ラブ&ビーン
- 1 名前:オースティン 投稿日:2009/01/19(月) 13:09
- ガキさんを大好きな愛さん。
愛さんが大好きだけど我慢してるガキさん。
お互い両思いとは気づかない
うっとうしいのでくっつけようと奔走するメンバー。
おおむねギャグ。
- 2 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:10
- また今日も。
不毛な戦いが繰り広げられている。
「ガキさーん。んー、今日もいいまゆ毛やねー。可愛いのぉ。」
「…そういうのいいから。早くメイクしちゃいなよっていうかまず私に自分の準備させてよぉ。」
「あっしがしたろか?」
「だからいいって…。邪魔!とりあえず離れて!」
楽屋でジャレる高橋と新垣。
絡む高橋に、あからさまに迷惑そうな顔をして目を背ける新垣。
いつもの光景だ。
まったくもって、いつも通りの。
- 3 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:10
- 「…あのぉ、道重さん。」
「なに?みっつぃー。」
「………新垣さん、喜んではりますよね?」
黙々と着替えを進めつつ、光井が呟いた。
道重は何も言わなかった。
隣で聞いていた田中も、敢えて何も言わなかった。
「なんだかんだ言うてはりますけど、新垣さんって高橋さんが遠くで何かしてるときとか、ガン見ですよね?」
光井はさらに核心を突きまくった。
「高橋さんはあからさまに新垣さんラブやし。なのに新垣さん全然気づかないし。高橋さんやって、あんなに一緒にいるのに、新垣さんの気持ち気づいてへんみたいですし。」
そこまで聞いて、鏡とにらめっこしていた道重がやっと顔を上げた。
「…とうとう気づいたわね、みっつぃー。」
「いや、とうとうっていうより、とうに、って感じですけど。」
「誰がうまいこと言えと。…とにかく。」
道重はゆっくりと遠くを見つめた。
「あの二人、じれったくてうっとうしいのよ!!」
その場にいる全員が頷いた。
テキトー女も。ミラクルも。チャイニーズも。
もう、全員。
- 4 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:12
- 「なんなの、あれは!モーニング娘。は『りぼん』か何かなの!?それとも『なかよし』!?」
「あのノリは『花ゆめ』あたりじゃないかな。」
「そんなことはどうでもいい!!」
自分から言い出したくせに、道重は亀井を遮った。
「…もう甘酸っぱいのは結構です。おなかいっぱいです。…なので、いっそあの二人をくっつけようと思うの。」
「えー?でもガキさん意外と硬派だよ?あんなに愛ちゃんが猛アプローチしても超我慢してるっぽいし。」
田中の言葉に再び全員が頷く。
なんとなくじれったいのは今に始まったことではない。みんな知っている。
「あの、新垣サンはホントに高橋さんが好き好きなんデスか?」
リンリンが素朴な疑問を口にした。
確かに、本当に迷惑がっているのかもしれない。
勝手にくっつけようとしたら迷惑かもしれない。
他のメンバーも、密かに同じことを考えていたようだ。
- 5 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:13
- 「…確かに、れいなもあの二人あやしいと思いよったけど。実際、どう?愛ちゃんは確定っぽいけど、ガキさんはようわからん。」
「うーん。まあ、そうだよねえ。じゃあちょっと順番に、『ガキさんのあやしいエピソード』を発表しようよ。」
かくして、リーダーとサブリーダー以外の全員が、楽屋の隅に丸くなった。
渦中の二人は、打ち合わせに行っているようだ。
好都合だった。
「じゃあどうぞ。各自思いついた人から挙手!」
「はいはーーい!!」
真っ先に手を挙げたのは久住だった。
「こないだ新垣さんに電話したとき、電話の向こうで超シンデレラのDVDが流れてましたー。」
「ほう。」
「それは…えーと、ちなみにどのシーンが?」
「結婚式だったよ。しかもチャプターリピートで!大して聞きたくない自分のセリフを何度も聞いちゃったもん。」
「聞きたくないんかい。」
ビシっと光井が突っ込んだ。
- 6 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:13
- プチ漫才は華麗にスルーして、道重は難しい顔をする。
「絵里、どう?」
「うーーん、かなりアヤしいけど…決め手に欠ける。」
「ガキさんは仕事に厳しいけんね。なんか自分の演技に反省点があったのかもしれん。」
かなりグレーゾーンではあるものの、この意見は棄却された。
続いて、光井が手を挙げる。
「えっと、新垣さんのカバンからちょっと写真が見えてて…。多分、ハロショに売ってる高橋さんの生写真でした。」
「おお…」
「そ、それもなあ…。」
一同に動揺が走る。
年長組は、もちろん新垣が娘。ヲタだったことをよく知っている。
安倍のトレカや生写真のファイリングを見せられたこともあるのだ。
今更メンバーの写真を持っていてもおかしくはないのだが…。
- 7 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:14
- 「まさか自分でハロショ行って買ったりしてませんよね?」
「あぁ…」
「だといいよね…」
マジヲタガキさんだし、ありえな、くもない。
いや、しかし。
「でもさあ。同期っちゃよ?安倍さんとか後藤さんならわかるけど、同期っちゃよ?」
「待ってれいな!早まっちゃいけない!」
「そうですよ、高橋さんが『あげる』って渡したかもしれません。」
話は再び保留になった。
「…でも限りなくあやしいのには変わりないよね…」
「もう有罪でいいんじゃないかな。」
会議に飽き始めた亀井が、のんびりとポッキーを食べ始めた。
「ああ、じゃあ小春もそれに賛成です。」
横から久住がポッキーを奪う。
「いやいや、せっかくここまで犯人を追い詰めたのに。もう少しだよ?」
道重が粘りを見せる。
なぜか新垣は犯罪者枠になってしまった。
- 8 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:14
- 「えーとデスね。ワタシ、どうでもいいけど、見たんですケド。」
「…どうでもええんか。」
いきなりしゃべり出したジュンジュンに一応突っ込んでから、光井が先を促した。
「で、ジュンジュン何見てん?」
「オう。ワタシこないだ、楽屋の机とロッカーの間に隠れて、バナナ食べてたデスよ。」
真顔で説明するジュンジュンを道重が遮った。
「待って、まず何でそんなとこに隠れてたかを問いたい。」
「バナナ8本目だったデスよ。」
「…………よくわかんないけど食べ過ぎだよ。」
「一日7本までと、新垣サンと約束したですよ。見つかたら怒られるからネ。で、隠れました。バナナ食べました。そこに、新垣サン来ました。」
「…はぁ。」
- 9 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:15
- とにかくジュンジュンが言うにはこういうことだった。
楽屋に隠れてバナナをむさぼるメンバーにまったく気づかず、新垣は一人で入ってきたらしい。
そこで彼女はメンバー全員の上着がかかっているラックの前に立って、自分の上着のポケットからガムを取り出した。
そしてその後、隣にかかっていた高橋のコートに目をとめる。
少し迷ったように、周りを見回しつつ。
「…で、新垣サン、高橋サンのコートにぎゅーってしました。」
「……え?」
「ぎゅーって何を?」
「えト、だから」
ジュンジュンはおもむろに、隣にいたリンリンを抱きしめて、胸に頭をぐりぐり押しつけた。
「え、なに!?」
「こんなんデス。ハグハグ。コートに。」
「「「「「「…………………。」」」」」」
- 10 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:15
- ぐりぐり、と続けられて困るリンリン。
見ていた周囲は一様に黙り込んだ。
そして。
「ん有罪いぃぃーーーーーーーー!!!!」
「なんてことだ!!ガキさん!殿中じゃ、殿中でござるぞ!!」
「なんなん!?サッカー部員のユニフォームを抱きしめるマネージャーですか!!?」
「『花ゆめ』どころか、もう『ちゃお』だよ!!乙女ちっくパワーきらりんりんだよ!!」
「ちょ、落ち着いてくだサイ!!」
ご乱心の6期と7期を、果敢にもリンリンが止めた。
「新垣サンたちもうすぐ帰ってきますよ。普通に、ふつうに。」
「あぁ、そうやった…」
「ごめん、ちょっと何かがわからなくなった…。」
- 11 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:16
- ひとまずクールダウンしたところで、ぽつりと久住が呟いた。
「でもさぁジュンジュン。そんな爆弾ネタ、なんで最初に言わなかったの?思いっきりビンゴなのに。」
「やー、お世話好きの新垣サンなので、みんなの上着が洗濯いつするかチェックだと思いました。」
「いやいや、ないから。ていうか抱きしめたのは高橋さんのだけでしょ?」
「高橋サンの上着が洗濯どきなんだと思いマシタ。」
リーダーの上着が汚いとでも…?と思わないでもなかったが、隣の光井は傍観を決め込んだ。
「ま、とりあえずジュンジュン…グッジョブっちゃよ!コレで心おきなく二人をくっつけられるね!」
「そうと決まればまた作戦か…。今日の仕事が終わってからね…。」
田中と道重が思案する。
亀井はどうでもよさそうにポッキーを食べ続けながらも、『なんか楽しそうだねえ』と笑った。
- 12 名前:1.最初の審判 投稿日:2009/01/19(月) 13:16
- 「…あ、ところでなんで高橋さんの気持ちは“確定”なんですか?」
光井が素朴な疑問を口にした。
ロッキーズがゆっくり振り返る。
「…『ガキさんはあーしの嫁』って言うの。」
「寝言で『ガキさん』て言うっちゃ。」
「ガキさんにちょっかいだしたら蹴られた。」
「ああ…。そうでしたか…。」
なんかよくわからないけど怖いから気をつけよう、と光井は心に誓った。
- 13 名前:オースティン 投稿日:2009/01/19(月) 13:17
- 続きます。
- 14 名前:たま 投稿日:2009/01/19(月) 16:25
- かなり
おもしろいです!w
会議をするメンバーに
かなりウケましたw
次回更新楽しみに
待ってぃます♪
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/19(月) 16:40
- 爆笑しましたw
続きを楽しみにして待ってます!
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/19(月) 22:39
- 最高ですww
しかも確実に好きなCPですしw
どうメンバーが奮闘するか楽しみにしていますw
- 17 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:48
- その日の午後。撮影の合間、高橋は台本を読む新垣を見つけて近づいた。
「お茶買ったけど。いる?」
「あ、うん。ありがとう。」
スタジオの隅に仮設営された休憩スペースには、簡易ベンチがいくつか並んでいる。
割と余裕のあるサイズのそれに腰掛けていたにもかかわらず、高橋はきっちりと新垣にくっつくように座った。
「ガキさんの隣ゲットー。」
「…ちょ、愛ちゃん狭いよ。そっち全然あいてるじゃん。」
「ええやん、ちょっと寒いし。」
「えー?じゃあそこの膝掛け使いなよ。風邪ひくよ」
「ガキさんがあっためてくれてもええんやけど。」
「はぁ?あっついお湯でもかけようか?」
「うっわ、ひど!!」
顔は笑っているが、あくまでも新垣はそっけない。
高橋も、どこまで本気かわからない口調で絡みつつ、『好きオーラ』はゆるめない。
一見ただのジャレ合いのような会話だったが、各々の心の声を露わにするとこうなる。
- 18 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:50
- *******
「ガキさんの隣ゲットー。(あぁ、ちょうど周りに誰もおらん・・・。っていうか誰か来ても間に入って来られんようにくっついとこ。・・・やっぱガキさん顔小さいなあ。可愛いなあ。)」
「…ちょ、愛ちゃん狭いよ。そっち全然あいてるじゃん。(あんまりくっつかれると顔に出ちゃいそうだからイヤだなあ・・・。あ、なんか愛ちゃん、いい匂いする・・・ってバカバカ、私は変態か!!…ヤバい、顔熱くなってきた・・・。)」
「ええやん、ちょっと寒いんよ。(寒いって便利やなー、くっついても変に見えんし。・・・ってかもうちょっとこっち見ろよー、顔見えないよー。)」
「えー?じゃあそこの膝掛け使いなよ。風邪ひくよ。(人の気も知らないでベタベタするのズルいよ・・・あああ、私だけぐるぐるしててカッコ悪い・・・。)」
- 19 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:50
- 「ガキさんがあっためてくれてもええんやけど。(ちょっとは私の本気の思いに気づけコノヤロー!って、こんな言い方するからダメなんか・・・でもしゃーないよなあ・・・。)」
「はぁ?あっついお湯でもかけようか?(あぁああ愛ちゃん!?そ、そんな上目遣いで可愛い顔すんな!!殺す気か!!・・・もう、これ以上好きにさせてどうすんだよぅ・・・)」
「うっわ、ひど!!(ここで照れたりとかしてくれたら希望が持てるんやが・・・。ああもう、結局冗談で終わってもーた!!)」
*******
- 20 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:51
- お互いがお互いを恨めしそうな顔で見つめ、どちらともなくため息をつく。
こんなに長い時間を一緒に過ごした仲であっても、自分に向けられた想いには鈍感なようだ。
そしてそこからそう遠くない場所では、メンバーたちが二人の様子を見ていた。
「……ジュンジュンの話を聞いた今なら、ハッキリわかりマス。…新垣サン、変です。」
「リンリン、人はそれを恋と呼ぶんだよ。」
「絵里、誰がうまいこと言えと。・・・ていうか何でお互いの好きオーラに気づかないの?」
「ヘタレっちゃね。」
これはなかなか苦戦しそうだ、と一同が渋い顔になる。
背中を押してあげようにも、ある意味漬け入るスキがない。
- 21 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:51
- 「じゃあ、助っ人さんにアドバイスをもらったらいいんじゃないですか?」
光井がぱっと顔を輝かせた。
「助っ人?」
「あの二人のこと、私たちよりもよく知ってる人がいるじゃないですか!・・・帰国子女さんと、北海道の音楽ガッタスさんが。」
「・・・ははぁ。なるほどね。」
その言葉で、みんなの脳内に五期メンバーの顔が浮かんだ。
久住だけは、なぜかアヤカと里田を思い浮かべていた。
「…だったら吉澤さんも入れてあげてくださいよ。」
「…え、小春どうした?ってか『だったら』って何?」
- 22 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:52
- 何か言いたそうな久住に道重がひっかかったが、田中はそれに気にせず携帯を取りだした。
「マコっちゃんにメール入れとくよ。なんかアドバイスくれるかもしれんし。」
「あぁ、でも時間合うならいっそ会って説明したいなあ。絶対なにか知ってそうだもん。」
「オッケー、そんなら電話する。」
言うが早いか、さっそくダイヤルしはじめた。
「…や、でも小川さんも今すぐは忙しいんと違いますか?」
少々心配そうな光井の予想に反して、電話はすぐにつながったようだ。
「あ、もしもしマコっちゃん?今何しよる?……うん。あぁー、あっははは、いいなぁー。あ、そんでちょっとメンバーみんなで話したいことあるんですけど。うん。はいはい。」
ひとしきり話し終え、2分くらいで電話は切れた。
- 23 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:52
- 「れいな、どうだった?あっちも現場じゃなかったの?」
「や、なんか家でネコと一緒に寝てたらしいよ。暇やけん、こっちが終わる頃に出てきよるって。」
「おお、ナイス!さっすがマコっちゃん!」
「…いいんですか?小川さんの生活、それでいいんですか…?」
光井の心配のベクトルが変わってしまった。
「小川サン、いい人デース。」
「今日もバナナくれるカナ。」
「よーし、とりあえず心強い味方も来ることだし、頑張って仕事終わらそう!」
「「「「「「おーーー!!」」」」」」
道重の一声で、一同が団結した。
- 24 名前:2.豆色片想い 投稿日:2009/01/20(火) 00:52
-
「…ねえ愛ちゃん、なんか向こう楽しそうなんだけど。」
「わからんけど、なんでうちらを入れてくれへんのやろか。」
台風の目の二人は、寂しげにメンバーを見つめるばかりだった。
- 25 名前:オースティン 投稿日:2009/01/20(火) 00:53
- さっそくレス下さった皆様、ありがとうございました。
続きます。
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/20(火) 02:15
- 続ききた!
レスをした後にもう1度読もうとしたら嬉しいww
合流した後に、どんな風になっていくのか楽しみにしていますw
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/20(火) 12:28
- 楽しいw
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/20(火) 21:30
- >>21 の小春の心遣いが愛しいw
- 29 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:01
- 夕刻。
約束通り、小川はふらりと現れた。
「ういーすういーす。みんなお揃いで。」
「マコっちゃん?」
「…麻琴?どした、今日なんかあったっけ?」
小川の参上の理由を知らないリーダーとサブリーダーは、コンビニ袋ぶら下げてやってきた同期を不思議そうに眺めた。
「や、なんかあたしもよくわかんないんだけど。田中っちに呼ばれた。」
「…なんなん、それ。ていうか予定なかったんか?大丈夫?」
「うん。今日は一歩も外に出てなくて、このままじゃ私自身がこたつになっちゃいそうだったから。ちょうどよかったよ。」
のほほんと笑う小川を見て、新垣は眉毛を下げた。
「マコっちゃんの生活それでいいの?違う意味で大丈夫?」
さらっとひどい事を言われているにもかかわらず、小川は気にしていないようだった。
「まあまあ、せっかく可愛い後輩からのお呼び出しですし?…おーいみんな、おやつ買ってきたよー。」
- 30 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:01
- その声に反応して、メンバーが集まってきた。
「わーい!!小川さんありがとうございます!」
「小春は会うたびにでかくなるなあ。はい、シュークリーム。」
「やったぁ♪」
続いて、新人組もやってくる。
「小川サン、こんにちわー。」
「愛佳も頂いてええですか?」
「いいよー。はい、どうぞ。…あ、そうそう。ジュンジュンにはバナナね。はい、仙人バナナ。」
「オォ…嬉しいデスけど、シュークリームはナイんですか…?」
後輩に囲まれる小川を遠くから見つけて、ロッキーズが高速ダッシュで近づいてきた。
「まこっちゃん!!」
「あ、田中っち。そうだ、話ってなに?」
シュークリームを渡しつつ、あっけらかんと言う小川の腕を、道重と亀井が両側から封じた。
「おぉ!?」
「込み入った話があります!!」
「こんな所じゃ話せません!!」
「え?え?」
- 31 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:02
- おみこし状態で小川を抱え上げると、三人は残りのメンバーを振り返った。
「ほら何してんの!みんな行くよ!!向かいのデニーズに集合!」
「え?あ、あぁ、そう言えば」
「シュークリームに夢中でしたぁ。」
ぞろぞろとついて行くメンバーの後ろから、高橋と新垣も続いた。
「なんやなんや。」
「ご飯でも行くの?」
何も知らずについてきた二人に、ロッキーズはばしっと言い放つ。
「「「二人は ダ メ ! !」」」
「「えぇーーー!!??」」
有無を言わさず置いてきぼりにされ、控え室のドアは無情にもバタンと閉まった。
あからさますぎる仲間はずれだ。
「……なんや、今日は昼間のことと言い…。ウチら何かやらかしたか?」
「シュークリームすら置いてってくれなかったね…。」
…日本一不憫なリーダーとサブリーダーは、とりあえず帰る準備を進める他なかったという。
- 32 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:02
-
******
その頃。
向かいのデニーズでは、ロッキーズによる状況報告がなされていた。
店の隅にある広めのスペースで、全員が同じ席にいる。
「…なるほど、愛ちゃんとガキさんの仲を、ね…」
ひとしきり後輩達の話を聞き終え、小川はため息をついた。
「さすがに毎日一緒にいるみんなだね。二人のこと、よくわかるようで。」
「ていうか、あの二人がわかりやすすぎっちゃよ。」
「むしろわかってないのは二人だけだしね。」
頭を抱える田中と、少々呆れ気味にパフェをつつく亀井。
そこまで聞くと、小川は少し考え込むように俯いた。
- 33 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:03
- 「…わかった。みんながそこまであの二人を思っているなら、私も協力したい。…実は、私とあさ美ちゃんも、前に一度あの二人をくっつけようとしたことがあるんだ。」
「え?」
道重が顔を上げる。初耳だった。
「まあ、今の二人を見ればわかるとおり、うまくはいかなかったけどね。……ね?あさ美ちゃん。隠れてないで出ておいでよ。」
小川が意味ありげにそう言うと、一同が使っていた席の後方から声がした。
「…ふふ、やっぱり気づかれてたか。さすがまこっちゃん。」
「「「「「「「…うわあぁあ!!??」」」」」」」
口いっぱいにかぼちゃパフェを頬張る紺野がゆっくりと振り向く。
どうやらすぐ隣の席にいたようだ。
- 34 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:04
- 「いやいや紺ちゃん!!なんでそこにいるんですかっていうか一体いつから!?」
「みんながこの店に入ってきたときから…。話はすべて聞かせてもらったよ。」
普段の彼女らしくなくニヤりと笑った口元には、普段の彼女らしく生クリームがついている。
「…普通にその時点で合流してもらいたかったなあ。」
ぼそりと呟く道重の声は、届いていないようだ。
「まあ、そんなことはどうでもいいよ。今は愛ちゃんとマメの話でしょ?」
「ええ、まあ…」
「一応…」
頷くメンバーに向かって、紺野は話し始めた。
それは、まだ紺野と小川が娘。のメンバーだった頃の話だ。
- 35 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:04
- 〜〜〜〜〜〜〜〜
「…ねえあさ美ちゃん。うちらもうすぐ、卒業なんだよね。」
「うん…。」
時期はズレているものの、二人はモーニング娘。の卒業を間近に控えていた。
それぞれに進むべき道はある。
同期の二人とも一旦離ればなれになってしまうが、そんなことはたいした問題ではなかった。
4人で同じスタートラインに立ち、同じ夢を見たのだ。今さら寂しくはない。
ただひとつ、心残りがあった。
「…ほら愛ちゃん、あごにソースついてる。」
「ん?あぁ、ごめんごめん。」
「もー、衣装にこぼしたら汚れちゃうでしょ?」
「へへ、ガキさんはやさしいなぁ。」
「……愛ちゃんは子どもみたいだよ。ほら、拭いてあげるからこっちむいて。」
「はーい。」
- 36 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:05
- 仲むつまじく昼食を摂る同期の姿。
その二人を遠くから見て、紺野と小川はため息をついた。
「あれ、なんとかならないかな?」
「カップル成立にチェックメイトって感じなんだけどねえ。」
どう見ても好き同士のはずの二人だが、どうにも最後の一歩を踏み出せていない様子は、脇で見ていても明らかだった。
「愛ちゃんはあれで結構ビビりだし、ガキさんは自分のこととなるとニブいもんね。…どうなるんだろ?」
「あのままじゃ平行線でしょ。絶対。」
紺野の断言に、小川は思案げにウインナーをかじる。
「…そうだ。うちらが卒業する前に、あの二人をくっつけておこうよ。」
「いや、そうしたいのはやまやまなんだけど…どうやって?」
「つまり、二人がお互いの率直な気持ちを知ればいいわけだよ。」
- 37 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:06
- 名案、と言わんばかりに表情を明るくした小川は、当人に聞こえないようにそっと声をひそめた。
「…あさ美ちゃんさ、愛ちゃんを呼び出して、それとなくガキさんへの気持ちを聞き出してよ。私は偶然装ってその場所にガキさん連れていって、そっちの会話を聞かせるから。」
「あぁ、なるほど。通りすがりに『たまたま聴いちゃいました』ってノリだね?」
「そうそう。…どうせ今日は最後にみんなで事務所寄るでしょ。ガキさんが帰る時間を狙ってさ。」
「…うーん、うまくいくかなあ?まあでも、せっかくだしやってみよう!細かく打ち合わせしとこうか。」
こうして、二人の最初で最後の『作戦』が決行されたのだった。
- 38 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:06
- ******
そして、その日の夜。
『卒業する前に聞いておきたいことがある』との前置きで呼び出すと、高橋はあっさりと紺野についてきた。
「どした?こんなとこ呼んで。なんかあったん?」
「いやー、なんかっていうか…ちょっと、確認というか…」
小川と相談して決めたのは、事務所のロビーの脇にある、小さな自販機スペースだった。
出入り口の自動ドアもすぐそこにあるため、新垣を連れた小川が屋外に出ようとすれば、通りがかりでもここの会話は聞こえる。
ねらい通り死角に立たせた高橋からは、ちょうど出入り口が見えない位置だ。
「悩み事でもあるん?」
「うーん、悩み…といえばそうなんだろうけど。もしかしたら、おせっかいかもしれないけどさ。」
「ええよ?とりあえず言ってみたらええやん。」
はぐらかしつつしばらく時間を稼いでいると、遠くから小川と新垣の姿が見えた。
チャンスだ。
小川からのアイコンタクトを確認してから、紺野はやや大きな声で切り出した。
- 39 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:07
- 「……ずっと気になってたんだけどさ。愛ちゃんて、マメのことどう思ってるの?」
「うぇ!?」
突然の直球に、高橋が目を丸くする。
こちらの声は聞こえているのだろう。ロビーの新垣が、びくりと肩を強張らせたのが遠目でもわかった。
これで高橋の気持ちを聞けば、嫌でも新垣は意識するはずだ。
紺野は先を促した。
「…そばで見てて、ずっと思ってたんだ。マメが好きなんでしょ?その…特別な意味で。」
ロビーにいても良く聞こえるように、ゆっくり、はっきりとそう口に出した。
高橋はあからさまに頬を赤くしていたし、離れたところにいる新垣は、立ち止まってこっちを見ている。
それは、不安と期待が入り混じる表情だった。
横に並ぶ小川も、『してやったり』とニヤニヤしている。
「あ、あーしは…」
高橋はうつむいた。
が、じっと何かを考えているように一点を見つめ、やがて勢いよく紺野を見る。
それはまさに、恋する乙女の表情で。
紺野は思わず目を細めた。
- 40 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:07
- …が、しかし。
「…ありえへん!!」
「えぇ!?」
ズガアァァーーーーン!!!
高橋は大きな声で全否定した。
「そういう、なんていうか…特別なとか、恋愛感情とか、ありえへん!!」
予想外だった。
いや、なにかがおかしい。ていうかそんなはずはない。
あと多分、『ズガーン』は、ロビーにいる新垣から発せられた音だと思う。
「…っだいたいそんなん、キモいやん!メンバー同士で!ガールズ同士で!!!」
「いやいやアナタ、『ガールズ』て。…うわ!」
紺野の視界の隅に、ダッシュで逃げて行く新垣の姿が見えた。慌てて小川が後を追いかけていく。
二人はあっというまに事務所の外に消えていった。
- 41 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:08
- 「あぁ…あぁあ…。」
声にならない声が紺野から漏れたが、高橋には届いていない。下を向き、合いも変わらず思い詰めた顔のままだ。
「…でもなぁ。」
「…え?」
作戦大失敗で多いに落ち込む紺野の肩を、高橋はおもむろにつかんだ。
「あっしはそれでも、ガキさんが好きで好きでたまらんのや!!普通やったらありえへん恋やけど、キモいかもしれんけど……。でも自分でもキモいくらい、ガキさんが大好きなんやよぉおおお!!!!」
「えええぇぇーーー!?」
「どんだけ近くにおっても、ただの友だちでいるなんて嫌や!!…でも、冗談で流さな、もう一緒にいられんようになってまう!そんなんもっと嫌や!!!」
「いたたたた、愛ちゃん!!モゲる!!首がモゲるぅぅぅぅぅ!!」
- 42 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:08
- 高橋の勢いで、紺野の首ががくがく揺れる。
シェイキングされすぎたせいで薄れゆく意識の中、紺野は思った。
なぜそれをさっき言ってくれなかったのか。
そしてなぜマメはあんなにせっかちなのか。
ていうかなぜ私は今死にそうな目にあっているのか。
…ああ、もうどうでもいいや、後は任せたよマコっちゃん…。
紺野は意識を手放した。
- 43 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:09
- ******
一方その頃。
小川は新垣を追いかけて、近隣の児童公園まで来ていた。
「…確かにこっちに入っていったんだけど…いないなあ。」
人がほとんどいない時間帯だし、ましてや小さな公園だ。砂場と滑り台しかないこのスペースで、見失うわけはない。
「隠れるような場所もないし…やっぱここじゃないのか…」
他を当たろうとした小川だったが、砂場の脇を通り過ぎようとした瞬間、派手に何かにつまづいた。
「うわ!?」
「…スイマセン。」
砂のカタマリ。
が、しゃべった。
「ガ キ さ ん !!!!」
近くを通っても全然わからなかった。
それくらい、完全に生気をなくしている。
- 44 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:09
- 「よかった、見つかって…えっと、あのさぁ…」
小川は新垣の隣に並んだ。
「…とりあえずガキさん…ちょっとあまりにも砂場と同化しすぎてて自信ないんだけど…ここが顔だよね?そうだよね?」
なんとなく凹凸が確認できる部位に向かって話しかける。
今の新垣は、大きな砂の山にしか見えなかった。
「あ、あの、えーと…。その、あれはさぁ。なんていうか…」
何とか言葉を探す。
しかし、どう肯定的にとってもアレはない。
そもそも、『キモい』なんていうのは高橋の本心ではないはずだ。
とはいえ、自分が二人の本当の思いを知ってるなんて言えない。
ていうか多分信じてもらえない。
- 45 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:10
- 「き、気にしない方がいいよ!ガキさん!…ほ、ほら、愛ちゃんなんかよくわかんないこと言ってたけどさ、大丈夫!!だって私の方がキモいもん!!…ほら見て、石川さんのモノマネだよー。『グッチャー☆元気ださないと、お・し・お・きだゾ!エヘv』」
自分でも何をしているかよくわからないまま、とりあえず先輩のモノマネを披露しておいた。
拙いなりに気持ちは伝わったはずだ。
バカにされても、呆れられてもいい。ほんの少しでも笑ってくれるなら。
「まこっちゃん…」
新垣に、少しだけ顔色が戻る。
その目は、じっと小川を見た。
「……お願いだから、一人にしてくれないかなあ?」
「……!!!」
怒気をはらんだ声。
顔色が戻ったように見えたのは、怒りのせいだったようだ。
- 46 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:10
- 「で、でも、私このままだとなんか」
なおもわたわたと言葉をつなげようとした小川に、最後通牒が下された。
「一 人 に し て く れ な い か な あ ?」
「ハイすみませんっした!!消えます!!今すぐ消えます!!!」
こうして。
なにもできず、モノマネも受けず。
ささくれだった新垣の心を逆なでし、小川は一目散に逃げ帰ったのであった。
- 47 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:11
- *******
次の朝。
早めに起きずにはいられなかった小川と紺野が、人のまばらな控え室の隅に座り込んでいた。
「……あさ美ちゃん、あれからどうなった…?」
「………愛ちゃんがどれだけマメにLOVEか、死にかけるまで聞かされた。あと、首が痛い。」
「首…?」
目の下にクマを作って遠くを見る紺野は、朝から一切首を動かしていない。
あの後意識を取り戻してからも、愚痴とシェイキングのダブル攻撃を夜中までやられたのだ。
むち打ち症のごとく、顔はまっすぐ前向きのままだ。
- 48 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:11
- 「…マコっちゃんはどうだった?」
「……ガキさん、砂と一体化してた。一度は帰ろうと思ったけど、やっぱり心配だったからずっと遠くから様子見てた。…塾帰りの高校生カップルとか、酔っぱらいサラリーマンとか、何人もガキさんにつまづいて転んでたよ。」
「砂…?」
こちらも目の下にクマを作った小川は、紺野と同じく遠くを見た。
結局、新垣がふらふらと立ち上がったのは日が変わる頃で、しかも歩きながらブツブツと『もう恋なんてしない…』と繰り返しているのを、小川はしっかり聞いてしまったのだ。
「……なんか、わざわざ状況を悪くしてしまったような気がする。」
「同感だよ…。」
はあ、とため息をつくと、そこに高橋と新垣もやってきた。
何事もなかったように現れた二人だったが、少々顔が疲れている。
- 49 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:13
- 「…お、おはよう愛ちゃん!!」
「ガキさんもおはよう!…いやぁ、今日もいい天気だね!?」
紺野と小川はあわてて駆け寄る。
しかし、予想に反して二人の様子は自然だった。
「…全然いい天気じゃないよマコっちゃん。途中で愛ちゃんと一緒になっちゃったせいで、雨降りそうだったもん。ねえ?」
「いやいや、なんでや!雨女はそっちやろ?ていうかもともと雨の予報やんなぁ」
「まあ確かに雨女同士だけどさあ。絶対そっちの方が強いってー。」
冗談で笑い合う二人。
いつものように睦まじい様子に、小川は少なからずホッとした。
よかった、仲良しは変わっていない。
隣の紺野も同じように安堵の笑顔を浮かべたが、次の瞬間、新垣の表情が少し変わった。
なんというか、やけっぱち全開の無理矢理スマイルだ。
- 50 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:13
- 新垣は高橋の手を、両手でぎゅっと掴む。
「…な、ガキさ……えっ?」
戸惑う高橋に顔を近づけ、新垣は大きな声で宣言した。
「…愛ちゃん。ずっと友だちでいようね?ずっと!友 だ ち で!!!」
「と、ともっ……」
ズガアァーーーン!!!
『友だち』をやたらと強調されて、高橋は100万ボルトのショックを受けた。
しかし、こちらも負けじと、即座にやけっぱちスマイルを作る。
「あ、ああ!もちろん友だちやよ!?クリーンで爽やかな友だちやな!?あはは、あはははは!!」
「ふはは、ふははははははは!!!!」
硬い表情で手を取り、笑う二人。
「あぁあ…」
「うあぁあ…」
そしてそれを、声にならない声で見守る二人。
それが、5期メンバーとしての最後の思い出となったのだった。
- 51 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:14
- 〜〜〜〜〜〜〜
「…というわけなんだよ。……悲しい…出来事だった…。」
話し終え、紺野はゆっくりと紅茶をすすった。
小川は何か思い出したのか、大泣きしている。
「…ううっ、おうっ…っずずず。…聞くも涙、語るも涙の物語だよね…。」
盛り上がる二人をよそに、現メンバーの表情は重い。
「…絵里の気づかない間にそんな事があったのか…。」
「ていうか、ガキさんが可哀想っちゃ。」
小川はナプキンで鼻をかみ、遠くを見つめた。
「…結局、それからすぐにあさ美ちゃんは卒業になっちゃったし、私も留学準備であの二人の進展は見守れなかったけど…。思えば、あの事件の後くらいからだったよね。あの二人が『ぴょんぴょん』みたいになったのは。」
「小川さん、『ちゃお』です。ていうかぴょんぴょんはもうないです。」
「小春、そんなことはどうでもいい。」
- 52 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:15
- 久住を制し、道重はゆっくり小川を見る。
「…えーと。先輩にこんなこと言うのもアレですが、敢えて言わせていただきます。」
小川をびしっと指さし、あらん限りの声で叫んだ。
「まこっちゃんのアホーーー!!!!!!」
「ひぃ!スミマセン!!」
小川は即座に縮み上がった。
「むしろまこっちゃんが何もしなければ勝手にくっついたかもしれないじゃないですか!!そこんとこどうなんですか!?」
「ハイ重々承知しております!!ていうかだから今、協力したいって言ったじゃない!ごめん!ごめん!!」
「さゆ!まこっちゃんだけを攻めないで!確かにまこっちゃんはアホだけど!ごめん!ごめん!!」
紺野も加わり、そろってへこへこと頭を下げる。その様子に、先輩としての威厳はみじんもない。
- 53 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:15
- 騒ぐゴロッキーズを見て、最年少が不安そうな顔をした。
「…あの、田中さん。ワタシの人選、もしかしてミスやないですか?小川さんたちでよかったですか?」
「うん、れいなも自信なくなってきた。ダメかもしれん。」
「まあなんとかナリマスよー。」
「とりあえず毎日、明日はキマスねー。」
どこまでもマイペースなチャイニーズの声に、光井と田中は顔を見合わせる。
二人はどちらともなく、小さなため息をついた。
- 54 名前:3.それぞれのトラウマ 投稿日:2009/01/21(水) 13:16
- ********
一方。
ハブられたリーダーとサブリーダーは、別のカフェでくつろいでいた。
「…なーんか、麻琴がおると昔に戻ったみたいやったなぁ。」
「そうだねえ。」
カフェオレを飲みつつ、高橋はふと顔を上げる。
「そういえばガキさんてさぁ…。好きな人おる?」
「えぇっ!?い、いないよ!!」
「……そうか。」
即答されて、高橋は少しホッとした顔になる。
それに気づいてか、新垣もわずかに頬を紅くした。
(……愛ちゃん、なんで私に好きな人いないからってそんな顔するんだ…?私のことなんとも思ってないくせに…。)
(好きな人がいないのは好都合やが、『愛ちゃんがスキv』とかいう選択肢はないんやな…。くっそー、やっぱ『友だち』やもんなあ…。)
―時が流れても、相変わらずすれ違う二人だった。
- 55 名前:オースティン 投稿日:2009/01/21(水) 13:17
- 更新しました。
レスいただけて光栄です。
小春はよっちゃん思いです。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/21(水) 19:05
- 面白いです!
ガキさんかわいそう。。。はやくくっつけw
更新待ってます!
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/21(水) 20:00
- いいねー
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/22(木) 00:43
- うおー!
更新来てた!
続き待ってます!!
- 59 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:38
- その後もデニーズでは作戦会議が続けられていた。
過去の失敗と、標的の行動パターン・思考を可能な限り洗い出して照らし合わせる。
しかしやはり最終的には『あの二人が自分で動かないと無理』という結論に落ち着いてしまった。
「なんだかんだで、もう私たちはきっかけを与えるくらいしか出来ないよね…。」
ぽつりと紺野がそう言うと、全員黙り込んでしまう。
デニーズに入ってからすでに二時間が経過。光井は居眠りを始めていた。
「あー…じゃあさ、ちょっとベタやけど、ヤキモチ妬かせるとかはどう?」
田中の提案に、亀井が顔を上げた。
「…でも、絵里がガキさんにちょっかいだしたときは、愛ちゃんに蹴られて終わったんだけど。」
「ていうかその話。絵里、どうちょっかいだしたの?」
道重にきかれると、亀井はさらっと言い放った。
「『ガキさん、ちゅーしよ?』って。」
「うわ、チャレンジャー。」
「で、どうなった?」
- 60 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:38
- その時のことを思い出したのか、亀井は痛そうに顔をしかめた。
「…遠くにいたはずの愛ちゃんがすごい速さで走ってきて、そのまま飛び蹴りされた。…で、コケそうになって目の前のガキさんにしがみついたら、流れるような勢いで脳天にチョップくらった。」
「ああ…。超痛そう。」
「そもそもなんでちょっかい出しよう?」
まさか…。と、少々田中の表情が変わる。
うっかり三角関係などになってしまったら、誰を応援していいかわからなくなってしまう。
そんな危惧もあってか、他のメンバーも少しいぶかしげな雰囲気になった。
「いやいや、絵里は別に本気とかではなく。ただ、ガキさん可愛いなあって。」
「…十分あやしいよそれ。」
なおも疑う道重に、亀井はさらっと答えた。
「まあでも、私はさゆの方が好きだから。いいじゃん。」
へらへらと笑われて、道重は絶句した。
「…そ、そう…。」
若干顔を赤くする様子を見て、小春が小声で紺野をつついた。
「…もしかしてこっちも『ちゃお』ですか?」
「んんー、いいねえ。ちゃおってるね。」
「…そういう使い方するんや、ちゃお…。」
- 61 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:39
- なんだか妙な空気になってしまったのを切り替えるように、小川が手を叩いた。
「…ああ、じゃあ愛ちゃんが直接怒れなくて、なおかつきちんとヤキモチ妬かせられる相手を選ぼう。先輩とか。」
「そっか。ガキさん、先輩大好きだもんね。」
なんといってもマジヲタガキさんだ。
大好きな先輩からであれば、ちょっかい出されても喜ぶだろう。
「なるほど。先輩に可愛がられて喜ぶガキさんを見て、愛ちゃんが『本気でオマエのことが好きなのはあっしだけじゃワレェ!』とか言えばいいってわけだ。」
「…愛ちゃん、そんな言葉遣いだったっけ?」
亀井の妙なモノマネに、冷静に道重が突っ込んだ。
「…よしわかった。じゃあ、ここはひとつ思い切って、安倍さんか飯田さんにお願いしよう!!」
「おおー!!!」
「そんな大御所を!」
頼もしい小川の言葉に、一斉に拍手が沸き起こった。
「先輩も後輩も一丸となって二人のために…。そういうのってなんかイイよね!」
紺野も大きく頷いている。
- 62 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:39
- 「…なんか、気づいたらオオゴトね。」
「美しいメンバー愛ヨ、ジュンジュン。」
どこまでも楽しそうな仲間を見つめつつ、ジュンジュンとリンリンは生温い笑顔を浮かべた。
*********
翌週。打ち合わせた通りの日に、小川は再び現場を訪れた。
- 63 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:40
- 「おーす。来たぞー。」
「あ、まこっちゃん。お待ちしてました!」
最初に気づいた亀井がそっと近づく。
「…で。どうです?ゲストは来てますか?」
「……うん。外に待たせてある。事情は全部話したから、うまくやってくれるはずだよ。」
「…さっすが先輩!頼りになるなあ。」
盛り上がる声を聞き付けてか、道重と田中も寄ってきた。この時間は、ロッキーズ三人しかいないようだ
「ちょうど今、みんな撮影中でいないんです。愛ちゃんとガキさんももうすぐ戻ると思うけど、中で待っててもらいましょうよ。」
「ああ、そうだね。一応段取りも確認しておきたいし…。」
そう言うと、小川はおもむろにドアを開けた。
「あのー、入って待ってていいそうです。どうぞどうぞ。」
「そう?ありがとう。」
促されて応えた声。
田中は不審そうに眉をひそめた。
「…!まさかこの声…。」
- 64 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:40
- 「ハロー!!みんな、元気ー?☆」
「「「…………。」」」
変な動きで入ってきたのは、どう見てもハングリーでアングリーで、くねり腰の石川だった。
「あれ?なんか元気ないじゃーん。どうしたの?…そうだ、愛ちゃんたちは?……大丈夫、全部わかってるから!私にまかせて!!」
なんだかテンションの高い石川をよそに、亀井は静かに小川の肩を掴んだ。
「…えーと。まこっちゃん、ちょっと集合。」
「………はい。」
小川もわかっていたのか、おとなしく廊下に出る。
パタンとドアが閉まり、石川の桃色ボイスは部屋の中に消えた。
「…えーと、確か安倍さんか飯田さんを呼ぶって話だったはずですが。」
「いや、私もそのつもりだったんだけど。でも、安倍さん忙しいらしくて連絡取れなかったんだよ。で、飯田さんにも一応メールでお願いしたのね。そしたらさあ…。」
言いながら、小川は携帯電話を取り出した。
「…この返事が来たわけだよ。」
突き出す画面には、殺風景なカタカナが並んでいた。
- 65 名前:4.よろしく先輩。 投稿日:2009/01/23(金) 00:41
- 『カオリ ヨテイアリ ゴメン カワリ ハケンスル』
「…なんですかこの、戦時中の電報みたいなのは?」
「いや、私もちょっと、これ見た瞬間不安でいっぱいだったんだけどね…。」
幾分しょげた様子で携帯をしまうと、がばっと顔を上げた。
「でもせっかく『代わり派遣する』とまで言ってくれたわけだから断れないし、お言葉に甘えたんだよ!……そんで、今日来てみたら…。待ち合わせ場所に梨華ちゃんがいたんだよ…!!」
「…そうでしたか…。」
つられてしょげた顔を浮かべ、亀井は頷いた。
先輩の先輩のご厚意ならば、仕方ない。
例えそこに現れたのが、どうしようもなく期待できない先輩だったとしても。
「…じゃあ一応、予定通りにすすめましょう。14%くらいの確率でうまくいくかもしれないし…」
「まあ、おおむねどうにもならないと思うけど…とりあえずやってみようよ。」
二人はものすごく消極的な決意を固めたのだった。
- 66 名前:オースティン 投稿日:2009/01/23(金) 00:44
- 少し更新です。
期待してくださっている皆様、ありがとうございます。
娘。さんはみんなちゃおってると思います。
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/23(金) 01:45
- 毎日更新があるので夜寝る前の楽しみにさせていただいています
そうですね、ちゃおってますよねw
この言葉自分の中ではやりそうですw
- 68 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/23(金) 10:21
- ちゃおってるってイイですねw
他にもちゃおってるメンバーいるのかな?
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/23(金) 15:17
- ちゃおってるが流行りそうですねw
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/24(土) 00:35
- ちゃおってるww
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/24(土) 06:56
- どうしようもなく期待できない先輩w
- 72 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:06
- その後。
なにか策があるという石川の指揮のもと、作戦が決行された。
『マメが帰ってきたら、外から合図してね』と指示された小川は、言われるままに控え室の前に座り込んで待機している。
総大将石川は、ロッキーズたちと一緒に、中で何か準備をしているようだ。
大きなバッグを持ってきていたし、小道具でもあるのかもしれない。
「………しっかし、なんで梨華ちゃんかなぁ。」
ふー、とため息をつくと、通路の向こうから元気な話し声が聞こえてきた。
「…でね、ジュンジュン。カメラの前を横切るときは……って、まこっちゃん?」
「小川サーン。」
撮影が一段落ついたのか、新垣とジュンジュンが戻ってくる。
小川は二人に気づかれないよう、中に向かって合図を送った。
- 73 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:07
- 「お帰り。…あ、ガキさんおみやげの肉まん。ジュンジュンにはこっちね。はい、エクアドルバナナ。」
「…オオウ。また肉まんはナイですか。」
差し出された袋を受け取ると、新垣は不思議そうに楽屋のドアを見る。
「まこっちゃん最近よくいるなあ。…ていうかなんでそこにいるの?入ればいいじゃん。シゲさんたち、中にいたでしょ?」
「え?ああ、うん。えーと…あっ、なんかね、シゲさんが『今から全裸になる』って言うからちょっと外で待ってようと思って!!」
「…は?いやいや、なにやってんのあの人。」
とっさに訳のわからないことを言ってしまって、小川は焦った。
「…い、いや、そんなわけないよねえ!聞き間違いかなぁ?…あ、そうだ、そういえば愛ちゃんは?」
本格的に怪しまれる前に、小川は話題を切り替えた。
「なんだ、愛ちゃんに用事?今一人で撮影してるみたいだけど。もう来るんじゃないかな。」
「あ、そうなんだ…。」
「とりあえず入ろうよ。ここ寒いよ?」
「う、うん…。」
- 74 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:09
- 促されるまま、小川は後に続いた。
段取りが整っているのか気になったが、合図はしたわけだし。
もう開けてもいいだろう。
ドアに手をかけたのは、新垣本人だった。
「ただい…」
「うわっ」
「オォー」
絶句した新垣の後ろから中を見たジュンジュンと小川も、言葉を失った。
「おかえりなさいっっ、マイハニーー!!!」
バラの花びらがちりばめられた絨毯。
その上に斜め座りをし、セクシーポーズで控える石川梨華。
…服装は、なぜか『ザ☆ピ〜ス!』の裸エプロン風衣装。…に、ウサミミ。
ロッキーズは、部屋の隅で隠れるように身を寄せている。
「待ってたわよ、子猫ちゃんv」
ばっちりと新垣を視線でロックオンして、満を持してのウインク。
が、いつも通り両目ともつぶっている上に口が開いていた。
無駄にセクシーなのに、なんというブサイクさ。
- 75 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:16
- 予想以上に予想外な事態に、小川は泣きそうな顔でロッキーズを見る。
三人はちらりとだけ小川に目線を投げてから、俯いて『ムリムリ』と手を振った。
「な、な、な…」
なんでここにいるんですか、とか。
なんでその格好なんですか、とか。
なんで私をロックオンなんですか、とか。
多分そういうことが言いたいはずの新垣だが、そのどれも言葉にはなっていない。
とりあえずふらふらと近寄ると、石川の前にぺたんと座ってこう言った。
「…石川さん、お疲れ様です。」
まずは挨拶。
新垣は律儀だった。
「んもう、そうじゃないでしょ!…『ただいま、ハニーv』は?」
「…えっと、そういうのいいですから。そろそろつっこんでいいですよね?」
「いやっ!いきなりつっこむだなんて里沙ったら大胆!!」
- 76 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:18
- くねくねと身をよじる石川に、新垣は思いきり嫌な顔をする。
「…つっこむデスね。コレ、使いマスか?」
何の気遣いか、横からそっとバナナを差し出すジュンジュン。
「使うかあぁぁ!!」
「アヤー!」
全力でバナナをたたき落とされ、ジュンジュンは半泣きでそれを拾った。
「ていうかなんなんですか!ドッキリ!?いや、どこがどうドッキリかわからないけど!!」
少々ヒステリックにそう言う新垣を気にもとめず、石川はわめく頭をぎゅっと抱きしめた。
「もー、せっかく会いに来たんだからもうちょっと愛想良くしてくれないの?」
「ふがううう!」
「「「…!!!!!」」」
伝説の梨華πが今…
新垣の顔に、ぐりぐりと押し付けられている。
「………。」
押し黙る新垣。
見守る人々は目を見張った。
- 77 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:19
- 「こ、これは!」
「ガキさん大人しくなっちゃいましたよ。」
「セクスィ〜」
絶大なる効果に感心しきっていたが、田中があることに気づいた。
「…待って、この光景を愛ちゃんが見てなきゃ意味ないっちゃよ!」
「ああっ!そうだ、しまった!!」
重大な事実に思い至って焦るものの、どうしようもない。
ひとしきり梨華π責めが続いた後、新垣はやっと解放された。
「…ぶはっ!!」
窒息寸前まで胸を押し付けられ、心なしか目を潤ませた表情でぽつりとつぶやく。
「……すごい…。」
羨望と感動の入り混じる視線で石川を見つめる新垣に、田中は少々悲しい顔をした。
「…やっぱり女は胸っちゃね…」
- 78 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:19
- まだ放心している新垣に聞こえないように、小川は石川に耳打ちする。
「(梨華ちゃん!愛ちゃんにヤキモチ妬かせるんだから今やっちゃダメでしょう!?)」
「(…はっ!確かに!!…うっかり本気出しすぎたわ…。)」
「(アナタの本気は怖いから!ちょっと抑えて!)」
促され、石川は頷いた。
「(わかった、じゃあ愛ちゃん来るまでは普通の話でもしておくね。)」
「(そうしてください。)」
話がまとまると、、石川は一息ついて新垣に向き直る。
「…じゃあ、マメ。」
「…はっ!え、なんですか?」
我に帰った新垣の肩を、石川はばんと掴んだ。
「久しぶり!」
「えぇー、今から挨拶なんですか!?」
さんざん乳を押し付けられた後だ。
普通に、とは言ったが逆に普通じゃない。
「まあまあ、今のもさっきのもほんのご挨拶。ここからが普通の世間話よ。」
「はあ…」
まあ座って、と新垣がすすめられたのは、薔薇がまかれた絨毯の上。
「……えーと、じゃあ失礼します…。」
遠慮がちに、というよりは迷惑そうにそこに腰を下ろす。
- 79 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:20
- 「…マメ、最近どうなの?」
「はぁ、まあ、楽しく元気にしてますが…。」
頷くと、石川はニヤリと笑った。
「ねえ、ここらでひとつ、私と新しいユニット作らない?」
「はっ!?」
「「「「「ええっ!?」」」」」
新垣もそうだが、聞いてる外野も驚いた。
「誘惑の次は勧誘だ…!」
「ていうかすでに普通の世間話じゃないし!」
「私タチの新垣サンとらないでくだサーイ!」
騒ぐ仲間を気にせず、やはり新垣は静かに嫌な顔をする。
「…石川さん、ハングリーでアングリーなんだからもういいじゃないですか。」
「違う!あれは謎のインディーズユニットだから私ではありません!似てるってよく言われるけど!」
しらじらしく首を振ると、石川はぐっと拳を握った。
「私はね、美勇伝を超えるユニットを作りたいの!なんていうか…インパクトで!!」
「えーっと、インパクトで言うならば、そうそう美勇伝を超えられるものはないと思うんですけど。」
新垣の脳裏に、バニーガールで金髪な石川が浮かんだ。
- 80 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:25
- 「そんなことない!私たちならきっと、未来型アイドルになれるよ!」
「えー…そうですか?」
昭和のリアクション新垣と、昭和顔な石川なのに。
そう思ったものの、敢えてコメントは控えることにする。
「今日会えると思って、実はもういろいろ考えてあるんだ!私たちのユニット名なんだけど…」
言いながら、石川は胸の谷間から手帳を取り出した。
「そ、そんなとこから。」
「セクシーガールの基本よ!」
悠々と手帳を開き、胸を張ってその中の一つを読み上げる。
「ひとつめ…『石ガキ☆アイランド』。」
「…ええー、最初からそれですか?」
「候補が100個近くある中の、かなり上位だよ?」
逆に下位が気になるところだが、新垣はスルーした。
- 81 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:25
- 「これがダメなら次は…そうだなあ、『豆リカ合衆国』。」
「うちら国でもなんでもないですから!無理!」
「そしたら、『石川さんのおまめ』」
「嫌だ!なんか生理的に嫌だ!」
「他にはね、えーと…『豆の華』。」
「料亭っすか!」
「じゃあ『梨の華』。」
「あんま変わらな…て私の要素消えてるし!!」
湯気が出るほどの熱い攻防。
一歩も譲らぬ勢いに、周りの誰も口を挟めなかった。
なんとなく目的を見失いかけた頃、控室のドアが開いた。
「…ただいま…って、何しとるん。」
高橋が、驚き半分呆れ半分の顔で立っていた。
「梨華殿、すごいカッコですね。…んで麻琴はなんや、また来てたん?」
この瞬間。
新垣以外の全員が、己の目的を思い出した。
- 82 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:31
- 「あぁあーーぅ!!」
「なっ、なんですか石川さん!!?」
突如横で大きな声を出され、新垣はびくりと肩を揺らす。石川は慌てて新垣へのアプローチを再開した。
「マメ!!」
「はっ、はい」
抱きしめようか、なにか愛の言葉を囁くか、そもそも何を言うんだっけ…。
コンマ何秒の間にさまざまなことが頭を駆け巡ったが、なぜか豆リカ合衆国が頭の中をちらついて考えがまとまらない。
とりあえず勢いにまかせて動いた。
「…豆リカーーン!」
「はっ!?…!!!」
その動きは、見ていた者たちにはスローモーションに見えた。
新垣の肩を掴んだ石川は
勢いよく、目の前の唇を
- 83 名前:5.GOGOアングリー 投稿日:2009/01/29(木) 01:32
- ……指でつまんでひねりあげた。
「んむむむむ!!!!」
「「「ええええーーーー!?」」」
「ワーオ」
押し倒すとか梨華πとか、いっそキスでもしてしまうのかと思っていた一同は、正直に度肝を抜かれた。
色気も何もあったもんじゃない。
「はっ!?いけない、手が勝手に!」
手を離すと、目に涙をためた新垣がその場に座り込んだ。
「…唇持ってかれるかと思った…」
「…何をしてるんだ私は…」
ぜーぜーと肩で息をつく新垣と、無駄にセクシーなナリで打ちひしがれる石川。
その両者をぬるい視線で眺め、高橋はつぶやいた。
「…豆リカンってなんなん?」
- 84 名前:オースティン 投稿日:2009/01/29(木) 01:32
- 少々間が開きましたが更新です。
いろいろごめんなさい。
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/29(木) 01:53
- 深夜に爆笑しましたw
…とりあえずお腹痛いですwwwww
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/29(木) 04:55
- 豆リカ合衆国でリアルにカフェオレ噴いたwww
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/29(木) 10:06
- 石川さんのお豆って…
おもしろすぎるw
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/29(木) 18:06
- 笑いすぎて腹痛いw
豆リカ合衆国ってw
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/30(金) 00:11
- 笑ったw
この石川さん、ちょっとシンデレラの義理のお母さんみたいだ
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/30(金) 23:50
- 石川さんがおもしろすぐるw
続きが楽しみ〜
- 91 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:48
- 「…正直、ここまでどうにもならないとは思っていませんでした。」
「…存じております。」
控室の外。
小川と亀井は、石川を連れ出して作戦会議中だった。
…あの後。
なんだか状況がわからない高橋は、先程の状況を多いに怪しんだ。
石川の裸エプロンバニーにさんざんつっこみ、『ガキさんになにしてんですか』と詰め寄られたところを逃げてきたのだった。
「…いやでもさ、ウサミミをガキさんにかぶせて逃げたのはグッジョブだったよ。愛ちゃん、そっちに超食いついてたもん。」
「今頃愛ちゃんによる個人的な撮影会だろうね。」
控室の中から、時折『ガキさハァーーー(*´д`*)ーーーン!!!』とかいう奇声が聞こえる。
三人は聞かなかったことにした。
- 92 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:48
- 「…でも、うまいこといきませんでしたね。」
「結局愛ちゃん怒ってたしね。普通に梨華ちゃんにメンチ切る勢いだったよね。」
これではわざわざ先輩をチョイスした意味がまるで無い。
もっとも、好んで石川を選んだわけではなかったが。
「うう…すまんこってすたい…。」
小さくなって謝る石川の肩を、小川はぽんと叩く。
「…まあ、最初からうまくいくとは思ってませんでしたけどね!」
「さわやかに悲しいこと言わないでよーー!!」
泣き崩れた石川の後ろを、見慣れた影が二つ通り掛かった。
「…なにやってんの梨華ちゃん。」
「うわあ石川さーん。」
- 93 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:48
- 撮影が済んで戻ってきた久住。そして、久住に引っ張られるように歩いてきたのは、ジャージ姿の吉澤だった。
双方、満面の笑顔である。
「…小春、こんな大きなワンちゃんどこで拾ってきたの。うちでは飼えないっていつも言ってるでしょ?」
「ワンワン!…って誰が犬じゃ。」
一応ノリツッコミをしてから、吉澤は亀井の頭をぽこんと叩いた。
「いったー…で、何で吉澤さんがいるんですか。」
亀井が頭部をさすりながらそう言うと、久住はうれしそうに吉澤の手を握った。
「隣のスタジオにいたんですー。お仕事終わったみたいなんで、連れて来ちゃいましたぁ!」
「うんうん、どこにでもついていくぞー。」
娘を甘やかす父親よろしく、吉澤の頬はゆるんでいる。
「…なに、ここもちゃおだったの?」
「や、ちゃお…まだ未遂じゃないですかね?」
「…なによ、ちゃおって?」
ひそひそと話す三人。
その様子を見て、吉澤がつぶやいた。
- 94 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:49
- 「…ていうか梨華ちゃんさ、すっげーカッコしてね?」
きらびやかな裸エプロン衣装を見下ろす。
石川は、少々怨みがましい目で吉澤を見た。
「私もいろいろ頑張ってるのよ。後輩のために。」
「…そうなんだ。ごめん、全然伝わらないけど。」
戸惑いを含んだ言葉に、小川と亀井が強く頷く。
そこで、ふと小川が吉澤を見た。
「…そうだ、せっかくだから吉澤さんも協力してくださいよ。」
「は?」
「ああ、そうだね!私がダメならよっすぃー!アングリーがダメならハングリー!」
頭の上に『?』をいっぱい並べている吉澤をひっぱり、小川は事の経緯を話した。
- 95 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:50
- 「…はあ、なるほど。それで梨華ちゃんはこの格好を…。」
「ええ。でもまあ見事なまでの残念ぶりだったので、是非とも師匠の力をお借りしたいのです。」
小川と亀井、そして石川がそろって頭を下げる。
吉澤は、まじめな顔で頷いた。
「…そうだなあ。そう言われてみれば、ガキさんは高橋大好きだよなあ。」
「いや、うちらが娘。にいた頃からそういう雰囲気出てたじゃん。よっすぃーの方が最近まで見てたでしょ?」
石川の声に、前リーダーは少々遠くを見て、ぽんと手を叩いた。
「そういえば、こないだ一緒に飲んだ帰り、ガキさん電柱に向かってずっと『好きだー!』って言ってたんだよ。」
「…それもまあ不憫な話ですけど。」
ぼそりと相槌を打つ亀井に手を降り、吉澤は豪快に笑った。
- 96 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:50
- 「いやぁそれが、てっきりガキさんが好きなのはあたしなんだと思っちゃってさあ!お断りのセリフを30パターンくらい考えてたところだったんだよね!いや〜よかったよかった一安心!」
「うわあ、なんですかそのおめでたい自意識!」
「…ていうかハングリーアングリーはパターン考えるの大好きですね。」
亀井と小川に突っ込まれても、安心感からか吉澤は嬉しそうだ。
「だってやっぱさー、ガキさんとはいえ傷つけたらひどいじゃん?」
「や、むしろその言い草がひどいですけど…じゃあまあ、ご機嫌ついでに協力してくださいよ。」
さらっとお願いすると、とたんに吉澤は真顔になった。
「嫌だ。めんどい。」
「えぇーー!?完全拒否!?」
後輩と相方がそろって悲しい顔をしたが、耳も傾けずぷいと横を向く。
「だってなんだかめんどくさいことになりそうじゃん。」
「…くっ、それは否定できない…。」
交渉決裂かと思われかけたそのとき、久住が吉澤のジャージのすそをつかんだ。
- 97 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:50
- 「…吉澤さん、お願いしますよー。お礼に何かごちそうしますからー。」
その瞬間、無表情が一転し、吉澤の目はギラリと光った。
「…その、ごちそうしてくれる『何か』って、何かな?」
「え?吉澤さんは何が食べたいんですか?」
屈託なくそう尋ねた久住の肩を、吉澤は獣の目で掴んだ。
「…小春が食べ
「「「コラーーーーー!!!!」」」
- 98 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:51
- 言い終える前に、左右後方からパンチが飛んだ。
「何言ってるの未成年に!そんな事言う悪いお口はアングリーが縫うよ!?」
「そうですよ!未遂と思ってたのに油断も隙もない!」
「まったく、ちゃおすっとばしてどこまで行くつもりですか!?」
「いってぇー!!なんだよちゃおって!?」
頭の三患部を順番にさする吉澤。聞いていたのかいないのか、久住はヘラヘラしている。
「じゃあわかったよ、ケーキでもおごってもらえばいいんだろ…。」
不服そうな表情ながらもそう妥協案を出す。
「はい!ケーキおごります!」
こうして、ミッションにさらなる人員が加わったのだった。
- 99 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:51
- ************
そして、控室の中では。
こちらもちょっとした作戦会議が開催されていた。
「…さんざんやったね、石川さん。」
「いや、しょうがないよ…ある意味想定内だし…。」
さりげなくひどいことを言いながら、道重は振り返る。
部屋の中央では、すこぶるご機嫌な高橋が、ウサミミつきの新垣の姿を携帯に収めていた。
「可愛ぇの〜。ほら、目ぇそらさんとちゃんとこっち向きーや」
「…もうやめてよー。そんなん撮ってどうすんのさぁ」
「待ち受けにする。もちろん現像もする。」
「嫌だって!!」
ひたすらデレデレする高橋の様子に、口で嫌がりつつも新垣は大人しくしている。
- 100 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:51
- 「…まあ今日のところは作戦失敗だけど…日を改めてまたなにか考えようよ。」
「そうやね。…とりあえずこれ、かたづけよっか。」
「カーペット巻きマス。」
石川が置いていった絨毯と薔薇の花びらに三人が手を出しかけた瞬間、亀井と久住がばたばたと飛び込んできた。
「ちょ、ちょっと待ってくださぁい!」
「お、小春おかえり。…あ、ねえ聞いた?作戦、失敗しちゃったんだけど…。」
「はい、聞きました!…であの、その代わりってわけじゃないけど今助っ人が来ますから!」
「……助っ人?」
そろって首をかしげていると、再びドアが開いた。
「…おまたせ、僕のお姫様…。」
「え」
「うわっ!」
- 101 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:52
- ズジャーンと効果音でも鳴り出しそうなほど、颯爽と現れた吉澤ひとみ。
その姿は、宝塚の男役そのままの、王子様スタイルだった。
赤い生地に金糸の縁取りの礼装。きらびやかなそれは、中世の貴族そのものだ。
「…えーと。何でしょう、今日はコスプレの日ですか?」
二人目の珍客に戸惑う新垣。
吉澤はそれには答えず、その隣にいた高橋の前まで歩み寄った。
「…え?」
「今日も可愛いよ…。愛。」
そのまま手を引き、薔薇の絨毯の上へと歩みを進める。
「あ…」
高橋の頬が一気に紅潮した。
- 102 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:52
- 「…なるほど、今度はガキさんに妬かそうって作戦っちゃね!」
「考えたなあ。…いや、でもあれはマジでかっこいい!!ヤバいよ!」
「王子様、ステキ。」
道重は廊下の方へ視線を向ける。そこでは、石川と小川が力強く親指を立てていた。
「いやー、どうしたんですか吉澤さん!かっこいい!!めちゃめちゃかっこいいです!!」
興奮気味に手を握り返す高橋に顔を寄せ、吉澤は努めて爽やかに笑った。
「いやー、たまたまそこのスタジオにいてさあ。今日はこの衣装で仕事だったんだ。高橋こういうの好きだし、見せようと思ってねー。」
もちろんそんな話は嘘だったが、高橋は信じたようだった。うっとりと吉澤の姿に見入っている。
「…ええなー。本物の王子様みたいやぁ。」
「あはは。…迎えに来たよ、シンデレラ。」
「もー吉澤さん、うまいなぁ。」
- 103 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:52
- 楽しげに会話を交わす二人。
その様子を見ながら、外野は確信した。
今度こそうまくいく、と。
ここで新垣がうまいこと妬いてくれれば、その後の進展のきっかけになることは十分有り得る。
亀井が期待を込めて新垣に近づいた。
「クリス王子、どうすんの?愛ちゃんとられちゃうよー?」
ニヤニヤしつつ顔を覗き込む。
が、その表情を見て亀井は思わずぎょっとした。
この世の終わりのように死んだ目をしている。
- 104 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:53
- 「…あ、あのー…ガキさーん?」
ひらひらと目の前で手を振ると、新垣は地を這う声でつぶやいた。
「……やっぱり、王子様はワタシじゃない方がよかったんだよ…」
「はっ!?」
少なからず周囲は、『愛ちゃんは渡さない』とか『吉澤さんゆるすまじ』とか、そういう言葉を期待していた。
が、新垣は別の面で傷ついたようだった。
「…吉澤さんが卒業してなかったら、王子は間違いなく吉澤さんだったよ…。わかってるよ…。ワタシじゃシンデレラとは釣り合わないってさぁ…。」
「ちょ…ええ、そっちー!?」
膝を抱えて体を丸め、新垣はどんどん床に近づいている。ウサミミをつけたまま砂になりかけているその姿は、雪うさぎならぬ砂うさぎだ。
- 105 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:53
- 「…愛ちゃんは綺麗だったけど、私はシンデレラと身長も変わらないし…せいぜい15歳くらいのコドモ王子だよ…。私が王子になれたのは、たまたま時期がよかっただけでブツブツブツそれにモッさんがいたとしたってブツブツブツ」
「いやぁぁ!!戻ってきてガキさーん!!」
「なっ…ガキさん!?」
今にも崩れ落ちそうな新垣の姿に気づき、高橋は慌てて駆け寄ってきた。
「なん、どうした!?なあ!!」
「……♪きーみーのー靴だけーが残ったー……」
「へっ!?なん、なにがあったー!?」
どんどん砂になる新垣を揺する。見守る亀井が代わりに答えた。
「…なんか、ビジュアル完璧王子の吉澤さん見て、『やっぱり王子は私じゃない方がよかったんだ』って…。」
「なんやてーー!?」
目を三角にした高橋は、ざばっと新垣を抱いた。
「ガキさんしっかりせぇ!!」
「…あの夜のことは夢なんかじゃありませんよぅ!」
- 106 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:53
- なおもブツブツと王子のセリフを繰り返す新垣。高橋はもどかしそうにその身を離した。
「なぁ、ガキさん。よーく聞いてな?あの…いや待って、顔はどこや?目はどれ?」
うろうろと探っていると、横から小川が囁いた。
「…ウサミミカチューシャの位置から察するに、このへんが顔と思うけど…。」
「あぁ、そうか。…と、とにかくガキさん!」
新垣の顔とおぼしき場所をまっすぐ見つめ、高橋は大きな声で言い放った。
「…た、確かに吉澤さんはかっこええし、背も高いけど…。でも、あーしは!ガキさんが相手やったからあんなに役に入り込むことが出来たわけで…。泣いたのも、笑ったのも、本当にただの演技やのーて…」
言葉を選ぶような言い方になっているのは、迷いからか。
気持ちを露呈し過ぎないようにセーブしているのかもしれない。
「…だから、だから…あー、もう!」
伝えてしまいたい、でも言えない――。
そんなジレンマに苛まれているのは、周りから見ても明らかにわかる。
- 107 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:54
- 「…なんか、逆に成功してるっぽくない?」
「なんでもいい、チャンスだよ!」
「ガバーっとブチューっとデスよ!」
壁に張り付くように二人から離れ、後輩達がこそこそと応援する。
「おいおい、あたしいい仕事したんじゃねーの?」
「高橋頑張れ!言え、言っちゃえ!!」
並ぶとますますすごい衣装の、先輩たちも応援していた。
「…あ、あの、つまりな?こんなん言うたら変に思うかもやけど…」
うつむいた顔を上げ、決意を込めた表情できっぱりと言った。
「あ、あーしにとっての王子様は、ずっとガキさんだけなんよ!!!」
- 108 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:54
- 「言ったーーー!!!」
「えらい!よく言えた!!」
「さすがリーダー!!」
ギャラリーは当人たちを邪魔しないよう、小声で盛り上がる。
「で、ガキさんどう出る?」
「今のはかなりストレートな告白やったけんねぇ。」
高橋は、言いたい事を言ってしまった気まずさからか、顔を赤くしている。そして、じっと自分を見ている新垣に問い掛けた。
「…あ、あの、ガキさ…」
「……靴を…」
「え?」
うつろなその顔をのぞき込む。
高橋を見つめているかのように見えた新垣だったが、よくよく見ればその視線は高橋をすり抜け、はるか遠くを見ていた。
- 109 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:55
- 「…この靴を、国中の若い女性に合わせてみてほしい…。」
「えぇーーまだ殿下モード!?ていうかなんでさっきから、シンデレラおらんシーンのセリフばっかりなん!?」
「彼女はまだどこかにいるはずなんだ!!!」
「いやいや、ここにおるて!!ガキさんてばーー!!」
せっかくの勇気が空回りに終わった高橋は、すっかり『砂ガキさん』と化した新垣に覆いかぶさるように泣き崩れる。
完全にうまくいったと思いこんでいた観衆は、しばし言葉が出なかった。
「…えーっと。…し、失敗ですかね、コレ…。」
「小春、それ違う。……大失敗だよ。」
「…ですよねぇー。」
どう状況を好転させようかと悩む道重のすぐそばで、控室のドアが開いた。
- 110 名前:6.ファイトだハングリー 投稿日:2009/01/31(土) 01:56
- 「戻りまし……え?どないしはったんです、あの砂場。」
「スナバ!」
最後に撮影を終えて帰ってきた、光井とリンリン。
突如控室の真ん中に出現した砂に、目を丸くしている。
「リンリン、トンネル作りたいデス!」
「おお、じゃあ愛佳も!」
「「「「「「ダメーーーー!!!」」」」」」
何も知らない二人を、一同は全力で止めた。
………その後、新垣はメンバー全員とハンアンによる『ガキさん最高!!!(パパンパパンパン)殿下最高!!(パパンパパンパン)』の大コールで、やっと人間の形に戻ったという。
- 111 名前:オースティン 投稿日:2009/01/31(土) 01:58
- 更新です。
レス下さった皆様、ありがとうございました。
石川さんはウザ可愛いと思います。
愛ガキがどんどん可哀想ですまんこってすたい。
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/31(土) 02:03
- 今日も真夜中に声出して笑ったwww
- 113 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/31(土) 07:50
- よっちゃんケーキ食べて帰りに食べちゃえ
- 114 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/31(土) 11:38
- どんな展開!?
愛ガキのせつなさとかが好きなんだけど、こういう笑えるのももありだな
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/31(土) 21:58
- 砂ガキさん見てみたいw
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/02(月) 22:53
- 面白いですね〜
てかガストじゃなくてデニーズで会議してて良いんですかw
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/02(月) 23:19
- なんかモーニング娘。っていいなあっておもいました
- 118 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:05
- 仕事を終えた帰り道。
道重の家に泊まりに行くことになっていたため、亀井も同じタクシーに便乗していた。
「愛ちゃん、まだ凹んでるよね。」
「…そうだねえ…。」
二人は、少々疲れた表情でお互いの顔を見る。
悪夢のような作戦大失敗から数日が経ち、新垣はすっかりいつもの元気を取り戻していた。しかし、高橋の方には時折思い詰めたような様子が垣間見える。
一歩踏み出して気持ちを伝えたのに、まったく届いていなかったのだ。落ち込むのも当然だろう。
「あのときガキさん、愛ちゃんの声聞こえてなかったのかな?」
「多分ね。頭ん中、シンデレラでいっぱいって感じだったじゃん。」
例え聞こえていたとしても、恋愛感情の混じった言葉だと感じ取れるまでの精神状態ではなかったはずだ。
- 119 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:06
- 「…でももう、してあげられることが見当たらないんだよなあ…。」
「やればやるほどこじれてるもんね。」
何度失敗しても、『放っておく』という選択肢はないようだ。
しばし考え込むように二人が口をつぐむと、道重の携帯電話が震えた。
「…あ、リンリンだ。」
「ん、電話?」
「うん。なんだろう?ちょっと待ってね…もしもし?」
電話の向こうからは雑音混じりの喧騒が聞こえ、道重は顔をしかめた。
「…リンリン、どこにいるの?そこ、うるさいね。」
『道重サーン。あのー、今チャイナタウンデース。』
「チャイナ…えーと、中華街?」
明るく話す声は、隣の亀井にも聞こえるほどだ。
『ハイ!…ジュンジュンも一緒デス!あのー、すごいモノ見つけたんで!中国の歴史のすごいの、わかりマス!』
「な?ちょ、まず言ってる意味がちっともわからないんだけども」
『見たらわかりマスから!』
「いやいや、なに?どうした?」
- 120 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:06
- 一つも理解できないまま、『とにかくすごい』の一点張りで電話は切れた。
「…絵里、聞いてた?」
「うん、全部聞こえた。」
あっさりと頷くと、亀井は即座に運転手に声をかけた。
「すいませーん、やっぱ中華街でお願いします。」
「はいわかりましたー。」
「え!?」
あまりにあっさりの行き先変更に、道重は大いに戸惑う。
「道空いてるし、ここからなら30分かからないでしょ。」
「そうだけど…別に『来い』とは言われてないよ?」
むしろ来るとは思ってないんじゃ、と言いかけたが、亀井は満面の笑顔だった。
「だって小龍包食べるんでしょ?行かなきゃー!」
「はっ!?いやいや、絵里、電話の内容のどこ聴いてたの!?小龍包とか一言も言ってないから!!」
道重の悲壮な叫びと共に、タクシーは横浜へと向かっていくのだった。
- 121 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:07
- **********
「思てたより早いデシタねー。」
「さあここ、オススメのお店デスよ。」
中華街にたどり着いた二人が指定の店に入ると、すでにリンリンたちは食事をとっていた。
ジュンジュンおすすめの中華料理屋。テーブルには亀井リクエストによる小籠包や、胡麻団子などが並んでいる。
「…それでデスね、すごいの見つけたのコレです。」
リンリンは、さっそく『すごいモノ』を取り出した。
カラフルな小瓶に入ったそれは、一見すると香水のようだ。
「なにこれ?可愛いー。」
「香水?でもすごいって、どういう…。」
言いながら、蓋を開けようとした道重をジュンジュンが止めた。
「ああ、いきなり匂い嗅ぐダメです。それ、薬だカラ。」
「…薬?」
- 122 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:07
- 蓋を閉めたそのボトルを机に置くと、リンリンが話し始めた。
「コレ、自分の心にある気持ち、正直に話せる薬デス。昔々の中国では、悪いことシタ人に警察が使うものだったです。」
「…それってつまり、自白剤ってことかな。でも、どうやって手に入れたの?危ないものじゃなくて?」
不安げに瓶を持ち上げる。
ジュンジュンは、満面の笑顔で手を上げた。
「ワタシのおじいちゃんのトモダチ、中華街で薬売るシゴトしてます。これくれた、とても詳しい。ダイジョブ。」
「あー、それにこれ、キケンないデス。今の中国だと、パーティーグッズ。買うのムズカシくないデス」
「…そうなんだ…。」
二人が言うことから考える限り、法に触れるものでも、人体に危険が及ぶものでもないらしい。
だとすれば、気になることがもうひとつあった。
「…本当に効果あるのかな?」
小籠包を口に運びつつ、疑わしそうに瓶を眺める亀井。
成文表示もなにもかも、特に記されてはいない。
- 123 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:07
- 「効果、わからないデス。」
「なので、実験しまショ。」
真顔であっさりと言った二人を見て、道重はぽろりと箸を落とした。
「…まさか、電話くれたのってそのため…?」
「え、そうですケド。」
「「オォォーーーイ!!」」
さも当然といった顔のジュンジュンの頬を、亀井はぐにっとひっぱった。
「んが、イテーですよ亀井サン。」
「なんでその危ない係に私たちを選んだのよー!?私たちはただ小籠包食べに来ただけなのに!」
「いや、別にそれ目的ではなかったけど…。なんていうか…。そっか、実験台か…。」
少々遠い目で、道重は涙をぬぐった。
心底不満そうな亀井はしばらく口を尖らせていたが、少し考えた後で何かに思い至った。
「あ、でもさ。考えたら絵里別に、特に隠してることないもん。薬試したってなにも困ることないかも。」
ぱっと笑顔になり薬の瓶に手を伸ばした。
「よーし、正直者の亀井さんが試してあげようじゃないの!」
「オー、かっこいいです!」
「さっすがセンパイ!!」
ぱちぱちと手を叩く後輩に乗せられて、亀井は得意げにふふんと笑った。
- 124 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:08
- 「で、これどれくらい飲めばいいの?」
「ほんのちょっと、ちょんちょんで、2回3回くらいデス。」
「2〜3摘ってこと?そんなもんでいいんだ。」
亀井は様子を見ながら手の平に雫をとり、それを舌で舐めとった。
「…んー。甘い。ちょっとフルーツっぽい味だね。」
「絵里、どう?」
道重は心配そうに亀井の様子を眺めたが、特に変わった様子はなさそうだ。
「亀井サン、今なにか言いたいことないデスカ。」
ジュンジュンが顔を近づけて詰め寄ると、亀井は少し目を細めて呟いた。
「…デザートは絶対マンゴープリンが食べたい…。」
「……。」
「……。」
ジュンジュンは微妙な顔で道重を見た。
道重は、さらに微妙な顔でリンリンを見た。
リンリンはとてもいい笑顔だった。
- 125 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:08
- 「大成功!バッチリデース!」
「エェーー」
「いいの!?絶対いつも普通に言うよ!?」
メニューを吟味しつつ、『やっぱりマンゴープリンだなあ』と繰り返す亀井は、普段のトーンとなんら変わらない。
疑わしげな視線に気づいてか、本人も困った顔をした。
「…だってさあ、いきなり言われても、特に言いたいこととかないんだもん。大丈夫だからさ、一応さゆも試してみたら?」
「…うーん、まぁさゆみもそんな言いたいことはないけど…」
渋りつつも、興味が沸いて来たのか瓶を手に取る。そのまま蓋を開けて、とりあえず鼻を近づけた。
「…あ、いい香り。香水とか、甘いジュースみたい。」
くんくんとしばらく香りを楽しむ。
「道重サン、どうですか。」
「…んー…どうって言われてもなあ…。」
しばし考えるように首を傾げていた道重だったが、やがてふっと視線を落として呟いた。
「…絵里、実はガキさんのこと本気なんじゃないの?」
- 126 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:09
- 「…え。」
唐突過ぎる質問に、亀井がぎこちない動きで顔をあげた。
「…い、いきなり何をおっしゃいますさゆみさん?」
「だって、ガキさんにちょっかい出すところ、さゆみ何度も見たもん。愛ちゃんに怒られるってわかってるくせに。」
道重は視線を下に向けたままそう続ける。
普段とは人が違ったようにトーンが低い。
「ていうか、『さゆの方が好き』とかよく言ってるけど、絵里ってなんかふらふらしててわけわかんない。」
いつもにない責めるような視線に、亀井の方もいつになくおろおろしている。
「いや、あの、それはさあ…。っていうかさゆ、どうしちゃったの?そんなの今まで言ったことなかったじゃん。」
言い淀む亀井の前に、リンリンはすっと蓋の開いた薬瓶を差し出した。
甘い香りが鼻をくすぐる。
「……。」
体が痺れたように、ゆっくり亀井の頭が揺らいだ。
そして、おもむろにドカンと立ち上がる。
- 127 名前:7.ブルーライトヨコハマ蜃気楼 投稿日:2009/02/04(水) 00:09
- 「…ガキさんにちょっかい出すのなんて、さゆに妬かせたいからに決まってんじゃん!!!」
「!!」
「『好き』って言うのだっていつも本気だよ!気づけ、バカ!」
突如目の前で始まった痴話喧嘩に、ジュンジュンは口を開けっ放しで見ている。
それに気づいて、亀井は慌てて自分の口を塞いだ。
「…あれぇ、おかしいな…。これ絶対秘密にしとこうと思ってたのに…。」
「………わ、私も…。なんかごめん…。」
道重も、赤くなった顔で大人しくなってしまった。
「ね?ほらジュンジュン、バッチリよ!」
「…リンリンなんか怖いヨ。」
笑顔満面の同期を横目で見て、ジュンジュンは少しひいている。
…ともあれ、薬の効果は二人の身をもって実証されたのだった。
- 128 名前:オースティン 投稿日:2009/02/04(水) 00:11
- 少しだけ更新です。
いつも見てくださる方々、レス下さる方々。大変励みになっております。
ありがとうございました。
こんなバカ話を読んで『娘。っていいなぁ』なんて思ってもらえたら、幸せの極みです。
恐れ多いですが。
ちなみにガストの方が妥当ってのはすっかり忘れてました。ガッタスごめん。
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/04(水) 03:35
- いやー、ちゃおってますねw
イイヨイイヨー
- 130 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/04(水) 04:07
- さゆえりちゃおっててイイ!
結局先輩は頼りにならなかったかw
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/04(水) 05:43
- 大変な物が出ましたね
危険な感じがいっぱいですが、愛ガキに使うとどうなるか楽しみですw
- 132 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/04(水) 22:09
- おおっ〜
次回が楽しみだ。今度こそ上手くいくかな?
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/05(木) 00:11
- 中国四千年の歴史すげーアルヨ(>_<)
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/05(木) 00:38
- さゆえりちゃおっちゃいましたかw
リンリン、素敵すぎです…
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/10(火) 00:27
- 続きが読みたいよー><
- 136 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:16
- 「…というわけで、この薬をあの二人に試します!中国四億年の秘薬でーす!!」
移動中のバスの中。リーダーとサブリーダーが仲良く口を開けて寝ているスキを見て、亀井が皆に呼び掛けた。
手には、例の瓶が握られている。
「中国の歴史って長いんだねえ。でも本当に効くの?」
「や、四億は長すぎるやろ。…ていうか怪しくないですか?」
久住と光井が、当然の如く疑問を口に出した。
しかしそれも予測済みといった様子で、ジュンジュンがうれしそうに口を挟む。
「ダイジョブ、ちゃんと試したカラ。道重サンと亀井サン、あの薬でちゃおゴフッッ!!」
「「………ちゃおゴフ?」」
後部座席から、脇腹に綺麗に決まったストレート。
それを放った道重は笑顔だった。が、目は一切笑っていなかった。
「…ジュンジュン?なんか言ったかな?」
「スミマセンッシタ、ワタシナニモイワナイダヨ」
慌てて謝り倒すジュンジュン。
- 137 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:16
- ただごとでない様子に、田中は眉をひそめた。
「…れなの知らない間になんかあったっちゃね、あの二人…。」
「でも怖くて聞けませんよ。…リンリンなんか知ってはる?」
「ナニモシリマセン」
リンリンは笑顔をキープしたまま答えたが、石のように表情がカタい。
「とにかく!決戦は今日!ガキさんには『たまにはメンバー全員、水入らずでおいしくご飯を食べようよ』と言っておいたから多分来る!愛ちゃんは、ガキさんが来るならきっと来る!」
亀井は高らかに宣言した。
「…順序的に、声のかけ方が違うような気がするっちゃけど。」
「いいんだよ、愛ちゃんはリーダーだけど、ガキさんはみんなのお母さんだから。」
よくわからない道重理論だったが、一同はなんとなく納得した。
「…よーし、そんじゃこれが最後と思って、ばっちりあの二人くっつけよう!…いくよ?がんばっていきまっ」
「「「「「しょーーい!!!」」」」」
道重の号令に、釣られて皆が拳を振り上げる。
- 138 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:16
- これだけうるさくしても起きないリーダーとサブリーダーは、しかめっ面で寝言を吐いていた。
「…うーん、全員いるかー…。…もー、愛ちゃんがいなくなってどうすんのよ…」
「ガキさん、アカン、砂はもうアカンて…。」
結局平和なモーニング一家だった。
**************************
- 139 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:17
- その夜。
『メンバー水入らずで』という誘い文句には断れなかったようで、見事に全員がそろった。
個室が充実した和風ダイニング。
賑やかにしても目立たず、かつ一般の客からは目につきにくい。
田中のリサーチのたまものだ。
その一角のテーブルを二つ、貸し切りにしてあるのだが。
新垣と高橋は、大変不満そうな顔をしていた。
「…あのー、メンバー水入らずって言ったじゃん?」
「……うん。言った。だからほら、水入らずじゃん。」
不満全開の新垣に返答するのは亀井だった。
「あのさあ。まあ常識的に考えてね。……テーブルの割り振り、おかしくない?」
「なんで?」
あくまでも真顔で対処する。
が、新垣はダマされなかった。
「なんではこっちのセリフだっつーの!!なんでこっち二人だけなの!?」
- 140 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:17
- そう。
用意された2テーブルの一方には、高橋と新垣。
そして、人が一人通れるほどの通路を挟んで、もう一方には、残りの全員がぎゅうぎゅう詰めで座っている。
しかもその通路には、ご丁寧に仕切り用の屏風が置かれていた。
「…だってほら、しょうがないじゃん。9人全員同じテーブル座れないしさ。」
「いや、それはわかる!!だからってなんで2:7なの!?普通4:5でしょ!百万歩譲っても3:6でしょ!?」
新垣の向かいでは、高橋が寂しそうに隣のテーブルをのぞき見ていた。
「…そっちとこっち、テーブルの大きさ一緒なのになぁ。こっちはやけに広いなぁ。」
「ていうか、全員で来た感ゼロなんだけども。どうなのよこれ?」
「いや、それはまあ…なんていうか…。」
だって薬が効いて二人がちゃお合戦しちゃうかも知れないじゃん。
当然の配慮じゃん。
…なんて、直接顔見て言えない♪
- 141 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:18
- 心の中で歌ってみても、亀井の気持ちは届かない。
ブーブー言いまくる二人をなんとかかわそうとするも、押され気味だ。
変わって、田中が口を挟んだ。
「…ほら、せっかくやけん、この方がウチらのこと気にせんと二人はお酒飲めるやん?未成年も多いし!」
「おお!そうそうそれ!あたしはほら、まあ飲める年にはなったけど、今日はいいから!まだお酒慣れてないし!」
とっさのフォローに乗っかって、名案とばかりに手を叩く。
しかしそれも、高橋の一言で覆された。
「…ほやったら、ジュンジュンはこっち来ね。」
「!!」
飲めないとは言わせないぞ、という雰囲気が出まくった視線。
確かにジュンジュンがそれなりに飲めることは皆知っている。
- 142 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:19
- 「…えーと…アノー…」
どう逃げようかしばらく迷った末に、ジュンジュンはとっさに田中の肩を掴んだ。
「…!?」
「「「「!!!!!」」」」
予告も何も一切なく、唇めがけて思い切り口づける。
それはすぐに離れたが、田中は完全に固まっていた。
「…ワタシ、お酒飲むとこうなりマスカラ!!」
何故か胸を張るジュンジュン。
『飲まなくてもしとーやん』という抗議の声は、言葉にならない。
自分の体に刺さる視線に気づいたからだ。
一つは、何か言いたそうな光井のもの。
もう一つは、睨み付けるようなリンリンのもの。
いつも笑顔を絶やさない彼女だったが、このときは筆舌に尽くしがたいほど怖い顔をしていた。
「…sj;@ldh:;pqt::。」
「なに!?中国語っぽくないその言語はなに!?わからんけどなんか怖いけんヤメて!!」
「ワタシのジュンジュンに…」
「いや!いやいや!!れながやったんやなかよ!!ちょ、助けてーー!!」
- 143 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:19
- なんだか変な修羅場になっているテーブルを見て、新垣と高橋はそそくさとメニューに視線を向ける。
「…いやー、ここの厚焼き卵はおいしそうだねえー。」
「刺身もええなー。…あっちのテーブル怖いで、やっぱこっちでよかったなぁ。」
思わぬ方向で、テーブル分けは二人に納得されることとなった。
それを見て、道重と亀井はジュンジュンに賞賛を送る。
「よくやったわ、ジュンジュン。みごとだった!!」
「一時はどうなることかと思ったよー。」
「アリガトゴザイマース。」
「ってコラ!!こっちどーしてくれんね!?ジュンジュン!!この黒いリンリン元に戻してーー!!」
とんだとばっちりを受けた田中の悲鳴の中、『なんとなくメンバー水入らず』の食事会は開催されたのだった。
- 144 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:20
- ****************
「…じゃ、再度確認しようか。」
食事が始まり、各々が雑談を始めたタイミングで、道重が声をひそめた。
「愛ちゃんたちから一番遠い席の小春が、店員さんから受け取った飲み物に薬を入れる。で、そのまま気づかれないよう、二人に回す。…オケー?」
その指示に、瓶を託されていた久住が頷いた。
「ちょっとで効くカラ、入れすぎダメよ。」
普段の調子を取り戻したリンリンが、いつものニコニコ顔で話す。
その様子を見て、光井が田中に声をかけた。
「…そういえば、リンリンの機嫌どうやって治しはったんです?」
「……ジュンジュンが中国語でなんか言ってたから、そのおかげやと思うっちゃけど。わからん。でもなんかちゃお的なカンジはした。」
光井に聞かれてそう答えるも、田中には細かいことはわからない。
とにかく、あんな怖い思いは二度とごめんだ。
- 145 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:20
- 「そういえば、いっこ気になってたんですけど。」
大役を仰せつかった久住が、小声で手を挙げた。
「…コレ、お酒に混ぜてもいいの?」
「「「「…………。」」」」
「え、あの、ちょっと。ノーコメントっすか?」
綺麗に黙り込んだ先輩たちを不安そうに見る。
その先輩たちは、リンリンを見た。
リンリンは機嫌が良さそうだった。
「大丈夫、バッチリデース!!」
「ちょちょ、なんでもソレかい!!」
「お酒と薬はやばいんじゃないっけ…?」
少し不穏な雰囲気になったところに、隣のテーブルから声が聞こえた。
「すみませーん、梅酒ソーダ下さい。ソーダ多めで。」
「じゃあ私も同じの下さい。普通で。」
高橋と新垣のオーダーだった。
- 146 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:21
- 「…ほらどうすんですかー。お酒ですよー。」
「あー…うん。うーん…。」
目を泳がせつつ、亀井が最終判断を下した。
「わかった、じゃあちょっとだけ!一滴の半分だけ入れよう!小春頼んだ!」
少量でも効くことを知っている亀井だ。
普段の彼女に比べれば、かなり慎重な判断と言える。
が、一見賢明そうなその指示は、冷静に考えればかなりおかしなものだった。
「わかりました!一滴…の、半分…。」
みるみるうちに久住の表情が険しくなる。
「一滴の半分てどれくらいだろう…。」
瓶を見つめながらしばらく思案する。
助けを求めるように亀井を見るも、すでに食事と雑談が再開されていた。
「失礼します、梅酒おまたせしましたー。」
「うわ!はは、はい、こっちで受け取ります!」
高橋たちのテーブルに届く前に、久住は慌てて店員を引き止めた。
「恐れ入ります。こちらがソーダ多めです。」
「え、あぁ。はい、どうも…。」
- 147 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:21
- これが高橋さん、これは新垣さん…。と、忘れないように確認する。
そしてその間にも、亀井たちは警戒するように高橋たちの様子を見ていた。
久住の緊張が高まる。
「一滴の半分、一滴の半分…。」
滴下式の瓶ではないため、加減が難しい。
手が震えた。
その時だ。
「ねー、そっちに梅酒きてないー?」
「うわぁ!!」
新垣からの声が飛び、大きく手元が狂った。
かなりどばっと入ってしまったのだ。
- 148 名前:8.ミラクルなロシアン 投稿日:2009/02/11(水) 01:21
- 「うひい!!」
全身から嫌な汗が出た。
「小春、オッケー?回すよ?」
「あ、あああはい!!」
慌てているうちに、二つのグラスは持って行かれてしまった。
ひとつは大量の薬入り。
もうひとつは、何も入っていないただの酒。
「はーい、どうぞー。」
「ありがとカメ。…ソーダ多め、どっちや?」
「こっちでしょ。はい。」
何も言えず、ただアワアワするのみの久住。
何も知らない二人は、グラスに口をつけている。
「………やばい…。」
薬の効果を知らない久住ではあった。
しかし、これを持ってきたリンリンも、実際使ったらしい亀井も『入れすぎるな』と言っている。
もしかしたら、大変なことになるかも知れない。
久住はなすすべ無く、とりあえず死人が出ないことを祈るのだった。
- 149 名前:オースティン 投稿日:2009/02/11(水) 01:23
- お待たせしました。ぼちぼちラスト間近です。
いつもコメントくださる皆様ありがとうございます。
リンリンがアレですみません。
ていうか全員アレですけど。
- 150 名前:& ◆PrwWhipQ0w 投稿日:2009/02/11(水) 03:00
- アレなメンバーも大好きなんで頑張ってください!
- 151 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/11(水) 05:22
- 更新乙です!
ジュンジュンが何を言ったのか気になるw
それにしても計画はいつもスムーズにいかなくてワロタw
- 152 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/11(水) 10:26
- アレ最高
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/11(水) 15:24
- おおっ〜。ついに!
早く続きが読みたいです
- 154 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:29
- 高橋と新垣は、何も知らずに酒を交わしていた。
後輩達の愛情あふれるおせっかいに、もちろん気づいてなどいない。
「…飲んだ?」
「うん。ちょっとずつだけど…。飲んでるね。」
仕切りの陰から、チラチラと隣を伺う道重。
一緒に覗き見る亀井も期待に目を輝かせているが、隅っこの久住は死にそうな顔をしている。
「…久住サン、顔色悪いヨ。どうしまシタ?」
異変に気づいたリンリンが肩を叩く。
「…いやぁ…。へへ、まあ…そんな日もあるよね。」
曖昧に笑うが、何を言っているかわからない。
すると、高橋たちのテーブルからがつんと大きな音がした。
「うわっ!!なんや、どうしたガキさん。」
「…あのねえ、今日という今日は、言いたいことがある!!」
- 155 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:29
- キターーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
大きな音は、新垣がテーブルを叩いたときのものだったようだ。
後輩達は揃って聞き耳を立てる。
「さっそく効いてるね!」
「ついに!ついにこの時が!!」
盛り上がる亀井たち。
久住は気が気ではない。
「…あれ、新垣さんに当たったのか…。」
ハラハラしつつ顔をあげると、今度はがしゃんと大きな音がした。
新垣が、仕切りの屏風を取っ払って仁王立ちしていたのだ。
…なぜか、後輩達の方を向いて。
- 156 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:30
- 「なっ…」
「こ、こっち!!?」
新垣の視線は驚くロッキーズを通過し、久住で止まった。
「小春!!!」
「ほわぁ!!!」
ヤバい、バレた。
先輩に薬なんて盛るんじゃありません!って、新垣ママに怒られる。
『私だからまだいいけど、愛ちゃんにやったら許さないよ!?』
って、鬼のように怒るんだ。
そんで高橋パパは、『まあまあ〜』って笑ってるんだ。
ああ麗しき夫婦愛。
…じゃなくて!!!
- 157 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:30
- 久住は即座に頭を下げた。
「ごごごめんなさいぃぃ!!小春はアフォなんで!一滴の半分がわからなくてごめんなさい!!!」
先に謝ってしまった方がいいと判断し、平謝りする。
しかし、予想に反して新垣は怪訝そうな顔をしていた。
「…一滴?何言ってんの。…だから、小春は人の話を聞かないとダメっていつも言ってるでしょう!この間だって収録の打ち合わせ、ちゃんと聞いてなかったの知ってるんだからね!?」
「うひ…え?」
新垣は確かに怒っていた。が、どうやら薬がバレたとかではないようで。
…つまり、単なる仕事の説教だった。
「まあまあガキさん、せっかくの食事大会にお説教せんでも。」
「いや、『大会』ってなんだよ!…じゃなくて!むしろこういうときに言うべきでしょう!」
「…スイマセン。」
のんびりと卵焼きを口にする高橋は、逆に怒られてしまった。
- 158 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:31
- 「とにかく、小春。若くても社会に出てお仕事してるんだから、ちゃんと人の話は聞くこと!わかってんの?」
「はいぃ!!気をつけます!!」
「…まったく、返事だけはいいんだから。」
良い子のお返事に呆れつつも、新垣は微笑んだ。
さすがみんなのお母さんだ。
「はいじゃあ次!カメ!…カメはもうハタチなんだから!いつも後輩が見てるんだってことを自覚しなさい!」
「えぇ!?絵里も!?」
「当ったり前だこのPPP!!!」
反論の余地すら与えず、新垣の長々とした説教が始まる。
彼女にとって何をおいてもまず言いたいことは、やはり仕事絡みだったようだ。
「…飲んでる時も仕事なんやなー。可愛いなあ。」
他人事丸出しの高橋は、相変わらずのほほんと食事を続けている。
しかし、その声はしっかりと新垣に聞こえていた。
「…愛ちゃんにも最後にガッツリ言わせてもらうからね。」
「…ハイ。お待ちしております。」
きつい視線を向けられ、高橋は身を縮めて酒を啜った。
- 159 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:31
- ******************
「…というわけだからさ。なんだかんだキツいことも言っちゃったけど、やっぱりみんなが大好きなのよ。だからね、みんなの愛する娘。は、みんなで守っていかないと!!明日からも全員で頑張ろう?」
「「「「はい!!!」」」」
新垣の説教は見事だった。
ダメ出しを受けたのは実質、久住と亀井だけ。
他のメンバーに関してはねぎらいと激励、そして最終的には深い愛情で締めくくられたのだ。
ジュンジュンに至っては鼻水を垂らして感動している。
「…ッズズズ…ワタシ…モーニング娘。でよかったデス…。」
「小春も!!小春もそう思うよ!!」
「うんうん、本当に新垣さんには一生ついて行きたいです…って、アレ?ウチらなんか忘れてませんかね…?」
涙を拭きながら、光井が呟く。
「ううん、何も忘れてなんかない…。むしろ、私たちは思い出したんだよ!本当の仲間が、どういうことかってね!」
どこか遠い未来方面を見つめてそう語る久住に、光井は曖昧に頷いた。
「…そ、そうですか…。いや、そうでなく…。」
- 160 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:31
- 未だ感動している後輩達を満足そうに見てから、新垣は自分の席へと戻った。
「…あぁ、うっかりしゃべりすぎた。喉乾いた。…ありゃ、氷溶けちゃった。」
「下に酒沈んでるで、ストロー使いな。ほれ。」
「ああ、ありがと。」
梅酒ソーダにストローを突っ込んで飲む新垣。
……そう、まだまだたくさん薬が入っているであろう、梅酒ソーダを。
「……!!!忘れてた!!!!!」
久住の顔色が緑色になった。
他のメンバーも、酒に口をつける二人を見て『ああ』と呟いた。
「…ガキさんの言いたいことって、結局あれだったのかな。」
「そうじゃない?ガキさんだしねえ。でも、愛ちゃんは?まだ何も言ってないみたいだけど。」
道重と亀井が話し合っている。
しかし、高橋に変化が起こるはずはなかった。
新垣が薬入りを当てたのだとしたら、もう一方はただの酒なのだから。
- 161 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:32
- 「…あ、あのー。新垣さんの告白って、アレで終わりですかね…?」
おそるおそる久住が口を挟む。
新垣の手の中にある酒は、まだ半分以上残っているのだ。
しかも、今まさに彼女は、その濃い部分をストローで飲んでいる。
だが、薬が大量に入っていることを知らない亀井は首を振った。
「…わかんないけど、あんなもんなんじゃないかな?そんなに効果が長続きする感じじゃないし。」
「そうだねえ。うーん、イマイチうまくいかなかったなあ。」
道重も頷く。
「…そうですか。…そうですよねえ。」
とりあえず、『第一段階で死ななくて良かった』と久住は思う。
まだ飲んでる最中ではあったが。
- 162 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:32
- 「…ガキさん、本当にみんなのお母さんやなあ。さすがサブリーダー。」
屏風の向こうでは、高橋がしみじみと話している。
「これでも、サポートに必死なんですぅ。…愛ちゃんにばっかり苦労かけらんないしさあ。」
「いやいや、ガキさんのが苦労してると思うけどなあ。」
眉間にしわを寄せて説教カマす新垣を思い出し、高橋はくすくすと笑った。
「…で、あーしには説教しないんか?」
どこか楽しそうに聞く高橋を見て、新垣は眉をひそめる。
「愛ちゃん?愛ちゃんはねー…。」
ストローに口をつけたまま、じっとその顔を見る。
やがて、その表情は少し恥ずかしそうにふせられた。
「…愛ちゃんは…もっと、私に甘えなよ…。」
「え?」
予想外の返答に、高橋は耳を疑った。
- 163 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:33
- 「相当甘えてると思うんやけど…え、こ、これ以上甘えて欲しいん?」
上擦り気味の声で問う。
「いや、なんか…やっぱりお姉さんだし、リーダーだし…私ももっともっと頼れる存在になって、できれば愛ちゃんを養えたらいいなあって…。」
「ブホっ!」
仕事の話と思ってうんうんと頷いていた高橋だったが、最後の一言で盛大にむせた。
「いやいやガキさん『養う』て!あーしはヒモか何かかい!」
「や、なんていうか、そのー…そうすれば…私の、ものに…。あ、あれ?何言ってんだろ…。」
うろうろと視線をさ迷わせながら困惑した様子の新垣に、最初に気づいたのはやはり久住だった。
「みみみ道重さん、向こうなんか変なこと言ってません?」
「……だね。おかしいな、薬の効果は終わったと思ったんだけど。」
高橋の方も、何を言われているのかわからない顔でぼんやりしている。
「…アカン、酔ってきた。多分幻聴が聞こえた。」
顔を両手で覆って、頭を振る。
自分にとって都合のいい発言は、脳内で『幻聴』として処理されるようだ。
損な性格である。
- 164 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:34
- 「…まあほら、あーしはめいっぱいガキさんに甘えてんで?こんなになんでも話せるのはガキさんだけやもん。」
「…うん…。」
そう言われて頷くも、新垣はどこか腑に落ちないような顔をしている。
「…なんやー?不満か?…ていうか、ガキさんやってもっとあーしに甘えてええんよ?肝心なときに一人で頑張ろうとするでなぁ。」
にこにこと微笑まれて、新垣はばっと顔を上げた。
「っ…私は!…ダメだもん、だって、だってさぁ…。」
歯切れ悪く言い淀む。
普段の彼女には見られない光景だ。
しかし、どこか余裕をなくした様子で、新垣は高橋を正面から見た。
「私は、愛ちゃんに隠してること、いっぱいあるもん!!!」
「!!!!」
ピシャァアアアン!!!
高橋は可哀相なくらい可哀相な表情になった。
出会ってかなりの月日が経つというのに、この仕打ち。
- 165 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:35
- 「…どうしましょう、高橋さんがスルメみたいな顔になってます。」
「どんな顔よ?それ。…でもまあ確かに今のは効いたよね…。」
久住と道重がじっと二人の様子を伺う。
先程の新垣の大声に気づいた他のメンバーも、二人を気にしはじめた。
「な、なあガキさん…。そそそんなにあーしに隠し事が…?例えばそのー…あーしが頼りないで言えんっていう、そういう…?」
高橋の動きがカラクリ人形のようにぎこちない。
「ううん。そういうんじゃなくて。もっと個人的な…私のわがままで…。」
「んん?…や、言いたいことようわからんけど…なんかあるんなら言ってや。ちゃんと聞くで。」
「……ううう…。」
だんだんと追い詰められる形になり、新垣は少しひるんだ。
だが、そんな葛藤をする表情には、どこか色気が漂っている。
真剣な高橋の目に負けるように、潤んだ瞳で叫んだ。
「だ、だから、えーと…わ、私本当はいっつも、愛ちゃんに絶対言えないようなことばっかり考えてるってことだよ!ずっと…ずっと前から!!」
「え……?」
- 166 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:35
- さすがに高橋も気がついた。
普段は決して見せない、甘い響きに。
それでも、過去の失敗経験が高橋にブレーキをかけていた。
というか、必要以上に疑い深くなっていた。
「い、言えないようなことって例えば…。そのー、あーしがキモいのでぶん殴りたいとか…?」
「な ん で だ よ !!!」
「いや、ほら…いっつもベタベタしたり『ガキさんはあーしの嫁』って言ったり、寝顔を舐めるように眺め回したりするから…。」
さりげなく本当に気持ち悪い告白を交えると、新垣はわずかに眉をひそめた。
「…そ、そんなことしてたの…?いや、まあでも、それを言うなら私だって相当キモいこと考えてるもん。」
「…え…ど…どんな?」
二人の周りは、今や完全に二人の世界だ。
メンバー全員がリーダーたちの会話に聞き耳を立てていたのだが、当人はそれどころではない。
「…愛ちゃんに…し、してみたいこと、とか…。」
「え、それって…」
薬が効いているのか酒の勢いなのか、焦点が定まらない。
それでも、じっと高橋を見つめる視線は十分に熱っぽかった。
- 167 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:36
- 「き、キス…とか…?」
「…っ…!!?」
この期に及んで疑問形にするあたりがとてもヘタレらしい。
しかし高橋の心臓には、ダイレクトな衝撃を与えられたようだ。
テンパりMAXなせいか、デビュー当時のびっくり顔になっている。
そしてその頃、隣のテーブルの後輩達も若干テンパっていた。
「…き、キスってアレっちゃよね。魚の…。」
「そ、そうそう、天ぷらにするとおいしい…。」
田中と亀井が、ぎこちなく顔を見合わせる。
こちらも積み重なった失敗経験のせいで、思いっきり直接的なセリフまで死亡フラグに感じられてしまうようだ。
「みんな、しっかりして!現実受け止めて…!」
道重の激励に、一同は困惑気味に頷く。
屏風の向こうでは、誰よりも困惑しているであろう高橋が、めまぐるしく思考をめぐらせていた。
- 168 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:36
- ―これはアレか、ドッキリか。
そう思うとメンバー全員揃うとか思いっきりアヤしいで。
はっ!!で、でもそしたら、照れて逃げるとかカッコ悪いやん!
ここはひとつ、逆に強気に出てびっくりさせるという手も…。
ああ、しかしどう見てもドッキリちゃうな。だいたい、カメラ入るならみんなもうちょい緊張感あるやろし。
カメなんかほとんどスッピンで眉毛ないで。眉なしはあかんやろ。
…あ、だとしたらコレ、夢か?めっちゃリアルなんやけど。
でもまあドッキリにしろ夢にしろ、こんなチャンス逃すのは死ぬほどもったいない!!
脳の普段使わない部分までフル活用し、高橋は考えをまとめ上げる。
そして、震える声で告げた。
- 169 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:37
- 「じゃあ、キキキ、キス、する…?」
「ふえっ!?」
自分から言い出したくせに、驚いた新垣の声は思い切り裏返っている。
「ほやって、ガキさんしたいって思ってたんやろ?…なら…し、しても…」
「え…こ、ここで?」
「う、うん…」
「「「「ここで!!?」」」」
むしろ焦ったのは隣のメンバーだった。
「な、そんないきなり…もう愛ちゃんったら大胆!絵里困っちゃう!」
「お、落ち着いて絵里!アホなこと言ってる場合じゃないよ!」
狼狽する亀井と道重。箸を持ったまま椅子から半立ちになっている。
「ど、どうします!?二人にしてあげますか!?」
珍しく気を使った小春を、田中が手で制した。
「待った!…大丈夫、あの二人…うちらのことなんか見えてないけんね!」
悲しい事実を宣言すると、動揺していた一同も黙って着席した。
「写メ撮るカー。」
「記念写真イイネ。愛のメモリーよ。」
リンリンとジュンジュンは、マイペースに携帯の準備をしている。
- 170 名前:9.フラグか否か。 投稿日:2009/02/17(火) 01:37
- 「えっと、じゃあ、い、いくで…?」
「お、おう…」
なんとも色気のないやりとりだ。
見つめ合う二人の目は、むしろファイティング体勢である。
「…ちょ、目ぇつぶってや。き、緊張するがし」
「わ、わかった…。」
ぎゅっと目をつぶる新垣。
その顔を至近距離で見ただけでも失神しそうではあったが、なんとか気を落ち着かせて頬を寄せた。
柔らかそうな唇に一瞬目を奪われる。
ぼんやりした頭のまま、高橋の方からそっと唇を合わせた。
- 171 名前:オースティン 投稿日:2009/02/17(火) 01:39
- いつも呼んでくださる皆様、ありがとうございます。コメント大変嬉しいです。
なかなか進まない二人ですが、ようやく周囲の努力が実を結びつつあります。
…っていうのすら嫌なフラグかもしれませんが、最後までお付き合いください。
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/17(火) 01:46
- キタ━(゚∀゚)━!
おぉ、ついについにですか!?
ってか横のメンバーのテンパリ具合も凄いww
- 173 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/17(火) 02:45
- やべー!!!!!
続きまじで期待して待ってます!!!\(^O^)/
- 174 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/17(火) 06:31
- 何?ついにくる?どおーなるんですかーー
こんな所でとめるなんて生殺しorz
- 175 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/17(火) 20:59
- 飲んだのがガキさんで良かった。じゃないと話が進まない...
と思ったら、ここで止めるの〜!!早く続きが読みたいです。
- 176 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:29
- 触れた唇は、微かな熱を残してすぐに余韻になった。
「………。」
触れたのは、ほんの一瞬。本当に一秒足らずだ。
少しだけ名残惜しそうな表情を残して、高橋は身を離す。
「…あ、なんかホントにちゃお的なキスやね。」
「純情だなあ…。」
中学生のファーストキスのような雰囲気に、過剰にドキドキしていたメンバーは少々安堵した。
さすがアイドルグループのリーダーとサブリーダーだ。
キスもレモンのような香りがするに違いない。
ところが。
恋はときに急発進だった。
発熱したようにぼんやりしていた新垣が、我に返って視線をさまよわせる。
そして、緊張で喉が渇いたのか、プチドラッグてんこもりの梅酒ソーダを一気飲みしたのだ。
「あ…!」
久住はヤバいと思った。
でも黙っていた。
純粋に、怒られるのが嫌だったのだ。
- 177 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:29
- 「…愛ちゃん…。」
「ん…?」
新垣が少々危うい目つきになる。
余韻に浸って幸せそうな高橋におかまいなく、思い切り顔を近づけて呟いた。
「…足りない…。」
「え!?…!!」
もう一度、不意打ちのように唇が重なる。
が、今度は触れるだけで済まなかった。
「!!んっ…んー…ぅ」
高橋の頬を両手でしっかりホールドし、上から体ごと押さえ付けるキス。
苦しそうに口を開けた高橋に、新垣はさらに深く侵入した。
「ふ…んんっ…」
唇の端から吐息が漏れる。
それでも、何かに憑かれたように、口づけは止まらなかった。
- 178 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:29
- 絶対に起こりえない天変地異に、隣の席も大混乱だ。
「かかかか亀井さんどうしましょう、舌がinしてます…!」
「みみみみ道重さん、どうしていいか全然わかりません!!助けてれいな!!」
「いやいやいや、れなにどうにかできるわけなかよ!!」
「逃げないで…」
「え、だって、…ん…」
熱のこもった目で囁き、壊してしまいそうなほど強く求める。
肉食獣を思わせる貪欲さに、高橋は息もできなかった。
「えーとえーと、こういうときはどうするんだっけ絵里!?」
「あ、あー…手のひらに3回、人という字を…」
「ああ、人と人が支え合って、人っちゃね!?」
もうわけがわからなかった。
リーダーとサブリーダーは遠くに逝ってしまわれた。
ロッキーズも、先輩としての中枢機能を奪われた。
- 179 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:30
- それより下のメンバーは、なんだか逆に落ち着いてしまった。
「…意外と新垣さんが攻めるんだねえ。」
「な、なんかやらしいけど、めっちゃかっこええなあ…。」
「オトナのキッスね。…あ、バナナパフェひとつお願いシマース!」
「ジュンジュン、食べてる場合違うヨ!ムービー撮るヨ!」
リンリンは抜け目がなかった。
新垣の舌攻めは今もなお続いており、高橋の目は泣き出しそうに揺れている。
「ん…んー…」
「…っは…」
崩れ落ちそうになる体を支えるだけで精一杯だ。
別人のような熱い視線。
絡まる舌までもが、ひどく熱く感じた。
はじめての感触。
はじめての熱。
「愛ちゃん…」
「………ん…」
唇が離れた。
うっとりと見つめる視線。
- 180 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:30
- …だったのは新垣だけで、高橋は腰を抜かして放心状態だった。
『目の前にいるこの人は誰やろか』
多分、そう思ってる顔だ。
あれだけ気持ちを押し隠してきた新垣だから、無理もないだろう。
その積もった想いが、今は溢れて止まらない。
言葉にならなくても、目が『好き』と語っている。
今の新垣は、そんな風に見えた。
「愛ちゃん……私の本当の気持ちを聞いても、嫌いにならない…?」
もう、逃げない。
そんな表情で、じっと高橋を見つめる。
気持ちを、体ごとぶつけてしまったのだから。
それを感じた高橋も、何かを悟ったように頷いた。
「…あ…。う、うん…。絶対、ならへん。」
さっきよりは少しだけ落ち着いて、最後の告白を待つ。
盗み聞きするメンバーも、パニックをなんとか抑えて待った。
久住は、突然新垣の死が訪れたりしないように祈って待った。
リンリンは、一切の手ブレなくムービーを撮りながら待った。
ジュンジュンは、運ばれてきたばかりのバナナパフェにうっかり夢中だった。
- 181 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:31
- 新垣は、ゆっくりと、しかしはっきりと告げた。
「…私…私ずっと、愛ちゃんと×××したいと思ってたんだよ!」
「!!」
「「「「!!!!!!!」」」」
なにか、年齢制限的用語が聞こえた気がした。
高橋の目が今にも飛び出そうだ。
「ちょ、え、ガガガガキさん?」
驚きすぎて噛みまくるも、焦る気持ちを整えて聞き直した。
「ごめん、なんか聞き間違えたっぽいからもっかい言うて?」
新垣は焦点の合わない表情のまま、それでも同じ言葉を繰り返す。
「…えっと、だから…。×××したい…んだけども…。あの、本当は私いつも、愛ちゃんのこと××て×××××たり愛ちゃんが×××××たらどんなかなって考えたり、愛ちゃんの」
「うわわわわガ、ガキさんタンマ!!」
ちっとも聞き間違えてなかった。
むしろもっとひどかった。
- 182 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:31
- 「ガキさん、あの、ちょちょっと落ち着こうや!なぁ?」
さすがの高橋も焦っている。
「…なんで?愛ちゃんの××××、きっと可愛いと思うんだけど、私」
「わあ!わあ!アカン!!あーしそんなんせーへんて!!」
見たことのない顔で手をバタバタ振っている。
しかし、焦ったのは高橋だけではなかった。
「ちょ、7期と8期ー!!耳塞いでぇ!!」
まさかの放送禁止用語続出に、亀井は高らかに号令を出した。
みんな素直に、耳に手を充てた。
「あーあーあー、愛佳はなんにも聞こえてへんですぅ!!」
「小春も×××とか××××だなんて聞こえませんでしたぁ!!」
「いやそれ聞こえてるし!!」
道重に突っ込まれて久住は口を塞ぐ。
「アーアー、聞こえたケドよくわからなカタヨ。」
「アーアー、バナナおいしくて聞いてなカタヨ。」
なんだか楽しそうに耳を塞ぐチャイニーズ。
「いや、ジュンジュンは聞いててもいいっちゃろ。一応大人やけん。」
やけに可愛い顔でアーアー言っているジュンジュンの肩を、田中が叩く。
- 183 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:31
- 「…愛ちゃん見てると、なんか私おかしくて。なんでこんなこと考えちゃうのかわかんないけど、ドキドキして…。どうしていいか、わかんなくって。愛ちゃんに隠し事してるみたいで、なんか…嫌だったんだ。」
ふう、と息をついて、新垣は目線を落とした。
言いたいことが言えたはずなのに、悲しそうだった。
「…ガキさん…」
自分に身を預け、もたれかかる新垣を抱き止める。
どう伝えよう。
ここまで気持ちを晒してくれた彼女に、どう応えよう。
そう思いを巡らせる高橋の体に、思い切り重力がかかった。
「…って、重っ!!ガキさん、ちょ…あ、あれぇ?」
新垣は、高橋の腕の中で意識を無くしていた。
というか、寝ていた。
- 184 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:32
- 「ななななんちゅーありがちな!!いや、そんなことよりちょ、ガキさん!大丈夫か!?そんなに飲んでへんやん!!なぁ!!」
焦る高橋。
ずるずるとのしかかる体をどうにもできず、必死で体を起こそうとする体勢のまま、隣の席に向かって叫んだ。
「なあ!!これドッキリか!?ドッキリなんやろ!?」
その言葉に、後輩達は毛を逆立てて一斉に取り繕う。
「そ、そんなドッキリとかなわけないじゃないですか!だいたい絵里スッピンですよ?眉毛ないんですよ?」
「そうそう、それに多分、ガキさんのさっきのアレは本心だと思うの!」
「いや〜、愛ちゃんはガキさんに愛されててうらやましいっちゃね!!」
「ホント、素敵なメンバー愛って感じしはりましたよ!」
「ムービーバッチリデース!」
「バナナおいしかたヨ。」
- 185 名前:10.予想の斜め上なのか下なのか 投稿日:2009/02/19(木) 01:32
-
誰一人、新垣につぶされている高橋を助けようとはせず。
なるべく二人から遠ざかる格好で見守るメンバーの目は、ただひたすらに生温かった。
実行犯の、久住を除いては。
「…新垣さん、寝てるだけですよね?死んでないですよね?」
「勝手に殺すな!めっちゃ息してるし!ていうか超寝てるし!!いや、じゃなくて起こすの手伝えー!!」
新垣の下で元気にジタバタする高橋を見て、久住はほっと一安心するのだった。
- 186 名前:オースティン 投稿日:2009/02/19(木) 01:33
- 少しだけ更新です。さすがにひどい寸止めでした。すみません。
さらにひどい内容ですみません。
とはいえ今後エロ展開とかはないので期待しないでください…。
- 187 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/19(木) 06:39
- 清純なガキさんが…
早朝から大笑いしましたw
愛ガキに幸あれ!
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/19(木) 18:50
- 伏せ字の部分がめっちゃ気になるw
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/19(木) 18:54
- リンリンが撮ったムービー見てー
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/19(木) 21:17
- ガキさんはむっつり派でしたか…
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/19(木) 22:04
- リンリンのムービーを素に戻った時に見たら、どうなるのだろう?
砂ガキさんではなく、えらいことになりそうだ(笑)
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 22:42
- 更新楽しみにしてます
- 193 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:44
- 「…どうなっとんのやろか。」
タクシーの中、高橋は呆然とつぶやく。
新垣はいまだ深く眠っていて、隣の高橋にもたれ掛かることで、なんとか座位を保っている。
梅酒ソーダ一杯でベロベロになって、放送禁止用語たくさんぶちまけて。
いくら飲み慣れてないからとはいえ、ここまで弱いはずはないのだけれど。
しかも、後輩達は『観たいテレビがある』とか『眉毛ないから』とか、わけのわからない理由をつけて帰ってしまった。
仕方なく、こうしてタクシーに押し込んだわけだが。
「…ガキさん起きてやぁ。」
普段しっかりものと称される同期は、一向に起きる気配がない。
「……見た目より重いんやで、アンタ…。勘弁してや…。」
ぽつりとつぶやいて、ため息をつく。
―それにしても。
- 194 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:44
- さっきのあの言動は一体なんだったのだろう。
いきなりキスしたいと言ってみたり、それ以上にすごいことをはっちゃけたり。
…好き、とは言われていないけど。
あれじゃまるで好きだって、言われたみたいだ。
普段の彼女からは想像もつかない表情で、激しくキスを求められたり。
その感触を思い出して、頬が一人でに熱くなる。
―ああまでされて、ただの興味本位だった、とかだったら嫌やなあ。
そう思いながら、どこか苦しげにうつむく頬をそっと撫でた。
*************
- 195 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:45
- 夢を見た。
隣で笑っていたはずの彼女の顔が、思い詰めたように曇っている。
私は、心配になって肩に手を延ばす。
その手はすぐに振り払われた。
『キモいよ。』
…なんで?
『だって、私ら…』
まさか、バレた?
『ただのメンバー同士やん』
冷たく放り出された気分だった。
そういう、夢だった。
************
- 196 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:45
- 「……あれぇ…。」
新垣が目覚めたのは、高橋の家だった。
彼女の匂いを普段より濃密に感じる。
どうやらベッドに寝かされていたようだ。
「あ、起きた。おはよう。」
「うう…なんかアタマ痛い…。」
高橋はベッドの脇に座り込んで、がちゃがちゃとゲームをしていた。
「…なにやってんの。」
「レベル上げ。」
「ほお…。いや、そんなことより。」
新垣はずるずるとベッドの上を這うように、高橋に近づいた。
「…今何時?私、もしかして倒れた?」
「今は夜の11時半くらい。…で、倒れた、というよりは…突然爆睡、みたいな?」
「えー…」
腑に落ちない表情でじっと高橋を見る。
見つめられた方は少し居心地悪そうに目を反らすと、視線から逃げるように背を向けた。
「…疲れてたんやろ?一日仕事して、飲んでるときまでみんなのために説教してさ。」
「えっ?説教?」
心底驚いた顔。
とぼけている様子はない。
- 197 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:46
- 「…なん、そこから記憶ないんか?完全にシラフやと思ってたのに。」
「え。えー…。ごめん全っ然覚えてない。…ていうかあたし、なんかした?変なこと言わなかった?」
「…いやぁ。」
なんとなくそんな気はしていたけれど
やっぱり覚えてないんですか。
とりあえずの言葉も出ずに押し黙ると、新垣が驚いて高橋の肩を揺すった。
「ど、どうしたの?スルメみたいな顔になってるよ?」
「あ、いやいや…ってスルメってなんや。」
なんとか意識を保って首を振る。
「…あたし、やっぱりなんかしたんでしょ?もしかしてひどいこととか言った?」
「ひ、ひどいことなんて言ってえんよ」
不安げに見つめる視線に思考が搦め捕られそうになる。
本当のことを言うべきか、隠そうか。
ああでもきっと、自分の嘘なんてすぐバレてしまうに違いない。
長い付き合いなのだから。
考えて、高橋は観念した。
「…えーと。キス、された。」
- 198 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:46
- 視線を外す。
返事がない。
そっと、様子をうかがってみる。
なぜか新垣は怖い顔をしていた。
「誰に!!?」
「はっ!?いやいやいや、誰ってアンタや!」
「は!?あたしぃ!!??」
おかしな会話になってしまった。
新垣は、高橋が自分じゃない誰かにキスされた、と思ったらしい。
「してないよ!さすがにチューしたら覚えてるでしょう!!」
「その言葉そっくり返したるわ!!だいたい何であんなにしたのに覚えてえんの!?」
思わずそう言ってしまってから、高橋はハッとして自分の口をふさいだ。
「…あんなにしたって…。そ、そんなにしたの……?」
「いやあのー…。そ、そんなにやないよ…ちょ、ちょっとな?ちょっとやよ?」
動揺が顔に溢れ出ているので、なんのフォローにもなっていない。
新垣はますます不安そうな顔をした。
- 199 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:47
- 「……あのー、記憶をたどったところ、メンバー全員でご飯を食べたのが最後のメモリーなんだけども。…そ、そこでしたってこと?」
「あ、いえ、まあ…ついたてがあったから…。ていうかみんな食べるの夢中で見てえんかったわ。うん。」
「そ、そう…。」
実はムービーまで撮られていたことは、なんとか隠した。
ていうかバレたら多分、砂ガキさんでは済まない。
「…………。」
「…………。」
気まずい沈黙。
二人とも、聞きたいことが何一つ聞けなかった。
高橋は、
『覚えてないかもしれんけど、なんでキスしたん?』
『もしかしてあたしのこと好きなん?』
の二点。
新垣は、
『私、キスしたときなんて言ってた?』
『愛ちゃん、どう思った?』
の二点。
二人の脳内に、ぐるぐると『最悪の返答パターン』がうずまく。
お互いのことになるとどこまでもネガティブだった。
- 200 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:47
- 身動きが取れない不自由さに困り果ててうつむくと、高橋はふとジーンズのポケットに目を止めた。
そこには、先程後輩達と別れたときに、亀井からあずかったものが入っている。
タクシーに新垣を押し込んだ直後。何かを思い出したように走ってきた亀井が、高橋の手に握らせたのだ。
『あのー、ガキさん連れて帰った後でなんか困ったことがあったら、この香水つけてみてください。』
『なん?これ。』
『えーと、なんか幸せになれる香りのアロマです。』
『…へー。ようわからんけどありがとう…。ていうか今困っとんのやけど。絵里一緒に来てや。一人やとガキさん重い。』
『ダメですってば。眉毛描かなきゃいけないし。』
『…ずっとなかったやん。』
で、結局誰も手伝ってくれなくて、今に至るわけだけど。
そんなことはもうどうでもいい。
…とりあえず、使ってみよう。
気休めでもなんでも、気分転換くらいにはなるかもしれない。
なにやら頭を抱えて悩んでいる新垣の目を盗んで、高橋は香水の蓋を開けた。
甘い香り。
確かに、女の子に人気の出そうな香りだ。
- 201 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:47
- 「………わ」
ふわっと、体ごと宙に浮くような感覚に襲われた。
頭の芯が揺れる。
「………愛ちゃん?」
異変に気づいた新垣が、ベッドから降りてきてその顔をのぞき見る。
どこか遠くを見るような目に、不安そうに肩を揺する。
「え、なに?どうしたの?」
正面に回り込んだ新垣を視線でとらえて、高橋は小さく呟いた。
「ガキさん、あたしにキスしたかったん?」
「……え?!」
予想外の言葉に声が裏返る。
「なっ、なんで?あたし、やっぱりなんか…」
「あたしにキス、してみたいって。酔っぱらってたけど言ってた。」
「!!!!!」
「………あ。…あ、あれ?」
そこまで言って、高橋は我に返った。
自分の口走った言葉に、自分で驚いている。
- 202 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:48
- 一方新垣は、これほど衝撃的なことを言われているのに、全く記憶がないことに混乱していた。
しかも、『キスしてみたい』というセリフの内容は真実だ。
「そ、それはあの、ごめん、覚えてないけど…多分酔ってたからであって…そういう、変な意味じゃないよ?」
こんな言い訳は通用しないと思いつつも、必死で取り繕う。
だが、そんな苦しい言い訳であっても、高橋は正直に落ち込んだ。
「そ、そうよな…。変な意味か…。そうだね…。」
「うん……」
再び沈黙。
向かい合ったまま言葉を失った新垣は、話題を変えるべく高橋の手元を見た。
「…あ、そ、それなに?香水?」
「え?ああ、これな、なんかさっきカメがくれたんやけどうわ!!」
「あっ」
新垣に手渡そうとしたソレが、手を滑らせた高橋の指先から落ちていく。
少し緩んでいたふたが取れ、フローリングの床に水たまりを作った。
「ちょ、わぁ!!なななにしてんの愛ちゃん!」
「ご、ごめんなんか拭くもの持ってくるから…」
- 203 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:49
- 立ち上がろうとする高橋と、慌てるだけの新垣と。
その二人を、甘い香りが捕らえた。
「……!」
「……。」
ぐらぐら、ぐらぐら。
頭の芯まで甘くなる。
立ちかけた高橋はその場に座り込む。
新垣も、不思議と落ち着いた気持ちで高橋に向かい合った。
頭のしびれは続いているけれど、嫌な胸のざわざわはない。
目が合っても、気まずくもない。
真っ白な光の下にいるように、素直な気分だった。
「…愛ちゃん。」
「…え?」
会話のない会話がどこまでも続きそうな雰囲気を先に破ったのは、新垣だった。
- 204 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:49
- さっき見た夢や、今まで何度も頭の中で繰り返したやりとり。
いつも『最悪のパターン』ばかりを思い描いていたけれど、ふと気がついた。
こうして見つめ合う彼女の顔は、きっと自分と同じ表情だ。
長い付き合いだもの。
本当は心のどこかで思ってた。
…お互い、同じ気持ちなんじゃないかって。
「決めた。私、逃げるのやめる。」
「………。」
何かを言うことすらためらわれ、高橋は黙って頷いた。
新垣は、観念したように笑う。
「……私、愛ちゃんが好きだよ。…いや、これじゃ伝わらないかな…。もう、すごい好き。多分、愛してるってことだと思う。」
「………え」
- 205 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:49
- あまりにもストレートに言葉に出されて、高橋は口をパクパクさせた。
その様子に少し眉を下げ、あきらめが混じる口調で目線を落とす。
「やっぱり、キモいって思うかな?ごめんね。」
あっさりと何かを振り切るような言い方が、妙に遠く思えて。
高橋は思わず声を荒げた。
「バカ!」
「えっ!?」
体の芯からあふれ出しそうな思いに耐えきれず、勢いよく新垣を抱きしめる。
こんなにもストレートに気持ちをぶつけてくれるなんて、思ってもみなかった。
逃げ道を作ってばかりだったのは自分で、ずっと苦しめていたのに。
「…キモいわけないやん。むしろ、キモいのはあたしやよ。好きすぎてヤバい。」
ためらいなく抱かれる力の強さに、新垣は言葉を失う。
- 206 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:50
- なんて、簡単なことだったんだろう。
互いの気持ちを探り合う必要なんてない。抱きしめられるだけで、どんなに愛されているか知ることができたのに。
「…ごめん。ずっと逃げててごめん。…好き。愛ちゃんが好き…。」
「うん。…嬉しい。すごい嬉しい…」
幸せそうにつぶやき、くすくすと笑い合う。新垣は少しバツが悪そうに、抱きしめる腕に力を込めた。
「私、もしかして昨日も好きって言った?」
「…ふふ、言ってへんよ。ていうか、好きより先に『チューしたい』って言ったんよ?カゲキやなあ。」
「…だ、だって覚えてないんだからしょうがないじゃん…。」
消えそうな声でそう言うと、上機嫌の高橋は押し倒すように体重をかける。
「…なあ。キスしよ。」
「えっ!?い、いきなり?」
うろたえる新垣に、呆れ笑いで返す。
「昨日のガキさんの方がよっぽどいきなりやったで?」
「な…だ、だから知らないって!!」
「あーもう、可愛いなあ!」
- 207 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:50
- えい、とさらに体を押すと、バランスを崩した新垣は床にがつんと倒れ込んだ。
「…いったぁ!!ちょ、愛ちゃん!」
「へへ、ガキさん顔真っ赤。」
完全に高橋のペースかと思われたが、床には危険物質が放置されたままだった。
…例の薬である。
床に転がった新垣に、ダイレクトにその香りが降り注いだ。
「………愛ちゃん。」
「え?」
新垣の目の色が変わる。
獣、いや、むしろケダモノの目だ。
「…×××しよう?」
「んが!!?」
引き寄せる力の強さはケタ違い。
あっという間に高橋の方が押し倒される形になる。
「ずっと我慢してたんだから…。ねえ、愛ちゃん?」
「ちょ、そっちこそどんだけいきなりなん!!?いやいや、ん、あっ…」
非力な高橋は強引さに負けるように、ずるずると新垣に抱きすくめられていった。
- 208 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:50
- ************
一方その頃、道重宅では。
「うまくいったみたいで何よりだねえ…」
「うん、本当に…。長い道のりだったよ…。」
亀井が感嘆の声をあげるその目の前には、小さなスピーカーが置かれている。
『…ガキさん、待って、ホントに…あの、心の準備が…』
『やだ。待てない。』
『やっ、あぁ…』
スピーカーから流れるは、今まさにアレな展開になっているリーダーとサブリーダーの声だ。
「こんなこともあろうかと、こんこんにびっくりどっきりメカを借りといてよかったよー。愛ちゃんのバッグにマイクつけただけで、音質もバッチリ!」
「うんうん、グッジョブだよ絵里!最後まで成り行きを見届けるのが、くっつける側の義務だもんね。」
道重が親指を立てる横で、田中が少々心配そうな顔をしている。
「ねえ、でもこれ犯罪やなかと?盗聴やん。」
「なに言ってんのー。メンバー愛だよう。」
へろへろと笑う亀井には悪気も悪意もない。
「…し、しかもなんかヤバい展開なっとるし…。」
- 209 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:51
- スピーカーからは、リーダーの嬌声が漏れ始めている。
やらしいことこの上ない。
「大丈夫、こういう展開を予測して、ちゃんと18歳未満のメンバーは家に帰したわけだし。」
そう。
道重宅には、ロッキーズの他にジュンジュンも来ていた。
「…まああのー、れなも相当ドキドキしよるっちゃけど。なんか隣の人の様子がヘンやけ…。」
「ん?」
言われて道重が顔を上げると、それまで平然としていたジュンジュンが田中にぴったり寄り添って正座していた。
「…どうしたジュンジュン。顔真っ赤だけど。」
「…こ、困るデス。アノ、なんか。変デス。」
要領を得ない口調に、田中の方が首を傾げる。
「ヘンなのは見ればわかるっちゃけど。なに?恥ずかしいの?」
- 210 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:51
- キスは平気で見てたくせに、と言う田中を見る目がやっぱり変なので、道重がぽんと手を叩いた。
「…ああ、わかった。」
「なに?」
亀井が聞くと、道重は隣の部屋を指差した。
「れいな、私の部屋を解放するから、ジュンジュンの話を聞いてあげてよ。きっと何か相談ごとだよ。」
「………おお。」
田中はしばらく考えて、ジュンジュンの手を引いた。
「よし!れなの出番やね!先輩がなんでも聞いてあげるけん!」
「…ホントデスカ。ありがとございマス!」
意気揚々と隣の部屋に消える二人を、亀井は黙って見送る。
そして、パタンとドアが閉まるのを確認すると、ぽつりと口を開いた。
「…さゆ、騙したね?」
「……なにが?」
道重は『なんにも知りません』という顔で微笑む。
しばらくすると、隣の部屋から田中の悲鳴とかジュンジュンの変な笑い声とかいかがわしい声とかが聞こえてきたが、二人は完全に無視を決め込んだ。
- 211 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:51
- 「…さて、お茶でも飲みながらリーダーたちの行方でも見守ろうか。」
「そうだね!あ、私煎餅持ってきたよ。」
その晩、二人は遅くまでメンバーの『見守り』に徹した。
亀井は睡魔に負けてあっさり撃沈したものの、道重はメンバー愛とプライドを全力で発揮し、見事に朝まで二人の様子を聞きとどけたのだ。
…彼女のカウントによると、サブリーダーの暴走に満ちた行為は、実に11回までに及んだという。
********
- 212 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:52
- 次の日。
娘。の楽屋は、昨日の今日で盛り上がっていた。
「じゃあ、うまくいったんですね!?」
「うん!これで一安心だよー。私たちのおかげだねマジで。」
誇らしげに語る道重。若干眠そうではあるものの、満足げだ。
「クスリ役に立ってよかったデスヨー」
リンリンも喜んでいる。
「…あれ、田中さん、どうしはったんです?」
「いや、うん、ちょっと…。」
微妙に疲れた表情の田中は、元気がない。
「……そういえばれいな、あれからどうなったの?」
声をひそめて尋ねた亀井に、泣きそうな声で田中が返す。
「…なんかすごいエロい顔で脱がされたっちゃけど、『胸なくてカワイソウ』ってジュンジュンのテンションだだ下がりで…代わりに一晩中胸揉まれた…。大きくなりようって…。」
- 213 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:52
- 「…そ、それは…。えーと、絵里何て言ってあげたらいい?一線越えないで済んでよかったね?それとも残念だったね?」
「どうでもよかったい、そんなん…」
ふて腐れたようにだらりと床に座り込む。
心なしかその胸は大きくなっているように見えたが、亀井はあえて何も言わなかった。
「でも今日はめずらしく、新垣さんたち遅いっすねえ。」
「ラブラブ過ぎて起きれなかったとかね。」
久住たちがほのぼのとそう話していると、タイミングよくドアが開いた。
「あ、来たよー。」
「おはようございま……」
全員がにこやかに迎え入れようと振り向いた瞬間。
見慣れない生き物がそこにいた。
「おはょぅ……」
- 214 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:52
- 我らのリーダー、高橋だ。
が、その体はカサカサにやせ細り、今にも死にそうなほど顔が青白い。
しかも体が痛いようで、歩き方も明らかにおかしい。
それなのに何故か顔だけは満面の笑みだった。
「たたた高橋さーーん!!?どうしたんですかその…なんかもうスルメ通り越して、のしイカみたいなお姿は!?」
「ははは、何を言っているのかな小春は?スルメはおやつに入らないがし」
「いやいやいや何言ってんのかわかんないのは高橋さんですから!!とりあえずどっか座ってください!倒れる前に!!」
その様子を少し離れて眺める亀井は、首をかしげた。
「あ、あれ?てっきり幸せ全開な感じで来ると思ったんだけど…。」
「…そりゃ一晩で二桁いったらああなるよ。でも見て、顔はものっそい幸せ全開だよ…。」
「ああ、ホントだ…。って、なんか悟りの境地みたいでコワいよ。」
死にそうな体にへばりついているアルカイックスマイルは、微妙に気持ち悪かった。
- 215 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:53
- 「おはようございまーす!!」
「あ、ガキさんだ。」
「めっちゃ元気だね。」
高橋とは打って変わって、こちらはツヤッツヤのいい顔だった。
まるで高橋の生気を根こそぎ吸収したような元気さである。
「あっ、にいがきさーん!リーダーが死にそうなんですけどどうしたんですか?ていうかどうしたらいいですか?」
事の顛末までは知らない久住に泣きつかれて、新垣もさすがに『ヤバい』という顔になる。
「え、えーと…。ちょっと、つ、疲れてるんじゃないかな?ほら、愛ちゃんドラマとかいろいろあったしさ!」
「ええー、でもこんなの見たことないっすよー!ねえ高橋さぁん、何があったんですか?新垣さんになんかされたんですか?」
微妙に核心をついた一言に、思わず新垣は目をそらす。
高橋は、釈迦のようないい顔で親指を立てた。
- 216 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:53
- 「小春、気にしないで…。あっし、今最っ高に幸せやで!二桁だろうが三桁だろうが、受けて立とうやないか…。」
「だから意味わかんないっすよーー!!」
一方、薄々状況を把握した光井たちは、できるだけ二人から離れて声を落とした。
「…なぁ、もしかして可愛くちゃおってる二人のままがよかったんとちゃう?高橋さん、死んでまうよ。」
「元気出るモノとかあげてみましょうカ。高橋サンに。」
「リンリンそれイイね。スッポンとかネ。」
「……いや、それあんまり解決にならへん気がする。」
そして、声を潜める後輩達の輪に、ロッキーズも加わった。
「と、とりあえずくっつけちゃったのはうちらだし、もう後には戻れないよ…。」
「じゃあとにかく応援!応援しよう!!」
「わかった!応援っちゃね!!」
横たわる高橋と、うろうろする久住。
その二人の周りを、後輩達は手をつないでぐるりと取り囲んだ。
- 217 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:53
- 「わっ」
「な、なに?」
「いくよ?せーの…」
「「「「「「がんばれがんばれリーダー!!がんばれがんばれ愛ちゃん!!!」」」」」」
かけ声は勇ましく、一同は輪になったままぐるぐると回り始める。
「よくわかんないけどすごい楽しそう!私も入る!!」
「よし小春おいで!」
久住も加わり、輪は7人になった。
「な、なにこれ?新しい宗教?」
輪からはじかれた新垣は、困った顔で見つめるしかない。
「絶倫サブリーダーのエロガキさんは黙っててください!!」
「リーダーのいのちだいじに!!」
「!!!!ちょ、どういう意味!?ていうかカメにシゲさん、何か知ってんの!?ものすごい聞き捨てならないんだけど!!」
あからさまに動揺する新垣と、回る愉快な仲間達を眺めて、高橋はさらに幸せそうな顔を浮かべた。
- 218 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:54
- 「あぁ、なんか妖精たちの声が聞こえる…最後の最後で超幸せやったなぁ、あっしの人生…。」
「いやあぁぁ!!愛ちゃんの魂が!!なんか昇天しかかってるーー!!!」
「ミンナ幸せでよかったネー」
「ミンナ仲良しで何よりネー」
「…ほんまにこれでええんか…?」
モーニング娘。総勢9名。
リーダーとサブリーダーの恋は見事に成就し、メンバー全員の結束も何故か強まったのであった…。
【完】
- 219 名前:11.超展開の頂点 投稿日:2009/03/10(火) 21:54
- 《おまけ》
「…吉澤さん、リンリンが送ってくれたこのムービー、なんとかDVD化できないっすかね?」
「よし、またこんこんあたりに頼んでみよう…。シゲさんが盗ちょ…いや、見守りをしてくれた音源と合わせて商品化すれば、当分食いっぱぐれないべ。」
ゲヘゲヘと悪い笑いを浮かべながら密談する小川と吉澤であったが、紺野による『出どころがバレたらガキさんに殺されるよ』の一言で、泣く泣く商品化をあきらめたという。
【本当に完】
- 220 名前:オースティン 投稿日:2009/03/10(火) 21:56
- 一応完結です。最後の最後でお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。
いつも書き込み下さった皆様、見ていてくださった皆様、ありがとうございました。
短編程度とは思いますが、あまった分で何か書けたらと思います。
全てにお応えすることはできないかもしれませんが、読んでみたいものなどありましたらお知らせ下さい。
- 221 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/10(火) 22:03
- 最後も思いっきり笑いましたww
>>217の11,12行目とか最高にツボです。
お疲れ様でした!
- 222 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/10(火) 22:04
- 完結おめでとうございます。そして、お疲れさまです。
いやあ、楽しかったー!!
- 223 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/10(火) 22:46
- 笑った!なんか幸せな気分になったよ
ガキさん、愛ちゃん、良かったね
- 224 名前:オースティン 投稿日:2009/03/10(火) 23:44
- 訂正
>>206
で二人が『昨日も』って言ってますが、まだ『今日』の話なので
『さっきも』が正解です。
ごごごめんなさい!
- 225 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/10(火) 23:53
- 完結お疲れさまでした!
幸せな気持ちになるお話をありがとうございました。
出来ればさゆえりのお話も読んでみたいです。
- 226 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/11(水) 01:09
- 完結おめでとうございます!
暴走するガキさんが見れてとても嬉しかったです!
盗聴してる間のさゆえりもちゃおってほしかったですw
- 227 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/11(水) 04:09
- おもしろかったです☆
さゆえりもおもしろそうですし、れなジュンもおもしろそうですね♪
ありがとうございました☆
- 228 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/11(水) 05:57
- 完結お疲れ様です
いやーとてもよかったです。
個人的に、愛ガキの逆バージョンも見てみたいですw
後は、さゆえりw
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/11(水) 18:47
- とても面白い話で娘。がまた好きになりました。
何でも良いのでまた作者さんの話を読ませてもらえたら光栄です。
- 230 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:23
- 「明日って、リンリンの誕生日じゃないですか。」
全ては、久住のこの一言から始まった。
ちなみに、そのとき久住の側にいたのは、光井とジュンジュン、それに田中だった。
「…誕生日は祝わんといけんよ。誕生日やけん。」
田中が大きく頷く。
誰かの誕生日と言えば、日が変わると同時にメールをし、自分の誕生日とあらば、日が変わる前から携帯を構えて待機する田中だ。
『誕生日』というイベントには、なみなみならぬ思いがあるようだ。
「で、考えたんですけどね。私、リンリンの欲しいものって、正直思い浮かばないわけですよ。」
本当に正直に、久住はそう話す。
「それやったら、親友のジュンジュンがいてはるやないですか。…ねえ?」
「エー。なんでも知ってルヨ。」
私に任せとけとばかりに、ジュンジュンはキラリと目を光らせる。
- 231 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:23
- 「…リンリンはクレープが好きネ!!」
「「「………。」」」
完璧なキメポーズでそう言い放ったジュンジュンに、三人は冷たい視線で返した。
「そんな、昨日今日リンリンのファンにならはった人でも知ってるような情報はいらんのですよ。」
「うん、れなも知ってた。」
「ていうか食べ物って誕生日プレゼントとしてどうよ?」
完全否定されて、ジュンジュンは若干落ち込んだ。
「うー、でもリンリンはホントにクレープ愛してるデスヨ。初めて覚えタ日本語はクレープだし、生まれ変わったらクレープになりタイと思ってマスヨ。」
「…まあそれもわからへんでもないけど…そもそもクレープは日本語ちゃいますし。」
「うん、れなもそれずっと思ってた。」
「ていうか生まれ変わったらクレープになりたいって人としてどうよ?」
- 232 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:24
- もう散々な言われようだ。
しかし、少なくともリンリンのクレープに対する思いは伝わったらしい。
「じゃあわかったよ、そこまで言うならプレゼントはクレープにしようか?」
「せっかくやけん、手作りならよかよ。」
「ああ、それならまだプレゼントらしいですわ。」
というわけで、急遽『リンリンの誕生日を手作りクレープで祝おう!』プロジェクトが発足したのだった。
*****************
- 233 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:24
- 「…で、こういう展開になるわけですか。」
ぽつりと呟くは、絶倫サブリーダーこと新垣。
その新垣宅に、リンリン以外のメンバーが全員集合している。
「だって新垣家が一番広いし。キッチン借りれる場所なんてそうそう無いですよ。」
プロジェクトの内容を聞いて、新垣家を使わせてもらうことを提案したのは道重だった。
「いやまあ、いいけど…。なんか、うちらって変なところで団結力あるよね…。」
「変なところとは失礼な。メンバー愛ですって!」
誇らしげに語るは亀井。
そして、全員がお揃いのエプロンをしている。
田中が即興で手作りした物で、胸元に筆ペンで『娘。参上』と書いてある。
「どっちかってーとむしろ、リンリンだけこのエプロンがないってことの方がアレやよなあ。」
高橋が珍しくするどいツッコミをしたが、誰も何も言わなかった。
- 234 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:25
- 「さて、今日はこうしてリンリンのためにクレープを作ろうってわけだけど…。ちなみに、クレープの中身はどうするの?」
何の気なしに言ったであろう道重のセリフに、久住と田中はフリーズした。
「そ、そういえば、それを考えていませんでした…。」
「れな、卵と小麦粉しかもってきてないけんね。」
「……えー…。」
これはゆゆしき事態だ。
このままでは、プレゼントが『手作りクレープ(皮のみ)』になってしまう。
「クレープって言っても、幅広いよな…。」
「うん。クリーム系とかチョコ系とか、あとはツナとか卵とかのガッツリ系もあるしねえ。」
高橋と新垣の言葉に、光井は眉をひそめる。
「…そうか、中身のことなんてちっとも考えてへんかったですよ。何が好きか、ジュンジュン知らへん?」
「エー」
ジュンジュンは真剣に首を傾げる。
こちらも『とりあえずクレープ』としか考えていなかったらしい。
- 235 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:25
- 「アー、でも、リンリンは甘い物が好きデス。」
笑顔になって、ジュンジュンは手を叩いた。
「ほう、甘い系か。」
「だったらまあ、チョコとかでいいのかな?」
なんとなくまとまりかけたところで、誕生日クイーンの田中が待ったをかけた。
「でも!!せっかくの誕生日やけん、フツーじゃつまらんよ。」
「そうですよ、なんかドカンとでっかいことしましょうよ!」
田中と久住のスタンスはあくまでも『盛大に』だ。
「…えーと。なら、特大のクレープにする?できるだけ大きなホットプレートとか鉄板とか使って。」
「おお!ナイス案!!」
「さすがリーダー!」
高橋の提案に、二人は即座に頷く。
「いや待って、うち鉄板はないし、ホットプレートならあるけど、大きさは普通だよ?」
横から新垣がストップをかける。
田中は残念そうな顔をした。
「…なかなか夢のジャンボクレープは難しいっちゃね。」
「…田中っち、なんかすごくクレープにロマン抱いてるよね。」
新垣にそう言われると、田中はびしっと新垣を指差した。
- 236 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:26
- 「だってスイーツデカ盛りは女の子の夢やけんね!ガキさんやってアンビリーバボーなビッグパフェでテンション上がったっちゃん!」
「う、それは確かに。あれはヤバかった。テンション上がった。」
なにげに新垣も甘党だ。高橋も横で頷いている。
「なので、夢はでっかく!れなはいつか、プリンでできたプールを、ガキさんと一緒に泳ぎたいと思う!!」
「プール!?いや、それはどうかと思うよ!?そこに私入れてくれなくていいから!!」
慌てて突っ込む新垣にはお構いなく、久住と光井はさりげなく感銘を受けている。
「…プリンのプール、いいねえ。夢があるよねえ。」
「そこに溺れるほど苺がトッピングされてはるなら、愛佳も喜んで飛び込みます。」
一同が脳内のプリンプールで溺れはじめた頃、珍しくジュンジュンが現実に引き戻させた。
「…で、クレープなんデスケド…。」
「「「「「あっ!!!!」」」」」
そう、肝心のクレープに関してはなにひとつ決まっていない。
- 237 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:26
- 「しまった、夢見すぎてた。クレープの話やったね。」
「どうやって大きくするかだなあ。」
しばらく考えていた光井が手を挙げた。
「普通の大きさのクレープをたくさん焼いて、繋げて大きくするのはどうでしょう?」
「お。それもいいね。」
振り向いた亀井に、しかし光井は申し訳なさそうな顔をする。
「ただ、どうやって繋げるかは考えてへんです。」
「ああ…そうだなあ。」
再び沈黙。
すると、今度は久住が手を挙げた。
「わかったー!ホチキスで繋げよう!」
「それだ!…って、ダメですやん!ホチキス食べられへんわ!!」
「あ、そっか…じゃあ、縫い合わせて繋げよう!かんぴょうとかで!」
「や、クレープ言うてますやろ!?スイーツにかんぴょうイヤやわ!」
「あーそれならもういっそノリ!『ごはんですよ』とか!」
「ああ、ホカホカごはんに…ってなんでやねん!!」
「「「………。」」」
- 238 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:27
- 光井の見事なツッコミコンボに、思わず一同は聴き入っていた。
が、高橋の『続きは?続きは?』とでも言いたげなワクワク視線に、光井は我に帰った。
「…しもた!つい関西の血が…!!」
「ええー、面白いのに。もっとやってやぁ。」
「いや、スイマセン。高橋さん、そんなキラキラした目で見んといてください…。」
そんな様子を見て、再びあの人がつぶやいた。
「…で、クレープなんデスケド…。」
「「「「あっ!!!!!」」」」
こんなやりとりが、その後一時間ほど続いたという。
****************
- 239 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:27
- 「…で、なんとか生地が焼き上がったわけですが。」
2時間後。
テーブルには、クレープが文字通り山のように積み上げられていた。
…もっとも、大半は失敗作であったが。
メンバーの顔は、そろって粉まみれだ。
「大きく見せるにはクレープを何枚も重ねるってことでいいとして、肝心の具がないよ。どうするよ。」
新垣が腕を組んでシブい顔をする。
とりあえず焼いちまえ的な発想でここまできたものの、見事に行き詰まってしまった。
「ちなみに、リンリンの好きなトッピングはなんなの?」
道重に促され、ジュンジュンは首を傾げる。
「…ワカリマセン。」
「ええー。」
「頼むよ親友ー。」
露骨に期待はずれな顔をされて、ジュンジュンは少ししょんぼりした。
「親友ですケド、なんでも知ってるわけじゃナイデスヨ。」
「さっき『なんでも知ってる』って言ったじゃん。」
久住がぽつりとつっこむ。
- 240 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:30
- そしてさらに追い撃ちをかけるように、田中がジュンジュンを指さした。
「…そもそも二人、アヤしいっちゃよ。れなはてっきりもう、デキてるもんやと思ってた。」
「ああ、愛佳もそう思ってました。」
真顔で指摘され、ジュンジュンはわずかに動揺する。
「な、違いますヨ!なんでそう思いマス?」
「えー、だって…」
それまで静観していた亀井が、ふらふらと天井あたりを指差した。
「>>142 あたりで、そういうフラグ立ってたじゃん。」
「絵里、そういう言い方しない!」
道重が小声でたしなめる。
「あ。アー…。いや違うデスヨ。聞いてくだサイヨ。いろいろあるんデス。もうだいぶ前デスガ…」
そう言ってまた手を振ると、ジュンジュンはゆっくりと思い出すように話しはじめた。
********************
- 241 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:31
- それはまだ、二人が娘。に入って数ヶ月の頃のことだ。
「…ううううう。ズズズズ」
「ジュンジュン、泣かないでよう。明日また頑張ろうよー。」
「うう…うん、ありがとう…。ごめんね、いつもこんなで…。」
言葉がうまく通じず、新人ゆえに怒られることも多い二人。
ことに、もとよりホームシックぎみなジュンジュンはよく泣いていた。
この日も例外ではなく、解散後も気持ちが立て直せないジュンジュンを、リンリンが励ましていたのだった。
二人で会話をするときでも、人前ではなるべく日本語で話すようにしているのだが、こんなときだけは特別で。
たまった本音を吐き出すときは、やはり母国語だったのだ。
「…でもさぁ、リンリンは偉いよ。私の方が年上なのに全然ダメだなあ。」
少し落ち着いたのか、ジュンジュンは小さくため息をつく。
リンリンも、ほっとしたように笑った。
「ジュンジュンは努力家だし、愛されるタイプだもん。すぐみんなに追いつけるよ。私、絶対そう思う。」
隣に並んで座り、その手を握る。
リンリンの小さな手は、力強くて暖かかった。
- 242 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:31
- 「…ありがとう。でも私は、リンリンの強さがうらやましい。つらくても、いつもちゃんと笑ってるから。」
そう言うと、リンリンは少し眉を下げて笑った。
「…うん。でも、笑うのはもう癖みたいなものなんだ。…中国で、初めて芸能界入った頃ね。そのときの師匠さんが、『笑ってる人に、周りの人は敵意を持たな
いから。いつでも笑っていなさい』って言ったの。」
「……そうなんだ。」
それを聞いたジュンジュンは、不思議な気持ちだった。
笑っているリンリンを見ていて、なぜか寂しくなったのだ。
「ねえ、リンリンは寂しくないの?頭に来ることとかも、ない?」
「…うーん、それはまあ、ないことはないけど…。でも、笑ってるのに慣れちゃったから。もしかしたら、泣き方とか怒り方とか、忘れてるかも。…だから、私は素直に泣
いたり怒ったりできるジュンジュンがうらやましいよ。」
リンリンはやはり笑顔だった。
なのにジュンジュンは、笑えなかった。
- 243 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:32
- 少し考えて、その目を見る。
「…私は、笑ってるリンリンが好きだし、リンリンの師匠さんが言ったこと、正しいと思う。」
そう言って、ジュンジュンはリンリンの手を握り返した。
「でも、ここにはもう、リンリンの敵になる人はいないよ。悲しい時に泣いたっていいし、腹が立ったら怒ったっていいと思うよ。モーニング娘。は多分、家族みたいなものだもん。」
「……家族?」
やさしく微笑んだジュンジュンを見て、リンリンの表情から初めて笑顔が途切れた。
握ったままの手を持ち上げて、そっと振る。
「うん、家族。…で、私はリンリンの、日本で最初の家族だよ。頼りないかもしれないけど、私がリンリンのお姉ちゃんになる。」
「……お姉ちゃん…かぁ。そっか…。家族、かぁ…。」
噛み締めるようにそうつぶやいてから、リンリンはぎゅっとジュンジュンにしがみついた。
- 244 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:32
- 「…わかった。ジュンジュンの前では無理しない。そうしてみる。…ありがとね。」
素直にそう答えたリンリンを抱き返して、真顔で言う。
「…泣く?泣いてもいいよ。」
それを聞いて、リンリンはおかしそうに笑った。
「ううん。とっとく。なんか、今泣いたらもったいないから。」
「なにそれ?もったいないとかあるの?」
「あるのー。」
やっぱり、リンリンは笑っていた。
でもそれは、本当に嬉しそうで、いつも見る笑顔よりもずっと幼く見えた。
****************
- 245 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:32
- 「…っていうことがあったデスヨ。だからソノー、恋人とかというヨリハ、家族で、姉妹で……ワァ」
ジュンジュンは、話し終えて顔を上げると驚愕した。
みんな、感動で涙ダクダクだったのだ。
「な、なんて…なんて健気なリンリン!!笑顔の陰でそんな思いが!!」
「うっ…ジュンジュンそんなこと今まで黙ってたなんて、水臭いよ!!」
道重と亀井はなぜか抱き合って泣いている。
「こ…小春もリンリンのお姉ちゃんになるよ!…あ、あれ、でもリンリンは私より年上だ…じゃあ、妹になるよ!…や、でも私は先輩だ…」
久住は泣きながら混乱している。
そして、圧巻なのは高橋だ。
その涙っぷりたるや、さながら日本海の荒波のような豪快さだった。
「…ぞんな、す、すでぎなメンバー愛があっだなんで…。あっし、あっし…ぶわあぁああ」
「あ、愛ちゃん!顔!顔すごいから!…ほら、鼻かんで。はい、ちーん。」
「うぶぶ…ぢーーん!」
恋人通り越して、新垣はなんだか介護妻のようだ。
- 246 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:33
- 「まあ、それは本当にいい話として…あの、れなはまだ納得できないっちゃけど。ほら、こないだみんなでご飯食べた時、なんかリンリンめっちゃヤキモチ妬いてた気がするけん。」
おそるおそるそう言うと、光井もすぐに賛同した。
「…ええ。ジュンジュンが田中さんにチューしはったとき、リンリンおかしかったですね。」
するとジュンジュンは、しばらく考えてから首を振った。
「…あ、アレはですね、リンリンいつも言うデスよ。『ジュンジュンは抱きまくらにするとふかふか気持ちいいカラ、あんまり痩せないで』ッテ。」
「…はあ。え、それで?」
一見何の関係もない理由に見えたが、ジュンジュンはさらに続けた。
「つまりもし私が田中サンとソノー…ちゃお的にナルと、私まで細くナル思ったようで。」
「いやいやいや、なんやねんそのトンデモ発想。」
思わず光井が突っ込む。
- 247 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:34
- 「え、じゃああれは?その後ジュンジュンが中国語で何か言って、すぐリンリンの機嫌が治ったアレは?『リンリンが一番好きだよ』とかそういうんやなかと?」
「そうそう、絵里もそれ気になってた。>>144 あたりで。」
「だからそういうこと言わない。」
すると、ジュンジュンはあっけらかんと笑った。
「いやいや、アレは『ダイジョウブ、貧乳は伝染らナイ』言ったダケデス。」
「コラァーーー!!!!なななんてこと言うと!!?バカ!バカジュンジュン!!」
いきりたつ田中を見て、久住が正直に笑い転げた。
「あっはははは!!貧乳うつらない!!あっはははは!!!!」
「ちょ、小春そんなに笑ったら田中っち怒るよ、プクククク」
久住をたしなめるはずが、新垣も笑っている。
「いやいや、小春とガキさんはちっとも笑う権利ないけん!!」
「なに言ってんですか、小春は背が高いから田中さんより大きいですよ。」
「私も田中っちより肉ついてるから大きいよ。」
- 248 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:34
- 胸の所有具合で変な喧嘩が始まりそうな空気を打ち破ったのは、本日通算7回目ほどになるあのセリフだった。
「………で、クレープなんデスケド…。」
「「「あっ!!!!!」」」
「ベタやなあ。」
ぽつりと光井が呟くと、それまで何か考えている様子だった高橋が声を上げた。
「…よしわかった!!リンリンが一番喜ぶトッピング、あるで。」
「えっ」
「なになに?」
リーダーの一声で、皆が集まってくる。
そして、その案はそのまま実行に移されたのだった。
***********************
- 249 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:34
- 次の日、リンリンの誕生日当日。
再び新垣宅に集まったメンバーにより、リンリンは呼び出しを受けた。
と言っても、新垣に『遊びにおいで』と誘われただけなので、メンバー全員が待ち受けているとは知らされていない。
なんの疑いもなく新垣家に入ったリンリンは、まず室内の暗さに驚いた。
「…あ、アレ?新垣サーン?」
薄暗い室内。
しかし確実に感じる人の気配。
不審に思っていると、突然大音響に見舞われた。
「「「「「「「「リンリン、誕生日おめでとーーーー!!!!!」」」」」」」」
パパパパンパパ
パパンパパ
パパン
「ヒアーーー!!」
- 250 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:35
- 暗闇から襲いかかる火薬臭と、頭に覆い被さる紙テープ。
正直、ものすごい恐怖だ。
「ちょ、小春!!最初に電気つけてって言ったでしょ!!」
「あ、すみません。一番乗りでクラッカー鳴らしたくて。」
そんな声と共に、電気がつく。
闇でクラッカーに襲撃されたリンリンは、その場に座り込んで呆然としていた。
「ごめん、超驚かしたね。」
「グダグダやん小春ー。」
そう言って苦笑いを浮かべるリーダーとサブリーダー。
そして、後に控えるメンバー。
全員が、なぜか頭の上に紙皿をくくりつけていた。
あごで紐をしばったその姿は、たいそうマヌケだ。
「え、え…?なんでみんな頭にお皿あるデスカ。」
当然の疑問を口にすると、光井が自分の頭部の皿を指差した。
「ただのお皿とちゃいまっせ?ほらほら、コレ。」
「…あ、クレープ!」
- 251 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:35
- リンリンがぱっと顔をほころばせる。
よく見ると、全員のメンバーの頭のお皿に、ひとつずつクレープが乗っていた。
大きさは普通のクレープ。
中の具も、メンバーひとりひとりが自分の好きなものを入れたものだ。
「クレープいっぱい!!…コレ、私に?」
「そう、誕生日プレゼントダヨ。」
にこっと微笑んで、ジュンジュンがしゃがみ込む。
しかしなぜ頭に皿なのか。
リンリンがそれを問う前に、高橋が照れ笑いを浮かべた。
「…いやぁ、本当はリンリンの一番好きなものを入れようって話やったけど。でも、リンリンに一番好きでいて欲しいのは、娘。のみんなやと思ったんよ。」
「そう。だから、パッと見は私たちの頭の上にクレープ乗っかってるだけに見えるけど、実は私たちみんながトッピング、っていうね。」
新垣も笑って付け足した。
- 252 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:36
- 道重も、亀井も、田中も、久住も。
みんな一様にいい笑顔で、頭にクレープを乗せていた。
その姿はバカっぽいことこの上ない。
しかし、それは愛すべきバカたちだった。
「…リンリン。みんな、リンリンの家族だって言ってくれたヨ。ダカラ、怒っても、泣いても、ココではいつでも、そうして良いんダヨ。」
「……ジュンジュン。」
親友の一言で、ゆっくりと深く頷く。
そして、リンリンは初めてぽろぽろと涙を流した。
「…ミンナ、ありがとございマス…。こんなに幸せな誕生日、初めてヨ。ミンナが私の一番好きなもの、ちゃんと知っててくれて…家族が、いっぱいデ…。」
顔をくしゃくしゃにして泣く彼女は、泣いているのにとても幸せそうだった。
そして、親友のジュンジュンも。
もちろん、他のみんなも。
8人分の愛情を、全身で受け止めているリンリンを見て、同じように幸せそうにしていた。
- 253 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:36
- **********************
そして次の日。
楽しい誕生会の余韻か、メンバーはいまだ楽しげだった。
「いやー、でもやっぱ誕生日っていいっすねー。なんか感動しちゃったなあ。」
「うんうん、仲間ってよかとねー。」
一緒に頷くは田中。
誕生日クイーンもご満悦だ。
「…そういえばリンリン、今日はなんだか大人しいよね。昨日はあんなにはしゃいでたのに。」
亀井がちらりと視線を移した。
確かに、リンリンは控室の椅子で静かにしてる。
「なんかまだ感動しちゃってるんじゃないっすかぁ?」
脳天気そうにそう言う久住の後から、新垣が渋い顔で現れた。
「…えーと、みんないいかな。あの、つい今しがたマネージャーから聞いたんだけども。」
「ん?」
「どうしたんですか、そんな顔で。」
そちらに注目する面々。
そして、気まずそうにしている新垣に変わって、高橋が口を開いた。
- 254 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:37
- 「……リンリン、お腹痛いんやって…。ここの撮影終わったら、すぐ病院連れてくって…」
「「「「「……………。」」」」」
黙り込む一同。
中には下を向く者もいる。
「…えーと。確認やけど。…各自、クレープに入れたものを発表してください。ちなみに私はブルーベリージャムです。」
高橋がそう言うと、皆順番にそれにつづいた。
「私普通にバナナですケド。」
「愛佳はいちごです。」
「え、れな焼肉。」
しれっと言った田中の肩を道重が叩く。
「いやいや、なんでクレープに焼肉?」
「え、普通やん!おかずにもなるっちゃよ!ってそういうさゆは?」
「え、私ピザ。」
「は!?ピザ入れちゃったの?クレープだよ?」
「だってピザ好きだもん。え、じゃあ絵里は?」
「絵里、ぎんなん。」
「ええ!?それなんて茶碗蒸し!?」
- 255 名前:愛は国籍を越えて 投稿日:2009/03/12(木) 01:37
- だんだん雲行きがあやしくなってくる。
その亀井は、隣の新垣を見た。
「ガキさんは?」
「えっと…もんじゃ焼き。」
「いやいや、だからクレープだよ!?」
「しょうがないじゃん好きなんだもん!!え、小春は?小春どうよ?」
「やだなぁ、小春は普通に生クリームですよー!生クリームと………『ごはんですよ』。」
「ああ、ホカホカごはんに…ってだからなんでやねん!!」
散々な結果に、高橋はそっとため息をつく。
「…原因がクレープすぎる。」
遠くを見るように呟く。
ジュンジュンも、隣で大きく頷いていた。
しかし、お腹を押さえて縮こまっているリンリンは、とてもいい笑顔だったという。
―Happy Birthday Linlin!!―
【完】
- 256 名前:オースティン 投稿日:2009/03/12(木) 01:41
- 完結後の書き込みくださった皆様、ありがとうございました。
「娘。が好きになった」等の感想、とても幸せです。
リンリンさんの誕生日ということで、早速番外編でしたが、どうしても全員でバカっぽく愛し合ってるのが好きで…。
なかなか表舞台に出てこないチャイニーズが存分に書けてよかったです(笑
- 257 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/12(木) 03:18
- Greatful☆
- 258 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/12(木) 20:02
- 何が一番おもしろいって、
新垣さんが絶倫と確定されてしまったことですwww
- 259 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/12(木) 20:19
- 愛すべきバカたち良いですね〜w
確かにジュンリンがメインってのは新鮮で面白かったです
- 260 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/12(木) 21:58
- 皆のマイペースっぷりに笑いましたが、ジュンリンで泣きました。
モーニング娘はサイコーです!
- 261 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/13(金) 03:00
- ピザかよw みちしげええええええええええええええええw
- 262 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/27(金) 17:09
- いい話だなぁ…とじーんとしていたのにオチがwww
9人もの登場人物をしっかり動かせていて、かつみんなの個性が表されているところは尊敬します
自分もそんな文章が書けるようになりたいなー
- 263 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:51
- 4月である。
空の色もすっかり春らしく、桜も綻びはじめるこの日。
娘。のメンバーたちは、朝から緊張感でピリピリしていた。
「…今日だね。」
「今日です。」
久住と光井がぽつりとつぶやく。
お互いがお互いの顔色を常に伺い、交わす会話もどこかぎこちない。
なぜこんなことになっているのかというと…。
「第一回、大ダウト大会ーーーー!!!」
「「「「「イエーーーイ!!!」」」」」
エイプリルフールである。
- 264 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:52
- 実は一週間ほど前から、メンバーだけで行われるこのゲームの開催が告知されていたのだった。
ちなみに、言い出しっぺは亀井である。
嬉々とした表情でこの場を仕切っているのも亀井だ。
広めの楽屋の床には、全員が丸くなって座っている。
「揃ったね?じゃあ始めようか。…一応ルール説明すると、一人ずつ順番にネタを出して、もしそれが嘘だと思ったら『ダウト』のコールね。で、全員が賭け終えたら、ネタを出した人が答えを発表します。ダウトが間違ってたり、逆に嘘を見抜けなかったりしたら、ペナルティとしてネタ提供者に手持ちの飴をひとつ渡すこと。ネタ提供者が答えを当てられた場合も、同じくペナルティです。…で、最終的に一番飴が多く残った人が勝ちで、賞金2万4千円がもらえまーす!」
「おっけい!!」
「…負けまセンヨ。」
気合い十分の田中とリンリン。
みんな、大袋入りの飴を抱えている。
ちなみに賞金額が半端なのは、勝った一人に残りの全員が二千円ずつ渡す決まりになっているからだ。
- 265 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:52
- 「賭け事初めてデス。ワクワクするだ。」
「…まあ、本当はいけないんだけどね…。」
新垣があさっての方を見る。
お金を賭けるというあたりで最初はストップをかけた新垣だったが、高橋の『やろうやろう』の一言に負けたのだった。
「じゃあ、制限時間は一時間。リーダーから順番に始めます。どうぞ!」
「あい!」
どこか気の抜けた返事をしてから、高橋はおもむろに言った。
「…明日は、晴れやよ。」
「「「「「「「「………。」」」」」」」」
一同、眉間にシワが寄る。
「なんか、一発目から予想外なんですけど。」
「愛ちゃん、微妙に趣旨を理解出来てないね?」
道重と新垣にそう言われ、高橋はきょとんと首を傾げた。
- 266 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:53
- 「…え、でもウソかホントか当てるんやろ?間違ってえんよ?」
「う、うーん、まあ…。でもなんていうか、未来のことだから…」
グレーゾーンな判定に迷っていると、携帯をいじっていたリンリンが手を挙げた。
「…ハイ!Googleによると、明日の天気は大雨デス!」
「え」
「あら。」
その一言で、8人全員が高橋を指差した。
「「「「「「「「ダウト。」」」」」」」」
「あっひゃひゃひゃ!」
何が楽しいのか、高橋は手を叩いて笑っている。
「…愛ちゃん、笑い事じゃないよ。はい、全員の袋に飴入れて。」
「ええー?でもさ、天気予報外れるかもしれんで。」
無茶なネタを出した分際で言い逃れようとしている高橋の袋を、新垣がひょいと取り上げた。
「あぁ、あっしの!」
「はいはい、みんな一個ずつねー。」
「わーい、ガキさんありがとー。」
有無を言わさず中身を配り始める姿を見ると、高橋も仕方なさそうに頭を掻く。
- 267 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:53
- リンリンは、なぐさめるようにその肩を叩いた。
「大丈夫デス、雨の確率は90%デスから。」
「…や、なにが大丈夫かわからん。」
大分減った飴の袋が高橋の手に返されると、今度は新垣が手を挙げた。
「じゃあ、次行くよ?えーと…。私さあ、ここ一年で買った安倍さん関連のグッズの額、実は10万超えてるんだよね。」
「うっ」
「こ、これは…」
笑顔満面の新垣。が、その深意は読めない。
「っていうかまだグッズ買ってたんスか!?」
誰もが抱いた疑問を久住がストレートに口にすると、田中が制した。
「待って、グッズ買いようところからもうダウトかもしれんけんね!」
「あ、ああ確かに…」
弱く頷くと、久住は潔く手を挙げた。
「じゃあ小春はダウトで!」
「れなも。」
- 268 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:53
- ここで二人が乗る。すると、ジュンジュンが難しい顔で口を開いた。
「でもー、こないだ新垣サンち行ったとき、新しいグッズあるの見たデスヨ。」
「なにぃ!?なんでそれもっと早く言わない!?待って、ダウトなし!!」
「おっと、取り消しは無しだよ小春。」
久住が焦って言ったものの、軽く新垣にあしらわれてしまった。
「…や、でも10万は…なあ?」
「でもでも、全部セットとか高いよ?」
一方、高橋と亀井は買った額について真剣に検討をしている。
かなり難しいラインだ。
「…じゃあわかった!!絵里はマジだと思う!」
「う、うーん…あっしはじゃあ、ダウトで…」
「愛佳も、買ったとしても値段的にダウトと思います。」
結局意見は真っ二つで、ダウトに乗ったのは田中・久住・高橋・光井の四人でとどまった。
「おっけー?じゃあ正解行くよ?」
新垣はゆっくりとメンバーを見回した。
- 269 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:54
- 「正解はダウトでーーす!!」
「「「おおお!!!」」」
手を叩く勝者たち。そして、負けたものもどことなく安堵の表情を浮かべている。
「…そりゃ、10万はないよねえ。マジヲタガキさんじゃあるまいし!」
「そうだよー、いくら私だってそこまでねえー」
亀井のギリギリのジョークを笑い飛ばす新垣。
しかし、見事にメンバーを混乱させるお題だったといえよう。
「で、ガキさん本当はいくら使ったの?」
冗談混じりで道重がけしかけると、新垣はさわやかに言い放った。
「えーとね、さっき計算したら9万7230円だった。」
「え!?」
「ちょっ」
周囲から、声にならない声が上がる。
- 270 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:54
- 「それもうほぼ10万だよね!?」
「ていうかもうダウトとは言えへん領域ですやん!」
道重と光井に言われても、新垣は『何を言っているのだ』という顔つきだ。
「だってこれでも去年より少ないよ?」
「…ていうかガキさん、あっしの知らんうちにどんだけ買ってたん!?そんなに安倍さんがええんか!!」
動揺を隠しきれない相方の声に、メンバーは少々不憫になった。
なんだか不穏な雰囲気になりかけたことを察知して、道重が声を挙げた。
「じゃ、じゃあそれはさておき、次行こう、次!!」
「わ、わかった!じゃあれな行くけんね!!」
田中は身を乗り出すと、満を持して、自信満々に言った。
「…実はれな、最近少し胸が大きくなったっちゃよ!!」
「「「「「「「「ダウト。」」」」」」」」
「ええ!?満場!!?ていうか早っ!!!」
一瞬の考える余地もない、完璧なダウトコール。
田中は泣きたくなった。
- 271 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:54
- 「れいな、そういう悲しい嘘はダメだよ。悲壮感が増すよ。」
「いやいやいや、なんねさゆ、全否定!?もうちょっと考えてもいいと思わんと!?」
すでに悲しみのリゾナント全開の田中。追い打ちをかけるように久住が手を伸ばした。
「飴、もらっちゃっていいッスよね?全員ダウトで正解ですよね?」
「いや、でも田中っちカッコよかったよ。捨て身のギャグ最高だよ。」
新垣も頷きながら手のひらを出す。
すると、田中は全力で飴の袋を死守した。
「待て待て待てい!!!全員不正解!!ホントに大きくなっとーとよ!!」
「またまたぁ。」
「ないっすないっす。」
全く信用しない久住と新垣。
『貧乳フラット3や』、と思ったが、もちろん光井は黙っていた。
「でもれいな、証拠は?具体的に何か変化を感じたの?」
「うん、ちゃんと測ったっちゃん!そしたら1.2p大きくなっとーと!」
「い、1.2…」
道重はまじまじと胸部を見る。傍目にはわからないが、測ったというならそうなのだろう。
- 272 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:55
- 「…でも、信用できるデータなの?測り間違ってない?」
さりげなくひどいことを言う亀井。
すると、それまで無言だったジュンジュンが、カッと目を見開いた。
「…調べればイイ!!」
「え!?」
「ど、どうしたジュンジュン?」
周囲のとまどいも気にせず、ジュンジュンは跳んだ。
大きな体に似合わない俊敏な動きで、即座に田中の体を抑える。
「!??な、なに?…ぎゃああ!!!」
その動きは、早すぎて逆にスローモーションに見えた。
メンバー全員が見守る中。
ジュンジュンの左手が背中から田中のシャツに侵入し、ほんの一瞬でブラジャーの金具を外す。
そしてそのまま、空いている右手で、シャツの下から胸を触診した。
「ちょ、いや、やめんかい!!!うあぁぁ」
必死で抵抗する田中。
しかし、その行為はものの数秒で終了し、ジュンジュンはその場に崩れ落ちた。
- 273 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:55
- 「……无法相信!!!!!!」
「え」
「どうだったの!?」
ゆっくりと顔を上げたジュンジュンは、驚愕の表情で呟いた。
「…1.2違いマス。…1.5pモ大きくなってマス!!!!」
「「「なにーーーーぃ!!?」」」
「ていうかなんなんその特技!?ゴッドハンド!?」
呆れ半分、感心半分の表情で光井が言うと、リンリンは重々しく頷く。
「ジュンジュンの手は間違いないデス。」
過去に何かあったのかと少し気になったが、敢えてスルーすることにした。
「まさかここで負けるとは…田中っち、飴だよ…!!」
「もってって!もう潔く持ってっちゃってください…!!」
田中の前に、全員分の飴が積み上がる。
「…なんか…完全勝利やのに全然嬉しくないっちゃよ…。」
泣きそうな顔でブラジャーをはめなおす田中は、実に不憫な生き物だった。
- 274 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:56
- 「じゃ、じゃあ次、絵里がいこうかな…」
珍しく気を使った亀井が口を開いた。
「えーと…誰にしよう。」
「…え?」
隣の新垣が、訝しそうに亀井を見る。
その亀井は、メンバー一人一人の顔を見ながらニヤニヤしている。
「…な、なんかものっそいイヤな予感するんですが気のせいですか?」
「みっつぃー、目を見たらダメだ!食われる!」
久住は、小声でそう言って目を隠す。
そして、亀井はパッと何かを思いついた顔になって手を叩いた。
「よし、決めた!えっと、今日の愛ちゃんのパンツは勝負下着だ!!」
「「ええぇ!?」」
当の高橋は、ふいをつかれて目をむいた。
同じく、新垣も高橋と同じ顔で驚いている。
「…さすが絵里、鬼だね。」
なぜか道重は満足そうだ。
- 275 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:56
- すると、事の成り行きを見守っていたリンリンが口を開いた。
「…アノー、ショウブ下着てなんですカ?」
「え」
「あ、えーと…」
言い淀む高橋と新垣。
期待に目を輝かせるリンリンに、代わりに答えたのは久住だった。
「スケスケだよ!!パンツがスッケスケなんだよ!!」
「す、スケスケですか?ストッキングみたいニ?」
「そう!もう全部見えちゃうんだからね!」
「エェー!?パンツなのに?」
なぜかテンションが上がる二人。しかし、そのリンリンの脇から、ジュンジュンが身を乗り出した。
「見タイ!!!」
「わっ」
キラキラしたその笑顔に負けじと、久住は大声を上げた。
- 276 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:56
- 「そういう問題じゃないよ!!でもそんなこと言ったら小春だって見たいよ!!」
「ヤーヤー、私の方がすごい見タイですカラ!!」
「バカ!小春はねえ、愛ちゃんの勝負下着のために娘。に入ったと言ってもいいぐらいだよ!!」
「違う、私はそのタメに中国からキタ!!」
なんだか妙な争いが始まってしまった。
完全に喧嘩漫才である。
そして、いがみ合う二人は絶妙なシンパシーで宣言した。
「…というわけで私たちはダウトしません!!」
「勝負のパンツ見せてくだサイ!!」
「あ、じゃあワタシも見マス。」
こそっとリンリンも手を挙げる。
「…いや、なんで勝負パンツの前提やねん。」
光井は一応つっこんでから、新垣の方をちらりと見た。
- 277 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:58
- 「…ちなみにあのー、新垣さんはどっちに賭けはります…?」
「え!?」
新垣はあからさまに動揺する。
それを見て、道重は亀井に耳打ちをした。
「…みっつぃーも結構鬼だね…。」
「唯一事実を知ってそうな人だもんね…。しかしそれをここで答えさせるのはあまりにも…。みっつぃー、恐ろしい子!」
感嘆する二人。
見守るほかのメンバーも興味津々だ。
新垣は、恥ずかしそうに高橋を見てから目を逸らした。
「……ふ、普通だと思うから…。ダウトでいいよ…。」
「…普通ですか…。」
普通ってどれくらい普通なんやろ、と思わないでもない光井だったが、とりあえず頷いた。
「じゃ、愛佳はダウトで。」
「さゆみも。」
- 278 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:59
- 恋人の意見は信憑性があると踏んだのか、道重も便乗する。
しかし、じっとやり取りを見ていた田中は、するどく高橋を指差した。
「でも、愛ちゃんはどっちに賭けると?」
「「「あっ!!」」」
今しがたダウトに賭けた二人が『しまった』という顔をした。
本人が賭ける方が、そりゃ正解に決まっている。
「…さすがれいな、まさかの直球どストレート…!でも鬼レベルはみっつぃーの方が上だからね!油断したらダメだよ!」
「…いや、変なこと言わんといてください道重さん…。」
若干迷惑そうな光井。
確かに鬼呼ばわりは大迷惑だ。
そして問われた高橋は、しばし真剣に考えた。
「…あのな、正直どのパンツをはいてきたか覚えてえんのやけど。とりあえずダウト。そもそも勝負パンツとかないし。」
「あ、ないんだ…。」
新垣が少しホッとしたように呟く。
- 279 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 00:59
- すると、田中は満を持して頷いた。
「じゃあ、れなもダウト。」
「…うあー、ズルいなあ。」
すでに勝負下着に賭けてしまった久住は悔しそうだ。
「…オッケー、じゃあ答え合わせをします!!」
全員が賭け終わったのを見計らい、亀井が声を挙げた。
「…答え合わせ?やけん、もう愛ちゃん違うっていっとーやん。」
田中が不思議そうに問うのも構わず、ニヤニヤ顔で亀井は道重を見た。
「さゆ!!」
「ん?ああ、了解!」
アイコンタクトだけで何かを察したのか、道重はサッと高橋の隣に移動した。
「はい、ご注目!!」
「え?うわっ!!」
道重は、高橋のスカートを勢いよくめくった。
「あっ」
「おお!!」
「ぬぁああ!!!!」
- 280 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 01:00
- 道重のめくり方は天才的だった。
メンバー全員に、その下着はきちんと見えた。
左右が紐になっている、黒の、レースで、やたらと布が少ない…
つまり、勝負下着である。
目を丸くする一同。
が、一番に口を開いたのはジュンジュンだった。
「アレ、スケてないヨ!!!!!」
「まったくだ!!スケてない!!やっぱ勝負パンツじゃなかったかぁーー!!」
悔しがる久住に、光井は全力でつっこんだ。
「いやいやいや、あれ完っ全に勝負ですやん!!」
「まぶしい…リーダーの下着がオトナすぎてまぶしいたい…!!」
田中も、頭を抱えて打ちひしがれている。
- 281 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 01:00
- 「…そうか、これは勝負下着やったか…。普通な方と思っていたが…」
真顔でぶつぶつ言う高橋。
彼女が本気出して勝負下着を選んだあかつきには、ものすごいことになるに違いない。
そして、相方新垣はというと。
「……あの。ごめん、ちょっ…5分休憩さして!!!」
「え?」
「ど、どうしたのガキさ…あぁ。」
口元を手のひらで隠して崩れ落ちている新垣。
鼻から大量に出血していた。
「…新垣さんすごいっス!!エロいもの見て本当に鼻血出す人、初めて見ました!!」
久住は何故か感動している。
「エロガキさんはさすが昭和のリアクションだなあ。」
ティッシュを差し出しながらニコニコする亀井。
新垣は『エロガキ言うな!!』と目で訴えるも、何も言えないようだ。
- 282 名前:1.エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/05(日) 01:00
- 「…が、ガキさん大丈夫か?血ぃ飲まんようにな、ほら、こっち向いてみ?」
高橋が心配そうに顔を近づける。
が、目が合った瞬間、新垣の顔が真っ赤になった。
「あ…」
「ちょ、ガキさん血!!血ぃ凄い!!」
ますます出血が止まらなくなってしまった新垣を見かねて、道重が高橋を遠ざけた。
「愛ちゃん、血が止まるまでガキさんの視界に入らないで下さい。」
「ええー?なんでぇ?」
無自覚のリーダー。
取り囲んで眺めるメンバー一同は、なんとなく『日本は平和だなあ』と思うのだった。
- 283 名前:オースティン 投稿日:2009/04/05(日) 01:03
- 前回の短編にレス下さった方々、ありがとうございました。
暖かいレスが多くて、本当に和みます。
エイプリルフール編、季節合わせでさくっと終わらせるつもりでしたが、ちょっと長くなりそうなので分けます。
今回もバカまっしぐらですが、お付き合い宜しくお願いします。
- 284 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 04:46
- 愛ちゃんのネタにワロタw
やっぱり愛ガキ最高です!
ネタ満載で面白いです。つづきが楽しみです。
- 285 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 14:09
- なんかキテターww
愛ガキのネタ素晴らしいw
続きも凄く気になりますwww
- 286 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 14:45
- ジュンジュンが中国から来た理由がこれってww
- 287 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 18:24
- ガキさん初めて見た訳じゃないだろうにw
愛ちゃん大好きなんだねw
- 288 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 20:08
- れいなとガキさんのキャラが面白すぎるw
胸が大きくなったのはジュンジュンのおかげかな?
- 289 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 22:51
- 今回も全員のキャラが面白すぎて爆笑でした。
ガキさん、絶倫なのに、中学男子みたいになっている(笑)
- 290 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/06(月) 01:02
- すばらしいの一言に尽きる!
- 291 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/10(金) 00:10
- ワロタwwwwwwwww
- 292 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/12(日) 12:00
- 相変わらずメンバー一人一人が楽し過ぎますw
愛ガキもワロタwww
- 293 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:07
- 「…さて、サブリーダーの鼻血も止まったところで、再開しようか。」
亀井がのんびりとそう切り出す。
新垣は、鼻にティッシュを詰められて膝を抱えている。
「…ガキさん大丈夫?」
新垣に近づこうとした高橋の間に、光井がさりげなく割り込んだ。
「あ、えっと、高橋さん隣ええですか?」
「ん?ええよー♪」
新垣は、心の中でそっと光井に感謝した。
「…じゃあ続きね。誰から行こうか?」
「えーと、じゃあ私が行こうかな。」
名乗り出たのは、道重だった。
- 294 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:08
- 「はい!あのー、今日ね、みっついーの大事に取っておいた苺を食べちゃったのは、さゆみです。」
「え、自白…?」
「自白だ…!」
一同、唖然とした表情になった。
よもや、この場を借りての自白とは。
道重にしては予想外のゲーム展開だ。
光井は、苺のことを思い出したのか、わずかに悲しそうな表情になった。
「…一番おいしそうな苺でした。」
「……一番…?」
首を傾げる高橋に、光井は遠い目のまま説明する。
「今日の午前中ですけどね。差し入れで頂いた苺を、紙皿に取って食べてたんですわ。で、一番赤くて大きくておいしそうな最後の一粒を残してたら、マネージャーさんに呼ばれたんで、仕方なく紙皿に名前を書いてその場を離れたんですが…。」
- 295 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:08
- 戻ってきたときには、空の紙皿だけが残されていたという。
黒のマッキーで書かれた自分の名前だけがぽつりと紙皿に残り、なんとも言えない虚しさだったそうだ。
「そ、そうか…。」
「悲しい思いをしたんだね…。」
光井の苺好きはみんな知っている。
また、彼女が普段は、そこまで食べ物に執着しないということも。
その光井が、暗澹とした表情で遠くを見つめている。
「ごめんね、みっつぃー…。私、みっつぃーのだって気づかなくて…。名前まで書いてあったのに…。」
申し訳なさそうに謝った道重に、光井は慌てて明るい顔を作った。
「いやいやそんな、ええですよ。置きっぱなしにしといた愛佳のせいですし、道重さんにだったらむしろ…むしろ、喜んで苺をあげられますって!」
「…みっつぃー…あなたって子は!」
爽やかに微笑む光井を、道重は思い切り抱きしめる。
なんと麗しいメンバー愛。
- 296 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:09
- 「…光井サン、えらいデス!!感動しマシタ!!」
「シゲさんもよく言った!!」
リンリンと高橋は、感涙せんばかりの勢いだ。
他のメンバーも、頷きながら二人を眺めている。
「もうじゃあ、これはもうイレギュラーって感じだけど、ダウトはなしだよね。」
「そうやねえ。」
亀井の声に、田中も納得したように相づちを打つ。
しかし、和やかムードを叩き切るように、久住がつぶやいた。
「……えっと。ダウト。」
「「「「「えっ!?」」」」」
なぜこのタイミングで、と誰もが思った。
しかし、久住は真顔だ。
道重はわずかに微笑む。
「…いいの?」
「はい。いいっす。」
謎のダウトに一同が戸惑っていると、道重は腕組みをして言い放った。
- 297 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:09
- 「…みんなごめん!正解はダウト!!」
「「「「「ええぇーーー!!!??」」」」」
あのちょっとイイ話は何だったんだ。
皆がそう思った。
光井も、わけがわからないといった表情だ。
「ていうか小春、なんでわかったの?」
高橋がそう訊くと、久住はヘラっと笑った。
「…え、だって。その苺食べちゃったの、小春だし。」
「え」
「ええ!?」
ヘラヘラという表現がぴったりの笑顔。
その瞬間、光井の目がギラリと光った。
そして、少年漫画ばりの効果線を伴って、光井の右手が唸る。
「あ」
「愛佳!!?」
なおもヘラヘラと笑い続けていた久住のおでこに、光井の高速チョップが炸裂した。
- 298 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:10
- 「アンタかあぁあああい!!!!」
「ブベッ!!!」
見事なチョップだった。
隣で見ていたジュンジュンには、おでこから煙が吹き上がるのが見えていた。
…久住は、ゆっくりと仰向けにぶっ倒れた。
「はっ!!しもた、同級生とはいえ先輩に本気チョップを…!!」
光井は自分の右手を見てうろたえている。
どうやら無意識だったらしい。
「…ふ、みっつぃー…効いたよ…!」
久住は転がったまま、なぜか満足そうに笑った。
「す、すみません久住さん!!い、痛いですよね?今冷やすものを…」
「いいんだ!みっつぃー、むしろ小春は嬉しい!」
「え!?」
焦る光井の腕を掴み、久住は体を起こした。
「同い年なのになんとなくまだ遠慮してるみたいで、気になってたんだよ。だからなんか、容赦なく突っ込んでくれて嬉しかった。…これでますます仲間だ!!」
「…く、久住さん…!」
光井は感動した。
そこまで自分を気にかけていてくれたとは。
- 299 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:10
- 「小春ちゃん、立派になったね…!」
「久住サン、格好いいデス!!」
亀井とリンリンも、手を取り合って頷き合う。
満足そうにその様子を見守っていた新垣は、ふと疑問を口に出した。
「…てことはシゲさん、小春が犯人だって知ってたの?」
「いや、知らなかった。なんかみっつぃーが苺ないない、って言ってたから、ちょっとここで言ってみようと思って。」
つまり、あぶり出し作戦だったというわけだ。
「まあ、さゆみの中で犯人は二択だったんだけどね。」
「…二択?小春と、もう一人誰かってこと?」
眉をひそめた新垣に、道重は頷いた。
その視線の先には
ジュンジュン。
「な、なんでワタシ見る!?食べてないヨ!!」
「あー。でも気持ちはわかる。」
新垣も納得して頷いた。
- 300 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:10
- 「まあでもね、小春も気づかなくて食べちゃったんでしょ?」
高橋が久住の肩を叩く。リーダーらしく微笑む姿に、久住も満面の笑顔で返した。
「…いや、なんか楽屋戻ったら『みつい』って書いてあるお皿があったから。『みっつぃのかー。まあいいや、食べちゃえー』って。…えへへ。」
「え」
「…うわあ。」
やはりヘラヘラしている久住。
悪気のかけらもないヘラヘラっぷりだった。
すると再び、光井の目が光った。
「わざとかぁぁあい!!!!」
ゴスッ
「ウボァ!!」
その瞬間の光井の顔は、まさに鬼の形相だった。
全体重をかけたチョップが、おでこに炸裂する。
ドダーーン!!!!
両足を上げ、やはり仰向けに倒れた久住を見て、リンリンは大爆笑した。
「どわっはははは!!コント!コントだコレ!!」
「リンリン、笑いごとじゃないよ、小春ちゃんおでこから煙出て…ぷっ…イーッヒッヒヒ!!」
止める気があったのかなかったのか、亀井もつられて大爆笑してしまった。
- 301 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:11
- 「はっ!!しもた、体が勝手に…!!」
「…愛佳…。」
田中は、『この人は絶対に怒らせまい』と心に誓った。
「台無しだ!小春は本当に台無しだ!」
「まあ、小春らしいよなあ。」
憤る新垣と、のんびり笑う高橋。
誰一人、久住の安否を気遣う者はなかった。
「さて、じゃあさくっと次に行こうか。」
「だったらワタシやりますネ!!」
さっきまで爆笑していたリンリンが、くるりと振り向いて手を挙げた。
なんだか目がキラキラしている。
「リンリン、超やる気だね。」
「やりマスヨ!ええ!」
- 302 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:11
- 妙な動きでカパカパと腕を動かし、気合いを見せつける。
そして、元気いっぱいに言い放った。
「私はヘンタイです!!!」
「「「なにぃ!?」」」
「へ、変態…っ!!」
「そんな、いい笑顔でなんてことを…!?」
場は一瞬にして騒然とした。
さっきまで伸びていた久住も、膨らんだおでこのままで飛び起きたほどだ。
「ど、どう変態なんやと思う…?」
戸惑いがちに意見を求める田中。
道重と亀井は、真剣に議論を始めた。
「…ガキさんより変態かなあ。」
「や、ガキさんは絶倫なだけで、変態とは違う。」
「でも、ガキさんの中の秘めたる変態成分が、愛ちゃんによって開花されてるわけで…」
「…私がなんだって?」
間に割り込むように、新垣が低い声を出す。
二人はそろって、あさっての方向を向いた。
- 303 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:12
- そして、傍らではナハッキーズも議論を始めていた。
「…それってもしかしてさ、ジュンジュンより変態ってこと?」
「ワタシはかなりヘンタイよ。」
「自分で言わはったで、この人。」
変態の定義と、その具体例について。
皆はそろって議論した。
しかし、たっぷり数分間黙っていたリンリンは、突然ピコーンと立ち上がって手を叩いた。
それはもう、昭和のリアクション新垣をしのぐ、赤塚マンガばりの動きだった。
「…ごめんなさい、日本語間違ってマシタ!言いたかったの、『ワタシは書道三段です』デシタ!」
「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」
真剣に話し合っていたメンバーは、一斉にリンリンを見る。
あまりにも壮大すぎる間違いだった。
- 304 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:12
- 「…なーんだ、ちょとヘンだと思ってたネー。」
「ホント、リンリンが変態だったらどうしようかと思ったじゃん」
ほっとしたように顔を見合わせるジュンジュンと久住。
「待って待って、おかしい。『書道三段』と『変態』、一文字も合ってないから!ていうかもう字数すら違う!!」
「絶対ワザとやろ!?」
さらっと流されてたまるかと、新垣と光井は猛抗議した。
当然の抗議だ。
「ジュンジュン見てタラ、うっかり思い出しマシタ。ヘンタイと。」
「…どんな記憶回路や?それ。」
高橋がぼそっとつっこむ。
リンリンが『変態』という字を辞書で引いたら、きっと『李純』と足すのだろう。
嫌な辞書だ。
「ハハハ、そんな褒められたら恥ずかしいヨ、リンリン。」
「…いや、どう考えても褒めてへんやろ!アンタは確かに恥ずかしいけど!」
光井の的確すぎるつっこみに、新垣も大きく頷いた。
- 305 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:13
- 「…まあまあ、それはさておき。ゲームに戻ろう。…書道だっけ?」
埒が明かないと見て、道重が話題を戻した。
「まあ、似合うよね。確かに。」
「でも聴いたことないしなあ。」
リンリンは、黙ってニコニコしている。
実際の所、リンリンの過去の経歴うんぬんは、メンバーとて細かくは知らない。
特技が多いことは知っていたが、正直謎もまだまだ多いのだ。
「でもさ、中国四億年だよ?書道なんてきっと一輪車乗りながらできるよ。」
「そうかな。いや、そこまで行ったらもう雑伎団だと思うよ。」
「ていうか四億年て。」
道重と光井にそろってつっこまれたが、亀井は適当に流した。
「そもそも、リンリンはお嬢様っぽいじゃん。書道くらい極めていても違和感ないよ。」
「まあ、そうだよねえ。」
「絵里の言い方に説得力はないけど、違和感もない…。」
- 306 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:13
- なんとなくまとまりかけたところで、新垣がハッと顔を上げた。
「待って!!…実は三段じゃなくて四段とかいうオチかもしれない…!」
「あっ…」
「有り得る…!」
お題そのもののベクトルは否定せず、細かい部分で嘘をつく。
先ほど新垣も使った戦法だ。
「それなら満を持してダウト!!」
「ダマされないっちゃよ!」
「うん、ガキさんが言うならそれ。」
新垣を筆頭に、光井、田中、高橋が次々とダウトに賭ける。
しかし、意外なところで用心深くなった久住は、自称『リンリンの親友』のジュンジュンを見た。
「ジュンジュンはどうする?」
すると、それまで一切の口出しをしなかったジュンジュンは、あっさりと言い放った。
「私?もちろんダウトですヨ?」
「やっぱりか!ならダウト!!」
「じゃあさゆみも♪」
そして、全員がダウトとなった。
- 307 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:13
- 「…終わりましたか?じゃあ正解発表しマス!」
ダダダダダ…と、セルフドラムロールを入れるリンリンは心底楽しそうだった。
高橋はそれを見て、ちらりと『石川さんぽいなあ』と思ったが黙っていた。
「ダン!答えはー…ダウト!!」
「おお!!」
「全員正解!!」
「よかった!!さすがガキさんだ!!」
皆口々に安堵の声を漏らす中、リンリンは笑いながらも悔しそうだ。
「予想外に、当てさせてしまいマシタネー。」
「はっはっは!リンリンのことなんてお見通しだよ!」
亀井が妙に勝ち誇っているが、彼女の言動は常に適当なので、やはり説得力はない。
「…まあ、デモ…やっぱりバレてたネ。…ジュンジュンには。」
「当たり前ヨ。」
意味深な言葉に、ジュンジュンは即座に頷いた。
さすが親友と言うべきか。
リンリンの真の腕前を知っているようだ。
「…みんなだませても、私ひっかからナイよ。ていうか、みんなもホントは知ってるハズです。」
「え?」
「な、なにを…?」
メンバーがざわついた。
何か見落としがあっただろうか。
- 308 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:14
- 「…ま、まさか…!!」
新垣が何かに気づいた。
そして、即座に自身のバッグを取りに走る。
出てきたのは、一枚の写真だった。
具体的に言うと、ハロショで扱っている生写真だ。
「やっぱり!!…みんな、これを…!!」
「あっ」
「…そ、そういえば…!!」
それは、リンリンの写真だった。
エイプリルフール企画で、本人の手書きコメントがついている。
その字は、へろっとしていた。
もう、へろっ、と。
「………リンリン、字下手デス。」
そう。
書道は別と言われればそれまでかも知れないが、確かにリンリンの字は微妙だった。
不慣れなひらがなだからとか、多分もうそういう感じとはちょっと違うレベルで。
- 309 名前:2.続・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/04/16(木) 19:14
- 「な、なに?ってことは、そもそも段持ちじゃないってこと!?」
「ははは、ナイデスナイデス。級もナイ。」
「なんっじゃそりゃあああ!!!」
それは不思議な悔しさだった。
賭けには勝ったのに、完全に裏切られたという喪失感。
いっそ負けにしていただきたい、と道重は思ったが、最終的には勝ちたいので黙っていた。
「しかしさすがリンリン…。中国四億光年の嘘はひと味違うよ…!」
「…さっきまでお見通しって言ってたじゃない、絵里。」
「ていうか光年て。距離ですやん。」
先ほどと同じようにつっこまれる亀井を生ぬるく見守りつつ、高橋はふと思った。
…ガキさんのカバンには、いったいどの範囲の生写真が入っとるんやろ。
エッグまで網羅してるとか…まさかなあ。リンリン入ってて、あっしのがなかったら嫌やなあ。
「…どうしたの?愛ちゃん。」
「……いや、別に…。」
『とりあえず今夜、勝負下着をちらつかせつつ問い詰めよう』と、物騒なことを考える高橋だった。
- 310 名前:オースティン 投稿日:2009/04/16(木) 19:17
- いつも暖かいレスをありがとうございます。更新です。
エイプリルもうっかり半ばを過ぎてしまいましたが最後までお付き合い下さい。
リンリンが実は本当に書道やってたらどうしようと思いつつ…。
でもあのへろっとした字が好きなんです。すみません。
- 311 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/16(木) 23:18
- いちいち昭和っぽくてワロスw
- 312 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/16(木) 23:43
- ゲームが終わった後でのガキさんの安否が気になりますwww
- 313 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/17(金) 14:16
- 勝負下着を見られるガキさんがうらやましい
- 314 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/17(金) 19:02
- 先生!ジュンジュンは開き直りすぎだと思います!w
(さすが乳首出せと言われてダイジョウブデスヨネの人…w)
- 315 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/18(土) 00:18
- さゆみん黒いよさゆみん
- 316 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/18(土) 22:19
- ゲームが終った後の愛ガキが
気になります
- 317 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/19(日) 13:51
- ゲーム後の愛ガキも詳しく(ry
続きも期待です!
- 318 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/19(日) 23:07
- 愛ちゃん!
そんなことをしてしまったらガキさんが大変なことに…!
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/20(月) 17:54
- 更新待ってました!
みっつぃーやリンリンのキャラが自分の中でもはっきりしてきた気がしますw
愛ガキに期待ww
- 320 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/24(金) 18:58
- 更新を読むのが毎回楽しみです。
ガキさんのハロプロコレクション、一回見てみたい
- 321 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:09
- 「…で、いよいよラストスパートですが…。」
ゲームも終盤にさしかかろうとしていた。
珍しく仕切りに徹していた亀井が、目の前を見る。
残ったメンバーは、久住、ジュンジュン、光井。
メンツ的に、あまりいい予感はしなかった。
それを肌で感じている新垣の眉間には、すでに皺が寄っていたほどだ。
「じゃ、じゃあ小春ちゃん、どうぞ…。」
一抹の不安を抱えつつそう促すと、久住はとてもいい笑顔で言った。
「はぁい!……こないだ小春、ついに吉澤さんに食べられちゃいました!」
「…くっ!!!」
「ぬぁ!!」
年上メンの嫌な予感は的中した。
ダウトだろうが、真実だろうが。
この手の話題は年若いアイドルにとってよろしくないのだ。いろいろと。
とりあえず、新垣は動揺を抑えつつ静かに呟いた。
「…えーと。これはデリケートな問題なので。早急に片付けたいです。」
「さゆみ、吉澤さんに抗議しますよ。」
気の早い道重は、早速吉澤にメールを打っている。
どちらにせよ、真偽のほどを確かめたい、という意味もあるのだろう。
- 322 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:10
- 「じゃあえーと、とりあえず全員賭けようよ。」
新垣はあくまでも、さらっと流すつもりだった。
高橋も、『小春には、あとでこっそり注意しておこう』と思っていた。
しかし、大陸仕込みの好奇心が、それを許さなかった。
「……久住サン、吉澤サンに、なにを食べられたんデスカ?」
「「「「!!!!!」」」」
リンリンだった。
とても無垢な表情だった。
隣では、同じくジュンジュンも不思議そうに首を傾げている。
変態なことと、日本語のスラングを知っていることとは別なのだ。
二人にとって、『食べる』と言えば『食事』に他ならない。
亀井が頑張ってフォローを試みた。
「えーと…あのね?それは…」
「だから、食べられたんだよ。吉澤さんに。小春そのものを。小春の小春を!!」
「!!!」
バッサリである。
久住自ら、禁断の箱を開けまくる。
亀井は涙目だった。
- 323 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:11
- 「そのもの、ッテ?体を?」
「そうそう、そういうこと。」
目を丸くするリンリン。
ジュンジュンは不思議そうに、しげしげと久住の体を見た。
「どこ食べられタ?痛かった?…デモ、日本人は、人の肉を食べナイよね?」
「…いや、日本人は、ってなんやねん!!コワいわ!!」
真顔のジュンジュンから一歩後ずさりつつ光井がつっこむ。
「わかった、もういい!意味わからないでいいから、もうどっちかに賭けて!!」
新垣は、徹底して流そうと奮闘する。
しかし、村仕込みの天真爛漫さが、それを許さなかった。
「だからほら!つまり新垣さんが、勝負パンツの高橋さんにすることだよ!!ベッドで!!」
「「「「!!!!!!!」」」」
久住のキンキン声が響き渡る。
田中の視界にちらりと入った新垣は、若干砂になりかけていた。
「ガキさんいかん!!気を確かに…!!」
「堪えて!!小春ちゃんにはあとでさゆみがお仕置きしとくから!!」
久住が開けた禁断の箱のラストは、まさにパンドラの箱のようだった。
高橋は、黙秘を決め込んで遠くを見つめている。
- 324 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:11
- リンリンとジュンジュンは、やっと合点がいったように頷いた。
「ああ、なんだ、そういうコトでしたか。ヨカッタね、久住サン無傷デシタ。…じゃ、ノーダウト。」
「長くアイドルしてると、いつか食べられるのカト焦ったヨ。私もノーダウト。」
「待って、その論点おかしない?まあ、とりあえず愛佳もノーダウトでええわ。」
確かにおかしいと誰もが思ったが、もうそんなことはどうでもよかった。
年長メンバー達は、祈る気持ちで声を張り上げた。
「と、とりあえず、私は小春の純潔を信じたい!!ダウトで!!」
先陣切った新垣に、残りのメンバーも続いた。
「さゆみも!!可愛い小春ちゃんでいて!!ダウト!!」
「れいなより先にオトナになるのは許さんけん、ダウト!!」
「手が早い吉澤さんはなんかイヤだから絵里もダウト。」
「別にどっちでもいいが、ガキさんが必死だからあーしもダウト。」
理由は様々だったが、先輩組は皆ダウト。
後輩組はノーダウトで分かれた。
- 325 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:12
- 久住は、笑ってしまわないように我慢しているのか、妙な表情でみんなを見た。
「へへー、じゃあ正解いくよ?正解は……。」
先輩組はおおむね必死。
8期組はぽやんとしている。
久住は、心底楽しそうに言った。
「ダウトでしたーー!!!」
「「「「「おおぉ!!!」」」」」
先輩組からどよめきの声が上がる。
新垣など、天井に向かって祈っている。
「よかった…!!娘。の風紀は乱れていなかった…!!」
「う、うん…。よかったね…。」
ガキさんも乱している中の一人だよ、と、亀井は思ったけど言わなかった。
道重は、久住の頭をポンと叩いた。
「あのねえ小春ちゃん、あんまりそういう冗談言ったらダメだからね?」
「はい、わかりましたぁ。」
何も考えていない顔でとりあえず頷く。
それにしても、と道重は考えた。
ゲームとはいえ、小春もこんなことを言えるようになったのか。
- 326 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:12
- オトナになってるんだなあとしみじみしていると、携帯にメールが届いた。
先ほど吉澤に送ったメールの返信だ。
小春の悪い冗談に、本人もさぞかし驚いていることだろう。
大あわてで弁解するつもりなのかもしれない
少しおかしく思いつつメールを見ると、ぽつりと短い文があった。
『私が小春に食われたんだYO…。』
道重の手から、ごとりと携帯が落ちる。
なんてこった。
そうきたか久住小春。
さすがミラクルさんだ。
「…さゆみんどした?すごい顔してるけど。」
「うひぃ!!?」
新垣に声をかけられ、道重はテンパる。
とりあえず、急いで携帯をしまった。
「なななんでもないから!!さゆみはいつもすごい顔だから!!」
「え…そ、そう…。」
意味がわからなかったが、新垣は気迫に押されて頷く。
道重は心に誓った。
このことは誰にも言うまい、と。
万が一久住が自ら暴露しようものなら、息の根を止めることも辞さない覚悟だった。
なぜか、そういう使命感に駆られていた。
- 327 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:13
- 「さあ、次!!元気よく行こうね、次!!」
「…テンション高いなあ。」
不思議そうに言われつつも、なんとなくその場は収まった。
そして、次に控えていたのはこの人である。
「ハイ!!ジュンジュン行きマス!」
「「……あぁ。」」
道重と新垣のため息がシンクロする。
それは、久住に続く嫌な予感だった。
いかに変態的なセリフが出てきても不思議はない。
そういう予感だ。
しかし、実際の言葉は、おおよその予感を少しばかり裏切るものだった。
「田中サンが好きなのは私デス!」
「え」
「…ほう。」
「いやいやいや、ダウト!!ダーウート!!」
田中が即座に否定した。
が、本人の宣言にもかかわらず、他のメンバーは田中を無視して議論を始める。
- 328 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:13
- 「…あのねえ、絵里は正直、アリだと思うんだよねえ。」
「でもどうなの?今のは『私が好きなのは田中さんです』って言うべきじゃない?」
「いやガキさん、ジュンジュンは多分誰でも大好きやで。」
「えー、DDじゃん。」
田中以外のメンバーは、正直自分に矛先が向かなかったことに安心していた。
なんだかもう、ダウトゲームの趣旨が微妙に変わってきている気もするが。
「ちょ、ちょ、もしもしみんな?」
しかも誰一人、田中のダウトを認める様子はない。
どことなく面白がっているのは明白だった。
「でも、田中サンと仲良しは光井サンですヨネ?」
リンリンが言うと、道重がしたり顔で割り込む。
「それはラブじゃなくてライクだよ。そもそもみっつぃーはれいなのこと、ビジネスライクな付き合いと思ってるでしょ?」
「ちょ、なに『うまいこと言った』みたいな顔してはるんですか!!人聞きの悪いこと言わんといて下さい!!」
ひどい言われように、光井よりもむしろ田中が傷ついた顔をした。
- 329 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:14
- 「…ていうか、みんながどう言いよっても、れながダウトって言いようけん、関係ないっちゃん…。」
どちらかといえば早々にこの話題を終わりにしたい田中は、少々強引にまとめようとした。
が、周りは完全に楽しんでいた。
「田中っちがダウトなのはわかった。でもまだ答えはわからないじゃん!!」
「絵里たち真剣に考えてるんだから、ちょっと待っててよ。」
新垣と亀井が、揃って阻止する。
「やけん、れなが違うって言いよったらそれが答えっちゃろがぁあ!!!」
田中がばんばんと床を叩いて抗議した。
これだけ怒っているのに相手にされないというのも不憫な話だ。
ふわふわとことの流れを見ていた久住が、きょとんと首を傾げる。
「えーと、じゃあじゃあ、田中さんはジュンジュン嫌いなんですかぁ?」
「え?」
そのいかにも純粋そうな口調に、一同が少々ざわつく。
やや気性の激しいところもあるが、根はやさしい田中だ。
たとえこの場をしのぐためだけのものとはいえ、仲間に対して『嫌い』と言うことには抵抗があった。
- 330 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:15
- 「いや、そりゃ嫌いなわけないっちゃん、ジュンジュンとは仲良いけん。でもやっぱり」
「…嫌いなんデスカ。」
たたみかけるように言ったのは、ジュンジュン本人だった。
なんだか可哀想な子犬のような顔だ。
「嫌いやないと!!だからってその…なんで最近、そんなにれいなに絡むと?」
「田中さん、可愛いダカラ。」
『からかうと面白いから』の間違いではないのかと密かに道重は思っていたが、訂正はやめておいた。
ジュンジュンの表情はいたって真面目だが、そのせいか、いまいち真意も読めなかった。
しかし、田中も意外と真面目だった。
「あのー、ほら。『好き』って言っても、いろんな意味があるやん…?やけん、答えにくいっちゃん…」
「アー。」
「…おお…」
納得するジュンジュン。
そして、正直呆れるギャラリー。
そこを追求してしまったら、余計答えにくいのではないのか。
さらっと『ああ好きさ!』とでも言ってしまった方がいいのではないのか。
しかし、誰もつっこまなかった。
面白いので。
ジュンジュンは、しばらく考えてから呟いた。
- 331 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:18
- 「意味などどうでもイイ!!!」
「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」
そこ大事じゃん、なんでそこ明確にしないの、とみんなが思ったが、ジュンジュンは真顔だった。
自分から言い出したくせに、よくわかっていないのかもしれない。
しかし、田中はその言葉で少し安心したらしく、ため息をついて頷いた。
「わ、わかった。そんなられいな、メンバーとしてジュンジュン好きやけん。」
「ホントですか!!ヤターー!!!」
元気よくガッツポーズ。
メンバーとして好きなのは当たり前なような気もするが、一同はジュンジュンが嬉しそうなのでよしとした。
「…じゃあれいな、ジュンジュンにチューしてあげなよ。」
「さゆ、ナイス案だね。」
「はぁ!?」
道重はしれっと言い放ち、当然亀井もそれに乗っかった。
案外あっさり流れそうでつまらなかった同期からの、ささやかないたずらだ。
田中にしてみれば、完全に罰ゲームだが。
- 332 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:18
- 「いや、やけん、そういう意味で好きなわけないっちゃろ?だいたいなんで」
「田中サン。」
ジュンジュンが田中の肩を叩く。
振り向いた田中は、絶句した。
ものすごく可愛い顔だ。
それはもう、このキスを拒んだら、中国政府が黙ってないぜ、くらいの。
もちろん田中はそこまで考えたはずもないが。
「れいな、日中友好のなんちゃらのためにやりなよ。」
「そうだよ。パンダの代わりに、日本が差し上げるのはれいなだよ!」
道重と亀井が全力で推す。
「…そんな、社会派っぽい言い方してるけど…。」
新垣が言いかけてやめた。
面倒くさくなったらしい。
「…わかった!!ああもうわかった!!やればいいっちゃろ!?」
「お願いしマス。」
一応謙虚に頭を下げるジュンジュン。
そして、田中はゆっくり顔を近づけた。
なんとなく、見ている一同は、この先どうなるかわかっていた。
残念ながら、それがわかっていないのは田中だけだった。
- 333 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:19
- ジュンジュンの目が光る。
軽く触れた唇が離れるより早く、ジュンジュンは田中を押さえ込んだ。
「!!!」
普段からは考えられないような敏捷さだ。
座っていた田中に対して、膝立ちのジュンジュンは覆いかぶさるような位置にいる。
両手で田中の頬を押さえているせいで見えなかったが、多分いろいろINしているだろう。
『それでこそジュンジュン』と、みんなのんびり見守った。
自称”娘。の風紀委員”の新垣は心配そうな顔をしたが、高橋が静かに目を輝かせていたので何も言わなかった。
しかし、光井があることに気がついた。
「…あのー。田中さん、顔真っ白にならはってますけど…。」
「え?」
「あっ。」
- 334 名前:3.続々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/05/21(木) 10:19
- よく見ると、田中の手はだらりと下がり、力が抜けきっている。
「れれれいなーー!!?」
「ちょ、田中っち!!息!!息してない!」
「ジュンジュン、タンマダ!!」
リンリンが引きはがす。
「エー、本番はこれからダヨ?」
「…こんな人が大勢見てるところで本番はダメだよぅ。」
亀井が諭すように言う。
多分、亀井の言う『本番』は別の意味だ。
新垣は、しょぼくれた顔でため息をつくのだった。
- 335 名前:オースティン 投稿日:2009/05/21(木) 10:21
- いつもレスを下さる皆様ありがとうございます。
とっくにエイプリルが終わっています。時間かかってすみません…。
次回で完結となります。
れなジュンがマイブーム過ぎて大変です。
- 336 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/21(木) 20:10
- 小春w
れなジュンはブームが来てますね。
どう完結するのか楽しみに待ってます。
- 337 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/22(金) 03:22
- 小春はやっぱミラクルで、れいなは不憫で笑った
最後のみっついはどんな爆弾を持ってくるのか楽しみ
モー娘のシングル1位をお祝いする話とか読みたいな
- 338 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/23(土) 23:45
- 腹抱えて笑った!ww
さゆえりの一体感は最高です!れいな頑張れれいな!
次回も期待しておりますー
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/31(日) 13:59
- おもしろい!!
更新待ってます
- 340 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:24
-
「じゃ、えーと…みっついーだね。最後はみっつぃーだよね。」
「はぁい。」
念を押すように新垣が言う。
光井なら。
光井ならこのゲームをマトモに終わらせてくれるに違いない。
そういう期待もこもった念押しだった。
ちなみに、新垣の後ろには田中が伸びている。
意識はあるが、ひたすら顔色が悪い。
「…天国ってあんな感じとかいなぁ。お花畑があるっちゃん…」
「田中サン死なないデー」
「…誰のせいやと思っとーと?」
横たわったままスゴまれて、ジュンジュンは久住の後ろに隠れた。
「じゃ、行こうか…はい、光井どーぞ。」
新垣に促され、光井は笑顔満面で言った。
「えーと。愛佳、見てもうたんですけど。昨日、亀井さんが、寝てる道重さんにチューしてはるところ。」
- 341 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:24
- 「「えっ!?」」
亀井が顔色を変える。
道重も、心底驚いた様子だ。
そしてもちろん、新垣も死にそうな顔をしている。
光井愛佳、おまえもか。
誰ひとり、もうエイプリルフールのことなど忘れていた。
もはやこれは、ドッキリ大暴露大会だ。
「してない!!絶対にしてない!!」
手を振り、首を振り、ついでにくねくねまでして。
亀井は体全身で否定した。
「…そういえばさ、昨日さゆみんとカメ、最後まで残ってたよね…。」
「ということは、二人っきりの時間があったってことやね。」
サブリーダーとリーダー、そろって突っつく。
ここぞとばかりに、息の合ったところが発揮されている。
- 342 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:25
- 「二人でなんしよったと?なんしよったと?」
田中もとたんに元気になって、いきいきと亀井を責めた。
こっちは多分、仕返しのつもりだろう。
「ていうか、さゆもなんか言ってよ!してないよ、してないよね!?」
珍しく必死な亀井。しかし、道重はしれっと答えた。
「どうかなあ。さゆみ、ちょっと寝てた時間があったからわかんないんだよねえ。もしかしたら、寝てる間にされちゃったかも♪」
「なっ…」
亀井、四面楚歌。
亀をいじめる子供は大勢いるのに、この浦島太郎は助ける気がまるでない。
「寝てる間にちゅーするなんて、亀井さんエローい!」
「エロいネ!」
「エロいダ!」
はやし立てる久住にあわせて、リンリンとジュンジュンも続く。
「うるさいうるさい!エロいとか言わない!!ていうか、違うんだって!!あのー、ほら、寝てるさゆの顔にまつ毛
ついてたから、それ取ってあげてただけだもん!」
誰が聞いてもあやしい言い訳だった。
なによりも、亀井の目は泳ぎまくっていた。
それはもう、五輪選手ばりの泳ぎっぷりだ。
- 343 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:26
- 「本当にウソが下手やねえ、絵里は。」
高橋はニヤニヤしているが、嘘の下手さに関しては到底人のことは言えない。
「あーあ、カメはそういうんじゃないって思ってたのに…。」
少々遠い目で、新垣が非難の目を向ける。
「いや、待って!!どっちにしろガキさんにだけは言われたくないから!!」
口にこそ出さないものの、『絶倫のくせにー!』と顔に書いてある。
「絵里、やっぱりさゆみのことそういう目で見てたんだー。ふーん、そっかそっかー。」
道重が、心底楽しそうに笑う。
まさに、してやったりの顔だ。
そして、味方のいない状況に耐えかねたのか、ついに亀井は逆ギレした。
「…あーもう!!したよ!!絵里がやりました!!なんかつい、うっかりしたくなっちゃったの!!でも体が勝手にやっただけだもんね、絵里のせいではありません!」
「なんちゅー言い訳だ!!」
「絵里、ツンデレは似合わんとよ。」
道重は、最高潮に目が輝いていた。
心の中では『みっつぃーありがとう』と万歳三唱が鳴り響いている。
- 344 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:27
- 「…でもー、どうせしてくれるんならー、起きてる今してくれてもいいと思わない?」
「えぇ!!?い、いや、ダメじゃない?それはダメだよね?」
声が裏返る亀井。
しかし、仲間はどこまでも非情だった。
「さゆ!それはいい考えっちゃね!!」
「もうどうでもいい。カメやっちゃいな。」
「ガキさんがそう言うならやればいいがし。」
「やっちゃえやっちゃえー。」
「ドーゾドーゾ」
「ドーモドーモ。」
「…リンリン、『どうも』は変やで。」
「くっ…な、なんという鬼グループ!」
亀井は打ちひしがれた。
が、今まで新垣や田中にしてきたことを思えば、人のことは言えない。
道重も、完全に臨戦態勢。まさに準備オッケーよ状態だ。
「はい、どこからでもどうぞ♪」
「う…うぅう…」
亀井は唸る。そして道重に近づく。
しかし、その後が進まない。
- 345 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:27
- 少し近づきはまた離れ。
「うー…うーーー」
唸り
近づき
また離れ
ちょっと近づき
道重の周りを一周し
そしてついに、頭を抱えてしまった。
「やっぱ無理!!すみませんっした!!無理です!絵里のようなドジでノロマなカメにはできません!!」
「えぇーー!?」
道重は絶望満点に絶叫する。
「なんで!?さゆみのこと好きって言ったよね!!」
「言ったよ!!言ったけど…でも人前でキスは無理!」
「なんでよ!!ヘタレのれいなだってできたのになんでできないの!?」
「へ、ヘタレ…」
言い争いのどさくさに紛れて暴言を吐かれた田中は、正直に落ち込んだ。
ジュンジュンは黙ってその頭を撫でる。
もちろん、ジュンジュンの手はぱちんと振り払われたが。
- 346 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:28
- 「だって、みんなにキス見られるとかありえないし!!それに、可愛いさゆをみんなに見せるの、イヤだもん!!!」
「!!!!!」
『『『『『ええーーーー!!??』』』』』
露骨にときめく道重と、つっこみたくてたまらない仲間達の見事な対比である。
特に、すでにキスを見られまくっている高橋や田中の表情たるや。
「リーダー、あいつぶっとばしてよかと?さゆも込みで。」
「いい!許す!」
「いやいやいやダメ!!田中っち落ち着いて!愛ちゃんも煽らない!!」
目が座っている田中をなんとかいさめる新垣。
その新垣も、おそらく腹に据えかねる思いはあるものの、もうあきらめているようだ。
「絵里…そんなに…そんなにさゆみのこと…?」
「うん…。す、好きだよ。」
「絵里ーーー!!!」
飛びついて抱きつく道重。
受け止め損なって転がる亀井。
- 347 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:28
- 「やっぱり絵里サイコー!絵里可愛い!!」
「うへへへ、えーでもぉー、やっぱさゆの方が可愛いよぉー。」
「絵里ーーーvv」
「さゆーーーvv」
二人はさながらトレンディドラマのように、転がったままキラキラと笑った。
「…あのー、人前でちゅー、の100倍くらい恥ずかしいと思うんですけど、これ。どうなんすか?」
珍しく、ぽつりとつっこんだ久住の言葉に、誰もが頷くしかなかったという。
「…それで、ですね。」
光井が、いつ口を挟もうか待っていたかのように手を挙げた。
「あの、結果なんですけども。」
「…結果?」
田中が不思議そうに光井を見る。
「いや、だから。ダウトしてはる途中でしたよね、まだ。」
「あ」
「あーあー、そうだったね。」
高橋も思い出したように頷く。
目の前で展開されていた光景があまりにも鬱陶しくて、誰もが忘れていたのだ。
- 348 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:29
- 「…ダウトなんですよ。」
「はぁ。」
「ダウトだねえ。ん、なにが?」
新垣が問う。
光井は、申し訳なさそうに頭をかいた。
「…だから、えっと。亀井さんと道重さんがチューするの見た、って。嘘やったんですけど。」
「え」
「えぇええ!!?」
昭和のリアクションでのけぞる新垣。
うっかり居眠りをはじめていたリンリンも、騒がしさで目を覚ました。
「え、なになに?ホイコーローがなんデスッテ?」
「言ってないよ!!ていうか説明めんどいからもういい、リンリン寝てて!」
新垣に手厳しくつっこまれ、リンリンはしょんぼりした。
「そんなー、ガッカリンリンですヨ…………グゥ…グゥ…」
「寝ちゃったーー!」
「もうよか、全部どうでもよか!っていうか、じゃあなんで!?愛佳が見よったのは嘘でも、絵里はホントにチューしとったってこと?」
「…ってこと、ですよねえ…」
全員が道重と亀井を見る。
なんだかまだ二人の世界だったので、何も言えなかった。
ていうか、何も言いたくなかった。
- 349 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:29
- 「…絵里、じゃあさぁ、誰もいないとこだったらチューしてくれる?」
「えー、どうしよっかなぁー。うへへへ。」
「………リーダー、あいつらぶっとばして相模湾に放り込んでよかと?」
「いい!!許す!!」
「だからダメだって!!!ていうか、なんで相模湾!?」
「田中サンこわい〜〜」
…その後、新垣の説得と、なぜか泣きながら土下座したジュンジュンによって、やっと田中の怒りは収まったという。
********
- 350 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:30
- 「結果発表ーーーー!!!!」
「……いえーい…」
なんだかんだで長時間にわたったゲームが終わり。
亀井が元気いっぱいに声をあげた。
が、大多数のメンバーは疲弊しきっている。
ダマし、ダマされ。
ときには嫌なことを暴露され、さらしものにされ。
おおむね亀井と道重以外のメンバーは、『もうやるまい』と心に誓った。
「もう最後の方何が何だかわかんなかったけど、飴の数でいったら…みっつぃーの勝ち!!」
「おっ」
「やったー!!」
最後の嘘がきいたのか、はたまたそれまでの堅実さか。
正直もう、飴のやりとり自体正しく行われていたのかもあやしいところだが。
「じゃあ、約束の賞金です!二万四千えーん!」
「ありがとございまーす!!」
賞金を持っていかれたのは悔しいが、誰ももう異論はなかった。
無事にこのゲームが終了したこと。
そして、道重・亀井のどちらにも賞金が行かなかったこと。
それだけで、他のメンバーにとっては充分だった。
- 351 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:31
- 「あーあ、でもなんていうか、こんなに必死で嘘ついたエイプリルフールは初めてだったなー。」
新垣が疲れ切った顔で体をよじる。
「ねえねえみっつぃー、それ何に使うのー?」
久住は、光井の賞金をのぞき込んで興味津々だ。
光井はちょっと考えてから、ぽんと手を叩く。
「あ、じゃあ、今日みんなでごはん行きません?コレでおごりますよ♪」
「おっ」
「マジで!!?」
メンバーみんなの顔がぱっと輝く。
「みっつぃー、アンタなんて良い子なの!!」
高橋がわしわしと光井の頭を撫でる。
すると、騒ぎに気づいてリンリンが目を開けた。
「…なになに、トンポーローがなんデスッテ?」
「あんたまだ寝てたんかい!…ほらもうリンリン、ご飯行くってよ。」
新垣にぺちんと叩かれて、リンリンは『ハイハイ』と笑った。
「肉!れいなは肉がいい!」
「小春も!小春もそれ!!」
みんなでわーわー騒いでいると、楽屋に突然の来訪者が現れた。
- 352 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:32
- 「おいーっす。通りがかったから来たぞー。」
「あら」
「吉澤さん!!」
オッサンのようにふらりとやってきたのは吉澤。
どう通りがかったのかわからないが、近所のコンビニに行くようなスタイルだ。
「あ、そうだシゲさん、メール見た?」
「!!!」
開口一番そう言った吉澤に、道重は顔色を変えた。
そうだ、小春に食われたんだったこの人。
ていうか、小春のいくつ年上だと思ってるんだこの一人ヘタレブリリャンチス!!
道重は、心の中でひどいことを思った。
それほど、『小春に食われた』発言は衝撃だったのだ。
「あの、吉澤さん!さゆみ、秘密にしますから!!愛ちゃんにもガキさんにも、誰にも言いませんから!」
「え?」
必死にそう宣言する道重を見て、吉澤は首を傾げる。
そして、盛大に笑いはじめた。
- 353 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:32
- 「あーあ、あれ?うははは、ダマされたー!エイプリルフールだYO!」
「!!!」
腹を抱えてうひうひ笑う吉澤。
「もうシゲさん、あんなの信じちゃったのかー?かっわいいなぁー。そもそも小春にまだそんなんできるわけないし!ひゃひゃひゃ!」
道重の目が一切笑っていないことに、吉澤はまだ気づいていない。
「あはは、あは…あ?シゲさんどした?」
なにも言われないことにやっと気づき、アホ面で顔を上げる。
すると、道重はニッコリと、頬の筋肉だけで微笑んだ。
********
その日以来。
吉澤の携帯にはやたらとチェーンメールが届くようになり、吉澤は泣く泣くアドレスを変えたという。
- 354 名前:続々々・エイプリルのフールたち 投稿日:2009/06/13(土) 22:33
-
初夏だけどエイプリル
【END】
- 355 名前:オースティン 投稿日:2009/06/13(土) 22:35
- エイプリルフールネタなのに時間かかってしまってすみませんでした。
やっと完結です。
今後の更新は未定ですが、まだやれそうなこともあるので短編程度でやっていきたいと思います。
いつもレスくださった皆様、ありがとうございました。
リクエストも励みになりました。
今後とも宜しくお願いします。
- 356 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 01:09
- エイプリルフール編、お疲れ様でした!
毎回毎回本っ当に面白くて、更新を楽しみにしていました。
今後も愛ガキはもちろん、さゆえりのバカップルぷりはジュンれなを見守っていきたいですw
次も楽しみにしています!
- 357 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 13:05
- 完結お疲れさまでした。
爆弾発言や大暴露満載でとても面白かったです。
またよろしくお願いします。
- 358 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 14:38
- 面白かったぁ!
さゆえりいいですね〜
吉澤さん不憫だなぁww
- 359 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 18:48
- いや〜、娘絡みの小説で毎回読むたびに大爆笑した作品は久しぶりです!
今後も作者様の作品楽しみにしてます。
- 360 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 20:29
- 最高!本当に笑った作品でした。
今回地味に、ガッカリンリンがツボでした
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 21:52
- 一人ヘタレブリリャンチスwwww
笑わせていただきました、次回作も期待しています!
- 362 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/16(火) 10:12
- ものすごく面白かったです
すてきな作品どうもありがとうございました!
- 363 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/19(金) 23:53
- とてもおもしろかったです。
愛ガキを応援しつつ次回作待ってます。
- 364 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 01:15
- 改めて読み返しました
ものすんごくおもしろいです!!
新たなシリーズが始まることを期待していますwww
- 365 名前:オースティン 投稿日:2009/10/06(火) 14:12
- 時間が経っても読んでくださる方がいるようで、喜ばしい限りです。
ネガティブな話題もなんのその、ラブ&ビーンは相変わらずみんなバカです。
よろしくお願いします。
- 366 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:14
- 「れいな、どうしても納得行かんことがあると。」
それは突然始まった。
そのとき娘。のメンバーは撮影の空き時間で控え室にいて、リーダーの高橋だけはスタッフに呼ばれてミーティングに出ていた。
残りの8人が思い思いの時間を過ごす中、田中がふと口を開いたのだった。
「なに?納得行かないって。」
台本に落書きをしていた亀井が顔を上げる。
田中は少々重々しく口を開いた。
「あのさあ、なんで娘。の貧乳キャラはれいな、みたいなことになっとーと?どう見ても小春やガキさんの方が胸ないっちゃん?」
「…はあ。」
心底どうでもいいという感じでそう呟いた亀井の背後で、新垣が立ち上がった。
「コーーラぁーー!!!」
「うわっ」
亀井が驚いて身をかがめる。
新垣は、びしっと田中を指さして声を張り上げた。
- 367 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:15
- 「小春はともかく、あたしは多少はあるよ!ああ、あるね!!むしろ田中っちよりあるとゆいたい!」
「ない!絶対れいなよりない!!」
新垣が某後輩の名言を口走ったことには触れず、言い合いが始まった。
「ケンカだよ光井サン。どうしよ?」
「…とりあえず様子見やな。」
「どっち勝つかナー。」
ジュンジュン、光井、リンリンは傍観を決め込んだようだ。
そもそも、止める気もなさそうだが。
「だいたいね、小春と同列にされるとかありえないから!むしろ比べるまでもないよ!」
「いやいや、れいなの写真集見たらわかるっちゃろ、ちゃんと谷間もあるけんね!」
さらにヒートアップする二人。
久住もその場でやりとりを聞いてはいたものの、微妙に口を挟めずにいる。
すると、それを見ていた道重は、なにやら久住に耳打ちした。
久住は首を傾げる。
「なんすかそれ?それ言えばいいんですか?」
「うん、そう。ほら、ちゃんと両手あげて。」
- 368 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:16
- 何かの指示をした道重の言うとおり、久住は両手を上に上げて言い放った。
「こぱるはきょにゅう!」
「そうそう!あははは!!」
何がなんだかわからない久住の横で、道重は笑い転げる。
その後ろの方では、ジュンジュンもブハッと吹き出した。
「はははは!!本物!!本物!!」
田中と新垣は顔をしかめた。
「何言っとー、小春が巨乳なわけないやん。」
「ていうか何?こぱるって。」
「いや、わかんないすけどなんか道重さんが言えって。」
大乱舞がどうのこうの、総選挙がどうのこうのと笑い合う道重・ジュンジュンを放置して、貧乳トップスリーの議論が始まった。
「でも小春は別に胸なくてもいいんですけど。」
「いや、そういうこと言えるの今だけやけんね。」
「大人になると世間は貧乳に厳しくなるんだよ!」
微妙に重みのある新垣の言葉に、聞いていた田中の方が複雑な顔をする。
そして、それまで黙ってやりとりを眺めていたリンリンは、ここで初めて口を出した。
「デモー、みんなスゴイ魅力的だし、胸とか関係ないダヨ?」
「……。」
- 369 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:17
- 隣の光井は、あえて何も言わなかった。
案の定、新垣と田中の鋭い視線が刺さる。
…主にリンリンの恵まれた胸に。
「リンリン。れいなは今だけ、リンリンが大嫌いと。」
「あたしも今だけ、リンリンを仲間とは認められません。」
「エエー!?」
わけがわからず、ショックを受けるリンリン。
ジュンジュンは、最近ネットでちらほら見かける『リンπ』という単語を思い出して、一人静かに頷いた。
そして、何か一生懸命考えていた田中が、ばんと机を叩いて立ち上がった。
「わかった!じゃあもうここではっきり決めると!WBC …ワーストバストチャンピオンを!!」
「だ…WBC…!!」
よもやそんな単語が飛び出すとは思っていなかった一同は、軽い衝撃を受けた。
そんな中、WBC最有力候補の久住がぽつりと呟く。
「…かっこいいっすね、WBC。」
「かっこよくないよ!!バストがワーストなんだよ!?」
「あ、そっか。」
新垣につっこまれて納得する。
「で、どうすんの。どうやって決めんの?サイズ?」
「それじゃふつうすぎる!」
「や、そこは普通でええやん!」
- 370 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:18
- 3人がわちゃわちゃと言い合うのを黙って聞いていた亀井は、笑顔で爆弾を落とした。
「…じゃあジュンジュンに審査させなよ。」
「えっ!?」
さらっと落とした割に、その爆弾の威力は絶大だった。
「いいんデスカ?」
「ちょ、目を輝かせない!!」
光井がジュンジュンの腕を引っ張るも、ジュンジュンはすでに心底乗り気。
背筋を伸ばして腕まくりをする姿を見て、光井は軽く諦めた。
「デハ選びます!」
「う、うん…。え、でもどうやって?」
少々引きつつ田中が訊くと、ジュンジュンはおもむろにその胸をわし掴んだ。
「なっ!?」
「さわればワカルですカラ!」
「ええー!?」
なんとなくこうなることがわかっていた一同は、温かく見守った。
ライブ中のステージでも滅多に見せない、素晴らしくいい笑顔で田中の胸を触りまくる。
「あっ…いやっ、なんかくすぐったい、ヤメて…」
「まだまだデス!!これからデス!」
- 371 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:19
- 上から押さえ込む体勢で、謎の審査を続ける謎の中国人。
最近はもうたいして謎でもないが。
そして、その表情はだんだんと悪代官のそれに変わっていった。
「ジュン子、ちょ、もう…あぁっ」
「ふはははは!ナイス!田中サンナイスおっぱい!!」
極悪の高笑いを発し始めたジュンジュンを見かねて、さすがにリンリンと道重が止めた。
「ジュンジュン!!帰ってキテ!!」
「審査に私情を挟むのはよくない!」
両脇を抱えられてやっと離れたジュンジュンは、はっと真顔に戻った。
「…スミマセン、ちょと今、何かがわからなくなりマシタ。」
「もー、自由すぎるよジュンジュン。」
そして田中は、我に返ったジュンジュンの足下でぐったりしている。
「…なんか…ジュン子とおると、年々トラウマが増えていきよる…」
まるで強姦にあったかのような風貌に、光井は涙を禁じ得なかった。
「で、どう?どうだった?結果は。」
促す久住の声にしばらく考えて、ジュンジュンは頷いた。
「んー…。愛情もって揉めばもっと大きナル!!」
「おおお!まだ伸びしろはあるってことやん!」
- 372 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:20
- 床に座り込んだまま、それでも明るい声を上げる田中。
若干、ジュンジュンに都合のいい審査結果だな…と思ったが、道重は何も言わなかった。
そして、次に口を開いたのは、ミラクルなバカだった。
「じゃあ小春は?」
「久住サン…?」
先ほどのジュンジュンの乱心ぶりを見てなお、自ら審査を受けようと言うその心意気に、光井は感服した。
決して、自分もそうなりたいとは思わなかったが。
しかし、その心意気は、フリーダムな審査員によって打ち砕かれた。
「久住サンの胸、別に触りたくナイです。」
「えっ!?」
まさかの門前払い。
オーディションで言えば書類で落とされた感じだ。
久住は、唐突に悔しくなった。
「バカ、それじゃ審査にならないよ!!触ってよ!」
「いえ結構デス」
「なにその拒否っぷり!?いいからほら!!」
「イヤー!」
ジュンジュンの手を取って迫る久住。
いやいやと首を振るジュンジュン。
めったに見れない光景だ。
- 373 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:20
- 「ちょっとだけ!ちょっとだけ触ればわかるんでしょ!?」
「ちょっともイヤデス!」
「じゃあ服の上からでいいから!」
「服の上でもイヤデス!!」
部屋の隅にジュンジュンを追いつめんばかりの久住。
リンリンは、ぽつりと呟いた。
「ナンカ、久住サンがかっこよく見えマスね。」
「なに?その感想…。」
亀井にはちっともわからなかった。
ただ、『ジュンジュンも小春も、どっちも敵に回したくはないなあ』と思った。
「でもほら、審査はしないといけないよ、審査員。」
「ムー…そうデスガ…」
新垣に促されて、ジュンジュンはじっと久住の胸を見る。
決して手は触れず、いろいろな角度から眺め回した。
- 374 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:21
- 「…20点。」
心底残念そうな顔でそう告げたジュンジュン。
何をもって20点なのかは誰にもわからなかったが、ギャラリーはなんとなく納得した。
そして、もちろん納得していないのは、久住だった。
「20点て何!?なにそれ?ていうか何点満点!?」
「アー…あの、20点のうち8点くらいはオマケでつけたデスケド。」
「おまけ!?てことはなに、実質12点じゃん!なんだよ!」
キーキー文句をつける久住を、新垣と田中が止めた。
「もう認めようよ小春。リアルに妥当な点数だよ。」
「そうそう、むしろ12点が正しい気もしよるけん、ありがたく思わんと。」
たいがいひどい慰めに、久住は遠くを見つめた。
「なんか今…初めて胸が大きくなりたいと思いました。」
「うん、それが大人になるってことだよ。」
「小春も今日からレディやね!」
チームWBC候補の結束が、なんとなく強まった記念の瞬間だった。
- 375 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:22
- 「…さて、じゃあ最後はガキさんですけど。」
亀井が思い出したように話を戻す。
正直、みんななんとなく、新垣は拒否すると思っていたのだが。
「…よーし!!負けないからね!!」
意外と、乗り気だった。
「どうするジュンジュン、どのコースでいく?」
「では触りマス。」
さっきとは打って変わって、またはりきって腕をまくる。久住は何か言いたそうだったが、諦めたらしい。
「えーと…ど、どうしたらいい?」
「直接触っていいデスカ?」
「え、まあいいけど…」
「では失礼シマス」
ジュンジュンは新垣の背後に回って、Tシャツの裾から両手を入れて、ブラジャーの上から大きさを測る。
「うわっ…手、冷たい。」
「スミマセン。ちょと我慢してクダサイ。」
後ろから抱きしめているようにも見えるその姿。
しかし、田中の時とは違って、ジュンジュンも真剣に審査しているようだ。
- 376 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:23
- なので、誰もつっこめなかった。
『なんかエロい』とは、思っていても誰一人言えなかった。
口にすれば、むしろ口に出した者がエロ扱いされることだろう。
そういう真剣さが、なぜか今の二人にはあった。
そして。
不幸なことに、楽屋の扉が開いたのはまさにそのタイミング。
ミーティングに出ていた高橋が帰ってきたのだ。
「お待たせー、ミーティング終わっ…」
「ジュンジュン、ちょっとくすぐったい…」
「もう少しナノデ。力抜いてクダサイ…」
背後から新垣の胸を揉むジュンジュン。
見ていたメンバーは『しまった』と思ったが、誰かが止めるよりも、高橋の動きは早かった。
「あっしのガキさんに触るなーーー!!!」
「ぶぼひゅっ!!!」
悲鳴に近い叫び声をあげながら、高橋の繰り出したスクリューパンチ。前体重を乗せたその拳は、見事ジュンジュンの頬にメガヒットした。
大きな体が、いとも簡単に後方に吹き飛んで、控え室にあった椅子の山に突っ込む。
- 377 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:24
-
「わあー!!ジュンジュン!!」
駆け寄る新垣。
その腕を、高橋は引き止めるように掴んだ。
「ガキさん!!あっしのこともうどうでもええんか!?ジュンジュンが好きになってもーたん!?」
「いやいや、違う!!つかアイドルの顔殴るなよリーダーが!!」
「そ、そんなにジュンジュンのことかばうなんて、やっぱ好きなん?そうなんやな!?」
ネガティブ心に火がついた高橋の勢いは止まらない。
代わりに、頭から椅子に埋まったジュンジュンの足を、久住とリンリンが片方ずつひっぱった。
「…またすごい飛んだねえ。」
「さすがリーダー、意外と力持ちでしたネ。」
「イタタ…。首とれるカト思ったヨ。」
なんとか助け出されたジュンジュンの左頬は、アンパ○マンのようにぷっくり腫れている。
- 378 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:24
- 「どうしよう。冷やす?」
「このあと撮影ダヨ。間に合うカナ。」
ジュンジュンの顔を見ながら思案する二人。
すぐにはひきそうにないその様子に、久住は小さく呟いた。
「…右も同じくらい腫れてれば、均整とれるんじゃないかな?」
あまりにも無茶な意見だったが、リンリンの思考回路もたいがい無茶だった。
「わかった、まかセテ!ジュンジュンいくヨ!」
「いたた、ん、ナニナニ?」
なんとか立ち上がったジュンジュンを、リンリンは田中の前に押しやる。
そして、物陰からジュンジュンに似せた声色で叫んだ。
「ヒンニュー田中!アホー!」
「!?」
思惑通り、田中はギラリと振り返る。
「なぁーんやとぉーー?」
「!?な、ワタシナニも言ってな…うわああ」
さすがにジュンジュンも身の危険を感じたのか、慌てて逃げようとするも時すでに遅し。
- 379 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:25
- 「人のこと言える胸かぁーー!!!!」
「べるぶっ!!!!」
ジュンジュンの右頬に、田中の渾身の跳び蹴りが決まった。
先ほどとまったく同じように、頭から椅子の山に突っ込む。
「イヤー飛んだ飛んだ!」
「…リンリンやるなあ。鬼だなあ。」
また片方ずつ足を持って引っ張り出すと、ジュンジュンの顔は見事なア○パンマンになっていた。
「完璧ダ!」
「おー、これはこれでかわいいね!」
「ヒドイ…みんなヒドイよ…。」
右も左もぷっくりぷっくりの顔で嘆くジュンジュンの様子を遠くから見て、光井がぽつりとつぶやいた。
「あそこまでひどい目におーてるジュンジュン、初めて見た気がします。」
「…感心するポイントが違う気もするけど、まあそうだよね…。」
なんとなく同意する道重。
- 380 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:25
- そして、控え室の入り口あたりでは別のバトルが展開されていた。
「あーしがあかんかったんやな?ガキさんに甘えて、いっつもされるばっかりで」
「いや、違うって!今のはそのー…い、いろいろあったけど、愛ちゃんが思ってるようなんじゃないし!」
「そんなにして欲しかったんなら、ジュンジュンなんかやのーてあーしに言ってくれたらあーしやって」
必死に弁明する新垣と、まったく聞いていない高橋。
そして、なんとか間に入る隙をうかがっている亀井。
その姿は、さながら大縄跳びになかなか入れない小学生のようだ。
「あのー、愛ちゃんちょっと聞いてあげてよ、こっちもいろいろあったんだよ。」
「わかった、今夜うち泊まりにおいで?これでもあーし、本とかDVDとか見ていろいろ研究しとるんやざ!」
「いやなんの研究だよ!コワいよ!!」
「ガキさんもちょっと、ここは一旦冷静に…」
マジ喧嘩なのかただの痴話喧嘩なのか、微妙なラインを行き来しつつ、二人の言い争いは小一時間続いたという。
- 381 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:26
- *****
そしてその後。
高橋は、新垣以外の7人がかりで『新垣さんは、リーダーだけの新垣さんです!』と言い続けられ、やっと機嫌がよくなった。
「…いやー、そうやったなあ。やっぱりガキさんはあっしだけのもんやなあ。」
「そうそう。ていうか、今日のアレはただのWBCだし。」
頷く道重の言葉に、高橋は不思議そうな顔をした。
「…なんや。ワールドビジネスサテライトがどうした。」
スポーツに造詣の深くない高橋は、ローカルなニュース番組と勘違いしたようだ。
しかし、ニュースに造詣の深くない道重には伝わらなかったので、『それはWBSだよ』とはツッコめなかった。
「つまり、貧乳ナンバーワン決定戦だよ。」
亀井がそう言うと、高橋はWBC候補3人を見た。
「…誰がナンバーワンやったん?」
「えーと…暫定一位は小春だった。」
実質12点。
他の二人の点数が明らかになっていないとはいえ、おそらくダントツだ。
- 382 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:26
- 「そうか。…じゃあとりあえず3人、ここに並びなさい。」
高橋は、いつになくリーダーらしい口調で3人を並ばせた。
何が始まるんだ、と警戒しつつ並んだ3人は、そっとリーダーの顔色を見る。
すると、高橋は大きな声で活を入れた。
「…アンタらみんな、誰にも負けない魅力があるんや。胸なんか関係ない!!!」
「「「…!!!」」
これがあのふにゃふにゃリーダーだろうか。
女神が降臨した。
昔風に言えば、ビーナスムースだ。
その余りの神々しさに、3人は思わず目を潤ませる。
「あ、愛ちゃん…ステキ…」
「ずっとついていくったい!!」
「リーダー最高!リーダー最高!!」
感涙する3人。
が、遠くで見ていたリンリンは悲しい顔をした。
- 383 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:27
- 「…アレ、さっきワタシも言ったヨネ?」
「アレやな、『何を言うか』やのーて、『誰が言うか』ってことちゃうか?」
さらっと言った光井の言葉に、リンリンはそっと下を向いた。
そして、3人に向かって高橋は続ける。
「まあでも、アイドルという点でどうしても胸が気になるんやったら…そうやなあ。」
首をひねって、まず田中を見た。
「れいなのは、ジュンジュンが大きくしてくれる。」
「えっ!?いやいや、断る!!」
慌てて手を振る田中の後ろで、ジュンジュンが目を光らせる。
その眼光に気づいた道重は、『今夜はオールナイトかなあ』と、ぼんやり思った。
「それから、ガキさんのは…あ、あっしが」
「い、言わなくていいよ!!!」
明らかに先のセリフが読めた新垣が慌てて止める。
「でも、あっしやればできる子やと思うんよ!パン生地こねたりできるでな!」
「そ、そんな力任せにこねたら痛いよ!やだ!」
「なんでじゃ!?やさしくするからまかせてや!!」
- 384 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:27
- 嫌がって見せる新垣も、若干頬を染めているあたりが鬱陶しい。
その雰囲気に耐えられず、亀井が静かに止めた。
「あの、そういうのは家でやってください。」
「あ、ごめん…。」
リーダーとサブリーダーも静かに引き下がる。
そして残された久住が高橋の腕を引いた。
「…で、小春はどうすればいいですか?」
「……小春かあ…。」
高橋の頭の上に、ニヤニヤする吉澤の顔が浮かんだ。
が、それに気づいた道重が、必死で手を振ってその映像を消した。
「愛ちゃん、それはダメ!絶対に、ダメ!!」
「お、おう…。いや、ってかなんでわかったん?」
「見えました!!マンガ風に!!」
「そうか…」
仕方がないので高橋は別の策を練った。
そして、しばし間があいてぽんと手を叩く。
- 385 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:28
- 「ほや!…小春、アンタまだ若いやろ?」
「…はい。」
「てことは、何もせんでもまだ大きくなる可能性がある。」
「……なるほど!!」
久住が目を輝かせた。
周囲のメンバーは内心『その可能性は低そうだ』と思っていたが、久住が嬉しそうなので黙っていた。
「今は確かにWBCかもしれんが…それは、『ワーストバストチャンピオン』やない!未来への無限の可能性をこめて…」
高橋は久住の肩を叩いた。
計画では、ここでうまいこと言いたかったのだ。
が、高橋はアドリブに弱かった。
しかたなく、思いついたことをそのまま言った。
「小春はWBC…わ、わくわくバストチャレンジャーや!!!」
「わくわくバスト!?」
「「「「「「「チャレンジャー!?」」」」」」」
可愛いんだか可愛くないんだかわからないその響きに、新垣と田中はそっと安堵した。
- 386 名前:乙女心とWBC 投稿日:2009/10/06(火) 14:28
- 「よかった…WBCにならなくてよかった…」
「わくわくバストはお断りやね!!」
「……なんかやっぱ、小春別に胸無くてもいいっす。」
微妙な称号を二重につけられた久住は、ただむなしく呟くだけだったという。
********
その後。
なんだかんだで貧乳対決は集結したものの。
アンパ○マン顔のままで収録に臨んだジュンジュンの姿に、狼では『ジュンパンマン降臨』等のスレが乱立したという。
- 387 名前:オースティン 投稿日:2009/10/06(火) 14:30
- 短編ですので完結です。
触れてはいけない貧乳ネタですみません。
お付き合い有難うございました。
- 388 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/06(火) 22:17
- 更新ありがとうございます!
アンパンマンJJワロタw
やっぱりれなジュンはいいですね!
- 389 名前:ぽち。 投稿日:2009/10/07(水) 00:18
- やっぱりおもしろすぎる。
もしかするとあの9人ならこんなやりとりがあるかも、思わせるところが
すごいです。
- 390 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/07(水) 16:48
- すっごいおもしろかったです!
どのメンバーも特徴を的確に捉えていて良かったです
とにかく笑いましたw
- 391 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/10(土) 01:28
- 1レス進むごとに腹が痛いw
- 392 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/22(木) 12:09
- 面白すぎwww
- 393 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/26(月) 17:40
-
小春・・・
ドンマイw
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