4色クレヨン
1 名前:1.お世話係 投稿日:2009/05/28(木) 22:23
ライブ前の慌ただしい時間。
私はいつものように早めに準備を終わらせて、自分の鏡の前で最終確認をする。
よし。OK、っと。

ほんの少し目線をずらしたら、見慣れた横顔がちらりと映った。
とがった唇と下がった眉。
どうやら彼女はアイロンを片手に鏡とにらめっこ中のようだ。
2 名前:1.お世話係 投稿日:2009/05/28(木) 22:24
私は、思わず零れる笑みを隠して、そんなカメを鏡越しに観察する。

あんまり早く助けちゃうとね、カメにもよくないもん。
なんてゆーの?子どもの成長を見守る母親の心情、的な?

「むあー!もー無理!」

カメ観察を始めてたった数秒。情けない声が楽屋に響いた。毎度のことなので、他のメンバーは特に気にすることなく自分の仕度を続けている。私ももちろん知らないふりをするんだけど、こういう時は何故か私が捕まると決まっている。ふふんと笑って、振り返るカメ。

「がーきさん」
3 名前:1.お世話係 投稿日:2009/05/28(木) 22:25
あー、やっぱり。
頭を抱えたら、カメの隣のさゆみんが、申し訳なさそうに笑って片手をあげた。
わかったよ、と、こっちもさゆみんに向かって片手をあげる。

「ねー、髪の毛やってくださぁい…!」

泣き出しそうな声をあげ、アイロンを差し出すカメは、後は私がやってくれるんだって確信してる顔。その通りすぎて、ちょっとムカつく。

……ほんとは、もうちょっと1人で頑張らせたいんだけどなー。

でも、なんせ、私はカメのこの顔に弱い。
それに、頼ってくれてるのは、正直なところ悪い気はしないし。
4 名前:1.お世話係 投稿日:2009/05/28(木) 22:25
「もー、カメは仕方ない子だねぇ」

とか言って、渋々イスから立ち上がりながら、自分が笑顔になってるのがわかる。
だって絵里ちゃん、1人じゃできないんだもーん、なんて甘えてくるカメの頭をよしよししながら、ぱしっと小気味よい音をたてて、アイロンを受け取った。

「新垣さんに任せなさーい」

この時の、ふにゃりとしたカメの笑顔がたまらなく好き。
調子に乗るから言わないけどね。
5 名前:1.お世話係 投稿日:2009/05/28(木) 22:26
「で、今日はどうすんの?」
「えっとね、こっから下は巻いて、で、このあたりで結んでほしい」
「ん。りょーかい」
「へへー」

嬉しそうに足をバタバタさせるカメに、こっちまで嬉しくなる。
良いように使われてるんだけどなぁ。
1人で苦笑いをしたら、隣の席で自分のことを見つめてたさゆみんと目が合って、今度は2人して肩をすくめた。

「がきさんがんばー」
「おぅ」

鏡の中では私たちの様子を見ていたカメが不思議そうに首を傾げる。

くそー。
相変わらず可愛くてムカつく。
6 名前:こい 投稿日:2009/05/28(木) 22:34
こんばんは、こいと言います。
久々にスレ立てました。
以前立ててたのは、まだ雪板のある時代ですがw

今までは吉絡み作者としてやってましたが、今回は現娘。のメンバーでやっていこうと思います。
1話ごとにメインを変えていく予定なので、読みにくいかもしれませんが、宜しくお願いします。


7 名前:2.教育係 投稿日:2009/05/29(金) 20:09
「がーきさん。ごきげんですね」
「おー、さゆみん」

1公演目が終わって、ケータリングの前にいたがきさんに声をかけた。

「ほんとですよー。にーがきさん今日めっちゃテンション高かったです」

さゆみの隣についてきていた小春ちゃんが、続いてがきさんに話しかける。

「いや、小春には言われたくないから」
「確かに。小春ちゃんはテンション高すぎやね」
「えーー!そぉですかぁ?」

キーンと耳に響く声に、がきさんと2人で「今も高いから」とツッコミを入れる。
ふつーですよ、ふつー!と、やっぱりテンションの高い小春ちゃんは、そのままの調子で、ケータリングを物色し始めた。
8 名前:2.教育係 投稿日:2009/05/29(金) 20:09
そんな小春ちゃんの後ろ姿を見ながら、さゆみ達は話を元に戻す。

「そんなごきげんだった?私」
「でしたねー。てか、さゆみ知ってんです。がきさんがごきげんになる方法」
「うぇ?そんなのあるの〜?何ぃ、教えてよ」
「ふふーん。どーしよっかなぁ〜」
「えー、何さ何さ」

もったいぶるようにして、さゆみも小春ちゃんに並んでケータリングの物色を始める。

「わー、おいしそぉ」
「ちょ、さゆみん」

ただし、がきさんの場合、特に興味がない話題でもったいぶりすぎると、話が流れちゃうので、楽しむのはほどほどにしないとね。
まぁいいや、とがきさんが諦めてしまうギリギリに、くるりと振り返って、答えを教える。

「絵里ですよ」

9 名前:2.教育係 投稿日:2009/05/29(金) 20:10
「は?カメ?」
「はい。がきさんが絵里の髪の毛やってあげた日は、がきさんライブでのテンションが高いんです」
「……そうかな?」

リアルにハテナを浮かべて答えるがきさん。
本人は全く気づいてないらしい。
もー、がきさん自身が意識してたら、もっと面白いのに……。

「ん?でも何で、やってあげてる私の方がごきげんになるんだ?」

いや。それでこそ、がきさんなのかも?
10 名前:2.教育係 投稿日:2009/05/29(金) 20:10
大好きな親友がお相手なんだもん。さゆみちゃん、一肌脱いじゃおっかな〜。
絵里の前にいるときのがきさんが、めちゃくちゃ嬉しそうにしてるのは間違いないんだから。

「さぁ?さゆみにもわかんないですけど」
「ふぅん」
「でも、絵里が1人で髪の毛できた日とは全然違いますね、確実に」
「そ、そうなんだ。へぇ」

これで少しは意識するよーになったかな?
慌てたように目線をそらすがきさんに、思わずにやりと笑った。

さゆみってばナイスアシスト!
よし、ここは一気にもう一押し!
11 名前:2.教育係 投稿日:2009/05/29(金) 20:11
「ねぇ、がきさんって好きな人とかいないんですか?」
「ぅえぇ!?な、何よイキナリ!」
「お。なんですか、なんですかぁ?小春も聞きたぁい」

しまった。小春ちゃんがおったんや……。
こういう恋バナは、2人きりとかじゃないと、がきさん照れて話さないからなぁ。
さゆみは、失敗したなと反省しつつ、これ以上の進展は見込めないだろうと、差し入れのお菓子を口の中に放り込んだ。
ん。おーいひぃ。

「あんたは聞かなくていいから!」
「なーんでですかぁ!小春だって知りたいぃ」
「……そ、そーゆう小春はどうなのさ、その、好き、な人…とか」
「小春はいますよー」

「「え?」」

予想だにしてなかった小春ちゃんの突然の告白に、さゆみとがきさんの声がハモった。
12 名前:2.教育係 投稿日:2009/05/29(金) 20:11
「え、ちょ、まじ?」
「はい!」

小春ちゃんはいつものように元気よく返事をしたけど、さゆみには、さっきの表情が忘れられなかった。
好きな人がいると当然のように言ってのけた小春ちゃんは、さゆみが教育係をしていた頃には考えられないような、大人な表情をしていた。

「そうなの?誰、どんな人?」
「秘密ですー」

がきさんが、小春ちゃんから色々聞き出そうとしている間、さゆみはその会話に入れないでいた。
口の中に放り込んだお菓子はとっくになくなっていたけど、ずっとケータリングの方を見て、食べてるふりをしていた。

いつまでも、他人の恋愛を面白がって、楽しんで、自分はただ白馬の王子さまを待ってるだけ。
それなのに、自分よりずっと子どもで妹みたいだと思っていた小春ちゃんが、ちゃんと恋をしてるんだなって知ったら、なんだかすごく胸が苦しくなったんだ。




13 名前:こい 投稿日:2009/05/29(金) 20:14
更新しました。

こんな感じで、1人称変えていきます。
そんな長くならないつもりですが、まだよくわかりません。不定期更新でやっていきたいと思ってます。
あ、でも放置はしませんので!
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/30(土) 07:45
こはるんの好きな人誰だろー
続き待ってるんでがんばって下さい。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/30(土) 20:48
現メンだ!
期待してます。
16 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:37

17 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:37
さゆの様子がおかしい。

今日のライブは全て終了して、今はホテルに向かう車の中。いつものように、隣に座るさゆは、静かに寝息をたてていた。
普段なら絵里も一緒になって眠るんだけど、今日はさゆの様子が気になって眠れなかった。

1公演目と2公演目の間かな。ケータリングから帰ってきたさゆは、いつものさゆじゃなかった。
さゆはこう見えてプロ意識の高い子だから、ライブ中はそんなこと微塵も感じさせなかったし、他のメンバーも多分、気づいてない。
けど、絵里にはわかる。だって、親友だもん。

よぉし!絵里が原因、突き止めてやる!

心当たりがあるのは、がきさんと小春。
あの時、さゆと一緒に楽屋に戻ってきたのはこの2人だ。
とりあえず、2人から話を聞くかな。
18 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:38
んと。まずは、後ろに座るがきさんから。

「ねー!がきさん」
「わぁ!」
「おぉう!」
「……ちょっとぉ。そんな驚かなくてもいいじゃないですか」

最初に声をあげたのはがきさんで、次がその隣にいた愛ちゃん。
いきなり振り返って声をかけた絵里も悪いけど、驚きすぎだと思う。
元々びっくり顔のリーダーは、更にびっくりしちゃってるし。

「あ、あんたがいきなり振り向くからでしょ」
「静かやから寝てると思ったんやろがー」
「むー、すみませぇん」

2人同時に文句を言われて、流石に謝るしかなかった。一応先輩だしね。
19 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:39
「で、がきさん、聞きたいことがあるんですけど」
「ん?何よ」

背もたれに、乗り掛かるようにして、話に本腰をいれる。
愛ちゃんは、さっきまで読んでたらしい本を開いて、自分の世界に戻ってしまった。
絵里は邪魔をしないように小声で続ける。

「さっき、昼公演の後、さゆと何話してたんですか?」
「え。……えぇ?えっと、えー」
「いや、えーって言い過ぎだから」
「や、うん。あ、えと。あー!ごめん、覚えてないや」
「……?はぁ。そうなんですか」

わかりました、と絵里は自分の席にすとんと座り直した。
で、頭をひねる。

……がきさんも、なんか変!

20 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:41
よぉし。
がきさんのテンパリ具合も気になるけど、気を取り直して次は小春だ!
信号が赤になるのを待って、絵里は小春が座る一番後ろの席へ素早く移動した。
がきさんは慌てた様子で絵里を止めようとしたけど、車がすぐに発車してしまったので諦めたようだった。

「ね、小春ちゃーん」
「なんですか?亀井さーん」

絵里の調子に合わせてへらへらっと笑う小春。
さっきまで小春と喋ってたみっつぃは、空気を読んで、れいなと話し始めた。
みっつぃ、小春と同い年なのにしっかりしてるなぁ。

「で、なんですか」
「あぁ、そうそう。なんかさ、さゆの様子が変なんだよね」
「はぁ」
「それが小春と一緒にケータリング行ってからなんだよ。なんか知らない?」
「……んー」

一瞬、考えこむように黙る小春は、絵里の知らない人みたいだった。
いつもテンション高く笑ってばっかだから、そのギャップのせいだろうけど。
21 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:43
「そういえば道重さん、ケータリングにあったお菓子、めちゃくちゃ食べてましたよ」
「へ?」
「食べ過ぎなんじゃないですかね?」

にひっと笑う小春は、いつもの小春で、なんか安心した。
っていうか、食べ過ぎって。うーん……。ま、いっか。

「そっか。ありがと」
「いえー」

お礼だけ言うと、ちょうど赤信号で車が止まったので、急いで自分の席に戻った。
ふと、がきさんを見ると、さっきの会話をずっと聞いてたのか、小春の答えに少し安心したような表情をしていた。

聞き込みの結果分かったのは、2人とも、なんか隠してるってこと。
ここはもう、さゆに聞くしかないか。

ホテルに行ったら、色々聞き出してやろうと決心して、何だか疲れてしまった絵里は、そのまま眠気に身を任せることにした。



「よぉっし、さゆ!行くよ!」
「え?ちょ…どーしたの?絵里ぃー?」

絵里は、ホテルにつくなりマネージャーさんから鍵を奪い取り、さゆの手を引っ張った。
22 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:43

「で。どうなの?」
「どうなの?……って、絵里、石川さんみたい」

絵里とさゆの部屋。
ベッドは2つあるけど、1つのベッドの上で向かい合う。
ほんのり心外な言葉を浴びつつ、ここに至った経緯を話したら、さゆは呆れたようにため息をついた。

「はぁ。……まぁ、絵里になら言ってもいいか」

しばらく考えこんだ後、さゆは、淡々と今日の出来事を教えてくれた。
がきさんとの会話、小春に好きな人がいるってこと、そんで、そん時さゆが思ったこと。
話の途中で、口をはさみたいところがいくつかあったけど、とりあえずさゆの話が全部終わるまでは、黙って待つことにした。
23 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:44

「以上。わかった?」
「……うん。ってか、がきさん、絵里の髪の毛やった日はごきげんなの?」
「そう。だって絵里、がきさんのこと好きやろ?さゆみなりに協力してあげようと思っ…」
「えーー!ちょちょちょちょ……なぁんで知ってんのーー!?」

さゆの様子がいつもと違う理由を聞こうとして、さらりと爆弾を落とされた。

え、え、絵里ががきさんのこと好きだってバレてたの!?
てか、がきさんもまんざらでもない感じなわけ!?

いきなりの情報に声にならない声で叫んだら、落ち着きなよ、と一蹴されてしまった。
24 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:45
「どんだけ絵里の親友やっとーと思っちょるん」
「さゆぅ〜」
「2人とも端から見たら、いい感じやのにさぁ、じれったいっていうか」
「え、まじまじ?」
「……てか、さゆみの話は?これでも、小春ちゃんの話で動揺しっぱなしなんですけど」
「うぁぁ、ごめんごめん」

だいぶ、頭の中はがきさんのことで埋め尽くされてたけれど、さゆの相談も聞かなきゃね。
えと、なんだっけ?
小春ちゃんに好きな人がいて。で、ずっと子どもだと思ってたのに、先こされちゃった感じー!みたいな??

あー!てか、がきさんいっつも文句言ってるくせに、絵里の髪の毛やるの何気に好きなんじゃーん。
……やば。そうだ。今はさゆのことだ。
25 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:46
「よ、よぉし。気になってること言ってみな!」
「……絵里、にやけちょーし」
「へ?い、いつもこんなだって!」
「いーよ、もう。さゆみはさゆみで解決するから」
「え、えぇ?なんで〜」

すがりつくように、さゆに抱きついたけど、今は絵里とがきさんの話をしよう、と目を輝かせて言われてしまった。

「さゆみの場合、好きな人が出来ないと、このモヤモヤは解決しないもん」
「はぁ」
「だから、今は絵里の話聞く〜」

えぇぇ〜。それじゃあ、今までと変わらないんじゃ……。
なんて思いつつ、絵里は、がきさんを好きになったきっかけやら好きなとこやらを延々と夜遅くまで語らされることになった。

あーあ。さゆにも早く、王子様が現れないかなぁ。


26 名前:3.聞き込み 投稿日:2009/05/31(日) 21:47

27 名前:こい 投稿日:2009/05/31(日) 21:51
更新しました。

>>14  名無飼育さん
ありがとうございます。
小春たんの好きな人は、そのうち、というか次回?明かされる予定です。

>>15  名無飼育さん
最近は現メンにはまってるのでw
期待を裏切らないように…がんばりますw
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/31(日) 22:24
更新キター!
両思いだったのね♪
さゆは好きな人いないのかな?
29 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:52

30 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:52
失敗したかもしんないな。

同室のみっつぃは、田中さんの部屋に遊びに行ってしまって、今はホテルの部屋に小春1人。

ばふん、と仰向けに倒れて今日のあの人を思い出す。
好きな人がいると宣言した時の、びっくりしたような表情に、明らかに変わった様子。

あんなことを言ったのは、失敗だったのか、それとも成功だったのか。
後にならなければわからないことなのに、それが知りたくて知りたくて、胸がぎゅって締め付けられた。
31 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:52
亀井さんが新垣さんに何か話しかけた後、小春のところに来た時は正直焦った。

道重さんの様子がいつもと違うことには気づいていた。
もちろん、あの時、道重さんがお菓子なんて食べていたわけじゃないってことも知っていた。
だって、小春の言葉でそうなったんだから。

でも、亀井さんにはそんなこと言えないので、いつもの調子でごまかしてみせた。
我ながら、便利なキャラクターだな、なんて思ってみたり。

何か。
きっかけが欲しかったんだ。

欲しいものは何が何でも手に入れたい。
小春のそんな性格は、ただ好きな人のそばにいられればいいなんて、そんな考えを許さなかった。
なのに、小春の好きな人は、いつでも小春を妹のようにしか思ってなくて
他人の恋愛には面白がって首をつっこむくせに、自分のこととなるとさっぱりな人。

だから、何かきっかけ。
小春が昔のままの小春じゃないってことをわからせるための、きっかけ。

32 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:53
道重さんが小春に対して何かしらの意識を持ったことに関しては、ああ言って正解だったと思う。
でも、欲しいものは手に入れたいと思う反面、今までのように可愛がってもらいたいってのも正直なところ。
今日のことで道重さんの態度が変わってしまったら、という恐怖が拭えなくて、少し早まったかなぁとも思う。

考えてても、仕方のないことが頭の中をぐるぐるまわる。
恋わずらいってやつかなーなんて他人ごとのように思いながら、小春は、浅い眠りについた。
33 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:53


「おはよー」
「おはようございまーす」

朝は、コンサート会場へ向かう車の中での集合。
昨日は、あのあとすぐに帰ってきたみっつぃに起こされて、シャワーを浴びてから眠りについた。なんか、思った以上にぐっすり眠れた気がする。
一方、小春の好きな人と言えば、

「おはようございます!ちょっと遅れましたっ」
「……おはよーございまぁす」
「えーりっ、早く!」

亀井さんと2人して、ドタバタと遅刻気味に車に乗り込んでくる。
昨日遅くまで話して寝坊して、で、亀井さんが準備に手間取って更に遅れた、みたいなパターンだろう。

「カメー、髪の毛はねてる」
「えぇ?まじ?がきさーん、直してくださいよぅ」
「う、…うん」

いつものコンビの会話から、自分の分析は正しかったのだろうと推測する。
あ。にーがきさん動揺してるー。

ちらりと道重さんを見ると、そんな2人の様子を嬉しそうに見ていた。
おせっかいな人だよなぁ。
そんなとこも好きだけど。

しばらくすると、全員が揃ったということで、車が動き出した。
34 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:53
会場につくと簡単な打ち合わせがあって、あとはしばらくの自由時間となる。
何をして過ごそうかと、メンバーを見渡したら、道重さんと目があった。

小春を見てた?

内心驚いたけど、そんなことは感じさせないように、いつもの笑顔を貼り付ける。

「小春ちゃん」
「はいっ」
「ちょっと来てー」
「え?はい…」

いきなりの呼び出しですか。
びっくりだし、嬉しいんだけど、教育係をやってもらってたってこともあって、若干怖い。
なんだろ……。
35 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:54
「ねぇ」
「はいぃっ」

自販機コーナーの一角。
小春らしくもなく、緊張している。もっとうまくやらないと。
ちらりと盗み見た道重さんの目は、きらきらと輝いていた。

「な、なんですか?」
「あのね、小春ちゃん昨日がきさんと話してたやろ?」
「……好きな人の話ですか?」
「うん。さゆみ、あんまり話聞けなかったからさ」
「差し入れ食べてましたもんね」
「う、うん」

なんとか平常心を保とうと、精神的に優位に立てるような言葉を選ぶ。
ほんとは食べてなんかないってことに気づいてたとはバレないよう気をつけながら。
36 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:54
「でね、小春ちゃんの好きな人ってどんな人なのかな〜って気になって」

何か真意があるのかどうか、考えたけど、ただ単に聞きたいだけなんだろう。
小春が好きなのは、自分だなんて考えたこともないって瞳。

「んー、…可愛い人ですよ」
「女の子なの?」
「はい」
「何?メンバー?」
「さぁ?」
「えー!教えてよぅ」

目の前にいる人ですよ、って言ったらどんな顔するんだろ。
興味はあるけど、そんなことぜーったい言えない。
自分の好きな人を前に恋バナってのも、苦しいなぁ。

「じゃあじゃあ、告白とかしないの?」
「しないですよー、まだ」

そう。まだ。
小春、勝ち目のない恋愛はしないんです。

「ふぅん。なんで?」
「……その人、小春のことなんてなんとも思ってないですから」

自分で言っといて、なんか、傷ついた。

だって、道重さんだもん。
小春の好きな人は、小春じゃなくて、ただ恋の話に興味があるだけだもん。

さっきの言葉、語尾が震えてなかっただろうか。一気に不安になった。

37 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:55
とっさに声色を変えて、話題を変えようとしたら、遠くの方で新垣さんと高橋さんの声が聞こえた。
良かった。もう、準備する時間だ。

「やば、呼んでるね」
「ですね。行きましょー」

ちょっと助かったかも。
小春は道重さんに、はい、っと片手を差し出す。

「何?」
「道重さん、足遅いから引っ張ってあげます」
「うわ、イヤミー!」
「えへへー」

むーっと可愛らしく頬を膨らませてから、小春の手を握ってくれる道重さん。
ほんとはただ手を繋ぎたかっただけ。

「超超ちょースペシャルマッハで走ります!」
「うわわわわ。待って待って」

ギャーギャー言いながら小春と道重さんは、楽屋に急いだ。

38 名前:失敗か、成功か 投稿日:2009/06/05(金) 21:55

39 名前:こい 投稿日:2009/06/05(金) 22:01
更新しました。


>>28 名無飼育さん
うちのさゆちゃんは、…どうでしょうね〜w
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/05(金) 22:03
ふぇーい!リアルタイム遭遇!
小春ちゃんがいい感じに強気で素敵です。
お疲れさまです
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/06(土) 02:58
こはるんなにげに策士ですねw
さゆみんがどうなっていくのか楽しみ〜
42 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:48

43 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:49
事務所での短い打ち合わせが終わり、そのまま帰ろうとしたら、亀井も来てるよ、と思い出したようにマネージャーさんが言った。

カメ、来てるんだ。

挨拶でもしてから帰ろうかと、教えてもらった部屋に入った。……ら、寝てた。


約2ヶ月に渡るツアーが終わって、もう1ヵ月。
通常なら、仕事のペースは少し緩やかになるんだけど、カメの場合はツアー後すぐに舞台があった。

疲れてんのかなぁ。

伏せられた顔の下敷きになっている舞台の台本を見て思う。
口をだらしなくあけたまま、幸せそうに寝てるカメに、なんだか心が癒されて、知らぬ間に顔が緩んでいる自分がいた。
44 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:50
そして、ふと思う。
よだれ、大丈夫かな。や、ダメだよなぁ。
汚したりなんかしたら、恥ずかしいだけじゃなく、さゆみんによってブログに公開されてしまいそうだ……。
そこまで、考えて自分で苦笑い。いくら、さゆみんだからって、そこまでしない…よ、ね?

「う、完全には否定できない」

ニヤニヤとケータイをいじる道重さゆみの姿が容易に想像できてしまった私は、急遽、台本をよだれから守るべく、救出作戦を開始した。

45 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:50

なるべく音をたてないようにカメに近づく。
目の前に膝をついて、台本に手をかけようとした時、安心しきった寝顔が目に飛び込んできて、何故か心臓がドキンと鳴った。

なんか、こんな近くでカメをまじまじと見るなんて、初めてかも。
本当に可愛いなぁと思う。

……この間、さゆみんが言ってたように、私はカメに特別な何かを感じているのだろうか?
カメのことを好きかと問われれば、自信を持って好きだと言える。
でも、それは他のメンバーも同じこと。
46 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:50
カメを見て、愛おしいと感じるこの気持ちは、……恋愛感情?

「……」
「……」

息をするのさえ忘れるくらいに、カメを見つめた。

わからない。

そもそも、恋愛感情って何?キスしたいとか、そういうことかな。

カメと、キス。私が?

私は、静かな寝息をたてるカメの唇に目線をやった。
47 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:51


『がきさん、絵里、がきさんが好き』
『カメ……』

真っ直ぐな瞳に捕らえられて、もう逃げられない。
両肩から伝わる手のひらの熱に、私の体温も上がっていくのがわかった。

近づいてくるその薄い唇に、早く触れたくて仕方がなかった。

濡れた瞳をゆっくりと隠すように、まつげが下りてくるのを見つめる。それが完全に閉じられる前に、私は自分のまぶたを閉じた。

そして、2人の唇は……。

48 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:51
って、ぅぉおおおい!!

自分の思わぬ妄想力に全力で突っ込みを入れる。
危うく、声が出そうだったよ。
あっぶないあっぶない。

ふぅ。
落ち着け落ち着け落ち着くんだ、新垣里沙。

とんとんと胸を叩きながら、今は、台本の救出が最重要事項だと考えを改める。
なんとか思考回路を切り換えて、次こそは、と台本に手をかけ、カメを起こさないようにと、じりっじりっと台本を引っ張っていった。
それでもなかなか引き抜けない台本に、もうちょっと強くても大丈夫かな、とカメのほうを見る。
49 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:52
そして、猛烈に後悔。
さっきの自分の妄想のせいで、なんか死ぬほど恥ずかしい。

うあー!
落ち着け、里沙!
今は台本だ!


……みたいな端から見たら1人コントを数回ループ。

あぁ。
なんかめんどくさくなって来ちゃった。
50 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:52
……ま、いっか。カメだし。
最終的に私が決行した作戦は、

「かぁめーー!何寝てんのーー!」
「……ん、…へ?」

ただ単純に、叩き起こす。
寝てるカメ相手に、変な妄想してしまった照れ隠しを含め、少々手荒ですが。

「え?え?何?はっ?」

許せ、カメ。
完全に寝ぼけてるカメに、眠気覚ましのチョップを一発お見舞いする。

「いったぁぁい」
51 名前:ヨコシマな妄想 投稿日:2009/06/06(土) 21:52

52 名前:こい 投稿日:2009/06/06(土) 21:57
更新しました。
疲れて寝てるのに、こんな起こし方されたら溜まったもんじゃないですよね。
( ・e・)<……

>>40  名無飼育さん
リアルタイムは、無駄にうれしいですよねw
私の中の小春ちゃんは、こういうイメージですww

>>41  名無飼育さん
小春には、意外と冷静な裏の顔を持っていて欲しいんですw
さゆみんは、そのうちどうにかなるでしょう←
53 名前:名無飼育 投稿日:2009/06/06(土) 22:33
>>44

確かに否定できないw
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/06(土) 23:45
更新お疲れさまです!
ガキさんついに目覚めたのか?
2人が進展するといいな。
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/08(月) 00:47
何もー知らないー亀が愛しい。
56 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:23

57 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:23
最近は、小春ちゃんと話をする機会が増えた。

今までかかわりがないわけじゃなかったけど、話をするたびに、さゆみの知らなかった小春ちゃんを発見する。
これまでもずっと近くにいたのに、そこまで深く見てなかったってことなのかな。

いつもの笑顔の向こう側に、こんなにも色んな表情を持ってるだなんて、気づかなかった。

ツアー中、2人っきりで話をした時、小春ちゃんは「好きな人は自分のことを何とも思っていない」と言っていた。
もうあれからだいぶ経つけど、あの時の小春ちゃんの痛々しいほどの表情を、さゆみは今でも忘れられない。
58 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:23


「高橋さん高橋さーん」
「おぅ、どしたー?」

そんなことをぼーっと考えていたら、いつもの甲高い声が、さゆみの耳に飛び込んできた。
小春ちゃんだ。

「あの、ダンスで教えてほしいとこあるんですけど」
「ほぉ。何のやつや?」

背中で会話を聞きながら、それ、さゆみの役目だったのになぁ、と思う。
道重さん道重さん、とさゆみの後ばっかり追いかけて来ていた小春ちゃんは、とっくの昔にいなくなっていたけど、なんだか無性に悔しい気持ちでいっぱいになった。
59 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:24
当時はさゆみ自身にも余裕がなくって、なんで、さゆみが教育係なの?って悩んだりもした。
小春ちゃんの無遠慮で人なつっこい性格が、余計にさゆみをイライラさせて。
しばらくして、小春ちゃんが頼ってこなくなった時には、正直、せいせいしたくらいだった。

それなのに、今、さゆみの近くで、さゆみではない愛ちゃんと話す小春ちゃんを見て、嫌な感覚がちくちくと胸を突き刺した。

可愛い人、か。
……小春ちゃんの好きな人は、愛ちゃんなのかもしれない。

そう思った途端、ざわざわと胸の辺りが騒ぎだしたのがわかった。
60 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:24


「みっちしっげさん!」
「きゃー!!」

いきなり、どんっという衝撃が背中に響いて、思わず悲鳴をあげる。

「びっくりしました?ドッキリせーこー」
「……ちょ、っと!小春ちゃん!」
「ふふ、ハツが飛び出る感じ?」

なんかの番組で、さゆみが使ってた言葉だ。
後ろに振り向くと、へへへっとイタズラが成功した子どものように笑う小春ちゃんがいて、さゆみの胸のざわつきが収まった。
昔と変わらないその笑顔に、安心する。
61 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:25

「聞きたいことは聞けたの?」
「……は?」

隣の席に座ってきた小春ちゃんに話しかける。
質問の意味が分からなかったようで、小春ちゃんは首をこてっと横に倒した。

「ダンスのこと」
「あー!高橋さんに。はいっ、ちゃんと教えてもらいました」
「……そっか」

いつもの笑顔。
さゆみは、あの時の小春ちゃんのあの表情を見てから、ニコニコと笑うその顔の裏に、何か違う感情があるんじゃないかと探るようになってしまっていた。
愛ちゃんが小春ちゃんの好きな人だとしたら、愛ちゃんはそのことに気づいてんのかな。

さゆみが、小春ちゃんの好きな人だったら、これからはちゃんと気づいてあげられるのになぁ……。
62 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:25
「道重さん?」
「……え、な、何?」

心の中で、自分自身が言った言葉に、さゆみが一番驚いた。
『さゆみが、小春ちゃんの好きな人だったら…』なんて。

……そっか。さゆみは、きっと小春ちゃんのことが好きなんだ。

「……。いきなりぼーっとして、なんか変」
「そ、そんなことないって。さゆみは元々こんな顔やし!」

焦って口をついた言い訳に、小春ちゃんは目を丸くしてから、声をあげて笑った。
あ、楽しそう。…じゃなくって。
63 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:26
好きだなんて意識した途端、無駄に心臓が暴れだして、ほんと、どうしようかと思う。
小春ちゃんとの会話をつづけながら、頭の端っこの方で、いつからそうだったのだろうかと考えてみたけど、加入したての頃の小春ちゃんも、ソロ活動で頑張ってる時の小春ちゃんも、みんなと笑ってるときの小春ちゃんも……いろんな小春ちゃんが頭に浮かんできて、結局よくわからなかった。

もしかしたら、さゆみは、気づいていなかっただけで、初めから小春ちゃんのことを好きだったのかもしれない。

そう思ったら、どんどんと自分の顔が熱くなっていくことに気づいた。
どうしよう、ばれてないかな。
他愛もない会話をしながらも、そのことに頭がいっちゃって、不安になる。
64 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:26

「あ、そうだ、道重さん」

しばらく話をつづけた後、小春ちゃんが思い出したように言った。

「ん?」
「小春ね、近々好きな人に告白しようと思います」
「……え?」

いきなりの発言に、また心臓が飛び出しそうになる。今度はさっきとは全く違う意味で。

なんで?なんで?
まだ告白しないんじゃなかったの?
さゆみ、小春ちゃんのこと好きだって自覚したばっかだよ?
告白が成功しちゃったらさ、……せっかく始まった恋を諦めなきゃいけないじゃん。
65 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:26

「な、んで?」
「……。なんか勝ち目でてきたんで。多分ですけど」
「そ、っか。良かったじゃん」

ギリギリで声を絞り出す。
さゆみが小春ちゃんを好きだなんて、バレちゃいけない。
せっかく、真っ直ぐに恋に向かっていこうとする後輩を邪魔するなんて、できない。

ゆっくりと小春ちゃんを見たら、頑張りますね、と静かに笑った。
66 名前:笑顔の向こう側 投稿日:2009/06/14(日) 12:26

67 名前:こい 投稿日:2009/06/14(日) 12:34
更新しました。
睡眠時間もろくにとれないほど、作者多忙につき、なかなか更新&執筆の時間が取れません;
今日もう一話うp予定ですが、それ以降の話についてはまだ未定な状態です。なので、しばらくお持ちいただけると嬉しいです。
放置は絶対にしませんので!

>>53 名無飼育さん
私もそう思いますwww
おじぎブログはほんとおもしろいですよね〜

>>54 名無飼育さん
目覚めましたねぇ
なかなかじれったい感じで進めていけたらなと思いますww

>>55 名無飼育さん
しょーおーがーないカメ追いーびーとー←
68 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 13:17
更新キター!
小春ちゃんついにですか?
どうなるんだろー楽しみです。
69 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 15:07
お疲れ様です!
待ってますので無理しないで下さいね〜
70 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:09

71 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:09
舞台終わり。着替えを済ませた愛ちゃんは、足早に帰って行った。

夏にあるディナーショーの打ち合わせも兼ねて、がきさんとご飯食べに行くんだって。

いーなぁ。愛ちゃんばっかり。


72 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:10


「絵里、膨れてるね」
「ほんまやん。…あのほっぺた潰したらどうなるんかいね」
「うはっ。ちょっと、れいな〜!想像しちゃったじゃん」

「ねぇ、れいな。1回やってみよーよ」
「お!ええやん」



「……あのー。聞こえてるんですけど!」

嬉しそうに人差し指1本立てて迫ってくる同期2人に言う。
てか、真横で喋られてたから最初っから全部まる聞こえです!
73 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:10
「なんや絵里気づいとったん?」
「気づくでしょ普通」
「頭の中がきさんでいっぱいかと思って」
「は!?な、なんで、がきさんなのよー」

いきなりがきさんの名前がでてきて焦る。
さも当然、というようなれいなの顔を見ながら、絵里はごくんと喉を鳴らした。

「だって絵里、がきさんのこと好きなんやろ?」
「……えぇぇー!?れいなにもバレてたの!?」

目の前には、逆にびっくりしたようなれいなの顔。
いやいや、絵里のほうがびっくりです。

「あったりまえやん。てか絵里は隠しとったとかいな?」
「か、隠してたに決まってんじゃん!」
「いや、バレバレやし!今も愛ちゃんが、がきさんとご飯行くって言うた瞬間に拗ねとったやん」

ズバッと鋭いれいなの言葉に、隣でうんうんと頷くさゆ。
絵里は、……何も言えないや。
確かに、あれはわかりやすかったかもと反省する。
74 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:10
「てゆーか、がきさんも、こんなわかりやすい絵里相手によう気づかんね」

れいなが呆れたように言うと、それを聞いたさゆは、にやっと笑った。

「でも最近は絵里のこと意識しだしたんだよー」
「まじ!?やるやん、がきさん!」
「まぁ、さ・ゆ・み・が!アシストしてあげたっていうかぁ?」
「お〜!さゆ、なかなかやりよるね」
「やろ?やろ〜?」

ぴょんぴょんと跳ねるさゆに、れいなも合わせて、すごいすごい!と跳ねる。
絵里の話題のはずなのに絵里抜きでどんどん盛り上がっちゃってるし。

はぁ、とため息をついたら、それに気づいた2人が、はしゃぎすぎたかな、と言った表情で目を見合わせていた。
まぁ、絵里としては、自分のことのように考えてくれるのが嬉しかったりもするんだけどね。
いきなり、しゅんとしちゃったさゆとれいなが、ワンちゃんみたいで可愛くて、ついつい笑ってしまった。

75 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:11



場所は変わって、絵里の家。
気が付いたら、何故だかさゆとれいなが泊まることになっていた。

「第1回、絵里ちゃん告白作戦会議〜!」
「いぇー!」

さゆの言葉に、れいなが拍手で盛り上げる。

今度は本気でため息。
さっき、別に絵里は怒ってないよと伝えたから、余計調子に乗っちゃったみたい。

でも、2人して絵里んちに泊まるなんて、すごく久しぶりだし。……まぁいいか。
76 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:11
「とりあえず。がきさんからの告白はないとみて…」
「それ、れいなも思う!」
「やろ?ってことは、絵里から告白せなあかんってことになるよね」

うんうん、とれいなが身を乗り出す。
また2人だけで盛り上がられるのも、なんかむかつくので、絵里も会話に入ってみた。

「でも、絵里、ちょーへたれだよ?」

「わかっちょーから」
「わかっとーから」

「そんなハモんなくていいじゃん」

会話なんて入んなきゃ良かった。
絵里はがっくし、と肩を落とす。
77 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:12


会議開始から、1時間ちょっと。
それなのに、あーでもないこーでもないと会議はまだまだ続いていた。
メールで言っちゃう案、電話で言っちゃう案、どんどんアピールしまくって気が付けば付き合っちゃってました案……などなど。
はっきり言って、全部、微妙?

あまりにもまとまらない会議に、絵里はぶっちゃけ飽きてきたんだけど、さゆとれいなは、あくまでも真剣に絵里にできそうな告白方法を考えている。

「ねー、もういいじゃん。せっかくうちに来たんだしさ、他のことしよーよ」
「は?なんでなん。れいな達は、絵里に幸せになってもおーと思って一生懸命考えとるのにぃ」

「そーだよ!絶対、がきさんも絵里のこと好きやのにさ、もったいない、じゃん……」

「…さゆ?」
「ど、どうしたん?」
78 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:13
明らかに、語尾が小さくなっていくさゆに、絵里は、れいなと2人して慌てた。

「……別にさゆみはどうもしてないし」
「いや、どうかしとーし」
「うん。会議中断しよ。さゆ、ほんとどうしたの?」

身体をさゆのほうに向けてから、れいなと絵里でさゆを見つめる。
2対1で、勝てないと思ったのだろう。さゆは、すぐに観念した。

79 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:13


「ふぅん。好きな人に、告白するって宣言されてもーたんや」

さゆの話を聞き終えて、れいながぽつりと言うと、さゆは、黙って頷いた。

「告白ってことは、その人、誰か好きな人がおるんやね」
「うん。でも、それは前から知ってたんやけどね。告白するって言われると、なんかショックで…」

絵里は、真剣に話す2人を見ながら、心の中に、嬉しい気持ちがほんわりと浮かんでいるのを感じていた。

だって、さゆに好きな人ができたって。
小春ちゃんとの話を聞いてから、気になってたんだ。
誰?誰?って追求したい気持ちももちろんあるけど、そういう雰囲気ではなかったし、今はしようとは思わなかった。
80 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:13
「ねぇ、絵里。さゆみ、自分の好きな人が自分のことを好きって、奇跡みたいなことだと思うの」
「う、うん」
「だから、絵里には頑張ってもらいたい」
「さゆ……」

そっか。だから、さゆは、あんなに真剣に、告白する方法を考えてくれてたんだ。
そんな思いを知った絵里は、思いっきりさゆを抱きしめた。

「さゆぅー!大好き〜」
「えりー!」




「あのぉ、れいなもいるんですけど」




「「あ。」」
81 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:14


あの後は、「れいなだって絵里のこと思って必死に考えよったのにー!」と、いじけるれいなを、さゆと2人で慰めるのに大変だった。
でも、そうやって3人でバタバタやってるのが楽しくて、絵里は本当に本当に幸せだなぁと思った。
やっぱり同期っていいなぁ(一瞬、れいなの存在を本気で忘れちゃったけどね)。

明日、がきさんに会ったら、頑張ってアピールしてみよう。
今はもう寝息をたてている2人を見ていたら、そう思えた。
82 名前:ガールズトーク 投稿日:2009/06/14(日) 20:14

83 名前:こい 投稿日:2009/06/14(日) 20:17
予告どおり更新終了。
しばらく更新の方はお休みをいただきます。

>>68 名無飼育さん
小春ちゃんついに!と思わせときながら、次の更新までもうしばらくお待ちくださいw

>>69 名無飼育さん
ありがとうございます。
気長に待っていただければ幸いです。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 08:20
おつですー
6期いいっすね
85 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 21:43
更新お疲れさまです。
続きがかなーり気になりますが、待ってます。
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 22:37
ロッキーズ最高!!!!


いい子にして続きを待ってます。
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/18(木) 14:52
さゆにキュンキュン
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/12(日) 12:52
小春が大人だ。
89 名前:こい 投稿日:2009/07/20(月) 10:34
まだ忙しい日々が続いてますが、あまり時期をずらしたくないネタなので更新します。
6月後半か7月入ったばかりくらいの感じで読んで下さい。
90 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:35
急速に近づいた2人の関係。
道重さんに、好きな人がいると宣告したのは、正解だったみたい。

道重さんが小春のことを好きかどうかは、正直、微妙。期待をこめて半々ってところかな。
ほんとは、確実に好きだと言い切れるようになってから告白したいんだけど、そんなの待っていられない。

話すごとに、大好きが増えていって、小春も、もう限界だった。

道重さんを呼び出したのは、告白すると宣言してから、ちょうど一週間たった日だった。
撮影の合間。
そんなに長々と話すつもりはなかったので、告白するには十分な時間だった。

「小春ちゃん?」

不安げに、部屋に入ってきた道重さんを小春の正面の席に座らせる。
一度、大きく深呼吸をして、小春も席に座った。
91 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:35
「相談なんですけど」
「な…何?」

明らかに緊張しすぎな道重さんに、思わず笑みが零れた。
小春のこと、意識してくれてんだなぁ。

「あのー、もうすぐ誕生日ですよね。何か欲しいものあります?」
「……え?」

相談ってそんなこと?と、拍子抜けした表情の道重さんに、プレゼントですよぅ、ととぼけて言う。

「てか、小春ちゃんだって誕生日もうすぐやん」
「ふふ、そうですね」
「小春ちゃんは何かあるの?欲しいもの」
「ありますよー。道重さんプレゼントしてくれます?」
「もちろん!あ、モノによるけどね。あんまり高いのはダメだよ」

先輩風を吹かせたような口調で、車とか土地とか家とか…とぶっ飛んだことを言う。
面白いな、好きだな、って思いながら、でも、小春の心臓はバクバクと音をたてていた。
92 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:36

「で、何が欲しいの?誕生日」

にこにこと、小春を見つめる道重さんを、まっすぐに見つめ返す。

「道重さんです」

「へ?」
「小春、道重さんが欲しいです」
「……は?さゆみ?」
「はい。そうです」

余程びっくりしたのか、いわゆる開いた口が塞がらない状態な道重さん。

小春は、そんな道重さんを見つめながら、次は何て話そうかと必死に考えていた。
まとまらない言葉が、浮かんでは消えての繰り返し。
93 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:36

「えっと、…好きです。小春、道重さんのことが大好きです」
「……あの、…愛ちゃんじゃないの?」
「ふぇ?」

あまりにも真剣な顔して見当違いなことを言うもんだから、思わず間抜けな声が出てしまった。
愛ちゃん?って、高橋愛さん、だよね?

……あぁ。

「ち、違いますよ!!」

やっと道重さんの言葉の意味が分かって、小春は否定の言葉を急いだ。
そっか。道重さん、小春が高橋さんを好きだって勘違いしてたんだ。
だからこの前、小春が高橋さんと喋ってる時、ものすごいこっちを気にしてたんだ。
94 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:36

「小春が好きなのは道重さんです!」
「……ほんとう?」

間髪入れずに、力いっぱい首を縦に振る。
そしたら、道重さんはフワリと笑った。

あ、綺麗。

「……さゆみも、好きだよ」
「え…、ほ、ホントですか?」
「うん。ホント」

まじまじまじまじまじ!?
小春の目の前がキラキラ光り出す。
95 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:37

「やっ、たぁぁぁぁ!!!」
「ちょっとぉ、うるさいよ」

文句を言って耳を塞ぎながら、でも、嬉しそうに笑ってる道重さん。
どうしよう。ちょー可愛い!ちょー嬉しい!

「好きです!!」
「う、わかったから」
「いーじゃないですか!今まで、小春、ずーっと言えなかったんだから!」

真っ赤になって照れる道重さんに、好きを連呼する。
それでも、全然足りないくらいに、好き!

「ほ、ほら、小春ちゃん!そろそろ戻らなきゃ」
「え?あ、……はぁい。」

ちらりと時計を見たら、もうすぐ撮影の時間。
仕事に穴を空けるわけにはいかないので、小春は渋々返事をする。
しゅんと肩を落としてみせたら、恥ずかしそうに道重さんが手を差し出した。
ほら、行こう?って優しい声に、ぱっと笑顔になる。
96 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:37

「あ、そうだ。道重さん!」
「ん?」
「楽しみにしてますね。誕生日、プ・レ・ゼ・ン・ト♪」
「……ちょ、えぇぇ!?」

小春の言葉に、またしても、顔を真っ赤に染める。うひひ。可愛い。

あ、これ、冗談とかじゃないですから。
本当に楽しみにしてますからね、道重さん♪

97 名前:プレゼントのリクエスト 投稿日:2009/07/20(月) 10:38

98 名前:こい 投稿日:2009/07/20(月) 10:43
更新終了。
とりあえず、まだまだ寝れない日が続きそうですので、この回以降の更新は未定です。
時期がどんどんずれていきそうですねw

>>84 名無飼育さん
6期大好きですw

>>85 名無飼育さん
ありがとうございます。
しばらくお休みさせていただきますが、待っててくださると嬉しいです。

>>86 名無飼育さん
ロッキーズの関係性は見てて面白いですよね〜

>>87 名無飼育さん
わたしもキュンキュンさせられっぱなしですw

>>88 名無飼育さん
作者の中での小春のイメージは意外と大人なのですww
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/20(月) 14:49
策士な小春が可愛い。
純なお姉さんさゆも可愛い。
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/21(火) 17:25
更新お疲れ様です!
次回も待ってますー
101 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/08/27(木) 18:26
カップル成立ですねー
次はガキさんと亀ちゃんかな?
れいなはどうなんだろうと、六期会を見て思いました。
次回更新楽しみにお待ちしております。
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/07(月) 02:33
うおー!くっついてくれたー!!
カメには頑張ってほしいです!
103 名前:こい 投稿日:2009/11/04(水) 18:19
作者です。生存報告だけしておきます。
しかしながら、半分死んでる状態なので、もうしばらくお待ちください。すみません。
104 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/05(木) 05:02
ゆっくりお待ちしてます
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/22(火) 17:10
ゆっくりまってまーす
生存報告があるだけで幸せです
106 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:21

107 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:21
「うー…!がきさぁん」
「あー、はいはいはい」

今日のカメはすこぶる荒れていた。

その手の中にあるグラスは、私の隣の席に来た時から数えても、もう4杯目だ。
やって来る前からすでに軽く酔っ払った状態だったから、トータルだと、10杯近いお酒を飲んだことになる。

地方でのキャンペーン終わりの軽い打ち上げ。
元々、お酒をあまり飲まないはずのカメが、こんなになってるのは初めて見た。
108 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:22
そろそろ本気でヤバいなぁと思いながら、私はカメの頭を叩くように撫でる。

あーあ。なんでこんなことになっちゃったんだろう。

そんなことを考えて、ちらりと奥のテーブルを見る。
少し前まで、カメが座っていた席には、小春がいて、さゆみんと仲良く話していた。
カメが荒れてる原因は、これ。
2人は、つい最近付き合い始めたらしい。

さゆみんと小春がねぇ。

そういや、まだツアーやってるとき、小春、好きな人がいるって言ってたな。それ、さゆみんのことだったんだ。
そのとき、その場にさゆみんもいたことを思い出し、小春はほんと大胆だなと思った。
元来、大胆で自由なやつだけど、自分にできないことをやってのける小春は、ある意味すごいと思う。
109 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:22
そうやって小春を見てたら、いきなり隣から強い衝撃を受けた。
そして、それが、カメに殴られたためだと気づくまでそう時間はかからなかった。

「いったい!なんで殴るのー!」
「だってだってぇ」

酔っ払ってるせいか、カメの声が甘すぎて、怒る気が失せる。

「さゆもがきさんも小春ばっかりぃ」
「や、そんなことないから」

しまった。
これでは、さっきから、慰めてたことが台無しだ。
私は慌てて弁解の言葉を述べる。
110 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:23
カメが荒れてる理由。
それは、……小春にさゆみんを取られて、拗ねてるのだ。
だいぶ子どもっぽい理由だとは思うが、今まで、いつも2人でいたのだから仕方がないのかもしれない。

初め、ここにやって来た時には、2人が付き合いはじめたことがなんだか嬉しいって話を上機嫌にしていた。
しかし、空いたカメの席に、さゆみんが小春のことを呼んだあたりから、雲行きは怪しくなる。だんだん、小春にさゆを取られたって話になっていき……

「みんな、絵里よりも小春なんだぁぁ」

今に至る。
111 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:23
カメが飲んでいたグラスがちょうど空いたところで、私はストップをかけた。
明日は移動だけだからと、今まで容認していたマネージャーさんも、そろそろ止めようと思ったのだろう。
やれやれといった表情で私たちのところへやって来たのと、ほぼ同時だった。

「カメ、かなり酔っちゃってるんで、先に帰ってもいいですか?」
「うん。車の用意できてるから」

ありがとうございます、と一礼してカメを立ち上がらせる。
ぶーぶーと文句を言ったけど、そんなのお構いなし。
私は、一旦カメをマネージャーさんに預けてから、リーダーである愛ちゃんに、後は宜しく、と挨拶をしに行った。
112 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:24
いきなり、マネージャーさんに預けられたのが気にくわなかったのか、カメはむすっとした顔で私のことを睨む。

あー。さゆみんたちのところへは挨拶に行かない方がいいだろうな。
また拗ねちゃいそうだし。

「ごめん、カメ。行こうか」
「うん!」

急いでカメのもとに行くと、満面の笑みで抱きつかれて、心臓が軽く跳ねた。
113 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:24
自分たちに割り当てられたホテルの部屋についたとき、カメはすでに1人では歩けない状態になっていた。が、テンションだけは異常に高かった。

「ふへへー。がきさんは絵里なんだねぇ〜」
「へ!?うぇ、えぇ!?」
「んふー。照れんなってぇ」
「は!?照れてないし!」

酔っ払い相手にバカ正直に反応してしまう自分もどうかと思うが、カメもカメだ。
そんな緩んだ顔で、甘えられると、ほんっと心臓がどうにかなっちゃいそうだから!

「わっ」

カメの可愛さに気を取られた瞬間、なんとか支えていたバランスが崩れて、私たちはベッドに倒れ込んだ。危ない、と思う前にふにゃふにゃの笑顔が目の前にあって、やっぱり心臓はドキドキする。
114 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:24
「がきさぁん!だめじゃん。ちゃんと支えててよぅ!」
「う…、ごめん。……って、あんたがしっかり立たないのが悪ーい!」

どアップのカメに、もうドキドキが止まらなくて。私はごまかすように、そして逃げるように、1人ベッドから下りた。

「がきさん…?」

さっきまでの緩んだ表情とは一変、不安げな表情のカメが私を見上げた。だめだ。上目遣い、反則…。
ベッドに横たわるカメは、自然と私を見上げる形になっていて、立ち上がったことを少しだけ後悔する。

「ごめんね?怒ってる…?」
「や、いや、怒ってないよ!」

私は慌てて手と首を横に振った。

「…だって、急に絵里から離れた、じゃん」

泣きそうな、というか半分泣いてるカメは、小さな声で言う。聞き取れないくらいの、弱い声。
コロコロ変わるカメの表情に私は正直戸惑っている。
115 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:25
わ、どうしよう。カメが泣いちゃう。
どうしよう、どうしよう。どうしよう!

慌てた私はカメを座らせて自分もその横に腰を下ろした。

「怒ってないから」

ね?と瞳を見つめて真剣に伝える。
そしたらカメはこくりと頷いて、それから2回、丁寧にまばたきをした。
少し濡れた睫毛がぱた、ぱた、と動く。
116 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:26

「……もしかして、眠いの?」

私の問いに、声は出さずにこくりと頷くカメ。

だぁーー!もう、何なのこの酔っ払いは…!
さっきから私、1人でバカみたいじゃん。

はぁ、とため息をついたら、ほぼ同時に眠気がピークに達したのだろう。カメがもたれ掛かってきた。

もう1度、ため息。
いちいち真剣に相手してると疲れる。

それでも横目でカメを見ると、自分の頬が緩むのがわかって、なんか、ものっすごい悔しい気持ちになった。
117 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:26
「なんなの、あんたは」
「……」

「……起きなきゃ、ちゅーしちゃうぞ」
「……」

返事が返ってこないことを知りながら、ずるい私。
でもダメだ。もう知らない。

カメを好きな気持ちがどうしても抑えられなくて、私はカメにキスをした。
壊れないように、丁寧に、優しく。優しく。

「好きだよ」

唇から感じる2人の鼓動は、私の耳の奥に響いて、少しくすぐったかった。
118 名前:9.酔っぱらいとバカ正直 投稿日:2010/01/24(日) 16:26

119 名前:こい 投稿日:2010/01/24(日) 16:32
ほんっとうにお待たせいたしました!
もう時期ズレまくりですが、夏頃のお話です。小春ちゃんもまだいますよw

>>99  名無飼育さん
作者もこの二人ほんと好きですw

>>100  名無飼育さん
お待たせいたしました!

>>101  名無飼育さん
やっとですwほんとはもっともっとサクサク行く感じだったのにw
更新は遅いですが、話はサクサク行こうと思っています。

>>102  名無飼育さん
うちのかめちゃんはへたれなのでw

>>104  名無飼育さん
ありがとうございます!

>>105  名無飼育さん
更新いたしました。そう言っていただけると励みになります!
120 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/01/26(火) 10:14
お疲れ様です!
絵里が可愛いー!これからどうなるんだろ…
121 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:33

122 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:33
撮影の待ち時間。

今は、8期が撮影をしてて、残りのメンバーは楽屋で待機中。誰かの脈絡のない言葉に違う誰が応えたりと、なんとなーくな会話はつきないけど、各々、雑誌読んだり髪の毛いじったり。まぁ、何て言うか、

――暇だぁー。

さゆみはケータイをいじっていたけど、すぐに飽きてしまい、コトリと机の上に置いた。
ふと、目線をあげると、頬杖をついてぼーっとこっちを見つめてる小春ちゃんと目が合う。

「何?さゆみに見とれてた?」

愛しい恋人の視線に、若干照れる。若干ね。

「んー?みちしげさんっておいしそーだなと思って」
「……はぁ?何それー」
「白くてやわらかそうで」

何考えて人のこと見つめてんだ、こいつは。
さゆみが、むっと唇を尖らせた瞬間、背中の方で勢いよくドアが開いた。
123 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:34
「久住さぁん、次、撮影ですー」

みっつぃを先頭に、ジュンジュン、リンリンがわいわいと楽屋に戻ってきた。
はぁいと、返事をした小春ちゃんは、のんびり立ち上がって、みっつぃが開けたままにしている楽屋の出口に向かった。
さゆみの横を通り過ぎるとき、さりげなく「何か欲情しちゃいそうになります」と囁いて。

「はぁぁぁぁぁ!?」

さゆみのいきなりの大声に、なんだなんだと一斉にメンバーの視線が集まる。
当の小春ちゃんはというと、さっさとスタジオに行ってしまったようで、さゆみの叫び声は行き場をなくしてしまう。

「あ、いや、なんでもないでーす。あはは」

ばか、小春。
なんでさゆみが気まずい感じなんだよぉぉ!
124 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:34
次の日。

小春ちゃんとさゆみの誕生日が重なるこの時期は、差し入れにケーキがよく登場する。
2人の誕生日は、数日前に過ぎてしまったけど、まだまだ誕生日気分が味わえる上に、何度食べても美味しくて、さゆみにとっては嬉しいことづくしなのだ。
今日も差し入れにと楽屋に数種類のショートケーキが置いてあって、いつもと同じく、みんな大盛り上がり。
やっぱ女の子はケーキに目がないよね〜。どれにしようかと目を輝かせるみんなを見るのも大好きだったりして。

しばらく悩んだ後、さゆみも好きなケーキを1つ選んで、席に持っていく。少しして隣にやってきた絵里が、「何にしたの?」とお皿を覗いてきた。
125 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:35
「フルーツいっぱい載ってるやつ♪」
「あ、いーな、美味しそうじゃん!」
「やろー。絵里のも美味しそうやね。ちょっとちょーだい」
「いーよ」

結局、2人で2種類のケーキをつつきながら、ペちゃくちゃとお喋り。
最近は小春ちゃんといる時間が増えたから、絵里とくだらない話をするのも久しぶりな感じがして、全然会話は止まらない。

「あ、ねぇ、絵里ぃ、そういえばがきさんは?」

いつもなら、絵里の近くにはがきさんがいるのに。

「……え?知らなーい」
「知らなーいって。愛しのがきさんじゃーん。何、喧嘩ですか?」
「するわけないじゃん。…でも、なんか今日、変なんだよ、がきさん」
「ふぅん」
「ふぅんって興味なさそー」
「さゆみはケーキと小春ちゃんがいれば幸せだからね〜」
「うわ、厭味ぃ」
126 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:35
「ふふ、いただきぃ」

絵里の方のケーキを一口奪って、ジュンジュンリンリンと一緒にいる小春ちゃんの方に目を向けた。
あ、小春ちゃん苺のショートケーキにしたんだ。
さゆみも迷ったんだよな〜。

と、さゆみの視線に気づいた小春ちゃんがこっちを見て、ふわりと笑った。
そして、さゆみを見つめたまま、真っ白な生クリームをぱくりと口の中に入れた。
127 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:35
『みちしげさんっておいしそーだなと思って』
『白くてやわらかそうで』
『何か欲情しちゃいそうになります』


さゆみは一瞬にして小春ちゃんがショートケーキを食べる姿から目が離せなくなった。
なんか、なんか、ゾクゾクする。
小春ちゃんが変なこと言うせいだー。さゆみまで変になっちゃったじゃん!


「さゆー?どうかした?」

目の前で絵里の掌がひらひらとちらついて、ぱっと現実に戻る。

「どっ、どーもしてないっ」

わざとらしく小春ちゃんから目を逸らしたさゆみは、なんかもう恥ずかしすぎて、ケーキを一気食いするしかなかった。

「さゆ変ー」

きっと顔は真っ赤だったに違いない。
128 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:36

129 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:36
「なんですかー?こんなとこで」
「…って、なんで呼び出されたかわかってんでしょ?」
「えへへー」

ここは、楽屋とは別に割り当てられた衣装部屋。
といっても、今日着た衣装がずらっと並んでるだけで、当分、人が入ってくることはない。

「小春ちゃんさ、わざとこっち見ながら食べたでしょ」
「ばれました?」
「ばれるでしょ」
「興奮しました?」

「うん、めちゃくちゃ」

勝ち誇ったようにニヤニヤ笑う小春ちゃんに、あえて素直に答えてあげる。
そしたら、そんな返答、予想もしてなかったであろう小春ちゃんは、一気に耳まで真っ赤になった。
130 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:36
へへ。
あんまりお姉さんをからかっちゃいけないんだよ?

「なんでそんなことしたの?」
「う…、だって、道重さん、ずっと亀井さんと喋ってんですもん。…小春の、小春の道重さんなのにぃー!」

ちょー自分勝手な独占欲。
はっとするほど大人っぽい表情をするくせに、やっぱり子どもな小春ちゃんがとてつもなく愛しいと感じた。

「そりゃ絵里とだって話するよー。親友だもん。その度にヤキモチ妬かないでよね?」
「…ごめんなさい」

まだ真っ赤な顔でしゅん、とうなだれる小春ちゃん。
もぅ、可愛すぎだって。
131 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:37
ちゅ。

気づいたら、さゆみは、その幼い唇にキスをしていた。

「……絵里といても、誰といてもさ、さゆみは小春ちゃんのものだし」
「…はい。」

真っ赤になったまま、下を向いたままの小春ちゃん。
照れてんのかな。やっぱり、まだ子どもなんだな。

「――うー、だめだ小春、やられました。」
「え?…んっ…!」

今度は小春ちゃんからのキス。
自分から誘惑してきたくせに、少し震える唇での不器用なキスだった。


ちゅっちゅっと、狭い部屋に、響く音。
少し唇を開いたら、おずおずと舌が入ってきて。でも、ほんの数秒でさゆみの舌先を大胆に絡めとっていた。もう、唇も震えていない。

何なの、この子、どんどんキスが上手くなってんじゃん。
さすが、ミラクル。
足に力が入らないよぅ。
132 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:37
「どうしよう、道重さん、こは、我慢できないよ」

やっと唇が離れたかと思うと、目の前には切羽詰まった顔。
何気に、Tシャツの裾からやらしい手が侵入しちゃってるし!

「ちょ、やっ、…」
「みちしげさんっ」

拒もうとしているのに、身体が言うことをきかない。
小春ちゃんに触られると、どうしても、甘い声が出てしまう。

「あっ…まって、い、くらなんでもここはマズイよ」
「…むー!それぐらい小春だってわかってますよぉ〜!」

でも、どうしようもないじゃないですかぁ!とジタバタする小春ちゃんは、ほんとうに大人なんだか子どもなんだかわからない。
思わずくすっと笑ったら、なんですかぁ!と怒られた。
133 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:37
「ね、焦んなくていいよ」

さゆみはなんとか体勢を立て直して、小春ちゃんの唇に人差し指を当てる。

「え?でもでも…」
「今日さ、お母さんとお姉ちゃん、出かけるんだって」
「……」
「夜まで待てそ?」

答えが言葉にならないみたいで、ぶんぶんと縦に首を振るだけの小春ちゃん。
だからさ、可愛すぎるんだって。もぅ。さゆみより可愛いなんて、ほんと許せないから。

「誕生日プレゼント、まだあげてなかったもんね」

もう一度、さゆみからキス。ちゅっと軽いのをほっぺにね。

続きは、またあとで。
一番美味しいデザートは、最後にとっとくものでしょ?
134 名前:10.苺のショートケーキ 投稿日:2010/02/01(月) 21:37

135 名前:こい 投稿日:2010/02/01(月) 21:39
更新しました。今日は甘めでw

>>120 名無飼育さん
もうすぐガキカメ話も終盤です。どうなるんでしょうかw
136 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/01(月) 22:06
わーわーわー
ガキさんの行動が…!この2人どうなるんだろう

って書き込もうとしたら次の更新が!
ますます気になります
どっちの組もどうなるんだろう
137 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/04(木) 10:10
リo´ゥ`リ<道重さんあまーい♪

ごちそうさまでした。
138 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:41

139 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:41
例年のごとく暑い夏だった。

毎年恒例のHello!Projectのコンサート。このリハーサルが始まると、今年も夏が来たなぁと思う。
愛ちゃん、さゆ、れいなとのおじぎ舞台を挟んだせいか、がきさんとステージに立つのは、すごく久しぶりな感じがしてなんだか嬉しかった。
だから、ちょっとでも長く一緒にいたくて、絵里は暇さえあれば、がきさんの姿を探していた。

「あ、がきさ…」
「あいちゃーん!次のMCのときなんだけどさ」

「がき…」
「小春ー、立ち位置ちがうよ」

「が…」
「田中っち〜」

なのに、なのに、
なんか絵里、がきさんに避けられてる!?
140 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:42
すっと目の前を通りすぎていくがきさんを見つめて考える。ここ2、3日、がきさんの様子が変だ。
何度か声をかけようとチャレンジしているのだけど、ことごとく失敗。
もう、わざと避けてるとしか思えない!

「カーメー次、集合だよー?」
「あ、うん、がきさん。すぐいくー」

や、完全に避けられてるってわけじゃない…んだけど、なんか最近ほんと変なんだよ。よそよそしいっていうか何て言うか……。
向こうから声をかけてきてくれるときもあるし、全然普通に話とかもするんだけど、やっぱりどっか変。

絵里、なんかしちゃったのかな……。

集合場所に向かう足どりも、いつもの100倍重かった。
141 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:42
軽い打ち合わせを終えて、合同のリハーサルのため、広めのスタジオにハローのメンバーがぞろぞろと集まってきていた。
愛ちゃんとがきさんはいなかったけど、各グループのリーダーの姿も見えないから、多分まだ打ち合わせ中なんだろう。
リハが始まるまであと10分は掛かるかな。
きょろきょろと周りを見て、小さく息を吐いた。

こういうときの絵里の行動パターンは決まっている。もちろん、さゆに相談だ。

ちょっと来て!と半ば強引にさゆの手を引っ張って、広いリハーサルルームの端っこに2人で座る。
絵里がこうすると気づいていたのだろうか、さゆは全く抵抗することなく、疑問を口にすることもなく、絵里について来た。

「……あ。ねぇ、勝手に連れて来といてなんだけど、小春大丈夫だった?」

そういえば、前までと事情が違うことを忘れていた。
さゆは、絵里だけのさゆじゃなかったんだ。相談に乗ってもらうだけであの娘にヤキモチでも妬かれたら、たまったもんじゃないもんね。

「あー、大丈夫大丈夫」
142 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:43
ひらっと掌を出して、適当な様子でさゆが答える。全く気にしなくてよい、といった感じ。
絵里は小春が少しだけ不憫に思えて、ちらりと小春がいる方に目をやった。そしたら、絵里に気づいた小春は、いつものへらへらとした笑顔でこっちに手を振った。

「……?なんであんな余裕なの?」

手を振り返しながらさゆに問う。
小春の行動が予想外だったからだ。

「『道重さんは小春のもんですー!』とか無駄にキーキー言われんのかと思ったのに」
「さぁ?……さゆみは自分のものだって自信があんじゃない?」

そう言って、にやっと笑ったさゆは、いつもより大人びていて、鈍感な絵里でも2人に何かあったのだとわかった。
とりあえず、軽く肘鉄だけくらわせて、本題に入る。
143 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:43
「がきさんが変なの!」
「あー。昨日も言ってたね。何かあったの?」
「絵里がくっついていったら、なんか避けるんだよぉ〜」
「そんなん前からやん」
「ちがーうの!前のはさ、絵里がこう行ったら、『ふふふん、もーカメー甘えんなよ〜』みたいな感じで避けてたのに、今は絵里が行ったら、さらーって。さらーーってだよ!?」

ジェスチャー付きで力説したら、一呼吸おいてから、とりあえず落ち着こうと、肩に手を置かれた。
むぅ…。

「てか、やっぱどっちにしろ避けられてたんやね」
「だから、前のは避けるっていうかぁ」
「わかるよ、じゃれてる感じでしょ?…でも、そういや、ここんとこ絵里の近くにはあんまりいないよね」
「だよね?さゆも思うよね?絵里絶対なんかしたんだぁ…。うぅ〜」
「だから落ちつきなって、絵里ぃ」
144 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:43
いつ頃からなのか、原因は何だと思うのか。さゆに相談すると一つひとつ考えることを絞ってくれて、少しだけ、楽になる。
やっぱり、さゆはこういうとき頼りになる。

「あ、ねぇ。酔っぱらった日やない?」

ぱっと、さゆが言った言葉に、思い当たる節がありすぎて絵里は身を強張らせた。
酔っぱらった日。それは、ほんの数日前、地方でのイベントがあった日だ。

「あの日、絵里のこと連れて帰ったのがきさんだよね?絵里そーとー酔ってたし、なんか粗相したとか」
「否定できない…。あんま覚えてないけどグチグチ言いまくっちゃったし」
「ホテル帰ってからは?そこら中に吐きまくったとか」
「いや!それはない!…と思うけど」

何があったのかを思い出そうとすることで、ひどく曖昧な記憶しか残ってないことを実感する。
せめてもう少し記憶がしっかりしていれば、と今になって、飲み過ぎたことを後悔した。
145 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:44
「えーとね、とりあえず、がきさんがいなきゃ立てないくらいの状態だったんだよ。で、…待ってね?それからー……あ!」

搾り出すように頭をひねって、その日の映像がフラッシュバックのように蘇った。
絵里は思わず声をあげ、自分の両手でその口を塞いだ。

「……ベッドに2人して倒れた!」
「えぇ!?その後は!?」
「その後はぁ!」

「……絵里?」
「覚えてなぁぁぁい!!ぜんっぜん覚えてない!気づいたら朝だったよぉぉ」

マジだめだめだ、絵里。
さいてーだ。
がきさんに嫌われて当然だ。
考えれば考えるほど、悪い方に頭がいってしまって、じわっと涙が浮かぶ。心臓がにわかに暴れだして、息が苦しかった。

「ちょっと、そんな目に見えて凹まなくても……。覚えてなくてもさ、朝のがきさんはどうだったの?」
「あ、朝…?朝はがきさん普通だったと思うけど…。頭痛いって言ったら、お薬用意してくれたりとかしたし…。」
146 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:44
「じゃあ、きっと最悪の事態にはなってないよ」
「そうかなぁ…?」
「そうだよ!」
「そうなのかなぁ…」
「そうだって!たぶん、がきさんハロコンのリハ始まったばっかでいっぱいいっぱいになってるだけだよ。ね?」
「う、うん…」

さゆの言葉に、思わず頷いてしまう。
……そうだよね。
もし、酔った勢いで絵里が何かしてたとしたら、あんな普通に対応できないよね?

とりあえずは、少しだけほっとする。
避けられてると言っても、明らかに拒絶されてるわけではないし、確かにさゆの言う通り、リハにテンパってるだけなのかもしれない。
がきさんはサブリーダーで、人一倍責任感強くて、大人数のコンサートをまとめる立場の人間だもんね。
うん。大丈夫だよ。
自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
147 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:44

148 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:44
数日後。コンサートは、無事に本番を迎えることとなった。
短いリハの中でのうちらの集中力は、他のどんなアーティスト集団にも負けないんじゃないかと本気で思う。
スタンバイ位置について、チラリと隣に目をやると、胸に手を置いて浅い呼吸を繰り返すがきさんがいて、だらしなく口元が緩んだ。

「がきさーん、緊張してるぅ」
「そりゃ嫌でもするでしょ。初日だよー?やばーい」
「気楽に行きましょーよ、気楽にぃ」
「…ふは。やっぱ、かめといるとちょっとは落ち着くわ」
「へへー」

少し前までの絵里の考えは杞憂だったに違いない。
リハが進むにつれ、がきさんの接し方はどんどん普通になっていって、今ではほぼ元通りだ。
たまにじゃれあいすぎると、焦ってぎくしゃくしちゃうがきさんだっただけど、悔しいかなそれはずっと前からだし。

1曲目の衣装を直していると、バタバタとスタッフさんの動きが忙しくなった。
ビリビリとほっぺたがふるえるような感覚。

すぅ、はぁ。
深呼吸をして、マイクを握り直した。

さぁ。幕があがる。
149 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:45
一度幕が開けば、コンサートは、滞りなく進む。
何があっても、滞りなく。
笑顔で始まって、笑顔で終わらせるのが、私たちのプロとしての鉄則だ。

コンサートの後半、曲の間奏でがきさんと絡む場面があった。
アップテンポの曲で自然とテンションもあがる。
踊りながら、がきさんとアイコンタクトをとると、弾けるような笑顔で絵里を見てくれた。それを見たらめちゃくちゃ嬉しくなって、絵里はいつものノリで、がきさんに顔を近づけた。

「わっ」
「…え?」
150 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:45
それは明らかな拒否だった。
マイクを持っていない方の手で顔をガードをしたがきさんは、のけ反るようにして、絵里から離れていった。
おふざけで、嫌がるわけではなく、本気で逃げた。

笑顔の中に、ほんの一瞬だけ、真剣な表情を見つけて、ぎゅっと心臓を握り潰されたような感覚がした。
近かったせいで、肉声で聞こえたがきさんの戸惑いの声がひどく冷たく鼓膜に届いた気がする。

コンサート中、メンバー同士のスキンシップが過剰になるのはよくあることだ。
抱き合ったり、キスしたり。それって特別なことじゃなくて、コンサート中でのノリというかお約束というか。
それに、さっきのは、行き過ぎたスキンシップとは言い難いし。
151 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:46
ショックが強すぎて、その後のことはよく覚えていない。マネージャーさんに何も注意されなかったことから考えても、何千回も踊ったダンスに笑顔を貼付けて、上手く切り抜けられたのだろう。

気づいたら、絵里はシャワールームに立ちつくしたまま、呆然としていた。
なかなか素晴らしいプロ根性じゃんか。
口の端っこだけで笑ってみたけど、切ない気持ちになっただけだった。

だめだ。
もうだめだ。
絵里、絶対何かしちゃって、がきさんはそれをなかったことにしようとしてるんだ。

外界をシャットダウンするように、ざぁざぁと強めにシャワーを流した。そして、きつく瞼を閉じて、絵里は声を押し殺した。
152 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:46

153 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:46
ホテルについたのは、22時を過ぎた頃だった。生温い夜の空気が、今の絵里にはとても優しく感じた。

いつもなら、さゆの部屋に行って、がきさんも呼んで、わいわいお話でもすると
ころだけど、明日も早いからとさゆの誘いを断って、足早に自分の部屋へ入った。

あれから、がきさんの顔は一度だって見ていない。怖くて、見れない。

部屋に入るまでは、普段と変わらないように振る舞えたと思う。
でも、1人になった途端、電気をつけるのさえも億劫で、ふらふらと壁伝えに歩いて、そのままベッドに寝転んだ。

仰向けになって、真っ黒な天井を睨む。
泣いてしまわないように、じっと。
154 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:47
それから、がきさんのことを考えた。たくさんたくさん考えた。
ぐるぐるぐるぐる同じことばかり考えて、胸が苦しくなった。どうしようもなく、好きになっていたのだと、改めて思い知った。


「……あ」

がきさんのことを考えながら、浅い眠りを何度か繰り返して、ふわふわとした気分で朝を迎えた。ふと、窓の外に目をやると、東の空が明るくなっていた。
微かに蝉の鳴き声が聞こえる。……こっちが泣きそうだっての。

一晩中考えて考えて辿りついた結論。そんなの最初からわかっていたことだけれど、このままじゃ嫌だってことだ。

謝ろう。

そう思ったら、自然と足ががきさんの部屋へ向かっていた。
155 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:47
よろよろと部屋の前まで来てから、ふと冷静になって、ケータイを開いた。まだ5時台。いくらなんでも、こんな朝早く、迷惑だよね。

こつん、とドアに頭を預けて苦笑する。
絵里、焦りすぎ。

ふぅと息を吐いたら、部屋の中から、小さな物音が聞こえた。

「……かめ?」

突然のがきさんの声に、絵里は慌ててドアから離れた。
覗き窓から見たのだろう。やっぱりカメだ、という声が聞こえて、かちゃりとドアが開けられた。

「ど、どうしたのカメ!?とりあえず、中」

顔を見るなり、がきさんは慌てて絵里を部屋の中に入れた。
ベッドに座らされると、がきさんは洗面台に消えて、すぐに温かいタオルを持ってきてくれた。

「目、腫れちゃうとまずいから」

泣いたつもりはなかったけれど、ずっと堪えていたせいだろうか。かなり充血してしまっていたらしい。
156 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:47
「ありがと」
「いや、大丈夫だよ」

がきさんの言葉を最後に沈黙になる。
謝るタイミングを逃した絵里はタオルを目に当てて、心を落ち着かせた。
温かいタオルに、じわじわと心もほぐされる。がきさんの心が温かいからかな。

「……がきさん、ごめんね」
「え?」
「…ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい」
「え、え?カメ?」
「絵里、謝るからさ、前みたくしてよ」
「ちょ、カメ?なんでカメが謝るの?」

不思議そうながきさんの声に、ぱっとタオルから顔をあげたら、本当になんのことだかわからないといった表情をしていた。

「謝るの、アタシの方なんだけど」
「……え、なんで?」
「その、今日のライブで、避けちゃった、じゃん。カメのこと傷つけちゃったよね。……ごめんね?」
「でも!それは、絵里が原因だよね」
「え?う、まぁ。…いや、そうなんだけど、でもカメが謝る意味が…」
「えぇ?こないだのイベントの日でしょ?絵里が悪いんだよね?」
「イ、イベントの日だけどさ、カメは何も悪くないし」
「……えぇ?」
157 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:47
訳がわからなくなって、首を捻る。
なんか、食い違ってるよね?

少しの間、見つめ合った後、絵里が泣きそうな顔をしたら、がきさんは観念したように、ため息を吐いた。
そして、地方イベントの日に何があったかを細かく教えてくれた。
がきさんから、キスしたこととか、全部。
真っ赤になりながら、一部始終を話すがきさんは、すごくすごく可愛かった。
……絵里、もしかして、めちゃくちゃ勘違いしてた?

「だからさ、謝るのはアタシなんだよ。元はと言えばアタシが悪くて、それなのに、あのとき、避けちゃって…。後悔して、なかなか眠れなかったくらいだもん。……なんか、カメ見たら、照れ臭くて、後ろめたくてさ…本当ごめんね?」
「……それはさ、絵里のこと、好きってことでいいんだよね?」
「へっ!?え?あ…!」
「今更テンパってもしょーがないでしょ」

思わず、ニヤニヤしてしまう。悲しかったこととか、悩んだこととか、全部全部吹き飛んでしまって、今は嬉しい気持ちしか残っていなかった。
158 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:48
がきさんは、困ったような泣きそうな顔をして絵里を見ている。そんな顔しても、がきさんから言わないと、許さないんだからね。
じっくり見つめ合った後、がきさんは心を決めたのか、ゆっくりと瞳を閉じた。
すぅっという息を吸う音が耳に届く。

「……すき、だよ。」

消え入りそうな声。
それでも、痛いくらいに気持ちがこもっていて、絵里には十分すぎるくらいだった。

「絵里も。がきさんのことが好き。」

伝えたくて、でも、伝えられなかった言葉を伝えた。
そしたら、すごくすごく嬉しそうな愛しい人の笑顔が目の前にあった。

「大好き!」

堪らなくなって、絵里はがきさんを力いっぱい抱きしめた。
159 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:48
時刻は6時を回ったところ。2人共寝不足だったけど、今から寝ても逆に眠くなるだけだからと、がきさんの部屋でゆっくりと過ごすことにした。

「でもさ、あんなに避けなくてもいーじゃん。」

絵里がそう言ったら、がきさんは腕で顔を隠して、耳まで真っ赤になった。

「ん?」
「…キス、したくなるんだよ。カメの顔が近くにあると」

らしくない言葉に、ドキンと心臓が鳴った。
もう、口元が緩んでしまって仕方がない。俯いてしまったがきさんには見えないから、ま、いっか。
がきさん、ちょー可愛い。
そんな照れたら、いじめたくなっちゃうよ?

「絵里、がきさんに嫌われたと思ってマジで一晩中悩んだんだよ?めちゃくちゃショックだったし」
「うぅ、ほんっとごめん!!」

手を合わせて謝るがきさんの両肩を優しく掴む。
そしたら、驚いた様子で顔を上げた。
160 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:48
「絵里からもチューしていい?」

潤んだ瞳に、胸が締め付けられる。

「絵里、覚えてないもん。がきさんだけずるい」

ゆっくりと近づいて、そして、そのままキスをした。
柔らかい唇。
絵里ね、ずっと、こうしたかったんだ。

「……っ」
「え、どした?ヤだった?」

唇を離すと、途端に黙り込んでしまったがきさん。
不安になって聞いてみると、ぶんぶんと首を横に振った。

「…カメからされるキスが、こんなに気持ちいいとは思わなかった」

やっぱ、がきさんずるいよ。
絶対、今、絵里の方が赤くなってる。

「いつもカメが寝てる間だったからさ」
「は?いつもって?」
「あ、や…ちが!…1回目は未遂だから!ほんとにしたのは、こないだだけだし!」
161 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:49
「ふぅん。人の寝込み襲ってねぇ」
「ひ、人聞き悪いな」
「ほんとのことでしょー?」
「う、言い返せない」

がきさんって何気にやらしーんだね。
真面目な顔して、絵里が寝てる間に色々やってたんだ。

「絵里は我慢してたのに、がきさんばっか好き勝手して」
「ご、ごめん」
「……ね。絵里ももう我慢しなくていいよね?まだ集合までは全然時間あるし」

そろそろと近づくと、がきさんはベッドの上で後ずさり。
逃げ場のないとこに逃げても、捕まるだけだよ?

「ちょ、待っ…」

ちょうど枕の上までがきさんが下がったところで、肩を軽く押した。
ばふんと音を立てて、倒れたがきさんは、真っ赤になって、前髪を直す。
今、気にするのそこ?
何となくがきさんらしくて、笑いが込み上げてきたけど、なんとか押し殺して、首筋に顔を埋めた。
かぷりと噛み付いて、舌で柔らかい皮膚を刺激する。
甘い香り。がきさんのにおい。
そしたら、がきさんの身体がびくんと一つ波打った。

「…くぅ…はっ」
「がきさんも我慢しないでよ」
162 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:49
初めての感覚に戸惑っているのだろう。絵里の肩を押し返そうとするけど、全然、力が入っていない。

「…ん…」
「声、聞きたい」

左手で自分の身体を支えて、右手は、がきさんのTシャツの中に滑り込ませた。
細いお腹を撫で上げて、可愛い膨らみを見つける。
ゆるゆると触ると、その度にがきさんは小さく震えた。
掌から伝わる速い鼓動が、嬉しかった。

「カメっ…やだ、はずかしぃ…よ」

あらら。完全に硬くなっちゃってる。
首筋に埋めていた顔を上げると、がきさんは全身が強張ってしまっていて、とても続きができる様子ではなかった。

「ごめん、がきさん。調子乗りすぎた」

絵里はそう言って、ぎゅっと瞑ったままのまぶたに唇を落とした。
胸に当てている右手も、ゆっくりと引き抜く。

「……ばか、カメ」

上気した顔で睨まれても怖くないけどね。
163 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:49
「怖がらせたいわけじゃないから」
「当たり前だよ。…でも、ありがと」
「こーみえても、女の子の気持ちわかるから」
「それこそ当たり前でしょーが」

ふふっとがきさんが笑う。
良かった。
がきさんには笑ってて欲しいもんね。

「まだまだ、たーっぷり時間はあるし、ゆっくりいきましょ」

だから、今日はこれだけね。
ちゅっと唇にもう一度キスをして、優しく抱きとめる。

「がきさん、大好きだよ」
164 名前:11.不器用な君 投稿日:2010/02/11(木) 16:49

165 名前:こい 投稿日:2010/02/11(木) 16:54
更新しました。
季節はまだ夏です。そして、次は一気にリアルタイムに飛ぶ予定です。
てか、次で終わらせる予定なんですがね。
4人で回していく感じにしたんで、どうやって終わらせれば良いのかわからなくなっちゃって試行錯誤中です。
誰が悪いって自分ですよね(ノ∀`)アチャー

もう少し、お付き合いいただけると嬉しいです。

>>136  名無飼育さん
こんな結果になりましたw

>>137  名無飼育さん
いえいえ、お粗末さまでした。
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/12(金) 21:46
更新お疲れさまです。

ぬあー!絵里ー!良かったねー

次が最終回なんですかね?頑張ってください。

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