文した内容は、つんくがすっぽり隠れるくらいの大きさのお人形さんを
作ってくれというものだった。というわけで、須藤茉麻の太さと熊井友里奈の大き
さが必要だったのだ。名前は二人の合成と言うかなり安易なものではあったが。
33 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:10
「ねえ茉里奈ちゃん、尊敬してる先輩はいるの?」
「えーと、みんなのこと尊敬してますぅ」
「茉里奈ちゃん、声が匿名を条件にインタビューを許可した元闇金業者みたいだね」
「そんなことぉ、ないですよぉ」

くそ、ボイスチェンジャーの設定を低くしすぎたわ。
悔しがるつんくだが、今更機械を調整するわけにもいかない。とりあえず日本発のお
っさん声アイドルと言うのを売りにするか。そんなことを考えていた矢先の話だった。
34 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:11
「おーい、そろそろロケバスが出るぞ」

マネージャーの声だった。
何や、今日はなんかロケでもあったかなあ。
娘。のスケジュールに大してさほど関心のないつんくは、今日は何の日フッフー
すら知らなかった。そんなんだからスカート切って陵辱式みたいなイベントが発
生するのだ。

「センパイたち、今日はなんのロケなんですか?」
「雑誌の撮影で、海に行くんやよ。水着でな」

こらえらいことになったでぇ…なんてな!!
そんなことはつんくの想定の範囲内であった。水着になろうが、裸になろうが大
丈夫なように、細かいところまで再現することに定評のあるオリエント工業に発
注したのだから。
35 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:12



                ○


36 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:14



夏真っ盛り。
太陽が眩しい。気分はもう熱帯。
…人形の中が。
聞いたこともないような雑誌の一企画。娘。メンバーにとっては他愛もないことだが、
機密性たっぷりの高級シリコンボディに包まれたつんくにとってはまさに生き地獄。
藤井茉里奈の中はすでに40度を超えていた。

「大丈夫?茉里奈ちゃん元気ないね」
「うん…ちょっと緊張しちゃって…」

しかし空気の読めない生田さんが藤井の手を取り、everydayカチューシャの振り付けを
やり始めた。かくしてそれを見つけた新垣里沙にコラー!と怒られるまで、つんくは竹
原のサウナスーツ的なものの中で踊らされる羽目になる。
37 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:15
げえええ…あかん。このままやったら死んでまう…

あくまでも無表情なダッチ顔とは裏腹に、中の人は憔悴しきっていた。友達のままさー、
の部分でプチゲロを吐いてしまったものの、機密性が高い構造のおかげで外に漏れずに
済んだ。つんくは長いこと日本の性産業を支えてきた匠たちの技術に感謝した。

ピコーン!

せや。海に飛び込んだらこの気の狂うような暑さも解消されるんとちゃうかな。冷却
水や、冷却水!
38 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:16
そうと決まれば話は早い。砂浜から海に向かって猛烈モーダッシュ。そう言えば昔
メロンの村田さんがそんな名前のラジオ番組をやってた気がするが、話とはまった
く関係ない。
そしてまた話は変わるが、大昔に旅客船が難破した時に海に投げ出された男が、夜
のさびしさを紛らわすために密かに持ち込んだあるもののおかげで一命を取り留め
たという。
別にここでクエスチョンです、と世界不思議発見のようなことを言うつもりはない。
要するに、藤井茉里奈さんは浮いてしまったのだ。
それはもう、ぷかぷかと。
さながら海に漂流する南極2号のように。
39 名前:第二話 寺田、纏う 投稿日:2011/08/22(月) 22:18
「おーい! お前ら助けてくれー!! 俺まだ死にとうないねん!」

そして緊急事態に思わず出てしまうしゃがれたおっさん声。
新メンバーの背中を見ると、なぜかそこにチャックがあった。最新式の技術を駆使して
いるのに、肝心なところだけレトロ仕様。
つんくの持つこだわりだったが、今回はそれが裏目に出てしまったようだ。
全てを理解したメンバーたちは波間に浮かぶつんくを、

沖のほうへ流した。

この後しばらくつんくは行方不明扱いとなるが、気にかけるものは誰一人居なかった。
40 名前:肉団子 投稿日:2011/08/22(月) 22:19


    
41 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:23



行方不明だったつんくが戻ってきてから、数日が経とうとしていた。
当初は枯れ枝のように痩せていたつんくであったが(生田につんくさん何でそ
んなに痩せちゃったんですかと聞かれた時は無言で睨み返し泣かせていた)、
「だってGOHAN食べてモリモリ元気が湧いてくるGOHAN、イェー」と
か歌いながらご飯を食べているうちにすっかり元のだらしない体に戻ってしま
った。

そんな石川梨華ちゃんの「白玉の歌」もびっくりの頭の悪そうなな歌詞を書く
ことで有名なつんくが、新たな手に打って出る。
42 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:24
さみすぃよるわぁ、ごめんどわぁ〜 さみすぃよるわぁ、くらいくらいくらぁぁい〜

「はいもしもしつんくやけど…な、なんやて? おお、おお、めっちゃロックやん! 
今すぐ行くわ!!」

電話に出たつんくは相手の話を聞くや否や、尻に火がついたように自宅を飛び出して
いった。彼をそこまで歓喜させる話とは? AKB解散? それともこぶ平似のメガ
ネデブが腹上死? 否、それはつんくが待ちに待っていた話であった。
43 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:25


ここは東京のはずれの小汚い雑居ビル。
つんくが向かった先の一室で、すっかり寂しくなってしまったマッシュルーム
が待っていた。

「遅かったな、つんく」
「おう、仕事ないからってチャリンコでどさ周りしてるヤツとは違うからな」
「アホか!仕事貰いにマウンテンバイク漕いてんのとちゃうわ!通勤の足で使
ってるんや…嫁が交通費出してくれへんから」

コホンと一つ咳をしてから、まことが本題を切り出す。

「ついにできたんや。お前の理想の10期メンバーがな」
「ほほほほほんまか! 早よ見せえや!!」
44 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:26
興奮のあまり、半枯れのマッシュルームを突き飛ばし、奥の部屋へと進むつん
く。「まことlabo」と書かれた扉を開けると、そこには理想の10期メン
バーがいた。
「はじめましてつんくさん。私が理想の10期メンバーです」
「おおお…震えが止まらん!!」

それはまさにつんくのプロデュース生活の集大成とも言うべき理想のルックス
と理想の声を持っていた。表現するのも面倒なので、とりあえずオリメンから
9期メンまでの娘。メンバーのいいとこを全部取ったような顔ということにし
ておこう。
て言うかハロプロ版江口愛美だ。
45 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:27
「これや!これが俺の求めてた理想の10期メンバーや!!」
「おいおいあんま揺すんなや。さっきダウンロードが済んだばっかやから、デ
ータが飛んでまうわ」

10期メンバーの肩を掴んでゆさゆさ揺らすつんくに対してそう嗜めるまこと。
そう、彼女はまことが持ちうるすべての科学力を結集して作成したアンドロイ
ドだったのだ。

「しかしどっからどう見ても生身の人間やなあ。オリエント工業もびっくりや
で。せや、今からでも遅くないからお前あそこの会社に就職せえ。今のブサイ
クな嫁さん捨ててダッチワイフと結婚すればええやん」
「美樹はブサイクちゃうわ!ちょっと人より鼻フックなだけじゃ!!」
「まあええわ。とにかく報酬は明日お前の口座があるぷちとまと銀行にでも振
り込んどくわ。ほなな」
46 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:28
10期メンの手を引いてまことの部屋を出ようとするつんく。しかしそこでふ
と立ち止まり、振り返る。

「ところで、性格のほうはきちっとプログラミングされてるやろな」
「そらもちろん。お前の言うように歴代娘。メンのいいとこだけ入れたったわ」
「おお、それ聞いて安心したわ」

薄気味悪い笑顔を浮かべて、足早につんくは立ち去った。
47 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:29



翌日。
つんくがまたまた娘。メンバーを集めてミーティング。現実にはこんなにつん
くとメンバーが触れ合う機会などないのだろうが、そうじゃないと話が進まな
いので読者は目をつぶって読むように。

「つんくさん今度は何なんですか? うちらと戯れてる暇があるんやったら1
00万枚売れるいい曲書いてくださいよ」
「あれ?そもそもつんくさんにいい曲って書けるんですか?」

失礼なことを口にする光井と生田を無視し、つんくは部屋の外に向かって呼び
かける。おい、10期メンバー入ってきてええでー。

また10期メンバーかよ…
呆れと怒りと諦めの入り混じる空気の中、彼女が登場する。そしてメンバーた
ちはこれまでとはまるで違う意味で驚愕する。
48 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:29
「先輩たちはじめまして。私、このたび10期メンバーに選んでいただいた飯
田路傍子っていいます。一生懸命がんばるんで、よろしくお願いします」

そう、彼女は全てにおいて完璧だった。端的に言えば、高橋よりエーダーで新
垣より娘。愛に溢れ道重より自己演出能力が高く鞘師よりダンス能力に優れ生
田より愛されるKYで譜久村よりも団地妻の色気があり香音よりも虫のものま
ねが上手かった。ついでに言えば田中より孤独ではなかった。

とんでもないおさせがやってきた。メンバーの誰もが、そう呟かざるを得なか
った。
49 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:30



   ☆


50 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:31



新メンバー飯田路傍子の登場で、娘。メンバーは常にプレッシャーとの戦いに
身を置くようになった。相手は言わば歩くモーニング娘。だったからだ。ロボ
ットだけど。

「わはははは、モーニング娘。はじまったな!! 今まではAKBにいいよう
に蹂躙されとったけど、今度はこっちがオセロの石をひっくり返す番やで!!」

つんくの中では既に10期メン活躍後のビジョンが浮かんでいた。モーBIN
GO、有吉モーニング共和国、なるほど!モースクール、マジでスカスカ学園
…ハロメン集めて総選挙やったろかな、そんなことさえ頭に浮かんでくる始末。
51 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:43
「つんくー、堀内(まことの本名)28号の調子はどないやー?」

と、ここで呼んでもいないのにバカキノコ登場。
「アホか、新メンをそないなロボットみたいな名前で呼ぶなや! 作りもんや
ってばれたらまた俺フルボッコやんけ…そもそもコンサのMCくらいしか仕事
のないお前が、事務所に何の用や?」
「事務所に用くらいあるわ! 一日の給料取りに行ったりとか」

手渡しで日給とか、お前まるで派遣のバイトやん…
そう言いたかったつんくだが、かつての友に現実を突きつけることはできなか
った。
52 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 22:44
「にしてもさすがは歴代メンバーのいいとこ取りや。今レコーディングしてる
らしいんやけど、菅井のりりんも尻で泣くような美声らしいで?」
「そうやろなあ。中澤石黒飯田安倍福田矢口市井保田吉澤石川辻加護高橋小川
紺野新垣藤本田中亀井道重久住光井ジュンジュンリンリン鞘師鈴木譜久村生田
のありとあらゆる要素をぶち込んだからなあ」

そうかそうか、歴代娘。メンのありとあらゆるところをな。まるで生けるド
リームモーニング娘。やな…ん?

つんくにはいまいちひっかかるものがあった。
が、今目の前にある大成功の前には、そんなことは些細なことでしかなかった。
53 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:03



一方、都内某レコーディングスタジオ。
ミスモーニング娘。こと飯田路傍子を中心に、音取りは順調に進んでいた。し
かし休憩中の9期メンバーたちのある会話によって事態は急変する。

「ねえねえズッキー」
「なにえりぽん」
「トマトとナスって同じ仲間だって知ってた?」
「どうだろうね」
「だってえり授業で習ったもん」
「でもさあ、トマトはナスになれないよね」
「そっかー、あれ? どっかで聞いたことあるよね」
「ん?なんだろ」
54 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:03
何故か一様に黙りだした先輩メンバーたち。新垣に至っては俯き肩を震わせて
いた。

「なんだろなんだろ、ここまで出てるんだけど」
「誰だっけなあ、ハロプロの先輩の言葉だったような」

思い出すな! 思い出してくれるな!!

5期6期の誰もが心からそう思ったが、願いも空しく、

「そうだ、安倍さんの詩だよ!」
「そうそう、ぬっちぬっち!!」
55 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:04
無邪気で無慈悲な答えが休憩室に響き渡る。
新垣は安倍を尊敬していた。お塩被告とプレステ3したいくらいに。氏の詩は
我が詩も同然、というクリスタルセイントみたいな言葉を、彼女は妄信してい
た。その崇拝してやまないなっちは天使を、あからさまに馬鹿にされたのだ。
さあ7代目リーダー(予定)ガキさん!今こそKY生田の腐った根性を娘。愛
の篭った拳で叩きなおすのだ!!

しかし大声を上げたのは予想外の人間。

「ったく、盗作くらいでガタガタ言われてむかつくんだよ!!」
56 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:05
声の主は新メンバーの飯田路傍子だった。
全てがパーフェクトの彼女、ハロプロの元マザーシップを貶されて、娘。を愛
する心に火がついたのか?

「おお、飯田、よく言ってくれた!!」

と喜んで駆け寄ろうとする新垣の、失われたはずの眉毛センサーが危険を告げる。
こいつは、危ない。そう、この禍々しい負のオーラはかつて嫌と言うほど浴び
てきた…隣を見ると高橋の顔も青ざめていた。
57 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:06
「おめえらにはまずフクロウの話からしないとだめっしょ! 何でフクロウが
朝飛ばないか、明日の晩まで教えてあげる!!」

かつて娘。に暗黒政治を敷いたという女帝。
今目の前にいる新人は、今にもねえ笑って!と言わんばかりの暗い表情をして
周囲を睨み付けていた。
そして悲劇はそこでは終わらない。

「あのバカプロデューサーがいい曲作らへんから、うちら最近稼げてないんだ
よねー。あーあ、汚らしいヒゲ面のおっさんと温泉旅行にでも行きたいわぁ」

懐から取り出したのは、かつて大きいお友達たちをとりこにした国民的アイド
ルK・Aが愛用していたバージニア・スリム。いけない、それに火をつけたら
最後、モーニング娘。は今度こそ本当に終わってしまう!!
58 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:07
「おりゃー!!」

ポルポがライターに火をつけるのを阻止したジョルノ・ジョヴァーノよろしく、
100円ライターを奪うことに成功する香音。金曜日されることだけは免れた。
しかし悲劇はまだまだ続く。

「おめえ何であたしのライターとったんだよ」
「それはただのコミュニケーションです」
「そんなコミュニケーションいらねっつんだよ…あーいらいらする」

何故か急に萎縮し始める田中。
滝川の狂犬と呼ばれた牙が、いたいけなメンバーたちに向けられる。
宴が、始まろうとしていた。
59 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:08



そんなこととはつゆ知らず、何故か事務所で酒盛りをはじめるつんくとまこと。
こちらでも別の意味での宴がはじまっていた。

「しっかしつんくお前、10kgで20000円はやりすぎやろー」
「日本のお米は世界で一番!!」
「おう、うちの嫁も世界で一番や!」
「お前の嫁は世界で一番鼻フックやろ」

いい気分で酔っ払っている中年2人。
しかし得てして、こういう時にこそ悲劇は訪れる。エロカップルがさかってい
る時に限って、ジェイソンが襲ってくるように。
60 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:09
くっちゃ、くっちゃ…

何かを、噛む音。
そうこれはまるで、よっちゃんイカ?

おかしいな、辻なら無期限育児休暇中のはずなんやけど。
まことに外の様子を見に行かせ、自分は再び酒を飲む。が、直後に聞こえてく
る悲鳴。それはまるでこんこんこと紺野あさ美アナが無理くり出してる外向け
ボイスに似ていた。

「おいまこと、なにやってる…はあああああっ?!」

そこでつんくが見たのは、美少女日記2で継母に向かって凶悪なツラで包丁を
構えた時さながらの藤本美貴…いや、殺戮マシーンと化した飯田路傍子であっ
た。
61 名前:第三話 寺田、造る 投稿日:2011/08/25(木) 23:09
「キャハハハ、すごーい。チャーオー、ハッピー! つんく、ヤキ入れたる。
完璧です。だってじまんすんらもん!!」

なんやこれ…歴代娘。メンバーの嫌な部分丸出しやんけ…いいとこ取りにしと
けって、腐れキノコに言うたのになあ…

路傍子にマジでスカスカのカンカンダンスのように、何度も金玉を蹴り上げら
れながら、つんくは意識を失っていった。
きっかけは「ぬっち」。そう、安倍さんが南斗六聖拳のユダのように最初にや
らかしたのがきっかけでハロプロがアレなことになったように、そのキーワー
ド一つでパーフェクトロボの精神は崩壊してしまったのだった。

その後、つんくはしばらく男と女の間をさまようことになる。
62 名前:肉団子 投稿日:2011/08/25(木) 23:10



 
63 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:15



アホなおっさんどころか、娘。メンバーまでもを巻き込んだ惨劇から、数日。
地獄の殺戮マシーンに血の海に沈められたメンバーたちは何事も無かったかのように、平穏な
活動をしていた。
人間あまりにも嫌なことがあると、記憶からその存在をすっぽりと消してしまうのだ。小さい
リーダーとか、北海道のまんなからへんのリーダーとか。

しかし、あの事件はつんくの体に劇的な異変を起こしていたのだった。
ロボットに何度も金玉を蹴り上げられた時に、つんくは喜びとともにある能力に目覚めてしまった。
64 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:16
スタンド使い。

世の中には自分のエネルギーを具体化して形にしてどうのこうの、というよりジョジョを読め。
とにかく、つんくはスタンド使いになったのだ。

「いでよ、俺の分身ッッッ!!!」

ドッギュゥゥゥゥーン、という怪しげな音とともに、一人の少女がつんくの背後に現れる。いか
にもハロプロ顔、といった感じの彼女はつんくの出したスタンドであった。

ダッチワイフやない。ロボットとも違うから、故障の心配もない。
エネルギーは俺自身、つまり俺が死なへん限り、年も取らんと永遠に活躍できるんや。最強や、
これこそ俺が望んだ理想のアイドルやでえ!!

今度こそ、10期メンバーの誕生や。すっきりやで!
つんくはウコンの力のCMで見せた、いらっとくるドヤ顔をしてみせるのだった。
65 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:17



翌日。
またしても事務所の一室に集められたモーニング娘。メンバー。そんなに仕事が無いのか、
と言いたくなってしまうが、ポッシボーよりは仕事はあるに違いない。

「お前ら、今日から加入する10期メンバーを紹介したるわ」

はいはい、どうせまたお前のしょぼいピコーンで生み出した偽メンバーだろ。誰もがそう思っ
ていたが、次の瞬間、全員が言葉を失う。
つんくの横に、いつの間にか見た事もない美少女が立っているのだ。
あかん、うちの姫ポジが取られるやんけ!
光井が焦りながら、携帯の電話帳から恨み屋本舗の電話番号を探し始める。光井だけでは
ない。その場に居る誰もが、危機感を感じていた。
66 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:18
「もしかしたらまたつんくさんの罠かもしれないんで」
「さゆみたちがボディーチェックをするの!」

誰も頼んでないのに、新メンバーに襲い掛かる変態1号道重さゆみと変態2号譜久村聖。
こいつらは、乙女の皮を被ったおっさんだった。相手が本物だろうが偽物だろうが、い
やらしい手つきでまさぐったりクンカクンカできればそれでよかったのだ。

10分後。
セクハラ、いやボディーチェックは無事終了し、10期メンバーは無事娘。に迎え入れられた。
彼女の名前は星白金子、決してスタープラチナを漢字にしただけではない。
スタンドなので、お風呂だって大丈夫。それをいいことに、つんくはプロデュースの成果をま
じまじと観察した。おおっ、ズッキに譜久村はええ乳してるのう。おいおい、ヤッシーこれは
犯罪やぞ、げっへっへ…。鼻の下を伸ばしながら、怪しげな独り言をつぶやくつんくを見て、妻
は離婚の二文字を頭に浮かべた。
67 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:20



順調にいっていた10期メンバー星白金子の芸能生活。
しかしピンチは唐突に訪れる。
娘。メンバーのある一人が、星白金子がスタンドであるということに気づいてしまったのだ。
そのメンバーの名前は田中れいな。あまりのはぶられっぷりに、友達が欲しか…と一心に願
った挙句のスタンド能力発現であった。
星白金子をスタンドだと告発するのはたやすい。しかし現状からして「何言ってるの?頭が
おかしくなったがし」とか「れいなは孤独すぎて発狂しちゃったの」とか言われるのがオチ。
何とかして確たる証拠を皆の前に突き出さなければ。
星白金子はいまやメンバーにすっかり溶け込んでしまっている。あわよくば自分がそのポジ
ションに、とれいなは密かに企んでいた。
68 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:21



そして運命の日がやってきた。
れいなは娘。メンバーを二手に分け、片方はスタンド使いであるつんくと一緒にさせ、
もう片方は星白金子と一緒にさせる作戦を実行した。作戦はあっけないほど簡単に成
功した。れいなが「星白金子ちゃんとカラオケに行くっちゃ」と発言したのだ。れい
なと星白金子、それとはじめてのカラオケ以降すっかりカラオケに夢中になってしま
った譜久村以外は、全員れいなに付いて行かなかったからだ。

二分割かただのはぶられかは置いといて、とにかく作戦の第一段階は成功。れいなが
いないほうの集団はつんくに売れる曲を書けと直談判するという。これで計画を第二
段階に移す事ができる。
69 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:21
ピロロロロ…

携帯が鳴る。画面を見ると非通知表示。れいなが一番弟子と認定している光井愛佳だった。

「ああもしもしうちですけど」
「愛佳?遅かったやん」
「すんまへん。ちょうどメンバーたちと話が盛り上がって」

れいなを差し置いてメンバーと仲良くなってるなんて!
光井が田中会を脱会するという噂におびえていたれいなは気が気ではない。だが、れいなが
出張風俗のキャンペーンガールに選ばれた(無断使用とも言う)時、真っ先に喜んでくれた
のは他ならぬ愛佳であった。
70 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:22
「今どこにおるっちゃ」
「つんくさんの会社の事務所ですわ」

そう、れいなは今回の計画を愛佳にだけは伝えていた。先輩より有能な後輩などいない、
そんなジャギのような信条をもって、れいなは10期メンバーを叩き潰すのだ!

「今度電話した時にれいなが合言葉言ったら、実行やけん。よろしく」
「了解。ほな、後ほど」
「ところで愛佳なんで非通知で」
ガチャ

携帯を切り、はぁ、とため息をつく愛佳。10期メンバーが本物か偽物かなんて、うちに
はどうでもええんやけど。そうひとりごちて携帯をポケットにしまいこんだ。
71 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:23
「みっつぃー誰から?」
「ああ、地元のしつこい先輩ですわ。ほんましつこくて」
「そういう人とは早く縁を切ったほうがいいよ」
「ええ、まあ」

うちかてそうしたいけど、代わりにあいつのお守りをお前らやってくれるんやろうな…
ほんまの10期メンが入ったらこの職務は押し付けてしまおう、そう密かに考えている
悪い愛佳であった。
72 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:24
そんなことを思われてるのもつゆ知らず、れいなはノリノリでカラオケを歌っていた。
これが噂のソロコンサートか。譜久村は半分哀れむような目で孤独な先輩の事を見ていた。
そして、星白金子(つんくのスタンド)。彼女は何食わぬ顔してれいなが歌ってる最中に
演奏中止ボタンを押し、自分の順番に回した。
こんなアホみたいな行事に付き合ってられるか。っちゅうかこっちはそれどころとちゃうねん。
そう、つんく(本体)は、リーダー高橋をはじめとするモーニング娘。有志に「売れる曲
を書け」と直談判されている最中なのだった。
73 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:25
「つんくさんお願いですからもっとまともなタイトルの曲を考えてください」
「そう言われてもなあ」
「とりあえず地球と原宿とお米はNGワードで」
「アホか!それ取ったら何も残らんやんけ!!」

今のでいっぱいいっぱいやねんて…と屁を垂れながら許しを請いたい気持ちでいっぱいな
つんくだったが、それを認めてしまえばお飾りプロデューサーの地位すら危うい。ここは
気合で乗り切るしかない。

「あれやがな。この前入れたった10期メンバーがおるやん。曲は作る側と歌う側が合わ
さって初めて売れるんやで。あいつに全部任したったらええ。バイバイありがとうさようならや」
「は?」
「っと。あかんあかん。こっちの話や」
74 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:26
その頃、星白金子はシャ乱Qの「ズルい女」を熱唱していた。歌に集中するあまり、本体が歌詞の一部を
口にしてしまったのだ。

「白金子ちゃんうまーい」
「そりゃそうたい」

こいつの中身は変態おっさんやけん。そう、スタンドとはいえ中身はあの中年。今までなに食わぬ顔で
メンバーたちと風呂に入ったり背中を流しっこしたりれいなの股間をみてほんとに毛が生えてないんだ
ーとせせら笑ったりしていたのだ。

れいなの怒りは頂点に達し、携帯電話を手に取る。
75 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:27
「もしもしれいなやけん」
「あーなんですか」
「牙を突きたてろ」
ガチャ

愛佳はおもむろに立ち上がると、恋のダンスサイトの振りをやりはじめた。そしてさりげなくつんくに
近づき、ウッ、ハッ!のところでつんくの股間に鉄拳を振り下ろす。

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

つんくと星白金子が絶叫するのは、ほぼ同時。

「どうしたの白金子ちゃん?」
「ああ…今アドリブでシャウト入れてみたの…」

涙目で股間を押さえている白金子。一瞬彼女の姿が薄くなったように譜久村には見えた。
そしてそんな様子をにひひと笑いながら横目で見ているれいな。
もう一押しっちゃね。第三段階に突入ばい。
76 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:28
一方、つんくは背中を丸めうずくまりながら、自らの息子に訪れた悲劇と激痛に
耐えていた。

「光井…いきなり何すんねん」
「いや、季節はずれのまつたけ狩りを…ってそれよりも、大変なことに気づいた
んですわ。この中に裏切り者がいるんですって」

何故か顔を伏せる生田。まさかこの前風邪を引いたと嘘ついてレッスン休んだの
に、実は幕張メッセにAKBの握手会に行ったのがばれたんじゃ…しかし心配は
杞憂に終わる。

「この中にスタンド使いがいるんです」
「ははは、何を馬鹿な」
77 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:31
真っ先に否定するつんく。
まさかこいつ、おれの秘密を…
10期メンバーが決まったからにはお前は外反母趾で卒業、おめでとう、いえい!
そう言う代わりに、疑問を提示する。

「それに誰がスタンド使いなんて、わからんやん。あんまアホなことばっか言うて
ると、お前中心で美勇伝2結成したるで?」
「いや、ひとつだけあるんですわ。判別方法が。スタンド使いは、夏になると…お
まんまんの穴が2つになる」
78 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:32
えっ?!
驚きのあまり、各メンバーが自分の股間をまさぐり始める。

「どういうこと!?」
「あったけどこれは尿道なの!」
「ええ、嘘ですわ。せやけど、マヌケはひっかかったみたいやでえ?」

愛佳が指を指した先には、ズボンに手を入れているつんくの姿が。

「どういうことか、説明してくれまへんか?」
「いや、2本に増えたら便利やなあ思って…」
79 名前:第四話「寺田、使う」 投稿日:2011/09/12(月) 23:33
ピロリロリーン。
愛佳にメールが届いたようだ。そこに写っていたのは、同じように股間をまさぐっている、
星白金子の姿が。

ゴゴゴゴゴゴゴ…
すべてを理解したメンバーたち。
そしてカラオケボックスのほうでも。

「ま、またこないな展開になるんか…もしかしてオラオラですか?」
「イエス!イエス!イエス!」
「ギニャアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

総勢9人からオラオラを喰らったつんくは、即病院送りとなるのだった。
80 名前:肉団子 投稿日:2011/09/12(月) 23:33




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