たまご雑炊
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/25(火) 04:22
- スレタイに意味はありません。
どう考えても万人受けしない感じの短編を10本程度。
1回目の更新以降はsage進行の予定です。
というわけで近日更新予定の3本、主な登場人物のみ予告しときます。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/25(火) 04:24
-
○田中・道重
○藤本
○石川・吉澤
- 3 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:25
-
穴
- 4 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:25
-
高校のクラスメイトの絵里がある日突然遺体で発見されてから、1年が過ぎた。
絵里は背中を何ヶ所か刃物で刺されて、空き地の草むらに捨てられていた。
犯人はまだ捕まっていない。
それどころか、何の手がかりも見つかっていないそうだ。
絵里は家庭でも学校でも、人間関係に問題があるわけではなかった。
そうすると男関係のトラブルを疑うのが自然だけど、1番仲の良かったさゆでさえ、まったく
心当たりはないと言う。
平和だった町は大騒ぎになったし、学校でもその事件の噂で持ち切りだった。
絵里と仲良しだった子の中には、ショックで学校に来れなくなった子も何人かいた。
でも、1年が経った今ではその話題を持ち出す人はほとんどいなくなり、絵里の存在も
少しずつ忘れ去られている。
- 5 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:26
-
- 6 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:26
-
「あ、田中さん、ちょっとお願いがあるんだけど」
帰りのHRが終わって教室を出ると、数学の村田先生に呼び止められた。
「はい?」
村田先生は相変わらず物憂げな瞳で、口元に微笑をたたえながら言った。
「今日、道重さん風邪で休んでたでしょ? 宿題のプリント、届けてあげてくれないかしら」
「あ、はい、いいですよ」
「ごめんなさいね、こんなこと頼んじゃって」
別に謝るようなことではない。
さゆのマンションはちょうど私の帰り道の途中にあって、届け物をするくらい大した手間
じゃないから。
それにしても、なぜ日本人というのはお礼を言う場面で謝罪の言葉が出てくるんだろうか。
謝られるより感謝されたほうがよっぽど気分がいいのに。
- 7 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:26
-
- 8 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:27
-
よく知らないけど、さゆは家庭の事情で1人暮らしをしているらしかった。
「高校生で1人暮らしとか大変やね。 料理とか洗濯とか面倒やなかと?」
以前そう訊ねたことがある。
さゆは、「何でも自分の好き勝手できるし、案外気楽でいいもんだよ」 と笑っていた。
住宅街の続く道をしばらく歩き、さゆの住んでいるマンションに着いた。
階段を上り、廊下を進み、さゆの部屋の前まで来た。
チャイムを鳴らす。
返事はなかった。
風邪をひいて学校を休んだわけだし、今は寝ているのかもしれない。
もう1度鳴らしてみる。
やはり返事はない。
- 9 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:27
-
ふと、ドアに付いている覗き穴が目に入った。
「‥‥あれ?」
私は思わず眉を寄せた。
覗き穴にレンズがはめ込まれていない。
指を突っ込んでみる。
向こう側に貫通。
「うわ、何やこれ。 外から覗き放題やん」
本来、中から外を見るためだけに付いている覗き穴。
それが、不特定多数の人間が外からも中のプライベートを覗き見ることができてしまう
という、非常に物騒なものになっていた。
危ない危ない。 さゆに早く教えてあげなきゃ。
そんなことを思いながらも、私は無意識にそこを覗いてしまっていた。
- 10 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:28
-
自分の目を疑った。
部屋の中では、死んだはずの絵里と、包丁を持ったさゆが揉み合っている。
さゆは絵里を壁に突き飛ばし、怯んだところを素早く後ろに回りこんで、絵里の背中に
思いっきり包丁を突き立てた。
「ひゃぁっ!」
私は思わず悲鳴を上げた。
その瞬間、覗き穴の向こうは真っ黒になり、何も見えなくなった。
がちゃり。
鍵の開く音がして、私は驚いて飛びのく。
ドアが開いた。
眠そうな顔をしたさゆが、そこに立っていた。
- 11 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:28
-
「さ、さゆ‥‥」
「あれ、れいなじゃん。 何? どうしたの」
さゆはきょとんとして、不思議そうに私の顔を見た。
普通だ。 いつも通りのさゆだ。
ほっとして胸を撫で下ろした。 私は夢をみていただけかもしれない。
かばんの中から、先生に手渡されたプリントを取り出す。
「これ、村田先生に頼まれたっちゃ」
「あーそっか、宿題? わざわざありがとう」
「別に通り道だからいいとよ」
さゆは柔らかく微笑んだ。
「せっかくだから上がっていきなよ」
「え‥‥でも、さゆ風邪ひいとるんやろ?」
「あはは、平気平気、れいなにうつさないから安心して」
「いやっ、そういう意味やなくて‥‥」
「さゆみは平気。 もうだいぶ具合良くなってきたし」
- 12 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:29
-
さゆの言葉に甘えて、私は部屋に上がらせてもらうことにした。
この部屋には何回か遊びに来たことがあるけど、相変わらずピンク基調でファンシーな
可愛らしい部屋だった。
もちろん絵里はいない。 家具の乱れもない。 血しぶきもない。
さっき覗き穴から見たのは、やっぱり夢だったんだ。
私は急におかしくなって、キッチンで紅茶を淹れているさゆに話しかけた。
「さゆさゆ、れいなさっき変なもの見たとー」
「ん? 何?」
さゆは背中を向けたまま答えた。
「ドアの覗き穴から覗いたら、絵里とさゆが喧嘩してたっちゃ」
「え?」
「それで、さゆが絵里の背中に包丁刺してたとー。 あはは」
「‥‥‥」
「こんな変な幻見るなんて、れいな病んどるかもしれん」
「ふふ、ほんとにね。 いきなり何言い出すんだろうと思ってびっくりしちゃった」
「絵里はもうおらんのにね」
「うん‥‥」
さゆは笑って頷いて、少し淋しそうにため息をついた。
- 13 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:30
-
しまった、と思った。
殺された大事な友達のことを、軽々しく笑って話すべきじゃなかった。
これだから私は空気が読めないと言われるのだ。
「ご、ごめん、さゆ‥‥」
「‥‥気にしなくていいよ。 いくら悲しんだって絵里はもう帰ってこないからね」
気まずい空気が流れた。
あぁ、もうやだ。
なんで私はこう失言が多いんだろう。
私は雰囲気を変えようと、無理に笑顔を作って立ち上がった。
「そ、それにしてもあの覗き穴、外から丸見えやけん危なか。 レンズが外れとう」
私はキッチンにいるさゆの前を通って、玄関へと向かった。
覗き穴を指差す。
「ほら、これ‥‥」
そう言いながら、私は何気なくそれを覗きこんだ。
- 14 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:31
-
「‥‥え?」
そこから見えたのは、慌てて部屋のドアから出て行く私自身だった。
部屋の前のマンションの廊下。
逃げようとする私の肩を、さゆが掴む。
さゆが私の背中に包丁を突き刺す。
脱力した私の体を抱えて、部屋の中に引きずり込むさゆ。
その瞬間、私はすべてを理解した。
不思議な覗き穴。
さっき部屋の外から覗いて目撃したあの光景は、過去だ。
絵里を殺したのはさゆで。
今、部屋の中から、つまりさっきと反対側から覗いて見えている光景は、未来だ。
‥‥私はこのあと、さゆに殺される。
- 15 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:31
-
背すじがすぅっと凍りつき、全身から血の気が引いた。
ゆっくりと振り返る。
キッチンから、無表情でこちらを見ているさゆ。
さゆは驚くほど自然な仕草で、そばにあった包丁を手に取った。
私は1歩も動けず、ただドアにへばりついているだけだ。
恐怖で膝が震えた。
さゆは静かに、ゆっくり私のほうへ近づいてくる。
そして、にっこりと微笑んだ。
「‥‥見たでしょ?」
- 16 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:32
-
- 17 名前:穴 投稿日:2007/09/25(火) 04:32
-
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/25(火) 04:36
- 終わりです。
というわけで、ありがちネタ的アイタタターな短編をせこせこ更新していきます。
ではまた。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/25(火) 18:36
- 面白いです。期待大。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/26(水) 02:05
- お・も・し・ろ・い
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/26(水) 14:43
- さゆ怖い。・゚・(ノД`)・゚・。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 03:46
- レスありがとうございます。
というか正直レスがつくと思ってなかったので、嬉しくて小躍りしてます。
>>19
しかし期待はずれ必至です。
>>20
う・れ・し・い・わ
>>21
从*・ 。.・)<褒め言葉なの
- 23 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:48
-
隣人
- 24 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:49
-
「ふぅーーー」
私は重いダンボール箱2つを床に下ろして、大きく息を吐き出した。
今日からここが私の新しい部屋だ。
荷物を運び込んで埃っぽくなった部屋で、私は畳に座り込む。
少し前までは大学の女子寮に住んでいた。
そこは男子禁制だったのだが、あろうことか私は彼氏を連れ込んで、えきべ‥‥
こ、事に及んでいるところを、相部屋の女の子に見られてしまったのだ。
私は寮を追い出されてしまった。
「あー、今うちのアパート空きあるで。 来るか? 藤本」
知り合いの中澤さんがそう言ってくれなかったら、私は路頭に迷うところだった。
ありがたい。
やはり、持つべきものはアパート経営者の知人である。
- 25 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:49
-
「ぷはぁー」
ペットボトルのお茶を飲み干す。
ひと息ついて、今後のことを考えて少し憂鬱になる。
隣近所へ引越しの挨拶に行ったほうがいいのだろうか。
正直、気が進まない。
キツめの受け答えや鋭い目つきのせいだと思うが、どうやら私は第1印象が悪いらしく
いつも他人と打ち解けるまでに時間がかかるのだ。
とはいえ、最初から近所付き合いをないがしろにするわけにはいかない。
せめて同じ階の人たちには挨拶に行くことにしようか。
よく知らないけど、こういう時って確かそば持ってくんだよな、引越しそば。
手打ち‥‥は素人には無理だな。
それに、美貴ただでさえ料理へたくそだし。
慣れないことはしないほうがいい。
迷ったあげく、私は近くのコンビニで290円のざるそばを4つ買った。
- 26 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:50
-
- 27 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:50
-
まずは301号室。
呼び鈴を押して待っていると、金髪ボブヘアの女の子が出てきた。
「はい、何か」
私は深呼吸をして、頭の中で繰り返し練習してきた挨拶文を、なるべく自然な作り笑顔で
言ってみる。
「どうもこんにちは、はじめまして。 304号室に越してきた藤本と申します」
「はぁ、どうも」
「えっと、仲良くしていただけると嬉しいです。 今後ともよろしくお願いします」
「はぁ」
「‥‥これ、お近づきのしるしに」
そう言って私がコンビニで買ったそばを差し出すと、彼女は一瞬微妙な表情をしたが、
すぐに笑顔でお礼を言ってくれた。
「ありがとうございます、こちらこそよろしく。 あ、ちょっと待ってて下さいね」
彼女はそれだけ言って奥へ引っ込むと、部屋の中をガサガサした後、綺麗なお菓子の箱を
持ってきた。
「実は私、ちょっと前まで外国に旅行‥‥じゃなかった、留学してたんです。
その時のお土産が余っちゃったんで、これ、よければどうぞ」
- 28 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:51
-
302号室は、ひげ面のおじさんと若い女の子の2人暮らしだった。
表札を見るとなぜか2人の苗字が違うのだが、年齢から見てきっと親子だろう。
女の子からは、かすかにタバコの香りがした。
303号室に住んでいたのは新婚の若い夫婦だった。
少し舌足らずでまだ幼い印象の奥さんは妊娠中で、来年1月に出産予定らしい。
旦那さんがにやにやしながら言った。
「いやぁ、避妊はしてたんですけどねー」
305号室も同じく新婚のご夫妻である。
奥さんはすらっと背が高く美人だったのだが、突然、宇宙とか交信とか何とか言い始めた
ので、私は変な宗教に勧誘される前に、この人とは距離を置こうと思った。
ちなみに彼女も来年1月に出産予定だという。
- 29 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:51
-
- 30 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:52
-
無事に挨拶を済ませて緊張が解けたのか、腹がぐうと鳴った。
とりあえず食料を買いに行こう。
1日中引越し作業で疲れたし、料理をする気力もない。
う〜ん、今日はコンビニ弁当でいいや。
階段を降りていくと、アパートの玄関口で、大家の中澤さんが掃き掃除をしていた。
「おぅ藤本。 どうや、新居の住み心地は」
私は苦笑した。
「まだ住んだって言えるほど時間経ってないですよ」
「あは、それもそうやな。 まーお疲れさん」
そして私は何気なく付け足す
「あ、でもさっき同じ階の人たちに挨拶してきたんですけど、みんな良い人たちみたいで
安心しました」
中澤さんが目をぱちくりさせた。
「は? 今3階に住んどるの、あんただけやで」
- 31 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:53
-
私はコンビニに行くことも忘れて階段を駆け上がった。
3階の廊下はしんと静まりかえっている。
どの部屋も、さっきまでは確かにあったはずの表札がない。
試しに呼び鈴を押してみたが、誰も出てこない。
人の気配はなかった。
改めて恐怖が沸き起こる。
幽霊だ。
私は、この世のものではない何かに出会ってしまったのだ。
自分の部屋に飛び込んで厳重に鍵を掛け、部屋中の電気を点けた。
ベッドに潜り込む。
頭から布団をかぶって、体をきゅっと縮めた。
来るな来るな来るな。
何なんだよ、美貴に何の恨みがあるって言うんだ。
もう嫌だ、こんな所に住めるわけない。
中澤さんには申し訳ないけど、明日にでも荷物をまとめ直して出て行こう。
誰が好き好んで幽霊アパートなんかに住むかっつーの。
- 32 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:53
-
- 33 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:54
-
いつの間にか、少しうとうとしていたようだ。
ふと気づくと窓の外はすっかり暗くなり、時計の針は夜9時を回ったところだった。
恐怖は少し落ち着き、私はお腹がへっていることに気づいた。
やっぱり何か買いに行こう。
そして布団の中でもそもそと体を起こそうとした時。
シーツを握りしめている自分の手を見て、私はぎょっとした。
‥‥透けてる。
信じられない思いで、震える手を開いた。
手のひらを透かして、シーツの皺がはっきりと見える。
指先はすでに消えかかっている。
ベッドから飛び起きて、Tシャツをめくり上げた。
ジャージの裾を引っ張り上げた。
腕、足、髪の毛、お腹。
私の体はゆっくりと、そして急激に透明になっていく。
- 34 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:55
-
「あ、あ‥‥」
何? 何なの? どうなってるの?
どんどん薄くぼやけていく自分の体を見つめながら、はっとした。
もしかして、‥‥あの人たちと同じ?
怖い! 怖いよ、美貴消えちゃうの?
もしかして、このままあの人たちみたいに幽霊になるの?
‥‥消えた美貴は、友達にも彼氏にも、中澤さんにも忘れ去られていくの?
- 35 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:55
-
必死でテーブルの上の携帯電話に手を伸ばした。
メール画面。
彼氏、いやだめだ、中澤さん。
本文入力。
‥‥「た」‥‥「す」
嫌だ嫌だ嫌だ!
美貴まだ若いんだよ! やりたいことだっていっぱいある!
消えたくない! まだ死にたくないよ!
「け」‥‥「て」‥‥
送信ボタンを押そうとした瞬間、携帯電話は私の手の中をすり抜けて床に落ちた。
手が完全に消えたのだ。
やめてよ、美貴が何したって言うの?
どうして? 消えたくないよ‥‥
‥‥‥誰か、助けて‥‥‥
- 36 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:55
-
- 37 名前:隣人 投稿日:2007/09/27(木) 03:56
-
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 03:58
- どうもすみませんでした。
終わりです。
苦情批判は絶賛受付中です。
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 05:11
- そういうことかw
分かりやすい皮肉だ。
- 40 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 07:35
- なんか一人足りな…ry
でも面白かったです!
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 09:11
- 勝手に消すな糞野郎
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 19:44
- シニカル。
たまにはこういうのもいいんじゃない?
- 43 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 21:08
- >>39
案の定、>>41さんに文句を言われました。
>>40
1人足りないって誰のことなのか、本気で分からない自分はヲタ失格でしょうか。
>>41
どうも!糞野郎です!
苦情批判だけでなく、もちろん誹謗中傷も大歓迎です!
最後まで読んで下さってありがとうございました。
ところでsageって知ってますか?
>>42
シニカルの意味が分からなくて検索してしまったことは内緒です。
思いのほかレスを下さった方が多かったので、調子に乗って早めに更新です。
- 44 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:08
-
乾燥機
- 45 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:09
-
「そういえばさ、2週間くらい前に乾燥機が壊れちゃったんだよね。
ま、実際あんまり困ってないんだけど」
番組収録が一緒になった日の帰り、私とよっすぃ〜は近くの喫茶店に入った。
注文したケーキはまだ来ない。
無難な世間話をしながら、私は何気なく故障した乾燥機のことを口に出した。
よっすぃ〜は大きな茶色い目をぱちぱちさせて、私の顔を見つめた。
「な‥‥何よ」
よっすぃ〜は黙ったまま、小首を傾げて何か考え込んでいる。
また変なことを思いついたのだろうか。
「梨華ちゃんさぁ、今、冷蔵庫の中空っぽでしょ」
「は?」
- 46 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:13
-
いきなり何を‥‥
私はよっすぃ〜の意図が全く読めず、肯定も否定もしないで言葉を返した。
「なんでそう思うの?」
「ハリイ・ケメルマンの有名な短編小説に、『9マイルは遠すぎる』ってのがある」
「‥‥は?」
ますます意味が分からない。
私はよっすぃ〜の思考回路を読むことを諦めて、とりあえず次の言葉を待った。
「“A nine mile walk is no joke, especially in the rain.” ―――9マイルもの道を歩くのは
容易じゃない。 ましてや雨の中となるとなおさらだ」
よっすぃ〜はやけに良い発音で、意味不明の英語を流暢に喋った。
きっと誰かにこの話をするために、頑張って覚えて練習してきたのだろう。
私はそんな見栄っ張りのよっすぃ〜を愛しく思った。
「友人が適当に提示したその11語の英文から、推論に推論を重ねた教授が、発覚すら
してない殺人事件を見破るっていう話だよ」
「何それ‥‥す、推論って、どんな妄想したらそんな結論に行き着くわけ?」
- 47 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:14
- 私は呆れて眉をしかめた。
アイスコーヒーのグラスを手に取り、ストローを口に含む。
ひとくち飲んで初めてガムシロップを入れ忘れたことに気づき、私は小さく舌打ちをした。
「‥‥『9マイルもの道を歩くのは容易じゃない。 ましてや雨の中となるとなおさらだ』
この言葉を発した人が実在すると仮定する。 彼は明らかに歩くことにうんざりしている。
できることなら歩きたくないと思ってるだろうね。 さらに、彼が歩いたのは深夜から
早朝にかけて、ということになる」
「ちょっと待って、なんでそうなるの?」
「昼間ならバスとか電車が動いてるんだから、歩く必要はない。 ついでに言うと、彼は
きっと自家用車を持ってなかったんだろう。 わざわざ歩いてるわけだし」
「はぁ」
- 48 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:15
-
「雨の日に9マイル、つまり約15キロ歩くとしたら、4時間ほどかかる。 始発バスもしくは
始発電車が着くのが5時半だから、彼は少なくとも5時半より前に、町で何か用事が
あった。 それなら、なぜ彼は前日に町へ行かなかったのか」
「‥‥知らんがな」
「それは、終電やら終バスより後の時間まで、他の場所にいなくてはならなかったから」
「‥‥‥」
「まぁ、そんな感じでどんどん推論が続いていくわけだ。 最終的に、教授は知りもしない
殺人事件の全貌を解き明かしてしまう。 何の変哲もないたった11語の任意の英文から、
突拍子もない結論を論理的に導き出すんだ」
- 49 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:16
-
「‥‥それはあくまで教授の妄想でしょ?」
「妄想じゃない、推論だよ」
「でも、その単語は友人が適当に提示したものだったんでしょ? 実際に殺人事件が
あったわけじゃないよね?」
「いや、あったんだよ本当に」
「どうして? 偶然?」
「教授はこう考えた。 こんな具体的な例文を、友人が咄嗟に思いつくわけがない。
ということは、友人は無意識のうちに、どこかでこの言葉を小耳に挟んだのではないか。
教授と友人は朝からレストランにいた。 つまりこの言葉を発した人物である犯人は、
レストランの中にいる」
- 50 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:16
-
私はぽかんとして、ぺらぺらと喋り続けるよっすぃ〜の薄い唇を見つめていた。
ていうか私たち、なんでこんな話をしてるんだっけ。
全部は理解できなかったが、私は話を無理矢理まとめた。
「つ‥‥つまりあれだよね。 風が吹けば桶屋が儲かる、ってやつ」
「微妙に違う気もするけど、極論で言えばそうだね」
話を戻す。
「で、どうして乾燥機が壊れると冷蔵庫の中が空っぽなの?」
「あぁ、それは‥‥」
よっすぃ〜は思い出したようにアイスティーをひとくち飲んで喉を潤すと、次のようなことを
一気に喋った。
- 51 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:17
-
- 52 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:17
-
乾燥機が2週間前に壊れたって言ったよね?
今は梅雨で、ほとんど毎日雨が降り続いている状態だ。 だから洗濯物を外に干せない。
それなのに、梨華ちゃんは困っていないと言っている。
単に部屋干ししてるってことも考えられるけど、部屋干しって服とかクサくなるよね。
だけど梨華ちゃんはクサくない。 つまり部屋干しはしていない。
「何その論理‥‥」
いいから黙って聞け。
じゃあ梨華ちゃんはコインランドリーを使っているのかもしれない。
でもコインランドリーには、盗難防止のために防犯カメラが設置されていることが多い。
自分の姿がカメラに記録されるかもしれないコインランドリーを、曲がりなりにも芸能人
である梨華ちゃんが軽々しく利用するとは思えないんだ。
「曲がりなりにもって何よ!」
- 53 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:19
-
それに盗難とか暴行とか、とにかくコインランドリーって犯罪多くて物騒だからね。
人一倍慎重な梨華ちゃんなら、絶対行かないと思う。
というわけで梨華ちゃんは、洗濯や乾燥を知り合いに頼んでいると考えられる。
男の影はないし友達も少なそうだから、家族に頼んでるって考えるのが自然だろうね。
「わ、私だって友達いるもん」
そうだとしても、人様に迷惑をかけるのを嫌う梨華ちゃんが、こんなことを友達に頼むとは
思えないし。
いちいち洗濯物を持っていくわけだから、家族が今住んでいるのは、わりと梨華ちゃんの
マンションの近くなんじゃないかな。
梨華ちゃんはズボラで面倒くさがりだし、もともと家事も苦手だよね。
毎日行き来できるほど近くに家族が住んでるなら、家に寄ったついでに夕ごはんとか
食べてるんじゃない?
「う‥‥」
- 54 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:19
-
朝食とか昼食は仕事先で食べるだろうし、もともと料理をするとしたら夕食だけのはずだ。
で、最近は実家で夕ごはんを食べてるから、梨華ちゃん自身は料理をしていない。
乾燥機が壊れてから、もう2週間が経っている。
2週間も経てば、冷凍食品以外、たいていの食材の賞味期限は切れるだろう。
というわけで、梨華ちゃんちの冷蔵庫は空っぽという結論に達したんだ。
- 55 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:19
-
- 56 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:20
-
見事である。
よっすぃ〜の言う通り、確かに今うちの冷蔵庫は空っぽだ。
でも‥‥
「どう? 当たった?」
よっすぃ〜は得意げに、にこにこしながら私の顔を覗き込む。
私は不敵に微笑んだ。
「‥‥ハズレだよ」
店員がケーキを持ってやって来た。
「レアチーズケーキとモンブランになります。 ご注文のお品は以上でお揃いでしょうか?」
「あ、はい」
「ごゆっくりどうぞ」
- 57 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:20
-
よっすぃ〜はしゅんと眉尻を下げ、心底がっかりした表情で私を見つめていた。
「おかしいなぁ、完璧な論理だと思ったんだけどなぁ」
「まぁ、いい線いってるけどね。 ちょっと小説読んだくらいで調子乗るんじゃないの」
確かに実家に寄る機会は多いし、ごはんもそこで食べるから、最近は料理をしていない。
結論だけ見れば正解だろう。
しかし、よっすぃ〜はその過程で致命的な間違いを犯している。
私は1人暮らしなので洗濯物が少ないし、毎日やるなんて面倒くさいことはしない。
2〜3週間おきにまとめて洗濯をしているのだ。
つまり私は、乾燥機が壊れてから1度も洗濯をしていない。
そして、乾燥機が壊れていてもいなくても、我が家の冷蔵庫はいつも空っぽである。
- 58 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:21
-
- 59 名前:乾燥機 投稿日:2007/09/27(木) 21:21
-
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 21:23
- 終わりです。
それでは近日更新予定の3本、登場人物のみ予告。
○岡井(他キッズ4名)
○嗣永
○道重・高橋
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 21:36
- しまった。微妙なミスをしてしまいました。しかも2レスにわたって。
× 提示
○ 例示
失礼致しました。
- 62 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/27(木) 21:38
- あぁ、もうだめだ。
書き忘れましたが>>46と>>49です。
見苦しいレス申し訳ありません。
- 63 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 01:46
- まぁブラックな内容なので批判はあるだろうけど面白いし好きだな
頑張ってね
- 64 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 01:51
- どんだけズボラなんだ梨華ちゃんw
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 10:04
- 分かってて上げたんだよ大便
- 66 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 10:12
- 書いた内容に愛情の欠片もなく
嘲りしか感じられないから不快に思うのは仕方ないね
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 12:37
- 最後の4行、本当にありそうな気さえしてくるのが凄いw
シニカルで突っ走れ。
- 68 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 15:31
- 微妙な流れになってきたので落としますね。
とりあえずレス返しのみ。
>>64
そんな石川さんのギャップが好きです。
>>63,>>67
まとめてしまって申し訳ありません。
ありがとうございます。その言葉を心の糧にして生きていこうと思います。
>>65
こんにちは。毎度おなじみ、うんこ作者です。
age=人目につく場所にスレを上げる
つまり>>65さんは、この作品をたくさんの人に読んでほしい、と思って
わざわざageて下さったのですね。
粋な計らい、どうもありがとうございます。
>>66
ある程度愛情がなければ、その人を主役にした小説なんか書けません。
主役でも脇役でも同じです。
興味のないメンバーを小説に登場させるわけありませんから。
私は藤本さんが好きです。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 15:32
- さて、なんだか過激派のお方に目をつけられてしまったようですが。
空気読まずに長文です。
>>1で言っている通り、私は全ての人に気に入られようとは思っていませんし、
今後スタンスを変えるつもりもありません。
このスレを見て不快に感じたのなら、もう見ないようにすればいいだけの話です。
飼育には現在、400以上のスレッドがあります。
気に入らないスレもあるかもしれませんが、もちろん好きなスレもありますよね。
わざわざ自分の嫌いなスレに行って喧嘩を売るような暇があったら、
好きなスレに行って、そこの作者さんにたくさん励ましの言葉をかけてあげて下さい。
嫌いな人を攻撃することより、好きな人を応援することのほうが楽しいですよ。
気楽にいきましょう。
同じ労力なら、マイナスよりプラスの方向へ使ってみてはいかがでしょうか。
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/28(金) 23:58
- 自分は面白いと思うよ
次の更新も楽しみにしてます
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 00:59
- ブラックジョークをネタとして楽しめない人って何処にでもいるものですしね。
私はこういうの大好きですよ
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 01:26
- 面白いよ、俺もミキちゃんは好きだけど別に気にならないね
空想の世界なんだから気に入らなきゃ読まなきゃ良いんだよ
書いといてなんだが荒れないで欲しいな
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 22:47
- >>70
ありがとうございます。気合い入れ直して頑張りまっくす。
>>71
私もあなたが大好きです!
>>72
大荒れの予感もありましたが持ち直したようです。君のおかげさ。
さて、若干飛ばし気味ですが、スタートダッシュということで
ポンポコ更新していきたいと思います。
- 74 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 22:53
-
仲間はずれ
- 75 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:53
-
つんく♂さんから呼び出しを喰らった。
どうしよう、私はまた何かやらかしちゃったんだろうか。
思い当たることが多すぎる。
まぁ、怒られるのは慣れてるからいいけど。
びくびくしながら部屋に入ると、同じように呼び出されたらしいキッズの面々が
すでに集まっていた。
なっきぃ、あいり、かんな、りさこ、そして私を入れて5人。
私は直感した。
これはきっと新ユニットだ、と。
寺田のおじさんがまた何か的外れなことを企んでいるに違いない、と。
それにしても人選が微妙だ。
こんなの、梨沙子と愛理にファンが偏るに決まってんじゃん。
コンサートなんかやっちゃったら、私はまた雑魚メンとしての自分を再認識する
という屈辱に耐えねばならない。
あぁそうですか、いじめですかこれは。
私はなっきぃの隣の椅子に座った。
特に話すこともなく、私たちはただ黙って自分の手元を見ているだけ。
5人の女子中学生が無言で横1列に並んで座っている光景は、なんだか異様に
感じた。
- 76 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:54
-
私が沈黙に耐え切れなくなって何か喋ろうとした瞬間、ドアが勢いよく開いた。
「おーおー、みんな集まったか。ごくろーごくろー」
自分が呼び出したくせに遅れてやって来たつんく♂さんは、面倒くさそうに私たちを
見渡して言った。
「はぁ‥‥えーと、菅谷、鈴木、中島、岡井、有原」
ちくしょう、見事に人気順で呼びやがる。
「まぁお察しの通り、5人でユニット組まそうか思って呼んだんやけどな。
ここに来る途中でピコーンと来たんや。 やっぱ5人は多いかなぁ、と。
それで4人に減らすことにした。 で、申し訳ないけど誰か1人抜けてくれんかな。
俺が決めて恨まれるのも嫌やし、自分らで抜ける奴決めたってや。
うん、民主主義、民主主義。 ええ言葉やな。みんな仲良く、円満に頼むで。
じゃ、そういうことで」
つんく♂さんは早口でそれだけ喋って、バタンとドアを閉めて忙しそうにどこかへ
行ってしまった。
- 77 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:55
-
- 78 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:55
-
みんな言葉を失って、お互い顔を見合わせている。
‥‥誰か1人を追い出せ? お前らが決めろ?
そりゃないよ。
逃げやがったな、おっさん。
こんなの円満に決められるわけねえだろ。
「あのさ」
私が呆れてぽかんと口を開けていると、なっきぃが上目遣いでみんなを見回して
気まずそうに話し始めた。
「まぁ‥‥とりあえず決めようよ。 つんく♂さんに逆らうわけにもいかないし」
少し間があって、愛理が不自然な笑顔を作って同調した。
「そ、そうだね、さくさくっと話し合っちゃおう」
梨沙子も言った。
「うんうん、みんすしゅ、み、ミンススギだよね」
言い直したくせに前よりひどくなっている。
栞菜が言った。
「決めるって、どうやって?」
- 79 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:55
-
みんな困って黙り込んだ。
どうせ私たちが何を言ったって、つんく♂さんの言うことには逆らえない。
でも、ライバル心むき出しで仲間を蹴落とそうとするなんて、私たちにはできない。
あーもう、こんなことさせて今後の人間関係に響いたらどうすんだよ。
これだから無責任なおっさんは嫌いだ。 死ね、つん糞。 ‥‥おっと暴言暴言。
なっきぃが口元を歪めて小声で言った。
「要するに‥‥仲間はずれを決めるってことでしょ?」
その瞬間、私はひらめいた。
脳味噌が、13年間の人生で初めてとも言えるほどのフル稼働をし始める。
やっべぇ! すげーいいこと思いついちゃった。
新ユニットは願ってもない大チャンスだ。
たとえ雑魚メン扱いだとしても、選抜メンバーとして売り出されるのだ。
この躍進のチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。
- 80 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:56
-
「じゃあさ、じゃあさっ」
私は自分のアイディアに感動しつつ、愛理の服の裾をくいくいと引っ張った。
「どうしたの、千聖。 そんな目ぇキラキラさせて」
私は得意げに言った。
「ここで真面目に話し合ったりして喧嘩になって、あとでこじれたら嫌じゃん?
この際、もう簡単にプロフィールとかで適当に、っていうか形式的に仲間はずれ
決めちゃおうよ」
みんな一瞬、「何言ってんだコイツ」的な目で私を見たけど、なぜかすぐに納得
したようだった。
「あー‥‥そうだね、人間関係含めて誰が仲間はずれかなんて話し合い始めたら、
雰囲気悪くなりそうだし」
「プロフィールって、誕生日とか出身地とか?」
「どうせ誰か1人抜けなきゃいけないなら、割り切ってそういうもので決めたほうが
確かにいいかもね」
「うん、それなら悔しいけど仕方ないって思えるかも」
思いのほか反論もなく、びっくりするほど簡単に話は進む。
はっはっは、バカ共め。
自分に危機が迫っているとも知らずに、呑気なもんだ。
- 81 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:57
-
誰かに先を越される前に、私は筆記用具を取り出して、そこら辺にあった紙に
次のようなことを書いた。
菅谷 梨沙子 : 神奈川出身、94年生まれ、おひつじ座、A型、Berryz工房
中島 早貴 : 埼玉出身、94年生まれ、みずがめ座、O型、℃-ute
鈴木 愛理 : 千葉出身、94年生まれ、おひつじ座、B型、℃-ute
岡井 千聖 : 埼玉出身、94年生まれ、ふたご座、A型、℃-ute
有原 栞菜 : 神奈川出身、93年生まれ、ふたご座、A型、℃-ute
- 82 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:57
-
プロフィールの項目は、出身地、生まれ年、星座、血液型、所属ユニット。
この項目でなければいけない。
そう、私が仲間はずれにならないためには。
出身地なら、仲間はずれは愛理。
生まれ年なら、栞菜。
星座なら、なっきぃ。
血液型なら、なっきぃか愛理。
所属ユニットなら、梨沙子。
プロフィールの共通点から決めるとしたら、私は絶対に仲間はずれには
ならないのだ。
すでに他の項目で決まってるから『血液型』は要らなかったかもしれないけど、
プロフィールと称する以上、入れたほうがいいかなと思って付け足した。
私は心の中でほくそ笑んだ。
岡井千聖、これで新ユニット入り確定。
しっかりこのチャンスをモノにしよう。
そしてお父さんとお母さんと3人の弟妹たちに、楽をさせてあげるんだ。
今まで稼ぎが少なくてごめんね。
お姉ちゃんは今度こそ人気メンにのし上がるからね。
だてに乳ばっか膨らんでるわけじゃないんだ。
私が本気出せば、愛理や梨沙子を超えることも不可能ではないはず。
- 83 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:58
-
- 84 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:58
-
私が書いた5人のプロフィールを、みんなはじっと見つめていた。
なっきぃ、あいり、かんな、りさこ。
4人の視線が交錯し合い、誰からともなく顔を見合わせる。
何? 何? みんなどうしたの?
私は戸惑った。
そして4人は、なぜか一斉に私の顔を見た。
愛理が言った。
「やっぱさ‥‥ユニットって1人1人の個性が大事だよね」
沈黙が流れた。
次の瞬間、私は自分の作戦が大失敗に終わったことを知る。
なっきぃがにっこり笑って言った。
「被ってる奴が仲間はずれね」
- 85 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:59
-
- 86 名前:仲間はずれ 投稿日:2007/09/29(土) 22:59
-
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 23:00
- 終わりです。
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/30(日) 00:18
- ふーん、こんな人気順なのかぁ知らんかったぁ
ガンバレ!
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/30(日) 04:05
- パズルみたいだ
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/02(火) 01:04
- >>88
現在、おそらく岡井少年とnkskが凌ぎを削っています。
>>89
これが成立する5人を探し出すだけで30分かかりました。
さて、ひっそりこっそり更新です。
- 91 名前:看板 投稿日:2007/10/02(火) 01:05
-
看板
- 92 名前:看板 投稿日:2007/10/02(火) 01:06
-
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
昔の人は、美しい女性のことをそんなふうに形容したという。
嗣永桃子、15歳。
現代に生きる私に、そんな古臭い花は似合わない。
立てばコスモス、座ればタンポポ、歩く姿はチューリップ。
可憐で愛らしい私にぴったりの例えである。
私は帰路を急いでいた。
小指をピンと立て、お尻をぷりぷりと振りながら、人けのない静かな通学路を早足で歩く。
たとえ周囲に誰もいなくても、女の子は常に可愛らしい姿を意識せねばならない。
美を追求するのなら、決して手を抜かないことだ。
- 93 名前:看板 投稿日:2007/10/02(火) 01:07
-
ふと、何かピンク色の物体が視界に入った。
ピンクというのはこの世で1番可愛い色だ。
女の子は、可愛いものに対するレーダーを常に張りめぐらせていなければならない。
立ち止まってそのピンクの正体を探す。
それは、たった今通り過ぎた通学路の脇の空き地にあった。
荒れ果てて草むらと化した空き地の真ん中に、不自然なほど新しいピンク色の看板が
ぽつんと立っている。
あれは何だろう。
何か字が書いてあるのだが、小さくて読めない。
私は好奇心につられてフェンスを乗り越え、その空き地に足を踏み入れた。
あぁ、かゆい。
膝まで伸びた雑草が、剥き出しの足をちくちくと刺激する。
- 94 名前:看板 投稿日:2007/10/02(火) 01:08
-
やはり字は見えない。
私はピンク色の看板に向かって、草むらの中を進む。
ピンクの中央に書かれた黒い小さな字が、だんだんはっきりと見えてきた。
私は目を細めながら、看板に近づいていく。
その看板にはこう書かれていた。
『危険! 近づくな! 周辺に犬のうんこ有り』
近づかなきゃ読めねーよ!!!
‥‥そんな叫びは誰にも届くことはなく、私の足は力強くうんこを踏みしめていた。
- 95 名前:看板 投稿日:2007/10/02(火) 01:08
-
- 96 名前:看板 投稿日:2007/10/02(火) 01:08
-
- 97 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/02(火) 01:09
- 終わりです。
- 98 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/02(火) 07:33
- ワラタ
なんつーオチwww
- 99 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/03(水) 00:11
- やべぇ飼育でこんなに笑ったの初めてだwww
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/03(水) 20:38
- 最後の2行でワロタwwww
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/08(月) 20:22
- >>98-100
レス返しまとめちゃってすみません。
笑ろていただいて光栄です。ありがとう。
ちなみにレスでのネタバレは大歓迎です。
もともとsage進行なので、全く( ^▽^)<問題ナシゴレン
お気遣いなく。
- 102 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:23
-
黒雪姫
- 103 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:24
-
ある所に、サユミというとても可愛い女の子が住んでいました。
吸い込まれそうな漆黒の瞳、艶やかな黒髪、そして雪のように真っ白な肌。
近所の男の子たちはみんなサユミの虜になりました。
しかし、サユミは庶民の男の子では満足できませんでした。
サユミの夢は玉の輿です。
それも、中途半端な金持ちなど眼中にありません。
サユミの最終目標は、この国の王子様を仕留めることなのです。
さて、ある日サユミはこんな噂を小耳に挟みました。
『毒りんごを食べて死ぬと王子様が迎えに来る』
頭の良いサユミは名案を思いつきました。
せっかく王子様が迎えに来ても、自分が死んでしまっては意味がありません。
それなら、王子様が来たところで生き返ってしまえばいいのです。
- 104 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:24
-
サユミは知り合いの魔女の棲み家へ出向きました。
「ミキ様ミキ様、どうかサユミに都合のいい毒りんごを下さい」
「は? タダじゃやらねーぞ」
「分かってます」
もちろん魔女の弱点など事前に調査済みです。
サユミは、ポケットから大きなはさみを取り出しました。
「見返りはこれです、ミキ様」
サユミはそう言って、腰まであった美しい黒髪を、肩の所でばっさりと切りました。
「おぉっ」
サユミがその髪の毛の束を手渡すと、魔女はたいへん喜びました。
「やったぁ! やったぁ! これで新しいカツラが作れるぞー!」
そうです、魔女は薄毛に悩んでいたのです。
- 105 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:25
-
気を良くした魔女は、サユミのために素敵な毒りんごを作ってくれました。
その毒りんごを食べると心臓も呼吸も止まり、仮死状態になります。
傍目からは死んだように見えますが、本人は至って健康、意識もあるのです。
そして、自分の好きなタイミングで毒りんごを吐き出せば都合よく生き返ることができる
という、なかなか便利な代物です。
家に帰ったサユミは、さっそく毒りんごを豪快にひとくちかじりました。
「うっ!?」
サユミは突然苦しみ出し、ぱたりと倒れて動かなくなりました。
- 106 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:25
-
- 107 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:26
-
今日はお葬式。
サユミの家族や友達がすすり泣く声が聞こえます。
一方、サユミは棺の中で退屈さと戦っていました。
(お葬式ってつまんないなぁ。 寝たふりしてるのって意外と疲れるし)
サユミの遺体は白い棺の中で、色とりどりの花に包まれています。
静かに眠っているサユミの顔はこの上なく可憐で、参列者たちはその美しさに思わず
息を呑みました。
(それにしても、こんなに可愛い女の子が死ぬなんて国家レベルの損失だよね。
ま、死んでないけど)
もうすぐお葬式が終わるようです。
周囲のすすり泣きの声がいっそう大きくなりました。
(あーあ、早く王子様が迎えに来ないかなぁ。 このままじゃサユミ火葬されちゃうよ)
- 108 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:26
-
その時です。
静かに、そして厳かに、式場の扉が開けられました。
優雅な身のこなしで入ってきたその人物を見て、人々はざわめきます。
(こ、これはもしかして‥‥)
静まり返った式場に、落ち着いた上品な声が響き渡りました。
「その娘、私が貰い受けよう」
(きたぁぁぁぁぁ!!!)
すべてサユミの狙い通りでした。
美少女が毒りんごを食べて死んだとの噂を聞きつけた王子様が、満を持してサユミを
迎えに来たのです。
サユミは小さくガッツポーズをしました。
この国の王子であるアイ様は、容姿端麗、頭脳明晰、剣の腕も確かで、国民の憧れの
存在です。
(ふふふ、究極の勝ち組とはサユミのことね‥‥)
サユミは棺の中でほくそ笑みました。
- 109 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:27
-
サユミのお母さんがおそるおそる言いました。
「いえ、アイ様、あの‥‥誠に恐縮ではございますが、娘はもう死んでおりますので」
(あぁ! お母さんのバカ! 娘の幸せを握りつぶす気?)
王子様が首を振って言いました。
「いや、こんなに美しい娘さんがこのまま焼かれて骨になるのを、黙って見ているわけには
いかない。 私はサユミが欲しいのだ。 誰が何と言おうと、私は彼女を連れて行く」
(よしっ! グッジョブ王子!)
アイ王子がそこまで言うなら、ということで、サユミの両親はそれを承諾しました。
サユミの棺に蓋がされました。
王子様の家来がサユミの棺を持ち上げます。
サユミは棺の中で、笑い出したくなるのを必死で我慢していました。
(この〜ニヤニヤはっ、 なぜ〜止まーらーない〜♪)
心の中で流行りの歌を歌いながら、サユミは王の城へと運ばれていきます。
真っ暗な棺の中でゆらゆら揺られながら、サユミはいつの間にか眠りに落ちていました。
- 110 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:27
-
- 111 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:28
-
‥‥ガタン、ゴトッ。
(ふごっ!?)
棺が地面に置かれた衝撃で、サユミは目を覚ましました。
(もう! もっと大事に扱いなさいよ! 未来の王妃サユミ様を)
棺の蓋が開けられました。
王子様はサユミの顔を覗き込んで、感嘆の声を上げます。
「おぉ、なんと美しい‥‥」
王子様はサユミの白い頬をそっと撫でました。
(フッ、そろそろね‥‥)
ただ生き返るだけでは面白くありません。
ロマンチックなシチュエーションを演出するために、サユミはタイミングを見計らっています。
(アイ王子が私にキスした瞬間、サユミはゆっくりと目を覚ますのよ)
- 112 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:29
-
頬を撫でていた王子様の手が止まりました。
(よし、来るぞ来るぞ‥‥)
王子様の息遣いがはっきりと聞こえます。
(来たっ!!!)
そして王子様は、サユミに深い口づけをしました。
(あぁ‥‥なんて素晴らしいんでしょう)
サユミにとって初めてのキスでした。
その甘美な柔らかい感触に、サユミはうっとりと浸っています。
(‥‥っと、いけない、いけない。 早く生き返らなくちゃ)
そして王子様の唇が離れた瞬間、
「ぐぼっ」
サユミは毒りんごのかけらを吐き出しました。
「うわっ!!」
王子様が驚いて飛び上がります。
サユミはゆっくりと目をひらきました。
- 113 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:29
-
王子様は愕然とした表情で、わなわなと震えています。
サユミは棺に横たわったまま、わざとらしい演技で言いました。
「あら‥‥サユミどうしてこんな所にいるのかしら」
その時です。
王子様が急にぷいっとそっぽを向いて言いました。
「帰れ。 お前に用はない」
サユミは耳を疑いました。
「‥‥え?」
王子様は明らかに落胆しています。
家来たちも、気まずそうに顔を見合わせています。
「ど、どうして‥‥」
サユミは震える声でそう言うのが精一杯でした。
王子様は不機嫌そうに舌打ちをして、サユミを見下ろします。
「私は生きている女に興味はない」
- 114 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:30
-
サユミは震えながら恐る恐る上半身を起こし、薄暗い部屋の中を見回しました。
「ひぃっ」
奇妙な色の液体に満たされた、たくさんの大きなガラス瓶。
そのガラス瓶の中には無数の美少女たちが、死んだ時のままの姿で保存されていました。
- 115 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:30
-
- 116 名前:黒雪姫 投稿日:2007/10/08(月) 20:30
-
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/08(月) 20:32
- 終わりです。
それでは近日更新予定の3本、登場人物のみ予告。
○藤本・保田
○光井・久住
○後藤・吉澤
- 118 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/08(月) 23:06
- 藤本・保田が非常に気になるところです
- 119 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/08(月) 23:44
- 死体コレクター(((( ;゚Д゚)))
- 120 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/09(火) 00:03
- ちょ…よしごまあるじゃないすか…てっら楽しみ
- 121 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/09(火) 00:33
- よしごま+こはみつにワクテカしつつヤスともっさんの気になる点について
脳内会議を開きながら待ちます
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/09(火) 00:39
- 接点?の藤本・保田は以外で楽しみ!
- 123 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/09(火) 02:18
- これは途中でオチが読めました
- 124 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/17(水) 19:39
- >>118,>>120-122
楽しみにして下さってありがとうございます。
しかし見ての通り、このスレは基本CP的要素がないので、正直言って
ご期待に応えられる自信がありませぬ。
>>119
つまりは変態さんだった、と。
>>123
いやーん
- 125 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:40
-
- 126 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:41
-
私は地面に穴を掘っていた。
こめかみから汗がしたたり落ちる。
人1人がすっぽり収まる大きさの穴は、すでに深さ1m近くまで達していた。
手を休めてため息をつく。
あぁ、無駄な労力を費やしてしまった。
私は穴の傍らに横たわる女の死体を一瞥した。
殺すつもりはなかった。
嘘じゃない。
こいつが家にいたことは、まったくの計算外だったのだ。
- 127 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:42
-
下調べは完璧なはずだった。
この辺りでは名の知れた資産家で、両親と娘1人、息子1人の4人家族。
毎週末、家族揃って母親の実家に里帰りする。
だから私はその週末の留守を狙った。
まさか長女が体調を崩して家に残っているなんて、予想もしていなかった。
運が悪かったのだ。
家族と一緒に出かけていれば、殺されずに済んだのに。
誰もいないと思って悠々と侵入した応接間に、この家の長女はいた。
突然の不審な侵入者に驚いて、彼女は金切り声を上げる。
私は咄嗟にテーブルの上にあったガラスの灰皿を掴み、彼女の後頭部に振り下ろした。
- 128 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:43
-
とりあえず金目のものをかき集める。
ブランド物のバッグをひっくり返すと、財布や手帳と一緒に車のキーがじゃらりと落ちた。
なんだ、車があったのか。 全然気がつかなかった。
応接間のカーテンを少し開けて外を見ると、ガレージに黒のアウディが停められていた。
おそらく、この女の車だ。
まだ20代半ばだろうに、まったくもって贅沢な奴である。
好都合だ。 この車で逃亡してしまえばいい。
好きなだけ金品を奪って、ぴかぴかの高級外車も手に入るなんて、今日は大漁だ。
- 129 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:43
-
ただ問題なのは、この死体。
なるべく事を大きくしないためには、殺人はバレないほうがいい。
初めから捕まることは考えたくないが、もし強盗殺人なんかで逮捕されたら人生終わりだ。
証拠隠滅。
私は血が床につかないように細心の注意を払いながら、死体をずるずると家の外まで
引きずっていった。
広い庭の隅にざくざくと穴を掘り、死体を埋める。
土は柔らかかったが、人が入る大きさになるまでには思いのほか時間がかかった。
灰皿についた血痕は綺麗に拭き取り、不自然にならないように、タバコを何本か吸って
吸殻を入れておいた。
- 130 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:44
-
- 131 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:44
-
しかしこの日の私は、ことごとく油断していた。
失敗は重なるものなのだ。
上機嫌でアウディを走らせていると、十字路から信号無視のトラックがぬっと現れた。
やばい、ぶつかる!
慣れない左ハンドルに一瞬戸惑った。
一瞬の判断の遅れが命取り。
必死でハンドルを切ったが、間に合わなかった。
「あぁぁぁぁ!!!」
私の乗ったアウディはそのままトラックに突っ込み、大破する。
ガソリンに引火し、燃え上がる。
熱い。 体が熱い。
皮膚がどろどろと溶けていくのが分かる。
右腕が変な方向に曲がっている。
太腿の肉が削げ、内部の白い組織が露出している。
苦しい。 息ができない。 ‥‥もうだめだ。
炎で真っ赤に染まる視界の中で、私は意識を失った。
- 132 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:44
-
- 133 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:45
-
気がつくと、病院のベッドの上にいた。
「あ‥‥?」
ベッドの傍らに座っていた若い男が私を見て、目を見開いた。
「うわぁぁぁ! 姉ちゃんが起きたー!」
外の廊下が騒がしくなり、病室のドアが勢いよく開けられる。
血相を変えて飛び込んできたのは、初老の男女だった。
「圭っ!」
は?
駆け寄ってきた女性が私を抱きしめた。
誰だ、この人。
- 134 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:45
-
女性は泣きながら言った。
「圭、圭‥‥目を覚ましてくれたのね」
「‥‥‥?」
「あなた半年間も植物状態だったのよ」
ベッドに取り付けられた名札。
私は女性の腕の中でむりやり首を傾けて、それを覗き込む。
『 保田 圭 』 と書かれていた。
―――違う。
私の名前じゃない。 私の名前は藤本美貴だ。
何が起こっているのか分からない。
私を圭と呼ぶこのおっさんとおばさんは誰だ。
私を姉ちゃんと呼ぶこの男は誰だ。
3人は興奮しているのか、ぺらぺらと饒舌に喋り続ける。
- 135 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:46
-
「このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思ったわ」
「姉ちゃんが交通事故で重体だって連絡が入った時は、ほんとにびっくりしたよ」
「全身大火傷でね」
「顔もぐちゃぐちゃだった」
「私は絶望したよ、圭の美貌が見る影もなく失われてしまって」
「一生お嫁に行けないかと」
体が小刻みに震える。
この家族が、重大な勘違いをしていることだけは分かった。
でもどうすればいいのか分からない。
女性が私の両肩に手を置いた。
「でも安心して、圭」
「‥‥え?」
「あなたが眠っている間、全身整形手術を施したのよ」
初老の男性がにこにこしながら、手鏡を取り出して私に手渡した。
「ほら、顔も体も、すべて元通りだ」
- 136 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:47
-
鏡に映っていたのは、私が殺したはずの女の顔だった。
「ほんと、現代の技術はすごいわねぇ」
「火傷の痕も目立たないし」
3人が笑いながら話しているが、私の耳には入ってこなかった。
「あ‥‥う‥‥‥」
声が出ない。 言葉にならない。
誰だ。 鏡に映っているお前は誰だ。
‥‥私は誰なんだ。
「結構お金かかったのよー」
「姉ちゃんの入院費と整形代のせいで、うち今スッカラカンだよ」
「まぁいいじゃないか。 娘の美貌を取り戻すためなら、金に糸目はつけないよ」
違う! 私はあんたたちの娘なんかじゃない!
これは誰の顔? 私は誰?
私の顔を、藤本美貴の顔を返して!
声にならない叫びが、頭の中でぐるぐるとこだまし続ける。
- 137 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:47
-
もう1度、鏡を見る。
自慢だった小顔も、高い鼻も、涼しい目元も、すべて失われていた。
ごつごつとエラの張った逞しい輪郭。
丸いだんごっ鼻。
鋭く吊り上がる、爬虫類のような離れ目。
これから私は残りの人生を、『保田圭』として生きていくのか。
私は絶望し、目を閉じた。
―――ただ、救いがないわけではない。
胸は少し大きくなっていた。
- 138 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:48
-
- 139 名前:強盗 投稿日:2007/10/17(水) 19:48
-
- 140 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/17(水) 19:49
- 終わりです。
- 141 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/17(水) 21:20
- うわグローなんて思いつつも面白かったです。
(´・ω・`)ミキティ…
- 142 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/17(水) 21:36
- ちょww読んだことがあるようなないような名作がところどころにwwwwワロス
- 143 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/17(水) 22:53
- よかったじゃん藤本さんwwwwww
- 144 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/17(水) 23:14
- グロいけどこれで良かった、…のか?
て言うか埋めた死体は・・・((((;゜Д゜;)))
- 145 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/18(木) 00:18
- そうきたかwwww
- 146 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/18(木) 01:30
- ガンバレ藤本
負けるな藤本
この話しの様にしぶとく甦れ!
- 147 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/19(金) 02:45
- おもしろい
でも失ったものの方が大きすぎる・・・・
いや普通に保田好きだけどね
- 148 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/25(木) 18:18
- レス多くて嬉しいです。感謝感謝!
>>141
ミキティかわいそす
>>142
多少のパクリは見逃して下さい。
>>143
お金持ちになれましたからね!
>>144
ゾンビにでもならない限り、彼女は埋まったままだと思います。
>>145
きました!
>>146
頑張ってほしいです。
>>147
( `.∀´)<失礼ね
- 149 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:19
-
- 150 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:20
-
ハロープロジェクトは倒産の危機に瀕していた。
新ユニットはことごとく失敗し、どんなに宣伝費をかけてもCDは売れず、どんなに布面積を
小さくしても写真集の売り上げは伸び悩んでいる。
度重なるメンバーの不祥事でファンからも見限られ、数十人のメンバーを養っていく力は
もはやハロプロには残っていなかった。
ピコーン!
「今こそリストラや! いらない奴らを捨ててまえばええんや!」
つんく♂先生のナイスアイディアは速やかに採用された。
事務所に不要と判断されたハロプロメンバーは富士の樹海に連れて行かれ、置き去りに
されてしまうのだ。
推されてもなかなか芽が出ないメンバー、すでに枯れてしまったメンバーなどが、その
対象となる。
その斬新な政策は、“姥捨て山”にちなんで“娘。捨て森”と呼ばれた。
語呂が悪い。
- 151 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:21
-
- 152 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:23
-
久住小春(15)と光井愛佳(14)は、深い森の中で、寒さに震えていた。
日も暮れて辺りは薄暗くなり、さらに不気味さを増している。
「寒いっ! なんで小春がこんな寒い思いしなきゃいけないの? 超ムカつく」
「少しは我慢しましょうよ」
「なんでみっつぃーそんなに平気そうなのー?」
「こんなこともあろうかと、厚着してきましたから」
「何それムカつく! そのコートちょうだい」
「えー、嫌ですよぉ。 ‥‥ちょ、ちょっと引っ張らんといて下さい」
光井は古い木の切り株に腰掛けた。
久住はその周囲をうろうろと歩き回っている。
「それにしても暗くなってきたなー。 マネージャーさん遅いね」
「はぁ」
「ここで待ってろって言ってどっか行ったきり、もう30分も戻ってこないし」
「‥‥もしかして先輩、気づいてへんのですか?」
「へ? 何に?」
- 153 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:24
-
光井は呆れた表情で言った。
「私たち、捨てられたんですよ」
「は!?」
久住は目を見開いて一瞬フリーズし、すぐにわめき始めた。
「うそー! うそうそ、絶対うそ! そんなわけないじゃん」
「いえ、残念ながら‥‥」
「だってだって、みっつぃーはともかく、この小春がリストラされるわけないじゃん」
「失礼な」
「だって小春、ハロプロの救世主だよ? 今ハロプロで1番、乗りに乗ってる小春だよ?」
「まぁ調子には乗ってますよね」
「死ね」
「すんません」
「だって絶対おかしいよ! この大人気の美少女小春が捨てられるわけないじゃん、
不人気ブチャイクのみっつぃーはともかく」
「しつこいですよ、さっきから」
- 154 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:25
-
「ありえない! 小春を捨てたりしたら事務所は大損害なのに! なんでなんで?
なんで小春なのー?」
「金かけてるわりに好感度上がらないからじゃないですかね」
「うるさい」
「アンチも多いですし」
「お前に言われたくねーよ」
「歯茎も出てますし」
「アゴは黙ってろ」
すると光井はため息をついて立ち上がり、思いがけないことを言った。
「さて、じゃあ帰りますか」
「へ?」
- 155 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:25
-
久住は目を白黒させて愛佳の顔を見た。
「いきなり何言い出してんの? 意味分かんなーい。 ていうかこんな樹海から簡単に
抜け出せるわけないじゃん、バカじゃないの。 下手に動いて迷子になってさらに深みに
はまっちゃったらどうすんの? やだぁ、小春死にたくなーい!」
意外と現実的である。
まくしたてる久住の言葉を遮るように、光井が言った。
「ヘンゼルとグレーテルの話、知ってます?」
「‥‥もしかして」
「ここに来るまで、気づかれないように白い石を落としながら歩いてきたんです」
久住は光井の指差すほうを見た。
「おおっ」
枯葉の積もった地面の上に、月明かりを反射して白く光る石が、点々と置かれている。
「あれを目印に歩いていけば、この森から出られるはずですよ」
- 156 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:25
-
「やるねぇ、みっつぃー。 あったまいいー」
「それほどでも」
「人間、誰でも1つは取り柄があるもんだねぇ」
「先輩こそ、顔以外に何か取り柄があるんですか」
「なにぃ!? 小春だって頭いいもん! ていうか小春のほうが性格いいしあとスタイルも」
「鶏肉食べると胸大きくなりますよ」
「うるさいうるさいっ」
久住と光井は白い石を目印に樹海の中を進み、無事に抜け出した。
都内の事務所に戻ると、マネージャーが卒倒した。
どうやら幽霊と勘違いしたようだ。
マネージャーは困ってつんく♂に相談した。
つんく♂が言った。
「意外としぶといなぁ。 悪いけどもう1回捨ててきてくれへん?」
- 157 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:26
-
- 158 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:26
-
今度は出発する前にボディチェックをされたので、2人とも白い石を持っていくことは
できなかった。
しかし光井はマネージャーに頼み込んで、菓子パンを1つ持っていくことを許された。
2人は森の奥深くに連れて行かれ、置き去りにされた。
久住は鼻を真っ赤にしてわんわん泣いている。
「うえーん、今度こそ終わりだぁー、小春ここで死んじゃうんだ」
「死にませんから」
「寒いよ暗いよ怖いよお腹すいたよー。 こんな所で死にたくないよぉー」
「ちょっと落ち着いて下さい」
「このまま迷い込んで餓死して熊のエサになって、浮かばれない小春は地縛霊になって
永遠にこの樹海をさまよい続けるんだぁー、うえーん」
そんな久住を呆れた表情で見つめながら、光井は言った。
「先輩、分かったから落ち着いて下さい。 さっさと帰りましょう」
「‥‥へ?」
- 159 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:27
-
光井はポケットから、小さくなった菓子パンを取り出した。
「ここに来る途中、パンくずをちぎって落としながら歩いてきたんです」
久住は一瞬泣き止んだが、またすぐに号泣し始めた。
「わーん、やっぱりみっつぃーは役立たずだよぉ」
「なんでですか」
「だってヘンゼルとグレーテルの話では、目印のパンくずを小鳥に食べられて、結局
帰れなくちゃうんだよ。 もーバカじゃないのみっつぃー」
「まぁ童話ではそうなんですけど」
久住は光井をキッと睨みつけた。
「ていうかさぁ、パン持ってんじゃん。 さっきから小春がお腹すいたって言ってるのに、
なんで分けてくれないの」
「いや、それは」
光井が何か言いかけたが、久住はそれを無視して、光井の菓子パンを奪い取った。
- 160 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:28
-
「はぁ、もう小春お腹ぺこぺこー。 いただきまーす」
「ちょ、先輩、そのパンは‥‥」
「‥‥‥‥うぐっ!?」
光井は「あちゃー」と言って目を閉じた。
久住は大きく目を見開き、喉をかきむしりながら倒れこむ。
「く、くるし‥‥ぐぁぁぁっ、げほっ」
その顔はどんどん青白くなっていき、最後に口から血を吐いて、久住は動かなくなった。
- 161 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:28
-
光井は久住の手首を取り、脈拍を確認する。
「うわ、やっぱ死んでもうた」
光井は悲しそうにため息をつくと、動かなくなった久住に話しかけた。
「先輩、すんません。 このパンは毒入りやったんですよ。 私が落としてきたパンくずを
食べた小鳥は死にます。 つまり、小鳥の死骸を目印に歩いていけば、この森から
抜け出せるはずやったんです」
光井は久住の死体にそっと手を合わせると、森の外へ向かって歩き出した。
- 162 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:29
-
- 163 名前:ミッツィルとコハーテル 投稿日:2007/10/25(木) 18:29
-
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/25(木) 18:29
- 終わりです。
- 165 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/25(木) 20:00
- おおお〜なんかちょっと感心したw
- 166 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/26(金) 00:38
- バカアイカコンビw
オチもそうだけど二人の口調とか距離感とか、うまいなあって素でおもた
321推しの俺が言うのも何だが何故小春も捨てられたんだろw
- 167 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/28(日) 23:58
- 必死な小春とそれをあしらう光井の会話がバカで楽しいですw
- 168 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/29(月) 04:22
- 上手いなぁキャラ的にも話的にも
- 169 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/30(火) 02:47
- やられたw!
オチも読めんかった
- 170 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/30(火) 22:38
- レスありがとうございます。
>>165
計画通り(AA略
>>166
ノリo`ゥ´リ<こっちがききたいわ!
>>167
ノリ#`ゥ´リ<バカじゃないもん
>>168
川=´┴`)<ありがとうございます
>>169
計画ど(AA略
- 171 名前:ご 投稿日:2007/10/30(火) 22:39
-
- 172 名前:っ 投稿日:2007/10/30(火) 22:40
-
ノノハヽ
キコキコ ( ´ Д `)
( O┬O
. ≡ ◎-ヽJ┴◎
- 173 名前:ち 投稿日:2007/10/30(火) 22:41
-
. ノノノノヘヽ
ノノハヽ (‘.▽‘ 川
(0´〜`) ∬ と )
( つつ ̄ ̄旦 ̄ ̄ ̄/ヽ
================、' ※ ノ
/ ※※※ ノノハヽヽ※ヽノ
. 〜―〜'( 川=‘ゝ‘=||つ(|;;;|
ヽ、_)  ̄
- 174 名前:ん 投稿日:2007/10/30(火) 22:42
-
ノハヽ 三 ノハヽ
(´ Д ` 三 ´ Д `)
(つ と)
∪ ∪
ノノハヽ
……> (´ Д ` )
( つと)
∪∪
- 175 名前:は 投稿日:2007/10/30(火) 22:42
-
:旦:. .:▲:
ノノノノヘ ノノハヽ プル ノノ !!!ヽヽ:
川‘.▽‘). :(0´〜`):: .:川=‘ゝ‘=||:: プル
( つ旦と プル 〜( )〜 /( )\
と_)__) .: ノ >: .: < >:
- 176 名前:ろ 投稿日:2007/10/30(火) 22:43
-
ノハヽヽ
( ´ Д `) <yochikoooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!
/ つ つ
. ∪ ∪
- 177 名前:ろ 投稿日:2007/10/30(火) 22:46
-
|\
| \ ドドドドドド
B _∧ ノハヽヽ
▼ (_‘= |(´〜`0) (´´
| Ю ⊂ )_√ヽ (´⌒(´
(  ̄11 ̄∪_)^)ノ ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
@ ̄ ̄ ̄@ ≡≡ (´⌒(´⌒;;
(´⌒;
- 178 名前:ぷ 投稿日:2007/10/30(火) 22:47
-
γ~三ヽ
(三彡0ミ)
(0´〜`)
ドドドドドドド ( ヽ ヽ
/ ̄ ̄>> ̄ ̄\
;;:⌒);;:⌒) | ∪ ・ |∩
;.;:⌒);;.:⌒) ;;:⌒)≡≡ ⊂| J \ノ
;;:⌒);;:⌒);;:⌒)≡≡≡= ;;:⌒)ノ,,ノ ̄;;:⌒)\ゞ;;:⌒)
- 179 名前:ろ 投稿日:2007/10/30(火) 22:47
-
ノハヽヽ
( ´ Д `) <ooooooooooooooooooooooooooooo
/ つ つ
. ∪ ∪
- 180 名前:卒 投稿日:2007/10/30(火) 22:48
-
<ooooooooooooooooooo..... γ三~ヽ
(彡0ミ三)
(゜〜゜0)
( ヽ ヽ
/ ̄ ̄>> ̄ ̄\
キキーーーッ! .| ∪ ・ |∩
⊂ヽ、 J \ノ
≡≡≡ ヽJJ ̄ ̄ヽ)、)
- 181 名前:業 投稿日:2007/10/30(火) 22:48
-
- 182 名前:お 投稿日:2007/10/30(火) 22:49
-
ノノハヽ ノノハヽ ≡≡≡
( ´ Д `) └(^〜^0)ヘ ≡≡≡
( つと) ヽ┌ ) ≡≡≡
∪∪ \ .;・:。;'゚ ≡≡≡
- 183 名前:め 投稿日:2007/10/30(火) 22:50
-
………
ノノハヽ. ノノハヽ
( *´ Д `) (´〜`0)
( つと) (つと )
∪∪ .∪∪
- 184 名前:で 投稿日:2007/10/30(火) 22:50
-
ノノハヽ
( ´ Д `)
/ つノハヽ ♪
キコキコ ( (0^〜^)
し( O┬O
≡ ◎-ヽJ┴◎
- 185 名前:と 投稿日:2007/10/30(火) 22:51
-
- 186 名前:う 投稿日:2007/10/30(火) 22:51
-
- 187 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/30(火) 22:54
- 本当はおめでとうとか言いたくないですけど。
ある程度予想していたとはいえ、思った以上にショックがでかい。
淋しくて悲しくて、2日経った今でも立ち直れません。
引退しないのがせめてもの救いですが、ごっちん帰ってきてよごっちん
よしごま短編は予告通り、近いうちに更新します。
突発AA失礼しました。
「ろ」が多いのは凡ミスです。
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/31(水) 00:07
- 和みましたww
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/31(水) 00:12
- へー。こんなのも書くんですね。びっくりしました。
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/31(水) 00:53
- ・゚・(ノД`)・゚・・゚・(ノД`)・゚・・゚・(ノД`)・゚
なんというか、ありがとうございまつ・゚・(ノД`)・゚・
ダッシュで戻ってくるくせに面と向かったら不器用な二人が愛おしいです
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/26(月) 08:57
- >>188
( *´ Д `)<わーい
>>189
そう言われるとなんだか恥ずかしくなってきました。
>>190
だから私もよしごま好きなんですよねー。
しかし妄想の中でも気まずい2人・・・
- 192 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 08:57
-
扉
- 193 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 08:58
-
「今日はバイトだから遅くなるよ」
「何時頃になる?」
「12時過ぎちゃうかな」
「‥‥もう1回」
「ああ、ごめん。 じゅう、に、じ」
私はごっちんが唇を読みやすいように文字を区切りながら、指で1と2を示す。
ごっちんは少しがっかりした表情で頷くと、早く帰ってきてね、と言った。
罪悪感で胸がちくりと痛んだ。
- 194 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 08:59
-
◆
- 195 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 08:59
-
ごっちんの家に住み始めてから、もう3年半になる。
大学が実家から遠く、でも1人暮らしができるほど家計に余裕があるわけでもない。
そんな私を、ごっちんが好意で自宅に住まわせてくれているのだ。
経済的な負い目は感じている。
ごっちんは私に生活費を請求しない。
せめて家賃くらいは払いたいのに、それすら受け取ってくれない。
「いらないってば。 よっすぃーからお金なんて取れないよ」
いつもそう言って、ふにゃふにゃ笑っている。
ごっちんとは高校時代からの付き合いだ。
両親を早くに亡くしたごっちんは、だだっ広い豪邸にたった1人で住んでいた。
高校を中退した後は進学も就職もせずに、裕福だった両親の遺産を食い潰しながら
家にひきこもっている。
私は、せめて大学を卒業するまではここでお世話になっていようかな、と思う。
もし私がここを出て行ったら、ごっちんは正真正銘の1人ぼっちになってしまうからだ。
- 196 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:00
-
ごっちんの耳が聞こえなくなってきたのは、一緒に暮らして1年が過ぎた頃だった。
「絶対おかしいって。 早く病院行って診てもらおうよ」
「やだ。 病院きらい」
「嫌いとか言ってる場合じゃないでしょ。 行かなきゃ治るもんも治らないよ」
「別に治らなくたって困らないもん」
「なんか変な病気だったらどうすんの」
「どうもしない。 そんなに行きたいなら、よっすぃーが1人で行けばいい」
「もー、めちゃくちゃなこと言うなよ」
そんな調子で、埒が明かなかった。
しかし実際、生活する上で困ることはなかった。
生まれつきの聾唖ではないから、発音やイントネーションが少々おかしいとはいえ、
言葉はしっかり喋れる。
人の言葉も唇を読むことである程度理解できるし、分からないなら筆談すればいい。
結局ごっちんは耳を放置し続け、気づいた時には聴力はほとんど失われていた。
- 197 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:00
-
このことも、私がごっちんの家から出て行きづらい原因の1つだった。
本当はもう1人暮らしができるくらい貯金も貯まっているし、とっくに就職も決まったし、
私自身はいつでも出て行ける状態なのだ。
だけど私がいなくなったら、ごっちんはどうなる?
耳が悪い。 人付き合いもない。
もし病気になっても、看病してくれる人がいない。 しかもごっちんは病院嫌いだ。
もし何かあったらどうしよう。
大袈裟だけど、突然死、孤独死、誰にも気づかれないまま白骨化、もしくはミイラ化、
なんて最悪の事態ばかりが頭をよぎる。
このままじゃ大学卒業どころか、死ぬまでごっちんのそばにいてあげなくてはならない
ような気もしてくる。
ああ、もう嫌だ。 頭が痛い。
私はいつまでごっちんに縛られ続けるんだろう。
- 198 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:00
-
◆
- 199 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:01
-
深夜を過ぎた頃帰宅すると、玄関にごっちんが座り込んでいた。
「わっ、何、どうしたの」
ごっちんは虚ろな瞳でゆっくりと私を見上げた。
「どこ行ってたの、よっすぃー」
「‥‥‥バイトだよ。 今朝言ったじゃん」
「嘘」
ぎくりとした。
私は1歩後ずさりして、ごっちんから目をそらす。
「う、嘘なんか」
「知ってるよ。 彼氏と会ってたんでしょ」
心臓が跳ね上がった。
バレた。 なんで? いつから知ってたの?
くらっと眩暈がして、私は手のひらでこめかみを押さえた。
- 200 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:01
-
「‥‥いつから?」
やっとの思いで喉から声を絞り出した。
ごっちんは唇が読めなかったようで一瞬首を傾げたけど、すぐに理解したようだった。
「2ヶ月くらい前から気づいてた」
「‥‥なんで分かったの」
「だってよっすぃーの」
ごっちんはそこで言葉に詰まった。
なんとなく嫌な予感がして、私は抑えた声で訊ねる。
「何?」
「‥‥‥」
「ごっちん、何? 言ってよ」
「‥‥けーたい、見た」
「はあ?」
- 201 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:01
-
◆
- 202 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:02
-
考えてみれば、前から色々とおかしいことはあった。
聴力を失っていくと同時に、ごっちんは私にひどく執着するようになった。
私の1日のスケジュールを事細かに知りたがり、事前に申告した時間に帰宅しなければ
機嫌を損ねる。
私が外出しようとすると、行かないでと駄々をこねる。
最近は私の人間関係にも口を出すようになった。
でももちろん、彼氏ができたことはごっちんには言えなかった。
ごっちんは夜1人で眠れないと言って、私のベッドに潜り込んでくる。
寝たふりをしていたら、キスされたこともあった。
どう考えてもおかしい。 ただの友達なのに。
気持ち悪い。 女同士なのに。
明らかにごっちんは私のことを、ただの女友達とは見ていなかった。
- 203 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:03
-
私の中で何かが吹っ切れた。
もう無理だ。 これ以上ごっちんと一緒に暮らすことはできない。
ここを出よう。
私は荷物をまとめ始めた。
スーツケースを引っ張り出し、服や靴、化粧品、教科書など、最低限の私物を詰め込む。
「よっすぃー、待ってよ!」
部屋のドアが勢いよく開いて、ごっちんが飛び込んできた。
私は小さく舌打ちをした。
私のいる部屋はもともと物置として使っていたらしく、中からは鍵を掛けられない。
つまりごっちんも自由に出入りできる。
おそらくずっと前から、私のプライベートはだだ漏れだったのだ。
- 204 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:03
-
「ごめん、携帯見たことは謝るから」
ごっちんは私の腕にすがりついて言った。
私は無言で荷造りを続ける。
「ごめんってば。 お願い、出て行くなんて言わないで」
ごっちんは涙目で懇願する。
私はごっちんを無視して、スーツケースの蓋を閉めた。
「よっすぃー、やだ、行かないで。 ずっとあたしのそばにいてよ」
私はごっちんの手を乱暴に振り払って言った。
「うるさいな、しつこいんだよ。 あたしだっていつまでもごっちんに構ってらんないよ」
- 205 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:03
-
ごっちんは驚いたように目を見開いて、私の顔を見つめた。
「ていうか何? ごっちんってあたしのこと好きなの? 恋愛の対象として見てるわけ?
もしそうだとしたら勘弁してくれないかな、そういうの。 なんか気持ち悪いし」
相手をひどく傷つけていると分かっていながら、私の言葉は止まらなかった。
ごっちんの体は小さく震えていた。
私を見つめる大きな瞳から、涙がひとすじ流れ落ちた。
私はごっちんから目をそらし、スーツケースを引きずりながらドアに手をかける。
「じゃあね。 ‥‥長い間ありがとう」
私はそう言って部屋を出た。
ごっちんは何も言わずに、部屋の中で立ち尽くしていた。
- 206 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:04
-
◆
- 207 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:04
-
夜の風が冷たい。
マフラーしてくればよかった。
そう思って何気なく首元を触ったことで、ふと思い出した。
ごっちんとお揃いで買ったネックレス。
あの部屋に忘れてきてしまった。
ひどい言葉を浴びせて出てきてしまったけど、私はごっちんを嫌っているわけではない。
一緒に暮らすのが無理なだけで、今でも大切な友達だと思っている。
少し冷静になった今となっては、喧嘩別れのようになってしまったのが悔やまれる。
私は立ち止まって考えた。
あのネックレスは2人の思い出の品だ。
‥‥せめてあれだけでも取りに戻ろうかな。
- 208 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:05
-
今来た道を引き返し、ごっちんの家に戻った。
玄関のチャイムを鳴らしたけど、ごっちんは出てこなかった。
当たり前だ。 耳が聞こえないんだから。
だめもとでドアノブを回してみる。
がちゃり。
うわ‥‥鍵、閉まってないし。
ごっちんは相変わらず防犯意識が薄い。
私はそっとドアを開け、忍び足で廊下を歩いて、かつての自分の部屋に入った。
ネックレスは鏡台の上に置いてあった。
それを手に取り、ポケットに入れる。
どうせなら、ごっちんに気づかれないうちにさっさと出て行こう。
そう思って部屋を出ようとした時、足音が近づいてくるのが聞こえた。
ごっちんだ。
私は咄嗟に身を屈めて、ベッドの陰に隠れた。
- 209 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:05
-
足音は部屋の前で止まった。
ドアは開け放ったままになっている。
私はごっちんが部屋の中に入ってこないことを願いながら、息を潜めていた。
ごっちんはぐすぐすと鼻をすすっている。
自分がごっちんをあんなに傷つけてしまったんだと思うと、胸が張り裂けそうになった。
ごめんね、ごっちん。 私のことなんか早く忘れたほうがいい。
幸い、ごっちんは私がいることには気づいていないようだった。
部屋には入らず、ただドアの前で泣いているだけだ。
「よっすぃー、ばいばい」
ごっちんは小声でそう言って、ドアを閉めた。
がちゃ。
鍵の掛かる音がした。
- 210 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:05
-
え? ‥‥何?
ごっちんは、中にまだ私がいるということに気づいていない。
きっと、私との思い出に蓋をするつもりで、この部屋の鍵を閉めたのだ。
この部屋は、中から鍵を開けることはできない。
まさか‥‥閉じ込められた?
- 211 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:06
-
私はドアに駆け寄って叫んだ。
「ごっちん! 開けて!」
拳でドアをどんどんと叩く。
「お願い! ごめん! あたしまだ中にいるの! ごっちん!」
外からは何の反応もない。
なんで気づかないの? こんなに大声出してるのに。
私を懲らしめるために、気づかないふりをしてるんだろうか。
もう1度ドアを叩こうとして、私はやっと気づいた。
反応がないのは当たり前だ。
ごっちんは耳が聞こえないんだから。
- 212 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:06
-
すぅっと血の気が引いていく。
もともと物置だったこの部屋に、窓や暖炉はない。
通気孔は狭すぎる。
つまり、出入り口はこのドアだけ。
ごっちんがドアを開けない限り、私はこの部屋から出られないのだ。
私は拳でドアを叩き、叫び続けた。
「ごっちんお願い! 気づいて! ‥‥も、もう出て行くなんて言わないから! ごめん!
一生ここにいるから! お願い、開けて! 開けてーーー!!!」
- 213 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:07
-
◆◆◆
- 214 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:07
-
高校の時にお世話になった先輩が死んだ。
不運な事故だったらしい。
彼女と一緒に住んでいた友人が聾唖者で、助けを呼ぶ声に気づかなかったそうだ。
その友人が1週間後にドアを開けた時、彼女はすでに衰弱死していた。
両手の骨が折れ、爪は剥がれていて、ドアは血まみれになっていたという。
美人でかっこよくて、大好きな先輩だった。
友達の麻琴と一緒にお葬式に行って、私たちは人目も憚らずわんわん泣いた。
- 215 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:08
-
◆
- 216 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:08
-
「こんこん、知ってた? 吉澤さんが同棲してたのって、後藤さんだったらしいよ」
事件から1年が経ったある日、麻琴がそんな情報を持ってきた。
ニュースでは吉澤さんの名前しか出なかったから、そのことは全く知らなかった。
「なんか意外だよねー。 友人とか言いつつ、どうせ一緒に住んでるなんて彼氏に
決まってんじゃん、とか思ってたし」
「そうだねぇ」
第一、 少なくとも私たちの知っている後藤さんは健聴者だったし。
「ルームシェアってやつかなぁ?」
「いや、違うらしいよ。 後藤さんの実家に2人で住んでたみたい」
確かに後藤さんは吉澤さんと仲が良かった。
3年生の時に中退してからは消息不明だったけど。
- 217 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:09
-
後藤さん、か。
久々にその名前を聞いて、私はなんだか懐かしい気持ちになった。
実を言うと私は、彼女に対して恋心のようなものを抱いていた時期があったのだ。
「そういえば後藤さんって、親が亡くなったから学校辞めたって噂あったよね」
「そうだっけ」
「1人が淋しいから吉澤さんと一緒に暮らしてたのかな」
「‥‥‥ねぇ、麻琴」
「ん?」
「後藤さんに会いに行こうよ」
- 218 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:09
-
突拍子もない私の提案に、脳天気な麻琴は2つ返事で乗った。
高校時代、後藤さんも吉澤さんも、同じ部活だった私たちの面倒をよく見てくれていた。
私たちにとっては、特に親しみ深い先輩たちだった。
麻琴自身、後藤さんに会いたくてうずうずしていたのかもしれない。
事件のショックも癒えてきた今、久々に後藤さんに会いたい。
高校時代の思い出話がしたい。
実は私、後藤さんのこと好きだったんですよ、なんて告白しちゃおうかな。
- 219 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:10
-
◆
- 220 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:10
-
「わー、久しぶりだねぇ。 元気だった?」
5年振りに会った後藤さんは、昔より痩せてさらに綺麗になっていた。
言われてみれば、確かに発音が少しおかしいような、呂律が回っていないような感じもした。
「お久しぶりです。 後藤さん、あの、失礼ですけど、耳が聞こえないって伺ったんですけど」
「あー平気平気、会話は普通にできるから」
「そうなんですか」
「うん、はっきり喋ってもらえれば唇の動きで大体分かるし。 どうぞー、上がってー」
後藤さんに促されて、私と麻琴は家の中に入った。
この家の中で吉澤さんが死んだと思うと、鼻の奥が熱くなって、また涙が出そうになる。
でも、この家でずっと暮らしている後藤さんはもっとつらいだろう。
自分のせいで吉澤さんは死んだんだ、と今でも自分を責めているかもしれない。
- 221 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:11
-
「今お茶入れるから待っててね」
後藤さんはそう言ってキッチンへ向かった。
噂に聞いていた通り、後藤さんの家は相当なお金持ちのようだ。
外国の家に来たみたい。
応接間は何もかもがゴージャスだった。
「こんこん、これ見て! 超高そう」
「すごいっ、ソファがふかふかだー」
「暖炉とかシャンデリアとか、一般家庭で初めて見たよ」
「カーペットも高いんだろうなぁ」
後藤さんを待っている間、私と麻琴は物珍しげに、応接間の中を歩き回った。
- 222 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:11
-
ふと、視界の端にきらりと光るものが映った。
なんだかよく分からない豪華な家具の上に、銀色のネックレスが無造作に置かれている。
私は何気なく、そのネックレスを手に取った。
「お待たせー」
後藤さんがコーヒーを持って応接間に入ってきた。
「ちょっと紅茶が切れててね、コーヒーなんだけど、2人とも飲める?」
「あ、大丈夫です」
「私もコーヒー好きなんで大丈夫です」
- 223 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:11
-
後藤さんは私たちの横を通り過ぎて、テーブルの上に、ミルクや砂糖と一緒にコーヒーの
カップを並べ始めた。
私は手に取ったネックレスをまじまじと見つめた。
たいして値の張る物ではなさそうだが、センスの良いデザインだ。
もっとよく見ようと顔を近づけた時、
「あっ」
ネックレスは私の指の間をすり抜けて、カーペットの上に落ちた。
後藤さんが振り向いた。
- 224 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:12
-
「あ‥‥ごめんなさい。 えーと、これ綺麗だなーと思って」
私が慌てて言い訳めいた口調で言うと、後藤さんは微笑んで言った。
「それ、よっすぃーとお揃いなの。 可愛いでしょ」
「え‥‥」
しまった。 地雷を踏んだ。
吉澤さんのことには触れないようにしようと思ってたのに。
「なんかすみません‥‥」
「いいよ、気にしなくて。 よっすぃーのことは、‥‥私が悪いんだけど、いくら自分のこと
責めたって、よっすぃーが生き返るわけじゃないし」
後藤さんはそう言いながら、やっぱり悲しそうな顔をした。
「ごっ、後藤さん、このコーヒーおいしいっすね!」
暗くなりかけた雰囲気を変えるように、麻琴が明るい声を上げる。
「あはは、普通のインスタントだけどね」
後藤さんが笑ったので、私もほっと胸を撫で下ろした。
- 225 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:12
-
◆
- 226 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:13
-
私たちはコーヒーを飲みながら適当に世間話をして、高校時代の思い出話に花を咲かせ、
無難にお開きとなった。
後藤さんが思ったより元気そうだったので、私は安心した。
平穏な日々が戻りつつある。
あの事件のことは早く忘れたほうがいいのだ。
麻琴と分かれた帰り道、私はさっきのネックレスのことを考えていた。
吉澤さんとお揃いだと言った、銀色に光るネックレス。
―――ふと違和感を覚える。
でも、それが何なのかは分からない。
さっきの場面を思い出そうとすると、何かが引っ掛かる。
- 227 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:13
-
私はネックレスを手に取った。
眺める。 綺麗だ。
ネックレスが手から滑り落ちる。
私は思わず声を上げる。
後藤さんが振り向いた。
そこまで考えて、私は立ち止まった。
後藤さんが、後ろを振り向いた‥‥?
- 228 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:14
-
なぜ後ろを見たのか?
後藤さんは耳が聞こえないはずだ。
ネックレスが床に落ちた震動?
いや、あんな軽い物が、しかもカーペットの上に落ちて、震動が伝わるわけがない。
ではなぜ後ろを見たのか。
信じたくない仮説。
―――私の声に反応したから?
今日はたくさん話をした。
やけにテンポの良いスムーズな会話。
いくら唇の動きが読めるとはいえ、あれだけ喋って、後藤さんは1度も私たちの言葉を
聞き返すことはなかった。
家に着いた時、後藤さんは私たちを迎えてくれた。
なぜ玄関まで出てきたのか?
私たちが、玄関のチャイムを鳴らしたからだ‥‥
- 229 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:14
-
動悸が速くなる。
体が震える。
背すじが冷たくなる。
後藤さんは聾なんかじゃない。
れっきとした健聴者だ。
‥‥聞こえないふりをしていただけなんだ。
‥‥‥本当は吉澤さんの声も、ちゃんと聞こえていたんだ‥‥‥
- 230 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:14
-
- 231 名前:扉 投稿日:2007/11/26(月) 09:15
-
- 232 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/26(月) 09:15
- 終わりです。
長い。
- 233 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/26(月) 09:24
- 近日更新予定の3本、とりあえず予告。
○道重
○小川・久住・新垣
○中島
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/26(月) 23:34
- 黒ごまー((((( ;゚Д゚))))
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/27(火) 00:30
- ガクガク((((( ;゚Д゚))))ブルブル
- 236 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/27(火) 00:31
- こういうよしごま大好きです!
・・・もしかして作者さん狼でよしごまAAネタ書いてたりしましたか?
- 237 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/27(火) 04:09
- よしこがかわいそうだな〜
ごっちん怖いYO〜
- 238 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/30(金) 02:26
- >>234
ごま塩ー((((( ;゚Д゚))))
>>235
ヨチヨチ(((( ´ Д `)(´〜`0))))ゴマゴマ
>>236
よしごまAAは書いたことないですが、知る人ぞ知る3ばかスレには出没してます
>>237
許してあげてー
- 239 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/30(金) 02:29
- さて、実は>>233は嘘なんです。
予告訂正。
○鈴木・石川・矢島
○道重
○石川・吉澤
- 240 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:30
-
密室
- 241 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:32
-
そこは完全な密室だった。
部屋の真ん中で、携帯を握りしめた小柄な女性が、頭から血を流して死んでいる。
「う〜ん‥‥」
中学生ながら名探偵として名を馳せる鈴木愛理は、もともと下がり気味の眉毛をさらに
ハの字にして、唸り声を上げながら考え込んでいた。
「‥‥う〜〜〜ん‥‥」
友人の矢島舞美も、愛理の隣で考え込んでいた。
2人の傍らでは、石川警視が必死に何かメモをとっている。
- 242 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:33
-
「被害者は矢口真里、24歳。 何かと恨みを買うことも多く、殺す動機のある人物は
数え切れないほどいる」
石川はため息をついた。
容疑者を絞り込むことは困難である。
ヒントと言えるものといえば、矢口の携帯に残された意味不明の文字列のみ。
『ちさやいわさ』
犯人の名前だろうか。 苗字は岩崎さんだろうか。
これも、殺された拍子に勢いで携帯のボタンをでたらめに押してしまっただけだろう
と石川は考えていた。
- 243 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:34
-
「はぁ‥‥いったい誰がこんなこと‥‥」
石川がそう呟くと、愛理がびっくりした顔で言った。
「へ? 犯人はとっくに分かってますよ。 私が今考えてるのは密室のトリックのことです」
石川は目を見開いた。
「うっそ!? 犯人分かったの!? それを早く言えよ」
「え、だってあまりにも簡単だったから、石川さんも分かってると思ってたんです」
石川は顔がかっと熱くなるのを感じた。
恥ずかしさで赤く染まった頬を悟られないように、顔を背けながら愛理に訊ねる。
「な、なんで分かったのよ」
「もちろん、これです」
そう言って愛理は被害者の携帯電話を指差した。
「メール画面に、『ちさやいわさ』。 こんなの携帯のボタンを見れば分かることです」
石川は慌てて自分の携帯電話を取り出す。
「メール作成画面じゃなくて普通の待受画面で、メールを打つ時みたいに『ちさやいわさ』
って打ってみて下さい」
- 244 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:36
-
石川は愛理の言った通りにボタンを押し、表示された数字を読み上げた。
「44381103‥‥」
「そう、つまり語呂あわせでヨシザワヒトミです」
「‥‥なんでまたこんな分かりにくいことを」
「まぁ、普通にひらがなで打つとしたら18回もボタン押さなきゃいけないですからね。
この数字の語呂あわせなら8回で済みますし。 死ぬ間際で虫の息だった被害者が
楽なほうを選んだんでしょう。 偶然そのときメール画面になっていた、と」
石川警視はあまりの単純さに脱力した。
そういうことか。 ちくしょう、また中学生に出し抜かれてしまった。
私、この仕事向いてないのかな‥‥
‥‥って、いっけない! 私またネガティブになっちゃった。
ポジティブポジティブ。
とりあえず逮捕よ、吉澤ひとみ。
- 245 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:36
-
舞美はさっきから一言も喋らず、不思議そうに部屋の中を見回している。
石川は犯人を伝えるため、仲間の警部に電話をかけている。
愛理は部屋をくまなく調べ始めた。
「ドアは中から鍵が掛けられている。 窓ははめ込み式で、ガラスが割られた形跡もない。
何だろう‥‥隠し扉でもあるのかな」
本棚をずらしたり、暖炉の中を覗いたりしたが、やはりそれらしきものは無かった。
いったい犯人はどうやって部屋から逃げたのだろうか。
それとも、犯人が逃げた後、被害者が自分でドアに鍵を掛けたのだろうか。
そうだとしたら、鍵を掛けた理由は?
犯人をかばうため?
いや、犯人については被害者が携帯にダイイングメッセージを残しているし、かばおうと
したわけではないだろう。
被害者は部屋の真ん中で死んでいるし、床に残っている血の痕から見ても、ドアのほうへ
向かった形跡はない。
- 246 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:37
-
愛理は行き詰まって頭を抱えた。
「じゃあ犯人はどうやってこの密室から抜け出したんだろう‥‥」
石川も諦めたように俯いた。
「だめだ、私にはまったく分からない」
その時、ずっと黙り込んでいた舞美が言った。
「そういえば私たち、どうやってこの部屋に入ったんだっけ?」
- 247 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:37
-
- 248 名前:密室 投稿日:2007/11/30(金) 02:38
-
- 249 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/30(金) 02:42
- 終わりです。
お気づきだとは思いますが、某人気シリーズから
( ´D`)<キャラ設定ぬっちしたのれす。てへてへ。
恨みを買わないようにののたんに言わせてみました。
すみません、大目にみて下さい。ではまた。
- 250 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/30(金) 16:31
- 最後の台詞を矢島さんが言うとおかしいw
バカすぎて、そして似合いすぎて。
- 251 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/30(金) 17:31
- 梨華ちゃんもアレだけど舞美www
3ばかってもしかして…
- 252 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/30(金) 19:59
- もしかしてオチが分かりにくかったでしょうか。
すみません。
ttp://shal-and-do.jugem.jp/?eid=36
こちらでネタバレ解説してますので、よかったらどうぞ。
>>250
矢島さんは愛すべきバカですね。大好きです
>>251
おそらくご察しの通り、やじよしうめスレです。
あのスレって何だかんだで℃-ute全員出てますよね。
- 253 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/01(土) 09:21
- 矢島ちゃんは将来物凄い美人になりそう〜
引き攣った笑顔が気になるけどあがり症なのかな?
- 254 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/04(火) 01:46
- 作者あのスレの人か!
3ばかにはいつもお世話になってます。
おもしろすぎですw
- 255 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/05(土) 11:47
- >>253
リl|*´∀`l|<既に物凄い美人です!!!
>>254
最近はネタ考える暇がなくてROMってばかりなので、1ヶ月くらい書き込んでません・・・
3ばかスレは心のオアシスです。
- 256 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 11:48
-
予告状
- 257 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 11:50
-
ある日、石川梨華の家の郵便受けに1枚の紙切れが入っていた。
【 今夜0時、ハロープロジェクトのメンバーを殺しに行きます 】
「キャーーー!!! 何これえええええええ!!!」
梨華はマンション中に響きわたる金切り声で悲鳴を上げると、その紙切れを持って
同期メンバーの吉澤ひとみの家へと走った。
- 258 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 11:52
-
「うわっ、どうしたの梨華ちゃん。 なんか顔が黒いよ」
「うるさいわね、元からよ。 そうじゃなくて、ちょっとこれ見て、よっすぃ〜」
玄関先に出てきたひとみに、梨華はその紙切れを差し出した。
「何これ。 ‥‥‥ハロメンを、殺す?」
「Yes! 殺人予告よ! 犯人はきっと私たちの美しさに嫉妬したジャニヲタね!」
「ひょー。 怖いねぇ」
「もう! 呑気なこと言ってないでどうにかしてよ」
「なんであたしが」
「困ってるのが私なんだから、助けるのはよっすぃ〜に決まってるでしょ」
「‥‥あれ、裏にも何か書いてあるよ」
ひとみは梨華の言葉を無視して、紙切れを裏返す。
そこにはこう書かれていた。
【 最初のターゲットは、みうな。 やる気 】
- 259 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 11:53
-
梨華はそれを見て震え上がった。
「やだ、どうしよう! みうなが殺されちゃうの?」
ひとみが首を傾げて言った。
「でもみうなって、もうハロプロのメンバーじゃないよね」
「‥‥あ」
「だって去年クビに」
「それ以上言っちゃだめよ」
「それにこの『やる気』って何だろう」
「“殺る”気ってことじゃないの?」
「それにしても文章が不自然だよ。 あと、なぜか『みうな。やる気』の所だけ太い文字で
書かれてるし」
ひとみはしばらく考えて、ぽんっと手を打った。
「分かった。 きっとこれはアナグラムだよ」
- 260 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 11:54
-
ひとみが部屋の奥から筆記用具を持ってきて、紙に何かを書いている。
ていうかアナグラムって何ですか、と梨華は訊こうとしたが、バカにされると嫌なので
黙っていた。
【 M I U N A Y A R U K I 】
「このアルファベットを並べ替えると、‥‥ほら」
【 K U M A I Y U R I N A 】
梨華は驚いて目を白黒させる。
「く、熊井友理奈?」
「そう。 ターゲットはたぶん熊井ちゃんだよ」
- 261 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 11:59
-
◆
- 262 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:00
-
梨華とひとみは相談して、その日の夜、熊井ちゃんをひとみの家にかくまうことにした。
予告された時間は深夜0時。
その時間を無事に過ぎれば、きっと殺人犯は諦めてくれるだろう。
梨華とひとみは熊井ちゃんを挟んで、3人で同じベッドに寝た。
少々狭いが仕方ない。
ちなみに、熊井ちゃんの足はベッドから20cmはみ出していた。
ロリコンのひとみは熊井ちゃんの寝顔を見ていたらムラムラしてきたので、ソフトタッチで
こっそり悪戯した。
- 263 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:01
-
◆
- 264 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:02
-
次の日、またしても梨華の家の郵便受けに予告状が入っていた。
【 邪魔しやがって。 今日はきっちり殺してやるからな。 深夜0時だ 】
「キャーーー!!! よっすぃーーー!!!」
梨華は力の限り叫びながら、またひとみの家に駆け込んだ。
- 265 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:03
-
玄関のドアを開けたひとみは、眠そうに顔をしかめながら言った。
「また来たの?」
「うん」
紙切れの裏を見てみると、今度は次のようなことが書かれている。
【 石黒 彩。 Ark 】
梨華は英単語を指差して訊ねた。
「石黒さんはともかくとして、Arkって何?」
「英語で“ノアの箱舟”って意味だよ」
梨華の顔がひきつった。
「ノア!? この前ののが生んだ子供、“のあ”って名前だったよね!? もしかして次の
ターゲットはののってこと‥‥? いやああああああ!!!」
梨華のキンキン声に耳をふさぎながら、ひとみがなだめる。
「落ち着いて、梨華ちゃん。 多分これもアナグラムだよ」
- 266 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:04
-
【 I S H I G U R O A Y A A R K 】
ひとみは紙にアルファベットを書き、しばらく色々な文字列を書き殴った。
5分ほど粘って、ようやく答えを見つけたようだ。
「たぶんこうじゃないかな」
【 A I R I S H U G O K Y A R A 】
「愛理‥‥しゅごキャラ?」
「うん。 ターゲットは愛理ちゃんに変更か‥‥」
「なんかキッズばっかり狙われるのね」
梨華が心配そうに言った。
ひとみのほうを見ると、なぜか拳を握りしめてプルプルと震えている。
- 267 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:04
-
「‥‥‥ちくしょう」
「え? 何?」
「‥‥なんで‥‥なんで愛理ちゃんがこんな目にあわなきゃいけないんだあああ!
うわーん、死んじゃやだよ愛理ちゃん愛理ちゃん」
「ちょ、ちょっとよっすぃ〜落ち着いて」
突然ひとみが泣き出したので、梨華は困っておろおろした。
梨華は知らなかったのだが、ひとみは最近℃-uteのイベントに行ってから、愛理ヲタに
なっていたのだった。
- 268 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:05
-
◆
- 269 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:05
-
その日の夜、ひとみは愛理ちゃんを自分の家に連れ込んだ。
ちなみに梨華は邪魔なので、色々と理由をつけてなんとか追い出した。
今日は愛理ちゃんと2人きりである。
「私、殺されちゃうんですか? 怖い‥‥」
「ぐへへ、大丈夫だよ、あたしが守ってあげるから」
「ありがとうございます‥‥優しいんですね、吉澤さんって」
「げへへへ、それほどでも」
ひとみは愛理ちゃんと一緒のベッドで寝た。
せっかくなので、おいしく頂いた。
- 270 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:06
-
◆
- 271 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:07
-
次の日、またしても梨華の家の郵便受けに (ry
【 いいかげん邪魔すんじゃねーよ。 今度こそ仕留めてやる 】
「キャーーー!!!」
梨華はとりあえず悲鳴を上げて (ry
- 272 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:08
-
梨華はひとみの家のインターホンを鳴らしたが、今日はなかなか出てこない。
ぴんぽーん。 ‥‥ぴんぽんぴんぽんぴぽぴぽぴぽ
鳴らし続けていると、うんざりした表情のひとみがドアを開けた。
「またかよ‥‥」
「よっすぃ〜遅い! 一刻を争うんだからさっさと出てきなさいよ」
梨華がプンスカ怒っていると、ひとみの後ろから愛理ちゃんがひょっこり顔を出した。
「あ、すみません。 じゃあ私はこれで失礼します」
愛理ちゃんはそう言って、梨華の横をすり抜け、そそくさと帰っていった。
梨華はぽかんとしてその後ろ姿を見送っていた。
「で、今度は誰の名前が書いてあるの?」
ひとみがあくびをしながら言った。
梨華は気を取り直して、真剣な顔で答える。
「今日は全然知らない人よ。 これ、犯人の名前かしら?」
紙切れの裏にはこう書かれていた。
【 佐野 美奈子 】
- 273 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:09
-
ひとみはため息をついて言った。
「よくもまぁ懲りないもんだね。 またアナグラムだよ」
【 S A N O M I N A K O 】
ひとみは面倒くさそうに紙とペンを取り出し、アルファベットを書いた。
「で、これを並べ替えると、こうだ」
【 M A N K O N I S A O 】
「ま、まん‥‥こに竿? ‥‥キャー! よっすぃ〜のエッチ!」
梨華は頬を赤らめて、手で顔を覆った。
「最近、男関係で派手にやっちゃったのは、ののと飯田さんとミキティ。 まぁデキ婚の
2人は産休中だし、ターゲットはきっとミキティだよ」
- 274 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:11
-
「どうしよう、美貴ちゃんを助けなきゃ。 じゃあ今日もよっすぃ〜の家に」
「えー、やだよ。 めんどくさい」
ひとみは、せっかく愛理ちゃんとお楽しみ中だったところを梨華に叩き起こされたので、
少々機嫌が悪いのである。
思いがけないひとみの言葉に、梨華が目を剥いた。
「なっ‥‥なんでそんなこと言うのよ! 本当に美貴ちゃんが殺されたらどうするの!?」
「ミキティは強いから平気だよ」
「何言ってるの! 相手は殺人犯なのよ!」
「絶対ミキティのほうが怖いし」
「ちょっとよっすぃ〜薄情すぎるんじゃない!? ‥‥そりゃあ私だって、美貴ちゃんのこと
あんまり良く思ってない時期もあったわよ! でも同じハローの仲間でしょ!? ガッタス
の絆はどうしたのよ! 仲間がピンチの時には助けてあげないと」
「きっと庄司が助けてくれるよ」
「‥‥そ、それは言わない約束でしょ」
- 275 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:35
-
仕方ないので、梨華は自分の家に美貴をかくまうことに決めた。
電話をかける。
「美貴ちゃん、今夜うちに来ない?」
『なんで?』
「今日美貴ちゃん殺されるんだって」
『はあ? 何言ってんの?』
「あの、えっと、殺人予告が」
『つーか今夜デートだから無理』
「また岩盤浴?」
『うるさいな。 じゃあね』
電話は切れた。
- 276 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:35
-
◆
- 277 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:36
-
深夜0時。
予告通り、1人のハロプロメンバーが殺された。
【 S A N O M I N A K O 】
A N
O
S K O
A M
N I
【 K O N N O A S A M I 】
- 278 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:36
-
- 279 名前:予告状 投稿日:2008/01/05(土) 12:37
-
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/05(土) 12:41
- 終わりです。
コピペし始めてから気づいたんですけど、>>239とか完全無視でしたね。
失敗失敗。
遅ればせながら明けましておめでとうございます。
2007年は厄年でした。
今年は何も無いといいですね。
- 281 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/05(土) 14:39
- すげー
- 282 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/05(土) 15:18
- 273レス目、ちょっとちょっとでしたが笑いを堪えられませんでした
面白かったですよ
- 283 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/06(日) 00:36
- 梨華ちゃんはウザさ全開だなw
- 284 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/06(日) 06:07
- 吉澤さん自重ww
梨華ちゃんも自重www
小ネタが効いてるなあ
- 285 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/12(土) 23:39
- >>281
(〜^◇^)<すごーい
>>282
ありがとうございます。 下品ですみません。
>>283
( ^▽^)<ま、そこが可愛いんだけどね
>>284
ありがとうございます。 私も自重します。
- 286 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:42
-
鏡
- 287 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:43
-
私は鏡が好きだ。
鏡の中にはいつでも可愛い女の子がいるから。
落ち込んだり悲しくなった時も、鏡を見ればすぐ幸せになれる。
私は自分の顔が大好きだ。
大きな姿見の鏡に全身を映し、私は微笑んだ。
「ふふっ、今日も可愛い」
鏡の中の女の子は、いつも私の口の動きを真似するだけだ。
声が出せないなんて可哀相。
こっち側にいる私はこんなに可愛い声なのに。
- 288 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:44
-
鏡に映る自分の顔を見つめた。
鏡の中ってどんな世界なんだろう。
やっぱり窮屈なのかな?
それとも、こっちと全く同じ世界が広がっていて、私と同じ生活をしてるのかな?
その時、鏡がぐにゃりと歪んだ。
私の顔の真ん中あたりを中心に、まるで渦を巻く水面のように、ぐるぐると歪んでいく。
ふっと気が遠くなって、私は意識を失った。
- 289 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:44
-
- 290 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:45
-
気がつくと、私は鏡の前に倒れていた。
起き上がって、周りを見回す。
部屋全体に違和感を覚えたけど、それが何なのか分からない。
そういえば学校に行く支度をしているところだった、と思い出す。
紺色のブレザーをハンガーから取り、腕を通した。
ボタンを掛けようとしたら、何とも言えないもどかしさを感じた。
それだけじゃない。
部屋のドアを開ける時、水道の蛇口をひねる時。
何かがおかしい。
やっぱり消えない違和感。
私は考え込んだ。
ブレザーのボタン、ドアノブ、蛇口。
指先の自由が利かなくなっているということだろうか?
何かの病気の前兆かもしれない。
どうしよう。 私まだ若いのに。
- 291 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:45
-
ダイニングキッチンで、父が朝ご飯を食べていた。
テーブルの上には新聞を広げている。
おはよう、と寝ぼけ眼で挨拶すると、父も微笑んで挨拶を返してくれた。
「あれ‥‥」
「ん? どうした、さゆみ」
父の手元から目が離せなくなった。
右手に茶碗、左手に箸。
お父さんって、左利きだったっけ‥‥?
何気なく、テーブルの上の新聞に目をやる。
私は息を呑んだ。
読めない。 新聞の見出しが読めない。
―――そう、文字が全て反転していたのだ。
- 292 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:46
-
私は悟った。
ここは鏡の中の世界だ。
制服もドアノブも蛇口も、部屋も新聞もお父さんも、私以外の全てが反転している。
私は、鏡の中の私と入れ替わってしまったのだ。
階段を駆け上がり、自分の部屋に飛び込んだ。
大きな姿見の前に立つと、いつもと変わらない、鏡の中の私がそこにいた。
「ちょっと! あんた誰なのよ! さゆみを元の世界に戻してよ!」
叫びながら、鏡を掴んで揺さぶる。
鏡の中の私は何も答えず、にやりと笑っただけだった。
- 293 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:46
-
どうしよう。 どうすれば元に戻れる?
どこから抜け出せるの?
‥‥‥そうだ、この鏡を壊せばいい。
私は部屋を出て階段を降り、リビングへ向かった。
「さゆみ、そんな怖い顔してどうしたの?」
キッチンから、反転した母が私に声をかけた。
「別にー」
リビングに入り、テーブルの上にあったガラス製の灰皿を手に取る。
私は、近くにいる反転した父に声をかけた。
「お父さん、ちょっとこれ借りるね」
- 294 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:47
-
自分の部屋に戻り、忌まわしい鏡の前に立つ。
鏡の中の自分も同じ灰皿を手にして、鋭い目つきで私を睨んでいる。
「さゆみ絶対そっちの世界に戻ってやるんだから。 所詮、あんたはニセモノなんだよ」
私はそう言って、右手に持ったガラスの灰皿を振り上げた。
鏡の中の私も、左手の灰皿を振り上げた。
「本物はこっちのさゆみなの! ニセモノはニセモノの世界に帰れ!」
ガシャーン!
- 295 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:48
-
それは簡単に割れた。
大きな姿見の右上から全体にひびが走り、いくつかの破片が下に散らばっている。
ひび割れた鏡の中の私は、額から真っ赤な血を流していた。
「え‥‥なに‥‥?」
急に右のこめかみがズキズキと痛み出す。
右の手のひらでそこを押さえる。
鏡の中の私も顔を歪めて、左の手のひらで額を押さえる。
そこから離した右手を見て、私はぎょっとした。
手のひらがべっとりと赤い。
灰皿で殴られた私の額はぱっくりと割れ、そこから真っ赤な血が噴き出していた。
- 296 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:48
-
- 297 名前:鏡 投稿日:2008/01/12(土) 23:48
-
- 298 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/12(土) 23:56
- 終わりです。
ちなみにもう予告はしません。
ネタはあるけど、まだストックがないので。
ある程度書き溜めたらまた予告します。
>>284
今さらメール欄気づきました。
(0´〜`)<どんまい
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/13(日) 12:25
- しゃゆううううううううううう
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/15(火) 19:51
- なんて不条理な
- 301 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/05(火) 16:45
- >>299
从;;;;) 。.<)<いたいのー
>>300
从;;;;) 。.・)<納得できないの
- 302 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:46
-
14歳の憂鬱
- 303 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:47
-
私は珍しく机に向かっていた。
間近に迫った学年末テストに向けて勉強しているのだ。
「あー、もう分かんないっ」
私はそう呟いて、机の上に鉛筆を放り投げた。
椅子の背もたれに背中を預けて、大きく伸びをする。
数学は嫌いだ。
1次関数、連立方程式、確率やら証明やら、一体、将来何の役に立つというのだろう。
足し算と引き算、掛け算と割り算さえできれば生きていけるんじゃないか。
中2の単元ですらこんなにややこしいのに、これから先、高校生になったらどれだけ
難解な内容を勉強しなければならないんだろう。
ああ、嫌だ嫌だ。 数学はせめて義務教育で終わりにしてほしい。
- 304 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:47
-
「早貴、勉強してるの?」
部屋の外から母の声が聞こえて、私は慌てて体を起こした。
「してるー」
少し声を張って返事をする。
母はドア越しに続けた。
「お母さん今からちょっと買い物行ってくるんだけど、早貴、何か欲しい物ある?」
私は少し考えた。
特に食べたいお菓子もないし、消耗品のヘアゴムやヘアピンも今のところ足りている。
通学用の白のハイソックスは、この前3足ほど買ってもらったばかりだ。
‥‥ああ、そういえばシャープペンシルの芯が切れていた。
それで今、久々に鉛筆を使ってるんだっけ。
シャーペンの便利さに慣れてしまってからは、鉛筆を使う機会はほとんどなくなったが、
鉛筆で書いた字のほうが柔らかくて優しい感じがして、私は好きだ。
- 305 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:48
-
「‥‥じゃあシャーペンの芯買ってきて」
「分かった。 HBでいいのよね?」
「うん」
母の足音が遠ざかっていくのを聞きながら、私は少しほっとしていた。
少し前までは、母の買い物にも一緒について行っていたのに。
最近、親と何を話せばいいのか分からない。
共通の趣味があるわけでもないし、学校での出来事をいちいち報告する気にもなれない。
最後にお母さんと手を繋いだのはいつだっけ。
最後にお父さんに肩車してもらったのはいつだっけ。
最近はろくに会話もしていない。
同じ食卓についているだけで、なんだか緊張してしまう。
これが思春期ってやつなのか。
お姉ちゃんや妹とは普通に話せるのにな。
ノートに三角形の合同条件を書き写しながら、私は小さくため息をついた。
- 306 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:48
-
- 307 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:48
-
日は沈み、窓の外はすでに真っ暗闇になっていた。
手が痛い。 腱鞘炎になりそうだ。
私は眼鏡を外し、鉛筆を置いて、手首をぶらぶらと回した。
時計を見ると7時過ぎだった。
さっき母と言葉を交わしてから2時間以上が経っている。
もうすぐ夕食の時間なのだろう、おいしそうな匂いが漂ってくる。
今夜はきっとハンバーグだ。
お腹がぐうと鳴った。
今日は父もいつもより早く帰ってきているので、久しぶりに家族5人揃っての夕食になる。
- 308 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:49
-
正直言って、夕食の時間は憂鬱だ。
家族との会話に困るから。
もちろん姉や妹とは普通に話せるのだが、両親の前で、姉妹にだけ話しかけて勝手に
盛り上がるのも気まずいし、私はいつも黙って食事をしている。
両親が気を遣って話しかけてきても、私は一言二言返すだけで、会話は結局続かない。
話したくないわけではないのだ。
ただ、距離の取り方が分からないだけで。
ドアががちゃりと開いて、隙間から姉が顔を出した。
「早貴、ごはんだって」
「あー、今行くー」
私は椅子から立ち上がり、姉を追って部屋を出る。
階段を降りながら、今日もあの気まずい空間をどうやってやり過ごそうか、そればかり
考えていた。
- 309 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:49
-
「早貴、14歳おめでとう!」
ダイニングキッチンのドアを開けた私を迎えたのは、両親と姉妹の暖かい笑顔だった。
思いがけない歓迎に驚いて、私はまばたきをしながら食卓を見る。
「うわぁ‥‥」
テーブルの真ん中には、大きな丸いケーキが置かれていた。
そうだ、誕生日だったんだ。 そんなこと、すっかり忘れていた。
だから今日お父さんは早く帰ってきてくれたんだ。
つん、と鼻の奥が熱くなる。
家族みんなが私の誕生日を祝ってくれていることが嬉しくて、不覚にも涙が出そうになった。
さっきまで私は、家族での食事を疎ましいとさえ思っていたのに。
- 310 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:50
-
母が微笑んで、私に小さな紙包みを差し出した。
「はい、これ。 誕生日プレゼントよ」
私は戸惑いながらそれを受け取った。
「あ‥‥ありがと‥‥」
嬉しさで胸がいっぱいになって、お礼の言葉にも詰まってしまった。
はやる気持ちを抑えながら、震える手でそっと包みを開けてみる。
真新しいシャーペンの芯のケースが1個、ぽとりと転がり落ちてきた。
- 311 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:50
-
- 312 名前:14歳の憂鬱 投稿日:2008/02/05(火) 16:50
-
- 313 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/05(火) 16:51
- 終わりです。
ぬけさくちゃん誕生日おめでとう。
- 314 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/05(火) 18:56
- 安いwwwww
なっきぃカワイソス(´・ω・`)
- 315 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/06(水) 01:06
- 作者さんがほのぼの話しを!?っと思ったらw
- 316 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/19(火) 01:06
- 泣く準備をしながら読んでいたのに
読み終わってみれば別の意味で泣けてしまいました
- 317 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/09(水) 21:38
- >>314
なかさきちゃんは可哀相なキャラが似合いますよね
>>315
ほのぼのも書くもん
>>316
ノソ;^ o゚)<…・・・
- 318 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:38
-
弁護士
- 319 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:39
-
艶やかな髪をなびかせて、少女がゆっくりと倒れた。
その左胸から、じわじわと赤い染みが広がっていく。
私は彼女の右胸にもう1発、銃弾を撃ち込んだ。
低く呻き声を上げ、体をぴくぴくと痙攣させて、彼女は息絶えた。
少女の服を脱がせて、そっとブラジャーを外す。
大きな乳房がくにゃりとこぼれ落ちた。
―――これで5人目。
憎むべき女が、また1人消えたのだ。
私は、血まみれのブラジャーに頬ずりをした。
コレクションがまた増える。 私が女たちを殺した証。
- 320 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:39
-
私が巨乳の女を憎むようになったのは、中学3年生の頃からだ。
その頃、私は自分の胸が人に比べて小さいなどと思ったことはなかった。
確かに申し訳程度の膨らみしかなかったが、中学生ならみんなそれくらいだと思って
いたし、何より、自分のスタイルに自信があったのだ。
私はいつも、この細身の体型を人に羨ましがられていたから。
しかし、忘れもしない修学旅行の1日目の夜。
入浴の時間だった。
クラスで1番乳のでかい女が、バカにしたような口調で言った。
「れいなってホントにぺったんこなんだねぇ」
一瞬、何のことを言われたのか分からなかった。
私が怪訝な顔をすると、彼女は笑いをこらえながら言った。
「いくら細いっつっても、それさすがにやばいよー。 ブラいらないんじゃない?」
- 321 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:39
-
ぷっ、と誰かが噴き出したのが聞こえた。
それを合図にしたように、他の女子も便乗してくる。
「ねー、それ何カップなの? ブラのサイズあるの?」
「あはは、でもちっちゃくて可愛いー」
「第2次性徴まだ来てないんじゃない?」
「ほんと、可哀相なくらい無いね」
「早く彼氏つくって揉んでもらいなよー」
冗談半分で私の胸を揶揄する彼女たちは、心底楽しそうだった。
私はひどくプライドを傷つけられ、悔しさに唇を噛みしめた。
悔しい。 忌々しい。 胸のでかい女が憎い。
巨乳の女を、この世から1人残らず消してやる。
- 322 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:40
-
- 323 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:40
-
「おい、そろそろ白状しろ」
不精ひげを生やした中年の刑事が、面倒くさそうに言った。
「もう証拠は上がってるんだから、早いうちに吐いたほうが楽だぞ」
「その手には乗らん」
私は刑事を睨み付けて言い返した。
「知っとうもん、容疑者には黙秘権があるっちゃろ。 れいなは何も言わん」
刑事はため息をついて、湯呑みにお茶を淹れなおした。
私は思いのほか簡単に逮捕されてしまった。
5人までは順調だったのに。
6人目に殺した女のパーカーを脱がせるとき、ジッパーが下げにくくて、ついつい手袋を
外して触ってしまったのだ。
被害者の衣服に指紋が付いていたとなれば、言い逃れは難しいだろう。
しかし、まだ望みはある。
凶器の拳銃が見つかっていないのだ。
- 324 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:40
-
「‥‥田中れいな、18歳。 連続無差別殺人事件の容疑者として逮捕、拘留中。
被害者は6人。 全員、右胸と左胸に1発ずつ、合計2発の銃弾を撃ち込まれて、
下着を取り去られている。 被害者の共通点はおそらく‥‥胸が豊満なこと」
ひげ面の刑事は、眉をしかめながら資料を読み上げた。
「胸のでかい奴が憎かったのか?」
「‥‥‥」
「何の罪もない女の子を殺したことを、悪いとは思わないのか?」
「‥‥‥」
私は何も言う気はない。
物的証拠、状況証拠、自白のうち2つが満たされていなければ、起訴は難しい。
証拠といえるものは金属製のジッパーに付着した指紋くらいだし、ラッキーなことに、
まだ凶器も見つかっていない。
しかも、推測され得る動機なんて 「巨乳が憎い」 などという馬鹿馬鹿しいものだ。
(まぁ、私は実際そのくだらない動機で殺人を犯したわけだけど)
私が自白しない限り、有罪になる可能性は低いだろう。
- 325 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:41
-
しかし、もし凶器が見つかってしまったら。
これから警察の捜査によって物的証拠は増えていくだろう。
起訴され、有罪を言い渡されたとしたら。
6人もの人間を殺して、ただじゃ済まないだろう。
未成年ということを考慮しても、終身刑くらいにはなるかもしれない。
法律のことはよく分からないけど。
嫌だ。 こんな所に何年も閉じ込められたくない。
私は外の世界で平和に暮らしたい。
- 326 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:41
-
- 327 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:41
-
「こんにちは、安倍なつみと申します」
私は弁護士を雇った。
取り調べの段階で弁護士と繋がることで、なるべく不利な証言を取られないよう、知識
を得るのだ。
「あ‥‥どうも、田中です。 よろしく」
短く挨拶を済ませて、私は現れた女をまじまじと見つめた。
彼女は凄腕の弁護士だ。
依頼された仕事のほとんどで、有利な判決を勝ち取っているという。
「うふっ、可愛いね、れいなちゃん。 なっちのことは、なっちって呼んでね」
「はあ‥‥」
有能な女弁護士というイメージにそぐわず、彼女は童顔でフレンドリーで、なんだか
ちょっと変な人だった。
- 328 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:42
-
私はごくんと唾を飲み込んで、安倍さんに頭を下げた。
「お願いします、どうにかしてれいなを無罪にして下さい!」
「いや、そんなこと言われてもねぇ」
「お金ならいくらでも払うけん」
「いくらなっちでも、絶対ってのは保証できないからなぁ」
「分かっとう、でも‥‥」
安倍さんは微笑むと、少し声のトーンを落とした。
「‥‥で、ぶっちゃけどうなの?」
「へっ?」
私の声が裏返ったのを聞いて、安倍さんはくすくす笑った。
「だから、やったの? 本当のところ」
「‥‥‥」
「れいなちゃんが殺したのかってこと」
私はきょろきょろと周りを見回すと、安倍さんの耳に顔を近づけて言った。
「‥‥‥やった」
- 329 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:42
-
安倍さんがにっこりと笑った。
「ターゲットを選ぶ基準は?」
「どうやって殺害現場に呼び出したの?」
「殺し方は?」
「ちなみに動機も一応聞かせて」
「凶器はどこに隠したの?」
安倍さんは私からそれだけ聞き出すと、満足したようにうんうん頷いた。
「大丈夫、なっちを信じて。 絶対れいなちゃんを無罪にしてあげる」
- 330 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:42
-
- 331 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:42
-
留置所の冷たい床の上で、私は膝を抱えている。
あれから数日が経った。
安倍さんはあれ以来、ここには来ていない。
彼女は本当に私を弁護する気があるのだろうか。
裁判になったら、私は本当に逃げ切れるだろうか。
誰かが近づいてくる音がして、私は体を固くした。
鉄格子の外に見えたのは、あのひげ面の刑事。
がちゃり、と留置所の鍵が開いた。
刑事は私と目を合わせずに、苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「田中れいな。 釈放だ」
- 332 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:43
-
「‥‥え‥‥えぇ!?」
驚いて思わず立ち上がる。
「な、なんで? だってれいな、まだ何も‥‥」
刑事は苦々しげに舌打ちをした。
「まったく同じ手口の殺人事件が起きた。 凶器はおそらく同じ種類の拳銃、弾丸は
左右の胸に1発ずつ。 被害者は胸の大きな女性で、下着を取り去られていた」
「‥‥‥」
「世間に公表しているのは、今までの被害者が胸を2発撃たれていたということまで。
下着のこととか、被害者の特徴‥‥巨乳ってのは、犯人以外知らないことだ」
「‥‥‥」
「拘留中のお前が、事件を起こせるはずもない」
- 333 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:43
-
私は呆然とその話を聞いていた。
中年の刑事は、無理に笑顔を作って言った。
「ほら、出ろ。 悪かったな、今まで」
刑事に引っ張られて留置所の外に出る。
じわじわと喜びがこみ上げてくる。
刑事が私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「何だよ、もっと嬉しそうな顔しろよ」
「えへ‥‥えへへへ」
久々に吸う外の空気。
そう、私は自由だ。
起訴なんかされる間もなく、無罪を勝ち取ったんだ。
私は刑事に聞こえないように、小声でそっと呟いた。
「‥‥なっち、ありがとう」
- 334 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:43
-
- 335 名前:弁護士 投稿日:2008/04/09(水) 21:43
-
- 336 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/09(水) 21:44
- 終わりです ( ● ´ ー ` ● )
- 337 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/10(木) 00:16
- 楽しく読ませていただきました。
れいなの台詞も可愛かったです。
- 338 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/10(木) 00:17
- 更新乙です
今回も黒いですねぇ〜
ド悪人なのに憎めんw
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/12(土) 06:41
- >>337
ありがとうございます。 でも博多弁はよく分かってません。
>>338
なっちの暗黒力はすごい!
- 340 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:41
-
3つの願い
- 341 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:42
-
ある所に、2人の美しい女の子が住んでいました。
名前はちゃーみーとよっすぃ〜。
ちゃーみーは大地主の1人娘でしたが、よっすぃ〜は貧乏な大家族の長女です。
小麦色の艶やかな肌、黒い瞳と黒い髪を持ち、男を惑わすグラマラスボディのちゃーみー
と、雪見大福のような白い肌、茶色い瞳と茶色い髪、少年のようなスレンダーボディの
よっすぃ〜。
どこを取っても対照的ですが、2人はとても仲良しでした。
しかし、2人は自分の境遇に不満を持っていました。
「あーあ、もうお金持ちなんて嫌だなぁ」
「どうして?」
「だってお父さんは仕事と言いつつキャバクラばっかりでほとんど家に帰ってこないし、
お母さんは家出しちゃったし。 毎日1人ぼっちで淋しいんだもん」
「静かでいいじゃん。 お手伝いさんはいるんでしょ?」
「いるけど仲良くないし退屈だよ。 いくらお金があっても、私ぜんっぜん幸せじゃない」
- 342 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:42
-
ちゃーみーがそう言って大きなため息をつくと、よっすぃ〜が反論に出ます。
「え〜、ちゃーみーは贅沢だよ。 貧乏子沢山なんてめんどくさいだけだもん」
「そうかなぁ」
「弟や妹はうるさいし、綺麗な格好もできないし、家事ばっかで自分の好きなことする
暇ないし。 あーあ、もう貧乏なんて嫌だなぁ」
ちゃーみーは、たくさんの家族に囲まれて賑やかな毎日を過ごしているよっすぃ〜の
ことをうらやましく思いました。
よっすぃ〜は、綺麗な服を着て何でも自分の好きなことができて、優雅に暮らしている
ちゃーみーのことをうらやましく思いました。
「あーあ、2人が入れ替わっちゃえばいいのになぁ‥‥」
- 343 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:42
-
- 344 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:42
-
ある日、よっすぃ〜は道端で汚いライターを拾いました。
「おっ、まだガス残ってるじゃん! うしししし、儲け儲け」
もちろんよっすぃ〜が煙草を吸うわけではありません。
お父さんのライター代が浮いたと思って、よっすぃ〜は喜びました。
ちょうどそこへちゃーみーが通りかかりました。
「どうしたの、よっすぃ〜」
「あっ、ちゃーみー。 見て、これ拾ったんだ」
よっすぃ〜はそう言って、嬉しそうにライターの火をつけました。
その時です。
カチッと小さく火花が散ったかと思うと、ライターの火はボゥッと勢いよく燃え上がり、
突然、炎の中から女の子が現れたのです。
「ぎゃーーー!!!」
- 345 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:43
-
ちゃーみーとよっすぃ〜は驚いて腰を抜かしてしまいました。
炎の中から出てきた女の子は、鼻をほじりながら2人を見ています。
「‥‥何や、女か。 はー、がっかりやな」
「あわ、あわわわ‥‥」
2人は声にならない叫びを上げて恐怖に震えています。
女の子は鼻くそを指で丸めてぴんとはじくと、面倒くさそうに言いました。
「うちはライターの精、あいぼんや。 自分らの願い、何でも叶えたるで」
「‥‥へ?」
ちゃーみーとよっすぃ〜は目をぱちくりさせました。
「ただし願い事は3つまでやけどな」
2人は顔を見合わせて、もう1度あいぼんのほうを見ました。
「どうした、何もないんか」
「はぁ‥‥えっと」
- 346 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:43
-
ライターの精? 3つの願い?
ちゃーみーとよっすぃ〜は、おとぎ話のような突然の出来事に困惑していました。
いざ願い事を言うとなると、咄嗟に言葉が出てきません。
「信じてへんのやったら、それでもええで。 うち帰るし」
そう言ってあいぼんがライターの中に戻ろうとするので、よっすぃ〜は慌てて言いました。
「あっ、待って!」
「‥‥‥」
一瞬、間があって、あいぼんは言いました。
「はい、待ったで。 これで願い事1つ終了な」
えぇぇ〜〜〜〜〜!!!
ちゃーみーとよっすぃ〜は、あまりの理不尽さに思わず不満の声を漏らしました。
「ちょ、ちょ、そんなのアリ? ずるくね?」
「そうだよ、ずるいよ! まだ願い事考えてないのにぃ」
「何や、いちゃもん付けんなや。 待てって頼まれたから待ってやっただけやで」
あいぼんはそう言って涼しい顔をしています。
- 347 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:44
-
2人は慌てて話し合いを始めました。
「どうする? よっすぃ〜」
「どうしよう、ちゃーみー」
でもあいぼんは待ちくたびれてしまったようです。
大きなあくびをして、こう言いました。
「時間かかるんやったら、またあとで呼んでや。 うち昼寝してくるわ」
あいぼんは、すぅっとライターの中に消えていきました。
さて、少し冷静になったちゃーみーとよっすぃ〜は、自分たちの願い事がとても簡単な
ものだということに気づきました。
願い事は残り2つです。
家族が欲しいちゃーみーと、お金持ちになりたいよっすぃ〜。
まずは、2人の境遇を入れ替えてくれ、と頼むことにしました。
そして、もしどちらかがその入れ替わった生活に飽きたりしたら、やっぱり元に戻してくれ
と頼めばいいのです。
これで3つの願いをすべて使い切ることになります。
ちゃーみーとよっすぃ〜は、自分たちのアイディアにたいへん満足しました。
- 348 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:45
-
よっすぃ〜がポケットからライターを取り出します。
「よしっ、じゃあ呼んじゃうよ」
「うん! 楽しみだね、よっすぃ〜」
「どうなるかなぁ、ほんとに入れ替わっちゃうのかなぁ」
「ドキドキするね」
「うん、わくわくするね」
ちゃーみーがモジモジし始めました。
「どうしよう、なんか緊張しておなか痛くなってきちゃった」
「ふはは、ちゃーみーは小心者だなぁ」
よっすぃ〜は笑って、ライターの着火装置に親指をかけます。
と、その時ちゃーみーが言いました。
「ごめん! やっぱ私おなか痛いから、先にトイレ行ってきてもいいかな」
その瞬間、よっすぃ〜の親指に力が入って、ライターからカチッと火花が散りました。
よっすぃ〜はちゃーみーの発言に衝撃を受けて、こう叫びます。
「えぇ!? ちゃーみーはうんこしないよ!」
炎の中から出現したあいぼんは、
「うむ、分かった」
と頷いて、またライターの中に消えていきました。
- 349 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:45
-
- 350 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:46
-
1週間後、よっすぃ〜の家の古風な黒電話がけたたましく鳴りました。
「はい、吉澤です」
「もしもし、よっすぃ〜?」
電話を掛けてきたのはちゃーみーでした。
なぜか涙声です。
よっすぃ〜は心配になって訊ねました。
「どうしたの? 何かあった?」
「あの、私、私‥‥」
「泣かないで、ちゃーみー。 私でよければ何でも相談に乗るよ」
「‥‥‥」
数秒の沈黙のあと、受話器からちゃーみーの絶叫が響き渡りました。
「私、うんこが出ないのよぉーーー!!!」
- 351 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:46
-
そうです。
ちゃーみーにはこうであってほしい、というよっすぃ〜の願望を、あいぼんは素直に
聞き入れてしまったのです。
下剤を呑んでも浣腸をしてもうんこのできない体になってしまったちゃーみーは、
この1週間ずっと腹痛に苦しんでいました。
やむを得ず、よっすぃ〜はライターの火をつけてあいぼんを呼び出しました。
現れたあいぼんは眠そうに、寝癖のついた前髪を直しています。
「おぅ、久しぶりやな。 もう3つ目か?」
「うん」
「これで最後やで」
「‥‥うん」
よっすぃ〜は深呼吸をして言いました。
「あいぼんお願い、ちゃーみーの便秘を治して」
「よし来た」
あいぼんはそう言って嬉しそうに笑い、ふわりと白い煙に包まれました。
「ほな、さいなら」
- 352 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:47
-
もくもくと立ち込めていた煙が消えると、もうあいぼんの姿はありませんでした。
よっすぃ〜が握りしめていたライターは、いつの間にか真っ白な灰に変わっています。
灰は手のひらから床にこぼれ落ちて、きらきら輝きながら消えました。
よっすぃ〜はしばらく放心していましたが、納得したように頷いてにっこり笑いました。
「ありがとう、あいぼん」
よっすぃ〜は満足げにぱんぱんと手をはたいて立ち上がります。
家族のために、お昼ごはんの支度をしなくてはいけません。
弟や妹がお腹をすかせています。
ごはん食べて洗濯物干して家の掃除が終わったら、ちゃーみーの家に遊びに行こうっと。
淋しがりやのちゃーみーのために、今日は弟や妹も連れて行こうかな。
―――ちゃーみーからの電話で、無事に排泄が完了したとの報告があったのは
その30分後のことでした。
- 353 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:47
-
- 354 名前:3つの願い 投稿日:2008/04/12(土) 06:47
-
- 355 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/12(土) 06:49
- 終わりです。
吉澤さん(と愛理ちゃん)誕生日おめでとう。
あいぼん復帰おめこ。
- 356 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/13(日) 10:53
- あいぼおおおおおおおおおおん………
珍しくほのぼのしたラストで、少し安心しましたw
- 357 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/13(日) 21:18
- いや確かにほのぼのなんだけど…w
- 358 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/29(火) 21:29
- >>356
とっかえっ娘。が好きでした
もう2度と戻らないあの頃の輝き
>>357
我ながら泣ける話だと思いました
- 359 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:29
-
隠し味
- 360 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:30
-
舞美ちゃんは鈍い。
みんなにバカだバカだと言われてるけど、知識の足りない雅ちゃんや知能の足りない
梨沙子ちゃんとは違う種類のバカだと思う。
舞美ちゃんは、頭の回転と知覚が鈍いだけなのだ。
この前、舞美ちゃんのお弁当が食べかけのまま放置されてたから、いたずら好きの
千聖がご飯に砂糖をいっぱいかけた。
『やだ、なんか甘ーい! ちょっとぉ、何か変なもん入れたでしょ、もう』
私たちは、この程度のリアクションを期待していた。
しかし、舞美ちゃんは予想の斜め上を行った。
何も気づかず、あの激マズ砂糖ご飯を食べ続けたのだ。
さすがにあれには寒気がした。
味覚が機能してないんじゃないかとさえ思った。
舞美ちゃんは鈍い。
自分が死んでも気づかないかもしれない。
- 361 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:30
-
- 362 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:34
-
「まいちゃん、今度は塩入れてみようよ」
千聖はそう言って、きっしっしっし、と悪戯っぽく笑った。
「えぇー、それってどうなの」
残念ながら、今回は少々同意しかねる。
市販の弁当のご飯なんて元々ごま塩がふりかけてあったりするし、少しくらい塩味が
効いていても、大して違和感がないんじゃないだろうか。
それではつまらないのだ。
「どうせまた舞美ちゃん気づかないで食べちゃうよー」
「だから気づかないのが面白いんじゃん」
「‥‥じゃあ、どれくらい入れたら気づくのかな?」
- 363 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:39
-
私たちは考え込んだ。
この前の砂糖事件で、舞美ちゃんの舌が危機回避能力の面から見ても全く使い物に
ならないということが分かっている。
「う〜ん、スプーン1杯分くらい入れたら、さすがに分かるんじゃない?」
「え、それくらいじゃ絶対気づかないよ! 舞美ちゃんの味覚、予想以上にバカだし」
「じゃあ、まいちゃんはどれくらいだと思う?」
「‥‥ここは舞美ちゃんのレベルに合わせて豪快に行かないと」
千聖と私は賭けをすることにした。
舞美ちゃんがひとくち食べて異変に気づいたら千聖の勝ち、気づかなければ私の勝ち。
賭けと言っても、子供らしくジュース1本という可愛らしい勝負である。
私には絶対の自信があった。
舞美ちゃんのバカレベルは、常に予想の斜め上を行くからだ。
- 364 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:39
-
- 365 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:40
-
今日はコンサート。
私たちは昼公演と夜公演の合間に楽屋を抜け出して、コンビニに行った。
スティックシュガーならどこにでも売ってるけど、塩の場合、小分けにされたものが無い
ことに気づき、仕方ないので普通の塩1kgの袋を買った。
我ながら、幼稚な悪戯に随分とお金を使ってしまったものだ。
「もうちょっと歩いてスーパーまで行けば、500gの塩があったかもしれないのにー」
千聖はさっきからそればかり言っている。
私はため息をついて言った。
「バカだね、遠くまで行って時間なくなっちゃったら元も子もないでしょ」
「もこもこ‥‥のない?」
訂正する気も起きず、私は千聖の腕を引っ張って早足で会場へと戻った。
- 366 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:40
-
楽屋の中は雑然としている。
えりかちゃんは鏡を見ながら、真剣にメイクを直していた。
なぜ女の子は、下まつ毛にマスカラを塗るとき鼻の下が伸びてしまうのだろう。
彼女のその間抜け面は、イラン人というよりラクダに似ている。
愛理と栞菜はケータイ小説を読みながらキャーキャー言っていた。
小説とも言えない低俗なエロ作文の何が面白いのか、私には理解不能である。
愛理なんかは普段利口ぶっているが、あんなもんを読んで喜んでいるあたり、おつむの
程度がバレちまうよってなもんだ。 実に恥ずかしい。
その点、なっきぃはまともな文庫本を読んでいる。
眼鏡をかけて静かにページをめくる様はおしとやかな文学少女にも思えるが、かつて
君がブースカだったことを私は忘れない。
- 367 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:41
-
「トイレ行ってくるー」
舞美ちゃんがそう言って席を立った。
ナイスタイミン‥‥グゥ〜!
しまった。
脳内とはいえ、思わず流行りの芸人の真似をしてしまった自分が恥ずかしい。
気を取り直して、私は千聖に目配せをした。
彼女が楽屋を出たのを確認して、私は素早く舞美ちゃんの分のお弁当を開ける。
「ちさと、塩!」
千聖は買ってきた塩の袋を開け、ご飯に向けてどばどばと入れる。
白いご飯の上には、真っ白い塩の山がこんもりと積もった。
大さじ山盛り3杯分くらいはあるだろうか。
さすがにこれではバレる。
私は千聖に、ご飯と塩を十分混ぜ合わせるように言った。
千聖は楽しそうにえへらえへらと笑いながら、割り箸でご飯をぐりぐりかき混ぜている。
- 368 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:42
-
そろそろ帰ってくるだろうか。
舞美ちゃんのトイレは、女の子とは思えないほど早いから。
「ちさと、廊下見張ってて」
千聖にそう命じて、私は塩ご飯の仕上げに取りかかった。
塩が目立たないように、箸で丁寧にご飯を撫で付ける。
「まいちゃん、舞美ちゃん来たよ!」
廊下にいた千聖が、慌てて楽屋に飛び込んできた。
私は舞美ちゃんのお弁当に蓋をして、そ知らぬ顔で近くの椅子に座り込む。
「ふー、すっきりすっきり」
舞美ちゃんはぱんぱんと腹を叩きながら椅子に座った。
もしかして、うんこだったんだろうか。
なんて速さだ。
舞美ちゃんは何の疑いも持たずにお弁当を開けると、何の迷いもなく割り箸をご飯に
突き刺した。
私と千聖は、固唾を呑んでその様子を見守る。
- 369 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:42
-
ぱくっ。
舞美ちゃんはひとくち食べて妙な顔をしたものの、もぐもぐと咀嚼し続けている。
そして、ふたくちめのご飯を箸に取った。
「よしっ!」
私は思わずガッツポーズをした。
この瞬間、私の勝ちが決まったのだ。
「あーあ、負けちゃったー」
とか言いつつ、千聖はひーひー笑っている。
舞美ちゃんの鈍さがおかしくてたまらないようだ。
舞美ちゃんはお弁当を食べながら、う〜ん、なんだか今日は喉が乾くなぁー、とか
言いながら水をがぶがぶ飲んでいた。
あれだけご飯が塩辛ければ当然だろう。 なぜ気づかないんだ。
「ごちそうさまー」
舞美ちゃんは、5分でお弁当を完食した。
- 370 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:43
-
しかし、その直後だった。
舞美ちゃんが突然呻き始める。
「うぅ‥‥なんか頭が痛い‥‥」
顔色は真っ青だった。
「‥‥うっ、おええええええええええ」
次の瞬間、舞美ちゃんは大量に嘔吐した。
楽屋は騒然となる。
千聖は腰を抜かし、えりかちゃんは驚いて泣き出し、愛理はマネージャーさんを呼びに
楽屋を飛び出していった。
舞美ちゃんは床に倒れこみ、熱い!苦しい!頭が痛い!お腹も痛い!とか喚きながら
胃の内容物を吐き続ける。
少し静かになったかと思うと、舞美ちゃんは体を痙攣させ、ぐったりと動かなくなった。
私は何が起こったのか分からず、呆然とその場に突っ立っていた。
- 371 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:43
-
- 372 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:44
-
あとから知ったことだけど。
塩にも致死量があるんだね。
ごめん、舞美ちゃん。
約束通り、千聖にはジュースをおごってもらった。
- 373 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:44
-
- 374 名前:隠し味 投稿日:2008/04/29(火) 21:44
-
- 375 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/29(火) 21:45
-
(o・D・)<おわりでしゅ
- 376 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/30(水) 00:36
- マイマイ姉さん全員ブッた切ってるなw
- 377 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/30(水) 12:48
- マイマイは命令してるだけで、実行犯はほとんど岡井ちゃんかwww
- 378 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/12(月) 08:49
- 知ってたから真綿で首を絞められるような気分だった……
まいまい黒いよまいまい
- 379 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/07/13(日) 23:01
- マイマイ苦手だったけどこれ読んで好きになった
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/29(金) 09:24
- >>376
狼で見たマイマイの「殺戮ピエロ」という俗称に笑いました
>>377
彼女は知能犯です
>>378
まさに殺し屋
>>379
ありがたいお言葉! 嬉しいです
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/29(金) 09:26
- 近々更新するので予告だけしておきます。
○娘。現メン
○亀井
○石川・吉澤
- 382 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:51
-
連鎖
- 383 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:52
-
モーニング娘。は危機に瀕していた。
この1ヶ月の間に、高橋、新垣、亀井、道重が相次いで死亡したのだ。
普段はハロプロを極力無視しているマスコミも、こぞってこのニュースを取り上げた。
世間は、「次の犠牲者は田中か!?」 と騒いでいる。
今やモー娘。といえば “ラブマの法則” ならぬ “年増の法則” が有名になっていた。
これによってメンバー1人1人が急激に認知され始め、CDもちょっとだけ売れた。
つんく♂は急遽、第9期オーディションを開催することを宣言した。
- 384 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:52
-
◎
高橋の最期を看取ったのは新垣だった。
2人が渋谷で買い物をしている最中、高橋は路上で突然苦しみ出し、
大量の血を吐いて死んだという。
息絶える直前、血まみれの高橋が喉から言葉を絞り出した。
「でぃー‥‥ぶい‥‥」
「え? 何? 愛ちゃん、何?」
「‥‥でぃー」
「え? DV? それってつまりドメスティックバイオレンス?」
「違う‥‥‥でぃー‥‥‥」
「家庭内暴力に悩んでたのね!? やだ、私、全然気づかなくて! ほんとごめん!」
「‥‥ちが‥‥」
「やっぱお父さん? それともお母さん? もしくは妹さん? はたまた彼氏さん?」
「‥‥でぃ‥‥‥‥」
「いやあああああ! 愛ちゃああああん死なないでえええええええ」
高橋は訂正する前に死んでしまったが、新垣は後になって、
「あれ‥‥なんかDが多かったな」
それがDVDのことだと思い当たったのだった。
- 385 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:52
-
後日、高橋の部屋を訪問した新垣は、プレーヤーに入ったままのDVDを見つけた。
不気味なほど真っ黒なDVD。
何か胸騒ぎがする。
新垣は少しためらってから、それをセットし直して再生ボタンを押した。
ザーーーーー、という音と共に、テレビの画面は砂嵐を映し出している。
10秒、20秒。 何かが映る気配はない。
諦めて停止ボタンを押そうとした瞬間、画面は灰色の砂嵐から真っ黒に変わった。
「え? 何これ‥‥」
真っ黒な背景に、赤い文字が浮かび上がる。
新垣は背すじが凍りつくのを感じた。
『 こ の D V D を 見 た 者 は 、 1 週 間 後 に 死 ぬ 』
新垣はこのことを誰にも告げず、DVDを燃えるゴミの日に捨てた。
その1週間後、自宅で彼女の変死体が発見された。
- 386 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:53
-
◎
犠牲者はその後、年増の法則に則って新垣、亀井、道重と続く。
正確には、亀井と道重は同時である。
新垣が捨てたはずのあのDVDは、
いつの間にか亀井の部屋のCD収納ラックに紛れ込んでいたのだ。
ちょうど道重が亀井家に遊びに来た日。
自分たちのライブDVDを見るつもりで、亀井はそれをプレーヤーにセットした。
「ん? 砂嵐しか出ない‥‥」
「もう、絵里間違えたんじゃないの?」
「あれー、おかしいなぁー」
突然、画面が黒く切り替わる。
浮かび上がる血文字。
『 こ の D V D を 見 た 者 は 、 1 週 間 後 に 死 ぬ 』
「や、やだー、何これぇ」
「なんか気持ち悪いね」
「絵里まだ死にたくなーい」
「あ‥‥ねえ、もしかして‥‥愛ちゃんとガキさんって」
「え? え? ちょっと、さゆってば怖いこと言わないでよぉ、それじゃ絵里たちも‥‥」
亀井と道重は顔を見合わせて震え上がった。
- 387 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:54
-
「やだもう、こんなの早く捨てちゃお」
「あのさ、御祓いとかしてもらったほうがいいんじゃないの?」
「おはらい?」
「ほら、みっつぃーのお父さんとか。 お寺の住職さんだし」
「そっか! じゃあみっつぃーに頼もう。 さゆ、電話して」
「え‥‥さゆみが?」
「言いだしっぺだもん」
―――沈黙が流れた。
気まずさを振り切るように、道重が呟いた。
「‥‥こんなこと軽々しく頼んじゃっていいのかな?」
「へ?」
「だってさぁ、正直そんなにみっつぃーと仲いいわけでもないよね」
「あー」
「あっちもそんな義理ないでしょ」
「確かにー」
「だからって他あたるのも‥‥ちょっとね」
「めんどくさいしね」
「うん」
「捨てよっか」
「うん」
亀井と道重は、DVDを燃えるゴミに出した。
1週間後、2人は同時刻に苦しみ出し、血を吐いて死んだ。
- 388 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:54
-
◎
モーニング娘。はあっという間に残り5人となった。
ちなみに、この時点で田中がリーダーに昇格している。
「あれ‥‥何か入っちょる」
自分のバッグの中身をあさっていた田中は、見慣れないものを発見した。
「何やろ、このDVD。 誰かから借りたっけ」
亀井と道重が捨てたはずのDVDは、今度は田中のバッグの中に潜んでいた。
ハロモニの収録があった日、亀井と道重は、妙なDVDを見たということを
娘。メンバーたちに話していたのだが、
田中はそのとき運悪くトイレに行っていて、その話を聞いていなかったのだ。
あとで田中に教えてやる者もいなかった。
何の警戒心も持たなかった田中は、逃れられない運命の餌食となる。
『 こ の D V D を 見 た 者 は 、 1 週 間 後 に 死 ぬ 』
田中は震える手でライターを掴むと、DVDに火をつけた。
ドーナツ型のそれは、徐々に溶けて歪んでいく。
それから1週間後、彼女は帰らぬ人となった。
- 389 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:55
-
◎
田中が燃やしたはずのDVDは、久住の手元にあった。
「これ‥‥まさか」
表面には何も書いていない、真っ黒なDVD。
知らないうちに久住のバッグに入っていたのだ。
久住はあの時、亀井と道重の話を聞いていたので、これがその呪いのDVDなのだと
いうことはなんとなく予想がついていた。
これを見たら死んじゃうかもしれない。
怖い。
でも、見ると死ぬなんて一体どんなDVDなんだろう。
知りたい。
本当に自分は死んでしまうのだろうか。
知りたい。
見ると死ぬかもしれない。
怖い。
でも見たい。 やっぱり見てみたい。
恐怖心は好奇心に負けた。
久住はそれをプレーヤーにセットし、再生した。
『 こ の D V D を 見 た 者 は 、 1 週 間 後 に 死 ぬ 』
恐怖に駆られた久住は急いでDVDを取り出すと、力任せに真っ二つに割り、
叩きつけるようにゴミ箱に捨てた。
それから1週間後、彼女は帰らぬ人となった。
- 390 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:55
-
◎
帰宅してバッグの中を覗いた光井は、ため息をついた。
「‥‥ついに回ってきたか」
久住が割ったはずのDVDは、今度は光井の手に渡ったのだ。
もちろん無傷のままで。
モーニング娘。は、もはや8期しか残っていなかった。
速すぎる展開に9期オーディションも間に合わず、現在は光井、ジュンジュン、リンリンの
3人で活動を続けている。
楽屋が広くなった上にうるさい先輩も全員いなくなったので、
3人はわりと快適な生活を送っていた。
ちなみに現在のリーダーはジャンケンでリンリンに決まった。
「まぁ、回ってきたんなら見ろゆうことやんな」
光井は面倒くさそうにDVDをセットし、再生ボタンを押した。
数十秒の砂嵐のあと、黒い背景に浮かび上がる血文字。
『 こ の D V D を 見 た 者 は 、 1 週 間 後 に 死 ぬ 』
- 391 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:56
-
◎
2085年、とある老婆の葬儀がしめやかに行われていた。
飾られた遺影の中で、皺だらけの顔が微笑んでいる。
黒目がちの瞳。 老いてなお重厚な存在感を放つアゴ。
光井愛佳、御年92歳の大往生であった。
棺の中で安らかに眠る光井。
会場には家族や知人のすすり泣きが悲しく響いている。
娘と思しき女性が、棺の中に黒いDVDを入れた。
- 392 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:56
-
◎
「ねぇ、愛佳おばあちゃん」
「あいよ」
「おばあちゃんが昔アイドルだったってほんと?」
「ほんまほんま。 モーニング娘。ゆう国民的アイドルでな」
「わぁ、すごーい」
「ばあちゃんはバックダンサーの中国人2人引き連れて、堂々とセンター張ってたんや」
「じゃあモーニング娘。呪いのDVD事件ってなあに?」
「おお、あれは世にも恐ろしい事件やった。
年増から順にクビを切られていくという大規模なリストラや」
「そっかぁ。 おばあちゃんは年下だったおかげでそれを免れたんだね」
「ちゃうわアホ、そもそも優秀な人材はリストラの対象にならんやろ」
「ところで、おばあちゃんはDVDを見たのに、なんでこんなに長生きしてるの?」
「ああ‥‥それはな」
光井はひと息ついて、お茶を飲んだ。
「ばあちゃんはそのDVDを毎週見とるからや」
- 393 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:56
-
- 394 名前:連鎖 投稿日:2008/08/29(金) 23:56
-
- 395 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/29(金) 23:57
- 終わりです。
狼の愛佳おばあちゃんスレ好きでした。
- 396 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/30(土) 01:13
- うわああああああああそうきたかあああああああああ!!!!
なんかいろいろ覆された気分・・・いいわあw
みっつぃならこういうとんち思いつきそうだしリアリティーがある
- 397 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/30(土) 04:29
- うわあ……なるほど
この子のこういうとこ好きだわー
すんごい面白かったです
- 398 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/30(土) 19:13
- これは机みたいな味わいのするお話ですね
- 399 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/30(土) 19:18
- すげー!!!!!!!
光井ならやりかねない思いつき…
天才だ!!
- 400 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/31(日) 00:38
- なるほど!光井は頭良い娘だな
解ってて見てしまう久住もらしい
- 401 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/21(日) 01:41
- うわ更新されてるの今気づいたああああ!!!!
それにしてもみっつぃーは出来る子ですね
- 402 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/21(日) 22:56
- >>396
川=、┬,)<なんか覆された気分…
>>397
私もみっつぃーが大好きです!
>>398
よく分かんないけど>>398さんは
机を味わったことがおありなんですか
>>399
川=´┴`)<知ってる
>>400
ノリ#`ゥ´リ<だってだって
>>401
専ブラを使うといいナリよ
とりあえず今、次のやつ書いてます。
直書きで投下しようかと思ったけどリスクがでかいのでやめた。
明日の朝までに更新できればいいな。
- 403 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:45
-
侵入者
- 404 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:46
-
私が帰宅して自分の部屋に入って1番初めにするのは、
PCの電源を入れることだ。
mixiにログインして、マイミクの日記をざっと読む。
私のマイミクの中には、もちろん娘。のメンバーもいる。
さゆとガキさんと愛ちゃんだ。
もちろん全員デタラメのプロフィールだし、
日記もちゃんと 「一部の友人まで公開」 に設定している。
私たちは、矢口さんのようなヘマはしない。
クッキーモンスター(笑)
専ブラで狼を見る。
ちなみにJaneを教えてくれたのは吉澤さんだ。
私はそれまで狼は携帯から見ることが多かったんだけど、
Janeを知ってその便利さに感激した。
吉澤さんは、移動中の新幹線にまでPCを持ち込んでいるPCオタクである。
里田さんの話によると、自宅でも常にネットで“何か”見ているらしい。
そんな生粋の狼住人の吉澤さんに色々教えてもらって、
私もヤススレを見抜く力とかアンチをスルーする技を習得した。
煽りレスに対する耐性もある程度ついた。
- 405 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:46
-
ファンスレ保全代わりにAAを投下したら、ズレまくっていてバカにされた。
お気に入りのネタスレに渾身のネタを書き込んだけど、そのあと全然レスがつかない。
悔しかったので、自演で 『wwwwwwwwwww』 を連投しまくった。
いつものように“亀”でスレタイ検索したら、ファンスレよりアンチスレのほうが多かった。
『 亀井がテレ東の人を底辺と罵ったワケだが/その7 』
はいはいすみませんね。 悪かったとは思ってますよ。
でもハロモニ@が打ち切りになったのは絵里のせいじゃない‥‥と信じたい。
狼に飽きたので、アンテナに登録してあるヲタサイトや日記を巡回する。
えりりんきゃわー。 さゆえり萌えー。 れなえりキター。 ガキカメちゃいこー。
さすが私の選りすぐりのヲタ日記。
今日も手放しで私のことを絶賛してくれている。
- 406 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:46
-
手の届かないアイドルを追いかけ続けるヲタ共が哀れに思えることもある。
でも私たちは、その軽蔑と憐憫の情を押し隠し、感謝という言葉で塗りつぶす。
オタクがいるから、私たちがこうして生きていけるのだ。
見下している奴らに生かされている惨めさ。
本当は気持ち悪い。
今でもコンサで興奮してる汗だくのヲタとか見たらうわっとか思うし、
握手会の前日は嫌で嫌で眠れない。
見ず知らずのキモヲタ数百人に手を握られるなんて、地獄以外の何ものでもない。
私に触れたその手は、握手の前後にどんな使われ方をしているのか。
そんなことを嫌でも想像してしまう。
- 407 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:47
-
「あ」
突然、新しくブラウザが開いた。
間違えてアフィ広告のポップアップか何かをクリックしてしまったようだ。
‥‥いや、違う。 アフィじゃない。 何だこれ。
何の宣伝文句も書かれていない。
真っ白な画面の中央に、シンプルな字体で並ぶ文字。
_______
名前を入力して下さい |______|
私の目は吸い寄せられたように、画面に釘付けになっていた。
ネット上の適当なHNなんかじゃない。 本名を書けって言われてる。
直感的にそう思った。
キーボードの上を無意識に指が動く。
亀井絵里、と打ち込むと、更に詳細なプロフィールの入力欄が現れた。
性別、生年月日、住所、職業、学歴‥‥
やばい、これはやばい。
頭の中で危険信号が鳴っている。
もしこれが悪質な詐欺サイトだったとしたら。
自分からこんなに個人情報を垂れ流して、悪用されても文句は言えない。
それでも私の指は止まらなかった。
- 408 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:48
-
全て入力し終わると、勝手にブラウザが開いた。
「ん? 何これ」
Yahoo!とかGoogleみたいな仕様のページだった。
『 記憶検索エンジン ( `.∀´)<Yasuu! 』
「き、記憶検索‥‥?」
検索ワードを入力する欄の下にはこんなことが書いてある。
『 検索したい人の名前を入力して下さい 』
「ふーん。 どうなるんだろ」
試しにさゆの名前を入れて検索してみた。
検索結果はたった1件。
どうやら日本に 「道重さゆみ」 という名前の人物は1人しかいないようだ。
私はそれをクリックした。
「‥‥う!? うわっ!!」
- 409 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:50
-
――――――――――――――――――――――――
道重さゆみ 1989年7月13日生 18歳 女 アイドル
東京都××区在住 山口県宇部市出身
はー、やっと終わったよ。 疲れたー。 ハロモニ@の収録なんてめんどくさいだけで
全然楽しくないしっていうかぶっちゃけつまんないし赤チンコとキャベツは笑えないし
さゆみが1人で頑張っても無駄だし。 みんな番組を面白くしようとする気あるのかな。
これ、うちらの番組なんだよ。 モーニング娘。の唯一のメディア露出の場なんだよ。
ただ与えられたつまんない企画、言われた通りにこなすだけで。 こんなんだから
向上心がないとかライバル心がないとか言われちゃうんだろうな。 さゆみ、自分で
見てもハロモニ@つまんないなと思うもん。 アイドリングもAKB48も、体張って自分を
アピールしてる。 どう見てもハロモニ@より面白いし。
- 410 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:50
-
ハロモニ@って誰が見てるの? オタクだけだよね。 オタクはさゆみたちの可愛い顔が
映ってれば満足なんでしょ。 内容が面白くてもつまんなくても、「推しメン」 が出てれば
無条件で見るんだよね。 でも、それも昔の話。 今じゃオタクでさえ見ないんだってさ。
そりゃそうだよ、だって正直言ってつまんないもん。 みんな面白いことしてないもん。
あんなの、どう編集したって面白くなるわけないじゃん。
とか思ってたらさ、ハロモニ@終了だって。 今月で打ち切りだって。 モーニング娘。、
これからは数分間の深夜枠にしか出れないんだよ。 卒業した先輩たちはどんな気持ち
なんだろう。 さゆみたち、8年半続いた看板番組を潰した代とか言われちゃうのかな。
さゆみ結構頑張ったんだけど。 まぁ、しょうがないよね、だって周りがあんなんだもん、
さゆみ1人が張り切ったって無駄だよね。 みんなやる気ないしー。 そう、さゆみの
せいじゃないもん。 頑張らないみんなが悪いんだ。
- 411 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:51
- ハロモニ@終了って言われて、メンバーのみんなはどう思ったんだろう。 ガキさんは、
先輩方に申し訳ないって言って泣くんだろうな。 で、愛ちゃんはこういう時だけ無駄に
責任感じちゃったりしてやっぱり泣くんだろうな。 れいなは最近頑張ってたし凹んだ
だろうけど、切り替え早い子だから、また映画やドラマに出たいとか夢みたいなこと
言い出して、来るわけないオファーを待ち続けてたり。 絵里、は‥‥なんにも考えて
ないんだろうな。 テレ東の人に底辺とか言っちゃうような子だし。 小春ちゃんもきらりが
終わったらどうすんだろ。 みっつぃーは頭いいけど、どんだけこの状況を理解してる
のか不明だし。 多分さゆみたちほど危機感は感じてないんだろうな。 ジュンジュンと
リンリンはそのうち中国に帰っ
――――――――――――――――――――――――
- 412 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:51
-
膨大な文字がリアルタイムで流れていく。
私はただ呆然としてそれを見ていた。
これは、さゆの心の中だ。
絵里は今、さゆの心を読んでるんだ。
何これ、やばいんじゃない?
心臓がばくばく鳴り始めた。
ページの上のほうに、【絞り込み検索】 と書いてある。
さゆの記憶や思考を検索できるのか。
「あ! そういえば」
急に嫌なことを思い出した。
今日、楽屋でさゆと遊んでるとき我慢できなくてオナラしちゃったんだ。
さゆは何も言わなかったけど、絶対聞こえてたはず。
もしかしたらニオイも‥‥うぎゃー!
私は 『 屁 絵里 』 と入力して、絞り込み検索をクリックした。
- 413 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:52
-
検索結果は3件。
え? 3件?
とりあえず上から見てみる。
さっきのようなリアルタイムの思考とは違って、記憶は箇条書きに記されていた。
道重さゆみ脳内 『 屁 絵里 』 の検索結果 3件中 1〜3件目
・ 絵里が楽屋で屁をこいた。 黙っておいてあげた。 (2008.9.17)
・ 一緒にプリクラ撮ってたら絵里がすかしっ屁した。 くさかった。 (2006.3.12)
・ 楽屋で屁が出た。 たぶん絵里に聞かれた。 死にたい。 (2003.10.8)
そんな昔のことまで覚えてるのか。
最後の項目のはちょっと笑った。 お互いさまってことだね。
ふと、それぞれの項目の横に2つのボタンがあることに気づいた。
【編集】と【削除】。 ‥‥もしかして。
記憶を消したり書き換えたりすることができるの?
- 414 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:52
-
( `.∀´)
- 415 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:53
-
世界最強にでもなった気分だった。
今の私は無敵だった。
記憶検索エンジン、Yasuu!
名前さえ分かれば、他人の記憶を思うがままにできるのだ。
もし自分に都合の悪いことがあれば、それに関連する人たちの記憶を修正する。
その記憶の部分だけ丸ごと消してしまう、なんてことも何度かあった。
私がハロモニ@でテレ東の人を底辺と呼んでしまったこと。
娘。メンバーだけじゃなく、スタッフの人やテレ東社員、さらに山崎会長の記憶まで
操作して、私はその事実をなかったことにした。
さすがに全国の視聴者たちの名前までは調べられないから、その辺は放置だけど。
私が記憶を消した人たちにも、いずれ 「底辺」 事件は知られてしまうだろう。
全国にそれを覚えている人がいるんだから。
情報はどこからでも入ってしまう。
だけど一時的だったとしても、関係者にそれを忘れさせることは重要だった。
そのおかげで、ハロモニ@打ち切りの話は白紙に戻ったのだ。
- 416 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:53
-
娘。のメンバーも嬉しかったみたいだ。
マネージャーさんからハロモニ@の継続を聞かされた時、
れいなや8期は素直に喜びをあらわにしていた。
愛ちゃんやガキさん、さゆなんかは、ほっと安堵したような表情だった。
ヲタにさえ糞番組と罵られるあんなつまらないものでも、私たちにとっては命綱だ。
きらりで成功していて余裕のある小春は、興味なさそうに 「ふーん」 とか言って
(みんな無職にならなくて良かったねー) みたいな顔をしてたけど、
それでも彼女なりに喜んでいるようだった。
- 417 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:54
- 小春は素直で自由なようでいて、本当は計算高くプライドも高い。
天真爛漫で鈍感で幼い自分を常に演出し、
本気になったり必死になったりする自分は決して周りに見せない。
必死な姿を他人に見せることは、弱みを見せるのと同じことだからだ。
天真爛漫な笑顔で喜んでみせるべきか、余裕の表情で聞き流すべきか。
小春はそれを一瞬のうちに考えて、後者を選んだ。
ハロモニ@ごときで一喜一憂するのは 「必死」 だと判断したのだろう。
自分のイメージを守ることより、プライドを守ることを優先したのだ。
Yasuu!で何度か娘。メンバーの思考を読んで以来、
私は彼女たちをより深く理解できるようになった気がする。
- 418 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:54
-
( `.∀´)
- 419 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:55
-
ハロモニ@では相変わらずつまらない記憶ショーをやっていた。
今回は 『娘。全員でチャンピオンみっつぃーに挑戦!』 みたいな企画。
お題はガンダムプラモデル、いわゆるガンプラだ。
こんなの覚えられるわけがない。
「ほんとすみません! マジ漏れそうなんで!」
記憶ショー本番の直前、私はトイレに行くふりをして個室の中でPCを起動した。
ガンプラについての自分の記憶を正しく修正し、
他のメンバーの記憶をいくつか間違ったものに書き換える。
れいなと小春に負けるのは癪なので、2人の記憶は特にいじりまくった。
怪しまれないように、みっつぃーだけは記憶の操作を控えめにしておいた。
赤チンの声が響く。
「優勝は、まさかの亀井絵里〜!」
- 420 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:55
-
そのハロモニ@の放送があった日、狼を見てみたら
「ありえねー」 「ヤラセじゃん」 「どうせ亀井のことだからカンニングでもしたんだろ」
「光井の秀才キャラ乗っ取る気なんじゃね?」 「後輩いじめの一環か」
ムカついたので亀井ヲタのサイトを巡回したら、
「さすがえりりん」 「えりりんはやれば出来る子」 「賢いえりりんも素敵」
「きっと今までは紺野とか光井に遠慮して、頭がいいことを隠していたんだ」
さすが選りすぐりの盲目ヲタ共である。
真実が何も見えていない。
おかしくて笑いがこみ上げてくる。
ぷっ、バッカじゃないの、絵里が頭いいわけないじゃん。
私はヲタ共の的外れな絶賛文章を読んで満足し、PCを閉じた。
- 421 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:55
-
( `.∀´)
- 422 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:56
-
私は、記憶検索エンジンYasuu!にどんどんハマっていった。
みんな自分の記憶が操作されているとも知らずに、能天気に暮らしている。
優越感。 私だけが全てを知っている。
人間関係も社会的地位も、全ては私の手に委ねられているのだ。
おかしくてたまらない。
そのうち私はYasuu!を悪用するようになった。
ブランド物のバッグをヤフオクに出品する。
私は出品者として当然、落札者と連絡を取り、名前と住所を聞き出すことができる。
代金が振り込まれたのを確認したら、Yasuu!で落札者の名前を検索し、
その人の記憶を書き換えてしまう。
こうすれば、私は商品を送らずに代金だけを巻き上げることができるのだ。
お金を振り込んだ本人が忘れてるんだから、証拠も残らない。
私の詐欺行為は面白いようにうまくいった。
2ヶ月で1300万くらい稼いだところでさすがに飽きたけど、
お小遣いが足りなくなったらまたやろうと思う。
- 423 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:56
-
( `.∀´)
- 424 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:57
-
私は今日も帰宅してすぐにPCを起動した。
いつもと同じように、Yasuu!で他人の記憶や思考を読みあさる。
今日のターゲットは藤本さん。
彼女がつまらない芸人とフライデーされて娘。をあっさりポイ捨てしてから、
もう1年半が経つ。
今でもテレビ番組でネタにされまくっているので、まだ関係は続いているのだろう。
藤本さんにしては長いほうなんじゃないかと思う。
狼周辺ではあれだけ駅弁駅弁と騒がれているけど、実際のところどうなのか。
つまり、彼女はあの芸人とどんな性生活を送っているのか。
下世話な好奇心だった。
私はにやにやしながらYasuu!の画面を開く。
- 425 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:57
-
「‥‥あ」
ふと、思い出した。
そういえば絵里、藤本さんとちょっとだけ仲良かった時期があったっけ。
藤本さんが脱退する少し前だったかな。
調子乗って、美貴様とか呼んじゃったりして。
‥‥あれ? 何がきっかけでそうなったんだっけ?
ハロモニだっけ?
思い出せなくて少し気になったので、私は自分の記憶を検索してみることにした。
とりあえず藤本さんの性生活は後回しだ。
『 亀井絵里 』
【検索】
『 ハロモニ 美貴様 』
【絞り込み検索】
- 426 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:57
-
その時だった。
画面が一瞬フリーズした後、突然ものすごい数のブラウザが自動的に開き始めた。
「え? え? うわ!」
しまった! ブラクラだ!
どうやら間違えてどこか変なURLをクリックしてしまったようだ。
耳障りなメタルミュージックを奏でながら、
大量の同じブラウザが画面のあちこちに現れ、動き回っている。
「ちょっと! やだもう!」
ブラウザは消しても消しても無限に開いていく。
しかも狂ったように動き回るもんだから、
右上の [×] にマウスポインタを合わせることすら難しい。
ちくしょう、これがブラクラって奴か。
- 427 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:58
-
イライラした私は、マウスをぐりぐり大きく動かして
画面の中をデタラメにクリックしまくった。
「あああああああもう! うざい!」
カチッカチカチカチッカチカチカチッカチッカチカチカチカチ
「バカ! くそ! 死ね!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
ブラクラで現れた大量のブラウザの隙間に、
『 亀井 絵里 の削除・編集 』
【編集】 【削除】
Yasuu!の編集ページが見え隠れする。
数打ちゃ当たるとばかりに、私は画面中を手当たり次第にクリックし続ける。
それでも運良く [×] を押せるのはごくわずか。
どんどん増えていくブラクラ。 大音量のメタルミュージック。
- 428 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:58
-
「もうやだっ! なんで消えないんだよう!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
【この部分を削除】 【全削除】
Yasuu!のページの文字が一瞬見えたような気がした。
「もおおおおお! 全然減らない! ブラクラ死ね!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
『 亀井 絵里 の記憶を 』
「消えろー!!!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
『 全 削 除 し ま す か ? 』
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
【はい】
カチカチカチカチカチカチカチカチ カチ カチッ
- 429 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:58
-
最後に見た文字は、
カチッ
『 亀井 絵里 を 全 て 削 除 し ま し た 』
あっ、
と思った瞬間、
- 430 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:59
-
私の世界は真っ白になった。
- 431 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:59
-
- 432 名前:侵入者 投稿日:2008/09/22(月) 07:59
-
- 433 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/22(月) 08:00
- 終わりです。
- 434 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/22(月) 08:41
- 鳥肌立ちました
- 435 名前:名無し読者 投稿日:2008/09/22(月) 08:50
- うわぁ・・・ こら怖いな・・・ たまげたなぁ・・・
- 436 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/09/24(水) 18:52
- 毎度小ネタが秀逸ですね
- 437 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/14(日) 22:07
- お待ちしてますよ…
- 438 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 07:52
- >>434
さぶいぼ!さぶいぼ!
>>435
えりりんは狂気が似合うと思うの
>>436
いやいや未熟者で申し訳ないです
>>437
そう言われたので更新します
- 439 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 07:53
-
- 440 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 07:56
-
新ユニット
.
- 441 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:02
-
† † †
- 442 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:03
-
期間限定とはいえ、hANGRY&ANGRYというユニットが決まって
私は正直ひと安心していた。
エルダメンがハロプロを卒業するという話はもう内部ではずっと前から出ていたし、
それに加えて美勇伝の解散もあって、
私は今後の芸能活動に大きな不安を抱えていたからだ。
ハンアンはそれなりにハロプロファンの注目を集めることもできたし、
私とよっすぃ〜の絡みを崇める一部の熱狂的なファンなどはもうお祭り騒ぎだった。
- 443 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:03
-
今の私たちにとって、ハロプロの枠を超えた外部の仕事というのはありがたい。
これで新規ファンを獲得できるなんて甘い考えは持っていないけど、
(どうせ購買層はヲタと呼ばれる人たちだけだろう)
このユニットのおかげでハロプロ卒業後の仕事にも少し希望が持てるようになった。
それに、この仕事は楽しかった。
普段はできないメイク、普段は着られない衣装。
いつもと違う曲調の歌を、いつもと違う歌い方で歌う。
どちらかというとハロプロの中で内輪向けの仕事をすることが多かった私にとって、
hANGRY&ANGRYでの活動は新鮮なことばかりだった。
気心の知れた同期のよっすぃ〜が相方というのも心強かったし、
こんなに純粋に楽しめるユニットは久々だった。
びゆ(ry
- 444 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:04
-
† † †
- 445 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:04
-
「あんじぇりーあ♪」
hANGRY&ANGRYの曲を口ずさみながら事務所の廊下を歩いていると、
女子トイレからよっすぃ〜が出てきた。
「あ、よっすぃ〜もお仕事だったの?」
「やっぱ梨華ちゃんか」
「何よそれ」
「いや、トイレ入ってたら遠くからボエ〜と」
「???」
“ぼえー” とは何のことだろう。
私が歌っていたのはhANGRY&ANGRYの曲である。
まぁ良い。
さすがよっすぃ〜、私の声を遠くからでも判別できるなんて!
これぞ同期の絆!
「うん、そうなの。 私Angelia歌ってたんだ」
「あーあれの曲ね、いんぐりもんぐりみたいな名前の」
「ハングリーアングリーでしょ! 自分がやってるユニットの名前くらい覚えなさいよ」
「‥‥覚えてるよ、冗談だよ」
- 446 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:04
-
よっすぃ〜は苦笑いをして、話題を変えてきた。
「そういえば梨華ちゃん、さっき小耳に挟んだんだけど」
「何よ」
「なんかまたハローで新しくユニット作るらしいよ」
「誰が?」
「分かんない。 エルダ4人とワンダ1人の5人組ってのは聞いたけど」
「え‥‥何それ」
おかしなことをするものだ。
エルダークラブのメンバーは、来年の3月でハロプロを卒業する。
今さらワンダメンとユニットを組ませて何がしたいのか。
「どうせ事務所推しの子ばっかでしょ」
「うーん、まぁそうかもね」
「ワンダなら愛ちゃんとか小春ちゃんとか、舞美ちゃんとか愛理ちゃんとか」
「いや分かんないよ。 10年記念隊の例もあるし」
- 447 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:05
-
そういえばすっかり忘れていたが、そんなユニットもあったっけ。
今考えてもあれはアンバランスな人選だった。
コンセプトがはっきりしないユニットというのは、どうしても印象に残らないものだ。
「ところでそれ、いつ発表なの?」
「今週末か来週には告知するって言ってた」
「ふーん、そうなんだ」
今の段階ではそうとしか言いようがない。
私もよっすぃ〜も他人事だった。
「ま、少なくともあたしたちは無いでしょ。 チングリーマングリーがあるし」
「ハングリーアングリー! もう、よっすぃ〜ったら相変わらず物覚えが悪いんだから」
「分かってるよ、冗談だよ」
よっすぃ〜とはその後また少し世間話をしたけど、
他には特にホットなニュースもなかったので 「お疲れ」 と言って別れた。
- 448 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:05
-
† † †
- 449 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:10
-
――――――――――
『 謎の新ユニット 「スクール☆ガール」 誕生! 』
(中略)
今年もハロープロジェクトからスペシャルユニットが大決定!!!
エルダークラブから4人、ワンダフルハーツから1人、
ある共通点に沿ってメンバーを選抜し、
新ユニット 「スクール☆ガール」を結成しました。
1月14日にデビューシングル 『学級日誌のあなた』 がリリースされます。
明日からの5日間、1日に1人ずつメンバーを発表していくよ!
5人の正体はいかに!? ヒントはユニット名!? 続報に乞うご期待!
――――――――――
- 450 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:10
-
ハロプロ公式ホームページのうすら寒い告知文を読んで、私は首を傾げた。
新しいことに挑戦しようという心意気は買わんでもないが、
告知の方法なんかより、もっと他に気合いを入れるべきところがあるだろう。
それにしても、5人のメンバーとは誰なのか。
私の幅広いネットワーク(柴ちゃんとよっすぃ〜と保田さん)を駆使しても、
突き止めることができなかった。
ハロメンにさえ秘密にしているのだろうか、あの事務所は。
- 451 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:10
-
† † †
- 452 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:11
-
――――――――――
巷で話題の謎のユニット、「スクール☆ガール」!
いよいよ1人目の発表です!
高橋 愛
――――――――――
「やっぱりね」
「この子は外さないよね」
私とよっすぃ〜は、顔を見合わせて苦笑した。
現在、ハロプロは空前の高橋ブームである。
何でも愛ちゃんを最優先で推すことが、暗黙のルールとなっているのだ。
- 453 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:11
-
今日は暇なので、私はよっすぃ〜の家に遊びに来ている。
今日“も”だろwww という煽りは無しの方向で。
私たちは午前中からPCの前に張り付き、公式ホームページでF5を連打していた。
ファンの人たちも同じなのだろう。
ページはひどく重くて、表示されるまで物凄く時間がかかった。
「これさぁ、誰になるのか本当にみんな知らないらしいよ」
「え? もしかして選ばれる予定の人たちにも伝わってないの?」
「そうみたい」
「じゃあ今頃、他のハロメンも公式リロードしまくってるのかなぁ」
「あはは、そうかもね」
- 454 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:12
-
† † †
- 455 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:13
-
――――――――――
「スクール☆ガール」、今日は2人目の発表です!
中澤 裕子
――――――――――
「ちょwwwww」
「出たwwwwwwww」
愛ちゃんと中澤さん。
不思議な組み合わせに首をひねる。
中澤さんなんかガールって年でもないでしょうに。
‥‥ん? もしかして。
「ねぇ、よっすぃ〜」
「なに」
「“ある共通点に沿ってメンバーを選抜”ってあるじゃん?」
「うん」
「この共通点って、歴代リーダーってことじゃない?」
- 456 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:13
-
中澤さんと愛ちゃんの共通点なんて、リーダーということしか思い浮かばない。
何か法則があるとすれば絶対にそれだ。
ということは、よっすぃ〜も選ばれる予定なのかもしれない。
「まさかー。 だってあたしにはセンズリーパイズリーが」
「ハングリーアングリーでしょ!」
「冗談だよ」
どこまでもふざけるよっすぃ〜にイライラしつつ、
私はなんとか気を取り直して自分なりの考えを言ってみる。
「だってね、よく考えてみて? エルダから4人、ワンダから1人だよ?」
「あー、そっかぁ」
「中澤さん、飯田さん、矢口さん、よっすぃ〜、ここまででエルダ4人でしょ」
「で、次が高橋でワンダ1人ってことか」
「そうそう!」
「なるほど! 梨華ちゃん珍しく頭いいね」
「ふふん」
一瞬、鋭い目つきで不機嫌な顔のあの人が脳内にちらついたが、
気づかないふりをしてやり過ごした。
「あれ? でも高橋って確か6代目‥‥」
「気のせい気のせい」
- 457 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:14
-
† † †
- 458 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:14
-
――――――――――
「スクール☆ガール」、3人目の発表です!
大谷 雅恵
――――――――――
「ええええええええええええええええええ」
「何だそれーーー」
「一気に分かんなくなったね」
私とよっすぃ〜はがっくりとうなだれた。
娘。という縛りをなくしたとしても、メロン記念日のリーダーは斉藤瞳なので
これで少なくとも歴代リーダーという線は消える。
愛ちゃん、中澤さん、まぁしぃ。
一体この3人にどんな共通点があるのだろうか。
よっすぃ〜はぽかんと口を半開きにして、間抜けな顔で考え込んでいる。
「ねぇねぇ、ちょっと最初の告知見直してみようよ」
私はよっすぃ〜からPCのマウスを奪い取って、3日前の告知ページを開いた。
- 459 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:15
-
『明日からの5日間、1日に1人ずつメンバーを発表していくよ!
5人の正体はいかに!? ヒントはユニット名!? 続報に乞うご期待!』
「ユニット名がヒント‥‥?」
私が呟いた途端、黙っていたよっすぃ〜がポンと膝を打った。
「分かった! 共通点が!」
「ほんとに!?」
私はびっくりしてよっすぃ〜の顔を見上げる。
「残りの2人が誰なのかも大体分かった」
「何? 何? 教えてよ」
「えぇ〜〜〜どうしよっかなぁー」
よっすぃ〜はわざとらしくもったいぶってニヤニヤしている。
- 460 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:15
-
「いいから早く言いなさいよ、あと2人って誰? どんな法則で選ばれてるの?」
「いやー、ネタバレしちゃったら梨華ちゃんもつまんないっしょ」
「つまんなくない! 気になるもん! 誰?」
「でもぉー」
「まさか‥‥自分だって言うんじゃないでしょうね?」
「いや、それはない。 だってあたしにはズングリームックリーが」
「それは柴ちゃんでしょ」
「そっかぁ」
私のイライラは頂点に達した。
「もう! そんな大袈裟に引っ張らないでよ!」
「うわっ梨華ちゃんが怒った」
「無駄にもったいぶるからでしょ!」
よっすぃ〜は少し考える素振りを見せたが、ぷいっとそっぽを向いた。
「やっぱやーめた」
「どうして!」
「だってもし間違ってたらやだもん」
「何よそれ!」
「じゃあ明日になったらってことで」
- 461 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:16
-
† † †
- 462 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:16
-
――――――――――
「スクール☆ガール」、4人目の発表!
保田 圭
ついに残りは1人です!
――――――――――
よっすぃ〜はPCの前の椅子に1人で座って、
告知文を読みながら勝ち誇ったようににやけていた。
「へっへっへ、やっぱり当たってた」
いいかげん我慢できなくなって訊ねてみる。
「そろそろ教えてよ。 この人たちの共通点って何なの?」
よっすぃ〜は偉そうに腕を組み、おもむろに足を組み替え、
床に座っている私を尊大な態度で見下ろした。
「じゃあ頭の悪い梨華ちゃんにも分かるように言ってあげようか」
ムカつくーーー!!!!!
アフォだと思っている奴にバカにされるのは癪である。
でもここで反抗したら、また教えてくれないかもしれない。
私は諦めて下手に出た。
「はいはい、知りたいです、お願いします」
- 463 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:17
-
よっすぃ〜は得意げに切り出した。
「ヒントあったじゃん?」
「ユニット名だとか‥‥スクール☆ガール?」
「そう、それ、スクール。 あたしはそれでピンと来たね」
「えぇ?」
「で、今まで発表された4人の名前。 高橋、中澤、大谷、保田」
「意味分かんない」
「じゃあ紙にでも書いてみな」
言われた通り、私はその辺にあった紙切れに4人の名前を書いた。
「なんか気づかない?」
「なんかって‥‥‥あ! もしかして」
文字に目を滑らせてみて意味が分かった。
頭文字だ!
高橋の“高”、中澤の“中”、大谷の“大”、保田の“保”。
「高校、中学、大学、保育園!」
「おぉ、正解正解。 4人の苗字は教育機関の頭文字だったんだよね」
「そっか! それでヒントが“スクール”なのね!」
- 464 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:17
-
私は嬉しくなって、よっすぃ〜と一緒に推理を続けた。
「残るは小学校、つまり名前の頭文字が“小”の人」
「今のところワンダが1人、エルダが3人出てるから」
「最後の1人はエルダ!」
「エルダメンで“小”がつくのは!」
「小川麻琴!!!」
「よーし! ひーちゃんマコトに電話しちゃおうっと!」
って、ちょっと待て!
慌ててよっすぃ〜を止める。
「やめなよ、本人も知らないだろうしネタバレさせちゃまずいでしょ」
「えー、明日いきなり知ってびっくりするより、ワンクッションあったほうがいいじゃん」
「そんなんいつ知ったってびっくりするよ」
「だって、せっかく解けたんだから自慢しとかないともったいないし」
「‥‥‥確かに」
私の道徳意識は自己顕示欲に負けた。
- 465 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:18
-
「あっ、もしもしマコトー?」
『吉澤しゃん! どうしたんですか?』
「あのねぇ、今ユニットのメンバー発表やってるじゃん?」
『はい』
「あれって最後の1人、マコトだよ」
『‥‥‥へっ!?』
「マジマジマジ、明日発表されるから楽しみにしてな」
『え、ちょ、それどういう‥‥』
「じゃあねー」
ピッ。
よっすぃ〜は一方的に電話を切ると、満足げにうんうん頷いた。
「良かった良かった、やっとマコトにもスポットライトが当たる時が来たか」
- 466 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:19
-
その後、麻琴から何度かメールが来た。
『明日のために驚く練習と喜ぶ練習しておきます!』
『新ユニットだし、気合い入れて美容院行ってきます!』
『久々にボイトレのレッスンすることにしました!』
『今ストレッチしてます!』
『せっかくだから明日5期で集まって飲み会でもしようかな(笑)』
『吉澤さんと石川さんも来ますか? なんつって(笑)』
- 467 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:19
-
麻琴の微笑ましいメールを見ながら、私たちも幸せな気分になった。
今まで報われなかった後輩の活躍は素直に嬉しい。
ふと気になることがあったので、よっすぃ〜に訊ねてみた。
「ねぇ‥‥そういえばさ、教育機関なのに保育園ってちょっとアレじゃない?」
「へ?」
「どっちかと言うと保育園は福祉施設でしょ」
「あー、教育施設って言われるのは幼稚園のほうだもんね」
「まぁ、苗字に“幼”がつく人なんていないから保育園でもいいんだろうけど」
「あと、あたしも気になるっちゃー気になることがある」
「何?」
「教育機関の頭文字が答えで、スクールがヒントってなんか簡単すぎるよね」
「うーん、言われてみれば」
「まぁ、そんなに難解なクイズにする必要もないんだろうけど」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「「‥‥ま、どうでもいいか‥‥」」
- 468 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:20
-
† † †
- 469 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:20
-
――――――――――
「スクール☆ガール」、ついにラスト、5人目の発表です!
飯田 圭織
涙の復帰を果たしたカオリンが満を辞して参加!
5人の共通点は分かりましたか?
それではスクール☆ガールを応援して下さいね!
――――――――――
- 470 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:21
-
高橋 愛
タカハシ アイ
( I )
中澤 裕子
ナカザワ ユウコ
( U )
大谷 雅恵
オオタニ マサエ
( O )
保田 圭
ヤスダ ケイ
( K )
飯田 圭織
イイダ カオリ
( E )
- 471 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:21
-
- 472 名前:新ユニット 投稿日:2008/12/18(木) 08:21
-
- 473 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:21
- 終わりです。
- 474 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 08:45
- 次に更新するかもしれない3作を
とりあえず予告。
○中島・熊井
○吉澤・仙石
○高橋
- 475 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/18(木) 16:53
- マコおおおおおおおおおおおおおお
- 476 名前:狼さん 投稿日:2008/12/19(金) 00:12
- まこちぃ・・・
- 477 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/27(土) 23:04
- 読解力のなさでオチがわからない・・・
- 478 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/27(土) 23:35
- では>>101に甘えて
>>477
5人の共通点は
名前に教育機関の頭文字があることじゃなくて
名前にアルファベットの読みがあること
- 479 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/28(日) 16:51
- みっつぃ…
- 480 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/31(土) 15:24
- >>475-476
∬∬´▽`)<人生なんてそんなもんだよね
>>477
すみません、私の構成力のなさが原因です
>>478
おお、解説どうもくん
その通りです
>>479
川=´┴`)<?
予告までしといて申し訳ありませんが、
な、な、なんとこのスレはもう更新しません!
削除依頼まで出しちゃう予定です。
娘。小説自体は自サイトで続けるのでよろぴく。
ttp://space.geocities.jp/shal_and_do/
- 481 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/03(火) 16:15
- 川#σ_σ||<ミュン!!
ってこちらも削除なさるんですね
お疲れさまですサイト行かせていただきます
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