青春心理
- 1 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/18(水) 14:56
- ペリキューで基本短編
・CPは殆どマイナー
・多分キャプ受けが多いかもしれない
・王道ぽっいものは基本的にあまり書かない
それでもOKという心の広い方は見ても楽しめるはず
- 2 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/18(水) 14:58
-
まずは合コンのホテル部屋割りから妄想してみた
- 3 名前:最高級のエンジョイGIRLS 投稿日:2008/06/18(水) 15:00
- 「お風呂上がったよぉ、先に入っちゃってごめんね。」
私はベッドの上に寝転がりながら雑誌を読んでいると暢気な声が聞こえてきたので顔を
上げる。
すると舞美は既にパジャマに着替えていて肩にタオルを掛けながらお風呂場から出てきた。
しっとりと濡れた長い黒髪に火照った顔は何だか色ぽっい感じがして私はちょっと
ドキっとした。
でも髪が拭ききれてないらしく辺りには水滴が跳び散り、絨毯には足跡がくっきりと
残っている。
その姿を見たらさっきまでのドキドキがいつの間にか少しだけムカムカに変わっていた。
「はぁ・・・ストップ!舞美、ベッドに座る前にそこの椅子に座って。」
「なんで?」
「そのまま座るとベッドが濡れるから。」
「あぁ、そっか。」
舞美は最初言葉の意味が分からなかったのか首を傾げていたけど、ちゃんと説明すると
納得して椅子に座った。
- 4 名前:最高級のエンジョイGIRLS 投稿日:2008/06/18(水) 15:00
- 「全く、高校生なんだから髪ぐらいちゃんと拭きなよ。」
私は舞美の首にかかっていたタオルを取ると少し乱暴に頭を拭きながら呆れた声で
溜め息混じりに言った。
その言葉に首だけ後ろに向けて不機嫌そうな顔をすると、
「いつもはちゃんと拭いてるって。今日は佐紀が待ってるし早く出ないと悪いなぁと
思ってさ。」
舞美は拗ねたような口調でそう呟いてから前に向き直る。
「はいはい、お気遣いありがとうございます。」
「絶対信じてないでしょ。」
「5%くらいは信じてるけど?」
「全然信じてないじゃん!・・・・っていうかさ、こうやって甘えるのは佐紀だからだよ。」
「ふえっ?」
舞美が変な事を言い出すから頭を拭いている手を止めて間の抜けた声を出してしまった。
- 5 名前:最高級のエンジョイGIRLS 投稿日:2008/06/18(水) 15:01
- 「やっぱそんなに甘えられないじゃん、他の子だとさ。一応リーダーだし。」
「いや、だからって私に甘えられても困るんだけど。」
一見舞美の言ってることが正論な気がしたけど、よくよく考えたら全然正しくなかったので
ツッコミを入れる。
すると舞美はまた首だけで振り向けると大きな目でまっすぐ私を見つめる。
「本当に?」
それから今までのふさけた感じから一転して突然真剣な顔になる。
さっきまで子どもみたいに拗ねていたのに急に大人の顔になるから戸惑いつつも胸の
高鳴りが治まらなかった。
「ど、どういう意味?」
「だから・・・本当に私に甘えられたら嫌だと思う?」
「・・いや・・・・どうだろ・・・。」
私は急な質問に頭の中が混乱していてちゃんと答えることができず適当に誤魔化したけど、
真剣な舞美の瞳から目を逸らすことができなかった。
そうして私達はまるで時が止まったかのように無言で見つめ合っていると、突然ドアを
叩く音がしてようやく我に返った。
- 6 名前:最高級のエンジョイGIRLS 投稿日:2008/06/18(水) 15:02
- 「はーい。」
と舞美が大きな声で答えてからタオルを頭に乗っけたままドアに向かって歩いていく。
そしてドア越しからナッキーの顔が見えて2人は何やら話していたけれど、少し距離が
あるので私にはその内容を聞くことができなかった。
それからすぐに会話は終わってナッキーが気まずそうな顔をして逃げるように帰っていく。
「ナッキーどうしたの?何か用でもあったの?」
「分かんない。ただ今佐紀といいところだからまた後でね、とか言ったら帰っちゃった。」
舞美は戻ってくると能天気に笑いながらとんでもないことをさらりと言った。
「ちょ!それ絶対誤解されるんですけど!!」
「いいじゃん、誤解されても。」
「全然よくない!」
「えー、私は逆に佐紀とそういう誤解されたいけどなぁ。」
呆れながら文句を言う私に近づくと舞美は笑いながら顔を近づけてきて唇を掠め取るような
キスをした。
- 7 名前:最高級のエンジョイGIRLS 投稿日:2008/06/18(水) 15:02
- 「ま、舞美?!」
私は突然のことに驚きながらも反射的に体を離していた。
舞美は今まで見たことがないくらい優しい笑みを浮かべると、
「好きだよ・・・・私は佐紀が好き。だから誤解されてもいいっていうか誤解されたいよ。」
それから聞くだけでこの子は本気なんだなと分かるまっすぐな声で告白された。
私はこんなに恥ずかしげもなくちゃんと告白されたのは生まれて初めてだった。
そのせいでさっさきから自分の耳に心臓が馬鹿みたいに脈打ってる音が聞こえてきて、
おまけに顔と耳たぶが異様に熱かった。
私は舞美の顔がまともに見れなくて顔を俯けたまま考え込むと一つの答えを出した。
前から舞美のことは気になっていたし、今日相部屋になるって聞いたときから心のどこかで
こうなることを期待していたのかもしれない。
それに何より告白されたとき嬉しかったってことはそういうことなんだと思う。
「・・・・これからよろしく。」
「へっ?」
相当恥ずかしいけど勇気を振り絞って答えたのに舞美は間の抜けた顔していた。
- 8 名前:最高級のエンジョイGIRLS 投稿日:2008/06/18(水) 15:03
- 私は少し呆れて溜め息混じりを吐き出すと分かりやすく言い直してあげる。
「私も好きだよ、舞美のこと。」
「はっ・・・ははは、あははははっ!もう最高!佐紀大好きだよ!」
すると舞美は異常なほどハイテンションになって突然私に抱きついてくる、そして背中に手が回ってきて腕の中に閉じ込められた。
「それじゃ晴れて恋人になったしさっきのやり直しってことで。」
舞美は本当に嬉しそうに笑いながらそう言うと抱き締めたままゆっくりと顔を近づけてくる。
私は胸の高鳴りはそのとき最高潮を迎えていて、なぜか分からないけど舞美のパジャマの袖を
ギュっと掴んでいた。
すると舞美は少し困ったように笑ってから唇ではなく額に軽くキスをしてくれた。
- 9 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/18(水) 15:06
-
- 10 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/18(水) 15:06
-
- 11 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/18(水) 15:06
- 清水矢島
夏焼梅田
徳永有原
熊井須藤中島
萩原岡井桃子
愛理菅谷
部屋割りは上のを元にしているのでこの組み合わせで書いてきます
一番初めからマイナー出発だけど後悔はしてない
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/18(水) 20:01
- キャプ受け大好物です
これからも期待してます
- 13 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:42
- >>12の名無しさん
期待に応えられる様に頑張ります
これからキャプ受けの素晴らしさを広めていきたいです
- 14 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:43
-
夏焼梅田と徳永有原のマイナーCP二本立て
- 15 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:44
- まずは夏焼梅田だから
ちなみに友情物なんで過剰な期待はしないでください
- 16 名前:恋してる時はいつも・・・ 投稿日:2008/06/23(月) 15:45
- 千聖の部屋に行くと同じく呼び出されたらしい梨沙子がいた。
私は「愛理は来ないの?」と聞くと「お風呂に入るみたいだから先に来た」と
教えてくれた。
それを聞いた舞ちゃんが携帯で撮りに行こうと騒いでみんなに止められていた。
私はからかい半分で行ってみたかったけど、噂によると本気で怒るらしいので止めたのは
正解だったと後から思った。
それから三十分くらいして愛理が部屋にやって来て皆で馬鹿みたいに騒いだ。
そして明日もあるのでその日は早めに寝ようということになり、私はもう少しみんなと
騒いでいたかったけれど渋々部屋に戻ることにした。
何も考えずに馬鹿みたいに騒いでいると気が紛れて楽だったから。
でもそんな自分勝手な思いの為に他の子を付き合わすわけにはいかないし、早めに寝よう
という意見に対して特に反論はしなかった。
そして持っていた鍵で部屋の中に入るとシャワーでも浴びてすぐ寝ようと思っていた
私の計画はすぐに変更することになる。
ドアを開けて中に入るといるはずのもう一人の姿が見当たらなかった。
いくら電気をつけていない薄暗い部屋だといっても人の姿ぐらいは見ればすぐ分かる。
誰もいない静かな空間に一人立ちつくしていると自然と溜め息が口から漏れて、そのことに
気付き思わず苦笑した。
そしてどうやら今日はすぐには寝られそうにないと私は直感で思った。
- 17 名前:恋してる時はいつも・・・ 投稿日:2008/06/23(月) 15:46
- 最初はトイレかお風呂かなと思ったけど覗いてみても誰もいなかったし、部屋の鍵は
私が持って出たので出掛けられない。
仮に出掛けたとしても彼女なら携帯にメールを送ってちゃんと連絡すると思う。
でも私の携帯には何の連絡もない、となると彼女がいる場所は大体の検討がついた。
「素晴らしい、素晴らしすぎる!夏焼探偵の名推理。」
外から吹く風に舞っている白いカーテンをくぐるとベランダに出ると、外の景色をぼんやりと見つめているエリカちゃんを発見した。
「ふっ、名推理の割にはここに来るのに5分はかかってたけどね。」
エリカちゃんは私の言葉を聞くと軽く吹き出してから体を反転させる、そしてフェンスに
背中で寄り掛かかると揚げ足を取ってくる。
「そういうことは言わないお約束だから。」
「ごめんねぇ、気が利かなくて。」
「気が利かないとモテないよ。」
「そっか・・・・だからダメなのかなぁ。」
エリカちゃんは少し悲しそうに笑うと夜空を見上げながら独り言のように呟いた。
月の光に照らされたその横顔は本当に日本人離れしていて、思わず息を飲んでしまうほど綺麗だった。
- 18 名前:恋してる時はいつも・・・ 投稿日:2008/06/23(月) 15:47
- 「上手くいったかな、あの2人。」
私はフェンスから少し身を乗り出して隣の部屋を見つめながら溜め息混じりの口調で
言った。
「上手くいったんじゃない?舞美は相当気合入ってたし。」
「そっか・・・・じゃぁ上手くいったかな。」
エリカちゃんは空から私に視線を変えると人事のように言いながらも顔は苦笑していた、
それに釣られるように私も自虐的に笑う。
季節的には春だというのに夜だと少し風が冷たくて隣の部屋は明かりがついていて、どこの
部屋かは分からないけれど楽しそうな声が聞こえてくる。
私は無性に泣きたくなってフェンスに頭を当てたけれど涙は出てこなかった。
「ウチら余っちゃったねぇ。」
とそれから不意にあまりに暢気なエリカちゃんの声が横から聞こえてきた、なぜかそれが
妙に笑えて私は吹き出すとゆっくりと頭を上げた。
- 19 名前:恋してる時はいつも・・・ 投稿日:2008/06/23(月) 15:47
- そして大きく息を吐き出すと顔を顰めながら聞こえてきた言葉に答える。
「っていうか片思い組で同室なんてさ、絶対に事務所の嫌がらせだと思うんだけど。」
「あはは、そうかもね。でも逆に慰め合えってことかもよ?」
「・・・・それじゃ事務所の意向に答えてみる?」
私はエリカちゃんに寄り添うように体を預けると少ししてから静かに顔を上げる、すると
軽く髪を撫でられてから頬に優しく手が置かれた。
それから顔が近づいてきたけれど私は抵抗せずに目を開けたまま黙ってその様子を見ていた。
吐息がかかるくらい顔が近づいてもう少しで唇が触れるというところでエリカちゃんの
動きが突然止まる。
私もあの無邪気な笑顔が頭を過って気がついたら肩を押し返していた。
エリカちゃんは色んな感情が混ざり合ったような何ともいえない表情をしていた、でもきっと今の私もこんな顔をしているんだろうなと思った。
それから少し気まずい雰囲気が漂いつつも互いに顔を見合わせると、
『やっぱできないよねぇ』
と溜め息混じりの情けない2人の声は見事に重なり合い、私達は吹き出すと声を上げて
笑った。
- 20 名前:恋してる時はいつも・・・ 投稿日:2008/06/23(月) 15:48
- ひとしきり笑うと私はフェンスに両腕を乗せその上に顎を乗せながら不貞腐れたように
ぽつりと呟いた。
「やっぱダメだね、ウチらは。」
「本当にね・・・・・さてと、もう寝る?明日は一応千秋楽だし。」
「だね。でもその前に何か飲まない?部屋にあるあの冷蔵庫の中から。」
「えー!勝手に飲んだら怒られるんじゃないの?」
「いいよ、もう。この組み合わせにした馬鹿な事務所に仕返しってことでさ。」
「・・・・分かった。付き合うよ、今日はとことん最後まで!」
「よし。それじゃ朝まで飲むぞー!!」
「それは勘弁。」
それから2人でソフトドリンクを無理矢理だけど全て飲み干して最後に栄養ドリンクを
鞄に詰め込んでから寝た。
そして次の日に私達はマネージャーにひどく怒られたけど、何か吹っ切れたような
爽やかな気分だった。
- 21 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:49
-
- 22 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:53
-
- 23 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:53
- そして栞菜徳永
多分殆どの人が初めて見るCPだと思うけど意外といけるはず
- 24 名前:素肌ピチピチ 投稿日:2008/06/23(月) 15:54
-
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
ってそれほど冷静に物事を考えられる状態では全くないんだけど、でもそう思わずには
いられなかった。
徳永千奈美16歳、ただ今キュートの有原栞菜にベッドに押し倒されてます。
- 25 名前:素肌ピチピチ 投稿日:2008/06/23(月) 15:56
- 意味が分からない、本当に真剣にマジで分からない。
栞菜は楽しそうに笑ってるけどこっちは全然それどころじゃないし。
そんなとき学校の先生が「分からないときは初めに戻って考えると分かる」と言っていたので
初めから思い出してみることにした。
栞菜と一緒の部屋になる
↓
部屋に入ってちょっとまったりする
↓
何となくベッドの方へ手を引かれて連れて行かれる
↓
押し倒される
↓
クンカクンカ ←いまここ
ダメだ!!
思い返しても全く意味が分からない。
明らかに重要なことがいくつか抜けているのは分かったけど。
だっていきなりベッドまで連れて行かれたと思ったらそのままみたいな・・・・。
おまけに今は首筋に顔を寄せて匂いを嗅がれてるし。
- 26 名前:素肌ピチピチ 投稿日:2008/06/23(月) 15:56
- 「ちょっと栞菜!何やってんの?」
「ん?千奈美ちゃんの匂い嗅いでる。」
「それは見れば分かるよ。じゃなくってさ!・・・・別に今日じゃなくてもいいじゃん。」
「だって一緒の部屋になれるときなんて今日くらいしかないよ?」
「あぁ、それもそっか。」
栞菜に上手く言い包められて私はよく意味が分らないまま納得してしまった。
でも納得する意味が分からないことに気がつき慌てて私は栞菜の肩を押し返して反論する。
「って!そもそも匂い嗅ぎたいって意味が分からないんですけど!」
「うーん・・・・ある種のスキンシップってやつかな?」
「そんなスキンシップは嫌だ!」
「ベリーズはやらないの?こういうこと。」
「やるわけないじゃん。っていうかキュートだってみんなやってるわけじゃないでしょ?」
「えっ、みんな普通にやってるよ。」
「ウソっ!!」
「嘘だよ。さすがにそれはないって。」
栞菜にからかわれたのがちょっとムカついたので私は上半身だけ起こすと、八つ当たりでちょっと強めにデコピンをした。
- 27 名前:素肌ピチピチ 投稿日:2008/06/23(月) 15:57
- 「痛っ・・・・・っていうかキュートはそんな変態グループじゃありません。」
「変態なのは栞菜だけでしょ。」
「そう!ピンポーン!大正解!」
栞菜は嬉しそうに笑いながらまた私を押し倒してくる、抵抗したけど両手を掴まれてベッドに
押し付けられた。
「ちょ、ちょっと待った!」
「千奈美ちゃんって綺麗な肌してるよね。」
栞菜は私の抗議を無視して妖しく微笑むと頬に手を置いてから体の線をなぞるように
ゆっくりと滑らしていく。
その行為と大人びた表情にちょっとだけドキっとした。
「まさに素肌ピチピチって感じ?」
「そのギャグ笑えないんですけど。っていうかそんな余裕すらない感じだし。」
「あははっ、確かに今すごい顔してるからねぇ。」
「えっ?どんな顔?そんなに変?」
「嘘だよ。千奈美ちゃんは今すっごい可愛い顔してる。」
優しい笑みを浮かべて少し低い声でそんなこと言うから栞菜がちょっと格好良く見えた。
そのせいか今心臓がヤバイくらいドキドキしている。
- 28 名前:素肌ピチピチ 投稿日:2008/06/23(月) 15:58
- そんなとき突然部屋のドアがノックされて私の心臓は違う意味でドキドキが増した。
「ごめーん!今千奈美ちゃんと夜のお楽しみタイム中だから手が離せない!」
と栞菜が隣の部屋にも聞こえるんじゃないかってくらい大きな声でドアの方に向かって叫ぶ。
その言葉を聞いて「ごめんなさい!」という少し甲高い声と共に足音が遠ざかっていく。
「あぁぁぁぁぁ!!もうっ!今の絶対誤解されたんですけど!!」
と私も隣の部屋に聞こえるぐらいの大きな声で叫ぶと栞菜を軽く睨んだ。
「まぁまぁ、誤解じゃなきゃいいんでしょ?」
「へっ?」
「つまりこのまま2人が結ばれてしまえば誤解じゃなくなるってことだよ。」
「あぁ、そうか。・・・・って全然納得できないから!!」
唇を突き出して迫ってくる栞菜の顔を何とか押し返しつつ、私達は夜遅くまでずっと
そんな攻防を繰り返していた。
ちなみに次の日うるさすぎて両隣の部屋から苦情が来たのは言うまでない。
- 29 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:58
-
- 30 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:58
-
- 31 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/23(月) 15:58
-
- 32 名前:名無し 投稿日:2008/06/23(月) 19:24
- 栞菜と千奈美のCPすげー良かったです。
栞菜に押されてしちゃえ!千奈美w
続編期待してます。
- 33 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/27(金) 00:19
- 雅と梅さんの組み合わせが新鮮ですごくよかったです
切なくてでもなぜかドキドキしてしまいました
幸せな二人の姿もちょっと見てみたいものですw
- 34 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 15:29
- レス返し
>>32 名無しさん
引かないでそう言ってもらえるのが一番嬉しいです
続編とか別に考えてなかったんですけど、その一言でちょっと今
書こうかなと思いました
>>33 名無飼育さん
全然見かけないCPですが自分は結構好きです
ちなみに二人のラブラブぽっい話は実はあるんだよ、とか言ってw
- 35 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 15:32
- 今回も二本上げときます
初めはマイマイ→千聖+嗣永プロの話なんですが千聖が全く出てきませんw
- 36 名前:ありがとう おともだち 投稿日:2008/06/30(月) 15:37
- 久しぶりに千聖と相部屋になれたのに「みんなを呼んで騒ごうよ」と言い出したときは
さすがに少し凹んだ。
せっかくもう一人の邪魔者がいつの間にかいなくなっていたから期待していたのに、どうやら
それはただの糠喜びというやつだった。
そして誰を呼ぼうかという話になり舞美ちゃんと栞菜は前もって釘を刺されてから止めて、
とりあえず大丈夫そうな部屋に内線をかけてみた。
すると来られそうなのは雅ちゃんと梨沙子と愛理の3人だけだった。
意外と少ない人数に千聖は不満そうだったけど皆が揃うといつも通りに遊んでいた。
さらに途中からナッキーが部屋にやってきて仲間に加わると、さらに輪をかけて私達は
馬鹿みたいに騒いでいた。
それから明日も早いのでその日は早めに解散することにした。
みんなが帰ってしまうと部屋は急に静かになってしまって、今私は一人だけだから
余計に物悲しく感じる。
千聖はお風呂に入っていて一緒に入ろうと誘われたけど何となく断った。
その理由は本能的に何か嫌な予感がしたからというえらく曖昧なものだったけれど、
私はすぐに自分の本能は正しかったと確信する。
- 37 名前:ありがとう おともだち 投稿日:2008/06/30(月) 15:38
- 突然窓の外で物音がしたので侵入者かと思い警戒しながらベッドの陰に身を潜めた。
でもすぐにそれは考え過ぎだったと思い知る。
「ジャジャーン!怪盗ピーチッチ参上!!」
まるで作っているような甲高く可愛らしい声を聞いて私は溜め息を吐きながらゆっくりと
立ち上がった。
それから両手に軽く上げると見事なくらいの棒読みで言った。
「キャー、変態がいきなり部屋に入ってきた。」
「変態じゃありません。嗣永桃子です。」
「で、変態さんは何で窓の外から入ってきたの?」
「だから変態じゃないってば。あと窓から入ってきたのは企業秘密ね。」
「企業じゃないじゃん。」
桃子ちゃんは人差し指を唇に当てて可愛いポーズをしていたけれど普通に無視して、
私は冷静に突っ込みを入れる。
- 38 名前:ありがとう おともだち 投稿日:2008/06/30(月) 15:39
- 「そういうところは気にしないで。それより千聖は?」
「ん?千聖は今お風呂に入ってる。」
それを聞いた桃子ちゃんは顎に手を持ってきて軽く撫でると少し残念そうに笑った。
「舞ちゃんは一緒に入らないの?」
「別に入っても良かったけど何となく入らなかった。」
「ざんね〜ん!せっかく2人のお風呂ショットを撮ろうと思ってたのに。」
と桃子ちゃんは楽しそうに笑いながらどこからかデジタルカメラを取り出すと、
レンズを私のほう向けてそのまま一枚撮った。
食えない奴だと前々から思っていたけどここまでだとは思わなかった。
私は目の前で何事もなく平然と笑っている少女を警戒の意味も込めて軽く睨みつけた。
- 39 名前:ありがとう おともだち 投稿日:2008/06/30(月) 15:42
- 「変態!本当に変態じゃん!」
「だから変態じゃないって。これは情報という名の武器なの、別に変なことに使わないし。」
「まさか・・・・今まで部屋にいなかったのって。」
「ストップ!それ以上は大人だったら言わないお約束でしょ?」
「・・・・その言い方ズルイ。」
「うふふふ。でもただ黙っていてもらうのは悪いから素敵なプレゼントをあげるね。」
そう言って桃子ちゃんは嬉しそうに笑いながら私の横を通り過ぎてお風呂場へと向かう、
デジカメを手にしたまま。
それからすぐに「きゃぁぁぁぁぁぁ!」という千聖の女の子らしい悲鳴が聞こえてきて、
見に行かなくても大体何をやっているかは想像がついた。
私はベッドに腰を下ろすと黙秘の代償としては悪くない贈り物だなと思って含み笑いをした。
「ありがとう、お友達か・・・・・まぁ、とりあえずはありがとうかな。」
そういえばベリーズの曲にそんなような題名のものがあったことをふと思い出すと、
千聖の悲鳴を聞きながら苦笑混じりに呟いた。
- 40 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 15:44
-
- 41 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 15:44
-
- 42 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 15:48
- 次はあいりしゃでほのぼのとした話
- 43 名前:付き合ってるのに片思い 投稿日:2008/06/30(月) 15:52
- 明日の準備を終えると私はベッドに腰を下ろしてようやく一息ついた。
すると今まで相手にされなくて寂しかったのか同室の梨沙子が突然後ろから抱きついてくる。
「寂しかった?」
「そういうんじゃないけど・・・・何となく。」
「ふ〜ん、そっか。」
「ウソ。本当は寂しかった、だって愛理が全然相手してくれないんだもん。」
真後ろにいるのでそのときの梨沙子の顔は見えなかったけれど不貞腐れているのが声の
調子で何となく分かった。
私は首だけ後ろに向けると察したのか梨沙子は一旦体を離してくれた、そして体を反転させると初めてちゃんと向かい合う。
でも改めて向かい合うと何だか恥ずかしかった。
だけどそれはお互い様なのか私達は顔を見合わせると照れくさそうに笑う。
それから梨沙子が肩に頭を乗せて甘えてくるので片手で軽く抱き締めながら空いた手で
優しく頭を撫でてあげる。
触れ合う肌同士から相手の温もりを感じるこの瞬間が私は一番好きだった。
でも頭を撫でられて心地良さそうにしている梨沙子はまるで赤ちゃんみたいで、そう思うと
何だか面白くて私はつい吹き出してしまった。
「ふふっ、梨沙子って本当に甘えん坊のお子ちゃまだね。」
「子どもじゃないもん!愛理よりずっと大人だよ?」
「えー、それはどうかなぁ。」
「本当だよ。もう大人だもん!」
その言葉と同時ぐらいに私の体は後ろに倒れて視界から梨沙子が消えると、その代わり
味気ないホテルの白い天井が目に入る。
どうやら私は梨沙子に押し倒されてしまったらしい。
- 44 名前:付き合ってるのに片思い 投稿日:2008/06/30(月) 15:56
-
「大人でしょ?」
「どうだろ・・・・・そうなのかなぁ。」
「えっ!?違うの?」
「いや、えっと・・・・私もよく分かんない。」
私を覗き込む梨沙子は部屋の照明を背にしているので逆光のせいか茶髪が金色に見える。
そのせいで本当に外人さんみたいだった。
実際の年より大人びていてすごく綺麗だから本当はひどく動揺していたけど、そんな気持ちを
知られたくなくて何とか平静を装っていた。
「・・・・キスしていい?」
梨沙子はこちらの顔色を窺うように覗き込むと不安そうな声で聞いてくる。
私は答えるのが恥ずかしくて目を瞑ることでその問いに答えた。
それから少しして前髪の辺りを優しく撫でられたかと思うと、梨沙子の息遣いがゆっくりと
近づいてくるのが分かった。
自分で聞こえるくらい胸が大きく脈打っていてどうしていいか分からなくなっていると、
梨沙子が私の手を軽く握ってくれた。
すると段々と心が落ち着いていって自然とその手を握り返していた。
- 45 名前:付き合ってるのに片思い 投稿日:2008/06/30(月) 15:58
- でもそんな良い雰囲気を壊すかのように突然部屋に備え付けられている電話が鳴り響く。
あまりに唐突な展開に思わず私は目を開けると思ったよりも顔が近くにあって少し驚いた。
「ちょっともうっ!何?せっかく良い雰囲気だったのに!!」
それから珍しく梨沙子が怒り出すと私から離れて鳴り続けている電話の元に向かう。
そして乱暴に受話器を取ると初めは不機嫌そうだったのに段々とその声は嬉しそうに
弾んでいく。
「行く行く!・・・・うん、分かった。・・・・・うん、それじゃぁね。」
そして電話が終わり私の元へ再び戻ってくるとさっきまでの怒りは跡形もなく、楽しそうに
笑っている梨沙子がいた。
「誰から?」
「千聖から。今から部屋に来ないかって。」
「行くの?」
「うん!何か楽しそうだし。愛理はもちろん来るよね?」
「えっ・・・・あぁ、うん。でもその前に風呂入りたいから先に行ってていいよ。」
「分かった。愛理も後から来てよ、絶対だからね。待ってるから!」
梨沙子は何度も念を押すと余程嬉しいのか少し早足ですぐに部屋から出て行ってしまった。
「やっぱりまだまだ子どもじゃん。」
と私は閉められたドアに向かって不貞腐れたような口調で呟いた。
- 46 名前:付き合ってるのに片思い 投稿日:2008/06/30(月) 16:00
- 本当はそんなにお風呂に入りたかったわけじゃない。
確かに少し汗臭い気はするけれど別に後で入っても良かった、ただ梨沙子があまりにも
嬉しそうに騒ぐからちょっと意地悪したかった。
でもお風呂から上がるとそんな気持ちまで一緒に洗い流されたようで大人気なかったかなと
自ら少し反省する。
そして待っているだろうから千聖のところに行かなきゃと思ってすぐ部屋を出た。
部屋の前に着くと楽しそうな笑い声がドア越しに聞こえてきて、ノックすると梨沙子が
顔を出して私の手を掴むと中に引き入れた。
それからみんなでトランプしたりゲームしたりして久しぶりに大騒ぎして遊んだ。
でも十一時半くらいになって明日もあるし早めに寝よういう話になり、それぞれの部屋に
戻っていった。
梨沙子は十一時を過ぎたくらいから目元を擦ったり欠伸したりと既に眠そうで、部屋に戻るなり
ベッドに倒れ込んでそのまま動かなくなる。
「梨沙子、着替えなくていいの?」
「うん・・・・眠いからもうこのままでいい。」
「ならせめてちゃんと布団掛けて寝なきゃ風邪ひいちゃうよ。」
「・・・・うん。」
少し寝惚けたような声で返事をすると掛け布団を引っ張って転がり芋虫のように包まった。
それって布団を掛けるっていうのかなと疑問に思ったけど何もないよりはいいかなと思って
特に言わなかった。
- 47 名前:付き合ってるのに片思い 投稿日:2008/06/30(月) 16:02
- 私もさすがにコンサート終わりで疲れていたので寝ようと思ったけど、不意に喉が渇いたので何か買ってこようと思い立った。
そして梨沙子を起こさないように小銭だけ持って静かに部屋を出ようとすると、
「・・・・愛理、どこ行くの。」
と起きていたのか寝言なのかは分からないけれど急に名前を呼ばれたから少し驚いた。
ベッドまで行くと梨沙子はどう見ても寝ている様子なのでどうやらさっきのはやっぱり
寝言だったらしい。
「すぐ戻ってくるから待ってて。」
私は前髪を優しく撫でてあげると寝ているはずなのに梨沙子は嬉しそうに笑った。
それを見て自分まで何だか嬉しくなった。
- 48 名前:付き合ってるのに片思い 投稿日:2008/06/30(月) 16:11
- それから部屋を出ると自動販売機があるエレベーターホールへと向かう。
私達の部屋は一番奥にあるのでひたすら歩く、そして長い廊下に飽き始めた頃にようやく
角まで辿り着いた。
でも角を曲がると壁に寄り添うように白い塊があって最初幽霊かと思った。
「ひぃ!」
だから一瞬心臓が止まるくらい驚いて情けない悲鳴を上げてしまう
でもそれはよく見るとそれは床に座り込んで泣いているナッキーだった。
さっき部屋で一緒に遊んだときは普通に笑っていたのに、今は何があったのかは分からないけれど
壁に縋りつくように泣いている
「どうしたの?!なんで泣いてるの、ナッキー。」
私は訳が分からなかったけれどとりあえず慌てて傍に駆け寄って声を掛けた。
- 49 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 16:12
-
- 50 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 16:12
-
- 51 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 16:15
-
- 52 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/06/30(月) 16:19
- 今のところこんな感じ
清水矢島 >>3-8
夏焼梅田 >>16-20
徳永有原 >>24-28
熊井須藤中島
萩原岡井桃子 >>36-39
愛理菅谷 >>43-48
- 53 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/07/10(木) 22:10
- あいりしゃいいですね!
なっきぃどうした!?
続き楽しみにしてます。
- 54 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/07/16(水) 16:57
- レス返し
>>53の名無し飼育さん
あいりしゃは初書きだったんですが自分でもよくできたと思ってます
自画自賛だとは思いますが・・・・
- 55 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/07/16(水) 16:58
- くまぁず+なっきぃの話
ちょっと切ない感じで尚且つ終わりが中途半端です
- 56 名前:ジリリキテル 投稿日:2008/07/16(水) 16:59
- 私は荷物を置いて軽く整理すると適当な理由をつけてすぐに部屋から出た。
どういう基準で事務所が決めたのかは分からないけど、熊井ちゃんと茉麻ちゃんの2人と
一緒になってしまった。
今まで話す機会があまりなかったけどコンサートをやるようになってからはだいぶ
ベリーズの皆とも距離が近づいた気がする。
誰とでも普通に話すようにもなったしメールのやり取りも前よりもずっと多くなった。
だから2人と一緒の部屋になると聞いたときも嫌だとは全然思わなかった。
茉麻ちゃんは基本穏やかだから話していると何だか癒されるし、熊井ちゃんはたくさん
話したことがなかったから話してみたかった。
正直なところ同学年なのにモデルみたいに背が高いところと端正な顔立ちに少し憧れていた。
それでも私が部屋を出たのはただ単純に気まずかったから。
何だか茉麻ちゃんと熊井ちゃんは良い雰囲気だったから、邪魔するのも悪いので少しの間
いなくなることにした。
時間潰しにどこかの部屋にでも遊びに行けばいいかなと楽観的に考えていたけど、
実際そうなるとどこの部屋へ行こうか迷ってしまう。
私はとりあえず舞美ちゃんとしみさきちゃんの部屋に行ってみることにした。
- 57 名前:ジリリキテル 投稿日:2008/07/16(水) 17:00
- 2つしか離れていないのですぐに部屋の前に着いてしまう、そして2、3回軽くノックすると中から「はーい」と舞美ちゃんらしき声がした。
それから少ししてパジャマ姿で頭にタオルを乗せた舞美ちゃんがドアを開けてくれた。
「ナッキーじゃん、どうしたの?」
「いや・・・何もないんだけどさ。ただ他の子がどうしてるかなぁと思って。」
「そっか。こっちは今佐紀といいところなんだ。」
「へっ?」
舞美ちゃんがあまりにあっさり言うから初めはその言葉の意味が分からなかった。
でもよくよく考えて意味が分かると耳の辺りが熱くなるのを感じた。
「ご、ごめんなさい!お邪魔しました!!」
どうやらいけないときに来てしまったらしいことを悟った私は足早にその場を去った。
そして適当な所で立ち止まるとすごく胸がドキドキしていて気恥ずかしい気持ちになった。
それから気がつくと千奈美ちゃんと栞菜の部屋の前にいた。
私は気を取り直して部屋のドアをノックする、でもすぐに自分の選択肢を間違えた
ことを知った。
「ごめーん!今千奈美ちゃんと夜のお楽しみタイム中だから手が離せない!」
とドア越しからでも聞こえるくらいはっきりと栞菜の大きな声が返ってきた。
その言葉を聞いてまた耳たぶが熱くなる。
「ごめんなさい!」
またしても変なときに声をかけてしまったらしく私はすぐに部屋から離れた。
- 58 名前:ジリリキテル 投稿日:2008/07/16(水) 17:01
- そして当てもなく歩いていると突き当たりの梨沙子と愛理の部屋に辿り着いた。
2人とも中学生だし変なことしてないよね、と思いつつ頭の中を様々な妄想が浮んできて
結局ドアをノックできなかった。
私は溜め息吐きながらとりあえずまだ行ってない部屋に行くことにした。
残っているのはえりかちゃんと雅ちゃんの部屋と千聖と舞ちゃんとももちの3人部屋だけで、
健全といえばそんな感じのする二つだった。
私は近くのえりかちゃん達のほうから寄ってみることにした。
でも軽くノックしてみたけど応答がなくて、私は何回か繰り返ししてみたけれど
やっぱり何の反応もなかった。
お風呂にでも入っているのか部屋にはいないらしい。
少し残念に思いつつも仕方がないので千聖達の部屋に向かうことにした。
- 59 名前:ジリリキテル 投稿日:2008/07/16(水) 17:02
- ノックするとすぐに千聖が顔を出して笑顔で中に入れてくれた。
どうやらちょうど呼ぼうとしていたらしく、私が来た後に雅ちゃんと梨沙子ちゃんがきた。
それから30分経った後くらいに今度は愛理がやってきた。
みんなで馬鹿みたいにはしゃいで遊ぶと少し暗かった気持ちを転換することができた。
それから明日もあるし早めに解散すると私も含めて皆は自分の部屋へ戻っていく。
久しぶりに騒いだせいか少し疲れたけど心地良い疲れだった。
でも気分が高揚していたせいかそのとき私はノックもせず、持っていた鍵でそのまま
ドアを開けてしまった。
部屋の中には抱き合っていると熊井ちゃんと茉麻ちゃんがいた。
2人は私に気がつくと目を大きく見開いてから慌てて離れる。
私はとにかくその場に居たくなくて何も言わずにすぐさま部屋から飛び出した。
「なかさきちゃん!」と後ろから熊井ちゃんらしき声がしたけれど振り向かなかった。
- 60 名前:ジリリキテル 投稿日:2008/07/16(水) 17:02
- 息が荒くなってきたので立ち止まるとそこはエレベーターホールだった。
私は急に力が抜けてその場に座り込むと近くの壁に寄り掛かる。
ショックだった
自分が思っている以上に二人が抱き合っていた光景が胸に深く突き刺さっている。
舞美ちゃんや栞菜のときは実際にその現場を見ていないからというのもあるけど、
ただ恥ずかしいとか気まずいなとか思うだけだった。
それなのにさっきは嫌だと思った。
あれ以上2人を見ていたくないから走ってこんなところまできたんだと思う。
どうしてそう思うのかは分からない。
ただ生まれて初めてなくらい胸が締め付けられて苦しくて悲しかった。
それから生温かいものが頬を伝わったかと思うと雫が落ちて床に敷かれている
赤い絨毯に染みが出来る。
それを見て私はようやく自分が今泣いていること知った。
- 61 名前:ジリリキテル 投稿日:2008/07/16(水) 17:03
- 「あれ?・・・なんで・・・・なんで私・・・泣いて・・る・の?」
自分でもどうして泣いているのか分からなかった、だけどどんな目元を拭っても
涙は止まってくれなかった。
「どうしたの?!なんで泣いてるの、ナッキー。」
急に近くで声がしたので顔を上げると視界がぼやけてはっきりとは見えなかったけど、
声と背格好で愛理だと分かった。
「分かん・・ない・・・・・分かんないよぉ・・・・。」
自分でも本当に訳が分からなかったので首を左右に振りながら素直に答えた。
すると愛理は何も言わずそっと私を抱きしめてくれる、そして涙が止まるまでしばらくの間
ずっと優しく頭を撫でてくれた。
- 62 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/07/16(水) 17:03
-
- 63 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/07/16(水) 17:03
-
- 64 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/07/16(水) 17:04
- 続きはないですが、実は違うverがあったします
- 65 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/08/25(月) 19:01
- ということで違うver
- 66 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:03
- 正直熊井ちゃんと一緒の部屋割りになったとき私は素直に喜べなかった。
別に仲が悪くはないとは自分では思ってないし、話す機会が今まであまりなかっただけで
会えば普通に話せる。
でも熊井ちゃんは私と話しているときだけ何だかよそよそしい感じがする。
嫌われているのかなぁとか思うときもあったけどそんなこと本人に聞けるはずもない。
だから少しでも仲良くなるべく自分から話しかけるようにしていた。
でも話しかければ話しかけるほど空回りしている感じで、2人の仲は大して進展しなかった。
- 67 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:05
- そして今日3人だけど同室になると言われたときはこれもチャンスだと思って
たくさん話そうと新たに決意した。
けれど熊井ちゃんは同室のまあさちゃんと一緒にすぐに出て行ってしまった。
私は一人取り残されてほっとしたような寂しいような複雑な気分になる。
話したかったけどきっと上手く話せないし、明日の朝にでもちょっと話せばいいかなと
思い直し沈んだ気持ちを振り払う。
「・・・・仲良くなれるチャンスだと思ったんだけどなぁ。」
と乾いた笑い声を漏らしながら何気なく呟いた独り言はどこか物悲しげだった。
「よしっ、お風呂でも入ろう!」
私は無意味に小さくガッツポーズをすると気分転換に入浴することにした。
きっとお風呂に入る順番で譲り合いになるだろうから、ちょうどいない今入れば無駄な
言い合いをしなくて済む。
私は我ながら名案だなぁと思い鼻歌を歌いながら少し上機嫌で浴室に向かった。
最初はシャワーを浴びてすぐ出ようと思ったけど、どうせ出ても本を読むことぐらいしか
やることがない。
だったら長風呂しちゃおうかなと思い浴槽にお湯を溜めた。
それからどれぐらい時間が経ったのかは分からないけれど、上がると少しのぼせ気味で
全身が火照って熱かった。
「あつーい!はぁ・・・・上がったら何か飲もう。何が良いかなぁ?うーん、やっぱり
コーラとか炭酸系がいいかなぁ。」
私は髪をタオルで拭きながらどうせ部屋には誰もいないので独りでしゃべっていた。
でもパジャマに着替えて浴室から出ると、ベッドに座って寛いでいる熊井ちゃんと目が合った。
- 68 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:06
- 「えっ。」
「あっ。」
互いに目が合って一言呟くとその後言葉が続かなくてしばらくの間部屋に沈黙が訪れる。
でも気まずい空気に耐えられなくて先に喋ったのは私のほうだった。
「ご、ごめん。」
「なんで謝るの?別に何も悪いことしてないじゃん。」
「いや、まぁ、そうなんだけど・・・・何となく。」
「そんなの変だよ。」
「ごめん。」
「ほら、また謝った。ひょっとしてなかさきちゃんの口癖?」
「そんなじゃないと思う・・・・多分。」
「なんていうかさ、自分が悪くないのに謝るのは損だと思うよ。もったいなくない?」
「私もそう思う。」
私は苦笑しながら小さく頷くとそれ以上言葉が出なくて顔を下に俯ける。
話はそこで一旦途切れて何とも言えない居心地の悪い沈黙が二人の間に流れる。
気のせいかもしれないけど今日の熊井ちゃんはいつも以上に冷たい気がした。
- 69 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:08
- 「そんなとこ立ってないで座れば?」
「えっ?あぁ、うん。そうだね。」
熊井ちゃんに会ってから呆然と立ちつくしていたことにようやく気がついて促されるままに
隣のベッドに腰を下ろす。
でも向かい合うように座ったのはいいけどやっぱり何を話していいか分からなかった。
私は色んな話題を考えていると意外にも熊井ちゃんの方から話しかけてきた。
「なかさきちゃんってさぁ、休みの日とか何してるの?」
「えっ?何してるかなぁ・・・・結構家にいる気がするけど。あっ、でも最近はだいぶ
出掛けるようになったよ!メンバーが誘ってくれるからなんだけどね。」
「ふーん。メンバーとは仲が良いんだ。」
「うん、すっごく良いよ!なんかいつも一緒にいるからもう家族みたい感じかな。」
「キュートは楽しい?」
「楽しいよ。このメンバーで良かったなぁって今まで何度も思ったし、大人になっても
ずーっと一緒に居られたら幸せだなって思うし。」
なぜか熊井ちゃんは次々に色んなことを質問してくる。
でも私はそれにちゃんと答えるのに大して興味なさそうで、すぐ次の質問を投げ掛けられる。
- 70 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:12
- 好きな食べ物、嫌い食べ物、最近ハマってることと聞かれた時点で私はようやくさっきから
ずっと疑問に思っていたことを聞いた。
「ちょ、ちょっと待って!熊井ちゃん・・・・・今日はどうしたの?さっきからずっと
私に質問してばっかりだよ?」
悪いなとは思ったけど次の質問を言おうとしているのを遮って問いかけてみた。
すると熊井ちゃんはバツが悪そうな顔をして頭を掻きながら軽く溜め息を吐き出す。
「それじゃ・・・最後に一つだけ聞いてもいい?」
と急に真面目な顔になると今までとは違う少し固い口調で聞かれた。
私は少し言い方が悪かったかなと内心反省していたところだったので断る理由もなかった。
そして大きく頷くと熊井ちゃんは安心したのかようやく笑みを見せてくれた。
「・・・・私の事どう思う?」
「へっ?熊井ちゃんの事?」
好きな色とか好きな動物はとかそういう系統だと思っていたので、全く予想もしていない
方面の質問に思わず声が裏返ってしまった。
けれど熊井ちゃんは私の言葉には答えずただとても真剣な顔つきでこちらを見つめていた。
改めて思い知るその端正な顔立ちと真っ直ぐな眼差しに胸が高鳴る。
「私は好きだよ・・・・なかさきちゃんのこと。」
熊井ちゃんは少し低いけど柔らかな声でそう言うと私の手を掴み自分の方へと引き寄せる、
そして長い腕が背中に回ってきて強く抱き締められた。
- 71 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:14
- しばらく自分が何を言われて何をされたのか理解できなかった。
一度にたくさんのことが起こり過ぎて頭の処理能力がついていけない、そんな感じだった。
「へっ?・・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ!!」
でも少し経ってからようやく事に気がつくと同時に私は叫んでいた。
「す、好きって・・・・私のこと、だよね?」
「当たり前じゃん。好きだからさ、その、えっと・・・なかさきちゃんの事が知りたかった。」
「だから今まであんなにいっぱい質問してきたの?」
「うん。」
「でも全然そんな素振りなかったし、なんていうか・・・・熊井ちゃんってさ、私にだけ
ちょっと冷たいよね。」
私は突然の告白に戸惑いながらもこっそり今まで不満に思っていたことを言ってみた。
「そ、それは・・・・好きだから上手くしゃべれなかっただけで。今日も一緒の部屋になって
本当はすごく嬉しかったんだけど、でも何話していいか分からなくて。だからさっきまで
まあに相談してた。」
見上げると熊井ちゃんの顔は急に年相応の子どもになってしどろもどろになりながら
話している姿がちょっと可愛かった。
- 72 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:16
- でもハッとなっていきなり真面目な表情になると綺麗な大人の人みたいに見えるから
不思議だなぁと思う。
「っていうか一番知りたいさっきの答え聞いてないんだけど。」
「へっ?あぁ、私が熊井ちゃんのことどう思ってるかって・・・・ことだよね?」
「それしかないじゃん。」
「そう言われてもあまりに急なことだから・・・・」
もちろん嫌いじゃないけど好きって即答できるわけでもないし、正直どう答えていいのか
自分でもよく分からなかった。
すると熊井ちゃんは待ちきれなくなったのか短く息を吐き出すと急に立ち上がる。
「もういいや、ちょっと我慢できそうにないし。」
「えっ?えっ?ちょっと待って!絶対早すぎだよね?っていうか私まだ何も答えてないし。」
少し投げやりな口調でそう呟くと私の肩を掴んでそのままベッドに押し倒した。
色んなことをすっ飛ばしていきなりゴールな展開に私の心は焦りと混乱と動揺しかなかった。
- 73 名前:思い立ったら吉でっせ 投稿日:2008/08/25(月) 19:17
- 「だってなかさきちゃんが・・・・エロいから。」
「エ、エロいって!?」
「だって髪下ろしてるなんて反則だし。あとなんか良い匂いがする。」
「いや、お風呂から出たすぐ後だったから髪は結えなかっただけなんですけど。」
「だからしょうがないってことでいいじゃん。」
「全然良くないよぉ。」
などと言っている間に段々と熊井ちゃんの顔が近づいてきて私は反射的に目を強く瞑った。
そうしたら額に柔らかい感触があってそれはすぐに離れたのでゆっくり目を開ける、
するとその瞬間を狙ったかのように唇を押し付けるようなキスされた。
そして私はその日、そのまま熊さんに食われてしまいました。
- 74 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/08/25(月) 19:18
-
- 75 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/08/25(月) 19:18
-
- 76 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/08/25(月) 19:22
- 清水矢島 >>3-8
夏焼梅田 >>16-20
徳永有原 >>24-28
熊井須藤中島 >>56-61 別ver 66-73
萩原岡井桃子 >>36-39
愛理菅谷 >>43-48
とりあえず合コン編はこれで全部です
次回はちょっと長めの話を書こうと思ってます、キャプ総受で
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/29(金) 17:35
- 一気に読ませて頂きました。キャプ受け大好物なのでやじキャプに悶えましたw梅さんと雅ちゃんの片思い組も良かったです!!℃とベリの組み合わせカプもあまり見ないので新鮮でした。次のお話も楽しみにしています。
- 78 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/05(金) 15:09
- >>77さん マイナーCPばっかりですがもしよかったらこれからも
見てやってください
宣言した通りにちょっと長めの話を書こうと思います
あと合コン編おわりと言いながら今回の話も合コンでの話なので、
>>76は相部屋編ってことにしておいてください
ちなみに今回の話は
・キャプ総受
・基本はりしゃキャプ
・設定がちょっと無茶苦茶
・続きはない
それでも良いって方は読んでくれると嬉しいです
- 79 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/05(金) 15:10
- なぜこんなことになってしまったのかと今更ながらに思う
千奈美の顔がゆっくり近づいてきて何となく唇に目がいくと、グロスを塗った唇はいやに
艶があって少し厭らしく見えた。
そして鼻先が付くぐらい近づくと微かに息が頬に当たって何だかこそばゆかった。
千奈美は悲しそうに目を伏せると肩に置いている手に少し力を込める。
それから顔がさらに近づいて柔らかくて生温かいな感触が唇に触れたかとそれはすぐに離れた。
避けることも拒むことも容易にできた、でもそのときの私には受け入れるという選択しか
選ぶことができなかった。
思えばあのとき断れば良かったんだと思う、ゲームの誘いに来たあの日に
- 80 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/05(金) 15:11
- 合同コンサートの初日最後の休憩時間を私達ベリーズ工房の面々は楽屋まったりと
寛いでいた。
そこへ突然ドアが二回ノックされてたまたま近くにいた千奈美が開けると、ちょっと
意外そうな顔をしているのが見えた。
楽屋の中に入ってきたのは中島早貴ちゃんで確かに意外な人物だった。
なかさきちゃんは少し引き攣った笑みを浮かべていて、大きく溜め息を吐き出すと
意を決したように私達に向かって言った。
「あの・・・・一緒に王様ゲームしない?」
顔色を窺うように言った言葉を多分私達の誰もがすぐには理解できなかったと思う。
あまりにもなかさきちゃんのキャラからかけ離れている言葉というか、普通の中学生が
口にしないようなセリフだったから。
「あのぉ・・・私バカだからさ、ちょっと言葉の意味が理解できないんだけど?」
一応キャプテンだし他のメンバーもこっちを見てくるので私はわざと明るく少し馬鹿ぽっい
口調で聞いてみた。
するとなかさきちゃんは困った顔して笑いながら分かりやすく説明してくれた。
それによるとどうやらキュートで少し前から王様ゲームが流行っていて、せっかくの
合同コンだし仲を深めるって意味で一緒にやろう。
という感じの内容で話を聞けばなんてことのない遊びのお誘いだった。
ちなみになかさきちゃんが今こうやって誘いに来たのもさっきやった王様ゲームで
言われたかららしい。
私達は特に疑問に思うことなく二つ返事ですぐその話に乗った、そのときはただ単純に
面白そうだと思ったから。
- 81 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/05(金) 15:13
- 初めは確かに面白かった
話には聞いたことがあったけどやったことがなかったし今までにない遊びだった。
キュートオリジナルルールで王様は当たってもすぐには言わず、全員が棒を引き終えてから
発表するので変な緊張感もあった。
それに初めの頃は王様の命令も「ジュースを人数分買って来い」とか「肩を揉め」みたいな
ものだったので遊びとして楽しめた。
それが愛知を過ぎた辺りから「王様にキス」や「王様の指を舐める」といった感じで少しずつ過激なものに変わっていた。
そこまでいくと正直ベリーズの全員が戸惑いを隠せなかった。
でも一方のキュートの子達は大して気にしている様子はない、というか王様に当たるのが
殆どキュートだからかそれなりに楽しんでいるようだった。
私達は大阪公演が始まる前に王様ゲームにこれからも参加するのかという事ついて話し合った。
すると辞めようという意見とこれが原因で変に仲がこじれたら嫌だという意見で対立した、
二つとも理屈は分かるしどちらともある意味正論だと思う。
最終的な判断はキャプテンである私に委ねられ色々考えた末『あと二日間でこのコンサートも
終わるからそれまで我慢して付き合う』
という答えを出すと渋っていた子もいたけど一応は了承してくれた。
夜の部までの休憩時間に14人はキュートの楽屋に集合すると王様ゲームが始まった
- 82 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/05(金) 15:15
- 「王様は?」
「はーい、私!」
舞美の問いに満面の笑みで勢い良く手を上げたのは栞菜ちゃんだった。
それを見てベリーズの面々の顔つきが少し強張る、でもキュートの子達の雰囲気も
心なしか少し沈んでいるように見えた。
でも前回のことを思い出してみるとそういう雰囲気なのも納得できる。
栞菜ちゃんは前回王様になったとき「開演するまで王様をずっと抱きしめていて」と命令して、
そのときたまたま当たったみやが困った顔しながら抱きしめていた。
本人はというと光悦の表情を浮かべて幸せそうだったのを今でも覚えている。
詳しくは知らないけど色々と噂は聞いたことがあるし、今回はどんなことを言ってくるのか
と思うと私もちょっと不安だった。
「どうしょうかなぁ・・・・。」
栞菜ちゃんは楽しそうに私達の顔を眺めながら先端が赤く染まった棒を手で弄ぶ。
それからわざとらしく唸りながら考え込んでいるといい加減痺れを切らしたのか、
「早くしなよ、焦らしすぎ!」と舞美に怒られていた。
「舞美ちゃんせっかちすぎ、焦らしたほうがドキドキするじゃん。でももういいや、
今日は・・・・8番と王様がディープキス。」
栞菜ちゃんは王様として命令すると私達の顔を見つめながら妖しく微笑んだ。
一方の私達はというと今まで一番過激な内容に動揺が隠せなかった。
キュートの子達が一斉に騒ぎ出した様子を見るとどうやら8番の該当者はいないらしい、
もし当事者がいるならあんなに騒げるはずがないから。
ベリーズの面々も釣られたように騒がしくなって静かなのは私と隣の梨沙子くらいだった。
8番と栞菜ちゃんが言ったとき梨沙子が小さく息を飲む音が横から聞こえて当たったんだと
すぐに分かった。
見ると梨沙子は真顔で固まっていた、そして棒を持っている手が小さく震えていた。
- 83 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/05(金) 15:16
- 「8番は誰?」
と栞菜が本当に嬉しそうな顔をして言うと辺りを見回しながら該当者を探す。
その言葉を聞いた梨沙子の肩が大きく震えて凍り付いていた顔が今にも泣きそうになる。
それを見た瞬間考える前に勝手に体が行動を起こしていた。
梨沙子の手から棒を抜き取り代わりに自分のものを押し付けてからゆっくり立ち上がる。
「はぁ・・・・はい。私、清水佐紀です。」
私は演技で深い溜め息を吐き出すと頭を掻きながら気まずそうな顔で言った。
栞菜ちゃんは私の前まで来ると意外そうな顔をして軽く小首を傾げる。
そしてどうも納得がいかないといった様子で訝しむように梨沙子と私を交互に見ている。
「・・・・佐紀ちゃんなんだ。」
「そうだよ。」
「っていうか梨沙子じゃないんだね、てっきり当たったのは梨沙子かと思ったんだけど。」
「梨沙子は3番。自分で勝手に8番だと思い込んでたみたい。」
「それって・・・・・。」
変に突っ込まれると困ると思ったので私は栞菜ちゃんに近寄ると唇に人差し指を当てて
言葉を遮った。
「梨沙子が良かったって気持ちは分かるけど・・・・私とじゃダメ?」
とこんな台詞言いたくもないけど罰ゲームのつもりで頑張って妖艶な大人の演技をした。
そしてなるべく手馴れている雰囲気を出したくてどこかで見たカップルを真似て、栞菜ちゃんの
首に手を巻きつけると甘えるように顔を肩口に摺り寄せる。
「いや、普段真面目そうな佐紀ちゃんが積極的だと逆に萌える。」
栞菜ちゃんは口端を上げて笑うと私の腰に手を回して軽く抱き寄せてから耳元でそう囁いた。
- 84 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/05(金) 15:17
-
- 85 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/05(金) 15:17
-
- 86 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/05(金) 15:17
-
- 87 名前:名無し飼育さん。。。 投稿日:2008/09/07(日) 00:20
- ここで切りますか!
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/09(火) 08:40
- キャプテン萌え!
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/14(日) 12:56
- 娘。は書かないんですか?
- 90 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/19(金) 15:38
- まずレス返し
>>87さん 中途半端なところで切ってすいません
>>88さん 萌えてくれれば本望です
>>89さん 娘は違うところで書いているのでここで書くつもりは
ないです
では前回の続きから
- 91 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/19(金) 15:41
- 「さてと・・・場所変えようか?」
「ここの部屋でするんじゃないの?」
「違う違う。立ってすると辛いからソファーにでも座らないかってこと。」
「そうならそう言ってよ。」
「でももし佐紀ちゃんが別室希望ならそれでもいいけど?」
「場所なんてどこだっていいよ、別に。たかがディープキスじゃん。」
私は変に突っ込まれたくないので提案を断ると鼻で笑った、すると栞菜ちゃんは楽しそうに
微笑みながら部屋の端にあるソファーまで連れて行く。
本当はメンバーやキュートの子達が見ていない場所でしたかった。
横目で皆の軽く様子を窺うと顔を赤くして俯いている子や驚いている子など様々だったけど、
ベリの子達はみんな悲しそうな顔をしていた。
ただ梨沙子の顔だけは意識的に見ないようにわざと視線を逸らしていた。
もし見てしまったらどんな顔をしていても、私はきっと動揺してしまうと思うから。
ソファーに二人並んで腰を下ろすとその重みで少し軋んだ音が鳴る。
少し距離を取ったところで残りのべリキューの子達は黙ってこちらを見つめている。
私は変な焦りと混乱する自分を密かに落ち着けながら、あまり冷静ではない頭でこれから
先の展開を考える。
けれどディープキスどころかキス自体まともにしたことがなかったので全く分からなかった。
でも何もしないでいるのもおかしいので私は栞菜ちゃんの頬を軽く撫でると、
「・・・・そっちからして?」
と上目遣いで見つめると誘うような仕草をしてあっちに上手く誘導してもらうことにした。
自分が言い出したのだから当然ディープキスはできるんだろうし、私は流れに身を任せて
栞菜ちゃんが満足するまで我慢すればいい。
- 92 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/19(金) 15:42
- 栞菜ちゃんは私の肩口に頭を乗せると首の辺りに顔を寄せて大きく息を吸い込んでから、
「いいよ。」
と少し掠れた声で言うと覆いかぶさるように身を乗り出して唇を閉じたまま軽いキスをする。
それから鼻の頭や頬を擦り合わせながら段々とキスに強弱がついていく。
「っ・・・はぁ・・・。」
自然と口から漏れる自分の息が妙に色ぽっいなと他人事のように思っていた。
そして適当に動きを合わせながら頭の中では必死に今まで見てきたマンガやテレビの
キスシーンを思い出そうとしていた。
そして何となく出てきた映像で首に手を回していたのでそれを実践すると栞菜ちゃんは角度を
変えてより深いキスをしてくる。
「ちょ・・・かん・・ちゃん・・・・んっ。」
私は少しして苦しくなり口を開けて息を吸い込むとその瞬間を狙っていたかのように舌が
口内に入ってきた。
栞菜ちゃんの舌は歯茎を軽くなぞってから中を探索するようにゆっくりと一周する。
それから一旦顔を離すとわざと赤い舌を出して見せつけてからもう一度顔を近づけてくる。
そして挑発するように唇端から下唇に沿って舌先を這わす。
反対の端までいったら上唇へと戻ると半開きの口の中に先端を丸めて硬くなった舌が
再び入ってきた。
- 93 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/19(金) 15:45
- 「ふぁっ・・・・。」
それは私の舌に軽く触れるとまるで何かの別の生き物のような感触だった。
互いの舌同士が重なり合い絡み合う、これがディープキスなんだなと冷静に思いながら
思考回路は段々と機能しなくなっていった。
「んむ・・・ぁ・・・はっ・・。」
「・・・佐紀ちゃんから・・・舌・・絡めて・・。」
何だか頭の奥が痺れてきて今まで浮かんでいた様々な映像が段々と真っ白になっていく。
比べる対象が他にないから分からないけれど多分栞菜ちゃんはキスが上手いんだなと思った。
正直言って気持ち良かったし言われるままに自分からも舌を絡ませていた。
14人もいるのに部屋は静かでただ私と栞菜ちゃんの舌が絡み合う厭らしい音しかしなかった。
そのときはもう頭の中は麻痺していて恥ずかしいとか嫌だか考えられなかった。
ただ今まで感じたことのない心地良い感覚に夢中だった。
「んっ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
「ふふっ、佐紀ちゃん夢中になりすぎ。まぁそういうところが可愛いんだけど。」
少し息苦しいなと思っているとまるで心の中を読んだかのように栞菜ちゃんが顔を離す、
そして苦笑しながら私の頬に軽くキスをした。
私は上手く力が入らなくてソファーの背に寄り掛かりながらしばらく呆然としていた。
でもそのときなぜかは分からないけれど皆のほうに一瞬だけ視線を向けてしまった。
すると居た堪れないような顔をしている梨沙子が視界に入る。
なぜかその瞬間今まで眠っていた思考が急に働き出してこんなこと何でもないといった風な
余裕の笑みを作る。
でも上手く笑えた自信はなかった
- 94 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/19(金) 15:50
- それから少しして王様ゲームは終わった。
というか栞菜ちゃんが私を押し倒して胸に手を置いた時点で、舞美とえりかちゃんが強制的に
止めに入った。
それからキュートの子達が色々言ってきた気がするけど内容は覚えてない。
一方のベリーズは本気で気まずい雰囲気が漂っていた。
終わってすぐはちょっと騒がしかったけれど自分達の楽屋に戻ってからはお通夜状態で、
誰も何も話さず互いに少し距離を置いて黙り込んでいる。
言いたいけど言えないというか、言う言葉すら見つからないといった様子だった。
私も空気を読んで何も言わず黙り込んでいた。
というかこの場合変に明るく振舞うのも自虐的だし、かといって暗く落ち込んでいて
変に心配されても困る。
だからとのあえずは何事もなかったかのように振舞って皆の様子を窺う、
というのが一番良策だと思った。
誰も言葉を発しないままただ時間だけが無駄に過ぎていく。
壁に掛けてある時計の時を刻む音がいやに響いて少し耳障りだなと思った。
私は雑誌を適当に読みながらこの雰囲気でコンサートはさすがにまずいなと思ってると
「さっきのって・・・・冗談だよね。」
と千奈美が独り言なのか私に投げ掛けたのかよく分からない小さな声で不意に呟いた。
私に対して問いかけたのか定かじゃないのに答えるのも変なので黙っていると、
千奈美は突然椅子から立ち上がる。
「どうなの?キャプテン。」
「何が?」
「だから・・・さっきの・・そのさ・・・栞菜とキスしたのって本気じゃないよね?」
千奈美は私のところまで歩いてくると軽く溜め息吐き出してから本題に入った。
最初は恥ずかしいのか当てもなく視線を彷徨わせていたけれど、言い終わるとこちらを見つめて
じっと答えを待っていた。
- 95 名前:First Kiss 投稿日:2008/09/19(金) 15:53
- 一瞬本当のことを言おうと思った
『本気なわけないじゃん、あれは梨沙子を庇っただけだよ』と言いたかった。
でも言えば多分話がややこしくなるしキュートの子達と関係が悪くなる可能性もある、
けれどもし私が自主的にしたことにすれば話は拗れないで済む。
当然選ぶ選択肢は一つしかなかった。
「・・・そりゃ本気じゃないよ。」
私は千奈美の顔を見上げると自分の心を押さえつけて笑いながら明るい口調で言った。
「良かったぁ〜。何かマジぽっい雰囲気だったからちょっと驚いちゃったよ。」
「・・・・だって本気でするわけないじゃん、たかがキスだし。」
そして安堵して胸を撫で下ろす千奈美を小馬鹿にするように私は鼻で笑いながら言った。
「キャプ・・・テン・・・嘘・・・だよね?」
千奈美は大きく目を見開くと呆然とした様子で途切れ途切れに言葉を呟く。
「そんな驚くことでもないでしょ、キスなんて誰とでもできるし。」
私は自分の思いとは全く正反対のことを何とか平静を保ってさも当たり前のように言った。
「それじゃあ・・・・私ともキスできるの?」
「うん、できるよ。」
千奈美の予想外の言葉にかなり動揺していたけれど顔には出さずに平然と答える。
「ならしようよ。」
「いいよ。」
「どっちからする?」
「どっちからでもいいよ。何なら私からしようか?」
「いい。ウチからする。」
千奈美は私の両肩に手を置くと膝を曲げて少し頭を傾けてからゆっくりと顔を近づけてくる。
肩に置かれた手は少し震えていてそのことに胸が軋むように痛んだ。
でも今更もう後に引くことなんてできない。
私は目を瞑りたいという衝動に駆られたけれど何とか堪えてずっと千奈美を見つめていた。
どんなに辛い現実でもちゃんと受け入れなきゃいけないと思ったから。
そして千奈美の唇が微かに私の唇に触れた感触があったけれどそれはすぐに離れた。
- 96 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/19(金) 15:53
-
- 97 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/19(金) 15:53
-
- 98 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/09/19(金) 15:53
-
- 99 名前:名無し飼育さん。。。 投稿日:2008/09/21(日) 01:54
- ドキドキです……
- 100 名前:名無し 投稿日:2008/09/27(土) 01:09
- キャプ総受け大好き。
こんなのを探してたんだ!!
これからもがんばってください!
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/28(日) 23:48
- 栞菜の次はキャプとちなみがぁーー!!興奮しました…
- 102 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/06(月) 15:49
- レス返し
>>99さん 本当はもう少しエロくしようと思ったんですが自重しました
>>100さん キャプ総受けって本当になくて自分で書きました
駄文ですが楽しんでもらえると嬉しいです
>>101 裏話として実はちなみの役は最初みやでした
でもたまにはちなさきも面白いかなと思って変更しました
前回の続きです
- 103 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 15:53
- 「・・・・なんで?なんで嫌がらないの?こんなことできないって言ってよ!
顔を避けるとかしてよ!・・・・・黙ってキスされないでよぉ!」
千奈美は今にも泣きそうなくらい目尻を下げて私の肩を強く掴むと、
激しく揺さ振ると掠れた声で叫んだ。
それは悲しさとどうにもならない遣り切れなさに溢れた声だった。
私はすぐに言葉が出てこなかった、黙り込んでいるのが気まずいと分かっているのに
何一つ言葉が浮かんでこない。
焦る気持ちを抑えつつ頭の中で必死に考え込んでいると突然楽屋のドアがノックされて
「開始15分前です」と言われた。
とりあえず間が保てたことに安堵しつつ皆の顔つきを見ていると不安と自己嫌悪が胸に募る。
「みんな行こうよ!もう時間だよ?」
黙り込んでいる皆の中で意外にも最初に声を出したのは梨沙子だった。
視線が一気に集中するけれど特に気にする様子もなく、鏡の前で衣装と前髪の
最終チェックを始める。
梨沙子だって決して心中は穏やかじゃないと思う、それなのに率先して動く最年少の姿に
何だか自分が情けなく思えた。
私はようやく我に返るとこれからステージに立つには萎え過ぎた気持ちを奮い立たせる、
そして勢い良く立ち上がると深呼吸してから口を開いた。
「そうだね、お客さん達には関係ないことだし。せっかく来てくれたのに私達が悲しそうな
顔をしているわけにはいかないよ。楽しませるのが私達の仕事なんだから!」
こんなこと言える義理じゃないのは重々承知している、でもキャプテンとしてメンバーを
引っ張っていかなければいけない。
これが私に与えられたもう一つの仕事だから。
- 104 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 15:57
- 「よっしゃ!行こう!」
「せっかくのコンサートなんだから思い切りやらなきゃね。」
「合同コンなんだもん、楽しまないともったいないよ!」
「そうそう。だってせっかく来てくれたお客さんに落ち込んでる顔なんて見せれないし。」
「ベリーズ工房行くべ!!」
と皆は沈んだ気持ちを振り払うように無理矢理テンションを上げて、口々に叫びながら
楽屋を出ていく。
それからベリーズとキュートが全員集まると、私と舞美から一言ずつ注意みたいなことを
言って14人で気合入れをした。
すると不思議なものでさっきまでのことが嘘のように忘れられた。
べリーズのみんなもいつもと変わらない様子でキュートの子に絡んで騒いでいる。
そして2人か3人くらいで並んでステージに向かって歩いていく。
そのとき梨沙子が偶然私の横に並んだ。
別に意識したわけではなく普通な感じだったから、本当にそれは偶然なんだと思う。
「はぁ・・・・緊張する。あぁ、もうヤバイよぉ。」
「大丈夫大丈夫、コンサート始まったらどうせ笑顔で歌ってるって。」
「そうだろうけどさぁ。あー、今すぐ始まらないかなぁ。」
「さっき15分前って言ってたから舞台裏に行ったらすぐに始まるよ。」
私と梨沙子は普段通りに雑談しながら長い廊下を歩いていた、でも二人とも決して
視線を合わせようとはしなかった。
互いに顔は見ているけど視線だけは微妙に逸らしていた。
そして会話が一旦途切れると梨沙子がそっと私の手に触れて握ろうとする。
でも生温かい感触がした瞬間軽く体を捻るとやんわりと拒絶した。
何だか梨沙子を穢してしまうような気がして、私は受け入れることができなかった。
- 105 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 16:01
- 「・・・・キャプテン。」
「ごめん。」
梨沙子が今どんな表情をしているか怖くて私は深く顔を俯けてから謝った。
その声は情けないほど弱々しく微かに震えていた。
それからしばらく無言のまま歩いていると騒がしい声が聞こえてきて私はようやく顔を上げた。
すると心配そうにこちらを見ているみんなと目が合って思わず苦笑してしまった。
我ながらキャプテン失格だなと思ったけど今は感傷に浸っている場合じゃない、
反省は後にしてこれから始まる2時間を精一杯楽しもう。
私が楽しまなきゃ来てくれるお客さんだってきっと心から楽しんでくれないと思うから。
「各隊員に告げる!我々ベリーズ仮面はこのコンサートを死ぬほど楽しむぞぉ!!」
私は少し偉そうに腰に手を当てると思い切り真面目な顔をして叫んだ。
初めは急な展開に皆は呆気に取られていたようだったけれど、すぐに事態を飲み込むと全員が
敬礼して「了解!」と笑顔で返してくれた。
「っていうかリーダは私なんだけど。」
と少ししてからまあの不満そうな突っ込みが入るとみんな吹き出して笑った。
それからすぐに会場が暗くなってお客さんの歓声が聞こえてくる、私は目を瞑ると
静かに深呼吸を繰り返す。
今だけは全てを忘れて合同コンサートの成功に向けて意識を集中することにした。
コンサートをやっていると本当に全てを忘れられた。
ファンの笑顔と会場の熱気に飲まれるといつもと同じようにステージに立てたし、
さっきまであったことがまるで夢だったようにさえ思えた。
このまま永遠にコンサートが続けばいいのに、私は歓声に包まれながら心の底からそう思った。
でももしかしたらそれはみんな思っていることなのかもしれない。
そして本当にあっというのに間にアンコールまで終えると私は残酷な現実に戻される。
- 106 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 16:03
- 楽屋に戻る途中で適当に廊下の角を曲がり当てもなく彷徨っていると、人気のない場所に
辿り着いた。
途端に力が抜けたようにその場に座り込むと私は味気のない白い壁に体を預ける。
すると色んな一気に思いが込み上げてきて子どもみたいに声を上げて一人で泣いた。
「うっ・・あぁ・・・くっ・・っ・・ぁ・・。」
どれぐらい泣いていたのかは分からない、私は自分の思いを全て吐き出すように嗚咽混じりに一人で喚いていた。
「・・・もう分かんないよぉ・・・どう・・したらいいの・・・なん・で・・なんで・・
・・キス・・なんか・・・。」
誰が悪いわけじゃないのに皆が嫌いになりそうで、でも一番嫌いなのは自分で泣きながら
ずっと自己嫌悪に陥っていた。
「・・・・佐紀。」
泣き疲れてようやく落ち着いてきた頃に突然自分の名前を呼ばれた。
私は反射的に顔を上げると声がした方に首を向ける、でも目に溜まった涙でぼやけた人影が
誰かまでは特定できなかった。
だから目元を少し強引に擦ると目の前にいる人物がようやく舞美だと分かった。
「舞美・・・・どうしたの?」
「いや、どうしたって・・・・佐紀が楽屋に戻ってこないからみんなで探してたんだよ。
それに会って謝らなきゃって思ってたし。」
舞美は困ったように額に眉を寄せていたけれど私と目が合うと申し訳なさそうな顔をする。
- 107 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 16:05
- それから軽く溜め息を吐き出すと突然深く頭を下げてきた。
「ごめん!本当にごめん!栞菜もやりすぎだったよね。一応終わった後で怒ったんだけどさ、
私ももっと早く止めるべきだったと思うし・・・・何か色々とごめん!」
そう言ってからゆっくりと顔を上げると頭を乱暴に掻いてから気まずそうな顔をしていた。
「・・・・私なら・・・大丈夫だから。」
「大丈夫じゃないよ!そういう顔してないじゃん。」
変に心配かけたくなくて強がったけれど声も弱々しかったし、余程情けない顔でもしていたのか
舞美は心配そうに私を覗き込む。
それから優しく微笑むと幼い子にするように軽く頭を撫でてから静かに自分の方へ
抱き寄せる。
本当はすごく心細くて誰かに縋り付きたい気持ちで一杯だった、だから抱き締められた瞬間
感情が溢れ出して私の目からまた涙がこぼれる。
「・・まい・・み・・。」
「うん。絶対大丈夫だから。何も心配いらないよ。」
舞美は私の背中を撫でながら何度も何度も『大丈夫』と繰り返した。
何の根拠があってそう言ってるかは分からないけど、抱き締められた腕から伝わる温もりと
力強い声で言われると不思議と安心できた。
- 108 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 16:07
- だいぶ精神的に落ち着いてきたので離れようとすると誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。
「舞美ちゃん!何やってるの?」
不機嫌そうでかなり低い声だったけどそれは間違いなく梨沙子の声だった。
「梨沙子?」
「佐紀ちゃんを泣かせたの?」
「違うよ!私は佐紀が落ち込んでたから慰めてただけだよ。」
「ふーん・・・・本当?」
「本当だよ、舞美はただ慰めてくれただけで別に何もされてない。」
「なら信じる。」
梨沙子はさっきのこともあって舞美を疑っているのか軽く睨みつけていた。
私は梨沙子がこんな風に誰かに敵対心を向けるところを初めて見たから、
少し面食らってしまった。
舞美もそんな梨沙子に驚いているようだったけど、不意にわざとらしく何か思いついたように
手を叩いた。
「あっ、そうだ!佐紀ちゃん見つかったって言ってくるよ。きっと心配してるだろうから。」
「ありがと。後でそっちに一回顔出しに行くから。」
「無理しなくていいよ、栞菜と顔合わすの辛いでしょ?私のほうからまたそっちに行く。」
気を利かせてくれたのか舞美は適当なことを言ってその場から早足でいなくなった。
- 109 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 16:11
- 「・・・キャプテン、大丈夫?」
梨沙子は舞美がいなくなるとすぐに膝を曲げて私の顔を心配そうに覗き込む。
その不安げな表情はいつもの梨沙子で私は安心しながら頷いてその言葉に答える。
「ごめ・・ん・・・ごめんなさい・・・・。」
すると梨沙子の目が潤んで急に泣き出したかと思う顔を俯けて私に謝ってきた。
突然のことに戸惑いながらも梨沙子を軽く抱き締めてから背中を撫でて慰める、ふとさっきの
自分と正反対だなと思って自然と笑みがこぼれた。
梨沙子も私とは種類が違うけどずっと罪悪感に苛まれていたんだと思う。
ある意味では代わって貰ったことということで私よりもずっと苦しんでいたのかもしれない。
謝罪の言葉が嗚咽で途切れると不意に梨沙子が顔を上げる。
濡れた赤い瞳がいやに艶かしく見えてこんなときに不謹慎だとは思ったけど胸が高鳴った。
梨沙子は深い息を吐き出すと悲しそうに笑ってから顔を近づけてくる。
でもあまりにそれが突然だったので反射的に体を引いてしまった。
「梨沙子?!」
「・・・・ごめん。でも私もキャプテンと同じになりたいから。」
「同じ?」
「うん、同じ。・・・・ごめんね、意味分からないでしょ?」
「うんん。何となくだけど梨沙子の言いたい事分かるよ。」
正解かは分からないけれど多分辛い思いを分け合いたいということだと思う。
キスするだけで分かち合えるものではないけど、その気持ちが嬉しくて私は梨沙子の頭を
軽く撫でた。
そしてこの子をもう悲しませたくないなと思った。
- 110 名前:First Kiss 投稿日:2008/10/06(月) 16:13
- 私は溜め息を吐いてから静かに体を離すと肩に手を置いてから諭すように優しく言った。
「気持ちは嬉しいけどダメだよ。何かさ・・・・梨沙子を汚しちゃう気がする。」
「そんなことないよ!そんなこと絶対ない。」
梨沙子のその言葉は大きな瞳と同様にとても真っ直ぐで純粋だった。
お互いの目が合うと再び梨沙子の顔が近づいてくる、私はもう拒まずに黙って静かに
目を閉じた。
そういえば目を閉じてキスするのは初めてだなと場違いなことを不意に思った。
でも突然梨沙子が喉を鳴らす音が聞こえてきて吹き出しそうになったのを何とか堪える。
だけど確実に自分の脈が早まっていくのを感じていた。
そして深呼吸するような息遣いが聞こえてきたかと思うと、少ししてからようやく唇に
柔らかなものが当たる。
それはキスと呼べるようなものではなかった。
まるで幼稚園くらいの子がするみたいな唇同士を押し付ける形だけのものだった。
おまけに梨沙子の唇は涙で濡れていてそのせいか少ししょっぱい味がした。
でもきっとファーストキスってこんな感じなんだろうなと思った。
- 111 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/06(月) 16:14
- 以上で終わりです
続きはありません、本当に中途半端な終わり方ですいません
- 112 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/06(月) 16:14
-
- 113 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/06(月) 16:14
-
- 114 名前:名無し 投稿日:2008/10/06(月) 21:43
- 良かった!
また書いて下さいよ
キャプ受け〜
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/06(月) 22:02
- まさかこんなシリアスな展開になるとは
今度いつかりしゃキャプお願いします
- 116 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/14(火) 21:13
- レス返し
>>114さん キャプ受けは好きだし書きやすいので、これからもちょこちょこ
書いていくと思います
>>115さん そんなあなたのリクにお答えしてりしゃキャプ書きました
ベリコレ行った当日に勢いだけで書いたりしゃキャプ
多分続きはあるはず
- 117 名前:REAL LOVE 投稿日:2008/10/14(火) 21:14
-
かみさま、あなたは私のことが嫌いですか?
- 118 名前:REAL LOVE 投稿日:2008/10/14(火) 21:16
- 私は本が入った紙袋を片手で抱きながら焦る気持ちを抑えつつ、少し小走りに家の階段を駆け上っていく。
そして部屋の前に着くと軽くノックしてからドアを勢い良く開けた。
「佐紀ちゃん、買ってきたよ!」
自慢するように紙袋を前に突き出して部屋に入ったけれど、期待に反して何の反応もなく
部屋は静まり返っていた。
でもその理由はすぐに分かった。
買い物を頼んだ張本人はソファーに背中を丸めて小さくなって眠っていたから。
嬉しそうな笑顔を想像していたから期待が外れて少し残念だったけれど、
可愛らしい寝顔が見れたので良しとした。
午後の日差しが心地よくてつい眠くなる気持ちは分からなくもない。
開いている窓から大分冷たくなってきた風が部屋の中に入ってきて、すぐそこまで
きている秋を感じさせる。
上に何も掛けずにうたた寝するには少し涼しすぎるかもしれない。
「自分で頼んでおいて寝るかなぁ・・・・普通。」
私は浅い溜め息を吐き出してから思わず小声で独り言を呟くと、買ってきた雑誌を
机に置いた。
そして起こさないようになるべく足音を立てないように静かに近く。
ソファーの前に立つと絨毯に膝をついて蹲っている佐紀ちゃんの顔を覗き込む。
私と3つ違う割にはまだ少し幼さが残る顔つきだった。
「おーい。買って来たよ・・・・・お姉ちゃん。」
耳元辺りで起きない程度に小さく呟くと、ちょっと悪戯して頭を指で軽く小突いてみた。
それから久しぶりにお姉さん扱いした。
いつもは愛称で呼ぶのでお姉ちゃんと呼ぶことは殆どなかった。
だって姉妹だと意識すると辛いから。
佐紀ちゃんは私の手を軽く払うと猫が顔を洗うときのような仕草をする。
「可愛いすぎるんですけど。」
口元がだらしなく緩むのを抑えられなくて、せめて声が漏れないように手で口元を
押さえながら呟いた。
それから少ししてようやく治まってきて最後に小さく溜め息を吐き出した。
そして改めて佐紀ちゃんの顔を覗き込むと、部屋に差し込む夕日の橙色の光に染まった髪を
梳くように優しく撫でる。
- 119 名前:REAL LOVE 投稿日:2008/10/14(火) 21:17
- いつの間にか日が落ちてきてきたので、私はそっと立ち上がるとクローゼットから
タオルケットを持ってくる。
「全く・・・こんなとこで寝て風邪ひいても知らないよ?」
と呆れたように呟くと丸まっている佐紀ちゃんの体にそれを静かに掛けてあげる。
「うぅ・・ん・・・・りさ・こ・・・・・。」
軽く唸ったかと思うと体を捻って寝返りを打つ、そして不意に私の名を呼んで人懐っこい笑みを見せる。
その瞬間どうしようもない衝動が湧き上がって私はその小さな唇を奪った。
絶対嬉しいはずなのになぜかいつも胸が締め付けられて痛い。
私は深い溜め息を吐き出すとその場に足を投げ出して、ソファーのアーム部分に後頭部を乗せると
味気ない白い天井を見つめる。
「こう見えてもモテるんだよ?早くしないと誰かのものになっちゃうからね。」
とどうせ聞こえてないだろうけど少し拗ねた口調で言ってみた。
それからすぐに首だけ後ろに向けたけど、佐紀ちゃんは相変わらず気持ち良さそうに
眠ったままだった。
「はぁ・・・・やっぱ気づかないよねぇ。」
人の気も知らずに幸せそうに眠っていその姿を見て思わず苦笑いしてしまう。
- 120 名前:REAL LOVE 投稿日:2008/10/14(火) 21:18
- もう何度も同じようなことしているけど未だに気づかれたことはない。
でももしも佐紀ちゃんが気付いてしまったら確実に今まで築いてきたものは壊れる。
避けられるかもしれないし、嫌われるかもしれない、きっともう普通に家族としては
暮らしていられない。
でも辛くて苦しいことのほうが多いのは覚悟してる。
それでも私は佐紀ちゃんへの想いを抑えることができなかった。
もしも私が男だったらとか、家族じゃなければとか、そんなこともう何回も考えた。
でもそんなことを考えても所詮は妄想で考えるだけきりがない
連れ子だから血が繋がってないのが唯一の救いかもしれないけど、でも同性じゃ
例え想いを告げても断られるのが目に見えてる。
私はため息を吐くと体を反転させて佐紀ちゃんの頭を撫でてから
額にそっとキスをした。
「好きだよ・・・・佐紀ちゃん。」
そう口にしたら不意に目頭が熱くなって堪えきれずに目から涙がこぼれ落ちる。
拭っても拭っても涙が止まらないので、私は仕方なく起こさないように
声を押し殺して泣いた。
- 121 名前:REAL LOVE 投稿日:2008/10/14(火) 21:19
- 「うっ・・うっ・・・っ・・・。」
「んっ・・・・梨沙子!」
知らないうちに声が漏れていたのか佐紀ちゃんが目を擦りながらゆっくりと体を起こす。
そしてなぜか泣いている私を見て目を見開いて驚いていた。
「えっ?ちょ、ちょっとなんで泣いてるの?!梨沙子?」
突然のことに状況が全くの見込めないらしく佐紀ちゃんは見事なくらい慌てていた。
それでもやっぱり年上って感じですぐに冷静さを取り戻して私の涙を拭ってくれる。
「だい・・じょぶ・・・・大丈夫・・だから・・。」
「うん。」
「・・・ほんと・・・だよ?」
「うん。」
「・・・・ありがと」
「うん。」
佐紀ちゃんは理由も何も聞かずに私を抱き締めると背中を優しく撫でてくれる。
私は少しでも自分の気持ちが伝わればいいなと思って、少し力を込めてその細く小さな体を
抱き返した。
- 122 名前:REAL LOVE 投稿日:2008/10/14(火) 21:20
-
かみさま、私はあなたが嫌いです
- 123 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/14(火) 21:20
-
- 124 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/14(火) 21:20
-
- 125 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/14(火) 21:20
-
- 126 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/15(水) 20:33
- ドキドキ
- 127 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/27(月) 16:09
- まずはレス返し
>>126さん 多分後半の方がドキドキすると思います
では、前回書いたりしゃキャプで姉妹物の続きです
- 128 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:09
-
神様 してはいけない恋ってあるのですか?
- 129 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:10
- あれは初めて再婚するお父さんとその連れ子が来た日。
「ほら、梨沙子。新しいお母さんとお姉ちゃんにちゃんとご挨拶しなさい」
「・・・・」
「悪いね、本当は明るくて元気な子なんだけどちょっと緊張してるみたいで」
「初めて会ったんだから仕方ないわよ。さっ、佐紀も挨拶して。」
「は、初めまして。清水佐紀です・・・・えっと・・・よ、よろしくね、梨沙子ちゃん」
私もそのときは緊張していてぎこちなく微笑むと、女の子はお父さんの後ろから少しだけ
顔を出してはにかむように笑ってくれた。
それが自分でも戸惑うほどすごく嬉しかったのを今でも覚えている
梨沙子が家に来たのは今から五年前になる。
初めて会ったときはこんなに可愛い子がこの世に存在するのか、と子どもながらに
感銘を受けてしまった。
それぐらいとても綺麗な子だった。
今までといっても当時12歳だったけれど学校でこんな子を見たことがなかった。
白い肌に外国の子どものような整った顔立ち、思わず時を忘れて見惚れてしまうほど
衝撃的な出会いだった。
- 130 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:11
- お父さんはいつもの出張、お母さんは看護士で今日は夜勤の日だった。
二人だけの夕食ももう今更戸惑うことなく至って普通のことになっていた。
私は食器洗浄機のスイッチを押すとソファーでだらしなく寛いでいる梨沙子に声を掛ける。
「梨沙子、先にお風呂入る?」
「佐紀ちゃんが先でいいよ。ちょうど見たいテレビがこれから始まるから」
「それじゃ先入るよ?」
「うん、いいよ」
梨沙子はテレビに夢中で私の言葉にはどうも生返事なので、会話を早めに切り上げて
私はお風呂場に向かうことにした。
でもリビングのノブに手を掛けたと同時くらいに梨沙子が急に体を起こして、
「佐紀ちゃん、一緒にお風呂入る?」
「えっ・・・・」
「あはは、冗談だよ。佐紀ちゃんのナイスバディー見たらきっと鼻血出ちゃうもん」
「も、もうっ!バカなこと言わないでよ!」
「・・・・ごめん。でもそんなに怒らなくってもいいのに」
「梨沙子がバカなこと言うからでしょ」
「うん・・・・もう言わない」
「それじゃそうして」
私は胸の高鳴りが押さえられなくてぶっきらぼうに会話を終わらせると、逃げるように
リビングから出た。
冗談だってことくらい分かってる。
それでも梨沙子にあぁいう言葉を言われる度に私の胸はいつだって大きく震える。
真に受けるのが馬鹿げていることぐらい分かってる。
それでも嬉しくって私は自分の顔が緩むのをいつだって止められない。
私も思いが叶わないことくらい分かってる。
それでも梨沙子を意識してしまう、そしてそれは時々自分でも抑えられなくなる。
- 131 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:12
- 初めは可愛い妹だとしか思わなかった。
でもいつの間にか家族への愛情が異性に向ける愛情と同じものに変わっていた。
前から好きだなとは思っていたけど、それが姉妹の範囲を超えていることに気がついたのは
本当につい最近の事だった。
けれど気づかなかっただけで前からそういう感情はあったのかもしれない。
幼すぎてその意味に気がつかなかっただけで。
でも永遠に気付かなければ良かった、この恋は辛いだけで絶対に報われない。
お風呂から上がってリビングに戻ると梨沙子はテレビを見ていなかった。
ソファーの上で膝を抱えながら顔を俯けているその姿は、どう見ても落ち込んでいる
ようにしか見えない。
私はとりあえず明るい口調で話し掛けると、その様子を軽く窺ってみることにした。
「梨沙子?どうしたの?見たいテレビがあったんじゃなかったの?」
「もういい」
「何かあったの?」
「何でもない」
「・・・・うん、そっか」
きっと話したくないことなんだと私は悟るとそれ以上何も言わなかった。
そして梨沙子の隣に腰を下ろすとそっと頭を撫でる。
少し経ってから気持ちが落ち着いたのか、梨沙子はようやく顔を上げると少し涙目だった。
「・・・・佐紀ちゃん」
「ん?」
「あの・・・・・うんん、やっぱりいい」
梨沙子は何かを言おうとしたけれど、引っ掛かることがあるのか言おうとしない。
- 132 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:13
- 私はさっきまでの理想の優しいお姉ちゃん像なんて切り捨てて、梨沙子の肩を掴むと
言うように催促した。
「言うなら言ってよ、気になるじゃん」
我ながらひどいことしている自覚はあったけれど、気になるものは仕方ないと割り切る。
「やだ。言いたくない」
と梨沙子はそっぽを向いてそう言うと口をきつく閉じた。
「ちょっと教えてよ」
「やだって言ってるじゃん」
「教えなさい」
「やだ」
「教えてってば!」
「い・や・だ!」
私達はいつの間にか互いに肩を掴んで押し合い圧し合いをしながらやりあっていた。
けれど不意に梨沙子が思ったより強い力で押してきたせいで、私はその力に抵抗できず
ソファーに倒れ込む。
そして梨沙子も勢いに乗って倒れてきたけれど私の横に手を置いて体を支えていた。
それから今まで言い争っていたのが嘘みたいに二人の間に沈黙が流れる。
- 133 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:13
- 「・・・・梨沙子」
なぜそのとき名前を呼んだのかは分からない。
でも名前を呼んだ瞬間、梨沙子が突然顔を近づけてきて二人の唇が重なった。
けれどすぐに顔は離れて梨沙子は捨てられた子犬みたいな目で私を見つめる。
それから小さく溜め息を吐き出すと申し訳なさそうに口を開いた。
「・・・ごめん。最低だね、私」
「なんでそう思うの?」
「だって・・・・だってキスしたんだよ?佐紀ちゃんはお姉ちゃんなのに」
「確かに突然すぎて驚いたけど嫌じゃなかったよ」
「へっ?」
「私は梨沙子にキスされるの全然嫌じゃないよ」
「えっ?な、なんで?!えっ?いや、うんと・・・・」
梨沙子は余程私の答えが予想外だったのか口元に手を当てて驚いていた。
もう見事なくらい動揺していて言ったら怒るかもしれないけど、その様子が
ちょっと可愛かった。
私は梨沙子の頬に手を添えると微笑みながらゆっくりと口を開く、
「だって梨沙子が好きだから」
それは自分でも驚くくらいあっさりとした告白だった。
- 134 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:14
- 「えっ?」
それを聞いた梨沙子はまるで石みたいに硬直していた。
それを見て胸が痛いくらい締め付けられたけれど、予想できたことなんだからと
自分を慰める。
もう子どもじゃないし受け入れられないことくらい容易に想像できた。
だから言わないつもりだった、ずっと自分の中にしまっておくつもりだった。
それなのに押さえる暇もなく言葉が口から出ていた。
そんなことを思っていたから梨沙子の言葉をすぐに理解できなかった。
「好き」
「えっ?」
「好きだよ」
「それって・・・・」
「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き!佐紀ちゃんが好き!!」
「へっ・・・・うえぇぇぇぇ!」
梨沙子に抱きつかれて耳元で言う意味がないくらい大きな声で好きを連発された。
あまりに予想外の展開に今度は私のほうが固まってしまった。
でも状況を理解してもいまいち現実感がなくて、嬉しいとか驚いたとかいう感情すら
そのときは湧かなかった。
- 135 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:16
- あんなに好きと言ってくれたのに不安で、私は梨沙子の顔色を窺いながら聞いた。
「・・・・私なんかでいいの?」
「佐紀ちゃん意外なんて考えたことないよ、今まで」
「本当に?」
その質問に梨沙子は答えず少し乱暴に私を自分の元へ引き寄せると強く抱き締める。
それは疑いようのないくらいまっすぐな答えで、私は何も言わずに梨沙子の首筋に顔を
埋めるとしばらく抱き合っていた。
それはとても幸せな時間でいつまでも浸っていたかったけれど、不意にある疑問が
浮かんで思ったままに問いかけた。
「そういえばなんで落ち込んでたの?」
「・・・・お風呂に行くとき変な冗談言ったから、佐紀ちゃんが怒ったのかと思って」
「別に怒ってないよ」
「本当に?」
「うん。っていうかそんなことで落ち込んだの?」
「そうだよ、悪い?」
「・・・うんん。とっても可愛い!」
私は口元が自然に緩むのを感じながら梨沙子の頭に手を伸ばして優しく撫でる。
梨沙子は気恥ずかしそうにはにかんでいた。
それからしばらく頭を撫でていたけれどいきなり手を掴まれた、何事かと思って
顔を上げるとゆっくりと唇が近づけてくる。
私は軽く微笑んでから静かに目を閉じると、すぐに梨沙子の唇が触れたのが分かった。
それからその柔らかくて温かくて優しい感触にしばし酔いしれていた。
- 136 名前:恋の呪縛 投稿日:2008/10/27(月) 16:16
-
神様 私は妹と恋に落ちました
- 137 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/27(月) 16:17
-
- 138 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/27(月) 16:17
-
- 139 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/10/27(月) 16:17
- 実はまだ続きがあるんだよ、とか言って
- 140 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/28(火) 00:12
- 続き…
きた〜
またをお待ちしてますwww
- 141 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/05(水) 08:56
- さらに続きがあるとは!
楽しみにしてます。
- 142 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/10(月) 15:10
- まずレス返し
>>140さん お待たせしました
三つに分けましたが、りしゃキャプは今回で終わりです
>>141さん 続きといいつつこの話が一番書きたかったし、
今までの話は前振りみたいなものです
それでは前回のしりゃキャプの続きです
- 143 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:12
-
かみさま あなたは私の初恋を汚いと思いますか?
- 144 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:14
- 私と佐紀ちゃんは両親を見送るために玄関前の廊下に二人並んで立っていた。
「それじゃ行ってくる」
「佐紀、後はよろしくね」
「大丈夫だよ、梨沙子と二人きりなのはいつものことだし」
「そうそう、だから二人とも楽しんできてね。何なら朝まで帰ってこなくてもいいよ?」
「バ、バカなこと言うんじゃない!全く・・・・梨沙子もいつの間に言うようになったな」
「もう中二だよ?これぐらい普通だもん」
お母さんとお父さんは久しぶりに二人きりでデートできるのが嬉しそうだった。
互いに忙しくて一緒にいる時間が少ない両親の為に、私と佐紀ちゃんから
結婚記念日にデートをプレゼントした。
それはちょっと高級なレストランのディナーにご招待というもので、
料金は既にお店のほうに渡してある。
お父さんは最後まで心配そうだったけれどお母さんが少し強引に腕を組むと、
満更でもない様子で家から出て行った。
- 145 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:16
-
私達は両親が夕闇で見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。
「・・・・・行っちゃったね」
と少し寂しそうに佐紀ちゃんは呟くと外履き用のサンダルを履いて玄関のドアを閉める。
カチっと鍵をかけた音がしたと同時に私は衝動が抑えきれなくなった。
裸足のまま玄関に下りると佐紀ちゃんの元に走っていく、そしてその細い小さな体を
強く抱き締めた。
「梨沙子、ちょっ・・・・」
それから何か言おうとする佐紀ちゃんの口を強引に塞いだ。
突然のことに驚いたのか佐紀ちゃんは体を後ろに引こうとする、それでも私は構わず
ドアに押し付けてキスを続ける。
すると肩を叩いて少し抵抗されたけどその手を取って強く握るとそれは止まった。
それからしばらくすると息ができなくて苦しくなったのか、佐紀ちゃんの口が僅かに開く。
それを見て私は角度を変えてより深く口付けると舌を入れる。
ここまですると佐紀ちゃんは少し困ったように笑いながら首の後ろに手を回してきた。
そして小さな舌先が自分のものに触れる、その瞬間体の熱が一気に上がって
無意識のうちに絡めていた。
- 146 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:17
- 静かな玄関で二人の舌が絡み合い吸い合う厭らしい音だけが響いている。
さすがにずっとキスし続けていると私も苦しくなって一旦顔を離すと、二人の間を
透明な糸が繋いでいた。
それをそっと手で掬うと最後に一度だけ触れる程度の軽いキスをする。
佐紀ちゃんは顔を火照らせてどこか焦点の合わない目をしていた。
私はというと体が異様に熱かった、そしてこの熱は欲望を果たさないと冷めないことを
知っていた。
もう自分を抑えられなくて佐紀ちゃんの首筋に顔を埋めると舌を這わす。
「り、梨沙子!?こ、ここではやめようよ」
と佐紀ちゃんは急に我に返ったようで慌てた様子で抗議の声を上げる。
言いたい事は分かる、でも心と体の要求が強すぎて今は止められなかった。
「ごめん。ごめんね?何か・・・もう無理みたい」
「えっ?ちょっと・・・・んっ」
さっきと同じように唇を塞いで言葉を遮る、でも今度は佐紀ちゃんの頭がドアに
当たらないように手を置いて庇った。
それから焦ったように少し乱暴に服を脱がすと、佐紀ちゃんの白い肌を見た瞬間に
意識が飛んだ。
- 147 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:19
- 気がついたら佐紀ちゃんは玄関に座り込んで荒い息を吐き出していた。
首筋や鎖骨の辺りに赤い跡がいくつもあって、自分がしたことなのに冷静になると
すごく恥ずかしかった。
「梨沙子・・・・ちょっと今日激しすぎ」
佐紀ちゃんは私を見上げると呆れた顔で笑いながら言った。
「・・・・ごめん。痛かった?」
「うんん、平気。ただいつもよりちょっと乱暴だなぁとは思ったけど」
「ごめん」
「別に謝らなくていいよ・・・・・その、まぁ・・・嫌じゃ、ないし」
頬を掻きながら照れくさそうにしている佐紀ちゃんがすごく可愛くて、私は床に膝をつくと
細い体を抱え込む。
キスもして、そういう行為もして、それだけで十分なはずなのに時々不安になる。
それは佐紀ちゃんがお姉ちゃんだからだと思う。
でも同じ家に住んでいてこんなに近くにいるのに、親の目があるから抱き締めることさえ
簡単にはできない。
今日だって両親の為と表向きは言っているけど本当の動機は不純だった。
ただ佐紀ちゃんと二人きりになれる、そう思ったから話があったときに賛成した。
- 148 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:21
- 佐紀ちゃんは甘えるように私の肩口に頭を乗せると完全に体を預けてくれる。
私は柔らかな温もりと一時の幸せに浸りながら黒髪をゆっくり撫でる。
そのとき不意に思ったことをつい口に出していた、そしてそれは一度口にするととめどなく
溢れて止まらなくなった。
「何かさ・・・・」
「ん?」
「意地汚いね・・・・私」
「梨沙子?」
「いくら触れても抱きしめても足りないの。佐紀ちゃんが欲しくて自分が止められなくなる」
「・・・・そっか」
「うん」
「それでもさ・・・・私は梨沙子が好きだよ」
佐紀ちゃんは優しく微笑むと逸らすことなくまっすぐな瞳で私を見つめる。
その言葉に私は胸が熱くなって抱き締める手に力を込める、そしてその唇に触れようと
顔を近づけた。
でも何だか急に触れることが怖くなって寸前のところで動きを止める。
すると佐紀ちゃんは苦笑しながら少しだけ体を持ち上げると、奪うように私の唇を
自分もので掠め取る。
「梨沙子はさ、私のこと好き?」
「えっ?好きだよ!誰がなんて言ったって佐紀ちゃんが好き!佐紀ちゃん以外無理だもん!」
「うん。ならそれでいいよ」
佐紀ちゃんは私の言葉に満足そうに笑いながら、また子ども扱いして小さい子にするみたいに
軽く頭を撫でられる。
私は照れ笑いしながら不意にいつかこの人を壊してしまうんじゃないかと思った。
でも例え壊してしまうとしても手放すことなんてできない、佐紀ちゃんが私の全てだから。
私達は見つめ合うとどちらともなく顔を近づけてから静かに唇を重ねた。
- 149 名前:あなたなしでは生きてゆけない 投稿日:2008/11/10(月) 15:22
-
かみさま どんなに汚くてもこれが私のする最初で最後の恋です
- 150 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/10(月) 15:22
-
- 151 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/10(月) 15:22
-
- 152 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/10(月) 15:30
- 以上でこの話は終わりです
一応まとめ
りしゃキャプで姉妹物
>>117-122
REAL LOVE(梨沙子視点)
>>128-136
恋の呪縛(キャプ視点)
>>143-149
あなたなしでは生きてゆけない (梨沙子視点)
ちょっと暗い感じの話だったので、次は明るい話が書きたいです
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/11(火) 08:15
- いやー、ものすっごいドキドキしましたw
実は私がりしゃキャプリクエストさせて頂いたんですが、こんなに素敵な作品で応えてくれて本当にありがとうございました。
次のお話も楽しみにしてます。
- 154 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/16(日) 11:37
- やばい。良すぎる。
りしゃキャプ最高。
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/16(日) 18:20
- 最初から一気に読みました。
キャプ絡みでさらにキャプ受けとか最高です!
- 156 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/26(水) 16:08
- まずはレス返し
>>153さん 期待に応えられれば良かったかなと思います
機会があればまたりしゃキャプは書いていきたいです、自分が好きなのでw
>>154さん 少しずつりしゃキャプを広めて行きたいと思ってます
>>155さん これからもキャプ受けはちょこちょこ書いていくつもりなので、
もし良かったらたまに覗いてみてください
- 157 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/26(水) 16:10
- 今回の話は栞菜×千奈美+みやです
需要はないと思いますが、自己満足で書いてみました
お好きな方はどうぞ
- 158 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:11
- 「栞菜ぁぁぁぁぁ!!」」
私は他所のクラスにも関わらず大声で怒鳴るとズカズカと足を踏み入れる。
それからクラスメートと楽しそうにしゃべっている栞菜の前で足を止める。
栞菜は私に気がつくと一瞬気まずそうな顔をした、でもすぐに笑顔を作ったけれど
口元が引き攣っている。
私は鼻から荒い息を吐き出すと勢い良く両手で机を叩く。
その音は教室中に響き渡るくらい大きくて、周りの視線がこちらに集中するのが分かる。
「ちょっと栞菜!またB組の愛理に手出したでしょ!」
「初めに言っておくけどそれ誤解だから。別に何もしてないし。」
「はぁ?誤解?この目でちゃんと見たんですけど!」
「へっ?!いや、あ、あれは・・・・そう!途中まで一緒に帰っただけだよ。」
浮気現場を見つけた妻のように、私は栞菜の襟首を掴むぐらいの勢いで問い詰める。
けれど栞菜は相変わらずしらばっくれて誤魔化そうとしている。
初めは私達の様子を見ていた子達ももう毎度のことなので、一部の物好きを除いて
こちらを見ている人はいなかった。
私は空いている机の上に座ると額に眉を寄せながら栞菜の話を聞いていた。
栞菜は時々困った顔をしながらも必死に言い訳を繰り返す。
- 159 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:11
- 「ふーん、一緒に帰っただけ?一緒に帰るのに腰に手を回す必要があるんですかねぇ?」
「あ、あぁ・・・・なんだろ?そういうこともしたかなぁ、ちょっとだけ。」
「あのねぇ、ちょっともたくさんもないから!そういうことしたら普通に浮気だから!」
「えー、浮気じゃないって。ちょっと触れただけじゃん。だって5分くらいしか触れてないよ?」
「結局触ってるですけど、この人!っていうか5分って長すぎ!」
浮気が確定すると栞菜はバツが悪そうな顔をして黙り込む。
私も何も言わず片手を腰に当てると、唇を少し突き出して不機嫌そうな顔つきで
栞菜を見つめる。
私は浮気現場を見るか噂で聞いてはこうやって説教していた。
そして栞菜は浮気がバレるといつも黙り込む。
でも小さな溜め息を吐き出すと徐に立ち上がって急に真面目な顔になる。
その顔はちょっと格好良くて、いつも少しだけ胸が高鳴るのが悔しい。
立つと大体同じくらいの位置に顔があって、栞菜は優しく微笑むと私の頭を軽く撫でる。
「本当に好きなのは千奈美ちゃんだよ。」
とまた真面目な顔に戻ってそう言うと頬に触れるだけのキスをした。
周りから冷やかしの声があって思わず顔が火照ってくる。
私が浮気を責める度に栞菜はいつもこんな感じで誤魔化してくる。
毎回真面目な顔をして「1番好きだ」って言って、最後に頬か額にキスをされる。
いつもそのパターンなのに私の胸はバカみたいにときめてしまう。
そしてやっぱり栞菜が好きなんだなぁと思う。
- 160 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:12
- 「栞菜!高等部の梅田先輩が呼んでるよぉ。」
と突然声がして見るとクラスメートらしき子が教室のドアの前で立っていた。
その横には高等部でも美人で有名な梅田先輩がいて、視線を戻すとすでに栞菜は
目の前にはいなかった。
「栞菜、今日って部活来れそう?」
「行く、絶対行く!えりかちゃんが来るなら毎日出るのになぁ。」
「私が来なくてもちゃんと出なよ。っていうか私高等部だからそんなに顔出せないし。」
「それが残念なんだよねぇ。」
「あのねぇ、栞菜って何の為に部活やってんの?好きだからじゃないの?」
「ん?好きだよ、えりかちゃんが。」
梅田先輩と楽しそうに、というか殆ど口説いてるようにしか聞こえないセリフを
栞菜は連発していた。
梅田先輩も満更じゃなさそうで嬉しそうな顔をして話している。
「栞菜ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は他所のクラスにも関わらず本日2度目の怒声を上げる。
そして栞菜のところまで早足で近づくと、手加減全くなしで頬に一発食らわした。
- 161 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:13
- そんな出来事が昼休みにあった為、5、6時間目の授業中ずっと不機嫌だった。
だから触る神に祟りなしってやつなのか、クラスメートは遠巻きに見つめるだけで
話かけてこなかった。
そしてようやく話かけられたのは放課後になってからだった。
一人でボーっとしていると、幼馴染のみやが珍しく部活がないらしく一緒に帰ろうと
誘われた。
私は断る理由もないので頷くと適当にカバンの中に物を入れて教室を出た。
「また栞菜とケンカしたんでしょ?」
「なんで知ってるの?」
「高等部まで聞こえてきたよ、栞菜との痴話ゲンカ。」
「ウソっ?!」
「うそーん。さすがにそれはないでしょ。」
「あのねぇ、今そういう冗談に笑える心境じゃないんですけど。」
ぶっきらぼうに言葉を返す私に対して、みやは時々こっちをからかいながら楽しそうに
笑っていた。
それから不意に栞菜以外の人と帰るのは久しぶりなことに気が付いた。
たまにはこういうのもいいかなと思いつつ、心のどこかでは違和感というか
物足りなさを感じていた。
「恋にお悩み中の千奈美ちゃんに良い案があるんだけどなぁ?」
「良い案?」
「そっ。とっても良い案。」
「なんかそれすっごく胡散臭いんですけど。」
「まぁまぁ、とりあえず話だけでもいいから聞いてよ。」
みやは何かを企んでいそうで悪い予感がしたけれど、話だけでもってことで
内容を無理矢理聞かされた。
- 162 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:13
- そして次の日のお昼休み、私はみやの良い案ってやつに乗せられて放送室にいた。
正直そんなに乗り気じゃなかったけれど強制的に連行された。
その良い案っていうのは『栞菜と付き合ってるということを校内放送で言っちゃおう!』、
という死ぬほど恥ずかしいものだった。
でも確かに公式に宣言すれば栞菜も他の子に手出しが難くなるかもしれない。
それにしたって恥ずかしすぎる、どこが良い案なんだよとツッコミをいれたかった。
まぁ実際に散々みやにツッコんだけど。
みやが言うにはちょうど企画で未成年の主張みたいなことやるから、その第一回にお試し
みたいな感じで言えばいいらしい。
放送室にやってくるとみやはかぐに機械を色々といじくりだした。
私はしばらくその様子を見ていたけれどしばらくすると暇すぎて飽きてきた。
だからなるべく物音を立てないようにみやに近づくと、耳元に顔を寄せてなるべく
小さな声で話した。
「・・・・今ってまだ声入らないよね?」
「ん?うん、入らないよ。入る時はちゃんと合図するから。」
「良かったぁ。っていうかさ、みやって放送のやり方知ってるの?」
「知ってるよ、一応。だって放送委員だし。」
「えぇぇぇぇぇ!!全然知らなかった。」
「ちょっと!一緒のクラス、一緒のクラスなんですけど。」
「あー、ごめん。でも他の人が何やってるかなんてさ、あんまり気にしないじゃん。」
予想外の事実に驚きつつもみやの背中を叩いて笑いながら誤魔化す。
でもみやとしては結構ショックだったらしい。
機械の縁に手をついて落ち込んでいるのか顔を俯けてしばらく項垂れていた。
- 163 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:14
- 「それにしてもひどくない?」
「だからごめんって。だって委員会なんて普通気にしなくない?」
「・・・・委員会のことじゃないよ。」
「えっ?」
「私は千奈美が他の子と一緒にされたことに凹んでるんだけど?」
私は「なんで?」って言うと思ったのに言葉が詰まって出てこなかった。
だってみやが突然顔を上げると私の肩を掴んできて、すごく真剣な顔をしてこっちを
見つめてきたから。
「・・・・千奈美にとって私の存在って何なのかな。」
「えっ?ま、まぁ普通に幼馴染じゃないの?」
「そんなんじゃ嫌だよ!私は千奈美ともっと違う関係になりたいって思ってる。」
「それって・・・・。」
みやは真剣な表情を崩さないままいきなり顔を近づけてくる。
まつ毛長っ、やっぱり綺麗な顔してるよなぁ、なんてぼんやりと思っていると、
シャレにならないくらい顔が目の前にあった。
私は少しテンパりながらとりあえず体を離そうとみやの肩に手をかけた瞬間、
「千奈美に手を出すなぁぁぁぁぁぁ!!」
と放送室のドアを乱暴に開け放ち、栞菜は大声で叫びながら中に駆け込んできた。
- 164 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:15
- 「おっと、王子様のご登場みたいだね。」
と栞菜の姿を見るやみやはそう言ってすんなりと私から離れる。
そうして入れ替わるように栞菜が私の前にやってきたかと思うと、いきなり強く
抱きしめられた。
「か、栞菜?!」
「千奈美ちゃんはちょっと無防備すぎ。」
「・・・・そ、そうかな?」
「うん、そう。千奈美ちゃんは可愛いんだから気を付けなきゃダメだよ。」
「可愛い?!別にそんなこと・・・・。」
「すっごい可愛いよ!命賭けてもいいくらいそれだけは譲れない。」
可愛いなんて言われ慣れてなくて連発されると少し恥ずかしかった。
でも栞菜の顔は真剣でその言葉が嘘じゃなくて本心だというのが素直に嬉しかった。
それに栞菜から説教されるのは初めで、いつもと逆だなと思うと何だか面白くて不意に
吹き出してしまった。
すると栞菜も釣られたように一緒になって笑い出す。
- 165 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:16
- 「はいはい、ラブラブはそこまでにしてくれない?見てるこっちが恥ずかしいんだけど。」
その声に栞菜から視線を逸らすと、みやは機械に寄り掛かりながら腕組みをして
不満そうな顔をしている。
その言葉に私はハッとなって慌てて栞菜から離れた。
冷静になると人前で抱き合うなんて恥ずかしいことよく今までやっていたなと思う。
でも冷静ついでにふとある疑問が頭に浮かんだのでそのまま栞菜に聞いた。
「っていうかなんで栞菜はここに私がいるって分かったの?」
「分かるよ。だって校内放送から聞こえてきたんだよ?なら放送室にいるってことじゃん。」
「へっ?こ、校内放送って・・・・この校内放送?」
「そうだよ。この学校って何か特別な校内放送してた?」
「してないよ。っていうかしてないから聞いてるんですけど。」
少し呆れた顔した栞菜の言葉を聞いて嫌な予感がした。
そして聞きたいけど、聞きたくなくて、しばらく私は腕を組みながら唸っていた。
でもこのまま何も言わないのも気持ち悪いと思い私はみやに近寄ると、軽く息を
吐き出してから口を開いた。
「・・・・もしかして今までのことって全部校内放送で流れてた?」
「ん?全部じゃないよ?正確にはうちが千奈美に迫るところくらいからかなぁ」
「ほぼ全部じゃん!!」
やっぱり聞かなきゃ良かった思いながら私は急に力が抜けて床にへたり込む。
そんな私の肩をみやは笑いながら慰めるように軽く叩く。
「人の恋で遊ぶな」と思いながらみやを睨むとさすがに苦笑いしていた。
- 166 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:17
- それからみやはお尻をつけないまま膝を曲げると、私の隣に陣取って顔を寄せてから
小声で話しかけてくる。
初めは無視しようかと思ったけれどつい話に乗せられてしまった。
「そんな怒らないでよ。結果オーライでしょ?栞菜の気持ちも分かったことだしさ。」
「栞菜の気持ち?」
「そう。超マジな顔して放送室に乗り込んできたじゃん。あのとき千奈美はどう思った?」
「・・・・・嬉しかった。」
「あれって本気で好きじゃないとできないんじゃない?」
「・・・・・うん。」
みやはニヤっと笑うと立ち上がって機械のほうに向かって歩いていく。
そして何やら操作してからマイクに顔を近づけると、
「それでは第1回カップルドッキリ大作戦はこれで終了です。第2回にご期待ください。」
とだけ言って機械から離れると放送室から出ようとする。
それからみやは私とすれ違い様に「じゃあとはごゆっくり」と言ってウィンクしてきた。
そうして私と栞菜の2人だけが放送室に取り残される。
でも2人きりになれたのに嬉しいような気まずいような複雑な気持ちだった。
- 167 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:18
- 「じゃお言葉に甘えてゆっくりしよっか?」
「別にここじゃなくてもいいじゃん。」
「まぁそうなんだけどさ、でもここなら千奈美ちゃんを独占できるし。」
「独占?何それ?」
「そのままだよ。千奈美ちゃんを誰にも渡したくないってこと。」
「バ、バカっ!」
栞菜があまりにも普通に恥ずかしいことを言うので顔が火照ってきた。
そして赤い顔を見せたくなくて顔を横に向ける。
付き合う前はこんな風に口説かれたけど、最近は全然言われてなかったから
心臓がバカみたいに高鳴りだす。
「こっちきて。」
「へっ?」
「ここに座って。」
それから栞菜は突然私の手を取ると部屋に1つしかない椅子の前に連れて行かれる。
そしてそこに私を座らせると、優しく微笑んでから抱きしめられた。
- 168 名前:乙女COCORO 投稿日:2008/11/26(水) 16:18
- 「はい、千奈美ちゃん独占。」
「ちょ、ちょっと栞菜!?」
「ヤダ?」
「えっ?その、まぁ、イヤではないけど何か恥ずかしいじゃん。」
「別に誰も見てないよ?」
「誰かが見てる見てないの話じゃなくて・・・・・」
「黙って。」
不満を言おうとすると栞菜に人差し指で唇を当てられて言葉を遮られた。
それから軽く髪を撫でられたかと思うと、ゆっくりと栞菜の顔が近づいてくる。
私は何だか納得がいかなかったけどとりあえず目を閉じた。
するとすぐに唇に柔らかなものが触れる。
恥ずかしい気持ちは今も変わらないけど、それと同じくらい幸せな気持ちで
胸が一杯だった。
ちなみにこの一部始終が実は放送されていて、みやに怒鳴りに行くのはまた少し後の話
- 169 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/26(水) 16:19
-
- 170 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/26(水) 16:19
-
- 171 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/11/26(水) 16:19
-
- 172 名前:名無し 投稿日:2008/11/26(水) 23:23
- ありえないカプですが面白かったですっ!!
- 173 名前:名無し 投稿日:2008/12/02(火) 20:41
- ちぃとかんちゃんって滅多にないんで良かったです。
みやも良い味だしてました。
- 174 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/05(金) 15:29
- レス返し
>>172さん 面白ければどんなCPでも自分はアリだと思ってます
>>173さん 自分も見たことがないですw
ただ読んで楽しんでもらえればそれだけで十分です
- 175 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/05(金) 15:33
- 一応注意書き
・黒愛理となっきぃーのお話です
・愛理がちょっとS気味です
・ガチエロです
以上のこと踏まえて、それでもいいという方だけどうぞ
- 176 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:34
- トイレから出て楽屋へ戻ろうと早貴がドアを開けると、目の前に愛理が立っていた。
「なっきぃ、ここにいたんだ」
「えっ?愛理?」
「戻ってくるの遅いからさ、ちょっと探しにきちゃった」
「えっ・・・・あぁ、わざわざごめんね?」
「別にいいよ。単に私が会いたかっただけだし」
にこやかに微笑む愛理を見た瞬間、早貴は嬉しさよりも気まずさを先に感じてしまった。
そして胸の奥が握り締められたかのように痛む。
愛理に会えて嬉しいという気持ちは純粋にある、でもこの後のことを思うとやはり
少しだけ気が重い。
- 177 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:34
- 愛理が中に入ってきたので早貴は押し戻されるように後退りする。
それから愛理は軽く肩に手を置くと、息がかかるくらい耳元に顔を寄せると囁く。
「次のPV撮影までにはまだ時間あるからいいよね?」
「えっ?・・・う、うん」
「良かったぁ、断られるかと思ったよ」
「そんなことあるわけないじゃん」
「そうだよね、なっきぃは私のことが好きなんだもんね」
愛理はこちらの様子を窺いながら聞いてくるけれど早貴は気付いていた。
自分が拒否しないことを知りながら聞いていることを。
だからいつものように従順に従うと愛理は嬉しそうに微笑んだ。
その女の子らしくて可愛いらしい笑みに合わせるように、早貴は少し無理して笑みを作った。
- 178 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:34
- 愛理は早貴と共に空いているトイレの個室に入ると後ろ手に鍵を掛ける。
早貴は場所がないのでとりあえず便座の上に腰を下ろした。
それから軽く髪を撫でられたかと思うと、愛理の顔が近づいてきて軽く唇が触れる。
早貴はいつもの流れ通りに目を閉じると愛理の首筋に手を回す。
そうして挨拶のようなキスが終わって顔が離れる、愛理は服に手をかけるとゆっくりと
ボタンを外す。
「何か久しぶりだね」
「うん」
「最近色々と忙しかったからさ、こういうことしてる暇なかったよね」
「そうだね」
「でもその方がなっきぃ的には嬉しかったりして?」
「・・・・別に。私は愛理とこういうことするの、嫌じゃないよ」
「そう。なら良かった」
慣れた手つきで服を脱がされながら二人は他愛もない話をする。
でも愛理が探りを入れてきているのは明確で、早貴は当たり障りのない言い方で
適当に誤魔化していた。
- 179 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:35
- まだ冬は遠いといってもさすがに下着姿になると少し鳥肌が立つ。
愛理は早貴の首筋に舌を這わせながら胸に手を伸ばす、そして形を確かめるように
なぞってから軽く持ち上げる。
「なっきぃってさぁ、最近胸大きくなったよね?」
「・・・・そう、かな」
「そうだよ」
「自分じゃ・・・あんまり分からないよ」
「そうなんだ。でも胸が大きくなったのってさ、私とこういうことしてるからかな?」
「・・そう・・なのかな・・・」
愛理が口の端を上げて楽しそうに笑うと、早貴は自分の耳が異様に熱くなるのを感じた。
今まで何度もこういう行為をしてきているのに毎回恥ずかしいと思ってしまう。
早貴は火照った顔を愛理に見られたくなくて少しだけ横に逸らした。
- 180 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:35
- 愛理は玩具を手にした子どものように楽しそうな顔で早貴の胸の先端を弄ぶ。
早貴は快楽に流されないようにどうにか耐えていた。
そんな状態で愛理は普段楽屋で話す時と変わらない口調で話し掛けてくる。
「今日さ、舞美ちゃんと楽しそうに話してたよね?」
「えっ?ふわぁ・・・あっ・・っ・・・そう、だったかな?」
「うん。すごく楽しそうに笑ってたよ」
「べ、別に・・・ふつう・・だよ・・・」
「なっきぃってさぁ、本当は舞美ちゃんが好きなの?」
「ちがっ・・・やっ、そこは・・・はぁっ!」
愛理は胸の先端を口に銜えると軽く甘噛みする、そして手は太股を触りながら
段々と上に向かっていく。
それから不意に下着越しに割れ目を指でなぞられて早貴は思わず体が小さく震える。
一瞬快楽の大きな波がきて早貴は意識が飛びそうになった。
- 181 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:36
- 「そっか、やっぱりなっきぃは舞美ちゃんが好きなんだね」
「ちがう!・・・わ、わたし・・は・・あいりが・・・」
「ん?何?」
「んっ、はぁっ・・・あ、あいりが・・・」
「ちゃんと言ってくれないと分からないよ?なっきぃ」
「ひゃぁ!・・・やらぁ、あっ、んっ」
愛理は自虐的な笑みを浮かべたかと思うと意地悪な質問をされた。
そして早貴が答えるのを邪魔するように下着の中に手を滑り込ませてくる。
それから足の付け根にある突起を指で挟んで擦ったり、押し潰したり、爪を立てたりして
早貴を追い込む。
- 182 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:37
- 「それじゃもう一回聞くね?なっきぃは誰が好きなの?」
「あい・・り・・・」
「ん?だからちゃんと言っててば」
「・・あい、り・・・すずき・・あいりが・・・すきです」
「はい、よくできました」
早貴は快楽の波に飲み込まれそうになりながら何とか答えると、愛理は満足したのか
目を細めて笑う。
それから顎を軽く掴んで上を向かせると少し強引に早貴の唇を塞いだ。
すぐに舌が入ってきて我が物顔で口内を好き勝手に動き回る。
既にまともに思考が働かなくなっていた早貴は、快楽の赴くまま愛理のものに自分の舌を
重ねて絡める。
二人の口元から舌が絡み合う厭らしい音がしたけれど、早貴はもう恥ずかしいとは
思わなかった。
それから二人の息が続かなくなり長いキスは終わりを告げる。
早貴は肩を小さく上下させながら息を吐き出していたけれど、愛理はというと一回だけ
深呼吸しただけだった。
- 183 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:37
- 「それじゃ時間もあまりないことだし、そろそろ終わりにしようか」
そう言って愛理の指がゆっくりと割れ目に触れると、早貴の熱く火照る体にひんやりと
冷たい指の感触が伝わってくる。
愛理は早貴を軽く抱き締めて割れ目に指を充てがったかと思うと、ゆっくりと中に
指を押し進める。
愛理の愛撫によってできあがった早貴の体はすんなりと指を受け入れた。
そして与えられる快楽を心も体も求めていた。
そんな早貴の心情を知ってか知らすか、愛理は指の第二関節辺りまで入れると一気に
激しく突き立てる。
「ごめんね、いきなり2本で」
「あっ、やっ・・・・いきなり、あっ、んっ」
「なっきぃは私のこと好き?」
「ん?うん。しゅき、すきだよ・・・・あい、り」
「・・・・うん、ならいいや」
「あんっ・・・やっ、っ、なんか・・もうっ・・・」
「いいよ、なっきぃ。そのままイっちゃって」
「ふぁっ!・・・・・あっ、はっ、っ、はぁぁぁぁぁぁ!!」
- 184 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:38
- 早貴は与えられる快楽に身を委ねて自然に体を反らす、そして絶頂の波に飲み込まれると
頭が完全に真っ白になった。
それからしばらく便座の座の背もたれに寄り掛かりながら早貴はぼんやりとしていた。
そのとき不意に愛理が口を動かしているのが視界に入ってくる。
「私のことだけを見てよ、早貴」
ちゃんと聞き取れなかったせいで本当にそう言ったのか定かではない。
でも言葉の内容は曖昧だったけれど、その表情と声だけは早貴の中にはっきりと
焼き付けられた。
愛理の顔は今にも泣きそうな顔でその声はとても寂しそうだった。
- 185 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:38
- とりあえず後処理を終えると時間もないので二人はすぐに楽屋へ戻ることにした。
そして特に会話もしないまま黙って目的の場所まで歩き続ける。
それはいつものことなので早貴は慣れていた。
ただ物寂しい気持ちになることだけは慣れることができなかった。
でも何も言うことができず、早貴は一人先を歩く愛理をいつも見つめることしかできない。
まだ十五歳の早貴にこれが正しい恋愛なのかは分からない。
ただ早貴は愛理のことが好きだった。
そう思うから一緒に居るしさっきまでしていた行為も受け入れられる。
愛理が信じてくれなくてもこの好意は事実だし、例え愛理が別の人をまだ好きでも
この気持ちは変わらない。
だからこそどうしたら自分の気持ちが伝わるのか分からなくて困っている。
でももしかしたら愛理も困っていて、だからあんな風に抱くことでこちらに伝えようと
しているのかもしれない。
だったらこの自分の思いを少しでも伝えてみようかなと、背筋を正して歩く愛理の
後姿を見て早貴はそう思った。
そして意を決すると息を静かに吐き出してから少し走って愛理の横に並ぶ。
それからその白い小さな手を掴むと、少し痛いかもしれないくらい力を込めて握った。
- 186 名前:美少女心理 投稿日:2008/12/05(金) 15:39
- 「あのね!・・・・あのね、愛理」
「ん?どうかした?」
「わ、私は・・・私は好きだよ!愛理のことちゃんと好きだからね?」
「うん・・・・知ってる」
「えっ?あぁ・・・・なら良いんだけどね」
早貴の気持ちが伝わったかは定かではないけれど、愛理は顔を俯けると小さな声で
返事をした。
それからまた沈黙が続いたけれど、二人は繋いだ手を離さないまま長い廊下を歩いていた。
そしてようやく楽屋に着いたのにドアの前で愛理は急に足を止める。
そして静かに顔を上げると真っ直ぐな瞳で早貴を見つめる。
「・・・・・好きだよ。私もちゃんとなっきぃのこと好きだから」
と少し震えていたけれど良く通る声で、愛理は早貴がさっきしたように手を強く
握りながら言った。
「・・・・うん。知ってる」
早貴は胸が熱くなって泣きそうになるのをどうにか堪えると笑顔で答えた。
- 187 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/05(金) 15:39
- 最近自分の中で熱いCPだったので書いてみました
- 188 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/05(金) 15:40
-
- 189 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/05(金) 15:40
-
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/05(金) 15:53
- 小説のレベルが上がっているような気がする
上手いよ
またキャプ受けで書いて下さい
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/21(日) 08:29
- 更新お待ちしております
- 192 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/22(月) 15:29
- レス返し
>>190さん 褒められると伸びない子ですが、やっぱり嬉しいです
キャプ受けはちょこちょこ書いていこうと思います
>>191さん ちょっと間があいてしまってすいません
お待たせしました
今回はキャプリーダーのお話です
- 193 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/22(月) 15:34
-
ちょっとだけ前半がエロいので、ダメな方はスルーしてください
- 194 名前:あいたいけど・・・ 投稿日:2008/12/22(月) 15:35
- 「ん・・・はっ・・・ふぁあぁぁぁぁ!」
佐紀は今までより大きな声を出すと絶頂に達したためか急な脱力感に襲われる。
そして抱きついていた舞美の首筋から自然と手が滑り落ち、後ろの壁に寄りかかると
深い息を吐き出した。
「ごめん。ちょっとやりすぎた・・・かな?」
舞美はそんなぐったりしている佐紀の様子を見て苦笑いしていた。
その手はまだ拭き取られていない半透明な液体で濡れていて、それは自分のものなのに
ひどく厭らしいなと思った。
「ちょっとどころじゃないよ、もうっ」
「久しぶりだったからつい熱が入っちゃった、とか言って」
「はぁ・・・・壁に押し付けられるし、二回もやるから腰がだるいし」
「佐紀があまりに可愛いから気合入っちゃってさ」
「このあと普通に三回公演の二回目が始まるんですけど?」
「本当にごめん!申し訳ありませんでした!」
佐紀は他にも色々と言いたい事があったけれど、これ以上言うと舞美が本気で土下座しそうな
雰囲気だったので止めておいた。
- 195 名前:あいたいけど・・・ 投稿日:2008/12/22(月) 15:39
- 「・・・・起こしてもらってもいい?」
未だ倦怠感に包まれていて立ち上がる体力はあっても気力がなかった。
既に着替えを終えている舞美に手を貸してもらってどうにか立つと、タオルで体を拭いて
脱ぎ捨ててあるコンサートの衣装に着替える。
佐紀は軽く深呼吸すると首や肩を回したりして軽く体をほぐす。
「そろそろ戻らない?スタッフさんに呼び出されたって言い訳で出て来てるんだし、
遅いとなんか怪しまれそうだからさ」
実際スタッフさんに呼ばれたのは本当のことだった、でも二回もやったらいい時間だろうし、
みんなと打ち合わせをしておきたいという真面目な気持ちもある。
でも舞美はその言葉に答えず佐紀を強引に自分のほうへ引き寄せると、両手を背中に回して
腕の中に閉じ込める。
「もうちょっとだけダメかな?この頃本当に会えなかったから」
「確かに最近忙しかったけど・・・・特に℃-uteの方は」
「何それ嫌味?」
「違うよ。だってライバルでしょ、あたし達。いい意味でずっと張り合っていたいし」
「そうだね。でもさ、今は仕事のこと忘れて?」
舞美は言うのと同時ぐらいに佐紀を壁に押し付けると唇を塞ぐ、そして貪るように乱暴な
口付けを繰り返す。
- 196 名前:あいたいけど・・・ 投稿日:2008/12/22(月) 15:47
- 佐紀は段々息が苦しくなってきて、舞美の肩を何度か叩くとようやく顔が離れた。
「んっ・・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
「本当にごめん!あぁ、もうっ!・・・・何かダメだなぁ、私」
それから舞美は今にも泣きそうな顔をして謝ってきた。
その姿が何だか無性に愛しく思えて佐紀は少し背伸びすると、項垂れている舞美の頭を
優しく抱え込む。
「舞美ちゃん、どこにいるの?みんな探してるよ!」
突然どこからか℃-uteの誰かだと思われる声がして思わず体が固まる。
そして足音に神経を集中させると近くまで来るかと思いきや、音は徐々に遠ざかっていき、
やがて聞こえなくなった。
2人はほぼ同時に溜め息を吐き出すと、顔を見合わせてから声を出して笑う。
メンバーに内緒で付き合っているので長く会えないのは毎度のことだった。
それに今みたいな事も今までに何度もあった。
2人は最後に苦笑すると、とりあえず楽屋へ向って歩き出すことにした。
「相変わらずモテモテだねぇ、舞美は」
「茶化さないでよ、もうっ!それより今本気でヤバイかと思っちゃたよ」
「あたしも。頭の中で色んな言い訳考えてたもん」
「やっぱり佐紀はすごいね。私なんか頭の中真っ白で何にも考えてなかったよ?」
「それはそれで舞美らしくていいんじゃない」
「それってひどくない?」
などとくだらない話をしながらしっかりと手を繋ぎ、ゆったりとした歩調で
通路を歩いていた。
- 197 名前:あいたいけど・・・ 投稿日:2008/12/22(月) 15:56
- それからしばらくすると楽屋が見えてきて、ドアの前にberryzと℃-uteのメンバーが
入り乱れて楽しそうに談話していた。
その様子を見て2人は何の躊躇いもなく繋いでいた手を離した。
「キャプテン!」
「舞美ちゃん!」
2人を見つけるとメンバーから声を掛けてきたのでそれに対応する。
さっきまで情事がまるで嘘か夢だったかのように、笑顔で明るくいつも通りに振舞った。
それから軽く打ち合わせして掛け声すると、異様なハイテンションの中でぞろぞろと
縦に並んでステージへと向かう。
はしゃぐ他のメンバーを上手く先に送り出すと佐紀は舞美の横に並んだ。
他のメンバーがカメラに向かって意気込みを話す様子を遠目で見ながら、その言葉は自然と
佐紀の口からこぼれた。
「うちらってさ・・・・なんかずるくない?」
「えっ?どういう意味?」
「言葉そのまんまの意味だよ」
「うーん・・・・ずるい、のかな?」
「うん。多分うちらはずるいことしてると思うよ」
「・・・・そっか。でもいいよ、それでもいい。私は佐紀の手を離す気ないし。」
舞美は暢気に笑いながら手を取って少し痛いくらい強く握る、佐紀は何も言わずに
ただ黙って強く握り返す。
そしてカメラが二人を捕らえると顔を寄せて、「これから頑張ります!」と
笑顔で声を合わせて言った。
- 198 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/22(月) 15:57
-
- 199 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/22(月) 15:57
-
- 200 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/22(月) 15:57
-
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/26(金) 11:10
- 待ってました!
この二人もいいよね
- 202 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/28(日) 20:22
- ここはキャプ受けが多くてうれしいです
- 203 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/29(月) 17:51
- まずはレス返し
>>201さん 個人的にキャプリーダも好きです。マイナーですが・・・・
>>202さん キャプ受け好きの人に楽しんでもらえれば自分は満足です
願わくば書く人が増えてくれると最高です
それでは年内最後なので、りしゃキャプで締めたいと思います
ちなみにネタがゲキハロですが、見てなくても分かる内容になってるので
楽しめると思います
- 204 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/29(月) 17:52
- 「これロボットなの?すごーい!!」
どこからどう見ても自分にしか見えないロボットに私は普通に感動してしまった。
科学ってすごいなぁ、と思いつつ試しに触ってみるとロボットの肌は固かった。
肌というより金属に塗装しただけという感じ。
この辺はまだまだなのかもしれないけど、それでも見た目だけならそっくりだし、
こんなもの作れるなんてすごいなぁと思った。
このロボットを紹介されたときはものすごく驚いた。
センゴクちゃんが「みんな大変そうだから作ってもらった」と、桃と熊井ちゃんと私の
目の前にそれぞれ自分そっくりのロボットを連れてきた。
とりあえずできたのがこの三体で他のメンバーは作っている途中らしい。
そして「はい!」と笑顔で渡された人形型のリモコン。
私達に渡すとセンゴクちゃんは満足そうに頷くとどこかに行ってしまった。
訳が分からなかったけど何だか面白そうだから、このロボットでしばらく遊んでみる
ことにした。
最初は説明も何もなくて困ったけど、色々いじっているうちに動かし方が分かってきた。
人形の手足を動かせばそのままロボット動き、しゃべりかけると片言だけどロボットも
同じことをしゃべった。
- 205 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/29(月) 17:55
- そして段々と飽きてきた頃、桃は何かを思いついたようで含み笑いをしながら、
「ねぇねぇ、これでちょっと他のメンバーのことからかってみない?」
と熊井ちゃんと私に悪巧みの話を持ちかけてきた。
「おっ、いいね!何か面白そう!」
熊井ちゃんはそういうところは意外と子どもで桃の話に目を輝かせて乗っかる。
「じゃぁ・・・・私はみやでもからかおうかな」
「それなら私は茉麻と千奈美にするよ」
『そういうことで、キャプテンをよろしく!』
「えぇぇぇぇぇ!!ちょっと待ってよ!なんでキャプテンなの?」
まだやるとも言っていないのに勝手にからかう人まで決められてしまった。
『だって怒ると一番怖いから』
と二人の意見は見事に一致していて声をハモらせて答える、それに関しては
私も同意見だった。
「じゃそういうことで」
「頑張ってね、梨沙子」
と桃と熊井ちゃんはそう言って逃げるようにその場からいなくなってしまう。
「えー、ちょっと待ってよぉ。無理だよ、キャプテンをからかうなんて・・・・」
二人に置いていかれて私は溜め息を吐きながらその場で項垂れる。
- 206 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/29(月) 17:56
- そんなとき少し遠くのほうから足音を聞こえてきた。
音のするほうに顔を向けると、噂をしたらってやつなのかキャプテンがこっちに向かって
歩いてくるのが見えた。
幸いなのかあっちはまだ私には気付いていないようだった。
私は近くに置いてあったセットの陰に急いで隠れる。
でもすぐに隠れたことを後悔した、まるでからかうことが確定したみたいだったから。
隠れずにそのまま立っていて「これロボットなんだ、すごいでしょ!」とか自慢するなり、
普通に会話すれば良かったのに。
と思ったけれど既に遅く、キャプテンは私そっくりのロボットに話しかけていた。
「梨沙子、こんなところでどうしたの?」
「チョットマッテ。マダココロノジュンビガ・・・・」
「心の準備?何それ?」
「ア、コレシャベッタラソノママイッチャウンダッタ。エット、アノ、チョットマッテ」
「うん、別に待つのはいいけど・・・・」
話しかけられたのがあまりに突然だったから何も考えなくて、私は一人物陰でリモコンを握り締めてテンパっていた。
そして何をするかは後で考えるとしてとりあえず普通に接することにした。
- 207 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/29(月) 17:57
- 「キョウハイイテンキダネ」
「えっ?今日は雨だよ?」
「アッ、ゴメン。エット、アメッテイヤダネ」
「まぁ良くはないけど。っていうか今日の梨沙子おかしくない?・・・・何か色々と」
「ソンナコトナイヨ、アハハハ・・・・」
自分でも恥ずかしくなるぐらい不自然だった、でもどうにかしようとすればするほど
余計にぎこちなくなる。
見事なくらい最悪な悪循環だった。
キャプテンはそんな様子だから心配そうに私、というかロボットの顔を覗き込む。
「熱でもあるんじゃないの?」
と少しだけかかとを浮かして背伸びすると前髪を上げて額をくっつける。
その様子を見て少しだけロボットのことが羨ましくなった
- 208 名前:とりあえず名無し 投稿日:2008/12/29(月) 17:59
- 「熱はないみたいだね。っていうか逆にちょっと冷たいくらいだし」
「シンパイシテクレテアリガトウ」
「これくらいキャプテンとして当然だよ、メンバーの体調くらい把握しておかないと。」
「・・・・・キャプテンハホントウ二エライネ」
「ちょっと何?急に褒めたって何もあげないよ」
それは思わず口から出てしまった言葉だったけど私の本心だった。
キャプテンはロボットの肩を軽く叩くと顔を赤くして照れていた、その姿が可愛くて
自然と微笑んでしまう。
「さてと、ワールドツアーも近いんだから本当に体調には気をつけてよ」
「ウン。ワカッタ」
「それじゃ私はセットのチェックしてくるから」
「ガンバッテネ、キャプテン」
「ありがと。じゃぁもう行くね。あっ、そうだ。梨沙子こないだのフリ間違って・・・」
キャプテンは私の言葉に笑顔で頷くとその場を去ろうとする。
でも不意に何か思い出したのか足を止めると、後ろに振り向きながら私に注意をする。
けれどその言葉は最後まで続かなかった。
キャプテンは言い終わる前によろけてその場に倒れそうになる。
「あっ!」
と私が叫ぶと同時くらいにロボットがキャプテンを腕に抱えていた。
- 209 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/05(月) 08:16
- つ、続きを・・・
- 210 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/05(月) 12:53
- 森板で終わってましたよ。
- 211 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/05(月) 19:49
- 色々とご迷惑をおかけしてすいませんでした
でもそれはそれとして反省しつつ、これからも変わらず更新していくので
よろしくお願いします
とりあえず草板の続きです
ちなみに前回題名を入れるのを忘れていたので、書き足しておきます
- 212 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU KNOW? 投稿日:2009/01/05(月) 19:53
- 今操作したっけ?と疑問に思いつつ床に頭を打たなくて良かったと思って
ホッと胸を撫で下ろす。
それからかなりぎこちなかったけれど、どうにか操作して壁際までキャプテンを運ぶ。
そして壁に体を寄り掛からせると少し休ませることにした。
多分最近休みがないからキャプテンは疲れていたんだと思う。
セットとかスケジュールはマネージャの岡田さんが確かに仕切ってくれている。
でも現場で色々と細かい調整をするのはキャプテンのほうが多かった。
だから苦労しているのも私だけじゃなくてみんな知ってる。
でもキャプテンが「辛い」とか「嫌だ」とか、言うところを一度も聞いたことがなかった。
「ダイジョウブ?」
「うん、もう大丈夫だよ。ちょっとクラっときちゃって。」
「キャプテンハガンバリスギダヨ。スコシヤスンダホウガイイ」
「えっ?ふふっ、ありがと。でもワールドツアーも近いしね、休むわけにはいかないよ」
「・・・・ゴメンナサイ。ワタシガモットシッカリシテ、タスケテアゲラレタライイノニ」
「梨沙子にはちゃんと助けられてるよ?ほら、今だって助けてもらったし」
キャプテンは軽く微笑むと、ゆっくりと上半身を起こしてロボットの頭を優しく撫でる。
そのとき無表情なはずのロボットが少しだけ嬉しそうに笑った気がした。
そしてなぜか私の胸がきつく締めつけられる。
そのときあそこにいるのが私ならいいのにと強く思った
- 213 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 19:55
- 「そろそろ行くね」
「タテル?モウスコシヤスンダホウガイインジャナイ?」
「大丈夫だって。休むのは全部終わってからでもできることだから」
「・・・・・ウン。」
「それじゃ梨沙子はちゃんと振り付けの確認しとくように。本番近いんだからね」
キャプテンは軽く注意すると立ち上がろうとする、私は何だか不安だったので
肩を貸そうとした。
でも上手く操作できなくて気がつくとロボットがキャプテンを壁に押しつけていた。
「り、梨沙子!?」
予想もしていなかった展開にキャプテンは目を見開いて驚いていた。
抱きしめたら折れてしまいそうな細くて小さな体、突然の出来事に対応できず困ったような
表情、そして鼻にかかった少し甲高くて甘い声。
今すごくキスしたい、そのとき不意にだけど確実に胸の中で思った
- 214 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 19:57
- でもそんな事できるはずもなくて、私はキャプテンに謝ってから手を貸そうと思った。
けれどそんな思いに反してロボットは顔を近づけていく。
操作してないのになんで?と思ったけど、そんな理由を考えている間にロボットは
本当にキスできそうなくらい迫っていた。
キャプテンもなぜか抵抗する様子もなく目を瞑ったままその場を動かない。
私はその場に居られずに物陰から飛び出すと、持っていたリモコンをロボット目がけて
思い切り投げつけた。
するとそれは見事にロボットに命中して動きが止まる。
それから近すぎるロボットの顔を退けると、一息置いてから私はキャプテンを
優しく抱きしめた。
「梨沙子?えっ、えっ、な、なんで梨沙子が二人もいるの?」
「いや、まぁ、ちょっと色々あって・・・・」
「っていうかなんで私は今抱きしめられてるわけ?」
「えっと、まぁ、ちょっと色々あって・・・・・」
キャプテンは目を開けるとまたもや予想外の展開に目を見開いて驚いていた。
私は何から話していいか分からなくて困っていると、突然服を後ろに強く引っ張られて
尻餅をついてしまった。
突然の出来事に意味が分からなかったけれど、顔を上げるとロボットは勝手にキャプテンを抱きしめていた。
どうやら自分が抱きしめたかったらしい。
- 215 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 19:58
- 「ちょっと!勝手にキャプテンに抱きつかないでよ!」
私は立ち上がるとキャプテンのところまで早足で近づく、そしてロボットに向かって
はっきりと命令した。
けれどロボットは完全無視で嫌味なのかキャプテンをより強く抱きしめる。
その行為に頭にきてロボットの手を掴んだけれど全く動かなかった。
それから私とロボットで格闘していると、置いてけぼりのキャプテンが真ん中で
抗議の声を上げる。
「ちょっと梨沙子!一体何がどうなってるの?」
「それは後でちゃんと説明するよ。でも今はそれどころじゃないないの」
「いや、後でって・・・・今説明してほしいんだけど」
「だから今は無理なの。分かった、じゃ私がキャプテンを抱きしめたら説明する」
「はぁ?な、何それ?今だって梨沙子に抱きしめられてるんですけど?」
「違うよ!ロボットじゃなくてちゃんと私が佐紀ちゃんを抱きしめたいの!」
なんか勢いに任せてすごいことを言った気がするけれど、それからキャプテンが
何も言わなくなったので気にしないことにした。
ちなみにキャプテンの顔は真っ赤だったけど、今はそれも気にしないことにした。
- 216 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 19:59
- そして私とロボットが争っているうちに、バランスを崩して三人とも一緒になって
床に倒れこんでしまう。
それでもロボットはキャプテンを抱きしめたままで少し腹が立ったけど、でもお陰で
怪我はなさそうだったので少しだけ感謝した。
そんなとき左右から騒がしい声と共に複数の足音が聞こえてきた。
「もうっ、桃のバカ!変態!なんてことするの!?」
「あはは、ごめんってば。さっきからちゃんと謝ってるのに」
「謝って済む問題じゃない!」
右側からは変なことでもしたらしく、みやに怒られながら桃が笑いながら逃げてきた。
多分桃は全く反省していないと思う。
「熊井ちゃんが二人いればうちらの問題は解決するんだって」
「そうそう。だからどっちか一人ちょうだい、っていうかできれば本物がいいなぁ」
「どっちもあげられないから!」
左側からはまあとちぃの二人に追いかけられて、必死な顔した熊井ちゃんがやってきた。
話の内容から大体の事の流れは分かった。
- 217 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 20:01
- 五人は私達のところまで走ってくると、目を点にして動きを一時停止させた。
というか一瞬時すら止まった気がした。
ロボットはキャプテンを後ろから抱きしめていて、私はキャプテンの上に馬乗りに
なっている。
私はすぐに自分が今とてもいけない体勢をしていることに気がついた。
「桃もさすがにそこまではできないなぁ」
「ちょっと!ママは梨沙子をそんな風に育てた覚えはありませんからね!」
「・・・・エ、エッチだぁ」
「梨沙子も意外とやるんだね、感動した!」
「何やってるの?梨沙子」
五人は私達を見つめながら自分勝手にそれぞれ感想を言っていく。
そしてやっぱり熊井ちゃんは純粋だなぁと思った。
「いや、あの、これは、その・・・・・・」
「梨沙子、離れて!」
『ハイ!!』
「それから他のみんなも離れて」
『はーい』
戸惑っていると突然キャプテンに注意されて、私とロボットは声を揃えて返事をしてから
一斉に手と体を離す。
他のみんなもキャプテンに言われるままにその場から少し離れる。
それから取調べみたいなものが始まって、私達は分かる範囲で事情を説明した。
そしてとりあえずロボットは没収になった。
- 218 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 20:03
- 「まぁ、何となくだけど事情は分かったよ。それよりみんな早くセット作らないと」
『えぇぇぇぇぇぇ』
「えー、じゃないよ。特に桃と熊井ちゃんと梨沙子。三人には本当に頑張ってもらうから」
「もうっ!桃が変なことするからだよ」
「くまいちょーだって結構ノリノリだったのに、その言い方ひどーい」
「ケンカしないの!言い出した方もやった方も悪いんだから。じゃすぐ現場に集合、
本当に今日中に終わらなくなるよ。」
桃と熊井ちゃんが罪のなすり合いをしていると、キャプテンが間に入って二人を止めた。
それから手を叩いてみんなをセットの置いてある舞台へ追い立てる。
するとみんなは渋々といった感じで、溜め息をつきながらのろのろと移動を始める。
「ちょっとトイレタイム!くまいちょーもさっき行きたいって言ったよね?」
「えっ?別に言ってないよ」
「言ってたでしょ?っていうか言ってたってことにして!」
「はぁ?なんで・・・・あ、あぁ!行きたい!トイレすぐにでも行きたいなぁ」
「ということで、うちらはおトイレに行ってくるから。二人でゆっくり話しでもしてて」
桃がいきなり手を上げてトイレ宣言する
熊井ちゃんは初め乗り気じゃなそうだったけれど、桃に肘を突かれて何かに気付いた
顔をするとすぐに同意した。
それから二人して少し早足でその場からいなくなってしまった。
何だか妙な様子だったからもしかして二人ともサボる気なのかなと思って、
私は少し腹が立った。
- 219 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 20:08
- するとみやとちぃとまぁの三人は円になって、小さな声で何やら話し合っていた。
でも少し距離があったから会話の内容までは聞き取れなかった。
そして話し合いが終わると急に頭を抱え込んでちぃが叫ぶ。
「あっ、あぁぁぁぁぁ、ちょっと急にひどい頭痛が・・・・・」
「うぉぉぉぉぉ!!何だかお腹が痛くなってきた!」
「えっと・・・ま、まぁも何だか具合が悪いからちょっと医務室で薬もらってくる」
どう見ても下手な演技だし仮病だと分かったけど、私が言う前に三人はその場から
いなくなってしまった。
こうして私とキャプテンだけが取り残された。
- 220 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 20:09
- 「・・・・もうっ、みんな変な気遣っちゃって」
キャプテンは軽く溜め息を吐き出すと頭を掻きながら小さな声でぼやく。
「どうする?先に舞台に行ってる?」
「いいよ、みんなが帰ってくるまで待とう。どうせ二人じゃ大したことできないし」
「うん。なら少しだけお話してもいい?」
「いいよ」
私はキャプテンの顔色を窺いながら聞くと笑顔で頷いてくれたので、隣に腰を下ろして
しばらくおしゃべりをすることにした。
そしてみんながしばらく戻ってこなければいいのにと思った。
- 221 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 20:12
- 「それにしても・・・・・まさかあれがロボットだったとはね」
「うん、私もセンゴクちゃんに初めて見せられたとき信じられなかったもん」
「確かに。あそこまで精巧にできると全然人間と変わらないし」
「でも一台ぐらいロボットがいてもいいかなぁ」
「私は嫌だなぁ、自分そっくりのロボットなんて。まぁ、梨沙子のなら一台欲しいかな」
「えっ?」
「あっ、いや・・・・今のは忘れて!本当に。ちょっとした言い間違いだから」
キャプテンは両手をバタバタと動かして思い切り動揺していた。
ここまで慌てる姿は今まで見た事がなかったから、何だか新鮮だったし小動物みたいで
可愛かった。
その姿に胸の中が温かくなって、この人が好きだとあっさり認めることができた
- 222 名前:なんちゅう恋をやってるぅYOU 投稿日:2009/01/05(月) 20:15
- 「キャプテンさぁ、さっきロボットにキスされそうになってたよね」
「えっ?あ、あれはその・・・・いきなり顔近づけてくるから」
「でも嫌がってるようには見えなかったんだけどなぁ」
「見てたの?!」
「見てたよ、バッチリ。」
私が笑顔で答えるとキャプテンの顔はすぐ真っ赤になった。
耳たぶまで赤く染まっていて、何も言わずに俯いてしまう仕草にまた胸の中が温かくなる。
「キャ、キャプテンはさ・・・・・私がしても嫌がらない?」
「へっ?えっ?な、何を?」
「キス」
「・・・・・・うん」
「良かった。まぁ、多分そう言ってくれるかなとは思ってたんだけど」
「なら聞かないでよ。恥ずかしいんだからね?」
私は笑いながらキャプテンの肩に手を置くと顔を近づける。
キャプテンは少し呆れたように笑ってからゆっくりと目を閉じた。
何だか急に緊張してきて私は一回だけ深呼吸をする、それから少しずつ顔を近づけていって
その小さな唇に触れた。
それは温かくて柔らかくて、当たり前だけど人間なんだなと思った。
- 223 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/05(月) 20:15
-
- 224 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/05(月) 20:15
-
- 225 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/05(月) 20:15
-
- 226 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/08(木) 08:31
- りしゃキャプやっぱいいなー
- 227 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/09(金) 16:06
- レス返し
>>226さん りしゃキャプは良いです、大好きです
どんなに現実ではあんまり絡みがなくたって、これからも妄想で
どうにか補っていきます
今回は熊井ちゃんとキャプテンのお話です
- 228 名前:胸さわぎスカーレット 投稿日:2009/01/09(金) 16:09
- 高校受験を控えた私を思ってか、お母さんがいきなり「家庭教師の人を呼びましょう」
と言ってきた。
でもどうせまた近所の人に影響されての事だと思う。
うちの母親はどうにも人に影響されやすい、食べ物とか薬とかその他諸々どこからか
仕入れてきた情報にいつも左右される。
そしてなぜかその被害は母以外の家族のほうがより大きく受けていたりする。
そんなわけで突発的な母親の言うことには慣れていたし、受験のことを思えば反対する理由は
特になかった。
そんなこんなで家庭教師の先生が来る日になった。
母親が言うには有名大学に通っている人らしいけど、当然今日が初対面だから顔も分からないし、
どんな感じの人かさえ分からない。
だから私は家庭教師の人が来る時間が近づくにつれてと段々緊張してきて、何をやっても
手につかない状態だった。
そして何度も横目で時計ばかり気にして見ていた。
「落ち着きがないわねぇ」と母親に笑われたけど、緊張するのは自分ではどうすることも
できないから仕方がない。
するとピンポーンと家のインターホンがリビング中に鳴り響いた。
私は突然の事に驚いて思わず小さく体を震わす。
とりあえず母親が出て行って遠くのほうから何やら話す声が聞こえてきた。
それから「友理奈、先生が来たからいらっしゃーい」と私を呼ぶ声が聞こえてきたので、
ソファーから立ち上がると玄関へと向かう。
そして玄関まで行くと母親の前に小さな女の子が立っていた。
一瞬中学生かと思ったけど大学生って話だからそれはない、でもどう見ても高校生くらい
にしか見えなかった。
多分家庭教師と思われるその人は私と目が合うと小さくお辞儀する。
それから顔を上げると優しく微笑んでくれて、その可愛らしい笑みを見た瞬間
胸が大きく高鳴った。
- 229 名前:胸さわぎスカーレット 投稿日:2009/01/09(金) 16:11
- 「先生、これどうやったらいいんですか?」
「これは因数分解でできるよ」
「あっ、そうですね!」
「後は分かる?」
「はい。とりあえず自分で考えてみます」
家庭教師の先生こと、清水佐紀先生は18歳で現役の大学生だ。
教えてもらうのは毎週火曜日の一日だけで主に数学を教えてもらっている。
私は先生を待たせると悪いので火曜日はいつもすぐ家に帰る、でも本当のところ理由は
そうじゃない。
本当は一秒でも早く先生に会いたいから。
初めて会ったあのとき以来、私の心はすっかり清水先生に奪われてしまった。
今日やる予定だった問題集が早めに終わったので、私は先生とジュースを飲みながら
普通におしゃべりをしていた。
私はこの何気ない時間が一番好きだった。
だからたくさん時間が余るように近頃はちゃんと予習するようにしている。
「でも熊井ちゃんって本当に飲み込み早いよねぇ、教えててすごい楽だよ」
「それは先生の教え方が上手いからですよ」
「ありがと、お世辞でそう言ってもらえると嬉しいよ」
「お世辞じゃありません!本当にそう思ってます・・・・・先生の教え方上手いって」
「そうだよね、ごめん。熊井ちゃんはお世辞とか言う子じゃないもんね」
クッションを抱きしめながら話している先生はぬいぐるみみたいで、その可愛さに思わず
顔が自然にニヤけてしまう。
- 230 名前:胸さわぎスカーレット 投稿日:2009/01/09(金) 16:12
- でも幸せな時間は先生の一言であっさりと終わってしまった。
「今もう一人教えてるんだけどさ、その子はちょっと覚え悪くて大変なんだよねぇ」
「えっ?先生ってもう一人教えてるんですか?!」
「そうだよ、高校生の子なんだけどね」
「・・・・・・こ、高校生」
「その子はすぐサボって遊ぼうって言ってくるし。注意すればちゃんとやる子なんだけどさ」
「・・・そう・・・なんですか」
私以外にもう一人先生に教えられている子がいるという事実は衝撃的だった。
そして何だか悔しくて顔も知らないその子に嫉妬した。
「その子も週一なんですか?」
「うんん、その子は週二だよ。水曜と金曜日に教えてる」
「えっ?しゅ、週二!!」
「そうだけど・・・・・どうかした?」
「先生!私も今度から週二にしてください!」
「ふぇっ?いやその子は覚えが悪いから週二であって、熊井ちゃんなら週一で大丈夫だよ」
「・・・・大丈夫じゃないですよ。他の子に週二回も会われて大丈夫なんかじゃない!」
私はつい興奮して身を乗り出すと大きな声で叫んだ。
それがあまりに突然のことだったので先生は小さく体を震わせると、目を大きく見開いて
こちらを見つめてくる。
でもすぐにいつも優しい顔に戻って小さい子にでも言う様な穏やかな口調で聞かれた。
「何が大丈夫じゃないの?良かったら教えてくれるかな?」
と目を逸らさずにまっすぐ見つめてくるから嘘なんてつけなくて、私は自分の気持ちを
素直に告白した。
「・・・・・好きです。清水先生が好きです。」
私は深呼吸してから聞き間違えないようにはっきりと言った、でも予想していたのか
先生はあまり驚いていなかった。
- 231 名前:胸さわぎスカーレット 投稿日:2009/01/09(金) 16:13
- 「ありがとう。嬉しいよ、熊井ちゃんの気持ち」
「驚かないんですね」
「まぁ大人だからね、告白の一つや二つじゃ動揺しないよ。それに何となく分かってたし」
「それじゃ・・・・・こうしても驚きませんか?」
「ちょ、ちょっと熊井ちゃん!?」
私は先生を軽く引き寄せて抱きしめる、大胆なその行動に自分でも驚きが隠せなかった。
でも一度抱きしめたらもう離したくないなと思った。
「ははっ、さすがにこれは驚きましたね」
「そんなの当たり前だよ!いきなり抱きしめられたら誰だって驚くって」
「ですよね・・・・でも先生の胸、今すごくドキドキしてる」
「えっ?」
「これって急に抱きしめられたから、ってだけですか?」
先生の小さな体から少し速い鼓動を感じる、これは驚きだけじゃないと思いたくて
私は抱きしめる手に力を込めた。
それから先生の顔を横から覗き込むと恥ずかしそうに逸らされる。
その仕草がたまらなく愛しくて、先生の頬に手を当てて強引に顔をこちらに向けさせると
触れるだけのキスをした。
先生は特に抵抗しなかった。
リップが塗られた艶のある唇は少し冷たかったけれど、とても柔らかかった。
それから名残惜しかったけれど私はゆっくりと顔を離す。
- 232 名前:胸さわぎスカーレット 投稿日:2009/01/09(金) 16:16
- そして先生と目が合うと機嫌悪そうな顔でデコピンされてから怒られた。
「痛っ」
「あのねぇ・・・・中学生がいきなりキスなんてしちゃダメだよ!」
「あぁ、あの、いやっ、すいませんでした!」
「まぁ反省してればいいよ」
「はい。本当にすいませんでした」
でもちゃんと心から謝ると先生は不機嫌そうな顔からすぐに笑顔になって許してくれた。
嫌われたかなと内心心配していた私はその笑顔を見て安心した。
それから気を取り直してずっと聞きたかったことを顔色を伺いながら質問する。
「あの・・・それで・・・・答えは?」
「えっ?答えって?」
「いやだから先生の気持ちっていうか・・・・私のことをどう思ってるかみたいなのです」
「わ、分かるでしょ?・・・・・キスのとき嫌がってなかったんだし」
「いや全然分からないですねぇ。分かるまでちゃんと教えてもらってもいいですか?」
「ふぇっ?えっ、もう!熊井ちゃんのバカ!」
私は答えが分かったけれど先生の口から聞きたくてわざととぼけた。
すると先生は顔を真っ赤にして軽くだけど肩を叩いてくる、でも最後にちゃんと
私の知りたかった答えを言ってくれた。
勉強は頭が痛くなるから好きじゃない。
それに数式とか漢字なんて大人になると忘れてしまうかもしれない。
でもそのとき先生が言ってくれた答えを私は絶対忘れないだろうなと思った。
- 233 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/09(金) 16:16
-
- 234 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/09(金) 16:17
-
- 235 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/09(金) 16:17
-
- 236 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/10(土) 00:20
- ひとりでニヤニヤしました
かーわいいなあもう
- 237 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/10(土) 00:28
- 何たる萌えストーリーw
御馳走様でした
- 238 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/10(土) 02:21
- マイナーだいすっきな自分ですがこのカプは初めてでしたwww
新しい萌えを見つけた気がしますwww
- 239 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/10(土) 03:11
- 青春やなぁ〜
- 240 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/10(土) 22:59
- 佐紀ちゃんかわいすぎる・・
カテキョって感じしませんねw
おもしろかったです!
- 241 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/01/11(日) 01:17
- 熊井ちゃんwww
- 242 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/11(日) 16:29
- まずはレス返し
>>236さん ちょっと大人なキャプテンを書こうとしたのに
書き上がったら、結局これでした
>>237さん 萌えて頂けれぱ言う事は特にないです
>>238さん 自分も書くのは初めてだということに
書き終わってから気づきました
そして結構いけるなということにも気づきました
>>239さん 生まれ変わったらこんな萌える青春をすごしたいものです
>>240さん 確かにカテキョぽっいのは前半だけですね
あとはただキャプテンの可愛さを愛でる話になってました
>>241さん 熊井ちゃんw、って感想は正しいと思います
正直書いてる自分もそう思いました
- 243 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/11(日) 16:35
- 今回のお話はやじうめです
ただ仲が悪いので甘い話ではないです、あと後半は他のメンバーが
出てくるので影が薄くなります
そんな感じなので見る方はあまり期待しないでください、
多分応えられません
- 244 名前:スイーツ→→→ライブ 投稿日:2009/01/11(日) 16:37
- 週末のライブが終わり、舞美は移動の車に乗り込むと一番奥の席に座った。
それから少しして他のメンバーがぞろぞろとやってくる。
かなり疲れていたので舞美は窓に寄り掛かると、今日はそのまま静かに目を閉じて
眠ることにした。
けれどちょうど眠りかけた頃、隣に誰かが座ってきて舞美は目を開ける。
でも目を開けなくても本当は誰だか分かっていた。
舞美は何となく感覚で隣に座ったのがえりかだと気づいた、でもだからこそ文句を言おうと
起きることにした。
「もうちょっと静かに座ってくれないかな」
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
「見れば分かるじゃん」
「それもそっか。今度から気をつけるよ、ごめんね」
顔は済まなそうにしているけどえりかが謝る気がないのは口調ですぐに分かった。
どこか投げやりで他人行儀な言い方をするのは、怒っているときか大してその物事に
興味がないとき以外は殆どない。
- 245 名前:スイーツ→→→ライブ 投稿日:2009/01/11(日) 16:38
- 「っていうか・・・・狭い」
「舞美のほうが幅とってるじゃん。こっちの方がもう少し詰めてほしいくらいなんだけど」
「何それ。私が太ってるってこと?そりゃ確かにえりよりは太ってるけどさ」
「そんなこと言ってないじゃん。っていうか舞美の体型好きだし」
「私だってえりの体型に憧れてるよ?」
「私なんて舞美の全てに憧れてるんですけど。綺麗で優しくてみんなに慕われててさ」
「えりの方が憧れるよ。だって面白いし何があっても落ち着いてて大人って感じだし」
舞美は改めてえりかの顔をまじまじと見つめた。
白い肌に大きな瞳、高い鼻筋に化粧栄えする外人のような顔立ち、綺麗過ぎて少し見惚れた。
だからこそ余計に悔しくて腹立たしくなる。
自分の全てに憧れているという言葉に少しだけ心揺らいでしまった自分に。
- 246 名前:スイーツ→→→ライブ 投稿日:2009/01/11(日) 16:38
- 「もう寝るね」
「どうぞ。着いたら起こしてあげるよ」
「ありがと」
「どういたしまして、キュートのリーダー様」
最後の一言が癪に障ったけれど舞美は本当に眠くて、言い返す気力もなくそのまま聞き流す。
それからようやく眠そうになった瞬間に手を握られた。
勿論、握っているのは隣に座っているえりか以外に考えられない。
でも手を握ってもらうと何だか安心した、それに手のぬくもりが気持ちよくて自然と
眠りに落ちたることができた。
- 247 名前:スイーツ→→→ライブ 投稿日:2009/01/11(日) 16:39
-
「ラブラブですねぇ、あの二人」
「まぁ本人達にはその自覚はないがみたいだけどね」
椅子の背もたれから少しだけ顔を覗かせて、後方の様子を一部始終見ていた栞菜が
呆れたような口調で呟く。
すると同じく様子を見ていた愛理は苦笑いしながら答えた。
お互いに好き合っているのに気づいてなくて、素っ気無い態度を取りながら出方を
伺っている。
器用なのか不器用なのかよく分からないなぁと愛理は思った。
- 248 名前:スイーツ→→→ライブ 投稿日:2009/01/11(日) 16:40
- 「あの二人いつになったら付き合うんだろうね」
「さぁ?でも案外早くできるかもよ?」
「いや・・・・意外に遅いんじゃないかなぁ」
「おっと、ここで栞菜となっきぃの意見が違ったぁ!コメンテーターの萩原さん、
どう思いますか?」
「なるようにしかならないよ、こういうのは」
「これまた大人らしい回答、ありがとうございます!」
他の五人は大体こんな感じで、年長の二人の関係をネタにいつも遊んでいた。
一見ふざけているようだけどこれでもみんな二人の幸せを願っている。
二人とも優しくて大好きなお姉さんみたいな存在だから、できればちゃんと
結ばれて幸せになってほしい。
愛理は首だけ後ろに向けると、手を握り合いながら寄り添って眠る二人を見て
そう思った。
- 249 名前:スイーツ→→→ライブ 投稿日:2009/01/11(日) 16:41
- 「それじゃ一週間以内に付き合うに3,000点!」
「なら私は一ヶ月以内に付き合うに4,000点かな」
「えっと・・・私はねぇ・・・じゃぁ、はらたいらさんに全部」
「はらたいらって誰?」
「だったらこっちは愛理に全部!」
「ちょっと私関係ないんですけど。っていうか話が完全に逸れてるよ?」
みんなも舞美ちゃんとえりかちゃんの幸せを願ってるよね、と愛理は聞きたくなった。
- 250 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/11(日) 16:42
-
- 251 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/11(日) 16:43
-
- 252 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/11(日) 16:43
-
最近、仲の悪いやじうめが萌えることに気づきました
- 253 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/01/12(月) 01:23
- 他の5人ウケるw
- 254 名前:熊井ちゃんw 投稿日:2009/01/12(月) 01:48
- はらたいら・・・w
最近やじうめにも興味をもちはじめていたので嬉しかったです☆(ベリキュー勉強中です☆)
- 255 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/16(金) 23:11
- はらたいらウケル。
仲の悪いやじうめもいいですね!
- 256 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/23(金) 15:23
- まずはレス返し
>>253さん 最後の五人の話は余談なので、笑ってくれればそれだけで
十分です
>>熊井ちゃんwさん 自分もベリキューに関してはまだまだ勉強中です
はらたいらさんを出したのは、対抗して栞菜が「愛理に全部」
と言いたいが為に出しました
>>255さん 仲が良くても悪くても話が成立するやじうめは
正直すごいと思います
自分は仲が悪くないと萌えない、少数派です
今回の話は前に書いた熊キャプ>>228-232の続きです
- 257 名前:YES!しあわせ 投稿日:2009/01/23(金) 15:23
- 先生と私は付き合うことになった。
とはいっても今のところ何の進展もない、ただ一つ変わったことといえば
先生が来る日が一日増えたことくらいだ。
前は火曜日だけだったのが木曜日も来てくれることになり週二日になった。
「先生、ここは二次方程式でいいんですよね?」
「うん、さすが熊井ちゃん。やっぱり飲み込みが早いね」
「ちゃんと復習してますから」
「真面目だねぇ。いや本当に偉いと思うよ、熊井ちゃんは」
「そんなことないですよ、私はただ先生と話したいから頑張ってるんです」
「へっ?どういう意味?」
「早く課題を終らせれば先生とおしゃべりする時間が増えますから」
私がにっこりと笑って答えると先生は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
その姿が可愛くて今にも抱きしめたい衝動に駆られたけれど、今は勉強中なので
理性で何とか押さえつける。
それから今やっている課題に意識を集中させた。
- 258 名前:YES!しあわせ 投稿日:2009/01/23(金) 15:25
- 課題はこの間の中間の復習みたいな内容だったので、全部解き終わるのに大して
時間はかからなかった。
だからいつもよりおしゃべりする時間が多めに取れた。
私は勉強道具を素早く片づけると、母親に前もって用意させていたジュースとケーキを
テーブルの上に置く。
「あぁ・・・・肩痛いなぁ」
「ははっ、熊井ちゃんなんかオヤジくさいよ?」
「そうですか?一応これでもまだ十五歳なんですけどね」
私は同じ体勢で鈍っていた体を大きく伸びをしてほぐすと、先生は何か面白かったのか
口元を押さえながら小さく笑った。
そんな先生に仕草と表情に釣られて私も自然と笑顔になる。
「ねっ、これ食べてもいい?」
「全然いいですよ、先生の為に買って来たものですから」
「・・・・そう言われると逆に食べづらいんだけど」
「えっ?いや、まぁ、好きに食べちゃってください」
「じゃ遠慮なくいただきます」
先生は今にも鼻歌を歌いだしそうな顔つきで、嬉しそうにケーキを簡単にカットしていく。
そして一番先端部分を口に入れると途端に幸せそうな顔になる。
それからまるで子犬が甘えているときのような声で唸ると、ケーキを噛み締めるように
食べていた。
その姿に私は今まで抑えていた自分の理性に限界を感じた。
- 259 名前:YES!しあわせ 投稿日:2009/01/23(金) 15:25
- 「・・・・先生」
「ん?どうかした?」
「好きです」
「ふぇっ?」
「すみません。ちょっと自分を止められそうにないです」
「えっ?ちょ、ちょっと熊井ちゃん!・・・・んっ・・・・」
私は戸惑っている先生に構わずテーブルに手をついて身を乗り出す。
そして生クリームがついたその小さな唇に自分のものを押しつけるように重ねた。
先生は何か言おうとしていたけれど無理矢理遮ってしまった。
それから少しして先生が軽く私の肩を押してきたので、我に返ってすぐに顔を離した。
「熊井ちゃんはいつもいきなりすぎ!」
「・・・・・すみません。でも好きなんです!先生のことが好きなんです」
「えっ?う、うん。それは分かるけどさ」
「キスしたらダメですか?」
「ダメってことはないけど・・・・熊井ちゃんはいつも突然すぎるから」
「それじゃ今度からは聞いてからにします」
「・・・・・・いや、そういうことじゃないんだけど」
私がはっきりと自分の気持ちを言うと、先生はデコピンしようとしていた手を下ろした。
そして納得してなさそうな顔つきだったけれどそれ以上は何も言わなかった。
そういうところが大人だなと感心する反面、自分がすごく子どもに思えて少し悔しい。
いつか子ども扱いされないで対等な関係になれればいいなと思っている。
でもそんな先の話より今はただ先生が可愛くて愛しくて、この人に触れたい、抱きしめたい、
自分だけのものにしたい。
受験を控えているのに私の頭の中はそんな考えで一杯だった。
- 260 名前:YES!しあわせ 投稿日:2009/01/23(金) 15:26
- 「先生・・・・抱きしめてもいいですか?」
「ふぇっ?ちょ、ちょっと熊井ちゃんいきなりどうしたの?」
「ダメですか?」
「いや、まぁ、その・・・・抱きしめるだけならいいよ」
「じゃ遠慮なくさせてもらいますね」
私はゆっくり立ち上がると先生の後ろに回り込んで腰を下ろす。
そして膝を立てて座り直すと足を大きく開いて、人が一人座れるくらいの空間を作る。
その様子を首だけ後ろに捻って見ていた先生は額に眉を寄せて顔を顰める。
でも私が「抱きしめるだけですから」と笑顔で言うと、先生は軽く溜息を吐き出してから
首を正面に戻した。
私はその様子に苦笑しながら先生を後ろから優しく抱きしめる。
「先生・・・・私、もっと先生のことが知りたいです」
「熊井ちゃん?」
「好きな食べ物、好きな音楽、あと趣味とか特技とか・・・・とにかく知りたいんです」
「それはゆっくりでいいんじゃない?」
「えっ?」
「履歴書みたいにそういうの書いて渡すことはできるけど、でもそれって何か違くない?」
「・・・・よく分かりません」
「とにかく焦らないってことだよ、恋も勉強もね」
先生は諭すように答えてくれたけど私はいまいち分からなかった。
そんな心中を感じ取ってか先生は体を半分くらい後ろに捻る、そして少し顎を上げると
私に触れるだけのキスをした。
- 261 名前:YES!しあわせ 投稿日:2009/01/23(金) 15:27
- 「今度の期末が良い点だったらデートしよっか?」
「えっ?ほ、本当ですか?!」
「うん。それに高校の合格が決まったら私はもっとちゃんと付き合おうと思ってる」
「・・・・・先生」
「でも今は大事な時期だからさ。それまで我慢できる?」
「はい。全然大丈夫ですよ、それぐらい我慢できます。子どもじゃないんですから」
「そうなの?いきなりキスしてくる熊井ちゃんには厳しいんじゃない?」
「いや、それは、まぁ・・・・・とにかく、合格までは我慢します」
私が宣言すると先生は満足げに頷いてから嬉しそうに笑った。
何だか上手く乗せられたような気がするけど、受験勉強を今まで以上に頑張ろうと思った。
でも頑張るのは次からにして今日は存分に甘えさせてもらうことにした。
私は先生を抱きしめ直すと首筋に顔を埋める、それから母親がドアをノックするまで
しばらくそのままの体勢でいた。
どうやら恋の勉強は当分の間おあずけになりそうだ。
今は学生の本分である勉強のほうに集中するほかないらしい。
でもデートがかかっているので、期末で良い点が取れるように本気で頑張ろうと思った。
- 262 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/23(金) 15:27
-
- 263 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/23(金) 15:27
-
- 264 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/23(金) 15:28
-
- 265 名前:熊井ちゃんw 投稿日:2009/01/24(土) 03:22
- 真っ直ぐで、なんかやっぱりまだまだ子どもな感じな熊井ちゃんがいいですねw
男子中学生みたい(笑)
- 266 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/24(土) 09:34
- 260のシーンを想像したら身悶えましたwww
- 267 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/24(土) 13:26
- 早くデートして欲しいですねー
更新楽しみにしてます!!
- 268 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/25(日) 09:13
- キャプテン先生萌え
- 269 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/30(金) 01:33
- 熊井ちゃんめ!
- 270 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/30(金) 17:00
- まずはレス返し
>>265さん この話の熊井ちゃんのはまさに男子中学生をイメージして
書いてます
>>266さん この話に限って1つ萌えシーンを入れるようにしてます
なので身悶えて正解です
>>267さん 実はデート編は殆ど完成してます、頭の中でですが
>>268さん キャプテンは先生役が似合うと思います
初期の予定では化学教師で白衣着せようかなとか思ってました
>>269さん 本当にそんな感じな話だと自分でも思います
- 271 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/30(金) 17:05
- 今回の話は栞菜×nkskです
・マイナーです
・暗いです
・救いがあまりないです
そんな話ですがもしよければどうぞ
- 272 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:06
- 遠慮がちにドアを叩く音がして私は重い瞼をゆっくりと開けた。
見慣れない真っ白な高い天井、首を横に向けると小さなテレビと小物しか入らないような
タンスが視界に入る。
その上にはちょっと頭を垂らした赤いガーベラが一輪飾られている。
少しすると寝惚けた頭が回ってきて、ようやくここが病院の一室だということを思い出した。
そんな私の様子を見ていたかのようにもう一度ドアが叩かれる。
どうやら客人を待たせているらしいことに気付くと、すぐに上半身を起こして
軽く髪を整える。
そして軽く咳払いして声出ししてから改めてドア越しの相手に声を掛けた。
「どうぞ、開いてるんで入ってきちゃっていいですよ」
どうせ見舞いに来る人なんて知れていたので、私は特に警戒することなく
普通に中に招き入れる。
けれどお見舞いに来たその人はなかなか入ってこようとしない。
もしかして声が聞こえなかったのかなと思い、もう一度声を掛けようとしたら
ドアが開いた。
その瞬間なぜすぐに入ってこれなかったのか分かった。
お見舞いに来たその人は私が一番会いたくないと思っていた人だった。
- 273 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:07
- 「・・・・・なっきぃ」
久しぶりに口にしたせいか名前を呟いたとき少し声が掠れた。
小さな花束を両手に持ってなっきぃは俯いたままドアの外に立ちつくしていた。
「ひ、久しぶりだね・・・・栞ちゃん」
「うん、そうだね。なっきぃは元気だった?」
「まぁ何とか」
「そっか」
私は小さく頷くとそこで会話が途絶えて二人とも黙り込んだ。
前から来ると分かっていたなら少しは心の準備もできたけど、あまりに突然すぎて
現状は心も体もかなり戸惑っている。
相変わらず二人の間には重苦しい沈黙が流れたままだった。
気まずいと感じながらもこの場に相応しい言葉が浮かばなくて、私はなっきぃから
視線を逸らして色んな言葉を頭の中で巡らせる。
まるで終わることのない沈黙に思えたけれど、意外にも破ったのはなっきぃの方だった。
- 274 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:08
- 「・・・・もっと前に来ようと思ってたんだけどさ、結局来れなくて。本当にゴメンね」
なっきぃは様子を窺うように上目遣いで時々私の方を見ながら言った。
「いや、でも、なんだろう・・・・・」
「うん」
「と、とにかくさ・・・・お見舞いに来てくれて嬉しいよ。本当にありがとう」
「うんん。お見舞いに来るのは当然のことだから」
私は言葉に詰まりながらもなるべく明るい声で言うように心がけた。
でも上手く笑えてる自信はなかった。
それからまた会話は途切れて押し黙る二人の間を重苦しい空気が漂う。
けれど今度は私のほうからその沈黙を破った。
「なっきぃ、中で話そうよ。座るところもあるしさ、ずっと立ってると疲れるでしょ?」
私は作り笑いをすると軽く手招きしてなっきぃに中へ入るように促す。
自分でも空々しい口調だなと思ったけれど、それでも沈黙が続くよりは何か言ったほうが
まだいいと思った。
「ありがとう・・・・」
なっきぃは私の提案に力なく笑ってから小さく頷いた。
そして中に入ってくると持ってきた花束をタンスの上に置くと、私が寝ているベッドまで
やってきた。
- 275 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:09
- 「テレビ見たよ。新曲・・・・明るくて可愛らしい良い曲だね。キュートの曲って感じ」
私はなるべく笑みを崩さないようにしながら弾んだ声で話題を振る。
政治経済とか景気のことなんて話せないし、やっぱり話題にするのはキュートのこと
くらいしかなかった。
でもキュートの新曲なんて本当は知らなかった。
出るってことだけはテレビ情報誌で知っていたけれど、聞いたことも見たこともなかった。
「えっ・・・あぁ、良い曲だよね。アップテンポでノリもいいし」
「そうそう、特にサビのところがいいよね」
「あそこいいよね・・・・なんか歌詞とかちょっと変なんだけど」
「でもつんくさんって感じだよね」
全く知らない新曲の話を私はいかにもそれらしく話した。
でもその話題があまり長く続いても困るので、私はメンバーの近況について聞いてみた。
- 276 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:11
- するとなっきぃが思い出したように鞄から一本のビデオテープを取り出す。
「そうだ、これ。キュートのみんなから。メッセージとコントとか色々入ってるけど」
「コント?どうせ千聖と舞ちゃんが馬鹿なことやってるんだろうなぁ」
「多分栞ちゃんの予想は合ってると思うよ。あとは愛理のモノマネとかかな」
「あー、きっとつまらないだろうなぁ」
「本人的には結構自信あるみたいなこと言ってたけど」
「そういうのに限ってすごくつまんないから、愛理の場合」
なっきぃが苦笑いしながらビデオテープを手渡そうとする、でもそれを受け取ろうと
手を伸ばしたけれど触れなかった。
私は不思議に思い右腕に視線を向けるとそこには何もなかった。
「ご、ごめんなさい!」
なっきぃは今にも泣きそうな顔をしてすぐに頭を下げて謝った。
私は謝罪の言葉を聞き流して、右腕があったと思われる何もない空間をしばらくの間
ずっと見つめていた。
「ごめ・・・ごめんなさい・・・わ、私のせいで腕が・・・・」
「ねぇ、ソファーに座らない?背もたれないとちょっと辛いんだよねぇ」
私はなっきぃーの言葉を最後まで言わせたくなくて、少し強引だとは思ったけれど
遮って話題を逸らした。
それから答えも聞かずに私は勝手にソファーに座る。
すると少ししてからなっきぃは暗い顔をしたまま静かに私の隣に腰を下ろした。
- 277 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:16
- 三ヶ月前ならなっきぃと二人きりなんて心の底から嬉しい状況だったと思う。
でも今の私は何も感じなかった。
私はきっと右腕と一緒になっきぃへの熱い想いも失ってしまったんだと思う。
あれは今から三ヶ月前に起こった不慮の事故だった。
地方のコンサート会場で私となっきぃは二人で歌う曲のリハーサルをしていた。
歌ってるときから微かにライトが揺れているような気がしていた、でもきっと空調とかのせいだろうなと思いあまり気に止めなかった。
そして曲が終わって明かりが消えた瞬間何か火花が散ったような音がした。
何だか嫌な予感がして私は上を見ると、それとほぼ同時ぐらいに照明器具が落下してきた。
このまま落ちると位置から推定してなっきぃーに当たる。
当時はそんなこと考えてなかった、ただ無我夢中でなっきぃに体当たりしていた。
それからすぐに今まで聞いたことないような騒音と土煙が広がって視界が悪い中で、
「栞菜!」と悲鳴のようななっきぃの声が聞こえた。
それを聞いて無事みたいで良かったと安堵したのを覚えている。
あとは妙に周りが騒がしかった気がするけれどあまり記憶が定かじゃない。
そして気がついたら私は病院の一室に寝ていて、肩から先の右腕を全て失っていた。
- 278 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:17
- 後からお医者さんや警察の人に聞いた話だと、右腕だけで済んだのが奇跡に近い
状況だったらしい。
確かに右腕以外は軽傷で自分でもよく死ななかったなと時々思う。
「私・・・・キュート辞めることにしたから」
怪我したときのことを思い出していたせいで、なっきぃのその言葉を私は危うく
聞き流すところだった
「えっ?なっきぃ、それってどういうこと?」
「そのままの意味だよ」
「どうして!?事務所の人に言われたの?」
「違う、ちゃんと自分で決めた。」
「何かあったの?」
「・・・・・栞ちゃんがもうキュートには戻れないって聞いたから」
なっきぃは泣きそうな顔をしていたけれど、決して視線を逸らずに私を真っ直ぐ
見つめていた。
私は分かっていたことなのに改めて言われると胸が痛んだ。
- 279 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:18
- 「なっきぃは辞めちゃダメだよ。今のキュートにとって必要な人だと思うから」
私は軽く深呼吸してから宥めるように落ち着いた口調で言った。
その言葉は半分建前だけど、半分は本音だった
なっきいは何も言わなかった、黙ったまま顔を深く俯けていて考え込んでいるようだった。
その様子を見て私はダメ押しに演技で背もたれに寄り掛かると
「それにさ、別にそこまでキュートにこだわってないし」
馬鹿にするように軽く鼻で笑ってから何事もなかったかのように平然と言った。
それでもなっきぃは黙ったままだった。
けれど不意に顔を上げると真面目な顔をしてゆっくりと話を切り出してきた。
「栞菜・・・・嘘つかなくてもいいんだよ?」
心の中まで見透かされてしまいそうな瞳に見つめられて、私は思わず視線を横に
逸らしてしまった。
- 280 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:20
- 「別に嘘なんてついてないよ。それに本当にキュートにはこだわってないし」
私は少し動揺したけれどわざとらしく首を竦めてから先程と同じ言葉を繰り返した。
「じゃぁ・・・・・なんでキュートの新曲知ってるなんて言ったの?」
「し、知ってるよ!さっき一緒に話したじゃん」
「本当はキュートが出てるテレビも見てないし、新曲だって聞いてないんでしょ?」
「ちゃんと見てるよ!新曲だってちゃんと聞いたし。なんでそんな嘘だなんて言うの?」
「嘘だって分かるから」
「何が嘘なんだよ!なっきぃの言う事全然分からないよ!」
なっきぃはいつも楽屋で話してるときのように少し強い口調で言ってくる。
私はつい感情的になってしまって最終的に怒鳴ってしまった。
するとなっきいは何かを堪えるように奥歯を噛み締めながら拳を強く握る。
「キュートの新曲は明るくて楽しくなんかないんだよ!失恋しちゃった女の子の曲だから」
とまるで全てを吐き出すかのように一気に喋った、すると目から一筋の涙が頬を伝って
床に落ちる。
- 281 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:20
- 「テレビが見れないのは気にしてるからでしょ?栞菜は十分キュートにこだわってるよ!」
なっきぃは泣きながら私に詰め寄ると声を裏返らせながらはっきりと断言した
私は指摘された通りだったので反論のしようがなく顔を俯けて押し黙る。
別に卒業したわけじゃないし事務所からの通達はまだない、でもこの体じゃ間違いなく
キュートには戻れない。
その事実がまだ上手く自分の中で消化できていなかった。
まだ加入して三年しか経っていないのに、キュートの存在は私の中ではとても大きかった。
そしてなっきいは私が適当に新曲の話をしているときから、キュートのことを避けている
ことに気付いていたらしい。
「初めから知ってたんだ、なっきいは。なら言ってくれればいいのに・・・・同情したの?」
私はようやく事を理解すると頭に血が上った、でもそれは怒りではなく自分でも
よく分からない激しい衝動だった。
そして我に返ったときにはなっきぃーをソファーに押し倒していた。
- 282 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:21
- 「栞菜!」
なっきぃは予想外の出来事に目を大きく見開いて驚いていた。
私はそんななっきぃに構わず顔を近づけると口を塞ぐ、そして勢いに任せて舌を入れた。
それから歯をなぞったり口内を少し乱暴に撫で回っていた。
でもそれにも飽きたのでなっきぃの舌を見つけると一方的に絡めて弄ぶ。
時折荒い息がなっきぃの口元から漏れて頬に当たる、私も段々息苦しくなってきたので
舌を引っ込めて顔を離した。
すると透明な細い唾液が二人を微かに繋いでいた。
私は口元を手の甲で拭うと肩で息をしているなっきぃを見下ろす。
初めは単によく分からない衝動に駆られてのことだった、でも今は欲情している。
好きとか嫌いとかの感情に関係なくただ抱きたいと思った。
だから躊躇することなく私はなっきぃのブラウスに手をかけてボタンを外していく。
でも片手だと外し難くて結構時間がかかってしまった、けれどなっきぃは黙って
私のすることを見つめていた。
ようやく全て外し終えてはだけると可愛らしい黄色いブラジャーが目に付いた。
- 283 名前:涙の色 投稿日:2009/01/30(金) 17:23
- 「抵抗しないんだね」
私は自分の髪を軽く撫でてから挑発の意味も込めて聞いてみた。
するとなっきいは硝子細工にでも触れるような手つきで私の右肩に触れる。
「私は栞菜の大事なもの奪っちゃったから」
と少し体を持ち上げるとそこに優しく口付けてから独り言のように呟いた。
それからなっきぃはソファーに身を沈めると、心に決めたのか戸惑うことなく私を見つめる。
「だから処女が欲しいならあげる。栞菜にあげられるものなんて他に大してないし」
私の頬に手を置くと穏やかに微笑みながら言った。
その言葉を聞いた途端に私の胸は熱くなって無性になっきぃに触れたいと思った。
でも左手は既に自分の体を支えているので使えなくて、こういうとき右手がないと
不便だなと思った。
- 284 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/30(金) 17:24
-
- 285 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/30(金) 17:24
-
- 286 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/01/30(金) 17:25
- あんまり需要がないもの書いてすみません
某インタビュー見たらつい書きたくなってしまって
- 287 名前:名無し 投稿日:2009/01/31(土) 00:13
- 少なくとも自分からの需要があるw
中島ちゃんには決まった相手がいないのを寂しく思っているので、
彼女がCPになるなら何でもOKなんだけど、
なんかちょっとジンときたし、自分は好きだよ、これ。
この後どうなるのかな、と思ったりする。
- 288 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/02/01(日) 11:13
- 全然あり!超好きだわ
- 289 名前:熊井ちゃんw 投稿日:2009/02/03(火) 01:19
- nkskちゃんは切ないキャラが似合いますね。
- 290 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/05(木) 00:40
- なっきぃバースデー!!
受験生コンビだかんな!
熊井ちゃんも受験がんばってケロ♪
- 291 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/06(金) 15:01
- レス返し
>>名無しさん 需要があって良かったです
確かに彼女には固定CPはないようですが、逆に言えば誰と組んでもいける!
とポジティブに考えてます
>>288さん そう言ってもらえると書いた甲斐があったと思います
>>熊井ちゃんwさん 不幸で報わない役をやらせたら、ベリキューでNO1だと思います
>>290さん そういえば同じ年で受験生なんですよね、この二人って
たまに誰が何歳だか分からなくなります
今回の話は雅×キャプ、巷で言うとみやさきってやつです
バカな話なので気軽に読めると思います
- 292 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:02
- その日、私達はお正月にやるワンダのコンサートのリハーサルをしていた。
ベリーズ、キュート以外にもモーニング娘さんやエッグも一緒に合同で行っている。
でもそんなことはお構いなしに私は佐紀ちゃんを後ろから抱き締める。
「佐紀ちゃん!」
「っ!・・・・ちょ、ちょっとみや!」
「ん?何?」
「何じゃなくて、今リハーサル中。」
「でも休憩中じゃん?」
「そうだけど・・・・一応仕事中でしょ。こういうことはしちゃダメだよ。」
「そうだよね、ごめん。」
ちょっと甘えただけなのに注意されてしまった。
佐紀ちゃんは変なところに厳しくてたまに今みたいな感じで注意されてしまう。
最近ちょっと忙しくて会えなかったから、少しでも触れてたいだけなのにその思いは
上手く伝わってないらしい。
そうして二人で言い合いをしているだけで休憩時間が終ってしまった。
構成としてはまたいつもの3組をバラバラに分けたチームで1曲、その他にベリーズで
2曲、ボーノでも2曲歌う。
あとベリーズとキュートの合同で2曲歌い、全員で歌う曲も含めると結構出番があって
私はちょっと一杯一杯になっていた。
だから佐紀ちゃんの異変にも気付いてあげられなかった
- 293 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:03
- ベリーズとキュートで一回踊り終えると、舞美が手を上げてリハーサルを中断させる。
「すいません、ちょっと止めていいですか?」
こんなことは初めてで何かあったのかとみんなして舞美に視線を向ける。
すると舞美はなぜか佐紀ちゃんに近づいていった。
それから突然床にしゃがみ込むと佐紀ちゃんの膝の辺りを手で掴んだ。
「痛っ!」
とその瞬間に佐紀ちゃんは苦しそうな表情を浮かべて体勢を崩す。
でも舞美を予想していたのかすぐに佐紀を抱き止めると、何思ったのかそのまま
お姫様抱っこをする。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
空気読めてないなと自分でも思ったけど叫ばすにはいられなかった。
だって恋人をお姫様抱っこなんてされて、平静を保っていられるほど私は大人じゃない。
「ま、舞美?!」
「佐紀が膝の調子悪いみたいなのでちょっと医務室まで連れてきます。」
「ちょ、ちょっと下ろしてよ!舞美!」
「ダメだよ。膝痛めてるんだから安静にしてないと。」
「それは分かったけどさ、何もお姫様抱っこしなくてもいいんじゃない?」
「このほうが佐紀に負担かけないかなと思って。」
「えっ?あぁ、ありがと・・・・。」
佐紀ちゃんは初めのほうは戸惑っていたけれど、舞美と会話しているうちに段々と
その顔が赤く染っていく。
そして舞美は佐紀ちゃんを抱えたまま爽やかに部屋から出て行った。
呆然と突っ立っている私を含めた12人と、許可していないのに勝手に出て行かれた
ダンスの先生を残したまま。
- 294 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:03
-
それから二人が戻ってくるまでリハーサルは一時中断することになった
私はとりあえず壁際に腰を下したけれどどうにも落ち着かなくて、足や指で時々
床を叩きながら時計ばかり見ていた。
すると桃とちぃの2人が寄ってきて私を挟むように座ると話してかけてくる。
でもできれば私は話したくなかった。
だって2人の顔は完全にこの状況を楽しんでいるから。
「さて、キュートの天然王子にお姫様をさらわれてしまった感想をどうぞ。」
「感想?そんなの何もないよ。」
「本当に?内心はハラハラしてるんじゃないの?」
「そうそう。舞美にキャプテンを取られるかもしれない、ってさ。」
「別にそんなこと思ってないよ!っていうか舞美には絶対佐紀ちゃんを渡さないから。」
少し格好つけて反論したのに2人は全く聞いていなかった。
そしてさらに2人は調子に乗って私の前でコントみたいなことをやり始めた。
どうやらちぃが舞美の役で、桃が佐紀ちゃん役らしい。
- 295 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:04
- 「舞美・・・・さっきはありがと。」
「全然気にすることなんてないよ。それより足のほうは大丈夫?」
「うん。舞美が早めに医務室に連れてきてくれたから。」
「・・・・佐紀。」
「ん?どうしたの、舞美。」
「実は・・・・実は私、前から佐紀のことが好きだったの!」
「えっ?実は私もなの。本当はみやなんかじゃなくて舞美のことが!!」
小学生の学芸会みたいなレベルの芝居を私は呆れながら見ていると、最後に2人は
勝手に盛り上がって抱き合っていた。
とりあえずの感想としては桃がぶりっ子すぎてキモかった。
あと別にやるのは構わないけれどその内容が最低だった、特に『みやなんか』って
セリフが気に入らない。
せめて「みやじゃなくて」とか、「みやよりも」とか、もう少し他の言葉にしてほしい。
- 296 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:05
-
「ちょっと!それひどすぎだから。なんで2人が両思いになってるわけ?」
「まぁまぁ、これはあくまでも私達の勝手な想像ですから。」
「そっ、細かいことは気にしない気にしない。」
「するよ!」
2人と話していると余計に疲れてきたのは気のせいではないと思う。
それに人事だからって楽しそうに笑っている姿を見ていると、正直少し腹が立ってくる。
もうちょっと励ますとか気遣うとかしてほしかった。
するといきなりちぃが少し真面目な顔を私の肩を軽く押してくる。
突然のことに何と思って顔を向けると、桃もちぃもとても優しい目をしてこっちを見ていた。
だからすぐに言葉が出てこなかった。
- 297 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:05
- 「・・・・行ってくればいいじゃん。」
「えっ?」
「心配なんでしょ?2人のこと。だったら様子見に行ってきなよ。」
「取られてからじゃ遅いしね。」
「そういうこと。」
私は胸に熱いものが込み上げてきて、少し泣きそうになったけれど堪えて笑顔を見せる。
やっぱりメンバーって最高だなと思いながら私は医務室に行くことにした。
でも部屋を出ようとドアノブに手をかけた瞬間、
「あっ、そうだ!何があったか後でちゃんと聞かせてね。」
「メモしてきてもいいから。何なら携帯で声を録画してくれると嬉しいかも。」
「それいい!じゃ携帯に録音ってことでよろしく。」
「楽しみに待ってるから。」
後ろからとても楽しそうな二人の声が聞こえてくる。
私は自分の手が痛くなるくらいドアノブを強く握ってからゆっくりと後ろに振り向ける。
「帰れ!本当に帰れ、そこの2人!!」
と二人を指差して心の底からの思いを乗せて大声で叫んでから、乱暴にドアを閉めて
部屋を出た。
- 298 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:06
- でも勢いで出てきたはいいけれど、佐紀ちゃんになんて声を掛けていいか分からなかった。
仮にも恋人なのに私は佐紀ちゃんが膝を痛めていることに気づかなかった。
はっきり言って恋人失格だなとか思ったりして、私は歩いているうちにどんどん気持ちが落ち込んでいった。
そしてさらに悪いほうに考えてしまう。
本当に舞美ちゃんが佐紀ちゃんのこと好きで今頃告白してたらとか、逆に佐紀ちゃんが
舞美に乗り換えたらどうしようとか。
頭の中に二人の姿がぐるぐる回って、いつの間にか合体して違う女の子になっていた。
それはそれで可愛かった。
「あっ、医務室に着いちゃった・・・・」
色々と考えごとをしていたら私はいつの間にか医務室の前に立っていた。
でもすぐに入ることが出来なくてしばらくドアの前に立ちつくしていた。
すると何やら中から声が聞こえてきて、私は思わずドアに耳をくっつけて聞き耳を立てる。
どうやら佐紀ちゃんと舞美が話しているようだった。
- 299 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:07
- 「・・・・舞美。」
「・・・・佐紀、もうちょっと力抜いてくれる?」
「ごめん。なんかつい力入っちゃって」
「謝らなくていいよ・・・・それより痛くない?」
「これぐらい平気だよ。それよりもうちょっと強くやっていいよ?」
「分かった・・・・でも痛かったらすぐ言ってね。」
「うん、ありがとう」
妖しい会話に思わず胸が高鳴った。
気のせいか心拍数が異様に上がっている気がする、そして鼻水かと思って手で拭ったら
鼻血が垂れていたらしく血がついた。
でも想像の舞美ちゃんが佐紀ちゃんの秘密の花園に手を伸ばそうとしたところで、
私は居ても立ってもいられなくてドアを開けた。
「ちょっと舞美!佐紀ちゃんの秘密の花園にはまだみやだって触れたことがないんだよ!」
そして中に入ると即行で舞美に向かって文句を言った。
舞美は佐紀ちゃんの膝をサポーターで巻きながら、呆気に取られた顔で私のほうを見ていた
- 300 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:07
- さっきの会話はどうやらサポーターの巻き方とかについてで、どうやら勝手な妄想で
一人盛り上がっていただけらしい。
完全に私の勘違いだった。
そうと分かると急に恥ずかしくなって耳たぶが熱く火照ってくる。
「私何かした?っていうか秘密の花園って何?」
「えっ?あぁ、それは・・・・秘密の花園に行きたいか?おぉぉぉぉ!みたいな。」
「何それ。」
「いや、今うちの学校で秘密の花園横断クイズってのが流行ってるんだよね。」
「ふーん、そうなんだ。みやの学校って変なの流行ってるんだね。」
「あはは・・・・やっぱり変だよねぇ、私も変だと思うんだけどさ。」
舞美が馬鹿だったことをこのときほど感謝したことはない。
普通こんなことで人は誤魔化せないと思う、現に佐紀ちゃんは困ったような顔して
苦笑いしていた。
- 301 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:08
- 「これでよしと。あんまり無茶しちゃダメだよ、佐紀。」
「うん、ありがとね。」
「じゃあとはみやに任せて退散するよ。」
「えっ?」
「友達よりこういうときは恋人にいてもらったほうが嬉しいでしょ?」
「バ、バカ!別にそんなの関係ないよ。」
「照れない照れない。そういうことで後はよろしくね、みや。」
サポーターを巻き終えると、舞美は佐紀ちゃんと簡単に会話してすぐに部屋から
出て行ってしまった。
でも急に舞美が出て行ってしまって二人きりにされると、会話に困って私はすぐに
声をかけることができなかった。
それは佐紀ちゃんも同じなのか黙ったまま時間だけが無駄に流れる。
でもさすがにずっと黙ったままってわけにはいかないので、私は勇気を出して
声をかけてみた。
「・・・・足、っていうか膝は大丈夫なの?」
「うん、サポーター巻いたら結構楽になった。」
それで会話は終了した。
- 302 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:09
- 少し凹んだ、でもこんなことじゃダメだと自分を叱って改めて声をかけようと思った。
でもいざ何か言おうすると言葉が浮かばなかった。
いつもはくだらない話で盛り上がれるのに今は全然話せない。
何だか自分が情けなくなってきて、私は自然と大きなため息をついていた。
「全く、ため息吐きたいのはこっちだよ。」
「えっ?」
「秘密の花園って何?舞美以外だったら絶対に誤魔化しきれてなかったよ?」
「いや、あれはその・・・・佐紀ちゃんと舞美が妖しい会話をしていたから、ついさ。」
「あのねぇ・・・・まぁいいよ。みやは心配してくれたんでしょ?」
「えっ?う、うん。」
「なら今回は許してあげる。ヤキモチ妬いてくれてちょっと嬉しかったから」
怒られるかと思っていたのに案外あっさりと佐紀ちゃんは許してくれた。
そして少し照れながら笑っている姿にさっき二人の会話を聞いたときとは違う、
胸の高鳴りを感じた。
そのとき佐紀ちゃんが好きだなと心の底から思った。
- 303 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:10
- 「佐紀ちゃん、好きだぁぁぁぁぁ!!」
私は自分が思ったままに叫ぶと佐紀ちゃんに抱きついてベッドに押し倒した。
「ちょ、ちょっとみや?!」
「好き。なんかね、今すっごい佐紀ちゃんが好きなの。」
「何かそれだとさ、いつも大して好きじゃないみたいに聞こえるんだけど」
「えっ?いつも好きだよ?でも今はすっごく好きなの!」
「うん・・・・ありがと」
最後に「ありがとう」と言った佐紀ちゃんの声はとても優しかった。
私の思いが伝わったのが嬉しくて、私は膝に気をつけながら佐紀ちゃんに馬乗りに乗ると顔中にキスの雨を降らせる。
すると佐紀ちゃんはくすぐったそうに笑った。
それからそっと佐紀ちゃんの前髪を梳かすように撫でると、唇を目指してゆっくりと
顔を近づける。
そしてもう少しで触れるというところで医務室のドアが突然開けられた
- 304 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:10
- 「えっ?」
「あっ」
「ちょっと様子見に来たんだけど・・・・・良いところだったって感じ?」
「ダンスの先生には私達のほうから上手く言っておくから。それじゃごゆっくり。」
「ちょ、ちょっと!まだ何も言ってないんですけど!」
最悪なことにドアの前に立っていた桃とちぃで、二人は勝手に想像して勝手なことを言うと
ドアを閉めて行ってしまった。
あの二人のことだから何倍にも事を大きくして話すに違いない、そう直感的に感じた私は
追いかけようと佐紀ちゃんから体を離れる。
それからすぐに部屋を出ようとしたら服の端を掴まれて私は足を止めた。
「・・・・・行っちゃうの?」
振り返ると佐紀ちゃんは上目遣いに私を見つめながら、少し寂しそうな声でそう言った。
私は首を横に振ると何も言わずに佐紀ちゃんを抱きしめた。
- 305 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:11
- 結局私は佐紀ちゃんの傍を離れることができなかった。
というかあんなこと言われて部屋から出て行ける奴がいるなら見てみたい。
でもいつまでも医務室にいるわけにはいかないし、佐紀ちゃんも膝の調子が少し良くなって
きたので二人で戻ることにした。
できれば戻りたくないけど私達の為に皆をこれ以上待たせるわけにもいかない。
それでもリハーサル室の前に立つと少し迷ってしまう。
私は隣に立っている佐紀ちゃんの手を軽く握ると、何とか勇気を振り絞ってドアを開けた。
でもすぐにやっぱり戻らなければ良かったと後悔した
- 306 名前:ギャグ100回分愛してください 投稿日:2009/02/06(金) 15:12
- 中に入るとまずベリキューのみんなに囲まれて色々と聞かれた。
「おめでとう!やっと一線超えたんだって?」
「佐紀ちゃんが高2らしい喘ぎ声だったって本当?」
「みやって上手いの?」
「いや舞美のほうがすごいから」
大体聞かれた話の半分くらいが完全下ネタだった。
茉麻は梨沙子の耳を塞ぎ、なっきぃが舞ちゃんの耳を塞ぎながらずっと「あー」って
叫んで聞かせないようにしていた。
エッグは遠目から私達のことを見てひそひそ話していた。
モーニング娘さんは亀井さんと道重さんはニヤニヤしていて、中国人二人はあんまり
意味が分かってないようだった。
あとは顔を赤くしていたけど中でも田中さんの顔が一番真っ赤だった。
そのとき不意に高橋さんと目が合った、ワンダのリーダーとして何かあるのかなと思ったらウィンクしながら親指を立てられた。
ハロプロの終わりは近いなと思った
- 307 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/06(金) 15:12
-
- 308 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/06(金) 15:12
-
- 309 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/06(金) 15:13
- 今度はちゃんとしたみやさきを書こうと思います
- 310 名前:名無し 投稿日:2009/02/06(金) 22:36
- 舞美が助演女優賞だなw
- 311 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 01:03
- ここのキャプテンは可愛すぎる
キャプテンが大好きな周りも可愛すぎる
ていうか最初相手はりしゃこだと思ってましたw
みやさきもいいなあw
- 312 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 01:16
- 永永コンビが良い味だしてますねw
- 313 名前:熊井ちゃんw 投稿日:2009/02/07(土) 02:27
- キュートの天然王子、むちゃくちゃ言われてますねw
おもしろかったです☆
やっぱり終わりは近いのかな・・・orz
秘密の花園か・・・w
- 314 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 11:40
- 桃と千奈美のキャラ最高w
- 315 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 15:35
- 吹いたw
- 316 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/08(日) 01:09
- 栞×nsnk
すん止め(・A ・) イクナイ!
需要とか関係ないですよっ
是非とも最後まで書いて下さい<(_ _)>
- 317 名前:もんちっち 投稿日:2009/02/08(日) 13:44
- みやキャプの桃と千奈美Verで見てみたいです。(笑)
永永コンビのあのやじうまな感じ好きです。
- 318 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/10(火) 23:06
- みやさき初めて見ました!!
意外とはまりますね・・w
次回も楽しみにしてます
- 319 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:32
- まずはレス返し
>>名無しさん 舞美のバカキャラあってこそ話だと思います
>>311さん 最初の予定では桃だったんですが、バカじゃないとつまらない
ということに気付き、相手を雅ちゃんに変更しました
>>312さん なにげに二人が話の核だったりします
>>熊井ちゃんwさん 天然というかあれだとただのバカですね
話的にはあれで締めましたが、現実的にはまだまだ頑張ってほしいです
>>314さん そう思ってくれればもう何も言うことはありません
>>315さん その感想が全てだと思います
>>316さん 栞×nkskは寸止めというか、あれ以上書けないだけです
多分すごく暗くてドロドロした話になると思うので・・・
このCPはまた別の設定で書きたいと思ってます
>>もんちっちさん この永永コンビはこの話は別verか、全く違う設定で
ちゃんと書くつもりです
>>318さん みやさきは読んだはありますが、書いたのはこれが初です
今度はもうちょっとまともなものを書きたいと思います
- 320 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:34
- 今回の話は愛理×nkskです
ちょっと切ない感じの話になってますが、興味のある方はどうぞ
ちなみに愛理は黒くありません
- 321 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:34
-
笑顔を向けられるとまるで夢見たいで、抱きしめられると迷ってしまう
もう他の誰にもあなたを渡せない
- 322 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:35
- 私は放課後になると急いで愛理と待ち合わせをしている屋上に向かった。
正確には屋上に行く手前の階段の踊り場で、昼間はお弁当食べたりする子が通ったりする場所だけど放課後ともなると人気はない。
二人が会うときは愛理の指定でいつもこの場所だった。
私が付き合っている愛理こと、鈴木愛理は私とは違って良い意味で学校中の注目を
集めている子だった。
愛理は家がお金持ちで誰にでも優しくて少しおっとりしているところもあるけど、
それがまたお嬢様らしい子だった。
あと頭がかなり良くて校内のテストではいつも一位を取っている。
それにすごく可愛いから学年関係なくファンも多い。
だからいつもこんな人気のないところに呼び出して会うんだと思う。
私なんかと付き合っていることを隠したいから。
だって地味でこれといって取り得のない私とは絶対釣り合わない、だから時々
愛理に告白されたことが夢のように思えるときがある。
- 323 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:35
- それでも屋上の踊り場から手を振る愛理を見つけると、私の胸は弾んで自然と口元が
緩んでしまう。
そして焦る気持ちを抑えつつ少し早足で階段を登った。
愛理は一番上で待っていて、私が登りきると同時くらいに手を伸ばして強く抱きしめる。
「会いたかったよ、なっきぃ」
「・・・・うん、私も。愛理に会いたかった」
「なんか、うーん、なんだろ・・・・今日すごく一日が長かった気がする」
「私も。朝メールもらったときから放課後になるまですごく長く感じた」
「へへっ、同じだね」
「うん、同じ」
私達は顔を見合わせると小さく笑った。
この幸せな時間がずっと続けばいいのにと私はいつも思う。
でも幸せなのはいつもこの夕暮れ時間ほんの十数分だけ、愛理は下校の鐘が鳴ったら
すぐに家へ帰らないといけない。
愛理は本当に絵に描いたみたいなお嬢様で、家で家庭教師やらピアノを習っているので
学校くらいしか会える場所がなかった。
でも鐘が鳴ったら帰ってしまうなんてまるでシンデレラみたいだなと思った。
そして愛理のドレス姿を想像すると、普通に似合っていたから私はつい笑ってしまった。
- 324 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:36
- 「なっきぃ、どうかした?」
「なんか愛理はシンデレラみたいだなと思って」
「そうかなぁ?」
「でも愛理ってドレス着たら似合いそうだし」
「まぁ着たことはあるけど・・・・っていうか、私はなっきぃが着てるところが見たいな」
「えっ?」
「髪下ろしてちゃんとお化粧したらすっごい綺麗だと思うよ」
愛理は私の三つ編を優しく撫でてからそれを手に取ると、顔を近づけてそっと
髪にキスをした。
その仕草に胸が大きく高鳴って鼓動がどんどん早くなっていく。
それから上目遣いの愛理と目が合うと今度は私の唇を目指して顔が近づいてくる。
突然のことに驚いて私は思わず少し後ろに下がった。
「ダメ?」
「えっ?あっ、いや、そうじゃないけどさ」
「でもダメって言われてももう止められないかも」
「愛理、ちょっといきなり・・・・」
「今は黙って」
愛理は私の唇に人差し指を軽く押し付けると言葉を止める、それから指を退かすと
静かに唇が触れた。
- 325 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:37
- 私はすごく嬉しいはずなのに何だか急に怖くなった。
多分好きすぎて怖いんだと思う、こんなにも今まで人を好きになったことはなかった。
こんなに好きになるとも思わなかった。
付き合った当初は単純にただ嬉しい気持ちで一杯だった。
でも今は誰に奪われるんじゃないかとか、愛理にいつか嫌われるんじゃないかとか、
そんな弱気で不安な気持ちが胸を占めている。
「イヤだった?」
「うんん、そんなことないよ・・・・すごく嬉しい」
「そう。なら良かった」
「うん。」
「・・・・好きだよ、早貴」
「私も好き、愛理が好き。私が一番好きなのは愛理だよ」
愛理は急に真剣な顔になるとはっきりと自分の思いを伝えてくれた。
それに対して私も偽りのない正直な思いをぶつける。
気持ちを伝えてくれるのは嬉しい、でもいつまでその気持ちが続くのかと考えると怖い。
私は特技もないし人に誇れるものも何もないから。
きっと他の人が私達の関係を知ったら釣り合いが取れていないと笑うかもしれない。
でも例え私なんかより相応しい人がいても絶対に愛理を奪われたくない。
ずっと自分だけを見てほしいとそのとき不意に強く思った。
- 326 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:38
- 私は少しだけ踵を浮かして背伸びをすると、初めて愛理に自分からキスをした。
でも慣れないことに手が震えて思わず愛理の服の袖を掴む。
すると愛理は私の手に自分のものを包むように上から重ねると強く握った。
そのとき手じゃなくて胸が震えた
でも無情にも別れを告げる下校の鐘が私の耳に入ってくる。
ずっとこのままでいたいけど引き止めると愛理に悪いと思い、私は手を服から離すと
静かに一歩後ろに下がる。
けれど腕を取られて引き寄せられたかと思う愛理に強く抱きしめられた。
その予想外の行動に驚いて私が勢いよく顔を上げると、少し強引に愛理に唇を塞がれる。
その日の私達は鐘が鳴り終わっても唇を離さなかった。
- 327 名前:憧れ My STAR 投稿日:2009/02/13(金) 15:39
- 「それじゃ私そろそろ行くね」
「遅刻したりしない?」
「ちょっとくらい遅れたって大丈夫だよ、適当な理由言って誤魔化すから」
「ごめんね、愛理」
「なっきぃが謝ることなんて何もないよ。むしろ私のほうが・・・・」
「愛理?」
「うんん、何でもない。それじゃ今日の夜またメールするから」
「うん。帰り道暗いから気をつけてね」
愛理は最後に軽く手を振ると鞄を持って足早に階段を駆け下りていった。
そして屋上の踊り場には私一人だけが残された。
何だか虚しくて寂しくて悲しくて、なぜだか急に泣きたくなって私は胸を押さえた。
それから何気なく愛理が降りていった階段に視線を向ける。
十二時の鐘が鳴ってシンデレラが去ったっていった階段を、王子様もこんな気持ちで
見ていたのかなと思った。
- 328 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:39
-
- 329 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:39
-
- 330 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:44
-
続きはありません
- 331 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:47
- このスレを読んでいる皆様にちょっとしたお願いがあります
正直ちょっとネタに詰まりました
そこでリクエストを募りたいと思います
ただ我が儘だとは思いますがこちらからも軽く注文があります
・家庭教師の熊キャプと、桃ちなは書くのでそれ以外のCP
・簡単でもいいので設定まで考えてください
・ベリキューに限ります
・マイナー、王道、なんでもありです
・このスレでは短編しか書くつもりはないので、話が中途半端なところで終わったら
あとは脳内妄想でカバーしてください
- 332 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/13(金) 15:54
- それでも考えてやるという方、リクエストをくれるとありがたいです
あとリクエストは先着5名ということにします
あまり多くても書ききれないですし、適当なものは書きたくないので
ちゃんと書ける範囲で募集したいと思います
結構いけるようなら再度リクエストを募集するかもしれません
そんな感じで本当に我が儘で申し訳ないんですが、よろしくお願いします
- 333 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 20:59
- りしゃキャプのアンリアルで学校の先輩後輩設定をお願いします!
- 334 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 21:50
- 作者さんが書く舞美と雅の関係を読んでみたいと思いました
年上だけどどこか抜けた舞美と、1コ下だけど比較的しっかり者で冷静な雅の対比が見たいです
- 335 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 22:43
- なっきぃと熊井ちゃんを素直になれない幼なじみ設定で読みたいです。
マイナーですけどお願いします。
- 336 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 22:44
- さきももが読みたいです!
- 337 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 22:58
- やじうめお願いします。
梅さんが大好きでヤキモチ焼きまくりな舞美ちゃん希望です☆
- 338 名前:& ◆/p9zsLJK2M 投稿日:2009/02/13(金) 23:25
- なっきぃとまいまい物をお願いします。
二歳の差を痛感しながらも健気に好き合う二人を見てみたいです!
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 23:32
- >>338
アウトー><
- 340 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/14(土) 00:25
- やじももをお願いします。
- 341 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/02/14(土) 01:18
- やじうめでお願いします!
それか島島で
- 342 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/14(土) 01:37
- >>340
>>341
レスぐらいしっかり嫁
- 343 名前:熊井ちゃんw 投稿日:2009/02/14(土) 03:38
- nkskちゃん健気ですね。そして切ない(>_<)
誕生日を迎えて、雰囲気も最近大人っぽくなってきてますよね。
リクエスト間に合わなかったですね(>_<)
家庭教師の熊キャプの続編楽しみにしています♪
- 344 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/20(金) 23:46
- 更新楽しみにしてまーす
- 345 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/23(月) 15:20
- まずはレス返し
>>333さん リク了解です。学園物でりしゃキャプを書いたことがなかったので、
ちょっと色々考えてみます
>>334さん 舞美×雅は自分でも書こうかなと思っていたので、まさかここで
リクされるとは思ってませんでした
でもこのCPを選ぶなんてなかなか通だと思います
>>335さん リク了解です。熊×nkskも最近書いてなかったので頑張って
書いてみます
>>336さん さきももは了解なんですが、内容に対して指定がないのでこちらで
勝手に考えさせてもらます
>>337さん やじうめ了解です。多分自分が書くのでちょっと変な感じに
なると思いますが、そこは優しく見舞ってくれると嬉しいです
338、340、341の方は申し訳ありませんが、今回は遠慮させてください
そういう需要があるってことは覚えておきます
>>熊井ちゃんwさん nkskは薄幸で切ない役をやらせたら、多分右に出る者はいない
ような気がします
熊キャプは頑張って書きます
>>344さん お待たせしました。
楽しみに待っていてくれる方がいると、ちゃんと書かなきゃって思います
リクエストをありがとうこざいました
本当はもう少し多く募集しようとも思ったのですが、手を抜きたくないので
五つということにさせてもらいました
気が向いたらまたリクエストを募集するかもしれません
そのときはまたよろしくお願いします
- 346 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/23(月) 15:23
- 今回はリクエスト頂いたものではなく、永永コンビのお話です
この二人が好きな方も、大して興味ない方も、軽い話なので読んでもらえると
嬉しいです
- 347 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:23
- 「・・・・千聖」
「夏焼、どうしてここに来たんだよ!」
「心配だったから・・・・いや違う。君が好きだからだ!」
「や、やめろよ!そんな冗談聞きたくねぇよ!」
「冗談で言うわけないだろ?」
「バカヤロー!冗談じゃなかったら・・・・冗談じゃなかったら・・・・」
「千聖!」
「みや・・・」
「雅のキスを受け入れる千聖、やっと思いが通じ合えたかに思えたが・・・次回波乱の
新展開!愛理先生の大正ラブロマンスにご期待ください」
「はい、みんな拍手!ほら、ちゃんと拍手して!」
と桃は誰も頼んでないのに勝手にマンガを読んで、読み終わるとこうやっていつも拍手を
求めてくる。
クラスの子達も最近はだいぶ慣れてきたのかみんなとりあえず拍手してあげる。
まばらな拍手が響き渡る教室で私は一人溜め息を吐き出した。
桃は拍手を聞いて頷きながら空いている隣の席に座る。
満足そうな桃の表情を見て私は呆れてさらに深い溜め息を吐き出した。
- 348 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:27
- 桃は人のクラスでいつもこうやって勝手にマンガを朗読する。
私達は一応付き合ってるし会いに来てくれるのは嬉しいけど、この頃はただ単に
マンガの朗読をしたいだけのような気がする。
それだったら自分のクラスでやればいいのにと普通に思う。
「徳さん、拍手してくれた?」
「しないよ!っていうか人のクラスで勝手にマンガ朗読するのやめてくれる?」
「ちょっと待って。いい話なんだよ、これ。徳さんも読まない?」
「いい、結構、ノーセンキュー。そういう系の話に興味ありませんから」
「いや騙されたと思って読んでみてよ」
「だから読みません!」
桃はさっきの話を本気で勧めてきたけど、私は全く興味がないので露骨に嫌な顔をして
断った。
強く言うと桃もそれ以上無駄に押し勧めてくることはなかった。
でも頬を膨らませて唇を尖らし、見るからに不満そうというか不服そうな顔をしていた。
桃の方が年上なのにこういうところを見ていると信じられなくなる。
だけどこうなるとお手上げで私は何となく辺りを見回した。
私達がくだらない言い合いをしている間に、クラスはすっかりいつも通りの姿を
取り戻していた。
- 349 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:27
- 私は軽く溜め息を吐くといつものように席を立つ。
そして不貞腐れている桃を無視して他の子のところへ行こうとする。
別に意地悪しているわけじゃなくて、大体いつもこのパターンで桃の機嫌は何とかなる。
予想通りの制服の裾が掴まれると無意識に口元が緩んだ。
それからわざとらしく首だけ後ろに向けると、俯いたまま袖を握っている桃の姿が
目に入る。
「・・・・ヤダ」
「何が?」
「他の子のところに行ったらヤダ」
「ふーん・・・・桃がそう言うなら行くのやめるよ」
「本当に?」
「本当に決まってるじゃん。徳永千奈美は嘘はつきません」
「それじゃぁ破ったら針千本飲んでくれる?」
「えっ?それはヤダよ」
私が調子の良いこと言うと桃はすっかり機嫌直ってしまう。
呆れるほど単純だけど、そういうところ嫌いじゃないしむしろ好きなところだった。
それからくだらない冗談を言って二人で顔を見合わせて笑う。
いつもはこれで昼休みの終了のチャイムが鳴るまでくだらない話をして終わる。
でも今日はいつもと違っていた。
- 350 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:28
- 桃はなぜかもう一度私の制服の袖を引っ張る。
それから息がかかるくらい耳元に顔を寄せると妖しく笑った。
時折見せるその小悪魔のような笑みに私はいつもバカみたいに胸が高鳴る、そして鼓動が
どんどん早くなっていく。
でもそれを知られたくなくて私はどうにか平静を装った。
「なっ、何?何かあったの、桃」
「ねぇ・・・・今からキスしよう」
「はぁ?バカじゃないの?できるわけないじゃん!場所考えなよ!」
「いい?考えたらダメなんだよ。恋愛はそんなもんじゃないの。分かった、徳さん」
「分かりませーん」
「ちょっと、ちゃんと人の話は真面目に聞いてよ!」
「無理。っていうかしないからね。」
桃が何を言い出すかと思ったけどそれは私の予想を遥かに超えていた。
というか私の予想していたこととは次元が違っていた。
こんな感じで桃は大人かと思ったら、変なところで妙に子どもだからよく分からない。
でも多分一生かかっても分からない気がする。
自分を棚に上げて人に説教している様子を見ていて私はそう思った。
- 351 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:28
- 「いいじゃん、キスしようよー」
「イヤだ」
「えー、ダメ?」
「ダメ」
「絶対に?」
「絶対」
「絶対に本気で本当にマジで命賭けてもダメ?」
「絶対に本気・・・・っていうか、とにかくダメなものはダメ!」
桃はどんなに断っても今度は全く引こうとしない。
基本的に桃は飽きやすい性格だと思うけど、一度何かにこだわってしまうと桃は絶対に
引かない。
そしてこうと決めると相手が折れるまで同じことを言い続ける。
いつもは大概私のほうが折れてあげるけど、今日はさすがにものが違うのでこちらとしても
折れるわけにはいかなかった。
すると桃は急に黙り込むと腕を組んで唸りながら考え込む。
その様子を見て私はとても嫌な予感がした。
「桃は千奈美とキスがしたい」
桃は上目遣いだけど少し真剣な顔で私を見つめながらそう言った、そしてそのすぐ後に
本当に子どものように無邪気に笑う。
言葉は無くてもそれが心を許しただけに見せる笑みだと分かる。
私の嫌な予感は見事に的中した、だって今まで頑なに断っていたのにその笑顔を見た瞬間
言う事を聞いてあげようと思ってしまった。
- 352 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:29
- 「・・・・・いいよ」
「ん?何が?」
「ちょ!あのねぇ、いいって言ってるんだからそれでいいじゃん!」
「ヤダ。ちゃんと言って?」
「あー、もうっ!ちょっと近く来てよ!だから・・・・・・キスしてもいいよ」
「誰と?」
「・・・・見た目は小5、頭脳は色んな意味で最低な2-C組の嗣永桃子さん」
「ひどーい!小5はちょっとひどいから」
「いいよ、どうせ桃だし」
桃は調子に乗ってどんどん我が儘になってくる。
私は疲れるなと思いながらも最初はちゃんと相手してあげていた。
でも段々呆れてきて後半は投げやりだった。
だから桃はまた不貞腐れるかと思ったけれど、言う事を聞いてもらえるからなのか
特に不機嫌になることはなかった。
- 353 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:29
- 「それでどうやってキスする?桃的にはストレートにきてもいいよ?」
「それは千奈美的に無理です」
「あー、そう。それで本当にどうやってするの?」
「ちゃんと考えてあるから」
「えー、徳さんの考えっていまいち信用できないんですけど」
「嫌ならしないよ?」
「お好きにどうぞ。桃は受身だからお任せします」
桃は一人で盛り上がって好き勝手言うと目を瞑った。
私は溜め息を吐き出すと机の中から適当に一冊のノートを取り出す、それから最後に
大きく深呼吸した。
でも変に意識しているせいか胸の鼓動が早くなっていく。
なんで自分がこんな緊張しなくちゃいけないのか分からなくて、嬉しそうな顔をして
目を瞑っている桃を軽く睨む。
けどあまりにも楽しそうだから途中で吹き出してしまった。
- 354 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:30
- 「あぁぁぁぁぁぁぁ!!英語の新倉先生の噂のアデランスが廊下に落ちてる!!」
私は廊下をまっすぐ指差すとありえないくらい大声を出して叫んだ。
クラスの視線が一斉に廊下のほうに向く。
それだけでも十分だと思ったけど一応念には念を入れて、私はノートで隠しながら
桃にキスをした。
多分結構長く唇に触れていたような気がする。
それでも本当は三秒くらいなのかもしれない、それでもゆっくりと顔を離すと心臓が
さっきよりも確実に早く脈打つ。
目を開けた桃は心なしか頬が赤いように見えた。
- 355 名前:LALALA 幸せの歌 投稿日:2009/02/23(月) 15:30
- 「千奈美、カツラなんてどこにもないじゃん!」
「ごめんごめん、何かよく見たらファーのついた黒い鞄だった」
「普通そんなのと間違う?」
「何か思い込むとさ、違うものでもそれらしく見えたりするときあるでしょ?あれあれ」
「それなんか違うと思うよ」
「いやでもあのときはマジでカツラに見えたの!本当だって!」
「はいはい・・・・千奈美にデマにみんなして踊られたってことで」
「それひどいから!」
私は勘違いをクラスメートに指摘されて適当に誤魔化していた。
本当はまだ胸の高鳴りが治まらないけど、それでも黙っているわけにもいかないので
いつもよりテンション高めでしゃべった。
でも反対に桃はキスしてからずっと黙ったままだった。
そしてなぜかまた私の制服の袖を握っている、私は軽く溜め息を吐き出すと辺りを
何気なく見回した。
そして多分死角で見えないことが分かると桃の手をどうにか探り当てて強く握る。
すると桃があの無邪気な笑みを見せるから私も自然に笑顔になった。
- 356 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/23(月) 15:31
-
- 357 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/23(月) 15:31
-
- 358 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/02/23(月) 15:34
- 夜中に思いついて、夜中に書きました
なので一番初めのところはよく分からないテンションで書きました
正直ちょっとやり過ぎたかなと、今は思ってます
- 359 名前:もんちっち 投稿日:2009/02/23(月) 15:55
- ちなももありがとうございました〜。
ちぃ攻めは初めて見たのでめっちゃ新鮮でした。
ちなももは学校にいたらこんな感じになると思います。(笑)
めっちゃ良かったです。
次回の作品も楽しみにしてます。
- 360 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/24(火) 00:52
- このコンビだいすっきなんですけどCPとしては初めてみた気がしますw
結構萌えてる自分がいましたw
そして最初の漫画に笑わせていただきましたwww
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/28(土) 16:56
- すごいおもしろかったです。
リクエストのほうも楽しみにしています
- 362 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/02(月) 00:44
- あまりなじみの薄い2人組だったがイメージできました♪
- 363 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/04(水) 00:46
- 更新お待ちしております・・・
- 364 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/04(水) 16:19
- まずはレス返し
>>もんちっちさん 千奈美受けのパターンも考えてはいたんですが、
色々考えた結果今回は逆でいきました
楽しんでもらえたらもらえたようで良かったです
>>360さん 冒頭のマンガの部分は本当に勢いと思いつきで書いたので、
笑ってもらえればそれだけで十分です
友情CPぽっいですけど、意外にいけるということを自分も書いて知りました
>>361さん 楽しんでもらえて良かったです
リクエストのほうは半分くらいはできているので、徐々に載せていこうと
思います
>>362さん マイナーな組み合わせですが、それをいかにもありぽっく書くのが
自分は好きです
基本かなりのマイナー好きなので書いてて楽しい話でした
>>363さん お待たせしました
そして多分これからも少しお待たせしてしまうかもしれません
- 365 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/04(水) 16:23
- 今回はリクエスト頂いた、熊×nkskの話です
設定が幼なじみで、互いに素直になれないということだったので
一応それ通りに書いてます
ちょっと終わりが中途半端なので、後は脳内でよろしくお願いします
- 366 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:24
-
私の片思い歴は長い
そんなの人に自慢できることじゃ全然ないけど、とりあえず長い
だって私が好きな人は幼なじみだから
- 367 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:24
- 学校から帰宅して玄関の前で鍵を見つけるのに悪戦苦闘していると、友理奈ちゃんが
偶然目の前を通りかかった。
でも偶然といっても家が隣同士だから通るのは当たり前だった。
それでも目かけたのは数ヶ月ぶりで、相変わらず背が高くて細くて綺麗だなと思った。
だけど私達は一瞬目を合ったけれど互いにすぐに逸らす。
それから私が軽く会釈すると友理奈ちゃんもそれに習って頭を下げる、そしてそのまま
一言も交わさずに通り過ぎていった。
私は鍵を探すふりをしながら友理奈ちゃんが家に入るまで密かに目で追っていった。
そしてその姿が見えなくなると自然と口から溜め息が漏れる。
結局また友理奈ちゃんと話すことができなかった。
今までこういうチャンスは何回もあったのに私はいつも見逃してばっかりだった。
もう一度ため息を吐き出すと適当に鞄の中を漁る、するとすぐに鍵が見つかって
項垂れながら私も家の中に入った。
- 368 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:24
- 友理奈ちゃんと私は家がお隣同士で幼なじみというやつだった。
小さい頃はよく遊んだりしたけど、中学が別々になってしまってからは話す機会が減って
今みたいに挨拶する程度だった。
本当は話したいけれど本人を目の前にするといつも言葉が出なくなる。
でもその理由を私は知っている、単純だけど友理奈ちゃんが好きだからだ。
好きだから緊張して、好きだから舞上がってしまって、好きだから目さえ合わせられない。
私は中に入るととりあえずリビングへと向かう。
それからソファーに鞄を適当に置くと、近くにあったクッションを抱きしめたまま
横に倒れる。
「・・・・綺麗だったなぁ」
とつい数分前に見た友理奈ちゃんを思い浮かべながら私は独り言を呟く。
「誰が綺麗だったの?」
「えっ?そんなの決まってるでしょ、友理・・・・ってママ!!いつ帰ってきたの?」
「ついさっきだけど?」
「声ぐらいかけてよぉ。あー、もうっ!ビックリしたぁ」
「はいはい、ごめんなさいね」
ママは特に先程の言葉は特に追求せずすぐに台所へ行ってしまった。
私はその様子を見てホッと胸を撫で下ろすと体を起こして気分転換にテレビをつける。
そして子ども向けのアニメを適当に見ながら夕飯まで時間を潰すことにした。
- 369 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:24
- 「そういえば、早貴知ってる?」
「何?」
「熊井さん留学するんですって」
「えぇぇぇぇ!!友理奈ちゃん留学しちゃうの?どこに?いつ?」
「そんなの分からないわよ、噂で聞いただけだし。まぁ近いうちに聞いてみるつもりだけど」
「そんな・・・友理奈ちゃんが・・・・留学・・・」
私は全身の力が抜けて再びソファーに倒れ込んだ。
友理奈ちゃんが留学する、その事だけが馬鹿みたいに頭の中を支配していた。
それから夕飯も上の空で途端に食欲もなくなった。
そんな私を家族は心配していたけれど、「全然大丈夫だから」と言って適当に誤魔化した。
私はとにかく一人なりたい気分で、かなり早く夕飯を切り上げるとすぐに自分の部屋へ
向かった。
そして自分の部屋に着くと迷わずベッドに倒れ込む。
柔らかな布団に顔を埋めたまま溜め息を吐くと、私はしばらくそのまま放心状態だった。
頭が回らなくて何も考えられなかった。
それから精神的な疲れのせいかいつの間にか眠ってしまった。
- 370 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:25
- 私は友理奈ちゃんに直接引越しのことについて聞こうと思った。
でもそう思っただけで結局一言も話しかけることができなかった。
家の前で待っていようかと思ったけど怪しまれたら困るので止めたし、直接家に行って
聞こうとしたけ玄関のベルが押せなかった。
あとは友理奈ちゃんが家の前を通るのを待ち伏せして、さり気なく声をかけようとしたけど
3回くらい出て行けずに見送った。
私の作戦は全て空回りに終わりあっという間に2週間が過ぎた。
そして何気ない夕食の時間、ママが思い出したように私に話しかけてきた。
でもできればそれは永遠に聞きたくない内容だった。
「早貴、熊井さんのところ明後日には引っ越すんですって」
「えぇぇぇぇぇ!ちょっと急すぎだよ、なんでもっと前に教えてくれなかったの?」
「ママだってさっき聞いたんだから仕方ないでしょ?なかなか会えなかったんだもの」
「そんなぁ・・・・明後日なんて急すぎるよぉ」
「でも引っ越すっていっても・・・・ちょっと聞いてるの?早貴?」
私はママの言葉を最後まで聞かずに自分の部屋へ向かう。
そしてあまりのショックで力が抜けてそのままベッドに横になると、いつかのように
自分でも気がつかないうちに寝てしまった。
- 371 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:26
- でも夜中に突然何かを叩くような物音がして私はふと眼を覚ました。
携帯を取って見ると夜の四時過ぎ、最初は気のせいかと思ったけれど再び物音がした。
それはどうやら私の部屋の窓から聞こえてくるようだった。
まともなときなら怖いと思ったかもしれない、でもそのときは少し寝惚けていた為に
全く警戒していなかった。
ただ単純に物音の正体を知りたいと思った。
私はよろけながらベッドから起き上がるとゆっくりと窓に近づく、そしてカーテンを
開けると人が居た。
「きゃっ・・・・えっ?友理奈ちゃん」
まさか人がいると思っていなかったので声を上げそうになったけど、すぐにそれが
友理奈ちゃんだと分かって悲鳴を飲み込んだ。
友理奈ちゃんは少し安心した様な顔つきでもう一度窓を叩いた。
友理奈ちゃんと私の部屋は思い切り手を伸ばせば届くくらいの距離にあって、昔はよく
窓越しに話したりしていた。
でもいつからか互いの部屋の窓にはカーテンがつけられて話すことはなくなった。
- 372 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:26
- 懐かしいなと一人勝手に回想していたら友理奈ちゃんに再び窓を叩かれる。
私はようやく現実に戻って少し慌てて窓を開けると、友理奈ちゃんは苦笑しながら
こっちを見ていた。
「ごめんね?すぐに開けなくて」
「別にいいよ。こんな朝早く窓叩いた自分もいけないから・・・・驚いたでしょ?」
「えっ?うん、まぁ。でも少しだけだよ?」
「なら良かった。それでなんか突然なんだけどさ、今からちょっと外に出れない?」
「今から?」
「うん。ダメかな?」
「うんん・・・・・いいよ、すぐ行く!」
突然の友理奈ちゃんからのお誘いには正直驚いた。
でも断ろうなんて思わなかった、というか断れるはずがなかった。
私が小さく頷くと友理奈ちゃんはすごい笑顔になって、その無邪気な笑みは子どもの頃と
全く変わっていなかった。
それにあんなに話そうとしてもできなかったのに、本人を前にするとそう思っていたのが
バカみたいに簡単に話せた。
- 373 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:26
- それから十分後に家の前で待ち合わせることにして窓を閉めた。
私はすぐにパジャマの上に適当な上着を羽織ると、別に焦ることないのにすぐに
外へと向かう。
でもまだ家族はみんな寝ている時間なので、なるべく足と音を立てないように頑張った。
外に出ると既に友理奈ちゃんが自転車に乗って待っていた。
ジーンズにダウンジャケットという意外とボーイッシュな服装だったけど、ちょっと
カッコ良かった。
「慌てて出てきたでしょ?」
「べ、別にそんなことないよ」
「ならいいけど。それでちょっと遠いんだけどさ、これから隣街の神社にいかない?」
「えっ?別にいいけど・・・・なんで?」
「えっと、まぁ、その、なんとなく。ダメかな?」
「別にダメじゃないよ。行こうよ、神社」
「うん。それじゃ後ろに乗って?神社まで漕いでいくから」
なんで神社なのか疑問だったけど、友理奈ちゃんは理由を言いたくなさそうだったから
聞かないことにした。
私はこうして会って話せるだけで十分嬉しいから。
私が頷くと友理奈ちゃんも頷いて、それから言われるままに自転車の後ろに乗った。
- 374 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:27
- でも乗ったものの友理奈ちゃんの体に触れなくて戸惑っていた。
いつも二人乗りのときは前の人の腰を掴むけど、相手が相手なのでそんな大胆なことを
私ができるはずなかった。
すると友理奈ちゃんは私の手を取って自分の腰の辺りに持ってくる。
「・・・・・ちゃんと掴まってないと危ないよ」
「えぇ!?・・・・あぁ、うん、ごめん」
「それじゃ行くよ。あっ、ちょっと時間ないから飛ばすね?」
「へっ?」
なんで急ぐのか気になって聞こうかと思ったけれど、ちょうど走り出してしまったので
聞くタイミングを逃してしまった。
そして友理奈ちゃんは宣言通りにかなりスピードで走っている。
それも歩道ではなくて車道で。
でも時間が時間なので車もまだそんなに走っていなくて、少し危ないかなと思ったけど
私は特に何も言わなかった。
- 375 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:27
- 自転車をかなり飛ばしているせいか風がかなり冷たかった。
冬が終わりに近づいているといっても夜になるとまだまだ寒いし、もう少し厚着してくれば
良かったかなと軽く後悔した。
私は思わずクシャミが出そうになって慌てて顔を横に向けた。
そして顔を戻すと友理奈ちゃんは相変わらずまっすぐ前だけ向いて、一生懸命に
自転車を漕ぎ続けている。
私と友理奈ちゃんは家を出てから全くしゃべらなかった。
それでも私は嫌じゃなかった、だってちゃんと自分の手で友理奈ちゃんに触れているし、
すぐ近い距離で一緒にいるから。
すごくドキドキして、すごく嬉しくて、私は不意に泣きたくなった。
そして視界がぼやけてきた瞬間、突然友理奈ちゃんが少しだけ後ろに首を向ける。
「寒くない?」
「へっ?うんん、大丈夫。友理奈ちゃんこそ疲れてない?」
「ならいいけど。でももし辛かったら言ってね?すぐに止まるから」
「うん、ありがとう」
友理奈ちゃんは私の顔を見てからすぐに顔を前に戻してしまう。
でもちゃんと私のことを気にかけてくれて、そのことが嬉しくてまた泣きたくなった。
そして今度は突然振り向かれてもいいように顔を下に向けた。
- 376 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:28
- 私はふと小さい頃にお互いの家を交代で泊まりあっていた時の事を思い出した。
幼稚園くらいまでは土曜日になるとどっちかの家に泊まって、そのまま日曜日は2人で
遊ぶのが定番になっていた。
そしてあるとき私達は夜に家をこっそり抜け出してみることにした。
多分時間的には9時か10時ぐらいだと思うけど、それでも幼い私達には遅い時間で
起きていることすらすごいと思っていた。
私達は足音を立てないように静かに家を抜け出すと、道の突き当りまで訳もなく走った。
いつも知っている場所なのに全く知らない所のようだった。
まるで大冒険をしたような気分だった。
でも一人だったら私はできなかったと思う、友理奈ちゃんが一緒にいてくれたから
できたことだと思う。
けれどあのときは人気のない道が怖くなって二人ともすぐに家の中に逃げ込んだ。
そして家の中に入ると顔を見合わせて笑った。
小さい頃はあんなに仲が良かったのに小学校、中学校と学年が上がるごとに私達はまるで
避けるように離れていった。
友理奈ちゃんとはもうあの頃の関係には戻れないと思っていた。
だから今もこんな風に自転車に2人乗りしていることが信じられなかった。
私は何だか不安になって思い切って友理奈ちゃんの背中に顔を寄せて頬を当てる、
すると微かに温かくて夢じゃないんだと実感した。
- 377 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:29
- すると友理奈ちゃんは少し腰を上げて一気にスピードをあげる。
景色が後ろにどんどん流れていって冷たい風が顔に当たったけど私は十分温かかった。
私はこの時間が永遠に続けばいいなと思った。
でもそれからすぐに神社の入り口が見えてきて、友理奈ちゃんは鳥居の前に自転車を止める。
そして二人して百段以上ある長い石段を見上げた。
「上まで行きたいんだけどいいかな?」
「いいよ、行っても。でもちょっと疲れそうだけど・・・・」
「ははっ、確かに。それじゃ頑張ろうか?」
「うん」
こうして私達は長い石段を登り始めた。
小さい頃はこの神社で遊んだとこともあったけれど、大きくなると初詣のときくらしか
来ることがなくなっていた。
だから人気のない石段を登るのは久しぶりだった。
友理奈ちゃんの少し後ろを歩きながら私の脈はどんどん早まっていく、でもそれは階段を
登っているからじゃない。
友理奈ちゃんと一緒にいるからって理由のほうが胸をドキドキさせている。
- 378 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:30
- それからようやく石段を登り終えるとさすがに息が切れた。
見ると友理奈ちゃんも肩を少し上下させていて、私達は目が合うと照れくさそうに笑った。
でも不意に友理奈ちゃんが何か思い出したようにポケットの中に手を入れる、そして中から
引っ張り出したものを私に手渡した。
「これ良かったら飲んで?」
「コーラ?」
「うん。ちょっと小さいんだけど家にこれしかなくてさ」
「これぐらいで私は十分だよ。それで友理奈ちゃんの分は?」
「えっ?あぁ・・・自分はいいよ」
「そんなのダメ!半分ずつ飲もう、私もそんな量飲めないから」
「・・・・うん、分かった」
遠慮する友理奈ちゃんを叱ると少し驚いた顔をしてから笑って頷いてくれた。
こうして私達は二人で1つのコーラを飲んだ。
でも後になって間接キスしてることに気付くと、変に意識してしまって私はコーラが
飲めなくなった。
- 379 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:30
- それから友理奈ちゃんの顔が見れなくてずっと景色ばかり見ていた。
すると遠くのほうに白い光が見えたかと思うと、それはだんだん大きくなっていって
空に昇っていく。
そして薄紫色に染まっていた街を起こすようにゆっくりと光で照らしていく。
あまりに美しすぎる光景に私はしばし見惚れていた。
だから友理奈ちゃんに突然話しかけられたとき少し驚いてしまった。
「早貴ちゃんは覚えてる?」
「えっ?えっ、な、何のこと?」
「小さい頃にいつか二人でこの神社から日の出を見ようって話」
「あっ・・・・ごめん。ちょっと覚えてないかも」
「別に大丈夫だよ。ただ自分が見たいなって思ってただけだから」
「だから今日見に来たの?」
「うん。でも予告なしに窓叩いたからさ、起きなかったらどうしようかと思った」
「ごめんね。私すぐに起きなかったでしょ?」
「でも結果的にはこうやって二人で日の出が見れるわけだし、良かったんじゃない」
優しく微笑んだ友理奈ちゃんを朝日が照らし出してすごく綺麗だった。
だから私は少しだけ見惚れてしまった。
そして一緒にこうやって日の出が見られて良かった、と心の底から思った。
- 380 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:31
- 「でも本当に見られて良かった。今日逃すとしばらく見られそうにないからさ」
「・・・・・行っちゃうんだよね」
「うん。ちょっとだけ家が遠くになっちゃうね」
「ちょっとじゃないよ!だってすぐには会えないでしょ?」
「でも多分二、三週間すれば落ち着くだろうからさ、そのときにまた会おうよ」
「えっ?一時帰国するってこと?」
「帰国?何それ?どういうこと?」
「えっ?だって友理奈ちゃんは留学するんでしょ?」
私達の会話は段々と噛み合わなくなっていって、互いにおかしいことに気付くと
顔を見合わせた。
だから私はとりあえずお母さんに留学するって聞いたことを話した。
すると友理奈ちゃんはお腹を抱えて笑った、そしてその笑いが治まるまで
しばらく時間がかかった。
- 381 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:32
- 「何か変だと思ったんだよね、早貴ちゃんの様子。何か深刻そうだからさ」
「だ、だって友理奈ちゃんが留学するって聞いたから・・・・」
「まさかうちのお母さんが駅前留学する、って話がそんな風になるとは思わなかったよ」
「私だって留学するのがお母さんのほうだとは思わなかったよぉ」
「まぁお互い様ってことだね」
「うん。はぁ・・・・それにしても悩んで損した。引越し先も自転車で行ける範囲だし」
友理奈ちゃんの話によると、どこで聞き間違ったのか知らないけれど留学するのは
お母さんのほうだった。
しかも引っ越し先の近所にある英会話教室に通うってだけのこと。
家に帰ったらママに文句言わなきゃと思いつつ、今は友理奈ちゃんが遠くに行かなくて
良かったと安心している。
引越し先も駅三つくらいしか離れていない街だったので十分会いに行ける。
- 382 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:32
- 「でも嬉しいな・・・・早貴ちゃんが悩んでくれて」
「えっ?」
「私が遠くに行くと思ったから悩んでくれたんでしょ?」
「うん。ま、まぁ・・・・そうだけど」
「私のこと気にしてくれて本当に嬉しいよ」
「・・・・・うん」
友理奈ちゃんは少し照れくさそうに笑いながらも、ちゃんと私の目を見て自分の気持ちを
伝えてくれた。
そのまっすぐな瞳に、まっすぐな言葉に、私の胸は大きく高鳴って顔が熱くなる。
だからただ小さく頷くことしかできなかった。
- 383 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:33
- 「私は・・・・好きだよ。早貴ちゃんが好き」
「えっ?うえぇぇぇぇぇぇ!!」
「ずっと言おうと思ったんだけど、ずっと言えなくて。でも今すごく好きだなと思ったから」
「あ、あの、えっと、あの・・・・・」
「無理しなくていいよ?別に振られても大丈夫だし。ただ言いたかったんだ、好きだって」
「・・・・・私も!」
「へっ?」
あまりに突然の告白だったから頭も心もすぐに対応できなかった。
でもようやく友理奈ちゃんに言われたことを理解すると、今度は嬉しすぎて舞い上がった
自分をコントロールできなくなった。
早く自分の気持ちを言いたいのに舌が回らない、口が上手く動かない、気持ちばかり
変に焦ってしまう。
きっとそのときの私の顔はかなりすごいことになっていたと思う。
でもそのときはそんなこと考えもしなかった、頭の中にあるのは友理奈ちゃんに一秒でも
早く返事をすることだけだった。
「私も・・・・・私も友理奈ちゃんが好き!ずっと好きだった!」
そしてかなり一杯一杯だったけれど、何とか自分の気持ちを言葉にすることができた。
- 384 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:33
- 友理奈ちゃんはしばらく呆然とした様子で私を見ていた。
てっきり笑ってくれるかと思っていたから予想外の展開に私も呆然としてしまう。
思わず変なこと口走ったかなと思って頭を捻ったけれど、やっぱりちゃんと好きだと
告白している。
それじゃどうしてと考えていると突然友理奈ちゃんに抱きしめられた。
「ちょ、ちょっと!友理奈ちゃん?!」
「本当?」
「えっ?」
「本当に私なんかでいいの?」
「それはこっちのセリフだよ。友理奈ちゃんこそ私でいいの?」
「うん、早貴ちゃんがいい。じゃなくて!早貴ちゃんじゃないとダメなんだ」
「私も。私も友理奈ちゃんじゃなきゃダメ」
「へへっ、両想いってやつだね。私達」
「・・・・・うん、両想い」
友理奈ちゃんは私を抱きしめながら幸せそうに笑う。
だから私も幸せな気分になってきて、軽く微笑み返すと友理奈ちゃんの肩に頭を乗せる。
すると友理奈ちゃんが強く抱きしめるから私はさらに幸せな気分になった。
- 385 名前:友情純情oh青春 投稿日:2009/03/04(水) 16:33
-
こうして長く続いた私の片思いは多分長く続く両思いに変わった
訂正→絶対続く両思いに変わった
- 386 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/04(水) 16:33
-
- 387 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/04(水) 16:33
-
- 388 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/04(水) 16:35
- 青い春だなぁと書きながら一人思ってました
- 389 名前:熊井ちゃんw 投稿日:2009/03/05(木) 04:14
- 甘酸っぺ〜(>_<)
若いって素敵ですね(笑)
- 390 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 19:53
- 熊井ちゃんとnkskちゃんをリクしたものです。
想像以上によい作品が読めてとても嬉しかったです。
自転車二人乗りのシーンは情景が目に浮かぶようでした。
他のお話も楽しみに待ってます。ありがとうございました。
- 391 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/15(日) 12:34
- 私が好きな感じの話でした。
すごくおもしろかったです。
他のリクの話も楽しみにしています!!
- 392 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/18(水) 15:09
- レス返し
>>熊井ちゃんwさん 同感ですね、若いって素晴らしいと思います
まぁ熊井ちゃんは若さに関係なく無茶いそうですけど・・・
>>390さん 満足していて頂ければ幸いです
いつも不幸な役柄にさせてしまっていますが、今回は幸せそうなnkskが書けて
自分も楽しかったです
>>391さん こういうほのぼの系は一番書きやすいです
リクは少し時間がかかるかもしれませんが、気長に待っていてくれると
嬉しいです
- 393 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/18(水) 15:15
- 今回のお話はリクエストにあった梨沙子とキャプのお話です
・学園物で先輩と後輩という関係です
・キャプがクールな感じの人です
・なのであまり甘い話ではありません
それでもよければどうぞ
- 394 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/18(水) 15:15
-
あの人は屋上のフェンスに小さな背中を預けて空を見上げていた
初めてその姿を見たときはその目には何が映っているんだろうと思った
二度目に見たときは一体その胸の中で何を思っているんだろうと思った
そして言葉を交わしたときはこの人のために何かしてあげたいと思った
今も何を見て、何を考えているのか分からないし、何もしてあげられてないけれど、
それでも先輩の傍を私は離れない
でも仮に離れてくれって言われても絶対に離れてあげない
- 395 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:16
- 今は数学の授業中だけど私は全然ついていけなくて溜め息ばかりついている。
訳の分からない数字とXとYとかたくさんあって、前からだけどいつも頭の中が
混乱している。
ノートには一応書いているにも関わらずどうにも理解できない。
黒板に目をやると相変わらず授業は私を置いてけぼりにして先に進んでいく。
だから後で誰かに教えてもらうことにして私はあっさりと頑張ることを諦めた。
そして机に肩肘をつくと何気なく窓の外に視線を向ける。
校庭はたまたま体育の学年がないらしく誰もいなかった。
人がそこそこいれば少しは楽しいのに、誰もいないとなると暇つぶしもできない。
それに人のいない校庭は見ていても面白くないし少し寂しい感じがする。
だから他に見ていて面白そうな場所を探す、でも特に見当たらなくて私は何気なく
屋上を見た。
すると人がフェンスに寄り掛かっているのが見えた、遠くてはっきり分からないけれど
背格好から女子なのは分かる。
私はまずあんなところで何をしているんだろうと思った。
学年が違っても間違いなく今は授業中だし、ということはあそこにいる子はサボってる
ということになる。
でも金髪で見るからに不良だったら分かるけれどどんなに目を凝らしても黒髪だし、
見た感じは優等生系の子に見える。
だからこそそんな子が授業中に屋上にいることが不思議だった。
- 396 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:17
- 私はどうせ暇なのでその女の子を観察することにした。
でも全く動かないのですぐに飽きてしまった。
もっと色々してくれれば面白いのに女の子は何をするでもなく空ばかり見ている。
もしかして空に何かあるのかと思ったけれど青い空と雲と太陽しかない。
だから私は女の子が何を見ているのか分からなかった。
そしてつまらないなぁと思っていると、今まで背中を向けていた女の子が私の方に
首だけ捻る。
一瞬、女の子が私のほうを見た
ような気がした、でも多分私が見ていたからそう感じただけだと思う。
たくさん窓がある中でこの教室を見ている確率はかなり低い、なんて考えると少しだけ
自分がちょっと頭良くなった気分になる。
でもせっかくいい気分に浸っていたら不意に先生に当てられた。
当然私は答えられなかった、でもきっと授業を聞いても答えられなかっただろうから
結果は同じだったと思う。
私は先生に怒られて、みんなに笑われて、さっきまでの良い気分が一転して最悪の
気分になった。
- 397 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:18
-
「はぁ・・・・最悪」
と小さく悪態をつきながら私は頭の片隅で先程の女の子のことを考えていた。
覚えているのは短めの黒い髪に少し幼さが残る顔立ち、なのに大人びた冷めた瞳。
それから微かに見えた赤いネクタイ。
一番印象に残ったのは目だった、全てを諦めて希望を失ったような光のない瞳。
そして何だかすごく悲しそうな瞳だった。
- 398 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:20
- さっきの子に会いたいなぁって唐突に思った。
自分でも突然だなと思ったけれど、一度思ったら行動しないと気がすまない人なので
私は教室を飛び出した。
次の授業が始まる僅かな休み時間の間に屋上に向かう。
でもあまり時間がないのでかなり頑張って屋上までの長い距離を走った。
そして緊張しながら屋上の扉を開けるとそこには誰もいなかった。
完全に無駄骨で私は深いため息を吐き出すと、少し落ち込みながら屋上を
後にした。
そして会えなくて残念だなぁと思いながらゆっくりと廊下を歩く。
するとチャイムが鳴って授業があるのをすっかり忘れていた私は慌てて教室に戻る。
けれど結局間に合わなくて先生に怒られて散々な結果に終わった。
あとは微かに見えた赤いネクタイに賭けることにした。
私は放課後になると三年の先輩がいる教室に向かって駆け出した。
赤いネクタイから三年生だということだけは分かっている、でも逆に言えばそれくらいしか
分かることはない。
それでも三年の人に女の子の特徴を話せば誰か分かるかもしれない。
私が仲の良い三年生は一人しかいない。
あまり頼りにならないけど、でも今はあの子を頼るしかなかった。
- 399 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:21
- 「桃、いる?」
「嗣永先輩でしょ?梨沙子、これでも私のほうが先輩なんだけど」
「だって桃って全然先輩に見えないし」
「見えるとか見えないじゃなくて・・・・ってもういいや。それで何か用があったんでしょ」
「うん。赤いネクタイしてる三年生について知りたいんだけど」
「あのね、梨沙子。三年生はみんな赤いネクタイしてるの」
「そんなの知ってるよ。じゃなくて、屋上にいる三年生の人が知りたいの」
「あぁ・・・・もしかして佐紀のこと?」
桃は近所に住んでいて昔から相談に乗ってもらったり遊んでもらったりしている。
それにあんまり先輩らしくないからいつも同年代感覚で話してしまう。
だから今まであんまり先輩だと思ったこともなかった。
でも付き合いが長いおかげか私が上手く説明できなかったのに分かってくれた。
そして屋上にいた女の子について教えてくれた。
- 400 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:22
- 「うーん、分かんないけど多分その人だよ!」
「分かんないって・・・・でも佐紀くらいしか思いつかないなぁ、だって授業中でしょ?」
「えっ?うん、そう!すっごーい!なんで分かったの?」
「それは秘密。それで梨沙子は佐紀について知りたいの?」
「うん。教えてくれるなら知りたい!」
「どうして?」
「いやどうしてって言われても困るよ。だって何か知りたいって思ったんだもん」
「何それ。思いつき?」
「思いつきっていうか・・・・なんか、悲しそうな目をしてたから。だから気になった」
桃は私の曖昧な答えに「そっか」と呟くと少しだけ考え込む。
でも私は絶対教えてくれると思った、だって「そっか」って呟いた桃は何だか嬉しそうな
顔をしていたから。
予想していた通り桃は私にその佐紀先輩って人のことについて教えてくれた。
でも教えてくれたのはいいけどその内容は予想外に重いものだった。
- 401 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:22
- 私は授業中になると机に肩肘をついて窓の外に視線を向ける。
あんまり窓の外ばかり見ていると先生に注意されるけど、それでも私は屋上が気になって
仕方なかった。
別に授業についていけるとかいけないなんてどうでもよかった。
佐紀先輩が屋上にいるかどうか、それが今の私にとって一番大事なことだった。
でもここ一週間はその姿を見ていない。
つまりこの前授業の合間に見たとき以来その姿を見ていなかった。
その日も数学の授業中で、私は先生の動きに注意しながら時折屋上のほうに見ていた。
するとあの日と同じようにフェンスに寄り掛かる小さな背中を発見した。
私は思わず声を上げそうになって口を押さえると慌てて飲み込む。
そしてわざとらしく咳払いすると、適当ノートにペンを走らせながらさり気なく
屋上のほうを見た。
佐紀先輩はやっぱり空ばっかり見ていた。
そのとき不意に桃が教えてくれたときことが頭の中に回想される。
- 402 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:23
-
「佐紀はね、前は授業サボるような子じゃなかった。っていうか普通に優等生だったし」
「だよね。絶対そんな子だと思ったもん」
「でも・・・・・足を怪我してから変わっちゃった」
「ケガ?」
「うん。子犬助けたのはいいんだけど足やっちゃってね。それからかな?あんな風になったのは」
「そう・・・・・だったんだ」
「佐紀は学級委員長でおまけに頭も良くてみんなに頼られるような人だった」
「へぇ、すごい人なんだね!」
「それにダンス部の部長だったんだけど・・・・ケガのせいで踊れなくなっちゃって」
「・・・・・色々あったんだ」
「まぁね。だから次期生徒会長とまで言われてたのに、今はあんな超無気力人間なわけ」
桃は寂しそうな顔をしながら窓の外を見る。
普通に気まずくて顔を逸らしたのか、それとも何か思って外を見ているのか、そのときの
私には分からなかった。
でも桃が佐紀先輩のことを心配しているのは分かる。
だから桃が安心して笑えるように、佐紀先輩が楽しそうに笑えるように、何かしたいと
唐突だけどそのとき強く思った。
- 403 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:25
- 改めて思い出すとやっぱり少し凹む内容だった。
もっとどうでもいい理由なのかと思ったら結構根が深そうな感じだった。
佐紀先輩は相変わらず空を見ていて、でも空には何もなくて、前と全く同じ体勢なのに
今は見ていて少し胸が痛む。
好きなことが出来ないってどんな感じなのか私には分からない。
でも何もしないってことがいいことじゃないくらい私にも分かる。
きっと今もあんな冷めた瞳をしているんだと思う。
そんな人を私は放っておけなくて、やっぱり実際に会って一度話そうと心に決めた。
でも一大決心をした途端に先生に当てられて私はまた答えられなかった。
とりあえずもう少し授業をちゃんと聞こうと思った。
でもそれはそれとして、今は佐紀先輩を逃さないように授業が終わると私はかなり急いで屋上に向かった。
だから屋上の踊り場に着く頃にはすでに疲れていて肩で息をしていた。
それでもこの機会を逃したくなくて軽く深呼吸してから私はドアノブに手を伸ばす。
ノブを握ると少し手が震えてきたから両手で強く握った。
それからゆっくりとドアを開けると、軋んだ音と一緒に眩しい光が入り込んできて私は思わず一瞬目を瞑る。
でもすぐ目を開けると手で影を作りながら屋上に一歩踏み出した。
そして目的の人を探して何気なく顔を横に向けると、少し遠くにフェンスに寄り掛かっている
女の子がいた。
風に揺れる黒髪を片手で押さえながら佐紀先輩がいた
- 404 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:26
- 白いフェンスを背もたれにして先輩は間違いなく私の方を見ている。
何だか変に緊張してきて思わず唾を飲み込んでしまった。
でもあまり時間がないのでいつまでも立っているわけにもいかない。
何か話しかけなきゃいけない、そう思って私は一度だけ深呼吸すると先輩に近づいていった。
けれど近づくのに比例して心臓の音が大きくなっていく。
そして目の前まで行くと私の心臓はありえないくらい早く大きく脈打っていた。
黒髪も印象的だったけど、それよりまず薄汚れた紺色のブレザーに第二ボタンまで外された
ワイシャツのほうが目に付いた。
あとはかなり丈が短いスカートに緩めにつけている赤いネクタイ。
お世辞にも優等生には見えない格好だった。
先輩は私を見て軽く鼻で笑うと、フェンスに寄り掛かったまま背中を滑らせてコンクリートの
地面に腰を下ろす。
- 405 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:27
-
「佐紀先輩・・・・ですよね?」
「あなたが梨沙子ちゃん?桃から聞いてるよ、いずれ可愛いストーカーが屋上に来るよって」
「ス、ストーカーじゃありません!」
「ははっ、ごめんごめん。ストーカーは言いすぎだったね。それで私に何の用?」
「いや、あの、用っていうか・・・・」
「用ないの?」
「えっと、その、なんていうか・・・・・」
「まぁでもせっかく人気のないところに来たんだし、イイコトでもしよっか?」
佐紀先輩は妖しく微笑むとゆっくり立ち上がってから私に近づいてくる。
そして手馴れた様子で私の太股を軽く撫でてから首筋に顔を埋めてくる、それから生温かい
息が当たったかと思うと舌先が首に触れる。
それは舌とは思えない変な感触で気がついたら私は先輩を軽く突き飛ばしていた。
少し怖かった、でもそれ以上に悲しくて悔しくて、胸が痛かった。
佐紀先輩の事を私は全然知らないけどこんなことする人じゃないのは分かる。
軽く頭を掻きながら薄ら笑いを浮べている佐紀先輩の瞳は相変わらず冷めていて、
それを見たら今まで一番胸が苦しくなった。
- 406 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:29
- このままじゃ先輩は絶対にダメになるって思った。
こんなこと絶対にしちゃいけないし、先輩だって本当はしたくないんだと思う。
でも他に好きなことがないからこんなことするんだと思う。
好きなダンスができないからしてる、好きなことが何もないからしてる、それはとても
悲しいことだと思った。
私は一歩前に踏み出すと先輩の手を取って両手で握りしめた。
自分でも意味が分からない行動だったけれど、でも握った先輩の手は瞳と同様に冷たかった。
「ふふっ、怒った?」
「グスッ・・・・ッ・・・・」
「泣いてるの?はぁ、なんか白けた。何も泣くことないでしょ、そんなに怖かったの?」
「ッ・・アッ・・らって・・せんぱい・・・こんら・・こんなの・・・」
「えっ?何言ってるのか全然分からないんだけど」
「あの・・・こんらこと・・・スンッ・・・せん・ぱいは・・・」
「もうっ!泣き止んでから話してくれない?ちゃんと聞くから。あとこの手離してもらえる?」
「・・・・・にげ・・る・・から・・・ダメです」
「逃げるわけないでしょ。もういいや、何か面倒臭いから好きにしてよ」
先輩は呆れた顔をして何度も溜め息をついていた。
それから私は初対面の先輩相手にバカみたいに泣いた。
でもちゃんと泣き止むまで待っていてくれて、やっぱり優しくて良い人なんだと確信した。
そして握った手だけは絶対離さなかった、先輩も特に振りほどこうとはせずに私達はずっと
手を繋いでいた。
- 407 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:30
- しばらくして泣き止んだ私はゆっくりと掴んでいた先輩の手を離す。
そしてまっすぐあの冷めた瞳を見つめると、軽く深呼吸してから私は話を切り出した。
でも突拍子のない話に先輩は最初呆れ顔だった。
「先輩は今好きなことありますか?」
「はぁ?泣き止んだと思ったら何?いきなり」
「いいから答えてください!何か好きなことありますか?」
「そんないきなり言われても・・・・・あっ、焼肉!焼肉は結構好きだよ」
「なら私と一緒にやりませんか?」
「えっ?何を?焼肉パーティーってこと?」
「・・・・・そうです、そうですよ!私と毎日焼肉パーティーしましょうよ!」
「毎日はちょっと嫌なんだけど」
「それなら週一回でいいんで私と一緒にやりませんか?焼肉パーティー!」
我ながら突然の思いつきで言ってしまったけど、好きなことをすれば先輩も前みたいに
戻れるかなと思った。
好きなことができなくて変わってしまったんならもう一度好きなことをやればいい。
バカみたいに単純な簡単な考えだけど、私は純粋に先輩の力になってあげたかった。
前みたいに戻れないにしてもあの冷めた瞳が少しは変わればいいなと思った。
そして楽しそうに笑ってくれるとさらに嬉しいかなと思った。
- 408 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:31
-
こうして私達は週に一回だけ家庭科室のコンロを借りて焼き肉研究会を作った。
もちろん非公式でやっていることなので先生に見つかると絶対怒られるし、部費はないので
お肉は各自の持ち込みだった。
ただお肉を焼いて話すだけの部活だけど私はすごく楽しかった。
迫られた時は焦ったけど普通に話す分には優しいお姉さんだし、時々ボケたことをする
ところはすごく可愛らしい。
二人で話す機会が増えたからもっとたくさん先輩のことを知れたらいいなと思う。
「先輩、もうお肉焼いていいですか?」
「ちょっと待って!・・・・・きてる!今、ここ!」
「はーい。とりあえずタンからいきますね、オーストラリア産の」
「わざわざ産地いわなくていいから。言わなければ国産って思って食べれるでしょ?」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんなの」
それから私達は黙ってお肉が焼き上がるのを待つ。
無駄にしゃべらず鶴のように箸を構えてお肉だけをじっと見つめる。
よく分からないけれどそれが先輩のこだわりらしい。
たまについていけなくなるけど、先輩が何だか楽しそうだから私は黙って言うことに
従うことにしている。
でもその日は不意にあることを思って私は先輩の顔色を窺いながら声をかけた。
- 409 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:33
-
「あ、あの、ちょっといいですか?」
「ん?何?」
「佐紀先輩ってどうして私とこんなことする気になったんですか?」
「そういうことって今更聞く?普通はいいよって言ったときに聞くんじゃない?」
「聞いたらダメですか?」
「べ、別にいいけど。私が梨沙子とやろうと思ったのは・・・・・誘ってくれたから」
「えっ?それだけですか?」
「うん。だって今まで頑張れとかやる気だせって言うだけの人ばっかりだったから」
「あっ・・・・」
「でも梨沙子は一緒にやろうって言ってくれた。だからやろうかなって思った」
嬉しかった、よく分からないけど先輩の言葉がすごく嬉しかった。
そして気がついたら私は涙を流していた。
先輩は少し驚いていたけれどすぐに頭を軽く撫でてくれた、そして「梨沙子は泣き虫だね」
と少し呆れた口調で言われた。
でもその声はちょっと優しくて私は今絶対に先輩が笑っていると思った。
けれど涙のせいで視界がぼやけていてその顔を見ることができなかった。
- 410 名前:One’s LIFE 投稿日:2009/03/18(水) 15:34
- 悔しいくらいタイミングの悪い自分に腹が立った。
でも先輩が嬉しそうだから今日のところはいいかなと思った。
それに嬉しそうな先輩の顔なんてこれからいくらだって見ることができる、そんな予感が
今はしている。
だから早く私の予感通りに先輩の笑顔が見たいなと思った。
- 411 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/18(水) 15:34
-
- 412 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/18(水) 15:34
-
- 413 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/03/18(水) 15:35
- 当初の予定では最後の場面にすきやき部が乱入、というのを考えていたのですが
ギャグになりそうなのでやめました
- 414 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/19(木) 08:15
- リクエスト応えてくれてありがとうございました!
こんな感じのキャプテンも新鮮でいいですね
あとよろセンネタには笑わせていただきましたw
- 415 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/22(日) 01:27
- りーちゃんキャワ!
- 416 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/24(火) 07:49
- なんかこういうキャプテンは新鮮でちょっと面白いw
- 417 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/28(土) 22:30
- 今までこういうキャプテンをみたことがなかったので
おもしろかったです
更新待ってます!!
- 418 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/03(金) 15:44
- >>414さん りしゃキャプはこんな感じで良かったでしょうか?
いつもの可愛らしい感じのキャプではなく、たまには意向を変えて
クールにしてみました
でも楽しんでもらえたようなので良かったです
>>415さん 後半の梨沙子が特に可愛いと思います
>>416さん ロリロリなキャプも好きです、でもクールでツンデレな
キャプも好きです
>>417さん ここまでクールなキャプって自分もあまり見たことないです
なのでとても書き難かったです
- 419 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/03(金) 15:57
- 今回はリクエストの舞美×雅のお話です
年上だけどどこか抜けた舞美と、1コ下だけど比較的しっかり者で冷静な雅の対比
ってことだったので割りとその通りに書いてると思います
そんな感じの話なので気になった方はどうぞ
- 420 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 15:58
- ボーノの初めてコンサートは無事に一回目が終わり、私達三人は開放感と高揚感に
包まれながらバックステージを歩いていた。
スタッフさんにもらったタオルで首筋などを拭きながら楽屋に向かう。
するとその途中で見慣れた顔を発見して私達は声を上げた。
来るのは知っていたけれど改めてその顔を見ると、高ぶっていた自分の心が段々と
落ち着いていくのが分かる。
「3人ともお疲れさま!」
舞美は軽く手を振りながらこちらに寄って来ると笑顔で出迎えてくれた。
「舞美ちゃん!」
と愛理が明るく弾んだ声を出してその名を呼ぶと一目散にその場から駆け出す。
そして思いきり抱きつくとコンサートの感想を興奮気味に話す。
その姿はまるで運動会で頑張った子どもがお母さんに自慢話しているみたいだった。
いつもしっかりしている愛理がこんな風に子どもの一面を見せるのは、多分相手が
舞美だからだと思う。
私達とも仲は良いけどやっぱり同じメンバーの方が安心するって気持ちは分かる。
- 421 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 15:59
- 愛理は話を終えると、今度は一緒に来ていた中島早貴ちゃんの方に寄って行って
二人で何やら話していた。
でも愛理が退いたと思ったら今度は桃が舞美に近づいて独占する。
「すっごい緊張したんだよぉ」
と同じ年なのに桃も舞美ちゃんに近づいて見上げながら甘えた声を出す。
舞美ちゃんは苦笑しながらも優しく頭を撫でてあげる。
桃はいつも私達を励ましたり元気付けてくれるけど、やっぱり本人も緊張してただろうし
誰かに頼りたかったと思う。
ベリの場合はキャプテンがいるけどボーノでは誰もいない。
私達には何も言わなかったけれど桃なりに色々と大変だったと思う。
- 422 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:00
- 舞美は穏やかに笑いながら桃の背中を軽く叩いて励ましていた。
そして後に写真撮影が控えていたのでマネージャーが声をかけると、桃は渋々といった
感じで舞美から離れる。
桃が離れると舞美は一瞬だけ私の方を見て優しく微笑んだ、でもそれだけで私達は一言も
言葉を交わさずにすれ違った。
いやいやいや、恋人に対してはそれだけですか?
って言いたかったけれどみんなの前で言えるはずもなく、私は複雑な気分のまま写真撮影に
向かった。
でも桃や愛理みたいに人前で抱き着くなんて私には恥ずかしくてできない。
それを知っているから舞美は近づいてこなかったんだと思うし、最後に微笑んでくれたから
許してあげることにした。
二人のときには見せなかった柔らかい微笑みは思い出すだけで私の胸を高鳴らせる。
- 423 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:01
- 写真撮影が終わったので私達は夜の部に向けて楽屋に戻ることにした。
とりあえず舞美とはコンサート終わりにデートの約束をしてるし、今はいいかなと
思っていると突然桃に手を引かれた。
そしてなぜか自分達の楽屋ではなく隣の部屋に連れて行かれる。
「何?イジメ?」
「ひどーい!そんなんじゃないよ、舞美と二人きりにさせてあげようかなと思ったの」
「はぁ?」
「せっかくだから二人きりにさせようって決めたんだよね、愛理?」
「うん。みやが舞美ちゃんと一緒に居れなくて寂しいって顔をしてるから。」
「べ、別にそんな顔してないし!」
「まぁまぁ。それじゃすぐに舞美ちゃん呼んで来るからここで待ってて」
「じゃぁね。あっ・・・・変なことしちゃダメだよ?これから夜の部もあるんだから」
「するわけないでしょ!もうっ、バカ!」
桃が最後に変なこと言うから一瞬つい妄想してしまう。
でもすぐにその妄想を頭を振って消し去ると軽く怒った、すると二人は悪戯っ子みたいな
顔をして部屋から逃げるように出て行った。
どうやら二人は私の為に舞美をこの部屋に連れてきてくれるらしい。
変な気を回しすぎだよと思ったけれど、でもせっかくなのでこの余計なお世話をありがたく
受けることにした。
- 424 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:02
- でも何だか落ち着かなくて立ったり座ったりを繰り返していたら、ふくらはぎの辺りが
少し痛くなってきたので座って待つことにした。
それから突然部屋のドアがノックされて私は勢い良く立ち上がった。
明日絶対に筋肉痛になるだろうなと思いながら、少し早足でドアに近づくと深呼吸してから
ゆっくり開ける。
でも部屋の前に立っていたのは気持ち悪いくらいニヤニヤしている桃だった
とりあえず私は無言で桃の両頬を掴むと横に引っ張った。
本当なら一発殴るところだったけれど、さすがに夜公演も控えているので妥協して
つねることにした。
「いがががか!いがいよぉ、みあ」
「ん?何言ってるのかさっぱり分からないんですけど」
「・・・・・もぉしわけあいまへんれした」
「うん、よろしい」
「痛いってば、もうっ!桃の可愛い顔が変な顔になったらどうするの?」
「はいはい。それは大変ですね」
「もうっ!いつものことだけどみやは桃に対して冷たすぎる」
ちょっと悪ふざけが過ぎたので桃にはちゃんと謝らせた。
それから不満そうにぶつぶつ言っていたけど、私が軽く睨みながら冷たい口調で言うと
桃は不貞腐れたような顔をする。
そんなくだらないやり取りをしていると愛理が舞美を連れてやってきた。
そして私と舞美を残して二人は隣の楽屋へ帰っていった。
- 425 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:05
- 「何かあったの?」
「うんん、何でもない。ちょっと桃がバカなことしたからさ」
「そうなんだ。ならいいんだけどさ」
「う、うん」
「なんかさ、ちょっとデートが早まった感じだね」
「えっ?あぁ・・・・・うん」
舞美があまりに嬉しそうに笑うから私は少し恥ずかしくなった。
正直でまっすぐなところは好きなところだけど、たまにすごく照れくさくなるときがある。
舞美は嬉しそうに笑ったまま私のほうに近づいてくる。
そして隣に座ると突然私の手を掴んで自分のほうに引き寄せる、それから両手が背中に
回されて強く抱きしめられた。
私の心臓はありえないくらい早く大きく脈打っていて、隣にいる舞美に聞こえるんじゃないか
と思うと少し恥ずかしくなる。
それに自分の顔が火照っているのが分かるからきっと今真っ赤なんだと思う。
でもそんな顔を見られたくなくて私は舞美の肩に額を押し付ける、すると髪を梳くように
優しく撫でられた。
- 426 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:06
- 「いきなりどうしたの?舞美ってこういうことあんまりやらないじゃん」
「イヤだった?」
「・・・・・べ、別にイヤではないけどさ」
「本当はさっきこうしたかったんだけどね、みやはみんなの前だとイヤだと思ったから」
「うん、そっか」
「ここなら誰も見てないしさ、いいでしょ?」
「うん。でも多分隣の部屋で約2名が聞き耳立てててると思うけどね」
私の予想は見事的中したらしく隣の楽屋から何かを落としたような物音が聞こえた。
物音から想像するにコップとかそういう類だと思う。
それを聞いて私と舞美は顔を見合わせると互いに肩をすくめて苦笑する。
本当に分かりやすい二人だなと思った。
それから舞美は気まずそうな顔をしてゆっくりと私から離れようとする。
私が二人に知られて恥ずかしがるからやめるつもりなんだと思う。
相変わらず舞美は優しいなと思いつつ、もうちょっと強引でワガママでもいいかなと思った。
今みたいに突然抱きしめられても私は全然構わない。
私は軽くため息吐き出すと舞美の手を軽く掴んで離れるのを引き止めた。
- 427 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:08
- 「・・・・いいよ」
「へっ?」
「こ、このままでも私はいいけど?舞美が抱きしめていたいって言うなら」
「ん?うん、じゃそうする。このままずっとみやを抱きしめてるよ」
「バカッ!舞美はバカ正直すぎるよ」
「へっ?やっぱりダメなの?だってみやが抱きしめたいならいいって言うから」
「あのさぁ、いいとかダメとかそういう・・・・・もういいよ!舞美の好きにして」
「じゃそうする」
舞美は嬉しそうに笑ってまた私を抱きしめる。
さっきまでバカみたいに高鳴っていた胸の鼓動はいつの間にか落ち着いていた。
やっぱりこの腕の中が一番安心する。
それから舞美のほどよく高い体温が心地良いのと安心感から私は少し眠くなってきた。
「あ、あのさ・・・・」
「ん?どうした?」
「・・・・・このまま寝てもいい?」
「ん?うん、全然いいよ。始まる頃になったらちゃんと起こすから」
「それじゃ少しだけ寝るね」
「うん。おやすみなさい、みや」
私は舞美の言葉を信じて眠ることにした。
でも信じたのは大きな間違いで、何かを叩くような大きな物音に私は目を覚ますと
部屋のドアが思いきり叩かれていた。
時計を見ると夜公演の時刻まで10分くらいしかなかった。
私は一瞬何が起きたのか分からなかったけれどその謎はすぐに解けた。
舞美は私を抱きしめながら寝息を立てている、どうやら一緒になって眠っていたらしい。
- 428 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:10
- 私はもたれ掛かってくる舞美を何とか引き剥がすと、すぐに立ち上がってまずは
化粧台に向かう。
簡単にだけど髪型と化粧をチェックして少しだけ直した。
それから何とか大丈夫そうなので私は舞美を放置して部屋から出ようとする。
でもノブに手をかけて捻ったと同時くらいに後ろからまっすぐな声が聞こえてきた。
「行ってらっしゃい。さっきよりカッコいいライブにしてよ、みや」
振り返るとしっかり目を覚ました舞美が立っていて、親指を立てながら満面の笑みで
励ましてくれる。
そのときなぜだか無性に舞美に思いきり抱きつきたいと思った。
でも時間がないので私は何も言わずに体を反転させるとすぐに部屋から出た。
けれど部屋から出ると何だかしっくりこなくて、私は溜め息を吐き出すとドアを開けて
再び中に戻った。
そして勢い良く駆け出すと体当たりするように舞美に抱きついた。
舞美は突然の出来事に目を見開いて驚いていた、その表情がすごく可愛かったから
私は頬にだけど軽くキスをした。
「みや以外見たらダメだからね」
と舞美を指差すとしっかり忠告する、そして苦笑いしながら頷くのを見て本当に
部屋から出た。
- 429 名前:忘れたくない夏 投稿日:2009/04/03(金) 16:11
- それからすぐに二人と合流したけど結局マネージャーさんに怒られた。
とりあえずコンサートが始まるからそんなに長いお説教ではなかったけど、でもきっと
終わってから相当絞られると思う。
それを思うと気分が少し滅入ったけど今はそんなこと考えるのはやめた。
だって今すぐにでもコンサートがしたくて、死ぬほど歌って踊ってはしゃぎたい気分だった。
だからそれだけに集中することにした。
「何だかすごい気合入ってるね、みや」
「うん。今すごいウズウズしてるんだよね、早く歌いたいし踊りたくって」
「おぉー、これが愛の力ってやつですかね」
「そ、そんなんじゃ・・・・・いや、そうかも。愛の力なのかもね」
「みやが照れずに恥ずかしいこと言ってるよ、愛理!今日はすごいことになるかも!!」
「いやぁ、愛って素晴らしいですねぇ」
桃は一人で勝手に興奮して騒いでいるし、愛理は悟ったかのように何度も頷いている。
私はというと自分で言ったことに今更になって照れていた。
そんなとき突然音楽がかかり熱い歓声が聞こえてきて、そうしたら体が熱くなって
少し手が震えた。
でもよく分からないけどこれは悪い震えじゃないと思った。
私は自分の拳を強く握ると大きく深呼吸してからもう一度気合を入れる。
そして忘れたくても忘れられない、この夏で一番熱い日にしてやろうと心の底から思った。
- 430 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/03(金) 16:11
-
- 431 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/03(金) 16:11
-
- 432 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/03(金) 16:12
- ツンデレぽっいみやが書けたので、それだけで自分は満足です
- 433 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/03(金) 23:49
- まいみやびキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
以前舞美と雅をリクさせていただいた者です
リクが漠然としていたためアンリアルかもと思っていましたがまさかBuono!ライヴという状況とはw
ツンデレなみやびちゃんとまっすぐすぎる舞美の対比にお腹いっぱいです
読んだこちらも非常に満たされましたありがとうございます!!
長々とレス失礼しました
- 434 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/04/04(土) 07:19
- ヤバい!!舞美と雅イィ!!
- 435 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/04(土) 17:30
- その他のカプお待ちしております。
- 436 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/17(金) 20:36
- レス返し
>>433さん 逆にアンリアルの設定は考えてもいませんでした
絡みを探っていたらちょうどボーノの映像があったので、そのまま使わせて
もらったって感じです
初書きだったので不安だったのですが、満足されたようで良かったです
>>434さん ちょっと自分もこのCPにハマりそうです
>>435さん お待たせしました
多分これからも待たせてしまうかもしれませんが、気長に待ってていただけると
嬉しいです
- 437 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/17(金) 20:40
- 今回の話はリクエストを頂いた中からももさきです
ただ内容に関して指定がなかったので、かなり勝手にやらせてもらいました
・若干SMが入ってます
・桃子さんがかなりのS仕様です
・そしてキャプが可哀想なことになってます
それでもOKという方はどうぞ
- 438 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:41
-
貴方に手を引っぱられて私は押し込まれるようにバスに乗り込んだ
そこは閉ざされた小さな世界
乱暴に席に座らされると錆びた鎖で縛り付けられる、そして嫌がる私を乗せたまま
バスは走り出した
- 439 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:41
- 喉元が急に締め上げられたように息苦しくなり咳き込みながら佐紀は目を開けた。
「かはっ!」
すると自分の目の前に鎖を持った桃子が不機嫌そうな顔をして立っている。
その様子を見て佐紀が口を開こうとした瞬間、桃子は掴んでいた鎖を勢いよく引き寄せる。
鎖は佐紀の首につけられている首輪と繋がっているので、まるでひれ伏すように体が
自然と前に倒れる。
「・・・っ」
そして倒れ込んだときに肩の辺りを打ちつけてしまい佐紀は思わず小さく呻いた。
そんな様子に桃子は顔色一つ変えなかった、そして何事もなかったかのように佐紀の顎を掴むと軽く上を向かせる。
「ご主人様が帰ってきたのに寝てたらダメだよ、佐紀」
「桃子様・・・・申し訳ありません」
「はい、よろしい。それじゃいつものようにやってくれる?」
「・・・・はい」
佐紀は小さく頷くと桃子の足元に顔を寄せてまずは足の甲の部分に舌を這わす。
それが一通り終えると今度は指の一本一本を丁寧に舐める。
まるで子猫が差し出されたミルクを舐めるように、その小さな舌で佐紀は桃子の足を
舐め続ける。
右が終われば今度は左と従順に尽くす佐紀を桃子は満足気に見つめていた。
都内のどこかにあるマンションの一室
この小さな部屋が佐紀における世界の全てであり、桃子は神様だった。
- 440 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:42
- 佐紀はある日の仕事終わりに桃子から声を掛けられた。
確か「最近一人暮らしを始めたからちょっと遊びに来ない?」というような感じの
内容だったと思う。
佐紀はその言葉に何の疑問も抱かずに桃子についていった。
そして桃子が自炊したという夕食を食べた後くらいからの記憶がない。
目を覚ますと佐紀は服を着ておらず全裸で、両手には手錠が嵌められ足には足枷が
つけられていた。
目の前に桃子がいたけれど、まるで能面のように無表情でただ黒い鎖を手に持って
佇んでいた。
「も、桃?」
「違うよ、キャップ。今日から桃のことをそう言っちゃダメなの」
「えっ?どういうこと?」
「ん?それはね・・・・・こういうことだよ」
「ふぇっ?・・・痛っ・・・・えっ?えっ?な、なんで?」
よく知っているはずなのにそのときの桃子は全く見知らぬ人のようだった。
でも佐紀が恐る恐る声を掛けると桃子は優しく微笑んでくれた、けれど笑みを浮かべながら
手にしていた鎖を自分のほうに引っ張る。
すると急に喉が詰まったように息苦しくなりそれと共に体が前につんのめる。
そのとき佐紀はようやく自分が首にしているものと、桃子が手にしている鎖が繋がっている
ことに気が付いた。
- 441 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:42
- 「舐めてよ、足」
「ちょ、ちょっと!そんな嫌だよ!」
「あのねぇ・・・・拒否権なんて佐紀にはないの」
「えっ?」
「だって佐紀は桃の奴隷なんだから」
桃子は佐紀の前に跪くと物言わず髪を掴んだ、そして力ずくで自分の足のほうに
頭を押し付ける。
突然のことに佐紀は一瞬対応が遅れたけれどすぐに状況を理解し、床に手をついて
何とか堪える。
それからどうにかして顔を上げると少し強い口調で桃子に抗議した。
すると桃子は軽く鼻で笑ったかと思うと突然冷たい顔になる、そして髪から手を放すと
今度は佐紀の顎を掴んでから頬を叩いた。
佐紀は手加減なしに叩かれたので思わず体がよろけてそのまま床に倒れ込んだ。
そしてしばらくそのまま立ち上がることができなかった。
痛みより精神的ショックが大きくてしばらく倒れこんだまま呆然としていた。
桃子とは今まで何度か喧嘩したことはあった、でもこんな風に手を上げられたことは
一度もなかった。
今の桃子が異常なことは佐紀も分かっていたけれど手を上げるとは思わなかった。
佐紀が呆然としていると痺れを切らしたかのように桃子が鎖を引っ張る。
鎖の動きに逆らうことは許されず佐紀は軽く咳き込みながら何とか立ち上がった。
- 442 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:44
- 「かはっ!・・・・ごぼ・・・ごぼ・・・っ・・・」
「まだ足を舐め終えてないのに寝てちゃダメだよ、佐紀」
「・・・桃・・・なんでこんなこと・・・」
「だから桃じゃなくてちゃんと様をつけてよ。奴隷のくせに偉そうだなぁ、もうっ!」
佐紀が自分の置かれている状況が理解できず質問すると桃子は眉を顰めた。
それから不機嫌そうな顔をして鎖を引っ張り佐紀を自分のほうに引き寄せる、それから
先程と同じように頬を平手打ちする。
ただ先程と違うのは一回だけではなく今回は左右を往復して叩かれた。
「佐紀はもっと頭良いと思ってたんだけどなぁ」
「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「それじゃもう少し痛い思いしてみよっか?」
「えっ?」
「じゃーん!折りたたみナイフ!これを指にでも突き立てたら言うこと聞いてくれる?」
「えっ、あっ・・やっ・・・・や、嫌だ・・・・」
桃子は相変わらずいつも楽屋で話していると時と変わらぬ様子で話す。
それが逆に佐紀には怖く思えた。
それから桃子は何やら少し考え込んだ後に一つの提案をする、意味が分からなくて佐紀が
首を傾げているとポケットからナイフを取り出した。
まるで誕生日プレゼントでも見せるように桃子は無邪気に笑っている。
でも笑いながら言っていることはひどく物騒で、佐紀は脳裏に桃子が躊躇なくナイフを
指に突き立てるところを想像してしまう。
佐紀は桃子のことが本気で怖くなって怯えながらゆっくりと後退りする。
けれどすぐに鎖を引っ張られて強引に引き寄せられる、そして歯が出てないナイフの
柄の部分を佐紀の頬に当てる。
- 443 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:45
- 「それじゃ足舐めてくれるよね?」
「・・・・・う、うん」
「うん?」
「は、はい!分かりました!」
「そうだよね、奴隷は基本ご主人様には敬語使わないとダメだよねぇ」
「はい・・・・・桃子様」
佐紀は恐怖に心を支配つれて桃子の機嫌をとる為に命令に従った。
そして床に立て膝を着くと自ら桃子の足に顔を寄せてその甲を小さな舌で舐め始める。
とりあえず軽く舐めてから様子を伺うように佐紀は顔を上げる、すると桃子が不満そうに
顔を顰めるので慌てて舐めるのを再開する。
そして桃子からいいと言われるまで足の至る所に舌を這わして必死に舐め続けた。
こうして佐紀は桃子のマンションに奴隷として監禁されることになった。
部屋にはカレンダーも時計もないので日にちの感覚があまりなく、ここに来てからどれくらい
時が経ったのか正直佐紀には分からなかった。
もしかしたら2、3週間くらいかもしれないけど、でももう半年くらい経っていると言われれば
そんな気もする。
自分がベリーズ工房として活動していたことさえ今はとても昔のことのように思えた。
初めの頃は佐紀も何度か逃げようと思った。
桃子は仕事があるので一日中マンションにいるわけではなく、それに一人暮らしというのは
どうやら嘘みたいで普通に実家に帰っている。
だから時々コンビニで食べ物や飲み物を一日分くらいまとめ買いして、それを佐紀の傍に
置いていき姿を見せない日もあった。
だから佐紀は桃子がいないときを狙って叫び声を上げたり床を叩いたりしてみた。
けれど誰も助けには来てくれなかった。
後で聞いた話だとこのマンションはかなり防音設備がしっかりしているので、
音漏れがしにくい構造らしい。
- 444 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:46
- 助けが来ないとなると佐紀は桃子に従うしか道がなかった。
それに佐紀は鎖に繋がれているので桃子が来なければ何もできなかった。
桃子が居ない間は逃げないようにと部屋の柱に打ち付けられたフックに鎖は繋がれている。
鎖は当然金属なので引き千切るなんて真似はできないし、フックもかなり頑丈に壁に
取り付けられているので外せなかった。
だからご飯を食べたりお風呂に入ることも、桃子が佐紀の鎖を外して一緒にやってくれないと
することができなかった。
つまり生きるも死ぬも桃子次第だった。
でも人間の適応力というのは時には恐ろしいもので、いつの間にか佐紀は桃子に
完全に服従していた。
最初の頃はともかく今は命令をされれば何でもやる。
そのことを異常だと思わなくなっている自分はもうどこか麻痺していると思う。
それでもこの小さな世界から逃げ出すこともできないとなると、佐紀はもう神様に
縋るしかなかった。
- 445 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:47
- 「ありがとう。舐めるのはこれくらいでいいよ」
「・・・・はい」
「それじゃ後はいつものことだから分かるよね?」
「はい、桃子様」
桃子は鎖を上に引っ張るので釣られて佐紀は立ち上がる、そして本当にいつも通りに
ベッドに連れて行かれた。
それから軽く肩を押されたので重力に逆らわずにそのままベッドに横たわる。
桃子はすぐに佐紀の上に馬乗りになる、それから首筋に顔を埋めるとゆっくりと
舌を這わす。
もう何度もこうして抱かれているので佐紀は特に何も思わなかった。
佐紀の体で触られてない場所などないというくらい、桃子と体を重ねることは
慣れきったことだった。
いつも桃子は行為が終わるとすぐにシャワーを浴びに行ってしまう、なのにその日は
移動しようとせずに肩で息をする佐紀を見つめていた。
そして急に真剣な顔になると佐紀の顔を上から覗き込んでからゆっくりと口を開いた。
「桃は佐紀の全部がほしい。ずっと独り占めしたいって思ってた」
「・・・・私の全ては桃子様の物です」
「本当に?その髪も目も唇も全部桃のものにしていいの?」
「はい」
「佐紀と目が合うたびに体が痺れるの。それからね・・・・なんか自分が自分じゃなくなる」
「桃子様?」
佐紀は桃子が望んでいる答えを返していると自分でも思っていた。
それなのに桃子は辛くて苦しそう顔をしている、どうしてそんな顔をするのか佐紀には
分からなかった。
ただこの小さな神様が自分の元から離れてしまうのが嫌で怖くて悲しくて、無意識のうちに
縋るように手を伸ばそうとした。
けれど両手に手錠をされている為に上手くできなかった。
そんな佐紀を見兼ねてか桃子は自ら手を伸ばして包み込むように握ると、初めて見るような
優しい微笑みを浮かべる。
「ねぇ・・・・・佐紀は桃のこと好き?」
佐紀は当然「はい、好きです」と答えようとした、けれどそういう前に桃子が強引に
唇を塞いでしまう。
それはまるで答えを聞くのを拒んでいるかのようだった。
でももしも桃子が答えを拒んでいるのなら佐紀は言うつもりはない、だから答えは
神様のみぞ知っているのだろうと思った。
- 446 名前:青春バスガイド 投稿日:2009/04/17(金) 20:48
-
バスはスピードを上げて走り続ける
でも貴方がガイドしてくれるなら例え辿り着く地が地獄だとしても構わない
私はこのバスが終点で止まるまで降りる気はない
- 447 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/17(金) 20:48
-
- 448 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/17(金) 20:48
-
- 449 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/04/17(金) 20:50
- 今度はもっと普通に幸せなももさきを書こうと思いました
- 450 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/18(土) 00:12
- 更新乙です
タイトルにだまされたっ!!(良い意味で) そして興奮しました
これはこれで幸せなんではないでしょうか
- 451 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/18(土) 22:28
- ももさきをリクした者です。
すいません。前は上げてしまいました。
よかったです。次はカワイイ恋をするももさきが見たいと思いました。
- 452 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/08(金) 17:38
- とりあえずレス返し
>>450さん まぁ話が話なので楽しんでもらえればそれだけで良いって
感じですね
タイトルはちょっと無理矢理でしたが、他に考え付かなかったので
これにしました
>>451さん リクエストありがとうございました
たまに遊んでみたくなるのでこんな話にしましたが、機会があれば見た目に合った
二人の話を書きたいと思います
ちなみに自分は上げ下げは特に気にしない人です
- 453 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/08(金) 17:42
- 今回はリクエストを頂いたやじうめです
かなり時間が経ってしまい、リク頂いた方には申し訳なく思ってます
それで遅くなってしまったお詫びで、というわけではないのですが
今回は前後半に分けたいと思います
多分無駄に長いだけだと思いますが、興味のある方はどうぞ
ちなみに前半の話では矢島さんは出ませんw
- 454 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:44
-
丘の上に立つ私立「部里弓学園」
ここに通う梅田えりかはごくごく普通の高校三年生
特に校内で目立った存在ではなく、趣味はお菓子作りと美味しいケーキ屋さん探し
きっとこのまま平凡に三年間が終わるんだろうな・・・・・と思っていた
けれど何故かいきなりモテ期到来!?
今まで縁がなかった学園のアイドル達とえりかは次々と知り合いになっていく
突然のモテ期に戸惑いながらも最後の高校生活が始まる!
- 455 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:46
- 私はクラスメートの桃と一緒にたわいもない話をしながら廊下を歩いていた。
そして桃の一言に受けて馬鹿笑いしていると、桃は突然を止めて口元を押さえながら
甲高い悲鳴を上げる。
「きゃぁぁぁぁ!あっちから歩いてくるのって1年のくまいちょーじゃない?」
「ん?くまいちょー?」
「えりかちゃん知らないの?熊井友理(くまいゆうり)君だよ?無口で無愛想でクールって
だけでも最高なのに、あの端正な顔立ちと長身で入学当初から女子に騒がれたじゃん!」
「へぇ・・・・・あの子ってそんな人気あるんだ」
「ちょ、ちょっと!えりかちゃん冷静すぎだよぉ!くまいちょーがこっちに向かって
歩いてきてるんだよ!!」
桃の言うとおり熊井君は確かに私達のほうに向かって歩いて来る。
でもちょうど彼に会って返したいものがあるから良いタイミングだと思った。
熊井君は私達の目の前に来ると律儀に立ち止まって軽く頭を下げる。
「・・・・どうも」
「あのときはありがとね、本当に助かったよ」
「別に大したことしてないと思いますけど」
「私が助かったって言ってんだからその気持ちは素直に受け取ってよ」
「は、はぁ・・・・」
「でさ、これこの前借りた120円。やっと返せたよ、ずっと借りたままでごめんね?」
「いや、あの、全然・・・・大丈夫です」
熊井君は少し照れているのか私から顔を逸らすと、逃げるように私達とすれ違って
どこかに行ってしまった。
何か変なこと言ったかなと思っていると桃に制服の袖を強く引っ張られる。
顔を向けると頬を膨らませていて見るからに不機嫌そうだった。
- 456 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:47
- 「どうしたの?」
「えりかちゃんズルイ!なんであんなにくまいちょーと仲が良いの?」
「別に仲良くないし。っていうか喋ったのもこないだと今日でまだ2回目だよ?」
「こないだってどういうこと?聞いてないんですけど」
「そりゃまぁ言ってないからねぇ」
「言ってよ!聞きたい!っていうか超詳細に教えて!」
「・・・・・まぁできるだけ詳しく話すよ」
桃にしつこくせがまれて私はあの日のことを話すことにした。
確か今から2週間くらい前だったと思う、自販機の下を覗き込んで困っている私を
熊井君が助けてくれたのは。
- 457 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:47
-
2週間前
私は自販機の下を覗きながら1人で悪戦苦闘していた。
ジュースを買おうにもお金を落としてしまい、それが100円ならまだともかく
500円だったので必死に取ろうとしていた。
多分そのときの私は傍から見たらめちゃくちゃ変な人だったと思う。
「・・・・・あの、お茶買いたいんですけど」
「へっ?」
背後から声がして慌てて振り返ると長身の男子が立っていた。
黒い長髪を軽く束ねて少し不機嫌そうな顔つきの美少年、ちゃんと立ち上がると彼のほうが
背が大きくて少し驚いた。
女子でもかなり背が高い部類に入るので男子でも私を越す人はあまりいなかった。
そんなことを考えていると長身の男子がますます不機嫌になっていく。
- 458 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:48
- 「あ、あぁ、ごめんね?ちょっとお金落としちゃって。先に買って良いよ」
「お金落としたんですか?」
「うん。バカでしょ?買おうとしたら手が滑っちゃってさ、あははっ」
「・・・・何買おうとしてたんですか?」
「ん?あぁ、ライフギャード」
「そういうのって女子も飲むんですか?」
「たまたまだよ。何か今日疲れたからさ、元気出るものが飲みたいなぁと思って」
「・・・・・面白い人ですね、先輩って」
一瞬長身男子が笑ったような気がしたけれど顔はもう真顔に戻っている。
今のは目の錯覚なのかなと思っていると、ガコンと自販機の下に缶が落ちる音がして
長身男子が中から取り出す。
そしてそれをなぜか押し付けるように手渡してきた。
戸惑う私を他所に長身男子は自分の目当てのものを買うと、何も言わずにそのまま
その場から去ろうとする。
私は意味が分からなかったけれどとりあえず慌てて彼を引き止めた。
「ちょ、ちょっと待った!何これ?貰っちゃっていいの?このライフギャード」
「・・・・いいですよ」
「いややっぱ悪いよ。君1年でしょ?さすがに1年に奢られるわけにはいかないじゃん」
「気にしないでください」
「そういうわけにはいかないよ。とりあえず近いうちに返すから、絶対返すからね!」
長身男子は人の話を聞いているのかよく分からない態度で、私に背を向けるとそのまま
歩いていってしまう。
残ったのはどうも納得のいかない私と手の中の冷たいライフギャード。
とりあえずせっかく貰ったのでそのライフギャードを軽く飲んでから、私はまたしゃがみ込んで
自販機の下の500円を取り戻すことにした。
- 459 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:49
- 「・・・・・って感じのことがあったんだけど」
「何そのラブフラグ!ねぇ、一回でいいから桃はえりかちゃんと入れ変わりたい」
「こっちは入れ替わりたくないけどね」
「ひどーい!ってそんなことよりいいなぁ、くまいちょーと知り合いで」
「知り合いっていうか会ったのは今ので2回目だよ。名前も桃に言われて初めて知ったし」
「話せるだけでも羨ましいの!」
「ふーん、そんなもんなのかねぇ」
漫才のような掛け合いをしながら私達は再び廊下を歩き出す。
そしてちょうど角を曲がろうとしたら誰かとぶつかって私は少し体勢を崩した。
でも私はよろけただけで済んだけれど、相手のほうは衝撃が大きかったらしく尻餅をついて
廊下に座り込んでいた。
「・・・・・痛たたた」
「あっ!ごめんなさい!・・・・って生徒会長!?」
「あのとき以来ですね、梅田えりかさん」
「あ、あの、その、本当にすみません!私ってば全然前見てなくて・・・・」
「それは僕も同じですよ、前方不注意でした」
目が合うと知っている人だったので少し驚いた。
私とぶつかったのはこの学園の生徒会長である清水佐紀君だった。
小柄な体だからぶつかった衝撃が私より大きかったらしい、そう思うと申し訳ない
気持ちになる。
お尻を摩りながら立ち上がろうとする生徒会長に私は慌てて手を貸した。
- 460 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:50
- 「ありがとうございます」
「こっちこそぶつかっちゃってごめんなさい!」
「そんな頭下げないでいいですよ。考え事しながら歩いていた僕も悪いですから、ははっ」
「・・・・・本当にすいません」
「そんなことよりあのときは本当に助かりました」
「えっ?・・・・あぁ!あんなの全然大したことじゃないですよ」
「それじゃまた僕が図書室で困ってたら助けてくださいね?」
「は、はい。私なんかで良かったら」
生徒会長は軽く制服を手で掃うと全く怒らず逆に笑いながら私を許してくれた。
それからこの間のお礼を言われて初めは何のことか分からなかったけれど、すぐに思い出して
少し照れくさくなった。
別に言われるほど別に大したことしてないから。
そして生徒会長は笑顔で軽く会釈するとその場から去っていった。
男子にしては小さな後姿を呆然と見つめていると、また桃に制服の袖を強く引っ張られた。
顔を向けると恨めしそうな表情の桃がいて思わず視線を逸らした。
私も馬鹿ではないのでさっきの展開から大体の事は察することができる。
だからこそ何も言われたくなくて視線を横に向けたけれど、桃の目力に負けて私は深い
ため息を吐き出すとゆっくりと話し出した。
- 461 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:52
-
一週間前
私はその日の放課後珍しく図書室にいた。
今度部活でケーキを作ることになったので、何か参考になればとお菓子の本を探しに
やってきた。
でもこの学園の図書室は無駄に広くて図書館レベルに本が置いてある。
結構色んな種類の本を置いてくれるのは助かるんだけど、探すのが大変なので来る度に
私はいつも迷ってしまう。
その日も相変わらず本の迷路を彷徨っていると不意に小さな後姿が視界の端に映った。
一人の男子がはしごも使わず頑張って背伸びをしながら、精一杯手を伸ばして高いところに
ある本を取ろうとした。
本人としては一生懸命なんだろうけど私には可愛く見えて少し笑ってしまった。
でもどう見ても届きそうになかったので、私は彼に近づくと後ろから手を伸ばして目的の本を
取ってあげた。
するとその小柄な男子がこちらにゆっくりと振り向く、その顔を見て私は図書室なのに
大声を上げてしまった。
「せ、せ、せ、生徒会長!!」
「しぃー。ここは図書室ですよ」
「・・・・すみません」
「と言っても今はあまり人が居ないので大丈夫だと思いますけどね」
「は、はい」
「本ありがとうございます。助かりました、なかなか取れなくって困ってたんですよ」
まるで女の子のような艶のある黒髪、男子にしては小柄で細身の体系をしていて顔立ちも
どこか可愛らしい感じ。
そしてその白い肌と相まって本当に女の子のようだった。
こんな近くで見たことがなかったので思わずジーっと彼を見つめてしまった。
一見女の子に見えるけれどこの人こそ、学園切っての秀才と言われている生徒会長の
清水佐紀君だった。
- 462 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:52
- 「はしごとか使えばよかったんじゃないですか?」
「あぁ!それもそうですね。僕としたことが考えてもみませんでした」
「ふふっ、生徒会長って意外とおっちょこちょいなんですね」
「そうですよ。僕はみんなに言われているほどしっかりしてないんです」
「えー、そんなことないですよ」
「みんなそう言ってくれるんですけどねぇ」
生徒会長は本を抱きしめながら楽しそうに会話する。
人当たりが良いと噂では聞いていたけれど、本当に物腰が柔らかい人だなと改めて思った。
そして噂通りちょっと可愛いなと思った。
- 463 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:54
- 「それからすぐに会長は行っちゃったよ」
「羨ましいぃぃぃぃ!ねぇ、ちょっと!本気で入れ変わらない?えりかちゃん!」
「だからイヤだって」
「いいなぁ・・・・生徒会長だよ?優しくって頭良くておまけに可愛良い生徒会長だよ?」
「だから?」
「だからって。話したいの!桃もえりかちゃんみたく親しげに話したいよぉ」
「熊井君の話じゃないけど別に親しくないんだけど」
「でも少なからず桃よりは親しいでしょ?」
「まぁ桃よりはね」
まるで桃は欲しい玩具を強請る子どものように私の腕を摘んで左右に揺らす。
そんなことされたって入れ替わることになんてできないし、かといって話で治まることでも
ないのでもう好きにさせといた。
そんな感じで廊下の真ん中でじゃれていると、スカートの後ろのほうが急に涼しくなった。
そして小柄な男の子が風のように私の横を走り抜ける
嫌な予感がして私は桃の腕を強引に振り切るとすぐにお尻の辺りを押さえた。
それから少し先のほうで笑っている岡井千聖を睨みつける。
「千聖!」
「ちぇっ、ブルマか。もうちょっと可愛いやつ履いてよ、えりかちゃん」
「あのねぇ!高校生でスカートまくりなんてしないでくれる?」
「へへっ、まぁなんていうの?癖ってやつ?」
「はぁ・・・・・手癖悪すぎ」
「昔からなんだから別にいいじゃん。えりかちゃんだってもう慣れてるでしょ?」
「まぁね。でも一番初めに高校でやられたときは驚いたよ」
「あははは!あのときは確か黄色のパンツだったっけ?」
廊下の真ん中で人のパンツの色を叫ぶこいつは岡井千聖。
年は二つ離れているんだけど家が近所で一応幼馴染って関係になる、でも昔から手癖が
かなり悪くてスカートめくりなんてしょっちゅうだった。
こいつを見ていると小学生から時が止まってるんじゃないかと時々思う。
- 464 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:55
- ワイシャツを肩が見えるくらい捲り上げてズボンも膝の辺りまで折っている。
そこから見える肌は日焼けしたように色が黒くて、見るからに健康優良児って感じだった。
顔は元々悪くないし頭にタオルを巻いている姿は少し大人びて見える。
それでも性格がこんなのだから私にはいつまで経っても弟のような存在だった。
「あのさ・・・・今度久しぶりにえりかちゃんの家に遊びに行ってもいい?」
「うん、別にいつ来たって良いよ。でもどうしたの急に」
「えっと、その、あの・・・・・いけない?」
「いけないっていうか、ただ珍しいなって思っただけだよ。最近家に来なくなったじゃん」
「まぁ、そのさ、久しぶりにえりかちゃん手作りの夕飯が食べたくなったから」
「そっか。なら来たいときにいつでも来なよ」
「・・・・うん。そうする!よっしゃ!!ご飯100杯くらい食べるぞ!」
「それは無理でしょ、さすがに」
それから千聖は部活があるというのでそれからすぐに走って行ってしまった。
そして私と桃の2人だけが廊下に残される。
どうせまた桃に袖を引っ張られると思っていたけれど、意外なことに袖は引っ張られることが
なかった。
どうしたんだろうと思って桃を見ると呆然と口を開けてこっちを見ていた。
- 465 名前:愛のスキスキ指数上昇中(前編) 投稿日:2009/05/08(金) 17:56
- 「・・・・・何その顔」
「いや岡井君まで知り合いだったんだなと思って」
「千聖は知り合いって言うか幼馴染だよ。なんていうか弟みたいなもんかなぁ」
「ねぇえりかちゃん知ってる?岡井君って結構3年に人気あるんだよ?」
「そうなの?あんなのが?どうして?」
「だって可愛いじゃん!生徒会長とはまた違う可愛さでさ。あとは人懐っこいところとか」
「あぁ、それはあるかも。誰にでも話しかけるから無駄に友達多かった気がする」
「それにサッカー部の期待のエースだしね。あっ、サッカーしてる時は超カッコイイよ!」
「へぇー、そうなんだ」
桃に熱く語られても私はいまいちピンとこなかった。
もう少し大人になっているならともかく、中身は昔から全然変わっていないからカッコイイ
という感覚が分からなかった。
でもサッカーしている千聖がカッコイイというのは少し分かる。
中学生の頃1度だけ試合を見たことがあるけれど、泥だらけになりながらサッカーボールを
追いかけている姿を見てちょっと見直した。
真剣というかきっとボールしか見えてないんだろうけど何か瞳がキラキラしてた。
そんなことを廊下で話していると不意に後ろから口笛が聞こえてきた。
「良いもの見せてもらっちゃった」
振り向くと頭の後ろで手を組みながらニヤニヤしている1人の男子と目が合った。
- 466 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/08(金) 17:56
-
- 467 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/08(金) 17:56
-
- 468 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/08(金) 18:00
- 以上です、すごい中途半端なところですが後編に期待してもらえればと
思います
まぁその期待に応えられるかは分かりませんが・・・・
あと大事なこと話が始まる前に書き忘れてしまったので、こっちに
書かせてもらいます
この話は殆どの登場人物の性別が変わってます
なのでそういう話が嫌だという方は読まないのが賢明だと思います
- 469 名前:名無し飼育 投稿日:2009/05/09(土) 00:18
-
やじうめをリクエストした者です。
難しいリクで、すいません。書いていただきありがとうございます。
前半部分だけでも、これからの展開が楽しみです☆モテてるのに気づいてない梅さん良いですね☆後半の舞美登場も楽しみにしてます☆
- 470 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/20(水) 19:12
- レス返し
>>469さん リクエストありがとうございました
多分やじうめを書き慣れている人なら普通に書けそうなんですが、自分が王道系を
書かないばっかりに時間がかかってしまって申し訳ないです
とにかくこれはこれで楽しんでもらえたら嬉しいです
- 471 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/20(水) 19:15
- というわけで前回の続きです
やじうめです、性別が違くなってます
そういう話なのでご注意ください
- 472 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:16
- そんなことを廊下で話していると不意に後ろから口笛が聞こえてきた。
「良いもの見せてもらっちゃった」
振り向くと頭の後ろで手を組みながらニヤニヤしている1人の男子と目が合った。
「栞太!」
「まぁブルマなのがちょっと残念だったけど、でもそれはそれでアリかな」
「ちょ、ちょっと!見たの?!」
「偶然だけどね」
「本当?」
「めくらなきゃ見えないよ、スカートの中なんて。そんな能力あるなら超ほしいよ」
「じゃなんで見えたわけ?」
「廊下を歩いてたらスカートめくりしてるどっかの小学生がいたもんでね」
「・・・・・もうっ、千聖のバカ!」
私の腰にちゃっかり手を回して顔を近づけながら話す、このちょっと変態ぽっい
男子は有原栞太(ありはらかんた)
1年生なのにやけに慣れ慣れらしく話しかけてくる奴でそれは今も変わらない。
私は腰に回されている手を軽くつねると、栞太は顔を引き攣らせながら手を離すと
1歩後ろにさがる。
- 473 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:16
- ワイシャツは2つ目までボタンを外し、ネクタイもまるでおまけでつけているかのように
かなり緩い
そして頭にはカチューシャをつけて前髪を上げている。
見るからにチャラ男って感じだけど栞太は見た目通り本当に軽い奴だった。
でもノリが良いのと顔が結構良いのも手伝ってモテるという話を聞いたことがある。
「それでえりかちゃんはいつになったらデートしてくれるの?」
「しません。前にも言ったけどする気ないからね」
「えー。1回もダメなの?」
「ダメ」
「ふーん、それは残念だなぁ。でもいつか必ずデートすることになると思うよ」
「だからしないって言ってるじゃん」
「いやするね。っていうかさせたくするよ、俺は有言実行の男だから!」
栞太はまた懲りずにデートに誘ってくるけど、私はいつものように冷たくあしらう。
それでも懲りずに誘ってくるその根気を別のことに使えばいいのといつも思う。
でもいつもなら不満そうな顔をして去っていくのに、今日の栞太はいきなり顔を近づけると
突然真剣な顔になる。
そんな表情を今まで見たことなかったから少しだけ胸が高鳴った。
それから栞太は不敵に笑って高らかに宣言すると、最後に私の頬に軽くキスをして
逃げるようにその場からいなくなった。
- 474 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:16
- あまりに唐突な出来事に私はしばらくボーっとしていた、でもようやく我に返ると
頬の辺りが段々と熱くなってくる。
それから横目で桃の様子を伺うと意外にも普通の顔をしていた。
私は絶対羨ましがるかからかうかのどっちかだと思っていたので、その様子に少し拍子抜け
してしまった。
「・・・・・コメントは?」
「ほしいの?」
「いや別にほしいってわけじゃないけどさ」
「っていうか栞ちゃんになら私も今みたいにデートに誘われたことあるし」
「えっ?そうなの?」
「っていうか、この学校で声かけられてない女子はいないと思うよ」
「そんなこと分かってるけどさぁ・・・・」
栞太が色んな女の子に声かけまくって手を出している、という噂は私達3年生のところまで
知れ渡っている。
でも実際女の子の友達も多いみたいだし軽いノリなのは事実。
だから初めて声をかけられたとき、というか今もそうだけど大して相手にしなかった。
なのに今日は突然真剣な顔をするから少し戸惑ってしまった。
「いつもは軽いノリなのに急に真面目な顔されてキュンキュンしちゃったとか?」
「ちょ!そ、そんなじゃないよ!」
「ふーん。えりかちゃんが栞ちゃんみたいなタイプ選ぶなんて意外だなぁ」
「別にタイプじゃないよ!だって私には・・・・・」
「ん?何?」
「何でもない!それよりいい加減帰らない?お腹減ってきちゃった」
「うん、それもそうだね。じゃカバン取ってきて正門前に集合って事で」
桃に図星を言われて私はつい大きな声を出してしまった。
すると桃は顎に手を当てて何やら企んでいるように笑う、それを見てロクなことを考えて
いないことだけは分かった。
だからつい勢いに任せて本音を言いそうになった私は慌てて口を閉じた。
でも追求されると困るので適当に誤魔化すと、桃はそれについては特に何も言わず
私の言うことに頷いてくれた。
- 475 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:17
- バレなくて済んだことに安堵しながら私は1人教室へと向かう。
好きな人のことは友達の桃にも言えない、別に隠しているわけじゃないんだけど
からかわれそうな気がする。
だって私の好きな人は王道だけど学校で一番モテる人だから。
ようやく自分の教室の前に辿り着くと私は勢い良くドアを開ける。
どうせ誰もいないと思っていたのに中には人がいた。
それも上半身裸の男子がちょうどワイシャツを羽織ろうとしているところだった。
「キャッ!ご、ごめんなさい!」
私は思わず小さな悲鳴を上げるとすぐにドアを閉めて教室から出た。
普通展開としては逆じゃない、と思いつつ胸の鼓動は治まらずにどんどん早くなっていく。
確かに男子の裸を見たら多少は動揺すると思う、でもこんな風に心臓が壊れるんじゃないか
というくらいドキドキはしないと思う。
でも私は今ドキドキしている、それは教室の中にいた男子が好きな人だったから。
引き締まったウエストに軽く割れた腹筋、腕にもしっかりと筋肉がついていて本当に
スポーツマンって感じの体つきだった。
それを思い出すとまたバカみたいに鼓動が早くなっていく。
私は心臓が痛くなってきたのとどうしていいか分からなくて、頭を抱えながらその場に
しゃがみ込んだ。
- 476 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:17
- 「梅田さん・・・・だよね?大丈夫?」
遠慮がちに肩が軽く叩かれたかと思うと後ろからあの優しい声が聞こえてきた。
私は軽く溜め息を吐き出してからゆっくりと振り返った。
心配そうに私の顔を覗き込んでくれるクラスメート。
彼の名前は矢島舞美、本当は舜美(としはる)って名前なんだけどお父さんの字が汚くて
舞美になってしまったらしい。
だから本名は「としはる」なんだけど、私も含めてみんな字のまま「まいみ」って呼んでいる。
普通に女の子みたいな名前だけど本人は大して気にしていないらしい。
「・・・・矢島君」
「さっきは何か変なとこ見せちゃってごめんね?人が入ってくるとは思ってなくてさ」
「いや、えっと、私のほうこそごめんなさい!いきなりドア開けちゃって・・・・」
「全然大丈夫だよ、気にしないし。まぁ逆じゃなくて良かったよ、とか言ってね」
「う、うん。そうだね」
矢島君は見た通りのスポーツマンで陸上部のエース、でも全然鼻にかけなくてたまに少し
天然ボケなところもあるけど基本的に頼れる男の子だった。
それに爽やかでカッコいいのに誰にでも優しいからこの学校の女子から絶大な人気がある。
私もそんな多くの女の子達と同じく彼のことが好きだった。
- 477 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:18
- だから顔を見てまともに話すことができなかった。
こうして話しているだけでもかなり嬉しいのに、目なんか合った日にはきっと即死してしまう。
私の心臓は今にも爆発してしまうんじゃないかというくらいドキドキしている。
これ以上二人きりで居ると私の体が待たないので、早くカバンを取って桃が待っている正門に
行こうと思った。
「あ、あの、カバン取ってもいい?友達を下で待たせてるから」
私は矢島君に作り笑いをしながら挨拶してカバンを取るために教室に入ろうとする。
でもすれ違った瞬間、矢島君が私の腕を掴むからその場から動けなかった。
男の子らしい大きくて厚みのある手は少し熱を持っていて、それがうつったのか触られた
部分が熱かった。
矢島君に触れられている、そう思うだけが硬直してしまって氷のように固まってしまう。
そしてまた私の心臓が大暴れしだす。
本当に壊れるんじゃないかというくらい鼓動が激しく脈打っている、でもこの状況で
死んだとしても悔いはないと思った。
- 478 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:18
- 矢島君に看取られながら死のもいいかも、とか一人で妄想していると後ろから声が
聞こえてきて慌てて我に返った。
「梅田さんは・・・・・俺のこと嫌い?」
「へっ?」
初めて聞く矢島君の弱々しい声に驚きながら振り向くと、悲しそうに私のほうを見ている瞳と
目が合った。
「他の男の子とは笑いながら話してるのにさ、俺とはなんか目も合わせてくれないし」
「そ、そんなことない!すごく楽しいよ!」
「そうかなぁ?俺と話してるときはあんまり笑ってないような・・・・」
「楽しいよ!本当に楽しい!超楽しいと思ってる!」
「本当?」
「うん・・・・矢島君と話してるときはこの世で一番楽しいと思ってる」
「あははっ、それは言いすぎだと思うよ」
まさか矢島君がそんなこと思っているとは想像もしなかった。
でも確かに話し掛けられるとドキドキするから多少避けてた気がするし、たまに話すときも
目が見れなくていつも顔を俯けていた。
今までの行動をよくよく振り返ってみると嫌いだと勘違いするのも分かる。
こんなに好きなのに逆効果なことしかしてない自分に呆れて、私は深くうな垂れながら
溜め息を吐き出した。
- 479 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:18
- 「と、とにかく!矢島君のことは絶対嫌いじゃないから。それだけは信じて?」
「良かったぁ。俺、梅田さんには嫌われたくないからさ」
「嫌いなわけないよ!その逆で好・・・・何でもない。それじゃ行くね?友達待ってるし」
「うん、またね」
嫌いだと思われたままだと困るのでとりあえず誤解だけは解いておこうと思った。
でも矢島君は私の言葉をそのまま信じてくれたからつい安心してしまって、ついポロっと
告白しそうになり慌てて口を押さえた。
それから適当にその場を誤魔化すと軽く挨拶をして教室を出た。
カバンを抱えながら矢島君とたくさん話しちゃったなぁ、なんて考えていると
後ろから大声で名前を呼ばれた。
「梅田さん!」
「ふぇっ?」
「今度部活中にお邪魔してもいい?何か食べさせてほしいなぁ、美味しいってよく聞くから」
「えっ、あっ・・・・う、うん」
振り返ると爽やかな笑顔がこちらを見ていて、見事に私の心臓のど真ん中が打ち抜かれた。
そして本気でこの人のことが好きなんだと改めて思った。
すると一気に自分の顔が火照ってくるのが分かって、私は真っ赤な顔を見られたくなくて
少しだけ俯けるととりあえず小さく頷いた。
そして心臓がまたバカみたいに高鳴りだすから、もうどうしていいか分からなくなって
その場から逃げ出るように駆け出した。
- 480 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:19
- 気がついたら下駄箱前に立っていた、どうやってここまで来たのか全く覚えていない。
自分の顔を触ってみるとまだほんのりと熱が残っていた。
でも不意に最後の矢島君の笑顔を脳内再生すると、熱が再び上がってきてまるで
風邪をひいたときに似た感覚だった。
とりあえず靴を履き替えて正門まで行くとふてくされた顔をしている桃がいた。
「遅いよ、えりかちゃん!もうっ!15分くらい待ってたんだからね」
「ご、ごめん。桃」
「ん?何か顔赤いけど大丈夫?風邪でもひいたの?でもさっきまで普通だったよね」
「風邪っていうか・・・・まぁ病であることに間違いはないけど」
「えっ、具合悪いの?なら早く帰って寝たほうがいいよ」
「・・・・うん、そうする」
結構待たせてしまったようで桃は最初かなり不機嫌な様子だった。
でも矢島君のせいで顔が赤い私を具合が悪いのと勘違いして、心配そうに顔を覗き込むと
友達らしくちゃんと心配してくれる。
そのときいつかは桃にもちゃんと自分の気持ちを言わなきゃなぁと思った。
- 481 名前:愛のスキスキ指数上昇中(後編) 投稿日:2009/05/20(水) 19:19
- 「でも何か辛そうって感じじゃないんだよねぇ、っていうかニヤニヤしててキモイし」
「・・・・キモイって言葉だけは桃に言われたくない」
「それ何気にひどいんですけどぉ」
桃にさっきまで矢島君と話していたことを言ったらどんな顔をするだろう、と子どものように
拗ねている様子を見ながら思った。
とりあえず当分の間は桃に矢島君が好きだとは教えられそうにない。
- 482 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/20(水) 19:20
-
- 483 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/20(水) 19:20
-
- 484 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/05/20(水) 19:21
- 正直乙女ゲーはやったことがないので、こういう感じで合ってるのか
いまいち分かりません
- 485 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/31(日) 13:58
- 次回も待ってます
- 486 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/31(日) 20:49
- 途中?
また更新されてたら読んじゃいます。
- 487 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/10(水) 17:18
- レス返し
>>485さん お待たせしました。でも待たせた割にくだらない話で
申し訳ないです
>>486さん 途中ではありません、残念ながらあれでやじうめは完結です
あれ以上は自分には書けませんでした
- 488 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/10(水) 17:22
- 今回はBuonoのお話です
熊キャプにちょっと詰まってしまいまして気分転換に書いてみました
でもCPとは特になく甘い話でもありません
かなりくだらない話になっているのでお暇な方はどうぞ
- 489 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:23
- その日はボーノの新曲が出るので打ち合わせがあった。
だから私は少し滅入った気分で控え室へと向かう。
ボーノは曲もキュートにはないロックな感じだし、詩も共感できるところがあるから
好きだし、人数が少ない分色々と目立つという利点もある。
メンバーの桃とみやの二人も私に優しく接してくれるし普通に仲は良いと思う。
だから色んな意味で良いグループだと思う、ただ一つ私にはどうしても受け入れられない
ところがあるだけで。
私は軽く溜め息を吐き出してからゆっくりと控え室のドアを開ける、すると予想通り
桃とみやがテーブルを挟んで向かい合っている。
どうやらまたいつものあれをしているらしい。
桃は私が入ってきたことに気づくと笑顔で手を振ってくれる、でも一方のみやの方は
真剣にテーブルに置かれたものを見つめていた。
その様子から察するに私の存在自体に全く気づいていない。
見慣れたとはいっても理解できないその行動に私は改めて深い溜め息を吐き出した。
- 490 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:23
- 「・・・・とりあえず生写真の4枚セットで。あっ、あとDVDマガジンも1つね」
「このハワイで撮り下ろしてきた最新カットはいいの?」
「それマジで迷うんだけどどうしようかなぁ。今日ちょっとあんまりお金なくてさ」
「そっかー。でも今キャンペーン中だから5000円以上だとポスターが付くんだけどなぁ」
「ちょ、ちょっと待って!それ聞いてないんだけど。じゃぁハワイのやつ買うよ!」
「お買い上げありがとうござまーす」
控え室のテーブルに並べられているのは生写真やグッズの一覧表。
まるでコンサートのグッズ販売で悩むファンの方さながら、みやはさっきから真剣な
表情でそれを見つめている。
そして注文を受けると桃ちゃんは自分の横に置かれている大きめのバッグの中から
商品を取り出す。
みやは現金を手渡すときキモいくらいニヤニヤしていた。
「あっ、そうだ。新商品でコレクション生写真っていうのが出たんだけど」
「何それ?また誰が出るか分からないってやつ?」
「そう!今回その第三弾が登場したわけ。ちなみに全14種類ね」
「それこの前買ったとき桃とか千奈美ばっかりだったんだけど・・・・」
「だってキャプテンがすぐ出ちゃったらつまらないでしょ?」
「あぁ、まぁね。えー、どうしょっかなぁ」
「一応当たりにはキャプテンの直筆メッセージがなんだけどね」
「とりあえず5つちょうだい」
「はーい、お買い上げありがとうございまーす」
- 491 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:24
- この二人はいつもこんな感じでボーノの控え室でグッズ販売をしている。
それも同じベリーズ工房に所属している清水佐紀ちゃんの。
ボーノの控え室でグッズを販売する意味が分からないし、というかそもそもみやの立場が
一番分からない。
とりあえず佐紀ちゃんのことが大好きということは分かる。
そして桃ちゃんは非公式、つまりはアンオフィシャルで写真やDVDを勝手に作って
みやに売りつけていた。
この理解できない二人の行為が私の頭をいつも悩ませている。
ボーノでの活動がある度にこれをやっていることが気が滅入る理由だった。
とりあえず本当やめてほしい。
- 492 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:24
- 桃に聞いた話だとベリーズでやると佐紀ちゃんに怒られるからできないらしい。
でもわざわざ集まるのも面倒だし、新作を作るには色々と時間がかかるので、ある程度
期間が空いて二人が集まれるボーノが最適らしい。
どうやらグッズ販売は終わったようでみやは生写真を眺めてニヤニヤしている。
ファンの方もこんな感じなのかなとか想像すると鳥肌が立ってきて、次の握手会で上手く
笑える自信がなくなってくる。
私は黙っていてもさらに気が滅入ってくるだけなので仕方なく桃に話しかけた。
「またやってるの?佐紀ちゃんのグッズ販売」
「うん。ハワイ行ったりとか色々イベントあったから新作作れたし」
「はぁ・・・・・いつまでやる気?」
「うーん。多分みやが佐紀ちゃんに飽きるまではやるかな」
「極悪だね」
「でもこれは需要と供給があるからこそできることだからさ」
なんて桃ちゃんは最もらしいことを言っているけど、売上金を数えながら言われても
正直軽蔑しかできない。
私は人間ってやっぱり大人になると穢れてしまうんだなと思った。
いや桃の場合は幼い頃から既にかもしれないけど。
- 493 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:25
- 「ねぇねぇ、愛理は興味ないわけ?」
「えっ?どういう意味?佐紀ちゃんにってこと?」
「そう。もし良かったらこれあげるよ、アロハロ清水佐紀のお試し版」
「あっ・・・・いらない」
「まぁそう言わずに見てみてよ。キャプテンにあと一歩で絶交させられそうになった
という桃の傑作だよ?これは本当にすごいから。ちなみに値段は2500円(税込み)ね」
「多分、っていうか絶対買わないと思うけど」
「とにかく!このお試し版はタダだからさ、ヒマなときにでもいいから軽く見てよ」
桃は人が断ったにも関わらずDVDを押し付けるように渡してくる。
結局その押しの強さに負けて私は受け取ってしまった。
でもタダだから別にいいかなと思って、私はそのDVDを自分のバッグの中にしまった。
- 494 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:26
- そして私は現在、電気をつけないまま居間に置かれたテレビの前にいる。
自分の部屋にもテレビはあるけれどDVDプレーヤーはないので、見るにはどうしても
リビングしかなかった。
別に見る気はなかったんだけど何だかその日は夜更かししたい気分で、机の上に置かれた
あのDVDに何となく視線が向いた。
まるでエッチなビデオを家族に隠れて見るお父さん、みたいな感じで私は物音に
注意しながらDVDをセットする。
ちなみにお父さんが見ているかどうかは知らない、というか知りたくもない。
そして私はテレビの電源をつけるとすぐに消音にした。
それから音楽プレーヤーで使っているイヤホンをテレビに繋げてから音量を上げる。
一応ちゃんと音漏れしないのを確認してから自分の耳にはめた。
画面を入力切替でそれ用に合わせるとDVDの再生ボタンをリモコンで押す。
私はソファーに座りクッションを抱きかかえると、少しドキドキしながら本編が始まるのを
じっと待った。
けどDVDは最初無駄な飛行機のシーンから始まったので少しイラッとした。
でもすぐに画面が変わって白い砂浜と綺麗な海が映し出されて、カラフルな文字で
「アロハロ!清水佐紀」とタイトルが現れる。
- 495 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:26
- いよいよ本編かなと思っていると、画面がまた変わって今度は室内の映像になった。
いかにも固定カメラの映像と言わんばかりに茶色の壁が映し出される。
するとポンと横から人が入ってきて、小さい感じだったから佐紀ちゃんかと思ったら
桃だった。
「アロハロ清水佐紀をご覧の皆さん、多分こんばんは。嗣永桃子です。本編だとちゃんと
完全プライベートな水着で波と戯れるシーンから入るわけなんですが、これはお試し版
ですから当然そんな良いシーンは見られませーん」
騙されたというかやっぱりただの時間の無駄だったと思い、私は電源を消そうとリモコンに
手を伸ばした。
するとテレビの中の桃は慌てた様子で手を伸ばしながら呼び止める。
「あっ、まだ消しちゃダメですよ!今回は特別に一番良いシーンをちょっとだけ
お見せしちゃいますから」
まるでこちらの動きを見ていたかのような言い方に私は少し驚いた。
だから何だか消すのが怖くなってきて、どうせ長くもないだろうからとりあえずこのまま
見続けることした。
- 496 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:27
-
「それではどうぞ!あっ、続きが気になった方は嗣永桃子までお問い合わせください」
桃の前振りと軽い宣伝があった後に画面は一旦暗くなった。
- 497 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:28
- そして画面が再び変わるとどこかの家の庭が映し出される。
ハワイらしい家作りというかアメリカのドラマで見るような木製の白い家だった。
綺麗に整えられた黄緑色の芝生からカメラが動いて、次にテーブルと椅子が置いてある
場所を映し出す。
そしてそこに佐紀ちゃんは座っていた、っていうか机に突っ伏してどうやら眠っている
らしかった。
カメラは徐々に佐紀ちゃんに近づいていき目の前まできて止まる。
それから横に回り込むと無防備な佐紀ちゃんの寝顔をはっきりと映し出した。
その瞬間なぜか胸が高鳴って自分でも驚いた
ハワイの爽やかなそよ風に撫でられて微かに揺れる少し茶色の髪。
「・・・・・あっ、佐紀ちゃん髪染めたんだ」
見慣れないその姿に気がつくと自然と独り言が私の口からこぼれる。
最初は日の光に当たっているから茶色なのかと思っていたけれど、近づいてもその色が
変わらないから染めていると分かった。
- 498 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:28
- でもそんなに明るい茶色じゃないから意外に似合ってるかなぁ、なんて思いながら
私はぼんやりと映像を見ていた。
佐紀ちゃんは本当に気持ち良さそうに眠っていてその様子を見ていると何だか癒される。
それから桃の手らしきものが画面の端から伸びてきて、佐紀ちゃんの頭を突然優しく
撫で始める。
すると佐紀ちゃんは少しだけ首を竦めると口元を軽く緩める。
どうやら撫でられるのが嬉しいらしい。
髪が茶色というのもあって、何だか段々とハムスターとかプレイリードックのような
小動物に見えてきた。
「・・・・か、可愛いんですけど」
私は抱えているクッションを強く抱きしめると噛み締めるように呟いた。
- 499 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:29
- それから髪を撫でていた手が止って今度は肩に移って軽く揺すり始める。
どうやら起こすつもりらしい。
何だか勿体無いなぁと思っていると、佐紀ちゃんは軽く呻いてからゆっくりと目を開ける。
そしてまるで幼い子どものように目を擦りながらチラッとカメラのほうを見る。
すると何を思ったのかカメラは急に佐紀ちゃんの顔へ寄っていく。
顔というか正確に言うと唇に焦点が合っていく。
まるで自分が佐紀ちゃんにキスしようとしているみたいで、私の心臓の鼓動が急に
早くなっていった。
そしてこれからどうなるんだろうと思ったら急に画面が真っ暗になった。
「えっ?故障?」
せっかくいい所だったのに邪魔されて私は思わずソファーから立ち上がる。
それからすぐに画面が変わった、でも映し出されたのはさっきの庭ではなくホテルの
一室らしいあの茶色の壁だった。
私が呆然と立ち尽くしているとまた桃が横から現れる。
- 500 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:30
- 「さっ、予告版いかがだったでしょうか?・・・・・はい・・・・はい、そうですよね!
続きが見たいですよね!そんな貴方は是非、嗣永桃子までご連絡ください。本編は2500円
で現在好評販売中です。数量に限りがあるのでお買い求めはお早めに」
桃はわざとらしくテレビに向かって耳に手を当てると話を聞くふりをする、それから
満面の笑みで一人頷きながら宣伝を始めた。
ご丁寧に画面の下のほうに赤い字で桃の携帯の番号がテロップでちゃんと出てくる。
「それでは完全版のアロハロ清水佐紀でお会いしましょう」
桃が爽やかに手を振ってお別れの言葉を言うと画面がフェイドアウトしていく。
それから画面は黒いままずっと変わらなくて、どうやらこれでお試し版は終わりらしい。
「・・・・・2500円か」
私は急に力が抜けたようにソファーに腰を下ろすと、真っ暗なテレビ画面を見ながら
溜め息混じりの口調で呟いた。
- 501 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:30
- それから二週間後に今度はボーノのPV撮影があった。
控え室に入ると相変わらずの見慣れた光景で、桃とみやの二人はまたテーブルを挟んで
向かい合って話し込んでいる。
「えっと、とりあえずマイクロファイバータオルとライブの生写真8枚セットで」
「それだけでいいの?」
「あとはどうしょうかなぁ・・・・・」
「一応新発売でコレクションピンナップポスターってのがあるけど」
「それ前のやつの第二弾?」
「そうそう。人気だったからまた作ってみたいんだけどどう?」
「うーん・・・・じゃとりあえず8つちょうだい」
「お買い上げありがとうございまーす」
みやが一覧表を見ながら注文すると桃ちゃんがバッグから商品を取り出す。
そして現金をもらって確認するとみやに品物を手渡す、ちなみに袋には入れてくれないので
商品を丸見えだった。
みやは早速手に入れたマイクロファイバータオルを見ながらニヤニヤしている。
前の私ならキモイと思うところだけど、今は何だか商品が気になってみやに近づくと
後ろから一覧表を覗き見る。
思っていたよりも色んな商品がそこには載っていて、私達が普通に出しているものと
大して変わらないようだった。
桃もよくこんなの作れるなぁと私は変なところに思わず感心してしまう。
でもその情熱と技術をもう少し別のことに役立てほうが本人の為になるような気がした。
- 502 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:32
- 私が一覧表を見ていたので興味があると思ったのか桃が声を掛けてきた。
「あっ、そうだ。愛理、この前のやつどうだった?」
「あのお試し版DVDのこと?」
「そうそう!どう買わない?今ならおまけに生写真一枚つけちゃうよ」
「まぁ・・・・それならいいけど」
「えっ?本当に?本当にいいの?」
「いや、その・・・・や、安いからさ。まぁ買ってもいいかなぁって」
「愛理ありがとう!じゃ超おまけで生写真3枚つけてあげるね!」
DVDを買うと言うと桃はいやに興奮した様子で前のめりになって私を見つめる。
少し恥ずかしかったけれどおまけもあるしいいかなと思って、私はバックから自分の
お財布を取り出す。
そして現金と引き換えに完全版のアロハロ清水佐紀を手に入れた。
まさか自分が買うなんて思いもしなかった。
でもあのお試し版を見ていたらいつもお姉さんでしっかりしている佐紀ちゃんが、
何だか幼い子どもみたいで可愛く思えた。
それにあの続きも気になるしこのDVDだけとりあえず買ってみることにした。
別に生写真とかタオルとかは欲しくないし、みやみたいにどっぷりハマったわけじゃない。
ただちょっと佐紀ちゃんに興味が出てきただけ。
そう自分に言い聞かしながらもDVDを手に取ると自然と口元が緩む。
- 503 名前:秘密のウ・タ・ヒ・メ 投稿日:2009/06/10(水) 17:32
- 「それじゃこれ、おまけのやつね。桃の超可愛い生写真3枚セット!」
「あっ・・・・・いらない」
「ちょ、ちょっと!愛理ひどーい!」
桃は言っていた通りおまけを私に手渡す。
その写真には佐紀ちゃんじゃなくてヘンテコなポーズをした桃が写っていた。
とりあえず返品した。
- 504 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/10(水) 17:32
-
- 505 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/10(水) 17:32
-
- 506 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/10(水) 17:33
- 本当にくだらない話ですいません
とりあえず笑ってもらえればそれだけで十分です
- 507 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/10(水) 21:00
- アロハロ清水佐紀ひとつください
- 508 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/11(木) 00:37
- 吹いたw
- 509 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/11(木) 14:09
- 仕事師もも
かなり笑えるし、きっとはまっちゃうんでしょう。
- 510 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/11(木) 19:35
- みや愛理のオーディオコメンタリー付きアロハロ清水佐紀も販売してください
- 511 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/13(土) 18:37
- 笑いました。
佐紀ちゃん自体は出てこなかったのが残念でした。
- 512 名前:宙 投稿日:2009/06/14(日) 03:28
- はじめまして
是非とも、「完全版アロハロ清水佐紀」を見た愛理の続編をw
私にも1つお願いします(笑)
- 513 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/21(日) 20:29
- まずはレス返し
>>507さん 「アロハロ清水佐紀」はあなたの心の中にあります
嘘です。あるなら自分も欲しいくらいです
>>508さん その一言が一番この話に相応しいと思います
>>509さん くだらない話なので笑ってもらえればそれだけで十分です
>>510さん もしオコメ付きのものがあったら、二人の解説があまりにキモ過ぎて
販売中止になると思います
>>511さん 最初からわざとキャプは出さないつもりでした
出ると多分収拾がつかなくなりそうだったので・・・
>>宙さん とりあえずこの話の続きは書くつもりはありません、というか
上手くまとめる自信がないです
でもキャプ愛理はいつか書くかもしれません
時々こんなバカバカしい話があったりしますが、これに懲りずに
たまに覗いてもらえると嬉しいです
- 514 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/21(日) 20:38
- 今回は熊井ちゃんとキャプで家庭教師の話の続きです
このシリーズ、というかこの2人の話は一応これで終わりにします
またいつか書くにしてもしばらくは期間が空くと思います
それで最後だからというわけじゃありませんが、今回は結構甘い話になっています
ちなみに前回>>228-232と前々回>>257-261のはこちら
気になった方はどうぞ
- 515 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:39
- 今日は待ちに待った先生とのデートの日。
期末を死ぬほど頑張ったおかげで約束通りデートをすることになった。
約束の時間は10時半、でも携帯を見るともうすぐ10時になろうとしている。
早すぎたかなと自分でも思うけど家でじっとなんかしていられなくて、予定より早く
待ち合わせ場所に行くことにした。
昨日は胸が高鳴ってなかなか眠れなかったから今は少しだけ眠い。
でも今日は携帯のアラームが鳴るより前に朝早く目が覚めてしまった、それだけこのデートを
心待ちにしていたのだと思う。
私は目印のライオンの像の前に立って落ち着きなく辺りを見回していた。
傍から見たらちょっと挙動不審な人かもしれないけど、先生がいつ来るか分らないから
少しでも気が抜けない。
でも見回していたおかげなのか人混みの中に先生の姿を発見した。
- 516 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:41
- 「先生!!ここです!ここですよ!」
私は人目も気にせずに左右に手を振りながら大きな声で叫ぶ。
当然色んな人が私のほうを見て笑ってたり唖然としていたけど、そんなこと
どうでも良かった。
私には先生だけしか見えていなかった。
先生は私に気づくと小走りでこちらに寄ってくる、そして軽く背伸びして手を掴まれた
かと思うと強引に下ろされる。
その顔は少し怒っているようだったけど頬と耳が赤くなっていて可愛いかった。
「恥ずかしいから止めてよ、熊井ちゃん!」
「へっ?何がですか?」
「いやだから、街中で先生って言うのは止めてもらえる?まして大きな声で」
「す、すいません。あんまり周りのこと考えてなくて・・・・」
「ちょっとはしゃいじゃったんだよね?大丈夫だよ、そんなに落ち込まなくても」
さすがに街中では名前を呼ぶのはまずかったみたいで先生に怒られてしまった。
冷静に考えてみる確かにやり過ぎだったなと思い素直に謝ると、先生は優しく微笑みながら
すぐに許してくれた。
- 517 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:42
- 相変わらず優しいなぁと思いながら私は改めて先生を見る。
先生はピンクのジャケットに中はひざ丈の白と黒のチェックのワンピース、その下に
重ねて履いているレース生地の黒いスカートが少しだけ見える。
靴は茶色のショートブーツで可愛いけれどちょっと大人ぽっくまとめていた。
ちなみに私は濃いグリーンのTシャツと長めの黒いベストを合わせて、下はジーンズだけど
少し暑いので軽く折って履いている。
靴はTシャツに合わせてグリーンのラインが入ったスニーカーにした。
でも先生のコーディネートに比べると少し子どもぽっい感じがして、もうちょっと
大人ぽっい方が良かったなと思い少し落ち込んだ。
「熊井ちゃん、どうかした?なんか暗いけど・・・・」
「へっ?あっ、い、いや、大丈夫です!全然平気です!」
「ならいいけど・・・・」
「それより先生、もしかして髪染めました?」
「うん。ちょっとイメチェンっていうかさ・・・・・似合う、かな?」
「はい!すっごく可愛いです」
「ちょ、ちょっと熊井ちゃん!そんなにはっきり言われると恥ずかしいよぉ」
服装の方に目がいって気がつかなかったけれど、先生は髪を黒から少しだけ
茶色に染めていた。
それに髪もいつものストレートの横分けじゃなくて、軽くパーマをかけたのか
毛先が軽くうねっている。
私が思った通りに褒めると先生は顔を赤くして照れていた。
- 518 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:43
- 「はぁ・・・・・私も先生みたいにもうちょっとオシャレしたほうが良かったですね」
「えっ?熊井ちゃんは十分オシャレだよ」
「そうですか?」
「そうだよ。あっ、そうだ!せっかくのデートだし、今から先生って呼ぶの禁止してもいい?」
「えっ?先生って呼んだらダメですか?」
「いやダメっていうかさぁ・・・・今は先生と生徒じゃないでしょ?」
先生は上目遣いで私を見つめる、というか本当はただ私のほうが背が高いから自然と
そうなってしまうだけだ。
でもその目に見つめられると胸が大きく高鳴って言葉が止まってしまう。
私は先生がたまらなく可愛く思えて抱きしめたい衝動に駆られたけど、さすがに街中で
できないので何とか堪えた。
そのときちょっとだけ自分が大人になったような気がした。
- 519 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:44
- 「そ、それじゃなんて呼べばいいですか?」
「友達には佐紀ちゃんとか佐紀って呼ばれるから、そんな感じでいいんじゃない?」
「どっちも無理なんですけど」
「えー!呼び捨ては分るけどさ、ちゃん付けもできない?」
「いきなりはちょっと無理ですよ・・・・・あっ、そうだ!さん付けってダメですか?」
「へっ?う、うん。熊井ちゃんがそれで呼びやすいっていうなら全然良いけど」
「それじゃ佐紀さんって呼びますね」
正直言って「先生」以外で呼んでほしいと言われて困った。
確かに今は先生と生徒じゃないし、あんまり実感ないけど付き合ってるわけだから
名前で呼ぶのが正しいことなのかもしれない。
でも「先生」以外の言い方は呼び慣れないからちょっと恥ずかしかった。
「さ、さ、佐紀さん。これからどこ行きます?」
「ふえっ?あぁ、う、うん。どうしようか?何も考えてなかったんだよね」
「行きたいところとかありますか?」
「えっ、あー、うん・・・・本屋さん行きたいかも。欲しい本があるんだよね」
「じゃ道案内してもらっていいですか?この辺のこと全然分らなくて」
「うん。いいよ」
ただ呼び方が変わっただけなのに、私は胸の高鳴りが治まらなくてまともに
顔が見れなかった。
でも先生こと、佐紀さんの様子を横目で軽く伺うとその顔は赤く染まっていた。
二人とも顔が真っ赤だったけどそのことが私はたまらなく嬉しかった。
- 520 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:45
- それから佐紀さんに連れられて大きい本屋さんに向かった。
大きいというかそこはビル全部が本屋さんらしくて、そのことを聞いたとき私は大げさに
驚いてしまった。
そして何も分からないまま佐紀さんの後について行った。
「何か欲しい本とかあるんですか?」
「うん、熊井ちゃんの参考書をちょっと見たいと思って」
「えっ?私のですか?」
「そうだよ。前から変えようかなぁとは思ってたんだけど機会がなくてさ」
「でも先生・・・じゃなくて、佐紀さんがお金出すんですか?そんなの自分で買いますよ!」
「あっ、全然大丈夫だよ。ちゃんと参考書代はお母さんから頂いてるから」
「そうなんですか?まぁ、ならいいんですけど」
一体どんな本を買うのか興味があって聞いたら予想外の言葉が返ってきた。
まさか私の為とは思ってもみなかった。
だから佐紀さんにお金を出させるわけにはいかない、と思って言ったら上手く言い返されて
しまった。
- 521 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:47
- 「ちょっと選んでくるからさ、熊井ちゃんは適当に時間潰しててもらっていいかな?」
その言葉に頷くと私を残して佐紀さんは参考書があるコーナーへ行ってしまった。
私は言われた通りその辺で適当に時間を潰すことにした。
でも近くにあるのは大人向けというか難しいそうなものばかりで、とてもじゃないけど
気軽に手に取って読める感じではない。
だからしばらくすると飽きてきて、私はこっそりと佐紀さんの様子を覗くことにした。
佐紀さんは参考書を手に取っては軽く眺めるというのを繰り返していた。
その真剣な横顔はやっぱり大学生って感じで、まだ中学生の私とは全然違うなと思った。
それから佐紀さんは本を棚に戻すと今度は高いところにある本を取ろうとする。
でも全然届いてなくて爪先立ちしてもちょっとだけ指が掠るくらいだった。
その姿がすごく可愛らしくて私は無意識のうちに微笑んでいた、だけどずっと眺めている
だけなのも何なので佐紀さんの所に向かう。
そして後ろから手を伸ばすと、取ろうとしていた本を代わりに取ってあげてそれを手渡した。
「く、熊井ちゃん!?」
「これですか?佐紀さんの欲しかった本って」
「う、うん・・・・」
「今度こういうときがあったら呼んでください、自分が取りますから」
「うん、ありがとう」
佐紀さんは少し恥ずかしそうに笑いながら上目遣いでお礼を言ってくれた。
その笑みに胸が大きく飛び跳ねたかと思うと、もう自分が止められなくて気がつくと
佐紀さんを抱き寄せていた。
すると佐紀さんは突然のことに目を丸くして私のほうを見る。
- 522 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:48
- 「ちょ、ちょっと熊井ちゃん!ここ本屋さんだよ?!」
「分かってます。ちゃんと分かってるんですけど、なんか、もう無理でした」
「と、とにかく!ここではダメだよ」
「もう少しだけ・・・・・もう少しだけこのままじゃダメですか?」
「はぁ・・・・もうっ、10秒だけだからね」
当然佐紀さんに怒られたけど私は離れなかった。
それにもっと怒るかと思っていたのに、最後は少し呆れた顔をしていたけれど抱きしめる
ことを許してくれた。
多分元々このフロアーに大して人がいないのと、ちょうど本棚が死角になっているので
そんなに人からは見えないからだと思う。
私は残り10秒しかないので佐紀さんをより強く抱きしめる、すると洋服越しに心臓の
鼓動が微かにだけどこっちに伝わってくる。
それは結構早くて佐紀さんが今ドキドキしているんだと思うと嬉しくなった。
それから10秒経つと佐紀さんは私の肩を軽く押した。
正直なところもう少しこのままでいたかったけれど、さすがに本屋さんで抱き合っている
わけにはいかないので体を離す。
すると佐紀さんは参考書を2、3冊手に取ると、赤い顔をしたまま逃げるように
レジのほうへ行ってしまった。
- 523 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:50
- そして参考書を買い終わるといい時間だったのでお昼を食べることにした。
またしてもこの辺りのことがよく分からない私は佐紀さんに連れて行ってもらう。
本当は自分が案内してあげたいところだけど、この街のことはあまり分からないので
どうしようもなかった。
「先生は結構この辺よく来るんですか?」
「うん、学校が近いから遊ぶとなるとこの辺りになっちゃうかなぁ。熊井ちゃんは?」
「へっ?私ですか?何度か来たことありますけど詳しくはないですね」
「そうなんだ、なんか意外。熊井ちゃん達くらいの年頃の子のほうが詳しいかと思ってたよ」
「そんなことないですよ。っていうかここまで遠出しないですもん」
「あぁ、近場で済ましちゃうってこと?でも私のときもそうだったかもしれないなぁ」
そんなたわいもない話をしながら私達は横に並んで歩く。
佐紀さんの学校ってこの辺りなんだなぁ、と分かると意味もなく私は嬉しくなった。
だからもう少しこの街について勉強しておこうと思った。
それにもし今度またここでデートすることがあったら、そのときはちゃんと案内できる
ぐらいに詳しくなりたい。
「これから行くところは本当に美味しいんだよ。外観もオシャレで内装も綺麗だし」
「佐紀さんって何でも知ってるんですね」
「そんなことないよ。実を言うとこのお店も友達に教えてもらったんだよね」
「ねぇ、佐紀!佐紀だよね?」
「ふえっ?だ、誰?」
これから行くらしいレストランの話していると、不意に後ろから佐紀さんの名前を
呼ぶ声が聞こえてきた。
佐紀さんと共に体ごと後ろに振り返ると、綺麗な長身の女の人が二人立っていた。
- 524 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:51
- 「え、えりかちゃんに舞美?!」
「佐紀さんの知り合いですか?」
「うん、大学の友達だよ。まぁクラスメートみたいなものかな」
「へぇ・・・・クラスメートですか」
佐紀さんは簡単に突然現れた二人について教えてくれた。
そう言われると二人とも背が高くて服装もすごく大人ぽっい、確かに大学生って
感じの人達だった。
それから佐紀さんはその人達と話し込んでしまって、話についていけない私は完全に
置いてけぼりだった。
大学での話とかされても分からないし、かといって関係のない話をして割り込むほど
空気が読めない奴でもない。
そのとき佐紀さんと年が同じだったら良かったのになぁと思った。
年の差さえなければ、それかもっと私が大人だったら四人で会話できたかもしれない。
でもどんなに足掻いたって今の私は子どもでただの中学生でしかない。
その事実がすごく悲しくて悔しくって自分が情けなくなった。
そして早く大人になりたいと、このときほど強く思ったことはなかった。
- 525 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:52
- 私は佐紀さんの話が終わるまで少し離れた所にあるビルの壁に寄りかかりながら、
ただじっと待っていた。
それから十分ちょっとくらい経って三人の話はようやく終わったようだった。
大学の友達という二人と別れると、佐紀さんが少し慌てた様子でこっち向かって
小走りでやってくる。
その顔は何だか嬉しそうで少し赤いように思えた。
「へへっ、熊井ちゃんのこといっぱい聞かれちゃった」
「・・・・そうですか」
「熊井ちゃん、どうかした?」
「別に何でもないです」
「そう、ならいいんだけど・・・・・それじゃ行こうか」
嬉しそうな佐紀さんの顔を見ても私は上手く笑い返すことができなかった。
だからぶっきらぼうに言葉を返した、でも佐紀さんは何も言わずただ少し寂しそうに
笑ってから歩き出した。
私は軽く頷くと黙ってその後ろについて行く。
さっきまですごく楽しいデートだったのに、何だか今は全然楽しくなかった。
- 526 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:55
- 会話も特にしないまま私達は横に並んで歩いていた。
でも平日なのにこの街は人混みがすごくて、気がつくと流されてしまったのか佐紀さんが
横にいなかった。
いつもの私なら急いで佐紀さんを探したと思う、でも今は体が動かなくてそのまま
適当に流れに身を任せて前に進む。
私と佐紀さんはやっぱり釣り合わないのかもしれない。
4歳なんて大して離れてないと思っていたけど、話したり行動するとその差は大きいなと
今更になって実感する。
中学生と大学生が付き合うのは無理だったかなと思うと胸が小さく痛んだ。
そんなことを思っていると突然私の右手が握られる。
驚いてそちらに向けると肩で息をしている佐紀さんと目が合った。
あまりに唐突な展開に私は混乱して言葉に詰まっていると、佐紀さんのほうから
声を掛けてきてくれた。
「やっと見つけたよ、熊井ちゃん!」
「・・・・・すいません」
「別にいいよ、無事こうやって見つけられたし。それよりさ、手繋がない?」
「えっ?」
「またはぐれちゃうの嫌だからさ」
「は、はい!」
佐紀さんは私が答える前にしっかりと指を絡めて手を握ってくる。
その顔はちょっと照れくさそうだったけど、でもすごく嬉しそうだった。
そんな佐紀さんを見たら不意に胸の中が熱くなって、この人のことがたまらなく好きだ
と思った。
私は泣きそうになりながら少し力を込めて佐紀さんの手を握り返した。
- 527 名前:FOREVER LOVE 投稿日:2009/06/21(日) 20:57
- 「熊井ちゃん、もしかしてちょっと泣きそう?」
「い、いや、そんなんじゅ・・・そんなんじゃないです!普通です!」
「別に隠さなくてたっていいのに。泣きそうな熊井ちゃんって可愛いいよ」
「可愛い・・・・ですか?そういうキャラじゃないと思うんですけど」
「そう?熊井ちゃんは可愛いよ。でもそれ以上に格好良い」
「えへへっ、でも佐紀さんだってすごく可愛いですよ。私の100倍は可愛いです!」
「なんか照れるよぉ。でもありがとう、熊井ちゃん」
私達は離れないようにしっかりと手を繋ぎながら人混みの中を並んで歩く。
体の大きさに関係あるのか分からないけど、佐紀さんは歩く速度が私よりも遅いので
それに合わせてゆっくりと歩く。
佐紀さんが私を褒めるから私も佐紀さんを褒めると、互いに恥ずかしくなってきて
自然と顔が赤くなる。
そのとき不意に手を繋ぐのはこれが初めてなことに気がついた、すると今更になって
変に緊張してきた。
でも手を握られただけで私の中の暗くて嫌な気持ちは一瞬で消えてしまった。
我ながら単純でこういうところが子どもなのかもしれないけど、でも佐紀さんとこうやって
ずっと笑い合っていきたい。
だからいつか子どもだと呆れられたり、釣り合いがとれなくて嫌われたとしても、
この人の手だけは離せない。
絶対に離したくないと思った。
私はまだまだ子どもで分からないこともたくさんある。
でもそれは勉強すればある程度は知ることができる、だから私はもっと色んなことを
知って大人になりたい。
そしてちゃんと佐紀さんの横に並んで歩きたいと思った。
- 528 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/21(日) 20:58
-
- 529 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/21(日) 20:58
-
- 530 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/06/21(日) 20:58
- たまにこれくらい甘い話を書きたくなります
- 531 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/22(月) 13:55
- このシリーズは好きなので更新がされててスグに読んじゃいました。
熊キャプ微笑ましくて読んでて癒されました。
このシリーズは終わっちゃいましたが、またこの組合せが読みたいって思っちゃいました!
- 532 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/22(月) 18:06
- 続きぷりーず
- 533 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/26(金) 23:30
- 熊キャプ更新キター!
待ってました。よかったです。
- 534 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 10:40
- 熊キャプしゃいこー(*´∀`)
- 535 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/08/20(木) 16:37
- 更新待ち続けます。
- 536 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/02(水) 18:20
- ようやく更新します
ちょっと忙しくて7、8月は更新は無理でした
これからは時間ができそうなので、ちょこちょこ更新できると思います
レス返し
>>531さん 熊キャプは癒しですね
現実の2人の話を聞いてても癒されます、キャプは熊井ちゃんに甘いので
>>532さん 気が向いたら続きは書こうと思ってます
一応キャプ視点で書こうかなぁとか、ライバル出そうかな、とか色々と
構想だけは考えてます
>>533さん 出来上がりは早かったんですが、最後の終わり方が難しくて
時間が掛かってしまいました。
よかった、と言ってもらえると嬉しいです
>>534さん 熊キャプもですが、キャプ絡みは全部しゃいこーです(・∀・)イイ!!
>>535さん お待たせしました
前回から更新空け過ぎですよね、本当にお待たせしました
- 537 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/02(水) 18:22
- 今回はやじうめです
・切ない感じの話です
・甘いのが好きな方には正直お勧めできません
・あと勢いで書いたので2人のキャラがちょっと変かもしれません
それでもよければ、どうぞ
- 538 名前:Bye Bye Bye! 投稿日:2009/09/02(水) 18:23
-
コンサートの一回目が終わり私とえりは横並びになって廊下を歩いていた。
私は大量の汗で濡れている顔や首周りを時折拭きながら、今日のコンサートの感想とか
たわいもない話をしていた。
「あー、疲れたー!もう歩けない!」
「そう言いながらも今歩いてんじゃん、えり」
「まぁそれはそうなんだけど」
「ふふ、何それ」
相変わらずえりは面白いなぁなんて思っていると不意にえりに手を掴まれた。
別に抵抗する理由もないのでそのままにしていると、えりが少し早足で歩き出すので
黙って歩調を合わせてついていく。
えりは長い廊下の角を曲がったところで突然立ち止まった。
それから口を開こうとした瞬間、私は手を引っ張られて気がつくとえりの腕の中にいた。
- 539 名前:Bye Bye Bye! 投稿日:2009/09/02(水) 18:24
- 私はあまりに唐突な出来事だったので動揺を隠せなかった。
自分達の家ならともかく、いつ人の目に付くか分からないこんな場所でえりが
こういうことするなんて珍しいことだった。
強いて言うなら私の方が無茶をする側で、えりは大体そんな私を嗜める側だった。
だからいつもとは逆だなぁと思いながら私はゆっくりと口を開いた。
「えり、ここだと色々とまずくない?」
「・・・・うん、分かってる。ちゃんと分かってるよ、舞美」
「ならやめておこうよ、ね?」
「ごめん。もう少しだけダメかな?」
「うん・・・・うん、そっか」
えりは私を抱きしめたまま肩に顔を押し付けるから、そのときどんな顔をしていたのかは
分からない。
ただ寂しそうな声だなって何となく思った。
だから離れることなんてできなくて私はそっとえりの背中に手を回した。
するとえりは軽く息を吐き出してからしっかりと私を抱きしめる。
- 540 名前:Bye Bye Bye! 投稿日:2009/09/02(水) 18:25
- こんなたわいもない時間がいつまでも続くと思っていた。
でもいつまでも続かなかった。
絶対に終わりはあって、時間がそれに向かって私を無理矢理連れて行く、時間よ止まれと子どもみたいに願って、でも決して止めることはできなくて。
自分は結局子どもで無力なんだと思い知らされた。
「舞美、泣いてんの?」
「えっ?あぁ、うん・・・・でもえりだって泣いてんじゃん」
「ははっ、何か馬鹿みたいだね。ウチらって」
「いいよ。馬鹿でいいよ」
私達は今同じような顔をしているんだと思ったら何だか笑えてきて、私は泣きながら
笑った。
そうしたらえりも泣きながら笑ってくれた。
私達は互いに背中に手を回して、骨が軋みそうなくらい強く体を抱き締め合って、
やっぱり時間が止まればいいのにと私は思った。
- 541 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/02(水) 18:25
-
- 542 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/02(水) 18:25
-
- 543 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/02(水) 18:26
- 短いですが、久しぶりに書いたのでこれが限界でした
- 544 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/02(水) 18:37
-
やじうめにがっかりした方もいると思うので、急遽リクエストを
皆様から募集したいと思います
正直またもスランプなのでネタが欲しい、というだけなので
協力してもらえると嬉しいです
条件はほぼ前回と同じです
・先着順で5つだけ書きます
・ベリキューのみのCP
・中途半端なところで話が終わったら、後は脳内妄想でカバー
・CPは何でもあり、できれば簡単に設定を考えて貰えると助かります
設定が書かれていない場合は勝手に考えるので、かなりやりたい放題な内容に
なる可能性があります
受付期限は特にありません、5つ集まった時点で終わりということに
させてください
それではまたもや勝手なお願いですが、ご協力お願いします
- 545 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 21:00
- リクエストさせて下さい!!
幼なじみで友達以上恋人未満な関係のみやあいりが読みたいですw
- 546 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 21:03
- みや→りしゃの微エロが読みたいですw
- 547 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 21:44
- 桃子舞美のエロが読みたいです。
更新楽しみにしてます!!
- 548 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 21:49
- まいみ→みやび
略してまいみや?w
みやびのツンデレに全力で振り回される舞美が見たいです
- 549 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 23:57
- うめすずで梅さんの卒業に揺れる愛理というのを
エロがあってもなくてもいいです
- 550 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/13(日) 16:09
- すでに6個目ですが、一応リクエストはりしゃキャプで。
リアルでもアンリアルでもいいです。
エロあったほうが嬉しい。
- 551 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/13(日) 18:19
- >>545-549の皆さん、リクエストありがとうごさいました
今回のリクはみやが多いのでキャラが被らないように頑張りたいです
あとエロに関してですが、できるだけ有りな方向でいきたいとは思ってます
ただあくまで予定なので期待しないで待っていてください
それと>>550の方のリクに関しては、今回ゲキハロでりしゃキャプの絡みが
ありそうなので多分書くと思います
ただ優先順位は先に頂いた5つのリクエストから書くので、気長に待ってもらえると
嬉しいです
- 552 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/09/13(日) 18:22
- ちょっとリクに時間がかかりそうなので、勢いだけで書いたキャプ×桃でも
見てもう少しお待ちください
あとさらに時間がかかりそうだったら、勢いだけで書いた島島コンビの話も
あるのでダメそうならそっちも載せます
- 553 名前:As ONE 投稿日:2009/09/13(日) 18:25
-
「ねぇ、キャップ。今ヒマ?」
桃のその言葉に適当に頷いたら私はスタジオ近くの公園に連れて行かれた。
まぁそこに至るまでには色々とあったのだけれど、くだらないことだし長くなるので
割愛させてもらう。
そこは公園というより広場というほうが正しいような場所で、一応遊具はあるけれど
こじんまりと一箇所に固まっている。
敷地の殆どが平地で周りにベンチが三つ等間隔に並んで置いてある。
そして真ん中には無駄に大きな噴水が置いてあって、夏になったら子どもが水遊びして
いる光景が容易に想像できるような場所だった。
私達は空いているベンチ、といっても昼間を少し過ぎた時間でしかも平日だったので
ベンチに座っている人は居なかった。
ともかくベンチに腰を下ろすと私は桃が口を開くのを待った。
私の推測だと何か悩んでいることがあるんだと思う。
でなければこんな所へ私を連れては来ないと思う、ただそれはあくまでも推測の範囲なので
本当のところは分からない。
気まぐれで連れ出したのかもしれないし、または突飛な思いつきだという可能性もある。
何しても今の私には桃の出方を待つしかなかった。
- 554 名前:As ONE 投稿日:2009/09/13(日) 18:26
- 「ねぇ、キャップ。ノド乾かない?」
「ん?うーん、まぁ少しは」
桃はいつもと変わらぬ調子で話し掛けてくるので、私のその質問に思ったままの
素直な感情で返した。
すると桃は何故か不満そうに唇を前に突き出す。
一般人との会話なら普通だと思われることがどうやら通じないらしく、相変わらず
よく分からない人だなぁと思う。
桃との付き合いは長い、キッズの頃から数えればもう7年も一緒にいることになる。
とはいっても別にずっと一緒にいたわけではないし、未だに桃について新たに知ることも
少なくはない。
「あのねぇ、キャップ。こういうときはさり気なくジュース買いに行くものなの。
もうっ!そんなんじゃ良い上司になれないよ?」
「はぁ?別に上司じゃないし。っていうか自腹で桃の分まで買うっていうのが一番イヤだ」
「そこ?そこは大して重要なところじゃないから・・・・・いやとにかく!もっとさ、
優しさを見せていこう?ベリーズの半分は優しさでできてるんだよ」
桃があまりにも真顔で言うから私は普通にちょっと引いた。
それから段々と言い返すのが面倒になってきたので、とりあえず無視することにした。
私は深い溜め息を吐き出すとベンチに背中を預けて空を見上げる。
空は雲一つない晴天でこれが休日で隣に誰も居なければ最高なのにと思った。
桃と話していると色々と疲れるから嫌だった、でも今のところ一度も退屈したことはない。
- 555 名前:As ONE 投稿日:2009/09/13(日) 18:29
- 「それじゃベリーズの残り半分は何でできてるわけ?」
「ん?それはもちろん桃の可愛さ!」
「ごめん、今日限りでベリーズ辞める」
あまりにくだらない桃の答えに私は立ち上がる、すると桃が急に顔色を変えて慌てて
引き止めようとするから少し笑ってしまった。
そうしたら桃も釣られたように笑った。
私はポケットの中に手を入れるといくつか小銭の感触があったので、ジュースを買いに
近くの自販機へ向かった。
「はい、適当に買ったから文句はナシね」
「えー!桃のジュース?キャップってたまに微妙なセンスのときがあるよね」
「・・・・・没収」
「ウソウソウソ!今のウソ!わぁー、嬉しいなぁ!優しいキャプテン、大好き!」
「はいはい、全く心が篭ってないお礼の言葉ありがとうございます」
私は一度桃から取り上げたジュースの缶を溜め息を吐き出すのと同時に手渡す。
でも途中でタダで渡すのも釈だなと思って、桃の手を直前で避けると前髪で隠された
額に置くように缶を当てた。
でも思っていたより勢いがついてしまって結構良い音がした。
桃は額を赤くして当然すぐに怒ったけれど、私は耳を押さえながら軽く無視した。
それから二人して黙ってジュースを飲んだ。
桃は何か言いたいことがあったのかもしれないけど、今は上機嫌で馬鹿みたいに
鼻歌なんて歌ったりしている。
それもベタに告白の噴水広場だったからちょっと吹き出しそうになった。
でもすぐに鼻歌にも飽きて、桃は少し遠くで遊んでいる子どもを見て目を細める。
その横顔からは本当に子どもが好きだというのが分かる。
本人の口から何度か聞いているから知っていたけど、すごく優しい顔をしていて
何だかいつもより少し大人に見えた。
- 556 名前:As ONE 投稿日:2009/09/13(日) 18:30
- 「・・・・佐紀ちゃんが男だったら子ども作れるのになぁ」
桃が不意に突拍子もないことを言うものだから、私は飲んでいたジュースを豪快に
口と鼻から噴き出してしまった。
「がはっ!・・ごほっ・・・・ごぼ・・・・バ、バカじゃないの!」
「ひどーい。っていうかキャプテン汚い」
「それは桃がいきなり変なこと言い出すからでしょ!」
「えー、桃のせいなの?」
「100%そうです」
「あー・・・・それはごめんね?許して、キャップ」
悪びれた様子もなく桃は手を合わせると可愛い声を出して謝る、その様子に私はただただ
呆れるしかなくてそれ以上何も言えなかった。
そして嗣永桃子は筋金入りの馬鹿だと私は改めて思った。
「っていうか私がもし男だとしたらこの状況はまずいんじゃないの?」
「えっ?撮られちゃう?あー、それはダメだね」
桃は無邪気に笑った、でも私には何だか寂しそうに見えた。
いつも能天気に笑って空回りして暴走してツッコミを入れられて、それが然も正しいこと
のように桃は振舞う。
でも時折こうやって繊細な部分を見せるから困る、傷つきやすくて脆い部分があるのに
あまり人に見せようとしない。
嗣永桃子は複雑な人間だと私は改めて感じた。
- 557 名前:As ONE 投稿日:2009/09/13(日) 18:32
- 本人はどう考えているのか知らないけど、分かる人にはその繊細な部分は分かると思う。
でも厄介なことに親しい人ほど桃はその壊れやすい部分を見せない。
どうにも如何せんややこしい事なのだけど、それは意外性の罠というやつなのか
一度知ってしまうと放っておけなくなる。
まず気になって、次に目が離せなくなって、最後に手が出てしまう。
私は桃の手を掴むと少し強引に自分の方へ引き寄せた、それから背中に手を回すと
少し力を込めて抱きしめる。
「えっ?ちょ!ちょっと!キャ、キャ、キャップ!?」
「ん?何?・・・・・あー、撮られちゃうかな?でもいいや、女だし」
「うん。ん?うーん、いい、のかな?」
「いいんじゃない?っていうかどうでもいいよ、そんなこと」
腕の中で桃はしきりに首を傾げては自問自答を繰り返している、私はそれを鼻で笑うと
どこか投げやりに答えた。
すると桃も納得したのか私の首筋に顔を埋めると静かに目を閉じる。
馬鹿みたいに昼間から抱き合って、まして私達は多分どっからどう見ても女の子で、
道行く人の好奇の対象には十分なりうる。
それでも桃を抱きしめているこの手を離す気にはならなくて、私はなんか色んな意味で
もうダメだなと思った。
- 558 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/15(火) 08:49
- 勢い待ちで行こう(・∀・)wktkwktk
- 559 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/15(火) 18:51
- 550です。
書いてくれますか!!嬉しいです。
リしゃキャプの次にさきももが好きなので、今回のは
たまりませんでした。
- 560 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/10/19(月) 17:32
- 最近またも仕事が忙しくて、なかなか更新できなくてすいません
まずはレス返し
>>558さん お待たせしました
もっと勢いでガーっと早く書ける人間になりたいです
>>559さん 楽しんでもらえたようで良かったです
りしゃキャプはゲキハロの設定を借りて書こうかなと思ってます
- 561 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/10/19(月) 17:37
- 今回はリクエストの一つで梅鈴です
梅田さんの卒業に揺れる愛理、というリクエストだったのですが
それらしく書けたと思ってます
そして勢いでエロ入れてみました
苦手なことはご注意を
- 562 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:38
-
楽屋のドアを開けたらえりかちゃんがいなかった
それだけで私の胸は痛む。
舞ちゃんと千聖は相変わらずくだらないことで喧嘩をしていて、なっきぃは少し離れた
ところで止めるべきか迷っていて、舞美ちゃんは一人筋トレに勤しんでいる。
そしていつもならえりかちゃんがソファーに座りながら雑誌を読んでいる、それが当たり前の
光景なのに今日はその姿がない。
ジュースでも買いに行ったのか、それともお手洗いにでも行ったのか、とにかくその姿が
見えないと何だか不安になる。
たった1人いないだけなのに、でもその1人が私には大きすぎていつもと全く違う
楽屋に思えた。
えりかちゃんの姿が見えないというだけでこんなに胸が痛むとは思わなかった
えりかちゃんが楽屋にいないだけでこんなに違うとは思わなかった
えりかちゃんがいないと私はダメなんだと知った
- 563 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:40
- 私は体を反転させると楽屋を飛び出して当てもなく走りだした。
えりかちゃんに会いたくなった、顔が見たくて声が聞きたくて、それからギュっと
抱きしめてもらいたかった。
でもあまりに必死に走っていたから、自販機コーナーにぼんやりと立っているえりかちゃんを
一瞬見逃しそうになった。
私は思わず普通に通り過ぎてしまったので急ブレーキで体を止める。
それから体の向きを修正すると人目も気にせずえりかちゃんに抱きついた。
「うわぁ!ちょ、ちょっと愛理?!いきなりどうした?」
いきなり抱きつかれたえりかちゃんは当然驚いていたけれど、それでもちゃんと背中に
手を回して抱きしめてくれた。
「・・・・・ごめん」
「いや別にいいんだけどさ。いきなりだったからちょっと驚いただけだよ」
私は言葉を返す言葉がなくてえりかちゃんの肩に顔を押し付ける。
するとえりかちゃんは何も言わず私の頭を優しく撫でてくれる、だから少しだけ
泣きそうになった。
こうやって抱き合うのもあと少しでできなくなる。
10月のあの日がきたら、えりかちゃんとは楽屋とかでは会えなくなってしまう。
だから互いの家とかでは抱き合えても仕事場ではまず抱き合えない。
そう思うと胸を直接掴まれたように苦しくなって、私はえりかちゃんの服の袖を伸びるくらい
強く引っ張った。
- 564 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:41
- いきなりのことで戸惑ってるかなと思って、その顔色をうかがうようにゆっくりと
顔を上げる。
するとえりかちゃんは目を細めて穏やかな表情をして笑っていた。
その顔を見たら自然と私の目から涙がこぼれた、するとえりかちゃんはその涙を指で
優しく拭ってくれる。
その瞬間いつもの私なら言わない言葉が口から飛び出ていた。
「あのね、えりかちゃん・・・・・今すぐ、抱いてほしい」
「へっ?あぁ、うん。いいけど、とりあえずここじゃないところに行こっか?」
「ふぇっ!?いいの?」
「だって愛理は滅多にこんなこと言わないじゃん。ってことはそういうことでしょ?」
「うん・・・・ありがとう、えりかちゃん!」
予想には反して意外にもえりかちゃんはあっさりと頷いてくれた。
そのことに少しだけ拍子抜けしたけど、理由を聞いたらすごく嬉しくなって私はまた
えりかちゃんに抱きついた。
突然のことにえりかちゃんは少し驚いていたけれど、それでもやっぱり優しく私のことを
抱きしめてくれた。
- 565 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:42
- それから私達は廊下の奥のほうにある、普段使わなそうな楽屋へ移動した。
中に入るととりあえずソファーに2人並んで座る。
私は何だか妙に緊張してきてぎこちなくえりかちゃんの手に軽く触れると、しっかりと
手を握り締めてくれた。
えりかちゃんは私の顔を覗き込むと、柔らかな笑みを浮かべながら空いている手で
髪を撫でてくれる。
その長い指で触れられると不思議と心が落ち着いていく。
それからどちらともなく顔が近づいて唇が触れる。
最初は軽く触れる程度だったのが、段々と角度がついてより深く私達は口付けしあう。
「っ・・・・はぁ・・」
「何かさ、今日の愛理っていつもよりエロいね」
段々息が苦しくなってきたなと私が思っていると、絶妙なタイミングでえりかちゃんは
顔を離した。
「えっ?そ、そう?別にいつもと変わらないと思うけど・・・」
「いやエロいよ。さすが自分から抱いてって言ってきただけのことはあるね」
そのえりかちゃんの言葉に反論する間もなく私は再び唇を塞がれた。
そして突然のことに固まってる私の頭の後ろに手を回すと、えりかちゃんは軽く笑ってから
口の中に舌を入れてきた。
「んっ・・・えりか、ちゃん・・・・」
私はえりかちゃんにリードされながら無我夢中で舌を絡め、そして求めた。
いつもより激しいキスで私の頭はすでに沸騰しそうだった。
- 566 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:44
- えりかちゃんはキスをしながら器用に私の服を脱がしていく。
そして気がつくと生まれたままの姿になっていてソファーに横たわっていた。
「愛理って本当に白いね」
「いやえりかちゃんのほうが白いと思うよ、それに綺麗だもん」
「愛理も十分すぎるくらい綺麗だって」
何だか恥ずかしくて少しだけ目を伏せた、そんな私をえりかちゃんは優しい目をして
見つめる。
それからまるで体の線をなぞるように、えりかちゃんは頭から足の先までゆっくりと触れる。
「いいよ・・・・別にそんな、お世辞なんか言わなくても」
「いやいやお世辞じゃないから。本当にそう思ってるよ、だから今欲情してるし」
えりかちゃんは言葉通り本当に欲情しているらしく、いきなり胸のほうに顔を近づけると
その先端を口に含む。
舌が先端に触れるたびに私の体は小さく震え、口からは甘い声が漏れ出す。
「っ・・・あっ!・・・やっ・・・んっ・・」
えりかちゃんは右手を私の腰の下に差し入れて支えてくれる、左手はしっかりと
指と指を絡ませて強く握ってくれる。
それからえりかちゃんは顔を右から左に移すと、同じように今の愛撫で固くなった先端を
舌で舐めたり突いたり、軽くかじったりする。
それだけで私は軽くイってしまいそうになった。
「愛理は左胸のほうが弱いよね」
「はぁ・・・っ・・ぁ・・・えりか、ちゃん・・・」
私は体がどうしようもなく熱く火照ってきて、荒い息を吐き出しながらえりかちゃんに
お願いする。
- 567 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:45
- するとえりかちゃんは笑顔で頷いてくれた。
それから私の額にそっとキスをすると、今まで腰を抱いていた手をそっと離した。
「久しぶりだからちょっと痛かいかもよ?」
「大丈夫・・・・えりかちゃんはきっと痛くしないと思う」
「はははっ、まぁ期待に応えられるように頑張るよ」
えりかちゃんは少し困ったように笑っていたけれど、すぐに優しい顔になると
私の中心に指をあてがう。
それから少しずつ中に指を入れると様子を見るように静かに動かし始めた。
「んっ・・・ふわぁ!・・っ・・・ぁ」
「大丈夫?痛くない?」
「へい、き・・・・全然、大丈夫」
「それじゃお言葉に甘えてちょっと遠慮なくやっちゃうよ」
その言葉がまるで合図だったかのように、えりかちゃんの長い指が
一気に奥まで入れられる。
「んんっ!やっ、あっ、っ、はぁ・・・・」
指の動きが早まるにつれて私の声がどんどん甲高くなっていく。
普段の私なら出ないような高い声を今にも飛びそうな意識の中で、まるで他人事のように
聞いていた。
不意に顔を上げるとえりかちゃんが視界に入る。
えりかちゃんはまっすぐ私を見つめてくれていた、いつもと変わらない優しい眼差し。
やっぱりこの人のことが好きだと改めて思った。
そしていつもまでも一緒に居たいと思った。
- 568 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:46
- 私は色んな思いを込めてえりかちゃんの手を強く握る。
「えりか、ちゃん・・・・もう・・なんか・・・」
「うん。楽になっていいよ、愛理」
えりかちゃんが手を強く握り返すと共に上から柔らかい声がした、それから私は
快楽の波に飲み込まれてしまってあまり覚えていない。
ただ頭が真っ白になっていく中で、何度もえりかちゃんの名前を呼んでいたような
気がする。
そしていつの間にか寝てしまっていたのか、目を覚ますと私はちゃんと服を着たまま
ソファーに横たわっていた。
隣には身を縮めるようにして少し窮屈そうにえりかちゃんが眠っている。
いつもはとても大人びて見えるのに、寝ていると少し子どもに見えるのが何だか少し
面白くて私は口を押さえて笑った。
それからえりかちゃんの肩の辺りに顔を埋めると、微かに甘い香水の匂いがした。
好きな匂いだなぁと思いながら私は静かに目を閉じる。
そしてもう少しだけ寝ていようと思っていると、突然携帯の着メロが鳴り出して
私は慌ててポケットの中を探した。
- 569 名前:即 抱きしめて 投稿日:2009/10/19(月) 17:47
- ようやく見つけるとすぐに電話を切った。
それから音が出ないようにマナーモードにすると、ポケットの中に再び携帯をしまう。
「はぁ・・・・きっと後で怒られるんだろうなぁ」
と独り言を呟いてからこの後のことを想像してみたけど、嫌な展開しか頭の中に
浮かばなかったので考えるのをやめた。
すごく怒られるのは覚悟している。
自分がしていることがワガママなのも分かってる、だけど2人きりの時間を今は誰にも
邪魔されたくなかった。
だって私達に残された時間はあまりに短いから
だからこそこの瞬間がとても愛おしくて手放すなんてできなかった。
「先のことなんて分からないから・・・・・だから、今だけはいいよね?」
私はえりかちゃんの手をしっかりと握ると、抱きつくように身を寄せてから目を閉じた。
- 570 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/10/19(月) 17:48
-
- 571 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/10/19(月) 17:48
-
- 572 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/10/19(月) 17:48
-
- 573 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/20(火) 23:43
- リクしたものです
何度も読み返してしまいました
素晴らしい梅鈴ありがとうございます!
- 574 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/11(水) 18:26
- 相変わらずですが、更新遅くなって申し訳ないです
まずはレス返し
>>573さん どうしても梅さんの卒業前に書きたくて、ちょっと雑に書いたかなぁ
と個人的には思ってました
なので喜んでもらえたようで良かったです
- 575 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/11(水) 18:32
- 今回はリクのりしゃみやです
リクエストにみや→梨沙子だったので片思い仕様になってます
なので全然甘くありません
あとリアルで微エロ、とのことだったのでそれらしく書いたつもりです
それでも良いという方は、どうぞ
- 576 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:33
-
卑怯なことをしている、という自覚は一応ある
こんなことしたって自己満足にしかならないのは分かっている
別に気持ちがこっちに向くわけでもないし、2人の関係が好転するわけでもない
それでも私は梨沙子に触れたかった
- 577 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:34
- 私は静かに深く息を吐き出すと、できるだけ足を立てないようにして梨沙子が眠る
ベッドに近づく。
そして片手を乗せると重みで少しだけマッドが沈み込む、一瞬起きるかなと思ったけれど
見た様子ではその気配はなかった。
「まぁ睡眠薬を飲ましたわけだし、そんなに簡単には起きないか」
改めて言葉にすると軽く針で突かれたように胸が痛んだけれど、私はそれを無視して
平然とベッドの縁に腰掛ける。
睡眠薬は最近不眠症だと嘘を吐くと、馬鹿みたいに簡単にマネージャーさんがくれた。
そしてそれを今日ホテルの部屋が一緒になった梨沙子に飲ました。
お風呂上りに「喉乾かない?これ飲んでいいよ」と優しく声を掛けたら、梨沙子は何の
躊躇いもなく私からコップを受け取った。
それが睡眠薬入りのジュースだと知らずに。
それから多分30分もしないうちに梨沙子は眠ってしまった。
元々ベッドに座っていたのでそのまま倒れるように寝てくれたのは助かった、もしも
変なところで眠ってしまったら移動させるのが面倒だから。
- 578 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:35
- 私は深い溜め息を吐き出してからゆっくりと梨沙子に馬乗りになる。
それから少し身を乗り出して顔を近づけると、さっきお風呂に入ったからか
微かに花のような匂いが鼻を掠めた。
「好きだよ・・・・・梨沙子」
無意識のうちにそう言葉が口からこぼれた、私は言った後にすぐ口元を押さえたけれど
どうせ聞こえてないからいいかと思い直した。
ずっと言いたかった、でも言えなかった
梨沙子の隣には私じゃない子がいるから、こんなこと言ってもきっと無駄に困らせる
ことにしかならない。
だから想いを隠してずっと見守っていこうと決めた。
というのはただの建前で、本当は梨沙子に想いを拒絶されるのが怖いだけだった。
- 579 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:36
- 梨沙子は昔から私に懐いていて、分かりやすいくらいはっきりと好意が感じられた。
だから私は梨沙子の『特別』なのだとずっと思っていた。
でもいつから変わったのか、それとも勝手に自分の都合良いように考えていただけなのか、
梨沙子は私ではない違う子を選んだ。
その手を強く握るのも、傍で支えるのも、強く抱きしめるのも、耳元で甘い愛の言葉を
囁くのも、全部自分に与えられた当然の権利だと思った。
でも私と梨沙子の位置は昔から今も変わっていない。
多分もう一生この位置は変わらないと思う、平行線のまま私と梨沙子は決して交わる
ことはない。
不意に悲しさか悔しさかよく分からない感情で胸が一杯になる。
梨沙子のことを思うと時々こんな風になる。
でも一時的なことなので私は目を伏せると、感情の波が引くまで奥歯を噛み締めながら
しばらく耐えた。
- 580 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:38
- それから感情が治まると私は一息置いてから梨沙子の服に手を伸ばす。
パジャマは淡い水色で襟元にはフリルがあしらってある、梨沙子が好きそうな可愛らしい
感じのものだった。
私は落ち着いた手つきでゆっくりとボタンを外していく。
不思議と焦りや不安感はなかった、まるでマネキンの服でも脱がしているかのような感覚で
梨沙子に触れていた。
でもその真っ白な肌が見えたとき無意識にノドが鳴った
パジャマを脱がすと白い肌と一緒に黄色のブラが自然と目に入る。
私は軽く息を吐き出してから梨沙子の首筋に顔を埋める、それから静かに唇で触れると
小さく呻くような声が聞こえた。
- 581 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:40
- 私は首筋に顔を寄せたまま胸に手を伸ばす。
最初は梨沙子の様子を見ながら触れていたけれど、睡眠薬を飲ませたんだから
起きやしないと自分に言い聞かせて手に力込める。
するとはっきりと梨沙子の口から甘い声が漏れだした。
「・・・はぁ・・・・んっ・・・」
梨沙子の普段聞いている声より高い声が聞こえてきて、私は胸が高鳴ると同時に
妙な満足感があった。
やっと梨沙子をこの手に抱ける、平行線上にいる二人が交わることができる。
これ以上私の心が満たされる事はない。
そう思うと急に感情が高まって私は顔を離すと梨沙子を強く抱きしめた。
私は抱きしめながらうわごとのように好きだと繰り返した。
「梨沙子・・・・好き、好きだよ、大好き、ずっと好きだった」
でもこの言葉はきっと梨沙子には届いていない。
だから絶対に嬉しい状況のはずなのに私は上手く笑えなかった。
- 582 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:45
- 私は梨沙子の髪を優しく撫でると額に触れるだけのキスをした。
それからゆっくりと顔を離すと、穏やかな微笑みを浮かべている梨沙子が視界に入った。
その表情は7年間も付き合いがあるのに今まで一度も見たことがないもので、
相手を全く警戒していない無防備な笑みだった。
それを見た瞬間、自分じゃダメなんだと思った。
梨沙子の横にいるのは私じゃないと本能的に分かった。
すると自然と目から涙がこぼれてきて、どんなに目を擦っても瞑ってみてもそれはしばらく
止まらなかった。
そしてようやく涙が止まると、私は馬乗りになっていた梨沙子からゆっくりと降りる。
それから顔を覗き込むと梨沙子は幸せそうに微笑んでいる。
本当に幸せそうな良い顔だった。
私は梨沙子に思われてるその子に少しだけ嫉妬した、だから最後にもう一度泣きながら
唇にキスをした。
- 583 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:48
- 「おはよう、梨沙子」
一応上半身を起こしたものの、まだ寝ぼけたような顔つきでいる梨沙子に軽く声を掛ける。
パジャマの裾で目元を擦りながら梨沙子は大きく伸びをした。
「ふわぁぁぁぁ・・・・おはよう、みや。んー、なんか、すごいたくさん寝た気がする」
と欠伸をしながら寝起きの少し低い声で梨沙子がぼんやりと呟く。
「確かに昨日の梨沙子はよく寝てたね。いびきとか超うるさかったし」
「えっ!ホント!?」
「ウソ」
「もうっ、やめてよぉ!本当かと思った」
「はいはい、ごめんね」
軽くからかうと梨沙子が少し怒ったので頭を撫でながら上手く宥める。
それから私は窓のほうへ向かってカーテンを勢い良く開けると、眩しい朝日が目に入って
思わず顔を逸らした。
- 584 名前:消失点 投稿日:2009/11/11(水) 18:50
- 私はあれから梨沙子にパジャマを着させると何もせずに寝た。
もしも告白していたら、あのまま抱いていたら、2人の関係は変わっていたんだろうか。
運命は変えられたのかな、と不意にそんな考えが頭を過ぎる。
でもきっと何をしても2人は平行線のまま変わらないと思う。
昨日までは平行線以外の場所に行ける気がしていた、でもあの無防備な笑みを見たら
一瞬で考えが変わった。
私にはどうやったってその場所へ辿り着くことはできないと。
「みや?どうかした?」
今自分がどんな顔をしているのか分からなかったけど、良い顔はしていないらしく
梨沙子が心配そうな顔つきでこちらを見つめてくる。
私は何だか急に泣きたくなって、でも泣き顔を見られるのは恥ずかしいから朝日で
眩しいフリをして手で目元を覆う。
「んー、いやまぁ・・・・とりあえずさ、来世で頑張ろうかなと思って」
とそれからなるべく平静を装いながら暢気な口調で答えた。
それから「えー、何それー」と梨沙子の不満そうな声が聞こえてきたけど、今喋ると絶対
声が震えてしまいそうだから何も言い返せなかった。
だから少し困ったように曖昧に笑った。
- 585 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/11(水) 18:51
-
- 586 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/11(水) 18:51
-
- 587 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/11(水) 18:53
-
- 588 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/12(木) 20:45
- りしゃみや待ってました!切なくていいですねぇ。何度も読んでしまいました。
ありがとうございました。
- 589 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/25(水) 16:20
- まずはレス返し
>>588さん お待たせしてしまってすいません
りしゃみや初書きで、なおかつ微エロだったので時間がかかってしまいました
楽しんでもらえたようで良かったです
- 590 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/25(水) 16:21
-
今回はリクエストの雅×愛理です
幼馴染で友達以上恋人未満な関係、ということでしたが一応それらしく
仕上がっていると思います
興味のある方はどうぞ
- 591 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:22
- 夏休み最後の日、私達は『ちょっと遠出して海へ行こう』という計画を立てた。
言い出したのは幼馴染の桃で、いつも突拍子もないことを言い出しては私ともう一人の
幼馴染であるみやを振り回す。
私は大概のことは桃に付き合う、みやは桃に色々と文句を言うけど何だか言って最後は
ちゃんと付き合ってくれる。
こんな感じで昔から私達は三人でどこかへ出掛けることが多かった。
今回も「夏だから海に行こうよ」と突然桃が言い出して、私は別に嫌じゃないから頷いて、
みやも少し渋っていたけど結局一緒に行くことになった。
「で、その発案者が風邪でダウンしたと」
「あはは・・・何か熱が38度くらいあるから今回はパスだって」
「まぁ桃がいないほうが静かでいいけどね」
「えっ?もうっ!そんなこと言ったらダメだよ!桃だって楽しみにしてたんだから」
「それもそっか・・・まぁとにかく行こうか?2人きりになっちゃったけど」
「あっ、う、うん」
2人きりというみやの言葉に私はつい動揺してしまう。
もしかして顔が赤くなってるかもと思って見られないように少しだけ俯いた。
できるだけ意識しないつもりだったのに、まさかみやの口からその言葉が出るとは
思わなかった。
でもみやは何か他意があったわけじゃなくて、ただ事実を言っただけだと思う。
私が勝手に一人で想像して盛り上がっているだけ。
みやはそんな私の気持ちに全く気づいていないらしく、普通にキップ売り場へ向かって
歩いていく。
私はまるで子どもみたいにみやの後に小走りで追いかける。
それから言われるままに海まで行くキップを買った。
- 592 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:23
- 「とりあえずここまで買って」
「あっ、うん」
「ちょっと時間がかかるんだけどさ、でも乗り換えないから楽だと思うんだよね」
「いつもごめんね?みやにばっかり色々調べさせちゃって」
「いいよ、もう慣れたし。っていうかその言葉をどっかの嗣永さんに聞かせてあげたいよ」
「あはは、桃はいつも最初に言うだけもんね」
海へ行くとは聞いていたけど、何処にどうやって行くのか私は何も知らなかった。
でもいつもこんな感じで桃は勢いだけで決めて後は放置、だから細かいことはいつも
みやが考えていた。
私はというと決まったことに従ってただついていくだけ。
それから私達はちょうどホームに着いた電車に乗り込んだ、どうやらみやの話では
一時間くらいかかるらしい。
「ちょっと長くてごめんね」とみやは気を遣って謝ってくれたけど、私はもっと時間が
かかってもいいとさえ思っていた。
だってみやと隣同士で座ってずっと話していられる、一時間なんて正直言って全然足りない
くらいだった。
- 593 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:24
- そして本当に一時間はあっという間だった。
降りる駅の名前がアナウンスで告げられたとき、私はやっぱりもっと話していたいと思った。
「愛理、ここで降りるよ」
電車が止まってドアが開くとみやは私の手を取って歩き出す
子どもじゃないんだから分かってるのに、って内心は思ったけど単純に手を繋げたのが
嬉しかったから私は何も言わなかった。
昔からみやはこんな感じでさり気なく優しい。
私が泣き出すと一番に桃が駆け寄ってきてくれて慰めてくれる、みやは後からゆっくりと
やってきて軽く頭を撫でるとその後は何も言わない。
でも黙ってるけど泣き止むまで私の傍に居てくれた。
私が泣き止むとみやはまた頭を撫でてくれる、それからいつも照れくさそうに笑っていた。
そのときの顔が本当に好きで、だから釣られるように私も笑顔になれた。
「どうしたの?愛理?何かニヤニヤしてるけど」
「へっ?あぁ、うん。ちょっと昔のこと思い出しちゃって・・・」
「昔のこと?そういえば小さい頃の愛理って泣き虫だったよね。泣き顔しか覚えてないもん」
「本当?そんなに泣き虫だった?」
「うん、泣き虫だった。でも泣いた後にさ、いつもすっごい良い顔で笑うんだよね」
それは「みやのおかげだよ」って言いたかった。
でも言えなくて、言葉が口の中で詰まっている間にみやは歩き出してしまった。
私は自分のヘタレさに呆れて小さく溜め息を吐き出すと急いでみやを追いかけた。
- 594 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:25
- 駅を出るとそこは少し寂れた感じの漁港だった。
目の前には大きな海と大きな船、あとはやっているのかやっていないのかよく分からない
お店が立ち並んでいる。
みやは辺りを見回して何かを探しているようだった。
そして目当てのものを見つけるとそこに向かって駆け出していく、私も慌ててその後を
追って走り出す。
「あー、ミスったぽっい」
「どうかしたの?」
「海岸まで行くバスに乗り過ごしちゃったみたい」
「次のバスはすぐ来ないの?」
「うん、時刻表通りなら一時間に一本しか来ないみたいだね」
「・・・どうする?近くに時間を潰すようなところもないみたいだし」
都会だったら適当にどっかの店に入って喋っていればいいんだけど、この場所では
その手は使えそうにない。
確かにお店はあるけれど時間を潰せそうな雰囲気がしない。
私は困ってみやに視線を向けると、みやは困っているどころか逆に楽しそうな
顔をしていた。
「少しだけこの辺りを探検してみない?」
「えっ?探検?」
「ダメ・・・かな?」
「いやダメじゃないよ、全然大丈夫!」
「それじゃ決定!早く行こう、愛理」
みやは軽く鼻歌なんか歌い出して知らない町を当てもなく歩き出す。
私はその後に黙ってついていく。
そのときふと懐かしい感覚に襲われた、昔もこういうことがあったような気がする。
何だったかなと私は記憶の糸を辿りゆっくりと思い出していく。
- 595 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:26
- あれは確かまだ私達が小学生低学年くらいだったときのこと。
いつもよりちょっと遠出してみようという話になって、私達はそのときよく遊んでいた
土手の向こう側に行ってみることにした。
でも橋を渡るとあまりに呆気なくて、もうちょっとだけ歩いて行こうという話になった。
初めて見る場所に私と桃は不安と戸惑いがあったけど、みやはそう思わないらしく
楽しそうに辺りを見回していた。
そんなみやに釣られてか私と桃もいつしか普通に笑って楽しんでいた。
でも楽しかったのは夕方までで、日が落ちる頃には私達は道に迷ってしまい完全に
帰り道が分からなくなっていた。
帰るのが遅くなれば親に怒られる、でも帰り道は全く分からない。
変な焦りともどかしさからか桃とみやはケンカを始めてしまう、私はどうしていいか
分からず2人の間でオロオロしていた。
いつもはすぐに治まるケンカもその日はなかなか止まらなくて、ついに私は泣き出して
しまった。
すると桃は慌てて私を慰めてくれて何度も「ごめんね?」と謝ってくれた、一方のみやは
気まずそうな顔で「ごめん」と一言だけ言った。
それから右に桃で左にみや、そして真ん中に私という順で三人で手を繋ぐととりあえず
歩き出した。
だけど結局道が分からないんじゃどうすることもできない、ってことになって私達は
色んな大人の人に道を聞くことにした。
とりあえず方向だけでも分かれば何とかなると子どもながらに考えた。
そしてあるおばあさんに道を聞いたら、逆に「どうしてここまで来たの?」と聞かれたので
私達は素直に自分達の状況を話した。
すると「これで親御さんに電話を掛けて向かいに来てもらいなさい」、と言っておばあさんは
300円もくれた。
私達は何度もおばあさんにお礼を言った。
そしてどうにか公衆電話を見つけると私の家に電話して迎えに来てもらった。
私はあのおばあさんに会ってお金を返したかったけれど、おばあさんの住んでる場所も
連絡先も分からないのであの日以来会っていない。
だけど今でもどこかで会えたらお礼がしたいと思っている。
- 596 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:27
- 「愛理?愛理ってば!どうしたの?またボーっとしちゃって」
「えっ?あぁ、ごめん。ちょっと昔のこと思い出してた」
「また?」
「うん。みや覚えてる?三人で道に迷ったときにおばあさんがお金くれたときのこと」
「ん?あぁ、覚えてるよ!もうっ超良い人だったよね、あのおばあさん」
「うん、すっごく良い人だったね」
それからあのときの話題で少しだけ盛り上がった。
桃が言い出したとか親に後で怒られたとか、あとは田んぼがあったことやすっごく大きな
バッタがいたこと。
話しているとあのときの光景が鮮やかに頭に浮かんだ。
もう随分と前のことなのにちゃんと覚えているんだなと思うと何だか嬉しかった。
そうして話していると不意にみやが足を止めて体ごと横に向ける。
私も立ち止まって首だけ横に向く。
目の前には長い石段とちょっと錆びついた感じの大きな鳥居がある。
何気なくみやのほうに視線を向けるとその目は子どものようにキラキラしていた。
あの頃と全く変わってないんだな、そう思うと無性に嬉しくて私の顔は自然に笑顔になった。
- 597 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:29
- 「ねぇ愛理、この石段の上に神社があるんだってさ。行ってみない?」
「うん、いいよ」
「本当に?すっごい長い石段だけどいい?」
「全然平気だよ、これくらい」
「やった!でも疲れたら言ってね?結構長い石段だからさ、休みながら行こう」
みやは私の手を取るとゆっくりと石段を上がっていく。
昔からみやは無茶なことを言い出すときはいつも私の手を握ってくれる。
危険な所へ行くときや近所の怖いおじいさんのところへ忍び込んだときも、いつだって
隣にいてくれた。
ちなみに桃も隣にいてくれるけど、何かあるといつも一目散に逃げるからあんまり
頼りにならなかった。
そうして私は頂上の境内を目指してひたすら長い石段を上る。
みやが一段上ったら私も一段上がる、私達は一段ずれていたけれど歩調はぴったりと
合っていた。
そんな調子で上っていると半分くらいきたところでみやが足を止める。
「愛理、疲れてない?大丈夫?」
「うんん・・・全然大丈夫だよ」
「少し休んでいく?」
「いいよ、このままいっちゃおう。あと半分くらいだし」
「まぁ愛理がそう言うならいいけど・・・もし途中で疲れたらちゃんと言ってね?」
「うん、ありがとう」
確かに少しは疲れてきていたけれど、休むほどではなかったから私はみやの提案を断った。
その優しい気持ちだけ受け取って私達は再び石段を上り始めた。
それから10分くらいして頂上に着いた、でも一気に登ったらさすがに疲れて肩で息をしていた。
私はあのときやっぱり休めば良かったかなとちょっとだけ思った。
- 598 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:30
- 「愛理、大丈夫?ごめんね?もう少しゆっくり行けば良かったよね」
「はぁ・・・はぁ・・・うんん、わ、私が・・・体力ない、だけだから」
「いやそれだけの問題じゃないよ。とにかくどっか適当な所に座って休もう?」
「うん・・・ありがとう、みや」
みやは辺りを探してくれたけど近くに座れるような場所はなくて、仕方なく私達は
神社の境内に腰を下ろす。
そして私達は休憩しながらたわいもない話をした。
それから大体10分くらい休むといい時間になったのでバス停に戻ることにした。
バス停に行くとちょうどバスが来ていて、みやが手を上げながら「ちょっと待った!」
と叫びながら走り出す。
私も釣られて「待ってくださーい」と叫びながら後を追うように走る。
そして2人は慌ててバスに飛び乗った。
でも運転手さんが「少しぐらいなら待ってるから大丈夫だよ」と笑いながら言うから、
私達は顔を見合わせると照れくさそうに笑った。
中には私達以外誰もいなくて貸しきり状態だったから、逆にどこへ座っていいか
迷ってしまう。
でも立っているのも何なのでとりあえず空いている席に並んで座る。
- 599 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:31
- 「ははっ・・・ちょっと恥ずかしかったね」
「うん。でも誰だってあれは叫んじゃうと思うよ、あぁいう状況だったら」
「だよね!だって行っちゃうと思ったもん」
「でもみやがあんな大声で叫ぶとは思わなかった」
「ふえっ?ちょ、ちょっと愛理!」
「でもね、叫んでる後ろ姿見ながらみやはやっぱり頼りになるなって思った」
「あ、ありがとう・・・って言うべきなのかな?」
みやは大声を出したのがかなり恥ずかしかったらしく少し顔が赤かった。
その様子があまりに可愛くてついからかってしまった。
でも大声で叫びながらバスを止めに走ってくれた、あのときのみやは素直に格好良いなぁ
と思った。
それから5分も経たないうちにバスは出発した。
でも何だか妙に2人とも落ち着かなくて、私達は体を反転させると半分くらい窓を開けて
少しだけ身を乗り出す
見慣れない町並みと微かに香る潮の匂いに自然と胸が弾んで、ましてや隣にみやがいるから
余計に私の胸の高鳴りは治まりそうになかった。
- 600 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:33
- 2人して子どものようにはしゃいでいるとあっという間に海岸に着いてしまった。
運転手さんにお礼を言って降りると、堤防を隔てた先に大きな海が見えて私達は小走りで
降りられる場所を探した。
それからようやく砂浜に辿り着くと、私は久しぶりに見た海に少し圧倒されてしまった。
でもみやも同じらしくてしばらくの間二人して呆然と海を見つめていた。
夏休み最後の日だしここがマイナーな海岸ということもあって、人気は近くにはなく
遠くの方に数人の人影が見える程度だった。
遊泳禁止なのかは分からないけれどとりあえず泳いでる人はいなかった。
でも私達も元々泳ぐ気はなかったから水着も持ってきてないし、何をするかという具体的な
ことは何も考えていなかった。
「これからどうする?とりあえず貝でも拾っとく?」
「あぁ、うん。そうだね」
「っていうかウチら何にも持ってきてないよね、遊ぶ道具とかそういうの」
「うん。でもただ海に行くとしか考えてなかったしね」
無計画だったのでこれからどうするか話し合っていると、突然『キュルキュル』と
何とも情けない音が聞こえてきた。
それは私のお腹から発せられたもので驚く同時に思わず顔が赤くなる。
みやは何とか笑うのを堪えようとしたけれど口元が完全に緩んでいた、でも結局耐える
ことができず腹を抱えて笑い出した。
そしてみやは笑いながら「とりあえず食べれる所に行こうか?」と言って手を差し伸べる。
私は気まずかったので顔を俯けながら静かにその手を握った。
- 601 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:34
- 探したけれどやっているお店は一軒だけで、そこで焼きとうもろこしと焼きイカと
焼きそばを買った。
お店のお兄さんが「二人とも可愛いからおまけね」と言って、二人じゃ食べきれないくらい
焼きそばを大盛りにしてくれた。
それから私達はお店の横にあるテーブルを借りて少し遅い昼食を取ることにした。
「まさかあそこで愛理のお腹が鳴るとは思わなかったよ」
「もうっ!恥ずかしいから言わないで!」
「ごめんごめん。でも桃がいなくて良かったね、居たら一生言い続けそうだもん」
「うーん、まぁ・・・そうかも」
「でしょ?」
「・・・ねぇみや、さっきのこと誰にも言わないでくれる?」
「いいよ。言わない。二人だけの秘密にしよ」
別にみやが言いふらすとは思っていないけど、一応不安だったから言ってみるとみやは
少し真面目な顔して頷く。
そして口元に指を当てるとイタズラっ子のように笑いながら約束してくれた。
その顔を見たらさっき以上に顔が熱くなったような気がして、私は横に逸らすとしばらく
熱が治まるのを待った。
- 602 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:36
- 結局焼きそばは全部食べ切れなかったのでパックのまま持ち帰ることにした。
その後は貝を拾ったりその辺に落ちている木の棒で字を書いたり、それを携帯で撮って
桃に送ったりして遊んだ。
楽しい時間はあっという間で気がつくと夕日が海を照らしていた。
「そろそろ帰ろっか?あんまり遅くなるとマズイでしょ、愛理の家って」
「みやと一緒だって言ってあるから大丈夫だよ。でもそろそろいい時間だもんね」
「うん。じゃ帰りますか」
「そうだね」
私は頷いたけれど本当は帰りたくなかった。
このままみやともっと一緒にいたい、でもみやが私のことを心配して言ってくれているから
頷くしかなかった。
私のワガママでみやを困らせたくない。
でもこの2人きりの時間が終わるのが惜しくて、私は軽く深呼吸すると意を決して
バス停に向かうみやの背中に叫んだ。
「ねぇ、みや!あの・・・あのね・・・えっと、その・・・今日は、楽しかったね」
本当に言いたい言葉が言えなくて私は結局適当に誤魔化してしまった。
みやは首だけ後ろに向けると、「うん、そうだね」と嬉しそうに笑いながら同意してくれた。
今はこれでいいかなと思い直して私は少し小走りでみやの後を追いかけた。
- 603 名前:Take It Easy! 投稿日:2009/11/25(水) 16:40
- また2人きりで来たいね、と言いたかった。
そうしたらみやはどんな顔をしたのかなと思うと、惜しいような気もするけれど
言わなくて良かったかなとも思う。
それにしても本当に自分は意気地がないんだなぁと改めて思って、何だかとても
情けないような気分になる。
私はこのモヤモヤした気持ちをどうにかしたくて突然その場で足を止まると、海に向かって
体を反転させる。
「バカヤローーーー!!」
とまるでドラマみたいに自分が出せる一番大きな声で思い切り叫んだ。
「ど、どうしたの愛理?急に叫んだりして」
「いや・・・えっと、やっぱり海に来たらこれをやらないとダメかなぁと思って」
「まぁ確かに定番だとは思うけどさ」
「そ、そうでしょ?」
「にしても誰に対してのバカヤロウなの?」
「えっ?あぁ、うーんと・・・桃、かな」
まさか誰に対してと聞かれると思ってなかったので少し動揺してしまった。
だけどまさか意気地のない自分に、なんて言えなくてつい咄嗟に桃と言ってしまった。
みやはその答えに納得したのか疑いもせずその場に崩れ落ちて笑い出す。
私は心の中で何度も謝ると、桃が風邪を治したら何か奢ってあげようと密かに思った。
- 604 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/25(水) 16:40
-
- 605 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/25(水) 16:40
-
- 606 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/11/25(水) 16:42
- とりあえずTake It Easy! のPV見てからのほうがより楽しめる、
ような気がする
- 607 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/28(土) 19:19
- みやあいりw
みやあいりw
- 608 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/29(日) 09:07
- すごくよかったです。
また続編とかがあれば見たいです。
- 609 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/15(火) 17:36
- レス返し
>>607さん 初書きw、初書きw
ってどんだけマイナーしか書いてないんだ、って話ですね・・・
>>608さん 良かったと言ってもらえて安心しました
続編は申し訳ないですけど多分書かない、というか書けないです
まぁ突然何かの拍子にみやあいりに目覚めたら別ですけど
- 610 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/15(火) 17:40
- 今回はリクの舞美→雅です
みやのツンデレに全力で振り回される舞美、とのリクでしたがどっちかというと
みやのほうが振り回されてる感じになってしまいました
・アンリアルです
・設定がちょっとおかしなことになってます
・↑のせいで無駄に話が長くなってます
それでもOKって方は、どうぞ
- 611 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:41
- 水色のブラウスに白のベスト、その上に着ている濃紺のブレザーには由緒正しそうな
金のエンブレム。
そして首のリボンは落ち着いた感じの黒が混じった赤色。
青を基調としたチェックのスカートは膝から上が見えないように歩くと、とっても上品に
見えるかもしれない。
でも私は今太ももが見えるくらい足を上げて全力で走っていた。
ひょっとしたらパンツが見えてるかもしれないけど、そんなこと気にしている余裕なんてない。
私は今かなり焦っていた。
転校初日、そして今日から通う私立でかなり厳しいと評判の学校。
とりあえず遅刻をしないほうがいいというのはバカな私でも分かることだった。
「あぁぁぁぁ、もうっ!だから私立はイヤだって言ったのに!」
一旦止まって皮製のカバンを腕に抱え直すと、学校へと続く長い坂道を走りながら
私は大声で愚痴った。
- 612 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:41
- 両親の突然の海外転勤のせいで私はいきなり私立の学校に転入させられた。
なんでも一人にするのが不安だからってことらしいけど、だからって寮のある私立女子高に
突然転校というのはちょっとおかしいと思う。
そのことを知ったのもつい2日前で、仲の良いクラスメートともあまり話せないまま
私は学校を離れることになった。
だから昨日の夜は別れ話にと色んな子に携帯で電話しまくった、そして次の日起きたら
ありえないような時間になっていた。
急いで制服を着たけど慣れないから無駄に時間がかかったし、そのせいでロクにご飯も
食べずに家を飛び出してきた。
学校の場所もよく分からないし、教えてもらったら坂の上だって言うし、その坂が無駄に
超長いし、もう最悪な展開過ぎて言葉もなかった。
「もう無理!時間内に辿り着けるわけないじゃん!」
私は絶望的な状況に諦めて足を止めると、重苦しいカバンを地面に投げ捨てて叫んだ。
そして深い溜め息を吐き出すとその場にしゃがみ込む。
このまま遅刻して怒られてもいいやと思っていると、道の横に連なっている茂みの中に
木でできた看板のようなものが見えた。
私は何だか気になってカバンを置きっぱなしにしたまま茂みの中に入った。
そして草や小枝を掻き分けながら進むと確かに看板があった、そしてそこには『秘密の抜け道』
と無駄に綺麗な字で書かれていた。
- 613 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:42
- 「はぁ?何これ?・・・・でもまぁどうせ遅刻なんだし、この変な看板に賭けてみますかね」
信用なんてしてないけどダメもとでこの看板に賭けてみることにした。
私は一旦カバンを取りに戻ると、覚悟を決めて茂みの中に飛び込むとそのまま勢いよく
走り出した。
本当は『秘密の抜け道』の下にちょっと危険だよって書かれていたけど、それは見なかった
ことにして私はとにかく学校を目指して走った。
そしてわずか5分で後悔した。
激しい急斜面はあるし、一歩間違ったら死ぬみたいな場所を通らないといけないし、おまけに
最後は崖みたいなところロープを使って登った。
ようやく学校の校内らしき所に着いたときにはもう心身ともにやられていた。
「バ、バカじゃないの・・・・普通に危険すぎだからあの道!」
私は肩で大きく息をしながら誰に言うでもなく宣言する。
でもふと我に返って辺りを見回してみると、さっきまで通ってきた景色とは正反対の
整った美しい光景に唖然としてしまった。
綺麗な黄緑色の芝生に整備されたレンガの道、その道の横には等間隔で花が植えられていて
何もかもが眩しく見えた。
さすが私立だなと思っているとどこからか馬の足音のようなにものが聞こえてくる。
私立だからってまさか馬に乗って登場とかないよね、と自分でも考えながらバカだなと
思って笑ってしまう。
そして私は何気なく音のする方に振り向くと、バカがいた。
- 614 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:43
- 「そこの君、初めて見る顔だけど転校生?」
黒馬に乗ったその人は私の顔を見て不思議そうに小首を傾げながら質問する。
淡い水色のシャツに灰色のベストを着て腰には細めの革でできたベルト、そして下は
白い細身のズボン。
首には細い黒のリボンをつけている。
そして上にまるでマントのような白いロングコートを着ていた。
一瞬どこぞの王子様か騎士かと思ったその子は、長い黒髪を揺らし綺麗な顔立ちをした
女の子だった。
とりあえずこの学校無理だわ、マジで
- 615 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:43
- 「えっと、まぁ・・・・一応転校生ですけど」
「やっぱりそうなんだ!いや見ない顔だと思ってたんだよねぇ」
「あの、えっと・・・・何からツッコんでいいか分からなくて困るんですけど」
「あっ!自己紹介もせずに失礼しました」
「えっ?自己紹介?」
女の子は突然何かを思い出したような顔つきで手を叩くと慌てて馬から降りる。
そして胸に手を当てると名前を名乗らなかったことを詫びて頭を下げた。
正直この女の子の名前なんかよりも、いきなり馬に乗って登場したのかということの方が
何倍も気になる。
でも頭まで下げられたらそんなこと言えなくて、黙って女の子の自己紹介を聞いて
あげることにした。
女の子は軽く身なりを正すと私の目の前までやってくる。
そして何を思ったのかいきなりその場で跪くと私の手を取って軽く口づけをした。
あまりに突然で理解不能な出来事に私は口を開けたまま呆然としてしまう。
けれど女の子はそんな私の様子を気に止めることもなく、すぐに顔を上げると爽やかな
笑みを浮かべてこちらを見つめる。
初めて手にキスをされたからだと思うけど、一瞬だけ胸がすごく熱くなった。
- 616 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:44
- 「私は学園の騎士団長を務めています、矢島舞美です。よろしくお願いします・・・・姫」
私を真っ直ぐに見つめて女の子、というか矢島さんは自分の名前を教えてくれた。
「あぁ、どうも。えっと、私は夏焼雅です・・・って姫?!」
「それじゃ行きましょうか?」
「えっ?ど、ど、どこにですか?」
「どこって・・・まずは校舎に行かないといけないんじゃないんですか、姫は」
「あっ!そうだ!ヤバイ!このままじゃ遅刻じゃん!」
「大丈夫。こいつで行ったらすぐ着きますから。さっ、乗ってください」
そうして半ば強引に矢島さんに手を引かれて馬に乗せられる。
馬に乗るの初めてだなぁなんてのん気に思っていると、矢島さんが跨って後ろから
抱きしめられるみたいに手を伸ばされる。
そのとき私はなぜか少し緊張してしまい思わず体を縮める。
でもその手は当然手綱を掴むと、「ハッ!」という矢島さんの掛け声と共に馬は勢いよく
走りだした。
宣言通りに馬はかなり速くて本当にすぐに校舎に着きそうだった。
でもふと我に返ると今の状況がかなり意味不明というか、普通の世界から随分とかけ離れ
すぎてることに気づき頭が痛くなってきた。
騎士とか姫とか、おまけにこうして馬に乗っていることでさえ全然意味が分からない。
私は矢島さんにそのことを聞こうと思って首だけ後ろに向ける、すると矢島さんは
真剣な顔つきで前を見つめていた。
他に何も見えていないような真っ直ぐすぎる瞳。
私は吸い込まれるようにその瞳から目が離せなかった、でもすぐに惚けてる自分に気づき慌てて顔を正面に戻す。
とりあえず今喋ると舌を噛みそうだから質問するのをやめた。
- 617 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:45
- それから何とか遅刻せずに学校の校舎に着いた。
でも制服も汚れているし髪が乱れているなどで結局校長みたいな人に怒られた。
「ですよねー」という感じだったので当然私は反論もできず、初日から長いお説教を
延々と聞かされるハメになった。
そしてようやくお説教から開放されると私が一番聞きたい話題になった。
これまた長い話だったので適当にまとめると、騎士はこの学園で運動神経が良くて
人望が厚い人などが推薦で選ばれるものらしい。
つまりは学級委員長みたいなもので、団長はその中でも一番優れている人がなる
と校長は言っていた。
つまりさっきの矢島さんは結構すごい人らしい。
そして姫というのは騎士と同じく優れた優等生が呼ばれるらしい、でももう一つあって
騎士がその人に付くと自動的に姫と呼ばれるというものだった。
その辺がいまいちよく分からないけれど、とりあえず優等生じゃない人以外は騎士が勝手に
姫を選ぶシステムらしい。
普通は姫が騎士を選ぶと思うけどここでは逆で、騎士の人気が高いからこういうことに
なっているという話だった。
とにかく話を聞いているうちに私は卒業までやっていけるのか心配になってきた。
でも強制とはいえ入ってしまったんだから我慢するしかない。
- 618 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:46
- 先行きが不安だけしかないなぁと思いながら、私は少し憂鬱な気分で学園長室を後にした。
するとなぜか廊下を埋め尽くすくらいの大勢の女の子達がいた。
一瞬私の為になんて思ったけれど、どう考えても普通の一般人である私を見に来た
可能性はほぼゼロに近い。
何かあったのかなと思っていると人だかりの真ん中に知っている顔があった。
「あっ、姫!」
まるで渋谷とか池袋の人混みの中から知り合いでも見つけたかのように、矢島さんは
私と目が合うと手を振ってこちらにやってくる。
その瞬間、矢島さんを囲んでいた女の子達が一斉に私を見つめる。
どう見てもそれは良い感じの視線ではなかった、というか明らかに睨まれている気がする。
そのことに矢島さんは気づいていないのか平然とまた私の前に跪く。
すると耳を塞ぎたくなるくらいの悲鳴とブーイングの嵐、そしてさっきよりも怖い顔で
私は睨みつけられた。
もう辞めたいんですけど、この学校
- 619 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:47
- それから私の気苦労ばかりな学校生活が始まった。
まずクラスでは矢島さんのおかげで総スカン、というか学校中から総スカンくらっている
ような気がする。
それだけ矢島さんの人気がすごいってことなんだろうけど、一方的に姫に選ばれた
私にとってはいい迷惑だった。
まぁそんな状態だから当然友達なんてできるはずもなく、私は一人行動するしか選択肢が
なかった。
でも元々少しだけ一匹狼資質があるので、一人でいることはそんなに辛くはなかった。
それに頭を下げてまであんな人達と友達になりたくはない。
だっていくら矢島さんを取られたからって、陰口を叩いたり私の教科書を隠したり、
すれ違い様にぶつかってくるなど、その他もろもろ色々やられた。
というかそもそも矢島さんが勝手に言い寄ってきただけで、私が奪ったわけでも何した
わけでもない。
ともかくそんな嫌な人達と友達になんて絶対になりたくなかった。
それに当然だけど私の騎士である矢島さんが世話を焼いてくれるので、学校生活を送る分には
そんなに問題なかったりする。
朝は寮から出ると矢島さんが待っていて、「おはようございます、姫」と言って愛馬の
チサト号に乗って出迎えてくれる。
そして私は馬に乗って悠々と学校へ登校、だから今のところ遅刻ない。
あとは授業が終わるたびに「姫、いらっしゃいますか?」と様子を見に来てくれる。
一番初めに一時間目が終わって来てくれたときはちょっとだけ嬉しいと思ったけど、
その日の四時間目が終わって来たときは正直ウザかった。
それに昼食もお金を渡せば買ってきてくれて、「焼きそばパンとアイスティー」と言えば
十分以内には買ってきてくれる。
まぁそんな感じで初めはストーカーかと思ったけど、慣れるとパシリのように使えて
結構便利な存在だった。
嫌がらせだって矢島さんの後ろ盾があるから実はそんなに表立ってはされない。
逆に私のほうは強気に出られるので楽だったりする。
だって嫌がらせしてきた子に「私の騎士にチクるよ?」と言えば、大抵の子は悔しそうな
顔をして次からは何もしてこない。
そう思うと姫も悪いもんじゃないかなぁと最近は思えてきた。
- 620 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:48
- 「舞美ってさぁ、いつから騎士やってんの?」
「えっ?この学園に入ったときからやってるけど」
「何それ?!入ったときからソッコウで騎士ってアリなわけ?」
「うん。入学時に一番成績の良い人は自動的に騎士になれるシステムだから」
「スゴ。っていうか舞美が普通にスゴいんだけど」
「あはは、姫ったらそんなに褒めないでよ。照れるからさ」
なんて暢気なことを言い合いながら、私達は学園の中央に位置する庭園の一角で
天むすを食べていた。
この変な私立学校に転校してきてから二ヶ月半、私はいつからか矢島さんのことを舞美と
呼ぶようになった。
最初はすごく堅苦しい人かと思っていたけど色々と話していくうちに、意外と天然で
普通の女の子と変わらないことが分かった。
だから私は騎士とか姫とか関係なく友達として普通に接している。
ちなみに舞美のほうが本当は学年が一つ上なんだけど、そういうこともあんまり気にせず
呼び捨てだしタメ語でしゃべっていた。
舞美もたまに敬語だけど基本的にはタメ語で話してくれる。
だけど私を姫と呼ぶのは初めて会ったときから今でも変わっていない。
初めは言われ慣れないからキモいと思ったけど、慣れてしまうとあだ名と同じような
感覚であまり気にならなくなった。
でももう互いに友達みたいな関係だし、舞美から姫と呼ばれるのも変かなと思った。
- 621 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:49
- 「あのさ、姫って呼ぶの止めない?まぁ最近は慣れてきたけど・・・でも何かさ・・・」
「うん。姫がそう言うなら止めるけど、代わりになんて呼んだらいい?」
「えぇっ!?あぁ、うーん、まぁ普通にみやでいいんじゃないの?」
「じゃぁ・・・みや!」
姫と呼ばないでとさり気なく提案してみたら舞美はあっさりと頷いてくれた。
逆にあまりにも簡単に頷くもんだから私のほうが驚いてしまった。
それから舞美は私の指定した名前で何のためらいもなく呼んだ、それもこっちを真っ直ぐ
見つめたまま満面の笑みで。
だからただ名前を呼ばれただけなのに胸は大きく高鳴った。
「や、や、やっぱナシ!」
「へっ?」
「姫でいい。名前呼びはナシの方向で」
「まぁ姫がそう言うなら私はどっちでもいいんだけど・・・姫、なんか顔赤くない?」
「べ、別に赤くないし!っていうか少しの間こっち見ないで!」
「ふふっ・・・了解しました、お姫様」
間違いなく今の自分の顔は赤いと思う、だからそんな顔見られたくなくて横に逸らすと
舞美に命令した。
すると舞美は楽しそうに笑ってから私の命令通りに背を向けて座り直す。
名前を呼ばれただけでこんなに動揺してしまうなんて自分らしくない、というか舞美に
会ってから調子が狂うことが多い気がする。
そう思ってふと横目で舞美を見ると馬鹿みたいに背筋を正した背中が見えた。
真っ直ぐで迷いがなくて綺麗な背中だった。
そのとき自分とは釣り合いが取れない人だと、改めて思い知らされた気がした。
今更気がつくなんてアホだな、私
- 622 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:50
- その日から私は舞美と距離を置くようになった。
元々騎士っていうのがよく分からなかったし、自分は姫とか慕われるような人柄でもない。
舞美が寄ってくるから一緒に居たけど多分その隣に私は相応しくない。
というか舞美は私の傍に居過ぎだった。
この学校に入学して二ヵ月半、いつも傍にいるのが当たり前だったからいないと少しだけ
寂しい感じがした。
でもそれも慣れないだけで時間が経てば一人にも慣れると思った。
舞美も初めは戸惑っていたみたいだけど、私が朝早く一人で寮を出たり昼食を一緒に
取らなくなったら空気を読んで離れてくれた。
たまに話すことはあるけど、前のように年中私に付き纏うということはなくなった。
だから最近は一人の時間が多くなった。
それを見て周りの子達は「捨てられた」とか「当然の結果」とか言っていたけど、所詮は
負け犬の遠吠えなので気にしなかった。
でも舞美のことはいいとして絡まれるのが倍増したのには困った。
多分舞美の後ろ盾がなくなったと思ったのかこぞって私に嫌がらせしてきた。
殴っていいなら殴りたいほどウザかった。
でも露骨なことをしてくるわけではないので、犬のフンでも踏んだとでも思えば
我慢できないことでもなかった。
でも今日に限って私は露骨なくらい絡まれていた。
- 623 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:51
- 放課後の校舎の裏という呼び出しの定番みたいなところに私は連れてこられた。
当然自分の意思とは関係なく半強制的に。
でも抵抗すればできたと思う、ただそういう気力すらなくて黙って連れて行かれた。
校舎裏に着くと十人くらいの女の子達の集団がいて、その真ん中に少し偉そうに腕を組んだ
アラブ人ぽっい顔立ちの先輩がいた。
「ふっふっふ、よくここまで来れたものね、夏焼雅」
「はぁ・・・・あんたが黒幕?」
「誰が黒幕よ!」
「えっ?それじゃもしかして裏番?」
「違うわよ!」
「じゃぁ何なの?」
「私は矢島舞美様(騎士団長)応援クラブの会長よ!」
「・・・何それ。っていうかネーミングセンスなさすぎなんですけど」
堂々と胸を張って会長がクラブ名を名乗っていたけど、あまりにもダサかったので
ツッコミを入れた。
するとどうやら禁句だったのか会長さんは顔を真っ赤にして怒り出した。
私としてはその怒りどころすら理解できなかった。
「キィィィィィィィ!矢島様を独占するだけでも万死に値するのに、この高貴なクラブ名に対する侮辱!許すまじ、夏焼雅!・・・皆さん、やっておしまいなさい!」
今時時代劇でしか聞けないような言い回しに呆れていると、掛け声と共に会長さんの
後ろにいた女の子達が一斉に動き出す。
そしてあっという間に私は周りを囲まれてしまった。
- 624 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:53
- 「これって・・・戦隊ショー?」
「違うわよ!でもそんなことを言っていられるのも今のうちですわ、夏焼雅!」
「・・・何する気?まさか集団リンチとか?」
「そんな下品なことするわけないでしょ?ただ貴方を裸にしてその写真ばら撒くだけよ」
「ちょっと!そっちのほうが下品だから!それにお嬢様のすることじゃなくない?」
「もうっ!そんなことはどうだっていいのよ!」
裸の写真をばら撒くという発想にツッコミを入れずにはいられなかった。
でもそんなくだらない話をしている間にも、女の子達はどんどん私に近づいてくる。
ようやく笑っている場合じゃないことに気がついたけど、どうやら遅かったみたいで
もう逃げられそうになかった。
どうすることもできない私を見兼ねてか、会長が得意げに笑いながら声を掛けてきた。
それも完全な上から目線で。
「もし矢島様から手を引くというのなら助けてあげてもよくってよ?」
「・・・舞美から・・・・手を引く」
本当なら会長の言葉にすぐに頷けばよかった、というか頷けると思っていた。
今だって舞美とはほぼ一緒に居ないから手を引いてるような状態だと思う、だけどどうしても
頷くことができなかった。
私は自分でもそのことに驚いてしばらく声が出なかった。
- 625 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:54
- 「どうやら手は引けないという答えのようね。仕方ないわねぇ・・・皆さんやっちゃって!」
何も答えなかったのをどうやら拒否と思ったらしく、会長が高らかに命令すると
一斉に女の子達が私に手を伸ばす。
そして制服を掴まれた瞬間、なぜだか不意に舞美が優しく微笑む姿が頭の中を過ぎった。
「まい・・み・・・舞美!舞美、助けてにきて!」
と私は無意識のうちに舞美の名前を大声で叫んでいた。
でも叫び終わってからドラマやマンガじゃないし助けに来てくれるはずない、と思って
自嘲気味に笑った。
そのとき馬の足音のようなものが遠くのほうから聞こえてきた。
でもまさか来るはずないだろうから、きっと願望で何かの音がそう聞こえたんだろうと
初めは思っていた。
でもその音はどんどんこちらに向かって近づいてきて、そしてそれははっきりと
馬が走っているときの音だと分かった。
「ヒヒィィィィン!」という馬の鳴き声と同時ぐらいに女の子達の悲鳴が聞こえて、
囲いが崩れると視界が一気に開ける。
すると私の目の前に黒い馬に乗った騎士がいた、長い黒髪を揺らし他に何も見えていない
と思うくらい私を見つめる真っ直ぐな瞳。
もうどうしょうもないくらい好きだ、舞美のこと
- 626 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:55
- 突然現れた舞美に私も含めてみんな驚いた顔をしていた。
中でも会長さんは顎が外れるんじゃないかってくらい口を開けて驚いていた。
だって誰一人として舞美の登場なんて予想していなかったから、特に私は絶対に
来ないと思っていた。
「矢島様!!」
「会長、手を引いて頂けますね?貴方は私にとって大切な友人だ、できれば傷つけたくない」
「本気・・・なのですね」
「はい。本気です」
「ふぅ・・・皆様、帰りますわよ。これ以上ここにいると矢島様の制裁を受けそうですから」
舞美と会長さんがどういう関係なのかは分からない。
でもさっきまでの会長さんの行動を見ていた私としては、当然もっと食い下がるのかと
思っていた。
それなのに予想していたよりもあっさりと会長は仲間を引き連れて行ってしまった。
- 627 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:57
- 舞美は会長達が去るのを見届けると馬から降りる。
そしてゆっくりと私のほうに近づいてくる、たったそれだけのことなのに私の胸は
馬鹿みたいに高鳴りだす。
舞美は私の前に立つと深く頭を下げる、そしてそのまま真剣な声で謝ってきた。
「お助けするのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした!」
「・・・・舞美、なんで来たの?」
「来たらいけませんでしたか?」
「い、いや、別にそういうわけじゃないけどさ」
「お姫様を助けるのは騎士の役目ですから・・・とか言って」
本当は素直にお礼が言いたかったけれどその顔を見たら言えなくて、結局いつものように
ぶっきらぼうな口調になってしまった。
というかまともに舞美のことが見れなくて私は顔を横に逸らしていた。
でも助けてくれたのにこんな態度じゃ悪いかなと思って顔を正面に向ける、でもその瞬間
舞美は爽やかな笑顔で笑う。
計算でやっていないのは分かってる。
分かっているからこそ胸の高鳴りが余計に治まらせなくて、私はきっと火照っているだろう
顔を見せたくなくて背を向けた。
- 628 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 17:58
- 「姫、こちらを向いてください」
「・・・ヤダ」
「こちらに向いてください」
「い・や・だ」
「それでは・・・無礼をお許しください」
「ちょ!それ超卑怯だから!」
恥ずかしくて舞美の顔が見れなかった。
だから断っていたら最初は優しく言ってくれていた舞美だけど、痺れを切らしたのか
肩を掴まれて力づくで体の向きを変えられた。
でも舞美の真っ直ぐな瞳と目が合うと耳たぶが異様に熱くなって、今の自分はきっと
タコみたいに顔が真っ赤だろうなと思った。
「姫は私のことが嫌い?」
「嫌いじゃ、ないよ」
「それなら避けないでよ。何か嫌なところがあるならちゃんと言って?」
「だから嫌いなところなんてないし」
「いや、遠慮しなくても全然大丈夫だよ。言ってくれれば全力で直すから!!」
「別に遠慮とかしてないし。っうかむしろ好きだから、舞美のこと」
言い合いをしていたらいつの間にか私は告白していた。
最初はすぐには分からなかった、でも後からハッとなって自分が口を滑らせたことに
気がついた。
舞美は突然の私の告白に間の抜けた顔をして固まっていた。
- 629 名前:大きな愛でもてなして 投稿日:2009/12/15(火) 18:00
- 「ちょっと待って!今のナシ!本当にナシ!今すぐ忘れて!」
「うーん、その命令は聞けそうにないかな」
「ちょ!・・・もうっ!舞美のバカ」
私は告白を取り消すように命令すると初めて舞美は拒否された。
それも嬉しそうに笑いながら。
私はまた顔が火照るのを感じて小さな声で文句を言うと俯くしかなかった。
すると舞美は私の前に跪いてごく自然に私の手を取る、それから軽く咳払いをすると
舞美は急に真剣な顔になった。
だから何かすごいことでも言われるのかと思って私は少し身構えてしまった。
「それでは夏焼雅さん、改めてお願いします。私の姫になってくださいますか?」
「へっ?ま、まぁ・・・・しょうがないからなってあげてもいいけど」
「それは光栄の至り」
舞美の言ったことは別にすごいことでも何でもなかった。
ただ言われたときすごく嬉しいと思った。
でも素直に頷くのも何だか嫌だから私は偉そうに上から目線で答えた。
すると舞美はとても嬉しそうに微笑むと、初めて会ったときと同じように手の甲に
優しくキスした。
- 630 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/15(火) 18:03
-
- 631 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/15(火) 18:03
-
- 632 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/15(火) 18:04
- みやのツンデレが書けて自分的には満足です
- 633 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/15(火) 20:46
- みやのツンデレが読めて自分的には大満足です(^q^)
- 634 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/16(水) 02:22
- お腹痛いw○○号とか○○○人とかwってか設定からしてw
楽しまさせて頂きました。
- 635 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/31(木) 17:58
- まずはレス返し
>>633さん 大満足という言葉が聞けただけで自分は悔いはないです
機会があればまたみいみやびは書こうかなと思います
>>634さん 話は少女マンガ系だったので所々で遊ぼうと思い、
あんな感じにしました
個人的にみやと○○○人さんとのやり取りが好きです
- 636 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/31(木) 18:03
- 今回はリクエストを頂いた中から最後になってしまいましたが
桃×舞美です
もしも逆だったらすみません
内容がエロとのことだったので、一応書きましたが色んな意味で
あんまりエロくない作品になりました
・一応エロ有ります
・アンリアルですが結構設定が適当です
・桃のキャラがおかしなことになってます
以上のことを踏まえて、それでもOKという方はどうぞ
- 637 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:04
-
PM 16:45
所々破けた黒い社長椅子に桃子は腰を下ろすと、少し離れたところにある業務用の事務机に
足を投げ出そうとする。
けれど相変わらず足が短いのであと一歩のところで届かず、桃子は顔を顰めると軽く
舌打ちをした。
そして気分を変えるために砂糖をありえないくらい入れたブラック珈琲を一口飲むと、
短く溜め息を吐き出してから肘掛けに頬杖をつく。
今日は何か大きな依頼がきそうな予感がする。
桃子の自慢のお尻がむず痒いのだ、こういうときは大抵いつも大きな仕事が来る。
決してお風呂に一週間くらい入っていないからではない。
ともかく桃子のこの予感は外れたことがなかった。
それから桃子が珈琲に再び口をつけようとすると、部屋に備え付けられている黒電話の
何とも古めかしい音が部屋に響き渡る。
三コール目で助手が出ると間違い電話ではないらしく会話が続いている、そして一旦
受話器を置くとこちらに話を振ってきた。
- 638 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:05
- 「嗣氏、依頼の電話だけどどうすんの?」
「ちょっと佐紀ちゃん!ここでは所長って呼んでっていつも言ってるでしょ!」
「はいはい。で、どうするの?依頼主さん待たせてるんだけど?」
「依頼って裏と表どっち?」
「・・・一応裏だけど」
「なら答えは一つ、受けるよ。条件はいつもと同じで料金三割を前金払い、その他
出張料などは後で要相談って伝えておいて」
「了解しました。ではそのように依頼主さんにお伝えしておきます、所長」
「うん、よろしい!」
それから数分して助手の佐紀は丁寧に電話を切った。
佐紀はこの事務所を始めたときから働いてもらっていて、今みたいに電話番や仕事が入った
ときは色々と手伝ってもらっている。
元々は幼稚園からの幼馴染なのだが、佐紀が言うには腐れ縁らしい。
時給は友情価格で千円、桃子のお小遣いをそのまま回しても足りないので今のところ
十万円程借金をしている。
そして事務所は現在使われていない倉庫で許可も取らず勝手に居座っているので、もしも
持ち主に見つかったら退去させられるのは間逃れない。
とりあえず今は通報されないことを心の底から祈っている。
桃子はここで人々の悩みを解決するという崇高な仕事に就いていた、でも佐紀に言わせれば
ただの何でも屋なのだがそれは言わないお約束というやつだった。
この仕事を始めてから三ヶ月程だが依頼はまだ三件しかこなしていない、それでもどうにか
続けていけるのは裏の仕事があるからだった。
- 639 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:06
-
裏の仕事
桃子は幼い頃から異様に霊感が強く、辺りにいる普通の人間と変わらずに霊が見えていた。
それどころか会話もできるし触れることさえもできた。
裏の仕事とはそんな桃子の能力を生かした、主に除霊などの霊に関する仕事だった。
だが今でさえ仕事として使える能力だが、最初はこの能力が誰かに知られるのが怖くて
ずっと隠していた。
でも長い時間一緒に暮らしている家族にばれないはずなどなく、今から三年位前に桃子の
この能力を知られてしまった。
普通なら母親とかが「桃子、恐ろしい子!!」などと言って苛めを受けそうものだが、母親も
父親もあと可愛い弟さえも桃子を嫌わなかった。
むしろ「特殊能力とかマジで超スゲェー!」みたいな勢いだった。
そんな家族の支えもありこの仕事を始めることにした。
色々と危険が伴うけれどそれに比例して大金が手に入るのがこの仕事の魅力だ、と言っても
霊的な事件はまだ一件しか解決してない。
それに大金と言っても五万円でそれは全て佐紀の給料に消えた。
ちなみにその一件の仕事内容はカラスの除霊という何とも微妙なものだった。
- 640 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:07
- 「よーし、頑張って働かないと!」
「ちょっと嗣氏。あまりにも久々の依頼だからって顔がニヤけすぎ」
「えっ?桃の顔そんなにニヤけてる?」
「うん、思いっきり。っていうかお金が入ったら残りの借金返してよね」
「あっ・・・うん」
桃子は久々の依頼に胸を躍らせていたが、そんな内心を悟られるのは少々気恥ずかしいので
できるだけ平然とした態度を心がけていた。
けれど隠し切れなかったらしく佐紀に指摘されて桃子は驚いた。
そしてお金が全て佐紀の元に流れていくのを思うと、何ともやるせない気持ちになった。
ダメを承知で桃子は両手を組むと、可愛いポーズをしながら上目遣いで聞いてみた。
「ねぇ佐紀ちゃん。桃のお尻いっぱい触らせてあげるから今回は半分に負けない?」
「・・・いや、それは無理」
佐紀は答えるのに少しだけ間があった。
押せばいけるな、桃子は変な確信を持つと後でもっと強く交渉してみようと心に決めた。
- 641 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:09
-
AM 2:10
依頼を受けてから数日、桃子は都内某所にある女子高にやってきていた。
今回の依頼主はこの学校の校長先生からで、何でも最近幽霊が目撃されていて多数の
生徒が怖がっている。
それに変な噂が立って入学する子が減るのも困る、という二点理由から今回依頼を
申し込んだとのことだった。
とりあえずその幽霊に会う為、桃子は乙女が出歩くような時間ではないこんな深夜の
時間帯に高校までやってきた。
ちなみにこの時間になるまでは近くのマックで暇を潰していた。
なぜこんな深夜にしたのかというと、魔物が跳梁するのにふさわしいとされる丑三つ刻を
わざわざ選んだ。
今回助手である佐紀はあまりにも遅い時間の為休んでいる。
本当は「深夜料金がつくならいいけど?」と言われたのだが、お金がないので休んでもらった。
道を歩いていたら一億円くらい落ちればいいのにと桃子はいつも思う。
- 642 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:10
- 桃子は気を取り直すと辺りを見回してお目当てのものを探す。
すると数分しないで校庭の隅にひっそりと生えている大きな桜の木を見つけた。
校長先生の話によると、幽霊の目撃情報はこの場所が一番多いのでこの桜の木に何らかの
関係がある子ではないかとのことだった。
詳しいことは本人に聞けば済むことなのだが、如何せんその本人に会えなくては
どうしようもない。
今は他に情報もないので桃子とりあえずその桜の木に行ってみることにした。
そこには美しい女の子がいた
少し枯れかけた桜の木の傍に一人の女の子立っていた。
艶のある黒髪は胸につくくらい長く、すらりと伸びた肢体に闇夜に浮かび上がる白い肌、
その凛とした顔つきは美しく、世界一の美少女の称号を与えたくなる程だった。
女の子は桃子に気づいていないのかただまっすぐ桜の木を見つめている。
桜が咲いていたらさぞ幻想的な雰囲気だったに違いない、そう思うと今にも雪が降りそうな
この季節が桃子は恨めしかった。
- 643 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:11
- 何か思うことがあるのか女の子は桜の木を見つめていた、だから桃子は声を掛けるのを
一瞬だけ迷った。
それでも仕事の為だと心を決めて女の子に声を掛けた。
ただ霊は存在自体が不安定なので、あまり刺激をしないように優しく穏やかな口調を
心がけた。
「貴女はここで何をしているの?」
「えっ?あ、あの・・・私の姿が見えるんですか?」
「うん、すごく霊感が強いから。だから貴女の姿も見えるし、喋れたりもするんだよ?」
「あぁ確かに今普通に喋ってますよね、私達」
「それで貴女は何でここにいるの?この木に何か未練があるのかな?」
「いやぁ、さくらんぼが早くならないかなぁと思って。私さくらんぼ大好物なんですよ」
「ん?」と桃子は一瞬小首を傾げずにはいられなかった。
そして聞き返そうかと思ったけれど、もう一度聞いたところできっとまともな答えは
返ってこないことを悟って口を閉じた。
こういう人なんだと桃子は理解すると単刀直入に言う作戦に切り替えた。
- 644 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:11
- 「えっと・・・まず貴女のお前は?」
「矢島舞美です」
「じゃ舞美ちゃんね。それで急な話で悪いんだけど、舞美ちゃんは成仏する気ないかな?」
「成仏ですか?」
「うん。そうしてくれると桃の懐が温か・・・いや、この学校の子も怖がってるみたいだし」
「しなきゃとは思ってるんです、思ってるんですけど・・・」
「未練っていうか、心残りがあるんだよね?」
「はい、そうです」
「それでその未練っていうのは何かな?」
「未練があるなら初めから言えよ」と桃子は言いたかったけれど、見た目はお子様でも
心は大人なのでどうにか堪えた。
とにかく未練があることは分かったので、あとはそれを軽く解決してしまえば校長から思い切り
ぼったくったお金をせしめることができる。
ちなみに佐紀には提示された四割しか伝えてないので、六割は桃子のものになる予定だ。
- 645 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:12
- 久しぶりの大金をどう使おうか考えていて、桃子は舞美の台詞に反応が少しだけ
遅れてしまった。
言葉はちゃんと聞いていたけれど反応が付いていかなかった。
世に言うちょっと耳の遠いおばぁちゃん状態だった。
「わ、私を・・・抱いてください!!」
「へっ?」
「だから私を抱いてくれませんか?」
「いやそんな恥ずかしい言葉を二回も言わなくても分かるから」
「あっ、ですよね。すいません」
「でも何か意外だなぁ、舞美ちゃんのキャラじゃないって感じ?」
「私はずっと部活一本だったんです。だから恋とかそういう知らないまま死んじゃって」
舞美は顔を真っ赤にして大胆なことを言い出した。
桃子は少し面食らったもののすぐに冷静さを取り戻すと諭すように舞美を宥める。
純情な子なのか舞美は顔全体を茹蛸のように赤く染めると深く俯ける。
その姿が桃子は素直に可愛いなと思うと同時に、何となく予想はしていたけど
部活一本馬鹿だったんだなと思った。
「でも無理ですよね?幽霊なんて抱けませ・・・・」
舞美は俯いたまま自嘲気味に笑うと独り言のように呟き始める、桃子は少し背伸びをすると
唇を塞いでその言葉を遮った。
- 646 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:14
- 「できるよ。桃は幽霊に触れられることができるから、舞美ちゃんを抱けるよ」
驚きで目を大きく見開いている舞美に桃子は笑顔で宣言した。
それからもう一度顔を寄せると唇を塞ぐ、それから今度は隙を見て舌を差し入れてみた。
最初は無論抵抗された、腹に二、三発良いものをもらって一瞬気が遠くなった。
それでも桃子は気合と根性で堪えると半ば自棄になって舞美に口付ける。
するとその効果なのか舞美の力が徐々に抜けていき、最終的にその場にへたり込むと
桜の木に寄り掛かった。
そこまでして桃子はようやく舞美から顔を離した。
すると二人の間に透明な糸ができる、桃子はそれを自分の舌で舐め取ると妖しく笑った。
「はぁ・・・っ・・・はぁ・・・」
「どうだった?ファーストキスとファーストディープキスのお味は?」
「レモン・・の味、しないんですね・・・」
「それじゃ変わりにどんな味がした?」
「うーん、なんていうか・・・安ぽっいお肉の味がしました」
「あっ、あぁ・・・それは・・・いやモスだから安くはないと思うよ」
「なら良いお肉なんですね」
「それはマックを食べたからだよ」なんて言ってしまうと、愛好家などから苦情が
きそうなので上手く誤魔化した。
余談だか桃子はまだモスバーガーを食べたことがない。
- 647 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:15
- それから桃子は舞美の服を脱がしていく。
着ているのが制服なので脱がすのが少し面倒だったが、制服姿というのは普段着とは
違う感じがして少し胸が高鳴る。
制服もいいな、とまるでおやじみたいなことを考えながら桃子はブラウスに手をかける。
そしてピンク色のブラジャーが視界に入ると、そんな桃子に視線を感じ取ったのか舞美が
今更になって手で胸を隠す。
手で覆い隠せる程度の胸なので確かに大きくはない。
余程気にしているのか舞美は顔を俯けるとか細い声で弱々しく抗議してきた。
「み、見ないでください・・・小さいんで」
「大きさとか関係ないよ、桃は全然気にしないから」
という言葉の後に「でも男の人は大抵気にすると思うけどね」、と付くのは秘密に
しておこうと桃子は思った。
「本当に気にしないんですか?」
「うん。だって友達にN焼とS木I理っているんだけど、その子達も普通にないから」
「誰だか知らないんですけど・・・私よりないんですか?」
「うーん・・・た、多分ないんじゃないのかな」
「良かったぁ。その言葉を聞いて何だか少し救われた気がしました」
本当は同じぐらいか小さめだと思ったけれど、桃子はわざわざ舞美を傷つける必要もないので
優しさで黙っていることした。
そしてどうやら機嫌が良くなったようなので、桃子はそれに便乗して舞美の背中に
手を回すとブラジャーのフックを外した。
すると確かに小ぶりだったけれど形の良い胸が姿を現す。
- 648 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:16
- 桃子は胸に手を伸ばして軽く揉み解しながら様子を見る。
舞美は初めてなのでいきなり突っ込んだことはできない、それにまずはその気にさせないと
いけないと思った。
桃子はまず左手で形を確かめるように掴みながらゆっくりと揉んでいく、右手は段々と
自己主張し始めた可愛らしい蕾を摘んだり摩ったりした。
「可愛いさくらんぼだね」
「いやぁ!んんっ・・・あっ、あぁ・・・」
「桃もさくらんぼ好きになっちゃいそう」
「あっ、なんか・・・頭が、ボーっとしてきて・・・」
「それでいいの。こういうときはあんまり深いこと考えたらダメなんだよ?」
「う、うん・・・分かった」
正直に言うと桃子もこういう行為は初めてだった。
台詞もやり方も全ては胸のないS木I理ちゃんから借りた、一般書店では出回っていない
薄い本に載っていた。
本は殆ど男の子同士だったけれど、中には女の子同士もあったので桃子はそれを応用してやっているのに過ぎない。
それでも舞美が甲高い声を出してよがってくれると、まるで自分が上手いんじゃないか
という気がしてくる。
ゴールドフィンガー桃子、誕生の瞬間だった
- 649 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:16
- それから耳たぶを噛んだりもう一度ディープキスなどをしていると、舞美の顔は段々と
赤く火照ってきて瞳が潤んできた。
その様子を見てもういいかなと思うと、桃子は舞美のスカートを外さずに下から手を入れて
パンティー越しにそこをなぞった。
「舞美ちゃんのここ、もうグショグショになってるね」
「・・・・言わないで」
「それに何だか甘い匂いがするよ」
「いやっ!そこに−顔近づけちゃダメ!」
桃子はスカートの裾を捲り上げると舞美のそこに顔を近づける。
そして「もうミルクが溢れちゃってるね、ぐひょひょ」と笑ってから、これってパパりんが
隠し持っていたエロ漫画に載っていた言葉なのをふと思い出す。
こんなおやじ臭いなのは駄目だと気づくと、気分転換の為に舞美のそこに指を入れた。
- 650 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:17
- 「ふえっ?!・・・くっ!んっ!・・あっ・・痛・・・」
「力抜いて?初めてだから難しいとは思うけど」
「は、はい・・・・」
「そう。最初は痛いけどすぐに気持ちよくなるから」
舞美は初めなので指を入れると苦しそうに顔を歪めた。
でも桃子が優しく声を掛けると舞美は涙目になりながら小さく頷く。
それを見て桃子は何だか胸が熱くなった、本当に良い子だなと思うとすぐにでもこの痛みを
消してあげたくて指の出し入れを早くした。
「んっ、あっ、あっ、あんっ・・・・」
「その顔からすると痛みはなくなってきたみたいだね、舞美ちゃん」
「ん?うん・・・気持ち、いいよ」
「それじゃちょっと色々やっていくね」
「えっ?ちょ、あっ!やだ・・・っ、あんっ・・な、何するの?」
桃子は指を中で軽く曲げるとそのまま動かす。
それと同時に太股の付け根にある赤く熟れた果実を空いている指で挟む、そしてそれを
しごくように動かした。
絵だから分かりにくかったけれど、確かあの本ではこんな感じでやっていた気がする。
すると舞美の腰を浮かび声がより甲高くなった。
やり方が合っていたことに桃子は内心安堵すると一旦舞美の中から指を抜き取る。
そして今度は二本と増やしてもう一度差し入れる。
- 651 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:18
- 中が濡れているので簡単に桃子の指を舞美は受け入れてくれた。
もう手加減しなくても大丈夫そうだと思うと、桃子は舞美の首に手を回して抱きつくと
指を早く動かす。
「っ、はぁ・・・やっ、んっ、あっ、あっ、あっ、」
「舞美ちゃん、イってもいいんだよ?」
「えっ?えっ?いくって何処へ?」
「いや何処へって・・・・それは、天国にだよ」
「て、天国?・・・・ふぁっ!なんか、なんかくるよ!ダメ!あっ、もうっ・・・」
「じゃお迎えが来たんだね。イってらっしゃい、舞美ちゃん」
「あっ、ん・・・・はぁぁ・・・・あぁぁぁぁぁ!!」
思い切り指を突き上げると、舞美は体を小刻みに震わせながら今まで一番甲高い声で
喘ぎながらイった。
それから舞美は気を失ってしまったようで目を瞑ったまま動かなかった。
でも桃子の肩に凭れている舞美の顔は幸せそうで、彼女の向かった先が天国だったら
いいなと思った。
- 652 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:18
-
こうして桃子は二件目の霊的な事件を己の指で見事に解決した
- 653 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:19
-
PM 16:20
あの事件から数日が経ち、桃は事務所で砂糖たっぷりの珈琲を飲みながら寛いでいた。
校長からぼったくったお金で佐紀への借金は半分になり、尚且つ手元にはまだお金が
余っているという状況。
顔を意識的に引き締めていないと自然と口元が緩んでしまう。
そんなとき部屋の黒い電話が鳴り響く。
また依頼かと思うと堪えきれずに口元が緩んでしまった。
佐紀が電話を取るとなぜかすぐに険しい顔に変わり突然何度も謝りだす、桃子は全く事情が
分からずただその状況を見つめるしかなかった。
それから佐紀が一旦受話器を置くと桃子がいる机まで歩いてくる、そして勢いよく机を
叩いて睨むので桃子は仰け反ってしまった。
「ちょっと嗣氏!苦情がきたんだけど、この間の幽霊退治してくれっていう校長先生から」
「えっ?なんで?ちゃんと除霊したのに」
「それができてないんだってさ。っていうかその幽霊が生徒に変なことして困るって」
「ふえっ!えっ?えっ?な、何それ!どういうこと?」
「そんなこと私が知るわけないでしょ!とにかくどうにかしてくれってさ」
桃子は解決したとばかり思っていたけど、よくよく考えれば舞美はあれから消えたわけでも
天に召された様子もなかった。
ただ目を瞑っていただけで、でも桃子は成仏したのかなと思ってそのまま放置して
帰ってきてしまった。
つまり舞美は成仏せず、逆に何かに目覚めてしまい生徒を襲っているらしい。
- 654 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:20
- 「そういえばあともう一つあるんだよね」
「えっ?まだ何かあの校長文句言ってたの?」
「いやこれは私個人から。なんか聞いていたより依頼料が多い気がするんだけど」
「あっ・・・えっと、そ、それは・・・」
「嗣永さんは私に黙ってこっそりお金をくすねたりしないよね?」
話の経緯はよく分からないが、どうやらあの馬鹿校長がお金に関して佐紀に色々と
話してしまったようだ。
佐紀は笑顔で聞いてきたけど目が全然笑っていなくて、桃子は今自分が死と隣り合わせに
あると本能的に悟った。
多分言い訳をしても聞く耳を持ってくれるかどうか怪しい、それならともう残る手はもう
一つしかないと桃子はある決意をした。
「ごめんなさい!ちょっとだけくすねちゃった」
「ちょっと嗣氏!くすねるのはちゃんと私の借金返してからにしてよね」
「でもその代わりって言ったら何だけど・・・・特別サービスしてあげるね」
「へっ?何?特別サービスって」
「それはね・・・・桃のゴールドフィンガーで天国にイかせてあげることだよ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
桃子は佐紀を事務所の床に押し倒すと服に手をかける。
初めは激しく抵抗していた佐紀だったが、桃子の有無を言わせない技にいつしか
嬌声が口から漏れる。
こうして校長の苦情を完全に放置して桃子と佐紀の愛の営みが始まった。
- 655 名前:桜チラリ 投稿日:2009/12/31(木) 18:20
-
PM 16:50
営みを終えると佐紀は急に我に返ったように、自分の服を急いで掻き集めてから
恥ずかしそうに体を隠す。
「もうっ!桃のバカ!は、初めてだったんだからね」
「でも気持ち良かったでしょ?」
「・・・・バカ」
口では悪態をついていても佐紀の真っ赤な顔は正直な気持ちを表していて、桃子は微笑すると
自分の椅子に腰を下ろした。
それから徐に机の引き出しを開けると中から紺色の小さな箱を取り出した。
そして箱の底を軽く叩くと白いココアシガレットを口に一本挟む。
ふと窓から外に視線を向けると夕日は既に沈んでいた。
桃子は所々破けた社長椅子に寄り掛かりながら、己の手をまじまじと見つめて思った。
この指でのし上っていけると
- 656 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/31(木) 18:20
-
- 657 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/31(木) 18:21
-
- 658 名前:とりあえず名無し 投稿日:2009/12/31(木) 18:22
- 舞美よりキャプのほうが出番多いんじゃない?ってツッコミは
なしの方向で
- 659 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/01/04(月) 00:47
- 吹いたw
- 660 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/01/05(火) 17:49
- 俺も吹いたw
出来ればこのシリーズ続けてほしいです
I理って音だとそのままだw
- 661 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/03/12(金) 16:46
- まずはレス返し
>>659さん 吹いてもらえればそれで十分です
というかむしろ吹いてほしいと思いながら書いてました
>>660さん 自分のテンションが高くないと書けない話なので、シリーズを続けるだけの
気力がないです
I理は確かにそのままだなと思ったんですが、変えようがないのでこれでいくことに
しました
- 662 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/03/12(金) 16:54
- お久しぶりです
結構長い間放置してしまってすみません
私情なんですがちょっと暇がなかったもので、なかなか更新できませんでした
それに書くと言っていたゲキハロのりしゃキャプがまだ全くできていないのと、
放置していたお詫びも含め、『春のキャプ祭』と題して、キャプ絡みの話をガーっと書いたので
今回はそれを載せようと思います
CPはベリキュー+おまけ付き、内容はアミダで適当に決めたのでエロあり
死にネタあり、というか何でもありになってます
本当はキャプ総受けにしたかったですが、ちょっと出来なくて友情だったり
攻めてたり色々です
キャプ好きな方は楽しめると思うので、どうぞ
あと先に謝っておきますが、愛理編がおかしなことになっていて
すみません
- 663 名前:ガキ大将(岡井×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 16:55
- 「しみさきちゃん!」
と自分の名前を呼ばれて振り返った瞬間、スカートが思い切りめくられた。
そして私の横を小さい影が走り抜けていく。
「千聖!!」
私はその遠ざかっていく小さな後姿に向かって叫ぶ。
今日はたまたま衣装で中に見せパン履いていたから良かったけど、私服のときやられたら
困るので注意した。
「あはは、ごめんね!」
千聖は走りながら体を反転させて謝る、でも顔にも態度にも悪びれた様子はない。
私は浅い溜め息を吐き出すと苦笑した。
それから完全に千聖の姿が見えなくなると、私は最後にもう一回溜め息を吐き出してから
再び歩き出す。
でも長い廊下を歩きながらふと小さく笑いが漏れた。
千聖は初めて会った時から今も変わらず、子どもというか少年みたいなところがある。
少し乱暴で頑固者だけど真っ直ぐで自分の信念を曲げない。
千聖を言い表す良い言葉があったんだけどなんだったっけ?
なんて考えると、「しみさきちゃん・・・・・好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!」って後ろのほう
から叫ぶ声が聞こえた。
私は驚いて後ろに振り返ると、反対側の廊下の角に真っ赤な顔をした千聖がいた。
そのときさっき考えていた言葉が突然頭の中に浮かんだ。
やっぱり千聖にぴったりだ、と思って私は一人で吹き出してしまった。
それから真っ赤な顔した千聖があまりにも可愛かったから、私は答えを言うのを少し
焦らすことにした。
「私も・・・・・・好きだよ、ガキ大将」
と絶対聞こえない小さな声で呟く、でも自分で言ったのに恥ずかしくて顔が火照ってくる。
こんな赤い顔をしていたら気持ちが分かっちゃうかなと思った。
- 664 名前:甘い罠(キャプ×梅) 投稿日:2010/03/12(金) 16:57
- お風呂上りにセクシーな下着を着てリビングに入ってくると、私の義理の姉は冷蔵庫から
牛乳を取り出して腰に手を当てて飲む。
義理の姉は無駄にスタイルが良いものだから目のやり場に困る。
でも私が目の前のテレビをガン見していると、隣にやってきて飲みかけの牛乳を差し出して、
「佐紀も飲む?」
なんて優しい笑顔で言ってくる。
「いらない」と素っ気無く言うと、「ひどーい」なんて言いながら私の腕に絡みについてくる。
その瞬間心拍数が異様に上がった。
私はすぐに腕を振り払って立ち上がるとリビングから出た。
またある時は私の部屋に勝手に上がりこんで、ベッドに寝転びながらファッション雑誌を
読み始める。
私は特に話し掛けたりせず机に向かって黙々と宿題をやっていた。
義理の姉は時折「あっ、可愛い」とか「佐紀に似合いそう」とか、独り言を言って一人で楽しんでいる。
でもしばらくすると声がしなくなった。
どうしたのかと思って軽く後ろに振り返ると、義理の姉は雑誌を枕代わりにして眠っていた。
ホットパンツからは長く綺麗な足が腿の辺りまで見えるし、Tシャツの裾は捲くれてもう少し
で胸が見えそうになっている。
あまりにも義理の姉が無防備すぎて見ていられないから、私は小さく溜め息を吐くとベッドに近づいた。
「・・・・・佐紀」
と義理の姉は寝ながら私の名前を呼ぶ。
ただ名前を呼ばれただけなのに胸が大きく震えて、途端に耳たぶが熱を持つのを感じる。
「卑怯すぎだから」と私は文句を呟くと、布団を上からかけてあげた。
その日も二人だけの夕食を終えると、義理の姉は普通に自分のと私の食器を下げてキッチンに持っていく。
義理の姉は鼻歌を歌いながら食器を洗っている、一方の私は適当に携帯をいじっていた。
でも不意に様子が気になってキッチンの方に視線を向ける。
すると偶然なのか義理の姉と目が合った。
その目はすごく優しげで、でも色気があって、私はすぐに視線を逸らすとすぐにテーブルのほうに顔を向けた。
「佐紀」
義理の姉が甘ったるい声で私の名前を呼ぶ。
顔が熱かった、でもそれ以上に胸が熱くてなって私は居ても立ってもいられなくなった。
だから立ち上がると義理の姉のところに向かう。
「えりかちゃんが悪いんだからね」
「えー、えりかって呼んでよ?」
「・・・・・・・えりかのせいだから」
えりかは私と向き合うと少し膝を曲げてから嬉しそうに笑う。
それから目が合って、瞳がゆっくりと閉じられて、私は軽く息を吐き出してから顔を寄せると
唇を優しく塞いだ。
- 665 名前:愛する人の名前を日記に(キャプ×マイマイ) 投稿日:2010/03/12(金) 16:58
- 舞は日記を書き終えると小さく溜め息を吐き出す。
それから日記の余白に清水先輩と書いてみた、すると針で刺されたように小さく胸が痛む。
バスの中でたまに会う違う学校の先輩。
まだ名前しか知らない、名前だけしか分からない、でも間違いなく舞は清水先輩に恋を
していた。
清水先輩と書いた横に小さくハートマークを書いてみる。
でもそれをすぐにペンで線を引いて消した。
らしくないことしてるなぁ、なんて思いながら舞は溜め息を吐きながら机に突っ伏した。
恋らしい恋なんてこれが初めてで正直どうしていいか分からなかった。
あの人のことを思うだけで胸が痛い胸が苦しい、なんてマンガかテレビの中の話だけかと
思っていた。
でも舞の胸にはまだしっかりと痛みが残っている。
今日電車の中で清水先輩に会った、嬉しかったけどその隣には見知らぬ女の子がいた。
二人はとても親しげでさり気なく手を握っているのを見たとき、恋に疎い舞でも二人の
関係が分かってしまった。
「・・・・・・好きです」
と本人を前にして言えなかった言葉を舞はふと呟いてみる。
それは甘くて痛くてほんのり苦い言葉だった
舞は起き上がると近くに置いてあるだろう自分の携帯を探した。
それからすぐに見つけ出すと、ふと頭に浮かんだあいつに電話してみる事にした。
珍しく3コール目であいつが出ると舞はいきなり話を切り出した。
「千聖、今から来て。あぁ、あと炭酸系のジュースも買ってきて」
「はぁ?いきなり何それ?明日朝練あるんだけど」
「千聖に拒否権ないから」
「ひどっ!・・・・・・まぁ、いいけどさ。あと10分位したらそっちに行くよ」
「5分で来て」
「無理だよ、そんなの!っうか舞ちゃんワガママすぎ!」
千聖はギャーギャー文句を言っていたので適当なところで電話を切った。
今日は千聖と騒いで気を紛らわそう、そうしたら少しはまた明日清水先輩と会ったとしても
笑えるはずだと舞は思った。
- 666 名前:ByeByeまたね(桃×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 16:59
- なんでキャップを殺したのかって?それは愛しているから
好きで好きで好きで誰にも渡したくなかったの
馬鹿げてる?でもそれが桃の愛なの
狂ってる?でもそれだけキャップを愛していたの
好きな人を永遠に自分のものにしたい、そう思うことはいけないこと?
桃は当然のことをしただけだよ
離れたくて、奪われたくなくて、傍にいたかった
でもう離れない、もう奪われない、誰にもあげない、誰にも渡さない
キャップは桃のもの
桃が殺したらキャップは桃のもの
怒ってる?でもキャップだけは絶対に渡せない
悔しい?でも桃がキャップのことを誰よりも愛してる
キャップの全てが欲しいかったの、ずっとずっとずっと前から
もしかしたら初めて会ったから欲しかったのかもしれない
でも本当のことを言うともう分からない、いつからキャップのことをこんなに愛しいと
思い始めたのか
7年前からか、昨日からなのか、それとも前世から?
でもとにかく愛しかったの
だから貰っちゃった、キャプテンの命
ねぇ、知ってる?キャップの血ってすっごく温かいの
ねぇ、知ってる?キャップの叫び声ってとっても可愛いの
ねぇ、知ってる?キャップの死体ってめちゃめちゃ綺麗なの
佐紀の最期は桃だけのものなんだよ
桃はまるで欲しがっていた玩具を買ってもらった子どものように、終始心底嬉しそうな
顔をして笑っていた。
そして看守に連れられて面会室を後にする際も何度も「佐紀、愛してる」と叫んだ。
正直狂ってるとしか私には思えなくて、みんなの反対を押し切って面会に来た事を
ひどく後悔した。
でもドアが締められる直前、桃は私に向かってこう言い放った。
「バイバイ・・・・・・またね」
- 667 名前:図書室待機(キャプリーダー) 投稿日:2010/03/12(金) 17:01
- 生徒会長の私が廊下を走ってるなんて、先生にでも見られたら怒られそうだけど今は
そんなこと気にしていられない。
一分でも一秒でも早く図書室に辿り着きたかった。
今日は舞美と図書室で待ち合わせしていたのに、生徒会の打ち合わせが予想以上に長く
なってしまった。
舞美のことだから怒りはしないだろうけれど、それでも結構長い時間待たせてしまったから
少し不機嫌かもしれない。
帰りにアイスでも奢ってあげようかなとか考えていると図書室の前に着いた。
「ごめん、舞美!すっごい待たせちゃったね」
図書室の中に入るなり私は待ちぼうけしているだろう舞美に謝った。
でも舞美からの返答はない。
だけどそれは怒っているからではなくて、舞美は図書室の机に突っ伏していたから。
その様子から多分寝ているんだと思う。
辺りを軽く見回したけど誰も居ない。
いつもなら図書委員がいるはずだけど、もう時間が遅いから帰ってしまったのかもしれない。
だから図書室に居るのは私と舞美だけ。
私は起こさないように足音に気をつけながら舞美に近づく、そして真横に立つとそっと
最近切った黒髪を撫でる。
舞美は陸上部のエースで部からも学校から期待されていた。
でもこの間あった最後の大会で上位入賞するとあっさりと部を引退、それからすぐに
綺麗な長い黒髪を惜しげもなく切った。
私にも何も言ってくれなかったから初めて見たときは驚いたけど、舞美になりに何か思う
ことがあったんだろうなと思って特に言わなかった。
梳きやすくなった髪を撫でながら私は何となく頭に顔を寄せてみる。
すると優しくて良い匂いがした。
髪の長さは変わっても匂いは変わらない、そして舞美自身も何も変わっていない。
そのとき突然胸の中が熱くなって無意識のうちに呟いていた。
「・・・・・・好きだよ、舞美」
「私も好きだよ、佐紀」
「ふえっ?!」
答えが返ってくるはずないのに即答されて私が驚いていると、舞美は上体を起こしてからにっこりと笑う。
それから私の腕を掴んで自分の方に引き寄せる。
抵抗もせずされるがままにしていると、上手い具合に舞美の膝の上に乗ってしまった。
「いつから起きてたの?」
「ん?うーん・・・・・佐紀がごめんって言いながら中に入ってきた辺りからかな」
「ちょっと!初めから起きてたってこと?」
「うん」
「もうっ!舞美のバカ!」
私は自分のしたことが恥ずかしいのと舞美に抗議する意味も込めて、手を上げてると軽く
頭を叩こうとした。
でもその手は頭に触れる寸前で舞美に掴まれる、それから顔を近づけられたかと思うと
優しくキスされた。
それだけで許してしまいそうになる自分はもうベタ惚れだなと思って、心の中で苦笑した。
- 668 名前:SHOCK!(みやさき) 投稿日:2010/03/12(金) 17:02
-
いつから私のこと嫌いになったの?
いつからあの子のことが好きだったの?
ねぇ、本当に私のこと好きだった?
「・・・・・・別れて、って言ったら怒る?」
みやは小さく息を吐き出すと少しだけ顔を俯けて話を切り出した。
覚悟はしていた。
近頃のみやを見ていたら桃に惹かれているのは目に見えて分かる事だったから、
言われるだろうなとは思っていた。
でも目から涙が溢れるとそれは止まらなくて、頬を伝って床に落ちていく。
「うん。いいよ」
私はなるべく笑って言おうと思っていた、でも全然できなかった。
分かっていた。
泣いたらみやを困らせるからできるだけ平静を装おうつもりでいた、でも私は泣き虫
だからきっと泣いちゃうだろうなとも思っていた。
いつものみやなら涙を拭ってくれるか、抱きしめて慰めてくれたと思う。
でも今日のみやはその場から動かなかった。
だから自分で涙を拭ってどうにか落ちつかせると、泣き腫らして痛む目をゆっくりと
開けてみやを見る。
「本当にごめんね、佐紀ちゃん。ウチさ・・・・・・桃の事が好きなんだ」
みやは頭を下げて謝ると、包み隠す事なく自分の気持ちを素直に打ち明てくれた。
それから目を逸らさずにまっすぐ私を見つめる。
知っていた。
それなのに実際みやの口から言われると胸が痛む。
私はまた泣きそうになったけど、自分の拳を強く握って感情の波が収まるのを待った。
「うん。前から何となく分かってたよ・・・・・・だから、みやのこと大嫌い」
と私も正直に自分の気持ちを打ち明ける。
すると普段滅多に泣かないみやがそのときは顔を覆い隠して静かに泣いた。
だから私は今自分が笑っているんだと分かった。
- 669 名前:私がすることない程全部してくれる彼 (キャプ×nksk) 投稿日:2010/03/12(金) 17:04
- 私は校門で一人彼氏を待っていた。
5時には終わると言っていたけれど、もう30分くらい過ぎている。
練習長引いてるのかなぁなんて思いながら私は携帯を閉じた。
そして小さく溜め息を吐き出すと、走ってくるような足音が少し遠くから聞こえてくる。
「ご、ごめん!早貴!待ったでしょ?」
清水君は校門まで走ってくるとすぐに申し訳なさそうな顔をして謝った。
この人が私の彼氏、清水佐紀君
彼はすごく優しくてしっかりしていて頼りになる、頭も良いし一見文科系なんだけど
意外にもサッカー部に入っている。
そのサッカー部でも結構頼りにされてるみたいだし、ちょっと背は低いけど顔は格好良い
から人気もあるらしい。
本当に私には勿体ないくらい良い彼氏だと思う。
「そんなに待ってないよ。これくらいなら全然平気」
「本当に?待ちくたびれてない?」
「大丈夫だってば。清水君こそ、部活終わりに走ってきて疲れてない?」
「それこそ全然平気だよ。だって、早貴に早く会いたかったから」
清水君はいつも私のことを一番に考えてくれる。
本当に優しい、そしてちょっとだけキザ。
普通なら恥ずかしくて言えそうにないことも簡単に言ってしまうから、その度に私は
いつもドキドキしてしまう。
「でもお腹減っちゃったなぁ・・・・・・帰りにマック寄ってもいい?」
「うん。私もお腹ちょっと空いてるからいいよ」
「それじゃ行こうか」
清水君の提案で私達はとりあえずマックに行く為に歩き出した。
そして味気ないアスファルトの道を歩いていると、清水君はさり気なく私の手を掴み
指を絡めながら握る。
でも顔は平然としているのに耳たぶが少し赤くなっていて、そういうところはちょっと
可愛いなと思った。
私はクスクス笑いながら清水君の手を握り返す。
そしてこんな風に何十年も経っても付き合えていたらいいなと思った。
- 670 名前:パッション E-CHA E-CHA(千奈美×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 17:06
-
初めて先輩に会ったとき、先輩は泣いていた
でも別に見たくて見たわけじゃなくて、たまたま校舎裏にある焼却炉にごみを捨てに
行ったら偶然見てしまった。
最初は背が小さいから同学年の子かと思ったけど、ネクタイの色が違うからすぐに二年生
だということが分かった。
理由は分からない、というか大して興味がなかった。
だけどとりあえず気まずいので、私はごみを捨ててすぐにでもその場を立ち去ろうと
思った。
でもゴミ箱を持って先輩の前を通り過ぎようとした瞬間、私は足を止めた。
正確には制服の袖を掴まれたので止まらないわけにはいかなかった。
「あの・・・・・何か用ですか?」
「無視しないで」
「いや、だって先輩のこと知りませんから。それに声掛けれる雰囲気じゃなかったんで」
「清水佐紀」
「はぁ?」
「それが私の名前。ちなみにクラスは2−C、そっちは?」
「・・・・・・徳永千奈美。クラスは1−Aです」
いきなり呼び止められて、よく分からないけど自己紹介する羽目になった。
それから清水先輩の愚痴を聞いてあげた。
でも正直言うと半分くらいは適当に聞き流していた。
なんでも泣いていたのは同級生の矢島舞美に振られたからだったらしい、でもその矢島舞美と
私は幼馴染みでその事を言ったらすごく驚いていた。
そして私達は随分と変な出会い方をしたのになぜか友達になった。
それから一年後、私は二年生になった
お昼休みになり騒がしい教室内、鞄の中からお弁当を取り出そうとすると誰かが
私の名前を呼んだ。
声のした方を見るとドアのところに佐紀ちゃんが立っている。
私はお弁当を取り出すと少し慌ててドアのところまで走っていく、そして今日は中庭に
でも行こうとなったときクラスメートのみやに話しかけられた。
「千奈美、今日もデート?」
「そう!羨ましい?」
「べ、別にそんなことないし」
「はいはい。みやも早く梨沙子とお昼休みデートができるといいね!」
「大きい声で言うな!」
みやが怒ったので私達は逃げるように教室を後にした。
それからたわいもない話しながら並んで廊下を歩きながら中庭に向かう。
初めて会ったときはまさか佐紀ちゃんと恋人同士なるとは思わなかった。
変な人だと思っていたら友達になって、友達だと思っていたらいつの間にか好きに
なっていた。
そしてダメ元で告白したらOKで私達は付き合いした。
「何笑ってんの、千奈美」
「ん?なんか初めて会ったときのこと思い出したら笑えてきた」
「・・・・・・あれは忘れて」
「嫌だ。だってめちゃくちゃな出会いだったけどさ、今は良かったって思うもん」
「変な出会いに感謝?」
「うん、そんな感じ」
私達は互いに顔を見合わせると笑い合う。
それからふと窓の外に目をやると雲一つない快晴、絶好の昼食日和。
今日も良い日になりそうだなぁと思って、私は眩しい太陽に目を細めながら微笑んだ。
- 671 名前:我ら!Berryz仮面(茉麻×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 17:07
-
ドカァァァァァァァァン!!
爆音と共に白い土煙が立ち上る、そしてあちらこちらの場所に吹き飛ばされた私達
Berryz仮面。
それからいつものように小馬鹿にしたような敵の高笑いが採石場に響き渡る。
「相変わらず弱いなぁ、Berryz仮面」と、嫌味ったらしく鳥の怪人は言うと
もう一度高笑いして去って行った。
悔しい、いつだってそう思う。
いや思わなかったことなど一度もない。
でも私達はいつも勝てない、とりあえず今のところ35連敗中だった。
みんな「また負けちゃったね」とか、「痛くて死にそう」と口々にぼやきながら基地に
向かって歩き出す。
私もひどく体力を消耗していたけれど気力を振り絞って歩き出す。
「・・・・・今日も勝てなかったね」
傷ついた体を引きずりながら、たまたま横を歩いていたイエローがぽつりと呟く。
「うん」
「本当に弱いよね」
「うん」
「カッコ悪いね」
「うん」
「でもさ・・・・・Berryz仮面好きだなぁ」
「・・・・・うん」
私もBerryz仮面が好きだ。
どんなに負けても、どんなに怪人たちに笑われても、それでも戦うことを決して
止めない。
そんなBerryz仮面が大好きだし、心の底から誇りに思っている。
私は痛みに悲鳴を上げる体に鞭打って走り出す、そしてみんなの目の前に躍り出ると
光輝く夕日を指差して言った。
「みんな、あの夕日に向かって走ろう!あの先に私達の目指す勝利があるんだよ!」
と折角熱く語ったのに返ってきた答えは散々だった。
「無理でーす!」
「同じく。今日は疲れたから無理!」
「あはは、レッドはそういう青春ノリ好きだよね」
「僕はそういうの今時ナンセンスだと思うな」
「えっ?えっ?夕日の先に勝利があるの?本当に?」
「本当にあったらいいんだけどねぇ・・・・・・」
私は深い溜め息を吐き出して項垂れると、近くにあった公衆電話に向かって歩き出した。
そして中に入るとある会社のフリーダイヤルに電話をかける。
「・・・・・もしもし。あっ、すいません。メンバーを変えたいんですけど」
と真剣に悩んで電話したのに、受付のお姉さんに「いたずらはやめて下さい」と言われて
電話を切られた。
- 672 名前:約束は特にしないわ(熊×キャプ) ※若干エロ 投稿日:2010/03/12(金) 17:10
- 君はいつだって強引で私の都合なんて考えてくれない。
少しでも余裕があれば私の手を引いて空いている部屋に連れ込む、そして有無を言わせず
強引にキスをして、乱暴に服を脱がせる。
そして私を下着姿にすると、まるでライオンかトラが草食動物の首筋に噛み付くように
顔を寄せて歯を立てる。
すると体が小さく震えて思わず艶めいた声が自然と私の口から漏れる。
「んっ・・・・・熊井・・ちゃん」
「何?」
「強引すぎ」
「いつもと同じだけど?」
「だから・・・・あっ、んっ・・・・いつも、強引すぎなの」
熊井ちゃんは私と話しながらブラを片手で器用に外すと、既に固くなっている先端を
口に含む。
そして舌で転がりしたり甘噛みしたりして弄ぶ。
私は熊井ちゃんの愛撫にただ甲高い声を上げることしかできない、時折抵抗で身を捩って
みるけれど無意味な行為だった。
熊井ちゃんは一旦胸から顔を離すと私を真っ直ぐ見つめる。
その珍しく真剣な瞳に胸の鼓動が早くなる。
相変わらず綺麗な顔をしているなと思いながら、熊井ちゃんから目が離せなかった。
「佐紀ちゃんはさ、ウチとこういうことするの嫌い?」
「・・・・・嫌い、じゃないよ」
「ならいいじゃん」
「でもなんて言うかさ、もう少しくらい優しくしてほしいなぁって・・・・・」
「もう黙って。うるさい」
「んっ・・・・くま・・・・・あっ、やっ、ふあっ!」
熊井ちゃんは私を壁に押し付けると強引に唇を塞ぐ。
そして下着越しに足の付け根にある敏感な部分を指で挟むと擦るように動かす。
思わず私の体は跳ねて一段と甲高い声が出る。
それから熊井ちゃんの手が下着を脱がさないまま中に入ってくる、でもその瞬間携帯の
着メロらしき音楽が部屋に響き渡る。
熊井ちゃんはすぐに私から離れてポケットの中から携帯を取り出す。
どうやらメールだったらしく携帯を開いて内容を確認すると小さく溜め息を吐き出す。
その仕草だけで私は事情が飲み込めた。
「ごめん。呼び出しが来たから行くね」
「うん」
「まぁ今度暇があったらやろうよ」
「・・・・・・そうだね」
「じゃまた後で」
熊井ちゃんは携帯をポケットにしまうとあっさりと部屋から出て行った。
多分大事な恋人からの呼び出しだったんだと思う。
いつものことなので私は苦笑しながら辺りに散らばった服を拾う、でもいつものことなのに
涙が頬を伝って床に落ちた。
それから私はその場にしゃがみ込むと少しだけ泣いた。
君はいつだって身勝手で私の都合なんて考えてくれない
- 673 名前:JUMP(キャプ×愛理) 投稿日:2010/03/12(金) 17:11
- 愛理は足がついていかずとうとうコートの中に倒れこんだ。
滝のような汗が頬を伝いコートに染みを作る、こんなにも大量の汗を掻いたことは今まで
生きてきた中で一度もない。
荒い息を吐き出すも体中が酸素を欲しがっているので、酸欠状態の金魚のように口の
開閉を何度も繰り返す。
愛理はもう立てないくらい体力を消耗していた。
「鈴木!そんなことじゃインターハイはおろか、全国制覇なんて夢のまた夢だ!」
自分を叱責する声に何とか顔を上げると、コーチである佐紀の姿が視界に入る。
黒いサングラスに水色の作業着はコート場に何ともミスマッチだったが、佐紀は若いながらも
名コーチとしてその名を馳せていた。
「コ・・・コーチ、私・・・・もう・・・・立て、ません」
「甘ったれるな!馬鹿者!」
懇願するように愛理が言うと佐紀からテニスボールが顔目掛けて飛んできた。
それから大声で怒鳴られる。
怒声に身を震わすと愛理は鉛のように重い体を無理矢理起き上がらせる。
するといつの間にか目の前までやってきていた佐紀が愛理に手を差し伸べる。
意外な行動に驚きながらも愛理は手を掴んで何とか立ち上がる。
だがやはり体力は限界を迎えていて立っているのがやっとという状態だった。
愛理が立ち上がったのを確認して佐紀は愛理の手を離す、そして背を向けると
しばらく夕空を眺めていた。
それから不意に振り向くと真剣な目で愛理を見つめる、本当はサングラスをしているので
表情は分からないのだが愛理には分かった。
「・・・・・・お前は全国、いや世界をも目指せる人材だ」
小さく息を吐き出してから佐紀はいつになくはっきりとそう断言した。
「えっ?」
予想もしていなかった言葉に愛理は動揺してラケットを落としてしまう。
「お前の全てを預けてほしい。そうすれば絶対に世界まで連れて行く」
「コーチ!」
「鈴木、信じてくれるか?」
「はい。信じます。私、コーチの為なら操だって捧げられます!」
「・・・・・・いや、それは重いから」
次の日、愛理は清水テニススクールを辞めた
- 674 名前:友達は友達なんだ(キャプ×舞波) 投稿日:2010/03/12(金) 17:14
- 友達の大切を歌った曲だからか、ふとあの子のことが頭に浮かんだ。
だからダンスシーンが始まる僅かな合間に私は楽屋に戻ると、久しぶりにあの子に
電話を掛けてみた。
でも勢いで掛けたものの、本当に久しぶりだから急に緊張してきてちゃんと話せるか
不安になってきた。
結構長いコール音が続いて出てくれないかなという思いがふと過ぎる、でも次の瞬間
懐かしい声が携帯から聞こえてきた。
「・・・・・・もしもし」
声を聞いたとき懐かしすぎて少し泣きそうになった。
しばらく聞いてなかったけれど全然あの頃と変わっていない、しいて言うなら少し
落ち着いた感じがするけど間違いなく舞波の声だった。
「ま、舞波?久しぶり。元気してた?」
「まぁ何とかやってる。キャプテンは・・・・・・元気そうだね」
「うん。元気だよ。あのさ、いきなり電話しちゃったんだけど迷惑だったかな?」
「まぁ若干迷惑かな。もうすぐ部活に行かないといけないから」
「そうなんだ、ごめんね」
「別にいいよ。何か久しぶりにキャプテンの声が聞けて嬉しいから」
もっと上手く話せないと思っていた。
一番最初に喋るときは確かに少し緊張したけど、舞波の声を聞いた瞬間そんなものは
どこかに吹っ飛んでしまった。
そして5年前に戻ったようにあの頃と変わらずに普通に話すことができて、そのことが
すごく嬉しかった。
「それでなんで急に電話かけてきたの?」
「いやぁ、新曲が友達の大切さがテーマの曲でさ。ちなみに今PVの撮影中なんだけど、
何か曲を聴いてたら舞波のこと思い出しちゃって」
「何?CDの宣伝?」
「違うって。まぁ両A面だからお勧めなんだけど」
「やっぱり宣伝だし。何?買えってこと?」
「できれば買ってほしいけど・・・・・・今度送るよ。住所変わってないでしょ?」
「うん。変わってないよ」
舞波の冷静な突っ込みは相変わらずだなぁなんて思いながら話していると、携帯越しに
「舞波」と呼ぶ女の子の声が聞こえてきた。
どうやら友達に呼ばれているらしい。
上手くやっているみたいで嬉しいけど何だか少し寂しい気もする。
「何か舞波も呼ばれてるみたいだし、今日はこの辺で切るね」
「うん。また時間があるときにかけてきてよ」
「分かった。今日はごめんね、今度はみんながいるときにかけるよ」
「えー、いいよ。何かうるさそうだし」
「あはは、多分うるさいと思うよ、特に・・・・・」
『千奈美とか』
舞波と私の声が見事に重なり合って2人して笑った。
やっぱり5年なんて月日は全然関係ないんだなと思ったし、新曲の歌詞じゃないけど
友達は友達のままなんだなと改めて感じた。
その後少しだけ舞波と喋って電話を切り終えると、やっぱり今度電話をかけるときは
メンバー全員がいるときにしようと思った。
- 675 名前:残暑お見舞い申し上げます(めぐ×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 17:15
- 夏休みも終盤に近づいてきた頃、家に帰ると自分の部屋に行く前に母親に呼び止められた。
「愛、手紙が来てるわよ」
そう言って渡された手紙、どうせ着物か塾とかの宣伝かと思いきや予想外のところから
きていた。
「・・・・・清水佐紀」
あまりにも意外すぎて差出人の名を無意識のうちに口に出して読んでいた。
ハロープロジェクトを辞めてから、極力メンバーとは連絡を取らないようにしようと
心に決めていた。
自分の未練を断ち切るためでもあるし、キュートに関しては早く私のことを忘れて
前に進んでほしかった。
だからコンサートにも一度も行ったことがない。
最初のころはチケットが送られてきたり、舞美やえりかからメールが来たけれど
「行かない」と返事していた。
今はもうチケットも送られてこないしお誘いのメールもない、煩わしくなくて良かったと
思う反面寂しさを感じるのも事実だった。
でもこうしてベリーズ工房のキャプテンこと、清水佐紀からは毎年残暑見舞いが届く。
私が在籍しているときから今も変わらず送られてくる。
文面は至って普通で、別にハローのことや私の悪口とかが書いてあるわけじゃない。
毎年暑くて大変だけど頑張ってね、みたいな内容だった。
でも私は毎年送り返さなかった。
「この子、毎年送ってきてくれるわよね」
「うん」
「お返事送らないの?」
「うん・・・・・・いや、今年は送ろうな。ハガキある?」
「普通のはあるけど、せっかくなんだから専用のハガキでも買ってきなさいよ」
「うーん、じゃそうするよ。明日コンビニでも行って買ってくる」
「そうしなさい」
本当は少し面倒だと思ったけど口には出さなかった。
でも書くことにしたはいいけど残暑見舞いなんて初めて書くから、一体なんて
書いていいか分からなかった。
まぁその辺はお母さんに教えてもらうとして、私のハガキが届いたら佐紀ちゃんは
どんな顔をするのかなと思ったら少し楽しくなった。
- 676 名前:夏わかめ(栞菜×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 17:17
-
私の妹は私の事が好きすぎる
無駄に私に引っ付いてくるし、隙あらば匂い嗅んでくるし、極めつけは洗濯物もの中から
私のパンツを探し出して頭にかぶっていた。
普通に無理だ、ともう何十回も飽きるくらい思ってきた。
そして今、私はとうとう妹に押し倒されていた
「お姉ちゃん、好きだよ」
「ちょ、ちょっと待った!栞菜、私達姉妹だから!血が繋がってるから!」
「そんなの関係ないよ」
「関係あるよ!っていうか普通に大アリだから!」
「いや、むしろ姉妹とか萌える要素の一つだと思うんだよね」
「・・・・・・お願いだから真顔で言うのやめてくれる?」
それから栞菜はいきなり姉妹萌えについ語り始めた。
姉妹萌えとかそんなこと語られても引くことはできるけど、理解ではできない。
というか早く私の上から降りてほしかった。
「・・・・・・ということなんだけど、萌えてきた?」
「えっ?いや普通にドン引きなんですけど」
「もうっ!相変わらずお姉ちゃんはツンデレなんだから」
「ツンデレとかそういうことじゃないから!」
「まぁとりあえず一回やろ?難しい話はそれからにしようよ」
「何そのエロオヤジみたいな理論。っていうか普通は順序逆じゃない?」
「照れない、照れない。それじゃいただきます!」
「ちょ!栞菜!・・・・あんっ!ちょっと・・・・ん・・・・・あっ」
結局私は栞菜に襲われてしまった。
でも襲われてからというものどうにも栞菜のことが気になっている。
だけど私達は姉妹なわけで、『好きになっちゃいけない、でも好き』という負の
スパイラルに私は巻きこまれようとしていた。
でもそれから少しして結局私と栞菜は血が繋がっていないことが分かるんだけど、
それはまた別のお話。
- 677 名前:ライバル(真野×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 17:18
- 卒業式が無事に終わり殆ど子達が正門に向かう中、私は一人剣道場に向かっていた。
予想はしていたけれど道場の戸には鍵がかかっていなかった。
戸を開けて中に入ると、白線の外に正座している女の子の姿が見えた。
面をしているので顔は見えないけれど私には誰だか分かる。
私はすぐにその女の子のところへは行かずに更衣室へ向かった。
そして自分のロッカーを開けて防具を身に着ける。
本当なら自分の防具は家に持って帰る約束になっているのだけれど、多分こうなると
分かっていたので持って帰らなかった。
私は面はせずに手ぬぐいだけ巻いた状態で道場の中に足を踏み入れる。
「清水さん・・・・・・やっぱり居てくれたんですね」
「そういう約束だったでしょ?」
「律儀なんですね」
「そういう真野ちゃんだってこうしてわざわざ来たんだから、律儀なんじゃないの?」
「うふふ、それじゃお互いに律義者ってことで」
私と清水さんはこの茂部木馬州学園で剣道部に所属していた。
清水さんは体は小さいながらも安定した実力を持つ剣道部の部長、一方の私はというと
一応レギュラーで中堅を任されていたけれど大して強くもない平部員。
クラスは違うけれど三年生は二人だけなので、部活終わりの帰り道などで話したりすることが
結構多かった。
そして私の一方的な思いなのだけれど、清水さんは私のライバルだった。
でも張り合っても腕が違いすぎて勝てたことなんて一度もない、というかきっと清水さんは
真剣に私の相手なんかしてくれてないと思う。
それでも入部したときからずっとライバル視していた。
そこで私達の最後の大会である夏のインターハイで試合が始まる前、清水さんに「この戦い
絶対勝ちます。だから卒業式の日、私と真剣勝負してください」と言った。
すると清水さんは軽く笑ってから「うん、勝てたらいいよ。勝てたらね」と言ってくれた。
だから私は思い切り気合を入れてその試合に臨んだ。
結果はどうにか勝った、後から聞いた話では胴打ち落とし面という技を使ったらしい。
何でも相手の右胴打ちに対して後ろに一歩下がりながら相手の竹刀を打ち落とし、すかさず
相手の面を正面から打つというもの。
でもあまりにも無我夢中だったので全く記憶になかった。
とにかくその試合は何とか勝って私達の部は初めて全国大会に進んだ。
でも進んだはいいけれど結局後が続かなくて一回戦で敗退、私達の夏はそれで終わって
しまった。
夏が終わると私と清水さんは部を引退、防具はそのインターハイ以来つけてないので少し
懐かしい感じがした。
私は正座すると手早く面をつける、それが終わるのを見計らって清水さんが白線の中に入る。
それを見て軽く深呼吸をしてから私も立ち上がって白線の中に入った。
本当の試合のように九歩離れた場所で互いに立ったまま礼、それから三歩進んで竹刀を構える。
緊張からか少しだけ手が震える、私は震えを抑える為に竹刀を握り直した。
そしてしゃがみ込むと清水さんを真っ直ぐ見つめる。
「真野ちゃん、一本勝負でいいでしょ?」
「はい。三本勝負なんてやったら贅沢過ぎます」
「いや三本もやると普通に疲れるからさ」
「うふふ、それもそうですね」
「それじゃ・・・・・・手加減抜きでいくよ」
「はい」
この一本に自分の三年間の全てを賭けようと思った。
道場は嘘のように静まり返り、少し離れている清水さんの吐息さえ聞こえてきそうだった。
私は浅く息を吐き出すとそれと同時ぐらいに「始め!」という清水さんの声がした。
声が聞こえた瞬間にもう立ち上がっていて私はすぐさま右足で一歩踏み込むと、面目掛けて
竹刀を振り下ろした。
- 678 名前:嗚呼 恋(梨沙子×キャプ) 投稿日:2010/03/12(金) 17:20
-
私はみやが好きだった。
だから告白した、でもみやには別に好きな人がいるらしくてOKをもらうことは
できなかった。
私はあっさりと振られてしまった。
その日は当然泣いた、ご飯も食べずにベッドの上でひたすら泣いた。
それからみやとの関係が少しぎこちなくなった。
お互いにどこか避けていたし、たまに喋っても上手く会話が噛み合わなくて何だか
変な感じだった。
多分メンバーも私とみやの間に何かあったことはすぐに分かったと思う。
でもしばらくの間は何も言わず黙って見守っていてくれた。
ただ時間が過ぎても解決しないのを見て、ある日キャプテンが私に声を掛けてきた。
「あのさ、梨沙子。もしかしてみやと何かあったの?」
「うん。ちょっと色々あった」
「聞いてもいい?」
「うん・・・・・・あのね、告白したけどフラれちゃった」
「そっか。フラれちゃったか」
本当のことを話すとキャプテンは少し驚いた顔をしたけれど、すぐに優しい顔をして
私の頭を撫でてくれた。
それから顔を包み込むように両手が頬に置かれて、「いっぱい泣いたでしょ?」って
言われたから素直に頷いた。
するとキャプテンは顔から手を離し、少し背伸びして私のことを抱きしめる。
あまりにも温かいから少しだけ私は泣きそうになった。
でも泣くのはカッコ悪いから頑張って堪えていると、もう一度キャプテンが頭を撫でるから
泣いてしまった。
キャプテンは私が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた。
「梨沙子は偉いよ、ちゃんと言ったんだもん」
「偉い?」
「うん。だって好きな人に自分の気持ちを伝えるのって、すごく勇気のいることでしょ?」
「そうだね。すっごく緊張したし声とか震えてた気がする」
「まぁ普通はそうだよ」
「でもね、言えて良かったって思う。言えないままウジウジしてるよりずっと良かった」
「そっか。なら・・・・・・私も言おっかな」
キャプテンの言葉に私は小首を傾げる。
どう聞いても好きな人がいるから告白する、そういう風にしか思えない言い方だった。
だから「好きな人居るの?」って聞こうと思ったら、キャプテンの方が先に口を開いて
言われてしまった。
「好きだよ・・・・・・梨沙子のこと。ずっと前から好きだった」
- 679 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/03/12(金) 17:20
-
- 680 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/03/12(金) 17:20
-
- 681 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/03/12(金) 17:21
- 以上です
ちょこちょこキャプが登場しない話もありますが、その辺は広い心で
受け止めてくれると助かります
- 682 名前:名無し飼育さん。。。 投稿日:2010/03/13(土) 09:41
- キャプ受け最高!
ベリーズ仮面の設定が特に好きだなー
イエロー総受けとかw
- 683 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/13(土) 11:51
- りしゃキャプ泣きました
- 684 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/14(日) 17:25
- 愛理w辞めるの早ッ
- 685 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/04/19(月) 16:34
- かなり今更ですが、ゲキハロのしりゃキャプが出来上がってきたので
少しずつ載せていこうと思います
まずはレス返し
>>名無し飼育さん。。。
キャプ受けが好きの人に楽しんでもらえれば本望です
その為だけに書いたようなものですから
ベリーズ仮面は機会があればまた書きたいなぁって思ってます
イエロー総受けでw
>>683さん
りしゃキャプは本当は甘い系が書きたかったんですが、あみだで失恋と
出てしまったのであんな感じになりました
勢いだけで書いただけなので内容が薄くて、泣いたなんて言われると何だか
申し訳ない気持ちになります
>>684さん
本当はもう少し真面目にしたかったんですが、良いオチが思い浮かばなくて
あぁなりましたw
あみだの指示がスポ根だったのに書き終わったらギャグでした
- 686 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/04/19(月) 16:38
- というわけでゲキハロの設定でりしゃキャプです
・CPは学子×果菜
・あくまで友情で恋愛物ではないよ
・ちょっと長くなりそうな予定
・ちょいちょい勝手に設定を作ってる
・カオリンも出るよ
そんな感じですが、全然構わないよって方はどうぞ
- 687 名前:青春大通り 投稿日:2010/04/19(月) 16:39
-
初めてあの子に会ったときの衝撃を私は未だに忘れられない
桜も散り始めた四月半ば、千駄木先生に音楽室の鍵を返すために職員室に寄ってから
私はぼんやりと廊下を歩いていた。
するとどこかからか歌声のようなものが聞こえてきた。
私はまるで歌声に引き寄せられるかのように半分くらい開いている窓へと向かう。
そして窓から顔を出すと目を閉じて耳を澄ます。
第一印象は真っ直ぐな綺麗な声。
でも聞いているうちにその中に力強さがあることに気づく、そして少し荒削りなところが
あるけれどしなやかで伸びがある。
この声が欲しいと思った。
そうしたら居ても立ってもいられなくて私は当てもなく走り出した。
この歌を歌っている子が何処にいるかは分からない。
とりあえず自分がいる階より上から聞こえてきたので、最上階から全部の教室を調べる
ことにした。
疲れるとか面倒だなとか全く思わなかった。
あの声が手に入るなら私はどんな労力も惜しまない、どんなことをしても手に入れたい。
それほど魅力的な声だった。
- 688 名前:青春大通り 投稿日:2010/04/19(月) 16:40
- 階段を急いで駆け上がったからか最上階に着く頃には肩で息をしていた。
私は一旦足を止めて小休憩する、でもまたあの歌声が聞こえてくると息が整う間もなく
再び走り出した。
走れば走るほど歌がどんどんはっきりと聞こえてくる。
そのことが嬉しくて自然と顔が笑顔になる、そして私は歌っている女の子がいるだろう教室に
ようやく辿り着いた。
教室のドアは開いていたのではっきりと一人の女の子の姿が見えた。
オレンジ色に染まった教室で窓辺に立って歌っている女の子、長い黒髪をポニーテルにして、
背筋良く立っている。
その整った横顔はまるで外人のようで、あまりに綺麗だったので少しの間見惚れてしまった。
女の子は私の存在に気づかず高らかに歌い続けている、その表情と歌声からこの子はなんて
歌に愛された子なのだろうと思った。
そしてあまりにも女の子が楽しそうに歌っているから私は抑えきれなくなり、突然すぎるとは
思ったけど女の子の歌に参加した。
それは合唱曲ではかなり定番となっているもので、谷川俊太郎先生の作詞で有名な曲だった。
中学の時に歌っただけなので歌詞を思い出すのに少し時間がかかったのが、女の子がサビに
入る直前でどうにか思い出した。
- 689 名前:青春大通り 投稿日:2010/04/19(月) 16:41
-
「この気持ちは何だろう・・・・・・この気持ちは何だろう」
女の子がアルトパートを歌っていたので、私はソプラノパートを歌い女の子の声に対して
上手く重ねる。
当然いきなり知らない人が歌に参加してきたので女の子はかなり驚いていた。
だから少し音程が狂ったけれどそれでも歌うことを止めなかった。
私は女の子に微笑みかけながら歌い続ける、すると女の子は歯を見せて嬉しそうに笑って
より高らかに歌う。
二つの声は綺麗に重なり合って教室中に響き渡る。
私は歌いながらやっぱりこの子が欲しいと強く思った。
『声にならない叫びとなってこみ上げる・・・・・・この気持ちは何だろう』
歌い終わると重なり合った二人の声が静かに消えていく。
でもその余韻は消えることなく私の中に吸い込まれていき、清々しいほどの達成感で
胸が満たされる。
女の子も気持ち良さそうな顔をしていた。
自分の力を精一杯出し切ったときか心の底から楽しんで歌うと、いつもこんな感じで
心の中が満たされる。
この感覚を私は最近味わっていなかった、多分去年の初出場したアノコウタ以来だと思う。
でもこの子といればいつだってそれが味わえる。
根拠はないけどそう思った、そしてその考えに間違いはないと確信していた。
- 690 名前:青春大通り 投稿日:2010/04/19(月) 16:42
- 「ねぇ、合唱部に入って!あなたと一緒に歌いたいの!」
私は女の子に駆け寄るとその両手をしっかりと握ってから少し早口で言った。
「えぇっ?!」
「あっ、えっと・・・・ごめんね?いきなりこんなこと言っちゃって・・・・・」
「いいよ、入る」
「えっ?」
「だから入るよ、合唱部」
女の子は私の誘いに二つ返事でOKしてくれた。
それがあまりにも即答だったから逆に私のほうが戸惑ってしまった。
教室で一人歌っているくらいだから歌が好きなのは分かるけど、まさかこんなに簡単に
良い返事を聞かせてくれるとは思っていなかった。
「ねぇ名前は?」
「えっ?名前って・・・・・私の名前ってことだよね?」
いきなり目の前で声がしたかと思って顔を上げると、女の子が目を輝かしながら聞いてくる。
その目は好奇心旺盛な子どもみたいだった。
蛙でも泥だんごでも興味があったら何にでも手を伸ばす、そんな幼くて純粋な子どもの目に
私には見えた。
- 691 名前:青春大通り 投稿日:2010/04/19(月) 16:43
- 「うん。そう」
「そういえば自己紹介がまだだったね、私は三年の水島果菜。合唱部の部長は私だから」
「へぇー、部長さんなの?すごいね!」
「別にそんな凄いもんじゃないよ。それよりあなたは?」
「あたし?私は一年の長雲学子」
女の子は少し自慢げに胸を張って名前を教えてくれた。
珍しい苗字だなと思ったけど、でもどこかで聞いたことのあるような気がする苗字だった。
でもそのときは特に何も言わずただ彼女の名前と学年を頭の中に入れた。
そして忘れないように三回くらい頭の中で繰り返し唱えた。
長雲学子、この名前を生涯私は忘れることはないと思う
- 692 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/04/19(月) 16:43
-
- 693 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/04/19(月) 16:44
-
- 694 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/04/19(月) 16:45
- 短いですがキリがいいのでこの辺で
- 695 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/06/08(火) 16:37
- りしゃキャプというか、ゲキハロの学子×果菜の続きです
- 696 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:39
- 学子が合唱部に入ることが決まり一時は喜んだものの、それはぬか喜びに過ぎず私は
後日少し重い足取りで職員室へと向かっていた。
なぜ気まずいかというとまず合唱部の入部締め切り日が過ぎているということ、でもそれに
ついては強引に押し通せば何とかなると思う。
それ以上に不安なのが入部審査だった。
他の部活動はともかく、合唱部はこの私立弁天女学園の中で一番の歴史と伝統を誇る部活
なので入るのには審査というかテストみたいなものがある。
それに学子が合格しなければいくら部長の私が推しても部には入れない。
学子なら間違いなく合格するとは思うけれど、全ては顧問の千駄木先生次第なので絶対とは
言い難い。
千駄木先生は悪い先生じゃないけど、合唱の事になると熱が入りすぎるというか色々と
こだわりがある人だった。
それに少しスパルタなところがあるので辞めていく生徒も少なくない。
でも毎年アノコウタで上位にいけるのは先生の指導の賜物だと思うし、尊敬している
部分もある。
とりあえず私は全力で学子を推そうと心に決めて私は職員室のドアをノックした。
「失礼します」
そう言ってからドアを静かに開けて軽く頭を下げてから中に入る、それから千駄木先生の姿を
探し出すと近づいて声を掛けた。
「あの千駄木先生、今お時間よろしいですか?」
「あぁ、水島か。どうかしたのか?」
「部活のことでちょっとお話がありまして・・・・・・」
「合唱部のことか?」
「はい」
千駄木先生は私の方に椅子を向けて話を聞いてくれる体勢になってくれた。
でも話が合唱部のことだと言うと右の眉毛がピクッと動いた。
それを見てやっぱりこの人は合唱部命だなぁなんて思うのと同時に、学子について話を
切り出しても大丈夫だろうかと不安になる。
でも学子は絶対に合唱部に欲しい、千駄木先生だって学子の歌を聞いたらそう思うはずだと
自分に言い聞かせて私は口を開いた。
- 697 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:39
- 「合唱部に入れたい一年生がいます」
私は小さく深呼吸すると、先生の目を真っ直ぐ見つめてからはっきりと言い切った。
「もう入部締め切り日を過ぎているのは知っているな」
「はい、分かっています。それでもその子を入れたいんです。入れて絶対に損はないと
思います」
「・・・・・・そうか。水島がそれ程までに推すということはできる奴なんだな」
「はい。まだ荒削りですがその子の可能性に賭けたいと思っています」
「分かった。明日の放課後にそいつを音楽室まで連れて来い」
「ありがとうございます!千駄木先生!」
「いや俺はお前の頼みだからというわけではなく、その、いや、一人の合唱部顧問としてだな・・・・・」
意外にも簡単に入部審査を受けさせてくれることが嬉しくて、私は気分が舞い上がって
しまい先生の話を最後まで聞かずに職員室を出た。
そしてすぐにでもこの良い知らせを学子に聞かせてあげたいと思った。
- 698 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:40
- 翌日の放課後、私と学子は音楽室で千駄木先生が来るのを待っていた。
学子は特に緊張している様子はなくさっきからピアノを弄って遊んでいる。
逆に私の試験じゃないなぜか緊張してきて、さっきから鼓動がどんどん早まっていくのを
感じていた。
「ねぇ、学子は緊張とかしないの?」
「えっ?うん。しないよ」
私はすぐに質問したのが間違いだったことに気づくと軽く溜め息を吐き出す。
良く言えば大物ってことなんだろうけど、緊張感が足りないのはあまり良いことでは
ないと思う。
そんなことを考えていると、ピアノに飽きたのか学子が小走りで私のところまで
やってくる。
そして私の顔を覗き込むとなぜだか不思議そうな顔をする。
もしかして自分が何か変なことしたかなと思って考えていると学子が口を開いた。
「果菜は歌うとき緊張するの?」
「うん、本番のときはやっぱりするかな。だってアノコウタとかだとさ、すごい大勢の人が
自分達を見ているわけだし」
「ふーん、そうなんだ・・・・・・でもなんかそれってもったいないね」
あっけらかんとした学子の言葉に私は思わず面食らう、そんなこと言われたのは
初めてだった。
誰だって大舞台立てば緊張するし、誰に言っても「仕方ないね」みたいな感じだった。
でも学子は違った。
勿体無いなんて今まで誰にも言われたことがなかったし、そういう考え方をしたことすら
なかった。
- 699 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:40
- 「勿体無いってどういうこと?」
「だって歌ってるときってすっごい楽しいから!緊張なんかしたらもったいないよ」
その言葉は真っ直ぐ私の心を貫いた、それだけ革命的な言葉だった。
でも言われてみれば納得できる。
学子からすれば好きなことをしているのに緊張する必要なんてない、逆になんで緊張
するのか分からないんだと思う。
だからさっき学子は不思議そうな顔していたんだなと思った。
「そうだね・・・・・・歌は楽しいものだから、緊張する必要なんてないんだよね」
「うん。歌は楽しめばいいんだよ。だからあたしは合唱部に入ったんだもん」
「えっ?」
「あたしは果菜と歌ってすっごく楽しかったよ。この人ともっと歌いたいと思った。
だから合唱部に入りたいと思ったんだよ?」
学子は無邪気に笑いながら私の手を取って握る。
歌を歌う身としてこれほど嬉しい言葉はない、というか最高の口説き文句だと思った。
私は手を掴まれたまま学子の胸に突っ込むように飛びついた。
- 700 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:42
- 「か、果菜?!」
「学子、大好き!!」
突然抱きついたので当然学子はひどく驚いていた。
でも好きだと告げると歯を見せて嬉しそうに笑う、あまりに嬉しそうに笑うから釣られて
私も笑顔になった。
「んっ、んんっうん!」
そうして2人で笑い合っていると、不意に男の人の咳払いが聞こえて私と学子は同時に
顔を向ける。
するとしかめっ面の千駄木先生がドアの前に立っていた。
私達は慌てて体を離すと横に並びになり両手を腿の横に置く。
「・・・・・・この子が水島推薦の子か?」
「そうです。ほら学子!」
「な、長雲学子です!よろしくお願いします!」
千駄木先生は値踏みするような視線で学子を上から下まで見る。
私は少しでも印象が良くなるように後ろから学子の背中を軽く叩く、すると焦りながらも
自己紹介してから頭を下げた。
「長雲?・・・・・・まぁいい、それじゃ早速だが歌ってもらう。曲は何でもいい、
好きなやつを歌ってくれ」
「はい。それじゃあれを歌います」
「あれって何だ。題というか曲名は」
「忘れました」
「忘れたぁ?歌を歌う者が大事な曲名を忘れるなんてなぁ・・・・・・」
「せ、千駄木先生!学子はちょっと緊張してるんです。多少は大目に見て頂けませんか?」
「ま、まぁ、仕方ない。ここは水島の顔を立てて良しとする」
一見険悪な雰囲気になったけれど何とか私が宥めて大事にはならなかった。
初めて会ったときから何となくそんな気はしていたけど、学子は年上に対しての礼儀とか
遠慮をしない。
だから千駄木先生に紹介するときもそこの部分が不安だった。
でも学子の歌を聞けばそんなことはどうでも良くなると思う、礼儀は確かに大事だけど
絶対学子のことが欲しくなると思う。
そして私のその予感は見事に的中した
- 701 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:45
- 学子は私と初めて会ったときと変わらず楽しそうに歌う。
その伸びやかで真っ直ぐな声は何度聞いても心が震える、この子が欲しいと思わせる。
そして一緒に歌いたいと思わせる声だと思った。
始めは渋い顔をしていた千駄木先生だったけど、学子の歌を聞いた瞬間目を見開いた。
それからすぐにまた気難しい顔になったけれど私は見逃さなかった、先生の口端が密かに
上がっていたことを。
それを見て私は学子が試験に合格したことを悟った。
「・・・・・入部を許可する。お前はこの弁天女子学院合唱部に絶対必要な人材だ」
「やったぁ!!やったよ、果菜!」
「うん。おめでとう、学子」
合格を告げられて学子は私に抱きつくと本当に嬉しそうに笑う。
私もまるで自分のことのように嬉しくて、私達は互いに手を取り合って喜んだ。
それから千駄木先生は明日の練習から学子に参加するように言った。
私もそうだけど学子も早く歌いたいらしくて、その言葉を聞いた途端小さくガッズポーズを
していた。
それから先生は私に「長雲のことは頼んだぞ」と言って音楽室から出ようとする。
でもドアに手をかけたとき、ふと思い出したかのように後ろに振り返って口を開いた。
「なぁ長雲、一つだけ聞いていいか」
「はい。何ですか?」
「お前はあのピアニストの長雲兜太と何か関係があるのか?」
「えっ?長雲兜太はあたしのお兄ちゃんですけど」
「珍しい名前だから親戚くらいに思っていたが・・・・・・まさか兄とはな」
長雲兜太、たまにワイドショーとかで取り上げられる天才イケメンピアニスト。
あんまり詳しくは知らないけれど、イケメンの前につく天才の名の通りに幼い頃から
数々の賞を取ってきたくらいは知っている。
どこかで聞いたことがある苗字だと思っていたけど、まさか学子のお兄さんがあの
長雲兜太の妹とは思わなかった。
- 702 名前:青春大通り 投稿日:2010/06/08(火) 16:46
- 「期待しているぞ、長雲」
千駄木先生は音楽室のドアを閉めるとき、私達に背中を向けながら呟くようにそう言った。
先生が個人に対してそういう風な言葉を言うのはとても珍しいことだった。
それだけ学子の実力を認めているということだし、言った通り本当に期待していると思う。
それに対して学子は至ってマイペースで、鼻唄のメロディーに乗せて「早く歌いたいなぁ」
なんて言っている。
あまりにも先生と学子が対照的なので私は軽く吹き出してしまった。
すると学子は鼻唄を歌うのを止めて私の顔を覗き込んでくる。
「ん?何か面白いことでもあった?」
「ふふっ・・・・・うん、あった。っていうかこれからたくさんある気がする」
「えー?何それ?」
これからもっと歌うのが楽しくなると思うと私は嬉しくてたまらなかった。
だからさっきの学子のように今度は私が鼻唄で歌いだす。
すると学子は小首を傾げていたけど、少ししてから一緒になって鼻唄で歌いだした。
私は学子と歌えば楽しくなると思っていた、でもそれはあまりに単純すぎる考えだった
- 703 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/06/08(火) 16:46
-
- 704 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/06/08(火) 16:46
-
- 705 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/06/08(火) 16:47
- 秋にやるベリのゲキハロが始まるまでには終わらせたいです
- 706 名前:名無し飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:21
- 期待しております
- 707 名前:とりあえず名無し 投稿日:2010/09/22(水) 15:33
- 気がついたら最後の更新から三ヶ月過ぎてました・・・・・
なかなか更新できなくてすみません
ゲキハロ始まるまでにと思っていたら、あっさり始まってしまったので
急いで書いて終わらせました
>>706さん
お待たせして申し訳ないです
期待に応えられている作品になっていれば嬉しいです
- 708 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:35
- 「さっ、学子。自己紹介して」
「えっと・・・・・長雲学子です。よろしくお願いします」
千駄木先生の許可を得て学子を合唱部に入部した。
一応初顔合わせのときに自己紹介をさせたけれど、拍手は若干まばらだったような気がする。
部員募集の締め切りを過ぎたのに入ってきた子として、注目されていることは私の耳にも
入ってきていた。
多少はギクシャクするかなとは思っていたけれど、私の予想より学子が合唱部に馴染むには
時間がかかりそうだった。
「ねぇ、歌おうよ。果菜」
「ちょっと学子!まず千駄木呼吸法をしないとダメだよ」
「何それ?」
「うちはそれをやってから発声練習して、その後ようやく歌に入る決まりだから」
「えー!そんなことやらないといけないの?」
学子は本当に自由奔放だった。
私は学子が歌が上手いことを知っているし期待もしている、でもあまりに自由すぎるのは
団体行動をするとき困る。
学子の歌を聞いて部員達は実力を認めたのか皆驚いていた。
でもいくら実力がだからといって何でも好き勝手やっていいわけじゃないし、私も部長として
当然学子をルールに従わせないといけない。
だからあまり馴れ合ったらいけないと思い、部活内では少し厳しく接しようと心に決めた。
そして私は皆の前では「学子」とは呼ばず「長雲」と呼ぶことにした。
- 709 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:37
- 私が音楽室に入ると部員達が固まって喋っているのがまず視界に入ってきた。
でも当然のようにその一団の中に学子はいなくて、軽く辺りを見回して探すと窓辺に立って
外を眺めているのを見つけた。
唇を突き出し少しふて腐れたようなその顔は、まるでつまらないと書いてあるかのように
見ただけでその心情が分かる。
入部してからもうすぐ二週間が経つけれど学子と部員達の間には未だに壁がある。
学子は本当に天真爛漫で自由なところがあるから、受け入れにくいという気持ちは
分からない
わけでもない。
でも決して悪い子ではないのになぁと思って私は小さく溜め息を吐き出した。
「おはようございます、部長」
部員達は私が来たことに気がつくと、一斉にこちらを向いて声を揃えて挨拶する。
その声に学子は私が来たことを知って勢い良く顔を向ける。
「果菜!」
まるでさっきまで蕾だった花が咲いたように笑って、学子は私のところへ小走りに走って
やってくる。
本当ならそのまま抱きしめたかった。
でも部長の私が一人の部員を贔屓するわけにはいかないし、そうすることで学子は
さらに孤立してしまうと思った。
だから私は両手を前に出して学子を止めるとさり気なく体を後ろに引く。
「お、おはよう、長雲」
「えっ・・・・・」
そのとき初めて「学子」ではなく「長雲」と呼ぶと、学子は最初意味が分からなかった
のか小首を傾げていた。
でも何を思ったのかは知らないがすぐに今にも泣きそうな顔をする。
「あ、あの、学子・・・・・」
「部長、今日は何をするんですか?」
「えっ?あ、あぁ、今日はまず千駄木呼吸法をやって、その後は、えっと、前回と同じ
曲をやろうかな」
私は学子の態度が予想外でかなり動揺してしまった。
ただ呼び方を変えただけなのに泣きそうな顔をされるとは思わなかった。
だから何かフォローしようとしたら、部員の一人が話しかけてきたのでそちらに答えていて
学子の相手を全くしてあげられなかった。
話がようやく終わってウォーミングアップに入る頃には、学子は私から一番離れたところの
アルトパートの列に加わっていた。
- 710 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:38
- 結局学子はその後一回も私と目線を合わせてはくれなかった
やりすぎたかなぁとかちゃんと説明してからするべきだったかな、などと考えていたら
全然集中できなくてミスを連発してしまった。
「部長らしくありませんね」なんて皆は笑って許してくれたけど、我ながら不甲斐なくて
先代の部長に申し訳ないなと思った。
それでも何とかその日の部活は終わり、一年は簡単な掃除があるので私は学子が出てくるまで
音楽室の外で待っていた。
そしてようやく出てくると思うと学子は一瞬だけ私を見たものの、すぐに顔を正面に向けて
足早に行ってしまう。
どうやら相当怒っているらしい。
私はどんどん遠ざかっていく学子を慌てて追いかけた。
「ちょっと!ちょっと待ってよ、学子!」
少し本気で走ってどうにかその隣に並ぶと、腕を掴んで強引に足を止めさせる。
「なんでさっきそう言ってくれなかったの?」
「えっ?」
「果菜、部活のとき長雲って呼んだ・・・・・なんで?どうして?果菜もあたしのこと
嫌いになったの?」
「嫌いになんてなってないよ!」
「本当に?」
「うん。私は学子のこと好きだよ」
「果菜ぁー!」
学子は私に抱きついてくると、大事なぬいぐるみを抱きしめるようにギュっと腕の中に
閉じ込める。
そして肩に顔を埋めてくるので私は優しくその頭を撫でてあげた。
学子はそれから少しだけ泣いた。
- 711 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:39
- 「落ち着いた?」
「・・・・・・うん。いきなり泣いちゃってごめんね?」
「うんん、私の方こそ何にも説明してなくてごめん」
しばらくして泣き止むと少し落ち着いたのか学子はゆっくりと私から離れる。
それからゆっくりと顔を上げるとはその目は真っ赤で、不謹慎だとは思ったけどウサギ
みたいでちょっと可愛いなと思った。
でもそれはさすがに本人には言えないから微笑みながら学子を見つめていた。
そして心身ともに落ち着いたようなので、私は「学子」から「長雲」に変えた理由を
ちゃんと説明する。
すると学子は泣き腫らした目を擦りながら何度も頷いてちゃんと聞いていた。
「分かった。あたしの為にしてくれたことだったんだね」
「まぁ大きく言えばそうなるのかな」
「そっか。良かった。果菜まで離れていっちゃうと思ったらすっごく怖くて、すっごく
嫌だって思ったから」
「・・・・・・学子」
学子は私の話を理解すると安心したように笑った。
その顔を見て「長雲」という言葉は学子を拒絶する言葉で、あまりにも安易に使って
しまったことを後悔した。
学子は確かに自由奔放で我が強い性格に一見見える、でもその実とても繊細で孤独を
嫌っている子だった。
「うちね、両親が音楽関係の仕事してるから小さい時からいないことが多かったんだ。
兜太お兄ちゃんも遠征とかでいないこと多くて。まぁそういうときは大体葉子のところに
行くんだけど、葉子とおじいちゃんが迎えに来てくれるまでずっと家で一人ぼっちで、
それがすっごく怖いからずっと歌ってた。歌ってると全然怖くないんだよね。なんでかな?」
学子は普通の会話のように平然と自分の家の話をする。
私はすぐに言葉が出なくて、ただ学子は私が思っていたよりもずっと孤独で強い子だった。
学子は間違いなく歌に愛されていると思う。
でもそれは幼い頃からきっと今も歌に愛を求めていて、そうしてずっと歌ってきたから
歌は学子を愛してくれるのだと思った。
- 712 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:40
- 私は学子について何も知らなかった。
まだ知り合って一ヶ月しか経ってないのに知った気になって、勝手に壁を作って傷つけて
しまった。
そのことに気づいたらすごく悔しくて悲しくなって、それから突然胸の中が意味も分からず
とても熱くなった。
私はさっきとは反対に自分から学子に抱きついた。
「学子!ごめん!」
「えっ?えぇぇぇぇ!!か、果菜?!どうしたの?急に」
「なんか・・・・・・なんか色々とごめんね、学子」
「ん?うんん、全然大丈夫だよ。よく分からないけど、あたしは大丈夫だから」
「・・・・・・うん」
学子は私を抱きしめながら目を細めて柔らかく笑う。
その笑顔を見たら不思議なくらい安心できて、なぜだか少し泣きそうになった。
でもここで泣いたら本当にさっきと逆になっちゃうなと思ったら少し笑えてきて、私は軽く
吹き出すと学子の背中を軽く叩いてから体を離した。
「そういえばさ、さっき言ってた葉子って学子の友達?」
「葉子は葉子だよ」
「いや、私はその子と知り合いじゃないから」
「あっ、そっか。なら紹介するね」
「うん、ありがとう」
「じゃ行こう。多分まだ校内にいると思うから」
学子は私の手を引っ張ってそのまま歩き出す。
私は後日その葉子さんって人を紹介してくれるものだと思っていたので、まさか今日
会うなんて考えてもいなかった。
学子は右手で私の引っ張りながら左手でポケットから携帯電話を取り出す。
それを見て意外に器用だなと思っていると学子が話し出した。
「葉子、まだ学校の中にいる?・・・・うん・・・・うん。えっ?玄関前?ちょっと
そこで待ってて!今果菜を連れて行くから・・・・・えっ?果菜って誰かって?果菜は
果菜だよ・・・・・うん、とにかく今から葉子のところまで行くから待ってて」
学子の電話をしている相手はどうやらその葉子さんらしい。
でも電話越しから微かに聞こえる相手の声は私と同じ反応で、きっと良い友達になれそうな
予感がした。
- 713 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:42
- 「学子がいつもお世話になってます。2年の服部葉子です」
「えっと・・・・・・3年の水島果菜です」
玄関前では立ち話も何なので、近くの談話ルームに移動してから簡単な自己紹介をした。
学子に紹介されて会ってみると何度か校内で見かけたことがある子だった。
背も高くて長い黒髪に綺麗な顔立ちをしている子で、その凛とした佇まいから近寄り
がたい感じがして話をしたことは一度もなかった。
でも話をしてみると普通に真面目で感じの良い女の子だった。
「それじゃ果菜さんはあの合唱部の部長なんですか?」
「うん、そうだよ。それより果菜でいいよ、学子も私のことそう呼んでるから」
「いや先輩ですから呼び捨てなんてできません」
「えー、果菜は果菜じゃん。葉子もそう呼べばいいのに」
「学子はもっと年上を敬いな。水島先輩は3年生でおまけに部長なんでしょ?」
「でも果菜は果菜だもん!」
葉子ちゃんに怒られて学子は少し不貞腐れたような顔をする。
すると葉子ちゃんは小さく息を吐き出しから少し困ったように笑う、すると学子は歯を
見せて嬉しそうに笑う。
そんな2人を見て、言ってはいたけど幼馴染みなんだとなぁと改めて思った。
2人には2人だけの時間があって、きっと葉子ちゃんは私が知らない学子をいっぱい
知っている。
それは当然のことなのに私はそのとき少しだけ悔しいなと思った。
- 714 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:43
- 「果菜?どうかした?」
「えっ?」
「今、なんか悲しそうな顔してた」
「そう?全然大丈夫だよ、ちょっと考えことしただけだから」
「ならいいんだけどさ」
ふと我に返ると学子が私の顔を覗き込んでいた。
そんな悲しそうな顔をしていたのかは自分では分からないけれど、学子が心配そうに私を
見つめるから笑って適当に誤魔化した。
それでもまだ学子が不安そうな顔をしているから軽く頭を撫でてあげる。
するとようやく学子が笑ってくれて、笑顔を見れたことが嬉しくて私も笑顔になった。
「それじゃ交流を深めるのも兼ねてどこか食べに行かない?」
「いいね、それ!賛成!」
「えっ、いいんですか?買い食いなんて見つかったら色々と言われそうですけど・・・・・・」
「まぁ見つかったらね。それとも葉子ちゃんはこういうの嫌い?」
「いや、好きです。好きというか、誘われたこととかあんまりないんでそれだけで
嬉しいです」
「よし!それじゃ皆で買い食いしよう!」
『学子、声が大きい!』
はしゃぐ学子を私と葉子ちゃんが注意するとその声が綺麗に重なって、私と葉子ちゃんは
顔を見合わせると声を出して笑った。
それから私達は普通の女の子と変わりなく騒ぎながら玄関に向かって歩き出す。
学子といるときも楽しいけれど、こうして3人でいるのも悪くないかなと思った。
その日、新しい友達が一人増えた
- 715 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:44
- ある日の放課後、私は校舎の階段を勢い良く駆け上っていた。
千駄木先生にアノコウタで歌う曲の候補を見せに行ったら、思っていたよりも時間が
かかってしまった。
どうせ大して時間がかからないと思っていたので私は音楽室で学子を待たせていた。
だから先生との話が終わると私は急いで職員室を後にした。
でも肩で息をしながら音楽室のドアを開けたけれど学子の姿はなくて、代わりに二年の
榎本かおりがピアノを弄って遊んでいた。
そんなに大きい部屋ではないのでいないのは分かっていたけれど、私は念のために
もう一度辺りを大きく見回す。
「はぁ・・・はぁ・・・・あ、あれ?・・・・・学、いや長雲は?」
走ってきたので息も絶え絶えになりながらも、どうにか声を絞り出してかおりに学子の
ことを聞く。
「長雲ならトイレ行ってきます、って言ってさっき出て行きましたけど?」
「あー、そうなんだ。行き違いになっちゃったのかな」
「・・・・・・部長って本当に長雲のこと好きっていうか、すごく大切にしてますよね」
「えっ?そ、そりゃまぁ我が部の期待の星だし」
「それにしても少し甘やかしすぎだと思うんですけど」
「うっ」
私は言葉に詰まってすぐ返答できなかった。
かおりのことは別に嫌いじゃない、ただ結構思ったことをストレートに言う子だから
少しだけ苦手だった。
それに意外と鋭いところをついてくるのも苦手に感じてる理由の一つだったりする。
でもピアノを弾けることもあって音程感は良いし、声は少し線が細いけれど綺麗で伸びがあり
音域もかなり広い。
実力は私よりもある子だし学子が入ってくるまでは彼女が一番だった。
- 716 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:46
- 「えっと・・・・・・私って、そんなに甘やかしてるかなぁ?」
「甘やかしてますね」
さり気なく聞いた私の質問はかおりに即答でばっさりと斬られた。
別に自覚がないわけじゃなかったけど、さすがに即答されると少しだけ胸が痛む。
「で、でも皆の前では長雲って呼ぶようにしてるし」
「それぐらいですよね」
「いや、うーんと・・・・・・ま、まぁ今のところはそうかな」
「別にいいですよ、長雲を贔屓しても。彼女はこの部で一番の実力者だし、大切にしたい
っていう部長や千駄木先生の気持ちも分かります」
「えっ?」
「でも私はもう少し他の部員のことも考えるべきだと思います。正直言って長雲が入って
きてから皆の士気が下がってきてると思います」
私の言う事はかおりに大概正論で返される。
そして冷静に意見されるとたまにどちらが部長だか分からなくなる。
でもかおりの最後の言葉だけは間違っていると思ったから、私ははっきりとした口調で
反論した。
「確かに長雲が入ってきたことで部は乱れたと思う。でも私は士気が下がったとは思わない。
だって皆歌ってるときすごく楽しそうに歌うようになったよ、それって長雲のお陰なんじゃ
ないのかな」
自分の意見を告げるとかおりは静かに私から目線を逸らし、皆がいつも歌っている場所を
見つめる。
学子が入る前の部員達はどこか綺麗に歌おうとしていた気がする。
でも学子は自分がその曲から感じたままに感情を込めて歌う、少し音程がずれたり荒いと
思うときもある。
皆の輪からズレているといえばそうだけど、でも学子は単純にその曲を愛している。
それが少しずつでも伝わったのか、最近は歌っている最中も楽しそうな顔をする部員達が
増えたように思う。
そして私は横目で皆のその顔を見ることを密かに最近の日課にしている。
- 717 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:47
- 「・・・・・・・前言撤回します」
「へっ?」
「さっきのは多分嫉妬です。本当は私も分かってました、長雲が入ってきてからみんなが
すごく楽しそうに歌ってるってこと」
私はかおりの自分の間違いをちゃんと認めて謝れるところが好きだった。
間違いを認めるにはとても勇気がいることだし、それを相手に向けて言えるのは本当に
凄いことだと思う。
かおりは良くも悪くもまっすぐで自分の意見をはっきり持っている、そしてもし違ければ
ちゃんと謝罪してくれる。
こういう子が部にいて本当に良かったと私はいつも思う。
「ありがとう、かおり」
「でも長雲に甘やかしすぎるのは直したほうがいいと思います」
「いや、その・・・・・分かってはいるんだけどねぇ」
「千駄木呼吸法だって100回くらいしかやらせないし、ストレッチも軽めだし、多少
音程がズレていても黙認してるし、後は・・・・・・」
「もうそれくらいにしてもらっていいかな?以後気をつけます」
ダメ出しを言うとキリがなさそうだったので私は自分から折れた。
そしてかおりは少しだけでいいから人に優しくした方がいいなと思った。
でも言われていることは全部事実だし、私はもうちょっと学子に対して厳しく接しないと
いけないなと思った。
- 718 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:48
- 私は深い溜め息を吐き出してから軽く項垂れる、すると突然大きな音を立てて音楽室の
ドアが開かれる。
「カオリン!果菜をイジメちゃダメ!」
と入ってくるなり学子は私の前に立つとまるで庇うように大きく手を広げる。
「別にイジメてなんてない」
「えー?本当に!」
「本当に決まってるだろ、バカ1年!」
「バカじゃないよぉ!もうー、カオリンはすぐにバカって言うからヤダ」
「だからカオリンって呼ぶな、長雲」
「ほら二人ともケンカしないの。同じ合唱部同士仲良くやらなきゃ」
私が諭すように言うと長雲は「はーい」と手を上げて大きく頷き、かおりの方はまだ少し
不満そうだったけれど一応小さく頷いてくれた。
長雲とかおりはたまにこんな感じでケンカというか言い合いをする、だから仲が悪いと勘違い
している部員もいると思う。
でも私は意外に二人は良いコンビだと思っているし、声の相性も結構良いからアノコウタに出る
ならこの三人かな、なんて密かに考えていたりする。
それに何よりこの三人でいるのが個人的にちょっと好きだった。
こうやって卒業するまでの間ずっと騒いでいけると思っていた、そう信じて私は疑った
ことすらなかった。
- 719 名前:青春大通り 投稿日:2010/09/22(水) 15:49
- 「・・シャン・・・ハイ?上海ってどういうことなの、お父さん!」
家に帰ってくるなり父から告げられた突然引越しするという話、それも国内ではなく
中国の上海という事だった。
「父さんも色々頑張ったんだがな、もう日本じゃ仕事じゃないんだ」
「そんな・・・・・・」
「それで上海にいる知り合いが仕事を紹介してくれるっていう話があって、父さんは
行こうと思ってる」
「それってもう決まったことなの?」
「別に無理には言わないさ。お前が日本を離れたくないというのなら、親戚のおばさんの
所に行っても構わない。それに多少退職金もあるからそれを使って一人暮らししてもいい」
「そんなことできるわけないでしょ!退職金使ったらお父さん達が困るし、私はそこまでして
日本に残りたいとは思わない」
「・・・・・・父さんも本音を言うなら一緒に上海に来てほしい。今まで家庭より仕事を
優先してきた奴の言えるセリフじゃないが、どうしても家族とは離れたくない」
父は今まで家庭を顧みない仕事一筋の人だった。
でも私も母もそれに対して養ってもらっている身だから何も言わなかったし、ただひたすら
仕事に打ち込むストイックな父を誇りに思っていた。
そんな父がリストラになったというだけでも衝撃的だったのに、新しい仕事先が上海と
聞いてさらに鈍器で殴られたような気分だった。
本当なら上海に行くべきだと思う。
それが家族の為にも良いことだというのは分かってる、でも頭に学子の顔がちらついて
私は素直に頷くことができなかった。
あの子を一人にしてしまう、一人でいること一番嫌がっている学子を独りにしてしまうことが
不安で心配でしょうがなかった。
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