眠れる羊
1 名前:RK 投稿日:2008/09/22(月) 06:49
ベリキュー中心の短編をいくつか書いていけたらと思っております。
なっきぃ救済になればいいなと。

更新遅めで、拙い文章ですがよろしくお願いします。
2 名前:RK 投稿日:2008/09/22(月) 06:50
    
3 名前:RK 投稿日:2008/09/22(月) 06:50


恋に落ちたら
4 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:52

「うち、告白しようと思うんだけど」
「「ええぇぇぇぇ!?」」

二人の驚きの声が桃子の部屋に響き渡る。熊井友理奈は思わず耳を塞いだ。

「ももちもみやも驚きすぎだって」
「だって、くまいちょーがいきなり言うから・・・」
「そうだよ。急にどうしたの?熊井ちゃん」
「いや、なんとなく・・・」

今日は幼馴染の嗣永桃子の家に夏焼雅が遊びに来るとのこだったので友理奈も混ぜてもらった。
ゲームしたり、いろんなこと話したり楽しかったんだけど、仲良さそうな二人を見ていたら、
胸のあたりがなんかごわごわして、落ち着かなくて、そして痛んだ。
いつもは、そんな二人を見ても平気って言ったらウソになるけど大丈夫だった。
なのに今日はダメだ。気がついたらそんなことを友理奈は口にしていた。
そろそろ限界なのかもしれない。
5 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:53
「・・・そっか」

そう言った桃子は笑顔だったが、どことなく困ったような笑顔だった。
何も言わない雅に視線を移すと、雅は落ち着かないのかそわそわしていた。
好きな人は誰なのかとか、もっとつっ込まれる思っていたが二人とも聞いてくる様子はない。
まぁ、聞かれたところで答えられるわけはなかったのでそれはそれでよかった。
いくら告白を決心したとはいえ心の準備はいる。
そんな二人の様子に、もしかしたら二人は自分の気持ちに気づいているのかもしれないと友理奈は思う。

「あ、あの・・・うち、もうそろそろ帰るね!」

雅がそう言って立ち上がった。相変わらずそわそわしている。
時計を見るとそろそろ夕食の時間だ。友理奈は自分も帰ろうと立ち上がる。

「じゃーうちも」

雅の隣に並ぶ。隣に並んだ流れで雅と手を繋いだ。
それに驚いたような雅に、友理奈は苦笑いするしかなかったが手を離そうとは思わなかった。
6 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:53
「じゃーまたね。気をつけて帰ってね!」
「うん。またね」
「また」

桃子が玄関まで見送ってくれた。
お邪魔しましたーと雅と言って玄関を出ようとしたところで、ふと友理奈は振り返える。

「あっ、ももち明日の放課後に裏庭に来て」
「え・・・うん、わかった」

そう答えた桃子の笑顔はさっきと同じで困ったような笑顔だった。
雅が俯いたのがわかったが、それに気づかない振りをした。
7 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:54
友理奈の家の前まで来て、雅と繋いでいた手を離す。

「じゃ、みやまたね」
「うん。また」

お互いに手を振って別れる。
雅は笑顔だったが、無理に笑ってるようだった。
その顔を見て胸が痛んだ。自分の決心によって雅を傷つけてしまうかもしれない。
でも、そろそろ限界に近づいている。
いつか、気持ちが溢れて暴走してしまうよりずっといい、そう友理奈は自分に言いきかせた。
8 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:56
  
9 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:56
友理奈は今日のことで緊張しているのか、大分早く目が覚めてしまった。
いつもよりゆっくりできるのだが、なんとなく家にいるのも落ち着かなくて学校に向う。

自分が一番かと思ったが、教室に入ると中島早貴がすでに来ていた。

「おはよー」
「おはよー。今日友理奈ちゃん来るの早いね」
「なんか、早く目が覚めちゃったからさー」
「そっか」
「なかさきちゃんはいつもこの時間に来てるの?」
「ううん。私も早く目が覚めちゃったから、学校で勉強しようと思って」

友理奈は中学三年で受験を控えている。
とはいえ、友理奈の学校は中高一貫校なのであまり受験勉強とは無縁だ。
よほど成績が悪かったり、違う学校を受験するなら話は別だが。
友理奈はこのまま高等部に進学予定だ。
ちなみに、桃子と雅は高等部の二年生と一年生だ。
学年の違う桃子と雅が仲良くなったきっかけは忘れたが、桃子を介して雅と仲良くなった。
10 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:57
「なかさきちゃんて他の学校受験するの?」

早貴は成績優秀だ。それにテストが近いわけでもない。
友理奈は疑問に思ったことを口にしてみる。

「ううん。高等部に進むつもりだけど。なんで?」
「テストもまだ先だしさぁ。なんで勉強してるのかなと思って」
「たしかにテストはまだ先だけど、やっぱり負けたくないじゃない」

メガネを上げながらキュフフと笑い早貴が答えた。
早貴の笑い方は特徴的だ。友理奈はキュフフってなに?といつも思うのだがそれを口にしたことはない。
笑い方などどうでもいいし、それにキュフフと笑う早貴が可愛かったから別にそれでよかった。

「そっか、なかさきちゃんらしいね」

負けず嫌いの早貴らしい答えに、ふふっと笑ってしまったが、
早貴は気にした様子もなく、笑顔でうんと答えてからまた勉強を再開した。
友理奈は机に鞄を下ろすと窓際に移動する。
窓から外を覗くと、校庭では運動部が朝練をしていた。
11 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:57
「そういえば、今日の生徒会ちょっと遅れるから先始めてて」

校庭から早貴に視線を移す。
友理奈は生徒会副会長をしていた。そして会長が早貴だ。
最初は面倒くさいと思っていたが、やってみると意外に楽しかった。
成績優秀な早貴が生徒会長なのはわかるのだが、
友理奈は自分がなぜ副会長なのか未だに疑問に思っている。
背が高く、スラっとしていてクールな出で立ちが、生徒の間で人気があることを友理奈は知らない。

「わかった」

早貴はそう答えると、すぐに教科書に視線を戻した。
真面目だなぁと思う。
友理奈はこんなに真面目な彼女も誰かに恋したりするのだろうか、と疑問に思った。
早貴に聞こうとしたが、なんとなくやめておいた。
12 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:58
放課後、裏庭に行くと桃子はもう来ていた。

「ごめん。待った?」
「ううん、今来たとこ」

それから沈黙が続く。
桃子はいつになく真剣な顔をしている。
いざとなったらすごく緊張して、どう切り出したらよいかわからない。

「あ、あのさー・・・うち―――」
「ちょっと待ったーーー!!」

やっとの思いで口にした言葉は、突然聞こえてきた声によってかき消された。
声のした方を見ると、雅が息を切らして走ってくる。
友理奈はそれを見て呆然とした。桃子を見るとやはり呆然としている。

「ごめん、熊井ちゃん。うちももものこと好きなんだ。
 ももを好きな気持ちは誰にも負けない。
 だから、悪いけどももは熊井ちゃんに渡せない!」

息が整わないうちに一気に雅はそういうと、桃子の腕を掴んでこの場を立ち去ろうとした。
突然のことに驚いて友理奈は雅の背中をぼーっと見ていたが、我に返り雅の腕を掴む。
13 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:58
「好き。みやが好き。・・・ずっと好きでした」

友理奈が自分の気持ちを打ち明ける。
告白しようとは思っていた。でも、こんな形で告白するつもりはなかった。
でも、この際仕方がない。雅は友理奈が桃子のことを好きだと勘違いしてるのだから。

「・・・・・」
「・・・へ?えと・・・あ、あれ?」

雅は相当驚いたらしく、口を空けたまま固まっている。
桃子も驚いた様子だがなにやら首を傾げている。

「ちょ、えぇぇー。ってか、えぇぇぇー!?」
「みや驚きすぎだから」

フリーズが解けたと思ったら、雅が今度はわたわたし始めた。
そんな雅の姿を友理奈は可愛いと思う。

「いやいやいや、驚くから!だって、熊井ちゃんはもものことが好きなんじゃないの?」

雅の言葉にうんうんと頷く桃子を見て、友理奈は呆れてしまった。
自意識過剰過ぎる。どこをどうとったらそのように思うのだろう。
14 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:59
「それに、ももを呼び出したのも告白するためでしょ?」

そう続けた雅の言葉に、あぁーだからかと思った。雅がこの場に来た理由。
たしかにそう捉えられても仕方がないような気がした。
友理奈はなぜ桃子を呼び出したのかも含め、二人に経緯を話し始めた。

昨日二人を見ていた、胸がざわついて告白を決心したこと。
桃子を呼び出したのは、みやに告白することを伝えるため。
桃子もみやを好きだってことはわかっていたので、正々堂々としたっかたこと。
このあと、雅を呼び出して告白するつもりだったこと。
15 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:59
「なんだー、そっかぁ」

経緯を聞いた雅は気が抜けたのか、その場に座り込んだ。
それを見た友理奈は苦笑いを浮かべる。
完全に雅は友理奈が告白したことを忘れている。
まぁ、そんなとこが雅らしくて好きだけど。

友理奈も腰を下ろし、雅を見つめそして手を取った。

「だから・・・みやが好き」

接続詞がなんかおかしい気がした。でも、もう一度ゆっくり気持ちを伝える。
結果はわかりきっているが、告白をなしにされるのは嫌だった。

雅は顔を赤くして、またわたわたし始めた。
ふと、桃子が気になって視線を桃子に移すと温かい笑顔で見守ってくれていた。
そんな桃子に友理奈は素直に感謝する。
16 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 06:59
「あのさ・・・」

わたわたしていた雅が切り出した。
顔は赤いままだがその表情は真剣なものだった。

「熊井ちゃんの気持ちはうれしいんだけど・・・」
「うん」
「・・・うちはもものことが好きだから」
「うん」
「・・・だから、ごめん」
「・・・うん。ありがと」

最後に手をぎゅっと握ったら、雅が握り返してくれた。
ゆっくりと、でもちゃんと答えてくれたことがうれしかった。
17 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:00
「じゃ、うち生徒会あるから」
「うん、またね」
「またね、くまいちょー」

立ち上がって二人に手を振る。が、あることに気がついた。

「あっ、そういえばももは?」
「えっ?」
「ももの気持ち、みやに言ってないよね?」
「あぁ・・・ってか、くまいちょーが言っちゃたからわかってるじゃん!」

友理奈も雅も自分の気持ちは言った。
しかも、桃子は両思いなのに一人だけ言わないのはずるいと思う。
それに、大好きな二人には幸せになって欲しかった。

「でも、やっぱり本人の口からどう思ってるのか聞きたいよね?」

友理奈の問いに雅は顔を赤くしてこくこくと頷く。

「ほら、言わないと」

でもー恥ずかしいしと言って桃子がくねくねしてる。
相変わらず桃子はぶりっ子だ。そしてキモイ。
まぁそんなところが桃子らしいくてよいのかもしれないが、くねくねしてるのは愛理だけで十分だ。
18 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:01
「みや、やっぱりうちにしといたら?」
「・・・うん。そうしたほうがいいかも」

ちょっとやりすぎかなと思ったけど雅の肩を抱いて言ったら、雅も乗ってきたので大丈夫だろう。
しかも、なんだかんだで、二人のキューピットをしたわけだからこのくらいの意地悪はしてもいいと思う。

「ちょ、ちょっと待って!言うから、言うからくまいちょー離れて!!」

そう言って、桃子が友理奈と雅の間に割り込んできて、二人を離した。
そして、友理奈から雅を守るかのように抱きしめ友理奈を睨む。
そんな桃子に友理奈は両手を上げて参ったのポーズとった。
雅も桃子の突然の行動にどうしていいかわからずあたふたしている。
19 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:01
「じゃ、どうぞ」

笑いを堪えながら友理奈が促すと、桃子が雅から離れ視線を雅へと移した。
桃子の真剣な表情は今日二度目だ。普通にしてれば可愛いのにと友理奈は思う。

「ももも、みやが好き」
「うん」

大好きと言って桃子が雅に抱きついた。
雅は手をどうするべきか彷徨わせていたが、背中に腕をまわししっかりと桃子を抱きしめた。
 
 
 
 
20 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:02
はぁ、と友理奈はため息をつく。
しばらく二人を見守っていたが離れる気配がない。
完全に二人の世界に入ってしまったようだ。
もうちょっと気を使って欲しいと友理奈は思う。
桃子に促したのは自分だが、友理奈は失恋したばかりなのだ。
まぁ大好きな二人が幸せそうだから今回は許すことにする。

「お取り込み中に申し訳ないけど、本当にもう行くね」

友理奈の言葉に慌てて二人が離れる。
すっかり友理奈がいたことを忘れていたらしく、二人とも顔が赤い。
じゃ、と手を振って友理奈は生徒会室に向かう。

「ありがとう、熊井ちゃん」
「ありがとう」

二人の声が背中から聞こえてきて、友理奈は振り返る。

「青春エンジョーイ!!お幸せにー」

そう叫ぶともう一度二人に手を振り、その場を後にした。
21 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:03
生徒会室の前まで来たが、中に人の気配がない。
時計を見ると割と時間が経っていた。
友理奈はやっちゃったなーと思いながらそーっと扉を開く。

案の定、もう終わってしまったらしかった。
しかし、誰もいないと思われた教室の窓際の席で誰かが寝ているようだった。
教室に入って近づくにつれ、それが早貴だということがわかる。
早貴は机にうつ伏せて寝ている。
机にメガネが置いてあることから、メガネをはずしているようだった。

そういえば、早貴がメガネをはずしたところを見たことがない。
友理奈は興味が沸いた。早貴のメガネをはずした顔を見てみたい。
でも、早貴も朝早かったのできっと疲れている。
施錠までまだ時間があるから寝せておいた方がいいのかもしれない。

いや、早貴のことだ。友理奈を待っていたに違いない。
だから、このまま置いて帰るわけにはいかない。
友理奈はそう言い訳して早貴を起こす。
22 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:04
「なかさきちゃん。起きて!もう帰ろう?」

早貴の肩を揺らすと、んーと言って体を起こした。

「あれ?・・・どうしたっけ?」
「・・・・・」
「ん?友理奈ちゃん?」
「・・・・・」

早貴の顔を見た友理奈に衝撃が走った。
天から光の矢が降ってきて心臓を射抜かれたみたいだ。
そして、胸がうるさいくらいにドキドキして苦しくてふらふらする。
友理奈は思わず胸の辺りをぎゅっと握った。
23 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:04
「友理奈ちゃんだよね?」
「・・・・・」
「やっぱり友理奈ちゃんだ。って、大丈夫?具合悪いの?」

友理奈が何も言わないので、早貴はメガネをかけて自分のそばに立つ人物を確認する。
確認したものの、友理奈が胸を押さえているのでちょっと慌てた様子だ。

「だ、大丈夫。なんでもないから」
「ホントに?でもなんか苦しそうだよ?」
「うん。ホントに大丈夫」

早貴を安心させるように笑って見せた。
ちゃんと笑えているかは別として。
24 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:07
そのまま早貴と生徒会室を出て、校門で別れた。
ホントはもう少し一緒にいたかったけど、帰る方向が別なので仕方がない。
もし、もう少し一緒にいれたとしても何も話せなかったと思う。
言葉数少ない友理奈を早貴は別れるまで心配していた。

友理奈は家に帰り、部屋に入ると着替えもせずにベットに横になった。
校門を出てからどうやって帰ってきたのか記憶がない。
そのかわり、早貴の顔だけが思い浮かぶ。
胸の痛みはまだ消えない。

早貴がメガネをはずしたら可愛いだろうなとは思っていた。
でも、実際は想像以上に可愛くて、綺麗で。
西日のせいかもしれないけど、まるで女神だと思った。
いや、早貴は天女のほうが似合ってるかもしれない。
友理奈は月光に照らされる早貴を想像して胸の痛みが増した。
25 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/09/22(月) 07:08
友理奈はあのときの感覚を忘れることが出来ない。
雅にも、誰にも感じたことがないあの感じ。


まさか―――


失恋した数分後に恋に落ちるなんて思ってもみなかった。
26 名前:名無し飼育 投稿日:2008/09/24(水) 13:43
なっきぃ好きには期待の出来る展開。
次回の更新、楽しみに待ってます。
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/26(金) 01:04
なっきぃ好きなんで楽しみですw
28 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 22:58
「うち、好きな人できた」
「「ええぇぇぇぇ!?」」

二人の驚きの声が桃子の部屋に響き渡る。友理奈は思わず耳を塞いだ。


「ももちもみやもうるさい」
「だって、くまいちょー・・・みやのこと・・・」

そういえば、つい最近同じようなことがあったのを思い出す。
桃子の部屋に来て早々、友理奈は好きな人が出来たことを告げた。
昨日、友理奈は雅に告白したばかりなのだから二人が驚くのも無理はない。


昨日、友理奈は雅に失恋した数分後に恋に落ちた。
その人物は中島早貴。
同じクラスで、同じく生徒会役員。
早貴は生徒会長で、友理奈は副会長だ。

今朝、学校に行くと早貴が話しかけてきた。昨日の友理奈の様子を心配して。
でも、なんだか意識してしまい前のようにうまく話すことができない。
しかも、早貴の呼び名も「生徒会長」に変わってしまう始末。
早貴もそんな友理奈の変化に気づいたようで、気まずそうにしていた。
自分でそう呼んでおいてなんだが、距離が出来てしまったようで嫌だった。
29 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 22:59
だから、相談に乗ってもらおうと桃子の家を訪れた。。
桃子だけでは少々不安はあったので、雅がいてくれてよかったと友理奈は思う。
まぁ雅が桃子の家にいることは、だいたい想像はついていた。
桃子以外、今日から休みを利用して旅行に行くので留守らしい、と今朝母から聞いたからだ。


「言い方悪いかもだけど、みやのことはちゃんと好きだったよ。
 今も友達としてみやのことは好きだよ。あっ、ももちのこともね。
 でもね・・・今回のはなんていうか・・・恋に落ちた!って感じなの」

友理奈はあのときのことを思い出しながら語った。
そのときの光景が浮かんできて胸が締め付けられ、胸のあたりをぎゅっと掴む。
30 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 22:59
二人からの返事はない。
何も言わない二人が気になって、視線を移すと驚いた表情をしていた。
しかし、桃子は目をぱちくりとしたかと思うと、へーと言いながらニヤニヤし始めた。
そこで友理奈は、何気に恥ずかしいことを言ってしまったことに気付く。
恋に落ちたとか・・・でも今さら後悔しても仕方がない。

「・・・なに?」
「べつにー」

友理奈は桃子を睨みつける。
それでも桃子はまだニヤニヤしている。
雅はそんな桃子を見て苦笑いを浮かべていた。
31 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:00
「しょうがないじゃん。落ちちゃったんだから!
 あーそうですよぉー落ちましたとも!!なに!?うちが恋に落ちちゃいけないわけ?」

なにか言いたげな桃子に対し、友理奈は半ばキレ気味に言い放つ。
落ちてしまったことは本当のことで、あのときの感覚はこう表現するしかなかった。
それに、誰かが『恋は落ちるもの』だと言っていたし。

「いけないなんて誰も言ってないじゃーん」
「だってももちが―――」
「まぁまぁ落ち着いて、くまいちょー」

落ち着いてなんかいられない。それに嗾けてきたのは桃子の方だ。
納得できなくて、桃子に言い返そうとしたが、先に桃子が口を開いた。

「で、その恋に落ちた相手は誰なの?」

桃子が興味津々というように友理奈に詰め寄る。
その一言で、友理奈は何も言えなくなった。
早貴の顔が思い浮かんできて、顔が赤くなる。
そんな友理奈を見て桃子が、このこのーと言いながらさらに肩をぶつけてくる。
32 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:01
「もーも。いいかげんやめなって。熊井ちゃん相談に来たんだろうし」

見兼ねた雅が止めに入った。
やっぱり雅がいてよかったと友理奈は改めて思う。

「はーい。くまいちょーからかうと面白いから、ついねぇー」
「ほら、ちゃんと話聞こう?とりあえず、離れて」
「みや、もしかしてヤキモチ?」
「違うから!」
「くまいちょーばかり構ってたから寂しかったの?」
「だからぁ、違うって!」

そう言い合いながら、桃子が雅にじゃれ始めた。

そうだ。相談に来たのだ。からかわれに来たのではない。
ましてや、二人のイチャつきを見に来たわけでもない。
友理奈は目の前でじゃれている二人を見てため息をもらした。
いつの間にか、顔の火照りも冷めていた。
33 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:01
「あのーそろそろいいですかね?」
「あっ、ごめん!熊井ちゃん」

呆れた表情をしている友理奈を見て、雅が謝った。

「ほら、ももも離れて」
「はーい」

ニコニコと笑っている桃子を一睨みし、雅が友理奈に視線を向ける。

「それで、相談なんだけど・・・」

友理奈は昨日のこと、そして今日のことを二人に話した。
34 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:02
「そっか、なっきぃかぁ」
「ってか、くまいちょーいきなり後退してどうすんの?」

へぇー、と頷いてる雅をよそに、桃子がいきなり痛いとこを突いてくる。

「わかってるよ!・・・だから、二人に相談してんじゃん」

そんなことは言われなくてもわかっている。
頭ではわかっているが、それが出来ないから困っているのだ。

「くまいちょー意識しすぎるんだって。もっと、力抜いてさ。リラーックス、リラーックス」
「リラックスかぁ。でも、本人目の前にするとそれがなかなか出来ないんだよね」
「まぁそうなんだけど・・・でも、くまいちょーが動かないと何も解決しないよ?」
「うーん・・・」

桃子の言うことはわかる。こうなったのも自分が原因だし。
どうしたものかと考えていたら、今まで黙っていた雅が口を開いた。
35 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:03
「何もしなくていいんじゃない?」
「へっ!?」

雅の言葉に驚いて、思ったよりも大きな声が出てしまった。
そのまま雅を見ていると、雅が違う違うというように両手を振って言葉を続けた。

「え、いや、何もしないっていうか・・・どうにかしようとか、
 何かしようとか・・・そういうこと考えないほうがいいってこと。
 あまり気負っちゃうと余計に話せないじゃん。だから、なんていうか・・・自然体で?」

自分でもなんて言えばいいのかわからないのか、雅は首を傾げた。
でも、雅の言いたいことはなんとなくわかった。

「みやって、たまにいいこと言うよねぇ」

桃子が感心してそう言うと、たまにとか余計だしと雅が拗ねてしまった。
そんな雅にごめんごめんと謝っていた桃子が、急に何か思い出したように顔を上げた。

「あっ、あと、くまいちょー笑顔ね」
「えっ?」
「笑顔は大切だよ!」

うふふと笑う桃子に負けないくらいの笑顔で友理奈は頷いた。
36 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:03
「二人ともありがとね」
「いえいえ、どういたしまして」
「あまりアドバイスになってないかもしれないけど、ごめんね」
「ううん、そんなことないよ!それに、話したらスッキリしたし」

なんか気が楽になった。本当に二人には感謝している。

友理奈は時計を見て立ち上がった。
そんな遅い時間ではないが、あまり長居しては悪い。

「それより、せっかく二人きりなのに邪魔してごめんね。
 今日みや、ももちの家に泊まるんでしょ?誰もいないし、イチャイチャできるもんね!」
「はっ!?泊まらないし、イチャイチャなんかしないし」

友理奈の言葉に、雅が顔を真っ赤にしながら言った。
珍しく、桃子も顔を赤くしながら俯いている。
最初は照れてるのだと思った。
しかし、二人の様子に意味がわかって、友理奈も顔を赤くしながら慌てたように口を開く。

「別に、そういう意味で言ったんじゃないから!変な意味じゃないからね。あの、えっと・・・帰るね!」

友理奈はそそくさと桃子の部屋をあとにした。
37 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:04
38 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:06
友理奈は頭を抱えていた。
桃子と雅に相談し、気は楽になったものの、早貴との距離は開いたままだ。
自然体、笑顔、自然体、笑顔・・・・・
早貴を前にするとそればかりが頭の中をグルグルと回って、やはりぎこちなくなってしまう。
そんなことが、もう数日続いている。
はぁーとため息をこぼし、友理奈は机に突っ伏した。

友理奈が突っ伏してからそんなに時間は経ってないと思う。
トントンと肩を叩かれ、起き上がると目の前に早貴が立っていた。
いきなりのことに友理奈は慌てる。
39 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:07
「せ、生徒会長。ど、どうしたの?」
「えと、手伝って欲しいことがあるんだけど・・・でも、友理奈ちゃん具合悪い?」
「そんなことないよ・・・ちょっと眠かっただけ」

友理奈はなんとか笑顔を作る。

「そっか。で、各委員会に配る資料の資料作りを先生に頼まれたんだけど、手伝ってもらえる?」
「い、いいよ」
「じゃー放課後、生徒会室で待ってて。私は先生から資料を受け取ってから行くから」

友理奈が頷くと、じゃーお願いねと言った早貴が、別の友達の所に歩いて行く。
友達と楽しそうに話す早貴を友理奈はそのまま見ていた。
自分もあんな風に話せたらいいのに、なんで出来ないんだろ。恋って難解だ。
そう思うとまたため息がでて、友理奈はもう一度机に突っ伏した。
40 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:07
放課後、友理奈が生徒会室に到着して間もなく、資料を持った早貴が入ってきた。
早貴に作業の説明をされて以来、二人の間に会話はなく沈黙が続いている。
早貴と二人きりという状況が、友理奈の緊張を倍増させていた。
それでも、なんとかこの沈黙を打破したくて、
話しかけるタイミングを伺ってると、早貴が口を開いた。

「あのさー・・・友理奈ちゃんて、もしかして・・・私のこと嫌い?」
「えっ!?」
「この間から、呼び方『生徒会長』だし・・・・・ぎこちないし・・・」
「・・・・・・」

友理奈は何も言えなかった。
違う!―――そう言いたいのに言葉がうまく出てこない。
何か言わないとこのまま誤解されてしまう、そう気持ちばかりが焦ってなかなか切り出せない。
友理奈がそのまま何も言えないでいると、早貴がまた口を開いた。

「なんか、寂しかったんだよね・・・」

早貴がキュフフと笑う。でも、顔は笑ってはいなかった。
41 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/10/14(火) 23:09
その早貴の表情を見て、いきなり友理奈が立ち上がった。
勢いがあったせいか、イスが後ろに倒れ、ガタンッと音をたてる。
その音に早貴が肩をビクッとさせたが、友理奈はかまわず続けた。

「嫌いじゃない!・・・嫌いじゃないよ、なかさきちゃん・・・・・むしろ、す、好きだよ!」

早貴の、好きな人のあんな表情は見たくない。そう思ったら、自然に体が動き、なんなく言葉が出てきた。
最後の言葉は、早貴に抱いている気持ちを感じさせないくらい軽く言った。
つもりだったが、噛んでしまった。笑顔も引きつっていたかもしれない。
内心、早貴に伝わってしまわないかドキドキした。
だけどそんな気持ちと裏腹に、ほんのちょっとだけ伝わって欲しいな、なんて思った。

「そっか・・・よかった。私も、友理奈ちゃんのこと好きだよ!」

そう言った早貴は、今度はちゃんと笑っているようだ。
友理奈と同じように早貴の『好き』も軽い感じだったが、素直にうれしい。
そして、気持ちに気づかれていないと安心した。
そう感じながらも、自分の好きと早貴の好きの種類が違うことに、友理奈は軽く落胆した。 
42 名前:RK 投稿日:2008/10/14(火) 23:11
>>26さん
ありがとうございます。
ご期待に添えられるよう頑張ります。

>>27さん
なっきぃの出番が少なく申し訳ないです。
次回はもっと増えるはず・・・
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/15(水) 00:03
ヤバい!何か萌える組み合わせだ!ヽ(´ー`)ノ
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/15(水) 02:41
更新きてる…!!

その場の状況が想像出来そうです。
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/26(日) 06:00
更新おつです
個々のキャラクターがとてもリアルで大好きです!
この後の展開も楽しみにしています
46 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:24
放課後の教室で、鈴木愛理と菅谷梨沙子は宿題をしていた。
教室には、時計の針がカチカチと動く音とペンを走らせる音しかしない。

「あー、もう飽きたぁ」

もうギブというように、梨沙子はんーと伸びをした。

「えー、まだ始めてから30分も経ってないよ」
「だってもう飽きちゃったんだもん!」

愛理が指摘すると、梨沙子がむぅっとむくれる。
そんな顔も可愛くて、愛理はついつい許してしまう。

「もう、しょうがないなぁ。じゃあ、ちょっと休憩する?」

うん、と梨沙子に満面の笑みで微笑まれ、愛理は苦笑いをする。

梨沙子に甘えられると何故だか許してしまう。
たぶん、本人もそれをわかってるんだと思う。
47 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:26
愛理はふぅ、と一息つくと、そうだっと思い出したことを梨沙子に聞いてみた。

「ねぇ、みやとももって付き合うことになったんだって?」
「うん、まぁやっとって感じ」

半ば呆れ気味に梨沙子が答えた。
梨沙子が呆れるのも無理はない。
どうみても両思いなのに、なかなかくっつかないのが不思議なくらいだった。

梨沙子と雅は幼馴染だ。梨沙子にとってお姉ちゃんみたいな存在らしい。
梨沙子に雅を紹介されたときに、桃子とも知り合った。
幼馴染を紹介してくれるとのことで、梨沙子の家に行ったら何故だか桃子も一緒にいた。
初めて見たときは同い年くらいかと思っていたのに、3つ学年が違うと聞いて驚いた。
さらに、会った途端に「可愛いー」といきなり抱きつかれて困ったのを覚えている。
48 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:26
「さみしくない?」
「うん」
「そうなんだ・・・」

なんとなく思ったことを聞いたら即答された。

愛理は自分が梨沙子の立場になったときのことを想像してみる。
もし、自分の幼馴染に恋人が出来てしまったらかなりショックだ。
下手したら寝込んでしまうかもしれない。

そんな愛理の思考を読んだように梨沙子が言った。

「私のみやに対する気持ちと、愛理のなっきぃに対する気持ちは違うから。想像するんだったら舞美ちゃんで」

愛理には二人の幼馴染がいる。早貴と矢島舞美だ。
舞美は愛理にとってお姉ちゃんみたいな存在であり、ライバルでもある。
そして、早貴は長年想い続けている想い人だ。
49 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:27
「あー、なんかわかったかも」

舞美に恋人が出来たら素直に祝福できる。
うんうん頷いていたら、隣でため息が聞こえた。

「チャンスだと思ったんだけどなぁー」

ん?と梨沙子の言葉に愛理は首を傾げた。

「熊井ちゃん・・・」
「・・・熊井ちゃん?」

意味がわからず、梨沙子の答えをそのまま繰り返す。

「熊井ちゃんは、みやが好きだと思ってたの。だから、みやとももが付き合った今、チャンスかなって・・・」
「えっ!?そうだったの?」
「でも、違ったみたい・・・」

はぁーとまた梨沙子がため息をつく。
50 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:28
そんな、梨沙子を余所にふと思ったことを聞いてみる。

「熊井ちゃんのどこが好きなの?」

一瞬、梨沙子の顔が曇る。
そして、上目遣いに愛理に問いかける。

「もしかして・・・愛理は熊井ちゃんのこと嫌い?」
「いや、違くて!・・・りーちゃんが熊井ちゃんを好きになった理由って、聞いてなかったなぁーって」

愛理は慌てて、両手と首を振って答えた。
熊井ちゃんのことは好きだ。それはもちろん、早貴に対する想いとは違うけれど。

「好きになるのに理由なんて必要?」

梨沙子が微笑む。それが、あまりにも大人っぽくて愛理はたじろいだ。

「え?・・・いや、必要ない・・と、思う」

梨沙子の雰囲気に圧倒され、愛理がどうしたらよいか困っていると、
ふふっと笑った梨沙子が口を開いた。

「なーんてね」

そう言うと、梨沙子は窓際まで移動した。
愛理は、そんな梨沙子を目で追う。
51 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:29
「私って、お姫様じゃん?みんな私を甘やかしてくれるでしょ?
 ・・・でも、熊井ちゃんは違うんだよねぇ。冷たいわけじゃないんだけど、普通なんだよね。
 私を甘やかしてくれない、特別扱いしてくれない・・・だからかなぁ?・・・・・惹かれたのは」

そう言って、薄く笑った梨沙子はやっぱり大人っぽくて、すごく綺麗で本当にお姫様みたいだ。
夕日も手伝ってか、より梨沙子の美しさを引き立たせ、そしてどこかの映画のヒロインのように儚げだった。

その光景にボーっとしていると、さっきまでとは違いおどけたように梨沙子が言った。

「それに、熊井ちゃんて背も高くて綺麗だし、王子様みたいなんだもん。お姫様にはやっぱ王子様でしょ?」
「う、うん、そうだね」

愛理は苦笑いを浮かべる。
そんな愛理を見て、梨沙子が拗ねる。

「拗ねないでよー。拗ね顔のりーちゃんも可愛いけど、笑顔のりーちゃんのがもっと可愛いいよぉ」

その一言で、梨沙子の機嫌は直ったらしい。
満面の笑みで愛理のもとへとやってきて隣の席に座った。
52 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:30
「で、熊井ちゃんの好きな人は誰なの?みやじゃなかったんでしょ?」
「愛理も気づいてんじゃないの?」

愛理が問うと、梨沙子が不機嫌そうに言った。
愛理もなんとなくわかっていた。ただ、気づかない振りをしていただけだ。

「やっぱりそうなのかな?」
「確信はないけどね。でも変じゃん。明らかに、熊井ちゃんとなっきぃおかしい」

そう、最近の二人は変なのだ。
愛理も、梨沙子も生徒会役員なのだが、生徒会での二人の様子が明らかにおかしい。
会話も必要以上話さないし、ぎこちない。何かあったのは間違いないと思う。
53 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:31
「もしかしてさ・・・付きあ―――」
「やめてよ!」

梨沙子が言おうとした言葉を最後まで聞きたくなくて、愛理は叫んだ。

「・・・ごめん」

驚いた顔をしていた梨沙子を見て思わず謝る。
梨沙子は眉をハの字にしてしゅんとしている愛理に、優しく微笑み頭を撫でた。

「ううん、ごめんね・・・大丈夫だよ、なっきぃから何も聞いてないんでしょ?」
「・・・うん」
「もし、そうだったら、なっきぃはちゃんと愛理に言ってくれると思うし」
「・・・・・」
「だから、大丈夫」

早貴からそういう報告を聞くのは辛い。
でも、黙ってられる方がもっと辛い。
しかし、愛理は信じている。そういう人が出来たときは、早貴はちゃんと言ってくれると。
そして、辛いけどそういうときが来たらちゃんと祝福すると。
それは、舞美との約束の一つでもあった。
54 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:32
「っていうかさ、お互い頑張ろう!」

いきなり、梨沙子に両肩をガッと捕まえられる。
愛理はビクッとしたが、梨沙子は気にした様子もなく続けた。

「私さ、熊井ちゃんに全然相手にされてないんだもん」
「・・・私だって、ずーっと思ってるのに気づいてもらえてないよ」
「私なんか、熊井ちゃんにアピールしてるのにマジレスされてかわされちゃうもん」
「私もこの間、舞美ちゃんとなっきぃ取り合ってたら、二人仲いいねぇなんて言われちゃったし」
「私は、んーと・・・んー・・・・・」
「・・・ってか、これなんの自慢大会?」

そういうと、二人して噴き出した。
ひとしきり笑い合うと、梨沙子がぽんぽんと肩を叩いた。

「とにかく、お互い頑張ろうよ!」

うん、と愛理は大きく頷いた。
きっと、よくわからない自慢大会は、梨沙子の優しさだ。
沈んだ愛理を元気づけてくれたのだ。
やっぱり、持つべきものは友達だなと思う。
55 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:33
なんだか、もう宿題をやる気も起きないので帰ることにした。
勉強道具を鞄に入れ、帰る用意をする。

「じゃ、これからなっきぃに会いに行ってきまーす」

梨沙子の帰る準備が整うのを待ってからそう言い、愛理は駆け出した。

「あっ、ずるいー。私も熊井ちゃんに会いたい!」

梨沙子は愛理を追いかける。

二人は笑いあいながら学校をあとにした。





56 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:33
愛理は宿題を終わらせて、早貴の家に向かう。
毎日、宿題を終わらせてから早貴の家に行くことが、愛理にとっては日常になっていた。
そして、もう一人の幼馴染も。
ただし、宿題を終わらせてからとういうのが条件だ。
桃子から、舞美は朝宿題を友達に写させてもらっていることを聞いた早貴が、
「宿題終わらせるまで遊びに来ちゃダメ!」っと怒ったのだ。

舞美は陸上部に所属している。
部活が終わって、それから帰って宿題を終わらせてから来るので、いつも愛理より来るのが遅れる。
舞美には悪いが、その間早貴と二人きりなので愛理にとってはとても幸せな時間なのだ。
57 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:34
いつものように、おばさんにあいさつして早貴の部屋に向かう。
早貴の部屋のドアをノックする。
しかし、いつまで経っても返事がない。

「なっきぃ?入るよ」

ドアをそっと開けると、早貴が机の上に肘をついてボーっとしていた。
近くまで近寄っても愛理には気がつかない。

「なっきぃ。なっきぃ」
「わぁっ!」

肩を揺らすと早貴が驚いた声を出した。
愛理は心配そうに早貴の顔を覗く。

「大丈夫?なっきぃ」
「うん、大丈夫。っていうか、部屋に入るときノックくらいしてよ」
「したよ。なっきぃがボーっとしてただけじゃん。私が部屋に入ってきたことにも気付かなかったくせに・・・」

愛理は心外だというように拗ねてみせた。

「ごめんね。ちょと考え事してたから」

早貴が愛理の頭を撫でながら謝る。
それだけで、愛理はふにゃっとした笑顔になった。
やはり、早貴に撫でてもらうとうれしいし、気持ちいい。
58 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:36
早貴が撫でるのをやめようとしたのがわかった。

「もうっちょっと撫でてて」
「もう、しょうがないなぁ」

愛理が甘えると、撫でるのをやめないでくれた。
愛理はペタンと床に座る。
すると、早貴の鼻歌が聞こえ始めた。

「今日、ご機嫌だね」
「ん?そうかなぁ?」
「なんか、いいことあった?」

最近の早貴は、どこか元気がないようだったので元気になってくれたことはうれしい。
うん、と言った早貴が話し始めた。

「あのね、今日友理奈ちゃんと話したの」

早貴の言葉に愛理はショックを受ける。
しかし、努めて平常に答えた。

「いつも話してるじゃん」
「うん。でも、最近はなんかぎこちないっていうか、あまり話せてなかったんだぁ」

声が冷たくなってしまったのはしょうがないと思った。
でも、早貴はそれに気づかなかったみたいだった。

「なんか、それがうれしかったの!」
「・・・・・」

愛理は俯いた。
胸が痛い。愛理の頭を撫でる手が優しいので、余計に痛みが増す。
目の奥が熱い。
59 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:38
「愛理?」

何も言わない愛理を不思議に思ってか、早貴が問いかけてきた。
その時、ドンドンと階段を駆け上がる音がした。
そしてガチャッとドアが開いた。

「おまたせー」
「みぃーたん、部屋に入るときはちゃんとノックして!」
「ごめんごめん。ガーっと駆けてきた勢いでつい。って、あぁーーー、愛理ずるい!!」

早貴に頭を撫でてもらっている愛理を見て、舞美が叫ぶ。

「みぃーたん静かに!ご近所迷惑でしょ」
「ごめん。でも、愛理だけ頭撫でてもらってずるい!次は私ね」
「しょうがないなー、代わってあげますか」

そう言って、愛理は早貴から離れた。
舞美が来てくれてよかったと思う。
あのままだと、確実に泣いていた。
60 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:40
早貴からは離れたが、舞美に捕まってしまう。

「愛理、どうした?」
「何が?」

変なところで舞美は勘がよい。
愛理は出来る限り平常を装った。

「何かあった?」
「何にもないけど?」
「変だよ?」
「そう?」

舞美とそんな会話をしていると、離れたはずの早貴も近づいてきた。

「ホントに愛理大丈夫?」
「全然OK!問題ナッシーング」

そういうと、出来るだけ自然に早貴から離れた。
早貴から離れたいと思ったのはこれが初めてだ。
あんなに側にいたくてしょうがなかったのに。

こんなときは、カッパダンスに限る。
カッパ、カッパと踊りだした愛理を見て、首を傾げていた二人も納得してくれたようだ。

61 名前:恋に落ちたら 投稿日:2008/12/09(火) 05:41
カッパダンスをして少し気分も晴れた。


まだ終わったわけではない。
それに、早貴は自分の気持ちに気づいていないようだ。
だから、ヒントなんて出してあげない。
今日、梨沙子と頑張ると宣言しあったばかりだし、まだまだ諦めてあげない、諦めるつもりもない。
勝負は最後までわからない。
舞美ではないけど、最後までガーっといこうと愛理は心に誓った。


62 名前:RK 投稿日:2008/12/09(火) 05:46

こんなときだからこそ更新。
だいぶ間があいてしまいましたね。もう少し更新速度をあげたいです。
そして今回もなっきぃ登場少ない・・・


>>43さん
熊なきいいですよねぇ!

>>44さん
ありがとうございます。これからも頑張ります。

>>45さん
ありがとうございます。
そう言って頂けるとうれしいです。

63 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/11(木) 20:17
無自覚ななっきぃカワユス!
次回も楽しみにしてます
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/13(火) 04:54
くまりしゃくまりしゃヽ(´ー`)/
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/20(火) 03:48
おもしろいです☆

熊井ちゃん、がんばって☆
66 名前:RK 投稿日:2009/02/06(金) 06:32
話の途中ですが今回は違うお話を
67 名前:RK 投稿日:2009/02/06(金) 06:34


素敵空間

68 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:35
2月5日晴れ。
待ち合わせ場所で友理奈ちゃんを待つ。
早く目が覚めてしまった私は、30分前に待ち合わせ場所に着いてしまった。
緊張のせいかそれほど寒さは感じない。

今日は平日。本来なら学校があるんだけどサボってしまった。
だって、中学最後の誕生日。素敵な思い出が欲しかったから。




『明日、友理奈ちゃんの時間を私にください』




今思えば、自分でも随分とすごいことを言ったと思う。
今日は平日だし、ダメもとで言ってみたら友理奈ちゃんはすんなりOKしてくれた。

69 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:36


70 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:36
中学の入学式。
その日も早く目が覚めてしまって、遅刻するよりはと早めに学校に向かった。

これから始まる新生活にドキドキしながら校門をくぐる。
やはり、まだ早いせいか人もまばらだった。

一瞬、風が強く吹き、私は片手でスカートを押さえ目を瞑る。
目を開けた次の瞬間、はらはらと桜が舞い散る中、私は一人の少女の目を奪われた。
その人は背がスラっと高く美しくて、まるでモデルのようでより一際目を惹く。

舞い散る桜を見上げている少女。
その光景があまりにも綺麗で、私はその場を動けずしばらくその人を見つめていた。

私がずっと見つめていたせいか、ふとその人がこちらを向き視線がぶつかる。
慌てて会釈をすると、その人がやわらかい笑顔で会釈をしてくれた。
71 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:37
私は止まったままだった足を進める。

「1年生?」

その人の横を通り過ぎようとしたとき、声をかけられた。
まさか声をかけられるとは思っていなかったので驚く。

「・・・はい。そうですけど」
「私もそうなんだ」
「へっ!?」
「一緒に行こうよ!」

とても大人っぽく、先輩だと思っていた私は同い年と聞いてさらに驚いた。

クラス表が張ってある所までその人と一緒に歩く。
どこの小学校だったとか、何のクラブに入っていただとか他愛もない話をした。
でもその間、なぜだか私の胸はドキドキしっぱなしだった。

クラス表が張ってある所に辿り着き、自分の名前を探す。

「何組だった?」
「私は1組」
「うちも1組」

同じだねーなんてその人が笑うから、私もうれしくて笑顔で頷いた。

「そういえば、名前聞いてなかったね。うちは熊井友理奈」
「私は中島早貴」
「これからよろしくね!」

友理奈ちゃんが手を差し伸べてきたので、私はその手をドキドキしながらギュッと握り返した。
72 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:38




それが友理奈ちゃんとの出逢い。



それからすぐ、私は友理奈ちゃんを好きだと自覚した。
もしかしたら、初めて会った時にもう心を奪われていたのかもしれない。

私は運がいいのか、友理奈ちゃんと3年間同じクラスだった。
けど、特別仲がいいわけでもなく、普通の友達。
クラスでは普通に話すし、たまにメールしたりするけれど一緒にどこか出掛けたりしたことはなかった。
73 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:39


74 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:39
待ち合わせ10分前に友理奈ちゃんがやってきた。

「ごめん。待った?」
「ううん。まだ待ち合わせ時間10分前だし」
「でも・・・なかさきちゃん待ったでしょ?」
「平気。そんなに待ってないから」

友理奈ちゃんがすまなそうに謝る。
早く来た私が悪いし、友理奈ちゃんを待ってる時間は苦にならなかったので私は笑顔で答えた。

すると、友理奈ちゃんがおもむろに私の手を取った。

「でも、なかさきちゃん手が冷たくなってる」

私の両手を包み込むように友理奈ちゃんは両手で握り擦る。
そして、はぁーと息を吹きかけた。

顔が赤くなるのが自分でもわかる。
私は恥ずかしくて、逃げ出したい衝動に駆られたが、友理奈ちゃんの手を振り解くことも出来ず俯く。

「なんとか大丈夫かな?」

手を擦りながら、何度か息を吹きかけて友理奈ちゃんは手を解放した。
友理奈ちゃんが触れた部分が、息を吹きかけられた指先かじんじんと熱を持つ。
75 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:39
赤い顔を見られたくなくて、私は俯いたままでいた。

「なかさきちゃん?」

俯いたまま黙っている私に友理奈ちゃんが声をかける。
仕方なく顔をあげると友理奈ちゃんが噴き出した。

「なかさきちゃん顔真っ赤!」

顔が赤いのは自分でも知っている。
だから顔をあげたくなかったのに。
私はまだ笑ったままでいる友理奈ちゃんを見て口を尖らす。

「もう、友理奈ちゃんのせいでしょ!」
「うちのせい?」
「うん。友理奈ちゃんがあんなことするから」
「そっか・・・ならいいや」

私が頷くと、友理奈ちゃんは優しく微笑む。
その笑顔に私は何も言えなくなった。
76 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:40
「じゃーそろそろ行こうか」

そう言って、友理奈ちゃんが手を差し出した。
私は少し戸惑ったけど、その手をしっかりと握った。

「そういえば、今日はどこに行くの?」
「えっ!?んーと・・・・・」
「・・・もしかして、決めてない?」

友理奈ちゃんが苦笑いを浮かべる。

今日どこに行くかは決めていなかった。
私は友理奈ちゃんと過ごせればどこでもよかったし、
昨日は、今日のことを思うと緊張してそこまで頭が回らなかった。
でも、こちらから誘ったのだからある程度決めておくべきだった。

「じゃ、お昼まで時間あるし映画でも見ようか?
 それで、そのあとお昼食べて買い物兼ねて街をぶらぶらする?」

自分の計画性のなさに軽く落ち込んでいると、友理奈ちゃんが提案してくれた。

「うん。ごめんね・・・私から誘ったのに・・・」
「いいよ、誘ってくれてうれしかったし」

申し訳なさそうに謝ると、友理奈ちゃんは笑ってくれたので私はとりあえず安心した。
77 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:45
それから私達は映画を見てお昼を食べ、そのあと街をぶらぶらした。
ゲームセンターで遊んだり、プリクラをとったり、買い物したり。
プリクラを撮ったとき、友理奈ちゃんが『初デート♪』なんて書き込むから、私はドギマギした。


さすがにいろいろと歩き回って疲れたので、カフェで休むことにする。

注文したレアチーズケーキを口に運ぶと、甘酸っぱい味が広がる。
それはまるで恋の味のようで、私は思わず泣きそうになり急いでアイスティーでそれを流し込んだ。

「今日はいっぱい遊んだねー」
「うん・・・そうだね」

楽しい時間には終わりは来るもので、それは確実に迫っていた。
私は必死で笑顔を作る。

「なかさきちゃんさ、まだこのあと時間平気?」
「へっ!?・・・うん、まだ平気」
「学校の近くの丘に行ったことある?」
「ないけど・・・」
「じゃーそこ行こう!」

思いがけない誘いに複雑な想いで、私は頷いた。
まだもう少しこの楽しい時間が続くと思うとうれしくて、
でも、楽しければ楽しいほど終わったとき悲しくなるから。
78 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:46
友理奈ちゃんに連れられて、学校の近くの丘までやってきた。
ちょうど、夕日が街並みの向こうへと沈もうとしている。

「うわーすごいキレイ!!」
「うん。キレイでしょ?」

私はその情景にすごく感動を覚えた。

「ありがと。私、3年間通ってたけど、学校の近くにこんな場所があるの全然知らなかった。
 卒業する前に知ることができてよかった・・・それに、今日は本当にありがとね。
 私の我がままに付き合ってもらって。友理奈ちゃんにまで学校サボらせちゃって悪いことしたけど・・・
 本当に楽しかった!!・・・・・これで、心置きなく卒業できる」

私は夕日を見つめたまま、友理奈ちゃんに感謝を伝えた。
ほんとは、友理奈ちゃんの顔を見てお礼を言いたかったけど、
友理奈ちゃんの顔を見たら泣いてしまいそうだったから。
79 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:47
今日はすっごく楽しかった。
今日の出来事すべてが素敵な思い出となる。一生忘れられない思い出に。
友理奈ちゃんからたくさんの思い出をもらった。
これで友理奈ちゃんからも卒業する。

私は目を閉じ、心を落ち着かせる。
覚悟を決めて友理奈ちゃんの方を向くと、友理奈ちゃんはじっと私を見つめていた。
私は驚いて何も言えないでいると、友理奈ちゃんが口を開いた。

「なかさきちゃんて、ズルイよね・・・勝手に終わろうとしてるでしょ」

私はなんのことかさっぱりわからない。
私が首を傾げると、友理奈ちゃんは何か言おうとしてやめた。
そして、はぁーっとため息をつくと、まぁしょうがないかと苦笑いした。

「今日、なかさきちゃん誕生日でしょ?よかったらプレゼント受け取って欲しいんだけど」
「え?いいよ・・・今日、友理奈ちゃんの時間をもらったわけだし、それだけで十分」

もう十分もらった。
これ以上もらったら、思い出に出来なくなる。
80 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:47
「もっといいものあげる」

そう笑った友理奈ちゃんの表情が、すっと真面目なものに変わる。
そして、一度深呼吸してから口を開いた。

「これからのうちの時間をなかさきちゃんにあげるよ。 
 今日みたいに映画見たり、プリクラ撮ったり、街をぶらぶらしたり、いっぱい話そう。
 そして、今日出来なかったこともたくさんしたりして、これからを二人でもっともっとエンジョイしよう」

何を言われたのか理解するまで時間がかかった。
理解した途端、涙が溢れてきて止まらない。

「受け取ってくれますか?」

友理奈ちゃんの問いかけに、涙で何も話せない私は無言で頷いた。

「ほら、もう泣かないで」
「ふぇ、だっ・・・て」
「しょうがないなぁ」

まだ、うまく話せない私を暖かい温もりが包み込む。
友理奈ちゃんは私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。
81 名前:素敵空間 投稿日:2009/02/06(金) 06:48
「っていうか、なかさきちゃんて鈍感だよねぇ」
「ふぇ?」

やっと泣き止んだ私に友理奈ちゃんが語り始める。」

「1年の最初の頃、うち結構アピッてたんだけどなぁ。
 なかさきちゃん素っ気なかったし。半ばこの恋は諦めてたんだよね」
「そうなの?」
「そうなの」

確かに、1年の最初の頃は友理奈ちゃんはよく話しかけてきてくれた。
だけど、友理奈ちゃんへの気持ちに自覚した私は、意識してしまってうまく話せなかった。

まぁ諦めなくてよかったけど、なんてうれしそうに笑う友理奈ちゃんを見て、とてつもなく幸せを感じた。


82 名前:RK 投稿日:2009/02/06(金) 07:06
なっきぃ誕生日おめでとうございます!
しかし、間に合わなかったorz

最近忙しくなかなか更新出ませんが、2月下旬になればもう少し更新速度をあげられるかと・・・
まぁ、頑張ります。


>>63さん
自分の中でなっきぃはそういうことに鈍感なイメージがあります。
次回は『恋に落ちて』に戻りますので、期待に応えられるよう頑張ります。

>>64さん
くまりしゃいいですよね。私も好きです!

>>65さん
ありがとうございます。
川*^∇^)<なるべく頑張りたいです!
83 名前:RK 投稿日:2009/02/06(金) 07:13
すみません。

次回は『恋に落ちて』ではなく『恋に落ちたら』でした。

ちなみに『恋に落ちて』は番外編タイトルです。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 02:34
巷で噂のkmskやがなー♪♪

サイコーです。ってかうれしいです。


くまりしゃも好きです。
85 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:07
あれから友理奈は早貴と普通に話せるようになった。
もしかしたら以前よりも話すようになったかもしれない。
友理奈から頑張って話しかけるようにしていたし、早貴からも話しかけてきてくれていた。

放課後、生徒会室に行くと愛理と梨沙子がすでに来ていた。
おしゃべりをしながら作業をしているのだが、早貴がおとなしい。

最近は、生徒会室まで早貴と一緒に行くようになって、今日もいつものように早貴と話しながら来た。
それまでは普通だったのに、今、目の前にいる早貴はたまに相槌をうつくらいであまり会話に入って来ない。
どことなく元気がなそうだ。

「熊井ちゃん。話聞いてる?」
「えっ!?・・・ごめん。聞いてなかった」

もう、と拗ねた表情の梨沙子が寄り添ってくる。
梨沙子はかわいい。素直にそう思う。
だから、こうして甘えられるのは嫌ではない。
でも、今は早貴のことが気になって仕方がない。
86 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:08
「なかさきちゃんどうしたの?具合でも悪い?」
「えっ?」
「さっきから話に入ってこないし、なんか元気なさそうだけど・・・」
「そ、そう?ちょっと考え事してて・・・」
「・・・そっか」

いきなり話を振ったせいか早貴は驚いた様子で顔をあげたが、友理奈と目が合うと視線を逸らし俯きながら答えた。
友理奈は早貴の様子に軽くショックをうけ、それ以上聞くことも出来ず黙った。

生徒会室に沈黙が訪れる。
なぜか、さっきまでわいわい話していた梨沙子と愛理も黙ったままだ。
ちらっと梨沙子と愛理の様子を窺うと、二人ともどことなく元気が無いように思われる。
友理奈はこの微妙な雰囲気を変えようといろいろ考えてみるがいい案が浮かばない。
どうしようか頭を悩ませていると、いきなりガラッとドアが開いた。
87 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:09
「やっほーい!遊びにきたよぉ」

桃子が片手を挙げながら入って来きた。
その後に、すまなそうな顔をした雅が入ってくる。

「ちょっとー。ノックくらいしてよ、ももち」

友理奈はそう言いながらもホッとする。
桃子の特徴的な高い声が、なんとなく気まずかった雰囲気を壊してくれたからだ。

「ってか、なんでももちが中等部の生徒会室に来るわけ?」
「いやーなんとなく遊びにね!久しぶりに愛理にも会いたかったし」

桃子がニヤニヤしながら答えた。
愛理に会いたかったというのは本当だろう。
桃子は愛理のことを可愛がっていたし、梨沙子のこともお気に入りだ。

だが、桃子の顔を見ればそれが目的でないことはわかった。
きっと、友理奈と早貴の様子を見に来たのだろう。
友理奈はわざとらしくため息をついた。
88 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:12
「もも、あたしは?」
「もちろん、りーちゃんにも会いたかったよ!」

梨沙子の問いかけに、プリプリとおしりを振りながら答える桃子。

「うわぁ・・・ももキモい」
「ひどーい!!」

桃子と雅の登場で生徒会室がいっきに騒がしくなる。
桃子と梨沙子の言い合いを見ながら愛理と早貴が笑っている。
でも、早貴はやっぱり笑顔がぎこちない。
友理奈はそんな早貴が気になりながらも、桃子と一緒に来た雅がその輪にいないことに気付いた。

周りを見渡すと、雅は窓際の席に座り片肘をついて外を見ていた。
友理奈は雅のところに移動する。

「どうしたの?みや・・・」
「・・・別に」

雅は外を見たままだ。声もいつもより低い。
相変わらず桃子達はキャッキャッとはしゃいでいる。
そんな桃子達と雅を友理奈は見比べた。
そして、なんとなく思ったことを聞いてみる。
89 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:14
「もしかして・・・みや、ヤキモチ?」
「そんなんじゃない!」

友理奈の言葉に振り向いた雅は、あきらかに不機嫌だった。
言葉では否定しているが、たぶん友理奈の考えは当たっているのだろう。

ふーん、と答えながら友理奈はニコニコと雅のことを見つめる。
そんな視線に耐えきれなくなったのか、雅は視線を逸らしため息をついた。
観念したのか俯いたままぼそぼそと口を開く。

「・・・・・ももってさぁ」
「ん?」
「ももって・・・年下好きだよね」
「心配?」
「・・・別にそういうわけじゃないけど」

そう言うと、雅は机に突っ伏した。
雅らしい答えだと思う。本当は結構心配してるくせに。
強がりだけど恥かしがり屋で、そして他の人に対してはそんなことは無いのだが、何故か雅は桃子のことになると素直じゃない。
90 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:15
そんな雅が可愛くて、友理奈は雅の前の席に座ると頭を撫でた。
友理奈にとって雅は友達だ。でも、つい最近まで好きだった人。
なんか妬けちゃうな、そんなことを思いながら桃子達の方に視線をやると桃子と目が合った。
しかし、すぐに視線を逸らされる。

ん?と友理奈は首を傾げる。たまたまだろうか。
でも、何かひっかかる。

友理奈は雅を撫でる手をやめないまま、こっそりと桃子を横目で観察した。
桃子は梨沙子達と楽しそうに話しながらも、こちらをちらちらと気にしているようだった。

「みやだけじゃないかも」
「ん?」
「気にしてるの」
「・・・何が?」
91 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:16
友理奈の言葉に雅がゆっくりと顔を上げた。
よく分からないという表情をして首を傾げている雅に友理奈は顔を近づけていく。

―――ももちも気にしてるみたい

そう雅に言おうと口を開きかけた時、ガタンっと大きな音がした。
その音にビックリした友理奈は顔を上げ、音がした方を向くと早貴が立ち上がっていた。

「ごめん・・・やっぱり私、体調悪いみたい。今日は先帰るね」
「じゃ、私も帰る。心配だし、家まで送るから!」

鞄を手に取り、そそくさと帰ろうとした早貴に愛理が声をかけた。

「ありがと。でも、大丈夫だから・・・申し訳ないけど、残りの仕事お願いね」

そういうと、早貴が生徒会室から出て行った。
いきなりの出来事に、友理奈は早貴が出て行ったドアをしばらく見つめていた。
92 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:16
「く、ま、い、ちょー」

そのままぼーっとしていたら、いつもより低めの声であきらかに不機嫌まるだしな桃子が近づいてきた。

「な、なに?」
「なに?じゃない!さっきみやに何しようとした?」
「えっ!?別に何もしてないけど・・・」

いつもとは違い、冷たい声の桃子に友理奈はたじろぐ。

「してないのは知ってる。でも、何しようとした?」
「・・・何もしようとしてないよ」
「顔・・・近かった」
「あーそれは、ももち達うるさかったじゃん。聞き取りづらいかと思ってちょっと近づけただけだよ」
「ホント?ほんとにそれだけ?」
「ほんとにそれだけ」

雅と顔が近かったのは自覚している。
桃子の反応が見たくて意識的に近づけた。ちょっとした悪戯だ。
だけど、それ以上のことはもちろんしようと思ってなかったし、
桃子も雅のことを気にしていると教えてあげようとしただけだ。
だから、何もやましいことなどないので本当のことを言ってもいいのだが、
桃子の様子がいつもと違うのでなんとなくそのことは黙っておいた。
93 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:16
ふーんと、まだ納得していないのか桃子が腕を組む。

「とりあえず、罰としてジュース買ってきて。もも、みかんジュースが飲みたい。しかも、つぶつぶが入ってるやつ」
「えーなんで!?それにそのジュース、校庭の隅の自販機にしか置いてないじゃん」
「だって、罰だもん。近くに置いてあるやつじゃ罰にならないじゃん」
「ジュース買いに行くこと自体が罰だと思うんですけど」
「つべこべ言わずにさっさと行く!あと、ダッシュで買いに行って来てよ。遅かったら帰るからね」

桃子に背中を押されて廊下に出される。
ここまでくるともう桃子に何を言っても聞いてもらえそうにない。
仕方なく友理奈は廊下を駆け出した。
94 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:17
下駄箱までくると、ちょうど早貴が靴を履いているところだった。
こちらに気付いていないのか、そのまま帰ろうとする。

「なかさきちゃん!」
「・・・友理奈ちゃん」

声をかけると早貴は酷く驚いた様子だった。

「どうしたの?」
「ももちにジュース頼まれちゃって。なんか、罰なんだって」
「・・・そっか。大変だね」

やっぱり早貴は元気がなさそうだ。どことなく辛そうにしている。
さっきより具合が悪化したのかもしれない。

「なかさきちゃんの方こそ大丈夫?辛そうだよ?」
「うん、大丈夫。ごめんね、仕事残してきちゃって・・・」
「それは気にしないで。とりあえず、途中まで一緒に行こうか」

そういうと、早貴の手を取り友理奈は歩き出した。
95 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:18
早貴の頬がうっすらと赤い気がする。熱が出てきたのかもしれない。
家に早く帰らせてあげたくて逸る気持ちを抑えて、ゆっくりと早貴の歩幅に合わせて歩く。
ふと、友理奈は早貴と手を繋いでいることに今更ながら気付いた。

手を繋いだのは無意識だった。辛そうにしている早貴をまえに出た行動。
意識してしまうとなんだかそわそわして落ち着かない。
心臓のドキドキという音がやけにうるさい。
手を繋いでいたいけど離したい、そんな矛盾した気持ち。

そんな時、スカートのポケットが震えた。
ごめん、そう言って友理奈は繋いでいた手を離しポケットを探る。
離した手を残念に思いながらも、少しだけホッとした。

携帯を開くとメールが届いていた。メールの差出人は桃子。

『なっきぃには会えたかな?ジュースはなっきぃにあげて下さい。
 ということで、ももとみやは先に帰るよ!ばいばい(*^ー^)/"』

あぁそういうことかと、友理奈は一人納得した。
桃子が気を使ってくれたのだ。
あの状況でよく思いつくなと桃子の機転のよさに感心する。
96 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:20
そういえば、早貴と会ってからジュースのことなどすっかり忘れていた。
いつの間にか校門まであと少しの距離だ。

「なかさきちゃん、校門で少し待ってて。すぐ、戻ってくるから!」
「え?」

早貴は不思議そうに首を傾げていたが、友理奈はそのまま走り出す。
校庭の隅の自動販機までは割と距離があるのだが、具合が悪い早貴を待たせては行けないと夢中で走った。

校門で待っている早貴のところに着く頃にはすっかり息があがっていて、喋ることができない。
はあはあと荒い息を吐きながら、友理奈は無言でみかんジュースを早貴に差し出す。

「どうしたの?」
「・・・これ・・よ・・・よく、なったら・・・・・飲んで!」
「でも、ももちのじゃないの?」
「だい・・・じょ、ぶ」

あがった息を整えながら、ジュースを早貴に押し付ける。
ありがと、と言って早貴は素直に受け取った。
早貴が受け取ってくれたことに安心する。
乱れた呼吸も落ち着いてきた。
97 名前:恋に落ちたら 投稿日:2009/10/30(金) 18:21
「今日は、ゆっくり休んでね」
「・・・ありがと」

友理奈は早貴の頭をポンポンと撫でると、早貴は俯いて小さな声で答えた。
俯いた早貴を不思議に思い、顔を覗き込むと早貴の顔が真っ赤に染まっていた。

「なかさきちゃん、大丈夫?顔真っ赤だよ!体調やばいんじゃない?」
「うん、なんかフワフワする」

顔を上げた早貴はどこか目も虚ろで友理奈は慌てた。

「早く帰ったほうがいいよ。って、ごめんね。うちが引き止めちゃったから・・・」
「ううん、そんなことないよ。ジュースありがと。また、明日・・・」
「無理しないでね」

うん、と頷いた早貴が手を振って校門を出る。
少しふらふらとした足取りを心配しながらも、友理奈は早貴が見えなくなるまでその背中をみつめていた。
98 名前:RK 投稿日:2009/10/30(金) 18:25
かなり間があいてしまいましたorz
更新速度が上がらない・・・


>>84さん
そう言ってもらえるとうれしいです。
熊なき少ないですからね。これから熊なき増えるといいなー
くまりしゃもいいですよね!
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/30(金) 20:51
熊なきとはめずらしい

作者さんはみやももも好きなのかな?
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/30(金) 20:56
上げてしまいました
ごめんなさい
101 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/09(月) 15:08
なんか新鮮な感じがしていいですね。あまりみない組み合わせですが、ガーデンズ4もあるし、これからにも期待してまってます。
102 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:37
愛理が生徒会室のドアをあけると、今日はまだ早貴一人しか来ていなかった。

「なんだ・・・愛理かぁ」

いきなりドアをあけたせいか、ビクッとした早貴にずいぶんと失礼なことを言われた。

「誰ならよかったの?」
「別にそういうわけじゃないけど、ごめんね」

愛理は拗ねたように口を尖らせながら、早貴の隣に座る。すると頭を撫でられた。
それだけで緩みそうになる顔をなんとかこらえて、拗ねた表情をキープする。
103 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:37
「もう。機嫌なおして」
「・・・もう少し撫でててくれたらなおる」

しょうがないなぁ、と言いつつ早貴が愛理の頭を撫でてくれる。

昔から早貴に頭を撫でられるのが好きで、早貴のことはもっと大好きだ。
早貴に頭を撫でられると、それだけで元気になる。
悲しいこと、嫌なこと、辛いことがどうでもよくなるくらいとても幸せな気持ちになる。
104 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:38

ずっとこのままでいたい。


だけど、愛理にはここに入ってきてから気になっていることがあった。
それは、最近よく早貴と一緒に生徒会室に来ていた友理奈がいないこと。
せっかく早貴と二人きりなのだから、そんなことどうでもいいはずなのに、
なぜか今日に限って、やけにそのことが気になった。

「熊井ちゃん、まだなんだ?」
「うん。なんか呼ばれたから、先行っててって・・・」

苦笑いを浮かべたあと、はぁーと早貴がため息をつく。
それを見た愛理の胸の辺りが痛む。
105 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:39
「りーちゃんは?」
「熊井ちゃんと同じような感じ」
「そっかぁ、二人ともモテるもんね」

そう言って、早貴がまたため息をついた。
愛理は痛む胸の辺りをギュッと握ったまま、早貴に問いかけた。

「気になるんだ?熊井ちゃんのこと・・・」
「・・・なんで?」
「さっきから、ため息ばかりついてる」

自分では気づいていなかったのか、うそ…と呟いた早貴が両手で口を覆った。
106 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:39
胸がキリキリと痛む。そして、そんな早貴を見ているとイライラする。
痛みとイライラが混じって泣きそうになった。

なのに、口からでた言葉はまた自分を追い詰めるようなものだった。

「熊井ちゃんが、誰かと付き合ったらどうする?」

早貴の表情が歪み、瞳が潤む。
その瞬間、ふと愛理に一つの感情が芽生えた。


―――早貴を困らせてやりたい



107 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:41
愛理は無言で早貴と距離を縮めた。

「ねぇ、なっきぃはさ・・・キスしたこと、ある?」
「えっ!?なに、いきなり・・・」

自分でもいきなり過ぎるのはわかっている。
でも、この芽生えた感情をどうすることもできない。

「答えて」

やけに冷たい声が出て、自分でも驚いた。
そんな愛理のいつもとは違う雰囲気に怯えたような早貴が、ないけど…と小さな声で呟いた。
108 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:41
「そっかぁ。私もないんだ。・・・ちょっとしてみる?」

顔は笑っていたが、きっと目は笑っていないと思う。
愛理は、自分が冷たい目をしている自覚があった。

「・・・冗談だよね?」
「ふふ・・・さあ?」

薄く笑い、曖昧に答えてからさらに距離をつめる。

「やめて、愛理」
「大丈夫だから・・・」

何が大丈夫なのか自分でもわからなかった。
でも、ここまできてやめることは出来ない。
愛理の肩を押す早貴の手を取って、顔を近づける。

もう少しで唇に触れるというところで、早貴がギュッと目をつぶった。
109 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:42
それと同時にガラッとドアが開く。
愛理がそちらを向くと友理奈が立っていた。

友理奈は酷く驚いた様子で固まっている。
愛理が声をかけようとする前に、早貴が声をかけていた。

「違うの!友理奈ちゃん・・・」
「あっ・・・。ぐ、ぐぉ、ごめんね、じ、邪魔して!」

我に返った友理奈は、あきらかに挙動不審だった。
視線を彷徨わせながらオドオドしているし、言葉もカミ過ぎだ。

ドアがピシャッと閉められる。

「ちょ、待って!友理奈ちゃん」

友理奈を追って行こうとする早貴の手を、愛理は必死に捕まえた。
110 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:42
「行かないで!」
「でも、友理奈ちゃんに誤解されちゃうよ」
「好きなの・・・・・なっきぃのこと、ずっと好きだった」
「えっ・・・」

ひどく驚いた早貴の顔。
ほんとに全く伝わってなかったんだと改めて思う。

驚いた表情をしていた早貴の顔が、困ったような、申し訳なさそうなものに変わる。
そして、頬を拭われた。

「泣かないで・・・。って、こんなこと言える立場じゃないけど」

いつの間に涙が零れていたのか、自分でも分からないうちに愛理は泣いていた。
111 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:43
「ごめんね、気づいてあげれなくて・・・辛かったよね」

早貴の目も潤んでいるように思う。
そして、愛理は早貴に抱きしめられた。
頭を撫でられ、耳元で早貴が呟く。

「愛理の気持ちはうれしいけど、ごめん」
「・・・ん」
「私ね、たぶん好きな人がいるの・・・」

視界がぼやけてくる。
胸が痛くて、そこを押さえようとした。じゃないと、本当に張り裂けてしまいそうだった。
だけど、早貴に抱きしめられていてそれは叶わない。
かわりに早貴をギュッと抱きしめ、そして愛理は早貴の肩に顔を埋めた。
112 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:44
「愛理のおかげで気づくことできたんだ・・・
 友理奈ちゃんが誰かと付き合ったら嫌だなって思った。
 ・・・さっき、友理奈ちゃんに誤解されるの嫌だった。
 それで・・・・・愛理に好きって言われて・・・
 あぁ、最近、友理奈ちゃんに抱いていた感情はこれだ・・・って思ったの」
「・・・・・」
「・・・だから、ありがと」

その声が優しくて、頭を撫でる手がいつも以上に優しくて、正直ずるいと思った。
そして、その優しさが今はとても辛かった。

なかなか、涙がひいてくれない。
それどころか、どんどん溢れてきて早貴の肩を濡らしてしまう。
愛理は早貴を抱きしめる力を強くした。
早貴は何も言わず、愛理を抱きしめたまま頭を撫で続けた。





113 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:44
どのくらいそうしていただろう。
しばらくして、早貴を抱きしめていた腕の力を緩める。
愛理が顔を上げると、早貴が真剣な表情をしていた。

「こんなんで、許してもらおうとは思ってないけど・・・」

愛理は何が起こったのか、一瞬理解できなかった。
視界がぼやけるくらい近くに早貴の顔があり、目は閉じられている。
そして、唇に温かい感触。

「ごめんね・・・そしてありがとう」

そう言うと、早貴は鞄も持たずに生徒会室を出て行った。

114 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:45
愛理はそれを見届けると、指を唇にあて、撫でた。
もしかして、もしかしなくても早貴にキスされた。

最後にあの幼馴染は、とんでもないことをしていってくれたものだ。
鈍感で、人の気持ちに全く気付かなかったくせに。
そう思いつつも、ファーストキスだよね…なんて思ってしまう自分が嫌になる。

でも、やっぱりうれしく思ってしまうのは本当で。
こんなことされたら、なかなか諦めきれない。
はぁー、と愛理はため息をつく。

そういえば、もう一人の幼馴染との約束も破ってしまった。
抜け駆けはしないという約束だったのに。

愛理は、ごめんと心の中で呟いて天井を仰いだ。
115 名前:恋に落ちたら 投稿日:2010/02/17(水) 21:46
またかなり間があいてしまいましたorz
これからは月一回くらいは更新できるよう頑張りたいですね。


>>99-100さん
熊なきはマイナーですからねw
でも萌えるんです!

みやももも好きです。ってか、実は一番好きなCPだったりしますw

あげ、さげは気にしてませんのでお気になさらず。

>>101さん
ありがとうございます。
ガー4が出来てから前より絡んでくれるのでうれしいです。
小説等も増えてくれるとうれしいのですけど・・・

まったり更新になるとは思いますが、更新速度が上がるよう頑張ります!
116 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/19(金) 14:09
更新キテター!
くまなき大好きだぁぁぁ
舞美ちゃんと愛理もなっきぃラブという設定は珍しいですよね
なっきぃ好きとしては愛されなっきぃは嬉しいです
117 名前:名無飼育 投稿日:2010/02/19(金) 21:50
あいりしゃこはどうなるのかドキドキ!
一気に読んじゃいました^^
たーのしーーーー

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