幼馴染
1 名前:名無し 投稿日:2007/08/20(月) 19:47






前スレ『together』内の幼馴染の続きです。






2 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:47


美貴君と梨華ちゃんが高校に入ってから3ヶ月が経ちました。
高校生ライフを満喫している2人。
一方、中学生ライフのひとみ君は最後の大会に向けて猛練習中です。
高校は強いところに行きたいと思っているひとみ君には、この夏が大勝負なのです。

「じゃあまた明日」
「おう、また」

「ふぅ」とため息をついたひとみ君の顔は、疲れが溜まっているように見えます。
そんなひとみ君を心配するのは、マネージャーの愛ちゃんです。
密かにひとみ君に恋心を抱いています。

「大丈夫?」
「何がぁ?」
「なんか・・・・疲れてるっぽいから」

ひとみ君はまた上を見上げて息をつき、笑顔で「大丈夫だよ」と言いました。
その顔が妙に悲しく見えて、
愛ちゃんは座っているひとみ君を思わず包み込むように抱きしめてしまいました。


3 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:48


「無理せんでね」

驚いたひとみ君ですが、
胸が顔に当たり少し気持ち良いのでしばらく愛ちゃんに身を任せていました。

「あたしは何にもしてあげれんけど」
「愛ちゃんてたまに訛るよね」
「おばぁちゃんっ子やからね」

しばらくそのままで居た2人ですが、ひとみ君から愛ちゃんを離しました。

「ありがと。また頑張れそうだよ」

複雑な顔をしながら愛ちゃんは頷きました。
ひとみ君が自分を求めていないとわかっているのです。求めているのは梨華ちゃん。
わかっていてもひとみ君を想い続ける愛ちゃん。

一方でそんな愛ちゃんを想い続ける麻琴君。
幼馴染の捻れた恋愛関係は、なかなか解くことが出来ないのです。


4 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:49











****************************************












5 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:49


「ねぇ美貴ちゃん。ひーちゃん元気?」
「あぁ、元気だよ。試合近いし頑張ってるんじゃない?」
「そっかぁ」
「どした?」
「ううん、最近会ってないから」

高校に入って以来、梨華ちゃんはバイトを始めたためひとみ君と会えなくなりました。
前は遊びに来ていたひとみ君も、最近は練習が忙しいからなのか遊びに来ません。
梨華ちゃんは何となく寂しいのです。ひとみ君と居るときが一番落ち着くときでした。

「まぁお互いバイトだ部活だで忙しいからしょうがないんじゃね?」
「亜弥ちゃんとは会ってるの?」
「え?・・・あぁまぁ、ぼちぼち」

美貴君と亜弥ちゃんは順調な交際をしています。
いまだに亜弥ちゃんの話を振られると照れてしまう美貴君。
梨華ちゃんもそれをわかって話を振っています。


6 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:49


「いいなぁ。ラブラブで」
「ラブラブじゃねーよ」

そんな仲良しな美貴君と亜弥ちゃんですが、美貴君は1つ悩みを抱えています。
これはなかなか人に言えない悩み。もちろん梨華ちゃんには言えません。
愛ある行為のことです。
残念ながらまだしていませんが、チャンスがあればしたいのです。
しかし亜弥ちゃんは中学2年生。していいものなのかどうか悩んでいるのです。
この悩みの解決法は、今のところありません。自分で考えるしかないのです。

「はぁ」
「なぁに、ため息なんてついて」
「いや、なんでもない。つーかさ、梨華ちゃんはひとみと付き合ってるの?」
「え?・・・・・付き合ってないけど」

そう。梨華ちゃんとひとみ君は付き合っているわけではないのです。
ただ今まで一緒にいて、最近一緒に居れないから寂しいだけ。
端から見ればカップルですよね。


7 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:50


「ふ〜ん。彼氏作れば?」
「えぇ?何よ急に」
「梨華ちゃんモテるしさ、すぐ出来るじゃん」
「モテません。すぐになんて出来ません」
「友達紹介してやろっか?結構居るよ、気がある奴」

口を尖らせる梨華ちゃん。別に彼氏が欲しいわけではないのです。
そのことをわかっている美貴君ですが、あえてその話を振ってみたのです。
自分のことを棚にあげて、いつまでも煮え切らない2人の関係に少々イラついています。

「バイト先にいい人とか居ないの?」
「居ません。彼氏とかいらないし」
「なんで?楽しいよ」
「美貴ちゃんは相手が亜弥ちゃんだから楽しいのよ。
 私は他の人と付き合っても楽しくありません」

美貴君はニヤっとバレないように笑いました。


8 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:50


「じゃあ誰なら楽しいわけ?」
「え?・・・・・・・・」

梨華ちゃんは言葉を詰まらせました。もちろんひとみ君と居るときが楽しいのです。

「・・・・・素直になればいいのにさ」
「・・・・・」

ガンガン照りつける太陽の下で、色々考える梨華ちゃん。
ひとみ君と居るときは楽しい。好きは好きでも恋のほうなのかどうかわからない。
なんせずっと一緒にいたんだもの。それが当たり前だったんだもの。

「わかんないよ」

梨華ちゃんはポツリと呟きました。
この2人をどうにかうまくいかせたいと思う美貴君ですが、
どうすればいいのかわかりません。

「俺もわかんね」


9 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:50











****************************************












10 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:50


「中澤!ちょっといいか?」

3年生最後の試合は地区の決勝までいったが、優勝することは出来ませんでした。
その後ひとみ君は進路を決めず、ちょっと考えさせてと言いました。
強い高校に行きたい気持ちは変わってない。

10月のある日、部活の顧問から呼び出されました。
そして小さい個室に入れと言われます。

「俺なんかしましたっけ?」
「いや、そうじゃない。お前が欲しいという高校があってな」

ひとみ君は飛び跳ねるほど嬉しい言葉でした。

「どこの高校ですか?」
「隣街のH市の高校なんだけど、私立でな。ちょいと金がかかるかもしれん」
「私立・・・・・金か・・・・・」


11 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:51


特待生ではあるが、全員寮に入らなければならず、その辺の援助はないとのこと。

「どうする?」

ひとみ君はすぐにでも行きたいと言いたかった。この辺では唯一の強豪校。
チャンスは逃したくない。しかし金銭の問題は親との相談だ。

「両親に聞いてみます」
「おう。お前が願ってたことだからな」
「はい」

隣の市だが、全寮制のため親とも離れることになります。
もちろんそういうことがある前提で考えてはいたことですが少し寂しい気もします。
色々考えるひとみ君の頭に一番大きく出ていたのは、梨華ちゃんのこと。
今でもほとんど会えていない。遊びに行ってもいつもバイトで居なかったのです。
寮に入るとなれば、3年間はほとんど会えないことになるかもしれない。
その間に梨華ちゃんには彼氏が出来るかもしれない。
もしかした結婚するかもしれない。
色々と有り得ない妄想をしながら家へと帰ってくひとみ君でした。


12 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:51











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++












13 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:51


「ただいま〜」
「お帰り」

家に帰ると真里ママが夕飯の支度をしていました。
他には誰もいないようです。

「父さんは今日遅いの?」
「なんも言ってなかったからいつも通りじゃない?」
「そっか」

いつも通りなら夕飯の時に言おうと考えるひとみ君。

「どうしたの?なんかあった?」
「え?いや、別に。なんで?」
「う〜ん?なんか意気込んだ顔してるから」

母は強し。子供のことならなんでもわかってしまう目を持っているのです。

「父さんが帰ってきたら話すよ」
「そう」


14 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:51











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++











15 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:52


「ただいま」
「あーパパお帰り」
「すぐご飯できるから」
「おぅ」

中澤パパが帰ってきた気配を感じて、ひとみ君はリビングへ降りていきました。

「おかえり」
「お、ただいま〜」

無言で中澤パパの向かいの椅子に座るひとみ君。さぁ勝負です。
真里ママの美味しいご飯がテーブルに並べられていきます。

「じゃ、食べよう」
「「「「いただきます」」」」

美貴君は部活のため帰りはいつも21時ごろ。
だから最近は4人で夕飯を食べることが多いのです。


16 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:52


「絵里。学校はどうや?」
「楽しいよぉ。絵里とガキさんね、ウサギの飼育係」

ガキさんとは里沙君のことです。
自分よりも子供みたいだからと絵里ちゃんがつけたのですが、
今ではクラス中がガキさんと呼んでいます。

「そうかぁ。ほな毎日餌やりに行かんとあかんな」
「うん!でも楽しい」

絵里ちゃんの眩しい笑顔にノックアウト状態の中澤パパ。
デレデレしまくで締まりの無い顔をしています。

「ひとみ。なんか話すことあるんじゃなかったの?」

なかなか言い出さないひとみ君に、真里ママが攻撃を仕掛けました。
いきなり振られてびっくりのひとみ君ですが、言わなければならないことなのです。


17 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:53


「ん?なんや?ひとみもなんかの飼育係か?」
「いや、違う」
「・・・・・なんやねん」
「実は・・・」

ひとみ君は高校のことを話しました。自分が行きたいということも。
何を言われるかビクビクしていたひとみ君ですが、答えは意外にもあっさりしていました。

「金のことは心配すな。行ったらええやん、行きたいんやろ?」
「うん、行きたい」
「そんなん反対する理由なんてあらへん。精一杯やってきたらええ」
「・・・・・ありがと」
「ただ途中で逃げ出すことだけはしたらあかんで。最後まで頑張りや」

ひとみ君は大きく頷きました。
こうしてひとみ君の願いは叶い、サッカーの強い高校へ行くこととなったのです。
寮生活。滅多に家族とも会えません。もちろん梨華ちゃんとも。
それでもひとみ君は自分の道を進むのです。


18 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:53











****************************************











19 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:53


梨華ちゃんは美貴君からひとみ君が家を出ることを聞かされました。
「強い高校に行きたい」と言っていたのは知っていましたが、
まさか本当に行ってしまうとは思っていませんでした。

「そうなんだ」
「やっぱりあいつ話してなかったんだ」
「うん・・・・」

寮に入り滅多に会えなくなることも聞きました。梨華ちゃんは急に寂しくなります。

「じゃあ全然会えなくなるんだ」
「そういうこと」

梨華ちゃんの目には涙。

「泣くなよぉ。別に一生会えなくなるわけじゃないんだから」
「だってぇ〜」
「だってなんだよ」
「今までずっと一緒だったのに、一緒じゃなくなるんだよぉ」


20 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:53


梨華ちゃんは堪えきれずに泣き出してしまいました。ここはとある公園。

「ちょっ、俺が泣かしたみたいじゃんか〜」
「だってひーちゃんがぁ」
「いつまでも皆一緒に居れるわけじゃないんだから。
 あいつの夢が叶ったんだから喜べよ」

そんなことは梨華ちゃんだって分かっています。
あのときのあの目は今も忘れません。真剣でした。でも寂しいのです。

「今だってほとんど会ってないくせに」
「違うのぉ。会ってなくても近くに居る安心感があるじゃない。
 少し歩けば会えるって安心感が」

美貴君は「知らねぇよそんなの」と呟きました。

「美貴ちゃんには乙女心はわからないのよぉ!」
「そりゃわかんねーよ」


21 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:54


しばらくして梨華ちゃんは泣き止みました。美貴君は一息ついて立ち上がります。

「久しぶりにうちで飯食うか?」
「・・・えぇ?いいの?」
「駄目なんて言うわけないだろ、うちの親は」

2人はその足で中澤家へと歩き出しました。まだグスグスいってる梨華ちゃん。
心の中でため息をつく美貴君。なんだかんだいって優しい男なのです。

途中、亜弥ちゃんに会い、一緒に中澤家で夕飯を食べることになりました。

「ただいま」
「たっだいま〜」
「お邪魔します」
「あら〜おかえり。梨華ちゃん久しぶりだねぇ」

そう言いながら真里ママは慌しく夕飯の準備。


22 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:54


「いやぁ、また綺麗になったんじゃない?」
「はは、ありがとうございます」
「もうすぐ出来るから待っててねぇ」
「はい」

3人でリビングの椅子に腰をかけます。

「ひとみは?」
「練習じゃないの?もうそろそろ帰ってくるでしょ」

久しぶりに会うひとみ君に何だかドキドキしてる梨華ちゃん。
実は夏に話しただけで、2ヶ月ぐらい会っていないのです。

「ただいま〜」
「お、帰ってきた」

ばっちり目が合う2人。ひとみ君は恥ずかしくなり視線を外しました。


23 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:54


「ひー君おかえり」
「また来てんのかよぉ」
「いいでしょ?たんに会いに来てるんだから」

「ねー」と美貴君に同意を求める亜弥ちゃん。美貴君は頷くしかありません。

「おかえりなさい」
「・・・・ただいまです」
「なーんか変な敬語ぉ。2人どうしたの?」

能天気な亜弥ちゃんは2人の微妙な雰囲気に気がつきません。
梨華ちゃんもひとみ君は苦笑い。

「さ!ご飯できたわよぉ」

真里ママの一声で皆食卓テーブルへ移動です。

食事の間もほとんど2人は会話をしませんでした。


24 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:54











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++











25 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:55


「ごちそうさまでした。私そろそろ帰るね」
「えぇ〜もう帰るの?」
「うん、明日も学校だし」

梨華ちゃんはひとみ君となかなかうまく話せないことが悲しく、
その場から逃げたかったのです。
梨華ちゃんが帰り支度をしていると、中澤パパが帰ってきました。

「ただいま〜。今日は仰山おるなぁ」
「お邪魔してます」
「梨華ちゃんは久しぶりやな。なんやもう帰るん」
「はい」
「もう少しゆっくりしてったらええがな。オジサンにお酒注いでくれへん?」

梨華ちゃんは少し戸惑いました。
でも久しぶりに中澤パパに会い、笑顔でお願いされたら断ることはできません。

「じゃあ、少しだけ」
「ありがとぉ」


26 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:55


「いや〜それにしてもあんなに小さかったんが、こんなベッピンさんになんねやな」
「ほんと、子どもだったのにねぇ」

中澤パパと真里ママは梨華ちゃんを見ながら言いました。
2人とも小さいころを思い出しているのです。昔から素直で可愛らしい女の子でした。
中澤パパは梨華ちゃんは必ず嫁に来てくれると思っています。

「もっと大人になって、早く嫁に来てな」
「え?」
「こんな嫁さんに毎晩晩酌に付きおうてもらえたら最高やで」

梨華ちゃんもその周りの全員目が点になっています。
それでもご機嫌の中澤パパ。勝手な人です。

「なんで梨華ちゃんが嫁に来るんだよ」
「・・・・・来るやろ」
「なんでだよ」
「何いうてんねん。ひとみの彼女やったら将来的にはうちの嫁さんやろ」


27 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:55


はい、皆凍りついています。誰もひとみくんの彼女が梨華ちゃんだとは言ってません。
すべて中澤パパの妄想です。みんなの目が徐々に冷ややかになってきました。

「・・・・・え?ちゃうの?」
「誰が梨華ちゃんとひとみが付き合ってるなんて言ったよ」
「えぇ?だってここにおるやん」
「それは幼馴染だから当たり前だろ。呼んだの俺だし」
「・・・・何やねん。まだだったんかいな。盛り上がって損したわ」

盛り上がっていたのは中澤パパだけです。ここにいる全員が呆れています。

「でも梨華ちゃんにお酒を注いでもらえるのはええなぁ」
「今度はあたしが注ぐぅ」
「ええって。亜弥ちゃん下手そうやもん」
「そんなことないも〜ん」

その後は中澤パパと亜弥ちゃんの追いかけっこです。


28 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:56


「これいっつもやってるから気にしないで」
「いっつも!?」
「そう。父さんは亜弥ちゃんに注いでもらうのが嫌らしいんだよね。よくわかんないけど」

中澤パパの頭には、
亜弥ちゃんはおてんば娘でお酒をうまく注げないイメージがあるのです。
それは本当にイメージで、実際はきちんと注げるんですけどね。

「もうええって」
「なぁんでぇ、あたしのも飲んでぇ」
「お前エロいねん」
「お父さん!訳のわからないこと言わないの!!」

中澤パパは真里ママに怒られてしまいました。
しゅんとなってソファに座る中澤パパの横に亜弥ちゃん登場です。

「はい、どうぞ」
「あ、どうもぉ」

ニヒっと笑った亜弥ちゃんはとってもいい笑顔でした。


29 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:56


その光景を笑ってみていた梨華ちゃん。その梨華ちゃんを見ているひとみ君。
自分の進路について、自分の口から言おうと決心しているのです。

「梨華ちゃん。ちょっといい?」
「ん?うん」

2人はそのまま2階のひとみ君の部屋へ・・・・・
その様子を見ていた美貴君は、心配そうに2人の歩いた後を見ていました。

「あいつ大丈夫かな」
「え?誰?」
「ん、いや。なんでもない」

馬鹿でも自分の弟。キショくても自分の幼馴染。
やはり2人動向が気になる美貴君なのです。

「ねぇたん。上行こうよぉ」
「あぁ、行こうか」


30 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:56


ここはひとみ君の部屋。この前来たときとさほど変わっていません。
きれいに並べられた箱たちの中から、『あの箱』だけは抜かれています。

「どうしたの?ひーちゃん」

久しぶりの梨華ちゃんの甘い声で名前を呼ばれ、ニヤっとしてしまいました。
それを見られまいと梨華ちゃんに背を向けるひとみ君。

「実はさ・・・・・」
「んん?」
「俺高校決まりそうなんだ。強いとこに」

この話はもうすでに美貴君から聞いていますが、ひとみ君の口から直接聞くと、
やはり寂しさが込み上げてきます。

「・・・・そっか、良かったね」
「うん・・・・・でそこがさ、全寮制だからこの家出ることになる」
「・・・うん」
「あんまり帰ってこれないかもしれない」
「・・・・・・・・」


31 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:56


梨華ちゃんはもう声になりませんでした。悲しすぎるのです。
そんな梨華ちゃんの異変に気がついてひとみ君は振り返りました。
そこには涙を流してただ頷いている女の人。その姿が妙に美しく、眩しくもありました。
ひとみ君は静かに近寄り、優しく梨華ちゃんを抱きしめます。
梨華ちゃんも抵抗せずにそのまま抱きしめられていました。

何も言葉を交わさないこの空間。
中学生の分際でこんな甘い雰囲気を醸し出して良いのかと思うほど甘ったるい空間。

搾り出すように梨華ちゃんがひとみ君に声をかけました。

「頑張、、って、ね」
「・・・・・うん」

さっきよりも強く抱きしめます。梨華ちゃんが愛しくて仕方がないのです。
中学生のときからこの感情を味わえるだなんて、幸せですね。


32 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:57


「うわぁ、いい感じじゃない?」
「いや、まだこれからだ。あいつはヘタレだからあれ以上は無理」
「うっそぉ。あそこまで来てまだ付き合わないってことぉ?」
「その通り」

ひとみ君の部屋の前でひそひそ話しながら隙間から見ているのは美貴君と亜弥ちゃん。
盗み聞き盗み見はいけません。でも気になる気持ちはわかります。

しばらくすると2人は離れ、なんとなく照れくさくなったのかお互い笑い出しました。

「あはは。ひーちゃん良かったね。行きたいって言ってたもんね」
「うん。待ってたかいがあったよ」

2人の雰囲気はさっきまでとは異なり、幼馴染の雰囲気。美貴君の正解です。

「な?普通になっちゃっただろ?」
「うー。つまんない」


33 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:57


「じゃ、下行こうか」
「うん」

そう言って横を向いたひとみ君の頬に柔らかい感触。そうです梨華ちゃんの唇です。
ひとみ君は一瞬固まってしまいました。
梨華ちゃんはというと、天使のような笑顔で笑っています。
そして自分だけそそくさと部屋を出て行きました。
つばを飲み込んだひとみ君は、倒れそうになりながら後を追って下に降りていきました。

「ねぇ!今の見た?梨華ちゃんて意外と積極的なんだね」
「相手があれじゃあ積極的になるかもな」
「亜弥もチュウしたい」
「はいはい」

ここの2人はなかなかうまくやっているようです。
美貴君のモヤモヤを知らない亜弥ちゃんが、ただ一人幸せものなのかもしれません。


34 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/20(月) 19:59


お互いに秘めた思いがあるのに出せないとき。


不器用でうまく相手を愛せないとき。


そんな時、一呼吸おいて相手の名前を心の中で叫び、『愛している』と言いましょう。


そしたら素直になれるかもしれません。


恋愛の難しさを痛感している9人の子どもたちのお話。



                         v(O^〜^)(^▽^ )  つづく


35 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/21(火) 00:09
頑張れひとみ君!
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/21(火) 00:54
へたれひーちゃんに、積極的な行動に出た梨華ちゃん
それを、心配しつつも楽しんでる美貴、亜弥、いい感じですね。 
がんばれ!ひーちゃん!!梨華ちゃんの勇気を無駄にするなよ。
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/21(火) 00:56
愛ちゃん、切ないですね。
38 名前:名無し 投稿日:2007/08/21(火) 07:57
がんばれ!!マコ〜〜〜
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/23(木) 09:23
ガキさんとかいつか絡んでくるんでしょうかw
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/04(火) 00:43
美貴君と亜弥ちゃんの愛ある行為についてwktkして待ってます(・∀・)
41 名前:名無し 投稿日:2007/09/29(土) 22:42
>>35:名無飼育さん様
 ありがとうございます。応援してあげてください。

>>36:名無飼育さん様
 ヘタレですが、頑張らせます。

>>37:名無飼育さん様
 またしばらく出てきませんがお待ちをm(__)m

>>38:名無飼育さん様
 マコもなかなか出てきませんよねぇ(;^^)スイマセン。

>>39:名無飼育さん様
 ガキさんも絡めますが、もう少しお待ちを!
 内容は考えていますので。

>>40:名無飼育さん様
 愛ある行為・・・・待っててくれるんですか?w


42 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:43


ひとみ君が中学を卒業し、高校へ入学してから3ヶ月が経ちました。
寮に入るひとみ君を、涙を見せずに笑顔で送り出した梨華ちゃん。
もう泣かないと決めたのです。泣くとひとみ君が心配します。

「おはよう、梨華ちゃんに美貴ぃ」
「おはよう柴ちゃん」
「おはよ」

本日も仲良く登校中の梨華ちゃんと美貴君。高校2年生になっても変わらないのです。

「なんかいいなぁ、幼馴染って」
「そうか?ウザイ時もあるぞ?」
「誰がウザイのよぉ」
「それがウザイのよぉ」
「あっはは。そうやって言い合える仲っていいよ、本当に」

美貴君と梨華ちゃんは顔を見合わせて苦笑いします。
お互いがお互いを大事だと思っていることに変わりはありません。
すごく良い関係なのです。


43 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:43


「柴ちゃん、幼馴染いないの?」
「ん?居るよぉ。まさお」
「大谷さん?じゃあ彼氏は幼馴染ってこと?」
「そう。いつの間にかそうなっちゃった」

大谷さんとは梨華ちゃんを合格させてくれた家庭教師。ひとみ君の天敵。
すでにあの頃からあゆみちゃんとは付き合っていました。

「お互い落ち着くところを探してたら、行き着いた場所が同じだったんだよねぇ」

美貴君と亜弥ちゃんみたいなものです。隣に居ないと落ち着かない。
そういう面でいうと、美貴君と梨華ちゃんも同じかもしれません。
恋愛感情はまったくありませんが、朝は必ず一緒にいます。

「2人はないの?」
「私と美貴ちゃんってこと?」
「そう。いっつも一緒じゃん」
「ないよぉ。美貴ちゃんには亜弥ちゃんがいるし」


44 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:44


亜弥ちゃんは今、美貴君と同じ高校に入ろうと必死で勉強中。
家庭教師はもちろん美貴君。キビキビしていて良い先生です。

「そっかぁ、亜弥ちゃんねぇ。あの子面白いから美貴にはあってるんだ」
「どういう意味だよ」
「誰かさんはいっつもむくれてるから、ああいう子に笑わせてもらわないと」

美貴君があゆみちゃんを睨みます。好きでむくれているわけではないのです。
こういう顔に生まれてきてしまったので、仕方がないのです。

「ねぇ、梨華ちゃん。今日の夜暇?」
「夜?うん、、、まぁバイトはないけど」
「マジ?じゃあ今日遊びに行かない?」

高校2年生にもなれば、色んなところへ遊びに行くものです。
しかし梨華ちゃんはなかなか遊びに出かけようとはしませんでした。
意外と横着で面倒くさがりなのです。



45 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:44


「たまにはいいじゃん!明日休みなんだし、遊ぼうよぉ」

あゆみちゃんはしつこく梨華ちゃんを誘ってきます。
その様子を見ていた美貴君は、「これは何かあるな」と悟りました。

「嫌がってるみたいだしさ、あんま誘ってやるなって」
「だぁってぇ」
「何を狙ってんだよ」
「いや、別に・・・・・」

あゆみちゃんは黙ってしまいました。梨華ちゃんは話がわからずにポケっとしています。
美貴君も困り顔。言わなきゃ良かったかなぁと後悔しています。

「別にどうでもいいけど」

美貴君はそう言って教室に入っていきました。
あゆみちゃんは口を尖らしたまま美貴君が歩いていく方向を見ています。

「美貴の奴ぅ」


46 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:45










++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










47 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:45


お昼休み。あゆみちゃんは梨華ちゃんを誘い続けます。

「柴ちゃん。なんでそんなに必死なの?」
「えぇ〜だって・・・・・まさおがさぁ」
「大谷さんが?」
「梨華ちゃん連れて来いっていうから」

梨華ちゃんはまたキョトンとしています。
大谷さんから呼ばれたらしょうがないかなとも思うのです。

「いいよぉ。たまには遊ぼっか」
「本当に?良かったぁ。いっつもまさおと2人だから飽きてたんだよね」

それは言ってもいい発言なのかなと思う梨華ちゃん。

「私お邪魔じゃないの?」
「全然!梨華ちゃんもさ、恋しようよ、恋」


48 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:45


あゆみちゃんの発言に?を浮かべる梨華ちゃん。

「いきなり何よぉ」
「だってさ、梨華ちゃん誰とも付き合おうとしないじゃん」

梨華ちゃんは黙ってしまいました。
高校2年生になり、女性の身体になった梨華ちゃんはとても美しいのです。
男の子が放っておくわけがありません。
イケメンに何度も告白されましたが、誰とも付き合ったことはありませんでした。
それはもちろん、心の中にひとみ君がいるからです。

「別に彼氏とか欲しくないし・・・」
「楽しいよ?色々と」

梨華ちゃんは困った顔をしています。あゆみちゃんはニヤニヤしています。

「ま、とりあえず今日は遊ぼうね?」
「うん」


49 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:46










++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










50 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:46


「遅いよ」
「ごーめん」

待ち合わせの場所に着くと、すでに大谷さんともう1人男の人がいました。
梨華ちゃんは大谷さんに挨拶をし、隣の人にも会釈しました。
かなりのイケメンでスラっとしています。王子様のようです。

「あ、こちらが綾小路さん?」
「そうそう。俺の後輩」
「始めまして、綾小路文麿です」
「はじめまして、柴田あゆみです。こちらが私の友達の石川梨華ちゃん」
「こんにちは」

綾小路君は少し微笑み、頭を下げました。今まで出会ったことがないタイプです。
梨華ちゃんの周りの男の子は、皆やんちゃ坊主でした。
幼馴染たちは特にやんちゃです。


51 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:47


「お父さんが会社の社長とか、凄いねぇ」

綾小路君は梨華ちゃんの1つ下で、いいとこの坊ちゃんでした。
近くの男子校に通っていて、凄くモテるそうです。これは大谷さん情報。

「彼女とかいないのぉ?」
「あぁ、いないですねぇ」
「こんなにカッコいいのに?もったいなぁい。梨華ちゃんも彼氏いないもんね」
「いないんですか?」
「うん」
「驚いたしょ?」
「はい、こんなに美しい方なのでてっきり居るものだと思っていました」

面と向かって美しいと言われ、梨華ちゃんは頬を赤らめました。
今まで男の人からそんなことを言われたことはありません。
綾小路君の顔を真っ直ぐに見れなくなった梨華ちゃんは、俯き加減で話を聞いています。


52 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:47


「梨華ちゃんどうしたの?具合でも悪い?」
「え?ううん、大丈夫だよ」
「そう?」

あゆみちゃんは梨華ちゃんが恥ずかしがって俯いていることに気付いていましたが、
あえてそこには触れませんでした。

「もう完璧だよね、綾小路君って」
「そんなことないですよ」
「スポーツ万能で頭も良くて・・・・・なぁんで彼女いないのぉ?」
「なんででしょう?」

綾小路君は困った顔をして、苦笑いです。

「じゃあさ、あたしと付き合う?」
「おい!彼氏を前にしてそういうことを言うな」

大谷さんの一言に笑いが起きます。
梨華ちゃんも何故綾小路君に彼女が居ないのか不思議でたまりませんでした。
スポーツは出来ても頭の悪いひとみ君のことを思い出し、
そういえばモテルのに彼女いないもんねぇと思いました。


53 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:48











+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










54 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:48


「今日は楽しかったねぇ」
「そうだな。あ、綾小路、梨華ちゃん送ってあげてよ」
「え?いいですよ。1人で帰れますから」
「そういうわけにはいかないよ。綾小路の家、梨華ちゃん家のほうだから」
「そうだよ、送ってもらったほうがいいよ。どうせ同じ方角ならさ」

梨華ちゃんは悪いなぁと思いつつも、同じ方角ということで送ってもらうことにしました。
綾小路君にとっては当たり前のことです。女の子を1人で帰すことはできません。

「すいません。わざわざ送っていただけるなんて」
「いえ。当たり前のことですから」

このとき既に綾小路君は梨華ちゃんに惚れていました。
梨華ちゃんの仕草や話し方など、全てが可愛かったのです。
でも自分からなかなかアプローチは出来ないシャイな綾小路君。
頑張ってもアドレスを交換するぐらいでした。

「あの、その・・・」
「はい?」
「・・・・・メールアドレスとか、教えてもらえませんか?」
「あ、いいですよ」


55 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:48


何も考えてない梨華ちゃんは友達が増えることを嬉しく思っています。

そうこうしているうちに、梨華ちゃんの家に着きました。

「ありがとうございました」
「いえ、今日は楽しかったです」

2人がお別れの挨拶をしているところに、美貴君が家から出てきました。
これから亜弥ちゃんに勉強を教えに行くところです。
ばったり会ってしまった、梨華ちゃんと美貴君。
美貴君は梨華ちゃんを見ることはせず、
一緒にいる綾小路君をいつもよりキツイ目つきで見ています。

「美貴ちゃん、今から亜弥ちゃんのとこ?」
「うん」

美貴君は綾小路君を見たまま答えます。その視線に気付いた梨華ちゃん。

「あ、こちら綾小路君。今日ね、柴ちゃんと大谷さんと4人で遊んだの」
「ふーん」
「こっちは美貴ちゃん。あたしの幼馴染。見ての通り男の子だけどね」


56 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:49


綾小路君は軽く会釈をしました。美貴君は首を前に出すように会釈しました。
凄く変な空気が漂っています。梨華ちゃんもそれに気付いていました。

「あ、亜弥ちゃん待ってるんじゃない?」
「あぁ、そうだね」

美貴君はやっと綾小路君から目線を外し、亜弥ちゃんの家へと歩き出しました。
美貴君が去るまで動けない綾小路君。固まっています。怖いのです。

「ゴメンね、目つき悪いでしょ?でも優しい人だから」
「あ、はい」
「じゃあまたね。今日は本当にありがと」
「いえ、ではまた」

綾小路君が角を曲がって見えなくなるまで梨華ちゃんは見送っていました。

何かが動き出しそうな予感がします。


57 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:50











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










58 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:50


「たん?なんでそんなに機嫌悪いのぉ?」
「別に悪くないし」
「怒ってるじゃん」

亜弥ちゃんも口を尖らせて不貞腐れています。
美貴君が機嫌悪い理由はもちろん、梨華ちゃんのことです。
でもそれをこの場に持ってきてはいけません。
亜弥ちゃんは何があったのか知らないのです。

「言わなきゃわかんないよ」

亜弥ちゃんが不貞腐れていることに気がついた美貴君は、
悪かったなと思いつつ亜弥ちゃんを抱きしめます。
亜弥ちゃんも美貴君の背中に手を回しました。

「どうしたの?」
「んー?俺もよく分からないんだけど・・・」
「ん?」

美貴君はさっき梨華ちゃんと綾小路君に会ったことを話しました。
そしてなぜか面白くないという気持ちも正直に言いました。


59 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:50


「たん。それってヤキモチじゃないの?」
「・・・・ヤキモチ?」
「うん。今までずっと一緒だったでしょ?だから他の男に取られるのが嫌なんだよ」

美貴君は「う〜ん」と唸りました。別に梨華ちゃんと恋人になりたいとかはありません。
美貴君には亜弥ちゃんという可愛らしい彼女がいるのです。

「ヤキモチではないだろ」
「ヤキモチだよ。娘とか妹を取られた感覚じゃない?」

まだ納得できない美貴君ですが、それ以上の理由が見つかりません。
「う〜ん」と唸りながら、亜弥ちゃんの肩に顔を埋めました。

「今日は甘えんぼさんだね」
「・・・・・」

美貴君はそのまま亜弥ちゃんの首筋に唇を当てました。
一瞬ビクッとなる亜弥ちゃん。今までそこに触れられたことはありませんでした。
美貴君もまた、本能的に首筋に唇を当てたため、少し戸惑っています。


60 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:51


「あれさ、彼氏とかじゃないよな?」
「まだ違うんじゃない?そのうちなるかもしれないけど」
「・・・・・」
「嫌なんだ」
「嫌っつーかさ、ひとみがいるじゃん」
「でも付き合ってないじゃん」

美貴君は黙ってしまいました。ひとみ君と梨華ちゃんがお互いを好きなことは分かります。
でもそういう関係にはまだなっていないのです。しかも今は離れ離れ。

「梨華ちゃんから離れたひー君が悪い」
「あいつだって色々考えてると思うんだけど・・・」
「珍しいね、フォローするなんて」

いつもひとみ君を貶してばかりの美貴君ですが、大切な弟に変わりありません。
梨華ちゃんにはひとみ君と幸せになってほしいとずっと思っていました。
美貴君は亜弥ちゃんを更にキツク抱きしめます。亜弥ちゃんも抱きしめ返してきます。

「たん、好き」
「ん、俺も」


61 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:51


2人の唇がごく自然に重なります。
それはどんどんと、お互いの唇の柔らかさを確かめ合うように激しくなっていきました。
美貴君はそのまま亜弥ちゃんを押し倒します。優しく優しく。
壊れ物を扱うかのようにベッドに寝かせます。

「ん、ん」

だんだんと激しくなるキスに自然と声が漏れてしまう亜弥ちゃん。
その声を聞いて、美貴君も興奮してきました。

そっと服の中に手を入れた後、美貴君は我に返りました。ここは亜弥ちゃんの家。
今は誰も居なくても、そのうち誰かが帰ってくるのです。
美貴君の動きが止まったことに気がつき、ゆっくりと目を開ける亜弥ちゃん。
凄く切ない目をしながら美貴君に言いました。

「今日・・・・誰も帰ってこない」
「え?」
「みんな旅行行っちゃった」

そう。今日は亜弥ちゃんを置いて、みんなで旅行に行ったのです。
亜弥ちゃんも誘われましたが断りました。勉強があるからと・・・・・


62 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:51


「だから・・・・」

その言葉にもう美貴君は止まりませんでした。
もちろんやり方などDVDで見たくらいで初めての体験です。
唇を何度も合わせながら、直に亜弥ちゃんの身体に触れます。もちろんすべすべです。

「ん、あ」

触れられるたびに亜弥ちゃんの口から甘い声が漏れてきます。
触れている手を背中に回し、ブラのホックを外しました。
亜弥ちゃんは締められていたもの解かれ、凄い開放感です。
もう美貴君に全てを捧げる覚悟が出来ました。

美貴君はそっと胸の膨らみに触れてみました。凄い弾力と柔らかさです。
興奮が加速し始めました。膨らみの頂点に触れます。

「ああ、ん」

亜弥ちゃんがビクッとしました。これが彼女を興奮を高めるものかとドキドキしています。
さらに優しく撫でるように触りました。


63 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:52


「んん!あ、ん」

亜弥ちゃんのその声が堪らない美貴君。
亜弥ちゃんの着ているシャツを捲り、その頂点を口に含みました。

「ああ、ん、あ」

右手と唇で一生懸命愛撫します。亜弥ちゃんに気持ちいいと思ってもらいたいのです。

「いや、たん、んん、あぁん」

美貴君はもう止まることは出来ません。今日はこのまま突っ走ってしまいます。
ずっと前へ進めずに、モヤモヤしていた気持ちが今日晴れそうです。
今日は心の底から亜弥ちゃんを愛します。
これからも愛し続けるという思いを乗せて・・・・・

「たぁぁん!!」


64 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:52











++++++++++++++++++++++++++++++









65 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:53


「あはは」
「何笑ってるんだよ」

事を終えた美貴君と亜弥ちゃん。
生まれたままの姿で亜弥ちゃんは美貴君に腕枕をしてもらっています。

「やっちゃったね」
「・・・・やっちゃいましたが」

亜弥ちゃんは嬉しそうに美貴君の肩に頬をすり寄せています。
そんな亜弥ちゃんが可愛くて仕方がない美貴君。自然と笑みがこぼれます。

「こんな感じなんだ」
「いやいや、感想とかいらないからね」
「えぇ〜言いたい」
「言わなくていいです」

2人とももちろん初めての行為。お互いこんなに気持ちがいいのかと感動しています。
それを言いたい亜弥ちゃんですが、あまり聞きたくない美貴君。恥ずかしいのです。


66 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:53


「たん、どうだった?」
「ど、どうだったってなんだよ」
「気持ちよかったのかどうか」

ズバッと聞いてくる亜弥ちゃんに少々戸惑いつつも、こういう子だよなと思い、
素直に答えることにしました。

「そりゃあ、まぁ、ね」
「なぁに?」
「・・・・・気持ちよかったです」
「やっぱり?」
「やっぱりってなんだよ」
「あたしも凄い気持ちよかった。最初は痛かったけど」
「マジ?」
「うん、マジ。こんなに気持ちいいものなんだねぇ」

なんだかヘンテコな会話をしていることに気がついていません。
それは2人がラブラブだからです。


67 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:53


「たん、好きぃ」
「ん」
「たんは?」
「ん?好きだよ」

亜弥ちゃんは嬉しそうに笑って美貴君にキスをしました。
美貴君も亜弥ちゃんにキスを返します。

「幸せぇ」
「はは、そりゃ良かった」
「たんも幸せでしょ?」
「もちろん」

また1つキスをします。今日はいつまででもしてられるのです。

「本当に今日帰ってこないんだよね?」
「ん?うん、今日はもう誰も帰ってこない」
「じゃ、もう1回しよっか」
「もう。たんのエッチ」

そんなことを言いながらその晩、疲れ果てるまで身体を合わせた2人でした。


68 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:54











************************************************











69 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:54


綾小路君と梨華ちゃんが出会ってお友達になってから、3ヶ月が経ちました。
なんの変化もなく、お友達のまま。イケメンのくせに度胸がない綾小路君。
今日は梨華ちゃんとお食事の約束をしています。今日こそ決めようとしていました。

「お待たせ」

今日は休日です。いつもの制服姿とは違いカワイイ私服です。
綾小路君はいつもドキッとします。3ヶ月間、何度か一緒に遊び、メールもしました。
その度に好きになっていくのです。いつも違う梨華ちゃんを発見してドキドキしています。

いつものように他愛ない話をして食事をし、梨華ちゃん家まで送ります。

「今日も楽しかった。ありがと」
「いえ、そんな。僕も楽しかったよ」

お互いタメ口で話せるようになりました。梨華ちゃんにとっても良いお友達です。

「あの、今日は梨華ちゃんに言いたいことがあって」
「・・・ん?なぁに?」


70 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:55


綾小路君は心臓が口から飛び出そうなぐらい緊張していました。
大きく深呼吸をします。心を落ち着かせるのです。

「ふぅ。・・・実は僕」

梨華ちゃんが真剣な目で見つめてきます。

「あなたのことが好きです。会ったその日から、あなたと付き合いたいと思っていました」

突然の告白にポカンとする梨華ちゃん。凄く驚いています。

「日に日にその思いは強くなっていました。僕と付き合ってください!!」

梨華ちゃんは我に返りました。綾小路君は真剣です。

「ちょ、ちょっと待って。その、あの、ちょっと突然だったから」
「あ、ごめん。・・・・返事はいつでもいい。僕は真剣だから」

言わなくてもその想いは目から伝わってきます。梨華ちゃんはドキッとしました。
どうしたらいいのか分からないため、今日はそのままバイバイをします。
梨華ちゃんの心は高まったままです。


71 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:55


「どうしよう」

梨華ちゃんは部屋に入り、1人で悩みます。
綾小路君はとっても良い人です。優しくてカッコよくて、頼りになります。
でも心に引っ掛かっているのはひとみ君のことです。
自分でもひとみ君のことをどう思っているのかわかりませんでした。
しかし今は違います。梨華ちゃんはひとみ君のことが好きだと自覚しているのです。
離れてみてようやく分かったのです。ひとみ君はなくてはならない存在。
でもひとみ君の気持ちはわかりません。
こっちが思っていても向こうが思っていなければ、何もならないのです。

「よし」

梨華ちゃんはひとみ君に電話をすることにしました。
ここがこの2人の分岐点です。


72 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:55


梨華ちゃんもひとみ君も携帯を持っていましたが、
梨華ちゃんはひとみ君の邪魔をしてはいけないと考え、電話することを躊躇していました。
しかし今回ばかりは、ひとみ君に聞かなければならないことがあります。

―プルルルル  プルルルル  プルルルッ

『はい』
「あ、ひーちゃん?」
『うん』
「久しぶりだね」
『うん』
「・・・・・あのね・・・」

梨華ちゃんはひとみ君の反応が薄いことに不安を覚えました。
なかなか次の言葉が出てきません。

「・・・・・・・・・・」
『どしたぁ?』

ひとみ君の優しい声が心に響いてきます。


73 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:56


昔とは違う、低く甘い声です。
小さい頃からだと、成長による身体的変化もさほど気になりませんが、
少し客観的に見てみると、その変化にドキドキしたりもします。
今まさに、ドキッとした瞬間でした。

『何かあった?』
「・・・・ひーちゃんにね、聞きたいことがあるの」
『・・・・何?』
「ひーちゃんにとって、私は何?」
『・・・・・何って言われても』
「知りたいの」

梨華ちゃんの声は真剣です。
いきなりそんなことを聞かれてひとみ君もオロオロしてしまいます。

『ど、どうしたのさ、いきなり』
「・・・・・答えてくれないの?」

いつになく真面目な梨華ちゃんの声。
本当のことを言えば、
梨華ちゃんはひとみ君にとって大切な人でいつまでも一緒にいたい人。
でもまだ素直になれないひとみ君は、そんなこと言えるわけがありません。


74 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:56


『ただの幼馴染だよ。昔から一緒にいる幼馴染』

本当はそんな軽いものじゃないのです。
しかし今のひとみ君にはそれしか言えません。

「・・・・そっか、ありがと」
『・・・今日の梨華ちゃん、なんか変だよ?』
「そんなことないよ。ひーちゃん、頑張ってね」
『お?おう。頑張るよ』
「じゃあまた、返ってきた時にね」
『うん』
「寂しくなったら電話くれてもいいよ?」
『はいはい』
「じゃあね、おやすみ、ひーちゃん」
『ん、おやすみ』

電話を切ると自然に涙が零れていました。
梨華ちゃんは、この瞬間に1つの幕が閉じた気がしました。

「明日、綾小路君に会おう」

梨華ちゃんは心を決めていました。


75 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:56











***********************************************************









76 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:57


「ゴメンね、待った?」
「僕も今来たところだから」

梨華ちゃんと綾小路君は公園で待ち合わせをして、
そのまま公園のベンチに座ってお話をすることにしました。

「少し寒くなってきたよね」
「そうだね、今年は雪振るのかな・・・雪好き?」
「うん、好き。よくね、幼馴染達と小さい雪だるま作ったりしたなぁ」
「本当に仲良しだよね」
「ねぇ。よく言われるし、そう思う」

嬉しそうに笑う梨華ちゃんを見て、ますます心惹かれる綾小路君。
一方の梨華ちゃんは小さい頃を思い浮かべながら皆のことを思い出していました。

「僕も仲間に入りたいな」
「ふふふ、でしょう?」

優しい雰囲気が2人を包み込みます。
まるで付き合いたてのカップルのような・・・・・。


77 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:57


「私、まだ綾小路君のこと、好きな人として見れないかもしれない」
「え?」

唐突に始まった梨華ちゃんの話に目を丸くした綾小路君ですが、
昨日の告白の返事だろうと思い、ジッと聞き入ることにしました。

「ずっとお友達だったわけだし・・・。
 でも、もしかしたら好きになるかもしれない」

綾小路君は真剣な眼差しで梨華ちゃんの真っ直ぐ前を見ています。

「だから、今はまだ、そういう気持ちじゃないんだけど・・・・・
 付き合ったらそういう気持ちになれるかもしれないし」

綾小路君の眉少し動きました。ちょっと良いほうに向かっている気がします。

「こんな私でもいいのなら・・・」
「いいです!」

綾小路君は耐え切れずに割り込んでしまいました。


78 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:58


「可能性があるのなら、ぜひ僕と付き合ってください。
 僕が振り向かせればいいだけのことです」

梨華ちゃんは少しドキッとしました。男らしかったのです。

「・・・・よろしくお願いします」
「こちらこそ!お願いします」

ペコリと頭を下げる綾小路君が妙に可愛く思えた梨華ちゃん。

こうして2人は付き合い始めました。
そんなこと、ひとみ君は知る由もありません。
これから・・・・・どうなっていくのか・・・・・


79 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:58


梨華ちゃんと綾小路君が付き合い始めて1ヶ月が経ちました。
初々しい2人は、まだ手を繋いでもいません。
でも綾小路君は毎朝梨華ちゃんを迎えに行き、一緒に学校まで登校します。
学校は別ですが、同じ方角なので一緒に登校できるのです。

「おはよ、美貴ちゃん」
「ん」

今日もいつものように綾小路君とともに登校した梨華ちゃん。
しかし朝から不機嫌な美貴君を目の前にし、眉毛がハの字になってしまいます。
なぜ美貴君の機嫌が悪いのか・・・それは梨華ちゃんに彼氏が出来たからです。
毎朝一緒に登校していた習慣を取られたのです。というよりも、自ら止めたのです。

「なぁんで毎朝機嫌が悪いのよぉ」
「別に」

毎朝美貴君と登校するクセのついていた梨華ちゃんは、
美貴君と綾小路君の3人で登校しようと考えていました。
しかしその願いは美貴君には届きませんでした。


80 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:58


「美貴ぃ。いい加減認めてあげなよ〜」
「いや、認めるとかじゃねーし。別に勝手にすればいいじゃん」
「はぁ。いつまで怒ってるんだか」

梨華ちゃんは凄く複雑な心境でした。綾小路君は本当に良い人です。
だから付き合い始めました。しかし、一番近くにいた幼馴染が喜んでくれないのです。
どんなに周りが祝福してくれても、美貴君が喜んでくれないことが悲しいのです。

「美貴ちゃん、ゴメンね」
「何で謝るの?別に悪いことしてないじゃん」

美貴君は梨華ちゃんの側を離れ、遠くの空を見つめています。
その方角にはひとみ君の住む街があります。

「おめぇ、もう手遅れだよ。俺知らねぇぞ」

美貴君はポツリと、ひとみ君のいる方角を見て呟きました。

そんなことになっているとは知らず、サッカーに打ち込むひとみ君の姿が、
美貴君の見つめた方角にはありました・・・・・。


81 名前:幼馴染 投稿日:2007/09/29(土) 22:59


素直になれない人。臆病な人。すれ違いって怖いものです。


どんなに好きでも伝えなきゃ伝わらない。


悩み多き高校時代。これを乗り越えて強くなるんですよね。


そんな9人の子供達のお話。



                               (´〜`O) つづく


82 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/30(日) 01:41
ひ〜ちゃんのバカー!!
離れてるからこそ言葉にしなきゃ伝わらないんだよ。
このままじゃホントに思いが伝わらなくなっちゃうよ(涙
83 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/30(日) 19:05
うわあああん続きが気になるー!
てゆーか美貴ちゃん、大好きです。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/30(日) 22:08
美貴ちゃんもう少しひ〜ちゃんに協力してあげて〜〜
85 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/01(月) 20:14
切ないねぇ
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/01(月) 20:52
バカヒーーーー!!!!
87 名前:t-born 投稿日:2007/10/06(土) 04:56
ああ、どうなるんでしょう!?
すごく気になります…。
ひとみ君は、これからどうするのか見ものですね。
早く誤解が解けるといいんですけど…。
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/06(土) 20:19
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/08(月) 01:12


ひーちゃーーーん(泣)




てかあやみきよかった〜(〃ω〃)
90 名前:名無し 投稿日:2007/11/04(日) 19:09


>>82:名無飼育さん様
 言葉って本当に大切なんですよね。ひーちゃんはバカです!

>>83:名無飼育さん様
 美貴君は今回、カッコいいキャラと自分の中では思ってます!

>>84:名無飼育さん様
 美貴ちゃんはクール・イズ・ボーイ。でも弟のために何かを・・・しないかもw

>>85:名無飼育さん様
 私も切ないです。

>>86:名無飼育さん様
 本当にバカですよね。いつか後悔する日が来るのでしょう。

>>87:t-born
 大変お待たせしました。読んでやってください!

>>89:名無飼育さん様
 あやみきのようないしよしを、私は書きたいのですが・・・
 うまくいきませんねぇw

91 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:10


「ねぇ、たん」
「ん?」
「聞きたいことがあるんだけど」
「どこ?」

ここは亜弥ちゃんの部屋。高校受験に向けて美貴君と勉強中です。

「勉強のことじゃなくてぇ」
「・・・・なに?」
「ひー君ってさ、梨華ちゃんに彼氏出来たこと知ってるの?」

美貴君は考えました。美貴君からは一言もその話をしていません。
梨華ちゃんから話していないのであれば、ひとみ君は知らないでしょう。

「さぁ?」
「さぁってさ。教えなくていいの?」
「それ知ったからってどうなんの?」

そんな話を聞けば、ひとみ君が落ち込むことは目に見えています。
いつかは知ること。美貴君は自分から教える気はありません。


92 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:10


「でもさ、早めに教えて早めに奪い返したほうがいいんじゃない?」
「え?」
「ひー君にその気があるなら、それくらいするでしょ」

確かにそうかもしれないと美貴君は思いました。
でも自分から教えていいものか、悩んでいます。

「じゃあさ、梨華ちゃんから言ってもらおうよ」
「う〜ん・・・もう言ってるかもしれないし」
「いや、絶対言ってないと思うよ。ってか教えたくないと思ってそう」

美貴君も亜弥ちゃんと同意見です。きっと梨華ちゃんは教えたくないはず。
2人のためにどうしたらいいのか、美貴君と亜弥ちゃんは悩んでいます。

「とりあえず、梨華ちゃん呼ぼうよ」
「あーうん」

3人で話をしたほうが早いと思った亜弥ちゃんは、
さっそく梨華ちゃんを呼ぶことにしました。


93 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:11










++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










94 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:11


「お邪魔します」
「どうぞ〜」

家が近いというのはこういう時に便利です。
梨華ちゃんはすぐに亜弥ちゃんの家に来ました。

「亜弥ちゃん頑張ってる?」
「もう頑張りすぎてヘトヘトだよぉ」

他愛無い話から入っていきます。
しかし梨華ちゃんは呼ばれたのだから何かあるんだろうと思っていました。
美貴君は何故か落ち着きません。

「綾小路君とはどう?」
「どうって言われても・・・」
「チューした?」
「してないしてない」

梨華ちゃんは頭を大きく左右に振って否定しました。
まだそこまではいっていないようです。美貴君は何故か安心します。


95 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:11


「ふ〜ん。綾小路君て、結構奥手なんだね」
「だってまだ1ヶ月だし・・・」

梨華ちゃんは恥ずかしそうに下を向きます。
美貴君は大きく頷いています。まるで父親のようです。

「そうなんだぁ。ひー君には言ったの?」
「え?」

いきなりその話を振るのかと美貴君も驚きます。
梨華ちゃんは明らかに動揺しています。ひとみ君にはまだ言ってないのです。

「言わなくていいの?」
「・・・・・」

梨華ちゃんは黙ってしまいました。自分でも言おうかどうか悩んでいたのです。
わざわざ言うことでもないと思いつつ、実際は言いたくないという気持ちがあります。

「そのうち知ることなんだし、早めに言ったほうがいいと思うけど?」

梨華ちゃんは黙ったまま。美貴君も梨華ちゃんと同じ表情で黙ったままです。
幼馴染だからといって、
こんなところまで一緒の表情をしなくていいだろと亜弥ちゃんは思いました。


96 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:12


「ね、電話しようよ」
「・・・・今?」
「うん、今。あたし達もいるからさ」

梨華ちゃんは考えます。伝えるなら今だと分かっています。
しかし、一歩が踏み出せません。
これを伝えることが、本当に幕を閉じることになるのです。

「しなよ、電話」
「・・・・・」
「あいつだけ知らないじゃん。幼馴染なんだからさ、祝福してくれるよ」
「・・・・美貴ちゃん」

美貴君は心からそんなことを思っていません。
美貴君自身があまり祝福していないからです。
そんな美貴君の言葉に、梨華ちゃんは伝える決心をしました。

「わかった。電話する」
「頑張って、梨華ちゃん」

亜弥ちゃんも応援しています。
電話をする梨華ちゃんの手が震えていました。


97 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:12


「もしもし」

ひとみ君が電話に出たようです。緊張の一瞬。
美貴君も亜弥ちゃんも、じっと梨華ちゃんを見つめています。

「うん、元気だよ。ひーちゃんは?」

まずは普通の会話から入っているようです。

「あのね、ひーちゃん」

いよいよこの瞬間がやってきました。ひとみ君がどういう反応をするのか。
どこでもドアがあればひとみ君側に行きたいと思う2人。

「私ね・・・・・彼氏が出来たの」

ついに梨華ちゃんの口からひとみ君に伝えました。

「ひーちゃん?」

ひとみ君は黙ってしまったようです。それは驚いたことでしょう。
なんの前触れもなく知らされたのですから。


98 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:12


「うん、ありがと」

何か話し始めたようです。

「うん、じゃあね、バイバイ」

梨華ちゃんはそう言うと、電話を切りました。
ひとみ君が何を話したのか、グイっと身を乗り出して聞こうとする亜弥ちゃん。

「どうだった?」
「うん・・・・良かったねって」
「それだけ?」
「忙しいらしくて、切られちゃった」

ひとみ君は相当動揺したことでしょう。一言二言話して電話を切ったそうです。
梨華ちゃんは凄く切ない顔をしていました。美貴君もです。

「ひー君がどう出てくるかだね」
「え?」
「いやいや、独り言だよぉ」

亜弥ちゃんだけ何故か楽しそうにしています。
ひとみ君が今後どうするのか、奪いに来るのか、とても興味津々なのです。


99 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:13


亜弥ちゃんは勉強を始め、梨華ちゃんは帰っていきました。
美貴君は切ない思いを抱えたまま、今日は家に帰ります。

「何暗い顔してんだよ」
「美貴ちゃんだって暗い顔してる」
「そんなことねーだろ」

玄関を出て、家までのわずかな距離。
美貴君は明るく繕おうとしますが、なかなかうまくはいきません。

「自分でそう選んだんだから。そんな落ち込むな」
「別に落ち込んでなんかないもん」
「・・・・・今幸せか?」
「・・・うん・・・」
「ならいいじゃん」

そのまま2人は何も話さず自分の家に入っていきました。


100 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:13


一方、梨華ちゃんから報告を受けたひとみ君は呆然としていました。

「なんで?」

イマイチまだ整理がついていないようです。
梨華ちゃんはずっと自分のものだと思っていました。
しかし今さっき、他の人のものだと言われたのです。
凄い衝撃でした。まだ信じることが出来ません。

「ウソだぁ」

そう言いながら笑ってしまいます。きっと皆で自分を嵌めようとしている。
そんなことまで考えています。

「何さっきから独り言言ってんの?」

同級生で同じ寮の同じ部屋の『里田まい』が話しかけてきました。
こっちに来てから、ただ1人。気を許せる友人です。

「はは」
「何笑ってんの?キモイけど」


101 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:13


まい君はズバッと言ってくれます。
それがスッキリするときもあれば、グサッと来るときもあるのです。

「あのさぁ・・・」

ひとみ君はまい君に何でも話せます。というか、話しています。
幼馴染のこと、もちろん梨華ちゃんのことも話していました。

「梨華ちゃんに彼氏が出来たらしい・・・」
「はぁ?」

まい君は大変驚きました。
今までずっと梨華ちゃんはひとみ君の彼女だと思っていたのです。

「え?だって・・・お前付き合ってたんじゃないの?」
「いんや」
「いんやって。マジかよ。付き合ってなかったの?」
「うん」

まい君はガクンと肩を落としました。
さも付き合っているかのように、ひとみ君は梨華ちゃんの話をしていました。


102 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:13


「いいの?」
「はは、何が」
「ってかなんかおかしくなってない?なんでずっと笑ってんの?」
「わからん」

ひとみ君は何が何だかわからなくなり、ずっと笑っているのです。
受け入れられないこのなのでしょう。

「奪いに行けばいいじゃん」
「なんで?」
「好きなんだろ?俺がいないとダメなんだって言ってたろ」
「・・・・・ダメじゃなかったみたい」

急に弱気になるひとみ君。まい君はその姿にイライラしていました。

「いいから言って話して来いよ。次の土日テスト休みだし」
「あぁ・・・・うん・・・」

ひとみ君は次の土日、7ヶ月ぶりに実家に帰ることにしました。


103 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:14











****************************************










104 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:14


「ただいま〜」
「おかえり」
「あー、お兄ちゃんおかえりぃ」
「ただいま」

土曜日になりました。久々の実家です。ひとみ君は嬉しさ半分、不安が半分でした。
とりあえず自分の部屋に荷物を置きに行きます。

「おかえり」
「あ、にぃ。ただいま」

美貴君は前と変わらないひとみ君に少し安心している反面、苛立ちもあります。

「おめぇがボケっとしてるから他の奴に取られちまったぞ」
「・・・・・・・・・・」
「いいのかよ」
「いいも何も・・・梨華ちゃんが決めたことならいいんじゃないの?」

美貴君は大きくため息をつきました。

「もう遅いぞ」

それだけ言って部屋を出て行きました。


105 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:14


「なんだよ。どいつもこいつも」

ひとみ君が一番自分にイライラしているのです。
素直に一言、「好きだ」と言っていれば、こんな気持ちにはなりませんでした。

「何やってんだよ、俺」

恋は誰でも悩むものなのです。


106 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:14











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










107 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:15


「ねぇねぇねぇ!ひーにぃ帰ってきたよ」
「本当に?久しぶりぃ。さゆみ会いたい!」

ここは里沙君の部屋。居るのは里沙君と絵里ちゃんとさゆみちゃん。
幼馴染で年の近い3人は一緒にいることが多いのです。

「でさぁ、梨華ねぇは本当に付き合ってるの?」
「うん、付き合ってるよ」
「ふ〜ん・・・絶対ひーにぃと付き合うと思ってなのになぁ」
「さゆみも思ってた」
「ひーにぃがさっさと告白すればよかったんだよ」
「男にだって、色々あるんだよ」

里沙君が口をはさみました。すると女子2人がギロっと里沙君を睨みました。

「だから男って嫌なのよねぇ」
「ほんと。女の子の気持ちがわかってないんだから」

最近はずっとこの調子です。男の子1人だけだと、女の子2人には勝てません。


108 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:15


「ひー君奪い返したりしないかな?」
「意外にヘタレだからね、無理っぽい」
「本当に言いたい放題だよね」
「だってその通りでしょ?」
「さゆみの近くの男の子って、なんでこんなにヘタレばっかりなんだろう」

これは幼馴染のことを言っているのです。
美貴君、ひとみ君、麻琴君に里沙君・・・・確かにヘタレばかりです。
里沙君は何も言い返せません。事実ですから。

「もっと力強い王子様が現れないかなぁ」
「それなりのお姫様にならないと無理でしょ」
「なんか言った?」
「自分が王子様になれないからって僻んでるんだよ。嫌だよねぇ」

ここから逃げ出したいと思う、里沙君なのでした。


109 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:15











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










110 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:16


「梨華ぁ」
「はぁ〜い」
「今日中澤さん家で鍋するから」
「えぇ?今日約束入れちゃったよぉ」

ひとみ君が帰ってきたということで、
久しぶりに皆でパーティーをしようということになったのです。
しかし梨華ちゃんは綾小路君と食事の約束をしていました。デートです。

「それ断れないのか」
「う〜ん」
「ひー君が帰ってきてんだぞ」
「えっ?」

梨華ちゃんはひとみ君が帰ってきていることを知りませんでした。
美貴君はあえて言わなかったのです。

「久しぶりだろ。断れるならこっち優先してくれよ」
「・・・・・じゃあその時間までに帰ってくる」
「おぉ。気をつけてな」
「うん、行ってきます」

梨華ちゃんは待ち合わせの場所に向かいました。


111 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:16


「ひー君、また背伸びたね」
「そう?確かに皆が小さく見えるなぁ。特に、にぃは」
「うっせ」

ひとみ君はどんどん背が高くなりますが、
美貴君はそんなに伸びずに止まりかけのようです。

久しぶりの再開とあって、予定のだいぶ前から皆中澤家に集まっています。
男の子はそれぞれ背が伸び、女の子は女性らしくなってきていました。
ひとみ君は梨華ちゃんに会いたい反面、見たくないような気もしています。
キレイな女性になっていることは想像できるからです。

「まこっちゃん、梨華ちゃんは?」
「ん?デートじゃない?時間までには帰ってくるって言ってたけど」
「へぇ。もうそっちを優先しちゃうんだねぇ」

亜弥ちゃんはひとみ君の前で、わざとそっちの方向に話を持っていこうとします。

「でも食事してくる予定だったみたいだから、こっちを優先したみたいだよ」

素直な麻琴君は何も考えずに素直な回答をします。
ひとみ君は少しだけホッとしました。


112 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:16


「よぉ〜し、ほら、出来たぞう」

大人数なので、土鍋が3つも並んでいます。大人席に1つと、子供席に2つ。
大人たちは飲む気マンマンです。

「梨華ちゃん遅いねぇ」
「もう始めちゃおう。待ってても何があるってわけじゃないし」

時間になっても梨華ちゃんが現れません。先に始めることにしました。
それぞれワイワイ久しぶりの集まりで盛り上がっています。
しかしひとみ君だけはテンションが下がりっぱなしです。

「ひー君?大丈夫?」

心配したのは隣にいた愛ちゃんです。ずっとひとみ君を想い続けている女の子です。

「ん?大丈夫だよ」
「なんか元気ないから」
「あ〜なんかテスト近いからさ、少しテンション低いけど」

ひとみ君はカラッと笑いましたが、愛ちゃんにはそうじゃないと分かっていました。
ずっとひとみ君を見てきたのです。変化には敏感です。


113 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:17


「梨華ちゃん、遅いね」
「・・・彼氏と仲良くやってんだろ」
「そうかもね」

愛ちゃんは否定しませんでした。少しズルイ女になっているのです。
このまま梨華ちゃんが綾小路君とうまくいけば、
ひとみ君が自分のところに来てくれる可能性が出てくる。そう思ってしまうのです。

「愛ちゃんは?彼氏できたの?」
「できんよ」
「なんでさ、こんなにカワイイのに」

ひとみ君の本心でした。愛ちゃんはカワイイのです。
もちろん告白をされたこともあります。でもひとみ君が好きなのです。

「あたしのことはいい。あ、ひー君、取ってあげる」
「あぁ、ありがと」

そんな2人を少し遠くで見ている麻琴君。ずっと愛ちゃんに思いを寄せている子です。

「はぁ」

思わずため息をついてしまいます。


114 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:17


「まこっちゃん」
「あ、亜弥ちゃん」
「そう気を落とさないでさ」
「別に落としてないけど」
「女なんてたくさん居るんだし」

亜弥ちゃんは麻琴君が愛ちゃんのことが好きだということは知っています。
もちろん美貴君もです。もちろん梨華ちゃんもです。
というよりも、幼馴染全員が知っています。愛ちゃん以外・・・

「男と女って難しいよねぇ」
「何?急に」
「あたしとたんぐらいだもんね、うまくいってるの」

それぞれが想いを寄せていても、それが全てすれ違いになっているのです。

「幸せでよかったですね」
「うん、チョー幸せ」

麻琴君はムカッとしていました。のろけ話を聞かされているだけです。


115 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:17


「こんばんわぁ。遅くなってすいません」

そこへ梨華ちゃんがやってきました。急いで来たのか、呼吸が乱れています。

「遅いぞ。もう始めたから」
「うん、ごめんなさい」
「男とええことでもしてきたんかぁ?」

ガハハと中澤パパは笑いました。他の大人たちも笑っています。
ただ1人、保田パパだけは笑っていませんでした。

「まだだろ、そんなの」
「だって高2やろ?十分や。美貴も経験済みなんやから」
「ブーーーー!!」

美貴君は思わず飲んでいたお茶を噴出してしまいました。
隣にいた亜弥ちゃんが慌ててそれを拭いてあげます。

「ちょっと待て!それは・・・・その相手は・・・」

割って入ってきたのは飯田パパでした。亜弥ちゃんのお父さんです。
気が気じゃありません。


116 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:18


「そんなんもちろん、亜弥ちゃんや」

飯田パパの顔がみるみる赤くなっていきます。
お酒のせいではありません。怒りのせいです。

「なぁにぃ!」
「まぁええやないの。もう大人なんやから」
「亜弥はまだ中学生だぞ」
「そんなん、今の子は早いねん。落ち着きやぁ。楽しいパーティーなんやから」

余計なことを言ってそれを台無しにしてるのはお前だろと誰もが思いました。

「覚えとけよ」

美貴君が死を覚悟した瞬間でした。

「梨華ちゃん!こっち座んなよ」

呆然と入り口に立ち尽くしている梨華ちゃんに亜弥ちゃんは声をかけて呼びました。
その声に安心して、亜弥ちゃんと美貴ちゃんのほうに向かいます。


117 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:18


「遅かったねぇ。まさか本当にいいことしてたとか?」
「まさかっ、そんなことしてません」
「なぁんだ。じゃあどうしたの?」
「映画見てたんだけど、終わる時間確認してなくて。長かったんだよねぇ」
「ふ〜ん」
「時間気になっちゃって、全然集中できなかったし」

梨華ちゃんはそう言いながら、ふとひとみ君のほうを見ました。
前に見たときよりも、大人の顔になっている気がします。この時期の成長は早いのです。

「ひさしぶり。なんか大人の顔になったね」
「そうかな?7ヶ月しか経ってないけど」
「その7ヶ月が長いんだよぉ」
「梨華ちゃんも・・・・なんか大人の女っぽいね」
「そう?ありがと。あ〜お腹減ったぁ」

梨華ちゃんは普通に話せて少し安心しました。
一方のひとみ君は、心臓がバクバクしています。
梨華ちゃんが思った以上にキレイだったのです。
女は恋をするとキレイになると言います。それなのかと少し落ち込みました。


118 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:18












++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










119 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:19


一通り宴が終わり、各々の時間を過ごしていました。
ひとみ君は何となくその場から離れたくなり、自分の部屋に行きます。
それを見た麻琴君が少し心配して、ひとみ君と一緒に部屋に行きました。

「この部屋、このままなんだね」
「あぁ?うん、片付けるの面倒くさいしね」

中学生の頃のまま、あの頃のままの部屋でした。
ひとみ君はベッドに倒れこみ、大きなため息をつきました。

「どうしたの?」
「ん?いや、皆かわいくなってるなぁと思って」
「皆じゃなくて、ねぇちゃんがでしょ?」
「はは。よくわかるなぁ」

麻琴君はひとみ君が心を許せる1人です。弟のようで、意外としっかりしている。

「ねぇちゃん、ずっと待ってたと思うよ、ひー君のこと」
「・・・・・・・そんなこと言われてもなぁ」

もう遅いとひとみ君は思っているのです。
しかし、他の人たちは皆、まだ間に合うと思っています。


120 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:20


「この際さ、愛ちゃんと付き合っちゃおっかなぁ」
「え?」
「だってよぉ、愛ちゃんメッチャかわいいじゃん。俺のこと嫌いじゃなさそうだし。
 なんかうまくいく気がするんだよねぇ。気は利くし、最高じゃね?
 ほら、胸とかもそこそこありそうだし。な?どうだろ?麻琴?聞いてんの?」

麻琴君は下を向いたまま、握り締められた手は、プルプルと震えていました。
ひとみ君のあまりにも身勝手な発言に、怒りを覚えているのです。

「おい、どうした?」
「さっきから聞いてれば」
「え?」

麻琴君の怒りが爆発しました。

「いい加減にしろよ!!さっきから聞いてれば勝手なことばっかり言いやがって。
 愛ちゃんがひー君のこと好きだって気付いてんだろ?なのになんだよそれ。
 その気持ちをいいように使おうとしやがって。ふざけんな!
 ヘタレで告白1つ出来ないくせに。だからねぇちゃんを他の男に取られたんだろ?
 ねぇちゃんだけじゃなく、愛ちゃんまで傷つけるのかよ!!」


121 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:20


麻琴君はほぼ息継ぎなしで、言いたいことを言いまくりました。しかも大声で。
そこまで言われてはひとみ君も黙っていません。

「お前だってヘタレだろうが!愛ちゃんのこと好きなくせに伝えてないだろ。
 なんでそんな奴にヘタレって言われなきゃいけねーんだよ。
 俺が愛ちゃんと付き合おうとしたからって、慌てて止めてんじゃねーよ。
 お前も俺と一緒だろうが!!」

ひとみ君も負けじと思ってることを言いまくりました。
確かに麻琴君も愛ちゃんに想いを告げられないヘタレ君です。

「俺は・・・・俺はヘタレじゃない!!」

そう言うと、麻琴君は部屋を飛び出し下へ降りていきました。

「なんなんだよ・・・・くそっ!!」


122 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:20


「愛ちゃん!!」

上からものすごい勢いで降りてきた麻琴君は、そのまま愛ちゃんの元へ行きました。
これは・・・・まさか・・・・の展開です。自分がヘタレではないことを証明するのです。

「麻琴?」

愛ちゃんもその勢いにビックリしています。
下からでも上で言い合いをしているのは聞こえていました。
ただ、何を言っているのかまではわかりませんでした。

「俺、愛ちゃんが好きだ!」

突然の告白。その場はシーンと静まり返りました。

「ずっとずっとずっと、これからも好きだ!」

麻琴君の渾身の想いをぶつけます。誰がいようと関係ありません。

「絶対!悲しい想いさせないから。泣かせたりしないから。だから」

途中まで勢いで告白し続けた麻琴君の手を、愛ちゃんがギュッと握りました。
優しく包むように、お姉さんの暖かさです。


123 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:21


「落ち着いて、麻琴」
「・・・・・」

麻琴君は呼吸を整えます。そしてジッと愛ちゃんの大きな目を見ていました。

「ありがと。嬉しい」
「・・・・・」
「いきなりでビックリしたけど。しかもこんなみんなの前で」

麻琴君は我に返って段々恥ずかしくなってきました。顔が真っ赤です。

「まだ中学生だし。これからいろんな人と出会うんだよ?」
「うん」
「もっと素敵な人がたくさんいるよ?」
「いないよ」
「いる」
「いない」

愛ちゃんが「ふふ」っと笑いました。嬉しそうです。

「本当に泣かないで済む?」
「うん!」


124 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:21


麻琴君は自信に満ち溢れていました。そして言いました。

「嬉し泣きはさせるかもしれないけど」

ちょっと大人気取りの中学生。愛ちゃんは「ぶは」っと噴き出しました。

「わかった。ちょっと考えてみる。もう少し、時間ちょうだい?」
「うん!」

麻琴君は今までで最高の笑みを浮かべました。愛ちゃんもです。
もう麻琴君はヘタレではありません。ちゃんと自分の想いを告げたのです。

「なぁに、いきなり。ビックリしたんだけど」
「ほんと。麻琴、よくやるな」

麻琴君はデヘヘと笑いました。亜弥ちゃんも美貴君も、そして家中がビックリしました。
ひとみ君はその光景を、階段からそっと見ていました。
梨華ちゃんは、羨ましそうに、これが自分達だったらと思いながら見ていました。


125 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/04(日) 19:21



徐々に合いはじめた運命の歯車ですが、どうしても嵌らないところがあります。



これはもう全て、ひとみ君にかかっているのかもしれません。



自分の幸せを見つけるために、日々もがき続ける9人の子供達のお話。



                               (´〜`O) つづく


126 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/04(日) 22:26
麻琴君カッケーですね。

ひとみ君ガンバレ!!君はやればできる男だ!!
きっと心の底では待っててくれてるよ。
127 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 05:15
大切なものは失って初めて気づくものなんですね
ひーちゃん「Do It now!」でしょう!!!
128 名前:t-born 投稿日:2007/11/05(月) 12:37
ああ、やっと続きが読めました!
作者さんありがとうございます!
早く梨華ちゃんを幸せにしてあげたいです!
これからも更新お願いしますね!!
129 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/05(月) 16:26
>>128
レスをつける前に自治FAQ に目を通しておくこと!
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 09:58
ヘタレな麻琴君もいいですけど凛々しい麻琴君もいいですね
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/06(火) 16:06
ここの麻琴君はいい麻琴君
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/11(日) 01:23
まこっちゃん!


かっけ〜!!
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/13(火) 01:41
True dream から作者様の小説が大好きです。特にのぞみ君がw
なのでまた作者様ののぞみ君が見たいな〜なんて思ってたりしますw
134 名前:名無し 投稿日:2007/11/25(日) 16:59
>>126:名無飼育さん様
 私の中での麻琴君はカッコいいヘタレですw

>>127:名無飼育さん様
 そうなんですよね。ひとみ君も十分気付いていると思います!

>>128:t-born様
 お待たせいたしました。もうそろそろ・・・・・

>>130:名無飼育さん様
 ヘタレの中に凛々しさがあるのがいいですよね!

>>131:名無飼育さん様
 はい、いい麻琴君です!

>>132:名無飼育さん様
 これからもカッコいい麻琴君を出していけたら・・・と思っております!

>>133:名無飼育さん様
 ありがとうございます!!今後、検討していきたいと思います!

135 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 16:59

麻琴君のカッコいい告白から約2時間。各々が家に帰っていきます。
大人たちの宴はまだまだ続きそうです。

「じゃあまたねぇ」

中澤家には大人たちと美貴君とひとみ君と絵里ちゃんのみとなりました。
絵里ちゃんはすぐにシャワーに入り、部屋に戻っていきました。
ひとみ君は部屋に篭りっぱなしです。
美貴君はそこそこに片づけをして、2階へ上がっていきました。

「ひとみ?入っていいか?」

美貴君は気になっていました。
2階に上がって以来、一度もひとみ君が降りてこなかったからです。
麻琴君との言い合いも、少し聞こえていました。

「どうぞ」

元気の無い声でひとみ君は返事をしました。

136 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:00

「何やってんだ?皆帰ったぞ」
「・・・・そう」

ひとみ君はベッドに横になり、ボーっと天井を眺めていました。
美貴君はそんなひとみ君を見てため息をつき、ベッドの下に座りました。

「梨華、心配してたぞ」
「なんで?」
「一度も降りてこなかったから」

ひとみ君が2階に上がってから、
ずっと落ち着かない様子で帰るまでそわそわしていました。
美貴君にも「ひーちゃん寝ちゃったのかな?」と聞いてきました。

「麻琴とかなり言い合ってたみたいだけど」

ひとみ君は反応しません。何を考えているのでしょう。

「あいつ意外とやるよな。まぁ小さいときから行動力はあったか」

137 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:00

麻琴君は小さい頃から「これがしたい!」と思ったら積極的に行動する子でした。
なかなか意志の強い子です。

「まぁ愛ちゃんは保留にしてたからな」
「何が言いたいのさ。はっきり言えば」

ひとみ君は美貴君の話を聞きながらイライラしていました。
美貴君が何かを言いたいと思っているのは明らかです。

「いいのか?はっきり言って」
「言えば?」

そこまで言われた美貴君も黙っているわけにはいきません。

「お前さ、何のために帰ってきたの?」
「何のためにって・・・・休みだからだよ」
「今まで休みでも帰ってこなかったじゃねーか」
「いや、今までは・・・忙しかったんだよ、色々と」

ひとみ君は何とか誤魔化そうとしますが、美貴君を騙すことはできません。
美貴君は感がいいのです。

138 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:00

「梨華を取り返しに来たんじゃねーのかよ」
「・・・・・」

その通りです。ひとみ君はまたまた黙ってしまいました。
取り返そうと思っていましたが、梨華ちゃんの顔を見ると、言いづらくなったのです。

「さっさとしろよ。俺は梨華がお前以外の奴に取られるの嫌なんだよ」
「・・・・なんだよ、それ」
「ずっと居た大切な幼馴染だからさ。
 恋愛感情じゃない愛情が生まれて来るんだよ」

ひとみ君もそれはよくわかっていました。
美貴君にとって、梨華ちゃんは亜弥ちゃんとは違う愛情を持った幼馴染なのです。
ひとみ君は起き上がり、ベッドの上に座りました。

「好きじゃないのか?梨華のこと」
「・・・好きだよ」
「勇気が出ないだけか?」
「・・・・・・・・・・」
「ヘタレが」

139 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:01

ひとみ君は『ヘタレ』という言葉に激しく反応して、美貴君を睨みました。
さっきも麻琴君に言われ、自分でもヘタレだと分かっているのです。

「睨むなよ」
「俺だってヘタレは嫌なんだよ」
「そりゃ誰だって嫌だろうな」
「でもさ、言っていいのかわからないんだよ」
「何が?」
「もう彼氏いるんでしょ?振られるかもしれないじゃん」

ひとみ君は怖いのです。振られたら、今までのような幼馴染でも居れないかもしれない。
そう思っていました。

「んなもん。ぶつかんなきゃ分からねーだろ。逃げてて何になるんだよ」
「・・・・・」
「ぶつかってダメならスッキリするだろう」
「・・・・・大丈夫かなぁ」
「俺らがついてるから。想いをぶつけて来い!!」

ひとみ君は美貴君の力強い言葉に、力強く頷き返しました。
覚悟を決めたようです。ヘタレのひとみ君を卒業する時がやってきました。

140 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:01

「今から電話して呼び出せ」
「どこに?」
「ここ・・・じゃあバカ親達がいるから駄目だな」
「絶対無理!あの親父・・・何言い出すかわからん」
「梨華んとこ行けばいいじゃん。それなら安心だろ」
「よし、そうしよう。電話する」
「おぅ。頑張れよ」

美貴君はひとみ君の肩をポンっと叩き、うまくいくことを願いました。

「そう言えばさ、にぃ」
「あ?」
「亜弥ちゃんとエッチしたの?」
「っ!?なんだよ急に」
「さっき父さんが言ってたから」

先ほどの父親の暴露をすっかり忘れていた美貴君。ニヤニヤしているのはひとみ君です。

141 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:02

「まぁ、俺だってもう高2だし」
「マジかよぉ!うわぁ、亜弥ちゃんがにぃに汚された」
「うっせーよ」
「んでんで?どんな感じ?気持ちよかった?」
「・・・・・最高」
「うわぁ・・・俺梨華ちゃん襲うかも」
「バカかお前は!さっさと電話しろ」

ひとみ君は「へいへーい」と言いながら電話をかけ始めました。意外に落ち着いています。
これがひとみ君の凄いところです。緊張を滅多に見せないのです。

「あ、俺」

美貴君に電話の内容は聞こえてきません。すぐにその電話は切られました。

「うん、じゃあ行く。はい、はーい」

ひとみ君の顔が心なしか引き締まったように見えます。頼もしい限りです。

「帰ってきたら慰めてね」
「はは、わかった」

142 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:02










++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++










143 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:02

梨華ちゃんはドキドキしていました。
「今から行ってもいい?」とひとみ君から電話が来ました。
2人きりで話すのは7ヶ月ぶり。何を話したらいいのか色々考えています。

コンコン

「はい」
「お邪魔します」
「どうぞ」
「玄関鍵閉めておいたほうがいいよ、危ない」
「そっか、こうやって勝手に入ってくる人が居るかもしれないもんね」

梨華ちゃんは笑って言いました。ひとみ君も「そうそう」と言いながら笑います。
勝ってに入ってきてしまうのは、昔からのクセなのです。

「ひーちゃん、元気だった?」
「うん、元気」
「大きくなったねぇ」
「なんだよそれ。親戚のオバサンみたい」
「美貴ちゃんは大きくないからさ、ちょっとビックリしたの」
「あぁ・・・梨華ちゃんの彼氏は背高いの?」

144 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:02

ひとみ君は自分が凄く嫌な質問をしたとわかっています。
でも何故か、皮肉めいたことを言ってしまうのです。

「・・・そんなに高くないよ」

じゃあ身長は自分が勝っているんだと、変な優越感に浸るひとみ君。
身長が勝っていたって何もならないのだけれど、
些細なことでも綾小路君に勝っていたのです。

「今、楽しい?」
「・・・楽しいよ」
「そっか」

ひとみ君は覚悟を決めました。今言わなければ、この先もずっと言えない気がします。
今日、『ヘタレ』を卒業するのです。
麻琴君に出来たのだから、ひとみ君に出来ないわけがありません。

「梨華ちゃん。俺の話聞いてくれる?」
「なぁに?」

優しく微笑む梨華ちゃん。ひとみ君は梨華ちゃんの笑顔が大好きなのです。

145 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:03

バタンっ!!

「姉ちゃん、俺のさ」

意を決して話そうとした瞬間、梨華ちゃんの部屋に麻琴君が入ってきました。
突然のことに3人とも目が見開いています。
麻琴君の目はやがて鋭いものに変わりました。先程喧嘩した天敵がいるのです。

「どしたの?」

梨華ちゃんが麻琴君に優しく声をかけました。

「なんでひー君がここに居るのさ」
「別に居てもいいでしょ?昔から遊びに来てたじゃない」
「こんな遅い時間に来たことはないはず」

麻琴君はひとみ君を睨み続けました。
一方のひとみ君は麻琴君に睨まれ、少し怯んでいます。

「ひーちゃんのことはいいから。どうしたの?」
「・・・・・俺にDVD返して欲しかっただけ」
「あぁ。ちょっと待ってね・・・あれ、どこ片付けたっけなぁ」

梨華ちゃんがDVDを探している間中、麻琴君はずっと膨れていました。
ひとみ君は謝ろうかどうしようか迷っています。

146 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:03

「あった!!これ面白かったよぉ、ありがとね」
「でしょ?じゃ、あんまり遅くまで居ないでね」
「どうしてそういうこと言うの」

麻琴君はひとみ君にそう告げて出ていこうとしました。それをひとみ君が引き止めます。

「麻琴!・・・・さっきは悪かった。言い過ぎた・・・ゴメン」

ひとみ君はしっかりと頭を下げました。
麻琴君は口を尖らせながらもひとみ君に言いました。

「俺も言い過ぎました。ごめんなさい」

これで仲直りです。喧嘩なんて久しぶりにしたひとみ君と麻琴君。
昔は梨華ちゃんの取り合いをしていたこともありました。
ひとみ君にとっては大好きな女性であり、麻琴君にとっては大好きなお姉ちゃんなのです。

「じゃ、俺戻る。遅くまで居るのはいいけど、変な声とか聞こえないようにしてね」
「バカっ!あほか!!」
「おやすみカン」

麻琴君はそう言い残して出て行きました。
余計なことを言いやがってと思っているひとみ君ですが、
梨華ちゃんはなんのことだか分かっていません。鈍感な女の子なのです。

147 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:03

「それで?ひーちゃんのお話ってなぁに?」
「え?あぁ・・・」

すっかり自分がここに来た理由を忘れていたひとみ君。
梨華ちゃんに促されてようやく本題に入ります。

「今回、なんで俺が実家に帰ってきたかっていうとさ」
「うん」

梨華ちゃんは変わらない視線をひとみ君に向けています。

「・・・ふぅ。正直、梨華ちゃんに彼氏が出来たって聞いて、焦った。
 嘘だと思ってた。」

梨華ちゃんは静かに聞いています。

「でも、帰ってきてみたら、それは本当でさ。なんか女っぽくなってるし。
 ずっと俺のものだと思ってたから、なんか寂しかった」

ひとみ君は深呼吸します。いよいよ『ヘタレ』卒業の時がやってきました。

148 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:04

「自分が本当に梨華ちゃんのこと好きなんだって。大好きなんだって気付いた。
 友達とかそういうんじゃなくて、女性として、本当に好き」

ひとみ君は梨華ちゃんの目を見てしっかりと伝えました。
言葉だけではなく、目からもこの想いと感じ取れとばかりに強い眼力で見ています。

「だから、その・・・・・俺と付き合ってほしい。ずっと一緒に居てほしい」

梨華ちゃんは胸が苦しくなりました。この言葉をどれだけ待っていたか。
そして、もう少し早ければと・・・・・

「大好きだから。梨華ちゃんしか見えないんだよ、もう」

ひとみ君は今まで言えなかった想いをぶちまけていきます。しかし・・・・・

「ひーちゃん」
「ん?」
「・・・・・遅いよ」
「え?」
「もう遅いんだよ」

ひとみ君はその言葉を聞いて愕然としました。
「もう遅い」
美貴君にも言われた言葉でした。
これが何を意味しているのか、ひとみ君にはわかっています。

149 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:04

「なんで・・・もっと早く言ってくれなかったのよぉ」

梨華ちゃんの目から涙がこぼれました。たった一粒だけ・・・

「あたし、もう、文麿さんと付き合ってるの。今更・・・遅いよ」

ひとみ君は言葉を返すことが出来ません。
ただ俯いたまま、梨華ちゃんの話を聞いています。

「ひーちゃん・・・・・遅いよ・・・・・」

この言葉だけがひとみ君の頭の中をずっと回っていました。
ひとみ君はスクっと立ち上がり、梨華ちゃんに向けていいました。

「明日。17時の電車で戻るから。それまでに返事、聞かせて」

そういうと部屋から出て行きました。呆気に取られている梨華ちゃん。
断ったつもりだったのです。しかし、「付き合えない」とは一言も言っていません。
ひとみ君はその言葉を聞くまでは、返事は保留だと解釈しようとしたのです。

「無理だよ・・・・」

1人、部屋に残された梨華ちゃんは、
ベッドに横たわりながら、色々なことを考えていました。

150 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:04











++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++











151 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:05

「あら、帰ってきちゃったんだ」

ひとみ君が2階へ上がると、ちょうど美貴君が出てきたところでした。
一緒にひとみ君の部屋に入ります。

「んで?」
「・・・・・もう遅いって言われた」
「やっぱりな」

美貴君は梨華ちゃんが言いそうなことはわかっていました。
そこでひとみ君がどんな粘りを見せるのか、そちらに興味があったのです。

「明日、俺が行く時間までに考えておいてって言って出てきた」
「そっか。遅いって言われても、フラれたとは思ってないんだ」
「付き合えないとは言われてない」

弟の神経に図太さに感心しつつ、明日が楽しみになった美貴君。

「明日亜弥ちゃんとお見送りに行くから」
「・・・・どうなるか見たいだけだろ」

図星は美貴君でした。

152 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:05










****************************************










153 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:05

次の日。ひとみ君が帰る時間になりました。時間が空いている人はお見送りです。
駅まで行くのは美貴君と亜弥ちゃんだけです。

「じゃあね」
「また年末にね」
「ケガするなよ」
「ちゃんとご飯食べるんだよ」
「バイバーイ」

口々にいろんなことを言い、ひとみ君も適当に返しつつ駅へと歩き始めました。

「梨華ちゃん、来るのかな?」
「来ないかもな」
「・・・・・」

今日は一度も梨華ちゃんの姿を見てはいません。麻琴君は家にも居ないと言っていました。
ひとみ君は期待と不安で胸がいっぱいになり、苦しくなっていました。

「はぁ」

今日何度目か分からないため息をつきます。
時間は刻一刻と過ぎていますが、梨華ちゃんの姿は見つかりません。

154 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:06

≪まもなくぅ、3番ホームに電車が入りまぁす。白線より下がってぇ、お待ち下さい≫

クセのあるアナウンスとともに、電車が近づいてきました。

「終わったぁ・・・」

ひとみ君は呟きました。美貴君と亜弥ちゃんは何も言えません。
梨華ちゃんが選択したことなのです。とやかく言う資格はありません。

「じゃあな、元気で」
「おぅ」
「またお正月にね」
「うん。たまにはデートでこっち来いよ。1部屋貸してやるから」
「はは、そんときはまた連絡するわ」
「ん。梨華ちゃんに宜しく言っておいて」
「わかった」

ひとみ君が電車に乗り込みます。梨華ちゃんは現れません。
この2人の恋は、本当に終わってしまいそうです。

プシュー

ドアが閉まり、電車は出発しました。
2人はひとみ君に手を振ります。梨華ちゃんは現れませんでした・・・・・

155 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:06















156 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:07














157 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:07

「!?梨華?」
「え?あ、梨華ちゃん!!」

そこには息を切らした梨華ちゃんが膝に手をついて、電車を見送っていました。

「ちょっと!もう、遅いよぉ」
「何やってたんだよ」
「ハァ、あの、ハァ、あっち、あっちに・・・ハァ」
「え?何?」

梨華ちゃんはとりあえず、息を落ち着かせることにしました。
美貴君も亜弥ちゃんも梨華ちゃんの回復を待ちます。

「あのね・・・」

息を整えた梨華ちゃんが、物凄く悲しそうな顔をして言います。

「あっちのホームにいたの」

そう言って指を差した方向は、逆方面へ行く電車のホーム・・・・・まさか・・・・

「間違えちゃった」

眉をハの字にして、首を傾げるその姿は、普通であればカワイイでしょう。
しかし今は状況が状況です。美貴君も亜弥ちゃんも沸々と怒りが沸いてきました。

158 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:08

「おんめぇは、どういう間違いしてんだよ!!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃない」
「ひー君、すっごい待ってたんだよ」
「あたしだって待ってたもん・・・・・あっちで・・・・」
「アホか!!」

話を聞くと、1時間も前からひとみ君を待っていたそうなのです。あっちのホームで。
日中はというと、綾小路君に別れを告げに行っていたのだというのです。

「マジかよ」
「だって」
「だって?何々?」
「ひーちゃんの言い方が」

梨華ちゃん的には、
ひとみ君の言い方が「俺が戻る前までに別れて来い」と言われたように思えたそうです。
それに素直に従った梨華ちゃん。ひとみ君への想いの方が強かったんですね。

「どうすんだよ。あいつフラれたと思ってるぞ」
「帰った途端、色んな女と遊んじゃうかもよぉ?」
「それはダメ!絶対にだめぇ!!」

ホームに梨華ちゃんの声が響き渡りました。恥ずかしい限りです。

159 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:08

次の電車の時間は19時です。
それに乗って行けば、ひとみ君に会うことは出来ますが、
帰ってくることが出来なくなるかもしれません。

「明日学校だもん」
「それまでに帰ってくればいいじゃん」
「パパに怒られるよ」
「私が何とか言っておくから」
「どこに泊まれって言うのよぉ」

2人はニヤっと笑いました。

「「ひとみ(ひー君)の寮でいいじゃん」」

梨華ちゃんは頬を赤らめました。さすが年頃の女の子です。

「あ、勝負パンツじゃないとか?」
「そんなの持ってないよ」
「着替えなんて向こうにいくらでも売ってるだろ。ひとみに付き合ってもらえよ」

梨華ちゃんは口を尖らせたまま、どうしようか迷っています。
しかし、今はひとみ君に会いたい気持ちのほうが強いはず。

「とりあえず、ひとみには俺らが遊びに行くってことにしておくから。
 駅まで迎えに来させる。それなら大丈夫だろ?」

160 名前:幼馴染 投稿日:2007/11/25(日) 17:08

美貴君と亜弥ちゃんの押しに負けて、梨華ちゃんはひとみ君の元へと走り出しました。

「あーあ、楽しみぃ」
「あいつヘタレだから、手出さないと思うぞ」
「うっそ。一緒に寝ても?」
「う〜ん、我慢できないか」
「出来ないでしょ」
「じゃあ、梨華と会った後ぐらいにアドバイスのメールでも入れておくかな」
「お、さっすが兄貴ぃ」
「うっせぇ」


こうして梨華ちゃんとひとみ君は恋人同士になることが出来ました。


合わなかった歯車がピッタリとはまり、華麗に動き出した9人の子供達のお話。



                          (O´〜`)(´▽` )  つづく


161 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/25(日) 21:01
うわぁ次回期待しちゃっていいんでしょうか。
よかったねひーちゃん梨華ちゃん。
162 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/25(日) 23:12
うおぉーー途中どぎまぎしましたがやっと思いが重なりましたね。
よくやったひーちゃん、よく粘った。
めっちゃ驚くでしょうねひーちゃん。
163 名前:t-born 投稿日:2007/11/26(月) 14:23
これで、SAGEになってると思うんですけど…。
それにしても、今回、すっごく良かったです!!
何度も読み返してしまいました。
胸が痛くなりましたよ。
次回はひとみ君との再会の模様ですかね?
すっごく楽しみです!!
更新ありがとうございました!!
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/29(木) 02:23
待っていました!良かったですね、お二人さん!
まこっちゃんたちの話も期待してます
頑張って下さい!
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/26(水) 01:15
まこっちゃん一歩踏み出せて良かったですね!!
今後の動向が気になるところです。
がんばってください!
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 23:59
ドキドキ
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/03(日) 22:25
待ってます。
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/11(月) 13:20
気になる

続きが気になる

待ってます
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/19(火) 21:43
自分も待ってます。
170 名前:ライ 投稿日:2008/03/08(土) 09:36
作者さん 続き超気になります!!
待ってます
171 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/08(日) 20:26
まこっちゃんも帰ってきたし、愛ちゃんと次のステップへ!!
172 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/07/09(水) 00:22
続き待ってます
173 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/07/24(木) 22:36
このまま…

作者さん終わってしまうのですか?
174 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/10(日) 08:48
いや、作者さんは更新してくれるはず!

頑張ってください
175 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/21(木) 11:26
そうしても続きが読みたい。。。
176 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/02(火) 21:47
続き読みたいよー…
177 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/06(土) 09:37
ずっと見てきました!
作者さんを信じてます
178 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/07(日) 16:47
凄くいいところで止まってるし
是非続きが読みたいです作者さんお願いします
179 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/23(火) 00:00
ガンバです
待ってます
180 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/10(金) 13:15
続きはもう諦めたほうがいいでしょうか・・・
せめてそれだけでも教えてくれませんか?
181 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/20(月) 21:15
一言お願いします。
182 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/21(金) 00:45
信じてずっと待ってますよ!
183 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/25(火) 11:03
最後の更新からちょうど一年ですね
もう諦めたほうがよさそうだね。
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/28(金) 01:26
それでも待ちたい、待ち続ける…
185 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/09(火) 01:37
待つのだー!!!
186 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/01(月) 14:18
続きが読みたーーーい!!
187 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/15(月) 21:42
待ってるぞーーー!!!
188 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/18(金) 22:15
待ってるー!!!!
189 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/08(火) 23:36
まだまだ待つぞ
190 名前:名無し 投稿日:2010/02/11(木) 23:59
作者です。
環境が目まぐるしく変わり、全く書けませんでした。
待っていただいている、
そのことに感動です。

また書けそうです。
頑張ります!
191 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/24(水) 00:16
また読める日が来るんですね?
うれしい限りです
続きの更新期待して待っております
192 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/04(土) 12:51
更新待つよ!

193 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/15(水) 17:11
更新待ってます!

ログ一覧へ


Converted by dat2html.pl v0.2