1/2
- 1 名前:value 投稿日:2008/02/08(金) 20:15
- 吉澤さん中心のお話を書きたいと思います。
元ネタありのお話ですが、なにぶん駄文ですので、読み苦しい点はお許し下さいまし。
- 2 名前:1/2 投稿日:2008/02/08(金) 20:20
- 神様は何も禁止なんかしてない。
- 3 名前:1/2 投稿日:2008/02/08(金) 20:45
-
むかしむかし。あるところにラブラブなカップルがおりました。
ところが男は、他の娘ともラブラブでした。それはあらゆる人に、至る所で確認され、お互いの存在を知った彼女達は−
「み、美貴ちゃん、あゆみちゃん、話し合おう!三人で。ね!」
話し合う間もなく−
「「しね!」」
お互いの拳で男を叩きのめし、その場を立ち去りました。
そして現在−。
「バイト先の大学生なのね。カッコよくってさぁ〜。その人が飲み会誘ってくれてー。友達いっぱい連れておいでって。だからぁ…」「い・や!」
「そ、そこをなんとか」
「ダメダメ。美貴今男嫌いモード入ってるらしーから」
「カッコイイ女の子も来るって」
「意味分かんないって」
「えー−じゃああゆみだけでも…」
「美貴が行くなら行く」
「美貴〜あたしの恋のために…」
「あゆみが行くなら行く」
「…………もれなく焼き肉食べ放題がついてきますが?」
焼き肉ですと?
お互い顔を見合わせるあたしとあゆみ。もちろん、考えてることは一緒。
「「しょーがないなぁ〜」」
- 4 名前:1/2 投稿日:2008/02/08(金) 20:50
- あたし達は、美味しいものに目がなくて、あゆみはつやつやしたしなやかな髪が、あたしはすらりと伸びたこの手足が自慢で。
毎日楽しく生きる事にはちょっと自信ある二人。
ひそかに理想的な相思相愛を夢見てるんだけど、過去の経験から、そのテの話題にはちょいと神経質なあたし達なのです。
でも大丈夫。
最近はしつこいイタ電と、毎朝のチカンのお陰で、男がうっとーしい!
「美貴でーす」
「あゆみでーす」
「「おおーーー!」」
「盛り上がってこーー!」簡単な、笑顔すらないあたし達の自己紹介で、その場にいた大勢の男達が異様な盛り上がりを見せていた。必然的に、他の女の子達からは冷た〜い視線を浴びる事になる。
「ここ、どうぞ」
山崎。と名乗った、ちょっとナルシスト入っている男が、さっそくあたし達をエスコートしてきた。「ずりーぞ山崎ぃ!」「席替え席替え!」そんな野次もお構いなしに、あたしとあゆみに(特にうっかり隣に座ってしまったあたしに)馴れ馴れしく話しかけてくる。「へ〜美貴ちゃんってバレー部だったんだ?なんで辞めちゃったの?勿体ないじゃん」
うっさい。だいたいあたしのプレーを見たこともないのに何が「勿体ない」だ?監督か?
つーか勝手にベタベタ触ってんじゃねーよ!
「美貴、ごめん、ちょっと化粧直し付き合って」
もうちょっとで手が出るとこだった。あたしの殺気をあゆみが敏感に察知してくれた。
命拾いしたな。山崎。
- 5 名前:1/2 投稿日:2008/02/08(金) 21:00
-
「何アイツ!?山崎!?アイツ、わざとあたしの前にある食べ物取る振りして、あたしの体にベタベタ触ってくんの!しかもアイツの話ってオチがなくって全然面白くないし!」
「ソイツだよ。まいちゃんのお目当ての彼」
口紅を塗り直しながらシレッとあゆみが言った。その様がめちゃめちゃ様になってる。カッコイイなぁ。大人の女って感じ。
や、そうじゃなくて、今聞き捨てならないことを。
「アイツ?」
「そ」
「マジ?」
「マジ。バイト先の山崎さんがぁ〜って、まいちゃんいつも言ってたじゃん?」
終わってる…。
「まいちゃん…ヤバイよ…」
「うんうん」
「あゆみ〜帰ろ〜よー。なおさらもうアイツの隣には戻れないよぉ」
「うん。あたしも同感」
まいちゃんには明日詫びを入れておこう。そして説得しよう。
あの山崎はろくな男じゃない。顔はそこそこイイのだろうけど(あたしは全然タイプじゃない!)、あいつの会話の内容ときたら、自分の自慢話ばっかり。自慢ネタが尽きると、今度はエラソーに経済の話なんか延々とされ、正直聞いてうんざりだった。
もちろん内容は理解不能だったが、直感で、「まるで新聞の経済面に書いてあることみたい」だと思った。
まいちゃんは、今どき珍しいくらい素直でイイ娘だから、あいつの表面だけに騙されてる。絶対やめさせるべき。
- 6 名前:1/2 投稿日:2008/02/08(金) 21:20
- 「これからどーする?」
パチンとコンパクトを閉じるて、あゆみが聞いた。
「あたし食べ足りなーい」
「ドトールでも寄ってこーか?」
やっぱり男はろくなもんじゃない。とゆーのが今日改めて思った。べつに今どーしても彼氏が欲しいってわけでもないし、彼氏がいなくても、それなりに楽しい毎日が送れてるわけだし。
まぁ劇的な出会いなんてそうそう訪れないもんなのよ…
「もう帰るの?具合でも悪い?」
そんな事を考えながらトイレから出ると、ふいに背後からハスキーな声に呼び止められた。
一瞬、その言葉が自分達に向けられてる事に気付かず、少しして、あたしとあゆみはお互い顔を見合わせて立ち止まった。そして、確認するために、ハスキーな声の方を振り向く。
「戻ってくるのが遅いから心配してたんだ」
「…………」
「…………」
誰?
- 7 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/02/08(金) 21:38
- 本日はこの辺で区切りたいと思います。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/09(土) 05:09
- いいとこで切りますねぇ。
続き楽しみにしてます!
- 9 名前:1/2 投稿日:2008/02/09(土) 11:21
-
「あ、あの、うち、一応君達の斜め前に座ってたんだけど…」
斜め前…?二人してじーっとその人の顔を見つめてみたけれど、残念ながら記憶に全くない。だってこの人、メガネかけてるせいか、見るからに印象薄いんだもん。
ふむ。でもまあ、背はまあまあ高いし、格好は割とオシャレだね。
てゆーか、あたしは隣の山崎のバカがウザすぎて、他が目に入ってなかった。
悪いのはあたし達じゃなくて、ぜーんぶ山崎だから。
「あぁ、うち印象薄かったかぁ。えっと、うち吉澤です。吉澤ひとみ」
あからさまに無躾な態度を取っていたあたし達に、その人は怒るでもなく、寧ろちょっと照れ臭そうに笑いながら言った。
よしざわひとみ…?ひとみ…ってことは…?
「あ、女の子なんだ」
思わず本音。だって、ジーンズとジャケットというラフな出で立ちだから、ぱっと見男の人に見えたんだもん。と、すかさず後頭部にあゆみの平手が入った。
「あぃたっ」
「ばか美貴。ごめんなさい、この娘悪気はないから」
- 10 名前:1/2 投稿日:2008/02/09(土) 11:41
- さすがに失礼な発言だったと、慌ててあゆみがフォローしてくれた。
あたしは、いつも思ったことは素直にそのまま口に出しちゃうタイプだから、たまに人を不愉快にさせてしまうことがある。
そういう時、あゆみは決まって、あたしを窘め、直ぐさま的確なフォローに走る。
あゆみのこういう所が大人だなぁって関心する反面、それに引き換え、あたしはまだまだ子供なんだなぁって反省してしまう。
「美貴、ちゃんと謝る」
「うん。あの、ごめんなさい」
「いやぁ、それよく言われるから。ホント気にしないで」
吉澤さんは、全く気を悪くする風もなく、にこにこと人の良さそうな笑顔を振り撒いていた。
今度は改めて、その顔をまじまじと見ていた。これはびっくり。よく見ると、この人すっごい綺麗な顔してる。女のあたしが思わず見とれてしまうほど。
あー…確か、この人にピッタリの言葉があったんだけど。なんだっけ?なんだっけ?…むぅ、ダメだ。今は思い出せないや。
でも残念だなぁ。もし吉澤さんが男だったら、間違いなく彼氏候補になりうるのに。
いくら今のあたしにとって男がウザい存在だからって、あたしは女の子には走りませんからね。ご心配なく。
- 11 名前:1/2 投稿日:2008/02/09(土) 11:54
-
「お腹すいてない?なんか食べに行く?」
「行きまーす」
「あ、あたしお寿司がいいなぁ」
「オッケー」
給料日前なんで…、そう申し訳なさそうに言って、吉澤さんは私達を近所の回転寿司屋に連れて行ってくれた。もちろん吉澤さんの奢りで。
あたし達は、とにかく質より量ってやつなんで、沢山食べれたらそれでよかった。しかもタダだし。
「「ご馳走様でしたー」」
いやあそれにしても食べた食べた。二人10皿ずつ。合計40貫。たいてい、初めてあたし達の食欲を目の当たりにした人は、呆れるか、若干ひいちゃうんだけど、吉澤さんは呆れるどころか、満足そうににこにこしていた。
「いえいえ。それにしてもいい食べっぷりだったねー。うちの周りの友達はさ、ダイエットとかでみんな少食なんだもん」
「へー。あたし達は何がなんでも食を優先するけどなぁ」
「うんうん、同感」
「だよね。やっぱり女の子も美味しそうに食べてる姿見ると気持ちいいもんな」
お、分かってるなぁこのヒト。すごくいいヒト。初対面のあたし達にも優しいし。きっと、困ってるヒトとか、弱ってるヒトとかほっとけないタイプなんだよね。
そんで捨て犬とか捨て猫とかもほっとけなくて、見つけては連れて帰って、家の中ムツゴロウ王国みたいな。
なんて、そんな勝手な想像膨らませて、一人で楽しんでいた。
- 12 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/02/11(月) 08:34
- ちょっと間があいてしまいました。スミマセン。
>8 名無し飼育様
さっそくのレスありがとうございました。更新はちょっと遅いですが、頑張りますので。
- 13 名前:1/2 投稿日:2008/02/11(月) 08:38
-
「吉澤さんもK大なの?」
「うん、そう。そこの二年生」
「専攻は?」
「考古学」
「「へー」」
頷いてはみたものの、2人して、なんのこっちゃい?という顔をしていた。
「えっと…具体的にどんなこと勉強してるの?」
吉澤さんは言葉を選ぶように、ちょっと考えてから言った。
「んーとね、考古学ってのは、古代の人達の生活痕跡なんかを調べて、かつての生活や文化を研究したりすんだけど…って言っても、うちも人に偉そうに説明出来るほどよく解ってないんだけどね」
はははと笑う吉澤さんの、そんな謙虚さに、あたしはとても好感を覚えた。
もっとこの人のことが知りたいと思った。
「ねー吉澤さんは、今付き合ってる人はいるの?」
今までの会話の流れとは全く別の方向へ飛んだ話題に、あゆみも吉澤さんもちょっとびっくりした顔をしていた。特にあゆみは、ちょっと咎めるような顔であたしを見たけれど、吉澤さんは面白がって、笑いながら答えてくれた。
「あー残念ながら今はいないんだ」
「なんで別れちゃったんですか?」
「美ー貴」
「いいよ、別に。もう過ぎた事だし。なんかね、他にも付き合ってた人がいたみたいでさ」
「「えっ」」
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/11(月) 11:19
- よしみき?
- 15 名前:1/2 投稿日:2008/02/12(火) 01:06
-
今、まさに、あたしとあゆみの二人の気持ちが一つになった。
「「吉澤さんっ」」
「えっ?な、なに?」
吉澤さんは、突然二人から手を握られて、戸惑いながら目をぱちぱちさせた。
「元気出してね!」
「へ?」
「あたし達「二股撲滅委員会」の会員なんです!」
「…?は、はぁ」
もちろんそんな会はない。今作った。突然仲間意識が芽生えたあたし達。
こんな人畜無害な人まで犠牲になっていたなんて…。そう思うとなんだかほろりときちゃった。
「今日はありがとうございました」
「またご飯連れてって下さいね」
「うん。いーよ」
にっこり笑顔。さっきから思ってたけど、このヒト、笑うとめちゃめちゃカワイイ。
「あ、そーだ。今度学祭おいで。たいした規模じゃないけど、ライブはけっこーいいの呼んでるから。チケットあげるよ」
「「行きます!」」
見事にユニゾン。
「はは、待ってるよ。んじゃ、うちは電車だから」
そう言って吉澤さんは爽やかに去って行った。二人で吉澤さんを見送りながら、どちらともなくぽつりと呟いた。
「いい人だったね」
ホントにしみじみそう思った。これ以上の言葉が当てはまらないってくらい、しっくりくる。こんな人初めてだった。
そっか。学祭に行けば、また吉澤さんに会えるんだ。そう思うと、なんだかうきうきしている自分がいた。
- 16 名前:1/2 投稿日:2008/02/12(火) 01:30
-
「ちょっと二人とも!昨日はなんでさっさと帰っちゃったわけ!?」
次の日、昨夜フォローし忘れてたまいちゃんが荒々しくやってきた。
ヤバい。まいちゃんのこと本気ですっかり忘れてた。
「いやー実はあゆみがお腹くだしちゃってさぁ…」
なんて苦しい言い訳を、
「えっホントに!?」
なんとまいちゃんはあっさり信じてくれた。いや、そんな真に受けられたらこっちが困る。
「そうとは知らずに怒ってごめんねっ。あゆみもう具合は大丈夫?」
「あー…う、うん」
なんだかとてつもない罪悪感。とりあえず話題を逸らそうと、まいちゃんお気に入りの山崎の話を切り出してみた。その後どうなったの?
「いや?別にこれといってなかったかな…?」
それを聞いてあたし達も一安心。でも、そのわりには、なんかまいちゃん嬉しそうじゃない?
「ふふふ、新しい出会いがあったんだぁ」
あ、そう。心配して損した。
- 17 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/02/12(火) 14:55
- ちょっと区切ります。ちなみにまいちんのお相手は今後出てきませんので//
>14 名無し飼育様
みきよしプラス柴ちゃんです。ちょっと分かりづらいですかね。
- 18 名前:1/2 投稿日:2008/02/18(月) 22:19
- まいちゃんのお相手は、K大の法学部で、谷原章介似の(ホントかよ!?)背が高くてとても優しい人なんだとか。
「なんか話してたら意気投合しちゃってさ、アドレスとか交換してー、で、今度2人で映画でも見に行こうって事になったの」
「はぁ〜恋だね」
「恋しちゃってるねぇ」
昨日の出来事を嬉々として話すまいちゃんは、ホントに幸せそうだった。「恋する乙女」なまいちゃんが、あたしはちょっぴり羨ましかったりする。
恋ねぇ…。
今まで見た目とか雰囲気で「あ、この人いいなー」て思ったことは何度かあるけれど、それってちょっと違うのかな?
好き、だとか、ドキドキ、だとか、そんな気持ちちょっと思い出せない。あれ?もしかして忘れちゃったの?やだやだ。なんかあたしって寂しい人みたいじゃん。
「まいちゃん。ちょっと聞きたいんだけど」
「なに?どうしたの?改まって」
「恋ってどんな感じ」
「「は!?」」
まいちゃんだけじゃなくあゆみも目を丸くしていた。そして口を揃えて「美貴大丈夫?」と聞いてきた。
失礼な。あたしはマジメに聞いてんの!
「いーじゃん。ちょっと聞いてみたかったの。ねーどんな時好きって思うの?」
「う〜〜ん…」
まいちゃんが珍しく真剣な表情で悩んでいた。それからしばらく考えてぽつりと言った。
「顔が浮かぶことかなー」
「「かお?」」
今度はあたしとあゆみがハモった。
「うん。用もないのにその人の顔がポンって頭に…」
顔が浮かぶ人…かぁ…。
一瞬、あの人の笑顔が頭をよぎったけれど、あたしはそれを打ち消した。やだなー。あり得ないよ。
だってあの人は…
- 19 名前:1/2 投稿日:2008/02/18(月) 22:39
-
放課後、まいちゃんは例の彼とさっそくデートとのことで、意気揚々と帰っていった。
「幸せそーだったね。まいちゃん。上手くいくといいけど」
「いくでしょ?まいちゃんなら」
あたしとあやみは、いつもと変わらず2人で楽しく仲良く寂しく(?)下校中。
「余計な心配か。てゆーかそれより美貴さぁ」
「ん?」
「今日まいちゃんに変なこと聞いてたよね?」
「変なことって…」
「なーんか美貴らしくないなーと思ってさ。なんかあった?」
「べつにー…」
自分でもらしくないこと聞いちゃったなーとは思ったんだけど。今日のまいちゃん見てたら聞いてみたくなったんだよね。
「でもまいちゃんの言うことさ、あたしちょっとそーかもって思った」
「え?」
それって、あゆみ、今恋してるってこと?
「誰かいるの?」
「あ、いや、違う違う。一般論でってこと」
「なんだー。びっくりした」
「美貴こそさ、誰か浮かんだんじゃないの?」
「ないない。寂しいことに、誰も浮かばなかったよ」
「あは。あたしも」
ウソ。ホントはちょっと浮かんだんだけどね。でもそんなこと言ったら、あゆみきっとびっくりしちゃうだろうから。きっとまた「大丈夫?」って言われちゃうだろうから。
だから、この事はあたしだけの胸にしまっとこうって思った。
- 20 名前:1/2 投稿日:2008/02/19(火) 13:01
-
そんなこんなで学祭当日。
今日は、あの日振りによっちゃん(…吉澤さんって、ぶっちゃけめんどくさいから、二人で「よっちゃん」って勝手に呼ぶことにした)に会える日。
大学の学祭ってことで、ちょっとだけ、普段より大人っぽい格好をしてみた。別に示し合わせた訳でもないのに、あゆみもあたしと同じ事を考えてたみたいで、待ち合わせ場所でお互いの格好を見て、思わず二人で笑ってしまった。
ホント、あたし達ってなんでこんなに気が合うかな?
「よっちゃん達もなんか出してるって言ってたよね?」
パンフレットを見ながらあゆみに尋ねた。
ウザいナンパやろー達を無視するように、黙々読みながらぐんぐん歩く。競歩なみのスビードだ。
「うん。ゼミの研究発表とか言ってた」
「よっちゃんって、確か考古学の勉強してるんだよね?」
「そーそーそんなやつ。」
「あ、ここだ」
『生命・地球化学研究発表』
「「…………」」
なんかよく分かんないけど。頭いーんだな。よっちゃん。ってことは分かった。
とりあえず教室をこっそり覗いてみると、中にはそこそこ人が入っていて、意外にも盛り上がっていた。
が、よーく観察していると、彼らは「お客さん」ではなく、ほぼ「身内」のようで、恐らく動員が見込めないだろう事は予め承知していたようで、完全にたまり場と化していた。
おっと、そんな中によっちゃんを発見。みんなに囲まれて楽しそうに笑ってる。
二人でじっと視線を送っていると、よっちゃんはすぐにあたし達に気付いてくれた。
「あ、美貴ちゃんにあゆみちゃん」
笑顔でやってきてくれたよっちゃんを見ると、建前とかじゃなくって、ホントに歓迎してくれてるっていうのが伝わってきた。
「ホントに来てくれたんだ」
「うん。せっかくよっちゃんが誘ってくれたからね」
「ちょうどヒマだったしねー」
「はは、ありがと。ここすぐ分かった?」
「あ、うん。パンフレット見ながら来たから」
あたし達が「よっちゃん」って呼ぶことを、よっちゃんは自然に受け入れてくれてるようで、たったそれだけのことに、あたしは嬉しくてちょっと舞い上がってしまっている。
周りの人達が、よっちゃんと親しくしているあたし達に、訝しげな視線を送っていることにも気づかないくらいに。
- 21 名前:1/2 投稿日:2008/02/19(火) 13:05
-
「よっちゃんは何の研究をしてるの?」
あたしは、教室内に掲示してある「研究発表」をぐるりと見渡しながら尋ねた。
「えっとね、主に地層とか化石とかだね」
「……つまり?」
「地層を調べて二畳紀と三畳紀の境目を探すの」
「二乗?三乗?」
「…………」
説明されても分かるわけがない。あたしの頭からプスプスと煙が出てる音がする。ちらっと横を見ると、隣のあゆみも同じ反応だったのでホッとひと安心。
そんなあたし達の様子を察したよっちゃんが、「ちょっとお茶しにいこっか?」って、すかさずフォローしてくれた。
「でも、いーの?」
あゆみがちょっと申し訳なさそうに尋ねる。
「だいじょうぶ。ちょうど今から休憩だし」
それから「ちょっと出てくるわ」とよっちゃんが誰ともなく言うと「えーサボりだー」とか「よっすぃその娘達だれー?」とか、そんな声がちらほら聞こえた。
あたしは、そっか。よっちゃんはみんなからよっすぃって呼ばれてるんだ。なんて見当はずれのことを考えていた。
- 22 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/02/19(火) 14:09
- ちょこっと更新致しました。
- 23 名前:名無し飼育 投稿日:2008/02/19(火) 17:23
- (・∀・)イイ!個人的によししば希望!
続き楽しみにしてます。
- 24 名前:名無し飼育 投稿日:2008/02/20(水) 08:16
- 自分はよしみきで。
作者さん頑張って下さい。
- 25 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/21(木) 10:02
- よっしーが中心なら誰でも♪
作者さん楽しみにしてます。
でも…
アヤカなんかいいかも
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/25(月) 22:31
- 待ってます♪
- 27 名前:1/2 投稿日:2008/03/01(土) 00:05
- よっちゃんを真ん中に挟んで、あたし達三人はぶらぶらと校内を散策した。模擬店なんかも本格的で、やっぱり大学の学祭は規模が違うなぁって思わず感心していると、
「あ、よっすぃーだ。おはよー」
「おぉおはよー」
「うわっ、よっすぃーが可愛い女の子連れてる!」
可愛い女の子ってあたし達?いや〜照れるし。
それにしても、よっちゃんは男女問わず、いろんな人達からやたらと声を掛けられていた。しかも、その一つ一つにきちんと対応するもんだから、なかなか前に進まないんだよ。
あたしが「モテモテだね」ってからかうと、よっちゃんは「そんなんじゃないよ」って言いながらもちょっと照れくさそうだった。ふふ、可愛いなぁ。
- 28 名前:1/2 投稿日:2008/03/01(土) 00:11
-
「ひとみセンパーイ!」
そんな中で、ひときわ大きな声がよっちゃんを呼んだ。
つられて振り返ると、そこにはなんとまあ可愛い女の子。
って言ってもあたし達より年上なんだろうけど、彼女は「女性」というよりも「女の子」って言った方がぴったりくるような、愛くるしい顔立ちだった。
えっと、よっちゃんの後輩かな?
「んあ?あーあやや?どした?」
よっちゃんが優しい笑顔で尋ねる。
- 29 名前:1/2 投稿日:2008/03/01(土) 00:17
-
「もお、ひとみセンパイってば、肝心なもの忘れますよ」
あややと呼ばれたその女の子は、はいっと言って、手にしていた財布を差し出した。
「あ、ホントだ!うあー危ないとこだったぁ。あやや、サンキューね」
「いーえ。その代わり、後夜祭は約束通り、松浦と回ってくださいね?」
「わかってるって」
そう言って、よっちゃんはあややさんの頭をよしよしって撫でてあげると、あややさんはスッゴい嬉しそうな顔をしていた。
「えへへ、やった。じゃあ、お邪魔しましたぁ」
律儀にあたし達にもペコリと頭を下げるあややさん。その仕草がまた何ともいえないくらい可愛らしい。うーん…見習わなくちゃ。
軽やかに去って行く後ろ姿に、あたしは思わず見とれてしまった。
- 30 名前:1/2 投稿日:2008/03/01(土) 00:42
-
「スッゴい可愛い人だったね。よっちゃんの後輩?」
「あーうん。同じゼミの子」
「なんかアイドルみたい」
「あははは。本人に言ったら喜ぶよ」
よっちゃんが可笑しそうに声を上げて笑った。
「よっちゃんも隅に置けないね。あんな可愛い子と」
からかうと、よっちゃんは白い歯を見せて微笑むだけで、今度は何も言い返してこなかった。それが却って意味深に思えたけど…。
よっちゃんは「ただの後輩」だって言ってたけど、少なくとも、あのあややさんのよっちゃんに対するただならぬ好意はひしひしと感じた。
よっちゃんもまんざらでもないんじゃない?だってあんな可愛い子に懐かれたら誰だって悪い気はしないもん。
理由は分からないけど、なんだかもやもやした気分になった。…ところで、後夜祭って、何するんだろ?スッゴく楽しみにしてるって感じだったけど…。
気になる。なんだかとっても気になるわ。
- 31 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/01(土) 00:59
- やっとこさ更新しました。
あまりに未熟な文章なので、今後もこっそりひっそりと書かせて頂きます。
ここでレス返しを。
>23 名無し飼育様
ありがとうございます。あ、あと柴ちゃんの出番が少なくてすみません//
>24 名無し飼育様
ご声援ありがとうございます。なんとか頑張って更新していきます。
>25 名無し飼育様
ありがとうございます。アヤカは…もしかしたら出番が、ない、かも、しれません//すみません。
>26 名無し飼育様
すみません、お待たせいたしました。
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/01(土) 08:58
- 作者様お待ちしてました!
「あの娘」の登場でなにやら一波乱ありそうな予感?続きが楽しみです♪
- 33 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/02(日) 05:18
- 更新お疲れ様です。
可愛い女の子の今後の行動に期待してます。
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/04(火) 20:51
- 続け。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/05(水) 00:23
- 一気に読ませていただきました。更新楽しみにしてます。
- 36 名前:1/2 投稿日:2008/03/08(土) 02:09
-
「さて、そろそろどっか入ろっか?」
そういえばあたし達ずっと歩きっぱなしだったもんね。ちょっと疲れたかも。きょろきょろとお店を物色していると、
《RRRRR》
どこからかケータイの着信音が鳴りだした。それに一番に気付いたよっちゃんが、
「なんか鳴ってない?どっちかのケータイ?」
「あ、それ美貴のじゃない?」「へ?あたし?」
2人に言われてカバンに耳を当ててみる。あ、ホントだ。なんか鳴ってる。
「もお、自分が設定した着メロくらい覚えてなよー」
あゆみがそう言って苦笑いを浮かべていた。だってそんなのいちいち覚えてないって〜とぶつぶつ言いながら、バッグの中のケータイを探すのに悪戦苦闘していると、あゆみが、
「あ、あたしその間ちょっとトイレ寄っていい?」
「うん。じゃあうちらここで待ってるから」
よっちゃんが答える。
「ごめんね。すぐ戻るから」
「いってらっ…あ、あった」
やっとカバンの中からを発見されたケータイのディスプレイには「非通知」の文字。
はぁ、またか。心の中で舌打ちをする。
- 37 名前:1/2 投稿日:2008/03/08(土) 02:21
-
ピッ。
「あれ?出ないの?」
「うん。最近イタズラが多くて。ナンバーが出てないやつは出ないことにしてるの」
「大丈夫なの?それ」
「あ、うん。そんな大したことじゃないから」
いや、でもなぁ…ってよっちゃんはちょっと考え込んで、
「そだ。今度掛かってきたら、うちが出てあげよっか?」
「よっちゃんが?」
「うち声低いから、たまに男の人に間違えられんの。相手も男が出たと思ったら、もうかかってこなくなるかも」
「あ、なるほど〜。じゃあ次はお願いね?」
「うん。まかせて」
そう言ってよっちゃんは胸を張った。この時、あたしには、その辺の男の子なんかよりも、よっちゃんの方が何倍も頼もしく見えた。
ホントに頼りにしちゃうよ?
- 38 名前:1/2 投稿日:2008/03/08(土) 02:26
-
「そーだ。ね、よっちゃんの番号教えてよ」
「あーうちケータイ持ってないんだ」
「うそ!?」
これには、思わず声が裏返るほどびっくりした。ちょっとしたカルチャーショックだよ。タモさん?
「なんでなんで?」
「いやー…前は持ってたんだけどね、あんまり必要とは思わなかったし、だいたいうちってそんなに忙しい人間じゃないからさ」
「でもさ、やっぱケータイって便利だよ?」
「んー…そーゆー便利なものって、それと引き換えに大事なもの犠牲にしてる気がすんだよね」
「そーなの、かな…?」
あたしはケータイをまじまじ見つめた。あたしに(てゆーか現代人に)とってケータイは当たり前にあるものだから、それがない生活の方が考えられない。するとよっちゃんがバツが悪そうに笑いながら、
「なーんてエラソーなこと言ったけど、実はうちって機械音痴なの。もう最新機種とかチンプンカンプン。いっそシニアケータイとか買おうかなって検討中」
「あはは、それって通話だけ、みたいな?」
「そうそう。文字とボタンがやたらデッカいやつ。それなら、使いこなせる自信あり」
よっちゃんが真顔で言うもんだから、あたしは笑いが止まらなかった。
- 39 名前:1/2 投稿日:2008/03/08(土) 02:32
-
「でも、まぁしばらくは予定なし」
だからさ、とよっちゃんは続けた。
「美貴ちゃんが用事があるときは会いにきて。うちも美貴ちゃんと話しがしたいときは会いに行くから」
「あ、うん」
よっちゃんが女の子だってこと分かってて、思わずドキッとしちゃった。
「会いにきて」「会いに行くから」かぁ。いいなぁ。こんな人に愛されたら、きっといっぱい幸せにしてもらえるだろうな……
「きゃーーー!!」
突然、まるで空気を切り裂くような女の子の悲鳴が聞こえて、あたしとよっちゃんはびっくりして当たりを見回した。
え、ちょっと待って。今の声って…
「あゆみ!?」
- 40 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/08(土) 02:37
- 本日の更新はここまでです。
微妙なところで切ってすみません。やはり歳と睡魔には勝てませんでした(x_x;)
次の更新は出来るだけ早めに…
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/09(日) 00:29
- おぉう!いいところでっ!w
無理せずに頑張ってください。
- 42 名前:1/2 投稿日:2008/03/09(日) 02:04
- 振り向いたとたん、トイレから男出てきて、そのまま一目散に逃げて行った。
あまりに突然のことで呆気にとられていると、すぐ後ろを追い掛けるように、あゆみが飛び出してきた。
「美貴ー!」
「あ、あゆみ!どうしたの!?大丈夫!?」
「あ、アイツ、痴漢!隣の個室に隠れてたの!絶対写真撮られた!」
「えー!?」
「あんの野郎…!!」
「え?ちょっ、よ、よっちゃん!?」
言うが早いか、よっちゃんが猛ダッシュで男の後を追っていた。これがまたよっちゃんの足の早いこと。ぐんぐん追いついて行く。思わず痴漢野郎が振り返り悲鳴をあげる。
「ひっ!?」
「逃がすかこの痴漢野郎!!」
あっという間に後ろに着けると、タックルをかまして男を取り押さえてしまった。
まさに一瞬の出来事だった。
- 43 名前:1/2 投稿日:2008/03/10(月) 00:39
- 一時辺りは騒然となり、ちょっと遅れて、周囲からおぉーという、あたし達からすると場違いな歓声が上がった。
それから何人かが慌ててよっちゃんの側に駆け寄っていく。
ホントなら、あたし達もすぐによっちゃんの側に行きたかったのに、あまりにショッキングな事態に、あたしもあゆみもお互い手を握り合いながら、ボー然と眺める事しか出来なかった。人だかりでよっちゃんの姿が見えない。
よっちゃんは?よっちゃんは無事?
「み、美貴…よっちゃん大丈夫かな?」
「うん…」
握った手に自然と力がこもる。
- 44 名前:1/2 投稿日:2008/03/10(月) 01:07
- 「よっすぃー大丈夫?ケガはない?いま警察呼んだからね」
「吉澤、お前すげーな。なんかドラマ見てるみたいで、めちゃめちゃかっこよかったんだけど」
「てゆーかこいつマジで最低なヤツだな。こんなヤツが紛れてたなんて、警備員はちゃんと仕事してたのかよ?」
「ホント、おちおちトイレにも入ってらんないじゃん。あ、もしかして他にも撮られちゃった娘いるんじゃない!?」
「あーありうるな」
よっちゃんは周りの声にはろくに返事もせず、いきなりなにを思ったのか、男の持っていたカメラを取り上げ、本体からフィルムを引き抜こうとしていた。あたし達にも、かろうじてその姿が見えた。
すると、側にいた人が慌てて止めに入る。
「あ、何やってんだよ!それ大事な証拠に…」
「証拠だからってこんなの現像されてたまるか!」
そう言ってよっちゃんはフィルムを引っ張りだし、地面に投げ付けた。その剣幕に、男はまた情けない悲鳴を上げ、何度も「ごめんなさい。すみません。」を繰り返していた。
もう男の事なんて頭になかった。よっちゃん声が、表情が、あたしの胸の真ん中を確実に射抜いた。
「カッコいい…」
思わず呟いてしまい慌てて口を噤んだ。なに不謹慎なこと口走ってんのあたしは!
- 45 名前:1/2 投稿日:2008/03/10(月) 01:30
- てゆーか、ちょ、ちょっと待って。あたし、今ときめいてるの?女の子のよっちゃんに?違う。そんなのあり得ない。
戸惑う気持ちとは裏腹に、胸の鼓動は早まっていくばかり。あたし、変になっちゃったのかな?分かんない。なんでこーなったのか分かんないよ。
惹かれる自分と、それを否定する自分が、頭の中をぐるぐる回る。いったいどっちが正しいの?
だれか、教えて…
- 46 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/10(月) 01:45
- 本日はここまでとさせて頂きまです。また近々更新しますので。
ここで遅くなってしまいましたレス返しを。
>32>33 名無し飼育様
レスありがとうございます。
「あの娘」はこれからもしつこく登場させたいですね。
>34 名無し飼育様
頑張ります!
>35 名無し飼育様
このような駄文でも、読んで頂けただけで光栄です!
>41 名無し飼育様
お気遣いありがとうございます。相変わらずのゆったりペースですが、頑張らせてもらいます。
- 47 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/10(月) 13:52
- 面白いですね〜
よっちゃんカッケー
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/10(月) 16:13
- 良いですねぇw
よっちゃんカッケー!
続きが気になる(´艸`)
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/11(火) 00:34
- よっちゃんカッケー(・∀・)
美貴様いっちゃって!
- 50 名前:1/2 投稿日:2008/03/14(金) 18:07
- じぃっとよっちゃんを見ていると、よっちゃんはそれに気付いたのか、周りにいた男の子に痴漢男を預け、あたし達の方に小走りでやって来た。
「あゆみちゃん?大丈夫?」
あゆみは、状況が把握しきれていないのか、きょとんとした顔でよっちゃんを見ていた。
「あ、あゆみっ」
あたしが握っていた手をぐいぐいと引っ張ると、ようやくあゆみは我に返ったようにぱちぱちと目を瞬かせて「あ、ごめん」とだけ言った。
- 51 名前:1/2 投稿日:2008/03/14(金) 22:32
-
「ケガはない?」
「う、うん…だいじょぶ…」
「そっか。よかった」
優しい目であゆみを見つめるよっちゃんを見て、あたしの胸がチクリと痛んだ。あたしはこの期に及んで、あゆみにやきもちを妬いていた。
でも皮肉にも、この時、やっとあたしは自分の気持ちに確信が持てた。
−あぁ。あたし、よっちゃんが好きなんだ。って。
- 52 名前:1/2 投稿日:2008/03/14(金) 22:42
- 「あゆみ、よかったね。よっちゃんのお陰だね…」
人だかりへ戻って行くよっちゃんの背中を見つめながら、あゆみに声を掛けた。
「…………」
が、反応がない。
「あゆみ?」
心配になってあゆみの顔を覗き込むと、あゆみはただ一点をずっと見つめていた。
「美貴」
ふいに名前を呼ばれどきっとした。嫌な予感が全身を駆け抜けた。
「美貴、あたし…」
あたしは、次にあゆみが口にする言葉を予期しながらも、何も言えず立ちすくんでいた。
だって、あゆみのその視線の先には−
よっちゃんがいたんだもん。
「あたし、今ときめいた」
「ぇ……」
もしかしたら、あたしは、どこかでこうなるコトを予測していたのかもしれない。
あたし達にとって一番望んでいなかった展開を。
「美貴は?」
「へ?」
「美貴は、よっちゃんのことどう思う?」
「あ、あたし?」
- 53 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/14(金) 22:46
- 時間差更新ですみませんでした。
本日はここまでです。
- 54 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/14(金) 22:53
- >47 名無飼育様
カッケーよっちゃんが伝わって頂けていればそれだけで満足です。
>48 名無飼育様
今後もカッケーよっちゃんをご期待下さい。
>49 名無飼育様
美貴ちゃんはガンガンいきますよ〜(笑)
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/15(土) 00:14
- ついに・・・ですねw
毎回更新を楽しみにしてます。
頑張ってください!
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/15(土) 00:45
- お!更新されてる♪
またいいところで切りましたね〜
おかげで続きが気になるじゃないですか〜
- 57 名前:1/2 投稿日:2008/03/27(木) 08:02
- ・
・
・
・
それから警察の人が来て、簡単な現場検証と事情聴取をして帰って行った。
あたしとあゆみは後夜祭を待たずに帰ることになり、よっちゃんが駅まで見送ってくれた。
「じゃあ、ここで。二人とも気を付けて」
「うん。ありがとう、よっちゃん」
お礼を言い、そのまま改札に向かうあたし達に、ふいによっちゃんが「待って」と呼び止めた。心臓がどきりと鳴る。
「あゆみちゃん…ホントに大丈夫?」
呼び止めた対象があたしじゃないと知り、胸の高鳴りが痛みに変わった。
- 58 名前:1/2 投稿日:2008/03/27(木) 08:06
-
「そんな顔しないで。よっちゃんのせいじゃなんだから」
「…でも、なんかあったらいつでも言って。うちで出来ることなら力になるから」
「うん。ありがとう」
あゆみの笑顔を見て安心したのか、ほっとした表情を浮かべたよっちゃん。完全に外野のあたし。
二人を見ているのが辛かった。やきもちなんて、妬いてる場合じゃないのに。そもそも、あたしにはそんな資格はない。
- 59 名前:1/2 投稿日:2008/03/27(木) 23:09
-
−美貴は、よっちゃんのことどう思う?
よっちゃんへの想いを打ち明けた、あゆみの真っ直ぐな視線に、あたしはどうしたらいいのか分からなかった。
あたし、あたしは……
−べつに…なんとも……あはは
心とは裏腹に、あたしはごまかし笑いでその場を取り繕った。あたしは自分の気持ちに背を向けた。
あゆみに嘘をついた。
好きな人を取り合いたくないから、とか、多分そんなきれい事じゃない。ただ単に、あたしは自分の気持ちに、まだ自信がなかったから。女の子を好きになった自分に、後ろめたさを感じていたから。
胸を張って「よっちゃんが好き」だって言ったあゆみは、あんなにかっこよかったのに…
- 60 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/27(木) 23:13
- 本日の更新は以上です。
早くもストック切れです//
- 61 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/03/27(木) 23:18
- >55>56 名無飼育様
そんな、こんな駄文を楽しみにしていただいてるなんて…有り難いお言葉です。頑張って更新していきます。
- 62 名前:value 投稿日:2008/04/02(水) 22:16
- <P>
- 63 名前:1/2 投稿日:2008/04/02(水) 22:56
-
コンコン
「美貴ちゃーん、入るよー」
ふいに鳴ったノックと同時に、部屋に入ってきたのは妹の絵里だった。
「ありゃ?美貴ちゃんもう寝るの?具合でも悪い?」
部屋の電気も点けず、ベッドに寝っ転がってるあたしを見下ろしながら、不思議そうにコテっと首を傾げた。
「べつに、ちょっと横になってただけ」
強制的に思考を中断させられたせいもあって、あたしはわざと素っ気ない返事をした。
- 64 名前:1/2 投稿日:2008/04/02(水) 23:05
-
「ふ〜ん。じゃ電気点けていい?」
「いいけど…てゆーかあんたねー、もー何度も言うけど、人の部屋にいきなり入って来ないでよね?」
「ノックしたぁ」
「どうぞって言ってない」
「もぉいいじゃーん。家族なんだからぁ」
「家族でもプライバシーは守りたいの」
「はいはぁい」
絵里は全く悪びれもせず、ニコニコ顔で隣に座ってきた。笑うと八重歯が覗く。絵里のチャームポイント。
あたしも、それ以上は言わずに、「で、どうしたの?」と優しく聞いた。なんか絵里には甘いんだよね、あたし。
「うん………」
すると、絵里は打って変わって、視線を床に落としたままもじもじしだした。その仕草に、あたしは絵里が突然部屋を訪ねてきた理由に、なんとなく察しがついた。
- 65 名前:1/2 投稿日:2008/04/02(水) 23:11
-
「絵里、なんか話があるんでしょ?」
もう一度呼びかけると、おずおずと視線を上げた。
「うん…お姉ちゃん、あのね…」
「ん?」
『お姉ちゃん、あのね…』絵里は、昔から何か打ち明け事があると、決まってこう始める。
『お母さんのコーヒーカップ割っちゃって…』
『今日ね、さゆとケンカしちゃって…』
歳を重ねても、こういうところはいつまでも変わらない絵里が、あたしは可愛くてたまらないんだよなぁと思う。
そして絵里はぽつりと呟いた。
「…好きな、人が、できたの」
そう言ってしまうと、顔を真っ赤にして、また俯いてしまった。
- 66 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/04/02(水) 23:14
- 本日はここまでです。
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/03(木) 03:03
- またいい所で切りましたねw
新たな登場人物も出てきて、これからどうなるんですかね?
好きな人とは一体…。
続き楽しみにしてます。
- 68 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/03(木) 08:53
- えりりん可愛い♪好きな人って誰?続きかなり期待してます。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/04/06(日) 00:38
- けっこー好きな配役かも…
更新お待ちしてます。
- 70 名前:1/2 投稿日:2008/06/17(火) 13:48
- 妹の口から出た言葉に、あたしは少なからず驚きながらも、「そうか、絵里もそんなお年頃か…」と、親さながらの感傷と好奇心がこみ上げてきた。
「恥ずかしがる事じゃないじゃん。ねぇどんな人?同い年?」
あたしは絵里の顔を覗き込みながら優しく尋ねると、絵里はゆるゆるとかぶりを振った。
「年上?」
「うん…」
「同じ学校の人?」
コクンと頷いた。絵里は耳まで真っ赤になっていた。
「えっとね、部活のね、先輩でぇ…」
「部活って言ったら合唱部?」
「うん。スッゴくキレイで、優しくて、歌も上手くて、みんなの憧れなのっ」
絵里はうっとりとした顔で、視線を宙に彷徨わせていた。
おおかた、その先輩の顔でも思い浮かべてるんだろうなぁ…
恋をすると、ふとした瞬間にその人の顔が浮かぶものだって。まいちゃんが言ってた言葉を思い出した。
まいちゃんすごいよ。今度からまいちゃんのこと、恋愛プロフェッサーと呼ぼう。きっと意味分かんないだろうけど。
- 71 名前:1/2 投稿日:2008/06/17(火) 20:26
- 「そっかぁ…じゃあかなり競争率高いんじゃない?」
「う〜…そうなんだよね…」
「あ、そのさ、先輩の写真とかないの?」
この絵里をここまでメロメロ(死語)にしちゃう相手となると、姉としても気になるじゃない。
ねぇねぇとせっつくと、絵里は一瞬、ちょっと戸惑った顔をしたけれど、すぐにいつもの笑顔になって、いそいそと背中に隠していたアルバムを取り出した。
「実はぁ、美貴ちゃんに見てもらおうと思って、持ってきてたんだぁ」
「見せて見せて。なに?何の写真?」
「えっとねー、部活の、練習中の写真なんだけどー」
パラパラとアルバムをめくる絵里の指を何気に見ながら、ふと、ある疑問が浮かんだ。
「ちょ、ちょっと待って?」
「へ?」
「絵里の学校って…たしか、女子校じゃなかったっけ?」
「そうだよ?」
なにを今さら、と言いたげに、絵里がきょとんとした表情を向ける。
うん。まぁたしかに今さらだけど。でも、念のため、確認。
- 72 名前:1/2 投稿日:2008/06/17(火) 21:29
-
「…えーっと、つまり、絵里が好きになったってゆー先輩は…」
「高橋愛先輩ってゆーの。あ、この人!」
いや、名前じゃなくてね。
絵里が指差した先に写っていた人は………
「えーと…女の子…よね?」
「ふぇ?当たり前だよ。美貴ちゃんこの写真が男の子に見えるの?」
見えねーよ。どっからどう見ても、黒目勝ちの、ぱっちり二重の美少女だわよ。
「ね、ね、スッゴい美人でしょ?」
「うん…スゴいね」
噛み合わない返事をしながらも、あたしの心境は複雑だった。こんなことってあるの?
姉妹揃って女の子を好きになるなんて。
あたしと絵里は性格も好みも全然違うのに。なんで、よりによって、そういうところがシンクロしちゃうの?
「…って美貴ちゃんっ。聞いてる??」
「へっ?あぁ、なんだっけ?」
高橋愛先輩の魅力をとくと語っていたらしく、うわの空だったあたしにふくれっ面をして見せた。
「もおー美貴ちゃんっ」
「ごめんごめん」
絵里の気持ちを否定はしたくないって、それだけは言える。
だって、それは同時に、あたしの−あたしやあゆみの、よっちゃんへの気持ちも否定することになるから。
でも、その思いを、あたしは上手く言葉に出来なかった。今のあたしに出来るのは、ただ絵里の話を聞いてあげることだけだった。
- 73 名前:1/2 投稿日:2008/06/18(水) 17:22
-
「あ、うあっ、もうこんな時間?」
「へ?」
絵里の素っ頓狂な声につられて、あたしも時計を見た。時計の針は、すでに12時近くを指していた。
「やば〜、絵里明日から週直だったんだったぁ」
話が中断されたことで、あからさまにホッとしてしまった自分に気付き、かなり罪悪感。
はぁ…ダメな姉だなぁ…。
「大丈夫?明日ちゃんと起きられる。あんたただでさえ朝弱いんだから…」
「大丈夫だよー。美貴ちゃん、絵里はもう子どもじゃないんだからねっ」
そーだね、と言いながらあたしは苦笑いを浮かべた。
ついつい構っちゃうクセがついてた。
「絵里、今度またゆっくり聞かせて。その〜…高橋先輩?の話」
絵里は嬉しそうにうんうんと頷くと、じゃあと一旦ベッドから腰を上げた。が、すぐに何かを思い出したように、またストンと座り直した。
「どうした?」
「…あのね、この事はまだ誰にも言わないでね」
「誰にもって…?お母さん達にってこと?」
「うん…それもだけど……」
だって、それ以外に話す相手なんて…
「あっ」
瞬時に、あの猫のような大きな目をした、愛らしい幼顔が浮かんだ。
「さゆちゃん?」
絵里は一瞬どきり、とした表情であたしを見ると、ばつが悪そうに呟いた。
「…うん」
なるほど…というふうに、あたしは肩をすくめた。
- 74 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/06/18(水) 17:26
- 今回の更新は以上です。
更新までかなり時間があいつしまい申し訳ないです…
- 75 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/06/18(水) 17:37
- >67>68 名無し飼育様
お待たせしてすみませんでした。ご期待に添える内容だといいのですが○| ̄|_
>69 名無し飼育様
作者自身もかなり好きな配役なので、そう言って頂けると嬉しいです。
- 76 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/06/19(木) 01:32
- もうちょこっと更新します。
ホントにちょこっとですが…
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/19(木) 02:12
- 以前から気になっていたんですが、もしかして直書きですか?
ある程度書き溜めてから普通にコピペしたほうがいいと思いますよ。
出しゃばって申し訳ありません。
- 78 名前:1/2 投稿日:2008/06/19(木) 02:52
-
さゆちゃんこと道重さゆみちゃんは、絵里の幼なじみ。
明るくて人懐っこくて、とっても可愛い女の子で、あたしも妹のように可愛がっている。
…ただ、さゆちゃんの絵里に対する溺愛っぷりはハンパじゃなく、絵里の為なら世界中を敵に回しかねない…ってほど。
・
・
・
確か、あれは絵里達が幼稚園の時だったかな?
両親が、二人に「大きくなったら何になりたい?」とありがちな質問をした時のこと。
絵里はケーキ屋さん。とまぁありがちな答え。さゆちゃんはお嫁さん。これまたありがちかと思いきや、
「さゆはえりちゃんのおよめさんになりたいの」
と、満面の笑みではっきり言い放った。
さゆちゃんのこの発言は、周りの大人達を少なからずびっくりさせてたが、すぐに、「子供の言うことだからね」「それだけ仲がいいってことよね。可愛いね」というほのぼのとした見解で落ち着いた。
果たして、今の成長したさゆちゃんの中に、あの時の夢が健在しているのか…定かではないけれども。
・
・
・
・
「ん〜…っぱり言いづらい…かぁ」
「うん………」
でも…と、絵里は言葉を続けた。
「さゆもね、高橋先輩の事すごい尊敬してるんだよ。さゆも先輩みたいに歌がうまくなりたいなぁって…」
「うん」
「だから…さゆにも分かってほしいんだ…」
「うん」
「…わかってくれるかな?」
不安そうに見つめる絵里。
怖いんだよね?さゆちゃんとの関係が壊れるかもしれない事が。あたしにも分かるよ。
- 79 名前:1/2 投稿日:2008/06/19(木) 02:56
-
「大丈夫だよ。絵里」
それはあたし自身にも言い聞かせていた言葉だった。
「だって、高橋先輩を好きになっても、さゆちゃんを好きな気持ちは今までと同じでしょ?」
「うんっ」
「だったら、その気持ちを頑張って伝えるの。分かってもらえるまで」
「分かってもらえるまで…」
「うん」
「言ってもいい…の、かな?」
「隠し事された方が、きっとさゆちゃんを傷付ける事になるんじゃない?」
「う〜〜そっかぁ…」
「あたしは、絵里が正直に気持ちを話してくれたことが、すごく嬉しかったよ」
「…ほんとに?」
そして、今のあたしにはない、絵里の素直さを羨ましいとも思った。
絵里は少し考えて、そして何かを決心したように顔を上げた。
「…うん。美貴ちゃん。絵里頑張ってみる」
絵里は、胸のつかえが取れたようなスッキリした笑顔で立ち上がった。
「美貴ちゃんっ」
「ん?」
「ありがと」
「うん」
「あとね…」
「?」
「絵里は、美貴ちゃんも大好きだからねっ」
いきなり何を言い出すかと思えば…
「あーはいはい。ありがと」
思いがけない言葉に、照れくさい気持ちを隠して、わざと素っ気ない返事をした。
絵里が出て行った後の部屋のドアを、あたしはしばらく見つめていた。
- 80 名前:のらうさぎ 投稿日:2008/06/19(木) 10:05
- >>77 名無し飼育様
ご指摘ありがとうございます。いや、実はちゃんと書き溜をしているのですが、いざコピペしからもいろいろ手直しを加えてたくなってしまい、そうこうしているうちに、更新がまばらになってしまいまして…○| ̄|_
しかも仕事の合間などにしているものですから、うっかり時間があいてしまうのです。
なんだか言い訳クサい文章になってしまいましたが、今後は読者様の事も考えて、更新には気を付けたいと思います。
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/19(木) 21:13
- 更新お疲れ様です。
あまり気にされずに、のらうさぎさんのペースで更新されればいいのではないでしょうか?
私はのらうさぎさんの書く文章はとても好きなので、これからも応援してます。
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/23(月) 00:02
- お待ちしてました。亀の恋の行方も気になりますが、甘甘なみきよしの絡みも期待してます♪
- 83 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/23(月) 00:03
- お疲れ様です!亀の恋の行方も気になりますが、今後のみきよしの絡みも期待してます♪
- 84 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/23(月) 00:06
- >>82>>83
↑すみませんm(_ _)m微妙に二回書き込みをしてしまいました
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/27(水) 17:57
- sage
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