A season of girls
- 1 名前:sh 投稿日:2007/09/11(火) 19:30
- マイナーCPというやつなんでしょうか。
初めて書きます。良かったらどうぞ。
てってけてえりりんでアンリアル。
他、何名かガキさんを筆頭に出てきます。
- 2 名前:sh 投稿日:2007/09/11(火) 19:31
- 「絵里、愛ちゃんのこと好きかも」
「へ??」
それは気持ちいいくらいに晴れた冬の日の昼下がりの出来事。
思わず。
思わず愛はそれまで支えていた絵里の両手を離してしまった。
・・・何言い出したのこの子。
あっけにとられてる愛を知ってか知らずか
当の絵里は気の抜けた笑顔のままだ。
うへへ・・・って感じの、いつもの笑顔を見せて。
笑うと見える八重歯が可愛らしい・・・ってそうじゃなくて!
愛は自身に突っ込みを入れる。
戸惑ってる愛をよそ目に
自由になった両手に気付き、明らかに不満そうな表情をしたものの
そのまま絵里は大きく弓を引き
気の抜けた笑顔はいつの間にか真剣な横顔になって
矢を射る直前に一瞬だけ
一瞬だけ横目で愛を捕らえて
そのまますぐ的に狙いを定めて
_________________パン!!
今日の練習の中で一番良い音が場内に鳴り響いた。
この季節特有の澄んだ空気も手伝ってか
それはとてもクリアに愛の耳まで届いた。
見事、ど真ん中。
本来ならここで弓道部員達の「よーし」という掛け声が
矢が的に当たるとあるのだけど今日は聞こえない。
愛が絵里の突然の発言にテンパってとかそういうんじゃなくて
単純に今この弓道場には絵里と愛の二人しかいないのだ。
部活が休みのテスト期間。
正確には二年生最後の学期末のテスト休み。
本来ならまっすぐ家に帰って勉学にいそしまなくてはならないのに
何故ここで部活動に真面目に取り組んでいるのかというと
いや、テスト期間なんだから逆に真面目じゃないのか??まぁいいか。
ここにいる理由は他でもない絵里の誘いがあったから。
- 3 名前:sh 投稿日:2007/09/11(火) 19:33
- テストも終わり帰りのHRの時間。
愛のクラスは担任の話が異様に長くて
はじめはそのことに大概嫌気がさしていたものの
最近では、とは言ってももう一年経とうとしてるので
いい加減慣れてしまった。
暇をもてあます愛はただぼんやりと窓の外を見つめる。
ウトウトと冬の日差しと淡い眠気を感じながら
早々とHRが終わり下校する生徒を今ではもう
うらやましいと思うことなくただぼーっと眺めていた。
その時だった。
「ん??・・・絵里?」
よく目を凝らして見ると、校庭のだいたいど真ん中で
下校生徒に沢山の視線を浴びながら
ピョンピョンと飛び跳ねているアホが・・いや。少女が一人。
明るい茶色に染められたショートの
髪を揺らして確実に絵里はこっち。そう愛に手を振っている。
そういう愛も同じように明るい茶色の色を髪をしている。
長さは絵里のように切らずにずっと我慢していたので
胸がかくれるほどには達している。
校則がゆるいわけではない。
二人とも思いっきり校則違反しているだけの話。
ここは二年生の二階の教室。
校庭からは確かに見える位置だけど・・
にしても絵里。恥ずかしくないのかよぉ
半ば呆れながら窓際の席にいることをいいことに
絵里に見えるように手を振り返すと
それに気付いた絵里はこっからも見てとれるような
満面の笑みを浮かべ、また大げさなジェスチャーで
両手をとある方向へ向けた。
その先を視線で追うと校庭の隅にぽつんとある
愛が部長をつとめる弓道場だった。
ちなみに言うが絵里は弓道部じゃなくて陸上部で
おまけに一年生だ。
かくして大胆なジェスチャーを披露した絵里は
そのまま校庭を走りぬけ弓道場に向かってしまわれた。
さすが陸上部、速い。・・・・じゃなくて
「何あいつ。来いってこと??」
・・・・シカトしよ。そう思ったのも束の間
携帯に一件受信メールが差出人は案の定絵里。
“愛ちゃん帰っちゃ駄目ですからね〜
今日こそ的に当たるように練習するんですからね〜”
・・・初めからメールすればいいのに。
・・・あのジェスチャーいらんやろ。
愛は何でか絵里に弱い。
その理由がなんでかはあまり考えたことがない。
であった当初から絵里とはこんな調子だから
それが当たり前だと愛自身そこに落ち着いて
またそれなりに居心地のいい関係だったりしたから
余計に気にすることなど皆無だったのだ。
・・・帰っちゃ駄目って私にも都合ってものが。
・・・てかそもそも絵里、弓道部じゃないじゃん。
様々な不満がつのる中それらを全て無視して
一言だけ“あいよ〜”と返事をした。
愛は何でか絵里に弱い。
そして今に至る。
- 4 名前:sh 投稿日:2007/09/11(火) 19:37
- 絵里の突拍子もない発言と
まぐれのあたりに愛があっけにとられているのを尻目に
絵里はいつの間にか的のそばにいて
「見て見て愛ちゃん!!真ん中!真ん中!!」と
嬉しそうに今日一番の笑顔を見せてはしゃいでいる。
写メまで撮る喜びようだ。
あの発言の後に絵里の態度がいつもの絵里だから。
なんだか愛は気にするのがばかばかしくなって
まぁいいか。そう思うようにして
「当たり前やろ?誰が教えたと思ってんの??」
「ん〜??愛ちゃん」とこれまた嬉しそうに絵里は答えるのだ。
なんとなく今日一番の笑顔はこれじゃなかろうか。と
少し考え直すほどだ。絵里は目鼻立ちは整っていて
いわゆる典型的な美少女顔なのに、すでにその印象が愛に無いのは
絵里の独特なしゃべり方とあの気の抜けた
妙になっつこい笑顔にあるんだろうと愛はひそかに分析している。
「絵里〜あんた、あーしがきっちょうなテストの時間
さいてやったんやから何かおごりやがれ〜」
「え〜何でですかぁ!!」
絵里は不満げに的の側でドタバタしている。
「え〜じゃない!!それに早く矢を抜いて戻って来い!
もうあーしお腹すいたわ。はよ帰るで」
そう言うと絵里は今日一番のあたりを惜しそうにひきぬいたかと思うと
右手でその矢をブンブンと振り回して戻ってくる。
惜しいんだか、どうでもいいんだか・・・。
絵里の振り回す矢を見て、先ほどまでの自分を重ねて
なんとなく面白くない気持ちになりつつも
まぁいいか。いつものように思い直す。
細かいことは気にしない。こういう大雑把な愛の性格が
二人の関係を良好にしていることに愛自身は気付いていない。
そんなこんなで二人は別に勤しまなくてもよかった
テスト期間の部活動の後片付けを終わらせ、早めに学校が終わる時は
いつも寄るファミレスに向かおうと
“やったぁ初めて矢が当たったぞ記念”をするのだと
絵里がテンション高めに正門に走って向かうのを
愛がこれまたテンション高く、一つ年上だというのも忘れて
“やったぁ初めて矢を当ててやったぞ記念”をするのだと
陸上部の絵里に無謀にも足で挑戦する。
絵里は愛のこういう先輩らしくないところが可愛いとそしてずるいと
心の中で思う。が、絵里は思ったことを留められない性格が故
手加減して走っていた足を止め、
だいぶ本気で追っかけていた愛はもれなく絵里に衝突してしまった。
「痛だぁ!!コラ絵里ぃちょっと何急に・・・」
「愛ちゃんずるい」
「は??ずるいんは絵里やろ?急に走ってしかも今度は止まっ・・」
言い終わらないうちに愛の唇は絵里の唇にふさがれていた。
絵里の方が愛より身長が高いため、身長差は約5センチ。
年上だけどちっこい愛の唇は、年下の絵里にいともたやすく
奪われてしっまった。
時間にして約10秒ほど。
何がずるかったのか分からない。
ずるいのはどちらかといえば絵里なのに。
こればっかりは、まぁいいか。じゃ済ませられないと
人様の唇を校庭のど真ん中で奪った絵里を目の前にして
愛はただ立ち尽くす。
当の絵里はまたしてもいつもの
なつっこい笑顔を浮かべて「んひひ」と八重歯を覗かせて
「やっぱ絵里、愛ちゃんのこと好きかも」
今日一番の笑顔はこれかもしんない。
愛は呆然としながらもそれだけは思った。
- 5 名前:sh 投稿日:2007/09/11(火) 19:41
- こんな感じで書いていきます。
完結目指して頑張りますので
良かったら御付き合いください。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/11(火) 22:34
- 愛絵里きたー!
期待しています!
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/11(火) 23:13
- キター!
全力で期待します
- 8 名前:名無しなの 投稿日:2007/09/12(水) 00:39
- 愛絵里ー!!
素敵な空気感であのほんわか八重歯が妄想できます^^
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/12(水) 01:31
- 二人ともカワイイねぇ、ガキさん登場したら好きなが3人勢ぞろい!楽しみ。
- 10 名前:sh 投稿日:2007/09/20(木) 16:55
- >6
更新遅くなりすみません。
愛絵里です。期待にそえるよう頑張ります。
>7
愛絵里来ました。好きなCPなのでつい書いちゃいました。
全力で書かせていただきます。
>8
愛絵里です。亀井さんの八重歯のチラリズムは
なんか良いですよね〜更新しますのでまた読んでくださいね。
>9
更新遅くなりすみません。
楽しみにして頂いてありがとうございます。
ガキさんもかわいいですよね。
更新しますのでどうぞまた読んで下さい。
- 11 名前:sh 投稿日:2007/09/20(木) 16:59
- 何で・・・何で・・・・。
ここ数週間、愛の頭の中はその言葉だけが
ずっと繰り返されている。
考えても考えても答えは出るあてもなく。
ただひたすらに、愛はもんもんと毎日を過している。
“考える人”って今のあーしやね。と
かの有名な石の彫刻を頭の片隅でぼんやりと思い出しつつ
「はぁ・・・何で・・・」とぽつり呟いた。
とは言っても、あの彫刻のように考えるポーズをとっている
訳はなく、自分の部屋でベットに横たわり
お気に入りの豚さんのぬいぐるみを枕にしながら
ゴロゴロとしているだけなのだけれど。
学校はすでに春休みに入っており
自身が部長を務める部活以外に予定の無い愛は
自然とこの間の絵里との出来事を考えこんでしまう。
何も愛に休みの日に遊ぶ友達がいないというわけではない。
友達と遊ぶ予定もあったし、休みに入ってからももちろん何度か
遊びに誘われた愛なのだが、細かいことは気にしない性格なのに
一度考え込むとそこから抜け出せず
他のことに気がまわらなくなるという性格が災いして
単純に遊ぼうと思う気持ちになれず、誘われても断っていたのだ。
本当は部活にだって行くことは躊躇していたのだが
なにせ部長。さぼるわけにもいかず
部活には毎日行くという地味な春休みを過していた。
考えて考えて。今日も答えが出るあてもなく
愛が本格的にウトウトとし始めた頃、
トントンとドアをノックする音が聞こえた。
誰が来たのか考えなくても分かる愛は無視を決め込んで
ベットから起きようともせず睡魔に身を任せる。
「おい!!無視ですか!!!」
大きな突込みジェスチャーと共に愛の部屋のドアが開く。
入ってきたのは愛の一つ下で小学校からの幼馴染の里沙だ。
ちなみに絵里と同じクラスでおまけに二人は仲良しで、
愛と絵里が出会うきっかけを作った
張本人でもある。
「・・・・・・・ZZZZ」
「こら〜愛ちゃん!起きろ〜!!!」
「・・・・むにゃむにゃ」
「むにゃむにゃってそんな寝言、漫画でしか聞いたことないから!」
眠い頭に里沙のいちいち丁寧な突っ込みが響く。
「も〜うるさい里沙ちゃん」
しかし目は相変わらず閉じているものの里沙の突っ込みが面白かったのか
口元はにわかに微笑みながら愛はこたえる。
「うるさいじゃないよ〜せっかく遊びに来たのに。ほら起きて起きて」
「う〜・・・ねーむーたーい〜〜〜〜いや〜!!!!!」
無理やり起こされ、お気に入りの豚さんも取られてしまった。
里沙がこうして簡単に愛の部屋に出入りするのも
小さい頃からの延長線でお互いの家を行き来することは
珍しくなく当然の行為であり二人の、いやニ家族の日常でもあった。
愛はふてくされ気味に
「もぉ今すっごい気持ちよく寝れそうだったのに!
あーしの睡魔返せ!!豚さんも返せ!!」
「いや、無理だから。豚はハイ。返してあげる。それより愛ちゃん
春休み私とこうしてる時以外はゴロゴロしてて何もしてないって。
あ、でも部活にはちゃんと行ってるっておばさんが安心しつつも心配してたよ?」
何かあったんでしょ?と里沙は付け加える。
返された豚さんをぎゅっと抱きしめながら
これだから幼馴染ってやつは。と愛は思う。
隠し事なんて出来やしない、と浅いため息を吐く。
「べーつにぃ・・・何もないよ」
明らかに何か有り気な様子たっぷりに愛が答える。
ふぅやれやれと、
これだから幼馴染ってやつは。と里沙は思う。
愛ちゃんに隠し事は無理!とわざとらしく大きなため息をついてみせる。
その態度がお気に召さなかった愛がお気に入りの豚さんを
「歯〜くいしばれぇ〜」と冗談交じりに理沙に投げつけようとした時、
間髪要れずに言われてしまった。
「どーせカメのことでしょ?」
- 12 名前:sh 投稿日:2007/09/20(木) 17:00
- 愛の動きが止まる。
が、勢いあまって体勢を崩してそれまで
理沙に投げつけようとしていたそれと一緒に
ベッドの上からダイブしてしまった。
「あたたぁこら〜愛ちゃん痛いでしょうが〜!!」
「か、カメって・・・??」そのままの体勢で上になった愛が問う。
「何言ってんの。亀井絵里。カメのことでしょ〜愛ちゃんが気にしてんの!!」
そのままの体勢で下になった理沙が答える。
愛が呆然と里沙を見下ろす。顔はだいぶ青ざめている。
ちょっと待って。
ちょっと待ってよ?里沙ちゃんが絵里の名前を出すって言うことは???
「ね・・ねぇ里沙ちゃん。も、もしかして・・」
「知ってるよ〜校庭のど真ん中でチュ・・・うわ!!」
愛の両手が里沙の口を封じる。傍から見れば軽く事件に見間違われそうな体勢だ。
耳まで真っ赤になった愛が必死に里沙を口止めしようとする。
「む〜あいひゃんぐるぢぃ〜」里沙も必死だ。
絵里との一件は不運にも愛のクラスメイトにばっちり目撃されてしまっていたため
愛のクラスではテストが終わってしばらくは、そのことで持ちきりだったのだ。
面白半分で騒ぎ立てる者もいれば、気持ち悪いという視線で見ている者もいた。
仲のいいクラスメイトにまで好奇の目で見られ特に後者の目線で見られたことは
あまり他人の目はさほど気にしないタイプの愛だが、さすがに悲しくなってしまった。
事実が事実だけに、こればかりはどうしようもなく
ただほとぼりが冷めるのを黙って待つしかなかった。
春休みに入るまでにはだいぶ収まったのに、これが一学年下の里沙まで知ってるとなると
考えるだけで愛はげんなりして
「はぁ・・・何で・・・」とぽつり呟いた。
- 13 名前:sh 投稿日:2007/09/20(木) 17:01
- そういう愛の心情を察知した里沙は
あわてて自身の口を押さえる両手を引き剥がしこう付け加えた。
「違うよ違う。カメから直接聞いたんだよ?愛ちゃんにチューしちゃったって」
またもや愛の顔が耳まで真っ赤になる。
掴んだ両手までもが熱を持っているような気がする。
あれ。逆効果だったかと里沙は思うがこのままの体勢は自分に不利だと
大人しくなった愛を起き上がらせそのまま座らせ自分もとなりに座る。
「聞いたって・・絵里から連絡あったの?里沙ちゃん」
あぁ何だホントの理由はこれか。
里沙は乱れた髪を直しながら、やっと本音を言いやがったなと思う。
こんなに乱暴にしちゃってエクステが取れたらどうすんのよ。と愛に言うが
当の愛は深刻な顔をしたまま聞いちゃいない。
結構高かったんだよ?とも付け加えてみたが
やっぱり聞いちゃいない。
愛はあの一件以来、絵里とは会っていなかったから
単純に気まずくて会えなかったのだ。
幸い学年も違えば、部活も違う。
ただ帰り道はいつも一緒だったから
下校時は大抵、愛のいる弓道場に絵里と里沙が迎えに来て
三人で一緒に帰っていたのに。
避けたのは自分からだったとは言え一人で帰るのはすごく寂しかった。
肝心な絵里からはあの日以来、一切連絡は来ず。
避けてしまった罪悪感だけが日に日につのる。
しかし、キスされたのは自分だし
言い方を悪くすれば被害者は自分なわけなのだからと
連絡しようにもしたくない・・・というジレンマから
愛はどうしようも出来ずにもんもんとした日々を過していたのだ。
そんな愛のだいたいのことが、長年の付き合いの勘で分かった里沙は
「カメは元々メールとかマメじゃないの!それは愛ちゃんも知ってるでしょ?
私とかメール送っても返って来るの次の日だから!ってこれは置いといて。
ちなみに忘れっぽい愛ちゃんのために言っておくけどカメは今陸上部の合宿行ってんの!」
「うそ・・・そうやったっけ?」
「やっぱ忘れてた。あんだけカメ言ってたのに〜。私なんて耳にタコだよ?
なんかね合宿所が圏外らしいよ!だから連絡ないのよ。あとねカメは
ちゃんと愛ちゃんのこと気にしてるよ〜避けたこと怒ったりとかしてないからさ!
まぁきっかけ作ったのはカメだけど、大丈夫だって〜」
何が大丈夫なんだろうか。
お節介なくせして肝心なとこでいつも説明が足りない奴だと愛は思う。
それでも、こんな不甲斐ない幼馴染のために
毎晩心配して来てくれる里沙のことを思うと
いつものように、まぁいっか。とは思えなくても
「はぁ・・・何で」とため息だけをつくのは止そうと素直に思えた。
まだ拭いきれない不安はあれど
一つ下の幼馴染の気持ちが単純に嬉しかった。
「里沙ちゃんありがとう!絵里に今から連絡するよ!避けたこと詫びいれなきゃ!」
「どういたしまして愛ちゃんってまた人の話聞いてない!絵里、圏外だから!かけても出ないから!
あと詫びいれるってなんかガラ悪いから!!」
愛の言葉全てにいちいち丁寧に突っ込んだあと
さっき私がエクステの話してたのも聞いてなかったでしょ!と
里沙は付け加えていたがすでに愛は聞いておらず絵里に電話をかけていた。
「里沙ちゃん繋がらんじゃんかぁ〜うそつき!!」
「お前こそ歯〜くいしばれぇ〜!!!」
今度は愛がお気に入りの豚さんタックルをくらう羽目になったのは言うまでもない。
- 14 名前:sh 投稿日:2007/09/20(木) 17:11
- 今回の更新はこれにて以上です。
お話しはまだまだ続きます。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/21(金) 02:35
- ガキさんキターーー!
ガキさん来るとなんか面白くなるんだよな、個人的に。
最高のバイプレイヤーだな
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/13(火) 23:05
- 続きが気になる(^-^)/
まってまーす!
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/13(火) 23:05
- 続きが気になる(^-^)/
まってまーす!
- 18 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 19:59
- >15。名無飼育様
遅くなりました。まだ見ていただけてるでしょうか。
このお話し、少しづつガキさんをあんなことやこんなこと
出来たらと思っております。更新しますのでどうぞ!
>16。17。名無飼育様
続きです!遅くなってごめんなさい!!
- 19 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:00
- 「う・・・うぇ〜寒い・・・寒すぎる・・」
春休みももうすぐ終わろうとしている三月の末。
暦の上では春とはいえまだまだ風の冷たさが見に染みるこの季節。
学校の屋上で錆びれたベンチに腰掛けながら
必死に寒さに耐える背少女が一人。
「絵里のやつ〜遅い〜〜〜!!!」
おみくじとかでよくある待ち人来たらずって今の私やなぁ・・
いや、来るよな?来なかったら困る!!
かの少女、高橋愛は一人思う。
身に堪える寒さと待ち人が来るかという不安の中
愛は制服の上から羽織ったコートの襟を立て顔をうずめ
ベンチに体操座りで、だんだんと感覚を失ってきた鼻をすすりながら
今ここに、自分がこうしている事の顛末を思い返していた。
- 20 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:02
-
_______パン!!
場内に愛の放った矢の音が小気味よく響く。
今日も今日とて愛は真面目に部活に励んでいる。
まぁ部長なんだから当然なんだけれども。
まだ冬の冷たさの残る澄んだ空気を浅く深呼吸してため息をつく。
里沙のおかげで多少の元気は出たものの未だ連絡の取れない絵里のことを思うと
せっかく詫びを入れる気持ちになったというのに。
詫びと言うと里沙に「なんかガラ悪いから!!」と即座に突っ込まれたのを思い出しつつ
相手が圏外の地にいるということで何も出来ない状態が
今の愛の気持ちを憂鬱なものにさせていた。
考え込むとなかなか抜け出せないくせに一度こうと決め
答えが出てしまうといち早く行動にしないと気がすまないのだ。
そういうコなのだ愛は。
部活が終わっても一人もくもくと練習を続ける女子部長を見て
帰り支度を済ませた後輩の男子部員が不思議そうに聞いてくる。
「あれ〜高橋先輩。まだ帰らないんですか??」
「今日はね、里沙ちゃんがお迎えに来るから待ってんの。んで一緒帰んの。」
立ち止まって話をする後輩に対して愛は、矢を持つ手を止めず、
ぎりぎりと弓をひきながら答える。
そんな先輩をさして気にしていないのか弓を引く愛の後ろに立ちながら男子部員も
話を続ける。
「・・・・里沙ちゃんってもしかしてガキさん??ガキさん可愛いいですよね??
俺隣のクラスでなかなか話す機会とか無いんですよ〜
今度紹介して下さいよ!・・・おっ!?よーし!!」
パン!とまた小気味良い音が場内に響く。
「よーし」と言うのは矢が当たったときにかける言葉で
先ほど愛が引いた矢が的に当たったのだ。
“ガキさん”というのはどうやら一学年下の里沙の愛称のようだ。
新垣だからガキさん。
「おぉ〜今度言っとくよガキさんに」
そう言うと愛はにひひと笑いながら手に持っていた二本目の矢を引く。
「本当ですか〜高橋先輩すぐ忘れるからなぁ〜」
後輩から言われると立場が無い。
里沙からよく言われる“愛ちゃんは人の話を聞いてない”を思い出して
なんだかいたたまれなくなり、せっかく定めた狙いがズレそうになってしまった。
所在無く愛は
「はいはいうるさーい。はよ帰れ」と的を狙いを定めてるというのもあるが
後輩に目もくれずに言い放つ。
「ひでぇっすよ〜あっでもガキさんも良いけど、ガキさんと仲良い亀井さんでも良いっすよ!
亀井さんもマジ可愛いっすもんねぇ〜」
「え??亀井って・・・絵里!?絵里は駄目よ!」
そう言うやいなやそれまで全く目も合わせずに話をしていた男子部員を
急に振り返ったために、そのせいで思わず手を離した矢がそれまで狙いを定めていた的とは
見当違いの所に刺さってしまった。砂にささる鈍い音が聞こえる。
「高橋先輩ちゃんと的見ないと危ないっすよ〜それじゃあお疲れ様です〜」
部長の外したシーンを良いトコ見たと言わんばかりにケタケタと笑いながら
男子部員は帰っていた。
誰のせいじゃ誰のと小さくなっていく後輩の後姿を睨みつつ、しかし
それよりも咄嗟に“絵里は駄目よ”と言い放った自分自身に愛は驚いていた。
“何で絵里は駄目なんやろ”そう呟いたときに
「何で私はよくってカメは駄目なのさ〜!!!!」
声のするほうに驚いて振り向くと
そこにはいつからいたのか分からないが
道場の入り口に腕を組みながらやや不満げな顔をしている里沙が立っていた。
- 21 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:03
- 「おっ!里沙ちゃ〜ん!遅いよ〜」愛はわざと話しをそらす。
「いや遅くないから。時間ぴったりだしカメじゃないから約束時間に
遅れたりしないの!!」
携帯の時計を見ていると確かに待ち合わせ時間の12時半ぴったしに来ている。
うん。そういう子なのだ理沙は。
「あはは。申し訳ない。それじゃ帰ろ〜!!」愛はそそくさと帰り支度を始める。
里沙が先ほどから絵里の名前を出すたびに愛は
先ほどの自分の発言を思い出し、動揺を隠せずにはいられないのだ。
里沙だって分かった上で発言している。
全く手のかかる幼馴染だ。人知れずため息をついて
「愛ちゃん。今日何の日か知ってる??」
「へ?今日??・・・里沙ちゃん誕生日やったっけ??」さほど考えず愛が答える。
「誕生日はまだ!私は10月だから!!何年幼馴染やってんの!!絶対愛ちゃん忘れてる
っていうか聞いてなかったと思うからもう一回言うけど、今日はカメが帰ってくる日!」
それまで、軽く焦りながら片づけをしていた愛の手が止まる。
「何それ!いつ言った??」
思わず愛が入り口にいる里沙に駆け寄る。
「この間〜愛ちゃんチでおばちゃんと愛ちゃんと私と三人でご飯食べてる時に
ちゃんと言いました〜おばちゃん証人だから」
愛は思い返す・・・・里沙ちゃんとうちのママと3人でご飯??
里沙ちゃんがうちでご飯食べるなんてよくあること過ぎて思い出せない!
全く持って記憶にない。そんな自分に呆れるも今は絵里が優先だ。
「で、今日のいつ??」
「今日の14時くらいって。カメが言ったんじゃなくてちゃんと
顧問の先生から聞いた情報だから確かだよ。」
確かに絵里の言うことだと信用ならない。
3人のなかじゃ時間にルーズでまかり通ってるのが絵里だ。
「・・・てことは、絵里に携帯つながる!?」
「うん。つながると思うから早く連絡してあげな。」
わざと愛をひやかすために、ずっと難しい顔をしていた里沙がそれまで組んでいた腕をほどいて
愛の肩をぽんと叩く。その表情はひとつ年下のくせして本当に
愛よりお姉さんのようだ。ガキさんと慕われるだけある。
そのお姉さんのような幼馴染の
- 22 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:04
-
「だから私、先帰ってるから今日はカメと帰ってきなよ」
- 23 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:05
- その一言で愛はこうして一人この寒さの中、屋上で絵里を待っているのだ。
一緒に待ってくれない里沙に散々、駄々をこねたものの
「お腹空いてるし〜それに今回のことは二人の問題でしょうが」の一言で、やむなく諦めたのだった。
その姿はさながらワガママを言ってきかない妹のようじゃないかと
また、ひとつ年上のはずの自分に呆れる。
ズズっと鼻をすする。冬の空の下、なんだかとっても自分がむなしくなる。
でも、今から絵里に詫びをいれるんだ!と久々に絵里宛に送ったメールを見つめながら
静かに深呼吸をして、それまでうなだれていた顔を上げた時だった。
バン!!
思い切り屋上のドアが開く。
そこには、運動部特有のスポーツバックを抱え
寒かったのか制服の上から羽織ったパーカーのフードをすっぽりかぶったまま
勢いよく入ってきた少女が一人。
愛がそれまで待っていた人がそこに。
待ち人、来たる。
- 24 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:10
- 勢いよく屋上に飛び込んできた絵里は
パーカーのフードをすっぽりとかぶったまま
何かに怯えるように右、左と辺りを見渡している。
絵里や。
絵里だ。
絵里が来た__________「・・・・え」
そう愛が絵里の名前を呼ぼうとしたのとほぼ同時に
「いた!愛ちゃん!!!愛ちゃんのばか〜!!!」
ベンチの横に立っている愛を見つけた瞬間
何故か涙目の絵里に愛の声は見事にかき消されてしまった。
へ?バカ?バカって・・・・何で!?
やっと謝ろうと意気込んでいただけに絵里の思いがけないその言葉に
思いっきり出鼻をくじかれ呆気にとられていると
「も〜愛ちゃ〜ん!!」と舌足らずな甘えた声で
そのままぺたぺたと走りよってきた絵里に抱きしめられた。
「うおっ」とそのゆるい衝撃に思わず声をあげる。
絵里はぎゅ〜っと愛を抱きしめてから、それからがばっと身を離す。
愛の肩に手は乗せたまま。相変わらず涙目のままだ。
その表情を見て自分が避けていたことがこれほどまでに絵里に辛い思いをさせてしまっていたのかと
そう気付くといてもたってもいられなくなった愛は
今度こそ詫びを入れようと口を開いた瞬間
「愛ちゃんのバカ!!」
「・・・・・。」
またもや撃沈。
何なのだ。何なのだこいつは!
開いた口がふさがらないとはこのことだ。
人がさっきから何度も詫びいれようと!
落とし前をつけようと必死になっているというのに!
バカバカと連発しやがってぇ!!
里沙に何度もガラ悪いから!って突っ込まれようとそんなの関係ねぇ!
それだけ愛はむっとしてしまっていた。
- 25 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:12
- 「絵里・・・ちょっとあんたいい加減に・・・」
そう言いながら自身の方に置かれていた絵里の両手に触れると
突如としてまた絵里に抱きしめられた。
「うおっ」思いがけない行動にまた声が漏れる。
「愛ちゃんのバカぁ〜何で待ち合わせ場所こんなとこにしたんですか!?
絵里ここまで来るのにすっごい怖かったんですよ!」
「・・・・・え?・・・・・あ!」
そういえば、ここは校内では一番古い校舎の屋上。
春休みということもあって全く人気は無かったはず。
しかもこの屋上の存在を知る生徒は少なく、ほとんど来る人もいない。
愛自身も一年生の時、軽くヤンキーな先輩に教えてもらわなければ知ることもなかった場所だ。
なぁんだ。そういうことだったのかと愛は思う。
絵里が涙目だった理由はこれだったのか。
今まで散々バカバカ言われたことにも納得してしまう。
そう、絵里は極端なまでのビビリなのだ。
ちょっとした暗闇でも必要以上に怖がる。お化け屋敷なんてもってのほからしい。
昔、絵里とお化け屋敷に入ったことのある里沙がそう言っていたのを思い出した。
「あはは!ごめんごめん。絵里怖がりやったな。」
言いながら自分より少し大きな絵里の頭をフード越しに撫でてやる。
さっきまでの怒りもどこかへいってしまったらしい。
「う〜ホント絵里屋上行くの怖くってぇ幼馴染のさゆに電話したら
絵里なら出来るよ!って言われてぇんで切られちゃって〜もうホント無理って思ったんですけど
でも愛ちゃんが待ってると思ったらいてもたってもいられなくて
完全防備でここまでダッシュしてきたんですよ〜!!!」
そう言ってそれまですっぽりと頭を覆っていたフードを取る。
絵里にも幼馴染がおったんやなぁと愛は思いながら
「完全防備ってフード被っただけじゃん」冷たくあしらう。
「これがあるのと無いのとじゃ雲泥の差です!!きっとここまで来れなかった!」
あまりにも真剣な顔で絵里が力説するものだから
愛は思わず笑ってしまう。先ほどまでずっと気まずいと思っていたのに
嘘のように二人は今までどおりだ。
その今までどうりが愛はやっぱり嬉しいと感じる。
このまま謝らなくてもいいんじゃないかと考えてもみたが
ここまで必死になって来てくれた絵里のことを思うと
やっぱりちゃんと言わなくてはと思い止まる。
- 26 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:12
- 取り合えずいつまでも抱きついたまま離れない絵里を
先ほどまで自身が座っていたベンチに座るよう促して愛自身も隣に腰を下ろす。
しかし、せっかくいつもどおりに戻ったのも束の間
いざ言葉にしようと思うと声が出てこないのだ。
あの日のことが急にフラッシュバックする。
今更ながら絵里を前にして意識して緊張しているのだ。
視線だけ絵里に向けると
いつも気の抜けたふわふわした笑みを宿した絵里には珍しく
先ほどとは打って変わって大人しくうつむいたまま言葉を発しようとはしない。
二人とも、あの日の出来事を避けては通れないことは分かっているから。
気まずい沈黙が二人に訪れる。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・気まずい。」
ぽつりと絵里が呟いた。
- 27 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:16
- 校内では一番古い校舎の屋上。
錆びれたベンチに少女二人が腰掛ける。
木枯らしが二人に容赦なく吹き付ける。
“気まずい”先ほど絵里が思わず漏らした言葉をきっかけに
愛がはっとする。このまま気まずいままなんて嫌!
ここは一つお姉さんの自分が先に言わなきゃと
愛がやっと覚悟を決めて口を開く。
___________ごめん。
そう今度こそ愛が言おうとしたにも関わらず。
目の前に絵里の手のひらが。
よく見ると“ちょっと待った”と言う様にポーズを構えている。
二度あることは三度ある。
またもや撃沈。いつになれば言えるのだろうか。
そんな愛を知ってか知らずか
「絵里に。絵里に言わせてください。」
もともと大きな目をパチクリさせて呆気にとられている愛を
無視して絵里が体ごと向き直って話し出す。
「困らせてごめんなさい。やな思いをさせてごめんなさい。」
そう言って絵里はぺこっと頭を下げた。
その勢いで自動的にまたパーカーのフードを被ってしまう。
愛の脳裏にクラスでの一件がよみがえる。
確かに嫌な思いもした。それは事実。
でもそんなことより絵里と一緒にいられないことの方がもっと嫌。
そういう自分の気持ちを愛は当に気付いてしまっていたから、
いつまでも頭を下げたまま何も言わない絵里に早く顔を上げてほしくて
「あ、いや、確かにびっくりしたけど・・・別に今は大丈夫やし・・・ほやから早く」
“顔あげて”
愛は言いながら絵里の頭を覆ったフードを下ろそうとと手を伸ばす。
が、すかさずその手を絵里に掴まれる。
思いがけないその行動に赤面したまま愛は声すら出せずにいると
いつもと変わらない口振りのまま絵里が。
「でも〜愛ちゃんにキスしたことは謝りません!」
そういって顔をまた勢いよく上げる。その顔はなぜか得意気だ。
「おい!」
赤面しつつも、どういう意味やとさすがに愛もそこは突っ込む。
「だ〜か〜らぁ〜。」
相変わらず舌足らずな声を出しながらも絵里は掴んだ手を離さない。
「だから何やの?」
絵里の理解不能発言に呆れつつもやっと顔を上げてくれたことに安心して。
それから繋がれた手に気をとられていたのがいけなかった。
「だから、ただいまの――」
- 28 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:16
-
チュ。
- 29 名前:sh 投稿日:2007/12/09(日) 20:17
- 目の前には絵里の顔。唇にはあの日の感触。
気付いた時には二度目のキスを奪われていた。
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/10(月) 00:29
- 愛絵里めっちゃかわいいですね。これからも更新頑張ってください。
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/18(月) 00:15
- 何気に待ってます!
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/27(水) 19:31
- すっごく待ってます
- 33 名前:sage 投稿日:2008/03/26(水) 17:16
- 続きが気になっちゃってます。
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/08/16(土) 23:12
- ガキさんかわいい・・・・フツーに・・
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/14(日) 12:51
- 何気にめちゃ好きやった
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/14(日) 23:34
- あげるな
- 37 名前:sh 投稿日:2008/09/21(日) 23:51
- >30。名無飼育様
ほんと、ごめんなさい。えらい遅くなってすみません。
かなり今更ですがちょっとだけど、更新します。
愛絵里ってどうなんでしょね?私は好きなんですけど・・・
これかも頑張ります。ありがとうございます。
>31。名無飼育様
ほんとすみません。だいぶ今更ですが何気に更新しちゃいます。
>32。名無飼育様
すごいすみません。かなり今更感溢れますが更新します。
>33。名無飼育様
すいません遅くなりました。続き書きました。
>34。名無飼育様
こんばんわ。ごめんなさい更新します。
ガキさんをじゃんじゃん出せるように頑張ります。
>35。名無飼育様
その言葉を励みになんとか少しですが書けました。
現在形で感想をいただけるように再度頑張りまっす。
>36。名無飼育様
なんつーか、ごめんなさい。
- 38 名前:sh 投稿日:2008/09/21(日) 23:53
- 欧米か!里沙がこの場にいたらきっとそう言っただろう。
もちろん突っ込む余裕など持ち合わすはずなど無い愛は
突然のキスに驚いて後ろに体勢を崩す。
先程から二人の手は繋がれたまま。
自動的に引き寄せられるように絵里も前へ倒れ込む。
愛の視界一面に冬の青空が広がる。とほぼ同時に後頭部に衝撃が走る。
――ドン!
「アタタ・・・絵里。もぅいきなりはあかんやろ。」
「やだ!ごめんなさい愛ちゃん!大丈夫ですか!?」
下になり後頭部を押さえ涙目になっている愛に、
上になった絵里が心配して愛の頬に触れる。未だ互いの片方の手は繋がれたまま。
そのことに気付いた愛が恥ずかしさのあまり思わず手を離そうとした瞬間。
繋がれた先の片方の手によって拒まれてしまった。
またより一層強く繋がれた自身の指先から
絵里の指先。腕。肩のライン。首筋。
順に視線で追った先には今までに見たことないくらいに
真剣な表情をした絵里に見つめられていた。
「・・・え、絵里?」
だんだんとまた絵里の顔が自分に近付いているのが分かる。
今度は逃げようと思えば逃げられるのに、それが出来ないのは?
答えが出せないまま愛は、戸惑いを隠せないでいると
互いの鼻先が触れ合うほどの距離に近付いた時
「愛ちゃん。えりね、すっごい愛ちゃんに会いたかった。」
ギリギリで発せられたその絵里の声は
きっと愛が絵里と出会ってから初めて聞くような切ない声で
その声に抗う術など今の愛は持ち合わせておらず。
その気持ちの整理も追いつかないまま
再び絵里によって愛の唇は塞がれた。
- 39 名前:sh 投稿日:2008/09/21(日) 23:54
- おーい。
絵里。
絵里やーい。
あんたいつまでそうしてるんだよ。
言いたい。
けどいえるわけがない。
ただいま愛は三度目のキスを絵里に奪われてる真っ最中なのだから。
愛に覆いかぶさった形になった絵里の、
言ってしまえばマウントをとられる形になった愛は
なす術もなく
ただ絵里の成すがままに身をまかせていた。
嫌だと本気で嫌がればきっと絵里はすぐにでも止めてくれるだろう。
愛が困惑している一番の理由は嫌だと言わない自分自身にだった。
愛にとっての絵里。
いつからか何かが変わってきていた。
きっかけはあの日のキスに違いない。
でも多分その前から愛の中で絵里は特別だった。
それがいつからなのか思い出せずに
それに今のこの状況で考えられる訳もなかった。
胸の鼓動もだんだんと速度を増していよいよ
どうして良いのか全く分からなくなった愛は
このままじゃやばい。と思った矢先、それに気付いた絵里が
ずっと口付けていた唇を離した。
「あはは。止まらなくなっちゃいましたねー。」
呑気に絵里が八重歯を覗かせて笑う。
どうしてこいつはこうも普段どおりに出来るのかと
愛は先ほどまでの自分がバカらしく思う。
ほんとに。
ほんとにいつからだったのか。
絵里が特別になったのは。
やばい、また悩みそうや。
また里沙ちゃんに心配かけてまうわ。
はぁ、と呆れたため息なのか何なのか
分からないものを吐き出しながら愛はまた絵里を見上げると
にやにやとした気の抜けた笑みは変わらないものの
それでも愛しいと言わんばかりの視線を愛に向けるのだ。
なんとも言えない気持ちになる。きっと顔は耳まで真っ赤に違いないのだ。
絵里の視線に耐えられなくて肩越しに見える青空を見上げる。
- 40 名前:sh 投稿日:2008/09/21(日) 23:56
-
あぁやっぱやばい―
冬の寒空の下。速度を増したままの心音はしばらく収まりそうになかった。
- 41 名前:sh 投稿日:2008/09/21(日) 23:57
- おかしい。
おかしい。
どうにもこうにも愛ちゃんとカメがおかしすぎる。
いや、どちらかといえばこの二人はおかしい人間の部類に入るんだけど。
なーんかいつもと違うんだよね。と
新学期始まって間もない朝のSHR前、席につきながら
里沙は昔、太くてコンプレックスだった眉をぴくぴくと
寄せながら一人もんもんと考え込んでいた。
二人が仲直りしたという事実も、ちゃんと聞かされていたし
もうそれで全て解決したのだと里沙は思っていた。
それなのに里沙がこんなにも考えてしまうのは
昨日、始業式のあった帰り道に、久しぶりに愛と絵里と里沙の
三人で肩を並べて帰ったのだが、愛はいつにも増して
人の話を聞かないし、絵里は絵里でいつにも増して
ぽけぽけぷぅで三人でいると確実に突っ込みなる里沙は
いつにも増して二人に突っ込みを入れなくてはならず
大変だったのだ。
- 42 名前:sh 投稿日:2008/09/21(日) 23:58
- 今後これ以上となると手に負えないなぁと
里沙は少し憂鬱になる。しかし考えても当人ではないのだから
答えなんて出るわけないかと持ち前の切り替えの良さで考え直す。
二人の間に何かあったのなら本人に聞けばいいんだ聞けば。と
よって悩みの半分を占める相手に視線を向ける。
が、あまりにその相手の顔の近さに里沙はうんざりする。
絵里が里沙の席の半分に腰掛けているのだ。
二人にとってはいつものことらしく里沙は呆れながらも突っ込む。
「カメ近いから!何で毎朝毎朝あたしの席に座りに来るのよ!」
「なんで良いじゃん。コミ・・コミュ、コミニケーションじゃないですかー。」
「ちょっとカメ言えてないから!コミュニケーションでしょ!」
「ガキさんだって言えてないじゃないですかー。」
「いや、何言ってんの!言えてるでしょうが!」
朝からぽけぽけぷぅな絵里がおかしくて
ついつい本題からずれてしまいそうになる。
いけない。いけないと思い直した里沙は
すぐ隣でいつまでもやれコミュニケーションだと
うるさい絵里の発言を無視して単刀直入に聞いてみる。
「はいはい。そういえばカメさ、この間、屋上で愛ちゃんと何かあった?」
「え?そんなこと聞くなんてガキさんたらKY!」
「こらー!KY(空気読めない)とか、ぽけぽけぷぅのカメだけには言われたくないから!」
二人仲良く一つの椅子に座りながらぎゃあぎゃあと騒ぐ。
一年生のときからの習慣は二年生になってからも
変わりそうもなかった。
- 43 名前:sh 投稿日:2008/09/22(月) 00:00
- 結局、絵里からは何の情報もゲットできないまま時間は放課後。
情けないことにそのことに里沙が気付いたのは悩みのもう半分を占める相手。
長年の幼馴染の愛からのメールだった。
“今日、風邪で早退したからあーしのこと待たんで帰ってええよ”
大丈夫?との内容を愛には返信し絵里には
愛が早退したから今日は二人で帰ろうと送信して
携帯をぱちんと閉じる。
里沙は自身が入っている将棋部へ向かいながら
愛の様子を心配しつつも思考は再び朝のSHR前の状態に戻っていた。
一体、二人の間に何があったんだろうと
また眉をぴくぴく寄せてしまう。
考え込みながら部室の扉を開けると
里沙がいつも座る窓際の席に長い黒髪がやたら綺麗な女の子が一人
里沙の席の前に立っていた。
見たところ制服の真新しさから一年生だ。
入部希望だろうかと女の子が将棋部なんて珍しいなと
思いっきり将棋部員の自分を無視して
おそるおそる里沙はその黒髪の女の子に話しかけるために近づく。
が、里沙はすぐにその行為をやめてしまった。
その黒髪の女の子の容姿が一般的なレベルからずば抜けて
可愛いということもあったが
そんなことよりも里沙の席を
なにか思いつめたように見る眼差しが
話しかけることを躊躇わせたのだった。
- 44 名前:sh 投稿日:2008/09/22(月) 00:02
- その里沙の視線に気付いたのか黒髪の女の子が里沙を見る。
その瞬間先ほどまでの思いつめたような表情が一変して
ふわふわしたものに変わる。
その雰囲気が、誰かに似ている気がして里沙は違和感を抱く。
困惑気味の里沙に対して黒髪の女の子はふわふわとした表情のままだ。
このままじゃらちがあかないと里沙は先ほどより話しかけやすくなった
空気を察して話しかけることにする。
心の中では“ほらやっぱりあたしはKYなんかじゃないからー”と思いながら。
「あのーもしかして入部希望かな??」
「まさか!将棋部なんて可愛くないのに、さゆみが入るわけないの。」
その可愛い容姿とは真逆な毒舌に里沙は返す言葉を失う。
心の中では“こらー全国の将棋ファンに謝りなさいよー”と思っていた。
そんな熱い里沙を他所にさゆみと名乗るその子は独りでに話し出す。
「う〜ん。見たところ38番目なの。」
「え、何が??」
「何って可愛さランキングに決まってるの。」
その順位が喜んでいいものかどうかは里沙はよく分からなかったし
新入部員でないならこんな失礼な子ほっとこうと思うのだが
少し気になったことがあったので聞いてみる。
- 45 名前:sh 投稿日:2008/09/22(月) 00:03
- 「えーと、ちなみに37番は?」
「え、イチゴのイヤリングですけど」
「イヤリング以下かい!」
里沙の突っ込みが部室内に響く。
将棋部が可愛くないと罵られまさかのイヤリング以下の順位に
憤慨中の里沙を気に留める様子もないそのさゆみという女の子は
ふわりと笑い、それから里沙に半歩近づいて距離をうめる。
突然の行動に驚く間もなく、その憎たらしくも可愛らしい顔が里沙の耳元に近づいて
「1番はもちろんさゆみで、それから2番は絵里なの。」
「・・・・・え?」
誰かに似てると感じたのは、間違いではなかったと里沙は思う。
おだやかそうに見える雰囲気に拍車をかけるような甘い声。
それからたまに何を考えているのか分からないような掴み所がない感じ。
それは間違いなく里沙の一番仲良しのクラスメイトの絵里で
その絵里が持つ雰囲気をどことなくこのさゆみという女の子から
里沙は感じていた。
「あんたカメの何なの??」
「あんたじゃなくてさゆみなの。さゆって呼んでほしいの。それから絵里は―――。」
言い終わるとゆっくりと里沙の耳元から顔を離した。
その言葉の意味が理解できないままの里沙は怪訝な顔でしかできない。
- 46 名前:sh 投稿日:2008/09/22(月) 00:03
-
「絵里は、さゆみのものなの。」
- 47 名前:sh 投稿日:2008/09/22(月) 00:04
- そう言って、さゆみと名乗る一年生は不敵に笑ったのだ。
- 48 名前:sh 投稿日:2008/09/22(月) 00:07
- だいぶ遅すぎる更新でしたが、今回はここまでです。
ちょいとばかしブラックさゆみんで行こうと思います。
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/09/24(水) 19:47
- 更新されると思ってなかったんで、すごくウレシイです。
続き期待してます
- 50 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 17:57
- >49。名無飼育様
コメントありがとうございます。
こちらこそ嬉しいです。
続き書きましたので良かったらまた読んでみてくださいね。
- 51 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 17:59
- その頃愛は、風邪で完全にダウンしていて自身のベッドで休んでいた。
「う〜・・こりゃ完全に風邪やなぁ・・・。」
そう言いながら熱でだるい体に鞭打ちながら
心配してメールを送ってくるクラスメイトにいちいち丁寧に
大丈夫だよ〜との内容のメールを返信していた。
一応、部活が終わればいつも一緒に帰る里沙と絵里には
自分からメールを送っていた。
里沙からはすぐ心配した内容返事が来たものの一向に絵里からの返事はない。
「さっすが里沙ちゃんやなぁ・・・に比べて絵里のやつめぇ。」
愛はそう呟きつつも、絵里に即レスを期待する方が間違いだったと
思い直し、とりあえず早く寝て風邪を治してしまおうと瞼を閉じる。
その瞬間、ブーブーと携帯がマナーモードのままメールの受信を知らせる。
まさか絵里から??そう思うや否や
熱できついことも忘れて愛はがばっと身を起こす。
あまりにも勢いよく起きたために軽くめまいを覚えつつも
絵里からの即レスを期待しないとお休みモードに突入したにも関わらず
こう咄嗟に反応する自分に愛は少し呆れていた。
「なんかあーし最近、絵里に振り回されっぱなしやなぁ・・・。」
などどぶつくさ呟きながら、勢いよく動いたためずれた冷えピタを直しつつ携帯を開くと
絵里からではなく、差出人は同じクラスメイトの松浦亜弥だった。
“今日はごめんね。みきたんからアドレス聞きました。風邪ちゃんと治してね。 松浦亜弥”
絵里からのメールではなかったことを少し残念に感じる自分の心境の変化に
ますます疑問を持ちつつも、同じクラスになったばかりの亜弥からのメールに
愛はただ携帯を見つめる他なかった。
「“今日はごめんね”か・・・まぁ確かにねぇ。」
そう呟きながら軽い苦笑いと共に
今日、早退するまでに学校であったことを愛は思い出した。
- 52 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 18:01
-
愛が風邪で早退するまでのこと。
愛は同じクラスの松浦亜弥と共に、ついこの間
絵里に何度目かのキスを奪われた古い校舎の屋上に来ていた。
早く教室に戻らないと授業が始まってしまうという心配もあったが
朝からなんだか具合が悪いことも重なって
出切れば早く用件を聞いて教室に戻りたいと愛は思っていた。
なのに、「聞きたいことがあるんだけど、良いよね?」と有無を言わせず
愛を誘ったはずの亜弥は屋上に着いても話しかけようともせず
屋上のフェンス越しに外の景色をぼんやりと眺めている。
正直、愛と亜弥は特別仲が良いという間柄ではなかった。
三年生になり初めて同じクラスになってクラスメイトという関係にはなったが
それまでは共通の知人“藤本美貴”を介して互いに顔見知り程度の関係だった。
四月とは言えまだ冬の寒さも残る時期、
まだ朝方の時間ということもあって吹く風は冷たい。
フェンス越しに佇む亜弥の短めのスカートが風に吹かれてゆれる度に
覗く華奢な脚が冷たい風にさらされた。
それを見た愛は自分も大概スカートを短くはいていることを他所に
うわぁ寒そうやな・・・てか寒いわ。なんか頭も痛いし、絶対これ風邪ひいた・・・
と愛はシャツの上から羽織っただけの黒のカーディガンのボタンを締めつつ
ブレザーの上着を教室に置いてきてしまったことを悔やんでいた。
一向に話し出す気配もないままの亜弥に愛はとうとう痺れを切らして
近くにあるベンチに腰をかけた。そこはついこの間、愛が絵里から散々キスを
奪われ好き放題にされたベンチだった。なんとなく頬が赤くなるのを感じつつも
ここしか座るとこないんだから仕方ないと自分に言い聞かせていると
「この屋上良いよねーほとんど人来ないしね!」
「へ!?」
先ほどまで何も話し出す気配もなかった亜弥に唐突に話しかけられた。
一体何を急に言い出すんだと呆気に取られる。
フェンスに背中を預けたままの亜弥の表情はどこか楽しそうだ。
訳の分からないままの愛を他所に
亜弥はフェンスから離れ愛の座るベンチの目の前までやってきた。
なんとなく嫌な予感がした愛はベンチにもうそれ以上、下がれないというほどに後ずさる。
その様子を見た亜弥はまた楽しそうに笑い
「愛ちゃんって年下のコに攻められちゃうんだね。」
“見ちゃった”
そう言って亜弥は愛の座るベンチを指差した。
- 53 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 18:02
- 愛の顔が一気に耳まで赤くなる。
確かに今、愛が座るベンチはついこの間年下の絵里にキスを奪われた場所だった。
あの時のことが第三者に見られていただなんて。まさかの展開に言葉すら出ない。
しかし、よく考えたら少女漫画やドラマ、しかもお昼の時間帯ではよくある展開じゃないかと
んな、ベタな!と愛の赤い顔がだんだん青ざめてくる。
体調が悪いことも手伝ってかどんどん気分も悪くなってきた。
そんな愛を他所に亜弥は先ほどまでとはうって変わって楽しそうにしている。
「この場所、みきたんから聞いたんでしょ?」
「そ、そうやけど・・・もしかして亜弥ちゃんの聞きたいことってそれ?」
愛は動揺しつつもかろうじて声に出す。
みきたんというのは愛と亜弥の共通の知人の“藤本美貴”のことで
愛にこの場所を教えてくれた軽くヤンキーな先輩のことでもあった。
美貴と仲の良かった亜弥がここを知らない訳がなく、たまたま屋上に来た亜弥に
目撃されてしまった。それが今のこの状況を招いていた。
それににしてもツイてない。タイミングが悪すぎる。
“女の子同士のキス”といいうことで一度目であんなに周りから騒がれたのに
ここにきてやっとその騒ぎも落ち着いてきて、絵里とも仲直りしたばっかりなのに
二度目の目撃情報となると周りからの騒がれ方も容易に想像できた。
「それもあるけど、それだけじゃないんだなー!」
「じゃ、何やの?」
愛の嫌な予感はなんとなく続いていた。
不自然なまでに近づいてきた亜弥は手を伸ばし愛の長く伸びた髪を梳く。
楽しそうにしていた表情はそのままで
「ねぇ女の子とキスするのってどんな感じ?」
「は??」
「ね、あのコと付き合ってるの?」
「どんな感じって・・・無理やりされただけやし・・・てか、付き合ってなんかないし。」
「うそ!だって最後の方は愛ちゃんも良い感じだったじゃん!」
「えぇ??どっから見てたの!?」
「二人がキスしてキスし終わるまでだよ〜!」
「ちょうどピンポイントじゃんか!!」
にゃははと楽しそうにまた亜弥が笑う。
あまりの運の悪さに更に愛が顔色を悪くさせていると
それまでずっと楽しそうにしていた亜弥の表情が急に真面目なものに変わる。
そのいきなりの変化に愛もまた身構え、後ずさる。
右手で愛の顔の輪郭をなぞりながら、にやりと口角をあげて亜弥は口を開く。
「ねぇほんとーは、付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってなんかないよ。そもそも女のコ同士やしあり得んわ。」
「でも、あのコは愛ちゃんのこと好きなんでしょ?」
「分かんない。はっきり好きって言われた訳やないし・・・てか亜弥ちゃんには関係ないやろ。」
確かに絵里には“好きかも”とは始めてキスをされた時に言われたことはあったが
それから何度かキスをされてはいるものの愛はきちんとした絵里の気持ちを愛は聞いた訳ではなかった。
自分でそう言っておきながら何故だか少し悲しくなってしまっている気持ちには
この際気付かないようにして、愛は亜弥の目を見てそう答えた。
が、愛からその言葉を聞いた亜弥はそれまでずっと愛の頬に触れていた右手を離し
開いた口が塞がらないというように愕然とした表情を浮かべて
「何言ってんの関係大ありなんです!ていうか、ていうか!そんなの好きに決まってんじゃん!」
「え?決まってんのか?」
「あったりまえじゃない!じゃあ聞きますけど私とキス出来る?」
「はぁ?何でそうなるんや!?」
「いいから目、つぶって!」
嫌な予感が的中したと、とっさに身構える愛だが
すでにスタンバイOKの亜弥に両頬を捕まえられて身動きがとれない。
全く持って訳の分からなくなってしまった展開に頭もついていかず
なおかつ今朝からずっと具合が悪かったのがこの時すでにピークに達してしまっていた。
「ちょ、もうダメ。キスはあかんて!あーし、そういうのは好きな人としか―――。」
「ほーらね!愛ちゃんやっぱりあのコのこと・・・あれ?愛ちゃん!?なんか、顔熱い?」
風邪による熱と亜弥による唐突な尋問のせいであがってしまった熱とで
半分気を失いかけた愛は、その後、亜弥に連れられ保健室まで行き
学校から連絡を受け仕事場から迎えにきた母と病院へ行き共に自宅まで帰りついたのだった。
- 54 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 18:04
- 結局、本当のところ亜弥が何を確認したかったのか、聞きたかったのか
その真意は分からないままで、愛からしてみれば
屋上に呼び出され、ただキスを奪われそうになっただけだった。
そんな早朝の出来事を思い出し
「ごめんねで済んだら警察はいらんわ〜。」
と、なんかよくある言葉をベッドに潜りながら力なく呟いた。
今朝方あった出来事を思い出して更に熱が上がってしまうような感覚を覚えつつ
本当に迷惑な話だったと思いながらもきちんと
亜弥からの謝罪のメールに気にしないでとの内容を返信しながら
そんなの好きに決まってんじゃん!―――
亜弥から屋上で言われた一言を思い出す。
「いやいやありえんよ。あーし女やし・・・絵里だって女の子やし。」
そんなことをぶつくさ言いながらも、絵里のことを考えれば考えるほどに
愛は心音の速度が増す自分にさすがにもう気付いていた。
それでも、頑固な性格が故に
“違う違う。そんなんやないもん。あーしは普通の子やし
絵里だってなんかの気まぐれに過ぎんかもしれんし”
心の中で四苦八苦しながら、もう考えるのは止そうと
愛は、携帯を片手にお布団の中に勢いよく顔まで潜り込む。
お布団の暗闇の中、自身の握られた携帯を見つめる。
期待しないと言い聞かせつつ結局のところ絵里からの返信を待っていることに気付いた愛は
また少し風邪の熱とは違う別の熱が上がる自分に半ば諦めを覚えつつ
薬が効いてきたことを良いことにそのまま睡魔に身をまかせて瞼を閉じた。
- 55 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 18:05
- 「いたた。愛ちゃん何するんですかー。」
「・・・あ、本物や。」
どれくらい眠っていたのか分からないが
不意に、愛は視線を感じて目を覚ました。
身の危険を察知したといっても良いかもしれない。
ただ、目を覚ます前に夢を見ていて。
それも絵里の。
だから夢に出てきた当人であるはずの絵里が
目をあけた直後に自分の目の前にいる事実が
にわかに信じられ無かった愛は
夢か現実か確認するために、おもむろに目の前の絵里の頬をつねり
先ほどの言葉はその直後の絵里と愛の第一声だった。
「ひどい。せっかくえりが心配してお見舞いにきたのにー。」
「お見舞い?・・・あぁそうや。あーし早退したんやったわ。」
「何でいきなしえりのほっぺたつねるんですかー?」
「や、夢かと思って・・・確認も兼ねて。」
「えーそれ普通、自分のほっぺたでするものですよ。人のでしたら意味ないー。」
言いながら絵里は愛の行動の意味が面白かったのか
ケラケラと笑いながら愛のベッドに上半身だけのせるようにして床に座った。
愛はケラケラと楽しそうに笑う絵里を見ながら
つい先ほどまでは絵里だけから心配のメールがなかったことに不満を抱いていたのにも関わらず
風邪で早退した愛を心配して、今は目の前にいてくれる絵里を見て
熱で身体がだるいことも忘れ、心の底から嬉しいと感じる自分にまた違和感を感じていた。
普通の“友達”に対してここまで心が動かされるものなのだろうか。
考えれば考えるほど、答えの先はひとつしか無いように思えたが、
その答えは愛にとっては理解し難いものであり、理解するものでもないと思っていた。
一人自問する愛を他所に、当の絵里はまだうへへと笑っている。
本当に心配してお見舞いに来たのだろうか。少し呆れながらもまぁいっかと思い直して
完全に起ききった目で再び絵里を見ると
制服のブレザーもカバンも人の部屋お構い無しに脱ぎ散らかしている。
この辺はいつものことなのだが、いつもと様子が違うことに愛は気付く。
何故か絵里は額にうっすら汗をかいていて綺麗に染められた栗色の髪が額に少し張り付いていた。
その上、制服のブラウスは第2ボタンまで開け腕まで袖をまくっている。
第2ボタンまで開けられたブラウスから見える絵里の鎖骨のラインが色っぽくて
ちょっとセクシーだなと思ってしまったことは置いといて
愛はその絵里の様子を不思議に思い聞いてみる。
「絵里、暑い?汗かいてる。」
「え?・・・あぁ学校終わって愛ちゃんチに急いできたから暑くって。」
「もしかして走ってきたん??」
「イエス!えり陸上部ですから!」
「学校終わってすぐ来たって、部活もしかしてサボったんか?」
「うへへ。そうとも言いますねえ。」
「いや、そうとしか言わんやろ。部活さぼってまで来てもらったらなんか悪いわ。」
絵里は申しわけなさそうに所在無げにする愛に気付いたのか
それまで上半身だけをベッドにのせた体勢をやめ、愛の顔が見えるように
愛のベッドに腰掛けた。その行動につられるように愛も上半身だけ体勢を起こすと
急に絵里の手が愛の頭に触れた。愛が訳が分からないままでいると
先ほどまで寝ていたということもあって乱れていた髪を絵里になおされていた。
- 56 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 18:08
- 愛は思わず赤面する。
絵里はこういうふとした時に触れてくることが多い。
きまって愛が何かに必死になっている時など、とにかくなにかに気を取られて焦っている時に限って
その行為は限定されているようで、その度に絵里の指先から伝わる温度に
自分の気持ちが落ち着いていく感覚が不思議だった。
絵里がそういう愛に気付いているのかどうかは分からないが
いつもと変わらない気の抜けた表情を見ると無意識的な行動なのだろうと愛は思う。
ただ、その感覚が心地よくて大人しく絵里の行為に甘えているとふいに絵里が口を開いた。
「愛ちゃんが悪いって思うことないですよ。
だって愛ちゃんが風邪ひいたのってえりのせいでしょ?」
「は?何で?」
「この間、屋上でずっとえりのこと待ってましたよね?絶対あの時ですよ!
なのにえりってば愛ちゃんに会えたのが嬉しいあまり、熱烈なチューをおみまい・・・うわ!」
「こら!ママに聞こえるやろ!!」
愛は顔を真っ赤にしながら最後まで話そうとした絵里の口を押さえた。
確かにあの日は寒かったうえに場所が屋上という悪条件の中
二時間近く絵里を待った経緯はあった。
けどそれでも風邪をひいてしまったのは自身の自己管理がなってないからで
絵里のせいというわけでは決してない。
そのことを伝えようと絵里の口から手を離すも絵里に先手を打たれる。
「だから。えり責任とりにきたんです。」
「へ?せきにん?」
そこまで言うと絵里は怪しげな笑みを浮かべて愛に顔を近づけてきた。
責任という意味までは分からないにしろ、これまでの経緯から何をされるか愛ははっきりと理解できた。
と同時に咄嗟に今日、クラスメイトの亜弥に屋上でさも当たり前と言わんばかりに言い放たれた言葉を思い出し
それまで自身もずっと気になって引っかかっていた言葉を投げかけた。
「ちょっと待って絵里、もしかしてあーしのこと本気で好きなんか?」
その言葉に絵里の動きが一瞬だけとまる。ただそれはほんの一瞬だけで
きょとんとした表情をいつもの気の抜けた笑みに変えながら、さも当たり前と言わんばかりの口調で
「そんなの好きに決まってるじゃないですかあ。」
その言葉がすとんと愛の中に落ちる。その言葉が聞けたのが良かったのか
愛は自分でも驚くくらいに大人しく絵里にキスを許してしまった。
が、自分が絶賛風邪引き中だったことを思い出して愛は絵里から身を離す。
「あかん。風邪うつってまうやろ?」
「だから愛ちゃん。えり責任とるって。風邪は人にうつせば治るんですよ?」
“愛ちゃんの風邪はえりがもらいます”
言いながら絵里はまた愛に口付けた。風邪で熱っぽい愛の唇に絵里の唇が重なる。
風邪をもらうその言葉とおりに、いつもより熱っぽいそれは
愛の思考を麻痺させるには充分で。
絵里の一言でこんなにも簡単に唇を許してしまう自分に
だんだんと絵里の深みにはまる。
絵里とのキスを受け入れながら愛は熱のさめない頭でそんなことを思った。
- 57 名前:sh 投稿日:2008/11/04(火) 18:15
- 本日はここまでです。
まつーらさんを出してみました。
次回はブラックさゆみんが頑張る!・・・はずです。
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/05(水) 08:12
- おー出演者が素敵すぎる!
黒さゆ期待♪お疲れさまです!
- 59 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 16:52
- >58。名無飼育様
感想ありがとうございます!
嬉しいです。出演者はもうほとんど出ちゃいました。
最後の方に黒さゆさんが出てますので是非ご覧下さい。
あと微妙な性描写があるので苦手な方は
スルーしちゃうということでお願いします。
- 60 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 16:54
- 静かな部屋に2人の小さな息づかいだけが響いている。
つい先ほど『責任をとる』=『キス』宣言をされてから
またもや愛は絵里のなすがままの状態だった。
いつもとは違う慣れないキスに逃げ惑う愛の舌は、いとも簡単に絵里の舌先にかすめ取られる。
そのまま歯列をなぞられて初めて感じるくすぐったい感覚に愛は思わず声が漏れた。
「…ぁっ…んっ。」
「愛ちゃんやーらーしー。」
やーらーしー。じゃねぇよと愛は思う。
ただそのことを口に出来るほどの気力は愛には残っていない。
が、熱でだるいということもあったが、これ以上続けたら
本当に絵里に風邪をうつしてしまうかもしれない。
そう思って言葉にする代わりに
視線の下に見える絵里の鎖骨の辺りをぐっと抑えて身を離した。
それに気付いた絵里が甘えた声を出す。
「やだぁ。もうちょっと。」
やだぁもうちょっと。じゃねぇよと愛は思う。
責任を取るなどと言いながらやっぱりただキスをしたいだけの絵里に
不覚にもその甘えた声を聞いてドキドキさせられたのだが
愛は意識の外でその気持ちを否定していた。
何で絵里はこんなにキスが上手なのかと疑問を感じつつも
いつもまでも絵里の好きにはさせられないと愛はやっと声を振り絞って
「絵里もうダメ。本当に風邪うつしてまうやろ?」
「・・・愛ちゃんずるい。」
そういうと絵里はしぶしぶながらも大人しく愛から離れた。
“ずるい”という言葉は一番初めにキスをされたときにも絵里から言われていた。
あの時も一体なにがずるかったのかは分からなかったが、今回だって同じように理解することが出来なかった。
それに今のこの状況で考える余裕もあるわけもなく
ただ、今は大人しく離れてくれた絵里に安心する他なかった。
- 61 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 16:55
- が、安心したのも束の間しぶしぶ体を離した絵里が思い出したように口を開いた。
「あっそういえば愛ちゃんはどうなんですか?」
「え?なにが?」
「なにってえりのことですよう。」
半ば拗ねた口調で絵里が答える。
こういう拗ねた時の絵里は決まって口元がアヒル口になった。
愛はそれを人知れず可愛いと思っていたのだが、拗ねた対象の先が自分であれば
そんな悠長なことも考えていられる訳もなく返す言葉に詰まってしまった。
愛の中での常識が返事をすることさえも戸惑わせていたからだ。
そのまま答えられずに考え込みながらベッドにポスンと身体を倒すと
「もー愛ちゃーん。」
とまた絵里が甘えた声を出し
寝転んだ愛を追いかけるように四つん這いになって
質問の問いを催促するようにベッドをぎしぎしと上下に揺らした。
アヒル口のままいじけた表情の絵里に上から見つめられる。
その体勢のせいで暑かったからと第2ボタンまで開けられた絵里の胸元が愛の視界に入ってしまう。
なんとなく必要以上に責め立てられているような気分になった愛は
病人お構いなしの絵里に呆れながらも、思い切って考え込んでいたことを伝えた。
「だって、あーしら女の子同士やよ?」
それを聞いた絵里はそれまでずっとぎしぎしと
ベッドを揺らしていた動きを止め、なんとなく気まずそうな顔をした。
それからしばらく視線をキョロキョロと挙動不審に動かしたと思うと
絵里はおもむろに、そして気まずそうに口を開いた。
「あのーそれってやっぱし重要ですかね?」
それというのは愛の言った“女の子同士”ということで。
絵里のその発言に愛は言葉が出なかった。
それもそのはずだった。
絵里とは人を好きになるという行為において考え方が根本的に違ったのだ。
その事実に愛が、また同じように絵里も気付いた瞬間だった。
互いに気まずいまま言葉を発せられずにいると
ドカドカと愛の部屋に向かって階段をけたたましく上がる音と
互いに聞き慣れた人物達の声が聞こえてきた。
- 62 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 16:56
- 「ちょっとあんた!何で愛ちゃんちまでついて来るのよ!」
「あんたじゃなくてさゆみなの!それに、さゆみのお家こっち方面なんです。」
「方面がでしょ!?何でそれで愛ちゃんちまで入ってくるのよ。意味分かんないでしょうが!」
「あっやーん。これ可愛い!可愛さランキング29番なの。」
「こらー話しそらさない!てかさっきあたしのこと38番って言ったよね?
何であたしが愛ちゃんちのドアノブ以下なのよ!」
そんな訳が分かるようで分からない一連の会話と共に
里沙とさゆみが二人して同時に愛の部屋に上がり込んできた。
愛と絵里は互いに呆気に取られたまま声すら出せずにいきなり入って来た2人を見つめていた。
里沙とさゆみはそんな2人お構いなしにそのままのテンションで2人に詰め寄る。
「愛ちゃん風邪大丈夫?てかカメ!このあんたの失礼な友達どうにかしなさいよ!」
「あんたじゃなくてさゆみなの。何度言ったら分かるんですか?もー絵里からもなんとか言ってよ。」
「え?え?てか何でさゆとガキさんが一緒いるんですか??」
「そーんなのこっちが聞きたいくらいなんですけど!
とにかくカメ!このナルシストの固まりみたいな子、一刻も早く連れて帰ってよ!」
ドタバタと入ってきたさゆみと里沙に絵里は両腕を掴まれて訴えられる。
絵里が頭の片隅でナルシストの固まりってその言い方ウケるガキさん!とか思いつつも
そんな場合じゃないと2人の様子に困惑していると
マイペースなのかなんなのか空気の読めない愛の言葉が3人の耳に届いた。
- 63 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 16:57
- 「さっすが里沙ちゃんやなぁナルシストの固まりて面白いこと言うわ。」
あっひゃーと豪快に笑うとその言葉に3人の動きが止まる。
絵里はさすが愛ちゃん!と感心する。その言葉を聞いた里沙は
「なんだ。愛ちゃん結構元気そうなんだね。心配して損したよ。」
「いや里沙ちゃんあーし熱ちゃんとあるんや…」『そーなの。ガキさんが来たか
らこれでえりも心おきなく帰れますよお。選手交代、バトンタッチです。あんまり人多いと迷惑
なんでさゆ連れて帰りますね!じゃ!』「ちょっ…絵里?」
そう言うや否や絵里はさゆみの手を取り愛の部屋を出て行く。
里沙はよほどさゆみの対応に疲れたのかいきなり帰ると言い出した絵里を引き止めもしない。
愛も先ほどの件で多少気まずい空気になっていたので
良かったといえば良かったのに絵里が帰るということを無意識に寂しいと感じてしまっていた。
だからことの発端になったっぽいさゆみという子に、ほぼ無自覚に
ふいに愛が視線を向けると、思いがけないことにさゆみも同じように愛のことを見ていた。
部屋の扉が閉まるわずかな時間。
時間にして数秒。
愛の動きが止まる。
目が合うとすぐに口端をあげてにこりと微笑んださゆみの表情の変化に
少し気後れしながらも愛は微笑み返そうと表情を変えるも
間に合わず扉はカチャと音を立てて閉じた。
全てにおいて鈍感な愛は
自分に向けて可愛らしい表情で微笑む前の
さゆみの瞳の奥の冷たい視線には気付くことはなく
たんたんたんと階段を下りていく
二人の足音だけを聞いていた。
- 64 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 16:59
-
幸せってなんだろ。
なにそれ美味しいの。なんぼのもんよ―――
自身の腕の中ですやすやと眠る絵里の顔を見ながらさゆみは一人呟いた。
先ほどまでしていた行為のせいで裸のまま寝ている絵里の肩ががシーツからのぞいて見える。
のぞいた肩が寒そうに上下していてシーツをかけてあげようと手をかけるも
さゆみはその手をとめて、すやすやと気持ち良さそうに眠る絵里から
先ほどの考えとは真逆にシーツを全て剥ぎ取った。
絵里の褐色の色をした肌が暗闇の中に交わることなく浮かび上がる。
さゆみはその光景をまじまじと見つめながら
今日初めて対面した絵里の先輩の高橋愛を思い出して
絵里はさゆみのものなんだから―――
再び一人呟きながら未だ眠ったままの絵里の胸元に唇をよせた。
- 65 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 17:00
- 絵里とさゆみは、愛と里沙がそうであるように
小さい頃からの幼馴染という関係だった。
ただ一般的な“幼馴染”という関係から違うことは
こうして“イケナイコト”をしているということだった。
互いにませていたということもあって
思春期のちょっとしたSEXへの興味から遊びから始まったこの関係は
さゆみの家庭環境も手伝ってか、ほとんど両親が家にいないさゆみの部屋で
誰に見つかることもなく行われていた。
だんだんと知識をつけてエスカレートしていく行為。“イク”ことを覚えて止められなくなっていくほどに
すでに二人には“イケナイコト”という感覚は消え去ってその感覚さえも快楽の一部になっていた。
ただあくまでも遊びだったから。
二人の関係において制約されるものは何もなかったのに
絵里が高校生に上がって間もなくしてから
少しずつさゆみの中で何かが変わってきていた。
絵里は少し引っ込み思案で地味なところがあったのに
高校生になってからそれまで長かった黒髪をばっさり切り
ほとんど金髪に近いショートにしたことからがきっかけになったのだと思う。
だんだんと性格も明るくなってそんな絵里から仲良くなった
友達の里沙と先輩の愛の話を聞かされるうちに次第にさゆみの中では
自分でも制御が利かない程だんだんと黒いものが渦巻いていくような感覚に陥っていた。
自分をおいて変わっていく絵里が許せなかった。
「嫉妬」だった。
親にどれだけ放任されていても心のバランスを失わないでいられたのは
紛れも無く絵里の存在があったからなのに
“遊び”という何の制約もないゆるい鎖で繋いでいたから
その関係の脆さにさゆみは焦りを覚えた。
だって絵里は愛と出会ってからさゆみとあまり“イケナイコト”をしようとは言わなくなったから。
そのことに気付いたさゆみは少し泣きそうになって
と同時に、初めて自分が絵里を本気で好きなのだと気付いてしまった。
さらに一人取り残されるという感覚がさゆみの行動に拍車をかけて
それからのさゆみは自分の行きたい高校に進学するのを止めてまで絵里の通う高校を受験したり
今日みたいに里沙の部室に行ったり病人の愛の部屋まで強引に入ったりなど
思った以上に絵里に依存していることに気付いて
さゆみ自身そんな自分に呆れるばかりだった。
- 66 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 17:02
-
「ばっかみたい。」
独りでに呟いて、二人の関係性を如実に表したように
未だすやすやと眠ったままの絵里になんだか気に食わないような気持ちになって
それまで胸元に口付けしていたのをやめ
きれいに浮き出た絵里の鎖骨に甘噛みするように歯を立てると
さすがの絵里も眠りから覚めたらしく
「・・・あっ。さゆぅいたいんですけどぉ。」
「痛くしてるの。分かんない?」
やっと目が覚めた絵里に向かって冷たくさゆみは言い放つ。
行き場のない気持ちはどこにもやることが出来ずに。なのにその気持ちは
目の前で痛いと不満そうな顔している絵里本人にしかぶつけることが出来なかった。
どうして、どうしてさゆみだけなんだろ―――
そう思ってまたなんとも言えない気持ちになって
今度は絵里の首筋に唇をよせ痕を残すように強く吸い付いた。
今日はもう絵里が眠るまでに何度かしていたのに
さゆみの手は再び絵里の胸に伸びていた。
「やっ・・・あっ・・さゆ、おばさん達帰ってこない?」
「そんなの絵里が一番分かってるでしょ。」
絵里の言葉に自然と口調が冷たくなる。
さゆみの手を掴もうとする絵里の手を制して
両腕を掴みベッドに押さえつけるようにして仰向けにする。
身動きがとれにくいことを良いことに絵里の胸の一番敏感な部分に歯を立てた。
「んっ・・・やだ。さゆ今日いじわるー。」
絵里の言葉に一瞬だけさゆみの舌が止まる。
さゆみに動きを封じられ仰向けになったまま不満そうに見上げる絵里。
暗闇の中でもはっきりと分かる絵里の顔は不満そうに見えて
それでいてさゆみを誘っているようにも見えた。
「絵里が、絵里が悪いんだから。」
「なにそれ。意味わかんないよお。」
甘えた声で不満を言う絵里と冷たくあしらうさゆみ。
小さな頃から中身はまったく変わっていないのに対して
こういう関係を続けていけばいくほどに分かる互いの身体の成長。
絵里はどんどん大人の身体になっていく。
“イケナイこと”の時の絵里はすごくやらしくて、それから綺麗だった。
自分しか知らない絵里を他の誰かに見られるなんて
考えるだけでさゆみは嫌だった。
なのに今日始めて会った愛の顔が浮かんで
さらにその感情を煽られてしまう。
だから痛いと不満をもらす絵里を無視して
絵里はさゆみのものなんだから―――
さゆみは再び絵里の首すじに強く歯を立てた。
- 67 名前:sh 投稿日:2008/11/11(火) 17:06
- 本日はここまでです。
こんなことになってしまいましたが
次回、ガキさんにえりりん怒られちゃうの巻き…更新頑張ります。
- 68 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/11/12(水) 17:33
- 黒さゆー!!
続きが気になる!!
さゆみんがえりりんの事を好き過ぎるのが萌えます。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/12(水) 17:47
- そうゆうことかあああ!
さゆえりぃー!がきさん頼んだぞー。
更新乙です!
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/19(火) 23:28
- 続きが気になる。
愛えりも勿論だけどさゆえりもさらに気になる。
ゆっくり待ってます。
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/21(日) 22:41
- 待ってます
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/01(火) 18:49
- 待ってます!
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/11(金) 10:42
- 待ってますよ〜
ログ一覧へ
Converted by dat2html.pl v0.2