綺想曲
1 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/01(日) 03:16
初めまして。
何となくぼやっと頭に浮かんだので
初めて書かせて頂きます。
登場人物は追々分かると思われますので・・・。
ここでは敢えて伏せさせて頂きます。
ご了承くださいませ。

それと季節は冬です。

更新は多分遅いと思われます(笑)。
とりあえずひっそりとやって行きたいので
それでよろしくお願いします。
2 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/01(日) 03:19
季節は1月の昼過ぎから雪が降ってきたそんな夕暮れ時。
学校帰りの私は震えながら家路へと向かうバスを待っていた。
日課となってる学校の図書室で夢中になって本を読んでいたら
すっかり帰るのが遅くなってしまった。
いつも学生でごった返しているこのバス停もほとんど人がいない状態だった。

3 名前:マフラー 投稿日:2004/08/01(日) 03:22
う〜〜〜っ!寒いよぉ〜!!失敗したなぁ〜耳が冷たくってジンジンするよぉ〜
せめてマフラーでも持って来ればよかったなぁ〜と
後悔の嵐が吹き荒れているところに、後ろから私の首に何かが掛かった。

「えっ!?」
なに!?・・・よく見るとそれは黒色のシンプルなマフラーだった。
私はびっくりして振り返った。
するとそこにはにこりと微笑むショートカットの少女が一人が立っていた。

「えっ!?・・あの・・これ・・・あなた?」
私はおずおずと聞いた。

「そっ!だって今あなたマフラー持って来ればよかったって思ったでしょ?」
にっこりと微笑む少女。

「えっ!?」
私・・・そんなの声に出してたっけ?
も・・もしかして・・禁断のテレパシー!?
などと眉をひそめていると

「ははっ!もしかしてテレパシーとかって思っちゃった?
そんな分けないじゃん!だってそんな風にガメラみたいに
首縮めて寒そうにしてたら誰だってそんな風に思うでしょ!?」

少女は大きな声で笑いながら「じゃぁ!」と去って行った。

私はしばし唖然として立ち尽くしていたが
ハッと我に返りあわてて少女を追った。

「ちょっ!ちょっと待ってよ!!ガメラってなんなのよ!?」
・・・ってそこかい!?

ほんの一瞬なのにどうやら彼女は歩くのが早いようだ。
これでも私は足は速いほうなのだが・・・
ちょっと本気で走ってしまった。
やっと追いつきグイと彼女の肩をつかんだ。
4 名前:マフラー 投稿日:2004/08/01(日) 03:24
「ねー・・・あの・・・ハァハァ・・」
その後はもう息が切れてしゃべれなかかった。
ダメじゃないの!完全に運動不足よ!!

「ん!?どうしたの?そんなに息切らして?」
ちょっとびっくりした様子で、でもにっこり微笑みながら振り返った。

「あ・・あ・・あの・・」
ハァハァゼィゼィもうダメ・・私・・息も絶え絶えピーンチ!よ。

「ま、ま、深呼吸して深呼吸!はい!吐いてぇ〜!はい!吸って〜!」

「ハァ〜スゥ〜」

私は彼女に言われるがままに深呼吸を数度繰り返して息が整った。

「あのう!これ・・どういうことですか?」
私の首にかけられていたマフラーを首からはずして
彼女の目の前に突き出した。
「あぁ〜それねぇ〜だってさっきあまりにも
あなたが寒そうにしていたからそれはプレゼント!」

そう言って私の手からマフラーを取りそれを私の首に巻いた。

「えっ・・でも・・そんな・・知らない人からそんな・・もらえませんよ。」
とそうつぶやくと私はうつむいた。
「そっか知らない人ね・・でも私はあなたの事知ってたよ。」
とニコニコ微笑んでそう言った。
「え!?どこかでお会いしましたか?」
「どこかで?う〜ん・・・」
しばし彼女はその質問の答えをどう答えようか悩んでいたようだった。
5 名前:マフラー 投稿日:2004/08/01(日) 03:25
そこへ私が乗るはずだったバスが私の目の前を走りすぎた・・・・
「あっ!バスが・・・・来ちゃった・・」
ここからバス停まで戻るには
また来た道を同じように走らなくてはならないわけで・・
今更走って戻った所で到底バスには乗れそうも無いのわけで・・・
私はすっぱりきっぱりと諦めた。
次でいいや次で・・・
それを見ていた彼女は
「あれ?バス乗らないの?ってもうムリか、もう行っちゃったし」
クスクスと笑う彼女を見ていたら
何だかどうしても理由が知りたくなった。
「次のバスまで時間あるんでそれまでちょっと私に付き合ってくださいよ!」
と半ばヤケクソ気味の私が言うと彼女はいいよと微笑みながら言ってくれた。

それから私たちはバス停に戻りながらさっきの話の続きをはじめた。

「ねぇ〜さっきの話だけども、どこかでお会いしました?」
「いや、別に会った事は無いけど見てるよ毎日」
と言って彼女はクスクスと笑った。
「えっ!?私をですか?どこで???」
「そっ!あなたを毎日見てますよ私は」
そう言って意味深な笑いをした。
「あ〜っ!何かそれすっごく気になるなぁ〜教えてくださいよぉ〜」
私は気がつくと誰だか分からないその彼女に酔っ払いのように絡んでいた。

「ははっ!あなたってそんな風にもしゃべるんだ!へぇ〜一つ収穫!」
やりぃ!と言って彼女は小走りしながらクルクル回って喜んでいた。
何だか仔犬のような人だなとフと思った。

「もぉ〜ちょっとまってよぉ〜!」

気がつくと私は彼女を追って駆け出していた。
6 名前:マフラー 投稿日:2004/08/01(日) 03:26
バス停に到着した時私は思い切って彼女に尋ねた。
「ねぇ〜あなたの名前何ていうの?」
「名前ねぇ〜う〜ん・・・」
何やらまた彼女は悩んでいるようだった。
「あっ!バス来たよ!」
「えっ!?」
見ると私の乗るバスがタイミングが良いと言うのか悪いと言うのか近づいてきた。
「名前は今度会った時にね!」
とにっこり微笑んだから私はそれ以上何も言えなかった。

名前を知られるのが嫌なんだろうか?
でも私の事は知っていると言った彼女の事をもう少し知りたいと思った。

バスに乗ろうとした時私はマフラーをしていることを思い出した。
「あの・・マフラー・・」と言いかけた時
「それはプレゼント!もし要らなかったら捨てていいよ!」
と言って私をバスに押し込んだ。
同時に「ビィ――ッ」と音がしてバスのドアが閉まった。

「えっ!」
私はあわててドアの外を見ると彼女は笑って私に手を振っていた。
どんどん小さくなる彼女は結局見えなくなるまで手を振っていた。

いったい彼女は誰なんだろう?
7 名前:マフラー 投稿日:2004/08/01(日) 03:27
私は彼女の事を知らない。
でも彼女は私のことは知っていると言った。
しかも毎日見ていると・・・・。
う〜〜ん謎だ!
でも分からない物を考えていても埒があかない。
それに確かに彼女は言った。

『毎日見てる』と。

毎日見てるのなら明日でも会える可能性はあるわけだ。
でもどこで毎日見てるんだろう?
もしかしてストーカー!?
なんて考えるとちょっと怖くなった。

でもあんなに優しく微笑む人がストーカーだなんて・・・そんな事はない!
そう自分に言い聞かせながらマフラーを触った。

マフラーの端にイニシャルのような数字のようなのもが刺繍してあった。
イニシャルなのか数字なのかよく分からないその文字は

5lとあった。

「ん!?ご・・ごじゅういち??」
なんでしょう?
ゴジュウイチと言えば・・・・イチロー!?

イチローのファンなのかな?
なんてつまらない事を考えていた。
何の意味だか全く分からない5lと書かれた刺繍文字。

まぁ〜それも次に会う時に聞けばいいや
それにあれこれ考えても仕方がないと私は開き直る事にした。
8 名前:私っておかしい? 投稿日:2004/08/01(日) 11:19
『毎日見てる』と確かに彼女は言っていたけども
あれから私はどうしても彼女を見つけることが出来なかった。
いったいどこから見てるんだろうか?

そんな事を考えながら毎日キョロキョロしながら通学してた。
その様子を見かねた友人が教室に入ってきた私に心配そうに話し掛けてきた。

「ね、ね、梨華ちゃん頭大丈夫?」

親友の柴ちゃんが心配げに聞いてきたから私は思わず
「何よ!私はいつも可愛いわよ!」
違う方向に逆切れしていた。
「ははっ・・梨華ちゃんやっぱ頭おかしいね」
そう言って私の頭をナデナデしている柴ちゃん。
「もう!頭なんかおかしくないよ!!」
私の頭を撫でている柴ちゃんの手を払いのけた。
「おぉ〜おぉ〜怖い怖い!お姫様がご立腹ですよ!」
柴ちゃんは笑いながら走っていった。
「もぉ〜柴ちゃんったらぁ〜!!私は何も怒ってないわよ!」

もぉ〜〜〜〜〜〜〜っ!!

怒り心頭の私の背後から誰かが近づいてくるなんて
全然気がつかなかった。
9 名前:私っておかしい? 投稿日:2004/08/01(日) 11:22
急に誰かが目隠しした。
私の視界がふさがれ真っ暗になった。

「だぁ〜れだ?」

私の目を背後から覆い隠したその人物。
声色を変えているようだけど私にはわかる。


「ごっちん!」


「あはっ!あったりぃ〜!」
パッと手が離され急に視界が明るくなった。
「もぉ〜そんなことするのごっちんしかいないでしょ!?」
怒ったような口調でそう言うと。
「あはっ!やっぱ今日の梨華ちゃんはご機嫌斜めですね〜」
そう言って私の肩を抱いた。

「なに!?また柴ちゃんの告げ口?」
私はすぐそばにあるごっちんの顔を睨んだ。
「おぉ〜おぉ〜そんな怖い顔をする梨華ちゃんも可愛いね!」
眉を下げてそう言うと「ははっ」と笑った。
教室の入り口の方を見るとドアの影からこちらを伺う柴ちゃんが居た。
10 名前:私っておかしい? 投稿日:2004/08/01(日) 11:23
あんにゃろう〜何か困った事があればすぐにごっちん呼ぶんだから!!
いつかギャフンと言わせてやるんだから!
って人間って本当にギャフンって言うのかな?
なんて一人でブツブツ言ってると

「ん!?どしたの梨華ちゃん?今日の梨華ちゃんやっぱいつもと違うよ?」
ごっちんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。
そう・・ちょうどキスができるくらいの角度。

スッとごっちんの顔が近寄ってきた。
反射的に私は顔をそむけてしまった。
ごっちんの動きは直前で止まった。

「やっぱ今日の梨華ちゃんちょっと変だよ?なにかあったの?」
今度は本当に心配そうに聞いた。
「えっ!?ごめん・・・別になにもないけど・・ただそんな気分になれないだけ」
そう言うと私はスッとごっちんから体を離して「ごめんね」と走って教室から出た。
11 名前:私っておかしい? 投稿日:2004/08/01(日) 11:24
梨華が出て行ってから直ぐに柴ちゃんがごっちんの下へやって来た。
「いつもならムキになって拒否するくせにねぇ〜ごっちん!」
「うん・・・いつもならグーパンチが出るんだけど・・・」
トーンダウンのごっちん
そして二人が声をそろえて言った。


「「やっぱ梨華ちゃんおかしいよ!!」」


そう言うと二人は梨華が走り去った方向を見つめていた。

12 名前:私っておかしい? 投稿日:2004/08/01(日) 11:26
教室からごっちんから走り去った梨華はひとり屋上にたたずんでいた。
「うっ!やっぱり寒い!!」ブルブルとふるえた。

当然である。

前日も雪が降り積もったのだから寒いのは誰でも分かる。
そうでなくとも冬の屋上など寒いに決まっているのに
なぜか梨華は考え事をしている時はいつも屋上に来てしまうのだ。

屋上から見ると隣に建てられている大学が少しだけ見えた。
うちの学校は高校と大学が隣接のような感じで建てられているんだけども
別に私の高校は隣の大学の付属と言う事ではない。
全然関係のない大学なのです。

なぜそんな風に建てられているのか私には分からないしあまり関心ない。
隣同士であっても今まで別にこれと言って交流もされていなかった。
お互い女子校と言う事で今まで問題も起こっていない。

そう言えばあの人は毎日見ていると言った。

でも学校中捜したけど居なかったし、通学路でも捜したけど居なかった。
家の近所かと思って家の近所も捜してみたけど居なかった。

すると考えられるのはただ一つ!
13 名前:私っておかしい? 投稿日:2004/08/01(日) 11:27

そう!隣の大学だ!


いくらなんでも高校生が大学に潜入して人捜しも出来ないだろう。
それに相手の名前もわからないのに人に聞く事も出来ない。
そう思い屋上から向こうの大学を見てみることにした。

しかし、そう簡単にはいかなかった。
ちょうど大学が見えそうな所で壁が立ちはだかったのだ。

見えそうで見えないもどかしさを覚えながら私は断念した。

でもどこかで見える場所があるに違いない!
そう思った私はその場所を捜そうと思った。

思い立ったら吉日である。

ーとちょうどチャイムが鳴った。

「勝負は放課後までお預けよ!」

―いったい誰と勝負しているんだか・・・。

14 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/01(日) 11:29
とりあえず更新終了。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/02(月) 07:55
更新お疲れ様です。
名前のわからないひとが誰かきになります。
16 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 22:53
あれから学校中見えそうな場所を捜したけど見える場所が見つからなかった。
大学側に面している階段の窓と言う窓を見たけども窓から見える景色は
大きな木が邪魔で全く見えなかった。

いったいどんな風に建ててあるんだか。
こちらから全く見えないなら向こうからだって見えないはず

なぜかそう勝手に確信した。

校舎の裏に回っても学校と学校の間にはコンクリートの壁で仕切られ
立ち木が生い茂っていて全く向こうは窺い知れないジャングルだ。


「一体どうなってるのよぉ〜〜!!」


と怒鳴ってみたところでアリババよろしく洞窟が開くように
森の木が開くわけでも無く私はとても空しくなって捜索を断念した。
17 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:00
いつものように図書室で本の続きを読もうと
いつもの窓際の場所に座った。
パラパラパラとページが進むが全然頭に入ってこない。
同じページを行ったり来たり。

「はぁ〜っ・・」

ため息をついておもむろに窓の外を眺めた。
そう言えばここの図書室も大学側だったんだ!
何か見えるかな?と必死に見ていたが
やっぱり見えるものは背の高い木が生い茂っているだけだった・・・。
しばしボーっとその木々を眺めていたときの事だった。
18 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:03


「あっ!」


自分の予想以上に声をあげていたことに気がつき
あわてて周りを見渡したが
自分の声に特に気にする者が居なくほっとした。
私を含めて3〜4人の生徒しか居ない。
学校の図書室なんてそんなものだ。

見つけたのだ!

たった一箇所だけ小さな隙間が見えるのを!!
目を凝らして見てみると、
向こうの教室の窓辺で誰かが絵を書いているようだった。

じっと見ているとそれはあの人だった。

19 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:05

マフラーさん・・・


だって名前がわからないんだもの。
向こうからだと少し見下ろすような形だから
よく見えるはずだ。
まさかあんなところから見てたなんて・・・。
知らない間に見られていたというよりも
やっと見つけたと言うほうが大きく
私は暫くじっと絵を書くマフラーさんを見つめていた。

何の絵を書いているんだろう?
と思ったその瞬間マフラーさんがこっちを見た。
遠目ながらバッチリ私と目があったような気がした。
思わず私は目をそむけてしまった。
気付かれないようにそっと目をマフラーさんに向けると・・・
マフラーさんは私に向かって手を振っていた。
私はびっくりして思わず席を立って図書室を後にした。

手を振っていたマフラーさん・・・あの手の降り方は
先日私の乗ったバスを見送ってくれたのと同じ手の振り方だった。
20 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:09
やっと見つけた!
しかも隣の大学にいた。
マフラーさんはあの窓から毎日私を見ていたの?
一体いつから見ていたのだろうか?
でもあんな距離からよく見つけたものだ。
眼がとっても良いのでしょうか?
見つけた私も眼が良いのかしら?


マフラーさん・・
あなたの名前は何ていうの?

色々聞いてみたい事がフツフツと湧き上がってきた。




会いたい!



そう思った。
でもどうしたら会える?
大学の前で待ち伏せ?
ううん・・そんな事は出来ない。
第一いつ帰るのかわからないじゃないの!!
それにマフラーさんの名前もわからないじゃないの!!
しっかりするのよ!梨華!!
この間会ったのは偶然よ!
21 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:12
そうよ!
あの窓から何か・・コンタクトを取ればいいのよ!
簡単じゃないの!さぁ〜行くのよ!

梨華!



・・・あらあら脳内一人猿芝居ですか?
はは・・でも猿って・・・



思い立ったら吉日よ!

・・・またか・・・

勇んで図書室のあの窓へ向かった。
そして窓の向こうを見た。


・・・が、
そこには誰も居なかった。
22 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:14

ガ――ン!!


ショックだった。

今さっきまであそこに居たマフラーさんの姿が見えない。

「はぁ〜」

大きなため息をついて図書室を後にした。

とぼとぼとバス停へ向かっていると
後ろの遠くのほうで誰かが誰かを呼んでいる声がした。
でも私には関係ないことだと勝手に解釈して
振り向きもせずに歩いていたら
いきなりガシッと肩をつかまれ私は「キャー!!!」と大声をあげて
その場にしゃがみ込んだ。
23 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:17
「おいおいおい!結構な言われかただよなぁ〜何かショック受けちゃったよ」
拗ねるように言うその人物。
「え!?」
私はあわてて私の肩をつかんだその人物を見た。

その人は間違いなく私が捜していたあの人・・・
マフラーさんだった。


「マフラーさん・・・」


思わず私は声に出していた。
「は?マフラーさん?誰?それ?もしかして私のこと?」
キョトンとするマフラーさん。
「え・・あっ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

気がつけば私はひたすら謝っていた。

「ちょっ!ちょっと待ってよ!それちょっと謝りすぎ!
そんなに謝られると何か私があなたを虐めてるように見えるじゃない!?」

確かにそうだった。
ハッ!とその事に気がついた私は・・・
「ごめんなさい・・・」また謝っていた。

「ははは!だからそれはもういいって!かんべんしてよね〜」
マフラーさんは大きな声で笑った。
その声につられて私も笑った。
24 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:21
「ははは!マフラーさんね・・それでいいよ!私の名前!おもしろいし!」
マフラーさんはそう言って豪快に笑った。

そのまま二人でバス停へと短い道のりを一緒に歩いた。

「でもよくわかったねあの場所が」
そう言ってニヤリとするマフラーさん
「捜しましたよ!学校中!」
そう言ってこれまでの経緯を力説する私。
ほほぉ〜いい所に目が行ったね!
さすがに図書室通いしてるだけじゃないね。
そう言って私の頭を撫でた。

急に胸が何だかモゾモゾした。

マフラーさんは話を続けた。

「さっき私を見つけた後急に居なくなるからもしかして嫌われちゃったかな?
って思ってさーもしかしたらもう会ってくれないかもって思って
あわてて出てきちゃったんだよね」
25 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:23
そう言うマフラーさんを見ると至る所に絵の具がついた服を着ていたのに今気がついた。
「え・・・そんな・・・」
真っ赤になってうつむく私を見てるような見てないようなそんな感じで
マフラーさんはまた話し始めた。

「実はさ、私もあなたと同じ高校だったんだよね。
んでー、3年間向こうの大学を覗き見る場所がないか捜したんだけども
結局見つからなくって、今度は向こうから捜してみようって思って
あの大学受けたんだ!」
そう言ってケラケラと笑った。



なんて人なの!?
たったそれだけの為に隣の大学受けちゃうなんて・・・
そう思うと何だか笑えてきてクスクスと笑った。
26 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:26
「でさ、やっと見つけたんだ!それがあの場所なんだよね!
丁度あの大学は高校よりも少しだけ高台にあるんだよね。
それなのにあの巨大な木が邪魔でどうしても見れないんだよね。
でもあの部屋のあの場所から見るあの部分だけがぽっかりと空いててさ
何だか私を待っていてくれたみたいでうれしかったんだ!
でも・・やっと見つけたあの教室いつも誰も居ないんだよね。
使ってない教室なのかな?って思って毎日見てたんだけど
たまたま夕方まで見てたときがあってさ、その時にやってきたのが
あなただったんだよね!もうさ、すんげーうれしくってさ!
毎日あなたが帰るまで見ちゃってたよ!」

うれしそうに一気に話すマフラーさん

「んでー今度はあの場所で毎日出会うあなたにどうしても会ってみたくってね
あなたが帰ると同時に私も学校を出るんだけどなかなかどうして声をかけるきっかけが
無くってねぇ〜・・それでこの間あのような事をちょっとしてしまいました」

ペロッと舌を出しておどけて見せたマフラーさん
27 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:28
何だかこの人ちょっと変わってるかも?
そう思ったけどもあまりにも面白い話だったので
あははははと二人して笑った。

あれ?何かいいムードじゃない!?
今がチャンスよ!梨華!
さっきの疑問をぶつける時よ!!
そう思い口に出そうとした時

またタイミングがいいと言うのか悪いと言うのか私が乗るべきバスが来た。

「あっ!バス着たよ!」
マフラーさんがそう言って私の手を取り走り出した。
「ちょっ・・ちょっと!」
私の叫びにはお構いなしのマフラーさんは
走りながら大声でバスに向かって
「そのバスちょっとマッタぁ〜!!!」
と言ってバスを止めさせた。
私はしぶしぶバスに乗り込み思い切って言った。
28 名前:思い立ったら吉日 投稿日:2004/08/02(月) 23:32

「また会えますか?」


私の問いににっこり微笑んで
マフラーさんは言った。


「もちろん!」


そう言うと同時にまた無常にもまたバスのドアが閉まった。

またこの間と同じようにマフラーさんは私に向かって手を振っていた。
気がつけば私も同じように手を振っていた。

いつまでもいつまでも・・・。





「あっ!」



突然私はバスの中で大声をあげた!
周りの乗客は少しびっくりしたような顔をして私を見ていた。
「あ・・すいません・・」
私は小さくなって謝り席に座った。

・・・マフラー返すの忘れちゃった。

いつでも返せるようにとクリーニングに出したマフラーを鞄から出して撫でた。
また会えるってマフラーさんも言ってたしね。

なんて考えていたら気がつけばニヤニヤしていた私
・・・一体どうしたんだろう?
マフラーさんのことを考えると
ワクワクドキドキしてしまう自分が居る事に気がついた。




・・・これってなに!?
29 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/02(月) 23:40
時間があったので更新。
とりあえず今日はこれまで



>>15 ありがとうございます。それはもう少し後で出てきます。
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/03(火) 00:33
誰なんですかーーーー!
そこも楽しみにしつつ次回も期待してます
31 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:25
バスの中でそんな事を考えている時に急に携帯の着信を知らせる音楽が流れた。
まぁ〜所詮携帯電話なんて急に鳴る物だ。
今から鳴らします!なんてことはありえないのだから。
もしそんな電話あったらウザイ。
バスの中なので迷惑にならないうちにすばやく携帯を開けた。
携帯の表示には「ごっちんメール」とあった。
メールを開くと

<<やっほー梨華ちゃん!今部活終わったんだけど今から一緒にお茶しない?−ゴトー−>>

私はピピッと携帯を触って返事を送信した。

<<遅いよ!ごっちん!もうバスの中だよ!またね!−梨華−>>

それからごっちんから返事はこなかった。
きっと了承したと言う事だろう。
ここ最近私はマフラーさんの事で頭がいっぱいだった。
ごっちんとは最近教室以外では会っていない。
ちょっと悪かったかな?少し反省した。
32 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:28
家に帰っても何もする気も起きず部屋でボーッとモーツァルトを聞いていた。

―交響曲第40番ト短調K.550が繰り返し流れていた。

最近私はこの曲がお気に入りなのだ。この曲を聞くと落ちつくのだ。
一人暮らしなので少々時間が遅くても音楽の音も文句は言われない。
それに一人暮らしと言っても実家がやってる小さな賃貸マンションの空き部屋だし・・・
全てにおいて親が出してくれてるからその辺は不自由ない。
贅沢この上ない状況なのだ。

それに明日は土曜日で学校も休みだし・・・。

モーツァルトを聞きながらマッタリしているとまた携帯の着信を知らせる音楽が鳴った。
表示を見ると「ごっちん携帯」とあった。

―なんだろう?

<もしもし?>
<あっ!梨華ちゃん!今から出てこれない?>
<え!?今からって今何時よ?>
ごっちんからのの問いかけに少し眉をしかめていると
<あはっ!まーた梨華ちゃん眉毛しかめっ面〜!!>
まるでどこからか見ているかのようにからかってきた。
<なによ!もぉ〜!!私をからかう為に電話してきたの?それならもう切るわよ?>
些細な事でちょっとイライラしているとごっちんが急にまじめな声で
<違うよ。最近の梨華ちゃんってさちょっと様子が変だったから何か悩み事でもあるのかな?
って思ってさ・・・それに最近二人っきりで会ってないしラブラブな事もしてないしね!>
ごっちんはマジメに言ったかと思うと「あはっ!」と電話の向こうで笑った。

<もぉ〜!!!ごっちん!!>
<あはははは!>
<わかったわよ!で、どこに行けばいいの?>
<じゃぁ〜私の家!>
<えっ!?>

私の家とごっちんの家は自転車で30分の方角にあるのだ。
33 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:31
<え〜っ!!無理だよぉ〜!ごっちんの家遠いしそれに今何時だと思うの?>
私は横目で時刻を確認した。

<ん〜んとね〜11時かな?>
<11時かなじゃないでしょう?それにこんなに夜遅くにこーんなに可愛い私を
一人出歩かせようっての!?あなたは!?>
別に自転車で行けば30分位の距離だし行けない事もない。
外は寒いし今日はもう出歩きたくない気分だったのでちょっと怒ってみただけだ。


しばし間があってごっちんはそれには触れずに


<今さ、梨華ちゃん家の前なんだ・・・出てきてよ>
プツッと電話が切れた。
プーップーップーッ・・・と繰り返し発信する音を暫く聞いていて
ハッ!と我に帰りあわてて玄関へ急いだ。

ドアを開けると寒そうに手をハァハァしながら立っているごっちんがいた。

「よっ!」ごっちんは右手を上げてから私を抱きしめ耳元でささやいた。
「会いたかったよ!梨華ちゃん!」
耳元でささやかれてうれしかったのと恥ずかしかったのと両方で思わず
「ごっちん!こんなところでやめてよぉ〜!!」
照れ隠し半分嬉しいの半分でごっちんを私から引き離した。
「梨華ちゃんのケーチ!」
プゥとほっぺを膨らまして拗ねてみるごっちん。
そんなごっちんを見て可愛い!と思った。
「ケチで結構!」私は笑った。

「ごっちん合鍵持ってるんだから入ってくればよかったのに」
「う〜ん今日はちょっとそんな気分だったから」
・・・ってごっちんどんな気分だったんですか?
34 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:32
―外は寒いので部屋に入った。

先に私は玄関で「部屋汚いわよ!」そう言うとごっちんは
「ん〜汚い方が落ち着くし」そう笑った。
「もぉ〜!!汚い方が落ち着くってどういう意味よ!?」
ごっちんにジリジリ詰め寄ると
「梨華ちゃんの匂いのする部屋ならどんな状態でも落ち着くんだよ!」
少し照れたような顔をしながらごっちんは私を後ろから抱きしめながら歩いた。

部屋に入ってごっちんは嬉しそうに「ん〜〜梨華ちゃんの匂いがする!」ベッドにダイブした。
「もぉ〜!!ごっちん!!」私は困ったようなうれしいような顔をした。
私はベッドの側に背中をもたれさせて座った。

しばらく一人でベットで戯れていたごっちんが急に起き上がって後ろから私を抱きしめ耳元で
「ね、梨華ちゃん最近何かあったの?悩み事?
何か最近の梨華ちゃん見てたら心配なんだよね・・それに柴ちゃんも心配してたよ?」
心配そうなごっちんの真剣な顔が横目で見えた。
「うん、ありがとう。でも悩み事はないよ心配してくれてありがとう」
でもその時ごっちんの顔は見れなかった。



―なぜだろう?

35 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:33
急にごっちんが私の首筋にキスをしてきた。
「!!ど・・どうしたの?ごっちん!?」
あまりにもの急な出来事に驚いた。
「んーちょっとね、梨華ちゃん切れだからちょっと充電!」
ごっちんは私の首に顔を沈めた。
何だかムズ痒いくすぐったいような感じだった。

平常を保ってるように見せかける為に
「どうしたのごっちん?」
私がそう言うのが早いか彼女が私を押し倒すのが早いか
一瞬の出来事で私は気がつけば床に寝ていた。

上からごっちんが私を見下ろしていた。

やっぱごっちんって綺麗だなぁ〜だなんて考えてると顔が近寄ってきた。
いつもの私ならこういう体制になってもさりげなく避けるんだけども
今日はなぜか避けずにごっちんを受け入れた。
ごっちんの唇と私の唇がそっと優しく触れる。
私は目を閉じた。
ごっちんは優しく舌で唇を舐めて優しくじっくり味わうように
ゆっくりと唇で上唇をはさみ下唇も優しく唇ではさむ。
しかし決して舌は入れてはこない。
なぜなら私がそう言うの嫌いだから。
何度もされたけどその都度それは嫌だと言って来たので
ごっちんはもう私が嫌がるような事はしない。




あいかわらず部屋の中ではモーツァルトが鳴り響いていた。

36 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:35
突然唇が軽くなり今度は胸が重くなった。
目を開けて見ると私の胸の上に頭を乗せていた。
「ごっちん重いよ!」彼女をどかそうと思ったけど
「何だかこの音楽聴いてたら眠くなってきちゃった暫くこのままで居てもいい?」
眠そうな顔を上げて私を見たのでそんなごっちんが急に愛しくなったので
「いいよ!」しばらくそのままの体勢で寝転がっていた。
同じ曲ばかりいったい何回聞いたんだろう?
ちょっと背中が痛くなった。
時計を見たら時刻は夜中の1時を指していた。

「ねぇ〜ごっちん!起きてよ!もう重いよ!」
私の胸からどかせて起こそうとしたけど
一旦寝ちゃったごっちんを起こすのは至難の業だと悟っていた私は
寝ているごっちんを横に転がしてその横に布団を敷いて
またゴロゴロと転がして布団の上に寝かせて布団をかけた。
私は自分のベッドで寝ようと思ったけれども一緒に同じ布団で寝た。
「おやすみごっちん」彼女にそっと口付けをした。


あっ!CDかけっぱなしだった
そう思ったけどもごっちんの傍がとても心地よくって動く気になれなかった。

37 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:36

―夢を見た。―

それは白い世界だった。

なぜかごっちんとマフラーさんが私をはさんでいがみ合いのケンカをしていた。
ごっちんがマフラーさんの胸倉を掴みこう言った。

“ねぇこれ以上梨華に近づかないでくれる?あんたは一体梨華の何?
梨華は私の恋人なの!!もうこれ以上梨華を振り回さないでよ!”

マフラーさんはニタニタしているだけで何もしゃべらない。
一方的にごっちんがしゃべっているだけだった。

“止めてよごっちん!悪いのは私なんだから!責めるなら私を責めてよ!”

そんな私を見てごっちんは

“なにそれ!?じゃぁ〜まんまゴトーが悪者?ゴトーが全部悪いの?”

そうじゃないのよ・・・
相変わらず何も言わずにニタニタしているマフラーさん

「“やめてよごっちん!!”」

―夢と現実がシンクロした。

38 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:37
「んぁ〜!?どうしたの梨華ちゃん?私何かした?」
眠気眼で私をゆすっているごっちん・・・
あ・・・夢だったんだ・・・よかった。
ホッとしたのもつかの間に私の唇にやわらかい何かが触れた。
ごっちんの唇だった。

「どうしたの?怖い夢でも見た?それとも私に襲われる夢でも見たの?」
ごっちんは寝起きなのに「あはは」と笑った。
つられて私も同じように笑った。
あれ?今日のごっちんは寝起きよくないですか?そう思いながらも
「そうそう!もうちょっとでごっちんに襲われるかと思っちゃった!」
ちょっとボケてみた見た。
「ムッカー!!ゴトーは梨華ちゃんの嫌がることなんてしないのに〜!!」
ほっぺを膨らまして拗ねていた。
確かにごっちんは、体を触られるのがあまり好きではない私に対しては
極度なスキンシップはしてこない。
ちょっと拗ねたごっちんがとても可愛くって思わずごっちんに抱きついた。
私からそんな事あまりしないのでごっちんは一瞬びっくりしたけども
優しく私を抱きしめてくれた。

「ねぇ〜梨華ちゃんそれより今何時?」
私は時計を捜した。
時計は5時を指していた。
「えっとぉ〜5時!」
「んなんだぁ〜!?まだそんな時間か、まだ寝れるよ・・・梨華ちゃんおやすみ・・」
彼女は私を抱きしめたままストンと眠りの世界へ旅立っていった。
「早いよごっちん・・・・・のび太もビックリだよ!」
ちょこっとごっちんのほっぺをつねった。
ムニャムニャ言ってごっちんはほっぺを擦った。
「可愛い!」
思わず私はごっちんに口付けしてから目を閉じた。

あ・・・まだCD鳴りっ放しだ・・・
でもこの体勢を崩すのが嫌なのでそのまままた眠りについた。

39 名前:きっかけは・・・ 投稿日:2004/08/05(木) 21:38


夢うつつの中私は思った。


あの人・・・マフラーさんが仔犬のような人だとしたら

この人・・・私の隣で眠るごっちんは・・猫のようなだなぁ・・そう思った。


40 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/05(木) 21:42
更新終了しました。

>>30 ありがとうございます。
やっぱりそれはもちょっと先です。
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/06(金) 11:42
更新お疲れ様です。
すごい誰か気になるので、毎回すごい更新が楽しみです。
42 名前:ココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:38


―朝目が覚めると隣にいるはずのごっちんがいなかった。

それに音楽も止まっていた。
あれ?ごっちんどこに行ったんだろう?
「ごっちん?どこ?」
彼女を呼んで捜したけど彼女はどこにもいなかった。
もぉ〜一体どこ行っちゃったのよぉ〜!!!
朝っぱらからお怒りモードの私

―なぜでしょう?

玄関のドアがガチャリと開いて誰かがドスドスと入ってきた。
一瞬身構えたが入って来た人が誰だか分かってホッとした。

「もぉ〜!ごっちん!何処行ってたのよぉ〜!!」怒りの矛先を向ける。
「あはっ!ごめんごめん!梨華ちゃん良く眠ってたし黙って出ちゃってごめんね」
重そうにごっちんは買い物袋を前に出した。
43 名前:私のココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:41
「だって梨華ちゃん家何にも無いんだもの」
外国人が困った時にするようなポーズをした。
「ちょっと待っててね!朝ご飯作るから!」ごっちんは台所へ消えていった。
「私も手伝う!」くっ付いて台所へ向かうが
「ん〜ん別に梨華ちゃんに手伝ってもらう・・・」
そこまで言ってごっちんはハッとした顔をして私を見た。
「あ、いやそうだなぁ〜そうだ!梨華ちゃんお皿出してよ!お皿!」
うんうんと一人でうなずいていた。

―あれ?私そんなに変な顔した?
まぁ〜いいわよ!ふん!どうせ私は料理下手ですよ〜だ!!フン!
そんな不機嫌満開の顔をしていたら急に後ろから抱きしめられた。
・・・ごっちんって何気に後ろから抱きしめるの好きだね?
なんて人事みたいに考えてたら
「ね、梨華ちゃん今何考えてた?」鋭い突っ込みありがとうごっちん。
「ん?別に〜」話を逸らそうとしたら急にキスされた。
唇を離してごっちんが「私と居る時はさ、私のことだけ考えててよね」
にっこり笑ってごっちんは料理の続きを始めた。

ごっちんって何気にこう言う時だけ鋭いんだから・・・。
あれ?でも私・・誰か他の事考えてた?
ごっちんの事だよね?
ちょっと頭の中は???で一杯になった。

44 名前:私のココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:44


ごっちんが作ってくれた朝食兼昼食を食べてしばらくマッタリしていた時
私を抱きしめながら「ね、梨華ちゃん・・・エッチしようか!?」と聞いてきた。

答えに困った私は「え?私・・まだ・・そんな気分じゃ・・な・・ぃ・・・」
少しオドオドしているのは自分でも分かる・・
だったら尚更ごっちんにも分かるはずだ。

私の変化には口にせず「ふーんそっか、そう言うと思ったよ」少し拗ねたように言った。
「ごめんね・・・」どうして良いのか分からずに私は謝った。
「あはっ!やだなぁ〜謝らないでよ!ちょっと言ってみただけだよ!
それに言ってるじゃん!梨華ちゃんがしたくなったらしようってね!」
優しく私の頭を抱きしめて撫でた。

何だか訳がわからないけどとても悲しくなった。
泣いている私に気が付くとごっちんは「ごめんね」とまた優しく撫でてくれた。

違うのよ!悪いのは私なのよ!
あまり触れられたくないからと言って、そう言う事をしたのはたった1度キリ。
しかも未遂。途中で怖くなって私がこばんだのだ。
あの時もごっちんは優しく抱きしめて私がそんな気分になるまで待つと言ってくれた。
やっぱりこのままごっちんに我慢させ続けるのは如何なものだろうか?
私はこういう事をするのは好きではない。
でもごっちんの事は好きだし愛している。
しかしその一歩先がどうしても踏み込めないのです。

一歩先行く勇気が今の私にはありません。

私の意見ばかりごっちんに押し付けているのではないだろうか?
ごっちんの気持ちはどうなんだろう?
私は私自身に歯痒い思いをしていた。

そんな私の気持ちを察知したのかごっちんは私の肩に手を置いて静かに言った。

45 名前:私のココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:45
「別にさゴトーは梨華ちゃんとエッチがしたいから付き合ってるんじゃないんだよ?
エッチが目的なら他の人と付き合うよ・・それは前にも言ったでしょ?」
顔を上げてごっちんの顔を見た。
私と目が合ったごっちんはニコッと微笑んで
「梨華ちゃんの傍に居たいと思ったから付き合ってるんだよ?」
そっと優しく私の頬にキスをした。

「それにゴトー男じゃないしそれが目的じゃないもん!」
優しく抱き寄せぎゅっと私を抱きしめた。
「ゴトーはこうして梨華ちゃんを抱きしめてるだけでいいんだよ!」
「ごっちん・・・」私はもうそれ以上何も言えなかった。

しばらくそのままごっちんの腕の中で目を閉じて
ごっちんの心臓のドクンドクンと言う音を聞いていたら
何だか子供の頃のお母さんに抱かれている自分を思い出した。


46 名前:私のココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:46


気が付くと私はごっちんの腕の中で眠っていたようだった。
私が起きた気配を感じたごっちんは「ん!?梨華ちゃん起きた?」
優しく私を抱き起こしてくれた。

「ごめんね、何か私寝ちゃってたみたい」照れ隠しに頭をポリポリかいた。
「いいよ別にそんな事、それよりも梨華ちゃん体痛くない?」
「うん・・大丈夫みたい」
「そっよかった。」
「ん〜梨華ちゃんここんとこ寝不足だったの?」
「え!?そんな事ないけど・・」
「そっか、じゃぁ〜疲れてたんだね」
そっかそっかと独り言のようにつぶやきながらごっちんは「トイレー」と立ち上がった。
47 名前:私のココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:47

時計を見るともう夕方の4時だった。
一体私は何時間この体勢で寝ていたの!?
何だかそう思うとますますごっちんに申し訳なく思った。

トイレから戻ってきたごっちんにまたまた私は謝った。
ごっちんは笑いながら
「いいよいいよ久しぶりに梨華ちゃんのぬくもり感じられたし可愛い寝顔も見れたしね!」
持っていた携帯をおもむろに開いて画像を私に見せた。
「なっ!?」それは私の寝顔の画像だった。
その画像を見た瞬間私の顔はこれ以上ないくらい真っ赤になった。
「やめてよ!ごっちん!それ消してよ!!」
私はあわててごっちんの手にある携帯を取り上げようとした。
「だめー!これはゴトーのコレクションにするのだ―!」
携帯を守るようにして私の手から逃れるように逃げまわった。

あ、何だか今、この一瞬すごく楽しい!私はそう思った。
この時ばかりは私の頭の中からあの人・・・

マフラーさんのことは頭にはなかった。

48 名前:私のココロは今ココに。 投稿日:2004/08/06(金) 23:50


―――梨華が眠りの世界にいる頃のゴトー―――



私の腕の中でスヤスヤと眠る眠り姫。
いつもなら私が寝てるんだけどもね、今日は特別―
それにしても梨華ちゃん最近違う事考えてない?私には分かる・・・・
最近は電話もメールもそっけなくなった。でもそっけないのは最初からだけど。
梨華ちゃんからの電話やメールも少なかったけど最近じゃほとんどこっちからだし。

それにここ数日の彼女の考えている事が私には分からない。
今も一緒にいるのに彼女だけどこか遠くに向かってる。
あまり無理に梨華ちゃんの心の奥まで踏み込まなかったけど
もう少し踏み込んだ方がいいのかな?

「・・ぅ〜ん・・ごっちん・・・」ムニャムニャ

あはっ!夢見てるのかな?私の夢かな?
でもこう言う時に私の知らない人の名前が出てくるとかなり凹むよなぁ〜

あっ!そういや今チャーンス!じゃない?
可愛い姫の寝顔なんてめったに撮れないしね!
何度も言うがいつも寝てるのは私だからね。
足元にある携帯を器用に取った。
が、しかし思いの外梨華ちゃんを動かしてしまった。
「ん〜ん・・・」
や・・やばい!しばしこのままのフリーズしないと!
・・・・・寝た?寝た?寝た?ふぅ〜よし!続行だ!

さてと眠り姫の寝顔を・・・って思ったけどなかなかどうして
この体勢ではフレームに入れるのが難しい。
カシャッ!よし!
カシャッ!カシャッ!カシャッ!
クックックッ!おもしろ〜い!!

49 名前:私のココロは今ココに。 投稿日:2004/08/06(金) 23:51

調子に乗ってると急に梨華ちゃんが動いた。
起きたのか!?
ヤバイ!私は木よ!私は木!木のように固まった。
モゾッと動く梨華ちゃんに私は優しく声をかけた。
「ん!?梨華ちゃん起きた?」梨華ちゃんを抱き起こした。

「ごめんね、何か私寝ちゃってたみたい」梨華ちゃんは頭をポリポリかいていた。
可愛いぃ〜!そんなに寝顔を見られるのが恥ずかしいのかな?
「いいよ別にそんな事、それよりも梨華ちゃん体痛くない?」
「うん・・大丈夫みたい」
「そっよかった。」

そう言えばここ数日の梨華ちゃんの行動から察するに寝不足なのかな?
よし!ここは聞いてみよう!

「ん〜梨華ちゃんここんとこ寝不足だったの?」
「え!?そんな事ないけど・・」そんな事無いのかよ!っていつから私は三村に!?
「そっか、じゃぁ〜疲れてたんだね」
そっかそっか・・まぁ〜あんまり深く聞いてもあれだし・・・
そうだ!さっきの画像を確認しなくっちゃ!
「梨華ちゃんちょっとトイレー」私は立ち上がった。
右手にはしっかり携帯電話が握られていると言う事は言うまでもあるまい。

50 名前:私のココロは今ココに。 投稿日:2004/08/06(金) 23:53
トイレに入って画像を確認!

よし!いいぞ!ゴトー!
この出来栄え!最高だ!
ガッツポーズをした。
おっと!あまり長居するのもあれだしね・・・

トイレから出た私に向かって梨華ちゃんは「ごめんねごっちん!」執拗に謝っていた。
そんなに謝られると何か余計に変に疑っちゃうよぉ〜!?
でもまぁ〜いいや、いいもの手に入ったし!
「いいよいいよ久しぶりに梨華ちゃんのぬくもり感じられたし可愛い寝顔も見れたしね!」
持っていた携帯をおもむろに開いて梨華ちゃんの寝顔画像を見せた。
それを見た梨華ちゃんは「なっ!?」とこの世の物とは思われないほどの驚いた顔をした。
へぇ〜梨華ちゃんって驚くとこんな顔にもなるんだぁ〜!一つ収穫!

見る見るうちに梨華ちゃんの顔が赤くなる。
赤くなった梨華ちゃんも可愛い!!
なぁ〜んてほのぼのして見ていたのも束の間、
物凄い顔をした梨華ちゃんが私の携帯を奪いの来た。
「やめてよ!ごっちん!それ消してよ!!」
おっと!これを消されてはたまるものか!!
「だめー!これはゴトーのコレクションにするのだ―!」
梨華ちゃんの手から逃れるように逃げまわった。

何だか久々に梨華ちゃんと幸せな一時が過ごせたような気がした。


51 名前:私のココロは今ドコに? 投稿日:2004/08/06(金) 23:55



結局夕飯もごっちんが作ってくれた。
何だかんだ言って私は優しく気遣ってくれるごっちんに依存しているのだろうか?

「今日も泊まっていく?」と聞いたけど
「ん〜今日は帰るよ!明日部活だし」笑顔を振り撒いてごっちんは帰っていった。
「部活か・・・」
よく考えると私はごっちんが何の部に入ってるのか知らなかったし教えてもらっていない。
こんな事で本当に付き合ってると言うのだろうか?
そう言えばマフラーさんは絵を書いていたなぁ〜と
一人になると急に私の心の弱い部分から
フツフツと湧き上がってくるあの人の事

・・・マフラーさん

さっきまであんなにもごっちんのことで埋め尽くされていた私の心。
それなのにどうして一人になった途端にマフラーさんのことを思い浮かべてしまうのか
段々自分でもわからなくなってきた。


確かにごっちんのことは好きだし愛してもいる。
ごっちんの優しさに甘えてしまっている自分がいることも分かっている。
でもごっちんは必要以上には私の心の中まで入ってはこないし
私も必要以上にごっちんの心の中まで入ろうとは思わない。
お互いの心の中心には付かず離れず微妙な距離で接している。
これで本当にいいのだろか?

今までも一人になってからごっちんのことを思い浮かべたりはしなかった。

でもマフラーさんは出会いから強烈に私の心を捉えていたような感じがした。
そうじゃなければあんなにも捜したりしなかったと思った。

マフラーさんに会えるとすれば学校がある日だけだ。
一日でも多く会いたいと私は思うようになっていた。

よし!明日学校へ行ってみよう!
第一相手が明日学校に来ているのかどうかなど考える事もしなかった。

とにかく学校へ!

よし!「学校へ行こう!」あれ?どこかで聞いた事あるフレーズ。

まぁ〜いいわ私はまた眠りについた。
今日の私って寝てばっかりね?
52 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/07(土) 00:04
>>41  名無飼育さん
ありがとうございます。
そんなに誰なのか気になられてしまっては
何だか名前を出すのがちょっと・・・です。
多分次の更新で名前が出てくると思うので・・・
あまり期待されない様。
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/07(土) 09:13
更新お疲れ様です。
次、名前がでてくるのやっぱり楽しみです。(笑
それでは、少し期待して待ちます。(笑
54 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:31

朝いつもより早くに目が覚めた。

そりゃあれだけ寝れば早くに目が覚めますよね。
・・・って誰にしゃべりかけてるんだか。


お昼頃に日曜だけど学校なので制服を着て行く。
運動部の人達がグラウンドで部活をしていた。
私は閉まっているだろうと思いながら図書室へ足を運んだ。
ドキドキしながらドアに手を添える。


思い切ってドアを引・・・・けなかった。

やっぱりドアは閉まっていた。
そりゃそうよね、日曜日だもの・・・。
悲しみ最大級の体を引きずって帰る事にした。
丁度正門を出ようとした時、私を呼ぶ声がした。

振り返るとごっちんだった。

「あれ?梨華ちゃん今日はどうしたの?部活もしてないのに?」
ごっちんは相変わらず私に優しさ最上級の笑顔で声をかけてきた。
どうしようごっちんに何て言い訳しよう・・・
なんて色々考えていたら
向こうのほうからごっちんを呼ぶ声が聞こえてきたので
ごっちんは私にはあえて何も聞かずに
「じゃっ!私これから部活だから!じゃぁね!」走って行った。

・・・ごっちん・・何の部活してるの?

今そう聞くチャンスだったのに・・・なぜか聞けなかった。

ううん、聞けなかったのじゃなくて聞かなかった。

その時私は違う事を考えていた。

どうして用事もないのに学校へ来たのかと言う言い訳を・・・

今すごく心が痛かった。

これって一体なんだろう?

55 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:34

図書室に入れなかったから私は思い切って
隣の大学まで行ってみる事にした。

ダ メ モ ト である。


そう思い意気込んで歩き始めて数分・・・
それにしても遠い!
こんなにも隣の大学の正門が遠いなんて・・・
でもあの時マフラーさんは私が門の外に出ると同時くらいにはもう出てきていた。
どんなに速い脚をもってるのかしら?

―もしかしてカモシカかしら?

それはまた違う意味ね。
陸上でもしてるのかしら?
でも確かにあの時は絵を書いていたわよね?

頭一杯???マークで満たされた時に
やっと大学の正門にたどり着いた。

中に入っちゃおうかとも思ったけど門が閉じられているので諦めた。
しばらく門の前でたたずんでいたけど、
誰も通る気配がないので諦めて帰ろうとしたその時だった。


「お―――い!!」


誰かが誰かを呼ぶ声がする。
あ・・・誰か居たんだ。

そんな事にはお構いなしで私は帰る事にした。
トボトボと歩いていた所にいきなりガシッと腕を掴まれた。


「ひひぃ〜!!」


あまりにもの恐怖にビックリして悲鳴をあげて腰を抜かしてしまった。

56 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:39

「おいおいおい!今度はひひぃ〜!かよ!?
いいかげん傷つくよなぁ〜」

恐る恐る見上げるとマフラーさんだった。


「あ・・・」

「もう!さっきから呼んでんのに無視して行っちゃおうとするから正直焦ったよ!」
額の汗を拭きつつマフラーさんはフゥフゥ言いながら私を立たせてくれた。
「あ・・ごめんなさい・・・」そして私はいきなり本題に入った。

「あのう、この間私を追いかけてきた時速くありませんでした?」
「は!?・・いきなりだね」
「はい!イキナリです!だって、ここの正門そこですよね?」指を指す。
「うん」
「だったらおかしいじゃないですか!?」
「は?」
「ここからだと一生懸命走ったって絶対追いつかないはずでしょ?」
この際だ!とばかりに私は疑問をぶつけてみた。
するとマフラーさんは「う〜ん・・・」一時悩んで見てから
私の手を取り「こっち来てよ」と私を引っ張った。

「あのう?何処へ行くんですか?」
「ん?や・・だから今の質問の答えをね」にっこり笑った。


よく考えてみると私の手とマフラーさんの手が今・・・繋がってるんだよね。
そう思うと急に恥ずかしくなった。
57 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:43

意識を逸らそうと
「あの・・今日って学校お休みですよね?」
だなんて意味の無い話をした。

「うんまぁ〜ね。でもあんまり休みって関係ないからね」
そう言ってマフラーさんは笑った。
「そうなんですか・・・」
あまりにものつまらない自分の質問に意気消沈していたら

「ん!?どしたぁ〜お腹でも痛い?」
心配そうな顔をして私の顔を覗き込んできた。
「い・・いえ何でもありません」
瞬時に顔が真っ赤になったであろう。
「そっか、それならいいや」
また何事も無かったように私の手を引いて歩いた。

しばらく歩いて急にマフラーさんが止まった。

「ここ」

そう指差した。

そこには高校と大学の境目から大学側へ伸びている金網にポッカリ空いた穴があった。
「ん〜とね、ここを通って来ました!」
小学生のように手を上に上げてマフラーさんは答えた。
「なるほどね」
なぜか私は感心してしまった。

「この穴さ実は私が開けたんだよね!」
マフラーさんは小学男子のように得意げに言った。
「えっ!?そんなことしても大丈夫なんですか!?」
「大丈夫大丈夫!だってここの正門まで遠いんだもん!それに皆も使ってるし!」
また豪快にマフラーさんは笑った。
「あはは・・」マフラーさんが笑うから私も笑うしかなかった。


58 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:47


「そうだ!あなたにさ、見せたい物があるんだよね!」
マフラーさんは突然そう言うと有無を言わさずに
「ちょっと来てよ!」と私の手を引き例の穴をくぐり学校内へ入った。

校舎の入り口でIDカードみたいな物を差し込むとピッと音がしてドアが開いた。
同時にパシャとカメラのフラッシュのような物が光って私は目を閉じた。
「あ、ごめんね〜一応セキュリティー関係でね、出入りする人物撮影してるんだよ」
一応女子校だからね。そう言ってへっへっへっと笑った。
へぇ〜オートロックの大学なんてあるんだぁ〜なんて感心している私を尻目に
ズンズンと私の手を引き歩いていくマフラーさんと引かれるままに付いて行く私。

始めて見る窺い知れなかった隣の大学での未知との遭遇。
私はキョロキョロ辺りを見ながら手を引かれていた。
シーンと静まり返ってホテルみたいに小さい小部屋が
いくつも連なっている廊下を歩いていたら
ある部屋の前でマフラーさんは止まった。

「ここ」

マフラーさんはカードをピッと挿入してドアを引いた。
「おいで」
にっこりと微笑みながら手招きするのでつられるように私は部屋の中に入った。
それと同時にバタンとドアが閉まった。
59 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:50

広さからして15〜20畳位?のワンルームっぽい造りで
至る所に物が散乱していてお世辞にも決して綺麗な空間ではない。
白い壁には絵の具の跡や落書き、
奥にはソファーや椅子にテーブル冷蔵庫もあったりした。
でもなぜか部屋の真中に黄色いテープが2本貼ってあり
そこだけは物が何も落ちていなかった。

「ここは?」
「ん!?あぁ〜ここは私の部屋」
「えっ?部屋?」
「あぁ〜部屋って言うか・・・部屋だな」私は思わずズッコケてしまった。
「ははは!いいねぇ〜そのズッコケ」ケラケラと笑うマフラーさん。
何だかそれを見ていた私もつられて笑った。
「そんなことよりさちょっと来てよ!こっちこっち!」
私は手招きする方へ小走りに急いだ。

窓の外を見るように言われた。

「あ!・・・」

窓の外には私の学校のあの図書室の窓が小さく見えた。
「わっ!本当だ!凄い!!凄いよ!マフラーさん!」
私はマフラーさんの手を取り、バターになっちゃうよ?
と、ばかりにグルグル回った。



ひとしきり喜んだ後マフラーさんが言った。

「そういやさ、お互い自己紹介してなかったよね?」


―確かにそうだった。


マフラーさんは私が勝手に名付けただけだしね。


「じゃぁ〜私から言うね」
マフラーさんが少し照れたように言った。

60 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:57


「私の名前は市井紗耶香。
マフラーさんと呼んでくれていいよ!よろしく!」
照れながらそう言うと豪快に笑った。
61 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:58

「わ・私の名前は・・石川梨華です。よ・よろしくお願いします。」
ペコリとお辞儀をした。


「へぇ〜梨華ちゃんかぁ〜可愛い名前だね、顔も可愛いけど」
マフラーさんはそう言うとまたケラケラ笑った。
可愛いと言われて私は顔が真っ赤になった。

「ねぇ〜リカってどういう漢字書くの?
国語算数理科社会の理科?って例えが古いよなぁ〜」
そう言うと頭をポリポリかいていた。

「あの・・えっと、果物の梨に華道の華で梨華です」

「へぇ〜漢字も可愛いんだ」
「ふぇっ・・・」また可愛いと言われてまた顔が真っ赤になった。

「じゃぁ〜さ、梨華ちゃんの華の字を取って、
『ハナ』ちゃんって呼ぶ事にする!」
そう腰に手を当てて胸を張ってマフラーさんは言った。

「いいかな?」
マフラーさんはうつむいたままの私の顔を覗き込むように顔を近づけてきた。

「えっ!あっ!はい!い・い・いいです!それで!」
焦った私はそう返事したような記憶があるような無いような・・・。
それに今までハナちゃんだなんて呼ばれた事もなかったから少し驚いた。

「ははっ!おもしろいなぁ〜ハナちゃんは!」
私の頭を撫でながらまた豪快に笑った。
究極に恥ずかしい私はうつむいたまま顔が上げれなかった。


うつむきながら思い出した。


62 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 20:59

「あっ!そう言えばあれはどういう意味なんですか?」
ちょっと自分でもビックリするくらいの大きい声を出した。

「わっ!びっくりした!え!?あれって何?」
「あれですよ、マフラーです」
「は?マフラー?」
「そうです!あのマフラーに刺繍されていたイニシャルみたいな数字ですよ!」
「数字?」
「5lって書いてありましたけど?」
う〜ん・・・としばらく腕組みをして考えていたマフラーさん。
心当たりがあったのか「ははっ!」と笑いながら答えた。

63 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 21:00

「あれはSとIだよ!」
「エスとアイ?」
「そう!紗耶香のSと市井のI」
「え・・でもあれは5lって読めたんですが・・・」

イチローのファンかと思っちゃいました・・・
なんてとても声に出して言えませんでしたけどもね。

「51って・・ちょっとショックだよなぁ〜」と沈んだ表情を見せた。
Sって何気に難しいんだよな〜あの丸の所がうまくいかないんだよなぁ〜
マフラーさんは一人で何かブツブツ言っていた。

私は大事な事を思い出した。


64 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 21:03

「あっ!」
「わっ!?今度はなに?」
「私、マフラー持って来るの忘れちゃった・・・」

もぉ〜自分のバカさ加減にとうちゃん情けなくなってくりゃぁ〜だわ!全く!

「あぁ〜あれね、あれはハナちゃんにあげたんだから返さなくってもいいよ!」
「えっ・・でも・・・」
「あ〜もし要らなかったら捨ててくれてもいいし!」

優しい顔をしながら私の頭を撫でた。
私は黙ってうつむいて頭を撫でられたまま何も言えなかった。
何だかマフラーさんに撫でられているのがとても心地よく感じた。

65 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 21:04

急に私はマフラーさんに抱きしめられた。
「えっ!」私はビックリして体を怖ばらさせた。
急激に恐怖感がブワッと湧き上がってきた。

「ごめん・・なんか今こうしないとハナちゃんが私の前から消えちゃいそうに思ったから」
マフラーさんは「ごめんね」と私を腕から離して私の肩に手を置き私の顔を見た。

「あの・・・」

一瞬の静寂が流れた。


―――その時。


66 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 21:07

ドン!ガチャッ!

勢いよく扉が開いた。

「あっ!紗耶香!あんた何やってんの!?高校生連れ込んじゃダメじゃない!」
大きな荷物を抱えたその人は私には目もくれずに部屋の奥の椅子にドカッと座った。

「ちょっと圭ちゃん!人聞きの悪い事言わないでよねぇ〜!」
マフラーさんは私の耳元で小声で「ちょっとごめんね」と
圭ちゃんと呼ばれたその人の傍まで走って行き何やらコソコソ話をしていた。

何だか私お邪魔かしら?
そう思い帰ることにした。

「あのう・・私これで帰ります・・」
小さな声で私が言うとマフラーさんは慌てて戻ってきて
「わっ!ちょっとまってよ!ハナちゃんに見せたい物がもう一つあるんだよ!」
有無を言わさずに私の手を引き白い布がかけてあるカンバスの前に立ち
おもむろに布を剥ぐと絵が現れた。

その絵を見た瞬間私は理解した。

67 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/10(火) 21:10

「これって・・・」
「そう!これはあの窓から見える読書中のハナちゃんです!」
物凄く嬉しそうな顔で笑った。

「よかったらさ、これ・・・貰ってくれない?」
イキナリの申し出に私は絶句した・・・
と言うよりも恥ずかしさで胸が一杯だった。

「・・ってイキナリ言われても困るよね」はは・・と苦笑いをしていた。

急に私の頭の中を色んな事がグルグルと駆け巡り次の瞬間
私の心が張り裂けんばかりに悲鳴をあげて・・そして私は倒れた。



―ごっちん助けて!―


68 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/10(火) 21:13
え〜途中ですが今日の更新終です。

『学校へ行こうは』後少し続きます。
今回はとりあえず名前出しまでという事でご了承ください。
そろそろストックも無くなってきたので
これからの更新は厳しくなるやも知れませんので
その事も併せてご了承くださいませ。


>>53 名無飼育さん
ありがとうございます。
やっと名前出しましたがご想像通りだったでしょうか?
ご期待にそえましたでしょうか?
それとも最後まで名前出さない方が良かったでしょうかね^^;

69 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:33


―そこは白い世界だった。
 
 


70 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:34

・・・誰かの話し声がする。
私はいったいどうしちゃったのかしら?
なぜここはこんなに白いの?
精神と時の部屋かしら?
 
71 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:35

『ね〜紗耶香これからどうすんの?』
『ん〜どうしよっかなぁ〜』
『何!?あんたここまで来てまだ悩んでるの?』
『イヤ・・だってさ、圭ちゃん・・普通悩むでしょ?』
『まぁ〜そうだけど・・・』

一体何の話をしてるんでしょう?
紗耶香?圭ちゃん?だれ?それ???



あっ!思い出した!
私マフラーさんの学校へ!!
そう思った瞬間目が覚めた。
72 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:36

「あっ!紗耶香!彼女起きたよ!」私の傍に居る誰かが言った。
急に顔の前に影が出来「大丈夫?貧血?」
心配そうなマフラーさんの顔が近づいてきた。
「キャッ!」
私はビックリして手で顔を隠したら今度は急に明るくなった。
よく見ると服のエリを掴まれて引っ張られているマフラーさんだった。
「コラ紗耶香!そんなに顔近づけたらビックリするでしょうが!」
「ハイ・・しゅいましぇん・・」
シュンと怒られてるマフラーさんを見ていたら仔犬がいたずらをして
叱られた時のように耳が垂れてるように思えておかしくなって笑った。
73 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:38

「あっ!何笑ってるんだよぉ〜!」
そんな私を見てマフラーさんが怒って来たけど
「くぉら!紗耶香!」
また頭をゴチンと殴られたらまた耳が垂れてるように思えてまた笑った。
「元気になったみたいだね」
圭ちゃんと呼ばれていた人が私に近づいて来た。
「あ・・はい・・どうもすいませんでした。」そう謝る私を制して

「私は保田圭。紗耶香とは同じ部屋なんだ!
【圭ちゃん】って呼んでね!よろしく!」
そう言っておもむろに私の手を取り握手した。

「あーっ!圭ちゃんむやみやたらとハナちゃんに触らないでよねぇ〜!!」
マフラーさんは保田さんの手を私から離し変わりにマフラーさんが私の手を握った。

「はいはいはい!あぁ〜あやってられないねぇ〜!」
ちょっとムッとしたようなあきれたような表情の保田さんは
少し離れた所にある椅子に座って雑誌を読み始めた。
74 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:41

「あのう・・・」
「あ、あれはあれで放っておけばいいんだよ!」
そう言ってマフラーさんは手元にあるポットからお湯を出して
「お茶でいいよね?」そう言って「熱いから気を付けてね!」と私に渡してくれた。
お茶をのんで一息ついてから私はマフラーさんに聞いた。
 
75 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:44

「あのーこの部屋って何の部屋なんですか?ここに住んでらっしゃるんですか?」
「んーとねぇ〜・・・」
と一頻り考えてからじゃべり始めた。

「入学時に与えられる多目的部屋?ってのかな?
何でも好きな事しても良いよって言う部屋で、
まぁ〜ここで授業も受けるんだけどもね。」
「授業も?」
「そう!ほらあそこの机にモニターがついてるでしょ?」向こうにある机を指差した。
「あ、本当だ!」私はその机に歩み寄った。

マフラーさんも机に近寄り机に組み込まれた画面をトントントンと叩きながら
「この画面に授業風景が映るという仕組みなんだよね!」
「へぇ〜何だか駅前留学みたいですね!」
76 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:46

「駅前留学ね〜まぁ〜そんなもんかな?
この学校にはサークルとか無いから各自この部屋でやりたい事するんだけども、
まぁ〜中にはここに住んでる人も居るみたいだけどね。
ははっ・・んで私は部屋を決める時、
窓から向こうが見れないかどうか全部の部屋見て回って
この部屋であれを見つけてこの部屋に決めたんだけど、
実はこの部屋本当は先客がいてさ、
その人に無理言って代わってもらったんだよね。」
と、申し訳なさそうに保田さんを見た。

「ふん!」と保田さんは背中を向けた。

― 一体何の事なんだか・・・
 
77 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:47

「そう言えばあの黄色いテープはなんですか?」
私は部屋の真中にはってある黄色いテープを指した。
しばらくじーっと私の指の先にある黄色いテープを見ていきなり二人が笑い始めた。

な・・な・・なんなのよ!?

お腹を抱えて笑い転げているマフラーさんを尻目に保田さんが言った。
「あれはね、境界線」
「境界線?」
「そっ 境界線。こいつはすぐに散らかすんだよね。
だから境界線を引いて通路を確保してるんだよ!」
そう言ってマフラーさんの頭を小突いた。
「イテッ」と頭を撫でながら「へへッ」と笑った。
 
78 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:49

部屋を見渡すと確かにマフラーさんの場所と保田さんの場所物の乱れ方が違う。
何かすごく納得した。


あまり長居してもアレなのでそろそろ帰ろうと思い
「あのう・・私そろそろ帰ります」
と言う私の言葉にマフラーさんはシュンとして少し寂しそうな顔をした。

あ・・・今のその顔も犬っぽくって可愛いかも!


「あっ・・そ、じゃぁ〜帰り分かる?」

えっと・・・・ここまでどうやて来たんだっけ?

「あの・・わかりません・・」
「ですよね!」
ニコニコしながらマフラーさんは言った。
急にマフラーさんの周りにパッと花が咲いたように輝いた。

何かこの人分かりやすいかも!
 
79 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:50

「んじゃ!圭ちゃんまたね!」と保田さんに言ってから
「んじゃ行こっか!?」マフラーさんは私と手を繋いだ。
「お邪魔しました・・」私は保田さんにお辞儀をして部屋を出た。
部屋の奥では「おう!」と保田さんは雑誌を見ながら片手を上げていた。

部屋の外に出てから聞いてみた
「あの・・これって全部部屋なんですか?」
「そっ!全部部屋だよ!」
「スゴーイ!ホテルみたい!」
私は目をキラキラ輝かせながら歩いたら

ある部屋の前を通りかかった時、
急にドアが開いてビックリした私は思わず腰が抜けた。
 
80 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:51

「わっ!ハナちゃん大丈夫?」
「はは・・大丈夫です・・ちょっとビックリしただけです」

何ともはや情けない・・・。

部屋から出てきた人物に向かってマフラーさんは吠えた。
 
81 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:53

「くぉっらぁ〜!!ヨシザー!!危ねーだろうが!!」
マフラーさんは金髪頭のヨシザーと呼ばれた人の胸倉に掴みかかった。
・・・しかし、このヨシザーという人、金髪も驚いたが背がデカイ。

「ん〜なんですかぁ〜!?一番さん?」
マフラーさんを見下すような態度・・・態度もデカイようだ。

「い・ち・い・だよ!テメェ〜何回同じ事言わせんだよ!!」
「いいじゃないスかぁ〜一位も一番も同じだし・・あれ?一等賞の方が良かったスかぁ〜?」
ヨシザーさんは眼をキラキラさせてまるでいたずらっ子のようだった。

「・・って読み方は同じだけど漢字が違げーだろう!?漢字が!!」
「ヨシザーバカなんで漢字分かりましぇ〜ん!!」
「このやろう!それよりもハナちゃんに謝れよ!このスットコどっこいが!!」
ヨシザーさんを睨みつけながら私の方を顎で示すマフラーさん・・・。

えっ!?わた・・わた・・私なの!?
 
82 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:54

そのヨシザーと呼ばれた人は私を見て舌なめずりをしながら近づいて来る。
「へぇ〜ハナちゃんねぇ〜なかなか可愛いじゃないっスかぁ〜」

・・・こ・・怖いわ!この人・・

「くぉ〜ら!怖がってんじゃねーかよ!近づくな!下がれよお前は!!」
ヨシザーさんを突き飛ばし「シッ!シッ!」と犬を追っ払うように言った。
「イッテ〜なぁ〜!ちぇっ相変わらず一番さんはケチッスね!」
そう言い残すとヨシザーさんは部屋に戻っていった。

「一番じゃなく市井だっつーーの!!」
マフラーさんは閉まったドアの向こうに向かって怒鳴っていた。
 
83 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:55
 
「ごめんね、怖かったでしょ?」
「いえ・・ちょっとビックリしただけです・・あの・・あの人誰なんですか?」
「あぁ〜あいつね、ヨシザーって言うんだけども、ここの大学の生徒じゃないんだよね」
「えっ!?」
「ん〜とあいつの、かの・・イヤ友達がね、あの部屋にいててちょこちょこ来るんだよね」
全くイヤになっちゃうよはは・・と苦笑いした。

「そうなんですか・・」この大学って学生以外でも出入りできるの?
「そう言うわけだからハナちゃんも来たかったら来てもいいよ!」
「えっ!でも部外者立ち入り禁止じゃ?」
「いいーの!いいーの!この学校にそんなもの存在しないの!まぁ〜男は入れないけどもね」
苦笑いしながらマフラーさんは「そうだそうだ!」と言いながら
私にメモ用紙を渡した。
 
84 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:59

「えっと・・これは?」
「えーっとそれは私の携帯の番号とメールアドレス!
用事が無くてもかけてきてね!」
満面の笑顔でにっこり微笑んだ。
「じゃぁ〜私も・・・」
貰った紙の空白に書いて渡した。

「やたっ!!サンキュゥ〜四級〜五級〜♪
ハナちゃんのメルアドと携番ゲットだぜ!」
コロコロと凄く嬉しそうに踊っていた。

何だか仔犬と戯れてるしんな感じがして心が癒された気がした。
 
85 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 00:59

そして例の金網の穴を抜けていつものバス停まで送ってもらった。
「一緒にご飯でもって思ったんだけど今忙しくってね、ごめんね!今度行こうよ絶対!」
ちょっと残念そうな表情のマフラーさん・・
私ももうお別れかと思うと残念だった。
何かの歌でもあったけど

『次の約束があるから生きていけるよ』

・・・だったっけ?
そうだ!次の約束があればまた会えるんだよね!
 
86 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:01

「はい!是非今度ご一緒しましょう!」
私はにっこり微笑むと、パッと花が咲いたようにみるみるマフラーさんの表情が明るくなって
私の手を握り「絶対だよ!絶対!約束だよ!や・く・そ・く!」と小指と小指を絡ませて
指きりげんまんをした。

指きりなんて何年振りかしら?

なんて考えてたらまた、タイミングが良いと言うのか悪いと言うのかバスが来た。
 
87 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:02

「じゃぁ〜またね!」とマフラーさんは手を振った。
私も手を振りながら「またね!」そう言ってバスに乗り込んだ。
何か言おうとした時、無常にもまたドアが閉まった。
もぅ!もうちょっと開いててくれてもいいじゃないのよ!!
関係ない運転手を呪った。

外では相変わらずマフラーさんが手を振っていた。

いつまでも・・・いつまでも・・・
 
88 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:03


―――手を振って見送っていた市井―――


ふぅ〜〜〜っ!と大きなため息をついた。
そして真冬のキンキンに冷たい空気を目一杯吸い込んだ。
冬なのに汗びっしょりの市井。
汗を拭い今来た道を戻っていく。

金網の穴から大学の敷地内に入り自部屋へ向かう途中
ドアがガチャリと開いた。
 
89 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:07

「あっ!一番さん!え〜っと花子ちゃんは?」
それはまたヨシザーだった。

「あ゛?一番でなく『市井!』それに花子じゃなく『ハナ』ちゃん!」
そんじゃぁ〜ね!そう言ってそのまま通り過ぎようとしたその時
「一番さんちょっと!」ヨシザーが腕を掴んだ。
「なに?今忙しいんだけど?」
うっとしそうにヨシザーを見たら何やら真剣な表情をしていたので
しょうがない・・少し相手してしてあげる事にした。

「どしたの?また?」部屋の中を指差した。
コクリとうなずくヨシザー。

こそっと覗き見ると、いるいるいる。
ぼーっと一点を見つめたままのあれが・・・
 
90 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:08

「ーで今度はなに?」
「何か一番さんのこれからの恋愛運を占うんだって言ってましたよ?」
「はぁ〜?まぁ〜せいぜい良い様に占っておいてよって言っといて!」
そんじゃぁ〜ね!と手をヒラヒラさせて去って行った。

「ちょっとぉ〜!一番さ〜ん!
もうちょっと位ヨシザーと遊んでくれても良いじゃないっすかぁ〜!
今ヨシザー暇なんですよぉ〜!!」

ヨシザーは騒いでいた。

ったくいくらなんでもそんなに大きい声出したらヤツに聞えるっつーの!

アホか?あいつは?
 
91 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:09

ずーっと騒いでいるヨシザーを無視して自部屋に戻ってきた。

ドアを開けると圭ちゃんがこっちを見ていた。

「うっす!圭ちゃん!ただいま!」
「おぅ!お帰り!」
圭ちゃんはソファーに踏ん反り返ったまま右手を上げた。

「ぉぅぉぅ偉いね〜ちゃんと送ってきたんだ?」
「や・・やだな圭ちゃん・・・そんなの当たり前じゃん!」
「あんたの事だからそのままお持ち帰りかと思ってたわ」
「ひ・・人聞きの悪い事言わないでよねぇ〜」

ふぅ〜と溜息をついたらすかさず圭ちゃんが

「あいつ・・ヨシザー居たの?」
「居た居た!あいつうぜーっつーの!いいかげん!」
 
92 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:10

「ふ〜ん・・・で、あんたあの娘どうするつもり?」
「え!?ヨシザー?」
「バーカ!さっき連れ込んでたあの娘だよ!
あんたずーっとあの窓から見てたんでしょ?
この間もしゃべれたとか言って凄く喜んでたクセに」
「・・・」
「今日も連れて来るなら連れて来るって言ってよね!」
頭をコツンと小突いた。

「イテ!でも今日は本当にそんなつもりじゃなかったんだよ!」
「フーン」と顎を上に上げて上目使いの疑いの眼差し。
「や・・本当だって!たまたま食堂行った帰りに彼女が校門の前に立ってたんだってば!」
「フーンそんなの信じられるわけ無いでしょ!?
そんな事言って今日約束してたんじゃないの?」

さすが圭ちゃん!
蛇のようにしつこく絡んでくる。

・・・さすがって・・・
 
 
93 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:12

「本当だって!それに・・・」
「それに?」






「好きだし・・・」



「ダァ〜〜〜!!!」
バシッ!!っと圭ちゃんは叫んでスリッパで私の頭を叩いた。


「返事になってないでしょうが!!!」
鬼のように圭ちゃんがムクムク巨大化した。
「ごめんなさい・・・」
私は一寸法師のようにシュルシュル小さくなった。

「まぁ〜いいわ。でこれからどうするの?」
「どうするって?」
「あんたの事だから連絡先とか聞いたんでしょ?」
「あ・・あんたの事ってどういうことだよ〜まぁ〜聞いたけどさぁ〜・・・」
「って聞いたのかよ!?」
あれ?圭ちゃんっていつから三村?
 
94 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:14

「ーで聞いたの?」
「何を?」
パコーン!とスリッパで私の頭を叩き
「付き合ってる人いるかどうかでしょうが!?」
また巨大な鬼に変身した。
「ぃぇ・・・聞いてません」
私は涙目で、また一寸法師になった。

圭ちゃんの質問いつも主語が無いから意味がわかんないんだもん・・ウルウル
 
95 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:15

あっ!そうだった!うかつだった!

あんなに可愛いんだもの恋人がいても不思議じゃないよなぁ〜・・・
これじゃぁ〜私に勝ち目は無いよなぁ〜・・・

もうすでに沈んでいる私に向かって圭ちゃんは
「あんだけ可愛いんだからもしいたとしても落ち込まないでよ」
私の頭をワシワシと圭ちゃんは撫でて
「まぁ〜お持ち帰りしなかったって事は本気だって事か・・」
そう呟くと圭ちゃんは部屋を出て行った。
 
96 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:16

何か酷い言われ方なんですけど・・・・
でもまぁ〜いいか、携番とメルアドゲットしたし!。
成るように成れ・・・だ!

くしゃくしゃの頭で圭ちゃんの出て行ったドアを見つめていた。
 

97 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:18

でもどうしよっか・・・
え〜い!メール送っちゃえ!

ん〜っと

<<今日は楽しかったよ!絶対に今度ご飯に行きましょう!−マフラーさんより−>>

送信!と。

直ぐに返事が来た。

<<私も楽しかったです。是非ご一緒しましょう♪−梨華−>>

くぅ〜〜〜!!この!この!梨華だってよ!!
めちゃめちゃ可愛いぃ〜〜〜!!!
携帯を握り締めてグルグル走り回って小躍りした。
このメールは永久保存決定だな!うん。
 
98 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:20

−一方相変わらずの梨華−


家に帰ってボーっとしてモーツァルトを聞いていた時
携帯の着信音が鳴った。
メールかな?そう思い見ると
マフラーさんからのメールだった。

<<今日は楽しかったよ!絶対に今度ご飯に行きましょう!−マフラーさんより−>>

きゃぁ〜!!!
マフラーさんよりだって!!可愛い〜!!
思わず携帯を握り締めてゴロゴロ転がった。

私もすかさず返信をした。

<<私も楽しかったです。是非ご一緒しましょう♪−ハナより−>>

・・ってちょっと待ってよ!
いくらなんでも自分からハナと名乗るのは恥ずかしいわよ梨華!

やり直しっと!ピピピッと

<<私も楽しかったです。是非ご一緒しましょう♪−梨華より−>>

これでよし・・・と!
BLACKMAIL送信!

・・・って違うわよ!
 
99 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:21
 
100 名前:学校へ行こう 投稿日:2004/08/16(月) 01:22
 
 
101 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/16(月) 01:24
更新終了しました。
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/16(月) 01:58
2人ともカワイー♪
この調子でがんばってください
103 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 19:53


―次の日―


次の日私はウッキウキのワックワクで登校した。

♪Yeah!めっちゃホリディ〜ウキウキな夏希望〜
って今は冬よ!梨華!
でも私の頭の中は夏なのよ!

ルルル〜ラララ〜♪

そんな私の様子を見た柴ちゃんは
教室に入るなりあわてて私に駆け寄り
「梨華ちゃぁ〜ん!?大丈夫?」と私の顔を覗き込んできた。
 
104 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 19:56

しかし!
今日の私は多少の事言われても
全然問題ナッシングなのですよ!ふっふっふっ!

腰に手を当ててフッフッフッと言う私を見て
頭を抱え私をスルーしていく柴ちゃん

あれ?どうしてのよ!?
いつものように絡んで来ないの???
どうしたのよ!?
いつものようにカモンナ!!

なんて考えていると隣のクラスから
ごっちんが飛んで来て私を抱きしめこう言った。


105 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 19:57

「梨華ちゃん!今すぐ病院へ行こう!」
ごっちんは私の手を取り教室を出ようとした。

はい?何ですって!?
病院へ行こうですって!?
昨日は学校へ行こうだったわよね!!
しかも昨日は学校で今日は病院なの!?
病院?ナースのお仕事なの!?朝倉なの?
なんてそんな事考えてる場合じゃないのよ梨華!

今は緊急事態よ!

106 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 19:58

「ちょちょ!ちょっとまってよ!私はおかしくなんか無いわよ!!」
そう力説すればするほど
「うんにゃ!酔っ払いも酔ってるのに酔ってないって言い張るもんだよ!」
意味の分からない例えを出してくるごっちん。
もしもぉ〜〜〜し?
ごっちんあなたのほうがおかしくないですかぁ〜!?


病院に行く行かないと押し問答しているうちにチャイムが鳴った。

107 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 19:59

「ほら!ごっちん!教室戻らないと!」
「もぉ〜しょうがないなぁ〜本当に具合が悪くなったら病院に行くんだよ?」
「はいはい!」
「ハイは一回で良いの!」
「はぃ」
「うむよろしい!」
カッカッカッ!とごっちんは
水戸黄門のように笑いながら隣の教室へ戻っていった。

108 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:00

大丈夫ですか?

あなた・・・



教室に戻ると柴ちゃんがこっちを見ていた。

あんにゃろぉ〜め!
絶対にギャフンと言わせてやるんだから!
 
109 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:01


−放課後−


私はいそいそと図書室へ向かい

いつもの場所に座ろうとしたら・・・

その場所にはすでに先客が・・・・・・・・いた。
 
 
110 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:01

誰!?誰なの!?
私の指定席に座っている人は!?

あなた誰!?

いつも誰も座って居ないのにぃ〜〜〜〜!!


怒り心頭の私は思わずその人に声をかけた。
 
111 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:02

「あのう・・そこ・・私の・・・」
と私がそこまで言ったと同時にその人は顔も上げずに
「へぇ〜ここの図書室ってこぉ〜んなに席があるのに座席指定なんだ!」
ふぅ〜ん!とこちらを見ずに言った。
「なっ・・・」確かに座席指定じゃないですけど・・・

「早い者勝ちでしょココは?違う?花子ちゃん」
その人は下を向いてクックックッと笑っていた。

「花子って!?」
誰の事かしら?トイレの花子さん?
と不思議そうに呟く私にその人は顔を上げた。
 
112 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:03

「あっ!ヨシザーさん?」

そう!確か昨日隣の大学で見たちょっと怖い人・・・
金髪頭のヨシザーさんだった。

「へぇ〜私の名前覚えてくれたんだぁ〜うれしいねぇ〜」
そう言って立ち上がると私の肩に手を置いた。
 
113 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:04

えっ!?何?何?
何をするの???と思っていたら
ヨシザーさんは私の頬に軽くキスをした。

「!!!!!!!!」

あまりにものショックに私は持っていた巨大な本で
ヨシザーさんの顔面をクリーンヒット!!
ホームラン勢の当たりだわ!
ヨシザーさんは大きな音を立てて椅子から転げ落ちた。
 
114 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:04

「イッテェ〜なぁ〜!!テメェ〜何すんだよ!!」
大声を張り上げるヨシザーさん
途端に「コラッ!そこ二人!静かに出来ない人は外へ出る!」
私まで怒られてしまった。

「す・・すいません!」
私は謝りながら慌ててヨシザーさんの手を引いて図書室の外へ出た。
 
115 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:05

「ちょっとあなたね、図書室で大きな声出さないでくれる!?」
「はぁ!?何だって!?あたしに大きな声出させるような事したの誰だよ!?あ゛!?」
ヨシザーさんはどんどん顔を近づけながら大声でスゴんで来た。

「あ・・・それは・・・ごめんなさ・ぃ・・」
「あ゛!?聞えないなぁ〜!?」
ヨシザーさんの目はギラギラと輝いていてまるでそれは

獲物を狙うライオンのようだった。

「ぅぅぅ・・ごめんなさ―――!!」いと、言うが速いか私は駆け出した!
 
116 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:06

「ゴルァ!逃げんのかよ!!」
金髪のライオンに変身したヨシザーさんが追いかけてきた。

「きゃぁ〜〜〜!!」力の限り叫びながら私は逃げた。
まだポツポツ残っている生徒達は、
私が叫んで逃げる廊下をモーゼの如く道を開けてくれた。
 
117 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:07

そして廊下の端から端まで走って逃げた。
しかし追っ手はまだやってくる。
もうダメ・・・行き止まりだ・・・
きっと私はライオンに捕らえられて食べられてしまうんだわ。
観念して行き止まりになった廊下に座り込んだ。

ライオンさんはハァハァ言いながら走ってきた。
 
118 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:08

「ははは!残念でした子猫ちゃん!行き止まりですねぇ〜」
ライオンさんはそう言って私の前に立ちはだかり
ペロリと舌なめずりして近づいてきた。

『・・・ライオンのエサになってしまうのね』私はもう覚悟した。
ライオンさんはおもむろに私の肩に手を当てた。



――その時――
 
119 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:09

「もぅいいんじゃないのぉ〜?」
突然ライオンさんの背後で声がした。

「あ゛〜!?何だぁ〜!?誰だよゴルァ!!」
スゴんだ声でライオンさんは振り返った。
「なんだ!?ミキティかよ!?」
ライオンさんは急に気の抜けたような声になった。


はい?
ミキティ!?
新しいお茶ですか??
 
120 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:10

「よっちゃんさぁ〜たま〜に来たと思ったら
女の子虐めてるんだね?」
そのミキ茶と呼ばれたその人は
腕組みをしながらライオンさんに話し掛けてる。

「OH!ミキティ!人聞きの悪い事言うなよぉ〜
先に手を出してきたのはあっちだよ?」
そう言いながら私を指差す。

ちょっ!ちょっと!指差さないでよ!!

「ふぅ〜んそうなんだ!でも美貴見てたもん
よっちゃんがその人の『ほっぺ』に『キス』してる所!」
「ぅへっ!そ・・それは・・・きっと見間違いだよ!」
 
121 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:11

急におどおどし出したライオンさん。

へぇ〜この『ミキ茶』と言う人は
この金髪のライオンさんよりも強いのね。

じゃぁ〜トラかしら?
それともゾウ?
ハイエナ?はまた違うわね。
感じから行けばやっぱりトラかしら?
でも『百獣の王ライオン』って言うわよね?
そんな私を無視して二人のバトルは続く。
 
122 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:12

「へぇ〜そうなんだぁ〜別にいいよ見間違いでも!
美貴そのままお姉ーちゃんに言うもん!」
そう言い残して私の救世主のミキ茶さんは走り去って行った。

「ちょ・ちょ・ちょっと!ミキティ!待ってよ!それだけは勘弁してよ!!」
ライオンさんは慌ててミキ茶さんを追いかけようとしたその時、

私のほうを振り向き言った。
 
123 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:13

「じゃぁ〜またね!ヘンパイ!」

そう言ってライオンさんは去って行った。

あぁ〜ミキ茶さんに御礼を言ってなかった・・・。
ってそれよりも何なのよ・・ライオンさんって一体何者?
違うわよ梨華!ライオンじゃないわよ!
ヨシザーさんよ!
しっかりするのよ梨華!!



そんな事よりもヘンパイって何!?
 

124 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/18(水) 20:14
 
125 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/18(水) 20:15

本日の更新終了しました。
 
126 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/18(水) 20:18
>>102 名無飼育さん
ありがとうございます。
がんばります。

かわいいですか?
そう言ってもらえると光栄です。
127 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/28(土) 16:19


あぁ〜〜!!もう!!


貴重なマフラーさんと会える時間が減っちゃったじゃないのよ!!
あのバカライオン!ヨシザーめ!!

私はズンズン!と怒り満開のまま図書室に戻ると・・・



【本日終了】


・・・と図書室のドアに札が・・・


そして今、正に図書室のカギをかけている先生がいた。
128 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/28(土) 16:22

「先生!今日はもう終わりですか?」
「おっ!石川〜今日は今から職員会議なんでねもう閉めようと思って」
そう言われて残念そうにする私を見た先生は
「なんなら石川、最後ちゃんと鍵締めておいてくれるならいいよ!
もう誰もこないと思うけど先生居ないから札はこのままで、
中から鍵を閉めておきなさい。」そう言うと先生は
私の手に鍵をポトリと落として先生は去って行った。

「はい!」
私は元気よく返事して図書室に入って鍵を閉めた。

いつもの席に座って窓の外を見ると
窓の向こうではマフラーさんがこっちを見ていて
私に手を振ってくれていたので私も手を振った。

すると携帯が鳴った・・・と言うよりも震えた。
マフラーさんからのメールだった。
129 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/28(土) 16:24

<<おっす!ハナちゃん今日は遅いんだね?>>

<<さっきヨシザーさんに虐められてたの・・・>>

と送信してマフラーさんを見たら
何やらこっちを見て怒鳴ってるようだった。
私は耳に手を当てて「なに!?」と言った。
そう言った所で聞えるはずがないんだけどもね。
するとまた携帯が震えた。

130 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/28(土) 16:26

今度は電話だった。

<もし・・>

私が電話に出るかマフラーさんがしゃべるのが速いかのタイミングで
マフラーさんが物凄い剣幕で話してきた。

<ねーハナちゃん!あのバカ、ヨシザー今日来てたの?>
物凄い剣幕で言ってきた。

<あ・・はい>
<なんかされたの?>
<・・ぃぇ・・別に・・ちょっと追いかけられただけです・・・>
って半分は私も悪いんだけど・・

131 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/28(土) 16:27

<は!?何だソレ!?あの野郎〜ブッ飛ばしてやる!!>
と電話口で騒いで居る所に横から伸びてきた手が
マフラーさんの頭を叩いた。

【パシッ!】

物凄くいい音が電話口から聞えてきた。
『イッテェ〜!!』と言う言葉だけ残して
私の視界から消えたマフラーさん。

その代わりに保田さんが携帯片手に
こっちに向かって手を振っていた。

<あんまり『バカ』の相手してるとあんたまでバカになっちゃうよ!>
ホーッホホホホホ!と高らかに笑って電話が切れた。

132 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/28(土) 16:28

少ししてからマフラーさんからメールが来た。

<<もし、ヨシザーに何か変な事されたら直ぐ知らせてよね!−マフラーさん−>>
見るとこっちに向かって手を振っていた。
<<はい。>>
と返信しておいた。

それから少し本を読んだ。
椅子を引いて背伸びした時机の下の棚の隅に
小さく折りたたまれた紙があるのを見つけた。

133 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/28(土) 16:33

誰も見ていない様なのでw
こっそり少しだけ更新終了。
 
134 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/28(土) 16:34

135 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/28(土) 16:35

136 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/29(日) 02:02
見てますよ〜♪
珍しいいしいちCPに期待してます
137 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/08/30(月) 21:31
マフラーVSライオンも
影ながら期待しています
138 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:14



それは手紙のようだった。


誰のだろう?
黙って見るの悪いかな?
そう思いながら開いて見てみると


それはライオ・・いやヨシザーさんからだった。


139 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:17

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

花子ちゃんへ

昨日初めて会ったあの時から私のハートはあなたにクギ付けになりました。

・・・なぁ〜んてうっそぉ〜!!

一番さんのお気に入りの花子ちゃん奪うほど不自由してないしね。
                        いろいろ後が怖いし(笑

一番さんに聞いてた通り毎日この席に座るんだ。
でもさっきの一発効いたねぇ〜!
まぁ〜私も悪かったと思うけどあの本は無いんじゃないの?
これ以上賢くなったらどう責任とってくれるんだよ!?

オラ!

なんてね、まぁ〜安心してよ
今日は花子ちゃんの顔見に来ただけだから。
もっとも当分学校で会う事も無いと思うけどね。

じゃぁ〜またお会いしましょう♪

あなたのヨシザーより(笑

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

140 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:18

えっ!?花子?
花子って誰よ!?
えっ!?私?
は?一番さんのお気に入り?
ってこの手紙一体いつ書いたのよ!?
は!?何よこれ・・
あなたのヨシザーって何よ!?

えっ!?はっ!?
そ・・・・そんなぁ〜!!!!

手紙を前に青くなったり赤くなったりしているときに
ごっちんから電話が着た。

141 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:20

<もっしー!?梨華ちゃん今何処?>
<あっ!ごっちん!部活終わったの?>
<ん〜終わったと言えば終わったけど?>
<けどなぁ〜に〜!?>

<だから今梨華ちゃん何処よ!?>
<ふぇっ!?あ・・図書室に居るんだけど?>
<は!?まだそこに居るの?早く帰らないとダメだよ?
ゴトー門の前で待ってるから一緒に帰ろう!
じゃっ!そう言う事だから早く来てね!>
そう言ってごっちんは電話を切った。


142 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:23

まだって・・そんなに遅くないでしょ?
そう呟くと私は図書室の正面にかけてある時計を見た。

ってえっ!?
8時!?

なに!?それ!この時計おかしいのよ!!
しかし携帯を見ても同じ8時
きゃぁ〜!!!と叫んで鍵を閉めて鍵を返して
慌てて門の前まで走ったら

薄明りの下の門の前でごっちんが私の知らない誰かと親しそうに話をしていた。
暗くってその人の顔までわからなかったけど・・・

143 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:27


―ねぇ〜ごっちん・・その人誰?―



何だか心がチクリと痛んでヤな感じがした。


でも私がマフラーさんと会ってる所をごっちんが見たらどう思うんだろう?
やっぱり同じように心がチクリと痛むのかしら?
ちょっと私の心に黒い雲がウズを巻いた。

144 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/08/30(月) 23:28

145 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/30(月) 23:30
今回も少しだけですが更新終了。
なにぶん不定期更新ですのでご了承ください。
146 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/08/30(月) 23:32
>>136 名無飼育さん
これはこれはご覧になられていらっしゃったのですね。w
どうもありがとうございます。

>>137 名無飼育さん
ありがとうございます。
この二人の対決は・・・今後どうなるのか乞うご期待くださいませ
・・と言ってもあまり期待されても困るものでしてw

このいしいち?いちいし?CP・・まだ海の物とも山の物とも分かりませんです。はい。
これからどうなるのか、ちょこっと方針転換したのでわからなくなりました。泣
147 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/01(水) 20:04
あ・・今気が付いた。
いしいちじゃなくっていしごまです。一応まだ・・
OH!鬱だ・・・。
148 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:08

何事も無かったようにごっちんは私に気が付き私の方へ走ってきた。

「よっ!梨華ちゃん!元気にしてた?」
「うん。ごっちんっていつもこんな時間に帰るの?」
「う〜んまぁ〜そんな所かな?」

さっきの人の事を聞いてみることにした。

「ねぇ〜ごっちんさっき門の前でしゃべってた人って誰?」
「んぁ〜ん〜っとねぇ〜・・・部の後輩だけど?」
だけどって後輩って言うまでにすごーく間があったような気がするんですが
・・・気のせいかしら?

149 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:10

「そうなんだ・・ふーん・・・」
「何だ梨華ちゃん気になる?」
「そ・・それは・・気になるわよ・・・だって・・・」
「だって?」
「だって私の知らない人とごっちんが仲良くしてるのなんて見たくないんだもの・・・」
私がそう言うとごっちんは

「あはっ!梨華ちゃん可愛い〜!!妬いてるんだ!」
私のほっぺをブニュプニュ摘んだ。
「心配しなくっても私は梨華ちゃん一筋だから大丈夫だよ!」
私の肩に手を回すと、むにゅ〜っと私のほっぺとごっちんのほっぺを引っ付けた。
 
150 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:11

「もぉ〜ごっちんってばぁ〜」
何だかちょっと心がスキッとした。
やっぱり聞いて見るものだ!
思った事は話し合わないとね!うんうん。

なんてそんな話をしながらいつものバス停まで着た。
「ごっちんは、あっちでしょ?」
向こう側のバス停を指差した。
「うーんそうだけど、今日はもうちょっと梨華ちゃんと一緒に居たいから家まで送る・・」
そう言うとごっちんは急に私を抱きしめてきた。
 
151 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:12

「えっ!ごっちんやだよ!こんな所で・・・恥ずかしいじゃないのよぉ〜!!」
「大丈夫だって!もう暗いし、みんな帰って・・・誰も見てないって!
それに・・・こんな時間に梨華ちゃん一人で帰すとゴトー凄く心配だから・・」
ごっちんは私のほっぺにキスをした。
「もぉ〜ごっちんってば・・・」

確かに冬は日が暮れるのが早いけど
こんな時間って・・・まだ8時過ぎですけどごっちん・・・。
 
152 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:15



しばらくしてから二人は何事も無かったように
仲良く手をつないでバスに乗り込んだ。




そんな二人の様子を後ろの自動販売機の陰から誰かが見ていたとは
この時の二人には知る由も無かった。






バスが走り去ってしばらくしてからそこに居た影が走り去った。
 
 

153 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:16
 
 
154 名前:ライオンと遭遇 投稿日:2004/09/01(水) 20:17
 
 
155 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/01(水) 20:19
またちょこっとですが本日の更新終了。
156 名前:――― 投稿日:2004/09/04(土) 21:04
  
 
 
 

157 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:07


−一方その頃の市井−


何だか慌てたように梨華が帰って行った後の真っ暗な図書室を
しばらく見つめていた市井の部屋のドアをノックする音がした。

「ん?誰〜?」
市井は面倒臭そうにリモコンをドアにかざしロックを外した。
するとこそっとドアが開いて誰かが入ってきた。

158 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:08

「チース!一番さん!」
ニヤニヤしながらヨシザーは入ってきた。

「あっ!ヨシザーテメー!ハナちゃんに何したんだよ!!」
ヨシザーに飛びついてグィグィと首を絞める。
「わっ!ちょっ・・ちょっと!!く・・苦しいっス!」

ヨシザーは「ギブギブ」と市井の腕をドンドンドンと叩いた。
「チッ!」

少し残念そうに目を細めながらヨシザーを離した。
 
159 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:10

ヨシザーは苦しそうにヘタリ込んで喉を抑えながらゲホゲホ言っていた。
そんな苦しそうなヨシザーの肩を市井はドン!と蹴飛ばし転がして、
お腹の上にドッカと座った。

「ーで?ヨシザーちゃんはハナちゃんに何したのかなぁ?」
まだゲホゲホ苦しそうにしているヨシザーは喉を擦りながら
「な・・何の事ですか?し・・知りませんよ・・」
「へぇ〜でも残念ながらネタは上がってんだよねぇ〜」
そう言いながらヨシザーのお腹に乗ったまま
片足でヨシザーの顎をグイグイ押し上げた。

さっきよりも苦しそうにもがきながらヨシザーは市井の足をバンバン叩いた。
「グホッ!しゃ・・しゃべりますから・・あ・・足を!!」
「あぁ〜足ね」また残念そうに言い、市井は足をどけた。
 
160 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:14

「・・・で?」
「ゲホッ!ゲホッ!・・あ・・あの・・ちょっとあ・・あの席に座って・・
ちょ・・ちょっとからかっただけです・・」
「ほぉ〜っ・・・で?」

「からかったら持ってた本で殴られたんで・・・」
「たんで?」
「ちょっとからい半分で追いかけて・・・」
「追いかけて?」
キランと市井の目が鋭く光った。

「そ・・それだけ・・で・・す・・」
ヨシザーはガタガタと脅えていた。
 
161 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:17

「何か抜けてなぁ〜い!?」

急に市井の背後から声がした。

「!?」
ヨシザーは頭を動かし背後の人間を見た。

「うわっ!ミキティ!」
そう呼ばれた美貴は腕を組みながらニヤニヤしていた。

「テンメーチクッたのかよ!」
市井に乗られている事も忘れてヨシザーは美貴に向かって行こうとしたが
その前に市井に頭を掴まれた。
 
162 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:20

「おい!今、話してんのは私だよ!」
市井はヨシザーの髪の毛をグイグイ引っ張って前後左右に振り回した。
「いっ・・イテー!!」
ヨシザーが叫ぶと同時に市井がパッと手を離した。
と同時に無常にもヨシザーの頭が『ゴン』と言う鈍い音と共に床に落ちた。

「ぐわっ!イデッ!!」
「あぁ〜ごめんね!ヨシザーちゃん!今のは痛かったよね!?」
市井は涙目のヨシザーの頭を撫でてヨシザーの体から降り側に座った。
 
163 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:24

「あぁ〜あ・・でも今のは美貴関係ないもんね!」
美貴も市井の側に引っ付くように座った。
それを見た市井は優しく美貴を抱き寄せて頭を撫でた。

「あ・・あのぉ〜市井さん?」
涙目のヨシザーは市井の顔色をうかがった。
「なんだよ!?」
怒り爆発寸前の市井は不機嫌この上ない表情だ。



あのぉ〜一番さん・・・ミキティ見てた時と顔が違いすぎませんか?
 
 
164 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:25
 
165 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:25
 
166 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/04(土) 21:25
 
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/04(土) 22:52
やっぱりライオンさんよりマフラーさんの方が強かったですね♪
168 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/05(日) 15:04
>>167 名無飼育さん
ありがとうございます。
そのようですねw
でもライオンさんが強い方がよかったですか?w
169 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:08

「もうしませんから許してくれませんか?」
「う〜んそうだなぁ〜」
そう言いかけた時、横から美貴が茶々を入れた。

「ダメだよ!お姉ーちゃん!ビシッとしめるときはしめないと!」

おいおいおい!ミキティ頼むよ!
それにしめるって何ですか!?
しめるって!!!
もうこれ以上一番さん怒らせないでくれよ!!
祈るような想いのヨシザーであった。
 
170 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:10

しかし!そうは問屋が卸さなかった。

「ねぇ〜お姉ーちゃんがやんないなら美貴がやってもいい?」

ぉぃぉぃぉぃ!美貴ちゃん
やるとかやらないとか・・・何て事言うんですか!?

あ・な・た・・・

「ん?だーめ!美貴はハンパ無いからダメだ!」

お〜っ一番さん適切な処置だ!うん。
ミキティってホント・・ハンパ無くやりそうだもん!
マヂに殺られちゃうよ!

「ちぇっ!美貴最近ストレス溜まってたのに〜!!」

・・・って私はあなたのストレス発散マシーンですか?
勘弁してくださぁ〜〜〜い!!
ヨシザーは心から叫んだ。
 
171 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:14

「じゃぁ〜今度カラオケ付き合ってやっからよ!
5時間でも8時間でも何時間でも歌え!歌え!」
「えっ!?本当!?」
「あぁ〜本当だ!今はフリータイムなんてものがあるんだよ!
だから時間一杯歌え!何なら延長してもいいぞ!
ちゃーんとここに居るヨシザーが相手してくれるから!」
そう言ってヨシザーを指差した。

うんうんいい姉妹愛だ!かぁ〜っ泣けてくるねぇ〜
・・・ってえ!?
私・・ヨシザーっスか!?
一番さんそりゃ無いっスよ!

ヨシザーが途方に暮れていると
 
172 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:17

「え〜っ!!よっちゃんつまんないんだもん!
携帯ばっかいじって全然美貴の歌聞かないんだもん!
お姉ーちゃんじゃなきゃ美貴絶対ヤダ!
それが無理なら美貴・・よっちゃん今しめる!」
美貴はヨシザーの胸倉をググッと掴む。

「わっ!ちょっ・・ちょっ!ミキティ勘弁してよ!」

ヨシザーはマジで殺られると恐怖した。
 
173 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:24

そんな様子を見ていた市井は
ヨシザーの胸倉を掴んでいた美貴の手をやんわりと掴み
「はいはいはい!分かりました!今度ね今度!」
そう言って優しく美貴の頭を撫でた。

頭を撫でられたミキティーは凄く嬉しそうだった。
猫がノドを鳴らすようなそんな感じで甘えていた。
 
174 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:24

ちっ!このシスコンめ!
でもミキティ花子ちゃんの存在知ってんのか!?
ん!?見てたって事は知ってるって事だよな?
まぁ〜いいか、この姉妹の事は・・・

だなんてヨシザーがブツブツ言ってると

「お姉ーちゃん!よっちゃんが何かブツブツ文句言ってるよ!?」

ぉぃぉぃ!ミキティ余計な事言うんじゃありません!
恐る恐る一番さんの様子をうかがうと
ソファーに座った一番さんは
聞いてる様で聞いていないそんな感じだった。
 
175 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:26

「ねー!お姉ーちゃん!よっちゃんどうすんの?」

おーぃ!ミキティ恐ろしい事言わないでよね!?

「ん?あぁ〜もう帰れよ!お前ら二人共!」
一番さんはソファーに背中を向けて寝転がった。
「え〜なんでぇ〜!?美貴も帰んなきゃダメなの?」
「ダーメ!美貴とヨシザーの二人共!帰りなさい!」
そう言って背中を向けて寝たまま手をヒラヒラさせて
シッシッ!と犬を追い払うように手を動かした。

「ちぇっ!」
プゥ〜とふくれっ面したミキティは出て行った。
「じゃぁ〜ヨシザーも帰ります・・今日はすみませんでした。」
ペコリとお辞儀をして部屋を出た。

背後から「気ィ〜付けて帰れよぉ〜!」と一番さんの声がした。
 
176 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:27





ドアを閉めて一足先を歩く美貴に声をかける。
「ねぇ〜ミキティちょっと待ってよぉ〜」
美貴はそう言うヨシザーを無視して歩く。
走って追い付き美貴の腕を掴んだ。
 
177 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:28

「なに?よっちゃん・・・」
何だかすごくご立腹のミキティ

「チクルなんて卑怯だよぉ〜」
「いいじゃん別に、美貴はお姉ーちゃんの味方だもん!」
ヨシザーの手を振り払って歩く。

ヨシザーは駆け寄り美貴を後ろから抱きしめ
「ミキティってばツレナイよなぁ〜」
と美貴の耳元で呟くと首筋に顔をうずめキスをした。
 
178 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:29

「ねぇ〜よっちゃん」
「なにミキティ?その気になった?」

「美貴が言うのもなんなんだけども」
「ん?」
「この部屋の前でそんな事してもいいの?」
「ん?」
美貴の首から顔を外さずに目だけで部屋を見た。



そこは・・・
 
 
 
 
 
179 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:32




・・・・・例の部屋の前だった。



「ん〜・・いいんだよ!今日は!」
「ふーんそうなんだ」
「ソーナンス!」・・ポケモンかよ!

「何で?今日居ないの?」
「そそ・・今日はココに来ない日だからいいの!」
「ふーん・・そうなんだぁ〜」
「いいのいいの!」そう言って美貴の首筋をスリスリしていた。

二人が話をしている背後に影が大きく伸びてきてその影が言った。
 
180 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:35


「何がいいんだって?」



ヨシザーは相変わらず美貴の首筋に顔をうずめて「いいのいいの!」と言っていたが
その声にびっくりしたヨシザーが美貴を抱きしめながら美貴と共に振り返ると
そこには仁王立ちしている人物がいた。
 
181 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:36



「わっ!カ・オ・リ!」



「そっ!ご名答!」



カオリはにっこり微笑んでヨシザーに近づき
「美貴ちゃんごめんね〜ヨシザー貰うね」
「どうぞどうぞ!勝手に引っ付いてるだけなんで」
美貴もにっこり微笑んでヨシザーを差し出した。

カオリはにっこり微笑みながら
必死に美貴の首に張り付いているヨシザーを引っぺがして
「さぁ!ヨシザーお仕置の時間!」
ヨシザーを引きずり部屋に向かった。
 
182 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:38

「うっわ!カオリ!!ちょっとタンマ!タンマ!
ラーメンに入れるのはメンマ!だよ!メンマ!」

訳の分からない事をわめきながらヨシザーは可愛そうに部屋に連れ込まれていった。

その様子を冷めた目で見ていた美貴は両手を合わせた。

「ご愁傷様です」

チ―――ン!
 
 
 
183 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:38
 
184 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:39
 
185 名前:ラーメンにはメンマ 投稿日:2004/09/05(日) 15:40
 
186 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/05(日) 16:37
いえいえ、やっぱマフラーさんが強い方がいいですね。
でも、美貴ちゃんさん。もう少しよっちゃんさんに優しくしてやってください
187 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/08(水) 23:41

>>186 名無飼育さん
ありがとうございます。

そうですね、美貴ちゃんにはもうちょっと優しくするように言っておきます。(笑
聞かなそうですが・・・((苦笑
188 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:45



ドサッ・・・





またしても部屋の中に転がされたヨシザー。
床に転がったの今日で何度目だ?

「さぁ〜てヨシザーさっきのアレは何だったのかな?」
仁王立ちしてヨシザーを見下しているカオリ。

189 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:47

「いやぁ〜あのぉ〜そのぉ〜い・・いち・・一番さんに・・・」
「紗耶香に?」
「一番さんに頼まれて・・」
「頼まれて?」
「ミキティを・・・」
「美貴を?」

「・・お・・おー・・」
ヨシザーの目は宙を舞っていた。

「おーなに?」
「おーそうそう!お・・送って行く所だったんだよ!」
そうだ!そうだ!うんうんと一人で納得するようにヨシザーは立ち上がってうなずいた。

「へぇ〜そうなんだぁ〜ふぅ〜〜ん」
「・・そ・・そうで・・す・・」
ヨシザーは小さくなった。
 
190 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:50

相変わらずカオリは腰に手をやり仁王立ちのまま見下ろしている。

「じゃぁ聞くけど、送って行くだけなのに何であんな体勢だったの?」
「いや・・あの・・それは・・お・・(また「お」かよ!)
おんぶ!そうそう!おんぶですよ!おんぶ!
ミキティがヨシザーをおんぶしてくれるって言うから・・・」
「へぇ〜そうなんだぁ〜ふぅ〜ん」

そんなヨシザーの言い訳を聞いてるのか聞いてないのかカオリは
何かを考えるように目は空中を泳いでいる。

「ねぇ!ちょっと!ちょっと!カオリ!納得したんじゃないの!?」
「う〜んとねぇ〜・・納得?したよ!
・・・・・だからお仕置き決定!」
「だからってナニ!?私が納得できないよ!!」
ヨシザーは目を白黒させていた。
 
 
191 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:52

そんなヨシザーを無視してカオリは暴走する。

「じゃぁ〜今日のお仕置きはっと・・・」
カオリはそう呟くとヨシザーの側に近寄り
「わっ!ちょっ!ご勘弁を!お代官様!!」
わめき散らしているヨシザーをベッドに押し倒した。







「や・・優しくしてね・・」
ヨシザーは観念して目を閉じた。




「カオリはいつも優しいよ!」
優しく微笑みながらカオリは
ヨシザーに口付けをしながらおもむろにヨシザーの腕を掴むと・・・
 
192 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:55



右手を[カシャッ]
 

左手を[カシャッ]


右足を[カシャッ]


左足を[カシャッ]


そして最後に


胴体を[カシャッ]と固定した。
 
193 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:56

体の自由が利かなくなったヨシザー
ベッドに貼り付けにされ固定された。

「わっわっ!何!?カオリ何これ!?」
新しいプレイ!?
「う〜んとぉ〜矢口が作ってくれたヨシザーお仕置きだべー3号!」
「何ですか・・・それは??」
しかも3号ってなに?後の1号とか2号とかどこ行ったの?
なんてヨシザーが考えていると

「んーとねーとりあえず行っとけ!」
カオリはニコッと笑って「ポチットな!」とボタンを押した。
 
 
 

 
194 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:57
 
195 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/08(水) 23:57
 
196 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/09(木) 00:00
本日の更新終了です。
197 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/09(木) 02:37
更新おつかれです
そうですね。美貴ちゃんはそう簡単にいう事を聞いてくれそうにありませんが
少しは効果が出てくれればと・・・
お仕置きマシーン・・・何が行なわれるんだろ?
次回も期待しています
198 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/11(土) 19:39
>>197 名無飼育さん
ありがとうございます。

お仕置きマシーン・・・そんなに期待されると困るのですが・・・
大したオチはありませんが、あまり期待されませんように(汗


199 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:45

グィ〜〜〜〜〜〜ンとモーターの音が部屋中に広がり
ヨシザーが縛られたベッドがゆっくりと確実に上へ上へと動いている。
グングン天井が目の前に迫ってくる。
あっという間に天井付近に達した。

ヨシザーはこれから何が起こるのか天井を見つめながらゴクリと生唾を飲み込んだ。
頂点に達したのであろうか?
ベッドの動きが止まった。
これで終わりか?
ヨシザーは小さく安堵の溜息をついた。

次の瞬間・・・・

200 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:48

”カチッ”と言う音がしたかと思うと
今度は遊園地のアトラクションのように
何の前触れもなくいきなりクルッ!と反転した。

「ワ―――――ッ!!何!?何!?何これ!?魔法のじゅうたん?
ギャーッ!!こえ〜よ!逆さになってるしグラグラ揺れてるよ!!」

しかも固定がちょっと甘かったのか左足が解けて宙ぶらりんになった。

「わっ!ちょっちょっ!カオリ!外れてるって!落ちる!落ちる!死ぬぅ〜!!」
そうやって暴れるものだから余計にグラグラ揺れるのだ。

大騒ぎしているヨシザーをカオリは冷めたような顔をして眺めていた。

「ちょっとヨシザーうるさい!ん〜〜それに後4つ繋がってるから大丈夫だよ?ヨシザー?」
「・・・や・・だから大丈夫じゃないんですけど・・・カオリさん?」

ヨシザーの叫びは無視されカオリは黙々と
天井にへばり付いてるヨシザーのスケッチを始めた。
 

201 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:51

大丈夫って・・あなたは下にいるじゃないですか!?
って何でこんな姿を絵に書いてるんですか!?
見せしめですか?
それなら写真でお願いしますよ・・・
写真なら一瞬で済むのに・・・・。
ヨシザーは今・・・天井に・・・
重力に反する場所に貼り付けられているのですよ?
こ・・こんな目にどうして私がならなくっちゃならないの!?
いったい私が何をしたというの!?
何って・・・したね・・・ミキティに・・・
たったあんな事で・・・ヨシザーは涙目になった。


ヨシザーはアナタのおもちゃですか!?


それよりも何よりも、
何で矢口さんはこんな大掛りな装置をカオリに作ったんだよ!
ヨシザー矢口さんに何かしましたか?
つーか矢口って誰!?
ちくしょ〜!!矢口め!!

作った人物・・・矢口を呪った。
 
202 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:52

「なぁ〜に?ヨシザーこれだけじゃ足りない?」
「いえいえ飛んでも八分歩いて十分走って行ったら30秒でございます!」
そう言ってブルンブルンと顔を横に振る。

「何それ?足りなかったらオプションつけようか?」
「い・・いえ!純正だけで結構でございます!」
即答できっぱりとお誘いを断りヨシザーは
天井付近でベッドに張り付けられながらひれ伏した。

ん?貼り付けになりながらひれ伏すってどんなんだ?
とにかくひれ伏したのだよ!

「あっそ!何だつまんないの。
せっかく矢口が楽しそうなオプションつけてくれたのに・・・」
カオリはつまらなさそうにまたスケッチを始めた。
 
203 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:54

はぁ〜今日は踏んだり蹴ったり張り付けられたりの厄日だよ・・・・

ヨシザーはぐったりした。


・・・でもオプションって・・・どんなの?
しかも楽しそうなって・・・・・
どんなものなのか考えただけでも気が遠くなるヨシザーであった。
 
 
204 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:55
 
205 名前:必殺仕置き人? 投稿日:2004/09/11(土) 19:56
 
206 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/11(土) 19:58
かな〜り短いのですが本日の更新終了です。
207 名前:  投稿日:2004/09/13(月) 20:48



――――――――――――――――――――――――――
 
 
 
208 名前:探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 20:50


―次の日―



私は昨日出合った金髪のライオンさん・・もといヨシザーさんの事を柴ちゃんに聞いてみた。
柴ちゃんはちょっと待って!と少し考えてから
パラパラと、とても分厚い手帳を出して何かを調べていた。
しばらくページをあっちこっちさ迷っていてあるページで手が止まった。

「なに?何か分かったの?」
柴ちゃんはそのページを眺めたまま微動だにしない。
「ちょっと柴ちゃん?」そう言って私もその手帳を覗き込んだ・・・。

そこには・・・

209 名前:探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 20:53

【1年よしざわ】とだけ書かれてあり後は白紙だった。

「なによ!柴ちゃん何も書いてないじゃないのよ!」
そう言うと柴ちゃんは静かにこう言った。

「あのさ、この人・・よしざわさん?だっけ?この人さぁめったに学校にこないんだよね。」
「なんで?」
「何でって私に聞かれても知らないよ」
「柴田探偵に知らないものは無いんじゃなかったの?」
そう挑発的に言うと
「私にでも知らない事はあるんだよ。」

そう言うとやけにいつもと違ってとってもシリアスな表情の柴ちゃん。
しばらく空中をさ迷っていた柴ちゃんの視線が私の前で止まった。

しょがないかぁ〜というような表情をした後おもむろに話し始めた。
 

210 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 20:59

「私が知ってるのは、名前は吉澤・・ひとみ・・1年A組。
成績は入試試験の成績は全問正解で当然学年トップ。
しかし2学期を過ぎた辺りで急に学校にこなくなり現在にいたる。
原因は何でも2学期始め頃に停学になってそれ以来学校に来なくなった模様。
来なくなった理由は不明。現在留年の危機。」
そう言うと「ふぅ」と大きく息を吐いた。


何だ柴ちゃん結構知ってるじゃない!
でもなんで手帳に何も書いてないわけ?ソラで言えるから?
1年生か・・・するとあの時言った
「へんぱい」っていうのは・・・・先輩って言ったのね。
ブツブツ独り言を言ってると今度は柴ちゃんが聞いてきた。

「ところでさ、梨華ちゃんなんで吉澤さんの事知ってるの?」
「えっ・・あの・・」
 
211 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:02

正直困った。

どこで会ったのかと言う事を話すと当然マフラーさんの話もしなくてはいけなくなる。
うーんうーんと一人でうなっていると
「なに?ナンパでもされたの?」そう聞いてきた。
「は?柴ちゃん何言ってるの?」
私は目を大きく見開いて柴ちゃんを見つめた。

「ね、梨華ちゃんお願いだから見つめないでよ」
そう言って目線を逸らした。

どうしたの?
今日の柴ちゃんはおかしいわよ?
 
212 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:03

「実はさ・・・この吉澤さんって・・・結構モテルらしくって・・・
まだはっきり調べたわけじゃないから分からないんだけど
何か色々手当たり次第に手を出して・・・それが理由かどうかわからないけど
夏休み明け2学期の始め頃に停学になってその辺りから
急に学校に来なくなったって噂がね・・・。」

「じゃぁ〜昨日会ったあの人はヨシザーさんじゃないの?」
「えっ?昨日梨華ちゃん本人に会ったの?」
「うん・・ヨシザーさんと呼ばれていた人には会ったわよ?
でもあの人って本当にヨシザーさんなのかな?」
「さぁ〜どうだろう?私見てないからわかんないよ。
でも本人かもしれないから・・・これからちょっくら行って調べてくるよ!」
そう言うと柴ちゃんは風のように去っていった。
 
213 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:05

ほうほうほうこれはこれは頼りになる探偵さんだコト。
それにしてもあの乱暴者のヨシザーさんがモテルの?
ふーん世の中変わってるんだね。
でもそれで停学なんて自業自得よね・・フフ


(・・・・・・・梨華ちゃんあなたの頭の中も少々変わってるかもしれませんが?)

ってあなた誰?
作者はこんな所で口を出さないでちょうだい!
(・・・・・・・すみません以後気をつけます。汗)
 
 
214 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:06

「あっ!そうだ!ついでにミキ茶さんの事についても調べてもらえばよかった・・・」
そうブツブツつぶやいていると


「紅茶がどうかしたって?」と私の背後から声がした。

あわてて声のした方に振り向くと・・・・
 
215 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:07
 
216 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:08
 
217 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/13(月) 21:10
 
218 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:29

「よっ!」
と言う声と同時に急に私の目の前が薄暗くなり
伸びてきた手が私の額に刺さった。



バシッ

まともにチョップが額に刺さったのだ。


「いったぁ〜〜〜い!!」
「OH!大げさだよなぁ〜」
私にチョップをしてきた人は外国人がよくするポーズをした。


・・・また例のヨシザーさんだった。
 
219 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:34

「あ・・アナタね!」
「OH!ワタシハ、アナタと言うナマエではありまシェーん!」
「もぅ・・・ヨシザー・・さん・・」
「はい!なんですか?」
ヨシザーさんは目を大きく見開きキラキラ輝かせながら私に近づいてきた。

「ちょ・・ちょっと!近いわよ!」
「なにがですか?」
「顔です!」
力一杯両手でヨシザーさんの顔を押しのけた。

「ちぇっ」
ヨシザーさんは下を向いて小さくつぶやいた。
あらら・・何か今のしぐさは可愛くなかったですか?

少しツボにハマル梨華。

220 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:40

私は昨日の手紙の事を思い出した。
「ねぇ〜ヨシザーさん?昨日の手紙・・・あれは何?」

うつむきながら私の話を聞いていたヨシザーさんは
うつむいたままこう言った。

「あぁ〜あれ?
あ・れ・は・ヨシザーから花子ちゃんへ
愛を込めたラ・ブ・レ・ター」
 
221 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:47

「は?」
私の顔がみるみる真っ赤になっていくのが自分でも分かった。
そんな私をこっそり覗いて見ていたヨシザーさんの体が
小刻みに揺れているのに気がついた。

よく見るとそれは笑っていた。
「なによぉ〜もぉ〜!!」
私はヨシザーさんをバンバン叩いた。
昨日、あんなに金髪ライオンさんに追いかけられた事など忘れて・・・
「うひゃひゃひゃひゃ」笑い転げるヨシザーさん

ちょっと・・何気に失礼じゃない?
私のほうがお姉ーさんなのに!!
 
222 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:49

「ちょっとあなた!何なのよぉ〜〜〜っ!!」
そう叫ぶ私の口を慌ててふさぐヨシザーさん
「もがー!むぐぐ!」
ちょっと!息が出来ないじゃないのよ!!

私の口をふさいだままヨシザーさんは私の耳元でこう言った。

「あのさ・・・一番さんに頼まれたんだけど・・」
私の手にプラスチックのカードを1枚置いた。

私はヨシザーさんの手を解き手のひらの上に乗せられているカードを見た。
 
223 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:52

「な・・なに・・これ?」
「んーとぉ〜一番さんの部屋に入れる特別なカード」
そう言ってヨシザーさんはウインクしながら
ズルズルと後ずさりして私から離れて行き大声で叫んだ。


「一番さんが待ってるってよ!」ヒューヒュー♪


「じゃぁ〜ね!ヘンパイ!」そう言って走り去っていった。


あっ・・またヘンパイって言った。
・・・って今日も学校来てるじゃないの!
柴ちゃん情報もあてにならないじゃないの!?

そう思いながらヨシザーさんから渡されたカードを見つめていた。
マフラーさんの部屋に入れるカード・・・

そう思うと急に顔が真っ赤になって行くのが自分でもよく分かった。
 
224 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:54

しばらくそのままの形で固まっていると

遠くから私を呼ぶ声が聞えた。
振り返るとあまりアテにならない柴ちゃん探偵だった。

ハァハァぜぇぜぇ言いながら柴ちゃんは走ってきた。
そんなに走って何がいったいどうしたと言うの!?
ハァハァ言いながら柴ちゃんは私の肩に手を置き
「・・よ・・よし・・ざ・・・・・」ハァハァ
「ちょっと柴ちゃん!深呼吸しようよ!深呼吸!」

「はい!吐いてぇ〜・・はい!吸ってぇ〜」
柴ちゃんは私の掛け声に合わせるように深呼吸を繰り返した。

あれ?こんな光景一度どこかで見たような・・・ま、いっか。
 
225 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:57

「どう?落ち着いた?」
「うん。サンキュ!」

「で、ヨシザーさんがどうかしたの?」
「そうだ!吉澤さん何か昨日と今日、学校に来てるんだって!」
「へぇ〜そうなの」

え?昨日?
昨日と言えば・・・あれも昨日よね?
なんて考えてたら
「おーい!梨華ちゃん大丈夫?」
柴ちゃんが私の顔の前で手を振っていた。
 
226 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 00:58

「あっ!そうだ柴ちゃん!」
急に私は大声で叫んだ
「わっ!何!?びっくりするじゃないのよ!」
「ごめんね。そんな事よりもちょっと聞きたい事があるの!」

「そんな事って・・・梨華ちゃん冷たい・・・」
「柴ちゃん?」そう言って少し睨んだ

・・・・・柴田は思う。
何だか今日の梨華ちゃんちょっと怖いよ?そう思いながら
「はいはい!?なんでしょうか?お嬢様!?」
 
227 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 01:00

「あのね、ミキ茶って呼ばれている人捜して欲しいんだけど・・・」

・・・・・また柴田は思う。
あれ?・・・「お嬢様」はスルーですか!?
それに人捜しってどうせならさっき言って欲しかったんだけど・・・

「え!?みきちゃ?」
「そう!ヨシザーさんがミキ茶って呼んでたの」
「みきちゃね〜・・・みきちゃんじゃなくって?みきちゃ?」
「そう!ミキ茶!確かにそう言ってたもん!!」

「みきちゃか・・・わかったよ。調べてみる」
そう言うとまた疾風のように去っていった。

そう言えばヨシザーさんも疾風のように現れて疾風のように去っていくわね

 
228 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 01:01


もしかして・・・月光仮面!?





ってふるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!梨華!あなた何歳!?

 
229 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 01:03
 
230 名前:柴田探偵事務所 投稿日:2004/09/15(水) 01:08
 
231 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 19:51

放課後、あまりアテにならない?
柴ちゃん探偵はもうこっちに置いといて
私はマフラーさんに貰った?
と言うよりもヨシザーさんに貰った?
まぁ〜この際どちらでもいいわ
このカードを使ってみる事にした。

ドキドキしながら例の穴の前に立つ。
穴をぐぐりしばらく歩くと
館内への入り口に到着した。

別にこんな所通らなくとも正々堂々と正門から入ればいいのだが
何だかどうも気が引けるのである。

しかしここまで来ても相変わらず誰にも会わない奇妙な空間だ。

確かここでカードを入れるんだったわよね?
ドキドキしながらカードを差し込むと
「ピッ!」と大きな音がして
「バシッ」と光が輝いて
「ガチャッ」とドアが開いた。
すごぉ〜〜い!ヒラケゴマね!

私はおずおずと中に入る。

232 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 19:56

この間はマフラーさんに連れてきてもらったからよく分からなかったけど
よーく見渡すとすごいのよ!
なにがすごいって・・・色々よ!!
・・・って私は誰に向かって逆ギレしてるの!?

ず〜〜っと続いてるんじゃないかと思われる長い長い廊下
歩けど歩けどいつまでたってもマフラーさんの部屋につきません。

あれ?もしかして私迷子になっちゃった?
マフラーさんの部屋って何回だったかしら????

そう思い立ち尽くしていると
後ろからポンポンと肩を叩かれた。

振り返るとそこに人差し指があり
面白いように私のほっぺに刺さった。

「いたいっ!」
「あっ!ごめんごめん!今時コレに引っかかる人がおるんやぁ〜」
そう言って私のほっぺに人差し指を突き立てた張本人は笑った。
 
233 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:04

笑い転げてるその人をムカツク思いで見ると
その人はその笑い方とはギャップが激しい位とても綺麗なお姉さんだった。
見られていることに気が付いたのかそのお姉さんは笑う以外の言葉を口にした。

「あぁ〜ごめんごめん!笑ろたらまずいわな。
ところで〜・・・え〜っと、自分〜高校生やろ?」
「え・・はい・・・」
「ん?イヤ怒ってんのとちゃうんよ!めずらしいなぁ〜って思ってね」
その綺麗なお姉さんはにっこり笑った。
私もつられて笑った。

「その高校生ちゃんがこんな大学で何してるんや?学校見学か?」
んなわけないか!
・・・一人ボケ突っ込みをしていた。

「あの・・マフ・・いや・・・えーっと・・・」
あれ?マフラーさんの名前なんだったっけ?

私が固まっていると
その綺麗なお姉さんが私の手元にあるカードを見つけた。
「ちょっとそれ見してみ」と私のカードを手に取った。

「えーっとこの部屋は・・・あ・・・」
お姉さんは小さく声をあげた。
え?なに?なにか問題でも?
 
234 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:11

「へぇ〜」
私の顔とカードを交互に見ながらニヤリとした。
な・・・な・・なに!?
私がおろおろしていると

「こっちやでおいで」
と私の手首を掴むと歩き始めた。
「あの・・・」
「ん?大丈夫やて、そないに心配せんでも
ちゃんと連れったるから」とニコリと微笑んだ。
「・・・・」
「何や信用してなさそうやなぁ〜ちょっとショックやわ」

「いえ・・あの・・そういうわけじゃ・・」
綺麗なお姉さんに手を引かれながらおろおろしていると

「後でなぁ〜紗耶香に道順教えてもらいや〜」
ニコリと微笑みながら私の方を振り返って言った。

「・・・はい・・・どうもすみません・・・」
私が小さくなってると
「ん?どうしたん?何凹んでんのや?
そんなんちゃんと教えとかへんあいつが悪いねん!
何もあんたが凹む事あれへんよ」
私の頭をわしわし撫でた。

しばらく行くとそのお姉さんがある部屋の前に止まった。
「ちょっとそこで待っとき」
私のカードを使って中に入っていった。
 
235 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:12

―――――――――
 
236 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:14

その頃市井は、部屋でボーっとしていたら
急に部屋のドアが「ガチャッ」と開いた。
圭ちゃんかな?そう思っていたら
部屋に入ってきた人物は開口一番、大きな声で言った。

「こら!紗耶香!
アンタの大切な人路頭に迷わせてどないすんの!?」
カツカツ近づいてきて市井の頭をグーで叩いた。

ボカッ!

「イッテ!なんだよぉ!グーはないでしょう!?グーは・・・」
涙目で訴えた。

「そんな事よりアンタの大事な人連れてきたから後はヨロシク!」
「は!?大事な人?」
「まぁ〜見たら分かるやろ?
あ・・それとアンタちゃんと道順教えとかなあかんで」
そう言うとドアの向こうへ消えた。
 
237 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:15

――――――――――
 
238 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:17

マフラーさんの部屋の前でボーっと待っていたら急にドアが開いて
さっきのお姉さんが出てきた。
私にカードを手渡すと
「ほな!話はつけてきたから後はよろしゅう」
そう言って私の頬に口付けをした。

「え!?」と驚く私にそのお姉さんは、私の耳元で
「サヤりんには内緒やで」とそう言ってウインクをして去って行った。

訳が分からず何が何だかと言った感じの時にまたドアが開いて

「ちょ・・ちょっと・・」
と今度は血相を変えたマフラーさんが出てきた。
 
239 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:18

―――――――――――
 
240 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:22

「ちょっ・・ちょっと・・・」
市井は慌ててドアを開けた・・・・ら、そこにポカンとした顔の梨華がいた。

「あ・・・ハナちゃん来てくれたんだ!うれしいなぁ〜」
「・・・」
市井は梨華の目の前に手をかざした
「おーい!?ハナちゃーん!どこ行ってるの?」
ぼーっと放心状態の梨華はボーっとしたまま答える。
「・・・今連れてきてもらったお姉さんが私に・・・」
「私に?」
「あ・・いえ・・なんでもありません」
「なに?何でもないってハナちゃん何かされたの?」
眉間にしわをよせて聞いてきた。
「え・・何もされていません」私はうつむいて答えた。
「まぁ〜ハナちゃんがそう言うのならそれでいいけど・・・」
マフラーさんはブツブツ言っていた。

「あの・・それよりもカードありがとうございました」
ペコリとお辞儀をした。
「いやいやそんなのどうってことないよ!
ヨシザーだって他の部屋の持ってるし
それにここにはちょくちょく来てくれるとうれしいし」
ニコニコ笑った。

「あのう・・・さっきの人誰なんですか?」
「あぁ〜さっきの・・・ってどこで会ったの?」
「私が部屋が分からなくって悩んでる時に・・・」
「あ・・ごめんね、ちゃんと教えてなかったよね」
そう言って頭をポリポリかいた。
 
241 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/15(水) 20:23
 
242 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/15(水) 20:25
更新終了しました。

今回のはちょっと読み難かったかな?
と、少々反省してみたフリをしてみる。
243 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:22

「さっきの人はみっちゃんって言って院生なんだ・・・
って言ってもオーバードクターだけどもね・・」
「オーバードクター?」
「んーとね・・博士課程修了してもずーっとここに居座っちゃてる人・・達・・」
「達?」
「もう一人ね・・・・・厄介なのがいるんだけど・・・
ハナちゃんその人にはまだ会ってないよね?」

「え?あ・・はい・・多分会ってないかと・・」
「じゃぁよかった!むしろ会って欲しくないし」
そう言ってなぜか私の頭を撫でながら、うんうんと、うなずいていた。

会って欲しくない?
一体どんな人なんでしょうか?
それにしてもオーバードクターって・・・なに?
話が全然見えないのですが・・・。
 
244 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:28

245 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:29

しばらくマフラーさんの部屋で色んな話をして過ごしていた。

「そう言えばヨシザーさんって学校に行ってないんですか?」
「さぁ〜知らない・・・でも何で?
なに?・・・そんなにヨシザーのコトが気になるの?」
マフラーさんはそう言うと片方の眉毛をピクリと動かした。
「え・・いえそんなんじゃないんですが、色々と噂を・・・」
噂と言っても柴田探偵の情報なんですが・・・

「へぇ〜どんな噂があんの?」
と興味深々で両方の眉毛を上げた。
「えっとーヨシザーさんすごくおモテになるらしくって
色々手を出しすぎちゃってそのせいで停学になって
2学期から学校にきていないという噂が・・・」





「へーそれって面白い噂だね」




その声は私の背後からだった。
ビックリした私は後ろを振り返るとそこにいたのは・・・

246 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:31

「ラ・・・ヨシザーさん!」
「よっ!花子ちゃん!」
そう言うとわざわざ狭いのに私の隣に無理やり座った。

「こら!ヨシザーどこ座ってんだよ!」
「どこってソファーですよ!」そう言って「ねぇ〜」と私に同意を求めた。
「え・・」
返答に困っているとマフラーさんがヨシザーさんに言った。

「んなこより何でお前入って来れんだよ!」
「だってドアが半開きぃ〜♪」節を作って歌うように言った。

「はぁ〜・・・」
マフラーさんは大きな溜息をついて頭を抱えた。
 
247 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:32

そんな様子のマフラーさんを尻目に
ライ・・いえ、ヨシザーさんは私の腰に手を回して
「あんな噂・・・花子ちゃんは信じるの?」
そう言って大きな瞳で見つめてきた。
「え・・・あの・・・」返答に困っていると
「こらっ!ヨシザーお前いいかげんにしとけよ!
でないとまたカオリにチクられるよ?
うちの可愛い妹に・・・」
ククク・・・とマフラーさんは笑った。

「げっ!チクリ魔のミキティ!ほんと勘弁して欲しいよなぁ〜
あれじゃぁ〜体がいくつあっても足りましぇん!」
拳を上につきたてながらヨシザーさんは立ち上がった。

「カオリによろしく!」
マフラーさんはヨシザーさんに手を振った。
「はいのはいのはいと♪」
とまた節をつけてヨシザーさんは部屋を出て行った。
 
248 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:34

ミキ茶さん・・・またここでも出てきたわ・・・
って、え?ちょっと待ってよ?
さっきマフラーさんが言ってたわよね?
『うちの可愛い妹』って・・・
ヨシザーさんが言ってた『ミキ茶さん』と同一人物ってこと?
じゃぁ〜ミキ茶さん=マフラーさんの妹?

一人で色々考えているとまた私の目の前に手をかざされ
その手がゆらゆらとゆれていた。
「おーーい!ハナちゃんまたどっかに旅行中?
なんかカオリみたいだね」とケラケラ笑った。

・・・・カオリ・・さんって誰かしら?
そう言えばさっきも出てきたわよね?
なんて考えてたら急にマフラーさんが立ち上がった。
「そろそろ帰ったほうがいいよ。
もう暗くなっちゃうからさ・・・送ってくよ」
そう言って私の手を掴んだ。
 
249 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:37

私は引かれるがまま部屋を出て廊下を歩いた。
途中目印になるようなものを教えてくれた。

そう言えばこの間急にドアが開いてヨシザーさんが飛び出して来たのよねぇ〜
だなんて考えていたら・・・


バーン!


やっぱり急にドアが開いて私はびっくりして床にへたり込んだ。


「あ・・・花子ちゃんまた床に座ってるぅ〜」
とドアを急に開けた張本人はニヤっと笑った。
「あのな・・」マフラーさんがそう言い掛けた時、
私は立ち上がりながら大きな声で叫んだ

「ライオンさん!あなたが急に飛び出してくるからでしょう!?」

急に大声でライオンと叫ばれたヨシザーさんは目を真丸にして立ち尽くしていた。
そう・・・私の隣にいるマフラーさんも同様に・・・

やってしまった・・・そう思った次の瞬間
 
250 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:40

「「ははははは!」」

二人が大声で笑い出した。
「ヤバイよ!花子ちゃん!それ面白すぎだから!」
そう言っておなかを抱えて笑う。
「いや〜ハナちゃんて見かけによらずに面白い事言うんだね!」
そう言ってマフラーさんも笑った。

「も〜!!知らない!!」
私は恥ずかしさと苛立ちが出たり入ったりだったので
二人を置いてズンズン進んだ。


階段を下り右に曲がるとそこは出入り口・・・のはずでしたが・・・



「もぉ〜〜!!ここってどうなってるのよぉ〜!!!」

その場にヘナヘナとへたり込んだ。
 
251 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/18(土) 03:41
 
252 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/18(土) 11:29
花ちゃんラビリンス突入ですね
253 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/09/19(日) 21:51
>>252 名無飼育さん
果たして思い描いているようなラビリンスに突入なるのか!?
ご期待に添えなかったらごめんなさい。

では本日の更新です。
254 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 21:57


しばらくその場にへたり込んでいると



「おっ!新種発見!!」



私の背後から声がした。




振り返るとさっき出会った綺麗なお姉さんとはまた違った綺麗なお姉さんが
ニコニコしながら両手を望遠鏡のようにして私を見ていた。



「なんやどないしたん?新種が・・・
いや女子高生がこんなところで・・・
迷子か?」ニヤリと笑った。
「はい・・すみません・・・出口はどこでしょうか?」

「ん〜教えてやってもええけどなぁ〜
その前にちょこ〜っと裕ちゃんの部屋にけ〜へんか?」
またニヤリと笑った。



ちょっとその笑顔に少し恐怖を感じたのだが
このままさ迷っていてもしょうがないと思い従う事にした。

255 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:00

裕ちゃんと名乗った綺麗なお姉さんの部屋に連れ込まれ?
おいしくお茶とお茶菓子をいただいていると



「なーなー自分なんであそこにおったんや?」
「えーっとーマフ・・いや・・い・・市井さんの部屋に遊びに行った帰りに迷ってしまって・・・」
「・・・何やあんた紗耶香のコレか」そう言ってがっくりと項垂れながら小指を立てた。
「え・・・」小指って・・・?

「何やちゃうんか?
ちゃうんやったら裕ちゃんのモンにならへんか?
今ならもれなく付き人のみっちゃんがついてきまぁ〜す♪」
と裕ちゃんと名乗った綺麗なお姉さんの言葉の後にすかさず
「なんでやねん!」
と物影から突っ込みの声がした。


「なんやみっちゃんおったんか?」
「おったらあかんのですか?
それにここ・・私の部屋でもありますやん!」
ムクッと瓦礫のように散乱した部屋の物陰からひょっこり顔を出した。

256 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:05

「あっ!」
私はその顔に見覚えがあった。
「おっ!」
みっちゃんと呼ばれた人も私を見てびっくりしたように声をあげた。
「は?なんやあんたら知り合いか?」
二人を交互に見つめる裕ちゃんと名乗った綺麗なお姉さん。

「さっきな〜サヤりんの部屋まで連れて行ったったんよ」
「なんや自分・・行きも帰りも迷とんか?」
裕ちゃんと名乗ったお姉さんが呆れ顔でつぶやいた。

「どうもすみません・・・」
シュルシュルと小さくなっていく私。
「けど・・・この娘、迷路連れったら面白そうやな」
クククと裕ちゃんと名乗ったお姉さんが笑った。

「それより姉さんうちがおらんかったらこの娘に何するつもりでしたん?」
「ん〜・・・さぁどう〜やろ?」はははははは!と大声で笑い
「ついでに行きも送ったんなら帰りもみっちゃん送ったりぃ〜」そう言い残して
「ちょっとお散歩〜♪」と裕ちゃんと名乗ったお姉さんは部屋から出て行った。





残された部屋の真中で二人は顔を見合わせた。




「そう言うコトやけど、どうする?」
「おねがいします・・・」
ペコリとお辞儀をした。

「了解しました!」
右手を額の横に持って行き敬礼した。


257 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:08
 
258 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:11

「それにしても何で迷うんや?
サヤりんに送ってもらえへんかったんか?」
「送ってもらってたんですけど・・・途中でヨシザーさんが出てきて・・・」
「ヨシザーかぁ〜おうた事ないけど癖モンらしいなぁ〜」
クククと肩を震わせて笑った。





階段を登って2つ上の階に来た。
「あのな、ここ見てみ」そう言って壁を指差した。




そこには【1F】とかいてあった。


「ここ1F・・・わかる?」
「・・・はい・・」

「ちなみにサヤりんの部屋は5Fやで?」
「・・・・はい・・・すみません・・」
ちょっと涙目になってきた私・・・
「あ・・イヤ・・別に怒こってんのとちゃうんよ?」
みっちゃんさんは急におろおろしだした。
今にも泣き出しそうな私の頭をワシワシと撫でた。
「ささ・・玄関こっちやで」
私の手首を掴み誘導した。
しばらく歩くと見覚えのある玄関にたどり着いた。

みっちゃんさんは玄関の脇にあるエレベータを指差して
「今度来る時はあれ乗って5F行ったらすぐやしな」
「・・・はい・・・」
「何や元気ないなぁ〜もちっと元気出して帰ろうや・・・な?」

「・・はい!」
よしよし!そう言って私の頭をワシワシ撫でた。
 
 
259 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:16

それからみっちゃんさんはカードをピッと差し込んで私共々表に出た。
「ほうれ脱出!!外に出れたで!」
両手を上に上げてそう言うと私の方を振り返りニコニコ笑った。




「こっから一人で家帰れるか?」
「あ・・はい・・」
「何ならついでに家まで送ってったろか?」
「いえ・・そんな・・・」
「しゃぁ〜けどもう〜暗なってるしなぁ〜・・・まぁ〜遠慮せんでもええって!」
と有無を言わさず強引に私の手首を掴み門とは別の方角へ歩き出した

「あの・・・門は向こうじゃ・・?」
「あぁ〜車よ!車!車で送ったるわ!」
そう言うと人差し指で車のキーをクルクル回した。
あまりにも勢いよく回り過ぎて指先からピョンと飛んで行った

「わっ!ダサ!」そう叫んで慌ててキーを拾いに行くみっちゃんさん
私はおかしくなってクスッと笑った。
「おっ!笑ろたな!ちょっとは元気でたな」キーを拾って戻ってきた。
 
260 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:23

駐車場には少し大きめのまだらに薄汚れた白いバンがとまっていた。



「これやねんけどちょっとまってな」
ドアを開けてなにやらガサガサしていた。
「ホイ!どうぞ!」助手席のドアを開けてくれた。
「お邪魔します・・・」
「お邪魔て・・・おもろいなぁ〜自分」
みっちゃんさんはニヤニヤ笑った。

「ごめんな車ん中ゴミゴミしてるやろ?姉さんがすぐ散らかすんよ」
と溜息混じりに笑った。


後ろの座席を見てみると改造したのかベッドのようになっていた。

「これって・・・」私が後ろを指を差すと


「あぁ〜それなぁ〜去年の秋に姉さんが急に
『鈴鹿にF1見に行きたい』って言うから急遽改造したんよ。
もうじき冬やと言う肌寒い時期に鈴鹿で車の中でお泊りやで?
ありえへん・・・
んでせっかくクソ高い場所のチケット取ったのに
着いた初日は一日中隣接されてる遊園地でダラダラ過ごして
一切予選も何も見ずよ!何しに来たんやっちゅ〜ねん!
で、日曜の決勝も最初は機嫌よう見とったんやけど
だんだん姉さん機嫌悪なってきて、まだレースの最中やのに
『うるさいし疲れたからもう帰ろう』やって・・・ありえへん・・・
ムカツクから車の中もその時のままや・・・
ホンマありえへん・・・」
 
261 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:27

「ありえへんありえへん・・・」
ブツブツと念仏のようにつぶやき続けるみっちゃんさん

「じゃぁ〜最後のゴールも見ずですか?」
「そうや、ゴールも見ず帰ってきたわけよ・・・一体鈴鹿まで私は何しに行ったのか・・・」
悲しそうに言い遠い目をした。


「ま、こんなアホな話しててもしゃぁ〜ないわ、ほな出発すんで!」
そう言うと同時にエンジンキーを回し
「あ・・はい」と言うが早いか車が発進した。
門の近くに来た時リモコンをかざすと門がスーッと開いた。

「わっすごい!開けゴマですね」私が笑うと
「そやな!ひらけぇ〜〜〜ゴマぁ〜!!」
私の言葉に乗ってくれた。
車が門の外に出るとみっちゃんさんは後ろを振り返り
「とじろぉ〜〜〜ゴマぁ〜!」
すると門がスーッと閉じた。
なんだかすごく面白い!
ここの大学にはこんなに面白い人が沢山いるんだなと思った。
 
 
262 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:32


車で走る事ほんの10分弱で我が家に到着した。
たった10分弱の間にみっちゃんさんは沢山面白い話をしてくれた。
もう着いちゃったの?
と後ろ髪を引かれる思いで車を降りた。

「ありがとうございました」
「ほなまたな!」
そう言うとみっちゃんさんは来た道を帰っていった。
もうちょっと一緒に話をしたいなと思った。






車が走り去った後、建物の影でこちらを見ていた黒い影がスッっと消えた。
 
 
 
263 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:34

しばらくして携帯が震えた。
マフラーさんからのメールだった。
そう言えば私はあのままマフラーさんに黙って帰ってきたんだった事を思い出した。



<< さっきみっちゃんから聞いたよ、また迷ったんだってね?(笑)
まぁ〜無事帰れてよかったよ。またこれに懲りずに遊びに来てね♪
 ―マフラーさんより― >>

少し考えてからマフラーさんに返事を送信した。

<< ごめんなさい・・また迷ってしまいました(T-T)
これに懲りずに遊びに行きますね(笑)
 ―梨華― >>
 
264 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:35
 
265 名前:迷宮の・・・ 投稿日:2004/09/19(日) 22:37
 
266 名前: 投稿日:2004/09/29(水) 18:47

――――――――

267 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 18:52


―次の日―



朝、バスを降りるとそこにはいつもいないごっちんがいた。
何だか多数の後輩に周りを囲まれちゃっていた。
そんな中私を見つけたごっちんが大声で私を呼んだ
「梨華ちゃん!」
一斉にごっちんの周りにいた人達が私のほうを見た。
うっ・・・・何だか皆さんの視線が怖いのですが・・・気のせい?
そんな周囲の視線にはめもくれずに
ごっちんは周りの人を掻き分け私の元へやってきた。

「相変わらずごっちんすごい人気だね」
「へ?人気?そんなこと無いよ梨華ちゃんほどじゃないもん」
とニヤニヤ笑った。

「何でそこで私が出てくるの?」
「ん〜それは・・・梨華ちゃんが気が付いていないだけだよ」
ごっちんは目を細めて人差し指で私の頬から顎にかけてスッと指を這わした。



キャーッ!



途端に私の背後で黄色い声がした。



ごっちんは何事も聞えないような顔をしながら私の手を取り教室へと向かった。
「なんかさ、梨華ちゃんと登校って久しぶりだね!」
「そうね、だっていっつもごっちん早いんだもの」
「まぁ〜ね、朝は色々忙しいからね」
にっこり微笑んだ。
・・・色々ってなに?ごっちん・・・

268 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 18:54

私の教室の前までくると
「じゃぁ〜梨華ちゃんまたね♪」
そう言って隣のクラスに消えていったごっちん
もうちょっとごっちんと一緒にいたかったなぁ〜と思っていると
ごっちんが消えて直ぐに柴ちゃんが走ってやってきた。

「梨華ちゃん!昨日の調査終了したよ!」
そう言いながら駆け寄ってきた。
「さすが柴田探偵!仕事が早〜い!」
よしよし!私は柴ちゃんの頭をナデナデした。
「ワンワン!」柴ちゃんは犬のまねをした。



「・・・ってそんなことより梨華ちゃん
昨日の”みきちゃ”ってあれ間違ってるよ?」
「え?どういうこと?」
「吉澤さんと関係あるとかって言ってたでしょ?
それで調べてみたら」
「フンフン・・調べてみたら?」

「”みきちゃ”じゃなくって【ミキティ】だよ!」
「え?ミキ茶さんじゃないの?」
「お茶じゃなくってティだよ!み・き・てぃ」
「・・・あっそうなんだ」呆然とする私。
「梨華ちゃんもしかしてティをお茶のティだと思ったりした?」
「う〜〜〜思ったりしました・・・」

ったく・・・呆れて物が言えませんよ!
とでもいいたげな柴ちゃんのその表情。


「そんな事より調査の結果を教えてちょうだいよ!」
「はいはい、調査結果報告をさせていただきます。」
「はい!よろしくどうぞ」
 
269 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 18:58

「えーっと名前は藤本美貴さん。
吉澤さんと同じ1年A組。
成績は普通・・・かな?・・・・微妙に・・・
学校にはとりあえず毎日来てるようです。」
「とりあえずって?」
「大半が朝登校して午前中に早退するか
ずっと保健室で寝てるかのどちらかだから」


「あ・・・待って、名前をもう一度お願い」
「えーっと名前は”藤本美貴”さん」
「藤本?」
「そう!藤本」
「市井じゃなくって?」
「いちい?・・・そんな名前は出てこなかったよ?」
「そう・・・」
「藤本さんがどうかしたの?」

「ううん・・なんでもないありがとう柴ちゃん!」
ごまかしついでに柴ちゃんに抱きついた。
「わっ!り・・梨華ちゃん!こんなのごっちんに見られたらどうすんの!?」
「え?別にどうもしない〜」
変な柴ちゃん。











そんな二人のやり取りを教室の隅からこっそり覗かれているなんて
この時の二人は知る吉も無かった。
 
 
 



270 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 19:00

――――――――――――
 
271 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 19:01

―梨華が柴田探偵から調査報告を聞いていたその頃
ヨシザーは自分の学校には行かずに隣の大学に遊びに来ていた。
あのにっくき”矢口”を捜して一言物申したかったからだ。

大学構内をウロウロしたのだが
いかんせん普段でも誰とも会わないのにこんな授業中に会うはずもなく、
一部屋づつ聞いて廻るのもめんどうだ。
どうしたものかと途方に暮れていたヨシザーは、食堂付近を差し掛かった時
カオリと誰かが話をしている場面に偶然遭遇した。

すこ〜し近づいて聞き耳を立ててみると
”矢口”がどうのこうのと言っていた。
きっとこの金髪が矢口なんだな!
確認もせずに直感だけで確信した。

カオリが先に一人で食堂を後にした。
それを見届けてからヨシザーはおもむろに立ち上がり矢口の前に出た。
 
 
272 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 19:03


「頼もう!」


急に変な風に声をかけられた矢口は
ポカンと口を開けたままヨシザーを見上げた。

「矢口さん・・・ですよね?」
「え?・・・おぅ・・・おいらが矢口だけど?・・・あんた誰?」
「その節はお世話になりました。・・・・ヨシザーです!」
そう言ってニヤリと笑ってなぜか腰に手をやり仁王立ちした。

「あ・・・よっすぃ〜ね!」矢口はニコニコ笑った。
「なんですか?それ?そのよっすぃ〜って・・・」
「あぁ〜オイラがつけたあんたのあだ名だよ!」
「勝手につけないで下さいよ!」
「なんだよ!そんな固い事言いっこなしじゃん!」
そう言ってヨシザーの腕をバンバン叩く。

ヨシザーはそんな矢口の手を掴み顔を寄せて言った。
「もうね、カオリに変なもの作らないでよ!困るのはこっちなんだから!」
ブン!と掴んでいた矢口の腕を放り投げるように放した。
その勢いで矢口は少々吹っ飛んでテーブルに当たって転んだ。


「いってぇ〜なぁ〜何すんだよぉ〜
元はといえばあんたが変なことばっかするからだろ?
あんまりカオリを困らせんなよな!」
床に転がって手をついたままヨシザーを睨んできた。
「あなたには関係ないでしょう?構わないでくださいよ!」
そう言い残してドスドスと音が鳴りそうなほど地面を踏みしめながら
ヨシザーは帰っていった。

「・・ったくなんだよあいつ・・・」
起き上がろうと手を強くついた瞬間・・・
「イタッ・・・」どうやらさっきぶつけた時に右手首を強打したようだった。
「やっばいよ・・・どうしよう・・・このままじゃ・・・」
 
 

273 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 19:06
 
274 名前:柴田探偵事務所再び 投稿日:2004/09/29(水) 19:08
 
275 名前:   投稿日:2004/10/05(火) 20:59

――――――――
 
276 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:04


次の日、すっかり昨日の事など忘れていたヨシザーが
いつものようにカオリの部屋に行った時のこと。



バーン!



突然ビリビリと響くような大音響と共に部屋のドアが開いた。


普段めったに出てこない学生諸君もこの日ばかりは一斉にドアを開けた。
そこにはヨシザーが転がっていた。





「あんたね!矢口に何したか知ってんの?
矢口ね右手首骨折したの
それがどういうことだか分かってるの?」

何が何だかわからない・・・放心状態のヨシザー・・・。

「矢口ね、週末にロボットカップがあったのに・・・
これじゃぁ出品に間に合わないじゃないのよ!
ねぇ〜ヨシザーどうすんの!?」


今にもヨシザーを踏み潰しそうな勢いのカオリ
騒ぎを聞きつけた市井と保田が慌てて駆け寄りカオリを二人掛りで部屋に入れた。

カオリが部屋に入ったのを見てその他大勢の学生諸君も各部屋に戻った。


今だ放心状態のヨシザーが一人・・・ポツリと廊下に転がっている。
 

277 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:06


しばらくしてからカオリの部屋から市井が出てきた。



「ヨシザー・・・カオリの言いたい事分かるよな?」
「・・・」
「カオリにとって矢口は・・・大切な親友だしさ・・・」
「・・・じゃぁ〜ヨシザーは大切じゃないんだ・・・」

「そう言うんじゃないんだけどもさぁ・・・
まぁ〜カオリの事は圭ちゃんと二人で何とか収めるから
とにかくヨシザーは暫らくもうここに来んなよ!」
そう言い残すとカオリの部屋に消えていった。





「そうっスか・・・ヨシザーが全部悪いんスよ・・ヨシザーが悪者っスよ」




そう言うとフラフラしながらどこかへ歩いていった。
 
278 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:07

――――――
 
279 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:09




あれからヨシザーはフラフラと屋上に来ていた。




ふてくされた顔をして屋上の手すりにもたれながら
下に向かって小石を落としていた。
ふと手に持った石が少々大きかった。
少々と言うか・・・拳大・・・ってか結構デカイね・・・。

投げようかどうしようか躊躇していた時、
偶然下を梨華が通るのが見えた。
どうやら今から一番さんの部屋に行く所なのだろうか?

ちょっと驚かしてやれ!
よーし投げちゃえ!

そう思い石を投げようとした時、腕を後ろから掴まれた。




「え!?」




「アンタ何考えてんの?そんなん当たったら下手したら死ぬがな・・・
そんな小学生でも分かるような事・・・あんたは分からんのか?」

「えっ・・あの・・そ・・・そう・・で・・・すね・・」
ヨシザーはズズーンと沈み込んでいった。
 
280 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:10

「実はな、さっきからずーっと見ててんけど、
あんた何ふてくされてんのんや?お姉さんに言ってみなさい!」
胸をドンと叩いたと思ったらゴホゴホとむせていた。
それを見てヨシザーはフフッと笑った。

「おっ!なんや思ってたほど元気やん自分・・・」


『ほなな!』と言って去って行こうとする後姿にヨシザーは声をかけた
「ねー」
その人はヨシザーの呼びかけに反応して振り返った。
「ん?どした?」
「・・・もう少し・・・一緒にいてくれませんか?」
「んー・・ええよ!」

”丁度暇やったし”

・・・ヨシザーの隣にしゃがんだ。
 
281 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:12

それからいろいろ話をした。
たわいも無い話を色々と。

「へーなんやヨシザーちゃんっておもしろいな!なんや平家さん気に入ったわ!」
ワシワシと頭を撫でてくれた。
そういやカオリに頭なんて撫でてもらった事ないよなぁ〜って
しみじみ思い出してると何だか泣けてきた。

「わっ!どないしたん?平家さんなんかヘンな事言うたか?」
ヨシザーは涙をごしごし拭いて
「ち・・違うんです。ちょっと思い出しただけです。」
「ほうかーなんや辛い事思い出させるような事私がしたんやな」
”ゴメンな”・・・と平家さんが言ったので慌てて
「ちっちっ違うんです!」

”ちょっとうれしいなって思って”・・・そう言うとうなだれた。


「なんや噂でしか知らんけどいつも元気印のヨシザーちゃんが元気ないと平家さん悲しいわ」
そう言ってまたヨシザーの頭をワシワシ撫でると
「よし!ヨシザーちゃん!平家さんと面白い事して遊ぼうか!?」とニヤリとした。

 
282 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:14


何か裏があるのか?
そうも思ったが、ここは一つ平家さんの誘いに乗ってみることにした。



ヨシザーはフラフラと平家さんに連れられて部屋の前まで来た。
さすがに地階までは来た事がなくちょっとした未知との遭遇だった。
辺りをキョロキョロしながら歩いていたが、他の階とはあまり変わらないけど、
地階と言う事だけあって少しだけ薄暗かった。


「ちょっと待ってて!」と平家さんは部屋に入っていった。

しばらく部屋の前で待っていると
「ハイ!お待たせ!」
私の目の前にあるものが差し出された。



ん?これは?
どこからどう見ても風船ですが?

「あの?」
「あぁ〜それふうせんやで?」
分かってますよそんなの・・・。
「よし!ほなやろか!」
そう言って私の手を引いてずんずん歩く平家さん
「ちょっ・・ちょっと!」
どこへ行くのですか?
平家さん・・・やるってなにを!?

 
283 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:18

3Fにある普段あまり使われていない広い水場にやってきた。

「あの?ここでなにを?」

そう言う私を無視して平家さんはおもむろに風船に水を入れだした。
あっという間にパンパンに膨らんだ水風船をキュキュッと口を縛る。

ヨーヨーでもしようっての?

なんて思っているといきなりパシッと言う音と共に私の視界が水浸しになった。
「わっ冷たい!へ・・平家さん何すんですか!?」
「ほれほれ!ヨシザーちゃんも早く作んないとダメだよ!」
そう言いながら風船に水を詰めている。
「わっ!きったねー」
私も負けじと風船に水を詰めだしたがまたしても水を入れてる最中に
平家さんから横からの攻撃を受けた。
バシッ!
「つめたっ・・!!」
またしてもびしょぬれだ!



冬なのに・・・冬なのになんでずぶぬれ!?
 
284 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:27

「どりゃぁ〜!!」
ややヤケクソ気味の私は大量に水を入れた水風船を逃げる平家さんに向かって投げた。
が、しかしあまりにもの水の多さにコントロールが狂った。



パシッ!



何かにぶつかり水風船が弾けて水しぶきが飛び散った。



「きゃっ!」



「あっ・・」
平家さんは小さく声をあげた。
恐る恐る見るとそこには鬼の形相をした圭ちゃんが立っていた。



「わっ!・・・けっ・・・圭ちゃん・・・どうしたのそんなにずぶぬれで・・・雨降ってた?」
そうは言ってみたものの鬼の形相の圭ちゃんはヨシザーに近づき
ヨシザーの口をグニグニと広げたり閉じたりしながら

「ど・の・く・ちがそんな事言うんだ!?」

すんげーその顔が怖いのですが・・・

「ふぅいまふぇん・・・」
口を引っ張られながら謝った。
 

285 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:29

「あんたまだ懲りてないの?」
そのまま引きずってどこまでも行きそうな勢いだったので
「ちょ・・ちょっと圭坊!堪忍したってよ!」
平家さんがヨシザーと圭ちゃんの間に入ってくれた。


納得したのかしないのかそれから3人仲良く?
平家さんの部屋で服を乾かしにいった。
なぜか平家さんの部屋には洗濯機も乾燥機もあった。
本当に生活している部屋みたいだ・・・。


乾燥機にかけている間
平家さんのジャージやスウェットを着て
3人でブルブル震えながらストーブの前で暖を取ってると
圭ちゃんが聞いてきた。

「ねぇあんた達このくそ寒い冬に何であんな事やってたのよ!?」

うっ・・・ごもっともなご意見です。


「バッカじゃ無いの?」

ううっ・・・
バカと呼ばれた二人がうなだれた。




「それよりさ、あそこ水浸しのままでしょ?どうすんのよ?」
圭ちゃんの鋭い眼差しがヨシザー目掛けて突き刺さった。
「あ・・・そうっスね・・・」
「でもあっこってあんま人通らへんから大丈夫ちゃうんちゃう?」
「まぁ〜あんなに濡れてたら誰でも気がつくわよね」
「「「ははは!」」」

「それに気ぃ付かんと転ぶ人っちゅ〜たら姉ーさんくらいちゃうか!?」
「「「ははは!」」」
「それ言えてるかも!裕ちゃんならありえる!」
「圭ちゃんそれ言いすぎだよ!」
はははは!
 
286 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:41

・・・と3人が笑い転げている時。
「ひっ・・・・くショイ!」
くしゃみをしている人物一人。
例の水場付近を歩いています。

ボーっと何も考えずに歩いているようです。
あ・・・そこは水溜りが・・・
水溜りに足を取られ・・・・・・

ツルン・・・バシャッ・・・

あちゃ〜・・・あぁ〜あ・・・見るも無残な・・・。

後は私知りませんよ?

287 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:44


そんなことがあったとも知らずにしばらくしてから
ブツブツ言いながらも圭ちゃんは濡れた床掃除を手伝ってくれる事になった。
3人モップをもって3Fの水場に行くと・・・・



「へ・・・平家さん・・・だ・・誰か転んでますが・・・」
「うん・・・ほんまやな・・・あれってもしかして・・・」
「「「裕ちゃん!?」」」
3人のその声に気付いた水溜りに座っているその人が振り返る。

「ごるあ!あんたらか!!こんなことしたんは!!!」
圭ちゃんもビックリの鬼のように巨大化した裕ちゃんが追いかけて・・・・
来ようとしたけど、水でツルツル滑ってなかなかこちらまで来られない様子。


「わっ!とりあえずここは逃げとこ!」
そう平家さんは言うとモップを投げ捨て走り出した。
ヨシザーもモップを投げ捨て平家さんの後を追った。

288 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/05(火) 21:47

保田もまたモップを置いて一緒に逃げようと思ったのだが
「なんや圭坊もこんなにかわいそうな裕ちゃんを置いて逃げんのんや?」
そう言われてまで逃げるわけには行かない。
保田の変なプライドが彼女をそうさせたのだ。

しょうがなく二人が投げ捨てたモップを拾い床の水を拭き始めた。
ぼーっとその様子を見つめていた中澤に保田は
「はい!裕ちゃんもちゃっちゃとやっちゃってよ!」とモップを手渡した。

「何で何の関係の無い・・しかも被害者のうちがやらなあかんの?」
「もうブツブツ言ってないでさっさとやる!」
段々鬼のように大きくなっていきそうな気配・・・。
それを察知したのか中澤は
「はいはい・・」
圭坊キレたら怖いからな・・・中澤は素直に保田に従った。

「返事は一回でいいの」
「・・・はい・・・」







(何だか話が遠くのほうに言っちゃってる気がするのですが・・・まぁ〜いいか(w

289 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/07(木) 21:42


その頃みちよとヨシザーは二人を置いて走って逃げていた。



「ハァハァ・・・へ・・・平家さんも・・もう大丈夫っスかね?」
「はは・・ハァハァ・・だ・・大丈夫ちゃうか?」
そう言うと二人とも地面にへたり込んだ。
「はは・・・何か今すんげーおんもっしれー」
「はは・・そりゃよかったな」
ははははと二人顔を見合わせながら笑っていると
ヨシザーは急にみちよの肩を掴んで見つめた。

「わ・・・どうしたんや?ヨシザーちゃん・・・」
「あの・・・平家さん・・・」
「な・・なんや?」
「ヨシザー決めました!」

「??な・・何を決めたんや?」は?一体この子は何を考えてるんや?
そんな様子でヨシザーを見るとヨシザーは満面の笑みを浮かべながら
「平家さんカード下さいよ!」
「はい?」みちよは頭の中一杯?マークが飛んでいる。
「だから平家さんの部屋のIDカードですよ!」
相変わらずヨシザーは意味がわからない事を口走っている。

「なんでや?あんたは・・・」
「いいんです!カオリとは別れます!だから・・・」
「ちょ・・ちょっと待ってよ!」
みちよは落ち着かせようとヨシザーに掴まれている手をどけ、
自分の手をヨシザーの肩に乗せてヨシザーを前後にブンブン揺すりながら叫んだ。

「ヨシザーは待ちませんよ!」
ヨシザーはみちよの手をすばやく外してギュッと強く抱きしめた。
抱きしめられたみちよは呆然としながら
「え・・・と・・・ヨシザーちゃん・・・これはなにかな?」
「えーっとヨシザーが今平家さんを抱きしめてます・・・が・・・ダメでしょうか?」
「ダメもなにもクソも無いわ・・・」
「じゃぁ〜いいんですか?」









「あかんなぁ〜それは・・・」





ヨシザーの背後から声がした。
 
290 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/07(木) 21:46

「あっ・・・姉ーさん!」
みちよがヨシザーの背後に立っている裕子に先に気がついた。
慌ててヨシザーから離れようともがいたけれどもヨシザーがそれを許さなかった。
「ちょ・・・ちょっとヨシザー離してて!」
「ダメです!離しません!」
ギュッとさらにヨシザーは強く抱きしめてくるのでさすがに力では敵わない。


「へーみっちゃんとヨシザー・・・あんたらいつの間にそんなに仲良なったんや?」
裕子は腕組みをしたまま頭上から見下ろし聞いてきた。
「や・・姉ーさん・・だから・・その・・」
みちよは何とかして離れようと試みるも力が強くて離れないのだ。
「つい今さっきからですよ!」
まるで宣戦布告するかのようにヨシザーは中澤を見てニヤっとした。


「ふ〜〜〜ん・・・ま、ええわ。
でも言うとくで、うちの部屋には立ち入り禁止やで
・・・・・・・・・・・・・・・吉澤」
えぐるような鋭い視線をヨシザーに突きつけてから
「それとみっちゃん今日はもうそのまま帰り」
手をヒラヒラさせながら去って行った。
 

291 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/07(木) 21:48


「ちょっと姉ーさんって!!」
みちよは助けを乞うように呼び止めるが裕子は振り返らずに去って行った。

「平家さん!」
ヨシザーは体を離し肩に手をやり真剣な眼差しで見つめてきた。
「なんやの?」
半ば諦め顔の覚めた目でヨシザーを見た。
「ヨシザーじゃダメですか?」
ヨシザーは真剣な目をしながら聞いてくる。
「・・・・」
みちよはフッと目をそらした・・・
だってそんな真剣な目をされたらとても見れないよ・・・。
「裕ちゃんじゃなきゃダメなんですか?」ヨシザーは真剣な眼差しで聞いてくる。
「・・・・」
「平家さん!!」
ヨシザーはだんまりを決めている平家の唇を強引に奪った。
「・・ん・・・」みちよの口からは驚きの声が漏れた。
時間にして数秒間の口付け。
唇と唇が触れる程度の軽い口付け。
ゆっくり唇を離したヨシザーに寂しそうな表情をしながらみちよは言った。

「ヨシザー・・・もう気が済んだか?
だったらもう・・さっさと帰り!
それでもう二度と私の前には姿現さんといてな」

そう言うと平家さんは立ち上がりフラフラと壁伝いに歩き始めた
・・・・が、しかし
急にカクンと膝が折れるようにして床に膝を着くようにして崩れた。
体が倒れる寸でのところでヨシザーがスライディングキャッチするが如く駆け寄り抱きとめた。
抱きとめた平家さんの体はとても熱かった。
額に触れるとひどく熱かった。

どうしてさっき抱きしめた時気がつかなかったんだろうか?
自分のことで頭がいっぱいだったからだろうか?

肩を担いで立ち上がらせようとも試みたがもう意識が無いのか
体がクニャッとなってこれは一人ではどうしようもない
いくら体格がいいからといって所詮自分は女の子・・・
人一人抱き上げるなんてムリだけど・・・ムリだけど・・・
今はそうも言って入られない。
力を込めてみちよを抱き上げた。

思った以上に軽かった。
“これなら行けるかも”ヨシザーはみちよを抱きかかえゆっくり歩き始めた。
 

292 名前:冬なのに・・・ 投稿日:2004/10/07(木) 21:49


ヨシザーはみちよを抱きかかえたままある部屋の前に立った。
両手がふさがっているので足で膝でドアをノックをした。


ゴツンゴツンゴツン!
ノックなのか殴っているのかわからないような音が出た。

暫らくしてドアが開いた。


その部屋の人物はヨシザーの顔を見て露骨に嫌な顔をしたが
ヨシザーに抱きかかえられているその人物を見て表情が変わった。





「どないしたんや!?あんた・・・あんた何かしたんか?」
「いえ・・・きゅ・・急に平家さんが倒れて・・・その・・・すごい熱みたいで・・・」
ヨシザーがそう言うと裕子の顔色が変わり素早くみちよの額に手を当てた。

「は?なにこれ!?めっちゃ熱いやん!はよこっちに寝かしたって!」
ヨシザーを部屋に入れみちよの使っている簡易_ベッドに誘導した。
冷蔵庫から氷を取り出し氷枕を作って頭の下に額には氷水で冷やしたタオルを置いた。
その様子を少し離れた所で見ていたヨシザーは黙ってそのままドアへ向かった。
ドアノブに手を触れようとした瞬間中澤の声がした。
「ありがとうな・・」
「え?」
ヨシザーはドアノブの前で手が止まったまま振り返った。
「みちよ連れてきてくれて・・・ありがとう・・・」
「いえ・・・あの・・こっちこそさっきはすいませんでした。」
しゅんとしょぼくれるヨシザーに裕子は
「さっきのは・・・別にどうでもええねん・・・
でもな・・・みっちゃんが・・・みちよが辛い目にあうんだけは
うちが許さへんから・・・」
そう言うと裕子の目から大粒の涙がこぼれた。







ドアがバタンと音を立てて閉まった。
 
 
293 名前:  投稿日:2004/10/09(土) 22:02

――――――

294 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:06


ヨシザーがしびれる腕を擦りつつ玄関まで来た時、丁度先客がいた。
そっと近づき後ろからがばっと抱きしめた



「キャ――ッ!!」



急に抱きしめられたその人は大きな悲鳴を上げた。




「OH!ベイベーそんなに驚くことは無いんじゃないの?」
驚いて振り返るとヨシザーさんだった。
「あ・・何だヨシザーさん・・・なの?びっくりするじゃないのよ!!」
「ははは!ごめんごめん!ちょっと驚かしてやろうと思っただけだから
あれ?花子ちゃんもうヨシザーの事ライオンさんって呼ばないんだ?」
ヨシザーはニヤニヤと笑った。
「え・・・あ・・あれは・・・」
「ははは!いいよいいよ!ヨシザーのことはなんとでも呼んでよ!
でもライオンってカッケーし気に入った!
なんたって野生動物の王様だしね!」

ヨシザーさんはカッケーカッケーといいながらカードを挿入してドアを開けてから
「・・・ここに・・・・・いな・・・」ポツリと何か一言つぶやいた。
「え?」
「ううん何でもないよ!ささ!帰ろうよ!」
と私の背中を押すように足踏みした。
「そうだね」
トボトボと二人はバス停へと歩き始めた。

「ねぇ・・・花子ちゃんさ、家どこ?」
「え?」
「やだなぁ〜そんなに構えないでよ!襲わないって!
たださ、もう遅いからさ送って行ってあげようかと思ってね」
ニヤニヤしながらそう言うヨシザーさんの目だけがいつに無く真剣だった。
私はヨシザーさんの申し出について返事はしなかったけど
来たバスに二人一緒に乗り込んだ。
 

295 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:09

「ヨシザーさん家はどっち?」
「あっち」
そう言うと進行方向とは逆の方向を指差した。
「え?それじゃぁ〜・・・」
「なんてね!うっそぉ〜家はそこだよ!」
と赤信号で止まっているバスの窓から
反対斜線側の道路沿いの商店街の中の一つを指差した。
そこには吉澤商店と書かれたシャッターの閉まった酒屋さんがあった。
信号が青に変わりバスが動きだす。
「すぐそこじゃない」
「・・・そうだね」
「そうだねって・・・」
「ん〜最近家に帰ってないから・・・」
寂しそうに窓の外を見ながら遠い目をした。
私はそれ以上何も聞けなかった。
誰にでも色んな事情はあるものだ。



私の降りるバス停に到着した。
「私ここで降りるわ」
私が立ち上がると同時にヨシザーさんも立ち上がり、後ろについてバスを降りた。
 
296 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:10

相変わらずヨシザーさんは私の後ろから歩いてくる。
「―で、家どこ?」
「・・そこのマンション」私が前方にあるマンションを指差した。
「へーカッケーじゃん!」
・・・なにがカッケーんだか・・・
何だかんだ言いながらとうとうヨシザーさんはマンションのエントランスまでやってきた。

「ヨシザーさん・・・寄って・・・く・・・・の?」
「ん〜どうしよっかなぁ〜・・・あ、一番さんは入ったことあるの?」
「え?・・・ない・・・わよ?」
「ふーんじゃぁ〜なんでヨシザーを一番さんよりも先に部屋に上げようと思ったの?」
「べ・・べつに・・・」
「ま、今日は遠慮しとくよ!じゃないと今にも刺されそうだから」
ヨシザーさんはニヤっと笑うと私の頬にチュッと口付けて
「じゃぁ〜またね!へんぱい!」
ヨシザーさんはそう言うと一目散に駆けて行った。

私はヨシザーさんの行動に驚いて
頬に手をあてたまましばし呆然としていた時
急に後ろから声をかけられた。
 
297 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:12

「お帰り梨華ちゃん」
・・・ごっちんだった。
私は慌ててオートロックを外して自動ドアを開けた。
「た・・ただいま・・ごっちんどうしたの?」
「ん?別に・・・」
ごっちんは私を後ろから抱きしめながら一緒にエレベーターに乗った。
「どうしたの・・ごっちん?」
ごっちんは私の首筋をスリスリしながら
「梨華ちゃんに会いにきたのだよ」そう言った。
まるで動物のマーキングのようにごっちんは
自分の匂いをつけるように私の首筋をスリスリしていた。

「合鍵持ってるのに入ってればいいじゃないの・・」
「たまにはこうやって待つのもいいかな?って思ってね。」
ごっちんは相変わらず私の首筋をスリスリしていた。

・・・いつまでごっちんのこのマーキング行動は続くのでしょうか?

エレベーターは私の部屋の階で止まった。


私はごっちんを背中にへばりつかせたまま玄関を開け部屋に入った。
ソファーに座っても相変わらずごっちんは私の背中と首から離れなかった。

・・・今日のごっちんはいつになく甘えん坊さんだね。


「ね、梨華ちゃん・・・さっきの・・・誰?」ごっちんは私の耳元でつぶやいた。
「え?」ごっちんのつぶやきに私は固まった。
「さっきそこまで送ってきてもらってた人・・・」
あ・・見られてたんだ・・・
だからあの時ヨシザーさんは『今にも刺されそうだから』って言ったんだ・・・。
 
298 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:13

「なに?梨華ちゃんの新しい人?」
相変わらずごっちんは私の背後にいる。
「え・・何言ってんのごっちん?そんなんじゃないよぉ〜」
ごっちんの顔を見ようとするがごっちんはそれをなぜか許してくれない。
「じゃぁ〜どんなの?」
ごっちんのすごくすごく低い声が私の耳の中に入ってきた。
「ただ・・・」
「なに?」
どうしよう・・・どう説明すればいいの?
「送ってもらっただけなの・・・」
私がそう言うとごっちんは耳元でフフッと笑うと
私の耳に直接語りかけるように「何で?」息を吹きかけるように言った。
その吐息がとてもくすぐったかった。
「く・・暗いからって・・・」
「暗いって普段とあんまり変わんないじゃない?」
キュッと私の首をしめるように抱きついてきた。
「そ・・それは・・・」
「へぇ〜じゃぁ〜ただ送ってくれたって言う人が梨華ちゃんの頬にキスまでするんだ・・・」
「あれは勝手に・・・」
ごっちんは私の首にしがみついたまま体勢を変え後ろから私の顔を窺うような体勢で
「梨華ちゃんあいつの事好きなんだ・・・」そう言うと私の首筋に口付けをしてきた。
ごっちんのその行動に少し驚きながら答えた。
「あ・・・あいつって・・・」
「ヨシザーだよ!」
私はごっちんの口から出たヨシザーさんの名前に驚いて振り返った。
「え!?ごっちん知ってるの?」
振り返ってみたごっちんはすごく目が冷たかった。
「知ってるも何も・・・あいつは・・・・」
ごっちんの目は何か獲物を捕らえた獣のようだった。
ヨシザーさんとは違うタイプのハンターの匂いがした。
 
299 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:14



「ねぇ梨華ちゃん・・・」
ごっちんは私の背中から離れて私と向かい合って座った。

「なに?」
ごっちんは私の顔は見ずに「梨華ちゃんにとって誰が本命?」そうつぶやいた。
「え?」・・・誰が本命って?何の事?
「この間もさ、ゴトーの知らない人の車から降りてきてたよね?」
「えっ・・・」この間って・・・車って・・平家さんの事?
私が記憶をたどっていると急にごっちんは私の肩をゆさゆさ揺すり真剣な顔で聞いてきた。
「ゴトーってさ・・梨華ちゃんにとってなに?」
「え?」
「ゴトーってどういう存在?」そう言うとごっちんはさらに激しく私を揺すった。
「どう言うって・・」
「言えないんだ・・・」そう悲しそうにつぶやくと私の肩を揺らすのを辞めた。
「・・・・」

「そっかわかったよ・・・じゃぁ〜もうゴトー梨華ちゃんには近づかないよ」
ごっちんはそう言いながら私の肩を突き飛ばすように離した。
「なっ・・なんでそんな事言うの?ごっちんは私を一人にするの?」
「ゴトーも今一人ぼっちだよ・・・」
ごっちんは床に項垂れて座り大粒の涙をこぼしていた。
「ごっちん・・・」私はそんなごっちんをそっと抱きしめた。





「私は・・・ごっちんが・・・好きだよ・・・」



・・・ずるいようだけど・・・それだけしか今は言えない・・・。



 
300 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:16

――――――――
 
301 名前:アクセス 投稿日:2004/10/09(土) 22:19

今ヨシザーはカオリの部屋の前に来ています。

さてここで問題ですヨシザーはこれからどうするのでしょうか?

正解は・・・・・・この後すぐです!

 
302 名前:アクセス 投稿日:2004/10/11(月) 01:11



ヨシザーはドアの前で一つ大きく深呼吸をして「よし!」と一つ気合を入れて
おもむろにカードを差込みドアを大きく開けた。


ヨシザーが部屋の中に入るとその部屋の持ち主がギロリとした目をしてこちらを見た。

「あ・・え〜っと・・・カオリ・・・さん?」急にヨシザーは先ほどの威勢がなくなる。
「なに?ヨシザー」相変わらず目をギロリとさせて見ている。
「あの・・・ごめんなさい・・」しょぼくれたヨシザーは小さな声で言った。
「なにが?」ヨシザーとは正反対に大声でカオリは言った。
「えーっと・・や・・矢口さん・・・の・・・事で・・・」
「・・・で?」
「ごめんなさい」
ヨシザーは額を床に摩り付けるように土下座した。
なおも額をこすりつけている。

「ヨシザーさ、謝る相手間違えてなくない?」
腕組みしながらカオリはヨシザーを上から見下した。
「え・・あ・・・それもそうです・・・ね・・」
ヨシザーが顔を上げた時カオリの背後から「もういいよカオリ」と物陰からそう声がして
腕に包帯を巻いて首から吊るした痛々しい姿の矢口が出てきた。

驚くヨシザーに近寄り肩をポンポンたたき
「よっすぃ〜もさ、気にしなくっていいよ!ほら!オイラも悪かったしね・・・
怪我もそんなにたいした事無いし・・それに・・・・・ま、とにかく大丈夫だからね!」
そう言ってヨシザーの頭を撫でて「じゃまたねカオリ!」と部屋から出て行った。


ヨシザーは床に両手を着いたままがっくしうなだれていた。

 
303 名前:アクセス 投稿日:2004/10/11(月) 01:18

カオリはヨシザーの傍に立ちはだかり
「矢口はあんな事言ってたけどカオは絶対にヨシザーを許さないからね」
「・・・・・」
「ねぇ〜ヨシザー何とか言いなよ!」
カオリはヨシザーの肩をつかんでブンブン揺すった。


しばらく黙ってやられていたヨシザーが口を開いた。
「わかったよカオリ・・・」
「なにが?」
「・・はい」ヨシザーはカオリの手の中に何かを置いた。

「え?」カオリは驚いて手の中にあるものを見た。
「これって・・・」
「返すよ・・それ・・・」

そう・・・それはカオリの部屋に入るためのIDカードだった。

「なに?どう言うつもり?」カオリは眉間にシワをよせていた。
「どう言うもこう言うも無いですよ・・・返しただけですよ。」ヨシザーは両手を少し上げた。
「それってどういうことかわかってるの?」カオリはヨシザーの目を見つめた。
「わかってますよ。それを返すって事はもう金輪際カオリの部屋には来ないって事ですよ」
ヨシザーもまたカオリの目を見つめながら答えた。
「ヨシザーそれって・・・」
「そうですよ・・・もうお別れって事ですよ。」そう言うと目を伏せた。
「は?なにそれ?」カオリは慌ててヨシザーの腕を掴んだ。
「もうね、ヨシザー疲れちゃいました・・・」
やんわとカオリの手を解くとムクリと立ち上がってドアの方へ向かった。

「ちょっと!ヨシザーそんな事カオが許さないよ!」
「・・いいんです許してくれなくっても・・・」ヨシザーは振り返らずに手を振った。
「ヨシザー逃げるの?」
「はい・・逃げますよヨシザーは・・・」
ヨシザーはカオリに背を向けたままそう言うと勢いよくドアを開け外に出た。
ドアが閉まろうとしたその瞬間カオリの声がした。



304 名前:アクセス 投稿日:2004/10/11(月) 01:19





「ヨシザー!!カード無しで帰りどうやって外に出るんだよ!」






・・・と、同時に無常にもドアが閉まった。
閉まったドアを背にヨシザーはカオリの最後に言った言葉が頭を廻っていた。




305 名前:アクセス 投稿日:2004/10/11(月) 01:21



・・・カード無しでどうやって帰り外に出るんだよ・・・



306 名前:アクセス 投稿日:2004/10/11(月) 01:22


「・・・そうだった・・・」
チッ・・・
舌打ちした所で始まらない。
今更どの面下げてカオリに外まで送ってもらえってんだよ・・・。

一番さん・・・は流石にそんな事頼めないしなぁ〜そんな事で借りを作るのいやだし
花子ちゃんは・・・まだあっちの学校だしなぁ〜・・・
ヨシザーは途方に暮れた・・・。


あ・・・そうだ・・・


あの人に頼もう・・・。


ヨシザーは急いでダッシュした。




307 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/12(火) 16:26
ヨシザーさんイイ!
ナイスキャラですね。何をしてくれるのかいつも楽しみです。
308 名前:アクセス 投稿日:2004/10/15(金) 23:03


ヨシザーはある部屋の前に来ていた。



コンコンコンコン!



部屋をノックしたらしばらくしたらドアが開いた。
ドアを開けた人はヨシザーを見て怪訝そうな顔をした。

「あのう・・・」

ヨシザーが何かを話そうとした時その人は言った。


「まぁ〜入り・・・」

ヨシザーはおどおどしながら部屋に入り
そこにあった小さな椅子に座った。

「あのう・・・」

その人はソファーに座りヨシザーのほうは見向きもせず
「私確か昨日言うたよね?」と冷めた声で言った。

「は・・はい・・・」
ガクッとヨシザーうなだれて床に正座するような形になった。

「じゃぁ何で来たん?」
相変わらず冷めた細い目付きで見つめてきた。

「あのう・・・ちょっと恥ずかしいお願いがあるんですが・・・」
ヨシザーは床に両手を着いて土下座するような形になった。

「は?お願い?」
目をキラッと輝かせ興味心身に体を前のめりにして聞いてきた。

「・・・はい・・・」
大きな体を小さくして答えた。

「しかも恥ずかしい?」
もっと興味津々の顔をして聞いてきた。

「・・・ぇぇ・・・」
さらに体を小さくして答えた。
 


309 名前:アクセス 投稿日:2004/10/15(金) 23:08

「・・・で、なに?どうしたん?」
「あのう・・・今さっきカオリとお別れしてきて・・・それで・・・」

「え?何で?あんたカオリと別れたん!?」
初めて聞く事実に驚きの声を上げた。

「えぇまぁ〜そうです・・・あの・・・そんな事よりもお願いが・・・」
「あぁ〜お願いね・・・で、どんなお願いなん?」

「あのう・・・実は、外まで送って欲しいんですが・・・」


「は?何で私が?」


「いや・・カオリにIDカード返して・・・
勢い良く部屋の外に出たのはいいんだけど
帰りのドアが開けられないと言う事に気がつきまして・・」



「ブハハハハ・・あんたアホやろ?」
いきなりお腹を抱えて大笑いした。




310 名前:アクセス 投稿日:2004/10/15(金) 23:11

「そ・・・それってちょっと笑いすぎ・・・」

「あ・・ごめんごめん!おもろすぎて・・」
必死に笑いをこらえているのだがまだカクカクと肩が笑っている。

「あのう・・」ヨシザーは上目遣いで見つめた。

「カ・・カードなんか外の個人ポストに入れとけばいいのに・・・」
その人は肩を揺らしながら必死に笑いを噛み殺していた。


「や、ホントマジで笑ってる場合じゃなく、
あの人に会わないうちに早く帰りたいんですよね」
ヨシザーは笑いこらえている人に切に願った。










「あの人ってうちの事か?」







またヨシザーの背後で声がした。




311 名前:アクセス 投稿日:2004/10/15(金) 23:13

「あ、姉ーさんおかえり」
笑い涙を拭きながらみちよはヨシザーの背後に近づく裕子を見た。

ヨシザーはそれを聞いてギクリとして振り返った。
「あ・・・ゆ・・裕ちゃん・・・」
ガックシうなだれた。

裕子は目を細めてうなだれたヨシザーに近寄り頭を撫でてから言った。
「なぁ吉澤・・・昨日うちが言った事覚えてるか?」
「あ・・はい・・・」
「それでも来るてあんたええ根性してんな」
裕子はヨシザーの額を指先で突付くと
その指でヨシザーの顎を持ち上げた。

「や、姉さん違うんよ!」
慌ててみちよが間に入ろうとするがそれを見た裕子は
今度は急にニヤリと笑った。


「知ってるよ」


「「えっ!?」」

二人は裕子は一体何を知っているのか?
そんな顔つきだった。

すると裕子はサラッと「さっきそこでカオリに会うたし」


ヨシザーはまたがっくしうなだれた。
・・・一体何回うなだれればいいのだろうか・・・
 
 
312 名前:アクセス 投稿日:2004/10/15(金) 23:16

「ほい」
裕子はヨシザーの頭の上に何かを乗せソファーに座った。

「え?」
あわててヨシザーは頭の上を探った。

「えっ?」
ヨシザーはその何かを手に取って見てまた声を上げた。

「あのう・・・裕ちゃんこれは・・・」
おずおずとヨシザーは手に持ったそのものを裕子に見せた。

「見て分からんか?」

「え・・あの・・I・・D・・カード・・・ですよ・・・ね?」

「そうや」
裕子は腕組みをしながら
ソファーに座り踏ん反り返っている。

「これはどこの・・・」
裕子は”パチン”と指を鳴らして
ヨシザーに人差し指を向けて言った。


「決まってるやん!」


「え?まさか・・カ・・カオリの?」
ヨシザーはカードと裕子を見比べた。

「・・ってなんでやねん!よう見てみぃ!」
ガクッと転げて見せて少し寂しそうな顔をした。

ヨシザーは真剣にカードを見つめ
「あ・・色が違いますね・・・」とポツリ

「そうや、ここの部屋のカードや」
フフンどんなもんやと言うような顔をした裕子がそこに居た。

「え?・・・でも・・・」
ヨシザーはカードを見つめながら上目遣いで裕子を盗み見た。

裕子は首をポキポキいわせながら
肩をトントンと洋酒の空瓶で叩きながらヨシザーを見て

「言うとくけどそれはみっちゃんのやないうちのや・・・」










―あんたをうちの監視下に置く事にしたから。―






 
 

 
313 名前:アクセス 投稿日:2004/10/15(金) 23:20


ヨシザーは新しいカードを手に出入り口で止まっていた。



「いや・・とりあえず今日ここから出られるのは嬉しいんだけど・・・」

先ほど裕子に言われた言葉を思い出した。






『ヨシザーがこれ以上悪さ出来へんようにうちの監視下に置く事に決めた。
だから今日からあんたはうちのシモベや!
勝手な事は一切許さへんからな!覚悟しときぃ〜!』






「シモベって・・・」

ヨシザーは大きく溜息をついた。



 
314 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/10/15(金) 23:26
本日の更新ここまでです。

>>307 名無飼育さん
えーっとまずはレス感謝です。
ありがとうございます。
それとヨシザーをお褒めいただきありがとうございます。
後しばらくヨシザーの出番は続きますのでw
315 名前:アクセス 投稿日:2004/10/21(木) 00:39

―――――
 

316 名前:アクセス 投稿日:2004/10/21(木) 00:42


ヨシザーはさっそく朝から裕子のシモベとして屋上で働かされていた。


「よっさんはよ持っといでやぁ〜」
裕子は腕を組みながらヨシザーをアゴでこき使っていた。


「裕ちゃんこれってなに?すんげー重いんだけど」
ヨシザーとみちよは大きく黒い物体を運ばされていた。

「黙ってちゃっちゃとみっちゃんと二人で全部運んできたらええねんから」


・・・ったく自分も手伝えっつーの!

ヨシザーは横を歩くみちよに尋ねた。
「へ・・平家さん・・これ・・何ですか?」
「ん?あぁ〜それなぁ〜・・・ま、まだまだ同じようなもんあるから早よ運びよ!
私はあんたが居てくれるおかげで仕事が半分に減ってうれしいし」
はははと声を上げて笑うと荷物を置くとまたせわしなく部屋に戻っていった。

「・・ってか教えてくれないし・・・つーかまだあんの?」
ヨシザーは途方に暮れた。


一体これなんなの?





317 名前:アクセス 投稿日:2004/10/21(木) 00:43

裕子の部屋と屋上を何往復したのか?
そんなのいちいち数えてないっつーの!
って言うくらい往復の後ようやく全ての機材が運ばれたようだ。


・・・ホントに一体なんだ?これ?


「姉ーさん搬入終了で〜す!」
「ん〜〜!!ごっくろうさぁ〜ん」
両手を組んでグッと上にあげ背伸びして立ち上がった。

「さてと・・・ほな次ぎみっちゃん組み立てヨロシク!
うちはその間ちょっと散歩してくるわ」
手をヒラヒラしながら屋上から去って行った。


「ほら!ヨシザーもはよ手伝ってよ!」
みちよはヨシザーの手を引っ張った。

「え?わっ・・ヨシザーそんなの知らないっすよ?」

「大丈夫簡単やし」
ニコッと微笑んだ。

「でも・・・何すれば・・・」
「んーとね、これとこれを繋ぎ合わせて・・・」
「ほうほう」


――――――――――――






数分の後、ブツが続々組み立てあがった。



その完成された物を見てヨシザーはポツリ・・・。





「これって・・・・・・・」








「そう!望遠鏡!」

「・・それはわかりますけど・・なんでこんなに?」

「まぁ〜それは夜になればわかるから」
ヨシザーの肩をポンポンと叩くと
「ほな姉ーさん呼んでくるわ!」
やや放心状態のヨシザーの横をすり抜け屋上から消えた。


「はぁ〜・・・それにしてもこんなにも望遠鏡何すんだ?」
5台の望遠鏡の前で途方に暮れた。
しかしこの望遠鏡・・お手軽に扱えるような代物ではなく
本格的な大きさの代物だ。

「もしかしてこれ・・・また分解してもとの部屋に戻すのか?」
そう思うとヨシザーはまたブルーな気持ちになった。



318 名前:アクセス 投稿日:2004/10/21(木) 00:46


しばらくすると裕子と何やら大荷物を担いだみちよが帰ってきた。

「おーおーよっさんお疲れさーん!」
裕子はヨシザーの目の前に缶をポンと投げてよこした。
「わっ!・・え?これって・・・タダですか?」

「いややなぁ〜よっさん!裕ちゃんそんなにケチちゃうで?なぁ〜みっちゃん」
「ええまぁ〜」振られたみちよは苦笑いした。
・・・ケチちゃうっていう以前の話やん・・このコーヒーも私が買うたのに・・・
みちよがブツブツ独り言を言ってると。


「みっちゃんそろそろあの子ら迎えに行ったってよ!」
裕子に言われみちよは「了解」と小声で言うとそそくさと去って行った。

「さて、よっさんにはまだ仕事があんねんなぁ〜」
歯をキラッと輝かせるようにニヤッと不適に笑った。
「え・・・・まだあるんすか?」
ヨシザーの額から汗が・・・そして体から変な汗が出てきた。

「さっきみっちゃんが持って来たそれ組み立ててよ」
袋に入ったそれを指差した。

「これって・・・なんですか?」
「ま、広げてみたらわかるやろ?」
裕子は缶コーヒーを飲みながら
そばにあった映画監督なんかが座るような椅子に座った。


しぶしぶヨシザーは置いてあるその物体を取り出しにかかった。


319 名前:アクセス 投稿日:2004/10/21(木) 00:47

小さな袋からこれまた小さく綺麗に折りたたまれた
ナイロン性の大きな布のようなものがぞろぞろ出てきた。

「な・・なんですかこれ?」
「ん〜?見てわからんか?」

「・・・・」

見てわかんないから聞いてるんだけど・・・
さすがにヨシザーはそこまで発言できなかった。


「とりあえずそこにあるポールをその穴に通してみ」
ヨシザーは裕子に言われるがまま作業に没頭した。




ようやく全貌がわかってきた。





「これって・・・」









「そうや!テントや」

・・・ちっ!またセリフとられたよ・・・
誰だってテントくらい見ればわかっつーの・・・


320 名前:アクセス 投稿日:2004/10/21(木) 00:52


「でも何でテントなんかいるんですか?」


冬なのに・・・


「ん〜?ま、それも夜になったらわかるわ」
ワハハハハと裕子は笑うと立ち上がり
「さてと、そろそろあいつら来る時間やな」
時計を見ながら言った。

「え?誰か来るんですか?」
「は?あんた何も人の話し聞いてないねんなぁ〜
さっきみっちゃんが迎えに行ったやろうが?」

そう裕子に言われそう言えばそんな話もしていたなぁ〜と思い出した。
というか、あんな事やそんな事やらされてたんだよ?


イチイチ覚えてねーっつーの!


「よっさんとりあえず今はもうええわ!
また後で呼ぶからもう帰っていいで!
ほんであんた、たまにはあっちの学校行きや!」
「あ・・・はい・・」

なんだよ・・こんな事させる為にこのヨシザー様をここへ呼んだのかよ・・・
それに二人して夜夜って・・・今教えてくれてもいいだろっつーの!
あんなにこき使われて缶コーヒー一本かよ・・・
・・・学校って朝からこんな事させといて今さら学校?
ヨシザーはうなだれながら屋上を後にした。



321 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:09

―――――
 


322 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:12


夕方近くに再びヨシザーは裕子に屋上へ呼び出された。

せっかくいい気持ちで寝てたのに・・・。
また出かけるというとブツブツと部屋の持ち主に小言を言われながら家を出た。


・・・文句があるなら裕ちゃんに言えっつーの!




ヨシザーがブツブツ言いながら学校付近にさしかかったころ
丁度学校が終わった時間なのだろうか、
生徒がゾロゾロ学校から吐き出されていた。
バス停で花子ちゃんを見つけた。
声をかけようかとも思ったけども止めた。



だって・・・




少し後ろにはこの間花子ちゃんの家の前で見た人が見張ってるようだった。
あの人はいつもああやって見張ってるのかね?
ま、ヨシザーには関係ないし・・・。


二人に悟られないように学校へ行く方角とは逆に向かって歩いていると
車に乗った一番さんとすれ違った。
どこに行くのか少し気になったけど
今は裕ちゃんに呼ばれているのでしかたなく急いだ。

あまり気乗りのしないまま屋上に来て見てビックリした。



323 名前:307 投稿日:2004/10/22(金) 00:14
更新お疲れ様です。つーかヨシザーさんもお疲れ。
みっちゃんが不憫でならない今日この頃(w
夜になるのが楽しみです(ワクワク
324 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:14



一瞬ここはどこかと我目を疑った。





ワーワーキャーキャーと騒ぎながら走っている



巨大なぬいぐるみが2体・・・





あれ?


ヨシザーの目がおかしくなければ・・・



黄色のピカチューと緑のゴジラのぬいぐるみが
屋上を走り回っているように見えるんですが・・・。





325 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:17

よく見るとそれはピカチューとゴジラの着ぐるみを着た
小学生と思われる女の子2人だった。


・・あぁ〜なんだ着ぐるみかよ・・・
ヨシザーの目がおかしくなったかと思ったよ。


その様子をほほえましく眺めている裕ちゃん。
2人の女の子に遊ばれている平家さん・・・
・・・・あの子達・・・もしかして裕ちゃんのこ・・・
そうヨシザーが頭の中に思い浮かべた瞬間




326 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:19


「あ〜〜〜〜〜っ!!シモベや!!」
「あ、ほんとなのれす!」



確か遠くに離れていたはずの2人があっという間にヨシザーの体にへばりついた。


あれ?・・・ヨシザーの思い過ごしじゃなければ
今ヨシザーの体に着ぐるみ二つぶら下がってるように思われるんですが・・・




「ゴラ!あんたらしょっぱなから飛ばしすぎ!スピード違反で赤キップ切んで!」
裕子が一喝するとススッとヨシザーの体から離れた場所に起立した。

・・へぇ〜裕ちゃんの言うことはよく聞くんだ・・・やっぱり・・・
だなんて頭の中をグルグル回っていると



327 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:22

「よっさんこっちや!」
裕子に現実に呼び戻された。

「あ・・はい・・」
ヨシザーは裕子の元へ走った。



「なんでしょう・・・・か?」
「ほら!」
裕子がヨシザーのほうに何かを差し出した。
ヨシザーは裕子の手元を見てビックリした。

「こ・・これは・・・?」
「見てわからんか?
今からバーベキューすんねん!・・ほら!」
裕子はヨシザーにトングを投げてよこした。


「わっ!わっ!・・熱っ!!」

丁度掴んだ部分が先ほどまで燃え盛る炭火をいじくっていた方だった。

「ホラよっさん!何ぼさっと突っ立ってんねん!
そこに飢えた仔羊がおんねんからちゃっちゃと肉焼かんかい!」
裕子はヨシザーのお尻を回し蹴りした。

「わっ!イタッ!それにセクハラ・・・」
「何言うてんねん!」
首を捕まれ頭を叩かれた。

ヒリヒリ痛む火傷の跡をフーフーしつつ半分涙目でヨシザーは
しぶしぶ用意されている大量の肉を焼いていった。
何で冬の寒い時に屋上でバーベキュー?
・・・ったくそれに誰がこんなに食うんだよ!?
しかもこの肉、ステーキ並にぶ厚いぞ?



328 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:24


「お兄さん早よ焼いてよ!うちらお腹空いてんのやから!」
「そうなのれす!ののはもうおなかペコペコなのれす!」

「・・はいはい」


こいつらが仔羊?
狼・・いやハイエナじゃねーのか?


・・・ってなんでヨシザーがこんなことしなくっちゃいけないんだ?
それにヨシザーお兄さんでなくってお姉ーさん・・・なんだけどなぁ〜・・・。


そんなヨシザーの思いとは裏腹に、あんなにもぶ厚い肉は焼いても焼いても
どんどん目の前に居る二人の子供の胃の中へ消えて行っていた。

・・あつっ!!冬なのに体が熱いよ!!汗だくだよ?
何で冬なのにヨシザーだけTシャツ姿なんだよ!?
それにしてもこいつらこんな気ぐるみ着てよく食えるよな・・・。
汗をダラダラたらしながらTシャツ姿でヨシザーは
黙々と次から次へと自分が焼く肉が消えていくのを見つめたいた。


329 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:25

「つーかヨシザー一口も食べてないんですが!?いつまで焼けばいいんすか?」
裕子に突っかかっていくと
「よっさん諦め〜相撲部屋でも横綱が食べ終わってからでないと
幕下力士は食べられへんしな」
裕子は焚き火の側でグビグビと喉を鳴らしてビールを一気に飲みほした。

「は?なんですかそれ?ヨシザー力士じゃありませんよ?」
それにさっきからよっさんよっさんって・・・何?
裕子は数本目になろうかというビールの缶を取り出していた。
・・・しっかしよく飲むよな・・・つーか寒くねーの?
むしろ今うちが飲みたい気分だよ!
うちの周りだけ常夏じゃん!!


330 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:27

「心配せんでもそのうちこの子らの興味が代わるから」
みちよはニヤリとした。

「興味・・・ですか?」
「そっ!今この子らの頭ん中は肉で一杯!そろそろ次の波が来るはずや!」
「次の波?」

「ま、後もうちょっと待っとき」
そう言うとみちよはバーベキューコンロの横にある黒い鉄の塊のナベのような物に
何やら差し込んでふたを開けようとした。

「それ・・なんですか?」
「ん?あぁ〜これ?ダッチオーブン」
「は?ダッチ・・・ワイフ?」
「アホ!オーブンや!なんでワイフやねん!アホか!」
「だってヨシザー知らないんすもん!」
うるうるとウソ泣きをした。

「ヨシザーあんたそれ可愛いとかって思ってやってんの?」
「・・・・・・・・・すいません思っていません」
「うむ。よろしい」
フハハハハと笑ってみちよはオーブンを開けた。

途端に少し香ばしいいい匂いがしてきた。

「あ・・何かいい匂い!」
「やろう?」みちよはニヤニヤ笑った。

その匂いをかぎつけたのかハイエナ2匹はやってきた!


331 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:28

「あっ!鳥なのれす!」
「鳥の丸焼きや!」


ハイエナ2人は平家さんの前に集合した。


「はーい!鶏肉欲しい人!」
平家さんが着ぐるみに向かって手を上げる。
「「はーい!」れす!」
着ぐるみの二人は我先にと手を上げる。

「ほな、お皿もって大人しく並ぶ〜!」
そう平家さんが言うと二人は大人しくお皿をもって並んだ。


「な・・なんなんだよ!この違いようは!!!」


おいしい部分のモモを一本ずつもらった二人は仲良く並んで食べていた。
その姿を見ているとヨシザーのお腹が「グルグル」と鳴った。


332 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:29

「ほら」
「え?」

ヨシザーが振り向くとみちよが
先ほどの鶏肉を切り分けた物をヨシザーに手渡した。

「あ・・・すみません・・」
「ま、今のうちに食べとき」
ヨシザーの頭をポンポンと叩いて
もう一つ手に持っていた皿を裕子に渡した。




一口食べてみた。



「すんげーうめーっ!!」
ヨシザーは絶叫した。
「やろ?」
「こんなにうめ〜の食べたの初めてですよ!?」
目を真ん丸にした。
「これ食べたら自分の食べたいだけ肉焼いたらええから」
みちよはヨシザーの肩を叩くと少し離れた所に座った。



333 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:31

ふとコンロを見ると裕子がビールを片手に網に肉をのせていた。
ヨシザーは慌てて鶏肉を平らげると裕子の持っていたトングを奪った。

「なんや?よっさん」
「ヨシザーがやりますよ」
「あ、そう」

そう言うと裕子は焼きあがった肉を食べつつビールを飲んだ。
コンロの上の肉は先ほどのぶ厚い肉ではなく普通サイズの肉だった。
ヨシザーは肉をいじりながら裕子にさっきの疑問を聞いてみる事にした。






334 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:32





「それはそうとあの二人って裕ちゃんの子供ですか?」







ブ―――――ッ!!







裕子は口に含んだばかりのビールを思いっきり吐き出した。

「は?何でやねん!
いくらなんでもあんなに大きい子供て・・・
うちは一体何歳やねん!」

そう叫ぶと空き缶でヨシザーの頭を殴った。


コン!

乾いた音がしたと同時に残っていたビールが
ヨシザーの頭に降り注がれた。

「わっ!イタッつめたっ・・・」
ヨシザーは側にあったタオルでゴシゴシ拭いた。
・・・だって裕ちゃん何歳なのかヨシザー知らないですから・・。



335 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:35


「あの二人はうちの従姉妹の子供や・・・
緑色のほうがあいぼんで、黄色のんがののや」
裕子はまた新しいビールを手にそう言った。

「あいぼんにののか・・・」
「それにああ見えてもあのこら中学3年生やから」
「えっ!?うちより1歳下なだけ?」


ヨシザーは目を白黒させた。
・・・どう見ても小学生だよなぁ〜・・・


二人を見るともう食べ物の興味はなくなったのか
今度は二人でキャーキャー言いながら花火をしていた。

・・・今度は冬なのに花火かよ・・
用意がいいよなぁ〜

「あんたら火の始末ちゃんとせなあかんで!」
みちよの声が飛ぶ

「「はーい!」れす!」

みちよは良い子のお返事をする二人を見て
目を細めながらうんうんと頷いていた。




336 名前:アクセス 投稿日:2004/10/22(金) 00:39



「あの〜ところであの望遠鏡は・・・」
ヨシザーはみちよに聞いた。



「もうちょっと暗くなってからかな」
「はい?」
・・・まだですか?まだ教えてくれない?


「ま、今日は徹夜になるからしっかり食べとかなあかんよ」
ヨシザーの肩を叩くとバーベキューコンロの上に肉を並べ始めた。
「まぁ〜ヨシザーおいで!」
その声につられるようにヨシザーは席に着いた。


・・・・いったいこれから何が行われるんだろうか?
ヨシザーは天を仰ぎ見た。



空は雲一つ無く、夜なのに真っ青な夜空で
満月の円い光が明るく輝いてヨシザー達を照らしていた。







337 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/10/22(金) 00:42
え〜っと、夜は長いのでキリのいいここまで・・・と言うわけで本日の更新終了しました。


>>323 307様
ありがとうございます。
>夜になるのが楽しみです
これはこれはこんな駄文を楽しみにして頂いているとは恐縮です。
みっちゃんは・・・これからきっと良い事があるんでしょうか?(w
338 名前:307 投稿日:2004/10/22(金) 00:45
最悪のタイミングでレスしてしまい申し訳ないです。
作者さんごめんなさい。他の読者さんもすみません。
こんな時間なのに肉を食いたくなってごめんなさい。
とにかくひたすら謝るばかりです。
339 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/10/22(金) 20:31
え〜っと読者さんがいらっしゃる事が分かったのでw
これより本日の更新です。
 


340 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:36

―――――――――
 


341 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:38


焚き火の側で先ほどとはうって変わってヨシザー達の
静かなお食事タイムが終わりに差しかかった頃
二人のにぎやかな季節外れの花火大会も終演を迎えたようだ。




先ほどまで静かに一人で飲んでいた裕子が急に立ち上がり
「よっしゃ!ほな始めんで!」
裕子の掛け声と共に先ほどまで騒いでいた二人の声がぴたりと止んで
各自好きな場所に望遠鏡を持って移動始めた。




ヨシザーがあっけにとられていると


みちよが近づき「ヨシザーあんたそれ使い」と側にあった望遠鏡を指差した。

「はぁ・・・・はい・・・」
一体何がどうなのか・・・・・・・
しばらく望遠鏡の側に立ち尽くしていた。
 
 
 


342 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:40


急にヨシザーの背中を叩く者がいた。



振り返ると愛らしい笑顔を振りまく着ぐるみ・・イヤ・・あいぼんとののだった。

「あっと・・・なに?」
「ちょっとこっち来てよ」
あいぼんがそう言うとののがヨシザーの服のすそを引っ張った。


「これ見てみ」
あいぼんが望遠鏡をのぞくように言う。
ヨシザーはとりあえず訳が分からないまま
言われたままに望遠鏡をのぞいた。
 
 
 


343 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:41


「わっ!何これ?すげー!カッケーッ!!」
「やろ?」
二人を見るとニタニタしていた。


「それ月なのれす!」
「まぁ〜初心者は無難な月から始めやんななぁ〜」
そう言うとまたニタニタ笑った。


「初心者って・・・」
ま、初心者だけど・・・なんかムカツク・・・
 
 


344 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:43

自分にあてがわれた望遠鏡に戻り月に照準を合わせて見る。


「おっ!出たよ!月ハケーン!」


やっとヨシザーが月に照準を合わせたることが出来た時
おもむろに裕子が口を開いた。





「よしゃぁ〜今日見つけるんは木星!ヒントは太陽が沈む方角と逆!
ほな競走やで〜よぉ〜〜〜い!ドン!」
 
 
 



345 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:51

「よ―いドンって・・・」
ヨシザーがあっけにとられていると
あいぼんとののは一斉に望遠鏡にかじりついた。


その様子をニヤニヤと笑いながら見つめる裕子とみちよ。
ヨシザーがこっちを見ていうるのに気がついたのか
「よっさん早よ見つけぇ〜やぁ〜一番遅い人が朝飯おごりやからな!」
と裕子が言うとみちよも望遠鏡をのぞき始めた。


「え・・ちょっ!!」
あわててヨシザーも望遠居をのぞき見るが、如何せん初めて触る代物だ・・・。
それに今まで空なんて見なかったし太陽の方角なんて気にしてないし・・
どっちが西で東で北で南かなんてわからなかった。


しかも夜だし周りに目標物がない屋上なんだもの!!
ヨシザーは半ばヤケクソ状態で望遠鏡を右に左に上に下にと動かしていた・・・・




一瞬何かが横切った。




また上下左右動かしてそれを見つけた!



「やた!何か発見!」
ヨシザーが歓喜の声を上げた!
 
 
 
346 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:53



「「「「えっ!?」」」」



四人が声をそろえて驚きヨシザーのほうを見た。
全員が駆け寄り裕子がヨシザーの望遠鏡を覗き見た。





「・・・・・・」





しばし押し黙る裕子・・・・・
その裕子を真剣に見つめる6つの目・・・
その光景をハタから見つめる少し驚いた2つの目・・・。
 
 
 
347 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 20:56


「・・・・ちっ・・ご名答や」



「はぁ〜っ」全員が溜息をついた。
な・・なんだ?なんだぁ〜?この雰囲気は???
ヨシザーがそう思ったのもつかの間全員が各持ち場?に散った。

・・・なんかスゲー・・・な・・
へぇ〜これが木星なんだ・・カッケー!・・・
改めて自分の望遠鏡にうつった木星をじっくりと見ていた。
 
 
 
 
 
348 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 21:00


結局一番最後に発見したのはみちよだった。



と言うかあいぼん&ののによるといつも最後はみちよらしい。
・・・なんか平家さんらしいなぁ〜ヨシザーは一人静かに微笑んだ。


あいぼんとののはヨシザーを指差し
「初心者のクセにやるやんけ!」「そうれす!」と言いながら
ヨシザーをツンツン突付いてきたのでしょうがなく追いかけてやると
二人は喜んで奇声を上げ喜んで走り回った。





・・・し・・しまった・・・やつらの罠にはまっちゃってるよ・・・
しばらく着ぐるみ対ヨシザーの追いかけっこは続いた。
 
 
 
349 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 21:03

ヨシザーが息切れを起こしてぜえぜえハァハァ言って
寝転がっている隙に第二試合が開始された。



「よぉ〜し!今度捜すんは土星!ヒントは輪っかがあります!」



・・・・へ?裕ちゃんそれってヒントになってないから・・・
ってかヨシザーただいま息も絶え絶えピンーチ!ですから・・・。


そんなヘタリ込んでいるヨシザーを横目でちらりと見た裕子は
「最後に見つけた人がここの完全清掃な!」
そう言うとヨシザーを見てニヤリと笑った。



「きっ・・・・キタねぇ〜ぞ!裕ちゃん!!」
「ん?裕ちゃんは綺麗好きやでぇ〜?」

・・・ってそんな意味じゃないのに・・・

「はは!そんなことよりもよっさん早よ見つけ〜よぉ〜
それでなくても今日は満月で星観測には不向きやねんから!」


・・・・・じゃぁ〜何で今日なんだよ・・・
 
 
 
350 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 21:07

――――――――――――――
 

351 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 21:10



それから木星・土星捜し大会の後は星座を見たり捜したり
それについての裕ちゃんからの話を聞いたり
木星の周囲を巡るガリレオ衛星を捜したりして行くうちに
ズンズン夜が更けていった。




つーか冬なのに屋上でこんな事してて寒くねーの?
いくら焚き火してるからって・・・
ってかこんなこと勝手に屋上でやってもいいものなのかな?
しかもこの寒い冬に外でしかもテントに寝るのか?

・・・ってもうあいつら寝てるよ!!
まぁ〜着ぐるみだし寒くないか・・・。



・・・ってか裕ちゃんって・・・一体何者?
何の研究してんだよ?
 
 
 
352 名前:アクセク 投稿日:2004/10/22(金) 21:14


焚き火の周りで火の番をしているとみちよが側に寄って来た。


「ヨシザーあんたもちょっと寝たら?ここは私が見とくから」
そう言って薄手のブランケットをかけてくれた。

「あ・・んじゃお言葉に甘えて少しだけ横にならせて頂きます」
そう言うとブランケットを体にまといながらテントの空いたスペースに潜り込んだ。
テントの中は思ったよりも暖かかった。

着ぐるみの隙間にヨシザーは体を横たえた

気がつけばヨシザーは眠りの世界へと旅立っていった。
 
 
 
353 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/10/22(金) 21:17
とりあえず本日の更新終了いたしました。


307様
いえいえ最近ちゃんと更新終了の合図を出していなかったものでこちらこそ申し訳ございません。
そんなに謝られるとこちらも恐縮です。
どの部分にでもレスして頂いて結構ですよw
レスいただけるだけこちらとしては感激でございますから。
354 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/10/23(土) 21:14
えーっと突然ですが悲しい(悲しいかな?)お知らせです。
昨日突然この続きのデータが破損して全て文字化けしてしまい、
一晩中かけて色々復元やら修復やらかけたのですが
どうにもこうにも文字化けが直らずとりぜず修復を断念しました。
とりあえず今頭の中に残っているデータを思い出しつつ
少しずつ復旧していきたいと思いますのでしばし更新は出来ません。
ごめんなさい。
355 名前:307 投稿日:2004/10/24(日) 13:12
更新お疲れ様です。
ほのぼのしていていい雰囲気ですね。この会に参加したくなりますw
でもみっちゃん…やっぱり最後なのね(ニガワラ
自分も書き溜めたデータが消えてしまった経験がありますが
あれはなんともいえない虚脱感というか泣けます。
作者さんの心情お察しします。
マターリお待ちしてますのでこれからも頑張ってください。
356 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 18:33

――――――――――


357 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 18:40


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・あれ?






おかしいなぁ〜

 
 

358 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 18:44


確かさっき寝たはずなのに・・・

確か横向いて寝ていたはずなのに・・・

なのにヨシザーの背中というか腰というかで
なにやら軽いショックがあるような感触が・・・


薄目を開けて背中の方を見ると・・・・・・


緑と黄色の着ぐるみが楽しそうに
ヨシザーの背中でピョンピョンと・・・・・

 
 
 


359 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 18:49


「・・・っておい!」


「あっ!シモベが起きた!」
「おきたのれす!」

「誰がシモベだよ!」
ヨシザーが叫んだ瞬間に目の前に並ぶ2本の着ぐるみの・・指?

「うう・・」

「裕ちゃんが新しいシモベやって言うてたもん!」「れすよ!」
「新しいシモベって…なんだよそれ・・・」

「でも前はみっちゃんやったけどもな」「そうれすよ」
・・・・ってオイオイ平家さんってそんなに昔から?
でもみんな平家さんに対して扱い粗いよね?
んで今度のその標的がヨシザーなんだ・・・


はぁ〜・・・


もう何でもいいんだけど・・・・
ヨシザーの背中から早く退いてくれないかな?
二人は重いし・・・



ヨシザーはガックシうなだれた。
 
 
360 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:00


ブランケットを羽織い眠い目をこすりながらテントから出ると
まだ外は薄暗く、昨日の花火まだやってんの?
と言うくらい白いモヤがかかっていてとても寒かった。

「うっわっ!さっびぃ〜〜〜!!」
ヨシザーが叫ぶとその息が白かった。
つーか今何時よ?
まだ夜じゃねーの?


スッとヨシザーの目の前に差し出されるステンレスの銀色に光るマグカップ
差し出された手の持ち主を辿ると裕ちゃんだった。
「あ・・すいません・・いただきます・・」

このクソ寒い早朝にこの熱いマグカップは神の様にも思えた。

って大げさな・・・。
 
 
 
361 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:09


「うっわあったけぇ〜!!」
カップからは白い湯気がユラユラと立ち上っていた。
ヨシザーは冷たい手を温めて
カイロのようにカップを抱きしめながら一口飲んだ。


「あっつ〜〜いし、甘んめぇ〜〜〜よ・・・これ!」

それはとても熱くって甘いココアだった。



「それにはなぁ〜ポリフェノールが5倍も入ってるんやで!?」
「だからといって5倍も長生きしないれくらさいなのら!」

「「見るにみかねますから!」なのら!」


「・・・なんだよそれ?」

・・・売ってるのって確か3倍だろ?
5倍って取りすぎじゃねーの?
それにアレそんなに甘くないだろ?
オトナのって言うくらいなんだから・・・

まぁいいや朝からそんなに突っ込む元気ないし・・・

 
362 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:16

そんなヨシザーを知ってか知らずか着ぐるみの二人は
ツンツンとヨシザーを突っついてくる。

ん・・・なんだよ・・かまって欲しいのかよ?
しかし二人とも朝からトップギアかよ!?


だぁ〜〜〜もう!!


ヨシザーが観念して追いかけると二人は
キャーキャー言いながら楽しそうに逃げ惑う。

し・・しまった!またやつらに乗せられてしまったよ!
…ほんと朝から君たち元気だよね?ヨシザー感心しちゃうよ?
何でヨシザー寝起きからこんなに運動してんだよ?

たった1歳しか違わないのに何でこんなに違うのさ?
しかも着ぐるみ着てるのに何でこんなにすばしっこいんだよ!!!
全然捕まえらんないし・・・





いつの間にか気が付けば二人はヨシザーとの鬼ごっこに飽きたのか
ヨシザーをほったらかしで今度は平家さんの周りにまとわりついていた。


・・こ・・今度は平家さんかよ…げんきだよなぁ〜・・


ヨシザーは朝から走りまわされ息が上がる。
ゼーゼーハァハァ・・も・・もう・・もう・・ヨシザーダメです・・・・
またもや息も絶え絶えピーンチです・・・
カップに残っていたすっかり冷めて冷たくなったココアを飲み干し
地面にへたり込んだ。
 

363 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:22

そんなヨシザーの肩をトントンと叩く者がいた。

「ふぁ〜い?」
ヨシザーは間抜けな気の抜けた声で返事をしながら
後ろを振り返ると・・・



「あ・・裕ちゃん・・」


「よっさん朝飯なに食べたい?」
「は・・はい?」
「ん?なんやもう忘れたんか?よっさん・・・
あんたが木星一番やったやん!
一番の人が好きなジャンルのご飯食べれんねんで!?
・・・・・・知らんかったんか?」


「え・・あの・・ヨシザー朝は食べない人なんで…」
…と言うかそんな事一言も聞いてないしぃ〜つーか知らない。

「なんやそれ?おもんないなぁ〜
・・・ま、どうせいつものファミレスやろうしな」
裕子は振り返り向うを向いて大声で言った。



「よっしゃぁ〜!あいぼんにのの!飯行くでぇ〜!!」
「わーい!朝ご飯や!」「ご飯なのれす!!」
ワーワーキャーキャーと二人は騒ぎながら屋上で入り口へと向かう3人
あいつらまた朝から大量に食うのかな?

・・・・・・ってかあいつら着ぐるみ着たまま行くわけ?



マヂかよ?
 
 
 
 


364 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:27

ぼぉ〜っとその様子を立ち尽くして見ていたら肩をトントンと叩かれた。

「あっ平家さん・・」

平家さんはものすごーく疲れたような顔をしていた。
もしかして寝てないのかな?
ヨシザー不覚にも寝てしまいましたから!!
ごめんなさい!

・・・なんて色々考えていると


「ほら!ヨシザーも早よ着いて行きよ!」
「あ・・でも火は?」
「あぁ〜アレならとっくに消してあるから大丈夫!」
そう言うとヨシザーを回れ右させ背中をトンと突いた。

 
365 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:32



・・・・・・・・・・・・・・・・・・






・・・・あれ?


 
 
 


366 名前:アクセク 投稿日:2004/10/30(土) 19:36

確か今、平家さんがヨシザーを押しましたよね?
・・・確かに押してる感触があります・・・よ?
でも一向に前に進まないんですけ・・・・・・ど?
なぜでしょう?


ヨシザーこっそり後ろを振り返ったね




OH!



何と言うことでしょうか!?
平家さんがヨシザーの背中に頭をつけて寝ております!!
な・な・な・なんと興奮するような光景なのでしょうか!?
い・・・いや・・感動的な光景なのでしょうか!?

いやはや平家さんお疲れなんすね。
ヨシザー心中お察しいたしますよ。

ん〜でもこのままでいつまでいればいいのでしょうかね?
できることならヨシザーはずっとこのままでもいいんですが…
如何せん立ったまま寝るってのはいかがなものでしょうか?

どうせならこっち向いてくれれば抱きしめる事できるんだけどもなぁ〜…。

でも今動くとこの幸せタイムも終了だしなぁ〜


まぁいいか。


「ふぅ〜っ」っと大きく息を吐くとヨシザーは空を見上げた。
空は先ほどとはうって変わって朝日がまぶしくヨシザーを照らしていた。








そんな様子を少し離れた出入り口からこっそりと6つの目が
見つめていたなんてヨシザーには黙っておく事にしよう。
 
 
 

367 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/10/30(土) 19:42
本日の更新終了です。

やっぱり最初の方がよかった…orz
思い出す事は思い出しましたがイマイチ消えちゃったモノのほうが勢いがあって
よかったんだけどもなぁ〜と今更言っても消えちゃったものは帰ってこないわけで…orz


307様
ありがとうございます。
お待たせいたしました…って一週間しか経っていませんがw
少しだけ復活です。

ほのぼのしてますか?そう言っていただけると嬉しいです。
自分の中でみっちゃんは優しい人ですからね…w
368 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/11/13(土) 21:33
全然更新に気付かなかった!更新乙です。
着ぐるみコンビをファミレスに連れていって
好きなもの存分に食べさせてあげたくなりますw
みっちゃんとヨシザーさんがいい感じですね。
次回も期待しております。
369 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:27

―――――――――――――――――――――――――


370 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:30


朝っぱらから騒がしく忙しい朝ご飯も済み平家さんは
「あいぼん&のの」の着ぐるみコンビをそして裕ちゃんを送って行きました。



そうです・・・・・・・・




ヨシザー一人屋上に残してです・・・・・・・





371 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:31

そうですよ!

ヨシザーはあの勝負に負けましたよ。

えっ!?

あの勝負って何の勝負だって?
そりゃぁ決まってるじゃないですか!?
アレですよ!

例のいきなり始まった『土星捜し大会』ですよ!!


だってさ・・・・


ヨシザー実際に土星なんて見たこともないのにさ、
『どこにあるか?』
だなんてわかるかっつーの!
木星見つけたのだって超偶然だし・・・・・


でもねちょっと聞いてくださいよ!
平家さんだけがヨシザーが土星を見つけるのを
最後の最後まで付き合って待っててくれたんだけど・・・

じっと待ってるのに段々飽きてきた裕ちゃんが言った一言がさ・・・

あの一言がさ・・・





「あと1分以内に見つかれへんかった人全員で完全掃除な!」





裕ちゃんがそう言った瞬間平家さん・・・
パッと走って自分の望遠鏡覗いて「ハイ!発見!」
・・・それってキタナクナイ?
速攻じゃん!

それって最初から土星にピント合ってたんでしょ?
じゃないと考えられないっすよ・・・


いいんですよヨシザーは・・・・




はぁ〜・・・
あぁ〜もぉ〜なんだかなぁ〜
って一体誰に愚痴ってんだか・・・。








しかし完全清掃って一体どこをどういう風にすんだ?
ヨシザーバカなんでホント分かりませんよ!?




372 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:34

はぁ〜・・・

もうねヨシザーさっきから溜息ばっかりですよ?
分かる?この気持ち・・・
分かんないだろうなぁ〜・・・


はぁ〜・・・・・・・・



溜め息バッカついててもここにあるものは消えるわけでもなく
とりあえずテントを畳み入っていた袋に入れるんだけど
いかんせん空気が入るから微妙に膨らむし、きちっと入らない。


だあぁ〜〜〜もう!!

イライラする!!!!



思わずキレそうになって丸めたテントを投げつけようかと
手を上げた瞬間・・・


誰かにその手を捕まれた。



373 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:36

「っ・・・・」

「ヨシザーただいま!」
それは平家さんでした。


「あ・・・・・へ・・・いけさん・・どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも無いよ?ただ私は掃除をしにね・・」
ニコッと笑ってヨシザーの頭をポンポンと叩いた。


「え・・でも掃除はヨシザーが・・・」
「あんたじゃムリ!絶対ムリ!一日じゃムリ!一生絶対ムリ!」
ムリムリムリと言われてちょっとムッときた。
しかも一生って・・・・・

うう・・



「そや!ヨシザーあんたお腹空いたやろ?おにぎり買うてきたから食べ」
平家さんはヨシザーの腕の中一杯におにぎりを袋から出してバラバラと乗せた。

「わっ!ヨシザーこんなにも食べれませんよ?」
「あ・・そやった!あの二人もうおらんかったんやったな」
しもたしもたと笑いながら、みちよはヨシザーの腕の中から
数個のおにぎりを取るとおもむろに食べ始めた。
ヨシザーも1つ食べてみた。



374 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:41


・・・・・あれ?


何だかヨシザーってばお腹空いてるんですかね?
ヤメラレナイ止まらない状態なんですけど・・・

あんなにもあったおにぎりをあっという間に完食してしまった。


う〜〜っ食べ過ぎたかも・・・



「さてと、ほなそろそろ掃除の続きしよか?」
「えっ・・・あ・・はい・・・」

やっぱりするんだ・・・掃除・・・

「ほんならヨシザーはそこにあるセメント袋に炭やら灰やら薪やら入れてくれる?」
「あ・・はい!」




375 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:43

炭を触ると「わっ」と灰が宙を舞う。
あわててタオルで頭をそして口元を塞ぐ。

何だか煙突掃除するみたいだなぁ〜・・・

再び作業再開するとヨシザーの白い長Tが
見る見るうちにグレーに変わっていく。
ふと平家さんの方を見ると
ヨシザーがグチャグチャっと畳んだテントを畳み直していた。


「あ・・・平家さんそれ・・・すいません・・・」
「ん?あぁ〜これ?ちゃうねんちゃうねん!
私ってきちっと畳めてなかったら気持ち悪い人やから・・・」
そう言ってニカッと笑った。

376 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:46

思ったよりもコンロや焚き火の後の灰や燃えカスが多く
なかなか作業が終了しない。

「ヨシザー!そこにあるブラシ使って
限りなくゼロに近いくらい灰を掻き出してや!
後で私がそれを洗うから!」

「え?あ・・・はい・・・」
限りなくゼロに近いくらいって一体どんなの?


ヨシザーは炭ボコリにまみれながらみちよに言われた通りに
ブラシで灰を丁寧に掻き出して袋に詰めていった。


作業が一段落した頃、ヨシザーはふとみちよの方を見ると
屋上の出入り口の側にある水道でみちよはオーブンを洗っていた。


あれ?いつのまに持って行ったの?
気が付かなかったよ・・・


みちよはヨシザーの視線に気が付いたのかこちらを見た。
「あ〜ヨシザーそれ終わったらなぁ〜焼却施設にほかしに行ってくれる?」
「あ・・ハイ!」
・・・ホカス?保管する?・・・きっと捨てるって事だよね?


「場所はな、ほらあそこ!あの木の横のプレハブ小屋」


みちよが指を差す方向を見てみると
それは学校の裏側で大きな木と木の間にあり
屋根が黄色に塗られ小さな赤い煙突のあるプレハブの焼却小屋だった。


ほぅ〜焼却施設ね・・・やっぱ捨てるんだよね?


「わっかりましたぁ〜!」
ヨシザーは炭の入ったセメント袋を2つ小脇に抱えると
そそくさと屋上から姿を消した。

377 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:49

ヨシザーが遠く離れた焼却施設から戻ってくると
みちよはなぜか屋外の屋上なのに掃除機をかけていた。


スゲーでけー掃除機じゃん!業務用かな?
でもなんで掃除機に目玉が書いてあるのかな?
微妙に可愛いんだけど・・・まさか裕ちゃんの趣味?
んなことないよね?


・・・でもなんで屋上なのに掃除機かけるの?


なぁ〜んて一人でぶつぶつと色々考えていると
ヨシザーが帰ってきたのに気がついたのか
みちよがヨシザーのほうを向いた。


「あ、ヨシザー!じき掃除終わるからあんた顔でも洗っとき!」
「え?顔?」
ヨシザーは頭に巻いた薄グレーになった元白いタオルで
顔を拭うとみるみるタオルが黒くなった。

「げっ!!!」

慌てて顔を洗うヨシザーの顔に触れた透明の水はみるみるグレー色に染まっていく。
わっ・・こりゃぁ〜水だけじゃムリだよなぁ〜・・・
ん〜ちょっと突っ張っちゃうけどまぁ〜いいや。
ヨシザー若いし・・・

側にあった石鹸を手に取り泡立てて顔に塗りたくった。
綺麗さっぱりして顔をブルブルと犬のように振ってから
タオルの比較的綺麗な白い部分で顔を拭いた。

ふと水道の側に置いてあるコンロとオーブンを見た。


・・・わっ!すんげーピカピカじゃん!
こんな芸当・・・ヨシザーにはムリです。
きっと一生ムリです!!
つーか平家さん洗うの早っ!!


378 名前:アクセク 投稿日:2004/12/05(日) 12:51

ヨシザーが顔を洗ってよそ見をしている間に
みちよはもう掃除機をかけ終わったのか
中のゴミを袋にあけている所だった。

すげー屋上なのにピカピカじゃん!
これでワックスでもかけたら完璧だね!
こんな芸当ヨシザーには絶対ムリですよ!
やっぱ平家さんの言う通り一生ムリっすよ・・・

ううう・・・


・・・・・でもなんでこんなに綺麗にする必要があるんだろうか?
まぁいいか。



「ふぅ〜」っと大きく溜め息をついて空を見上げると
眩しかった太陽が気が付けば西に傾き紅く空が染まっていた。




・・・・・・なんだよもう夕方じゃん・・・
ヨシザー一人じゃ絶対夜になってるよ
つーか徹夜かな?






379 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/12/05(日) 13:00
えーっと気がつけばかなり放置してましたが・・・
読者も特に居ないようですのでこれからも放置気味でw


>>368 名無飼育さん
えーっと忘れた頃に更新しました(ニガワラ
いいかげんヨシザー編終わらせないといけませんね(ニガワラ
メインはこっちじゃないんだけど・・・

ではまたの更新まで・・・。

380 名前:アクセク 投稿日:2004/12/07(火) 20:48

―――――――――――――
 



381 名前:アクセク 投稿日:2004/12/07(火) 20:51


さて、掃除も終わり・・・

って言うかほとんど平家さんがやったようなもんだけど・・・
まぁ〜それはさて置き、平家さんの部屋に戻って来て何でここにあるの?と言う感じで
なぜか部屋にあるシャワーを借りて体中の炭ボコリを払って着がえの服まで借りた。

何だよぉ〜・・それじゃぁ〜上で顔洗う事なかったじゃん!


それにしてもあいからわずこの部屋って物がごちゃごちゃっとあって汚い。
さっきあんなにも屋上きれいにしてた意味、ヨシザーにはわかんないけど・・・
あんなにキレイに出来るのにココはどうしてこんなに汚いの?
 



382 名前:アクセク 投稿日:2004/12/07(火) 20:55

綺麗サッパリして着がえた後
入れてくれた温かいコーヒーを飲んでいた時
ふとヨシザー・・・さっきの事聞いてみたくなりました。


「ねー平家さんさっきのアレはどういう意味なんですか?」

平家さんはこいつは一体いつのどのことを言ってるのだ?
というような顔をしながら眉をしかめてヨシザーを見た。


「や・・だから朝ご飯食べに行く時に、
平家さんがヨシザーの背中で寝ちゃったことですよ!」
「あぁ〜それな、つーかえっらい古い話やなぁ〜」
「古いって今日の朝ですよ?」
「もう今は夕方夜です!」

はは・・・

「・・・そうですけど・・・・でもあれはどう言う意味ですか?」

「あぁ〜あれなぁ〜あれ・・・ほんまに覚えてないねん!
それに寝てたって言うてもほんの数秒やん!
もうな、あん時めっさ眠くってな、丁度いい所に壁があったからつい・・・」


・・・ついって・・・しかもヨシザー壁ですか?
 


383 名前:アクセク 投稿日:2004/12/07(火) 21:00

「なんだぁ〜・・・てっきり平家さんがヨシザーに
なびいてくれちゃったのかと思ったのに・・・」

「は?なんでやねん!?なんで私があんたになびかなあかんの?」

「なびいちゃってくださいよ!ヨシザー待ってますよ!」
「なびかへんし、むしろ待たんでもええ!」
「待ちますよ!」

「待たんでええって!私は当分・・・誰にもなびくつもりないから・・・」


「当分って・・・じゃぁ〜いつか誰かになびくんですか?」
「だ・か・らぁ〜・・・な・び・か・へ・ん・ちゅーてるやろ?
聞えんか?それにそんなんあんたに関係ないやろ?」

「関係ありますよ!」
「ないよ」
「ありますよ!」
「ない言うてるやろ?しつこいなぁ〜」


「ヨシザーしつこいですよ?」
「もうな、あんた・・ヨシザー帰り!疲れてるやろ?
早よ帰って寝!ついでやから送ったるわ!
送るんは家か?それともあの娘の家か?」

「あの娘って?」
 

384 名前:アクセク 投稿日:2004/12/07(火) 21:05

「マイ・・・・・・・・里田マイ」
「げっ!なんでそれを・・・・・・・」

「だってマイ・・・・うちらの後輩やモン!」


「うう…」
世間って狭いのね・・・


「色々とマイから話し聞かせてもらってまっせ旦那!」
みちよはニヤニヤしながらヨシザーの頬をペチペチと叩いた。


はぁ〜・・・・・
ホント世間って・・・狭いのね。
 
 

385 名前: 投稿日:2004/12/10(金) 23:10

――――――――――――
――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・

386 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/10(金) 23:15

一方時を同じくしてヨシザーがシモベとしてアクセクしていた時の梨華・・・



ごっちんとあんな事があったからではないが
放課後図書室にも行かずマフラーさんにも会わずに
真っ直ぐ家に帰る事にした。
いつもと違って下校ラッシュのこのバス停。
生徒がウジャウジャいる。

はぁ〜このままじゃ次のバスよねぇ〜と思っていた所




プップ―――――――――ッ!




けたたましく鳴る車のクラクション



・・・・・・ったく誰よ?うるさいわね。
自分には全く関係ないと思っていたので
あえてその音の鳴る方は見なかった。



すると今度はなにやら叫びだした。
 

387 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/10(金) 23:18


「・・・・・・・ってば・・・・・ん・・・」



次第に周りの生徒もざわつき始めた。


なんだか私もだんだん気になってきたので
こそっとその声のするほうを覗き見た。




あっ・・・・・・・





大声で叫んでいるその人は・・・





マフラーさんだった。
 

388 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/10(金) 23:20

よく聞くとそれは私の名を呼んでいるのがはっきり聞いて取れた。
と言っても『梨華』じゃなくって『ハナちゃん』だから私以外分からないんだけどもね・・・
急に恥ずかしくなってきた私は車の進行方向とは逆に向かって走り出した。

なぜって?

交通量の多いこの道路で急にUターンや逆行なんて出来ないはずだもの!
しばらく走ってどんな様子なのか後ろを振り返ると


な・な・なんと!


車はススィ〜〜〜ッとバックしてきたのだった。



な、な、なんで!?


車はあぜんと立ち尽くしている私の横に止まった。
驚く私にマフラーさんは窓から顔を出した。

「ね、ね、ハナちゃんあれは酷くない?」

「え・・あの・・・」

慌ててバス停の方を見るとバスが到着したらしく
生徒がドンドン吸い込まれて行っており
誰もこちらの様子を気にしている者は居なかった。


ホッとした。
 
389 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/10(金) 23:22

「ね、ハナちゃんこの後何か予定ある?」
「え?な・・い・・・ですけど・・・・?」
「じゃぁ〜さ、ご飯食べに行かない?」
「え!?」
「この間さ・・約束したじゃん!?」
「そ・・そうでしたね・・・」


梨華が車に乗り込むと直ぐに出発した。
バス停の前を通り過ぎる時
なぜか鞄で顔を隠して椅子の下に顔を伏せた。


うう・・・何も悪い事してないのにぃ〜・・・


「どしたの?」
そんな梨華の様子を見て声をかけてきた。

「いえ・・何も・・・あ・・それよりさっきなぜバック出来たのですか?」
「あぁ〜あの時さ、偶然車が通ってなくってね、
と言うかさ、ずーっと叫んで呼んでたのにシカトするしさぁ〜
やっとこっち見たと思ったら急に逆に走ってくんだもん!
イチイ焦っちゃったよ!」
そう言ってタァハハハと笑った。

「うう・・ごめんなさい・・」

「そんなことよりさ、何が食べたい?マフラーさんがおごっちゃる」
私の方を向いてニカッと笑った。
 
390 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/10(金) 23:25

結局なんだかんだ言ってファミレスになった。
「何だ結局ファミレスか・・・」
「知りませんか?最近のファミレスの冷凍&解凍技術は凄いんですよ!?」

そして二人顔を見合わせて笑った。
 
391 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 00:13

―――――――――――――――――
 
392 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 00:14

食後マフラーさんが「この後ちょっとドライブしない?」
と聞いたきたので私は特に断る理由も無いのでコクリと頷いた。

 
393 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 00:19


車は走る事数十分・・・・・








道は段々細くなり山を登っているようだった。




どうしよう・・・

このままこんな山奥に置き去りにされたら・・・

私・・・歩いて帰れるかしら?

それともこのままどこかへ連れ去られるのかしら?



それとも・・・・・・・

それとも・・・・

・・・・・・・・



だなんて梨華の脳内イリュージョンが炸裂していた時






「着いたよ!」

マフラーさんの声がして
「はっ」と現実に戻ってきた時助手席のドアが開いた。




「あ・・・・ありがとう・・・」


マフラーさんに手をひかれて月明りの中、ジャリの坂道を歩く。

しばらく行くとパッっと視界が開けた。




「わっ!」





それは満月の月光でとても明るく輝く街の夜景だった。

 
 
 
394 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 15:43

「すごーい!!私夜景って見るの初めてです!!」
「え?・・・あ・・そうなんだ・・・そりゃよかったよ」
うんうんと頷いた。

「あ・・でもさ、今日満月みたいでこんなに明るいけど
新月だったら空が真っ暗でもっと綺麗なんだけどもね・・・」
「ううんそんなことないです!お月見も出来て夜景も見れて最高です!」
「あ・・そだね、そりゃよかったよ・・よろこんでくれて」



梨華は目を潤ませながら夜景に見入っていた。
そんな梨華をイチイがじっと見ていたなんて梨華は気付きもしなかった。
 
 
395 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 15:45


「綺麗だね・・・」
「そうですね、すごく綺麗ですね」
「・・・の方が・・・・・・もね・・・」
「えっ?なんですか?」
「ううんなんでもにゃいよ」ニャハハハと笑った。
梨華は???マークで一杯になってる様なそんな顔をした。




ヤバイ・・・イチイってば何言っちゃってるわけ?
思ったこと口に出しちゃダメじゃん!
それじゃぁ〜ヨシザーと変わんないじゃん!?


でもいざ梨華を隣にふと頭の中によぎるもの・・・


それは・・・
 
 
 
396 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 15:50


いっそこのまま梨華を抱きしめたいという欲望と、
何もしなくていいからせめて彼女の傍にいたいという欲望。
このまま友達のままで構わないというあきらめと、
それじゃ我慢なんてできないという欲望と・・・


正反対の気持ちの間を行ったり来たりしながら、
矛盾だらけの自分の今の姿が情けなくって・・・


本当の自分は一体どれだ?
どこにいる?
どれが本当なんだ?


それとも本当の自分は別にいるのか?


それともこれはただ単なる夜景マジックなのか?

それとも満月の仕業?

それとも・・・・

それとも・・・


・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・

 
 
 
 
397 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 16:04

イチイは段々自分の理性が何処かへ吹っ飛んで行っちゃう・・・
そんな感覚が急に襲ってきた。


自分の隣に居るのは、とても綺麗でスッキリとした顔立ち・・・
長いまつ毛に・・・・・・ぷっくりとした柔らかそうな色っぽい唇。

思わず目を奪われてしまうほど綺麗な女(ひと)だ・・・



少しでもいいからその柔らかな唇に触れてみたいと言う願望が
本人が気づかないうちにみるみるうちに大きくなっていき

イチイはとうとう無意識に梨華の下唇にそっと人差し指を重ねてなぞった。


触れてみて初めてわかった。


それはしっとりとして柔らかく指に吸い付くような梨華の唇・・・


それを触った瞬間イチイの体をゾクゾクというような感覚が
体のどこからかやってきて徐々に体ごと乗っ取られるような
そんな感じがしてきた・・・
 
 
 
 
 
398 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 16:08

梨華は急なイチイの行動に一瞬ビクッと体を震わせて
驚いた顔をしてこちらを見た。


イチイの瞳と梨華の瞳が重なった。

途端にイチイの瞳は梨華にロックオンされた。
梨華もイチイの瞳に捕まった。


イチイは梨華の瞳から目を離さずに指をそっと離し
梨華の頬に手をやり、一瞬・・・梨華の瞳から唇に目をやり
自分の唇を梨華の唇にそっと近づけようとした



その時・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
399 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 16:16


ピカッ!!!


漏れた車のヘッドランプが一瞬二人を照らした。
その瞬間「ハッ」と我に返ったのか二人は離れた。





イチイは手を空中でアワアワさせながら
「あ・・や・・も・・もう帰ろっか?」
「そ・・そう・・ですね・・」


イチイはそのまま両手を宙で回しながら梨華はうつむいて
二人はぎこちなく車に戻った。




帰りの車中は会話をする事も無く
お互い意識しすぎてピーンと張り詰めたような車内だった。



時間にすれば短いんだけどとても長く感じられる道中
やっと・・・という感じで到着した梨華の家の前・・・


梨華を降ろしお互いぎこちない挨拶の後、
一人自分の家に車を走らせる車内で

「だぁ〜〜〜!!イチいってば一体何やってんだよ・・・・・」

イチイは大きくつぶやいて大きな溜め息をついた。
 
 
400 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 19:48

――――――――――――――――

401 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 19:50

しばらく走り去った車のテールランプを見つめていた梨華は
先ほどの出来事を思い出した。


確かあの時私は夜景を見ていた。
急にマフラーさんの指が私の唇に触れた。
びっくりしてマフラーさんを見たらなぜか目が離せなくなって・・・
そうしたら段々マフラーさんの顔が近づいてきて・・・
でも逃げる事が出来なくって・・・
むしろ逆に逃げたくなかったような・・・


でもあのまま車のランプが照らさなかったら私はあのまま
マフラーさんとキスをしてしまっていたのだろうか・・・



そんな事を考えながら部屋の前まで近づいてきたその時
薄暗い私の部屋の前に誰かが座っているのが見えた。

一瞬ギクッとしたがそれは・・・・・・



402 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 19:52

ごっちんだった。


な・・な・・なんでこんな所で?



ごっちんは床に三角座りをして
頭を足の間にはさんでいる様な格好だった。


こんな所でもしかして・・・・・


寝てるの?



私が傍まで近づいたが顔を上げる気配がない。
やはり眠っているようだった。

「ね・・ごっちん!」

体を揺すったが反応が無い。
しばらく揺すり続けてやっと反応があった。

「んぁ〜梨華ちゃんだぁ〜」

ごっちんは眠ね眼でホニャホニャしながら私に抱きついて
そしていつものように首筋に顔をうずめてすりすりした。

ごっちんが私に抱きついた時ヒヤッとした空気が動いた。
私に抱きついてるごっちんの手や体がとても冷たかった。

「もぉ〜ごっちん!手・・・冷たいよ?いつから居たの?
寒いんだからこんな所で寝てたらホント死んじゃうよ?
鍵持ってるんだから中に入ってればいいのに・・・」
「ん〜いいじゃん!待ってても!ゴトーはいつでも梨華ちゃん待ってるし・・・」


403 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 19:55

私はごっちんをしがみつかせたまま
ズルズル引きずって玄関を開けて中に入った。
ソファに座っても相変わらず首にしがみついたままだった。


もう!ごっちん重いよ!!




「ねぇ〜梨華ちゃん・・・
今日はまた違う車に乗ってどこ行ったの?」

「え?・・・・」

「今日の人はさ、ヨシザーでもこの間の車の人でもなかったよね?」

「・・・・・・」


あの時のあの瞬間をごっちんに見られていたんだ・・・
やはり軽率な行動だったと今更ながら後悔した。



ごっちんは私の首筋をスリスリしながら言った。

「ねぇ〜・・・今日の梨華ちゃんからは
ゴトーの知らない匂いがするよ?
この間ヨシザーの匂いはしなかったのにねぇ〜・・・」



ごっちん・・・まるで警察犬のようだよ?



404 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 19:59

「ふぅ〜んあの人が梨華ちゃんの本命なんだ・・・」

「え?本命って・・・なによそれ?私は・・・」
「ねー梨華ちゃん!ゴトー梨華ちゃん家に来てもいいかな?」
私の返事はさえぎられた。


「え!?」

はい?
ごっちん・・・
あなたが今居るこの場所が私の家ですが?・・

「や、だからゴトーはここで梨華ちゃんと一緒に住みたいって言ったの」

あぁ〜一緒に住むんですかそうですか、それはよかったですね・・・って

「えーっ!?」

「やっぱダメだよね?何ならゴトー学校辞めて働くよ!」
「えっ!ちょっとちょっとごっちん!落ち着いてよ!」
「ゴトーはいつでも落ち着いてるよ!」
「落ち着いてないわよ!」

ごっちんあなたは一人で何処へ向かってるの?


405 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 20:03

「ねぇ〜ごっちん一体どうしたの?」
私はごっちんの手を握った。


「あのね・・・なぜだか分からないんだけど、今梨華ちゃんと一緒にいないとこの先一生・・・
ゴトー・・・後悔しそうな気がしたから・・・最近何だか心配なんだよね・・・
梨華ちゃんがゴトーの傍からいなくなっちゃいそうなそんな感じがしてさ・・・」

ごっちんはそう言うと私の膝に頭を乗せて私の腰をギュッと抱いて泣いた。
私は優しくごっちんの頭を撫でた。


・・・・ごっちん・・あなた一体どうしたの?
私はいつでもあなたの傍に居るよ?
どうしてそんな事言うの?

何だか少し悲しい気持ちになった。
 
 
 
 
 
 


406 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 20:11

―――――――――――――――――――
 
407 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 20:14

しばらく私の腕の中で項垂れて泣いていたごっちんがゆっくり顔を上げた。




「ねぇ〜ごっちんどうしたの?あなたらしくないよ?」
その問いにごっちんは頭を再び私の膝の上に乗せ私を見ずに言った。


「ゴトーらしくない?ってどういうの?」


ごっちんからの質問返しのその質問に私は返答に詰まった。

「う・・だってごっちんいつもクールでかっこいいじゃない?」
「それは梨華ちゃんが勝手に思っている私でしょ?本当の私はそんなんじゃない・・・」


「ごっちん・・・」
いったいどうしたの?



「ゴトーはいつも不安なんだよ!
梨華ちゃんが思うよりもすごい嫉妬深くて、いつでも束縛しておきたくて・・・
でも・・・梨華ちゃんがいつかゴトーの傍からいなくなっちゃいそうで毎日々ゴトーは不安なんだよ!
最近、梨華ちゃんが近くて遠い人になってる・・・・・そんな感じがしたんだ。
梨華ちゃん自身が感じる嬉しい事も悲しい事もゴトーは全部受けとめたい!
愛しているんだよ!もっともっと梨華ちゃんとの距離を縮めたい!
体は一緒に居るのに心は傍に居ない・・・もうそんなのはイヤなんだよ!」
 
 

408 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 20:15

ごっちんはそう叫ぶと同時に私を押し倒し乱暴に口付けした。
いつものような優しい口付けではなくただただ乱暴に貪るような口付け。
拒否しても無理やりに押さえつけられる唇。

「ん…ぅ…ごっちん‥」
「梨華ちゃん…好きだよ…」

ゴトーの唇はスルスルと梨華の首筋へと下りていく。
梨華はその行為にゾクゾクと鳥肌が立ち嫌悪感が襲ってきた。


「ん…?!やぁっ‥!やめてよごっちん!」


逃げても逃げても執拗に追いかけてくる。
体全体で逃げようとしても押さえつけられ逃げられない。
ブラウスを引きちぎるようにボタンを外すと
その隙間から手を差し込んできた


「や・・やめてよごっちん!やめて・・」


悲痛な梨華の叫びにゴトーが一瞬の躊躇した隙に梨華はゴトーの手から逃れ
急いで部屋から出て玄関へと向かい靴を履こうとした瞬間にグッと腕を掴まれ
また部屋に連れ戻された。



「やっ…!ごっちん!離してよ!」
「梨華ちゃん好きだよ・・・」

梨華はゴトーに簡単に押し倒され唇を塞がれる。
どんどんエスカレートしていく荒々しいキス。


「んっ、もぅ・・ごっちん…やめて‥」




梨華は何かを叫んでそして世界が白くなった。
 
 
 
 
 
409 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 20:18

――――――――――――
 
410 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/11(土) 20:20


梨華の涙ぐんだその叫び声にハッと我に返ったのかゴトーは腕を離した。


「ご・・ごめん・・・梨華ちゃん・・・」


ゴトーはフラフラとその場から立ち去った。




ゴトーが立ち去った後の部屋に残ったのは
脱け殻のようになって動かない梨華だけだった。
 
 
 
 
411 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/17(金) 21:01
続きがとっても読みたいよ〜。
412 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2004/12/18(土) 18:36
>>411 名無飼育さん
ありがとうございます。
そう言ってもらえると嬉しいですが・・・
こんなものでいいのかと・・・少し心配ですが
今回の更新です。
413 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:41

――――――――――――――
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
 


414 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:43



あの後の事は覚えていない。



気がついたらごっちんは部屋にはいなかった。
私は自分の頬を伝う涙に気が付いた。



窓から満月が私を照らしていた。

 
 
415 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:45



気が付けば私は携帯を手に持っていた。

そして電話はだれかを呼び出しているようだった。

規則正しい呼び出し音が聞えていた。



誰にかけてるんだろうわたし・・・

 
 
416 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:47

プルルルル・・・遠く呼び出し音が聞える

ややあってから相手が出た。



<・・・ぁ・・あの・・>
恐る恐る電話に出た。

<ど・・どうしたの?こんな時間に・・何かあった?>
それはマフラーさんの声だった。


その声を聞いてホッとしたのか私は

<あの・・・・・・・・・・・・あ・・・・会いたい・・んです・・・>

なぜかそう言っていた。
自分でもよく分からなかった。
 
 

417 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:49

マフラーさんは私の急な申し出に驚いたのかしばらく間が開いてから


わかった!いますぐいくからそこでじっとしてるんだよ?いい?



そう言って電話が切れた。

マフラーさんの声を聞いたら何だかとっても安心した。
でも電話を切ってから直ぐにさっきの光景がフラッシュバックして
急に怖くなり部屋の明かりを消して部屋の隅でうずくまった。
 
 

418 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:51

――――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
 
419 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:52

イチイはハナちゃんとマンションの前で別れて
部屋でゴロゴロしていた所に彼女から電話があった。
あわてて携帯を取ろうとしたらベッドのパイプに小指をぶつけて
うずくまりながら電話に出た。

彼女からの急な電話で少し驚いたが、
どうも電話の声の様子じゃ何かあったようなそんな感じがした。
イチイは急いで彼女のマンションへ車を走らせた。
 
 


420 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:57

イチイは彼女のマンションのエントランスに立った時、気がついた。


「・・・・ゲッ!オートロックじゃん・・・しかもイチイ番号知らないし・・・どうしようか?」
そう思っていた時、タイミングよく中から誰か出てきてドアが開いた。


ラッキー!


ささっと中に滑り込む



よーし!後は部屋番号だけだ!
ポストで彼女の名前を探す。




あっ!あった!



『R・ISHIKAWA・・・・・307』



きっとこれだ!


エレベーターに駆け込みドアを「閉める」ボタンを押す。

こう言う時のエレベーターってドアが閉まるのすごく遅く感じちゃうんだよ!
 

421 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 18:59


息を整え「307」と書かれた部屋の前に立つ

ゆっくりとインターフォンを鳴らす



ピンポ――――――ン!



・・・・・・・・・・・・・




・・・しかし中から反応がない。

おかしい・・・

イチイはドアノブを持ちそっと開けてみた・・・



カッ・・・チャッ・・



何の抵抗も無くドアがスッと開いた。



「・・・・・・・・・・・・」



思わず眉間をしかめながらゆっくりと慎重にドアを開け中に入る。


部屋の中は真っ暗だった。

電気のスイッチを探して部屋の明かりを付けた。



するとそこは何か争ったような形跡のように思えて少し絶句した。
 
 
 



422 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 19:22

―――――――――
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

423 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 19:24


電話を切ってしばらくしてインターフォンの音がしたけど
ごっちんが戻ってきたのかもしれない・・・
私は恐怖で体が動かなかった。

ゆっくりとドアが開く気配がしたので私はそっと物陰に隠れた。

誰かが部屋の中に入ってきて急に部屋の明かりがついた。
私は恐怖で体をキュッと強張らせた。


その侵入者が声を出した。



「おーいハナちゃんどこ?」

マフラーさんだった。
ホッとして私は物陰から飛び出しマフラーさんに抱きついた。
マフラーさんは私の姿を見て驚いて眉をしかめた。



424 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 19:25

「わっ!・・・ど・・どうしたのその格好!?・・大丈夫?
誰かに乱暴でもされたの?・・警察に連・・・」
険しい顔をするマフラーさんを制して私は首を振った。

「なんでもないの・・・」
「なんでもないって・・・」
私はそれ以外何も言えずにうつむいていたら
マフラーさんは理由も聞かずに抱きしめてくれた。

「本当に大丈夫なんだね?」
「うん」
「本当に警察行かなくってもいいんだね?」
「いいの・・」
「・・・わかった」
ギュッと私を抱きしめながら頭を優しく撫でてくれた。


今は・・ここに居たくないの・・・

そんな私にマフラーさんは
自分が羽織っていたコートをかけて
黙って私を外へ連れ出した。



425 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 19:48

私はマフラーさんの車に乗り、着いた先はマフラーさんの家でした。
家に着いてもマフラーさんは何も言わず、何も聞かずに


温かいの飲むとちょっとは落ち着くでしょ?


そう言ってココアを出してくれた。
それを飲んでいたらだんだん落ち着いてきたような気がした。



――明日聞くから


理由も聞かずに私をマフラーさんのベッドに寝かしつけてくれた。


一緒に寝て・・・


と、私の願いも優しく微笑んで一緒に寝てくれた。
恐怖と不安で私から抱きつくと優しく抱きしめてくれた。
何だかとても安心してすぐに眠りの世界へ旅立った。




426 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 20:36

――――――――――――――

427 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 20:38


しばらくして目が覚めた。
神経が高ぶり気が張っていてあまり眠れない。




そこは白い世界だった。





―また夢?・・・




428 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 20:40

部屋には何も無く窓辺で白いレースのカーテンがなびいている。
電気もつけていないのに満月の月光でとても明るい。
マフラーさんは窓辺で風になびくカーテンとともになびいていた。
月光に照らされて凄く綺麗だった。

冬なのに窓が開いていても寒くない。
やはりここは夢の世界なのかな?



私が目を覚ました気配を感じたのか彼女がこちらを向いた。
彼女の目を見つめながら私は『ねぇ・・抱きしめて・・』と心の中で願ってみた。
すると彼女は優しく微笑むと近寄ってふわっと抱きしめてくれた。
真綿に包まれている・・そんな感じがした。


―どうして今、私が思った事がわかるの?


何もしゃべらなくても通じ合ってるようなそんなユルイ錯覚を覚えた。
それから二人してまた抱き合ったまま眠りについた。
何だか本当に夢のような感じ。
本当にこれは現実なのかしら?
それともやっぱり夢?



あの出来事が夢ならいいのに・・・・




429 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 20:42

―――――――
――――――
・・・・・・・・・・
・・・・・・


430 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 20:44



−朝−



ぼんやりと目が覚めるとやっぱりそこは白い世界だった。
まだ夢の続き?
そう思って周りを見渡していたら「おはよう」と言いながら
マフラーさんがカップを持って私の方にやって来た。

私はうなずきながら周りを見渡す。

あぁ・・・夢じゃなかったんだ・・・。
でもホント何も無い部屋なのね・・・
壁とカーテンの白さだけが強調されている・・・
昨日は全然気がつかなかったケド・・・


本当に白い世界なのね・・・



全然生活感の感じられないマフラーさんの部屋・・・



431 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/18(土) 20:46

マフラーさんは私の傍に座り「紅茶飲む?」とカップを私に渡しながら
「今日は学校に行きたくなければ行かなくてもいいよ」と私の頭を撫でてくれた。
「うん・・」
私は昨日の出来事をどう言うか悩んだが、結局何も言えなかった。


そんな様子の私を見たマフラーさんは

「言いたくなければ言わなくてもいいし家に帰りたくなければ帰らなくてもいいよ。
好きなだけここに居てくれてかまわない・・・私は君の味方だよ」
そう言ってそっと優しく肩を抱きしめてくれた。

うれしかった。



432 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/19(日) 00:59

――――――――――――――


433 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2004/12/19(日) 01:03

夕方、柴ちゃんから電話が着た。
ごっちんも今日は休みなんだそうだ。

『ケンカでもしたの?』

ケンカならまだいいよ・・。
あんなの最悪だよ・・・。

柴ちゃんは特に理由も聞かず
『明日はちゃんと出てくるんだよ』
そう言って電話が切れた。



ごめんね柴ちゃん・・・
心配かけて・・・ごめんね・・・


434 名前: 投稿日:2004/12/19(日) 01:07

―――――――――――
――――――――――
―――――――――
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

435 名前:うるへぇ〜 投稿日:2004/12/19(日) 01:15

ピコピコピコ・・・
部屋に響くゲームの音。


「ねぇ〜ねぇ〜よっちゃん」
「ん〜?なにぃ〜?」
「なにぃ〜じゃないわよ!」
「あに怒ってんだよぉ〜」
そう言いながらもゲーム画面から目は離さないヨシザー

「最近なんで帰ってくるの遅いの?」
「ん〜裕ちゃん命令だったから・・・」
「ふーん」
「なに?何か疑ってるっぽい?」
「そんな事無いけど・・・」
「けどなに?」
「最近よっちゃん冷たいし・・・」
「んなことないじゃん」

「そんなことある・・・」
「なに?あぁ〜もぅ面倒臭いなぁ〜マイってそう言う事言う人だっけ?」
「・・・・・・・」
「あれ?うちらってそんなんじゃなかったよね?」
「・・・・・・・」
「あぁ〜もう!面倒臭いなぁ〜・・・んじゃもういい!帰る!」
バンとコントローラーを床に叩きつけヨシザーは立ち上がった。


「でもよっちゃん帰るとこないんじゃないの?」
「ん?あぁ〜行く所なんて沢山あるよ!」

そう言って追いすがるマイを振り払って玄関から出て行った。




ガンガンガンとわざと大きな音を立てて階段を下りて行った。



「ちっ・・・はぁ〜どうしよっかなぁ〜・・・今日」


ま、いっか久しぶりに家にでも帰ろっ・・・・・かな?
 
 
436 名前:うるへぇ〜 投稿日:2004/12/19(日) 01:17

―――――――――――――
 
437 名前:うるへぇ〜 投稿日:2004/12/19(日) 01:19


「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」


ヨシザーは自分の家の裏口に立ち一つ大きく息を吐いて大きく息を吸い込んだ。


「よし!」


ヨシザーは意を決して裏口からこそっと家の中に入る。
最小限に音を立てないように忍び込むように・・・
こそこそっとコソ泥のように自分の部屋に入る。
明かりが外に漏れないようにスタンドライトに黒い布をかぶせ
袋からカサコソと出る音を最小限にしながら小腹が減ったので
途中で買ったコンビニ弁当を出し食べ始めた。



・・・ったく何で自分の部屋でこんなに気を使わなくっちゃいけないんだ?




そう思っていたのも束の間――





ドン!ドン!ドン!・・・



わざとらしいくらいに大きな音を立てて階段を上ってくる音・・・



ヨシザーはその音を聞いた瞬間薄暗い明かりを消し
箸をくわえたまま息をのみ、そして身構えた・・・・・

ヤバイ!・・・バレタか?




ドン!ドン!ドン!ドン!・・・・・


その足音はだんだんこちらに近づいて来て
そして自分の部屋の前を通り過ぎる足音・・・



バタン!


ドアが閉まる音がした。




「タァ〜・・・」



ここはやっぱ何か生きた心地がしない・・・・・・
やっぱムリだよなぁ〜・・・
とりあえず今日はもうアレは出てこないだろうから
明日見つからないうちに朝早く出て行けばいいか


・・・・・でも明日からどうしようか?
 
438 名前:  投稿日:2004/12/21(火) 21:05
 
 
 
439 名前:コインは表か・・・それとも・・・  投稿日:2004/12/21(火) 21:10

まだ誰も起きていないだろう早朝4時頃に起き出しこそっと部屋を出る。
少しギシギシときしむ階段を極力音を出さないように降り
勝手口のドアノブに手を伸ばした
その瞬間・・・・・・・…




「ひとみ!」




思わず呼び止められギクッとした。
「な・・・な・に?」
呼び止めた人のほうには向かずに答えた。


「また出て行くの?」
「・・・・うん・・・・」
「学校行ってるの?」
「たまに・・・」

「ちゃんと行かないと・・・
ひとみ・・・帰ってきなさい・・・
お父さんにはお母さんも一緒に謝ってあげるから・・・ね?」

「・・・・・・今はムリだよ・・・ごめんねお母さん・・・」
ヨシザーはそう言うと音を立てないようにドアを開け出て行った。


「ひとみ!」


ドアの向うでお母さんの叫ぶ声がした。
 
 
440 名前:コインは表か・・・それとも・・・  投稿日:2004/12/21(火) 21:14

ヨシザーは溢れる涙を拭いつつ走った。
走って走って走っていつもの場所にやってきた。



カチッ・・ピッ・・ガチャッ




ドアを開け一直線に走りダイブした。




ドサッ!





「イタッ!」
飛び込んだその先でヨシザー以外の声がした。


「え・・あっ・・・ご・・ごめんなさ・・・」


バッっと布団をめくるとそこには
すごーく眉間にしわを寄せたみちよがいた。



「あ・・れ・・?平家さんなぜここに?」
「そう言うあんたこそなぜここに?」
「あ・・や・・寝る・・場所に・・困って・・・」
「は?なんで?マイのとこは?」
「出てきちゃいました」
「ふーん?・・・なんで?」
「んーと何か急に面倒臭い事バッカ言うから・・・」
「ふーん・・・ま、いいわどうでも・・・私は寝るからほなおやすみ」
そう言うとみちよはヨシザーに背を向け布団をかぶった。

「あ・・じゃぁ〜ヨシザーも一緒にいいですか?」
「触りなや・・・」
「え!?」
「私の体に触りなや・・・」
「触りませんよ」
もぞもぞとヨシザーが布団に入った。
 
 
441 名前:コインは表か・・・それとも・・・  投稿日:2004/12/21(火) 21:17


「だぁ〜!もう!!触んなっつってるやろ!!!」
「触ってませんよ!」
・・・ほんのちょこっと当たっただけじゃないっスか・・
なんか眠い時の平家さんってちょっと怖い・・・かも・・・


「ホンマ頼むわヨシザー・・・私今さっき寝たとこやってんから・・・」
「じゃぁ〜後ろから抱きしめるだけでもダメですか?」
「あぁ〜もうるさいなぁ〜もう・・・かっ・・・・・・・・・・」
そして平家さんはピクリとも動かなくなった。

あれ?・・・マヂ怒っちゃったのかな?
それとも寝ちゃった?
ま、いいや平家さん抱きしめながら寝れるヨシザーは幸せ者です。

ヨシザーはギュッと後ろからみちよを抱きしめ目を閉じた。
 
 
442 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/12/22(水) 01:03
おお?!ヨシザーさんには一体どんな事情が?
443 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:13

―――――――――――
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・

444 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:15

コーンコーンコーン・・・・



ううっ何か耳障りな音が遠くで聞える・・・



コーンコーンコーン・・・・



あれ?


何だかその音ってヨシザーの頭の中から聞えてる・・の?

それとも外から?




コーンコーンコーン・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・




445 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:18
あれ?



今気が付いたんだけど何だか額がすごく痛いのですが・・・・




ウムムと無理やり片目を開けて見た。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・ゆ・・・う・・・ちゃ・・・ん?



段々意識が戻ってきた。



その途端に急激に額に痛みが差し込んできた。
「イッテ!!」
思わず額を両手で押さえる。

しかしかまわずそのかばった手の上からビシバシとデコピンは続づく。
額を隠しながら寝たまま逃げまくるが執拗に追いかけてくる指・・・
的確にヨシザーの額の場所に指を弾いていく。


「ぬわぁ〜!!」
あまりのしつこさ&痛さに耐えかねて
ヨシザーはベッドから転がり降りた。

446 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:20
「痛いっすよ!裕ちゃん!」
額を押さえながら涙目の上目遣いで見上げると
仁王立ちしている裕子がいた。

「あ・・・あのう・・・」

裕子のその姿がかなり怖かった。



「あんたここで何してん?」
「え・・あの・・・寝てました・・・」
「誰の許可を得て?」
「え・・あの・・平家さん・・の・・」

「ふーん・・・みっちゃんが?」
裕子の目線の先にはこの騒ぎの中スヤスヤとお休み中のみちよがいた。


「まぁ〜ええそれは、後でみっちゃんに聞くし」


「それよりあんたなんでここで寝てんのや?しかもあんなことして・・・」
「あんなこと・・・・ですか?」
ヨシザーは一体何のことか?と言う顔をした。

「何しらばっくれとんねん!みっちゃん抱きしめながら寝とったやろうが!!」
スリッパで頭を「パコーン」とおもいっきり殴った。

「イ・・・ッテ!!」

裕子はスリッパでヨシザーのアゴを持ち上げて顔を上に向かせ
「ヨシザー・・・あんまり聞き分けの無い悪い事ばっかりしてたら
みっちゃんの側に金輪際近寄らせへんで?」
そしてもう一発スリッパでオマケに殴った。

447 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:22
「あイテッ・・・・ご・・ごめんなさい・・・でも・・」
「でもなに?」
「ヨシザー寝る場所がなくなりました!」

「は?マイの所は?」
「なんかうるさい事言うので出てきました」
「ほんなら自分ンち帰りよ!」
「夕べ帰りましたよ・・・でもやっぱりあの家には居られません」

「他におらんのかいな?」
「はぁ〜・・・今の所は・・・」

「・・・ほんなら、うちンち来るか?」
「え?裕ちゃんの・・・家ですか?」
「イヤか?」
「あ・・や・・あの・・」
「嫌なら誰か探しやぁ〜私は何も言わへんしな」

ささっとヨシザーの側から離れ自分のデスクに座り新聞を広げた。


448 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:23
時計を見ると長針と短針は「12」を差していた。

なんだよ・・・もう昼?



「ヨシザー!」
「は・・はい!」
「あんたどうせ暇やろ?」
「え?はぁ〜まぁ・・・」



「ほんならそこの冷蔵庫から適当に見繕ってみっちゃんになんか作ったってよ!」
「え!?ヨシザーがですか?」
「あんたの他にヨシザーっておる?」
「・・・・・・いませんね・・」
「ほなよろしく!もうじきしたらみっちゃん起きるからそれまでによろしく!」
そう言うとデスクに向かいパソコンを立ち上げなにやらパチパチと打ち始めた。


449 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:26
何か作れって・・・ほとんど何も無いじゃん!
ビールばっかし・・・これじゃぁ〜独身男の冷蔵庫だね・・・

結局冷蔵庫の中にあった物と言えば
食べ残しのサラミとしっけたそうめんとスルメと鮭
少し干からびたレタスとカニカマと生姜のカケラにしっけたコンソメスープの元
それと冷凍されてあったご飯といつ買ったのか分かんないような卵3個だった。

これでヨシザーでも出来る物って言ったら・・・・


「裕ちゃんも食べるんですか?」

「うちはええみっちゃんに作ったって
あんたも食べるんやったら自分の分作って食べ」


450 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:29
ヨシザーがなにやら調理をし始めて数分後

ピピピッピピピッピピピッ♪

アラームの電子音が聞えてきた。

ごそごそと平家さんが動いてにゅっと手が出てきて目覚ましを止めた。


ガバッと布団をめくり起きた。


「あっ!姉ーさんおはようさん!・・・・・あれ?ヨシザーもう来たん?」
「え?昨日の・・・って言うか朝方の出来事覚えてないんですか?」
「ん〜・・・・・知らんよ?」
「え〜!!あんなにもラブラブで寝たって言うのに!!」
「は?何のこと?私知らんし」
そう言って顔を洗いに行った。

「平家さんツレナイっすよぉ〜・・」
「はは!よっさん残念やったな!
みっちゃん1回寝たら途中で起きても何も覚えてない人やから」

「えっ・・・」

はぁ〜そうなのか・・・
それならもうちょっと色々触っておけばよかったよ・・・

「よっさん何よからぬ事考えてんや?」
「え・・・や・・・やだなぁ〜裕ちゃん・・・ヨシザー何も考えてませんよ?」
「ふーん」

何もかも裕子に見透かされているように思えて
ヨシザーがガックシうなだれている間にみちよが戻ってきた。


「ヨシザー何作ってんの?」
「え・・・あの・・・平家さんのために・・・」
「あ、そうなん?ありがとう・・・でいつ出来るの?」
「あ・・もう出来ますよ!」

451 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:32
とりあえず作ったものをテーブルに並べた・・・

「へーヨシザー顔に似合わず美味しそうやん!」
「顔に似合わずってなんですか?」
「や、読んで字の如くそのままの意味やけど・・・」
「・・・・」

「あれ?ヨシザーのんは?」
「いや・・ヨシザーはいいんですけど・・・」
…ってか一人分しか材料ないんだもん・・・

「ほないただきます!」

パクッと一口・・・

「あっ!ヨシザーもしかしてサラミ使こた!?」
「え・・あ・・はい使いましたが・・・」
「全部!?」

みちよは目をギラギラさせて執拗に聞いてくる。

「いえ・・ちょっとクセがあるので少しだけ使いましたが・・・?」
「ほなそうめんは!?」
「え?それも少しだけ使いました・・・けど?」

ヨシザーの答えを聴くか聞かないかの間に
みちよはバッっと冷蔵庫まで走って冷蔵庫を開ける。

「よかったぁ〜・・・私サラミとにゅう麺さえあれば後はいらんねん!」


・・・はい?なんですか?
じゃぁ〜ヨシザーの作ったこれはいらないんですかね?

でもそう言いながらみちよはヨシザーの作ったレタスチャーハンと
タマゴスープ(レタスカニカマそうめん入り生姜風味。今命名(笑))をあっという間に完食。


452 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:35
とりあえずお腹は満足したのかみちよは
今頃ヨシザー存在を疑問に感じて聞いた。

「んでヨシザーは今日はどうしたん?」
「や・・だからその話は何度もしましたよ・・・」
「そうなん?でも私聞いてへんし」


・・・何度も言ったんですけど・・・


「ヨシザーを平家さんの部屋に居候させてくださいよ!」
「は?なんで?」
「色々・・・」
「色々なに?」

「・・・いえ・・・」
「それやったら、うちンちよりも姉ーさんンちの方が広いで?」

また裕ちゃんちかよ・・・。

はぁ〜・・・


「あ、でも裕ちゃンちってまだあの娘おったよね?」
そう言ってみちよは新聞を閲覧中の裕子に話し掛けた。

「ん?」


453 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:41

―――――――――――――
―――――――――――
―――――――――
 
 
454 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:45
ヨシザーは結局裕子の家に居候する事にした。


部屋に行ってビックリ!もの凄く広いのだ!
それにあっちにもこっちにも部屋があって・・・
しかもマンションの最上階で・・・・
・・・もしかして裕ちゃんって・・・お金持ち?




最初に通されたリビングで見たものそれは・・・
 
 

455 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:49

耳を劈くような大音響で響くゲームの音・・・・・・

そして巨大なプラズマテレビの前であぐらを組んで
ゲームに熱中する・・・少女が一人・・・



・・・・・・・・・・・・ダレ?


も…もしかして裕ちゃんの子供?
・・・・・・・・・・・・んなわけないよな?



最初入ってきた時は大音響で驚いたけど
今ヨシザーが居る場所とあっちとじゃ少し離れてるので
慣れてくるとそれ程音は気にならない。
そのくらい大きいのだ・・・ここのリビングは・・・


そこへカップを手に裕ちゃんがやってきた。


456 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:52

―あれ・・・うちの妹・・・
つーか、おとんの再婚相手の連れ子・・・
確かあんたと同い年やったっけな?・・・まぁ仲良ぉ〜したってや!



そう顎で示して言う裕ちゃんは珍しくビール以外のものを口にしていた。




―この近所のナンタラって言うお嬢様学校に通ってんねんけど、
最近は試験以外はあぁやってゲームして引き篭もってんのや。




ふーん


少しミステリアスな感じのする、ヨシザーよりも小さい女の子だ。
一日中ゲームねぇ〜ゲームならヨシザーも負けないっすよ?


で、このヨシザーに何をしろと?
ゲームの相手とか?
んなわけないか。


そのゲームする姿を見ながら裕ちゃんに貰ったココアを飲んでいたら
ふと気がついたことがあった。



なんだろ・・・あの仏頂面・・・誰かに似てなくないか?
 
 
 
457 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:54

あっ!そうだ!
何となく感じが一番さんに似てるっぽいかなぁ〜
それにあのデカイ態度はミキティだよなぁ〜
うんうん。
じゃぁ〜あの娘一人であの姉妹二人分だ!

そんな事を考えてると思わず「プッ」と笑いが込み上げてきた。


ヨシザーのそんな小さな吹き出すような笑いを
あんなに大音響でゲームをしているのにもかかわらず聞えたのか
ギロっとヨシザーを睨んできた。



458 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:56

わっ!こえ〜!
あの睨みはミキティとドッコだよ・・・
そんな事を考えてたら急にゲームの音が止まった。

TV画面の中の登場人物たちは一斉にその場に止まっていた。

少女が立ち上がりヨシザーのほうに近づいてきた。



ゲッ・・・こっち来るじゃん



「あんた何?ケンカ売ってんの?買うよ?」
ぼそっとヨシザーのほうは見ずに真顔でそう言いながら
テーブルの上にあったクッキーの箱を手に取りボリボリと食べながら
また元の場所に戻りゲームをはじめた。



こ・・・こ・・・こえ〜〜〜〜!!!

 
459 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 20:59

「…でや、ヨシザーあんた何で家出してフラフラしてんのや?」
「えーっとそれは・・・」
「何かワケありっぽいよなぁ〜?」
「・・・・」
「まぁ〜言いたくなかったら言わんでもええけど一応あんたを預かるこっちとしては
親御さんのアレの為にも理由を知っといても悪ぅないやろ?」
「・・・」

「でも学校にはちょこちょこ行ってるって事は一応悪いって思ってるわけ?」
「うっ・・・」
「あっもしかしてビンゴ?」

「あのう・・・」
「ん?」
「誰にも言わないで下さいよ?」
「あぁ〜言わへんよ(たぶんな)」
「平家さんにも一番さんにも・・・後マイとかにも・・・」
「裕ちゃんとヨシザーだけの秘密っちゅーやつやな!
こう見えても裕ちゃん口固いし!(・・・たぶん)」


460 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/18(火) 21:02

「で?」
「えーっと家出をしたのが・・・夏休み・・・でした。」
「ほぉ〜夏休みになったらよくあるプチ家出っちゅーやつやな?でもプチにしたら長くないか?」
「や・・・そういうんじゃなくって・・・」
「どんなんなんや?あぁ〜もううざったいなぁ〜ちゃっちゃと吐け!」

「・・・・・・・・」
ヨシザー何かの容疑者っスか?

「ほれ!」
「・・・・・・」
「ほれ!」
「・・・・・・・」

「はよ言え!!!」
「うっ・・・あの・・・笑いませんか?」
「笑わんからはよぉ!あぁ〜!!!もう!イライラすんなぁ〜!!」




「あのですね・・・」
 
 
 
 


461 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/19(水) 00:17
ええ!な、なになに?すげー気になるよ、作者さーん!
462 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 00:59

「―笑わないで下さいよ?

絶対に……」




そもそもヨシザーが家出した理由なんて些細な事なんですよね。




463 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 01:03

あれは高校に入って初めての夏休み。
いきなり高1の夏休みに遅めのデビューしちゃう人達がまま居る中。
ヨシザーの周辺でも一学期は普通に黒髪だったのに夏休みデビューしちゃった
友人数人がヨシザーの家に遊びに来ていた時のことなんですけど…
(まぁ〜ヨシザーのデビューも同じようなもんなんですけど)


誰かが「お酒を飲もう!」と言い出して、
まぁ〜ほら?ヨシザーの家って酒屋でしょ?
酒は腐るほどあるんだけど…まぁ〜でもそれはもちろん全部売り物なんですけど
「わかんないよ!何本かちょろまかしちゃえ!」と言う
友人の言葉に乗っちゃったヨシザーも悪いんですけどね。

さすがに店の売り物に手をつけるのはあれなんで、
まぁ〜一応万引きのようなもん(・・・万引きだよな)だから
リビングにあるオヤジの酒をちょろまかす事にしたんです。
オヤジ滅多に飲まないくせに酒を集めるのが趣味で…
で、何がいいんだかよくわかんないからとりあえずビールと日本酒
そして棚の奥の奥のほうで瓶に入った古そうな酒を見つけたんです。

封が切ってないその古い酒は製造年月日がかろうじて読めるくらい
ラベルがボロボロになっていて、封が切ってなくて古い酒だから
きっとオヤジも存在忘れてるよなぁ〜って感じで軽く思って皆で開けちゃったんですよ。


464 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 01:06

どうせ皆酒の味なんてわかんないし、その時はヨシザー
酒屋の娘なのに酒のことなんて何も知らなかったから・・・
まぁ〜高校生なんだから知らなくって当然なんですけど・・・

でも本当に知らなかったんですよ!

古酒って言って寝かせれば寝かすほど美味しくなる酒があるんだそうで
それを後になってそれを知ったんですよ。

そのオヤジが棚の奥で眠らせていたその古酒が原因であんな事になるなんてね。


でもヨシザーがもし逆の立場だったら多分同じような事したよなぁ〜・・・


465 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 01:09

あの日の夕方、酒の置いてあった戸棚が開きっぱなしだった事に気がついたオヤジが
古酒がなくなっているのに気がついて血相を変えてヨシザーの部屋に殴り込んできて
色んな酒をチャンポンしてベロベロに酔った友人を足蹴にしながらヨシザーに近づき
足で肩の辺りをいきなり蹴ってきた。

酒には少々強いヨシザーも少し酔っているのでいきなりのオヤジの先制攻撃に防御が出来ずに
一方的に殴られるのみ。
オヤジはワケの分からないような言葉を叫びながら蹴りつけてた
騒ぎを聞きつけたお母さんが血相を変えて飛んできてオヤジを必死で止めてた。



「―出て行け!」


それだけ言い残すと親父は部屋から出て行った。
売り言葉に買い言葉、酔った勢いとはいえ
オヤジの背中に向かってヨシザーの口から出た言葉・・・



「―あぁ〜出てってやるよ!こんな家!!」




ヨシザーが家出した原因がこんな些細な理由だって知ってるのは
お母さんとその場にいた酔っ払いの友人達だけなんだけど
多分やつらは誰も覚えちゃいないだろうケド・・・



後でお母さんから話し聞かされたんだけど
ヨシザーが飲んだあの酒って・・・



466 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 01:13

酒集めが趣味のオヤジが、ヨシザーが産まれた時に
知り合いの杜氏さんに頼み込んで一緒に作った「なんちゃら」って言う特別な酒で、
ヨシザーが20歳になった時に一緒に飲もうと思ってたらしくって・・・

それを勝手に飲んだヨシザーも悪いんだけど・・・


もう引くに引けないって感じでね・・・


467 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 01:16

「は?」
その話を聞いていた裕子の周りの時間が止った。

1・2・3と一瞬時が止まった次の瞬間・・・




「ブッファハハハハハハハハ!」



裕子は大音響のゲームの音もかき消されるほどの大きな声で腹を抱えて笑った。




「だぁ〜!!笑わないって言ったのにぃ〜!!!」





「あぁ〜ごめんごめん」
笑い涙を拭きつつ裕子はヨシザーに謝った。


「はぁ〜でもそんなことで家出まですんなよ!」
裕子はポカリとヨシザーの頭にゲンコツを落とした。

「イテッ・・・」


「あんたもあんたなら親も親やな?この親にしてこの子ありやで?」

「だって・・・うちのオヤジハンパないんだもん!」



468 名前:コインは表か・・・それとも・・・ 投稿日:2005/01/22(土) 01:20

だって怒ったらあいつ何するかわかんないんだもん!
ヨシザーこれでも女の子ですよ?
それなのに小さい頃から何かやっちゃ殴る蹴るな目にあってきたし
終いにゃキレたオヤジが裁縫用の布を裁断する大きな鋏を投げつけてきて
太ももに当たって筋肉断裂の大怪我をした事があったんですよ?

それからヨシザーもオヤジとのケンカは本気で行くようになりましたね。
ヤラレル前にヤリ返せってね、それでヨシザーケンカとなると目が変わるんですよ。

だから今回のケンカも、ヨシザーが一方的に悪いっちゃ悪いんだけども
こっちから折れる気が全くしない!きっとオヤジも折れないはず!

お母さんには悪いんだけど・・・



後の話を聞いていた裕子は大きくうなずくと
「よっしゃわかった!その件については裕ちゃんに任しとき!
ヨシザーの悪いようにはさせへんから」


そう言うとポカンとしたままのヨシザーを残してリビングを出て行った。


え?・・・なんだよ今からあいつと二人っきり?
なんかこえぇ〜よぉ〜


469 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2005/01/22(土) 01:27
はい・・・え〜っと作者です。
長々と延ばした割にはたいした内容で無くすいません。<(_ _)>
このところヨシザー編ばかりで話がなかなか進まなくってすいません。<(_ _)>


>>461 名無飼育さん こんな内容ですいません。

以後精進します。
470 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/22(土) 21:19
こんなこと言っちゃあれかもしんないけどヨシザー編おもろいっすよ
家出の理由ワロタwオヤジの気持ちもわからないでもないなぁ
ゲームやってるあのコは誰なんだ?気になるぅぅ
471 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2005/02/15(火) 23:12
え〜っと作者です。
更新は次回にさせて頂きます。


>>470 名無飼育さん
ありがとうございます。
いやぁ〜そう言ってもらえるとかなり嬉しいです。
家出の理由・・・本当はあの事はもちっと後に回そうと思ってたんですけどもねw

あのコが誰だかそれはココではちょっと・・・w
472 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/16(水) 01:17
一気に読まさせて頂きました。 なんかかなり興味深い作品で。 あのゲーム通は・・・あの人っぽいですね。 次回更新待ってます。
473 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2005/04/08(金) 20:58

――――――――――――
―――――――――――
――――――――――
――――――――

474 名前:今宵の月は? 投稿日:2005/04/08(金) 21:03

市井は今日も大学の部屋のソファーに寝転がっていた。


最近私はここでよく眠る。
なぜなら家ではあまり眠れない・・・
彼女の事がいろいろ気になって眠れないのだ。
だから私はここで眠るのだ。



丁度眠りの深い所へ今から行きまぁ〜す!
ってそんないい感じの時に私の頭を誰かが叩いた。

「イテッ!」
即座に現実へと引き戻される。
目を開ける気がしないので瞑ったままつぶやく。
「なに?」

私の頭を叩いた人物が溜息をつきながら言った。
「紗耶香・・あんたまたここで寝てるの?」
それは圭ちゃんだった。



「授業は?」
「うーん録画してる・・」
「録画って・・どうせ後で見ないんでしょう?」
「・・うん」

また溜息をつきながらあきれたような声を出しながら
「そろそろ理由聞いてみたら?
あんたもそろそろ限界でしょ?」そう聞いてきた。

「・・う・・ん・・」

ご名答!
もう限界近しって感じです。
さすが圭ちゃん・・・そう言うわけで・・・
そのまままた夢の世界へ行ってきま・・す・・
夢の中の遠くの方で圭ちゃんが吠えてる声がしたけど・・・
まぁ〜いいや、勝手に吠えてろ!ワンワンワン・・・

475 名前:今宵の月は? 投稿日:2005/04/08(金) 21:06

またしばらくすると今度は私の髪を撫でる感触がして眠りが覚めてきた。
せっかくの眠りを邪魔するのは誰だ?
そう思い薄目をあけると美貴だった。
撫でている美貴の手を取ると何だか驚いたみたいだった。



「わっ!お姉ーちゃん起きてたんだ!」
「ん・・寝てた・・」

美貴が何かうれしそうに私の傍にひざまずき
「寝てたってお姉ーちゃん起きてんじゃん!
ねーお姉ーちゃんこんな事いつまで続けるの?
美貴心配だよ・・・もう見てらんないよ・・
何で関係のないお姉ーちゃんがこんなにボロボロになってんの?」

鼻声で叫ぶ美貴をぼやっと見上げるとやはり泣いていた。
美貴の手を握りながら「んー・・さんきゅ・・もちっとな・・」力なく笑った。
476 名前:今宵の月は? 投稿日:2005/04/08(金) 21:08

「美貴許せない!お姉ーちゃんをこんな目にあわせてるなんて!」
そう言って立ち上がろうとする美貴の腕を引っ張り自分の方へ引き寄せ
「美貴いいんだよ!私が好きにやってんだから!
それから絶対あの人に、手も足も口も出すなよ!
何があっても黙って見てろ!いいね?・・・約束だよ。」

そう言ってムスッとしている美貴を抱きしめた。

「・・・わかった」

美貴もぎゅっと抱きしめ返し、そして一緒にソファーに横たわった。
そのまま二人でまた夢の中へに引きずり込まれていった。

477 名前:今宵の月は? 投稿日:2005/04/08(金) 21:10

―――――――――――――――

478 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2005/04/08(金) 21:13


―後少しでまた満月。―


私はあれから家に帰る気がしなかったのでマフラーさんの好意に甘えて
毎日学校とマフラーさんの家の往復でした。
大好きな図書室通いもしていない。

学校に居るといつ何時ごっちんに出会うとも限らないから


それにまだ彼女に会うのが怖いから・・・



マフラーさんは毎日夜遅くに帰ってきた。
そしてあのことには触れず一緒に時を過ごしてくれていた。
何だかだんだん毎日が楽しく思えるようになっていた。

気がつけば最初何も無かったこの部屋に
今はまるでここが私の部屋のように私の私物がいたる所に散乱していた。

479 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2005/04/08(金) 21:25

あれよあれよと言う間に私はマフラーさんの家で数週間も過ごしていたようだ。
親にはこの事は黙っていたけど心配をかけないように学校には行っていた。
あれから柴ちゃんは何も聞いてこない。
きっと私から話してくれるのを待ってるんだろう。

・・・ごめんね柴ちゃん・・心配かけて・・。

学校では全然ごっちんには会わなかった。
彼女の方も会わないようにしてるんだと思う。
学校に来ているのだけはチラッと見たので分かっていたけど
クラスも違うし、向こうから来ない限り会う事もない。
まして住んでいる場所も違うんだから、ばったり近所で出会うなんて事も無く
気がつけばこんなにも日が過ぎていた。


このまま彼女・・・ごっちんとは疎遠になってしまうのだろうか?
それとももう私達の関係は終わったの?
そんな事を考えている時、
いつもよりも早い時間に帰って来たマフラーさんが私に言った。



―ハナちゃん、そろそろあの事話してくれる気になった?



480 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2005/04/08(金) 21:27


あの事・・・それはあの日の出来事のコト・・・。


481 名前:その夜の月は満月だった。 投稿日:2005/04/08(金) 21:29

そうだ・・
そろそろこの人も私から解放してあげないといけない。
もともとこれは私とごっちんの問題なのに・・・
全然関係のないマフラーさんを巻き込んでしまっているのだもの。

それにあの日以来マフラーさんは
私の隣で満足に寝ていないと言う事を知っている。
よく夜中に起きている事も知っていた。

だって私もあれから眠りが浅いから・・・
ごっちんもきっとそうだろう・・・
きっと眠れぬ夜を過ごしているはずだ。

もうこれ以上この人には迷惑はかけられない。


そろそろ白黒はっきりつけなくっちゃ!



482 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2005/04/08(金) 21:41
本日の更新終了しました。

長らく放置していたのに
たったのこれっぽちしか更新できずにすいません。m(_ _)m

また暇が出来ればポツポツ更新していきたいと思いますので
よろしくおねがいします。




>>472 通りすがりの者さん
読んで頂きありがとうございます。
えっ!?興味深い・・・ですか?
そう言っていただけるとうれしいです。(゜ーÅ)

483 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/11(月) 11:33
更新お疲れさまです。 ついに石川さんの大告白!今後はどうなって行くんでしょうか? 次回更新待ってます。
484 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2005/08/11(木) 06:59
気がつけば8月ですね。
ごめんなさいこんなに長く放置するつもりはありませんでした。

近々大量うpさせていただきます。m(_ _)m


>>483 通りすがりの者さん
ありがとうございます。
次回更新は近々ということで・・・ご了承ください。
485 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/14(水) 20:46
待ったりとまっておりますので、更新頑張ってください。
486 名前:−告白− 投稿日:2005/09/29(木) 19:49

マフラーさんを目の前にして
どこからどういう風に話せばいいのか
一言一言悩みながら話し出した。

あの日マフラーさんと別れてからの出来事を・・・
掻い摘みまがらポツポツと話した。

あなたと出かけたあの日のあの時ごっちんが・・・

私の体に知らない人の匂いがついていると言い出して・・・

思い出したくない現実を思い出しながら話していると
だんだんその当時の事が鮮明に思い出してきて
また恐怖と嫌悪感がぶり返してきてカタカタと体が震えだして止らなくなった。

そんな私の様子に気がついたマフラーさんは
優しく私の肩を抱きしめてくれたら、震えがだんだんと治まってきた。

どうしてこの人・・・マフラーさんに抱きしめられていると
こんなにも心が安心して落ち着くんだろう?
ごっちんに抱きしめられてる時とは違うまた別の感情・・・
487 名前:-告白- 投稿日:2005/09/29(木) 19:51


決めた!



私はマフラーさんの腕から体を離すとこう言った。


「―私、明日…
ごっちんとちゃんと話をする事に決めました。
その事まだごっちんには言ってないですけど・・・
それから自分の家に帰ります。
もう私は大丈夫です!
今までありがとうございました。」


そんな私の話をうんうんと聞いていたマフラーさんは
一呼吸空けてから言った。

「お互い傷つけ合ってるうちは無いも解決しないし、何も終わらないし何も始まらない。
まだ彼女の事を思うのならまず話し合うべきだよ?でないと何も解決しない。
続けるにしろ終わるにしろもっとちゃんと二人で話し合うべきだよ。」



―本当に愛しているんならね。


488 名前:-告白- 投稿日:2005/09/29(木) 19:52

「まぁ、私にはこれ以上何も言えないよ」マフラーさんはそう言って立ち上がり
私の肩をポンポンと二度程叩いて「少し外出てくる」と言って立ち上がろうとした
そんなマフラーさんの手を取り私は言った。


「―ごっちんと話が済んだ後、あなたにお話があります。
聞いてもらえますか?」


私の申し出に最初はびっくりして面食らっていたマフラーさんは
「いいよ!いつでも待ってるよ」とニコッと笑って部屋から出て行った。


しばらくマフラーさんの居なくなった部屋で考え込んでいたが
私は意を決して携帯を手に持った。


<<話があるの、明日私の部屋に来て 
−梨華−>>


一瞬送信ボタンを押すのに戸惑ったが、押した。


画面には「メールを送信しました。」と表示されていた。
あぁ〜行っちゃった。
もうこのメールは取り返すことが出来ないんだなぁ〜ってなぜか思った。


ややあってごっちんから返事が来た。



<<了解。ゴトーも話があるから 
−ゴトー−>>


うっ・・・ごっちんも私に話があるんだ・・・って当然ね
当事者同士なんだもの・・・
きっとごっちんは私からこうして連絡してくるのを待ってたんだと思う。
そう言う人だからごっちんって…


これでもう逃げられない。



マフラーさんも言っていた・・・。


―いつまでも逃げてちゃ何も変わらないし、終わらないし、始まらない・・・―


489 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:53

梨華から衝撃の告白(?)を受けた後イチイは
出てくると言ってフラフラと大学の部屋に来ていた。
一人ブツブツ言いながら部屋のドアを開けると目の前に圭が立っていた。

「うわっ!ん・なんだよ圭ちゃんそんな所で!お化けかと思っちゃったよ!」
「ちょっと紗耶香!お化けって何よそれ!?ム・カ・ツ・ク!」
そう言って圭ちゃんは私のほっぺを両側伸ばせるだけ伸ばした。
「いひゃ〜うぃ!ふぇーふぃぁん!」
「うるさい!」バシッと頭を叩いた。
「イテ〜!!」涙目になった。

なんだよ・・・今日はご機嫌ナナメなの?
ケンカでもしたのかな?


「そんな事よりもあんたアレは解決したの?」
「う〜ん・・・多分・・・こっちはね。」
「こっちはって?」

「向こうで今から修羅場・・・かな?」
「かな?って・・・」
「さぁ〜知らないよ。あっちはあっちで何とかするんじゃないの?」

「あんたそれでいいの?」
「・・・いいよ」

「今がチャンスじゃないの?」
「ん〜・・弱ってる時に行くのは私の精神に反するからヤダ!」
「ふーん・・まぁ〜私には関係ないからいいけど」

じゃっ!

そう言って圭ちゃんは部屋から出て行った。

何だかんだ言って圭ちゃんってば心配してくれてるんだ・・・・
優しいとこもあんだよね、ああ見えて・・・

490 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:54

ソファーで寝転がっているうちにいつのまにやらどうやら眠っていたようだった。

唇に何かの感触があったような気がして意識が水面下まで上がってきた。
ぼんやりと目を開けると私に口付けしていたのは美貴だった。


ほんの少し前から気がついていたんだけども、
どうも私の妹の美貴は・・・

私が寝ている隙によくキスをしているようだった。

だけどもあえて私はその件については何も触れなかった。
その件については触れちゃいけないような気もしたからだ。



私は今目が覚めたと言わんばかりの感じで少しわざとらしいくらいに体を動かし
目をこすりながら目覚めたふりをした。

「ん?美貴ぃ〜?どぉ〜したぁ〜?」
するといきなり美貴が私に抱きついてきた。
「ねぇ〜お姉ーちゃん・・・美貴じゃダメなの?」

い・・・いきなり何を言い出すんだい?妹よ・・・

「はぃ?」
「だって美貴こんなにもお姉ーちゃんの事好きなんだもん!
あの人よりも美貴の方がずっとずーっとお姉ーちゃんのこと好きだよ?」
そう言ってズンズン接近してくる。

「わ・・・たしも美貴のこと好きだ・・・よ?」
少し身の危険を感じた。

「違う!お姉ーちゃんの好きと美貴の好きは違うもん!」

おいおい!今日の美貴ちゃんはどうしちゃったのかなぁ〜!?
何か変なものでも食べたの?

491 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:55

「なに?どう違うの?」
「全然違うもん!・・美貴お姉ーちゃんのこと愛してるもん!」
「ん?私も美貴の事愛してるよ?」

「違うもん!お姉ーちゃんの愛してるは、
家族として妹としてって言う意味でしょ?」
おっ!鋭い突込みナイス突っ込みだ美貴!

「ぅん。」

「美貴のは違うもん!」
「どう違うの?」
「美貴はお姉ーちゃんに対して恋愛感情もってるもん!
だから美貴にキスしてよ!」


「はぁ?キスって・・・」
「ねぇいいでしょ?」

もしもぉ〜〜〜し!!
何一人で先走ってるんだよ!?
美貴ちゃ〜〜ん戻ってらしゃい!

「・・・」
「ねーねーお姉ーちゃん!」
「・・・」

何ですか一体・・・
今日の美貴はおかしいよ?

「悪いけど美貴・・・それはムリだよ!
いくら可愛い妹のお前の頼みだからといってもそれはダメだね」
「どうして?」
「だってお姉ーちゃんは美貴に恋愛感情もって無いからダ・メ・だ!」
「恋愛感情持ってなかったらキスしてくれないの?」
「と・う・ぜ・ん!」

492 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:55

「じゃぁ〜あの人ならいいの?」

あの人ねぇ〜・・・ってあの人ってどの人の事言ってんだろ?

「ん〜そうだなぁ〜あの人ならいいかな・・・」
分かんないけどとりあえずそう言っとこうか?

「なんで?なんで?なんで美貴じゃダメなの?」
「なんでなんでって・・・美貴は私の可愛い妹だから」

「じゃぁ〜美貴もう妹辞める!だからそれでいいでしょ?」
「ん〜そう言う訳にも行かないんだよなぁ〜」
「どうして?」


うーん今日の美貴ちゃんしつこくないかい?

493 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:56

「どうしてって・・血が繋がってるからね。」
「血が繋がってちゃダメなの?」
「ダ〜メ〜だ〜」

「苗字が違っても?」
「苗字が違っても血が繋がってたら、ダ メ だ!」
「なんで?」

だぁ〜っ!しつけーぞ!美貴!!

「苗字が違っても前は同じ家族だったでしょ?
私と美貴は同じ・・・お父さんとお母さんから生まれてきたでしょ!?」
・・・ったく
苗字が違うのは・・・・・
親が離婚しちゃったんだから・・・
こればっかりはしょうがないでしょ?


「苗字が違っても血が繋がってたらダメなの?」
「ダメだっつってんじゃんかよ!」

だぁ〜!!この話はいつまで続くんだよ!!
今日の美貴しつこいよ!!
勘弁してくれよぉ〜!!
同じような話の堂々巡りは勘弁してよ!

圭ちゃんカムバック!!
戻ってきてよ!!!
いっそヨシザーでも誰でもいいよ!

イチイは切に願った。


494 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:57


「じゃぁ〜美貴は一生お姉ーちゃんに愛してもらえないの?」

「だ〜か〜ら〜今ちゃんと愛してるでしょ?」
「そんなの愛じゃない!」

愛じゃないって言われても愛には変わりはないのですよ?
姉妹愛って言うでしょ?美貴ちゃん・・・

「でも、美貴お姉ーちゃんがすきなの!誰にも渡したくない!あの人にも!!」

「ちょっ・・ちょっとタンマ!美貴何言ってんの?
誰の事言ってるのか知らないけど、私はその誰かとは何でも無いよ?」
「うそだ〜〜〜〜〜っ!!美貴知ってるもん!
お姉ーちゃんがあの人のこと好きだってこと!」

「だ…だから誰のことだよ!?」
「今お姉ーちゃんの部屋に囲ってる人!」
「囲ってるって・・・」
オヤジじゃないんだけど…
「うそついたってダメだよ!ちゃーんと美貴は知ってるんだよ!
ずっと前からお姉ーちゃんがあの人のこと好きだって事くらい」

ギクッ!痛いところをつかれた

「そ・・それは気のせ・・」
「気のせいじゃないもん!美貴ずっと見てたもん!
お姉ーちゃんとあの人のことずっと・・・」

見てたって・・・お前はストーカーか!?
我が妹といえどそれはあまりにも酷どくない?



495 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:58

「美貴じゃダメなの?」

あぁ〜美貴ちゃんまだ続けるの?
もうやめようよ!その話題・・・

「ダメ」
「そんなにあの人がいいの?」
「だからあの人とはそんなんじゃないよ」

「でもあの人ちゃんと恋人いるよ?隣のクラスに・・・それでも好きなの?」
「知ってるよその位・・・それに、そう言うんじゃないから・・・」
何度も同じ事言わせるなよなぁ〜・・・

すると美貴の目がキラッと光った。

「じゃあ〜美貴があの人に手を出してもかまわないよね?」
「は?何言ってんのおまえ!?」

手って・・・美貴ちゃんあなたの場合は暴力と言う名の『手』だよね?

496 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 19:59

「だってお姉ーちゃん好きじゃないんでしょ?あの人・・・」
「美貴・・お前自分で何言ってるのかわかってる?」
「わかってるよ!美貴はお姉ーちゃんが大好きだって言ってるの!
愛しているの!お姉ーちゃんに美貴の気持ち分かってもらえるように
今からあの人のところに言って手も足も口も出してくる!」

そうわめき散らして美貴は部屋を出て行こうとする

やばい!
今日の美貴は何だか知らないけど
ヤバイ方へ行っちゃてるよ!



「あっ美貴!待てよ!」
ドアの直前で美貴を捕まえた。

「お姉ーちゃんずるいよ・・・美貴の気持ち知ってるくせに優しくするなんて・・」
美貴をこちらに向かせて肩に手を置いて顔を覗き込む。

「するよ・・だって美貴は私の可愛い妹だからね」
「お姉ーちゃん・・・」

美貴は私の肩に顔を乗せてきた。

ほっ・・・やっと大人しくなってくれた・・・

そう胸をなでおろしたその時


497 名前:-告白の後- 投稿日:2005/09/29(木) 20:00

ガチャッ・・


「いやぁ〜忘れ物忘れ物」


圭が入ってきた。


入り口側で紗耶香と美貴があつい抱擁をしていた。
「あらあらあら姉妹でラブシーンですか?」
そうチャカしたように言うとムッとした表情で美貴が圭を見た。

「圭ちゃんは黙っててよ!」


「はいはい・・・」
触らぬ美貴に祟り無しですね。




・・・圭ちゃん登場するのが遅いよ!
もっと早く出てきてよ!!!!!

そう心の中で絶叫するイチイであった。




498 名前:  投稿日:2005/09/29(木) 20:01
 
 
499 名前:  投稿日:2005/09/29(木) 20:01
 
 
500 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:03
 
私は久しぶりに我が家に帰ってきた。
私物を取りに帰ってた時は気が付かなかったけど
部屋の中は当時のあのまま・・・の状態とはちょっと違っていた。
何だか綺麗に片付けられているそんな感じ。
誰かが掃除を?
親はほとんど来る事が無いのできっとごっちんだろう。

彼女から連絡があって昼過ぎにはこちらに向かうと連絡があった。




501 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:05
 
それからまもなくしてごっちんはやってきた。
久しぶりに見る彼女は少し痩せたようなそんな印象だった。

あれからお互いが会っていなくてもお節介の誰かさんが
近況報告として伝えてくれていたのだ。
『今日のごっちん』って言う名目で・・・。
どうせごっちんにも『今日の梨華ちゃん』って言う事で伝わってると思う。

だから久しぶりに会ったという感じはしないけども
本人を目の前にするとすごく距離を感じた。
お互い意識して距離を離してるんだと・・・
だって私が現にそうしてるんだもの・・・。


「ねぇ〜ごっちん少し痩せた?」
「んー・・・そうかな?」

ごっちんはよくわかんないと首をかしげた。

「ごっちん・・・元気にしてた?」
「んーまぁまぁだね・・」

やっぱりその後の会話が途絶える。

何か話さなくっちゃ何か話さなくっちゃと
考えて間が開いた次の瞬間
いきなりごっちんが床に土下座をした。

502 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:06
 

そして「ごめんなさい、ごめんなさい」とひたすら私に詫びていた。
私は慌てて傍に駆け寄り、やめてと叫んだけど、彼女はやめなかった。

そんな涙を流しながら許しを請う彼女を抱きしめながら言った。
「ねぇ〜ごっちん・・・まだ・・私のコト好き?」
ごっちんは起き上がると
「ゴトーはずっとずっと梨華ちゃんのコト好きだよ。愛してる!」
そう言って私を抱きしめた。
「私もごっちんの事好きだよ!」
私もごっちんを抱きしめた。


「こんなゴトーを許してくれるの?」
「私も悪かったんだし・・・」
「でもゴトーのほうが悪いし・・・」
「イヤ・・でも私の方も悪いし・・」

二人は見詰め合うと声を合わせて笑った。

「じゃぁもう一度やり直そうよ!私も悪いところは直すから!」
そうごっちんは言ってくれた。
正直うれしかった。

でも、やり直すその前に
ごっちんに告げなくてはいけないことがある。
それは『マフラーさんのコト』

ほんの小さな嘘をついても・・・
みんなに嘘をついても・・・
自分に嘘をついても・・・
この人・・・ごっちんにだけには嘘をついちゃいけない
絶対にいけない・・・

私とごっちんの間に嘘や隠し事はいけない・・・


503 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:07
 

あれからマフラーさんの家に世話になっていたという事を話し始めて直ぐに
ごっちんの機嫌がだんだん悪くなった。

「なんだ梨華ちゃん、てっきりゴトー実家に帰ってるんだと思ってたんだけど・・・
何か騙された感じがする・・・やっぱそっちが本命なんだ・・・」

「や・・だからごっちん違くて・・・」

私とマフラーさんの間には何も無いと言っても信用してくれなかった。

「何も無いのに一緒にいたんだ・・・ふ〜ん
梨華ちゃんはそいつの事・・ゴトーよりも好きなんだ・・」

ごっちんのその問いに私は「気になるだけよ」と答えたのだが
「気になるってそれって好きって言ってるようなもんじゃないの?」
・・・その質問には回答できなかった。


気になるだけよ・・・


つぶやくだけで精一杯だった。
ごっちんは疑いの眼で「もう告っちゃったとか?」なんて聞いてくる。

「きっとそれはまだ・・・」
「は?きっとってどういうこと?」
「あ・・や・・だから、そんな話はしてないって言う事」
「ふーん怪しいんだ」

何だかごっちんって全然私の事信用してくれていないんだ・・・
自分の好きな人に信用されていないって辛いよ・・・
でも信用されなくっても仕方がないのかなぁ〜
そう思うと何だか少し腹が立ってきた。

そして私は、今言っちゃいけない言葉を口に出してしまった。


504 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:07
 

「じゃぁ〜もう別れる?」

私がそう言うとごっちんは下を向いて何も言えなくなった。
卑怯だよね私って・・・
なんだかごっちんの気持ち弄んでるみたいだ。
せっかくいい感じに仲直りできたのに私のほうから崩しているみたい。


私は心に問う

『今、目の前にいるごっちんと、マフラーさんどっちが私にとって一番必要な人のか』

その問いに対する私の心からの返答は・・・


まだ無い。



私の傍で泣き崩れているごっちんを見ながら何も出来ない自分がいた。

どうしよう・・・どうすればいいの?


私は意を決した。


「あのねごっちん聞いてくれる?」

涙を流しながらごっちんは私を見た。

505 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:14

「じゃぁ〜もう別れる?」

私がそう言うとごっちんは下を向いて何も言えなくなった。
卑怯だよね私って・・・
なんだかごっちんの気持ち弄んでるみたいだ。
せっかくいい感じに仲直りできたのに私のほうから崩しているみたい。


私は心に問う

『今、目の前にいるごっちんと、マフラーさんどっちが私にとって一番必要な人のか』

その問いに対する私の心からの返答は・・・


まだ無い。



私の傍で泣き崩れているごっちんを見ながら何も出来ない自分がいた。

どうしよう・・・どうすればいいの?


私は意を決した。


「あのねごっちん聞いてくれる?」

涙を流しながらごっちんは私を見た。


「私に3ヶ月・・いえ2ヶ月ちょうだい2ヶ月の間に何とかするから・・・」
「・・2ヶ月?」
「そう2ヶ月待って欲しいの・・・」



ごっちんは何言ってるの?と言う顔をしながら
「は?ゴトーに2ヶ月待てって言うの?」
「そう・・・だめかな?」
「だめかなって・・普通ダメでしょ?それってつまりさ、
2ヵ月後に梨華ちゃんがどっちかに転んでるってことだよね?」

「・・・・」

「じゃぁ〜さ、もしゴトーが2ヶ月我慢しても2ヵ月後には
ゴトーが捨てられてる可能性もあるってことだよね?」


私は自分で言った事の重大さに気が付いた。

・・・気がつくのが遅い!

506 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:15

「梨華ちゃんは2ヶ月間、ゴトーとそいつを天秤にかけるってことだよね?」
もう一度ごっちんはそう言って迫ってきた。

「天秤だなんてそんな言い方・・・」

「でもそれは事実でしょ?」

ごっちんは冷たい目で私を見る。

「・・でもまだ私・・あの人に何も言ってないもん!」
「言ったら始まるじゃん!」




確かにそうだった。
マフラーさんに告白すればそこから
何かが始まる可能性もあるし、始まらない可能性もある。

「じゃぁごっちんはどうして欲しいの?」
「諦めてよ」


「諦めるって・・・そんなの・・・無理だよ・・・だって・・・」
「だって?」


何も始めてないのに終われないよ・・・


507 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:15


しばらく考えていたごっちんはこう言った。

「じゃぁ梨華ちゃんのその心に芽生えた感情を・・・・
今直ぐここで殺して!」

「え!?」
まさかそんな事を言われるとも思わなかった私は驚いた。
「その感情殺してよ!」
だんだん無表情で私に近づいてくるごっちん・・・
「そんなの無理だよ・・・」



「ゴトーと梨華ちゃんのこれからの幸せのために殺してよ!」

表面はすごく冷めていて実は奥の方で燃えたぎらせている
そんなごっちんの奥の方で燃えていた気持ちが表面に出てきた。

「ごっちん・・・」

「じゃぁ〜ゴトーが殺してあげようか?」

何だか私諸共殺してしまいそうなそんな感じがした。

「・・・ごっちん何でそんな事言うの?」
私はその場に泣き崩れた。

「梨華ちゃんきたないよ!」
「そんなことないもん!」
「そんなことあるよ!」

今燃えていたと思ったごっちん感情が今度は冷酷になった。


508 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:17

「じゃぁ〜もういいよ別れようよ!そのほうが梨華ちゃんのためだよね!?」
「私のためって・・・どういうことよ?」
「梨華ちゃんのためだよ!フリーの方がいいでしょ?」
「フリーって・・・そんな・・・」

冷酷になったごっちんが続ける

「でも梨華ちゃんがフリーになったら梨華ちゃん狙いの人殺到すると思うよ」
そう言ってニヤリと笑った。


「どうして?」
「だって今までゴトーが誰も梨華ちゃんに近づかさせないように
オーラ放ってたんだもの・・・知らなかったでしょ?」
そう言ってまたニヤリとした。

そうなの?

ただ家以外で私と一緒にいる時のごっちんはクールだなぁ〜とは思っていたけども
まさかそんなふうにしてバリアを張っていたなんて全然気が付かなかった。

509 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:17

「でも私は、ごっちんもマフラーさんも両方大切に思ってる人なの・・・
どっちも失いたくないの・・・」

「ずいぶん都合がいいね」

「そうね、都合がいいよね・・・」
「・・・」
ごっちんは目をつぶって何かを考えているようだった。



私はごっちんの手を取り言った。


「ねぇ〜ごっちん・・だからお願い!私に時間をちょうだい!」
「時間?」
「そう・・時間・・終わらせるための時間を私に下さい。」
私はごっちんの手を握りながら頭を下げた。

「・・・・じゃぁ〜その間ゴトーは何してろって言うの?
毎日梨華ちゃんがあいつと会ってるかもって悶々として暮らせって?」

ハハハ・・とあきれたように笑った。


510 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:18

私は首を振り「ううん・・いつもと同じようにしていてくれたらいいよ」そう言った。
「普通ってねぇ〜それって難しいなぁ〜・・・
でもゴトーは梨華ちゃんに
新しい恋人ができるまでの暫定彼女って訳でしょ?」

「暫定って・・・」


暫定―『しばらくの間の仮の取り決め。』そう辞書にも載っていた。



「そうでしょ?違う?ねぇ〜何かゴトー間違ってる?」
その問いかけに私は言葉をなくした。

「でも私は今はどっちも捨てられない」
「わがままだね梨華ちゃんって・・・」

「そうよ!私はわがままだよ!」

もしこれでごっちんとの仲が終わってしまうのなら
それはそれでもう仕方のない事だと腹をくくる事に決めた!



ごっちんは「は?」と言ってから遠くを見たまま固まってしまった。
何かを考えているのかずっと遠くを見つめたままだった。
その間二人の間に会話は無かったし、お互いの顔を見る事も無かった。

そしてしばらく考え込んでいたごっちんがおもむろに口を開いた。

511 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:18

「わかったよ!梨華ちゃんの言う通り2ヶ月待ってあげる。
そして2ヵ月後結果がどうであれ今度は私が梨華ちゃんを振ってあげる!」

これでいいんでしょ?ってそんな感じが伝わってきた。

その言葉に対して私は何も返事が出来なかった。

ごっちんは私の手を取り
「これから2ヶ月どうぞよろしく!」
そういってニヤッと笑った。

それから間があって「今日はもう帰るねまた明日来るよ」
そう言ってごっちんは帰って行った。

512 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:19

ごっちんが帰って一人になったこの部屋で私は一人泣いた。

泣くなら最初から言わなきゃいいのに・・・

でも言わずには居れなかった・・・
ごめんなさいごっちん・・・
でもまだ何も始まってないのに終われないよ・・・
この気持ち殺す事なんて出来ないよ・・・。
せっかく生まれたこの気持ち殺すのはかわいそうだよ・・・

でも本当にかわいそうなのは私に振り回されている『ごっちん』だよ。


513 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:20


私はあの後マフラーさんに電話をした。
少し眠そうな声だった。

「ごめんなさい、寝てました?」
「んー大丈夫!今起きたし!」

それからとりあえず仲直りしたと言う事を告げたら
「そっか!よかったね!」
何だか見えないマフラーさんが私を抱きしめてくれた・・・
そんな感じがした。

やっぱり私には
どちらか選べだなんて出来ない・・・
ごっちんとマフラーさんの両方がほしい!
ホントわがままで都合いいよね、私って・・・。





でもごっちんと私・・・私達って本当に仲直りしたんだろうか?


514 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:21


あれからの私とごっちんは、
以前と何ら変わらないような感じが当事者以外の人には
そう映るかもしれないけど、私も明るく努めていたつもり。

でもいつからかな?
ごっちんの前でちゃんと笑えなくなっちゃったのは・・・
彼女の前だとムリしちゃうようになったのは・・・
・・・やっぱりそれってちょっとおかしいことかもしれない



よく一人になると良くぼんやりしていた。
ぼんやりしていると教室の色んな所から微かに視線を感じるようになった。
私がその方を見るとスッと色んな方向からの視線が消える。

何だかイヤな感じ。
一体誰が見てるんだろうか?

ごっちんはそれを知っているのか、たまに私の所に来てくれる時、
私には笑顔で周りに刃物を向けているそれが手に取るようにわかった。
あれからのごっちんは私に何かと言っては体を触ってくる事が多くなった。

まるでそれは・・周りに見せ付けているみたいに・・・



515 名前:決戦は土曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:22

ごっちんにあんな風に宣戦布告のようなものをしたというのに
状況は何ら変わらなかった。

気がつけば1ヶ月たっていた。
寒い冬から暖かな桜の季節になり
私達は1学年進級した。

ごっちんとはまた別なクラスになった。
相変わらず柴ちゃんとはまた同じクラスになった。


この1ヶ月、ごっちんの気持ちを思うととても重い1ヶ月なのに
私にはあっという間の1ヶ月に思えた。
それにまだ私は最初の一歩をも踏み出せていないもどかしさに腹が立った。

そう思うのなら早く踏み出せばいいのに・・・


その頃どこから沸いて出たのか
私たちが別れたと言う噂が学校中を駆け巡っていたみたい。

516 名前:決戦は金曜日 投稿日:2005/09/29(木) 20:22

そんなことは知らない私は、
マフラーさんとはあれから毎日図書室の窓辺で顔を合わせて
少しメールでお話してさようなら
・・・そんな繰り返し。

こんな事繰り返してちゃいつまでたっても始まらないし、終わらない。
それに期限は残すところ後1ヶ月もない・・・

季節も冬から春になったことだし
私も今キレイに咲いている桜の花のように

パッと咲いてパッと散ろう!

そう決心した。


517 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2005/09/29(木) 20:28

久々の更新なのにたったこれっぽっちですいません。ヾ(^-^;)


>>485 通りすがりの者さん
大変お待たせいたしましてすいません。
その割に話しが進んでませんが・・・_| ̄|○
518 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:11
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
519 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/04(水) 00:42
ただひたすら作者さんを待ち続けます
520 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/04(水) 00:43
すいません、上げてしまいましたυ
521 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2006/02/09(木) 00:41
えっと作者です。
また定期ログ整理を行うようなので、ここで生存報告させていただきます。

レスを返しておきますね。

>>519 名無飼育さん
ありがとうございます。
こんな作品を待っていただけるなんて光栄で御座います。
なかなか時間が無くてうp出来ませんが近々更新の予定です。
今しばらくお待ちくださいませ。

ageられると恥ずかしいので出来ましたらsage、ochi進行でお願いします。


では近々更新に伺います。作者でした。
522 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/10(金) 06:36
待ってますよー
生存報告ほんとにうれしいです
523 名前:   投稿日:2006/03/05(日) 03:58
 
そんなある日の放課後、
いつものように図書室へ向かう途中
私は後ろから誰かにつけられていたらしい。
その事には全然気がつかなかった。

角を曲がり人気の少ない廊下を歩き
人気のない図書室のドアに手を伸ばそうとした
その瞬間・・・

後ろから口をふさがれどこかに引きずり込まれた。



何か薬品を嗅がされたのかすーっと意識がとんでいく感じがした。
薄れゆく意識の中で数人が私を囲んでニヤニヤしているのを見たのが最後だった。

524 名前:   投稿日:2006/03/05(日) 03:59
 
………………
 
 
525 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:00
 

クックックッ…

「おい!お前らちゃんと撮っとけよ!後で売りさばくんだからな!」
「わかってますよ!」

クックックッ…

部屋中でニタニタと薄気味悪い笑いが響いている。


「もうちょっとスカート上げた方がよくないですかぁ?」
「いいねぇ〜いいねぇ〜何かもうたまんないって感じだね」
「ボスも好きっすね!」

ダハハハハハハ!

「んじゃぁさ、そろそろご開帳と行こうかのぉ〜?」
「ボスも悪っスね」

ダハハハハハハ!

ボスと呼ばれたやつが制服に手を書けたその瞬間に
予想以上の大きな音を立ててドアが開いた。

526 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:01
 
ガラガラ…ドン!

ドアが勢いよく開き跳ね返ってきた。

「なっ!」
「なんだ!?テメー!?」

527 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:02
 

鬼のような顔をした黒い影がものすごい速さで中へ飛んできた
急な侵入者に驚き、慌てふためいたけども入り口付近の奴から順番に床に転がっていった。
運良くその攻撃を逃げた2人はからくもそこから逃げ出した。
いきなりの影からの先制攻撃にほとんどが戦意を失い床に伏したままだ。
戦意を失い伏したままのやつに対しても容赦なく踏みつける。
まるでそれは虫でも踏み潰すような、そんな感じで踏みつけている。
踏みつけられてやつの背中にはいくつもいくつもくっきりと足形が残っていく
その中でもまだ数人は根性を見せ立ち上がり影に向かっていく
が、しかし、顔面と腹に蹴りを貰うと大人しくうめき声をあげながら床に転んで
脇腹を蹴られマルムシのようにうずくまる。

さすがにボスと呼ばれていたそいつは少々の攻撃にも耐えていた。
しかし最後は、皆と同じようにうめき声をあげて床にうずくまった。
鬼のような顔をした影はうずくまってるボスの髪をわし掴みして立ち上がらせて椅子に座らせる。

髪を掴まれうめき声をあげながらもボスはそいつを睨んだ。
すると影の目がするどく光っり鬼のような顔をした影がニヤリと薄気味悪い笑みを覗かせた。
528 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:04
 


「ねぇ〜センパァ〜イ・・・この娘に何しようとしてたんですかぁ〜?」
「・・・・」
「あれぇ〜ダンマリですかぁ〜?ククク・・・センパイのくせに〜」
そう言いながら影はニヤニヤ薄ら笑いを浮かべた。

ボスは無言で睨みつけていたけども、目が腫れていてもうはっきりは見えないようだ。
でもやつらからはさすがボスと呼ばれるだけのことはある目はまだ死んじゃいなかった。

「センパイ何年留年すればいいんスか?ず〜っとこの娘狙ってたんでしょ?
知ってますよ?やっと同級生になれましたねぇ〜うれしいっスか?」
蔑んだようにまたニヤニヤと薄ら笑いを浮かべた。

無言で自分の髪を掴む影を睨んでいたボスだったが
だんだんその目から光が消えて行き、やがて戦意喪失と共に意識も喪失していった。
529 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:05
 

そんなことを知ってか知らずか影は話し仕掛ける。

「しょうがないなぁ〜・・・じゃぁ〜センパイに10秒あげます。それまでに話してね?」
そう言うと影は大声で数を数え始めた。


―じゅ〜・・・きゅ〜・・・は〜ち・・・なな〜・・・ろ〜く・・・五秒前!


「ほらほら!センパイ早く言わないと!」


―よ〜ん・・・さ〜ん・・・にぃ〜〜・・・イチ・・・


「ハイ!残念!」


―ゼロ!!


影の読み上げるカウントが「0」になったのと同時に影のコブシが
ボスの顔面にめり込み血しぶきが宙を舞いボスはズルズルと椅子からずり落ちた。

「ったく落ちないで下さいよ!セ・ン・パ・イ・!」

影は無表情のまま、またボスを椅子に座らせた。
ボスの顔はさっきよりももっと腫れ上がり鼻からも口からも出血していた。
元の形がわからないくらい見るも無残な顔だった。
530 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:06
 

「じゃぁ〜次は・・・ん〜順番だと本当は次は9秒前からなんだけど
もう面倒臭いから5秒前から行きます!」


―ご〜・・・よん・・・・・・さま・・・なんちゃってね!

に〜・・・イチ・・・ホラホラ早く言わないと!


―・・・ゼロ!!


「あぁ〜あ・・・ほら5秒たっちゃった・・・」


不敵な笑みをこぼしながら今度はコブシがみぞおちに直撃して
ボスは口から血を吐き前のめりに倒れそうになるのを
影の蹴りによってまた元の場所に戻された。

既にボスは当の昔から意識がなくなっていた。


「あらあらあら…センパイ今度は寝たフリですかぁ〜?
じゃぁ〜次は3秒前から行って見よう!」


―さん・・・に〜〜〜〜・・・イチ・・・


そう言って腕を後ろへ大きく振りかぶった瞬間、手首を誰かが捕まえた。


531 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:08
 

――――!!!!!

532 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:09
 
「よっちゃんもういいでしょ?」
「あっミキティ!」

その鬼のような顔をした影の正体とはヨシザーだった。
ヨシザーは以前からこいつらの怪しい動きは察知していたが
それが何の目的なのかわからなかったため、救出が少し遅れた。

遅れたといってもこれじゃぁ〜十分すぎると思うのだが…



美貴の名前を呼び振り返ったヨシザーの顔はいつもの顔に戻っていた。


「よっちゃんそれ…やりすぎだから・・・美貴でもそこまでやんないよ?」
「そうかな?まだ2回しか殴ってないよ?」
「いや・・・その前に十二分に殴ってたっしょ?」

美貴見てたからさ…
533 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:10
 
ヨシザーはやつらが使っていたカメラを見つけ
机の角にガンガンと叩きつけて足で踏みつけて壊した。

部屋中でプラスチックが壊れるようなそんな音がして
カメラの中から色んな小さな部品が出てきた。


「よっちゃんそこまでしなくっても…」
「ダメ、見せしめ」

そう言うとそこにあった水の入った吸殻だらけのバケツを持ち
その正体をなくしたカメラに浴びせ掛けた。

「…よっちゃんカメラにもトドメさすの?」
「当然!データ残ってたらヤじゃん?」
「いや…そこはさ、普通にデータ消去すりゃいいのに…」

デジカメもったいないよなぁ〜美貴がもらったのに…

「とにかくその人…どこかへ運んだ方がよくない?」
そう言い花子ちゃんを指差した。
「あ・・・そだね」


ヨシザーが梨華をオブって教室を出ようとした時後ろを振り返った。
534 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:11

「あっ!ミキティ忘れてた!こいつらの今のこの姿、このカメラで撮ってよ!」
と美貴にカメラを2つ手渡す。
「・・・ハイハイ!」
美貴は半ば呆れた様子でカメラを受け取ると
慣れた手つきでパシャパシャと全員の無残な姿を記録に残していく。
最後にインスタントカメラでボスの写真を撮影した後に



『今度やったらこの情けない写真バラまきますよ?せ・ん・ぱ・い♪』

とヨシザーが一言添えてボスのお腹の辺りに置いた。


それから美貴と二人して何とか誰にも見つからないように
校舎裏の秘密の抜け穴から隣の大学へ移動して
唯一ヨシザーが入室を許されている部屋へ運んだ。
美貴は「お姉ちゃんに知らせてくる」と言って走って行った。

535 名前:―白馬の王子様登場― 投稿日:2006/03/05(日) 04:12

ヨシザーは改めて眠れる森の(?)少女を見た。
花子ちゃんは特にこれと言って外傷がないからクスリで眠らされたんだろう。
まぁ〜その方が暴れなくって怪我がなくっていいけどもね。


あっ・・・そうだ・・・花子ちゃんのあの人に連絡しないといけないよなぁ〜


ヨシザーは花子ちゃんの鞄から携帯を探し出し番号を探して電話した。


pururururur・・・

ん〜やっぱこの時間はまだ部活中だよね?
と思い電話を切ろうとした瞬間つながった。


<<もしもし梨華ちゃん?>>


WOW!さすがにいつものあの怖い声じゃありませんね?
ヨシザーは一息ついてから話し始めた。


<<えーっと始めましてヨシザーと申します。>>
<<はぁヨシザー?なんであんたが梨華ちゃんの携帯使ってんの?>>

ホラ・・・途端にいつもの怖い声になっちゃったよ・・・

<<あのですね・・・・で・・・で・・・って訳なんですけど・・・>>
<<すぐ行く!>>
そう言って電話が切れた。

ホッと一息ついた時に花子ちゃんがモゾッと動いた。
536 名前:―姫のお目覚め― 投稿日:2006/03/05(日) 04:15
 
気が付くと私はどこかで目を覚ました。


あれ?ここは・・・・?


体を起こして周りを見渡してみた。
そこは私のよく知っている場所だった。


なんでここに?


私がそう思った時背後から声がした。


「あっ気がついた?」


そこに居たのはライ・・・いえヨシザーさんだった。


「あの・・・」
私が所在無くモジモジしていたら
「ん〜なに?もしかしてなんにも覚えてないとか?」
「うん・・・」

私の返事を聞いて溜め息を一つしながら
頭を左右にふるふると数回振ると
呆れたような顔をしながら言った。

537 名前:―姫のお目覚め― 投稿日:2006/03/05(日) 04:16

「あんたさぁ〜・・・あいつらに空き部屋に連れ込まれて、
もうちょっとで姦わされちゃうところだったんだよ?」
そう言ってニカっと笑った。

「え?姦わされる?あいつらって?」
「ん〜・・・まぁ〜知らないほうがいいかもね」
「でも・・・」
「あ、大丈夫!もう二度としないようにお仕置きしといたから!」
ヨシザーさんはそう言って指で鼻を拭った。
その時チラッと服のすそから赤い何かが見えた。

「ヨシザーさんそれ・・・」
私が指差すとその場所を見たヨシザーさんは言った。

「あぁ〜これ?まだついてたんだ」
ヨシザーさんは笑いながらタオルでそれを拭った。

「あの・・・」
「あぁ〜心配ないよこれあいつらの血だから」

「えっ!?」

私が何の話だわからないでいるとヨシザーさんはスッと立ち上がり

「そろそろ来る頃だからヨシザー迎えに行ってくから
花子ちゃんはそこで寝てるんだよ!?」

そう言うとニカっと笑って出て行った。
538 名前:―姫のお目覚め― 投稿日:2006/03/05(日) 04:17

・・・迎えに来るって誰が?







しばらくそんな事を考えながらボーっとしていたら、ドアが開いた。

それはマフラーさんだった。



「ハ・・・ハナちゃん大丈夫?」
「え?あ・・はい」
「よかったぁ〜」
そう言ってマフラーさんは私の手を取った。

そこへまたドアが開いてヨシザーさんが入って来た。

その後ろ・・・ヨシザーさんと共に入ってきたのは
・・・ごっちんだった。


「ごっちんなんでここに・・・」

「なんでじゃないよ!こいつから梨華ちゃんが襲われたって電話があって・・・」
そう言うごっちんの指先はヨシザーさんに向いていた。

「えっ!?私誰かに襲われたの?」

「「「はぁ!?」」」
539 名前:―姫のお目覚め― 投稿日:2006/03/05(日) 04:18

「あのね、梨華ちゃん・・・・・つーかさ、梨華ちゃんの手・・・握ってる人誰?」
ごっちんはマフラーさんを鋭く睨んだ。

マフラーさんが何か言おうとしたその時

「あ・・・あの匂いのヤツだ!」
そうごっちんが叫んだ。


「え?」
一瞬マフラーさんが止った瞬間に
ごっちんはマフラーさん目掛けて飛び掛っていた。



後はよくわからない


訳もわからず組み敷かれて殴られているマフラーさんと
ヨシザーさんに止められながらも殴りつづけるごっちん




そんな一方的な乱闘騒ぎの中を一喝するような声が部屋中に響いた。
540 名前:―姫のお目覚め― 投稿日:2006/03/05(日) 04:18

「ゴルァ!ガキが人の部屋で何しとんじゃ〜ダラ!!コロスぞ!」

541 名前:―姫のお目覚め― 投稿日:2006/03/05(日) 04:19

ドスのきいたその声でみんなのトキが止まった。




そう・・・その声は裕ちゃんだった。
後ろには今にも飛びかかろうとする裕ちゃんを
必死に止めている平家さんが居た。

そう・・・この部屋は裕ちゃんの部屋でした。


542 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2006/03/05(日) 04:22
 
>>522 名無飼育さん

大変お待たせして申し訳ありません。
今回の更新はこの辺で・・・

次で最終回となる予定です。

ではまた。

543 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2006/08/06(日) 12:27
定期ログ整理があると言う事なので生存報告です。

なかなか更新が出来なくてすいません。
申し訳ないですが、もう少し使わせてください。

近い内に何かしら更新したいと思います。
544 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 22:18
次回が最終回とのことなので、この三人がどうなるのか続き楽しみにしています。
545 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2006/09/11(月) 01:24
次回最終回と言っておきながら、ずいぶんと時間が経ってしまいましてごめんなさい。
最終回の前に、ちょっと別バージョン載せて置きます。


>>544 名無飼育さん
続きを待っていただきありがとうございます。
最終回までもう少し、お付き合いください。
546 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:26

え?ヨシザーの家出の原因ですか?
やだなぁ〜さっき話したじゃないですか!
きっと>>○○辺りにあるんじゃないですか?
え?もう一度聞きたいって?
同じ話二度も聞いてどうするんですか?

しょうがないなぁ〜今回だけ特別ですよ?

547 名前:ヨシザーの独り言。「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:26

いや家って酒屋やってるでしょ?
で、家に珍しいお酒とか古酒とか高い酒とか置いてあるんですよ。
・・・で、夏休みに友達が着た時に、
ずっと昔から親父が大事にしていたお酒を少々飲んでしまいまして
それがバレて大ゲンカになって家出を・・・



『―でもさぁ〜普通酒飲んだくらいでケンカして家出までするか?』



裕ちゃんはそう言ったけどね・・・ヨシザーにはヨシザーのプライドってもんがあるしね。
548 名前:ヨシザーの独り言。「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:28

家出して最初は友人の家を転々としてたんだけど
夏休みが終わるとみんなまじめに学校行ったりし始めて
ヨシザーの居場所がなくなった。
そんな時カオリに出合ったんだ。


カオリは優しくってヨシザーの言う事は何でも聞いてくれた。
すぐにヨシザーはカオリの家に居ついていた。
女の人とこう言う関係になっちゃうのって初めてだったからかなり戸惑ったんだけど
これもまたアリかな?そう思うことにした。

カオリと付き合うようになってから気がついたんだけど
ヨシザーって何気にモテルんですよね!
夜に生きるお姉さん方とかにね(クスッ♪)
今まで知らなかった世界が大きく広がっていっちゃった。
ヨシザー目覚めちゃいましたよ!

手当たり次第に声をかけては遊んでました。
549 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:29

え?・・・浮気?
それとはまた違うでしょ?

そんな感じがヨシザーにはしていたんだけど、
世間一般ではそれは浮気になるんだとか…知らなかったよなぁ〜

でもその事はカオリにお仕置きされて気がついたんだけど
あんなに簡単に堕ちるのにやらない手はないなと思っちゃってた。
やっちゃっても妊娠とか考えなくていいわけじゃないですか?

結局カオリもだんだんウザいしやたらと束縛するし…
ちょっと大学内をうろついてるだけでうるさいし…
それにたまにマジメに学校行っても先生がウザイし面白くないし…
550 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:31

そんな時一番さんがお気に入りだって言う(圭ちゃんに聞いた)花子ちゃんを見つけたんで
ちょっとからかってやったらこれがまた面白いんだ!
ツマンじゃおっかって思ってたら一番さんの妹のミキティに見つかった。
案の定シスコンのミキティに一番さんに告げ口されてちょこっと痛い目にあっちゃったよ。
シスコンは怖いね(クスッ♪)
一番さんにはシメられちゃうしさ…
でもね、それで気がついちゃったんだけどヨシザーね、
花子ちゃんの事すんげー気に入っちゃったんだ!
551 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:32

なんか花子ちゃんって危なっかしいんだよね。
それに結構花子ちゃん狙いの危ないやつが多いのにも気がついちゃったし・・・
これは花子ちゃんを影から守る騎士にならねば!
って思って影ながら様子をうかがってたんだけど、

ところがどうした!

花子ちゃんの恋人?なのかな?特に仲のいいあの人・・・
ゴトーさんって言ったっけ?
あの人さ、毎日遠巻きから見張ってるって言うのかな?
見守ってる?そんな感じなんだよね。
ちょっとキモくない?

え?ヨシザーとゴトーさん知り合いじゃないのかって?
知りませんよ?ヨシザーは…


552 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:33

ゴトーさんって、放課後はどこかに行って姿が見えないんだけど、
花子ちゃんが帰る時間になるとどこからともなく現れるんだよね。
やっぱキモイよ?
あの人なんのクラブやってんだろうね?
今度ちょっと後尾行けてみようかな?なんてね(クスッ♪)

え?何でそんなによく知ってるんだって?
いやぁ〜ね、ちょっと影ながら花子ちゃんを毎日見守ってたんですけどもね。
え?ストーカー!?
ううんそんなんじゃないですよ!絶対に!!…?

553 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:34

で、結局そんなこんなでカオリと色々あってもうね面倒臭くなっちゃって別れを切り出したんだけど
カードが無くっちゃ外に出られないのを思い出して一番さんに借りを作るのもやだし、
花子ちゃんはまだ学校だし、圭ちゃんはいつどこから現れるのかわかんないし…
で、結局平家さんに救いの手を求めたんだけど、結局なんだかんだで
ヨシザーの知らない間に裕ちゃんのシモベにさせられてまぁ〜色々あったけど・・・
でもそれはそれで楽しかったからいいんだけどもね。

554 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:44
 
 
 
 
555 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:45

おっとどこまでしゃべったっけ?


そうそう、ヨシザーって欲張りだからさぁ〜
手に入りそうなものなら全て手に入れたいんだよね。
だから花子ちゃんも平家さんも・・・
でも基本的に束縛はしたいけど束縛されるのが大嫌いなんだよね。

結果的にマイとも別れたんだけど、でもマイとはゲーセンで知り合ったんだけど
体の関係は全然無くってただ単なる宿にしてるに過ぎなかったんだけど
向うはそうは思ってなかったみたい。
毎晩ピッタリ体寄せてきてさぁ〜なだめるの大変だったんだよね。

556 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:46

え?やっちゃえばよかったのにって?
ブルブルブル・・・もうね、やなんだよね、体だけの関係とかって…
本気で好きでも無い相手とそう言うことってよくないって、ヨシザー学習したの!
えらいでしょ?
それにマイは裕ちゃん達の後輩だってことにもびっくりしたし・・・。
手をつけないでよかったよホントホント

ほんと世間って狭いよね。
 


557 名前:ヨシザーの独り言「1」 投稿日:2006/09/11(月) 01:49
 
ってなわけでヨシザーの独り言「1」はこれにて終了。
次はねぇ〜ってまだあるのかよ!?って?
ん〜あるといえばあるし、無いと言えば無いかな?
ってどっちだって?
ん〜・・・きっと作者の気分しだいだと思うケド(w

きっと今回が「1」だってことは、「2」もあるから「1」なんだと思うけどもね。
ヨシザーは何とも言えないなぁ〜(w

558 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/12(火) 00:20
「2」期待してますw
559 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 16:47
ごっちんがマフラーさんの大学の裕ちゃんの部屋で
乱闘騒ぎをしているところに、裕ちゃんがやってきて
一喝した後「話をするならうちンちおいで」そう言って
私を含む3人を裕ちゃんの家に連れてきた。

そしてなぜかヨシザーさんも一緒に・・・


予想外に大きな部屋に驚いたが通されたリビングには
裕ちゃんの妹?という人がいてゲームをしていた。

その横になぜかヨシザーが歩み寄っていた。


・・・???

ヨシザーさんと仲良いのかな?

560 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 16:48
その少女・・・私達が大勢部屋に入って来たのに
何の反応も無く、大音響で一人ゲームを続けている。
しかも隣に座ったヨシザーさんの存在すらも感じないような・・・

まるで自分以外の人間を拒否するかのように・・・
大きな壁があるかのように・・・
シャッターを閉めて一切無視を決め込んでいるようだ。


私は何故かそんな態度を取るその少女がすごく気になった。

561 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 16:50
さて、何であんな大騒ぎになったのかと言うと
マフラーさんが、私の手を握っていた場面を見たごっちんが
『きっとこいつが例の恋敵だ!』と直感して
逆上して気が付いたら殴ってたんだって

気がついたらって、ごっちん怖いです・・・。

でもそうなったのも私の責任でもあるし・・・。



ごっちんを見るとシュンとしてうつむいていた。
マフラーさんは平家さんに傷の手当てをしてもらっていた。
562 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 16:50
私の前にカップを置くと裕ちゃんは
「まぁ〜ここで話したらいいわ。まぁ〜ちょ〜うるさいけど…
静かな場所よりええやろ?それに第三者が居る方が後々ええやろうしな?」

そう言って私の側に座った。

563 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 16:55
「さて、何がどうなん?うちにはサッパリ訳わからんけど?」
裕ちゃんが私に騒ぎの主旨を聞いてきた。
「あの・・・その・・・」
私がそう言いかけたその時・・・

「つーかあんたに関係ないじゃん!これはゴトーと梨華ちゃんの問題だよ!
それからこいつにもね!」

そう言ってマフラーさんを指差した。


「あんたてか…ま、ええわ勝手にし、うちらはあっちにおるから」
裕ちゃんは一瞬眉をピクリとさせて平家さんと二人ダイニングの方に歩いていった。




そして、一時の沈黙の後ごっちんが最初に口を開いた。



564 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:05
「ねー梨華ちゃん・・・こいつでしょ?」
ごっちんはまたマフラーさんを指差した。
「え・・あ・・ぅん・・・」
私は小さくうなずいた。

「何?私が何か関係あるわけ?」
マフラーさんは一体何の事だか?そんな顔をした。


「は?何?梨華ちゃんまだ言ってないの?」
「・・・・・・・・・」
「なんだよ・・・・・」
ごっちんは苦虫を噛み締めたような顔をした。

「何の話?私関係ないから席外すよ?」
立ち上がろうとした時ごっちんがマフラーさんの腕を取った。

「あんたになくってもこっちに話があるんだよ!」
そう言っていっそう鋭く睨んだ

マフラーさんは鼻で小さく笑い肩をすぼめると
「何かうちの妹みたいだな」とまた鼻で小さく笑った。
565 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:05





566 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:08
相変わらずごっちんはマフラーさんを睨んでいた。


マフラーさんはまた元の場所に腰を落ち着かせた。


「あのさ、私・・・あんたやこいつって名前じゃなくって
ちゃんとイチイって名前があんだけどもね・・・」
そう言うとまた鼻で笑った。


「あんたの名前なんかゴトーは興味も無いし関係ないんだよ!」




「そんな事よりも今、ゴトーとあんた・・・ここにいる梨華ちゃんに
テンビンにかけられてるんだよ?…知ってる?」


ごっちんは映画に出てくるような、もの凄く嫌な悪者のような含み笑いをした。


567 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:10

そしてしばらくの沈黙の後、

ごっちんが今度は私に向かって口を開いた。



568 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:25
「ねー梨華ちゃん結局どっち取るの?」

ごっちん…じゃんけんホイホイどっち取るの?みたいにそんなに簡単に…

ごっちんはそう言いながら私のほうに近づいてくる。
だんだんとごっちんの怖い顔が迫ってくる。
「ね、ゴトー?それともこいつ?」
そう言って私の前に座っている人を指をさす。
マフラーさんは目を閉じたまま何も口を開かない。


「ねー梨華ちゃん早く決めてよ!」


・・・早くって言われてもねぇ〜
だから時間をちょうだいって言ってたのに・・・
569 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:25

「ちょっと待った!」

しばらく黙って様子をうかがっていたマフラーさんがやっと口を開いた。

「なに?」
あいからわずごっちんはマフラーさんに対して敵意剥き出しの表情だった。


570 名前:結末はこんな感じで? 投稿日:2007/03/03(土) 17:43
「あのさ、話がよく見えないんだけど、私とあなた…
ゴトーさん?のどちらかを、ハナ・・梨華ちゃんが選ぶってこと?」
「そうだよ!さっきも言ったじゃん!何聞いてんの?
それになれなれしく梨華ちゃんだなんて呼ばないでよ!」
「あ、じゃぁ〜なに?私に拒否権とかはないわけ?」
「無いよ!」
「なんで?」
「梨華ちゃんが選んでから拒否るなら拒否ってよ!だからそれまで黙っててよ!」
「ふーんそう言う選択方式なんだぁ〜」

マフラーさんはそう言ってチラッと私のほうを見た。
・・・え!?ごっちん・・・いつの間にそういう選択方式になったの?

571 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2007/03/03(土) 17:51
気がついたら半年振りの更新ですorz
久しぶりに更新しようと思ったら、読み返すうちに、
もう一度手を入れたくなったので、書き直しながら更新していたのですが、
このままでは最後結末まですんなりたどり着けそうになさそうなので、
今回の更新はここまでとさせていただきます。


>>558 名無飼育さん
ありがとうございます。
そして大変お待たせして申し訳ございません。
「2」は本編終了後となるかと思いますが・・・
あまり期待しないでくださいね つД`)
572 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/09(金) 21:48
更新してくれると信じてるよ
573 名前:かすたーどぉ。 投稿日:2008/01/13(日) 05:48
ログ整理のお知らせを知りあわてて駆けつけてしまいました。

完結まであと少しなのですが、なかなか時間が無く
このような状態になってしまっていることを、深くお詫びいたします。
勝手ですが、もう少し残してください。


>>572 名無飼育さん
ありがとうございます。
時間を作って更新したいと思っていますので
もう少し待ってやってください。


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