遠い国での物語
1 名前:k・y 投稿日:2005/02/02(水) 17:13
はじめまして。
物語を書いてみようと思いました。長編になると思います。
主人公は石川梨華で、その他大勢出てくると思います。
つたない文になるとは思いますが、よろしくお願いします。
レス大歓迎ですので、感想などありましたら、お願いします!!
2 名前:k・y 投稿日:2005/02/02(水) 17:14




運命や宿命って言葉、あなたは信じますか?




3 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:16
朝、お母さんの声に起こされて、
眠たい目をこすりつつも鏡の前でメイク。

ご飯の時間よりも支度の時間を優先したことで、
お母さんに小言を言われ、喧嘩しつつも家を出る。

遅刻ぎりぎりに学校着で、なんとな〜く授業。

休み時間と放課後は友達との会話で、
家に帰るのは、だいたい7時過ぎ。

妹と喧嘩してお父さんに怒られて、
ふてくされながら自分の部屋で友達とメール。

月末になると、携帯料金が気になってちょっとひかえるんだけどね。


で、結局寝不足でまた朝・・・


4 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:17
それが、このお話の主人公、石川梨華こと梨華ちゃんの・・・女子高生の当たり前の日常だった。


平凡な日常。繰り返される毎日。
当たり前の、ささいな生活・・・

でも毎日楽しくて、毎日輝いていた。
ふっつ〜うに、私たちは女子高生してたんだ。


え?私は誰って?私は、梨華ちゃんの親友?(自称じゃないよ!)
柴田あゆみ。物語の展開的には、ほどよ〜く、活躍してますってかんじ。ってか、脇役だけど・・・


なんで、視点が梨華ちゃんじゃなくって、私なのかっていうのは・・・

とにかく、私たちは毎日毎日、当たり前の日常を繰り返し、女子高生してたんだ。


あの日までは・・・

5 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:18
「もう!柴ちゃん聞いてよ!!」

朝から、ご立腹な梨華ちゃん。
きっと、お母さんか妹と喧嘩したって言うんだよね?

「はいはい。今日はどうしたの?」

今日は!ってところがポイント。
梨華ちゃんとの朝の会話は石川家の愚痴から始まるんだ。

「えりがね!私のグロス勝手に使ってたの!
 最低じゃない?だいたい、中学生のくせに、グロスなんてさ・・・」

先生が来るまでの5分ちょっとの時間、梨華ちゃんはず〜っと話し続ける。
私は、時々相づちを打ちつつ、同意をしつつ、梨華ちゃんの話を聞くんだ。
たまに私の話もするんだけど、そういう時梨華ちゃんは聞いてない。
だから、話す側よりも聞く側。

「あ!先生だ・・・柴ちゃんまたね!」
「うん」

話の続きは、放課後になるんだ。
授業の合間の休み時間は忘れた宿題を写す時間。
昼休みはランチに夢中で愚痴なんて忘れちゃうからね。
6 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:20
「ね?えりってば、ひどいでしょ?だいたい、あの子中学生のくせに、最近生意気なのよ!」
「はいはい。わかったから、ちゃんと掃除してよぉ!」

あの日、私と梨華ちゃんは、理科室の掃除をさせられてたんだ。

「な〜んで、私まで掃除しなきゃいけないんだか。だいたい、柴ちゃんが頼まれたんじゃん!」
「あ〜。そういうこと言うんだ。じゃあ、いいよ。一人でやるもん。その方が瞳ちゃんに褒めてもらえるし」
「瞳ちゃんのどこがいいんだか?」
「優しいし、美人だし、頼りになるし♪」
「怖いし、人使いあらいし、テスト問題難しいし・・・?」
「もう!瞳ちゃんに言っちゃうよ!」

理科室の掃除は瞳ちゃん・・・物理の先生、斉藤瞳先生に頼まれたから。
私は瞳ちゃんのことが好きなんだ。
だから、よく瞳ちゃんのところに行くんだけど、そのたびに掃除をまかされちゃうんだよね。
梨華ちゃんは、一緒に掃除に付き合ってくれるんだ。
っていうと、いい人みたいだけど、本当の理由は理科室からだと剣道部の練習がよく見えるから。
剣道部には・・・梨華ちゃんが思いをよせている相手がいるからね。

7 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:21
「あ〜あ。瞳ちゃん、ぜ〜ったいに、柴ちゃんの気持ち知ってるんだよ。
 知っててこき使われてるのにさ。柴ちゃん、お人好しだよね」
「いいの!」
「だいたいさ、この間の物理のテスト、あれ大学入試の問題だよ!自分で作ってないじゃん!手抜きしてるし!」


「そのテストの点がとれなかったのは、あんたでしょ!」


校庭に向けられていた私たちの視線が理科室の扉の方に移った。

「あ・・・」
「悪かったわね!手抜きで!」

職員会議が終わったらしく、瞳ちゃんが扉にもたれて立ってた。

機嫌わる〜・・・

「ご、ごめんなさい!あ、私用事があるから、柴ちゃんまたね!!」
「ちょ!あ・・・」

梨華ちゃんは瞳ちゃんが苦手なんだ。
だからさっさと出て行っちゃった。

「あ・・・ごめんね?梨華ちゃん、別にそういうなんていうか・・・
 悪気があって言ったわけじゃないっていうかね?」
「あーむかつく!あゆみ!お茶!!」
「あ、うん」

瞳ちゃんは準備室の方に行っちゃった。
きっと職員会議でいやなことがあったんだ。

「早く!」
「は、はい!」

やっぱり、こき使われてるのかな?
なんて思いつつ、お茶を入れに準備室に入った。
8 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:22
「はい」
「ありがと」
「ううん」
「あんたさ、物理の点数はいいのに、なんで他の教科はダメなのよ!」
「え?」

どうやら、進路指導が始まるみたい。

「せめて、英語と数学くらい人並みにできてればね・・・」
「・・・」

私も梨華ちゃんと同じでどちらかというと勉強嫌いなんだよね。
物理だけは瞳ちゃん効果で学年トップを死守してますけど・・・

「どうするの?進路?」
「う、うん」
「物理が好きなのに、数学が苦手なんて聞いたことないわよ」
「・・・だって」
「物理が好きなら、私が行った大学紹介してあげてもいいわよ?
 でもその前に、もう少し数学頑張りなさいよ!」

「大学行きたくないな・・・」
「は?そうなの?就職希望?」

「・・・恋人希望・・・」
「は?」

「瞳ちゃんのこと、好きなんだけどな・・・」
「なに、バカなこと言ってんのよ!ほら、さっさと掃除しな!」

「ねえねえ、好きな人とかいるの?」
「そうねぇ?石川とか、かわいいわよね?」
「・・・もういいよ」
「はははっ。さっさと掃除しな!」
「はぁ〜い」

結局子供あつかいされてるんだよね。
お茶を飲む瞳ちゃんの背中をちょっとだけ見てから理科室に戻った。

9 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:24
瞳ちゃんから逃れて理科室を出た梨華ちゃんは、玄関で私のことを待ってた。
「おっそいな〜」
「あ、梨華ちゃん!」
「え?」

振り返ったら、そこには梨華ちゃんが片思い中の美貴ちゃん。

「あ、美貴ちゃん」
「今帰り?」
「あ、うん。柴ちゃん待ち」
「相変わらず仲いいねぇ」
「柴ちゃん、友達少ないからさ」

失礼な。友達少ないのは梨華ちゃんの方じゃん!

「梨華ちゃんも、友達少ないけどね!」

言ったのはよっすぃ。美貴ちゃんと一緒で剣道部なんだ。

「もう!よっすぃ余計なこと言わないでよ!」
「好きな人の前だもんね!」
「もう!」

よっすぃはいっつも梨華ちゃんをからかうんだ。

「おっと!怖いなぁ。そんなんじゃ、嫌われちゃうよ?」
「バカ!それより、美貴ちゃん、もうすぐ試合だね!」

「うん。今度は優勝したいな」
「うんうん。絶対にできるよ!」

「そうそう。今年はうちとミキティだけじゃなくって、一年もいるからね!」

剣道部は今までよっすぃと美貴ちゃんだけが強かったんだけど、
今年入部した一年生が強いらしくって、優勝の希望の光が見えてきたんだって。

「応援してるね!!」
「あの〜?視線がミキティだけに向けられてるんですけど?」
「よっすぃは応援しなくったってどうせ勝つじゃん!」
「はいはい。どうせですよ〜だ」

「はははっ。本当に、二人は仲がいいね!」

美貴ちゃんが二人の会話に笑った。

「よくないもん!」
「よくないよくない」

そんな二人を見てまた美貴ちゃんは笑った。
10 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:25
「ごめん!遅くなって!!」

理科室の掃除を終えてようやく私が梨華ちゃんたちに合流。

「おっそ〜い!」
「ごめんごめん!!」
「瞳ちゃん、人使いあらいよ!」
「いいの!好きでやってるんだから!」

「え?柴ちゃんって、斉藤先生が好きなの?」

美貴ちゃんが驚いたようで目を丸くして聞いてきた。

「うん」
「もの好きだよね?瞳ちゃんなんて、柴ちゃんの気持ちをいいことにこき使ってるっていうのにさ」

余計なことを言う梨華ちゃんをかるくひじでつっついた。

「マジで?なんだ・・・美貴、柴ちゃんいいなって思ってたのに」
「え?」

私よりも先に梨華ちゃんが反応した。

「あ?でもさ!まだ付き合うって決まったわけじゃないんだよね?」
「は、はあ。まあ、一応?」

「じゃあ、いいや。とにかく、次の剣道の試合見に来てよ!」
「うん」

「美貴絶対に勝つし。でもって、柴ちゃんのハートゲットしちゃうよ♪じゃあね!」


そういうと、美貴ちゃんは行っちゃった。


これって告白?なんかよくわかんなくってボーっとした。



でも、隣からの冷ややかな視線・・・


11 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:26
「柴ちゃん・・・ひどいよ・・・」
「ち、ちがっ!!ちがうって!!」
「ミキティのことなら、気にしないほうがいいって!
 ああやって、かわいい子見るとすぐにからかいたくなるだけなんだからさ!」

よっすぃの言葉に複雑な気分。

「じゃあ、私はかわいくないってこと?」
「口うるさいし、ネクラだしね」
「よっすぃのバカ!!」

「梨華ちゃんだって、かわいいって!」
「柴ちゃんに言われたくないもん!!」

怒っちゃったよ。梨華ちゃんはその場からかけて行っちゃった。

「あ〜あ。怒っちゃった」
「よっすぃ言い過ぎだよ」
「でも、落ち込むより怒る方がらしいじゃん?」

まあね。よっすぃなりの優しさなんだろうけどさ。

わかりにくいっての。

「そりゃ、そうだけどさ。あ!試合、頑張ってね」
「うん」

12 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:27
夕日が沈んだ後の校舎は、一気に光が少なくなる。

廊下も教室も、昼間の明るい面影は全くなくなる。

闇が支配していく時間。青と黒の世界。



本当だったら、とっくに帰るはずだったのに、
梨華ちゃんがふてくされ中だから付き合うことにした。

「柴ちゃん、ほんと〜に美貴ちゃんに興味ないんだよね?」
「ないないないない!」
「本当に?」
「本当に!」
「でも・・・瞳ちゃんよりも美貴ちゃんの方がいいもん・・・」
「失礼な」

こんな感じで、もう一時間。
すっかり日が暮れた教室って青いんだなっておもいつつ梨華ちゃんの話を聞く。

もともと話は長いけど、こういう時は特別長いからね。
13 名前:序章 投稿日:2005/02/02(水) 17:28



『ドカ〜ン!!』



「え?」
「何?今の?」


突然の爆音。それが全ての始まりだった。


「何々?」
「体育館の方だよね?」
「うん」
「行ってみよ!!」
「え?ちょっと!!」

梨華ちゃんは、思い立ったら即行動なタイプなんだよね。
こういうところたまについて行けないって思いつつ、後を追った。


14 名前:k・y 投稿日:2005/02/02(水) 17:30


とりあえず、ここまで。

15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/02(水) 17:44
感想第一号〜!!!
おもろ〜いっす。気にな〜るっす。
16 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:20
もう部活も終わった時間だから、体育館に人の気配はなかったけど、
日が落ちたはずなのに、そこはすっごく明るくて、扉を開ける前から、何かあるなって思った。

「先生呼んでくるよ!」
「待って!せっかくだし、のぞいてみない?」
「危ないよ!」

って言ってるそばから梨華ちゃんは好奇心に火がついたみたいで扉を開けちゃった。


「きゃぁぁぁぁ!!」


中から飛び出した光に私たちは目が開けられなくなった。

「り、梨華ちゃん!危ないからドア閉めて!!」
「おそいよ!もう中に入っちゃったし!!」
「な!もう!!なにしてんのよ!!」


私も手探りで梨華ちゃんを探して中に入った。

17 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:21

「きゃぁぁぁぁぁ!!」


「え?なに?」
「変なの!変なのがぁぁぁ!!足に変なのがぁぁぁぁぁ!!」

梨華ちゃんの絶叫に目を開けてみると、梨華ちゃんの足元にネバネバの化け物・・・

「わ、わぁぁぁぁ!!」
「柴ちゃん助けて!!」
「えぇぇ!?無理無理無理!!」

気持ち悪い青黒いネバネバしたやつが梨華ちゃんの足にまとわりついてる。


「柴ちゃん!!」
「だって!!」

18 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:23

『姫を守って!』


突然聞こえたその声。

次の瞬間、体中が熱くなって、気がついたら梨華ちゃんの足元のネバネバと格闘してた。

梨華ちゃんの足元のネバネバは、とりはずそうとしても踏み潰そうとしても全く効き目なしで。
何とか格闘して私と腕に絡めとった。

「きもい〜!!」
「って、失礼な。助けてあげたんだからね!」

私の腕をみて遠ざかる梨華ちゃんに、少しだけ頬をふくらませた。

「とにかく、先生呼んでこよ!」
「待って!」

この後におよんで、まだなにかあるの?
ってかんじで振り返ったら、声の主は梨華ちゃんじゃなかった。


白い道着に青い袴。
腰には刀をさしていて、長い黒髪を一つに束ねた女の子。


剣道部?じゃないよね??

「あなたは?」

だんだんと、光が和らいでいって、女の子の姿がはっきりと見えた。

凛と張った胸。
固く結んだ口元。
そして、まっすぐな眼差し。

だけど、その目は見ているだけでなんだか悲しい気分になった。
19 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:25
女の子は梨華ちゃんの前までくるとひざまずいた。

「え?」

「姫!迎えにまいりました!」
「え?」

「今こそ、姫の力が必要なんです!
 お願いです!一緒に来てください!!」
「は?」

「姫の力が必要なんです!」
「はい?人違いじゃないの?」

梨華ちゃんの言葉に、女の子は顔を上げた。

「そっか・・・前世の記憶はないんやった・・・」
「え?」

それから女の子は、ぶっとんだ話を始めたんだ。

20 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:26
女の子は、私たちの世界とは別空間の、
第三世界という場所から来たんだって。

第三世界と私たちの世界は時空間でつながっていて、
同じ時間を共有しているんだ。

でも、空間は別々で、私たちの世界が表だとしたら、
第三世界は裏世界ってことになるらしい。

もともと別空間で、人も時間も交差することはなかったみたい。

それが、あることを境に、第三世界に生きた人の魂がこっちの世界に紛れ込んだんだって。

21 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:27
昔、第三世界が危機に陥った時、国を救った者がいた。
姫と、姫に使えた八人の剣士。

国に魔物が現れて国中が混乱に陥ったときに、
魔物と戦い四神の力を得て国を救ったのが姫と八剣士。

姫から授けられた運命の霊玉を持った八人の剣士たちと、
姫の祈りによって呼び出された四神。

その力によって国は救われた。

でも、姫は力を使い果たしたときに、生命力がつきて、
そのまま永遠の眠りについた。

そのときに、魔物にかけられた呪いによって、
永遠に第三世界には転生できないようにされたんだって。

そして、姫の生まれ変わりが、第一世界で生まれた梨華ちゃん・・・

22 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:27
第三世界は今、魔物が現れて国中が混乱している。


その魔物を退治するためには、四神の力が必要で、
その四神を呼び出すためには、姫と八剣士の力が必要なんだって。


だから、一緒に来てほしい!って話だった。

23 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:29
ぶっとんだ話に、私も梨華ちゃんも呆然となった。
新手の詐欺?誘拐??・・・なんてちょっと思いつつ・・・

「お願いします!」

でも、その女の子はすっごく真剣で・・・
だから、冗談でも笑える気分にはなれなかった。

「って言われてもね・・・」
「お願いします!!このままやったら、国中が危険なんです!!」

「でも・・・そんなこと急に言われても・・・」
「お願いします!!」

何度も何度も床に頭をくっつける女の子。
困ったなって顔の梨華ちゃんがこっちを向く。

「あのさ?話はわかったっていうか・・・
 わかんないっていうか・・・でも、とにかく、実感ないよ」
「そんな・・・お願いです!!一緒に来てください!!」

「・・・うん!わかった!!」
「え!?」

梨華ちゃんが承諾したのにびっくりしすぎて大きな声を出してしまった。
24 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:30
「ちょ、ちょっと待ってよ!第一、危険すぎるよ!!ほら!!これ見て!!」

私の腕にからみついてるネバネバを見せる。

「きもい・・・」
「ひどい・・・」

「あ!危ない!!」
「え?」

女の子は、私の腕のネバネバを見るなり剣をぬいた。
でもって、次の瞬間疾風に吹き飛ばされてて・・・

目を開けた時にはネバネバは切り落とされてた。

「は、ははは・・・」

一瞬のことだったけど、恐怖ってこういうもんなのね?
みたいなかんじで、その場にへたれこんだ。

「こいつは、ダークプリンといって、人の身体に寄生して細胞を食いつぶすんです」
「え・・・」

女の子に言われて腕を見てみると、変色して青黒くなってた。

「ほらほらほら!!危険だよ!!」
「本当だ・・・やっぱ、やめる・・・」

梨華ちゃんも、わかったみたい。
25 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:32
「困ります!そんなの困ります!!お願いです!!
 このままじゃ・・・このままじゃ、みんなを守れない!!」

剣を握った女の子の手が震えているのに気がついて、梨華ちゃんは言葉を失った。

「・・・」
「お願いします・・・」

「・・・」
「お願いします!!」

梨華ちゃんに向けられた真っ直ぐな視線。
その眼差しから目をそらすことはできなくて・・・

だから、結局梨華ちゃんはうなずいたんだ。

「わかった。一緒に行く!」
「ほ、ほんまに?」

「うん!困ったときはお互い様って言うしね?」

そういう問題じゃない気がするけど・・・
梨華ちゃんは、困ってる人を見るとほっておけないんだ。

「ありがとうございます!!」


女の子の目に輝きが戻って、固く結んでいた口元がほころんだ。
さっきまでの緊張や強張った表情が消えたその顔に、
こんな風に、無邪気な笑顔を見せる子だったんだなって思った。

26 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:34
「じゃあ、とりあえず、家に帰って荷物とってくるから・・・二時間後にまたここに集合でいい?」
「でいいって?」

私に同意を求められてもね?

「柴ちゃんも、行くでしょ?」
「え?いや。それは・・・」

「なんで?」
「なんでって・・・だって」

「え〜!!友達じゃん!!私だけ見捨てるんだ・・・」
「ちがっ。違うよ!!だって・・・」


だって・・・だって、明日、瞳ちゃんが天体望遠鏡見せてくれるって約束してたんだもん・・・
天体望遠鏡ってことは、夜だし・・・一緒に夜の学校でデートだって・・・勝手に浮かれてたんだよ・・・
ってそんなこと梨華ちゃんに言ったらどっちにしても、デートはできなくなるだろうし・・・

いろいろ考えてるうちに、梨華ちゃんの小言が始まって・・・結局私も承諾した。

27 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:34
私たちは、家の人に書置きをして、
その日の夜再び学校に集合した。


黙って家出するなんて梨華ちゃんはよくやるけど、
私は初めてで、なんだかすっごく悪いことをしてる気分になった。


きっと、すぐ帰れるよね?なんて思いつつ・・・

28 名前:旅立ち 投稿日:2005/02/04(金) 14:36
「え?これで行くの?」

第三世界へ行くために、私たちが乗り込んだのは、木製の時空旅行機・・・
スペースシャトルみたいに、もう少しハイテクなかんじを期待していたんだけどね。

「はい!」

はいって・・・元気に答えられちゃうと、不安な点を問い詰められないよ。

「本当に平気なの?」
「私も、これできましたし。来るときにちょっと故障したみたいだったけど、多分大丈夫です!」
「多分って・・・」

梨華ちゃんと見詰め合って、覚悟。
ようするに、行くしかないんだもんね。
時空旅行機に乗り込んだ私たちは、両手を胸の前で握り締めた。

「じゃあ、行きます!」
「「は、はい」」

それから、目の前がまぶしくなったかと思ったら、ものすごい衝撃に襲われた。


「きゃぁぁぁぁぁ!!」


それ以上に、隣の梨華ちゃんの絶叫。

梨華ちゃんの高音に頭が割れそうになった・・・

29 名前:k・y 投稿日:2005/02/04(金) 14:41
以上二話目です。

川σ_σ|| <補足説明です。
ダークプリン:人の身体に寄生して細胞を食べちゃうきもい化け物。
       攻撃レベル1。危険度1。
弱いんだけど、とにかくきもい化け物です。青黒いネバネバのかたまり・・・

30 名前:レス 投稿日:2005/02/04(金) 14:45
>>15 :名無飼育さん
 早速の感想ありがとうございます!!
 もっともっと面白くて、わくわくできるような物語を
 目指したいと思いまっす!!
 へたれ作者ですが、今後ともご期待ください?!
 
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 07:22
これ、超面白い!!!!!!
応援します!!
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/05(土) 15:35
やばい。超面白いですけどっ!
続き期待してます。頑張ってください。
33 名前:レス 投稿日:2005/02/06(日) 21:50
「柴ちゃん?大丈夫?」
「う、うん」

あんまり大丈夫じゃないけど、とりあえずそう答えておこう。

「着きました!」
「え?もう?」
「はい!第一世界と第三世界は空間軸だけが違うだけで、同じ時空間を共有してるんで」

よく聞いてるとわからなくなる話になるから、
あまり深く追求しようとは私も梨華ちゃんも思わなかった。
34 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 21:52
「ここ、どこ?」

外に出て、辺りを見渡した梨華ちゃんの第一声。

第三世界は、私たちの世界とはまったく別な雰囲気だった。
町の景色も人の格好。木造の家屋。着物を来た人々。
時代劇みたいな町並みに私たちは目を丸くした。

「私たちの世界です」
「あ、うん。そうだったね」
「外は危険なので、とりあえず、私の家に来てください!」
「あ、うん」

何もかもが、目新しくって、夢見心地な気分で。
とりあえず女の子についていくことにした。

「その前に!」
「え?」
「あなたの、名前を教えて?」
「え?名乗っとらんかったですか?」
「うん」

そういえば、聞いてなかったね名前。

「これは失礼しました!私は、この国の次期国王・・・
 『信』の霊玉を持ちし剣士、高橋愛です!」
「こ、国王って・・・偉いんじゃん!」

梨華ちゃんが愛ちゃんを凝視する。

「偉くなんか・・・ない」


そういって、うつむいた愛ちゃんの瞳は、また輝きを失っていた。


35 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 21:55
『信』の霊玉を持った愛ちゃん。

愛ちゃんは産まれながらにして、重たい運命を背負わされてきたんだ。
それについては、また今度ゆっくり。

八剣士は他にもいるし、霊玉を持った人は愛ちゃん意外にあと7人いるけど、
『信』の霊玉を持った者、その人が、この国の国王になるっていうのが決まりなんだって。

愛ちゃんは、国を治めるなんて無縁の世界から、
霊玉を持って産まれちゃったばっかりに、この国の次期国王になっちゃったんだ。

なんで、『信』の霊玉の持ち主が?っていうのは、『信』は信じる心。
この国の真の平和を信じ、国民を信じ、自分の信念を信じ・・・
そういう心を持った人がこの国をおさめるべきってことなんだ。

まっすぐな眼差しの愛ちゃん。
生真面目だけど、ひたむきで何事にも真剣な愛ちゃん。
そんな、愛ちゃんが『信』の霊玉の持ち主って似合いすぎるんだよね。

36 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 21:56
「え?ここって・・・」

愛ちゃんに連れてこられた場所。
それは・・・私たちの世界でいうところの、皇居♪

「皇居じゃん!!」
「コウキョ?」

「私たちの、世界でもねこの建物あるんだ!
 えっと、誰が住んでるんだっけ?小泉さん?」
「違うって!天皇」

無知な梨華ちゃんに笑った。

「とにかく、とにかく!皇居に入れるなんて、めったにないチャンスじゃん!」

めったにっていうか、一生ないチャンスだね。

「うんうんうん!」

だから、私も自然とテンションがあがっちゃう♪って思ったのも、つかの間だった。



空からの突風に私たちは地面に叩きつけられた。



37 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 21:57
「なに?」

上を見上げると、カラスの10倍サイズの化け物・・・

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

梨華ちゃんの絶叫。

「姫!危ない!!」

愛ちゃんが化け物から梨華ちゃんを守ろうと剣をぬいて梨華ちゃんの前に立ちはだかった。

「姫!怪我は?」
「なんなのよぉぉ!なにこの化け物!!」
「ズーです!」

ズーって名前らしい。
いかつい感じ・・・って感心してる場合じゃなかった。

「うっ・・・」
「愛ちゃん!」

ズーのくちばしが愛ちゃんの腕を捕らえた。
思わず剣を落としてしまう愛ちゃん。

「姫!逃げて!!」
「でも!!」
「逃げてください!!」
「そんなぁぁ!!」

「柴田さん!!」
「は、はい!」

恐怖で震えていた私にも愛ちゃんからの指令。

「姫を安全な場所に!!」
「え?」
「早く!!」
「って、言われても!」

「きゃぁぁぁぁ!!」

混乱してた私に梨華ちゃんの絶叫。
見てみたら、愛ちゃんの腕から離れたズーが梨華ちゃんの真上に!!!


「姫!危ない!!」

38 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 21:58



『姫を守って!!』



「え?」

また聞こえたあの声。
あの時と同じように、体中が熱くなって・・・

39 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 21:59
気がついたら身体を盾にして、梨華ちゃんをかばってた。

「う〜・・・」

背中に多分ズーのくちばしが刺さったんだと思う。
鈍い痛みの後に、生暖かい感触。
きっと血とか流れてるんだよね・・・背中でよかった。
目に見える範囲だったら、それだけで失神できる自信あり。

「柴ちゃん!大丈夫?」
「じゃ、ないかも・・・」

私が覆いかぶさったおかげで無事だった梨華ちゃん。

「姫!怪我は!!」
「私は平気!」
「よかった」
「よくないよ!柴ちゃんが!!」


「うっ!わぁぁぁぁぁ!!」


私から離れたズーが再び愛ちゃんをめがけて襲ってきたみたい。
もはや、剣を落としてしまった愛ちゃん。


万事休す。


うつすべなしで、目をつぶって身構えた。

40 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:00



「愛ちゃ〜ん!!」



次の瞬間、その声とともに、私たちは光に包まれた。


そして、次に目を開けたときには、ズーは焼き鳥になってた・・・


41 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:02
「愛ちゃん!!」

声の主が駆け寄ってきて、愛ちゃんを抱きしめた。
その人は、愛ちゃんの乳母。中澤さん。
中澤さんは、愛ちゃんがピンチの時には必ずかけつけてくれるんだ。

「無事?」
「はい!」
「よかった」

「姫は!姫は無事ですか?」

抱きしめられた愛ちゃんは、一命を取り留めたことで一瞬ホッとして、すぐに梨華ちゃんの心配。

「うん!大丈夫!!」
「よかった」

愛ちゃんは安心してその場に崩れこんだ。
42 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:03
「愛ちゃん、城は魔物に半分占領されてしまったんや。
 ここは危険やから、そこの姉ちゃんたちと一緒に逃げて!」
「そんな!そんなできません!私も一緒に戦います!!」


落とした剣を再び握り締めた愛ちゃんを、中澤さんはまた優しく抱きしめた。


「あんたには、このお姫様守って四神を呼び出して、国を救うっていう使命があるやろ?」
「でも・・・でも!もう誰も見殺しにしたくない!!」


その言葉は、愛ちゃんの心からの悲しみの叫び。


その言葉に、中澤さんは凛とした態度になった。

「アホ!愛ちゃんは誰も見殺しになんかしてへんやろ!!」
「・・・」
「あれは、しかたのなかったことやないか」
「でも・・・」

うつむいて、肩を震わせる愛ちゃんに、中澤さんの口調がやわらかくなった。

「愛ちゃんの大切なもんは、大切な城は、うちが守ったるから。な?」
「・・・」
「うちにはまかせられんか?」
「いえ」
「うちが、城守ったるから、愛ちゃんはお勤め気張りなさい!」

中澤さんの優しくて厳しい声。
その言葉に愛ちゃんは再び顔をあげた。

「はい!」
「ええ、返事や」
「はい!!」


愛ちゃんには、とってもつらくて悲しい過去があるんだ・・・
でも、その過去を忘れることなく、過去から逃げ出すことなく愛ちゃんは生きてるんだ。

43 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:04
「あの〜?」

二人の世界に梨華ちゃんが控えめに存在をアピール。

「なんや!うちの愛ちゃんを危険な目に遭わせおって!あんたそれでも姫なんか!!」

中澤さんの迫力に梨華ちゃん半泣き。

「姫!こちらは、生まれてからずっと私のお世話をしてくれてる、中澤裕子さんです」
「あ、ども」

「あんた?今度愛ちゃんを危険な目に遭わせたらしばき倒すからな!」
「はい・・・」
「ん?その子、早く治療せんと死ぬで。ドムドムは毒気を放つんや」

愛ちゃんへの視線を私に向けて、中澤さんが気がついてくれた。
ってか・・・遅いって・・・

「えぇぇぇぇ!!」

梨華ちゃんがその言葉を聞いて驚く。

「柴ちゃん!!」

背中から流れた血で梨華ちゃんの服も少しだけ赤く染まってた。


もっと早く気がついてよ・・・死んじゃうじゃん!!

44 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:06
「柴ちゃん・・・大丈夫かな・・・」

愛ちゃんと梨華ちゃんで私を近くの病院に運んでくれた。

「でも、姫に怪我がなくってよかったです!」
「よくないよ!」
「・・・でも、これが姫だったら・・・柴田さんでよかったんです」

そりゃ、昔っから丈夫な方だけどさ、だからって、よくは全然ないんですけど?

「よくないよ!柴ちゃん死んじゃうかもしれないんだよ!!そんなの絶対によくない!!」
「柴田さんは平気です!それに、姫が死んじゃったら、この国は救えんもん!」
「柴ちゃんは、私のこと守ろうとして怪我しちゃったんだよ?
 この世界に来たのだって、私がお願いしたからじゃん!
 それでもしものことがあったら、そんなの絶対によくないよ!!」
「姫・・・姫は・・・姫はもう少し、自分の身を守るっていう自覚を持ってください!」
「だからって、柴ちゃんを身代わりにはしたくない!」

だんだん二人の会話はヒートアップ。

「私は、姫のためだったら、姫を守るためやったら、自分を犠牲にできます!
 だから、姫は姫らしく!もっと自覚を持ってください!!」


愛ちゃんの口にする、『守る』って言葉、『自覚』って言葉、
それは梨華ちゃんには重すぎるんだ。

育った環境が全く違う私たち。

いきなり国を守るとか、姫としての自覚なんて備わるはずないんだよね。

45 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:08
「誰かを犠牲にするんだったら、そんな自覚もてないよ!!」
「姫!わかってください!!姫は、この世界にいたときは、
 気高く美しく優しく、そして強いお方だったんです!!」

「そんなのわかんない!!だいたい、姫姫って、
 そんなこと言われたってわかんないよ!!
 昔のこととか言われても、私じゃないし!!
 それに、今までふっつ〜に女子高生してたのにさ、
 いきなりこんな危ない世界に連れてこられて、
 しかも柴ちゃん怪我までさせちゃって!もうわけわかんない!!」
「わかってもらわんと困るんです!!」


「わかんない!!愛ちゃんなんて嫌い!!」


そういうと、梨華ちゃんは病院を飛び出して行っちゃった。


愛ちゃんは、奥歯をかみ締めてこぶしを握り締めた。


「わかってもらわんと・・・困るんです」


愛ちゃんの頬を涙が伝って、私のベッドに落ちた。


布団に落ちた涙はすぐに吸い込まれて消えたけど、
愛ちゃんの頬を伝う涙はしばらく消えることはなくって・・・


愛ちゃんはその涙をぬぐうのをやめて、ベッドに伏せて声を殺して、涙を開放した。

46 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:10
「?」

愛ちゃんのぬくもりをかんじて、ようやく気がついた私。

「・・・愛ちゃん?」
「あ!」

愛ちゃんは涙を隠すように、後ろを向いた。
涙のわけは、なんとなく聞いちゃいけないんだって思って、しばらくは黙っていた。

「ごめんなさい」
「ん?」

「あの・・・」
「あ、梨華ちゃん?喧嘩でもした?」

「あ・・・いや・・・」

愛ちゃんがうなだれたのがわかって、なんとなくなにがあったのか察しがついた。

「どれくらい?」
「え?」

「梨華ちゃん、ここを出てからどれくらいたった?」
「あ・・・えっと、30分くらい」

「そっか。じゃあ、あと30分」
「え?」

「梨華ちゃんね?強情だから、1時間は一人の時間をおかないと、
 ぜ〜ったいに非を認めないんだ。強がって、平気だもん!とか言ってくるの。
 だから、なにかあったときは、1時間たったら迎えに行くことにしてるんだ」
「・・・やっぱり、柴田さんは、姫のことを思ってるんですね?」

「ん?あ〜。友達だしね?付き合い長いんだこれでも」

物心ついた時から一緒にいるからね。梨華ちゃんのこと結構知ってるんだ。

「・・・友達」
「うん。きっとね、梨華ちゃんそのうち言い出すよ?」
「え?」
「愛ちゃん!愛ちゃんって、私の親友だよね?って」


冗談のつもりで笑った私にたいして、愛ちゃんはまた涙を落とした。


涙のわけは聞いちゃいけない気がしたから、またしばらく黙ってた。


愛ちゃんの涙。そのわけを知るのは、もう少しだけ先の話。

47 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:14
「り〜かちゃん?」

一時間後、ちゃ〜んと迎えに行く私。

「柴ちゃん・・・大丈夫?」
「じゃないよ!ってか、看病しててよ!」
「元気そうじゃん」
「まあね?」

これでも、なんか全身だるくて、ふしぶしがしびれてるんですけどね・・・

「で?気分は冷めた?」
「柴ちゃん・・・私さ、愛ちゃんが期待してるような姫?になんかなれる自信ないよ」

「そうだね〜。今まで女子高生だったんだもんね。
 しかも、成績悪いし、これといったとりえもないし、彼氏もいないしね?」

「そこまで、言わなくてもいいじゃん!
 だいたい、柴ちゃんだってかわんないでしょ!」

「あは?ばれた?」

「まあね。柴ちゃんよりかは、かわいいし、
 スタイルもいいし、優しいし?
 私の方が向いてる気もするけどさ!」

やっと、元気になったみたい。
梨華ちゃんは単純なんだけど、取扱注意なんだよね。

「うっわぁ〜。何々?落ち込んでたんじゃないの?」
「落ち込んでないわよ!ただ、ちょっと考えてただけ!」

「そっか。じゃあいいけど」
「・・・いいもん」

テンション上がったと思ったらすぐに落ちる・・・これもいつもの梨華ちゃん。
48 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:15
「梨華ちゃんはさ、梨華ちゃんなんだし・・・らしくていいんじゃん?」
「え?」

「ほら、元気で明るくて、チャーミングで・・・って言い過ぎか。
 とにかく、そのままで十分いけると思うよ」
「・・・うん」

「それにさ?愛ちゃんだって、守ってくれるって言ってるんだし?頼もしいじゃん!」
「う〜ん・・・」

「それに、一応私も守っちゃうからさ?友達として、親友として。ね?」
「柴ちゃん♪」

梨華ちゃんに抱きつかれて、少しよろけた。


一瞬背中に激痛が走ったけど、すぐに和らいで。
梨華ちゃんはやっぱり手がかかるって思いつつ、苦笑しながら天井を見上げた。

49 名前:自覚 投稿日:2005/02/06(日) 22:17
「ちょっとあんた!!」

梨華ちゃんと病院のロビーで話していたところに、お医者さんがやってきた。

「はい?」
「あんたじゃないわよ!あんた!!」

梨華ちゃんを押しのけて先生は私の前に立った。

「まだ、毒気が抜けきってないのに出歩くなんて、死んでもいいわけ!?」

そんなに、危ないの・・・ってかんじで首をふった。

「言っとくけどね!ズーの毒気にやられたら、普通の人なら即死なの!
 生きてるだけでも奇跡的なのに、こんなに早く出歩くなんて!信じらんない!!
 ここにはね、生きたいって思う人がたくさんいるの!
 自分から、命を粗末にする人なんていないわけ!!!わかった?」

「はい・・・ごめんなさい」

命を粗末にする気なんて全然ないけど、とにかくこの場は謝ったほうがいいよね。

「さっさと、病室に戻んな!!!」
「は、はい・・・」

慰めて、怒られて、散々だよ・・・って思いながら立ち上がった時だった。



『ズド〜ン!!!!』



爆音とともに、爆風!!

「何?」


次の瞬間、私たちの目に飛び込んできたのは、真っ赤な光景だった。

50 名前:k・y 投稿日:2005/02/06(日) 22:22
第三話目です。33のタイトル入力ミスです・・・すみません!!

川σ_σ|| <説明です♪

This is 八剣士…NO.1 高橋 愛

霊玉:信   タイプ:ナイト
年齢:16歳  出身:ノースアイランド  
武器:エクスカリバー(剣)
能力:水龍を操る。 
その他info:次期国王。すっごく真面目。すっごく純粋。
      姫(梨華ちゃん)第一主義♪

ズー:体長10m、見た目はカラス。空中から降下してきて人を襲う。
   くちばしから毒気を放ち、一撃必殺のすごい化け物。
      攻撃レベル:10。危険度:10。
かなり強いです。こんな奴にやられて、助かった私は幸運らしいです。

51 名前:レス 投稿日:2005/02/06(日) 22:36
>>31 :名無飼育さん
  面白いと言っていただけてめっちゃ嬉しいです♪
  今回は八剣士の一人、愛ちゃん登場です。
  愛ちゃんはひたむき真っ直ぐキャラってことで。
  伝わるように頑張りたいと思います・・・??
  愛ちゃんの活躍っぷり、期待してください!!
  作者も愛ちゃんも応援してくれると嬉しいです♪
  
>>32 :名無飼育さん
  ありがとうございます!!頑張ります!!
  物語の展開、わかりにくい面もあると思いますので、
  不明な点はどんどん質問してください!!
  柴ちゃんが答えてくれる予定です?
  今回はついてなかった柴ちゃんですが、
  みなさんの期待に答えられるように?頑張ってもらう予定です!!



それでは、なるべく早めの更新を心がけますので、次回もよろしくお願いします!!

52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/07(月) 11:23
ビデオゲームみたい!!まじで、おもしろい!!!
すごいよ!

柴ちゃんなんかかっこういい!!!

はい、次待ってます☆
53 名前:聖なる竜騎士 投稿日:2005/02/08(火) 00:03
初めまして、余りにも面白くて一気に読んでしまいました。

何か設定がRPGみたいで面白いです。
物語がどんどん進展していく様子が、これまたたまりません。
なんだか健気な愛ちゃんが、カッコ可愛いのでこれからどんどん活躍してほしい
と感じる今日この頃です。勿論、梨華ちゃんや柴田さんにも活躍してほしいです。

ではでは、次回更新も楽しみにしつつ、待ってます。
54 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:10
診察室の方が何者かによって爆撃されたみたいで、火の海に。
そして、その中をさまよう血だらけの人々。

梨華ちゃんは思わず嘔吐をもよおして顔を伏せた。
私はそんな梨華ちゃんを抱きとめた。

「み、みんな・・・」
「先生ダメ!!」

ふらふらと、放心状態のまま診察室の方に向かおうとする先生を私が止めた。

「姫!!」
「愛ちゃ〜ん!!」

愛ちゃんも私たちに合流した。
愛ちゃんは抱きついてきた梨華ちゃんをしっかり抱きとめると、無事かどうかを確認。
喧嘩したって、何があったって、愛ちゃんはいつだって梨華ちゃんを守ろうとするんだ。

「怪我はありませんか?」
「うぅぅ・・・うん。ないけどぉぉ・・・うぅぅぅ」

泣き出した梨華ちゃん。
愛ちゃんは梨華ちゃんが無事だったことで少し安心したけど、目の前の惨劇に顔を背けた。


「みんなぁぁぁぁ!!!」


先生の叫びは空しく、炎に吸収された。
55 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:12
「柴田さん!姫をお願いします!」
「え?あ、はい!」

先生の叫びを聞いて、愛ちゃんは再び惨劇に目を向けた。
そして、梨華ちゃんを私に任せると、炎に向かって剣を構えた。


「聖なる水よ、我に力を与えん!!」


愛ちゃんは深く深呼吸し、腰を落とすと目を閉じた。
そして、剣を天高く掲げると、目を開いた。


「真水龍舞!!」


愛ちゃんの呪文と同時に、天から水龍が現れた。
真っ赤な炎の中を舞う水龍。
きれいなその舞に私たちは、恐怖を忘れた。
水龍は、みるみるうちに炎を飲み込み、真っ赤に燃えていた診察室の炎は消し止められた。

56 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:13
「みんな!!」

炎が消えたとたんに、先生は人々の救出に向かった。

でも、生きてる人はほとんどいなくて・・・
生きていても、やけどで皮膚がボロボロに剥がれ落ちてて、助けられる状況じゃないように思えた。

「誰がこんな・・・」


生き地獄・・・まさにそんなかんじだった。


「お願い!手伝って!!生きてる人を病室に避難させて!!」

先生の言葉に、私たちも手助けに向かった。
全身大やけどで、うめく人々を前に、私たちは必死で命の灯をつなごうとした。

57 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:14

『ズド〜ン!!!!』


神様って残酷だ・・・二回目の爆撃。

その音に私たちは希望の光を失った。
二回目の爆撃は、みんなを避難させた病室からだった。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」

先生が錯乱して、病室に走る。

「先生!!危ない!!」

梨華ちゃんが先生を止めに続いた。

「姫!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんを、守るために走った。

私は・・・怪我人を病室に避難させたばかりだったので、被爆しちゃった・・・

58 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:15
「真水龍舞!!」

またしても愛ちゃんの必殺技で消火。
でも・・・そこに預けた多くの命はもう、助けられる状態ではなくなってた。

「柴ちゃん!!」

梨華ちゃんが、怪我を負った私にかけよる。

「柴ちゃん!!」
「梨華ちゃん・・・」
「大丈夫?」
「じゃないみたい・・・」

今度こそマジで死ぬのかも・・・って思った。

「どいて!」

先生が梨華ちゃんから私の身体を受け取った。
先生は、白衣のポケットから、何かを取り出すと、それを私にかざした。

「あ!!」

先生が取り出したものを見て、梨華ちゃんが思わず声をもらす。
先生が取り出したのは、『礼』の字が刻まれた霊玉。

「浄化!」

先生の呪文によって、私の身体は光に包まれた。
暖かい光、優しい光・・・そして、目覚めた時には、私の怪我は回復してた。

「柴ちゃん大丈夫?」
「う、うん。生きてるみたい」
「よかった!!」

梨華ちゃんと生の喜びを味わってる間に、先生は生きてる人の治療にあけくれた。

59 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:16
「うっ・・・」

半分くらいの人を治療したところで、
先生は見るからに体力が衰えてた。

「大丈夫?」

梨華ちゃんが先生を支える。

「この力、厄介なのよ。相手を治す代わりに、自分の生気が吸収されちゃうのよね・・・」
「そんな!まだ、怪我してる人はたくさんいるのに!!先生死んじゃうよぉぉぉ!!」

梨華ちゃんの言葉に先生は笑った。

「可能性がある限り、助けないといけないの。だから、医者なの」

梨華ちゃんの腕の中から立ち上がった先生は、また次の患者さんのもとへ。


強くて優しくて厳しい人。
それが、二人目の霊玉の持ち主なんだ。
60 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:17

『ズド〜ン!!!!』

運命のいたずら・・・三回目の爆撃・・・
今度は、病院全域にわたっての爆撃だった。

「危ない!外に避難しましょう!!」

愛ちゃんが指示をだす。

「先生!」

梨華ちゃんが先生をとめる。

「危ないから!外へ!!」
「まだ患者がいるの!!」
「ダメだよ!!」

治療を続けようとする先生を梨華ちゃんは必死にとめた。

「姫!!ここは危険です!!」
「わかってるけど!!先生が!!」

先生に付き添う梨華ちゃんを愛ちゃんが抑えた。

「逃げましょう!!」
「でも!!先生が!!」
「あの方は、私が必ず連れて行きます!
 だから、姫は柴田さんと早く先に逃げてください!!」

愛ちゃんは梨華ちゃんを私にたくすと、先生のもとに向かった。

「梨華ちゃん!とにかく、外に行こう!!」
「でも!!」
「愛ちゃんを信じて!!」

私は梨華ちゃんを無理やり外に連れ出した。

61 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:19


『ガラガラガラ!!!!!!!』


私たちが外に出た瞬間に、病院は崩れ落ちた。


「愛ちゃん・・・愛ちゃん!!愛ちゃぁぁぁぁん!!!」


間に合わなかった・・・梨華ちゃんの悲鳴がこだました。


「いやぁぁぁぁぁ!!」


私の胸を何回も叩く梨華ちゃん。何にも言えなかった。

62 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:22


『ゴォォォ!!』


病院から、突然水しぶき。瓦礫を押し上げた水龍。


「愛ちゃん!!」


愛ちゃんは生きててくれたんだ。
水龍は私たちの前まで愛ちゃんと先生を運んでくれた。

「愛ちゃん!!」

梨華ちゃんが愛ちゃんに抱きついた。

「姫!怪我はありませんか?」
「うん!ないよ!!」
「よかった」
「え?」


愛ちゃんはそのまま倒れてしまった。
倒れる瞬間に保田さんが愛ちゃんを支えた。


張り詰めた緊張の糸がほどけた戦士はつかのまの休息の眠りについたみたい。

「愛ちゃん?」
「その子、大技何度も使ったでしょ?私と同じ。自分の生の力使ったんだよ。
 疲れてちょっと、気を失ってるだけ。今は寝かせてあげて」

先生の言葉に、梨華ちゃんは愛ちゃんを抱きしめた。
愛ちゃんの手から剣が落ちて、私がその剣を拾った。


愛ちゃんの剣は、とっても重たかった。
たった、16歳の女の子が、
こんなに重たい剣を握ってるんだって思うと、


なんだか辛くなった・・・

63 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:23
その日は、近くの宿に四人で泊まることにしたんだ。

夜には愛ちゃんも目を覚まして。
目を覚ました愛ちゃんの第一声はやっぱり、

『姫は無事ですか?』

あいかわらずの愛ちゃんに大笑い。

さっきまの惨劇は嘘みたいに、私たちは明るくふるまった。
明るくふるまわなきゃ、さっきの惨劇を思い出しちゃうからね・・・

「でねでね!柴ちゃんってばね!その先生のことが好きなんだけどさ!!」

って・・・笑いのネタは、梨華ちゃんが話す私の恋愛談か失敗談・・・
人をネタにするなよ!って思ったけど、今日だけ特別。

「はははっ。柴田さんって面白いですね!!」

愛ちゃんの笑顔。

「あんたって、かわってるのね!!」

先生の笑顔。


二人とも笑ってくれるんならそれでいいかなって。

64 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:26
夜更けまでふざけあった私たち。
でも、布団の中に入ってからは少し沈黙だった。


なんでなんだろう。
暗闇は人の気持ちまで暗くする。
いやなこと全部、向き合わなきゃいけない時間・・・


「なんで・・・あんな・・・むごいこと・・・」

先生がつぶやいた。

「あれは・・・第六天魔王の仕業なんです・・・」
「誰それ」

愛ちゃんの言葉を受けた先生は、怒りをこらえてるようだった。

「3年前に・・・この国にやってきた悪魔です。
 天空の星たちを支配し、ついにこの国を支配しようとしてるんです」
「だからって、なんで、なんで、弱者のいる病院を狙ったのよ!!」

「王のもくろみは・・・死人をふやすこと。
 人は、突然の死は受け入れられないから、
 この世をさまようんです。そして、生をうらやむ。
 その心は悪心へと化し、死人はやがて魔物になるんです。
 死人を増やして魔物を増やすことが、魔王のもくろみなんです・・・」
「許せない・・・人の命を道具みたいに扱いやがって!!」
「・・・」

起き上がろうとした先生の手を、隣に寝ていた梨華ちゃんが握り締めた。

「一緒に、行こう?」
「は?」
65 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:27
「ずっとね、ずっと・・・考えてたの」

梨華ちゃんは、静かに口を開いた。

「あなたは、この町の病院でお医者さんとして普通に暮らしてた。
 だから、一緒に旅に誘ってもいいのかなって・・・普通の暮らし、捨ててなんて言えないなって」

その言葉に、愛ちゃんは唇をかみ締めた。
梨華ちゃんの普通を壊したのは・・・愛ちゃんだから。

「でも、これ以上、こんなに悲しいこと増やしちゃいけないんだよ!
 だから、だから、お願い!一緒に戦って?」
「え?」
「先生、霊玉持ってるでしょ?」

その言葉に、愛ちゃんが起き上がった。

「本当ですか?」
「え?これのこと?」

先生が霊玉を取り出して愛ちゃんに見せてくれた。

「これは・・・『礼』の霊玉!あなたは、八剣士の一人なんですね!!」
「は?」

先生は、八剣士のことなんて、全く知らなかったみたい。
66 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:28
八剣士は、霊玉を持って産まれた人。
それぞれ、霊玉と特殊な能力を持って生まれるんだけど、
なんで自分にそんな力が備わってるのかなんて知らないんだ。

昔、国を救ったとか、四神のこととか、なんにも知らずに育つのがほとんど。
愛ちゃんの場合は『信』の霊玉だったから、
周りに伝説の八剣士の話や国王になる定めのことを聞かされて育ったんだ。

先生は、そんなこと全く知らずに霊玉を持っていたんだ。
それから、愛ちゃんは先生に霊玉の話、八剣士の話を聞かせた。
67 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:29
「一緒に戦ってください!」

話を終えて、愛ちゃんは再び先生に頭を下げた。

「うん。わかった!一緒に行く!!」
「ほ、ほんまに?」
「うん」

その言葉に、愛ちゃんは梨華ちゃんと手を取り合って喜んだ。

「あ〜!!」
「なに?」

思い出したように梨華ちゃんが声をあげる。

「自己紹介!してなかったよね?!」
「あ・・・そうね?」
「私は、石川梨華!でもって、こっちが親友の柴田あゆみちゃん!
 で、こっちが、堅物の高橋愛ちゃん!」
「堅物やないです!!」

ムキになった愛ちゃんを見て、先生は笑ってくれた。

「あんたたちって、本当に見てて飽きないわ。
 私は、保田圭。よろしくね!」
68 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:31
「うん!じゃあ・・・圭ちゃん・・・う〜ん。
 なんかかわいくないから・・・あ!ケメちゃんでいい?」

いきなりあだ名・・・梨華ちゃん興奮して暴走してるよ。

「は?」
「ケメちゃんって呼ぶね!」
「な、あんたねぇ!!だいたい、年下のくせに生意気よ!!」
「保田さん!姫に向かって無礼です!!」

愛ちゃん、無礼なのは梨華ちゃんの方だから。

「何が無礼よ!だいたい、一緒に戦うって言ったけど、
 姫とかなんとかそういう関係はごめんだからね!」
「な!それでも、『礼』の霊玉の持ち主ですか!
 『礼』とは礼儀を重んじる心!」

「だ〜から!なんなのよ!私は私!
 それ以上でもそれ以下でもないわけ!
 いい?だれかに仕えるとかそういうのは絶対にいや!!」
「いいねいいね!!」

愛ちゃんが怒ろうとするよりも先に、梨華ちゃんが保田さんに同意しちゃった。

「私もね!そういうかたっくるしいのいやだなって思ってたの!
 ね!愛ちゃんも、ケメちゃんも!私のことは梨華ちゃんでも、チャーミーでもいいからさ!」
「チャ、チャーミーって・・・」

保田さんの顔がひきつる。

「梨華ちゃん、言い過ぎだって」
「ん?なに?柴ちゃんも、チャーミーって呼びたいの?」
「ないない。ありえない」

「ったく。あんたって、本物のバカね。おやすみ石川!」
「姫・・・おやすみなさい」

結局呼び名はそれで決定だね。

「ちょっとぉぉ!二人ともぉぉ!」
「お休み梨華ちゃん!」
「柴ちゃん!!」

梨華ちゃんのおかげで、闇夜が少し明るくなったよ。


だからみんな、今日はお休み。

69 名前:決意 投稿日:2005/02/08(火) 23:32
保田さんは、『礼』の霊玉を持った八剣士。

小さい頃から治癒の力が備わってて、白魔術の使い手。
魔術師であり、医者であり、保田さんはこの町でずっと暮らしていたんだ。

人々を助けて、みんなのために生きてきたんだ。
強くて優しくて厳しい保田さん。
身よりはなくって、捨て子として預けられたその病院で育って、ずっと働いてきたんだって。

慣れ親しんだ病院が崩され、
その町を後にすることになった保田さん。

でも、保田さんは気丈で、悲しみや憎しみを私たちに見せることはなかった。

70 名前:k・y 投稿日:2005/02/08(火) 23:37
第四話更新です。

川σ_σ|| <説明です♪

This is 八剣士  NO.2 保田 圭
霊玉:礼   タイプ:魔術師
年齢:20歳  出身:センタータウン  
武器:クロスペンダント(魔術師の十字架。魔力が備わる)
能力:治癒力。
その他info:魔術師として育てられたので、魔法が使える。
      怒ると怖い。怒らなくても、ちょっと怖い・・・


真水龍舞:愛ちゃんの必殺技。聖なる剣の力で水龍を呼び出し、
     水龍が舞うことで攻撃を繰り広げる。
     今回は、消火活動だったけど、愛ちゃんの水龍は無敵です♪

浄化:保田さんの白魔法。体内の邪気を取り払い、回復へと導く。
   おかげで私、助かっちゃいました。
71 名前:レス 投稿日:2005/02/08(火) 23:57
>>52 :名無飼育さん
  ゲームのように、みなさんをわくわくさせられるかは不安ですが・・・
  それを目指して頑張りたいって思います♪
  柴ちゃんエール嬉しいでっす♪
  ストーリーキャラの設定で、いろいろ悩んだんですが、
  柴ちゃんファンなので、娘。を差し置いて抜擢しちゃったんです。
  柴ちゃんにはこれからも、どんどんさんざんな・・・?
  活躍してもらう予定なので、見守って下さい!!  

>>53 :聖なる竜騎士
  空版の先輩作者さまからのレス!感激です!!
  これを励みにいっそうの努力をしていこうと思うかんじで♪
  今回は愛ちゃんの必殺技が炸裂でしたが、いかがでしたでしょうか?
  愛ちゃんはリアルでも好きなキャラなので、
  愛ちゃんのよさを、どんどん伝えられたらと思います。
  剣士としての愛ちゃんの成長。健気な愛ちゃんに大注目して欲しいです!
  もっともっと活躍させちゃいます?!応援してあげてください!!
  

長くなってしまいましたが、レスが本当に励みになります!!ありがとうございます!!
次回も急展開?になっちゃいますが、愛読いただければ嬉しいです!!
次は誰が?!みたいな??わくわく待っていてください!!
では、本文同様、お休みなさい♪

72 名前: 投稿日:2005/02/09(水) 10:18
面白い!!!まじですごいよ筆者さん!
みんなカッケ!愛ちゃんのキャラかわいい☆次は誰かな?!!!
応援しますよ♪
73 名前:みっくす 投稿日:2005/02/09(水) 21:50
おもしろいですね。
楽しく読ませてもらってます。
あとの6人誰が出てくるかたのしみにしてます。
74 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 14:51


「えぇぇぇ!!じゃあ、これからどうするのよ!!」


朝から大声な梨華ちゃん・・・


発端は、今からちょっと前のこと。



75 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 14:52
「おはよ!」
「おはようございます!」

愛ちゃん、朝早いね?
愛ちゃんは身支度ばっちりで、そうとう前に起きてたんだってわかった。

「はい!朝稽古してたんで」
「へぇ。感心感心!で、他の二人は?」
「ここ、朝は自炊なんです。柴田さんは朝ごはんの支度をしてます」
「え?マジで?柴ちゃんえっら〜い」
「私が無理やり起こしちゃったんですけど・・・」

そうなんだよね。
私は、朝っぱらから愛ちゃんに起こされて食事の支度をまかされたんだ。
愛ちゃん、炊事はしたことないからって。

「で?ケメちゃんは?」
「病院に、備品をとりに行きました」
「そっか。朝から、みんな働くね〜。で?これからどうするの?」
「え?」

「ほら、他の八剣士探しに行くの?
 それとも、四神さまのところに行くの?」
「あ・・・そっか・・・」

愛ちゃんが思い出したかのように顔を青くする。

「あの・・・」
「ん?」

「私・・・」
「うん」

「八剣士のことや、四神の伝説は聞いたことあったんですけど、
 剣士がどこにいるとか、四神がどんなとか、そういうこと知りません」

その言葉に、梨華ちゃんもフリーズ・・・
なにを言い出してるんだ今さら・・・ってかんじ・・・

76 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 14:54
「えぇぇぇ!!じゃあ、これからどうするのよ!!」

ってわけで、この展開。

「わからん」
「わからんじゃないわよ!!
 あてもないのに、どうやって探すのよ!!」
「だってぇぇ!!」
「だってじゃないわよ!なんで私のことは見つけにこれたのに、他の人はわかんないのよ!」
「姫は、この霊玉が姫のもとに案内してくれるんです!」

愛ちゃんが霊玉を見せる。
確かに、梨華ちゃんに反応するように文字が光っている。

「もう!愛ちゃんのバカ!!当てもないのに、探せっこないじゃん!」
「バ、バカって言った〜!!そこまで言わんでもいいじゃないですか!!」
「だって!そんな考えてないとは思ってなかったんだもん!!」

朝からにぎやかになっちゃいました。

「ちょっと何よ!朝からうっさいな!!」

保田さん登場。

「ケメちゃん聞いてよ!!愛ちゃんってばね!!」

それから、梨華ちゃんに事情を聞いて、保田さんは苦笑い。

「あんた、石川が怒るのも無理ないわ」
「だけど!!」
「まぁ、でも安心してよ!私、占いできるんだ。
 八剣士の場所くらいなら推測できるかもしれないし」
「本当に!!」

ってことで、一時はどうなることかと思った争いは執着。
77 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 14:55
「えっとぉぉ・・・」

保田さんが占ってようやく答えが出たみたい

「東の都。廃屋。伝説の刀・・・だって?」
「え?」
「で?」

抽象的な言葉に、首をかしげた愛ちゃんと梨華ちゃん。

「だから!」
「いや、それだけ?」
「そうだけど」
「それだけじゃ、場所わかんないじゃん!」

梨華ちゃんの言葉にムッとする保田さん。

「だから、東に行けばいいんじゃん?
 でもって、廃屋と伝説の刀よ!!」
「東って・・・果てしないんですけど・・・」

愛ちゃんが地図を開いて引きつり笑いを浮かべた。

「なによぉぉぉ!!文句あるわけ?!」

で、結局、保田さんも混じって口論再会・・・

78 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 14:57
「ちょっと!みんな起きてたなら手伝ってよ!!」

にぎやかな声に気がついて私が登場。
マジで朝ごはん一人で作るの大変だったんだから!
ガスないし、釜戸でご飯炊いて、七輪で魚やいて、味噌汁作って・・・
火起こしからやるのなんて、小学校のガールスカウト以来だったんだから!

「あ、柴ちゃん。おっは〜!」
「おっは〜って!もう!!起きてたんだったら!!」
「あのね!!」

私の言い分は無視して、梨華ちゃんは朝の一連の会話を聞かせてくれた。

「占い抽象的すぎるよね!」
「う〜ん・・・」

いつものパターンで、怒りを忘れて梨華ちゃんの会話に入ってる私。
これだから、この人が甘えちゃうんだよね・・・

「地図で見たって、東なんて果てしないんだよ!」

って言われて梨華ちゃんが手渡してくれた地図。

「あ・・・」

なんとなく・・・問題解決しちゃったんですけど?

「え?」
「これさ・・・東の都って・・・ここじゃないの?」
「え?」

「東は、英語でイースト。都はタウンでしょ?
 ほら、イーストタウンってところじゃないの?」

「すっごい!!柴ちゃん天才!!」

い、いや。イーストとタウンくらい梨華ちゃんわかってよ。一応大学受験するんでしょ?

「英語?」

愛ちゃんと保田さんは英語は知らないみたい。
地名は他にもほとんど英語なのに・・・
どっからついたんだよこの地名は。

まぁ、とにかく、保田さんと私?の活躍で次の行動は決定。


朝ごはんを食べて出発です!!

79 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 14:59
「え・・・ここが・・・」

イーストタウンは・・・まるで生き地獄みたいな場所だった。
街角に積まれた死体。路上にはいつくばる人々。
腐敗した人の臭いに私たちは手で口と鼻を覆った。

「なんなのよここ・・・」

梨華ちゃんの言葉に愛ちゃんが答える。

「ここは、センタータウンに住む富豪のおこぼれをもらおうとして、低俗な者たちが集まるんです」

その言葉は、保田さんの気に触ったみたい。

「あんたさ!そういう言い方よくないんじゃない?
 富豪とか低俗とか。人をものさしで計るような言い方やめてよ!
 だいたい、あんた、国王になるんでしょ?
 国を治める人がそんな言い方・・・最低!!」
「そ、そんなつもりじゃ・・・」
「どんなつもりにしたって、そういう言い方最低!!」

保田さんの言葉に愛ちゃんはうつむいて剣を握り締めると、
その場から走り去ってしまった。

「愛ちゃん!」

愛ちゃんの後を梨華ちゃんが追った。

「保田さん・・・」

私は、保田さんの方に残ることにした。
80 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:01
「あの・・・愛ちゃん、本当に、悪気があって、言ったんじゃないと思います」

しばらく沈黙で、それに耐えられなくなって私が口をひらいた。

「わかってるんだけどね。でもさ・・・
 そういうことを無意識にでも口にする大人になっちゃいけないんだよ。
 もう少し優しく忠告してあげられたらいいんだけどさ。こんな性格でしょ?」

私に向けた保田さんの笑顔は苦しげだった。

「あの子がしっかりしなきゃ、魔物を倒したってこの国はかわらない」
「・・・」

保田さんは、愛ちゃんとは別の視点でこの国を見てきたから。
だから、醜い世界、辛い現状、悲しい別れ、そういうものをたくさん見てきたんだ。

「まぁ、石川にちょっとは感化されることを祈って」
「え?」
「あいつ、石川・・・あの子やっぱり姫なのかもね?」
「???」

「さっきだって、高橋をすぐに追いかけたでしょ?
 あいつ、理屈なしに誰かのために動くんだ。
 いいやつだよ。高橋も石川に感化されて、
 もっとほぐされたらいいんだけどね」

私の方を向いて、くしゃっと笑った保田さん。
私も少しだけ笑ってうなづいた。


その日からだったのかな?

ううん。もっと、ずっと前からだったのかもしれない。


梨華ちゃんにはなにか特別なパワーがあるんだって思ったんだ。

81 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:03
「愛ちゃ〜ん?」
「・・・」

「愛ちゃん、足はっやいね〜!」
「・・・」

「さっすが、朝稽古してるだけあるね!」
「・・・」

「私なんて、中学の時はテニス部だったけどさ、
 高校は柴ちゃんがどーしてもっていうから、天文部なんだよね。
 天文部なんて顧問がいい加減だから、全く活動して無くってさ、
 身体なまっちゃってなまっちゃって」

梨華ちゃんってば、天文部は私が入ったら自分も!ってついてきたんじゃん。
それに、瞳ちゃんの名誉のために言っておくと、天文部は毎週ちゃんと勉強会やってるもん。

「・・・」

「やっぱり、運動してる人は違うよね!」

「・・・」

梨華ちゃんに背を向けて、うつむいている愛ちゃん。
梨華ちゃんは、愛ちゃんにいろんな話を一方的にした。
慰める言葉なんて思いつかないし、かといってほっておけないから、
だから関係ない話をいっぱいいっぱい話したんだ。

「でねでね、それでね!」
「あの!」

30分くらい梨華ちゃんの一人しゃべりが続いて、ようやく愛ちゃんが口を開いた。
82 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:05
「ん?なに?」
「・・・いえ」

きっと、もういいよ!って言いたかったんだと思うけど、
愛ちゃんにとって梨華ちゃんは『姫』だからね。そんなこと言えないんだよね。

「あ〜!!」
「え?」
「みて見て?」

梨華ちゃんが指差したのは空だった。

「すじ雲が東に向かってる!」
「すじ雲?」
「うん。すじ雲が東に向かうと晴れるんだよ。明日はきっと晴れだね♪」
「へぇ〜」

梨華ちゃんは空を見るのが好きなんだ。だから意外と詳しい。

「だから、大丈夫だよ!」
「え?」

愛ちゃんが振り返った。

「愛ちゃんの心の雨も、きっと晴れる日が来るからね!」

梨華ちゃんの笑顔は、愛ちゃんの心の雲に少しだけ光をさした。

「はい!」
「じゃあ、探しに行かない?」
「あ、でも、柴田さんたち」
「いいよいいよ。柴ちゃんとは、はぐれても絶対に会えることになってるし。
 保田さんは一緒にいるんだろうからさ。二人で探そ?」
「はい!」

っておいおい!ってわけで、梨華ちゃんと愛ちゃんで仲間探しに。
83 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:06
その頃私たちは。

「柴田!早く!!」
「は、はい!!」

保田さんは、路上で瀕死の状態の人たちを次々に救い始めた。
で、私はアシスタント。病人を保田さんのもとに運ぶのが役目だった。

「柴田!次、あっちの人よろしく!」
「は、はい!!」

なんで保田さんが直接動かないのかっていうと、
病人を治すためには保田さんの生力が使われるから。
だから、少しでも保田さんに負担がかからないように、私が運び役。

「ありがとうございます!」
「命、大切にね!」

治された人たちは次々に保田さんにお礼を言ってその場を去っていく。

「シスターの再来じゃ」

私が運んだ、38人目の患者さんが、その言葉を口にした。

「シスター?」
「ああ。昔、この地にも、私たちに御慈悲を与えてくださるシスターがおってな。
 かわいそうに、シスターは魔物を救おうとして命を落とされたんじゃ」


自分の身を犠牲にしてまで、人々を救ったシスター。
どんな人だったんだろうって思った。

でも、もし保田さんが命を落とすようなことになったら・・・
そう思うと、素直に共感できなかった。
84 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:08
「柴田!早く!!」
「は、はい!!」

シスターの話をしてくれたおじいさんを保田さんのもとに運んだ。

「お名前は?」

おじいさんが保田さんに名前を聞く。

「保田圭です」
「あんたは、シスターの生まれ変わりじゃ」
「シスター?」

おじいさんの言葉に首をかしげた保田さんの背後に、
黒マントを羽織った小柄な女の人が現れた。

「シスターなんかじゃないよ!」

次の瞬間、おじいさんの生気が消えた。

「え?ちょっと!!おじいさん!!」

突然の死を目の当たりにして、保田さんは驚いた。

「あんた・・・何したの・・・」
「シスターは、この町のシスターはただ一人。その魂は今も生きてるんだから!!」

それだけ言うと、その人は保田さんに背を向けた。

「ちょっと待ちなさいよ!!おじいさんの命返してよ!!」
「その人は、どの道長くなかった。
 くだらない妄想にすがってほんの少し長生きしたら、
 その分だけこの世への執着が増して魔物と化す可能性が高まる。
 だから、このタイミングで死ねばいいんだ。
 魔物にならないように後はオイラが始末するよ」

そういうと、おじいさんごとその女の人は姿を消した。
85 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:10
「保田さん!大丈夫ですか?」

いきなり、一人の人の命を奪ったんだもん。
保田さんにもしものことがあったら!って思って駆け寄った。

「魔女・・・まだ、魔女が生きてたなんて」


黒マントに大人なのに子供のような小柄な背丈、それは、魔女の証なんだって。

「魔女?」

「そう。昔、この世界を破滅に追い込もうとした一族。
 魔女狩りで絶滅させたはずだったのに・・・」
「え?でも、保田さんも魔法を使いますよね?」
「私のは魔術!魔術師は魔女を退治するために育成された人間。
 魔女は、人間じゃないの。魔女は魔女。
 生まれながらに、邪悪な血を受け継ぐ者たちなの」


魔女狩り。確か、西洋の昔話にそんな話が出てきたと思う。
でも、さっきの人が本当にそんなに恐ろしい魔女だなんて・・・

なんだか信じられなかった。


「さっきのやつ!追うわよ!!」
「え?」
「この町が荒れてるのはあいつの仕業なのかもしれない!行くよ!!」

保田さんは、そう言うと走り出してた。

「待ってくださ〜い!!」

私も慌てて後を追った。
86 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:10
「愛ちゃん?なんだろ?あの人だかり?」

梨華ちゃんと愛ちゃんは、私たちとは町の反対側の場所にいた。

「さぁ?あ!姫!!」

不思議なことにはすぐに顔をつっこんじゃうのが梨華ちゃん。
好奇心が先立って愛ちゃんをおいて人だかりを目指した。
87 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:13
「はいは〜い!この剣、引き抜けたら100万円だよ〜!!」

人だかりの中心にいたのは、茶髪で、浪人の格好をしたよっすぃ?!に似た女の子?
その子は、岩に刺さった剣を前に商売をしてた。
剣を引き抜けたら100万円。でもって、そのチャレンジ料が5千円。
何人かの人が面白がって挑戦したけど、結局ダメ。

「愛ちゃん!愛ちゃん愛ちゃん!!挑戦しようよ!!」
「あれは、詐欺です」
「え?」
「ここは、センタータウンに一番近い場所。
 たまに、センタータウンの金持ちが、ここに来て遊ぶんです。
 ほら、あっちには遊郭があるし、そっちには賭博場」

言われて周りを見渡すと、賭博場、遊郭、見世物小屋・・・
ここは、センタータウンのお金持ちが遊びに来る場所なんだって。

「なんか、怖いね。それにあの子よっすぃに似てるしね。よっすぃはいい加減だもんな」
「よっすぃ?」
「あ、ううん。こっちの話」
「ここは、もっとも悪どいやからが集まる場所です。早く他の場所へ行きましょう」

愛ちゃんの言葉に、梨華ちゃんもその場所を離れることにした。
88 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:13
「ほらほら!この剣は、天下の名剣デュランダルだよ!!」

その言葉に、愛ちゃんは振り返った。

「愛ちゃん?」
「デュランダルは伝説の名剣。
 このエクスかリバーと並ぶ名剣がこんなところにあるはずがない」

愛ちゃんが自分の剣を握り締めた。


「デュランダルの名前を使うなんて許せん!!」


愛ちゃんは人ごみの中に駆け出して行った。
89 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:16
「うそや!」
「な、なんだよ急に!」
「デュランダルがこんなところにあるはずがない!!」
「は?これは本物だよ?」
「違います!」
「じゃあ、証拠は?この剣は、伝説の名剣だから、
 こうやって簡単には抜けないようになってるんだよ!」
「そんなバカな!」
「バカはそっちだろ?お譲ちゃん!」

その言葉に、梨華ちゃんが首をつっこんだ。

「ちょっとぉ!この子をお譲ちゃんだなんて!この子が誰かわかってるの!」
「は?」
「この子はね!この国の王様になる人なんだからね!!」

その言葉に、周りの人だかりが一気に騒ぎ始めた。
そして、その言葉に、詐欺師さんは笑った。

「へぇ。国王になるやつが、こんなところで貧しいうちらをからかいに来たってわけ?」

詐欺師さんは冷たい眼差しを愛ちゃんに向けた。

「違います!」

愛ちゃんの真っ直ぐな眼差しがそれに答える。

「うちの剣は偽物。偽者で商売するなんて本当に低俗だって笑いに来たわけ?」

愛ちゃんは目をそらした。金持ちだから、貧乏だから・・・
そういう尺度でものを見るなって言った保田さんの言葉を思い出したから。

「ほら!目をそらした!」
「ちょっと!!さっきから、愛ちゃんが黙ってると思えば!!」

梨華ちゃんが愛ちゃんの前に立ちはだかる。

「さっさと、帰ったほうがいいよ。
 ここはあんたが来る場所じゃないぜ。次期国王!」


その言い方は、すごく皮肉っぽくて・・・


詐欺師さんは愛ちゃんをさげすんだ眼差しで見下すと、岩に刺さった剣を抜いた。

「言っておくけど、こいつは本物。
だから、うちにしか心を許さないんだよ。
他の奴らは一生かかったって握ることすら許さないんだ」

そういうと、剣を愛ちゃんに向けた。

「例え、国王だとしてもね。この剣は主を選ぶんだよ」

そう言うと、詐欺師さんは背を向けた。


「二度とこの町に来るな!さっさと、自分の居場所に戻んな!!」


そして、詐欺師さんは人ごみの中に姿を隠した。
90 名前:東の都 投稿日:2005/02/13(日) 15:17
「愛ちゃん?」


立ち尽くしてる愛ちゃんに梨華ちゃんが声をかけた。


「・・・」
「愛ちゃん?大丈夫?」

「追わんと!」
「え?」

「私・・・ひどいこと言っちゃった・・・謝らんと・・・」


そう言うと、愛ちゃんは詐欺師さんを追いかけた。

91 名前:k・y 投稿日:2005/02/13(日) 15:19
今日はここまでです。
92 名前:レス 投稿日:2005/02/13(日) 15:32
>>72 :希 さん
  ありがとうございます!頑張って書き続けるので応援お願いしまっす!!
  今回は天然な愛ちゃん?で、カッコいい戦闘シーンはありませんでしたが、
  今後じゃんじゃん戦ってもらう予定なのでご期待ください?!
  新たな仲間・・・次回でカミングアウトの予定です!
  でも、ちょっとばれつつあるかんじ?
  次回もよろしくお願いします!!

>>73 :みっくす さん
  楽しんでいただけましたでしょうか?
  今回は新たな仲間探しに出かけたわけですが・・・
  登場した二人正体は・・・?
  大人なのに小柄なあの人と、いい加減(このストーリー上)なあの人?
  残りの6人・・・誰になるかもワクワクしながら待っててください!
  これからもよろしくお願いします!!


レスありがとうございます!!

今回は小柄の魔女さんと詐欺師さんの登場です。
二人の正体は・・・?二人は敵なのか味方なのか?

次回を楽しみにしていただければ、嬉しいです♪
93 名前: 投稿日:2005/02/15(火) 16:35
更新お疲れ様。
面白かったです!!

次も期待します☆
94 名前:娘。よっすいー好き 投稿日:2005/02/18(金) 19:57
すごく面白い。


柴田さん視点も斬新でした。

続きも頑張って下さい。
95 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:13
「うっ。何この臭い!!」

私と保田さんが魔女さんを探してたどり着いたのは、一軒の小屋。
崩れかけたかやぶき屋根に、隙間だらけの扉。半分朽ちた壁。
そして、中から放たれる異臭・・・

「魔女の家。魔女は、普通のやつとは生活が違うんだよ」

そう言うと、保田さんは扉の前に手をかざした。

「聖母マリアよ。我に力を。神子とのお導きのもとに、悪を退治せん!」

そういうと、扉に魔法陣を描き始めた。

「封印!!」

その言葉を放った瞬間、あたりは光で包まれた。

「よし!これで、魔女の魔法は封印されたはず」

保田さんはそう言うと、扉を開けた。
96 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:14
「きゃぁあ!!」

中から勢いよく飛び出したのは、ねずみ。

「何で?魔術が効かないなんて・・・」

保田さんは、魔女さんがねずみに化けて逃げ出したんだと思ったみたい。

「ファイアー!!」

中から魔女さんの声。と思ったら、目の前が火の海になった。

「柴田!さがって!!」

保田さんが私を突き飛ばした。

「いったぁい!」

突き飛ばさなくてもいいじゃん・・・
私は10mくらい後ろに飛ばされて、地面にしりもちをついた。
保田さんは再び手を火の海に掲げて魔方陣を描く。

「焼き終わるまで待ってよね!この人ちゃんと焼ききらないと、魔物になっちゃうんだ」

魔女さんの言葉に保田さんは手を下ろした。

「あんたは、魔女でしょ?」
「そうだよ」
「それなら、なぜ魔物と化すのを防ごうとする?」
「魔女が魔物を倒すのはおかしい?」

全てが終わって、火が消えた。
そして、その中から現れたのは、さっきの魔女さん。
小柄。金髪。黒マント。そして手にはロッド。

「待ってたよ。あんたたちのこと」
97 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:15
そういうと、魔女さんは何かを取り出した。

「「あ!!」」

魔女さんが取り出したもの。それは・・・霊玉だった。

『孝』の文字が刻まれた霊玉。
そう。この人こそ、3人目の仲間。

「なんで・・・魔女が仲間だなんて・・・」

保田さんが信じられないといった表情であとずさりした。
それを見て、魔女さんは寂しそうな顔をした。
でもそれは一瞬で、すぐに元気な声をあげた。

「魔女で悪かったなぁ!!でも、オイラも一緒に戦うよ!!」
「そんな・・・」

顔をそらした保田さんに、認めたくないんだなって思った。
でも、新しい仲間だから・・・

「はい!よろしくお願いします!」
「うんうん。よろしく。オイラは、矢口真理。魔女の生き残り」
「柴田あゆみです!それと」

保田さんはまだ顔を背けたまま。

「あ〜。いいよいいよ。圭ちゃんでしょ?他は、梨華ちゃんと愛ちゃんだよね?」
「え?なんで知ってるんですか?」
「オイラの能力。魔法を使えることと、人の心を読めることなんだ」
「え!」

ってことは、保田さんが矢口さんを受け入れてないことや、
私がどうしようっておろおろしてるのもばれちゃってるってことだよね・・・

「はははっ。大丈夫!他の誰かに口外したりはしないからさ。斉藤先生だっけ?」

ってそんなことまで読まないでください!!

「矢口さん!!」
「はははっ」


浮かない顔の保田さんとは対照的に、矢口さんはとことん明るかった。
きっと、マジメな顔で、魔女と魔術師の確執に目を向けることができなかったんだよね。

98 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:17
「愛ちゃん・・・もう帰ろうよぉ」

梨華ちゃんと愛ちゃんは詐欺師さんを追いかけて詐欺師さんの家まで来ちゃったみたい。

「姫は先に戻ってください」
「そんなこと言っても・・・」

愛ちゃんだけ置き去りにしていくわけには行かないもんね。

「謝らんと・・・」

愛ちゃんが自分の剣を握り締めた。

「あんたらさぁ、しつこいって!!」

詐欺師さんが家から出てきた。

「さっきはすみませんでした!!」

愛ちゃんが詰め寄る。

「もういいよ。うちの偽者ってことにしてあげるからさ!」
「そんな・・・真実は一つです!もしその剣が本物だとしたら・・・」
「だとしたらなに?」
「だとしたら、私は無礼なことを言ったわけで・・・ちゃんと謝らんといかんから!!」

愛ちゃんの真っ直ぐな視線を詐欺師さんはけむたそうに避けた。

「あんた、やっぱりうちがいっちばん嫌いなタイプ」
「え・・・」
「その目、見てるだけでむしずが走るよ」
「そこまで言うことないじゃん!!」

うつむいた愛ちゃんに変わって梨華ちゃんが吉澤さんの前に出た。

「愛ちゃんは謝りたいって言ってるんだよ?なのになんなのよその態度!!」
「謝りたい?へぇ。だったらさ?金くんない?」
「え・・・」

その言葉は突然すぎて梨華ちゃんも愛ちゃんも呆然とした。

「うちさぁ、貧乏だからお金ないんだよね?
 あんたさ、次期国王なんでしょ?
 国家予算からほんのちょっとくれればいいからさ?
 ね?これで落着と!!」
99 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:19
「よっすぃそれくらいにしろよ!!」

らちが明かない会話を終了させたのは矢口さんだった。
私たちが矢口さんを連れてようやく梨華ちゃんたちに合流したんだ。

「柴ちゃん!!」

梨華ちゃんが私に抱きついてくる。

「なんか、大変そうだね」
「もう、本当に大変だったんだから!!」
「ははは」
「笑い事じゃないよ!!」
「ご、ごめん」

「よっすぃの剣は、本物」
「え?」

矢口さんが伝説の剣のことを話し始めた。

「昔、世界一の武器屋が三本の剣を作ったんだ。
 それは、初代八剣士の手に渡された。
 三人のナイトは、姫を守るべく、それを手に戦ったんだ。
 そして、彼らの死後も、剣は主のみに持つことを許す。
 その主っていうのは、新たに霊玉を手にした者」

その言葉に、愛ちゃんは驚いて詐欺師さんを見つめた。


「あなたは・・・剣士なんですか?」
「は?」

でも、詐欺師さんは実感ないみたい。

「よっすぃ!玉持ってるでしょ?」
「ああ。これ?」

矢口さんに言われてようやく霊玉を取り出したよっすぃ・・・
この詐欺師さんは、私たちの世界のよっすぃに似てるだけじゃなくって、同姓同名だったんだ。
100 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:20
吉澤ひとみ。彼女は『仁』の霊玉を持った剣士だった。
生まれてからず〜っとこの町で暮らしているよっすぃ。
親や兄弟は死に別れたんだって。

イーストタウンは弱肉強食。弱いものは生きていけない世界なんだ。
よっすぃは、剣術ができたから生きてこれた。
詐欺をして、人を騙すことで生きてこれた。

そんな境遇。私たちが理解できるはずなんてない。
でも、よっすぃは、自分の境遇を語ったり、愚痴ったことは一度もなかった。

そんなこと言っても始まらないから。
それに、自分の境遇を恥じて生きたことなんてよっすぃにはないからなんだよね・・・?

101 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:20
「そんな・・・八剣士が詐欺師やなんて・・・」

その言葉に、頭をかくよっすぃ。

「よくわかんないけど。落ち込むなって!ここじゃ、詐欺師なんて良い方だぜ?」

肩にのったよっすぃの手を振りはらう愛ちゃん。

「人を騙すなんて最低です!!そんな人仲間なんて認めたくない!!」
「それはこっちも同じ!あんたとは絶対に仲間にはなれないね!!」
「もう!!二人とも!!」


仲間を見つけられたけど・・・この調子だと前途多難だよ・・・

102 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:21
それから、矢口さんがよっすぃに事情を説明した。
よっすぃと矢口さんはこの町でともに育ったから、昔からの知り合いなんだって。

これで、仲間が二人増えた。
でも、まだお互いを認め合っていないんだけどね・・・


とにかく、私たちの旅は6人になったんだ。


103 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:23
私たちはその晩、イーストタウンの宿屋に泊まった。
よっすぃの行きつけの宿屋。って、宿屋っていうよりも、遊郭なんだけどね・・・
遊郭の空き部屋を借りて六人で泊まることにしたんだ。

「でねでね!!おもしろいでしょ!!」

みんな、バラバラなんだけど、梨華ちゃんが必死に話題を設ける。

「はははっ。おもしろいおもしろい!!」

でも、笑ってるのは私と矢口さんだけ・・・

「もう!三人とも、なんか暗いよ?」

梨華ちゃんが耐え切れなくなって愛ちゃんと保田さんをつついた。

「「やっぱり、認められない!!」」

二人とも同じことを口にした。

「吉澤さんは、人を騙して生きてきた。それにここは・・・
 こんなところに、客人を招待するやなんて!!
 ここは遊郭ですよ!!そんなふしだらな人、認められん!!」

まずは愛ちゃん。

「うっわぁ。まだ、そのこと気にしてたの?
 それに、ここけっこう、居心地がいいんだよ?
 美人なお姉さんた〜っくさんいるからさ!!
 それから、うちは別に認めてくれなくてもいいよ。
 一緒になんか行かないし。この玉だけ売ってあげるよ。
 あんた金持ってんだろ?」

よっすぃの言葉に愛ちゃんは顔を真っ赤にして怒って部屋から出て行ってしまった。

「よっすぃ・・・言いすぎだよ」

梨華ちゃんが、愛ちゃんを追いかけた。

「あ〜あ。行っちゃった」

反省の様子全くなしのよっすぃ。

「あんたって、本当にいい加減なやつみたいだね」

保田さんが呆れたように言った。

「いい加減だなんて、そんな褒めなくてもいいって!!」

おちゃらけるつもりのよっすぃに、保田さんはまともに取り合うのをやめたみたい・・・

「で?圭ちゃんはやっぱり、オイラのこと認められないってわけね?」

矢口さんの言葉にうつむく保田さん。

「・・・」
「ちょっと・・・二人で話さない?」
「いいけど」

そう言うと、矢口さんは保田さんと一緒に部屋から出て行った。
104 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:24
ってことは・・・必然的に・・・

「二人きりだね♪」

最悪の相手と二人きりになっちゃう私。

「そうだね・・・」
「柴ちゃんてさ?かわいいよね?」

絶対にお世辞ってわかってるのに、言われなれてない言葉に顔が赤くなった。

「好きな人とかいる?」

瞳ちゃんの顔が頭に浮かんだ・・・

「瞳ちゃんだっけ?」
「な!?」
「やぐっつぁんに聞いちゃった」

矢口さん黙っててくれるって言ったのに〜!!

「うちの名前もひとみなんだけどなぁ〜?」
「はいはい」
「ちぇっ。つまんないの」
「愛ちゃん、本気でこの国守ろうとしてるんだよ?」
「はいはい。正義の味方ね。すっごいよ。さっすが国王」

よっすぃはそう言うと部屋から出て行った。


部屋を出る直前に、ふっと、見せたよっすぃの目。
その目は、すごく冷たくて、すごく悲しげだった。
105 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:26
「あ〜いちゃん?」

愛ちゃんは、遊郭を出てしまっていた。
イーストタウンの夜はとっても危険。
でも、そんなこと愛ちゃんも、愛ちゃんを追いかけた梨華ちゃんも知らなくって。

「あ、姫・・・」
「よっすぃって、なんであんなにちゃらちゃらしてるんだろうね?」
「・・・」
「向こうの世界にもね、よっすぃっていう子がいたんだ。
 いっつもふざけてて、ちゃらちゃらしてて、私のことからかって。
 吉澤ひとみはどこの世界にいても、いい加減なんだよ」

「八剣士は・・・かつてこの国を守ったんです」
「うん」
「自分の身を犠牲にしてまでも、この国を守った。
 姫に使え、自らに与えられた宿命を受け入れ、
 この国の平和を信じ戦ったんです。
 なのに・・・吉澤さんにそれができるとは思えん!!」

愛ちゃんは、誰よりも宿命の、運命の重みを背負って生きてきたから。
だから、よっすぃの態度は許せなかったんだ。

「愛ちゃん・・・よっすぃは、いい加減だけど、でもきっといいところあるよ?
 向こうの世界のよっすぃもね、たま〜にいい奴だったんだよ?
 だから、こっちのよっすぃも、きっといいところあるよ!
 今は、認められないかもしれないけど、でも、一緒に行くしかないよ」

梨華ちゃんの言葉に愛ちゃんはうつむいた。
106 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:29
矢口さんたちは、外には出ずに遊郭の別の部屋で話をしていた。

「オイラは魔女。魔女は生まれながらに邪悪な血を受け継ぐ。
 でも、オイラはこの国を救いたい。ううん。
 この町を、イーストタウンに平和をもたらしたいんだ」
「なんで?」

「・・・オイラの大切な人が愛した町だから。
 大切な人が守りたかった町だから」
「大切な人?」

「うん。すっごく変わった奴でね。魔術師だったんだ。
 癒しの力を持っていて、人はもちろん、魔物も魔女も傷つくものは全て救ったんだ。
 オイラも彼女に救われた。オイラね、魔女に生まれたこと、ずっと恨んでた。
 何もしてないのに、みんなに虐げられて、嫌われて、ついには魔女狩り。
 でも、その人が教えてくれたんだ。生きてきた者には全て宿命がある。
 オイラが生きていることにも意味があるって。魔女だからできることもあるんだ。
 邪悪な血を受け継いでるのかもしれない。でも、オイラはこの国を守りたい」


矢口さんの目は真剣だった。
その眼差しは、魔女とか人間とか、そういうもの関係ない眼差し。


「その人・・・今は?」
「うん。肉体はほろびた」
「え?」
「死んだんだ。助けた魔物に殺された。
 でも、肉体は滅びたけど、魂はこの国に生きてる。
 この国を守り続けてるんだ」

その人の魂。矢口さんの過去。それがわかるのは、もう少し先の話なんだけど。
とにかく、保田さんには矢口さんの思いは伝わったみたい。

「あんたのこと・・・認めるのにはもう少し時間がかかるかもしれないんだけど・・・」
「いいよ。それでも。オイラの邪悪な血が騒ぎ出さないように、見張ってて」

そう言って笑った矢口さんの笑顔は、悲痛だった。


生まれながらに、邪悪な血を受け継いだ魔女という一族。
信じてもらえない。でも、矢口さんはそういうことを吹き飛ばすくらい、いつも明るかった。

107 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:29
「お嬢ちゃんたち、ここの人間?」

町にいた梨華ちゃんと愛ちゃんに話しかけてきたのは、いかにもガラの悪そうなお兄さんたち。

「新入り?かわいいじゃん!今日は俺が相手してやるよ!!」

お兄さんの一人が梨華ちゃんの腕をつかんだ。

「きゃあ!!やめてください!!」
「姫に何をするんですか!!」

梨華ちゃんを助けようとした愛ちゃんを他の人が羽交い絞めにする。

「姫?へぇ〜。おもしろいじゃん。格別の美女だもんな」

梨華ちゃんの顔に顔を近づけたお兄さん。

「やめてください!!」
「怒った顔もかわいいねぇ!!」
「姫!!」

108 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:31
「あんたたち、その子うちの女なんだけど?」

からまれた二人のもとに現れたのはよっすぃだった。

「お?これはこれは、吉澤じゃない。遊郭のつけも払えてない癖に、女かこうなんて100年早いぜ?
 前の女だってろくに食わせてやれなかったじゃねえか?貧乏人の詐欺師がいきがるな!!」

その言葉に、よっすぃはニヤッと笑うと、剣を抜いた。

「うわぁぁぁぁ!!!」


それは、一瞬の出来事だった。

よっすぃは、5人の男を一気に切り殺した。


他の人は、それに恐れてその場から逃げ出した。

梨華ちゃんは、突然のことに驚くことも怖がることも忘れて、その場にへたれこんだ。

「姫!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんに駆け寄る。

「この町、夜は出歩かない方がいいよ。
 さっきみたいなやつらはまだマシな方。
 他にもろくでもないやつらがごろついてるんだ」

109 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:32
「だからって・・・殺さなくてもいいじゃないですか!!」

目の前で息絶えた男たちを見て愛ちゃんがよっすぃをにらんだ。

「魔物は殺すんだろ?魔物以下の人間だっているんだよ」


よっすぃの目は、殺気に満ちた悲しい目だった。


「人間は!!魔物とは違う!!人間は!!」

愛ちゃんはそれでもよっすぃにくってかかった。
そんな愛ちゃんに、よっすぃは少しだけ苦笑すると、いつものふまじめな態度に戻った。


「はいはい。さっすが国王の言うことは違うね〜。
 うちなんかさ、貧乏人の詐欺師でしょ?
 ここじゃ、人殺しなんて当たり前だからさ。
 人間の価値にうとくなっちゃったんだよね〜。
 いやいや、まいった。さっすがだわ!!」


「吉澤さん・・・」

ふざけたはずなのに、よっすぃの目からは涙が流れてて・・・
愛ちゃんは何も言い返す言葉が見つからなくなった。

「さ?帰ろう?国王様とお姫様に遊郭なんて似合わないけど、ま、深く考えなきゃいいんだしさ?」

その言葉に、梨華ちゃんは立ち上がると、よっすぃを抱きしめた。


「ありがとう。助けてくれてありがとう」


よっすぃは、その言葉を黙って受け入れた。

110 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:34
「お帰り」

みんなが帰ってこないから一人でお布団ひいて、
寝る準備万端にしてあげた私って優等生♪・・・言いすぎでした。

「柴ちゃん気が利くねぇ」
「じゃあ、うちは梨華ちゃんと柴ちゃんの間♪」

「「絶対にやだ!!」」

「えぇ?いいじゃんいいじゃん」

「「やだ!!」」

本当によっすぃって軽い。

「あの!!」

ほら、また愛ちゃん怒っちゃったよ。

「あの!!吉澤さん!!」
「な、なに?」

さっきの反省があったのか少しだけ愛ちゃんを警戒するよっすぃ。

「一緒に・・・旅してください」

目をそらしつつ頭を下げた愛ちゃんにまだ納得してないんだなって思った。


それから、しばらく沈黙で。
その沈黙を破るのはよっすぃだから。
私と梨華ちゃんは息をすることすら遠慮した。

111 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:35
「うん。わかった」

その言葉に私たちはよっすぃに注目。

「こうしよう!契約!!」
「「「は?」」」

「お互いにさ、認め合ってないんだし、ここは契約ってことにしよう!!
 うん。それがいい。うちはあんたに雇われる。一日1万円ね!!」


よっすぃの言葉に私たちは言葉を失った。この人はどこまでも・・・

「わかりました!!」

よっすぃの言葉を愛ちゃんがのんだ。

「一日1万円ですね!!」

契約成立・・・

「ちょっとあんた何考えてんのよ!!」

一件落着って思ったら、保田さんたちが戻ってきた。

「何?金で片付けるの?」

保田さんご立腹・・・いつもの10倍怖いよ・・・

「あんた全然わかってない!!
 物事をお金で計るなっていっただろ!!」
「それは・・・」

「認めない。あんたのこと認めない!!」

愛ちゃんは唇をかみ締めて拳を握り締めた。
112 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:36
「もうやめよ?今日は、もう喧嘩するのやめよ?」

険悪な雰囲気を梨華ちゃんが破った。

「もうやめよ。今日はみんな疲れてるんだよ。だから寝ちゃおう?
 明日になったらまた気分もすっきりするかもしれないしさ?ね?
 そうしたらまた話せばいいよ?」


その言葉に、みんな黙って布団に入った。
でも、愛ちゃんだけはその場に立ち尽くしていた。

「愛ちゃん?」

梨華ちゃんが愛ちゃんの肩を叩く。

「・・・」
「もう寝よ?」
「・・・」
「愛ちゃん、疲れたでしょ?」
「・・・」
「一緒に寝よ?ね?」


梨華ちゃんの言葉に愛ちゃんはうなずいた。

113 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:37
愛ちゃんは、誰よりもこの国のことを考えてる。
ううん。愛ちゃんと私たちの旅への意識はギャップがあったんだ。

愛ちゃんはなんとしても仲間を見つけ、この国を守ろうとする。
それがどういうことなのか、なんのためなのか、そんなこと私たちは全然知らないから。

愛ちゃんみたいに強く思えていなかったから・・・


だから愛ちゃんの気持ちをわかってあげられなかったんだ。


114 名前:すれちがう心 投稿日:2005/02/20(日) 01:42
更新終了です!

川σ_σ|| <説明です♪

This is 八剣士  NO.3 矢口 真理
霊玉:孝   タイプ:魔女
年齢:不詳(魔女ですから)  出身:イーストタウン  
武器:デビルロッド(魔界の力を込めた杖)
能力:魔法。人の心を読むこと。
その他info:明るくて元気な魔女さん。なぜか首からは
      クロスペンダント(魔術師の称号)を下げてます。その理由は・・・

This is 八剣士  NO.1 吉澤 ひとみ
霊玉:仁   タイプ:ナイト
年齢:18歳  出身:イーストタウン  
武器:デュランダル(剣)
能力:炎を操る 
その他info:詐欺師さん。いい加減でおちゃらけてるけど、剣術は最強。
      お金大好き。女の子大好き。愛ちゃんとは何かと衝突。

封印:保田さんの白魔術。魔女や魔物の魔力を封印する。
  
ファイアー:矢口さんの魔法。地獄の火炎ですべてのものを焼き尽くす。
115 名前:レス 投稿日:2005/02/20(日) 01:47
>>93 :希 さん
   今回は新たな仲間の登場です。
   前途多難な匂いがしますが、しばしこの仲間で
   行動してもらう予定です。
   次回もよろしくお願いします!!

>>94 :娘。よっすいー好き さん
   ありがとうございます!!
   柴ちゃん視点でうまくみんなの心を
   表現できるように頑張りたいと思います!
   これからもよろしくお願いします!!

レスありがとうございます!!次回はいよいよ戦闘シーンに
なる予定です!!どうぞ楽しんでいただければ幸いです!!
レスもお待ちしております!!!
116 名前:娘。よっすいー好き 投稿日:2005/02/20(日) 06:26
更新お疲れ様です。

なんか(この世界の中では)どこの世界でも軽いですね(笑)

いよいよ次回からは本格的になりますね。楽しみに待っています。
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/25(金) 01:59
おぉ!!八犬伝だ♪
出ていない玉に誰がなるのか楽しみ。
118 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:44
「もう疲れた〜!!」

イーストタウンを出た私たちは、隣町のサウスタウンを目指した。
サウスタウンに行くためには、峠を越えなきゃいけなくて。
これがなかなかハードなんだよね。
何度も愚痴を言う梨華ちゃん。

「みんな頑張ってるんだし、もうすぐだよ。頑張ろうよ!」

何度もはげます私。

「疲れた〜!!」
「姫?荷物持ちましょうか?」

すでに、梨華ちゃんの半分の荷物を持たされてる愛ちゃん。

「いいっていいって。甘やかしちゃダメだよ!」

保田さんの言葉にふくれる梨華ちゃん。

「ケメちゃんとまりっぺは魔法が使えるから楽してるんでしょ!」
「「してないって!!」」

二人の怒りをくらった梨華ちゃんは、少し反省したみたい。
119 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:45
「きゃあ!!」

梨華ちゃんの足元にダークプリン・・・

「姫!!」

愛ちゃんがすぐに撃退。

「うわぁ!!」

私の足元にもダークプリン・・・

「柴ちゃんきもい・・・」

遠ざかる梨華ちゃん。

「って・・・愛ちゃん私も助けてよ・・・」
「あ!すみません!!」

梨華ちゃんのことだとすぐに動くのに、他の人だと結構無関心な愛ちゃん。
この峠、魔物がうようよしてるんだよね。

「なにあれ・・・」

前方に黒い塊がうごめいているのが見えた。

「吸血蜂の群れですね」

愛ちゃんの言葉に梨華ちゃんの顔がくもる。
名前からしてやばそうだよね。

「デス!!」
「まりっぺすごい!!」

矢口さんは一瞬にして蜂の群れを消しちゃった。

魔物は多いけど、仲間も多いから私たちは先へ進むことができた。

「あれ?よっすぃは?」
「ああ。この先に、よっすぃの知り合いの茶屋があるんだ。だから先に行っちゃったよ」
「またどうせ女でしょ?」

保田さんはよっすぃのことよく思ってないみたい。

「そうだよ。よっすぃが昔愛した人・・・の妹がいるんだ」


矢口さんの声が重かったから、よっすぃにも辛い過去があったのかな?って思った。


120 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:46
よっすぃが昔愛した人・・・

それがどういう恋愛だったのかがわかるのは、もっと先のことだけど、
よっすぃには、かつてすっごくすっごく好きだった相手がいたんだって。

そして、その人は今はもういないんだってことを矢口さんが教えてくれた。

「よっすぃも、いろいろあるんだね」


梨華ちゃんのつぶやきは、空に吸い込まれていった。


よっすぃはどんな思いにしろ、その茶屋を目指して私たちより先に向かったんだ。

121 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:47
「なにこれ・・・」

ようやく私たちも茶屋に着いて。
そこで、目にした光景は、無残なものだった。
先に着いた矢口さんが顔を背けた。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「姫!!」

梨華ちゃんが、その光景を前に錯乱した。
そんな梨華ちゃんを愛ちゃんが抱きとめる。
私たちの目の前に広がる光景。


それは・・・何人もの人の死体と、その人たちが流したであろう血。


茶屋の前は、鮮血で染まっていた。

「よっすぃが危ない!!」

矢口さんが額に人差し指を当てた。
次の瞬間、矢口さんが消えた。

「え?」
「瞬間移動ね」

保田さんはそういうと、矢口さんと同じように瞬間移動した。

122 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:48
「なにここ・・・」

中は外以上に無残で。
腐敗した死体からの異臭に保田さんは手で鼻をおおった。

「圭ちゃん。危ないから外にいてよ!」
「あんた一人ほっておけるわけないでしょ!」
「・・・ありがとう」
「どうなってるのここ?」
「魔物にやられたんだきっと」

「魔物とは、失敬な!!」

天から声がふってきた。
二人は上を見上げた。


でも、誰もいなくて。
かわりにまた声がふってきた。
123 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:49
「我が名はベテルギウス!貴様らの命いただく!!」
「は?」

「ブラックブレス!」
「圭ちゃんあぶない!!」

矢口さんの言葉はちょっと遅かった。
真っ暗な闇が保田さんの身体をとりかこんだ。
そして、次の瞬間・・・

「バンバンバンバンバン!!!!!」

何発にもおよぶ銃声が聞こえた。

「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

保田さんの悲鳴。
保田さんはベテルギウスが作り出した闇の中で、銃撃されたんだ。

「圭ちゃん!!!!」

闇が晴れると、保田さんは傷だらけだった。
矢口さんは保田さんを連れていったん外へワープした。
124 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:50
「ケメちゃん!!」

梨華ちゃんが保田さんにかけよる。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

血だらけの保田さんに再び梨華ちゃんは錯乱した。

「姫!!大丈夫ですから!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんを抑える。

「高橋!」
「はい!」
「ここはあぶないから、梨華ちゃんを連れて安全な場所に避難して!」

「はい!!」
愛ちゃんが混乱する梨華ちゃんを連れてもと来た道を引き返す。

「柴ちゃん!!」
「は、はい」

目の前の光景に、意識が朦朧としてた私に、矢口さんが指示してきた。

「圭ちゃん、7発くらったから」
「へ?」

「弾抜いて、応急手当して!」
「え!?私そんなことできません!!」

「やるしかないの!!お願い!!オイラはよっすぃのとこに行かないといけないから!!」

そういうと、矢口さんは姿を消してしまった。


無理だよ。そんなの無理だよ・・・
血を流し続ける保田さんを前に、私は泣きたくなった。
125 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:52
『大丈夫!あなたならやれる!!』

その時降ってきたいつもの声。
涙をこらえて、保田さんを安全な場所まで背負っていき、
そこであさ〜い知識ながらも治療することにした。



「よっすぃ!!」

中に入った矢口さんはよっすぃに会えた。

「さっきの、やぐっつぁんじゃなかったんだね?」
「うん。圭ちゃんがやられた」
「そっか・・・魔女のが強えってわけね」
「こんなときまで冗談言うな」
「ごめん」

「どうなってんの一体!」
「わかんないんだ。うちが来たときにはもうこんな状態で。まことも見当たらないし」

まことっていうのは、よっすぃが愛した人の妹。この茶屋を一人できりもりしていたんだって。
126 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:53
「ようやく、八剣士のおでましか」
「貴様は誰だ!!」

姿を現したのは、赤いよろいを身に着けて、槍と銃を持った大きな男。

「我が名はベテルギウス!」
「さっき、圭ちゃんを撃った奴だ!!」
「八剣士。きさまらは、全員殺せとの命令だ。その命貰い受けた!!」

ベテルギウスは身構えると銃を二人の方に向けた。
よっすぃはそれを見て剣を抜き、矢口さんはロッドをかざした。

「ほう。魔女とナイトか。おもしろい」

ベテルギウスは、ニヤッと笑った。
次の瞬間、二人の目の前は真っ暗になった。

「ホワイトウォール!!」

闇が二人を包む前に、矢口さんは魔法を放った。
闇は一瞬にして光に飲み込まれた。

「ほう。魔女のくせに、光をあやつれるとはな。殺しがいがある」

ベテルギウスは、今度は槍を手にした。

127 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:54
「そうだった。そこのナイトよ。これを受け取るがいい」

ベテルギウスが、よっすぃにお守りを投げた。

「ここの茶屋の娘が大事に持っておったぞ。
 きさまの名前を出したら、絶対にきさまには危害を加えさせんとかわめきおってな。
 しぶといやつだった。100発もの弾を無駄にしてしまったわい」

その言葉に、よっすぃの頭は真っ白になった。
大切な人の妹。まことちゃんは、ベテルギウスの手によって殺されていたんだ。


「うわぁぁぁぁ!!!!」


一気に激情したよっすぃはベテルギウスめがけて走った。


「よっすぃダメ!!」


ベテルギウスを相手に、考えなしに飛び込むなんて捨て身行為。

そんなよっすぃを見て、作戦通りと言わんばかりに、ベテルギウスは攻撃態勢に入った。


128 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:55
「ブラックブレス!!!」
「よっすぃ危ない!!」

ベテルギウスが放った攻撃は、よっすぃが受ける前に、矢口さんが身代わりになった。
矢口さんは、体中を闇に支配されると、闇の中で無数の刃をくらった。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

そして、闇が解けた後の矢口さんは・・・
体中に槍で貫かれた後があって、ぐったりしていた。

「や、やぐっつぁん!!!」
「ほう。魔女のくせに、人に情けをかけるとは。殺す手間が省けたな」
「き、きさまぁぁぁ!!」

よっすぃは、ベテルギウスをにらみつけるとすぐに、剣を前に身構えた。

129 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:56
「デュランダル今こそ、我に力を与えよ!!」

そういうと、よっすぃの気力が剣に集中しはじめた。

「烈火真炎!!!」

よっすぃの剣は一瞬にして燃え上がり、白い炎をまとった。


「うおぉぉぉ!!!」


よっすぃは剣を高く掲げると一気に振り下ろした。
その瞬間、地面が裂け、そこから火柱が上がった。
そして、よっすぃの剣をまとっていた白い炎は剣から離れて火柱の中をベテルギウスめがけて走った。

「なに!!うわぁぁぁぁ!!!」

思わぬ攻撃にベテルギウスはよけたものの、右腕を炎に焼き尽くされた。

「貴様!!ただでは済まぬぞ!!覚えておけ!!」

そう言うと、ベテルギウスは姿を消した。
130 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:57
「やぐっつぁん・・・うそだろ?なんでだよ!!」

ベテルギウスとの勝負を終えて矢口さんのもとに戻ったよっすぃ。
でも、矢口さんはもう息をしてなかった・・・

「魔女は、強いんじゃなかったのかよ!!」

矢口さんの身体をゆさぶるよっすぃ。

「こんなに冷たく、硬くなっちゃって!!
 魔女は不死身なんじゃないのかよ!!」


「不死身に決まってるだろ!!」


「え?」

振り返ったら矢口さんがいた。
目の前の死んだはずの矢口さんと生きている矢口さん・・・よっすぃの頭に『?』満開。

「いや〜。あぶなかった。もう少し遅かったら完璧に死んでたよ」
「え?」
「分身作ってすりかわったの」

そう。矢口さんは、攻撃を直撃する前に、分身を作って闇の中から脱出してたんだ。

「なんだよ!!マジびびったじゃん!!」
「はははっ。オイラは簡単にはやられないぜ!」

131 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:58
「姫!大丈夫ですからもう泣かないで!!」

避難してからもずっと泣き続ける梨華ちゃん。

「だって、だって、ケメちゃんが・・・」
「保田さんは大丈夫です!!きっと助かりますから!!」
「だって、だって・・・怖いよ!!」
「姫のことは、何があってもうちが守りますから!!」
「愛ちゃんは、怖くないの?あんなの目の前にして」
「・・・怖くなんかない」

愛ちゃんは、自分はもっともっと残酷な景色を見てきたから・・・ってことは言わなかった。

「ぅぅぅ・・・」
「姫・・・しっかりしてください!!これからだってこういうことはたくさんあるんやし・・・」
「・・・もう帰りたいよ!!こんな世界やだ!!」
「そんな・・・そんなこと言わんでください!!」
「・・・だって・・・ぅぅ・・・」
「姫は、もっと気丈なお方だったはずです!!」
「転生する前の話しないで!!」
「・・・」

梨華ちゃんに少しだけ腹がたったみたいで、愛ちゃんは顔を背けた。

「みんな・・・大丈夫かな・・・置き去りにしてきちゃったけど・・・」

その言葉に、愛ちゃんは震えた。


「置き去りになんてしてません!!」
「え・・・」


愛ちゃんがあまりにも興奮したので、梨華ちゃんはびっくりした。

「ごめんなさい・・・つい・・・」
「愛ちゃん・・・」

なんとなく、梨華ちゃんも愛ちゃんが過去に辛い経験をしたんだってこと、わかり始めてた。

「愛ちゃん。愛ちゃんは、すっごくマジメで、強くて、優しいんだね」
「・・・」


「愛ちゃんの、重り、いつか半分もらってあげるからね」
「・・・」


そういうと、梨華ちゃんは笑顔を見せて、愛ちゃんを抱きしめた。
132 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 21:59


笑顔には不思議な力があるんだ。
梨華ちゃんの笑顔は特別にね。


自然とその人の心の中に入っていって、
自然とその人の心の中をほぐしちゃうんだ。


笑顔には不思議な力があるんだ。
だからまた、愛ちゃんの心の鎖が一つだけはずれた。


133 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 22:00
「圭ちゃん大丈夫?」

保田さんの身体から7発の弾丸を取り出して、
包帯代わりに自分の服を破って傷口を止血して、
放心状態に陥ってた私のもとに矢口さんとよっすぃが来た。

「ってか・・・すごいセクシー」

よっすぃが私の格好を見て笑えない冗談。
多分、私はよっすぃのことにらんだと思う。

「・・・ごめん」

よっすぃが目をそらした。
一人で不安で不安で、でもやらなきゃいけないから治療して。
・・・もう限界だよ。

「血が止まらないし、このままじゃ保田さん・・・」

矢口さんが私の言葉を受けて保田さんの様態を確認。

「やばいね・・・でも、治療は完璧だよ。
 あとは圭ちゃんの生命力にかけるしかない。
 とにかく、今日はあの茶屋に泊まろう」
「え・・・マジ?」

よっすぃが顔をしかめる。

「圭ちゃんを運んで峠を下りるわけにはいかないでしょ?」
「・・・」
「オイラの魔法で茶屋はきれいにしちゃうから、
 よっすぃと柴ちゃんは梨華ちゃんたちを探しにいって!」
「わかった。行こう?」

よっすぃが私に手を差し出してきた。
もう少し心を静める時間ほしいよ。って思ったけど、
そんなわけにはいかないから、その手をとって立ち上がった。

134 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 22:02
「二人ともどこに行っちゃったんだろうね?」
「よっすぃ目が怪しい!!」

「あは?バレた?」
「マジむかつく!」

保田さんのおかげで、かなりきわどい格好になってるのはわかるけど、よっすぃの視線がなおさらそれを誇張する。

「いや〜見つからないねぇ」
「ってか、探す気ないでしょ?」

「バレた?」
「本当によっすぃって女の子好きなんだね!」

「好き好き大好き♪」
「だから、愛ちゃんと喧嘩するんだよ。気をつけたほうがいいよ」

「愛ちゃんだって、女の子好きじゃん?ほら、姫!姫!ってさ?」
135 名前:刺客 投稿日:2005/02/25(金) 22:03
「そんなんじゃありません!!」

その言葉に振り向いたら愛ちゃんと梨華ちゃんがいた。

「姫は!私は姫をお守りすることが使命なんです!!
 そんなふしだらな感情で姫を見たことなんてありません!!!」

よっすぃにつめよる愛ちゃん。

「わぁお。そうなの?じゃあ、うちが梨華ちゃんとっちゃおっと♪」
「吉澤さん!!八剣士は姫を守り使えるものです!!」

「でも・・・確か、前の八剣士だって、姫と恋に落ちた人がいたって話しだよ?」
「そんなのウソです!!」

「まあまあ、二人とも、そんなに私を取り合わなくてもいいってば♪」

なんか、嬉しそうな梨華ちゃん。勘違いしてるよこの人。

「やっぱり、それはないかも」
「ありえません!!」

二人の反応に口を尖らせる梨華ちゃん。

「し、柴ちゃんその格好どうしたの?」

気づいてほしくない点に気がついた梨華ちゃん。

「い・・・いや。保田さんの手当てで」
「柴田さん・・・遊女みたいや」


愛ちゃんの言葉にうなだれた。

136 名前:k・y 投稿日:2005/02/25(金) 22:07
以上です!

川σ_σ|| <補足説明です。

吸血蜂:進化したスズメバチ。人や動物の血を吸って生きている。
攻撃レベル:2 危険度:3 

ベテルギウス:天星人。魔王に心を奪われ悪と化した星。
       銃と槍を使い、次々と攻撃を繰り広げる。
攻撃レベル130 危険度150

デス:矢口さんの魔法。一瞬で生命を奪う恐ろしい攻撃。

ブラックブレス:ベテルギウスの攻撃。闇をつくりだし、その中で銃と槍の乱射。
        闇にのまれた者は、視覚を奪われ銃弾と槍の虜になる。
        今回は保田さんが大変なことになっちゃいました・・・

ホワイトウォール:矢口さんの必殺技。光を操り、聖なる力で相手をうちのめしちゃう。
         光を操れるのは本当は魔術師だけなんだけど・・・

烈火真炎:よっすぃの必殺技。炎を操って攻撃。
     超熱地獄のおかげで全てのものを焼き尽くす。
     すっごく強いよっすぃの技なんです。

137 名前:レス 投稿日:2005/02/25(金) 22:16
>>116 :娘。よっすいー好きさん
   よっすぃは軽いけど、ただものじゃないんです!!
   めちゃくちゃ強いんです!!!
   今回は憤慨で大暴走でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?
   これからも、かっこいいよっすぃに期待していただければ、嬉しいです!
   これからもよろしくお願いします!!

>>117 :名無飼育さん
   八犬伝がもとになっています!
   原作とはもちろんかなり異なりますが、
   八人の剣士と梨華ちゃんの活躍、楽しんでいただければ嬉しいです。
   残りの剣士、誰になるかも期待しながら読んでいただければ嬉しいです!
   これからもよろしくお願いします!!


レスありがとうございます!!今回は敵が初登場でした。
徐々に悪役側も出てくるので、ご期待ください!!
春一番がふきあれたのに、翌日は雪・・・おかげでインフルエンザです・・・
剣士たちが悪に負けないように、私も風邪に負けず頑張って執筆する予定ですので、よろしくお願いします!!
138 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/25(金) 22:39
更新お疲れ様です。
格好良いよっすぃーを期待してますね。
139 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/26(土) 14:25
更新お疲れ様〜!!
マジで面白い!!
すごいです☆
140 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 15:52
その日の夜は、私たちは茶屋に泊まることにした。

「これから、どうする?」
「とにかく、圭ちゃんの回復を待つしかないよ」

矢口さんの言葉にうなずく梨華ちゃん。

「ケメちゃん・・・大丈夫だよね・・・」
「うん・・・多分ね。柴ちゃんの治療結構的確みたいだから」

私は、保田さんと隣の部屋にいた。
保田さんの容態は悪化するばかりで、とりあえず、容態が急変しないように交代で看病することにしたんだ。

「よっすぃは?大丈夫?」

部屋の隅でまこっちゃんの肩身のお守りを見つめていたよっすぃに、梨華ちゃんが近寄った。

「え?何が?」
「大切な人が亡くなったんでしょ?」
「あ〜あ。そういえばそうだったね」
「え・・・」

ショックを受けてるのかと思えばいつも通りのよっすぃに梨華ちゃんは戸惑った。
141 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 15:54
「これさ、このお守り、100万円相当の宝石が入ってたんだ。
 なのに今は空っぽ。あのベテルギウスってやつが奪ったんよきっと。
 あいつ偉そうなくせにケチなのかなって考えてたんだよね」
「吉澤さん!!」

不真面目なよっすぃに愛ちゃんが怒らないわけないわけで・・・
よっすぃとは反対の部屋の隅にいた愛ちゃんが立ち上がった。

「なに?」
「人が死んだんですよ!そんな不真面目な発言・・・最低です!!」
「ど〜せ、人はいつか死ぬんだしさ。それが早いか遅いかでしょ?」

その言葉に、愛ちゃんはよっすぃにつかみかかった。


「愛ちゃん!!」
「高橋!!」


梨華ちゃんと矢口さんが愛ちゃんを止める。


「人が死んだんです!!殺されたんです!!
 大切な人が死んだのに、そんな態度!!
 あなたには、あなたには感情はないんですか!!!」


よっすぃは、その言葉に少しだけ笑った。
その笑顔は、あまりにもさびしげで・・・
梨華ちゃんは思わず息をのんだ。


「大切な人?うちが守れる相手なんていないよ。
 知ってるだろ?あの町。うちはイーストタウンで育ったんだ。
 自分が生きるためには友達だって恋人だって犠牲にする町。
 殺されたからっていちいち驚いてはいられないんでね」


そういうと、よっすぃは部屋から出て行った。
梨華ちゃんがよっすぃを追う。


「姫・・・」


愛ちゃんは梨華ちゃんがよっすぃをかばったって思ったみたい。

「愛ちゃん?よっすぃはね悲しみを封印したんだ。
 悲しみの表現はいろいろあるんだよ」

でもやっぱり、愛ちゃんは納得できないみたいで、部屋を後にした。
142 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 15:55
「よっすぃ?」
「ここ危ないよ?どこで暮らしてたのか知らないけど、
 この辺じゃ、夜、外に出るのは危険だよ?」

「大丈夫だよ」
「え?」

「ここに頼りになるナイトが一人いるからね?」
「それって、うちのこと?さっきも言ったけど、
 うちは誰かを守るようなタイプじゃないよ?」

「昨日だって守ってくれたでしょ?」

梨華ちゃんは、昨日の夜のできごと、よっすぃが助けにきたんだってわかってたみたい。

「それは・・・」
「よっすぃが言葉でどんなことを言っても、私わかるよ。
 なんでかな?昔っから相手の心を読むのだけは得意なんだよね」

「わぁお!そりゃ、すごいや。じゃあ、今うちが梨華ちゃん抱きしめちゃおう!って思ったのもわかったんだ?」

その言葉に、梨華ちゃんがそっとよっすぃを抱きしめた。


「え・・・」


「ダメだよ・・・よっすぃの心、これ以上心にウソついたら、よっすぃの心、凍っちゃうよ」


梨華ちゃんの言葉によっすぃは言葉でつくろうのをやめた。

「ごめんね。うまく慰めてあげられないから・・・」

よっすぃから離れると、梨華ちゃんはさびしそうに笑った。
よっすぃは、梨華ちゃんの笑顔に一瞬だけ笑顔を返すと手にしていたお守りに目を移した。

「そのお守り・・・」
「あげたんだ。間に合わなかったんだけどね」

「大切な人に?」
「そう」

その話の続き、それを聞きたい気持ちをおさえて梨華ちゃんはよっすぃの持つお守りを見つめるだけにした。
今はまだ、よっすぃが話したくないんだろうなってわかったからね。

143 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 15:57
「ん?わ!愛ちゃん!!」

な〜んか、気配をかんじるな?って思って後ろを向いたら愛ちゃんがいた。

「いつからいたの?」
「・・・」

隣の部屋の声はこっちにも聞こえてたからなんとなく理由はわかった。

「誰かを守るって大変なことだね」
「・・・」

「今日、保田さんの治療してよくわかった。
 誰かを守るって、すっごく勇気がいることなんだって」
「・・・」

「愛ちゃんはすごいよ。梨華ちゃんを守るって言えるんだもんね?
 でも、よっすぃが守るって言えない気持ちもわかるな」
「すごくなんかない・・・私は・・・私は間違ってますか?」

「え?」
「私はただ、姫を守ってこの国を魔王の脅威から守りたいだけなです!!
 それは、その考えは間違ってますか?」

「・・・間違ってるとか・・・わかんない」

わかんないよ。そんなおとぎ話みたいな感覚、今まで味わってこなかったんだもん・・・

「・・・」
「でも、それを決めるのは、私じゃないよ」

愛ちゃんはうつむいちゃった。

144 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 15:58
「姫は・・・後悔してるんでしょうか・・・?」
「え?」

「この世界に来たこと・・・だとしたら・・・
 私のこと・・・うらんでますよね・・・」
「多分・・・それはないかな?」

「え?」
「梨華ちゃんね?困ってる人見るとほっておけないタイプなんだ。
 だから、あの日、多分愛ちゃんがお願いしなくても、結局梨華ちゃんここに来てたよ?」

「え?」
「だって、愛ちゃんの顔、あの時の顔、すっごく悲しそうで困った顔だったもん。
 梨華ちゃんがほっておくはずないよ」

「姫・・・」
「うん。そういうてんでは、梨華ちゃんはお姫様かもね?」
「姫は、絶対に私が守ります!必ず、無事にもとの世界に帰しますから!!」

「できれば、私も・・・」
145 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 16:00
「ん?なんだ、愛ちゃんここにいたんだ」

矢口さんが入ってきた。

「・・・」

「柴ちゃん、圭ちゃんどう?」
「・・・あんまりよくないみたいで・・・」
「そっか・・・あのね?この峠を南に下ったところに、クルド族の森があるんだ。
 クルド族は薬学に詳しくって、だから、薬草が手に入るかもしれないんだ!」

クルド族っていうのは、人間とカエルの中間の人たちなんだって。
古い森の妖精で、みためはかっこ悪いんだけど、気のいい優しい妖精。
なんにでも効く薬草を作ってるかもしれないんだって。

「私行きます!!」

愛ちゃんが立ち上がった。

「うん。じゃあ、柴ちゃんと愛ちゃんでよろしく!!」
「え?私も??」
「柴ちゃんは鼻が効くでしょ?」
「は?」


「柴田だけに、柴犬!なんちゃって」


笑えない・・・って思った私の横で爆笑の愛ちゃん。
愛ちゃん・・・笑いの偏差値低いよ・・・

「オイラが行きたいところだけど・・・
 魔女だから、きっとクルド族に嫌がられると思うんだ」


魔女は嫌われ者・・・矢口さんの顔が曇った。


「わかりました!じゃあ、姫をお願いします!!」
「高橋・・・この場合は圭ちゃんを!だろ?」
「・・・でも、姫は!!」
「あ〜わかったわかった!わかったから、早く行って!!」
「はい!」
146 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 16:01
「あれ?柴ちゃんどこ行くの?」

外に出たら、梨華ちゃんたちがいた。

「コビト族?だっけ、そこに行くんだ」
「クルド族です!」

愛ちゃんに訂正される。なんだか愛ちゃん不機嫌?
あぁ。よっすぃがいるからね。

「あ、うん。そのクルド族に会いに行くの」
「へぇ。なんで?」
「保田さんの容態がよくなくて。
 クルド族は薬草を持ってるらしいからもらいに行くの」
「そっか。気をつけてね?」
「うん」

「愛ちゃんも!」
「はい!」

梨華ちゃんが相手だと態度が違うんだから。

「あ!よっすぃも連れていきなよ!」
「え?」
「ほら、夜道は危険なんでしょ?」
「それは・・・そう言ったけど」

愛ちゃんをチラッと見るよっすぃ。

「ね?いいよね愛ちゃん!」
「・・・姫がそう言うなら」

そう言いながらも不服そうな愛ちゃん。

「柴ちゃん、後はよろしく!」

二人に気づかれないようにこっそり私に耳打ちをすると、
梨華ちゃんは中に戻っていった。
147 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 16:04
よろしくって言われたけど・・・
かれこれ一時間、二人とも無言で歩き続けてます・・・

「こっちだっけ?」
「地図だと右です」

地図を見てたまに愛ちゃんが方向を導いてくれる。

「あ、そうなんだ」
「あ、柴ちゃん、こっちだよ。こっちが近道」

よっすぃは前にもクルド族のところに行ったことがあるみたい。

「あ、そうなんだ」
「柴田さん!地図通りに行ったほうがいいと思います!」
「あ、うん。そうだよね」

「柴ちゃん!早くついた方が圭ちゃんのためにもいいでしょ?」
「あ、うん。そうだよね」

二人とも、会話は私を通してするみたいで・・・板ばさみ状態・・・

「地図通りで!」
「近道で!!」
「あ・・・う〜・・・えっと・・・」

「柴ちゃん、早く行ったほうがいいよね?」
「柴田さん、吉澤さんのいうことなんて当てになりませんよね?」

「柴ちゃん、うちのこと信じてないの?」
「柴田さん、吉澤さんはいっつもいい加減ですからね?」

「柴ちゃん、こいつの言う通りに行動してたら日が暮れちゃうよね?」
「吉澤さんの言う通りなんかにしたら、とんでもない場所に着いちゃいますよね?」

「柴田さん!!」
「柴ちゃん!!」


「あ〜!!もうちょっと待ってよ!!」


いっくら、私だってこれ以上は我慢できないって!!


「二人とも直接話してよ!!」


「「・・・」」


って言ったとたんに見詰め合って火花が飛び散る二人・・・

「ちょ〜っと待って!!喧嘩はやめてね!!今は仲良くしないと!!」
「うちは、喧嘩する気なんて全然ないって」
「よっすぃは、愛ちゃんを怒らせるようなこと言わないでよね」

「それは、こいつが勝手に怒るからじゃん。うちはな〜んにも言ってないって」
「吉澤さんはふまじめすぎるんです!!」
「あんたが固すぎるの!!」


「もう・・・勝手にやって」


それから二人ともしばらく言い合いが続いて。
私は近くの切り株に座って試合観戦・・・
148 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 16:06
「はぁ・・・」
「大変ですねぇ」
「本当だよ。いっつもあの調子なんだよ」
「へぇ。本当に仲がいいんですね?」
「まったくだよ・・・って?え??」

ここには、よっすぃと愛ちゃんと私の三人だけなはずで・・・

「だ、誰?!」
「?」

周りを見渡しても誰もいないわけで・・・

「誰?誰かいるの!?」
「ここで〜す!!ここ!!ここ!!」
「え?」

声がするのは私の足元?ってことで足元を見てみたら・・・

「え・・・?」
「こんばんは♪」


足元にいたのは、キツネさん?
武士の格好をしてるんだけど、どう見てもキツネ。
分厚い本と剣を持ったキツネさんだった。


「キ、キツネがしゃべった〜!!」


驚いた私はそのまま後ろに倒れた。

「大丈夫ですか?」
「いった〜い。って・・・あなたもしかしてクルド族?」

思いっきり頭うって涙ちょちょぎれました。

149 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 16:07
「いえ」
「・・・」

こっちの世界って、おかしなことがたくさんあるんだね・・・

「クルド族は、もうこの森にはいませんよ?」
「え?えぇぇぇぇ〜!!!!」

「クルド族は平和を好みます。この森は魔王の手下がうろついているから、
 この森から出てサウスビレッジの森に引っ越しました・・・」
「・・・そうだったんだ」
「はい・・・」
「どうしよう・・・薬草が・・・」
「薬草?」
「うん・・・仲間が怪我しちゃってて。薬草が必要なの!!」
「クルド族の薬草ですか?えっと・・・」

キツネさんが本を開いて何かを調べ始めた。

「あ!これですね!これなら・・・あ!
 この草をせんじれば作れますよ?」
「え?本当に??」
「はい!」
「すっごいすっごいすっごい!!あなたって賢いキツネさんなんだね?」
「いや〜。それほどでも」

150 名前:森のコギツネ 投稿日:2005/02/27(日) 16:09
「柴ちゃん?」

キツネさんと話してた私のもとに、いつのまにかよっすぃと愛ちゃんが集合してた。

「柴田さん・・・キツネ相手になに一人でしゃべってるんですか?」
「へ?」

「柴ちゃん・・・頭大丈夫?」
「え?って・・・このキツネさんね!」
「変な格好してますね。誰かのいたずらやろか?」

愛ちゃんがキツネさんを捕まえようとする。
キツネさんは愛ちゃんの手を逃れて私のひざにのっかった。

「ダメだよ愛ちゃん!このキツネさんは、
 ただもんじゃないんだから!!
 薬草の作り方教えてくれるって!」

その言葉に、二人の顔はいぶかしげになった。

「柴ちゃん・・・さっきから、一人で何言ってんの?」
「え?だから、キツネさんが教えてくれるって言ってたじゃん?」
「いや。キツネ相手に、一人で柴ちゃんしゃべってたけど・・・?」

「え?ちょっと!キツネさん!!二人にもしゃべってあげて?」
「多分、二人には私の声は聞こえていないんだと思います」
「えぇぇ!!それじゃあ、私が変な人みたいじゃん!!なんでよ!?」
「それは、きっと、あなたが私のパートナーだからじゃないでしょうか?」
「パートナー??なんの??」


まさか・・・このキツネが運命の恋人とか言わないよね・・・
瞳ちゃんとの恋が実らないだけでなく、人類愛じゃなくって、
動物愛だなんて・・・
悲劇っていうか・・・喜劇すぎるよ。

「柴ちゃん・・・大丈夫?」

や、やばい・・・この状況を二人に説明しないとだった・・・


それから、二人にキツネさんのことと、その話を説明して私たちは戻ることにした。

151 名前:k・y 投稿日:2005/02/27(日) 16:12
今日はここまでです!

川σ_σ|| <補足説明です。
 ・・・今日は特になしです♪
 クルド族には会えなかったけど、かわりに
 賢いコギツネさんに会うことができました。
152 名前:レス 投稿日:2005/02/27(日) 16:22
>>138 :名無飼育さん
  今回は敵も魔物も出てきませんでしたが、
  愛ちゃんvsよっすぃ?!でした。
  この二人の関係にも注目していただければ、嬉しいです。
  もちろんこれからも、よっすぃはかっこよく活躍してもらう予定です!
  暖かく見守っていただけると嬉しいです♪

>>139 :名無飼育さん
  『面白い』その一言が励みになります!!
  もっともっと面白く、もっともっとワクワクするような
  そんな作品を目指そうと思ってまっす!!
  私自身も剣士たち同様成長できれば・・・
  これからも、よろしくお願いします!!


レスありがとうございます!!レスを励みに、頑張ろうと思います!!
次回は、あの人の過去が・・・わかる予定です!
愛ちゃん?ケメちゃん?まりっぺ?よっすぃ?誰の過去かは・・・???
次回も楽しんでいただけるように頑張りますので、よろしくお願いします!!

153 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/02(水) 13:29
柴っちゃんもたいへんだなあ。
賢いキツネときたらあの子かな?
続きを楽しみにしてます。
154 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/08(火) 04:18
いい感じいい感じ☆
次も楽しみですね。
155 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/03/08(火) 18:11
ageんな
156 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:46
「ケメちゃん・・・大丈夫かな・・・」

私たちの帰りを、梨華ちゃんたちは待ちわびていた。

「クルド族の薬草はすっごくよく効くからね!」
「そっか。よかった。あ・・・そういえば、なんで、
 まりっぺは、ケメちゃんみたいな魔法使えないの?」

「オイラは魔女だからね・・・」
「魔女と魔術師は違うの?」

矢口さんの顔から光が消えた。


「魔女は、人を助けられるような魔法は使えないんだ。
 もともと、邪悪な血を受け継いで、この世に悪をもたらすためにいたんだ。
 だから、人を助ける魔法は使えないんだよ。魔術師はもともとは人間。
 魔女を倒すために人間が魔法を手に入れたんだ。
 それを使えるように教育されたのが魔術師。
 魔術師は人間のために魔法を使えるんだけど、
 魔女は人間のための魔法はもってないんだ」


「ごめん・・・」


聞いちゃいけないことを聞いちゃったんだってわかって、梨華ちゃんはうつむいた。

「ううん。いいんだ。オイラは魔女だからね。それは、変えられないこと」
「でも!まりっぺは、いい魔女なんだね?」

「え?」
「私はまりっぺのこと大好きだよ」


「その言葉、前にも言われたことあったよ。
 あいつ意外にもそうやって言ってくれる奴がいるとはね・・・」


矢口さんは首から下げた十字架を握り締めた。


それは、魔術師のみが持つことを許された聖なる十字架。
クロスペンダント。


矢口さんの宝物。

157 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:48
矢口さんは、イーストタウンに捨てられてた。
魔女っていうのは、魔女の家庭に生まれるのではないんだ。

普通の家庭、人間の家庭に生まれる。
生まれた子の胸にこうもりのあざがあると魔女の印。

妊娠中に悪魔に子供が食べられちゃうと魔女になるんだって。
魔女かどうかは、生まれてからじゃないとわからないんだ。

生まれた子が魔女だった場合は、その子を殺してしまうか、
捨てる人がほとんどなんだって。

普通に育てたところで、魔女は15歳になったら悪魔に心を奪われるって言われてるから。


そして、矢口さんも捨てられたんだ。


普通の赤ちゃんだったら、生まれてまもなく捨てられたら死んでしまう。
でも、魔女の赤ちゃんは行きぬくために魔法を使うから、たいがい一人で成長できるんだ。

矢口さんは、イーストタウンで一人で育った。
イーストタウンは町が荒れているから、魔女狩りもなかったんだ。
その分、生き抜くことが大変だから、他の魔女も寄り付かない場所。
158 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:50
「こんにちは?」

矢口さんが、15歳になったある日、一人の女の子が矢口さんの家を訪ねてきた。

「あんた誰?」

古びた廃屋を住家としていた矢口さんは、その女の子を警戒した。

「怪我をした子がいるんです。治療してあげたんだけど、
 まだよくなるには、時間が要りそうなの。
 家で休んでくださいって言ったんだけど、家がないっていうの。
 お願いです!その子が治るまでここに住ませてあげられないでしょうか?」

「治療って・・・あんた何者?」


「はい!サウスタウンに住む魔術師です!
 安倍なつみっていいます」


その言葉に矢口さんは震えた。
そしてロッドを手にすると安倍さんの前に立って身構えた。

「え?」

突然、暗闇から現れた矢口さんに安倍さんは目を丸くした。

「オイラ、やられる前にやる主義なんでね!」

 矢口さんはロッドをかかげた。

「待って!!この子怪我をしてるの!!お願い!!」

安倍さんは矢口さんの手をあわてて握り締めた。

「魔女狩りにきたんだろ!!子供をだしにオイラを騙す気だな!!」
「違う!!この子を助けたいの!!」
「お前が魔術師である限り、オイラは惑わされない!!」
159 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:51
興奮する矢口さんに、安倍さんは目をつぶった。
そして、静かに自分の首からクロスペンダントを外した。


「これでいい?」
「え・・・」


「これは、魔術師の証。この十字架、あなたに預けるから。
 だから、私は魔術師じゃない。お願い!!この子を助けて?」


矢口さんの首に安倍さんはクロスペンダントをかけた。
矢口さんは困惑してそのまま後ずさりした。


『なんで?なんで、こいつの心読めないのよ・・・』


人の心を読む能力がある矢口さん。
でも、矢口さんに安倍さんの心の声は聞こえなかった。

「お願い!!」
「わ、わかった」
「ありがとう」

そう言って安倍さんが見せた笑顔は矢口さんの心に響いた。


今まで出会ったことのないくったくない笑顔。
その笑顔に矢口さんの閉ざされていた心は開いたんだ。


安倍さんは、子供を預けると、矢口さんに背を向けた。

「ちょっと待って!どこに行くの?」
「ここに来る途中にも、怪我をした人がたくさんいたの」
「この町は怪我人なんて腐るほどいるよ!!」
「ほっては置けないよ!!私にできること、できる限りやりたいの!!」

安倍さんは、人ごみにとけていった。
160 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:52
「あのさぁ!!ここは、病院じゃないんだからね!!」

三日もすると、矢口さんの家は、安倍さんが連れてきた患者さんであふれていた。

「あはは。病院ならもっときれいだもんね?」
「くっう〜!!言ったな〜!!」
「きゃははははっ」


安倍さんは笑顔がとっても似合う人だった。
生まれてから、ずっと一人で、人との交流がなかった矢口さんにとって安倍さんの笑顔は最高の魔法だった。


矢口さんの心は、安倍さんの魔法によってどんどん溶かされていったんだ。


「このぉぉ!!いそうろうのくせにぃぃぃ!!」

それから、安倍さんはイーストタウン中の患者さんを
治療するまではこの町にいるって言い出したんだ。

矢口さんは、けむたい顔をしながらも、笑顔でそれを受け入れた。


生まれて初めてできた友達。


だから、少しでも長い時間一緒にいたかったんだ。

161 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:54
「なっちはいいな」
「え?」
「なっちは、みんなに喜ばれる魔法が使えるだろ?」


みんなを治療する安倍さんは町中のみんなの神様だった。
シスターと呼ばれて、みんなに愛されていた。


「オイラは、みんなに嫌われる。
 魔法は使えてもみんなの役には立てない」
「矢口にも、みんなの役に立てること、きっとあるよ?」

「え?」
「人はね?みんなお仕事があるんだよ?
 私は魔術師として自分に与えられた仕事をしてるだけ・・・
 あ!魔術師は辞めたんだったね?」

安倍さんは矢口さんの首にかけられた自分の十字架を見て笑った。

「あ!これ!!返すの忘れてた!!」
「ううん。いいよ。矢口が持ってて?」


「いいけど・・・」
「矢口には、矢口にしかできないことが必ずあるよ?」


その日から、矢口さんは死体を焼く火葬の仕事を始めたんだ。
死体をきちんと埋葬すれば、魔物にならないから。
魔物と怪我人がいなくなれば、イーストタウンは平和になるからって。

162 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:55
二人は、時々喧嘩しながらも二年間一緒に暮らしたんだ。
そして、いつしか、お互いにお互いが大切な存在になってた。

「この町、いつになったら平和になるんだろうね?」
「きっと、平和になんかならないよ。この町は、この世の地獄だからね」

「永遠に続く地獄なんてないよ?この町もいつかは平和になるよ」
「なっちは、本当にお気楽だよ。そう言って、あれから、二年もこの町にいるんだもんな」

「ははっ。そういえば、そうだね。でもね?
 なっちがここにいられたのは、矢口のおかげだよ?」
「え?」

「矢口がいてくれるから、頑張れるんだもん」
「・・・そんなこと言うなよ。オイラは魔女だよ?」

「だから?」
「魔女は!魔女は邪悪な血を受け継ぐんだ!!
 だから、オイラの心は・・・」

「じゃあ、矢口は、いい魔女さんなんだね?」
「え?」

「なっちは、矢口のこと大好きだよ。
 この町が平和になっても、ず〜っと一緒に暮らそうね?」


それは・・・安倍さんの、ううん。
二人のささやかな夢だったんだ。


「なんでなんだろ・・・」
「え?」
「オイラ、他の人の心の声は聞こえるのに、
 なっちの声だけは聞こえないんだ」


その言葉に、安倍さんは、ただ笑っていた。

163 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:56
寒い寒い冬の朝のことだった。


安倍さんは、いつものように、町に診療にでかけた。


矢口さんは朝は少し苦手だから、安倍さんよりも遅く置きだして、朝ごはんの支度にかかってた。


診療を終えて戻ってくる安倍さんはいつも以上にほっぺを赤くして、かじかんだ手をすりあわせながら戻ってくる。


だから、暖かいスープと焼きたてのパン。
それから、赤いほっぺをからかうための真っ赤なりんご。


矢口さんは安倍さんの反応を想像しながら朝食を作ってたんだ。


「大変だ!!」


パンをオーブンから取り出そうとした時だった。
矢口さんの家に男の人が駆け込んできた。


「シスターが!!魔物に襲われた!!」
「え・・・」


矢口さんの顔から血の気がひいた。


「場所は?」
「西の広場!!」


矢口さんは家を飛び出した。

164 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 16:59
「なっち!!」

広場に着いたときには、安倍さんはもう傷だらけだった。

「怪我人だと思って治療した相手が魔物だったんだ」

近くにいた人が経緯を話してくれた。
安倍さんは、いつものように、怪我人を魔法で治療してた。
そうしたら、治療した相手が運悪く魔物で、
元気になった瞬間に安倍さんを襲ったんだって・・・

「くっそぉぉぉ!!」

安倍さんを倒した魔物は辺りにいた人が協力し合って倒した。
みんな、安倍さんを救い出すために、捨て身の覚悟で魔物と戦ったんだ。

「矢口・・・」
「なっち!!」

「ちょっと、どじっちゃったよ」
「どじりすぎだよ!!もう!!」

「矢口のおかげで、この町、魔物いなかったからさ。油断しちゃったよ」
「バカバカバカ!!」

「うっ」


安倍さんは真っ赤な血を吐いた。
その血は安倍さんの白い魔術師の服を染めた。


「矢口?怪我した人は?」
「バカ!なっちが一番怪我してるよ!!他はみんな元気だよ!!」
「そっか・・・矢口?うっ」


また安倍さんは血を吐いた。

165 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 17:00
「ダメ!!しゃべんないで!!」
「お願い矢口!!この町を平和にしてね?」

「なに、遺言みたいなこと言ってるんだよ!!
 なっちがいないと平和になんかならないよ!!」


「お願い・・・矢口・・・お願い・・・」


「ダメだよ!!ダメだよ!!なっち!!ダメだよ!!一緒にいるっていっただろ!!」


どんどん、力を失っていく安倍さんを矢口さんは必死に呼び起こそうとした。



「なっちはね・・・矢口が・・・好きだよ・・・
 だからね・・・うっ・・・ずっと、
 ずっと・・・そばにいるからね・・・」



そして、安倍さんは息をひきとった。


「なっちぃぃぃぃ!!うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」


広場には、矢口さんの叫びと、人々のすすり泣く声がこだましていた。

166 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 17:02


『なっちは、ずっと矢口のそばにいるよ』


矢口さんの耳にようやく届いた安倍さんの心の声。


「なんだよ・・・なんだよ・・・ずっと、ずっと前からなっちの言葉、聞こえてたんじゃん・・・」


そのとき、矢口さんは気がついたんだ。


そう、安倍さんの声は、ずっと矢口さんの胸に響いてたんだ。


安倍さんの心は真っ白で、曇りがない。
あまりにも真っ白すぎて矢口さんには気がつかなかった安倍さんの声。



でも、ようやく届いたんだ。

167 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 17:02
安倍さんの夢、それはイーストタウンが平和になること。
そしていつまでも二人で暮らすこと。


その夢は、魔物によって打ち砕かれた。


でも、矢口さんは安倍さんの夢を引き継いで、
ずっとずっと、イーストタウンで暮らしてきたんだ。



再び安倍さんの魂に遭える日を夢見てね。

168 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 17:04
矢口さんの話を聞き終えた梨華ちゃんは、号泣だった。

「まりっぺ。すっごくすっごく、辛い思いしてきたんだね!!」
「そこまで・・・泣かれると・・・なんか・・・」

大げさすぎた梨華ちゃんに矢口さんは苦笑。

「安倍なつみ・・・伝説の魔術師が、そんな終わりをとげたなんて・・・」

保田さんだった。

「ケメちゃん大丈夫?」
「うん。やばいけど、少しだけマシになった」

「柴田に感謝しなね?」
「矢口・・・私、あんたのこと・・・ううん。魔女のこと誤解してた。
 魔女とか、魔術師とかそんなの関係ないのかもしれない。
 私は私で矢口は矢口。それだけのことだよね?」

保田さ〜ん?私への感謝ってところ流さないでよ・・・ってまぁ、それはおいておいて。
ようやく、保田さんは矢口さんのことを認め始めたみたい。

「ありがと」
「ケメちゃん!!まりっぺ!!
 これからは、力を合わせて頑張ろうね!!」

「その前に、この怪我なんとかしないとね・・・」
「大丈夫!柴ちゃんたちがクルド族から薬草をもらって戻ってくるから!」
169 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 17:06
「クルド族なら、もうこの森にはいないよ〜ん」

突然天から降ってきた声。

「誰だ!!」

矢口さんがロッドを手に身構える。

「ハロ〜?」

三人の頭上に羽の生えた男の子が笑っていた。

「誰だ!!」
「おいおい。ハロ〜ってあいさつしてんだから、あいさつ返せよ!!
 僕はアルタイル♪姫と霊玉をもらいに来たんだよん」

その言葉に、矢口さんが身構える。

「フレア!!」

矢口さんがアルタイルに向かって魔法を放つ。
アルタイルは火に囲まれた。

「わぁお。魔女さん生きてたの?な〜んだ。ベテルギウスのやつ。
 結局やられて帰ってきただけじゃん。僕は、ベテルギウスよりは強いんでね。
 えっと・・・ぐるぐるハリケーン♪」


ふざけた名前なのに、すっごく強いアルタイルの技。
一瞬にして台風を起こすと矢口さんの魔法を飲み込み、矢口さんを直撃した。
もちろん矢口さんはそれをよけたけど・・・

170 名前:魔女と魔術師 投稿日:2005/03/09(水) 17:07
「あま〜い♪」
「え?」

よけたと思ったアルタイルの竜巻は、わなだった。

「台風のときに、風がないのは中心付近だけ。
 風がない場所に移動するってことは、台風の目に飛び込んじゃう、
 自殺行為ってことになるんだよん」


「え?うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


台風の目に飛び込んだ矢口さんの身体は、一瞬にして台風に飲み込まれた。


「まりっぺ!!」


そして、宙に巻き上げられ、床に叩きつけられた。


「まりっぺ!!」


全身をずたずたに切られた矢口さんは、瀕死だった。


「矢口!!」


今度は保田さんが魔法陣を描く。


「雷丸弾!!」


魔法陣の中から雷が飛び出して、アルタイルに向かった。

「マジで?君、魔法使うと死んじゃうよ?」

アルタイルは保田さんの魔法陣から飛び出す無数の雷を簡単によけると、
保田さんに向かって手をかざした。


「雷はね?こうやって使うんだよ。ゴロゴロサンダ〜!!」


これまた、ふざけた名前なのにめちゃくちゃ威力のあるアルタイルの技。
保田さんは雷に打たれた。
もともと、よける力なんか残ってなかった保田さんは、攻撃をまともに受けた。


「ケメちゃん!!」

171 名前:k・y 投稿日:2005/03/09(水) 17:12
ここまでです!

川σ_σ|| <補足説明です。

  アルタイル:天星人。魔王に心を奪われ悪と化した星。
        雨雲を操ることができる。ハリケーン、
        落雷攻撃は逃れることがれきない恐ろしい技。

  ぐるぐるハリケーン:アルタイルの攻撃。雨雲を操り、
            台風を作り出す。周囲にいるものは全て飲み込み、
            強力な雨風による攻撃は必殺。
            風のないところによけたらそれこそ命取り・・・

  ゴロゴロサンダー:アルタイルの攻撃。雨雲を操り、落雷を作り出す。
           落雷通常の10倍の威力があり、その衝撃は計り知れない。

  フレア:矢口さんの魔法。炎による攻撃。矢口さんは黒魔法の中でも炎を操るのが得意。 
      だから、ファイヤーよりも威力が強いフレアが使える。

  雷丸弾:保田さんの魔術。魔方陣からの落雷攻撃。
      無数の落雷を魔方陣から打ち出すことができる。



172 名前:レス 投稿日:2005/03/09(水) 17:24
>>153 :名無飼育さん
  柴ちゃん大変なんです。これからも・・・
  賢いキツネさんが何者なのかは・・・
  今後わかるかと?
  二人?の今後の活躍にもご期待ください!!
  これからもよろしくお願いします!!

>>154 :名無飼育さん
  楽しんでいただけましたでしょうか?
  今回はあの人の過去が明かされました。
  悲しい過去でしたが、安倍さんはいつでも、
  矢口さんのそばにいるってことで?♪
  今後の展開も期待していただけるとありがたいです! 

>>155 :名無し飼育さん
  お気遣いありがとうございます!!
  作者がビビリなもので、みなさんの反応を伺いつつ更新しようと
  思っているため、更新が遅れることがありますが・・・
  ご愛読いただけると本当に嬉しいです!
  これからもよろしくお願いします!!


レス本当にありがとうございます!!レスを励みに更新します!!
今回は、悲しい過去が明らかになりました。
これで、まりっぺファンが増えるといいな?なんて・・・
剣士たちへの応援もいただけると嬉しいです!!
ではでは、これからもよろしくお願いします!!
173 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/10(木) 11:46
わ〜〜〜安倍さん(泣)

これマジですっげ!面白い!!
更新お疲れ様でした。
174 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/18(金) 17:14
一気に読まさせて頂きました。かなり面白いです、ファンタジー的な作品は結構好きな方なので最後までお付き合いさせて頂きます。次回更新待ってます。
175 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:11
梨華ちゃんたちがアルタイルに襲われている・・・

「ねぇねぇ、その草、本当にこの森にあるわけ?」

そんなことになってるなんて、全く知らなかった私たちは、
キツネさんの本にあったクルド族の薬草探し。

「あるはずなんだけどな〜?」
「キツネって・・・昔から人を騙す動物って言われてるんですよ?」

愛ちゃんが疑いの眼差し。

「そうだよね〜。このキツネ、変な格好してるしね?ばかされてるんじゃない?」

こんな時だけ、意見が合うよっすぃと愛ちゃん。

「あ〜!!あった〜!!」
176 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:12
私が薬草を見つけたその時だった、またあの声が聞こえた。


『姫が危ない!!早く戻って!!』


「え?」


『早く!!早く戻って!!』


「みんな!!もしかしたら・・・梨華ちゃんが危ないかもしれない・・・」

私の言葉に薬草探しに飽きて座り込んでいたよっすぃと愛ちゃんが立ち上がる。

「姫!!」
「梨華ちゃん!!」

二人は、すぐに茶屋の方向に駆け出していった。

「あ?キツネさん、ありがとう!!」

私はお礼を言って二人の後を追った。
177 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:14
「姫!!」
「梨華ちゃん!!」

二人が戻ったときには、保田さんも矢口さんもボロボロだった。
梨華ちゃんは、矢口さんたちが作り出した魔法陣に守られてて、
アルタイルは手出しできないでいたから無事だったけど。

「よっすぃ!!」

梨華ちゃんがよっすぃに抱きつく。

「姫・・・」

それを見て、愛ちゃんはちょっとさびしそうな顔をして、剣を抜いた。

「姫に手出しはさせん!!」
「ははっ。今度はナイトが二人だね?へぇ〜。面白そう♪」

よっすぃも梨華ちゃんを自分の後ろにやって、剣を抜いて身構えた。

「真水龍舞!!」
「烈火真炎!!」

二人はいっせいに攻撃を放った。

「わぉ!!バ〜リアっと」

二人の攻撃をアルタイルは簡単にふせいでしまった。
178 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:15
「すっげぇ攻撃。二人ともすごいね。じゃあ、お返し!
 こっちもすっごいの一発送っちゃうよん♪ハリケーンクラッシュ!!」

よっすぃと愛ちゃんの剣に電流が走った。

「うわぁぁぁぁ!!」

攻撃をまともにくらったよっすぃは、その場に倒れこんだ。

「よっすぃ!!」

梨華ちゃんがよっすぃに駆け寄る。
愛ちゃんは、攻撃をよけ、身構える。

「残念でした。ハリーケーンクラッシュはよけられないよん」

身構えた瞬間愛ちゃんの上に、落雷が落ちた。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「愛ちゃん!!」

アルタイルが倒れた愛ちゃんに近づく。

「よく見ればこの子、有名人だよね?
 えっと・・・田舎者の次期国王だったね?」


田舎者のっていうのは・・・いずれわかること。


アルタイルは愛ちゃんを見下して哀れんだように笑うと、梨華ちゃんをにらんだ。

「さぁ?お姫様?ようやく、十字架の魔法陣から抜け出してくれたね?」

よっすぃのもとに行くために、梨華ちゃんは矢口さんと保田さんが作り出した魔法陣の中から出てしまったんだ。

「じゃあ、一緒に行こうぜ?」

アルタイルが梨華ちゃんに近づく。
179 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:18
「なに!?」

そのアルタイルの足を愛ちゃんがつかんだ。


「姫に・・・手出しはさせん!!真水・・・龍舞!!」


「なに!!うわぁぁぁぁぁ!!」

渾身の力で愛ちゃんが放った攻撃は、今度こそアルタイルを捉えた。
水龍に飲まれたアルタイル。でも、すぐに水龍を中から打ち破った。

「くっそ!!こいつ、許さない!!今度こそ殺してやる!!」

愛ちゃんの攻撃にアルタイルにも余裕がなくなったみたいで、
少し息を荒くして、声を荒げて愛ちゃんを見下した。

「ハリケーンクラッシュ!!」

アルタイルは愛ちゃんの額に手をかざすと攻撃を放った。


「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


アルタイルの手から愛ちゃんめがけて落雷が走った。


「愛ちゃ〜ん!!やだぁぁぁぁ!!」


愛ちゃんは攻撃を直撃し、ぐったりとアルタイルの足元に倒れこんだ。
180 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:22
「しぶといなぁ!!」


「姫には・・・ふれさせ・・・ない・・・」


攻撃を直撃して、立ち上がる気力さえ残されていない・・・
それでも、愛ちゃんはアルタイルの足を離そうとはしなかった。
意地でも梨華ちゃんに近づかせないってことで、アルタイルの足を握り締めていたんだ。


愛ちゃんにとって、守るっていうことはそういうことなんだ。


「真水・・・龍舞!!」


今度は、力が衰えてるせいで、愛ちゃんの技は威力がなかった。
それでも、愛ちゃんは何度も技を放った。

「姫・・・」

アルタイルは水龍を何度も倒し、愛ちゃんが力を使い果たしたところで、額に手をかざした。


「終わり?」

愛ちゃんの意識が無くなったのを確かめてアルタイルは嘲るように笑うと手をかざした。

「けな気だね?意識がなくても僕の足を離そうとしないんだもんね?
 そういうの、うざいって言うんだよ?死ねぇぇぇぇ!!」
181 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:23


「させへんでぇぇぇぇ!!」


その言葉に、あたり一面が光に包まれて・・・
光が解けた時にはアルタイルは傷だらけになっていた。


「あんたが、来るなんて反則だよ・・・」


アルタイルは攻撃をした人物を見るなり姿を消した。

182 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:24
「愛ちゃん!!」

中澤さんだった。
中澤さんは愛ちゃんのピンチをさっして、魔法で瞬間移動してきたんだ。

もはや、意識のない愛ちゃん。中澤さんはしっかりと愛ちゃんを抱きしめた。

「愛ちゃん!!」

梨華ちゃんも愛ちゃんのもとに駆け寄った。

「あかん・・・やばい・・・」

中澤さんの顔が曇る。
中澤さんの腕の中の愛ちゃんは顔面蒼白で呼吸が弱かった。

「やだぁぁぁ!!愛ちゃん死なないで!!」
「アホ!!誰が死なせるか!!」

中澤さんは梨華ちゃんの言葉をすぐに退けた。
でも、愛ちゃんの容態はかなり危険なかんじ・・・
183 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:26
「梨華ちゃん!!」

かな〜り、間が悪いっていうか、全部終わっちゃったんだけど、
今さらながら遅れて登場の私・・・弁明しておくと、よっすぃと愛ちゃんの足が速すぎただけで・・・
一般人だったら、多分私くらいの時間に到着なんです。

「柴ちゃん!!」

梨華ちゃんが私に泣きついてくる。

「みんながぁぁぁ・・・」

目の前の光景があまりにも悲惨すぎて、目をそらした。

「柴田さん!!薬草です!!」
「え?あ!!キツネさん!!」

私の足元にさっきのキツネさんがいた。
私は、キツネさんから薬草を受け取ると、
キツネさんの指示で薬草を薬に変えて、みんなに飲ませた。

薬の効果は絶大で、みんなの身体の傷はみるみるうちにふさがって、
1分もたたないうちに、みんな元気になっちゃった。


一人を除いて・・・


184 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:31

「なんで?なんで効かないの!!」
「この子は・・・自分で自分に呪いをかけてしもうたんや・・・」


愛ちゃんにだけは、薬は効かなかった。


「何よそれ・・・」
「薬も魔法も効かない身体にしてしもうたんや・・・」
「なんでよ!!」

中澤さんに詰め寄る梨華ちゃんをよっすぃがとめた。

「圭ちゃん、診察して?」

よっすぃの言葉に、保田さんが中澤さんから愛ちゃんを預かった。
保田さんは、愛ちゃんの体中の傷を治療したんだけど・・・


「やばい・・・このままじゃ多分・・・」


「多分なんやねん!!多分なんやねん!!
 愛ちゃんにもしものことがあったら、うちはあんたを殺すで!!」

激情する中澤さんをよっすぃが抑えた。うつむいた顔をあげた保田さんは少し震えていた。
保田さんの顔は険しくて・・・多分の先は聞いちゃいけない単語なんだって伝わる。
よっすぃの腕の中で、中澤さんは脱力した。

「外傷は手当てでなんとかなる。でも、力を使い過ぎてるから・・・
 高橋自身の自然治癒力、生命力が低下してるの!!」


その言葉に、梨華ちゃんは手で顔を覆った。
愛ちゃんは梨華ちゃんを助けようとして、何度も技を放ったんだ。
自分を助けようと、必死になって戦った愛ちゃん・・・
梨華ちゃんはその場に力なく座り込んだ。


「大丈夫!あいつは強いから!」


よっすぃが梨華ちゃんを抱きしめる。

「とにかく、やれるだけのことはやってみる。あとは高橋自身の生命力にかけるしかない」

保田さんの言葉から、希望を見つけることは難しかった。

185 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:33
その日から、三日三晩、愛ちゃんはうなされ続けた。


時々愛ちゃんは、わめき、泣き叫び、そして悲痛な表情を浮かべた。


そのたびに、中澤さんが愛ちゃんを抱きしめる。


16歳の少女は、悪夢の中をさまよっているんだ。


私たちは愛ちゃんのことを交代で看病したけど、
中澤さんと梨華ちゃんだけは、ずっと愛ちゃんのそばにいた。



「父上!!母上!!姉上!!れいな!!いやだぁぁぁぁ!!!」



愛ちゃんは何度も繰り返し同じ夢を見ているようで、
その言葉ばかりを口にした。
186 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:37
「この子は・・・この闇の中をもう何年もさまよい続けてるんや・・・」
「え?」


中澤さんが三日目の晩におもむろに口を開いた。


「まだ、16歳やのにな・・・」

愛ちゃんの手を握って、中澤さんはうつむいた。
握り締めた愛ちゃんの手の甲が濡れた。
気丈な中澤さんの涙は、愛ちゃんへの思いの強さを物語ってるみたいで、
私たちは何も言えず、ただ、愛ちゃんの回復だけを祈った。

「石川?やったかな?」
「はい」

「愛ちゃんはな、あんたが来てくれんのず〜っと待っとったんやで?」
「え?」

「いつか、もう一つの世界から姫が戻ってきて、この国を再び平和にしてくれる。
 そのとき、ようやく自分は真っ暗な孤独な闇から解放されるんやってな?」


その言葉に、梨華ちゃんはうつむいた。


愛ちゃんの今までの言葉。
その言葉に対して、一度だって向き合ってこれていなかった自分・・・


梨華ちゃんのことを精一杯認めようと、
守ろうと努めてくれた愛ちゃんに対して、
何もしてこなかった自分・・・


そんな自分に腹が立って、こぶしを握り締めた。

187 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:38
「お願いや。この子をこの闇の中から救ったってな?」
「・・・」

「せやけど・・・愛ちゃん?ええ仲間にめぐり会えたんやな?
 あんたが待っとった人は、ほんまに姫やったんやな?」
「え?」

「この子が、笑った顔、10年ぶりくらいに見たわ。ええ顔やわ」


わめき、泣き叫び、悲痛な顔を見せながらも、愛ちゃんは時々笑顔も見せた。


どんな夢を見ているのかはわからない。



でもそこには、きっと梨華ちゃんがいるんだよね?


188 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:46
    真っ暗な闇を照らすのは誰?
    真っ暗な孤独から救い出してくれるのは誰?


    真っ暗な真っ暗な・・・私は待っています。
    ずっとずっと待っています。


    真っ暗な闇は・・・でも私には希望の光が見えたんです。
    姫・・・あなたと出会ってようやく、私には光が見えたんです。


    だから・・・私はあなたを守ります。
    あなたを守りぬける力を手に入れられたら・・・


    きっとこの国も守れるから。
    姫・・・真っ暗な闇から私を連れ出してくれたのはあなたです。


    私はあなたを信じます。
    ずっとずっと信じています。

189 名前:死闘 投稿日:2005/03/19(土) 03:47
「あのさ・・・」

よっすぃが口を開いた。

「教えてくんないかな・・・」

中澤さんがチラッとよっすぃを見た。

「そいつの過去・・・」
「聞いてどうするんや?」

「・・・」
「聞くって事は、責任を預かることやで?
 一緒に苦しみ共有することやで?」
「うん。でも・・・聞かないと進めない」


よっすぃの言葉に中澤さんはうなずいて、愛ちゃんの手を握り締めた。


「言ったら怒るやろな?話してもええか?」


昏睡状態の愛ちゃんに中澤さんは少しだけ辛そうな顔をして、私たちを眺め渡した。

190 名前:k・y 投稿日:2005/03/19(土) 03:52
愛ちゃん・・・
今日はここまでです!!

川σ_σ|| <補足説明です。

ハリケーンクラッシュ:アルタイルの攻撃。雨雲を操り、落雷を落とす。
           通常の落雷の30倍の威力があるうえに、逃れることができない。           

キツネさんの薬:クルド族の薬草を本を見ながらキツネさんが煎じて作ってくれた薬。
        かなりの効果があるので、どんな怪我でも完全治癒!!


191 名前:レス 投稿日:2005/03/19(土) 04:00
>>173 :名無飼育さん
  安倍さんと矢口さんの悲劇、堪能していただけたみたいで?
  よかったです!!安倍さんはいつでも、矢口さんのそばにいます!!
  今後の矢口さんにも注目でお願いします♪
  面白いと言っていただけてうれしいです♪♪
  これからも、頑張るのでよろしくお願いします!!


>>174 :通りすがりの者 さん
  気に入っていただけて嬉しいです!!一気に読んでいただけるなんて♪
  ファンタジーどころか執筆自体初なので、不安ながらも更新しています・・・
  面白いと言っていただけると本当に励みになります♪
  かなり長くなが〜くなってしまうと思いますが・・・
  最後までお付き合いお願いします!!


レス本当にありがとうございます!!
今回は、愛ちゃんが・・・愛ちゃんが〜!!!ってかんじだったのですが、
楽しんでいただけたでしょうか?けな気な愛ちゃん大好きなので♪
伝わるといいな・・・なんて思いつつ・・・
次回もよろしくお願いします!!
192 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/21(月) 21:10
更新お疲れさまです。
一体高橋さんの過去に何が!? 呪い?気になる名前も出てきたので楽しみです。 次回更新待ってます。
193 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/25(金) 04:52
更新お疲れさまです。
次回楽しみ待ってます。
194 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:27
 愛ちゃんが生まれたのは、センタータウンからずっと離れたノースアイランドっていう孤島。

「殿!もうすぐ生まれます!!」

雪が降る寒い夜に愛ちゃんは生まれた。

「父上、赤ちゃんまだ生まれんの?」
「ん?もうすぐ生まれるよ。今、ばあやが呼びにきたやろ?
 もうすぐ生まれるよ。亜弥は、女の子がええか?それとも男の子がええか?」
「ぜ〜ったいに女の子!!」
「どうして?」
「そうしたら、亜弥がいろんなこと教えてあげるんだもん。赤ちゃんはかっわい〜い女の子がええな」

愛ちゃんが生まれたのは、高橋家ではなく、松浦家。
松浦家はノースアイランドの領主の家だった。
ノースアイランドは田舎町だから、人はあんまり住んでなかったんだけど、
その町を松浦家が守っていたんだ。

「そうか。でもこれ以上、気の強い女の子が生まれてしもうたら、父はかなわんなぁ」
「きゃはははっ。二人で父上負かしてしまうんや!」
「殿!!生まれました!!」

その言葉に、お父さんと亜弥ちゃんは駆け出していった。
愛ちゃんは、松浦家に期待されて生を受けた。
みんなが待ち望んだ誕生だったんだ。

195 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:29
でも・・・


「霊玉・・・」


『信』の霊玉を握り締めて生まれた赤ちゃんに、喜びは消えた。
『信』の霊玉を持ちし者は、国を治めるもの・・・
つまり、愛ちゃんは次期国王。

この家の子ではなくなってしまうから。
それ以上にこの子のゆくすえを案じると、お父さんは不憫でしかたがなかった。

「赤ちゃん女の子だね!!」

霊玉を見つめて奥歯をかみ締めたお父さんに、亜弥ちゃんは笑顔で誕生を祝った。

「うん。そうだね・・・」
「父上はうれしくないの?」

「どうして?」
「父上辛そう・・・」

亜弥ちゃんの言葉に、お父さんは天井を仰いだ。
神様を少しだけうらんで、それから全てを受け入れる覚悟を決めたんだ。


「うれしいさ!こんなにかわいい子が生まれてくれたんだぞ?
 うれしいに決まってるやろ?この子に名前をつけようね。
 この子は・・・愛だ」


「愛?」


「うん。愛・・・亜弥はこの子が生まれてきてくれて本当にうれしいやろ?
 父も同じや。この子を心から愛しく思うんや。
 だから、愛。この先何があっても、この子を愛するって意味やで?
 みんなに愛されるように。だから、愛」


「いい名前。愛、お姉ちゃんがこれからいっぱいいっぱい愛してあげるね」

196 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:30
愛ちゃんは、ごく普通の家庭に生まれたんだ。
もしも、霊玉なんて持たずに生まれていれば、
きっと家族仲良く平和に暮らせたんだ。


でも・・・愛ちゃんにはそれは許されなかった。
『信』の霊玉を持った者は国王になるために、
いずれ王家に入ることになる。
家族と別れて暮らす日が来る。


それでも、愛ちゃんのことは必ず見守るよ・・・
どこにいても、娘として愛し続けるよ。


愛という名は、そんな思いからつけられた名前。

197 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:32
愛ちゃんが生まれてまもなく、『信』の霊玉の噂が広まった。
王家の人が松浦家を訪れて、
愛ちゃんの今後の処遇についての話し合いが何度もなされた。


愛ちゃんは、20歳で国王に就任することが決まり、
10歳の誕生日から王家に入ることが決められた。
それまでは家族の下で、さまざまな教育を受けるようにってことになったんだ。


そして、教育係になったのが中澤さんだった。
中澤さんはある日突然、松浦家の門を叩き、教育係をかってでたんだ。
198 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:34
いろんな事情を持って生まれたけれど、
それでも愛ちゃんは10歳までは普通に家族と仲良く暮らしていたんだ。
お父さんとお母さん、お姉ちゃんと、新しく生まれた妹のれいなちゃん。

「姉上!ボールがそっちにいってもうた!とって!」
「愛!訛ってるよ!言葉はなおさなあかんやろ!」
「・・・」

でも、いずれ王家に入る者として、愛ちゃんはみんなとはやっぱり違った教育を受けた。

「なんでや・・・なんで私はこの国の言葉をつかったらいかんの?
 姉上も、れいなもこの国の言葉をつかっとるやろ!」
「それは・・・愛はいずれ王家に入るからや」

「うち、王家なんかに入りたくない!姉上たちと一緒にいたい!!」
「わがまま言ったらあかん!!」

「・・・なんで私だけ・・・」
「わかった!今日から亜弥も、都会の言葉でしゃべる!愛と一緒!!」

「え・・・」
「れいなもね!!」
「はい!」

「姉上・・・」
「愛は王家に入っても、松浦家の次女だよ?
 ず〜っと私の妹で、れいなのお姉ちゃんなんだからね?」
「はい!!」


たとえ離れ離れになっても、いつまでも家族だよ・・・
愛ちゃんは大切に大切に、愛されて育ったんだ。


10歳までは・・・

199 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:36
「ほう?そちが、国王とな?」

愛ちゃんは10歳の時に王家に入った。
10歳の愛ちゃんが一番初めに顔合わせをしたのは、
現在の国王。太った陰気くさいおじさん。


「ノースアイランドからきました!松浦愛です!」


「北の田舎の臭いがするなぁ。田舎臭くてかなわん。
 松浦?ああ。あの田舎領主のことだな?
 田舎者が国を支配するとはな。世も末じゃ」

愛ちゃんがいなければ、ずっと国王でいられたのに、
愛ちゃんの存在で国王の座を譲らなくてはならない国王は、
愛ちゃんに冷たくあたった。

「・・・」
「ん?口が利けぬのか?」

初めての場所で冷たくされた愛ちゃんは、恐怖が先立って言葉がでなかった。

「ほう。北国で口まで凍ってしまったのかな?」


「・・・」


「そんなことでは、国王は務まらんぞ?
 霊玉を持って生まれたとて、
 国王にふさわしいかどうかはわからんものだな」


「・・・」


「松浦の姓は今日限り名乗るな!
 王家に田舎者の血など入れとうない!ここは高橋家だ!!」


「・・・」


「下がれ!!」


黙りこくった愛ちゃんに王は、扇子を投げつけた。

200 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:37
国王のいじめは、その後も続いた。

「もういやや!!」
「愛ちゃん!!」

いじめに耐えられなくなって、愛ちゃんは自分の部屋で何度もかんしゃくを起こした。

「もういやや!!こんなところいやや!!家に帰りたい!!」
「あかんやろ!!この国守らな!!」

「私が守らんでも、誰かが守る!!」
「アホ!!」

かんしゃくを起こす愛ちゃんを中澤さんは何度も何度も叱ったんだって。

「なんで・・・なんで中澤さんは、怒ってばっかりなんや・・・
 私には・・・私には誰もおらんのに・・・」

「・・・愛?愛ちゃん?よ〜く聞きや?
 あの国王よりも、いじわるなことはこの世の中には死ぬほどある。
 うちよりも怖い人かて死ぬほどいてるんや。それに負けたらあかん。
 あんたは強くならなあかん!!」

「・・・」

「それにな?あんたは一人やないで?
 ほら、この霊玉があるやろ?この霊玉はあと7つある。
 あんたの仲間があと7人いてるんやで?
 それから、いつかこの霊玉を持った剣士が使える姫が戻ってくるから。
 愛ちゃんは一人やない」

霊玉の重み、愛ちゃんはだから誰よりも強く感じているんだ。
201 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:38
愛ちゃんへの悲劇はそれだけでは終わらなかった。


愛ちゃんが13歳の時。
今から3年前に、この国に再び第六天魔王が現れた。

魔王は星たちを携えて、魔物を操って国を滅ぼそうともくろんだ。
第六天魔王に一番に支配されたのは、ノースアイランドだった。


ノースアイランドに魔王が降り立ち、魔物が暴れだしたという一報を受け国中が慌てた。

「そちに、命ずる」

国王に呼び出された愛ちゃんは仕事を任された。

「ノースアイランドの魔物を成敗してこい」
「え・・・」

「自分の故郷を救ってこいと言ってるのじゃ!」
「はい!」

それは・・・国王の謀略。


愛ちゃんの心に深い傷を負わせた出来事だった・・・

202 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:39



何艘もの船を携えて、愛ちゃんの指揮のもとノースアイランドを目指した。



愛ちゃんの胸の中は、家族のことでいっぱいだった。



一刻も早く魔物から家族を救い出し、家族との再会を果たす。



その思いでいっぱいだったんだ。
203 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:40
「姉上!魔物が!!」

ノースアイランドは、壊滅寸前だった。
それでも、松浦家を中心にナイトたちが必死に魔物と戦った。

「もうすぐ愛が助けに来てくれるって一報が入ったの!
 だから、なんとしてでも食い止めよう!!」
「でも!!このままじゃ、間に合わんよ!!」

「れいな!!愛を信じて!!」
「・・・」

「愛は絶対に助けに来る!だから信じて戦うの!!」
「はい!!」

亜弥ちゃんもれいなちゃんも、愛ちゃんの助けを信じて必死の攻防を重ねた。

204 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:42
「ダメです!!魔物が多すぎて島に入れません!!」

船がノースアイランドに近づいたものの、
魔物が海までも占拠してて近づくことができなかった。

「海の魔物を倒して島に入りましょう!!」
「しかし!!島に入ったところで我々の身が危険です!!」
「せめて、島の人を助けましょう!!
 島民は全て海岸で船を待つように指示されているんです!!」

島民の安全を確保しようとする愛ちゃんに、家来たちは逆らった。
自分たちの身を守るため、そして、初めから指示されていた国王の命令を遂行するために。

「このままじゃ俺たちもやられてしまう。
 それに、魔物は人に姿を変えるという。
 島民には悪いが、この島はもうダメだ。
 島ごと焼き払ってしまえば他に被害は及ばない」

「な!何を言ってるんですか!!見殺しにする気ですか!!」

「やむをえない犠牲だ」

「待ってください!!」

愛ちゃんの目の前で、家来たちは次々に島に向けて火炎爆弾を噴射し始めた。

「やめて!!やめてください!!」
「うるさい!黙ってろ!!」

家来の一人に急所をつかれた愛ちゃんは、そのまま気絶してしまった。
205 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:44
「姉上!!船です!!」
「愛がきてくれた!!みんなを岸に誘導して!!」

船を発見した亜弥ちゃんたちは、神にすがる思いで岸に走った。
でも・・・


『ズドーン!!』


先に岸に着いた人たちが、火炎爆弾の餌食になった。

「え・・・」

目の前の光景に愕然とする亜弥ちゃん。

「なんで・・・」
「姉上・・・」

「れいな!!」

れいなちゃんは、先に岸に着いたから、爆弾を受けた。

「姉上・・・」
「れいな!!しゃべんないで!!今、お姉ちゃんが傷口・・・」


れいなちゃんの傷はどうにかできるような状態じゃなかった。
爆弾をあびた背中は、焼け爛れ、皮膚がはがれ落ち、骨が見えていた。


「愛姉ちゃんの船やなかったみたいね?」
「・・・」


船に刻まれた王家の紋章。


それでも、れいなちゃんも亜弥ちゃんも疑いたくなかった。

206 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:45
「魔物が化けたんやね・・・」

「・・・愛」


「愛姉ちゃん・・・うちら、見捨てたんやろか・・・」


「・・・」



「愛姉ちゃん・・・助けに来るよね・・・助けに・・・」



れいなちゃんの身体が急に重くなった。

「れいな?」
「・・・」


「れいな!!」
「・・・」



「れいなぁぁぁぁぁ!!!!」



亜弥ちゃんの腕の中でれいなちゃんは息をひきとった・・・

207 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:46
「う、うそや・・・」


気絶から覚めた愛ちゃんが目にしたのは・・・炎に包まれたノースアイランド。


「うそや!!うわぁぁぁぁ!!!真水龍舞!!」


愛ちゃんは必死に水龍を炎の中に向かわせた。
真っ赤に燃え盛る炎のなかを龍は空しく舞った。


「父上!!母上!!姉上!!れいなぁ!!うわぁぁぁぁ!!!」


「愛様やめてください!攻撃の邪魔です!!」
「今すぐ攻撃をやめろ!!」
「それは無理です」
「やめんと、この船もろとも水龍につぶさせるぞ!!」
「小娘が!!」


はむかった愛ちゃんに家来たちは刃を向けた。



愛ちゃんは・・・船の上で仲間に抑えられ、
自分の故郷を、家族や仲間が燃えていくのをただ見つめることしかできなかった・・・



「やめろぉぉ!!うわぁぁぁぁぁ!!!!」



わめき泣き叫び、悲しみが全てを支配したときに、愛ちゃんはまた眠りについた。
208 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:48
「気がついたんか?」

夢から覚めたような心地で、
そんな地獄はまるで嘘だったかのように、
愛ちゃんは中澤さんのいる自分の部屋で目を覚ました。


「ずいぶん寝てはったんやで?」
「・・・島は・・・」
「・・・」


黙って首をふる中澤さんに、全てが夢じゃなかったって知って、愛ちゃんは震えた。


「愛ちゃん!」


震えた愛ちゃんを中澤さんは強く抱きしめた。


「私のせいや・・・」
「あんたのせいやない!!」

「私が・・・私が・・・」
「あんたのせいやない!!



「うわぁぁぁぁぁ!!!」



錯乱する愛ちゃんを中澤さんは涙を流しながら包み込んだ。



「わあぁぁ!!わぁぁぁぁ!!」



なんで・・・なんで・・・
13歳なのに、なんでこんなに重たいものしょいこませなきゃなんないんだよ。


あまりにも理不尽で、あまりにもかわいそうで、あまりにも切なくて・・・
泣き叫ぶ愛ちゃんに中澤さんはかける言葉が見つからなかった。

209 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:51
「・・・デスト」
「愛!!」


そして、愛ちゃんは禁断の呪いに触れてしまったんだ。

中澤さんの魔術師の十字架を手に、呪いの呪文を口にした。
愛ちゃんの身体を闇が包み込む。

「愛!!愛!!」

必死に闇から愛ちゃんを取り戻そうと中澤さんはその中に入ろうとしたけど、
闇の力に何度も跳ね飛ばされた。


「愛!!愛!!キルド!!」


苦肉の策で放った中澤さんの魔法で、愛ちゃんは闇にのまれずにすんだ。
でも、愛ちゃんの身体には呪いが今でも残ってるんだ。

闇の呪い。薬も回復魔法も効かない身体になってしまう呪い。


それは、愛ちゃんが自分に負わせた償いなんだ。


家族を仲間を守れなかった自分への戒め・・・

210 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:52
「アホ!!アホ!!!」
「ぅ・・・ぅぅ・・・死なせてください・・・」

「・・・」


声を殺して泣き続ける愛ちゃんに中澤さんは言葉をためらった。
この子にとって、もしかしたら今死んだほうが幸せなのかもしれない・・・そんな思いがよぎったんだ。


「みんないなくなってしまった。もう・・・もう生きてたってしかたない!!」
「・・・かんにんな・・・」

「・・・」
「かんにんな・・・あんたに、愛ちゃんにこんなに辛い思いさせて・・・神様がおったらぶっ殺したいくらいやな・・・うちはなんもできん。愛ちゃんが辛いのどうにもできん・・・かんにんな・・・ほんまにかんにんな・・・」

「・・・ぅぅ・・・」


「でも、約束する!愛ちゃんはうちが守る。
 これ以上愛ちゃんを一人にはさせん。
 うちがずっとそばにいる!!殿や亜弥ちゃんたちの分まで・・・
 あんたを守るから・・・せやから・・・せやから、頑張って・・・」
「・・・中澤さん」


さんざん泣いて。
涙が枯れ果てたころ、愛ちゃんは再び決意したんだ。


この国を守る。
強くなる。
自分の大切なものを必ず守り抜くっていう。

211 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:53
中澤さんの話が終わったとき、私たちは言葉を失っていた。


16歳の女の子が持つには重過ぎる過去。そして運命。


今までの愛ちゃんの必死さが理解できた分、心の中が重くなった。


「ずっと、闇の中におるんや・・・」


中澤さんの最後の言葉は、みんなの胸に突き刺さった。
212 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:55


「・・・うっ」


5日目の朝、愛ちゃんに反応があった。

「愛ちゃん!!」

明け方で、看病をしていた梨華ちゃんもよっすぃも眠っていたけど、
中澤さんだけは起きてて、すぐに異変に気がついた。

「よっすぃ!圭ちゃんを呼んで来て!!」

中澤さんの言葉によっすぃが飛び起きて保田さんを呼びにいった。

213 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:56


「な・・・かざ・・・わさん・・・」


保田さんが来る前に、愛ちゃんは意識を取り戻した。

「愛ちゃん!!」

愛ちゃんを抱きしめる中澤さん。


「あ!!姫は!!姫は無事ですか??」


愛ちゃんの意識は5日前から停止していたからね。

「大丈夫だよ!!愛ちゃんが守ってくれたんじゃん!!」

梨華ちゃんが愛ちゃんの手を握った。


「よかった・・・」


そして、戦士は再び眠りについた。

「愛ちゃん!!」

中澤さんの腕の中で眠りについた愛ちゃんの表情は穏やかだった。
梨華ちゃんの、姫の安否が確認できたから、今度は穏やかに休めたんだね?


「大丈夫みたい。生命力が戻った。怪我の方も時間が経てば何とかなりそうだしね」


保田さんの診察に、私たちはホッとした。



5日ぶりにホッとして、ようやく生きた心地で空気を吸った。
空気の味を覚えたのは始めてだったと思う。
214 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:58
その日の夜。愛ちゃんは眠りから覚めた。
起きた時の第一声はやっぱり、『姫は?』で、みんなその言葉に笑った。

「中澤さん?どうして?」
「うちは、愛ちゃんのピンチの時には、必ず駆けつけるで?」

「ごめんなさい!心配かけて・・・」
「ほんまや!!まったく、悪い子やなぁ!!」

「本当にごめんなさい!!」

愛ちゃんは横になりながらも恐縮していて、私たちはそんな二人を見守った。

「こんな心配、二度とごめんやで?」
「はい!」

「うん。ええ返事や」
「はい!」

「ええ子や。愛ちゃんにもしものことがあったら、うちはここにいるやつら、みんな殺すところやったわ」

その言葉は、冗談には聞こえなくて、私たちの笑顔がひきつった。

「怪我が治るまでしばらくかかるそうや。せやから、愛ちゃんはひとまず城に戻ろうな?」
「そんな!!私は、姫を守らなくては!!」

「愛ちゃん?愛ちゃんは、まずは自分の身体を治して?じゃないと、心配で守ってもらえないよ」

梨華ちゃんが愛ちゃんの隣に座った。

「でも・・・」
「愛ちゃんの大切なこの国を守るために、少しでも旅を進めないといけないでしょ?
 だから、五人で先に出発するってみんなで相談して決めたの?ダメ?」
「いえ・・・でも!!」
215 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 12:59
「あんたが戻るまで、うちが梨華ちゃんを守るから」
「吉澤さん・・・」

「あんたの分まで、必ず守るから」
「約束できますか?」

「うちの約束でも信じる?」
「姫を必ず守ってくださいね!」

「うん」


ナイトとナイトの近い。それはこぶしを交わすこと。
愛ちゃんのこぶしとよっすぃのこぶしがぶつかった。


その瞬間に、言葉以上の思いが託されたんだ。

216 名前: 投稿日:2005/03/28(月) 13:06
ここまでです!愛ちゃんの切ない過去でした。

川σ_σ|| <補足説明です。

デスト:クロスペンダントが持つ暗黒魔法。魔術師が使える唯一の黒魔術。
    闇によって全てを無にするという魔法。もしも愛ちゃんが闇に飲まれていたら、
    愛ちゃんはこの世から消えていたんだ。この世から消えなかった代わりに、
    闇の呪いが愛ちゃんの身体に宿ってしまったんだ・・・

キルド:魔術師の中でも選ばれた者のみが使える、究極魔法。
    この魔法のおかげで、愛ちゃんは闇にのまれずにすんだ。
    中澤さんがこの魔法を使えるってことは、そうとうな魔術師ってこと。


松浦亜弥・れいな:亜弥ちゃんの姉妹。悲劇の三姉妹・・・
         また登場するかもしれないので?
         覚えておいてください!!

217 名前:レス 投稿日:2005/03/28(月) 13:15
>>192 :通りすがりの者 さん
   愛ちゃんの過去・・・切なく悲しい過去だったんです!!
   亜弥ちゃん、れいなちゃんとの別れ・・・愛ちゃんの思い、伝わりましたでしょうか?
   愛ちゃんは、悲しみを乗り越えて剣士として大きく成長してくれると思います!?
   亜弥ちゃん、れいなちゃん・・・覚えておいてくださいね?!
   今回はシリアスな感じでしたが、次回は?!これからもよろしくお願いします♪

>>193 :名無飼育さん
   愛ちゃんの物語、楽しんで?!いただけたでしょうか?
   松浦家、高橋家・・・愛ちゃんの苦悩はまだ序章です?!
   これからも、暖かく、中澤さんとともに愛ちゃんを見守ってください!!
   次回は、またまた新たな地へと向かいます!
   今後のストーリーも楽しんでいただけるように頑張るので、よろしくお願いします!!


レス本当にありがとうございます!!今回は愛ちゃんストーリーでした。
次回は愛ちゃんとはいったん別れて、出発します。
今後も剣士たちの旅、楽しんでいただけるように頑張りまっす!!
では、次回もよろしくお願いします!!
218 名前:名無し飼育 投稿日:2005/03/29(火) 15:01
更新待ってました。
愛ちゃんの過去はそんなことがあったんですね。
毎回続きを楽しみにしております。
次回更新もお待ちしておりますー!
219 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/29(火) 15:06
更新お疲れさまです。 少し目にごみが・・(;_;) そんな事があったんですか・・なんと悲しい・・。はい、二人の事は絶対に忘れる事は無いと思います。次回更新待ってます。
220 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:33
翌朝、私たちは愛ちゃんと中澤さんを残して峠の茶屋を後にした。

「ところでさ?そのキツネ、いつまで一緒にいる気なの?」

そう。あの晩出会ったキツネさんはあれから、ずっと私と一緒にいるんだよね。

「いつまでいるの?だって?」
「私の役目が果たせるまではずっと一緒にいますよ!」

「ずっと、一緒にいるって言ってるよ?」
「柴田、本当に、そのキツネの言葉がわかるの?」

保田さんは、キツネとしゃべる私を変人扱いしてくる。

「なんで、みんなには、聞こえないんでしょう・・・」
「だからそれは、私が柴田さんのパートナーだからですってば!!」
「ははは・・・うれしいよ」

「でもさ、でもさ、なんだか仲間が増えたみたいでうれしいよね!!コンコンかわいいし♪」

「「「「コンコン??」」」」

梨華ちゃんが名づけたキツネさんのあだ名。変なあだ名・・・

「うん。ほら、こぎつねコンコン♪って歌あったじゃない?」
「あ〜。そういえば。キツネさん?あなたのあだ名はコンコンだって」
「コンコン?う〜ん・・・でも、まぁいいですよ!!」

って、気に入ってないみたい?というわけで、
キツネのコンコン・・・コンちゃんが仲間になりました。

「その、コンコンっての役に立つわけ?魔物とかじゃないよね?」

保田さんはコンちゃんを疑ってるみたい。

「でも、薬草のこと教えてくれたのコンちゃんですよ?」
「柴ちゃん!!コンちゃんじゃなくって、コンコンだってば!!」

「だって、コンコンってのコンちゃん気に入ってないみたいなんだもん!!
 とにかく、コンちゃんは多分きっと、もしかしたら役に立つからさ!ね?」
「絶対に役に立ちます!!」

「ほら!役に立つって言ってるよ?」
「いや。聞こえないから」

よっすぃのつっこみに、私は口を尖らせた。
なんで、みんなには聞こえないんだよ・・・

221 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:35
翌日、私たちはサウスタウンについた。

サウスタウンは、イーストタウンとは全然雰囲気が違った。
穏やかで明るいサウスタウン。
そこは、当たり前のように平和な世界だった。


「ここが、サウスタウンか・・・」


よっすぃも矢口さんも浮かない顔。
だって、峠を一つ越えたイーストタウンは地獄のような世界なのに、
サウスタウンにはそんな影は全く見えない。

自分たちのいた場所と比較すると、いやでもうらやむ心が生まれてくる。

「いい町だね」

梨華ちゃんの言葉に二人はうなずかなかった。

「これが、普通なんだよ」

矢口さんがポツリとつぶやく。

「この町は、朱雀の巫女に守られてますから」

コンちゃんが言った。

「朱雀の巫女?」

「はい!四神にはそれぞれ巫女が仕えるんです。
 巫女は、それぞれ四方の国を守る。
 朱雀の巫女は、魔王に心を奪われていないから。
 だから、南方朱雀の巫女が司るこの国は平和なんです」

それから、コンちゃんはいろんなことを教えてくれた。
222 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:38
四神にはそれぞれ巫女が仕える。
巫女は死んだ女の子がなるんだって。
死後100年間巫女として四神に仕えて、国を守る。

でも、都合よく良い心の持ち主が巫女になるわけじゃないから、
この世を恨んで死んだ人が巫女になったら、四神の力を手に入れ、
私欲の限りに国を荒らすことがあるんだって。

青龍の巫女はどうやら、この世を恨んで死んでいった人みたい。
青龍の巫女は魔王と取り引きして、
その力を利用して今はこの国を滅ぼそうとしてるらしい。

だから青龍の巫女が司るイーストタウンは改廃が進んだ。
もともと荒れていた町だったけど、今よりもマシだったみたい。
朱雀の巫女は穏やかな心の持ち主だったらしく。
だから、サウスタウンは平和なんだって。
223 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:39
私は、コンちゃんの話をみんなにも聞かせた。

「それ、本当なの?」

保田さんがうさんくさそうな顔でコンちゃんを見る。

「本当だと思います」
「キツネって、人を騙すんだよ?」

よっすぃがコンちゃんの首をつかんで持ち上げる。

「こいつ、うちらを化かしてるんじゃないの?」

よっすぃの顔の前で、手足をバタつかせているコンちゃん。

「ちょっと!かわいそうじゃん!!」

みかねて私が救出した。

「私は信じるよ?コンコンのこと」

梨華ちゃんが私からコンちゃんを預かって優しくなでた。
コンちゃんは気持ちよさそうに梨華ちゃんの腕の中でグルグルっとのどをならす。


やっぱり、ただのキツネだよね・・・化かされてるのかな?
そう思ったけど、私も信じることにした。

224 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:40
「そなたたち何者?」

サウスタウンの関所で私たちは呼び止められた。

「え?」
「部外者を町に入れるわけにはいかん!」
「は?ちょ、ちょっと待ってよ!!」

梨華ちゃんが門番に抗議。

「私たちは、この先に行かなきゃいけないの!」
「そなたたち、どこからやってきた?」
「イーストタウンです」

その言葉に、門番は梨華ちゃんを取り押さえた。

「柴田さん!」
「え?」

「逃げましょう!!」
「は?」

「早く!!」

私はコンちゃんに言われてその場から離れた。

「何するんだよ!!」

梨華ちゃんだけでなく、よっすぃも矢口さんも保田さんも門番に取り押さえられた。

「みんな!!」
「ダメです!!今行けば私たちまで捕まります!!」

「でも!!みんなのことほっておけないよ!!」
「私に考えがあります!だから安心してください!!」

225 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:42
「出せ〜!!出せ〜!!」

地下牢に響くよっすぃの声・・・
梨華ちゃんたちは、そのまま地下牢に閉じ込められたんだ。

「ったくなんなんだよこの町!!」
「町の治安を乱す者は徹底的に排除するってことでしょ」

矢口さんはよっすぃとは違って冷静だった。
矢口さんにとったら、虐げられることは当たり前のことだからね。

「やぐっつぁん!冷静に考えてないで、ちゃんとこの先を考えてよ!!
 このまま、この寒くて暗〜い地下牢暮らしなんて絶対に嫌だよ!!」
「助けは必ず来るよ」
「って誰が?」
「コンコンと柴ちゃん」

矢口さんはコンちゃんの心を読んでいた。
言葉は通じなくても、心の声は聞こえるんだ。

「柴ちゃん!そうだよね!!」

梨華ちゃんは、私がいなくなったことで落ち込んでたみたい。

「逃げたのかと思ったよ」
「よっすぃひどい!!柴ちゃんはそんなことしないよ!!」

「へぇ。結束固いね?」
「当たり前じゃん!!友達なんだから!!」

「友達ってそんなに信用できるものなの?」
「信用できるから友達なんだよ」

でも、よっすぃにはそういう感覚まだやっぱりわからないみたい。
よっすぃは、首をかしげながら、牢屋の隅に座った。
226 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:43
「まずは、髪を切ってください!」
「は?」

コンちゃんは私を連れて、サウスタウンを出た。
サウスタウンに入る森で私たちは身を潜めることにしたんだ。

「あとは、服をなんとかしないとな・・・」
「え?ちょっと?」

疑問を抱いているまもなく、コンちゃんは私の髪にはさみを入れた。

「ちょっと!!」
「作戦作戦♪」

肩まであった私の髪はみるみるうちにコンちゃんに切られてショートに・・・
伸ばしてたのに・・・ひどいよ。髪は女の命なのに・・・

「・・・」
「さてと!次は服装ですね!」

髪の毛をばっさり切られて落胆中の私に、
落ち込む暇をあたえさせないコンちゃん。


次は何よ・・・

227 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:45
「あ!来た来た!!」

コンちゃんの狙いは、サウスタウンに向かう馬車。

「柴田さん!行きますよ!!」
「へ?行くって何?」

「馬車に乗っているのは、諸侯か貴族♪」
「は?え?」

意味不明なんですけど?って思っていたところに、
コンちゃんに馬車の前に突き飛ばされた。

「きゃぁぁぁ!!!」

もう少しで馬車にひかれる!!って所で、運良く?馬車が止まってくれた。

「危ないではないか!!」
「へ?へ?あ・・・」

馬車の中から人が降りてきて、私を問い詰める。
私は恐怖で半泣きで答えにならない返事を返した。

「柴田さん!」

コンちゃんが私の隣に飛び出してきた。

「キツネ!!そなた、キツネに化かされたのか?」
「へ?」

「柴田さん、ハイ!って言って下さい!!」
「へ?あ、はい!!」

「それは、かわいそうに。言われてみると、見慣れない異国の服を召しているようだが?
 それもキツネのしわざかな?」
「へ?」

「柴田さん!私がこれから、言うことをリピートしてください!」
「へ?」

「いいですか!」
「へ?」

なんだか、わけがわからないんだけど、
コンちゃんの言われるままにしてみた。
228 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:47
「サウスタウンに入る途中で、キツネに化かされたんです。
 おかげで、家来たちはもぬけの殻。武器もお金も服まで全てキツネに取られました。
 サウスタウンに入ろうとしても、このありさま、門番に断られ、途方に暮れて、
 このコギツネを捕らえたんです」

「なんと。それはあわれなこと。しかしそなた?
 見かけぬがどこから来たのですか?」

「えっと・・・」

コンちゃんを見つめると、ウインクされた・・・
はいはい。リピートね?

「私は、ノースアイランドから参りました。次期国王に仕えています」
「な、なんと!!それはまことのことですか?」
「あ・・・はい・・・」

相手があんまりにも恐縮したから、ウソつくのが悪く思えちゃった。

「我々は、現国王のやり方はあまり好いてはおらぬ。
 だから、霊玉を持った、真の国王。次期国王に期待をかけているんです!」


愛ちゃん・・・期待されてるらしいよ。
その次期国王が今瀕死の状態なんて言えない言えない。絶対に言えない。

愛ちゃんはこの人にとって、希望の光なんだもんね。


「ここは一つ、あなた様のお力にならせてください」
「は、はい」

「まずは・・・服と武器と馬を差し上げましょう!」
「あ、ありがとうございます!!」

229 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:49
「似合いますね♪」

通りがかりの貴族さんに武器と馬と服をもらっちゃった私。
髪の毛もばっさり短くなったし、よっすぃたちと同じ武士の格好。
重た〜い剣までもらっちゃって。
使えないんだから邪魔だな・・・なんて思いつつ。
馬だって、乗れないんだし、これをどうしろっていうのよ。

「第一作戦完了♪柴田さん、剣を貸してください!」
「え?あ、はい」

コンちゃんは自分の短剣で、もらったばかりの剣になにやら細工を始めた。

「何してるの?」
「よっし!これで、できあがりです!」

見た目は、別に変わってないんですけど?

「はい!どうぞ!!」

受け取ってびっくり!!
さっきまですっごく重たかった剣がめちゃくちゃ軽くなってたんだ。

「なんで?すっごい!!」
「柴田さんを受け入れたみたいですね?
 剣に命を吹き込んだんです。その剣はクラウソラスです。
 この先きっと、柴田さんを助けてくれますよ!」

「え?でも、私剣とか使ったことないよ?」
「この剣は主に共鳴します。
 だから、ピンチになったら剣が導いてくれるんですよ!」

「へぇ〜。よくできた剣だね。
 ってか、コンちゃんが改造したんだっけ?
 コンちゃんすごいんだね?」
「いや。それほどでも」

照れたコンちゃんはちょっとかわいかった。

「で?これから、どうするの?」
「あ!そうだった!!では、再びサウスタウンに向かいましょう!!」

「って・・・また追い返されると思うけど・・・」
「大丈夫ですよ♪」

コンちゃんはそう言うと馬に飛び乗った。
230 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:50
そして、再び私たちはさっきの門番のところにやってきた。

「さっきの人じゃないみたい。ってか、もっと怖いかんじの人なんだけど?」

さっきの人よりも体格がよくておひげも立派な門番さんに早くも逃げ腰な私・・・

「大丈夫ですよ!あ!!さっきみたいに私の言うことをリピートしてくださいね?」
「あ、うん」

門番さんの前に着くと、門番さんはいきなりひざまずいた。

「へ?」
「これはこれは、ようこそサウスタウンにおいでくださいました」

頭を下げた門番さん。なんで?ってかんじでコンちゃんを見ると、ウインク。はいはいリピートね。

「道中で、キツネに化かされ、家来を失いました。
 旅を続けるためには、新たなる家来が必要です。
 この馬を差し上げるので、家来をいただくわけにはいきませんか?」
「は!この名馬を我が国に献上していただけるのですか?」

なるほど。このお馬さんと私の服を見て門番さんは私が偉い人だって思ったわけね。
もともと、貴族さんにもらったものだから偉い人のものであることにはまちがいないけどね。

「はい。馬がいても、家来なくして旅は続けられませんからね」
「では!領主様のところへ案内いたします!!」
「よろしくお願いいたします」

なんだか、うまくいくもんだね?
コンちゃんにピースしてみせると、得意な顔を馬の上からのぞかせた。
231 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:53
「あなたは、どこから来たの?」

領主さまって言うもんだからどんな人かと思えば、かわいらしい女の子。

「ノースアイランドから参りました。次期国王に使えています」
「へぇ〜。次期国王様の家来なんだ。偉いんですね?」

「いえ」
「名前は?」

「あ、柴田あゆみです」
「そう。私は道重さゆみ♪よろしくね!」

「はい!」

どう見ても、年下だよね?って思いつつ、でも立場は上なんだろうから頭を下げた。

「あの?」
「はい!」

「そのお隣にいるキツネさんは?」
「あ!こっちは・・・」

「そのキツネさんがあなたを騙したの?」
「い、いえ!こっちは・・・友達?みたいなかんじ?」

「はい?」
「あ・・・いや〜・・・その。なんていうか・・・」

不思議な顔の領主様にタジタジ・・・

「でも、なんだかかわいらしいキツネさんですね!」

コンちゃんがアピールってかんじで領主様のひざに飛び乗った。
なんか・・・こういうところ、ちゃっかりしてるっていうか、愛想のふりまき方しってるんだよね?
可愛いコギツネに騙されるって・・・あなどれないね。
領主様に頭をなでられて、コンちゃんは喉をならした。

「で?家来ってどれくらい必要なんですか?」
「えっと・・・」

コンちゃんが領主様の腕の中から私のひざに飛び移る。

「柴田さん!」
「あ、うんわかった」

コンちゃんの合図がでました。
232 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:56
「家来は欲しいのですが、長旅になります。いつ帰れるかもわかりません。
 だから、この町の者を連れて行くわけには行きません。
 そこで提案なのですが、罪人を数名私にいただけませんでしょうか?」

「罪人ですか?罪人を家来にすると言うのですか?」

「はい。危険な旅です。いつ命を落とすとも限りません。
 罪人に罰を与える代わりと思って私に預けては頂けませんか?」

「はぁ。いいですけど。でも、罪人が従うでしょうか?」

「それは、このキツネの化かしでなんとでもなります」

「なるほど。キツネさんの力で罪人を味方にしちゃうんですね!
 わかりました!いいですよ!!」

「ありがとうございます!!」

コンちゃんの作戦大成功♪コンちゃん、あったまいい♪
ん?これって、キツネに化かされたってやつ??
いやいや・・・賢いキツネさんのおかげで仲間救出!だよね??
233 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:57
「ここが、地下牢です。好きな人を連れて行っちゃってください」

領主様はそう言うと外で待機。罪人を見るのはごめんってことみたい。
中は薄暗くて冷たくて。本当に梨華ちゃんたちここにいるんだよね?

「梨華ちゃ〜ん?」

いくつもある牢獄。その中には、目がぎらぎらした人が閉じ込められていた。
そんな人にびびりつつも、奥へ奥へ。

「あ!!梨華ちゃん!!」

一番奥の牢獄にみんなが閉じ込められていた。

「柴ちゃん?」

髪を切ったし、服も変えたから、始めは誰だかわからなかったみたい。

「そう!そうだよ!!」
「助けに来てくれたんだね!!」
「うん!!」

ってなわけで、ようやく梨華ちゃんたちを牢獄から助け出すことができた私とコンちゃん!大活躍♪
え?まぁ・・・私はなんにもしてないっていうか・・・コンちゃんのおかげなんだけどね。

私たちは領主様にお礼を言って、サウスタウンの宿に泊まることにした。

234 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 01:59
「あ〜。もう。本当に柴ちゃんが友達でよかったよ!!」
「はは。ありがと」

「私は絶対に助けに来てくれるって信じてたよ!!」
「はは。ありがと」

「柴ちゃん大好き!!」
「はは。ありがと」

宿ではず〜っと梨華ちゃんに抱きつかれっぱなしなかんじで。

「いちゃつくんなら、部屋かわってよ」

部屋は二部屋に別れてて、保田さんと矢口さんが狭い方の部屋。
私と梨華ちゃんとよっすぃとコンちゃんが広い方の部屋だった。

「そんなつもりないって!!」
「いいじゃん。いいじゃん。柴ちゃんってば照れ屋さん♪」

よっすぃの反応にムキになった私をからかう梨華ちゃん。もう・・・

「あ〜あ。愛ちゃん見たら嫉妬するよ?」
「だから!違うって!!私には、ちゃんと好きな人が・・・」

「コンコンがいるもんね!」

またしてもからかう梨華ちゃん。助けなきゃよかったよ。

「もう!からかわないでよ!」
「ははっ。ムキになった!かわいい♪」

「バカ!」

「髪切ったし、服も変えたし。柴ちゃん、一気に男前になったもんね?
 いや〜二人ともお似合いだよ!」
「ちょ!よっすぃ!!あ!!」

部屋を出て行っちゃうよっすぃ。

「あ〜あ。梨華ちゃん追いかけなよ?」
「・・・知らない」

「???」

どうやら、私が知らない間によっすぃと梨華ちゃんには何かがあったみたい?
235 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 02:00
「友達だからって助けに来るとは限らないんじゃん?」
「柴ちゃんは特別だよ!」

「なんでそこまで信じるの?」
「今までだって、私がピンチの時には必ず助けに来てくれたんだもん」

私の助けを待つ間、梨華ちゃんとよっすぃはちょっとした口論をしたんだ。

「小学校の時に、遠足で迷子になった私を見つけてくれたのは柴ちゃんだったし、
 中学の時に家出して帰るに帰れなくなった時だって迎えに来てくれたのは柴ちゃんだったし。
 そうそう!小さい頃、車にひかれそうになったのを助けてくれたことだってあったんだから!」

そうそう。おかげで私は車にひかれて急死に一生スペシャルもんの体験させていただきました。

「・・・柴ちゃんって、梨華ちゃんに惚れてんの?」

違うからね!!絶対に違うからね!!私が好きなのは瞳ちゃんだからね!!

「・・・そうなのかな?」

って・・・真にうけるな〜!!否定しろよ〜!!

「だったらなおさら。信じない方がいいよ」
「なんでよ!」

「恋人に裏切られるなんて、最悪じゃん。だったら始めから信じない方がいいんだよ!!」

いやいや、恋人じゃないって!

「柴ちゃんは裏切らないって!!」
「わかんないじゃん!!」

「わかるもん!!」

そんなことがあって、二人は微妙な空気を引きずっていたんだ。

236 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 02:01
「・・・」
「どこで育ったか知らないけど、夜中に外にでたら危険だよ?」

結局よっすぃを迎えに行った梨華ちゃん。
梨華ちゃんに気がついてよっすぃがいつもの言葉を口にした。

「大丈夫だよ。頼りになるナイトがここにいるからね?」
「・・・」

「柴ちゃん。来てくれたでしょ?」
「・・・梨華ちゃんのヒーローだもんね?」

「違うよ。柴ちゃんはお友達。それにね、柴ちゃん好きな人いるもん。
 私も柴ちゃんのことそんな風に見たことないよ?」
「あっそ」

「そう」
「・・・」

「でもね?もし、柴ちゃんが来てくれなかったとしても・・・
 やっぱり柴ちゃんはお友達だし、次に何かがあった時は同じように信じると思うな?」
「え?」

「友達だからね」
「お人好しだね?そのうち、痛い目見るよ?」

「なんで、よっすぃはそんなこと言うの?」
「うちはただ忠告してあげてるだけだよ!!」

「誰かを信じない方がいいなんて忠告いらない!!」
「あっそ?」

「よっすぃなんてだいっきらい!!」

梨華ちゃんは怒ってその場から走り去っちゃった。
237 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 02:02
「やっほ〜!!」

サウスタウンの中央広場で怒りを静めていた梨華ちゃんの前に現れたのは・・・

「アルタイル!!」
「ようやく、一人になってくれたみたいだね?
 さてと?僕と一緒に来てもらえるかな?」

近寄ろうとするアルタイルに梨華ちゃんは助けを求めるために周りを見渡した。


誰も回りにいない・・・


「助けはこないんじゃない?みんなが泊まってる宿からはだいぶ離れてるからね?」
「やめて!!来ないで!!」

梨華ちゃんはその場から逃げようと走った。

「無駄だよ?」

梨華ちゃんの行く先々にアルタイルは立ちはだかった。

「僕ね?空飛べちゃうんだ」
「・・・」

「さ?行きましょうお姫様?」
「いや!!離して!!!」

238 名前:賢者 投稿日:2005/04/07(木) 02:04
そんなことになってるなんて知らなくて・・・

「あれ?よっすぃ梨華ちゃんは?」

一人で帰ってきたよっすぃに私は首をかしげた。

「・・・」
「梨華ちゃん、迎えに行ったよね?」

「・・・どっか行っちゃった」
「え?って・・・もうこんな時間だよ?いくらサウスタウンでも危ないよ」

「知らない!!」

布団の中に入ったよっすぃに、しかたないなってかんじで私は梨華ちゃんを迎えに部屋を出ようとした。


『姫が危ない!!』


いつもの声が聞こえた。


『助けて!!』


梨華ちゃんの声も・・・

「よっすぃ起きて!!梨華ちゃんが危ないかもしれない!!」
「は?」

「早く起きて!!」
「って・・・」

私は戸惑うよっすぃを叩き起こして一緒に宿を出た。
239 名前:k・y 投稿日:2005/04/07(木) 02:06
更新終了です!今回は、賢いコンちゃん大活躍でした♪

川σ_σ|| <補足説明です。
  とくにありませんが・・・サウスタウンの領主様は
  とっても可愛い方でした♪
  みなさん覚えておいて下さいね!!
240 名前:レス 投稿日:2005/04/07(木) 02:17
>>218 :名無し飼育さん
  愛ちゃんにはそんな過去があったんです。
  悲しみを乗り越えて、成長していく健気な愛ちゃんが書けたらなって思います!
  今回は悲しみから一転、賢いコンコンのお話でしたがいかがでした?
  コンコンの賢さ&ふりまわされてる柴ちゃんを楽しんでいただけてれば嬉しいです♪
  これからも、よろしくお願いします♪

>>219 :通りすがりの者さん
  愛ちゃんの過去、切なく悲しい過去でした・・・
  ちなみに、亜弥ちゃん、れいなのキャスティングは・・・
  西日本つながりと言うわけで・・・訛り微妙ですが、関西弁ベースです。
  今回は賢いコンコン大活躍でしたが、楽しんでいただけましたか?
  これからも、みんなの活躍がかっこよく面白く書けるように頑張るのでお願いします!!
  
レスありがとうございます!!レスがあると、本当に励まされます♪
これからも、よろしくお願いします!!
せっかく救出されたのに・・・またまた捕まっちゃった梨華ちゃん・・・
次回もよろしくお願いします!!

241 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/07(木) 13:34
更新お疲れさまでした。
今回もすごく面白かったです。
応援しますよ。
242 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/08(金) 19:58
更新お疲れさまです。 すごく面白いですね。  石川さんが大変です!! 一難去ってまた一難とはこの事ですね。 気になります! 次回更新待ってます。
243 名前:名無飼育 投稿日:2005/04/15(金) 15:48
更新お疲れ様です。
コンコン大活躍ですね?頭のいいコンコンに期待です。
そして、石川さんが!!
今後も気になります!頑張ってください!!
244 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 14:54
「柴田!!石川が危ないって?」

中央広場に私たちがついたところで、保田さんと矢口さんと合流した。

「え?なんでわかったんですか?」
「コンコンのジェスチャーで」

矢口さんのわきからコンちゃん登場。
コンちゃんのジェスチャー・・・ちょっと見てみたいかも・・・ってそんな場合じゃなかったね。

「で?見つかったの?」

首を振った私。その時、保田さんが何かを見つけた。

「これ・・・石川のだよね?」
「あ・・・」

趣味の悪いピンクのウサギのストラップ。

「ってことは、ここにいたんだ。あ・・・これ!」

私が見つけたのは・・・手紙だった。
245 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 14:56


『やっほ〜!!八剣士のみなさん元気?
 姫はいただいたのだ!!返して欲しければ霊玉を渡すこと♪』


なにこれ・・・居場所とか、その他の情報が一つもないよ。

「きっと、アルタイルだ」

矢口さんがこぶしを握り締める。

「でも・・・こいつどこにいるんだろ?」

保田さんが手紙を私から受け取って顔をしかめる。

「手がかりないと・・・見つけようがないよね」

手がかりがない限り・・・見つけようはなかった。だから、みんな黙った。

「なんで?なんで・・・石川一人にしたの!!」

沈黙を破ったのは保田さんで、よっすぃにつかみかかった。

「それは・・・」
「あんた!!高橋と約束したんでしょ!!」

愛ちゃんがいたら・・・きっと、梨華ちゃんは一人ではぐれたりしなかった。
今まで気づかなかったけど、愛ちゃんはいつも梨華ちゃんの安否を気遣ってくれていたから。
梨華ちゃんの隣にはいつだって愛ちゃんがいて、守ってくれてたんだ。

「高橋と約束したんでしょ!!」

何も言い返さないよっすぃに保田さんは再度詰め寄った。

「言い争ってもしかたないよ」

矢口さんが二人の間に立った。

「でも!!」

保田さんが矢口さんを押しのけようとした。
保田さんは、真っ直ぐな人だから、いい加減なよっすぃが交わした愛ちゃんとの約束、許せなかったんだ。
愛ちゃんの真剣さが伝わったから。よっすぃが許せなかったんだ。

「圭ちゃん!よっすぃだって、わざとじゃないよ!!」
「でも!高橋と約束したんでしょ!!それに・・・
 このままじゃ・・・石川殺されちゃうかもしれない・・・」

その言葉に、矢口さんもよっすぃもうなだれた。


「見つかりますきっと!!」


落胆しかけたみんなが、私を見つめた。


「私!梨華ちゃん探すの昔から得意だったんです!!」


悪いけど、愛ちゃんよりも、剣士たちよりも?!
私、梨華ちゃんとの付き合い長いからね!!
246 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 14:58
「ここ?どこ??」

アルタイルが梨華ちゃんをつれてきたのは、薄暗い館。

「つれてきたよん?」

アルタイルは梨華ちゃんを奥にいる女の人に差し出した。

「よくやった」
「ね?僕は使えるだろ?」

「霊玉は?」
「そっちはまだ・・・」

「私の命令は?」
「・・・はいはい。姫を連れてくること。
 霊玉を奪うこと。八剣士を殺すこと。
 一つでも達成したんだから、もう少し褒めてよ」

「全部達成しなきゃ意味ないの」
「はいはい」

女の人の冷たいオーラに梨華ちゃんは心まで凍りつきそうになった。
アルタイルと会話を交わすその人の言葉は、まるでロボットのように、閑散としていた。

「あなた・・・誰?」
「あなたにそれは関係ない」
「・・・」

梨華ちゃんに一瞬向けたその人の目は、人間じゃないようだった。

うらみに満ちたその目。

魔物・・・悪魔・・・ううん。そんなんじゃない。


もっともっと、負のエネルギーに満ちた目・・・


247 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 14:58
「あいつは?しとめたの?」
「ん?ああ。あの国王様?今頃死んでるんじゃない?」

アルタイルの言葉に梨華ちゃんが否定する。

「愛ちゃんは!愛ちゃんは死んだりしない!!死なせたりしない!!」
「えぇ?生きてるの?マジ?しぶといな」
「愛ちゃんは!!」

そういいかけた梨華ちゃんに、女の人は剣を向けた。

「愛は、愛だけは必ず殺す」
「・・・」

「地獄を味あわせてからね」
「・・・」

「アルタイル!」
「はいはい。霊玉ね。そのためにはそのお姫様におとりになってもらう必要があるんだ」

「さっさと、始末してきなさい」
「はいはい」

女の人はそう言うと姿を消した。

248 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:00
「柴ちゃん、本当にこっちで会ってるの?」

そのころ、私たちはサウスタウンとセンタータウンの境界域まで来ていた。
みんなは私の進むままについてきてくれたんだけど、一時間以上歩いてよっすぃが不満を口にした。

「う〜ん・・・わかんないけど。多分こっちだと思う・・・」
「は?あんたわかるって言ってたじゃん!!」

保田さんが呆れたってかんじで立ち止まった。

「わかるとは・・・言ってないですよ。だから・・・その。いつも見つけることできるからって・・・」

よっすぃも保田さんも、そんないい加減なって顔になった。

「でも、今は柴ちゃんに頼るしかないでしょ?」

呆れ気味の二人を矢口さんがなだめてくれる。

「でもさ、センタータウンの方に敵のアジトがあるわけ?
 あるんだったら、イーストタウンの方じゃないの?」

保田さんの言葉は納得できた。
確かに、イーストタウンは魔物が多いしね。いるとしたらそっちかも・・・


でも、なんかこっちが気になったんだよね・・・

249 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:01
「柴ちゃんの読みは、あってるよ。イーストタウンは魔物が多い。
 それは、今に始まったことじゃない。魔王が来るもっと前からあそこは、死の町。
 だから、サウスタウンの警備は東からの魔物を防ごうとしてそっちが厳しくなる。
 センタータウンは国王が納めてるから、警備をおくことも王の了承がいるでしょ?
 いろいろとめんどくさい問題も多いから、警備はいないんだ。
 つまり、この境界域はサウスタウンの死角なんだよ」

矢口さんのフォローで、よっすぃも保田さんも納得してくれた。

「柴田さん?」

コンちゃんが何かを思い出したかのように、袴の裾をひっぱった。

「なに?」
「みなさんに霊玉を出すように指示してください」
「みんな、霊玉を出してってコンちゃんが言ってる」

三人は首をかしげつつも、霊玉を出した。
すると、霊玉の文字から光が放たれていた。
光は一定の方向を指し示している。

「光は姫の居場所を示しているんです。
 光が導く方向へ向かってください」

コンちゃんの言葉をみんなに伝えた。
どうやら、梨華ちゃんはもう少し北のセンタータウン付近にいるみたい。

250 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:02
「光が、吸い込まれてる・・・」

霊玉の光を追って梨華ちゃんのもとへ急いでいた私たち。
急に、光が空中に吸い込まれた。

「光が消えたら、梨華ちゃんの居場所わかんない」

吸い込まれていく光に私たちはまた足を止めた。

「柴田さん?」

コンちゃんが私の腕に飛び乗った。

「この先に、空間をゆがめて作られた、天星人のアジトがあります。
 境界域に入るまでは、その存在は見えないんです。
 このまま進めば、境界域を超えてアジトに侵入できます」

「つまり、この先に行けばいいの?」
「はい!」

私はみんなにそれを伝えて、私たちはまた歩き始めた。


「あ、待って!境界を越えたら、敵に一気に襲われます・・・」


コンちゃんの言葉は間に合わなくって、私たちは境界を越えた瞬間に一斉攻撃にあった。
251 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:03
「うわっ!!」

真っ先に飛び込んだよっすぃがいきなり切りつけられた。

「は?げっ!!」

続いて矢口さんが殴られる。

「なに?きゃっ!!」

私もよっすぃを切った人に切りつけられた。
コンちゃんは私に隠れて、うまいぐあいに攻撃をよけたんだけど、続いて入った保田さんも切りつけられた。

「コンちゃん・・・もっと早く言って・・・」
「すみません・・・」

コンちゃんに薬草をもらってみんなも復活できたからいいんだけど・・・
もう少し早く言ってよね・・・

252 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:04
「梨華ちゃんはここにいるのかよ!!」

よっすぃが切りつけた相手に剣を向ける。

「梨華ちゃん?あぁ。あの姫子のことだな?いかにも。ここにいる」
「しかし、ここから先は通さん!」
「我ら、プレアデス星団が相手だ!!」

私たちは一気に、敵に取り囲まれた。同じ顔をした人がたくさん・・・
プレアデス星団って人たちらしいけど・・・

「悪いけど、あんたらの相手してる場合じゃないんでね?」

よっすぃが、剣を地面に刺した。

「烈火炎上波!!」
「危ない!!」

矢口さんが私たちを魔方陣の中に導いてくれた。

魔方陣に入ったとたんに、あたりの地面が一気に炎上した。
そして、プレアデス星団のほとんどが、よっすぃの炎の餌食になった。

「くそっ!!よくも仲間を!!」
「先に、うちらの仲間をらちったのそっちだろ!!」

よっすぃは地面から剣を抜くと、残りの者に刃を向けた。
253 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:05

「我らを見くびるな!!ミリオンスパーク!!」

プレアデス星団たちは上空高く飛び上がった。
一人が空から急降下でよっすぃに切りかかった。

「くっ!!」

落下速度が加わっている分、通常よりも激しい攻撃。
でも、よっすぃはなんとか持ちこたえた。
でも・・・

「なに!!」

上空のプレアデス星団たちが、一斉に弓矢を放ったんだ。
よっすぃは攻撃されていたから、弓矢は見えなくて・・・
よっすぃに切りつけた人もろとも、弓矢の餌食になった。

「仲間を殺してまで・・・」

保田さんが目の前で起きた光景に愕然として立ちすくむ。

「よっすぃ!!」

よっすぃは、無数の弓矢を身体に受けて血を流していた。


「来ないで!」


助けに行こうとした矢口さんをよっすぃが拒んだ。


「うちがこいつら片付けなきゃいけないんだ。
 あいつに約束したんだから。梨華ちゃんはうちが取り戻す!!」


愛ちゃんとの約束、よっすぃなりに守ろうって思ってるんだ。
私たちは、矢口さんの魔方陣の中で、必死に戦うよっすぃを見守ることにした。

「貴様!しぶといな!!」
「悪いけど、襲撃とかってなれてるんでね?」

よっすぃがボロボロになった身体を立て直した。

254 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:07
「仲間を見殺しにするなんて、あんたら悪趣味だね?」
「仲間とは、任務を遂行するためにいるのだ」

「へぇ?なかなか、いい根性してんじゃん。
 うちは、仲間なんてどうでも、いいけどさ。
 とりあえず、めんどくさい約束しちゃったから、守らせてもらうよ?」


よっすぃの身体が上気していくのがわかった。
周りの小石がよっすぃのオーラに呼応して微動している。


「力が、覚醒しかけている・・・」


コンちゃんがそうつぶやいた。

「覚醒?」
「吉澤さんは今、八剣士としての力が覚醒しかけています」

仲間を見殺しにしたプレアデス星団への怒りなのか、
愛ちゃんとの約束のためなのか、梨華ちゃんを救いたいからなのか・・・
よっすぃの中の剣士の力が目を覚まし始めたみたい。


「烈火真炎!!!!」


よっすぃの気力をふりしぼった攻撃。
今までにない、よっすぃの雄叫びは、炎となって燃え上がる。
そして、プレアデス星団たちは、一人残らず炎に包まれた。


「うぉおぉぉぉぉ!!!」


よっすぃの気力がみなぎって、炎は激しさを増す。
今のよっすぃに敵はなし・・・

255 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:08
そのころ、梨華ちゃんは・・・

「アルちゃん・・・あの人・・・誰なの?」
「あ、アルちゃん??」

自分をあだな呼びしたことで、アルタイルは少し驚いていたみたい。

「あの人誰なの?」
「巫女だよ」

「え?」
「青龍の巫女。魔王に心を売ったんだ」

「なんで?」
「よっぽどこの世に憎しみがあるみたいだよ?魔王よりも怖いもん」

「・・・なんで、愛ちゃんだけは殺すって言ってたの?」
「さあ?嫌いなんじゃん?国王とかそういうの。
 あの人のことあんまり詮索できないからわかんないだ。
 近づけば僕らの命も危ういからね」
256 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:09
「アルタイル!!」

誰かが入ってきた。

「なんだ。デネブかよ」
「そいつが、姫か?」
「ん?ああ。そうだよ」

デネブは、梨華ちゃんを見るなり剣を向けた。

「ちょ!殺したらダメだよ!!魔王に怒られちゃうって!!」
「うるさい!!」

デネブは一瞬にしてアルタイルの動きを封じた。

「死ね!!」
「やだぁぁぁぁぁ!!!!」

デネブが剣を振り下ろそうとした瞬間だった。
257 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:11
「梨華ちゃん!!」
「柴ちゃん!!」

デネブの剣が梨華ちゃんを威嚇している以上、私たちは身動きがとれなかった。

「返せ!!梨華ちゃんを返せ!!」

よっすぃの怒鳴り声が響いた。

「黙れ!!」

デネブはよっすぃに向けて剣を振り下ろし、その風圧に私たちは弾き飛ばされた。

「我が目的は、貴様の命のみ!死ね!!」
「梨華ちゃん!!」

デネブの剣が梨華ちゃんを捕らえる前に、私が梨華ちゃんをかばった。

「柴ちゃん!!」

おかげで、ざっくり切りつけられた私の背中・・・

「いった〜い・・・よっすぃ!!梨華ちゃんを!!」

私の指示でよっすぃが梨華ちゃんを救出。
そして、みんながデネブに向かって剣を構える。
多勢に無勢。不利だと感じたデネブは姿を消した。

「くっそ。じゃまが入らなければうまくいったのに!」

アルタイルも姿をくらませた。

「ケメちゃん柴ちゃんを!!」

梨華ちゃんの指示ですぐに保田さんが治療してくれたから私は一命をとりとめた。

258 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:12
「あの・・・」

宿に戻る途中で、よっすぃが梨華ちゃんの様子を伺うようにして口を開いた。

「やっぱり、夜道は危険だね?」

何かを言う前に、梨華ちゃんに先をこされて、よっすぃは決まり悪そうに顔を背けた。

「あ・・・うん」
「でも、信じてたよ?」

「え?」
「助けに来てくれるって!」

「・・・あれは、柴ちゃんが」
「よっすぃも来てくれたじゃない?」

「・・・」
「信じてた。みんなのこと」

「そう」
「でも、夜道は今度からは気をつけるよ」

「うん」
「ありがとう」

「え?」
「助けに来てくれて」


「・・・うん」


259 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:13
「柴田さん!!柴田さん!!」

翌朝早く、私はコンちゃんに起こされた。

「ん・・・ん〜・・・」
「柴田さん!!起きてください!!」

「ん?何?」
「みなさんを起こしてください!!」

「はい?」
「出発です!!」

「ほえ?」

よくわからないまま、私はみんなを集合させた。

260 名前:捕らわれた姫 投稿日:2005/04/18(月) 15:15
「なに?まだ、6時じゃん」

朝が苦手なよっすぃは不機嫌。

「なんかね、コンちゃんが出発だって言ってるの」
「・・・今から?」

「みたい」
「出発ってどこに行くわけ?」

「どこに行くの?」
「朱雀の巫女に会いに行くんです!」

朱雀の巫女は、サウスタウンからちょっと行った、
サウスビレッジにあるマウントフェニックスの山頂にいるんだって。
巫女に会って、朱雀の力を手に入れることが今後の旅においても必要になるってことで、
コンちゃんはそこへ行こうって言い出した。

「でもさぁ?何もこんな朝早くから行かなくてもいいでしょ?」

よっすぃはまだ眠いみたい。

「船の時間があるので、すぐに出発しないといけないんです!!」

サウスビレッジへは、船で行くみたい。私たちは、コンちゃんの言葉を支持し、朝早く宿を旅立った。
261 名前:k・y 投稿日:2005/04/18(月) 15:28
ここまでです!

川σ_σ|| <補足説明です。

烈火炎上波:よっすぃの必殺技。地下のマグマを呼び出し炎上させる。
      周囲の敵は一気に炎にやられちゃいます。矢口さんの魔法陣に入らなかったら、
      私たちも丸焼きでした・・・

プレアデス星団:アルタイルの家来。天星人で、宇宙の芥から合成された集団。
        仲間でも見殺しにしちゃう、極悪非道な集団・・・

ミリオンスパーク:プレアデス星団の攻撃。一人をおとりとして死角を作り出し、
         上空からの弓矢による一斉攻撃。よっすぃだから持ちこたえたけど、
         自爆的な非情な攻撃です。

青龍の巫女:四神の一匹、青龍の力を司る巫女。この世への憎しみが強く、魔王と手を組んだ。
      愛ちゃんへの恨みが特に強いみたい・・・
      非情で、冷徹・・・巫女の正体は・・・??

デネブ:天星人。闇を操る。アルタイルやベテルギウスよりもはるかに強い。
    でも、魔王の家来でありながら、不穏な動きをしようとしている。
    
      
よっすぃの必殺技&新たな敵の登場です?!


262 名前:k・y 投稿日:2005/04/18(月) 15:36
>>241 :名無飼育さん
  今回も楽しんでいただけたでしょうか?
  よっすぃ大活躍だったのですが、よっすぃの
  かっこよさが伝わればって思います?!
  新たな敵も登場なので、今後も展開についてきていただければ?
  これからもよろしくお願いします!!

>>242 :通りすがりの者 さん
  梨華ちゃんなんとか救出です!
  よっすぃの大活躍、楽しんでいただけましたか?
  何気に、柴ちゃんの友情も感じていただければと・・・
  青龍の巫女、デネブ・・・新たな敵にも注目です!
  これからも、よろしくお願いします!!

>>243 :名無飼育 さん
  コンコンへの応援レスありがとうございます!!
  頭のいいコンコン、これからも活躍してくれると思います!!
    
    コンコン<活躍しますよ!絶対に♪
  
  だそうです!!これからもよろしくお願いします♪

レスありがとうございます!!励みになります♪
次回は新たな場所に旅立ちます!!
今後も剣士たちの活躍にご期待ください!!
では、次回もよろしくお願いします!!!!!
263 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/18(月) 21:52
更新お疲れ様です。
よっちゃん格好良かったですよ。
264 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/20(水) 00:05
お疲れさまっス!!
石と吉の、戦闘後の雰囲気が凄い好きです。
コンコンも朝から働き者ですね。
がんばってください!!
265 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/25(月) 06:31
更新お疲れさまでした。 よっすぃーよかったです。あの女性は・・・? 次回更新待ってます。
266 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:49
「まだつかないの?」

コンちゃんに言われて船にのって3日。
一向に島は見えてこないわけで。
いつになったら、つくんだろ・・・
梨華ちゃんも私も船酔いでヘロヘロ。

「コンちゃん、いつになったらつくの?」
「この船は、旧式なんですよ」

旧式の船だから、普通の船の倍以上の時間がかかるんだってさ・・・
みんな、3日間海の上で、くたくただっていうのに島はぜんぜん見えてこない。

「うちら、キツネに化かされたんじゃないの?」

よっすぃがコンちゃんをつかまえた。
よっすぃの腕の中で暴れるコンちゃんを梨華ちゃんが救出。

「よっすぃ、いじめちゃだめだよ」
「絶対にうちらそいつに化かされてるんだよ」

「そんなことないって!ね?柴ちゃん?」
「え?ああ。うん。そんなことはないと思うよ。
 みんなのこと助ける知恵を出してくれたのだってコンちゃんだし」

「はぁ・・・どっちでもいいけどさっさとこの生活やめたいよ」

保田さんに言われて、みんなうなだれた。
海の上の生活は予想以上に過酷なんだ。

267 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:50
旧式の船旅は、今の船では考えられないくらい揺れるし・・・船酔いも絶好調。

「柴ちゃん・・・ご飯だって?」
「・・・無理」

私も梨華ちゃんも、ご飯を食べる気力を無くすくらいに船酔いにやられていた。

「どうにかなんないのかな・・・このままじゃ、死んじゃう」
「だね・・・」
「みんなは?」
「元気なのはよっすぃだけ」

矢口さんも保田さんも同じように船酔いにやられてたんだけど、よっすぃだけは元気だった。

よっすぃだけは、船の中をあちこち動き回ってて。



でも、よっすぃが歩き回ると・・・ろくなことにならないんだよね・・・


268 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:51
「よっし!!はいはい?またうちの勝ちだよ?!」

他の乗客たちと、ポーカーしちゃってたんだよね。

「なんだよ!」
「くっそ!!」
「はいはい?1万円ね?まいどあり!!」

お金を賭けたポーカーゲーム・・・よっすぃのやりそうなことといえばそうなんだけどね・・・

「あんた、本当に強いな?」
「まあね?うちは、ギャンブラーなのさ!」


って・・・よっすぃはギャンブラーじゃなくて、詐欺師なだけで・・・


私たちがいないのをいいことに、久々に羽目を外してるんだ。

「もう一回勝負しとく?」
「おう!今度こそ負けねえぞ!!」
「ま?何度やっても無駄だよ?」

にやりと微笑むよっすぃのたくらみ笑いには誰も気がつかないみたい。

269 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:53
「いっやー!船って最高!!」

一儲けして、私たちの船室に戻ってきたよっすぃは、お酒も入ってご機嫌。

「うっ!!ちょっと!!よっすぃお酒臭い!!」

ただでさえ気持ち悪いのに、お酒のにおいなんてかいだら、不快感倍増!!

「あれ?やぐっつぁん、まだ酔ってんの?
 もったいないな?ここの船の料理めっちゃうまいんだよ?」
「何言ってんの?おいしい料理食べられるのは、お金持ってる人だけでしょ?」

保田さんの疑問によっすぃはさっき稼いだお金を見せる。


「お金なんて持ってるやつから、もらえばいいんだって!」


よっすぃが見せたお金に、私たちは戸惑って、一瞬静寂に包まれた。

「・・・そのお金、どうしたの?」

梨華ちゃんのまなざしに、よっすぃは目をそらしながら答えた。

「ポーカーで勝ったんだ」
「詐欺でね?」

矢口さんに心を読まれてよっすぃは顔をしかめた。

「あんたね!!」

保田さんが立ち上がってよっすぃに詰め寄る。

「なに?うちは、うちの仕事しただけだよ?」
「人をだますことのどこが仕事なのよ!!」

「お金もらうって意味では一緒でしょ?」
「あんたね!!人として恥ずかしくないわけ!!」

「別に?」
「それでも、剣士なの!!」

「ちょ〜っと待ってよ!うちは剣士だけど、それは高橋との契約ってだけだよ?一日一万円!」

おちゃらけた風に人差し指を立てたよっすぃに、保田さんはあきれ返って部屋を出て行った。

「バカ!」

矢口さんがよっすぃを叩いてから保田さんの後を追った。
270 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:55
「あ〜あ?怒られちゃった」

反省の様子全くなしのよっすぃ・・・

「よっすぃ、ダメだよ・・・人を騙すの・・・やっぱりよくないよ!」
「なに?今度は梨華ちゃんが説教?」

「・・・」
「いいじゃん。持ってるやつからもらったって」

「でも!」

反論しようとした梨華ちゃんによっすぃは鋭い眼差しを向けた。


「持ってるやつからもらって何が悪い?
 あいつらにとったら、こんな金、はした金なんだ。
 それをとって何が悪いんだよ!!」


よっすぃの目は、いつもと違って怒りに満ちていた。

「金は天下の回りものって言うでしょ?
 あいつらの遊び金をいただいただけじゃん」
「そんなに・・・そんなにお金が欲しいの?」

梨華ちゃんは、うつむいたまま何かを抑えるようにそう言った。

「ああ!欲しいね!!この国全部買い取れるくらいの金持ちになりたいね!!」


「だったら・・・だったら全部持ってってよ!!」


梨華ちゃんは愛ちゃんから預かったお金の入った袋をよっすぃに投げつけた。


「・・・」


梨華ちゃんの怒りにさすがのよっすぃも言葉を失ったみたい。


「お金なんかあったって!意味ないんだから!!うっ・・・」


泣き出した梨華ちゃん・・・
立ちすくむよっすぃ・・・


271 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:57
「お金、粗末にしちゃダメだよ」

どう、この場を収めていいかもわからず、私は梨華ちゃんが投げた袋を拾った。

「金があれば・・・なんでも、買えるんだよ・・・」

よっすぃがつぶやく。

「なんでも・・・買えるんだ・・・」
「お金は、そんな風に使うものじゃないよ・・・」

「梨華ちゃんにはわかんないんだよ!!」
「わかんないよ!!」

「え・・・」
「わかんないよ!!そんなのわかんないよ!!」

「・・・」
「わかんないよ!!でも!!そんなことしてたら、
 いつかよっすぃの心まで、お金で変わっちゃうよ!!」

「・・・」
「そんなのやなの!!」

「・・・」


二人にした方がいいのかな?って思って。
私はコンちゃんを連れて外にでた。

272 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:58
「いいんですか?出てきちゃって?」
「うん。いいの」
「でも・・・」

コンちゃんが心配そうに扉を見つめる。

「大丈夫だよ。私たちがいない方が、
 よっすぃきっと、梨華ちゃんの言葉受け入れるし」
「え?」

「ギャラリーがいると、よっすぃふざけたくなっちゃうでしょ?サービス精神旺盛だからさ?」
「なるほど」

「うっわぁ!星きっれ〜い!!」


見上げた星空は、満天の!って言葉じゃたりないくらい空いっぱいに広がっていた。

273 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 01:59
「どうせ、うちなんてイーストタウン育ちの孤児だから、今さら関係ないよ」
「そんなことない!よっすぃは、私のこと助けてくれたし!
 愛ちゃんとの約束ちゃんと守ろうとしてる!!」

「それは・・・」
「よっすぃは、本当は優しくて強い剣士なんだから!!」

「不真面目で、軽薄な詐欺師だって!」
「違う!!」

「違わない!!詐欺師として今まで生きてきたんだ!剣士は契約!!」
「違う!!」

「はぁ・・・しつこいなぁ。うちなんか信じたって何にも得しないよ?」
「損とか得とか!そういうことじゃないの!」

「・・・じゃあなに?」
「仲間だから!」

「え?」
「よっすぃは・・・よっすぃは仲間だから!だから信じるの!!」

「・・・」
「仲間だから、だから、よっすぃの心を傷つけさせたくないから!
 だから、もう人を騙すようなことはしないで欲しいの!!」

「・・・」
「よっすぃは、大切な仲間なんだよ!!」

「・・・」

梨華ちゃんの言葉に、よっすぃは戸惑って・・・
どう答えていいのかわからなくて・・・


仲間って言葉はよっすぃには慣れない響きだったから。

274 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:00
「あ!!」

答えを探していたよっすぃに、
いきなり梨華ちゃんが何かを思い出したように口を開いた。

「な、なに?」
「あ〜!!!」

「なに?」

梨華ちゃんに手を握られてよっすぃはますます状況が飲み込めない。

「治った!!」
「え?」

「治った治った!!」
「なにが?」

「船酔い!!治っちゃった!!」
「・・・」


話の方向が一気にそれちゃって、よっすぃは唖然とした。
梨華ちゃんはそんなことおかまいなしで、一人よっすぃの手を握って飛び跳ねる。

「よっすぃのおかげで、怒って泣いたら、船酔い治っちゃった♪」
「ははは・・・」

笑顔がひきつるよっすぃ。

「ありがとう!!う〜ん!!なんか、気持ちいい!!」
「ははは・・・よかったね」

「よっし!!外行こう??」
「って、夜だよ?」

「だから、いいんじゃん!!きっと、柴ちゃん星空見に行ったんだよ?」

よっすぃの手を握って梨華ちゃんは扉を開いた。


強引な、気ままなお姫様に、よっすぃは苦笑しながらも救われた思いでいっぱいだったんだ。

275 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:02
「柴ちゃん!!」
「あ!梨華ちゃん!!」

ほらね?仲直りしてるでしょ?ってコンちゃんに目で合図すると、
そうですね!って返してくれた。

「あ、まりっぺたちもいたんだ?」
「うん。柴田に星の名前を教わってたとこ」

「柴ちゃん、そういうのだけはマニアだからね?」
「マニアって・・・」

響きが微妙なんですけど・・・
よっすぃが座ったとたんに、立ち上がった保田さん。まだ、許してないみたいね・・・

「圭ちゃん、ごめんね。うち、詐欺師はやめることにした」

星空を見上げながらよっすぃが口にした言葉に、私たちはそっと微笑んだ。

「あっそ」

保田さんは、それでもわざとそっけなく答えてまた座って星空を見上げた。

276 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:03
「こうしてると、なんか悪くないね」

梨華ちゃんの言葉にみんなうなずく。

「でも・・・やっぱり早く船の上から降りたいよ」

まだ、船酔い中の矢口さんはうんざり。

「明日で6日目だもんね・・・」

保田さんがそう言った時だった。

「そんなにいやなら、この星から消してさし上げよう?」

静かな海の上に現れた黒い影。また刺客が現れたみたい。

「誰だ!!」

よっすぃが剣を抜いて梨華ちゃんの前に立った。
なんだかんだいっても、愛ちゃんとの約束、梨華ちゃんを守るっていう約束忘れていないんだ。

「わが名はデネブ」

この間、梨華ちゃんに剣を向けた奴。
コンちゃんが梨華ちゃんの腕の中から私の方に飛び移った。
277 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:05
「デネブは、アルタイルやベテルギウスとは比べものにならない腕の持ち主です!気をつけて!」

コンちゃんの言葉をみんなに伝える。
アルタイルたちよりも強いなんて・・・ありえないよ!!私たちはたじろいだ。

「なるほど。貴様まだ生きておったとはな。玄武の巫女もしぶといな」

デネブがコンちゃんを見てそう言った。
コンちゃんとデネブ、玄武の巫女・・・その関係がわかるのはまだまだ先の話。

「まぁよい。玄武の巫女もいずれ支配してやる」
「そうはさせない!!」

コンちゃんの言葉は無情にもデネブには届かないんだ。

「今はただのコギツネ。きさまの知力は使えまい」

デネブはそう言って高笑いをすると、一気に攻撃態勢に入った。

「ブラックエンブレム!」

デネブの腕から放たれた黒炎が私たちを取り囲んだ。

「ブリザード!!」
「聖水!!」

矢口さんと保田さんが炎を消し止めるために魔法を放つんだけど、ぜんぜん効果なし。
むしろどんどん威力が増してる・・・

「柴ちゃん!梨華ちゃん頼む!!」
「あ、うん!!」

よっすぃが梨華ちゃんを私に任せてデネブのもとに向かって走った。

「ダメです!!ブラックエンブレムは逆らうものに牙を向くんです!!」

コンちゃんの言葉はもちろんよっすぃに届かなくて、よっすぃは黒炎の餌食になった。

「うわぁぁぁぁ!!!」

倒れたよっすぃに保田さんが駆け寄る。

「ダメです!!黒炎の餌食になった人に魔法は逆効果です!!」

その声も保田さんには届かなくて、保田さんはよっすぃに回復魔法をかけた。

「うわぁぁぁぁ!!!」

さっきよりも勢いの強い炎がよっすぃの体を包んだ。
私も梨華ちゃんも一連の光景に腰を抜かしちゃってて・・・

「柴田さん!!訳してください!!」

腰を抜かした私は、コンちゃんの言葉をみんなに伝えられなかった。
278 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:07
「そろそろ、全員ほうむるか」

混乱の中、デネブは次の攻撃を放った。

「デビルバスター!!」

あたり一面が暗黒の闇に支配された。

「な、なに?」

一瞬の静寂。それは嵐の予兆。

「柴田さん!剣を抜いてください!!」

コンちゃんの言葉に私は反応できずにいた。

「柴田さん!!」
「は、はい!!」
「剣を抜いて!!」

どうにか、立ち上がると私は剣を抜いた。

「きゃぁぁぁぁ!!!」

剣は抜いた瞬間にものすっごい疾風を起こした。
その威力をまともに受けた私は剣に吹き飛ばされた。

「柴田さん!!ちゃんと剣を構えてください!!」
「む、無理だよぉ!!」

「剣に心を合わせてください!!」
「え?わかんないよ!!」

「心を合わせないと、その剣は言うことを聞いてくれないんです!!」
「なに言ってるのかわかんない!!!」

コンちゃんの言葉に混乱してパニック状態の私。
次の瞬間だった。闇の中から無数の刃が私たちを襲った。

「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「梨華ちゃん!!」

私は梨華ちゃんの叫び声に反応して梨華ちゃんをかばって身体を盾にした。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


方々から聞こえる仲間の声。



「フラッシュ!!」



コンちゃんだった。



闇に一瞬光が射し、デネブは姿を消していた。


279 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:08
「う・・・」

でも、船の上は悲惨な事態になっていて、私もみんなも傷だらけだった。

「り、梨華ちゃん大丈夫?」

よっすぃが梨華ちゃんのもとに駆け寄る。

「柴ちゃんが守ってくれたから、平気。でも・・・」

無意識のうちに私は梨華ちゃんをかばっていたんだ。
だから梨華ちゃんは軽傷だったんだけど、私はボロボロ・・・
他のみんなも立てそうにないくらいに傷つけられてる。
よっすぃは保田さんと矢口さんのもとへ駆け寄った。

「大丈夫?」
「う・・・うん」

私はなんとか立ち上がって剣をさやに戻した。

「大丈夫?」
「それなりに、やばいけど、なんとか生きてる」

保田さんも矢口さんもなんとか大丈夫みたい。

280 名前:詐欺師と剣士 投稿日:2005/05/01(日) 02:10
「それよりもコンコン!」

矢口さんに言われてコンちゃんを探した。

「コンちゃん!!」

でも、コンちゃんの姿はどこにもなくって・・・


「やっぱり・・・コンコン、デネブと一緒に自爆したんだ」


いなくなってるってわかって矢口さんが口を開いた。

「え?」
「デネブのあのわざは、全てを闇の中へ葬り去る技なんだ。
 コンコンはその闇からうちらを救い出すために一瞬の光を作った。
 その光にデネブの意識をそらしたところで、デネブを捕まえて一緒に闇に落ちたんだ」

「そ、そんな・・・」
「それで、その後コンコンはどうなるわけ?」

保田さんの言葉に矢口さんを見つめた。



「多分・・・デネブもろとも・・・死んだ」



「そんな・・・」



コンちゃんは、何度も私に指示を与えたのに・・・
弱虫で腰がひけちゃってコンちゃんの言葉をみんなに伝えられなかった私のせいだ。


それから、頭が真っ白になって、その場に泣き崩れることしかできなかった。


281 名前:k・y 投稿日:2005/05/01(日) 02:19
ちょっと、PC故障で更新が遅れました・・・
すみません!!

川σ_σ|| <補足説明です。

ブラックエンブレム:デネブの攻撃。黒炎による必殺技。
          炎の餌食になったものは、はむかえばはむかうほど炎の威力にやられる。
          魔法は無効。魔法を使うと炎の威力が強力になっちゃうんだ・・・

デビルバスター:デネブの攻撃。闇をつくりだしその闇の中でさまざまな攻撃を繰り出す。
        闇を破壊しない限り、闇に飲まれ死に至る・・・
        コンちゃんの捨て身の攻撃で私たちは助かったけど・・・

ブリザード:矢口さんの魔法。吹雪を起こす。

聖水:保田さんの魔術。聖なる水を作り出す。

フラッシュ:コンちゃんの攻撃。光を作り出す。
      瞬時の攻撃。殺傷力はないけど、敵の注意をひきつけることができる。

282 名前:k・y 投稿日:2005/05/01(日) 02:29
>>263 :名無飼育さん
  レスありがとうございます!
  よっすぃの活躍っぷり、楽しんでいただけましたか?
  よっすぃにはこれからも、かっこよく、不真面目に頑張って
  もらう予定ですので!?
  これからもよろしくお願いします!!


>>264 :名無飼育さん
  レスありがとうございます!よっすぃと梨華ちゃんの微妙な
  かけ引き、伝わってもらえたら嬉しいです♪
  今回も、二人の微妙なかけ引きがありましたが・・・
  伝わりましたでしょうか?
  これからも、二人の展開?に注目して下さい!!


>>265 :通りすがりの者さん
  毎回レス、ありがとうございます!!励みになります♪
  よっすぃの活躍、楽しんでいただけましたか?
  あの女性は・・・そうです!あの人です・・・?!
  正体がわかるのは、まだまだ先ですが・・・
  これからも!よろしくお願いします♪


レス本当にありがとうございます!!励みになります♪
今回も大変なことになっちゃってます・・・
コンコンがぁぁぁ!!!ってことで、次回もよろしくお願いします!!
283 名前:おまけ♪ 投稿日:2005/05/01(日) 02:38
  川σ_σ|| <どうしても・・・言いたいことがあるらしいので・・・
       おまけです。

(0^〜^0)<みなさ〜ん!!応援ありがとっ!!
        かっちょいいうちに、みんなついて来いっ!!
        え?今回はかっこよくない?

  川σ_σ|| <詐欺でみんなを怒らせちゃったしね・・・

(0^〜^0)<まぁ、人を欺くことも時には必要なんだって。
        ・・・ま、しばらく詐欺師は止めるんで!
        これからも、応援よろしくっす!!
        剣士の中で一番かっこいい吉澤ひとみでした〜!!
  

 レスで、人気だったので・・・特別に♪
 よっすぃの活躍、これからも期待してください!!
 もちろん、他のみんなも応援してください!!
 では、次回まで!!
284 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/01(日) 21:09
更新お疲れさまです。 えぇっ( ̄□ ̄;) 本当に消えてしまったんですか!? そ、そんな・・・。 次回更新待ってます。
285 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/02(月) 07:42
コンコン〜〜〜(>。<

今回も超面白かったです。
次回、待ってます☆
286 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/04(水) 10:05
今回も微妙な距離(?)のよっちゃんと梨華ちゃんの雰囲気が・・・
ってコンコン!?
この先どうなるのかすごい楽しみです。
287 名前:松本氏 投稿日:2005/05/06(金) 18:34
めっちゃ面白い!
次回もたのしみです。
288 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:11
「柴ちゃん?少しは食べないと?」

コンちゃんがいなくなってから、三日目の朝を迎えた。
食欲なんて全然なくて、私はただ毎日ボーっと海を見てた。

「柴ちゃん?」
「・・・」


心配して梨華ちゃんは何度も話しかけてくれたんだけど、全然答えられなかった。
罪悪感に支配された世界は、とてつもなく重くて暗いものだった。


「コンコン、生きてるよ!」
「・・・」


私のせいで・・・コンちゃんは・・・
そう思うと、もう流すだけ流したはずなのに、やっぱり涙が溢れた。

289 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:12
「柴田、そうとうめげてるね?」

保田さんたちの怪我はだいぶ回復した。

「責任かんじちゃってるんだね?」
「責任かんじられるうちはまだいいよ」

よっすぃの言葉を受けて、矢口さんが立ち上がる。

「柴ちゃんの気持ち、わかってやれるだろ?」
「うちに期待しないで」

よっすぃはその場を離れた。

290 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:13
「柴ちゃん?元気だそうよ?」
「・・・」

「柴ちゃんがそんなんじゃ、私まで悲しいよ・・・」
「・・・」

「コンコンだって、そんな柴ちゃん好きじゃないはずだよ?」
「・・・」



「そうですよ!!柴田さんは元気じゃなくっちゃ!!」
「え!?」



その声に思わず振り向いた。


「え?え?え?」
「コンコン!!」


コンちゃんだった。少し照れながらも私の腕の中にひょいっとのっかったコンちゃん。


「コンちゃん!!!」


久々の再開はすぐに涙で見えなくなった。
それからコンちゃんが戻ってきたことで、みんなも集まった。
291 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:15
「なんで?どうやって戻れたの?」

矢口さんの質問にコンちゃんは私の腕の中でみんなに説明を始めた。

「デネブの闇は、ほぼ完成したブラックホールです。
 あの時、デネブと一緒に闇に飲まれたけど、
 道しるべがあればその闇から逃れることができるんです」
「みちしるべ?」

「はい。道しるべ」
「それって、柴ちゃん?」

「いいえ。石川さんですよ。間に合ってよかった。
 玄武の巫女に思いが通じて、闇に飲まれる瞬間に授かったんです」


そう言って、コンちゃんが見せたのは・・・『智』の文字が刻まれた霊玉だった。


「この霊玉は姫に同調するんです。だから、道しるべとなって私をみなさんのもとに、戻してくれたんです」

得意気に霊玉を見せたコンちゃんに、みんなは唖然としていた。
292 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:16
「あのさ・・・そういえば、コンコンの言葉わかるようになったね?」

よっすぃがそれに気がついた。

「はい!霊玉を手にしたので、みなさんとも話ができるようになったんです」
「とにかく、よかったね!!ね?柴ちゃん?」

梨華ちゃんが泣き続ける私の肩に手をおいた。
私は言葉の代わりに何度も何度もうなずいて、
なんだか安心したら気が抜けてそのまま倒れちゃった。

「柴ちゃん!!」
「柴田、ようやく気が抜けたんだよ。
 これで、やっと怪我の手当てができるよ。
 本人平気そうな顔してたけど、あの時一番デネブの攻撃にやられたのは柴田だからね」
「え?」

梨華ちゃんの顔が青くなる。

「多分、体ボロボロだよ。ご飯もろくに食べなかったし、
 薬も使わなかったからね。でも安心して。柴田は私が助けるから」

保田さんはそう言うと、私を担いで部屋に連れて行ってくれた。
コンちゃんはそんな私に寄り添うように一緒に部屋に入った。


293 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:17


コンちゃん。『智』の霊玉を持った5人目の剣士。
コンちゃんについての物語はまた今度話すことにします。


頭がよくて心が強いコンちゃん。
『智』の霊玉の持ち主にはぴったりなんだ。


そして、コンちゃんは私の物語にも大きな影響を与えることになっちゃうんだけど・・・


それはまだまだ先の話。



294 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:19
「うっわぁ〜!!すっごくきれいなところだね!!」

サウスビレッジに着いたのはそれから2日後のこと。
そこは、まさに南国の楽園ってかんじの場所だった。
青い海、白い砂浜、やしの木に、色とりどりの小鳥たち。

「なんか、旅のパンフとかに載ってそうな場所だよね!!」

私と梨華ちゃんはまっさきに船から降りて海に足を入れた。

「つっめた〜い!!」
「きもちいい〜!!」

そんな私たちを見て、よっすぃも加わった。

「ったく、あいつらホントに子供ね」

保田さんが矢口さんに同意を求めたんだけど・・・

「って!矢口!!」

矢口さんも海へと走っていた。

「旅は辛いけど、それは楽しいことに気がつかないからです。
 石川さんがいる限り、この旅は楽しめそうですね?」

呆れかえってる保田さんに、コンちゃんがそう言った。

295 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:20


私たちの旅は、過酷で悲惨で辛いことばっかりだった。


でも、そこには必ず誰かの笑顔があったんだ。
笑顔の源、それはやっぱり梨華ちゃんで。


だから、私たちの旅は光を帯びたものになったんだよね?


楽しいことに気がつく心を持って、心のそこから素直に笑える人がいたから、
だから、旅をするのが楽しかったんだよね。

296 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:21
「今日も野宿かよ・・・」

サウスビレッジは、南国の楽園ではあったものの・・・
人も建物もなんにもなくって。私たちは野宿生活を送っていた。

「そろそろ、お布団で寝たいね・・・」

梨華ちゃんの言葉にうなずくよっすぃ。

「あったか〜いお布団で、きれいなお姉さんと一緒に寝たいなぁ」
「バカッ!」

「コンちゃん?私たち、同じ場所を歩いてない?」
「え?」

私の指摘にコンちゃんが空を見上げる。

「でも、あの岩山の方角に向かってるはず・・・」
「でもね?昨日もあの星、この時間にあの場所にあったんだよね・・・
 岩山に向かっているんだとすれば、同じ時間に見える星とあの山の関係が変わるはずなんだけどな・・・」

これでも天文部なんでね。一応そういうことには詳しかったり。
私の言葉を受けてコンちゃんは本を開いた。

297 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:23
「あ・・・」
「え?なになに?」

矢口さんが覗き込む。

「この森・・・惑わしの森・・・」

惑わしの森っていうのは、森に入ったものの方向感覚を惑わし迷子にさせる森。

「確かに柴田さんの言うように、私たちは同じ場所をまわっているんです!!」
「えぇぇぇ!!それじゃあ、野宿するだけして進んでないってわけ?」

「すみません・・・」
「コンコンしっかりしてよぉ!!キツネが騙されてどうするよぉ!!」

よっすぃは冗談のつもりなんだけど、コンちゃんは落胆。

「しかたないよ」

梨華ちゃんがコンちゃんの頭をなでる。

「移動は夜するしかないね?」

私にも頭をなでられて、紺ちゃんは私の腕の中に乗っかってきた。

「よしよし」

なでられて、機嫌を回復した紺ちゃんは再び本を開いた。

「でも・・・夜移動するのはやっぱり危険です。
 センターサウスは朱雀の巫女によって守られてはいるけど、
 夜は動物たちの活動が活発になります」
「でも、それしか方法ないよね・・・こうなったら、そうするしかないんじゃない?」

結局、私たちは夜移動する方法を選択した。

298 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:24
森の夜は暗い。月明かりや星の瞬きだけが光源なんだけど、その光が地面まで照らすことはないから、足元をすくわれやすい。
かろうじて矢口さんの魔法で光を絶やさずに進むことにしたんだけど、魔法を使い続けるってことはかなり体力を消耗する。
矢口さんの体力も限界に近づいた三日目の晩だった。

「ダメだ・・・ちょっと休ませて・・・」

森の中で光を絶やした矢口さん。
そんな晩に限って、新月で月明かりがない分いつも以上に暗い森に私たちは身を置いた。

「圭ちゃんは光出せないの?」

よっすぃの言葉に保田さんに期待が集中。

「光を操れるのは限られた者だけ。最上級の魔術師だけなんだ」
「でも、やぐっつぁんは魔術師じゃないよ?」

「オイラが光を操れるのは、この十字架のおかげ。なっちの魔力を身につけたからだよ」

矢口さんは胸にかけられた十字架を握り締めた。

「安倍なつみ。伝説の魔術師。そう。
 光を操れる魔術師の中でも一番の腕の持ち主だったはず」

保田さんがそう言った直後だった。不気味な物音に私たちは耳を澄ました。

299 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:26

『ガォォォォ!!!!』


「ガルムです!!」

コンちゃんの言葉によっすぃが剣をぬく。

「梨華ちゃん!!うちの後ろへ!!」

いつもなら、返事をするか絶叫するはずの梨華ちゃんの声がなかった。

「石川!!」

矢口さんがあわてて光をかざした。
でも、そのときには梨華ちゃんの姿はなくって・・・

「梨華ちゃん!!」

よっすぃの声にも反応なくて。

「どういうこと!!」
「ガルムです。ガルムにつれさられたんです!!」

コンちゃんの言葉にみんな青ざめた。

「そいつ、どこにいるの!!」
「えっと・・・」

よっすぃに言われて本を開くコンちゃん。

「わかりません・・・あ!でも!!
 石川さんの居場所ならこの霊玉が導いてくれるはずです!!」

コンちゃんの言葉に、みんな霊玉を取り出した。
霊玉の文字の部分から放たれた光の道筋は一定の方向をさしていた。


「よし!行くしかない!!」

300 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:28
「柴ちゃんこわい〜!!」
「私だって怖いよ!!」


みんな・・・気がついてくれてなかったんだけど、私も梨華ちゃんと一緒にさらわれちゃったんだよね・・・


ガルムは、トラとライオンを混ぜた感じってよくわからないか・・・
たてがみつきのトラ。しかもめっちゃくちゃ大きいし・・・

「私たち、食べられちゃうのかな・・・」
「お友達にはなれなさそうだよね・・・」

「柴ちゃん!こんなときに冗談言わないで!!」
「ごめん」

「どうしよぉ・・・」


どうしよぉって言ったそばからガルムがこっちを向いた。
緊張が走って抱きしめあう私たち。


『ガルルル』


「やだやだ!!私たちなんて食べてもおいしくないよぉ!!」


『ガルルル』


「うぅぅ!!助けてぇぇ!!」


天に祈る思いで私たちは目をつぶった。

301 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:29

『我の力を解き放て』


それは、いつもの声とは別の声だった。

「え?」


『我の力を解き放て』


見ると剣が青白い光をおびていた。
私は恐る恐る剣をぬく。
抜いた瞬間、光はいっそう強みを増して光の光線があたりに散らばった。

「し、柴ちゃん?」

剣は私に不思議な力を与えてくれた。
心が強く強く鼓動しているのがわかる。


「梨華ちゃんは私が守る!!」


自然にそんな言葉を口にして、自然に呪文が頭に浮かんだ。


「偉大なる剣よ。私に力を与えたまえ!ウィンドブレイク!!」


天に振りかざした剣を振り下ろすと、たちまちものすごい疾風と光がガルムを襲った。

302 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:30
「きゃあ!!」

同時に、衝撃波で私も吹っ飛んだ。

「柴ちゃん!!」

梨華ちゃんが駆けつける。

「っつ。いった〜い」
「柴ちゃん・・・すごい。すっごいすっごい!!」

「え?」
「化け物倒しちゃったよ!!」

「え?え?え?」


ガルムは跡形もなく消えていた。ううん。ガルムだけじゃない。
あたりの木々も技が及んだ範囲にあったであろうものは全て跡形もなく消えていた。
それを見て、今更ながら恐怖って言葉が浮かんで慌てて剣をしまった。

303 名前:智の剣士 投稿日:2005/05/10(火) 03:32
「柴ちゃんかっこよかったよ!!」
「あ、ありがと」

「森を荒らしたのはあなた?」

その声に私たちは振り返った。

「あなたが森を荒らしたの?」

色とりどりのめちゃめちゃ派手な着物をまとったナイトさん。
かな〜り怒ってるみたい・・・

「あ、あのこれは・・・」
「問答無用!!」

「待って!!待って待って!!」

梨華ちゃんの言葉もむなしくナイトさんが私たちに向けて剣をぬいた。

「森を荒らすことは、許さない!!」
「あなた、誰?」
「朱雀三銃士!みうな!!」

みうなはそう言うと技を放つ体制に入った。


「炎上!!」


みうなが剣を振り下ろした瞬間に私たちの周りは火の海になった。

「これで逃げられないでしょ?そのまま丸焼きになりなさい!!」

みうなはそう言うとその場から姿を消した。

「あっつい!!柴ちゃん助けてぇぇぇ!!」
「む、無理だよ!!どうやって消すの!!」

徐々に近づく炎を前に私たちはどうすることもできずにいた。


このままじゃ、人間の丸焼きができあがっちゃうよぉぉ!!

304 名前:k・y 投稿日:2005/05/10(火) 03:43
川σ_σ|| <補足説明です。

This is 八剣士  NO.5 コンコン
霊玉:智   タイプ:賢者
年齢:不詳  出身:不詳  
武器:クレバーソード(短剣) メディアブック(何でも載ってる辞書)
能力:知力に優れている。
その他info:謎が多くて賢いコギツネさんです。人間じゃない理由もそのうち
      わかるはずです??いつでも賢くて冷静な剣士です!

ガルム:大型の猛獣。魔物ではなく、もともとこの森にいた猛獣です。
    獰猛で、人間を襲っちゃう危険な動物・・・すッごく強いんだけど・・・
    運良く私の活躍?で倒せちゃいました♪

みうな:朱雀三銃士の一人。火を操る。
    朱雀の巫女に仕えていて、巫女を守る三銃士の一人。
    今回は森を荒らしちゃった私に怒り爆発でした・・・

305 名前:レス 投稿日:2005/05/10(火) 03:54
>>284 :通りすがりの者さん

  お騒がせしましたが、コンコンは無事でした!!
  でもって、新たな仲間として加わったわけですが・・・
  今後もコンコンには注目です!?
  賢くて優しいコギツネコンコン♪
  これからもよろしくお願いします!!

>>285 :名無飼育さん
  コンコン無事に剣士として戻ってきました!!
  デネブと玄武の巫女さまとコンコン・・・
  その関係がわかるのはもっともっと先ですが・・・
  これからも、応援しつつ見守っていただければ♪
  次回もよろしくお願いします!!

>>286 :名無飼育さん
  コンコン無事でしたよ♪新たな仲間として加わった?コンコン
  これからも、応援してください!!
  でもって、新たな展開?!またまた危険が迫ってます。
  次回も楽しんでいただけるように、精進します!!
  もちろん・・・よっすぃと梨華ちゃんも???

>>287 :松本氏さん
  レスありがとうございます!!今回も楽しんでいただけましたか?
  新たな地に降り立った梨華ちゃん一行。
  柴ちゃんも強くなったのに、またまたピンチですが・・・
  これからも、ご愛読してもらえるとうれしいです♪
  次回もよろしくお願いします!!!

多くのレスありがとうございます!本当に励みになります♪
うれしいです!!今回も急ピンチですが、次回を楽しみに!!
これからも、よろしくお願いします!!
306 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/11(水) 10:27
うわ〜今回もすごく面白かったです!!
次回待ってます☆
頑張って(^v^)☆
307 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/11(水) 23:25
柴ちゃん、よかったね・・・って、一転、大丈夫?!
姫がピンチだ!!よっちゃん急げ!!
308 名前:名無飼育 投稿日:2005/05/12(木) 04:12
初めて読みました!!
めっちゃ!おもしろいっす!!
今後の展開も気になります!頑張ってください!!

個人的には高橋ファンです!
愛ちゃんの出番・・・期待しつつ・・・
お願いしまっす!!!
309 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/12(木) 08:31
コンちゃーん!!(TДT) って一難去ってまた一ーーぃー難!! もう絶えませんねぇ。 次回更新待ってます。
310 名前:松本氏 投稿日:2005/05/18(水) 00:55
今回も良かったです!
個人的には、愛ちゃんのことが気になりますね^^;
無事なんでしょうか?
次回も楽しみにしてます。
311 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/23(月) 03:00
おもしろいです!
柴田さん強いですね?かっこいい!!
更新待ってます。
312 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:38
「柴ちゃん助けて!」
「って言われても無理だよぉ!!」
炎の中に取り残された私たち・・・絶体絶命!!

「梨華ちゃん!!」

炎の向こうに聞こえたのはよっすぃの声。

「よっすぃ!!助けてぇぇ!!!」
「ブリザード!!」
「聖水!!」

矢口さんと保田さんが消火しようと魔法を使ってるみたいだけど、
炎は衰えることなく燃え上がるばかり・・・

「ダメです!!この炎は結界なんです。中心部に向かうまで衰えないんです!」

コンちゃんの言葉に半泣きになる私と梨華ちゃん。

「そんなぁ!!助けて!!」

梨華ちゃんが私にすがりながら泣き声をあげた。


「くっそぉぉぉ!!!うりゃあぁぁぁぁ!!!」


「「よっすぃ!!」」


矢口さんと保田さんの声に何かがあったんだって思った瞬間・・・

「よっすぃ?」

炎の結界を破ってよっすぃが私たちのもとに飛び込んできた。

「梨華ちゃんはうちが助ける!」

よっすぃはそう言うと、梨華ちゃんを抱きかかえてまた炎の中に飛び込んでいった。
梨華ちゃんを助けたよっすぃは幸い無傷だったみたい。


313 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:40
「あの・・・私は?」

取り残されちゃった私。

「そっか・・・わかった!柴田さん!!」

炎の向こうからコンちゃんの声。

「結界に向かって思いっきり飛び込んでください!
 火が体に燃え移る前にこっちに来れば助かります!!」

って・・・よっすぃだからそんな神業できるわけで・・・

「無理だよ!!」
「大丈夫です!!もしも燃えちゃったら、
 保田さんたちがなんとかしてくれます」


「えぇぇぇ!!」


動揺する保田さんの声。無理だってやっぱり。

「はぁ・・・誰か助けてよ・・・」

しかたないから、腹をくくるしかなくて。
目をつぶって思いっきり炎に向かって飛び込んだ。


「あっつい!!あついあついぃぃ!!!」


案の定服に火が燃え移って・・・

「ウォーター!!」

矢口さんがすぐに消火してくれた。

「柴田さん大丈夫ですか?」
「あ・・・いや・・・うん。今は冷たい」


なんだか結局一番散々な思いしてるのって私だよね・・・



なんて思いつつ梨華ちゃんの安否を確認すると・・・
よっすぃに抱きついたまま、なんだかすっかりいい感じ・・・
私の安否も少しは気にしてよ・・・って思いつつ無事だったことに安心する自分がいた。
314 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:42
「やっぱり夜移動するのは危険だね」

それから私たちはその場所で休むことにしたんだ。
燃え盛る炎のおかげで闇夜はうそみたいに明るかった。
燃え盛る炎を見つめながら保田さんがそう言った。

「そうですね・・・でも・・・道がわからないし・・・」

コンちゃんはなんとか解決策を見つけようと何度も本を読み返してる。

「あのさ・・・四神の巫女って・・・死んだ女の子がなるんだよね?」

矢口さんがコンちゃんにたずねた。

「はい」
「そっか」

矢口さんの表情が明るくなった。

「え?」
「わかったよ?」

「え?え?」
「聞こえたんだ。巫女の声。オイラが案内するよ」

「え?」

わけがわからないってかんじのコンちゃんに、矢口さんはそれ以上を伝えようとはしなかった。
矢口さんはただただ炎を見つめ続けた。
315 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:44
私たちは疲れからその夜はその場で眠りについた。

さっきまでは恐怖でしかなかった炎の熱は、
いつのまにか心地よいぬくもりに変わって、
いつの間にかに眠りに落ちてた。


「うわぁぁぁ!!!」


真夜中、目を覚ましたのはよっすぃだった。

「大丈夫?」

梨華ちゃんも気がついて起きた。

「・・・」

よっすぃの額から流れる汗を梨華ちゃんはぬぐって、手を握った。

「よっすぃの中の暗闇も照らしてあげられたらいいのにね・・・」
「・・・」
「愛ちゃんも、よっすぃも・・・悲しすぎるよ」
「・・・」

よっすぃが悪夢によってこんな風に目覚めることは初めてじゃなかったんだ。
旅の途中も何度もそんなかんじで真夜中に目を覚ましてた。
梨華ちゃんはそれを知っていたんだ。

「火、消えちゃったね?」
「・・・」

「さっきね?炎の中でよっすぃの声が聞こえたとき、これで助かるんだって思ったんだ」
「・・・約束だからね」

「愛ちゃんとのね?」
「・・・うん」

「よっすぃがいてくれて本当によかった」
「うちは・・・」

「ん?」
「うちは・・・うちはウソつきで、詐欺師で、
 軽くて、卑劣で・・・とにかく最低なんだよ!!」

「それでもいいよ」
「え?」

「よっすぃは、よっすぃじゃん?」

その言葉によっすぃが梨華ちゃんに顔を向けると、梨華ちゃんは穏やかな笑顔を返した。
その笑顔に、よっすぃの中で何かがはずれて、よっすぃは思わず梨華ちゃんを抱きしめた。

「よっすぃ?」
「ちょっとだけ!・・・ちょっとだけ、こうさせてて?」


「・・・うん」


少しずつ、ゆっくりだけどよっすぃの中のしがらみもはずれようとしてるんだ。

316 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:45
「保田さん、早起きですね?」

みんなの朝ごはんを作るのはいつの間にかに私の役目で、
だからいっつも早起きだったんだけど、珍しく保田さんが先に起きてた。

「うん・・・なんだか、胸騒ぎがするんだ」
「占いですか?」

水晶を覗き込む保田さんの表情は険しかった。

「邪気が近づいてるんだよね・・・」
「邪気?敵ですか?」


「・・・わからない」


保田さんを気にしつつ、私は朝ごはんの支度にかかった。

317 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:47
「へぇ。じゃあ、また敵が来るってことか?」

朝ごはんの話題は保田さんの占いのことでもちきりだった。

「次から次に・・・きりがないよ・・・」

うつむいた梨華ちゃん。

確かに・・・この旅が始まってから何度も危ない目に遭遇しちゃってきたもんね・・・

「ま、敵が来たってうちが倒すから心配ないって」
「よっすぃは脳天気でいいね・・・」

よっすぃなりの優しさだったのに、梨華ちゃんには伝わらなかった。

「ま、先のこと考えて暗くなってもしかたないか?前向き前向き!!」

梨華ちゃんはそう言うとみんなに笑顔を見せた。

「なんだよ!梨華ちゃんだって脳天気じゃん!」
「よっすぃも石川もお気楽なんだから」

そう言う保田さんもさっきの険しい表情は消えていた。
なんか、梨華ちゃんが笑ってるとみんなも自然に笑顔になるんだ。
みんなで笑いあってる時間は、少しずつだけどそれぞれにかけがえのない時間になっていた。

318 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:49
「あの?」

朝ごはんを終えて、出発の準備をしていた私たちのもとに、女の子が近づいてきた。
藍色の道義をまとった女の子・・・敵?味方??

「はい?」

梨華ちゃんが声をかけられて振り向いた。

「あの?八剣士のみなさんですか?」
「え?そうだけど?」
「よかった!!」

女の子は梨華ちゃんの手を握り締めて笑顔を見せた。

「え?」
「私も剣士なんです!!」


「えぇぇぇ!!!」


女の子の言葉に梨華ちゃんがびっくりして声をあげた。
その声に私たちも駆けつける。

「これ!」

女の子が取り出したのは、『義』の文字が刻まれた霊玉。

「すっごいすっごい!!」

霊玉を前にはしゃぎまくる梨華ちゃん。

「みなさんの噂を聞いて、私も力になりたいと思って駆けつけたんです!!」

女の子も満面の笑みで答える。

「へぇ。偉いね。自分が剣士だって自覚あったんだ」

よっすぃは、やる気満々の人はあんまり得意じゃないみたいでその場から離れた。

「もう、よっすぃ愛想悪いんだから!気にしないでね!私は石川梨華!よろしくね!!」

梨華ちゃんが女の子の手を再び握り締める。

「新垣里沙です!!よろしくお願いします!!」
「うん!!」

それから、梨華ちゃんがあれこれと里沙ちゃんに話を始めた。
私たちもはじめはそばにいたんだけど、次第に各々わかれて時間をつぶしはじめた。
319 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:50
「矢口さん?」

コンちゃんがめずらしく矢口さんに話しかけた。

「ん?」
「彼女の心、読めますか?」
「え?」
「里沙ちゃんの心・・・」
「なんで?」
「いや・・・ちょっと気になることがあって・・・」

コンちゃんの言葉に矢口さんは里沙ちゃんを見つめる。

「心の声は聞こえないよ。ってことは、うそ偽りのない人間ってことだよ」
「そうなんですか?」
「うん。いい子じゃん。剣士ってかんじだよ」
「それならいいんですが」
「コンコン心配性なんだね?」

コンちゃんは首をかしげながら里沙ちゃんを見つめていた。

「義の霊玉の持ち主はナイトだったはずなのにな・・・」
「そういえば、剣は持ってなかったね?」

「はい。義の霊玉の持ち主は、三名剣の一つ、バハムンクの持ち主なはずなんです・・・」

三名剣は、愛ちゃんのエクスかリバー、よっすぃのデュランダル、そしてバハムンクなんだって。
初代八剣士の三人のナイトが手にしていた剣。

「まだ見つけてなかったんじゃん?よっすぃだってデュランダル見つけたの10歳の時だったし」

三つの剣はそれぞれ持ち主に呼応するんだ。
でも、最初からその人が持ってるわけじゃない。

「バハムンクは・・・特別なんですけど・・・」
「でも、悪い人じゃなさそうだよ?」
「そうですね!」

320 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:51
「占い、期待を裏切りましたね?」

再び水晶を見つめた保田さんに私が声をかけた。

「う〜ん・・・」
「敵じゃなくて仲間が来ちゃうなんて。よかったですね!」

「う〜ん・・・」
「義の霊玉。正義の味方参上!ってかんじですよね?」

「・・・う〜ん」
「何か・・・気になるんですか?」

険しい表情の保田さん。

「邪気の正体・・・どうやらあの子みたいなんだよね・・・」
「え?・・・そんなことないですよ!ほら!梨華ちゃんと楽しそうに話してるし」
「だよね・・・私の占いもくもりはじめてきたってことかな・・・」
「疲れてるんですよ!最近、野宿ばっかりだったし?」
「そっか」
321 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:52
「じゃあ、あだ名はガキさんで決定ね!!」
「はい!!」

里沙ちゃんはすっかり梨華ちゃんと意気投合したみたい。

「よし!みんな出発しよう!!」
「おぉぉ!!」

新たに加わった仲間、新垣里沙ちゃん。


義の霊玉を持った剣士。
義の霊玉・・・正義の霊玉・・・


コンちゃんや保田さんは腑に落ちない点があったみたいだけど、
何はともあれ仲間が増えた私たちは、意気揚々と出発した。
322 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:53
「本当に、こっちであってるわけ?」
「よっすぃうっさい!オイラを信じろよ!」

「やぐっつぁんだから信じらんないんじゃん?」
「なにおぉぉぉ!!!今まで育ててきた恩を忘れたのか!!」

「育ててもらった覚えはないって!それにやぐっつぁん方向音痴じゃん!」

矢口さんの先導のもとに、私たちは朱雀の巫女のもとへと向かった。

「あ!ここ・・・」

本を見ていたコンちゃんがなにかに気がついたみたい。

「どうしたのコンコン?」

梨華ちゃんが青くなっているコンちゃんに尋ねる。

「ここ・・・ガルムの巣です!」
「え・・・」

あたりを見渡すとガルムがたくさん・・・
それを見て剣を構えるよっすぃ。

「大丈夫です!ガルムはなにもしなければ襲ってきたりしませんから」

コンちゃんの言葉は少し遅かったみたいで・・・
ガルムはよっすぃの剣に敵意を感じたらしく攻撃態勢に入った。

矢口さんもロッドを構え、保田さんも攻撃態勢に・・・
でも、どう考えても数からして私たちに勝ち目はないよ・・・
血気盛んなガルムたち・・・

「柴ちゃん!この間の!!」
「う、うん!きゃぁぁぁ!!」

梨華ちゃんに言われて剣を抜いたら、疾風で吹き飛ばされた。

323 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:54
この剣はなかなか言うことを聞いてくれないみたい。
立ち上がろうとした私の首筋をドロっとしたものがつたった・・・

「え?・・・!!!」

真後ろにガルムが!!恐怖で何も言葉がでなかった。

「柴ちゃん!!」
「柴田さん逃げて!!」
「む、無理・・・きゃぁぁぁ!!」

半泣き状態の私にガルムが襲い掛かってきた!!
そのときだった。美しい笛の音があたりを包み込んだ。

「ガキさん?」

里沙ちゃんが笛を吹き始めたんだ。


その音色はすごく美しくて。
ガルムの敵意は次第に静まっていった。


「柴田さん今のうちに!!」

ガルムが笛の音に聞きほれているうちに、私はみんなのもとに戻った。
ガルムたちはすっかり里沙ちゃんの笛の音に聞きほれちゃって。
あんなに興奮状態だったのにすっかりおとなしくなっちゃってた。

「今のうちにみなさん逃げましょう!

里沙ちゃんの指示のもとに私たちはその場から逃げた。
324 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:55
「ガキさんすっごいね!!」

梨華ちゃんは里沙ちゃんの神業にすっかり感心したみたい。

「ハーモニックメーカーなんですね?」

コンちゃんの言葉に里沙ちゃんはうなずいた。

「ハーモニックメーカー?」

首をかしげた梨華ちゃんにコンちゃんが説明してくれた。

「ハーモニックメーカーは、音楽で相手の気持ちを自在にコントロールすることができるんです。新垣さんの場合は笛の音色で相手を意のままにコントロールすることができるんですよね?」
「はい・・・」
「すっげぇ」

笛を珍しそうに興奮気味で除きこむよっすぃに、里沙ちゃんは後ずさりをすると笛を隠した。
325 名前:笛の音 投稿日:2005/05/28(土) 23:57
「もったいぶることないじゃん!見せてよ!!」

よっすぃの言葉に、里沙ちゃんは戸惑い気味に顔を上げた。

「笛を吹いて相手を操るなんて能力のせいで、小さい頃からみんなに気持ち悪がられて・・・」
「へぇ。そうなんだ」

軽く受け止めたよっすぃに里沙ちゃんは不満げ。

「おっと?怖いなぁ」

よっすぃに代わって矢口さんが前に出た。

「気にすることないよ。剣士に与えられた能力。それは誇るべきなんだ。
 オイラだって魔女だからみんなに嫌われてきたけど、気にしてない。
 人にはみんな与えられた役目がある。人になんて言われたって、いつかは救われる日がくるよ」

「そうだよ!それに、こんなにきれいな笛の音色聞いたの初めてだよ。
 ガキさんすっごくすっご〜くきれいな心を持ってるんだね?」

梨華ちゃんの言葉に、里沙ちゃんはようやく顔を上げてくれた。

「私のこと・・・怖くないですか?」
「なんでよ?怖くない怖くない!ガキさんは仲間だよ♪」

梨華ちゃんの言葉に、里沙ちゃんは満面の笑みを返した。


「いいね!その笑顔!!よっし!じゃあ、みんな出発!!」


梨華ちゃんの掛け声で、再び旅が始まった。

326 名前:k・y 投稿日:2005/05/29(日) 00:06
遅くなってすみません!!PCの調子が悪くって・・・
更新終了です。

川σ_σ|| <補足です!剣士登場!!

This is 八剣士  NO.6  新垣里沙
霊玉:義   タイプ:ハーモニックメーカー
年齢:15  出身:サウスタウン  
武器:ソウルフルート(笛)
能力:笛を吹くことで自在に相手をコントロールすることができる。
その他info:笛の名手!新垣里沙ちゃん。すごく美しい笛の音で相手を
      操ることができちゃうすっごい人。コンちゃんと保田さんの
      の気がかり・・・今後も里沙ちゃんから目を離さないでください!


 新たな仲間が登場しました!ハーモニックメーカーの里沙ちゃん。
 幼い頃、その能力のせいでみんなに嫌煙されたことが心の傷になってる
 みたいです。でも、美しい笛の音、すんだ瞳。強力な仲間です♪

327 名前:レス 投稿日:2005/05/29(日) 00:28
>>306 :名無飼育さん
 更新遅くなっちゃってすみません!!
 今回も楽しんでいただけたでしょうか?
 新たな仲間も増えました。
 ガキさんの活躍にも注目です!
 次回もよろしくお願いします!!

>>307 :名無飼育さん
 姫のピンチを救うのは、やっぱりよっすぃです♪
 愛ちゃんとの約束だから?ということにしておきつつ・・・♪
 今回は新たな仲間が増えましたが、いかがでしたか?
 ガキさんのよさも伝わればいいと思っています。
 これからもよろしくお願いします!!

>>308 :名無飼育
 はじめまして!楽しんでいただけて嬉しいです!
 愛ちゃんファンさんですか?愛ちゃんは、瀕死の重傷だったので・・・
 もう少し回復まで時間がかかりそうです・・・(>0<)
 大好きな姫のそばに彼女が戻る日を待ち望みつつ・・・
 これからも、よろしくお願いします!!

>>309 :通りすがりの者
 コンコンに続いてまたまた仲間の登場です!!
 ハーモニックメーカー新垣里沙。
 ガキさんにも今後注目してくださいね♪
 ようやくひと段落?いやいや、まだまだ!!
 次回も死闘の予感・・・です!

328 名前:レス 投稿日:2005/05/29(日) 00:29
>>310 :松本氏
 楽しんでいただけましたでしょうか?
 愛ちゃんは、今中澤さんのもとで療養中です。
 すぐにでも合流したい愛ちゃんですが、完治するまで中澤さんが離しません?!
 愛ちゃんの完治を祈りつつ、物語は進めちゃいます。
 愛ちゃんが戻ってくる日を楽しみに待っていてください!

>>311 :名無飼育さん
 更新遅くなっちゃってすみません!!
 なにかとついていない柴ちゃんを応援してもらえて嬉しいです♪
 今回も、さんざんな目にあっちゃってましたが・・・
 実は何気に強いんです!これからも、柴ちゃんのさんざんな・・・
 かっこよい活躍期待してください!!

 更新、遅くなっちゃいました。すみません!
 暖かいレスの数々、本当に励みになります!!
 ありがとうございます!!些細なコメントでもいいので、
 これからも、レスよろしくお願いします!!
 次回もよろしくお願いします!!

329 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/29(日) 20:29
 更新お疲れさまです。 おぉ( ̄□ ̄;)!! なんと心強い仲間が! 今後の期待が膨らむばかりです! 次回更新待ってます。
330 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/01(水) 01:27
更新待ってました。ガキさんキタ―!!
保田さんの邪気・・・が気になりますが・・・??
次回も楽しみに待っています!ガキさん頑張れ―!!
331 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/02(木) 22:50
ヨッシィ・・・だんだんいい感じになってきましたね。

新たな仲間、しかし、一体どうなることやら?
332 名前:名無飼育 投稿日:2005/06/05(日) 00:24
柴ちゃんついてないですね・・・
でも、応援してます!!

新たな仲間も増えたことだし!
次回待ってます!!!
333 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:15
「まりっぺ本当に道あってるの?」

梨華ちゃんとよっすぃに交互に道を聞かれる矢口さん。
ちょっと機嫌が悪くなり始めているかんじ?

「あってるってば!!」
「はぁ・・・もう疲れたよ。今日はこのへんで休もうよ?」
「ダメだよ!!日が落ちないうちは歩き続ける!
少しでも早く朱雀の巫女のもとに行きたいだろ?」

なんでだか、矢口さんはすっごくすっごくはりきっちゃってるんだよね。

「柴ちゃん疲れたぁぁ!!」
「愛ちゃんいないしね。荷物持ってもらえないもんね?って預けるなよ!」
「きゃは?柴ちゃん強くなったんだしいいじゃんいいじゃん?」
「よくないって!もう!!」

「あ〜!!」

荷物を返そうとしたら、梨華ちゃんが何かを見て叫んだ。

「な、なに?なに?」
「あれ見て!!」

梨華ちゃんが指差した方には・・・小さな小屋があった。

「やっと人に会えるよぉぉ!!」

小屋へと走る梨華ちゃん。それに続いて私たちも走った。

334 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:15
なんどか扉をノックしてみたけど、返事はない様子。

「もしも〜し?」
「・・・」

「あの〜!!」
「・・・」

「空き家かな?」

梨華ちゃんの言葉によっすぃが代わってノックしてみる。

「いないみたいだね?」

よっすぃは扉を開けた。

「ダメだよ!!勝手に人の家に入っちゃ!!」
「どうせ空き家でしょ?今日はここに泊まろうよ!」

梨華ちゃんが制するのをふりきりよっすぃは中へと入っていった。

335 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:16
「やっぱり・・・誰かが住んでるんじゃない?」

テーブルの上のパンとりんごを見て保田さんがそう言った。

「誰だ〜!!」

どうやら家の主が戻ってきたみたい。私たちの後ろから声がした。

「ご、ごめんなさい!!」

梨華ちゃんが謝りながら振り返る。

「え?」

でも、目の前には誰もいない様子・・・

「さては、人間だな!!出て行け〜!!」

声はするんだけど姿は見えなくて。

「もしも〜し?どこにいるんですかぁ?」

みんなであたりを見渡した。

「クルド族です!!」

コンちゃんが相手の正体をつかんだみたい。
コンちゃんの方へ視線を向けると、
コンちゃんの目の前にコンちゃんよりも小さなカエルさんが立っていた。
336 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:18
「ちっちゃ〜い!!」

梨華ちゃんがしゃがみこんでクルド族さんにあいさつ。

「人間きらいだ!!出て行け〜!!」
「お願い!!私たち旅をしてとっても疲れているの。
今日一日でいいからここで休ませて?」
「やだやだ!!人間きらいだ!!出て行け〜!!」
「お願いお願いお願い!!」
「ダメ!!ぜ〜ったいにダメ!!人間は災いをもたらす。絶対にダメ!!」

梨華ちゃんがむくれて私のもとにやってきた。

「クルド族って、頑固だね!」

ふてくされた梨華ちゃんにかわって今度はコンちゃんが交渉。
すると、クルド族さんはすんなりとOKだしてくれちゃった。
きっと、また作戦でも思いついたんだろうね。

「なんでコンコンだとOKなのよ!」

不機嫌度最高潮の梨華ちゃん。

「なんでって・・・コンちゃん人間じゃないからじゃん?」
「あ!なるほど!!」


単純・・・

337 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:19
クルド族は、平和を愛する一族。
昔はイーストタウンの森に住んでいたんだけど、
魔物が多くなったから平和なこの地に引っ越してきたんだって。

イーストタウンで一族のほとんどがやられちゃったから、
今はわずかに生き残った仲間だけでほそぼそと暮らしているんだって。

私たちがお世話になったのは、クルド族の若者ドラ。
ドラはこの小屋に一人で暮らしているんだ。
家族はイーストタウンの森で魔物や人間によって殺された。
だからドラは人間がきらいなんだ。

でもこの小屋は、もともとは人間が暮らしていた場所。
人間はきらいなくせに、人間がいた場所に住むなんてね?


変だよね?


338 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:20
初めは人間嫌いって言ってたのに、
ドラはどんどん私たちと仲良くなった。
夜には、森中のクルド族を集めて宴会をするなんて言い出して、一気に歓迎ムードになっちゃったんだ。

クルド族っていうのは、そうとう頭のいい人たちみたい。
森中の仲間を呼ぶのに、地下の磁気を利用した簡易電話を使ったり、大
気圧をうまく使いこなしてすぐに水を沸かしたり。

なんか、科学の世界も極めるとすごいのね・・・
ってかんじで感心しっぱなし。

日が落ちるころになると、森中のクルド族が集まりだして、
小屋の中は大賑わいになっちゃってた。
それから宴が始まって、私たちはクルド族のもてなしを心から喜んだ。


でも・・・招かざる客も来ちゃったんだ・・・


339 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:22
『コンコン』

宴の盛り上がりもだいぶ覚めたころ、その客はやってきた。

「はいよぉ?だ〜れ?」

すっかりお酒に飲まれちゃったドラが扉をあける。
その瞬間に、家の中に炎が吹き込んできた。

「ドラ!!」

ドラは扉を開けたわけだから、きっと炎を直撃してるはず。
梨華ちゃんがドラの安否を気にして扉の方へ向かおうとする。

「ダメ!!」

私が梨華ちゃんを止めた。

「みんな逃げて!!」

矢口さんの指示で、クルド族が家中の窓から外へと逃げ出していった。

「誰だ!!」

よっすぃが私たちの前に立ちはだかって剣を抜いた。
その瞬間に二度目の火炎。

「フォルドムです!!」

コンちゃんが相手を教えてくれた。

「フォルドムは、火を噴く野獣です!
本来は人に危害を与えるようなマネはしないはずなのに!!」

340 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:23
「さすが、『智』の玉を持つものは鋭いねぇ」

フォルドムの影から現れたのは、黒マントの女の人。

「誰だ!!」
「おやおや。血気盛んだこと。
そんなんじゃ、そこのお姫様は守れなくてよ?ナイトさん?」

挑発されて頭に血が上ったよっすぃは女の人めがけて走った。

「ガルム!」

女の人の指示でよっすぃの前にたちふさがったのはガルムだった。
ガルムに切りつけるよっすぃ。
でも、ガルムの皮膚は硬くて剣は刺さったものの、それ以上どうすることもできない体制になっちゃった。

「だから、喧嘩っ早い子は長生きしないのよ?フォルドム!」

女の人の指示にフォルドムが火炎をよっすぃに浴びせる。

「ブリザード!!」

火炎を直撃する前に、矢口さんが魔法で阻止した。
よっすぃはいったんガルムから離れて私たちのもとに戻った。

341 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:25
「あんた誰だ!!」
「失礼ね。あんたじゃないわよ。口の利き方勉強しなさい?
私はベガ。あとは、そこにいる子ギツネさんにお聞きになって?」

ベガの言葉にコンちゃんが口を開く。

「ベガは、ソウルハンターです。
魔物も猛獣も全ての生き物の心を操ることができるんです」

「なるほどね。じゃあ昨日、梨華ちゃんを襲わせたのもあんたの仕業だな!!」
「頭に血が上りやすいわりには、かしこいじゃないナイトさん」

「てっめぇ!許さねぇぇぇ!!!」
「よっすぃダメ!!」

武器もないのにベガに飛び掛りそうになったよっすぃを梨華ちゃんが抑えた。

「ホワイトウォール!!」

かわりに矢口さんが前に立ってベガに攻撃をしかけた。
ベガは向かってくる攻撃にガルムをたてにさせた。
攻撃を直撃したガルムは無残にも息絶えた。

「攻撃しても無駄よ?この森には何万匹もの野獣がいるんだからね。
代わりはいくらでもいるのよ」
「ひどい!!」

梨華ちゃんが前にでる。

「ひどいよ!!こんなのひどすぎるよ!!」
「あらあら?さっすがお姫様。慈悲深いこと」

「今すぐ、この子達を解放して!!」
「それは、飲めない交渉ね?」

「解放して!!」
「解放するのは、あなたたちの命をもらってからよ!!フォルドム!!」

ベガの命令に、さっき以上の火を放つフォルドム。

「丸焼きにおなり」

そう言ってベガは姿を消した。


心を無くした野獣たちを置いて・・・

342 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:26
火の海の中、フォルドムたちが暴れ始めた。
矢口さんと保田さんが魔法で対抗するんだけどまったく効果なし。
よっすぃも剣を取り戻したのはいいんだけど、炎属性の攻撃しかできないから火に油。

「このままじゃみんな丸こげになっちゃうよぉぉぉ!!」

梨華ちゃんが私にしがみつく。

「コンちゃん、なにか作戦は?」

「えっと、えっと・・・吉澤さんは攻撃不可、
柴田さんはまだ剣を使いこなせていないから危険、
矢口さんと保田さんの魔力じゃフォルドムは倒せないし・・・あ〜!!」

「え?」

「たしか、水を操れるナイトがいるはずですよね?!」
「って、愛ちゃん今はいないから!!」

コンちゃんもパニック状態みたい・・・
どうしよう。このままじゃ本当にみんな丸こげだよぉぉぉ!!

343 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:34
「あ・・・」

パニック状態だったはずの梨華ちゃんがフォルドムを見て固まった。

「なに?」
「泣いてる・・・」
「え?」

言われて見てみると、フォルドムたちは涙を流しながら暴れていた。
自分の心を奪われたフォルドムたち。本当はこんなことしたくないんだよね。


この森で穏やかに暮らしていたのに・・・こんなの辛すぎるよ!!


「もうやめて!!」

そう言うと、梨華ちゃんは炎の中のフォルドムめがけて走り出した。
そして、燃え盛る炎の中のフォルドムに梨華ちゃんは抱きついた。

「梨華・・・ちゃん」


炎を恐れず、フォルドムを愛で包んだ梨華ちゃんは・・・本物のお姫様みたいに見えた。


美しい人って、こういう人のことなのかな・・・そう思った。

344 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:40
『姫を助けて!!』

いつもの声に我に返った私。
梨華ちゃんは完全に炎に飲まれていた。

『姫を助けて!!』

体中が熱くなって、炎の中に飛び込んだ。

「梨華ちゃん!!」
「柴ちゃん!!」
「もう!無茶なことしないでよ!!」
「でも!!」
「あ!危ない!!」

梨華ちゃんにフォルドムの火炎が直撃しそうになった。
・・・万事休す・・・

「よっすぃ!!」

梨華ちゃんをかばってよっすぃが炎を直撃した。
私は梨華ちゃんと怪我したよっすぃをなんとか炎の外へ連れ出した。

345 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:42
「よっすぃごめん・・・」
「これくらいかすり傷だよ」

保田さんがすぐによっすぃの怪我を治療してくれたから
大事にはいたらなかったけど、普通だったら致命傷だよ。

「バカ!!火の中に飛び込むなんて自殺行為だよ!!」

保田さんの言葉に梨華ちゃんは再びフォルドムを見つめた。

「なんにも悪くないのに!!」

梨華ちゃんは再び火の中に飛び込もうとした。

「ダメだよ!!」

よっすぃが梨華ちゃんを止める。

「でも!!」
「あいつら心を失っているんだよ!!
 なにを言っても無駄なんだよ!!」
「そんなことないよ!!」

よっすぃをふりきって再び炎の中に飛び込んで行こうとした梨華ちゃんを止めたのは・・・

里沙ちゃんだった。


346 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:43
「待ってください!私にまかせてください!!」

里沙ちゃんは自分の笛を取り出すと、フォルドムに向かって吹き始めた。


美しい音色・・・でも、心を無くしたフォルドムたち・・・
コントロールできるの?


そう思いつつも、みんな里沙ちゃんの笛の音に希望を託した。
美しい旋律は次第に全てを支配していった。
燃え盛る炎も次第に衰え、フォルドムたちの鬼気もおさまっていった。
心を無くした猛獣たちは、美しい音色に魅了されて浄化されていったんだ。

「ガキさんすっごい!!」

全てを沈めた里沙ちゃんに梨華ちゃんが抱きついた。

「よかった。収まって」

里沙ちゃんは、心なしか嬉しそうじゃなかったけど、とにかく一件落着してよかった。

「本当によかった・・・」
「梨華ちゃん!!」

力が抜けて倒れそうになった梨華ちゃんをよっすぃが抱きしめる。

「よかった。みんな元に戻って・・・」

フォルドムたちが元に戻ったことに安心して梨華ちゃんは眠りについた。

「無茶しやがって・・・」

眠りに落ちたお姫様をよっすぃはしっかりと抱きしめた。
347 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:44


「死ぬかと思ったよ。やっぱり人間きらいだ」


ドラはなんとか生きててくれた。
小さいってこういうときには便利みたい。


ドラの家は矢口さんが魔法で建て直してくれて、
前よりも立派になったのをみたら、またドラは人間大好き♪って言ってくれた。

348 名前:クルドの住む森 投稿日:2005/06/07(火) 15:48
「よっすぃ?」

真夜中、外に出ていたよっすぃの元に梨華ちゃんがやってきた。

「どこで育ったのか知らないけど、夜外に出るのは危険だよ?」
「大丈夫。頼りになるナイトさんがいるからね?」

その言葉に、二人は少しだけ笑った。

「体は大丈夫?」
「うん。ケメちゃんの魔法すっごいからね」
「そっか」

「よっすぃは?平気?」
「平気平気!うちって強いからね?」
「そっか」

「また・・・助けてもらったね?」
「約束だからね」
「愛ちゃんとのね?」
「うん」

「フォルドムさんたちは?」
「柴ちゃんとコンコンが森に放しに行ったよ」
「だから、二人ともいないんだ」
「コンコンいわく、フォルドムたちにも住処ってのがあるらしいよ」
「そっか。でもよかった。みんなもとに戻れて」

「・・・梨華ちゃんさ・・・」
「ん?」
「・・・いや。なんでもない」

「よっすぃがいてくれてよかった」
「え?」
「助けてくれるから」

「・・・これからだって・・・何度だって守るよ」
「え?」
「絶対に・・・今度は絶対に守るよ」
「今度?」

「あいつのことは、守れなかったから。でも今度は絶対に守る。
 また、こんな気持ちになる日が来るなんて思ってなかったよ・・・」
「え?」


それから、よっすぃは昔話を始めた・・・

349 名前:k・y 投稿日:2005/06/07(火) 15:55
川σ_σ|| <補足説明です。

ベガ:天星人。魔王に心を奪われ悪と化した星。
   相手の心を食いつぶし、自分の意のままに操ることができる。
   野獣だけでなく、人の心も食べちゃう、怖いお姉さん・・・
   
フォルドム:森に住む野獣。本来はおとなしいんだけど、ベガに操られて、
      猛獣になった。火を噴く野獣。

極悪非道なベガの登場です。今回は森の野獣たちが餌食になっちゃったけど・・・
今後も注目してください!

350 名前:レス 投稿日:2005/06/07(火) 16:07
>>329 :通りすがりの者さん
  今回もガキさんの活躍でなんとか危機を脱出しました。
  ソウルハンターのベガに操られた野獣の心をガキさんの
  笛の音色で取り戻しちゃいました♪
  今後もガキさんチェックしてくださいね!!
  では、次回もよろしくお願いします!!

>>330 :名無飼育さん :2005/06/01(水) 01:27
  さっそくのガキさんエールありがとうございます!
  コンコンやケメちゃんにはまだまだ違和感が残る
  ようですが、ガキさんも着実に心を通わせています?!
  これからも、ガキさん応援してあげてください!
  では、これからもよろしくお願いします♪  

>>331 :名無飼育さん :2005/06/02(木) 22:50
  よっすぃも、だんだん姫の魅力にはまってます?
  愛ちゃんがいない間にどんどんリード??です。
  次回はよっすぃの過去が明かされます!!
  よっすぃの悲恋・・・
  次回も、よっすぃ注目です!!よろしくお願いします!!

>>332 :名無飼育 :2005/06/05(日) 00:24
  登場キャラで一番ついていない柴ちゃんの応援ありがとうございます!
  これからも・・・どんどん災難な目に・・・??
  柴ちゃんの物語も今後始まる予定なので、楽しみにしていて下さい!
  もちろん??かなりついてないかんじになりそうですが・・・
  まだまだ先の話になっちゃいますが、よろしくお願いします!!

レスありがとうございます!ハーモニックメーカー新垣さんの
活躍いかがでしたか?次回はついによっすぃの過去が明かされます!
次回も楽しんでいただけるように頑張ります♪
では、これからもよろしくお願いします!!!
351 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/08(水) 07:17
 更新お疲れさまです。 ガキさんの笛は無敵ですね、今後もチェックしていきますよ。 ついによっすぃーの過去が・・・。 次回更新待ってます。
352 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/08(水) 13:04
途中まで読んでてもしや垣さん出番ナシ?かと思いましたが、やっぱりすごいっすね。
そして、ヨッシィの過去・・・。あいつとはもしやあの人?
梨華ちゃんとの関係もさらに深く・・・。
次回更新楽しみに待ってます。
353 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/08(水) 23:50
ガキさん、さすがっ!!
これからもガキさんの活躍に期待してます。
次回はついによっすぃの過去が・・・
よっすぃの相手、すっごく気になります。
よっすぃといえば・・・あの人かあの人??
更新、待ってます!!!!
354 名前:松本氏 投稿日:2005/06/10(金) 20:05
おお!いつの間にか更新されてる!?
ガキさんが仲間になったんですね? しかも、大活躍してるし。
次回を楽しみに待ってます。
355 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:44

よっすぃは、イーストタウンで育った。
貧しい家庭に生まれ、5歳の頃には親兄弟全員死に別れていたんだ。


そんなよっすぃの面倒を見たのは矢口さん。
理由は知らないけど、なんだかんだで面倒を見る関係になったんだって。
よっすぃは小さい頃から強かったけど、
イーストタウンで生き残れたのは矢口さんのおかげ。


よっすぃが15歳の時、よっすぃは初めて恋をした。
相手は、峠の茶屋のお姉さん。


矢口さんのお使いで、クルド族に会いに行く時に
通った峠の茶屋のお姉さんによっすぃは恋をしたんだ。
356 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:45
「今日も、お使い?」
「うん。やぐっつぁん人使いがあらいんだよね!」

「大変ね。はい。お茶」
「うっわぁ。ありがと。人使いあらいけど、やぐっつぁんには感謝しちゃうよ」

「え?」
「だって。おかげでうちはアヤカに会えるんだからさ♪」

「お世辞うまいわね!」
「お世辞じゃないよ!!ねえねえ?好きな人いるの?」

「さあ?どうでしょ?」

相手は、3歳年上のアヤカさん。
きれいで気立てがよくて、よっすぃはアヤカさんに夢中だった。
矢口さんのお使いは口実で、よっすぃはアヤカさんに会いたい一心で毎日のように茶屋に通いつめたんだ。

アヤカさんにとって、よっすぃはまだまだ子供だったけど、
それでもよっすぃは思いをぶつけるようにアヤカさんのもとに通い続けた。
357 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:47
「な、なんだよこれ!!」

ある日、よっすぃが茶屋に行くと、いつもと様子が違った。
荒らされた店先。よっすぃは異常な光景に急いで中に入っていった。

「まこと!!」

まことちゃんが隅で泣いているのを見つけた。

「吉澤さん!!お姉ちゃんが!!」
「は?アヤカになにかあったの!!」

「ガラの悪いお兄さんに連れて行かれちゃった!!」
「なんだって!!ざっけんな!!どっちに向かった?」

「多分、イーストタウン!」
「って、来る途中では会わなかった・・・そっか。あっちの道だ」

よっすぃは、まことちゃんに詳しい事情も聞かないでその場を走り去った。
358 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:48
「アヤカ!!」

道の途中で、よっすぃはアヤカさんを連れて行く男たちに遭遇。

「よっすぃ!!」
「誰だてめぇ!」

「アヤカを返せ!!」
「ん?あぁ。吉澤ね?お前、貧乏なくせに女囲うのかよ?100年早いぜ?」

「うっさい!!離せ!!」
「ガキのくせに生意気なんだよ!!魔女とつるんでやがるから手出ししなかったけど、
 てめぇ昔っからぶっ殺したいって思ってたんだ!!」

そういうと、男たちはよっすぃに剣を向けた。

「ふっ」

そんな男たちを見て、よっすぃはニヤッと笑った。
よっすぃにとって、囲まれるのはよくあること。
いつもに比べれば相手が少なすぎるくらいだったから。

「やれ!!」

リーダー格の男の支持で一斉によっすぃに剣が向けられた。

「あいにく、うちって強いんでね?うりゃあぁぁぁぁ!!!!」

よっすぃは腰を落として剣を抜いたかと思うと、男たちを瞬殺した。

359 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:49
「よっすぃ・・・」
「アヤカ!大丈夫!!」

アヤカさんは目の前で起きた光景に少し戸惑いながらもよっすぃに抱きついた。

「こいつらなんなんだよ!!」
「遊郭の人・・・」

「は?」
「うちの親の借金・・・返せなくって。
 私、遊郭に行くことになったの・・・」

「そんな!!」
「・・・」

「そんなのやだよ!!!」
「・・・しかたないの」

アヤカさんの目から涙がこぼれた。

「借金っていくら?うちが払う!!」
「・・・1000万円」

「・・・って」
「よっすぃには無理だよ。私もう決めたから。だからいいの!!」

「よくないよ!!」

抱きしめられていたよっすぃから身を離して、アヤカさんは歩き出した。

「アヤカ!!ダメだよ!!」
「いいの!平気!!」

「ダメだよ!!」
「しかたないの!!お願い!!私のことはほっておいて!!」

アヤカさんは、よっすぃの前から逃げるように走り去った。
360 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:50
貧しい人が遊郭に身売りすることなんて、イーストタウンではめずらしくもない。
でも、相手がアヤカさんである以上、よっすぃはほおっておくことができなかった。

「よっすぃ!!」
「へへへっ。来ちゃった?」
「でも!!」

その日のうちに、よっすぃはアヤカさんが売られた遊郭を探し出した。

「おっと!悪いけどお客さんだからね!ちゃんとお金払ったから!」
「そう・・・」

アヤカさんは寂しそうな目をすると、着物を脱ぎ始めた。

「ちょ!!ちょっと待ってよ!!!」

よっすぃが慌ててそれを止めた。

「ここは・・・そういうことをするお店なんだよ!!
 なんで?なんで来たのよ!!よっすぃに、そんな姿見られたくなかったのに!!」
「アヤカ・・・」

「好きでもない人と、そういうことをする所なの!
 だから・・・好きな人には来て欲しくない・・・」
「アヤカ!!」

よっすぃはアヤカさんを抱きしめた。

「うち、毎日来るから!他の誰にもアヤカを抱かせたりしないから!!
 借金返済し終わるまで、毎日来るから!!」
「・・・」

361 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:52
その約束通り。よっすぃは毎日アヤカさんのもとに足を運んだ。

「お金大丈夫?」
「平気平気!うちさ、これでも結構稼ぐんだぜ?」

「って、人を騙してでしょ?」
「ひっどいな。詐欺だって立派な仕事だよ。
 みんなに一時の夢を見させてあげてるんだからね?」

「夢か・・・」
「ん?アヤカの夢って?」

「・・・好きな人と、ずっと一緒にいること」
「それって・・・うちのこと?」

「さあ?」
「じゃあ、うちの夢!」

「ん?」
「アヤカとずっと一緒にいたい!」

よっすぃの言葉に、アヤカさんは笑った。

「よっすぃ?」
「ん?」


「好きだよ」


そして、アヤカさんは初めてよっすぃにキスをくれた。


「アヤカ・・・好き」


二人の関係は、一気に恋から愛へと加速したんだ。
そこが、遊郭じゃなければ、立派な純愛。


ううん。遊郭だけど、立派な純愛。
二人は心のそこから愛し合ったんだ。


362 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:53
だけど・・・二人の幸せは長くは続かなかったんだ・・・


「どういうこと!!」
「・・・」

「なんでだよ!!」
「・・・」

半年が過ぎた頃、アヤカさんはセンタータウンの貴族のもとへお嫁に行く話が決まった。

「なんでだよ!!」
「・・・ごめん」

「わけわかんないよ!!うちの他に付き合ってた人がいたわけ!?」
「違う!!」

「じゃあなんで!!なんで!!」
「・・・ごめん」

「ごめんじゃわかんないよ!!」
「ごめんね!!」

「うちと、ずっと一緒にいるって約束したじゃないか!!」
「一緒にいたいよ!!ずっと一緒にいたいよ!!でも!!しかたないの!!」

「なんだよそれ!!」
「わかって!!」

「なにをわかれっていうんだよ!!
 うち以外の奴にアヤカが抱かれるのを黙って見てろっていうわけ?
 そんなの認められるわけないじゃん!!」
「・・・よっすぃ」

「アヤカはいいの!!」
「こうしなきゃ、借金が返せないの!!」

「・・・」
「お父さんが決めたことだから・・・」

「いつまで?」
「え?」

「いつ行くの?」
「・・・」

「いつまで!!」
「三日後」

「わかった」
「え?」

「三日後までに、うちが1000万用意するから!!」
「よっすぃ」

「アヤカを他の誰かに渡したりはしない!!」
「でも・・・」


「うちを信じて!!」
「・・・」


「信じて!!」
「うん」

363 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:55
そんな大金、当てなんてなかった。
でも、三日のうちにお金を用意するって約束した以上、よっすぃはやらなきゃいけなかった。

アヤカさんは、よっすぃを信じて遊郭をやめ、茶屋に戻った。
三日後。よっすぃがお金を持って茶屋に行くって約束したから。

よっすぃを信じて、よっすぃに全てを託したんだ。

「あ〜!!金金!!やぐっつぁん金!!」
「って!いくらなんでも1000万は無理っしょ?」
「なんでだよ!!やぐっつぁん魔女だろ?金くらい出してよ!!」
「それができたら、もっとマシな暮らししてるっての!」

よっすぃはいつもよりもヤバめの仕事をどんどんこなした。
詐欺。盗み。ひったくり。恐喝。強盗・・・って悪の極みなんだけどね・・・

でも、それじゃらちがあかないってことに気がついたのが二日目。


そして、一世一代の大勝負に出た。

364 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:56
よっすぃの大勝負。それは、センタータウンの貴族の家に盗みに入ること。
センタータウンはお金持ちがたくさんいるから。


中でも一番お金を持っていそうな家を狙ってよっすぃは盗みに入った。
案の定。お金も財宝もその家には溢れていて。
生まれて初めて目にする金銀財宝をよっすぃは夢中になってカバンにつめた。


でも・・・全てがうまくいくはずなくて・・・
最後の最後で警報が鳴って、よっすぃは捕まってしまった・・・


それから、1週間よっすぃは牢屋に入れられて・・・
約束の日は過ぎてしまったんだ。


でも、よっすぃは約束を忘れたわけじゃなかった。
警察の人に伝達を頼んで、アヤカさんのもとにお金を届ける工夫をしたんだ。


お守り袋の中に時価1000万円以上すると思われる宝石を何個か入れて、それを届けるように頼んだんだ。
すんなりそれが届けば十分間に合う。


だから、よっすぃは1週間後には愛する人に会えると信じていた。

365 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:58
「まこと!!」

でも・・・

「吉澤さん・・・」

1週間後に牢屋から出たよっすぃが茶屋を訪れたときには、アヤカさんの姿はなかった。

「アヤカは?」
「・・・」

「え?アヤカになんかあったの!!」


「・・・お姉ちゃん・・・自殺した」


「は?」


その言葉に、よっすぃの頭の中が真っ白になった。


「何言ってんの?なわけないじゃん!!ちゃんとお守り届けただろ!!」
「・・・お守りは・・・間に合わなかった」

まことちゃんがお守りを握り締めた。

「ウソだろ・・・ちゃんと・・・」
「お姉ちゃん。吉澤さん以外の人のもとへは行けないって・・・それで・・・」
「なんでだよ・・・」


アヤカさんは・・・よっすぃが初めて愛した人は・・・そんな形でこの世をさったんだ。


大切な人を失ったよっすぃ。
涙もでないほどの悲しみに包まれて、ただ呆然と残された人生を送るしかなかった。


悔しくて悔しくて・・・


悲しくて悲しくて・・・


寂しくて寂しくて・・・


そして自分を許せなかった。


そして、よっすぃは悲しみを封印することで、生きる術を見つけたんだ。

366 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 01:59
話し終えたよっすぃの目からは涙が溢れていた。
封印した悲しみを解き放った瞬間。


「よっすぃ・・・」
「守れなかったんだ。大切な人」


「・・・」
「でも!今度は守るから!!」


「え?」
「君を・・・梨華ちゃんを守りたいんだ」


「よっすぃ・・・」
「うちが必ず君を守る」

367 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:00
「うっ!うわぁ!!」
この、あと一歩で恋に落ちそうな雰囲気を邪魔しちゃったのは・・・

「柴ちゃん?」
「あ・・・ははは・・・」

家の前で話してる二人に気を使って身を潜めていたんだけど、
コンちゃんが体勢を崩した拍子に二人の前に転げ出た私・・・

「何してんの?」

心なしか冷たいよっすぃの眼差し。

「いや〜・・・ちょっと・・・邪魔しちゃ悪いかなって・・・」
「十分邪魔してるけど?」

よっすぃやっぱり怒ってる・・・

「ごめんなさい」
「柴ちゃん、みんな無事に森に帰せた?」

梨華ちゃんは怒ってないみたいね。

「うん」

よっすぃは家の中に入っていっちゃった。

「梨華ちゃんごめんね・・・」
「え?なにが?」


気づいてないのね・・・鈍感・・・

368 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:01
「おかしいな・・・」

その晩、コンちゃんは難しい顔で本を読んでて、なかなか寝付こうとしなかった。

「どうしたの?」

みんな寝ちゃったのにってことで私が声をかけた。

「この森は、惑わしの森なんです。
 それなのにベガは私たちの場所を探し当てた。
 ドラの家にいることを知っていた・・・おかしいと思いませんか?」
「そう言われるとそうだね?」

コンちゃんはしきりに本をめくって何かを調べているようだった。

「柴田さんは先に寝てください?」
「う、うん・・・でも・・・」

なんか一人置いていくのも悪いしね・・・
結局明け方までコンちゃんに付き合って・・・

せっかくの久々の布団で眠ることなく私たちはその場所で転寝をした。
369 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:03
翌朝、ドラにお礼を言って私たちは再び旅にでた。

里沙ちゃんが仲間になったおかげで、毎晩私たちは里沙ちゃんの笛の調べを楽しんだ。

「ガキさんの笛、本当に癒されるよねぇ」
「やぐっつぁんの老体も少しは若返るって?」
「よっすぃ言ったな?!」

二人のやりとりを見て笑った私はコンちゃんに同意を求めた。
コンちゃんは相変わらず、里沙ちゃんのことが気にかかってるみたいで、いつも難しい顔をしていた。

「はははっ。面白いね?」
「え?あ、はい」

「コンちゃん?里沙ちゃんのことそんなに気になるの?」
「・・・義の霊玉は・・・」

「バハムンクはきっと、他の霊玉の持ち主が持ってるんじゃない?
 ほら、他にも・・・えっとなんだっけ?忠だっけ?とにかく二つの霊玉があるんでしょ?」
「忠の霊玉・・・」

忠の霊玉って言葉に、コンちゃんは私から顔をそらした。

「コンコンは、なんでそんなに昔話知ってるの?」

今度は梨華ちゃんがコンちゃんに尋ねる。

「それは・・・その・・・」
「そっか!本に書いてあるんだね?」
「え?あ、はい」
「コンコン?もっと教えて欲しいな?」
「え?」

梨華ちゃんがコンちゃんに近寄る。

「例えば・・・恋の話とか?」
「は?」

予期せぬ発言にコンちゃんは本を落とした。

370 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:04
「姫と八人の剣士でしょ?恋に落ちた!とかそういうのないの?」

そういうことになると、やる気出しちゃうんだもんな・・・
この人は・・・ってかんじで私が梨華ちゃんを静めようとしたらコンちゃんが口を開いた。

「ありました・・・」
「おぉ!!」
「大恋愛・・・」

コンちゃんはまたうつむいた。

「で?で?で?」
「ナイトと姫が結ばれたとか?ないの?」

さっきまで矢口さんと小競り合いをしていたはずのよっすぃもいつの間にかに会話に加わっていた。

「ナイトたちはみなさん、それぞれに恋をしました」
「おぉぉ!!」

ナイト・・・愛ちゃんとよっすぃ。それにこれから加わる仲間??
コンちゃんの発言によっすぃ大興奮。

「バハムンクの持ち主。彼女は生まれ変わっても必ず同じ人を愛すると誓ってこの世を去ったんです」

バハムンクってことはよっすぃでも愛ちゃんでもないんだ。
それを聞いてよっすぃはがっかりしたみたい。

バハムンク・・・コンちゃんが気にしていた義の霊玉を持ってたはずのナイトの剣。
コンちゃんは落ち込んだよっすぃじゃなくて、私を見つめていた。

「ん?」
「いや、なんでも・・・先に寝ますね」

コンちゃんはその場から離れてテントに入っていった。
371 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:06
「バハムンクの持ち主か♪どんな人なんだろ♪」

すっかり、運命の恋人に浮かれモードの梨華ちゃん。

「美貴ちゃんはもういいんだ?」

あなたは第一世界の人間なんだよってことで忠告。

「そうだった。でも・・・ふられたようなもんだったしな?」

そうだった・・・美貴ちゃんは私にいきなり告白しちゃったんだよね・・・
忘れさせていたのに思い出させちゃって・・・墓穴をほった。

「ははは・・・まだチャンスあるって!」
「コクられた人に言われてもね・・・」

「まぁ、過去のことなんてふっきって!新しい恋すればいいじゃん!!」

いきなりよっすぃが会話に入ってきた。

「な、なに?」
「昔々は姫を射止めたのはバハムンクの剣士だったとしても!今は違うってことだよ!」

さりげなくアピールしてるみたいだけど・・・絶対に梨華ちゃんには伝わらないと思うな?
なんてったって、鈍感だから・・・

「そうだよね!柴ちゃんに気持ちないんだし、美貴ちゃんだって戻ったら私に振り向いてくれるかもしれないしね!!」

ほらね・・・梨華ちゃんの言葉によっすぃの笑顔はひきつっていた。

「ま、いいや!ガキさん!もう一曲吹いてよ!!」
「はい!」

よっすぃの恋心は近づいたり離れたり・・・


昔々の大恋愛・・・それはこれから私たちの物語に大きくかかわってくるんだけど・・・
まだまだ先のお話です。
372 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:09
森は、奥にいけば行くほど道が険しくなって行って歩くのもやっとになった。

「あなたたち、まだ生きてたの!!」

私たちの前に、またしてもみうなが現れた。

「この森に、不穏な空気を呼び起こすことは許さない!!」
「待って!!」

梨華ちゃんが止めたにもかかわらず、問答無用でみうなは剣を抜いた。
それを見てよっすぃが梨華ちゃんの前に立ちはだかる。

「炎上!!」

みうなの炎が私たちを取り囲んだ。

「この炎、この間の炎もお前の仕業か!!」
「あなたたちが森を破壊したからだ」
「烈火真炎!!」

燃えてるっていうのに、みうなに逆上してよっすぃは攻撃を放った。

「「よっすぃバカ!!」」

矢口さんと保田さんが二つの炎の消火を試みる。
でも、炎が消えるはずはなくって。

「はははっ」

炎の向こうからみうなの高笑いが聞こえた。

「くっそぉぉぉ!!」
「よっすぃ落ち着けよ!!」

すっかり頭に血が上ったよっすぃを矢口さんがなだめる。
よっすぃは、攻撃できそうにないなって思って私が剣に手をかけた。

「ダメです!!」
「え?」
「クラウソラスは、もろ刃の剣。剣の力は相手を倒すと同時に自分にも牙を向くんです。今使うのは危険です!」
「え・・・」

この剣ってそんな危険なものだったの・・・どうやら私の剣はリスクを伴っちゃうみたい。私は剣を握った手を放した。

「どうしよう、このままじゃ」

梨華ちゃんの言葉にコンちゃんが本を開く。
でも、解決策なんてきっとないわけで・・・
炎の量はこの間の倍みたいだしね・・・

373 名前:愛した人 投稿日:2005/06/18(土) 02:10
「朱雀の森を荒らさせない!!炎柱!!」

みうなの放った次の攻撃に、私たちの足元がだんだんと熱くなってきた。

「な、なに?」
「地下のマグマを呼び起こして、一気に炎上させるつもりです!」

コンちゃんの言葉に、足元の異変が恐怖に変わった。

「どうすればいいの!!」
「地面が炎上する前に逃げるしか・・・」
「それって・・・」

この炎の中に飛び込め!ってことだよね・・・

「無理じゃ〜ん!!」

梨華ちゃんの言葉にみんな覚悟を決めた。

「コンコンなんとかなんないの!!」
「・・・」

「まりっぺ!!」
「・・・」

「ケメちゃん!!」
「・・・」

「よっすぃ!!」
「・・・」

「ガキさん!!」
「・・・」

「柴ちゃん!!」
「・・・」


この炎さえ消せれば・・・この炎さえ・・・


こんな時に彼女がいてくれたら・・・

374 名前:k・y 投稿日:2005/06/18(土) 02:15
川σ_σ|| <補足説明です!

炎上:みうなの攻撃。周囲を炎で取り囲み中心部へ行くまで焼き尽くす技。
   今回はよっすぃのおかげで、炎の量が倍増です・・・

炎柱:みうなの攻撃。地下のマグマを呼び起こして、一気に噴火させちゃう技。
   もちろん、直撃したら・・・

 再び現れたみうなに、絶体絶命の私たち。この炎を消すには・・・
 真面目で、ひたむきな・・・彼女がいてくれたら・・・
375 名前:レス♪ 投稿日:2005/06/18(土) 02:34
>>351 :通りすがりの者さん
 よっすぃの過去がついに明かされました。
 今までお金に執着し続けたよっすぃの過去・・・
 よっすぃがお金に執着する理由、理解していただけましたか?
 そしてまたまた、大ピンチ!!炎に強い剣士と言えば!?
 次回はついに・・・よろしくお願いします♪

>>352 :名無飼育さん
 よっすぃの悲恋いかがでしたか??
 よっすぃの初恋相手、いろいろ悩んだすえに、
 きれいなお姉さんにピッタリだと思って、登場してもらいました。
 よっすぃと梨華ちゃんの恋の行方は・・・??
 鈍感な梨華ちゃんにめげず、今後もよろしくお願いします!!

>>353 :名無飼育さん :2005/06/08(水) 23:50
 よっすぃといえば・・・この人!!リアルでは仲いいですし?
 きれいなお姉さん、この後また登場するかもしれませんので・・・
 忘れずにいてくださいね?!ガキさんの応援もありがとうございます。
 コンコンはまだまだ気がかりなようですが・・・
 これからも、よろしくお願いします!!

>>354 :松本氏 :2005/06/10(金) 20:05
 更新ペースが遅いながらも・・・ひそかに更新しております。
 今回はよっすぃの過去の悲恋物語でしたが、いかがでしたか?
 そして、またまた大ピンチです!!こんな時、彼女がいてくれたら・・・
 炎に強いあの人!真面目で真っ直ぐなあの人!よっすぃのライバルのあの人!
 次回もお楽しみに!よろしくです!!

 レスの数々、ありがとうございます!!本当に励みになります♪
 物語は、長編予定なので、まだまだ先は長いのですが、
 これからもご愛読いただけるように頑張ります!!
 そして・・・次回はついについに!!ついにあの人が・・・!!!
376 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/18(土) 09:54
更新お疲れさまです。 よっずぃー(TДT)〃     かなり泣ける話じゃないですか!!        そんな事があっても立ち向かう気持ちが生まれたなんて凄いですよ!!    絶体絶命のピンチ!?( ̄□ ̄;)!! か、かなりヤバいです!! ハッ( ̄□ ̄;)!!つ、ついにあの方がご登場ですか!? 次回更新待ってます。
377 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 21:27
よっすぃ!!そんな過去があったとは!!!
お金に執着する理由がわかりました。
そしてそしてそして!!!次回はいよいよ☆
あの人が登場ですね???炎に強い剣士ってやっぱりあの人???
すっごくすっごくすっごく楽しみ!!次回待ってます!!!
378 名前:名無し 投稿日:2005/06/21(火) 16:46
はじめまして。一気に読ませてもらいました!!
すっごくおもしろいですね!!
これからも、応援します!!次回の展開がすごーく気になります!!
ちなみに、ミキティファンです。彼女の登場は??期待しつつ・・・
頑張ってください!!
379 名前:名無し 投稿日:2005/06/21(火) 16:46
すみません!ageちゃいました・・・
380 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/22(水) 00:31
成る程、ヨッシィにはそんな過去が・・・。「あの人」の予想ハズれました(涙
しかし、ヨッシィも惜しいところで邪魔が入りましたね・・・w
彼女にとって最大の敵は身内にひそんでいる?
で、コンコンがガキさんを気にしている理由・・・まさか!?(今度こそ!)
では次回、あの人の登場を期待しつつ・・・更新がんばってください!
381 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:31



「真水龍舞!!!!!!」



このちょっと訛った幼い声は!!



「「「「え!?」」」」


救世主は突然現れた。


水龍は一気に炎を飲み込んでくれて、
ものすごい勢いだった炎はすっかり消火された。
382 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:33


「愛ちゃん!!」
「姫!!無事ですか!!」


とにかく私たちはその場から離れた。
私たちが逃げた直後に地面が爆発・・・
愛ちゃんがもう少し遅かったらって思ったら顔がひきつった。

「姫!無事ですか!!」
「うん!」

ホッとした愛ちゃんに梨華ちゃんが手を差し伸べる。

「愛ちゃん、お帰り?」

その言葉に、愛ちゃんは涙ぐみながら梨華ちゃんの手を握り返した。

「遅くなってすみません。無事でなによりです」

梨華ちゃんは愛ちゃんの手をひいて立ち上がらせると、おもいっきり抱きしめた。

「お帰り」
「姫・・・」
「無事でよかった。愛ちゃんが無事でよかったよ」


愛ちゃんはその言葉に少し涙ぐんだみたいで、
梨華ちゃんの肩に顔を伏せた。

383 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:34
久々の再開でみんな嬉しくて、話がつきることはなくて。

それから、愛ちゃんに今までの旅のことや、コンちゃんと里沙ちゃんの紹介をしたりで、結局日が暮れちゃった。

「コンコンはすっごく頭がいいんだよ!でね!
 ガキさんは笛で相手を操ることができるの!すごいんだよ!!」

一番はしゃいでるのは梨華ちゃんで、愛ちゃんはそんな梨華ちゃんの話を笑顔で聞いていた。


ようやく大好きな梨華ちゃんのそばにいることができるようになったナイトは、以前よりも少しだけ大人っぽく見えた。


「よっすぃ?梨華ちゃん愛ちゃんにとられちゃったね?」

矢口さんがよっすぃをからかう。

「あいつ、すっごく梨華ちゃんに会いたかったんだって顔してるし。
 まぁ、梨華ちゃんはあんなガキ相手になんかしないし。今日は特別」

よっすぃも、愛ちゃんが戻ってきたことは嬉しいみたい。でも素直じゃないから、嬉しい!なんて言えないんだ。

384 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:36
「高橋?」

梨華ちゃんと会話をしていた愛ちゃんを保田さんが呼んだ。

「はい?」
「ちょっと、見せて?」
「え?」

保田さんは愛ちゃんの袴を捲り上げて、足を診察した。

「やっぱり・・・あんた!まだ完全に治ってないじゃない!!」
「そんなことないです!」

愛ちゃんの左足は少しだけはれていた。
アルタイルとの死闘の怪我がまだい癒えていないみたい。

「いつも姿勢のいい高橋が、左重心で立ってるからおかしいと思ったのよ。
 ったく。これくらいだったら他の人ならいいけど、あんたは魔術も薬も効かないんだからね!」
「ごめんなさい・・・」

「帰れ!って言ったところで、ここまで来ちゃったし、仕方ないけど、必ず怪我したら私に言いなさいよ!」
「はい!」

「もう!ケメちゃん怖いよ?愛ちゃん久々なんだしさ?もっと優しく言ってあげなよ?」

梨華ちゃんが恐縮しちゃった愛ちゃんの肩を叩いた。

「高橋は大切な仲間でしょ?もしもの事態なんてもう勘弁なのよ」

口調は厳しいけど、保田さんなりに、愛ちゃんのことを気遣ってるんだ。

「圭ちゃんやっさしい!」

よっすぃに言われて、保田さんは少しだけ顔を赤くした。

385 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:37
「いいな・・・」
「え?」

みんなのやり取りを見ていた里沙ちゃんがつぶやいた。

「仲間っていいですね・・・」

里沙ちゃんはすごくさびしそうな顔をしていて、私は返す言葉を失った。

「・・・私、小さい頃から、ハーモニックメーカーの能力のせいで、
 化け物扱いされてきたから・・・仲間なんかいなかった・・・」

魔女狩りをするくらいだから・・・特殊な能力の持ち主はこの世界では嫌煙されるんだ。

「そっか・・・」
「あんな仲間がいたら・・・悪魔に心を売ったりしなかった・・・」


里沙ちゃんのつぶやいた意味深な言葉に少し驚いて横を見つめた。


「え?」
「仲間っていいですね」


見つめた里沙ちゃんの顔はいつものように穏やかだったから、その言葉に深い理解は求めなかった。

「でもさ?もう仲間できたじゃん?」

私の言葉に里沙ちゃんは少しためらってから顔を上げた。

「みんな仲間だよ?霊玉持ってる仲間だよ?
 あ・・・私持ってないけどね・・・とにかく仲間なんだから!」
「そうですね・・・」

里沙ちゃんの孤独の闇・・・そのときはまだ気がついてあげられなかったんだ。
386 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:42
「姫?」

その夜更け、テントを抜け出した梨華ちゃんを愛ちゃんが追った。

「眠れませんか?」
「あ、愛ちゃん。ちょっと、外の空気を吸いたくなったの」
「でも、夜は危険です。この森には猛獣がたくさんいますから」

愛ちゃんはやっぱりいつも梨華ちゃんを気にしてくれてるんだ。
その思いに、梨華ちゃんは笑顔を向けた。

「え?」

「愛ちゃんがいなくなって、大変だったんだから」
「すみません」

「アルタイルにさらわれたり、ガルムにさらわれたり・・・」
「すみません!!」

「でも、もう大丈夫だね?」
「え?」

「愛ちゃんは私のことちゃんと守ってくれるもん。だから安心だよ」
「はい!守ります!!」

真っ直ぐな愛ちゃんの返事を聞いて梨華ちゃんはまた笑った。

「あ〜あ。うちだって梨華ちゃん守ったじゃん?」

よっすぃの声に二人が振り返る。

「吉澤さん!姫をさらわせたりするなんて!!約束したじゃないですか!!」

愛ちゃんに苦笑してから、よっすぃは梨華ちゃんの隣に腰を下ろした。

「よっすぃはちゃんと守ってくれたよ?」
「ほらね?」

「でも!」
「二人ともこれからも、しっかり守ってね!」

梨華ちゃんは二人の手を握るとそのままテントに戻っていった。

「姫は、私が守ります!」
「何言ってんの?言っとくけど、お前がいないうちに梨華ちゃんの心はうちに傾いてんだからね?」

「そんなはずありません!!」
「ま、うちがバシッと梨華ちゃん守っちゃうからお前の出る余地はないって」

「吉澤さんみたいにいい加減な人に姫は任せられません!!」

よっすぃと愛ちゃんの言い争いはその後もずっと続いた。
387 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:43
「あ〜あ。あのバカどもまた喧嘩してるよ」

テントの中まで響く二人の言い争いに保田さんが呆れつつも嬉しそうに言った。

「本当に仲がいいんだから」

矢口さんも嬉しそう。

「梨華ちゃん、置いてきちゃってよかったの?」

喧嘩の発端になったお姫様に私が忠告。

「いいのいいの。ああ見えて、仲良しなんだからあの二人」
「梨華ちゃんさ・・・」

「ん?」
「鈍感だよ・・・」

「え?なになに?」
「なんでもない。お休み〜」

「ちょっと、柴ちゃん?」
「お休み」


そんな風に、今日は過ぎていった。

388 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:45
「あなたたち!まだ生きていたの!!」

翌朝、三度現れたみうな。

「残念でした!愛ちゃんがいるからもう炎なんて怖くないんだから!」

梨華ちゃんの言葉にみうなは剣を抜く。

「私の炎を消し去るとは、なかなかの腕前・・・勝負!!」
「それはできません!!」
「では、こちらから参る!!」

その言葉に、愛ちゃんはみうなの前に立ちはだかった。


「敵ではないあなたとは戦いたくありません!!
 無駄な血を流してはならんのです!!」


「・・・」


みうなに愛ちゃんはひざまずいた。

「今、この国のために朱雀の力が必要なんです。
 この国の平和のためにはどうしても必要なんです!!」

一心に思いを告げる愛ちゃんに、みうなも納得してくれたみたいで剣をおろした。

「わかりました。朱雀大路へ私が案内します」

みうなの言葉に愛ちゃんが顔をあげる。
389 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:46
「あ、あなた・・・次期国王・・・」

みうなの言葉に愛ちゃんは顔を伏せた。


「仲間を裏切りし国王・・・私にあなたを信じろっていうの!!」


「愛ちゃんは!愛ちゃんは一度だってウソを言ったことないよ!!
 いつもこの国のことを考えて、仲間のことを考えてるよ!!」


梨華ちゃんだった。愛ちゃんはその言葉に、うなだれた顔をあげる。
みうなはしばらく愛ちゃんの瞳を見つめた。


「なるほど。あなたの目、美しい。信じます」

390 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:48
私たちはみうなの案内のもと、マウントフェニックスのふもとにたどり着いた。

「え・・・この山登るの・・・」

マウントフェニックスは岩山で、絶対に素人っていうか一般人は登れませんってかんじだった。
こんなのプロのロッククライマーくらいしか登らないよ・・・
梨華ちゃんが断崖絶壁の岩山を見て早くも逃げ腰。

「無理だよね・・・」

よっすぃが無理ならみんな無理だよ。

「山を登らなくても、朱雀大路から行くことができます」

みうなの言葉に私たちはホッとした。

「その代わり、朱雀大路を越えるためには私たちと戦っていただきます」
「え?」

「巫女へと通じる朱雀大路は私たち朱雀三銃士が守っています。
 巫女のもとへ行くことが許されるのは真の勇者のみ。その力を我々が試すんです」

みうなはそう言うと再び剣を抜いた。

「わかりました。では、手合わせいたします!!」

みうなの前に歩み出たのは愛ちゃんだった。

「まって!」

梨華ちゃんが愛ちゃんを止める。愛ちゃんは怪我したら大変だからね。


「大丈夫です。必ず姫を朱雀のもとへお連れします!」


愛ちゃんは握り締めた梨華ちゃんの手を優しく外すとみうなに向かい合った。


ナイトとしての自覚と誇り。
それにふれた気がして、私たちは静かに愛ちゃんを見守る方を選んだ。

391 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:50
そして、愛ちゃんとみうなの決闘が開始した。

「炎上!!」

愛ちゃんの周りを炎の決壊で包むみうな。

「真水龍舞!!」

愛ちゃんはみうなの決壊を簡単に破り、水龍をそのままみうなへと向けた。

「抗炎!!」

水龍を防ぐために炎で防御するみうな。

「水龍乱舞宴!!」

一つだった水龍が八方に分かれて飛び散った。
それは、すっごくきれいな技で私たちは水龍のあまりの美しさにみとれた。

「炎上!!」

みうなは水龍を防ぐために自らの周りを決壊で囲う。
でも、水龍の勢いは衰えることなく決壊を破るとみうなをとらえた。

「うわぁぁぁぁ!!」

水龍にやられてみうなの叫び声が響いた。
その瞬間に愛ちゃんは攻撃を止めた。

「甘い!!炎柱!!」

愛ちゃんの一瞬の心の隙をついてみうなの火柱があいちゃんの足から爆裂した。

「う・・・」

一瞬だったけど、完璧にとらえたみうなの技で愛ちゃんは傷ついた。

「甘い!!その心の油断が命取りになるのよ!!」
「ひどい!!助けてあげたのに!!」

梨華ちゃんが愛ちゃんをかばうように口をはさむ。

「戦場に情けは無用!!倒すか倒されるか!!どちらかが倒れるまでは情けをかけたほうが負ける!!」
「愛ちゃんはあなたを倒したいとは思ってないんだよ!!」


「ならなおさら!!この国は守れないわ!!」

392 名前:水龍再び 投稿日:2005/07/04(月) 14:51
みうなが愛ちゃんの額に手をかざす。

「炎・・・」
「真水龍舞!!」

みうなの攻撃の前に愛ちゃんの攻撃が先行してみうなを倒した。

「うわぁぁぁぁ!!!!!」

再び響くみうなの叫び声に、愛ちゃんはまた攻撃を止めた。

「だから甘いって!!」
「倒すことだけが戦いではありません!!」

愛ちゃんの言葉にみうなは攻撃態勢を解除した。

「力は必要な時に使うべきもの。誰かを傷つけるものじゃない!!
 あなたが私の力を試したいと言うのであれば、何度だって戦います!!
 でも、でもそれはあなたを傷つけるためのもんやない!!」

その言葉に、みうなはひざまづいた。


「負けました」


そしてみうなは愛ちゃんに頭を下げた。

「朱雀大路を開放します。この先に二人の銃士がいます。あなたたちならきっと力を示し、巫女に会えると信じています」

そう言うと、みうなは岩山に手をかざした。

「炎上」

その言葉に岩が砕け、扉が開いた。

「さあ、進んでください」


そして、私たちは朱雀大路へと足を踏み入れた。

393 名前:k・y 投稿日:2005/07/04(月) 14:56
川σ_σ|| <補足説明です!

水龍乱舞宴:愛ちゃんの必殺技。水龍が八方に分かれて敵を攻撃する。
     すっごくきれいだけど、すっごい威力の大技です。

抗炎:みうなの防御技。愛ちゃんの水龍に対抗して繰り出したんだけど、
   愛ちゃんの水龍は無敵でした♪

今回は愛ちゃんが帰ってきました!!戻ってきた愛ちゃんの活躍、ご期待ください!
394 名前:レス 投稿日:2005/07/04(月) 15:08
>>376 :通りすがりの者さん
  ついに!愛ちゃんが戻ってきました♪
  今回は愛ちゃんの大活躍でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?
  そして、ついに踏み入れた朱雀大路。
  未知の世界が梨華ちゃんたちを待っています。
  これからも、よろしくお願いします!!

>>377 :名無飼育さん
  炎に強い愛ちゃんが戻ってきました!!
  水龍の勢いもさらにパワーアップです。
  楽しんでいただけたでしょうか? 
  梨華ちゃんとのやりとり、よっすぃとのやりとり・・・
  愛ちゃんの活躍、ご期待ください!!

>>378 :名無しさん
  はじめまして!楽しんでいただけてうれしいです!!
  ミキティのファンなんですね?この物語上では、ミキティは
  梨華ちゃんの第一世界での片思い相手なんですが・・・
  今後の展開は?ご期待いただければと・・・
  これからも、よろしくお願いします♪

>>380 :名無飼育さん
  よっすぃにとっての最大の敵は・・・コンちゃんが気にする理由・・・
  鍵はバハムンクの持ち主さんです?♪
  とにかく、愛ちゃんが戻ってきちゃったので、ごちゃごちゃしそうです♪
  次回からは、朱雀大路での奮闘が繰り広げられます。
  ご期待ください!これからもよろしくお願いします!!      


 レスありがとうございます!!本当に励みになります!!
 お待たせしました!ようやく愛ちゃんが戻ってきました♪
 健気に戦う愛ちゃんの剣士っぷり!これからも応援してください!
 では、次回もよろしくお願いします!!!
395 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/07/06(水) 22:25
更新お疲れさまです。 第一関門突破って感じですねぇ(^o^; しかもあの人も帰ってきてガキさんのコトバも気になるところ!! 見所満載ってトコロですね。 次回更新待ってます。
396 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/08(金) 02:54
愛ちゃんキターーー!!!
待ってました!水龍の勢いもパワーアップですし!!
これからも期待してます!!頑張ってください!!!
397 名前:名無し 投稿日:2005/07/21(木) 03:36
更新お疲れ様です!
今回も楽しませてもらいました!!
今後の展開がすっごく気になります!!
頑張ってください!!
398 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 15:49
踏み入れたのはいいんだけど・・・
朱雀大路は簡単には私たちを受け入れてはくれないみたいで・・・

「なんだよ、また壁じゃん!!」

立ちはだかる壁を前によっすぃが頭を抱える。
コンちゃんいわく、大路を通ることができるのは限られたものだけ。
朱雀の試練を越えたものだけが巫女に会うことを許される。
だから立ちはだかる壁をいかにして突破するかは私たちへの試練なんだって。

「しかたない。力ずくであけるか。烈火真炎!!」

よっすぃがみうなのマネをして壁を焼き払おうとした。
でも、壁はびくともしなくて・・・

「登れそうにはないよね・・・」

梨華ちゃんが壁を見上げる。

「朱雀大路の壁は謎解きなんです」

コンちゃんの言葉によっすぃは攻撃をやめた。

「は?」
「朱雀大路の壁には暗号が書かれています。それを手がかりになぞを解いて壁を空けるんです」

コンちゃんの言葉を受けて梨華ちゃんが壁をチェック。
399 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 15:51
「えっと・・・ジュウノホウヲカイジョセヨ?」

カタカナで書かれた暗号はもちろん私たちにはさっぱりなわけで・・・
みんなの視線がコンちゃんへ。


「ジュウノホウ・・・ジュウはおそらく、重さを意味しています。
 重さの法則を解除せよって意味ですね」
「「「「「「「おぉぉぉ!!!」」」」」」」


みんなに感心されてコンちゃん得意気。

「で?それって、どういう意味?」

よっすぃに聞かれて得意気だったコンちゃんは首をかしげた。


「さぁ?」
「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」


「と、とにかくみんなで考えよ?」

梨華ちゃんの言葉でみんなその場に座り込んで考えることにした。

400 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 15:52
「重さの法則ってなんだろうね?」
「う〜ん・・・」

「柴ちゃん物理得意でしょ?」
「でも、重さの法則なんて習ってなくない?そんな公式知らないよ」

「瞳ちゃん手抜き授業だったもんね」
「失礼な!ちゃんと教えてたよ!」

だんだんと話題がそれていく私たち。



「重さの法則・・・そんな魔法あったっけ?」
「確か、重力転換の魔法があったはずだけど・・・私は使えないよ」

「オイラもだ・・・」
「光は使えるのに?」

「あれは、なっちの十字架のおかげ。なっちの得意魔法だったからね」
「そっか。伝説の魔術師だもんね・・・」

矢口さんたちもだんだん話がそれていく。

401 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 15:54
「なんだか、みんな、話がそれてる・・・」

里沙ちゃんが苦笑気味に愛ちゃんに同意を求める。

「あ、真剣・・・」

真面目な愛ちゃんは一生懸命考えてたんだ。

「重さか・・・重さ、重さ・・・」
「あんまり、根詰めて考えてると頭爆発しちゃうよ?」

「吉澤さんはもっとまじめに考えてください!!」
「そんな、重さ重さっておも〜く考えないでさ?」

「吉澤さんは軽すぎるんです!!もっと真剣に!!」
「あ〜あ。そうやって、おも〜く言われると考える前にひいちゃうよ」

「そういう態度が軽いんです!!ことの重さをちゃんと考えてください!!
 だいた、吉澤さんは、重要なことほど軽くあつかう・・・」

喧嘩が始まるよっすぃと愛ちゃん。


「それだ!!」


黙って考え込んでいたコンちゃんが何かをひらめいたみたい。
みんな一気にコンちゃんに集中。

「え?」
「わかりました!!重さの法則を解除せよ!!の意味!!」
「え?え?」

コンちゃんはよっすぃと愛ちゃんの会話からヒントをもらったみたいで、二人に詰め寄った。
詰め寄られた二人はなんのこと?ってかんじで不思議な顔をしてたけど・・・

402 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 15:59
「重たくすると軽くなる!です!!」
「は?」

「物質は通常重力によって下に引き寄せられますよね?
 それが、重さの法則。その法則を解除すればいいんです!」
「え?」

早くも意味不明モード突入・・・

「でも、重力に逆らうなんて魔法じゃない限りできないよね?
 うちらそんな魔法使えないよ?」

保田さんの言葉にコンちゃんが答える。

「矢口さん、ジャンプしてみてください!」
「え?」

不思議な顔をしながらも矢口さんがジャンプする。

「もっと高く飛んでみてください!」
「ほえ?」

矢口さんはさっきよりも高くジャンプした。

「一回目よりも、二回目の方が高く飛べましたよね?どうしてですか?」
「え?それは、二回目は地面を思いっきり蹴ったから」

「つまり、そういうことなんです。地面を蹴るということは、
 地面に対して下方向に力を加える。そうすると、同時に地
 面から同じ大きさの上向きの力を加えられるんです。
 だから、私たちは飛び上がることができるんです」


「そっか!!作用反作用の法則だね!!」


私の使った物理用語はこっちの世界にはないみたいで・・・みんな、?って顔になった。

「あ、いやなんでもない。コンちゃん続けて」
「は、はい。だから、この壁をジャンプさせる要領で下向きの力を加えるんです。
 そうしたら壁が一時的に開くはず・・・その間に通過すればいいんです」


「でも・・・それって無理じゃない?」


そう。壁の一番上ははるか頭上にあるわけで・・・

「愛ちゃんの水龍に人暴れしてもらえれば可能です。
 水龍ならどこまでも高く上がれます。この壁を水龍に
 持ち上げてもらうことは不可能かもしれませんが、
 水龍に上から押してもらうんです!そうすれば一時的に
 壁が浮き上がるはずです!!」


ってわけで、コンちゃん指導の下に作戦決行!!

403 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:00
「真水龍舞!!」

何度見ても愛ちゃんの水龍はかっこいいんだよね。
水龍は高く高くあがっていった。

「水龍が力を加える一瞬の間に扉があがります。その瞬間に通過してください!」

コンちゃんの指示にみんな身構えた。

「行きます!」

愛ちゃんが剣を振り下ろした瞬間に水龍が壁にぶつかった。
ものすっごい勢いだったみたいで、ものすごい地響きとともに壁は跳ね上がった。
「今です!!」
コンちゃんの合図で私たちは壁の向こうに進むことができた。
作戦成功♪・・・・・・・・と思って安心した瞬間に・・・・・・・


「「「「「「「うわあぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」


地面に急に穴があいて、私たちはその中に落ちていった。

404 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:03
「ここ・・・どこ?」
「とりあえず、どいてください・・・」

私は矢口さんと一緒に別の場所に落っこちていた。

「お?ごめんごめん」

地面に落っこちた私の上に落ちた矢口さん。

「なんか、足元が変ですよね・・・」

足元に違和感を覚えた私が下を向くと・・・

「う・・・うわぁぁぁ!!!」

辺り一面のダークプリン。

「きもい!!」

すがりつく私からはなれて矢口さんはロッドを構えた。

「気持ち悪がってる場合じゃないよ。このままじゃ、二人ともこいつらに食いつぶされちゃう」
「うぅぅぅ!!」
「ファイヤー!!!」

おびえている私を尻目に矢口さんはダークプリンに攻撃を仕掛け始めた。
でも、足元のダークプリンは焼き払っても焼き払ってもきりがなくて・・・
それでも矢口さんは攻撃を続けた。


「あ・・・これ・・・」


私がダークプリンの異変に気がついた。

「何?」

攻撃が全然効かない矢口さんは疲労困憊で汗だく。

「多分・・・幻です」
「は?」

「前に、ダークプリンに腕を襲われたことがあったんですが、
 腕にまとわりついて全然離れなくって。しかもダークプリン
 が絡み付いた場所は青黒くなったんです。
 でも、このダークプリンたちは、私たちに全然危害を与えません」

そうなんだ。一向に攻撃をしかけてこないダークプリンを見て、私は不思議に思ったんだ。

405 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:04
「さっすが柴田さん!!」

その声に振り返ると、コンちゃんがいた。

「コンコン!いたの?」

矢口さんに驚かれたコンちゃんは私の腕にのっかってきた。

「はい。私も一緒に落ちたみたいです」

コンちゃんは背が低いからダークプリンに埋もれて見えなかったみたい。
コンちゃんは私の腕に飛び乗ると指示を与えた。

「ここにいるのは、幻影です。危害を与えることはないと思います。さあ!出口を探しましょう!!」


「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」


歩き出そうとした瞬間またしても地面に穴が空いて私たちは落っこちた。


406 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:05
そのころ、他のみんなは・・・

「いってぇ!!あ!危ない!!」

落ちてきた梨華ちゃんをよっすぃが抱きかかえた。

「ありがとう」
「どういたしまして」
「なにここ!!」

梨華ちゃんたちが落っこちたのは、幻光虫だらけの場所。

「幻光虫だ!」

よっすぃが梨華ちゃんを下ろして剣を抜いた。

「ゲンコウチュウ?」
「うん。気をつけて。こいつら幻を見せて人の心をゆさぶるんだ」
「幻?」

梨華ちゃんが首をかしげた瞬間だった。
梨華ちゃんの目の前がぼんやりと、ぼやけていった・・・

407 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:07
「ここは・・・」
「あ!梨華ちゃん!!」

第一世界。私たちの世界。
梨華ちゃんはいつもと変わらない学校に身をおいていた。

「え?美貴ちゃん!」
「今日の練習見てくれてた?」

「え?え?」
「もうすぐ試合なんだ!」

あの時と同じ学校の下駄箱の前で美貴ちゃんに呼び止められた梨華ちゃん。

「え?」
「あれ?忘れてた?ほら!剣道の試合!!」

「あ・・・うん」
「見に来てくれるよね?」

「あ、あの・・・私・・・第三世界に・・・」
「は?何言ってんの?」

「あ、いや・・・」

まるで、今までのことが夢だったかのように、当たり前の風景に梨華ちゃんは戸惑った。

「見に来てくれるよね?試合!」
「う、うん!」

「美貴さ!絶対に勝つから!!勝って、梨華ちゃんの心ゲットしちゃうからさ!!」
「え?美貴ちゃん、柴ちゃんが好きなんじゃないの?」

「は?なんで?」
「だって!この間・・・」

「何言ってんの!美貴はいっつも応援してくれる梨華ちゃんのことが好きなんだよ!」
「え!?本当に♪」

「はははっ。そういうことだからさ!そうだ!これから、時間ある?」
「うん!」

「じゃあ、ちょっと付き合ってよ?」
「うんうん!!」


あの日、美貴ちゃんにふられて、いじけながら学校に残って、
愛ちゃんに出会ってそのまま第三世界に来ちゃって・・・

そんなこと全部夢だったんだ・・・

理科室の掃除を終えて、私のことを待っている間に夢を見たんだ。
夢が覚めた。これが本当の世界なんだ・・・


梨華ちゃんは、胸を躍らせながら美貴ちゃんの手を握ろうとした。

408 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:08
「ちょっと待った!!」

二人の仲を引き裂くように声を荒げてよっすぃが飛び込んできた。

「え・・・」

第三世界で出会ったよっすぃと同じ格好のよっすぃに梨華ちゃんの顔が曇った。

「梨華ちゃん!惑わされるな!そいつは幻光虫が作り出した幻だ!!」

梨華ちゃんの手を引いて美貴ちゃんから離すよっすぃ。

「何言ってんの?ってかよっすぃ、何その格好?ふざけてないで着替えてきなって?」

美貴ちゃんがよっすぃの格好を見て嘲笑した。
まるで、よっすぃがコスプレでもして、
それを諭すかのようなやりとりに梨華ちゃんは再び美貴ちゃんの方へ向かおうとした。

「梨華ちゃん!!」

再び手を握るよっすぃに美貴ちゃんの表情が変わった。

「邪魔するなよ。梨華ちゃん?美貴と一緒に行こう?」
「ダメだ!!惑わされるな!!」

二人に挟まれた梨華ちゃんはゆっくり目を閉じた。

「「梨華ちゃん!!」」

二人に差し伸べられた手。
そして梨華ちゃんが選択したのは・・・よっすぃだった。

「くっそ。いいところだったのに・・・」

美貴ちゃんの姿が魔物へと変わっていくのと同時に、あたりの景色も変異していった。
409 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:10
「きゃあ!!」

おびえる梨華ちゃんを自分の後ろに回してよっすぃが剣を抜く。

「梨華ちゃんの心を惑わすなんて許さない!!烈火真炎!!!」

よっすぃの炎が魔物を飲み込んで全てが終わった。

「大丈夫?」

震える梨華ちゃんの手を再びよっすぃが握った。

「・・・大丈夫じゃないかも」


もとの世界に戻った夢。
片思いの相手と心が通じた夢。


辛いことを忘れさせる一時の夢物語は、梨華ちゃんの心を乱したんだ。


「なんか・・・全部夢だったんだって思って・・・
 この世界のこと、夢でよかったって思ったのに・・・
 夢じゃなくて・・・」


梨華ちゃんの頬を涙が伝わる前に、よっすぃが抱きしめた。


「あの日、美貴ちゃんにふられたことから全部が夢で・・・
 本当の世界では、普通に女子高生して・・・
 好きな人とも思いが通じてって・・・でも・・・
 夢じゃないんだよね・・・ぅぅ」


泣き出した梨華ちゃんの頭をよっすぃは優しく撫でると、額にキスを落とした。
よっすぃからの思わぬ贈り物は、梨華ちゃんの心から悲しみを消した。


「君がこの世界に来てよかったって、みんなに会えて・・・
 うちに会えてよかったって思えるように、そんな日が来るように必ずするから。
 梨華ちゃんの心にはまだ、うちの存在は無いのかも知れないけど・・・
 それでも、君を守るから」


「よっすぃ・・・」


そして、よっすぃは再び梨華ちゃんを抱きしめて、
大きなぬくもりを逃がさないように、梨華ちゃんもよっすぃに抱きついたんだ。
410 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:12
そして、愛ちゃんたちは・・・

「倒しても倒してもきりがない」

魔物に取り囲まれて防戦一方。

「あ!あそこに、洞窟があります!!とりあえずあそこまで、逃げましょう!!」

里沙ちゃんの言葉に走る三人。

「姫は無事なんやろか・・・」

洞窟に入ってひと段落するなり梨華ちゃんを気にする愛ちゃん。

「大丈夫。きっと無事だよ。信じよう」

保田さんが、愛ちゃんの足を診察しながら言った。

「でも、もしも一人でこんな場所に落ちちゃったら・・・無事じゃないですよね?」

里沙ちゃんの言葉に立ち上がろうとした愛ちゃんを保田さんが止めた。

「石川の心配よりも、ここから無事に抜け出す心配をしなきゃ!」
「でも!姫にもしものことがあったら!!」

「大丈夫だって!!石川には必ず誰かがついてる!!」
「でも!!」

「仲間を信じよう?」
「・・・」

「信じられない?」
「いえ!!」

「石川は無事だよ!!」
「はい!!」

保田さんと愛ちゃんのやりとりをうらやましそうに見ていた里沙ちゃんがおもむろに口を開いた。

411 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:14
「愛ちゃんは・・・故郷の仲間や家族を裏切ったんだよね・・・?」

その言葉に、愛ちゃんの顔がこわばった。

「裏切ってないよ」

うつむいた愛ちゃんの代わりに、保田さんが答えた。

「でも!」
「裏切ってないよ。高橋が人を裏切るはずがない」

「でも・・・」
「高橋は、誰よりも真面目で真っ直ぐな子なんだよ。誰かを裏切れるような子じゃない」

「・・・ごめんなさい。変なこと言って」
「新垣?人には、いろいろ事情があるんだよ。だから、誤解されることだってたくさんある。
 でもね?仲間だったら信じなきゃいけないんだ。
 仲間になったんだったら、何があっても信じたいって私は思うな?」

保田さんの言葉に、二人ともしばらく黙っていた。

「ありがとうございます」

愛ちゃんが顔を上げたのを見て、保田さんは微笑んだ。

「あんたの大好きな姫を見ててね、そう思ったんだ」
「はい!!」

「あの・・・どうしてですか?」

里沙ちゃんがうつむいたまま、つぶやいた。

「え?」
「どうして、そこまで仲間仲間って・・・信頼できるんですか?」

今度は、愛ちゃんが里沙ちゃんの手を握って答えた。

「仲間やから信じるんじゃないよ?信じているから仲間なんだよ」
「甘いよ・・・」

「え?」
「愛ちゃん、甘いよ!!」

「・・・」
「甘いよ!!」
「新垣!!」

興奮気味の里沙ちゃんの肩に保田さんが手を置く。
保田さんの手のぬくもりに、里沙ちゃんの興奮はしだいに落ち着いていった。

「新垣?」
「・・・」

「私は、あんたのことも信じてるよ?」
「・・・」

「本当はね、私の占いではあんたは、ものすごい邪気を放ってたんだけどさ。でも、今は信じてる」
「・・・あの」

言いかけた里沙ちゃんの言葉は、魔物の進入によって防がれた。

「真水龍舞!!」

愛ちゃんが必死に防戦する。でも、魔物の数は半端じゃなくって・・・


そのとき、里沙ちゃんが笛を吹き始めた。
美しい音色に従うように魔物たちの殺気は失われた。そして・・・

412 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:15
「「うわぁぁぁぁ!!!」」

再びもとの壁を越えた先に落下した私と矢口さん。

「いったい・・・」

ちなみに、ここにワープするまでに、濁流に落ちたり、
雪山に落ちたり、灼熱地獄に落ちたり・・・
さんざんな目に遭った私と矢口さんとコンちゃん・・・

「矢口?」
「圭ちゃん・・・」

ボロボロな私たちを見て、ちょっと引きつつも近寄ってくれた保田さん。

「大丈夫?」
「さんざんだった」

なんとか無事でよかったとしか言えない。
みんなも大変だったよね?ってかんじで梨華ちゃんを探した私は・・・

「り、梨華ちゃん?」

よっすぃに抱きついてすっかりいい雰囲気の梨華ちゃんを目の当たりに。

「姫・・・」

少しだけさびしそうな愛ちゃん。

「あ?え?あ!!」

周りが現れたことに気がついてあわてて離れる二人に苦笑しつつ、私たちは立ち上がった。
413 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:16
「なんで?なんでなんで??」
「姫・・・無事ですか?」

愛ちゃんがいつものように安否を気遣う。

「うん」
「どうなってんだよ」

みんなが、不思議な出来事に首をかしげる中、里沙ちゃんが笛を下ろした。

「そうか・・・わかった!」

コンちゃんがそういうなり、里沙ちゃんをにらみつける。

「今までの出来事は全て夢。あなたが見せた幻覚ですね!!」
「何言ってんのコンコン!!」

保田さんが里沙ちゃんの前に立ちはだかる。

「新垣がそんなことするわけないでしょ!!」
「でも!!」

「おそらく、朱雀大路のしかけだよ。
 新垣は私たちをその夢の世界から引き戻してくれたんだよ!!」
「・・・」

「もし、新垣がやったんだったら、なんで助けるわけ?」
「確かに・・・すみません」

コンちゃんは里沙ちゃんに頭を下げると私の腕に飛び乗った。

「いえ・・・気にしないでください。それより先に進みましょう?ほら・・・」


里沙ちゃんが指差した先には、早くも次の壁が・・・

414 名前:朱雀大路 投稿日:2005/07/26(火) 16:20
川σ_σ|| <補足説明です!

幻光虫:蜂に似た魔物。触覚から磁波を発して相手に幻覚を見せる。
    幻覚の闇に落ちたものは、戻れなくなることも・・・
    今回はよっすぃのおかげで梨華ちゃんは無事でした♪

朱雀大路に早くも悪戦苦闘の私たちですが、次回も・・・よろしくお願いします!!
415 名前:レス 投稿日:2005/07/26(火) 16:31
>>395 :通りすがりの者さん
 一難さってまた一難です。朱雀大路は簡単にみんなを
 受け入れてはくれないみたいで・・・
 まだまだ、悪戦苦闘が続きます!!
 ガキさんの意味深発言は今回もありましたが・・・
 今後の展開を楽しみにしていてください♪

>>396 :名無飼育さん
 今回は、頭のいいコンコン大活躍でしたが、いかがでしたか?
 もちろん愛ちゃんの水龍も大活躍と言うことで♪
 これからも、二人の活躍にご期待ください!!
 次回も朱雀大路での死闘が繰り広げられます?!
 お楽しみにしてくださいね!!

>>397 :名無しさん
 楽しんでもらえて嬉しいです!!
 今回はちょっと眺めの更新でしたが、いかがでしたか?
 少しでも、梨華ちゃんやみんなの魅力が伝われば!と
 思っています。これからも、よろしくお願いします!!
 次回もお楽しみに!!


レスありがとうございます!!
つたない文章ながら、反応がいただけて毎回嬉しいです!!
次回もいろいろあると思います!!ご期待ください!!
これからも、よろしくお願いします♪
416 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/07/27(水) 20:01
更新お疲れさまです。 謎が謎を呼ぶ{笑 かなり悪戦苦闘な場所ですそしてガキサンの発言もかなり気になりますね 次回更新待ってます。
417 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/28(木) 00:20
更新おつかれいな。
保田さんはこういうところで活躍しますね。カッケー!
いやぁ〜、でもガキさんはどうなってしまうんでしょう?
418 名前:名無し 投稿日:2005/07/31(日) 01:41
ガキさん気になります!!
さりげに、矢口さんと柴田さんがさんざんな目に会ってる?
笑えました(^o^;
419 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/04(木) 05:34
コンコンあったまいい!!
さっすがですね!!次回も待ってます!!
420 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:31
「フノチカラヲモッテハンパツサセヨだって」

梨華ちゃんが壁に書かれた暗号を読み上げる。

「なるほど」

今度はコンちゃん、すぐに答えがわかっちゃったみたい。

「磁器を利用すればいいんです」
「え?」

「フノチカラっていうのは、−の力。
この壁はきっと−の粒子が帯電してるんです。
ほら、私の毛がビリビリしてるでしょ?」

そういわれると、コンちゃんの毛が逆立ってる。

「この壁は磁石でいったら、S極なんです。
同極同士だと磁石は反発しますよね?
だから、磁器の強力な磁石のS極を近づければ反発して壁が開くはず」
「でも、磁石なんてないよ?」

梨華ちゃんに言われてコンちゃんはひげをさわった。
どうやら考えてるみたい。
その仕草はなんだか得意気で、自分の出番だ!
って張り切ってる様子が伝わってすっごくかわいらしかった。

「わかりました!えっと、みなさん身に着けている金属をなんでもいいので出してください!」
「金属なんてもってないよ?言っとくけど、剣はダメだからね!」

よっすぃの言葉に愛ちゃんもうなずく。
旅をするのにできるだけ身軽にしたいってことで、みんな最小限度のものしか持ってないんだよね。

「う〜ん・・・あ、それでいいですよ!」
「え?これ??」

コンちゃんは私の指輪を指差した。
この指輪は瞳ちゃんがもういらないから!ってくれたもので。
まあ、いらないからくれたんだけど私にとっては宝物なわけで・・・
って思ってるそばからコンちゃんに指輪をとられた。

421 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:32
「あ!だからそれはダメだよ!!」
「柴ちゃん?みんなのためだよ!あんな指輪なくたってうちがいるでしょ?」

そう言って私の肩を抱き寄せたよっすぃにエルボ。

「矢口さん、保田さん、この指輪に雷を落としてください!」
「えぇぇぇ!!!」

私の悲鳴なんておかまいなしで、二人は魔法の準備。


「ダメダメダメ!!!」


「サンダー!!」
「落雷!!」


「あぁ・・・」


指輪が・・・私はその場に崩れ落ちた。

「よし!はい!柴田さん!!」

雷が落ちて電気が帯電してる指輪をコンちゃんに反された。

「あ、りがと・・・」

一応無事みたいね・・・

「これで、その指輪も雷の−電気が帯電してます。柴田さん、壁の前に立って指輪をかざしてください」
「う、うん」

私はコンちゃんの指示通り壁の前に立って指輪をかざした。
その瞬間、壁の一部が指輪に反応するように動き出した。

「おぉぉ!!」

もちろん私の手柄じゃないんだけど、アリババになった気分でちょっと感動。
これで、二枚目の壁もクリア!
って思って壁の向こうに足を踏み入れた瞬間、私たちを稲妻が襲った。


「ようこそ朱雀大路へ!!」


手荒な歓迎ありがとうございますってかんじで、朱雀三銃士の登場です。

422 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:33
「ち、ちっちゃい・・・」

矢口さんが相手をみて一言。

「ひっどい!!そっちだってちっちゃいじゃん!!」
「オイラはちっちゃくなんかない!!」
「やーいチビチビ!!」
「そっちがチビだろーが!!」

ちびっ子バトル?なんて言ったら私が袋叩きだね。

「矢口!喧嘩してないで試合でしょ?」

保田さんになだめられて矢口さんはいったん身を引く。

「この勝負、オイラがやるよ!」
「やぐっつぁんもガキだねぇ」

よっすぃは早くも観戦体勢ってことで隅に腰を下ろした。それを見て私たちも座ることにする。

「負けないぞぉぉ!」

闘志を燃やす矢口さん。

「こっちだって!!私はあさみ!朱雀三銃士一番の魔法使いなんだから!!」

小さい身長、黒マント、ロッド。
もしかしたら?って思ったらやっぱり魔女みたい。
423 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:34
「魔女が巫女を守るなんて・・・」

保田さんが信じられないってかんじで二人を見つめた。
保田さんの言葉をあさみはしっかり聞いてたみたいで、
矢口さんに向けられていた視線を保田さんに向けた。


「朱雀の巫女は、差別や偏見のない高貴で優しい人。
 魔女としてずっと差別され続けていた私を認めてくれた。
 だから私はここで巫女を守る!!」


その言葉に矢口さんは微笑んだ。


「あいかわらずだね」


矢口さんのつぶやきは私たちには聞こえなかったけど、
矢口さんとあさみさんはよく似ていて、
それは見た目とかそういうことじゃなくて、
なんていうかオーラが似ているんだって思った。


この試合は、二人の思いのぶつかり合い・・・


「じゃあ、行くよ」
「うん」


そして、魔女の誇りをかけた試合が始まった。

424 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:35
「サンダー!!」

まずは矢口さんが攻撃をしかける。

「ウォーター!!」

雷には水。あさみが矢口さんの雷を魔法で迎え撃つ。
二人の魔法が打ち消されたところで、今度はあさみが攻撃。

「ファイヤー!!」
「ブリザード!!」

今度は矢口さんが迎え撃つ。またしても魔法は打ち消される。
いったん、二人の攻撃が止まる。

「どうやら、一級の魔女みたいだね?本気で行くよ」
「そうこなくっちゃ」


二人はロッドを天にかざした。

425 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:36
「魔怪獣を呼んでる。ここにいたら危ない。みんな私の魔方陣の中に入って」
「え?」
「魔女には魔怪獣がやどる。真の力を発揮するとき、魔女は魔怪獣を呼び寄せて戦うんだ」

保田さんが説明している間に二人の周りに異変が生じる。
地面の意思が二人の魔力に呼応するように浮き上がり砕け散る。
空気中が真空放電してる。

もしも保田さんの魔方陣がなかったら、よっすぃや愛ちゃんは別として私や梨華ちゃんはその場にいるだけで怪我するってかんじ。

「呼び寄せた魔怪獣は、主がそうとうな魔力を持っていないと指示を無視して暴れだす。
 ときには主を食い殺すこともある。あんたたち、何があってもこの魔方陣から出ちゃダメだよ!!っておい!!」

言ったそばから外にでちゃう梨華ちゃん・・・

「姫!!」

愛ちゃんも梨華ちゃんをかばって外にでる。
426 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:37
「きゃあ!!」

魔力の衝撃で梨華ちゃんは魔方陣と別の方向に吹き飛ばされる。

「姫!!うわぁ!!」

愛ちゃんも魔力で梨華ちゃんとは別の方向に吹き飛ばされた。

「梨華ちゃん!!」

愛ちゃんの代わりに今度はよっすぃが梨華ちゃんをかばおうと外にでる。
よっすぃは矢口さんとの付き合いが長いから、
魔力が放出された環境に身をおく術を知っていた。
だから、梨華ちゃんのもとにたどり着いて保田さんの魔方陣に連れ戻すことができた。

「石川!!出るなって言ったでしょ!!」
「だけど、あそこに子猫が!!」

梨華ちゃんが指差した愛ちゃんの横に黒い子猫がいた。
梨華ちゃんは子猫を助けようとして外に出たみたい。
よっすぃがしかたないなって顔をしてから、愛ちゃんと子猫を助けて魔方陣に戻ってきた。

愛ちゃんは梨華ちゃんを助けられなかったことが悔しかったみたいで、落ち込んだまま隅っこに座った。

「絶対に魔方陣から出ちゃダメだからね!!」

保田さんが念を押すように梨華ちゃんに忠告。

「ごめんなさい・・・」

梨華ちゃんが謝った瞬間に、ものすごい爆音が轟いた。

「いよいよだ・・・」

保田さんの言葉に私たちは固唾をのんだ。

427 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:39
二人の頭上が暗黒の闇で覆われた。

「出でよ!イフリート!!」

先に呼び出したのは矢口さん。
矢口さんが呼び出したイフリートは地獄の火炎に包まれた怪物。
頭は牛で頑強な肉体に蛇の尻尾。矢口さんの何十倍もの大きさの化け物だった。

「出でよ!バランバラン!!」

あさみが呼び出したのは風と雷を操る鬼。
こっちも、イフリートに負けないくらい厳つくて、大きな化け物・・・

二人はそれぞれ、両手にステッキを持って悪魔の後ろに立った。
魔力の衝撃は二人の体力も確実に奪う。
両手でステッキを持って立ち続けるだけでもかなりの体力を消耗するんだ。

428 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:41
「フレアバスター!!」

矢口さんの呪文でイフリートが火を吹き、バランバランを攻撃した。
バランバランは炎に苦しんだけど、すぐに体勢を立て直す。

「デビルハリケーン!!」

今度はあさみさんの呪文でバランバランが攻撃。
イフリートを雷と疾風が襲う。
イフリートは30mくらい吹き飛ばされて、私たちの横に倒れた。
イフリートが倒れた衝撃で私たちまで吹き飛ばされそうになった。

「アクアブレス!!」

バランバランが続けてイフリートを攻撃する。
今度は水霧がイフリートを包み込んだ。
水霧に支配されたイフリートの体は瞬時に爆撃された。

「なんで?」

何が起こったのかわからなかった私たちにコンちゃんが説明してくれた。

「水は水素と酸素からできています。アクアブレスは水をもとの状態に戻し燃焼させる技。
 酸素の助燃性と水素の発火性によって水霧の中で爆破が起こるんです」

爆破のおかげでイフリートは深手をおった。

429 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:42
「あなたの力はそんなものなの?」

あさみの言葉にイフリートは体勢を立て直す。

「デビルアイ!!」

今度はイフリートの目から光が放たれた。
その光はバランバランを捉える。

「な、光をあやつるなんて・・・」

あさみはイフリートの攻撃に不意をつかれて一瞬んひるんだ。
バランバランは光によって動きを制された。

「ホワイトウォール!!」

イフリートはさらに攻撃を重ねた。
それは矢口さんの必殺技。
光がバランバランの体を包み込む。

「うわぁぁぁぁ!!!」

あさみさんの悲鳴とともに、バランバランは倒れて消えた。
430 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:42
「負けたよ・・・」

その言葉に、矢口さんはイフリートを魔界に返した。
二人の魔女は激戦の末にそのまま倒れた。

二人の体はイフリート、バランバランと呼応していたから、魔怪獣への攻撃は二人へも及んだのだ。

「矢口!!」

保田さんが矢口さんのもとに走りよった。

「まりっぺ!!」

梨華ちゃんもそれに続く。
コンちゃんはあさみの方へ向かった。

矢口さんは保田さんの魔法で、あさみはコンちゃんの薬草で回復させた。
再び起き上がった魔女さんたちは互いに抱きしめあった。

「巫女によろしく」
「うん」

交わした会話はそれだけだったけど、きっと心の中でいろんな話をしたんだと思う。


そして、私たちはまた歩き出した。

431 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:43
「何よここ?」

あさみの砦を隔てていた壁の向こうは、ものすごいことになってた。

「ここ・・・渡れって言うの?」

断崖絶壁の細い直線通路。
もし万が一落ちたりしたらマグマにボッチャン・・・間違いなく死んじゃうよ。

「マスターロードです。勇気あるものだけが通ることのできる道」

コンちゃんが勇敢にもマスターロードに足を踏み入れる。

「ボッチャンしたら、死んじゃうね・・・」

矢口さんの顔がひきつる。

「女の子だから、ボッチャンにはなりたくないですね・・・」
「柴ちゃん、それ・・・ダジャレのつもり?笑えないよ・・・」

梨華ちゃんにダメだしされて、気分はボッチャン・・・
え?寒い?これはしばった・・・失礼しました。気を取り直して・・・

「とにかく、先を急ぎましょう!」

コンちゃんが先頭で私たちはマスターロードを行くことにした。

432 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:45
始めは怖かったけど、だんだんと慣れてくるもので、しばらくしたら誰もマグマの上を歩いてるなんて感覚なくなっていた。
でも、その油断がいけなかった。

「きゃあ!!」
「姫!!」

梨華ちゃんが思わず足を踏み外す。
後ろにいた愛ちゃんに支えられてボッチャンは免れたものの、踏み外して削られた石が下に落ちた。
そのときだった。マグマに異変が起きる。

「な、何?」
「なんか、変だよね?」

「まずい・・・みなさん、走ってください!!ドラコスたちが目覚めてしまったようです!!」

コンちゃんはそう言うと走り出した。
私たちは一瞬何が起きたの?ってかんじで、呆然とした。
そのとき、マグマからマグマでドロドロになった巨人兵が現れた。

「きゃぁぁぁ!!!」

巨人兵は私たちを目掛けて口からマグマを放射させる。
とにかく逃げないと!!みんなコンちゃんに続いて猛スピードで走った。

「危ない!!」

梨華ちゃんが足を滑らせてマスターロードから落ちそうになった。

「姫!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんの手をつかんで、なんとか落っこちずに済んだけど、かなり危険な状態。

「姫!すぐに引き上げますから!!」
「高橋危ない!!」

愛ちゃんめがけてドラコスのマグマが発射された。
梨華ちゃんを離すわけにわけにいかないから、剣を抜くことができない愛ちゃん。


このままじゃ、二人まとめてマグマに飲まれちゃうよ!!
そう思った時だった・・・

433 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:46
優しい笛の音があたりを包み込む。

「ガキさん!!」

里沙ちゃんが笛を吹き始めたんだ。
すると、奇跡が起きた。
ドラコスのマグマが静まったんだ。

「みなさん!ドラコスの注意は私がひきつけて起きますから!先に行ってください!!」

里沙ちゃんはそのまま笛を吹き続けた。

「ダメ!ガキさんだけ置いて行けないよ!!一緒に行こう!!」

愛ちゃんに引き上げてもらった梨華ちゃんは里沙ちゃんの手を握った。


「でも!」
「仲間を置いては行けない!!一緒に走るよ!!」


「はい!!」


私たちはまた猛スピードで走り始めた。

434 名前:魔女vs魔女 投稿日:2005/08/05(金) 01:47
なんとか、マスターロードは抜けられたものの、みんな息があがっていた。

「もう!石川のバカ!!」
「だってぇ」

保田さんに怒られて梨華ちゃんは愛ちゃんの後ろに隠れる。

「姫は悪くありません。私が後ろにいながらちゃんと見ていなかったから!」
「高橋は石川のこと甘やかしすぎ」

「そんなことないです!!私の使命は姫をお守りすること!!」
「愛ちゃん大好き♪」

梨華ちゃんに抱きつかれた愛ちゃんは顔を赤くした。

「それから、ガキさんも!ありがとう!!」
「いえ・・・」

梨華ちゃんが差し出した手を里沙ちゃんは握らなかった。
不思議に思う前に、また新たな刺客の声に迎えられちゃった。

「よく、ここまで来たわね!!」

マスターロードの疲れが抜けきらないのに・・・

「マジかよ。みんな疲れてるってのに。少しは休ませろよ」

よっすぃが愚痴愚痴言ってる間に相手が姿を現した。
435 名前:k・y 投稿日:2005/08/05(金) 01:56
川σ_σ|| <補足説明です!

イフリート:矢口さんの魔怪獣。地獄の火炎に包まれた怪物。
      頭は牛で頑強な肉体に蛇の尻尾。矢口さんの何十倍もの大きさの怪獣。

バランバラン:あさみの魔怪獣。風と雷を操る鬼。いかつい大きな怪獣。

フレアバスター:イフリートの攻撃。地獄の火炎を敵にあびせ、苦しめる大技。

デビルハリケーン:バランバランの攻撃。竜巻と落雷で相手を吹き飛ばす。

アクアブレス:バランバランの攻撃。水霧の中に相手を誘い込み、爆破させる。

デビルアイ:イフリートの攻撃。目から光を放ち、相手を攻撃する。
      通常魔女は光を操れないのだが、矢口さんはできちゃうんです♪

ホワイトウォール:イフリートが放った矢口さんの得意技。
    
ドラコス:マグマの中にすむ巨人兵。なにか物音をさっちすると攻撃してくる。


 今回は矢口さん大活躍でした♪魔女ってかっこいい!!と思ってもらえると、
 矢口さん喜んでくれるはずです!

436 名前:k・y 投稿日:2005/08/05(金) 02:05
>>416 :通りすがりの者 :2005/07/27(水) 20:01
  今回も楽しんでいただけましたか?
  技の押収ってかんじでしたが、どうだったでしょうか?
  ガキさんの謎の言動の数々は・・・
  次回も戦闘シーンから始まります!あの人が活躍!!
  よろしくお願いします♪

>>417 :名無飼育さん :2005/07/28(木) 00:20
  保田さんは、誰よりも熱い心を持った強い人なので♪
  保田さんの正義感、仲間を思いやる心が伝わってくれれば
  と思いながら、書いてます!
  ガキさんの心を開くことができるのか??ってかんじで。
  次回もよろしくお願いします!!

>>418 :名無し :2005/07/31(日) 01:41
  さりげに、柴田さんは一番さんざんなキャラでいこうって思ってます。
  彼女自身のストーリーも今後あるかも?さんざんなかんじで。
  期待して待っていてください!!
  さてさて、ガキさんですが・・・ 
  今後の展開に注目下さい!!!

>>419 :名無飼育さん :2005/08/04(木) 05:34
  今回も微妙にコンコンの天才っぷりを出してみました。
  賢い賢いキツネさんです。
  今後のコンコンにも注目していてください♪
  次回はまたまた刺客との決闘です!!
  よろしくお願いします!!


 レスありがとうございます!!今回も楽しんでいただけたでしょうか?
 次回はあの人が戦います!!ご期待下さい!!
 ささいな感想でもなんでもいいので、レスいただけると本当に嬉しいです!!
 次回もよろしくお願いします!!!
437 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/05(金) 08:36
更新お疲れさまです。 やぐっつぁんかっけー(笑 次は誰が対戦でしょうか?楽しみです。 次回更新待ってます。
438 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/10(水) 01:51
矢口さんかっこいいっす!
そんでもって、ガキさんが気になってしかたないです!!
次回も待ってます!!
439 名前: 投稿日:2005/08/10(水) 10:21
うわ〜〜矢口かっけー
面白かったです!!
次回も楽しみ待ってます!
440 名前:名無飼育 投稿日:2005/08/16(火) 01:56
やぐっつぁんかっこいいっす!!
そんでもって、ちびっ子対決笑えました!!
次回も待ってます!!!
441 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:36

「私は里田舞!」


「ってか、なんであんただけフルネームなんだよ。って・・・めっちゃいい女」

よっすぃ早くもデレデレ。

「なに?なんなのよ!」
「いいじゃん。舞ちゃんきゃわいい♪」

いきなりよっすぃに抱きつかれて舞ちゃんは出鼻をくじかれた。

「ちょっとぉ!!」
「よっし!!この勝負!!うちが引き受けた!!」

デレデレのよっすぃに、勝手にしろ!ってかんじで私たちは観戦モード。

確かに、舞ちゃんの格好は丈が短く、胸が強調された着物・・・
よっすぃじゃなくても刺激されるだろうけどね。女の子大好きなよっすぃにはたまらない相手だね。
でも、舞ちゃんは朱雀三銃士の最後の一人にして最大の相手。
こんなにふらふらした気持ちで向き合う相手じゃないと思うんだよね・・・

「吉澤さん!!油断しないでください!!」

コンちゃんの忠告にピースで答えるよっすぃ。
完璧に舞ちゃんの虜になっちゃってるよ。

「よっすぃ・・・」

心なしか寂しそうな梨華ちゃん。

「やっぱり、吉澤さんは軽すぎなんや」
「そうだね」

愛ちゃんの言葉に今度は機嫌が悪くなっちゃったみたい。

442 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:37
「朱雀蓬莱弾!!」

デレデレのよっすぃに舞ちゃんは剣を抜くと早速攻撃にうつった。

「おっと!!」

舞ちゃんの技は剣で光弾を作り出すみたい。
よっすぃは軽々とその光弾の数々を交わした。

「うっ!!」
「光弾はおとりよ」

光弾はおとりだったみたい。
いつのまにかに舞ちゃんはよっすぃの背後にまわっていて切りつけた。
不意をつかれたから相当深く切り込まれたんだと思う。
よっすぃはその場にひざをついた。

「飛翔赤空暫!!」

そのまま、舞ちゃんは宙に舞い上がったかと思うと剣を逆手によっすぃめがけて切りつけた。


「よっすぃ!!いやぁぁぁ!!」


舞ちゃんの技を直撃したよっすぃの血が飛び散り、梨華ちゃんの悲鳴が響いた。

443 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:39
「っつ・・・いってぇ・・・さっすが、きれいなお姉さんは怖いねえ」

普通の人だったら、あれだけ切りつけられたら立てないと思う。
でもよっすぃはかすり傷くらいのかんじで立ち上がる。
息が絶え絶えで、背中からの流血が平気じゃないんだって思ったけど、
よっすぃは相変わらずデレデレしたかんじでいつもの冗談を止める様子はなかった。

「朱雀・・・」
「ちょ〜っと待って!!」

舞ちゃんが次の攻撃を放つ前によっすぃが口をはさんだ。

「な、なによ」
「きれいなお姉さん見てたら、ちょっと本気出したくなってきちゃってさ。ちょっとタイム!!」

そういうとよっすぃは懐から何かを取り出した。

「は?」

よっすぃが取り出したのは、ひょうとっくり。
ひょうとっくりに入ったお酒をよっすぃはグビグビと飲み始めた。
呆気にとられた。


この人・・・どこまで軽いんだ・・・


「あほや・・・」

愛ちゃんの言葉にみんなうなずく。
呆気にとられたのは私たちだけじゃなくて舞ちゃんも。
ひたすらお酒を飲み続けるよっすぃに呆れて言葉も出ない様子だった。


444 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:41
「やっばいね。こりゃ、あいつ本気みたいだね」

矢口さんだけはよっすぃのことを知ってるから、勝利を確信していたのかもしれない。
よっすぃはひょうとっくりのお酒を全部飲みほすと真っ赤な顔でニヤリと笑った。

「きれいなお姉さん?うちの剣に酔わせてあげるよ」

よっすぃの体が上気していくのがわかった。
よっすぃの周りのチリがいっせいに微動をはじめる。

「烈火真炎」

いつもなら剣を抜いて技を放つのに、よっすぃはただ技を口ずさんだだけ。

「きゃぁぁぁぁ!!!」

それだけなのに、舞ちゃんを炎が飲み込んだ。
またよっすぃはニヤッと笑うと剣を抜いた。

「酔炎斬殺!」

よっすぃがその場から瞬時にして消えたかと思ったら舞ちゃんの悲鳴が響いた。


「きゃぁぁぁぁ!!!」



「酔炎列暫!」



「・・・」



見ている私たちには炎の中で何が起こったのかわからなかった。

よっすぃは、炎の中の舞ちゃんを酔炎斬殺で切りつけ動きを封じ、酔炎列暫でしとめたんだ。
酔炎斬殺は、無数の刃を相手に向け切り殺す恐ろしい技。
そして酔炎列暫は一太刀で相手の急所をとらえるこれまた、恐ろしく強い技なんだ。
よっすぃは、酔拳の使い手なんだ。
445 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:42
「強い・・・」

燃え盛る炎を見てポカンとしていた愛ちゃんに矢口さんが指示をだす。

「愛ちゃん!火を消して!!」
「真水龍舞!!」

よっすぃの炎は水龍をもってしてもなかなか消火されず、数分かかってようやく消火された。
火の後にはよっすぃと舞ちゃん二人が倒れていた。

「舞ちゃんが危ない。圭ちゃん!!」

矢口さんは保田さんの手をひいて倒れている二人の下に走った。

「よっすぃ!!」

梨華ちゃんはよっすぃの方へ向かう。
446 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:43
まもなくして、舞ちゃんは保田さんの魔法によって回復した。

「圭ちゃん!よっすぃも!!」
「あぁ。そいつはしばらく寝かせておきな。
 どうせ置きだしたらまた舞ちゃんかわいい!って騒ぎだすだけだし」

矢口さんの言葉に梨華ちゃんはためらいながらも答える。

「でも・・・よっすぃの怪我もそうとうやばいよ?」
「大丈夫。そいつは殺したって死なないよ。
 オイラたちイーストタウンでは人に切りつけられるのなんてざらだったからね。それくらいかすり傷だよ」

ありえない・・・背中から滴り落ちる血の量、絶対に致死量だと思うのに?

「よっすぃは血の気も多いしちょうどいいってこと。眠ってるのは酒の飲みすぎなだけ」

矢口さんの言葉に梨華ちゃんはよっすぃを見つめる。

「・・・本当に平気なのかな・・・」
「平気平気!さ!!次行こう!!」

矢口さんはよっすぃにはおかまいなしで歩き始めた。

「でも・・・」
「じゃあ、柴田がよっすぃの見張りってことにしよ?」
「え?」

矢口さんに勝手に決められて私がよっすぃに付き添うことになった。
447 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:44
「巫女はこの先の朱雀殿にいます」

舞ちゃんが梨華ちゃんにひざまずいて、奥の扉を指差した。

「巫女の力、決して悪事に利用しないようにお願いします!」
「はい」

梨華ちゃんは舞ちゃんに頭を下げると扉の前に立った。

「これでようやく、私たちも人間に戻れます」

舞ちゃんの言葉に梨華ちゃんは首をかしげた。

「私たちは、巫女に使える者。私は70年前、あさみは60年前、
 みうなは30年前に死んだんです。その後、朱雀の巫女の導き
 のもとに巫女を守る銃士となった。銃士である間はかりそめ
 の命を与えられる。巫女の力が召喚され巫女が朱雀殿から出
 た時、私たちはその命を手に入れることができるんです。
 これでようやく務めが終わった」


舞ちゃんの安堵の顔に私たちもホッとした。

448 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:46
「あれ?あかないよ?」

扉の前に立ったのはいいものの、扉は押しても引いてもびくともしない。

「また、謎解きなのかな?」

でも、扉にそれらしき暗号はない。

「朱雀殿に入るには霊玉が必要なんです」

コンちゃんが中に入る方法について説明を始めた。

「剣士が持つ8つの霊玉はそれぞれ四神に呼応しているんです。
 礼の玉と孝の玉が朱雀、信と仁の玉が白虎、智と悌の玉が玄武、義と忠の玉が青龍。
 朱雀殿の扉を開くには、矢口さんと保田さんの霊玉を扉にかざせばいいんです!」

「「わかった」」

保田さんと矢口さんが扉の前に立った。

「「開け!!」」

二人の霊玉が赤い光を放った瞬間に扉がゆっくり開いた。
中から赤い光がみんなを導くように照らした。
みんな黙ってその中へ足を踏み入れる。

「ん?コンコン行かんの?」

愛ちゃんが動かないコンちゃんを促す。

「私は、中に入れないんだ」
「?」
「ここで待ってるから、先に行って?」
「う、うん」

愛ちゃんは不思議に思いつつ、もう一人動かない人に声をかけた。

「里沙ちゃんは?」
「私もここで待ってる」

里沙ちゃんとコンちゃんを置いてみんなは中に入っていった。
みんなが入り終えると扉はゆっくり閉まった。

449 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:48
「待ってたよ」

朱雀の壁画の前に巫女が立っていた。

「やっぱり・・・君だったんだね」

矢口さんが朱雀の巫女の下にあゆみよる。

「会いたかったよ・・・なっち」
「来てくれるって信じてた」

矢口さんは安倍さんを抱きしめようとした。

「え?」

安倍さんの体は矢口さんの体をすり抜けた。

「ごめんね・・・実体じゃないんだ」
「そっか・・・」

安倍さんは死人だから、実体はもうないんだ。

「そんな顔しないで?」
「ごめん」

作り笑いを見せた矢口さんに安倍さんは微笑むと梨華ちゃんの前に立った。

「はじめまして。朱雀の巫女、安倍なつみです」

安倍さんのオーラは暖かくて心地よくて。
梨華ちゃんはどんどんそのオーラに包み込まれていくのがわかった。

「石川梨華です」

「これから、あなたに私の力を与えます。
 でも、力を受け入れられるかどうかはあなた自身にかかっています。
 朱雀の試練に耐えられたものだけが朱雀の力を手に入れられるの。
 失敗すれば死んでしまうかもしれない。それでもいい?」

「え・・・そんな!!」

安倍さんの言葉に梨華ちゃんよりも愛ちゃんが反応した。

「そんな!!死んでしまうかもしれんなんて、そんなの危険すぎる!!」
「力を得るっていうのはそういうことだから」

「・・・やめましょう!!姫の命を粗末にはさせられません!!」
「愛ちゃん・・・」

愛ちゃんの思いがけない言葉に少しだけ梨華ちゃんは悩んだけどすぐに顔をあげた。

450 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:53
「ダメだよ愛ちゃん。使命を忘れちゃダメでしょ?四神の力をもらって、魔王を倒すんでしょ?」
「姫・・・」

うつむいた愛ちゃんを梨華ちゃんは優しく抱きしめた。

「ありがと。でも、私ちゃんと力を受け入れるから。絶対に死なないから」

そして、再び安倍さんに向き合った。

「では、行きます!!」

そういうと安倍さんは目を閉じた。
安倍さんの体は見る見るうちに真っ赤な光に包まれて、朱雀へと代わった。

朱雀は、まばゆいまでの赤い閃光に包まれていた。
凛とはった胸、厳しい顔つき。でも、優しい眼差し・・・

大きな翼を広げ朱雀はあたりを飛び回ると梨華ちゃんの前に降り立った。
そして翼で梨華ちゃんを包み込む。

「うっ!!くっ!!」

朱雀が梨華ちゃんを試し始めた。
朱雀は羽を動かし、かまいたちを作り出し、梨華ちゃんを切りつけた。
梨華ちゃんの鮮血で朱雀の周りが赤く染まる。

「姫!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんを助けようと朱雀に近づいたけど、朱雀のオーラに跳ね飛ばされる。

「姫!!」
「梨華ちゃん!!」
「石川!!」

愛ちゃんだけじゃなく、矢口さんや保田さんも梨華ちゃんの安否を気にし始めた。

「あなたに力を授けます」

朱雀は優しく言うと羽を広げた。

451 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:54
「姫!!」

朱雀に解放された瞬間に梨華ちゃんは倒れた。
三人が梨華ちゃんに駆け寄る。

「あ・・・」

かまいたちのおかげですっかり切り刻まれた梨華ちゃんの服。
おかげで梨華ちゃんの格好は悩殺もの。愛ちゃんが顔を赤くして後ろを向いた。

「大丈夫。息はある」

保田さんが梨華ちゃんの無事を確認して手をかざす。

「まって!ここでは魔法は使えないの」

朱雀に止められて保田さんは手をひっこめた。

「姫に私の力を与えました。これからはいつでも私はあなたたちの力にることができます。
 私の力が必要な時は、二人の霊玉をかざしてください。姫の祈りと霊玉の力が重なった時、
 私はいつでもあなたたちに力を貸します」

そう言うとだんだんと姿が薄らいでいった。
452 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:55
「まって!!なっち!!」

矢口さんが朱雀を呼び止める。

「矢口?なっちはいつでも矢口のそばにいるよ?
 もう、姿はなくなっちゃったけど、なっちの心はいつも矢口に寄り添っているからね」

そして朱雀は姿を消した。

「行っちゃった・・・」
「矢口?」

「うん。平気。なっちはいつもオイラと一緒。それに、今は仲間がいる」
「そっか」

「さ、姫を運んで治療しないとね?」
「うん。ほれ、高橋!運びな!!」

「え?え?あ・・・いや」

保田さんに言われて愛ちゃんは照れながら梨華ちゃんに向き合う。

「なに、照れてんの。ほら、早くしないと死んじゃうよ?」
「姫!!」

慌てて梨華ちゃんを背負った愛ちゃんを見て二人は笑った。
こうして、私たちは朱雀の力を手に入れたんだ。

453 名前:朱雀の巫女 投稿日:2005/08/21(日) 23:57


「な、なんなの!!」


全てが終わって、朱雀殿を出た梨華ちゃんたちが目にしたのは・・・
再び起こった惨劇だった。


扉の前に広がるのは血の海・・・

454 名前:k・y 投稿日:2005/08/22(月) 00:05
川σ_σ|| <補足説明です!

里田舞:朱雀三銃士。きれいなお姉さまってかんじの銃士。
    きれいな見た目とは違ってすっごく強いんだけど・・・

朱雀蓬莱弾:舞ちゃんの技。光弾を作り出し、相手を攻撃する。
      光弾に触れると大きなダメージを受ける。

飛翔赤空暫:大空に高く舞い上がり切りつける技。
      ダメージは計り知れない。よっすぃじゃなければ、一撃必殺・・・

酔炎斬殺:よっすぃの酔拳技。無数の刃を相手に向け切り殺す恐ろしい技。

酔炎列暫:よっすぃの酔拳技。一太刀で相手の急所をとらえるこれまた、恐ろしく強い技。

今回はよっすぃの酔拳炸裂でした♪
次回は・・・悲劇が待っています・・・
455 名前:k・y 投稿日:2005/08/22(月) 00:18
>>437 :通りすがりの者 さん
  矢口さんの戦い、かっこよさが伝わってよかったです!
  大きな魔怪獣を操る小さい魔女さん。
  そして、今回はあの人との再会が果たせました! 
  矢口さんの応援、そして朱雀の応援よろしくです!!
  次回もよろしくお願いします!!

>>438 :名無飼育さん
  矢口さんのかっこよさが伝わってよかったです!
  ガキさんの謎の言動の理由は・・・
  次回何かがわかると思います??
  今回、ようやく朱雀の力を召喚したんですが・・・
  次回、ご期待下さい!!

>>439 :希 さん
  レスありがとうございます!
  今回も楽しんでいただけたでしょうか?
  矢口さんに続き、よっすぃの戦い。
  イーストタウン育ちの二人は最強なんです!
  次回は惨劇が・・・次回もよろしくお願いします!

>>440 :名無飼育 さん
  魔女魔女対決。ちびっ子対決。楽しんでいただけて嬉しいです。
  今回の対決はどうでしたか?
  ついに朱雀召喚ですが、また新たな悲劇が・・・
  これからの剣士や梨華ちゃんにも注目してください!
  次回もよろしくお願いします!!

 レス本当にありがとうございます!励みになります♪
 次回は悲劇・・・朱雀殿に入らなかったメンバーに何かが・・・
 次回もよろしくお願いします!!!
456 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/22(月) 13:03
更新お疲れさまです。 ついに一人目ですね。 よっすぃーにあんな技があったなんて・・・ 最後の光景は一体? 次回更新待ってます。
457 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/25(木) 21:46
更新きてた!
よっしぃ…恐ろしげな技もってますね‥
梨華ちゃんに照れる愛ちゃんキャワ!って言ってる暇もない急展開!一体どうなる?
次回更新待ってます!
458 名前:名無飼育 投稿日:2005/08/31(水) 01:45
ついに一人召喚ですね!まりっぺよかったね♪
しかし!!またまた何かが起きた様子?
次回待ってます!!
459 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:32
「ようやく出てきましたね。さあ、霊玉と姫君をこちらに渡していただきましょう」


「ベテルギウス!!」


朱雀殿から出てきた梨華ちゃんたちを迎えたのは、私たちではなく、ベテルギウスだった。
ベテルギウスを前に矢口さんがロッドをかまえる。

「おやおや。あの時の魔女さんですか?
 生きていたとはさすが魔女。人を欺くことが得意なようですな」

「高橋、石川をおろして」

ベテルギウスの注目が矢口さんに集中している間に、保田さんが梨華ちゃんを治療する。

「朱雀の巫女が召喚した今、朱雀三銃士もただの人間。
 殺しがいがありませんでしたよ。あなたが相手をしてくれると言うのかな?」

ベテルギウスは、すでに息絶えた舞ちゃんを矢口さんの前に放り投げた。

「舞ちゃん・・・」

矢口さんは顔を伏せる。

「よっすぃ!!コンコン!!柴ちゃん!!」

梨華ちゃんが気がついて、私たちを見て錯乱する。

「姫!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんを抱きとめる。
保田さんは舞ちゃんの容態を確認して息がないことに顔を伏せた。

「そこのナイトは、はじめから死んだようなものだったから、止めをさしてやった。
 そのキツネは小さいくせに勇敢だったがな、最後はあっけないものだった。
 そっちのお嬢さんは、ただの小娘。殺しがいもなかった」


「許せん!!」
「きさまぁぁ!!」


矢口さんと愛ちゃんが攻撃態勢に移る。

460 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:33


「オーヴァールック!!」


突然の攻撃。


ベテルギウスは光に包まれた。


「うおぉぉぉぉ!!!!」


全て一瞬だった。一瞬にしてベテルギウスは灰となった。



「な、なに?」

矢口さんも愛ちゃんも攻撃をする前に事件が起こって放心状態になった。

「だ、誰?」

光はしばらく辺りを包んでいて、
まばゆい光の中でみんな誰が攻撃をしかけたのかわからないようだった。
461 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:35


「柴田さん!!」


その声は、コンちゃん。

「コンコン生きてるの!」

梨華ちゃんがコンちゃんに駆け寄る。

「柴田さんが、柴田さんが死んじゃう!!石川さん!!柴田さんが!!」

自分だって瀕死なのに、コンちゃんは懸命に私の心配をした。

「コンコンしゃべんないで!!」

保田さんがコンちゃんを手当てする。

「柴田さん!!」

コンちゃんは動けるようになったとたんに私のもとに駆け寄った。
それに続いて梨華ちゃんと保田さんも駆け寄る。

「柴田さん!!」
「ダメだ・・・」

私の手首を握って、脈がふれないことで保田さんがうつむいた。
保田さんの言葉にコンちゃんが崩れる。


「・・・ウソでしょ・・・」


梨華ちゃんが私の体を揺らした。

「石川・・・」

保田さんに止められて、梨華ちゃんは私の体に泣きすがった。

「圭ちゃん!よっすぃ息があるから早く!!」

悲しむまもなく、保田さんはよっすぃの治療に向かう。


「ウソだ・・・ウソだよ・・・いや・・・いやぁぁぁ!!!」

462 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:36
「柴田さん!!なんで剣を抜いたんだよ・・・」

私は、最後の力をふりしぼって剣の力を解放したんだ。

さっきのめっちゃ威力のある攻撃は私が放った攻撃。

クラウソラスは諸刃の刃。
相手を倒す威力は相当だけど、自分の体にも相当な負担がかかるんだ。
ウインドブレイクなんて比べ物にならないくらいの大技をボロボロな体で放つなんて・・・
自殺行為だったんだ。


463 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:38


「なんでこんなことに・・・」


拳を握り締めた矢口さん。
よっすぃが立ち上がって、梨華ちゃんのもとに歩み寄る。
私にすがりついてただ泣き続ける梨華ちゃんの肩を優しく抱き寄せてから、
よっすぃは静かに口を開いた。


「新垣・・・剣士じゃなかったんだ」


その言葉に、周りの空気が凍った。

464 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:42
朱雀殿に梨華ちゃんたちが入ってすぐに、里沙ちゃんはある行動に出たんだ。

急に笛を吹き始めた里沙ちゃん。
その音色はいつもの穏やかな旋律とは違って、殺気が満ち溢れるものだった。

「に、新垣やめろよ!うち怪我してんだからもっと気持ちいい曲吹いてよ!」

気を失っていたよっすぃも起きだして、みんな異常な行動を止めようとした時だった。

「お導きありがとうございます。新垣様?」

ベテルギウスが現れたんだ。

「え?」

信じられない光景にみんな目を疑った。

「舞ちゃん!!」

ベテルギウスを追って、あさみとみうなも駆けつけた。

「里沙ちゃん、どういうこと?」

問いただそうとしたそばから、私の身体は動かなくなった。

「みなさん、耳をふさいで!これは、金縛りの旋律です!!」

コンちゃんに言われて耳をふさいだんだけど、里沙ちゃんの音色は身体の中に染み入るように鳴り止まなくて・・・

「無駄ですよ?新垣様の笛の音は、身体の細部から入っていくんですからね」

ベテルギウスが嘲るように言った。

「なんでだよ!新垣!!おまえ剣士だろ!!」

みんなの動きを封じて、里沙ちゃんは演奏をやめた。


「私は・・・八剣士じゃなくて青龍三銃士です!!ベテルギウス後はよろしく」


そういうと里沙ちゃんは姿を消した。
その後には、義の霊玉・・・偽者の霊玉が落ちていた。

「あの方は、青龍三銃士。貴様らの仲間ではなく、我々の仲間だ」

ベテルギウスが里沙ちゃんの霊玉を踏み潰した。
簡単に砕け散った霊玉に私たちはショックで言葉を失った。

「全て作戦。さすがハーモニックメーカー。人を欺く術を熟知されていたのだ」

そして、ベテルギウスは次々に私たちを倒していったんだ。

465 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:43
「そんな・・・」

よっすぃの話を聞いてみんなショックを隠しきれない様子だった。

「柴ちゃん!!」
「柴田さん!!」

コンちゃんと梨華ちゃんは私から離れようとしない。


早いよ・・・早すぎるよ・・・私まだ18歳なんですけど・・・
これから、もっともっと恋して大人な女になって瞳ちゃんの彼女になるんだよ。
18歳で娘に先立たれたら、お父さんやお母さんだってやりきれないよ。
物語の展開的にも、私まだ生きていていたいんだけど・・・



ってことで、奇跡は起きた。
梨華ちゃんの涙が私の体に変化をもたらした。

「・・・ぅ」
「え?」

「・・・ぅぅ」
「柴ちゃん!!」

「・・・う」
「ケメちゃん!!」

保田さんが駆けつける前に、コンちゃんが私に薬草を飲ませてくれた。

「すみません。ベテルギウスに負わされた怪我には効くんですが、
 クラウソラスの方は・・・しばらく衝撃が残ると思います」
「うん。平気。ありがとう」

体中が痛くて熱くてだるかったけど、助かったんだからよし。

「柴ちゃん!!」
「梨華ちゃん・・・もう少し早く出てきてよ。死ぬかと思った」


冗談っぽく言った私の言葉に梨華ちゃんは少し笑ってまた泣いた。

466 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:45
その日、舞ちゃん達の遺体を私たちは埋葬した。


三人はここでどんな思いで朱雀の巫女を守り続けていたんだろう。


ようやく勤めが終わって、本当だったら普通の女の子に戻れたはずの三人・・・


こんなに簡単に誰かの命が失われるんだ。


こんなにあっけなく誰かの死に直面しちゃうんだ。


仲間だと思っていた相手の裏切り・・・


みんな、いろんな思いが交錯して口を開くことはなかった。

467 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:45
「みんな起きてください!!」

マウントフェニックスの前で野宿した私たち。
翌朝私たちを起こしたのはコンちゃんだった。

「なんだよコンコン。今日くらい寝かせろよ!」

朝が苦手なよっすぃは不機嫌モード全開。

「これ」

コンちゃんが梨華ちゃんに手紙を見せる。

「え・・・」

手紙を読んだ梨華ちゃんが固まった。


「愛ちゃん・・・旅やめるって。一人で魔王を倒すって」


梨華ちゃんから手紙を横取りしてよっすぃが確認する。

「あのバカ!」

手紙を握り締めて走り出したよっすぃを私たちも追った。


468 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:47
「サウスビレッジが離れ小島でよかったよ」

愛ちゃんは船着場にいた。
よっすぃが愛ちゃんのもとに歩み寄って手紙を投げつけた。

「どういうことだよ!ふざけんな!!」
「ふざけとらん!!」

「なんだよ、今更やめるって!!何考えてんだよ!!」
「これ以上、みなさんを巻き込むわけにはいかんもん!!」

愛ちゃんは昨日の惨劇に自分を責めていたんだ。
全てを巻き込んだのは自分のせい。

もしも自分が梨華ちゃんやみんなを旅に誘わなければみんな普通に平和に暮らせていたのかもしれない。
朱雀三銃士だって自分たちが来なければ死なずにすんだのかもしれない。

そう思ってずっと自分を責め続けていたんだ。

「・・・」
「これ以上・・・犠牲者を増やしたくない」

「・・・じゃあ、なんとかなんのかよ。
 お前の力だけでなんとかなにのかよ!!」
「それは・・・」

「お前の力だけではなんともなんないから、うちらを集めたんじゃなかったのかよ!!」
「でも!このまま旅を続けたら、姫や、みんなが死ぬかもしれない・・・
 そんなの絶対にいけないんです!!」


「・・・」

469 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:49
「死なないよ?」

よっすぃに代わって梨華ちゃんが愛ちゃんの前に立った。


「愛ちゃん、みんな死んだりしないよ。
 だってほら、ケメちゃんがいるもん。
 コンコンだっているし。だから死なないよ。
 よっすぃやまりっぺはすっごく強いし、
 柴ちゃんだってどんどん強くなるよ?
 だからね、誰も死んだりしないんだよ」


「でも!」


「愛ちゃんと一緒に戦うって決めたんだもん。
 愛ちゃんの苦しみ半分もらうって約束したでしょ?
 だから、愛ちゃんがなんて言ってもみんな、一緒に行くよ?」


「姫・・・」


愛ちゃんは梨華ちゃんの言葉に泣き崩れた。

「ったく。朝から騒動起こすなよ。高橋がいなかったら、
 うちの霊玉だけじゃ、白虎呼び出せないんだし意味ないじゃん」


「あ!今高橋って言った?」


よっすぃが始めて愛ちゃんを名前で呼んだ瞬間。
それをすぐに梨華ちゃんに言われたよっすぃは顔を赤くして知らん顔をした。
そんなよっすぃを見て私たちは笑った。
470 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:50
「あ!!それとさ!?思ったんだけど、まりっぺって何歳なの?」
「え?」

そういえばそうだよね・・・
朱雀三銃士の舞ちゃんは70年前に巫女に使えた・・・ってことは?
朱雀の巫女の安倍さんはそれよりも前に巫女になったわけで・・・ってことは?
安倍さんと矢口さんが知り合ったのはもっと前・・・一体いくつ?

「ねえねえ?」
「93歳だったっけ?」

「えぇぇ!!やぐっつぁんおばあちゃんじゃん!!ってか覚えてないの?」
「うっさい!!魔女に年齢は関係ないんだ!!」

よっすぃにからかわれて、矢口さんはムキになってよっすぃを叩いた。

「うっわぁ。おばあちゃん、八つ当たりすんなよ!!」
「おばあちゃんって言うな〜!!」


そんな二人を見て私たちは笑った。

そして、愛ちゃんも涙でぐちゃぐちゃな顔をくしゃくしゃにして笑ってた。


愛ちゃん、気がついてくれた?私たちはもう仲間なんだよ。



471 名前:惨劇の誓い 投稿日:2005/09/06(火) 01:54
川σ_σ|| <補足説明です!

オーバールック:私の大技です。クラウソラスの力を最大限に発揮し、自分の命を引き替える代わりに
        あらゆるものを破壊することができる技・・・禁忌技です。

 今回で、第一章が完結です。ひそかに・・・区切ってみたり・・・
 次回からは、新たな地へ旅立ちます。これからも、応援してくださいね♪
        
472 名前:レス♪ 投稿日:2005/09/06(火) 02:05
>>456 :通りすがりの者 さん
  ついに一人目召喚で、第一章完結です。
  いつもレスいただけて、本当に嬉しいです♪
  あの人の真相も明かされて・・・辛いできごとが・・・
  次回からは、新たな地へ旅立ちます。
  これからも、よろしくお願いします!!


>>457 :名無飼育さん :2005/08/25(木) 21:46
  よっすぃのすご技に続き、今回は柴ちゃんの禁忌技炸裂でした。
  急展開の中、悲しみを乗り越えて、剣士たちはサウスビレッジを離れます。
  愛ちゃんだけじゃなく、みんなの中に、剣士としての、姫としての自覚が
  芽生えたようです??よっすぃと愛ちゃんの友情も・・・
  次回からもよろしくお願いします!!


>>458 :名無飼育 さん
  朱雀の巫女、まりっぺの大切な人との再会でした。
  これからは、朱雀として、なっちはまりっぺとともに戦ってくれます。
  今回は、シリアスストーリーでしたが・・・
  次回からは、新たな地でまたまた旅が始まります!
  これからも、よろしくお願いします!!

 
 レスありがとうございます!おかげさまで、第一章完結です。
 いつの間に?第一章って??ってかんじかもしれませんが(汗)
 次回からは第二章です!剣士の活躍、姫の活躍ご期待下さい!!
 これからも、ご愛読よろしくお願いします!!
473 名前:次回予告 投稿日:2005/09/06(火) 02:15
川σ_σ|| <第二章予告です!

 第二の四神を召喚すべく、西へ・・・
 西を守る四神とは??
 立ちはだかる三銃士。
 
 天星人の奇襲もさらに・・・
 裏切り者の行方は・・・
 悲しい戦いが繰り広げられる。

 残りの剣士も続々登場♪
 強くてかっこいい剣士が登場?!
 梨華ちゃんの恋もいよいよ始動??
 矢口さんと保田さんが呼び出す朱雀の活躍!
 愛ちゃんとよっすぃの友情!?
 コンちゃんの秘密も明らかに!!
 そして、私の物語りも始動・・・?

とにかくとにかく!!第二章もよろしくお願いします♪
474 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/06(火) 07:36
更新お疲れさまです。
一瞬ハラハラドキドキしましたよ。
この先どんな新展開があるのか楽しみです。
次回更新待ってます。
475 名前:名無飼育 投稿日:2005/09/07(水) 18:11
ガキさ〜ん!!!ってかんじです。
そんな展開だとは・・・
第二章も楽しみにしてますんで!!
476 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/09/11(日) 17:56
( ^▽^)<しなないよ!
第二章も楽しみです♪
477 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/13(火) 02:58
みんな仲間ってかんじですね?
第二章は恋愛の方も進展するみたいだし??
楽しみにしています!!
478 名前:k・y 投稿日:2005/09/29(木) 14:34
川σ_σ|| <

 普通の女子高生をしていた梨華ちゃんは、第三世界からやってきた
 女の子愛ちゃんに連れられて、未知の世界へ旅にでちゃったんだ。
 その世界で、梨華ちゃんは魔王を倒すために、八剣士たちと一緒に
 姫として戦うことになっちゃった。

 実直で、姫を一途に守りぬく愛ちゃん。
 軽いんだけど、熱い心を持ってるよっすぃ。
 厳しくて優しい保田さん。
 小さな身体で、平和を願う矢口さん。
 賢くて、頼りになるコンちゃん。
 それと、梨華ちゃんの親友の私(柴田あゆみ) 

 朱雀の巫女の力を得ることができて、四神の一人を召喚できたんだけど・・・
 仲間だと思っていた里沙ちゃんに裏切られるし。
 敵もぞくぞく登場しちゃうし・・・
 
 私たちの旅はまだまだ先行き不安なんだけど・・・
 
 第二章始まりです!!!
479 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:36
朱雀の力をもらった私たち。サウスビレッジに別れを告げて、船に乗り込んだ。

「あ〜あ。また船か・・・」

ここに来るまでだってすっごく時間がかかったわけだからね・・・
また何日も船の上なんだって思ったら気が重くなったみたいで、梨華ちゃんが乗るのを躊躇。

「オイラも船は勘弁だよ・・・」
「でも、乗らないとここから出れないし・・・」

矢口さんと保田さんも乗る前から顔が青くなっちゃってる。

「三人とも暗くなってもしかたないじゃん!!」

船酔い知らずのよっすぃには、船の辛さはわかんないからね・・・

「あ、来ました!」

愛ちゃんが遠くの船を指差す。

「は?これじゃないの?」

よっすぃが荷物を積んだ船を指差す。

「本当はみなさんに黙って島を出る予定だったので・・・船を呼んだんです」
「どうやって?」
「中澤さんに通信機を持たされていたんで」

どうやら、あっちの船は愛ちゃんが呼んだ船みたい。

「じゃあ、国王軍の船に乗れるんですね?」

コンちゃんは新型の国王軍の船に興味津々みたい。

「はい。旧式の船と違うのでエンジンがついとるから、すぐに移動できます」

ってことは!!長い船旅をしなくて済むってことだよね?みんな一気に顔が明るくなった。

「へぇ。さっすが次期国王は違うね?金があるし?偉いから?苦労しなくて済むわけだ?」

不満気に荷物を船から降ろし始めたよっすぃに、愛ちゃんが詰め寄る。

「そういうわけじゃありません!!」
「庶民は、旧式の船で気長に旅して?国王様は最新式の船で爽快な船旅を!ってことだろ?」
「わかりました!船はこっちのに乗りましょう!!」

愛ちゃんはそう言うと、通信機で連絡してせっかくの船を追い返しちゃった。

480 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:38
「あ、愛ちゃん?できれば、向こうの船の方が・・・?」

梨華ちゃんの声にも耳を傾ける気配はなく、愛ちゃんは旧式の船に乗り込んだ。

「よっすぃのバカ!」

矢口さんに叩かれつつも、よっすぃも船に乗り込む。

「はぁ・・・」
「せっかくの、爽快な船旅が・・・」
「よっすぃのバカ」
「最悪・・・」
「ま、仕方ないですね」

私たちも不服ながらも船に乗り込んだ。
結局愛ちゃんとよっすぃの喧嘩に振り回されちゃうんだから。
481 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:40
「で、次はどこに行くの?」

梨華ちゃんがコンちゃんに尋ねる。
この旅の案内役はいつのまにかにコンちゃんになってた。
頭がいいからなのか、コンちゃんはやたらと詳しいからね。

「この船は、西に向かいます西には白虎の森があるはずなので、そこを目指しましょう」

本を開きながらコンちゃんが指差した先にはまだ陸地は見えなかったけど、どうやら私たちは西に向かうみたい。

「白虎ってことは、よっすぃと愛ちゃんの霊玉だね?」

梨華ちゃんに言われて二人とも姿勢を正す。

「白虎の力・・・」

まだ知らない未知の力に感慨深げな愛ちゃん。

「ま!白虎の力もちゃちゃっともらっちゃおう!」

かる〜く受け止めてるよっすぃ。

「吉澤さん!!もっと真剣に!!」
「真剣にって、今から緊張しても仕方ないっしょ?」
「だからって!」
「高橋は、思いつめすぎなんだってば!!」

結局また始まった二人のバトルに私たちは苦笑しつつその場を離れた。
482 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:42
「ガキさん・・・どうしてるのかな・・・」

船室に荷物を置きながら、梨華ちゃんがつぶやいた。
里沙ちゃん・・・思わぬ裏切りにあった私たちは、
あれから里沙ちゃんのことは口にしていなかった。

口にすることは、まるでパンドラの箱を開けるみたいに、この世の悪を開放しちゃうことに思えたから・・・
悪夢から目をそむけていたんだ。

「きっと、元気にやってるよ」

梨華ちゃんの言葉に返す言葉を探していた私たちは、
保田さんがさらっと言いのけたのに少し驚いた。

「ケメちゃん・・・どうしてそんなに簡単に言えるの?」
「なんで?」

「だって・・・」
「だって。新垣は仲間でしょ?一度仲間になった相手だったら、私は信じる」

自分の霊玉を握り締める保田さんの手は少し震えていた。
保田さんの信じるって言葉は、そうとうな覚悟からの言葉なんだ。

「うん。そうだね。ガキさんにはきっと理由があったんだよ」

梨華ちゃんが保田さんの手を握り締めた。梨華ちゃんの手の優しいぬくもりに、保田さんの震えは収まった。

「なんで、ガキさんの心の声は聞こえなかったんだろ・・・」

矢口さんは心を読めるはずなのに、里沙ちゃんのもくろみに気がつかなかったんだよね。

「心の声が、聞こえなかったってことは、ガキさんはやっぱりウソ偽りのない、優しい心の持ち主なんだよ!」

梨華ちゃんの言葉にコンちゃんが立ち上がった。


「でも!裏切ったじゃないですか!!新垣さんは始めから私たちを裏切る目的で近づいたスパイです!!
 ウソをついて仲間のふりをしていたんですよ!!義の霊玉を偽りの道具に使うなんて・・・許せません!!」


コンちゃんがすっごく興奮しているのがわかった。いつも冷静なコンちゃんがこんな風に怒ることなんてなかった。

「コンちゃん?落ち着いて?」

差し出した私の手をとろうとはしなくて、コンちゃんは自分の中に必死に怒りを押し込めようとしていた。

「霊玉には初代剣士たちの思いがたくされているんです・・・それなのに・・・それなのに!許せません!!」

コンちゃんの興奮が冷めそうにないから、私は三人に出て行くように促した。
483 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:43
「すみません・・・取り乱して」

三人が出て行ってしばらく経ってからコンちゃんはようやく口を開いてくれた。

「ううん。そういう時ってあるよ」
「・・・」

「コンちゃんはなんでも知ってるんだね?」
「・・・」

「霊玉に込められた剣士の思いか・・・
 なんか、コンちゃんその人たちに会ったことがあるみたいに思っちゃった」
「・・・ありますよ」


「え?」
「私は・・・初代八剣士です」


「・・・え?」



いきなりの告白に驚くのも忘れた。


言葉を失った私。


再びうつむくコンちゃん。


船室にはさっきまで気にも留めなかった船がきしむ音だけが流れた。


484 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:45
「コンコン・・・大丈夫かな?」

船室を出て甲板に出た三人はコンちゃんの様子を気にしていた。

「ずっと、義の霊玉は?って気にしてたもんね・・・」

矢口さんはコンちゃんの心を読んでいたから、
みんな以上にコンちゃんのことを理解していたみたい。

「でも、やっぱり私は新垣のこと信じたい」

保田さんが遠くを見つめながらそう言った。

「うん。私も信じたい。だって、ガキさんの笛、すっごくやさしい音だったし。
 あんなにきれいな笛が吹ける人が悪い人なはずないよ!
 剣士じゃなくても、仲間には変わりないよ」

梨華ちゃんの言葉に、保田さんは笑みを見せた。

「石川?」
「ん?」

「私あんたが姫だって理由、なんかわかってきたよ」
「え?なになに?やっだぁ!照れるじゃん♪」

「ったく。そういうところは全然姫じゃないけどね?」
「もう!ほめるかけなすかどっちかにしてよ!」

485 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:47
和やかな雰囲気の甲板とは違って、こっちは突然の告白にどうしていいかわからずにいた。

「って・・・どういうこと?」
「私は、初代八剣士なんです。つまり、愛ちゃんたちとは別の世代」

「え?意味が・・・?」
「この霊玉も、本来は別の人の手にあったもの。
 あの時、デネブとの死闘の時に玄武の巫女が、
 一時的に私のもとに授けてくれたものなんです」


「え?えっと・・・え?」


「私は、初代剣士として、300年前に戦いました。
 愛ちゃんのエクスかリバー、吉澤さんのデュランダルを作ったのも私なんです。
 それと、義の霊玉の持ち主が持つ、バハムンクも」


「う、うん?うん・・・え?」


私の思考回路が追いつかないままに、コンちゃんは話しを進めた。


「バハムンクの剣士は、愛を誓ってこの世から去りました。
 その剣士は、私に最後の望みを託したんです。
 バハムンクに命を吹き込んで、自分の思いを次に霊玉を手にする義の剣士に伝えて欲しいって」


「うん・・・???」


「だから、義の剣士は、バハムンクの剣士は特別なんです!!」


「うん」


なんとなくだけど、コンちゃんが気にしてた理由が少しだけわかった気になった。でも頭が混乱しちゃって・・・

「つまり・・・コンちゃんは初代八剣士だから、今の八剣士とは違うってことなんだよね?」
「はい」
「え?じゃあ、コンちゃんの霊玉はどうなっちゃうの?」


その質問にコンちゃんが答える前に、みんなが部屋に押しかけてきた。

486 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:49
「コンコン!!みんなと喧嘩したんだって?」

よっすぃがいきなり乱入してきて・・・私たちの会話は中断した。

「ちょっと!よっすぃ喧嘩じゃないってば!」

梨華ちゃんがよっすぃに訂正する。

「あれ?そうだっけ?」
「コンコン大丈夫?落ち着いた?」
「さっきはすみませんでした」

コンちゃんがそう言って頭を下げた瞬間だった。


『ドカーン!!!!』


突然の爆音に驚いて外にでた私たち。

487 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:51
「どういうこと?」

火の海になった甲板に呆然となった梨華ちゃんの背後に、黒い影が現れた。

「はじめまして。姫?」
「え?きゃあ!!」

梨華ちゃんが振り返る前に、梨華ちゃんのことを影が切りつけた。

「梨華ちゃん!!」
「姫!!」

よっすぃと愛ちゃんが駆け寄る前に影が梨華ちゃんに剣を向けた。

「動かないでください?これは、ほんのあいさつ代わりです。
 動けば姫の命をいただきますよ?はじめまして。リゲルと申します」
「姫をはなせ!」

愛ちゃんの怒鳴り声にリゲルは嘲ると、梨華ちゃんに再び刃を下ろした。

「うっ!!」

切りつけられた梨華ちゃんは恐怖で真っ青な顔になる。

「すみません。私は大きい声が苦手でして。つい、手を出してしまいました。あなたを殺そうとは思っていませんよ」

リゲルは薄ら笑いを浮かべると、傷ついた梨華ちゃんの背中を蹴りつけた。


「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」


傷口を痛めつけられた梨華ちゃんは、その場にうずくまった。

「やめろ!!」

よっすぃが剣をリゲルに向ける。
488 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:52
「なるほど。頭が悪いようですね?」

再び振り上げられたリゲルの剣に、梨華ちゃんが目をつぶる。


『姫を守って!』


いつもの声に身体が動く。

「うっ・・・」

気がつくと梨華ちゃんの前に飛び出してリゲルの剣を受けていた。
愛ちゃんが隙を見てリゲルのもとから梨華ちゃんを救い出す。

「どうやらあなたのようですね?」

リゲルは私の手をつかむと、不気味な笑みを浮かべた。

「なに?」


「探しましたよ?姫を守る忠実な剣士さん?」


「え?」

489 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:53
リゲルは再び剣をふりかざした。

「柴田さん!逃げて!!」

コンちゃんの叫び声は聞こえたけど、目の前の不気味な男から逃れる術を私は持っていなかった。

『我の力を解き放て!』

クラウソラスが光る。剣に呼応するように身体が熱くなる。

「ウィンドブレイク!!」

リゲルは私の技を直撃し、10mくらい吹き飛ばされた。

「さすがですね。ベテルギウスを倒すだけのことはある。今日はこれくらいにしておきましょう」

リゲルはそう言うと姿を消した。

490 名前:新たな旅立ち 投稿日:2005/09/29(木) 14:55
「石川!柴田!早く怪我の治療を!!」

保田さんが梨華ちゃんのもとに駆け寄って、
コンちゃんが私のもとに駆け寄ってきてくれた。

「船が沈むぞ!!」

怪我の手当てをする前に、船が大きく傾いた。
船室から乗員が飛び出してくる。
あっという間に、甲板はパニックに陥った。

「海に飛び込みましょう!!このまま船と一緒に飲まれたら、みんな助かりません!!」
「え・・・うち泳げない」

コンちゃんの言葉によっすぃの顔がひきつる。

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!行くよ!!」

矢口さんがよっすぃを連れて海に飛び込んだ。

「姫!」
「よし!これで傷口はふさがったはず」

保田さんに治療された梨華ちゃんも海に飛び込む。
それを追って、愛ちゃんと保田さんも海へ。

「柴田さん!薬草です!!」

コンちゃんがそれを渡そうとした瞬間に、船が真っ二つに割れて砕けた。
私とコンちゃんは別々の方向へ・・・

「柴田さん!!」


私は船ごと海に飲み込まれた・・・

491 名前:k・y 投稿日:2005/09/29(木) 14:59
川σ_σ|| <補足説明です!

 リゲル:天星人。不気味な発言を残して去っていったんだけど・・・
     彼のもくろみがわかるのはまだまだ先です。


 いきなりのコンちゃんのカミングアウト・・・この先どうなるかは・・・
 
492 名前:レス 投稿日:2005/09/29(木) 15:10
>>474 :通りすがりの者さん
  ついに第二章が始まりました。
  これからも読んでもらえると嬉しいです。
  今回は新展開のキーワード満載なかんじにしたんですが、
  気がつきましたか?
  これからも、よろしくお願いします!!

>>475 :名無飼育 :2005/09/07(水) 18:11
  第二章が始まりました。
  前回、ガキさんの衝撃事実が告げられましたが。
  ガキさんは・・・
  これからの展開もよろしくお願いします。
  
>>476 :名無し飼育さん :2005/09/11(日) 17:56
  第二章開始です!
  ようやく絆が深まったみんな。
  これから、新たな仲間が増える予定です。
( ^▽^)<みんななかまだよ♪
  次回もお楽しみに!

>>477 :名無飼育さん :2005/09/13(火) 02:58
  第二章開始です。
  今回も、はどうでしたか?
  新たな敵が登場しました。
  これからも、楽しんでもらえるように頑張ります!
  これからもよろしくお願いします!!!
  
レスありがとうございます!
これからも、多くのレスがもらえると嬉しいです!
第二章もよろしくお願いします!!

493 名前:名無飼育 投稿日:2005/10/06(木) 01:22
うぉぉ!!更新されてる!!!
待ってました!!!
気になる展開ですね。これからも頑張ってください!!!
494 名前:名無飼育 投稿日:2005/10/06(木) 01:23
すみません。興奮してageちゃいました・・・
495 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/07(金) 02:52
保田さんはそこまで・・・
それがシスターってものなんでしょうねぇ。
そしてまたまた急展開! カミングアウトも気になります!
496 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:28
「姫!無事ですか!!」

愛ちゃんが梨華ちゃんを探そうとあたりを見渡す。

「う・・・ぅっぷ・・・」

梨華ちゃんは沈んだ船が作り出した渦潮に巻き込まれて溺れかけていた。

「姫!!」
「高橋!あんたまで溺れる!!」

梨華ちゃんを助けに行こうとした愛ちゃんを保田さんが抑える。

「でも!このままやと!!放してください!!」

愛ちゃんは強引に保田さんから放れると梨華ちゃんを助けに向かった。

「姫!!」

愛ちゃんは、小さい頃は島で育ったから泳ぎは得意なんだ。
だから、渦潮の中から梨華ちゃんを助け出して、安全な場所に移動した。

497 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:31
「姫、無事ですか?」
「う、うん・・・ありがとう」
「いえ」

「この状況もかなりやばいよね・・・」

保田さんに言われて、海を見渡す梨華ちゃんと愛ちゃん。

「このままじゃ・・・あ!よっすぃたちは?」

梨華ちゃんがよっすぃと矢口さんを探す。

「あ、いた!」

愛ちゃんが板木に捕まっているよっすぃと矢口さんを発見した。

「よっすぃ!大丈夫!!」

梨華ちゃんの呼びかけに、なんとか手を振るよっすぃ。

「あ!船だ!!」

よっすぃのずっと奥の方に、国王軍の船が見えた。


「愛ちゃ〜ん!!!」


船から中澤さんの声が聞こえる。
愛ちゃんのピンチを察して助けに来てくれたんだ。
中澤さんのおかげでみんなはなんとか船に救出された。
498 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:34
「愛ちゃん!怪我はない?」
「はい!」

船に引き上げられるなり、我が子のように愛ちゃんの安否を気にする中澤さん。

「死ぬかと思った・・・」

よっすぃが青い顔で海を見つめる。

「それより・・・やばいかもしれない・・・」

矢口さんが海を見渡して深刻な顔になる。

「コンコンと柴ちゃん・・・どこにも見当たらないんだけど・・・」
「え!!」

梨華ちゃんの顔が青ざめて、海を見渡す。

「柴ちゃん、怪我してたし・・・あんな状態で海に投げ出されたら・・・」

よっすぃの言葉に梨華ちゃんは泣きそうになった。

「柴ちゃん!」

私を探そうと再び海に飛び込もうとする梨華ちゃんを慌てて愛ちゃんが止めた。

「柴ちゃんが!」

振り切ろうとする梨華ちゃんを愛ちゃんは必死に止めて、なだめた。

「柴田さんもコンコンも必ず生きてますから!!」
「でも、柴田の気配も、コンコンの気配もかんじないんだ・・・」

矢口さんの言葉に梨華ちゃんが震えた。

「姫!落ち着いて!!」
「落ち着けるわけないじゃん・・・
 柴ちゃんにもしものことがあったら!!」

愛ちゃんから離れて海に飛び込もうとした梨華ちゃんはよっすぃに抑えられた。

「離して!!」
「離さない!!」
「柴ちゃんが!!」
「梨華ちゃんが今、海に飛び込んだって助けられないよ。
 それよりも、ちゃんと助ける方法を考えよ?」

よっすぃの落ち着きのある言葉は梨華ちゃんの心を静めた。
499 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:34
「あ、なにあれ!!」

保田さんが沈んだ船の後の不気味な異変に気がついた。
海水が四方に分かれて、その場所だけ水がなくなっていく。
そして、その場所にまばゆい光に包まれた亀が降り立った。


「この二人をお願いします」


亀は私とコンちゃんをみんなのもとへと帰してくれた。


「待って!あなたは!!」


梨華ちゃんが引き止める前に亀は姿を消した。


500 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:35
「う・・・」

船室に運ばれた私たち。
先に気がついたのはコンちゃんの方だった。

「コンコン大丈夫?」

心配された矢口さんに返事をすることなく、コンちゃんは私のもとに走った。

「コンコン!まだ動いたらダメだって!!」

保田さんと矢口さんがコンちゃんを追いかける。

「柴田さん!!」

梨華ちゃんの脇から私のベッドにコンちゃんは飛び乗った。

「柴田さん!」
「コンコン、揺らしたらダメだよ!」

梨華ちゃんに抑えられてコンちゃんはようやく落ち着きを取り戻した。

501 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:37
「コンコンは本当に柴ちゃんのことが好きなんだね?柴ちゃんの王子様みたい?」

よっすぃのいつものような軽い言い回しにコンちゃんの中で何かがはじけた。

「・・・そんな大切な思いを軽々しく言わないで下さい!!柴田さんは!!」
「コンコン落ちついて!」

よっすぃに向かっていきそうになるコンちゃんは梨華ちゃんに抑えられた。
梨華ちゃんの腕の中で平静を取り戻してから、コンちゃんは再び私の枕元に立った。

「ごめんなさい・・・あなたを危険な目にばかり遭わせてしまって」
「平気だよ」

にぎやかなやり取りに、私もようやく気がついた。

「柴田さん!!」
「いたっ・・・コンちゃんごめん。揺らさないで」
「すみません!」

コンちゃんは反省して梨華ちゃんの腕に飛び移った。

「柴ちゃん平気?」
「平気じゃないよ」

「ごめんね。私のせいで」
「うん。本当に。あ、梨華ちゃん怪我は?」

「ケメちゃんに治療してもらったから」
「できれば私も?」

「それが・・・」

梨華ちゃんの横から保田さんが顔を見せた。

「あんたのその傷、魔法も薬も効かないのよ」
「え・・・」
「多分、ここの海水が毒だったんだと思う」
「そんなぁ」
「しばらく、安静にするしかないから」
「はい・・・」


結局、私ってついてないんだ・・・

502 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:39
「大丈夫?」
「みんなは?」

寝てる間に、梨華ちゃんだけになってた。

「甲板にいる。コンコンは船室に寝かしてる」
「そっか。看病してくれてるんだ?」

「あたりまえじゃん!友達でしょ?」
「はは。どうも」

「大丈夫?」
「じゃないって。いいよね。梨華ちゃんはみんな守ってくれるし?」

「嫉妬?」
「ははは。どうだろ?」

「じゃあ、柴ちゃんのことは私が守ってあげるよ!」
「いっつも、助けるのは私なんだけど?」

「そういえば。柴ちゃん、いっつもかばってくれるね?」
「勝手に身体が反応するんだよね・・・」

「柴ちゃんも剣士だったりして?」
「ははは。だったらすごいね?まだ、あと三つの霊玉が残ってるんだもんね」

「うん。どんな人なんだろ?」
「どんな人なんだろうね」

「よっすぃがいたってことは、美貴ちゃんもいるのかな?」
「言っとくけど、私たちはもともとこの世界の人じゃないんだからね?」

「わかってるけどさ」
「全部終わったら、戻るんだからね?」

「はいはい」
「ちょっとだけの予定が、こんなに長引くなんて思わなかったよ。早く帰りたい」

「あ!ぬけがけしないでよ?ちゃんと一緒に戻ろうね?」
「はいはい」


でも・・・そんな約束は果たされることはなかったんだ。

503 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:40
「なんか、蒸し暑いね?」

船旅を終えた私たちは新たな場所に到着した。
パズルフォレストと呼ばれる奇妙な森。

「気をつけてください」

コンちゃんに言われてみんなに緊張が走る。

「みたいだね・・・今度は寒い」

さっきまで暑かったのに、10歩も進まないうちに今度は寒気に襲われる。

「なんだよここ!」
「パズルフォレストです」

「ってそれはわかってるよ!」
「だって聞いてきたじゃないですか」

「うっわぁむかつく!!」
「お互い様です」

仲良くなったのかな?ってかんじだったけど、相変わらずなよっすぃと愛ちゃん。

504 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:41
「あっつい・・・」
「さむい・・・」
「あつぃい!!」
「っさっむぅ!!」

それの繰り返し。こんなところにいたら体が変になっちゃうよ。

「コンコン、この森いつまでこんな調子なの?」

梨華ちゃんの言葉にコンちゃんは本をめくる。

「えっと・・・歩いて3日くらいでウエストタウンに着くはずです」
「えぇぇぇ!!3日も!!」

「あ!なるほど!!わかりましたよ!!」
「え?」

「この森ではもともとの寒暖の地域が混在しちゃってるんです。
 つまり、ぐちゃぐちゃになってるんです」
「で、つまりどうすれば?」

愛ちゃんのもっともな質問にコンちゃんは首をかしげた。

「コンコン?それを伝えてうちらにどうしろっていうの?」
「さあ・・・」
「コンコン・・・最低」

よっすぃにダメだしされてしょげたコンちゃんは私の腕に乗っかってきた。

「こんなところにいたら、風邪ひいちゃうよ」
「吉澤さんは大丈夫やと思います」
「なんで?」
「アホやから」
「高橋!!!」

よっすぃが愛ちゃんにつかみかかりそうになった時だった。


不気味な笛の音が森に響く。


505 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:42
「この笛の音は・・・」

よっすぃが剣を抜く。

「まさか・・・」

その笛の音は、私たちが慣れ親しんだ快い音色ではなく、
悲しみに沈む憂いに満ちた暗闇の旋律・・・

「来た!!」

よっすぃが感じた殺気に答えるように、森の中から次々に刃が飛んできた。
目に見えない無数の槍が私たちに向かってくる。

「えい!!!」

よっすぃと愛ちゃんが次々に槍を切り落とす。

「くっそぉ!こんなことしないで姿見せろよ!!」

よっすぃの怒鳴り声に攻撃が止まった。

「出てこいよ!!うっ・・・」


怒鳴ったよっすぃの身体が固まった。


「よっすぃ?よっすぃ!!!」

よっすぃの身体はみるみるうちに石化していった。
梨華ちゃんがよっすぃの石化を止めようとしがみつこうとしたんだけどよっすぃは石になっちゃった。


「高橋!!」


よっすぃに続いて石化し始めた愛ちゃんに保田さんが気づく。


「愛ちゃん!!」
「姫・・・」


そして、愛ちゃんも石になってしまった。


「どうなってるのよ!!」


石になった二人を前に泣き出しそうな梨華ちゃんを私が支えた。

506 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:44
「これは・・・」

コンちゃんがよっすぃたちが切り落とした槍の破片を見て本を開く。

「ストーンヘンジです」
「ストーンヘンジ?」


「はい。ストーンヘンジは普段ドアーフたちが持っているんです。
 あらゆるものを石に変えることができるドアーフの工具が・・・
 こんな風に使われるなんて・・・吉澤さんたちはこれに触ったから石化したんです」


「石化を解く方法はないの?」
「エルムの聖水をかければ元に戻るはずですが・・・」


「エルムはもう、この森にはいませんよ?」


聞き覚えのある声に振り返ると・・・


「ガキさん・・・」


里沙ちゃんだった。
さっきの暗闇の旋律はやっぱり里沙ちゃんの笛の音・・・

「ガキさん!無事だったんだね!!」

笑顔を向けた梨華ちゃんに里沙ちゃんは少し戸惑った顔を見せたけどすぐに笛を構えた。

「ドアーフを操ったのは私です!」
「ガキさん・・・なんで?なんでこんなこと!!」


「私は青龍三銃士です!!」
「だけど!仲間だよ!!」


里沙ちゃんは何かを振り切るように笛を吹き始めた。


507 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:46
「やめて!!」

里沙ちゃんを止めようとした梨華ちゃんだったけど、急に身体が重くなって地面にひれ伏す形になった。

「こんなことまでできるなんて。うっ・・・」

コンちゃんが里沙ちゃんをにらみつけながら地面に引き寄せられた。

「この森の精霊を操ってるんです!!柴田さん!!剣を抜いてください!!」
「無理!!」

とっくに地面とお友達状態の私が動けるはずはないわけで・・・


「新垣!!こんなことしても・・・自分を苦しめるだけだよ!!やめて!!」


保田さんがなんとか立ち上がると里沙ちゃんのもとに歩き出した。
里沙ちゃんはさっきよりもするどい笛の音で保田さんを遠ざけようとする。
それでも保田さんは里沙ちゃんのもとまでたどり着くと、手を差し伸べた。

里沙ちゃんの笛の音が一瞬止まったんだけど、次の瞬間、さっきとは違った曲を奏で始めた。


荒々しく、狂おしい旋律・・・あたりが一瞬にして闇に飲まれる。そして・・・


「危ない!!」


ドアーフたちのストーンヘンジが私たちを襲った。


『姫を守って!!』


いつもの声に私はとっさに梨華ちゃんをかばった。
ドアーフの攻撃が止んだ時、保田さんも矢口さんもコンちゃんも・・・みんな石になっちゃっていた。
そして、里沙ちゃんの姿はなくなっていた。

508 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:47
「梨華ちゃん大丈夫?」
「うん。柴ちゃんは?」

「なんか、平気みたい」
「みんな・・・」

石になったみんなを見て、私たちはどうすることもできずに立ち尽くすしかなかった。


「さっすが、青龍三銃士!」


私たちの背後から聞こえた声は・・・


「「アルタイル!!」」


「あ〜あ。みんな石になっちゃったね。さてと!」

アルタイルは一番近くにいた保田さんに近づくと、落ちていた霊玉を手にした。

「霊玉ゲット♪」
「やめて!!」

梨華ちゃんが保田さんの霊玉を取り戻しにアルタイルに掴みかかった。

「はい!姫もゲット♪」

飛んで火にいる夏の虫・・・アルタイルに逆に腕をつかまれて梨華ちゃんはたじろいだ。

「梨華ちゃんを離して!!」
「って、自分から捕まりにきたんだよ?」
「離してってば!!」

剣に手をかけた私を見てアルタイルは梨華ちゃんを解放した。

「ベテルギウスみたいになりたくないんでね」

ベテルギウスを倒したのは私。
一瞬の技での瞬殺・・・アルタイルはそれを恐れているんだ。

「ま、霊玉全部集めてからでも姫はいいし」

アルタイルに先を越される前に、私たちはよっすぃたちの霊玉を拾った。

「この森にはもうエルムはいないよ?」
「この森にいなくたって、探すわよ!!」

梨華ちゃんの言葉にアルタイルは嘲笑した。

「悪魔になったエルムならいるけどね?じゃあ、今日はこのへんで!」

アルタイルはそう言うと姿を消した。

「どうしよう・・・」
「とんでもないことになっちゃったね・・・」


見ず知らずの土地に二人きりにされちゃうなんて・・・


今までみんながいたからこんなに不安になることなんてなかったのに、
梨華ちゃんも私も、ただただ、呆然とするしかなかった・・・

509 名前:西の森へ 投稿日:2005/10/24(月) 00:52
川σ_σ|| <補足説明です!

ドアーフ:森で働く小人。ストーンヘンジを操って、石細工をしている。

ストーンヘンジ:ドアーフの石槍。普段は工具であって、決して武器ではない。

 
 再び現れた、里沙ちゃん・・・でも、八剣士じゃなくて青龍三銃士・・・
 二人っきりになっちゃった私と梨華ちゃん・・・ピンチです!!
510 名前:レス♪ 投稿日:2005/10/24(月) 00:58
>>493 :名無飼育 さん
  更新遅れがちですみません。
  新たな展開、楽しんでいただけていればうれしいです。
  今回は、ガキさん再びでしたが・・・
  仲間を失って、梨華ちゃん大ピンチってところですが・・・
  次回もよろしくお願いします!!

>>495 :名無飼育さん
  保田さんは、慈悲深いシスターなんです。
  でも、彼女の思いむなしく・・・
  コンコンのカミングアウトの秘密はいずれ明らかになります。
  次回はついに、新キャラ登場・・・??
  次回もよろしくお願いします!!

 レスありがとうございます。更新が遅れぎみで本当にすみません。
 定期的に更新できるように心がけるので・・・
 次回はついに?新たなキャラが登場するかもしれません・・・???
 これからも、よろしくお願いします!!
511 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/10/24(月) 21:51
更新お疲れ様です。
大ピンチですね、これを切り抜くことは果たして出来るんでしょうか?
うーん・・・。しかも柴田さんの言葉が凄く気になります。

次回更新待ってます。
512 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/25(火) 21:25
これはもう最大級のピンチじゃないっすか!
今後の展開が気になります。
513 名前:名無飼育 投稿日:2005/10/31(月) 01:12
更新お疲れ様です!
大ピンチですね。気になります。
次はついに新しいメンバーの登場ですね?期待してます!!
514 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:33
「これから、どうする?」

座り込んだ梨華ちゃんを気にしつつ、みんなの石像を少しでも安全な場所に運ぼうと、洞窟の中に移動した。

「・・・」
「このままじゃ、みんな元に戻せないよ?」
「・・・」

梨華ちゃんにその先を尋ねたってしかたないってわかっているのに、
それでも何も考え付かない私は、選択をゆだねた。

「梨華ちゃん?」
「・・・」

「・・・ごめん。何も考えられないよね・・・」
「柴ちゃん?」

「ん?」
「行こう?」

「え?」
「とにかく、今は二人で頑張るしかないから!エルムを探しに行こう!」

何か壁にぶつかると、梨華ちゃんは決まって私に泣き言を言ってきた。
散々泣き言を言って、その次に相談。
結局いつだって答えを出すのは私の方で・・・

でも、今の梨華ちゃんは違った。
一人で考えて、泣き言なんて言わずに答えを出した。

この旅で、いつのまにかに梨華ちゃんはすごく成長したんだって思った。
姫を前にして、私は自然と敬服していた。

「柴ちゃん?」

肩ひざをついて、頭を下げた私に梨華ちゃんは不思議な顔をした。

「ん?何してんだろ!ごめん!」

無意識のうちに出た行動にあわてて立ち上がると、
梨華ちゃんはいつものように無邪気な笑顔に戻っていた。

「ははっ。変なの。とにかく、森の中を探し回れば何か手がかりがつかめるかもしれないし!行こう!!」
「うん!!」

515 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:35
威勢はよかったんだけど、半日近く森を歩き回った私たちは、
くたくたで口数も少なくなって、ただ歩いているだけの状態になっていた。

この森は、奇妙だから普通の場所を歩くよりもずっと体力が消耗される。
しかも、あてもないし、食料もない・・・

口に出さないまでも、私たちは少しずつ諦めモードに突入していた。


「仲間を助けるということは、たいそうなことですね?」


疲れきった私たちの前に、またしても刺客が現れた。

「リゲル・・・」

船の上での手荒い出会いを思い出し私たちはたじろいだ。


「いくら探してもこの森にエルムはいませんよ?
森の精。エルムは、人間によって滅ぼされましたからね?
もっとも?その人間たちを滅ぼしかけた殺人鬼でしたら今もどこかで隠れているでしょうが?」


「何が言いたいのよ!!」

梨華ちゃんの言葉にリゲルは剣を向けた。
向けられた剣から梨華ちゃんを守るように自然と身体が前に出る。
516 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:38
「ほう?本能とはあなどれぬな?皮肉なものだ。
実体あるものは石となり、実体無き者は健在」
「意味わかんないんですけど?」

「じきにわかる。我が支配下におよぶ時に」
「あなたの家来なんかにならないわよ!!」

私の後ろから抗議する梨華ちゃんをリゲルは嘲笑すると剣を抜いた。

「貴様の力にふれられるとはな。光栄だ!」

そう言うと、リゲルは私に攻撃を仕掛けてきた。

「ウィンドブレイク!!」

剣に誘われるように体が動く。

「力の真髄にふれられるとは、光栄なことだ」

私の技を待ちかねたとばかりにリゲルは手の平で技を吸収した。

「う・・・」

技を放った衝撃で傷つく私をリゲルは不気味な笑顔で見つめていた。


「その力。必ず手に入れる」


それだけ言うと、リゲルは姿を消した。


リゲルの残した不気味な言葉は、一瞬私たちに沈黙をもたらしたけど、
新たな刺客の登場で悩んでる暇を失った。

517 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:40
「リゲルのやつ、チャンスなんだから殺せばいいのに」

アルタイルが私たちの前に立ちはだかった。
たじろぐ私たちをアルタイルは面白そうに見つめてから攻撃態勢に入った。

「君はベテルギウスの仇だからね。殺させてもらうよ!」

私に向けられたアルタイルの敵意は今までのものとはまったく違った。
鬼気を感じて私も剣を抜いた。

「ぐるぐるハリケーン!!」
「ウィンドブレイク!!」

アルタイルの竜巻と私の疾風が激突する。
ものすごい威力にあたりの木々が倒されていく。

「うっ・・・」

攻撃を続ける私の身体はボロボロだった。
次第に気力が失われていく。

「疲れてきたみたいだね?さて、決着をつけようかな?ハリケーンホール!!」

体力の限界にひざをついた私をアルタイルの竜巻が襲い掛かる。

「柴ちゃん!!」
「来ちゃダメ!!」

助けに来ようとした梨華ちゃんを一喝して私は覚悟を決めた。


その時だった・・・


518 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:42
「ねばねばボーン」

アルタイルめがけて弓矢が走った。

「うっ・・・」

目を開けるとアルタイルの右肩を矢が貫通していて、
アルタイルは地面に膝をついていた。

「え?」

振り返った先には誰も居なくて、
私たちは救われた喜びよりも突然の攻撃の相手に底知れぬ恐怖を感じていた。

「くそ・・・」

アルタイルはそのまま姿を消した。

「だ、誰?」

あたりを包む不気味な気配を忘れようと、梨華ちゃんの声は少し大きくなった。

「誰か居るの?」

梨華ちゃんも声を震わせながら森に問いかける。
でも、なんの返事もなくて・・・

「柴ちゃん・・・」
「梨華ちゃん・・・」

二人で顔を見合わせた瞬間だった。

519 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:44
「にゃは??」

私たちの間に突然現れた女の子。
ピーターパンみたいな狩人の格好をしたその女の子は100%スマイルで私たちの前に姿を現した。

「だ、誰?」

矢口さんたちの瞬間移動は見てたけど、
いきなり間近に女の子が現れて、私も梨華ちゃんも腰をぬかした。

「ゴトーだよ?」
「へ?」

「はじめましてだね?後藤真希です!よろしく〜?」
「へ?は、はじめまして・・・」

「二人とも大丈夫?」

びっくりしすぎて声にならないことってあるんだ。
声にならない言葉を必死につなげて、梨華ちゃんがなんとか返事をした。
私はそのまま、ただうなずくだけ。


それが、後藤真希・・・ごっちんとの初めての出会いだった。

520 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:47
「はい!これ?」
「え?」

ごっちんがおもむろに差し出した小さな小瓶を受け取って梨華ちゃんは首をかしげた。

「それが無いと、困っちゃうんでしょ?」
「え?」
「んあ?え〜っと・・・ほら!石になった仲間を助けないといけないんでしょ?」
「え?」

混乱しすぎてなかなか意味を理解できないでいる梨華ちゃんに、ごっちんはまた100%スマイルを見せた。

「ハリスホークに聞いたんだ」

そう言ってごっちんが指差したのは天高く舞う鷹。

「でね、あいぼんに助けに行けって言われたんだ」
「あいぼんって?」
「神様だよ♪君の仲間が大変なんでしょ?それをかければもとに戻るよ?」
「え?じゃあ!まさかあなたが!!」

梨華ちゃんがようやく気づいたことに、ごっちんはまた100%スマイルを見せた。

「エルムだよ♪」

ごっちんの言葉を聞かないうちに梨華ちゃんはごっちんに抱きついていた。

「よかった!よかったよかったよかった〜!!!これでみんな元に戻せる!!」
「よかったよかったよかった〜!!ゴトーもなんだかうれしいよ♪」

こうして、私たちはエルムさんに出会うことができたんだ。
521 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:49
それから、私たちはみんなをもとに戻した。

「うわっ!あ?梨華ちゃん平気?」
「姫!怪我はありませんか?」

元に戻ったとたんに梨華ちゃんの安否を気遣うよっすぃと愛ちゃん。
相変わらずな二人とは対照的に、保田さんも矢口さんもコンちゃんも黙ったままだった。
突然の奇襲を仕掛けた主は私たちには残酷すぎる相手だったから。
だから誰も言葉を発しようとはしなかったんだ。

「ん?三人とも暗いよ?」

よっすぃが三人の様子に気がついて、あどけない口調でいつもの冗談を言い始めた。

「石にされて、心まで固まっちゃったんじゃない?」


「「「・・・」」」


「ちょっと?冗談なんだけどさ?なんか返してよ?」


「「「・・・」」」


よっすぃの冗談は三人には笑えなかった。

「あ・・・」

保田さんが、霊玉がなくなっていることに気がついた。

「ケメちゃんの霊玉・・・アルタイルにとられちゃったの・・・」

気まずい雰囲気になりかけたところに、ごっちんが口を挟んだ。

「はじめまして!ゴトーだよ?」

100%スマイルの唐突な挨拶にみんな拍子抜けして、
それからはごっちんの笑顔につられて自然と顔がゆるんだ。
522 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:51
「君がオイラたちを助けてくれたんだね?」

矢口さんに差し出された手を握り返さずに、ごっちんは笑顔を見せた。

「う〜ん?頑張ったのは梨華ちゃんと柴ちゃんだよ?
 ゴトーはね?ちょっとだけ手助けしてあげただけ」

「姫!ありがとうございます!」

「ううん。みんなが無事に戻ってよかった。ごっちんもありがとうね?」

梨華ちゃんに差し出された手をごっちんは見つめると、握り返さずにまた100%スマイルを向けた。

「ゴトーも仲間に加わるね?」
「え?」


「はい!ゴトーの霊玉だよ?」


そう言ってごっちんが取り出したのは、『悌』の文字が刻まれた霊玉。
突然の剣士の登場に私たちは驚く前に拍子抜けした。

「あいぼんに、仲間になりなさいって言われたんだ」

みんな思わず顔を見合わせた。
里沙ちゃんの件もあって、すぐに受け入れることができなかったんだ。
523 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:54
「霊玉を見せてください!」

みんなの沈黙を破ったのはコンちゃんだった。
ごっちんがしゃがんでコンちゃんに霊玉を差し出す。

コンちゃんは自分の霊玉をとりだして、ごっちんの霊玉にかざして見せた。
二つの霊玉が呼応するように緑の光を帯びていく。
そして、コンちゃんの『智』の霊玉とごっちんの『悌』の霊玉の文字がまばゆい緑の閃光を放った。

「この霊玉は本物です。
 霊玉は四神を呼び出すためにそれぞれが呼応しあっているんです。
 この『悌』の霊玉には私の『智』の霊玉。
 保田さんの『礼』の霊玉には矢口さんの『孝』の霊玉。
 吉澤さんの『仁』の霊玉には愛ちゃんの『信』の霊玉。
 それぞれ呼応しあっているんです」

「じゃあ、ごっちんは?」


「本物の剣士さんのようですね?」


コンちゃんの言葉にごっちんは100%スマイルになった。

「コンコンが言うんだから間違いないね?」

梨華ちゃんがごっちんに握手を求める。
ごっちんはその手を握り返して私たちを見渡した。

「愛ちゃん、よっすぃ、ケメちゃん、やぐっつぁん、柴ちゃん、コンコン、梨華ちゃん♪」
「すごい!なんでみんなの名前を知ってるの?」

自己紹介する前にみんなのあだ名を言い当てたことでみんなびっくり。

「森が教えてくれるんだよ。ゴトーは森とお友達だからね」

エルムは森の妖精なんだ。
524 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:55
「その剣!もしかして?」

よっすぃがごっちんの腰に差してある剣に気がついた。

「んあ?」

よっすぃに迫られたごっちんは、首をかしげた。

「それって、バハムンク?」

コンちゃんが前に言って大恋愛。
だからバハムンクの相手は、恋敵って方程式がよっすぃの頭の中では成り立ってるんだ。

「バハムンクなんですか?」

そして、もう一人、姫命!の愛ちゃんも、ごっちんの剣は気になるみたい。

「ううん。違うよ」

ごっちんに否定されて二人はホッと一息。

「それに、ゴトーの武器は剣じゃなくて、こっちだよ♪」
「ガーンディバーですね?」

ごっちんが掲げた弓矢を見てコンちゃんが名前を言い当てた。

「うん」

コンちゃんに向かってピースをして見せたごっちんの姿は、どこまでも平和ってかんじだった。

525 名前:GOT 投稿日:2005/11/09(水) 15:57
「そうだ!この森のエルムはもういないって本当なの?」

梨華ちゃんが思い出したようにごっちんに尋ねた。
ごっちんはその質問に初めて曇った顔を私たちに見せた。
それは一瞬だけだったけど、底知れぬ悲しみというか、憎しみとういか・・・
そういう感情にあふれていた。

でもすぐに笑顔を見せて、でもすぐに私たちに背を向けた。

「いるよ。エルムは森を守るんだから」

そう言ったごっちんの表情はわからなかったけど、
ごっちんの声は少しだけ震えていた。
それは、あふれ出しそうになる何かを抑えているように聞こえた。

「そっか。とにかく、オイラたちはごっちんのおかげで救われたってわけだし!ありがとう!」

矢口さんだった。

矢口さんはこのとき、ごっちんの気持ちを読んでいたんだ。
でも、矢口さんの口からごっちんの真実を聞くことはなかった。

「うん!」

再び振り返ったごっちんは、笑顔に戻っていた。


「よし!じゃあ、みんなでアルちゃん探しに行こう!!」


梨華ちゃんの言葉で、私たちは再び出発した。

526 名前:k・y 投稿日:2005/11/09(水) 16:06
川σ_σ|| <説明です♪

This is 八剣士…NO.6 後藤 真希

霊玉:信   タイプ:エルム
年齢:16歳  出身:パズルフォレスト  
武器:ガーンディーバ(弓)デュルフィング(剣)
能力:あらゆる生き物と話ができる。
その他info:森の妖精エルム。底抜けに明るい。
      ごっちんの100%笑顔は周りの人全てを
      幸せな気持ちにさせてくれる。

ハリスホーク:ごっちんの親友(鷹)。いつもごっちんの近くにいる。


 新たな仲間の登場です。
 100%スマイルのごっちんだけど・・・
 ごっちんの活躍も、ご期待下さい!!
527 名前:レス♪ 投稿日:2005/11/09(水) 16:16
>>511 :通りすがりの者さん
 なんとか新たな仲間の登場で、ピンチ脱出です。
 柴ちゃんの謎が明かされるのは、もうしばらくです。
 お待ち下さい。仲間も増えて、ますます複雑になって
 いきますが・・・お付き合いください。
 では、次回もよろしくです!

>>512 :名無飼育さん
 最大級のピンチもなんとか脱出です。
 新たな仲間が加わりましたが、どうでしたか?
 100%スマイルを前面にだしていきたいと思います。
 ごっちんの応援もよろしくお願いします。
 それでは、次回も!!

>>513 :名無飼育 さん
 新たなメンバーどうでしたか?
 エルムの存在にはまだまだ謎が残されていますが・・・
 とにかく、底抜けに明るくて平和なごっちん。
 今後の展開もご期待下さい。
 次回も、ごっちん大活躍の予定です。


レスありがとうございます。
新たな仲間が加わりましたが、いかがでしたか?
ごっちんの応援も、よろしくお願いします!!
では、次回もよろしくお願いします!!
528 名前:名無飼育 投稿日:2005/11/17(木) 03:41
更新おつです!
新たな仲間が加わりましたね。
活躍期待してまっす!!
529 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/18(金) 01:49
待ってました!!
あの人が加わったんですね。
今後の展開が気になります。
次回も待ってます。
530 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 15:53
「なんなんだよ。この森!」

ごっちんが仲間に加わったんだけど、
相変わらずパズルフォレストは奇妙な森で、
暑さや寒さが交互にきたり、昼がいきなり夜になっちゃったり・・・

私たちは翻弄されっぱなしだった。

「ねえごっちん?なんでこの森はこんなにへんてこなわけ?」

梨華ちゃんに尋ねられてごっちんは空を見上げた。

「エルムの収受がなくなっちゃったから・・・
 森の妖精が法則をやぶっちゃったんだ」
「なんだよそれ?わけわかんないよ。
 どうでもいいから、ごっちんの力でなんとかしてよ!」

よっすぃがそう言った瞬間だった。

「あ!そこは!!」

よっすぃが魔の領域に足を踏み入れちゃったんだ。
辺りがいきなり暗くなっていく。

「な、なに?」
「魔の領域。踏み入れちゃだめだよ♪」

ごっちんは100%スマイルでそれを教えてくれた。


でも、この状況って笑ってらんない・・・


辺りが暗くなって、体感温度が急激に低下していく・・・

531 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 15:54
「ハリス!!」

空が闇に支配される前に、ごっちんがハリスホークを呼んだ。
ごっちんに答えるように、ハリスホークが舞い降りてきた。
ごっちんはすかさず、ハリスホークの足首を捕まえると、
そのまま天に上がっていった。

ごっちんが空に上っていった瞬間に辺り一面が闇と凍てつく寒さに支配された。


「なんなんだよ。この森」
「このままだと、みんな凍え死ぬね」
「圭ちゃん冷静に言ってる場合じゃないって!」
「まりっぺの魔法でなんとかなんないの?」
「この森に魔法を封印されてるんだ」


ごっちんに取り残された私たちはただ、うろたえるしかなかった。

532 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 15:55
その頃、ごっちんは空の上で森に話しかけていたんだ。


「森よ、静まりたまえ。御身心を我にゆだねよ!
 心身の誓いにおいて、我がフォースを支配する。
 フォレストフォース!!」


ごっちんは呪文を唱え終えるとハリスホークの足首を離した。
ごっちんの体がたちまちに森へ落下していく。

それから次第に空中で体勢を整えると、森に頭から飛び込んでいった。
普通に落ちたら即死・・・

ごっちんの行動はエルムに許された森との誓いなんだ。
自分の身を森に任せ、恐怖を抱かずに森へ飛び込むことで、森と誓約が成り立つ。


そして・・・森はごっちんを受け入れた。


私たちの辺りが闇から解かれると同時に、ごっちんが私たちの前に降り立った。

「ごっちん?」

何が起きたのかわからずに、首をかしげた梨華ちゃんに、ごっちんは100%スマイルを見せた。

「森が味方してくれたんだ」
「え?」
「よっすぃが踏み込んだ場所は、魔の領域。
 許しなく森に入ったものが踏み入れると、
 森の呪縛に捕らわれて逃れられない苦しみの世界に引きずり込まれるんだ」

ごっちんは笑顔で話してたけど、内容は全然笑えなかった。

「今まで、無事でよかったね・・・」

私のつぶやきに、みんなの顔がひきつった。
533 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 15:58
「聞こえる・・・」

ごっちんがおもむろに、地面に耳をつけた。

「ごっちん?」

突然の行動に梨華ちゃんが首をかしげる。

「聞こえる・・・森が怒ってる」

ごっちんは、そう言うと立ち上がって天を見上げた。

「ハリス!!」

ハリスホークが舞い降りてくる。

「ごっちん!?」

再び、ハリスホークの足をつかんだごっちんを梨華ちゃんが呼び止めた。
でも、ごっちんは空に昇っていってしまった。

「アルタイルだ・・・」

矢口さんが、こぶしを握り締めた。

「近くにいるの?」
「わからない。でも、ごっちんはアルタイルを追って行ったんだ」
「私たちも後を追おう」

保田さんが額に人差し指を当てる。
それは瞬間移動のポーズ。
それを見て、矢口さんもロッドを掲げた。

「待って!うちらも!!」

よっすぃが呼び止める前に二人は姿を消した。

534 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 16:00
「今のやぐっつぁんたちは、怒りで我を失いかけてる。ほっておいたら危険だ」

よっすぃの険しい顔は私たちにことの重大さを告げるようだった。

「でも、まりっぺもケメちゃんも冷静だから大丈夫だよ?」
「魔女は、怒りに支配されたら悪魔に心を奪われるんだ!!」

梨華ちゃんの言葉によっすぃは声を荒げた。
その声に、周りの空気が一瞬止まった。

「おそらく、心配はいらないでしょう」

コンちゃんが静かに本を開いた。

「なんでわかるんだよ!アルタイルのところには、新垣がいるかもしれないんだぞ!
 やぐっつぁんは、裏切りとかが一番嫌いなんだ!
 圭ちゃんだって、もう新垣のことなんて信じてないだろ?」
「大丈夫です。ゴトーさんが一緒だから」

「なんでわかるんだよ!!」
「ゴトーさんの『悌』の霊玉は、心を和ませる力があるんです。
 憎しみも悲しみも癒すほどの力が込められた霊玉なんです」

「そ、そうだよね。ごっちん、なんだかいっつも笑顔だし、
 きっと怒りに身を任せるなんてことにならないよ」

梨華ちゃんの言葉をよっすぃは不安そうに受け止めた。

「我々も後を追いかけましょう」

愛ちゃんがよっすぃを気にしながら言った。

「どうやって?」
「あ・・・」

よっすぃに聞き返されて困った愛ちゃんはコンちゃんを見つめた。

「私の霊玉がゴトーさんの霊玉に呼応しています。
 それを頼りに進みましょう」

私たちは、コンちゃんの霊玉が放つ緑の閃光を頼りに先を進むことにした。
535 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 16:01
そのころ・・・

「森を荒らしちゃダメだよ?」

アルタイルの元に降り立ったごっちんが笑顔で忠告。

「誰だ?」
「やっほー?ゴトーだよ?」
「なんか・・・気がぬけるやつだな?」

敵の間合いをくじくごっちんの間合い。

「森が怒ってるんだ。だから、君は早くここから出て行って?」
「なんでお前にそんなことがわかるんだよ!」
「ゴトーはエルムだからね」
「エルム?エルムはもういないはずじゃ・・・」

アルタイルの言葉に、ごっちんの顔が少し曇った。

「エルムは滅びたりしないよ」

ごっちんの顔から一瞬笑顔が消えたかと思うと、アルタイルに弓矢を向けた。

「森を守るのがエルムの仕事なんだから・・・君は邪魔」

そう言うと、ごっちんは弓矢を放った。

「おいおい?僕をなめないでよね?これくらいの攻撃・・・」

ごっちんの攻撃を簡単によけたアルタイルだったんだけど、よけた瞬間に動きが止まった。

「うわぁぁぁぁ!!!!」

前方からの弓矢の攻撃はおとりで、後方からの刃にアルタイルは倒れた。

「森を荒らすな!」

ごっちんは鬼気的な表情をアルタイルに向けて、再び弓をひいた。
536 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 16:02
「「ごっちん!!」」

そこに、保田さんと矢口さんが現れた。
二人の登場に、ごっちんの顔がゆるんだ。

「やっほー?」

アルタイルに向けられていた、弓矢を外すとごっちんは二人に手を振って見せた。

「危ない!!」

矢口さんがごっちんの隙を狙ったアルタイルの攻撃に声を発した。
アルタイルはごっちんめがけて短剣を向けたんだ。
気がついた時には、アルタイルの短剣がごっちんの身体からわずか3cmのところにあった。

「んあ?」

ごっちんは二人に笑顔を見せると一瞬にして姿を消した。
ううん。消えたんじゃない。瞬時によけたんだ。
あまりにも素早くて、ごっちんの行動は二人には見えなかった。

「油断大敵♪」

ごっちんはいつの間にかにアルタイルの後ろに回っていた。
アルタイルの顔が、恐怖でこわばる。


「お前・・・まさか・・・」


アルタイルが何かを言いかける前に、ごっちんはアルタイルを弓矢で射抜いた。


「うわぁぁぁぁ!!!!」


アルタイルはそのまま、灰になった・・・

537 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 16:03
「す・・・すごい」

ごっちんの瞬殺劇に矢口さんも保田さんも言葉が出なかった。

「んあ?ケメちゃんの霊玉ないね?」

そんな二人を残して、ごっちんは灰になったアルタイルの残骸から霊玉を探していた。
今さっき、敵とはいえ相手を殺したばかりなのに、あんまりにも平静で・・・


二人はごっちんに少しだけ脅威を感じた。


「ご、ごっちん?」
「んあ?」


保田さんに呼ばれて振り向いたごっちんは100%スマイルだった。

「いや。なんでもない」
「ケメちゃんの霊玉・・・アルタイルは持ってなかったのかな?」

ごっちんの100%スマイルは、固まりかけた二人の心を再びほぐした。

「ごっちんってめっちゃくちゃ強いんだね?オイラびびっちゃったよ」

矢口さんがごっちんに笑顔で近寄る。

「うん。ゴトーはね。めっちゃくっちゃ強いんだ♪」
「ちょっと、びっくりしたけど、あんたが仲間って心強いわ」

保田さんもごっちんに近づく。

「あは♪」

そして、ごっちんはまた笑った。
538 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 16:05

そんな三人を笛の音が包んだ。
里沙ちゃんの笛の音・・・


「新垣!」
「この森の精霊は君の笛じゃ操れないよ?」

矢口さんがロッドを構えて、ごっちんが弓矢をひいた。

「待って!」

保田さんが二人を制して前に出る。

「圭ちゃん!こいつに霊玉とられたんだよ!!」

矢口さんが保田さんに訴える。

「わかってる。でも・・・待って」

保田さんは静かにそう言うと、里沙ちゃんの前にあゆみよった。

「新垣?戻っておいで?」

保田さんの優しい言葉に、里沙ちゃんは笛の音を強めた。

「うっ・・・圭ちゃん!戻って!!その音色は細胞を破壊してるんだ!!」

矢口さんが里沙ちゃんのもくろみに気がついて保田さんに訴えた。

「新垣?あんたの居場所はそこじゃないよ?」
「やめてください!!」

保田さんが差し出した手から里沙ちゃんは後ずさりした。

「やめてください!私は・・・私はもうあなたの仲間じゃないんです!!私は青龍三銃士なんだ!!」
「あんたは、仲間だよ!青龍三銃士だとしても!!仲間だよ!!だから、こんなことは止めな!!」


「うわぁぁぁぁ!!!」


里沙ちゃんは自分の中に沸き起ころうとする何かを解き放つように叫んだ。


「新垣!!」


保田さんが里沙ちゃんを抱きとめる。


「やめろぉぉ!!!」


保田さんの腕の中で錯乱した里沙ちゃんは・・・


「圭ちゃん!!危ない!!」
「うっ・・・」


保田さんの胸を短剣で突き刺した。


「圭ちゃん!!」


矢口さんが崩れ落ちる保田さんに駆け寄る。


ごっちんが里沙ちゃんに弓矢を放った。


「ごっちんダメ!!」


保田さんは、ごっちんの弓矢に反応して里沙ちゃんの盾になった。



「そんな・・・」



ごっちんの弓矢は保田さんの身体を射抜いた・・・



539 名前:エルムの森 投稿日:2005/12/02(金) 16:10
川σ_σ|| <説明です♪

フォレストフォース:エルムと森の誓約。森に全てを投げ出す勇気を示す
          ことで、森と誓いを結ぶ。エルムにのみ許された誓い。


 ごっちん大活躍でした!保田さんが大変なことになっちゃってますが・・・
 次回は・・・??
540 名前:レス♪ 投稿日:2005/12/02(金) 16:15
>>528 :名無飼育 さん
  レスありがとうございます。
  ごっちんの活躍どうでしたか?
  ちょっと、謎めいた部分もありますが・・・
  次回はついにあの人の秘密が明らかに!
  次回もよろしくお願いします!!

>>529 :名無飼育さん
  今回もお待たせしちゃってすみません。
  ごっちんの活躍どうでしたか?
  エルムパワー炸裂でした。
  今後もごっちんには100%スマイルで活躍してもらいます。
  次回もよろしくお願いします!!


レスありがとうございます。更新が遅くてすみません。
次回は、あの人の秘密が明らかになります?!
今後もよろしくお願いします!!
541 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/03(土) 20:54
更新お疲れ様です。
なんだか大変な事になってきましたね(汗
次回更新待ってます。
542 名前:名無飼育 投稿日:2005/12/05(月) 14:01
圭ちゃん・・・そこまで優しいとは・・・
どうなっちゃうんでしょう?
今後が気になります!
待ってます!!
543 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/10(土) 03:29
はじめましてです。
おもしろいっす!
ごっちんが気になる。。。
次回待ってます!!
544 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:14
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
545 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:23


「圭ちゃぁぁぁん!!!」


矢口さんが叫び声とともにその場に崩れた。


「そんな・・・」


里沙ちゃんの顔がこわばる。


「圭・・・ちゃん・・・」


放心状態のごっちん・・・




保田さんの意識はすでに無くなっていた。


「そんな・・・」


里沙ちゃんが、保田さんにあゆみよった。


546 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:24


「ごっちん!!」


そこに、私たちが駆けつけた。
梨華ちゃんがみんなを見つけて手を振った。
反応の無い三人に異変を感じて、私たちは駆け寄った。
里沙ちゃんは、それを見て姿を消した。


「ケメちゃん!!」


近づくにつれて、保田さんの様態に気がついた。

「何があったんだよ!!」

よっすぃが矢口さんを問いただす。


「新垣に・・・刺されて・・・ごっちんが新垣に向けた弓に・・・」
「コンコン薬!!」

梨華ちゃんが保田さんのもとに座ってコンちゃんに指示を出した。

「ごめんなさい・・・海に落ちたときに、ストックは全て・・・」
「そんな・・・」
「この森には薬草がないんです」
「うそでしょ・・・」

梨華ちゃんが泣き出しそうな顔になる。

「とにかく、やれることをしよう?」

私が保田さんに応急処置を開始した。
大量の出血、深い刺し傷と弓矢による致命傷・・・
何をどうすればいいのかなんて、わからなかった。
それでも私は必死に止血手段を施した。

547 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:27
「このままじゃ危険です」

コンちゃんが必死に本をめくる。

「後藤さん!この森に薬草は?」
「ないんだ・・・この森はもう、生命を宿す術を失ったから」

ごっちんがうつむいた。

「あ・・・これ・・・」

私を手伝っていた愛ちゃんが、保田さんの足元に落ちていた霊玉に気がついた。

「保田さんの霊玉・・・」

その言葉に、矢口さんが反応して立ち上がる。

「新垣が・・・返したんだ」
「霊玉がそろった!朱雀の力を召喚してください!」

コンちゃんが梨華ちゃんにそう告げた。

「え?」
「朱雀の力なら!彼女を回復することができるはずです!!矢口さん!霊玉を出して?」

矢口さんがコンちゃんに促されて霊玉を取り出した。

「どうすればいいの?」
「祈ってください!そして、これから言う私の呪文を唱えてください」

コンちゃんの指示に梨華ちゃんがうなずく。

548 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:29


「赤き光よ、我を包みたまえ。心身の契約のもとに、そなたを召喚す!」


コンちゃんの言葉を受けて梨華ちゃんが手を胸の前で組み、呪文を唱えた。


「赤き光よ、我を包みたまえ。
   心身の契約のもとに、そなたを召喚す!
 お願い安倍さん!  ケメちゃんを助けて!!」


梨華ちゃんの祈りに呼応するように、二つの霊玉が光った。


「うわぁぁぁ!!」


矢口さんの身体から、霊気が立ち上る。


「しっかり霊玉をつかんでいてください!」


コンちゃんに言われて、矢口さんは二つの霊玉を必死に捕まえた。
そして・・・


「朱雀!!!」


朱雀が姿を現した。
549 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:31
朱雀は天高く舞い上がり、空を一周すると私たちの前に降り立った。
気高く美しいその姿に、私たちは息をのんだ。

「私があなたを助けます」

安倍さんの声に矢口さんが反応する。

「なっち!」

朱雀はゆっくりうなずくと、保田さんを包み込んだ。
大きな羽を広げて保田さんを全て包み込んだんだ。


「フェニックスエナジー!」


梨華ちゃんが何かに導かれるように呪文を唱えた。
朱雀が赤い閃光を放つ。
やわらかいその光は私たちを心地よい気持ちにさせた。


そして・・・


朱雀がゆっくり羽をたたみこむと同じに保田さんの身体が現れた。


「もう大丈夫です」


そう告げると、朱雀は姿を消した。

550 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:32
「梨華ちゃん!!」
「姫!」

朱雀が消えると同時に倒れた梨華ちゃんをよっすぃが支えた。

「大丈夫です。まだ、力をつかいこなせていないだけです。
 朱雀の力のせいで少し疲れたんでしょう」
「矢口さん!」

梨華ちゃんに続いて倒れこんだ矢口さんを愛ちゃんが支えた。

「二つの霊玉に霊気を吸い取られたから、矢口さんも疲れたんです。
 二人ともしばらく休めばもとに戻りますから」

コンちゃんに言われて、二人は梨華ちゃんと矢口さんをゆっくりと寝かせた。

551 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:34
朱雀の力を使った梨華ちゃんはなかなか目覚めなかった。

「コンコン!なんで起きないんだよ!!」

梨華ちゃんが眠りについて三日目の朝を迎えて、とうとうよっすぃがコンちゃんに詰め寄った。

「予想以上に、体力と霊力を消耗したんです・・・しばらくは・・・」
「しばらくって、いつまでだよ!」
「体力はきっと回復していると思います。
 でも、霊力の方が・・・でも、心配にはおよびません。
 かならず、回復しますから」

コンちゃんの言葉に、よっすぃは苛立ちをおさえるように、梨華ちゃんの隣に座った。

「姫は強いお方です」
「わかってる」

愛ちゃんに諭されてよっすぃは黙り込んだ。

「しかし・・・このままだと、時間がない・・・」

コンちゃんは何か思いつめたような表情でつぶやいた。

「ん?時間って?」

聞き返した私の表情をコンちゃんは見つめると、ゆっくり目を閉じた。


まるで覚悟を決めるかのように。

552 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:35
「みなさん。お話があります」

コンちゃんの言葉にみんな振り返る。

「今から二手に別れましょう」
「は?」

コンちゃんの突然の提案にみんな首をかしげた。

「愛ちゃんと、吉澤さん、矢口さん、保田さんは姫の回復を待って、白虎の森を目指してください。
 後藤さんと・・・柴田さんは私について、ウェストタウンに向かいましょう」
「え?なんで?」

梨華ちゃんたちと行動を別にするって提案に私は顔をゆがめた。

「行かなくてはならない場所があるんです」
「って?どこへ?」
「・・・」

私の質問にコンちゃんは答えようとしなかった。
いきなり別々に行動しようって言い出したコンちゃんの提案。
私は驚いて質問を返したんだけど、他のみんなはそれほど気に留める様子はなかった。

「わかった。うちらは梨華ちゃんの回復を待つよ」
「ゴトーはコンコンと一緒ね」

次々にうなずく面々に、異論を唱えるタイミングを失った。


そして、私たちは梨華ちゃんたちを残して、ウェストタウンに向かった。

553 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:36
「コンちゃん、私たち、どこに行くの?」

ウェストタウンに着いた私たち。
でも、コンちゃんは行き先を教えようとはしなかった。

「えっと・・・それは・・・」

冷静さを失っているコンちゃんは初めてで、聞かないほうがよかったのかな?って思った。

「あ〜!!見て見て!!」

ごっちんが張り詰めた空気を破るように声をあげた。

「え?」
「ほら!あっち!!カキ氷だよ!!」
「あ!ごっちん!!」

走っていったごっちんを私たちも追いかけた。

「すっごいすっごい!!カキ氷だよ!!うっわぁ!!」

カキ氷ってこんなに喜ばれるものだっけ??

「1つ!!」
「あいよ。150円ね」
「えぇ〜!!お金とるの?」
「当たり前だろ!!」
「でも、ゴトーお金持ってないし」
「じゃあ、ダメダメ!帰んな?」
「ケチッ!」

ごっちんって常識はずれ??ってかんじで。
驚いていた私たちのもとに口を尖らせたごっちんが戻ってきた。

「あは。カキ氷くれないって」
「当たり前ですよ」

コンちゃんに言われてごっちんはくしゃっと笑って見せた。
その笑顔に、コンちゃんの固かった表情も緩んだ。

「カキ氷、私がおごりますね?」

コンちゃんにお金を渡されたごっちんは、カキ氷を3つ買ってきてくれた。

「うっわぁ!!コンコンありがとう!!」
「コンちゃんありがと!」

554 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:38
私たちは氷屋さんの軒先の長椅子に腰掛けてカキ氷を食べることにした。

「おいしいね!」
「うん!!」

ごっちんに洗脳されたのか、カキ氷はいつもと違ってすっごくおいしく思えた。

「私は、初代八剣士なんです」
「ん?うん」

カキ氷を食べながら、コンちゃんはいきなりカミングアウトを始めた。
前に、言うのをためらった真実を伝えるために、コンちゃんは口を開いたんだ。


「300年前、姫とともに戦った八剣士なんです。
 本当だったらとっくに死んじゃって、
 転生して次の剣士に霊玉をたくすはずだったんです。
 でも、私は生きていなくてはならない理由があって、
 こうしてキツネに姿をかえて今も生きているんです。
 キツネの寿命は人間と違って長いので・・・」

555 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:40


300年前、姫は国を救った後、永遠の眠りについた。
そしてそのときにかけられた呪いから、もう二度とこの世界に転生できないようにさせられた。


それを知った剣士の一人が玄武の巫女と契約をしたんだ。
姫をいつまでも守り続けるために。


玄武は時空を司る神。
だから、第一世界と第三世界をつなぐことができた。


姫を守ると決めた剣士は、その日から祈り子になった。
第一世界に自分の分身を送らせて、いつまでも姫を守りぬくために。


玄武の巫女はその剣士の強い思いに掟を破る決意をしたんだ。
巫女を勤められる期間は死後100年。
でも、玄武の巫女は剣士の思いを伝え続けるために300年間巫女を続けている。


そのためには、玄武の剣士が生き続けなくてはならなくて、
だからコンちゃんはキツネに姿を変えて生き続けたんだ。


でも、コンちゃんの寿命はもうあとわずか。
その前に、玄武の霊玉の真の持ち主にそれを渡しに行かなくてはならないんだって。


コンちゃん・・・もうすぐ死んじゃうんだってことが、
なんだか信じられなくて、私は黙ったままカキ氷を食べ続けた。


さっきはあんなにおいしかったのに、今は氷の冷たさが心まで凍らせるようで、
胸にはなんかいや〜な熱いものがジワジワ込み上げてきて・・・

556 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:41
「玄武の巫女と・・・契約をしたのは・・・」

その言葉の続きをコンちゃんはためらった。

「コンコンにとって、姫ってそんなに大切な人なの?」

ごっちんの言葉にコンちゃんは少し黙ってから口を開いた。

「姫のためじゃなかった。もう一度、あの人に会いたかったんです」
「あの人?」
「姫のために祈り子になった剣士・・・『忠』の霊玉を持った剣士に・・・」
「その人のこと・・・好きだったんだね?」

コンちゃんはコクッと頷いた。

「恋人?」
「いえ。その人には私なんか勝てないくらい愛し合った人がいたんです」
「その人は?」
「・・・自害しました。永遠の愛を誓って」
「永遠の愛・・・」
「忠の霊玉を持った剣士に全てをささげたんです」


姫のために祈り子になった『忠』の霊玉の剣士。
その剣士を愛してキツネになったコンちゃん。
その剣士と愛し合って命を絶ったもう一人・・・


「・・・その忠の霊玉の剣士さんは、どうなっちゃうの?」

その言葉に、またコンちゃんは少しためらった。


「・・・分身が姫を連れて戻ってきた時に、眠りから覚めます」



第一世界・・・分身・・・姫をそばで守る・・・戻ってきた・・・




なんか、一致した。



でも、その先を聞くのは恐ろしくて・・・



557 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:42






「『忠』の霊玉の持ち主は柴田あゆみ・・・」






558 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:43


「やめて!!」



カキ氷は、いつのまにか地面に落っこちていた。


「・・・」
「え・・・私・・・分身ってこと?」


「・・・はい」
「・・・え?」



意味がわからなかった。


コンちゃんのカミングアウトでしょ?なんで私がかかわっちゃってるのよ。


「柴田さんは・・・『忠』の霊玉を持った剣士が作り出した幻影なんです・・・」
「え?・・・ごめん。意味わかんない」

「柴田さんは・・・」
「じゃあ何?その人のところに行ったら、私はどうなるわけ?」



「幻影は・・・消えます・・・」



その言葉に心が跳ね上がると同時に立ちあがった私は、
溶けた氷にちょっと足を滑らせて思わず前に出た。
559 名前:明かされた真実 投稿日:2005/12/27(火) 00:44


「柴田さん!!」
「ごめん・・・ちょっと考えたいから・・・一人にして」


そう言うとその場から歩き出した。


「柴ちゃん!!」
「来ないで!!」



ごっちんが握った手を振り払って私はそのまま走り出した。


560 名前:k・y 投稿日:2005/12/27(火) 00:49
川σ_σ|| <説明です♪

 朱雀:四神の一神。『癒し』の力を持ち、心優しく穏やかな神。
    現世では、魔術師「安倍なつみ」として多くの人を救った。
    今でも、優しさと慈悲深さは健在。
 
 フェニックスエナジー:朱雀の癒し魔法。あらゆる怪我を治すことができる。
            朱雀の力と、霊玉の力に梨華ちゃんの祈りが通じたときのみ、
            力を発揮することができる。

 
561 名前:レス♪ 投稿日:2005/12/27(火) 00:57
>>541 :通りすがりの者 さん
  更新遅くてすみません(汗
  朱雀初登場でしたが、いかがでしたか?
  物語の方も、どんどん進展していく予定です。
  今後の展開にも注目してください!  
  では、次回もよろしくお願いします!!


>>542 :名無飼育 さん
  どこまでも、優しい保田さん。
  なんとか、朱雀パワーで復活??
  ガキさんと保田さんとの心の葛藤に
  注目してください!
  これからも、よろしくお願いします!

>>543 :名無飼育さん :2005/12/10(土) 03:29
  はじめまして!レスありがとうございます。
  ごっちんの姿も徐々に明らかになっていきます。
  とりあえず、100%スマイルと恐ろしい強さ
  に注目していてください!
  これからも、ご愛読&レスお願いします!!

 レスありがとうございます!さらなる急展開でしたが、
 いかがでしたか?悲劇の幕開けです!!(汗
562 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/27(火) 21:10
ぉぉ。
急展開…。。柴ちゃんはどうなるのでしょぅ。
朱雀初登場!ィいとこでまたw

563 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/28(水) 00:45
更新お疲れ様です。
うぁー( ̄□ ̄;)
なんだか本当に展開が急ですよね。
次回更新待ってます。
564 名前:名無飼育 投稿日:2006/01/02(月) 01:42
あけましてです!
柴ちゃん・・・どうなるんだぁぁぁ!!
次回待ってます!!
565 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:18


「痛っ!!」
「ごめんなさい!!」


思いっきり走ってたら人にぶつかっちゃった。

「本当にごめんなさい!!」
「別にいいけどさ」

その声に、思わず顔をあげた。


「美貴ちゃん・・・」


「え?なんで知ってるの?」
「あ・・・ううん。いや。知らない」


向こうの世界にもいたんだよね。
格好はなんか昔のアメリカ西部劇に出てくるようなカウガールの格好だけど、美貴ちゃんだった。
よっすぃも美貴ちゃんも二人いるから両方本物。


私は・・・


566 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:20
「変なの」

「ごめんなさい」
「ちょっと待って!!」

頭を下げてその場から離れようとした私の手を美貴ちゃんが握りとめた。

「・・・」
「悪いけど・・・なんていうか・・・ほっておけないっぽい」

涙でぐちゃぐちゃだった私の顔は、
そうとう情けなかったのかもしれない。


相手が他の誰かだったらきっとそのまま走り去ってたかもしれないんだけど、
美貴ちゃんだったから、素直に話せた。

567 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:22
「変だよね・・・信じないよね・・・うん。
 自分でも変なこと言ってるって思うし。ごめん。気にしないで?」

話したら止まらなくて・・・
全部打ち明けた美貴ちゃんの顔・・・困惑してるのがよくわかった。

「・・・」
「気にしないで!なんか、誰かに話したらすっきりしたし。うん」

美貴ちゃんだけど、初対面の相手なんだよね・・・
今さら思い出して失礼な私・・・

「・・・気にしたくないけど・・・気にする」
「え?」

「かわいい子の泣き顔見て、ほってはおけないし?」
「は?」

「とにかくさ・・・仲間おいて出てきちゃったんでしょ?今日は美貴の家に来なよ」
「え?いや。それは・・・」

「いいっていいって。さ!行こう?」

美貴ちゃんは私の腕を強引にひっぱって歩き出した。


やばい・・・美貴ちゃんだと思ってつい油断しちゃったけど・・・
これって新手の誘拐だよね?

568 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:25
「コンコン?もう遅いし・・・また明日探そうよ?」

私とはぐれたコンちゃんはごっちんと町中を探し回っていた。

「でも・・・ぅ・・・」
「泣かないで?」

「やっぱり・・・言うべきじゃなかった・・・」
「でも・・・いつかは言わないといけないことだし・・・」

「でも!でも・・・タイミングが・・・」
「・・・コンコン?」

ごっちんはコンちゃんの体を持ち上げた。

「わ!何するんですか?」
「ん?にゃは?」

いたずらな笑顔を浮かべたごっちんは、コンちゃんのわき腹をくすぐりだした。

「きゃはははっ!!や、やめて!!はははっ!!きゃはははははっ!!!」

わき腹攻撃にコンちゃんは笑い転げた。


「笑顔が一番♪今日はもうおしまい!またあした探そう?ね?」


「は、ははっは!!きゃはっははははっ!!!
 わ、わかったから!!きゃはははっ!!
 も、もう!!ははははっ!!やめてください!!」


ごっちんのおかげでコンちゃんは自責の念にかられずにすんだんだ。

569 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:30
美貴ちゃんは、家に着いてからいろいろと気を使ってくれた。

ご飯・・・は私が作ったんだけど、いろんな話をしてくれて、気を紛らわしてくれた。


「あの・・・布団は・・・?」


お風呂からあがって、部屋の中央に引いてある一枚だけの布団に顔がひきつる。

「ん?ああ。うちさ、貧乏だから布団これしかないんだよね」
「いや・・・さっき押し入れにたっくさんあったの見たんだけど・・・」

「いいじゃん。一緒に寝ようよ?」
「は?!」

ストレートに言われて大きな声を出してしまった。

「はははっ。別にエッチなことしようって言ってるわけじゃないしさ?」
「・・・」

赤面した私の顔を美貴ちゃんは面白そうに覗き込んだ。

「別に・・・そういう関係になってもいいけどね?」
「え、遠慮します!!それに!!私好きな人いるし!!」

「ん?そうなの?」
「いるし・・・もう意味ないけど」

いるけど・・・もうそれもきっと意味ないんだよね・・・


「ま!とにかく今日は疲れたでしょ?寝ようよ!!」
「きゃ!きゃあ!!」


油断した隙に美貴ちゃんに強引に布団に押し倒された。

570 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:32


「は、放して!!」


暴れる私を美貴ちゃんはきつく抱きしめて、でも別になにかされるのかな?
ってかんじじゃないなってわかって暴れるのを止めた。

「君はここにいるよ?」
「え?」

「君は、今美貴の腕の中にいるよ?」
「・・・」

「君は君だよ」
「美貴ちゃん・・・」

「こっち向いて?」

美貴ちゃんが力を緩めてくれて、だからそおっと美貴ちゃんの方に向き直った。

「君は君だよ」
「・・・うん」


だれかのぬくもりを感じるっていうことは、自分の存在を確認することだったんだ。
美貴ちゃんに抱きしめられながら、消えかけていた自分の存在がまた戻ってきた。


「もっとする?」
「は?」

「キスとか?」
「しない!!」

「ケチ」
「バカ」

571 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:34
翌朝、私は見送りしてくれるって言ってくれた美貴ちゃんと一緒にカキ氷屋さんまで戻った。

「あ〜!!柴ちゃんだ!!」

ごっちんが一番に私のことを見つけてくれて、コンちゃんが駆け寄ってきた。

「柴田さん!!昨日は・・・」
「うわっ!本当にキツネがしゃべった!!」

コンちゃんに伝えたいことたくさんあったのに、美貴ちゃんに先を越されちゃった。

「柴田さん誰ですか?」
「あ、えっとね・・・」

「藤本美貴ってか、この子に聞いたんだけどさ、あんたすっごいね。
 好きな人のためにわざわざキツネになっちゃったんでしょ?」
「え・・・」

自分の大切な思い出をバカにされたような気がして、コンちゃんはこぶしを握り締めていた。


「ってか、その人は他の人が好きだったんでしょ?
 ってことはあんたの恋愛は成就しないってことじゃん?
 よくそれなのにキツネにまでなれるよね?
 プラトニックってやつ?すっごいね。美貴信じらんない」


なんで美貴ちゃんがそんな風に冷たく言ったのかわからないって思ったんだけど、
私の手を握り締めている美貴ちゃんの手に力が入ったから、きっと私のこと気遣ってくれてるんだって思った。
572 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:37
「プラトニックってかっこいいね!なんかその響きゴトー好き♪」
「は?」
「プから始まる言葉ってさ、ださいのに、なんかそれかっこいいね?」

ごっちんが空気をかえてくれた。

でも、ごっちんの顔を見た美貴ちゃんの手が震えた。
そして美貴ちゃんは手を離した。


「その剣、デュルフィングでしょ?」


美貴ちゃんがごっちんの剣を指差した。


「・・・」


ごっちんの笑顔がひきつった。


「ってことは、あんたが有名な1000人斬りの殺人鬼なんだ?」
「・・・」


黙ったごっちんを見て美貴ちゃんは嘲るように笑った。

「へぇ。殺人鬼でも国を救おうとか考えるんだ?
 あぁ!そっか!!他のやつが殺すよりも自分の手で全員殺したいってこと?
 この国を救ってそれからゆっくり全滅させちゃおうってことだ?」


「・・・」


ごっちんの顔から笑顔が消えた・・・
573 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:41


『パシッ』


美貴ちゃんの言葉が許せなくて、思わず平手打ちしちゃっていた。


「ひどいよ!!」
「は?」

「美貴ちゃんひどいよ!!コンちゃんの生き方バカにしないで!!
 ごっちんを悪く言わないで!!もう帰って!!」
「・・・」

「柴田さん・・・」
「柴ちゃん・・・」


「ひどいよ!!美貴ちゃんひどいよ!!
 コンちゃんもごっちんも私の大切な仲間なんだよ!!
 仲間を悪く言うなんて許せないよ!!」


美貴ちゃんは真っ直ぐ興奮して真っ赤な私の顔を黙って見つめていた。


「・・・ミキティの言ってること本当だから、ゴトー別にいいよ?」

「「え?」」

その発言に私と美貴ちゃんがごっちんを見つめた。

「コンコンだって、プラ・・・プラ?プラトン?でしょ?
 それに、ゴトーもうこの剣抜かないって決めたし。
 だったらいいでしょ?ミキティも仲間♪」


ごっちんは・・・ごっちんは・・・予測不能だ。
さっきまでのひきつった顔はいつのまにかに100%スマイルに戻っていた。

「あ!カキ氷!!」

ごっちんは今までの話より、氷屋さんの開店の方がうれしかったみたいで、
おじさんの方に走っていってしまった。
おじさんは「昨日も来たのに本当にカキ氷が好きなんだね?」
とか言って、ごっちんにサービスでカキ氷をくれた。

574 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:44
美貴ちゃんの言葉は私やコンちゃんの胸に響いていた。


後藤真希。


本当にごっちんが1000人斬りの殺人鬼だったなんてあの笑顔からは絶対に信じられない。
だって、ごっちんがいると、自然と争いごとが解決されちゃうんだもん。
自分の中の悪い感情が一気になくなっちゃうんだよ?

そんな魔法みたいな力を持ったごっちんが誰かを憎んだり、
むやみに人を殺すなんて信じられないよ。
どんな状況だって100%スマイルで切り抜けちゃうんじゃないのかな・・・


カキ氷を食べるごっちんの笑顔は平和で。そんなことを思った。
575 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:46
その日、私たちは一日中ウエストタウンを探し回ったんだけど、
コンちゃんの言う、本当の『智』の霊玉の持ち主はみつからなかった。

「ごめんね?なんか、一日つき合わせちゃって」

美貴ちゃんは私たちと一日町を探し回ってくれた。
宿の前まで送ってきてくれた美貴ちゃんにお礼を言ってお別れしようとしたんだけど・・・
なんか別れがたくて、コンちゃんたちが宿の中に入っていっても、しばらく私は美貴ちゃんと一緒にいた。

「ごめんね。なんかいろいろ、ご迷惑かけました」
「いいって」

「なんか、美貴ちゃんに話したらすっきりしちゃった。だからもう大丈夫!」

ちょっと強がった。美貴ちゃんは私の強がり笑顔をじっと見つめて苦笑した。

「全然大丈夫そうじゃないけど?」
「・・・ばれた?受け入れるには時間かかるかな・・・でも!大丈夫!」

私の強がりピースを却下させて美貴ちゃんは笑顔を見せた。
576 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:48
「あのさ?」
「ん?」

「守ってあげよっか?」
「は?」

「美貴が」
「え?」

「君のこと、守ってあげるよ?」
「???」

「うん。そうしよう!」
「え?ちょ!ちょっと待って!!」

「なに?」
「意味がよく・・・わかんないんだけど?」

「だから、守ってあげるって」

急に何を言い出すの?ってかんじで。
意味がわかんないってかんじだった私の手を美貴ちゃんは握ると宿の中に入っていった。

「待ってってば!」


「いいじゃん。君のこと美貴が守る」


この日から、美貴ちゃんは強引に私たちと旅することを決めちゃったんだ。

577 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:50
「起きないね・・・」

よっすぃたちは私たちと別れて三日目の朝を迎えた。
眠りから覚めない梨華ちゃんに、みんな不安の色が濃くなった。

「姫、なんで目を覚まさんのや・・・」
「このまま、永遠に眠り続けるなんてこと・・・ないよね・・・」

矢口さんの言葉に、よっすぃと愛ちゃんがにらみつける。

「じょ、冗談・・・」
「でも・・・本当にこのままじゃ、まずいわね。
 何も食べずに時間だけ過ぎていくなんて・・・」

保田さんが、梨華ちゃんの様態をチェックしながらつぶやいた。

「だんだん、衰弱してる・・・」
「くっそぉ!!」

よっすぃがこぶしを地面に打ち付けた時だった。

578 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 00:56


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」


小さな女の子がみんなの前に姿を現した。
突拍子もないそのあいさつに、みんな固まった。

「やっほやほやほー?」

120%スマイルで元気にあいさつをした女の子に、よっすぃと愛ちゃんが剣を向けた。

「おっと?なにすんねん!」
「疑わしき者!正体を名のれ!」

愛ちゃんが剣を構える。


「そうやったな。あいぼんや♪」


あいかわらずの120%スマイルで女の子はそう言ってピースをして見せた。

「お前、何者だよ!」

よっすぃが警戒して剣を向ける。

「なにもんもなにも、あいぼんや!そうやなぁ。あえていうなら、神様や♪」

突然の神様発言にみんな唖然とした。

「神様がそんなふざけてるわけないだろ!」
「失礼やなぁ。うちは、あんさんたちのために来てやったっていうのに」

その言葉に、愛ちゃんがひざまずいた。
579 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 01:01
「姫を目覚めさせてください!」
「そりゃ無理や」

あっさり断られて、愛ちゃんが真っ赤な顔で立ち上がった。

「なんなんや!」
「どうどうどう!まあ、そんなにあせりなさんな。
 梨華ちゃんは今、ドリーブの悪夢に犯されてんねん」

「ドリーブの悪夢?」
「そうや。霊力や精気を使い果たした者は、心が抜け殻になる。
 ドリーブはその隙間に忍び込んで夢を奪うんや。
 梨華ちゃんの場合、初めての召喚やったから、ドリーブに勝つ術が見つからんで、悪夢の中から抜け出せないんや」

「なんとかなんないのかよ!」

よっすぃがあいぼんにつめよった。


「なんとかならなくもないで?」


四人はその発言に顔を上げた。

「うちは、神様や♪」

その発言には、顔を見合わせて首をかしげつつも・・・

「なんや?信用してへんな?まぁええ。
 うちに任せるかどうかや?」


梨華ちゃんは助けたいものの、目の前にいる神様と名乗る女の子はいかにもうさんくさいわけで・・・
四人とも顔がひきつったまま返事ができずにいた。

「梨華ちゃんをドリーブから救える方法は、ただ一つ。
 みんなが梨華ちゃんの夢の中に行って、悪夢を倒すことや」
「そんなことできるんですか?」

愛ちゃんが目を丸くして尋ねた。

「せやから、うちは神様やっちゅうねん!」
「でも・・・」

580 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 01:07
ためらい気味の愛ちゃんを押しのけて、よっすぃが前に出た。

「うちは、行く!それで、梨華ちゃんが救えるんだったら行く!!」

よっすぃの思いに愛ちゃんも負けじと前に出た。

「私も行きます!」

二人を見て、あいぼんは保田さんと矢口さんの様子を伺った。

「オイラたちも行くよ。ね?圭ちゃん?」
「うん」

「それでこそ、八剣士や♪ほな、これから梨華ちゃんの夢の中に連れていったる。
 ただし、ひとつだけ忠告や。夢の中にいられる時間は23時間。
 それを越せば、4人ともドリーブの夢に食われてしまう。
 必ずその前にこっちの世界に戻ってくるように!時間の目安に、これを貸したる」

あいぼんは金の懐中時計を保田さんに手渡した。

「それは、神様の砂時計や」
「砂時計?には見えないけど・・・」

保田さんが懐中時計を不思議そうに見つめる。
指摘されたあいぼんは咳払いをしてから、保田さんの懐中時計に手をかざした。

「見掛けは違うけど、内容は一緒や。23min・・・」

あいぼんは何かを小声で唱えていて、全てを終えると手を離した。

「文字盤が・・・」

さっきまで、普通の時計みたいだったのに、あいぼんの呪文に呼応したのか、
文字盤が、1〜12じゃなくて、0〜23に変わっていた。

「カウントダウン開始や」

長針が23を刻み、その脇にデジタル数字で分と秒が表示されていた。

「これが0になる前にこっちの世界に戻ってくること!」
「わかった」

581 名前:自分の存在 投稿日:2006/01/17(火) 01:07
「戻り方やけど、戻りたいって思ったときには呪文を唱えるんや」
「呪文?」

「そうや。この呪文は空間の戒律を破る神聖なる呪文や」

神聖っていう響きに四人は姿勢を正した。

「ほな、呪文を教えたる」

四人ともあいぼんを真剣なまなざしで見つめた。
あいぼんは咳払いを一回すると、胸を張って口を開いた。


「あぶらかったらたかかった〜!!」


あいぼんの声が森に木霊して、四人は耳を疑うと同時に疑惑の念を抱いた。

「なんだよそれ?」

よっすぃがあいぼんにつかみかかりそうになった瞬間・・・


「ほな!夢の世界で頑張ってな〜!!」


あいぼんの姿が四人の視界から消えて、辺りが闇に包まれた。

582 名前:k・y 投稿日:2006/01/17(火) 01:15
川σ_σ|| <説明です♪

藤本美貴:ウエストタウンで出会った女の子。
     一緒に旅をすることになっちゃいました。
     美貴ちゃんの存在は私の物語に大きく影響しちゃいます。

あいぼん:神様です。
     なんか、うさんくさい感じですが神様なんです。
     
 神様あいぼんと美貴ちゃんが登場です。
 私たちはウエストタウンで八剣士探し。
 よっすぃたちは梨華ちゃんの夢の世界へ・・・

583 名前:レス 投稿日:2006/01/17(火) 01:27
>>562 :名無飼育さん
  美貴ちゃん登場です。
  柴ちゃんの物語のキーパーソンになると思います。
  今後の展開に注目してください!
  朱雀もまた登場するので!
  これからもよろしくお願いします!

>>563 :通りすがりの者 さん
  美貴ちゃん登場でしたが、いかがでしたか?
  よっすぃたちも姫を目覚めさせるために、
  旅立ちました!二つのストーリーの進行、
  ぜひ楽しんでください!
  次回もよろしくお願いします。

>>564 :名無飼育 さん
  柴ちゃんの今後は・・・要注目です。
  コンちゃん、美貴ちゃん、ごっちん。
  四人の今後にご期待下さい。
  よっすぃたちの応援もお願いします!
  次回もよろしくお願いします!

 レスありがとうございます!
 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます!
 今年も、八剣士ともどもよろしくお願いします!
 より面白いものが書けるように、頑張りたいと思います。
 次回もよろしくお願いします!!
584 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/20(金) 01:17
始めて読んだけど面白かった〜。
彼女は巫女じゃなく神様なんかな?位置づけはどんな感じになるんだろう?
いろんな登場人物の過去やまだ出てないメンバーも気になるところです。次回更新お待ちしてます。
585 名前:名無しの読者 投稿日:2006/01/20(金) 17:39
とてもおもしろいです。更新、楽しみです。
586 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/20(金) 22:21
おもしろいなぁ
登場人物全員がほんとに魅力的でますます好きになっちゃいましたよ
更新楽しみにしてます!
587 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/01/21(土) 23:41
更新お疲れ様です。

この先が楽しみですね。
なんだか妙な人たちが登場してますし。
次回更新待ってます。
588 名前:名無飼育 投稿日:2006/01/22(日) 02:37
新キャラ登場ですね!
この人が登場するとは・・・
この先がすっごく気になります!!

次回待ってます。
589 名前:名無しの読者 投稿日:2006/01/27(金) 17:10
更新お疲れさまです。とてもおもしろいです。
この先がとても楽しみです。
590 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 00:55
闇があけた世界は、もとと同じ場所だった。

「なんだ?」

よっすぃが辺りを見渡す。

「やっぱり、あいつ詐欺じゃん!!」
「詐欺師でも騙されるんですね・・・」

愛ちゃんの言葉につかみかかりそうになるよっすぃを矢口さんが止めた。

「詐欺じゃないよ。ここが、梨華ちゃんの夢の世界ってやつみたいだよ?」

矢口さんの言葉に保田さんが辺りを見渡す。

「元の世界と微妙に違う。ここが石川の夢の中・・・」
「とにかく、梨華ちゃんを悪夢の中から救い出せばいいんだろ?行くぞ!」

よっすぃが先頭をきって歩き出そうとした。

「行くってどこへ?当てもなく歩きまわるのは体力を消耗するだけです!」

愛ちゃんの指摘によっすぃはむっとして留まった。

「とにかく、姫の気配を感じましょう」

愛ちゃんは目を閉じた。

「あっちのようです」
「なんでわかるんだよ!」
「なんとなく、こっちな気がするんです!」
「って!高橋だって適当じゃないかよ!」
「失礼な!」

「やめなって二人とも!今は喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

喧嘩になりかけたよっすぃと愛ちゃんを矢口さんが制した。


「あ!危ない!!」


矢口さんの背後に違和感を感じてよっすぃが身を盾にした。


「う・・・」


矢口さんをかばったよっすぃは腕を何者かの銃弾によって傷つけられた。

591 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 00:56
「よっすぃ!」
「この銃弾・・・あいつだ」

よっすぃはそういうと上空を見上げた。

「ベテルギウス!!」

そこには、死んだはずのベテルギウスがいたんだ。

「なんで?」
「梨華ちゃん、どうせ見るならもっといい夢見てっての」

よっすぃは腕の傷を一舐めして剣を手にした。

「烈火真炎!!」

よっすぃの炎がベテルギウスを捕らえる。でも・・・

「あいにくだが、私は幻。夢は傷つかんのだ」

よっすぃの攻撃はベテルギウスには全然通用しなかった。

「なんだよそれ!」

よっすぃが再び剣を構える。

「何度やっても無駄なこと」
「うっさい!烈火真炎!!」

よっすぃは怒りに任せて何度も攻撃をしかけた。
でも、攻撃がベテルギウスに届くことはなかった。

592 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 00:58
「よっすぃ!止めな!」

よっすぃに疲れが見え始めたところで矢口さんがよっすぃを止めた。

「くっそぉ」
「ここは、梨華ちゃんの夢の中。
 だから、何度やっても効かないんだよ」

「ほう?さすが魔女。ずる賢しい」

ベテルギウスは矢口さんを嘲ると再び攻撃態勢に入った。

「烈火真炎!」

よっすぃの攻撃はベテルギウスに届く前に、消滅した。

「ホワイトウォール!」

矢口さんが防御魔法でベテルギウスの攻撃を防ごうとする。


でも・・・


「効かぬ!」


ベテルギウスの銃弾は矢口さんの防御壁を突き破って突入してきた・・・
そしてベテルギウスの銃弾はよっすぃたちを次々に傷つけた。


「くっそぉ」


よっすぃがベテルギウスをにらみつける。


「貴様らのお姫様は、家来を信用していないようだな?」


ベテルギウスは四人を嘲笑した。


「この世界から抜け出したい。早くもとの世界に戻りたい。
 毎日毎日不安におびえる。その心中が闇を作り出したのだ!」


ベテルギウスの言葉に、愛ちゃんがうつむいた。

593 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:00
「高橋!うつむくな!!」

よっすぃが、愛ちゃんの背中を叩く。

「梨華ちゃんが、うちらを信用していないはずない!
 梨華ちゃんは、この世界に来たことを後悔してなんかない!!うおぉぉぉぉ!!!!」

よっすぃの体が蒸気していった。

「梨華ちゃんの心に闇なんかないんだぁぁぁ!!烈火爆炎!!!」

よっすぃの炎が闇を照らしたとき、全てが光に包まれた。

「勝った・・・」

矢口さんがベテルギウスの気配が消えたことで勝利をかみ締めた。

「よっすぃ!」

力を爆発させたよっすぃはその場に膝をついた。

「終わった」
「いや・・・そうでもないみたいです・・・」

愛ちゃんが新たな刺客に剣を構えた。

「ったく梨華ちゃん、いい夢見ろよ」

よっすぃもなんとか立ち上がる。

「って・・・おい・・・」

光の中から現れた新たなる敵と思われた相手は・・・
594 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:01
「ベテルギウス・・・」

よっすぃの顔がひきつる。

「この世界では、我は最強なのだ」
「ふざけんな!」

「姫は貴様らへの信頼よりも、我々への恐怖心の方が強いようだな?」
「お前らなんか、怖くないんだよ!それを証明するためにうちらは来たんだ!」

「ならば、我の前に跪かせるまで。まいる!!」

ベテルギウスは一瞬で姿を消すと、よっすぃの背後に回った。

「ブラックブレス!!」

ベテルギウスの闇がよっすぃを支配した。

「うわぁぁぁぁ!!!」

ベテルギウスの攻撃を直撃したよっすぃはその場に倒れた。

「よっすぃ!!」

保田さんがよっすぃに駆け寄ろうとする。

「させん!」

そこにベテルギウスが立ちはだかった。

「今度は必ず仕留める」

ベテルギウスの不気味な笑顔に保田さんは、過去の恐怖を思い出した。
ベテルギウスのおかげで、瀕死の重傷を負った経験から、保田さんの体が恐怖で硬直した。


「貴様も、恐怖の闇におぼれるがよいわ!」

595 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:03
「させません!!」

保田さんの前に、愛ちゃんが立ちはだかった。

「お前の相手は、僕だよ?」

愛ちゃんが振り返った先には・・・


「アルタイル・・・」


愛ちゃんにとって、これ以上ない敵だった。

「今度は負けません!!」
「どうかな?」

アルタイルは嘲笑すると、天に舞い上がった。

「真水龍舞!!」

愛ちゃんの水龍が天を目指して駆け上がる。
水龍はそのままアルタイルを飲み込んだ。

「よし!」

勝利を確信した愛ちゃんだったんだけど・・・
次の瞬間、水龍に異変が生じた。

「水龍!!」

愛ちゃんが水龍を必死にコントロールしようと剣を握り締める。
でも、水龍はコントロールを失いそのまま愛ちゃんに牙を向いた。


「うわぁぁぁ!!!」


水龍は愛ちゃんを傷つけて自滅した。


「高橋!」


保田さんが愛ちゃんに駆け寄る。

「大丈夫です」

愛ちゃんはなんとか体勢を立て直した。

「どうだい?自分の相棒に傷つけられる感想は?」

アルタイルは無傷で、愛ちゃんの目の前に立ち上がった。

「私が相手になる!」

保田さんが愛ちゃんをかばうようにアルタイルの前に立った。

「保田さん・・・私の敵や」

愛ちゃんは保田さんを制して立ち上がった。

「あんたは無理しちゃいけない体なんだよ!」
「姫を救うためには、強くならんといけないんです!」

愛ちゃんはアルタイルをにらみつけた。

「へぇ?じゃあ、せっかくだから、二人とも相手してあげるよ」

アルタイルは不気味な笑いを浮かべると上空に舞い上がった。


「ハリケーンクラッシュ!!」


愛ちゃんと保田さんを竜巻と雷が襲った。
そして二人はアルタイルの刃に倒れた。
596 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:05
「くっそぉ」

一方のよっすぃと矢口さんもベテルギウスに苦戦だった。

「なんで傷つかないんだよ・・・このままじゃオイラたち・・・」
「らしくないじゃん?やぐっつぁんは諦めが悪いんじゃなかったのかよ?」

「バカ!この状況、冷静に考えなって。よっすぃは能天気すぎるんだよ!」
「うちだってちゃんと考えてるって。うちは梨華ちゃんのナイトなんだ。
 だから、梨華ちゃんがうちを信じないはずがないっての」


「どこまでも、バカだな・・・よしっ!」
「諦めなければ勝つんだぁぁぁぁ!!!」


よっすぃは剣を振りかざしてベテルギウスに立ち向かっていった。

「おろかな。ブラックブレス!!」

よっすぃと矢口さんもベテルギウスの闇に飲まれた・・・

597 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:07
その頃、私たちはウエストタウンの宿屋にいた。

「本当にこの町にいるわけ?」

宿に戻ってから、一日中歩いた疲れで
美貴ちゃんがコンちゃんに苛立ちをぶつけた。

「そのはずなんですが・・・」
「はずじゃこまるじゃん!
 だいたい闇雲に歩いてるとしか思えないし!」
「そんなつもりじゃないです!!」

さすがのコンちゃんも怒り気味。

「藤本さんに探してもらわなくてもいいです!!帰ってください!!」
「美貴は帰んないよ」

「なんでですか?関係ないじゃないですか!」
「関係なくてもなんでも、一緒に行くって決めた。美貴がこの子守る」

「え?」

そう言って私の手を美貴ちゃんがつかんだ瞬間にごっちんが声を上げた。


「あ〜!!」


「なに?」
「は?」
「え?」


「にゃは。闇雲に歩くってすごくない?
 闇と雲じゃわかんないね?
 コンコン、今日は曇りだったしさ、明日晴れたら探しに行こう!
 曇りの日は無駄なんだよ」


ごっちんの発想はなんていうか、あんまりにもバカバカしくて美貴ちゃんもコンちゃんも思わず噴出した。

「そうですね!また明日探しに行きましょう!!ね?藤本さん!!」
「バカみたい」
「バカみたい♪ゴトー疲れちゃったよ。もう寝よ?」

みんなは、そんな風に普通に喧嘩して和やかに一日を終えた。


でも、私は・・・今日が終わったら明日は来ないのかな・・・って・・・
・・・恐怖と不安を抑えることで一日が終わっていった。

598 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:10
ううん・・・今日を終えることができずに・・・
みんなが一日の疲れで寝静まって、寝息が聞こえたとたんに震えと涙が開放された。

「寝れない?」
「あ・・・ごめん起きてた?」

美貴ちゃんまだ起きてたんだって思って平気を装おうとした。

「平気?」
「・・・ごめんね。起こしちゃったよね?」

「・・・そう言えばさ、聞いてなかったね?」
「え?」

「名前?」
「あ、えっと、キツネの子がコンちゃんで、
 もう一人が後藤真希ちゃん。みんなはごっちんって・・・」

「じゃなくって、君の」
「あ・・・うん。柴田」

「下は?」
「あゆみ」

それから、美貴ちゃんの気配が消えたって思ったら、温かいぬくもりが私の身体を包んだ。

「あゆみ?」
「ちょ!ちょっと!」

抱きしめられたことに動揺して離れようとする私を美貴ちゃんは黙って捕まえてた。
そのうちに心が落ち着いて、現実と向き合う自分がいる。
599 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:13
「泣いていいよ」
「・・・泣いてないもん」

「素直じゃないな?」
「・・・」

「言ったじゃん?美貴があゆみを守るから」
「・・・」

「美貴がちゃんと涙拭いてあげるから。泣きなよ」

また、消えかけた自分が戻ってきた。

「泣いてないもん」
「じゃあ、このままでいいよ。不安が消えるまでそばにいるから」

「・・・」
「・・・」

「もう平気だから」
「うそばっか」

「・・・本当に平気だから」


「本気だよ?」
「え?」

「美貴があゆみを守る」
「・・・」

「守ってあげるから、不安になんかなんなくていい」
「・・・」

美貴ちゃんはまたきつく抱きしめてくれた。

「キスする?」
「しない」

「ケチ」
「バカ」
600 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:16
次の日は、どしゃぶりの大雨だった。

「雨だね」

美貴ちゃんが宿から外を眺めてつぶやく。

「じゃあ、今日は中止だね?」

ごっちんの昨日の考えは本気だったらしく、ニコニコしながらそう言った。

「どうするコンちゃん?」

私は雨を黙って見つめるコンちゃんの隣に座った。
コンちゃんの気持ちは聞かなくてもわかる気がして、
意地悪な雨を私は少しだけにらんだ。

「・・・今日は、中止にしましょう」
「いいの?」

「手がかりはないし、みなさんを闇雲に連れまわすわけにはいかないので」


コンちゃんはそう言うと、部屋を出て行った。
601 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:18
「コンちゃん?」

部屋を出たコンちゃんは、そのまま町へ出た。
一人で探すつもりだったみたい。

「柴田さん・・・」
「雨すごいね?濡れちゃうよ?おいで?」

コンちゃんは少しためらった後に、私のもとに駆けてきた。

「どうしてわかったんですか?」
「ん?ん〜・・・パートナーだから?」

その言葉にコンちゃんは笑った。

「ほう?仲がよいな?」

デネブ・・・

「新たな玄武の戦士を見つけさせる前に、私がその霊玉いただこう。
 それと、その分身を本体に返す前に消滅させる!!」

分身って言葉にちょっと震えた。


「デネブ!!お前の思い通りにはさせない!!」


「子ギツネに何ができる?」
「・・・」

悔しそうに奥歯をかみ締めたコンちゃんを見て、私が剣を抜いた。

「貴様にその剣が使いこなせるかな?」
「・・・」

過去数回・・・この剣を抜いたらろくなことにならなかったよね・・・

でも、今は私がやるしかないもんね!!

602 名前:しのびよる恐怖 投稿日:2006/01/30(月) 01:20
「ウインドブレイク!!」
「ブラックホール!!」

私の攻撃は、デネブのブラックホールに吸収された。

「うっ・・・」
「はははっ。自らの刃で傷つけられるとはな」

デネブに攻撃が届かなかったから、自分だけ負傷。


「柴田さん、無理しないで!!」


でもそうはいかないし・・・

「ウインド・・・」

私は、決死の覚悟で剣を握り締めた私。
でも攻撃をためらっちゃってた間にデネブが攻撃を仕掛けてきた。


「ブラックエンブレム!!」


私たちは成すすべ無しで、身体を強張らせて目をつぶった。


万事休す・・・

603 名前:k・y 投稿日:2006/01/30(月) 01:30
582 :k・y :2006/01/17(火) 01:15
川σ_σ|| <説明です♪
 今回は刺客のオンパレードでした。おさらいです。

ベテルギウス:銃と槍を使う天星人。朱雀殿で私が奇跡的に倒した相手。
       梨華ちゃんの夢の中で再び登場です。しかも、無敵状態・・・
       よっすぃたちはこの闇から逃れられるんでしょうか・・・

アルタイル:竜巻と雷を操る天星人。ごっちんが倒した相手。
      過去、愛ちゃんを瀕死の重傷に追い込んだ相手。
      今回も水龍まで操られちゃって・・・ピンチです。

デネブ:闇を操る天星人。コンちゃんとは何か因縁の相手みたい。
    その理由が明かされるのは、もう少し先です。
    私とコンちゃんだけで立ち向かえる相手ではないんですが・・・

 とにかく、みんな大ピンチです。次回なんとかなってることを祈っててください!
604 名前:レス 投稿日:2006/01/30(月) 01:39
>>584 :名無飼育さん
 始めまして!読んでもらえてうれしいです。
 あいぼんは神様です。言動、正体は不明なんですが・・・
 神秘的な存在ということで?
 他のメンバーも個性がどんどん出せていけたらと思います。
 これからもよろしくお願いします!

>>585 :名無しの読者
 レスありがとうごさいます。
 今回は、ダブルストーリという感じで
 進行中ですが、いかがでしたか?
 それぞれの剣士への応援もよろしくお願いします!
 では、次回もよろしくお願いします!

>>586 :名無飼育さん :2006/01/20(金) 22:21
 ありがとうございます!
 登場人物の魅力が少しでも伝わればと思っています。
 登場人物の数だけ、いろんな想いが交錯するので、
 そのあたりを感じてもらえるとうれしいです。
 次回もよろしくお願いします!

605 名前:レス 投稿日:2006/01/30(月) 01:50
>>587 :通りすがりの者 さん
レスありがとうございます!
 今回は敵がどしどし登場でした。
 梨華ちゃんの悪夢からの解放、
 柴ちゃんの真実の重み・・・
 今後も楽しみにしてください!

>>588 :名無飼育さん :2006/01/22(日) 02:37
 ミキティの登場よろこんでもらえたようで?
 彼女の今後の活躍もご期待下さい。
 今回は、それぞれ窮地に追い込まれていますが、
 ここをどう切り抜けるかです。
 次回もよろしくお願いします!

>>589 :名無しの読者 さん:2006/01/27(金) 17:10
 ありがとうごさいます!
 みんなに楽しんでもらえる作品になるように、
 これからも精進しまっす><
 剣士への応援もお願いしますね!
 では、次回もよろしくお願いします!

たくさんのレスありがとうございます!
作者冥利につきます!感動&感謝です!!
これからも、楽しんでもらえるように書き続けますので、
ご愛読&レスお願いします!!
606 名前:名無し 投稿日:2006/02/11(土) 01:01
更新乙です。
めっちゃおもろいですね。
柴ちゃんのことがマジで気になります!
次回待ってます!!
607 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/11(土) 01:17
初レスさせてもらいます。
作者さん、更新乙です。初更新から1年たちますね。オメ。

謎が謎を呼びなおかつ引っ張りすぎない  この絶妙な匙加減が
すごくいいです。ミュンさん、初期からエライ目にあってますが、
ケメさんも死にかけてる様に見えるのは気のせいでせうか?
 
これからもがんがってくらさい。次回も楽しみにしてます
608 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/02/11(土) 14:44
更新お疲れ様です。

撃退策はあるのでしょうか。
気になりますねぇ。

次回更新待ってます。
609 名前:名無飼育 投稿日:2006/02/13(月) 12:39
待ってましたー!!
初レスから一年なんですね!
オメでっす。愛ちゃんの健気さに惚れてついてきた
私ですが、今はみんな大好きです。

これからも、作者さんのペースで頑張ってください!
次回待ってます!!
610 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 00:52
「死ね!!!」


デネブの攻撃から成す術なしで覚悟を決めた私とコンちゃん。


「ハリスホーク!!」


ごっちんの声が聞こえたって思ったら私とコンちゃんは空高く舞い上がっていた。

「え?えぇぇぇぇ!!」

ハリスホークが私たちをつかんで空高く避難させてくれたみたいなんだけど、
この展開はこの展開で、恐怖体験なわけで・・・
どんな絶叫マシーンよりも絶叫できちゃう展開。


「ねばねばボーン!!」
「トルネードショット!!」


上空で半泣きの所に、ごっちんと美貴ちゃんの声が下から聞こえた。
ごっちんの弓矢と、美貴ちゃんの銃弾がデネブめがけて突き進んだんだ。

「無駄だ。ブラックホール!」

再びブラックホールに吸収された攻撃・・・でも。

「何!!」

ブラックホールに飲まれたはずのごっちんの矢がデネブの肩に突き刺さった。

「うわぁぁぁ!!!」

そして、美貴ちゃんの銃弾もブラックホールを突き破ってデネブの腹部にヒットした。


「なぜ・・・」
「ねばねばボーンはねばり強いんだよ♪」
「ふざけた名前の攻撃。美貴の銃弾はなんでも突き破るんだよ」
「く、くそっ」


思わぬ伏兵の登場でデネブは姿を消した。
そして、ようやく私たちも地上に戻れた。

611 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 00:54
「あ〜あ。いっちゃった」

デネブに手を振るごっちん。

「あんたって、どこまでも平和だね」

敵にまで手を振るごっちんに呆れたってかんじの美貴ちゃん。

「ありがとうございます。おかげで助かりました。でも、どうしてわかったんですか?」
「コンコンのパートナーはゴトーでしょ?」

コンちゃんにごっちんが笑顔で霊玉を見せる。

「こいつが、追いかけようってうっさいからさ」

美貴ちゃんの言葉にごっちんは口を尖らせた。

「ミキティが先に部屋を出たじゃん?」
「違うよ!・・・あ!あゆみ大丈夫?」

素直に心配だったって言いたくない美貴ちゃんは話題をかえた。

「うん。平気」
「無理するなって」
「あ・・・」

ウインドブレイクの衝撃は体験済みだったけど、
少しあちこちがすり切れてて、それを見た美貴ちゃんが私をお姫様抱っこした。

「お、おろして?」

こんな体験初めてで、自然と顔が赤くなった。

「いいじゃん。怪我してるんだしさ」
「ミキティ、力持ち♪」
「柴田さん、大丈夫ですか?とにかく宿に戻りましょう」
612 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:00
「なんでこんな危ない武器持ってんの?」

宿に戻って、コンちゃんに怪我の治療をされる私に美貴ちゃんが聞いてきた。

「コンちゃん、この武器改造できないの?」
「クラウソラスは、柴田さんの武器なんです。柴田さんの能力が武器に呼応してるんです」
「どういうこと?」

「柴田さんの能力は守ること。誰かを守るということは、それだけ力を必要とします。
 柴田さんは他の誰よりも強大な力を持っているんです。その力は、神様が特別に与えた力。
 でも、その力は誤った使い方もされかねない。全ての力を解放すれば、
 この国を支配できるほどの威力があるんです。
 だから、力を解放するときに同時に身体に負荷がかかるようにされたんです。
 力を使うのは自分の身を犠牲にしてでも守らなければならないものがある時だけ。
 身体に負担がかかる分、柴田さんの身体も他の誰よりも強靭なんですよ」


「そうなんだ・・・」


なんとなく、だから私って意外と強いんだってわかった。
今まで急死に一生を得ちゃったりしてるのも、全部この力のせいなんだね。


「あのさ・・・もしも、その・・・私消えちゃったら、私の家族ってどうなるの?
 娘が死んじゃったってことになるのかな?」


「・・・柴田さんは・・・柴田さんの存在は・・・もう第一世界からは抹消されてるんです。
 あなたにかかわった第一世界の人の記憶は消されています」


その言葉は、私の胸の傷をえぐった。
残酷な言葉ってこんなに胸を引き裂くんだ・・・


613 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:03
「そう・・・なんだ・・・」

どんな顔してたんだろう。
美貴ちゃんが私の代わりに言葉をつないでくれた。

「じゃあ、あゆみが今第一世界に戻ったら?」
「・・・」

美貴ちゃんの質問にコンちゃんは黙った。
きっと、あっちの世界に私の居場所はもうないってこと。

「ごめん。わかった」

立ち上がろうとした私の手を美貴ちゃんがつかんだ。

「美貴ちゃん、大丈夫だから」
「だったら、ここにいな」

「・・・」
「じゃないんだったら、美貴も行く」

「本当に、大丈夫だから」

握られた手を離して、強がり笑顔を見せてから私は部屋を出た。



部屋を出た瞬間に、震えが開放されて・・・
その場から急いで離れて廊下の隅にうずくまった。


私の存在は・・・もう向こうの世界にないんだ・・・
お母さんや、お父さんや、お兄ちゃんや、友達や・・・
瞳ちゃんの中にはもう私の存在はいないんだ・・・


精一杯受け入れようとしても、身体がそれを拒むらしくて、
止めようとしても、震えが止まらなかった。



孤独感と消失感・・・私はもうすぐいなくなる・・・

614 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:06
震えていた私の身体を、暖かいぬくもりが支配した。

「全然平気じゃないじゃん」
「美貴ちゃん・・・」


慌てて平静をつくろおうとしたんだけどやっぱり無理で・・・


「無理しなくていいから」
「平気・・・」

「もう、なんにも言わなくていい」
「・・・」

「美貴がそばにいる。不安が消えるまでこうしてるから」
「・・・」


美貴ちゃんのぬくもりはだんだん私の気持ちをゆるめていった。


「どうしよう・・・」
「え?」

「どうしよう・・・怖い・・・」
「あゆみ・・・」

「怖いよ・・・どうしよう・・・怖いよ!」
「うん」


「怖くて・・・怖くてたまらないの」


私の言葉に、美貴ちゃんの腕の力が強くなる。


「怖いよ・・・どうしよう・・・」
「大丈夫。そばにいるから」

「受け入れなきゃって思うのに・・・怖くてどうしようもないの」
「うん・・・」

「・・・消えたくないよ・・・消えたくない!!」
「わかった。美貴が守る。あゆみは消えさせない」

「・・・」
「消さないよ。あゆみのこと、美貴が消えさせたりしないから。
 美貴が証明する。証明してあげるから。あゆみの存在」


もしも・・・正義の味方がいるんだったら・・・
きっとこんな風に暖かくて強くて優しい人なのかもしれない。


「ちょっとだけ・・・泣いてもいい?」
「いいよ」


美貴ちゃんのぬくもりは、私の心を解放してくれて、
おさまらない震えと、あふれ出した涙に美貴ちゃんは黙って付き合ってくれた。

615 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:07
「くっそぉ・・・」

その頃、よっすぃたちは防戦一方でベテルギウスたちの攻撃に耐え続けていた。


「うちが・・・うちが必ず助ける」


立ち上がる気力さえ残されていないはずなのに、それでもよっすぃは立ち上がった。

「しぶといな」

ベテルギウスは立ち上がったよっすぃの額に刃を向けた。

「死ね!」
「うわぁぁぁぁ!!!」


ベテルギウスの闇がよっすぃを包み、闇の中でよっすぃは無数の刃を受けた。


「人間ってバカだね。お前らみたいに弱くてバカなやつらに姫は救えないよ


アルタイルはそう言うと嘲笑して遠くを指差した。
その先には・・・


「「梨華ちゃん!」」
「姫!」
「石川!」


四人は恐怖におびえる梨華ちゃんのもとに歩み寄ろうとした。

616 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:09
「来ないで!!」

でも、梨華ちゃんは四人を拒むように後ずさりをした。

「来ないで!!来ないで来ないで来ないでぇぇぇ!!!
 もうこんな世界やだ・・・元に戻りたいよ・・・普通の暮らしに戻りたいよ!!」
「姫・・・」


梨華ちゃんの悲痛な叫びに愛ちゃんがうつむいた。


「貴様らの存在など、無意味なのだ!」


ベテルギウスの高笑いが虚しく木霊した。


「違う・・・あいつは石川じゃない」


保田さんが、一歩前に出た。

「石川は、すぐに弱音をはくし、姫なんて自覚全然なかったけど、
 あいつはあいつなりに、この世界のこと大切に思ってる。
 あいつなりに姫になろうってしてたんだ。私たちとの出会いを後悔したりしてない!!」

保田さんに続いて矢口さんも前に出る。


「そうだよ。オイラはわかる。梨華ちゃんは帰りたいなんて思ってない!梨華ちゃんの心の中にはオイラたちがいるんだ。仲間のことを一番に考えてるんだ」
「お前らを倒せば全てが終わる。梨華ちゃんがこの世界にいるって証、うちらを思ってるって真実、証明してやるよ!な?高橋?」


よっすぃの言葉に愛ちゃんは顔をあげた。


「姫の心は私たちが守ります!みなさん、行きましょう!!」



「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」



四人の声が闇に轟く。
そして、一筋の光が放たれた。

「無駄だ!!ブラックエンブレム!!」
「ハリケーンクラッシュ!!」


ベテルギウスとアルタイルの攻撃は光に吸収された。
聖なる光。真実の証・・・


でも・・・現実は・・・

617 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:11
「ここは・・・?」

光が明けた世界は、もといた場所とは別世界だった。
一人辺りを見渡す愛ちゃん。

「みんなは・・・」

他の三人はどこにも見当たらなかった。
愛ちゃんが降り立ったのは、あの日私たちと出会った場所。
始まりの場所・・・体育館だった。

「姫!!」

梨華ちゃんを探そうと愛ちゃんは叫んだ。

「姫!姫!!」

何度も何度も呼び声だけが体育館に木霊した。
でも、梨華ちゃんの姿も他の三人の姿も見当たらなかった。
次第に孤独が愛ちゃんを支配していく。

「姫!!吉澤さん!!矢口さん!!保田さん!!」

何度も何度も呼ぶ声は焦りと孤独感だけを増やしていく。
愛ちゃんは体育館を歩き回って、みんなの名前を呼び続けた。

618 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:13
「愛?」
「姉上?」

叫び疲れた愛ちゃんの前に姿を現したのは・・・

「姉上!れいな!!」

亜弥ちゃんとれいなちゃんだった。

「誰を探しているの?」

亜弥ちゃんが愛ちゃんに優しく手を差し伸べる。

「姉上にはうちらがついとるよ?」

れいなちゃんが優しく微笑みかける。

「姉上!れいな!!」

愛ちゃんは亜弥ちゃんの手をとろうとした。

「え?」

でも、その手は結ばれることなく、すり抜けていってしまった。

「もう、愛の手を握ることはできないんだ」
「え?そんな!姉上!!」

「だって、愛は裏切り者」
「姉上はうちらのことを裏切った」
「違います!!それは!!」

「国王軍の船に私たちの故郷は滅ぼされた」
「姉上の乗る船に殺された」
「それは違う!!」

「大切な仲間を見殺しにした」
「私たち家族を裏切ったんや」
「違います!!姉上!!信じてください!!」

愛ちゃんが二人に歩み寄ろうとするんだけど、二人は嘲笑うようにして愛ちゃんから身を遠ざけた。

「姉上!!れいな!!待って!!」


「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」


二人の声が愛ちゃんの心を除所に蝕んでいく。

「違う・・・あれは・・・違う!!」


「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」



「違う・・・違う!!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」



愛ちゃんの悲痛な叫びが体育館に木霊した。

619 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:15
「ここは・・・?」

矢口さんが降り立ったのは、サウスタウンだった。

「なるほどね。今度はバラバラってことか」

他の三人がいないことで、矢口さんはすぐに置かれた状況を理解した。
この辺は、修羅場を潜り抜けてきた矢口さんの勘のよさ。

「あ!魔女だ!!」
「え?」

矢口さんを見つけた町の人が追いかけてきた。

「なんだよ。そういう展開かよっ!」

矢口さんは町の人から走って逃れた。

「あ!魔女!!」

でも、次々に追っ手が増えるばかりだった。

「なんで、こうなるんだよ」

どこへ行っても魔女とわかるなり人々が追いかけてくる。
まるで終わりのない鬼ごっこ。

「お姉ちゃんなんで逃げるの?」
「え?」

矢口さんの前に突如現れたのは、小さな小さな女の子。

「なんで逃げるの?」
「追ってくるから逃げるんだよ」

「なんで追われるの?」
「魔女だから!」

「お姉ちゃん魔女なの?」
「そうだよ!だから逃げる・・・逃げる」


矢口さんはなんだか空しさでいっぱいになったんだ。
魔女だから逃げ続けなきゃ行けないってことが、なんだか空しくてしかたがなくなったんだ。
620 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:16
「魔女に、世界なんて救えないよ」

かわいらしかった女の子は一変して醜い悪魔になった。

「お前、何者!!」
「お前に世界は救えない」

「うるさい!!」
「魔女は魔女。世界を救う勇者にはなれないんだよ」

「うっさいうっさいうっさぁぁい!!」
「魔女に心を開く人間はいない。魔女はこの世界の悪だ」

「黙れ!!」
「お前は、醜い魔女」

「うるさい・・・うるさい!うるさい!ファイヤー!!!」

矢口さんはたまらなくなって悪魔にロッドを向けた。
怒りの火炎が悪魔を包む。


「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「え・・・・」


矢口さんが焼き払ったのは、悪魔ではなく人間の女の子だった。


「ウォーター!!」


慌てて炎を消火しようと魔法を放ったんだけど、時すでに遅し・・・



「う・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」



焼け焦げた女の子を前に矢口さんは錯乱した。

621 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:18
「ったく、ここはどうなってんだよ」

よっすぃは愛ちゃんと同じように私たちの学校にいた。
校舎の中を歩き回っていた。
学校って、慣れ親しんだ私たちにはなんともないけど、
初めての人にとっては、同じ空間の連続で、迷いやすい場所。
よっすぃも混乱しながら歩き回っていたんだ。


「あ!梨華ちゃん!!」


よっすぃが梨華ちゃんを見つけた。
走りよったよっすぃは梨華ちゃんの手を握りとめたんだけど、梨華ちゃんは振り向くことはなかった。


「離せよ!」


二人の手を引き裂いたのは、美貴ちゃんだった。

「またお前かよ!」

よっすぃは、朱雀の関門の時に見た幻影の中で美貴ちゃんには出会っていたんだ。
622 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:19
「梨華ちゃんは、こっちの世界の人間なんだよ」
「うっさい!ごちゃごちゃ二度も出てくんなよ!」

「梨華ちゃんは美貴と一緒にいたいんだよ」
「なんだよそれ!自意識過剰ってやつ?」

「梨華ちゃんが好きな相手は美貴だってこと。それに、あんた守れんの?」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃなんないんだよ!」



「好きな女を自殺させるようなやつに、
     梨華ちゃんを守る資格なんてないんじゃないの?」



その言葉に、よっすぃは言葉を失った。


「あんたは誰かを愛する資格はないんだよ!」
「・・・・・・・」

「さっさと、梨華ちゃん帰してよ?」
「・・・・・・・」

「梨華ちゃんを幸せにできるのは美貴だけだよ」
「・・・・・・・」



「梨華ちゃんまで自殺させられちゃ困るんだよ!」



「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」



よっすぃの中で築き上げてきた何かが崩れた。
よっすぃはそのままその場に頭を抱えて崩れこんだ・・・

623 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:20
「きりがない・・・」

保田さんが落ちたのは、イーストタウン。
町に溢れる病人たちを保田さんは治していたんだ。
でも、次から次へと溢れ出る患者の数に、保田さんは疲労困憊だった。

「この町から、病人は消えないよ?」
「誰?」

保田さんの前に現れたのは、黒マントに金髪の小さな女の子。

「見ればわかるだろ?」
「魔女・・・」

「そうだよ」

保田さんはクロスペンダントを握り締めると、魔女の前に立ち上がった。


「殺せ。殺せ。殺せ」


まるで呪文のように魔女はその言葉を繰り返した。
保田さんは厳しい顔で、魔女に立ち向かった。


でも・・・

624 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:23
「・・・できない」

保田さんにとって、魔女を否定することは大切な仲間を否定すること。
だから、魔女を倒すことができなくなったんだ。

「あんたは、魔術師。殺せ殺せ殺せ」
「や、やめて!」
「殺せ!!」

保田さんは目をつぶった。
今目の前にいる魔女を倒すことが正しいかどうかを自分に問いかけるために。

「お前は、魔術師。魔女は敵だ。それはお前自身が一番よくわかっているはずだ」
「・・・」

「魔女と魔術師は永遠に相容れぬ関係。
 仲間なんて言ったって、所詮腹の底ではお互いを敵視し合っているんだよ」
「違う!!私は!!」

「正直になれ。魔女は悪だ」
「いい魔女だっている!この世界の平和を願っている魔女だっている!!」

「本当にそんなこと信じているのか?」
「信じてる!!」

「おろかな人間。この世界に真実なんて存在しないのに」
「真実は!自分が信じるから存在する!私が存在させる!!」

「ならば、見るがいい。お前の仲間の姿を」

魔女はそう言うと水晶を取り出した。
625 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:25
「高橋!」

最初に水晶に映ったのは愛ちゃんだった。
体育館に膝をついて愕然としている愛ちゃんの姿。


「高橋!!」


絶望感に支配された16歳の女の子の姿に、勇敢な剣士の面影はなかった。


「高橋に何をしたのよ!!」
「ちょっと、傷をえぐっただけさ。自分の罪に希望を失っただけ」

「高橋!!」

水晶に訴えかける保田さんの叫びは愛ちゃんにはもちろん届かなかった。


「次は・・・」

再び水晶が移り変わった。

「矢口・・・」

今度は、町の路地裏の隅にうずくまって震えている矢口さんの姿が映った。

「矢口に・・・何をしたのよ!!」
「所詮魔女は魔女。自分の宿命に気がついて真実を見失っただけさ」

小さいからだをますます小さくして震える矢口さんの姿は、明るく元気な魔女の姿ではなかった。


「矢口!!」
「これが、真実さ。真実なんてもろい。すぐに消えてなくなる」

「矢口!矢口!!矢口!!!」

保田さんの叫びむなしく、水晶から矢口さんの姿は消えた。



「よっすぃ!」

最後に映ったのはよっすぃだった。
廊下に頭を抱えて叫び続けるよっすぃの姿。

「よっすぃ・・・」
「もう、あいつに人を守ることはできないよ」
「・・・」

よっすぃの叫びに保田さんは何も言うことができなかった。
辛すぎて、悲しすぎて・・・
よっすぃの名前を呼ぶことすらできなかった。
626 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:27
「返して・・・三人を返して!!」
「それは、できない。私は夢を食うんだからね?」

その言葉に、保田さんが顔を上げた。

「あんたが・・・」
「ドリーブだよ」

保田さんは正体を現したドリーブから距離をとって、ペンダントを掲げた。


「あんたと戦う気はないよ。あんたはまぶしすぎる。あんたは弱さが見つからない」
「三人を返して!!」

「返してもいいけど、このままもとに戻れば、三人は生ける屍」


保田さんは、こぶしを握り締めた。


「三人を返して!!あんたに証明してやる!!真実は絶対に消えないってことを!!」


「「勝負!」」


ドリーブと保田さんの勝負が始まった。


627 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 01:51
川σ_σ|| <説明です♪

 板がいつのまにかに変更になってました。
 初めての方も多いと思いますので、ちょっとおさらいもかねて・・・

ストーリー:普通の女子高生をしていた梨華ちゃん。もう一つの世界から
      来た愛ちゃんに、国を救うために姫になって戦って欲しいって
      言われちゃって、女子高生→お姫様になっちゃいました。
      国を救うためには、四神の力が必要。そのためには、霊玉と
      それを持つ剣士の力が必要。霊玉を持つ剣士を探しながら、
      魔物や天星人たちとの死闘の日々。
      梨華ちゃんと八剣士たちの葛藤、格闘、奮闘の物語です。

八剣士
NO.1 高橋愛:「信」の霊玉を持つ剣士。梨華ちゃんを迎えに来たこの国の
        平和を心から願う次期国王。ひたむきで真っ直ぐで真面目な剣士。
        姫(梨華ちゃん)命!で頑張ってます。

NO.2 保田圭:「礼」の霊玉を持つ剣士。魔術師で、治癒の力を持つ。
        すっごく厳しくて優しい剣士さん。旅の中では頼れる
        お姉さまです。

NO.3 吉澤ひとみ:「仁」の霊玉を持つ剣士。イーストタウンで育ったため、
          粗暴な性格。お金と女の子が大好きなよっすぃ。でも、旅を
          していく中で、徐々に変化が・・・?

NO.4 矢口真理:「孝」の霊玉を持つ剣士。魔女として社会の影で暮らしていたけど、
         魔術師の安倍さんとの出会いで平和を願う魔女に変わった。安倍さんは
         死んじゃったけど、朱雀の巫女として再会が果たせた。

NO.5 コンコン:「智」の霊玉を持つ剣士。300年前からあることを理由にキツネに姿を変えて、
         生き続けてきた初代八剣士。私とも大きな関わりを持ったコンちゃん。
         もうすぐ世代交代になっちゃうんだけど・・・

NO.6 後藤真希:「悌」の霊玉を持つ剣士。森の妖精エルムで、100%スマイルでいつもみんなを
         和ませてくれる。ハリスホークを相棒に持つ。いるだけで、みんなが笑顔になれちゃう
         ような不思議な力を持ってる一方で・・・?
         
以上が現在の八剣士です。みんなの活躍は本編を読んでいただければと思います!
628 名前:孤独の闇 投稿日:2006/03/15(水) 02:06
川σ_σ|| <説明です♪

続いて・・・
その他の主要人物です。

朱雀の巫女:生前は安倍さん。平和をこよなく愛する優しい巫女。
      梨華ちゃんにとっての初めて召喚した四神。
      安倍さんのオーラで朱雀パワー炸裂です。

青龍の巫女:生前に恨みを抱いて死んだ人がなったため、魔王に
      心を売り渡してしまった巫女。私たちの旅に、不気味な
      影を落とす。

天星人:魔王の配下。ベテルギウス、アルタイルはもうやっつけちゃいましたが、 
    デネブ、ベガ、リゲル・・・などなど刺客はまだまだたくさん登場する
    模様です・・・

第六天魔王:世界中を手中に収めようとたくらむ悪の親玉。星たちを支配し、  
      青龍の巫女の心までも奪い取った。
      
あいぼん:神様。

藤本美貴:ウエストタウンで出会った女の子。私の身の上に同情してくれて、
     一緒に旅をすることになっちゃいました。
     もとの世界では梨華ちゃんの初恋の相手でもあって・・・

柴田あゆみ:梨華ちゃんの親友で、向こうの世界から一緒にやってきた。
      旅ではなにかとついてません。非常についてません。
      それでもって、ありえない展開に巻き込まれることに・・・

以上です。初めての方もいつも読んでくれている方も、これからもよろしく
お願いします!レスも大歓迎ですので、みんなの活躍を楽しんで下さい!!
629 名前:k・y 投稿日:2006/03/15(水) 02:27
>>606 :名無しさん
  柴ちゃんのこと、気遣ってくださってありがとうございます。
  作者も柴ちゃんが大好きです。先日、メロンミュージカルに行って、  
  ますます好きになりました。これからも、柴ちゃんにはどんどん
  悲惨な目に・・・活躍してもらう予定なので。
  これからもよろしくお願いします!!

>>607 :名無飼育さん :2006/02/11(土) 01:17
  初レスありがとうございます!!
  しかも祝一周年もありがとうございます!!
  ミュンは、これからもエライ目にあわせていきます。
  次回はケメちゃんの活躍が・・・?
  これからも、よろしくお願いします!!

>>609 :名無飼育さん :2006/02/13(月) 12:39
  いつもありがとうございます。
  愛ちゃんのファンなんですね。作者も大好きです。
  愛ちゃん、今回は過去のトラウマに襲われています。
  愛ちゃんの成長、他のみんなの活躍、ご期待下さい。
  これからもよろしくお願いします!!


 板が変わって、自分のスレが無くなってしまったと思っていました。(汗
 そのため、更新がかなり遅れてしまいすみません!!
 いつのまにかに、一周年も迎えられて、本当に暖かいレスのおかげです。
 これからも、精進するのでよろしくお願いします!!
630 名前:k・y 投稿日:2006/03/15(水) 02:30
>>608 :通りすがりの者さん
 すみません。編集していたら、おかしなことに・・・
 いつもご愛読ありがとうございます!!
 まだまだ梨華ちゃんの悪夢の世界からは抜け出せません。
 撃退どころか、飲まれ気味な剣士たち・・・
 全てのカギはあの人しだいです。
 これからも、よろしくお願いします!!

631 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/15(水) 03:06
始めまして
一気に読ませていただきました。
よっすぃ〜負けないでぇ!!
更新待ってます!!
632 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/03/16(木) 00:11
更新お疲れ様です。

いやぁ、かなりマズい事になりましたねぇ;
一体どんな脱出劇を果たすのでしょう。
次回更新待ってます。
633 名前:名無飼育 投稿日:2006/03/20(月) 01:16
更新お疲れ様です!
新たな板になったけど、頑張ってください!!
愛ちゃんの心の傷・・・切ないです。
保田さんの活躍に期待です。
634 名前:名無飼育 投稿日:2006/03/20(月) 01:16
すみません。
ageちゃいました。
635 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/21(火) 22:18
待ってました!更新乙です。
よっすぃたちも気になりますが、
柴ちゃんのことがすっごく気になります。
636 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:03
「みんな!!」

ドリーブが姿を消したのと同時に三人が保田さんの前に現れた。


愕然と座り込む愛ちゃん。
震えてうずくまる矢口さん。
頭を抱えて叫び続けるよっすぃ。
心を切り刻まれた三人・・・


保田さんは静かに目を閉じた。


「石川。ここがあんたの夢の中なら、力を貸して」


保田さんはそうつぶやいてクロスペンダントを掲げた。


「幻光画!!」

637 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:04
あの日、愛ちゃんとの出会いから、梨華ちゃんの旅が始まったんだ。


『お願いします・・・』
『・・・』


『お願いします!!』
『わかった。一緒に行く!』


『ほ、ほんまに?』
『うん!困ったときはお互い様って言うしね?』

638 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:06
出会ったばかりの梨華ちゃんは、愛ちゃんが期待していたようなお姫様なんかじゃなくて、普通の女子高生で。
だから、言い争ったりもしたんだよね。


『よくないよ!柴ちゃん死んじゃうかもしれないんだよ!!そんなの絶対によくない!』
『柴田さんは平気です!それに、姫が死んじゃったら、この国は救えんもん!』


『柴ちゃんは、私のこと守ろうとして怪我しちゃったんだよ?
 この世界に来たのだって、私がお願いしたからじゃん!
 それでもしものことがあったら、そんなの絶対によくないよ!!』
『姫・・・姫は・・・姫はもう少し、自分の身を守るっていう自覚を持ってください!』


『だからって、柴ちゃんを身代わりにはしたくない!』
『私は、姫のためだったら、姫を守るためやったら、自分を犠牲にできます!
 だから、姫は姫らしく!もっと自覚を持ってください!!』


『誰かを犠牲にするんだったら、そんな自覚もてないよ!!』
『姫!わかってください!!姫は、この世界にいたときは、
 気高く美しく優しく、そして強いお方だったんです!!』


『そんなのわかんない!!だいたい、姫姫って、
 そんなこと言われたってわかんないよ!!
 昔のこととか言われても、私じゃないし!!
 それに、今までふっつ〜に女子高生してたのにさ、
 いきなりこんな危ない世界に連れてこられて、
 しかも柴ちゃん怪我までさせちゃって!もうわけわかんない!!』
『わかってもらわんと困るんです!!』


『わかんない!!愛ちゃんなんて嫌い!!』
『わかってもらわんと・・・困るんです』


「高橋?あんたが全部始めたんだよ?
 あんたが、石川を連れてきて、それでみんなを結び付けたんだよ?
 もう、高橋は一人じゃない。私たちが、石川がついてるよ?」


保田さんは、幻影を見せながら愛ちゃんに優しく語りかけた。
愛ちゃんの、脱力した体を支えて、愛ちゃんの心に優しく訴えかけた。

639 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:07
私たちは仲間になれたんだ。
その中心にはいつも梨華ちゃんがいて。
梨華ちゃんが心をほぐしてくれたんだ。


『置き去りになんてしてません!!』
『え・・・』


『ごめんなさい・・・つい・・・』
『愛ちゃん・・・』


『愛ちゃん。愛ちゃんは、すっごくマジメで、強くて、優しいんだね』
『・・・』


『愛ちゃんの、重り、いつか半分もらってあげるからね』
『・・・』


愛ちゃんの心をほぐしたあの言葉・・・
その光景に愛ちゃんの目に光が戻りかけた。


「高橋?あんたのお姫様は、必ずあんたを救ってくれる。
 だから、心を閉じないで!!」


「姫・・・」


保田さんは愛ちゃんの額にクロスペンダントをあてると、よっすぃのもとに向かった。

640 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:07
よっすぃと矢口さんが加わったときは、大変だった。
愛ちゃんとよっすぃは気が合わないし、魔術師の保田さんは魔女である矢口さんを受け入れられないし。
この先どうなるの?ってかんじだった。


『こうしよう!契約!!』
『『『は?』』』


『お互いにさ、認め合ってないんだし、ここは契約ってことにしよう!!
うん。それがいい。うちはあんたに雇われる。一日1万円ね!!』
『わかりました!!一日1万円ですね!!』
『ちょっとあんた何考えてんのよ!!何?金で片付けるの?』


『あんた全然わかってない!!
 物事をお金で計るなっていっただろ!!』
『それは・・・』


『認めない。あんたのこと認めない!!』
『もうやめよ?今日は、もう喧嘩するのやめよ?』


『もうやめよ。今日はみんな疲れてるんだよ。だから寝ちゃおう?
 明日になったらまた気分もすっきりするかもしれないしさ?ね?
 そうしたらまた話せばいいよ?』


「あんたと高橋、本当に気が合わなかったよね?
 でも、あんたたちをくっつけたのも、石川だよ?」
保田さんは優しく語りかけた。

641 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:08
そうだった。
梨華ちゃんが、みんなをだんだん仲間にしていったんだ。


『よっすぃ?』
『ここ危ないよ?どこで暮らしてたのか知らないけど、
 この辺じゃ、夜、外に出るのは危険だよ?』


『大丈夫だよ』
『え?』


『ここに頼りになるナイトが一人いるからね?』
『それって、うちのこと?さっきも言ったけど、
 うちは誰かを守るようなタイプじゃないよ?』


『昨日だって守ってくれたでしょ?』
『それは・・・』


『よっすぃが言葉でどんなことを言っても、私わかるよ。
 なんでかな?昔っから相手の心を読むのだけは得意なんだよね』
『わぁお!そりゃ、すごいや。じゃあ、今うちが梨華ちゃん抱きしめちゃおう!って思ったのもわかったんだ?』


『ダメだよ・・・よっすぃの心、これ以上心にウソついたら、よっすぃの心、凍っちゃうよ』



「あんたの心を溶かしたのも石川だよ?」


642 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:09
頑なだった、よっすぃの心も、梨華ちゃんが溶かしていったんだ。


『どうせ、うちなんてイーストタウン育ちの孤児だから、今さら関係ないよ』
『そんなことない!よっすぃは、私のこと助けてくれたし!
 愛ちゃんとの約束ちゃんと守ろうとしてる!!』


『それは・・・』
『よっすぃは、本当は優しくて強い剣士なんだから!!』


『不真面目で、軽薄な詐欺師だって!』
『違う!!』


『違わない!!詐欺師として今まで生きてきたんだ!剣士は契約!!』
『違う!!』


『はぁ・・・しつこいなぁ。うちなんか信じたって何にも得しないよ?』
『損とか得とか!そういうことじゃないの!』


『・・・じゃあなに?』
『仲間だから!』


『え?』
『よっすぃは・・・よっすぃは仲間だから!だから信じるの!!』


『・・・』
『仲間だから、だから、よっすぃの心を傷つけさせたくないから!
 だから、もう人を騙すようなことはしないで欲しいの!!』


『・・・』
『よっすぃは、大切な仲間なんだよ!!』


「あんたにとっても、石川は大切な人なはずだよ?だったら、ちゃんと守らなきゃ!」


「梨華ちゃん・・・」


顔をあげたよっすぃの額に保田さんはクロスペンダントをあてた。

643 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:10
「うっ・・・」

幻影を見せ続けるためには、そうとうな霊力を使うから、だから保田さんの体は相当な負荷がかかる。

「本当に、非力なんだから」

保田さんは、一瞬地面に膝をついたけど、すぐに立ち上がって矢口さんのもとに向かった。


「悪夢からは逃れられないよ?」


矢口さんと保田さんの間を阻んだのは、アルタイルだった。
今の保田さんには、アルタイルに攻撃を与えられるだけの力はもちろん、身を守るだけの力もなかった。


「仲間を救おうなんて、無理だよ」
「無理かどうかなんて、やってみないとわかんないでしょ!!」

「わかるよ。ハリケーン・・・」
「真水龍舞!!」
「烈火真炎!!」


攻撃をしかけたアルタイルの前に立ちはだかったのは、愛ちゃんとよっすぃ。

「保田さん!ここは私たちが食い止めます!」
「圭ちゃん、やぐっつぁんを頼む!」
「二人とも!」


「ドリーブに保田さんの魔術が負けるわけないんです」
「戦いはうちらに任せてよ。やぐっつぁんを早く!」


よっすぃと愛ちゃんがアルタイルに刃を向けている間に保田さんは矢口さんのもとに向かった。
644 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:11
「あんたの夢は、イーストタウンを、この世界を平和にすることでしょ?」


『オイラは魔女だからね・・・』
『魔女と魔術師は違うの?』


『魔女は、人を助けられるような魔法は使えないんだ。
 もともと、邪悪な血を受け継いで、この世に悪をもたらすためにいたんだ。
 だから、人を助ける魔法は使えないんだよ。魔術師はもともとは人間。
 魔女を倒すために人間が魔法を手に入れたんだ。
 それを使えるように教育されたのが魔術師。
 魔術師は人間のために魔法を使えるんだけど、
 魔女は人間のための魔法はもってないんだ』
『ごめん・・・』


『ううん。いいんだ。オイラは魔女だからね。それは、変えられないこと』
『でも!まりっぺは、いい魔女なんだね?』


『え?』
『私はまりっぺのこと大好きだよ』


「矢口は、悪い魔女なんかじゃない!
 矢口がいれば、魔女と魔術師が分かり合える!
 人間と魔女が共存できる平和な世界が必ず来るから!!」


保田さんが矢口さんの額にクロスペンダントをあてた時だった。

645 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:12
「そんな世界、来るはずがない!!」


保田さんの背後に現れたのはベテルギウスだった。


「圭ちゃん!!危ない!!」
「保田さん!!」


よっすぃたちは、アルタイルとの戦いで保田さんを守るには間に合わない。
その時・・・


「朱雀蓬莱翔!!」


朱雀が現れた。


「圭ちゃん、ありがとう!」
「矢口!!」


矢口さんが、復活したんだ。

646 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:12
「姫の心があなたたちに呼応しています。だから、私を呼んだんです」

朱雀の優しい声が四人の胸に響いた。

「あとは、私に任せて。矢口?圭ちゃん?行くよ!!」

矢口さんと保田さんは朱雀の言葉に霊玉を掲げた。

「フェニックスエナジー!!」

朱雀は天高く舞い上がると金の粉を振り注いだ。
黄金の粉は辺り一面を光にかえた。


「光は全てを浄化させます」


朱雀の、安倍さんの優しい声が天に響いた。
647 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:13
闇は必ずあけるんだ・・・



『起きて?ねえ?起きて?
  怖い夢を見たね?でも、もう大丈夫だよ?
     どんなに怖い夢だって、覚めない悪夢はないんだから。
 さあ、起きて?私はあなたのそばにいるから・・・』



そして、悪夢は終わった。


648 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:14
「ん・・・ん?」

最初に目を覚ましたのは矢口さん。

「戻れたの?」

保田さんが砂時計を見つめる。

「うっ・・・ん?」

よっすぃも目を覚ました。

「・・・姫!」

愛ちゃんも目覚めて、梨華ちゃんの様態を気遣った。

「・・・ぅ」

幽かに動いた梨華ちゃんの手を愛ちゃんがしっかりと握った。

「姫!!」
「石川!!」

保田さんと矢口さんも梨華ちゃんを覗き込んだ。

「ん・・・ぅん」

そして、梨華ちゃんは目を覚ましたんだ。

「姫!!」

目覚めた梨華ちゃんに感極まって愛ちゃんは抱きついた。

「よかった」
「寝すぎだよ」

保田さんと矢口さんもようやく安心。

「みんなの声が聞こえたの・・・愛ちゃんの声が聞こえて、よっすぃの声が聞こえて・・・
 それから、なんかなつかしい声が聞こえて。それで・・・」
「それで、ようやく目が覚めたってことだね?」

矢口さんが、立ち上がりざまにそう言った。

「うん」
「よかった。マジでオイラたち心配したんだから。特によっすぃなんて」

その言葉に、梨華ちゃんはよっすぃの方を向いた。

「別に、うちは心配してないって」

でも、よっすぃは冷たくそう言い放つとその場から立ち去った。


649 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:14
「よっすぃ?」

気になってよっすぃを追いかけた梨華ちゃん。

「ん?」
「あの・・・」

なんだか、いつもと違って、遠くに感じるよっすぃに梨華ちゃんはかける言葉を失っていた。

「あの・・・さ。その・・・柴ちゃんたちは?」
「あぁ。なんか、コンコンとどっかに行った」

「え?」
「大丈夫だよ。どうせ戻ってくるよ」

「うん・・・」
「梨華ちゃんも、柴ちゃんも・・・向こうの世界に戻るんだよね」

その言葉は、二人の間に隙間を作った。

「・・・そうだけど・・・でも!」
「うちらとは、いつか別れる。だったら、あんまり近づきすぎない方がいいんだよ」

「なんで?なんで突然そんなこと言うの?」

よっすぃの中では、ドリーブの悪夢はまだ完結していなかったんだ。

「早く戻りたいんでしょ?」
「え?」

「向こうの世界に」
「戻りたくないって言ったら嘘になるかもしれないけど!でも・・・」

「向こうの世界には好きな相手もいるしね?」
「・・・向こうの世界には、好きな人だっているし、家族や友達や・・・たくさんいるけど、でも!こっちの世界に来れたこと後悔してないよ!」

「うちはしてるよ!」

よっすぃの言葉に梨華ちゃんから自然と涙が溢れた。

「え・・・」
「ごめん」


泣き出した梨華ちゃんの前からよっすぃは姿を消した。

650 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:15
「姫!」

よっすぃの代わりに愛ちゃんが梨華ちゃんのもとに現れた。

「・・・」

梨華ちゃんの涙に愛ちゃんは少し動揺した。

「何があったんですか!吉澤さんですか?」
「・・・いいの」
「よくないです!姫を泣かせるなんて!!許せん!!」


愛ちゃんはそう言うとよっすぃを探しに走り去った。

651 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:16
「吉澤さん!」
「ん?」

よっすぃを見つけた愛ちゃんは胸倉につかみかかった。

「姫を泣かせるなんて!許せん!!」
「・・・」

無抵抗なよっすぃに愛ちゃんは手を離した。

「姫を泣かせるなんて!」
「お前さ?」
「はい」

愛ちゃんの真っ直ぐな視線からよっすぃは煙たそうに顔をそむけて口を開いた。

「忘れてない?」
「何をですか?」

「梨華ちゃんは、もともとこっちの世界の人じゃない」
「知ってます!」

「だから、いつかはこの世界からいなくなる」
「・・・」

「向こうの世界には、うちらの知らない梨華ちゃんの居場所があって、
 友達や、親や・・・好きな相手がいるんだ。
 そんなに、姫姫って言ってると別れられなくなるよ?」


よっすぃの言葉を愛ちゃんはしばらくかみ締めていた。


「でも・・・私は姫が好きです」
「だから!」


「私は、姫のことが大好きです。だから、お守りしたい。
 姫と少しでも長く一緒にいたい。
 いつか別れるんだとしても、それまで、そばでお守りしたいんです」
「だから、お前のこと嫌いなんだよ。真っ直ぐすぎんだよ」


よっすぃは、またその場を離れた。

652 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:17
一方私たちは・・・相変わらず霊玉の持ち主探し・・・

「そのさ、新しい『智』の霊玉の持ち主ってどんなやつなわけ?」

当てもなく歩き続けているところに美貴ちゃんが口を挟んだ。

「えっと・・・頭がいい人だと思います」
「思いますってそれだけ?もっと外見的特徴とか、名前とか居場所とか手がかりないわけ?」

「・・・ありません」
「は?」

「でも!持ち主には霊玉が反応するはずなんです」
「じゃあ、その玉が反応するまでこの町を歩き続けるわけ?」

「・・・はい」

コンちゃんの発想に美貴ちゃんは呆れ顔。

「とりあえず、この町にいるっていうのは確かなわけ?」
「・・・多分」

「多分って・・・じゃあ、いないかもしれないわけ?」
「・・・でも、センタータウン、イーストタウン、サウスタウンにはいなかったはずなんです。それに、ノースアイランドには人は住んでいないはずだし・・・」

「その他にも、この国にはたっくさん居場所があると思うけど?」

美貴ちゃんの言葉に返す言葉が見つからなくなったコンちゃんはうつむいた。

「きっと、この町にいるよ」

私はコンちゃんを抱き上げた。

「ね?」
「はい!」

美貴ちゃんは呆れたって顔してたけど、何も言わなかった。

「そうだ!美貴ちゃんってこの町に住んでるんでしょ?」
「え?ああ。まあ」

「じゃあさ!じゃあ、この町でいっちばん頭がいい人知ってるよね?」

私の言葉に美貴ちゃんは顔をしかめた。

「知ってるけど、あいつが剣士だったら笑えるよ。頭はいいけど、世界で一番臆病なやつだと思うよ?ひきこもりだしさ」
「じゃあ、二番目に頭がいい人は?」


コンちゃんもそんな人が剣士だなんて、信じたくないみたいで二番目って話になった。


653 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/28(火) 15:17
でも結局、一番目の臆病者さんに霊玉は反応しちゃったんだ。


「マジ・・・」


その人の家の前に来たときに、霊玉は緑の光を放った。


「マジで?」


美貴ちゃんが信じられないってかんじでコンちゃんの霊玉を見つめる。


「と、とにかく・・・中に入りましょう・・・」


コンちゃんの指示で私たちはその人の家を訪ねた。

654 名前:k・y 投稿日:2006/03/28(火) 15:19
ちょっと時間がなくなったので、いったん更新を中断します。
また、夜に続きを載せる予定です。
すみません!!
レスへの返信などもそのさいに・・・
655 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/03/28(火) 17:16
更新お疲れ様です。

今度もまた波乱の予感がしますねぇ。
ん?そういえばコンコンのパートナーは
ごっちんだったような…。
まぁ良いですね、次回更新待ってます。
656 名前:k・y 投稿日:2006/03/29(水) 02:34


昼間の続きです!


657 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:36
「はい・・・」

中から出てきたのは、白衣姿のかわいらしい女の子。

「あの!」
「き、キツネがしゃべった!!」

コンちゃんに驚いた女の子はすぐに扉を閉めてしまった。


「「「「・・・」」」」


本当に臆病らしいね・・・私たちはドアの前で拍子抜け。


「あの!!もしもし??お〜い!!」


美貴ちゃんが扉を叩いた。

「き、キツネがしゃべるなんて・・・そんな非科学的なこと・・・
 つまりそれが可能なのは魔物ってことだから・・・」

中で女の子はコンちゃんの分析を始めたみたい。

「あの!!おい!!ここ開けてよ!!」
「無理です!!帰ってください!!」

美貴ちゃんが、ほらね?ってかんじで私たちに目を向けた。
相手は相当な臆病者で警戒心が強いみたい。

「あの!私たち、魔物でもあなたの敵でもないんです!ここを開けて話を聞いてください!」

コンちゃんが再度扉を叩く。

「魔物が自分のことを魔物って言うはずがないじゃないですか!!」
「・・・」

その通りだ・・・

「本当に!敵じゃないから話を聞いて下さい!!」
「話は聞きます!でも、扉は開けられません!!」

ってことで、女の子に扉越しに事情説明をすることにした。

658 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:37
「ってことなんです!!あなたの力が必要なんです!!」

コンちゃんの説明に、しばらくたって扉が開いた。

「それ・・・本当ですか?」
「はい!これ、あなたのでしょ?」

「あ・・・それ・・・一ヶ月前くらいに突然なくなっちゃったんです」

どうやら、本当にこの人が『智』の霊玉の持ち主みたい。

「あなたにお返しします」
「い、いりません!!」

コンちゃんが渡そうとした霊玉をつき返した女の子。


「そ、そんな、私無理です!
 国を守るとか、誰かと戦うなんて無理です!!」
「・・・」

「私は、この町で修理の仕事と発明をして平和に暮らしていたいんです!」
「・・・」

「だから、それ返します!!」
「・・・そんな・・・」

「ごめんなさい!!」


女の子は再び扉を閉めてしまった。

659 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:38
「やっぱりね。噂どおりの臆病者だよ。コンコン、あれは無理だね?」

美貴ちゃんに言われて、コンちゃんはうなだれた。

「他のやつじゃダメなの?」
「霊玉は持ち主が決まっているんです。
 その人じゃないと威力が発揮されないんです」

「コンコンでいいじゃん?」
「私は・・・多分もうあと一ヶ月も生きられないと思うから・・・」


コンちゃんの寿命は尽きようとしていたんだ。
その日は、それからもずっと説得していたんだけど結局女の子が姿を見せてくれることはなくて・・・

「もう、今日は無理だよ」

日が落ちた頃に美貴ちゃんが諦めを口にした。

「出てこなくなっちゃったもんね・・・」
「みなさんは、宿に戻ってください。私はもう少し出てくるまでここで待ちますから」

コンちゃんはどうしてもその場を離れようとはしなかった。

「じゃあ、ゴトーもここで待つよ。ゴトーの相棒だもんね♪」

ごっちんはどんな状況でも楽しいみたい。
相変わらずの100%スマイルは私たちの疲れを一瞬忘れさせてくれる。
コンちゃんの決意は固いみたいだから、今日はここで篭城だな。

660 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:39
「じゃあ私、美貴ちゃんの家で何か作ってもってくるよ」
「え?なんで?ってか勝手に!」

「長期戦になりそうだしね?」
「すみません」
「おいおい。勝手に話進めるなってば」

「美貴ちゃん、行くよ!」
「ちょっと!」

今度は私が強引に美貴ちゃんをひっぱっていった。

「強引なんだから。美貴の家、何にもないよ?」

美貴ちゃんは、そう言いながらも素直に家を提供してくれた。

「強引なのはお互い様」

台所はこの間出て行ったままの状態だった。

「ろくなもんないよ?」
「十分十分!」

旅先での生活を思えば、何もないって言ってるわりには美貴ちゃんの家にはお米も野菜も卵もあった。
後でわかったんだけど、美貴ちゃんにとってのご飯って、『お肉』なんだ。
だから、お肉がない=何もないってことみたい。

661 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:41
「ってかさ?美貴思ったんだけど・・・」
「ん?」

「協力しない方が、いいんじゃん?」
「なんで?」

「だってさ、このままあいつが剣士にならなければ、
 四神も呼び出せなくなるし、あゆみだって戻らなくていいじゃん?」
「・・・それとこれとは違うじゃん」

「でもさ!」


開いた美貴ちゃんの口に私はおにぎりを押し込んだ。

「ふんがぅふぅんが・・・」

美貴ちゃんの慌てぶりを見て私は声を上げて笑った。

「もう!ひっどいな」
「お仕置きだよ。コンちゃんはず〜っとず〜っと待ってたんだよ?
 300年も・・・ようやくコンちゃんの戦いが終わるんだよ。
 それを邪魔したりなんてできないよ。私の問題は私の問題。
 コンちゃんは大切な友達なんだから協力しなきゃ!」

「友達ね・・・」
「そう。友達」


「でもさ!」
「いいの。いいんだってば!」


それは、美貴ちゃんに対してっていうより、自分に言い聞かせるような感じの口調だったと思う。
美貴ちゃんはきっと、私の心の中なんてすっかりお見通しだったんだ。
言葉を返す代わりに私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくれた。

「よし!っと。行こうか?」
「え?あぁ。うん」

おにぎりと玉子焼きを持って私たちはコンちゃんたちの所に戻った。

662 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:42
「コンちゃん!」

コンちゃんとごっちんは相変わらず、霊玉の持ち主の賢者さんの家の前に立ち尽くしていた。

「あ!柴ちゃ〜ん!!」

私たちを見つけていち早くごっちんが駆け寄ってきた。

「うわぁ!おにぎりだ♪」

自分が作ったものを誰かが笑顔で食べてくれるってこんなに嬉しいんだって、
ごっちんの100%スマイルを見て思った。

「おいしいです!」

コンちゃんもお腹がすいていたみたいで、
小さい体からは想像できないくらいおにぎりを食べた。


「あ!?このおにぎり、あの子にもあげようよ!」


ごっちんは急に思い立ったみたいで立ち上がるとおにぎりを持って賢者さんの家の扉を叩いた。

 
663 名前:真実の証明 投稿日:2006/03/29(水) 02:48
川σ_σ|| <説明です♪

 幻光画:保田さんの魔術。ドリーブの悪夢に対抗して保田さんが見せた幻影。
     よっすぃたちに過去の映像を見せることで、自我を取り戻させようと
     しました。保田さんならではの愛のある魔術です。

 朱雀蓬莱翔:朱雀の召喚飛翔です。天を舞う朱雀の姿は
       本当に気高く美しい。
 
 フェニックスエナジー:朱雀の浄化攻撃。全ての元凶を断ち切り、
            幸福を呼び戻す朱雀のパワーです。
           

 今回は、保田さんの活躍でピンチ脱出でした。
664 名前:レス 投稿日:2006/03/29(水) 02:56
>>631 :名無飼育さん :2006/03/15(水) 03:06
 はじめまして!
 読んでもらえてうれしいです。
 新たな板で、新たな読者が増えればって思ってますので。
 よっすぃと梨華ちゃんは、微妙にすれ違いだしちゃいましたが・・・
 今後を見守ってください!

>>632 :通りすがりの者さん
 保田さんのおかげでドリーブの魔の手からはのがれられました。
 保田さんの強さ、優しさが伝わっていればうれしいです。
 ちょっとだけひずみは残りましたが、一先ず終着です。
 次回からは、コンコンストーリーが続きます。
 よろしくお願いします!

>>633 :名無飼育 さん:2006/03/20(月) 01:16
 保田さんの活躍で、愛ちゃんたちはなんとか復活です。
 なつかしいセリフが出てきましたが、覚えていましたでしょうか?
 ここまでの旅を懐かしみながら読んでくださいね。
 剣士の成長、梨華ちゃんの成長・・・
 これからも、楽しんでください。

>>635 :名無飼育さん :2006/03/21(火) 22:18
 柴ちゃんのことも気にしてくれてありがとうございます。
 柴ちゃんの方もかなり複雑な展開になっていますが・・・
 今後も、柴ちゃんにはさんざんな目にあってもらいます。
 柴ちゃんの葛藤、柴美貴にも注目してください。
 これからも、よろしくお願いします。

665 名前:レス 投稿日:2006/03/29(水) 02:58
>>655 :通りすがりの者 さん:2006/03/28(火) 17:16
 コンコンのパートナーはもちろんごっちんです。
 心のパートナーは柴ちゃんです。
 今回、ようやくコンちゃんから霊玉を引き継ぐ人物のもとに・・・
 一筋縄ではいかないみたいですが・・・
 これからも、よろしくお願いします!!
666 名前:名無飼育 投稿日:2006/03/30(木) 03:31
更新お疲れ様です!
保田さんマジいいですね。
朱雀の登場がなんか、かっこいい。
次回も期待しています!!
667 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/30(木) 14:33
待ってました!

ついに新しい剣士の登場ですか?
誰だろう?と今から楽しみにしてます!
668 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:37
「もしも〜し!」
「もう!帰ってください!!」

中から女の子の声が響いた。

「おにぎり一緒に食べようよ!おいし〜いよ?」
「帰ってください!!」

女の子は突然扉を思いっきり開けて、
開いた扉はごっちんにぶつかって、持っていたおにぎりは宙を舞った。

「ってめえ!せっかくあゆみが作ったのに!!」

美貴ちゃんが女の子につかみかかった。

「美貴ちゃん!ダメだよ!!」

慌てて私が美貴ちゃんを抑えたんだけど、女の子はすでに半泣き状態。

「ごめんね。何度も押しかけちゃって。はい。これしかないけど」

地面に落ちたおにぎりの代わりに、私は玉子焼きを女の子に渡した。

「おいしいですよ?」

コンちゃんが私の横から女の子にピースをして見せた。
女の子は恐る恐るだけど、玉子焼きに手を伸ばした。
玉子焼きだけなのにこんなに緊張するなんて思わなかった。
私の玉子焼きがおいしくなかったら、この子はずっと私たちに心を開いてくれないんじゃないかなって。
私たちは息をのんで女の子のリアクションを待った。



「・・・おいしい」



小さな声と小さなリアクションだったけど、確かに女の子の口元はゆるんだんだ。

「本当に!よかったぁ!!」

待ちわびていたリアクションに私は過大に喜んじゃって、また女の子は後ずさりをしちゃった。

「よかったよかった!これで君も友達だね♪」

ごっちんはいちもの100%スマイルで女の子の家に入り込んでいった。

「あ!待ってください!勝手に!!」

女の子は慌ててごっちんを追いかけて、そんな二人を追って私たちも家の中に入ることにした。

669 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:39
「うっわぁ〜!すっごいすっごい!」

女の子の家は見たこともない機械でいっぱいだった。
きっと彼女の発明品なんだよね。

ごっちんはその一つ一つに驚いていて、コンちゃんは珍しそうに眺めていた。
美貴ちゃんは相変わらず無愛想な顔で突っ立っていて。

私はすっかり注意がそれてしまった三人の変わりに女の子のもとに向かった。


「すごいね?これ全部あなたが作ったの?」
「あ!そこ踏まないで下さい!!」

女の子は私の足元を指差した。
私が踏んじゃった床には、数字が書かれていてそのわきにいくつもの計算式が書かれていた。

「あ、ごめんなさい」

女の子は私が踏んじゃって少し消えかかった計算式の修復に取り掛かった。
まるで何かにとりつかれたように床にしがみついて数字を書きなぐる。
よく、天才って人目を気にしないって言うけど、今目の前にいる人はきっとそういうたぐいの人なんだって思った。


「あ、あの・・・ごめんね?」
「だから、いやだったんです」
「ごめんなさい・・・」


頭を下げたら女の子の書いた数字が見えた。

670 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:41
「なんの計算?」
「・・・友達を探しているんです」

「友達?」
「約数を足し合わせるとお互いの数になる数字です」

「???」

私には、よくわかんないけど、
どうやら女の子は膨大な数の中から奇跡的に巡り合えるペアを探しているみたいだった。

「えっと・・・」

「踏まないで下さい。
 そこには、196724と202444という、
 おととい発見したばかりの、22番目の数があるんです」


「ごめん・・・」


床に書かれた一つ一つを愛しそうに見つめる女の子の目はとても輝いていた。


「ばっかじゃないの?」


私たちのやりとりを、見ていた美貴ちゃんが女の子の持っていた棒を取り上げた。

「友達ってのは、下向いてたって見つかんないよ?」
「あ!」

美貴ちゃんは女の子が書いた数字の上に立っていて、それに気づいた女の子の表情が強張った。

「そこ!どいてください!!」
「あんたさ、そんなことしてて楽しいの?」

「はい」
「人間の友達とかいる?」

「・・・」
「聞いてんだけど?」

「いません。でも、私には数字があります」
「は?ばっかじゃないの?」

「バカじゃないです。数字は私にすばらしい世界を教えてくれます」
「ったく!!」


美貴ちゃんは女の子から棒を奪い取って、床に書かれた数字を足でかき消した。


「何するんですか!!」


女の子が上げた大声にコンちゃんやごっちんも気がついた。
671 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:42
「友達ってのは、目と目を見て話し合うからできるの!
 こんな下ばっかり見てたら一生友達なんてできないよ!」
「・・・だったら、友達なんて・・・」


女の子が言いかけたところに、ごっちんが顔を出した。


「わぁ!!」


ごっちんの唐突な行動に女の子は後ろに倒れた。

「はははっ。ごめんごめん。ミキティだめだよ。この子はゴトーの友達だよ?」


ごっちんは100%スマイルで女の子に手を差し出した。



ごっちんの笑顔には何か不思議な力があるんだ。
人懐っこくて優しくて暖かくて・・・


だから、女の子は手を握り返したんだ。


672 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:43


「あは?これで決まりだね?」


ごっちんの言葉に女の子は慌てて手を離した。

「ち、違います!!私は一緒には行きません!!
 第一、私は弱いしそんな、魔物や敵となんて戦えません!!」

ごっちんは困ったって顔になったけど、すぐまた100%スマイルに戻った。


「大丈夫だよ。ゴトーが戦っちゃうからさ?」
「そういう問題じゃないです!!私は、役には立てませんから!!」
「ん〜・・・」


女の子の前にごっちんの変わりにコンちゃんが立った。


「この霊玉は、玄武の巫女があなたに与えた物です。
 霊玉の持ち主は本来、転生した剣士に与えられます。
 でも、私がこうして生き続けているから、
 この『智』の霊玉の持ち主は玄武の巫女が見定めた相手に与えられたんです。
 あなたは玄武の巫女が見定めた相手なんです」


「そんなこと言われても・・・」


「玄武の巫女が誤った選択をするはずがないんです。あなたは・・・」


「やめてください!!そんなこと言われても困ります!!」


女の子がコンちゃんを拒絶して後ずさりした時だった。


673 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:45


『ドォォォォン』


ものすごい爆音とともに、女の子の家の扉が爆発した。


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」
「大丈夫だよ」


慌てふためき錯乱する女の子を私がつかまえた。


「そいつが新たな玄武の剣士か?」
「デネブ!」


コンちゃんが剣を向けた。


「哀れなコギツネめ。300年もの思いにすがるとはな?
 そこにいる分身も滑稽だ。貴様らが思うほど人間は強くは無い!」


「弱いから強くなれるんだよ」


美貴ちゃんだった。
デネブを嘲笑するようにそう呟くと、美貴ちゃんは私たちの前に立った。



「あんたが誰だか知んないし、こいつが剣士になるとかなんないとか、そんなの美貴には関係ない。
 でも、そこにいるキツネは哀れなんかじゃないし、あゆみだって滑稽じゃない!!
 人間は弱いよ。だけど、弱さを知っているから強くなれるんだよ!!」


674 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:46

美貴ちゃんはデネブに銃を向けた。

「トルネードショット!!」

美貴ちゃんの銃弾がデネブめがけて走った。

「二度も同じ攻撃にやられるか!!」

デネブは美貴ちゃんの銃弾を素手で捕まえた。

「なんで・・・」

美貴ちゃんが信じられないって感じで宙をにらんだ。

「決壊です!!」

コンちゃんが異変に気がついた。
デネブは扉を爆破させた時に決壊を築いていたんだ。

「くっそ。どうすれば、決壊が破れるんだよ!」

美貴ちゃんがコンちゃんに指示を仰ぐ。
コンちゃんは本をめくって打開策を探すんだけど・・・

「無駄だ」

デネブは嘲笑いながら、次の攻撃態勢に入った。

「立ち直れぬくらいの恐怖を味あわせてやろう。ブラックホール!!」

ものすごい疾風と同時に辺りが闇に支配されていく。


675 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:48
「う、うわぁぁぁぁ!!」

闇の中から、魔物たちが現れたのを見て、女の子が泣きわめく。

「だ、大丈夫だよ」

女の子にはそう言うものの、私も魔物に半泣き状態・・・

「トルネードショット!!」

美貴ちゃんの姿は見えなかったけど、銃声が何度も闇夜にとどろいた。

「大丈夫だよ。こいつら全部幻」

ごっちんの声。

「そのようです。大丈夫です。
 この魔物たちは危害を加えたりはしません。
 とにかくこの闇から逃れる方法、決壊を破る方法を考えましょう!」

コンちゃんの冷静な声に少しだけ自分の心を整える。


「きゃぁぁぁぁ!!」


たとえ幻だとしても、魔物たちの襲来は女の子に十分すぎる恐怖を与える。
女の子は床に落ちていた短剣を拾うと、それを振り回した。


「待って!」


闇の中で剣を振り回すなんて、危険だから、慌てて私が止めに入った。


「うっ・・・」


女の子が振り回した剣は私の右腕をかすめた。
少しかすっただけだったけど、血が女の子の顔に飛び散った。


「きゃ、きゃぁぁぁぁぁ!!!!」


顔についた鮮血に女の子の心はさらにかき乱される。


「大丈夫だから!!」
「来ないで、来ないでぇぇ!!!」


錯乱した女の子は私の左足に短剣を突き刺した。


「うっ・・・」


激しい痛みに襲われて私はその場にうずくまった。


「やだ、やだ・・・やだぁぁぁぁ!!!!」


女の子の心は完全に壊れてしまったみたいだった。

676 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:49
「わかりました。この決壊は磁場が共鳴してできているんです」

コンちゃんが決壊の謎を探り当てたみたい。

「磁場ってなんだよ!」

美貴ちゃんの怒声が響く。

「この部屋にある機械が強力な磁界を作り出しているんです」
「だから!つまりどうすればいいんだよ!!」

「この部屋の機械を壊しましょう!」
「なるほどね。みんな伏せて!」

美貴ちゃんが銃を構える。


「トルネードクラッシュ!!」


美貴ちゃんの連射が始まった。
360°四方八方に美貴ちゃんの銃弾が走る。


「いやぁぁぁ!!!」


美貴ちゃんの銃声に女の子の恐怖が限界を超えた。


「伏せなきゃ!!」


私は力を振り絞って女の子を床に伏せさせようと試みた。


「きゃぁぁぁ!!」
「うっ・・・」


お腹に鈍い痛みを覚えた。
女の子が私の腹部に剣を刺したんだ。
私はそのまま女の子と一緒に床に倒れた。

677 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:50
美貴ちゃんのおかげで闇が消えた。
消えた後にはもうデネブはいなかった。
デネブの狙いは、女の子の心を壊すことだから、目的は果たされたんだ。


「あゆみ・・・あゆみ!!」


女の子の隣で血まみれになって倒れている私に美貴ちゃんが気がついた。


「な、どういうことだよ!!」


短剣を持って震えている女の子を美貴ちゃんが問い詰める。


「ミキティ待って!」


ごっちんが興奮する美貴ちゃんを抑える。


「柴田さん!」


コンちゃんが私の傷の具合を見る。


「まずいです。早く医者に連れて行きましょう!!」


コンちゃんの言葉に美貴ちゃんがうつむいた。


「この町に医者はいない・・・大人はいないんだ・・・」
「そんな・・・私が作ったクルドの秘薬ももう無いのに・・・とにかく」


薄れゆく意識の中で、コンちゃんと美貴ちゃんの声が聞こえていた。
678 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:51
「ん・・・」
「あゆみ!」

次に目を覚ました時、目の前には美貴ちゃんがいた。

「私・・・うっ・・・」
「まだ、傷がふさがってないから」

「ここは?」
「美貴の家」

「あ!女の子は!!」
「まだ無理だよ!」

起き上がろうとした私は美貴ちゃんに布団へと戻らされた。

「コンコンが一緒にいる。ごっちんは保田さんって人を迎えに行った」
「保田さん?」

「その怪我、見てあげられる医者がこの町にはいないんだ。
 薬を塗ったけど、結構深く刺されたみたいだし」
「大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないよ!・・・ごめん。美貴が離れたりしたから」
「ううん。違うよ。私って間が悪いんだ。
 旅にきてからも、たくさん怪我したし。これくらい平気だよ」

美貴ちゃんはちょっと苦笑してから私の手を握り締めた。


「弱みみせてよ。もっと、頼ってよ」


「・・・でも、本当に大丈夫だから。あの女の子・・・」
「あいつのことは、気にしなくていいって」

「でも、怖い思いさせちゃったし」
「あゆみのせいじゃないでしょ?」

「でもさ」
「とにかく、今は休むこと!」

「・・・でもさ」
「わかった。美貴が様子を見に行ってくるから。」

「一緒に連れて行って?」
「ダメだよ!」

「お願い!」
「ダメ!」


「・・・わかった」


美貴ちゃんは、私の頭を軽く撫でると部屋を出て行った。

679 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:53
「お〜い?」
「あ、藤本さん」

戦闘のせいで、めちゃくちゃにされた女の子の家からコンちゃんが出てきた。

「柴田さんは?」
「うん。目が覚めた。あいつのこと心配してるから、美貴が様子を見に来た」

「そうですか。よかった」
「で?あいつは?」

「心を閉ざしてしまっています」

うつむくコンちゃんの肩を叩いて美貴ちゃんは女の子のもとに向かった。

「また、数字かよ」

女の子が床に書いている数字を美貴ちゃんは足で消した。

「あ・・・」
「お前さ、こんなんじゃ、一生友達できないよ?」

「いりませんから」
「あっそ」

「あなたたちが来たおかげで家がめちゃくちゃです」
「あのな!家なんていくらだって片付くけど、あゆみの怪我は!」


「美貴ちゃん!」


やっぱり気になって美貴ちゃんの家から飛び出しちゃった私。

「あゆみ!」
「ダメだよ、強く言ったら」

「なんで来たんだよ」
「心配だったから」

女の子は私の怪我を心配そうに見つめていた。

「あ、大丈夫だよ。本当に」
「でも・・・」

「こっちに来てからたくさん怪我したし。
 それに・・・私ってちょっとやそっとじゃ死なないんだ」


分身だからね・・・
私の言葉に、コンちゃんと美貴ちゃんが顔を伏せた。

680 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:55


「不死身の身体、最強の力、私がいただく!!」


私たちの一瞬の隙を見計らって、またしても刺客が現れた。


「リゲル!!」
「貴様の力はこのリゲルがいただく!!」


リゲルは私の背後に回りこむと私の手をつかんだ。

「放して!!」
「あゆみ!!」

美貴ちゃんが銃を向けたんだけど、私の背後にいるリゲルへの攻撃はできない。

「うっ・・・」

お腹の傷が開いたみたいで、私の服が赤く染まっていく。


「柴田さん!」
「あゆみ!!」


リゲルは手出しができない美貴ちゃんとコンちゃんを小気味よく見下ろした。


「やめてください!!!」
「なに・・・」


リゲルの背中を刃が襲った。


「放せ!放せ!!」
「小娘がぁぁぁ!!!」


女の子が短剣でリゲルの背中を刺したんだ。
逆上したリゲルは女の子に剣を向けた。

681 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:56


「きゃあぁぁぁぁ!!!」


目をつぶる女の子。


「死ねぇぇぇぇぇ!!!」


振り下ろされる剣。


「うっ・・・・・・・・」


そして鮮血が飛び散った。


「コンコン!!!」


それは、女の子のじゃなくて、コンちゃんの血。
一瞬のうちに助けに入ったコンちゃんの背中にリゲルの刃が振り下ろされたんだ。


「いやぁぁぁぁぁ!!!」


女の子の悲鳴が天に響いた。

682 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:58
その時、女の子の悲鳴に呼応するように、天に円陣が描かれた。
そして・・・

ペガサス、ドラゴン、グリフォンが現れた。


「覚醒したか」


3体を見たリゲルは姿を消した。


「いやぁぁぁぁ!!!」


女の子は、3体の聖獣に恐れをなして泣き喚く。
それに呼応するように、聖獣たちは暴れ始めた。


「落ち着いて・・・あなたの味方です」


コンちゃんの言葉は女の子の耳には届いていないみたいだった。

「落ち着いて!」

私も必死に女の子を落ち着かせようと手を握ろうとしたんだけど、それも一方通行にすり抜けられる。

「くっそ!」

美貴ちゃんが見かねて聖獣たちに獣を向けた。


「トルネードショット!!」
「藤本さんダメ!!」


美貴ちゃんの攻撃に気がついてコンちゃんが立ちはだかった。
そして、銃弾はコンちゃんを貫いた。


「コンコン!!」
「聖獣に危害を加えれば、その負荷は彼女にかかります」

「だからって!」
「今は、彼女を落ち着かせ・・・」


コンちゃんはそのまま意識を失った。

683 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 01:59
「コンコン!くっそぉぉぉ!!」

美貴ちゃんは、聖獣をよけながら女の子のもとにたどり着いた。

「お前、いい加減にしろよ!!」

美貴ちゃんが女の子の肩をゆさぶる。


「来ないでぇぇぇ!!」


女の子の悲鳴に、聖獣が反応して美貴ちゃんを襲おうとする。

「美貴ちゃん後ろ!!」


美貴ちゃんの背後をグリフォンが襲おうとした時だった。
私たちの視界が緑の光で包まれる。

全ての動きが封じられ、でも記憶だけは鮮明で・・・
一筋の強い光の中に何者かが現れた。


私は、体中が熱くなってだんだんと意識が薄らいでいった。

684 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:00
「こんにちは?」


光の中から現れたのは・・・


「は?亀?」


美貴ちゃんが亀を見て首をかしげる。


「玄武の巫女です」


優しいオーラで辺りが包み込まれる。

「あゆみ!」

意識を失った私のもとに美貴ちゃんが駆け寄る。

「大丈夫。一時的に眠らせただけです」

玄武の巫女はそう告げると、私の身体を光で包んだ。
光に包まれて、私の身体が宙に浮いた。

「これで、大丈夫」

身体が地面に戻る前に、美貴ちゃんが私を抱きかかえた。

「あゆみ?」
「柴田さんの怪我は全て回復させました。彼女のこと、よろしくお願いします」

美貴ちゃんは黙って、うなずいた。


「戻りなさい!」


巫女のしっかりとした強い口調に、聖獣たちが天へと戻っていった。
それから、巫女は女の子に語りかけた。


「怖さは弱さではありません。
 あなたにはあなたの強さがあります。
       玄武の霊玉をお願いします」


「む、無理です!コンコンを助けてください!!」
「もう時は過ぎたのです。あなたが新たな剣士です」

「コンコンを!」
「それはできません」

巫女の力強い言葉に女の子は力なく膝をついた。


「アトランティスでお待ちしています」


そして、巫女は姿を消した。

685 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:01
「コンコン!!」

女の子がコンちゃんに泣きつく。

「コンコン!!目を覚まして!!」

コンちゃんの小さな身体は真っ赤な血で染まっていた。

「ん・・・」
「あゆみ!?」

美貴ちゃんの腕の中で目を覚ました私も、コンちゃんのもとに駆け寄った。

「コンちゃん!」
「コンコン!!」

私たちの何度目かの呼びかけに、コンちゃんの目がようやく開いた。

「・・・柴田さん」
「コンちゃん!!保田さんが来るまで頑張って!!」

私の言葉にコンちゃんは首を振った。

「私の役目は終わりました」
「そんな!そんな・・・まだ終わってません!!私には無理です!!」

女の子がコンちゃんにすがるように泣きつく。


「あなたは、もう立派な剣士です。
 聖獣たちが現れたのがその証拠」
「でも!」

「心はこれから強くなります。
 そうすれば、聖獣たちをコントロールできるようになります」
「無理です!!」


「大丈夫。霊玉をお願いします」


コンちゃんが差し出した霊玉は、女の子の手に確実に受け継がれた。


「コンコン・・・」


コンちゃんは、安心したのかようやく笑顔を見せた。
その笑顔は、まるで天使のように光に満ちたもので、
私たちはその笑顔に一瞬時を忘れた。

686 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:02
「柴田さん?」


コンちゃんは最後の力をふりしぼって身体を起こした。


「コンちゃん!」


起き上がったコンちゃんを私が支えた。


「辛い思いをさせてしまってごめんなさい」
「そんなの、そんなのいいから!!だから生きて!!」

「もう、十分生きました」
「でも!コンちゃんが会いたい相手は!!」

「会えましたよ?」
「でも!それは私じゃなくて、私の本体なんでしょ!!」

「あなたに、会えてよかった」
「ダメ!ダメだよ!!もうすぐ保田さんが来るから!!」


「私は、あなたが大好きです」


「コンちゃん!!」

687 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:03
「藤本さん?」
「うん」

美貴ちゃんは、冷静にコンちゃんと向き合っていた。

「あゆみは、もとには戻させないよ?」

美貴ちゃんの決意に満ちた強い言葉にコンちゃんは微笑んだ。

「柴田さんのこと」
「美貴が守る。それから・・・そいつのことも、ちゃんと面倒見てやるよ」

美貴ちゃんの言葉にコンちゃんはまた微笑んで手を差し伸べた。
差し出した手を美貴ちゃんはしっかりと握り締めた。


「後は、よろしくお願いします」


つながれた手を離すと、コンちゃんの身体がだんだんと透明になり始めた。

688 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:04


「コンちゃんダメ!!」


消えようとする身体を私はつなぎとめようと必死にコンちゃんを抱き寄せた。


「柴田さん?」
「コンちゃん!!」

「私は・・・」
「コンちゃん!ダメ!!ダメだよ!!」

「私は・・・」
「ダメだよ!!!好きな人に会うんでしょ!!!
 もうすぐ保田さん来るから!頑張ってよ!!」


「幸せでした」


その言葉に、少し身体を離してコンちゃんの顔を覗き込んだ。
コンちゃんは、幸福に満ちた笑みを私に返してくれた。


「あなたの・・・笑顔・・・見せて・・・ください・・・」


涙でぐちゃぐちゃだったけど・・・
きっと笑顔なんて言えたものじゃなかったと思うけど・・・
それでも私は、コンちゃんに笑顔を返した。


「ありがとう」


それが、コンちゃんの最後の言葉だった。
その言葉が宙に吸い込まれるように、コンちゃんの身体も空気と一体となっていった。


「コンちゃん!!!」


抱き寄せようとした腕は、そのまま自分の身体を抱いただけになった。


「コンコン・・・」
「やだぁぁぁぁ!!!」


それが、コンちゃんとの永遠の別れになったんだ。


689 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:05
昔々、大好きな大好きな人のために、キツネになった人間がいました。


大好きな大好きな人のために、キツネは長い間生き続けました。


大好きな大好きな人に再び会える日を祈って。


大好きな大好きな人に会うことは叶いませんでした。


でも、キツネは十分幸せでした。


だってキツネは、大好きな大好きな人を思って生きてこれたから。


だから、十分満たされていのです。


キツネは、最後まで。


最後の最後まで大好きな大好きな人を思い続けるのです。



コンコンキツネはだから幸せだったんだ・・・



690 名前:玄武の霊玉 投稿日:2006/04/16(日) 02:07
大切な仲間を失ったショックで、私はしばらくその場に泣き崩れていた。
でも、その隣で震えている女の子に気がついて立ち上がった。
立ち上がるとき、少しよろけた私を美貴ちゃんが優しく支えてくれて、だから少しだけ勇気がでたんだ。


「大丈夫だよ?」


自然とそんな言葉が出た私に女の子は首を振った。


「昔々・・・この国を救おうとしたお姫様がいました」


私は女の子の隣に座って話し始めた。
なんで、そんな言葉が出てきたのかはわからない。
でも、自然と次から次へと言葉がつながれた。


「お姫様は、8人の剣士と一緒に戦ったのです。
  剣士はみんな強くて、勇敢で。
 でも剣士の中に、とても臆病な剣士がいました。
 みんな強くて勇敢なのに、どうして自分はこんなに弱くて臆病なんだろう?
   臆病者の剣士さんはず〜っと悩んでいました」


私のゆったりとしたしゃべりかたに、女の子の顔が少しずつ上がってきた。
美貴ちゃんは少し距離を置いた所に腰をかけて、私たちのことを見つめていた。


「臆病者は剣士にはなれないと思う?」


私の問いかけに、女の子はただ黙って私の顔を見つめた。
私は少しだけ微笑みかけて、立ち上がった。


「その霊玉が必ずあなたを証明してくれるよ」


差し伸べた私の手を、女の子は恐る恐る握り締めた。


「私・・・紺野あさ美です」
「私は柴田あゆみ。彼女は藤本美貴ちゃんだよ。
   よろしく!紺野ちゃん!」



一つの物語が終わって、一つの物語が始まったんだ・・・


691 名前:k・y 投稿日:2006/04/16(日) 02:16
川σ_σ|| <新たな剣士さん誕生です。


This is 八剣士  NO.5 紺野あさ美
霊玉:智   タイプ:賢者
年齢:16  出身:ウエストタウン  
武器:クレバーソード(短剣) メディアブック(何でも載ってる辞書)
   *コンちゃんの武器です。
能力:知力に優れている。
その他info:聖獣を呼び出して戦うことができる。でも、今は臆病な剣士さん。
      数字がお友達のとっても賢い紺野ちゃんですが、剣士として覚醒す
      るのは・・・成長を見守ってあげてください!

トルネードクラッシュ:美貴ちゃんの攻撃。360°の銃乱射。
           周りの物全てを打ち抜きます!

聖獣:ペガサス、グリフォン、ドラゴン。紺野ちゃんが操ることができる聖獣。
   でも、今回は紺野ちゃんがコントロールしきれなくて暴れだしちゃいました・・・


今回は、別れと旅立ちです・・・
692 名前:レス 投稿日:2006/04/16(日) 02:20
>>666 :名無飼育 :2006/03/30(木) 03:31
  今回は梨華ちゃんたちは登場しませんでしたが、
  いかがでしたか?玄武の霊玉の重みが伝われば
  と思っています!
  玄武の巫女も一部登場でしたが・・・?
  次回は梨華ちゃん登場予定ですので!よろしくお願いします!

>>667 :名無飼育さん :2006/03/30(木) 14:33
  ついに、新しい剣士さんの登場です!
  智の霊玉が確実に新世代に受け継がれたわけですが・・・
  まだまだ、新米剣士さんです。
  これからの、臆病者の成長、見守ってください!
  次回もよろしくお願いします!!
693 名前:k・y 投稿日:2006/04/16(日) 02:27


今までコンコンを応援してくださった方々、ありがとうございました!
賢くて、勇敢なコギツネの活躍がみんなの心に残っていれば、うれしいです。
300年の思い、コンコンの魂は確実に新世代に受け継がれました。
まだまだ、弱くて臆病な彼女ですが、コンコンのように賢く勇敢な剣士に
なれるように・・・?成長を見守ってあげてください!
愛する人を思い続けた賢く勇敢な剣士がいたんです。


コンコンよ永遠なれ・・・


694 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/04/16(日) 17:21
更新お疲れ様です。

ふむ、出会いがあれば別れもある。
あの方にはそれを必ず受け継いでいただきたいですね。
次回更新待ってます。
695 名前:名無飼育 投稿日:2006/04/16(日) 19:35
新しい仲間登場ですね!
でも、さびしいです。
コンコンよ永遠なれ・・・ですね。

次回も待ってます!!
696 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/16(日) 21:23
うわっ、狐の名前にすっかり騙されてた。
作者さんすごいっすね。
697 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/17(月) 00:07
更新お疲れ様です
ほんとおもしろいなぁ
次回の更新も楽しみにしてますよ
698 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/17(月) 01:21
コンコン!!大好きだったっす!!
コギツネ伝説がよみがえります。

でも、別れがあるから、出会いもありなんですよね。
彼女の成長に期待します。
699 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:26
私たちが、一つの物語に決着をつけたいた頃、梨華ちゃんたちにも、ちょっとした事件が起きていた。

「吉澤さん・・いなくなった」

あの日、少しだけ食い違った歯車は、
修正するタイミングを逃したままで・・・
よっすぃはみんなの前から姿を消したんだ。

「どういうこと?」

呆然と立ち尽くす梨華ちゃん。
よっすぃが消えたことに気がついた愛ちゃんを矢口さんが問いただす。

「わからん。でも・・・」

愛ちゃんの手にはよっすぃの霊玉があった。

「霊玉を置いていくってことは、旅をやめるってことですよね」

愛ちゃんの言葉に梨華ちゃんも矢口さんも保田さんも言葉を返さなかった。
愛ちゃんは霊玉を握り締めると梨華ちゃんの顔を見つめた。
青ざめて、強張った表情に愛ちゃんの心が締め付けられる。

「吉澤さんは、始めっからいい加減やったし!
 こうして霊玉があるわけだから、白虎は呼び出せます!
 吉澤さんなんかいなくったって、姫のことは私が守ります!」

愛ちゃんは、自分の心の動揺を隠すように早口で梨華ちゃんを励まそうとした。
だから、そんな気持ちに答えるように梨華ちゃんも笑顔を返した。

「うん。そうだよね!よっすぃなんか・・・いなくっても平気だよ!!」

梨華ちゃんの笑顔はいつもの輝きはなかったけど、でも必死に動揺を隠そうとして繕って見せたんだ。
矢口さんも保田さんもそれに気がついていたから、みんなは何も言わずに歩き始めようとした時だった。

700 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:28
「人間・・・殺す!」

森の中から不気味な声が聞こえてきた。

「誰だ!」

矢口さんがロッドを構えて梨華ちゃんを背後に立たせた。

「人間・・・災いもたらす!」
「姿を見せろ!!」

矢口さんの声は森に吸収されただけで、相手の姿は全く見当たらなかった。

「姿を見せろ!!卑怯だぞ!!」
「森に災いもたらす!殺す!!」

そして、次の瞬間に弓矢が飛んできた。

「伏せて!」

矢口さんの指示でみんなが地面に身を伏せる。

「姫!!お怪我は?」
「大丈夫」
「この森は奇怪です。先を急ぎましょう」
「うん」

愛ちゃんに言われて梨華ちゃんが立ち上がろうとした時だった、

「危ない!」

無数の刃が梨華ちゃんたちめがけて飛んできた。
愛ちゃんと、矢口さん、保田さんでなんとかしのぐものの、次から次へと弓矢が飛んできた。


「姿を見せろよ!!」


矢口さんの声はただ空しく森に吸い込まれただけだった。

「とにかく、ここから移動する手段を考えよう!」

保田さんが逃げ場所を探す。

「無理です!八方から攻撃されていて、身動きがとれません!」

愛ちゃんの声が響いた。

701 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:29


「プロミス!!」


天から響いた一つの声に弓矢の攻撃が止まった。



「人間!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!人間殺す!!」



幾重にも重なる怒涛の声に梨華ちゃんたちは怯えた。
それは、怒りと悲しみに満ち溢れた闇そのもの・・・


「やめて!!!!」


恐怖に耐え切れなくなった梨華ちゃんが森に向かって声をあげた。



「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



突然聞こえた声に、梨華ちゃんたちが空を見上げた。


「ごっちん!!」


ごっちんが上空で森に向かって叫んだんだ。
ごっちんのわめきに応じて、不気味な声は消えた。

702 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:30
ごっちんは、ハリスホークにつかまってゆっくりとみんなの下に降りた。

地に足をつけたごっちんの表情には、
いつもの100%スマイルはなく、こみ上げてくる何かと格闘しているようだった。

それから、みんなに一瞬背を向けて深く息を吸うと、また100%スマイルで振り向いた。


「大丈夫?」


ごっちんの笑顔は、いつものように人懐っこくて、だから今目の前で起きた恐怖を忘れた。


「ありがとう。ごっちん!」


梨華ちゃんが差し出した手をごっちんは握らずに、空を仰いだ。


「ごめんね」
「ごっちん?どういう意味?」


ごっちんは、梨華ちゃんの問いかけに応じることなく深く深呼吸をすると、また笑顔を見せた。


また、ごっちんの笑顔に言葉を失いかけたみんなだったけど、愛ちゃんがごっちんに詰め寄った。

703 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:31
「後藤さん!説明してください!」
「んあ?」

「この森はおかしい!それに、あなたの行動も!!」
「ん〜・・・」

「説明してください!!」

ごっちんは笑顔を崩すことなく愛ちゃんと向き合っていた。

「後藤さん!」

言葉を返そうとしないごっちんに愛ちゃんの声が大きくなった。

「愛ちゃんやめな?」

愛ちゃんを制して矢口さんが前に出た。


「言いたくないこともあるよ」
「矢口さん・・・」
「聞かなくていいこともある」


矢口さんは愛ちゃんに厳しい眼差しを向けた。

「やぐっつぁんありがとう♪」

自分のことで空気が固まりかけたのに、ごっちんは相変わらずの笑顔だった。

「ごっちんは、私たちの大切な仲間だよ。それでいいじゃん」

不服そうな愛ちゃんに梨華ちゃんがそう言った。
梨華ちゃんの言葉に愛ちゃんは黙ってうなずくと、ごっちんを見つめた。
ごっちんの笑顔は相変わらずで、愛ちゃんも呆れたってかんじで笑顔になった。


「それより、ごっちんなんで助けに来てくれたの?」

梨華ちゃんの質問に思い出したようにごっちんが口を開いた。

「あ?柴ちゃんが怪我しちゃったんだ」
「え!!」

梨華ちゃんが思わず声を上げた。

「コンコンの薬がもうないから、結構重症なの」
「柴ちゃん大丈夫なの!!」

問い詰める梨華ちゃんに、ごっちんは笑顔を見せた。

「大丈夫!みんなついてるから」
「みんな?コンコンだけじゃないの?」

「うん。仲間ができたんだ」
「見つかったんだ!新しい霊玉の持ち主さん!」

「うん。それと、すっごく強い味方」
「すっごく強い味方?」

「うん!とにかく、早く一緒に来て!!」


ごっちんに言われてみんなはその場から駆け出した。

704 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:34
「おい!約束通り戻ってきたぞ!!姿を見せろよ!!」

その頃、よっすぃはまだ森にいたんだ。
あの時、ドリーブから梨華ちゃんを救い出した場所に。

「おい!!」

よっすぃは、あの時ドリーブと駆け引きをしたんだ。
自分の心を預けて、梨華ちゃんの心を返すっていう駆け引き。

「戻ってきたか?」
「あんまり嫌な奴になりたくないんでね」
「ほう?気に入られたいか?」
「うっせえ!さっさと返せよ!!」
「そうはいかない」
「とにかく姿見せろ!!」」

よっすぃの呼びかけに応じて姿を現したのは・・・


「お前・・・」
「ドリーブだよ」


それは、予想外の人物で、よっすぃはその場に呆然と立ち尽くした。

「なんでだよ!あんた神様じゃないのかよ!!」
「神様や」


そこに現れたのは、あいぼん。


「神様がなんでこんなことすんだよ!」
「ここからの戦いは、ほんまに辛い戦いになる。
 剣士の心が折れたら終わりなんや」

あいぼんは神妙な面持ちでよっすぃに向き合った。

「よっすぃは、剣士の中でも特別な剣士なんや?」
「なんだよそれ」

「姫を守りたいんやろ?せやったら、うちから心を取り戻してみ?」
「うっぜえ。いいよ。あんたと勝負してやるよ!!」

よっすぃは剣を抜こうとした。

「ちょ!ちょっと待ち!!」
「なんだよ!」

「暴力はあかん」
「なんなんだよ!」

「うちは神様や。平和主義や」
「なんなんだよ!!」

「とりあえず、お休みや?」
「は?」


首をかしげたよっすぃの視界がだんだんとかすんでいった。
よっすぃは再び悪夢の世界に舞い戻ったんだ。

705 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:34
「うぅぅ・・・」

真っ暗闇の中に迷い込んだよっすぃ。

「またかよ」

冷静に立ち上がると辺りを見渡した。
見渡す限り闇の世界。
闇の中に身を置いて、よっすぃは少しだけ微笑んだ。

「悪いけど、闇には慣れてるよ。
 お日様の下歩ける生活なんてしてこなかったからね?」

よっすぃは、イーストタウンでの暮らしを思い出したんだ。


「光を手にしなければ闇は続く」


暗闇からあいぼんの声が響いた。


「歩け。光を求めて歩くんや?」


あいぼんの言葉によっすぃは黙って歩み始めた。

706 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:36
私たちはその頃、紺野ちゃんの家の片づけをしていた。
デネブ、リゲルの攻撃のせいでせっかくの発明品はボロボロになっちゃってた。

「せっかく、作ったのにね・・・」
「機械は、部品があればいつでも作れますから。それより・・・」

紺野ちゃんにとっては、機械が壊れたことよりも、
床に書かれていた数字が消えちゃったことの方が悲しい出来事だったみたい。

「友達は、床になんかいないっつうの」

名残惜しそうに床を見つめる紺野ちゃんを美貴ちゃんが時々嗜めた。


「あ・・・これ・・・」


紺野ちゃんの部屋の片隅に、見覚えのある機械を見つけた。

「あ、それは時空旅行機です」
「うん。私たち、これに乗ってこっちに来たんだ」


向こうの世界を思い出した。


707 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:37
「私の父は大発明家だったんです。
 だから、国王にもこの機械を献上したんです」
「そうなんだ・・・」

私の心の中で何かが揺れ動いた。

「それって、使えるの?」

私の幽かな心の動きに美貴ちゃんが気がついたみたい。

「はい。使えるはずです。でも、私は使ったことないんで・・・」
「じゃあ、使ってみなよ」

「え?」
「せっかくだし。試してみたら?」

話している相手は紺野ちゃんなのに、美貴ちゃんは私のことを見つめていた。


「美貴ちゃん私!」


断ろうとしたんだけど、美貴ちゃんの真っ直ぐな真剣な眼差しに何も言えなくなった。
美貴ちゃんは、私の心のずっとずっと深い部分を見てるんだって・・・
そんな気がした。

私の気持ち全部見透かして、それを全部受け止めようとしてるんだって・・・
そんな気がしたから・・・


だから何もいえなかったんだ。


それから、美貴ちゃんは私に近づいて、優しく抱きしめてくれた。

「行きたいんでしょ?」
「・・・でも、もう私は・・・」

「でも、行きたいんでしょ?」
「・・・」


返事の代わりにうなずいた。

708 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:40
「あのさ・・・」

美貴ちゃんは紺野ちゃんに事情を説明しようとした。

「はい」

美貴ちゃんの威圧感に紺野ちゃんは少し後ずさりをした。

紺野ちゃんには自分でちゃんと伝えたいって思って、私は美貴ちゃんの手をつかんだ。
美貴ちゃんは少しだけ強く手を握り返すと何も言わずに手を離して、私たちから距離をおいてくれた。


「昔々、この国で大きな戦いがありました。
 その時この国を救ったのが姫と8人の剣士。
 国は平和になったけど、その時魔物が姫に呪いをかけました。

 姫はその呪いのおかげで、二度とこの世界に転生できないようになりました。
 その時、姫の傍に仕えていた剣士の一人が、姫を永遠に守るために、玄武の巫女と契約を交わしました。
 
 忠の霊玉を持った剣士さん。
 その剣士は、とっても忠実な剣士でした。
 だから、たとえこの世界に姫が転生できなくても、
 姫をずっと守りたいって思いました。

 姫を守るのが、忠実に使えるのがその剣士の役目だから・・・
 だから玄武の巫女にお願いしました。
 自分の分身を姫の傍に使わせるっていう。

 どの世界に、どの時代に転生しても必ず姫を傍で見守るために、
 分身をつくったの・・・

 分身は・・・
 ちゃんと姫の一番近い存在でずっとずっと姫と一緒で・・・それで・・・」


自然に涙が溢れ出して、言葉がつまった。


泣き出すのは、いつだって梨華ちゃんの役目で、それを慰めるのが私の役目だったのに・・・
泣き出して言葉が詰まるなんて感覚、初めてだった。


「分身はね・・・消えちゃうの・・・
  分身だったから、もう向こうの世界の記憶なんて無くなっちゃって・・・」


「え?」


感情が高ぶりすぎて私の言葉は滅裂になっちゃって、紺野ちゃんは戸惑いながらも聞き返した。


「ごめん・・・あのね・・・」


高ぶりすぎた感情を制御する術は私には残されてなかった。

伝えたい言葉がのどにひっかかって出てこない。
よく、梨華ちゃんが泣いてめちゃくちゃなことを言ってたけど、
             今はめちゃくちゃな言葉すら出てこないよ・・・
709 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:42
言葉を必死に探していたら美貴ちゃんに手を握られた。
美貴ちゃんは、私の頭を優しく撫でてから、真っ直ぐに紺野ちゃんと向き合った。

「あんたは、コンコンの代わりに剣士になった。
 時代は変わるんだ。でも、変えられないこともある。
 向こうの世界からはもうあゆみの記憶は消されているかもしれない。
 でも、あゆみがここにいることは事実だし、
 あゆみが向こうの世界にいたことも事実なんだ。
 だから、ちょっと里帰りさせてあげてくんない?」


紺野ちゃんは頭がいいから、分身が私のことだってわかったみたい。
紺野ちゃんは私の顔をじっと見つめて、それから美貴ちゃんの顔を見つめた。


「頼む」


美貴ちゃんは紺野ちゃんに深々と頭を下げた。
紺野ちゃんは少し黙ってうつむいた後に、機械へ向かっていった。

「私の父は、偉大な発明家でした。
 時空旅行機は父の一番の発明品です。
 こっちは、調整不良で国王のもとへは献上しなかったんです。
 でも、装置自体は同じです。
 だから、きっともう一つの世界にも行けると思います。

 一緒に行ってもいいですか?」


女の子は機械の点検をしながら独り言のようにつぶやいた。


「ありがとう」


後ろを向いている女の子に向かって私は頭を下げた。

710 名前:暗闇 投稿日:2006/05/31(水) 00:43
「美貴は一緒に行かないよ?」

見上げたら美貴ちゃんは、
まだ、頬に残った涙の跡を手でぬぐってくれて、それから優しく私に微笑んでくれた。


「好きなやつ、いたんでしょ?」


その言葉に、ちょっと苦笑した。


「告ってふられて、戻ってきな。ここで待ってるから」


その言葉は、美貴ちゃんの優しさがいっぱい詰まった言葉だってわかったから、私は黙ってうなずいた。



そして、私は紺野ちゃんと一緒にもとの世界に戻った・・・


711 名前:k・y 投稿日:2006/05/31(水) 00:52
川σ_σ|| <ご無沙汰です。

プロミス:ごっちんが交わす、森との契約。エルムだけに許された契約です。

712 名前:レス 投稿日:2006/05/31(水) 01:04
>>694 :通りすがりの者 さん
  更新ご無沙汰ですみません。
  別れがあって、旅立ちです。
  新米剣士さん?まだまだ剣士にも
  なれていない彼女ですが・・・
  これからも見守ってあげてください。

>>695 :名無飼育 さん
  コンコンはいなくなりましたが、
  これからも新しい剣士さんが
  引き継いでくれると思います。
  今回は梨華ちゃんたちも・・・
  次回もよろしくお願いします!
  
>>696 :名無飼育さん
  狐のコンコンは人間になりました♪
  コンコンの魂は必ず引き継がれますので。
  これからも楽しんでもらえるように、 
  頑張りたいと思います!
  次回もよろしくお願いします!!

>>697 :名無飼育さん
  今回は新たな物語への序章ってかんじです。
  ごっちんと謎の森の正体についても、
  おいおい明らかになります。
  一人一人の葛藤を感じてもらえればと。
  次回もよろしくお願いします!!

>>698 :名無飼育さん
  作者もコンコンは大好きでした。
  賢いコギツネさんが少しでもみなさんの
  心に残ってくれればうれしいです。
  そして、新たな剣士である彼女にも期待してください。
  次回もよろしくお願いします!

713 名前:k・y 投稿日:2006/05/31(水) 01:06
 
 更新がだいぶ遅れてしまいました!すみません!!
 コンコンの余韻に浸っているうちに・・・月日が・・・
 少しでも多くの方に楽しんでいただけるように、
 定期更新を心がけたいと思います!
 これからもよろしくお願いします!
 レスの方も、よろしくお願いします!!

714 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/05/31(水) 03:14
更新お疲れ様です。

なんとそんなものがありましたか。
これは次回が楽しみですね。
次回更新待ってます。
715 名前:名無飼育 投稿日:2006/05/31(水) 23:21
待ってました!!

よっすぃの行動が気になります。
次回も待ってますね!!
716 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/03(土) 01:39
柴ちゃんせつねぇ・・・
なんか、雰囲気が好きです。
頑張ってください!
717 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2006/06/18(日) 19:37
ごっちん何があったんだろう。。
それにしても、この作品の愛ちゃんはいいなぁ真っ直ぐで。
次回も楽しみにしています。
718 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:44
私たちが旅立ってすぐ、紺野ちゃんの家に梨華ちゃんたちがやってきた。

「やっほー!!」

ごっちんが陽気に中に入ってきた。

「あれ?」

美貴ちゃんしかいないことに、ごっちんは首をかしげた。
振り向いた美貴ちゃんは相変わらずの無愛想な顔をごっちんに向けた。

「え!?」

美貴ちゃんの顔を見て、梨華ちゃんの胸が躍った。

「美貴ちゃん?」

美貴ちゃんは、梨華ちゃんの顔を一瞬見ると、ごっちんに視線を戻した。

「おせえよ」

もっと、早く戻ってきてくれればコンちゃんは・・・
そんな思いがこみ上げて、美貴ちゃんはそう呟いたんだ。

「失礼です!」

美貴ちゃんの態度に愛ちゃんが腹を立てた。

「美貴ちゃん・・・だよね?」
「あぁ。うん。そうだけど」
「すっごい!!すっごいすっごい!!
 新しい剣士さんって美貴ちゃんだったんだね!!」

興奮する梨華ちゃんに、美貴ちゃんは冷たく言い放った。

「美貴は剣士じゃないよ」
「え・・・?」

「じゃあ、何者?」

矢口さんの言葉に美貴ちゃんは静かに言葉を返した。


「美貴があゆみを守るんだ」


その言葉に、みんなの時間が止まった。

719 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:45
「柴田は?」

沈黙を破ったのは保田さん。

「あぁ、玄武の巫女って人が怪我は治してくれた。
         今は、向こうの世界に戻ってる」


「え!!!」


梨華ちゃんが思わず大きな声を上げた。

「なんで?なんでなんで!!」
「別に、すぐ戻ってくるよ」

興奮気味の梨華ちゃんに美貴ちゃんは冷たく言い放った。


そして、それ以上のことはみんなに話さずに、紺野ちゃんの家を出た。

720 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:46
久々に戻ったもとの世界。
でも、その世界から私の存在は抹消されたんだよね・・・


私はあの日旅立った時と同じ体育館にいた。

「ここが第一世界・・・」

紺野ちゃんは目にするもの全てが新鮮みたいで、目を丸くさせて少し興奮気味だった。


「久しぶりだな・・・」
「あ・・・」


私が来た理由は・・・だから紺野ちゃんは気持ちを合わせるように、興奮を隠してくれた。

「向こうの世界とは違うでしょ?」

それに気がついて、無理しなくていいよって合図。

「はい。あの!えっと・・・一人の方がいいですよね?」
「できれば・・・」

「じゃあ、私もこの町のことを調べたいし。
 待ち合わせにしましょう?えっと、いつまでがいいですか?」
「日暮れまでには戻るよ」

「いいんですか?もっと・・・」
「ううん。日暮れまでで!じゃあ、行くね?」


長くいれば、この世界から帰れなくなると思った。


だから、紺ちゃんにそう断言することで、自分の気持ちにけりをつけた。


そして、私は自分の家に向かった。

721 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:47
学校から二つ目の駅。
駅からはいつもは自転車。
でも、今はもう二度と歩くことがなくなる一つ一つの風景をかみ締めて私は歩いた。


駅前の本屋とCDショップ。
お小遣いをもらうと必ず行く店。
商店街の八百屋のおじさん。
クリーニング屋のおばさん。
帰り道には必ず挨拶をかわしたっけ。


商店街をぬけると公園がある。
小さい頃は毎日遊んだすべりだいやぶらんこ。
公園に少し立ち寄って、遊んでいる子供たちに自分の姿をかさねて。
それから、また立ち上がった。


住宅街をしばらく歩く。
橋本さんの家のブルドッグ。
今日は吠えないや。


そして、我が家が近づいてきた。


3時。
やっぱり、聞こえてきたお母さんのピアノ。
きっと小学生相手にレッスンをしてるんだね・・・


その音は懐かしくて、愛しくて・・・
自然に目頭が熱くなる。


これ以上前に進んだら・・・
私、この世界から戻れないかもしれない・・・


そう思って・・・その場所から走り去った。


722 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:48
時間だけが過ぎていった。


太陽が赤くなるまで私は公園のベンチに座り続けた。


今、この瞬間も全てが消えるんだよね・・・
私の存在が全てなくなるんだよね・・・


お母さんのことも、お父さんのことも、お兄ちゃんのことも・・・
全部全部・・・
落とせるだけ涙を落として。再び立ち上がった。


やっぱり、最後にお母さんの顔だけは見ておきたくなったから。


そう思って公園から再び家までダッシュ。


723 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:51
息を切らせて家の前に到着。


でも・・・


中に入ることはできないよね・・・
だって、お母さんの中で私の存在はもう消えてるんだもんね・・・


家の前で、立ち往生。


『ガチャ』


その音に心臓が飛び跳ねた。
玄関が開かれて、そしてお母さんが出てきたから。


「あ・・・」
「あら?なにか御用ですか?」


「・・・」


その言葉に、私は愕然とした。
お母さんにとって、私はもう見ず知らずの人なんだね・・・


「あの・・・」
「はい?」


「その・・・私・・・いつもピアノ聞かせてもらってて。
 それで、すっごくいいなって思ってて!!あの!!
            今までありがとうございました!!」


お母さんは不思議な顔をしてから、ニコっと微笑んでくれた。


「ありがとう。うちにもあなたみたいな女の子がいてくれたらよかったわ。
     そうしたら、ピアノを教えてあげられたのにね?」


お母さんの笑顔は、やわらかくて、あったかくて、やさしくて。


お母さんの声は、おだやかで、ここちよくて。


「よかったら、またいらして?ピアノを教えてあげるわよ?」


またお母さんは笑ってくれた。


その笑顔を見た瞬間、また、口の中が苦くなって、
目頭が熱くなって、のどのおくがじわってなって・・・


「ありがとうございます!!」


それだけいうのがやっとで、その場から走り去った。


どうやって、駅までたどり着いたのかわからない。
涙が落ちないように走って走って走って・・・

そして気がついたら駅にいたんだ・・・
724 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:53


もう・・・この世界に私はいない・・・



私は再び学校に戻った。
どうしても、最後に会いたい人がいたから。


私が使っていたはずの下駄箱には、別の名前のうわばきがあった。
やっぱり、もう存在しないんだね・・・


最後に、私は理科室に向かった。


「掃除してないんだ・・・」


掃除するのは私の役目だった。
瞳ちゃんはお掃除が苦手。

少しほこりがかって、実験器具が煩雑に扱われた理科室に、自分の存在を確認できた。


いつものように、ほうきで床を掃除して。
雑巾で机やイスを磨いて。
ビーカーや試験管を磨く。
薬品棚に薬品を戻して、もちろんラベリングも忘れずにして。
それから、準備室でやっぱりそのままにされてる瞳ちゃんのコーヒーカップを洗う。
725 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:54


「あなた・・・誰?」


瞳ちゃんだった。


「あ・・・あの・・・」
「なんか、わかんないけど・・・掃除してくれてありがとう!何年何組?」

「えっと・・・」
「・・・一年生?」


童顔ですか?


「あ・・・はい」
「そっか。また、掃除しにきてよ!」

「え?」
「って、そりゃ話がよすぎるか?
 ジュースくらいならおごるからさ!
 たまには掃除しにきてよ?おまけに!物理の補修しちゃう!!」


その言葉に思わず笑った。

そう言えば、一年生だった私に、瞳ちゃんは同じことを言ったんだ。
また、私の存在がここに残された。


「ね?」
「あの・・・」

「ん?」
「私・・・先生のことが好きです!!」


瞳ちゃんの顔に『?』が満開。
だよね。初対面の相手に告白されちゃね・・・


「ずっと、ずっと好きでした!!」


でも、瞳ちゃんはすぐになにかを理解してくれたみたい。


「ありがと。う〜ん・・・でも、あんたまだ一年でしょ?
 私ね?こうみえても、一応大人なんだよね?
 もう少しあんたが大人になったら考えてあげるわ」


冗談だったみたいで、瞳ちゃんは白い歯をにって見せて笑った。


「はい!」


726 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:55



もういい。




もういいんだ。




さよなら・・・私の居場所・・・



727 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 00:59
「柴ちゃんおかえり!!」
「え?!みんな!?」


第一世界から戻った紺野ちゃんの家には、みんなが待っていた。


「柴ちゃんずるいよ!!なんで一人で戻っちゃうの!?」


時空旅行機に乗り込んできて私を責める梨華ちゃん。
でも、このほうがらしくてよかった。
その分、いろんなこと考えなくてすむから。


「ごめんごめん!!ちょっと里帰り」
「そ〜れ〜か〜ら〜!!」
「え?」


梨華ちゃんの目が怖い・・・

「いつの間に知り合ったのよ!」
「え?」

「美貴ちゃんと!!」
「あ・・・ははは・・・」

「美貴ちゃん、あゆみを守る!とか宣言したんだから!」
「へ?へぇ・・・冗談うまいね?」

「本当に冗談なの?!」
「冗談冗談!!」

「柴ちゃん?!」
「ははは・・・それより!紹介します!!紺野あさ美ちゃんです!」

話題をそらして紺野ちゃんをみんなに紹介。

「コンコン人間に戻ったの?」

梨華ちゃんが紺野ちゃんを覗き込む。

「いや、違くてね」

それから、コンちゃんのことをみんなに説明した。
もちろん、私の話はできなかったんだけどね・・・

「コンコン・・・死んじゃったんですか?」

愛ちゃんの言葉に、みんながうつむく。
沈黙が支配しかけた時間を破ったのは紺野ちゃんだった。

「コンコンは!私の中に生きてます!!」
「じゃあ、あなたが新しいこんこんだね?!」

梨華ちゃんの言葉に紺野ちゃんはうつむいた。そうだよね。コンちゃんと一緒にされたら、困るよね・・・

「だから、紺野ちゃんはコンちゃんじゃなくてね・・・」


「はい!こんこんです!!」


私の言葉に紺ちゃんは決意に満ちた声をあげた。

みんなの注目が紺ちゃんに移ったから、私はさりげなくその場から離れた。


やっぱり、みんなといるの・・・辛いから。

728 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:01
紺ちゃんの家の外に出たら、扉のわきに美貴ちゃんが座ってた。
美貴ちゃんは私を真っ直ぐに見つめると立ち上がった。



「おかえり?」
「ただいま」

「あいつ、平気だった?」
「ん?」

「梨華ちゃん」
「あぁ。うん。慣れてるし」

「そっか。ちょっと、いい?」
「え?」


美貴ちゃんは私の手をひいて歩き始めた。

729 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:02
「きれいでしょ?ここ?」

美貴ちゃんが私を連れてきたのは、町のはずれの高台。
夕焼けの空がすっごくきれいで、私はしばらくみとれた。

「会えた?」
「うん」

「どうだった?」

美貴ちゃんの言葉は落ち着いていて静かで。
だから、その単語は私の胸に響いて・・・
向こうの世界のこと思い出しちゃって自然と涙が溢れた。


「あ!ごめん!!美貴無神経だった!!」
「ううん・・・平気」

「ごめん」
「・・・ちゃんと・・・告って・・・ふられてきたんだ」

「え?」
「お母さんにもね・・・ぅぅ・・・・会えたし・・・」

「あゆみ・・・」
「・・・ぅぅ・・・だから・・・ぅっ・・・もういいの」


うつむいた私を美貴ちゃんは抱きしめてくれて。
だから美貴ちゃんの胸の中でおもいっきり泣いた。


「家出なんて・・・するもんじゃないね・・・」
「・・・・」

「梨華ちゃんはよく家でしてたけど、私はしたことなかったから。
 あの日、梨華ちゃんと一緒にね、生まれて初めて家出したんだ・・・
 家出したら、ちょっと帰るとき気まずいな。なんて思ってたのに・・・
 気まずいどころか帰れなくなっちゃった・・・」
「・・・」


「私の居場所・・・なくなっちゃったよ・・・」


泣いて泣いて泣いて・・・泣きまくって。
顔をあげたら、夕日が沈む10秒前。


その真っ赤な夕日があまりにもきれいだったから、私はまたみとれた。

730 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:03
「きれいでしょ?ここ?」
「うん」

美貴ちゃんは私の涙の跡を親指でぬぐってくれた。

「こっちの世界にだって、居心地いい場所たくさんあるよ?」
「うん」

「美貴がなるよ」
「え?」

「居場所」
「え?」


驚いて、寄り添っていた体を離すと、すぐに美貴ちゃんにまた抱き寄せられた。


「あゆみの居場所になってあげるから」
「・・・」


「美貴じゃ不満?」
「・・・」


わかったことが一つだけあった。


美貴ちゃんのぬくもり、すごっく居心地のいい場所になりつつあるんだなって。


「キスする?」
「バカ」


本当に調子がいいんだからって、笑った私を美貴ちゃんは抱き寄せてくれて。


美貴ちゃんのぬくもりを少しでも長く感じようとよりそった。


731 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:05
「柴ちゃん!!」

美貴ちゃんと紺野ちゃんの家に戻ったら、家の外で梨華ちゃんが待っていた。
私は美貴ちゃんとつないでいた手を離して梨華ちゃんのもとに駆け寄った。

「どこ行ってたの?」
「え?あ・・・ちょっと。散歩」

「柴ちゃん?」
「え?」

「目が赤いよ?」
「あ?あぁ、えっと、寝不足」

「そうなんだ」
「うん」

梨華ちゃんに本当のことなんて言えないから、だから私はウソをついた。
梨華ちゃんのウソはいつだって、すぐに見破れたけど、私のウソを梨華ちゃんは見破ったことないんだ。
美貴ちゃんは、ちょっと離れた場所で私たちのことを見守っていた。

「美貴ちゃんと一緒だったんだね・・・・」
「あ、えっと・・・うん。でもね!ほら、なんていうか、偶然」

「なんか?焦ってない?」
「え?そんなことないよ。あれ?みんなは?」

「宿に行った」
「待っててくれたんだ。ごめんね」

「あのさ・・・」
「遅くなっちゃったね。ごめんごめん!宿に行こうか?」

いつもだったら、梨華ちゃんの変化に気がつくのに、
そのときの私は自分のことで頭が真っ白だったから、
梨華ちゃんの気持ちを見落とした。

「え?あ・・・うん」

梨華ちゃんの笑顔が輝いていないことなんて、
全然気がつかなかったんだ・・・

「あ!紺野ちゃんは?」
「中にいる」

「そっか、あ、私あいさつしてくるね」
「・・・うん。じゃあ、先に宿に戻ってるね」

「うん。ごめんね。すぐ行くから」


梨華ちゃんが、私に背を向けて歩き出したのを見届けてから、私は紺野ちゃんの所へ向かった。
732 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:06
「あ、柴田さん!」

家に入るとすぐに紺野ちゃんが寄ってきてくれた。

「大丈夫だった?みんなにいろいろ聞かれたでしょ?」

紺野ちゃんは、私の目が赤いのを見て下を向いた。

「私は大丈夫です」
「ほら、よっすぃとか乱暴なかんじだったでしょ?」

「え?よっすぃ?」
「うん。あれ?名前は聞かなかったの?」

「いえ。聞きました。でも国王様と、石川さんと矢口さんと保田さんだけでしたが?」
「え?」


よっすぃがいないってこと、全然気がつかなかった。
梨華ちゃんの変化に気がつかなかったのは始めてだった。

梨華ちゃんが私を待っていたってことは何かあったからだって、
考えればすぐにわかることなのに自分のことでいっぱいいっぱいで気がつけなかった。

梨華ちゃんの胸が詰まりそうな気持ちが一瞬にして私に伝染して・・・
気がついたら紺野ちゃんの家を飛び出していた。

「あゆみ?」

家の前で待っていた美貴ちゃんが私の手を捕まえた。
私の青ざめた顔に美貴ちゃんの顔が曇る。

「なんかあった?」
「梨華ちゃんは?」

「え?」
「梨華ちゃん、どっちに行った?」

「宿でしょ?あっちの」


美貴ちゃんが指差した方へ私はすぐに走った。

733 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:08
でも、宿に梨華ちゃんの姿は無かった。
それから町中を探してようやく梨華ちゃんを見つけたのは2時間近くたってからだった。

「梨華ちゃん!」
「あ・・・柴ちゃん」

「なんでいなくなるのよ!」

自分が気づけなかったことへの後悔っていうか苛立ちで、私は自分でも驚くくらい強い口調だった。

「怒ってる・・・」

泣きそうな顔をした梨華ちゃんに、私は気分を落ち着かせて隣に座った。

「ごめん・・・」
「なんで柴ちゃんが謝るの?」

「気がつかなかったから・・・よっすぃのこと」
「・・・」

「愛ちゃんに聞いたよ?」
「・・・」

「大丈夫?」
「うん。全然平気」

平気じゃ無いときに限って梨華ちゃんは強がる。
平気なときは大げさなのに、本当に辛い時には平気なふりをするんだ。

「ウソつき」
「ウソじゃないよ!平気だもん!!」

ムキになった梨華ちゃんにちょっと安心。

「きっと戻ってくるよ」
「・・・」

「よっすぃはさ、始めはなんか、すっごく軽い人だって思ってたけど、
 旅をしていくうちに、梨華ちゃんのこと守るんだ!
 って気持ちがどんどん強くなってるのよくわかった。
 よっすぃは、ああ見えて梨華ちゃんのこと誰よりも考えてると思うよ?」
「でも・・・霊玉置いて行っちゃったし・・・」

「それは・・・」


よっすぃのバカ。なんで大好きな相手を不安に陥れるのよ。
私が言葉を探している間に梨華ちゃんが言葉をつないだ。


「もう、よっすぃのことは忘れる!」
「だから、よっすぃは・・・」



「それに、私たち、魔王を倒したら元の世界に戻るんだしね!」



その言葉に、私の心が震えた。

「あ・・・柴ちゃんは戻ったばかりだったね・・・」


私は・・・戻ったんじゃない・・・
別れを告げてきたんだ・・・でも、それを梨華ちゃんに打ち明ける勇気なんて全然なくて・・・

「みんな元気だった?」

気の利いたことを言おうと思っても言葉が喉にひっかかって出てこなかった。

734 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:09
「私も早く戻りたいな!でも・・・こっちの世界でも美貴ちゃんに出会えたし!
 しばらくは大丈夫かな?」


梨華ちゃんが言った強がりを見抜けるほどの余裕は私の心に残されてなかった。


「え・・・」


美貴ちゃんは、向こうの世界では梨華ちゃんの片思いの相手。

「美貴ちゃん、こっちの世界でもかっこいいよね?」
「・・・」

「柴ちゃんもさ、斎藤先生に会ってきたんでしょ?」
「・・・」

「やっぱり、好きな相手に会えるって元気になっちゃうよね!」
「・・・」


梨華ちゃんは自分の心の隙間を繕うために話してるって、
いつもだったらわかるのに、本心からのことばじゃないっていつもだったら気づくのに・・・
私は美貴ちゃんの名前にすっかり動揺して梨華ちゃんん話は上の空だった。


「柴ちゃん?聞いてる?」
「え・・・あ、ごめん・・・そうだよね」


そうだよね・・・美貴ちゃんは、向こうの世界では梨華ちゃんの片思いの相手なんだもんね。


「柴ちゃん?」
「み、美貴ちゃんに会えてよかったね」


言葉が震えそうになるのを必死に抑えて、
心が締め付けられるのを必死にこらえて・・・


「協力するから」


私はウソをついたんだ・・・

735 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:10


どうせ、私はもうすぐ消えていなくなる。


神様?もし、あなたが本当にいるんだとしたら・・・

私はどうすればいいの?


梨華ちゃんのためだけに、生きている存在。

私に残された時間・・・


私はどうすればいいの?


神様?もし、あなたが本当にいるんだとしたら・・・


なんでこんなに辛い思いをさせるの?


なんで、私から全てを奪うの?




私は・・・自分の心にウソをついた・・・


736 名前:居場所 投稿日:2006/06/20(火) 01:12
「うん!ありがとう!!なんか、柴ちゃんと話したら元気出てきたよ。
 じゃあ、みんなの所に帰ろっか?」
「うん。よかった」


立ち上がったら、私たちから少し離れたところに美貴ちゃんが待っていた。
一瞬合った目をそらして、私は梨華ちゃんの手をつかんだ。


「美貴ちゃんも探しにきてくれたんだよ」


私は梨華ちゃんの手をひいて美貴ちゃんのもとまで走って・・・


「美貴ちゃん、梨華ちゃんをちゃんと、宿まで送ってあげて!」
「え?」


梨華ちゃんの手を美貴ちゃんの手に渡した。


「私さ、紺野ちゃんの家に戻らなきゃいけないから」
「あのさ」


何かを言いかけた美貴ちゃんの言葉をふさいで私は言葉をつなげた。


「ちゃんと、姫を守ってね!じゃあ、私行くから」


私は、二人に背を向けて全力でその場から走り去った。

737 名前:k・y 投稿日:2006/06/20(火) 01:13
川σ_σ|| <補足説明です。

今回は、第一世界へのちょこっと里帰りでした。
うぅぅ・・・

738 名前:レス 投稿日:2006/06/20(火) 01:24
>>714 :通りすがりの者 さん
 時空旅行機でのプチ里帰りでした。
 いかがでしたか?
 柴ちゃんの切ない気持ちが伝わればってかんじです。
 次回は、またまた新たに旅に出発します。
 またよろしくお願いします!

>>715 :名無飼育 さん
 今回はよっすぃは登場しませんでしたが、
 彼女は今頃暗闇の中をさまよっています。
 次回はおそらく登場しますので、
 しばしお待ちください!
 次回もよろしくお願いします!


>>716 :名無飼育さん
 柴ちゃんのせつなさが伝わってもらえてうれしいです。
 彼女には、今後もどんどん悲劇な思いをさせていくかも・・・
 一緒に、切なさを味わってください。
 そして、応援してあげてください!
 それでは、次回もよろしくお願いします!!

>>717 :名無し募集中。。。 さん
 ごっちんの過去は・・・壮絶な感じです。
 徐々に明らかになりますので、お楽しみしていてください。
 愛ちゃんは、この作品の中ではどこまでも真っ直ぐです。
 健気な愛ちゃんを書きたいと思っていたので。
 これからも、応援してあげてください!


レスありがとうございます!毎回、レスに励まされています。
これからも、どんどん感想、ご意見をよろしくお願いします!!
次回は、新たに加わったメンバーとともに、旅に出発します。
次回もご愛読よろしくお願いします♪

739 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/06/20(火) 21:33
更新お疲れ様です。
うーん、なんだか複雑ですね。
この先どうなるのか気になる所です。
次回更新待ってます。
740 名前:名無飼育 投稿日:2006/06/21(水) 01:13
更新乙です!

うわぁ!!なんか微妙な関係になってますね?
柴ちゃん・・・ってかんじです。

次回も待ってます!!
741 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 07:08
作者さん、交信乙です。
リアルこんこんは卒業してしまいましたがここのこんこんは健在ですよね

それにしても柴ちゃん・・・    切ない・・・

今回のスレ整理には引っかからないとは思いますが生存報告をお願いします
742 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 01:56
翌朝、私たちはタイガーホールを目指してウエストフォレストへ入った。
朱雀の森とちがって、ウエストフォレストはなんだか奇妙。

「あ!魔物!!」
「ちがうよ。あれは灯虫」
「うわぁ!魔物!!」
「んあ?それは幻草」

魔物だって思うと、ぜんぶ幻で森の草木が面白がって幻を作り出すんだって。
ごっちんが説明してくれるからいいけど、ごっちんがいなかったら完全にパニックだね。
特に、紺野ちゃんが泣きそうな顔をしていた。

「こんこん大丈夫?」

休憩の度に心を静める紺野ちゃん。
幼い剣士にとっては、この森は刺激が強すぎるんだ。
紺野ちゃんの心配はいつもごっちんの役目だった。

「大丈夫じゃないです・・・」
「う〜ん。森はちょっといたずらしているだけで、悪気は無いんだよ」

「・・・・」
「森は優しさで包まれているんだから」

「意地悪な優しさですね」
「きっとこんこんも友達になれるよ」

「私には、数字の方がいい」
「すうじ?」


紺野ちゃんにとって森は自分の知らない世界。
ごっちんにとって数字は自分の知らない世界。

743 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 01:59
「はい。数はいろんなことを教えてくれるんですよ?」

首をかしげたごっちんに紺野ちゃんは地面に数を書いた。

「何これ?」

森で育ったごっちんは数字のことは全然知らないみたいで、
紺野ちゃんが地面に書いた『6』の意味がわからなかった。

「ロクです」
「へぇ」
「後藤さんは6番目の剣士。6って数字は完璧なんです」

紺野ちゃんは地面に数式を書き始めた。

「6の約数は、1と2と3と6。
自分以外の約数を足し合わせると、
6は再び6になるんです。
パーフェクトナンバー。6は完全なんです」


紺野ちゃんにとって、ごっちんは完璧なんだ。
6番目の剣士だからってことだけじゃなく、
紺野ちゃんにとって、ごっちんは完璧な存在に見えたんだ。

ごっちんは相変わらずの笑顔で首をかしげたままだったけど、
二人の間には小さくてもしっかりと絆が結ばれたんだ。

744 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:00
「何してんの?」

二人の様子を見つめている私に美貴ちゃんが声をかけた。

「紺野ちゃん、大丈夫そうだね?」
「・・・」

美貴ちゃんの表情は険しかった。

「何かあった?」


「あの二人は・・・出会ったらいけなかったんだ」


「え?」


美貴ちゃんはそれ以上のことは言わなかったけど、
紺野ちゃんとごっちんは悲しい宿命を背負っていたんだ。


それを私たちが知るのは、まだまだずっと先のことなんだけど・・・
美貴ちゃんに言葉の深意を聞く前に私たちの前に暗雲が立ちこめた。


「誰だ!」


美貴ちゃんが闇に向かって銃を放った。

745 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:01


「手洗い歓迎だな?」


暗闇からデネブが姿を現した。


「デネブ!」


デネブは私の顔を見て嘲笑した。

「まだ、戻っておらぬのか」

その言葉に、心が震えた。


「美貴が戻さない!」


美貴ちゃんがデネブに銃を放った。

「影は消えうせるのみ。本体に戻らぬまま消えうせるがいい!」

美貴ちゃんの銃弾をデネブは気で跳ね返した。

「恐怖に怯える顔は実に心地よい」

デネブの言葉に美貴ちゃんが振り向いた。
私は止めようとしても止まらない、ふるえと必死に戦っていた。


「お前、絶対許さねぇ!!!トルネードショット!!」


美貴ちゃんの怒りにデネブは姿を消した。

746 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:03
「あゆみ?」

私はその場に、膝をついて迫り来る現実に怯えた。

「本当なんだね・・・」
「美貴が守るから!」

どん底に落ちた私の胸に、美貴ちゃんの声は力強く響いた。

「柴田さん!?」

心が落ち着く前に、私は愛ちゃんに呼ばれた。

「なに?」

自分の動揺を隠して私は立ち上がった。

「姫が・・・」

それだけで、愛ちゃんが言いたいことはわかった。
奇妙な森。紺野ちゃんの悲鳴が響いていたけど、
いつもだったら一番に怯えるのは梨華ちゃんなのに、
梨華ちゃんの甲高い声は森に響くことはなかった。
梨華ちゃんの心にはポッカリ穴が開いちゃっていたんだ。
梨華ちゃんは、何度となく休憩をした。
どんどん森へ入っていけば、よっすぃが遠くなるように思えたから。

「うん。わかった」

立ち上がろうとした私の手を美貴ちゃんが捕まえた。

「今は!」
「平気だから」

握られた手が震えてるのに、平気だなんて強がっても美貴ちゃんにはお見通し。
美貴ちゃんは、言い聞かせるように私の手を強く握り締めた。

「美貴が行くよ」
「でも!」

不満気な愛ちゃんに美貴ちゃんは強い眼差しを向けた。


「大切な人は、自分が守りなよ」


愛ちゃんは、その言葉をかみ締めるようにうつむいた。

747 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:04
「梨華ちゃん?」
「え?美貴ちゃん」

美貴ちゃんに声をかけられて、梨華ちゃんは少し驚いていた。

「大丈夫?みんな心配してるよ?」
「うん。ちょっと疲れただけだから」

「この森変だもんね」
「うん」

「姫は、笑ってた方がらしいんじゃん?」
「え?」

「笑顔でいた方が、似合うと思うよ」

美貴ちゃんに言われて梨華ちゃんは、照れたように笑った。

「ほら!そっちのがいいよ」
「美貴ちゃんは優しいね?」

「美貴だけじゃないよ。みんな心配してんだからさ」
「うん。ごめんね」

「ま、こんな世界に来ちゃって大変だろうけどさ」
「うん。でも、来てよかった」

「え?」
「ここに来なかったら普通の女子高生で、
 なんとなく毎日学校行ってただけだったし。
 ここに来たから大切な仲間ができた」

「そっか」
「美貴ちゃんにも、会えたしね?」


美貴ちゃんと梨華ちゃんのやりとりを愛ちゃんと二人で見守っているうちに、心が締め付けられた。


梨華ちゃんは、大切な仲間ができたって言ってたけど・・・
私は、自分を失おうとしてるんだよ・・・


たまらなくなって、私はその場を離れた。

748 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:05
「矢口さんあの・・・」

愛ちゃんも梨華ちゃんたちから離れて矢口さんに相談を持ちかけた。

「なに?」
「姫の心、読めますか?」

「なんで?」
「姫が寂しそうにしているのを、ほってはおけないんです」

「理由が知りたいってこと?」
「はい」

矢口さんは隣にいた保田さんと目配せをした。

「高橋?」

口を開いたのは保田さん。

「はい」
「あんたなら、石川の気持ち、聞かなくてもわかるでしょ?」

「・・・」
「自分が正しいと思ったことをやればいいんだよ」

「でも!何をすべきかわからん」

今度は矢口さんが答えを返した。

「石川の気持ちがわかったからって、
 何をして欲しいかまではわからないんだよ。
          それを考えるのは自分自身」
「・・・」

「愛ちゃんにできることをすればいいんだよ」
「そういうこと」


「できること・・・」

749 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:07
「姫?」

夜中にテントを抜け出した梨華ちゃんを愛ちゃんが追いかけた。

「愛ちゃん」
「今日は満月ですね?」

「本当だ」
「眠れませんか?」

「うん・・・なんかね。あ、でも心配無いよ!
 昼にもね、美貴ちゃんに笑顔でいた方がいいって言われちゃったんだ」

よっすぃのことが気になって眠れないってこと、愛ちゃんは聞かなくてもわかった。
自分の気持ちを隠すように明るくふるまう梨華ちゃんに愛ちゃんは居たたまれなくなった。


「辛い時は、無理に笑わんで下さい」


「・・・」


「仁は人を愛する心。仲間を愛し、大切な人を心の底から思う心。
 吉澤さんは戻ってきますよ」


「うん・・・ありがと」


梨華ちゃんのさびしげな顔に愛ちゃんの心が痛んだ。

750 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:08
「昔々、空に輝く美しい満月を独り占めしようとしたフクロウがいました」
「え?」

「城に入ったばかりのときは、不安で不安で・・・毎日眠れなかったんです。
 父上や母上。それに姉上たちと別れて暮らさなくてはならなくて。
 だからさびしくてさびしくて夜になると毎日泣いてばっかりやった」


愛ちゃんの話を梨華ちゃんは黙って聞いていた。


「そういうさびしい夜には、決まって中澤さんが昔話をしてくれたんです。
 昔話を聞いているうちに私はいつも決まって自然に眠ってたんです。
 受け売りですが、中澤さんの昔話はすごく楽しんです。
 うまく話せるかどうかはわかりませんが、テントに戻りましょう?」


「うん」


愛ちゃんの声は物語をかたるのにふさわしいみたいで、梨華ちゃんは心地よく眠りに落ちた。


愛ちゃんは知っていた。


千の物語よりも今梨華ちゃんに必要なのはたった一人の存在だってこと。
自分が語る万の言葉よりも、梨華ちゃんがすぐに元気になれる存在がいるってこと。


それでも、愛ちゃんは愛しい姫のために、物語を語ったんだ。

751 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:09
その頃、よっすぃは光を探して闇の中をさまよっていた。

歩いて歩いて・・・
それでも、よっすぃが探し求める光は現れなかった。


「いい加減飽きたよこの世界」


どこまでも続く暗闇によっすぃの足取りも重くなる。


「よく戻ってきたな。仁の剣士よ」


そのとき、暗闇から低い声が聞こえた。
そして次の瞬間、一瞬にして辺りが光に包まれた。

「ようやくおでましかよ」

よっすぃの前に黒い影が現れた。

「姿は見せないのかよ」
「姿?そんなものは遠の昔に消滅してる」

「は?」
「そなたを待っていたぞ。仁の剣士よ」

影は突然牙をむいた。
ものすごいスピードで剣を抜き、瞬時によっすぃを切りつけた。
よっすぃは避け切れずに右腕を負傷した。

「荒っぽいじゃん」
「それくらい、避けられぬようでは剣士ではない」

その言葉によっすぃも剣を抜いた。


「烈火真炎!」


よっすぃの炎が影をとらえる。


「烈火炎上!」


影はそれにも勝る炎でよっすぃに対抗し、二つの炎は打ち消しあった。

752 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:11
「そうだった。そなたの魂を返しておこう」

影は光の玉をよっすぃに投げつけた。
光はよっすぃの身体に吸収されてそのまま消えた。

「この感覚だ」

沸き起こる熱い気持ちによっすぃは自分に戻れたことを実感した。
そして、真っ先に梨華ちゃんを思い出した。

「さっさと戦い終わらせたくなってきたよ。
 めちゃくちゃ梨華ちゃんに会いてえ」
「姫君を愛しく感じるか?」

「あぁ。愛しいなんて言葉じゃ足りないくらいね」

張り詰めていた空気は少しだけ穏やかになった。
影が緊張の糸を少しほどいたみたいで、
もしそこに顔があったなら、きっと二人は微笑を浮かべあっていたのかもしれない。

753 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:12
「300年前、私もそなたと同じように姫を愛した。
 国を救うためなどではなく、愛する人を守るために戦った。
 戦いに勝利したが、私は愛する人を救うことができなかった。
 姫は、激しい戦いの末に永遠の眠りについたのだ。
 そしてその時、呪いをかけられてしまった。二度とこの世界に転生できぬように」

よっすぃは影の話を黙って聞いていた。

「私たちは誓った。未来永劫、姫を守りぬくと。
 私はここでそなたを待っていた。
 再び転生した姫に、プリンセスソウルをお渡しするために」

「プリンセスソウル?」

「姫の呪いを解き激しい戦いに耐えうるパワーだ」

「つまり、それがあれば呪いは解けるし、戦いに耐えられるってこと?」

「呪いを解くためには、8つの霊玉が必要だ。
 そしてプリンセスソウル。私はここで、300年間プリンセスソウルを守ってきた」

「あんた一体・・・」

「かつて、そなたと同じ『仁』の霊玉を守護していた者だ。
 さぁ、『仁』の剣士よ。私を倒しプリンセスソウルを奪うのだ!」


影の言葉によっすぃは剣をかざした。


「よくわかんないけど、梨華ちゃんを救うために、
 あんたを倒さなきゃいけないってことだね。行くぞぉぉぉ!!!」

よっすぃの叫びが大地を揺るがせ、それが開始の合図であるかのように二人は剣をぶつけ合った。

754 名前:君のためにできること 投稿日:2006/08/20(日) 02:13
「烈火真炎!」
「白夜光炎!」


よっすぃの炎はたちまち影の炎に飲み込まれた。


「本気で来いってことだね」


よっすぃは瓢箪を取り出して、酒をあおった。


「そなたの力が私に及ばぬ時は、切り捨てるまで。
 私に勝てぬようでは姫をお守りすることはできぬ!」
「あいよ。じゃ、本気でいっちゃうよ!」


赤ら顔になったよっすぃは、剣を抜くと瞬時に影に切りつけた。


「酔炎斬殺!」


影をとらえたかのように見えたんだけど、剣は空を切っただけだった。


「力無き者守る資格なし!白虎究極奥儀、猛虎白炎斬!!」


よっすぃは、目の前が真っ白になったかと思ったら、体中が燃えるように熱くなり、血が噴出した。



「うわぁぁぁぁ!!!」



炎を刃に変えることで、影はよっすぃの身体を焼き、そして斬りつけたんだ。


「終わったか」


よっすぃが倒れたのを見て影は剣を収めた。


755 名前:k・y 投稿日:2006/08/20(日) 02:18
お久しぶりです。
まったく更新できなくて本当にすみませんでした!!
個人的に、コンコンショックに陥ってまして・・・
今までの卒業と違ってメディアからコンコンが消えちゃうなんて・・・
って感じで・・・
そんなこんなで、更新が遅れてしまいました。
でも、立ち直ったので!これから、心機一転頑張ります!!

だめだめ作者ですが、今後もよろしくお願いします!!

756 名前:k・y 投稿日:2006/08/20(日) 02:26
川σ_σ|| <補足説明です!

影:かつて『仁』の例玉を守護していた剣士。今は肉体が滅びたので、
  影としての存在のみ。よっすぃに思いをたくすために牙を向いたんです。

烈火炎上:影の攻撃。炎を操るよっすぃと同じタイプの剣士なんだけど、
     威力はよっすぃの倍以上!

白夜光炎:影の攻撃。攻撃した瞬間にあたり一面の闇が消えることから
     この名前がつけられた。

白虎究極奥儀猛虎白炎斬:白虎の力を得たものだけに許される白虎究極奥義。
            猛虎白炎斬は炎を刃に変えることで、焼き尽くしながら、
            切り殺すという恐ろしい技。

 ついに、よっすぃが試練の時を迎えました。
 よっすぃはこのまま影にやられてしまうんでしょうか・・・
757 名前:レス! 投稿日:2006/08/20(日) 02:38
>>739 :通りすがりの者 さん
 更新が送れちゃて本当にすみません!!
 毎回読んでもらってるのに・・・ごめんなさい!!
 これからも、剣士たちにいろいろなことが・・・
 一人一人の成長、心情の変化に注目して下さい。
 次回もよろしくお願いします!!!

>>740 :名無飼育 さん:2006/06/21(水) 01:13
 柴ちゃんの本当のせつなさはこれからです・・・
 自分を失う恐怖に柴ちゃんは勝てるのか・・・
 ミキティは!!ってかんじで、注目して下さい!
 お待たせしないように作者も強くなりますので!!
 次回もぜひ、よろしくお願いします!!

758 名前:レス! 投稿日:2006/08/20(日) 02:39
>>741 :名無飼育さん :2006/08/10(木) 07:08
 お待たせ&心配かけちゃってすみません!!
 リアルコンコン卒業・・・せつな過ぎる・・・
 リアルコンコンも夢に向かって成長真っ只中ですね。
 こっちのこんこんも成長していきますよ!!
 応援してやって下さい!


レスありがとうございます!本当に、今回は更新する気になれなくて・・・
本当に本当にすみませんでした!!
剣士のみならず、作者も成長せねばですね・・・
読んでもらえる方がいる限り、頑張りますので!!
ご愛読&レスよろしくお願いします!!!!!!!
759 名前:名無飼育 投稿日:2006/08/22(火) 23:41
待ってました!!
更新乙です。
作者さんのペースでがんばってください。

よっすぃ頑張れ!!
760 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/09/02(土) 18:49
更新お疲れ様です。
このあとの展開が気になりますね。
よっすぃ〜はどうなっていくのでしょう。
次回更新待ってます。
761 名前:守る抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 00:53
「まだ終わってねぇよ」

剣を収めた影によっすぃは、食らいついた。

「その傷では戦えまい」

よっすぃの傷は半端じゃなかった。
身体中から血が噴出していて、普通の人なら即死。
でも、よっすぃは立ち上がった。


それは、好きな人を守るため。


「うちって、血の気が多いんだよね。ちょうどいいよ」
「どのみち、私を倒すことはできまい」
「やってみなきゃわかんないだろ。うちさ、あきらめ悪いんだよ」

よっすぃは、ふらつきながらも剣を影に向けた。
よっすぃの攻撃を影はいとも簡単によけると、そのまま剣を抜いた。


「白虎究極奥儀 猛虎白炎斬!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」


よっすぃは、二度同じ技を直撃した。
痛みに身体中を支配されて、感覚が麻痺していくのがわかった。
意識が薄らぎそうになるのを、よっすぃは必死につなぎとめて・・・


立ち上がる力さえ残っていなかった。


762 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 00:56


『おいおい・・・だっせぇなうち。
 梨華ちゃん守るんじゃいのかよ・・・
 また、好きな女の子を守れないで終わるのかよ・・・』


よっすぃは、自分に問いかけて必死に自分を立ち上がらせようとしたんだ。



『白虎・・・うちはあんたの剣士なんだろ?
 一瞬でいいよ。うちに力をくれ・・・
 好きな人を守りたいんだ・・・
 梨華ちゃんを・・・守りたいんだ・・・
 うちの身体も魂も全部あんたにやるから・・・頼む・・・』



よっすぃの意識が途切れた・・・



『よっすぃ?よっすぃ??力をあげるよ』



よっすぃは立ち上がると剣を掲げた。



「うおぉぉぉぉぉぉ!!! 白虎究極奥儀 白虎演武翔!!」



地に木霊するよっすぃの咆哮は白虎そのもの。
そして、剣に力が宿ったんだ。


白虎の力。


すべてを斬り、すべてを焼き尽くす力。


763 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 00:57
「きさま!死ぬぞ!!」


影の言葉に耳を向けず、よっすぃは炎を躍らせた。



「うおぉぉぉぉ!!!」



そして、影を倒したんだ。



闇は開け、夢は終わった。


764 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 00:58
「よっすぃ?よっすぃ??」
「ん・・・ん?」


目を覚ますと、あいぼんがよっすぃの前に立っていた。


「う・・・」


身体中が重くて立ち上がることができないよっすぃに、
あいぼんが手をかざした。


「なおりんしゃい」


あいぼんの呪文に、身体中の傷が消えた。


「あんた・・・悪趣味だね」


傷口はふさがったものの、よっすぃは激しい痛みに襲われていた。


「その、右手の怪我はうちにも治せん」
「神様でも、できないこと・・・あんだ」

「その怪我は、白虎との取引や。
 白虎の力を使う代わりに、白虎がよっすぃの右手を食べたんや」

よっすぃの右手は、真っ黒に焦げ付いていた。

「そう・・・右手で済んでよかった」
「右手はもう・・・使えん」

「いいよ。手なんかなくたって・・・それより」
「これやろ?」

あいぼんがよっすぃに手渡したのは、美しく光り輝く鏡。

「知んないけど、そいつが・・・あいつの言ってた?」
「プリンセスソウルや姫に力を与え、守り抜いてくれる魂や」

「よかった・・・」
「しばらくは、うちの館で怪我を治し?」

「そんなことしてらんないよ。今は、もう・・すっげぇ会いたいんだ」
「アホ」

「それしかとりえないかんね」


あいぼんは、少し微笑んで、姿を消した。

765 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 00:59
よっすぃが、一つの戦いに決着をつけたころ、私たちは森の奥へと進んでいた。

「美貴ちゃん、それでね!」

梨華ちゃんの、心の傷も少しずつ和らいでいった。
愛ちゃんの支えと、美貴ちゃんの存在が梨華ちゃんを前に向かせたんだ。
私のことを気遣って、美貴ちゃんが梨華ちゃんの相手をしてくれたんだけど、
いつも隣にいてくれた人がいなくなった空虚感で私は複雑だった。

「よかったね。石川もどって」

旅の先頭はいつのまにかに梨華ちゃんに戻っていて、その隣にはいつも美貴ちゃんがいた。

「一時は、どうなるかと思ったけど」

保田さんと矢口さんの会話は、なぜか素直に喜べなかった。

「姫には笑顔が似合います」

梨華ちゃんを心から心配していた愛ちゃんは、笑顔が戻ったことだけで十分な様子だった。

766 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:00
「し〜ばちゃん?」
「・・・」

「しばっちゃん?」
「・・・」

「あ〜ゆみん?」
「え?あ・・・ごめん」

私は、いつのまにかに最後尾を歩くようになっていた。
剣士たちへの気後れ・・・ううん。
隣にいなくなった、美貴ちゃんの後姿を近くで見つめたくなかったから・・・

「大丈夫?」

時々、ごっちんや紺野ちゃんが振り向いてくれた。

「うん。大丈夫大丈夫」

ごっちんの100%スマイルは、見ているだけで幸せな気分になれたし、紺野ちゃんの優しい言葉にも元気付けられたんだけど・・・


隣にいて欲しい人が誰なのか・・・嫌でも思い知らされた。

767 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:02
「あれ?」

先頭の梨華ちゃんが立ち止まったのは、トンネルの前。

「何か書かれてる?」

不思議な文字で書かれた立て札にみんなが首をかしげた。

「ようこそ、白虎王国へ・・・ニャー!・・・って書かれてます」

こんちゃんが、本を見て訳してくれた。

「なんか・・・面白いね」

こんちゃんは、梨華ちゃんに言われて顔を赤くした。

「ここが、タイガーホールなんでしょうか?」

立て札に引き気味のみんなとは違って、愛ちゃんの表情は真剣だった。
まじめな愛ちゃんにギャグは通用しないんだ。

「違うよ。ここは、トリックロードだよ」

ごっちんが後ろから口を出した。

「トリックロード?」

首をかしげた梨華ちゃんに、ごっちんが説明してくれた。

「うん。誰でもタイガーホールに近づくことができないように、
 トリックロードがあるんだ。トリックロードにはいろんなしかけがあるらしいよ。
 トリックロードを抜けないと、白虎ちゃんには会えないことになってるんだよ」
「じゃあ、ここを抜ければいいんですね!」

愛ちゃんが意気込んだ隣で、梨華ちゃんがうつむいた。

「ちょっと、休憩しない?」

美貴ちゃんが梨華ちゃんの異変に気がついて提案した。

「でも、少しでも早く!」

「行きたくないって顔してるんだけど?姫が?」

美貴ちゃんに言われて愛ちゃんも梨華ちゃんの表情が暗いことに気がついた。

「姫・・・」
「はい。休憩」

美貴ちゃんが強制的に休憩を開始させた。

768 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:03
愛ちゃんと梨華ちゃんを残してみんな散り散りに分かれた。

「すみません。気がつけなくて」
「ごめんね。ほら・・・いろんなしかけがあるって言ってたでしょ?
 朱雀大路みたいに頭良くないと通れないのかなって・・・」

「・・・吉澤さんは、一人じゃ通れませんね?」
「・・・ごめん」

「待ちましょう。吉澤さんは必ず来ますよ」
「・・・」

「それまでは、私がそばにいますから」





誰よりも愛しく思う。
だから、見ている視線の先がわかるんだ。
それでも、愛しい姫のそばにいたい。
大好きだから守りたい。
一番になれなくても、近くで守り抜く存在で居たいんだ。


769 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:05
「あゆみ?」

美貴ちゃんは私を見つけるなり、後ろから抱きしめた。

「ちょ・・・と」

すごく落ち着いた。
美貴ちゃんのぬくもりは、私が私でいられる実感。

「やっぱり、あゆみのそばが一番いい」
「・・・」

黙っている私の顔を覗き込もうと離れようとした美貴ちゃんの腕を捕まえた。

「ん?どうした?」
「ちょっと・・・嫉妬」
「え?」

驚いた美貴ちゃんから離れて私は笑顔を見せた。

「なんでもない。梨華ちゃんの所に行ってあげて?」
「愛ちゃんがいるから平気だよ」

「梨華ちゃんは」
「梨華ちゃんが好きなのは美貴じゃないよ。好きな人が他にいる。
 わかるよ。美貴も片思いだから」

「そうなんだ」

自意識過剰かな?美貴ちゃんが私のことを見てくれてるってことは、聞かなくてもわかった。
でも・・・それを受け入れる勇気は私にはなかった。
顔をそむけた私を美貴ちゃんはまた抱きしめた。

「離れないで」

美貴ちゃんの抱きしめる力が強くなった。
気持ちが涙になって溢れた。

「こんな気持ちにさせるなら、離れなきゃよかった」
「・・・」

770 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:06
美貴ちゃん?美貴ちゃんといるとすごく落ち着く。
でもね、すごく辛いんだ。
あなたを近くに感じるほど、そばにいたいって思うほど・・・
心が辛くなるんだよ。
自分を失うことよりも、あなたの前から消えちゃうことが怖いんだ。
だからね・・・美貴ちゃんは好きになったらいけない人・・・





「美貴がそばに居たいのは、あゆみだよ」

その言葉に胸が締め付けられて・・・胸の痛みをはぐらかすために私は美貴ちゃんから離れた。


「あんまり、優しくしないで?そんなんじゃ、本当に好きになった人に思い伝えられなくなっちゃうよ?」


私の言葉に、美貴ちゃんは困ったように優しく笑っていた。

771 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:07
「こ〜んこん?」
「え?うわぁぁぁ!」

心を静めていたこんちゃんは、ごっちんに話しかけられただけで飛び上がって驚いた。


「うわぁぁぁ!!」


こんちゃんのリアクションが気に入ったみたいで、ごっちんがマネをした。

「後藤さん・・・脅かさないでください」

笑っているごっちんにこんちゃんは不満気な顔をした。

「怒ってるんですよ!」
「ん?ごめん」

こんちゃんに強く言われてごっちんは笑顔で頭を下げた。

「後藤さんは、いっつも笑ってるんですね?」
「うん。ゴトーはね、強くなりたいからね」

「強く?後藤さんは十分強いじゃないですか?」
「弱いよ・・・」


ごっちんは、時々、この世の全てを凍りつかせてしまうような冷たく悲しい顔をする。


こんちゃんが、その顔に気がつく前に二人の前に魔物が現れた。

「こんこん伏せて!」

ごっちんの言葉に反応する前にこんちゃんはズーにさらわれた。

「うわぁぁぁ!!」

ズーに捕まえられたこんちゃんは泣き叫びながら天に舞い上がっていってしまった。
772 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:08
「ハリス!!」

ごっちんの呼びかけにハリスホークがどこからともなく舞い降りてきた。
ハリスホークはごっちんの肩を捕まえるとズーの後を追っていった。

「こんこ〜ん!」

上空でズーを見つけたごっちんがこんちゃんを呼んだんだけど、幼い剣士は恐怖で気を失っていた。


「ハリス!行くよ!!」


ごっちんの声にハリスホークは気高い鳴き声を上げるとズーの頭上を支配した。


「こんこんを返せ!」


ごっちんの弓矢がズーを直撃して、ズーはこんちゃんを離して森に落ちていった。


「ハリス!」


ごっちんの意図していることがわかるように、
ハリスホークはこんちゃんの下に急降下し、落下するこんちゃんをごっちんが受け止めた。

773 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:08
「・・・」
「大丈夫?」

目を覚ましたこんちゃんはしばらく呆然として、それからすぐに自分の無事を確かめた。

「後藤さん・・・私は・・・」
「ズーにいたづらされちゃったんだ。でも大丈夫だよ」

ごっちんの笑顔とピースにこんちゃんは苦笑した。


「笑いごとじゃありませんよ」


「笑顔とピースは平和の証拠♪」


その言葉は、こんちゃんの胸に響いた。
そのとき、こんちゃんは気がついたんだ。



今目の前にいるごっちんは世界で一番強いのかもしれないってこと。
なんで、ごっちんが強いのかってことを。


774 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:09
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」


突然、二人の背後からしゃがれた怒鳴り声がした。


「な、何?」


振り向いた私たちの前に現れたのは・・・


「ラ、ライオン!!」


恐怖で震え上がるこんちゃんをライオンが捕まえた。


「姫はいただいた!」


それだけ言うとライオンはこんちゃんを連れて姿を消してしまった・・・


「こんこん!!」


ごっちんの叫びがこんちゃんに届く前に姿は跡形も無く消えてしまった。

775 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:10
「みんな〜!!!」


ごっちんに呼ばれてみんながその場所に集結した。


「どういうこと!」
「ライオンが姫を連れて行くってこんこんが連れて行かれちゃった!」


ごっちんの言葉にみんな首をかしげた。

「こんこんは、姫ではありません」

愛ちゃんが疑問をごっちんにぶつける。

「でも、連れて行かれちゃったの」
「と、とにかく、ごっちんの霊玉で探そう!」

梨華ちゃんに言われてごっちんが霊玉を取り出した。
でも・・・


「あ・・・あった」


ごっちんの霊玉が反応した!と思ったら、『智』の文字が刻まれた霊玉はすぐ近くにころがっていた。


「こんこん、落としちゃったんだね」


美貴ちゃんがあきれたように霊玉を拾った。

776 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:11
その頃こんちゃんは・・・

「巫女殿!連れて参ったぞ!」

ライオンさんに薄暗い洞窟に連れて行かれていた。

「レグルス。しくじったわね?」

ライオンさんの名前は、レグルス。
そして現れたのは青龍の巫女。

「そんなはずは!一番か弱い者を連れてきたはずだ!」
「その子は剣士。まだ、剣士の心も備わっていないただの臆病者よ」

「貴様!だましたな!!」

レグルスに怒鳴られてこんちゃんは半泣き状態。

「姫だなんて一言も言ってません!」
「・・・確かに。しかし巫女殿、剣士を捕獲したわけですから!」

「霊玉すら持たぬ剣士なんて、意味無いわ。始末しなさい」

それだけ言うと巫女は姿を消した。
レグルスはしばらく固まっていたけど、こんちゃんの肩に手を置いた。

「や、やめて!!」

脅えるこんちゃんを見てレグルスは高笑いをした。

「貴様が剣士?こんなに弱い者が剣士であるはずがない」
「・・・」

「俺様は、弱い者を殺す趣味は無い。したがって、貴様は今日から俺様の僕にしてやろう」
「こ、断ります!」

脅えながらもこんちゃんはきっぱりと答えた。
レグルスは黙って、こんちゃんを地下牢へ閉じ込めた。

777 名前:守り抜く強さ 投稿日:2006/09/14(木) 01:11
「食え」

閉じ込めてしばらくしてから、レグルスは肉をこんちゃんに与えた。


「生肉なんて・・・食べられません」


牢屋でふさぎこむこんちゃんは、か細い声でそう答えた。


「なぜだ!なぜ肉を食べない!」
「普通食べません・・・」

「貴様はおとりだ。3日たっても仲間が現れなければ貴様を殺す。
 つまり。3日間は生きていてもらわねば困る。だから食え!」
「焼いてくれなきゃ、無理です!!」


こんちゃんに強く言われてレグルスは肉を持って姿を消した。


778 名前:k・y 投稿日:2006/09/14(木) 01:15
川σ_σ|| <補足説明です!

白虎究極奥儀 白虎演武翔:よっすぃが白虎に授けられた究極奥義。
             全てを焼き尽くす力を一時的に白虎に授かったんだけど、
             変わりに、よっすぃの右腕を白虎に食べられちゃいました。

よっすぃ、ついに影に勝ちました!
779 名前:レス 投稿日:2006/09/14(木) 01:20
>>759 :名無飼育さん :2006/08/22(火) 23:41
 いつもありがとうございます!
 よっすぃは守れる強さを身につけました!?
 作者的には、剣士一人一人の強さが描ければと思っています。
 みんなの強さに注目してください!
 次回もよろしくお願いします!


>>760 :名無し飼育さん :2006/09/02(土) 18:49
 レスありがとうございます!
 よっすぃはなんとか乗り切りました。
 しかし・・・あらたな敵が・・・
 こんこんが!!
 次回もよろしくお願いします!


レスありがとうございます!
楽しんでもらえましたか?
次回は、あの剣士に注目です!!
780 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:23
「食え!」

レグルスは生肉を焼いて持ってきてくれた。

「・・・」

真っ黒に焦げた肉を見つめてこんちゃんは、少しだけ笑った。

「焼いてやったぞ。食え!」
「有機物は燃やすと炭になる」
「何言ってるんだ!」

真っ黒な焼け焦げて炭になった肉をこんちゃんは黙って食べた。

「うまいか?」
「にがいです」

こんちゃんの反応がいまいちだったので、レグルスは腹を立てた。

「俺様の肉がまずいはず無い!」
「料理が心を感じるものだとしたら、すごくおいしいですよ」
「そうか」

こんちゃんの穏やかな空気にレグルスは少し戸惑った。


「ありがとうございました」


お辞儀をした少女にレグルスの顔が緩んだ。

781 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:24
「レグルス!」

背後に現れたのは、青龍の巫女。
レグルスは跪いて頭を下げた。

「何をしているの?この子は殺せと言ったはずでしょ?」
「しかし、こいつは弱い。ほって置いても害はありません」

「そういう問題じゃない!」
「弱い者を手にかけることはできません!」

「逆らうな!」

巫女はレグルスに手をかざした。

「う、うおぉぉぉ!!」

何をしたのかこんちゃんにはわからなかったけど、レグルスは胸を抑えてその場に倒れこんだ。


「殺さなければ、あなたを殺す」


そして、巫女は姿を消した。
782 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:26
「レグルスさん!」

こんちゃんが牢屋の中からレグルスに手を伸ばした。

「心配はいらない」

よろめきながらも起き上がったレグルスの胸元は真っ赤な血で染まっていた。

「動かない方がいいです」
「心配はいらない。俺様は強い」

「でも!動いちゃダメです!」
「指図するな!!」

「指図ではありません。この薬を使ってください」

こんちゃんは牢屋の中からレグルスに薬を渡した。

「コンコンの本に書いてあった薬だから、きっと怪我には効くはずです」

レグルスは半信半疑で薬を手にした。
手にした薬を何度も確かめて、においをかいでから薬を投げ捨てた。

「俺様は強い。こんなものに頼らなくても平気だ」
「あ、あなたは弱い!」
「なんだと!うっ」

威嚇しようとしたレグルスは傷口を抑えてふたたび倒れこんだ。
こんちゃんは、レグルスの怒鳴り声に一瞬身を縮めて、恐る恐る顔を上げた。


「あ、相手を疑うのは臆病な証拠です!
 私もそうだから・・・本当に強い人は、疑ったりしません」

レグルスは、ムキになったみたいで、投げ捨てた薬を無造作にとると傷口に塗った。
薬の威力は絶大で、傷口はすぐにふさがった。

「礼を言う。これは、かりだ。必ず返す」

無骨なレグルスにこんちゃんの緊張はほぐれていった。
783 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:28
「こんこ〜ん!」

その頃私たちは、手分けをしてこんちゃんを探していた。
いっくら探してもこんちゃんの姿は見つからなくて・・・

「本当に、どこに行っちゃったんだろう」


当てもなく探し続けることに少しだけ限界を感じていた。
広い森の中を捜し歩くことは、それだけで体力を消耗する。
でも、誰一人として『辞めよう』っていう諦めを口にする人はいなかった。

ごっちんは、何度もハリスホークに捕まって空に上って、
天からもこんちゃんを探していた。
ごっちんは誰よりもすばやく動けるから、
みんなの数倍森の中を移動していた。
誰よりも体力を消耗するはずだったんだけど、
ごっちんから笑顔が消えることは無かった。

「ごっちん、少し休んだ方がいい」

ごっちんの疲労を察して保田さんがとめた。

「ん?大丈夫だよ!」

ごっちんは笑顔でピースを返した。

「大丈夫じゃない。あんた笑顔だからわかりにくいけど、立ってるのもやっとでしょ?」

ごっちんは相変わらずの笑顔だったけど、
額からは汗が流れるように落ちていて、足元がふらふらしていた。

「だいじょ・・・」

ごっちんは言い終える前に眠りについた。

「ごっちん!」

倒れ込んだごっちんを慌てて私が支えた。

「眠らせたよ」

矢口さんだった。

「ごっちんは、辛さとかそういうの感じないんだ。
 だから、こうでもしなきゃ死ぬまで動き続けるからね」

矢口さんのごっちんを見る目はせつなさに満ちていた。
矢口さんには、ごっちんの心がわかっていたから、
だから深くため息をついた。


眠りに落ちたごっちんの顔はすごく穏やかだった。

784 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:29
「こんこんを見つけないとごっちんまでまいっちゃうね」

梨華ちゃんが立ち上がったそのときだった。

「あらあら?お困りのようね?」

聞き覚えのある妖艶な声。

「あなたは・・・」
「久しぶりね?お姫様」

久々のベガの登場に梨華ちゃんがこぶしを握り締めた。

ベガだけは許せなかった。
罪の無い動物の心を奪って凶暴化させる。
梨華ちゃんに怒りがこみ上げた。

「あら?死に損ないのエルムじゃない」

その言葉に美貴ちゃんが銃を放った。

「皮肉ね?ウエストタウンの人間がこいつと一緒にいるなんて」
「黙れ」

怒りを必死に押し殺した美貴ちゃんの声は低かった。

「あらあら。せっかく教えてあげようと思ったのに。その子の相方の居場所」
「こんこんの居場所を知ってるんですか!」

前に出た愛ちゃんを見てベガは高笑いをした。
不気味な笑いが森に木霊し木々がざわめくのがわかった。

「面白い!次期国王と死に損ないのエルム。
 それにウエストタウンの人間。破滅が目に浮かぶわ。
 そこにいるエルムが全てを滅ぼす」


「やめろぉぉぉ!!!」


美貴ちゃんの怒りが爆発した。


「トルネードクラッシュ!!!」
「フォルドム!」


美貴ちゃんの銃弾がベガに届く前に、フォルドムたちが身を盾にして銃弾を直撃した。


「いやぁぁぁ!!」


梨華ちゃんの悲しみが森に木霊した。

「梨華ちゃん大丈夫だから!」

私は錯乱する梨華ちゃんを必死に支えた。

785 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:30
「血の気が多いわね。あのバカ剣士がいなくなったと思ったから少しはマシになったと思ったのに。
 またバカが現れたってわけね。話ができる相手はいないの!」
「こんこんの居場所を教えてください!」

美貴ちゃんに代わって愛ちゃんが前に出て頭を下げた。

「やめろ!こいつには近づくな!」

とめようとする美貴ちゃんの手を愛ちゃんは払いのけた。

「今はこんこんの居場所を知ることが大切です!」
「さすが国王様。話がわかるじゃない」

「こんこんはどこにいるんですか!」
「案内するわ。ただし、あなたたちのうち二人だけを連れて行きます」

ベガが不気味な笑みを浮かべた。

「私が行きます!」

真っ先に手を上げた愛ちゃんを美貴ちゃんが制した。

「こいつには近づくな!」
「でも!」

「あんたは行くな!」
「しかし!こんこんが!」

「美貴が行く。美貴が一人で行く!他には誰も行ったらダメだ!」

美貴ちゃんの表情はとても強くて厳しくて真剣だった。

「愛ちゃんは、ここで梨華ちゃんを守ってやんなよ」

美貴ちゃんの言葉に愛ちゃんが黙ってうなずいた。

「じゃあ、あんたが一緒に行くわけね?」
「ああ。一緒に行ってやる」


「美貴ちゃん待って!」


ベガのもとに行こうとした美貴ちゃんを私が止めた。


「大丈夫。こんこんを連れて戻ってくるよ」
「私も行く!」

「ダメだ。ベガには近づいたらいけない。
 美貴は必ず戻ってくるから。
 美貴はあゆみのそばに居たいから必ず戻る」


美貴ちゃんは私を一瞬抱きしめると、ベガのもとに向かった。
ベガが美貴ちゃんを抱きしめると二人の姿は一瞬で消え去った・・・

786 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:31
「美貴ちゃん・・・」

ずっとそばに居た人がいなくなるって、空っぽなになっちゃうんだ・・・
私は地面にひざをついた。

「ベガが操れるのは動物の心だけじゃない。
 ミキティはそれを知っていたんだ。
 オイラたちが近づけば、
 きっとオイラたちはベガに心を捕られる。
 だからミキティは一人で行ったんだ」

「美貴ちゃんの心は!」

矢口さんの言葉に思わず大きな声を出してしまった私は、保田さんになだめるように座らされた。

「藤本は心を奪われない自信があったんだよ」

保田さんの言葉に矢口さんもうなずいていた。

「柴ちゃん」

空っぽの私を支えたのは梨華ちゃんだった。

「大丈夫?」

私は黙ってうなずいた。

787 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:32
「ん・・・」

静まり返った時間の中でに、天使が目を覚ました。

「後藤さん」

愛ちゃんがごっちんに気がついた。

「このにおい・・・ハリス!」

ごっちんは、ベガが残した幽かなにおいに反応してハリスホークを呼んだ。

「待ってごっちん!」

梨華ちゃんがごっちんを止めた。

「一緒に行く!みんなで行こう?」

ごっちんは真剣な眼差しを向けて、すぐに笑顔を返してくれた。

「ゴトーに任せて」
「お願い!」
「うん。わかった」

ごっちんはハリスホークを空へ返すと、弓矢を天に放った。
天を貫く弓矢は、雲を切り裂き太陽光を私たちに届けた。


「この光の方向へ行けば、こんこんに会える!」


ごっちんの言葉に私たちは歩き出した。

788 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:35
ベガが美貴ちゃんを連れてきたのは、レグルスの館だった。

「この中にあの娘がいるわ」

美貴ちゃんは疑いの眼差しをベガに向けたまま視線を動かさなかった。

「警戒しなくてもいいわよ。とって食べやしないわ」
「なぜ案内した」

「あの小娘を殺すわけにはいかないでしょ?
 あいつは鬼を呼び出すエサなんだからね」
「ふざけんな!!」

銃を向けた美貴ちゃんをベガの鋭い眼差しが襲った。

「いきがるな!あんたの心は私のものよ!!気に入らないわ。やっぱりあんたを食べることにする!」

辺りが一瞬で闇に飲まれた。
美貴ちゃんは覚悟を決めて目をつぶった。

「一人で犠牲になろうなんて、立派な覚悟ね。
 どうせあいつら全員食ってやる!
 あんたが先でも、他の奴が先でも同じこと!!」


その言葉に美貴ちゃんは笑みを浮かべた。


「美貴は食われたりしないよ」
「いきがってるのも今のうちよ」

闇の中から無数の刃が美貴ちゃんを襲った。
闇の中での攻撃は、恐怖心を増幅させる。ベガの狙いだった。
でも、美貴ちゃんは一つ一つの攻撃を微動だにせずに受け続けた。

「そろそろ、行くか」

美貴ちゃんはゆっくり目を開くと銃ではなく、剣に手をかけた。

「力かしな」

美貴ちゃんの問いかけに応じるように剣が答えた。


「おう。相棒出番かよ」
「お前なんか使いたくないけど、今はそんなこと言ってられる状況じゃないからね」

「相変わらず生意気だな」


「行くぞぉぉぉ!ゴットブレイク!!」


闇が一瞬にして壊れた。
闇が解け、傷だらけの美貴ちゃんが現れた。

「あのおばさん消えやがったな?」

ベガは油断したのかその場にはいなかった。


「ああ。お前のおかげで助かった」
「珍しいな?お前が礼を言うなんて」

「なぁ?美貴に守れるかな?」
「仲間意識とかめばえちゃったわけ?」

「もっと深いよ」
「ベガに心を食われなかったんだ。あんたの心は本物だよ」

「そっか」


剣を再び鞘に納めて美貴ちゃんはレグルスの館の中に足を踏み入れた。
789 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:36
「レグルスさん?」

みんなの心配をよそに、こんちゃんとレグルスの距離は近づいていた。

「なんだ」
「どうして、悪いことをするんですか?」

「悪いこと?俺様は力を試すために戦っているだけだ」
「罪の無い人を傷つけることは強さの証明じゃない。弱い者いじめです」

「な!失礼な!俺様は弱い者をいじめたことは無い!
 力のあるものが世界を支配するのは自然なことだ」

「本当に強い人は、支配したいなんて思わない。
 みんなの平和を守るんです」

「平和など理想にすぎん」
「理想ではありません。平和を守れる人が強い人です」

「そんなやついない」
「います!ゴトーさんは、みんなの平和を守ってくれます!」

「ゴトーサン?仲間か?」
「はい!こうして・・・」

こんちゃんはレグルスにごっちんに習ったスマイルピースを見せた。
レグルスは奇妙な顔をして、首をかしげた。

「笑顔とピースは平和の証拠なんです!」
「ふん。くだらん」

そう言ったレグルスの顔は少しだけほころんでいた。

「その、ゴトーサンというやつは、助けに来ないではないか」
「それは・・・でも、きっと来ます!」

「くだらぬ理想を抱くな」

こんちゃんが言い返そうとした所に、レグルスの家来がやってきた。
790 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:36
「レグルス様!侵入者です!!」

こんちゃんの顔が笑顔になった。

「ゴトーさんです!」
「何人だ?」

「一人です」
「一人?一人で来るなんて無謀な」

「しかし、すごく強いんです。
 剣と銃を使って、もう館の半分まできてます!」
「え・・・?」

家来の言葉に、こんちゃんの顔が曇った。
ごっちんじゃないってわかったから。
こんちゃんの変化にレグルスはすぐに気づいた。

「ゴトーサンでは無いようだな?」
「・・・」

「とりあえず、ねずみ退治に行ってくる」


こんちゃんを残してレグルスは立ち上がった。
791 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:38
「こんこ〜ん!」

館を突き進む美貴ちゃんの前に遂にレグルスが立ちはだかった。

「こんこんを返せ!」
「貴様は、ゴトーサンか?」

「は?何言ってんの?」
「ゴトーサンかと聞いている」

「違うよ。なんで、ごっちんのこと知ってんだよ」
「娘が言っていた。ゴトーサンが助けに来ると」

その言葉に美貴ちゃんは少しだけ笑った。

「そっか。ま、そのゴトーさんの代わりってやつだ。こんこんを返してもらう!」
「そうはいかん。娘を返して欲しければ、俺様を倒してからだ!」

その言葉に美貴ちゃんが銃を構えた時だった。


「レグルス!」


再び、青龍の巫女が現れた。


「あんた・・・」


美貴ちゃんは巫女を見て固まった。


「生きてたのか・・・」


巫女は、美貴ちゃんを一瞬見ると、すぐに冷たい視線をレグルスに移した。

「こいつは、ウエストタウンの人間。それから、あんたが連れてきたあの臆病者の剣士もね」

巫女の背後からベガが現れた。

「最強の殺人鬼がこっちに向かってるわ?」
「貴様!俺様の館に勝手に!」

「黙れ!」

ベガを怒鳴ったレグルスは巫女に一括された。

「鬼を怒らせるために、こいつらを痛めつけなさい。
 二人居るんだから、一人くらいは殺してもいい」
「ふざけんな!」

巫女に食って掛かろうとした美貴ちゃんは、金縛りに支配されたように体の自由が奪われた。

792 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:39
そして、美貴ちゃんとこんちゃんは地下壕に閉じ込められた。

「藤本さんだったんですね」
「悪かったね。ごっちんじゃなくて」

「いえ。ありがとうございます」
「まぁ、コンコンと約束したしね。でも、結局捕まっちゃった」

十字架にはりつけられている状況に美貴ちゃんは苦笑した。

「大丈夫ですよ!必ずゴトーさんが助けに来ます!」

こんちゃんの目は、希望の光がまだやどっていた。

「せっかく美貴が助けにきたのに、こんこんのヒーローはごっちんか?」

その言葉を嘲笑しながら、ベガが姿を現した。

「あんたが、待ってるのは、ヒーローじゃなくて殺人鬼よ」
「やめろ!!!」

大声を上げた美貴ちゃんの右足にベガは銃を放った。

「いきがるなって言ったでしょ?心が食われていれば痛い思いなんかせずにすんだのにね」
「誰が貴様の言いなりにになるか!」

右足が血で染まっても美貴ちゃんは平然としていた。
その隣で、こんちゃんの顔が恐怖で歪んだ。

「あらあら?強いわね?」

ベガは不気味な笑みを見せると攻撃態勢に入った。


「デスハート!」


ベガの呪文とともに、辺りに魔獣が現れた。


「いやぁぁぁ!!」
「こんこん平気だ。これは幻だから!」


美貴ちゃんの言葉は錯乱するこんちゃんには無意味だった。


「うぁぁぁぁ!!!」
「こんこん落ち着いて!心が食われる!!」


「助けてぇぇぇ!!!」


793 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:39


「うおおぉぉぉぉぉ!!!!!」


こんちゃんの叫びに答えるように地下牢の壁がぶち破られた。
そして、現れたのはレグルス。

「貴様!」

敵意を見せた美貴ちゃんを無視してレグルスはこんちゃんのもとに向かった。


「いやぁぁぁ!!来ないでぇぇぇぇ!!!」


拒絶するこんちゃんにレグルスは容赦なく近寄った。


「やめろぉぉぉ!!!」


美貴ちゃんは十字架につながれた手を必死に解いてレグルスを止めようとしたけど、鎖が外れる事は無かった。
こんちゃんの前まで来るとレグルスは剣を掲げた。


「いやぁぁぁ!!」
「やめろぉぉぉ!!!」


二人の叫びに応じることなくレグルスは剣を下ろした。

794 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:41

「え?」


レグルスの剣は、二人を傷つけることなく鎖を切りつけた。

「あんた・・・」
「この娘にはカリがある」

驚く美貴ちゃんにそう言うとレグルスは脅えるこんちゃんの額に手を当てた。

「お前は特別だ。脅えるな。
 恐怖を抱けば闇に飲まれる。俺様みたいに強くなれ」
「レグルスさん」


涙目ながらも、こんちゃんはしっかりとレグルスを見つめた。


「レグルス!!」


背後からの声は、ベガだった。

「あんた、敵を逃がすつもり!」
「この娘は俺様の獲物だ!横取りするな!」

「巫女様の命令よ!逆らえば命は無い!」
「うるさい!!」

「私とやるっていうの?この決壊の中で?」


ベガは一瞬不気味な笑みを見せて、般若の顔になった。


「全員まとめて始末してやる!!」


ベガの怒りが空間を支配した。

「レグルス!美貴の鎖を外せ!」

美貴ちゃんの言葉にはレグルスは応じようとはしなかった。

「俺様に命令するな!」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!みんなまとめて殺されるぞ!!」
ベガのすさまじい気のせいで、空中の塵が自然発火を繰り返す。
このまま気力が高まれば最悪の結果が予想されるって美貴ちゃんはわかった。

「こんこん!美貴の鎖を外して!!」

こんちゃんは恐怖で顔を強張らせていた。

「こんこん!怖くない!!美貴もレグルスもいるから!!大丈夫だから!!」
「でも・・・でも!!」


こんちゃんが叫びだしそうになったその時だった。


「うわぁぁぁ!!」


美貴ちゃんを無数の刃が襲った。
十字架に縛り付けられて身動きの取れない美貴ちゃんは攻撃を防ぐ術が無く、体中が血で染まった。


「いやぁぁぁ!!」


ぐったりしている美貴ちゃんの隣でこんちゃんが叫んだ。

795 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:42
「娘!落ち着け!!」

レグルスはこんちゃんの手をしっかりと握って、美貴ちゃんの鎖を外した。

「遅いって」

倒れそうになる体を必死に起こして、美貴ちゃんは剣に手をかけた。

「危ない!!」

こんちゃんに刃が向かったのにレグルスが気づいて、とっさにこんちゃんの盾になった。

「う、うわぁぁぁ!!」

レグルスは胸を突き刺されこんちゃんにかぶさるようにして倒れた。


「いやぁぁぁ!!」


こんちゃんの恐怖が最高潮に達した。


「こんこん!ダメだ!!脅えるな!!」


「やだ、やだ、やだぁぁぁぁぁ!!!!!」


泣き叫ぶこんちゃんの剣が光り、天井に魔方陣が現れた。


「まずい・・・」


あの時と同じ光景。
錯乱したこんちゃんに呼応して聖獣たちが現れた。


こんちゃんが錯乱している以上、聖獣たちは、暴れ狂う魔獣。


796 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:43
負傷して意識を無くしたレグルスと、今にも倒れそうな美貴ちゃんだけでは、とうてい抑えることはできなかった。

「落ち着け!!」
「うわぁぁぁ!!うわぁぁぁ!!うわぁぁぁ!!」

「こんこん!!」
「来ないで!!!来ないで!!!」」

こんちゃんは美貴ちゃんを判別することもできなくなっていた。

「こんこん!うわぁぁぁ!!」

美貴ちゃんの背中をドラゴンの爪が襲った。
その拍子に、手にした剣と腰にあった銃が飛ばされた。



絶体絶命・・・



美貴ちゃんを恐怖心が襲った。



「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」



美貴ちゃんの絶叫にこんちゃんが正気を取り戻した。


「藤本さん・・・」


こんちゃんが落ち着いたことで、聖獣たちは姿を消した。

797 名前:少女とライオン 投稿日:2006/10/06(金) 01:44


「よくできました」


恐怖で意識を失った美貴ちゃんを見てベガが姿を現した。


「な、何するんですか」
「何って?いいことだよ」

「や、やめてください!」
「あんたには用はないの!」


こんちゃんは金縛りにあったようにその場から身動きが取れなくなった。


「あんたの心、いただくわ」


ベガは美貴ちゃんの首筋を噛み付いた。


美貴ちゃんは一瞬、目を開けてすぐに脱力した。


798 名前: 投稿日:2006/10/06(金) 01:47
川σ_σ|| <補足説明です!

デスハート:ベガの特殊攻撃。相手の心を食べて意のままに動かすことができる。
      幻影を見せて恐怖を感じた瞬間に相手の心を食べちゃう恐ろしい攻撃。

今回は美貴ちゃんが・・・・心を食べられちゃったのか?!
次回もお楽しみに!よろしくです!
799 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/09(月) 22:30
更新お疲れ様でした。
続きが気になりますね、次回も楽しみにしています。
800 名前:名無飼育 投稿日:2006/10/09(月) 23:08
更新乙です!
ミキティどうなってしまうんだ?!
次回待ってます!

801 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 00:59
「行きな!」

ベガの合図で美貴ちゃんは目を覚ますと、
立ち上がり床に落ちた銃を手にしてその場を後にした。

「おい!おい!!」

ベガと美貴ちゃんがいなくなって放心状態のこんちゃんを呼ぶ声がした。

「だ、誰?」
「ここだよ!ここ!!」

それは、美貴ちゃんの剣だった。

「け、剣がしゃべった!!」

泣きそうな顔のこんちゃんにはおかまいなしで剣は話を続けた。

「相棒がやばい!あいつの所まで運んでくれ!」
「む、無理!!」
「このままじゃ、まずい!!」
「無理です!!」
「頼む!!このままじゃ、あいつは操り人形になっちまう!!」

こんちゃんはその場にひざを抱えてうずくまった。
802 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:00
「おい!」

剣の呼びかけにも応じずに、ひざを抱えて顔を埋めた。

「娘?」

震えるこんちゃんに低くて優しい声が伝わった。

「レグルスさん」

こんちゃんはうつぶせたままのレグルスのもとに近づいた。

「娘。ベガの毒気は24時間で心を食い尽くす」
「・・・」
「助けられるのは、娘だけだ」
「無理です」
「俺様が力を貸してやりたいところだが、それはできぬ」
「・・・」
「だが代わりに、いいものをやろう」

こんちゃんが恐る恐る顔を上げると、レグルスの大きな手が何かを差し伸べていた。

「勇者の石だ」
「勇者の石?」

「勇気ある者が手にできる」
「勇気・・・」

「娘。俺様の勇気をお前にやる」
「レグルスさん」

「時間が無い。早く行け」

レグルスの言葉に、こんちゃんは立ち上がった。

「いい子だ」
「あの・・・薬です」

こんちゃんはレグルスの手に薬草を握らせた。

「また、かりができたな」

レグルスの言葉に包まれて、こんちゃんは美貴ちゃんの剣を抱きかかえて走り出した。

803 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:01
「ここにいるの?」

私たちもごっちんのおかげでレグルスの館に到着した。

「うん。ここにいる」

ごっちんは笑顔だったけど、みんなに緊張が伝わった。

「行こう!」

梨華ちゃんの言葉に館の扉に愛ちゃんが手をかけようとすると、扉が開いた。
中から現れたのは・・・


「美貴ちゃん!!」


血を滴らせながらだけど、美貴ちゃんが私たちの前に姿を現した。
確かに美貴ちゃんだったけど、血で染まった服と青白い顔が別人のようだった。
近づこうとした梨華ちゃんに美貴ちゃんは銃を向けた。

「姫!」

梨華ちゃんの身を案じて前に出た愛ちゃんに向かって美貴ちゃんは銃を放った。
愛ちゃんは剣で銃弾を切り捨てたから、怪我は無かったけど、
いきなりの攻撃に私たちは混乱した。

「美貴ちゃん?なんで!!」

前に出ようとする梨華ちゃんを矢口さんが止めた。

「心を食われたみたいだ」

心を無くした美貴ちゃんに私たちはどうすることもできなかった。

804 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:03
「うおぉぉぉぉ!!!」

美貴ちゃんの雄叫びは、相手が美貴ちゃんで無いことを証明するかのように森に響いた。

「どうすれば!」
「こうなったら、戦うしかない」

矢口さんがロッドを構える。
それを見て愛ちゃんも剣を抜いた。

「ダメ!!」

二人を私が止めた。

「柴ちゃん放せ!このままじゃ、オイラたちミキティに殺される!!」
「美貴ちゃんは、大丈夫だって言ったんです!」
「ブレイクショット!!」

私たちがもめている間に美貴ちゃんが攻撃をしかけた。

「森よ!守れ!!」

瞬時にごっちんが決壊を作ってくれたから、
美貴ちゃんの銃弾は私たちを傷つけなかった。

「柴ちゃん!あいつはもうミキティじゃない!」

矢口さんの言葉に私は必死に首をふった。
決壊から出ればすぐに美貴ちゃんの銃弾の餌食になる。
矢口さんの言ってることはわかった。
でも・・・どうしても美貴ちゃんを攻撃させるわけにはいかなかった。

「美貴ちゃんやめて!」

私は決壊を飛び出して美貴ちゃんに両手を広げた。

「柴田危ない!」

保田さんの忠告を背に受け、私は銃を向ける美貴ちゃんのもとへ近づいた。
美貴ちゃんの手が震えているのがわかった。

「美貴ちゃん!約束したじゃん!戻ってくるって!!」
「・・・う・・・・う・・・」

私は、困惑している美貴ちゃんを抱きしめた。


「う、うわぁぁぁ!!」


美貴ちゃんの体に電流が流れた。
私の体をものすごい衝撃が襲った。


「お願い戻って!」

805 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:04
「柴田!!」

衝撃の危険を感じて保田さんが私を美貴ちゃんから離した。

「放してください!美貴ちゃんが!!」
「あんたが死んじゃう!」
「でも!!」

旅が始まってから、ううん。
今まで生きてきた中で、こんなに興奮したことなかった。
保田さんともめている私のこめかみに冷たい感触が伝わった。

「美貴ちゃん!」

美貴ちゃんの銃口が私のこめかみに当てられていた。
引き金を引けば一瞬で私の人生が終わる・・・
でも、自然と恐怖は無かった。

「あ・・・ゆ・・・み・・・・」

幽かに残る美貴ちゃんの意思が必死に押さえているんだってわかった。

「美貴ちゃん!戻ってきて!!」
「うおぉぉぉぉ!!!」

苦しみ悶えながら美貴ちゃんは銃を下ろして、頭を抱えてその場にうずくまった。

「美貴ちゃん!」

美貴ちゃんの背に手をかけようとした瞬間、不気味な声が響いた。

「戻れ!」
「ベガ!」

ベガが現れた。
美貴ちゃんはベガの指示に立ち上がると、私たちに背を向けた。

「美貴ちゃんダメ!」

私が止める声は美貴ちゃんには届かなかった。

「美貴ちゃん!美貴ちゃん!!」

それでも、諦められずに美貴ちゃんにすがり付こうとした私にベガの刃が襲った。

「デスクロウ!!」

体中に鈍い痛みが走ったと思ったら、辺りが血で染まった。
そのまま私は地面に倒れた。

806 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:05
「柴ちゃん!」

梨華ちゃんが倒れた私に駆け寄る。

「お姫様?いいこと教えてあげるわ?」
「あんたの大切な仲間は、決して仲間にはなれない運命なのよ。
そこにいる次期国王と悪魔に心を売ったエルム。臆病者の剣士。
真実を知れば全てが闇に包まれる」

「やめろ!!」

矢口さんがベガの言葉をさえぎった。

「あらあら。魔女さん。そうね。
あんたは心が読めるから全てを知ってるってわけね。
この娘が隠そうとした真実をね」

ベガは戻ってきた美貴ちゃんの肩をつかんだ。
そのまま、高笑いを残してベガは美貴ちゃんとともに姿を消した。

807 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:06
「説明して下さい!」

愛ちゃんが矢口さんに詰め寄った。

「知らなくていい真実もある」
「だけど!全てを知らなきゃ仲間にはなれん!」
「今こうして一緒に居る。それが真実だよ!」

愛ちゃんの強い視線から矢口さんは目をそらさずに見つめ返した。
張り詰めた空気がみんなに伝わった。

「二人とも、今は少し落ち着いて」

保田さんが私の治療をしている横で梨華ちゃんが冷静に口を開いた。

「柴ちゃん大丈夫?」

意識はあったけど、梨華ちゃんの言葉に答えることはできなかった。
美貴ちゃんがベガに心を奪われたっていう真実は、予想以上に私の心を痛めた。
怪我は保田さんのおかげですぐに完治したけど、心は空っぽのままだった。

「美貴ちゃんは大丈夫だよきっと!」
「なんで?なんでわかるの!」

梨華ちゃんが元気付けようとした言葉に私は思わず声を荒げてしまった。

「ごめん」

すぐに、我に戻って下を向いた。

「ベガの言葉は気にしないようにしよう?」
「しかし!」

愛ちゃんに梨華ちゃんは屹然とした態度を見せた。

「真実だけが全てじゃない。それに、それを聞く相手はまりっぺじゃない」
「・・・」
「今は美貴ちゃんの心を取り戻すことが大切だよ」
「はい」

落ち着いた様子の愛ちゃんを見て、梨華ちゃんは私に視線を移した。
「美貴ちゃんは大丈夫だよ。だって、約束したじゃん。
美貴ちゃんは絶対に心を失ったりしない」

梨華ちゃんの言葉は、落ち着いていてしっかりしていて。
いつだって何かあったら泣き言を真っ先に言う梨華ちゃんの姿はそこになかった。


『あぁ。この人は姫なんだ・・・』


そういう思いが沸き起こると同時に、自分の存在が消えていきそうな気がした。
不安に陥りそうな私を支えてくれたのは、美貴ちゃんだった。


「会いたい・・・」


すごく美貴ちゃんに会いたいと思った。

「行こう?」

梨華ちゃんに差し伸べられた手を握らずに、私は立ち上がった。

「うん」
808 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:07
美貴ちゃんは、再びレグルスの館の地下牢に閉じ込められていた。

「ったく。しぶといガキね。心を食ったはずなのに」

意識の無い美貴ちゃんの頬にベガは噛み付いた。

「ガキのくせに、さっさと心を渡しな!」
「さ、させません!!」

ベガの前に現れたのは、小さい剣士。

「あらあら?おちびちゃん。何しにきたのよ。この臆病者が!!」

ベガに一括されて一瞬立ちすくんだこんちゃんは、レグルスにもらった石を握り締めた。

「あのバカ、人間なんかに渡しやがって」

レグルスの心を握り締めるように、こんちゃんは勇者の石を握った。

「ふ、藤本さんを放せ!」
「この子は、私の人形なんだよ!」
「放せ!!」
「つべこべ言ってるとあんたの心も食うわよ!!」

ベガの脅威に泣き出しそうになりながらも、こんちゃんは剣を抜いた。

「お願いします!!」
「しっかり握ってろよおちびちゃん」

剣はしゃべりだすと、光を放ちベガに向かっていった。


「う、うわぁぁぁ!!」


あまりの勢いにこんちゃんは剣を離してしまった。
コントロールを失った剣は、ベガの前に落ちた。

「おい!ちゃんとオレ様を捕まえろ!!」
「む、無理です!」

こんちゃんには、剣を手にする力が無い。
それに気がついてベガは高笑いをした。
809 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:08
「惨めね。力が無いってのは」

泣き出しそうになるのを必死にこらえて、こんちゃんは剣を手にしようと立ち上がった。

「あら?ここまでこれるのかしら?」

震えをこらえて、こんちゃんは歩き出した。
小さな剣士の勇気をベガは嘲笑すると、攻撃をしかけた。

「ブラックワールド」

あたりが一瞬で闇に落ちた。


「うわぁぁぁ!!」


闇の中からこんちゃんを刃が襲う。
決して傷つけることはなかったけど、恐怖が募る。
募る恐怖の中でこんちゃんは目を閉じた。

「コンコン・・・お願い。私にも勇気と力を下さい!!」

レグルスにもらった勇者の石を握り締めたこんちゃんの霊玉が光を放った。


「フラッシュ!!」


ついに、小さな剣士は覚醒したんだ。
それは、コンちゃんの・・・いや。こんちゃんの得意技。
闇は一瞬にして光に変わった。


「聖なる光よ!我に力を与えん!!」


天空に光の輪ができた。
そして、そこからドラゴンが現れた。

810 名前:勇気ある者 投稿日:2006/12/25(月) 01:09
「うわぁぁぁぁぁ!!!」

こんちゃんの雄叫びに答えるように、ドラゴンがベガに火を噴いた。

「ぎゃあぁぁぁぁ」


炎に包まれたベガを見て、こんちゃんは剣を拾った。


「おちびちゃん。なかなかやるじゃねぇか」
「は、はい」
「オレを美貴の額にかざしてくれ」
「はい」


こんちゃんは、泣き虫で弱虫な臆病者から勇敢な剣士に姿を変えた。


「藤本さん!!」


剣は美貴ちゃんの額に掲げると、まばゆいばかりの金色の光を放った。
一瞬目を閉じたこんちゃんの首筋に冷たい感触が伝わった。


「甘いわね。おちびちゃん?」


炎に包まれたはずのベガは、こんちゃんの背後を捉えていた。
こんちゃんの首筋にベガの短剣が触った。

「動くんじゃないよ。少しは成長したことは褒めてやるわ。
でもね?戦いは勢いだけじゃ負けるのよ」


こんちゃんの心から勇気のともし火が消えた。

811 名前:k・y 投稿日:2006/12/25(月) 01:13
川σ_σ|| <更新遅くなっちゃってごめんなさい。

補足説明です。

フラッシュ:コンちゃんのそしてこんちゃんの必殺技。
      天空に光を誕生させて聖獣を呼び出す。

ドラゴン:こんちゃんが操る聖獣。火を操って相手を攻撃する。
     
今回はこんちゃんが剣士として覚醒?しました。
812 名前:レス 投稿日:2006/12/25(月) 01:18
>>799 :名無飼育さん :2006/10/09(月) 22:30
  更新が遅くなってすみません。
  今回はこんこんが頑張ってくれてます。
  まだまだ、若輩者の剣士ですが、勇気を手にしました。
  が・・・しかしピンチ!
  次回もよろしくお願いします!

>>800 :名無飼育 :2006/10/09(月) 23:08
  更新遅くなっちゃってごめんなさい。
  ミキティはまだまだピンチです。
  こんこんはミキティを救えるのか?
  応援してあげてください!
  次回もよろしくお願いします!

次回はなるべく早く更新できるように頑張ります!
これからもよろしくお願いします!!
813 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/26(火) 01:42
更新乙です!
毎回毎回展開が面白くて大好きです。
早く更新見たいですが作者さんに無理のナイように。
がんばってください。
814 名前:名無飼育 投稿日:2006/12/26(火) 14:13
待ってました〜!!
こんこん頑張りましたね!!
こんこんも作者様も応援してます!!
815 名前:かなぁ 投稿日:2007/02/04(日) 14:23
頑張って!!(笑)
816 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/05(月) 20:00
(笑)とか付ける意味がわからない。
冷やかしてるのかと思われるぞ。あとレスはsageが基本。


首を長くして待っているので、作者様のペースで頑張ってくださいね
817 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:51
ベガがこんちゃんの背後を捉えた瞬間に、ドラゴンは姿を消した。
こんちゃんの勇気が消えたからドラゴンが消えたんだ。


絶体絶命。こんちゃんは恐怖で目を閉じた。


「こんこんを離して!!」


梨華ちゃんの声が響いた。
絶体絶命の窮地に追い込まれたこんちゃんの元に、私たちが駆けつけたんだ。


「動くんじゃないよ!このガキの命がかかってんだよ!」


ベガの言葉にみんななすすべなくその場に足止めされた。


「みんなどいて」


ごっちんだった。
弓矢を構えたごっちんを見てベガが笑った。

「一歩間違えば、その弓がこのガキの命を奪うわよ?
  それとも、このガキもろとも私をやろうっての?」

ベガとこんちゃんの距離は1pにも満たない。
ごっちんは息を深く吸うと弓を引いた。

「仲間を裏切るわけ?それとも、この子が人間だから?
 殺してもいいってわ」け?」

黙ったままのごっちんの代わりにこんちゃんが答えた。

「黙れ!私は後藤さんを信じてる!!」
「生意気なガキ!!」


反抗的なこんちゃんにベガの手が動いた。


「ぎゃあぁぁぁぁ」


818 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:52
こんちゃんの喉元を掻っ切る前に背後からベガは切りつけられた。
深手を負ったベガはすぐに姿を消した。


「美貴ちゃん!!」


美貴ちゃんだった。
思わず声を上げた私に美貴ちゃんは優しく微笑み返してくれた。


「こんこん!」


恐怖と緊張で限界に達したこんちゃんは気を失った。
美貴ちゃんは幼い剣士をしっかりと支え、自分の剣を受け取った。


「ありがと」

819 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:53
美貴ちゃんはこんちゃんをそばにいた保田さんに託し真剣な表情でごっちんの前に立った。

「なんで・・・こんこんに武器を向けた?」
「助けたかった」

「一歩間違えばこんこんは!」

ごっちんの胸倉をつかもうとした所で梨華ちゃんが美貴ちゃんを抑えた。

「ごっちんは、こんこんを助けようとしたんだよ」
「うるさい!」

美貴ちゃんに振り払われた衝撃で梨華ちゃんは地面に倒れた。

「姫!藤本さん!!」

愛ちゃんが美貴ちゃんにつかみかかった。

「愛ちゃん止めて!」

梨華ちゃんに制されて愛ちゃんは手を離した。


「こんこんにとって、あんたは憧れだ。
 だから、絶対に失望させないでほしい」


美貴ちゃんの真剣な眼差しに、ごっちんの顔から笑顔が消えた。
そのとき、私たちを包んでいたレグルスの館が消えた。

「レグルスがこの森を出て行ったんだ」

矢口さんがレグルスの気配が消えたことを感じ取ったみたい。


「ミキティ?ごっちん?みんなに、真実を話してもいい?」


二人の顔が一瞬強張ったのがわかった。
「知らなくてもいいことはある。でも話したほうが、二人の気持ちが軽くなると思う」
「知らなくていい」
美貴ちゃんの言葉に、矢口さんはごっちんを見つめた。
ごっちんは優しく微笑んで、首を振った。
820 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:54
「まりっぺ?話さなくていい」

梨華ちゃんが優しく二人の手を握った。

「知らなくていいなら、知る必要は無いよね?」
「ありがとう」

ごっちんの笑顔は底抜けに悲しかった。


私たちが、その真実を知るのはもっとずっと先のこと。
この先の未来に、もっと悲しい現実が待ち受けていることなんて私たちはまだ知らない。


「美貴ちゃん!」


全てに決着がついて安心したのか、美貴ちゃんは気を失った。
そばにいた梨華ちゃんが美貴ちゃんを支えて、保田さんがすぐに様態を見た。

「まずい。出血多量・・・」

美貴ちゃんは、レグルスやベガと連戦して大怪我を負っていたんだ。

「美貴ちゃん!」

梨華ちゃんの表情が強張った。
でも、梨華ちゃん以上に私は泣き出しそうな顔をして保田さんにすがった。


「保田さん!美貴ちゃんを助けて下さい!!」
「わかってる」

821 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:56
それから、テントを張って美貴ちゃんとこんちゃんはそれぞれのテントに寝かされた。
こんちゃんにはごっちんが、美貴ちゃんには私が付き添った。

「柴ちゃん?」
「あ、梨華ちゃん。こんちゃんは?」

「うん。大丈夫そう。ごっちんも見守ってるし」
「そう。よかった」

「美貴ちゃんは?」
「まだ、眠ったまま」

「私が、診てるよ。柴ちゃんも少し休んで?」
「ううん。平気」

「・・・柴ちゃん・・・美貴ちゃんのこと好き?」


梨華ちゃんがそう思うのも当然だと思う。
でも、今の私にそんな言葉は虚しく聞こえた。


「好きって・・・好きなわけないじゃん」
「でも」

「好きになんかなれるわけないじゃん」
「私のことだったら、気にしないで」

「・・・・」
「確かに、向こうの世界では美貴ちゃんのことが好きだったけど・・・」

「・・・・」
「だから」

「好きになんかならないよ!!」


梨華ちゃんの顔が強張ったことで、大きな声を出している自分に気がついた。


「ごめん。でも、好きじゃないから・・・好きになったら・・・戻れなくなるじゃん」



「そっか・・・私たち、いつか元の世界に戻るんだもんね・・・」



梨華ちゃんの勘違いがこんなに残酷に思えたことはなかった。


822 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:57
視界がだんだん涙でにじんでいった。

「柴ちゃん?」

梨華ちゃんが私の涙に気がついた。


「ごめん。なんでもない。ちょっとホームシック」


そういって、ごまかした私の手を梨華ちゃんはしっかりと握り締めた。


「必ず、帰ろうね」



「・・・・」



その言葉には答えることはできなかった。


823 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:57


梨華ちゃん・・・私、帰る場所なんないんだよ?



梨華ちゃん・・・私、もうすぐ消えなくちゃいけない運命なんだよ?



梨華ちゃん・・・自分がいなくなるって・・・そんなこと想像しただけで・・・それだけで、この世の中が破滅しそうなほど恐ろしいんだって知ってた?



梨華ちゃん・・・なんで私なの?




梨華ちゃん・・・梨華ちゃん・・・梨華ちゃん・・・



824 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 00:58


「ごめん。出てってもらえるかな?」


私たちの会話に急に入ってきたのは美貴ちゃんだった。

「美貴ちゃん!」

気がついたことに驚く梨華ちゃんに美貴ちゃんは同じ言葉を口にした。

「ごめん。あゆみと二人になりたいんだ。出てってもらえるかな?」
「え・・・」
「頼む」

困惑しつつも、梨華ちゃんはテントを出た。
梨華ちゃんが出て行ってすぐに美貴ちゃんは私を抱きしめた。


「ぅぅぅ」


震える私をきつく強く抱き寄せて、美貴ちゃんは私の額に優しいキスを落とした。


「好きだよ」


美貴ちゃんがくれたその言葉は、たったそれだけなのに私の心を満たした。


「美貴は、君のためにここにいる。
 だから美貴がいる限り君は消えたりしないよ。
 美貴が必ず存在証明させるから」


「美貴ちゃん・・・」
「その時好きになってもらうよ」

「え?」



「好きになれる日が必ず来るから」



美貴ちゃんは、また私の額にキスを落とした。


825 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:00
「姫?」

テントから出た梨華ちゃんを待っていたのは愛ちゃんだった。

「あ、愛ちゃん・・・」

心なしか元気の無い梨華ちゃんに気がついて愛ちゃんは言葉を探した。

「藤本さん、大丈夫でしたか?」
「うん・・・柴ちゃんと二人になりたいって」

墓穴をほったことに愛ちゃんはうつむいた。

「最近、柴ちゃんの気持ちわからないんだ」
「姫・・・」

歩き出した梨華ちゃんを愛ちゃんは後から見守るように付き添った。

「なんか元気ないし。この世界に来たこと後悔してるのかな・・・」
「そんなことは無いですよ!」

「どうして?」
「だって・・・柴田さんは・・・」

「柴ちゃんは確かにお友達だけど、本当は全然関係ないし・・・
 向こうの世界で普通に女子高生やってた方がよかったって思ってると思うし・・・」
「でも、柴田さんは誰よりも姫を近くで見守っている存在なんです」

愛ちゃんは、きっと私の正体を知っていたんだ。
次期国王の宿命とともに霊玉の話、八剣士の話、
そういうこと全部聞かされていたんだ。

「でも、だからって・・・」
「大丈夫ですよ。柴田さんは姫の味方です」

「でも、どんどん遠くに行っちゃうよ。
 柴ちゃんも、美貴ちゃんも・・・
 大切な人がどんどん遠くにいっちゃう。
 みんな私から離れちゃうよ!」


感情が高ぶって涙が溢れて、梨華ちゃんは手で顔を覆ってうずくまった。


「よっすぃだって・・・もうきっと戻ってこないよ・・・」


その言葉に愛ちゃんの心が大きく乱れた。
826 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:00
「愛ちゃん?」


愛ちゃんは背後から梨華ちゃんを抱きしめた。
全てを包み込むように。優しく強く。



「ダメですか?」
「え?」


「私じゃダメですか?」
「愛ちゃん?」


「私じゃ、吉澤さんの代わりになりませんか?」
「それは・・・」


「私は姫のそばにいます!離れたりしませんから!」」
「愛ちゃん・・・」



「好きです・・・姫が好きです!私が姫を守りますから!!」
「愛ちゃん・・・私・・・・」



梨華ちゃんの戸惑いに気がついて愛ちゃんは身を引いた。


「す、すみません。感情的になって」



「・・・・・」


827 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:01
「あ〜あ。せっかく戻ってきたのに。いい雰囲気になっちゃって」

声の主に二人は驚いて振り返った。

「よっすぃ!」
「吉澤さん!!」

梨華ちゃんが駆け出すよりも早く、愛ちゃんはよっすぃに殴りかかった。


「いってぇ!」


なおもよっすぃに殴りかかろうとする愛ちゃんを梨華ちゃんが止めた。


「何してたんですか!姫がどんなに・・・どんなに心を痛めたか!!」


愛ちゃんの言葉をよっすぃは紳士に受け止めた。

「ごめん。殴ってすむなら殴れよ」

よっすぃの真剣な眼差しに愛ちゃんの興奮も冷めていった。


「よっすぃのバカ!」


代わりに梨華ちゃんがよっすぃの頬を叩いた。

「ごめん」
「バカ!!」

泣き出した梨華ちゃんをよっすぃは抱きしめた。

「ごめん」


その様子を見て愛ちゃんは身を引いた。


「みんなを呼んできます」


828 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:02
「会いたかったんだから!」
「うん。うちだってすっげぇ会いたかった」

「バカよっすぃ!何してたのよ今まで!!」
「こいつをもらいに」

よっすぃはそういって、梨華ちゃんにプリンセスソウルを手渡した。


「何これ?」
「お守り。梨華ちゃんを守ってくれるんだって」

「え?」
「これで、朱雀だろうが白虎だろうがなんだって召喚しても平気だよ」

「よっすぃ・・・私のために?」
「まぁ・・・姫を守るのがナイトの役目ですから?」


いたずらに笑うよっすぃに梨華ちゃんは抱きついた。

829 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:04
「よっすぃ!!うりゃあぁぁぁ!!!」

二人のもとに、矢口さんがいち早く駆けつけた。

「お前何やってたんだよ!!」

ロッドを構えた矢口さんを見てよっすぃは立ち上がった。

「ま、待ってよ!いきなり攻撃は無いっしょ?」
「お前は生かしておけない!大バカヤロウだ!!」

「うわぁ。やぐっつぁんごめん!!うちにも色々事情ってもんがあって!!」

無邪気に戯れる二人の様子に梨華ちゃんは心から安心を取り戻した。
次第に、全員が集まって久々にみんなの心が同じ方向を向いた。

「よっすぃ・・・あんたその手・・・」

保田さんがよっすぃの左手に気がついた。

「ちょっとね。白虎ちゃんに食われちゃって」

へらへら笑うよっすぃに保田さんの表情が厳しくなった。

「笑ってる場合じゃない!何してんのよ!!見せな!!」
「無理無理。神様だって治せなかったんだ」

笑っているけど、よっすぃの腕はただ事ではなかった。
真っ黒に焼け爛れた左手は再起不能であることを知らしめた。

「それより、そこらへんの人たち、うち知らないんだけど?」

よっすぃはこんちゃんや美貴ちゃんを指差した。

「ってか、お前は何度か会ってるけどね。夢の中で・・・」

美貴ちゃんのことをよっすぃは知っているんだ。
梨華ちゃんが向こうの世界で好きだった人だってことも。

「こっちは、こんこんでこっちが美貴ちゃん」


梨華ちゃんの簡単な説明に二人は頭を下げた。
830 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:06
「へぇ。こんこん。人間になったんだ?」

その言葉にみんなうつむいた。

「コンちゃんは、亡くなったの」

私が口を開いた。

「ウエストタウンでリゲルに襲われた時に」

私が握った拳を美貴ちゃんの手が優しく包み込んでくれた。

「コンちゃんは、紺野あさ美ちゃんに霊玉を託したの。
 玄武の巫女との聖約期間が終わったから、
 コンちゃんは息をひきとったの」
「コンコンからこんこんに霊玉が預けられたってわけね」

よっすぃは何となく理解してくれたみたい。
脅えるこんちゃんに右手を差し出した。
でも、こんちゃんは後ずさりして私の後ろに隠れてしまった。

「おいおい。こいつ大丈夫?
 剣士のくせになんか弱そうなんだけど?」

よっすぃの言葉にこんちゃんはますます小さくなっちゃった。


「こんこんは、立派な剣士だよ」


梨華ちゃんに言われてよっすぃはこんちゃんを見つめた。

「ふ〜ん。じゃあまぁ、よろしくってことで。
 うちは吉澤ひとみ。一番強くてかっちょいい剣士だよ!」
「ばっかじゃないの」

よっすぃの冗談に美貴ちゃんは嘲笑して冷たい言葉を吐き捨てた。

「お前、むっかつく!」

ムキになったよっすぃを見て美貴ちゃんはますます呆れ顔になった。

「ムキになんなよバ〜カ」
「ってめえ!藤本勝負だ!!」

「ウザッ」

立ち上がろうとしたよっすぃを保田さんが止めた。

「すぐにムキになるな。その怪我を治すことが先でしょ!」
「圭ちゃん止めないでくれ!
 こいつに一発食らわせない限りうちの怒りは収まらないんだぁぁ!!」


「だから、吉澤さんはアホやって言われるんですよ」


今度は愛ちゃんが呆れたようにつぶやいた。


その言葉に、みんな少しだけ笑った。


みんなが同じ方向を向いて笑うのって、
なんだかすごく久しぶりな気がした。


その笑い声はすごく心地よく心に響いて。
みんなの笑顔は見ているだけで幸せを呼んでくる気がして。



この時間がかけがえのないものなんだって、それぞれが感じていた。


831 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:06
「その怪我・・・治るかもしれないよ?」


矢口さんが何かを思いついたみたい。


「無理だよ。神様も無理だったんだ」
「できるよ。朱雀の力なら」


矢口さんが取り出した霊玉は赤い光を放っていた。


「圭ちゃんも出して?」
「あ、うん」

保田さんの霊玉も赤い光を放っていた。


「なっちが呼んでる」


矢口さんが霊玉を梨華ちゃんに掲げた。

「待ってください!姫がまた!!」

愛ちゃんが止めに入った。
きっと、また朱雀を召喚したことで梨華ちゃんの体に危険が及ぶことを心配したんだ。

「大丈夫だよ。よっすぃにもらったお守りがあるから」

梨華ちゃんは愛ちゃんをなだめるように、プリンセスソウルを見せた。

「二人とも!行くよ!!」

梨華ちゃんの掛け声に、矢口さんと保田さんが一歩前に出た。


832 名前:それぞれの思い 投稿日:2007/02/28(水) 01:07


「赤き光よ、我を包みたまえ。
    心身の契約のもとに、そなたを召喚す!」


梨華ちゃんの呪文が天に木霊した。
それに応じるように朱雀の甲高い声が響いた。



「安部さんお願い!よっすぃの怪我を治して!!」



朱雀は、天を数回周遊すると私たちのもとに降り立った。

「矢口。圭ちゃん。呼んでくれてありがとう。姫、お願いします」

朱雀の優しいぬくもりはそばに居る私たちまで心地よい気分にさせた。


「フェニックスエナジー!!」


朱雀がよっすぃを包み込んだ。


赤い光がよっすぃを包み込む。


朱雀は何度か天に向かって甲高い鳴き声を上げた。


その光景は、幻想的で私たちは朱雀の姿に見とれた。


数分の後に、朱雀はよっすぃをはなした。


「すっげぇ・・・」


よっすぃの手は完全にもとの状態に戻されていた。
よっすぃは、手の感覚を確かめるように見つめては動かしていた。

「あんたすごいよ!」


「しかし、これは一時的な措置でしかありません。
 白虎との契約であなたは腕を渡しました。
 10日以内に白虎の力を手に入れてください。
 そうすれば、腕を取り返せます」


そう伝えると朱雀は天に戻っていった。

「10日もあれば十分だよ!みんな行こう!」



そして私たちは、白虎の森へ向かった。

833 名前:k・y 投稿日:2007/02/28(水) 01:10
川σ_σ|| <更新遅くなっちゃってごめんなさい。

 本当に本当にごめんなさい!!
 今回は、ようやく全員集合です♪
 
プリンセスソウル:梨華ちゃんの力を最大限に引き出し、四神を召喚
         する時にかかる、負荷を軽減させてくれる。
         四神を操るためには欠かせない力を秘めたペンダント。

834 名前:k・y 投稿日:2007/02/28(水) 01:14
>>813 :名無飼育さん :2006/12/26(火) 01:42
  遅くなっちゃってすみません。
  今回も読んでもらえてるとうれしいです(汗
  いよいよ白虎の森へ突入します!
  今後の展開も楽しみにしていてもらえれば・・・
  作者も頑張りますので!


>>814 :名無飼育 :2006/12/26(火) 14:13
  更新遅くて本当にすみません。
  こんこん頑張りました!
  まだまだ、幼い剣士ですが、今後も
  ご期待下さい!!
  次回もお願いします!

>>815 :かなぁ :2007/02/04(日) 14:23
  更新遅くてすみません・・・
  もう少し早めを心がけます。

>>816 :名無飼育さん :2007/02/05(月) 20:00
  ありがとうございます。
  待ってもらえている人がいる限り、
  絶対に更新はしますので!!
  早めを心がけます。
  次回もお願いします!!!
835 名前:k・y 投稿日:2007/02/28(水) 01:17
 今回、更新が本当に遅くなってしまったことを、心よりお詫びします。
どうしても、決まらない部分がありまして、ちょっと伸び伸びになって
しまいました。話の方向性は大枠で決まっているものの、細かい設定を
決定しつつ書いています。
 それぞれのキャラを生かしたいと思うと、なかなか思うように進まな
くなってしまいました。
 とはいえ、もう少し早めの更新を心がけますので、これからもよろし
くお願いします。

 読んでいただいてる方々に、心から感謝しています!
836 名前:k・y 投稿日:2007/02/28(水) 01:18
あ・・・伸び伸びではなく、延び延びでした。
ふがいない作者ですみません。。。。
837 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/03/01(木) 12:48
学校さぼって一気に読んでしまった・・・
なんて楽しいんだこの小説!
じゃ今からいってきまーす
838 名前:名無飼育 投稿日:2007/03/02(金) 00:33
待ってました〜!!
柴ちゃんセツネ〜YO
応援してますんで。
作者さんのペースで待ってます。
みんながんばれ!
個人的には愛ちゃん頑張れ〜!!
839 名前:名無飼育 投稿日:2007/03/02(金) 00:34
すみません。
久々で興奮して。。。
ageちゃいました。
840 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/03(土) 02:15
待ってました〜!!
朱雀かっけぇ!
841 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:27
「なんだこの字?」

再び戻って
きたトリックロード。看板に書かれた字を見てよっすぃが首をかしげた。

「ようこそ、白虎王国へ・・・ニャー!って書かれてるらしいよ」

矢口さんが苦笑気味に教えた。

「なにそれ。やぐっつぁんふざけてんの?」
「こんこんが訳してくれたの!」

そう言われてよっすぃはこんちゃんに疑わしい眼差しを向けた。

「ほ、本当にそう書かれてるんです」

こんちゃんは、私の後ろに隠れてしまった。

「とにかく入ろう!」

梨華ちゃんに言われてみんな中に入っていった。

842 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:27
「なんだこの字?」

再び戻って
きたトリックロード。看板に書かれた字を見てよっすぃが首をかしげた。

「ようこそ、白虎王国へ・・・ニャー!って書かれてるらしいよ」

矢口さんが苦笑気味に教えた。

「なにそれ。やぐっつぁんふざけてんの?」
「こんこんが訳してくれたの!」

そう言われてよっすぃはこんちゃんに疑わしい眼差しを向けた。

「ほ、本当にそう書かれてるんです」

こんちゃんは、私の後ろに隠れてしまった。

「とにかく入ろう!」

梨華ちゃんに言われてみんな中に入っていった。

843 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:27
「なんだこの字?」

再び戻って
きたトリックロード。看板に書かれた字を見てよっすぃが首をかしげた。

「ようこそ、白虎王国へ・・・ニャー!って書かれてるらしいよ」

矢口さんが苦笑気味に教えた。

「なにそれ。やぐっつぁんふざけてんの?」
「こんこんが訳してくれたの!」

そう言われてよっすぃはこんちゃんに疑わしい眼差しを向けた。

「ほ、本当にそう書かれてるんです」

こんちゃんは、私の後ろに隠れてしまった。

「とにかく入ろう!」

梨華ちゃんに言われてみんな中に入っていった。

844 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:28
「クイズです。パンはパンでも食べられないパンってな〜んだ?」

トリックロードに入った私たちにいきなり天から声が聞こえた。

「何だ?」

みんなが辺りを見渡すと、突然天からマジックとフリップが落ちてきた。

「答えを15秒以内に記入しなさい。もちろん、カンニングはなしよ」
「な、なんなんだよ!」

よっすぃが天に向かって声を上げた。

「時間がありませんよ。タイムオーバーも失格になりますよ」

その声に、慌ててみんなペンを滑らせた。


「3・2・1・・・・タイムアップ!」


天の声に、みんな自分の解答を掲げた。

「正解は・・・フライパン!」
こんなの誰も間違えないよ・・・って思っていたやさきに、隣で固まる二人が・・・
「失格者、高橋愛・保田圭!」
二人の足元に黒い影が現れた。
「普通間違えないだろ!」
よっすぃに言われて、何かを言い返そうとした愛ちゃんの足元に穴が開いた。
「「うわぁぁぁ!!」」
保田さんと愛ちゃんはそのまま穴に飲み込まれていってしまった。
「ちょっと!何するのよ!!」
「知力無き者通るべからず」
「知力ってなぞなぞじゃん!」
梨華ちゃんの抵抗虚しく次のお題に突入した。
845 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:30
「クイズです。世界の中心にいる虫ってな〜んだ?」
「え?虫?え?え?」

よっすぃが慌ててマジックを落とした。

「あ!」

落としたマジックはそのまま消えてなくなった。

「マジック返せ!」
「マジックやフリップを落とした場合も失格とみなします」

「え?ちょっと!!」

よっすぃの足元も闇に包まれて、奈落の底に落ちていった。


「みんなをどこへやったのよ!!」


抗議する梨華ちゃんをたしなめるように天の声が響いた。

「そんなに、感情をむき出しにしては、頭が働きませんよ?さぁ!タイムアップ!!」

慌てて回答を書き込んだ私たち。

「正解!!答えは『蚊』です」
「それよりみんなを!」

梨華ちゃんは正解したことよりも、よっすぃたちの行方を気にした。

「失格者は奈落の底へ落ちます。暗闇だけが支配する世界。
失格者が救われる道は二つだけ。
トリックロードを進むことを諦めて、もと来た場所に戻ること。
もう一つは、みなさんの誰か一人でもいいから、このトリックロードから抜け出すこと」

「なぞなぞだったら得意なんだから!一人でもいいならなんとかなるわよ!」

「なるほど。頼もしい。それでは、ウオーミングアップは終わりにして、本題に参りましょう」
「え?ウオーミングアップだったの?」

「なぞなぞは、頭の運動ですよ。
では、みなさん奥へ進んで下さい。
ここからは、ジュゲム君たちがみなさんの知力を試します」

天の声が消えて私たちの前に道が開かれた。
846 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:31
「進めば・・・いんだよね?」

梨華ちゃんが恐る恐る歩き始めた。

「ん?こんちゃん?」

みんなが進もうとしているのに、こんちゃんは私にしがみついたまま動こうとしなかった。

「もしも・・・みんなが不正解だったら奈落の底に落とされるんですよね?」
「・・・うん」

「そんなことになったら、一生暗闇・・・私!」

こんちゃんは、奈落の底にすっかり恐怖を抱いているみたいだった。

「そんなこと言ってたら進まないじゃん!」

美貴ちゃんが、呆れ顔でこんちゃんの頭を叩いた。

「でも!!」

すっかりパニックになっちゃったみたいで、こんちゃんはその場にうずくまった。

「こんこん?大丈夫だよ!」
「そうそう!オイラたち、今までだったすっごく危ない目にあったけど無事だったし!」

梨華ちゃんや矢口さんもこんちゃんを励まそうとするんだけど、こんちゃんはひざに顔を埋めたたまま動こうとしなかった。

「こ〜んこん?こんこん♪こんこん♪」

ごっちんがこんちゃんの隣にうずくまった。

「お前まで!」

美貴ちゃんに言われてごっちんは笑顔を見せた。

「焦っちゃダメだよ。焦ると頭が働かないよ。ね?こんこん?」
「え?」

ごっちんの不思議な思考回路にこんちゃんは顔を上げた。

「こうやって、丸くなれば落ち着くよ」
「そういうことじゃないだろ」

美貴ちゃんはすっかり、呆れたみたいで近くの柱にもたれかかった。

「奈落の底に落ちても、みんないるからきっと楽しいよ」
「ゴトーさん・・・でも」

「それに、落ちでも上がればいいんだしさ」
「え?」

「ハリスホークが助けてくれるよ。ね?だから大丈夫!」

847 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:32


ごっちんの言葉は不思議。
ごっちんの行動は不思議。


でも、ごっちんの言葉や行動には素敵な魔法が隠されているんだ。
だから、こんちゃんの心の暗闇にも光が照らされたんだ。


ごっちんの言葉に落ち着いたみたいで、こんちゃんは立ち上がった。


848 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:33
「よし!行こう!」
「はい!」

梨華ちゃんの言葉にこんちゃんは元気よく答えた。

「一件落着」

矢口さんが先に歩き始めた。
それに続いて、梨華ちゃんとこんちゃんも歩き始めた。

「ったく。世話がやける」
「やけるやける♪」
「行こう?」

呆れ気味の美貴ちゃんと、状況がわかっていたのか相変わらずの笑顔を見せるごっちんに声をかけて私も歩き始めた。

「うわぁぁぁ!!」

先を歩いていた矢口さんが声を上げた。

「お化け〜!!!」
「失礼な!!」

梨華ちゃんの言葉にお化け?が答えた。


「はじめましてジュゲム君です」


小さくて、青白くて、頭が大きくて体がもやしみたいに細い人間の形はしてるんだけど、
明らかに人間ではない奇妙な生物がそこにいた。


「僕と対決です」


その言葉に矢口さんがロッドを構える。

「違う違う。知力で対決です。行きますよ」
「臨むところよ!」

梨華ちゃんにが身構える。


「では行きます!私は全能の神です。私には出来ないことがありません。
私が全能の神では無いことを証明してください」


言葉の意味を理解するのに、しばらくみんなは固まった。
849 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:35
「つ、つまり出来ないことをさせればいいんでしょ?」

梨華ちゃんが何かを思いついたみたい。

「逆立ちして、早口言葉をいいながら、ここにいる全員の似顔絵を書いて?」

梨華ちゃんナイス!って思っているところに、ジュゲム君は逆立ちを始めた。

「生麦生米生卵。隣の客はよく柿食う客だ。
赤巻紙青巻紙黄巻紙。坊主が屏風に上手に坊主の絵を書いた」

見事な早口言葉を言い終えてジュゲム君は元の体制に戻った。


「はい。できましたよ」


私たちに差し出されたのは、全員の似顔絵。しかも完璧。


「神業・・・」


梨華ちゃんが呆気にとられている間に矢口さんが前に出た。

「トラになれ!」
「簡単簡単」

「まりっぺもっと難しいこと言わなきゃダメだよ!」
「そうだった」

「目を閉じたままで、私が書いた字を当てて!」

「空を飛べ!」

「ジャンプしながら、あの岩を弓矢で打ち抜いて!」

「10分間水槽に顔をつけろ!」


次々に梨華ちゃんと矢口さんが無理難題を出すんだけど、
ジュゲム君は次々になんなくクリアしてしまった。

850 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:36
「一時間経過です」

一時間が過ぎたところで、ジュゲム君が私たちを見渡した。

「では、この中から一人を脱落させます」
「え?そんなこと聞いてない!!」

梨華ちゃんの抵抗をジュゲム君は聞き入れずに、矢口さんに手をかざした。

「ルールです。一時間経過ごとに一人脱落。
脱落者はあなたたちで決めてください。
3分以内に決まらない場合は、この人を脱落させます」
「この先のことを考えたら、頭が良くて魔法も使えるやぐっつぁんは必要だよ」


ごっちんが笑顔でそう言った。


「じゃあ、ごっちんが脱落する?」


美貴ちゃんの言葉に、こんちゃんの顔が曇った。


「あんたが、いないとこいつダメみたい。
美貴が脱落ってことでいいよ。
正直あんまり頭使うの得意じゃないし。
こんこん?頭いいってところを見せつけてやれよ!」


「藤本さん・・・」


美貴ちゃんが潔くジュゲム君の前に立った。

「美貴ちゃん!」

引き止めようとする前に、ジュゲム君によって美貴ちゃんの姿は消された。

「問題が解けなければまた一時間後に誰かが脱落しますよ」


851 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:38
「うぅぅぅ・・・」

梨華ちゃんも矢口さんもネタ切れのようで頭を抱えた。

「あ、あの!」

こんちゃんが前に出た。

「矢口さん!」
「はい?」

こんちゃんは矢口さんに何か耳打ちをした。

「OK」

矢口さんは何かを納得したみたいで、ロッドを構えた。


「出でよ!ストーン!!」


矢口さんの呪文によって現れたのは、巨大な岩石。

「あ、あの・・・・あの!」

こんちゃんが勇気を出してジュゲム君の前に立った。


「ここにある石は、神様にも持ち上げられない重たい石です!
あなたには持ち上げられることができますか?」


こんちゃんの質問にジュゲム君の顔色が変わった。


「持ち上げられなければあなたは全能では無い!
持ち上げたとしたらあなたは神では無い!!」



こんちゃんの言葉にジュゲム君は姿を消した。


「あなたの勝ちです。先へどうぞ」


「すごいすごい!!こんこんすごい!!」

梨華ちゃんに抱きつかれたこんちゃんは、照れて顔を真っ赤にさせた。

「こんこんナイス!先に進もう!」

矢口さんに言われて私たちは再び先を急いだ。

852 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:39
「またまた、お出ましか」

少し進んだところに、またジュゲム君が待ち構えていた。

「勝負です」
「かかってきなさい!」

梨華ちゃんが前に出た。

「勝負は簡単。ここに25枚のコインがあります。
お互いにコインを取り合って、最後の一枚をとった方が負けです。
コインは最大3枚を一度にとることができます」


「よし!」


梨華ちゃんがジュゲム君の前に立った。

「先攻、後攻どちらにしますか?」
「もちろん先よ!」

梨華ちゃんがさっそく3枚とった。ジュゲム君は1枚。
続いて梨華ちゃんも1枚。ジュゲム君は3枚・・・・


「さぁ?最後の1枚ですよ?」


負けたのは、梨華ちゃんの方だった。

「なんで?うぅぅぅ・・・」
「よし!オイラがやる!」

続いて矢口さんが前に出た。
でも、結局最後の一枚をとったのは・・・

「くっそぉ!!」

矢口さんの方だった。

「言い忘れていましたが、このゲームは負けた方が失格です。
あなた方二人を奈落の底に落とします」
「ちょっと!そんなの聞いてない!!ルール違反よ!!」

「そうだそうだ!!」

梨華ちゃんと矢口さんに激しく抵抗されて、ジュゲム君は困り顔になった。


「わかりました。特別ルールです。一人だけを失格とします。
メンドクサイなぁ。じゃあ、あなたが失格!!」


有無を言わせずにジュゲム君は矢口さんを消した。

「ちょっとぉ!!」
「梨華ちゃん、落ち着いて」

抵抗する梨華ちゃんを私が止めた。

「でも、柴ちゃん!」
「一時間経っちゃうよ」

私に言われて梨華ちゃんは我に返った。

「一時間ルールもあるんでしょ?」
「もちろんです」

853 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:40
時間が無い。ここで私が勝負してもきっと失格になるだけ。
私はこんちゃんの背中を押した。

「こんちゃん。お願い!」
「え?」

「こんちゃんしかできないよ。お願い」
「でも・・・」

「大丈夫。落ち着いて考えて?」

私はこんちゃんの手を握り締めた。

「・・・はい」

少し自信無いようだったけど、こんちゃんはジュゲム君の前に立ってくれた。


「先攻、後攻どちらを選びますか?」
「・・・後攻」


こんちゃんとジュゲム君の勝負が始まった。
ジュゲム君が1枚。こんちゃんが3枚。ジュゲム君が2枚。
こんちゃんが2枚・・・


「私の勝ちです」


最後の一枚は、ジュゲム君の番だった。

「25ということは、4で割れば1余る。
合計を4枚になるように取り続ければ、
必ず相手が最後の1枚を取るんです」


こんちゃんに見破られてジュゲム君は姿を消した。


「こんこんすごい!!」


梨華ちゃんに抱きつかれたこんちゃんはますます顔を赤くして、すぐに離れた。


「こんちゃんナイス!」
「はい!」


こんちゃんはハニカミつつ、笑顔を見せてくれた。

854 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:42
洞窟は奥に進むにつれて暗くて陰湿な雰囲気が増していった。


「何かあるよ」


梨華ちゃんが、岩の上に置かれた天秤とコインに気がついた。


「勝負です」


またまたジュゲム君の登場みたい。


「そこに、9枚のコインがあります。
その中に一つだけ偽者が混じっています。
天秤を使って偽者を見つけ出してください。
ただし、天秤を使えるのは二回だけです」


「こんこん?わかる?」


今度は、梨華ちゃんも始めからこんちゃんに頼るみたい。

こんちゃんは、しばらく右上を見上げて何かを考えている風だったけど、すぐに天秤の前に立った。
なんだか、勇敢な剣士みたいに凛々しい顔になってきた。


「まず、コインを3枚ずつ3組に分けます。
1組目と2組目の重さを比べます」


こんちゃんが3枚ずつのコインを天秤に乗せた。
天秤は少し揺れたけど、両腕を等しい高さに留めた。


「釣り合ったということは、この2組の中に偽者はありません。
では、この3枚の中に正解があるということです。
この3枚のうち2枚を天秤に乗せます。
答えは、そこでわかります。
もしも釣り合ったら、この1枚が偽者」


こんちゃんは極めてスマートにコインを天秤に乗せた。
なんだか、推理小説に出てくる名探偵みたいにスマートでかっこよく見えた。

天秤は、すぐに答えを出した。
あからさまに答えを知らせるように、左腕が下がった。

「これが、偽者です!」


こんちゃんにあっさり見破られてジュゲム君は姿を消した。


「こんこんがいれば無敵だね!」


梨華ちゃんは意気揚々と前に進んだ。

855 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:44
「きゃあ!!」

先に進んだ梨華ちゃんはなぜかおりに閉じ込められていた。


「何するのよ!」


ジュゲム君に向かって私は剣を構えた。

「お前を火あぶりか縛り首で死刑にする。
どちらにするかはもう決めたし、絶対に変えない。
私がどちらにしたか当ててみろ。
当たれば火あぶり、外れれば縛り首にする。」


ジュゲム君の宣告に梨華ちゃんが泣き顔になった。

「意味わかんない!!どっちにしろ死刑じゃん!!なんでよぉ!!!」
「梨華ちゃんを解放しなさい!!」

剣を抜いた私を見て、ジュゲム君は口を開いた。

「この洞窟で攻撃をすることは反則に当たる。お前失格!」
「柴田さん!!」

私はジュゲム君によって消されてしまった。
私がいなくなったことでこんちゃんの恐怖心が再び目覚めた。


「さあ!答えを出せ!!」


ジュゲム君に言われて、こんちゃんは再びうずくまって、ひざに顔を埋めてしまった。


「こんこん!お願い!!」


梨華ちゃんがすがるような声でこんちゃんに呼びかけたけど、こんちゃんは恐怖の闇に迷い込んでしまったようだった。


「一時間たったら、一人が失格になるぞ?」
「こんこん!!お願い!!私じゃわかんないよぉ!!」


梨華ちゃんの言葉はこんちゃんには不安を募らせるだけにすぎないようだった。
856 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:45
「こんこん?勇気の石を出して?」


ごっちんが見かねてこんちゃんの頭を優しく抱きしめた。


「後藤さん・・・」

こんちゃんは、腰のポケットからレグルスにもらった勇者の石を出した。


「いい娘」
「レグルスさん・・・」


レグルスの言葉を思い出したこんちゃんは立ち上がった。


「こんこんは強いんだから。大丈夫だよ」
「さあ?答えろ!」


ジュゲム君にこんちゃんは凛とした態度で臨んだ。


「縛り首にしてください!!」
「こんこん!!それじゃあ、殺されちゃうじゃん!!」


こんちゃんの答えに半分パニック状態の梨華ちゃんが悲鳴に近い声を上げた。


「火あぶりと決めていたら、外れなので縛り首になります。
しかし決めた方法は絶対に変えないと言っているので、
火あぶりという方法を変えられません。
縛り首と決めていた場合も、当たったので、火あぶりで殺さなくてはなりません。
どちらにしても、矛盾が生じるから殺すことはできません!」


こんちゃんのきっぱりした答えにジュゲム君は梨華ちゃんを解放した。


「こんこん、ありがと!!」


解放された梨華ちゃんはこんちゃんに飛びついた。
857 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:47
「よし!この調子で制覇よ!!」

意気揚々と先を目指す梨華ちゃんたちの前に、再びジュゲム君が現れた。

「ここに、二つの砂時計があります。一つは10分間。
もう一つは7分間を計ることができます。
二つを使って丁度18分計りなさい」


ジュゲム君の言葉に、こんちゃんは少しの間目をつぶって考えた。
梨華ちゃんとごっちんはその様子を優しく見守った。
知力戦である以上、こんちゃん以外には解決策を見出せそうにないってわかったみたい。


「わかりました。まず、両方の砂時計を引っくり返します」


二つの砂時計はゆっくりと時を刻み始めた。


「ここで、7分経過。続けてまた引っくり返します」


7分の砂時計を続けざまに引っくり返した。


「ここで、10分経過です。続けてこちらも引っくり返します」


10分の砂時計も引っくり返した。


「ここで、7分のが終了。つまり14分経過です。
14から10を引けば4なので、
ここでさっき引っくり返した10分の砂時計をまた引っくり返します。
この砂が4分間分なので、この砂が落ちきれば18分になります」


「すばらしい。しかし、1時間は過ぎています。誰が脱落しますか?」
「そんな!」


こんちゃんが不満な顔でジュゲム君に訴えた。


「1時間も経ってないはずです!!」


こんちゃんが考えてから答えを出すまでにそんなに時間が経ってるはずがなかった。


「時間は常に相対的なもの。絶対などありえません」
「そんなの反則です!!」

「ここでは、私が規則です」
「でも!」


反論を続けようとするこんちゃんをごっちんが抑えた。

「ゴトーが行くよ」
「そんな!」


ごっちんが前に出たことでこんちゃんが泣き顔になった。

「こんこん?梨華ちゃんを守るんだ」

ごっちんは、勇者の石を指差して満面の笑顔を見せた。

「待ってください!」
「こんこんは立派な剣しだよ」

「でも!」
「ダイジョウブ!」


ごっちんの100%スマイルにこんちゃんの気持ちは軽くなった。


「はい」


こんちゃんの返事を聞いてごっちんは深くうなずくと姿を消した。
858 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:48
「おいおい。ごっちんまで脱落かよ!」

ごっちんを奈落の底でみんなが迎えた。

「うん。1時間経っちゃったんだ」

失格したのに相変わらずの笑顔を見せるごっちんにみんな拍子抜けした。


「こんこん、あんたがいなくて大丈夫?」


美貴ちゃんの心配にごっちんは首をかしげた。


「う〜ん。大丈夫。あと一問だし」
「なんで、あと一問って知ってるの?」


保田さんの質問にごっちんは笑顔で答えた。


「だって、ゴトーこの洞窟は何度も通ったことあるもん」
「お前、じゃああのジュゲムの質問の答え全部知ってたのかよ!」


美貴ちゃんの怒りとは裏腹にごっちんは相変わらずの笑顔を見せた。

「うん」
「なんで、最初っからそう言わないんだよ」

「こんこんが答えなきゃ意味が無いでしょ?
こんこんは勇敢な剣士なんだから」
「あいつが?ただの臆病者だよ」

よっすぃの言葉に美貴ちゃんが立ち上がった。

「こんこんは臆病者なんかじゃない!少し気が弱いだけだ」

つかみかかった美貴ちゃんによっすぃも負けじと対戦モードに突入した。

「ちょっと!二人とも辞めなよ!」

矢口さんと私が慌てて二人を抑えた。

「やぐっつぁん放せ!!藤本だけは一発殴らないと気がすまねぇ!!」
「バカ!喧嘩してる場合かよ!!」

興奮が収まらない様子のよっすぃ。

「美貴ちゃんが悪いよ。急につかみかかったら・・・・」

美貴ちゃんを注意しようとした私は不意に目の前が真っ白になった。


「だって!!え?・・・・あゆみ?」


様子がおかしいと思った美貴ちゃんは興奮が一気に鎮まった。


「どうした?」


美貴ちゃんの声が遠くに聞こえて、私の心はそのままみんなのもとから離脱していった。

859 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:48
『時間が無いの』
「誰?」

『時間が無い。早く戻って』
「あなたは・・・」

『お願い!時間が無いの』
「あなた・・・私?」

『姫が18歳の誕生日を迎えるまでに呪いを解かないと』
「私なの?」

『早く、ここへ戻ってきて。あなたが戻らなくては呪いが解けない』
「やだ・・・私消えたくない!!」

『あなたが戻らなくては、姫の呪いが解けない』
「呪い?」



『早く戻って』
「・・・・・」





『お願い』
「・・・・・」





860 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:50
「あゆみ?あゆみ!!」

美貴ちゃんの呼び声に私はみんなのもとに心を戻すことができた。

「どうかした?」
「・・・・なんでもない」

「顔が真っ青だよ。なんかあったんでしょ?」
「なんでもないから」

「でも」
「藤本さんは、柴田さんを心配しすぎや」

過剰な心配をする美貴ちゃんに愛ちゃんがそう言った。

「あん?」

美貴ちゃんは愛ちゃんをにらみつけた。

「柴田さんも、最近変だし。そんな気持ちで旅をするんだったら
二人でウエストタウンに残った方がいいと思います」


愛ちゃんの言い分はよくわかった。

「お前!!」

愛ちゃんに殴りかかりそうになった美貴ちゃんを止めて、私は立ち上がった。


「ごめん。そうだよね。みんな、必死に戦ってるのにごめんね。
なんか気分が落ち着かなくて。ホームシックかな?」


無理して笑顔を繕ったけど、心臓の音は激しさを増すばかりで、不安が心を支配していくばかりで・・・

「愛ちゃんだって、姫姫!って言ってるじゃん?
ミキティだって愛ちゃんだって、好きな人を心配するのは同じだよ。
ほらほら、柴ちゃんもホームシックなら向こうで少し一人になって落ち着いたら?」


矢口さんがそう言いながら私をみんなからさりげなく離してくれた。
矢口さんは心が読めるから。
きっと私のこと、全部知ってるんだ。

矢口さんのさりげない優しさがありがたかった。
奈落の底は不穏な空気に支配された。


861 名前:試される知力 投稿日:2007/04/26(木) 00:51
「こんこん?行こう!」
「はい!!」

一方こんちゃんと梨華ちゃんは、最後の難関を迎えようとしていた。
二人の前に、二つの分かれ道があらわれた。
そして道の前には立て札が掲げられていた。



『あなたの前に二つの道あります。
 片方はゴール、片方は奈落の底に続いていて、
それぞれにジュゲム君がいます。
 1人は正直者。何でも本当のことを言います。
 1人は嘘つき。何でも反対のことを言います。
 どちらがどちらの道を守っているか分かりません。
 あなたは片方のジュゲム君に1度だけ質問することができます。
 正しい道を選んでゴールして下さい』



「どういう意味?」

梨華ちゃんが首をかしげた。

「正直者に道をたずねたら、正しい答えを教えてくれます。
でも、嘘つきに道をたずねたら、間違った答えを教えられる・・・」
「じゃあ、いちかばちか勝負しろ!ってこと?」

「それでは、答えになってませんよ」

意味がわかっていない梨華ちゃんの隣でこんちゃんは考え始めた。


「正直者でも、嘘つきでも同じ答えを導く・・・ウソウソ本当・・・」
「こんこん?」


ブツブツ独り言を言い始めたこんちゃんを梨華ちゃんは心配そうに見つめた。


「こんこん?大丈夫?」
「本物の道を聞く・・・ゴールなのか、奈落の底なのか・・・」

「こんこ〜ん??」
「YESかNOか・・・」

「こんこん?こんこん?こんこん??」
「よし!!わかりました!!」

「きゃぁ!!」


急にひらめいたように大きな声を出したこんちゃんに、梨華ちゃんは思わずびっくりして腰を抜かした。


「行きましょう石川さん!」
「え?は、はい」

862 名前:k・y 投稿日:2007/04/26(木) 00:53
川σ_σ|| <更新遅くなっちゃってごめんなさい。

難問解けましたか???

ジュゲム君:トリックロードに住む守り神。
      なぞなぞでみんなの知力を試しています。

今回はこんちゃん大活躍でした。
最後の問題、答えは。。。次回!!
863 名前:k・y 投稿日:2007/04/26(木) 00:57
>>837 :名無し飼育さん :2007/03/01(木) 12:48
  更新遅くてすみません!
  学校も新学期でしょうか?
  また、楽しんでいただけていたら嬉しいです!

>>838 :名無飼育 :2007/03/02(金) 00:33
  今回はこんちゃん特集でした。
  愛ちゃんも次回?活躍させたいと思います!
  また、読んでくださいね!

>>840 :名無飼育さん :2007/03/03(土) 02:15
  朱雀はまた、登場させていきたいと思います。
  そのためには、姫や剣士の成長が・・・
  応援よろしくお願いします!!

今回は、こんこん大活躍でしたが、いかがでしたか?
最後の問題の答えは、次回予定です!!
では、今後ともよろしくお願いします!!
864 名前:None 投稿日:2007/06/07(木) 14:55
I want to say - thank you for this!
865 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/07(木) 15:19
作者さん、更新乙蟻であります。
 
こんこん 大活躍だよ こんこん

リアルでは見ることは無くなりましたので嬉しいです。この作品は人物のキャラが
とても生きてますね。リアル美貴様残念なことになりましたが、この話の中では
まだまだ活躍してくれると見守ってます。

作者さんのペースで頑張ってください。次回更新をお待ちしております。
866 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/13(水) 23:57
ファンタジー系は正直苦手だったのですが、この作品は楽しくて引き込まれました。
面白いです!!大好きになりました。
865↑さんと同じで、キャラクターの個性がそれぞれに光っていますね。
みんな仲間だから、みんな好きですよ!!
たまに出て来る笑える柴ちゃんと、柴ちゃん一筋のコンコンが特に好きです。

なんで柴ちゃんばっかりカワイソウ・・・と思っていたら・・・
楽しみです♪
作者さんのペースで、頑張って下さい。
867 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/14(木) 02:03
866↑です。すみません(?_?)まだ全部読まない内に早まってレスしてしまいました。
コンコンが死んでしまう前の段階で・・・400位で
大変失礼しました。昨日から今日にかけて一気に読みました。
こんな展開になって行くとは!!
こんこん、コンコンの為にも頑張って!
柴ちゃんはどうなるのか・・・
868 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:28
こんちゃんは意気揚々と右側の道を進んだ。
道の先にはジュゲム君が待ち構えていた。


「ゴールを守るジュゲム君は正直者ですか?」
「いいえ」


ジュゲム君の答えに納得したように、こんちゃんはもと来た道を引き返した。


「こんこん?どういうこと?」
「こっちの道は奈落の底に通じているということです。」

「え?なんで?」

「ジュゲム君が正直者だったら、ゴールを守っていないから『いいえ』と答えます。
 ジュゲム君が嘘つきだったら、ウソをつく。
 正直者が守っているという本当と反対のことを言うので、『いいえ』と答えます。
 つまり、相手が正直であっても嘘つきであっても同じ答えを出すんです」


「こんこんすご〜い!!」


梨華ちゃんは一瞬首をかしげたけど、
すぐにこんちゃんのすごさに気がついてこんちゃんを抱きしめた。


「い、行きましょう」


こんちゃんは照れ隠しに梨華ちゃんから身を離してゴールへ通じる道を歩き始めた。

869 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:30
薄暗い細道を抜けると一気に光に包まれた世界が待っていた。


「おめでとう!真の勇者よ」


天から声が降ってきて、二人は上を見上げた。

「え?きゃあ!!」

空から落ちてきた仲間に梨華ちゃんは思わず声をあげた。

「いってぇ」
「うわぁぁぁ!!」
「いたたた・・・」
「ほいっと」
「大丈夫?」
「ありがとう」
「姫無事ですか?」

みんなのそれぞれのリアクションにこんちゃんは少しだけ笑って、
梨華ちゃんも安心したのか笑顔を見せた。

「大丈夫だよ。こんこんが助けてくれたんだから」
「石川さん・・・」
「こんこんすご〜い!!」

照れて顔を赤くした小さな剣士の頭をごっちんが撫でた。

「あ・・・」
「ん?」

撫でられた時にうれしそうにするこんちゃんの顔は、
まるでコンちゃんみたいに思えたから、私は少し驚いた。

「ううん。なんでもない」
「こんこん、なんだかコンコンみたいだね?」

私が思っていた言葉は美貴ちゃんが代わりに言ってくれた。
美貴ちゃんは、本当に心のそこまでお見通しなんだなって思うと、なんだか、安心感に包まれた。

「うん」
「こんこん?前に言ったこと、訂正するよ」

よっすぃがこんちゃんの前に立って頭を下げた。

「あんた、立派な剣士だ」

こんちゃんは、戸惑い気味に私に目を向けた。
こんちゃんに答えるように私は大きくうなずいた。


「わ、私は・・・まだ剣士なんて言えません。
 でも、みなさんがいれば、強くなれる気がするんです!」


こんちゃんの小さな意志はみんなの心を強くしてくれた。


「みんなでいるから、強くなれるんだよ」


梨華ちゃんの言葉に、みんなお互いの顔を見合わせた。

「よし!行こう!」
「まって、まだ行かない方がいい」

梨華ちゃんをごっちんが止めた。
870 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:31
「なんで?」
「もうすぐ夜が来るんだ」

「え?こんなに明るいのに?」
「うん」

ごっちんは目をつぶると数を刻み始めた。


「10・9・8・7・・・・」


ごっちんに言われてみんな夜空を見上げた。

「だんだん暗くなってきた」

愛ちゃんのつぶやき通り、空はだんだん影を落とし始めた。


「3・2・1・・・・」


そして、すっかり闇に包まれた。

「変な森だねぇ」

よっすぃの言葉も闇にのまれた。


「秩序が崩れたんだ」


ごっちんの言葉は、悲しみに包まれていた。

「え?何?どういう意味?」
「よし!じゃあ、寝る場所確保するためにテントを張りますか?」

よっすぃがごっちんを問い詰める前に、矢口さんが話題をそらした。

871 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:31
西の森にはエルムがいた。


エルムは森を守り、森はエルムを優しく包み込んでいた。
エルムが森から消えたとき、森は優しさを失ったんだ。


だから、あらゆる秩序が失われた。


エルムの悲しみだけが、森には残った。


真実は森の中に潜む。


でも、その真実に触れることは、タブーなんだ。




ごっちんに宿る、唯一のタブーに触れることを私たちは避けていた。



872 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:33
「姫?」

梨華ちゃんは、テントには入らずしばらく外を歩いていて、心配した愛ちゃんが迎えに行った。

「森は危険です」
「ごめん。なんかさ、じっとしてられなくて」

「戻りたいですか?」
「ん?」

「元の世界に・・・」
「・・・」

「・・・できればずっと」

愛ちゃんはいいかけて、途中でやめた。

「姫を必ず無事にもとの世界へお戻しします」
「・・・一緒にいたい」

「え?」
「今は、みんなと一緒にいたいの。少しでも長く、この世界にいたい」

その言葉に、愛ちゃんは嬉しそうにハニカンだ。


「ずっと、こっちにいればいいんだよ」


よっすぃだった。

「そんなこと、できるわけないじゃないですか!
 ちゃんと姫の気持ちも考えて下さい!」

よっすぃのストレートな発言に愛ちゃんは立ち上がった。

「うちは、ずっと梨華ちゃんにこの世界にいて欲しい。
 高橋だってそう思ってるんだろ?なんではっきり言わないんだよ。
 そんなんだったら、本気でうちが梨華ちゃんのことゲットしちゃうよ?」


「な、何言ってるんですか!!人の気持ちを知った風に!!」
「あれ?違うの?」

「だ、だから!!吉澤さんは軽すぎるんや!!」
「高橋が重すぎなんだよ!!」


二人が言い争いになったところで、梨華ちゃんはその場から離れた。

873 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:33
「また、あいつら言い争ってるの?」
二人のもとを離れた梨華ちゃんに声をかけたのは保田さんだった。
「よかった。よっすぃが戻ってきて。やっぱり、みんないないとね?」
「ま、少し賑やかなくらいがいいか」
「うん」
「それよりあんた、最近身体の調子とか変じゃない?」
「え?そんなことないよ?」

「ならいいんだけど」
「なんでなんで?」

「ちょっと、占いでね。でも、きっと気のせいだよ」
「え〜!!だって、意外とケメちゃんの占い当たるじゃん!!」

「意外とって、失礼ね」
「どうしよう。実はどっか悪いのかなぁ。不治の病に犯されてたりして?」

大げさな梨華ちゃんを見て、保田さんは安心した表情になった。


「やっぱり、勘違いだわ。あんたは殺しても死なない」
「え〜!!」


梨華ちゃんの表情を見て、保田さんは声を上げて笑った。

874 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:35
「賑やかだね。これじゃあ、うるさくて寝れないや」

テントで横になっていた矢口さんが起き出した。

「ったく、全体的に精神年齢低いんだよ」

美貴ちゃんが呆れ顔で、そう言った。

「でも、なんだか楽しいですね」
「こんこんも慣れたみたいだね?あれ?ごっちんは?」

矢口さんが、ごっちんがいないことに気がついた。

「あいつはエルムだから、夜は空だよ」
「へぇ。え?どうやって?」

「知らないけど。そういうもんらしいよ」

美貴ちゃんのアバウトな説明に、矢口さんは首をかしげた。

「エルムは、森や町を守るんです。だから、夜になると空に上って見回りをするんです」

こんちゃんが代わりに説明してくれた。

「へぇ。じゃあ、寝ないの?」
「はい。エルムが眠るのは、明け方のほんの僅かな時間だけなんです」
「だから、あいつタフなんだ」

美貴ちゃんの言葉に、矢口さんもこんちゃんも納得の表情だった。


「ゴトーさんは、ヒーローなんです」


得意気なこんちゃんの表情に二人は笑った。

「こんこん?ごっちんがヒーローでもかまわないけど、
 こんこんもヒーローになんなきゃね?こんこんは剣士なんだから!」

矢口さんの言葉に、こんちゃんは苦笑した。

「・・・頑張ります。剣士か・・・あ、ごめんなさい」

話題が、剣士になったことに気をつかってこんちゃんは口をつぐんだ。

「あゆみ?」

三人の会話は私の耳にはほとんど聞こえていなかった。
奈落の底で、聞いてしまったあの言葉が胸の中にうごめいていて、周りを気にする余裕は私には無かった。

「あゆみ?」

美貴ちゃんに肩を触られてようやく我に戻った。

「え?あ、ごめん。何?」
「やっぱり、おかしいよ。あの時何があった?」
「ううん。なんにもないよ」

話そうとしない私を見かねて美貴ちゃんは手を握った。

「美貴が信じられない?」
「・・・・・」

「話そう?」
「・・・・・」

私がうなずくと、美貴ちゃんはそのまま立ち上がって、テントの外に私を連れ出した。

875 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:37
「やっぱりきれいだね」

わざと、他のことに注意を向けて気分を落ち着かせてくれているんだってわかった。

「うん」
「星を見れる心境じゃないか?」

「・・・・・」
「何があった?」

「うん・・・」
「言いたくない?」

「・・・・・」
「美貴じゃ、その心のモヤモヤ解決できないか・・・」

「ううん。そうじゃないの・・・」
「聞かせて?」

美貴ちゃんは、真剣に私を見つめていた。
美貴ちゃんは、本気で私を支えようとしてくれてるんだって思った。
美貴ちゃんの眼差しに自然と口が開いた。

「あのね・・・あの時、一瞬目の前が真っ暗になって・・・聞こえたの」
「何が?」

「声」
「声?」

「うん。たぶん、私の本体の声」
「・・・・うん」

「早く戻って!って言われたの」

自然に震えだした身体を美貴ちゃんは優しく包み込んでくれた。

「美貴が戻さないから。そんなの気にしなくていい」
「・・・・」

「約束したでしょ?守るって」
「うん」

「だから、消えさせたりしない」
「うん」


美貴ちゃんのきっぱりした言葉は、私の不安に希望をくれる。
真っ暗闇に光をくれる。


「このまま、もう一人の剣士が現れなければいいのに」
「え?」

「もう一人の剣士が見つからなければ、私も戻らなくてもいいかなって。
青龍の剣士は見つからなかったから、他の6人で姫を守ろう!
ってなればさ、私も戻らなくてもいいかなって」
「・・・・・」

美貴ちゃんは、なぜか黙って私から体を離すと後ろを向いた。

「美貴ちゃん?」

「と、とにかく、美貴が守るから」
「うん」

「心配しなくていいから」
「うん」

「ついでに、キスしとく?」
「しないって」

「ケチ」
「バカ」



いつもそばに居てくれて。
いつも守ってくれて。
いつも励ましてくれて。


美貴ちゃんは、私が私でいられる場所。
唯一の居場所。

876 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:39
翌朝、私たちは出発した。
森はどんどん奇妙になっていったけど、みんなでいると不思議と怖くは無かった。

「大丈夫ですか?」

愛ちゃんは相変わらず梨華ちゃんの心配。

「うわぁ!!」
「あはは。それは幻虫だよ」

いろんなものに驚くこんちゃんを見て、ごっちんの笑い声が響いていた。

「ったく、それでも剣士かよ」
「よっすぃだって、剣士っぽくは無いけど?」

「ひっどいやぐっつぁん」
「まぁ、矢口の言ってることはもっともだね。
よっすぃは、軽いしお酒と女の子大好きだし?」

「圭ちゃんまで!」
「おまけに、詐欺師ですからね」

「ってめえ高橋!お前には言われたくないっての!!」
「二人とも、喧嘩しないの!」

「姫・・・すみません」
「あ〜あ。高橋のせいで怒られた」

ここが、ウエストフォレストでなく、私たちの旅の目的がもっと別なことだったら、きっとすっごく楽しい旅行だったんだと思う。

「ったく、バカばっかり」
「でも、楽しいよ」
「あゆみが楽しいならいいけど」

877 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:40

「スト〜ップ!」
「ここから先は!!」
「通しませんぞぃ!!!」


私たちの前に、おかしな三人組が現れた。


「な、何者?」

よっすぃの引き気味な問いかけに、三人は変なポーズを決めた。


「「「白虎三銃士参上!!」」」


どうやら、この面白三人組が白虎三銃士らしいです・・・


「華麗なるクノイチ小川真琴!」
「知性を極めたガンナー村田めぐみ!!」
「平和と自然の使途飯田香織!!!」


それぞれ、決めポーズとともに自己紹介・・・
なんか、戦隊もののヒーローみたいな滑稽な登場に一瞬みんな唖然となった。

「真琴?お前何やってんだよ!」

よっすぃとまことちゃんは知り合いだったんだ。

「白虎三銃士です」
「は?お前が?」

「むむむ・・・」

よっすぃにつっこまれて、まことちゃんは顔をしかめた。

「恵まれない死を迎えた者は四神の導きのもとに召抱えられます。
三銃士の勤めが終わればまた、元の姿で生き返ることができる」

飯田さんの説明に梨華ちゃんは、開いていた手の平を硬く結んだ。
きっと、朱雀三銃士のことを少し思い出したんだ。
彼女たちは、恵まれない死を迎え、三銃士の勤めを終えたのに、
すぐにベテルギウスによって殺された。
その時のことを思い出して、胸が締め付けられているんだってわかった。

前だったら、梨華ちゃんの手を握るのは私の役目だったけど、
今の私には差し伸べられる手はないから・・・

「姫?」
「うん。大丈夫」

愛ちゃんが代わりに梨華ちゃんを気遣ってくれた。
878 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:43
「じゃあ、うちらが白虎を召喚すれば、まことは生き返るわけ?」
「はい」
「なら、話は早い。白虎に会わせろよ」

よっすぃの発言に三銃士は背筋を正した。

「そういうわけにはいきません」
「白虎に会えるのは、選ばれた者だけ」
「知力体力精神力。全てを兼ね備えた者だけ」

三銃士のことばにみんなは戦闘体制に入った。

「なら、戦って証明すればいいんだね?」
「ちょっと待った!戦うのは私たちではありません!!」
「さっきは、知力で勝負しました!今度は体力です!!」

「さて!これから、八剣士の皆様方に、体力を示してもらいます♪
八人が見事クリアしたら道を開きましょう!」

村田さんはそういうとなにやらくじ引きらしきものを取り出した。

「みなさん、一本ずつ引いてください!」

愛ちゃんを先頭にみんながくじ引き開始。

「ん?なにこれ・・・悪魔と勝負?」

くじを開いた矢口さんが首をかしげる。

「どれどれ・・・やっだ〜!まりっぺ大当たりね♪」

矢口さんの紙を覗き込んだ村田さんが意味ありげに笑う。

「いいですか?このくじは対戦カードと応援カードに分かれます。
対戦カードを引いた剣士の方は、対戦していただきます。
応援カードを引いた方は、対戦の間、書かれたメニューをこなしていただきます。
対戦時間は応援カードをひいた相手の体力が尽きるまで。
時間内に相手を倒さなければ失格となります♪
それぞれ二人ずつがペアになるように設定されています。
全チーム勝利で通過可能となります」

まことちゃんが説明してくれた。

「ってことは、オイラは対戦カードってこと?」
「そういうこと♪で、矢口の応援者は?
あくまでも応援!って書いてあるはずよ?」

飯田さんのダジャレにみんなの顔がひきつった・・・・・・

「あ・・・私や。ん?スクワット?」

どうやら、愛ちゃんみたい。

「愛ちゃんは、やぐっつぁんが戦ってる間スクワットを続けてもらいます♪
ちなみに、1分間に最低50回できないとペナルティーですわよ」

村田さんの言葉にうなずく愛ちゃん。どうやら自信あるみたい。
でも、どちらかというと・・・愛ちゃんには戦闘カードを引いて欲しかった気が・・・

879 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:44
「お!うち戦闘カードだ!!ん?ゾウと対決?」

よっすぃがカードを見て喜んでる。

「ってことは・・・私がよっすぃの応援ね・・・腹筋か・・・」

応援するゾウ♪の保田さんのカードには腹筋って書いてあった。

「ゴトーも応援カードだ♪うっさぎ跳び♪」

ごっちんのカードには、ダジャレじゃなくてただ、うさぎ跳びだけしか書かれてなかった。

「美貴のカードなんにも書いてないけど?」

美貴ちゃんがカードを三銃士に見せる。

「あ?それ?それは対戦カードよ。見えない敵と戦うの」

ってことは、残りの二人って・・・


「マジ・・・」


よっすぃが私とこんちゃんを見て敗北を確信したみたい。

「でも!柴ちゃん強いよ!!」

梨華ちゃんの言葉に私はみんなにカードを見せた。


「応援しタイガー・・・腕立て伏せ・・・」


ってことは・・・こんちゃんが対戦カードみたい・・・
こんちゃんは恐怖で早くも顔がこわばってるよ・・・
ってか・・・その前に、私の腕立てもそんなに期待できないんだけど・・・
一分も持たないよ・・・


「くじ、やり直しは?」


「「「ダメ!!」」」


矢口さんの言葉に三銃士そろって否定・・・マジっすか・・・

「それでは、一回戦からいきますわよ♪」
「ますわよ♪」


ごっちんは村田さんの口調が気に入ったみたい。
100%笑顔でリピート。でも、他のみんなは笑顔がひきつったまま。
880 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:46
「一回戦のファイター君!でてらっしゃい!!」

まことちゃんの呼びかけに、地面が割れた。
そして、割れ目から灰色のひょろひょろした人間ににた生命体が這い上がってきた。

「紹介します♪悪魔君です!!」

村田さんの紹介に、矢口さんが顔をしかめさせる。
悪魔君・・・どうみても気持ち悪い・・・

「さてと。いでよ!闘技場!!」

飯田さんの大げさなアクションに呼応するように、森の中に闘技場ができた。

「まりっぺ頑張って!!」

梨華ちゃんの応援を背に、矢口さんは闘技場にあがった。


「は?なに?どういうこと?」


矢口さんが闘技場に立った瞬間、急にあたりが暗くなった。


「エロイムエッサイム・・・」


悪魔君が何かを唱え始めたみたい。


「まずい・・・あいつ矢口の中の邪気を呼び出してる」


保田さんが悪魔君のもくろみに気がついたみたい。
矢口さんは魔女。
魔女は体内に邪気を潜めていて、その邪気が体中を支配した時は・・・
矢口さんが矢口さんでなくなる瞬間なんだ。


「この試合、やめさせて!!」


保田さんの言葉に梨華ちゃんが三銃士のもとに走る。


「お願い!この試合やめさせて!!」
「一度、闘技場にあがったものは、何があっても試合放棄はできません。
矢口さん自身が勝利するか敗北するか。それだけです」

まことちゃんの言葉によっすぃが詰め寄る!

「まこと!ふざけんな!!
こんなところで、やぐっつぁんを悪魔にさせるわけにはいかないんだよ!!」
「悪魔に心を奪われるようなら、八剣士にはふさわしくない」

飯田さんの言葉は厳しくて重たかった。


「まりっぺ!!」
「やぐっつぁん!!!」


梨華ちゃんたちの声はもう矢口さんには届かないみたい。
矢口さんの様子がどんどん変わっていくのがわかった。
このままだと・・・矢口さん・・・


「そうだ!愛ちゃんがスクワットやめればいいんだよ!!」


梨華ちゃんの言葉に愛ちゃんはスクワットをやめた。


「一分経過・・・ペナルティ1」
「え?」


愛ちゃんの身体が急に重たくなった。


「応援の方が応援をやめても試合は中止になりません。
ペナルティがかされていくだけです。ペナルティは重力です。
このペナルティは最終的に応援者の身体をつぶします。
体力がつき、応援を辞めた場合は重力がかされていきます。
そして応援者の命が絶たれた場合は試合中止となります」


まことちゃんの言葉に愛ちゃんはあわててスクワットを始めた。

「そんな・・・まりっぺ!!まりちゃん!!」

闘技場にあがって矢口さんを止めようとした梨華ちゃんは吹き飛ばされた。


「梨華ちゃん!!」


よっすぃが梨華ちゃんを支える。
881 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:47
どんどん闇が矢口さんを支配していく・・・
私たちは、ただ成り行きを見守るしかなかった。


「やぐっつぁん・・・」
「まりっぺ・・・」
「矢口・・・」
「大丈夫だよ!!やぐっつぁん強いもん!!」

ごっちんだけは、みんなとは違っていつもみたいに笑っていた。


「そうだよね・・・あんた、魔女の前に、剣士じゃん」

「でも!」

よっすぃがごっちんに反論しようとしたときだった。


「え?」


矢口さんの身体が光に包まれた。


「どういうこと?」


闇を全て吹き飛ばす光。
まぶしすぎて私たちには何が起こったのかわからなかった。
882 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:48
なんだよここ・・・」

矢口さんが闘技場にあがってすぐに、矢口さんは闇に包まれた。

「エロイムエッサイム」
「は?なに?」

「エロイムエッサイム」
「だからなんなんだよ・・・」

悪魔君の不気味な呪文、はじめは何をされてるのかわからなかった矢口さん。

「エロイムエッサイム」
「・・・まさか」

自分の身体の奥から沸き起こる不気味な感覚に矢口さんは恐怖を感じた。

「エロイムエッサイム」
「・・・や・・・やめろ」

「エロイムエッサイム」
「やめろ!!」

気がついたとき、矢口さんの理性は封印されたんだ。
邪気が沸き起こり、理性は心の奥へと・・・

「エロイムエッサイム」
「・・・やだ!!・・・やだ!・・・やだ・・・や」


「エロイムエッサイム」


それで、悪魔君のもくろみは達成するはずだったんだ。


でも・・・

883 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:49


『矢口?矢口!!』


安倍さんの声が矢口さんの理性を引き戻した。


「なっち!!オイラ!!オイラ!!」
『矢口!大丈夫!!矢口にはなっちがついてるよ?』

「でも!!でも!!オイラ!!オイラの心が消えちゃいそうなんだ!!」
『あきらめちゃだめ!』

「魔女は、邪気に身体を支配されたらもう・・・終わりなんだよ」
『矢口?矢口は魔女の前に、八剣士だよ?』

「でも!!オイラは魔女なんだ!!もう・・・終わりだ・・・」
『クロスペンダント・・・矢口はクロスペンダントをした魔女なんだよ?』



「クロスペンダント・・・」


『そうだよ。なっちのペンダント。魔術師のペンダント』


「なっちのペンダント・・・そっか・・・わかった」
『矢口ならできるよ』

「うん。どうすればいい?」
『圭ちゃんの心にアクセスして?』

「それで?」
『圭ちゃんが矢口を信じてくれたら私の力が開放できるから』


「うん。わかった」

884 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:51


『圭ちゃん!!圭ちゃん!!オイラを信じて!!』


私たちは矢口さんが悪魔に心を奪われたと思っていた。

『圭ちゃん!!圭ちゃん!!オイラを信じて!!』

だからもちろん保田さんに矢口さんの思いは届かなかった。

「やぐっつぁん・・・」
「まりっぺ・・・」

「矢口・・・」
「大丈夫だよ!!やぐっつぁん強いもん!!」

ごっちんの言葉・・・それによって保田さんは思い出したんだ。

『オイラ、この町を、オイラが愛した人が守りたかった町を守りたいんだ』

矢口さんの言葉。

『魔女だけど、守りたいんだ』

矢口さんの思い。

「そうだよね・・・あんた、魔女の前に、剣士じゃん」

思いがつながった瞬間。

『矢口!圭ちゃんの心が共鳴した!!』
「なっち!!」

『行くよ!!』
「わかった」

『なっちを、圭ちゃんを、みんなを・・・そして自分を信じて!』
「うん」



『「フェニックスソウル!!」』



そしてクロスペンダントが光を放ったんだ。

885 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:52
「矢口!!」
「まりっぺ!!」

「やぐっつぁん!!」
「やっぱり、やぐっつぁんは強いや♪」

奇跡を目の当たりにしてみんな興奮で身を乗り出した。

光がペンダントに収まったとき、矢口さんは目覚めた。

「なっち、ありがと」

ペンダントを握り締め、ゆっくり目を開いた矢口さん。


「オイラは邪気になんか支配されないよ?」


「エロイムエッサイム!!」
「無駄だっての!!今度はこっちから行くよ!!」


矢口さんの言葉に後ずさりする悪魔君。


「なっち・・・また力借りるよ?」
『うん』


「フェニックスフレア!!!」


朱雀の炎が悪魔君を一瞬で包み込んだ。


「きぃぃぃぃぃ!!!!!」


奇怪な叫び声とともに、矢口さんは悪魔君を焼き払った。


「勝った!!まりっぺ勝った!!!」
「さっすがやぐっつぁん!!」


梨華ちゃんとよっすぃが手を取り合って喜んだ。


「はぁはぁはぁ・・・よかった」


スクワット終了の愛ちゃんはお疲れモード・・・

「愛ちゃんもお疲れ!」
「はい!!全然平気です!!」

梨華ちゃんが差し出した手を握り返した愛ちゃん。
やっぱり元気の源は梨華ちゃんってことだね。

886 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/24(日) 23:53


「では、二回戦を行います!出でよ!ゾウたち!!」


むらっちの掛け声に呼応して5頭のゾウが現れた。


「ってか・・・でっけぇ」


よっすぃの顔が少しひきつった。


「なに?びびってんの?」


美貴ちゃんに言われてよっすぃはムッとした。

「なわけないじゃん!うちは最強なんだから!!
この試合に勝ってお前との差を見せ付けてやるよ」
「はいはい」

美貴ちゃんの言葉で俄然はりきりモードのよっすぃは前に進み出た。

「さてと。さっさと片付けるか」
「圭ちゃん頑張って!」

矢口さんの言葉にうなずいて腹筋体勢の保田さん。

「腹筋は、一分間に30回だって」

梨華ちゃんの言葉にうなずく保田さん。

「時間配分考えて、体力残してください!!」

愛ちゃんの助言に苦笑する保田さん。


そして、第二回戦が始まった。


887 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/25(月) 00:01
川σ_σ|| <補足説明です。

白虎三銃士:飯田香織、小川真琴、村田めぐみの天然・・・最強三人組です♪
      朱雀三銃士と違って、なぜか面白い感じですが・・・
      白虎を守る最強な使者なんです。

悪魔君:矢口さんを苦しめた最初の刺客。相手の邪気を呼び起こして、
    戦闘不能にさせる、嫌な相手。

フェニックスソウル:朱雀の、安倍さんの力を借りた矢口さんの渾身の攻撃。
          邪気を振り払い、聖なる光を取り戻した。
          保田さんと矢口さんの思いが共鳴すると、朱雀の力が使えちゃいます。

フェニックスフレア:朱雀の力を借りた矢口さんの炎属性の攻撃。一瞬で相手を焼き払うことが
          できます。

 今回は、矢口さん大活躍でした♪
 次回は、よっすぃの番です!!
888 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/25(月) 00:11
>>864 :None さん
 Thank you for the rooting.
 I want to do to the work that can be enjoyed.
 I want to tell the charm of characters more.
 Please read next time.


>>865 :名無飼育さん :2007/06/07(木) 15:19
 リアルでも、こんこん戻ってきましたね♪
 頭の良いこんこんが作者は大好きなので、魅力をもっと引き出したいです。
 美貴様も、美貴様らしく頑張ってもらう予定ですので。
 リアルを超えるキャラを目指して頑張ります!! 
 次回もよろしくお願いします!!
889 名前:白虎三銃士 投稿日:2007/06/25(月) 00:17
>>866 :名無飼育さん :2007/06/13(水) 23:57
 楽しんでもらえて嬉しいです!
 喜劇で悲劇な柴ちゃん、もっともっと辛い目に会いそうです。
 みんな大好きなキャラばかりなので、魅力をもっと伝えたいと思います。
 
>>867 :名無飼育さん :2007/06/14(木) 02:03
 一気に読んでもらえて光栄です!
 コンコンはいなくなってしまいましたが、こんこんは健在です♪
 賢いコギツネさんから、気弱な新米剣士になりましたが、頑張ってもらいます!
 柴ちゃんの応援もよろしくお願いします!!
 次回もよろしくお願いします♪


多くのレスありがとうございます!!
リアルでのハロプロはショックなことも多いですが・・・
負けずに、めげずに書き続けようと思いました。
これからも、応援&レスよろしくお願いします♪
890 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/25(月) 03:02
ぇと…飯田さんは香織じゃなくて圭織で小川さんは真琴じゃなくて麻琴です

スイマセン!

次回更新ぉまちしてます…

891 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/05(日) 23:07
作者さん、865でございます。更新乙です蟻です。
 
まさかリアルこんこんが戻って来るとは思いませんでした。そして白虎三銃士に
この方々を使ってくるとは・・・主要人物もそうですが、配役ツボにはいってます。

なのにどこかシリアスで、>>876の下から4行目のみゅんさんの回顧(?)が妙に心に
残ります。所々にひかれている伏線も。

作者さんのペースでがんがって下さい。次回更新お待ちしてます。
892 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:22
「ゾウってでっかいんだね。うち、初めて見たよ」

よっすぃは、ゾウたちの真ん中に飛び込んだ。
ゾウがよっすぃを威嚇する。

「烈火真炎!!」

よっすぃの炎がゾウたちを取り囲んだ。
でも、ゾウたちはびくともしない。

「なんで?」

よっすぃは信じられないってかんじでゾウを見る。

「ゾウの皮膚は硬いんです。しかもそこにいるゾウはおそらく通常のゾウよりも進化しています!!
 炎も剣も通用しないと思います!!」

こんちゃんがよっすぃに伝えた。

「マジかよ・・・」

炎も剣も通用しないなんて・・・どうやって倒すの?

「へぇ。面白いや」

よっすぃの顔に笑み。

「行くぜゾウさん!」

よっすぃはゾウたちに向かって切りかかった。
でも、よっすぃの剣をゾウさんたちはもろともしない。
それどころか、よっすぃめがけて長い鼻で攻撃開始。

「っく・・・」

攻撃をまともに直撃しちゃったよっすぃは地面に何度も叩きつけられた。

「いっててて・・・ゾウさんゾウさんお鼻が長いのね?」

よっすぃの顔に少し焦りが見えてきた。
よっすぃはひょうとっくりを取り出すとお酒を飲み始めた。
得意の酔拳で蹴りをつける気なんだ。


「酔炎斬殺!!」


でも・・・よっすぃの剣はゾウさんの皮膚を突き抜けない。

893 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:24
「無駄です!!そのゾウたちには剣は通用しません!!」
「だったら!どうしろっての!!」

こんちゃんの忠告によっすぃが言い返す。
焦りでイライラしてるみたい。

「・・・」

よっすぃの迫力にこんちゃんは逃げ腰になって、
口を閉ざして私の後ろに隠れちゃった。

「こんこん?教えて?どうすれば勝てるの?」

こんちゃんに梨華ちゃんが優しくたずねる。

「・・・」
「こんこんの力が必要なの、よっすぃに教えてあげて?」

「でも・・・」
「お願い?!」

梨華ちゃんの言葉にこんちゃんは再びよっすぃに忠告を始めた。


「おそらく!ゾウたちが強固なのは仲間意識からくるものだと思われます!
 ゾウたちは仲間の存在が確認できているから、自分を誇示できるんです!!」


「こんこん!!難しい単語使われても、うちわかんないって!!」


ゾウの攻撃をかわしながらよっすぃがこんちゃんに怒鳴り声を上げた。

「・・・」

またしてもうつむきかけちゃうこんちゃん。

「よっすぃ!そのゾウさんたち、仲間がいるから強がってるらしいよ?」

私がこんちゃんの言葉を噛み砕いてよっすぃに伝える。

「なるほどね。で?どうすればいいの?」
「こんちゃん?どうすればいいの?」

「ゾウたちを孤立させてください!!
 仲間意識を外せば、恐らく恐縮するはずです!!」
「なるほどね。サンキュウこんこん!!」


よっすぃは再びゾウさんたちの中心に立つと剣を構えた。

894 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:25
「烈火真炎!!」

たちまちにゾウたちを炎が取り囲む。
炎に囲まれたゾウさんたちは一頭ごとになり、
仲間の存在を確認できなくなった。
次第にゾウの動きが弱弱しくなっていく。


「ゾウさん、一人は寂しいってか?
 動物愛護団体に訴えられちゃいそうだけど、
 勝負に勝たないと先に進めないから許してよね。酔炎列暫!!」


よっすぃは炎の中、次々とゾウを切ってまわった。
そして・・・


「勝った!!」


炎が消えた時にはゾウさんたちは息絶えていた。


よっすぃ・・・動物愛護団体にきっと訴えられるね。
よっすぃが闘技場から戻ってきて保田さんの手をとる。


「圭ちゃんお疲れ?」
「・・・これ本当にしんどい」


保田さんの腹筋・・・愛ちゃんのスクワット・・・
まだいいじゃん。私なんか腕立て伏せだよ・・・
1分もたないよ・・・

それに、こんちゃんだって・・・
今から恐怖で固まっちゃってるよ・・・


「では、三回戦にまいります!!出でよ!!タイガー!!」


まこっちゃんの言葉に青くなる私とこんちゃん・・・


ついに来ちゃったよ・・・

895 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:26
闘技場のトラさんたち・・・一匹ならずも5匹もいるよ・・・
こんちゃんは恐怖で硬直しちゃってる・・・

「こんこん?大丈夫だよ!さっき、よっすぃに指示したみたいに、
 冷戦に判断できればきっと勝てるから!!」

梨華ちゃんの言葉にうなずくものの、明らかに耳には入ってないみたい。

「あんなの見かけだおしだって!」

美貴ちゃんがこんちゃんの背中を叩く。

「・・・」
「こんこんならできる!」

よっすぃがこんちゃんの頭をくしゃくしゃっとなでる。

「・・・」
「こんこん、はい!これ!」

「え?」

ごっちんが何かをこんちゃんに手渡した。

「お守りだよ♪」
「あ、ありがとうございます」

そして、こんちゃんはとうとう闘技場に上がっていった。

「腕立ては、一分間に15回だって」
「あ・・・うん」

美貴ちゃんに言われて私も腕立ての体制に。
一分間に15回ね・・・でも・・・
この試合何分続くんだろう・・・私、もって二分だよ・・・

「あゆみ!頑張って!!」
「・・・うん」

896 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:28
「では!試合開始!!」

その合図とともに、トラたちが一斉にこんちゃんを狙う。
まるで、狼に囲まれた子羊だよ・・・
こんちゃんは剣を構えて泣きそう・・・
そのままの体勢で10分経過・・・

「柴ちゃん大丈夫?」

梨華ちゃんの言葉に地面とお友達になってから答える。

「・・・もう・・・だめかも・・・」

もう、腕に力が入らないよ・・・
150回も腕立てしたことないもん。

「一分経過。ペナルティ1」

飯田さんの言葉にゲッて思った瞬間に・・・

「いたっ!」

私の右腕が切られた。

「柴ちゃん!!」

血が滴ってる・・・
この旅に来る前だったら血なんて見ただけで気絶してたけど、
今だとこれくらいの怪我だったら平気だってわかる自分が怖い・・・

「なんでだよ!ペナルティは重力だろ?」

美貴ちゃんが飯田さんに詰め寄る。

「あれは、スクワットの場合です。
 今回は一分経過するごとに、切り傷が増えます」

なにそれ・・・最悪・・・

「ケメちゃん!!」

梨華ちゃんが保田さんに回復させるように促す。

「試合中は、ギャラリーの方々の魔法は通用しません」
「えぇぇ!!」

ってことは・・・こんちゃんが早く勝ってくれないと、
私出血多量で死んじゃうよ・・・

897 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:29
みんなもこれはかなりやばいって思ってこんちゃんに声援を送る。

「こんこん!!頑張って!!そんなトラ怖くないよ!!」
「・・・でも」

梨華ちゃんの言葉にこんちゃんがトラから目を話した瞬間だった。


「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」


トラたちが紺ちゃんめがけて襲ってきた。

「こんこん!!目を離しちゃだめ!!
 トラは目が合ってる瞬間は威嚇されてるって思ってなにもしないんだ!!」

よっすぃの忠告空しく、こんちゃんは闘技場を逃げ惑う。
こんちゃんのトラとの鬼ごっこ・・・30分経過・・・


「あゆみ!!」
「う・・・」


私もそろそろ瀕死です。

「こんこん!!さっさと倒せよ!!あゆみが死んじゃうだろ!!」

美貴ちゃんの激にこんちゃんは泣きながらトラから逃げる。

「こんこん!!」
「やばい。このままじゃ、本当に柴田死んじゃうよ」

保田さんが私の体の傷をチェックしてつぶやく。

898 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:31


「こんこん!!」


美貴ちゃんの怒鳴り声が闘技場に木霊する。

「無理です!!無理無理無理!!!」
「バカ!!無理とか言ってんじゃねえよ!!」

「だって!!殺されちゃう!!」
「こんこんが向き合わないとあゆみが死んじゃうんだって!!」

その言葉にこんちゃんは逃げるのをやめて剣を構えた。


「柴田さん・・・」


こんちゃんは目を閉じて剣を掲げた。


「お願いコンコン!!力を貸して!!フラッシュ!!!」


目の前がまばゆい光で包まれた。
コンちゃんの技・・・ううん。こんちゃんの技。


「え・・・」


フラッシュは、光を作り出すだけだから、別に攻撃じゃないんだよね・・・
光が解けた瞬間に、トラたちはさっきよりも殺気が増してる・・・
そして、トラたちは一斉にこんちゃんめがけて飛び掛った。


「きゃあ!!!」
「こんこんお守りだして!!」


ごっちんの言葉にこんちゃんはさっきもらったお守りを取り出してかざした。


「え?」


トラたちの殺気は一瞬で失われ、一気におとなしくなった。


「あ!またたび!!」


こんちゃんはごっちんのお守りに気がついたみたい。


「そっか。トラは猫の仲間でした。なるほど・・・」


「感心してる場合じゃないよ!!こんこん!!
 早く倒さないと柴田しんじゃう!!」


保田さんの言葉にこんちゃんは剣を構えて首をかしげる・・・


「どうやって・・・倒すの?」


そういえば・・・こんちゃん、決闘初デビューだった・・・


「ぶったぎればいいんだよ!!」


美貴ちゃんの言葉に顔がひきつるこんちゃん。
おとなしくなったとはいえ、相手はトラ。
近づけるわけないよね・・・

899 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:33


「こんこん!目を閉じて!!」
「え?石川さん?」


「目を閉じて!!」
「はい!」



「こんこんならできる!!自分を信じて!!
 自分の力と向き合うの!!」


梨華ちゃんの言葉にこんちゃんは心を静めた。


そして、ゆっくりと剣を掲げる。


「コンコン・・・玄武の巫女様・・・
  私に力を下さい!!お願い!!」


紺ちゃんの内なる力が呼応した!
紺ちゃんが地面に剣を突き刺した瞬間、天に光の輪が現れた。


「ペガサス!!」


天馬が駆け下りてこんちゃんを背にのせると再び空に駆け上がった。


「グリフォン!ドラゴン!!」


続いてグリフォンとドラゴンが現れる。
二匹の聖獣はトラたちを瞬殺すると天に帰っていった。


全てを終えるとペガサスがこんちゃんを地上に下ろして、再び空へと帰っていった。


「そこまで!!」


試合終了です。


「勝った・・・」

900 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:34
信じられないって表情のこんちゃんのもとにごっちんが駆け寄る。

「こんこんすっごい!!」

ごっちんの100%スマイルを見た瞬間に、
こんちゃんは緊張の糸がほどけたみたいで、声を上げて泣いた。

すごくすごく怖い思いをしたんだ。
精一杯の死闘は、こんちゃんを少しだけ剣士に押し上げた。

小さな剣士にごっちんは戸惑い、そんな二人のもとに梨華ちゃんが歩み寄った。

「こんこん?すごいね?」

梨華ちゃんは幼い剣士の頭を何度か撫でて、
こんちゃんを立ち上がらせると、闘技場を後にした。

「柴ちゃん大丈夫!!」

結局1時間15分の激闘・・・私の身体もボロボロです。
試合終了ですぐに保田さんが治療してくれたからよかったんだけどね。

「柴ちゃん・・・セクシー」

梨華ちゃんの言葉に自分の格好を確認・・・
あちこち切られて服がやばいことになっちゃってる。

「見るなよ!!」

美貴ちゃんがよっすぃのわき腹にエルボ。

「ミキティこそ見るなって!」
「見てないよ!!」

「・・・着替えてくる」

私はみんなのもとから離れた。

901 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:36
「では、最終試合を始めます!対戦者前へ!」

まこっちゃんの指示に美貴ちゃんが闘技場へ上がる。

「何?」

今までと違って相手が出る前に呼ばれた美貴ちゃんは首をかしげた。

「うさぎ跳びは試合中休むことなく行ってください!では!始め!!」

まこっちゃんの指示でうさぎ跳びを始めたごっちん。

「え?相手は?うわっ!!」

誰もいないはずなのに、美貴ちゃんはいきなり殴られた。

「なんなんだよ!!いてっ!!」

姿の見えない相手に美貴ちゃんはまた殴られた。

「最終試合の相手は、透明人間君です!」

むらっちの言葉に美貴ちゃんの顔が一瞬曇る。

「なるほどね。トルネードクラッシュ!!」

美貴ちゃんは360度銃を連射した。

「姿が見えなくたって美貴は無敵だっての!うわっ!!」

これだけ打ち込めば一発くらいはヒットしたはず?
って思ったのに、美貴ちゃんはまた殴られた。

「マジかよ・・・」
「ミキティ!!相手は一人じゃないんだ!!
 ざっと50人くらいいるから!!
 さっきの銃弾は前の方のやつらをかすめただけなんだ!!」

うさぎ跳びをしながらごっちんがアドバイス。

「ってか・・・見えてるの?」

よっすぃが不思議な顔でごっちんにたずねる。

「うん。ゴトーね、視力いいの♪」
「視力って問題じゃ・・・」

ごっちんワールドによっすぃたじたじ。


「トルネードクラッシュ!!」


また美貴ちゃんの技が炸裂。

「ごっちん!あと何人?」
「えっと・・・あ!だめだ。この人たち、回復魔法使えるみたい。
 一気に倒さないと後ろのやつが前のやつ生き返らせちゃう」


「んだよ・・・めんどくさいな。いてっ!!」


美貴ちゃんは何度も何度も殴られて、少しだけ息があがってきた。

902 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:37
「あ!柴ちゃん!美貴ちゃん透明人間と試合してるよ?」
「え?」

戻ってきた私に梨華ちゃんが教えてくれた。

「苦戦してるの・・・」

梨華ちゃんの言葉に美貴ちゃんを見ると、
誰もいない闘技場で傷ついて息を切らせている美貴ちゃんがいた。

「美貴ちゃん・・・」
「相手の姿が見えないから・・・倒しようがないの・・・」
「美貴ちゃん!!美貴ちゃん!!頑張って!!」

私がそんな風に誰かを応援することって多分今までなかったんだ。
感情に任せて大声を張り上げることって・・・
だから、梨華ちゃんは少し驚いた顔をした。

「あゆみに応援されちゃ、張り切るしかないな?
 任せてよ。美貴けっこう強いんだから」

私の声援に美貴ちゃんのふらふらだった体がしゃきっとなった。

「さてと?お前ら一気に殺してやるよ!!」

そして・・・美貴ちゃんは剣を抜いた。

「お?相棒出番かい?」
「あぁ。お前なんか使いたくないけど、仕方ねえ」
「ったく、いちいち失礼なんだよ!」

剣と会話し始めた美貴ちゃんを見て、みんな唖然とする。

「あいつ・・・何者?」

よっすぃの言葉に首をかしげるみんな。

「とりあえず、力かせよ!」
「はいよ。このバハムンク様にまかせとけって!!」

ため息をついてから、美貴ちゃんは剣を構えた。


「ゴットブレイク!!」


次の瞬間、ものすごい爆発が闘技場で起こった。


「そこまで!!」


透明人間さんたちは一瞬で全滅しちゃったみたい。
903 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:38
でも・・・


私たちは、試合に勝ったことよりも・・・



美貴ちゃんの剣が名乗った、『バハムンク』って名前に驚いていた。



私の胸も・・・張り裂けそうだった。


だって・・・



バハムンクって・・・




八剣士が手にする剣じゃん・・・



904 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:41
美貴ちゃんは剣を納めると、闘技場を降りた。


「美貴ちゃん!剣士だったんだね!!」


闘技場から戻った美貴ちゃんを梨華ちゃんが浮かれモードで向かえた。


「え?」
「だって!バハムンク♪」


「あ・・・」


美貴ちゃんはしまったって顔をした。

「なんで、隠す必要があんだよ。
 隠すってことは後ろめたいことがあるんじゃないの?」

よっすぃは美貴ちゃんが剣士だったことに納得がいかないみたい。

「ないよ!」

否定に梨華ちゃんが喜んで美貴ちゃんに抱きつく。

「やった!!これで、仲間が増えちゃったね!!」
「って!おい!!」

美貴ちゃんは梨華ちゃんから身を離して、私を探した。

「美貴ちゃんの霊玉はどっちなの?」
「・・・」

美貴ちゃんは梨華ちゃんの質問に答えずに私に近づこうとした。

「あ、あれ?いつの間にかに、白虎三銃士いなくなっちゃったね?」

みんなの視線が私に向けられる前に、私は話題をそらした。

「本当だ?どこ行っちゃったんだろ?」

首をかしげる梨華ちゃん。

「本当にミキティ霊玉持ってるの?」

話題がそれたって思ったのによっすぃが話題を戻しちゃった。

「・・・」
「ほら!言えないじゃん!ってことは持ってないんでしょ?」

「吉澤さん!バハムンクの持ち主は八剣士です!そんな風にからかうもんやない!」


愛ちゃんまで・・・
私は心の中で祈ってた。

お願い・・・美貴ちゃん霊玉出さないで!!
もしも、美貴ちゃんが霊玉出しちゃったら・・・


私は剣士にならなきゃいけない・・・
それよりも・・・


美貴ちゃんが・・・
私のそばから離れちゃうよ・・・

「美貴ちゃん?八剣士だよね?霊玉持ってるよね?」
「・・・」

「柴ちゃんに何かあるの?」

梨華ちゃんの言葉に顔を上げると、美貴ちゃんは私を見つめていた。
目を合わせることはできなくて、顔をそらした私に、梨華ちゃんは気がついた。

「柴ちゃん・・・?何かあるの?」
「え?・・・ううん・・・ないない!!
 なんにもないよ!!美貴ちゃん剣士だったんだね!!」

無理に元気を装う私に美貴ちゃんはきっと気がついていた。


だから、なにもふれずに霊玉を取り出して見せてくれた。


「『義』の霊玉だ・・・美貴ちゃん正義の味方みたいだもんね!?」


梨華ちゃんはすっかりご機嫌で、だから私の心はなおさら締め付けられた。



正義の味方・・・うん。
でも・・・正義の味方よりも・・・



私の味方でいて欲しかった・・・




「そうだね」
「これで7人!みんな先に進もう!!」

梨華ちゃんの言葉に、よっすぃと愛ちゃんが立ち上がる。


「「白虎に会いに!」」

905 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:42

「あ!あのさ!!ちょっと、休んでからにしない?」

矢口さんだった。

「え?まりっぺ疲れた??」
「うん。ちょっと。疲れた。ね?休んでからにしよ?」

「うん。じゃあ、休んでからにしよっか?」

矢口さんのおかげで、先に進む前に心を休めることができそう・・・
休憩になってすぐに私はみんなと離れた。


「柴ちゃん?大丈夫?」


矢口さんは私の心を読んでいたから、
私を気にしてみんなに休みたいって言ってくれたんだ。


「大丈夫です」
「・・・こういうとき、オイラの能力って本当に厄介だよ」

「・・・矢口さんは、美貴ちゃんが剣士だって・・・知ってたんですか?」
「・・・オイラ、嘘は嫌いだから正直にいう。知ってた。ミキティの心読んでたから」

「・・・そうですか。なんか、私バカみたい」
「え?」

「勝手に美貴ちゃんのこと・・・私だけの味方だとか思って・・・ホントバカ」
「違う!ミキティは、剣士だから一緒に旅をしてたんじゃないよ!!」

「・・・」
「オイラは退散するよ」


美貴ちゃんがやってきたのを見て、矢口さんはその場から離れた。

906 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:43
「あの・・・」
「・・・」

「美貴は!!」
「なんで・・・言ってくれなかったの?」

「ごめん!!黙ってるつもりはなかったんだ!!
 でも、言ったらあゆみ気にすると思ったから」
「言ってくれてたら、こんなに辛くならなかったよ・・・」


「ごめん」


「バカみたい。何にも知らなくて・・・剣士だから、一緒についてきたんでしょ?
 なのに、私・・・美貴ちゃんは私だけの味方だって勝手に思い込んじゃって・・・
 ホントバカみたい」


「美貴はあゆみだけの味方だよ!!」
「やめてよ!!」


「ごめん・・・でも!美貴は剣士にはならないから!!」


「遅いよ・・・もう美貴ちゃんは、『義』の霊玉を持った剣士になっちゃったんだよ・・・
 今更なかったことになんてできないよ!」


「あゆみ!!」


「隠し事しないで!!」


「待って!」


「離して!もうほっといてよ!!」


私は美貴ちゃんに握られた手をふりほどいて、その場から走り出した。

907 名前:明かされた真実 投稿日:2007/08/13(月) 00:44
「ようやく見つけた」


心の中がぐちゃぐちゃなのに、こんなところでデネブにご対面・・・


「・・・」
「貴様をもとの姿に戻すわけにはいかん!」


もとの姿・・・私は誰なのよ・・・


「ん?戦う気がないのかな?」


「・・・もういい」


戦闘放棄の私にデネブは剣を向けた。



「ならば!!その命もらい受ける!!」



どうせ、私は消えちゃうんだし・・・
だったら、今でもこの先でも同じ。


霊玉なんかあるから、こんなことになったんだし。



もう全部終わっちゃえばいいんだ・・・




デネブの振り落とした剣に血が飛び散った。



908 名前:k・y 投稿日:2007/08/13(月) 01:00
川o・-・)<説明・・・今回は、柴田さんに代わり、紺野でいきます!


This is 八剣士…NO.7 藤本 美貴

霊玉:義   タイプ:ナイト
年齢:18歳  出身:ウエストタウン
武器:バハムンク(剣)
能力:拳銃使い。バハムンクとは特別な関係 
その他info:伝説の剣、バハムンクを手にする剣士。普段は銃を
      使っているけど、バハムンクを操る美貴ちゃんは無敵!

私と同じ、ウエストタウン出身の藤本さん。でも、私と違って心も体もすっごく強い。
柴田さんへ一筋に思いを寄せてるんですが、剣士だって明かされちゃったことで、二人
の関係は・・・
言葉を発するバハムンクにも注目です。二人の物語は、動き出したばかりなのです!
909 名前:k・y 投稿日:2007/08/13(月) 01:06
川o・-・)<続きまして・・・

ゾウ:白虎三銃士、第二の刺客。進化したゾウさんたちは、頑丈な皮膚のお陰で
   剣がまったく通じません。吉澤さんも大苦戦でした。

タイガー:白虎三銃士、第三の刺客。すっごくすっごくすっごく怖かったです!
     もう、二度と戦いたくありません・・・

透明人間君:白虎三銃士、第四の刺客。見えない相手と戦うなんて、本当に
      ありえません!でも、透明人間も見えてしまう後藤さんの視力って・・・

ゴッドブレイク:藤本さんの必殺技。バハムンクで繰り出す攻撃。
        空気中の静電気を一気に爆破させて、あたり一面に衝撃を与える。
        ものすごく、強烈な攻撃です。

今回は、戦い満載でした(汗

910 名前:k・y 投稿日:2007/08/13(月) 01:10
>>890 :名無飼育さん :2007/06/25(月) 03:02
 すみませんでした。
 名前間違え最低です。
 本当にすみません!!
 また、懲りずに読んでやってください。

>>891 :名無飼育さん :2007/08/05(日) 23:07
 レスありがとうございます。
 本当に、励みになります(涙
 こんこん、今回はちょっとだけ成長できましたよ?
 リアルこんこんがどんどん、剣士になって行きますんで、
 作者ともども見守ってやってください!!


今回は、三連戦でした。
そして、あの人がついに・・・
どうなる柴ちゃん!?ってかんじです。
次回もよろしくお願いします!!
911 名前:k・y 投稿日:2007/08/13(月) 01:10





隠します。。。




912 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/13(月) 17:27
更新ありがとうございます。
どうなっちゃうのかとっても楽しみです。
913 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/17(月) 22:35


続きが凄く気になります。
頑張って下さい!
914 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:42
「み・・・きちゃん・・・」

デネブの剣は私じゃなくて、私を助けに入った美貴ちゃんを切りつけた。

「美貴ちゃん!!」
「トルネードショット!!」

美貴ちゃんは負傷した肩をかばいながら、デネブに銃を向けた。
美貴ちゃんの銃弾を受ける前に、デネブは姿を消した。

「美貴ちゃん!」
「いってぇ」

「なんで!」
「守るって、言わなかったっけ?」

「でも!!」
「あゆみにいなくなられたら困るんだ」

「・・・」
「とりあえずさ・・・結構思ったよりも切れてるみたいだから・・・
   保田さんのところまで・・・」

「美貴ちゃん!!」

美貴ちゃんはそう言うと意識を失った。

915 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:43
「美貴ちゃん!!」

みんなのところに連れて帰った美貴ちゃんを見て梨華ちゃんが飛びついてきた。

「どういうこと!!」
「・・・うん。私を助けようとして・・・」

「とにかく、ケメちゃんに!」
「うん」

よっすぃたちがテントをはってくれて、美貴ちゃんはその中で治療してもらった。

「これで大丈夫」

保田さんのおかげで、一安心。

「柴ちゃん、後は私が見てるから」
「あ・・・でも」

「柴ちゃんも顔色悪いよ?少し休んだ方がいいよ」

私の顔を心配そうに覗き込む梨華ちゃん。

「でも!私のせいで怪我しちゃったから・・・」
「いいっていいって!ここは任せて?」

「・・・」
「柴ちゃん?」

私の顔を梨華ちゃんが覗き込んできて、とっさに顔をそむけた。

「やっぱり・・・謝りたいし・・・」
「治ってからでいいじゃん?」


「でも!本当に私が悪いから!!ちゃんと謝りたいし!!だから二人にさせて!!!」


梨華ちゃんはちょっと、驚いたような顔をしてた。でも、すぐに身を引いてくれた。

「わかった。じゃあ、柴ちゃんに任せるね?」
「・・・うん」

私が強く言うことってあんまりないからなのか、
梨華ちゃんも何かを悟っちゃったのか・・・
でも、私たちはお互いにそれ以上詮索しなかった。

916 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:46
「あゆみ?」

梨華ちゃんがテントから出て行ってすぐに美貴ちゃんが目を開けた。

「・・・起きてたの?」
「うん」

「・・・いじわる」

美貴ちゃんは起き上がると私を抱き寄せた。

「美貴の前からいなくならないで?」
「・・・」

「美貴ね?美貴がこの霊玉持っててよかったって思う。
 剣士にはならない。美貴はこの銃で、ずっとあゆみを守るから」
「美貴ちゃん・・・」

「だから・・・もう美貴の前からいなくならないで」
「・・・」

「魔王だってなんだって美貴が倒すから!!
 霊玉なんかなくたって、四神なんか呼び出さなくたって!!
 絶対に美貴がなんとかするから!!」
「・・・」

「あゆみのことは美貴が証明する。
 絶対に消えさせたりしないから!!」
「・・・」

黙っていた私を美貴ちゃんは抱き寄せた。


「君が大切なんだ」
「・・・」


「美貴が守るから」
「・・・」


「返事は?」
「・・・」


「返事しないならキスするよ?」
「しないって」


「ケチ」


そう言って少しだけ笑って美貴ちゃんは目を閉じた。
忘れてたけど美貴ちゃんは今日いろんなことしたんだよね。
戦って、私のこと気遣ってくれて、そしてでデネブに斬られて・・・
私の声を聞いて安心して美貴ちゃんは目を閉じた。


私は、美貴ちゃんの寝息を確認してから、美貴ちゃんの手を握り締めた。


その手は、とても暖かくて、優しくて・・・


そのまま自分を預けたくなったから・・・


手を離してテントを出た。



917 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:49

「待ってたいましたよ?」

テントを出た私を待ち構えていたのは・・・


「リゲル!」


「デネブなんかに、貴様の命を奪われるわけにはいかない」
「・・・なんで私なのよ!!」

怒りをぶつける相手はきっと、誰でもよかったんだと思う。
私の怒鳴り声に、リゲルは不気味な笑みを浮かべた。

「怒りは、己を強くする。憎しみは、己を固持させる。
 我に従えば、貴様は永遠に貴様であり続けられますよ?」

リゲルの言葉は、私の心に響いた。


もしも、この人に従ってついていったら・・・


私は私のままでいられる・・・


迷いが顔に表れたことを、リゲルはすばやく読みとった。


「行きましょう?己でいられるためには、
 我が僕になる他ありませんよ?さあ!!」
「や、やめろ!!!」

その声に、うつむきかけた顔を上げた。

918 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:53


「こんちゃん・・・」


短剣をリゲルに向けて、こんちゃんが震えながらも睨みつけていた。

「柴田さんは、お前なんかの僕にはならない!!」
「うるさい!!弱き者が口を出すな!!」

リゲルは、手をこんちゃんにかざすと攻撃を放った。

「わぁぁぁぁ!!!」

こんちゃんは、衝撃吹き飛ばされて、近くの木の幹に体をぶつけた。

「こんちゃん!!」

こんちゃんは、それでも立ち上がると剣を構えた。

「やめて!!」
「柴田さんは、お前なんかの・・・」

こんちゃんは、最後の言葉を言い終える前にその場に倒れた。

「こんちゃん!!」

倒れたこんちゃんに駆け寄ると、私は小さな体を抱き起こした。
リゲルは、あと一歩の所で邪魔されたことに苛立っている様子だった。

「我が僕になれ!」
「・・・・」

「貴様が貴様でいられる唯一の方法だぞ!!」
「・・・・」

「我に従えば」
「やめて・・・」

「永遠の命を手に入れられるのだぞ!!それに!!」
「やめて!!」

私は、リゲルを睨みつけていた。

「命が欲しくないのか?」
「欲しいわよ」

「ならば!!」
「欲しいよ・・・欲しいに決まってるじゃん。 でもね・・・もっと欲しいのは、仲間なの!!
 私に必要なのは、こんちゃんや、梨華ちゃんや、美貴ちゃんなんだから!!」

私の言葉にリゲルは嘲笑した。

「おろかな」
「あんたや、デネブが何考えてるかわからないけど!
 私には一緒にいたい人がいるの!!」

「ならば、せいぜい苦しむがいい。己が消えうせる時が近づけば、
 貴様は必ず我にひれ伏す。それまで、恐怖と戦うがいい」

リゲルの言葉に折れそうになる心を必死に保たせて、精一杯の気持ちで睨みつけていた。


「恐怖を味わうがいい!!」


リゲルの攻撃に、私は目をつぶった。

919 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:55
「え・・・?」

直撃のはずの攻撃は、私に全くダメージを与えなくて・・・
目を開けた私の前には・・・

「ごっちん」
「にゃは?」

その人は、相変わらずの100%スマイルで。

「大丈夫?」
「うん」

だから、今までの恐怖が一気に吹き飛んだ。

「柴ちゃんやこんこんをイジメたらゴトー許さないよ!」

ごっちんの顔を見て、リゲルは真剣な眼差しになった。

「殺人鬼。貴様が剣士だというのか?貴様らが仲間になれるはずが無い!」

リゲルの言葉に、ごっちんが少し震えているのがわかった。

「ごっちん?」

私の問いかけに振り返ることなく、ごっちんはリゲルに向かって弓矢を構えた。

「貴様の相手は私ではありませんよ」

リゲルはそれだけ言うと姿を消した。
異様な雰囲気に包まれて、私は次の言葉を発せずにいた。

「大丈夫?」

なのに、振り向いたごっちんは相変わらずの100%スマイル。

「うん。ありがとう」
「あ?こんこん?」

私の腕の中で、少しだけ動き出したこんちゃんにごっちんが気がついた。

「こんちゃん!」

私の問いかけに答えるように、こんちゃんはうっすら目を覚ました。

「柴田・・・さん?」
「こんちゃん!!」

朦朧となる意識が徐々に鮮明になり、小さな剣士は再び自力で立ち上がると剣を構えた。


「もう大丈夫」


こんちゃんの震える手を握り締めると、不意に涙が零れ落ちた。

920 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:58
「柴田さん・・・」
「柴ちゃん・・・」

二人は、かける言葉を見つけられずに、ただ私の隣で見つめていた。

「ごめんね。私・・・」

一瞬でも、リゲルについていこうと思ったことへの後悔なのか・・・
自分が消えちゃうって思うことへの恐怖なのか・・・
信じてくれる仲間への罪悪感なのか・・・

あふれ出す涙を止める術も、自分の気持ちを伝える術もなく、私はただただ、泣き続けた。


しばらくの沈黙の後に、口を開いたのはこんちゃんだった。

「昔々人間は太陽と星の存在を証明しました。
 空気の中に酸素や窒素や二酸化炭素の存在を証明しました。
 太陽だって酸素だって、誰かが証明したから存在したんです。だから!」
「証明してみせるよ」

その声の主は、いつも私を私でいさせてくれるぬくもりをまとっていた。

「ミキティ♪」

ごっちんは、私の頭を優しく撫でると、美貴ちゃんと場所を交代した。

「この霊玉は、正義の証。本当に愛しい人を守れないなら、正義なんて意味が無いんだ。
 美貴は、この霊玉に誓って、あゆみを守る。あゆみの存在を証明する」
「ミキティは、正義の味方だね♪」

ごっちんに言われて、美貴ちゃんは少しだけ笑って、それから真剣になって。
それから、私の額にキスを落とした。



「あゆみのためなら、正義の味方にだってなんだってなってやるよ」


921 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/24(月) 23:59



この人のぬくもりを、私はどれだけ求めていたんだろう。


生まれてくる、もっともっと前から、この暖かいぬくもりを求めていたと思う。



だって・・・





だって、このぬくもりに包まれていると、不思議と恐怖がなくなる。




このぬくもりに包まれていると、私は私でいられる。



922 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:02
「テントに戻ろ?」

美貴ちゃんの手をしっかり握り締めた。
私は、このぬくもりにずっとずっと包まれていたい。

「こんちゃん、ごっちん、ありがとう」

二人の、優しい笑顔は私から恐怖を取り去ってくれる。


「ふわぁ。眠いや」


ごっちんの、とぼけた表情を見て私たちは笑いあった。


「10日目の月が、南西に傾いてるので、もう深夜をとっくに回ってますね」
「なんだよそれ。意味わかんない。時間なんて時計で十分だよ」

こんちゃんの知識を美貴ちゃんはあっさり否定して、それでも二人は互いを認め合うように距離を縮めた。


テントに戻った私たちは、すぐに眠りに落ちた。


仲間のぬくもりに包まれて、穏やかな気持ちで久々に深い眠りに落ちた。

923 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:03
「へ?なにここ??」

翌朝、テントを出た私たちは・・・

「どこここ?」

前日とまったく別の場所に来ていた。

「あらら。森に化かされたね?」

ごっちんが笑顔で答える。

「どういうこと?」

美貴ちゃんが、めんどくさそうに尋ねる。

「この森は、いたずら好きだから、こうやって、もと居た場所から一晩の間にとんでもない場所に移動させちゃうんだ」

いたずらにしては、やりすぎだって。

「・・・ここやばいよ?」

美貴ちゃんが辺りの状況に気がついた。


まわり一面・・・フォルドム・・・


「ここは、フォルドムの巣みたいだね?」

ってごっちん笑ってる場合じゃないって!!
巣を荒らされたフォルドムさんたちはもちろんご立腹な様子で・・・
一気に炎を吹き始めた。

「きゃあぁぁぁ!!」
「あゆみ!!」

美貴ちゃんの後ろに隠れる私。
私の後ろに隠れる紺ちゃん。
紺ちゃんの後ろに隠れるごっちん・・・?


「ごっちんは戦えよ!!」
「ほえ?」


ごっちんは私と紺ちゃんの行動が面白くてマネをしたかっただけみたい・・・


「トルネードクラッシュ!!ごっちん戦えっての!!」
「うん!ねばねばボーン!!」

924 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:05
「ここどこ?」

梨華ちゃんたちも朝目覚めたら別の場所・・・

「ずばりそれは、森の仕業ですわね?」
「村田さん!!」

朝から三銃士の登場です。

「今日は何しに来たんだよ!」

寝起きのよっすぃは機嫌が悪い。

「あなたたちが、偶然飛ばされたこの場所、白虎大路の最終関門なのよ」

朝だからリアクションの悪いみんなに村田さんはムッとした。

「私たちに勝てば、この先に進めるけど?」
「もちろん勝負します!!」

愛ちゃんが真っ先に手をあげる。

「よろしい。では、手合わせ願いましょう?」

愛ちゃんと村田さんが前に出た。どうやら二人の戦いが始まるみたい。

「いきますわよ!!手加減しなくってよ!!」
「望むところです!!」

「白虎マル秘爆弾!!」
「は?」

村田さんがバズーカーにこめた爆弾は愛ちゃんの前で爆発したものの、
威力は全くないわけで・・・思わず拍子抜け。

「ハ・・・ハクション!!」
「村田さん特製胡椒爆弾よ!!続きまして、マル秘爆弾パート2!」

「ぅえ?わぁぁぁ!!」

今度は・・・

「村田さん特製カラシ爆弾よ!!」

全身カラシまみれの愛ちゃんは痛みでその場を転げまわった。

「目が!目が!!」

目にカラシが入っちゃったみたい。

「名づけて、香辛料はほどほどに作戦!!」

村田さんの攻撃は予想以上にダメージがあるみたい。
見ていた梨華ちゃんたちも顔がひきつる。

「真水龍舞!!」

愛ちゃんが放った水龍は村田さんの方ではなく、愛ちゃんを飲み込んだ。

「愛ちゃん!!」

愛ちゃん・・・パニックで錯乱したのか?

梨華ちゃんの悲鳴が木霊した。


「ふぅ・・・危ないところでした」


水龍は愛ちゃんの身体についたカラシや胡椒を洗い流したんだ。

「お主なかなかやるの?」
「まだ、ひりひりする・・・」

925 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:07
「では、次の作戦!!村田さん特製マル秘爆弾パート4!!」
「え?3やないの?」

首をかしげた愛ちゃんに、今度は威力満点バズーカーが炸裂した。
愛ちゃんは見事に直撃して近くの岩場に叩きつけられた。

「名づけて、意表をついて木っ端微塵作戦よ!」
「ずるい!!」

梨華ちゃんの抗議に村田さんは不適な笑いを浮かべた。

「続きまして、村田さん特製マル秘爆弾パート3!!」
「へ?」

今度は愛ちゃんの目の前にりんごが落ちた。

「さっき、痛い思いをさせちゃったお詫びよ。
 りんごを食べて元気を出して戦いましょう!」
「ありがとうございます!」

愛ちゃんがりんごを手にした瞬間・・・


『ドッカーン』


りんごが大爆発。


「ずるい!!」


「戦いとは作戦よ。策略が優れたものが勝利するのよ」
「ってか、策略ってよりも、子供だましじゃん!!」

よっすぃの抗議に村田さんの顔がひきつる。

「子供だましにひっかかる方がいけないのよ!!」
「高橋はバカ正直だから信じちゃうんだっての!!」

「ただのお子様じゃない!!」
「っく・・・」


村田さんが梨華ちゃんたちとやり取りしている間に愛ちゃんが立ち上がった。

926 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:09


「私はお子様やない!!姫を守る剣士です!!」


愛ちゃんの身体が上気していくのがわかった。

「やば・・・」

村田さんがバズーカーを構える。

「村田さん特製マル秘爆弾パート5!!」

愛ちゃんの頭上に風船があがった。

「ひっかかりません!!」

愛ちゃんが地面を剣で突き刺した瞬間に風船が大爆発をした。

「むむむ・・・」
「私は、お子様やない!!姫を守るんです!!」

「少女は恋を知って大人になったのね・・・」
「え?!」

村田さんの思わぬ発言に愛ちゃんは顔を赤くして気を緩めた。

「いまだ!!」

そこへ村田さんのバズーカーが炸裂。

「うわぁぁぁ!!!」

またしても吹き飛ばされる愛ちゃん。

「この試合・・・やばいんじゃない?」

保田さんがおもむろにつぶやいた。

「え?」
「だって・・・ずる賢い村田さんに、単純な高橋・・・どう考えても相手が上手だよ」

「確かに・・・」

矢口さんまで納得。

「力じゃ、高橋が勝ってるけどね・・・」
「ん?そっか!!」

よっすぃが何かを思いついたみたい。

927 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:13
「ねぇねぇ梨華ちゃん?」
「なに?」

「高橋のこと好き?」
「え?」

「高橋なんかよりもうちの方が好きだよね?」
「は?」

「あんな、おこちゃまで単純バカよりも、うちの方が強いし賢いしかっこいいよね?」
「よっすぃ?何言ってるの?」

「高橋なんかさっさとふっちゃってうちと付き合おうよ!」
「よっすぃ?」

「吉澤さん!!」

村田さんと戦っていたはずの愛ちゃんがいきなり二人の会話に割って入った。

「あ、愛ちゃん?!」
「姫はそんな、軽くていい加減でだらしがない人好きになるはずがありません!!」

「おっと?単純バカよりマシだっての!高橋はおこちゃまだからね?!」
「子供やない!!」

「だったら、あんなやつの作戦に引っかからないで、さっさと試合終わらせてこいよ!」
「望むところです!!」

愛ちゃんは完全に興奮状態。


「水龍乱舞宴!!」
「村田さん特製バリア!!」

「ほら!高橋なんて弱いな?梨華ちゃんはうちのもの♪キスしよ?」
「え?ってよっすぃ?!」


よっすぃが梨華ちゃんにキスをしようとした瞬間・・・


「水龍爆裂大演舞!!!」


村田さんのバリアを破って愛ちゃんの水龍が暴れた。


「うわぁぁぁぁぁ!!!ギブゥゥゥ!!!!」


村田さんの白旗があがったけど、水龍は勢いをまして・・・


「た?高橋?冗談でしょ!?」


よっすぃをとらえた・・・


「冗談だってば!!うわぁぁぁぁ!!!」


そして、よっすぃは村田さん同様水龍に飲み込まれるのだった・・・

928 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:15
「姫、怪我は?」
「ははは・・・平気」

隣で、ずたずたになって倒れてるよっすぃに梨華ちゃんも苦笑。


「名づけて、恋敵で一気に逆上大作戦・・・」


よっすぃの作戦の威力は強大すぎたみたい・・・

「高橋・・・やっぱりお子様だよね・・・」

矢口さんが小声で保田さんに同意を求める。

「勝てたからいいけど・・・」


「ではでは!二回戦行きます!!」


今度の相手はまことちゃんみたい。

「じゃあ・・・オイラやろっか?」

愛ちゃんのおかげでずたずたなよっすぃに変わって矢口さんが前に出ようとした。

「その試合、ゴトーやる!!」
「は?」

その言葉に振り向く梨華ちゃんたち。
私たちがようやく合流したんだ。

「柴ちゃん!!」
「やっと合流できた。あれ?よっすぃ大丈夫?」

梨華ちゃんの隣で倒れてるよっすぃに気がついた。

「大丈夫じゃない。高橋にやられた・・・」
「仲間割れ?」

「ちょっと愛ちゃんが怒っちゃってね」
「そうなんだ」

「二人で石川取り合ったのよ。バカでしょ?」

保田さんが呆れ口調でそう言った。

「梨華ちゃんもてるねぇ?」
「ははは・・・」

笑顔がひきつる梨華ちゃん。

「多くのアホにもてるよりも、一人で十分!」

そういって私の肩を抱き寄せた美貴ちゃんから身体を離す。

「ははは・・・美貴ちゃん。冗談うまいね?」
「はぁ・・・なんで伝わらないかな?」

「藤本!うちはアホじゃねえ!!」
「私だってアホやないです!!」

「そういうところがアホなんだって」

喧嘩し始めた三人はほっておいて私と梨華ちゃんはごっちんのもとへ。

「ごっちん大丈夫?」
「うん!ゴトーも試合したい!!」

「うん。じゃあ、頑張ってね!!」
「うん!あ?!ゴトーは、梨華ちゃんも柴ちゃんも大好きだよ!!」

「「私も♪」」

そして、ごっちんはまことちゃんのもとに進み出た。

929 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:16
「はじめまして!」

礼儀正しいまことちゃんに、ごっちんも頭を下げる。

「はじめまして!」
「白虎三銃士です」

「んあ?ゴトーは・・・八剣士です!」
「では、手合わせ願います!」

「うん」

そう言って両手を合わせるごっちん。


「ごっちん違うって?!」


梨華ちゃんの指摘に首をかしげるごっちん。

「んあ?手合わせ願いますって言われたよ?」
「手合わせって手を合わせるんじゃなくって・・・」

梨華ちゃんに気を取られていたごっちんの目前にまことちゃんの剣が向かった。


「危ない!!」


こんちゃんの声に振り向いたごっちん。
でも、もうまことちゃんの剣は振り下ろされてるから間に合わない!!


「あれ?」


って思ったのに、ごっちんは瞬時に剣を交わしてまことちゃんの後ろをとった。


「早い・・・」


まことちゃんが信じられないってかんじの表情・・・

「剣が振り下ろされるまでの時間が0.2秒だとすると、後藤さんは気がついてから移動するまでに・・・0.01秒」

どこからその数字が出てきてるのかわからないけど、こんちゃんの頭の中では計算されてるみたい。
とにかく、ごっちんのすばやさは目にも留まらぬってやつみたい。


「そこだ!!」


まことちゃんは何度もごっちんに切りかかるんだけど、ごっちんはいつも、あと一歩のところで剣を交わす。
残像だけが切られて、まことちゃんはどんどん焦りが募る。

930 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:18


「あいつ・・・戦い方知ってる」


面白そうにまことちゃんと戦うごっちんを見てよっすぃがつぶやいた。


「知ってるってよりも・・・まるで遊んでるみたい・・・」


愛ちゃんの言葉に美貴ちゃんが口を開く。

「もっと早くよけられるのに、ぎりぎりまで剣をひきよせてからよける。
 その分、相手は遊ばれてると思い焦りが募る。その焦りはじきに恐怖に変わる。
 ごっちんとまことの力の差は歴然。その相手をすぐに倒さずに気力をくじいてから倒す」


美貴ちゃんは銃を取り出して、ごっちんに向けた。


「何するんですか!」


こんちゃんが美貴ちゃんに気がついて銃を制した。

「あいつが、また鬼になったら、この銃ですぐに倒すって約束したんだ!」
「後藤さんはそんな人じゃありません!!」

美貴ちゃんの襟をこんちゃんがつかんだ。

「なんだよ!美貴とやんのかよ!!」
「後藤さんはそんな人じゃない!!」

「放せよ!!」

こんちゃんは、美貴ちゃんに突き飛ばされて、地面に倒れた。

「藤本さん!何しとるんですか!」

愛ちゃんがこんちゃんに代わって美貴ちゃんに詰め寄った。
倒れたこんちゃんは、私が手を差し伸べて立ち上がらせたけど、
美貴ちゃんに鋭い眼差しを向けていた。

「美貴ちゃん、銃を下ろして」

梨華ちゃんの言葉にも、美貴ちゃんは耳をかさないみたいで、

「美貴ちゃん!止めて!!」

私に言われてようやく、美貴ちゃんは銃を下ろした。


「でも・・・あいつ本当にやばいかもしれない」


イーストタウンで暮らしてきたよっすぃには、ごっちんの戦い方が普通じゃないってわかったみたい。


「戦いっていうよりも、もてあそんでる」


よっすぃの言葉に反論しようとしたこんちゃんを私が止めた。

931 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:20

ごっちんは、試合開始から一度も弓をひいていない。
攻め続けているのはまことちゃん。

それなのに、まことちゃんはまるで狼に囲まれた子羊のように、
今にも恐怖で泣き出しそうな顔をしている。



相手の気力をくじいてから試合を決める・・・



もしもごっちんがそうしようとしてるんだったら・・・



笑顔で攻撃をかわし続けるごっちんは・・・


・・・・・・・・・鬼。

932 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:21

「辞めさせた方がいい」


矢口さんが口を開いた。
何も言わなかったけど、矢口さんの言葉はごっちんの心を読んでるってわかったから、みんな黙った。

「この試合、辞めさせよう」

梨華ちゃんが飯田さんのもとに向かう。

「試合辞めさせてください!」
「私たちも、試合を辞めさせようとまことの心にアクセスしてるんだけど・・・完全に恐怖で心を閉ざしてるの」

飯田さんたちもごっちんに鬼気を感じたみたい。

「あなたたちから、彼女を止めて!」

飯田さんの言葉に梨華ちゃんはうなずく。


「ごっちん!もう辞めて!!」


梨華ちゃんの声はごっちんには届いていない。

「ごっちん辞めろ!!」
「試合終了です!!」

次々に試合終了を告げる私たちの言葉はごっちんには届かなかった。


ただ、目の前の子羊をどう殺すか・・・ごっちんにはそれしかないみたいだった。

933 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:23
「後藤さん!!」

意を決したこんちゃんが二人の間に割ってはいる。

「こんちゃん危ない!!」

ごっちんに向けたまことちゃんの剣の前にこんちゃんは出ちゃった。


「え?きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」


真っ赤な血が辺りを染めた。


「こんこん・・・」


ごっちんは目の前で倒れたこんちゃんを見てまことちゃんに弓を引いた。


「うわぁぁぁ!!!」


弓は完璧にまことちゃんの急所をとらえ、まことちゃんはその場に倒れた。


「こんこん!!」


保田さんがこんちゃんに駆け寄って治療をした。


「まこと!!」


よっすぃはまことちゃんを起こそうとしたんだけど、もう意識がない。

「大丈夫。私たちはもともと死人ですから」

飯田さんがまことちゃんをひきとった。

「ごめん・・・」

ごっちんから笑顔が消えた。


勝ったのに・・・この絶望感はなんなんだろう・・・みんな口を閉ざすばかりだった。


「ごっちんおめでと!!」


空気を破ったのは梨華ちゃん。

「え?」
「なにはともあれ初勝利!!」

「うん!!」

梨華ちゃんの言葉にごっちんは笑顔に戻った。
その笑顔を見て美貴ちゃんはその場を離れた。

「こんこんごめんね?」

意識を取り戻したこんちゃんにごちんが謝る。

「いえ。ゴトーさん強いですね?」
「・・・」

「玄武の巫女様、私にもその強さを半分分けてくれればよかったのに・・・」
「こんこんも強いよ?」

「そんなことないです。私は臆病だから・・・」
「こんこん強いよ!」

「はい!」


こんちゃんの笑顔を見てごっちんはさびしそうに笑った。

934 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:25
「美貴ちゃん?」

追いかけたものの、かける言葉が見つからなくて、
言葉を捜していた私を見かねて美貴ちゃんが先に口を開いた。

「追いかけてくれるんだ?」
「え?」

「美貴のことも心配してくれるんだね?」
「・・・仲間だし?」

「仲間ね・・・」
「ごっちんは・・・」

「あいつは、美貴の家族を殺した。だから、あいつに会ったときに復習を誓った。あゆみに近づいているふりをして、あいつを殺す機会を伺ってた」
「え・・・」

「って言ったらどうする?」
「・・・」

私の顔はきっと泣き出しそうな顔をしていたと思う。

「ウソだよ」
「・・・」

「ウソにしなきゃいけないんだ」
「え?」

「じゃなきゃ、こんこんがごっちんを恨む日が来る」
「どういうこと?」

ウソだって言ってるのに、美貴ちゃんの表情は強張っていて、握り締めた拳はかすかに震えていた。


「こんこんにとって、ごっちんは憧れだ。絶対的な正義の味方。
 だから、全部ウソにしなきゃいけないんだ。
 だから・・・もしもまた、ごっちんが鬼に戻る日が来たら、鬼になる前に美貴が殺す」


「そんな・・・ごっちんは!」


「信じてるよ。あいつは、ヒーローなんだってね」


振り向いた美貴ちゃんの顔は、いつもの笑顔に戻っていた。


でも、どこか寂しそうで不安そうで・・・


たまらなくなって、気がつくと私は美貴ちゃんを抱きしめていた。


「え?」


美貴ちゃんが驚いたのがわかって、すぐに身体を離した。

「ごめん」
「だから・・・好きなんだよ・・・」

「・・・」
「ありがと」

「え?」
「美貴のこと、気にしてくれて」

「・・・仲間だし」
「仲間でいいから・・・」

「ん?」
「キスして♪」


「バカ!」

935 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:27
「柴ちゃん!美貴ちゃん平気?」

調子づいた美貴ちゃんを残して私は梨華ちゃんのもとへ戻った。

「うん。あの調子だったら問題ない」
「そっか。あ!三回戦始まったよ?!」

「うん」

三回戦は飯田さん対矢口さん。
ってか・・・大人と子供??

「身長では負けてるけど、まりっぺ強いよ!?」

息を切らしてる飯田さんに攻撃の手を緩めない矢口さん。
確かに、矢口さんの方に分があるみたい。

「かくなるうえは・・・」

飯田さんは完全におされ気味で、最終手段に出たみたい。


「絶望の泉!!」


飯田さんは剣を高く掲げるとそう叫んだ。
そのとたんに、矢口さんの周りを暗闇が取り巻く。

「なに?」

暗闇で矢口さんが見えなくなった瞬間・・・


「いやあぁぁぁぁぁ!!!!」


矢口さんの叫び声が響いた。

「矢口!?」
「やぐっつぁん!!」

「まりっぺ!!」

矢口さんの今まで聞いたこともないような叫び声に私たちは恐怖を覚えた。
そして・・・闇が明けた時、矢口さんは倒れていた。

「お前!!やぐっつぁんに何したんだよ!!」

よっすぃが飯田さんに詰め寄る。

「戦いに勝っただけよ。さ?次のお相手は?」
「うちが相手だ!!」

矢口さんは保田さんが安全な場所に移動して治療にかかった。
そして、次の相手はよっすぃ。

936 名前:正義の味方 投稿日:2007/09/25(火) 00:28


「烈火真炎!!」


矢口さんの分まで闘志を燃やすよっすぃの攻撃はいつも以上に切れがある。


「絶望の泉!!」


さっきの攻撃・・・早くも飯田さんはよっすぃに向けて同じ攻撃を放った。
よっすぃの周りを暗闇が取り巻く。


「そうはさせない!!」


闇を切り裂くよっすぃ。
でも・・・もがけばもがくほど、闇は増していった。


「うわぁ!!やめろ!!うわぁぁぁぁぁ!!!!」


闇がよっすぃを支配した時、よっすぃの叫び声が聞こえた。


「よっすぃ!!」
「吉澤さん!!」


そして、闇が説けた瞬間、よっすぃも矢口さん同様倒れていた。


矢口さん、よっすぃ・・・二人がこんなに簡単にやられるなんて・・・


私たちは固まった。

937 名前:k・y 投稿日:2007/09/25(火) 00:35
川σ_σ|| <補足説明です。

白虎マル秘爆弾:村田さんの得意技。子供だまし?って感じだけど、
       村田さんいわく、作戦です(−−;

水龍乱舞宴:愛ちゃん渾身の一撃。よっすぃの作戦のおかげ?で放たれた一撃。
      水龍大乱闘って感じで、相手を飲み込んじゃいました。

村田さん特性バリア:あらゆる攻撃を防ぐことができるバリアなんだけど、
          愛ちゃんの怒りの一撃にはなす術無しでした。

絶望の泉:飯田さんの一撃必殺攻撃。
     その攻撃の正体は・・・次回です!

ついに白虎三銃士との直接対決ですが・・・
次回もよろしくお願いします!
      
938 名前:k・y 投稿日:2007/09/25(火) 00:39
レスです!

>>912 :名無飼育さん :2007/08/13(月) 17:27
 ありがとうございます。
 今回は、いろんな展開がありましたが、
 楽しんで頂けたでしょうか?
 次回もよろしくお願いします!!


>>913 :名無飼育さん :2007/09/17(月) 22:35
 更新が遅くてすみません!
 ようやく、モバイルPCを手に入れたので、
 次回からは、もう少し早めに更新できるかと。。。
 がんばりますので、よろしくお願いします!

次回は、ようやく白虎召喚?かもしれません。
よろしくお願いします!
939 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/04(木) 00:43
作者さん更新乙蟻です。モバイルPCゲットよかったですね。
 
実は最初から読み返したのですが、まだまだ謎がいっぱいですね。
それにしても何故こんなにギャグとシリアスが絶妙なんですか?

次回更新をお待ちしてます。
940 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/23(金) 01:47

続きが気になります。
更新待ってます。



941 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:50
「さ?次は?」
「私が行きます!!」
「あなたは、村田さんと戦ったからダメです」

愛ちゃんがダメってことになると・・・
ごっちんもおそらくダメなわけで・・・
美貴ちゃんいないし・・・
顔を見合わせるこんちゃんと私・・・


「「ははは・・・」」


よっすぃや矢口さんが簡単にやられる相手に勝てる自信なんてないし・・・
ってかやばそうだから戦いたくないってのが本音。

「あなた?それともあなた?」
「・・・」

「・・・」
「じゃあ・・・私?」

こんちゃんよりは、多分強いしね・・・

「よろしい」
「まって!!」

止めたのは保田さんだった。

942 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:51
「柴田じゃなくて私が相手になる」
「保田さん♪」

「でも?ケメちゃんよりも柴ちゃんの方が強いよ?捨て身だけど?」
「梨華ちゃん余計なこと言わないで・・・」

「多分、この勝負に勝てるのは、私だけだと思うから」

保田さんは梨華ちゃんの言葉を止めて飯田さんの前に出た。

「私が相手よ!!」
「よろしい!では行きます!!」

「雷丸弾!!」

先に攻撃を仕掛けたのは保田さん。
飯田さんはその攻撃を簡単に交わすと、さっきの攻撃態勢に移った。


「絶望の泉!!」


保田さんの身体を暗闇が取り囲む。

943 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:51
「柴田じゃなくて私が相手になる」
「保田さん♪」

「でも?ケメちゃんよりも柴ちゃんの方が強いよ?捨て身だけど?」
「梨華ちゃん余計なこと言わないで・・・」

「多分、この勝負に勝てるのは、私だけだと思うから」

保田さんは梨華ちゃんの言葉を止めて飯田さんの前に出た。

「私が相手よ!!」
「よろしい!では行きます!!」

「雷丸弾!!」

先に攻撃を仕掛けたのは保田さん。
飯田さんはその攻撃を簡単に交わすと、さっきの攻撃態勢に移った。


「絶望の泉!!」


保田さんの身体を暗闇が取り囲む。

944 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:52
「やっぱりね・・・」

絶望の泉。それは、死者たちの恨みの力を刃に変える攻撃だった。
暗闇の中で死者たちの悲痛な叫びを聞き、それに耐え切れなくなった時に身体が破壊されていく。
死者の呪いのレクイエムなんだ。

「あなたたちの悲しみ・・・私が全部もらいうけるわ!!」

保田さんは霊玉をかざした。


「朱雀の巫女?私にも力を貸して!!」


保田さんの思いに霊玉が赤い光を放った。

『呼んでくれてありがとう。あなたは、真の魔術師です。私の力を信じて』

巫女の声が保田さんの心に届いた。

「朱雀蓬莱光!!」

死者たちの叫びは保田さんの体内へと吸収されていった。

「くっ・・・」

次第に増す死者の叫びに保田さんは立つことさえままならなくなりひざまずいた。

『頑張って!圭ちゃんなら、必ず悲しみを消すことができるから!!』
「朱雀・・・」

クロスペンダントを握り締める保田さん。

「終わりなき悲しみなんてない!!
私が全部受け止めて、あなたたちを召還してあげる!!!」

保田さんは死者たちのレクイエムに負けないくらいの気力をふりしぼった。

「朱雀聖天光!!」

保田さんの身体から光が放たれた。
そして・・・闇は明けた。

945 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:54
「聖なる光・・・」

飯田さんが光に包まれた保田さんを見て剣を落とした。

「死者たちを救うなんて・・・」
「私は魔術師」

その言葉に、飯田さんはひざまづいた。

「負けました」

死者たちの叫びを受け止めた保田さんの精一杯の優しさに飯田さんは敗北したんだ。

「さあ、この先に白虎の巫女がいます!」

飯田さんが指差したのは洞窟。

「タイガーホール」
「言っておくけど、白虎はトラです。なめてかかると食い殺されますからね!」

村田さんの言葉に顔がひきつる梨華ちゃん。
そうだよね・・・優しい朱雀ですらそれを受け入れる試練で瀕死だった梨華ちゃん。
白虎の力を受け入れること・・・自信ないよね。でも、梨華ちゃんは勇ましかった。

「よっすぃ!愛ちゃん!!行こう!!」
「はい!!」
「おう!!」

「みんなはここで待ってて?」
「でも?」

「白虎は危険だよ。だから近づくのは最低限度の人数でいい」


梨華ちゃんは、本当に姫らしくなったんだね。


そして三人は洞窟へと消えていった。

946 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:56
「この先に・・・白虎の巫女がいる」

洞窟の奥に閉ざされた扉があった。
三人は息をのんでから、決意を固める。

「よっすぃ、愛ちゃんお願い!」
「うん」

「はい」

そして、二人は霊玉をかざした。

「「白虎のもとへ!!」」

ゆっくり扉が開く。中から白い閃光が三人を向かえた。


『ガオォォ!!!』


白虎の歓迎に三人は早くも腰を抜かして扉の前にしりもち。

「な?」
「え?」
「は?」

怖くて厳つい白虎ちゃん?!って思っていたのに・・・

「なんで?」
「あなたが?」
「巫女??」

中にいたのは、無邪気な少女。

「ガオォォ!!」
「いや・・・怖くないから」

冷静になって中に入っていく三人を白虎の巫女様はタイガーポーズでお出迎え。

「ガキンチョの遊戯じゃないんだから・・・」

これが自分たちの霊玉の支配者かよ・・・って思うと情けなくなるよっすぃ。

「朱雀の巫女・・・かっこよかったのに・・・」

安倍さんの巫女姿がかっこよかっただけに、
今目の前にいるお茶目な白虎の巫女にうなだれる愛ちゃん。

「まぁまぁ二人とも・・・」

梨華ちゃんもちょっと苦笑。

「ようこそなのだ!!」
「ははは・・・」

「・・・」
「あなたが白虎の巫女様?」

「そうなのだ!!」
「お名前は?」

「のの!!」
「普通、フルネームで答えるだろうが・・・」

幼い白虎の巫女によっすぃ完全に呆れ気味。
そんなよっすぃに白虎の巫女様ご乱心。

「ブーブー!!辻希だよ〜だ!!」
「なんで、こんな幼い子が巫女を・・・」

愛ちゃんは、やっぱり安倍さんと比較してうなだれるばかり。

「ののは強いんだから!!」
「そうなんだ」

「ののは昔、アームレスリングのチャンピオンになったことだってあるんだから!!」
「すっごいね!!」

まともに取り合ってるのは梨華ちゃんだけ。

「お前、本当に白虎の巫女なのかよ!」
「白虎の巫女がこんなお子様なんて信じられません!!」

二人の言葉に気を悪くしたののちゃんは、いじけモードに移ってしまった。

947 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:57
「いいもん。いいもん。のんのこと信じてないし」
「のの?」

「いいもん。どうせ子供だってバカにするんだ」
「のの〜?」

「いいもん。力あげないもん」
「のの!ごめんね?!二人とも悪気はないの!」

「・・・」
「お願い!あなたの力が必要なの!」

「・・・」
「お願い!!」

「わかったのだ」


ののちゃんはようやく立ち上がると、二人に向かった。

「霊玉だすのだ」
「はい」
「ほれ」

よっすぃと愛ちゃんの態度にののちゃんは再び後ろを向く。

「やる気ないならやめる」
「ダメダメ!!やる気あるから!!」

梨華ちゃんに止められて再び二人に向き合う。


「じゃあ、行くのだ!!白虎変化!!」


ようやく白虎のおでましです!!


『ポンッ』


「え?」
「は?」
「へ?」

こんどこそ、恐ろしい白虎が登場?!って思ったら・・・


どう見ても、そこら辺のトラ猫・・・

948 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/04(火) 23:58
「やっぱり詐欺や・・・」

愛ちゃんの言葉にうなずくよっすぃ。

「だいたい!吉澤さんが詐欺師やから!!巫女まで詐欺師なんです!!」
「なんでだよ!!うちがわりぃのかよ!!」

「そうですよ!!だいたい、私と吉澤さんの霊玉が呼応してること自体がおかしいんです!!」
「それはこっちだってだよ!!お前なんかが相手だったら、まだ藤本の方がマシだっての!!」

「こっちだって!!吉澤さんだったら、こんこんやゴトーさんの方がマシです!!」

喧嘩を始めちゃう二人・・・

「二人とも・・・やめて?」

今更ながらみんなを連れてこなかったことを後悔する梨華ちゃん。

「ニャー!!ニャー!!!」

足元で鳴いてる白虎・・・もとい猫ちゃん。
梨華ちゃんはため息。

「もう!!二人とも嫌い!!」

その言葉に二人の喧嘩は中断した。

「姫・・・」
「梨華ちゃん・・・」

「なんでいっつも喧嘩するのよ・・・喧嘩する人嫌い!!」
「け、喧嘩なんてしてないって!!」
「そうですよ!!」

梨華ちゃんの発言にあわてて仲直りを開始する二人。

「二人の気持ちが一つにならなきゃ、白虎だって出てきてくれないよ!!」
「うちらは、一心同体だよ!!な?高橋?」
「は、はい!!仲良しです!!」

肩を組み合う二人。

「じゃあ・・・ちゃんと霊玉猫ちゃんにかざして?」
「でも・・・」
「こいつ・・・」

「猫でもなんでも白虎は白虎でしょ!!いやならいいわよ。二人とも・・・」

梨華ちゃんの言葉を待たずして二人は猫ちゃんに霊玉をかざした。


「お願い白虎ちゃん!私に力をください!!」


三人の思いがつながった瞬間・・・
949 名前:白虎の巫女 投稿日:2007/12/05(水) 00:00


『ボンッ』


大爆発とともに、白虎が現れた。

「マジ・・・」
「こわっ・・・」
「すごい」

正真正銘白虎ちゃん。さっきの猫ちゃんの何百倍もの身体。
鋭い牙にとがった爪。ギラギラした眼差しに三人はフリーズ。

「さっきは、よっすぃと愛ちゃんの心が一つじゃなかったら、変身に失敗したのれす!」

でも、舌ったらず具合はののちゃんみたい。

「さあ?梨華ちゃん、白虎の力をうけとるのれす!!」

そして、白虎は梨華ちゃんを包み込んだ。

「うっ・・・くっ・・・きゃっ・・・」

梨華ちゃんは白虎の腕の中で試練に耐えた。
白虎は何度も咆哮し、その声は白虎殿に響き渡った。
白虎の白い体が梨華ちゃんの鮮血で染められていく。

「梨華ちゃん!!」

白虎に剣を向けようとするよっすぃを愛ちゃんが止める。

「これは、姫の試練です」
「でも!!死んじゃうよ!!」
「大丈夫!!姫は強いお方です!!」

白虎は梨華ちゃんに噛み付き、何度もつめを立てた。
梨華ちゃんの身体はボロボロに傷つけられ、次第に生命力が弱っていった。
朱雀の試練とは比べ物にならないほどの試練。
白虎の力を得るということはそういうことなんだ。
そして・・・梨華ちゃんはその試練にうちかった。

「姫!!」
「梨華ちゃん!!」

白虎の腕の中から解放された梨華ちゃんを二人が支える。

「白虎の力を授けたのだ。もう少しで姫は命を落とすところだった。早く治療にむかって!!」

白虎ちゃんの言葉によっすぃが梨華ちゃんをおぶって二人は外に飛び出していった。
これで、二つ目の力・・・白虎の力を私たちは手に入れられたんだ。
950 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:24
「え?どういうこと?」

タイガーホールから出てきた梨華ちゃんたちが目にしたのは、魔物だらけの森だった。

「白虎の力が召喚されたから、森が制御を失ったんです!」

飯田さんが戦いながら説明してくれた。

「そんな・・・」

自分たちがしたことで森に混乱を及ぼしたことで、愛ちゃんはその場に膝をついた。

「高橋、落ち込んでる場合じゃないだろ!」

よっすぃが剣を抜く。

「朱雀の時は、こんなことにならなかったのに・・・」
「この森は、悲しみで溢れているんです。
 死者たちの怨念は、白虎の力で魔物に変わらずにいた。
 でも、その力が召喚されたことで、怨念が魔物にかわったんです」

まことちゃんの言葉に、ごっちんが弓矢を落とした。

「ゴトーさん?」

こんちゃんがごっちんに弓矢を渡す。
でも、ごっちんは弓矢を受け取ろうとはしなかった。

「ゴトーさん?」

二人の異変に気がついて、美貴ちゃんが二人の間に入った。

「この森に、怨念なんか無い!エルムは誰かを恨んだりしない!!」

美貴ちゃんの言葉にごっちんは我に返るとこんちゃんから弓矢を受け取った。

951 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:26
「何?」

突然聞こえた笛の音。

「この音は・・・」

梨華ちゃんが目を閉じて思い出す。

「新垣」

保田さんがいち早く気がついて、笛の音の方を向いた。

「お前の仕業か!!」

よっすぃが里沙ちゃんに向かって剣を抜いた。

「違う!」

梨華ちゃんがよっすぃを止めた。

「ガキさんはそんなことしないよ!!」
「こいつは、うちらを裏切ったんだぞ!!」

「違う!!何か理由があったんだよ!!」
「やぐっつぁん!こいつの心読めるだろ?なんて言ってんだよ!!」

よっすぃに言われて矢口さんは目を閉じて必死に里沙ちゃんの心を探った。


「わからない・・・」


矢口さんが信じられないって表情で目を開けた。


「読めない。まったく心が読めない!」


「新垣は、襲いに来たんじゃないよ。助けに来たんだよ。
 それが証拠に周りの魔物、全く反応しないでしょ?」

保田さんの言葉に、魔物の攻撃が収まったことに気がついた。


「ガキさん!」


近づく梨華ちゃんからは、少し距離を置くように里沙ちゃんは後ずさりした。

「早く、この森から出た方がいいです」
「ガキさんも一緒に!」

「それはできません」
「何で!!」

「私は・・・・」

梨華ちゃんが差し伸べた手から目をそらして里沙ちゃんは悲痛な表情を浮かべた。

「あんたが、青龍三銃士だって、
 裏切ったからって、そんなの気にしてない!
 新垣は仲間だよ?」

保田さんの言葉に里沙ちゃんは、顔を上げた。


「一緒に行こう?」


里沙ちゃんが保田さんの手を見つめた時だった。
爆音とともに、悪魔が姿を現した。


「ベガ!!」


銃を向けた美貴ちゃんを見てベガは嘲笑すると、すぐに里沙ちゃんの元へ近づいた。

「心の無い者が、感情なんか持つんじゃないよ?」

ベガの不気味な言葉に里沙ちゃんは再び笛を構えた。

952 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:27
「ガキさんやめて!!」
「新垣こっちへ来な!!」

梨華ちゃんの呼びかけにも、保田さんが差し伸べた手にも動じることなく里沙ちゃんは笛を奏で始めた。

「う・・・この音」

よっすぃがすぐに気がついて耳をふさぐ。
あの時と同じ音。
朱雀大路で私たちが聞いた旋律。

「金縛りの旋律なの!」

私の言葉にみんな耳をふさごうとしたんだけど、すでに固まってしまい身動きがとれなくなっていた。

「よくできました」

ベガは里沙ちゃんの首筋をなめると、ごっちんのもとに近づいた。

「やめろ!!」

美貴ちゃんの怒鳴り声はただ森に木霊するばかりで、ベガはごっちんの隣に立った。

「いいこと教えてあげるわ?」

不気味な笑みを浮かべると、ベガはごっちんに何か耳打ちをした。
何を言ったのかはわからなかったけど、
ごっちんの顔がみるみる変わっていく事で、ただならぬ事態の予兆を私たちは感じた。

953 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:28
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

ごっちんは、悲鳴にも似た叫び声を上げると、ベガを睨み付けた。
その表情は、いつも笑顔のごっちんには似ても似つかない、鬼の形相。

「いまの話・・・ホント?」

身動き取れないはずなのに、ごっちんはベガの方に体を向けた。

「本当よ?」
「あんただけは・・・許さない!!」

ごっちんは、剣に手をかけた。

「鬼さんこちら?」

ベガはごっちんから身を遠ざけると、挑発するように笑った。

「やめろ!!ごっちんやめるんだ!!」

美貴ちゃんがごっちんの行動を止めさせようと叫ぶ。

「新垣やめて!!」

保田さんが里沙ちゃんに笛を止めるように叫ぶ。

「ごっちん!!」
「新垣やめろ!!」

「やめてください!!」
「ごっちん!!」

みんなの叫び声は、ただ森に吸収されるばかりで、ごっちんにも里沙ちゃんにも届かなかった。


「見せてやるよ」


そして・・・ごっちんの顔から笑顔が消えた。


「デュルフィング!!」


絶対に抜かないと約束したはずの剣をごっちんは手にした。


剣は鞘から放たれた瞬間に、漆黒のオーラを放った。



私たちはその闇に一瞬ごっちんの存在を失った。

954 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:30
「え・・・」

次にごっちんを見つけた時、私たちはごっちんが別人のように思えた。

「血化粧」
「え?」

「デュルフィングは、生き血を欲しがる。それは主のものであったとしてもね。
 だから、ああやって自分の体を傷付け血化粧を施して剣に全てを委ねるんだ」

矢口さんが、説明してくれた。


「うおぉぉぉぉ!!!」


ごっちんの、雄叫びに里沙ちゃんの笛が壊れた。


「そんな・・・」


里沙ちゃんは、信じられないって表情を浮かべ、すぐにその場から姿を消した。


「ごっちんやめろ!!」


美貴ちゃんが銃をごっちんに向ける。


「藤本さん!!」


美貴ちゃんの前にこんちゃんが立ちはだかった。

「あいつは、もう理性を失っている!!」
「ゴトーさんは、そんな人じゃない!!」

二人が言い争う背後で、ごっちんはあっという間に周りの魔物を切り捨てた。
その瞬間技に私たちは鬼気を感じた。

「いいわよ。さあ!もっと恨みなさい?鬼になりなさい!!」

ベガの不気味な笑い声が森に木霊した。


「貴様!!」


よっすぃがべガに剣を向ける。

「言っておくけど、私が悪いわけじゃないわよ?
 そこにいる小娘と、その鬼が仲間になれる訳が無いのよ!」

ベガの言葉に、こんちゃんが立ち上がる。


「そんなこと無い!!」


こんちゃんのまっすぐな眼差しを見て、ベガは嘲笑した。


「じゃあ、教えてあげるわ?」
「やめろ!!」


美貴ちゃんがベガの前に立ちはだかる。

「そんなに、隠したいわけ?真実がわかれば仲間ではいられなくなるかしら?」

ベガの言葉に美貴ちゃんの顔がひきつった。


「教えてあげるわ?」


「やめろぉぉ!!!」


美貴ちゃんが放った銃弾はベガの目の前で消えた。


「私に弾をぶち込もうなんて100年早いわよ」


ベガの言葉に美貴ちゃんは剣を抜いた。

955 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:31
「やめろ、ごっちん!!」

よっすぃにごっちんが襲い掛かっているのを見て、美貴ちゃんはベガでは無くごっちんのもとに向かった。


「うわぁぁぁぁ」


ごっちんは、あっという間によっすぃを斬つけると、隣にいた保田さん、矢口さんと次々に斬りつけていった。

「やめてごっちん!!」

立ちはだかった梨華ちゃんにごっちんが剣を向ける。

「姫!!」

梨華ちゃんをとっさにかばって愛ちゃんが犠牲になった。

「やめて!!」

倒れた愛ちゃんに代わって私がごっちんと向かい合う。

「どうして?剣を抜かないって約束したじゃん!!」

ごっちんには、私の問いかけは聞こえない様子で、剣を向けてきた。


「やめろぉぉぉ!!」


剣を振り下ろされる前に、美貴ちゃんの銃弾がごっちんの右腕に命中した。


「藤本さんなんで!!」


銃を放った美貴ちゃんに、こんちゃんが詰め寄った。


「気づけよ!あいつはもうごっちんじゃない!!」


美貴ちゃんの言葉にこんちゃんはひたすら首を振った。


「ゴトーさんは!!」


「あんたの父親を殺した殺人鬼よ?」


ベガの言葉にこんちゃんは、一瞬固まり、脱力して地面に膝をついた。


「こんこん・・・・」

こんちゃんの表情を見て美貴ちゃんも力が抜けた。


「あんたたちの親を殺した殺人鬼よ?それでも、仲間になれる?」
「やめろ!!!」


美貴ちゃんは銃をベガに向けて放ったけど、かすめもせずに、森の中へ銃弾は消えていった。


「今目の前にいる獣を見ればわかるでしょ?血に飢えた獣。目の前にいる奴らは一人残らず殺す。面白い!」


ベガは勝利したかのように高笑いをし、姿を消した。


956 名前:ウエストタウンの殺人鬼 投稿日:2007/12/06(木) 23:44
川σ_σ|| <補足説明です。

絶望の泉:飯田さんの攻撃。森にあふれる死者たちの恨みの力を刃に変える攻撃。
     矢口さんもよっすぃも倒されるほどの攻撃だったけど、保田さんの
     癒しの力で撃退できました。

朱雀蓬莱光:朱雀の力を宿した保田さんの技。邪気を全て自分の体内に封じ込める。
      今回は、死者たちの悲しみを全て身体で受け止めました。

朱雀聖天光:朱雀の力を宿した保田さんの技。邪気を浄化し、全ての悪を
      生まれ変わらせる。死者の怨念も見事に浄化させました。

白虎の巫女:辻希。一見、幼いように見えるけど、怪力の持主。
      強くて優しい白虎に変身する。

白虎:四神最強の力を持つ。

デュルフィング:エルムのみが持つことを許された、呪われた剣。人をねたまず、恨むことの
        無いエルムのみに許された。少しでも邪悪な心を持った者が手にすると、
        血を求めて相手を斬り続ける。最終的には持主の血さえも奪いつくす。

血化粧:デュルフィングに全てを委ねる為に、自らの身体を傷つけ、理性を失って相手を斬り続ける。
    2回血化粧を施した者は、元の姿には戻れない。

大変なことになってしまいまいた。
957 名前:レス 投稿日:2007/12/06(木) 23:49
>939 :名無飼育さん :2007/10/04(木) 00:43

 ありがとうございます。
 ギャグとシリアスのバランスは作者の課題です。
 これからは、シリアスが増える可能性が高いですが、
 笑い飛ばせるように書きたいと思います。
 次回もよろしくお願いします。

>940 :名無飼育さん :2007/11/23(金) 01:47

 更新が遅くて本当にすみません。
 もう少しマメに更新するように
 心がけますので、今後もお願いします。
 
 
そろそろ、いっぱいになってきたので、
新たにスレ立しようと思います。
新しくなっても、ぜひ読んで下さい!
958 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/10(月) 09:32
更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

k・yさん、更新乙です。白虎の巫女・・・まさかこの人とは思いませんでしたw
一難去ってまた一難どころかまた一危機ですよね。リアルごっちんはハロプロ
卒業しましたが、ここのごっちんはまだまだ活躍してほしい1人です。

まだまだ目が離せない作品の1つです。次回の新スレ?での更新お待ちしてます。
959 名前:名無飼育 投稿日:2007/12/11(火) 00:05
待ってましたーーーー!!!
更新乙です。本当に見逃せない展開ですね。
一人一人のストーリーがなんかいいです。
こんこんが成長していくのがなんか好きだな。

次回の更新もお待ちしています♪
960 名前:コウ 投稿日:2008/01/18(金) 15:59
このつづき話しの名前何ですか??(´Д`)
961 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/23(土) 02:33

毎回楽しく読ませてもらってます!

次回の更新が待ち遠しいです。
ほんと楽しみにしてます。
962 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/18(火) 18:14

更新待ってます
963 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/05/10(土) 02:26
ひっそりとお待ちしております…
964 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/10(火) 08:43
続きが気になるYO!
965 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/04(木) 21:35
更新お待ちしています

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