中距離恋愛
1 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:28

toy boxスレのものです

シリーズとかない短編シリーズです


2 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:29

勝ち負けがつくのなら、絶対勝ちが欲しい

順位が決まるのなら、絶対一番が欲しい

3 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:29



その冷静さ、負けず嫌いにつき



4 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:31

一回イメージが決まってしまえば、とことんそのイメージを守る
だって、イメージを勝手に着せられて、求められるのがアイドルと言う仕事だから

だから、小春は天真爛漫で無邪気と言う分厚いスーツを着込んで、今日も一日を送る
本当はその下に冷静さって言う、イメージとはかけ離れた素顔があるんだけど…


イメージを守る、それはカメラの前だけじゃない
メンバーの皆と居る時だって、そうだ

絶えず喋り続けるのはイメージを守る為…

そして、自分を守る

皆が“小春だから”と、そう思ってくれたらそれは小春の勝ち
少しでも“おかしい、変だ”と、そう思われたらそれは小春の負け

負けは嫌だ、勝ちたい
そんな自分を守る為には喋り続ける、それが最善の選択になっていた

5 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:31

今日だってそうだ
楽屋では皆思い思いに過ごす
女三人よればかしましいとはこの光景だろうか
九人も居ればかしましいどころではない

小春はそんな中でアンケートに答えている
勿論、喋る事も忘れずに


ただ、上手くそれを出来ない時だってある
今まで分かった限り、その条件は唯一つ

「小春ぅ〜、書けてる?」
「あったりまえですよぉ〜、小春はやっぱりあのですね、
こういうアイデア沢山湧いてくるんですよねぇ!!」

6 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:32

そう、亀井さん…
亀井さんが隣に居ると、どうもザワツク

自慢じゃなくて事実だけど、小春は可愛いし、スタイルだって良いし、隠してるけど切れ者だし、やっぱり可愛いし
イワユル、無敵ってやつ?

そんな無敵の小春がどうしても、亀井さんにはザワツク
不自然になってしまう
何でだか、なんて分からない…

7 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:33

多分、亀井さんと居る小春も皆から見たらいつも通りの小春で、五月蝿くて、意味不明な小春になっていると思う

でも、小春の中では5秒に1回くらいトクンと不自然な鼓動が混じっているのが聞こえる


「えり、これ苦手…ウヘヘ、まぁ今回もこんな感じで良いかなぁ〜」
「あっ、出来ましたぁ?見せて下さいよ!!今回もぽけぽけぷぅ〜ですか!?」

亀井さんの手元にある紙を取ろうとする
その一瞬、またトクンと脈打った
その手に…亀井さんの手に触れてしまったから


動きが止まった
小春の動きだけが止まった
時間にしたら僅か1秒程だろう
でも、それは人間の時間であって
“小春”の時間じゃない
小春の時間では、ここから先の輝く未来までもを失くす程長い

8 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:34

嫌だ!!
そう心の中の小春が叫んだ

多分、イメージを崩すのが嫌で
亀井さんに勝手に動揺しているのが嫌だったんだろう

脳が世界記録を更新するスピードで命令を出し
全身の細胞を奮起させて起こした行動は意味不明だった

小春は亀井さんに…

亀井さんにキスをしていた

9 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:34

キスをしたいが人間の本能とは言い得て妙だと感心した

あぁ、小春は亀井さんが好きだから不自然だったのか

小春はやっぱり小春だ
今の流れでキスするなんて言う意味不明な行動は小春のモノだ
小春しか出来ない芸当だ
細胞単位でイメージを守ろうと努力しているんだ
そう考えると意外と落ち着けて

亀井さんをチラッと見やると今度は亀井さんが止まっていた
やった!!勝った!!守った!!

10 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:35

…と思ったら、違った
普通に小春の手からアンケートの紙を取り返し
「どうせ、えりのはぽけぽけぷぅ〜な回答ですよぉ」
とか言いながら、頬を膨らませている

ちょっと待った…
キスした小春でさえ少しテンパってるのに、何で?何で、こんなにも…

「何でそんなに冷静なんですか?」
「えっ、だって…」

11 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:35



“好きな人にキスしたいって、当たり前の感覚じゃない?”



12 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:36

小春も気付いてなかったのに
亀井さんは小春が亀井さんを好きって気付いてたって事?

…あぁ、この人は小春以上だ
小春以上に冷静で、それでいて大胆不敵なんだ

「さぁ、えり終わったしスタッフさんに渡して来よーうっ!!」
「…」

13 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:37

そう言って、席をたった亀井さんの耳が赤いのに気付かないフリが出来る程、
小春は大人じゃなくて…

「あれぇ?亀井さぁ〜ん、耳赤いですけど、どうかしたんですか?熱、あるんですか?大丈夫ですか?」

軽く冷やかす様にその背中に声をかける
好きよりも勝ちを取るくらい負けず嫌いなのが小春ですから


「…誰かさんが突然にあんな事するからぁ、えりちゃんビックリしちゃってぇ〜」
「えっ…」

14 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:38

クルッと向き直って、小春を見てニヤっと笑った

「まぁ、こんなに可愛い可愛いえりちゃんにキスしたくなるのは仕方ないですよねぇ〜…
ねぇ、ガキさん?」
「…つか、カメと小春五月蝿いっ!!」
「ウヘヘェ〜、だってぇ、小春がぁ〜…」
「あっ、ちょっ、ちょっと待って下さいよ、亀井さん!!小春は、えっと…」

この後、皆を巻き込んでの大騒動になったのは言うまでもなく
何だかうやむやになったのも亀井さんっぽいなぁと思うと笑わずには居られなかった

15 名前:その冷静さ、負けず嫌いにつき 投稿日:2008/10/21(火) 22:38



冷静さ、負けず嫌いにつき

fin



16 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:38




17 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:38





18 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:39

私が一瞬で走り抜ける事が出来る距離でもなくて

それでも、息が切れるほどきつい距離でもない

19 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:40



中距離恋愛



20 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:40

物心が付いた時には隣に居て、それは今でも変わらなくて
嬉しいことに高校まで一緒に居る事が出来るの
少し運命めいたものしら感じる事が出来た

だから、皆が異性に興味を持つ頃になっても私はえりにしか興味を持てなくて
でも、それを打ち明けるのは簡単な事じゃなくて
私は珍しく辛抱強く、この気持ちを大事に隠してしまっていた

21 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:41

放課後、部活に向かう私は階段を降りる為に隣の教室の前を通る
それは絶対
そうしなければ、部活に行けないから

その時に教室に残って話をしている集団を見る
それは日課
そうしなければ、えりを見る事が出来ないから


何でここまでするのか…

だって…
だって、こんな事になるなんて思いもしなかったから

22 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:42

中学でもクラスが違って教室で一緒に居る事が出来なくて
朝練があるから登校は一緒に出来なかった
それでも中学ではえりも吹奏楽部に入っていたから週に何度かは一緒に下校が出来た

そして、同じ高校に行けると決まった時には、二人で泣きながら喜んだ


喜んだはずなのに
なのに、だ

私は中学から続けて陸上部に入った
でも、自分のしたい事をしたいと言って、えりは部活に入らなかった

私は何度か部活しないの?って勧めてみたけど、えりに無理強いするのは何か嫌で
結局、私はえりの意志を大事にした

23 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:42

こうして私とえりが一緒に居る時間が少しずつだけど自然と減っていった
それでも、私の気持ちは反比例するかの様に強まるばかりで、全く弱くならなかった

時々見る、えりが誰か他の子と居るのが歯痒くて…
えりのあの笑顔を作っているのが私じゃないのが悔しくて…

24 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:43

「うん、じゃあ終わるまであ待ってるよ」
「えりか、ごめんね」
「しみさきちゃんの頼みなら仕方ないって!!」
「本当、ありがとう」

教室の前を通る一瞬

えりの声が聞こえるのが嬉しくて、そんな日は誰よりも速く走る事が出来た

えりの声が聞こえないと不安で、そんな日は足が鉛の様に重く感じた

今日は声が聞こえたのに、どうしても落ち着かない

えりが他の誰かと帰る現実
頭では分かっていても、それを目の当たりにすると
全身に一気に矢の雨を浴びたかの様に痛いと、心が泣いた

25 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:44

案の定、今日の部活は最悪だった
タイムは悪いし、顧問の話を聞いていなくて怒られるし
部活の皆は心配してくれた
でも、私が欲しいのはそんなんじゃなくて、えりだけだった

えりが居ないなら一人が良い
私のそんなワガママは私を独りにした
部室から校門までの距離、いつもより寂しい気がした
そんな時だった

26 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:44

やっぱり、私が欲しいのはえりで
独りを一人に戻して、二人になるのはえりだけ

「舞美!!」

後ろから聞こえた声
安心出来て、泣きたくなる
でも、泣かない、泣けない


えりは小走りで私の隣までやって来る
その音ですら愛しい

27 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:45

「えり…珍しいね、こんな時間に」
「しみさきちゃん待ってたんだけど、桃ちゃんにとられちゃった」

冗談めいて話すえり
その顔には全く怒りの感情は無くて
逆に何だか嬉しそう

「3人で帰れば良かったじゃん」
「ん〜、桃ちゃんさ、しみさきちゃんと違うクラスなのに一緒に帰りたくて待ってたみたいだから
なんか邪魔出来なくて」

あぁ、こんなえり久しぶりだ
私の中のえりじゃなくて
本物のえりらしい、えり
ウチが求めて、求めて、どうしようもないくらい好きなえり

28 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:46

「ウチも舞美が居るからって思って」
「えっ…」
「せっかく一緒の高校なのに、全然会わないじゃん?だから、舞美を待ってた」
「…」

そう言って、道に会った小石を明後日の方向に蹴飛ばすえりが
何だか私に似て見えたのは気のせいじゃないと思う

29 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:47

一瞬で走り抜ける事が出来なくても
息だって切れるほどきつくない、心地好さ
他愛のない話、それでも満たされる様な距離

そんな二人の帰り道はまるで中距離
並んで歩いて帰る
そんな中距離

30 名前:中距離恋愛 投稿日:2008/10/21(火) 22:48



中距離恋愛

fin



31 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:48





32 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:48




33 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:50


その冷静さ、負けず嫌いにつき (亀×久)
>>2-15


中距離恋愛 (矢×梅)
>>18-30

34 名前:gen 投稿日:2008/10/21(火) 22:50

更新

こんな感じで進みます
頑張ります

35 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/23(木) 20:28
もどかしい感じのやじうめにやられました…
次の短編も楽しみにしてますね
36 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:16




37 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:16

>>35さん
ありがとうございます
がんばいます
38 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:17



39 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:17

窓の桟に腰かけて鼻歌を歌うあなた

それを見つめて微笑むあの子

40 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:18



美しき占領



41 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:18

親友って言うのは大体2タイプ居る
いつも一緒に居て、何をするにも気が合う、綺麗な円を描ける相手

時々しか会わないのに、背中を預けられる、鍵と鍵穴の様な相手

私の親友は確実に前者で
言葉では表せないぐらいに仲良くて


だからこそ、私はぎこちなくしか笑えなくなった


42 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:19

「今日も長かったね」
「ね」
「何か甘いもの食べたいかも」
「私も」

会話らしい会話とは思えない
それなのに、分かり合えているのは似た者同士だから

二人並んで歩く放課後の廊下
休み時間に沢山の人が居るよりも賑やかに響く足音

どこからか聞こえてきた鼻歌
それは私たちの足音に和音の様に溶け込んで来て
私とりーちゃんはどちらともなく、その鼻歌の方に足を向けていた

43 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:20

「ここらへんかな?」
「そう思うよ」
「廊下からでも見えるかな?」
「どうかなぁ?」

まるで宝物でも探すみたいな足取り
私たちは鼻歌に導かれていた
辿り着いた先は1年生の私たちはあまり来ない3年生の教室が並ぶ場所

ただでさえ慣れない場所
迂濶に行動が出来ないのに、私もりーちゃんも赴くまま

44 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:20

「ここ、みたい」
「みたいだね」

3年A組の教室の前
扉を開ける勇気の無い私たちは通り過ぎる時に中を覗く作戦をとった


窓の桟に腰かけて鼻歌を歌っている人
この教室の生徒だろう

45 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:21

西陽が当たって茶色く光る髪が眩しくて
その光のせいかはっきりとは見えない顔
それでも分かる不思議なくらい圧倒的な雰囲気


そして魅力的な声


ただ、綺麗だと思って
私は何故だか悲しい気持ちになった

そして惹かれていた…

46 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:22

ふと我に帰る
ここはまだ教室の前の廊下
帰ろうと歩き出す私

それでもりーちゃんは動かなかった

気付かずに少し先を行った私も止まり、振り返る

「…りーちゃん、どうしたの?」
「あっ、うん…」
「行こ?バレたら怒られちゃうかもよ」
「…うんっ!!」

47 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:23

歩き始めた私たち
それでもりーちゃんはずっと
ずっとずっと
教室の中を気にしているのか、チラチラと振り返る

理由は聞かなくても分かった
似た者同士の大親友


だって私も同じ気持ち…


48 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:23

その人が占領したのは私とりーちゃんの重なっているのに重ならない部分
円の縁、ほんの僅かに空いた隙間の部分

どっちも同じ恋心なのに
りーちゃんの純粋で真っ直ぐな部分
私の臆病で卑怯な部分

それだけが違った
それだけで私は狡くなった

49 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:24

「…綺麗、だったね」
「うん…」

私は何で悲しい気持ちになったのか分かった気がした

頬を少し赤く染めて嬉しそうにするりーちゃん
それは凄く可愛いと思うのに
どうしても負けたくない、譲れない…
そんな感情が生まれた

こういう事、だったんだ…

50 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:24

りーちゃんは学校を出てからも少しソワソワと落ち着かなくて
普段の私ならそんな姿をみて笑えてたのに

どうしても上手く出来なくて

足元を見ることしか出来なかった

「愛理、何かあった?」
「えっ、何も無いよ…」
「ホント?」
「うん、ホントホント」
「そっか、じゃあ行こう」

スッと延びてきた手
りーちゃんは私の手を掴んでニコッと微笑んだ

51 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:25

友情とか愛情とかそんな事難しくて

どちらかを選ぶ、選ばない、選べない…

今、私の手を握っているりーちゃんはそんな事なんて考えていないはず
なのに私は全部が上手く行かない事を恐れてしまって

「愛理、じゃあまた明日」
「うん、また明日…」
「あっ、明日もさっきの人居たら見に行こうねぇー」
「…」

りーちゃんは元気に手を振って自らの家路につく

52 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:26



私は一人になっても少しの間動く事が出来なくて

堪えきれない涙を流した



53 名前:美しき占領 投稿日:2008/10/23(木) 22:26



美しき占領

fin



54 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:27




55 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:27




56 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:27


物憂げな笑顔に甘い薫り

あぁ、まるで儚く散る金木犀の様だ


57 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:28



花折り人



58 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:28

ふと鼻をくすぐる覚えのある匂い
季節を知らせる一通の手紙の様な匂い

金木犀…

ほんの短い時期

一斉に咲き誇り

一斉に散る

だからと言って、忘れ去るにはいかない
鮮烈に心を掴んで離さない

59 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:29


微かに薫ると探してしまう
薫りの源はどこなのか
足が勝手に動いてしまう


60 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:30

辿り着いた、人気のない路地

私は見上げ、腕を伸ばす
枝がたわんで、花が散る


…瞬間、目眩がする


遠く離れて居ると可愛らしく恋しい
近く傍に居ると眩しく煩わしい

金木犀の花がこんなものだと、あの子は知っているだろうか?

61 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:31


私にとって、金木犀は君
近くに居すぎる事で、私は目を伏せる


62 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:32

先程掴んだ枝をもう一度掴む
たわんだ反動で幾らか花は散ったが、まだまだ在る小さな橙の集まり

可愛くて、愛しくて、眩しくて、憎い

枝の先、一段と細くなった部分
指先に力を入れ、その細い枝を折る


「…こんな事して、何になるんだろう…」


63 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:32

折れた枝

花を散らす様に指で触れる
花は散る、でも、散らない
私の目からは散る事はない

何でこうも虚しいのだろうか
虚無感に襲われ、私は立ち竦む


64 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:33

ポケットの中で振るえる携帯電話

「…梨沙子」

君は私の季節の中に常に存在する金木犀
今はこんなに愛しいのは、離れているからなんだろうか?

「…もしもーし」
「あっ、みやぁ〜」

甘い薫り、鼻に残る
甘い声、耳に残る

「何、どうかした?」
「ん〜、ただ何となく」
「何それ…」

目に映る、橙の花
瞼に浮かぶ、表情

65 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:34

「時間、有る?」
「無くは、ない」
「遊びに行って良い?」
「…」

どうしてだろう、足が勝手に動くのは
どうしてだろう、心が君の名前を叫ぶのは

「今外だから、ウチが行く…」
「えっ、ホント?」
「うん、お土産あるから」

そう言って握ったままの枝を見る
近くにあるのに、先程よりも可愛く見える

66 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:34

「何?お土産、何?」
「ん〜、秘密…」

君の声の甘さも
花の薫りの甘さも

「じゃあ、待ってるね」
「うん」

67 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:35


君はやはり金木犀

私は見上げる花折り人


68 名前:花折り人 投稿日:2008/10/23(木) 22:36



花折り人

fin



69 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:38


その冷静さ、負けず嫌いにつき (亀×久)
>>2-15

中距離恋愛 (矢×梅)
>>18-30

美しき占領 (鈴×菅)
>>39-53

花折り人 (夏×菅)
>>56-68


70 名前:gen 投稿日:2008/10/23(木) 22:38


更新しました

次回はtoy boxの更新です


71 名前:gen 投稿日:2008/11/09(日) 22:53




72 名前:gen 投稿日:2008/11/09(日) 22:53




73 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:53


いつもと同じ朝だったはず

いつもと同じ通学路だったはずなのに


74 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:54



通学迷路



75 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:54

私の通学路には少し大きな公園がある
そこを突っ切るのは近道になるから利用者は結構居るらしい

私はそんな理由で通っているんじゃない
私の理由は花壇に咲いている花

公園の花壇は綺麗に手入れされているので季節ごとの花を楽しめる
私はそれが好きで、毎日通っていた

花を楽しみながら歩くと時間が掛かる
私は家を出る時間は必然的に早めになるから
誰とも通学中に会った事はなかった

76 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:55

今日もいつもと変わらず公園の出口に近付いていた
沢山あった花壇ももう端に近付いている
そして、その端は植木で出来た小さな迷路に繋がっている

小さい頃はよく遊んだ
迷路に入る度にその形が変わった様な錯覚に陥って
迷子になりそうな不安で泣いた事もあった

でも今となっては知っている
壁伝いにゴールまで行ける事を

だから毎朝通っても何の問題もなく、ただの通過点にすぎない

77 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:55

そんな迷路の入り口が昨日までと違う雰囲気になってる
花壇の花の植え替えしたのかな?とか考えたけど他の花壇はそんな事無かったし
明らかに色がおかしい

よく見る様な色だけど、何だっけ?
花壇じゃない、もっと違う所で見る…

そんな事を考えながら恐る恐る近付く
そこにあった…
否、居たのは、私と同じ制服を来た女の子だった

78 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:56

起こした方が良いのかなぁ?
万が一、死んでるなら私が疑われるのかなぁ?
て言うか、何でこんな所に居るわけ?

色んな疑問が浮かんでくる
スルーして通る事も出来た
でも、臆病な私の足はすくんでしまって動かない

79 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:57

「ひっ…」

モゾモゾと目の前の子が動き出す
いきなりの事で驚いて大きめの声が出てしまう
今度は女の子が驚いたのかビクンと大きく肩を震わせる

「…」
「…」

視線が合う
大袈裟にならない様にその人を確認する
タイの色から私より一学年上、中学三年生だって分かった

80 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:58

「…今、何時?」
「えっとぉ…8時5分前くらいです…」
「んぅ〜朝練遅刻決定…もうサボろっかなー」

ブツブツと一人で呟いて
ヒョイと飛び起きる

「急がないと遅刻するよ、君はえっと…」
「鈴木です…」
「スズキさんかぁ…じゃあね!!」

その人は制服に付いた草やら泥やらを手で払って
走って迷路の中に消えて行った…

81 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:58

「あっ、私も行かなきゃ…」

私も続いて迷路に入る
それはまるでウサギを追い掛けるアリスの様に

あの人は誰?
何て名前なんだろう?
あの人もここが通学路なのかな?

そして私は迷子になった
毎朝通る
あんなにも簡単な迷路で

82 名前:通学迷路 投稿日:2008/11/09(日) 22:59



通学迷路

fin



83 名前:gen 投稿日:2008/11/09(日) 23:00





84 名前:gen 投稿日:2008/11/09(日) 23:00




85 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:01


いつもと変わらない、そんな今日なのに

聞こえてくる周りの音がいつもより明るく弾んでいた


86 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:01



校庭楽団



87 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:02

先週からフットサル部の朝練が始まった
遅刻したら顧問がウルサイし
最高学年としての“示し”ってやつもつかない(らしい)

6月とは言え、朝は冷える
それに元来、早起きが苦手な私にとっては苦痛でしかない
唯一の救いは練習が楽しいって事

そんな私が今日、遅刻をした

学校に着いた時にはなっきぃが
「かんなん遅刻だから、とりあえず5周してきてー」
って、叫んできた

88 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:02

多分昨日だったらかなり嫌がったと思う

多分明日だったら何かしら言い訳するかもしれない


だけど今日だった


今朝は何だか調子が良い
否、今朝って言うよりさっきからだ

89 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:03

先週からの早起きが祟って
解けた靴紐を結ぶ為に座ってそのまま寝てしまった
有り得ない話なんだけど
実際にそうなっちゃったんだから仕方ない


時間にしたら3〜5分程度だったと思う
人通りの多い歩道じゃなくて良かったって思ったのも束の間

「ひっ…」って、声が聞こえた

90 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:04

スズキさん…って言ってた

元からなのか、あんな状態の私を見たからなのか分からないけど
頼り無さそうに下がった眉

身長は私より高かったけど
何だか小動物みたいな雰囲気があった

可愛かったなぁなんて思いながら走っていると
何でもないような小石にも躓きそうになったりする

91 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:05

「かんなん、終わったらアップ手伝うからねぇー」
なっきぃの声で我に帰る
今、何周目だっけ?もう、そろそろ良いかなって思ってペースを落とす


止まって足踏みをしながら、校庭を見渡す

朝練をしているのはフットサル部だけじゃない
野球、サッカー、陸上…
皆が色んな掛け声を出して頑張っている

今の私にはそれが楽しい音楽を奏でる様に聞こえる
頑張れって背中を押してくれてる様に聞こえる

92 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:05

「…っし、頑張るか」

そう言って部活の皆の元へ向かう

「なっきぃ、アップ手伝って〜!!」

叫んだ瞬間だった

93 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:06



…あっ、スズキさんだ



94 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:07

目が合った
ポケーっと歩いていたスズキさんがこっちを、私を見た

私は小さく頭を下げる
ニコって笑う
上手く笑えたと思う

95 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:08


カキンッ!!

シュパッ!!

ワァーッ!!

色んな音が奏でるハーモニー

愉快な音楽

96 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:08

理由なんて分からないけど

何だか今日は一日頑張れそうだ
そんな気がした

97 名前:校庭楽団 投稿日:2008/11/09(日) 23:09



校庭楽団

fin



98 名前:gen 投稿日:2008/11/09(日) 23:11


その冷静さ、負けず嫌いにつき (亀×久)
>>2-15

中距離恋愛 (矢×梅)
>>18-30

美しき占領 (鈴×菅)
>>39-53

花折り人 (夏×菅)
>>56-68

通学迷路 (鈴×有)
>>73-82

校庭楽団 (有×鈴)
>>85-97


99 名前:gen 投稿日:2008/11/09(日) 23:11


更新しました

それではまた


100 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/10(月) 08:14
栞菜面白いですねw
好きな雰囲気の話です
次回も楽しみにしてます
101 名前:gen 投稿日:2008/11/10(月) 20:37




102 名前:gen 投稿日:2008/11/10(月) 20:37




103 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:38


ちょっとだけ謝りたくて

でも、もの凄く嬉しくて


104 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:38



廊下伝心



105 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:39


一人で居るのはもう慣れた

仲が良い子が居ないワケじゃない
気を遣ったり、遣われたり
そういうのがちょっと重く感じるだけ


自ら望んで、一人で居る


106 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:39

ただ寂しくないかって聞かれたら
寂しくないとは言い切れない

でも、ホントの自分を見せる事が出来ない方が寂しい気がして

なんて言う、強がりで意地っ張りな言い訳をしてみる

107 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:40

でも、本当に慣れた
慣れてしまえば気まぐれに自由に
何でも出来ちゃう気がして

登下校だって一人で大丈夫だし
昼ご飯だって一人で大丈夫


廊下を一人で歩くのだって


周りがどんな眼で桃の事を見てるかも分かってる
そんな事を気にしなきゃいけない関係なんて、まっぴらゴメンだ

だって、桃は桃なんだもん…

108 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:41

「桃っ!!」

そんな桃でも、案外寂しがりで
佐紀ちゃんの声を聞いたら、何故だかちょっと涙が出そうになる

「あんた、また一人で…はぁ、一緒食べる?」
「…」
「えりかも舞美も心配してんだからね」

迷惑かけてるって分かってる
もしかしたら…って不安もある

だけど、佐紀ちゃんはそうじゃない
何でか理由なんて分かんないけど、そうだって言い切れる

109 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:42

「でも、佐紀ちゃん見付けてくれるでしょ?」
「何言ってんの…見付けるって言うか、探さなくてもそこら辺…
 ってか、私の前に居るじゃん、桃は」

呆れたとでも言わんばかりに
桃の手を引いてくれる

少し乱暴な言い方なんだけど
そこに隠れた優しさが嘘じゃないって分かるから

「佐紀ちゃんは素直じゃないなぁ〜」
「はぁっ?」
「“隣に居て”って言えば良いじゃん♪」
「……」

佐紀ちゃんは本当に呆れた、お手上げです、みたいな表情で首を振る

110 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:42

こんな事普通に出来るのだって
桃と佐紀ちゃんだからだって

そんな所も安心出来て
本当は凄く嬉しいんだよ?
涙の理由は嬉しさなんだよ?

「とりあえず、行こ…二人とも待ってるから」
「…うん♪」

111 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:43

素直じゃないのは桃だって言うのも分かってる

だけど、いつか
いつになるかはまだ分かんないけど

“ごめんね、そして、ありがとう”

って、ちゃんと言える様になるから

それまで、あと少し
我儘な桃で居て、良いですか?

112 名前:廊下伝心 投稿日:2008/11/10(月) 20:43



廊下伝心

fin



113 名前:gen 投稿日:2008/11/10(月) 20:43




114 名前:gen 投稿日:2008/11/10(月) 20:44




115 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:44


全く違うってなんとなく感じたけど

親近感が沸くのはホントは似てるからなのかな


116 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:45



階段接触



117 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:45

ウチには一人になりたくなる時が訪れる事が度々あって
それはどこに居ても大体突然やってくる

家に居たら部屋に籠れば良い
授業中なら先生にバレない様にイヤフォンで耳を塞げば良い

そして、今みたいな休み時間ならフラッと教室を出ていけば良い

118 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:46

ポケットには携帯、財布、音楽プレーヤー

携帯はホントに一人になりたい時には持っていかない

でも、今日はなんとなく
腕時計を忘れたから困らない様にとか、そんな感じで

やって来たのはいつもの場所
校舎の端、外に繋がる非常階段の一番上

晴れでも雨でも関係無いくらいに
そこはヒヤッと涼しくて、少し湿気がち
何だか良いイメージはない
だから、あんまり人は来ない

ウチみたいに内省的でセンチな気分に浸りたがるなら持ってこいな場所だけど

119 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:47

今日は雨って事も加わって
何かイイ感じに気持ちが落ち着く

このまま、ここに居ようかな?
てか、ウチ居ないの皆気付いてないよね?
はぁ〜、なんか全部めんどくさーい…

頭の中は完全に全てを遮断し始めていて
そろそろ夢の中に行きそうになっていた


「あっ…夏焼先輩だぁー」
「ん〜と、あぁっ…菅谷梨沙子だ」

120 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:48

突然、名前を呼ばれる

バカな行動とか
派手な顔立ちのせいでちょっとした学校の有名人
ウチにはこんなこと茶飯事で
驚いたりはしない、断じてしない

ただ、名前を呼んだ人をウチも知ってたってだけ
目の前に現れたのは中等部2年生の人気者の菅谷梨沙子

仲が良いワケじゃないし、知り合いってワケでもない
話すのなんて多分今日が初めてだ

121 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:49

「…何してんの?」
「え〜…先輩は?」

“一人になりたかった”
なんてダサい事言えないし
言ったら言ったで気を遣われそうで何か嫌だし

「ん〜、何だろうね?分かんない」
「ふぅ〜ん」

あっ正直に言えば良かった、って思ったのは遅かった
コイツ完璧に全く気を遣えないタイプだ

予感的中
「んしょっ…」なんて言いながら隣に座りやがった

「雨、ですねー」
「ん〜、だねー」

122 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:50

…沈黙
まぁ、ベラベラ喋られるよりは全然、楽だ

シトシト、雨の音
ザーザー、風の音

全部が凄く心地好い
今、瞼降ろしたら寝ちゃうんだろうな


フワっと不思議な感じ
肩が少し重くなる

「…寝てるし」

123 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:51

自然にカールした柔らかい髪
同じくらい綺麗にカーブを描く睫毛
全体的に丸い雰囲気

キリッとしていて、少し刺々しいなんて言われるウチ
菅谷さんはウチと正反対の位置に居る様な感じ

「んっ…あっ、寝てた…すいません」
「良いよ、ウチも寝そうだなーって思ってた所だし」
「何か気が合いますねー」
「かもねー」

それなのに、どこか似ていて
隣に居るのが全然嫌じゃなかった

124 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:52

…あっ、もしかして、菅谷さんも

そんな事思ったけど口にはしなかった

だって、一人で居たいウチがいつの間にか、居なくなっていて
少しでも長くこのままで居たいと思うウチが小さく顔を出していたから

だから、あと少しだけ
雨の音を聴いていよう

125 名前:階段接触 投稿日:2008/11/10(月) 20:52



階段接触

fin



126 名前:gen 投稿日:2008/11/10(月) 20:54


その冷静さ、負けず嫌いにつき (亀×久)
>>2-15

中距離恋愛 (矢×梅)
>>18-30

美しき占領 (鈴×菅)
>>39-53

花折り人 (夏×菅)
>>56-68

通学迷路 (鈴×有)
>>73-82

校庭楽団 (有×鈴)
>>85-97

廊下伝心 (嗣×清)
>>103-112

階段接触 (夏×菅)
>>115-125


127 名前:gen 投稿日:2008/11/10(月) 20:56

更新しました

米レス

>>100さん
不思議なことをさせようと思って栞菜にしてみました

これからもがむばります。

128 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/13(木) 16:12
みやりしゃ♪みやりしゃ♪二人の雰囲気大好きです!!
129 名前:gen 投稿日:2008/11/13(木) 23:58




130 名前:gen 投稿日:2008/11/13(木) 23:58




131 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/13(木) 23:59


見える景色が変わっても

実際何が変わったかなんて本当は何もないのかも


132 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/13(木) 23:59



靴箱騒然



133 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:00

朝、会わなかった
どうせ寝坊だから、何も言わない
だけど、部活の先輩は少々お冠で
放課後がちょっと楽しみだった

「千聖、何やってんの?」
「あ〜、舞ちゃん!!助けて…」

部活に行こうと誘いに来た、2年生の教室
そこに居るのは千聖一人だけで
電気が無くても明るい教室で
机に向かって黙々と一人戦っていた

134 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:01

「今日、寝坊して2限までサボっちゃったんだよ」
「アーララ」
「先週のその時間の英語も遅刻しちゃって、明日の英語あてるって言われてさー」

予習しなきゃだよーなんて嘆いてる
完全に困ってますって表情な千聖
こういうところも皆に好かれるところなんだろうなぁって、舞は悠長に思う

「それもだけどさ、栞菜…先輩が今日の放課後楽しみにしてるってさ」
「うわっ…え〜、もう無理じゃん!!」

135 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:02

お手上げです!!って感じで体を伸ばす
うあーなんて叫んで、本当に大変そう

「…ん〜、英語は愛理に見せてもらうっ!!部活、部活行く!!」
「行こ、栞菜先輩待ってるし♪」

少しイタズラに笑う
千聖は本当に恨めしそうに舞を見る
そんな千聖を何度も見てきた
ただちょっとだけ、それがちょっと下の方に見える様になったけど

136 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:03

「あー、行きたいけど、行きたくない…」
「まぁ、栞菜先輩だしそんなに怒らないでしょ」
「だけどさ、皆が見てるとこだよ?千聖ちょー笑いものじゃん」

靴箱に着いて、学年の違う舞たちは少し離ればなれ
それでも千聖は大声を出して話してくる

「仕方ないじゃん、千聖のせいだし」
「だけどさー」
「学習しなきゃ」
「舞ちゃんも一緒に怒られてよ」

…千聖の言う事は大体支離滅裂だけど
時々ホントにため息をつきたくなる

137 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:04

「ねぇ、千聖」
「何、舞ちゃん?」
「千聖が寝坊したの」
「うん」
「何で舞まで怒られなきゃいけないの?」

だから、舞は諭す様に話す
千聖は真面目にそれを聞く
どっちが年上か分からなくなる

「いやー、二人だったら大丈夫かなって」
「いやいや、意味分かんないよ」

138 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:04

でも、ずーっとこんな感じで
だから、千聖の事嫌いじゃない

「…もう、ウダウダ言ってないで行こう」
「ん〜」

だって、そんな変わらない千聖が良いんだもん

「あっ、良いこと教えてあげる」
「ふぇっ、何?何々?」
「今日、栞菜先輩も遅刻したから、それ言えば?」
「おっ…おぉー?ありがと舞ちゃん…」

多分、だから何なんだ?とか思ってながらも頷く千聖
…やっぱり、バカだ

139 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:06

「まぁ、行くか」
「うん」

靴をつっかけて走り出した千聖
舞も遅れない様について行く

「て言うか、千聖寝坊するほど寝てるのに大きくならないよね」
「うわ、舞ちゃん今千聖が一番気にしてる事言った!!」
「ハハハッ!!だって本当ですよ?」

わーわー騒ぎながら走る舞たち
何だか毎日こんな調子

「いつか千聖だって大きくなるんだから!!」
「はいはい…」

140 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:07


ほら、どれだけ身長が伸びたって
どれだけ見える景色が変わったって

変わらないモノがある瞬間
それは舞にとって千聖と居る瞬間


141 名前:靴箱騒然 投稿日:2008/11/14(金) 00:07



靴箱騒然

fin



142 名前:gen 投稿日:2008/11/14(金) 00:07




143 名前:gen 投稿日:2008/11/14(金) 00:08




144 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:08


真っ黒な瞳が私を見つめて笑った

不覚にもドキってなった


145 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:09



部室談義



146 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:09

中学校に入って最初に仲良くなったのが“かんなん”だった

他の皆は小学校も一緒だった子とかと仲良くしていたけど
中学校入学と伴に越してきたかんなんは一人ぼっちで背中を丸めて本を読んでいた

その姿が凄く綺麗で、可愛らしくて、ちょっと格好良くて
他の皆と何かが違う様な、そんな雰囲気を漂わせていた

私はその姿を一目で好きになった

147 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:10

「かんなん、部活行こ」
「あっ、うん」

私たちは嬉しい事に同じ部活に入った
と言うか、とある先輩に半ば強引に入れられたって言う共通点が私たちにはあった

「そろそろ最後の大会だねー」
「んー、色々あったけど最後なんだね」
「みぃたん見に来るってよ」
「マジ?張り切っちゃおうかなぁ〜♪」

それでも、そんな部活―フットサルはすっごい楽しくて
元から負けず嫌いな私は最後までやりきるぞ!!って気持ちがあった

でも、正直かんなんがここまで…最後まで続くなんて思ってなかった

148 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:11

かんなんは1年の頃はポカーンとしてるけど
コミュニケーションだけはバッチリとる、みたいな子だった

その頃の練習してる姿はあんまり思い出せないけど、サボってた記憶もない
(因みに私は学校も部活も皆勤賞)

要するに、かんなんは部活の皆で居る事が好きみたいで
自分が出てない試合でも一生懸命応援していたし
先輩たちが引退する時は誰よりも大きな声で泣いていた

人のことを分かってあげられる
そういう所が微笑ましくて
かんなんの良い所だなって思う

149 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:13

いろんな事を思い出しながら部室まで歩く
キュフフって小さく笑いが込み上げる

「…って、なっきぃ聞いてる?」
「…もしかして中島いっちゃってた?」
「いっちゃってた、いっちゃってた」

かんなんは笑いながら「なっきぃは変わらないねー」なんて言う

150 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:13

「ごめ〜ん、何て言ったの?」
「ん〜」

かんなんは部室の鍵を取り出してガチャガチャと開けている
開きづらいこのドアを頑張って開けるのは、あと何回だろう?

「だからさぁ、その最後だし…」
「うん」

151 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:14

カチャッ…

ドアが開いた
かんなんはノブを引きながら私の方へ振り返る



「思いっきり格好良いところ見せてやる!!ってね…」



152 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:14


黒目がちなクリッとした瞳
前からずっと強いなって思ってた不思議な力を持った瞳
それが私を、私だけを見てそう言った

嘘偽りの無いそれが私を完璧に射抜いた


153 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:15


「…って、なっきぃ何か言ってよ恥ずかしいじゃん!!」
「えっ、あっ…うん!!」
「えぇっ!!なっきぃ大丈夫ですか〜?らしくないよ、何か」
「…あっ!!あぁ〜中島も負けませんよ!!」


154 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:16


ハハハッって笑いながら
少し放心状態の私の手をひいてかんなんは部室に入る

その手にもドキってしたのは繋いだ手からバレてなければ良いなって思った


155 名前:部室談義 投稿日:2008/11/14(金) 00:16



部室談義

fin



156 名前:gen 投稿日:2008/11/14(金) 00:18


その冷静さ、負けず嫌いにつき (亀×久)
>>2-15

中距離恋愛 (矢×梅)
>>18-30

美しき占領 (鈴×菅)
>>39-53

花折り人 (夏×菅)
>>56-68

通学迷路 (鈴×有)
>>73-82

校庭楽団 (有×鈴)
>>85-97

廊下伝心 (嗣×清)
>>103-112

階段接触 (夏×菅)
>>115-125

靴箱騒然 (萩×岡)
>>131-141

部室談義 (中×有)
>>144-155


157 名前:gen 投稿日:2008/11/14(金) 00:20

更新しました
℃メンをとりあえず

米レス

>>128さん
みやりしゃは良いですよね。私も大好きですよ。何かユルくて好きです。


158 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/14(金) 11:04
更新おつかれさまです
部室談義めちゃめちゃ良かったです!
自分も射抜かれたことあるから共感できましたw
159 名前:gen 投稿日:2008/11/19(水) 22:37




160 名前:gen 投稿日:2008/11/19(水) 22:37




161 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:38


上手く隠せていない純粋さが

可愛くて、羨ましいと思った


162 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:38



校門羨望



163 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:38

私とみやは所謂お受験組で
同じ小学校からここに来たのは二人だけで
そんな事もあってか、ずっと仲が良い

凄く仲が良いんだけど
ツーカーの仲って言っても過言じゃないと思うんだけど…

164 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:39

普段は五月蝿いって注意されても
それに気が付かないタイプのみや
この前だって廊下を疾走の上
先生に大激突をして、こっぴどく怒られたばかりだ

良くも悪くも小学校の頃から中身の成長は見られない
外見は綺麗で艶やかなのに
それに本人はそんな成長よりも別のところの成長ばかりを気にしてるみたいだけど

165 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:40

そんなみやが凄く儚く見える瞬間がある
それは同時に私を悲しくさせる


…だってそれはみやが一人になりたい合図だから
ずっと見てきたからこそ分かる事で
そんなときは親友でも何にも出来ない
何にもしないで見守るのが優しさだった

166 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:41

「みや、帰ろ?」
「あー、うん」

トボトボと歩く
昇降口から校門までは結構な距離がある

「そう言えばさ、…」
「うん」
「この前、菅谷さんと初めて話した」
「梨沙子と?」

私は一応、家庭科同好会に所属している
活動は少なくて、ほぼ帰宅部なんだけど

小春は「茉麻に似合いすぎ!!」なんて、私のエプロン姿を見て爆笑していたっけ?

同好会ってくらいだから、中高合わせても人数が少ない
その少ない中の一人に梨沙子が居る

「ママァー」って、甘えた声ですり寄ってくる姿はかなり可愛い

167 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:41

「うん、何か話したって言うか、一緒に居た?って言うのかな」
「へぇ〜」

珍しい、そう思った
まず、みやが家族とか仲の良い友達以外と居るところが想像出来ない
みやに人見知りな所があるし
どちらかと言うとみやは近付きにくい人種だ

しかも、学校だとみやはほとんど私と居る
梨沙子と会うなら、私と居た方が確率が高いだろうし

168 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:42

「可愛かったでしょ?」
「うん、楽だった」
「楽?」
「うん、沢山喋らなくて良かったから」

みやは説明が上手く出来ない見たいで
口を尖らせて、ん〜と唸る
だけど、その姿はお気に入りを目の前にした子どもの様に落ち着きが無くて
ワクワクっていうか、ソワソワしている

私には分かった
みやは一人になった時に梨沙子に会って
一人になりたかったのに、梨沙子と一緒に居たんだろう

169 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:43

「何か迷惑かけたんなら注意しとくよ?」
「うぅん、全然」
「ホント?」
「うん、ウチだって多少の事だったら大丈夫だし」

フフンと鼻を鳴らして、得意気で大人ぶるみや
私にはこんなみやがホントのみやに思える

やるせなさから逃げるために一人になるみやより
照れて笑っているみやの方が何万倍も可愛くて

170 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:43

「それに何か」
「うん」
「気持ち良かったし」

ほら、その顔
昔と変わらない、その表情

「あっ、ウチ今日寄る所あるから」
「うん、じゃあまた明日」

私はそれに憧れて
ずっと見ていたいから見守るんだよ

171 名前:校門羨望 投稿日:2008/11/19(水) 22:43



校門羨望

fin



172 名前:gen 投稿日:2008/11/19(水) 22:44




173 名前:gen 投稿日:2008/11/19(水) 22:44




174 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:45


私の中のルールを守れば絶対に

次の日も良い事がある様な気がする


175 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:45



放送運命



176 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:46

忘れっぽい性格の私なのに
私の中には勝手なルールが沢山ある
それは気休めだったり、ジンクスだったり色んな由縁のあるルールだ

・ローファーとかはどうでもいいけどスパイクだけは右から履く(そっちの方がなんかタイムが良くなる気がする)
・よく知らない人とはあまりペチャクチャと喋らない(イメージが崩れるって佐紀に言われた)
・緑茶じゃなくてミドリチャ(嗣永ケンポーってヤツらしい)

などなど
まだあるけど、そういう場面に遭遇しないと思い出せないから今はこれくらい

177 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:46


他のルールは忘れても絶対忘れないルールが一つだけある
あの日からずっと守っている
大事な、大事な…


178 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:47



・18時の下校のカノンはえりと聴く



179 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:47

私の高校は私立の女子校
お嬢様が集まるってわけでもないけど、まぁそれなりに女の子が集まったら色んな事情の子もいるわけで

18時30分には生徒は完全下校しないといけない校則がある

その校則を守らせるために学校側は17時30分過ぎには部活を終了させて
18時には下校放送がある

部活でもやってない限り大体この校則は守る事が出来る

180 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:48

私は中学校の時から陸上部だった
まぁまぁ足は速くて、上手くいけば県大会とかにも出ちゃうレベルで
そんな経歴があるもんだから、高校に入っても陸上部からお呼びがかかった

一方、幼馴染のえりは中学校からずーっと帰宅部だった
すっごいおしゃれで、家族の事が大好きで
自分の時間が沢山欲しいって言ってた
本当に自由人って感じで、良い意味で誰にも縛られないタイプ

長く付き合ってきたから、そんな事だって知っていた

181 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:48


そんな私とえりの何でもない約束

それが私の一番大事なルール


182 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:49

それはえりが度重なる風紀違反で、先生に長い長い説教を喰らった日だった

部活が終わって、片付けも無くて、さぁ帰るかーって部室から出て大きく伸びをした時だった

「あっ、電気…」


たまたま私は日直だった
日誌を書いたりをもう一人の子がしてくれたし
その子が用事があるからって、教室の施錠をする事になった

窓の鍵、教室の後ろの扉の鍵、そして最後に前の鍵を閉める
当然、電気だって消したはずだった
それはもう完璧にしたはずだった

183 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:49

だけど、教室の電気がついていた

「ヤバいなぁ、消しにいかなきゃ」

何と言っても慌てん坊で、忘れっぽい私だから
そんな失敗があっても全くおかしくない

思い立ったら即、行動に移っていた
ガーッと階段を駆け上って、ガーッと教室まで走っていた

184 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:50

「あれっ、舞美じゃん」
「えっ、えり…?」

私が教室の前に着いた時にはえりが電気を消して、鍵を掛けようとしていた

「どしたの?」
「いや、私日直…仕事…えっと…」
「落ち着きなよ」

えりは柔らかく笑った
いつもは豪快に笑うのに、時々こうやって笑うのは凄く綺麗だと思う

「電気ついてたから…私日直だったし、消し忘れたかなぁーって」
「あっ、ごめん…さっきまで説教されてて、とりあえず教室に置いてる漫画片付けろって言われてさ」

185 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:51

えりはフーっと溜め息をついて、面倒くさそうに鍵を掛ける

「大変だったね、お疲れ様」
「いや、舞美に比べたら…自業自得だし」

私たちは他愛のない話をする
時計なんて見てなかった
だから、18時になろうとしてるなんて知らなくて

186 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:51

「あっ…カノン」
「何、これ?」
「えりは知らないのか」
「うん、で何?」

私は説明した
18時になったら放送で流れる事を
えりは「この曲好きなんだよねー」なんて鼻歌で歌いながら上機嫌で
そんなえりを見た私も上機嫌だった

それからも私たちの他愛のない話は続いて
何となく盛り上がったんでえりの家で少し話を続けてからバイバイをした

187 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:52

「じゃあ、移動してー」

次の日、帰りのHRで席替えがあった
比較的、皆と仲は良いけど
特に仲が良い、えりとか、佐紀とか、桃とかと近くになった事はなかったから
その日も期待なんてしてなかった

「舞美が隣じゃん、初めてじゃない?」

あまり位置が変わらなくて、そんなに移動しなくて良かった私は皆より一足先に座っていた
だから声が聞こえた瞬間、顔を思い切り上に向けた

188 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:53

「えりぃ〜」
「舞美ぃ〜」

ブハッてえりは笑って、席についた
私は本当に嬉しくて仕方なかった

「なぁんか、善い事したっけか?」
「ん〜…昨日一緒に帰ったからじゃない」
「ちょっ、舞美それ善い事じゃないし」
「でもさ、普段と違う事なんてそれくらいしか思い付かないし…」

えりは「ん〜」って唸りながら考えている
その姿が面白くて、私はまた笑顔になる
そして、何気無く言っていた

189 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:53



「良い事起こるみたいだし、えりとカノン、毎日聴きたいなぁー」



190 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:53

本当に何気無くだった
多分皆が後先考えてないって言うのはこういう所なのかも知れない
でも、そんなに深く物事を考えても私にはよく分からなかったりするし

「じゃあ、ウチ舞美の部活終わるまで待ってるよ」
「えっ?」
「ウチが待ってたら、聴けるじゃん一緒に」

191 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:54


……
………

今、何て言った?
えり、何て言った?

192 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:54

「いーよ、ウチこの頃暇だしさぁ」
「…」
「確か、先生に残って掃除しろって言われた気がするし?」

口、すっごい開いてたと思う、絶対
迷惑かけたって思うよりも、嬉しくて仕方なかった

「舞美、大丈夫?大口開いてる」
「あっ…うん、えりありがと」
「何が?ウチ何もしてないっしょ?」

えりは私を不思議そうに見た
私はやっぱり口は開いたままだったと思う

193 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:55


何か変わったかは分からないけど

良い事が起こる
そんなルールが私には大事


194 名前:放送運命 投稿日:2008/11/19(水) 22:55



放送運命

fin



195 名前:gen 投稿日:2008/11/19(水) 22:57


通学迷路 (鈴×有)
>>73-82

校庭楽団 (有×鈴)
>>85-97

廊下伝心 (嗣×清)
>>103-112

階段接触 (夏×菅)
>>115-125

靴箱騒然 (萩×岡)
>>131-141

部室談義 (中×有)
>>144-155

校門羨望 (須×夏)
>>161-171

放送運命 (矢×梅)
>>174-194


196 名前:gen 投稿日:2008/11/19(水) 22:59

更新しました
茉麻が好きです

米レス

>>158さん
栞菜は本当に目力強くて素敵ですよね
私もやられっぱなしです

197 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/25(火) 13:17
やじうめいいですね〜♪
舞美のガァ→と感も出てて好きです!!

みやりしゃも楽しみにしてます。
198 名前:gen 投稿日:2008/12/10(水) 19:30




199 名前:gen 投稿日:2008/12/10(水) 19:30




200 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:31


全く知りもしないのに

全てが解る様な気がした


201 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:31



下校共鳴



202 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:32

周りに騒がれるのはあまり好きじゃない
私はフツーの女の子だし
皆となんら変わりないのに

だけど、ある時嫌じゃなくなった
ある先輩が私と似た様な目をしていたから

…夏焼先輩

綺麗で格好良い
皆に騒がれているからって調子に乗るワケじゃなくて
そんなの聞こえていない様にしている

203 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:32


ただ、私には聞こえた気がした
何もかもに少しずつ嫌気がさしてる
一人を望んでいる
そんな先輩の心の声みたいなヤツが


204 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:33

だからと言って、私が先輩と交わる事も無ければ、生活も変わらない

ポヤーと過ごして一日が終わって、また始まる

今日だってそうだった
友達からの誘いも断って、一人の帰り道

寄り道もしないで
でも、真っ直ぐ家に帰るのは嫌で
ゆっくり、この前社会の授業で習った牛歩ってやつみたいに歩く

205 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:34

少し前に小さく見える背中

…あっ、夏焼先輩だー

歩くのを速めようと思った
でも、止めた
また何か聞こえた気がしたから

先輩も私に負けないくらいゆっくり歩いていた

「イヒヒ…」

小さく漏れた笑い
可笑しくて、嬉しくて
心に張り詰めていた糸が綻んだ

206 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:34

そのまま一定の距離を保って歩いていた

でも突然だった


「あっ…」


先輩が振り返った
私に気付いた
照れてるのか、面倒くさがっているのか分からなかったけど
少しだけ手を上げて、口元を上げるだけの笑顔を作った

簡単な挨拶だったけど、私にはちゃんと分かった

207 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:35

先輩に駆け寄る
そんなに速く走れないけれど
頑張ったと思う

「家、こっちの方?」
「はい」
「じゃあ、途中まで一緒か…」

頬を指で掻く仕草
困ってるのかな?
校舎全体を使った大々的な鬼ごっこをしたりする人とは思えない様な姿

どっちが本当の先輩かは分からないけど
私は今の先輩の方が好きだと思った

208 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:37


「じゃあウチ、こっちだから」
「あっ、さようなら」

挨拶をして、別れる
特に何かを話したわけじゃない

だけど凄く楽しかった
それに凄く落ち着けた

209 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:37

リンリンリンと小さく心がなった
多分それはどこか似ている先輩に私の心が反応したんだと思う

これが先輩にも聞こえていたら
そんな風に私は思った

210 名前:下校共鳴 投稿日:2008/12/10(水) 19:37



下校共鳴

fin



211 名前:gen 投稿日:2008/12/10(水) 19:38




212 名前:gen 投稿日:2008/12/10(水) 19:38




213 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:39


オレンジ色になる瞬間

君の笑顔を思い出した


214 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:39



屋上回想



215 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:40

今までHRが終わった瞬間に教室を出て
誰にも左右される事なく、自分のペースで歩く
行きたい所に行ったり、したい事をしたり
そんな生活が染み付いていた

だから部活に入ってないウチにとって
放課後の学校は案外面白いものだって、初めて知った

216 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:41

先生に言い付けられて仕方なくやってる教室の掃除
一人で誰も居ない教室に居る

いつもは気が狂うくらいな雰囲気が充満している教室が
何か違う場所に思える

廊下だって、階段だってそうだ

ウチは何かに誘われる様に教室から出て、廊下を走り、階段を登っていた

217 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:41

屋上に出る扉を、思い切り開ける
風の音がゴーっと聞こえる

ウチは何だかワクワクしていた

見たことない景色…
知らない全ての事に五感の全てがピリピリと鳴っていた

屋上全体に張り巡らせてあるフェンスにまで駆け寄る
そこから見える校庭
運動部の生徒が小さく点の様に見える
点がパラパラと動いて、何か絵を描いてるみたい

218 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:42

…あっ

校庭の隅の方で黒くて綺麗な輝き
すぐに舞美だって分かった

ずっと一緒に居て空気みたいな存在
そんな事になったら離婚するとか、別れるっていうのがウチにはずっと分からなかった

だってウチにとって、舞美は空気みたいな存在で、居ないと生きていけないのだ
当たり前の様に、そこに居て欲しいのだ

ウチには必要不可欠な舞美は空気なんだ
ウチは舞美がどんなに離れていても必要なんだ
だから、どこに居たって探してしまう

219 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:43

「…ふふっ」

ウチ、舞美の事ばっかりだって思うとちょっと面白くなった


そんなに時間は経ってないと思うのに
空はもうオレンジ色になっていて、日の早さをしる

空のオレンジ色は綺麗で、優しいって思う
まるで、舞美みたい…

「さっきから舞美ばっか…」

空から視線を外してもう一回、校庭を見る
やっぱり、直ぐに舞美を見付けられた

220 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:44

校庭から“片付けしろー”って声が聞こえてくる
もう、そんな時間かって思って中に向かう

さっきとは違うワクワク
舞美に会える、それだけなのに

舞美でいっぱいになってる自分が
凄く気持ち良かった

221 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:44

あぁ、明日も明後日も

この空気とオレンジと

そして、舞美が当たり前でありますように

222 名前:屋上回想 投稿日:2008/12/10(水) 19:45



屋上回想

fin



223 名前:gen 投稿日:2008/12/10(水) 19:47


通学迷路 (鈴×有)
>>73-82

校庭楽団 (有×鈴)
>>85-97

廊下伝心 (嗣×清)
>>103-112

階段接触 (夏×菅)
>>115-125

靴箱騒然 (萩×岡)
>>131-141

部室談義 (中×有)
>>144-155

校門羨望 (須×夏)
>>161-171

放送運命 (矢×梅)
>>174-194

下校共鳴 (菅×夏)
>>200-210

屋上回想 (梅×矢)
>>213-222


224 名前:gen 投稿日:2008/12/10(水) 19:49

更新しました
短めですがそんな日常


米レス
>>197さん。
やじさんもうめさんも分かりやすいのにお互いに伝わってないところが好きです
みやりしゃはアフォっぷりが好きです。


225 名前:gen 投稿日:2008/12/21(日) 21:03




226 名前:gen 投稿日:2008/12/21(日) 21:04


これからの作品は設定上性別等が変わっています
不快に思う方はご遠慮ください


227 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:04


漫画みたいな幼馴染
漫画みたいな関係
漫画みたいなあなた


228 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:05



vampire castle



229 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:05

学校でキャーキャーと騒がしい声を聞けば
大体、あなたがそこに居る

クリッとした眼に、あまり背が高くないせいかホントに女の子みたいな感じの“有原先輩”

学校では知らんぷり
声をかける事も、かけられる事もない

ちなみにもう一人騒がれている先輩が居て、二人は結構仲が良いみたいで
一緒に居るところを見ると周りに居る女子たちはどっち派かで議論しはじめる

そんな議論に入らないのは私とりーちゃんくらいで
皆からは「見る目ないよね〜」なんて言われる

230 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:05


見る目が無いのは私じゃない

皆の方が見る目が無い


231 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:06



* * * * *



232 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:06

私の安息は家に無い
部屋に入るとベッドで眠る小さな塊

これを見たら学校で騒いでる皆は何て思うんだろう

「栞菜、着替えるから出て行って…」
「……」

返事は無いけど寝たフリだって分かる
寝ていると思って着替え始めると、イタズラされる
そんな事、もう何度もあった

「もうっ!!怒るよ?」
「…じゃあ、愛理がちゃんと鍵閉めて行けば良いじゃん」
「栞菜が来た時開いてなかったら栞菜落ちちゃうじゃん」

233 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:07

隣の家は昔、他の人が住んでいた
だけど、その家の夫婦の子どもが病弱だったから
こんな街中に居るよりも、空気の綺麗な山の方に引っ越して行った

結構仲良くしていたから悲しかったけど
その家に次に来るのは親戚だから時々遊びに来るよって言ってバイバイした
そして、その後に来たのが栞菜だった

栞菜の部屋は私の部屋とほぼくっつくみたいな位置
初めて会った時も窓越しだった

それからは何度となく私の部屋に窓を使って入ってくる

234 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:07

何度もあったけど学習しないのは私だ
学習しないんじゃない、どこか期待してるのかもしれない…

「…ツンデレ?それってツンデレって言うの?」
「違う!!何かあった時に責任とりたくないの!!」

栞菜はピョコっと身体を起こして私を見つめる

(…確かに可愛いかも)

“有原先輩”なんて学校で騒がれるのも分からなくない
そう思うのもほんの一瞬
ハッと思った瞬間には手が伸びてきて、抱きつかれている

「責任なんてとらなくていいじゃん」
「…」
「愛理が僕と結婚してくれたら、それで良いんだよ?」

235 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:08

ふざけた口調でそんな事を言って
首筋に吸い付く栞菜は
正真正銘の“吸血鬼”なんだ

「ンッ…」
「愛理、ありがと…」

236 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:08

とは言っても、栞菜はかなり人間に近い吸血鬼らしい

栞菜の曾祖父だか、そのまた祖父だかが人間と結ばれた
それから栞菜のお父様までずっと人間と結ばれて栞菜が生まれた

だから物語にある様な性質はあまり持ち合わせていないみたい

太陽が照っていても外に出られるし
ニンニクを使った料理も食べられる
本当は血も吸わなくて良いって言ってた
時間だって人間と同じ様に流れている

栞菜を見ていたら“吸血鬼”のかけらも何にもない

「ねぇ、何で?」
「何が?」
「血…」

237 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:09

それでも栞菜は私の血を吸う
それもほとんど毎日

栞菜に血を吸われると、私は自分自身が分からなくなる

栞菜の事、嫌いじゃないから血をあげる
でも、そんなもの本当は栞菜に必要無い
栞菜を繋ぎ止めるだけの行為

嫌いじゃない、好き…
好き、だけど辛い…

「分からないけどさ…愛理がくれるから」
「…」
「そうしないと愛理が繋ぎ止めててくれないから」

栞菜は血を吸った後は絶対辛そうな表情をする
私の気持ちも一緒に吸った様に辛そうな表情をする

238 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:09


それに気付いていないフリ
ずっと続けていたのに、私は気付いた

「愛理がまだ僕を繋ぎ止める方法を他に知らないから…
僕もまだ愛理を手に入れる方法を知らないから…」


239 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:09

栞菜がこんなに…ここまで辛そうなのに私は何もしないの?
私は栞菜を繋ぎ止める方法を知ってるのに
たった一言、それを知ってるのに

「…帰る、ごめん毎日…ありがとう」
「待って…待ってよ!!」

ここで言わなかったら、一生言えないまま
この瞬間に二人の関係が崩れる

「栞菜が学校で騒がれるの嫌だし、今ここから居なくなるのも嫌だ」
「……」
「栞菜が居てくれるなら血だってあげる」

240 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:10

本当はずっと知っていた
ただ甘えてただけなんだ
栞菜が皆が見てる“有原先輩”って姿よりもずっと繊細で優しいから
私の事、何でも受け止めてくれるって…

「好きなんだから、ずっと…」
「うん」
「栞菜が想像つかないくらい、好きなんだから…」
「うん…」

フワッと優しく包まれた
血を吸われる時とは全く違う感覚

241 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:10

そこには辛さも悲しみもない

「愛理…僕、変だよ?」
「知ってる」
「愛理の匂いに包まれたくてベッドに潜り込むよ?」
「慣れた」
「好き」

温もりと愛しさしかない

242 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:11


私の唇に感じた温かさは
私しか知らない
誰も知らない


243 名前:vampire castle 投稿日:2008/12/21(日) 21:11



vampire castle

fin



244 名前:gen 投稿日:2008/12/21(日) 21:11




245 名前:gen 投稿日:2008/12/21(日) 21:11




246 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:12


大きな荷物を持って
急いでバスに乗って
あなたに会いに行く


247 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:12



vampire weekend



248 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:13

バスを降りたらすぐある大きな家
そこがみやの家
私の週末はここで過ごす
これはもうずっとしてきた習慣

初めて会った時、何て綺麗な男の子なんだろうって思った
会った時から私はずっと好きだった
みやがどうなのかは知らないけど、みやは私を選んだ
みやの秘密を知っている人の中から私を選んだ

「みや…」

まだ昼なのに…うぅん、昼だから
みやは死んでいるみたいに、綺麗に眠る

249 名前:vampire 投稿日:2008/12/21(日) 21:13

「みや…」

私は何度も名前を呼んで、みやに触れる
みやは起きたのか手を私の手に重ねる

「…来たの?」
「うん、もう金曜日だよ」
「早いなぁ〜、この頃…」

みやは悠長に欠伸をしながら起き上がる
どんな姿も綺麗で、神秘的だ

それは多分、人間じゃないから

250 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:14

「まだ、寝てて良いよ」
「うん…梨沙子も来なよ」

布団を持ち上げて私を招き入れる
私は断る理由も無いし、断る事が出来ない

みやは吸血鬼だ
物語に出てくる様な、血を吸う事で命を繋いでいく吸血鬼だ

何でそれを私に教えてくれたのかは分からないけど
私はみやの秘密を知ってしまった

私はそれを聞いた時、驚かなかったし、妙に納得していた
みやの言葉にする事の出来ない魅力
外出を絶対しない理由

全てが繋がって線になった瞬間だった

251 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:14

だけど、みやは私の血を飲む事は一回も無かった
その代わりに何度も身体の関係を持った

吸血鬼のみやにとって、どっちが大事なのかは考えなくても私には分かった

悲しいと思った
会うのを止めようと思った
でも無理だった

みやが私をどう思っていようと、私はみやの事が好きで仕方なかった

「梨沙子…」
「何?」

252 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:15

みやが名前を呼んでくるのは、ただのフリ
私なんかどうとも思っていない…

みやが求めてくる前に自分からシャツを脱ぐ事に抵抗は無い
どんな形であれ、みやが欲しい…

そう思いボタンに手をかけると、思いがけない事を言われた

「泣かないでよ」
「泣いてないよ?」
「涙、出てるから…」

みやの手が頬に触れる
そのままみやは指で涙をなぞった

253 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:15

「梨沙子、ごめんね…」
「……」
「ごめん、ごめん…」


みやを見ると、みやの頬にも涙が一筋流れていた
みやはまたごめんと呟いて、私の首筋に顔を埋めた

254 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:15

初めての感覚だった
熱くて、冷たくて、怖くて、嬉しくて、気持ちが良かった

それはどことなく絶頂に近い快感で

血が吸われたと気付くのは、事が終わってからだった


255 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:16

それから、みやは私を残して布団を出た
そして、少し離れたところに座った

「梨沙子ごめん」

みやはまだ謝った
さっきからごめんしか言ってない

「ちゃんと梨沙子の事好きだから」

私は顔だけをみやの方に向けて、言葉の続きを待った

「好きだから、梨沙子には嘘つきたくなかった
 好きだから、梨沙子とは人間として関わりたかった
 好きだから、梨沙子の血は絶対飲みたくなかった
 でも、好きだから…」

256 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:17

みやは涙を流す
私はそれを綺麗だと思った
何をしても綺麗だと思った

「もう、帰って良いよ」
「なん、で…?」
「吸血鬼だよ、俺?人間じゃない」
「でも、みやだよ…みやだもん!!」

私はずっと思っていた
みやが好きだって思っていた

みやが吸血鬼ならば、そのみやを好き
みやが人間ならば、そのみやを好き

257 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:17

「みやには私の血、全部あげるから…傍に居てよ」

私のみやと過ごした時間は
みやが何者かとか関係無くて
みやだから好きなんだ

「みやの傍に居るのが私は嬉しいから」

私の気持ちが分かってもらえなくても
分かってもらう様に頑張れば良い

258 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:18

「梨沙子…」
「なぁに?」

みやはまた謝るんだと思った
さっきからそうだし、ずっとそうだ

「ありがとう…好きだよ…」
「……」

259 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:18


そう言って笑ったみやは吸血鬼でも人間でもない

ただのみやだった


260 名前:vampire weekend 投稿日:2008/12/21(日) 21:18



vampire weekend

fin



261 名前:gen 投稿日:2008/12/21(日) 21:20


vampire castle (鈴×有♂)
>>227-243

vampire weekend (菅×夏♂)
>>246-260


262 名前:gen 投稿日:2008/12/21(日) 21:21
更新


更新しました
書きたいのを書きました

次回はtoy boxの更新をします


263 名前:gen 投稿日:2009/01/13(火) 00:06




264 名前:gen 投稿日:2009/01/13(火) 00:07




265 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:07


「雨が降る…帰ろう」
「帰ろう」

栞菜がそう言った
私は頷いた


266 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:07



雨のあと



267 名前:& ◆HKOKNs67GA 投稿日:2009/01/13(火) 00:08

海からの帰り道、栞菜が言った通りに雨は降ってきた

走って坂を上がっていると丁度、屋根付きのバス停の前を通った
だから二人並んで座って雨宿り

潮で錆びたトタン屋根、壁は穴の開いた板
それでも二人にはそこしかなくて
二人にはそれが良かった

「よく分かったね」
「何が?」
「雨降るの」

栞菜はずっと落ちてくる雨粒を真剣に見つめている
私はそんな栞菜の横顔を見つめている
栞菜の右手と私の左手は繋がっている

268 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:09

「匂いがした」
「雨の?」
「うん、雨の」

栞菜はそう言って、目を閉じた
そして、胸いっぱいに空気を吸った
私も慌てて真似をして、胸いっぱいに空気を吸った

「これが雨の匂いです」
「これが雨の匂い」

私は栞菜の言った事を味わう様に反芻した
栞菜は納得したのかウンウンと頷く

269 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:09

栞菜は私の知らない事を沢山知っている
それを一つ一つ丁寧に教えてくれる

「そして、夏の終わりの匂いです」
「夏の終わりの匂い」

私はまた栞菜の言った事を反芻した
栞菜は今度は頷かないで、話を続けた

「夏が終わって、秋が終わって、冬が終わって、春が終わって、また夏が来て…」

270 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:10

栞菜は雨を見つめている
私も雨を見つめた


「愛理と二人の1年がまた始まります」
「また始まります」


栞菜がギュッと強く握ったので、少し痛かったけれど
私もギュッと強く握ったから、栞菜も痛かったと思う


痛かったけど、この痛さは嫌いじゃないと思った

271 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:10



* * * * *



272 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:11

「栞菜、質問していい?」
「どうぞ」
「明日からは秋ですか?」

栞菜はクルっと私の方を向いた
私もクルっと栞菜の方を向いた

「いい質問です」
「いい質問」

私の顔を見たまま栞菜は少し止まった
栞菜の顔を見たまま私も少し止まった

10秒くらい経って、二人同時に笑いだした

「愛理は秋は好きですか?」
「はい、野菜も果物もお米も美味しいから好きです」
「そっかぁー…」

273 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:12

栞菜はウ〜ンと唸って、首を一度回した
私はそれを目で追いかけた
元の位置に目が戻ると少し間を置いて栞菜がこう言った


「じゃあ、明日から秋にしようか」
「うん、秋にしよう」


栞菜が嬉しそうに笑ったから、私も笑った


274 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:12



* * * * *



275 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:13

私が少しだけ目を閉じた瞬間に
いつの間にか雨は止んでいて
いつの間にか栞菜は私の肩を借りて、寝ていた

「栞菜、雨上がりました」
「ンッ…ンン〜」

栞菜が手を上に大きく上げて、伸びをした
私と手を繋いだままだったから、私もつられて伸びをした


「さて、帰りますか」
「帰りますか」

二人同時に立ち上がる
二人同時に歩き出す
やっぱり、手は繋いだまま

ふと、栞菜の方を見る
栞菜は気付かないで前を見ている

珍しくタイミングが合わなかった
ちょっと寂しかった

276 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:14

私は大体の事を栞菜から教わった
今日だってそうだったし、明日だって
これからずっと先だって、ずっとそうだと思う
ずっと、ずっとそうだ

「栞菜は何でも教えてくれるよね」
「そうですか?」
「そうですよ」

栞菜は何度か口を開きかけ
そして、何度か口を閉ざそうとした
何か言いたい事があったのかもしれないけど、私には分からなかった

「栞菜が教えられないものってある?」
「あるよ、多分沢山…」
「沢山」

277 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:15

栞菜は指を折りながら、数えている
栞菜の口から出てくる言葉を捕まえても
やっぱり私には分からない事みたいだ

「一個だけ教えたくない事がある」
「教えたくない事」
「そう、教えたくない事」

栞菜が歩くのを止める
私も歩くのを止める

栞菜がチョンと口を尖らせて
私の唇に、キスをした

温かい
暖かい

278 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:16



「愛理に栞菜が居ない世界は教えたくない、かなぁ…」



279 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:16

栞菜はそう言うとまたキスをした


「日が暮れちゃう、帰ろう」
「帰ろう」

私は空いている右手で唇を触った
この仕草は自分で覚えた

280 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:17



* * * * *



281 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:17

大きくて真っ赤な夕日を横に坂を歩く
隣には栞菜が居る
今日も昨日と変わらずに栞菜が居る


私には栞菜が居ない世界なんて想像も出来なかった


だから、いくら栞菜だってそんな事教えられるわけないと思った
だから、私は幸せだと思った

282 名前:雨のあと 投稿日:2009/01/13(火) 00:17



雨のあと

fin



283 名前:gen 投稿日:2009/01/13(火) 00:18




284 名前:gen 投稿日:2009/01/13(火) 00:18




285 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:19


最近、不覚にもドキッとする事が増えた

確かに緊張しすぎるタイプだし、ビビりって言えばビビりだけど
フツーにあるものに驚いたり、怖がったりする事なんて全然なかった

なのに、どうもおかしい
有り得ない事にドキッとする
そんなウチが何か嫌だ…
何かソワソワしてしまう…


286 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:19



ハートビート



287 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:20

「あぁー、もう!!あんたうっさい!!」
「えー、何にも言ってないじゃん」
「とりあえず、そこに居るのがうるさいの!!」

移動のバス、今日はたまたま隣は梨沙子
こいつは確かにちぃとかももみたいにベラベラ喋るタイプじゃない
だから、うるさいなんて事はない
時々構って構ってとうるさい時もあるけど
始終うるさいタイプではない

だけど、確かにうるさくなる
ドキドキ、バクバクってウチの中で不自然なほど沢山刻まれる音
それがウチはうるさく感じて、嫌いで仕方ない

288 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:21

「でも、しょーがないじゃん、そういう座り方なんだし…」
「あー……もうっ!!」


言葉に出来ないイライラを、どこにぶつけるでもなく
ウチは梨沙子の反対派を向いて目を閉じる
寝るワケではないけれど、少し怒っているとアピールするためだ
ちょっとは思い知らせるためだ

289 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:21

梨沙子はまだブツブツと何かを言っている
その内容はどうせ理不尽にキレたウチに対する文句から始まるんだろう
そして、自分を責め始めて、謝ろうとウチの機嫌を伺い始める
果てには泣き出したりするもんだから

要するに、梨沙子は非常に繊細でマイナス思考なヤツってこと
扱いが難しいし、それに対して何か言えば言うほどめんどくさくなる時がほとんど

それでもウチウチだって少なからず罪悪感を感じるワケであって
タイミングを見計らってフォローの一つや二つはする
…フォローというか謝罪だ

290 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:22



* * * * *



291 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:22

そろそろ、そのタイミングかなって思って
ガラスに映る姿で梨沙子の事を確認しようと思って、片目を開けて、それを見る


……
………

一瞬、呼吸が出来なくなるかと思った
両目を大きく開いて、ウチは梨沙子の方を振り向いた

失礼な事なのかも知れない
人が涙を流す姿を見て、そんな風に思うのは嗜好的におかしいのかも知れない

292 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:23

だけどウチが思った事はただ、これだけ


“あぁ、綺麗だ…好きなんだ”


ただ、これだけだった

ウチのドキドキの原因はそこにあったんだ


293 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:24



* * * * *



294 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:24

このせいでウチは謝るタイミングを逸してしまった

梨沙子が小さく鼻を啜る音がやけに耳について
ウチの中でのドキドキの音も更に大きくなる

それでも、ウチのイライラは姿を消して
新しく穏やかな気持ちが生まれていた

295 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:25

何も言えないウチの手は
真っ直ぐに梨沙子へと届き、柔らかいその髪に触れ、優しく撫でた

それに対して梨沙子が体を小さくビクッとさせ、ウチの方を見た
涙が少し残った目で、完璧な微笑みをした

言葉にするよりも簡単で
言葉にするよりも伝わる

ウチのドキドキはこんなにも単純な方法で
大好きなモノに変わった

296 名前:ハートビート 投稿日:2009/01/13(火) 00:25



ハートビート

fin



297 名前:gen 投稿日:2009/01/13(火) 00:27


雨のあと (鈴×有)
>>265->>282

ハートビート (夏×菅)
>>285-296


298 名前:gen 投稿日:2009/01/13(火) 00:28
更新

更新しました

次回はこちらとtoy box両方更新出来ると良いなぁと思っています。


299 名前:gen 投稿日:2009/02/07(土) 22:23




300 名前:gen 投稿日:2009/02/07(土) 22:23




301 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:24

確かに朝から空模様は微妙だった
だけど、ただでさえ遅刻ギリギリに登校するウチが
天気予報なんて気にしているワケがないし
飛ぶ様に家を出るから、傘になんて気が回らない

授業中に窓から見る空もぐずついてはいたものの、何とか持ちこたえていた
急いで帰れば雨に降られる事はない、大丈夫…そう思って6限まで授業を受けた

302 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:25

最悪なのはその最後の授業、6限を受けた後だった
『放課後職員室に来る様に』と、先生に呼び出された

服装違反、遅刻の常習、サボり、成績…
思い当たる節はある…寧ろ、あり過ぎる程ある
これは長い事になると容易に想像出来た
その通り、先生の話は終わりが見えて来ない程に長かった

先生とどうにか視線を合わせないで、尚且つ反省している様に見せるには、
下を向いて素直に返事するしかなかった

そうやって色々考えて早く終わらせようとした努力は、嫌な形で報われた

303 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:25

―ドーーンッ!!


いきなり轟音が鳴り響く
雷鳴だ…
それと同時にバリバリとガラスが振動する

びっくりしてウチが外を見た時には、ザーッと言う音が耳に届いていた

「…まぁ、雨も降ってきたし、今日はこれで終わり」
「…あっ、はい、すみませんでした」

とりあえず、頭を下げてはみたものの、反省なんてしてないし
“あんたのせいで雨降ってきたじゃん”と毒づいていた

304 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:26

廊下に出て鞄を持つ
直ぐ様、その鞄に手を突っ込んで携帯を取り出す

メールが1件、ちぃからだ…
どうせ“先に帰ったよ、ごめん”みたいな内容だろう
見なくても分かる気がしたから、開かないで携帯を鞄に戻した

さて、どうしようか…なんて考えていたのに習慣とは怖いもので、足は下駄箱へ向かっていた

305 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:26



* * * * *



306 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:27

仕方がないから上履きを脱ぎ、ローファーを突っ掛ける
屋根が付いているギリギリまで行って、雨脚を確認
まぁ、そんな事しなくても分かるくらいの強い雨

どうする事も出来ないから、敷いてある簀の砂を払って
そこに座って弱まるのを待つことにした

307 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:27



* * * * *



308 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:28

ザーッとその音しか聞こえない
雨脚は一向に弱まる気配がない
さっきと変わったのは、傘が無くて可哀想な生徒がウチだけじゃなくなった事

鞄を肩に掛けて、ずっと立ったまま雨を見ている
横顔しか見えないけれど、かなり綺麗な顔立ちである事が想像出来た

…だからと言って、どうにかなるワケじゃないんだけど

309 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:28

こうも事態が変わらないと何もかもが面倒で軽く鬱になる

「止まないなぁー…」

溜め息混じりの独り言
雨の音に掻き消されるはずなのに、隣の子がウチの方を振り向いた
人見知りのウチにとってはタイミングが悪い事に、視線がぶつかってしまった

その子は予想通り綺麗で、それでいて可愛い顔立ちだった

でも、何か表情が無いって言うか、感情が読みにくいって言うか…
多分、その子も人見知りか何かだろうとウチは思った

310 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:29



* * * * *



311 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:29

また少し時間が経った
時間だけが過ぎていく、それ以外に変化は無い
もしかしたら、少し弱くなっているかもしれないけれど、それはウチに分かる様な変化では無かった

ウチと隣の子しかここに居ないと言うことは皆は傘を持っていて、既に帰ったと言うことだろう

“皆偉いなぁ、天気予報見てるんだ”ってバカな事を考えていないと、気が紛れない

「雨、止みませんね…」

頭の中でちぃが毎朝ニュースを見てる想像をして一人でニヤけていると、いきなり声が聞こえた

びっくりしたけれど、それはバレない様に隣を見上げる
困ったって言う表情で雨を見ながら、そう呟いた…
呟いたんじゃない、ウチに話しかけたんだ

「……最悪ですねー」

ウチは正直にそう答えた

312 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:31

それからポツポツとではあったけれど、言葉を交わした
会話と呼ぶには粗末な感じで
本当に言葉を交わしたとしか言えないものだったかも知れない

“天気予報を見るか”とか、“折り畳み傘が嫌いだ”とか、その程度のどうでもいい様な話
大きさで言うとかなり小さな会話だった

ウチにしては初対面の人とここまで話せたのは
世界新記録でギネスに載るレベルだったから少し不思議な気持ちになった

313 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:32

「あれっ、夏焼お前まだ居たの?」

校舎の方から、ここで足止め喰らってる原因を作った憎き先生の声がする

と同時に、違うもう一人の先生の声が聞こえる

「菅谷さん、そこに居たの?親御さん心配なさって今電話かかって来てたわよ…
 お迎えに来てもらいましょう…」

ウチはそっちを無視して先生に傘が無いと伝えた
先生は置き傘取ってくると言って、走って戻って行った
もう一人の先生も隣の子に待っててねと言い、戻って行った

314 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:32



* * * * *



315 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:33

傘の先を外に向け、一気に傘を開く
雨がそれを叩く音は激しく、雨はまだまだ強いと教えてくれる

傘を差してもローファーが濡れる…なんて文句が無いワケじゃないけど
せっかく貸してくれたんだから使わないワケにはいかない

「じゃあね、お母さん来るまで頑張って」
「あっ…」
「んー?」

もう会うことは無いだろうと思って、軽く別れの挨拶をしたのに
それなのに何か言いたげにウチを見る、その子は小声でこう聞いてきた

316 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:33


「明日、晴れますかね?」
「…さぁ?」
「そう、ですよね…」


317 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:34

凄く残念な顔をされる
そんな顔をされるとウチが困る
困った挙げ句、大体出任せを言う
彼女は何となく世話したくなるような子だ

「でも、晴れるんじゃない?」
「分かるんですか?」

さっきしたばかりの話
他愛の無い、明日になったら忘れている様な話

「さぁ、分かんない?ほらウチ天気予報見ないじゃん」
「そうでした」

そう言うと彼女は小さくクスッと笑った
それはあまりにも彼女に似合っていて、ウチは少し嬉しくなった
表情が無いって思ってたのに、正反対だぁ…
本当はめちゃくちゃ感情豊かな子なんだぁ…って思った
だって、笑顔が凄く眩しかったから

318 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:35

ウチもそれに向かって、微笑んだ
それが少し恥ずかしくなって、雨の中に飛び込んだ
振り向かずに進む、進む、進む…

…立ち止まる


319 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:36


「………ったから」
「えっ?何か言いましたか…?」
「君が笑ったから、明日は晴れ」



それは多分、絶対に
君の笑顔のお陰なんだ

だから絶対、明日は晴れ

320 名前:明日は晴れ 投稿日:2009/02/07(土) 22:37



明日は晴れ

終了



321 名前:gen 投稿日:2009/02/07(土) 22:37




322 名前:gen 投稿日:2009/02/07(土) 22:37




323 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:38



特別を君にあげる

大好きな君にあげる



324 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:38



Thank You For My Birthday



325 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:39

今日は土曜日である前に、私の誕生日
学校が休みだから、皆から直接おめでとうを言って貰えるのは月曜日になる

ちょっと悲しいけど、リビングに行ったらそんなの直ぐに吹き飛んだ

「舞美おはよー」
「えり…」

普段は家族しか自由に座らないソファーに深く腰かけて、顔だけ私に向けてえりは挨拶をする

それがあまりにも自然で、私はちょっと笑いたくなった

326 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:40

「何で居るの?」
「うわっ、そういう言い方する?」
「あっ、そうじゃなくて」
「分かってるって」

えりはケラケラ笑って立ち上がる
そして、私の前に来て、まぁまぁと言ってキッチンへ促した

「じゃーん」
「何これ?」
「ケーキ」

目の前には私の大好きなさくらんぼが沢山乗ったタルトケーキ
朝からだって言うのに、えりはテンション高めにそれを切り始める

「舞美の誕生日だから、特別にウチのお手製ケーキです!!」
「ありがとー」

私はケーキをえりが作ってくれた事よりも
えりがそれを見せてくる笑顔が、嬉しくて仕方なかった

327 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:40

「そういや、お母さんたちは?」
「ウチが来たら、あとは任せるって言って出かけて行ったよ」
「えっ、もう…えりごめんね」
「何が?ウチは舞美の誕生日を誰よりも早く祝いたくて来たから、願ったり叶ったりですよ」

私はケーキを一口、パクリと頬張りながらえりと話す
私の向かいに座ったえりは、ウチも食べようなんて言いながらケーキに手を伸ばす

328 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:41

私の誕生日
ケーキがある
いつもとは違う特別
だけど、えりと居る雰囲気は変わらない

それがくすぐったくて、気持ち良くて
やっぱりいつも通り笑うしか出来なかった

329 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:41

「舞美、今から暇?」
「うん、今日土曜日だし」
「じゃあ、買い物行こ」

えりはニッコリと笑って、私を見る
その笑顔が綺麗で、私は声が出なかったけど一生懸命に頷いた
えりはそんな私を見て、さっきとは違った、いつもみたいなバカ笑いをした

「着替えてくる!!」

何でだろう?えりが誘ってくれただけ
えりは結構色んな友達と買い物に行ってるし、私だってそうだ
だけど、どうしてかなぁ?ドキドキする
今日は私の誕生日だからだろうか?

330 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:42

「おしゃれ、してよ…」
「えーっ、えり何て?何て言った?」

リビングをガーッと出て行こうとする私に向かって声をかける
よく聞き取れなくて、私は止まってえりを振り返る
…えりの顔は何か赤い気がする

「だからさぁ…」
「うん」
「舞美誕生日なんだし、ウチと二人じゃん」
「うん」

えりは赤い顔のまま、話を続ける

「久しぶりじゃん、何か二人っきり…」
「そう言えば、そうだねー」
「しかも、アレじゃん、特別な日だし…」

331 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:42

えりが少し下を向く
えりの気持ちがちょっとだけ伝わって来た様な気がする
なぁんだ、えりもちゃんと特別な日って思っていてくれたんだって私は安心する

「えり、もう良いよ」
「えっ…」
「特別、上げるから覚悟しといてね!!」

手でピストルの形を作ってバーンとえりを打ち抜く
ポカーンとしたえりの顔を見て、私は部屋へダッシュした

332 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:43



* * * * *



333 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:43


いつもと変わらない私たち
いつもと変わらない土曜日
いつもとは少し違う誕生日

もらって、あげる特別
それは君とだから


334 名前:Thank You For My Birthday 投稿日:2009/02/07(土) 22:43



Thank You For My Birthday

終了



335 名前:gen 投稿日:2009/02/07(土) 22:45

明日は晴れ (夏×菅)
>>301-320

Thank You For My Birthday (矢×梅)
>>323-334


336 名前:gen 投稿日:2009/02/07(土) 22:47
更新

更新しました
みやりしゃっぽいのと、やじさん誕生日おめでとう駄文です

toy boxの方も来週は1回くらい更新したいです


337 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 23:38
舞美誕生日おめでとう!
実際こんな誕生日迎えたんだろうかと妄想するとニヤニヤが止まりませんw
りしゃみやの二人の空気の感じもすごく良いです
晴れていたら良いですね
338 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/09(月) 02:05
やっぱりやじうめやね☆
339 名前:gen 投稿日:2009/02/12(木) 22:03




340 名前:gen 投稿日:2009/02/12(木) 22:04




341 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:05


扉を開けた瞬間に風がゴーっと音を立てた

肌寒く感じるけれど、引き返そうとは思わなかった


342 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:05

この学校の屋上は原則的に立入禁止だ
だけど、どうやってか鍵を持っていたり、開けたり、屋上に入る手段を持ってる生徒がいる

私の幼馴染で、同級生で、大好きな人もその中の一人
その人の姿が見当たらなければ、屋上にいる事がほとんどだ


「えり?」

ここ屋上にえりが居るって知ってるから
朝の屋上に絶対えりは居るから、私は鞄を教室に置いて、直ぐ屋上に向かった

343 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:06

「あぁ、舞美…おはよ」
「おはよう…寒いねぇ」

屋上は何にも無いと思っていたのに、見渡すと至る所に色んなものが有る
ここまで充実してるのは屋上の住人たちが頑張ったからだろう

そんな中でえりは少し奥まった所で、フェンスに凭れながら座っていた
えりはいつも、ここで授業が始まるまでを過ごしているらしい

「何してるの?」
「んー、下…皆を見てた」

一回も私の方を向く事なく、そう答えた

その姿が何だか消えてしまいそうな感じで
私は目を瞑りたくなって、顔を伏せた

344 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:07


「…こうやって見てるとさぁ」

えりが突然話し出した
顔を上げてえりの方を見るけれど、まだえりはフェンスに凭れて下を見ている

「神様って可哀想だなぁーって思う」

唐突な話だった
えりは普段は明るくて、皆を笑わせてくれる様なタイプだ
なのに、そんなえりとは違って、今は少し儚い

「上から見てるだけで、誰とも遊べないし、それ以前に話せもしない」

345 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:08

顔は見れないけれど、えりが表情を作らずに素のままで言ってるって事は想像出来た
私はそれが嫌なのに、何も言う事も出来ないし、見ているままだった

「ウチはさ、時々そんな気分になるよ」
「……えりは違うよ!!」
「分かってるけどさぁ」

えりがやっと私の方を向く
柔らかく笑んでいるその顔は綺麗でいつもから綺麗なのに
それよりも綺麗で
表現しようが無いくらい綺麗で

私はちょっとだけ、悲しみが晴れた気がした

346 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:09

「えりには私が居るよ、私が」
「うん、ありがとう…」

立ち上がり、えりが近づいてくる
私の少し目の前で止まる…
やっぱり、綺麗な顔だと思う

「えりは神様じゃないし、私も違う」
「うん、分かるよ」
「だからそういうのは要らない心配だよ」

えりがスッとてを伸ばす
私の頬に触れた手は、寒さのせいか少し冷たくてヒヤリとした

347 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:09



それを感じた瞬間に、唇にはほのかに暖かみを感じた



348 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:10

「なっ、んで…」
「いやっ、分かんないけど、舞美きれいだったから…
 …まぁ教室、行こうかぁ」
「…うん、そだね」

ドアを開けて中へ入る
えりは私の手を握ってくれている

えりの中にある不安や心配も
私の中にあった悲しみも

全ては屋上の風に吹かれて飛んで行った


349 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:11

「えりぃ〜」
「んー?」
「何か屋上充実してたね」
「あ〜、桃ちゃんが色々拾って来たり、栞菜がおやつ持って来たり、みやが雑誌置いて行ったり…」
「い〜な〜」

手を握ったままブンブンと振り回す
二人してちょっとバランスを崩してしまって、階段から落ちそうになる

「舞美〜、力強過ぎ」
「あはは〜、ごめん」

ほら、もう笑顔だよ
こんなにも笑い合えてるよ


だからほら、不安はいらない


350 名前:風吹けば 投稿日:2009/02/12(木) 22:11



風吹けば

終了



351 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:12


昼休み、食堂へ向かう皆の流れとは逆方向に向かうあの人は
それだけじゃなくても目立っていた
私は一瞬迷って、結果やっぱり追いかけた


352 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:13


「しつれいしまーす…」
「だれー?って梨沙子かぁ」

辿り着いたのは屋上で、普段の屋上には自由に出入り出来ない
だけどみやは何でか知らないけど、鍵を持ってる
私も欲しいて何度も言ったけど、絶対にくれない
多分、本当はみやは鍵なんて持っていなくて、魔法で開けてるんだと思う

「ご飯もう食べた?」
「ウチはまだ」
「じゃあね、今日ねパンいっぱいあるから」
「くれんの?やりぃ〜!!」

353 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:14

みやは外見は鋭くて、冷たそうで、少し怖い感じがあるって言われているけどす
ごく面白くて明るい人だ
それでも、皆が格好良いって言うくらいで、私も当然格好良いって思ってる

みやを見たら格好良いと思うけど、私はそんな事よりも、好きだなーって気持ちの方が強い
それくらい、みやの事が大好きだと自覚している

「これね、新作何だって、半分あげる」
「ありがと」

はい、とパンを差し出すとみやはそのままかぶりつく
私は下に、みやは加えたまま上にパンを引っ張って分ける
まぁまぁ綺麗に半分こになったから、満足

「うーんまい」
「ねぇ」

354 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:14



* * * * *



355 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:15

みやと知り合ったのは去年で、学校近くのパン屋さんだった
最後の一個を買ったみやと、お腹の虫を鳴らせた私

“あとで屋上に来なよ”

その時から私は好きだったんだと思う
あんなに綺麗に、可愛く、格好良く、優しく…
言葉では言い表せない様な完璧な笑い方をするのはみやしか居ないと思った

それから、私はみやの事には敏感になって
皆が噂するみやとか、学校でみかけるみやとか
色んなみやを知ろうとした

ある時屋上に続く階段の前でみやと会った時、私はたまらなく嬉しくて
好きだって事を初めて自覚した

そんな私にみやは“またパン欲しいの”ってとぼけた事を聞いて来て
私とみやの関係はなんとなくだけど、続いていった

356 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:15



* * * * *



357 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:16

「うーん、食べたー!!」
「美味しかったね」

みやはゴロンと横になる
気持ち良さそうな表情を見ると、私まで嬉しくなる

「朝ね、良い事あったんだって」
「何?」
「知らないけど、えりかちゃんからメール来てた」
「そっか〜」

みやは友達思いで、他人の事も自分の事の様に喜べる人
そう言うところも格好良いし、好きだ

「ウチはさ、こうやってる時、結構幸せ」
「へぇ〜」
「て言うか、屋上居る時は大体幸せ」

358 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:17

小さな事でもそうやって口に出して私に言ってくれるところも好き
普段は一緒に居ないから、色んな事を知れるのは嬉しいなって思う

「と言う事なんで、少しウチは眠ります」
「えーっ!!」
「予鈴くらいには起こしてね」
「牛になるよ!!」
「アンタに言われたくない」

ワーワー言い合っているけど、みやは既に目を閉じて眠るスタンバイOKな感じになっている
私もみやが寝ても良い様にスタンバイはしてある

359 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:17

私の幸せは多分、屋上にあって
それはみやと二人で居る時にあって
言葉は無いけれど、こういう瞬間も幸せで
それは他の皆からしたら普通と思える様な事でも私には違って
隣で安心してくれるみやにだけ、伝わっていれば良いなぁと思った

「ホント、幸せなんだからね…」

それだけ呟くと、今、感じている気持ち良さに私も少しだけ目を閉じた

360 名前:陽が照れば 投稿日:2009/02/12(木) 22:18



陽が照れば

終了



361 名前:gen 投稿日:2009/02/12(木) 22:19


風吹けば (矢×梅)
>>341-350

陽が照れば (菅×夏)
>>351-360


362 名前:gen 投稿日:2009/02/12(木) 22:23
更新しました

ちょっと同じテーマで時間帯を変えた短編を書いてみようと思って
あと二つあります。私の中での王道です。

頑張ります。

米レス
>>337さん。
やじうめもりしゃみやも雰囲気が好きなんですよね、綺麗だなーって思えます。
誕生日はどうだったんでしょうかね?気になりますね。

>>338さん。
やっぱり、やじうめですかね。私は大好きですよ、やじうめ。綺麗ですしね。

これからも頑張ります。よろしくお願いします。

363 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 03:23
やじうめ、すげぇーって思いました。>>344の発想に思わず、すげぇって真夜中に一人唸ってしまいました。
りしゃみやも良かったんですが、とにかく>>344の発想にやられました。
364 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 21:57
屋上ってだけでものすごく甘酸っぱい感じがします
屋上は大好物です
「同じテーマ」って屋上か!?と一人わくわくしています
365 名前:gen 投稿日:2009/02/18(水) 19:23




366 名前:gen 投稿日:2009/02/18(水) 19:23




367 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:23


何で私なんだろう?

そんな気持ちもあったけれど、私はそれにいつも逆らわない



368 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:24

「ももー、居るでしょー」

分かってる、屋上に居るって
ただ痕跡は残ってない
いつも思うけど、屋上の住人たちはどうやってここに来ているのか分からない
でも、まぁ私には想像出来ないような業で、私はしようと思わない様な方法を使ってるんだろう

「あっ、佐紀ちゃーん」
「佐紀ちゃーん、じゃないよ!!まったく…」

桃は木曜の5限に参加することが稀だ
この前ちゃんと出ろって言った時に
“だってぇ、もも大ピピンとか小ピピンとか分かんないしぃ”
と、理由にもならないような言い訳をしていた

369 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:25

今日も居なくて、とりあえず6限には出てもらおうと思って、探しに来た
探すと言っても屋上に居ると分かり切っている

「とりあえず、あと5分くらいしかないから戻るよ、教室」
「え〜、無理、今日は本当に無理」
「知らないから…あんた居ないと級長の私が怒られるんだからね」

そうだ、学級委員長でも無ければこんな事しなくても良いのに
大体、屋上に居るのバレたら私だってただじゃ済まない
桃のせいで、心労が絶えない気がする

「いいじゃ〜ん、佐紀ちゃんもサボれば?ベンチ使っていいよー」
「良くないから、サボらないから」

桃はロッキングチェアーに深く座って、ユラユラと揺らしている
教室に戻る気配は全くないみたいだ

370 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:26

私はどうもしようがなくて、とりあえず大きくため息を吐く
桃がピクンと体を起こして私を見る
いきなりどうしたんだ?って思うくらいジーッと見つめてくる

「何?戻る気になった?」
「…佐紀ちゃん、ため息吐いた?」
「あぁ〜、うん…あんたのせいで大変だなーって」

桃は少し怒った様な口調で問いつめてくる
いきなり何なんだコイツは…

「もー、幸せ逃げちゃうよー」
「あんたには関係無いじゃん」
「でもー、桃も今聞いちゃったじゃないですかぁー」

371 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:27

…妙に真面目な顔をして、プンスカと怒りながら言ってくるその姿は正直、笑えてくる

多分、こう思っているって事は既に桃の思うつぼってヤツにハマっているんだと思う

「それにさー、佐紀ちゃんが幸せだと桃も幸せだしぃ」

こうやって案外凄い内容の発言も普通の流れで言ってくる
だから私は聞き落とさない様にしている…自然と、そうなっている

「…の幸せはちゃんと真面目に生活する事だから、教室戻ろう…」

372 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:28

戻ろうと言い切る瞬間だった
無情にも今一番聞きたくないモノが聞こえてくる
チャイムだ…これから6限だから、予鈴じゃなくて本鈴だ

「最悪…」

優秀ってワケじゃないけど、それなりに真面目な生活を送っている私
たかが遅刻でさえ、かなりのショックな出来事で
私はちょっときつめに桃を睨む

「ごめぇん〜でもさぁ、仕方ないよ、こういう事もあるって」

桃にそんなのは効いていないみたいで
いつもと変わりなくブリブリしている

373 名前:& ◆EQYWjt4ERQ 投稿日:2009/02/18(水) 19:29

「お詫びに、ホラこれ…あげる」
「何これ?」
「みーやんがお昼に食べ切れなかったからって、ジャムパンだって」

ポスっと私の目の前に落とされた袋
学校の近くのパン屋の人気のジャムパン
投げ落とされた事でジャムが少し袋に付いている

「はぁ〜」
「あー!!またため息!!」

374 名前:& ◆EQYWjt4ERQ 投稿日:2009/02/18(水) 19:30

桃と話してるとぜーんぶがどうでもよくなって来る
無理して頑張らなくて良いんだよって言われてる気がして来る

「パン、食べ終わるまでだからね」
「ん〜」
「パン、食べ終わったら教室帰るよ」
「佐紀ちゃぁ〜ん」

桃は今日一番の幸せそうな声を出した
そんな桃を見て、私はバレない様にもう一度だけため息をついた

そして足下の袋を拾った

375 名前:鐘が鳴れば 投稿日:2009/02/18(水) 19:31



鐘が鳴れば

終了



376 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:32


明るい笑顔と燃えるような夕陽
私は泣きたくないのに、涙を流した
それで全てが滲んで、綺麗に見えた


377 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:32



* * * * *



378 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:32


“何かあったらコレ…使いなよ”
そう言って渡された鍵は、秘密の場所への扉の鍵だった

秘密の場所は学校の屋上
誰しもが入れるワケじゃないから、秘密と言えば秘密だと思う

私に鍵を渡してくれたのはえりかちゃん
えりかちゃんは格好良い
何て言うか、絵に描いた様な女子高生で、お洒落で、私には真似できない様な感じ
だけど、優しくて…私は大好きだった

379 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:33

そんなえりかちゃんが“愛理にだけ”ってくれたモノは2つの秘密
屋上への鍵と、えりかちゃんの好きな人の名前

“私にだけ”だから喜びたいのに、私は涙を流してしまった

最初から分かっていた、私はえりかちゃんにとっては妹みたいな存在だって

それでも好きで
私は失恋しながら、恋を続けていた

380 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:33



* * * * *



381 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:34

ただ一人になりたくて鍵を取り出した
屋上なら一人になれると思った

ギッと金属の擦れる鈍い音
風の重さも加わって、かなり体重を乗せないと扉は動かなかった

やっとの思いで屋上に着く
鍵もかかっていたし、私は一人だと思っていたのに…

「有原先輩…」
「えーっと、鈴木愛理ちゃん」

お箸で卵焼きを掴んでアーンと口に運ぶ途中の有原先輩が何故かそこには居た

382 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:35

先輩はえりかちゃんの友達で、えりかちゃんの好きな人の部活の後輩
笑顔が可愛くて、人懐っこくて、優しい人

「鈴木さんも鍵持ってたんだ」
「はい…今日初めて使うんですけどね」

一人になりたかったのに先輩が居た
話しかけられたからもう校舎内には戻りづらくて、先輩の隣に座る

「ごちそうさまでしたぁ」

先輩はパコっと弁当箱に蓋をして片付け始める
周りに散らかっていたものを手当たり次第鞄につめて、帰る準備をしてるみたい

383 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:35

「じゃあね、あとはゆっくりどうぞ〜」
「何で…」

まるで私が一人になりたかったのを分かっているみたいな態度
でも、私は先輩が帰らない様にまだ扉の前に立っている

「良いの、私居ても?」
「話、聞いてくれませんか?」

384 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:35



* * * * *



385 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:36


「へぇ〜、そうなんだ」

先輩は私の話を最後まで、何も言わずに聞いてくれた
えりかちゃんの知り合いだから、あまり話したくなかったけれど先輩には何故か全てを話した

「やっとって感じかなぁ、私からしたら」
「知ってたんですか?」
「気付いてた、えりかちゃん分かりやすいし、舞美ちゃんも分かりやすい」

私は足下を見たまま先輩の話を聞く
先輩は嬉しそうな声をしていたから少し恨めしかった

「失恋、なんだね」
「…」
「強いね、鈴木さんは」
「…」
「私なら、泣いちゃうなぁ〜」

私だって泣きたい…今にだって涙が出て来そうだ

386 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:36

「泣いて良いよ、誰も見てないし、私も見ないよ…強がってるなら、そんな事しなくて良いと思う」
「強がってなんか、無いです…」

強く言い放つつもりだったのに、本心が隠し切れない
こみ上げて来た居る涙、もう心は欠壊寸前だ

それを認識すると私は静かに涙を流してしまった

「うん、それで良いよ…」

先輩は泣き始めた私の肩を優しく抱きしめて、そう言った
凄く温かくて、優しさがドンドン伝わって来た

387 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:37

「何で私じゃないんだろう…」
「そうだね」
「ずっと、ずーっと見て来たのに」
「うん」

涙と一緒に流れ出る愚痴に先輩はただ相槌を打つだけ
そんな先輩に私は甘えてしまう

「妹なんかじゃ嫌だよぉ…」

388 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:37



* * * * *



389 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:38


「迷惑かけてすみませんでした」
「うぅん、あんなんで良ければいつでも言ってよ」

先輩は鞄を肩にかけて扉の前で私を振り返る
先輩は全部が優しさで出来ている様な感じだ

「肩だって貸すし、何なら私ごと全部貸すよ」
「…」
「だからさ…」

“今度からは私の事、見て”
そう言うと、先輩は力一杯に扉を開けて、走って帰って行った

390 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:38


一人残された屋上
寂しさと、悔しさと、ドキドキと、驚きで私は涙が止まらなかった


391 名前:涙流せば 投稿日:2009/02/18(水) 19:38



涙流せば

終了



392 名前:gen 投稿日:2009/02/18(水) 19:41


鐘が鳴れば (清×嗣)
>>367-3375

涙流せば (鈴×有)
>>376-391


393 名前:gen 投稿日:2009/02/18(水) 19:45
更新

更新しました
屋上を舞台にどうでも良い様な話。
キャプももと、失恋鈴木さん。

短いですがキャプももは結構気合い入れました。何と言うか恋愛恋愛させたくなかったので。
その反動で鈴木さんには頑張って頂きました。

>>363
凄いですかね?う〜ん、まぁ梅田さんって意外と深い事を考えているイメージなんで。
矢島さんにはそんな梅田さんを大事にしてもらいたいです。

>>364
こんな感じになりました。
私自身は屋上なんてそんな頻繁に使っていなかったので、勝手な妄想ですがね。


394 名前:gen 投稿日:2009/02/18(水) 19:47

あと、飼育に載せた分をまとめる為に新しいHPを開きました。
よろしければ、そちらも覗いてみて下さい。
何か新作もあります。

ttp://nekotokappa.tobiiro.jp/simpleVC_20090215171406.html

よろしくお願いします。


395 名前:gen 投稿日:2009/03/05(木) 23:08




396 名前:gen 投稿日:2009/03/05(木) 23:09




397 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:09

飾らない素顔のままでで笑っていられる君が凄く眩しかった

いつからか、それが大好きで

少しだけ憧れていた

398 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:10



* * * * *



399 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:10

「みやー」
「うん?」
「なーんもない」

ヘヘへと笑う君は昔から全く変わっていない
私にとっては妹みたいな存在で、キツい事も言っちゃうけれど可愛くて仕方が無い存在

それでも今はちょっと変わって来た気がする
ある意味感謝に近い気持ちがあると思う

ふとした瞬間、君の笑顔を見る事が出来ると嬉しくて、照れてしまう
変わらない梨沙子と変わったウチ

400 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:11

梨沙子の笑顔は昔からウチに何かをくれる
元気な時にはウチも笑顔になれるし
悲しい時は頑張ろうって気持ちになれる
梨沙子が無理してるって分かる時もあるし、
そう言う時は逆にウチが笑わせてあげようって思う

「何もないなら呼ばないでよ」
「んー、だってそこにみやが居るし」
「意味分かんないしー」

ほら、また綺麗に笑う
つられてウチも笑う、飾らない笑顔を作れる

401 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:11

そう言う時は決まって、優しい気持ちが流れる

私をこんなにも色んな気持ちにさせるのは梨沙子だけかなって思う
梨沙子が居たからこんな気持ちになるんだって思う

ソファーに座っていたウチの隣にクルンと収まる
猫みたいだって思うと、いきなり梨沙子がゴロゴロ喉を鳴らしそうでクスッと笑いが漏れる

「笑ったー、なんだよー」
「いや、梨沙子って猫みたいって思って」
「にゃー」

梨沙子の鳴き真似があまりにも似ていなくて、
ウチはまた笑う
梨沙子も笑う

402 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:12

チクタクとゆっくりと時間が流れるのが分かる
ウチはまた少しだけ優しくなった様な気がする
そんな風に少しずつ変わっていく
梨沙子と居ると変わっていける

「…大好きだよ」
「ふぇっ?」
「もう言わな〜い」
「えー、もう一回!!」

ガシッと私の腕を掴んで、梨沙子が顔を覗いて来る
ウチの突然の告白に戸惑う姿は、やっぱり昔から変わっていないと思う

403 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:13

ウチと梨沙子何かが違っていて
ウチは変わってしまうけど、梨沙子は変わらない

そのお陰で、ウチらの関係はこんな感じで良い感じ

ウチは変わりたいと思っていて、変わっていける事が嬉しかったりする
でも、ウチは梨沙子には、梨沙子にだけは変わって欲しくないって思っている

梨沙子が変わったら、ウチはどうなるか分からないし、
もしかしたら、ダメになっちゃうかもって言う不安がある

だけど、隣でむくれている梨沙子を見るとそんな不安は吹っ飛んでしまって
梨沙子は、ウチらは変わらないでいられるなって思った

404 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:13


だから、ウチは少しずつだけど、大好きなあの飾らない笑顔になれたら良いと思った

梨沙子の為に、梨沙子みたいに笑っていようと思った


405 名前:さわって変わって 投稿日:2009/03/05(木) 23:13



さわってかわって

終了



406 名前:gen 投稿日:2009/03/05(木) 23:14




407 名前:gen 投稿日:2009/03/05(木) 23:14




408 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:14


正三角形じゃなくて二等辺三角形

私たちは頂点までは同じ距離に居る


409 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:15



* * * * *



410 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:15

「みやー」

声のトーンが変わってる
多分、他の皆には分からないかも知れないけど、私には分かる

…だって、私もそうだから

「愛理、どった?」
「あのねー、えーっと…忘れた」
「あー、愛理この頃毎回そうだしー」

愛理たちと一緒になるといつも感じる
愛理がみやに話しかけるとき、いつもの何倍も可愛く見える
それに、いつもはしっかりしていて大人だなって思う愛理が、急に幼くなるような気がする

411 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:16

何でだろうって思ってた、最初ちょっとだけ
でも、直ぐに理由は分かった
それは簡単な事で、私と同じだから

それはちょっと残念で、ちょっと嬉しい事
残念なのは愛理とライバルになっちゃうからで、嬉しいのは愛理とこんな所までお揃いだから

みやの愛理に対する態度は優しそうなお姉ちゃんって感じ
私にもそうだと思うけど、愛理にはもうちょっとだけ優しい気がする…
それは勘違いだと良いなって思う

412 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:16

「梨沙子ー」
「あっ、うん何?」
「聞いてよ、愛理がさー」

みやが私を呼ぶ声はいつもと変わらない
その隣に愛理がいるのがちょっと違う
愛理の表情は明るくて、でもちょっと困ってる
そんな顔見ちゃったら、私もどうして良いか分からない

でも、そう易々とみやの隣をあげるつもりは無かったりする
みやの所へ行く、勢い任せで腕を組んだ様にみやと愛理の間に滑り込む

…偶然じゃなくて、これは計算
一瞬、ほんの一瞬だけど愛理が苦い表情を作る
みやもそれを見て、だけど愛理は私の子供みたいな行動に笑っているんだと思うんだろう
私はそう言う所もみやの事好きなんだけどね…

413 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:17

「ねー、みやなぁに?」
「んー、愛理がねさぁ〜、またモノマネ出来る様になったから梨沙子も見てあげてよ」
「もー、みや恥ずかしいじゃん」
「愛理やって、やって〜」

愛理は困った様なアヒル口で私とみやから少し離れてオホンと一息
モノマネをしようと準備をする
私はそれを良い事にみやと更にピッタリとくっつく

“みやはあげないよ”
声には出さないで目だけで愛理に伝える
これは親友だから出来る偉大な業
愛理はそれを見て、少しむくれた、あれは負けず嫌いな愛理の本性

“大丈夫、りーちゃんでも負けないよ”
愛理は私にそう答えて、ハニカミながらモノマネをする

414 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:17

一瞬沈黙が流れた後、みやがいつもみたいにゲラゲラと笑う
私は愛理がそういう事をするのを見るのって結構好きだから心から笑う
愛理はやっぱりするんじゃなかったって雰囲気で顔を手で覆う

…うん、一時休戦だ
私はみやが大好きだけど愛理も大好きだkら
3人でこうしていられるなら、案外それが一番良い状態なのかもしれないって思った

415 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:18


* * * * *



416 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:18


今はまだ、このまま
あとちょっとだけ、このまま
距離も一緒、角度も一緒の正三角形に一番近い二等辺三角形
それが今の私たち


417 名前:トライアングル 投稿日:2009/03/05(木) 23:18



トライアングル

終了



418 名前:gen 投稿日:2009/03/05(木) 23:20


さわって変わって (夏×菅谷)
>>397-405

トライアングル (夏+菅+鈴)
>>408-417


419 名前:gen 投稿日:2009/03/05(木) 23:20
更新

更新しました
個人的に好きなものを短く書きました

それではまた頑張って更新出来る様にします

ではまた会いましょう。


420 名前:gen 投稿日:2009/03/13(金) 19:25




421 名前:gen 投稿日:2009/03/13(金) 19:25





422 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:25


思い出すのは手を引かれて二人で歩いた道とか街とか
思えばずーっと前から好きで、今も好きで、これからも好きなんだと思う
だけど、もう手を引いてもらって歩く事は無いんだと分かっている


423 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:26


それでもずっと好きなまま

簡単に嫌いになんてなれないって知っている


424 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:26



* * * * *



425 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:26

パタンと携帯を閉じる
それでも目を閉じればさっきまで眺めていたメールが映る

“ごめん、今日用事があるから一緒帰れない”

たったそれだけのメール
今までも素っ気ない様なメールは何回もあったけど、
それだけでも嬉しかったし、何でも無い様なメールを返していた

426 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:27

でも、今はもうそんな事も出来ない
どうせ、桃の事なんて見てくれていないから
みーやんの目には他のモノもいっぱい映っている


427 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:27

さっき教室の窓から見つけたみーやんは凄く急いでいて、走ってた
走っていながらもどこか嬉しそうな顔をしていた
そんな姿でも見れると嬉しくて、でもみーやんがあんなに急いでいた理由を考えると悲しかった

普段は案外めんどくさがりのくせに、あんな表情をしてどこかへ行った
どこに行くかなんて分からないけど、誰に会うかくらい分かっている

みーやんをあんなに走らせるのなんて、一人しか居ない
直接その子を知っている訳じゃないけど、みーやんが楽しそうに話すのを聞いた事がある

428 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:28

そんな事桃にしか話せないからって…

桃は親友だからって…

ずっと一緒に居てくれたからって…

429 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:28

「ばーか…」

ぽつりと呟いても届く分けない
それは離れているからとかじゃなくて、近くに居てもそうで
桃の気持ちなんて伝わらない

桃の方がずっと隣に居て、見つめ続けていたのに
一緒に笑って、一緒に泣いて、色んな事をずっと一緒に感じて来たのに
そんなのは簡単に崩れてしまう

…それも一瞬で

430 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:29

それなのに桃の気持ちは崩れないし、変わらない
今でもぎゅっと優しく手を握ってくれる事を祈っている
叶わないって分かっているのに、思いは強くなる一方で
いつも一筋涙を流してしまう
こらえてもこらえても出てしまうものがある
431 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:29


それを見たらみーやんはどんな顔をするのかな?

困った様な顔で、いつもみたいに桃を慰めてくれるのかな?

432 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:29


そんな事を考えていると好きって気持ちと、嫌いになれないって気持ちが溢れて来て
桃はやっぱり涙をこらえる事が出来なくて
小さくみーやんって呟いて、涙を流した


433 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:30



* * * * *



434 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:30



* * * * *



435 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:30

確かに顔は可愛かったけど、むすっとした様な表情で
人見知りの激しいウチにとって彼女の第一印象は良いものではなかった

だけど本当は人なつこくて、ふにゃりと優しく笑うって知った
その笑顔にウチはいつからか癒されていて、今までに無い様な気分になった

436 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:31

本当にそうかはイマイチ分からないんだけど、これは皆に思う“好き”とは違っていて
特別なんだって、そう思う様になっていた

だから、ウチは“公園で待ってる”なんてメールを勢いで送って、
教室から飛ぶ様に出て行った

437 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:31

「はぁ、はぁ…まだ来てない…?」

ウチの高校とアイツの通っている中学校の中間地点にある公園の噴水の前
ウチが指定したこの場所は待ち合わせには最適の場所

時間は特に決めていなかったけど、やっぱり先についておきたい気持ちがあって
学校からずっと全力疾走だった

438 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:32

「みや、待った?」
「あっ、梨沙子…待ってない、さっき来た」
「どっか行く?」
「あー、いや話す事あって」

梨沙子はキョトンとしてウチを見る
仕種の一つ一つが可愛くて、暖かい気持ちになれる

439 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:32

公園をぶらっと歩いて、見つけた空いてるベンチに腰掛ける
当然梨沙子が隣にいるんだけど、それが何か自然な感じがしてウチはくすぐったかった

「あのさ、えっとー」
「うん」

中々本題に入れないでさっきからえっとばかり
そんなウチに対してもニコニコと頷いてくれる梨沙子
少しだけ勇気をもらえた気がして、ウチが口を開こうとした瞬間だった

440 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:32

「みや、好き」
「えっ…」
「好き」

ウチは限界まで目を見開いて梨沙子を見る
梨沙子もウチを見て、そしていつもの様に微笑んだ

「みやとこうしてるの凄く好き…何があるってワケじゃないんだけど、好き」
「あっ、ありがと…」
「何かね、凄く好きなの」

441 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:33

梨沙子はイヒヒって笑って足をブラブラさせた
ウチは言おうとしてた事を言われてしまって、呆気にとられてしまったけど
それはそれで嬉しくて、小さく笑った

「ウチも好き、梨沙子とじゃないとこんな感じ出ないと思う」
「うん」
「これが、言いたかった事」

442 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:33



* * * * *



443 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:34

この後何があったってワケじゃないんだけど
ウチらはただボーッと座ったままで少し肌寒くなるまで二人で居た

「帰ろうかぁ」
「うん」

そう言って立ち上がり自然と梨沙子の手を握った
その温かさは今までに感じた事の無い様なもので

これからウチはこれを大事にして行くんだと心に誓った


444 名前:無題 投稿日:2009/03/13(金) 19:34



無題

fin



445 名前:gen 投稿日:2009/03/13(金) 19:35


無題 (菅×夏←嗣)
>>422-444



446 名前:gen 投稿日:2009/03/13(金) 19:36
更新

更新しました

更新しました

更新し(ry

頑張りました。

では、また今度


447 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/14(土) 21:50
もも・・・
切な過ぎるよ
448 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/15(日) 02:37
コメントはsageて
449 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:20




450 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:20





451 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:21



Bloomin'



452 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:21

スタ…スタ…と自分の歩く音が聞こえる
一人だから、やけにその音が耳に付く
それが不満で口を尖らせながら、やっぱりスタスタと歩く

歩く音、風の音、街行く人の話声
その中に大好きなあの声は無い…

453 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:22

つまらない、なんて思いながらも歩き続けると視界の端に淡いピンクが飛び込む

「わぁーっ、桜満開だぁ…ねぇ、みや!!見てっ!!って…」

綺麗なモノは一番にみやに見てもらいたい
美味しいモノはみやと二人で食べたい
私のお気に入りはみやと共有したい

でも、今みやは私の隣に居ない

さっき喧嘩をした
私がみやの話を聞いてないか、みやが私の話を聞いてないか
そんな些細な事で喧嘩をした

454 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:22

「私、みやの話ちゃんと聞いてるもん…」

確かに私はボーっとしてる方だ
だけど、大好きなみやの話は何よりも一生懸命に聞こうとしてる
どんなに小さな出来事でも少し大袈裟に話すみやを、私は逃さない様にしてる
今日だって、どっちかって言うとみやの方が話は聞いてくれてなかったと思う

それに今日は喧嘩したくなかった
だって、みやから二人で帰ろうって誘ってくれた、遠回りして、帰ろうって
いつもは照れて嫌がるのに、手だってみやから握ってくれた

それなのに喧嘩なんてしてしまって、本当に最悪だ

455 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:23

「あーぁ、二人で見たかったなぁ…」

そう思うと、涙が出そうになる
何でこうも、みやの事になると涙もろいんだろう?
でも、それくらい本気でみやの事好きなんだもん


私の涙は、みやへの“好き”のしるし


456 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:23


「あー、あんたまた泣こうとしてる」


あと少しで、本当に涙が流れ出る所だった
後ろから大好きな声が聞こえる

457 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:23


「してないもん!!みやのバカっ!!」
「…はぁ、バカで良いですよー」
「ムー…て言うか、何で居るの?」


みやと分かれて結構経ったはずだ
それなのに今、みやは私の隣に居る

458 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:24

「あんたが二人で見たいって言ったから」

そう言って上を指差す
その顔はいつもの格好良い表情とは違って、
イタズラが上手くいった時の様にはにかむ

「ウチ、梨沙子の話、ちゃんと聞いてるし」
「うん…」
「そう言う事だから、ホラっ…」

ギュッと握られる手
みやの手は少し汗ばんでいて、温かい
よく見たら、少し息も乱れている…

459 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:25

「ねぇ、みや…」
「んー、何?」
「イヒヒィー、何でもなーい」

走って来てくれたのか、どうかなんて関係無い
今はそれよりも二人並んで歩ける事が嬉しくて

私の頬も、みやの頬も、見上げた空も、
ほんのり優しい淡いピンクに染まる


460 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:25



それは凄く美しいモノ



461 名前:Bloomin' 投稿日:2009/03/29(日) 23:25



Bloomin'

終了



462 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:25




463 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:26




464 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:26


その瞳を見つめた瞬間魔法にかかってしまう
それは君しか見えなくなる魔法

要するに“LOVE”なわけだ


465 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:27



Fell in LOVE with a girl



466 名前:Fell 投稿日:2009/03/29(日) 23:27

そりゃ、ウチと舞美はずっと一緒に居る訳で
幼馴染とは違うけど、もうずっと一緒に居る
それは戦友でもあり、親友でもある

だけど、いつからか少しだけ違う感覚も混ざっている様な気がする
それはウチの勘違いかも知れないけど

467 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:28

今日も舞美は皆をまとめようともしていなけど、皆が周りに集まって来ている
舞ちゃんはまるでお姉ちゃんに甘える妹の様に
千聖はそんな舞ちゃんに引っ付いていて
なっきぃはそんな舞美を支える様に寄り添って
愛理はフワフワっと一緒に居るのは、栞菜が居ない寂しさを紛らわせる為だろうか?

ウチはそんな輪に入れずに、傍から皆を観察している
舞美がそういう風に皆の中心にいるのは慣れた
それなのに、どうしてもモヤモヤとしてしまうのは、ウチの隣に舞美が居ないから

468 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:28

ウチは結構、我儘だ
年下の子たちと一緒に居るから、我慢が強いられるけど
だけど、一番欲しいものは傍に置いておきたいって思う

皆にはバレない様に、一人でちょっと沈んでみたりしてみる
それは気付かれたく無いんだけど、気付いて欲しい
矛盾がつもりに積もって、ため息が出る
ヤバい、皆に振り向かれると思ったけれど、
聞こえていなかったみたい

469 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:28

…だけど、違った
舞美だけは心配そうにウチを見る
ある意味作戦成功みたいな感じだけど、どうも無性に情けなく思う

アハハと頼りなく笑って、舞美を見る
舞美も似た様な感じで笑い返してくれるんだけど、どこか格好良い
ウチはそんな舞美が好きで仕方ないなぁ、なんて思ったり
二人見つめ合って、目だけで会話
うちはそんな瞬間が好きで仕方ない

470 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:29


深い黒に染まった舞美の瞳がウチを写している
ウチだけが舞美を独占している幸せ
それは何にも変え様の無い感覚で、ウチが恋に落ちていると感じる


471 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:29

そんなウチを冷静に見てみようと思うんだけど
それでも舞い上がっているから、上手くは行かない
もう一度小さく頼り無さげに笑う

あぁ、恋をしている
一番近くに居られない時でもそれだけで嬉しくて、それだけで満足

472 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:29

願わくば、もう少しだけ君の瞳を
願わくば、いつの日か君の心を


そう思いながら、ウチは今日も恋に落ちて行く


473 名前:Fell in LOVE with a girl 投稿日:2009/03/29(日) 23:30



Fell in LOVE with a girl

終了



474 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:30




475 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:30




476 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:32


Bloomin' (菅×夏)
>>451-461

Fell in LOVE with a girl (梅×矢)
>>464-473


477 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:33
更新

更新しました
短いですけど更新しました

頑張りました

HPの方も覗いてくれたら幸いです


478 名前:gen 投稿日:2009/03/29(日) 23:35
米レス

>>447さん。
切ないですね。切ない桃子が私は好きです。
桃子にはもっと他の気の利く人が居ると思います。

>>448さん。
代わりに注意してくださってありがとうございます。次回からは自らしますので。
今回はありがとうございます。

では、また合う日まで。


479 名前:gen 投稿日:2009/04/05(日) 20:58




480 名前:gen 投稿日:2009/04/05(日) 20:59




481 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 20:59


雨の中で傘も差さず、踊る様な足取りの君

雨粒は、君の為にこそ降り落ちる


482 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 20:59



雨も私も



483 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:00

「あれ、梅田さんは?」
「さっき帰ったよ」
「えーっ、またサボり?」

放課後の教室
机を後ろに寄せて、掃除に取りかかる皆
掃除当番ではないけれど、借りたノートを写して帰ろうと思っていた私は教室に残っていた

窓側の机を借りて、ノートを写す
意味不明な記号の羅列は、まるで通り雨の様に軽く不快感を覚える程で、
ペンは思っているよりも全然進まない

484 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:00

「めんどくさっ…」

ほぼ止まっていたに近い手をペンを放り投げて、完全に休ませる
そのまま右手は私の顔を支える杖になる

ノートを写すのも、皆の会話も、何もかもがめんどくさい…

そう思いながら、掃除をする皆の声をBGMに私は窓の外に目を向ける

シトシト降る雨はまるで私の心みたいに冷たいのだろうか
無表情にそう思う

485 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:01

本音を言わない私は毎日、心に傘を差して生きている
私自身が冷たい雨を受けない為に

「あっ…」

ちらほらと見える帰宅中の人たちの中に一人だけ、傘を差さずに歩く人
その足取りは誰よりも軽やかで、踊る様なステップ
相変わらず、雨が降っても傘を差さないのは、私の大切なあの人しか居ない

「えり、だ…」

この学校、否、この世界に一人だけ
私のありのままを受け止めてくれる存在
正に、今それを実感するには十分な状況で、狙っていたと言わんばかりに

今日もえりは傘を差していない

486 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:01



* * * * *



487 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:02

クラスで浮いた存在のえり
だけど、誰よりも寛容で、誰よりも地に足の着いた人


“ウチ、厭なヤツだから教室での矢島さん嫌いだなぁ”


確かに私は教室では『矢島舞美』と言う一人の生徒を演じていた
上手く周りに馴染んで、それなりの生活を送っているけれど
心のどこかではそれを、皆を蔑んでいた

だって、皆はそれに気付かない
こんなにも近くに、私は居るのにって思うと、涙が出そうで
それでも、私は私で居なくちゃいけなくて

488 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:02

だけど、えりは違った
トロンとした、全てを溶かす様な瞳で、えりは私にそう言った
私の事を何も知らない、そんな人が私の本質を見据える

私はそれを聞いた時に衝撃と嫌悪、そしてそれを凌駕するほどの安心感を感じた


えりと出会う為に、私の心に雨が降っていたんだ

私と出会う為に、えりは傘を差さないんだ


489 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:03



* * * * *



490 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:03

私は自然と鞄から携帯を取り出してメールを打つ

『そこで待ってて、私も今教室出るから』

気付くだろうか?絶対、気付くだろう
だって、えりは傘を差していないから

急いでノートを閉じて、ペンを仕舞う
鞄に出来るだけ丁寧に突っ込んで、私はわざと音を立てる様に立ち上がった

491 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:03

「あっ、舞美ノート終わった?」
「ごめん、用事思い出したから、明日で良い?」
「うん、急がなくて良いよ」

私はそんな会話を、教室から出る事だけを考えながらする
誰が話しているかなんて、正直分からない

「じゃあ、バイバイ」
「あっ、雨降ってるよ…傘ある?」
「いらないっ!!」

そう答えた時にはもう、全力で走る姿勢になっていた

492 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:04



* * * * *



493 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:04

校舎を飛び出して、瞳に飛び込んで来る風景、雨を見上げたえりの姿
酷く安心出来るその姿に、私は優しく微笑んだ

この雨は暖かい
私の心も暖かい

だから、傘は要らない
だって、えりがそう言ってるから

494 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:04


この雨はえりの為に降る

だから、私はえりの為に雨を降らせる


495 名前:雨も私も 投稿日:2009/04/05(日) 21:05



雨も私も

fin



496 名前:gen 投稿日:2009/04/05(日) 21:05




497 名前:gen 投稿日:2009/04/05(日) 21:05




498 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:06


部活に行こうと急ぐ廊下
目に映ったのは空飛ぶ箒
その持ち主はとても綺麗な魔法使い


499 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:06



私のお気に入り



500 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:07

「うわっ、舞美かぁびっくりしたー」

校舎の裏側、壁に寄りかかって座るみや
その手には何故か箒が握られていて、それを乱暴にブンブンと振り回す
私はそれを校舎内から見たから空飛ぶ箒に思ってしまった

「箒が勝手に動いてたから気になって」
「勝手に動く訳ないじゃん」

501 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:07

私は上履きのまま、窓を開けて外へ飛び出る
いきなり、隣に着陸した私にみやは大声をあげて驚いた
私も箒に驚かされたから、これでおあいこって所だろう

「舞美、部活行かないの?」
「行くよ、でもまだ行かない」
「エースが遅刻したら先生泣くよ」
「エースじゃないから、大丈夫」

みやの隣にそのまま私も座り込む
地面はヒンヤリと冷たくて、スカートから伸びた足には良く無いなぁと思う
みやはまだ、箒をブンブンと振り回している

502 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:08

「みやは何してるの?」
「ちょっと、それ!!聞いてよ、あの中澤先生がさー」


みやは急にいきり立って話し始める
時々、みやはこんな風にスイッチが入る
それが何かは未だに分からないけど、カチッと一度スイッチが入れば
電池が切れるまで話し続ける
結構それは長い時間かかる

503 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:08

「…で、ウチがちょーっと、多分0.5秒くらい遅刻したの」
「うん」
「それだけで、“夏焼、あんたいい加減にしーや”とか言ってきて」
「うん」
「“まっ、今日は罰として校舎裏の掃除なー”とか言うの」

私はそれに相槌を打つだけしか出来ない
でも、それは決しておざなりにではなくて、案外真剣だ
だって、みやは聞き手の反応を思いのほか、しっかりと見ている

「酷くなーい?」
「う〜ん、酷い。みやは悪くない」

504 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:09

でしょー、なんてみやはプンスカと怒りながらさっきより大きく箒を振り下ろす

“そんなに乱暴に扱ったら壊れるぞー”とか、
“私に見つかったみたいに他の人にも見つかるぞー”とか
そんな心配をするけど、みやには言わない

だって、そう言う事が起こった時のみやの反応が見たいから
“もー、何で言ってくれないのー”って、またスイッチが入って、話し出すみやが見たいから

私が何でそこまでみやのスイッチを入れたいのかって言うと
そんなみやが好きだからだ

505 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:09

黙っていればかなり綺麗だ
ただ綺麗なだけじゃなくて、華があるとでも言うのだろうか
とりあえず、黙っていたら近付き難い程のオーラがある

それなのに、話し出したら全然違う
どことなく愛嬌があって、人なつこい
ギャップってヤツなんだろうけど、それが私のツボだったりする
とにかく、みやは私のお気に入りってワケだ

506 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:10

そんな事を思いながら、みやを見る
まだ一人熱く喋っているけど、その横顔は本当に綺麗だ
涼しげで、華やかで、少し鋭くて、愛らしい

「はー、ほんっとに、もーヤダ!!」
「仕方ないよ、頑張れ」
「ありがとっ…って部活、行かないの?」

みやが私を見て来る
やっぱり、お気に入りだとまじまじと感じる

507 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:10

「みや…」
「んっ?」

みやの唇に人差し指で軽く触れて宣言する



「みやは私のお気に入りだぞ…」


508 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:11

「えっ?何それ?」
「さぁー、部活行こう」

驚いてしどろもどろしているみやを置き去りにして、私は走り出す
あぁ、何であんなにも愛おしいのだろう


それはやっぱり私のお気に入り…
みやは可愛い、私のお気に入りだから

そんな魔法をかけられたから


509 名前:私のお気に入り 投稿日:2009/04/05(日) 21:11



私のお気に入り

fin



510 名前:gen 投稿日:2009/04/05(日) 21:13


雨も私も (矢×梅)
>>481-495

私のお気に入り (矢×夏)
>>498-509



511 名前:gen 投稿日:2009/04/05(日) 21:14
更新

更新しました
矢島さん祭り
略してヤジマツリ

お決まりと変化球です

では、また頑張ります


512 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/04/05(日) 22:01
変化球の方にやられました
距離感の加減が絶妙です
513 名前:名無し 投稿日:2009/04/07(火) 22:09
自分も変化球が気に入った
意外に合うね、この2人
514 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/08(水) 21:31
お決まりは定番としての安定感ありーの
変化球は読者の胸掻き回しーの
genさんの幅の広さにまたやられました
今後も楽しみにしています
515 名前:gen 投稿日:2009/05/10(日) 00:21




516 名前:gen 投稿日:2009/05/10(日) 00:21




517 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:22


おかしなヤツとおかしなヤツ
真っ直ぐじゃないのは完璧じゃないから
ウチが多分物好きだから


518 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:23



a perverse person



519 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:23


最近目の前のヤツ、菅谷梨沙子に恋人が出来た

「イヒヒィー」
「…クリーム付いてる」
「どこ?みや、とって」


こんな梨沙子を好きになるなんてかなりの物好きだ

520 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:24

梨沙子は何て言っても、先ず幼い
今もクレープを食べてるだけなのに
口の周りはクリームでベトベトしてそうだし
テーブルの上は有り得ない量の食べこぼし
食べた量よりこぼした量の方が多いんじゃないかって思うくらい

「あんたさー、いい加減ちゃんとしなよ…はい、とれた」
「うーん、考えとく」

ただ食べるって言う単純作業すらまともに出来ないのだ

…て言うか、今まだ朝の10時前って言うのに、
クレープを食べるって言う神経と胃袋がまず理解出来ない

521 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:24



そんな梨沙子を好きになるなんて相当の物好きとしか思えない



522 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:25

しかし、そんな梨沙子曰くその人は完璧らしい
少し頭の悪い所があるらしいが、見かけも中身も格好良くて
それでいて優しくて、面倒見が良いらしい

「いつ愛想尽かされるか分からないよ、そんなだと」
「大丈夫、やっと実った恋だから」

梨沙子はその人に長年思いを寄せていたらしい
でも、伝える勇気が無くて、この間たまたま勢いで“好き”と口走って
それがラッキーで受け入れられて、今日に至る
色々端折ったけれど、そういう流れだそうです

523 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:25

はっきり言って、梨沙子の言う事を信じていいのかどうか…
まず、梨沙子が梨沙子なワケだ
だから、そんなヤツが褒める人が本当に凄いとは思えない

ウチが知る限り、そんな素晴らしい人間ではない
見かけの割に小心者だし、ビビリだ
どれだけ素晴らしくても、それだけで最悪になり得る要素だ
だから、梨沙子の言う事は信じられない

「それでもそんなあんた見たら百年の恋も覚めるって」
「えー…でも、大丈夫だと思う」

524 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:26

梨沙子はお得意のアヒル口で少し拗ねた様な表情を作る
加えて沈んでますよってアピる様にテーブルの上のグラスをグルグルと回す

…こうやっていじけた態度を見せる梨沙子
多分、こういう所が梨沙子の可愛い所なんだろう


そうじゃなければ、どこに魅力を感じるか分からないし…


525 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:27

「て言うかさ、今何時か分かってる?」
「んー、9時45分」
「待ち合わせ何時って言ってたっけ?」

さっきまで沈んでたのが演技だったと主張してるくらいに
ピンピンでニコニコで、何て言うかハッピーそうな雰囲気しかなくなっている
ストローでブクブクと繰り返し、何食わぬ顔

「えっとねー、10時30分」
「まだ1時間近くあるじゃん」
「そだねー」

加えてのんびりとしてるし、マイペース過ぎる
こういう所見てると、やっぱりどこが魅力か分からなくなる

526 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:27

「何でそんなに早いのさ」
「待ち合わせに遅れるなんてタブーじゃん」
「…そっかぁ」

あぁ、分かった
梨沙子には常識ってヤツが通用しないんですね
そういう何にもとらわれない所が魅力なんですね
…やっぱり、物好きとしか言いようが無い

「それに私が先に居て、着いた時に安心してもらいたいじゃん」
「梨沙子で安心出来る訳無いじゃん」

とりあえず、梨沙子はウチが主張して来た通りのヤツで
だから、仮に梨沙子がそう思っていたり、考えていたとしても
無駄な妄想としか言い様が無い

527 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:28

「むー…でも、いつか安心させるの」
「へー、頑張ってね」

それでも一生懸命に相手を思うって言うのは難しい事で
そう言う点では凄く梨沙子はいい子なんだろう
だって、ここまで恋人を思っている人をウチは知らないから

そんな真摯な姿に打たれてしまうのは物好きなんかじゃなくて
当たり前の事なんだと思う


「うん、頑張るよ…頑張るっ」


528 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:28



だから、梨沙子は思いを寄せていた人と付き合えたんだろう



529 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:29



「さぁ、行こうか」
「あっ、待って」



530 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:29



だから、ウチは梨沙子の気持ちを受け止めたんだろう



531 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:29



* * * * *



532 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:30


「ねー、みや一個だけ聞いて良い?」
「何?」
「今日何時に来た?」
「……さぁ?」


533 名前:a perverse person 投稿日:2009/05/10(日) 00:30



a perverse person

fin



534 名前:gen 投稿日:2009/05/10(日) 00:31




535 名前:gen 投稿日:2009/05/10(日) 00:32


a perverse person (菅×夏)
>>517-533



536 名前:gen 投稿日:2009/05/10(日) 00:33
更新

更新しました。
プチどんでん返し的な感じにしたくて、躓きました。
ごめんなさい。もう無理な事はしません。


537 名前:gen 投稿日:2009/05/10(日) 00:39
米レス

>>512さん。
二人は多分仲はヨロシイんでしょうけど、そこから進まない二人だと思います。
そういう距離感だと思います。

>>513さん。
二人とも美人同士だから絵になると思います。だから合うんだと思います。
そういうものだと思います。

>>514さん。
幅的には茉麻ぐらいで、厚み的には梨沙子くらいあれば良いなと思って挑戦しながら書いてます。
私の書ける世界をそれくらいにしたいと思っています。


米レス遅れてすみません。こちらの存在を忘れて居た訳ではありません。
皆さんが変化球を気に入ってくれたようですが、この先書く予定はありません(笑)
でも、変化球は沢山投げれる様になりたいと思っているので
これからもよろしくお願いします。
それではさようなら。

538 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/10(日) 00:51
3スレでオチ読めました
539 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/10(日) 01:21
レスだろバカwwww
540 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/10(日) 01:32
あげんなバカ
541 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/10(日) 08:22
自分は全然最後までオチ分かりませんでしたw
いいですねーこうゆうりしゃみや。大好きです。きゅんとしちゃいました。
また更新される日を楽しみにしています。頑張ってくださいね。
542 名前:gen 投稿日:2009/05/11(月) 22:59




543 名前:gen 投稿日:2009/05/11(月) 22:59




544 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 22:59


自由な君とそれに憧れる私

少しでも気持ちは通じ合っているかな?


545 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:00



エール



546 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:00

「あっ…」

ごそごそと動くそれは、見つけたくて仕方なかったもの
小さな体を右へ左へ翻し、今日もどこかへ向かって行く
それはそれは自由にいろんな所まで

「まだ、ここに居たんだ」

それなのに、結局いつも同じ所で出会うのは
君がここを心地良いって思っているからなのかな?
そう思うと私は少し嬉しくなる
だって、ここは私も大好きな所だから

「私は今から仕事に行ってきますよー」

報告がてら一人でそう呟くけれど、知らん顔をされてしまう
そんな所も君らしくって、自然と笑みがこぼれて来る

547 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:01

私がどんな事をしたって、新しい事を始めたって
君は変わらず自由気ままに欠伸をする
だから、私は心変わりしないで君の事を探すんだ

「帰りは結構遅くなるから、今日はもう会えないかなぁ?」

隣に居る君に視線をやると、やっぱり私のことなんかこれっぽちも気にしていない
そういうつれない態度も好きな所だったりする
まぁ、嫌いな所なんて無いんだけど…

548 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:01

「明日も会えると良いねー」

君に会うと頑張ろうって思えるんだ
君のその何にも流されない姿に、憧れてたりしちゃうから
だから、今日も頑張ろうって思えるんだ

「じゃ、行ってくるね」

私は真っ直ぐと前を見て歩き始める
それでも君は私の事なんか気にしていなくて
それはやっぱり、当たり前に君らしくて
ウフフって声に出して笑ってしまう

549 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:02

「…ニャー」
「えっ、嘘?」


後ろを振り返るとさっきと変わらずのんびりと丸まっている姿
寝そべって前足で顔を洗っている君だけど
でも、確かに聞こえたよ…君から私へのエールが

ビックリしたけど、それよりも嬉しくなって
とびきりの笑顔を君に見える様に作ると
少し小走りで、私は仕事へと急いだ

私はまた前を向いて歩いている

550 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:03


気持ちは少しだけど通じています

私からも…
そう、君からも


551 名前:エール 投稿日:2009/05/11(月) 23:04



エール

fin



552 名前:gen 投稿日:2009/05/11(月) 23:05


エール (真+α)
>>544-551


553 名前:gen 投稿日:2009/05/11(月) 23:05
更新

小ネタ。
思いつき。
まのえり好きだよ、まのえり。


554 名前:gen 投稿日:2009/05/11(月) 23:09
米レス

>>538さん
オチていないからオチは無い様なものです。

>>539さん
すぐバカって言ったらいけません。

>>540さん
すぐバカって言ったらいけません。

>>541さん
オチていないので読めなくても十分です。
私もりしゃみや大好きです。
需要が無いけど早めに更新してみました。


これからも頑張ります。時々まのえりまのえり言うと思いますが、頑張ります。
でも、結局、帰る場所はりしゃみやかやじうめだと思います。
頑張ります。

それではさようなら。

555 名前:gen 投稿日:2009/05/17(日) 20:16




556 名前:gen 投稿日:2009/05/17(日) 20:16




557 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:17


窓の外はかんかん照りの青空と春の名残の爽やかな風

明るく見える世界は夏の光に照らされているんだろうか?


558 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:17



ナツノヒカリ



559 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:19

コンコンとゆったりしたテンポでノートをペンで叩き
窓の外をジッと眺める
授業が分からない訳じゃない
理解出来ている訳でもないけれど、一生懸命にはなれない

「…きー、すずきー」
「愛理、呼ばれてるよ!!」

窓際の席だからいけないんだ、なんて自分勝手な言い訳をする
気持ちが良いとか言うんじゃなくて
どこか空っぽにしてしまう力があるんだと思う

それはゴツンと言う少し乱暴な音で現実に引き戻される

「鈴木、お前余裕だなー」
「はぁ、まぁ…」
「これから伸びて来るヤツが沢山居るんだからな」
「すみません…」

机を丸めた教科書でボンボンと叩いて先生は私を軽く睨む
この前から、この先生とは折り合いがつかない

560 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:19

私の事に一生懸命になってくれるのは嬉しいけれど
全部が全部飲み込める様な事ではない
私にだって譲れない部分があって、
それが今回は中学生活で最後のイベント『受験』だったってだけ

もっと上を目指せると言われるのは私を認めてくれてる事だけど
同時に否定されている様な気分になる
私にだって考えがあって、いろいろ決心しているんだ
それを先生は少しでも分かってくれているんだろうか?と疑問に思う

561 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:20

「もう、呼んだのに」
「りーちゃん、ごめん」

先生が教卓に戻っていったのを見てりーちゃんがブーッと頬を膨らませ私を見る
まるで自分が怒られてしまったかの様な表情を見ると
いつもの少し大人びた姿は見当たらない
私はそんなりーちゃんの方が好きだなって思う

授業は何も無かったかの様に進んでいくけれど
私はやっぱり集中出来ない
多分、それは外の世界の眩しさのせいだと自分に言い聞かせた

562 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:20



* * * * *



563 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:21

人工的な青のソーダアイスバーの色は
どこか空の青に似ていると言う矛盾に気付いた日
繋いでた手がフッと離れた
それは一瞬で、繋がりは儚かったと言わんばかりに

「えっ…」
「だから、ウチも来年は高校に入るなーって思ってさ」

少しかすれた様なその声はいつもと変わりがない
時折シャクシャクとアイスを噛む音が混ざっている事を除けば

ただ、私は事態を飲み込めなかった
初めて、この声を聞いていたくないと思った

564 名前:gen 投稿日:2009/05/17(日) 20:21

「高校は忙しいんだって、皆に言われる」
「そうなんだー」
「こうやって遊ぶ暇無くなるかもってさ」
「あっ、うん…そっか」

ポトリとアイスが溶けて手に零れる
ヒンヤリと冷たさが広がって、現実なんてこんなモノだと笑い声が聞こえた
キョロキョロ見回しても、私とえりかちゃんしかいない
一体何だったんだろう?と怖くなる

「愛理と簡単に会えなくなるね」
「そうだね」
「大丈夫?」
「うん、私も来年中学生になるんだよ…もう大人だよ」

565 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:22

強がって笑ってみせると、一瞬凄く悲しそうな顔をされた
何でえりかちゃんがそんな顔をしたのか私には分からなかった
だけど、本当は笑って欲しかったって思った

「心配?」
「愛理が大丈夫だって言うなら、安心」
「大丈夫だよ、私りーちゃんとか千聖と違うから」
「あの二人は特別幼いからねー」

ハハハっと大きな声を上げて笑い出したえりかちゃんを見て
私はきっと少しだけ大人になったんだと、今になっては思う

そんな事なら、私は本当は


大人になんて、ならなくて良かったのに
大人になんて、なりたくなかったのに


566 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:22



* * * * *



567 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:23

「まだ5月なのにこの暑さはなんなのさー」
「千聖、五月蝿い、暑い、黙って」
「ワーワー。りーちゃんって風流じゃないねー」

帰り道、もう夕方だと言うのに空は青くて
ベタベタと暑さがシャツを捲った腕にまとわりつく
そんな暑さに嫌気がさしている私の隣で
千聖とりーちゃんはそんな事を気にせず騒いでいる

「二人とも、これから夜まで塾あるから騒いでると疲れるよ」
「「だって、コイツが!!」」
「分かったから少しは静かにしてよ」

568 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:24

それでも騒ぎ続けるのはいつもの事で
それは嬉しくもあり、煩わしくもある
私はつくづく厭なヤツだとも、思う
この二人とは違う、私は大人なんだと優越感に浸っている部分を否めない

「はぁー早く終わらないかな…」
「愛理、何が?受験?終わって欲しいねー、千聖もそう思うよ」
「うん、そうだね…」

私の話に相槌を打つ二人
でも、何も分かっていない
私が終わって欲しいと思っているのは受験じゃない
今、まさに始まろうとしている夏

569 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:24



* * * * *



570 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:24

「あー愛理だ」
「あっ、みや…」

休みの日の本屋には色んな人が居る
子ども連れのお父さんに、私と同じ年ぐらいの子
外国の方も居るし、本当に多種多様って感じ

私は参考書や問題集の棚を見ている
漫画の棚も近くにあって、こんな配置じゃ誘惑に負けてしまう人が続出だと思う
今日もやっぱり、その誘惑に負けた人が沢山いるみたいで
漫画を持ち、立ち読みしている若い人が沢山居る

「何、問題集?」
「うん、そう。みやは?」
「ウチは涼みに入って来ただけー…そしたら、立ち読みが止まらなくって」

571 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:25

綺麗な容姿に似合わない無邪気な笑い方をする人だ
と、みやに会う度に毎回思わされる

だからこそ、私はみやが好きで、少し羨ましく思っていた

「そう言えばさー、この前えりかからメール来たよ」
「…ふぅん」
「あれ、愛理には来なかった?」
「うん…」

夏が来る、あなたがやって来るのは本当でしょうか?
私の前に、あなたはまた来てくれるでしょうか?

572 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:25



* * * * *



573 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:26

「愛理、あーいりっ!!」

外から聞こえて来るのは虫の声と、えりかちゃんの声
インターフォンを鳴らせば良いのに、毎回大声で呼びかけて来る
いつ、その声が聞こえるか、私はドキドキしながら待っていた

それは二人が一つずつ年をとっても変わらなくて
その頻度こそ変われど、
私が中学生になって、えりかちゃんが高校生になってもやっぱり変わらなかった

ガラリと窓を開け、体を少し乗り出す
下を見れば、優しい笑顔を簡単に見つける事が出来る

「何?」
「いや、ちょっと話、したくなった」
「うん良いよ、降りるから待ってて」

574 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:26

夜と言えども夏は夏で、暑さは簡単に消えない
それでも、ぴったりと寄り添う様にして歩く
離れない様に、離れない様にと、ゆっくり着いて行く

「あのさ、ウチ…」
「うん、なぁに?」
「好きな人出来たかも知れないんだ」
「うん」

ピタッと立ち止まって、えりかちゃんは私を見る
何でそんな顔してるの?なんて聞けなくて
そんなのずるいよ、なんて言えなくて
私はただ、小さく「うん」と頷いた

575 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:26

「高校の同じクラスの子でね、凄い子なんだ」
「へぇー」
「でもさ、可笑しいんだよ…何で好きになったか分からないの」
「うん」
「だって、その子女の子なんだよ…」

えりかちゃんは今にも泣き出しそうな顔で、それなのに無理して笑っていた
私はそんなえりかちゃんを見て、グッと胸が苦しくなった

「気持ち悪いよね」
「全然、えりかちゃんが好きな人なら素敵な人なんだろうなって思うよ」
「その子はそうだけど、ウチは気持ち悪いよ」
「そんな事ないよ、全然気持ち悪くない」

576 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:27

ギュッと手を握って、私は精一杯の気持ちを伝えようとする
次第にポロポロと涙が流れて来たのは、えりかちゃんじゃなくて私だった

「ごめんね、こんな話聞かせちゃって」
「うぅん、大丈夫だよ」
「ダメだね、ウチ年上なのに」
「そんな事ないって、えりかちゃんはえりかちゃんだもん」

私が鼻声でそう言うと、えりかちゃんはフフっと笑った
いつもみたいに笑って、私の頭を撫でてくれる
その手は温かくて、夏の暑さに溶けてしまいそうで
私は涙がやっぱり止まらなかった

「愛理は優しいね」
「えりかちゃんも優しいよ」
「ありがとう…愛理に話したら少しだけ楽になった」
「良かった…」

577 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:27

繋いだいた手がフワッと離れる
何となくだけど、それで予感がした
今日で最後、今日でおしまい

「帰ろうか」
「うん」
「アイス買ってあげるよ、お礼に」

パタパタと風に揺られて葉っぱが音を立てた
私たちもポツリポツリと歩き出す

「えりかちゃん」
「んー」
「好きだった、私」

それだけ言うと、私はえりかちゃんを見ないで走り出した
名前、呼ばれた様な気がしたけど
多分それは風が運んだ空耳なんだと、私は思った

578 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:28


それ以来えりかちゃんの事を見ていない
嫌われてしまったのなら、自業自得で
嫌われていないとしても、迷惑な話だったんだろう

私はずるいヤツなんだ
えりかちゃんが優しいから、私の気持ちを知ったら
少しでも私の事を見てくれると思ったから
勢いでもなんでもなくて、私はちゃんと計算していた

だから、断ち切る様にえりかちゃんは私の気持ちを断ち切る様に
全く姿を見せなくなったんだと思う



579 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:28



* * * * *



580 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:38

「愛理、私コンビニ寄りたい」
「うーん、良いよ…て言うか、転けるよ」
「大丈夫だって」

ピョコンピョコンと走る様に歩くりーちゃん
私は転けない様にと注意するが、聞く耳を持たない

「この前千聖も言ってたけど暑いねー」
「そうだね」
「愛理ってさー、夏嫌いだね」
「…うん、嫌いかも」

りーちゃんが何でも無い様に言った言葉
私にグサリと刺さって来る
それでも平然とした態度で居ようとする
出来るだけ、誰にも悟られない様に
私の気持ちが変わっていない事を誰にも悟られない様に

581 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:38

ガラーっとコンビニの自動ドアが開く
既に冷房がギンギンに効いていて、少し肌寒い

「飲み物見て来るねー」
「うん、私雑誌見てるよ」

何気なく雑誌を手に取っては開いて、
置いては新しいものを取るのを繰り返すけど
手持ち無沙汰になってしまう

「あっ、アイス…」

立ち止まる冷蔵庫の前
毎年色んな種類のアイスが出るけれど、定番のアイスだってある
私は絶対、それは買わないし、食べない事にしている


それなのに、妙に視界に入って来る


582 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:39

「ごめんなさい、ちょっと良いですか…」
「あっ、すみません…」

私が邪魔をしていたのか、横に体をずらす
その瞬間、覚えのある感覚に襲われる

「えりかちゃん…」
「愛理…」

懐かしい笑顔に、私も笑ってしまう
結局、何にも変わっていないんだなって実感する

「愛理ー、って梅田先輩お久しぶりです」
「あっ、うん久しぶり」

やって来たりーちゃんがぺこりと頭を下げる
それに優しく微笑むえりかちゃんはやっぱり何も変わっていない

583 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:39

「あれー、えりその子たち後輩」
「あっ、うんそう、後輩」

えりかちゃんの隣にやって来た人
長い黒髪がふわりと揺れて、辺りの雰囲気が少し変わる
そして、その人が自然とえりかちゃんの手を握ったのを私は見逃さなかった

「可愛いね、二人とも」
「あっ、ありがとうございます…」
「あぁーあ、えりにこんな可愛い知り合い居たんなら早く紹介してよー」

584 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:40

ブルンブルンとえりかちゃんの手を振り回して満面の笑顔を作るその人を見て
私は、全てが分かってしまった

「あー、ごめん…」
「別に良いけどさー、って言うかそろそろ映画始まる」
「本当だ…じゃあね、愛理」
「うん、また」

コンビニを出て行くえりかちゃんたちを見て
私は心にぽっかり大きな穴が空いた気がした

「愛理、私たちも行こう」
「うん、行こうか…」

585 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:40

終わってしまったんだ、そう思う
夏が始まる前にあなたはやって来て、また去って行く



それでも明るい世界にはしっかりと夏の気配が迫っていた



586 名前:ナツノヒカリ 投稿日:2009/05/17(日) 20:41



ナツノヒカリ

fin



587 名前:gen 投稿日:2009/05/17(日) 20:41



ナツノヒカリ
>>557-586



588 名前:gen 投稿日:2009/05/17(日) 20:42
更新

更新しました
やじうめすずです。
頑張りました。
これからも頑張ります。
これからは途中で邪魔が入らない時に更新します。

それではさようなら。

589 名前:名無し飼育 投稿日:2009/05/17(日) 23:06
ぐっ!!ときました。
愛理せつない。。
できれば、梅さん視点も期待しちゃってます☆
590 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/18(月) 04:34
かなりツボなお話でした。
またの更新お待ちしてます。
591 名前:名無しいく 投稿日:2009/05/21(木) 20:41
愛理さんに…きゅんきゅんしてしまいました
この三人好きれす
592 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/23(土) 22:34
うめすず熱いです最高です
593 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:29



594 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:30


君の冷めた表情を緩ませるのは凄く暖かい

私は知らない誰かの笑顔

595 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:30



ホットスイーツ


596 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:31

「…ごめん、寄る所あるから私、ここで」
「うん、ばいばーい」

私の放課後は大体桃と二人でプラプラと寄り道みたいな感じ
桃のどうでも良い様な事を聞きながら、
面白そうなモノを見つけてはあーだこーだと二人で言い合う

それがつまらないワケじゃなくて、たまたま
今日はたまたま他のモノが目についただけ

そう、たまたま
597 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:31

カフェの看板の前で立ち尽くす梨沙子
何か真剣に思い耽っている様で、どうしても気になって
声をかけずにはいられなかった

「りーさこ」
「あー…キャプテンだぁ」

低めの声で落ち着いては居るんだけど、いざ話すと幼さが残っているって毎回感じる
それは梨沙子の可愛い部分を象徴していると思う
ずっと昔からの付き合いだから、そんな事どうでも良い事なのに
何故だか時々、凄くそういうところに惹かれてしまう

「何、食べたいの?」
「んー…うん」
598 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:32

綺麗にデコレートされた看板にはメニューが並んでいる
ランチメニューにデザート、今日のオススメまで
ただでさえ食べる事が好きな梨沙子の目には
この看板はさぞかし魅力的に映っているんだろう

「良いよ、おごってあげる」
「えー、でも…」
「良いよ、でも1個だけね」
「ありがとぉー」

間延びしたお礼は嬉しそうに聞こえるのに
表情はほとんど変わっていない
変わったのは口元くらいで、それは本当に小さな笑顔だった

599 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:33



* * * * *


600 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:33

「キャプテンって呼ばれてるんでしょ」
「…誰に聞いた?」
「んー、桃」

いたずらっ子の様に微笑む梨沙子
それを見たら私はそれまで考えていた事を忘れてしまう
それくらい魅力的な笑顔を梨沙子は見せる

「私もそう呼んで良い?」
「もー、好きにしな」
601 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:34

どうでも良い事にも喜んでその笑顔を見せる
色とりどりの感情を持つからこそ一つ一つの表情が魅力的で
何にも汚されていない笑顔だからこそ
私は梨沙子に対しては甘い態度をとってしまうんだろう

「キャープテン」
「はぁーい」
「イヒヒィー…何か良いね」
「そう?」

また梨沙子が笑顔を見せる
私はまた心の芯から蕩けそうになる…

602 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:34



* * * * *


603 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:35

「私この…焼きたてアップルパイ」
「すみません、アップルパイとカフェラテを一つずつ」

メニューと格闘する事、約5分
あれもこれもと首を傾げていた梨沙子が選んだのはオススメメニューのアップルパイ
横に添えられた写真を見ると、上にバニラアイスが乗っているみたいだ

「キャプテン、ありがと」
「うぅん、たまには年上っぽいことしたいじゃん」
「えー、キャプテンには普段から頼りっきりだよ」

テーブルを見ながらモジモジと呟く姿はやっぱり年下なんだって思わされる
外見は大人っぽくて妙に色っぽいのに
だからこそ生まれるギャップが良かったりするのかな、
なんて野暮な事を考えてしまう

604 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:35

「最近どう?」
「んー、勉強が大変かなぁ…」
「梨沙子ももう受験生だもんねー」
「うん、そう…」

梨沙子の返事は歯切れが悪い
そんなに勉強が嫌なのかな?なんて思うんだけど
それは隠す様な事じゃないし、私に何度か勉強教えてなんて言ってきた事もあるくらいだ
要するに、私にも言えない様な事があるんだろう

私も梨沙子に全部を話すワケじゃないけれど
隠し事なんてした事なかったし、聞かれた事は答えて来たはずで

だからなのかは分からないけど、目の前で俯く梨沙子を見ていると
何故だか少しだけ悲しかった

605 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:36



* * * * *


606 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:36

「あっ、危ない…」
「あっ、あぁー…」
「梨沙子大丈夫?」


白いワンピースにジワリと滲むソーダアイスの青
淡い青が滲んでいくのが少し綺麗だな、なんて思っていられない

どんどんと青の面積が広がっていくのを二人で無言で見つめる

607 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:37

「梨沙子、アンタ来年から中学生でしょ…」
「イヒヒィー…キャプテンはもう高校生だね」
「そういう事じゃなくてさー」
「分かってるよー」

梨沙子は青空に映える太陽の様な笑顔を見せる
子どもなのか大人なのか分からない様なその表情は
私にはとても眩しくて、見ていられなくなって
目を逸らしてしまった…

608 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:37



* * * * *


609 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:38

「んー、美味しい…」

大きな一口を開け、フォークを口に運んで行くのを見ると
こぼさないかなって心配してしまうのは、梨沙子がどうも覚束ないから
小さい頃と全く変わっていないこういうところは
私の心をフワッと舞い上がらせる

成長したって言っても結局は外見だけなのかな?
そう考えると、自然と笑みが漏れて来た

「キャプテンも食べる?」
「んー、良いよ…梨沙子が食べたかったんでしょ」
「イヒヒィー…ありがとう」

610 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:39

嬉しそうにまた一口、パクパクと食べる
やっと見せた笑顔は私が作ったんじゃなくて、お皿の上のアップルパイが作ったんだろう

それでもその笑顔はまだ固くって
どうしてこんな事になったのか分からなくて
少しモヤモヤとした黒いモノが私の心の中を埋め尽くす

「梨沙子、何かあった?」
「えっ…何で?」
「んー、何からしくないって言うか」
「…やっぱりキャプテンだなぁ」

611 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:39

梨沙子はフォークをカタリとお皿の上に置いて
一瞬、寂しそうな表情で私を見た
何でそんな顔をするの?なんて言えなくて、少しの間沈黙が続いた

「好きな人出来たの…」
「…うん」
「誰にも言わないでね…その人キャプテンの学校の人なの」

梨沙子がマジマジと私を見つめる
梨沙子の言葉が意味する事は聞かなくても分かってしまった


…だって、ウチの学校って女子校だもん


612 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:40

「良いんじゃない、そういうのも」
「良かった…キャプテンがそう言ってくれなかったらどうしようなんて思っちゃって…」

弱々しく笑いながら、泣こうとしているのを隠しているみたいで
それが私にも伝染してきそうで、
奥歯を食いしばって堪える事しか出来ない

「そんな、言うわけないじゃん…」
「ありがと…」
「で、で…どんな子?」
「キャプテンも知ってるかもしれない」

梨沙子はコロッと表情を変えて嬉しそうに話し始める
あぁ、梨沙子はそんなにもその人の事を思っているんだって分かってしまう
それでも梨沙子の中の私はいつまで経っても“キャプテン”で
変わる事は無いんだろうって悟ってしまった

613 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:41

「その人、変わった名字でね…すごく綺麗な人なの」
「誰だろ?わっかんないなー」
「キャプテンの一個下でね…」

梨沙子は少しずつヒントを出す様に告げて来る
多分、梨沙子は頭の中でその人の事を描きながら
一つずつ確認する様に丁寧に思い出しているんだろう

「…って人なの」
「んっ、そっかー…分かるかも、その人」
「愛理が…あっ、その人の幼馴染なんだけどね、有名人だって言ってたもん」

614 名前:ホットスイーツ 投稿日:2009/06/20(土) 19:42

梨沙子はさっきまでの陰を見せないぐらい笑顔になっていて
それはまるでアップルパイの上で蕩けるアイスみたい
梨沙子の目の前に居る私では溶かす事が出来なかったのを溶かしたのは
目の前に居ない、梨沙子の思い人

「そりゃ、大変だね…」
「うん、でもね頑張るんだ…」

梨沙子は嬉しそうに頷くと、またアップルパイを口に運んだ
ツーっと溶けたアイスがお皿に垂れる
昔ならそれは制服に付いたんじゃないかな?と思うと
私は一気にカフェオレを飲み干した

ただ、それしか出来なかった

615 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:43



ホットスイーツ

fin


616 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:43


ホットスイーツ
>>594-615


617 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:44
更新

更新しました。頑張りました。
今度は早く更新出来る様に頑張りたいです。

618 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:46


ホットスイーツ
>>594-615
清→菅です。

619 名前:gen 投稿日:2009/06/20(土) 19:48
米レス

>>589さん
読んで頂きありがとうございます。
いつか書くかもしれないので、期待しないで待っていて下さい。

>>590さん
ツボですか。私は書いていてキツかったです。
これからもよろしくお願いします。

>>591さん
私も愛理さんにきゅんとしそうでした。
私は3人と言わず℃全員が好きです。

>>592さん
熱いですかね?私は今暑いです。
これからも読んで下さい。

620 名前:gen 投稿日:2009/07/29(水) 22:03



621 名前:gen 投稿日:2009/07/29(水) 22:03



622 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:04



それは夏が連れてきたしるしだった


623 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:05



summer sign


624 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:05

左右逆の世界のみやと現実世界のみやがジッと睨めっこ
一生懸命に手を動かしている
スーッと肌に馴染んでいく、日焼け止めの白
こうやって見ていると、みやの肌は思っていたよりも白くない

「梨沙子、準備大丈夫ー?」
「うーん、ちゃんと出来てるよー」

毎朝、毎日、毎回
外出するとき、みやは入念に日焼け止めを塗る
私だけのときは全然良いんだけど、ちぃとか熊井ちゃんが一緒のときは
少し嫌味になってるんじゃないかなって、私がヒヤヒヤしてしまう
625 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:06

“やっぱ、焼けたくないじゃん”

みやがそう言う度に、私はそんなにしなくても良いじゃんと言ってきた
それでもみやは努力を怠らなかったし、
その度に私はそんなみやを見つめてきた

ただ、何も言わないで
ただ、ずっと真っ直ぐに…

626 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:06



* * * * *


627 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:07

私の通う中学校まで歩いて20分くらい
みやの高校はそこから5分くらい行ったところ

田舎の学校だから年々生徒数が減って行く一方で
どっちもいつ潰れてしまうか分からない様な状態
それでも、ゆっくりと流れる時間を感じる事が出来る
私はそれが凄く好きで、みやも多分そうなんだと思う

628 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:07

だから、私たちは毎朝海沿いの道を歩いて学校に向かう
二人一緒に並んで歩いたり、私がみやの後ろを歩いたり
喋ったり、喋らなかったり

1日はだいたい二人の気分によって決まって
みやが機嫌が悪いと私はちょっとだけ悲しくなって
みやが機嫌が良いと私は結構嬉しくなったりした


それでも一人で歩くよりは二人が良くて
丁度、良い数がみやと居ると“2”だっただけ

629 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:08

そして毎日みやは一瞬、海を見て立ち止まる
私もみやが歩き出すまで海を見る
みやは歩き出す前に絶対「夏になったら一緒に遊びに行こう」と
小さく呟いて、一人納得した様に頷いていた


それを聞こえない振りで流していたけど
心臓はバクバクと打っているのを必死で隠そうとしていた
それくらい嬉しかった

630 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:08



* * * * *


631 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:09

「梨沙子、帰ろう」
「うん、あっ…ちょっと待って」

みやが浜から道路へ上がりかける姿を見て
私は走り出そうとしたけれど、上手くいかなかった
ミュールのストラップで踵が擦れて赤くなっている

毎日の様にみやと海に遊びに来ていた
めんどくさいって言うのもあったけど、一番の理由はお気に入りだから
それで毎回このミュールを履いていた
それがたたったのかは知らないけれど、いつの間にか踵は赤くなっていた

632 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:09

「どうかしたー?」
「んー、靴擦れ…」

駆け寄って来るみやと足を交互に見て、私は力なく笑うしか出来なかった
年の差とかじゃなくて、私とみやの間には大きな違いがあると思う
慣れた友達とだと落ち着かない行動ばっかのみやは
なぜか私の前ではすごくしっかりしている気がする


あれも、これも、それも、どれも

633 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:10

「あちゃー…大丈夫、じゃなさそうだね」
「…、うぅん、大丈夫だよ」

しゃがみ込んだみやが、私の足に触れる
靴擦れした場所よりも触れられた場所の方が熱を持っている気がする
そんな風に思っているのに黙ったまま、みやにされるがままでいるしかない
ドキドキが止まらない
それはどうしてもみやに伝わったらダメだと言い聞かせる

「んー…じゃあ、ウチの代わりに履きなよ」
「えっ?」
「ほらウチのビーサンだしさ、梨沙子のだったらウチも履けるし」

しゃがんだままのみやがサンダルをポンと脱ぐと
今度は私の足に手を掛け、ミュールを脱がせる
妙になれた手付きに見えるのは様になっているからだろうか?

634 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:10


みやが何かをする度に絵の様に綺麗だなって思ってしまう
幼い頃から一緒の私が今でも心奪われてしまうくらいだから
他の皆はどうなんだろう?と思う

635 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:11



* * * * *


636 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:11



“皆が言うほど器用じゃない”



みやは口癖の様に私にそう言う
うん、と私は頷くけれど、納得いかない部分もある

確かにみやは不器用だ
感情を上手く現せないし、バカだし、そんな事に気付いていないし
近くに居る私が気付いてあげなきゃ、自分で気付かない事も多々ある

それでもやっぱりみやは器用だと思う
陰で努力をしているのをしっかり発揮出来るのは器用な証だと思う

637 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:12


そんなみやを私はずっと見てきた
そんなみやが不思議だなって思う時もあった
まるで矛盾しているって思う時だって


それでも矛盾が私はたまらなく好きだった
だって、それがみやがみやだっていうしるしだから


638 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:12



* * * * *



639 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:14

「ほら、はい」
「あっ、大丈夫なのに…」

私の言葉には耳も貸さないで、みやは私にサンダルを履かせる
みやによく似合う色の赤いビーチサンダル

(なんだかなぁ…)

なんだか、恥ずかしくなる
みやが履かせてくれた事

何となくだけど、シンデレラの気分が分かった様な気がする
履かせてもらってるのはガラスの靴でもなくて
みやのサンダルなんだけど…

640 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:15

「これで痛くないでしょ?」
「ごめん…」
「何で謝るのさー?梨沙子が歩けなくなるより良いでしょ」

みやは立ち上がって砂を手際よく払って
私に手を差し伸べた



太陽は海に沈んで行こうとしているのに
みやとは正反対の方向にあるっていうのに
なぜだかみやが凄く眩しくて
私は一瞬、ほんの少しだけ俯いてしまった


641 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:15

「大丈夫?」
「あっ、うん…」


みやが差し伸べた手を取って、立ち上がろうとした瞬間だった


「あっ…」
「んっ?」
「イヒヒ…何でもなーい」
「変な梨沙子」


みやは気付いていない
だけど、私は気付いている


642 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:16

それはいつもの事で、なんら不思議ではないけれど
私はそれが嬉しくなる
だから、私は笑みが零れる

みやの足の甲
うっすらと白い線が走っている
それは丁度、サンダルの鼻緒があたる場所
要するに、日焼けのアト

毎日、念入りに日焼け止めを塗っていたみやが見落としてしまったところ
教えようかな?うぅん、教えない…

643 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:17


あと少しだけ、そんなおっちょこちょいなところを
夏が連れてきた可愛いしるしを、私だけが気付いておこう


そう思って少しだけ強くギュッとみやの手を握った


644 名前:summer sign 投稿日:2009/07/29(水) 22:17



summer sign

fin


645 名前:gen 投稿日:2009/07/29(水) 22:19
更新

久々の更新をしました


>>622-644
summer sign (菅×夏)


646 名前:名無し 投稿日:2009/07/30(木) 11:10
いいですね〜!
穏やかなりしゃみやは読んでて癒されます
647 名前:名無し飼育 投稿日:2009/08/01(土) 19:58
りしゃみやってほんとかわえぇ><
648 名前:gen 投稿日:2009/09/16(水) 21:34



649 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:34



ずっと一緒だなんてそれは嘘で

それなら今も嘘になってしまう…

650 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:35



blue are still blue


651 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:35

もう9月も半ばだと言うのに真夏の様相が残る太陽
それでも本当の夏よりは幾分か涼しい
そんな今日、プールに足をつけて
まるで子どもの様にパシャパシャと飛沫を立てる姿は
妙に綺麗で視線が外せない

「冷たくない?」
「うん、気持ち良いよ。えりも来る?」
「遠慮しとく」

お昼過ぎ、授業を抜け出して舞美と2人で忍び込んだのは
体育館の裏にある人目にはつきづらいプール
最初はご飯を食べるだけと言う名目だったのに
なぜか本鈴がなったのも気にせず、舞美は堂々と居座っている

652 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:36

舞美と違って優等生じゃないウチは
先生に見つかった時の事を考えて木陰になっている隅の方に
体を縮めて隠れる様に座っている
何をするでも無く、ただ単に舞美を見つめている

「えりさー、進路決めたんだよね」
「うん、一応ねー」
「そっかー…早いなぁー」

舞美はプールに浸けた足先を見つめながら間延びした返事をする

653 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:36

皆からしたらウチが舞美のあとを追っている様に見える事の方が多いかも知れない
だけど、実際は逆のパターンを方が多くて
ウチがパッと決めた事でも、舞美はじっくりと考える事の方が多い

その理由は分かっている
ウチの方が舞美よりも出来る事が少ないからだ
消去法ではないけれど、出来る事を選んで行けば辿り着く事しかしない
加えて、ウチは色んな事にそこまで興味とか関心を持たない
だから、一度決めてから迷う事も少ない

舞美はそんなウチとは違って色んな事に興味を持って
そして、それを実行するだけの能力もある
だから、皆が思うよりも悩んでいるのをウチは知っている

654 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:37


「あー、私もえりと一緒にしようかなー」

だから、そんな事を言われると悲しくて
そして少しだけイラっとする

「て言うかさ、ずっと一緒がいいなー」


655 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:37


でも、それが本音じゃなくて、
弱音なんだって気付いてあげられるのもウチだけで

ちょっとだけ嬉しくなる


656 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:38

それでもウチは喜んでなんて居られなかった

「そんなの無理なんだよ」
「分かるけどさー」
「プールだって本当は青くないし、水色なんて色はない」
「…どういう意味?」

ウチは舞美の隣まで移動する
キョトンとした顔の舞美を無視して両手で掬える限りの水を掬う
そして、空に向かって目一杯まき散らした

「そして、最後はどこかに消えちゃう」
「んー、難しい…」

657 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:39

キラキラとした水滴がウチと舞美の上にパラパラと舞い落ちる
ずっと一緒なんて、そんなの幻で
ただの気休めの嘘でしかない
それでも、舞美がそんな事を言っちゃうのは
ウチには到底理解出来ない、そう思った

「だからさ、あんまり舞美にそう言う事言ってもらいたくない」
「そっかー…えり、何か冷めてるね」
「そうじゃないよ、ちょっとだけ舞美の前に居るだけ」

ウチがそう言うと、舞美はウチを見てほんの一瞬、寂しそうに笑って
また、目の前に広がる大きな水たまりを見つめる
そんな舞美の隣で、靴を脱いで舞美みたいに靴も靴下も脱ぎ捨てる
スーッと水に浸けた足にはヒンヤリとした感覚が走る

658 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:39

「なんだかんだで私たちって高3なんだねー」
「そうだねー」
「えりにまでそんな事言われるなんて思ってなかった」
「失礼な事言うなー」

ハハハと笑っているけれど
胸にモクモクと広がるのは雨雲の様な空虚

ちょっと前のウチなら、舞美みたいな事思ったのかな?
それは分からないけれど、
それだって空に放った水の様に散り散りになるんだろう

659 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:40

「でもね、えり…」


どれだけだろう、沈黙が続いたあと
舞美は水の様に透き通るほどの声で私を呼んだ
「んっ?」と返事をしようとしたその時だった…



バシャーン!!!


660 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:41

大きな音が聞こえたと思ったら、
体全体にビリビリとした感覚が生まれる
目の前には限りなく青の世界が続いている…

あっ、プールの中に居るんだ
そんな事、悠長に思っていたいんだけど
本能がそうさせてはくれなくて

必死で手足を動かす命令が出ている

661 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:41

「ぷはー…ちょっと、舞美!!」
「やっぱり、プールは青いよ」
「…」
「私が今、えりと見たのは綺麗でどこまでも続く青だったよ」

水が滴っているからか、涙を流しているからなのかは分からないけれど
舞美は泣いた様な顔で笑った

「だから、今だけは嘘じゃない」
「…」
「だから、今はまだえりと一緒に居たい」

662 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:42

それでも強い意志の隠った舞美の瞳は
ウチの事をしっかりと捉えていた


だけど、ウチは上手く舞美に笑えなくて
舞美の頬を伝う水は青くなんてなくて
その向こうにある舞美の肌を透かしているだけ

663 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:43



それは何の色も無く、ただ零れ落ちて消えるだけの

ウチの心みたいでしかなかった



664 名前:blue are still blue 投稿日:2009/09/16(水) 21:43



blue are still blue

fin



665 名前:gen 投稿日:2009/09/16(水) 21:45
更新

久々に更新しました

>>649-664
blue are still blue (梅×矢)

666 名前:gen 投稿日:2009/09/16(水) 21:46
米レス

>>646さん。
アフォな2人は無駄にはしゃぐか穏やかなのが似合うと思います。

>>647さん。
私もそう思います。可愛くて綺麗な2人が大好きです。

667 名前:gen 投稿日:2009/10/21(水) 00:56



668 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 00:57


そっちから見える世界と
こっちから見える世界は違っていても

確実に一つの穴で繋がっている


669 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 00:57



ドーナツに死す



670 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 00:58

キャーっと言葉で現せない様な皆の声が響く
昼休みのそんな廊下で舞はいつも通り友達と話している
開け放たれた窓の桟にちょこんと腰掛ける様にして
吹き込んでくる風の心地良さに目を細める

「それにしても舞ちゃん背、伸びたよね」
「あー、うん…結構伸びたねー」

額に掛かる髪を上目遣いで眺めて頭の天辺に意識を集中させる
そんな事なんてしなくても背が伸びたのは分かっている
毎日、舞の隣に並ぶあいつのせいで
嫌って言うほど思い知らされるから

671 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 00:59

「ちょっと羨ましいかも」
「そう?これくらいで止まれば良いけど大きくなり過ぎるのは嫌かな」
「それって、岡井先輩のため?」
「…っ、違うっ!!ただ、嫌なの大きくなり過ぎるのが」

友達がからかう様に顔をにやけさせて、舞を覗いてくる
それを手で払いのけて、桟から飛び降りる
スカートを叩いて、正して、真っ直ぐと姿勢も正す
う〜ん、やっぱり見える世界も変わっている
それくらい背が伸びたみたいだ

「まず、舞の好きなタイプは背高い人だから。千聖は無いの」
「えー、でもいっつも一緒に居るじゃん」
「だって、幼馴染だから」

672 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 00:59

幼馴染、一言で簡単に片付けられる言葉だけれど、事実でしかなくて
舞と千聖の関係はその“幼馴染”でしか無い

舞の幼馴染の中で一番年が近くて、一番気があって
気兼ねなく何でも言い合える仲だから
他の皆より、一緒に居る時間が長くなっただけ

だから、皆が思う様な漫画みたいな関係では無いし
千聖も多分、舞と同じ気持ちだと思う
家族ではないし、友達でもない
当然、恋人でも好きな人でもない


ただの幼馴染


673 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:00

「わー、舞ちゃん酷いんだー」
「げっ、千聖…」

私が友達にそう言い切って、何度か頷いた時だった
グッドなのかバッドなのか
私が千聖を話のネタにした時に、よくその場に現れる

「千聖だってこれからグーンと伸びるんだぞ!!」
「もう無いって…千聖ずっと言ってるけどちっちゃいままじゃんか」
「うっわー、ほんと酷い!!」

千聖はキャンキャンと犬が吠えるみたいに喋る
舞だって言えた立場じゃないけど、滑舌が悪い千聖だから
それが本当に犬が興奮したときみたいで、面白くて仕方ない
千聖は真剣な顔なんだけど、それが更に面白さを助長する

674 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:01


だからかな?ゲラゲラと笑う声で聞こえなかったのかな?


「もう良いよ、舞ちゃんなんて…」
「えっ?」
「もう、帰るっ!!」

千聖がクルリと踵を返して、歩いて行く
あれ?千聖機嫌悪くない?舞、何か悪い事したっけ?

「舞ちゃん、ちょっと言い過ぎだったよー」
「えっ?いつもあんな感じだって」
「でも、先輩怒ってるみたいじゃん…」
「……大丈夫、いつもと、一緒だから」

675 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:02

千聖の背中を眺める
もう、随分遠くまで行っていて、
あと5歩も行けば階段を上がって教室までまっしぐらだろう

何となくモヤモヤする…
いつもの千聖なら、口であんな事言いながらも笑ってプロレス技かけてくるのに
変なの、千聖…何か、おかしいよ…

フツフツと怒りが込み上げてくる
でも、何かが出来るわけじゃなくって
ただ唇を尖らせて、千聖の居なくなった廊下の先を見つめていた

676 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:02



* * * * *



677 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:03

「舞、ちょっとこれ千聖ちゃんにあげてきて」
「えー…」
「作り過ぎちゃったのよ、ドーナツ」

こういう日に限って、お母さんはタイミングが悪いとしか言いようの無い事をする
私がつまんでいたドーナツはお母さんの手作りで
少し油っぽいけれど、砂糖が良い感じにかかっていて私のお気に入りだったりする
ちなみに千聖も好きだって言って、お母さんを喜ばせてたっけ?
だからかどうか知らないけど、ドーナツを作る時は大量に作っては
千聖の家にもお裾分けしている

「あんた、暇でしょ?ちゃっちゃと持って行ってあげて」
「…仕方ないなぁ〜」

あと一口の大きさになったドーナツをモグっと食べて
重い腰を持ち上げた

678 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:04


…ホント、気が乗らない

でも、文句を言ったって解決するわけじゃないし
舞、そういうの以外と責任感じてやっちゃうタイプだし
千聖に会わないで、ドーナツだけ岡井家に届ければ良いわけだし
ちゃちゃーっと、ちゃちゃちゃーっと片付けちゃえば良いわけだ

千聖の家は私の家から歩いてだいたい375歩くらい、隣の隣のその家の前
斜向いとか難しい言葉は使わないし、使えない
ただのご近所さん、そんな感じだ

人差し指でボタンを押せば、ピンポーンと間延びしたチャイムがなる
「はぁーい」と千聖のママの声が聞こえると「舞でーす」と簡潔に答えた

679 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:04

トットットと家の中から音が聞こえると
カチャリとドアが開いた

「…千聖」
「舞ちゃん…」

少し上に目線を向けて、ドアが開くのを見ると
一番最初に見えたのが千聖だった
最悪、最悪、最悪…
今日、ちょータイミング悪い気がするんですけど?

「ドーナツ、お母さんが作ったから持って行けって」
「あ、あぁ…ありがと」
「これ…」

680 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:05

少し乱暴にドーナツの入った透明のタッパーを渡す
それを少し落としそうになったけど、しっかりと受け取って
ジーッと中身を見つめて、蓋を開けて一つ摘んだ

「ありがとうございますって伝えといて」
「うん…」

ニコニコとドーナツを摘んだまま、千聖は舞に笑いかけた
さっきまで千聖に会いたくなかったはずなのに
今はその笑顔にちょっと嬉しくなったりしてる


…こういう切り替えの早いところ、千聖の良いところなんだよね


681 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:06

「千聖、あの、あのさ…」
「おや?このドーナツ小さくなった?」
「はぁ?」
「穴から見える舞ちゃんの大きさがいつもと違うぞぉ〜?」

千聖はドーナツの穴から舞の顔を見つめる
クリクリとしたドングリ眼がキラキラと輝いていて
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ眩しく思えた

「そうかも…お母さんに言っとく、ドーナツ小さいって」
「うん、もーっと大きいの食べて千聖は大きくならなきゃいけないんだから!!」
「…うん、決して舞が大きくなったんじゃないよ、ドーナツが小さくなったんだよ」
「へっへー、そうでしょ、そうでしょ」

682 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:07

千聖がニカっといつもみたいに笑った
そして、パクリとドーナツにかぶりついて、あっという間に食べ終えた
その姿を見て舞も笑いたくなって、大きな声を出して笑った

あれ、さっきまで機嫌悪かったはずなのに
千聖に会うの、億劫に思ってたはずなのに

ドーナツの穴から覗いた千聖の目に吸い込まれそうで

そんなこと忘れてしまったみたいだ

683 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:07


なんとなくだけど、ドーナツの穴に落ちたらこんな気分なんだろうと思った
それは一瞬だけどずーっと続いていく様な

それくらい、舞と千聖の関係も続けば良いなって、ちょっとだけ思った


684 名前:ドーナツに死す 投稿日:2009/10/21(水) 01:08



ドーナツに死す

fin



685 名前:gen 投稿日:2009/10/21(水) 01:09
更新

更新しました

>>668-684
ドーナツに死す (萩×岡)

686 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/26(月) 00:13
ええですなぁ
687 名前:gen 投稿日:2009/11/01(日) 22:40



688 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:40


左腕の時計と背後、頭上にある時計の針を見合わせる
少しのズレはあるけど、時間は大体同じ
もう午後1時になるちょっと前だ


689 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:41



Don't be late



690 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:41

休日の駅前は沢山の人で賑わっていて
あまり、と言うかかなり小さい方の私には結構辛い場所だったりする
それでも、待ち合わせをしたいって言った彼女のワガママを聞いて
今回も駅前の時計の下で待ち合わせってことになった

基本、桃は待ち合わせが好きだ
大勢の時でも、二人きりの時でも、どこかへ行く事になったらまず
『どこで待ち合わせする?』
と、いの一番にそのセリフを吐き出す

691 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:42

それまでは別に可愛いもんなんだけど、
桃のダメなところは、自分で決めておいた待ち合わせに堂々と遅刻するところだ
と言うか、時間に間に合ってきた試しが無い

それならば、こっちも遅刻してやろうと思うのだが
仮に、もし万が一、億が一にでも桃が時間通りに来てしまっていたなら

『あー、あー、キャプテン遅刻ー!もぉの事待たせていいんですかぁ〜?』

なんて言い出しそうだから、迂闊にそんな事は出来ない仕様になっている

692 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:43

今日もいつも通り桃が待ち合わせ時間の午後1時に来る気配は無い…
慣れた事とは言えど、ちょっと精神的に疲れる

“またかぁー”って怒りたい気持ちと
“事故とかじゃ無いよね?”って心配する気持ち

桃が遅刻の確信犯で常習犯であるとは言え、
後者の可能性が全く無いワケではないから、
私はいっつも桃が来るまでどんな顔をして待っていたら良いか分からない

693 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:43

「キャープテン!!」
「遅い…」
「えー、今日早い早い!!だってまだ10分だよ?」
「遅刻に変わりないじゃん」

どんな風に桃を見たら良いか分からないから、
腕時計を見て、頭上の時計も確認する
確かに桃が言った通り長針は2を指すか指さないか微妙なところにある
いつもの桃にしては早いのは認めざるを得ない

「でもね、この前キャプテンちょー怒ったじゃん」
「あー、そう言えば」
「だから、今日は頑張ってみたんだよ?」

694 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:44

何が“でもね”なのかは分からないけど、
それも桃と話していると頻繁にあることで
ツッコミはじめたらキリがなくなるから最近ではスルーが多い
だけど、それも桃が気付きはじめたみたいだから
効果を発揮できるのがいつまでになるかは時間の問題みたいだけど…

「あぁ、うん…て言うか、遅刻してるって自覚あるなら」
「あーあー、それ前も聞いたから聞きたくなーい」
「いやいやいや…100歩譲って私との待ち合わせは遅れても良いけどさー、他の人の時は…」
「ちょっとずつ早くなってるんだよ!」

エッヘンと言いながら胸を張って、得意気な顔をする桃
威張る様な事じゃないんだけど
桃が言うと何だかそれが当たり前の事の様に聞こえて
ちょっと笑いそうになってしまう

695 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:44

「分かったからさ、遅刻はダメだよ今度から」
「はぁーい」
「うわー、絶対思ってないしー」

いつも通りに桃が遅刻したパターンと同じで
私がお小言をくれてやって、桃がそれに適当に返事をする
結局、それは桃に届いていないみたいだけど
何と言うか定番になってしまった行為だから、しておかないと落ち着かない

696 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:45

「でもね、キャプテン」
「んー?」
「桃の事心配してくれてるってのはちゃんと分かってるよ」
「んー…」
「反応うすーい!て言うか、何かイライラしてない?もぉが遅刻したから?」

さっきの話題とテンションを引っ張ったままの桃は
歩き始めて半歩前を行く私の腕をチョンチョンと突いてくる

て言うか、また意味の無い“でもね”を使った

て言うか、いちいち桃の行動が気になってしまってる…

697 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:46

「あー、もうっ!!」

本当はいつも通りの事なんてしなくたって良い
ただ素直に一言、桃に言えば良いだけなのに…
簡単に言える一言なのに…

「ねぇキャップ、どうかした?」
「遅刻、ダメだってやっぱり思うよ」
「だからーそれは謝ってるじゃん、ごめん…」
「でもね、本当はそうじゃなくて…」

あっ、“でもね”がうつった
違う、そう言う事考えなくて良い

今は、伝えなきゃ、ちゃんと桃に伝えなきゃ

698 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:46



「結構マジで心配してるし、何よりも早く桃に会いたいって思ってるの」
「えっ?」
「だから…だから、遅刻はして欲しくない」



699 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:47

そう言い切ってちょっと俯く

後悔なんてしていない、ただちょっと恥ずかしいだけ
もう何回もしてきた桃の遅刻に対して、初めてこんな風に素直になってみたから


でもね、グズグズしてられないって思ったから


700 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:48

「…分かった、もうしない、絶対しない」
「まっ、期待はしてないけど」
「わー、ひどーい!!」
「今は、桃がちゃんと来てくれるだけで良い…」

やっぱり、まだ少しだけ恥ずかしくって
私は後ろでワーワーと何かを言ってる桃を放って、ズンズンと歩いていく
遅刻厳禁でグズグズするのも厳禁、そんなテンポで歩いていく

「もー、キャップ待ってよー」
「やだ。早く来ないと置いてくよー」
「えー」

701 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:48


でもね、少しは待ってあげる
だって、桃が隣に居てこそだから

そのためなら、少しだけ待ってあげる


702 名前:Don't be late 投稿日:2009/11/01(日) 22:48



Don't be late

fin



703 名前:gen 投稿日:2009/11/01(日) 22:49
更新

更新しました

>>688-702
Don't be late (嗣×清)

704 名前:gen 投稿日:2009/11/01(日) 22:51
米レス

>>686さん
ええですか?ええんですかね?


これからもよろしくおねがいします。

705 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/07(土) 00:57
お姉さんズ最高!!
706 名前:gen 投稿日:2009/11/18(水) 21:28




707 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:29



その言葉は空耳じゃなくって
しっかりと、あなたの口から出た言葉だった



708 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:29



白い息



709 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:30

充電器に差した携帯電話が机の上で震える
あと少しだけ予習をして寝ようと思っていたから
メールしていた子にも『おやすみ』って送ったはずだし
こんな時間だから、何か急用なのかな?と思って
人工的な光を見つめると、大好きなあの人からの電話
急いで出なきゃって思うんだけど
緊張してしまって、深呼吸を一つ二つ最後に三つ目

電話を手に取るとやっぱりちょっとだけ落ち着かない
私の手自体も震えてるみたいで
ちょっと可笑しくなって笑ってしまう

710 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:30

「もしもし、みや?」
『あっ、愛理?ごめん遅くに』
「うぅん、起きてたよ」
『出るの遅いから寝たかなって思って切ろうとしてた』

電話から聞こえてくる声もいつもと変わらず綺麗だ
みやは出会ったときから変わらない
見かけが派手なのもあるけど
内から出てくる何かがあって、自然と目立つ様な人
どうして出会ったのかなんて思い返してみたら
恥ずかしさで顔が熱くなってしまう


それでもそれは大事な思い出で
だから今、私はみやに恋をしているんだ

711 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:31



* * * * *



712 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:31

「何してんの?」

よく通る声が背後から突き刺す様に聞こえた
ビクリと肩を竦ませると
自然と全身から汗がジワリと出てくるのが分かった
バッグに入れようとしていた漫画がパタリと床に落ちた

別に出来る限りの悪い事だったら何でも良かった
ただ、良い子で居たくなかった
反抗期だったのかも知れない
だから、私は欲しくもない漫画をバッグに入れようとしていた

だけど、失敗に終わった
と言うか、失敗させられた?

713 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:31


「……」

謝る事も、言い訳する事も、振り返る事もしない私の手をギュッと掴む
引っ張られる様にズンズンと進んでいく背中をチラッと見る
サラサラと揺れる髪は弾ける様な明るさで
何となく申し訳ない気持ちと後ろめたさが生まれた

多分、お店の人のところに連れて行かれるんだろうと
そう予想していた私は頭の中でどうやって謝ろうか考えていた
でも、未遂だから大丈夫なのかな?なんて思ったり
ただ、引っ張られるがままに私は歩いた

714 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:32

「あっ、ごめん。痛かったよね?」

連れて行かれたのは本屋さんの外、少し離れた所のベンチ
フーッと大きく息を吐いたのは私じゃなくて、目の前の人
後ろ姿も綺麗だったけれど、顔も凄く綺麗だ
私は最悪なところを見られてしまったと言うのに
かなり悠長にその人の事を観察していた

「ウチがいきなり言うのもなんだけど、しちゃいけないと思う」
「ごめんなさい」
「理由は知らないけどさ、欲しかったならちゃんと買うべきだよ」

真面目な事を言っているのに、少し頬を赤くして
照れている様な表情で、そう言った

715 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:32

「欲しかったわけじゃないんです」
「じゃあ、何でさ…って、ウチが聞いていい様な事じゃないよね」
「いえ、少し聞いて欲しいかも」

初めて会った私に、いきなりそんな事言われちゃうなんて
普通だったら想像すら出来ないのに
ちょっとだけ困った様に眉を下げるだけで
優しく『うん』と頷いてくれた

716 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:33

あんな事をしようとした理由は支離滅裂だった

何となく、親と上手くいっていない事
学校が少し楽しくない事
良い子で居るのに飽きた事
だから、最近皆に良く思われていないこと
そのせいでイライラして人に当たっちゃう事
私が自分勝手に思っている様な事を全部ぶちまけた

誰かに聞いてもらってる、それだけなのに凄い安心感があった
全く知らない人なのに、受け止めてもらえるだけで嬉しかった

「そっか、大変なんだねー」
「そんな、自分勝手なだけって分かってるんです。でも…」
「ウチなんかと比べたら偉いなーって思うよ、ちゃんと自分と向き合えてるって感じで」
「でも…」
「ずーっと我慢してきたなら、時々は息抜きしないとだよ?」

717 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:34

ニコリ、と言うよりもニヤリの方がぴったりハマる様な笑顔
それでも私とは違って大人びていて、
それでいて可愛らしさと言うよりも幼さもある様な、そんな感じ

それを見て、私の胸はキュッと締め付けられる様な音を立てている

「でも、流石に万引きは…」
「分かってます、ダメだなーって思ってます」
「うん、なんか安心した…チラッと見えてさ、何で君みたいな子がーって思ったから」

そんなに私、バレバレな感じだったのかな?
自信があったとは思わないけど
結構、バレない様にやってたのに…

挙動不審で大人しそうに見えたからって
何でそんな事しちゃってるんだろうって
そんな事させたくないって思ったって
正義感なんかじゃなくて本当に不思議に思ったって

718 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:35

「ごめんなさい」
「良いよ、結局何もやって無いじゃん…良かったよ」
「ありがとうございます」
「お礼を言われる様な事は…」
「でも、凄く気持ちが楽になりました」

私が深く頭を下げると、慌てたみたいで
すぐに私の体を起こそうとする

「助けになったなら、良かったけどそこまでは…」
「本当にすっきりしたんで」
「ん、じゃあさ…」

719 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:35

私の顔を見て、またニヤリと笑った
見惚れてしまうほど、格好良くて、可愛くて、綺麗で
はっきりと好きだなって思った

「キツいなって、ギブアップだーって思ったらウチに言って」
「えっ?」
「知ってる人には話しづらい事ってあるじゃん、そういうのはウチに話してよ」

得体の知れない頼もしさとか
掴み様の無い優しさとか
全部が私の、ホントの私に触れてきた

それがみやとの出会いで
一目惚れだったのかも知れない

720 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:36



* * * * *



721 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:36

「…みや、ありがと」
『へっ、何が?て言うか、いきなり…』
「今、みやと初めて会ったときの事思い出してた」

みやに会ってからの私は変わった
私自身もそう思うし、皆にもそう言われた
皆はどうしてなのか分からないって顔をしていたけど
絶対に全部みやのお陰で
感謝の気持ちも凄くある

『そっかぁ…クシュンッ』
「風邪引いたの?」
『いや、ちょっと寒くて…』
「もしかして外に居るの?」
『あーうん…て言うか、愛理の家の前かも』

722 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:37

携帯を持ったまま急いでカーテンを空けて確認する
随分寒くなったって言うのに
相変わらず制服のスカートは短いし
胸元は開いていてダラーっとしてるし
今、風邪引いてなくても、明日には引いちゃう様な格好

友達と遊んでたら遅くなっちゃってなんて言いながら
鼻を擦る姿は私まで寒くてくしゃみが出そうになる

「ちょっと待って、今開けるから」
『いや、このまままで…』
「でも…」

出会ったときは大人だなって、憧れるなーって思っていたのに
どんどん知っていくと子どもみたいに我が儘と言うか、
頑固で譲ってくれない部分があるのが見えてきた

723 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:37

それでも、みやはみやだった
私の愚痴も我が儘も他愛の無い話も
それに皆には寒いって言われる様なジョークだって
優しく笑いながら聞いてくれた

どんどん好きになるしかなかった

『一言だけ言いたい事あって』
「うん」
『顔見て言おうと思ったけど、やっぱり恥ずかしくなって』
「うん」

外との温度差で白く曇ってしまう窓をパジャマの裾で何度も擦って
私はみやから目を離さない様にする
私の部屋の方を見上げているみやは
しっかりとは見えないけれどいつもの様に笑っているみたいで
ちょっとだけ心がポカポカとなった

724 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:38

『あのさ、すごく言いづらいんだけど』
「うん、何?」
『もうこのままじゃ居られないと思うんだ』
「えっ?」
『ウチ、多分愛理とはこのままじゃ居られない』

みやは私の方を見上げたまま、少しだけ表情が変わった
優しくて、不安そうで、ちょっと泣き出しそうで

何でみやがそんな顔するの?
私だって泣きたいよ、みやにそんな事言われて
みやにそんな顔をされて…

『愛理は嫌って言うかも知れない』
「……」
『でもさ、ウチ…もう無理だよ』

725 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:39

何を言われるかなんて分からないって思いたかった
でも、頭の中に、心の中に溢れちゃうよ…

何かあったら全部みやのせいにしちゃうよ?
私まだまだ我が儘な子どもなんだよ?
それでもみやは悲しくならない?
それでもみやはこのままで居たく無いの?


726 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:39




『ウチ、愛理は特別だって思う

 好きだよ、凄く…付き合って欲しい』


727 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:40

みやの言葉を聞いた瞬間私は堪えていた涙が溢れた
何でみやはいっつもそうなの?
私が考えているよりもずっと先に居て
それなのに私の為に手を差し伸べてくれる

『愛理が無理って言うなら…』
「バカ」
『へっ?いや、ウチは確かにバカだけど』
「違う、嬉しい」
『へっ?今、何て?』

素っ頓狂な声を上げるみや
さっきまでの表情はどこへ行ったのかなんて私にも
多分みやにだって分かっていない
それでも私には十分な知らせが届いた
今、涙が出ているけど、一番の笑顔をしてるはずなんだ
それをみやに届けたくて
そんな私もみやに知って欲しくて

728 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:41

「みや!!」

携帯を置いて、窓を開ける
名前を呼ぶと、声は白くなって空に解けていく
夜なのに喜びと嬉しさを隠し切れない私の声
みやの耳にはどう聞こえた?
言葉で伝えなくちゃ分からないかな?

「私も、同じ気持ち」
「…ホント?」
「うん、多分会ったときから変わってない、これだけは変わってない」

それでもまだ“好き”って言葉は恥ずかしくて
真っ直ぐ言えない様なひねくれ者で
やっぱり幼い自分勝手な私だけど
目に見える白い息に変わる、この気持ちは本当で

729 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:41

「じゃあ、ウチって特別?」
「うん、特別」

みやの表情をキラキラと輝かせる事くらい容易くて
涙っではっきり見えないから余計にキラキラしていて
世界中が凄く綺麗に輝いて見えた

「それだけ、言いたかった」
「うん、ありがと…」
「じゃあ、愛理も温かくして寝るんだよ?」
「うん、みやも風邪引かないでね」

うん、と頷いて見せたみやの笑顔は
やっぱりニコリと言うよりもニヤリで
私は小さく笑って、みやを見送った

730 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:42

みやの姿が見えなくなって、窓を閉める前に空を見上げる
月や星がビックリするほど沢山あって
目を奪われると、小さく呟いた

「好き…」

私から出た白が空へと舞い上がる
解けて見えなくなったそれは、みやに届いたかな?
フフフと漏れた笑みは汚れの無い純白で
私のみやへの気持ちみたいで嬉しくなって
フゥーっと一息、大きくみやの消えていった方向に息を吐き出した


731 名前:白い息 投稿日:2009/11/18(水) 21:42



白い息

fin



732 名前:gen 投稿日:2009/11/18(水) 21:43
更新

>>707-731
白い息 (夏×鈴)

更新しました

733 名前:gen 投稿日:2009/11/18(水) 21:44
米レス

>>705さん
お姉さんズいいですよねー、最高です。

734 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/21(土) 22:05
みやあいり!みやあいり!

更新お疲れ様です。
真っ直ぐなみやが素敵でした!
735 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/24(火) 00:27
みやあいり最高!
これからもっとブームがくるはずw
736 名前:gen 投稿日:2009/11/30(月) 00:39




737 名前:gen 投稿日:2009/11/30(月) 00:39




738 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:39

窓は開け放たれていて風が吹き込んでいた
その折に風鈴を揺らし、チリンチリンと季節を告げる
空は青く果てしなく、白く積もった雲は心地良く
蚊取り線香の香りが鼻をくすぐると眠気を誘った

そんな部屋で私は初めてキスをした

739 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:40



ノーカウント



740 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:40

「りさこー…」

襖を開け、そこから顔だけで部屋を覗く
部屋に居るべき人の姿が見当たらない
視線を下へ移すと、ゆっくりと息を立てながら寝ている梨沙子の姿があった
その姿を見ると笑えてきて、クスリと小さく鼻を鳴らせた

「寝てやんのー」

すり足で部屋に入り真上から顔を覗く
随分大人っぽい容姿なのに、寝顔は驚くほど幼くて
何だか親心と言うものが湧いてくる

741 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:40

部屋の角にある机にはノートが広がっている
さっきウチが留守の間に我が家まで来て勉強を教えて欲しいと言ったそうだ
ママが「雅には無理よ」と笑いながら言っていたのが悔しくて
出来もしないのに梨沙子の家にまで出向いていた
椅子に座りノートを見ると、変な意地を張るんじゃなかったと後悔するが
このままも癪なので、イラストを描いて吹き出しにメッセージを添える

手持ち無沙汰になったウチは意味も無く伸びをしてみたり
机の上にある本をペラペラと捲って見たり
そう時間の掛からない動作を繰り返す
その間も梨沙子はピクリともしないで目を覚ます気配すらない
せっかく来てやったのにって思うけど
この部屋の気持ち良さなら仕方ないとも思う

742 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:41

「暇だぁー…」

ボソリと呟いてみるものの、それは窓から外へ出て行き
青い空に吸い込まれていく
帰ろうかと思い立ち上がり、また音を立てない様にソロソロと静かに歩く

それでも何か物足りなくて、梨沙子の横で頬杖をついて寝そべる
ほんのりと赤くなっている梨沙子の頬はプニプニと柔らかそうで
ちょっとしたイタズラ心で突くと、ゆっくりと指が沈む感覚
少し眉を顰めた梨沙子の表情が面白くて
ツンツンとまた何度か突く
眉間に出来た皺に指を乗せ伸ばそうとしても簡単には行かない

「プッ…ブッサイクー」

何度声をかけても起きない梨沙子
死んじゃったんじゃないかなって思うけど
梨沙子の眠りが深いのは昔からで
その度につまらない思いをしてきた事だってある
ただ、暇な事が嫌いなウチには梨沙子ののんびりした性格が合わない
それは分かり切った事なのに、ウチは梨沙子との繋がりが切れない

743 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:42

ジーッと見つめる
呼吸に合わせて上下する胸
うっすらと開いた口がどうしようもなくウチの心を掻き乱した

どうして?なんて聞かれても口を噤んで
答える事は出来ないし、答える気もサラサラ無い
ただ、したかったとしか言えないかもしれない


ウチは梨沙子にキスをした


744 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:42

「……」
「んっ、んぅー…みゃぁ?」
「…わっ、いやっ、みや、そうみやだけど」
「おぁよー…」

こんなにタイミング良く、キスのあとに起きるなんて
コイツは白雪姫なんだろうか?
て言うか、バレてる?バレてない?
それが気になって仕方ないウチはどうも挙動不審になってしまう
そんなウチに気付かないのか、寝起きで頭が働いていないのか
梨沙子は体をのっそりと起こす
目を擦る仕種は小さな頃の面影があって
ちょっとだけウチは落ち着きを取り戻す

745 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:43

「何でー…あぁ、そうだ!!そうだ!!宿題!!教えて」
「えー、あぁ…」
「あーっ、みや落書き!!」
「だって分かんないんだもん」

梨沙子がノートを持ち上げて、ウチに見せる
さっきの落書きを見せられても、どうしようもない
ウチがハハハと笑うと、キッと眉を吊り上げるけれど
全然怖くなくて、ウチは笑う事を止められない

「て言うか、なんでペンで書くのー」
「えー、ペンしかなかったから」
「これ、提出するやつなのに」
「ごめんごめん」

746 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:43

どうしようなんて唸りながら、どうにかして消そうとする姿を見ていると
さっきしたキスの事なんて忘れてしまう
いつも通りの梨沙子がちょっと恨めしくて
でも、それが梨沙子らしくもあって
ウチはさっきとは違った笑みがこぼれた

「もー、笑ってないでどうにかしてよ!!」
「いいじゃん、そのまま出せば」
「いーやーだっ!!私受験生なんだよ、成績ちょっとでも…」
「ウチのとこなら楽勝でしょ?」
「ふぇっ?」
「良いじゃん、梨沙子もウチ来たら良いじゃん」

747 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:44

漠然と、勝手に、ウチはそうなるもんだと思っていた
家が近所で保育所も一緒で、お受験なんてしなかったから小中学校も一緒
だから、年のさなんて考えられないくらい
梨沙子とは当たり前の様に一緒に居る時間があって
なんとなくそれがずっと続いていくって思ってた

「…全部ダメだったらそうする」
「うわっ、何それ?」
「だって、愛理と一緒の高校行く約束したし」
「愛理ちゃんって梨沙子の代で一番頭良い子でしょ?梨沙子には…」
「分かってるよ、でも約束したから頑張るの」

何となくだけど、梨沙子の頬に赤が加わった気がした
なんだよ、いっちょまえに恋なんてしやがって
見かけだけじゃなくて中身も大人になっていってんだなーって思うと
ちょっとだけ、寂しくなった

748 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:44

「じゃあ、その愛理ちゃんに頼れば良いじゃないか」
「バカだって思われたくないじゃん…」
「そういうとこも可愛いって思われるんじゃないの?」
「…そうかなぁ?」
「うん、バカわいいって思われるんじゃないかな」

ウチを見て、また眉を吊り上げた梨沙子はやっぱり怖くなくて
笑うのを止められなくて、
結局同じ事を繰り返してるみたいに感じる

「じゃあ、役立たずのウチは帰りますよ」
「んー、じゃあ、また。」
「うん。頑張れ」
「うん。」

梨沙子は体を精一杯ウチの方に向けて手を振る
やっぱり、幼いよ、梨沙子は
そんな梨沙子にウチも手を振って、部屋を後にする

749 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:45

外に出て、青い空を見上げてある事を思い出す


「ウチ、失恋したんだ…」

そんな大切な事に直ぐ気付かないなんて
ウチって梨沙子よりかなりバカなんだって思うと

さっきの内緒のキスはノーカウントにしてあげなきゃと思った



750 名前:ノーカウント 投稿日:2009/11/30(月) 00:45



ノーカウント



751 名前:gen 投稿日:2009/11/30(月) 00:46
更新

>>738-750
ノーカウント (夏×菅)

更新しました。次回まで続くgdgdなやつです。

752 名前:gen 投稿日:2009/11/30(月) 00:48
米レス

>>734さん。
みやびちゃんはバカなので一直線だと思うのです。

>>735さん。
ブームが来たら良いと思うけど今回はりしゃみやってます。

753 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/01(火) 20:58
みやぁ…

でもりしゃあいりも好きです(`・ω・´)キリッ
754 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/02(水) 17:44
たまには片思いのみやびちゃんもいいですねえ。どこの小説見てもいつも梨沙子ばっかり不憫なのでw
755 名前:gen 投稿日:2009/12/05(土) 21:36




756 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:37

自動ドアが開くと店員さんのお決まりの挨拶を背に寒空の下へ繰り出す
ビニール袋を揺らさない様に慎重に持つ
中に入ったおでんが揺れて零れない様に一歩をいつもより少しだけ遅めにして
それでも家へはやる気持ちを抑えられない

そんなウチを邪魔するのは寒さだけで
敵無しのルンルン状態だって言うのに
突然、背後から衝撃が走る
ナイフで刺された事何てないから、もしかしたらそうかもしれない
多分、本当にそうだったとしてもビックリしてる事で頭は一杯になるんだろう

757 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:38

「……みゃ」
「梨沙子、危ない、転けるじゃん」
「…大丈夫」
「あんたじゃなくて、ウチがっ!!」

ナイフじゃなくて良かったなんてアホな事考える暇も無くて
ただ、アホなヤツのせいで寿命が縮んだとは思った

758 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:38

ウチが勝手に失恋してからもウチと梨沙子は変わらなかった
と言うか、何か変わるならウチのせいだし
ウチが変わらなければ、変わる原因なんて何一つないのだ
だから、会えば今まで通り他愛のない話をして
梨沙子はホントアフォだなんて思って
梨沙子はやっぱり可愛いななんてちょっと思って
ウチが梨沙子にどう思われてるかなとかちょっと考えてみて
あのキスは気付かれてないみたいで安心して

だから、よく自問自答する
ホントに梨沙子が好きなのか?って
イエスでありノーである様な気がする
確かに可愛くて、妹みたいだって思っていた気持ちが強くて
それが大きく成長していたのは、自覚している
ただ、それが正真正銘の“好き”なのか分からない
だから好きと普通の間の線の上をフラフラと行ったり来たり

759 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:38

でも、かなり好き側に傾いているのは確かだ
だって、梨沙子に会えただけでちょっと嬉しくなってるから
だって、梨沙子に会うとかなり笑顔になってる気がするから

「ごめん…」
「別に良いけど…て言うか、何かあった?」
「……」

だから、夏が終わって短い秋が終わりそうになっている今日まで
ウチはウチで、梨沙子は梨沙子だった
明らかにおかしい今日の梨沙子を放っておく事は出来なくて
背中に抱きつかれたまま、どうしようかと首を傾げる

760 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:39

「ここじゃ、邪魔になるし動こう」
「…」

相変わらず、何も喋らない梨沙子は小さく首を縦に動かした
それで背中が少し擦れてくすぐったかったけど
笑わないで、梨沙子の全部を受け止めたいって思っていた


761 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:39



* * * * *



762 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:40

近くの公園のベンチに座って梨沙子が落ち着くまで何も喋らない
制服のスカートから伸びる素足に
冷えたベンチの冷たさはかなり厳しい気がする

そう言えばさっき買ったおでんが冷めてしまうと思って
取り出して、食べようとすると梨沙子がジーッと見つめてくる

「…食べる?」

コクンと首を小さく振り、意志を継げる梨沙子
こんな時でも食い意地には負けてしまう梨沙子は
ホントに面白くて、可愛いなーって思う
口をチュンと尖らせていると、年齢よりも幼く見えるけど
いっちょまえに悩みなんかあるみたいだし
ウチは年上のお姉さんとして優しくしてあげなきゃなーって思う

763 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:40

「たまごと大根どっちが良い?」
「…両方」
「ばーか、どっちか」
「えー…半分こしよ?」

首を傾げて、精一杯の笑顔を作る梨沙子は
ちょっと痛々しくも見えて、だけどウチには破壊力抜群の表情で
仕方ないって頷いて、たまごと大根を半分に切って蓋に乗せて渡した
つくねも買ってあるけど、それは譲れないから分けて上げない

764 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:41

少し温くなっていたけど、まだ温かいからハフハフと息を立てながら食べる
体が芯から温かくなるみたいで、自然と笑顔になりそう
しかも、何の目的でここにいるかなんてどうでも良くなりそうで
いやいや、それじゃダメだろなんてツッコミを自分にしつつも
どうしても、梨沙子と居るときの不思議な雰囲気に包まれてしまう

「ねぇ、みや」
「んー」
「失恋した事ある?」
「あー…あるっちゃ、あるかな」

大口でたまごを頬張る梨沙子をチラッと見る
君にしたんだよ、君に、失恋
なんて、言えるわけなくって、大根を更に小さく一口にして
それと一緒に愚痴を飲み込む

765 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:41

「やっぱ、辛かった?」
「んー?んー…んー、辛かった、かぁ?辛かったよ、多分」
「みや、そういうの私に話さないよね」
「だって、年下に相談なんて出来ないじゃん」

あんた、加えて頼りないし
なんて笑いながら言ってみたけど、そうじゃなくって
梨沙子に梨沙子が好きだったなんて告げたら
失恋の相談じゃなくて告白になることくらいウチにも分かる

766 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:42

「愛理にね、あっ、愛理分かる?」
「うん、頭いい子、可愛い子、お金持ちの子」
「そう、その子…恋人出来たの」

梨沙子は綺麗な水色に浮かんだ真っ白のモコモコした雲をジッと見ている
それをじっと見ているウチに気付く様子も無くて
何を思っているか、考えているかなんて野暮な事は聞かなくても
察しがつくくらいに、梨沙子の気持ちが手に取る様に分かる
でも、ウチの何倍も梨沙子は辛いんじゃないかな?
ウチなんてはっきり好きかどうかも分かってなかったから

「ショックだったんだー」
「そりゃ、そうでしょー…」
「でもねー…」

767 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:42

勘違いなんだろうか?いや、ウチが梨沙子の表情を見間違えるワケない
テンションの割にスッキリとした感じだし
失恋ってなんなのさ?的な問いかけをしてきてるはずなのに
それをそこまで気にしていない様な雰囲気

「そんなショックじゃなかった事にショックなんだー」
「はぁ?あんた愛理ちゃん好きだったんでしょ?」
「うん、でも愛理から恋人出来たって聞いて嬉しかったんだもんっ!!」

768 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:43

口調を強めて、ウチに反論してくる
何故にキレてる?ウチ悪い事言ってなくない?
さっきよりも俄然尖ってきた梨沙子の唇
困ってるんだろうなって分かるんだけど
そんな事話されてるウチの方が困ってるし
好きな人の恋バナされて、
挙句には失恋がショックじゃなかったとか意味分からない事言われるし

「ちゃんと好きだったのに、よく分からなくなって…」
「んー…ウチも分からないよ」
「みやに話そう、って思ったの」
「あっそ」
「最初にみやが頭に浮かんだの、愛理の幸せそうな顔見てると」

769 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:43


“みやに会いたいって思った”



さっきの怒りは落ち着いたのか、急にポツリポツリとした喋り方になる
でも、しっかりと話しているのは本心っぽくて
そーいうところ、素直で羨ましいって思うんだけど
そーいうところ、ガキっぽいって思うんだけど
そーいうところ、梨沙子っぽいとも思うわけで
要するに、そーいうところ、好きだって思うんですよね

「みやに会いたいなってなったんだよ」
「そっか…」
「分かる、今の梨沙子の気持ち、分かる?」

770 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:44

助けを求める様な視線
ウルウルとした瞳に見つめられると
視線外せそうになくて、かなりドキッとしちゃうんだけど
まだ、梨沙子には教えてあげない


“多分、それ好きって事だよ”


なんて事、言えるワケないから
梨沙子に見つめられたまま、ウチはフフンって鼻で笑う
それに気付いた梨沙子がちょっと機嫌を悪くしたって
ウチは絶対に秘密にしておくんだ

771 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:45

「みや、分かるの?」
「さーねー?」
「ぜーったい分かってるでしょ?」
「しーらない」

“えー!!”なんて叫びながら、ポカポカと腕を叩いてくる梨沙子をかわして
いつの間にか少なくなっていたおでんの最後の一口を食べる
なんだかんだで何も変わっていないウチらの関係
今はまだこのままで良いから

いつか、あの梨沙子へのキスが
ちゃんとしたキスだって言える様に


そんな二人になれるまで、やっぱりまだノーカウントにしておこうと思った

772 名前:ノーカウント 投稿日:2009/12/05(土) 21:45



ノーカウント

fin



773 名前:gen 投稿日:2009/12/05(土) 21:46
更新

>>756-772
ノーカウント (夏×菅)

更新しました。終わりました。
頑張りました。

774 名前:gen 投稿日:2009/12/05(土) 21:48
米レス

>>753さん。
こんな感じになりました。りしゃあいりも今度はちゃんと書きたいです。

>>754さん。
片思いの雅さんは多分いつもより2割増くらいで綺麗だと思って書きました。

775 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/06(日) 00:09
あら、なんて素敵な成り行き
776 名前:gen 投稿日:2010/01/31(日) 01:26



777 名前:gen 投稿日:2010/01/31(日) 01:26




778 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:27

まるで犬みたいだ

フワフワと気持ちの良い感触に
チョコチョコと後ろを着いてくる姿
欠伸がうつっちゃうところだってまるで犬

だから言うよ、おやすみ
そして・・・


779 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:27



like a puppy



780 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:27

“誰かの肩が無いと眠れない”なんて
フツーに言われたら、結構引いちゃうような事も
梨沙子が言うと、不思議と“一緒寝る?”と返してしまう
それはウチが梨沙子を甘やかしているわけでもなくて
確実に彼女が持つ魅力のせいだと思う

グループ内では末っ子だって言うのもあるけど
他に理由の無い、説明出来ない可愛さがある

781 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:28

それをウチだけに見せてくれるんなら良いんだけど
無意識に皆にそういうところ見せてるから
ウチはなーんか嫌になっちゃって、
皆の前では梨沙子に優しく出来ないんだ


でも、二人で居たら出来る限り優しくしようって思うんだ


782 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:28

梨沙子の背中にギュッて抱きついて、深く溺れるみたいな感覚を得る
溺れると言っても水の中に沈んで行く感じじゃなくて
フワフワの暖かい“何か”の中に居るみたいな感じ
愛犬ピースくんにグリグリと顔を押し付けた時の感触に似てる

「みやー、どうしたの?」
「んー…」

そんな幸せな一時を作るのが梨沙子ならば
低く響く声だけで簡単に壊しちゃうのも彼女なワケで
案外、ウチの方が振り回されちゃってる
最初はちょっと不本意だって思う時もあったけど
ウチ犬好きだし、仕方ないかってなってきた

783 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:29

「くすぐったいよー」
「んー…でも、梨沙子の背中好きなんだもん」
「えー、なんかそれ嫌だぁー、背中広いみたいじゃん」

“好きなんだもん”なんて、まるで梨沙子みたいな口ぶり
ウチが言っても、あんまり可愛くない
梨沙子の口から聞いた方がやっぱりしっくり来ると思う

でも、自然とそういう口調になっちゃうのって
それがうつっちゃうほどそばにいて
誰よりも近くで聞いているからだって思うと
嬉しくなって小さく笑ってしまう

784 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:29

「みや、息もかかるしくすぐったいって」
「この状態、ダメ?梨沙子は嫌だ?」
「嫌じゃないけどー、なんかみやっぽくないんだもん」

う〜ん、確かにそうだ
ウチっぽくないのは、自分でも分かってる
でも、そういう部分だって元から少なからずはあって
いくら恥ずかしくても梨沙子には見せても良いし、
見てもらいたいって思っている

それは梨沙子がウチになんでも見せてくれるからだ
寝起きの顔だって、怒って膨れてる顔だって、悔しくて泣いた顔だって、
嬉しい時の飛び切りの笑顔だって
ウチは梨沙子に出会ってから、ずーっと、沢山貰ってきた

785 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:30

最初は懐いてくれてる梨沙子が単純に可愛いなって思うだけだったのに
それが五月蝿いなって思っちゃった時もあったけど
昨日も、一時間後も、ついさっきだって、今だって
梨沙子と居たって事実があって欲しくて
出来るならば、結構ずーっと先までそういう事実があっても構わなくて


“ちょっとおかしいぞ、しっかりしろ!!”
って言われても仕方ないくらい、ウチどうかしちゃってる

786 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:31

「えー、ウチっぽくないって?」
「そーゆうことして良いの、私だけだもん」
「ウチだって甘えたいんですー」
「カッコいいみやが良いの、猫みたいにスマートな感じ」

猫、かぁ…確かにウチは猫っぽいって言われるけど
犬の方が絶対好きなんだよなー
あっ、でも梨沙子は猫が好きだし、ウチらって丁度良いのかも
って思うと、ウチ猫っぽくて良かったって思える

787 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:31

「あっ、でもねこうやって時々甘えてくるよ猫も」
「ほうほう」
「だからやっぱりみや、そうでも良いかも」

梨沙子に“良い”って言われるウチ
梨沙子の好きなウチで居られてるって事だし
無理に努力しない、素のウチを好きって言ってくれてるんだもんな
それってちょっと、かなり嬉しい事だ

788 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:32

「みやぁー」
「んー」
「なんか温かくて眠くなってきちゃった」
「そう言えば、ウチも眠いかも」

ウチの手をスルッと解いて梨沙子が振り返る
確かに眠そうでトロンとしちゃってる…

そんな事思った瞬間にどちらともなく欠伸がもれる
もう、これは迷う事無くベッドに直行コースだ

「梨沙子、おいで。寝よう」
「うん、寝る。」

チョコチョコっと歩いて、ポスンとベッドに入る梨沙子を見て
ウチもゆっくりと隣に入る
ほどよい暖かさで、眠気が更に襲ってくる

789 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:32

「ふぁー、すぐ寝付けそう」
「うん、ウチも」
「じゃあ、みや…おやすみ」
「うん、おやすみ」

梨沙子はそう言ってゆっくりと瞼をおろした
それを見届けて、ウチは少しだけ梨沙子の顔を見つめる
言葉通りすぐに規則正しく寝息が漏れ始める
子どもっぽいって思うけど、そこが可愛くて仕方なくて
フフフと笑うとウチも目を瞑りながら囁いた


「梨沙子、お休み…大好きだよ」


790 名前:like a puppy 投稿日:2010/01/31(日) 01:32



like a puppy

fin



791 名前:gen 投稿日:2010/01/31(日) 01:34
更新

更新しました。
like a puppy (夏×菅)
>>778-790

短編。りしゃみや祭り1個目。
ただ可愛くしたかった。

792 名前:gen 投稿日:2010/01/31(日) 01:35
米レス

>>775さん。
遅くなりましたが、そういう成り行きです。
二人の距離はそんな感じです。

では、また。

793 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/02(火) 16:35
( *´Д`)
794 名前:gen 投稿日:2010/02/04(木) 21:22




795 名前:gen 投稿日:2010/02/04(木) 21:22




796 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:22



やめてよそんな笑顔見せるのは
他に何にも見えなくなっちゃうじゃん…



797 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:23



How to walk this way



798 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:23

少し狭いスペースにくっつくようにして2人で座る
それでも窮屈だって思わないのは多分、愛理とだからだろう
美味しいお弁当を大好きな親友と2人だけで食べる
皆に秘密の場所って言うのもあって
ワクワクするし、ドキドキするし
何よりも無駄に気張らなくて良いから純粋に楽しって思える

他愛のない話をしながらパクパクとお弁当を食べる
愛理も私も食べる事が好きだから
この時間はすっごく幸せだって思ってる

799 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:23

そんな事を考えていると聞こえてきたのは着信音…消失点だ
愛理と2人で「みやはこれだね」ってお揃いにした着信音
私のかなって思ったけど、マナーモードにしてたはずだと思ったら
やっぱり愛理みたいで、愛理はかなり速い動きで携帯を開いた
いつもの愛理は私といるとそう言う事あんまりしないのに
どうしたんだろう?って
じーっと携帯を見つめる愛理をみて不思議に思ってしまう

少しだけど、ほんの少しなんだけど
キュッと結ばれていた口がフニャンって緩むけどすぐに元に戻る
だけど、携帯を大事そうに両手で包んでいる

800 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:24

「何かあったの?」
「んっ、いや…みやがあぁ!の打ち合わせしよって、それだけ。」

早口で捲し立てる様に愛理は言う
やっぱり、いつもの愛理みたいじゃない
ちょっと心配になっちゃって愛理みたいに眉が垂れてしまう

「本当に?なんかいつもと違うじゃん」
「大丈夫、ホント心配される様な事はないよ」
「ホントー?隠し事してない?」
「…りーちゃんは心配性だなー」

愛理が笑って、お弁当の蓋を閉める
大丈夫って言っていたけど、何か違う
でも、これ以上何も言えない私はとりあえず考える事を止めて
最後のおかずを大きな一口で食べ終えた

801 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:24



* * * * *


802 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:25

「あっ、愛理遅い。梨沙子おかえり」
「ごめんごめん、りーちゃんとお弁当食べてた」
「ただいまー」
「待ってたんだぞー」

楽屋に戻ると戻ってきた事を声にするよりも先に
みやが私たちを見つける
そういうところ、みやの好きなところ
冷たそうに見えて、全然暖かい
嫌いになれる要素なんて持っていなくて
どんどん好きにさせる魔法を持っている

803 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:25

「じゃ、りーちゃん」
「うん、打ち合わせ頑張って」

みやの方に走って行く愛理はさっきまでの雰囲気が全くない
て言うか、凄くキラキラしてる
みやの隣に立つと、自然と寄り添う見たいに近付く
顔を見合わせただけで微笑み合う二人

どうしたんだろ?って今度は自分に向けてみる
胸がズキンズキンと言っている
大丈夫だよって、何度も自分に言い聞かせる


もしかして、さっきから可笑しかったのは私なのかな?


何で、何でずっと気付かなかったんだろう…
何で、何で気付いてない振りをしようとしてるんだろう…

804 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:26



* * * * *



805 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:26

「あれ、梨沙子帰らないの?」

案の定お昼から私はずっと調子が上がらなかった
上の空、心ここに在らず
考えている事は何となくだけど
言葉にしちゃうと壊れちゃいそうで出来ない

「みや…みやは?」
「んー、ウチ今帰り。」
「…そっかぁ」
「まぁ、残り物同士一緒帰ろうか」

みやがハハハと笑っているけど何だか乾いた笑い方
ねぇ、それって愛理がいないから?
愛理じゃなくて私だから?
そんな事聞けるほど狡くないし、強くない


だから、ただ純粋にみやと一緒に居られる事を喜ぶしかしない


806 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:27

「うっわー、めちゃくちゃ寒いし…梨沙子大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「ほら、梨沙子見て真っ白!!」

私の目の前を歩くみやははしゃぎながら
大きな口を開けて息を吐き出す
白く浮かんだ吐息はすぐに消えてしまう
そんな事でも嬉しそうに話せるみやが私は好きで
私も凄く嬉しくなってしまう

「…って梨沙子、手袋は?」
「あー、なんか片っぽなくしちゃって、だからしてない」
「そっかー、じゃあやっぱり大丈夫じゃないでしょ?ほらっ…」

807 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:27

何で?何でそういう事普通にしちゃうかな?
ねぇ、その手を掴んで良いの?
そんな事して愛理が悲しまないの?
本当は愛理と手を繋ぎたいくせに…


あー、私って最悪だ…


今、私がみやの手を握っちゃえば
ありがとう、って素直に言えたら
そしたら、そしたら私はうまく笑えるだろうし
しっかりこの道を歩けるはずなのに

808 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:28

「梨沙子ー、ほらっ、手冷えるでしょ?」
「だっ、大丈夫だって!!」
「えー、風邪引いたら大変だよ」
「ほんとに、大丈夫だから…」

なんでだよ…
歩き慣れたはずの道なのにみやが居るだけで
みやの後ろに愛理の顔が浮かぶだけで
私は歩き方が分からなくなる

「そっか…じゃあ、早く帰らなきゃだから急ごうか」
「…うん」

809 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:28

そう言って歩き始めたみやの背中がはっきりとしないのは
距離が離れているからで
決して目に涙がたまっているからじゃないって

私は必死に目を拭った

810 名前:How to walk this way 投稿日:2010/02/04(木) 21:28



How to walk this way

fin


811 名前:gen 投稿日:2010/02/04(木) 21:30
更新

更新しました。
How to walk this way (菅→夏×鈴)
>>796-810

最近りしゃこの事を考えると泣きたくなります。

812 名前:gen 投稿日:2010/02/04(木) 21:31
米レス

>>793さん。
(・?・)


813 名前:gen 投稿日:2010/02/08(月) 22:44




814 名前:gen 投稿日:2010/02/08(月) 22:44




815 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:45



パラパラって降りてくるのは
真っ白な粉雪と淡い恋心



816 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:45




アワイコナユキ



817 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:46

冬の屋上は風が強くて好きじゃない
それはちょっと前までの話
今では暑くたって、寒くたって、風が強くたって
手すりがなくて下が見えて怖くたって
この学校で私のお気に入りの場所はこの屋上しかないと思う

「梨沙子?」

ベンチに座ったままの夏焼先輩が私に気付いて手を振ってくれる
そういうところ子どもっぽくて可愛い
はぁ、来て良かったって今日も思う

夏焼先輩はすっごく人気のある先輩だ
格好良いし、オシャレだし、格好良いし…
女子生徒の憧れって言うか、結構皆本気で好きだと思う

818 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:46

私が屋上にくるのだって、夏焼先輩が理由だ
ほら、だって夏焼先輩が居るし
私、夏焼先輩の事大好きだし
自分の我が儘とか言って、困らせたくないし
でも、もっと好きになって欲しくて、ずっと好きにさせたくて
だから、仕方ないくらいに会いたくて
仕方ないくらいに好きが積もっていく

「やっぱ梨沙子だー!!最近毎日来るねー」
「へへへ、私も屋上好きなんですよー」

先輩はしっかりとコートを着て、マフラーを巻いている
ちょっと遊びにきましたって感じじゃなくて
完全に居座る気があるんだろうって察しがつく
何しに学校に来てるんだろうって思うけど
あんまり勉強とか好きそうじゃないから似合ってるけど

819 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:47

「あっ、梨沙子寒くない?」
「えっ、私ですか?大丈夫ですよ」

そう、先輩と違って私はコートもマフラーも無い
手袋も無くて、ブレザーの下にカーディガンを着ているくらいだ
寒くないって言ったら、嘘になるし
正直なところ、かなり寒い

だって、本当はいつも先輩と会うよりも早い時間だから
どうせ、居ないだろうと思って来た
居なかったらまたコートを着て、その時間に来たら良いかって思ってた

ちょっとだけ先回りしたい気持ちで来たのに
先輩はもしかしたら本当に屋上にずっと居るんじゃないかって思ってしまう

820 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:47

「絶対、大丈夫じゃないし…ほら」
「うわぁー」

私の目の前まで来て、マフラーを外すと
今度は私の首に乱暴にグルグルと巻き付ける
これ、先輩の匂いなのかな…
って、私変態みたいじゃん!!そんなんじゃないもん!!

「少しはあったかいでしょ?」
「ありがとございます!でも、先輩大丈夫ですか?」
「うん、コートあるし、大丈夫」

ニコッと笑って親指を立てる
ほんと、子どもっぽい
だけど、凄く優しくて格好良いですよ、先輩…
そう思いながら紺色のニットのマフラーを両手で押さえて顔を埋める
あっ、やっぱりこれ先輩の匂いなんだよな…

821 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:48

「今日、早かったね」
「えっ?」
「いつもより、来るの早かった。中等部授業終わる時間じゃないじゃん」
「自習だったんで。」

バレそうな言い訳で、なんとか本心を隠そうとする
先輩はふーんなんて言って納得してる雰囲気で良かった
やっぱり、先輩は勉強とかそういうのダメな人なんだろう
私も言えたことじゃないけど…

「しっかし、寒いねー」
「ですねー、雪降りそうだなー」
「降るよ、多分」
「分かるんですか?」
「だって、めちゃくちゃ寒いじゃん。降らない方が可笑しいって!!」

822 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:48

自信満々にそんなことを言っちゃう先輩は凄く可愛い
目がキラキラしていて、ホントに雪降ったら良いのにって思っちゃう
寒いの嫌だけど、先輩が喜ぶ姿が見たいんですよー
雪なんかよりも、ずっとずっとそんな姿が見たい

降って下さいって、空に祈る様に手を組む
不純な願いだけど、叶えて下さい、神様!!
なーんて、無理だろうけど…

目を瞑ってそんな事をしていると
組んだ手にフワッと暖かさが伝わる
へっ?っと思って目を開けると夏焼先輩が私の前に居る
しかも、手、包み込まれてるし…

823 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:49

「寒いんでしょ?温めてあげる。」
「いや、ちがくて…その、雪降って欲しくて」
「ホントに?でも、俺がこんなことするの珍しいから受け取って」

…さっきまでの少し軽薄な雰囲気がどこにも無かった
すっごく真剣なその瞳は見たこと無くて
あぁ、ダメだ、ダメだ…
どんどん好きになるのは私じゃないか

「温かいです…」
「うん、俺も…嫌がられなくて良かった」

ヘヘへって笑う表情は、私の心にスーッと染み入ってくる
気持ち伝わらなくて良いや
願いも叶わなくたって良い
もうちょっとだけ、この熱を持っていたい

824 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:49


そう思ったらポツリポツリと冷たさが広がる
もう、なんだよー!!って見上げると雪だ
雪が降って来たんだ!!

「先輩…」
「ほら、やっぱり降って来た!!」

ふっと重なった手は離れたけれど
私は全然悲しくなくて
逆に何故か嬉しくて


825 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:50



犬の様に駆け回る先輩の姿を見て
まだまだ、こんな調子の関係でも良いかなって思った



826 名前:アワイコナユキ 投稿日:2010/02/08(月) 22:50



アワイコナユキ

fin



827 名前:gen 投稿日:2010/02/08(月) 22:52
更新

更新しました
アワイコナユキ (菅×夏♂)
>>815-826

更新しました。
擬男化ですので嫌な方は読まないで下さい。


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