染まる
1 名前:ドログバ 投稿日:2009/10/31(土) 04:51
Buonoの3人にインスピレーションを受けました。
一生懸命書くので、ちょっとでも観てください。
2 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 04:52


もし 明日が来ない日がくるなら
そのことに気づくときは、いったいどの瞬間なんだろう


目を閉じた瞬間? それとも、目が覚めた瞬間?


選べるなら、そうだな・・・

あたしは 夢の中で気づきたいな


だって夢なら、いつかは覚めそうだもん
3 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 04:52










8月1日。天気は晴れ。
ちっちゃい雲が、ふわふわ流れてる。
あたしはじっと、雲を見つめていた。
ただ眺めているわけではない。
あたしがあの雲たちを見つめているのには、ちゃんとした理由があるのだ。


雲は絶えず変化を繰り返していて、次第に消えてしまう。
けれど、空のはじっこからは、また無数の雲がやってきくる。


雲は見てて飽きないし、何も考えないですむ。


あたしは、1学期中、毎日ずっと空を見てた。
4 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 04:52
まわりは次第に高校受験モードで、休憩時間でも、ごはんの最中でも、友達の緊張感がどことなく伝わるようになった。
そんな周囲の変化に、少し引いてしまったのかもしれない。

何も考えたくなかった。将来のこととか、夢とか、そういうの。
自分のことは、自分が一番よくわかってるから。

怖いんだ。未来と向き合うのが、たまらなく辛くて、歯がゆい。


あたしは、ちょっとだけ、青春してみたくなった。


なぜかはわからないけれど、受験とか、高校生とか、卒業とか。
そういう類のフレーズを耳にすればするほど、大人になれって言われてる気がして。

嫌だった。

たまらなく、嫌だった。
5 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 04:53
いつまでも子供でいたいわけじゃない。
だけど、いつまで子供でいれるのかを、もっとしっかり知りたくなった。

だから、青春。
青春って聴くだけで、なんだか若いイメージあるじゃん?

あたしは、まだ大人にはなりたくない。
まだまだ、得体の知れない【大人】ってやつを、を意識したくないんだ。

消えることだと思ってる。大人になるってことは、今までのあたしが消えることだと。


こんなお日様が眩しい日には、いつもなら見つめるだけの雲も、何だか意思があるように思えた。

雲。大空にずっしりと座り込んでるみたいな入道雲。

消えてゆく。
時間は、すぐに消えちゃう。
あたしは、消えたくない。

あの雲もそうなのかな、って、あたしは思ったんだ。
あの雲も、まだ消えたくないって思ってるのかなって。

目に見えない強い向かい風とか
あっという間に流されちゃうくらいの強い追い風のせいで

自分の意思とは無関係に


自分を失うのかな
6 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 04:54
あたしは・・・

あたしは・・・


8月1日。天気は晴れ。
ちっちゃい雲が、ふわふわ流れてきて、太陽を隠した。

スッと迫るように暗くなる。教室中をおっきな影がまとう。

どこまでも続きそうな、まっすぐな青空に、太陽を透かした薄いちっちゃな雲がひとつ。

邪魔してるようにも、守ってるようにも見えた。
7 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 04:54
8月2日。


青春を意識したあたしは、まず何ができるか。そして、何をまっさきにすべきかを深く考えてみた。
青春。
んー・・・たとえばー・・・恋愛?
あたしだって、恋のひとつやふたつ、したことくらいある!
・・・あるっけ・・・?
自分にウソはつけなかった。

あたしは生まれてこのかた、一秒だって、誰かのことを好きって思ったことがなかった。
好きですってゆってくれる男の子はたくさんいたけど、なんだかピンと来なくて。
女の子の友達からは、男の子をふるたび、注意されてきた。

今思えば、恋をするってことが怖かったのかもしれない。

恋愛とか、誰かを好きになったりとかって、もっと大人の感情だって思うから。

それに、そういうのって、自分のバランス感覚とか、色々見失いそうで怖いんだ。
8 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 05:15
8月3日。晴れ。

恋愛がダメとなると、青春ってなんだってことになってきた。

だって、誰かを好きって感情が一番若々しくてキラキラしてるはずじゃない?
たとえば、好きな人と同じ消しゴム使うとか、仕草をまねするとか。
そうゆう些細な事から無限にドキドキしちゃうのが女の子の青春のはず!
じゃなきゃ、もったない!
あたしは自慢じゃないけど肌だって綺麗だし、声だって特徴的で可愛い。
青春を楽しむ条件には申し分ないはずなのだ。
おかしい。あたしが悶々とするのは不公平だ。

相変わらず窓の外は、突き抜けるように青くて、雲は輝いて眩しい。

誰か素敵な男子が結婚申し込んでくれたらなー。

バカかあたしは・・・。
9 名前:染まる 投稿日:2009/10/31(土) 05:15
銀色のフレームで長方形に切り抜かれた空はそこだけ別の世界みたいに見える。
あたしの生きてる世界とは別のもっと遠い遠い場所。
そこには悩みとか不安とか模試とか受験とかなくて、好きなことだけがただ存在する。
空間をくり抜いて青い絵の具をいっぱいに注ぎ込んで、その世界は作られた。
悲しみや苦痛、いやな事全部を混ぜた真っ青な絵の具をいっぱい注ぎ込んで。

今日の空が驚くぐらい青く澄んで綺麗なのはいつもよりたくさん悲しみを背負ってるからだろう。

午後2時の日差しを浴びてポカポカした空気を染み込ませるカーテンがゆっくり膨らむ。
緩やかな風を受け、呼吸をするように揺れる。
真夏を通り過ぎる一筋の微風に、あたしは今日も未来を憂いだ。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/31(土) 15:25
楽しみにしてます!!
11 名前:染まる 投稿日:2009/11/01(日) 05:19



二人目のM


12 名前:染まる 投稿日:2009/11/01(日) 05:22
鳥から見た渋谷の街はどう映っているのだろう。
無数の人間が往来するセンター街は腐乱したモンシロチョウに群がる蟻の大群に見える気もする。
真っ白な街に真っ黒な人間。蟻は夜を求め、夜の中の光彩を追いかけ、巣から這い出す。
光に魅せられた蛾にも似た人々。
一様に群れを成し、そのりんぷんが金と空虚を生み出す。
メインストリートを一歩はずれるとそこは腐臭に満ち満ちている。
死骸同然の乞食は、街を形どるもう一つの光。
どろりと黄色く濁る膿。道玄坂で喚く大学生やプッシャーのイラン人も何ら変わりない。
鳥から見ればそれらは同様で同等。そこに大差はない。一様に同じなのだ。
13 名前:染まる 投稿日:2009/11/01(日) 05:23
昔飼っていたセキセイインコがじっと私を見つめる事がよくあった。
なんだか気色悪くて、私はお母さんに捨てて、と頼んだ。
お母さんはどうしてと聞いたけど、答えられなかった。
滲むようなオレンジをしたヤコブソンのランプの光がインコの眼球に映って燃えているみたいだった。
次の日の朝にはインコはいなくなっていた。インコと一緒に歯ブラシと剃刀が二つ使われてたと弟に聞いた。

それ以来、あの夕焼けのような照明が灯るリビングではいつも動物の体液の匂いがした。
正確にいうと、リビングでは母親の趣味のガーネッシュの8番が途切れることなく焚かれているから
そんな匂いは微塵もしないんだけれど、時折ふっと鼻腔に漂う「いきもの」の匂いが、私を見つめる一対の目玉を想起させてひどく居心地が悪かった。
14 名前:染まる 投稿日:2009/11/01(日) 05:24
京王新宿線のホームを出る。巨大な抽象画を右手に眺める広場を横切り、エスカレーターを下る。
午前0時前のスクランブル交差点。
隣にいるサラリーマンは何度も時計を見ては、車の往来を舌打ちしながら目で追う。
約束にでも遅れそうなのだろうか。右足が動悸したように上下に揺れている。
ストレートチップの黒い革靴には年季が入っている。足元にくたびれた青年誌があった。
表紙は見慣れた歌手だった。名前はラブ。
15 名前:染まる 投稿日:2009/11/01(日) 05:26
中学生のころ大好きだった歌手で、クラスにはファンの子が私以外にも数人はいた。
3年前に入学した付属高校は数えるくらいしかいってないから、もしかしたら私のクラスにも未だにラブを好きな人もいるのかもしれない。
でも、普遍的な愛を歌いたがるラブは私から見ても時代遅れだ。
芸名はコートニーから取ったらしいがコートニーの事もきっと外人くらいにしか思ってない。
浅はかさが透けて見えるような女。そんな歌手だ。
一時期、ラブに憧れてバンドをしようと考えた事があるのは、私だけの秘密だ。この先も。
16 名前:染まる 投稿日:2009/11/01(日) 05:27
数分後、信号が黄色に変わった瞬間にサラリーマンは駆け出して、反対側の信号待ちの人混みに姿を消した。

サラリーマンを目の端で追いながら私は人の塊を縫うように歩いた。
この街では、他人とぶつからずに歩くことだけが唯一絶対の処世術だ。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/05(木) 22:43
続き楽しみにしています!

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