光の射す方へ
1 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:08

いしよしファンで
この度思い切って短編を書き始めてみました。

まとまりないと思いますがすみません・・・

2 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:09



『光の射す方へ』


3 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:09


社会人になって3年。
だいぶ仕事にも慣れてきた頃。

大手企業の企画部に配属され、
信頼し合える仕事仲間と共に協力と競争を繰り返す日々を送っている。

ここに勤めている社員は一般的にエリートと言われる部類だ。
一流大学を出て、難しい就職試験を突破して、そして今に至る。

4 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:09


秋の終わり、
春から動いていたある大きなプロジェクトが大成功と遂げ、
走り回ってくれた営業部も含めたプロジェクトメンバーで
盛大な打ち上げを行った。


「吉澤〜!こっち頼む!!」


直属の先輩に呼ばれて向かった一際賑やかなテーブルでは


「なんや〜!!オマエももうドロップアウトか〜???」


柄が悪そうだけどかなり頭の切れるうちの女部長中澤さんが
次々と狙った獲物を酒で潰していた。

5 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:10


企画部長の中澤裕子は、
そもそも社長の従兄弟の娘にあたる人で、
私が入社するずっと前は別の超大手企業で働いていたらしいのだが、
切れのある発案力に目をつけた社長がうちの会社へと引き抜いたそうだ。
ここでもメキメキと力を発揮し、実力で部長という座までのし上がったらしい。

社長が親族である事なんて関係なく努力する姿には
ほんと心から尊敬するけど、
酒癖が悪いのは本当に勘弁。
企画部で飲み会が行われるたびに多数の犠牲者が出る。

6 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:10


「おっ!!!よっさんやないか!!
 どこにおったんや!!こっちき〜や!!」


このテーブルだけは避けてきたのに・・・
どうして呼んだんだという目でと先輩を一睨みし、
先輩からおちょこを受取ると、
中澤さんの隣りで熱燗をなみなみとついでもらった。

7 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:11


どんだけ飲んだら果てるの?
というぐらい中澤さんは飲んでも飲んでも
限界がない。

適度なところでフェードアウトしないと
いくらお酒に強い私でも完全に潰されてしまう。

8 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:12


この度の企画について熱く語ったり、
かと思ったら話はシモネタにいつの間にか切り替わっていたり、


「よっさん、ところであっちの方はどうなんかいな〜
 あっはっはっはっ!!
 よっさんなら男も女もほっとかんやろ〜
 で?どうなんや???」


「あは・・あはははは・・・」


「顔はいい、頭もいい、仕事もできる、Hもうまい!
 これから期待してるで〜」


「頑張ります〜」


隣りに座らされ抜けるに抜けれない状況の中
最後の方おかしな事言ってるけど、酔っ払いだ。適当に流しておこう。

9 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:12


「よっちゃん!ちょっと手伝って!!」


営業部の藤本美貴が急いで急いで!と言う風に呼びに来た。
中澤さんに失礼しますと言い、テーブルを後にした。


「美貴!サンキュー!!」

「礼はこの後の1杯でいいよ。」

「んだよ、ボランティア精神じゃね〜のかよ!」

「当たり前でしょ。こっちも頑張って演技してやってんだから。」


藤本美貴は同じ大学の同級生で、
特にお互い仲の良い友達として改めて意識した事はないと思う。
けど、気付けばいつもメンバーにいて、
気付けば本音も弱音も素直に吐けているヤツかもしれない。
こうして部こそ違うものの、競争率の高いこの会社に
一緒に就職できたのも何かの縁かもしれない。

10 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:12


「よっちゃん、もう抜けるっしょ?」

「み〜んな酔っ払いだからもうわかんないでしょ!」

「じゃあ、さっきのお礼の1杯行こう!」

「やっぱりそうなるの?」

11 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:12


「ってかさぁ、1杯って酔い覚ましのコーヒー1杯とかじゃね〜の?」

「だって美貴、お酒ついで回るだけで飲んでないもん!!」


という訳で若者に流行っているオシャレなバーで飲みなおしている。

12 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:12


「よっちゃん聞いた?」

「何を?」

「うちの専務、40歳目前にして16歳も年下の嫁もらうんだってよ〜」

「マジ?!」

「女に興味なくて仕事一筋なのかと思ってたけど、
 若すぎじゃね?美貴たちと同い年ぐらいじゃん?」

「まぁ、専務も社長の息子としてさ、
 跡取りとか気にしてるんだろうから結婚できて良かったんじゃない?」

「ま、若い方が子ども作りにも精が出ますしな?」

「まぁ、いいんじゃね〜の?」

13 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:13


この時は、他人事のように、
会社の時期TOPに立つであろう人のめでたい事を
特に何の感情もなく笑い話にしていた。


「で、よっちゃんはあれ以来、全く浮いた話を
 聞かないけどさ、未練から恋愛しないわけ?
 もう5年だよ?」

「ん〜どうだろね?
 
 あれから5年も経つんだ・・・
 実感がわかないんだ。
 あの時のまま何も変わらなくてさ。
 確かにもう存在はないのにね。」

「美貴は悪いけど許してないよ?
 自分の都合で留学だかなんだかしてさ、
 何にも話し合いは解決しないまま一方的に
 別れ告げて、よっちゃんを捨てたんじゃん?」

14 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:13


「美貴、私あの時ちゃんと恋愛してた?」

「してたよ。」

「夢とかじゃないよね?」

「毎日うざいぐらいにイチャついてた。
 悔しいぐらいに幸せそうだった。」

「そっか・・・夢じゃないよね・・・
 梨華ちゃんはちゃんと存在してたよね?」

「してたよ。」

15 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:13


しばらくの沈黙の後、


「ねぇよっちゃん、亜弥ちゃんがね、
 同じ秘書課の子によっちゃんを紹介してほしい
 って言われてるみたいなんだけど、
 今度一緒にご飯でも行かない?」

「・・・そうだね・・・よろしく〜」


場の空気を重くしたくなくて微笑んだつもりだけど
ちゃんと笑えてたかな?

16 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:14


暗い洞窟の中を彷徨っているような、
自分が入ってきた入口さえも、
この先にあるのかわからない出口さえも見えなくて、
不安や後悔に押しつぶされそうになる。

いつか光が見えるのかな?

17 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:14


*****


18 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/20(火) 17:15


本日はここまで。

続きをまた書かせていただきます。


19 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:19


またいつもの月曜日が始まる。

今日は午後から来月行われるうちの部が
企画したクリスマスイベントの会場に行き、
現場の状況をチェックしてきた。

バタバタと忙しくなる予感を感じながら、
夕焼けが反射する会社のビルへと足を進める。

エレベーターに向かって歩いていると
自分でも信じられない、見覚えのある人物が
こちらの出口へと向かって歩いて来た。


20 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:20


「梨っ・・・梨華ちゃん?・・・」


「えっ・・・ひ、ひとみ・・ちゃん・・・?」


その時、彼女の後ろからものすごい
勢いで走ってくる美貴が見えた。


「よっちゃーーーん!!大変だっ!!!って、あっっ!!!!」


美貴が私のところにたどりつく頃には、
私の目からは大粒の涙がポロポロと
次から次へとこぼれていた。


21 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:21


急に別れを告げられた日だって、その後だって一切出なかった涙。
5年ぶりに再会したあの人をこの目でとらえると、
今度は止めようと思っても止められないぐらいの涙が
溢れ出してきた。

会いたかったんだ。
この目はずっとあなたをとらえるために待ってたんだ。


22 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:21


「お、お久しぶりです。」


他人行儀な言葉を梨華ちゃんは発した。


「あぁ、久し------」

「今更何が久しぶりよ!!
 あの後よっちゃんがどんな風になったかわかってんの?!」


横からすごい剣幕で美貴が捲くし立てる。


「そうよね・・・
 でもまさかここで再会するなんて・・・
 ごめんなさい。」


そう言って立ち去ろうとする彼女を私は引き止めた。


「時間あるかな?」


23 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:22


一緒に行かせろという美貴に何も口出ししない事を
約束させ、会社の近くにあるカフェにやってきた。


「社会人頑張ってるんだね。」


「うん、まぁ。アメリカからはいつ?」


「えっと、去年・・・」


「そっか。
 あれから5年なんだよ!知ってた?
 もうすごい過去だよね・・・」


優しく微笑みかけたつもりだけどきっと引きつってたよね。


24 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:22


「そういえば、どうしてうちの会社に?」


「えっと・・・わたしね・・・」


しばらくの沈黙の後、


「わたし・・・

 結婚するの・・・」


彼女から出てきた言葉は私の頭の中を
何度も旋回して、要約「結婚」という言葉を
認識した時


「そちらの会社の専務さんと・・・」


25 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:24


何が何だかわからなかった。
あの時、16歳も年下を嫁にもらうだの
若いから子作りに精が出るだの
笑い話にしていたあの相手が梨華ちゃん?!


私の横で開いた口が塞がらない状態の美貴も
さすがに何も言えない様子。


あの時専務のめでたい事を笑い話にした罰?


26 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:25


5年ぶりの再会をわずかでも期待した自分がいたんだ。

ベタベタな恋愛ドラマみたいな再会が現実にあっても
おかしくないよね?って思ったりもしたんだ。

でもドラマみたいな最悪な事もあるってことだよね。


27 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:25


会社までどうやって帰ったんだろう。
あの後交わした会話さえ覚えていない。

こうやって美貴に付き合ってもらってるって事は
ずっと美貴が一緒についててくれたのかな。

いい加減なようで、いつでも肝心な時に頼りになるよな美貴は。


28 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:26


「あ〜、よっちゃん飲みすぎ!
 ペース落とせって!!」

「よっちゃんさん、今日はどうかしたんですか?」

「んとね、昔の恋人に未練たらたらで
 偶然再会したら結婚するって言われて傷心なわけよ。
 ってゆうか、5年も未練たらたらって亜弥ちゃんどう思う?」

「うっわ〜〜〜5年も?!」

「うるせ〜っ!!!」

「確かにそりゃ良い女だったかもしれないけどさぁ
 5年前に突然話し合いも何もなく捨てられたんだよ?
 恨んだりとかないわけ?!」


「でも・・・ 亜弥ちょっとわかるかも〜
 大切な存在ってそうゆうもんですよね。
 私も美貴たんにどんなにひどく裏切られても
 きっとずっとずっと好きだと思うから・・・
 理由なんてなくて、私の中で大きな大きな存在だから・・・」


29 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:26


「亜弥ちゃん・・・グスッ」


「おい!そこで恋愛劇してんじゃね〜よ!!!

 ホントはさ、わかってるんだ。
 今更どうもならないこと。
 運命の再会か?!なんてちょっと期待した自分が
 いたからちょっと落ち込んでるだけ。

 結婚するって聞いたんだからさ。
 すぱっと諦めるいいきっかけになると思うんだ・・・」


「そっか・・・。
 良いきっかけになるといいね。

 ま、今日はさ、ハメはずしてパーッとしよ!!!」


「亜弥も付き合いますけど〜
 吉澤さん!!約束ですよ!!!
 今度うちの秘書課の子とご飯ですからね!!!
 何度も何度もきつく言われてるんですから!」


「へ〜い。」

「秘書課は美女揃いだから
 よっちゃん、傷心を癒してもらいなよ!フフフ。」


「みきたん!美女って誰のこと?」


「亜弥ちゃんが一番です。」


30 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:31


この後、2人の惚気を聞きながら意識が朦朧とするまで飲んだ。
気がついたら美貴の家で3人で転がってたけど、
再度失恋した傷心より、
こうやって気をまぎらわそうと付き合ってくれる友情の温かさが
身にしみて天井見上げたまま静かに涙をこぼした。


31 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:32


*****



32 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/21(水) 14:33

全然短編ではなくなってきましたが、
本日はここまでです。

また時間ができましたら続きを書きます。


33 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/21(水) 22:01
私も同じいしよしファンです。
これからの展開に期待しても良いのですよね?
34 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 09:02

> 名無飼育さん

初めまして。
同じいしよしファンよろしくお願いします!

文才もなくただのファンとして趣味で書き始めてしまいました・・・
まだまだ続きそうなのですが、
初作品がちょっとダークなのも抵抗がありますので、
何とか光の射す方へ明るい結末を自分でも期待しています(笑)
よろしくお願いします。


35 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:43


しばらくたって
彼女が専務の奥さんになる事は社内に広まり始めた。

式と披露宴を再来月の年明けに行うみたいだ。
その打合せもあってか
ちょこちょこ彼女は会社に顔を出しているらしい。
私はクリスマス企画の現場に出向いている事が多く
幸い社内で出くわす事はあれから一度もない。

社内の人たちが口々に専務の婚約者は美人だと噂している。
当たり前だ。と、もはや過去の恋人なのに得意気な気分に
なっている自分が何か惨めだった。


36 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:44


「あ、あの人ですよね?専務の奥さんになる人って。」


企画部のフロアに現れた人物を見て、
隣りのデスクに座っている後輩の紺野がパーティション越しに私に話しかけてきた。

普段は誰が来ようとパーティションに隠れて見向きもしないフロアの社員が
ヒソヒソ話をし、頭をひょこひょこ出して彼女を確認している。

ちょっとした有名人だね。

若い男性社員の中には、彼女の美しさに見とれてボーッと立ったままの者もいる。


「今は社内ではちょっとした有名人ですよね。
 専務もどこであんなに若くて綺麗な人捕まえたんでしょうね〜。」


「さぁ・・・ お見合いとかじゃない?」


彼女は専務とどう知り合って結婚にまで至ったんだろう。
恋愛結婚?お見合い結婚?

ボーッとそんな事を考えていたら、
その社内のちょっとした有名人が私の横にいた。


37 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:44


「ひとみちゃん・・・」


「え?」


「ちょっとお願いがあるんだけど・・・お時間あるかな?出れる?」


フロアの社員が一斉にこちらに注目している。


「え??はぁ。
 じ、じゃぁ・・会議室行きましょうか。」


彼女が何の用事があってここに来たのか知らないが、
空いている会議室の鍵を取り、フロアの視線を浴びながら企画部のフロアを出た。


38 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:45


大きな自社ビルは1フロアに会議室が集中している設計だ。
小さな会議室から大きな会議室まで合わせて10室近くあるうちの
空いている小さな会議室の鍵を開けて入った。

どちらも話しかけるタイミングがつかめず、
企画部のフロアを出てから一言も発していない。


重苦しい沈黙を私から断ち切った。


「で・・・ お願いって?」


「うん、えっと・・・

 あのね、披露宴での事なんだけどね・・・」


「ぅん・・・」


39 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:45


「彼の友達がけっこう派手に余興してくれる予定なんだけど・・・

 会場側でステージを用意してもらうと何かとこっちの希望通りにならなくて・・・

 そしたら彼が、うちの会社の企画部にお願いしてみたらどうかって・・・

 ごめん。本当はこうゆうのって企画部の部長さんなんかに話すべきよね!
 でも、知ってる人ってひとみちゃんしかいないから・・・」


「あぁ・・・

 そんなこと?
 うちから部長に言っとくよ。
 
 喜んで引き受けるんじゃないかな。」


「うん・・・ ありがと。」


「これから忙しくなりそうだね?」


「そうね・・・」


「こっちもクリスマスやら年末のイベントであちこち走り回ってるよ〜
 不景気の中、忙しい事は良いことだね!」


40 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:46


わけのわからない弾みもしない会話をして会議室を後にした。

このまま家に帰ると言う彼女をエレベーターの前まで見送り、
披露宴の事で連絡する事もあるだろうと携帯電話の番号を聞いた。

今でも暗記している5年前の番号からは変わっていて、
すごく胸が締めつけられる思いになった。
今更何を悪あがきしているんだろうか、
エレベーターに乗り込む彼女に私が発した言葉は


「私の番号覚えてる?」


「え?」


「変わってないから・・・」


戸惑ったように俯いた彼女が「ぅん」と言ったが、
こちらを向いたと同時にエレベーターの扉は閉まった。



「バカだな・・・私」


自分が言った事を激しく後悔しながらフロアに戻った。


41 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:46


「吉澤さん!!ど〜ゆ〜事ですか?!
 専務の奥さんになる人と知り合いなんですか?!?!」


「あぁ・・・こっちもびっくり。はは。
 まさか大学の時の同級生とはね〜」


「ホントびっくりですよ!!
 
 で、何話したんですか?何やってる人なんですか???
 専務とはどうやって知り合ったんですか???」


「ちょっ、ちょっと!紺野落ち着け!
 何やってるとか出会いとか知ったこっちゃないから!!

 ただ披露宴でする余興のステージをうちの部で製作してくれないかって頼まれただけだよ。」


「な〜んだ。昔話に花が咲くほどの仲ではないんですか・・・

 専務の結婚式ともなると小さい事にもこだわりそうですね〜〜
 ってか、披露宴にめちゃくちゃお金かかってそ。金持ちのする事はわかりませんね!」


「そうだね・・・何考えてるんだかわからないよね・・・」


42 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:46


そう、私も何考えてるんだかわからないけど、
彼女も何考えてるんだかわからない。
5年前も何を考えてたんだろう・・・


「吉澤さ〜ん!目が遠いです!!
 そろそろ時間です!イベント会場行きましょう!!」


「おう!!
 ラストスパート頑張ろうか!!!」


43 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:47


*****


44 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 10:50

本日は以上です。

何だかあまり展開がないですね。
ちょっと軌道修正しようと思います。



45 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/22(木) 15:37
昔同じタイトルの未完の作品がありまして…期待してきてしまいました
いしよしなら違いますね…
46 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/22(木) 15:42

> 名無飼育さん

すみません、過去の作品の学習不足です・・・
お目汚ししてしまいましたね。すみません。


47 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/25(日) 08:32
この作品の雰囲気好きですよ。
地の文と会話の文のバランスの良さにも感心しました。
作者さんの自由に書けば良いと思います。
続きをまったりお待ちしてます。
48 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/26(月) 15:30

> 名無飼育さん

ありがとうございます。
更新がちょっと遅めですが、初めての事ですのでちょっと自由に書いてみようと思います!


49 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:09


その日の夕方、美貴が営業回りから帰る途中に
公園で彼女を見かけたと言ってきた。

彼女は何かをしている風でもなく、
どこか物悲しそうな目でただただ遠くをずっと眺めていたそうだ。

気になってしばらく見ていたがその様子は何十分と続きそうだったので
諦めて会社に帰ったとのこと。

ほら、この時期特有のマリッジブルーってやつ?
そんなもんなんじゃないかと話したが、
結婚式の事で彼女と話をした事を伝えると


「揺らいでんじゃない?」


と美貴は笑った。

そして急に真剣な顔をして


「諦めるって決めた人にこんなこと言うのもアレだけど・・・

 まだ人妻じゃないんだからさ、よっちゃんがどうにかしたい気持ちがあるんなら

 どうにでもなるんじゃない?」



彼女の中で私はまだ揺らげる存在でいるのかな?



50 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:09


披露宴のステージの事は、中澤部長に話し、
部長から直接連絡を取ってもらった。

この時期のイベントで走り回っている私や紺野がいるチームには余裕がなく、
ちょうど手が空いた他の人が設計などの準備手伝いをする事に決まった。

実質、もう彼女と関わる機会はなくなってしまった。


これでいいんだ。



その日の夜、
暗い洞窟の中を彷徨って
出口が見つからない夢を見た。
不安で怖くて悲しくて涙が止まらない夢だった。


51 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:10


クリスマスのイベントまであと1週間。
緊張感も一層高まり、そして忙しすぎてたまらない。

でも忙しい事は今の私には苦じゃなかった。
突然起こった身の回りの事をこの間は忘れていられるから。
だから必死になって働いた。


もうすぐ日も変わる頃。
フロアにはイベントを担当しているメンバーがほとんど残っている。
急に眠気が襲って、皆の集中力が切れている時間帯。

隣りの紺野も虚ろな目をしてパソコンで資料のチェックをしている。


「ちょっと眠気覚ましてくる。」


「は〜い」


紺野に一声かけてフロアを出た。



52 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:10


真夜中の社内は非常灯の緑色が強調され何とも不気味だ。
私は廊下の一角をぼーっと白く照らし出している場所へと伸びをしながら歩いていく。

自販機の明かりが眩しくて一瞬目を細めた。

熱いブラックコーヒーを選び、ベンチに腰掛けてもう一度伸びをした。


その時、携帯のバイブがポケットから体に伝わってきた。


着信を知らせる携帯のディスプレイを見て一瞬で眠気が吹き飛んだ。
かかってくるはずがないと思っていた少し前に聞いた彼女の番号。
彼女の名前がディスプレイ画面に浮かんでいるのだ。


出ることをためらったが、
こんな時間にかけてくるってことは何かあったのかもしれないと思い、
電話を繋げた。



53 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:10


「・・・もしもし・・・」


「・・・・・・」


「・・・もしもし?」


「・・・・・・」


「・・梨華ちゃん?」


「・・・ぃた・・い・・よ・・・」


「え?」


「・・・会いたいよ。・・ひとみちゃん・・・」



54 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:10


私の中で何かが切れた。
電話越しの彼女は泣いていて、必死で言葉を発している

”会いたいよ”って・・・。

無我夢中でフロアに走り、鞄をつかむと、紺野に


「帰る」


とだけつげ、全力で走り出していた。


「は〜い。


 ちょっっ ちょっと!!吉澤さーーん!!!」


55 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:10


走りながら
彼女のマンションの場所を聞くと、タクシーで急いで向かった。


会社から割と近いマンションはすぐに見つかり、
幾度となく躓きながら部屋の前へと辿りついた。

インターホンに手をかけた時、


ガチャッ


と向こう側から扉が開き、
涙の跡をいっぱいつけて、泣き続ける彼女が立っていた。


56 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:11


「・・ご、ごめん・・・・ごめんなさい!」

「梨華ちゃん!!」


何度も何度も謝り続ける彼女を気付いたら強く抱きしめていた。


「ひっ・・ひと・・・・っ

 はぁ・・・

 ひとみ・・・・・・ちゃん!」


嗚咽する彼女を折れそうなぐらい抱きしめ続け、
そっと唇を重ねた。


それから
まるで5年間の年月を埋めるように激しく激しく求め合った。


その後の事はあまり覚えていない。

気が付けばベッドの上で梨華ちゃんを腕に抱き眠ってしまっていた。

どんなに願っても叶わなかった愛しくてしょうがない寝顔がここにある。
きっと夢を見ているんだと思い、再びゆっくりと目を閉じた。

彼女の温もりを感じる。

彼女の香りがする。


「梨華ちゃん。」


深い眠りについている彼女が返事をする事はなかったけど
確かに梨華ちゃんはここに存在している。


57 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:11


暗い洞窟の中を彷徨って
出口が見つからない夢を見た。
不安で怖くて悲しくて涙が止まらない夢だった。

走ってみても進んでいるのかわからない宙に浮いた感覚。
がむしゃらに走ってみた。
汗が滴る。
大声で叫んでみた。
声はどこにも届かない。
急に淋しくなって大泣きした。



ひとみちゃん・・・


彼女の幻聴が聞こえてくる。
洞窟の先にわずかに光が見えた気がした。


58 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:11


「ひとみちゃん!」


ハッと目を覚ますと心配そうに覗き込んでいる梨華ちゃんがいた。


「大丈夫?すごくうなされてた。

 すごい汗!悪い夢でも見てた?」


夢の中の淋しさで急に胸が締め付けられ、梨華ちゃんに抱きついた。


「しばらく・・このままでいて・・・」


梨華ちゃんの胸に顔をうずめると
優しく頭をなでてくれる。


夢ではない現実が嬉しいはずなのにどこか不安で涙が止まらなかった。


「・・・どうして・・

 どうして、あの時いなくなったの?」


59 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:11


涙が少し落ち着いたころ、
5年前の事を梨華ちゃんに問いかけてみた。


梨華ちゃんはしばらくの沈黙の後、
重い口調で少しずつ話し始めてくれた。


「・・・怖かったの。」


「・・・怖かった?」


「うん。 すごく幸せすぎて・・・

 それなのに、先が全然見えなくて不安で怖くてしょうがなかった。


 ひとみちゃんが好きで、だた一緒にいたいだけなのに、
 その先の一緒にいる未来を見ようとすると幸せな未来が見えなかったの・・・」


60 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:12


「未来か・・・」


「だから、何かが変わって傷つく前に逃げちゃった。

 ひとみちゃんの前から私の存在を消そうって決めたの。


 ちょうど興味があった留学の話を留学経験のある従兄弟に話したら、
 知り合いのホームステイ先を紹介してくれるって、とんとん拍子に話が進んでね。」


「傷つく前にって・・・

 私は相当傷ついてヤバかったんだけどな・・・」



「・・・ごめん。

 でも・・・


 5年経っても変わらないものは変わらないんだね。

 5年前も今も変わらずひとみちゃんが・・・

 好きでしょうがないよ。


 結婚決まってるのに・・・私バカだよね・・・」


61 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:12


そんな事を言われると自分も変わらず好きだという言葉を言えなかった。

気持ちを確かめ合ったはずなのに、
彼女の口から出た言葉は

『結婚決まってるのに』

その現実はやっぱり進んじゃうんだね。

いっその事、今度は彼女を連れて私も一緒に逃げちゃおうか?


62 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:13


*****


63 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/27(火) 15:13

本日はここまでです。


64 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/27(火) 20:29
初めから読まさせていただきました。
思わぬ急展開でこれからが楽しみです。
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/28(水) 07:29
おもしろくなってきた
66 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/28(水) 09:46

> 名無飼育さん

すぐ終わる予定だったのですが、自分でも予想外に展開してしまいました。
最初から読んでいただいてありがとうございます。
少しずつですが、更新がんばりたいと思います。


> 名無飼育さん

嬉しいお言葉です。
ここからどう転がそうか悩んでいますが、
結末は自分の中では決まっているので自由に書いてみたいと思います。
読んでくださりありがとうございます!
67 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:40


次の日、彼女の部屋でシャワーを借り、そのまま出勤した。

運悪くというのか、会社の最寄の駅で偶然美貴達に会い

「吉澤さん、何だか昨日も同じ服でしたよね〜
 それに体からはあま〜い香りがしてる♪」

「よっちゃんマジ?!家からだと電車逆だし、怪しくね?」


「ちょっと・・・ね・・・」



「「あ〜や〜し〜い〜!!」」



根掘り葉掘り聞かれて、事情も知っている2人なので全てを話した。


「ただのヘタレだと思ってたのにやる時はやるんじゃん!」

「誰がヘタレだよ。」


怒られるか呆れられるかどちらかだと思っていたけど意外に2人は楽しそう。


68 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:40


「こうゆう昼ドラ系のドロドロってワクワクするよね〜

 進展あったら報告すること!!」


え?何?ドロドロを楽しんでる?



それからイベントまで日にちがないのもあって、
寝る間も惜しんで働いた。
世間はクリスマスムード一色なのに・・・


彼女とはあれから連絡を取っていない。
期待して待ってる自分がいたが、電話が鳴る事はなかった。


69 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:41


いよいよイベント当日。
世の中はクリスマスでも、私たちには全く関係ない。

イベントは特に問題もなく、これまでの地道な努力の成果が出た形となった。
現場のスタッフも一生懸命対応してくれて、我々のチームが構成してきたものが
目に見える成功という結果に終わった。

徹夜続きだったチームの皆がそれはもう浮かれモードで、
イベント後は大人数で打ち上げの場へと流れた。

私も浴びるようにお酒を飲み、完全な酔っ払い。

一緒に飲んでいた同僚の男の子が


「今日はちょっとこの辺で失礼します!」


と言って席を立った。


「なんや〜! クリスマスやからって戦友放って女んとこかっ?!」


やっぱり打ち上げだけには中澤さん来るんだ?


70 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:41


「で、よっさんはええんか?」


「はぁ?私っすか? そんな人いませんよ!!」


「またまた〜

 モテモテなんは知ってんやで!」


「どこで何聞いたか知らないですけど、そんな人いません!!」


「ま、手遅れにならんようにな。」


「え?」


中澤さんが何に対して言っているのかわからなかったが、
何だか胸がすごく胸騒ぎがした。


71 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:41


打ち上げも酔い潰れた者が多数出た頃、
ポケットに入れていた携帯を手にすると、
不在着信があった事に気づいた。


”石川梨華”


彼女からの着信。

急いでお店の外に出てかけ直してみた。


「もしもし。」


「あ、ごめん。イベントの打ち上げ中で着信気付かなかった!」


「うん。そうだろうなって思ってた。」


「どした?」


「ん?

 あぁ、

 えっと・・・

 クリスマスだから・・・

 いや、何でもない。」



「ん?どした?」


72 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:41


電話越しに聞こえた人ごみの声や車の音が、
彼女が家ではなく外にいる事を知らせてくれた。


「ってゆうか、外にいるの?」


「うん。街をプラプラ。

 何だかカップルだらけで、もう帰ろうかな〜 フフッ」


「梨華ちゃんもカップルなんじゃないの?」


「え?・・・あぁ、あの人は出張で海外よ。

 年明けまで戻れないみたい・・・」


「あ・・確かそんな事聞いたような・・・

 じゃあ・・

 1人?」


「こんな日に他に誰と過ごすっていうのよ・・・」


73 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:42


そうだ彼女はクリスマスは恋人と過ごす日だって熱弁してたな。
クリスマスにバイトを入れて怒られた事もあったっけ・・・

彼女がいなくなってから、私にとってクリスマスなんてどうでもよかった。


「じゃあ、そっち行ってもいい?


 待ってて。すぐ行くから。」


「・・え?」


74 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:42


彼女が待っている駅前に着くと
人ごみの中、寒そうに手に息をかけている彼女を見つけた。

駅前には大きなツリーのイルミネーションがあるため、
皆それをお目当てにやってくる。

人ごみを掻き分けて彼女にそっと近づいた。


75 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:42


「お待たせ。」


「本当に来たんだ。」


ちょっとビックリしたように微笑む彼女を見たら、
その笑顔を独り占めしたくて、人目を気にせずぎゅっと抱きしめた。


「・・・」

「あったかい・・・」


そっと私の背中に回る小さな手がたまらなく愛しかった。


「恋人じゃないのに・・・

 梨華ちゃんのクリスマスを過ごす相手になってもいいかな?」



「うん・・・
 
 今日だけ。


 今日でもう我慢するから・・・

 ひとみちゃんにもう迷惑かけないから。」



「今日だけ?

 梨華ちゃんつれてこのまま遠いとこに逃げちゃおうかな・・・」


「・・・」


無言の答えが切なく心に響いた。


76 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:43


「冗談だよ。ははは。」


「でも・・・嬉しかった。

 私・・・また逃げてるのかな・・・

 でも、これでいいの!


 これでいいの。」


彼女は自分に言い聞かせるように言った後、
私の頬にそっとキスをし、そっと私から離れた。



彼女の幸せな結婚のためにも私もきちんとさよならをしないと・・・

自分にそう言い聞かせて人ごみへと消えた彼女が見えなくなっても
ずっと彼女が去っていった方を見つめていた。


77 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:43


*****


78 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/10/31(土) 11:43

本日は以上です。


79 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/03(火) 02:07
切ないです〜
胸が締めつけられます(泣
80 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 11:59

> 名無飼育さんさん

切ないですよね・・・
このままじゃ終われない。
けど、今日で終わらせます。


本日で最後です。

81 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:00


日にちはあっという間に過ぎ、新年早々明日は彼女の結婚式。


「あ〜結婚できたらな〜

 男だったら絶対奪いに行くんだけどな〜」


「行けばいいじゃん。」


新たなスタートをきったつもりでもやっぱり未練タラタラな私は
こうやって美貴と居酒屋でぐちぐち言っている。


「そんな簡単に言うなよ・・・
 
 今更じゃん!

 明日だよ?」


「でも可能性は0じゃないよね。

 女同士で結婚できる国だってあるんだよ?」


「ここ日本だし・・・」


82 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:00


「方法なんてさ、やってみた後で考えても遅くなんてないんじゃない?

 手遅れになって後悔する方がかなりダサイと思うんですけど〜」


「ダサイって・・・」


「私だってさ、遊びで亜弥ちゃんと付き合ってるわけじゃないし・・・

 後悔しないようにって思ってるけど、

 結局形で示さなくても好きなもんは好きじゃん?

 その好きな気持ちにワガママになってもいいんじゃないかと思うわけ。」


「ワガママね・・・

 私にできると思う?」


「さぁ・・・

 最強のヘタレだからね。」


83 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:01


場所を美貴の家に移し、亜弥ちゃんも合流して飲みなおした。
どうでもいい話や2人の惚気話を聞きながらお酒を飲んでいると睡魔に襲われてそのまま寝てしまった。


『また逃げてるのかな・・・』


彼女の言葉が聞こえた気がして目が覚めた。
日はすっかり昇ってしまっていて、リビングには美貴と亜弥が毛布に包まって寝ている。

時計に目をやると、時間はAM10:30。
式は11時からだっけ・・・。
急げば間に合う時間かな・・・。


眠っている2人をもう一度見ると、美貴が寝返りをうって少しだけ目を開けてこちらを見た。
少し微笑んで


「行ってらっしゃい」


と言ってまた眠りに入った。


「方法なんてさ、やってみた後で考えればいっか。」


昨日言われた言葉を思い出し、そうつぶやいて部屋を出た。


84 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:01


タクシーに飛び乗り式のある教会へと向かった。
到着したのが11時10分。
始まってるよね・・・
教会の中から賛美歌の歌声が聞こえてきたが、ちょうど終わったところのようだ。


大きく深呼吸をして扉を開けると、
バージンロードに真っ白な光が射しこんだ。
一斉の視線がこちらに向いて、ザワザワとし始めた。

牧師の前でこれから永遠の愛を誓おうとしている2人がすごく驚いた表情でこちらを見ていた。

ゆっくりと彼女の方へ近づいて、もう一度大きな深呼吸をした。


85 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:01


「一体何なんだ?!」


回りの人が騒ぎ始めたが、私は扉から射しこむ光を背に受けて彼女に向けて口を開いた。



「逃げ出さないように私がちゃんと捕まえておくから・・・


 私たちのこともちゃんと未来は待っててくれるから・・・


 そしてやっぱり梨華ちゃんが好きで好きでしょうがないから・・・


 だから・・・ 行こう。」



彼女へと差し出した手を大きく大きく開いた。

この手を握り返されない事は覚悟していた。



「こんな・・・


 こんなにたくさんの人に迷惑かけて・・・」



あぁ・・ダメだったか・・・と思った時、



「でも、もう何も怖くないかも・・・・」


そう彼女は言ってふわりと私の手を包み込んだ。

回りは大騒ぎになってきたが、構わず彼女の手を握り締めて
光が射しこむ扉の方へと走った。


86 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:02


係の人や親族が追いかけてきている様子だったが、
教会を出ると


「よっちゃ〜ん、こっち〜〜〜!!」


美貴と亜弥が手を振っている。


「とりあえず乗って!」


止まっていたタクシーに4人で乗り込み、教会を後にした。


87 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/04(水) 12:02


「ついにやっちゃったね・・・」


「やっちゃったよ・・・

 ってか、何で2人がいるわけ?!」


「こんなドラマみたいな一大事見届けないでどうすんの?!」


「そうですよ!!」


野次馬精神で来たのかよ・・・



「梨華ちゃん、何だかごめんね・・・」


「謝らないでよ・・・

 好きでついてきちゃったんだから・・・ふふ。」


「ありがとう。」


ウェディングドレス姿の彼女はそれはとてもとてもキレイだった。


「これからの事は、これから考えるから、
 今、梨華ちゃんを好きなこの気持ちにワガママになってみたいんだ。」


「うん。私も同じだよ。」



「これから2人は後始末で大変かもだけどさ〜

 美貴たちも力になるから!

 落ち着いたら、海外で4人で式あげっちゃったりしない?!」


車中では4人の結婚式の話で盛り上がり、
未来への一歩を踏み出した。




〜Fin〜
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/04(水) 20:59
完結おめでとうございます。
ストーリー展開も会話の組み立ても、とても面白かったです。
すっと頭の中に入ってくるような、読み易い文章も印象的でした。
良い作品に出会えたことに感謝します。ありがとうございました。
次回作もぬる〜く期待してます。
89 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/05(木) 09:21

> 名無飼育さん

読んで下さりありがとうございました。
展開がまとまりなくてどうしよう・・・と思っていましたが、
このような感想をいただくとすごく嬉しいです。
これからも時間ができましたらぬる〜く書いてみたいと思います!
ありがとうございました。


90 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/18(水) 17:54


いしよしで新作書きたいと思います。


91 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:55


********************************


92 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:56

石川梨華 25歳 独身 ついでに彼氏もいない。
大手企業の秘書課に勤める私は
要約大事な仕事も任せてもらえるようになってきた入社4年目。


93 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:56

同期入社の子は何十人っている。
秘書課には総勢10名ほどの女性がいるけど同期はいなくて、
企画課でばりばり働いている柴田あゆみこと「柴ちゃん」と同期の中では一番仲が良い。
それも柴ちゃんとは大学が一緒でその頃からの友達なんだけどね。
同じ就職先を希望したけどまさか念願が叶うとは思わなかった。


94 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:57

お互い一緒にお仕事する機会は少ないけど
2人が社内にいる時は一緒にランチに出かける事が多い。


「お腹すいた〜〜〜
 梨華ちゃん、今日はどこ行く?」

「ん〜そうだね・・・あっ!!
 そういえば飯田さんからそこの角に美味しいイタリアン
 のお店ができたって聞いたよ♪」

「じゃ、そこにしよ! 混んでそうだけどね・・・」


飯田さんとは同じ秘書室の先輩で、
新しい情報にはすごく敏感で新しくオープンしたお店の
チェックがすごく早いの。


95 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:57

「春は歓迎会とかお花見続きで食生活乱れ気味・・・
 このお腹のぷよぷよ感はヤバイよね・・・」

「ぷよぷよはダメよ〜」

「柴ちゃんも結構飲みに行ってるはずなのに・・・」

「頑張ってるもん!
 4月に入ってからさ、上のフィットネスジム真面目に通ってるんだよね〜
 もうそろそろ1ヵ月じゃん?結構お腹回りとかきくよ〜」

「え〜!続いてるんだ?!」

「失礼ね!!」

「梨華ちゃん、今男いないからって気を抜いちゃダメよ!」

「なっ!柴ちゃんだっていないじゃん!!!」


96 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:58

「だからいつでも挑めるように頑張ってるんです〜♪」

「私もそろそろ早く帰れそうだから通おうかなぁ〜」

「一緒に行こうよ!」

「続くかな?ふふ。」

「さぁ・・・梨華ちゃんだもんね・・・
 でも、私は別の目的もあったりするんだよね〜♪」

「なになに??」


97 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:58

「超イケメンのインストラクターがいるの〜♪」

「うっそ〜〜〜!!行く!行く!!」

「食いつきはやっ!」

「どんな感じ?」

「ん〜〜  見た目は王子様!」

「へ?」

「背が高くて、色が白くて、髪の毛サラサラで、目がキラキラで、
 梨華ちゃんが大好きな爽やかな王子様系?みたいな!!」

「柴ちゃん!今日にでも行きたい!連れてって!!」

「今日は予定があるから行かないよ。そ・れ・に!」

「それに?」

98 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:59

「譲りませんから!!!」

「何それ〜 」

「あと、1つ。」

「なに?」

「そのインストラクター、イケメンだけど女だから。」

「え〜〜〜
 王子様じゃないじゃ〜ん・・・
 期待して損した!」

「そんな事言ってて後で後悔するよ〜 ふふ。」

「ううん。大丈夫!柴ちゃんに最初から譲るよ。
 でも、ホントこの体なんとかしなきゃだからジムには行くから!!
 次行く時誘って。」

「らじゃ〜。 でも絶対今の発言に後悔するから!」

「し・な・い!」

99 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 17:59

柴ちゃん、私は切実に恋愛に飢えてるの。
もう半年以上いないんだよ?
仕事終わりに彼氏と食事とか
バレンタインやクリスマスも恋人と過ごしたいの!!
そのイケメン、目の保養にはなるのかもだけど恋愛できないじゃない!!!

100 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/18(水) 18:00


*******************************************

101 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/18(水) 18:00

書き出しという事で、本日はここまでです。


102 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/18(水) 21:05
お、新作スタートですね。
小気味良い文章で、さくさく読めます。
作者さんのペースでお願いしま〜す。

103 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/19(木) 17:54

> 名無飼育さん

調子に乗ってスタートしてしまいました。
読んでくださりありがとうございます!
更新も進展も遅いかもしれませんがよろしくお願いします。


104 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:55

翌々日、柴ちゃんがジムに行くと言うので予定通りついていった。
うちの会社が入っているビルの上階にあるこのジムは
仕事帰りのサラリーマンやOLが大半を占めてる。

「こんばんは〜」

「柴田さん、こんばんは〜
 今日はお友達も一緒?」

切れ長の目をした少しきつそうに見えるけど
明るくて感じのいい女性が受付にいた。
名札には【藤本】と書かれてる。
インストラクターの人も話しやすそうだしよかった〜。

105 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:55

「友達もジムに通いたいみたいでつれてきた♪」

「どうもありがとうございます!
 インストラクターの藤本といいます。
 本日は見学にします?それともさっそく始めてみます?」

「じゃあ、さっそく体験してみようかな〜」


とゆうわけで、簡単な手続きをすませて、
さっそく説明を受けながらやってみることにした。
本当に引き締めないとヤバイからガンガンやらなきゃ!!

106 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:56

初めてということもあって、
藤本さんと一緒に柴ちゃんも各トレーニングマシンを回ってくれたんだけど、
話を聞くと藤本さんは私達と同い年でやけに話が合って楽しい!
いつの間にか敬語もなくなっちゃってるし。


カシャンッ! カシャンッ!!


わ〜柴ちゃん!
楽そうに腹筋マシンやってる!!
負けてられないんだから〜〜


カシャンッ! カシャンッ!!


「石川さ〜ん、ゆっくり始めようね〜
 無理なトレーニングは体の故障にも繋がるから!」

「は・・はい・・・」


私、張り切りすぎた?

107 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:57

「ねぇ、柴ちゃん」

「ん?」

「今日イケメンは?」

「あ〜!やっぱり梨華ちゃん気になるんだ〜〜〜!」

「違うよ!
 柴ちゃんがあんなにイケメンイケメンって言うから見てみたいだけ!!」

「誰がイケメン?」

「あ、吉澤さんのことなんだけどね〜」

「あぁ、よっちゃん?
 やっぱり女性の会員さんに人気だね〜」

「そんなにイケメン?
 柴ちゃん情報は何か期待できなくて・・・
 それに女性でしょ〜?」

「綺麗な顔はしてるよ〜
 一応女子だけど、詳しくは少年の方が合ってるかな。あははっ
 よっちゃんとは高校大学と一緒で職場まで一緒の腐れ縁なんだよね。
 職場ではクールぶってるけど実際はアホでヘタレだから騙されないで!あははっ」

「ほら、柴ちゃんは見る目がないんだって!!」

「アホでヘタレでもいいの!
 そんなところが可愛らしいんじゃない!」

「ま、いいヤツだよ。」

108 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:57

もう!柴ちゃんって・・・
アホでヘタレを聞いて私のイケメンインストラクターの吉澤さんだっけ?への期待度は半減。
やっぱり頼りがいがあってしっかりした人がいいじゃない?
いやいやいや、最初から女性だと聞いてた時点で何の期待もしてなかったんだけどね。

でも柴ちゃんがここまでカッコイイと言うと何だか早く見てみたいような・・・

109 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:57

「そんなに気になる?
 よっちゃんそろそろ休憩から帰ってくるから交代しようか?
 ちょっと待ってて。」


ちょっと待って!!
交代って、柴ちゃんはよくても説明受けるのは私よね?!
どんなもんか少し顔見るだけでいいのにいきなり来られると困るじゃない!!!
いや、困りはしないけど緊張しちゃうじゃん!!

110 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:58

「ちょっと柴ちゃん!!
 あんな事言うからイケメン来ちゃうじゃん!!
 説明してもらうの私なんだけど!!」

「いいじゃん聞いてるだけなんだし。
 会話は私がしてあげるから!」

「そうゆうもんじゃないでしょ!!」

「あ!来た!!」

111 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:58

うそ・・・
あれが噂の?

何か・・・
王子様じゃん・・・


すらっと背が高くて、色白で、サラサラの茶髪で、
キラキラした大きな目の王子様がこっちに向かってやってくる。。。

112 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:58

「こんばんは。
 柴田さん、今日も頑張ってますね!」

「こんばんは〜
 吉澤さんに会いたくて頑張ってます!ふふふっ。」

「嬉しいですね〜」

「初めまして。吉澤です。」

「・・・」

「ほら、梨華ちゃん!」

「え?・・あぁ・・、石川です。よろしくお願いします。」

「どうぞよろしくお願いします。」

「梨華ちゃん、顔真っ赤!」

「そ、そんな事ないって!」


ちらっと吉澤さんを見ると、優しそうな笑顔でこっちを見ていて
さらに顔が真っ赤になっていくのがわかった。

113 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:59

柴ちゃんが耳元で

「ほら、王子様みたいでしょ?」

って言ったけど、何だか悔しくて「そう?」なんて返してみた。
柴ちゃんの『ほらみなさい!』って感じの含み笑いがちょっと癪に障ったけど、
イケメンってのは仕方がないから認めるわ。

吉澤さんが藤本さんに代わってマシンの説明をあれこれしてくれたけど
ハッキリ言って緊張しすぎて筒抜け状態。
こんな事なら藤本さんに説明してもらってた方が良かったのに・・・

114 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 17:59

でも、説明を聞いてて気付いたことが1つ。
吉澤さんが女性客に人気があるのは、ただイケメンだけだからじゃない。
すごく説明が丁寧で、話す時に相手の目線に合わせようとするさりげない気遣いを忘れない。
きっとこうゆう、人に対しての優しさが人気度を上げてるんじゃないかと思う。

一通りマシンの説明を終えて、休憩ついでに水分補給の場所やストレッチの場所などの案内をしてもらった。
柴ちゃんはトレーニングを続けていたので、こうして2人きりになるとせっかく慣れてきたのに
また緊張が込み上げてきた。

115 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:00

「一気に説明しちゃったんで、また使ってみてわからなかったら聞いて下さいね。」

「は、はい。」

「柴田さんとすごく仲が良いんですね。」

「え?えぇ。大学が一緒で、就職先も一緒みたいな・・・」

「へ〜。 じゃあ、私にとっての美貴みたいなもんかな?
 あ、美貴ってのは、最初に説明してた【藤本】のことね!」

「あ、高校からずっと一緒だってさっき聞きました。
 すごい偶然ですよね。」

「ですよね。色々過去のことバラされるんで困ります。ははっ。」

「私も柴ちゃんには色々暴露されてますよ。ふふっ。」

116 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:00

たわいもない話だけど気を遣って向こうから色々話しかけてくれる。
さっきは藤本さんにアホでヘタレなんて話聞いたけど、そんな感じは見受けられない。

その後、簡単なストレッチをしたんだけど吉澤さんが軽く背中を押してくれた。
優しく触れる大きな手がすごく落ち着くんだけど、ふと触れられてる事を意識すると急に恥ずかしくなって
触れられている部分が集中的に熱くなっていく感じがした。

この緊張がバレてないかと不安になって
フロアの隅に位置するストレッチマットがある壁に設置された鏡越しに吉澤さんの様子を伺うと

あれ?何か赤い?
緊張がうつっちゃったかな・・・気のせい気のせい!!
ダメダメ、真面目にストレッチしなきゃ!!


そんなこんなでその日のトレーニングは終了した。

117 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:00

更衣室に向かう前に、吉澤さんと藤本さんがお見送りしてくれた。

「噂に聞いてたイケメンはどうだった?」

「イケメンって?」

「よっちゃんのこと」

「はぁ?」

「私がイケメンがいるって梨華ちゃんを誘ったの。ふふっ」

「ハードル上げないで下さいよ!」

「はははっ!でも大丈夫。
 アフォでヘタレをアピールしといてあげたから!!
 で?石川さん?」

「え?えぇ・・・お噂通りで・・・」

何だか急に恥ずかしくなっちゃったじゃない・・・

「どうも・・・」

何だか吉澤さんも顔真っ赤になって照れてるし・・・

「じゃあ、また来ますね!」

「「またお越しください!」」

118 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:01

更衣室で着替えていると柴ちゃんが真面目な顔をして少し言いにくそうに口を開いた。

「ホンキだったりするんだ・・・」

「え?」

「吉澤さん。」

「ん?」

「ただイケメンに憧れてるだけだろうとか、女だよ?とか思ったりするんだけど・・・」

「うん。」

「1ヵ月通ってみて」

「うん。」

「もっと知りたくてしょうがないの。
 インストラクターじゃない吉澤さんが・・・」

「そっか・・・」

「バカだとか思ったりする?」

「しないよ。」

「相手は女だし、軽蔑する?」

「だからしないって!
 頑張ってみたらいいじゃん!
 私は応援するよ〜。協力できる事あったらするし。」

「梨華ちゃん・・・

 ありがと。」

119 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:02

柴ちゃんからの告白?カミングアウト?
何だか正直複雑だったけど、親友がホンキだと言うのであれば
やっぱり頑張って欲しいって思う。

藤本さんも吉澤さんのこと『いいヤツ』って言ってたし、
柴ちゃんの真直ぐな気持ちをぶつければもしかしたらもしかだし、
私は全力で応援するよ!

120 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:02

「柴ちゃん、次はいつ行くの?
 また一緒に行ってもいい?」

「いいよ〜
 吉澤さんね、明後日お休みらしいから明日も行っとくつもり〜」

「柴ちゃんもしかして休日も来てたりするの?」

「たまにね」

「やっぱり会いたいとか思っちゃうの?」

「会いたくなっちゃうんだよね・・・」

「そっか・・・ 何だか羨ましい。」

「何が?」

「恋愛って久しくしてないからさ〜
 そんな感情忘れちゃってる感じ。。。」

「突然きちゃうもんじゃない?そうゆうのって。」

「だといいけど。」


相手が女であろうとホンキで恋焦がれている柴ちゃんが
何だかすごく大人な女性に見えて羨ましかった。
今の柴ちゃんすごく綺麗。


こんな感じでジム1日目は終了した。
121 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:03

--- 一方2人が帰った後のジムでは ---


「よっちゃん、ヤバイっしょ?」

「何が?」

「石川さん。」

「は?」

「よっちゃんのタイプぐらいすぐわかるよ。
何年の付き合いだと思ってんの?」

「バカ?」

「素直じゃないね〜!
 真っ赤な顔して背中押してたアフォはどこのどいつ?」

「そんなんじゃないし!」


そんなんじゃないわけじゃないんだけど、
そりゃ初めて見た時は世間一般的に見て可愛い部類の人だなとか思ったし、
声も高すぎるけど可愛いとは思ったよ。

122 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:03

「可愛くないな〜!!」

「うるせー!」

「ちなみに」

「ん?」

「柴田さんからご飯誘われてるんでしょ?」

「誘われたような。」

「バカ。」

「バカって何だよ!」

「女心は繊細なんだよ?」


いや・・・誘われた事を忘れてたわけじゃないんだけど・・・
どう接していいのかわかんないんだよね・・・

123 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:04

「あの、私も女ですからね・・・」

「よっちゃんにはわからないんだよ。
 その気ないなら断りなよ!
 向こうはホンキっぽいからさ・・・」

「まさか〜」

「まさかじゃないよ。
 こっちはご飯の返事が来ないって相談されたんだから・・・
 面倒な事に巻き込むな。」

「断っといてよ。」

「アホ!ヘタレ!!」

「ちょっ!」

「でも・・・
 石川さんとのこと考えると今後やっかいだね・・・」

「だから何で石川さんが出てくんの。」

「ま、今は自覚なくてもそのうちどっぷりよ。」

「勝手に言ってろ。」

124 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:04

「あっ!!」

「何?」

「柴田さんとのご飯に石川さんも誘ったらいいじゃん!」

「何でそうなる?」

「自分は石川さんに興味があるんだよ〜感を漂わせて
 徐々に柴田さんには諦めてもらって、
 結果石川さんをゲットみたいな。」

「だ〜か〜ら〜
 柴田さんがそうだって確定してないんだから!」

「じゃあ、なおさら始まりが肝心。
 自分の気持ちはそこにないって事をアピールしとかないと!
 後で面倒な事になるよ〜
 よっちゃんアフォだからわかんないだろうな〜。」

「アフォアフォ言うな!」

125 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:05

「これに関しては美貴協力してやるから。
 あの時以来でしょ?」

「何が」

「恋しかけてんの」

「・・・」

「良い傾向じゃん?」

「だから、勝手に言ってろ!」

「まったく・・・

 もっと自分から相手をつかまないと
 また同じ事の繰り返しなのに・・・」

126 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:05

柴田さんの事も何となく気があるのかな・・・
とは感じてたけど、でもやっぱりどう接していいのかわからない。
気さくな人だし、きっと性格も優しい人なんだろうけど・・・
それ以上に特別な感情というものもない。

石川さんだって・・・可愛いくてドキドキしちゃったりなんかしたけど
それが恋とか言われると会って1〜2時間だし・・・ それ以前に会員さんに手出すってどうよ?
これを美貴に言うと「恋って突然おちるもんなんじゃね?」な〜んて言ってた。
そうなのかな?

127 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/19(木) 18:05

***************************************************

128 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/19(木) 18:06

本日の更新は以上です。


129 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/21(土) 20:52
わー新作きてた嬉しい
これまた面白そうなお話ですね
続きが楽しみです
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/22(日) 03:47
更新お疲れ様です。
新作まってました!
面白そうなので楽しみにしてます^^
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/22(日) 21:33
最近ジム通いだしたのですごくリアルです
132 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/24(火) 17:59

> 名無飼育さん

嬉しいお言葉ありがとうござます!
ゆっくりの更新になりそうですがよろしくお願いします。


> 名無飼育さん

ありがとうございます!
どう展開しようか、話がちゃんとまとめられるかわかりませんが、
ぼちぼち更新をしていきたいと思います!


> 名無飼育さん

実はこちらもジムに通っていまして、フロアの構成なんかは
通っているジムを思い出しながら書いていたりします。
読んでいただきありがとうござました。



133 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:01


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134 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:01

--- 翌日 ---


今日も柴ちゃんと仕事後にジムへ行く事になった。

「「こんばんは〜」」

「こんばんは。今日も2人とも頑張るね〜!!」

「梨華ちゃんは最近太ったから焦ってるの。」

「も〜言わないでよ〜」

「しぼりが中心って事ね。
 簡単なプログラムでも組もうか?」

「いいの?」

「任せて〜
 って、美貴はこれから急ぎの仕事があるからよっちゃんに言っとく!」

「え?!よ、吉澤さん?」

「そ〜いえば吉澤さんは?」

「よっちゃ〜ん!!」

135 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:02

藤本さんがフロア中に響き渡る声で吉澤さんを呼んだ。


「大きな声出すなよ・・・」


藤本さんが呼んだ声が大きくて他の会員さんがクスクス笑ってた。
恥ずかしそうに顔を赤くした吉澤さんが奥の方から歩いてきた。


「こんばんは。吉澤さん!」

「こんばんは。頑張りますね〜」

「こ、こんばんは・・・」

「美貴さぁ、今から急ぎの用事があるのね。
 石川さんがダイエットしたいから適当にプログラム組んで欲しいって!
 よっちゃんお願いね!」

「え?あぁ、りょーかい。」

136 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:02

「梨華ちゃんいいな〜」

「柴田さんは普通のトレーニングで大丈夫!じゃあね!」

「もう・・・藤本さん!」


「じゃぁ・・・ちょっとあっち座ってメニュー作りましょうか。」

「あ、はい。」

トレーニングに入る前に簡単なメニューを組んでもらうことになった。
まずは体脂肪を測り、体力・筋力的な面を見たいからと今日も1日吉澤さんがついてくれる事になった。

真剣な表情で何か表に書き込んでくれてる。
吉澤さんって一見クールでカッコイイ感じなのによ〜く見ると可愛い少年みたい。
って、何言ってんの私。
でも柴ちゃんとの縁結びのために色々聞き出してきっかけを見つけてあげなきゃ!

137 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:02

「あの〜」

「何です?」

「柴ちゃん、あっ柴田さんのことね、
 ジム通い始めてすごく引き締まって良い体になりましたよね〜」

「結構頑張って通ってますもんね。」

「頑張りやなんですよ!すごく羨ましいんですよね〜
 私なんか今お腹ヤバイし、鍛えても筋肉がつかない体質ってゆうか・・・」

柴ちゃんが頑張ってるってとこをアピールアピール!

「石川さん全然細いですけどね?」

「隠れてるだけですから!」

「そう?
 でも女の子ってぷにぷにぐらいが可愛いし、気持ちいですよね〜」

「え?」

「ん?いやっ・・えっと・・・女性らしいってこここ・・事です!!」

「そ、そうかな?」

「そうそう!」

顔真っ赤にして子どもみたい。ふふっ。

138 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:03

今日も一通りトレーニングを終え、ちょうど終わった柴ちゃんと一緒にストレッチをしていると
用事を済ませて帰ってきた藤本さんが私達のところにやってきた。

「おつかれ〜」

「「どうも〜」」

そこへ、組んでくれたプログラムの表を持って吉澤さんがやってきた。

「ジムに来た時と自宅で簡単にできるトレーニングを書いておきました。
 参考にしてみてください。」

にっこり微笑んでくれた笑顔が眩しいぐらいに綺麗で思わず見とれちゃった。

「石川さん?」

「あぁ、すみません!自宅でできるものまで・・」

「いえ、何かあったらまた言ってくださいね。」

隣りで藤本さんと話していた柴ちゃんがすかさず「はーい」と返事をしていた。
私はニッコリ微笑んでうなずくだけの返事をした。


139 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:03

「あ〜そうそう!!」

と藤本さんが思い出したように話し始めた。

「4人とも何の偶然か同い年じゃん?」

「そうだよね〜」

と楽しそうな柴ちゃん。

「何かの縁って事で、今度ご飯でもどう?」

「いいね〜!」

柴ちゃんが瞬時にそれにのった。
これって・・・柴ちゃんにはすごくチャンスじゃない!!

「楽しそ〜」

私も賛成の方向で!

140 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:04

「よっちゃんは?」

「あぁ、いいんじゃない?」

「そっけないね〜」

「いや、その・・・
 めっちゃ楽しそー」

「何その棒読み・・」

「「あははは!」」

この2人面白い!
高校からずっと一緒だからこんなに息ピッタリなんだろうな。

決まったら即行動派の藤本さんの意見と
決まった休みではない2人のシフトの関係と
私と柴ちゃんにとっては週末ってこともありご飯会は急遽明日になった。

141 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:04

「よっちゃん明日休みなんだからお店決めて予約ね!」

「何でそうなるの?」

「そーゆうのは時間がある人がするもんなの。」

「んー・・・
 柴田さんと石川さんの方が絶対お店詳しそうだけどな・・・」

「レディに予約させてどうすんのよ!」

「はぁ?」

「吉澤さんがオススメするお店行ってみたいな〜」

な〜んか柴ちゃん積極的!

「じゃあ適当に予約しておきます・・・」

「適当じゃなくて全力で予約ね!」


何だか急に4人の距離が縮んだ気がして、
学生の時に新しくお友達ができる感覚っていうのかな、
すごくワクワクしてる自分がいた。

柴ちゃんも通っているジムのインストラクターと会員の関係から1歩脱出じゃない。
何か純粋に嬉しいよ。

142 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:04

--- ご飯会当日 ---


翌日のご飯会は、それぞれ同じビルで働いている事もあって、
ビル1階のロビーで待ち合わせる事になった。

柴ちゃんは今やってる企画の会議が長引いてしまい、
直接お店に行くから場所を連絡して欲しいと吉澤さんへの伝言を頼まれた。
これってさりげなく吉澤さんと柴ちゃんが番号交換するって事じゃない?
何かワクワクする〜とか思ってたら私ももう5分遅刻だし!!!

18時半の待ち合わせなのに、ロビーに着いたのは18時40分。
あ〜10分も遅刻!
吉澤さんは今日はお休みだったし、藤本さんも早番で18時に仕事終わるって言ってたから
きっともう来てるよね・・・


カッカッカッカッ

はぁはぁ・・

143 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:05

--- 一方ロビーでは ---


「連絡先ぐらい聞いとけよ・・・」

「ごめん。聞いていいのかわかんなくて。」

「急用ができた時とかどうするつもりなわけよ?」

「だよね・・・そこの受付で内線繋いでもらおうかな・・・」

「所属とか知ってんの?」

「いや。」

「こんな大きい会社、石川も柴田もいっぱいいそうじゃね?」

「ですよね〜」

144 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:05

カッカッカッカッ

はぁはぁ・・


「あっ!」

「ん?」


美貴の指差す方を見ると走ってこっちに向かってくる石川さん!
よかった・・・
何かいつもと雰囲気違うな。可愛い・・・


「な〜んか、めちゃくちゃ可愛くね?」

「・・・」

ジムでは、来た時は更衣後、帰る時は更衣前にしか会わないので
実はジャージ姿しか見た事がなかった。
今日の石川さんは可愛らしい膝上のワンピースを着てる。

145 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:05

「よっちゃん、言葉失ってるから。」

「え?あぁ。」


「ごめんなさぁ〜い!!はぁはぁ・・
 ちょっとバタバタしちゃってて・・・はぁ・・・」

「大丈夫大丈夫!
 お店すぐ近くみたいだし、こいつが連絡先交換してなかったのが悪いんだから。」

「すみません。2人に連絡先を伝えておくべきでした・・・」

「いえいえ!
 あっ、柴ちゃん遅れるみたいなので直接お店に行くって!
 お店の場所を連絡して下さいって言ってました。
 柴ちゃんの番号教えますね!」

「わかりました。
 じゃあ、行きましょうか!」

146 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:06

「柴田さんやるね〜」

「え?」

「いや、何でもない。こっちのこと。」

「藤本さん、もしかして柴ちゃんから聞いてたり?」


吉澤さんに聞こえないように藤本さんにこっそり聞いてみた。

147 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:06

「あ?」

「柴ちゃんが吉澤さんにラブなこと♪」

「なるほど・・・石川さんにも協力を頼んでるってことか・・・」

「うふふ♪
 何だかこうゆうのって縁結びしてるみたいでワクワクしない?」

「そう?」

「あれ?そうでもない?」

「柴田さんがよっちゃんにアプローチしてるのは
 もうよっちゃん本人に話したし!ね?よっちゃん。」

「うっそ〜!!
 どうして本人に言っちゃうの?!」

「こいつはそうハッキリを言わないといつまでも気付かないタイプだから。
 もしくは気付かないふりしてスルーしちゃうからハッキリ話す方がいいの。」

「人を鈍感や腹黒い人間みたく言うな。」

「だって事実じゃん。」

「で・・・吉澤さんはどうなんですか?」

「え?いや・・・どうって・・・どうも・・・

 お店着きましたよ〜 ここです!」

148 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:07

「おっしゃれ〜 よっちゃん頑張ったじゃん!」

「大人な雰囲気で素敵〜♪
 会社の近くにこんなお店あったの知らなかった〜
 吉澤さんっておしゃれなお店沢山知ってそうですね♪」

「やったね、よっちゃん♪」


吉澤さん照れちゃって可愛い。ふふっ
耳まで真っ赤になって、基本的に恥ずかしがりやなんだろうな〜

149 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:07

ちょっと待って!!
話流されてない?
柴ちゃんのためにこれは重要なことなんだから、
本人来る前に何とか少し聞いておかないと!

席に通されて、さっそく切り出した。


「さっきの話ですけど!」

「ん?」

「どうなんです?」

「どうって・・・」

「石川さんダメよ。
 こいつホントにハッキリしない生き物だから・・・
 これまでだって付き合ってんのか付き合ってないのかわかんない子いっぱいいたんだから!」

150 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:08

「え・・・遊んでたってこと?」

「違います!!」

「否定するんだ?」

「だって、付き合ってるなんて一言も言ってないのに
 勝手に相手が思い込んじゃってたパターンじゃん!」

「石川さん、こうやって乙女の気持ちを踏みにじるヤツだから。」

「そうなの?」

「キスせがんで拒否されなかったらその気になる子だっているんじゃね?」

「誰とでもキスするの?」

「よっちゃんは求められたら与えるんでしょ?
 優しさを履き違えてるアフォよアフォ。」

「違うし・・・

 ちょっとトイレ。」


ちょっと不機嫌になった吉澤さんは席を外した。

151 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:08

「でもさ、フォローするとしたら・・・

 好きな子ができた時はわかりやすい。 そして一途。」

「吉澤さんもてるんだろうな。
 好きでもないのに優しさでキスはダメだけど・・・」

「今ね、気になる子はいるっぽいよ。」

「うそっ?!それって・・・」

「長年よっちゃんと付き合ってるけど・・・
 ごめん、それは柴田さんじゃないと直感的に思う。
 でも真剣に恋しそうになってるんじゃないかな〜。」

「そうなんだ・・・」

「この話はこれで終わりね!
 よっちゃんいじけて帰っちゃいそうだから。あはは。」

「はい。
 でも柴ちゃんは応援してあげたいんです・・・」

「うん。」


吉澤さんが戻ってきたので約束どおりこの話は終わりにした。

152 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:09

「柴田さんに電話しといた。」

「ありがとう。」

「いえ・・」


それから10分もしないうちに柴ちゃんも合流してお酒と料理を注文した。
吉澤さんが選んだお店に柴ちゃんがすごく惚れ惚れしてた。

153 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:11

「吉澤さんお店に詳しいんですね!めちゃくちゃオシャレ♪」

「いえ、この前友達連れてきてもらって、ここならお2人にも気に入ってもらえるかな?と思って・・・」

「お友達って恋人?」

「ち、違いますよ!! そうゆう人いませんから!!」

「よかった・・・」


恋人がいないと知って柴ちゃんはすごくホッとした顔してた。
恋をするって相手のちょっとした言葉が気になっちゃったりするもんよね。
過去の恋愛を思い出して懐かしく思っちゃった。

154 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/11/24(火) 18:11


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155 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/11/24(火) 18:12

本日はここまでです。


156 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/26(木) 04:36
話のテンポがいいのでまた次が楽しみです
どんなふうになっていくのか期待と不安が入り混じってます
次回の更新も楽しみに待っています
157 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/12/02(水) 11:53

> 名無飼育さん

ありがとうございます。
期待と不安ですか?!
私も不安です!(笑
本日更新したいと思います。


158 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/12/02(水) 11:53


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159 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:53

「な〜んか、せっかくだからさぁ、
 柴田さんとか石川さんじゃなくて呼び名変えない?!」

と藤本さんが提案した。

それぞれこれまでの呼び名の話をして、
変なあだ名に盛り上がったりしながら決めたんだけど、

藤本さんは【美貴ちゃん】【ミキティ】に落ち着き、
柴ちゃんは本人の希望で下の名前がいいらしく【あゆみ】【あゆみちゃん】となり、
色んな呼び名がある吉澤さんは柴ちゃんからは【よっすぃ〜】、
私は本人が恥ずかしいからやめてと言っていた【ひとみちゃん】にした。
呼ばれて照れてる様子が子どもみたいで楽しかったんだもん。
そして私は【梨華ちゃん】【梨華っち】となった。
【チャーミー】というあだ名の話をしたら美貴ちゃんに「キショイ」なんて言われた。
もう!何でよ!!

160 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:54

4人ともお酒には比較的強いみたいなんだけど、
私と柴ちゃんは2人でワインを飲んでいて2本目に手を出したところ。
けっこう良い感じに酔っ払ってきちゃってすごく楽しい!
きっと顔も赤くなってるんだろうな。

美貴ちゃんとひとみちゃんは最初にビールを飲んでたけど、
今は焼酎のボトルを入れてちびちび飲んでる。
2人とも全然顔が変わってなくて、本当にお酒に強いんだと思う。


「見てみ。ワイン飲んでる2人は大人な女性って感じだけど
 焼酎ちびちび飲んでるうちらってオッサンみたいじゃね?」

「だね・・・」

161 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:55

柴田さんと石川さん・・あ、あゆみちゃんと梨華ちゃん・・って名前で呼ぶの恥ずかしいもんだね・・・
2人ともほんのり赤くなっちゃって。
お酒に強いと言えるのかわからないけど、2本目に手を出して大丈夫かな・・・
あ〜あ、梨華ちゃん目がとろ〜んとなって眠いのかな?
ってゆうか何かエロくないですか?!


「梨華ちゃん何かエロくね?」

美貴が隣りでぼそっと私に向けて呟いた。

「ぶふっっっ!」


162 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:55

「よっちゃん汚いよ・・」

心で思っていた事を読み取られた気がしてビックリした。

「よっすぃ〜きたない〜!何なに?」

「よっちゃん1人でエロいこと考えてたんだよ。」

「ちがっ---」

「ひとみちゃんのエッチ〜!」

「違うし!!」


梨華ちゃんがエロそうな目するからいけないんじゃん!
酔っ払うといつもこんな感じなのかな?
きっとこうゆうのに落ちちゃう人いっぱいいるんだろうな・・・

この後、2本目のワインの途中で
梨華ちゃんが机に突っ伏して寝てしまった。

163 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:55

「り〜か〜ちゃ〜ん!」

「梨華ちゃんいつもこうなの?」

「飲みすぎると潰れるんじゃなくて寝るね〜」

「襲われるよ?ははっ」

「何度私がお持ち帰りした事か・・・」

「あゆみちゃんかわいそ〜」

「でしょ?
 でも、いつも女子の飲み会でしかこんなにならないよ。
 ガールズトークに盛り上がってついつい飲みすぎちゃうらしい・・・」

「で、今日もお持ち帰り?」

「ん〜・・・でも家が逆だからねー・・・
 今日も持ち帰らないといけないのかなぁ・・・あはは」

「梨華ちゃん家どこ?」

164 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:56

美貴とあゆみちゃんの話を焼酎片手に聞いてると
どうやら梨華ちゃんが住んでいるマンションは私のアパートから
結構なご近所のようで、しかも私が毎朝自転車で通っているであろう場所にあるようだった。


「よっちゃん近所なら送ってけば?
 こんなマグロ状態な人間あゆみちゃんに運ばせるのかわいそうじゃない?」

「え?!私が運ぶの?」

「帰り道にポンと家に置いてくればいいだけじゃん。」

「そんな物みたいに言って・・・」

「言っとくけど、送り狼にはなるなよ。」

「え?!やだ!!私もついて行く!!!」

「あゆみちゃん、私がそんな事すると思う?!」

「しないと思うけど・・・
 梨華ちゃんいいな・・・」

165 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:56

何か変な沈黙が流れた後、美貴が助け舟を出してくれた。


「じゃあさ、よっちゃんあゆみちゃんを駅まで送ってきたら?
 美貴が梨華ちゃん見とくから、その後家にポンと置いて帰ればいいじゃん?」

「え?あぁ・・・」

「あゆみちゃんもそれならいいしょ?」

「ありがと〜♪」


とりあえず、あゆみちゃんを駅までだけど送った。
梨華ちゃんと同じぐらい飲んでたはずなのにあゆみちゃんの足取りはしっかりとしていて

「私、梨華ちゃんみたいな女の子〜って感じに憧れるんだ〜」

と話し始めた。

166 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:56

「どうして?」

「守ってあげたいって思うじゃん。」

明るく話していたあゆみちゃんが少しだけ俯いた。

「あゆみちゃんはあゆみちゃんらしくでいいんじゃないかな。」

「やっぱりよっすぃ〜は優しいね。」

「え?」

「美貴ちゃんがよっすぃ〜は優しすぎるから
 女の子いっぱい泣かせてるって言ってた。ふふっ」

「なにそれ・・・」

「でも・・・
 私はいっぱい泣いても・・・
 全然平気。

 今度は2人でご飯行かない?」

「え?」

「無理にとは言わないよ。この前のもスルーされちゃってるし。あはは。」

「いや〜あれは・・・じゃあ今度・・・ご飯でも。」

「やった!今度が実現しますように♪

 私・・・

 よっすぃ〜のこともっともっと知りたいから・・・」

「・・・」

167 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:57

気がつくともう目の前は駅だった。


「よっすぃ〜、ありがと!
 これから梨華ちゃんも送らないといけないのにごめんね。」

「いや、あゆみちゃんが運ぶの辛いだろうしね。ははっ」

「念のために死んでないか明日お昼ぐらいに梨華ちゃんち行ってみるよ!ふふっ」

「よろしくね!」


あゆみちゃんを無事駅まで送り届け、来た道を戻った。
私の事をもっと知りたいか・・・
コレって何の勘違いでもなくアプローチされてんじゃんね。
2人でご飯ってやっぱり向こうに期待させちゃうのかな・・・はぁ・・・

168 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:57

お店に戻ると依然とテーブルに突っ伏して眠る梨華ちゃん。
時間をもてあまして焼酎飲みながら携帯でゲームをしている美貴。

「おかえり。」

「おう。」

「何かあった?眉間にシワ寄せちゃって。」

「ん?

 あぁ・・・」

「告られた?」

「いや・・・

 もっと知りたいって言われた。」

「よっちゃんを?で?」

「今度は2人でご飯行こうって言われた。」

「そっか。どうすんの?」

「今度行きましょうと返事しました。」

「はぁ・・・」

「なに?」

「今後その気がないなら今きっぱり断らないとって言ったじゃん。
 相手は期待を膨らます一方なんだよ?
 突き放す事が優しさになることだってあんの!あほ!へたれ!」

「だって・・・」

「美貴、もう帰る。
 梨華ちゃん頼んだよ!」

169 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:58

梨華ちゃんを揺すり起こしたけど寝ぼけた感じで起きる気配がないので
お店までタクシーを呼んでもらい、お店の外まで美貴に手伝ってもらって運んだ。
とりあえず、タクシーに乗せ、美貴とはそこで別れ、
さっきあゆみちゃんから聞いた住所へと向かってもらった。

着いても梨華ちゃんは起きる気配もなく、仕方がないから背負って部屋まで運んだ。
カバンの中から鍵を探し出し

「おじゃましま〜す」

家主は背中で眠ってるけど一応挨拶だけはしとこう。
電気は電気は〜?


カランッッ


おっと、何か蹴飛ばしちゃったな・・・


ガツッ


「いってー!」

170 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:58

思いっきり何かに小指をぶつけたところで電気のスイッチを入れた。
あれ?さっき蹴飛ばしたのは空き缶?
空き缶は何に使うんだろう?
ってか、この重いダンボールは何?これのせいで廊下狭くなってんじゃん!!

ってか、色んなものが色んなところに散乱してるけど、
これは空き巣が入ったとかじゃないよね?大丈夫かな?
とりあえず、こっちの部屋が寝室かな。重い・・・梨華ちゃんをベッドに転がさなきゃ・・・


「よいしょっと!」


何とか梨華ちゃんを運んだぞ!!任務完了!!!
よし、帰るぞ!
起きないだろうけど念のために


「りかちゃ〜ん、帰るからね〜
 オートロックみたいだから鍵はカバンに入れとくから〜」

「う・・・んん・・・」

「おやすみ。」

171 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:59

「いやっ!」

ベッドサイドから立ち上がろうとすると急に服をつかまれた。

「え?」

「い・・・やだよぉ・・・うぐっ・・・ぐっ」


え?な・・泣いてます?
間違いなく酔っ払って眠っているんだけど、目尻から涙がポロポロこぼれてる。
ちょっ!何?!


「お・・お願いだから・・・

 行かないでよ・・・うぐっ・・・」


「梨華ちゃん?」

172 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 11:59

何度も揺すってみたけど起きる気配はなく、
朦朧とする意識の中で何か夢を見ているのかもしれない。
辛い過去でも思い出した?
何だか夢で泣いているとはいっても放っておけなくて
しばらく服をつかまれたままでベッドの端に腰掛けていた。

10分ぐらい彼女の泣き顔と強くにぎられた手を見つめてただろうか、
そっと握っている手をほどこうとすると更に力がこもり


「今日だけで・・・うぐっ・・・いいから・・・いてよ・・」


静かに涙を流して呟いた。
酔っ払って押さえ込んでた感情があふれちゃったのかな。
きっと梨華ちゃんが夢の中で求めている人は違う誰かだけど
今、この手を振り解くことなんてできなくて
身代わりにもなれないかもだけど今夜は側にいてあげたいと思った。

173 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 12:00

ベッドの端にこのまま座っているのはやはり冷えるし、体勢も辛いので
梨華ちゃんを端に寄せ、距離を置いてそっと隣りに入り込んだ。

しばらく頭を撫でていると落ち着いたのか、安心したような顔をして
規則正しい寝息を立て始めた。

私は隣りに眠る梨華ちゃんにちょっと緊張して中々眠れそうにない。
あ〜明日の仕事午後からで良かった・・・
朝家に帰って準備して行く事にしよ。
きっと明日は梨華ちゃん二日酔いだろうな。

174 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/02(水) 12:00


***************************************************


175 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/12/02(水) 12:00

本日は以上です。


176 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/04(金) 01:04
更新お疲れ様です。

梨華ちゃん起きてビックリですねきっとww
次回楽しみにしています。
177 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/22(火) 20:42
そろそろ梨ちゃんを起こしてあげてほしいです
178 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/24(木) 09:28

> 名無飼育さん

バタバタしてサイトを見れない日々でした・・・
いい加減起こしてあげようと思います(笑

179 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:29

--- 翌日昼頃 ---

あ〜〜〜〜〜

頭がボーッとするような・・・

窓から射しこむ穏やかな光と、心地良い人肌の温もり・・・


って、誰?!?!?!?

誰が隣りで寝てるのよっっ!!!!!!

180 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:29

え?
う・・そ・・・  ひとみ・・ちゃん?
何で?どうゆうこと?!

もしかして

酔った勢いで私そうゆうことした?

いやいや、服はちゃんと着てるから・・・
って、そうゆう問題じゃな〜〜〜い!!!

それにしてもすっごく綺麗な顔・・・。
作り物みたいで同じ人間とは思えない・・・

181 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:29
「う〜〜〜・・ん・・・」


伸びをしてパッと目を開いたひとみちゃんと目が合った。


「あ・・・」

「あ?」

「やぁ〜っべ!今何時っ?!」

「え?!あぁ・・・12時過ぎぐらいかな?」

「あーーー!家帰ってる時間ないじゃん!!
 梨華ちゃんお願い!シャワー貸して!!」

「へ?ど、どうぞ・・・」


いそいそとシャワーを浴びに行くひとみちゃん。
何だか状況が理解できないんだけど・・・
とりあえずタオルを準備しておいた。

182 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:30

私は部屋着に着替えてキッチンで情けなく昨晩のメイクを落としてる・・・

落ち着いてる場合じゃないのよ・・・
この状況を自分でちゃんと把握しなきゃ・・・
どうしてひとみちゃんがうちにいて、そしてシャワー浴びてるの?
答えは1つ。
そうなっちゃいますよね〜


ピーンポーン


宅配?


「はぁーい!」

183 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:30

・・・

はぁ?!
どうしてこんな時に柴ちゃんなのよ!!!
この状況どう説明すればいいわけ?!

えっと・・・
このまま外でお茶でもって、部屋着にスッピンじゃん!


「り〜か〜ちゃ〜ん、生きてる〜〜?」

「大丈夫よ!ってゆうかどうしたの?」

「心配で見に来たんじゃない〜。開けてよ〜」


これは開けない方が不自然よね・・・

え〜い!

184 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:31

ガチャッ


「おはよ・・・」

「お〜!生きてた!大丈夫?」

「え?んー、ボーッとするぐらい?」


二日酔いなんかしてられない状況よ!
どうしたらいいのよ!


「あがるね〜」

「え?」

「ん?」

「いや・・・どうぞ。」

「あれ?梨華ちゃんこんなスニーカー持ってたっけ?大きくない?」

「は?」

185 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:31

柴ちゃんが指摘した玄関にあるスニーカーはまさにひとみちゃんの靴で、
返答に困ってどうしようと思ったとき
タオルで頭をガシガシ拭きながらひとみちゃんがお風呂場から出てきた。


「おぉ!おはよ、あゆみちゃん!
 やっべ〜〜〜遅刻しそ〜!!」

「よっすぃ〜?え?まさか・・・本当に送り狼に・・・」

「柴ちゃん、違うの・・・」

「梨華ちゃん・・・嘘でしょ?」


バタンッッ


柴ちゃんは顔色を変え走って帰っていってしまった。
非常にまずい状況で、言い訳をしようにも私も状況をつかめてない。

186 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:32

「ねぇ!ひとみちゃん!」

「あ?」

「昨日って・・・」

「ちょっごめん!遅れるから出る!!また!」


ちょっとーーー!!!
誰か状況を説明してよーーー!!!

187 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:32

---------

「せーふ・・・」


何とか仕事に間に合った・・・
携帯でアラームセットしとくんだった・・・


「おはよ〜 送り狼。」


「おはよ。

 ・・・
 
 は?」


「さっき、あゆみちゃんから連絡あったよー
 いくらなんでもそりゃないでしょ〜よ・・・」

「何の話?」

「梨華ちゃんとやっちゃったんでしょ?」

「はぁ〜〜〜〜???」

188 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:33

あゆみちゃんが梨華ちゃんちに様子を見に行くと
シャワー浴びて出てきたとか、
梨華ちゃんの様子がおかしかったとか、
誤解されてもおかしくない事を言われ、
細かく事情を話し美貴には状況を理解してもらった。


「な〜んだ。」

「な〜んだじゃね〜よ・・・」

「多分だけど梨華ちゃんも状況わかってないっぽいよ・・・
 ま、寝てたんだから仕方ないんだけど・・・
 よっちゃんがあゆみちゃんに話すとややこしくなりそうだから
 そこは美貴から話しといてあげるよ。」

「さんきゅ〜・・・」


朝、梨華ちゃんの様子がおかしかったのはそのせいか・・・

189 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:33

「でもさ〜」

「ん?」

「よっちゃんの気持ち的には何もなかったわけ?」

「え?」

「さっき話してくれた、過去の恋愛で泣いてるっぽい梨華ちゃん見てさぁ。」

「別に・・・」

「ふ〜ん・・・」

190 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:34

心配してるにきまってる。
でも、過去の恋愛で泣いている梨華ちゃんをどうしろって言うんだ。
好きでもない相手に慰められて、梨華ちゃんからしたら余計なお世話かもしれない。


休憩時間に美貴があゆみちゃんに状況を話してくれた。
あゆみちゃんは大笑いしてたらしい。
そして、今でも状況がつかめず悩んでいるであろう梨華ちゃんに
話しておくとも言っていたらしい。
仕事が終わったらろくに話もせず急いで家を出てしまった事を
梨華ちゃんに電話で謝っておこう・・・。

191 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:34

その日の仕事は、昨晩の梨華ちゃんの泣き顔が
ずっと頭の中にあって集中できなかった。
誰の事を思って泣いてるの?
って・・・私には関係ないか・・・


「・・・おーい!!」

「へ?」

「さっきから呼んでんだけど!!」

「ごめん!何?」

「いやいや、何?じゃなくて!
 いつまで同じところ掃除してんの?
 もう帰ろうよ・・・」

「え?あぁ・・・」


後片付けしてたんだった・・・
気付いたらもうジムを閉めて帰る時間で驚いた。


192 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:35

「そんな梨華ちゃんが気になります〜みたいな顔して仕事しないでくれる?」

「違うって・・・」

「今日よっちゃんが変なのは昨日のせいしかないじゃん・・・」

「気にならないとは言わないけど・・・」

「じゃ、何とかしてあげなよ。」

「それは私じゃないよ・・・」

「まったく・・・」

「何だよ」

「じゃ、美貴が何とかしてもいい?」


193 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:36

「は?」

「よっちゃんが何とも思っていないなら、
 美貴が梨華ちゃん狙っちゃうよ〜。」

「何の冗談?」

「マジでって言ったら?」

「え?
あぁ・・・
 いいんじゃない?
 美貴って女もいけるんだ?」

「恋愛ってそうゆうの気にしてするもんじゃなくね?」


私にどうしろって言うんだ。
美貴が梨華ちゃんの事を好きだと言うのであれば、
私がそれを止める理由なんてなくて・・・
友達の恋愛だから応援もしてあげたくて・・・


「そう。」


そっけなく返事をした。
でもちょっぴり胸が熱くなったのは何でだろう。

194 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:36

---------------

柴ちゃんから電話が来て昨日からの状況がわかったからと教えてくれた。
とんだ誤解だった・・・。

そうよね、柴ちゃんの気持ち知ってて私がそんな事するわけがないじゃない!

それよりか、私酔って覚えてないんだけど泣いて引き止めたって?
あぁ恥ずかしい・・・
確かに前にお付合いしていた人が夢に出てきた気がする。
もう半年以上も前の話で、最近はその夢も全然見なくなってたのに・・・
どうして?

195 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:37

そう、私は大恋愛していた。
そして半年ちょっと前に大失恋した。
相手は奥さんがいる人だった。
最初は奥さんがいるなんて知らなかった。
優しくてすごく大人な雰囲気で、私の話を笑顔でずっと聞いてくれる人だった。
大きく包み込んでくれる大人な男性。
何度か食事を重ねるうちにどんどん好きになってた。
気持ちを伝えると、実は結婚しているんだと話してくれた。
それに加えて「でも、梨華が大好きだ。」と・・・。

よく考えなくてもすごくズルイ話なんだよね。
柴ちゃんにもやめとけって言われたのに
頭ではわかってても心がついていかなくて・・・
ついに体の関係を持ちズルズルと付き合い始めてしまった。

196 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:37

1年半ぐらいの付き合いだった。
相手には子どもがいなくて作るつもりもないって言ってた。
そして、身の回りを整理して私と一緒になりたいとも言ってくれた。

半年前、奥さんに子どもができたから私との関係を終わりにしたい
と言われたとき、すごく裏切られた気持ちになった。
でも、大好きだったから恨む事もできなくて、
苦しめたくないから彼からの別れを素直に飲み込んだ。

197 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:38

どこかでこうなる事は自分でも予想してたはずなのに
現実にそうなると息もできないぐらい苦しくて辛かった。
何度も何度も同じ夢を見た。
彼に泣いて「行かないで・・・」って言ってるの。
いつも夢では彼は優しく頭を撫でてそっと去っていくのに
昨日は側に感じる事ができた。
それはあんな事があったから、
ひとみちゃんが優しく側にいてくれたからなんだろうな。

過去の辛い事を思い出し苦しくなったけど
ひとみちゃんの優しさを思うとなぜか心が温かくなって
今朝の寝顔を思い出すと胸がトクンと言った。

198 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:39

♪♪♪


あ、携帯鳴ってる。

ん?ひとみちゃんだ。
何だかちょっぴり緊張する・・・


「もしもし。」

『あ・・梨華ちゃん?』

「うん。お仕事終わり?」

『そう。朝シャワー借りたのにろくにお礼も言わず出てきちゃって・・・』

「昨日はほんっとごめん!!
 爆睡しちゃうなんてホントに迷惑だよね・・・
 こちらこそ送ってもらっちゃって・・本当にありがとね!!」

『いえいえ。
 昨日の話はちゃんと聞いたんだね!良かった・・・
 今朝のあゆみちゃんは誤解してたみたいだね。はははっ。』

「そうみたい。ふふっ
 こっちもビックリだったのに。ふふふっ」

『変に誤解させちゃったお詫びにあゆみちゃんにご飯お誘いしないとな〜』

「きっと楽しみに待ってると思うよ〜。

 そういえば・・・」

『ん?』

199 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:39

「昨晩はお恥ずかしいところをお見せしまして・・・」

『あぁ・・・』

「本当にごめんなさい。引き止めちゃって・・・記憶にないんだけどね。えへ。」

『記憶にないなら仕方ないよ。ははっ  でも・・・・・・』

「でも?」

『いや、何でもない。』

「え〜?」

『何か話して楽になることがあったらさ。』

「うん。」

『話ぐらい聞くし。』

「うん。」

『美貴も心配してたから、
 あいつ私より頼りになるし、相談とか乗るのうまいと思うよ。』

「ありがと。」

200 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:40

----------------
気になって梨華ちゃんに電話しちゃうぐらい自分も心配してるのに
とっさに言葉に出たのは美貴のこと。
心配しておきながら相談は別の人へなんて・・・
超かっこわり〜

でも、これでいいんだ。これで・・・

201 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2009/12/24(木) 09:40


***************************************************


202 名前:坊ちゃん 投稿日:2009/12/24(木) 09:41

本日の更新は以上です。
クリスマスイブなのに全然話が甘くない・・・


203 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/24(木) 16:02
待ってましたよん♪
これから更に複雑に絡み合うのかな…
次の更新までもうすでにワクワクです。
でも師走だしぼちぼち頑張ってください。
204 名前:坊ちゃん 投稿日:2010/07/06(火) 17:10
> 203:名無飼育さん

師走も終わり、新年も終わり、新年度が始まって、夏になった頃に戻ってきてみたりしました(笑
ワクワクして下さってたのにすみません!
205 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:12

休み明けに柴ちゃんとジムに行った。
ダイエットプログラム実行中の私は柴ちゃんとは別メニュー。
ぼ〜っとサイクリングマシンをこいでいると美貴ちゃんがやってきた。

「もしかしてまだお酒残ってる?」

「へ?」

「冗談よ。はははっ
 でも、あの熟睡っぷりにはビックリだったわ〜」

「も〜、ほんとにゴメンね・・・

 ・・ひとみちゃんは?」

「気になる?」

「え?いや・・・
 すごく迷惑かけちゃったし・・・
 恥ずかしい姿も見せちゃって・・・」

「本人きっと迷惑だなんて思ってないから大丈夫だよ。
 あ、よっちゃん!」


ちょうどひとみちゃんがこちらに歩いて来るのが見えた。


トクンッ トクンッ


どうして?
私の心臓壊れちゃったかな?
ちょっと優しくされただけじゃない。

206 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:13

「梨華ちゃん、こんばんは。」

「こ・・こんばんは。」


簡単に挨拶すると柴ちゃんのところに行っちゃった。
何だろ・・・
この切ない感じ・・・


「ねぇ、梨華ちゃん?」

「ん?」

「付き合ってみない?」

「何に?」

「美貴と。」

「へ?」

「お試しでもいいから、美貴の彼女になってみない?」

「も〜冗談?」

「マジだよ。」


美貴ちゃんのぶっ飛んだ冗談かと思ったのに目は真剣。


「どうして?」

「好きだから。」

「・・・」

「じゃないとそんなこと言わないでしょ。」


み、美貴ちゃん?!

207 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:13

私は美貴ちゃんの事、恋愛対象で見たことない。
嫌いではないけど・・・お試しみたいな軽い感じで付き合ったら悪いじゃない。

あぁ・・ひとみちゃんは電話で美貴ちゃんにって言ってたな。
そうゆうことだったの?
照れ隠しなんかじゃなく、あなたも友達の恋を応援してる立場だった?
目を閉じるとそこには笑顔のひとみちゃんがあった。


「・・・

 ちょっと考えてもいい?」

「いいよ。」


考えたところで私はいったいどう返事をしたらいいんだろ。

帰り道、柴ちゃんが嬉しそうにひとみちゃんと2人きりで
ご飯に行くんだと話してくれた。
その時に思い切って思いを伝えるらしい。
友達として・・・
柴ちゃんの恋がうまくいけばいいなと思う。

その週は私はジムをお休みした。
美貴ちゃんからあの事が原因で来にくくなってたらゴメンって
メールが来たけど、仕事がバタバタしているからと返信しておいた。
行きにくいっていうのがもちろんあるんだけどね。

208 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:14

美貴が梨華ちゃんに告白した。
事後報告だったけど、美貴は思い立ったらすぐ行動。
まさかあんな宣言をした週明けに告白しただなんて知らなかった。
梨華ちゃんの返事は「考えさせて」だそうだ。

断らなかった・・・

考えるって事は可能性があるって事?
美貴は良いやつだから・・・きっとうまくいくだろう。
うまくいってほしい友達の恋なのに、複雑な気持ちになっている。


そして今日はあゆみちゃんから驚かされたお詫びとしてご飯に連れてってと誘われていた日。
誘いに乗ったということは、相手の気持ちにちゃんと向き合おうとしてるって事。
梨華ちゃんは美貴とそうなるわけだから・・・

209 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:14

「や〜っぱりよっすぃ〜が選ぶお店はオシャレ!!」

「そう?ここも友達に。」

「それって恋人じゃないよね?」

「だ〜か〜ら〜、そうゆう人いないって!!」

「「あはははっ」」

「じゃあさ、立候補してもいい?」

「ん?」

「私、よっすぃ〜の事、好き。
 もう気付いてるでしょ?」

「ん?」

「そうやってはぐらかされるのも想定内だから。ふふふっ
 今日はきちんと返事を聞くまで帰らないことにしてる。」

「え〜〜?」

210 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:20

「よっすぃ〜が私の事を好きじゃないのはわかってるの・・・」

「いや・・・」

「でも・・・

 今、好きな人がいないなら・・・

 いつか好きになってくれるかもでもいいから・・・

 お付合いしてもらえませんか?」

「・・・」

「突然ごめんね・・・」

「いや、

 いつまでも気付かないフリしてあやふやにしてちゃいけないって自分でもわかってるんだ。」

「うん・・」

「正直、あゆみちゃんの事を・・・その・・・

 恋愛感情で見た事がないとゆうか・・・」

「・・うん」

「でも、誰か付き合っている人がいるわけではないし、
 好きな人が・・・
 いるわけでも・・・

 だから・・

 それでもいいってあゆみちゃんが言うなら・・・
 まずはお互いをよく知り合う関係にとゆうか・・・」

211 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:20

「え?」

「ん?」

「これからそうなる事もないとは言い切れないって事よね?!」

「ん、そうなのかな・・・」

「うそ・・・やだ・・・ホント?」


その後歓喜あまってあゆみちゃんは泣き崩れてしまった。

でも・・・
あゆみちゃんと話している間、頭の中は梨華ちゃんでいっぱいだった。

212 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:20

柴ちゃんから泣きながら電話が来た。
告白したら前向きな返事をもらえたって・・・
まだ付き合うとかそうゆうんじゃないけど、
柴ちゃんはすごく嬉しかったと思う。
それに、ひとみちゃんもそうゆう風に柴ちゃんを見ているって事だよね。

柴ちゃんに「よかったね」と言いながらなぜか心に穴があいた気分になった。
溢れ出てきそうな自分でもわからない感情を閉じ込めるように
そのまま美貴ちゃんに電話をした。


「この前言ってくれた事だけど・・・

 よろしくお願いします・・・」


美貴ちゃんは優しくてすごく良い人だから。
これから好きになっていけるはず。

213 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:21

私と美貴ちゃんが交際をスタートさせて1ヶ月が経ったある日。
今日も柴ちゃんとジムで脂肪燃焼中。


「まさか梨華ちゃんがミキティとね〜♪」

「・・・」

「恋人ができるとダイエットもはかどるよね〜♪」

「・・・」

「な〜んでそんな浮かない顔してんのよ〜?」

「・・・

 実感がないの・・・」

「実感?」

「付き合ってる実感とゆうか・・・

 恋愛ってこうなのかな?って。」

「美貴ちゃんのこと好きじゃないって事?」

「違うの。

 優しいし、一緒にいて楽しいし、私の事大事にしてくれるし、

 好きなんだよ。
 これからきっと美貴ちゃんをもっと知ってもっと好きになれるのかもしれない。

 けど・・・

 心のどこかでそれでいいの?って思っちゃう自分もいるの。」

214 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:21

「迷ってるんだ?」

「わからない。
 
 自分の感情がわからなくなるの・・・」

「エッチは?」

「へ?」

「まだ?」

「ちょっと!!

 ・・・まだ・・・」

「肌を重ねて生まれる感情もあるんじゃない?」

「そんな・・・」

「一番気持ちが近くなれるような気しない?」

「そうかな・・・」

215 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:22

その夜、あの夢をまた見た。
置いていかれるの、大好きな人に・・・
私の頭を優しく撫でながらゆっくり去っていくモヤのかかったあの人の顔。
半年以上も前のことでしょ・・・
寂しくて離れたくなくて涙が止まらない。
段々と視界がハッキリとしてきて、
優しく微笑んで去っていくのは・・・


ひとみちゃん?!?!


「何でっっ!!」

思わず叫んで飛び起きた。
体中寝汗でビッショリ。


何で相手がひとみちゃんに・・・



それから毎日のように同じ夢を見た。
日に日にモヤのかかった人影はハッキリとひとみちゃんになっていく。

216 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:22

毎晩この夢を見るせいで寝不足。はぁ・・・。


「いしかわ〜」

「・・・」

「い〜し〜か〜わ〜!」


「へ?

 あっ・・はいっっ!!」


同じ秘書課の先輩である飯田さんに呼ばれたみたい。


「へ?じゃないわよ!
 ど〜した?なんか最近抜け殻のようになってない?」

「そ・・そうですか?」

「そうよ。
 小さなミスが多いわよ!!」

「すみません!!」

「そんなんじゃ、一緒に仕事してる仲間が不安になるわ。
 何かに悩んでるんだったら 
 解決できる問題は早く解決して
 できないものはスパッと諦めなさい!!
 仕事に影響するようじゃ社会人失格よ!!」

217 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:22

飯田さんに叱られた。
新入社員の頃のように叱られたので気分が落ち込んでしまった。
今日はジムで汗流してスッキリしようかな。

柴ちゃんを誘ったら残業だから行けそうにないと言われた。
今日は1人で集中!!!

218 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:23

ジムに行くと美貴ちゃんとひとみちゃんが入口近くに立っていて、美貴ちゃんが笑顔でこちらにやってきた。

「今日もおつかれ〜」

「うん。美貴ちゃんも。」

「しっかり汗流してさっぱりと1日終わろ!」

「そうだね。」

いつもの元気の良い美貴ちゃん。
きっとこんな凹んでいる時にこそ美貴ちゃんに甘えるべきなんだよね。
でも無理矢理笑顔を見せて頑張る私。
もっと素直になればいいのに・・・

219 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:24

家に帰っても何もやる気がおきず、お風呂に入って寝ようと思っても中々寝つけなかった。
明日は休みだし、コンビニにお酒でも買いに行こうかな。
日付が変わる少し前のコンビニへお買物。
お酒を選んでいると

「あれ?梨華ちゃん?」

「あ・・・

 ひとみちゃん・・・」

最近やたらと夢に登場するひとみちゃんが目の前にいるから緊張する。

「スッピンだ〜」

「やだ・・見ないでよ。」

「そう言うほどヤバくないじゃん?はは。」

「今帰り?」

「そ。今から寒いお家に帰ってコンビニご飯食べるの。さみし〜」

「そっか・・・柴ちゃんは?来てくれたりしないの?」

「だって、付き合ってるとかじゃないし・・・」

「進展ないんだ?」

「ないってわけじゃないけど、やっぱり何だろ・・・まだそうゆう関係には・・・」

「そうなの? 柴ちゃんは毎日楽しそうだよ〜」

「そっか。」

220 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:24

柴ちゃんの話をふったのは自分なのになぜかすごく淋しい気持ちになった。

甘い系のお酒を何本か選んでカゴに入れる。
ついでにおつまみのチーズも。
そしてお会計を済ませる。
隣りでひとみちゃんも遅い夜ご飯を買ってる。

2人で並んでコンビニを出た。

「こんな時間に1人で歩いてたら危ないからさ、送るよ。
 美貴が知ったら超心配すんじゃん。」

「大丈夫だよ。」

「ま、ご近所なんだから遠慮しないで。すぐそこだし。」

「ん・・ありがと。」


夜道を私のマンションに向かって歩いていく。
外灯が私とひとみちゃんと自転車の影を作る。
長くなったり短くなったりしながら。

221 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:25

「な〜んかさ、ジムの時から元気ない気がするんだけど気のせい?」

「え?」

「無理して笑顔で頑張ってる〜って感じ。美貴と何かあった?」

「・・・」

「違ったらごめん。」

「・・・」

「美貴と喧嘩でもした?」

「いや・・・」

「どした?」

「会社で・・・ちょっとね・・・」


ポタッ ポタポタッ

ちょうどマンションの前につくと、目から大量の涙が溢れてきた。
仕事でミス続きの自分への悔しさと、我慢していた自分に気付いてくれた
ひとみちゃんの優しさが嬉しくて次から次へと涙が出てきた。


222 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:25

「・・・うぐっ・・ごっ・・めん・・ね・・・」

「うん・・
 大丈夫。大丈夫だよ。」

ひとみちゃんは『大丈夫』を繰り返しながら頭をそっと撫でてくれた。
撫でられれば撫でられるほど涙は止まらなくて、
そんな私を包み込むようにひとみちゃんがそっと抱きしめてくれた。

何でこんなに落ち着くんだろ。
すごく心地よくて、さっきまで次から次へと流れていた涙がすーっと引いて穏やかな気分になった。
ひとみちゃんの心臓の鼓動が直接私に伝わってきてドキドキする。
ちょっと鼓動の早いひとみちゃんの心臓。
こんな温かくて優しい感覚は初めて。

しばらくするとひとみちゃんが私から離れた。
一気に淋しい気持ちになる。

223 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:25

「落ち着いた?」

「うん・・・」

「美貴呼ぼうか?」

「大丈夫。」

「そっか。」


2人の間にしばらく沈黙が流れる。


「落ち込んでた理由とか少し話す?」

「・・・」

「あ、言いたくなかったらかまわないから!」

「もう遅いし。ひとみちゃん家に帰らなきゃ。」

「私は全然かまわないよ。
 話して落ち着くならいつでも。

 って、それは美貴の役目か・・」


ひとみちゃんはいつでも優しい。
優しすぎるから・・・


「そんなことしたら・・・」

「ん?」

「大丈夫!もう大丈夫だから!早く帰って休んで!!」

224 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:26

気付いてしまった。
きっともう随分前からそうなんだけど気付かないフリしてたんだと思う。

だけど、確信してしまった。


私、ひとみちゃんを好きになってるって。
あの腕に包まれて、離れたくないって思ってしまった自分がいた。


マンションのエントランスに入ると
美貴ちゃんがエレベーターの横の壁にもたれかかって立っていた。


「最初っから勝ち目ないのはわかってたんだけどね〜。ははっ」


部屋に入り、少しお話をした。

225 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:26

「よっちゃんさ、昔っからすごくもてるんだよ。」

「そうなんだ。」

「そのくせ恋愛には鈍感で、色んな可愛い子が必死で気持ち伝えてるのに全然気付かないの。

 でもね・・・

 ある日、よっちゃんが振り向いた女性がいたの。」

「・・・」

「同じ大学の2つ年上の先輩で、笑顔にいっぱい幸せが詰め込まれたような優しい先輩だったよ。
 女性との恋愛に興味がなかった美貴でもくらっとしちゃうぐらい素敵な女性だった。

 お互いに自然と惹かれあって、回りが羨ましがるぐらいお似合いで
 こうゆう人たちがずーっとずーっと一緒に生きていくんだろうなって思った。

 でも運命って残酷なんだよ。

 ある日突然、よっちゃんの大切な人はこの世からいなくなった。」

「え?」

226 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:27

「もう4年経つかな。
 交通事故でね・・・

 雨が降る日に駅から歩いてよっちゃんちに向ってた彼女は
 ちょっとわき見をした車に・・・

 よっちゃん、酷く自分を責めてさ、どうして駅まで迎えに行かなかったんだろとか、
 自分が彼女の家に行く事にしてたらとか、
 仕方なかったとしか言えない事を全部自分のせいにして壊れちゃいそうだったよ。

 美貴さ、よっちゃんが消えちゃうんじゃないかと思って
 毎日しつこいぐらいによっちゃんに付きまとって一緒にいるようにした。
 苦しい時も悲しい時も辛い時も楽しい時も一緒に過ごした親友だからさ、
 よっちゃんいなくなったら今度は美貴がダメになっちゃうだろうし。ははっ。

 それからね、時が忘れさせてくれる事もあって、
 2年も経てばちゃんと過去として受け入れて前に進めるようになったの。 

227 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:27

 誰とも恋愛しようとしないけどね。
 言い寄られても突き放す事もしないし、深く関係を持とうともしない。

 いつかね、そんな態度が相手を苦しめる事もあるんだよって説教した事があるの。
 
 そしたら・・・
 そうやって特別に愛情を注ぐ人間が突然いなくなる事が怖いって
 だからちょっといいなって思う人が現れても深入りはしないんだって。

 何かさ、見てると美貴が苦しくなるんだよね・・・

 でもさ、 
 長く一緒にいるじゃん? よっちゃん見てると雰囲気でわかるの。
 あ、出会っちゃったなって。」

「出会っちゃった?」

228 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:28

「深入りしないようにしてても本能が求めちゃう大恋愛ってやつ?」

「大恋愛・・・」

「そ。あの人以来に出会ってしまったんじゃないかなって。

 梨華ちゃんといるよっちゃん、超切ない顔してる。」

「私?」

「な〜んか、2人って鈍感だよね。」

「鈍感ってひどい・・・」

「ちなみにあゆみも気付いてたから。」

「え?柴ちゃんが?!」

「今頃、帰ってきたよっちゃんにあれこれ説教して背中押してんじゃないかな〜」

「そんな・・・」

「意外にあゆみはスッキリした顔してたけどね。

 惹かれ合うものが一緒にならないのは理不尽だ!とか言ってた。
 頑固じゃん?曲がった事嫌いで気持ちはストレートに出すし。」

「そうだね。

でも・・・私・・・」

「ほら〜 行っといで!!
 きっとチャリぶっ飛ばして来てるからさ。ふふっ」

229 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:28

走ってマンションを飛び出ると息を切らして自転車をこいでやって来るひとみちゃんが見えた。
ホントにぶっ飛ばして来てる。


「ハァハァハァ・・・

 梨華・・ちゃん! ハァハァハァ・・・」

「ひとみちゃん・・・」


息を整えているひとみちゃんにそっと近づき、体を預けると
ひとみちゃんもそっと背中に腕を回してくれた。

すごく早い鼓動。

230 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:28

「ごめん。」

「どうして謝るの?」

「親友の彼女好きになっちゃった・・・」

「そっか・・・

 実は私も親友の好きな人を好きになっちゃって・・・」

「ふっ」


耳元でひとみちゃんが笑った。

231 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:29

「柴ちゃんってあんなに怖かったっけ?」

「うん、昔から曲がった事が嫌いだからね。
 何か言われたの?」

「好きな気持ちに気付いてるならもっとわがままになれって。ふふっ
 今を生きてる人をもっともっと大事にすればいいじゃないの!!
 って怒鳴られたよ。」

「へ〜。柴ちゃんらしい。ふふふっ」

「何かさ・・・」

「ん?」

「自分の気持ち認めちゃったらさ。」

「うん。」

「すっげ〜好き。」

「そっか。」

「ちぇっ〜なんだよ〜!そっちはどうなんだよ!」

「ん?」


少し体を離してひとみちゃんの瞳を見つめる。
吸い込まれそうなほど大きくてキラキラしてる。


「だ〜いすきだよ♪」


そのまま首に手を回してひとみちゃんにキス。
2人の恋が始まった。



fin

232 名前:好きな気持ちにわがままに 投稿日:2010/07/06(火) 17:29


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233 名前:坊ちゃん 投稿日:2010/07/06(火) 17:33

久しぶりの更新で完結させてしまいました!!
ありがとうございました。

234 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/08(木) 01:01
完結お疲れ様でした。
やっぱり二人は惹かれあう運命が似合いますね〜
素敵な親友達もステキでした。
235 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/11(日) 01:11
うぉーーー更新来てる!!!
完結おつかれさまでした。
正直少し諦めていたのですがこうして完結してくれて嬉しい限りです。
展開もおもしろくサクサくっと読めて素敵なお話でした。
完結してくれて嬉しいけど寂しい…とにもかくにもありがとうございました。
236 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/12(月) 11:09
> 234 名無し飼育さん

感想ありがとうございます!
そうなんです。
惹かれあう運命じゃないと落ち着かないんです(笑


> 235 名無し飼育さん

お待たせしました!
ちょっと長い忙しい時期に突入してまして、要約更新しました・・・。
無理矢理完結させた感じですが(笑
また時間ができた時に新作書けたらなと思っています。

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