豆柴と飼い猫と、きっと青空。
- 1 名前:太 投稿日:2009/05/16(土) 18:11
-
久しぶりにこっちの世界へ舞い戻ってきたので、
ちまちま短編を書いていきたいと思います。
CPは基本いしごま。よろしくおねがいします。
- 2 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:13
-
アルコールの匂いと、幼い寝顔。
イコールで結ぶのは難しいそれらを、今日も彼女は持ってやってくる。
未だにその理由を問い質すことができない、私の元へ。
- 3 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:14
-
□■□
インターフォンの拍子抜けするほど明るい音が、室内に響いた。
レトルトのカレーで夕飯を済ませて、お風呂に入り、
仕事で疲れた身体をピンクのソファに沈めながらテレビを眺めていた私は、
テレビの真上の壁に掛かる時計へ視線を投げる。
実家から持ってきたシンプルなアナログ時計の針は、てっぺんをとおに通り越していた。
むむっと眉根を寄せる。
一般常識を少しでも持っている人が尋ねてくるような時間じゃない。
もちろん誰かと会う約束もしていないし、こんな時間に連絡も無しに訪ねてくるような友人に、
心当たりは無かった。
それでは、勧誘かただの悪戯か。
だけれど、勧誘にしてはおかしな時間だ。
だって、こんな夜中に訪ねたって迎え入れてくれる所なんてないだろうに。
- 4 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:15
-
(じゃあ、いたずら?)
それなら、放っておけばいい。
このマンションは一通りの警備システムは整えられていて、
部外者は一階のホールから入れないようになっているのだから。
そう結論づけて、ふっと肩の力を抜いた、その時。
またもや馬鹿明るいインターフォンの音が室内に響いた。今度は立て続けに3度。
私は緩めた眉根をさっきよりもきつく寄せて、小さく溜め息を吐く。
せっかくのお風呂上りの一時が台無しだ。テンションが急降下だ。真っ逆さまだ。まったくもう。
だけど、そんな事お構い無しに、インターフォンは何度も何度も来訪者を告げる。
仕事の疲労とお風呂上りの時間を邪魔された事に苛立ちながら、
インターフォンをオフにするべく、私はもそもそと立ち上がった。
- 5 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:16
-
リビングのドアの横に設置してある、インターフォンの受信機。
掌に収まるくらいのサイズのそれは、防犯の為だからとか何とか、通話機能と共に、
ホールの来訪者を映し出すディスプレイもついている
ここへ引っ越す時にお世話になった不動産屋さんは、若い女性も安心して暮らせますよ、
と、にこやかに言っていた。
けれど、そもそも私は、自分で言うのもあれだが、訪ねてくる友人が極端に少ないし、
勧誘が来る時間帯に家にいないものだから、カメラの機能を活用することは稀で。
今もカメラをオフにしていたのだけれど、あまりにも腹立たしかったから(だって、
大事なお風呂上りの時間を邪魔されたんだもの!)不審人物の顔を見てやろうと、
カメラ機能をオンにして ―――。
ディスプレイいっぱいに広がる姿に、私は息を呑む。
- 6 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:17
-
栗色の髪の毛に、小さな輪郭。通った鼻筋。
その上に乗っかるサングラスで目元は見えないけれど、
それは、後藤真希、その人に違いなくて。
そこにきて私は、こんな夜中に訪ねてくる心当たりの一つをすっかり失念していた事に気が付いた。
本当にすっかり、すっかり、忘れていた。
ホールのカメラに近づきすぎて、超どアップに映しだされるごっちんの顔を数秒見つめ、
二度目の溜め息を吐きながら、私は、ゆっくりとインターフォンの通話ボタンを押す。
「……ごっちん?」
小さくインターフォンに向かって問いかけると、画面越しの彼女の頭がゆるりと動いて、
形の良い口元がだらしなく綻んだ。
『りーかちゃんっ』
場違いに明るい声がインターフォンから流れ出る。
同時に、画面の中の彼女の頭がゆらりゆらりと揺れるのを見とめて、
忘れていた“心当たり”が間違いではない事を確信。
- 7 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:17
-
私は、この後起こるであろう事を想像して、本日3度目の溜め息を吐いた。
「どうしたの?こんな時間に」
『いーれてー』
「入れてじゃなくて、ね、あの、」
『はーやーく、はーやくー』
「……」
全く繋がらない会話に、すばやく通話機能をオフにして、私は歩き出す。
ホールで締まらない顔でゆらりゆらりと揺れいる彼女を迎えに行くために。
――― これだから、酔っ払いの相手は嫌なのだ。
- 8 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:17
-
***
「ぬぁーっ、相変わらずピンクですなぁー」
「ちょ、ちょっと、ごっちん、靴は脱いで、靴は!」
ホールで座り込んでいたごっちんは、アルコールと煙草の香りをその身に纏っていて、
私を見つけると上機嫌にふにゃりと笑った。
そこから千鳥足の彼女を何とか支えて、エレベーターに乗り、自室まで歩き、
彼女の靴を脱がせて、リビングのソファまでやっとの思いで連れて来た。
当の本人は、私のお気に入りのソファに寝転がって(家主に断りも無く、だ)
ぴんくだー、だの、きっついー、だの、ふにゃふにゃと喋ってる。
こっちは千鳥足の酔っ払いを必死の思いで支えて、息も絶え絶えだというのに。もう。
「もう、……また飲んできたの?」
私の問いかけに、寝転がるごっちんは、ふにゃふにゃと言葉になりきらない声を発すだけ。
私は、本日4度目の溜め息を吐く。
- 9 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:18
-
彼女がこんな状態でうちへ来るようになったのは、2ヶ月ほど前からだ。
その時も彼女は、今日のように足元も覚束ないぐらいにぐでんぐでんに酔っていた。
インターフォンに映ったごっちんに驚いて、玄関ホールまで迎えに行ったその時の、
にへらと締まりのない彼女の笑顔を私は多分一生忘れないと思う。
翌日、酔いが醒めたごっちんを問い質すと、返ってきたのは、
「だって梨華ちゃんち、近かったんだもん」と、あっけらかんとした答え。
詳しく聞けば、どうやら初めて泥酔してうちへ来た数日前に、
うちの近くの歓楽街でごっちんと出くわした事が原因らしかった。
その歓楽街で、彼女は数人の男女と連れ立って歩いていた。
そこへ偶然通りかかった私は、久しぶりに会うごっちんと軽く言葉を交わして、
「梨華ちゃんも遊んでるの?」という彼女の疑問に、家が近いのだと、何の気も無しに場所を教えた。
- 10 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:19
-
今思えば、その数人の男女はごっちんのスタッフさんだったんだ。
酔いの醒めたごっちんによれば、その歓楽街にはごっちん達がよく打ち上げに使うお店あって、
酔ったごっちんは、酔っ払い特有のよく分からない思考回路を持ってして、
うちへやって来たのだった。
ピンクのソファに沈むごっちんの頬はソファに負けないくらいピンク色で。
置いてあったクッションに気持ち良さそうに顔を埋めている。
……あれ、絶対、クッションにファンデついてる。そう思うけれど、
何故だか注意する気が起きなくて、代わりにソファの傍らにしゃがんで、
彼女の顔に乗せられたままのサングラスをとってあげた。
その動作がくすぐったかったのか、ごっちんは、くふふ、と小さい子供のように笑う。
- 11 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:20
-
――― あの時。
あの歓楽街でごっちんと偶然出会った時、どうして私は彼女に自宅の場所を教えたのだろう。
適当に濁してしまう事だってできたはずなのに。
声をかけてきた時のごっちんの顔があまりにも嬉しそうだったから?
久しぶりに会えた事に舞い上がっていたから?
彼女のよく遊ぶ場所を知った優越感から?
それは嘘じゃないけれど、同時に、全て本当ではない気がした。
楽しそうに、くふくふ、笑むごっちん。
栗色の柔らかそうな髪に指を差し入れて、するりと梳いた。
見た目以上にそれが柔らかだと知ったのは、彼女がここへやって来るようになってからだ。
ごっちんは、私がそうしたらいつもするように「りかちゃん」と呟いて、目を細めた。
その表情はアルコールの力もあるだろうけれど、出会った頃と変わらずにあどけない。
私と彼女の距離は、こんなにも遠くなってしまったのに。
私は、繋がりが欲しかったのかもしれない。
そう気付いたのは、最近のことだ。
- 12 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:22
-
元々、私とごっちんはそれほど親しかったわけじゃない。
かと言って険悪だったわけでもなく、会えば話もしたし、誘われれば一緒にご飯にだって行った。
ただ、互いの連絡先は知らなかった。
知っていた時期もあったけれど、仕事の関係で疎遠になってしまって、
けれど、わざわざそれを教える必要性もそれほど感じてはいなかった。
だって、同じ事務所に所属していた私達は連絡先を知らなくても年に数回は確実に会えたから。
けれど、それも今では、彼女の移籍で“確実”ではなくなってしまった。
無理やりにでも連絡を取る方法はあったけれど、私はそれをしなかった。
そうする程、私は、彼女と近しい人間ではなかったからだ。
だから、かもしれない。
だから、あの時、偶然出会った時、自宅の場所を教えたんだ。
ごっちんとの繋がりが欲しかったから。
- 13 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:22
-
彼女の髪を梳く。
何度も何度も。子猫の毛並みを揃えてやるように、優しく。
ごっちんは、ふにゃふにゃと、やっぱり言葉になりきらない声を出して、口元を綻ばせた。
その顔を見て、身体を駆け巡る何かを、私は気づかないふりをする。
初めてごっちんが来てから2ヶ月、彼女は度々うちを訪れた。
決まって泥酔状態で、決まってこのソファに「ピンクい!」と文句を言いながら寝転がって。
そして ―――。
ぶーん、と何処からともなく虫の羽音のような振動が聞えてきた。
私は、迷うことなくその発信源へ視線を送る。
ごっちんのバッグから顔を覗かせるケータイがぶるぶると震えていた。
――― そして、決まって、彼女がここへ来るとこうしてケータイが鳴る。
ちらりと見えるサブディスプレイには、明らかに男の人の名前がぴかぴか点滅してた。
ごっちんの髪を梳く手を止めずに、ぼんやりとそれを眺める。
スタッフさんか、友達か、それとも、もっと別の。
- 14 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:23
-
「ごっちん、ケータイ鳴ってるよ」
私の声に、うう、と唸ったごっちんは、手探りでケータイを掴むと、
表示された名前を一瞥して、ぽい、とケータイを投げ出した。
バッグへ逆戻りしたケータイは、諦めずにぶるぶる震えてる。
「……出なくていいの?」
「いい」
今度は、ちゃんと意味の取れる言葉が返ってきた。
ごっちんがクッションに頬を擦り付けるのを横目に、放り出された哀れなケータイを眺める。
主人に出てもらえるように健気にアピールを続ける憐れなその姿に、私は小さく彼女に進言した。
「まだ鳴ってるよ?」
「いいの」
けれど、それも空しく、ケータイから全ての興味を無くしたとばかりに、
ごっちんはゆったりと目を閉じてしまう。
これも毎度の問答だった。
ケータイが鳴って、ごっちんが確認して、放り出す。
彼女は、ここで、一度だってケータイに出たことがない。
- 15 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:24
-
眠いからだろうか。面倒くさいからだろうか。それとも、相手に問題があるのだろうか。
想像はいくつもできる。
けれど。
“どうして、出ないの?”
その一言が、私は、未だに、言うことができない。
アルコールの匂いと煙草の匂い。ごっちんから漂うそれら。
どちらも苦手なのに、私は、ゆっくり髪を梳く手を止めない。
それは多分、柔らかなこの髪の感触が気に入っているから。
ごっちんの、栗色のそれを。そして多分、その、持ち主も
あどけない表情のまま彼女が身じろぐ。
気持ち良さそうに喉を鳴らした。
どうして、ケータイにでないの。
どうして、酔う度にうちへ来るの。
どうして、私、なの。
- 16 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:24
-
“どうして”が心の中で渦を巻いて押し寄せる。
酔っ払いの行動だと一蹴するのは簡単だった。
けれど、私は、未だに聞くことができない。
――― どうして、私は、聞けないの?
「梨華ちゃん……」
ぽろりと彼女の口から零れた自分の名前に、競り上がってくる感情。
そこから私は静に目を逸らす。
答えなんて、とっくに知っているくせに。
響くのは、彼女の健気なケータイの音だけだった。
おわり
- 17 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:24
-
>>>揺らぐ足元
- 18 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:25
-
暗い。そして、こうきゅうまんしょんの警備システムとか、
私にはさっぱりすぎます。だって貧乏だから。
身動きが取れなくなっている石川さん。多分、後藤さんも。
- 19 名前:揺らぐ足元 投稿日:2009/05/16(土) 18:25
- 流します。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/16(土) 20:56
- わー!
お帰りなさい!
「今」の二人が読めるなんて幸せすぎます。
- 21 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/05/17(日) 09:56
- 太さんキタ-------!
今じゃ希少価値のあるいしごまをありがとうございます!w
今後の更新も楽しみにしてます><
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/17(日) 18:25
- もうお目にかかれないかと思ってました
嬉しいです!!!!
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/18(月) 20:16
- まさか太さんのいしごまがまた読めるとは思いませんでした
期待しています!
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/18(月) 23:07
- 待ってました!
更新楽しみにしています!!
- 25 名前:太 投稿日:2009/05/23(土) 18:40
-
上のやつと繋がりあり。
後藤視点。
- 26 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:40
-
揺れる揺れる、このあしもと。
すべてがぐるぐるでふわふわな世界の中の重い瞼の裏、
この気持ちも、きっとそんな世界だけのモノならよかったのに。
- 27 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:40
-
□■□
再会は偶然だった。
スタッフさんたちとの打ち上げで、いつものお店へ行く途中に、ちらりと視界を掠めた横顔。
それがすごく懐かしい顔だったものだから、気が付いたら声をかけていた。
振り返った驚き顔は、出会った頃とは比べ物にならないくらい綺麗なお姉さんのそれで。
私から声をかけたっていうのに、うむ、と口ごもってしまった。
高々、数ヶ月ぶりの再会だ。こんな風に口篭る理由なんて無いはずなのに。
繁華街のきらきらしたネオンが、梨華ちゃんの驚きから嬉しそうなそれへ表情が変化していく様を、ゆるりと包み込む。
二の句が告げないでいる私の元へ、梨華ちゃんは小走りで近づいて来た。
「ごっちん」
近くで見たきらきらの彼女の顔も、その呼び名も、
それを紡ぐ年齢にそぐわない高い声も、全部が懐かしかった。
ああ、そうか、と、胸の中で小さく頷く。
だから口篭ってしまったんだ。懐かしすぎたんだ。私は一人勝手に結論づけた。
- 28 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:40
-
へらり、と対外用の笑顔で小さく挨拶すると、
梨華ちゃんは元々高い声を更に弾ませて返してくれた。
それから交わした少しの会話の中から、彼女の近況と、
彼女がこの繁華街のごく近くに住んでいることを知った。
会話の最中、始終笑顔だった梨華ちゃんも、時々子供みたいに舌足らずになる声も、
スタッフさんを待たせてたから、早々に会話を切り上げた時に覗いた、
少しだけ物足りなそうな彼女の表情も今でもよく覚えてる。
弾む声も、嬉しそうな笑顔も、それが彼女からの自分への好意だと気付いてたから、
単純に、本当に単純に嬉しかった。
うん。だからだ。
だから、私は、頭にアルコールがぐるぐると駆け巡っている状態で、
梨華ちゃんの家のインターフォンを押してしまうのだ。
――― ただ、単純に、嬉しかったから。
私は、やっぱり一人勝手に結論付ける。
- 29 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:41
-
***
ピンクのソファに寝転がると、頭の中で脳みそがぐるりと一回転したような感覚がした。
でも、それは決して気持ち悪いものじゃなくて、むしろアルコールが体中を揺らしているようで気持ち良かった。
瞬きをすると瞼の裏側がすごく熱くて、ああ私酔ってるなぁ、って他人ごとみたいに思う。
それが何故だかおかしくて堪らなくて声を押し殺して笑ったら、
ここまで私を運んでくれた梨華ちゃんが呆れたように眉尻を下げた。
それは見慣れた彼女の表情だ。懐かしい。
でも、覚えているそれよりも、少しだけ大人っぽい。てか、色っぽい。
出会った時から妙に色っぽい表情の子ではあったけどさ。
(いつの間にそんな艶やかな表情をするようになったの?)
手元にあった、ピンクのクッションを引き寄せて、ぐりぐり顔を押し付ける。
クッションと頬が擦れる感触が気持ち良かった。
その事にまたおかしくなって、くふくふ笑って梨華ちゃんを見たら、
いつの間にかソファの傍らに座り込んでいる彼女を発見して、
予想外に近い距離に一瞬胸の奥がざわついた。
- 30 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:41
-
アルコールでぼやけた視界のせいで、梨華ちゃんの顔がゆらゆら揺れる。
相変わらずの八の字眉毛。その下の、テレビで見るよりも柔らかな瞳もゆらゆらしていた。
それは私のアルコールのためなのか、それとも違う理由なのか分からなかったけど、
私は、そのゆらゆらの瞳が自分を捉えていることが嬉しくてしかたがなかった。
「ごっちん」
彼女の高い声が耳を撫でる。あまりにも心地良かったから、ゆっくりと目を閉じた。
そうしてから、ああ、そういえばそれは私の名前だ、と数秒遅れて思って、
同時に、酔ってるなぁ、なんて改めて自覚。
閉じた瞼を再び持ち上げ、ぼんやりと梨華ちゃんへ視線を投げた。
彼女の口がまた少し動いたけれど、声がよく聞き取れない。
代わりに、彼女の薄い唇に視線がいく。赤く濡れたそれが、ゆっくり動くのを見つめる。
綺麗な形をしている梨華ちゃんの唇は、きっと触ったら柔らかい。
柔らかくて、暖かい。そして、きっと、おいしいに違いない。
- 31 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:42
-
触ってもいいかな。
触ったら梨華ちゃんは怒るだろうか。それとも驚くだろうか。
それとも。それとも ―――。
じっと見つめる。
ゆるゆる揺れる視界の中で、赤い唇だけがやけにはっきりと見えた。
おいしそうなそれ。ねえ、触らせて。優しく撫でるから。そして、その吐息を奪わせて。
一度瞬きをして、熱い瞼をゆっくり押し上げたその後。
私は、それと同じくらいゆっくりと、彼女へ手を伸ばす。
こんなにもゆっくりと手を動かしているのに、彼女は最初のその位置から動かなかった。
避ける事も、逃げる事も、やめてと抗議する事もきたはずなのに。
彼女の赤いそれへ、人差し指から順に置いていく。
予想以上の柔らかさと温かさに、私は、うっとりと目を閉じた。
おわり
- 32 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:42
-
自分では気付かない所で、ものすごく石川さんが気になっている後藤さん。
前の更新の時に書き忘れていたのですが、
このスレでの話と過去スレでの話には繋がりはありません。
なので、ここでの二人は付き合っているわけでもなければ、友達なのかも微妙な感じです。
(でも、突発的にいちゃってるのも書くかもしれませんがw)
妄想の赴くままに書いていきたいと思います。よろしくお願いします。
- 33 名前:脳内アルコール 投稿日:2009/05/23(土) 18:43
-
>>>脳内アルコール
忘れてた…。
- 34 名前:太 投稿日:2009/05/23(土) 18:43
-
>>20
戻りました。レスどうもです。
やっと後藤さんの動向がつかめるようになってきたので頑張りたいです。
>>21
色んな意味で希少価値がありますよねwでもやはり自分は、
この二人が好きなんだなぁと最近になってひしひし感じます。
レスありがとうございました。
>>22
ありがとうございます。
覚えてくださってる人がいらっしゃるという事がすごくすごく嬉しいです。
>>23
ありがとうございます。
期待に応えられるように頑張ります!
>>24
ありがとう!頑張ります!
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/24(日) 14:21
- 太さんのいしごまがまた読めるなんて本当に本当に嬉しいです。
相変わらず雰囲気のある作品にやっぱ好きだなぁと改めて思いました。
- 36 名前:太 投稿日:2009/05/31(日) 11:42
-
後藤視点。
後藤さんが割りと最低。
- 37 名前:最低な友達 投稿日:2009/05/31(日) 11:43
-
ベッドに背中を預けて、ふあ、と欠伸を一つかみ殺す。
キャミしか着てない肩はちょっとだけ肌寒いけれど、上着を着る気にはならない。だってめんどくさい。
これまたパンツしかはかずに投げ出していた足を引き寄せてあぐらをかく。
床のひやりとした感触が肌に直接伝わってきた。
また一つ欠伸をかみ殺して、ぐにゃりと頭をベッドへ折り曲げたら、視界に入るピンクのシーツ。
それから、何も纏わない綺麗な(ちょっと黒い)身体を惜しげもなく晒す、梨華ちゃん。
彼女は両手で顔を覆ってた。
私はしばらくそれを眺めて、ふわ、と欠伸を一つ。
「……信じられない」
ベッドの上に蹲る梨華ちゃんがぼそりと言った。
“それ”が終わってから彼女は同じ言葉しか発しない。
『信じられない』、『どうして』、『なんで』。それから、また、『信じられない』。
私はそれらを聞き流してた。
多分、彼女は答えが欲しいんじゃないだろうなぁ、って思ったし、何より、めんどくさかったから。
だから、今度の“信じられない”も同じようにする。
- 38 名前:最低な友達 投稿日:2009/05/31(日) 11:45
-
唐突に喉の渇きを感じた。
そういば、ここに来てから何にも飲んでないや。
梨華ちゃんの部屋ってミネラルウォーターあったっけ。
視線をキッチンの方へ移して。
「ちょっと!聞いてるの!?」
ぼんやり水の事なんて考えてたら、いきなりの大声に驚いて、びく、と身体が跳ねた。
聞いてるの?と彼女が問いかける相手は私しかいない。
だって、この部屋には私と梨華ちゃんしかいないから。
恐る恐る視線をベッドの先へ戻すと、予想通り梨華ちゃんとばっちり合う視線。
非難する様な色を乗せた視線を全身に浴びながら、私は片方の眉を、ちょい、と上げた。
「あー、聞いてるよ」
力んだ梨華ちゃんの声とは正反対に気の抜けた声が出てしまって、ちょっと慌てる。
まずい。今のは完全空気読めてない。めんどくさいと感じたそのまま声になってしまった。
その気持ちは間違ってないけど、この状況で出していい声音ではない。
その証拠に、梨華ちゃんの視線が更にきつくなる。
- 39 名前:最低な友達 投稿日:2009/05/31(日) 11:46
-
「なんでよ……。なんでこんな事になったのよっ!」
ふるふる震える高い声。ほら、そんなに力むから目もうるうるしてきてるじゃん。
なんだかちょっとその目を見ていられなくなって、私は視線をゆっくりと下げる。
何も纏わない身体のラインを視線でなぞりながら、彼女の言葉を考えた。
なんで。なんでだろうなぁ。
なんていうのか、流れっていうか。勢いっていうか。
いつものように酔っ払って梨華ちゃんちに来て、ピンクのソファに寝転がって、
介抱してくれる梨華ちゃんを揺れる視界で見てた。
いつもの光景だった。だったんだけど。
私へ伸びる腕の先の肩のラインがすごく綺麗で色っぽかったから。
前髪をピンで簡単に留めて、そこから覗くいつもは見えない額が可愛かったから。
すっぴんで無防備な姿が、なんだかすごく抱き締めたくなったから。
柔らかそうな唇の味が知りたくなったから。
「なんでだろ」
呟きながら、視線を唇へ移す。
そこは声と同じように小さく震えてた。
- 40 名前:最低な友達 投稿日:2009/05/31(日) 11:47
-
数時間前に初めて触れたそこは、予想以上の柔らかさと暖かさを持っていて、
なんだかひどく感動してしまった。
そこからはもう止まらなくて、気が付いたら押し倒してた。
焦ったような彼女の声も気にならなかった。
勢い、だった。
多少アルコールのせいもあったかもしれないけど、私は、梨華ちゃんの全部を触りたかった。
梨華ちゃんだって、抵抗しなかったし。ベッド行こって言ったら素直についてきたし。
だから、そんな非難轟々な目で見られるのは、ちょっと心外だ。
ふるふるする唇を眺めながら、どう説明しよう、なんて考える。
思っている事をそのまま言ったら確実に地雷だ。
ぼんやり思って、唇から肩へ視線を滑らす。
ゆるやかな曲線を描くそこは、相変わらず綺麗で色っぽい。ちょっと黒いけど。
それからゆるゆると視線を下げて、腰へ。
ベッドにぺしゃんと座ってるせいか、綺麗なくびれの途中にお肉がちょこんとはみ出てた。
それに、なんだか、どきどきして。――― ああ、なんか、もう一回したいかも。
湧き上がる感情に、ごくり、と唾を飲み込んだ。
- 41 名前:最低な友達 投稿日:2009/05/31(日) 11:47
-
数時間前にも感じた同じそれが、せり上がってくる。
私はそれを抑えることもせずに立ち上がって、彼女のいるピンクのベッドへ乗り上げた。
相変わらず非難の色を乗せて私を睨む梨華ちゃん。
その中に不安が見え隠れしてたけれど、そんなの構わずに私は彼女へ手を伸ばした。
綺麗な肩を掴むと、その手をそのまま項へ這わして、引き寄せる。
「ちょっとっ、まだ、話しが、」
「いいよ、そんなの。めんどいじゃん」
言葉尻を奪うように声を発して、そのまま口付けた。
酷いことをしてる自覚はあったけど、止める気なんてさらさら無かった。
ああ柔らかい、なんて、ぼんやり思う。
喉が渇いていたことも、彼女の問いも全部どうでもよくなって。
私は、梨華ちゃんの華奢な身体をきつく抱き締めた。
おわり
- 42 名前:最低な友達 投稿日:2009/05/31(日) 11:47
-
>>>最低な友達
- 43 名前:太 投稿日:2009/05/31(日) 11:48
- 後藤酷い。だけど受け入れちゃう石川さん。
好きとかそういうのは全然ない感じの二人です。
あっても自覚してません、お互いに。
>>35
ありがとうございます。
そう言って頂けると嬉しいです。
- 44 名前:太 投稿日:2009/05/31(日) 12:12
- 流し
- 45 名前:名無し 投稿日:2009/06/04(木) 00:31
- お帰りなさい!!また太さんの作品が読めるなんて…嬉しいです!!
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/04(木) 17:27
- キーキー言ってる石川さんと淡々としてる後藤さんが好対照で面白いです
でも無意識に同じこと思ってるらしき2人がまたイイですね
- 47 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/07(日) 08:35
- 今日気づいたよ〜
また読めるなんて嬉しい
- 48 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:28
- 上のやつと微妙に繋がりあり。
石川視点。
- 49 名前:たぶん 投稿日:2009/06/12(金) 01:29
-
好きとか嫌いとか、そういうんじゃないと思うの。
たぶん、だけど。
- 50 名前:たぶん 投稿日:2009/06/12(金) 01:30
-
***
ソファの上で膝を抱えて蹲る。
片手に持ったリモコンでテレビのチャンネルをぷちぷちと回していくうちに視界に飛び込んできたCM。
何ともなしに気になって、チャンネルを変える手を止めた。
テレビ画面には最近よく見かける若い俳優と、あどけない顔をした女優が寄り添って映っていた。
少し前に話題になった恋愛小説が映画化されるらしい。
映画のタイトルが落ち着いたナレーションで流れ出て、画面に“真実の愛”って文字がさらりと浮ぶ。
一瞬、あまりにも“それっぽい”煽り文句に苦笑する。
今時、真実の愛なんて言ったって、若い子たちの観賞欲を擽るのかな。
ぼんやりと眺めながら、少なくとも私は見に行かないだろうな、なんて失礼な事を思う。
まず第一に、出演者に興味を惹かれない。
それから、この宣伝を見るに、恋愛映画!ってのを全面に押し出した、
良くも悪くも淡々としたストーリーになることは用意に想像できたから。
仮に観に行ったとしても途中できっと寝てしまう。
- 51 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:31
-
(ああ、あと、それと、)それと、たぶん ―――。
テレビ画面がぱっと明るくなって、次のCMが映し出された。
同時に、背中の方からドアが開く音が聞える。
――― 今の私が“真実の愛”なんてものから、
一番遠くにいるっていうのも一つの理由かもしれない。
ひたひたと足音がして、私のすぐ背後でぺたりと止まる。
少しの熱気とシャンプーの香りが、ふわりを私を撫でたけれど、
確認しなくてもその足音の主が誰だか知っているから、私は振り向かない。
「何見てんの?」
頭の上から降ってきたのんびりした声。
私はやっぱり振り向かずに「何にも」と応えた。
そしたら後ろの人は自分から聞いたくせにもう興味をなくしたみたいで、
小さく鼻を鳴らしてひたひたと離れて行った。
彼女はたぶんキッチンへ向かったんだろう。
お風呂上りには必ずミネラルウォーターを飲む人だから。
- 52 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:31
-
彼女の行動をすぐに想像できてしまった事にはっとして、小さく溜め息を吐いた。
だってそれは、彼女の、ごっちんのお風呂上りの習慣を覚えてしまう程、
その時間を共に過ごすことが多くなってるってことで。
つまりそれは、彼女がうちのお風呂に入らなきゃいけないことが、それくらい起きてるってことで―――。
首を横に振る。それ以上考えると気が滅入りそうだ。
けれど、今キッチンにいるであろう彼女以外の事を考えようとする思いとは裏腹に、
私の思考はその当の本人の事へと向かってしまう。
彼女がここへ来るようになって、数ヶ月。
酔って寝ていくだけだった彼女といつの間にかキスをして、いつの間にかそれ以上をするようになっていた。
それがいつからだったのか、何がきっかけだったのか、正確には思い出せない。
思い出したくなかった。
- 53 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:32
-
それまで私の中でそういう関係って、告白して付き合って、デートとかしてキスをして、その延長線上にあるものだった。
だから、過程を全て飛び越えた彼女との関係に戸惑っていたし、
終わった後何事もなかったように普通に接してくる彼女にも困惑していた。
それから、自分の事も。
能天気に明るいCMを引っ切り無しに垂れ流すテレビを見るのを止めて、
リモコンをテーブルの上へ投げ出した。
ごっちんとのそういうのが嫌なら拒否をすればいいのに、私はそれをしない。
いくら力が強いって言ったって、彼女は自分と同じ女の子だ。本気で抵抗すれば良かった話だ。
そもそも、それがあった次から彼女を家に上げなければ、こんな事にはならずに済んだ。
だらだらと健康的ではない関係を続けずに済んだんだ。けれど、私はそれをしない。
つまり、どうやら私は、ごっちんに触られるのが嫌ではないみたいなのだ。
それが、ここ数週間考えて考えて出た私の結論だった。
- 54 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:32
-
けれど、私達の間にあるモノは、好きとか好きじゃないとか、そういうのとは違う気がした。
少なくとも、彼女から嫌われてはいないと思うし、私も彼女のことを嫌ってはいない。
でも、それが恋愛のそれかと問われれば首を捻ってしまう。
テレビの音しかしなかった部屋に再びひたひたと足音が響いた。
それは今度は背後で止まらず隣までやってきて、ごっちんが視界に入る。
彼女はそのままソファに腰を下ろした。
すっぴんの幼さの残る横顔を眺めていたら、彼女の髪がまだ湿気を含んでいることに気が付いた。
「ごっちん、髪濡れてるよ」
指摘したら、ごっちんは首に引っ掛けてたタオルを頭に乗せて、不満そうに唇を突き出した。
その姿が悪戯を見咎められた子供のようで、少しだけ笑ってしまう。
- 55 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:33
-
「あとでドライヤーするからいーの」
「そんなこと言って、いっつもそのまま寝ちゃうじゃない」
「う、……今日はちゃんとやるし」
子供のような言い訳も昔と少しも変わらない。
あまりにも普通な彼女とのやり取りに、さっきまでのベッドでの事は悪い夢なんじゃないかって思えてくる。
拗ねたように髪を拭くごっちんがおかしくて笑ってたら、
つけっぱなしだったテレビ画面にさっきの恋愛映画のCMが再び流れた。
寄り添う若い男女に落ち着いたナレーション。そして、“真実の愛”。
思わず振り向いて、テレビを指差した。
「真実の愛だって、なんかくさいよね」
それまでの会話のノリでCMの感想を述べると、頭を拭いてたごっちんは、
ちらりとテレビ画面を見てすぐに視線を逸らす。
- 56 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:33
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「きょーみないし」
彼女はぼそりと呟いて、すぐに髪拭きを再開する。
私は何と返せばいいのか逡巡して、それを誤魔化すようにテレビへ視線を移した。
相変わらず画面には寄り添った男女。とても幸せそうに微笑み合っている。
視線をそっとごっちんへ戻す。
手を忙しなく動かす彼女の表情はタオルの影に隠れていて、こちらからは窺えない。
真実の愛なんて煽り文句は確かに臭いけれど、画面の中の彼らの間にあるモノは間違いなく愛で。
お互いを好きだという感情に、違いなくて。
ならば。それならば、私達の間にあるモノは一体何なんだろう。
画面の中のように、甘い空気を含んだモノで無いことは確かだけれど。
そもそも、私達の間には何かがあると思うこと自体が間違っているのだろうか。
他とは違う何かが。
「ごっちんは、」
気付いたら口が動いてた。
「私のこと、―――」
―――― どう思ってるの?
寸前の所で、続くはずだった言葉を飲み込んだ。
- 57 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:33
-
すぐにばかばかしいと思ったからだ。
だって、問いかけて一体私はどうする気なのだろう。
もしも。
もしも、仮に、その答えが恋愛感情を含んでいるものだったらどうする?
私はそれに応えることができない。私の中にある彼女への感情は、恋愛のそれではないのだから。
絶対、違うモノだから。そう、絶対に。
それじゃあ、「興味ない」と言われたら?
さらりと、背中が冷たくなる。
じわりと、胸の奥が震えた。
ごっちんの頭からタオルが滑り落ちて、首に引っかかった。
くしゃくしゃになった髪の毛を手で整えながら、彼女の顔がこちらへ向く。
怪訝な表情。その目が、不自然に詰まった私の言葉を促しているように見えて。
私は徐に立ち上がる。
ごっちんの顔をこれ以上見たくなかったから。
その答えを想像したくなかったから。
――― ほんの一瞬身体を駆け抜けた感情を打ち消したかったから。
- 58 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:34
-
「私、もう寝るね」
ごっちんの顔を見ないように踵を返して寝室へ。
一歩を踏み出した途端に手首に熱い感触がして、強引に後ろへ引っ張られた。
声を上げる暇も無く迫ってきたのは、あどけない顔と、長い睫。
それから、唇に感じる柔らかさ。
けれど、それは一瞬の出来事で、すぐに引き離されて、
あどけない顔をもっとあどけなく綻ばせたごっちんと目が合った。
「おやすみ梨華ちゃん。ごとーもうちょっとテレビ見てくよ」
それきりテレビへ顔を向けた彼女から身を隠すように、私は、素早く背を向けた。
今度こそリビングを抜けて寝室へ。
テレビの音に急かされるように少しだけ小走りに目的の部屋へ飛び込んで、ドアを閉めた。
とん、と閉めたばかりのドアへ背中を預ける。ひやりとしたドアの温度が背中を撫でた。
- 59 名前:たぶん 投稿日:2009/06/12(金) 01:35
-
胸の奥がざわざわと不穏な動きをしているのを自覚して、首を振る。
違う。これは違う。
あのCMの二人のような“そういう”感情じゃない。
だってそれは、告白してデートして、お互いの距離を縮めて、その間に生まれるものだ。
だからこれは違う。絶対に違う。
ドアから背中を離し目の前のベッドへ乗り上げて、頭からすっぽり布団を被る。
ぎゅっと目を閉じて、私は寝ることに意識を向けた。
何も考えたくなかった。
胸がざわざわと揺れる理由も。さっき駆け抜けた妙な感情も。
彼女に触れられた唇が、馬鹿みたいに熱い、その意味も。
考えたく、なかった。
おわり
- 60 名前:たぶん 投稿日:2009/06/12(金) 01:35
-
>>>たぶん
- 61 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:35
-
石川さんってマニュアル通りにいかないと、
混乱または暴走しちゃう人っぽいなと思うんですがどうだろ。
一話完結とか言って、一個目から繋がってる感じになってます。
認めちゃえば楽になるのになぁ。石川さん。
- 62 名前:太 投稿日:2009/06/12(金) 01:36
-
>>45
出戻ってきました。
そう言って頂けて、私の方が嬉しいです。
>>46
彼女たちの温度差を楽しんで頂けると嬉しいです。
今の二人には、前スレのような甘々しいのは違う気がして、只今距離感を模索中です。
>>47
ありがとう。そう言って頂けると嬉しいです。
- 63 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:45
- マニュアルに沿わない自分に悩む石川さんがなんか凄く可愛く思えます
してることは大人なんですが(w
- 64 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/26(金) 07:50
- 梨華ちゃんの真実の愛はどこにあるんでしょうね
続きが気になります
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/15(水) 21:14
- 待ってます
- 66 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/27(月) 01:04
- 続き楽しみにしてます
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/11(金) 01:03
- まだかなぁ
- 68 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/09(金) 04:17
- 待ってます
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