Raining cats and dogs
- 1 名前:とも 投稿日:2008/09/10(水) 00:42
- ベリキュー中心の短編をちょこちょこ書いていけたらと思います。
基本はやじうめ、あいかん、りしゃみやなどですが、その他のカプも書いていきたいです。
まったり更新していきたいと思います。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
- 2 名前:◇遊園地に行こう◇ 投稿日:2008/09/10(水) 00:42
- 「来たああああああ!」
「栞菜!早く!あれ乗ろうよ!」
一昨年は一緒に行った。去年はどうしても行けなかった。そして今年。
残念ながら学校とかお仕事があって、丸一日行くことは叶わなかったけど。
それでもこうして大好きな栞菜と大好きな遊園地に遊びに来れた。
「やっぱさ、平日の午後だし空いてるね。」
「ね。のりほーだい!!!!」
「ちょっと栞菜走るのずるい!!」
私はどちらかというと運動は不得意。
それに反して栞菜は100m走で1位を取るような子。
確かに早く乗ろうと言ったのは私だけど、走ったら置いて行かれちゃう。
そんなの寂しい。
できることなら手を繋いで、他愛もないような世間話でもしながらアトラクションまで行きたい。
そう思ってるのをきっと栞菜は分かってくれる。私に関してはエスパーだから。
「もう…愛理はノロマなんだから。」
「栞菜が速いだけですぅ。」
ほら。こうして私の隣に来て手を取ってくれる。
繋いだ手からお互いの体温が伝わってくる。
- 3 名前:◇遊園地に行こう◇ 投稿日:2008/09/10(水) 00:42
- 「ちょ…」
「もう栞菜しっかりしてよ!」
「いや…どう考えたって可笑しいでしょ。」
4回も同じジェットコースターに乗るなんて。
「あたしだから、まだ平気なんだよ!?これがえりかちゃんだったら…」
「栞菜、ストップ。」
「うん。ここから先の想像は止めておこう。」
何というか、えりかちゃんが可哀想。
「ねー愛理ー。」
「んー?」
「とりあえず休も?」
普段は男前なくせにこういう時ばっかり甘えてくる。
ちょっと甘えたな声で、大きな瞳を上目遣いに。
でもそんな栞菜が可愛いなって、私はすぐにノックアウト。
栞菜はずるいんだ。
- 4 名前:◇遊園地に行こう◇ 投稿日:2008/09/10(水) 00:43
- 私は喉は渇いてないからちょっと大きいサイズを買って二人で分け合う。
間接キスにドキドキはもうしない。
一昨年はまだこういう関係になって間もなかったからドキドキの連続だったけど。
「愛理?どした?」
「んーん。」
変なの、と言いながらアイスティーを口に運ぶ。
その仕草がすごく綺麗で目を奪われてしまった。
栞菜は私なんか気にせずにマップを出して「次どこ行く?」なんて聞いてるのに。
何だかすごく悔しくて。私ばっかり好きみたいで。
「ねぇ、栞菜。」
「な―――」
何?なんて言わせない。
顔を真っ赤にして口をパクパクさせてる栞菜は、私の持ってる浴衣の柄の金魚みたいだった。
いつもやられっぱなしだし、たまにはいいよね。
- 5 名前:◇遊園地に行こう◇ 投稿日:2008/09/10(水) 00:43
- 「あ、あああ愛理!?」
「なーに?」
いつもの男前な栞菜はいない。
目の前にいるのはお姫様に不意打ちされてヘタレになってる王子様。
とか言って。
舞美ちゃんの口癖がうつってしまった。
そんな自分に酔っていたせいか、全然気がつかなかった。
「ね、栞菜次どこにす―――」
「……仕返し。」
「か、か、かんなあ!!!!」
栞菜の口角がニヤリと上がったことに。
結局私は栞菜の手の平の上で転がされている。
「さ、行こ?」
「…もう。」
それでもいいのかもしれない。
こういう風に一緒に手を繋いで遊んでいられるのだから。
- 6 名前:とも 投稿日:2008/09/10(水) 00:44
- 短いですが『遊園地に行こう』でした。
- 7 名前:名無し 投稿日:2008/09/10(水) 05:49
- 更新おつです
遊ぶ2人をずっと見てたいですw
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/11(木) 10:27
- 新鮮なあいかんありがとうございます。
やじうめ、りしゃみやも楽しみに待ってます。
- 9 名前:名無し飼育 投稿日:2008/09/12(金) 00:39
- 愛栞コンビと本人達が認めた今日この頃w
前以上に仲良しな二人はやっぱり小説でも最高です。
栞菜も愛理を相方呼ばわりした事だしw、愛理は振り回されてるのが一番可愛いですね!
- 10 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/09/19(金) 02:43
-
透き通るような白い肌。くりっとした目。
同い年なのに俺よりずっとずっと考えてることが大人で。
そんな君が大好きなんだ。
- 11 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/09/19(金) 02:43
- 「ちーさーと!起きろぉ!!」
「んー…っさいなぁ…」
「ちょっと今うるさいとか言ったでしょ!」
私はわざわざ起こしに来てあげてるのに!と朝から大きな声を上げている。
見た目は大人しそうなのに、意外と気は強いのだ。
「早くしないと朝練遅刻するよ?」
「…やっべ!!!!!」
『遅刻』の一言で我に返る。
それは非常にまずいのだ。ただでさえ俺は先輩から可愛がりを受けているというのに。
幼なじみを部屋の外に出して、制服に着替える。
真新しい制服にはまだまだ慣れない。
両親が俺がでかくなることを予想したせいで、シャツもズボンぼぶっかぶかだ。
- 12 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/09/19(金) 02:44
- 部活用のサブバッグと授業用のバッグを持って部屋を出る。
階段2段飛ばし誰より速く駆け下りる。
「ご飯は?」
「いらなーい!」
母さんには悪いけど、ゆっくりご飯を食べる時間はないんだ。
バンッと荒っぽくドアを開ける。
君はきっと待っていてくれてる。
「ほら、行こ?」
「えー、愛理歩くの遅いんだもん。なんてね。」
何それ、ってちょっとだけ顔を膨らせてる。
そんな姿も可愛いなって思うことは愛理には絶対言わない。
- 13 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/09/19(金) 02:44
- 幼なじみの愛理。
ちっちゃい頃からいつも一緒だった。
今もちっちゃいじゃんっていうツッコミはなし。
昔はよくいじめられたりして守ってあげてたのに、今ではそんな様子微塵も見せない。
それだけ彼女が大人になったということなんだろう。
同じくらいな身長だったのが、いつの間にかどんどん大きくなって今じゃ見上げるようになってしまった。
身長だけじゃなくて表情とかもすごく大人っぽくなった。
ふと見せる憂いを含んだ横顔とかに単純バカな俺はドキドキさせられる。
俺は何一つ変わっていないのに。
いつまでもガキのまんまなのに。
愛理ばかりが大人になっていく。
何だか、置いていかれるようで嫌だ。
ずっと一緒が良い。
- 14 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/09/19(金) 02:44
- 「「おはようございまーす!」」
二人そろって朝練に登場するのは入部してから数週間もすれば恒例になった。
端から見たら俺たち二人はどういう風に見えるのだろうか。
友達、姉弟…恋人。
でへへとにやけてたら、バカじゃないのと罵られた。
「お前らホント仲良いよな。」
「栞菜先輩!おはよーございます!」
「朝から見せ付けてくれんじゃないの。先輩の目の前でさ。」
しまった。
ちょっと前に書いたけど俺は可愛がりを受けている。
この2年の栞菜先輩に。
「お前2分15秒の遅刻だから校庭5周ね。」
「ちょ、勘弁してくださいよ!」
「何?先輩の言うこと聞けない?」
「…走ります。」
「よし。」
「でも愛理とか走らないでずるくないすか?」
「いいの。愛理は可愛いから。」
そう言って笑顔で愛理に手を振っていた。
- 15 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/09/19(金) 02:45
- 「あぢいいいいいいいい」
「千聖お疲れ。」
「まじ半端ない。栞菜先輩の鬼!」
朝練も終わり、着替えて教室に向かう。
先輩たちがいない今だからこそこういう風に愚痴が言える。
「鍛えられてる分期待されてるんじゃないの?」
「いいや。栞菜先輩は絶対楽しんでやってる!」
確かに栞菜先輩は選手としてめっちゃ尊敬してる。
頭だって良いし、面白いし、ちょっとエロいけど文句なしに良い男だと思う。
正直憧れたりもするし。
その時俺は栞菜先輩のことで頭がいっぱいで気付かなかったんだ。
「でも、かっこいいよね。」
愛理の一言に。
- 16 名前:とも 投稿日:2008/09/19(金) 02:51
- 更新終了です。
ちょっとだけ続きます。
>>7 名無しさん
州´・ v ・)<遊ぶ二人はめちゃくちゃ可愛いです。
リl|*´∀`l|<いつまでも見ていたいんだよ。
>>8 名無し飼育さんさん
州*´∩ v ∩)<新鮮とか…
州´・ v ・)<やじうめもりしゃみやも頑張ります!
>>9 名無し飼育さん
州*´∩ v ∩)<愛栞です…
ノk|‘ー‘)<これからもどんどん振り回していくかんな!
- 17 名前:名無し 投稿日:2008/09/19(金) 09:34
- 最後の一言が…
続き楽しみだけど胸が痛いんだよ
- 18 名前:名無し 投稿日:2008/09/19(金) 23:08
- 男かいな…
- 19 名前:とも 投稿日:2008/09/20(土) 01:49
- >>17 名無しさん
まあどうなるかは分からないもんです、恋愛って。
続きはお待ちください。
>>18 名無しさん
事前に注意を入れるのを忘れてしまいました。
不快な思いをさせてしまって申し訳ございません。
- 20 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:43
- 少しだけ続き物としてるこの作品は人によっては性別が変わっています。
苦手な方はご遠慮ください。
前回の更新の際に、注意を促すのを忘れて申し訳ございませんでした。
それでは、続きを更新させていただきます。
- 21 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:44
-
- 22 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:44
- 部活は毎日ある。朝練も放課後も。
俺の所属する陸上部はこの学校で一番厳しくて大変な部活だと言っても過言ではないと思う。
最近は覚えた難しい言葉を使うのが自分の中でのマイブームだったりする。
少しでも愛理に近づきたいから。
「千聖!」
げ。
「…お前今『げ』とか思っただろ。」
「思ってません!思ってません!」
「何だよ折角俺がおごってやろうかと思ったのに。」
「行きます!行きます!是非お願いします!」
そんな厳しい部活の厳しい先輩。
でも一旦部活を離れれば優しくてめちゃくちゃ良い先輩。
面白いし、テストの前に勉強とかも教えてくれる。
何気に頭の良い栞菜先輩のテスト前の特別授業は1年にとても人気なんだ。
俺だけじゃなく、愛理だって参加している。
その成果なのか愛理のテストの点数は鰻上りだ。
…俺のことは聞かないで欲しい。
- 23 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:44
- 「まあ俺もあんま金ないからマックくらいだけどさ。」
「いやマックでもホントありがたいっす!」
「お前単純だなあ。」
呆れたような、バカにしたような、そんな笑い方。
行くぞ、ってかばんで尻を軽く殴られた。…地味に痛かったから軽くないかもしれない。
「あ、そうだ。」
「どうしたんすか?」
「俺先に着替えてるから愛理も誘って来いよ。」
そう言って先輩は更衣室に入っていった。
何で愛理も誘うんだろうか。
マネージャーだから?俺の幼なじみだから?それとも他の理由?
頭の悪い俺が考えても答えなんて出てこない。
ひとまず俺は考えることを止めて、行動に移すことにした。
まだ部活が終わったばかりだから片付けやら何やらを部室でしてるだろう。
俺は足早に向かった。
- 24 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:44
- 「あーいーりー?」
「んーちさとぉ?」
「お、いたいた。」
「どしたの?」
「何かね、栞菜先輩がマック奢ってくれるって。」
本当に!?と顔を綻ばす愛理。
細い身体をしてるくせして、意外と食べることが好きなんだ。
だからこうして食べ物の話をすると犬のようにくっついてくる。
「でもいいのかな?」
「いいんじゃないの?」
「悪い気がする…」
「先輩が奢ってくれるって言ってるんだから問題ないって。」
その通りなのだ。
別に俺の判断で愛理を誘ったわけじゃない。
先輩が誘えと言ってきたんだから。
- 25 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:45
- 愛理と門の前で落ち合う約束をして部室を後にした。
更衣室に戻ると、先輩はもう着替え終わっていた。
「愛理来るって?」
「はい。すっげー喜んでましたよ。」
「あいつ食べるの好きだかんな。」
「そうっすね。」
先輩と会話をしながらジャージを脱いで制服に着替える。
畳むのは面倒だからジャージはそのままエナメルに突っ込んだ。
何も俺だけじゃない。男子の大半はそんなもんだと思う。
栞菜先輩はかばんを持って壁にもたれていた。
「あ、すんません。」
「良いって。愛理誘ってたし仕方ないっしょ。」
「ですね。」
「おい。」
流石に先輩を長い間待たせるわけにはいかないからそれからはダッシュで着替えた。
- 26 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:45
- 「愛理何食べる?」
「えっと、ポテトとフルーリーも頼んでいいですか?」
「いいよー。俺はてりやきのセットで。」
「先輩!俺!俺も!てりやきセット!」
「はいはい。じゃあてりやきのセット2つとポテトのMとフルーリーとファンタグレープのSください。」
3人分はお盆に乗り切らず、俺と栞菜先輩で持つことになった。
席について他愛もない話をする。
テストのこと。部活のこと。委員会のこと。今はまってるもの。
バカみたいな話。くだらない話。
そんな話を面白おかしくし、人を笑わせられる栞菜先輩はすごいなって思う。
俺も愛理も腹を抱える程ではないが、笑いが絶えることはない。
俺もよく人を笑わすけど、こういう感じではない。
何か笑ってるというより笑われてる感じに近い。
だから、栞菜先輩ってすごいなって思うんだ。
『すごい』しか言えないんだけど、すごいんだ。
- 27 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/10/17(金) 00:45
- 「ありがとね、千聖。」
「へ?」
帰り道。先輩とは別れて二人で夜道を歩く。
「千聖が誘ってくれたから。」
「や、俺じゃなくて栞菜先輩が…」
「そうだけど。やっぱり栞菜先輩に誘われるより、千聖の方が行きやすいし。」
それって。それって。それってもしかして。
俺と一緒が良かったってこと?もしかしてもしかして素敵な展開?
ここは男の俺から切り出すべき?そうなの?
「栞菜先輩に直接声を掛けられたら、恥ずかしくて耐えられないから。」
「俺もだ―― …え?」
「それに千聖が居たから先輩とあんなに話せたし。本当にありがとう。」
ちょっと待て。頭の回転が追いつかない。
何だこれ。もしかして俺はとんでもない勘違いをしているんじゃないだろうか。
「ねえ千聖。」
「は、はい?」
「…栞菜先輩って彼女、いるのかな?」
そう言った君の顔は月明かりに照らされて、とても綺麗だった。
あまりの綺麗さに泣きそうになった。
- 28 名前:とも 投稿日:2008/10/17(金) 00:47
- 更新終了です。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/23(木) 12:32
- リアルでちさあいり遊園地の約束したみたいですね
続きどうなるか楽しみです
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/29(水) 22:51
- 遊園地か… 遊園地と言えばリアルはしかn…(ry
- 31 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/11/21(金) 18:13
- 愛理が栞菜先輩のことが好きだなんて思いもしなかった。
どこかの少女漫画のように幼馴染同士はお互いに惹かれあって結ばれるものだと信じていた。
けどそれは俺だけが勝手に思ってたこと。
現に愛理は俺じゃなくて、栞菜先輩に恋焦がれているんだから。
あんな愛理を目の前にして俺はただ一言言うしかなかった。
『いないと思うよ。』
って。
『いる』って言えば良かったかもしれない。
そしたら愛理は栞菜先輩のことを諦めて、俺の方を見てくれたかもしれない。
でも真っ直ぐな目をした愛理に嘘を吐くなんてできなかった。
それに、あんな目をしてたら諦めないだろう。
どちらにしても俺を見てくれることはない。
- 32 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/11/21(金) 18:13
- 何で栞菜先輩なんだろう。
俺より年上で落ち着いてるから?
面白いから?頭が良いから?本の趣味が合うから?
考えても考えても分からない。
俺と違うところがありすぎる。
だからこそ愛理は俺じゃなくて栞菜先輩なんだろう。
俺と似てたら俺を選んでもいいはずだから。
授業中に俺はそんなことばかり考えてる。
ただでさえ馬鹿なのに授業を聞かなかったら大変だ。
特に今は数学なんだから授業に集中しないと――――
「岡井。お前余裕だなあ。」
「あ゛っ……」
「目の前の問題解いてみるか?」
「…すいませんでした。」
教室に笑いが起こる。愛理も笑ってる。
栞菜先輩は愛理を笑わせてるけど、俺は愛理に笑われてるだけだ。
- 33 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/11/21(金) 18:14
- 「千聖ダメじゃん。」
放課後、一緒に部室に向かいながら愛理がさっきの授業の話を振ってくる。
あー超かっこ悪い、俺。
「何か考え事?」
「まあそんなとこ。」
「悩みとかあるの?」
「んー…どうだろう?」
「千聖でも悩むんだね。」
「バカにしてんの?」
「ううん。あたしで良かったら聞くよ?」
誰のせいで悩んでると思ってるんだよ。
って言えたら楽になるんだろうな。
「好きだ」って言いたい。栞菜先輩じゃなくて俺を見て欲しい。
もうすぐ部室だ。先輩がいるかもしれない。
言うなら、今しかない。
「俺、愛理のこと―――」
ガタッ。
- 34 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/11/21(金) 18:14
- 物音がする方を見ると栞菜先輩が暑いからか学ランを腕まくりして立っていた。
俺は妙に冷静に栞菜先輩を見つめていた。
栞菜先輩も俺を見つめていた。というか俺の腕の先。
愛理に告白しようと俺の手は愛理の肩にあった。
「お前らイチャつくならもっと場所選べよ。」
いつもの明るい感じの栞菜先輩はどこにもいなかった。
表情には憂いがあって、声は低かった。
まるで今にも泣きそうで。
「ちがっ!」
愛理が反論しようとする。
そりゃそうだろう。愛理は栞菜先輩が好きなんだから、誤解されたくない。
「良いんだって。ただ単に俺が嫉妬してるだけ。」
みっともねえな、と零しながら先輩は俺たちに近づいてきた。
- 35 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/11/21(金) 18:14
- 「俺は、愛理が好きだから。」
ずるいよ先輩。俺が今言おうとしたのに。
先に言われたら俺勝てっこないじゃん。
「じゃ、二人とも部活はちゃんと来いよ。」
先輩は愛理の返事を待たずに部室の方に向かって行った。
告白された当人の愛理は俺の目の前で震えていた。
「何で言わなかったの?愛理も好きなのに。」
「だって…」
「ああ、そっか。俺が言おうとしたことは、愛理が考えてることと違うから安心して。」
愛理の肩から手を離す。これで愛理は自由になれる。
思い切り栞菜先輩のとこに行けばいい。
「俺は愛理のこと、すんげえ大事な幼馴染だと思ってる。だから―」
「…だから?」
「英語の宿題貸して?」
「…ばか。」
「馬鹿だから借りたいんじゃん。」
- 36 名前:◇ずっと好きでいいですか?◇ 投稿日:2008/11/21(金) 18:15
- 「ほら。愛理、泣きそうな顔しないで。」
「うん。」
「あたしも先輩のこと大好きです。って言ってこいよ。」
「うん。」
俺にできることはこうして愛理の背中を押してやることだけ。
だけどこれだけは誰にも譲らない。幼馴染の特権。
「栞菜先輩は本当に良い人だから。愛理も分かってるだろうけど。」
「うん。」
「絶対愛理のこと幸せにしてくれるから。」
「うん。」
ほら、と愛理の背中を言葉だけでなく手でも押す。
すると彼女は笑顔で走り出すから。
「運動神経ないんだから転ぶなよ!」
「うるさい千聖!」
こうして憎まれ口を叩けるのは俺だけ。幼馴染の愛理は俺だけの愛理。
小さな声で『ごめんね』と聞こえた。
愛理は気にしないで。俺がただ幼馴染としてじゃなく愛理を好きだっただけ。
愛理。俺、愛理のことすっげえ好きだよ。
- 37 名前:とも 投稿日:2008/11/21(金) 18:18
- 更新終了です。
そして『ずっと好きでいいですか?』も今回の更新で最後でした。
>>29 名無飼育さん
ポラに書いてましたね!是非実現して欲しいものです。
あいかんは既に遊園地には行ってますからねえw
>>30 名無飼育さん
ちょw はしか(ryは、はしか(ryで良いと思います。
あくまで私個人の意見ですが。
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/05(金) 15:14
- 千聖切ないけどあいかんの幸せを願ってしまう
この愛理かわいいなー
- 39 名前:とも 投稿日:2008/12/19(金) 14:55
- 今回の更新から新しい作品になります。
前回の作品同様、一部のメンバーの性別が変わってる場合がありますのでご注意ください。
- 40 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:56
- 「オーライ!」
バシッとミットにボールが収まる感覚。
小さな頃からお兄ちゃんと一緒にキャッチボールをしていた。
だからこの感覚を身体が覚えていて、心地良い。
ソフトボールを始めた頃はまだ手が慣れていなくて、痛みを感じることもあったけど
もう何年も続けているとそんな風に感じることはなくなった。
「舞美、そろそろ始めようか。」
「そだね。」
- 41 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:57
- 始めるのはピッチングの練習。
最初はみんなと全体練習。その後にポジションごとの練習。
全てを把握しないといけないキャプテンは大変だ。
山下先輩から指名を受けた時には正直困ったんだけど、今は何とかやっていけてる。
それもこれも副キャプテンのキャッチャーがしっかりしてくれてるお陰なんだけど。
「ねえ茉麻、私新しい球種を増やそうかなと思って。」
「また?」
「また、って何それ。」
「だって舞美、夏の大会でもそういうこと言ってたじゃん。」
「うん。」
「で、それを投げた後、あたし舞美に何て言ったか覚えてる?」
「『これただのストレートだとゆいたい。』」
「そう。だから舞美はさ、球種増やそうとか思わないでストレートを極めた方が良いとゆいたい。」
「でもさ…」
「舞美は良いストレート持ってるんだから。球威もスピードもあるし。」
- 42 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:57
- 茉麻の言っていることは正しいと思う。
実際私は変化球となるとてんでダメ。まるで私の性格を表すみたいに。
だけど今のままじゃダメなんだって。
県大会の出場が決まるあの日。
私が打たれたせいで点が奪われ、私が打てなかったせいで追いつけなくて負けた。
私がもっと努力をしていれば、点が奪われなかった。打つことができた。勝つことができた。
たら、れば、とか、もし、とかを今考えても仕方ないことだってわかってる。
もう過去に戻ることはできないんだから。
だからこそ、今頑張りたい。
- 43 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:57
- 「それより。」
「ん?」
「舞美さ、ソフトのことばかり考えるのも大事なんだけどさ、1個忘れてることない?」
「え?何?今週数学の小テストとかあったっけなあ?」
「まいみー!!!」
遠いところからまさかの突っ込み。
目線をそちらの方に向けると、小柄でデコを出した子が一人。
「何でこんな大事なこと忘れてるのよ!」
「な、なっきぃ怖いんだけど…」
「いいから!ちゃんと思い出しなさい!!」
「は、はい!」
何かあったっけなあ…?大会は冬だし……冬?
- 44 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:58
- 季節は秋。そう、学園祭の季節だ。
「あー!!!!!!!!!!!!」
「思い出した?」
呆れた顔で見てくるなっきぃと茉麻。
…ごめん。本当にすっかり忘れていた。
「が、く園祭のだしも、の?」
「「そう。」」
「あーどうしよう!全然考えてなかった!!!」
「「やっぱりね。」」
「どうしよう!どうしよう!」
- 45 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:58
- 正直な話、学園祭なんてものは私の頭の中にはなかった。
あったのは部活のことばかり、それとせいぜい今月末の期末テストくらいだ。
「去年と同じでいいんじゃない?」
「そうケロ!」
「………」
「あれ?舞美?何か他にやりたいことある?」
「…去年って、何やったっけ?」
「「忘れたのかよ!!!」」
- 46 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:58
- 鋭いツッコミを喰らい、こってりと絞られてから帰路に立つ。
なっきぃはともかく、あの温厚な茉麻があんなにも怒って…というよりは呆れているのか。
確かにちょっと試合の方に集中しすぎてた。
それについては二人は責めなかったけれど、一人で張り切りすぎてた。
ソフトボールはチームワークが大事。
キャプテンである私がその輪を崩しちゃダメじゃないか。
結局、部活終わりに学園祭の出し物について部員と話し合った結果、去年と同じことをすることになった。
去年の出し物はストラックアウト。テレビでやってるアレ。
挑戦者が子供や女性だったら多少前から投げさせて、男性は標準の位置。
投げ抜いた枚数に応じてお菓子やらをプレゼントする。
ごくごく普通の出し物。
「まあ特に考える必要ないし、楽だからいっか。」
基本的に楽観的で単純な考え方しかできない私だから、考えてもこの結果になるだろうし。
- 47 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:59
- 大きなエナメルバックを持ったまま歩く。
頭の中には部活とテスト、それと新しく加わった学園祭。
正直高校2年生の乙女がこんなんでいいのかと思ってしまう。
なっきぃとか普通に恋をしてるわけだし…それに比べて私は…恋の『こ』の字もしてない。
恋をしているからか、なっきぃはすごく可愛くなって…
私なんか全く色気という色気もない。
…まあ茉麻も同じようなもんか。
从o゚ー゚从<失礼だとゆいたい
- 48 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 14:59
- 家に着いて部屋に入り制服を脱ぐ。
夕飯の匂いが漂ってくる。その匂いに誘われるように私は急いで部屋着に着替えて階段を下りた。
ベッドの上に制服を投げ出したから皺になるかもしれない。
それでも今の私には夕飯>制服だから。
- 49 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 15:00
- ―――――――――――――――――――――――――――
ご飯も食べ終わり、制服もきちんとハンガーにかけた。
ちょっとスカートに皺が出来てたけど、明日の朝までには大丈夫だろう。
お腹もいっぱいで何だか勉強する気が起きない。
明日は英語があるから教科書を写して和訳をしとかないと。
忘れっぽいけど意外と真面目な私はその辺はちゃんとやる。とか言って。
かばんの中から教科書と電子辞書を取り出す。
新出単語の意味調べをして、ノートに書き出す。
単純な作業だけど結構楽しいもんで。
和訳は大変だけど、英語は嫌いじゃないから。
そんな風に手も頭も休まず働かせると、予習なんてちょちょいのちょいだ。
「あー疲れた!」
ノートと教科書をかばんに投げ込む。ストライク。さすが我がソフト部エース。
自分で褒める。自画自賛。褒められ伸び子。
- 50 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 15:00
- ふと思い出す。夏の大会が終わったある日のこと。
なっきぃと二人で放課後にバカやってた。
その時になっきぃの好きな人が発覚した。コーチに来てた竹下先輩。
別に竹下先輩自体には興味ないけど、そういうのいいなってたまに思う。
「胸、キュンキュン…かぁ……」
自分とは程遠い話題だけど、興味がないわけじゃない。
一応年頃の女の子。
恋をしているわけではないけど、恋には憧れる。
なっきぃが羨ましい。
- 51 名前:◇忘れたくない夏◇ 投稿日:2008/12/19(金) 15:00
- 「私も恋、したいなあ…」
したいと口にしたからと言ってできるわけではないけど。
何かの雑誌か本に書いてあった気がする。
『恋はするものではなく、落ちるもの』と。
今は周りに脳みそ筋肉と言われるような私だけど、恋に落ちる日が来るんだろうか?
- 52 名前:とも 投稿日:2008/12/19(金) 15:03
- 更新終了です。
何回か続きます。
>>38 名無飼育さん
私もあいかんが好きなのであいかんの幸せを願ってしまいます。
が。千聖も頑張った分だけ、それに相応しい幸せがやってくると思います。
きっと素敵な相手が見つかりますよ。
- 53 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/12/20(土) 00:04
- あいては誰か気になる〜><
梅でありますようにwww
- 54 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/12(月) 02:12
-
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/26(金) 23:48
- 続きをプリーズ
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