小春日和
1 名前:失意の作家 投稿日:2007/05/28(月) 05:37
アンリアルで主人公は光井です。
2 名前:失意の作家 投稿日:2007/05/28(月) 05:38



時は午後8時――


普段、この時間帯は人気が少ない筈のこの公園で多くの人々が集まっ
ていた。その人々の中心に警官が二人と大学生ぐらいの女性が一人、
そして、中学生ぐらいの少女が横たわっていた。

女性は顔の至る所に擦り傷を作り、服はズタズタの状態。その女性が
目に涙を溜め、少女を頭を抱きかかえ、手をギュッと握り締める。
抱きかかえられた少女は呼吸が荒く、腹から吹き出ている血を空い
ているもう片方の手で押さえていた。

眼から涙を零し、少女に対して謝る女性。少女は首を横に振り笑みを
作る。必死に大声で少女を呼び掛ける女性。その女性の必死の行為も
少女から返ってくる反応が徐々に鈍くなっていた。パトカーや救急車
のサイレンが鳴り響く。見ていた野次馬達も辿り着いた救急隊員達に
早く早くと急かす。この時、少女の目は完全に閉じられていた――。


3 名前:失意の作家 投稿日:2007/05/28(月) 05:38



  ・・・・何か、色々な記憶が蘇って来る

  良い事も悪い事もあった

  けど、生んでくれたお母さんに感謝する事が出来る人生だった

  ただ、一つだけ悔いが残る

  あの人に――



4 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:39

彼女がこの町に引っ越してから1ヶ月――
元来の明るい性格と常に見せている笑顔から、クラスメイト達とは
すぐに打ち解ける事が出来た。

彼女の名は光井愛佳。仇名は親しい仲間達からは主にミッツィーと
呼ばれている。(但し、男子生徒からは某有名柔道家に似てる事から
ヤワラ、また、何故か及川と呼ばれている)。

クラスメイト達と談笑している愛佳。その愛佳の背後から背が高い
二人の女生徒が立つ。

「ミッツィー、私、これから部活だから。」

――と愛佳に話しかけたのは須藤茉麻、クラスの母親的存在である。
大人しく面倒見が良いので良くクラスメイト達からは相談される。
(因みに普段は大人しいが男子も含めてクラス一の身体能力を誇る為、
誰も彼女には逆らわない。一般的にママと呼ばれてるが愛佳はまだ、
茉麻ちゃんと呼んでいる)。因みに愛佳に一番最初に話し掛けて来た
のは彼女である色々と愛佳の世話をしている。

「ミッチー、ミッチ草くっちゃ駄目だよ!?」

クラス中を凍りつかせるサブイ駄洒落を言って来たのは徳永千奈美。
彼女も茉麻同様、身体能力は高くバトミントンで県大会3位になった
程である。因みに駄洒落を言って引かせては愛佳にTSUMUJIチョップを
喰らってる。(千奈美・・・・じゃなくて因みに今も喰らっていた)。

『じゃあね』
「頑張ってね!」

二人が教室を出た後、愛佳は帰りの支度を初めた。この時、クラスが
ざわつき始めた。

5 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:39



「ねぇ、愛佳ちゃん。帰ろう?」

――と彼女に声をかけてきたのは夏焼雅、隣のクラスの子である。

「あれ?いたんだー」
「ひっどーい」

愛佳の言葉に笑いながら言い返す雅。
しかし、愛佳がこう言うのも無理が無い事で、彼女はよく芸能活動を
理由に早退している。主にモデルをやっていて、雑誌は勿論、たまに
バラエティにも出ている為、この学校では知らない者はいない。また、
男子生徒達からは憧れの的である。

「あれ、ママとちなは?」

茉麻と千奈美の事で3人は小学校時代からの同級である。

「部活だって」
「そう・・・・」

――と少し寂しげな表情を見せる。彼女は時々、寂しげな表情を見せ、
それが女性の愛佳から見ても驚く程、色気がある。

「私じゃ不満なのかー!?」

雅にヘッドロックを決めながら、TSUMUJIクラッシュ(旋毛をぐりぐり
する技)を決める愛佳。

「ごめーん、まいったまいった!!」

タップする雅。その光景を見た男子生徒達は雅コールとブーイングが
女子生徒達からはミッツィーコールが起き、気づいたら愛佳のクラス
メイト対夏焼雅ファンクラブ(学内限定)の抗争が始まっていた。

6 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:40


じゃれ合いも終わり、帰宅する二人。因みに愛佳のクラスメイトVS
夏焼雅ファンクラブの戦いはまだ教室で続いている。

前日に見たテレビの話、クラスでの出来事、好きなアーチストの話等、
他愛の無い話を雅としていた、すると――。

「雅ちゃん、及川、じゃあね」

――と夏焼雅ファンクラブの一人が声をかけて来た。

「及川じゃない!!」

笑顔で起こりながら追い駆ける愛佳を嘲笑うかのように自転車で逃げる
男子生徒、すると今度は他のクラスメイト達が――。

「じゃあね。雅ちゃん、ヤワラちゃん」

――さっきのクラスメイトに便乗して同じような行動を起こす。愛佳も
全力で追い駆けるが相手が自転車である為、追いつかない。

「ちょっと笑ってないで少しは加勢してよ!!」
「クスクス・・・・ごめんごめん」

この光景を見て笑ってる雅に対して怒り出す愛佳、そして、謝る雅――。
しかし、内心では男子生徒達にこそ好かれてるが女生徒達からは嫌われ
ている雅にとっては女生徒達から好かれ、男子生徒達からも親しまれて
いる愛佳の事が物凄く羨ましかった。

7 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:40



校門近くにある校庭の前にて、額に汗を流しグラウンドを走る千奈美の
姿があった。愛佳と雅の姿に気づいたか、軽く手を振り通り過ぎる。
その千奈美に対して、満面な笑みで手を振る雅といつも通りに手を振る
愛佳。二人は千奈美が通り過ぎるのを見て、再び、歩き始める。

雅への男子生徒達から浴びせられる視線は校門を出てからも変わらない。
それどころか他校の生徒達からの視線も加わり、ナンパまでされる始末。
そんな困難を掻い潜り、何とか家の近くの公園まで辿り着く。

「あ、この公園を突っ切ると駅から近いから――」

――と愛佳が公園に入ろうとした時、雅が立ち止まる。どうしたのかと
入り口付近を見ると痴漢注意の看板が立てかけられていた。

「ねぇ、ミッツィー。あっちから行かない?」

本来は遠回りである事と人目が付き易いっと言う事で雅の言う大通りの
方には行きたくはなかった。それに今は昼間である。昼間はこの公園は
比較的に人通りも多く、襲ってくる者は今の所は現れた事がなかった。
だからと言って入り口付近に置かれている看板は雅にとっては見過ごす
事は出来ないんだろうな――としか、その時は考えられなかった愛佳は
雅の提案を呑む事にした。

8 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:45


何とか駅に辿り着き、電車に乗った二人は自分が住んでいる駅で降りる。

「ん?」

突然、立ち止まり後ろを振り向いた愛佳。その様子を見て不安気な表情
で愛佳を見る雅。

「どうしたの・・・・?」
「いや、何でも無い」
「・・・・脅かさないでよ――。」

少し安堵感を見せる雅、二人は前を向き、再び歩き始める。
しばらく歩き、また立ち止まり後ろに振り向く。

「ね、ねぇ・・・・脅か――。」

この時、愛佳達の後ろに怪しげな男が紙袋を持って立っていた。

「・・・・ま、待て!!あ、怪しい者では無い」
「別に何も言ってないじゃないんですが・・・・」

必死に言い訳をしようとする男に愛佳は無表情で応える。慌てた男は、
この場をどう流れるかを考えていると手に持つ紙袋を落としてしまい、
そこから雅の隠し撮り写真やグッズが零れ落ちてしまった。

9 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:46


完全にテンパってしまった男は、膝から崩れ落ち項垂れる。

「どうする?」

雅に聞く愛佳。しかし、愛佳の問い掛けには何も答えず、男が落とした
写真を拾い、男の前に立つ。

「・・・・これ落としましたよ」
『え?』

自分の隠し撮りである写真を拾い上げ、男に渡そうとした雅に対して、
男だけでなく愛佳も驚いた表情をした。

「ちょ、ちょっとみやーん・・・・」

愛佳が何かを言おうとするのを制して、男の紙袋の中に入れた。

「・・・・いつも応援してくれてありがとうございます。私の事を思って
 くれる気持ちは嬉しいんですが、私は一応、芸能界にいる身であり、
 一人だけにこう言う行為を許す訳には行きません。この写真について
 は見なかった事にしますので今後はやらないようにして下さい。
 お願いします――」

――と相手の手を取り、紙袋を握らせる雅。好きな娘に手を握られた
男は顔を真っ赤にし、ボー然とする。一方、愛佳の方は唖然としていた。

10 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:46

その場から立ち去った二人はしばらく無言の状態が続いた。雅はいつも
通りであったが愛佳の方が完全に萎縮していた。

「よく手を握る事が出来たね」

先に口を開いたのは愛佳の方であった。さっき雅がやった行為は自分には
いや、普通の女の子には信じられない行動であった。

「何で?」
「だって、自分を付回していた、あの・・・・その何て言ったっけ・・・・・
 えっと・・・・そう、スニーカー!!」
「クス・・・・ストーカー!ちなじゃないんだから――」

――と笑い始める。雅の笑い顔に緊張が解けたのか愛佳もいつもの表情に
戻った。

「そう、それ。自分のプライベート写真を勝手に撮っていた奴に対して
 良くあんな優しい態度を取れるな――って思って?」
「プライベート写真・・・・か。そんなに珍しい事じゃないよ」

少し興奮気味に話す愛佳に対して、雅は涼しげな表情で答える。

「けどさ・・・・みやーんの後をつけていた人だよ?」

男を庇う雅に対して、少し苛立ちを持ち始めたのか語気を少し荒くなり
始める愛佳であった――。

11 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 05:47




  ・・・・あぁ言う人の大半ってさ、自分を表現するのが下手でいつも
  周りから色眼鏡で見られてきた人なのよね――

  あの人が実際はどうか知らないけど、多分、そうだと思う

  もしあの人がその気だったら愛佳ちゃんに問い詰められた時に逆上
  して襲い掛かっていたと思う
 
  だけど、そうはしなかった――
  きっと悪い人じゃないのよ

  ううん、あの人の行為が良いとは思わない。思わないよ?
  けどね、私は信じたい。
  あの人が実は良い人だって事を――。
  
  何で?
  決まってるじゃない。
  私を応援してくれてる人なんだから。


12 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/05/28(月) 06:14



「――なーんてね」
少し照れた表情を見せる雅に対して、少しキレ気味だった恵比須顔の
愛佳も本物の恵比寿様のような表情をして雅の顔をじっと見ていた。

「な、なによ」
「みやーんって良い人だね」
「ちょ・・・・止めてぇ、恥ずかしいから」
愛佳の言葉に酔っ払ったサラリーマンのように顔を真っ赤にする雅。
そんな雅に対して、意味深な表情をする愛佳。

「もう照れてるくせに〜」
「もーぉー!」
手に持つバッグを愛佳の肩に数回叩く。"イタイイタイ"と言いつつも
痛さを微塵も感じさせない表情をする愛佳。このじゃれ合いは駅に辿り
着くまで続いた――。

13 名前:失意の作者 投稿日:2007/05/28(月) 06:16
第1話の途中ですが、ここで一旦は終了とさせて頂きます。
14 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:10


愛佳が近道としてよく使う公園の側で、トボトボと帰る男の姿があった。
彼は俯き何かを呟きながら、歩いていた――。


15 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:10


  ずっといじけていた――このルックスにこの体型
  生きてきた中で苛められなかった事などなかった
  男からは苛められ、女からは汚がられ・・・・
  優しい言葉なんか誰もかけてくれなかった
 
  そんな中、テレビのアイドルの姿を見て俺を慰めてくれた
  彼女はいつも俺を慰めてくれた
  いつしか俺と彼女は俺の心――つまり妄想の中での恋人となっていた
  ささやかながら幸せな日々は続いた

  俺は彼女に関わるイベントがある度に彼女の元へ向かった。
  付き合ってくれなくても良い、特別な存在で無くても良い
  単にファンの一人でも良い、彼女を応援できる事が幸せだった

  けど、アイツに出会ってから彼女の本性を知った
  俺は許せなかった――俺に対してだけじゃなく、俺ら全てのファンに対して
  彼女の本心を知った時は。
  この時、知った――彼女も所詮、あいつらと同じ人種だって事を――
 

16 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:11



  それから昔、俺を苛めていたヤツや馬鹿にしたヤツ全てに対して
  アイツの力を借りて復讐を続けた

  そんな時、あの子の存在を知った――とても気になる存在とだった
  俺は瞬間的だが、再び平穏な心を取り戻した。 
  そんな時、あの子がどんな子かを知りたくなった・・・・もし、自分の理想とする
  性格なら彼女をこれまで以上に応援し続けようと。

  俺はヤツに力を借りようとした。けど、ヤツは力を貸してくれなかった
  だから、あの子を知ろうとして尾行をした

  普通だった――いや、俺の感覚で言う普通だから普通では無いのだろう
  汚らわしいところなど何一つも無い女の子だった    
  俺は益々、彼女の本心を知りたくなり、ヤツに力を貸してもらえないか
  もう一度、頼んだが振り向いたのはヤツじゃなく、彼女だった。

  彼女は俺に・・・・俺なんかに手を差し出してくれた。
  そんな彼女に対して俺はずっと――。


17 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:11


ふと気づく――いつの間にかに自分の知らない場所に辿り着いていた事を。
この辺に住んで10年近く立つ男にこの辺りでは自分が知らない場所等は
なかった。

・・・・どこだ?ここ

『ここに来ては駄目』
辺りを見渡す男――この時、男の背後から声が聞こえる。

「ん?」
振り返るとこの辺りでは見た事が無い制服を纏った少女が立っていた。
年は雅と同じぐらいであろう。

『・・・・早く逃げて!』

  逃げる?・・・・何から逃げるんだ?

男は少女が何を意味して逃げろと言ってるのかは分からなかったが少女の表情
からとてもふざけて言っているようには見えなかった。

「・・・・何だか分からないけど、そうするよ」
『早く!』
「はいはい――」
男がすぐにその場から立ち去ろうとした時、突如、地が裂け、割れ目から炎が
湧き出て男の周りを囲む。

「・・・・ま、マジかよ――」
『・・・・大丈夫、今、逃げ道を作るから――』
「え?」
少女は意識を手に集中させ、地に手をあてると徐々に火の力が弱まって行き、
やがては完全に火を消え去った。

18 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:12


「す・・・すげぇ。」
彼女の力に驚嘆する男――その彼女はと言うと肩膝をつき、辛そうな表情を
している。

「だ、大丈夫?」
『まだよ!早く逃げて』
「え、でも火は消え去った訳だし・・・・」
『核を消した訳じゃない!!』
「だったら、尚更、君も一緒に逃げ――」
『私は大丈夫だから、早く逃げて!!』
少女の声に圧倒される男、そして、男は少女の言う通りに逃げ出そうとした
時であった。

(もう遅い!!)
地から聞こえてきた声、その声の主の方へ視線を向ける・・・・が誰もいない。
  
  空耳か・・・・

(空耳などでは無い!!)
「何?」
もう一度、その声の主の方へ視線を向ける。初めは姿が無かった箇所から、
徐々に姿、形が形成され、明確な物と変わってくる。

  まずい!!

男は女の子を手を取り、逃げ出そうとした。
しかし、彼女はその手を振り払い、禍々しい謎の生物の方へ。
「な、何をしようと・・・・」
『私の事より早く逃げて!!』
「そ、そんな事は出来・・・・」
『早く!!』
この時、彼女を助けると言う気持ちより自己保身の気持ちの方が完全に男の
心の中を支配してしまった。

「ご、ごめん!!」
男は自分の行為を情けなく思いながらもその場から逃げ出した――今度こそ
絶対に変わろうと言う誓いをたてて。

19 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:12


その場から逃げ出す男を見ながら、優しい目で笑みを浮かべる少女。

(おかしいだろうな。大の男が女の子に庇われながら逃げ出すんだから)
「おかしくないわ。だって、私だってこの体じゃなければ逃げ出したもん」

少女が手をかざすと空間から光に包まれた剣が現れ、少女の手に吸い付かれる
ようにゆっくりと少女の手元へ――手元に来た剣を握ると目付きが変わる。

「・・・・行くわよ。もう私みたいな人は作りたく無いから――」
(お前みたいな人物を作ったのは人間だ。私は人間の持つ本能に少し手助け
 しただけだ)
「人は誰でも僅かな欲望や卑しい心を持つ者。だけど、ほとんどの人はその
 欲望と戦いながら、生きている。そんな人間に・・・・」
(健気?おかしな事を言うな。皆、私の力を喜んで借りたヤツ――)
謎の生物が全てを言い終える前に少女は謎の生物に襲い掛かった。

(クックックック・・・・人の台詞を全て言い終える前に襲い掛かるとは卑怯では
 無いか)
「・・・・別になんと言われようが、あなたを倒せるなら構わないわ。」
一旦、離れて間合いを取る少女。謎の生物の方は少女の方へ振り向くだけで
何もしようとはしない。

  ・・・・くっ、隙が無い――
  圧倒的な霊力の差、まるで鎧を纏った兵士のように固い体・・・・


  どうすれば倒せる――

  どうすれば――――

  どうすれば――


20 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:13


(ふっ・・・・その程度の霊力で私を倒せると思ったのか――)

少女の攻撃など全く意ともしてない謎の物体に対して、少女は既に着用を
してる衣服がボロボロとなっていた。

『思ってないわよ・・・・けど、もう誰にも傷つけさせない!!』
(あの事件は俺の所為じゃないぜ?)
『うるさい!!』
少女が持てる限りの力を振り絞り、生物に向けて振り抜く――
しかし、無常にも意とも簡単に剣を弾かれると光輝いていた剣は光を失い
やがては消滅した。

自らが持つ唯一の武器を失い、成す術を失った少女には立ち上がる力さえも
失っていた。

(さて、そろそろこの世から失って貰おうか・・・・)
『――好きにすれば・・・・』
既に覚悟を決めた少女は目を瞑り、手を合わせた。

「止めろ!!」
謎の生物の前に立ち塞がったのは先ほどの男であった。

『な、何で戻ってきたのよ!!』
「・・・・君と会う前に女の子に生まれて初めて優しくされた。
 その子に会ってから自分の生き方に対して悔いてきた。」
『それは――』
少女が謎の生物の所為じゃないと言おうとしたが、全てを言い終える前に
男は首を横に振った。

「こいつの所為じゃない。俺は自分の意思でこいつの力を借りてた。
 そんな俺がのうのうと生きて、君みたいな純粋な子が死ぬなんて不条理だ。
 さぁ、俺の体をくれてやる!だから、この子を救ってやってくれ!!」
(あぁ、良いとも。俺の狙いは霊では無く、浮世の者だけだからな!)

『や、止めて!!』
(フハハハ、もう遅い!!)


――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
――――

21 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/06(水) 08:14


駅前の喫茶店で食事を終えた後、雅が駅の改札に定期を通そうとした時、
愛佳が立ち止まり、ポケットと言うポケット全てに手を入れ始めた。

「どうしたの?」
「あかーん、定期落としたかもしれーん」
「えー!何時まであったの?」
「うーん・・・・思い出せん。ごめん、先に帰ってて」
「あ、みっつぃー!私も・・・・」

私も付き合う――と言う言葉を言う間も無く、愛佳はさっさとその場から
姿を消した。

22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/10(日) 00:19
お、なんか面白そう
続き楽しみにしてます
23 名前:失意の作家 投稿日:2007/06/17(日) 18:09
>>22
レスをありがとうございます。とても励みになります。

途中までですがアップ出来るところまでアップします。
24 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:10



謎の生命体は男の体を乗っ取り、その場から去って行った。
彼女はその姿を見ながらも何も出来ないでいた――
いや、助けたくても体を動かす事が出来なかった。

闇は明けるといつから居たのかは分からないがいつも通りに子供達が
賑わっている平穏な公園に戻ってる

そんな公園にある木陰の下で少女は木によっかかり、子供達が笑顔で
遊んでいる光景を眺めている。

彼女の体力の限界はとうに越していた。
意識は薄らいでいき、呼吸もままならない状態である。
来ていた衣服は無論、体中も傷だらけで目も虚ろになって来ている。

  体中が痛み出して来た――こんな経験・・・・二度目か
  不思議なもんね・・・・こんな状態でも体が痛むなんて――

木に伝いながら立ち上がり、一歩、また一歩と歩を進め、男の・・・・いや、
謎の生命体の後を追った――
25 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:10



  自分が何者かはすぐに気づいた――目の前に自分の姿が見えたから
  泣き崩れる女性の前で私がお腹を押さえて倒れていた
  
  死んだんだ・・・・
  
  不思議と冷静でいられた
  ただ、何か胸に痞えた感がずっとしていた

  しばらくして、肉体を失った代わりに特殊な力を身につけた事に気づいた

  初めはこんな事が出来ても・・・・って思っていたけど、目に見えてなかった
  世界では魑魅魍魎に満ち溢れている事を知った
  そして、あそこで起きた事件の大半が幾つかの妖魔に魅入られた人間の手に
  よって起こされた事も――
  
  そして、妖魔に取り付かれた人間がまた一人――
  あの人は私を助ける為に自ら妖魔に取り付かれた
  私の所為だ・・・・私の失態だ・・・・だから、何としても彼だけは私の手で――

     
26 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:10

ようやく辿り着いた男の住処――どこにでもある薄汚いアパート。
ここに男と共に妖魔もいる筈である。
妖魔の霊気を感じ、彼女はまだ取りついている事を確信する。
  
  行くか・・・・  

覚悟を決めて、足を前に踏み出そうとした時だった。

「くっ!」

しかめる顔、
体中につけられた傷の痛みが彼女を襲い前に踏み出す事を阻止する。

体は拒絶した――妖魔と戦う事を。
体は分かっていた――今の自分ではあの妖魔に勝てない事を。
身の危険を知らせる為に痛みとなって、彼女を救おうとした。
  
しかし、彼女は拒絶する体に逆らい、助かる道より消滅する道を選んだ。

27 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:11


公園付近にあるアパートの一角――男はここを住処としている。
そこで男、いや、男の体を乗っ取った妖魔は久しぶりの人間生活を
堪能していた。

(やはり良いな――生の体は)

久しぶりに乗っ取った体を堪能しながら、男が撮り貯めたアイドルの隠し
撮りや3流ゴシップ誌の切り抜き等を見てにやついている。

(流石、私が見込んだ男だ。趣味が良い・・・・)

しかし、並べられている写真や切抜きはとても一般の感覚では趣味が良い
物とは言えなかった。一通り見た後、雅の写真や切抜きだけを集め眺める。

(この胸の高鳴り・・・・いつ以来であろう――)

雅の写真をマジマジと見ながら、不適な笑みを浮かべる男の体を借りた妖魔。

(美しく心優しき少女――ずっと、このような少女の出現を待っていた。
 まさに我が理想の少女・・・・この少女に私はどのような悲劇を与えようか――)

思い立つ限りのシナリオを描く妖魔――それは人と言う者であるならば、
誰もが思いつかないような代物であった――。

(心優しき美女の泣き叫ぶ姿――それこそが我にとって至福の瞬間・・・・)

あれこれと頭の中に思い描いては、自ら作り上げるシナリオに酔いしれる妖魔。
そんな時であった――

「折角、作り上げたシナリオも妄想止まりね!」

剣を手に持つ少女が妖魔の前に再び現れた――。

28 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:11



妖魔と少女が再び、戦おうとしてる頃、雅は――


29 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:12


「みっつぃ・・・・置いてくなんて酷いよ・・・・」

流石に自分が妖魔に狙われてるなんて考えても無く、
ただ、愛佳に置いてきぼりにされた事に対して落ち込み、トボトボと
改札機の方へ戻って行た。
彼女は鞄から定期を取り出し、改札機を通そうとしたがそこで雅の足が
止まった。

  ・・・・なんか詰まんない――久しぶりに寄り道しちゃうか

彼女は定期を再び鞄にしまい、地上に出る階段へと向かって行った。

30 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:12

朝比奈町――ここは愛佳達が住む町である。
彼女等は"朝比奈"駅で下車し、そこから地下鉄・宝郷線に乗り換えて
"朝比奈3丁目前"駅で降りている。

"朝比奈"駅から"朝比奈3丁目前"駅は歩いて10分・・・・と決して歩けない
距離では無い――むしろ定期代が無駄である。しかし、雅にはそうせざる
得ない理由があった。

"朝比奈"駅から彼女が住むマンションに向かう途中に大きな商店街がある
のだが、彼女がそこを通ると必ず大騒ぎになるので彼女は店に迷惑を
かけないように家から最寄の駅である"朝比奈3丁目前"駅を使っていた。

・・・・が久しぶりの休みである。このまま、帰るのも忍びない。

「・・・・よし、決めた!」

この日だけは迷惑をかけるかも知れないが敢えて商店街を通る事にした。

31 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:12

久しぶりの商店街。
時刻は夕方と言う事もあり、この日の夕飯を調達しに来た主婦達により
賑わっていた。

雅が通るが皆、買い物に夢中になっているか気づいても彼女を気遣って
声をかけたりはして来なかった。

  久しぶりにゆっくりと出来る――

胸を撫で下ろし、周りに何があるかを見ながら歩く雅。
ふと目に入る

  そう言えば、あの子と初めて会ったのもここだったっけ――。
  今、あの子は何をやってんだろう・・・・。
  
ふと、旧友の事を頭に浮かべながらも色々な店を見てまわっていた。

32 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:13



一方、愛佳はと言うと――


33 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:14


「え・・・・と――」

さっき男を見つけ出した所に愛佳はいた――
そして、この時、彼女は目を瞑りながら腕を組み、考え事をしているようで
あった。

「あっちだ!」

この声と共に目を開き、彼女が歩き始める。その光景に通りがかる人達は
怪しげな目で見る物のそんな事などは気にもせず、同様の行為を何度か繰り
返している。

しばらくし、辿り着いたところは男が住んでいる薄汚いアパートであった。
このアパートを見て、愕然とする愛佳。

「・・・・何か、如何にもって感じで逆にがっかりだわ〜――
 何か、実は金持ちだったとか・・・・ん?何だこりゃ・・・・」

この時、愛佳には何か違和感が感じられた。

  何で妖魔以外の霊気が・・・・ま、良いか

首を捻りながらも男が住むアパートへ入って行った。

34 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:14


男の部屋を開ける。

「わお!」

そこには着用していた服がビリビリに破れ、既に下着が少し見えそうに
なってる剣を手に持つ少女と雅の追っかけと言う名を借りたストーカーが
対峙していた。

  うわぁ、背高っ!
  髪も長いし、眼も大きい!! 
  むっちゃ可愛いくてスタイルも良くて・・・・モデルか何かかな――

愛佳は男の方を見た。長い髪を揺らしながら戦う気持ち悪い男に美少女・・・・
何か危ない何かを見ている気分になっている愛佳の姿がそこにあった。

  って、変な気分になってる場合じゃないわ〜助けなくちゃ・・・・
  え・・・・っと、そうそう、先ずは情報収集、情報収集――

愛佳は男が持っていた紙袋に左手を当て、右手の人差し指と中指を額に当てると
何かと呟きながら目を瞑った――

35 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:14


ポケットに手を突っ込み、俯きながら歩く男の姿が浮かんできた

  ぇ・・・・と、へぇ――マジで反省したんだ。少し見直したな・・・・
  じゃあ、何で今、あの子を襲ってるんだ?
  部屋中にはみやーんの写真ばかりだし・・・・

男と対峙している少女が男に立ち塞がり、戻るように忠告している場面になる

  ふーん。あの子って霊だったんだ――なるほどねぇ・・・・
  それにしては・・・・ちょっと、生気が強いけど・・・最近、死んだのかな?

しばし、男に何かを説得している少女。そして、男が引き返そうとした時、
突如、地が割れ始め、地面と地面の間から火が噴出す場面になる。

  オォ!!

少女が地に手を当て、火を消し止める場面に対してである。

  やる〜霊になって間もないのに既にここまでやり遂げるなんて・・・・ん?

そして、割れた地から禍々しい体をした生物・・・・つまりは妖魔が現れ――

36 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:15


「うわ〜・・・・醜っ(みにく)!!
 ありゃ、元々は人が作り出した残留思念の集合体が妖魔となって霊に取り付いて
 具現化したケースね。世間で言う悪霊?
 そう言った類の良い例だね・・・・良いレイ?良いレイって――」

少女と妖魔が真剣に戦っている最中に大笑いを始める愛佳。
そして、この声に動きが止まる二人。

(・・・・ん?どこから入ってきた――この虫ケ・・・・)

「キャハハハハ〜〜悪霊なのに良いレイですって!!
 可笑しくないですか〜ちょう受けるんですけど・・・・・!!!!」

  何、この子・・・・

(・・・・何だこいつ――)

千奈美クラスの下らないダジャレで愛佳が大爆笑している中、出会ってから
ずっと敵対していた少女と妖魔が初めて意見があった記念すべき瞬間であった――

37 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:15

愛佳が笑っている瞬間、ずっと妖魔と少女は彼女の方を何か珍しい生物を見る
ような眼差しで眺めつつ、彼女が笑い止むのを待っている。

「・・・・ハハハハ――ふぁ・・・・失礼、どうぞ、続けてください」

周りの寒い雰囲気に気づいたのか、愛佳は気まずそうな表所をしながらも部屋の
端へ――。

(邪魔が入っ・・・・)
「クックック・・・・」

再び開戦と言う雰囲気になり妖魔が声を発した時、愛佳の笑いを堪えている声が
聞こえて来る。
危険を回避させる為にも愛佳をこの部屋から出そうと少女が愛佳に話しかける。

「・・・・あ、あのね」
「はい」
「私達、今、戦ってるの」
「はい、見れば分かりますよ!?」

だったら、早く出て行けよ――と内心では思いながらも精一杯、優しい口調で
再び愛佳に話しかけようとする少女。

「こんなところにいると危ないでしょ?だから、この部屋から――」

妖魔は少女の行為にまどろっこしさを感じたのか邪魔ならば消してしまえ――と
ばかりに指からビームのような光線状のものを愛佳に向けて放った。

「危ない!!」

愛佳を救うために突き飛ばすも自分はかわしきれず、光線は少女の肩口を貫いた――。

38 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:15


「うわぁぁぁあああああ!!!!!!!」

傷口を押さえ、蹲る少女。その光景を見て、不適な笑みを浮かべる妖魔。
自分の所為で苦しんでいる少女を見て、流石の愛佳も慌てる素振りを見せる。

「ご・・・ごめんなさい、大丈夫ですか?」
(この痛みようを見て、大丈夫と聞くとは随分、おめでたいヤツだな)

確かに妖魔の言う通り、この痛み具合を見て大丈夫だと思う者などは居ないし、
そう言う言葉を発した愛佳でさえもマズイと思っての言葉であった。

(ハッハッハッハ、だがお前には感謝するよ。お陰で邪魔なハエを楽に退治
 する事が出来たのだからな。次はお前の番だ)

ゆっくりと妖魔が愛佳に向かって近づいてくる。
この時、愛佳は手を挙げ、大きく指を鳴らした――

39 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/06/17(日) 18:16


愛佳にじわりじわりと近づく妖魔――その妖魔に対して、いつもの恵比寿顔は
見せずに妖魔を睨み付ける愛佳。

(ほう、大した度胸だ。だが、それもここまでだ)
「それはこっちの台詞ですよ」

少し訛りの入った言葉で言い返す愛佳。その言葉に少し笑いが漏れる妖魔。
一歩、また一歩、ビデオのスローモーションで見てるような速さで近づく妖魔。
心理的重圧を愛佳に与えようとしたのだろう。

しかし、挑発的な笑みを見せる愛佳。妖魔にはその笑顔が気に食わない。

(ふん、生意気な小娘め!)

力一杯、愛佳の腕を掴んだ妖魔。しかし、愛佳はその手を振り払おうとする所か
満面な笑みを見せて、妖魔の顔をじっと見る。

「あ〜」
(どうした?)
「いいえ、何でも。そんな事より私の体から離れた方が身の為だと思うんですけど〜」
(ふん、強がりもここまでだ)

力の限り握り、愛佳の腕を握り潰そうとした。
しかし、潰れる所か幾ら力を入れても愛佳の表情を変える事さえ出来ない。
そうこうしているうちに、少女が立ち上がった――

40 名前:失意の作者 投稿日:2007/06/17(日) 18:39
話の途中ですが今日はここまでとさせていただきます。
後、すみませんが早速、訂正があります。

>>31
8行目(空白行を除く)

×:ふと目に入る
〇:ふと昔、良く通っていた本屋が目に入る

後、2回、駅に辿り着いてますがそれは今回の話にあるよう
学校の最寄駅と地下鉄への乗り換える駅って言う事で・・・・。
そう言った部分に関してもごめんなさい。

以後、こう言う事のないように気をつけます・・・・。
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/18(月) 22:25
雅ちゃんの選択がどう出るか
みっつぃは何を隠し持ってるのか楽しみにしてます
42 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/07/10(火) 05:43


(ほう――大した物だ)

若干、感心した様子を見せる妖魔だが、ある程度は想定内であったの
だろう――驚いた様子ではなかった。

「――その手を放すんだ・・・・」

先程までとは違い、低い声で妖魔に返答する少女――
悲壮感こそは漂わせている物の彼女の目には迷いが無くなっていた。

(あれをまともに受けて立ちあがるか・・・・)

立ち上がった少女の姿を見た後、妖魔は一瞬、愛佳の顔を一瞥すると
握っていた腕を放すや視点を少女の方へ移した。

(どうやら、お前の事を少し見くびりすぎていた様だな)
「・・・・」

妖魔の言葉に何も言わず、ただ、黙って睨み付けるだけの少女。

(そろそろ、本気を出そう――)

そう言うと服を脱ぎ捨てるかの如く、男の体を抜け出した妖魔は元の
禍々しい姿を現した。一方、男は意識がなかった為、糸の切れた操り
人形の如く崩れ落ちた。

43 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/07/10(火) 05:43



  賭けだった――
  これ以上、戦っても勝ち目がない事は分っていた
  ならば、せめてあの人と彼女だけでも・・・・

重苦しい雰囲気の中、少しづつ間合いを詰めていく両者――
じっと相手の動きを見る少女に対し、妖魔の視線は愛佳の方へ向いて
いる。視線が自分の方には向いてない――妖魔にとって、少女は然程、
気をつける相手では無いと見られてる事になる。

  眼中に無い・・・・か

命を賭けた戦いをしてる少女にとっては屈辱な行為である・・・・が今の
少女にとってはもはやどうでも良い事――相手を倒せれば・・・・いや、
倒せなくても二人を助ける事が出来ればどうでも良かった。

  後はどうやって相手に・・・・

ゴクリと飲み込む唾の音でさえも部屋中に響き渡る感じの静けさ――
そんな中、相手に自分の狙いを読まれては行けないと必死で平静さを
保つ少女――頬の動き、足音、全てに気を使いながら妖魔との間合い。
を詰めて行く。

  彼女や彼との距離は大丈夫・・・・

少し踏み込めば、妖魔の懐に潜り込める所まで間合いを詰めた瞬間で
あった――。

44 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/07/10(火) 05:44


(心中狙いか――)

妖魔の口から出た一言――正に少女の狙いであった。しかし、狙いが
当てられたにも関わらず、少女は全く表情を変わらない。

(さっきから目がキョロキョロと動いてるな――
 この部屋からこの男やガキの姿でも探してるようだが?
 気になるか?)

妖魔の言葉にも少女は、全く反応を変えない。それどころか、益々、
落ち着きが感じられる。

  心中狙いの場合は注意すべき事
  それは相手を倒すまでに自らが死なない事
  どのような手段を取るかを悟られない事
  そして――

霊にとっての死、つまりは消滅の道を選んだ彼女にとって今、一番、
怖い事はただ一つだけ――。

45 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/07/10(火) 05:46


(だんまりを決めるか――だが、こうするとどうかな?)

  ・・・・、来る!

怖いのは人質、つまりは妖魔に生身の人間の体を乗っ取られる事――。
何を目的での心中かと言うと、一つには妖魔を倒す事、そして、二人を
無事に助け出す事である。

よって、少女にとっては一番、恐れてる事は再び憑依される事が何よりも
恐れてる事であり、注意すべき事であった。

選択肢は二択――男か愛佳か。
男は気を失ってる分、動ける愛佳よりも憑依し易い。一方、相手は当然、
少女が男に取り憑く事を狙ってる事は予測してると考えてる筈。意表を
付き、愛佳に取り憑く事も考慮に入れなくてはならない。

  前者は物理的に護れば良い。
  問題は後者である――
  相手はどのようにして私に対し意表をつこうとして来るか・・・・

相手の動きを観察する。妖魔の視線が男の方へ向けられ、足が男の方へ
踏み出す瞬間、少女は男の前に向かった――。
46 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/07/10(火) 05:47


  一応、計算の中に入れておいて良かった・・・・

男の下に辿り着く直前に妖魔の前に立ちはだかる少女――
しかし、次の瞬間、妖魔の姿が消えた。

「な・・・・」
(どこに向かって居る)

声が少女の下に辿り着いた時には既に妖魔は愛佳を捕らえ、男の体を
乗っ取った時のように包み込もうとしていた。

  し・・・・しまった!!

「逃げて!!」

油断しきっていたのか、それとも何をやって来ても対応できると思って
いたのか妖魔が愛佳の方へ向って来ても逃げる素振りも見せず、少女の
悲痛な叫びもむなしく、愛佳の体は妖魔に包まれていった――。

47 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/10(月) 22:38
ハラハラさせるところで途切れてるじゃないですか
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/12(水) 21:33
期待して待ってるで
49 名前:失意の作者 投稿日:2007/12/25(火) 06:27
長らく放置した事をお詫びします。

>>47-48
レスをありがとうございます。

出来た時にこのレスが無いと言う状態は避けたいので、まだ、完成してませんが
1、2レス分、予告の意味も込めて、更新したいと思います。
50 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/12/25(火) 06:33


愛佳を取り囲んだ妖魔が体を奪い取るまでそうは時間がかからなかった。
愛佳の体を憑依した妖魔は何か驚いた様子を見せている。
何かを叫ぶ妖魔だが、少女にはその内容がどうあれどうでも良かった。

  ―――ここまで・・・・か

少女は目に溜めた涙を零すまいと天を仰ぎ、大きく息を吐き出す。
愛佳が何者かは分からない。だが、喜んでる姿から妖魔にとっては
使い慣れた男の体を捨ててまで愛佳を選ぶ価値があった事は分かる。

愛佳が何者かは今の少女にとってはどうでも良かった。
自分の消滅もどうでも良かった。
ただ、二人を救う事が出来ない事だけが心残りで成らなかった――――

気付いたら乾いていた涙――――
愛佳の方へ視線を移すと既に不適な笑みを浮かべつつ、掌を翳し、何時でも
仕掛けられる体勢を取っていた。

(よく頑張った方だ。褒美として、苦痛を感じる間も与えずに消してやろう)

掌に集まる気は徐々に膨大な量となって行き、"さらば"と言う声と共に
少女に向けて放たれた――――。
51 名前:第1話 〜出会い〜 投稿日:2007/12/25(火) 06:42


『ドーン!!』
爆発音のような音が響き渡る。
辺りは塵や埃が宙に舞い、周辺を包み込む。

音と共に目覚める男―――
自分が妖魔に体を乗っ取られた時までの記憶はある。
真っ先に男が気になったのは自分を救いに来た少女であった。

しかし、辺りは塵や埃で見えない。
徐々に人の姿がはっきりとする。
先ず、初めに発見できたのは愛佳の姿であった。

  あいつ、無事だったんだ―――

正直、どうでも良い存在であるが、取り合えずはホッとする様子を見せる男。
すぐ気持ちを切り替え、辺りを見渡すと次に入って来たのは床で蹲っている
制服を着用した女の子の姿であった。

  う、嘘だろ・・・・・!?
 
痛む体に鞭を打ち、男は女の子の下へ這うような形で向かって行った――。

52 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/25(火) 19:32
予告ありがとう
更新待ってます
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/30(木) 00:20
まってます
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/07(金) 01:12
まだまだ待ちます
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/27(水) 17:39
待ってます
56 名前:noa 投稿日:2009/11/22(日) 15:01
一生待ちます

57 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/24(木) 23:59
何となく愛理だとは思ってました(笑)。
ただ、俺だったらここで意表をつき、楠本柊生(第五回ゲキハロの脚本・演出家)辺りを使い、
空気をぶち壊していたでしょう(笑)。
58 名前:57 投稿日:2009/12/25(金) 00:00
すみません、誤爆しました…

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