世界の中心は君だ
- 1 名前:知 投稿日:2008/08/15(金) 10:52
- あやみき。
即興ですので誤字脱字等あると思いますがお許しを。
ちょっと変わったお話かと思います。
年齢設定まだ未詳。
- 2 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:53
-
傍若無人
支離滅裂
自己中心
他に付け加えるとしたら…
容姿端麗 かなぁ?
- 3 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:53
-
「美貴ちゃん?何書いてんの?」
「や、ちょっとね…」
「四文字熟語ねー。あはは、傍若無人に支離滅裂!何か嫌なことでもあったの?」
「あはは…な、なんでもないよ」
作成したレポートの端に、文句代わりに書いた恋人のステータス。
同じゼミの梨華ちゃんはそれを見てハテナマークを浮かべ、美貴からパッと奪い取ったレポートをあっさり返してくれた。
「じゃ、あたしバイトだから先帰るね」
「あ、うん。つか今何時?」
「12時ちょうど」
「え?!嘘!」
しまった、ゼミ長引いたんだった…
一気に背中から冷や汗が出てきて、顔が青ざめていくのが分かった。
いや、今から走ればなんとか間に合う?タクシー捕まえる?
いやいや、渋滞に巻き込まれたりしたらそれこそ一貫の終わり!
あわてふためいてカバンを手にとり、梨華ちゃんにバイバイするのも忘れて教室を飛び出した。
- 4 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:54
-
『校門で待ってるから、時間厳守。遅れたらどうなるか、分かってるよね?』
珍しく電話がかかってきた(いつも料金負担は美貴だから)と思ったら、お迎え命令。
テスト明けで学校が早く終わった後、ショッピングに付き合えとのことだった。
こ、これって…デート? な訳が無くて、ただの荷物持ちに美貴を呼びたいらしい。
用件だけ告げてブチンッと通話が途切れ、美貴は一言も喋らずに渋々了解。
電話ってさ、コミュニケーションとるためのツールだよね? いつしか本来の目的を失ったケータイは、まさに恋人のためだけに存在してるようなものだ。
- 5 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:54
-
ああくそ!車でくれば良かった…けどガソリン高いから最近控え(ry
貧乏そうに見えて実はマイカー持ってるんだよ美貴だって! そこ、疑うな!
とにかく、急がなきゃ…
タクシー?電車? もうどっちでもいい!
門を抜け出ると、中学時代陸上部で道大会(HOKKAIDO出身)14位というなんとも微妙な成績(参加者賞獲得)を残した自慢の脚で、全速力で駅に向かった。
とにもかくにもタイムリミットは後15分。
1秒でも遅れたら……あ…ああ…あぁ!
こ ろ さ れ る !!!!
- 6 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:55
-
息も絶え絶えで駅に到着し、タクシー乗り場に直行。
駅の電光掲示板に「人身事故」という文字が微かに見えて、小さく舌打ちをした。
ったく真っ昼間から飛び込むなよ…こっちが死にたいくらいなのに(真剣)
とか思いながら無事タクシーを捕まえた。
「はぁ…はぁ…あの、○○駅までおねがいします…」
「今ちょっと道混んじゃってて、時間かかりそうなんですけど大丈夫ですかぁ?」
「はぁぁ?!! ちょ、困るんですけど!」
「いやお嬢ちゃん、おじさんも困っちゃうんだよねぇそう言われても」
「そ、そんな…っ」
- 7 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:55
-
やだやだやだ! 前言撤回死にたくないよぉぉぉぉ!
携帯を見るともう残り時間は少ない。
し、死のタイムリミット… なんて冗談じゃないわけで。
ああもう!あの時ゼミ抜けてればよかった! でも最近サボッってたからそれはやばかったし…
はっ!ていうか何で道混んでんだよ!人の生死が関わってんだぞゴルァ!
- 8 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:56
-
「………ふ、はははは…」
「…お、お嬢ちゃん?」
「いくら欲しい?」
「…え?」
「いくらでもやるから、早くタクシー飛ばせ!」
「ギャァ!ははははいぃぃ!」
高校生の時から使っているP○RTERの財布を投げ付けて、運転手に無理矢理ハンドルを握らせる。
もう運転速度とか道路交通法なんて美貴の六法全書には無いの!あのこだけが法律なんだってば!
- 9 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:56
-
どっかでこんな映画なかったっけ?
こうタクシーが次々道路にあるものはね除けて、あわよくば警察まで敵に回してっていう…
気付いたら後ろに白バイやらパトカーがついてきてるし。ああもうどうにでもなれ。
「だーもうっ、ここでいいから降ろして!!」
「は、はい!」
ギィィィとタイヤがアスファルトを焼く音と焦げる匂いと共に、タクシーを降りてあのこの高校へと全速力で走る。
うーんおかしいなぁ、あのこと付き合うようになって美貴、体力ついたのかな?
最初は筋肉痛で大変だったけど、いつのまにか良いダイエットになったっていうか…
ほら、気にしてたお腹まわりもスッキリしてきたし?
まあ良い運動に… な る か 馬 鹿 !!
- 10 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:56
-
なんとか白バイetcをまくことに成功し、いつのまにか底がすり減ったスニーカーを気にする余裕もなく、校門で仁王立ち+腕組みする、セーラー服の女の子を確認。
遠目からだからよく分からないけど… なんか怒ってない?
いやいつもあんな目つきで人目憚らない子だけどさ、あの目は美貴を半殺しにするときの……
- 11 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:57
-
ふと目が合い、だらしない笑顔を向ける美貴を見て大きな溜め息。
特有の唇を尖らせる表情に変わり、持っていたカバンをほいっと美貴に投げた。
「おわっ!…あ、亜弥ちゃん? ご、ごめんね道混んで…」
「たん、おそい」
「ご、ごめん…」
「この間よりタイム遅くなってる。どこで道草くってたの?」
「道草なんてしてないよ!ちょっとゼミが長引いて…」
下校する生徒から、ジロジロと舐められるような視線を感じる。
ストップウォッチをずずいと美貴の目の前に押しやり、リセットボタンをぽちっと押す亜弥ちゃん。
ああそうか、間に合っても間に合わなくてもこうなる運命だったのか。
…早く気付こうよ美貴…ぐすん
- 12 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:58
-
「ゼミとあたし、どっち取るのよアンタ」
「(時間間に合ったのに…) …も、もちろん亜弥ちゃん」
「ふん。よろしい。 早く行くよ」
ふわっと紺色のスカートを翻して、不満そうに歩き出す。
美貴はそれに遅れまいと隣を歩くけど、なんかいつもとちょっと違う。
殺気立ってるのは変わらない。…て、あれ?
髪、切った? 前髪をそろえて、ちょっと子供っぽくなったような…
- 13 名前:世界の中心は君だ 投稿日:2008/08/15(金) 10:58
-
「たん!おーそーい!」
「わ、ごめ…」
「じろじろ見るなっ、ばぁか」
キッと目を鋭くさせて、べーっと舌を出す。
手を繋ごうかどうか迷ったけど、今の亜弥ちゃんはバツば悪そうだ。
そろえた前髪を左手で抑えて、気にするように瞼をゆらゆら動かす彼女は、いつもの傍若無人さとはかけ離れていて、美貴は思わずくすくす笑っちゃいたくなって堪えきれなかった。
それに亜弥ちゃんはますます怒り出すわけだから、結局怒られる羽目に。
いやいや、イタイ。イタイってばちょまじで殴らないでほんと。
to be continue ?
- 14 名前:知 投稿日:2008/08/15(金) 10:59
- >>2の前に以下の文章が入る予定でしたスミマセンorz
美貴の恋人は、それはそれはお嬢様のように勝手気侭で、自分が世界の中心だと思ってるような女の子。
逆らえばムチが飛び、文句のひとつでも垂れようものなら逆さ吊りの刑に処されて…なんて域には及ばないけど、絵に書いたような我侭っぷりには本当に愛想尽きてしまう。
これらの性格を抜きにしたら、とんでもなく可愛い完璧なジョシコーセー。
寝顔はまさに天使の様…けど、悪魔は悪魔なんだよね。
美貴の事、まるで犬扱いしてこき使うし、使うだけ使って気が済んだらポイ。
え?どうして付き合ってるんだって?
だから、さっきも言ったじゃん!美貴の恋人はね、世界一我侭で勝手だけど…
なんか、憎めないんだよねぇ…
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/15(金) 21:52
- あやみきだああ
おもしろそうっす
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/16(土) 03:44
- 今ではあまり見かけなくなった
古き良きあやみきの香りがします←キモい
続き、楽しみにしてまーす
- 17 名前:知 投稿日:2008/08/16(土) 10:37
- >>15
面白くなるかなぁ…頑張ります。
>>16
みき→あや な感じですね。でも古めかしいのは亜弥ちゃんがツンデレみたいになってるからかな笑
ありがとうございますー。
- 18 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:15
-
ひい、ふう、みい… いや、もう一度数えてみよう。
ひい、ふう、みい… …うー、やっぱり変わんないか…。
- 19 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:16
-
「どうしたの美貴ちゃん、目の色変えてお札数えちゃって」
休み時間中、どう見ても三枚しかない紙幣をぺらぺらと何度も確認していたら、妙な視線を感じた。
下唇を噛んで、そっとそれを封筒にしまうと、梨華ちゃんは何かを察したようにくすっと笑う。
「な、何?」
「それ、今月のバイト代でしょ?」
「うん。でも案外少なくてさぁ…朝も眠いの我慢して入ったのに」
「何か欲しいものでもあるの?」
「…欲しい、っていうか」
そそくさと封筒を鞄にしまって、頬杖をついて携帯を開く。
ピッピッピッ うん、やっぱりあと1週間後の今日だ。
- 20 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:16
-
携帯の画面にカレンダーには、6月25日に赤いポイントマークが記されている。
自分で設定した覚えなどない。そりゃ、誰がやったのかって言ったら、
『ちょっと携帯貸して!』
亜弥ちゃんちでまったりしてたら、横から急に手を差し出されてそんなお願いをされた。
- 21 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:17
-
別に見られて困るものなんて無かったし、ほいとそれを渡すと、慣れた手付きでぽちぽちと何かボタンを押しているようだった。
その時の亜弥ちゃんの表情と言ったら、何か企んでいるような、いつもの意地悪い目つきをして、作業が終わるとひょいと美貴に携帯を投げ付けた。
『あたしの誕生日。たん、知らないでしょ?』
ふふん、と勝ち誇ったような顔をして、右の拳で美貴の額をごんと小突いた。
別に痛くは無かった。無性に亜弥ちゃんの幼さを感じたというか、美貴の知らない亜弥ちゃんの秘密をぽつぽつと教えてくれる、そんなゲームみたいな事を亜弥ちゃんは楽しんでいるんだと思う。
- 22 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:17
-
だから、記念日だとかそういうのには結構うるさいらしい。
「でもさ、何が欲しいとか…言わないんだよ」
「へぇ〜、物欲ないの?そのコ」
「いやいや、ありまくり。でも、美貴に あれ買って! とか、言わないんだよね」
最近は梨華ちゃんも、亜弥ちゃんのことについて親身に聞くようになった。
世界の中心は自分だ! なんて思っちゃってるようなジョシコーセーが実在するんだよ!
って美貴が力説しても、『そうだよね、最近そういうコ多いみたいだし』なんて笑いながら言うから、きっと美貴の苦労なんてアリのようなものだと思ってる。
- 23 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:17
-
「我侭だって言うけど、欲しいもの一つ美貴ちゃんにねだらないなんて、不思議だね」
…そーなんだよねぇ。 亜弥ちゃんちが馬鹿みたいに金持ちだってことはもう知ってるからそのせいだろうと思ってたけど、どうやら違うみたい。
「亜弥ちゃんはそーとープライド高いし負けず嫌いだから、人に何か買ってもらうなんて事は絶対的に許せないんじゃないかな」
「……いやいや、ちょっと待ってよ美貴ちゃん。 あなたたち、恋人同志なんだよね?」
「うん、一応」
「それなのに、プライドとかそういうものを引っ張りだしてくるその子…すっごい性格だね」
梨華ちゃんは恐れいったと言わんばかりの納得ぶりで、美貴の知ってる亜弥ちゃんのわずかでも理解したらしい。
- 24 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:18
-
亜弥ちゃんは…ひねくれてるっていうか、あまのじゃくっていうか。
お金が有り余る程ある=プライドが高い っていう方程式でも当てはまるんだけど、
いや!
でもやっぱり、それじゃ何かが違う気がする… 亜弥ちゃんはもっと、美貴なんかじゃ考えられないくらいおっきなことを根に持ってるんじゃ……
「素直に聞いてみたら? 誕生日忘れるな!ってわざわざ美貴ちゃんに釘刺してる位なんだから、きっと祝って欲しいんだろうし。 プレゼントの一つくらい、期待してると思うよ?」
「そう、だよねぇ……」
ふと時計を見ると、次の講議が終わったらちょうど亜弥ちゃんの学校も放課後に差し掛かる時間帯になっていた。
どうせ今日はバイトないし、レポートの作成も終わった所だし、特に用事が入っている事もない。
だったら…
- 25 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:18
- 今日、会って聞いてみようかな?
- 26 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:19
-
- 27 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:19
-
亜弥ちゃんは帰宅部で、同好会とかそういうのにも全く興味が無いらしく、6限目が終わるころにはいつも帰宅する。
もっとも、興味が無いというわけではなく、習い事が忙しい事が一番の原因だと思う。
その習い事っていうのは、ボイストレーニングだったりダンススクールのことみたい。
詳しい事はあんまり聞かされて無いけど、ひとつだけ、 亜弥ちゃんのおっきな夢を聞かされた事があった。
『あたし、歌手になりたいんだ』
珍しくにこやかな表情をして、ボイトレ用の楽譜を見つめながらそう言った。
その瞳は自信に満ちていそうで、どこか不安げな影を負ったようだった。
笑ったら怒るからね。 と言いつつ、亜弥ちゃんがそっと自分の秘密を教えてくれたことが、美貴は嬉しくてたまらなかった。
- 28 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:19
-
亜弥ちゃんはそのおっきな夢を実現するために、この音大附属の高校に通っている。
全国でも有数のお嬢様学校で、偏差値もそれなりに高いし、美貴が通った地元の高校とは比べ物にならないくらい。(もっとも美貴の地元は田舎だけど)
「お、ジャストじゃん」
キーンコーンカーンコーン 軽快な終令の鐘が鳴り響いて、徐々に生徒が下校し始めていた。
でっかいチャペルが門をくぐった正面に大きく構えており、それだけでもかなりの威圧感がある。さっき鳴った鐘も、このチャペルの真上にある。
そういや、亜弥ちゃんの学校、初めて入るんだっけ。
そもそも勝手に入っちゃって良かったのかな? いや、良く無いよねさっきから凄く視線感じるもん。
でも、門の外で待っていたらどれが亜弥ちゃんだか分からないし…
- 29 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:20
-
「あのー…もしかして、亜弥のこと探してます?」
「…へ?」
「あたし、亜弥と同じクラスの高橋です。みきた…じゃなくて、美貴さんですよね?」
「あ、うん」
おたおたしている美貴を見兼ねたのか、何度か見た事のあるだろう美貴の姿を認識して、おそるおそる声をかけてきた。
亜弥ちゃんの友達だという彼女も、亜弥ちゃんに負けず劣らずの容姿。
や、でも残念だけど、この子見た事ないや… 美貴亜弥ちゃんの友達にまで知られてるって、なんか変だな。
今、「みきたん」って。
- 30 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:20
-
- 31 名前:謎 NAZO 投稿日:2008/08/16(土) 12:20
-
- 32 名前:知 投稿日:2008/08/16(土) 12:22
- 少し更新。謎はまだ続きます。
松浦さんと藤本さんのガチッぷりを最近聞きませんね…
ソロ活動再開=以前の二人 というわけにはいかないみたいですね。
- 33 名前:I 投稿日:2008/08/17(日) 13:56
- あやみき好きの私としては、うれしい限りです。
ぜひかんばってください。
- 34 名前:I 投稿日:2008/08/17(日) 13:57
- すみません・・・「頑張ってください」でした。。。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/21(木) 22:26
- あやみき発見!
楽しみにしています。
- 36 名前:知 投稿日:2008/08/22(金) 23:52
- ちょっとここで短編をうp
松浦さん視点。こっちのほうが今のふたりっぽいかなと思います。
- 37 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:53
-
日付けが変わったその瞬間、あたしは風呂に入っていた。
ただぼんやりと天井を見上げて、ママが送ってくれた誕生日プレゼントをまだ開けてないことや、妹からお粗末な誕生日メールが送られていた事をふと思い出す。
はて、いつのことだっけか?
そう思ってしまうくらい、最近忙しい。もう何年も前から感じているこの日常を、未だにあたしは享受出来ていない。
何度言っても足りないくらい忙しい。
それくらい、アタシには平穏っていう言葉が一番似合わない。
- 38 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:54
-
例えば、
常に窮屈な箱の中でうごめく、この季節だとカブトムシみたいなのがアタシだとする。
ただ樹液を塗った木にへばりついて、そのままじっとしている。敵がくれば身体をふるって相手を追っ払おうとする。攻撃的な所、まあ似てるかもしれない。
そんなあたしを捕まえて可愛がり続けてくれる事務所に出会って、本来なら一夏の生命を授かったカブトムシは永遠を生き続ける。うん、メデタシメデタシ。
- 39 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:54
-
これでいいのか?あたしの人生よ!
答えはイェス。 あたしはこうなるべく生まれてきたに違い無いから。
パパは反対したけど、ママは喜んでくれた。歌うたいならアンタに向いてる!ってさ。
歌うだけじゃないんだよ?あれこれ色々やらされるし、スキじゃないことだって、普通の中学生だってやらないようなことをするお仕事だもの。
だから、カブトムシは奮闘した。樹液を吸って、更に大きく、美しくなった。
カブトムシは蝶にはなれない。むしろそれがアタシらしい。
スキャンダラスな世界だもの。
折れたら負け。アタシ達は負けず嫌いが唯一の共通点。
だから、ねぇ アンタなら分かってくれるでしょう?
- 40 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:55
-
「あやちゃん、虫好きだったっけ?」
「バカ、そーゆー意味でない」
「ぁう」
小1時間カブトムシがあたしの脳内を洗脳した後、今度は子犬相手で精一杯になる。
脱ぎっぱなしの上着。食べかけのコーヒーゼリー。
それに気の抜けた質問。アタシをもどかしくさせる天才だ、コイツ。
文句かわりに小さなその頭を小突いた。
なんだよ、食べたいって言うから買ったのに。
犬はとぼけた顔でテレビのチャンネルをかちゃかちゃと変えては、寝転がる体勢を変えて何度かあくびを繰り返す。
実家にいるコーギーのほうがよっぽど利口だと思う。パタパタと締まったふたつの脚がやけに人間らしくて、無性にむかむかとしてきた。
- 41 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:55
-
あたしがカブトムシならこいつは犬だ。ちょうどイイよね、鼻筋のラインとか、うちの犬に似てるし。
柴犬っぽい所もある。あの犬種って、飼い主以外には警戒心強くて、触ろう撫でようものなら噛み付かんばかりの口元が印象的。
黙ってれば可愛い。うん、ぴったしじゃん。
「あやちゃんこの間言ってたDVD見ようよ」
クリームがかかった食べかけのそれにあたしは手を伸ばす。どうせもう食べないんだろうし。
というか、あたしの話はもういいのね?
やっぱ違うかも。 このこには分からないか。
- 42 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:55
-
返事も聞かずにデッキをいじり出して、つい先日話題にしていた洋画を取り出しながらぺたんとフローリングに腰を降ろした。
その背中から察するに、今夜はあたしを無限大にツマラナイ自分のうちあけ話に突き合わせるつもりらしい。 ああ、寂しいのね。長い付き合いで、とうとう顔を見なくても何を考えてるのか分かるようになってきた。
これって良い事なんだろうか。
「たん、あのさ」
「んー」
「あんたはあたしが好きでしょう」
「うん、そうだよ?」
はは、間違いはない。 仕事とアタシを切り離し、アタシを自分の世界へまんまと引き込む事に成功したこのこならではの、自信に満ちあふれた瞳。
アタシはいつもこれに吸い込まれて、帰れなくなって、気付いたら周りの世界とは全く違う鮮やかな色に染まっている。
- 43 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:56
-
リモコンを握りしめたまま、考え込んでしまったアタシの肩に顎を乗せて、何か期待に満ちた瞳をキラキラと輝かせる。
いつからこうなった? あたしはこの7年間のうちに、何度この瞳に吸い込まれた?
きっとそれはあたしがカブトムシで、事務所にもらわれた時から既に始まっていた筋書きなんだろう。 あたしがこの仕事をするという運命とともに付帯した奇跡だとも言える。
ちくしょう。なんかむかつく。
- 44 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:56
-
いつのまにかオープニングのテロップが流れ出し、本編があと数秒でスタートする頃になっていた。
あたしは異世界へとトリップしていたために、そのことには全く気付かなかったけど、ミキたんが握っていたリモコンがテレビへ向けられた時、それが確かに「電源」を落とす合図だということではっと我に返った。
ぐるぐるぐるぐる アイドル 女 男 歌 あや みき GAM ソロ 脱退
あたしの世界の中心は仕事だけで、その他の領域なんて存在してなかった。
このこに出会う前まで、しらけた夢の中でまた違う夢を見ていたような気がする。
同じ空気を吸って同じものを食べて同じ事に共感して、それで松浦亜弥と藤本美貴っていう違う人格がひとつになったことではじめて、今のアタシがあるわけで。
- 45 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:57
-
かけがえのない人。 そんなくっさい台詞、このこは嫌いだろう。
ロマンチストなサディスト それがあたし。夢見るのはけっこう好きだ。
- 46 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:57
-
「わー、カブトムシに襲われるぅ」
「今日だけだよ。もうしてやんないから」
「んふふ、あやちゃんなんかかわいいよ」
「うっさい。ねえ、もう寝ちゃおうよ。明日見よう映画」
「うん、そうしよう」
あたしは意識を失った昼ドラのヒロインみたく、B級な演技でふっとミキたんに身体を預けた。
この感覚を忘れてしまったら、アタシはアタシでなくなるような気がした。この細い身体に、あたしの身体のひとつひとつを溶かしていくように、しがみついた。
いつか、こんなことも出来なくなるんだろう。 このこにはもっと大切なものが、大切な人が必要なんだと、昔からそれだけを言い聞かせてきた。
- 47 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:57
-
カブトムシ。樹木。あたしとミキたんはこれで繋がってるんじゃないのかな。
あたしが前者で、アイツが木。
もうどっちでもいいけど、それぐらいの関係でいいと思う。
べったり甘えてたカコのあたし。 サディストになった今のアタシ。
何が違うんだろう。大人になったからか、昔を思い出すことがおっくうになってきて、考えるのをいつも途中で止めてしまう癖がついた。
それもまた、受け入れるのがフジモトミキという存在なんだと思う。
器のでっかい犬だこと。 密かに、より濃ゆく、あたしはこのこを愛してるんだもの。
- 48 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:58
-
- 49 名前:irony 投稿日:2008/08/22(金) 23:58
-
- 50 名前:知 投稿日:2008/08/23(土) 00:00
- 何か訳の分からない話ですいません。突発的に書いたもので。
要するに松浦さんは藤本さんが思ってるより藤本さんのことを溺愛してるよという話です。
>>33
いやはやありがとうございます。これからもよろしくです。
>>35
あやみきです。多分これ以外書きません というか書けません。
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/25(月) 00:47
- 最近あやみきを書いてくださる方が少ないのですごく嬉しいです。
続き楽しみにしてます!
- 52 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/01(月) 14:03
- いつまでも待ってますよ
- 53 名前:I 投稿日:2009/08/08(土) 13:57
- お待ちしています。
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