Fall the rain
1 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2006/12/27(水) 17:52
需要があるかはわかりませんが
初期ハロ好きな方に喜んでいただけるといいなと思って、新スレ立てました。

中澤さんとか保田さんとか平家さんとか、お好きな方
どうぞお付き合い下さい。

更新は遅めです。
あしからず。
2 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:53



―さよなら

そう口にした刹那
ついさっきまでただ険しいだけだった彼女の表情が少しだけ、和らいだ気がした

―さよなら

同じように
声にならない声で彼女の口がそう動くのが見えたけれど

アタシはもう止まらない
止める訳にはいかない
それはきっと彼女も同じで

擦れ違う瞬間
嗅ぎ慣れた香水の匂いが鼻先を掠めたのが、ただ哀しかった


3 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:54






4 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:55



「おぉい、生きとるかぁ?」

何の気なしに覗いたビルの谷間で、蹲る華奢な体を見つけた
近寄って声をかけてみるけれど、動く気配はない

「どうしたの?」

後ろからかけられた声に

「ちょいおっきいネコ、拾ったかもしれん」

そう答えて見上げた夜空から、ぽたりぽたり、頬に水滴が落ちて来る
本格的に降り出しそうな匂いもする

膝の下に腕を入れ、もう片方の手で背中を支えて
所謂、お姫様抱っこというやつに近い状態で抱き上げた

それなりに重さは感じるけれど、これぐらいなら大した労力は要しない
5 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:55

「跳ぶ、で?」
「へ?」
「急がな濡れ鼠になるやん」
「いや、そうだけど、そうじゃなくて、それ、」
「平気やろ」
「え〜、、、まぁ、いいならいいけど」

右腕付近に手が添えられたのを確認して
一気に跳んだ

セタガヤの自宅兼事務所を目指して

6 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:55




    
7 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:56

                                                                                                
「で?」
「で、ってなんやねん」
「誰なの、コレ」
「圭ちゃんもそう思うよね」

怪訝そうな顔をしてタオルを差し出す保田に、同じような表情をして矢口が頷く

「別にええやん。変なもんちゃうって」

首を軽く捻って、こきり、こきり、と小気味良い音を鳴らしながら
冷蔵庫へ向かって歩き出す中澤の後ろから保田の声が飛ぶ

「飲みすぎたら駄目だかんね?」
「あいよ〜」

ひらひら、と手を振りながら、今にも鼻歌でも歌い出しそうな勢いの後姿を見ながら
保田は苦笑いを浮かべた

元々、口の悪さとは対照的に面倒見の良い中澤が、ひょいと何かを連れて帰って来るのは珍しい事ではなく
今ではある意味、もう慣れたものなのだけれど
最後に人間を拾って°Aって来たのは何時の事だっただろうかと記憶を探る
8 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:56

玄関から聞こえてきた、のんびりした声に、そうか、と思う
最後に拾って@たのは、確か、後藤だった

「おう、おかえり、ごっちん」

缶ビール片手に咥えタバコ、という、オヤジ顔負けのスタイルで出迎えた中澤に
ふにゃりと笑って見せて

「ただいま」

と、もう一度口にした後藤の頭を、がしがし撫でながら笑う中澤の、口元の煙草にほんの一瞬、蒼い火が灯る
ああ、機嫌がいいんだな、なんて思いながら
保田は意識をソファの上に向けた

「動かすけど、いい?」
「ん?おう、アタシのベッドにでも置いといて」
「はいはい。んじゃ行くよ?」

少しだけ深く、意識を集中し始めた保田の後ろで、後藤が手を挙げる

「ねぇ、触ってみてもいい?」
「ん?触るって、アレをか?」
「うん、そう」

茶色の髪を揺らして、こくり、と頷いた後藤の横で、矢口も大きく頷いた

「そうしなよ。それが一番安全だって」
「平気やとは思うけど。ええよ。でも一応、気ぃはつけてな?」
「うん!」
9 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:57

紺のジーンズに右手を擦り付けながら、ソファの上で未だ目を覚まさない女性に近づいて行く
その後姿を見ていた矢口の頭がふい、と揺れた

「どうした?」

一瞬変わった気配に保田が振り向いた

「いや、なんか、視えたような気がしたんだけど」
「何かって?」
「一瞬すぎてよくわかんなかったよ」
「ま、悪いもんじゃなきゃいいけど」
「まぁね」

首を竦める保田と矢口を見て、中澤は紫煙を燻らせる
これはこれでいいバランスだ、と思いながら


「んじゃ、行くよ〜?」
「おう、行ったって」

中澤のゴーサインと同時に後藤の白い手は、そっと肩の上に乗せられる
一瞬だけ、ぴくり、と肩が揺れたようだったけれど、次の瞬間にはいつも通りの後藤がいた

「どう?」
「ん〜、問題はなさそうだけど、、」

保田の問いにはっきりしない答えを返しながら、右手を閉じたり開いたりしつつ
後藤が首を傾げる

「…調子、悪いのかなぁ」
「ま、すぐどうこうって感じじゃないって事やろ。気にせぇへんでもええってこっちゃ」
10 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:58

いまいち納得できない、といった表情の後藤に手招きしながら
中澤の指に挟んであった煙草が消える

「あ、またやった」
「ええやん。エコやん」
「エコかもだけど、無駄遣いだよ」
「それに、ほれ、灰皿いっぱい」
「え〜?!また?!吸い過ぎだって!」
「やっさしいなぁ、矢口は。捨ててくれるんやろ?あの中身」
「うぇぇぇえ?!」

にやり、と笑いながら矢口とじゃれる中澤の目の前で、ソファの上の人影が消える

「移動完了。後はどうする?」
「をわ、早いな。さすが圭坊」
「はいはい。ありがと。で?一人にしとく訳?」
「そゆ訳にもいかんやろ。せやな、したら矢口か後藤に頼むかな」
「はいは〜い、ごと〜がやる!やぐっつぁんも一緒にやろ?」
11 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:58

部屋の隅でぶつぶつ言いながらも、灰皿の上に山盛りになった吸殻を片していた矢口は
急に自分の名前が出てきた事に驚きつつ、快諾する

「うん、いいよ」
「やった!」
「じゃ、行こ。裕ちゃんの部屋だよね?」
「せや」
「行ってきまぁす」

仲良く二人で出て行くのを見送って、中澤はくるりと保田の方へ振り向いた

「ほんなら圭坊はアタシと飲もか」
「裕ちゃんが吐かない程度にならお付き合いするけど」
「きっついなぁ」
「吐かれたら困るもの」
「気ぃつけますぅ」
「なら良し」

12 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:58



「…組長向いてんの、圭坊の方ちゃうんか」

腕を組んで満足そうに笑う保田を見ながら、ぽつりとつぶやいた一言は、確実に保田の耳に届く

「何だって?」
「あ〜、いや、何でもないですぅ。ほれ、飲むで!今日は飲み倒しや!」
「はいはい」


13 名前:Fall the rain 投稿日:2006/12/27(水) 17:58



後藤、矢口組が中澤の寝室へ向かって移動し
中澤、保田組が軽く漫才状態になっていたまさにその時


「…此処、どこ、や、、、」

掠れた声が中澤の寝室に響いていた



14 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2006/12/27(水) 17:59

書き忘れました。
アンリアルです。

次回更新は、間違いなく年明けになると思います。
皆様、どうぞ良いお年を。
15 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2006/12/27(水) 18:06
すみません、訂正です

>>8

「たっだいまぁ」


この台詞をコピペし損ねました。
申し訳ありませんが、脳内補完お願いします。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/28(木) 02:28
うわぁ、いいもの発見しました!二日遅れてクリプレをもらったような感じです。
ゆうちゃんの大ファンでゆうちゃんリーダー時代のメンが好きな自分には嬉しい限りです。
キャストも話もおもしろそう!これからの楽しみが出来ました。
次回の更新をワクワクしながらお待ちしてます。
17 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/01/05(金) 18:10

更新します。
18 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:11




19 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:11


最近の御時世はどうだとか、たくさん飲みたいなら発泡酒だとか、昨日の夕飯に後藤が御飯を三杯も食べたとか
今日は用事があるとかで、外出中の安倍が出かける前に作っていったおかずを肴に
缶ビールをハイペースで空にしながら保田と二人、話しこんでいた中澤の眉間にふいと皺が寄る

「なんか、あったみたい、やな」

その言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、リビングのドアが開いた

「裕ちゃん!起きてた!」

慌てた様子で話す矢口を見遣って、中澤はひとつ、大きな溜息をつく

「そぉか。ほな行くで、圭坊」
「はいよ」

こつん、こつんと二回、硬い音がして、テーブルの上に新たな空き缶が二本並んだ
20 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:11

軽く首を捻りながら、立ち上がった中澤に酔った様子はまったくなく
一歩後ろにあたるポジションで腕を組んで立つ保田にも、あれだけの量を空けた人間の雰囲気は感じられない
いつもの事ながらすごいものだと、ドアを押さえたまま矢口は思う

「うん?なんや?」
「…なんでもない」
「ごっちん、待ってるし、行こか」
「うん」

中澤を先頭に、三人連れ立って寝室を目指し、リビングを後にした


21 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:11





22 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:12



「で?気分はどない?」

ベッド脇の椅子腰掛けて、足を組む

「悪くは、ない、と思います、、、」
「名前、わかる?」
「…みち、、よ?平家、みちよ、です。…多分」

頬にかかった茶色の髪を細い指でかきあげながら、ベッドの上で、平家みちよ、は困ったように眉の辺りをしかめた
一時的な記憶障害かもしれない、と保田が耳元で囁く
それに黙って頷いて、中澤は平家に笑いかける

「ま、なんや。此処でしばらく生活したらええ」
「でも、、、」
「このウチにはオンナしかおらん。アタシも含めて全部で6人や。此処におらん2人はまた後で紹介するし」
「だけど、、、」
「どこに帰るかもわかんないんでしょ?だったらウチにいればいいわよ」

困惑する平家に、いつもよりも柔らかめの声で保田が言う
23 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:12

「…御迷惑でないのなら、、御言葉に甘えさせていただいて、しばらくお世話になります」

ぺこり、と頭を下げた平家の足元で、後藤が嬉しそうに笑う

「うん?どないしたん」
「嬉しいなって思って」
「何が?」
「家族が増えるんだなって」
「ああ」

サイドボードに手を伸ばし、新しい煙草を取り出して、口に咥えながら頷く
孤独を知っているが故に、後藤は家族のぬくもりがどんなに良い物か、誰よりもわかっている、と中澤は思う
24 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:12

最初はそれこそ、人には懐かない狼のように、殺気立っていた後藤だけれど
一緒に生活するうちに、少しづつ穏やかな表情を見せるようになり
今では誰よりも幸せそうに笑う存在になった

仕方のない事だと言えば、それで片付いてしまうような事なのかもしれない
それでも、仕方ない、で片付けてしまって良いものではない、と中澤は知っている

だからこそ
自分と同じような思いをしている娘。達に、心から笑って、幸せになって欲しいと願って、この事務所を作った

そして
その願いは、今、現実として、中澤の手の中に確かに存在している
25 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:13

「ほんなら、ごっちんと同じ部屋にしたろか?」
「え?いいの?」
「ええよ。ええやろ?圭坊」
「はいはい。新しいベッド、倉庫から後藤の部屋に運んでおけばいいのね」
「頼むわ」


部屋を出て行く保田の後ろ姿を見ながら

「…すみません、色々と…」

また頭を垂れた平家に、これまたえらく謙虚な性格なものだと思いながら
煙草の先に軽く意識を集中させたけれど、蒼い火は灯らない

「…ん?飲みすぎた、か?ま、ええわ」

火のついていない煙草を咥えたまま、中澤は軽く頭を振った
金に近い髪がさらりと揺れる
と、同時に矢口の頭がまた、ふい、と揺れた
26 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:13

「どないした?」
「わからない。また視えなかった。でも、」
「でも?」
「あんまり良い予感じゃない気がする」
「そぉか」

すぃ、と立ち上がった中澤に、矢口と平家が不安そうな眼差しを向けて来る
右手でジッポを擦る仕草をしてみせると、平家は納得した表情を浮かべ、反対に矢口は眉間に皺を寄せた

「どうしたの、裕ちゃん」
「いや、飲みすぎたかなぁて」
「飲みすぎたぐらいで制御できないなんて…?」
「体調かもしらへんし。気にすんなて」
27 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:13

作りつけの引き出しを上から下まで漁って、ようやく銀のジッポを見つけ
椅子に再度腰を下ろしながら、今気がついた、という風体で

「煙草、平気?」

と、平家に問う

「平気やと思い、ます」
「そか。ほんならあかんかったら言うてな」

ジュ、と独特な音を発してジッポライターに赤い火が灯る
中澤と赤い火という取り合わせは、矢口にとっても後藤にとってもしっくりこない絵面で
くすっ、と後藤が笑う

「なんやねん」
「いや、裕ちゃんて赤い火って感じじゃないなぁって」
「藤本の色、やからなぁ」
「だねぇ」
28 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:14

後藤と2人で笑う中澤に、平家が控えめに声をかける

「あの」
「ん?」
「よろしかったら、ええと、お名前…」
「ああ。まだ言うてへんかったっけ。アタシは中澤裕子っちゅ〜ねん。一応、ここの主」
「中澤、さん」

記憶に刻み込むかのように、呟いて、すぅ、と視線が矢口へ向けられる

「おいらは矢口。矢口真里」
「矢口、さん」
「ごと〜はね、真希。後藤真希。ごっちんとか、ごっつぁんとか呼ばれてるよ」
「後藤、さん」

同じようにそっと呟いて、平家が頷く

「さっきの人は…?」
「ああ、圭坊?アイツは保田圭、っちゅ〜ねん」
「保田、さん」
「あと、安倍なつみ、っちゅ〜、こう、色白のちまっこいのと、藤本美貴っちゅ〜、ちょっと愛想の無いのんもいてる」
29 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/05(金) 18:14


「愛想ないって」

後藤が大笑いする横で、矢口は苦笑いを浮かべた

「事実やん。愛嬌あんねん、とか嘘ついてもしゃあないやろ」
「それはそうだけど、さ。ミキティが聞いたらまた軽く火事だよ、火事」
「そうそう燃やされてたまるかっちゅ〜ねん。次はさすがにきっちり抑えるわ」
「だぁねぇ。あんな火事はもうごめん」
「ごと〜の洋服、3着も燃えたし…」
「矢口の新品の鞄もだよ、、、」

大きな溜息をつく三人を交互に見遣りながら、平家は小首を傾げた
まるで意味がわからない、といった風に

30 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/01/05(金) 18:21

レスです。

>>16名無飼育さん
中澤さん好きの方とのこと。
自分の書く関西弁がおかしくないかと不安な点もありますが
楽しみにしていただけるのはとてもありがたく、嬉しいです。
自分も中澤さんを含め、平家さんのいた初期ハロー時代が大好きなので、、、(w
頑張りますので、どうぞ完結までよろしくお願いします。


正直、関西弁云々より、日本語として成り立っているのか不安なんですが、、、
四苦八苦しながら完結まで頑張ります。
では、また。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/06(土) 16:19
すごく興味がひかれるストーリーですね。
全く展開が読めないのでこれからがますます楽しみです!
自分も西生まれですが、作者さまの関西弁は心配されることは何も
無いと思います。次回更新を楽しみにしてまーす。
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/12(金) 17:50
なんだか面白そうな話を見つけてしまいました
こういう話大好きなのでこの先の展開が楽しみです
作者様のペースで頑張ってくださいね
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/16(火) 20:45
うわぁ。平家さんとか中澤さん時代の娘。小説が今読めるって嬉しいです!!
楽しみにしてます。
34 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/01/31(水) 17:36

更新します。
35 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:37




36 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:38



「平家さん」
「はい」
「平家さんって呼んでもいい?」
「あ、はい」
「ありがとう」

ベッドの上に足を投げ出した後藤が笑う

保田によって運び込まれた真新しいベッドの置かれた後藤の部屋は
元々二人部屋の作りだったせいもあり、ようやくしっくりと落ち着いたようだった
まるで
平家がそこにいる事が当たり前であるかのように
37 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:38

「でも、本当に良かったんですか?」
「んあ?何が?」
「アタシみたいな得体の知れへん人間と同じ部屋、で」

ベッドに腰掛けて、自嘲気味に笑う平家の左目を覆うように、長めの髪が落ちる
それをかきあげる事もせず、自分を見つめる平家を見つめ返しながら、綺麗だな、と後藤は思う
細い躯に白めの肌、それに似合う、明るい茶色の髪

「平家さんて綺麗だよね」
「…え?」
「綺麗、だよ」
「いや、あの、そないな事は、、、」

そう言って視線の落ちた平家に

「そっち、行ってもいい?」

そう尋ねて、こくり、と首が縦に振られるのを確認するや否や
身軽に立ち上がった後藤は平家のベッドに飛び込んだ
ベッドが上下に揺れて、平家のバランスが崩れる
38 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:38

「わわっ」

後藤の上に倒れこんだ平家の躯はやはり軽い

「ご、ごめん」
「だいじょぶ〜」

慌てて躯を起こした平家の腕の下で、後藤はふにゃりと笑った


39 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:39





40 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:39



「そういえば」
「うん?」
「あのコ、カンサイ訛りで話しとったな」
「ああ、平家ってコ」
「アタシのんとはちょい違う感じやったけどな。でもカンサイの出やと思う」
「でしょうね」

リビングのソファで足を組んだまま、紫煙を燻らせる中澤と
ソファとは背中合わせにある位置で、普段は使わない眼鏡をかけて、帳簿と睨めっこする保田
41 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:40

会話の途切れた空間に、時計が時間を刻む音と
二人とは少し離れた位置で、矢口が最新のファッション雑誌のページを捲る音だけが響く
しばらくそんな状態が続いた後、保田が口を開いた

「ねぇ、裕ちゃん。もしかしたらカツシカの人間って事は」
「いきなりなんやねん」

灰皿に短くなった煙草を押し付けながら中澤が振り向く

「だから、もしかしたら、の仮定の話」

眼鏡を外しながら保田が言う
矢口の視線が雑誌から静かに二人の方へ向けられた

「可能性としては無きにしも非ず、って事か」
「そういう事」
「その可能性は低いと思うけどな。知らない、って顔やったで?力の事なんか」
「でも」
42 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:41

二人の視線が矢口に向けられる

「ごっつぁん、わからないっぽかったよ?」
「そゆ事もあるやろ」
「何にもわかんないなんて事、あると思う?生きてる人間なんだよ?」
「それはそうかもやけどな。もしかしたら自覚がナイだけで、ブロックできる力、持ってんのかもやし」
「矢口が視えなかったのも気になる。それに」
「それに?」
「…裕ちゃんの煙草が点かなかった」

いつもはあまり見せない真面目な表情の矢口に、新しい煙草をくわえ、蒼い火が灯るのを確認して

「酔ってるから、って事じゃなさそう、やな」

中澤は大きな溜息をついた
43 名前:Fall the rain 投稿日:2007/01/31(水) 17:41

「せやけど、カツシカにカンサイ訛りを話す人間はおらへんかったハズなんやけどなぁ、、、」
「そうね。聞いた事ないわね」

保田が頷いて、三人でまた黙り込む

そこへ玄関が開いた音がした

「料理長のお帰り、やな」
「おみやげあるかな」

矢口がそう言うのと同時に

『おみやげあるべさ』

嬉しそうな安倍の声が響いた


44 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/01/31(水) 17:45

レスです。

>>31名無飼育さん
本当ですか?
ありがとうございます。
嬉しいです。
関西弁もどうにかセーフのようで安心です。

>>32名無飼育さん
ありがとうございます。
亀だったりうさぎだったり、なんともアバウトなペースですが
頑張ります。

>>33名無飼育さん
最近、あまりそのラインが主役級の話を見かけないので、
自分で書いてしまう事にしました(w
どうぞお付き合い下さい。


相変わらずおかしな日本語を並べていますが、、、
楽しんでもらえてますか?
では、また。
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/01(木) 00:23
更新お疲れ様です。
今日か今日かと毎日チェック入れてました!
次回もますます楽しみです。
46 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/02/02(金) 01:14

更新します。
47 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:15





「カツシカのアタマ?」

まだほかほかと、湯気を立ち上らせるお土産のたいやきを、嬉しそうに皿に移し変える矢口の横で
人数分の日本茶を淹れながら、安倍が首を捻る

「そ。アタマ。見た事あるか?」
「それっぽいのなら見た事あるけど…。ええとねぇ、確か、髪は長かった気がする」
「アバウトやなぁ。それがアタマって証拠はナイしなぁ。圭坊は?」
「私が会った事あるのは先代のトップだけだから。参考にはならないと思うけど?」
「先代なぁ。先代ならアタシも何回かやりあってるからよぉ知っとるんやけど…」
48 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:15

組んだ足の左右を入れ替えながら中澤は天井を仰ぐ

「代替わりして以来、メンバーがどないなってんのかもよぉわかれへんのよなぁ…」
「確かに」
「アイツはまだいてるん?カオリ、やっけ?」
「…いる」

そう言って、明らかに機嫌の悪い表情で、矢口はたいやきに手を伸ばす

「異常なくらい強いよね、力」
「せやなぁ」
「たまに視えるんだよね。矢口の二歩くらい先の時間を視てる圭織」

やれやれ、とでも言いそうな勢いで首をすくめてたいやきにかぶりつく
その姿は矢口を実年齢より若く見せるようで、中澤の顔に笑みが浮かんだ

「裕ちゃん、ヘンタイみたいな顔して笑ってるけど?」
「ヘンタイ言うな!」
49 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:16

笑いながら隣に腰を下ろした安倍の額をこつん、と小突いて、この幸せがずっと続けばいい、と中澤は思う
カツシカのアタマを先代が務めていた頃は、しょっちゅうと言っていいぐらいのペースで衝突していたけれど
死んだ、と風の噂で聞いて以来、カツシカとセタガヤが衝突する事はなく
つまらない小競り合いさえ起きていない

「このまま何も起きないといいけど」

矢口の言葉に黙って頷いて、中澤は手元のたいやきに視線を落とした
それと同時にばっ、と顔を上げる
50 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:16

「って、あかん!なっち、ごっちん呼んで、ごっちん!食いモンの恨みは怖いて言うやん!」
「確かに、後藤は敵に回したくないわね。特に食べ物関係」

先程かけ直したばかりの眼鏡を左手で持ち上げながら、真面目な顔で保田が言う

「せやねん。まだ数あるやろ?」
「一応ね。いっぱい買ってきたし」
「ほんなら頼むわ。超特急で呼んだって」
「了解」

湯飲み茶碗を手に持ったまま、安倍は笑顔で頷いた

51 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:16





52 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:16



平家のベッドの上で胡坐をかいた後藤が嬉しそうに笑う
目の前で、警戒心などというものはまるで存在しないかのような顔で笑う後藤を見ていると
一瞬、自分が何者であるか思い出さなくてもいいのではないかと思ってしまう
此処で目が覚めて以来、色々な事を必死で思い出そうとしているけれど、平家の頭は痛むばかりで何かを思い出す気配すらない
心の何処かで、思い出す事を拒否している自分がいる気さえする
53 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:17

「後藤さんは、、、」
「ごっちん、でいいよ?」
「え?じゃあ、、ごっちん」
「うん。何?平家さん」

笑顔の後藤から視線を逸らして、自分の手を見つめる

「アタシが何者か、とか気にならへんのん?」
「別に?」
「でも、、、気持ち悪くない?」
「何で?ごと〜は平家さんの事、まだ良く知らないけど。でも好きだなって思うよ」

中澤に拾われた、という割には、綺麗に整えられた自分の爪が気になる
何日もずっと、そこにいた訳ではないと、この爪が証明していると思うから
54 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:17

「…アタシ、誰なんやろな」
「平家さん、でしょ?」
「その名前かて、、本名かどうかなんて、、、」

服も汚れていない
髪だって、シャンプーの香りがする
香水のだって、嫌味ではない程度に香ってくる
自分はいったい誰なのか

「平家さんが誰でも、ごと〜にとっては平家さんだし。…んあ?日本語って難し、、、」

ばた、と胡坐のまま後ろに倒れこんだ後藤
視線を自分の手から後藤に移して、くす、と平家が笑った瞬間、勢いよく後藤の部屋のドアが開き
矢口が顔を覗かせた
55 名前:Fall the rain 投稿日:2007/02/02(金) 01:18

「ああもぉ、さっきからなっちに呼んでもらってるのに!ごっつぁん、たいやきいらないの?」
「んあ?たいやき?」
「…呼ばれてないと思うんだけどなぁ、、、」
「…」

躯を起こしながら首を傾げる後藤を見ながら、矢口は眉間に皺を寄せる
やっぱり、何かがおかしい、と思いながら


56 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/02/02(金) 01:22

すみません、訂正です。

>>55

「んあ?たいやき?」
「…呼ばれてないと思うんだけどなぁ、、、」


後藤の一続きの台詞ですが、ミスで区切ってしまいました。
脳内で補完してもらえるとありがたいです。

では、改めて。
レスです。

>>45名無飼育さん
毎日チェックして下さっているとのレスが嬉しかったので、
ちょっと頑張って更新してみました。
楽しんでもらえると嬉しいです。


微妙に登場人物が増えて来ました。
楽しんでくれてますか?
では、また。
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/03(土) 00:24
更新お疲れ様です。
チェック入れていた甲斐がありました!こんなに早く続きが読めるとは!
作者サマを急かしてはイケナイと思いつつ、手が勝手に「次回も楽しみです」と打ってしまう〜。
58 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/22(木) 00:25
更新楽しみにしてます。
59 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/12(火) 00:27
まったりお待ちしてます。
あきらめませんよぉ!
60 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/12(水) 16:53
作者さんまだ更新意志あるんかね?

あるなら別にそれで良いんだけど、無いなら
勝手に続きを書いてみたい、とか少し思ってるんだ…けど…
そろそろログ整理されそうだしね 

やっぱり非常識かな…
非常に面白そうな設定+好き面子なのでこのまま消えていくのは残念
61 名前:ゼロ(仮) 投稿日:2007/12/13(木) 02:49
スレ整理があると聞いて飛んできました


すみません
更新意志はあるんですがなかなか時間が取れなくてorz

本当に申し訳ないです



年内更新は無理でも必ず更新しますので、もうしばらく残しておいてもらえるとありがたいです
62 名前:59 投稿日:2007/12/13(木) 06:54
お、良かった。嬉しいです。
じゃあ応援してます。
妙なこと言い出してすまんかったね。
63 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/15(土) 17:47
更新待ってますよ
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/16(日) 02:11
自分も楽しみに待っているうちのひとりです。
ゆうちゃん大好きだし、何よりストーリーが面白いです。

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