ごっちんとよっすぃ〜のお話
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/18(火) 03:08
- よしごま作品専用スレです。
よしごま作品は放置が多いので誰でも気軽に書けるようにたてました。
短編からある程度長いものまでよしごまならALLおっけーです。
では、みなさん素敵な作品待ってます。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/19(水) 03:55
- では駄文ですが一つどうぞ。
- 3 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 03:56
-
あ、よしこだ。
- 4 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 03:57
- 人が行き交うのをじっと眺めている吉澤を発見した。
小走りで近づき、声をかける。
「あ、あのさ・・・。・・・・私のこと覚えて・・・る?」
「・・・ああ。ごっちん」
- 5 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 03:59
- ―――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――
「ごっちん」
あの日、私は高校を退学したばかりだった。
何かと問題を起こしていた私は、ついに学校から見放されてしまった。
母親は泣いた。
父親は殴った。
近所の人はケーベツした。
「はぁ〜・・・」
ベンチに腰掛け、深いため息をつく。
- 6 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 03:59
- こういっちゃなんだけど、私中学までは普通にいい子だったんだよね。
受験に失敗して、納得できないまま不本意な高校に通い始めた時から変わっていった。
退学かぁ・・・。こうなったら、もう次は「家出」かなあ。
そんな時だった。
- 7 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:02
- 「ごっちん・・・だよね?」
「あぁ、久しぶりだね。よしこ」
中学時代の友達だった。
「ホントに久しぶりだね・・・」
よしこは頭が良くてスポーツ万能。
文武両道で有名な進学校に合格してからは、勉強や部活で忙しく全然連絡をとっていなかった。
- 8 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:05
- 「学校は?」
「あー、行かなくてもいいの。タバコ見つかって退学になったから―――」
「・・・・・・」
「・・・ごっちん、保育士になるために大学で勉強するんじゃなかったの?・・・これから、どうすんの?」
「別に、どうもしないよ」
そんなことどうだっていいじゃん。
もうあんたたちとは違う道行っちゃってる人間なんだから―――。
梨華ちゃんなんか、昼間フラフラしてる私見て思いっきり目そらしたもんなぁ。
- 9 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:06
- つーわけで、さよなら。
きっと、もう街で会っても声かけないね。
「ごっちん」
吉澤が急に声を発した。
「久しぶりに、うちにご飯食べに来ない?」
- 10 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:08
- 中学のとき、よしこの家によく遊びに行った。
よしこの親は帰りが遅いので、一緒にご飯を食べることが多かった。
よしこの作るご飯は特徴があった。
ハーブが入っているのだ。
出される料理は美味しかったけど、何か分かんない説明が必ずセットだった。
いつも、テキトーな相槌をするだけであまりよく聞いてなかった。
- 11 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:09
- 「ごっちん、何か食べたいモノある?」
「いや、別に――」
「じゃあうちにまかせてね」
またハーブのご飯なんだろうなぁ。
とりあえずついてきたけど、私は料理のことなんかより家出のことばかり考えていた。
やっぱり、もうそれしかないよね。家に私の居場所なんてないし・・・。
貯金いくらあったかな?
- 12 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:11
- 吉澤は手際よく料理を作っている。
開いた窓から入る風が、料理の匂いを運ぶ。
わっ、すごいイイにおい・・・。
「おまたせ」
吉澤が運んできたのは、パスタだった。
すっごいおいしそー。
後藤は、フォークにパスタをからませ口へと運ぶ。
やっぱおいしーや。よしこのご飯。
- 13 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:12
- 「バジリコ・スパゲティ。バジルペーストで作るやつね」
「バジルと言えば、ハーブの王様と言われているけど――」
「・・・・・・」
また始まった。
- 14 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:13
- 「これは、ごっちんに食べてもらいたいと思って作ったんだ」
「あのね、バジルには――」
「?」
「“再生”っていう意味があるんだよ」
「・・・・・・はあ・・・」
後藤は、そのまま黙々と食べ続ける。
「・・・・・・」
次第に顔が歪み、目から涙が溢れだした。
「まだ、終わってなんかないんだよ」
- 15 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:14
- どうやって帰ったかはあまり覚えてない。
あの後、私は家出をしなかったし大検で大学にも行った。
なりたっかった保育士にはまだなれていないけど、バイトをしながら頑張っている。
ただ―――
最近調べたら、バジルに「再生」なんて意味はどこにもないことを知った。
よしこのでたらめだったのだ。
でたらめで、
むしろ嬉しかった。
- 16 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:17
- 「――そう。元気でやってるんだね、ごっちん。よかった」
「私もよかったよ!!あの後すぐ引っ越したって聞いて、もう会えないと思ってた。ここに引っ越してきたんだね。
私も最近一人暮らし始めて、この前ここに来たばっかりなんだ。あっ、おばさんやおじさんは元気?」
「・・・・・・もう、いないんだ」
「え?」
「死んじゃった。昨年」
「・・・・・・」
「何か車で事故っちゃったみたいでさ・・・。二人とも即死だったんだって。
ホントに、思いもしなかったよ。こんな年で一人になるなんてさ・・・。何か、もう・・・・・・」
- 17 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:19
- 「あ、ねえ、お腹空かない?」
暗い雰囲気の中、後藤が重い口を開いた。
「え」
「さっきメニューにあったんだけど――――
バジリコスパ 食べようよ」
吉澤は少し目を見開いている。
「・・・・・・」
後藤はその様子を窺う。
- 18 名前:二人だけの言葉 投稿日:2005/10/19(水) 04:20
- 「・・・うん」
吉澤の顔が歪む。
「うん・・・そうだね。それが必要だね」
―――――バジルには、“再生”って意味があるんだよ―――――
世界で二人にしか分からないことだけどね
fin
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/19(水) 04:21
- 以上。駄文でした。
- 20 名前:はち 投稿日:2005/10/19(水) 07:56
- 感想いいですか?
もうこの二人の雰囲気…サイコーです
そうそう、これこれ!よしごまはこうじゃなくっちゃ、って感じでw
お互いの支えあいがもう大好きです
自分もまた書かせてもらいます
- 21 名前:ひすい 投稿日:2005/10/19(水) 11:07
- おぉ。。。いいっすねぇ。
こうゆうじんわりくるの好きです。
作者さん、また作品楽しみにしてますよ〜
- 22 名前:1 投稿日:2005/10/19(水) 23:57
- 1です
さっそく書いていただきありがとうです
やっぱりよしごまイイ!!
- 23 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:45
-
- 24 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:46
-
授業かったりぃ・・・・・
隣のごっちんの瞼も重そうだし
はぁあ、ヒマだ・・・・・・・
ふーん・・・・・・ごっちん、キレイな顔してんなぁ
- 25 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:46
-
「ごっちーん」
「・・・・・んぁ?なに、よしこ?」
「あっぱれあっぱれ・・・・キスしてごっちん」
「んー、あとでー」
あ、後でならいいんだ
絶対だかんね
- 26 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:47
-
キーンコーンカーンコーン
「よしこー」
「んー?」
「おくじょーいこー」
「りょーかーい」
重い扉を押し開ける
開いてないってことは今日はラッキーディ、貸切だな
はぁ、すんげー開放感
やっぱ屋上はいいなぁ
- 27 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:48
-
あ、そうだキスしてくれるんだっけ?
「ごっちん、ごっちん」
「んぁ?」
「あっぱれあっぱれキスして・・・」
ガッツン!!
- 28 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:48
-
「・・・・・・・・ッぅ」
「こンのバカ犬、ごとーに手ぇだすな!っつの」
「きゃははは!よっすぃどんまーい。
ってかすんげー効果音的なGATOだったな、おいらあんなの初めて聞いたよ」
ごっちんをアタシから遠ざける市井先輩とアタシを指差し笑い続ける矢口先輩
この2人が卒業するまではアタシが恋する女の子だったとしてもビクトリーは遠いなぁ
- 29 名前:Go Girl 〜恋のビクトリー〜 投稿日:2005/11/06(日) 22:48
-
end
- 30 名前:はち 投稿日:2005/11/06(日) 22:49
- これって・・・よしごまって言ってかまいません?w
ってことで書かせてもらいました
- 31 名前:ミッチー 投稿日:2005/11/07(月) 01:13
- 面白かったッス(w
またお願いします。
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/07(月) 03:37
- >>25のセリフどっかで聞き覚えが・・。
ひょっとして作者さん絵とか描かれてます?
- 33 名前:はち 投稿日:2005/11/07(月) 07:42
- >>31さん
ありがとうございます!
さりげにいちごまも意識してみましたw
>>32さん
いえ、描いてませんよ
…ま、まさかこのネタもうありました?(アワワ…)
- 34 名前:一撃必殺 投稿日:2005/11/07(月) 20:32
- 久しぶりに同じ仕事。
”明日は早めに行くように頑張るから、会いに来てね”
昨夜あたしの携帯に届いた、遅刻常習犯さんからのメール。
嬉しくって、早く顔が見たくって、あちらの楽屋に直行決定。
少し眠そうに垂れたあの目があたしを捉えたら、ふにゃりと笑ってくれるかな。
それから、弾んだ声で”よっすぃ〜”って呼んで欲しいな。
コンッコンッ
短いノックを2回。
これがあたしの、あたしたちの合図。
「……」
ありゃりゃ、反応なし。
そうっと、そうっとドアを開けてみると…やっぱり。
スースーと寝息を立ててる、無防備なお姫……えっ、お相撲さん!?
- 35 名前:一撃必殺 投稿日:2005/11/07(月) 20:33
- なぜかお相撲さんの格好で、机につっぷして気持ちよさそうに眠っているごっちん。
その頬を人差し指でツンツン。
「おーい、起っきろー。よしこが来たぞぉ」
「…ん…んぁ?」
まだまだ眠そうに、でも、ゆっくりと開かれた目があたしを捉える。
「…ごっつぁん、デス」
「ごっちぃん!久しぶりに会えたっていうのに、なんで第一声がそれぇ?しかも何だよその格好…」
「んー?これ、なんか今日の衣装みたい」
「つーか、なんでもう着てんだよぉ。まだ全然時間前じゃん」
「よっすぃ来るまでちょこっと寝てよっかなーって思ったんだけどね、なんかここ寒くってさー。ちょーどいいやって、着ちゃった」
- 36 名前:一撃必殺 投稿日:2005/11/07(月) 20:34
- なんていうか、ほら、あたし的にはさ。
"よっすぃ〜!”
ギュー
みたいなやつをだね、期待してたわけですよ。
なのにその格好じゃ、どうにも色気が、雰囲気が…。
まったく、この子の考えることはよくわかんない。
ちょっと呆れつつも、寝乱れたごっちんの前髪を手櫛でサッと整えてあげる優しいあたし。
「…あーがとぉ、よっすぃ〜」
髪の間からちょこんとはみ出してるかわいい耳が赤く染まり、ごっちん必殺のふにゃり笑顔。
不意打ち食らったあたしは、もちろん一撃でノック・アウト。
END
- 37 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/07(月) 20:35
- せっかくのよしごま専用という素敵スレなので、駄文ですが記念投稿させてもらいました。
- 38 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 21:57
-
- 39 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 21:57
- 「お〜い、よしこぉ」
遠く離れたところから、呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと、ごっちんがこっちに向かって走ってきていた。
「どうしたの?ごっちん」
息を切らしているごっちんに声をかける。
「ハァハァ…よ、よしこが見えたからっ…来ちゃった。あはっ」
ふにゃっとした笑顔を見せる。
- 40 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 21:58
- この笑顔がたまらんな〜…。
ハッ、うちオヤジみたいだ。気をつけないと。
「ねぇ、ごっちん」
「んあ?」
「好きだよ」
二人の間を風が通り抜ける。
「ごっちんは?」
「ごとー?ごとーは――――」
- 41 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 21:58
-
- 42 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 21:59
- んっ、眩しい。
カーテンの隙間から入り込む日差しに眉をしかめる。
「――なんだ…夢か」
寝癖を直しながら呟いた。
「ってか“ごっちん”、“よしこ”ってなんだよ…。」
ぶつぶつと言いながら家を出る準備をする。
予定より早く目が覚めたので、少し早めに家を出た。
- 43 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:00
- 「今日は一番かな?」
ワクワクしながら楽屋の扉を開けると、中にはすでに後藤がいた。
「おはようございます、後藤さん」
まだモーニング娘。に入ったばかりなので、同い年の後藤にも敬語を使ってしまう。
- 44 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:01
- 「おはよ」
眠そうに返事を返してくる。
「今日は早いんですね」
「うん、市井ちゃんに早く来いって言われたから。そしたら早く着きすぎちゃった」
あはっ、と笑いかけてくる。
夢で見たものとは違う笑顔。
- 45 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:01
- 「暇だったから吉澤さんが来てくれてうれしいよ」
「そうですか」
たぶんその時、うちはとても幸せそうな顔をしていただろう。
“来てくれてうれしい”と言ってくれて死ぬほど嬉しかった。
まさかそんな事言ってもらえるとは思っていなかったから。
- 46 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:02
- それから色々と話をして、だいぶ仲良くなった。
パラパラと他のメンバーが来たけれど、ずっとうちと話をしてくれた。
本当に幸せだった。
けれど、その幸せはあの人によって簡単に終わりを告げた。
- 47 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:03
- 「おはよー」
その人が入ってきた瞬間、後藤は何の躊躇もなく目の前からいなくなった。
「おはよっ、市井ちゃん!」
あの、うちの大好きなふにゃっとした笑顔で話しかける。
「うっす、今日はちゃんと早く来たんだな」
「うん!えらいでしょ?」
「それが当たり前なの。明日からもちゃんと早く来るんだよ?もう一番下じゃないんだからね」
「わかってるよ〜」
ぶー、っと頬を膨らましている後藤を、市井は穏やかな顔をして見つめている。
- 48 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:05
- さっそく二人の世界かよ。
さっきまでうちと話してたくせに…。
叶わない恋だということは分かっている。
あのふにゃっとした笑顔は、市井さんにしか向けられていないことも。
- 49 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:06
- うちは市井さんのことを尊敬してるし、二人の邪魔をしようなんて思っていない。
ただ…。
もし市井さんがいなかったら―――って思ってしまう。
うちに可能性は全く無いのかな?
- 50 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:07
-
いつか、あの夢が現実になればいいのに…。
こうして、うちの初恋は終わった――――
- 51 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:07
-
かのように思えたが……。
- 52 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:09
- 「ごめーん、待った?」
「いや、うちも今来たとこだよ」
―――あれから色々あって
「ねぇ、ごっちん」
「んあ?」
「好きだよ」
二人の間を風が通り抜ける。
- 53 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:09
- 「ごっちんは?」
「ごとー?ごとーは―――」
「もちろん、だーいすきっ」
あの、ふにゃっとした笑顔をうちだけに見せる。
―――うちはあの日の夢の続きを見ることができた。
- 54 名前:夢 投稿日:2005/11/10(木) 22:13
-
最高に幸せだ!!!
fin
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/10(木) 22:18
- 以上。駄文でした。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:07
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 57 名前:好きな人 投稿日:2005/12/16(金) 23:43
-
「よっすぃってさぁ、好きな人いるでしょ」
楽屋で雑誌をペラペラ捲ってたら矢口さんが聞いてきた。
私は黙ったままだった。
無視してたわけじゃない。考えてたんだ。
『好き』って言葉の意味を。
『好き』って何だろう。私は皆の事が好きだ。
飯田さんだって好きだし、梨華ちゃんだって好きだし、
紺野だってガキさんだって亀井だってミキティだってもちろん矢口さんだってみんなみんな好きだ。
矢口さんの言ってる『好き』ってどんな意味なんだろう。
雑誌をペラペラ捲りながら考えてた。
「黙ってるって事はいるんだ?」
矢口さんは勝手に答えを出してしまったみたい。
チョット待ってよ、考えてるんだ、矢口さん。勝手に答えを出さないで。
「そっかそっか」
矢口さんは一人で勝手にウンウン頷いて楽屋を出て行ってしまった。
私は捲っていた雑誌を閉じて机の上に放った。
- 58 名前:好きな人 投稿日:2005/12/16(金) 23:44
-
矢口さんは何が聞きたかったのだろうか。
好きってなんだろう。私は目を閉じて考えてた。
でも分からなかった。分かりたくなかったのかも。
私は携帯を開いてごっちんにメールを送った。
『好きって何だろう』
しばらくして携帯がブルった。ごっちんから返事だった。
『ごとーはよしこのこと好きだよ』
なんだよ、ソレ。
答えになってないじゃないか。
でも私は頭の中の靄が晴れたような気がした。
だからごっちんにメールを送った。
『ウチも、ごっちんの事好きだよ』
メールを送って携帯を閉じると矢口さんが戻ってきた。
私は矢口さんに言った。
「私は、みんなの事が好きですよ」
矢口さんは顔を上げて言った。
「そっか。じゃあ矢口の事も好きなんだね」
私が頷くと矢口さんは笑った。
笑って小さく呟いた。
「アリガト」
- 59 名前:好きな人 投稿日:2005/12/16(金) 23:46
-
私の胸がチクリと痛んだ。
何で痛かったのかは分からない。
矢口さんの笑った顔が寂しそうだったから?
矢口さんの心が泣いているように見えたから?
分からない。
私は考える事をやめた。
矢口さんの視線を感じたけど気付かないフリをした。
机の上に放ってあった雑誌を手に取るとまたペラペラと捲った。
携帯が静かに唸ってる。サブディスプレイには『ごっちん』の表示。
携帯を手にとって黙らせた。矢口さんが楽屋を出て行く。
去っていく足音が妙に耳についた。
手の中にある携帯が熱を持って熱かった。
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/16(金) 23:46
- おわり
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/17(土) 01:16
- 良かった。もっと書いてほしいです。
- 62 名前:日曜日の午後 投稿日:2005/12/17(土) 22:38
-
ここはごとーの部屋。
ごとーとよっすぃと二人きり。
さっきから会話は0。
コンポから音楽が流れているだけ。
会話は0。
だけどよっすぃはニコニコ。
特に何をするわけでもなく、雑誌を適当にパラパラ捲ってる。
「ね、よしこ」
「なぁ〜にぃ〜?」
返事してくれたけど雑誌から目を上げてくれない。
何か寂しい。
「よしこはさぁ、ごとーといて楽しい?」
―だって部屋来てから何もしてないじゃん。
「何でそんな事聞くのさ。」
やっぱり雑誌から目は上げない。
「だってごとー何もしてないのによしこニコニコしてる」
「んー、ごっちんといると暖かいよ?」
- 63 名前:日曜日の午後 投稿日:2005/12/17(土) 22:39
-
何だソレ。
意味が分からない。だけどきっと機嫌が良い。
寝転んだまま足をパタパタさせて。
「んあ、ごとーは体温高いからねぇ」
「や、そーゆー意味じゃなくてさ」
やっとよっすぃが雑誌を手放す。
目が合った。
「何かね、ごっちんといるとさ、ポカポカすんの。なんだろな、太陽みたいな?」
「ふーん」
何かよく分かんないや。
「それでニコニコしてんの?」
「ん、まぁそんなトコ」
そしてよっすぃは起き上がって私をギュってした。
「うは、やっぱごっちん暖かいや」
- 64 名前:日曜日の午後 投稿日:2005/12/17(土) 22:40
-
何かよく分かんないけど、よっすぃがニコニコしてるならそれでいいんだと思った。
でもね、ごとーが暖かいのは、よっすぃがいるからなんだよ。
よっすぃといるとほかほかした気持ちになるもの。
今、ごとーが暖かいのは、よっすぃがギュってしてくれてるからなんだよ。
窓から差し込む光は軟らかくて、よっすぃの栗色の髪の毛がキラキラ眩しかった。
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/17(土) 22:40
- おわり
- 66 名前:プレゼント 投稿日:2005/12/24(土) 21:12
-
街は慌しく行きかう人々の吐く息は白い。
私は冷たくかじかんだ手に息を吹きかけ暖めた。
遅い。約束の時間をとうに過ぎている。
一時間近く待ちぼうけを喰らっている足の先は感覚がない。寒い。
ずり落ちてくるマフラーを直す。
遅れて来るなら来るで連絡ぐらいくれてもいいのに携帯は黙ったまま。
ポケットの中で確認してみるけどやっぱり何もなし。
いつになったら来るんだよ…つーか本当に来る気あんのかな?
困ってしまって空を見上げた。
濃紺の空にネオンの反射。
マフラーと首の間に出来た隙間に冷たい風が入り込む。
最初の内は気持ちよかったけれどやがて寒くなって空を見るのをやめた。
遅いよ。
寒いよ。
早く来てよ。
- 67 名前:プレゼント 投稿日:2005/12/24(土) 21:13
-
いつの間にか下を向いていた視界に入る見慣れたスニーカー。
顔を上げると目の前に頬をピンクに上気させて頭をかく姿があった。
「おーそいよー」
拳を固め軽く殴る。
「やーごめんごめん、プレゼント迷ってさ」
痛いはずなんてないのに大袈裟に身体を折ってやめてとアピールする。
調子に乗って足を蹴りだすとこれもまた大袈裟に避けた。
何だか急に悲しくなって泣けてきた。
「どうした?」
何でもない、何でもないよ。
言葉は声にならずただ涙が溢れた。
うえー気持ち悪い。
会った途端に泣き出す女なんて最悪だよね。
でもだってしょうがないじゃない。
回りも何も気にせずに泣いてたら冷たかったはずの体が温かくなった。
「ごめん、泣かないで」
私は抱きしめられていた。
「泣かないで」
そう言って頭を撫でる手は暖かい。
泣かないでってそんなの無理だよ。
私がどれだけ待ったと思ってるの。どんだけ不安だったか分かる?
何でそんなに暖かいの。余計泣けるよ卑怯だよ。
涙は止まらなくてしばらくずっとそうしてた。
- 68 名前:プレゼント 投稿日:2005/12/24(土) 21:13
-
「そう、プレゼントあるんだ」
やがて涙は止まり鼻をグズグズ言わせてると突然がしっと肩を掴まれた。
そしてそのまま腕を引かれる。
「ここじゃだめなんだって、付いてきてよ」
そう言って人込みをかき分けずんずん歩いてく。
どこをどう進んだのか辺りは私の知らない景色に変わっていた。
それは例えるならまるでおとぎ話の中のような。
いつの間にか雪まで降っている。
暫く進んで立ち止まる。
「ちょっと目瞑ってて」
言われた通りに目を瞑るとその上からさらに目隠しをされた。
なんなんだこの変態チックなプレイは。
「そのままそこ動いちゃダメだかんね」
遠くから声が聞こえる。
私は言われたとおりに目を瞑りその場から一歩も動かない。
何も聞こえない。
何も見えない。
寒い。
暗い。
ねえいつまでこうしてればいい?
何だか怖くなってきたよ。
- 69 名前:プレゼント 投稿日:2005/12/24(土) 21:14
-
「まだ目開けたらダメだよ」
突然後ろから声が聞こえて私の身体はビクついた。
手を握られる。
冷たい手の感触。
「まだ見たらダメだからね」
そのまま手を引かれまた歩く。
雪の中を歩く。
「ストップ」
声と供に立ち止まり、そして目隠しが外されていく。
「まだだからね、まだ見たらダメだからね」
必死なその声にうんうんと頷き目をいっそう堅く瞑る。
「3,2,1,0!で開けていいから」
そう言い残して離れていく。
ちょっと、また置いてけぼりかよ。
「さーん!」
突然四方八方から声が上がる。
「にーい!」
目を閉じていても辺りが明るくなっていくのが分かる。
「いーち!」
自然と笑みが浮かぶ。
ドキドキとワクワクで心臓の鼓動が高鳴る。
はやく、何々??
「ぜーろー!!!!!!」
声と供に私は目を開けた。
- 70 名前:プレゼント 投稿日:2005/12/24(土) 21:14
-
一番初めに目に飛び込んできたのは眩しすぎるオレンジの光。
視界を奪われそうになりながらも必死で目に映るものを探す。
なに、何も見えないよ眩しすぎる。
片腕で影を作りながら見てみるけどオレンジの光しか見えない。
もう一度目を閉じてみる。
そしてゆっくりと目を開ける。
オレンジの光の真ん中、ぼんやりと人影が見える。
「メリークリスマス」
人影はこちらに近づいてくる。
「・・・誰?」
光のせいで顔がよく見えない。
「ひどいなあ」
人影は笑う。
そして手を差し出す。
「おいでよ」
引き寄せられるかのようにしてその腕を取った私。
その瞬間気付いた。
この人、浮いてる。
そしてその腕を取った私もまた同様に宙に浮いていた。
「最高のクリスマスプレゼントだろ?」
ウィンクして笑う。
顔が見える。
ああ。
- 71 名前:プレゼント 投稿日:2005/12/24(土) 21:16
-
私達は空を昇っていく。どこまでも高く、高く。
遠く遥か足元に点々と明かりが見え、そして小さくなって消えていく。
雲を超える。
星を越える。
三日月の先に腰掛ける。
世界を見渡す。
隣には君。
「メリークリスマス、ごっちん」
シャンパンの栓を開け乾杯する。
ぶつかるグラスの音が静かな夜に響いた。
「メリークリスマス、よしこ」
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 21:16
- おわり
- 73 名前:18:23 p.m 投稿日:2006/02/02(木) 23:38
-
暖色の光に照らされた机の上で手を組み、後藤が口を開いた。
「ごとーはさあ、よしこの事好きだったんだよねえ」
「何それ好きだったって。何で過去形よ、今は好きじゃないの?」
「んー、今も好きだけど何か違うんだよ」
「何だそれ」
吉澤はハハハと乾いた声を上げた。
少し寂しかった。
後藤は知ってか知らずか笑ってみせる。
「だってよしこは変わっちゃったもん」
「そりゃウチも20だしねえ。人間なんて皆そんなもんでしょ。
大人になってるんだって。成長してく毎に何かが少しずつ変わってくんだよ」
「ホラ」
「何?」
「前までのよしこならそんな事絶対に言わなかった」
後藤に言われて吉澤は口を噤む。
沈黙が苦しかった。
- 74 名前:18:23 p.m 投稿日:2006/02/02(木) 23:39
-
「・・・まあ、でもね、今のよしこも好きよ」
後藤はすぐにでも消えてしまいそうな寂しい顔で笑った。
心が痛かった。吉澤の心が泣いた。
そんな嘘、吐かないでよ。
腕が伸びてきて吉澤の手の甲をそっと掠める。
小さな音をたてて後藤は席を立った。
「だけど、愛してはいない」
そのまま後藤の手は離れ、そして彼女自身もその場から姿を消した。
後藤の手が触れた手の甲をそっと包んだ。
そこに彼女の温もりはなかった。あったのは自分の冷たい手、それだけだった。
長く、大きな息を吐いた。
暖色の室内灯がやけに沁みた。
- 75 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/02(木) 23:40
- おわり
- 76 名前:きっかけ 投稿日:2006/02/20(月) 11:30
- 窓越しに浴びせられる春の日差しというのは、なんとも心地の良いものだ。
まして、後藤真希の席は窓際の一番後ろ。所謂、特等席なのだから尚更である。
1ヶ月程前に入学したこの学校。
『とりあえず窓側の前から出席番号順に』という担任による芸のない席決め方法のおかげで
後藤の姓を持つ彼女は、幸運にもこの場所をゲットした。
(ごとー、後藤家に生まれて本当に幸せだよなあ)
生まれて初めて心からそう思った。
(お父さん、お母さんありがとう)
生んでくれた両親への感謝の気持ちを忘れずに、今日も後藤は夢の世界へと旅立った。
- 77 名前:きっかけ 投稿日:2006/02/20(月) 11:31
- ***
「後藤さん、後藤さん」
机に突っ伏しフワフワと夢の世界を漂っていた後藤は、トントンッと背中を突付かれた感触と
自分の名前を呼ぶ声に、むくりと顔をあげた。
「んぁ…」
まだしっかりと覚醒しきっていない頭で返事ともつかない返事を返すと、声の主に視線を向ける。
(えーと、何サンだっけか…)
目の前の彼女とクラスメイトになって早1ヶ月。
元々他人事に関心の薄い後藤は、クラスメイトの名前をまだほとんど覚えていない。
しかし、彼女は後藤の名前を覚えていてくれた。呼んでくれた。
無駄な努力と思いながらも、彼女の名前を思い出すことは出来ないものかと頭を捻ってみる。
マシュマロのように白い肌。サラサラと流れるショートカットの茶色い髪。
少し垂れた大きな瞳をやんわりと細め、なんとも人のよさそうな微笑を浮かべた彼女の名前は…
- 78 名前:きっかけ 投稿日:2006/02/20(月) 11:33
- (あー、そうだ、ひとみだ。確か、吉澤ひとみ)
初めてのHRで行われた自己紹介。
『吉澤ひとみです。目の大きな赤ちゃんだったので"ひとみ"って名付けられたそうです』
彼女は照れくさそうにそう言って、微笑った。
「後藤さん」
"クラスメイトの名前を思い出す"という後藤にとっては難解な問題を見事にクリアし、
晴れ晴れとした気持ちに浸っていた時、再度そのクラスメイト、吉澤ひとみが後藤の名前を呼んだ。
- 79 名前:きっかけ 投稿日:2006/02/20(月) 11:34
- 「なーに?吉澤ひとみさん」
返事ついでに、思い出したばかりの彼女の名前を得意気に呼んでみる。
奥歯につまったホウレン草が取れた時のような爽快感に、自然と湧き出たとびっきりの笑顔を添えて。
「えっと、次、移動教室、だよ?」
教室には夢の世界から帰還したばかりの後藤と、白い肌を心なしかほんのりと赤く染めた吉澤。
二人だけが取り残されて居た。
END
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/27(月) 23:23
-
「おーい、食器洗うの終わったら洗濯物干してもらってもいい?」
「おーけーまかせとけ!」
「ありがと。そーだ、洗濯物干し終わったらさぁ、部屋の掃除もしてもらっていい?」
「掃除も?いいよー、やっとく」
「あ、今日天気いいな。布団も干しといて」
「はいはい」
「お風呂の掃除してないよね?」
「やっとく」
「クリーニング取りに行かなきゃ」
「後でね」
「シャンプー買いに行かなきゃもうない」
「それも後でね」
「あれ、爪切りは?」
「上から二段目の引き出し!」
「耳掻きは?」
「・・・」
「・・・よしこ?」
「っだああああああああああああああ!!!!一気に沢山言わないの!!
これ虐めだよ!イジメ!イジメカッコ悪い!イジメ反対!イジメ撲滅!!!
つーか何、ごとーさん、貴方は耳掃除と爪切り同時進行で行えると。そう言う事ですか?W録的な?
ンな事できるわけ無いでしょう!!これ虐めだよ!貴方も何かしなさいよ!」
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/27(月) 23:23
-
「うるさーい!いきなりキレないでよ!!」
「キレテナーイ、当然の事を言っただけアルヨ、アナタワタシイジメテルネ」
「むぅ。・・・よしこだってたくさん私をイジメるよ」
「何を言う。私がごっちんを?そんな馬鹿な事するわけがない」
「してるね。夜」
「夜?」
「ベッドの中に入るとよしこは意地悪だ」
「っっなんですとぉ!!?それはそのーあのーえーとですねそのーなんですか?ほら、愛があるわけですよ。
つーかごとーさん苛められてよろこんでるじゃないですか!!!!」
「っば!!!そんな事無い!!!」
「いーやあるね。大有りだよ。そう、だから愛のあるイジメはいいのよ。ところが何。
ごとーさんのイジメには愛が無い。ヒーちゃんはとても悲しいデース。
もう洗濯もお掃除もなーんにもしたくありませーん」
「むむむ・・・・・・じゃあぜーんぶ終わったらチュウしたげる」
「・・・マジで!!マジで?でじま?マジでじま?ぎゅーん!!!!とみこめっちゃ頑張る!超頑張る!
見てて!私の戦いを!!!マッハだからね!すぐ終わるから待っててね、絶対チュウだからね!!!」
「おーがんばれがんばれ」
「むはははははははは!!!!何でもこい!」
「ああ、ごとー今から出かけなきゃだから留守番よろしくね」
「おおいってらってなぁーにぃいいいいいいいいいい!!!???チュウは???」
「帰ってきたらね。んじゃ、ちゃんとやっといてね」
「あ、ああ・・・はい・・・あ・・・きをつけて・・・・」
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/27(月) 23:24
- おわり
- 83 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/28(火) 14:16
-
「ごとーさん」
「んあ?」
「今この瞬間の気持ちを五文字で表して」
「ねむたい」
「ちっがあああああああうう!!!ご・も・じ!!!一文字足りないでしょう!!」
「んもぅ、うるさいなあ。耳が痛いよ、寝れないじゃん」
「寝なくていいの!寝たらダメよ!ハイ、もう一回!!」
「ねむたいな」
「『な』付けただけじゃん!!何それ、何でそんなやる気無いの。もっと捻ってよ、ヒーちゃんショーック!!!」
「だからうるさいってば。眠たい時にやる気も捻るも出来るわけないじゃん。よしこもやってみ?」
「エッチしたい」
「六文字じゃん」
「ぅおっとぉ!?気付いちゃった?いいじゃんいいじゃん!リズム的には五文字じゃん!」
「ダメ」
「なんだよーごっちんのケチ!!」
「ケチで結構。もう寝るよ」
「あ、ちょっと待って」
「何?」
「キスしたい」
「・・・」
「ちゃんと五文字ですよ〜?」
「・・・電気消してからね」
「らじゃあ!!」
- 84 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/28(火) 14:16
- おわり
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/07(火) 16:59
- いいね
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/31(水) 18:35
-
「あー海行きてぇー」
ある晴れた日曜日の昼下がりに彼女は突然呟いた。
その言葉はなんの脈絡も持っていなくて、だから私は雑誌に落としていた目を上げて彼女を見た。
彼女は私に気付かないのかごろごろとそこらを転がりまわって「ホットホットサマー感じてぇー」なんてほざいてる。
ホットホットサマー?暑い夏?何を言っているんだ、今は秋だ。
それでも彼女の頭の中は真夏日のそれらしく、「カキ氷食べて頭キンキン言わせてぇよぉ」なんて最近伸ばしているのか随分と長くなった髪の毛を掻き毟りながら言った。
やがて転げ回るのを止めるとようやく私を見た。私も彼女を見た。
「海、行こうぜ?」
彼女のその笑みはどこぞやの田舎のガキ大将のそれだった。
私はイマイチ頭がついていけなくて、だから何も言えなくてボーっとしていた。
彼女はクスクス笑うと突然飛び掛ってきた。
「んふー、ごっちん!ねぇ、海行こうってば!!」
彼女の襲撃を受けた私は彼女諸共フローリングの床に倒れこみ、後頭部を強かに打った。
飛び掛ってきた彼女と言えば無傷なもので、私の胸に頭をグリグリと押し付けては「海、海ぃ」とまるでその言葉しか知らないかのように連呼する。
私はその柔らかな髪の毛を掴んで引き剥がすと身体を起こした。頭が痛い。
引き剥がされた彼女は躾のよく行届いた犬の様に私の目の前でお座りをしてみせる。
「海、行こうよ」
柔らかに笑って身体を前後に軽く揺らす。
私は床にぶつけた頭を擦りながら乱れた服の皺を伸ばした。
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/31(水) 18:36
- 「なんで、海さ」
私の問いかけに彼女はそれはもうとても嬉しそうに顔をグンニャリ緩ませて、白い頬を掻いた。
「だって、海に行きたくなった」
それは答えになっているようななっていないような、と言うかなっていないだろうコレは。
私はもう一度口を開きかけたがそれより早くに彼女の白い腕が伸びてきて、私の肩を掴んだ。
そしてまた笑うんだ。
「さあ、ドライブだ」
彼女はとても楽しそうに言った。
それで私にはもう選択の余地はないのだと悟った。
私が微かに笑うと彼女はそれを了解の意思と取ったのか「ぅひゃっほう!」と陽気な声を上げて飛び跳ねた。
私は立ち上がって凝り固まった身体を解した。視線の先には楽しそうに揺れる彼女の背中。
開け放したままになっていた窓から風が吹いてきた。私はそれを心地良いと感じた。
まあ、こうゆうのも悪くないかもしれない。私は彼女から見えないところで笑った。
「おーい、早く行こうぜぇ!」
トントンと靴を鳴らす音と彼女の声が玄関から聞こえる。
指先に引っ掛けた鍵の束を回しているのだろう、ジャラジャラ言う音も聞こえる。
私はうんと伸びをして、開け放していたままだった窓を閉めた。
空は青い。太陽が眩しい。風も、丁度いい。
ああ、海に行きたい。
「ちょっと待ってよ、よしこ」
私は青い空に向かって笑うと、レースのカーテンを引いた。
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/10(火) 22:09
-
- 89 名前:アイスコーヒーとカプチーノ 投稿日:2006/10/10(火) 22:10
-
久し振りの休日、街をぶらぶら歩いていたらごっちんに会った。
そのままバイバイするのも何だったんで近くの喫茶店に入った。ごっちんはカプチーノを頼んで私はアイスコーヒー。
二人きりでいるのは久し振りなので少し緊張する。ごっちんもそうなのかカップを手にして視線は店の外。なかなかこっちを見ない。
私の目の前のグラスは汗をかいている。カランと小さな音を立てて氷が崩れた。
氷が溶けてしまった表面は層を作ってそれは綺麗な透明だ。
「最近どう?」
グラスを見つめてぼんやりしていたらごっちんが言った。その言葉に顔を上げて目が合う。ごっちんはふにゃりと笑った。
あぁ、なんだか懐かしい。ごっちんはいつもこんな風に笑ってた。
「まぁまぁだよ。そっちは?」
コーヒーを一口飲んで聞き返すと「ごとーもまぁまぁ」と言って目を伏せた。
そこで会話が終わってしまう。次の言葉が切り出せなくて、思い浮かばなくて、私も目を伏せた。
なんだかなぁ。私達は変わってしまったんだね。
二、三年前なら居心地が良かったはずのこの沈黙が今ではとても息苦しい。
ごっちんはどう思ってる?私は苦しくて仕方がないよ。
「何か変わったね、最近」
黙ったままでいるとごっちんが口を開いた。私は目を開いてごっちんを見る。
ごっちんは顔を上げていたけれどその視線は店の外にあった。なんだか寂しい。
「変わったって、何が?私?」
「そう、よしこ。何て言うのかなぁ・・・まぁ変わったよ」
- 90 名前:アイスコーヒーとカプチーノ 投稿日:2006/10/10(火) 22:11
- ごっちんは私を見て笑った。
その笑顔は私がいつも見ていたふにゃりとした笑顔ではなく、口の端だけをキュッと上げる、とても大人びた笑顔だった。
そんな顔、するようになったんだね。
「そうかな。でもごっちんだって変わったよ。私も上手くは言えないけどさ」
私が言うとごっちんはまた大人びた顔で笑った。
それがなんだか寂しくて悲しくて私は小さく息を吐いた。
「あは」
ごっちんはふにゃりと、私がよく見慣れた懐かしい顔で笑った。
なぜ笑ったのかが分からずに私は少し首を傾げた。ごっちんはふにゃふにゃ笑ったままだ。
ずっと笑みを浮かべているので私も小さく笑った。カランと音を立ててまた氷が崩れた。
グラスを軽く回して口にする。
「飲めるようになったんだ」
「ん?」
「それ。ミルクもシロップも入れてないっしょ?」
「あぁ、そうだねぇ・・・」
そうだ。そう言えばごっちんと二人でいた時の私は何も入れずにコーヒーを飲むなんて事、出来なかった。
ミルクは必ず必要だったしシロップは二つ。いつもそうだった。
それがいつからからだろう。はっきり思い出せないな。
言える事は、私はコーヒーをブラックで飲めるようになったし、シロップが二つだなんて、
そんな甘ったるい物は今ではもう飲んではいないと言う事。
はは、私はごっちんが言うようにやっぱり変わってしまったのかも。
「大人になったんだねぇ」
ごっちんはしみじみと言ってカップを両手で口の前まで持っていく。カプチーノ。
「・・・相変わらず好きなんだね」
「ん?ごとー?」
「そ。いつもカプチーノだ」
- 91 名前:アイスコーヒーとカプチーノ 投稿日:2006/10/10(火) 22:11
- 私が言うとごっちんは大きな口を横いっぱい広げてにぃっと笑った。こんな顔もよくしてた。何だか得意そうな顔。
可愛いなぁ。
ごっちんの顔を見ながらコーヒーを飲んだ。
余計な物を何も入れていない苦みと少しの酸味と渋みが体中に染み渡っていく。
胸が苦しい。何だか押し潰されてしまいそうだ。
ごっちんは私の前で美味しそうにカプチーノを飲む。
胸が詰まって息が出来ない。苦しいよ。
「そっか。じゃあもう要らないな」
カップを机に戻してごっちんは唐突に言った。話が見えない私は、ん?と目で伺う。
ごっちんは大人びた顔で笑った。
「ミルクとシロップ。家にまだあるんだけどさぁ。もう使う人いないもん」
あぁ。
ごっちんは私の目を覗く様にして言う。見ないで。そんな事、言わないで。
ごっちんは何でもないように空になったカップを両手で弄ぶ。
何故か急に悲しくなって私は泣いてしまいそうになった。誤魔化そうとグラスを手にして一気に飲み干す。
氷が溶けて大分薄くなってしまったそれはあまり美味しくはなかった。
窓の外を見て、深呼吸する。
「いいよ、残しておいて」
ごっちんを見て言う。
紙ナプキンで折り紙をしていたごっちんは弾かれたように顔を上げた。
その仕草がおかしくて可愛くて私は笑ってしまった。
「置いといてよ、私だってたまには甘いコーヒーが飲みたくなるよ」
私が言うとごっちんは嬉しそうに笑った。ふにゃふにゃとした顔で。
「そっかぁ、じゃあまだ置いとこ」
ごっちんは嬉しそうに言う。それが私は嬉しい。
二人同時に席を立った。テーブルの上には空になったカップとグラスと紙ナプキンで作られた不格好な鶴。
店を出てごっちんはうーんと伸びをした。私はその少し後ろで深呼吸。
埃臭い空気は決して爽やかではないけれど、それでも幾分かすっきりして、肩から力が抜けた。
自然とごっちんの隣りに立っていた。
- 92 名前:アイスコーヒーとカプチーノ 投稿日:2006/10/10(火) 22:12
-
「今度、また近い内に行くよ、家」
ごっちんはビックリしたように私を見てそれから少し恥ずかしそうに、嬉しそうに笑って頷いた。
私も何だか恥ずかしくてごっちんを見れずに狭い空を見上げていた。
「約束だよ」
何かが手に触れて視線を落とすとそこにはごっちんの手があった。
あぁ、ごっちん。
そうだ、ごっちんの手はこんなだった。優しくて、暖かい。
涙が出そうになって空を見た。
「おぅ、約束だ」
涙目で睨む空はぼやけて何だか変な感じがした。
ごっちんが手をギュッと握るのが分かった。
甘い。甘いよ。
そうだ、私達はこんなだった。甘かったんだ。シロップの海に溺れているみたいに。ミルクのお風呂に浸かっているみたいに。
それがいつからかミルクは無くなってシロップも無くなった。何故。無くしたからだ。排除したから。
排除したのは私だ。私が無くしたのだ。けれど今、それを欲しているのも私だ。
ごっちんは何も変わってなんかいなかった。変わってしまったのは私だったんだ。
だから元に戻すのも私だ。
「また連絡するよ」
「うん、待ってる」
ごっちんは笑った。あの頃と何一つ変わらない笑顔で。
- 93 名前:アイスコーヒーとカプチーノ 投稿日:2006/10/10(火) 22:12
- ほら、笑顔だって私の手を握るその手の温もりだって何も変わらない。
胸が苦しくなって深呼吸してそれから笑った。
「「じゃ」」
同時に言って手を放す。ヒラヒラ揺れるごっちんの右手。もう一度笑ってから私は歩き出した。人の波に紛れ込む。
空を見た。秋晴れの空にコンクリのビルが映える。
立ち止まって、大きく息を吸って吐き出した。涙が溢れそうになって寸前で堪えた。
遥か昔のとびきりの甘さを思い出して切なくなる。あぁ、おもっくそ甘いコーヒーが飲みたい。
通り過ぎる人に押されてまた歩き出す。家に着いたらごっちんにメールしよう。
ポケットの中の携帯を握り締めて私は家へと向かった。
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/10(火) 22:13
- 終わり
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/11(水) 00:12
- よいです!
なんだか切ない。。
- 96 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/13(金) 19:14
- (・∀・)イイ!!
やっぱよしごまはいいわー
- 97 名前:Dear... 投稿日:2006/11/08(水) 12:14
- 失礼して、初めてですが
ちょっと書かせてもらいます。駄文ですが
- 98 名前:Dear... 投稿日:2006/11/08(水) 12:14
-
昨日あったこと今日過ぎたこと
今起こったこと明日気づくこと
全てに眩しさを感じます
ここにはさ、何でもあるんだよね
何もかも揃っていて何ひとつきっと本当には手に入らないんだけど
夢だなんて言わない
ここはいつでも現実的で脆く壊れやすい
それでも・・・・
だからこそ、手を伸ばしたくなるってもんじゃない
順調に全ては進んでいたよね
予測がつかないのは最初の出来事から。何も感じないわけじゃないよ
ただ衝撃に慣れていってしまうだけ この流れに逆らわず乗っていくだけ
- 99 名前:Dear... 投稿日:2006/11/08(水) 12:16
-
あたし?
あたしは今もずっとここにいるよ
変わらず、ここで頑張ってるよ
少しは見てくれてる?ちょっとは気にしててほしいよ
そっとあたしはあなたを見てる
見てないフリをしてるけれどね
でも気づいてるんでしょ
どうせ、こっそり真剣に。たま〜に苦笑しながら見てくれてる
そう思うんだ
- 100 名前:Dear... 投稿日:2006/11/08(水) 12:17
-
あなたはどう?そこは楽しい?
ここを離れて飛び立っていったあなた
一人立つ姿に逞しさを感じ、軽く憧れもした
いつもそうだったように
常に背筋を伸ばしている姿はさり気なくかっこいいよ
初めて会った時からそうだった
真っ直ぐ見つめる芯の強い目。今も変わらず持っててさ
今の自分に満足しない姿勢
常に見上げていかなければならない世界だからね
次の自分にはもっと高いハードルを課してたりして
だけど、本音はきっと”孤独”だよね
今までとは違う。誰も助けてはくれない、一人で立って一人でやらなきゃいけない
少しの差だと思ってたことも全然違ったものが待ってたりしたでしょ
- 101 名前:Dear... 投稿日:2006/11/08(水) 12:17
-
今はどうしているのかな・・・?
元気でいますか?
傍にはスタッフやメンバー以外の誰かがいますか?
たまにはハメはずしてたっぷり豪快に遊んでますか?
ちゃんとモリモリご飯食べてる?
本当に笑えていますか?
きっと大丈夫だよね
あたしの勝手な希望だけどさ、あなたならきっと大丈夫だと思うよ
- 102 名前:Dear... 投稿日:2006/11/08(水) 12:18
-
あなたがどこかで見てると思うから
あたしはここまで頑張れたんだんだよね
これからももっともっと頑張るよ
傍にはいられないケド
悲しいとか思ったことはない
あなたの穴はずっと空いたままでいいと思う
あなたはあなたでいてほしい
簡単で難しいことだけど あなたのままでいてほしい
ちょっと離れて見ているから
一人立ってる姿を見てるからさ
もっと・・・ずっと輝いててね
- 103 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/08(水) 12:23
- 終わり。
スイマセン。こんな一人語りな駄文載せてしまってorz
よし→ごまでした
- 104 名前:_ 投稿日:2007/01/30(火) 11:01
-
『何?何かあったの?』
「ううん、何もないよ。ただ、声が聞きたくなっただけ」
『何それ(笑)明日も早いから、用ないなら切るよ?』
「えっ?ちょ、待ってよ」
『じゃね――――プチッ』
「・・・切れちゃった」
ベッドに寝転んで、携帯の着信履歴を見た。
「前に電話くれたの、1ヶ月も前だよ・・・。昔は毎日電話くれたのに―――」
- 105 名前:_ 投稿日:2007/01/30(火) 11:02
- 「はぁ、眠れない・・・」
しばらくベッドでごろごろしていたが、妙に頭が冴えて寝付けない。
どうしようかと部屋をキョロキョロ見ていると、一枚の写真が目に入った。
そこには、笑顔の二人が写っていた。
- 106 名前:_ 投稿日:2007/01/30(火) 11:03
- 写真を手に取って見る。
「くそぅ、楽しそうに笑っちゃってさ」
写真にデコピンしてみる。
思ったよりも強くなって少し焦った。
その自分の行動がおかしくて、少し笑った。
- 107 名前:_ 投稿日:2007/01/30(火) 11:03
-
「何やってんだろ、あたし・・・」
何だか、急に会いたくなってきた。
「会いたいなぁ・・・」
- 108 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/30(火) 11:04
- 終わり
一応よしごまです。
- 109 名前:缶コーヒー@わざと間違えたよしざーさん 投稿日:2007/02/04(日) 00:45
- 「あっ、いた!ブラックの人!!」
「へっ??」
「ハイ、あげる。」
知らない子にさしだされた、ブラックの缶コーヒー。
「アタシに?」
「や、さっき間違って買っちゃって。いつもブラック飲んでるデショ?」
「あ、うん。あ、ありがと。」
「へへっ。どういたしまして。じゃっ。」
「あっ、あのっ、ナマエ、なんてゆーの?」
「アタシ?よしざーひとみ。」
苦いコーヒーがつれてきた、甘い恋の予感。
- 110 名前:L/P 投稿日:2007/02/04(日) 00:46
- 大学生のイメージ。
- 111 名前:缶コーヒーA小悪魔 投稿日:2007/02/04(日) 00:48
- 楽屋で、ごっちんが缶コーヒーを飲んでいたから。
あたしもちょっと飲みたいなーなんて思って。
「ひとくちちょーだい、ごっちん。」
「ん?はい。」
「センキュ。」
飲もうとして口を近づけた。
「間接キスー」
「なっ、ばっ」
「あはっ、じょーだん。何を今更中学生みたいな事気にしてんの。」
「……やっぱいらない。」
ちゅーがくせいみたいな事を気にして返した。
「ふふっ。よしこ。」
ちょいちょいと指先で呼ばれて。
「ん?」
チュッ
「……わりと小悪魔だよね。」
「そぉ?んふ。ありがとー。アイシテルわよ、よしこ」
「……そ。」
アタシも、なんて、意地でも言ってやんねー。
- 112 名前:L/P 投稿日:2007/02/04(日) 00:49
- 小悪魔がかわいくて仕方のないよしざーさん
- 113 名前:缶コーヒーBカフェオレ 投稿日:2007/02/04(日) 00:51
- 「にが。」
くちびるを離したよしこが呟いた。
「ブラックのんでたからねぇ。」
「よくあんな苦げーモンのめるねー。」
「じゃ、今度は牛乳飲んどいて。カフェオレつくろ。」
「……りょーかい。」
- 114 名前:L/P 投稿日:2007/02/04(日) 00:53
- 「つくろ」ってなんかエロス…w
長さまちまちですみません。お粗末さまでした。
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/04(日) 13:10
- ochi
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/06(火) 06:45
- やっぱりよしごまはいいなぁって思いました。
ぜひカフェオレつくって欲しいw
- 117 名前:缶コーヒーC 続・カフェオレ 投稿日:2007/03/04(日) 01:19
-
「よしこ〜、コンビニ行こー」
という事で、ごっちんと共にコンビニエンスストアーへ、いざ。
ん〜、暖かい。暖冬だねぇ。
手を握るなんてしないけど、隣りを歩くだけでココロがほこほこするのさ。
なんか知らんが隣りの彼女はゴキゲンだし。
つまりはあたしもゴキゲンだし。
二人で鼻歌ハーモニー。ウィーン少年合唱団も真っ青だね。なんつって、なんつって。
- 118 名前:缶コーヒーC 続・カフェオレ 投稿日:2007/03/04(日) 01:21
-
ウィーン。
「いらっしゃいませー」
「あれっ、ごっちん買うものコーヒーだけ?コンビニ来たのに?」
「え、よしこ買わないの?」
「なにを?」
「ぎゅーにゅー。そのために来たんじゃん」
「あ・・・あー、そうなんすか」
「そうなんすよ」
クスクス笑う君。情けないほど照れるあたし。
「えーと、そいじゃーよしざーがコーヒーもおごったげますよ、姫」
「お、まじですか」
「まじですよ」
ふふふ、っと微笑みあう。
未だにドキドキしてしまう、秘め事を交わすかのようなこの瞬間。
時間よ止まれー。なんつって、なんつって。
- 119 名前:缶コーヒーC 続・カフェオレ 投稿日:2007/03/04(日) 01:23
-
ウィーン。
「ありがとうございましたー」
「ん〜今日は暖かいねぇ。もう春なのかなぁ?」
空へと腕をのばして、クルッと一回転する彼女。
「どうだろ。暖冬だしねぇ」
眩しくて、目を細めるあたし。
眩しいのは、太陽だけじゃない。
あぁ、まずい。ひじょーに。
・・・・・・よし。
- 120 名前:缶コーヒーC 続・カフェオレ 投稿日:2007/03/04(日) 01:24
-
「ごっちん、スタジオまで走るぞ!!!」
「へ?ちょ、よしこ?!」
君の手をひいて、走れ、走れ。
止まったら、キスしてしまいそうだ。
そんなのダメだ。今日はカフェオレをつくるんだ。
なんて、考えただけでも顔が火照ってきた。
あー、今日は暖かい。
- 121 名前:L/P 投稿日:2007/03/04(日) 01:26
- 調子にのって続編を書いたはいいけど、言い訳したい事がてんこもりです。
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/29(月) 01:42
-
- 123 名前:太陽との距離 投稿日:2007/10/29(月) 01:43
-
「これでもう、本当に離れ離れだね」
私の言葉にごっちんはただ目を伏せた。
いきなり呼び出され何かと思えばとんだ別れ話。
私とじゃない、私達の仲間との別れ。
なんとなく感じていたんだ、今のごっちんの在り方。
これでいいのかな、合っているのかな、模索しているのか。迷っているの?
遠巻きに見ながらそんな事感じていた。
その矢先のこの話だ。
特別驚きもしなかったし若干の衝撃はあったけれどそれだけだった。
だって私とごっちんの関係ってそんなものだ。
二人とも子供じゃない、お互いに甘え合っていた時期はとっくのとうに過ぎていた。
ごっちんの卒業時から段々と広がっていった距離。
意識はしていなかったけど感じていた。
けれどそれを悲しいとは、寂しいとは思わなかった。
だって確かに距離はあったけれど糸はあった。
細くて見えなくて今にも千切れそうだったけど、確かにあったんだ。
けど、それももう無くなってしまうね。
糸もなくなって広がってしまった距離は結局埋められずに離れてしまう。
それだけが少し寂しい。
- 124 名前:太陽との距離 投稿日:2007/10/29(月) 01:44
-
「本当にそうかな」
「え?」
ごっちんの言葉に顔をあげる。
本当にそうかな。ごっちんは同じ言葉をもう一度吐く。
私は黙って次の言葉を待つ。沈黙。
ようやく吐き出されたごっちんの言葉に胸が締め付けられた。
「ごとー、よしこと離れ離れだなんて、今まで一度も思ったことないよ」
その言葉をポツリと落とすごっちんの姿に私はかける言葉が何も見つからなかった。
時が戻ってしまえばいいと思った。なんで今こんなことになっているんだろう。自分を責めた。
苦しい。悔しい。悲しい。寂しい。
いろんな感情が溢れ返って爆発しそうで、でもそれって結局自分の問題だ。
自分がとんでもない大馬鹿者だったっていう話だ。笑えてくる。
「だからね、ごとーはこれからもよしこと離れ離れだなんて絶対に思わないよ」
私はただ顔を伏せて溢れてくる涙を隠すしかなかった。
ありがとう。でもこんな顔じゃ言えないよ。ごめんね。笑っていたいんだけど、笑えないよ。
ごっちんのその真っ直ぐな心が痛い。その槍を防ぐ盾を私は持っていない。持つ必要もないけれど。
喜んでこの体をその槍の前に差し出すよ。
- 125 名前:太陽との距離 投稿日:2007/10/29(月) 01:46
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「どれだけ離れてもさ、よしことは絶対どこかで繋がってると思うんだ」
突き倒され貫かれボロボロの体で顔をあげる。
私は上手く笑えているだろうか。ぼやけて見えるごっちんの顔は柔らかな太陽のようだった。
「ありがとう」
その言葉を言うのが精一杯だった。
太陽は私には眩しすぎた。けれど辺りは穏やかな暖かな光に溢れていた。
遠く広がってしまったごっちんとの距離が、ほんの少しだけ近くなったような気がした。
- 126 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/29(月) 01:47
- おわり
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