桃色の缶詰
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:31
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ベリキュー中心に短いのを色々と。
桃子推しのカプヲタなので、彼女の話が多くなると思います。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:31
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まずは、しみもも。
キャプ視点。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:32
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がらんとした楽屋。
いつもはメンバーの声でうるさいそこ。今は、私と桃の二人だけで、とても静かだった。
今日の仕事は雑誌の取材で、メンバー全員で撮影をした後、個別にインタビューがあった。
最年少の梨沙子から順に呼ばれていて、私達年長組は最後に受ける事になっている。
壁に取り付けられた大きな鏡の前に座り、自分の取材の順番が回ってくるまでの手持ち無沙汰な時間を、私は雑誌を読むことで潰していた。
椅子を一個空けて隣に座っている桃は、さっきから熱心にケータイを弄ってる。
いつものメンバーがいなくて広くなった楽屋の中に響くのは、雑誌を捲る音と、
ケータイを押すかちかちとした音だけで、私と桃の間に会話はない。
けれど、静かなその空間の居心地は悪くなかった。
さすがに年単位での付き合いになってくると、むしろ安心してリラックスのできるそれだったからだ。
ぱらり、と雑誌を捲る。
そのページに可愛い服を発見して値段を確認。少し高めだけど手が出ないほどではない。
次のお給料が出たら買っちゃおうかな、なんてうきうきと心の中で思った。
そのページをじっくり眺めた後、さて次のページ、と捲ろうとしたその時。
私の視界を遮るように、私と雑誌の間に伸びてきたのは、透き通るような真っ白な二本の腕。
それは、目の前で交差して、ぎゅ、と私の肩を抱き締めた。
一瞬遅れて背中に押し付けられるのは、柔らかで温かい感触。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:32
-
確認しなくても、その体温の正体は、すぐに分かった。
だって、この部屋には私の他に一人しかいないし、メンバーが帰ってきた様子もない。
それに何より、いくらベリーズのメンバーがスキンシップ大好きでも、
私に対してこんな事してくる人なんてそう何人もいないから。
やや遅れて、右の肩の重みが増す。
ふわりと鼻腔を通りぬけるシャンプーの香りは、慣れ親しんだそれで。
(その香りに少しだけ、ほんの少しだけ鼓動が増したのは内緒だ。)
「桃」
背中にへばりついてる相手の名前を呼ぶと、桃は小さく身じろいだ。
暫く背中の様子を窺う。けれど、それがいくら経っても一向に離れる気配が無いことを悟って、
私は細く息を吐き出してから雑誌を捲る動作を再開した。
背中の彼女は好きにさせることにする。
桃が突拍子も無いことをするのは今に始まったことじゃないし、
今更、顔を赤くして、やめて、なんて言うような初々しい関係でもない。
まあ、他のメンバーがいれば対応は変わったかもしれないけど、
幸いなのか何なのか、楽屋には今私と桃の二人だけしかいないのだし。
それに何より、文句を言った所で桃が聞き入れるとは思えない。
けれど、彼女を好きにさせる事と、私がその存在を意識しないという事はまた別の問題で。
実のところ、雑誌を眺めてはいるけれど、そのページの半分の内容も頭に入ってきていなかったりする。
(……それを背中のヤツに教えるつもりは毛頭ないけれど。)
だって、絶対桃は意地悪く笑うに決まってるから。
あの特徴的な薄い唇を吊り上げて、“なあに、キャップ。そんなに桃が好きなの?”って。
想像しただけでもかちんとくる。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:33
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雑誌をもう一枚捲る。
そこに載っているモデルのお姉さんが、かちっとしたジャケットを甘く着こなしているのを流し見て、
それを熱心に読むふりをしながら、私はまたページを捲った。
そして、ちょうど四枚目を捲ろうとした時、また桃が小さく身じろいで。
そのまま桃は私の身体を抱き締めなおしたと思ったら、「キャプ」なんて小さな声で私の愛称を口にした。
それは本当に静かな呟きで、だぶん密着した私にしか聞こえないような、そんな音だった。
普段聞きなれない声音の桃に少しだけ引っかかりを覚えながらも、
私は雑誌から視線を上げず、勤めて興味なさそうに返事をする。
そしたら、首に回った腕に僅かに力が入って。
「キャプテン、もものこと、好き?」
予想外の問いに、「はぁ」なんて酷く間抜けな声が漏れてしまったのは仕方が無い事だと思う。
思わず雑誌から視線を外して、右肩に乗っかる桃の頭をちらりと盗み見た。
けれど、桃が肩に顔を伏せていたから、さらさらした黒髪が視界を揺らしただけだけで、
その言葉の真意は窺えない。
珍しい、素直にそう思った。
普段の桃ならこういう場合、決まって私の顔を見て、それはもう甘ったるい声で聞いてくるから。
それが今はどうだ。か細い声で私の名前を呼んで、ちらりともこっちを見ようとしない。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:34
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視線を前へ向けると、鏡に真顔の自分と右肩に乗っかる桃の前髪が映ってた。
一体何なんなの。明らかにいつもと様子が違う彼女に、私は内心首を捻る。
その原因を突き止めようと、今日一日の桃の行動を思い出してみるけれど、今日の桃は、
いつも通り挨拶して、いつも通り熊井ちゃんと喋って、梨沙子に甘えて、いつも通り私へ笑顔を向けた。
楽屋に入ってきた時から可笑しい所なんて一つもなかったはずだ。
これでもっかってくらい普段通りの桃だったはずだ。
もう一度隣へ視線を投げ、相変わらずそこに揺れるのが黒髪だけなを見とめて、
私は手元の雑誌へそれを戻した。
「嫌いだったら、こんなことさせないでしょ」
雑誌を読むふりをしながら、何でもない事のように言った。
――― 我ながら素直じゃないな、と思う。
こんな時、可愛らしく“大好きだよ”の一つでも言えれば話は早いのに。
そうすれば、きっと桃だって(何が原因でこんな風になっているかは分からないけど)
顔を上げてくれるだろうって事も十分に理解はしている。けれど。
けれど、桃の前ではどうしても子供じみた意地が出てしまって、捻くれた言葉しか出てこない。
長年の付き合いで培われたそれを今更改めるなんて、すぐにはできそうになかった。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:34
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私の答えが不満だったのか、桃はまた小さく身じろいで、
「キャプ」と不機嫌さを隠しもせずに声を出す。
「そういう言い方、ずるいと思う」
首に回った腕にまた少し力が篭る。
首筋に桃が額をすり寄せる感触がして。さっきよりも深くなる桃の香りに鼓動が跳ねた。
殆どゼロに近い距離にいる桃に、その鼓動の変化が気付かれていないか心配になる。
「ももは、好きかどうか聞いてるの」
私の心配をよそに不満気に身体を揺らす桃。
桃の望む答えは分かりきっていたけれど、私はそれを口に出さない。というか、出せない。
その答えが私の桃への本心だとしても、素直にそれを言葉にできるほど、私は大人ではなかった。
「なんなの、桃。さっきからへん、 」
「キャプ」
話題を逸らそうとしたら、桃にいつもより少しだけ低い声で遮られた。
答えを促すように、私を抱き締める腕に力が入る。
その拍子に桃の指が私の鎖骨辺りを掠めて、びくりと身体が跳ねそうになるのを何とか抑えた。
だけど、否応にも高まる鼓動を制御することができなくて、内心酷く焦った。
そもそも、何で桃はそんな事を言わせたがるのだ。
ここではない場所で何度も口にしているのに。口にするだけじゃなくて、行動でも示している事だってあるのに。
こんな仕事をする場で、メンバーがいつ来てもおかしくない状況で、言わせようとする事自体がおかしい。
――― それに。
それに、今更口にしなくても、桃は、私の気持ちなんて分かりすぎるくらい分かっているくせに。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:35
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高まる鼓動と格闘しながら桃へ文句を並べいていたら、不意に視界に入ってきた雑誌のページ。
ページを捲ろうと掴んでいた所が小さく皺になっている事に気付いて慌てて手を離す。
無意識に力が入って雑誌を握り締めていたみたいだ。
桃がまた小さく身体を揺らした。
「言って」
耳元で直接響く桃の声。
低く、私だけに言い聞かせるようなそれに、ぞくりと背中を何かが駆け抜けた。
肩に擦り寄る感触とさらりと落ちる髪の香り。
それらに酷く過敏に反応した鼓動が尋常じゃないくらいの速度で走ってて。
さすがにこれは不味い。
私は、桃の腕を解くために白いそれに触る。
「桃、いい加減にして。ちょっと一回離れて」
桃の細い手首を持って引き離そうとしたら、
「やだ」っていう子供っぽい声と共に抱き締める腕に力が入った。
「桃」
「やだ。言ってくれたら離れる」
「ちょっとっ、」
抗議の声を上げようとした、その時。
桃の指が私の鎖骨の上でするりと動いた。さっきとは違い今度は意志を持って。
小さく息を呑む。鼓動が早まって、体温が、上がってく。
まずい、やばい、だめ。
頭の中で鳴り響く警鐘音。
けれど、私の変化にもお構い無しに、桃の指はそのままゆるゆると滑り続けてた。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:36
-
「ねぇ、早く言って?」
桃が催促の言葉を投げかけてくる。
けれど、私は漏れそうになる吐息を抑えるのに必死で、応えられずにいた。
そしたら、桃の指は何度か鎖骨を往復した後、今度は首を柔らかく撫ぜて。
ぞくぞくと背筋を駆け抜ける何かに、紡ごうとしていた抗議の声が飲み込まれる。
「早くしないと、」鼓膜を震わせる、桃の、声。
背中を撫ぜる何かを抑えるように、ぎゅう、と瞼を閉じた。
「早くしないと、キャプテンの心臓、壊れちゃうよ」
その言葉に、私はやっと理解した。
閉じてた瞳を見開く。
――― 桃は私をからかってる。
以前、桃は私を困るような事を言って私をからかった事があった。
それ自体は本当に他愛も無い事だったのだけれど、どうにも怒れてきてしまって、
腹立ち紛れに理由を問い質したら、桃は、だってキャップの困る顔かわいいんだもん、
なんて理由にならない理由を口にしたのだ。
それにまた腹が立って、その日一日口を聞かなかった事は記憶に新しい。
たぶん、今の行動の原因もきっとそんなところだ。
理由を聞いたら、「からかうの面白いんだもん」だの「困ってる顔見たかったんだもん」だの、
悪びれることもなく桃は言うのだ、きっと。高校生には見えないあの笑顔で。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:36
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気が付いたと同時に腹立たしくなって、桃を叱りつけようと口を開いた時。
首筋に押し付けられる柔らかな感触。
それまでのとは明らかに違うそれ。すぐにその正体を理解して息が上がる。
それから一瞬後、首筋をゆるやかに撫ぜていた指が、するりと服の中に入り込んできて。
止める暇もなく、それはブラの線をやらしくなぞった。
「ちょ、とっ、桃!」
「言って」
「やめ、皆、来るっ」
早まる鼓動と自分の息遣いの色合いに更に焦って、桃の腕を強く引っ張った。
けれど、桃の腕は少しも動かない。
首筋に触れていた柔らかさが優しく這い上がってきて、ちゅ、と音を立てて耳朶に触れた。
「ほら」と桃が言う。私にしか聞えない声で「言って」と催促する。
何か変な病気に罹ってしまったんじゃないかっていうくらい、桃の唇が触れた部分から、
熱が身体中に広がっていく。背筋を駆けるだけだった震えも一緒になって心の奥を撫でた。
羞恥心と、鼓動と、桃の声。それらが私をぐらぐらと揺さぶる。
私はきつく目を閉じると、同じくらいきつく桃の手首を握って。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:37
-
息を吐き出す。
切羽詰ったような色になってしまったそれに奥歯を噛み締めて。
「……、き」
「んー?」
この距離で聞えないはずがないのに、すっ呆けた桃の声に、かっと頭に血が上った。
気付いたら、叫んでた。
「っ、好きに決まってんじゃん!なんなの、もう、ばかっ」
叫んだと同時に、桃の指がぴたりと止まった。
背中の温度が離れていく。
同じように、耳朶に感じていた柔らかさも、ふふ、と空気を揺らしながら離れていった。
私は小さく息を吐き出して、じっと手元を見つめる事に集中する。
そうしていないと、恥ずかしさと情けなさとで、熱い身体が本当に燃えて消し炭になってしまいそうだった。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:37
-
不意に、桃の白い腕が離れていった肩に、また温もりが触れた。
ちらりと確認すると、そこに置かれていたのは桃の掌。
それに力が入ったかと思うと、強引に、だけど優しく右へ向かされて。
超至近距離にだらしなく綻んだ顔の桃が割り込んできた。
「もももだよ」と、表情と同じくらいその声も酷くだらしなく響いた。
「ももも、佐紀ちゃんが、好き」
その声を彩る甘いそれを隠す気なんて毛頭無いんだろう桃の、だらしない声が鼓膜を撫でて、
その言葉の意味が身体の奥へじわりと染み込んできた。
彼女はさっき私にずるいと言ったけれど、桃のこういう所の方がずっとずるいと私は思う。
そうされると毒気が抜かれて、怒ってたのとかどうでも良くなってしまうから。
(こんな時だけ名前で呼ぶのだって、反則だ。ペナルティだ。レッドカードだ)
下唇をきゅ、と噛む。
だけど、簡単に絆されたことを桃に悟られるのが悔しくて、ポーズだけで桃を睨んだ。
けれど、そのポーズはその役割をきちんと果せていない事は明白だった。
だって現に桃は、悪びれた表情を少しも出さずに、そっと私に近づいてきたから。
その表情を、仕草を、苦々しく思いながらも、桃色の唇が近づくのを見とめて、
ゆっくりと瞼を下ろしてしまう自分は、本当にどうしようもなく馬鹿だと思う。
けれど、仕方がないのだ。
そんな桃が、私はやっぱり馬鹿みたいに好きなのだから。
おわり
- 13 名前:付き合いの弊害 投稿日:2009/06/17(水) 02:40
-
>>付き合いの弊害<<
タイトル入れるの忘れてた。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:40
-
キャプは同学年の桃子に存分に意地を張ってればいいなぁという妄想でした。
それはそうと、バスガイドの千奈美がイケメンすぎて惚れそうですw
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 02:40
- 流し
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 10:13
- キャプテン可愛すぎる…
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/18(木) 00:12
- 楽しみなスレが一つ増えました
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/18(木) 01:02
- これは可愛いキャプテンですね
ここに雅ちゃんが来たらどうなってたんだろう・・・佐紀争奪戦?
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/24(水) 02:00
-
しみもも2つ目。
桃子視点。
- 20 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:01
-
困っている時のあなたの顔が好き。
そんなこと言ったら、きっとあなたは怒るだろうけれど、ごめんね、止められない。
だけど、ねえ、知ってた?
それには条件があるの。
私は、可愛らしいその表情が見たくて、今日もあなたを困らせる。
- 21 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:01
-
***
床にぺしゃんと座り、私は壁に背中を預けた。
傍らに置かれたペットボトルを手に取ると、それは室内の気温で生ぬるくなっていた。
だけど、他に飲み物が見当たらないから、仕方なくその蓋を空けてミネラルウォーターを一口飲む。
やっぱり生温いそれに溜め息を吐いて、私は鏡の前の背中に視線を投げた。
熱心にステップ踏んで揺れるその背中は、我らがキャプテンのそれ。
その背中をぼんやりと眺めて、私はまた小さく溜め息を付いた。
今日は新曲のダンスレッスンの日だった。
新曲を渡されて数度目のレッスンだったから、“振りを覚える”という段階はもう過ぎていて、
メンバーそれぞれが、与えられたダンスをパフォーマンスとして完成させる事が、
今日のレッスンの大きなテーマだった。
先生の前で全体での振りを見てもらい、それぞれ不足している所や未熟な部分を
確認してレッスンをつけてもらって、今日のそれはお開きとなったのだ、けれど。
ちらり、と壁にかけられた時計を確認。
レッスンが終わってから早1時間。
メンバーがぱらぱらと帰っていく中、キャプテンはずっと鏡に向かってステップを踏んでいた。
それはつまり、今日久しぶりに彼女とご飯に行く約束をしていた私も、
同じだけ付き合わされているという事で。
- 22 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:02
-
ペットボトルの蓋を閉めて、ぽん、とわざと音が響くように床に叩きつけて置く。
けれど、一心不乱に振りを確認する目の前の人はそれに気がづいた素振りもなかった。
最初は10分だった。
10分だけ振りを確認したいからってキャプテンが言って、
私もいくつか確認したい所があったから一も二もなく承諾した。
けれど、それが5分伸び、10分伸び。
私が戦線離脱しても、キャプテンの確認はまだ終わらない。
鏡に向かって揺れる背中を眺めながら、
床に置いたペットボトルの口の部分を意味も無くぐりぐりと撫でた。
彼女がダンスに拘りを持っているのは知っている。
他のメンバー以上に振りをきちんと自分の物にしておきたいという気持ちが強い事も知っている。
それが、キャプテンの役割を任された彼女の責任感から来るものだということも。
その事に関しては、同じ仕事をしている身として素直にすごいと思うし尊敬もしていた。
そういうキャプテンだからこそ、私も、きっと他のメンバーも信頼もしているのだ。
だけど、30分以上も放ったらかしにされたら、
さすがに、むうっともしてしまうのも仕方が無いと思うの。
鏡の前の彼女の腰がステップに合わせて揺れる。
背筋をぴんと伸ばした大きくかちっとした振りは、小さな彼女を大きく見せていてかっこよかった。
(けれど。)
振りに合わせてキャプテンの髪が跳ねた。
――― けれど、その頭の中に、私との食事の約束はちゃんと仕舞われているのだろうか。
というか。
私がここにいるってこと、忘れてない?
- 23 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:02
-
「キャプテン」
鏡に向かう背中に呼びかける。
不満がそのまま声に反映されてしまったけれど、気にしない。
むしろ、放っておかれて不満だということをその背中に早く気付いてほしかった。
だけど、ぴんと伸びた背中は、私の声に反応する素振りも見せずにステップを踏み続けてて。
その反応に、むっとする。
キャプテンの拘りや、きちんとしたパフォーマンスをしたいって気持ちはよく分かるし、
そうやって頑張ってる姿は嫌いじゃないけど、(むしろ大好きだけれど!)だけど。
床の上に放り出されていたキャプテンのタオルを拾って、
勢いよく立ち上がると、私は鏡の前の背中へ向かった。
だけど。
ねえ、こうやってお互いの時間が合うのって何日ぶりか分かってる?
確実に両手の指じゃ収まらないよ。
仕事でよく顔は合わせるけど、二人きりでご飯なんて、何ヶ月単位で行ってないのに。
1メートル、2メートル。徐々に縮まる距離。なのに彼女は一向に気付かない。
それに更にむっとして、私は何の前触れもなく動くキャプテンの腕を掴んだ。
目を見開いてこちらを振り向く彼女。
私は、その彼女の顔にタオルを投げつけた。
「うわ」ってアイドルが出すべきじゃない声が上がったけれど、
そんなのには少しも構わずに掴んだ腕を引き寄せて、
私は、キャプテンの小さい背中から、ぎゅう、と抱きついてやった。
「ちょっと、桃、なにすんのっ」
私よりもほんの少しだけ高い位置にある肩に顎を乗せたら、
タオルを顔から引っぺがしたらしいキャプテンから抗議の声が上がる。
- 24 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:03
-
正面へ目を向けると、私に抱きつかれたキャプテンと鏡越しに目が合った。
その視線を受け止めて、私は不満さを表すように唇を突き出して眉根を寄せる。
彼女に文句を言われる筋合いは一つもないのだ。
「時間」
「はぁ?」
「今何時か知ってる?」
投げやり言ったら、キャプテンは不思議そうな顔をして首を傾げた。
それから、何かに気が付いたように、はっとして首を回す。その視線の先には壁掛け時計。
遅れて聞えてた「あ」って小さな呟きを私は聞き逃さなかった。
時計から鏡へ戻ってきた彼女の顔。いつも綺麗に整っている眉が気まずそうに眉尻を下げていた。
目一杯妬ましげに鏡越しに見返すと、キャプテンは数秒視線を泳がせて、
困った時よくそうするように下唇を小さく噛んだ。
「……ごめん」
聞えてきた声は酷く不安そうで頼りない。
上目遣いで私の顔色を窺うような仕草がまるで小動物のようで、すごく可愛らしかった。
そのしょぼんとした表情と声に、怒ってるにも関わらず、胸の奥が、きゅん、となる。
私はそれを誤魔化すように、キャプテンを抱き締めなおした。
「もぅ、すっごい待ってたんだから」
胸が震えた事なんておくびにも出さずに、不満気な声と表情で彼女を責めた。
悪いが、仕事で培ったポーカーフェイスならば誰にも負けない自信がある。
キャプテンは一瞬言いよどんでから、また「ごめん」と謝った。
- 25 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:04
-
「夢中になってて、時間、気付かなかった……」
「もものコト忘れてたでしょ」
「う、いや、……ごめん」
「ひっどーい!」
そこは“そんなことない”とか適当に言えばいいのに。
メンバーがいる時みたいに冗談にしちゃうとかでも構わないのに。
そうしたら私だって、しょうがないなぁって言って折れてあげるのに。
変に真面目なんだから、キャップってば。まあ、そんな所も好きなんだけどさ。
キャプテンの言葉を聞きながらそんな事を思うけれど、
でもそれは、裏を返せばそれだけ彼女は今、素に近いってことで。
私といる時にだけ顔を覗かせるそんなキャプテンの仕草が、
私の心を酷く躍らせる事をたぶん当の本人は気付いていない。
頬が緩みそうになるのを必死に堪えて彼女の身体を捕まえる腕に力を入れると、
されるがままの鏡の中のキャプテンは、俯いてしゅんと項垂れた。
叱られた子供みたいなその姿があまりにも可愛らしくて、私は胸の高鳴りを抑える事ができない。
――― もっと彼女を困らせたい。
脳裏を掠めるそれの半分は悪戯心から来たもので、もう半分はたぶん酷く邪な欲求からだ。
自分でもこの思考は危ないとは思うけれど、それを胸の中に押さえ込む気はなかった。
だって人間、したいことを出来る時にやっておかないと絶対損だ。人生は一度きりしかないんだから。
- 26 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:04
-
デートの約束も、待たされた事への不満も、いつの間にかすっかり良くなってた。
それよりも、今はもっと別の事が頭を占領していて。
私は自分のモットー通り、自分の欲求に正直になることにした。
「寂しかったんだからね」
「桃……」
申し訳なさそうに響く自分の名前に一瞬ちらりと罪悪感が心を掠めたけれど、
今更、もう、止まらない。
(ごめんね、キャップ)
「責任、とって」
言うが早いか、私はキャプテンのTシャツの裾から手を差し入れた。
がばり、と項垂れていた彼女の頭が跳ね上がり、鏡越しに私と視線が混ざる。
その視線を受けたまま彼女のお臍の隣に手を置くと、汗ばんでしっとりした肌が指に吸い付いてきて。
まるで最中のようなその感触に、ぞくり、と背筋が震えた。
「ちょっ、と!桃っ」
焦ったように上擦った声。同時に、キャプテンは私の腕を掴んだ。
けれど、そんなことには少しも構わずに、私は手の侵入を続ける。
脇腹をそっと撫で上げると、腕の中の身体が小さく跳ねた。
その反応に、思わず頬が緩む。
その瞬間、鏡の中の彼女とばちりと目が合って。
大きく目を見開いたキャプテンは、私を非難するように眉根を寄せて怖い顔をした。
ああ、ばれちゃった。胸の中でぺろりと舌を出す。
けれど、残念。止めるつもりは毛頭ない。
- 27 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:04
-
脇腹を撫でていた指をゆるゆると上へ滑らせて、彼女のブラのアンダーの線をやんわりなぞった。
ついでのように、肩に乗せた唇で耳の付け根にキスをすると、キャプテンから息を呑む気配。
彼女の華奢な身体がぴくりと跳ねる。私の頬もその反応の分だけ緩んでいった。
「も、もっ」
「なあに」
応えたけれど、それに対しての返事も聞かず、私は彼女の耳朶の下のくぼみをちろりと舐める。
そうしたら、色づいた息を吐き出す音が耳を撫でた。
その熱い感触に鼓動が増す。
そっと鏡を見やると、顔を真っ赤にして目を、ぎゅ、と閉じるキャプテンの姿が映ってて。
その姿に、また、ぞくりと背筋を駆け抜ける何か。
「ちょっと待っ、て、ってば」
「やぁだもん」
「あの、ね、ホントに、マジで、ここでやんの?」
必死に冷静さを装うとするキャプテン。
だけど、真っ赤な顔で、そんなヤラシイ声で言ったって、全然説得力なんてないんだから。
たぶんだけど、そうやって彼女は、この状況を打破する方法を考えているんだろう。
かわいいなぁ、キャプテンは。最後まで“キャプテン”なんだから。
そういう所、大好きなんだけど。
けれど同時に、そういう所が、困らせたくなる要因だったりもする。
「そうだって言ったらどうする?」
「……うわ、マジで。てか、私、汗かいてる、し、っ」
「そんなの、してる時はいっつもかいてるじゃん」
「あのね、あんたにはデリカシーってもんがさぁ、」
続くはずだった言葉は、唇で飲み込んでやった。
ゆるゆるとキャプの唇を自分のそれで撫でてから、舌先でその輪郭をなぞる。
キャプテンが鼻にかかった声を出して、それを合図に私はもっと深く口付けた。
- 28 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:05
-
最初は抵抗してた彼女の腕の力が徐々に弱々しくなっていくのが手に取るように分かった。
そして、いつの間にか抵抗していたはずの手は、私の服の裾をいじらしく握ってて。
どうしようかな、と思う。
最初は、ただからかって困らせるだけのつもりだったのだけれど、
キャプが言っていたように、続きをするのもいいかもしれない。
なんて、そんな馬鹿な考えが脳裏を過ぎった、その時だった。
突然、がちゃんと金属がぶつかり合う音が部屋に響いて、次いで重い扉が開く音。
誰かが部屋に入ってくる気配を感じて、私は素早くキャプテンから離れた。
ちらりとキャプテンを見やると、彼女の方も音に気付いていたようで、
慌てたように唇をシャツの袖口で拭ってた。
この部屋の唯一の扉へ視線を向ける。
「あっれー、まだいたの?」
扉の影から、ひょこりと顔を出したのは1時間前に帰ったはずの千奈美で。
千奈美は私達の姿を見つけると、破顔して甲高い声を上げた。
「千奈美こそ、帰ったんじゃなかったの?」
小走りで近づいてくる千奈美に問いかけると「事務所の人と話があってさ」と、笑顔のまま教えてくれた。
そのまま私達の前までやってくると、彼女は笑顔を引っ込め不思議そうに首を傾げる。
「キャプテン、なんか目ぇうるうるしてない?」
キャプテンに向かってそう言って、じいっとその顔を見つめる千奈美。
その視線を追いかけてキャプテンを見ると、確かに、その瞳は涙で潤んでた。
瞳が潤んだ原因は私なんだけれど、それをそのまま千奈美に伝えるわけにもいかない。
どう言い訳しようかなと考えてたら、私よりも早くキャプテンが
「ちょっとダンス練習やりすぎっちゃったかな」って誤魔化した。
だから私も「ホントずっと振りやってるんだもん、キャプテンってば」って合わせたら、
当のキャプテンに小さく睨まれた。
- 29 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:05
-
千奈美は私達のそんな視線のやり取りに気付かずに、その話題にもう興味を無くしたのか「ふうん」と頷いた。
千奈美から聞いてきたのに、と少し思ったけれど、この話題を蒸し返しても何も良い事はないから黙っておく。
「それで、ちぃは何で戻ってきたの?」
キャプテンが千奈美に問いかける。
私は部屋の中をぐるりと見回した。見たところ部屋の中には私とキャプテンの荷物が置かれてるだけで。
千奈美は忘れ物を取りに来たわけではなさそうだった。
千奈美に視線を戻すと、何かを思い出したように「そうだ」と千奈美が笑顔を見せて。
「今から、ご飯食べに行かない?」
素晴らしい提案をしたかのように、ひまわりみたいな笑顔で私たちを交互に見やった。
その言葉に、私は今更ながらキャプテンと二人で食事に行く予定だったことを思い出す。
もっと大事なことに気を取られてて、すっかり頭の隅に追いやってしまっていた。
どうしよう、と、ちらりとキャプテンを見ると、
キャプテンは眉尻を下げて困り果てたように千奈美を見返してた。
「何か予定あるの?」
「いや、えと、あると言えばあるし、無いと言えばないって、いうか……」
「どっちよ」
千奈美の質問に対するキャプテンの答えはどうにも歯切れが悪い。
視線を泳がせて、小さく頭をかく。彼女が酷く困っているのが手に取るように分かった。
私はそのキャプテンの仕草に小さく苛立つのを抑える事ができなかった。
キャプテンが私との約束のために言いよどんでいるのは分かってる。
けれど、一時間の居残り練習と、唐突な私の“悪戯”のせいで狂った予定を、
どうすればいいのか答えあぐねているのだ。
現に彼女は、助けを求めるように私へ視線を寄越した。
その視線に、更に苛立ちが増す。
- 30 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:06
-
千奈美と3人でご飯でもいいか、ってほんの少しだけ思ったけれど、前言撤回。
やっぱり2人で行くことに決めた。
私はキャプテンから千奈美へ視線を移す。
「千奈美、ごめんね」
キャプテンの方を向いていた千奈美の顔がこっちへ向く。
そのまま彼女はひまわりの笑顔で、不思議そうに首を傾げた。
「先約があってね。これからキャプと2人で行くところなの」
だからごめん、と唇の前で手を合わせたら、キャプテンが驚いたように私を見た。
当然の反応だ。だって、キャプテン以外の誰かと約束なんてしていないのだから。
千奈美が「えー」と不満気な声を洩らす。
「それって、ちなみも行っちゃだめなの?」
「ごめんね」
食い下がってきた千奈美に理由を告げずに謝ると、彼女は不満そうにしながらも「そっかぁ」と引き下がってくれた。
千奈美は思ったことをすぐに口に出す所があるけれど、
元々、他人との距離の取り方の上手い子だから、私の真意に気付かずとも察してくれたのだろう。
もう一度、今度は心の中で千奈美に謝ってから、私はキャプテンの手を取った。
「ほら、キャップ、そろそろ行かないと」
「う、え、あ、うん」
キャプテンを急かして、もう片方の手に自分の荷物とキャプテンのそれを持ち、
千奈美に「また今度ね」と言いながら私たちは出口へ向う。
小さく手を振る千奈美にまた心の中で謝って、私はキャプテンの手を引きながら扉をくぐった。
蛍光灯で照らされた明るい廊下を無言で歩く。少しだけ早足で。
向かうは、更衣室だ。
- 31 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:06
-
「桃」
私から少し遅れて歩くキャプテンの声が廊下に響く。私は応えずにどんどん歩を進めた。
いつものように“なあに”とでも応えられればいいのだけれど、
キャプテンには悪いけれど、苛立ちのせいでそんな余裕はなかった。
「桃っ」
今度はさっきよりも強い声と共に繋がった手を引かれて、
私はつんのめるようにして足を止めざるをえなかった。
キャプテンから顔を背けたまま顔に笑みを乗せてみる。
いつも容易くできるそれが今日は上手くいかない。
仕方なく口を真一文字に結んだままキャプテンの方へ振り返った。
視界に入った彼女は眉根を寄せて困惑顔で私を見返してくる。
「なんなの、先約って」
「ちょっとした言葉のあやだよ。千奈美に言い訳しただけ。ね、いいから早く行こ?」
そう言って繋がった手を引っ張ると予想以上の抵抗にあって、私は前へ進めない。
私は片方の眉を小さく上げて「キャプテン」と一向に動こうとしない彼女を呼んだ。
だけど、当の彼女はますます眉根を寄せて、口をへの字に曲げる。
「……桃、なに怒ってんの」
不満そうなその表情とは裏腹に、その声は不安そうに揺れていた。
「怒ってないよ」
「怒ってんじゃん」
「怒ってないってば」
それは嘘じゃなかった。怒っているわけではない。ただ。
ただ少し、拗ねてはいるけれど。
- 32 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:07
-
だけど、正直に告げる気にはならなくて、私はキャプテンから視線を逸らす。
そしたら、繋がった手に力が入って強く握られた。「桃」と促すように名前を呼ばれる。
子供に言い聞かせるようなその声音。
グループの年長組として扱われることの多い私へ唯一と言っていいほど、
そんな風に投げかけてくるキャプテンのそれに私は弱くて、だけど、それ以上に大好きだった。
その音の温度は、私の意地を溶かすには十分な効力を持っていた。
「……佐紀ちゃんが悪いんだもん」
佐紀ちゃんが悪い。
だって、あんな風に、千奈美を見るから。
飛び出してしまった言葉は駄々を捏ねる子供のような響きをしていた。
恥ずかしくて、それ以上零れ落ちないように私は慌てて口を噤む。
「……意味わかんない」
ぽそりと呟かれた言葉は平坦で、そこから彼女がどんな表情をしているのか汲み取ることはできない。
握られる手に力が入り、小さく引かれた。
それは、ゆるやかな動作だったけれど、強く私の言葉を促しているみたいだった。
佐紀ちゃんを見ないまま、眉根を寄せる。
だって。
だって、佐紀ちゃん。
「佐紀ちゃんがあんなトコ、千奈美に見せるから」
あんな風に、酷く困ったように、千奈美を見るんだもん。
だからだよ。
だから、やっぱり悪いのは佐紀ちゃんだ。
私は、佐紀ちゃん困った顔が好きだ。
他の表情ももちろん大好きだけれど、それとはまた少し違う次元で好きなのだ。
困ったように眉尻を下げた佐紀ちゃんに見つめられると、所構わず抱き締めてあげたくなってしまう。
だから、わざとわがままを言ったり、からかったりして、その表情を引き出そうとする事が多々あった。
- 33 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:07
-
けれど、それには条件があるの。
彼女がその表情をする時、側にいるのは私じゃなきゃ嫌だった。
私を見ていなきゃ嫌だった。
私のせいで、私だけに、困らないと、嫌なの。
他の誰かにそれを向けるだなんて、向けるような事をされるだなんて、考えただけで苛々する。
つまりそれは、子供じみた独占欲。
「もっと分かんないよ」
その声はさっきと同じ平坦な響きだったけれど、
さっきとは違う物が僅かに含まれている気がして、私はちらりと彼女を見やった。
視界に入ってきたのは、口元を綻ばせた佐紀ちゃんで。
私の機嫌は更に下降する。
「なにわらってんの」
できるだけ低い声で咎めると、佐紀ちゃんは更に口元を綻ばせて「だって」と言った。
「桃がなんで怒ってるのかよく分かんないけど、でもそれってヤキモチでしょ?」
続いた「超珍しいーと思って」という言葉に、むっとする。
だって、珍しくなんかない。というか、キャップは全然分かってない。
「いつも、ももすっごいヤキモチ妬いてるもん。
キャップ、無自覚に色んな人にひっつくから!」
特に、みやとか千奈美とかみやとか、べたべたべたべたべたべたって!
勢いで言い切ると、キャプテンは驚いたように目を丸くした後、
「それ、桃に言われたくないんだけど」と呆れたように苦笑した。
その表情に更にむっとする。
- 34 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:08
-
キャプテンの呟きを無視して、私は前を向いて歩き出した。
もちろん手は繋がったまま。今度は抵抗はなかった。
後ろからにやにやと締まりのない声で名前を呼ばれる。
もう不機嫌さを隠すのは止めて、私は繋がった手を、ぎゅ、と握り締めた。
私をからかうなんて、100年早いよ。キャップ。
廊下の突き当たりを右に曲がり、更衣室の扉の前までやってくる。
私は、扉のノブに手をかけながら、ちらりとキャプテンを見やった。
「今日のご飯は止めね」
キャプテンにだけにしか聞えないような音でそう言って扉を開ける。
拍子抜けしたような顔の彼女を横目で見ながら室内へ。
握った手を少し強引に引っ張って、閉まった扉にキャプテンの背中を押し付けてやった。
素直に、とん、と扉に身体を預けたキャプテンを真正面から見やる。
ほとんど身長差がないせいで、真っ直ぐに彼女の瞳の色を覗くことができた。
困惑の色を濃くした顔の脇に、そっと両手を突いて、私は彼女を捕まえる。
「今からキャプテンんちに行くから」
「ええ?」
「だめなら、うちでもいいけど」
不思議そうな表情のキャプテンにゆるゆると近づく。
キャプテンにきちんと届く大きさで「どこでもいいから二人になれるところで、」と、言葉を落としながら。
- 35 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:08
-
そうして、キャプテンの柔らかい耳たぶの側まで唇を寄せてから、
「さっきの続き、しよ」
キャプテンだけに聞えるように、呟いた。
一瞬後、視界に入る彼女の耳がみるみるうちに赤く染まっていくのを見とめて、頬が緩んだ。
そんな自分の思考を、ゲンキン極まりないな、と思いながらも、
私は赤く染まった可愛らしい耳に口付ける事を我慢することができなかった。
おわり
- 36 名前:必須条件 投稿日:2009/06/24(水) 02:09
-
>>必須条件<<
- 37 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/24(水) 02:09
-
キャプを困らせたくてしょうがない桃は、自分のしみもも感の基本です。
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/24(水) 02:09
- >>16
レスどうもです。
可愛いキャプテンは正義!
>>17
ありがとうございます。
今後も楽しんで頂けるように頑張ります。
>>18
雅ちゃんはキャプにべったりな事が多いので、
こんな現場見てしまったらショックで立ち直れないかもしれないですねw
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/27(土) 12:23
- おもしろかったです!
みやキャプも見てみたいので、時間あったら、
お願いします。
- 40 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/10(金) 23:58
- しみももいきます。
キャプ視点。
- 41 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/10(金) 23:58
-
「好きだよ」
それは、まるで世間話の続きみたいに、
至極あっさりと、私の耳へ届いた。
- 42 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/10(金) 23:58
-
***
ダンスレッスン終りのシャワーは最高だと私は常々思ってた。
汗っかきだから、汗をさっぱり流せるお風呂はもともと大好きなんだけれど、
スタジオに付いている簡易シャワーでの、ダンスレッスン終りのそれは、また格別なのだ。
汗と一緒に疲れもやんわり解れて、今日も頑張ったっていう満足感で一杯になれるから。
今日も汗をさっぱり流し、シャンプーの香りと共に胸を一杯にする満足感に頬を緩ませて、
メンバーへの挨拶もそこそこに更衣室を後にした。
レッスン中に告げられたコンサートの立ち位置や振りを頭の中でくるりくるりと繰り返しながら、スタジオの廊下を足取り軽く進む。
突き当たりを右に曲がればスタジオの出入り口だ。
左に曲がれば自販機とベンチが並ぶ小さな休憩所のような場所へ繋がっている。
そのまま帰ろうかとも思ったけれど、喉の渇きを感じて左へ曲がることにした。
飲み物ならバッグの中にもあるけれど、シャワー上がりの今は炭酸が飲みたい気分。
左へ曲がり廊下を進むにつれて、青や赤、白い自販機が見えてきた。
それと同時に、一番手前の青い自販機の前に、見慣れた後ろ姿も発見。
肩より少し長めの黒髪に真っ白な頬。
私より先に楽屋を出たはずの桃だった。
シャワー上がりでもともと良かった機嫌が、その後ろ姿でさらに上昇していくのを自覚する。
- 43 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/10(金) 23:59
-
「もーもっ」
名前を呼ぶと、自販機の方を向いていた桃がこっちへ振り向いた。
キャップ、と小さくその唇が動いて、ゆっくりと弧を描く。ほんわりと桃が笑った。
つられるように私も笑い、桃の隣に並ぶ。肩が触れそうで触れない微妙な距離で止まった。
「キャプテンもジュース?」
「うん。のど渇いちゃってさ」
「ふふ。ももも」
ほわほわ微笑む桃の手には、汗をかいてるオレンジ色の缶。
それに喉の渇きを刺激されて、私は急いで肩から提げたバッグに手を突っ込んで財布を探した。
ごそごそ、ごそごそ。バッグの中を弄って、あ、見つけた。
底の方へ押しやられてた財布を掬い上げる。
財布を開きながら自販機に向き直ると、真顔の桃が視界に入って。
その表情を不思議に思って、なに?、って聞いたら、
桃は一瞬驚いたように小さく目を瞠ってから。
「キャプテン、良い匂いがするなぁと思って」
黒目がちな瞳を細めて少し恥ずかしそうに微笑んだ。
それから、ゆるりと伏せられた睫に不覚にも、どきり、としてしまって。
私はそれを悟られないように、視線を逸らす。
「シャワー、してきたから」
「あー、シャンプーの匂いだ」
そっかぁ、なんて納得してる桃を尻目に、自販機に小銭を入れる。
今度から仕事の前は、このシャンプーでシャワーしようかな、なんて、
馬鹿馬鹿しい事を考えながら炭酸ジュースのボタンを押した。
- 44 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/10(金) 23:59
-
ごとん、と重たい音を立てて自販機が缶を吐き出した。
取り出し口からひんやり冷えた缶を取り出すと、隣にいた桃がぴょこぴょこと跳ねてベンチに座った。
その隣には不自然な空間が空いていて。
彼女は、ほら、キャップ、なんて言いながら、その不自然なベンチをぺしぺしと叩く。
てか、ここでジュース飲むのは決定なんだ。私まだ何にも言ってないのに。……別にいいけど。
桃の隣に腰掛けて、バッグを置く。
炭酸ジュースのプルタブを人差し指で弾いて開けると、ぷしゅ、と炭酸の抜ける音がした。
缶を傾けて、ごくり、と一口飲むと、炭酸のしゅわしゅわが口いっぱいに広がって、勢い良く喉を駆け抜けた。
シャワー上がりの身体中にその清涼感が染み入ってく。ああ、やっぱ、炭酸最高だ。
ちらりと隣を見やると、桃はオレンジの缶を両手で持って、ちびちびとそれを傾けてた。
ショートパンツから伸びた足が楽しげにぱたぱた揺れている。
まるで小さな子供みたいだ。その見た目といい、時々本当に自分と同い年かと疑いたくなる。
それは桃と出会った当初から持っていた気持ちだけど、
ここ最近はその後に必ず、“なんで”と思うようになった。
なんで、どうして。
炭酸ジュースの缶に口を付けたまま、その縁をちろりと舐める。
――― なんで、こんなのが好きなんだろ。
- 45 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/10(金) 23:59
-
童顔で、やることなすこと一々女の子女の子してて、ぶりぶりで、
背が低くて、すっごい甘ったるい声してて、そのくせメンバーの誰よりも現実的で。
中身は結構サバサバしてて、料理も下手で、だけど仕事はきちんと最後までやり切る。
たぶん、同じクラスにいたら友達にはなってなかった、そんなこいつを。
(そんな桃を、なんで私は好きなんだろう)
缶から口を離して、桃の方を向く。
私の視線に気付いたのか、桃もこっちを見た。
視線が絡んで、桃はほんわり笑った。
胸の中がざわりと騒ぐ。
このざわめきを感じる度に、自覚させられる桃への気持ち。
最初は、同じグループのメンバーだった。
欠かせない仕事仲間だった。大切な友達の一人だった。
――― だった、はずなのに。
それはいつの間にか、自分ですら気付かないくらいのスピードで、だけど、着実に変化を遂げていて。
友情の“好き”が、いつの間にか、友情ではない“好き”になってた。
- 46 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:00
-
オーディションを受けてからベリーズのメンバーと、桃と、人生の大半を共に過ごしているから、
桃の好きな所と同じだけ、嫌いな所も上げられるし、もしかしたら、そっちの方が多いかもしれない。なのに。
それなのに、この胸をざわめかせるこの気持ちは、間違いなくそういう意味の好きなのだ。
こくり、もう一度缶を傾ける。
「ね、ね、キャプテンのもちょっとちょーだい」
私の方へ顔を寄せながら強請る桃を、不自然にならないようにするりと避けて、私は持っていた缶を差し出した。
「じゃあ私、桃の飲む」
「いいよぉ」
桃とお互いに缶を取替えっこする。それは慣れたやり取りだ。
たぶん、世間一般の恋してる人なら、こういう時どきどきするのかもしれないけれど、
私は躊躇うことなく桃から受け取ったオレンジの缶に口を寄せた。
この数年間で何度となく交わされた行為だから、いまさら、ときめきも何もない。
「はー、やっぱ夏は炭酸がいいね」
「桃、おっさんみたい」
「おっさんってひどい。かわいい、でしょ?」
「あーはいはい」
いつものように適当に桃をあしらいながら、ベンチに手を突いて少しだけ背を逸らす。
そしたら、元々置かれてた桃の指先と、私のそれが僅かに触れ合って。
突然の温もりに、どきり、とする。
間接キスでは何にも感じないくせに、こういう小さな事で反応する自分の心が、
私は自分の物なのに、イマイチよく分からなかった。
- 47 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:01
-
だけど、その変化がよく分からなくても、嬉しいモノは嬉しいわけで。
急に手をどけたりしたら不自然だから、なんて、しなくてもいい言い訳を自分へ言い聞かせて、
桃とくっついた手をそのままにする。
代わりに、桃から受け取ったオレンジの缶をゆっくりと傾けた。
それは、桃の声のように酷く甘ったるかった。
「ねーキャプテン、今日のやつ覚えた?」
「んー?」
「立ち位置とかさ」
「だいだい入ったかな」
「えーももまだまだだよぉ」
桃はそれほど得意じゃないもんね、そういうの。
一度入ってしまえば後は完璧なのに、頭に入るまでがかかる子だ。
ふてくされたような声を聞きながら、オレンジの缶を桃へ返す。
それを受け取った桃も、何にも言わずに炭酸ジュースの缶を私の方へ向けた。
「まだ日数あるし、だいじょぶじゃない?」
「他人事だと思ってさー。そうだ、キャップ今度教えてよ」
ふてくされた声のままの桃を見やると、桃は唇を尖らせて首をちょいと傾けた。
「しょーがないなぁ」
呆れたような声音を出したつもりなのに、それには隠し切れない機嫌の良さが滲み出てた。
桃に頼られるのは嫌いじゃない。むしろ嬉しかった。
普段、私は無意識に桃に頼っていることが多いし、そのくせ桃はあまり人に頼ったりしないから。
だから尚更、時々こうやって桃に頼られると私はいつも嬉しくなってしまう。
それは、桃への気持ちを除外しても、変わらなくて。
- 48 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:01
-
緩みそうな頬を誤魔化すために、桃から戻ってきた炭酸ジュースの缶を傾けて一口飲んだ。
口に広がるしゅわしゅわはさっきよりも勢いがなかったけれど、何だかさっきよりも美味しい気がした。
「ねぇ、キャプテン」
缶から口を離しながら桃の声を聞く。
普段から甘ったるいと感じることの多いその声は、私の機嫌も相まってさらに甘く私の鼓膜を震わせる。
だけど、少しも嫌じゃない。
私はご機嫌に口の端についたジュースをちろりと舐め取って、続く言葉を待った。
「好きだよ」
―――― え?
続いた言葉は、私の思考を一瞬、完全に停止させるには十分で。
――― “好き”?
“好きだよ”?
機能を回復した頭で、桃の言葉を反芻する。
その意味をきちんと理解したのは、さらにその一瞬後で。
私は、勢いよく桃の方へ顔を向けた。
- 49 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:02
-
視界に飛び込んできたのは、目を瞠った桃の顔。
桃は、自分で言った言葉に驚いているみたいだった。
「……今の、なに?」
飛び出た言葉は当然の疑問だと思う。
だけど桃は、一番驚いている私よりも、もっと困ったみたいに眉尻を下げた。
その桃の様子から、“好きだよ”の後に続く言葉は、彼女の中に用意されていないのだと分かった。
どきどき、と揺れる鼓動。
胸の奥の方からざわめきが全身へ伝わっていく。
好きだ、とメンバーに言うことは日常茶飯事だ。
私だって、桃だって、他のメンバーにも、お互いにも言った事がある。
もちろんそれは友情の先にあるもので、時には冗談のように言い合う。
だけど、今のは、言葉のタイミングも、その声音の温度も、明らかにそれらとは違ってて。
桃を見つめて次の言葉を探していると、桃が視線を逸らした。
普段、どんなに強く睨みつけても自分からは絶対に目を逸らさないのに。
逸る鼓動はどうしようもないと思った。
だって、そんな反応、期待してしまう。
桃の今の言葉が、私と同じ温度を持っていると、期待してしまう。
視線を逸らした桃は横を向いてしまって。
前髪と横の髪が桃の目元を覆い、私からは整った横顔しか見えなくなる。
- 50 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:02
-
桃、と小さく呼びかけると、私の声と同じくらい小さく桃の前髪が揺れた。
桃は、えっと、と躊躇いがちに口を開いた。
「……今、言うつもりじゃなかったんだけど……」
特徴的な唇が動くのをじっと見つめる。
胸の中は、もしかしたらっていう期待と、まさかっていう警戒心でぐちゃぐちゃだった。
無意識に握り締めていた炭酸ジュースの缶が凹んで、ぺこん、と、
気の抜けた音をたてたけど、桃から視線は外さない。――― 外せなかった。
桃の唇の動きが一度止まって、きゅ、と引き結ばれる。
それから少しだけ躊躇うように、何度か開かれて。
桃の前髪が、ちらり、と揺れた。
「佐紀ちゃんが、好きなの。その、ちゃんとした、意味で」
紡がれた言葉に、息を呑む。
高鳴っていた胸は今や痛いくらいになってた。
桃の言葉が身体の中心にずんと染み込んでくる。
そこは次第に熱を持って、何故だか泣きたくなった。
桃に応えなきゃって思うけれど、次の言葉が出てこない。
- 51 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:02
-
ふと視線を下ろした先に見えた桃の手が小さく震えているのに気付く。
触れていた指先からその振動が、じわり、じわりと伝わって、胸がいっぱいになる。
ちゃんとした意味だと桃は言った。
それはつまり、私の気持ちと、きっと同じ意味だということで。
「私も、好き」
気付いたら唇から零れ出ていた言葉。
それは情けないくらいに震えていたけど、取り繕うとは思わない。
だって。
「桃が、好きだよ」
だって、こちらを向いた桃の顔が、困ったように、
だけど、酷く嬉しそうに、甘く笑んでいたから。
そこから伝播したみたいに、甘い何かが私の中に広がっていく。
私はじわじわと熱くなる目頭に負けないように、きゅ、と唇を結んだ。
触れていた指先を少しだけ桃のそれに絡めると、同じくらいの強さで応えられる。
桃が苦笑するように眉尻を下げて笑った。
「もっとさぁ、ムードのある感じで言おうと思ってたんだよ?」
「なにそれ」
「一生思い出に残るようなさ、告白にしようと思ってたの」
ふてくされたような声で、だけど嬉しげな表情で、桃は言った。
まるで、私の答えが決まっているかのような口ぶりに(実際そうなのだけど)、
不満そうに見えるように下から睨むようにして見つめると、桃は苦笑して私の方へ顔を寄せてきた。
鼻腔を擽る桃の香りに、どきどきしたけど、今度は身体は逸らさない。
- 52 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:02
-
耳元へ唇を寄せた桃が、だって、と呟いた。
「だってもも、佐紀ちゃんの答えは知ってたんだもん」
佐紀ちゃん分かり易いから、なんて言って、桃はそのまま私の肩に顔を伏せた。
「うそだぁ」
「嘘じゃないよ、だってさ」
桃は言いかけて、まぁいいじゃん、と言葉を切った。
それから身体を摺り寄せてきて、絡んでいただけだった手を、ぎゅ、と握られる。
桃の香りが深くなる。
それにつれて高まる鼓動。それを耐えるように私は眼を閉じた。
「佐紀ちゃん、やっぱりいい匂いがする」
薄暗い瞼の裏で聞いた桃の声に、より一層鼓動が増して、桃の手を、ぎゅう、と握り返した。
- 53 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:03
-
私はレッスン終りのシャワーが好きだ。
汗をさっぱり流せるし、それと一緒に疲れも解れて、
一日をやりきった満足感でいっぱいになれるから。
そして、今日、好きな理由が、もう一つ増えた。
おわり
- 54 名前:好きな理由 投稿日:2009/07/11(土) 00:03
-
>>好きな理由<<
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/11(土) 00:04
-
キャプももの告白はあっさりめなイメージで。
桃の方が余裕な感じだけど、裏ではめちゃくちゃドキドキしてたらいいと思う。
>>39
ありがとうございます。
キャプみやも好きなので、機会があれば書いてみようと思います。
期待せずにお待ちを。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/11(土) 00:04
- 流し
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/11(土) 12:08
- うわあもうお姉さんズ可愛すぎる…!
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/13(月) 00:18
- ごちそうさまです!!
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/14(火) 18:28
- 可愛すぎるのです。
大好きです。
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/27(月) 02:32
- 最近自分の中で熱いこはみついきます。
- 61 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:34
-
「小春のこと嫌いなの?」
彼女は酷く単純で、そして、びっくりするほど真っ直ぐだ。
- 62 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:35
-
***
日差しがじりじりと照りつける。
それは砂浜に反射して、足元からも絡みつくような熱気を発してた。
むき出しの腕やお腹が焦げつくような感覚に、私は羽織っていたパーカーの裾を引き寄せた。
眉根を寄せ、容赦なく降り注ぐ紫外線の元を睨みつけてから、1メートルほど離れた場所に佇む久住さんを見やる。
久住さんの顔は大きなサングラスで半分くらい隠れていたけど、尖がった唇から彼女が私以上に渋い顔をしているのは容易に想像できた。
その理由は私のそれとは違うと分かってはいたけれど、私は八つ当たり気味に太陽を睨みつけずにはいられない。
「ねえ、みっつぃ」
普段は高い彼女の声が、酷く低く響く。
その言葉は、さっきの答えを急かしているモノだとすぐに分かって、
久住さんに気づかれないように小さく溜め息をついた。
「嫌いなわけないですやん」
嫌いな相手とこんなとこまで来ませんよ、普通。
へらりと笑って答えたけれど、目の前の相手の不機嫌な空気は変わらない。
心の中で溜め息をついて、私は久住さんに三歩近づいた。
「そんな顔せんでくださいよ。こんなこと言うために来たんじゃないでしょ」
真夏まっただ中のこの時期に、人の波でごった返すこと確実な砂浜に、
こんな事を言われるために来たわけじゃない。
- 63 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:36
-
始まりはいつもの久住さんの思い付きだ。
仕事終りの楽屋で、海に行こうよ、と誘われた。
久住さんはその場の勢いでモノを言うことが多い。
雑誌に美味しそうなスイーツが載ってたら食べに行こうと言うし、
テレビ番組で登山の特集をしていたら山に行こうと言う。
だけどそれは社交辞令とは少し違ってて、その時はきっと本当に行く気なのだ。
まあ、それが実行されることはすごくすごく稀なのだけれど。
そういう人だから、今回のそれもきっと実行されることはないだろうと軽い気持ちでOKした。
けれど、今回はそのすごくすごく稀な事が起こってしまって。
仕事終りに一緒に水着を買いに行き、あれよあれよと言う間に、私は今、ここにいる。
―――― 人でごった返す、真夏の海水浴場に。
じりじりと肌を焼く紫外線に眉根を寄せたくなったけれど、
久住さんの手前そんなことをするわけにもいかず、笑んだまま首を傾けた。
顎に留まっていた汗の粒が耐え切れなくなったのか、一筋、首に流れた。
久住さんの小さな顔に我が物顔で陣取るサングラスがきらりと光る。
このサングラスをかけさせたのは私だ。
久住さんが、これだけ人がいたらバレないよぅ、なんて暢気な事を言って、
素顔のまま遊ぼうとしてたから来る途中で安物を買ったのだ。
渋る久住さんを、人がいたらいるだけバレる可能性は上がりますから、と説得したのは数時間前のこと。
- 64 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:36
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「ほら、行きましょうよ。たこ焼き食べはるんでしょ?」
尖った唇はまだ何か言いたげだったけれど、私は踵を返して歩き出す。
目指すは海の家だ。波打ち際ではしゃぎ疲れたらしい久住さんが、
たこ焼き食べたい、と言い出したのは数分前のことだった。
歩く度にビーサンと足の間に熱い砂が出たり入ったりする。
久住さんを説得していた時は久しぶりのこの感触にうきうきしたけれど、今は少しだけ不愉快だった。
何歩か歩いてから、後ろの気配が全くついてきていないことに気付いて振り返る。
振り返った先には最初の位置から一歩も動かずに不機嫌そうに佇む久住さんの姿。
「久住さーん。ほら、行きますよ」
佇む久住さんに呼びかける。だけど、久住さんは憮然とその場に立ったまま。
私は、久住さんの白くて華奢な肩をぼんやりと眺めた。
じりじり照りつける紫外線。
私もこれだけ感じているのだから、同じだけきっと久住さんの肌も焼いている。
真っ白なその肩が焼けてしまうのは少しだけもったいないと思った。
「……ないもん」
「へぇ?」
久住さんの声が聞き取れず、聞き返すと、久住さんは俯いてそっぽを向いてしまう。
何度か聞き返したけれど、一向にこっちを見ようとしない久住さんに、仕方なく空けた距離を縮めた。
ざくり、ざくり、ざくり。
熱い砂にビーサンがめり込む音を聞きながら、久住さんの前へ来る。
どうしはったんですか、って久住さんの顔を覗き込もうとしたら。
「話はまだ終わってないもんっ!」
大声で久住さんが怒鳴った。
キンキン声はさっきよのように低くない。
眉間の皺で、サングラス越しに睨まれてるんだと分かった。
- 65 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:37
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そんな声が出せるならもっと早く言ってくださいよ、と思ったけれど、すぐに思いなおす。
今の声で周りの人が何人かこっちを振り返っていたから。
久住さんはサングラスをかけてるとはいえ、変に注目を浴びるのは得策じゃない。
「とりあえず、海の家行きません?ね?」
不機嫌オーラを崩さない久住さんにできるだけ優しく提案して、その手に自分のそれを伸ばした。
触れる直前少しだけ躊躇して、ここから離れることが先決だと自分に言い聞かせ、私はその細い腕をとった。
繋がった手を引っ張って、海の家を目指す。
久住さんは抵抗しなかった。
「たこ焼き食べたいって言わはったの久住さんですよ。
あ、それともカキ氷にしましょか。あっついからきっと美味しいですよ」
一体気温は何度なんだろう。髪の間から汗がたらたらと零れ落ちてくるのが分かる。
日差しと、砂浜と、人の波が相まって、くらくらするほどの暑さだ。
けれど ―――。
素直に後ろからついてくる気配に注意を向ける。
それから、ちらりと繋がった手を見やった。
――― けれど。
私にとっては、久住さんと触れた右手の方が、よっぽど、熱くて。
それは、身体の奥のもっと奥の方まで焦がしてしまうようで。
視線を戻して、ひたすら歩く。
だけど、その熱が照りつける紫外線のせいじゃないことも、
ましてや久住さんのモノじゃないことも、私はよく知ってた。
- 66 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:37
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その熱を誤魔化すように私は喋り続ける。
久住さんから応えはなかったけど気にせずに歩いていると、白いコンクリートの海の家が見えてきた。
その周りはパラソルが数本かざされてて、砂浜の真ん中にあるにも関わらずどこか涼しげだった。
パラソルの下に久住さんを引っ張り込んで、サングラスで隠れた顔を覗き込む。
「どうします、たこ焼きにします?カキ氷にします?」
口をへの字に歪めたまま数秒黙っていた久住さんは、小さく、カキ氷、と呟いた。
やっと聞けたその声と、子供みたいな拗ねた表情に頬が緩む。
へらりと笑い、何味にします?と訪ねたら、また小さく、いちご、と返ってきた。
「じゃあ、買ってきますから、ここから動かんといてくださいね」
絶対ですよ、と念を押して、私は海の家へ向かった。
海の家の中は人でごった返していた。
浮き輪を買っていく人や、焼きそばやうどんを買っていく人。もちろんカキ氷を買っていく人もいる。
人の波にのまれながら、久住さんをパラソルの下へ待たせておいて良かったと思った。
だって、きっと久住さんはこんな人の波にのまれたら一発で迷子になりそうだし、
人の多さに勝手に怒って(今も怒ってるけど)ぷりぷりしながら帰る、とか言いそう。
それに、なにより。
(――― あたしが、嫌や)
久住さんのむき出しの白い肩が、誰か知らない人と触れるだなんて。
それが故意だろうとなんだろうと、嫌、だった。
- 67 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:38
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やっとのことで人の波をかき分けて、いちごのカキ氷を二つ買う。
零さないように注意しながら海の家を出て、久住さんの待つパラソルへ。
お待たせしました、と言い掛けて、私は口を噤んだ。
パラソルの下に目的の人物がいない。
場所を間違えたのかと思って、パラソルの色を確認。
ついでにきょろきょろと辺りのパラソルを見回したけれど、間違いなくこのパラソルだ。
……久住さん、この短時間で迷子になったんやろか。
冗談でなく、久住さんならありそうで心配になる。
もう一度真上のパラソルの色を確認してから、辺りを見回した。
ぐるりとその場で一周して、ついさっき出てきた海の家の隣に見慣れた後ろ姿を見つけた。
すぐに見つけられた事にほっとしながら、カキ氷を落とさないように持ち直し、
私はその後ろ姿へ向かって駆け出した。
「久住さん!」
声をかけながら駆け寄る。
けれど、絶対に聞えているはずなのに、久住さんは振り返る素振りも見せずに淡々と歩を進めていて。
めげずに声をかけ続けても反応はない。なんやねん、もう。
まだ怒っているのだろうか。それにしたって、返事くらいしてくれたっていいのに。
気まぐれな久住さんの行動には慣れていたつもりだったけど、
さすがにちょっとむっとして、私は足を速めて久住さんの前へ躍り出た。
通せんぼするように立ちはだかって片手のカキ氷を久住さんに突きつけると、彼女はやっとその歩みを止めた。
「……どこ行かはるんですか」
久住さんを見つめて訪ねると、久住さんがサングラスで隠された顔をちょいと俯けた。
ただでさえ隠れている表情が、ほとんど窺えなくなってしまった。
「帰る」
ぼそりと呟かれた言葉に、思わず、はあ?、なんてアイドルにあるまじき声が出てしまった。
取り繕うように口を噤んで、久住さんを見つめる。けれど、久住さんは動かない。
太陽の下に曝け出された無防備な肩が熱そうだった。
- 68 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:38
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「いやあの、カキ氷買ったし一緒に食べましょうよ」
「いらない。みっつぃ食べていいよ」
「さすがに二つも食べれませんよぉ」
無茶苦茶なことを言う久住さんに、眉尻が下がる。
久住さんがいちごのカキ氷がいいって言ったのに。
だいたい、海に行こうと誘ったのだって、久住さんなのに。
確かに久住さんは不機嫌だったけれど、それがどうして、こういう発言に繋がるのだ。
「それに帰るったって、お母さんたちに迎えに来てもらわんことには」
「……電車で帰る」
「こっから駅までどんだけあると思ってはるんですか」
自分で言うのも何だが、私の話はとても正論だと思う。
行き帰りは母親に送り迎えをしてもらう約束をしていたし、
行きにちらりと見かけた地元の駅までは、車でも結構な距離があったはずだ。
タクシーを使うにしても、こんな真夏の海水浴場ですぐに拾えるタクシーなんてない。
言い終わって久住さんを眺めていると、すらりとした手が震えて、ぎゅう、と握られた。
「とにかく帰るの!」
さっきと負けず劣らずの大声で、久住さんは吐き捨てた。
だけど、さっきとは違ってその声は水気を多く含んだような響きを持っていて、一瞬、怯む。
「みっつぃ、小春といても全然楽しそうじゃないんだもん!
みっつぃ楽しくないと小春も楽しくないから!だから帰るの!」
続いた言葉に、今度はぽかんとしてしまう。
だからさっき、嫌いなのか、なんて聞いたのか。私が楽しそうじゃないから。
それにしても、それを思ったって、そんなにど直球に尋ねなくてもいいのに。
同い年のはずの彼女は、酷く単純で、驚くほど真っ直ぐに自分の気持ちを表現する。
そういう久住さんの部分は嫌いじゃない。むしろとても好感が持てるけれど、同時に、私は困ってしまう。
どう反応するのが正しいのか、後輩として、仕事仲間として、何が正解なのか、分からなくなるから。
「……楽しくないなんて、言ってませんよ」
一瞬逡巡して、私はできるだけ平静を装った。
たぶん、今の私の立場で、これが一番正解に近い答えだ。
けれど、久住さんは少しも納得してくれなかったらしい。
- 69 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:39
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「言ってる。顔に書いてある」
「そんなことないですって」
「あるもん。だって、みっつぃ全然遊んでくれないし、溜め息ばっかついてるじゃんっ」
溜め息については否定できない。
だけど、それだって久住さんが嫌だから出たものではない。
「最近だって、ずっとそうじゃん。みっつぃ、小春といるといっつも溜め息ついてる」
久住さんの徐々に小さくなっていく声と震える拳を見つめながら、それも否定できないなと思った。
溜め息が多いのは、彼女が誰にでもスキンシップ過剰だからで。
それなのに私には、割とドライな対応をするからで。
それが、彼女の中で、私がどこら辺に位置するのか、嫌でも分かってしまうからで。
――― 自分が、彼女の特別ではないと、分かってしまうからで。
返す言葉を探す。
口八丁はお手の物なのに、私は久住さんには嘘をつきたくなかった。
逡巡していると、久住さんの拳がさらに、ぎゅう、となったのが視界の隅に映って、
それを追いかけるように彼女の声が降ってきた。
「やっぱみっつぃ、小春のこと嫌いなんだ」
「やから、そんなことないですって」
すぐに否定するけれど、久住さんの口元は歪んだまま。
嫌いだなんて、思ったことすら無いのに。むしろ、真逆だ。
久住さんは私の気持ちも何も知らない。
だからこんな言葉が出てくるのだと分かってはいるのだけれど、苛立ちを抑えられない。
けれどその一方で、なんでこんな所でこんな押し問答してるんだろう、なんて空しさも襲ってきて。
そういう気持ちが、日差しと暑さでぐでんぐでんに混ぜ合わさって溶けてしまいそうだ。
汗がたらりと零れた。
- 70 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:39
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「だったら、好きじゃないんだ」
鼓膜を震わせる彼女の言葉に彼女の拳から視線を上げた。
さっきまで俯いていた久住さんは、いつの間にか顔を上げていて、サングラス越しに視線が合う。
相変わらず表情は窺えないけれど、私はその顔を半ば睨みつけるようにして見つめた。
一体この人は何と言ったら納得してくれるの。
子供のなぞかけをやっているんじゃないのだ。
(嫌いじゃないなら、好きじゃないって)
それなら、好きだとでも言えば納得してくれるのか。
愛してると囁けば、笑顔を見せてくれるのか。
(じゃあ、久住さんは、)
―――― 私がそうしたら、私を受け入れてくれるの?
そんなことあり得ないと、私自身が一番よく分かってた。
だから。だから、言わないのに。
苛立ちが、ますます高まっていく。
けれど同時に、心の隙間に冷たい寂しさがするりと入り込んできて。
いっそのこと言ってしまった方がいいかもしれない、なんてちらりと考えて、すぐに打ち消す。
この暑さで本格的に脳みそが溶けてきたのかもしれない。
だって、言った結果なんて分かりきっているから。
また、汗がたらりと零れた。
私は小さく息をすって、吐き出した。
ゆっくり目を閉じて、自分を落ち着け、同じくらいゆっくり瞼を押し上げて、久住さんを見やった。
むき出しの肩と胸元が少しだけ赤くなっているのを見つけて、きっと黒くなってしまうだろうな、なんて思う。
そんなことを考えられる余裕が出てきたのを確認してから、へらり、といつもの笑顔を作った。
ここまで築いてきたものをこんな暑さに負けて、壊してしまうだなんて、私にはできない。
「……いっときますけど、好きじゃない人とこんな所まで来るほど、愛佳はお人好しやないですから」
これが限界だった。
今の私のこの位置で、久住さんに言える、ぎりぎりの正解だった。
取り繕うためだからって“好き”だなんて、冗談でも今の私には言えないから。
- 71 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:40
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久住さんが小さく、誤魔化した、と呟いた。
私は、そんなことないですよぉ、とへらりとする。
少しずついつもの調子が戻ってきた気がする。
だって、さっきまでへの字口だった久住さんの口元が若干緩んできてるから。
やっぱり久住さんは、酷く単純で、びっくりするくらい真っ直ぐだ。
そう思いながらも、自分の頬もそれに負けないくらい本格的に緩んでいることを私は気づかないふりをする。
「もう勘弁してくださいよ。ほら、カキ氷、溶けちゃいますから」
カキ氷を差し出すと、久住さんはやっとそれを受け取ってくれた。
それに笑みが深まっていくのを感じながら、私は、パラソルんとこで食べましょ、彼女に提案して歩き出す。
今度はちゃんとついて来てくれる後ろの気配に、また頬が緩んだ。
久住さんのこと単純だと笑えないなぁ、なんて考えながら歩を進める。
ざくり、ざくり、ざくり。熱い砂が足の裏を撫でる。
カキ氷を食べ終わったら、久住さんにパーカーをかけてあげよう。
念入りに日焼け止めを塗ってるとはいえ、その肩が紫外線に晒されるのは頂けない。
それに、他人の目に必要以上に晒されるのは、私が嫌だから。
嫌がられてもしつこく説得する決意をして、私は歩きながら一足先にカキ氷を口に運ぶ。
溶けかけのそれは、びっくりするくらいに、酷く甘かった。
おわり
- 72 名前:いちごのカキ氷 投稿日:2009/07/27(月) 02:41
-
>>いちごのカキ氷<<
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/27(月) 02:41
- 小春が光井を海に誘ったそうで、そこからの妄想でした。
- 74 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/27(月) 02:42
- >>57
ありがとうございます。
可愛いお姉さんズは正義!
- 75 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/27(月) 02:43
- >>58
お粗末さまです。
>>59
ありがとうございます。
- 76 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/08/22(土) 23:41
- 甘酸っぱいって感じでした。
よかったです。
次回のもまったり待ってます。
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/13(日) 16:10
- さきももを頼みます
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