石川先生によろしく
1 名前:paco2 投稿日:2003/12/13(土) 12:52
はじめまして。
全くの初心者です。素人です。
小説を読んでいて楽しいので私も書いてみようと思いました。
よろしくお願い致します。
内容は、いしよしです。
高校生の頃って、素敵な人に憧れたり、淡い気持ちを持ったりしますね。
そんな純粋な気持ちの吉澤さんの話です。
2 名前:paco2 投稿日:2003/12/13(土) 13:37
 梨華は、地元の医大を卒業したばかりの2年目の研修医。
生まれて初めて実家を離れ、この街の市民病院に配属された。
真面目に勉強してきたとはいえ、臨床の経験が無い為、
何をしていいか分からず、毎日オロオロ、
大変なおもいで働いていた。
病棟のおつぼねナース達は、石川梨華ではなく、石川ば華先生と
呼んでいた。
それでも、電子カルテの使い方や、検査の出し方、病棟のきまり
など、先輩医師には聞けないような細々したことは、
にっこり笑って、おつぼねナース達に教えてもらっていた。
 梨華は、浜っ子で積極的な性格(ポジテイブ)で、
顔立ちも整っていて、声もかわいいので、梨華に微笑みかけられ
ると、誰もが優しい気持ちになった。
陰口をたたいていたナース達も、とても親切に何でも教えてくれた
こうして、3カ月がたった。
3 名前:paco2 投稿日:2003/12/14(日) 08:37
 麻酔科研修がまわってきた。
4 名前:paco2 投稿日:2003/12/14(日) 10:02
 毎日朝から手術室に入り浸りになった。
朝は、コンビニでおにぎりを買って、昼は皆と一緒にお弁当を
注文して、夜は食べられない日が多かった。
青空というものを見ることがなくなった。
 緊急手術の依頼が入った。
交通事故で、開放骨折らしい。
麻酔科の先生が救急外来に診察に行っている間に、全身麻酔の
準備を整えた。
梨華は、「挿管、うまく入るかな。血管でてる人かな。」
ちょっと不安に思いながら、気管内チューブのカフの点検を
していた。
間もなく、患者が運ばれてきた。
すぐに、点滴をとり、心電図を付け、酸素バッグを押した。
静脈麻酔をかけ、挿管をやらせてもらった。
口の中も怪我をしている為、出血で声門が見えない。
吸引をし、ブレードをもちあげ、気管内チューブを入れた。
うまくできた。誤飲はないようだ。
「石川先生、上手になったね。」と誉められて嬉しかった。
こうして、1カ月がたった。
5 名前:paco2 投稿日:2003/12/14(日) 10:52
 梨華は、ローテーションで回る科が残っていたが、
とりあえず、整形外科病棟に戻ってきた。
 梨華が、整形外科を選んだのは、小学校の時、友達が交通事故で
亡くなったからだ。悲しかった。涙がとまらなかった。
大好きな親友だったから。
「大人になったら、私がたすけてあげる。」「こんな思いは、
誰にもさせたくない。」梨華は強い意志をもっていた。
 整形外科医は、救急当番の外科当番が回ってくる。
ベテラン医師でも嫌がる救急外来。
 梨華が初めて、先輩医師と救急当直した日の出来事だった。
6 名前:paco2 投稿日:2003/12/14(日) 11:28
吉澤ひとみは、高校3年生。バスケットボールをやっている。
この街は、バスケットボール全国No.1の実業団チームがあり、
ひとみは、そのチームから、すでに声をかけられていて、
卒業前から、練習メニューが組まれていた。
7 名前:paco2 投稿日:2003/12/19(金) 00:12
ひとみは、3年の夏が終わってからも自分の練習も兼ねながら、
後輩達のコーチとして部活にでていた。
交通事故にあったのは、バスケットの練習を終えて、自転車で
いつもの道を帰る途中、
青信号で横断歩道を渡っていたのに、対向車がいきおいよく右折して
きて、はねられてしまった。
後輩達の目の前での出来事だった。
ドーン!という鈍い音がして、すぐにギャーッ!という
悲鳴が響きわたった。
「先輩、大丈夫ですか!」「吉澤先輩!」「先輩しっかりして!」
ひとみは、立ち上がろうとしたが、動くことが出来なかった。
騒ぎに気が付いた、通りがかりの人が、
呆然と立ち尽くし、「交通事故やちゃった。・・。」
と自分の会社に電話している相手の車の運転手に、
「なに、ボーとしてんだ!どこに電話かけているんだ!
早く救急車呼べ!ばか!」と大声で叫んでくれた。
間もなく救急車が到着した。


8 名前:paco2 投稿日:2003/12/19(金) 00:42
「痛い。」ひとみの顔は苦痛で歪んだ。
「誰か一緒に乗ってくれる人いますか?」と
救急隊の人が聞くので、高橋が
「私、行きます。悪い、紺ちゃん、私の自転車頼んでいい?」
と自転車を紺野にあずけて、救急車に乗り込んだ。
「吉澤先輩・・・。」高橋は泣きながら手を握っていた。

10分ほどで、市民病院に到着した。
9 名前: 投稿日:2003/12/20(土) 22:49
わ〜!ナース石川と患者(?)吉澤。たのしみです。
がんがって下さい!!
10 名前:paco2 投稿日:2003/12/21(日) 16:54
9> 京 様
ありがとうございます。優しい方ですね。
こんな駄文ですが、最後まで頑張ってみたいと思います。
11 名前:paco2 投稿日:2003/12/22(月) 14:16
市民病院は患者でごった返していた。
長く待たされてイライラしている人。
椅子に丸くなり、必死で痛みを堪えている人。
血のにじんだ包帯の下に輪ゴムをキリキリ巻きつけて青くなって
いる人。
警察官に事情を聞かれている人。  ・・・人、  ・・・人々。

ルルルー、ルルー!何本も鳴り響く電話。
人がいるのに誰もでない。
泣いている子供の声。
診察室から聞こえてくる緊迫した声。
パタパタとした足音、機械の音。
ドアの外でかたまって何か話ししている人達。

ひとみは、救急車のストレッチャーのまま廊下でしばらく
待たされた。
高橋は初めて見るこんな光景の中で、ひとみの手を握りしめ
「神様、先輩を助けて下さい。」と祈るしかなかった。
12 名前:paco2 投稿日:2003/12/24(水) 02:27
「血圧は?」
「60です。」
「昇圧剤入れて!」
「×××(商品名)ワンショット!」
「×××(商品名)ブドウ糖に希釈してシリンジポンプにつないで。」
「瞳孔は?」
「3mm程度。」
「意識レベルがダウンしました!」
「挿管しよう。石川先生やってみろ。」
ドラマ’ER’のような状況で次々に指示を出していく先輩医師。
梨華も必死だった。
気道が確保されると、ようやく、こっちは俺がみるからと
待たせた患者をみるように言われた。

「次は誰を診ればいいの?」
半分キレそうになりながら、梨華は次のカルテを見た。
「石川先生、その人より、救急車の方、先にお願いします。」
そういわれて、診察室に運ばれた吉澤を診た。
「全身打撲。」「・・・・・。」
「交通事故。覚えてる?」
「分からないです。私どうしたのですか?」
「じゃあ、名前言える?お名前は?」
「吉澤ひとみ。」
「生年月日は?」
「今日は何月何日?」
「ここは、どこにいるか分かりますか?」
OK,頭は大丈夫みたいね。
「痛いところはありますか?」
「足と胸が息すると痛いです。」
「サチュレーション計った?」
「サチュレーション90です。」
13 名前:paco2 投稿日:2003/12/26(金) 00:43
「あの、先生、私どうしたんですか?なんで病院にいるんですか?」
ひとみは息苦しさを感じながらも聞いてみた。
「あのね、交通事故で運ばれてきたんだけどね、覚えてないのが
普通だから、後からゆっくり思い出せばいいわ。」
梨華は、ひとみを安心させるように、笑顔で丁寧に話しかけた。
「じゃあ、今からレントゲンに行ってもらうわね。」
そういわれて、ひとみがレントゲン室に連れていかれると、
「吉澤さんの付き添いの方、お入り下さい。」
と高橋が呼ばれた。

病院の臭い、ピッピッピッという機械音、行き交う看護師、
仕切りの向こう側で何かが起きている事を感じながら
高橋は少し震えながら目に涙をため、見てきた事を話はじめたが、
耐え切れず
「先生、吉澤さん大丈夫ですか?」と口をついてでてしまった。
「検査してみないと分からないから。もう少し待ってて下さい。」
梨華は優しい表情で答え、高橋を待合室の方へ促した。
高橋が廊下に出ると、ひとみの両親が駆けつけてきた。
14 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/01(木) 22:10
お気に入りに登録!がんがって〜
15 名前:paco2 投稿日:2004/01/03(土) 21:53
14>名無し読者様
ありがとうございます。
年末年始忙しかったので、全然書けなかったのですがやっと戻っ
てこれました。また頑張ります。
16 名前:paco2 投稿日:2004/01/03(土) 22:29
検査の結果は、足の骨折と肋骨骨折。
それと、折れた肋骨が肺に刺さり気胸を起こしていた。
「このせいで、サチュレーションが低かったのね。」
「呼吸器の先生を呼んで。・・・吉澤さんの動脈血ガス分析の
採血後、酸素3リットル。」
梨華は指示をだし、
ひとみは再び診察室に連れて来られた。
「検査の説明をしますので、家族の方お入り下さい。」
と両親も中へ入っていったが、
高橋だけ廊下で待たされてしまった。
「吉澤さん、レントゲンを見て下さい。足の骨が折れてます。
これは、手術が必要です。あと、肋骨が折れて、肺の一部を破って
ここの肺がこんなに縮んでいます。本当はこういう形なんですよ。」
とレントゲン写真をなぞりながら説明を続けた。
17 名前:paco2 投稿日:2004/01/04(日) 00:24
説明の途中で、呼び出された呼吸器外科の医師が現れ、ついでに
気胸の治療の為、胸腔ドレーン(管)を入れる説明も追加された。
話が終わってから、
手術の同意書、検査の同意書。そんなこと言われても
「私どうしてこうなったんだろう?」
って、思い出せず混乱している、ひとみは、
言われるままにするしかなかった。
「胸腔ドレーンを入れてから入院です。」
「ひとみちゃん、頑張ってね。」
母親が励ましてくれて、ドアの外に出てから、
ひとみは、服を脱がされ、白い肌は、消毒液で茶色く塗られて
いった。
「じゃあ、今から管を入れます。」
「麻酔がちょっと痛いですよ。」
「ううう・・・痛い。」
ひとみの胸に、音も無くメスが突き刺さり、すーっと抜かれると
小さな白い線がついた。
しばらくしてから、血がじわじわ滲んで流れた。
慣れた手つきで、そこにドレーンを突き刺し、
ゴリゴリと肋骨の間を通し、管の先は肺まで進められた。
最後にひとみの皮膚に糸がかけられ、管が抜けないように
糸でつながれた。
18 名前:paco2 投稿日:2004/01/04(日) 16:44
呼吸器外科の処置が終わり、
ひとみは、もう一度レントゲン室に連れて行かれた。
廊下で、高橋と顔を合わせたのだが、ひとみは気づかなかった。
「吉澤さん、手術までの間にね、足をできるだけ正しい位置に
戻してあげなきゃならないの。
今から、引っ張るけど、我慢してください。」
そういうと、カチャ、とレントゲンのスイッチが入り
鉛のエプロンを着た梨華と看護師が思いっきり足を引っ張った。
「あ〜!」
何か、ゴリッとした感覚と激しい痛み。
梨華は、透視画像を見ながら、折れている部分を正しく
合わせようと、何回も足をひねり、
その度に、ひとみは泣き声の混じった悲鳴をあげた。
「はい、この位置。」
整復が終わり、足にシーネが巻かれた。
19 名前:paco2 投稿日:2004/01/04(日) 19:22
「あの、吉澤さんはどうだったんですか?」
「高橋さん、ありがとう。足の骨折と肋骨骨折だって。」
ひとみの母親は、高橋に何度も礼を述べ、余分な心配をかけまい
と思ったが、鎮痛な表情は隠しきれず、
高橋はひとみが重症だということを悟った。
「高橋さん、もう遅いから、うちの車で送っていくわ。
本当にありがとうね。」
話をしている時、ひとみが通り過ぎていった。
「吉澤さん、」と声をかけたのに
ひとみは、中を見つめて気が付かないようだった。
20 名前:paco2 投稿日:2004/01/04(日) 21:49
ひとみは入院した。
病室はもう消灯時間を過ぎていて、薄暗くひっそりしていた。
シーネを巻かれた足は台に乗せられ、
胸から出ているドレーンは低圧持続吸引器に接続され、かすかな
機械音をたてていた。
母親が、電話をかけにいって、一人になったとき、あらためて
自分に降りかかった不運に絶望的な気持ちになり、
涙が溢れて止まらなかった。

21 名前:paco2 投稿日:2004/01/05(月) 13:25
気が付くと朝になっていた。
わりと、日当たりの良さそうな個室だけど何にもない。
まだ、頭がボーしてる。
「痛い。」
体のあっちこっち痛い。
「おはようございます。吉澤さん、落ち着いた?」
昨日の女医さんが入ってきた。

22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/05(月) 21:45
なんかいいっすね。続き待ってますガンガって下さい。
23 名前:paco2 投稿日:2004/01/07(水) 00:50
22>名無飼育さん 様
有難うございます。
書くことの難しさを痛感しておりますが、頑張ります。
24 名前:paco2 投稿日:2004/01/07(水) 22:47
「足はどう?痛くないですか。」
「シーネは、きつくなってこないですか?」
梨華は、やさしく微笑みながら、足の指先を触り、浮腫がないこと
25 名前:paco2 投稿日:2004/01/07(水) 23:38
確かめ、「胸の音も聞かせてね。」とひとみの胸を少し開き
聴診器をあてた。
「息をすってみて、はい、もう一回。」
ひとみが大きく息を吸うと、白く軟らかい肌に、
聴診器が少し埋まった。
「今日はもう一度、レントゲンを撮ります。病室に来てもらう
から、そのままでいいですよ。」
「はい。」
ひとみは、改めて驚いていた。
昨日は、気が付かなかったけれど、すごい綺麗な先生だ。
それに、優しくって、かわいい声。
昨日あんなに痛くされたのを、恨んでいたのに、
なんか、ちょっと嬉しくなった。
26 名前:paco2 投稿日:2004/01/08(木) 00:39
夕方5時をまわってから、石川先生がまた来てくれた。
「あの、お母さん、今日の検査の結果ですが、胸の中に出血は
ありません。肺もふくらんでいるし、呼吸状態は良好です。」
「心配ないと思います。よかったね、ひとみちゃん。」
梨華は、微笑みながら、
「手術なんですが。」ときりだして、
「明日の1番目に入れさせてもらいました。それとね、
主治医は私になりました。よろしくね、ひとみちゃん。」
梨華は、ひとみと握手して白い歯を見せて笑った。
ひとみは、細くて暖かい手を握り返しながら、
不安でいっぱいな気分になり、顔をくもらせた。
27 名前:paco2 投稿日:2004/01/08(木) 13:07
翌日。
手術室に入り腰椎麻酔をかけられた。
裸同然のかっこうで、真横に寝かされ、介助のナースに、
膝と首をかかえられ、ギューっとお腹に付くぐらいに、
丸い姿勢にさせられた。
「吉澤さん、ちょっと痛いけど、背中ひっこめちゃダメですよ。」
梨華は、針を刺す部位を決めるため、
ひとみの腸骨陵を指で確認し、見当をつけた。
わき腹をグイグイ押されて、ひとみはくすぐったくて、
動いてしまった。次は、背中に消毒液を塗られて、
くすぐったくて動いたら、
「危ないから、じっとして!」声が飛んできた。
穿刺針を構えた梨華は、それを腰椎の間隙に刺し、ゆっくり
進めていった。
ピクッ!
ひとみがピクッと動いた。
針先が神経に触ったようだ。
「足にひびきましたか?どっちの足?」
「右。」
「はい。」
梨華は、針を少し動かして、2重になっている内側の針を抜いた。
ポタ、ポタと透明な脳脊髄液がこぼれ落ち、
そこから、麻酔液を注入した。



28 名前:paco2 投稿日:2004/01/08(木) 13:57
ひとみは、上を向かされ、体中、緑の布で覆われた。
「これ、痛いですか?」
ピンセットでつままれても、感じなくなっていた。
「お願いします。」
という声で手術が始まり、器具の音や、話し声がずっと聞こえて
いたけれど、ひとみは、妙に穏やかな気持ちになり、
居眠りをしてしまった。
29 名前:paco2 投稿日:2004/01/08(木) 15:22
梨華は、すーっとメスを引いた。
切られた皮膚の断面から、血がわいてくる。
ガーゼで血をふきとりながら、先の細い止血かんし(器具)で
出血している所をつまんで、止めてゆく。
筋肉が骨を覆っている。
丁寧にかき分け、骨折した場所をさがす。
幸いな事に、すぐわかり、骨膜を剥離し、プレートをあてると
うまく合わさった。
あとは、プレートの穴にボルトを挿し、骨に固定していった。
最後の皮膚の縫合は、ひとみの足にキズが残らないように、
細いナイロン糸で細かく縫った。
足にキプスを巻く頃には、
ひとみも、目を覚ましていた。
30 名前:paco2 投稿日:2004/01/08(木) 23:00
退院できないまま、とうとう冬休みに突入。
母が、学校まで成績表をとりに行き、見せてくれた。
「欠席日数がこんなに。成績もさがってるよ〜。」
「担任の先生は気にしないで下さいって言ってたよ。」
「うん。」
せっかく、ここまで無遅刻、無欠席だったのに、
栄光の皆勤賞がもらえない。がっかりしていると、
「でも、運がよかったのよ、ひとみちゃん。あんな事故にあった
のに、死ななかったじゃん。」
なんて、まったく、能天気な事を言う、オッカーだ。うちの母親は。
「お母さん、もう今日は帰っていいよ。」
車椅子で動いてもいいことを許可された、ひとみは、そう言うと
室の外へ出て行ってしまった。

ナースステーションの前まで来ると、
開けっ放しのドアから石川先生がみえた。
パソコンに向かって、キーボードをたたくスピードが結構速い。
「カッケー!先生すごいじゃん。」
見とれていたら、忙しそうに出入りしている看護婦さんに、
「吉澤さん、室に戻ってなさい。」て怒られた。
31 名前:paco2 投稿日:2004/01/08(木) 23:57
ひとみは、昼間はTVを見たり、CDを聞いたりして、
退屈をしのいでいたが、
部活が終わると、毎日のように高橋が、家に帰る前にお見舞いに来てくれる。
花がしおれてきたら花を持って、新しいコミックが出たら置いていってくれて、
それが、何よりの楽しみになっていた。
今日は面会時間ギリギリに来てくれた。
「先輩、今日は遅くなっちゃった。」
「高橋、無理しなくていいよ。」
明らかに、疲れているように見える。
「無理じゃないんです。私、先輩の顔見ないと元気でないんです。」
と笑って答えた。
冬休みの招待試合にランキング上位のチームを呼んだ為、
猛練習をしているらしい。
「高橋、練習きつい?」
「ほんと、監督メチャメチャきついんですよ。」
熱心に語ってくれるのだけれど、早口でよく分からない。
☆!ひとみは、いい事を思いついた。
「高橋、秘密の話があるから、耳かして。」
そう言われたので、高橋はひとみの口元に耳を近づけた。
「チュッ。」
「いつも有難う。感謝のキスだよ。皆に秘密ね。」
高橋は、耳まで真っ赤になり、言葉がつまってボーとしていると、
面会時間終了の放送が流れた。
次の日、高橋は来なかった。
32 名前:paco2 投稿日:2004/01/09(金) 11:40
朝と夕方に、石川先生が顔を見に来てくれるのも楽しみだった。
簡単な診察をして、「今日はどーお?」って聞いてくれる。
ひとみは、毎日なにも変わったことがないので、
考えておいたジョークを披露したり、雑談したり、
先生が笑ってくれる、そんな時間が一番しあわせに思えた。
梨華も、厳しい研修医生活の中で、
ひとみの診察(ただのおしゃべり)は、心を和ませてくれる
楽しい時間になっていた。
でも、今日は一度も来てくれない。
夕食を運んでくれたナースに、ひとみは不満をもらした。
「今日、石川先生が一度も来てくれないんですけど。」
「そう?今日、朝から大きい手術があったから、病棟まわってないんだ。」
「石川先生に伝えておくからね。他になにかある?」
「ないです。」
「じゃあ、伝えとくから。」
そう言うとナースは隣の病室にいった。
33 名前:paco2 投稿日:2004/01/09(金) 12:51
消灯時間が過ぎてから、梨華は、ひとみの病室を訪れた。
「ひとみちゃん、遅くなってごめんね。今日はどーお?
変わったことない?」
「うん。先生も大変だね。」
梨華は、いつになく疲れていたので、ひとみの枕元の椅子に座って
ベットに肘をつき、ひとみの顔を覗き込んだ。
と思ったら、そのまま、うつ伏して寝てしまった。
「先生、先生、困るよ。」
「先生疲れてるんだ・・・先生寝てないんだね。」
ひとみは、しばらく梨華の寝顔を見ていた。
豆電球の光で、まつげが、長い影を作っている。
無防備なのに、きりっとした顔立ち。
「綺麗なお姉さんか。・・・こんなお姉さん欲しいな。」
肩を揺すって起こしてみた。
全然、起きない。
ひとみの指先に髪の毛が触れた。頭を少しなでてみた。
心臓がドキドキする。
しばらく、そのままでいると、
白衣のポケットのPHSが鳴った。
梨華はすぐ起きて、
「はい。石川です。今行きますから。」
と立ち上がった。
「ごめんね。私、寝ちゃった?」
「うん。起こしたのに、起きなかったよ。なのに、PHS(ピッチ)で
すぐ起きちゃうんだね。」
「職業病だね。」と笑って言って
「じゃあ、ひとみちゃん、また明日ね。」
言い終わる前に
「先生!!・・・」
ひとみは、こみ上げるせつない気持ちで、梨華を見つめた。
「ありがとっ。」
梨華は、照れ笑いしながら、
「ひとみちゃん、甘えん坊だね。」
と言って、ひとみの頬を両手で包み、
「おやすみ。」
を言って、そーっとドア閉めて出て行った。


34 名前:paco2 投稿日:2004/01/09(金) 17:34
今日は、クリスマスイブ。
午前中に練習を終えた部活の皆が、監督も連れてお見舞いに来てくれた。
クリスマス用のアレンジフラワー、ミニツリー、それぞれのクリスマスプレゼント。
ひとみの室は、いっきに華やかになった。

女子高生が集まると、なぜか大騒ぎになる。
他の室から苦情がでて、1時間ほどで帰っていった。楽しかった。
ひとみは、皆がくれたプレゼントを開けてみた。
ちょっと大きめの袋の中には、ミニクッションとカードがはいっていた。
「高橋からだ。手作りかよ!」
とつぶやいて、カードを読む。
「メリークリスマス。早く良くなって下さい。先輩のキス嬉しかったです。」
そして、ウインクした似顔絵。
目を通したひとみは、顔がにやけていた。
35 名前:paco2 投稿日:2004/01/09(金) 17:57
「ひとみちゃん、どーお?」
夕方の回診。石川先生だ。
「まあ、かわいい。ひとみちゃん、もてるんだね。プレゼントいっぱいじゃん。」
へへへ、と笑い、
「うん。今日部活の皆が来てくれて。」
「へーえ、よかったね。」
「先生は?先生は今日、クリスマスパーテイとかしないの?」
「仕事があるから、病院から離れられないから。」
「彼氏は?」
「いないよ。」
「え〜、本当かな。」
ひとみは、ニヤニヤ笑い、疑いの眼差しを向ける。
「ひとみちゃん、ケーキは?」
梨華はあわてて、話を切り替える。
「お母さんがあとで買ってきてくれるって。」
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/12(月) 05:46
イイ感じ!待ってまーす
37 名前:paco2 投稿日:2004/01/13(火) 10:39
36>名無飼育さん 様
有難うございます。連休中の仕事疲れでボーっとしてますが、
次にいってみます。
38 名前:paco2 投稿日:2004/01/13(火) 11:06
「ひとみちゃん、今年は、寂しいでしょ?」
「先生、私ね、今年は家でクリスマスパーテイできなくて
悲しいと思ってたけど、先生に会えたから、全然寂しくないよ。」
梨華は、窓際の壁にもたれながら、ひとみの顔を見つめて聞いていた。
「いつも、どんなクリスマスだった?」
「うちはね、ケーキ食べて、新しいゲームとか買ってもらって
普通のクリスマス。先生っちは?」
「うちはね、志賀高原に知り合いのペンションがあってね、
家族で毎年、そこにスキーに行ってた。」
「へ〜、すごい、ホワイトクリスマス。」
梨華の目はなつかしそうに、笑っていた。
「私もね、今年はスキーに行けなかったけれど、寂しくないよ。
ひとみちゃんに会えたから。」
「うっそー。」
ハハハハ、
「本当だって、未来のスーパースターさんと、衝撃の出会いがあったから。」
39 名前:paco2 投稿日:2004/01/13(火) 11:24
「はあ?ハア。」ひとみは、もう一度ため息をつき、
「先生、私バスケットやれるの?」
と聞いてみた。
「当たり前じゃん。」
「ほんと?」
「ただしね、ギプスが取れたら、リハビリ頑張らないと、筋肉おちてるわよ。」
と脅すような言い方をしたのだが、
ひとみは、目の前が、パッと明るくなったような気がした。
そして、梨華の目を見つめ返して、
「先生、有難うございました。」
と真顔で言った後、両手を伸ばした。
40 名前:paco2 投稿日:2004/01/13(火) 11:52
梨華は、ニコニコしながら、ひとみの肩を抱いてあげた。
「先生みたいな、お姉さんが欲しかったな。」
「私も、ひとみちゃんみたいな、弟が欲しかったな。」
「先生!私、女ですけど・・・。」
「えっ、ひとみちゃん、女だったの?」
抱き合ったまま、
二人は、屈託なく笑いあった。
「先生、好き。」
ひとみは、梨華の胸に顔を埋めて、こもった声で告白した。
「ありがとう、ひとみちゃん。」
抱きしめる腕に、力が込められた。
ふっと、腕が緩められた時、ひとみは、梨華の顔をみあげてみた。
眉を寄せた、せつない顔で、ずーと見つめてくれている。
ひとみは、恥ずかしくなり、もう一度、ぎゅっと胸にしがみついた。
「ハアッ。」
震えるような、小さな吐息が聞こえた。
41 名前:paco2 投稿日:2004/01/13(火) 13:44
梨華は、腕を解いて、椅子に座った。
「先生、プレゼント貰うんだったら、何がいい?」
「ひとみちゃんから?」
「じゃなくて、誰かから貰うとすれば。」
「そうだな、えーっと、心がこもっていれば、なんでもいいよ。」
「ひとみちゃんからだったら、オリンピックの金メダルかな。」
「ひとみちゃんは?」
「えーっ、そんなの無理。私は、先生のプリクラがいいな。」
「☆!あっ、プリクラはないけど、デジカメがあるから、ちょっと待ってて。」
と言って、梨華は、医局にデジカメを取りに言った。
ひとみの室に戻って来てから、ふざけて、何枚も写真を撮りあった。
二人で撮る時、カメラのボタンを押す瞬間、ひとみは、梨華の頬にキスをした。
そしたら、お返しにと、
梨華もわざとらしく、チュッ!ってしてくれた。
フラッシュで輝いた梨華の笑顔は、ひとみの脳裏に強烈に焼きつけられた。
一生忘れない。
白い室の中の、二人きりのクリスマスパーテイだった。
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/14(水) 23:25
おもしろくなーい
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 00:45

じゃあなぜ読んだのかと小一時間(略
漏れはおもろいと思ってるよ。
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 10:40
今まで密かにROMしていました、が・・・

私もすっごく面白いと思ってますよ。色んな意見があるとは思いますが
paco2さんの小説を楽しみにしている人、沢山いると思います。
だから気にしないで、これからもこの調子で頑張って下さい!
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/15(木) 23:05
>>43
タイトルが気になったから
46 名前:paco2 投稿日:2004/01/16(金) 15:05
42>名無飼育さん様
率直なご意見有難うございます。
自分には分不相応な事をはじめっちゃったと激しく反省しております。
でも、こんな文章でも人から意見や感想がいただけるって事が、
こんな幸せな気分になれるなんて、初めて知りました。
とりあえず、最後まで頑張りたいと思います。
47 名前:paco2 投稿日:2004/01/16(金) 15:15
43>名無飼育さん様
有難うございます。
嬉しいです。励みになります。
48 名前:paco2 投稿日:2004/01/16(金) 15:23
44>名無飼育さん様
有難うございます。
私は、石川さんと吉澤さんが大好きなので、
もうっちょっと頑張ろうと思っています。
49 名前:paco2 投稿日:2004/01/16(金) 15:46
45>名無飼育さん様
タイトルは、私の好きな「ブラックジャックによろしく」
を拝借いたしました。
したがって、石川梨華さんは、めちゃくちゃカッコイイ研修医。
吉澤さんとの出会いは、交通事故だった、という設定にいたしました。
50 名前:とみこ 投稿日:2004/01/16(金) 17:48
おもしろいです!!頑張って下さい^^
51 名前:paco2 投稿日:2004/01/16(金) 17:49
正月まえに、ひとみは退院していった。
その頃には、傍目にも、本当の姉妹のように仲良くなっていた。

1月はいく。2月はにげる。3月はさる。
誰かが言ってた言葉のとおり、あっという間に卒業式も終わり、
ひとみが、のんびり過ごしていたある日、
梨華からメールが入った。
「ひとみちゃんの開いてる日はいつ?今度一緒にお食事しませんか?」
ひとみは、嫌な胸騒ぎがして、すぐに返事を返し、理由をきいてみた。
すると、大学院の試験に合格して、
4月から大学に戻るということだった。
「もう、会えない!」
そう思うと、胸が熱くなり、涙が自然に溢れてきた。
52 名前:paco2 投稿日:2004/01/17(土) 22:38
50>とみこ様
有難うございます。そう言っていただけると、励みになります。
頑張ります。
53 名前:paco2 投稿日:2004/01/17(土) 22:57
最初で最後のデートの日。
ひとみは、朝から気合を入れていた。
昨日から考えぬいたデートコース。
バッグの中身は、地図、市内のグルメガイド、梨華へのプレゼント、
ハブラシ、コスメ、下着、テイシュ、ハンカチ、タオル、アウトドア用敷物、
ホカロン、お菓子、多めの小遣い。
「持ち物チェック、よし。」
はやる気持ちを抑えながら、
待ち合わせの30分も前に家を出た。
真冬から比べれば、寒さも和らいできたとはいえ、
やっぱり寒い。バッグが重い。
家を早く出すぎたことを後悔していると、
梨華の車が、すーっと近づいてきた。
54 名前:paco2 投稿日:2004/01/17(土) 23:24
「おはようございます。」
ひとみは、元気に助手席に乗り込んだ。
「ひとみちゃん、いったいどこに行くの?」
大きなバッグを見て、梨華が目を細めて笑った。
「へへへへ、兎に角、しゅっぱーつ!」
「どっちの方向?」
「とりあえず、前へ。」
「ひとみちゃん、私、道知らないから、早めに言ってね。今日の目的地はどこ?」
「海。・・・気持ちいいよ。」
「寒くない?」
「大丈夫、先生の分のホカロンもあるから、ふふっ。」
といたずらっぽく笑うひとみ。
それでは、と梨華はゆっくり車を走らせた。

市内の幹線道路をしばらく走る。
ひとみは、窓に映る景色や建物の説明をしながら、
梨華の横顔をながめていた。
うなずいたり、微笑んだり、梨華の唇が動くたびに、目がくぎずけにされてしまう。
「しっかり道見ててよ!」
って梨華に言われても、幸せいっぱいのひとみは、上の空。
赤信号で止まると、梨華もひとみの方を向き、照れ笑いするしかなかった。
55 名前:paco2 投稿日:2004/01/17(土) 23:53
「2つ目の信号、動物園って書いてある方、右に曲がって下さい。」
「動物園に行くの?」
「違います。早咲きの桜が咲いているんです。」
車は右に曲がると、こじゃれた喫茶店や、雑貨屋の並ぶ、きれいな道に入った。
平日なので、車が少なくて快適だ。
「いい所だね。」
「うん。先生初めて?」
「そう、日曜日とかもね、忙しくてどこも、来たことなかった。
この街で覚えたのはね、飲み屋さんばっかり。」
「先生、飲めるの?」
「まあね。そこそこ。」
「ざる?もしかして。酔うとどうなるの?」
「楽しいよ、テンションあがっちゃう。声も、もう一つ高くなっちゃうらしいよ。」
「・・・らしいよって・・(いっちゃってんのかよ!)」
ひとみは、梨華が、合コンでチヤホヤされてる姿を想像して、
壁を感じて嫌な気分になった。
56 名前:paco2 投稿日:2004/01/18(日) 00:59
「動物園開いてるよ、入る?」
「そこは、パス。でも、一度止まって下さい。」
ひとみは、地図を広げて、したり顔で梨華にドライブコースを説明した。
「そっか、わかったよ、行こ。」
梨華は、車を飛ばした。
低い山のわりには、ヘアピンカーブがつづく。
途中、早咲きの桜並木があり、
青い空、針葉樹の緑、桜の淡いピンク色がとても美しかった。
山が開けている所で休憩した。
そこからは、真っ青な海が見える。
外に出ると、下から吹き上げる風が冷たい。
「わっ、寒い。」
二人は同時に抱き合って、すぐ車に戻った。

昼食は、予約していた山の中腹のレストランで済ませた。
「フランス料理おいしかったね。ひとみちゃん、横浜に来たら、
私もおいしい所知っているから、連れてってあげるね。」
梨華は、横浜の話とかしながら、いっきに山を下って行った。
57 名前:paco2 投稿日:2004/01/18(日) 09:56
松並木のつづく、海沿いの道路。
海水浴場の駐車場で車を止める。
ひとみは、暖めておいたホカロンを梨華にわたし、車を降りた。
早春の海。波がキラキラ光っている。
砂浜を歩く。
「先生、寒くて、ごめんなさい。」
ひとみは、梨華にぴったり寄り添い、肩に頭をあずけた。
梨華は、ひとみの頭を抱いて、自分も頬を寄せた。
色んな事をしゃべった後、
波打ち際で遊んだ。

「ひとみちゃん、ありがとう。何か忘れてた事を思い出したみたい。来てよかった。」
と言ってくれた。
梨華が車のエンジンをかけた時、
「先生、帰りたくない、帰りたくないよ。」
とつぶやき、ひとみは、ハンドルを握る梨華の手を押さえた。
58 名前:paco2 投稿日:2004/01/19(月) 22:56
石川梨華 様
お誕生日おめでとうございます。
ご健康でかつ幸福であられますように
心よりお祈り申し上げます。
59 名前:paco2 投稿日:2004/01/19(月) 23:20
「ひとみちゃん・・・・・。」
梨華に、ひとみの気持ちが痛いほど伝わってくる。
ひとみを傷つけたくない。
この思いを受け入れた方がよいのか、
ひとみの将来に思いを馳せたが分からない。
沈黙がつづく。
・・・・・・・
ひとみの顔は真剣だった。
「今日一晩だけ、一緒にいたい。お願い。」
「うん。楽しい想い出、残そうか。」
梨華は決心し、ひとみの家に電話を入れ、
海沿いの観光旅館にチェックインした。


60 名前:paco2 投稿日:2004/01/23(金) 10:44
部屋の窓からは、海が見えて家族で海水浴にくるには、ちょうどいい旅館だ。
「今日は、貸切ですよ。」
と仲居さんが愛想よく言ってくれたので、
夕食までの間、お風呂にいくことにした。
家族風呂が、2つあったので、どっちに入っていいのか分からず、
片方を覗いたら、
ギョ!
女の人が、お風呂の中で膝たちして、
立っている男の人の股間に顔を埋めている。
ひとみは、あわてて戸を閉めた。
後から入ってきた梨華が、「なに?」って顔をする。
ひとみは、「しーっ!」と言って、中を見せた。
「ククククッ・・・・」
「フフフフッ・・・・」
口を手で押さえ、必死に笑いをこらえ、2人は逃げ出した。
「ハハハ・・お腹いたい。」
「なんなの、今のは?」
思いがけないハプニングのおかげで、
ハイテンションな2人は、女湯にゆき、
おもいっきり笑い、おもいっきりはしゃいだ。
夕食は、鍋料理をふたりでつつき、
ビールも飲んだせいか、ひとみは、トロンとして、
さっきから、あくびばかりしている。
61 名前:paco2 投稿日:2004/01/23(金) 11:12
「ひとみちゃん、もう、寝よっか?」
「修学旅行みたいね。」と笑いながら、
梨華は、仲居さんが、敷いてくれた布団をくっつけた。
「ひとみちゃん、こっちにおいで。」と、うなずいて、
自分の布団を少し持ち上げると、
ひとみは、すーっと滑り込んできて、母親に抱きつく子供のように、
梨華の胸に顔を埋めた。
梨華は、頭をなでてやり、ひとみの体をやさしく抱きしめる。
梨華のやわやかい体と、むくもりが気持ちよくて、
ひとみは、目を閉じた。
62 名前:paco2 投稿日:2004/01/24(土) 00:20
「好き。ずっと、こうしたかった。」
「ひとみ。」
名前を呼ばれて、顔をあげると、
笑みを浮かべた唇が、ひとみの唇と重なる。
やわらかい。あたたかい。
ひとみは、ドキドキした。
キスをつづける梨華の息遣いが、だんだん甘い吐息に変わっていく。
いつのまにか、ひとみの首にすがるように回された腕、
梨華の体が少し震えているのを感じる。
「かわいい・・。」
憧れ以上の感情が頭をもたげ始めた。
「梨華が欲しい。」
ひとみは、体が熱くなるのを感じると、
性急な男の子のように、梨華の上になり唇をむさぼった。
「・・・ん・・」
言葉にならない梨華の声がひとみをいっそう狂わせた。
63 名前:paco2 投稿日:2004/01/25(日) 16:00
堰を切ったように、ひとみの愛情が梨華に流れ込んでくる。
こんな情熱のこもったキスは、梨華も初めてだった。

浴衣の帯をほどき、胸をはだけると、
うなじから、肩、豊かな胸、ほっそりした腰へとつづくライン。
ギリシア彫刻のビーナスのようだ。
ひとみは、そーっと、触れるか、触れないかくらいの、感じで
体の線をなぞった。
上から下へ、下から上へ。
梨華は、全身が性感帯になったかのように、悶え、
かすれ、がすれの嬌声が、なまめかしい叫びにかわってゆく。
唇をはわせていく。
指先から脇の下、首筋から胸。
胸の先端を舌で転がす。
「・・・いや、止めて・・」
梨華の言葉とは裏腹に、ひとみを求めているように、
腰をくねらせている。
64 名前:paco2 投稿日:2004/01/25(日) 16:39
ひとみは、梨華をうつ伏せにさせ、浴衣と下着をはぎとった。
背中を腰にむかってキスしてゆく。
右手は、おしりから、足の間へと這わせてゆき、
熱をおびて、ヌルヌルと潤った部分にゆっくり指を滑り込ませていった。
「あああ・・・」
声と同時に、梨華の膣がヒクヒク痙攣し、
ひとみの指を飲み込んでゆく。
梨華の体を半身にし、片足をひとみの肩にかけさせた。
充分に広げられた花びらの、花芯を唇と舌で愛撫する。
それから、足、足先、指の間まで、キスを続けた。
「ちょうだい、ちょうだい!」
梨華は、声を震わせて、ひとみにしがみつき、せがんだ。
ひとみは、梨華の口をキスで塞ぎ、
指を奥深くまで入れ、ピストン運動させた。
「ああ・・・」
初めて聞く梨華の低い声、うめき声とも違う、なまめかしい声。
キスをしていた口は、半開きになり、恍惚とした表情で、
弛緩している。
膣からは、シーツが、びしょびしょになるくらい水が溢れだしていた。
65 名前:paco2 投稿日:2004/01/25(日) 23:35
目が覚めると、梨華がいない。
あわてて起き上がると、窓辺に置いてある椅子に座っていた。
海から太陽が昇ってくるところで、梨華はじっと海を見つめている。
ひとみは、その姿をしばらく眺めていたが、
何を考えているのか、聞いてみたくて、
後ろから近づいて、肩を抱き頬にキスをした。
梨華は、微笑みながらキスをかえしてくれた。
「今日からまた、忙しくなるね。」
「・・・・・・・・・・。」

ふたりは、金色の光につつまれて、今日までの想い出を昇華していった。
数日後、梨華は、大学病院へ戻った。
そして、ひとみは、実業団入りした。
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/25(日) 23:42
リアルターイム!!
面白いですっ!応援しております!
頑張って!!!!!
67 名前:paco2 投稿日:2004/02/01(日) 23:23
66>名無飼育さん 様
有難うございます。
そろそろ、締めくくらなくてはと思い、1週間ずーっと考えていました。
では、ラストシーンに向けて頑張ります。
68 名前:paco2 投稿日:2004/02/01(日) 23:52
入団してから、厳しい練習が続いた。
地元の女子高校から、強豪とされている実業団チームに入ったとあって、
ひとみは、早くからマスコミに注目されていた。
地方の新聞社が取材に来たこともあり、
ますます練習にも力がはいってゆく。
ひとみは、毎日写真たての梨華の顔を見ながら、
あの言葉を思い出していた。
「ひとみちゃんからだったら、オリンピックの金メダルがいいな。」
去年のクリスマスイブに梨華が言った言葉は、
ひとみを励ます為の、口からのでまかせってことは分かっていた。
でも、あえて、
「先生をアテネに招待するんだ。」
という気持ちにもさせてくれた。
その甲斐あって、ひとみは、社会人1年目から、日本代表候補にあげられた。
69 名前:paco2 投稿日:2004/02/02(月) 00:44
1999年、シドニーオリンピックの出場をかけて、日本は強豪韓国
と戦った。ワンゴールで決まってしまう互角の戦い。
しかし、わずか3点差で日本の夢は消えてしまった。

そして、2003年今度はアテネオリンピック出場をかけて、
女子バスケットのアジア予選が始まった。
そのベンチに日本チームのユニホームを着たひとみの姿もあった。
70 名前:paco2 投稿日:2004/02/02(月) 16:04
圧倒的な強さを見せる韓国。
予選で日本が対戦した時は、みごとな大差で敗れてしまった。
4年前の『かり』はやはり返せないと一般的に思われていた。
しかし、チームの雰囲気は負けてはいなかった。
「アジアから、オリンピック代表のキップは、3つあります。
まだ、大丈夫、皆頑張ろう!!」
シドニーオリンピック予選の悔しさを知っている、キャプテンを
中心に、全員に気合がはいった。
ミーテイングの輪の中で、ひとみも自然に気持ちが燃えていた。
2004/1/18
日本と韓国は準決勝で再び対戦する事になった。
71 名前:paco2 投稿日:2004/02/02(月) 18:45
ダン、ダン、ダダダッ・・・・・
・・キュッ・・パス・・
「戻って!」
「テイフェンス!」
死闘を繰り広げる韓国戦、そのコートの上にひとみもたっていた。
韓国絶対有利といわれているなかで、
日本チームもパワー、スピード、全く互角の戦いだった。
第1クォーター 日 13−11 韓
第2クォーター   11−17
第3クォーター   19−13
第4クォーター   13−15
同点のまま試合終了。延長戦にはいった。
しかし、延長戦も同点。   9−9
さらに、再延長戦に突入した。
72 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/02(月) 20:48
がんばれ、よっすぃー!
作者さんはバスケファンですか?
女子、アテネ決めましたね!
永田選手と大神選手とか好きっす。
これからも頑張ってください。
73 名前:paco2 投稿日:2004/02/02(月) 22:41
日本チームは、キャプテン中沢を中心に、早いパス回しで、
ボールをキープしていた。
中沢から、ボールが右サイドにいる吉澤に回った、
吉澤から、飯田にパス。
飯田は、ドリブルでゴール下へ走りこむ、ジャンプショットを放った。
ボールは、リングに当たりはじかれた。リバウンドだ。
リバウンドのボールを中沢がキャッチ。
中沢は、もう1回シュート。
韓国のデイフェンス、体がぶつかった。
「ピー」ホイッスルが鳴った。
韓国のファール、日本のチャンス。
日本のフリースローだ。
中沢は、落ち着いて1投目を決めた。
続いて、2投目これも決まった。
日本がリードした。
次は韓国の攻撃、素晴らしいスピードで、中央突破してきた。
必死でデイフェンスにはいる吉澤たち。
韓国がシュートを放った。ゴール下に飛び込んできた中沢がボールをはたく。
日本はルーズボールを奪い、速攻。
ドリブルで突破、大歓声がわきあがった。
74 名前:paco2 投稿日:2004/02/02(月) 23:51
日本がボールをキープ。右サイドにいる中沢にパスが回った。
韓国選手がマークにはいった。迷わずシュート。
綺麗な弧を描きリングに吸い込まれるボール、4点リードした。
キャプテンの頑張りに全員乱れぬチームプレー。
中沢から吉澤へ、ボールが渡った。吉澤は、フェイダウェィから、
見事にシュートを決めた。難易度の高いプレーがひかる。
若い代表選手の藤本も決める。
韓国の攻撃。
中央に飛び込んで来てシュート。
リングがはじいたと思ったが入ってしまった。
一進一退の戦い。日本のリードはわずかしかない。
藤本からのバウンドパスが後藤に渡った。
後藤は離れている吉澤にパス。
残り時間がもうない。
吉澤は、思い切ってスリーポイントラインからシュート。
鮮やかに決まった。ガッツポーズで喜ぶ吉澤。
次の韓国のシュートは、リングにはじかれた。
日本の攻撃、時間が無い、カウントダウンが始まった。
ついに、試合終了。
81−72 日本の勝利。
体育館は、大歓声と拍手でわれんばかりの騒ぎとなった。
日本はこの試合で2位以上が決定し、
アテネオリンピックのチケットを手に入れた。
75 名前:paco2 投稿日:2004/02/03(火) 01:14
試合終了後、キャプテンをはじめ、主力選手たちが取材のインタビューに
答えていた。
ひとみは、その脇をすり抜けるように、退場していった。
「吉澤さん、お願いします。」
「はい。」
声のした方を見ると、以前自分の所に取材に来た、地方新聞社の人がいた。
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「今のお気持ちは、どうですか。」
「すごく、嬉しいです。」
「フェィダウェィからのシュート見事でした、鳥肌がたちましたよ。」
「ありがとうございます。本当、決まってよかったです。」
「この喜びを、誰に一番伝えたいですか?」
「そうですね、私を支えて下さった方々と、私が交通事故で入院
した時、励ましって下さった、石川先生に伝えたいですね。」
「おめでとうございました。吉澤選手でした。」
「ありがとうございました。」

ひとみは、その言葉のとおり、ロッカー室に飛び込んで
梨華にメールを送った。
梨華がメールを見たのは、仕事が終わって、夜の10時を過ぎた
ころだった。
帰る前にメールを見るのが、習慣になっている梨華は、なにげに
見て、声をあげてしまった。
「試合に勝ったよ。アテネに行けるよ。」
「うそ!!」
その場で飛び上がって喜んだ梨華からのお祝いメッセージを
ひとみが読んだのは、翌日の朝になってからだった。
ひとみは、ホテルに戻って、梨華からの返事を待っていたが、
知らないうちに携帯を握りしめたまま、朝まで眠ってしまったのだった。

    おわり
76 名前:paco2 投稿日:2004/02/03(火) 09:45
72>名無飼育さん 様
吉澤さんの応援ありがとうございます。
よっすぃーは、頑張りました。
私もバスケットは好きです。
以前ジャパンエナジー対シャンソン化粧品の試合で、偶然ですが、
ジャパンエナジーの選手と話した事がありました。
すごく、かっこよかったです。それからのファンです。
今は、シャンソン化粧品の永田選手を応援しています。
77 名前:paco2 投稿日:2004/02/03(火) 10:12
おわりに
この駄文を書き始めた頃は、ラストシーンのバスケットの試合
風景は、自分で妄想して書く予定でした。
ところが、日本が韓国を破ったという大ニュースが飛び込んできました。
その日は、何度スポーツニュースを見ても感動しました。
そこで、我らの吉澤さんにも一緒に戦ってもらうことにしました。
このラストシーンの試合風景は、スポーツニュースを参考に
書きました。
女子バスケット日本代表チームの皆様、
おめでとうごさいます。
感動をありがとうございました。
アテネオリンピック応援しています。

最後に、吉澤さん、石川さんをはじめとする、
ガッタス ブリジャンチスの皆様
フットサル応援しています。頑張ってください。
78 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/15(日) 09:21
また、駄文ですが、書かせて頂ます。
よろしくお願いいたします。
犬も食わない、いしよしの仲っていうかんじでございます。

♪いっつも一緒がうれしい
恋する女の子の VICTORY V
トントントン・・・・。
「え〜ん、え〜ん。」
「梨華ちゃーん、何泣いてんのよ。」
「よっすぃーの、ばか。」
「自分がやるっていったんだよ。」
「だって、かっこいいとこ見せたかったんだもん。」
「わかったから、もういいよ、私がやるから。」
私は、背中から包むように、梨華ちゃんを抱いてあげた。
くるっと振り向き、私の胸に顔をうずめ、顔を押し付けて涙をふいた。
っていうか、鼻水もついたような気がする。
「汚っ、あたしゃ、タオルじゃないんだよ、梨華汁ついちゃったじゃん。」
「なによー、でも、ひとみちゃん愛してる。」
ギュッ。
「とか言って、背中で、指拭いてんじゃん。」
「してないよー。」
79 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/15(日) 09:39
「冷蔵庫から、ひき肉出して、卵とパン粉と塩コショウ、ナツメッグ。
・・・・玉ねぎ切るくらいで泣くなよな、ばか。」
「何か言った?」
「バターって言った。」
「ひき肉が冷たいから、手が冷たいね。」
「でも、こねるのって、気持ちいいよ。
梨華ちゃんの、おっぱいもんでるみたい。」
「エッチ!」
「あはぁ〜んって言って。」
「ばか!」
「子供の時さ、こんな形にして、うんこ、とか作らなかった?」
「作りません。ちゃんと作ってよ。ハンバーグで遊ぶな!」
「よっすぃースペシャル作っちゃお。」
「ハート?」
「うん、よっすぃーのハート梨華ちゃんにあげるね。」
80 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/16(月) 16:55
「たくさんできたね、食べよっか、ひとみちゃん。」
「バッチリ、バッチリ、サラダもバッチリ。ビールも飲もっかっ?」
トクトクトク・・・お〜っとっと。
「よっすぃ〜、ちょっとぉ〜、私を酔わせてどうするつもり?」
「り〜かちゃん、・・かんぱーい。」
「うん?何に?」
「おいすぃ〜い、梨華ちゃん。隠し味がきいてて、ベリーデリッシャス。」
「私の愛情、気づいてくれた?」
「うん、梨華ちゃんの爪のアカ、いいだし、出てるねー。」
「何よ、それ!」
ふたりの楽しい夕食、この後フフフッ・・、幸せの予感が。
81 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/16(月) 17:30
「今度のお休みの日、どっかに行かなーい?」
「いいね。」
「どこがいい?」
「ショッピングは?」
「何買うの?服?またピンク三昧、付き合ってるだけで、
目の前が補色のグリーンになっちゃて、マトリックスの世界になっちゃうよ。」
「ひどーい!じゃあ、よっすぃ〜は、あれだ、特設売り場の北海道物産展とかがいいんでしょう。
たらふく食べたらまた太るよ。紅の豚をとおりこして、
トトロになったら、どうするの?
♪歩こ、歩こ、私は元気・・、くらいしか踊れなくなっちゃうよ。」
「言ってくれるじゃん、・・・・。」
「ひーちゃん、ごめん、怒った?私ひーちゃんが好きだから、
変わってほしくないなって思って、つい言いすぎちゃった、ごめんね。
ひーちゃんがいなかったら、私生きていけないもん。
森三中とかに、売り飛ばされたら困るもん。」
82 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/17(火) 01:09
「ポン、ポン、ポン、ポン・・・・。」
「何やってんの?頭痒いの?」
「一休さん。考えてるの。」
「ポン、ポン、ポン、ポン・・・・。」
「ん?梨華ちゃんも?」
「考えてるの、何かいいことないかな〜。」
「普通にいいことってさ、ごちコンのイケパラにご招待っていうのが理想かな?」
「メンバーは?」
「テレビ局の人とか?梨華ちゃんにぞっこんの、○○君関係は?」
「嫌です、気持ち悪いもん。もっとちゃんとした人がいい。」
「じゃあ、NHK?3高、お墨付き、首切りなし。でも、知り合いの人いないね。」
「もう、いいよ。明日考えよ。」
83 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/17(火) 01:45
「そろそろ、お皿かたずけよう。」
「あっ!お腹痛い、梨華ちゃん、うっ、うっ、動けない・・・。」
「ひっ、ひとみちゃん、大丈夫?しっかりして、
自分で作ったハンバーグにあたったのね。よかったわ私、ひとみちゃんのハート食べなくて。
悪玉ひとみ菌にやられたのよ、いわゆる自己免疫疾患かしら?自家中毒かしら?」
「梨華ちゃん、御免、私もう寝る。」
「いいわよ、お薬飲んで寝ていてね。ひとみちゃん死んじゃやだよ。」
ハァ、ハァ、ハァ・・・・
「あれっ、ひとみちゃんのこと、心配し過ぎて、過換気になっちゃた。
手足がしびれて動けないよ。」
「マジ?梨華ちゃん大丈夫?」
「お姫様抱っこして。」
「梨華ちゃん、つかまって。」
「ベッドに連れてって、・・・・キスして・・・もっと・・・」
「参りました。姫のほうが一枚上手でございます。」
「じゃ、お皿洗って。」
「は〜い。」
84 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/17(火) 02:04
「終わったよ、一緒に寝よう、り〜かちゃん。」
「ダメ。狭くなっちゃう。押入れに布団が入ってるから、出して使って。」
「え〜っ、そんな。あっ!枕だ。えいっ!」
ボカン!
「痛い、何すんのよっ。」
「枕投げしよう、かかってこいよ〜、ヒューヒュー。」
「その手は桑名の焼きハマグリ。おやすみっ。」
「え〜、じゃこうしてやる。布団むし。」
「きゃー助けて。」
「梨華ちゃん、こけしみたいだよ。ふふふふ・・。」
チューッ。
「どう?手も足もでない状態って。」
「ばか、離してよ。」
「ふっ、梨華ちゃん、本当にあった怖い話してあげようか?」
「いらない。離してよ。」
「ダメ。」
85 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/20(金) 18:01
私は、わざと梨華ちゃんの耳元で、恐ろしげな低い声でささやいた。
「友達がね、手術室で働いていた時の話。
その日の手術が全部終わって、居残りの3人だけが、洗い場で、
血のついた手術器具や、血のついたガーゼを洗ってたんだって。
そしたら、誰もいないはずなのに、
出入り口の一つ手前の自動ドアが、
開いたり、閉まったりする音が聞こえて、ペッタ、ペッタって足音がするんだって。
3人とも変だねっ言って覗いて見たんだけど、誰もいないんだって。
でも、ドアは開いたり、閉まったりしている。
そこの自動ドアっていうのはね、古いタイプで、
マットの上に、人の体重がかからないと開閉しないんだって。
だから、3人で冗談っぽく、幽霊だよきっととか言ってたんだって。
そしたら、見回りをしていた当直婦長さんが中に入ってきて、
『今、手術室から、雨で濡れたコートを着た男の人が、
しずくを垂らしながら出てきて、エレベーターに乗って行ったけど誰?」
って不思議だから聞きに来たっていうの。
きゃー!
4人とも、震え上がったらしいよ。
だって、手術室に私服で出入りするなんてありえないし、
雨で濡れたコートなんて、
その日は雨なんか降ってなっかたんだって。
梨華ちゃん、どーお?怖いでしょう?
さっ、私は向こうで寝ようかなっ。」
私は、梨華ちゃんを解放して押入れの方へ行った。
86 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/20(金) 18:54
「よっすぃ〜、一緒に寝よっ。」
「狭くなったんじゃなかったの?」
「ううん、平気だよ。」
梨華ちゃんは、布団で包まれたまま、私を見上げている。
「ふふふっ、どうしようかな。
じゃ、膝まづいて、私の足にキスをして、
『私はあなたのしもべです。』って言って。」
梨華ちゃんは、ゴソゴソ布団から抜けでして、お尻を突き上げるようなかっこうで私の足にキスをした。
「・・『ボソボソ・・』言ったよ。」
「かわいい!梨華ちゃん、愛してる。」
「・・もうっ!」
私は、たまらず、ふくれている梨華ちゃんを抱き上げベッドに寝かせた。
87 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/20(金) 22:17
梨華ちゃんのパジャマを夢中で脱がせ、あらわになった胸を鷲づかみにしてしまった。
「あんっ。」
痛そうな顔とは裏腹に、甘い声がこぼれる。
「ごめんね。」
胸をもむ力を緩め、口で梨華ちゃんの乳房をほうばった。
舌先で乳首を転がすと、
目をつぶり、薄っすら笑ってるように見える口元から、あえぐ声と
「よっすぃー、愛してる・・」
と私を呼ぶこえが、震えながら交錯する。
「梨華ちゃん、愛してる。死ぬほど愛してるよ。」
私がささやくと、
「よっすぃー、好きにして、私はしもべ、愛の奴隷にして。」
消え入るような声で私の行為に答えてくれる。
88 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/20(金) 22:55
私は、いきなり、梨華ちゃんの膣に指をすべり込ませる。
「いやーん。」
と言って、ぎゅっと膣がしまる。
でも、すでに潤っているそこは、指がスムーズにはいっていく。
指の腹でやさしく刺激してやると、
梨華ちゃんは無意識に腰を上下させ、自分から求めてくる。
「もっと、もっと、ちょうだい。」
指全体を肉壁にこすりつけながら、ゆっくり出したり、入れたりすると
梨華ちゃんの愛液が、指の間から滴り落ち、
お尻を持ち上げ、さらに奥まで突くと、
愛液がどっと溢れ、梨華ちゃんの肛門から、背中の方までヌルヌルと濡らしてゆく。
私は濡れた手で、体を撫で回し、
指で愛液をからめとり、唇におしつけた。
梨華ちゃんは、チュパ、チュパと私の指をしゃぶり、愛しいそうに舌で愛撫してくれる。
理性を失ったその顔は、誰も見たことのない、
本人さえ知らない愛欲にみちたものだった。
89 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/22(日) 09:19
「梨華ちゃん、上になって。」
そう言うと、梨華ちゃんは、69になり、私の感じる処を丁寧に舐めてくれる。
愛する人に愛されている、そんな実感を味わう。
私は、目の前にある梨華ちゃんの繁みに、クンクン鼻を押し付けてくすぐってみる。
「いや〜ん。」
って、感じて私の上であばれので、ちょっと重いけど、心地のいい重みだ。

「ん?何これ。梨華ちゃんの陰毛が口にはいちゃった。」
私はつまんで取り出して、考えた。
「これって、ある意味、お宝?ふふふっ。」
この1本、無くさないように、枕の下に隠すことにした。
「ひとみちゃん、いやだった?」
梨華ちゃんが、向き直って不安そうに聞いてきた。
「ううん、よかったよ。」
やわらかい、優しい声で耳元でささやいて、
梨華ちゃんをギュっと抱きしめた、秘密がばれないように。



90 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/22(日) 09:58
リーン、リーン・・・
「へっ、電話?」
「怖ーい。」
「こんな時間に?いたずら電話?梨華ちゃん、どうする、出る?」
「切っちゃって。」
そうは言われたが、黙って電話に出てみた。
始めは無言だったが、しばらくして、ハアハアした男の声が聞こえてきた。
『・・・ねえ、今、何色のパンテイーはいてるの?・・ハア、ハア・・・』
やっぱり、いたずら電話だ。
この野郎!と思いながらも、梨華ちゃんは寝ちゃったみたいだし、
もう少し聞いてみた。
『・・・聞いてるんでしょ、何か言って・・・・
・・・感じてくれてるんだね・・・ハア、ハア、ハア・・・
・・あぁ〜・・・りか、りか・・・・感じるかい・・・』
私は頭にきて、ガチャと電話を切った。
「なんで、梨華ちゃんの名前知ってるの?どこで調べたの?」
すぐにまた電話がかかってきた。
もう電話線を引き抜いて、怒りでワナワナ震えてしまう。
「明日すぐ電話番号変えなきゃ。」
私は、眠っている梨華ちゃんの髪をなで、
「私が、守ってあげるからね。チュッ。」
として、シャワーを浴びにいった。
91 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/24(火) 11:52
おっおもしろぃ!!
92 名前:paco2 投稿日:2004/02/27(金) 16:34
91>名無飼育さん 様
有難うございます。
そう言って頂けると元気がでます。
93 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/27(金) 17:02
まだ、起きるには早すぎるので、リビングのソファーで横になっていた。
さっきの変体おやじの事が気になり、眠れやしない。
「ひとみちゃん、あれっ、どこにいっちゃたの。」
梨華ちゃんは、私がいないのに気づいてキョロキョロしている。
おもしろいので、
「こーこだよ。」
って、かくれんぼみたいに身をひそめると
「どこー?」
って、笑いながらゴソゴソ、パンティーだけ着けて、
胸を腕組みでかくして起きだしてきた。
やばいくらい、かわいい姿。
「わっ!」
ソファーから飛び出して驚かせると、
「キヤアーッ!」
肩をすくめて、棒読みのように驚く。
「梨華ちゃん、芝居じみてない?さすが、女優さんね。」
チクリと言ってみる。
「ふふふっ・・」
て、嬉しそう。マジに受け止めてるよ、この人。
「じゃあ、次は、入浴シーン見せて。」
私は、梨華ちゃんを抱いてバスルームへ連れてった。
94 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/02/27(金) 22:58
「バスタオル持ってくるね。」
そういって、ベッドに戻り、さっき収穫したお宝の陰毛をつまんで
ニヤニヤながめていたら、急に頭の後ろで
「よっすぃー!何やってんの?」
怒っている声がする。
「なんにもしてないよ、早くお風呂に入ってきなよ。」
「うそ!何かかくした。見せなさいよ。」
「何にも持ってないよ。・・・・あっ、梨華ちゃん、ごみが付いてる。」
目をそらせるつもりで、手を伸ばしたとたん、
ギュッ!
陰毛をつまんでる手をつかまれた。
「何よこれ!」
「ごみ。・・落ちてたから、拾って捨てようと思って。」
「じゃあ、早く捨てなさいよ。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「うそだね。ニヤニヤしてたじゃん。」
「・・・(冷汗たら〜)・・・」
「ひとみちゃんの変体。なにすんのそれ?」
「ひげ。」
その1本を鼻の下につけてみる。
「ばか!」
バシッ!
「うえ〜ん、ごめんなさーい。だってさ、さくら組とおとめ組に
分かれて、会えない日が長く続くじゃん、ひーちゃん淋しいから、
これを梨華ちゃんだと思って・・・」
「ばか、ばか、ばか。」
ボカッ!ボカッ!ボカッ!
「ぎゃ〜梨華ちゃん許して〜」
「許さないんだから、この変体!」
「そんな格好で梨華ちゃんも変体じゃん。」
「なに〜!」
火に油を注いじゃった。
「死ね〜!」
ボカッ!
「ううう・・・」
みぞおちに膝蹴りがはいった。
「あ〜っ・・・」
シザースキックをくらった。
「意識が遠のく・・・梨華ちゃん、強えー・・・」
バタッ。
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 12:56
つづき〜つづき〜♪
エロがほしぃ
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/28(土) 14:54
楽しみ
97 名前:paco2 投稿日:2004/03/01(月) 09:19
95>名無飼育さん 様
有難うございます。ちょっと痛いなと思いながら書いてます。
深く愛し合ってる二人は、つい過激な方向にいってしまいます。
軌道修正頑張ります。

96>名無飼育さん 様
有難うございます。
いしよしの仲って愛があって楽しいですね。
98 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/01(月) 10:00
「朝ごはんは、ひとみちゃんが作ってね。」
「・・・はい。・・いででで〜痛ぇよ。」
梨華ちゃんは、プンプン怒ってバスタオルを持ってお風呂場にいった。
「ボコにされちゃったよ、女は怖いね。」
あまり、食材の入ってない薄ピンクの冷蔵庫を開けてみる。
「たいしたもん、入ってないな。じゃがいもと人参と貝割れで、和風サラダと
あとハムエッグでいいかな?梨華ちゃんは、玄米パン、私はベーグルっと。」
「えーっと、サラダ油はここか。ヘルシーリセッタ中鎖脂肪酸入り。
ダイエットにいいんだよね。
へ〜やっぱり梨華ちゃんは、プロだね、偉いよ、あんたは。」
ジュージュージュー・・・
「仕度できたよー、紅茶はダージリンでいい?」
「いいよー。蒸らしはきっちり2分ねー。」
「はーい。」
99 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/01(月) 11:30
「ひとみちゃん、ありがとう。」
「どうぞ、お座り下さい。」
「ありがとう、アンソニー。」
「誰っがさ。」
「ねえ、今日のニュース、何か事件あった?」
「鶏が死んだんだって。」
「へ〜、鶏殺人事件?」
「違うよ、インフルエンザだって。」
「怖いね。」
「あと、自衛隊がサマワ到着。」
「ふーん。」
「なんのことか、知ってるの?」
「イラクでしょ。大変だね、自衛隊の人、ファンの人もいるのかな?」
「吉澤ひとみの写真とか、持ってくのかな?」
「石川梨華に決まってるでしょ!」
「ふーん、じゃ、梨華ちゃん、砂まみれになってんだ。」
「変な言い方しないでよ。隊員のみなさん頑張って下さいって・・・」
「第一生命、サラリーマン川柳投票募集だって。」
「あー、これって上手いよね、みんな。」
100 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/01(月) 12:03
「あたし、こういうの考えた。」
『ハロプロは、ダンスが大変、疲労ープロ。』
「おっ、上手い、ひとみちゃん座布団2枚。・・じゃ私はね。」
『一徹さん、やさしくしてね、夜だけは。』
「いつも優しいじゃん、トメ子さんには。」
『トメ子さん、あの時の声は、超音波。』
「ばか!」
『トメ子より、安い時給で、カラ威張り。』
「くそー。」
『トメ子さん、流れる血液、ピンク色。』
「むかつく!」
『愛し方、一つ覚えの、頑固一徹。』
「梨華ちゃん、・・私のこと嫌い?」
「なに言ってるのよ、世界一好きだよ。ジョークだよ、ジョーク。川柳でしょ?」
「私、なんか、時々梨華ちゃんの愛が、信じられなくなるよ。」
101 名前:コナン 投稿日:2004/03/02(火) 04:33
おもしろい〜

もっとエロエロしてくらさい。
いしよしでお腹いっぱいに、してくらさい。

更新楽しみにしてます。
102 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/03(水) 12:21
「ひとみちゃん、今日どうする?」
「私、どっこも行きたくない。」
「分かった。じゃ、私ちょっとでかけるね。何か買って来るから何にもしなくていいよ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

♪♪♪〜
「もしもし、あっ、梨華ちゃん?今どこ?」
『駅まで出てきて。保田さんがね、食べに連れてってくれるんだって。』
「うん、行く。何時?・・・わかった、じゃあね。」
103 名前:paco2 投稿日:2004/03/03(水) 12:37
101>コナン 様
有難うございます。
梨華ちゃんは、よっすぃーのことを心から愛しているのですが、
負けず嫌いなので、何か言われると、すぐ勝ちにいっちゃうのです。
もっと、二人の雰囲気を大切にになくてはね。
頑張ります。
104 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/03(水) 13:22
「梨華ちゃーん、あっ保田さん、こんにちは。お元気でしたか?」
「元気に決まってるじゃない。たまには、電話くらいしなさいよ。」
梨華ちゃんは、嬉しそうに保田さんの腕にしがみついている。
「よっすぃーは、何が食べたい?」
「何でもいいっすよ。」
「梨華ちゃんは?」
保田さんは、優しいお母さんのような顔で梨華ちゃんを覗き込む。
梨華ちゃんもなんのてらいもなく、保田さんに甘えている。
「保田さんの知っているお店でいいです。
 普段着だし、気を使わないところがいいです。」
こんなに、甘ーい声でおねだりされたら、誰だって奮発しちゃうよね。
「じゃ、寒いから、おでん屋でいいかな?」
「いいでーす。」
「よっすぃーは?」
「いいっすよ。(安上がりじゃん、圭ちゃんの財布が寒いのかな?)」
東京にこんなとこあったのかな?
って思えるくらい古そうな赤ちょうちんのお店に入っていった。
梨華ちゃんは、自分の胸を押し付けるように保田さんに、ぴったりくっついて、
私は、おまけのように、後ろからついて行った。
105 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/03(水) 14:18
「いらっしゃーい、圭ちゃん、お友達?」
「うん、後輩。梨華ちゃんとよっすぃー。」
「モーニング娘。の?」
「はい。石川梨華です。よろしくお願いします。」
「梨華ちゃん、よろしくお願いしなくていいから。」
「ははっ、すいません。」
「吉澤です。」
「かわいいお嬢さん達ね。何でも好きなもの取って食べて。」
「お姉さん、私そば焼酎のお湯割り、この子達は、ウーロン茶。」
106 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/04(木) 22:31
「寒い日は、こういうところがいいですね。さすが、保田さんですね。」
「ありがとっ、お皿かして、何がいい?よっすぃー?」
「うおー、とりあえず大根と卵。」
「梨華ちゃんは?」
「私も大根。」
肩がぶつかるほど狭い座席、椅子に座ると背中と壁のスペースがほとんどなく
後ろが通れなくなる小さな店は、おでんのにおいがこもって、モアモアしている。
でも、それが、ものすごく暖かい気分にしてくれる。
107 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/04(木) 22:52
「最近どうなの?よっすぃー?」
「えっ、頑張ってますよ、ほら、ちょっと痩せました。」
「そんなこと聞いてないわよ。」
梨華ちゃんを見ると、食べる気配も無いのに、大根を細かくお箸で切り分けている。
保田さんは、小声で、
「梨華ちゃんが、泣いて電話してきたのよ。」
と教えてくれた。
「えっ、なんで?」
「とっすぃーを怒らせちゃったって。けんかでもしたの?」
「・・・・・・・・?」
梨華ちゃんは、うつむいて二人の会話を聞いている。
そのうち、両手で顔をおおって、かすかに、すすり泣いている。
「何で、梨華ちゃん泣いてるの?」
私は、めんくらってしまう。
「梨華ちゃん・・・・」
「・・ごめんなさい・・・ううう・・」
108 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/04(木) 23:32
「怒ってないよ、何にも。」
「だって、今日一緒に出かける約束してたじゃん、でも、行きたくないって。」
「疲れただけだよ、誤解だよ。」
保田さんは、ニコニコ笑いながら、二人の肩を揺さぶって
「誤解だって、分かった?梨華ちゃん。」
「うん。」
「よっすぃー、誤解されるような事、するんじゃないわよ!」
「えーっ、梨華ちゃんばっかり、ひいきしてませんか?」
「なんだって!しっかりしなさい、吉澤。」
「はーい(私って悪者?)」
「さっ、もういいでしょ、今日は私のおごりよ。飲みほーだいよ、どんどん飲んで。」
梨華ちゃんがやっと笑って、
「保田さん、あのウーロン茶なんですけど。」
「飲みたいだけ飲んでいいよ。」
「食べる方は?」
「いいけど、吉澤は、こんにゃくと昆布にしなさい。」
「へっ、そんだけ?」
「じゃ、私は、おじゃがをもらおうかな。」
「もっと食べなさいよ、梨華ちゃん。」
私達は、保田さんの舞台の話とかで盛り上がり、
いっぱい食べて、いっぱい笑った。
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 07:01
http://www.videopokerclassic.com/~161203trA/indexjp.html
10セント(約11円)が約1200万円になったんだって
110 名前:paco2 投稿日:2004/03/05(金) 11:58
107>
間違えました。
とっすぃー(誤)→よっすぃー(正)
111 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/06(土) 14:35
保田さんは、帰りにおみやげまで持たせてくれて、
自分はもう少し飲んでいくからと、
最後に私だけに聞こえるように
「梨華ちゃんのわがまま、許してやんなよ。」
と言って、背中を押した。

「おでん暖かいね。」
「保田さんみたいだね。」
二人で下げている袋をさわりながら、腕を組んで歩くと
街路樹の黒い影のすきまから、街の灯りと車のライトが揺れていた。
「梨華ちゃん、ごめんね。」
私は、梨華ちゃんを引き寄せて小さく謝った。
「今日は帰るの?」
「もう一晩、泊まってもいいかな?」
と聞くと、梨華ちゃんは、嬉しそうに、うなずいてくれた。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/07(日) 02:48
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/07(日) 05:11
あげ
114 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/08(月) 13:13
「なに?なに、なに、あれ?」
「血?血みたいに見えるけど。」
「やっぱ、違うよ、黒いじゃん。」
「血だよ。血液って空気に触れると、鉄分が酸化して黒っぽくなるんだって。」
「嫌だ、怖い。早く帰ろっ。」
「ちょっと、待って。鞄が落ちてるよ。」
「ねえ、もしかして、強盗殺人?」
その時、街路樹の植え込みで、ガサッ!と音がした。
「キャーッ!あ、足。」
腰が抜けそうな梨華ちゃんをグッと支えて、
とりあえず、その場から遠ざかった。
「人の足だね。」
「警察に連絡しよう、ねえ、よっすぃー。」
「でも、犯人にされたら困るじゃん。」
「大丈夫だよ、私たちには、アリバイがあるじゃん。」
「でも、事情聴取されたり、指紋取られたり、未成年だから親が呼ばれたり、
泣き落としで、無理やり『やりました』とか言わされたりするんだよ。」
「あるわけないじゃん。」
「そうだ、119番にしよう。」
「そうだね、それ、それ。」
私は、ドキドキしながら119番に電話した。
「あっ、あの人が倒れてるんですけど。」
115 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/08(月) 14:15
「あの、駅の近くの○○ビルの前の街路樹のところです。」
冷や汗かきながら、電話し終わると、梨華ちゃんが妙に元気になっている。
「5分で来るって。」
「なんか、ドキドキするね。」
・・ピーポーピーポー・・・
救急車のドアがガラガラっと開き、隊員が降りてきた。
「通報された方ですか?」
「はい。あそこですけど。」
私が指差すと、隊員たちは、植え込みに入ってゆき
倒れている人を抱きかかえてきた。
「うるせー、離せ、馬鹿ろう!」
オェ〜
「お父さん、お父さん、ケガしてるから病院へ行こう。」
「ケガなんか、しえねーよ。帰るよ俺は。」
オェ〜
酔っ払いのオヤジは、
眉毛のあたりがバックリ切れていて、顔中血だらけ。
血を手でぬぐううので、手も血だらけ。
着てる服は枯れ葉がいっぱい付いてて、そのうえオェ〜まで。
かなりゴネてあばれてたオヤジも
救急隊員にはさまれて、車に乗せられ連れて行かれた。
116 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/08(月) 22:42
私は、ふっと、梨華ちゃんの顔を見て笑ってしまった。
そしたら、梨華ちゃんも、つられてふふつて笑った。
「勘違いでよかったね。」
「殺人事件じゃなかったね。」
ハハハハ・・・・・
安堵感からか、その後、お腹が痛いくらい笑ったら、誰かに
『うるせー』って怒鳴られて、
慌てて駅まで走って行った。


梨華ちゃんのマンションまであと少しというところで、
同じ車を2回見たような気がした。
117 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/11(木) 02:10
「梨華ちゃん、今通った車、さっきも見たよね。」
「えっ、そう?気が付かなかったけど。」
急に、車のライトが、私達を明るく照らし出した。
後ろを振り返ると、車がすぐ近くに迫ってくる。

「梨華ちゃん、私ら、つけられてるよ!逃げよう!」
私は、とっさに、梨華ちゃんの手を引っ張って、マンションとは反対方向へ走った。
この辺は、割と閑静な住宅地で、
一方通行と曲がり角が多くて、車をまくのに都合がいいと思ったからだ。
案の定、後ろからつけてきた車は、私達を追ってきた。
118 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/14(日) 08:51
車のライトから逃げるために、梨華ちゃんの手を引いて
思いっきり走っているので、体力のない梨華ちゃんは、ハア、ハア、息を切らしている。

一戸建ての家の生垣が見えたので、サッと敷地内に入り、身をかがめた。
すぐに、わきを、車のエンジン音とライトの光が通り過ぎて行った。
何か言おうとした、梨華ちゃんを制して
「また、戻ってくるかもしれないから、もうちょっと隠れてよう。」
私は、梨華ちゃんの肩を抱いて、二人で小さくなり息を殺した。

ウー、ウー・・・・低いうなり声。
「えっ!」
声のする方を見て、ギョっとした。
薄暗い陰から、この家の番犬が、白い歯をむき出して、うなっている。
「キャー!」
ワン、ワン、ワン、ワン・・・・・・!


119 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/14(日) 09:20
犬が吠える声と同時に、
梨華ちゃんは、道路に飛び出して行った。
(逃げ足速えー)
「梨華ちゃん、危ないよ!」
私は、すぐ後を追いかけた。
ハイビームのヘッドライトと共に、
急にスピードをあげて近づく不審な車。
「梨華ちゃん、梨華ちゃん。」
やっと、梨華ちゃんの腕を捕らえ、住宅の密集してる方へ走った。

ちょうど、隠れるのに都合の良さそうな塀があり、
また、敷地内に侵入して、その家の裏側にまわった。
ここなら、大丈夫と思い、
ハア、ハア、しながら、
「怖かったね。」
「怖かったね。」
と話をしていると、
今度は、いきなり、その家の雨戸がガラッと開き、
「こらー!何やってんだ!」
と、その家の主人らしい人に怒鳴られた。
「わーっ!」
反射的に二人は飛び出して行った。
120 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/18(木) 13:19
路地に出た二人は、車がいないことを確かめて
やっと開放された思いで、マンションに引き返した。

梨華ちゃんと繋いだ手を、グイッと引っ張り、素早くドアを閉めた。
カチャ。
ドアがロックされる音と同時に
梨華ちゃんが泣き声みたいな声で、しがみついてきた。
「よっすぃ〜、怖かった。」
「怖かったね。」
部屋の奥へ行こうとした時、
緊張感が解けたのか、梨華ちゃんはヘナヘナとしゃがみこんでしまった。
「梨華ちゃん、大丈夫?」
ガクガク、ブルブル。
「ごめんね、よっすぃ〜。」
「いいよ。」
震える梨華ちゃんを抱き上げて、ベッドに寝かせてあげた。
121 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/18(木) 13:35
服のまま、ベッドに入り梨華ちゃんを抱きしめていると、
やがて、スー、スーと寝息が聞こえてきた。
そーっと、腕を解いて、寝顔を見ると
長い睫毛、鼻筋のとおった横顔
まだ、幼さが残っているホッペと口元。
「かわいい!!」
カーッと体が熱くなり、
アソコが濡れてきちゃた気がするけど
今は、そっとしておいて、自分だけシャワーにいった。
122 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/19(金) 15:15
ソファーに座り、濡れた髪を乾かしていると
その音で目が覚めたのか、
「ねえ〜、よっすぃ〜来て〜。」
と甘えた声で呼ばれた。
梨華ちゃんの枕元に膝まづき、可愛い過ぎる目を見つめていると
梨華ちゃんも視線をそらさず、
両手を私に差し伸べて、キスを求めてきた。
チューッ。
「・・・うん・・よっすぃ・・・・あん・・・」
チューッ。
「・・・はあ・・あん・・・いや・・・ダメ・・・・」
チューッ。
長ーいキスを交わした。
123 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/19(金) 15:37
「よっすぃ〜、苦しいよ。」
「梨華ちゃんが可愛い過ぎるから、・・梨華ちゃん、梨華ちゃん・・梨華・・・」
「もう、・・シャワーに行った?」
「うん。」
「私も行ってくるね。」
「あっ、じゃ私がお風呂いれてくるから、待ってて。」
梨華ちゃんは、着替えとバスタオルを出して、
ベッドをきれいに整えていた。
「あん、よっすぃ〜何するの?」
後ろからいきなり抱きしめた私に、
体を揺すって振りほどこうとして、梨華ちゃんは声を荒げた。
「一緒に入ろっ。」
て、耳をペロっろ舐めたら
「ふっん。」
って、すぐにおとなしくなり、こっくりうなずいた。
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/20(土) 09:14
続き読みたいわ〜(´▽`)
メッチャ面白い!!エロに突入のヨ・カ・ン♪
125 名前:paco2 投稿日:2004/03/22(月) 22:49
124>名無飼育さん 様
有難うございます。
少しづつしか更新できませんが、頑張ります。
126 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/22(月) 23:17
「梨華ちゃん、洗ってあげる。」
「いいよ。」
「いいから、いいから。」
「うふふふ・・くすっぐたいよ。」
ボティソープをたっぷり泡立てて、足の先から頭まで
素手で丁寧にマッサージして洗ってあげる。
胸は、手をおわんの形にして撫でるように
先端を、親指で時々はじいてあげて
「・・はぁん・・・」
「梨華ちゃん、どうしたの?」
「・・はぁん・・・」
「ここは?」
「・・いやぁ〜ん・・」
「これは?」
「・・あっ、あっ・・ダメ・・」
「だめなら、やめちゃうよ。」
「・・はっ、はっ、はっ、は〜・・・」
「欲しいんでしょ。」
「よっすぃ〜、おねがい・・あ〜・・いい〜・・」
127 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/22(月) 23:48
「じゃ、私もお返し。」
と言って、梨華ちゃんも私の体に、ぎこちない手つきでボディソープを塗ってくれた。
「じゃ、今度は体で洗ってあげる。」
私は、ボディソープが付いているツルツルした体を
梨華ちゃんにこすりつけ動かした。
「・・あん、・・は〜っ・・」
梨華ちゃんは、うっとりした顔で、両腕を首に回してくる。
背中をゆっくり、撫で上げる。
お尻のわれめに、指をはわせ肛門にふれてみる。
「・・はぁ〜・・」
吐息をもらし、のけぞる梨華ちゃん。
胸と胸が擦れ合い、私まで感じてしまう。
128 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/03/23(火) 00:05
シャワーできれいに流したあと、二人で浴槽に入った。

梨華ちゃんの顔が上気してきたので
先にあがらせたんだけど、
浴槽から出る梨華ちゃんを下からながめると、
肉付きのよいお尻と
濡れて、ペタっとした陰毛から滴り落ちるしずく。
太ももではじけてる水滴。
艶やかな下半身。
「梨華ちゃん。」
「なに?」
「私も出るね。」
梨華ちゃんと離れることができない
狂ってしまいそうな私がいた。
129 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/04/13(火) 00:02
「よっすぃ〜、・・・」
「な〜に〜、梨華ちゃーん。」
「お誕生日おーめーでーとーっ。」
「ありがとうー!」
ギュッ。
「あん、ちょ、ちょっと苦しいよ。」
「プレゼントは、もちろん・・・だよね。」
「ぅ、うん。あの、ケーキ買ってあるの。」
「ぅおー、食いてー。」
梨華ちゃんは、この日のために、内緒でケーキとプレゼントを準備していてくれた。
「あらためて、お誕生日おめでとう。イエイ!」
「ありがとうー。」
「十代最後、ナインティーンに乾杯!」
「乾杯。」
130 名前:吉作 投稿日:2004/04/29(木) 22:22
待ってます★頑張って下さいね☆
131 名前:paco2 投稿日:2004/05/04(火) 23:35
130>吉作様
有難うございます。そう言って頂けると、勇気と元気が100倍でます。
続きをどういう方向にもっていこうかと、悩んでましたが、頑張ります。
132 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/04(火) 23:55
「ねーえ、よっすぃ〜、ケーキ食べるの一つだけにしときなさいよ。」
「え〜、なに小姑みたいな事言ってるの?いいじゃん、もう一個食べたいの。
これ、梨華ちゃんの愛がこめられてるんでしょ。」
「そうだけど、寝る前だから止めときなって。」
「あ〜、食べたい、食べたい、食べさせてよ。」
「もう、そんな恨めしそうな顔しないで!何も食べさせてもらえない嫁みたいじゃん。」
「あ〜ぁ、渡る世間は鬼ばかりだね。」
「明日、お弁当に持っていけばいいじゃん。ふふっ。」
「出来るわけねーじゃん、そんな事。恥ずかしいよ、見せ付けてるみたいで。」
「よっすぃ〜、それ意味違うから。」
133 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/05(水) 00:17
おあずけを食らって、ふて腐れてるよっすぃ〜の扱い方なんて
手馴れたものの梨華ちゃんは、洗い物をしながら、極上の甘ーい声で
「ね〜ぇ、よっすぃ〜、歯磨きして先に待ってて、お・ね・が・い」
そう言ってよっすぃ〜を促し、私って女優向きかしら?と思ってしまう。
不承不承で歯磨きしているよっすぃ〜は、
わざと「あーー」なんて声を出してうがいしている。
「うふっ、よっすぃ〜たら、子供みたい。かわいいわ。」
「梨華ちゃんも早くしてねー。」
「・・・・・・・すぐ行くわ。」
134 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/05(水) 00:31
私が、布団を持ち上げると、梨華ちゃんはスーっと入ってきた。
いつも可愛いな、と思ってしまうけど、今日は特別そう思う。
朝から梨華ちゃんは、私だけのために過ごしていてくれる。
スケジュールの確認以外は、メールもしないし、電話もしない。
私より忙しい人なのに。
有難うって思った瞬間、私は梨華ちゃんをギュっと抱きしめていた。
135 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/05(水) 01:08
「梨華ちゃん、今日は有難う。」
「いいの、よっすぃ〜、愛してる。」
「私も、愛してるよ梨華ちゃん。ずーっと、ずっと友達でいようね。」
「友達なの?」
「うん。いつか、梨華ちゃんが結婚するかもしれないし、私も。
でもね、梨華ちゃんを心から愛しているから、束縛したくないんだ。」
「よっすぃ〜!私は束縛されたい、あなただけの梨華でいたいの。
私だけを見つめててよ、よっすぃ〜!」
梨華ちゃんは、声にならない声で泣いてしまった。
「・・・うん、・・ごめん・・分かった。もう泣かないで梨華ちゃん。
さっきの言葉は撤回するね。梨華ちゃんは誰にも渡さないよ。」

そう言って私は、力いっぱい梨華ちゃんを抱きしめ
足もからめて、梨華ちゃんを動けなくした。
「さあ、逃げられるもんなら逃げてみ、梨華ちゃん。」
「よっすぃ〜のバカ。」
梨華ちゃんは、息苦しそうに言ったけど、顔は笑っていた。
それを見て、私は安心して力を緩めた。
136 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/13(木) 14:03
梨華ちゃんは、いつの間にか私の胸に顔を埋め、小さく名前を呼んでいる。
「よっすぃ〜、よっすぃ〜・・・好き。」
私は、上気した梨華ちゃんの艶かしい顔を見つめながら、
パジャマのボタンを一つづつはずしてゆく。
梨華ちゃんも待ち遠しいように、
私のTシャツの裾から手を入れ、背中に回してくる。
胸がはだけられると、梨華ちゃんは自分で袖を抜き
上半身をあらわにし、私の首にしがみついてきた。
「・・・よっすぃ〜・・・」

首筋に唇をはわせただけで、梨華ちゃんはもう全身で感じている。
腰が微妙にヒクついて、下腹部に伝わってくる。
「梨華ちゃん、欲しいの?」
「うん。」
私は、梨華ちゃんの蜜が溢れそうになっている部分に手を伸ばした。
137 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/13(木) 14:15
パンティの上から、そーっと梨華ちゃんを何度かなぞってみる。
「あん、・・あん・・」
思わず漏れる吐息と共に、湿ってくるパンティ。
私は、パンティをギュっとつかみ、
欲しがっている梨華ちゃんに食い込ませる。
「・・いや〜ん・・・」
声とは裏腹に、腰が踊りだす。
梨華ちゃんは、もう我慢ができず、私の手をとって
潤いきったそこに、指を押し当て、焦がれている。
138 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/13(木) 14:32
「あぁ〜・・・」
指を挿し込んでいくと、梨華ちゃんは悦びの声をあげる。
「梨華、感じる?感じてる?・・・ここは?・・・これは?」
私はキスをあびせながら、低い声で質問責めにする。
「・・うん・・」
言葉にならない声で、かすかにうなずく梨華ちゃん。
「・・・あっ・・あん・・あぁ・・・」
あえぎながらも、真面目に応えてくれる姿に
ちょっと意地悪な気持ちになり、
指をズコズコしたり、かき回したり
クリトリスと同時に攻めたり・・・・

梨華ちゃんからは、愛液がドクドク溢れだして
二人の下半身は、膝のあたりまでヌルヌルしてくる。
「・・・いやん・・もう・・ダメ・・」
肩で息をしながら、逃げ出そうとしている梨華ちゃんを押さえつけた。
139 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/13(木) 15:04
「梨華ちゃん、満足した?」
梨華ちゃんは、聞こえてないかのように、シーツを掴み
全身を包む甘美な快感に悶えている。

「・・・梨華ちゃんって、潮吹き娘。なんだ。」
私は、愛液をからめた指をなめ、
その指を、梨華ちゃんにもなめさせた。
「梨華ちゃん、今度は、私にもして。」
140 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/18(火) 08:02
超萌える━(゚∀゚)━━
作者さん頑張って下さい♪
141 名前:paco2 投稿日:2004/05/20(木) 00:08
140>名無飼育さん 様
有難うございます。そう言って頂けると嬉しいです。
梨華ちゃんとよっすぃ〜にも、もうちょっと頑張ってもらいます。
142 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/20(木) 00:34
「ねぇ〜」
梨華ちゃんの肩にそーっと手を置く。
梨華ちゃんは、「はぁ〜ん」って、まだ全身が性感帯になってるみたい。

「梨華ちゃんの、ちょうだい。」
「・・うん。」
梨華ちゃんは、苦しそうな顔から、ようやく微笑みを返してくれた。
チュ、チュ、チュ・・・
首筋を、ついばむようにキスしてくれる。
ゾクゾクする感触。思わず顔を横に向けると、
今度は、頬に手を添わせ、とろけるようなディープキス。
舌がからまって、長い時間。
梨華ちゃんの熱、熱い気持ちが伝わってくる。
「・・梨華ちゃん・・・」
梨華ちゃんは、少し唇を離してくれた。
143 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/20(木) 00:42
「・・・いれて・・・」

「・・・ぁっ・・・あぁ・・・・」

「・・もっと深く・・」

「・・梨華ちゃん・・・」

梨華ちゃんは、やりかたが分からないのか、すぐに指を抜いた。
144 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/20(木) 01:09
私は、もう一度、梨華ちゃんにおねだりする。

「梨華ちゃん、あのね、中指でね、クリちゃんを『の』の字を
書くように、軽く触れるか触れないかくらいで、さわってみて。」

「・・・・あっ・・・」
息が震えてくる。気持ちいい。・・・濡れてきた。

「・・梨華ちゃん・・ハア、ハア・・・中指を伸ばして・・・」

「・・ハア、ハア・・アソコに対して・・ハア、ハア・・縦に、上下して・・・」

「よっすぃ〜、・・いい?」
145 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/20(木) 01:23
「・・ハアハア・・あ〜ん、・・・いいよぉ〜」

梨華ちゃんは、愛しむように優しく撫であげてくれる。
・・・もっと濡れてきた。

「梨華ちゃん、挿れて。・・・中指と薬指・・2本・・」

「・・あぁ・・出したり、入れたり・・して・・」

「もっと、奥・・」
私は、梨華ちゃんの手の甲を押さえて、もっと深くへ求めた。
146 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/20(木) 05:38
「・・梨華ちゃん・・・ハァハァ・・
 ・・・指を・・カタカナのコの字に曲げてみて・・・
 ・・ハァハァ・・クリちゃんの裏あたりに・・・ハァハァ・・
 ・・・引っかかるところがあるから・・・・そこを・・
 ・・重点的に・・・ハァハァ・・・あぁぁ〜・・・」

「・・・梨華ちゃん・・イク!」
147 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/20(木) 20:56
ふぁ〜・・・・ だるい話だな。

ちょっとは勃起さしてくれ。
148 名前:paco2 投稿日:2004/05/21(金) 00:43
147>名無飼育さん 様
読んで下さって有難うございました。
文章を書く事の難しさを痛感致しております。
でも、いしよしが三度の飯より好きなので、最後まで頑張ります。
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/21(金) 12:04
途中で事件に巻き込まれそうになったのは、あのままなんですか?
150 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/05/22(土) 14:25
けっこう、ここにきてます。読んでますよ。
よっすぃ〜とりかちゃんの甘い甘い生活のなかに、なんか事件があるんですよね?(ネタバレすいません)

楽しみにしてますんで作者さんがんばってください。
私も、いしよし大好きです。
151 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/27(木) 23:31
149>名無飼育さん様
覚えて下さっていて有難うございます。
誘拐(拉致?)されかけた二人でしたが、あれは、なんとか逃げきって
無事に梨華ちゃんのマンションにたどり着けたということで、終わりにしました。
でも、こんな風にちゃんと読んで下さる方がいらっしゃることを知って
とても、勉強になりました。
因みに、このエピソードのねたは、私自身の体験談でした。
152 名前:paco2 投稿日:2004/05/27(木) 23:53
150>名無飼育さん様
有難うございます。
この話は、二人で過ごす、甘く楽しい休日の話ってことにしてあるので
あまり難しい事は考えてませんでした。
でも、小説ということで色んな事を考えて書かなくてはならないんだなと
気づかせて頂きました。有難うございました。
これからも頑張ります。
153 名前:paco2 投稿日:2004/05/28(金) 00:05
梨華ちゃんの卒業のニュースを聞いた時は、マジ、血の気が引いて倒れそうになりました。
しばらく、やる気のない脱力した日々が続きました。
でも、梨華ちゃんが、また大きく飛躍するのだから、ポジティブに
これからも、ずーっと応援していきます。
大好きな梨華ちゃん、頑張ってください。
154 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/28(金) 10:04
「よっすぃ〜、ちょっとぉ〜、起きて〜。」
「・・んん?・・梨華ちゃん、愛してる〜。・・このまま時間が止まってほしい。」
「そうじゃなくて、何か、熱くない?」
「・・梨華ちゃんもまだ萌えてるの?」
「ばか。」
「よっすぃ〜!起きてよ、何か変な臭いしない?・・もしかして、ケースバイケースでやっちゃた?」
「んな分けねーじゃん、梨華ちゃんの前でなんかしねーよ。」
「うふふっ、やっと起きた。ねえ、なんか、焦げ臭くない?」

ウー、ウー、カンカンカンカン・・・

「火事?」
「えっ火事?」
「うそっ、消防車?どこ?」
よっすぃ〜は飛び起きて、ベランダの方へ走っていった。

「よっすぃ〜!!なんか着てよ!!」
155 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/28(金) 18:54
ベランダの窓を開けてみると、煙が立ち込めている。
ケホッ、ケホッ・・
「煙が、すごいよ、どこなの、いったい?」
「見えないわね、どこかしら?」
「あっちは?」
「よっすぃ〜、ドアノブがあったかいよ。なんで〜」
「梨華ちゃん、下がって。私が開けて見る。」
「よっすぃ〜、気をつけてね。」
「わっ、やべー!!」
「煙?・・閉めて。」
「ここ?もしかして?」
「テレビ、テレビ、テレビ点けてみよう。」
156 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/28(金) 19:20
『臨時ニュスです。本日、都内某所でビル火災が発生しました。』
『現場の中野さーん、レポートお願いしまーす。』

「「うっそー、ここ?」」
「大変じゃん!」
テレビには、梨華ちゃんのマンションが映し出され、
消防車が放水活動を行っている。

『はい。現場の中野です。現在消防車5台による、必死の消火活動が行われております。
まだ、黒い煙があがっております。あぁ、炎も見えています。』

「大変じゃん!!」
157 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/29(土) 11:43
梨華ちゃんは、黙ってウロウロし始めた。
「梨華ちゃん、落ち着いて、何やってんの?さっきから。」
「持って出るもの、どうしよう。・・・預金通帳とカードとピアスと・・・
・・・逃げるときは、濡れた布をかぶるといいらしいよ。」

ほとんど、超音波みたいな声で、パニクっちゃてるのが分かる。
私も怖かったけど、梨華ちゃんを見てると逆に落ち着いっちゃって
何故か、おかしくなってきた。

「大丈夫だよ、すぐ消えるって。」
梨華ちゃんを無理やり引き寄せ、わざと笑顔を作って抱きしめた。

「よっすぃ〜、離してよ。あのね、新宿歌舞伎町ビル火災とか、大阪千日前ビル火災とか
沢山の人が犠牲になってるじゃん、逃げなきゃ早く。」

「はぁ?なんなの、その豆知識っぷりは。大丈夫だよ、マンションが全焼したって話は聞いた事ないから。」
理屈っぽい梨華ちゃんに、ちょっと半切れした私は
その唇をキスで塞いでやった。

「・・うぅ〜ん・・」
こんな中でも、梨華ちゃんはきっちり感じていてくれる。
どんな時でもかわいい梨華ちゃん、大好きだよ。
158 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/31(月) 14:29
「梨華ちゃん!死ぬ時は一緒だよ、だから生きる時も一緒、大丈夫だから落ち着いて。」
私は、これ以上できないくらいの真剣な顔で訴えた。

「よっすぃ〜、ありがとう。でもね、こんな所で犬死できないよ。」
そういうと、梨華ちゃんは、私の手を引っ張ってドアの方へ向かった。

「よっすぃ〜、たとえ、この扉の向こうが火の海でも、
1%でも生きるチャンスがあるなら、明日の為に、うってでようよ。」

梨華ちゃんは、映画のセリフのような言葉を返してくれる。
真面目なんだか、エキセントリックなんだか、
究極のポジティブ全開状態で。

私も決心した。
Do it now
「分かった。もう一度ドアを開けてみるから、下がってて。」
159 名前:よっすぃ〜、ちょっとぉ〜。 投稿日:2004/05/31(月) 14:47
「「せーの!」」
????????
「あれ〜?」
「あれ〜?・・アハハハハ・・消えっちゃった?」
「・・・みたいね。」

♪ルルルル・・・・
「あっ、・・・はい、石川です。」
ニュースを見たマネージャーさんから、
今日は大変そうだから、仕事はお休みでいいという連絡だった。

「やったー!もう1日休める!」
と大喜びの梨華ちゃんに、
「じゃあ、もう一度寝よ。」
と言うと
「ばか!」
と怒られた。

*********

梨華ちゃんとよっすぃ〜の休日は、
愛と友情に溢れ、かつ賑々しく過ぎてゆくのでした。

おわり
160 名前:paco2 投稿日:2004/05/31(月) 23:14
まだまだ、いっぱい書けそうなので、
とんでもない、駄文ですが、続けて書いてみようと思います。
今回も、梨華ちゃんとよっすぃ〜のお話です。
161 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/01(火) 00:04
無邪気でかわいい梨華ちゃんと、お友達のひとみちゃんのお話です。

(1)保育園デビュー

梨華ちゃんのママは、4月からパートで働くことになりました。
「ほーくえんってなに?」

162 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/02(水) 05:23
「うぇ〜ん、うぇ〜ん、ママ嫌だよ。うぇ〜ん、うぇ〜ん。」
「梨華ちゃん、いい子でね、みんなと仲良く遊ぶのよ。ママ行って来るね。先生よろしくお願いします。」
「お預かりします。いってらっしゃい。」

梨華ちゃんは、全然泣き止みません。
困った安倍先生は、梨華ちゃんを抱っこして、うめ組に連れてきました。

ひとみちゃんは、乳児の頃から、この保育園に通っている
とっても元気な女の子です。
163 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/02(水) 11:30
「うぇ〜ん、うぇ〜ん・・・」
梨華ちゃんは、泣き続けています。

「うめ組のみなさーん、おはようございまーす。」
「おはようございまーす。」
「・・・まーす。」「・・うぃっす。」「・・・・」

「あれ〜?・・ます。しか言わなかった子誰かな〜?みきちゃん?」
「・・うぃっす。って言った子、ひとみちゃん?朝は、おはようですよ。」
「あいさつできない子、誰かな〜?マキちゃん、寝ないで〜、昨日も夜更かし?」

「さあ、今日から、新しいおともだちの、梨華ちゃんが入りました。みんな仲良く遊んで下さいね〜。」
「はーい。」
「・・あべちゃん、長いよ。」「・・うぜ!」「・・はぁ?」

安倍先生は、朝の歌をはじめました。
梨華ちゃんも知っていそうな曲を選んだのに、梨華ちゃんはまだ、泣き続けています。
そこで、一応人当たりのいい、ひとみちゃんに目をつけて言いました。

「ひとみちゃん、お願い、梨華ちゃんに、元気を分けてあげて。」
「はーい。・・・梨華ちゃん、もう泣かないで、浮いてるよ。」
164 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/02(水) 12:33
「うぇ〜ん、うぇ〜ん、泣いてないもん。」
「泣いてるじゃん。梨華ちゃんの意気地なし。
 ママとちょっと離れたくらいで、泣いちゃダメだよ。
 あたしなんてね、紙オムツを背負うって通ってた頃から、泣かないよ。
 いつまでも泣いてると、やまんば中澤に食べられちゃうよ。」

「えっ、食べられちゃうの?分かったもう泣かない。梨華がんばる。」

「なんやて!吉澤!」
「やべ、出た!・・安倍先生、助けて〜」
「うぇ〜ん、待って〜」

こうして、梨華ちゃんとひとみちゃんは、お友達になりました。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/02(水) 20:24
うめ組、笑えますね〜。昔、友達とのバカ話で、カバ組とかウマ組、ゾウ組とかヤダ〜って。

ちょっと遅れましたが完結ご苦労様です。
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/04(金) 02:21
こ、これは・・・、いい話だ♪
こういうのは新鮮ですので、これから楽しみです。
167 名前:paco2 投稿日:2004/06/04(金) 16:43
165>名無飼育さん 様
有難うございます。私もバカ話は大好きです。
私の場合バカ話が、だんだんエロ話に移行して、周りが引いていくのは、内緒です。

166>名無飼育さん 様
有難うございます。
この先どうなっていくのか、まだ未知なのですが頑張ります。
168 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/04(金) 22:51
(2)お弁当
うちの保育園は、お弁当箱に、ご飯だけ詰めて持って行きます。
たまに、ママがデカレンジャーとかのふりかけも付けてくれます。
おかずは、給食の先生が、栄養を考えて、保育園で作って出してくれます。

「はい、うめ組さーん、手を洗いましょう。給食当番の人は、白衣を着てください。」

「梨華ちゃん、水道こっちだよ。」
「うん。」
ジャバ、ジャバ、ピチャ、ピチャ・・・・

「梨華ちゃんのハンカチ、どういうの?見せて。」
「これ。」
「ふーん、かわいいじゃん。」(ってね)
「ひゃきんで買ったんだよ。ひとみちゃんのは?」
「これ。」(勝ったね)
「かわいい。」(やだ、男の子みたい)
うふふふふ・・・はははは・・・
「今度さ、おそろいにしようか。」
「うん、しっよか。」
アハハハハハ・・・・・(ありえなーい)
169 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/04(金) 23:46
安倍先生は、ニコニコしながら給食の仕度をしています。
「はい、テーブルクロスを広げて下さい。」

「梨華ちゃん、一緒に食べよ。」
「うん。」
「コップは、ここに置くんだよ。当番の人が牛乳入れてくれるから。」
「うん。」

安倍先生は、みんなを見渡してから、真ん中に立ちました。
「皆さーん、席について下さい。のぞみちゃん、まだですよ、つまみ食いしないでね。
 あさみちゃん、給食睨みつけないでね、こっち向いて。
 真里ちゃん、爪ちょっと長いかな?(うるさいよ!)
 では、手を合わせて、ごいっしょに、いたーだきます。」
「いたーだきます。」

「先生、長いよ。」
「ミキちゃん、ごめんね。今日はミキちゃんの好きなメニューだもんね。」

「鮭のフライとハムサラダ、コーンスープか。梨華ちゃん、おいしいよ。」
「うん、おいしいね。」
「ここさ、給食が自慢なんだって。」

「少子化が進んで、子供を集めるために、エサでつってんだって。」
「マキちゃん、何いってるの?」

安倍先生は、一瞬怖い顔をした。いわゆる裏ナッチの瞬間。
「あはっ、先生給食おいしいよ〜。」
マキちゃんは、あせった。
170 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/05(土) 13:24
「あっ、え〜ん、え〜ん。」
「どうしたの?梨華ちゃん、あっ!」
「牛乳こぼしちゃった、え〜ん。」
「大丈夫だよ、ハンカチで拭こう。」
ひとみちゃんは、自分のハンカチで拭いてくれます。

「パンツも濡れちゃったもん、え〜ん、え〜ん。」
梨華ちゃんが泣いたので、安倍先生はすぐ来てくれました。
「梨華ちゃん、こぼしちゃったの?布きんで拭くから大丈夫だよ。服も濡れちゃった?じゃ、お着替えしましょうか。」
「先生、ごめんなさい。」
「うん、うん、ごめんなさいって言えたね。偉かったね。」

梨華ちゃんは、先生に連れられ、裏側に『モ保』と書いてある体操着に着替えてきました。

「ひとみちゃん、ごめんね。ハンカチ汚れちゃったね。」
「平気だよ。」
ニコニコ笑っているひとみちゃんを見て梨華ちゃんは、
『カッコイイ、なんか好き』と思いました。

夕方、おむかえに来てくれたお母さんに、梨華ちゃんが牛乳をこぼした話をしたら、
お母さんは、
「ひとみちゃん、偉かったわね。」と言って
ごほうびに、クリームたっぷりプリンとチョコでかモナカを買ってもらいました。
「・・よし!」
171 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/07(月) 00:23
(3)安倍先生お泊まり疑惑
園児のおむかえが皆来て、全員帰ったあと
先生達は、お掃除をしています。
仕事が終わったら、毎晩飲みに行っている保田先生が、安倍先生を誘いました。

「ねえ、安倍先生、今日飲みに行かない?和食のいい店見つけたのよ。」
「へ〜、行きたーい。何処にあるのそのお店。」
「○○町。ちょうど○武デパートの裏あたり。」
「近いね、いいじゃん。でも、ごめん。今日は友達と約束してるの。今度絶対連れてって。」

安倍先生は、やけにニヤニヤしながら、誘いを断った。

「安倍先生、今日デートなんでしょう。いいわねー、私にも誰か紹介してよ。」
「違うよ、友達と映画見に行くだけなんだから。」
と幸せのオーラで満ちた顔で否定した。
172 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/07(月) 00:43
それを聞いていた中澤先生が
「圭ちゃん、あたしとデートしょう。」
と声をかけました。

「裕ちゃん?やだ。裕ちゃんと一緒だと、男、寄ってこないもん。」
「うるさいな!お互い様やんか。こないだ、圭ちゃんが目ーつけた男、
トイレ行ってくるわー言うーて、それから、帰ってこーへんやんか、どないやねん。」
「あれは、裕ちゃんが悪いんじゃない。」
「違うわ、圭ちゃんが、酔った勢いで、彼の肩にもたれ掛かって、
白子食べたいとか言うーからやん。怖いでほんまに。」

二人の会話を尻目に、安倍先生は日誌をつけて、ニコニコしながら帰りました。

「圭ちゃん、行くでー。」
結局、保田先生は、いつものメンバーで飲みに行くことにしました。
173 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/10(木) 15:38
ひとみちゃんのお母さんは、車で迎に来てくれます。

「どうも、お世話になりました。」
「はい、ご苦労様でした。ひとみちゃーん、お母さん来たよー。」
「は〜い。」
「お母さん、今日は、ひとみちゃんが偉かったんですよー。」

と、安倍先生は、梨華ちゃんが牛乳をこぼした時、
ひとみちゃんが一生懸命拭いてあげた事をお母さんに報告して、誉めてくれました。

帰りの車の中でも、ひとみちゃんが梨華ちゃんの話をしていたら、
お母さんは、今からデパートに洋服をとりに行くから
その後ごほうびに、好きなものを買ってくれると約束してくれました。

デパ地下でウロウロ買い物をして、駐車場に向かう途中、安倍先生を見かけました。

「あっ、お母さん、安倍先生だよ!」
「ホントだ、誰かと待ち合わせしてるみたいね。」

とお母さんは、気にも留めずにどんどん歩いて行くのですが
ひとみちゃんは、気になって仕方ありません。
手を引っ張られながら、後ろ向きに歩いていると
安倍先生の前で車が止まりました。

「あれっ?」
と思っていると、車は立ち去り、安倍先生もいなくなってました。

174 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/12(土) 10:47
次の日、安倍先生は早番ではなく、普通の時間に出勤してきました。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
次々と園児がやってきます。

ひとみちゃんが、保育園に送ってきてもらった時
安倍先生も入ってきました。
「安倍先生、おはようございます。」
「おはようございます。」

いつもにも増してニコニコしている安倍先生を見たひとみちゃんは
先生が、昨日○武デパートの前で見た時と同じ服を着ているので思い出しました。

「先生、昨日○武デパートのとこにいたの見たよ。」
安倍先生はびっくりして、真っ赤になりながら
「うそ!あははは・・・・」
と、笑いながら着替えにいきました。

それを見ていた中澤先生の眉毛が、ピクリと片方上がり
ニヤッと笑って
「ほんまかー?ひとみちゃん、よう分かったやん。」
とかまをかけてきました。
175 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/12(土) 11:15
「ほんとだよ。安倍先生の今日の服、昨日と同じだから・・・・間違いない!」
テレビっ子のひとみちゃんは、お笑い風に言ってみました。

中澤先生は、フンと笑ったあと
「ひとみちゃん、おもろいなー。」
とおおげさにうけてくれました。

***************

その日も終わり
いつものように、安倍先生が日誌をつけていると
ニヤニヤ笑いながら、保田先生と中澤先生が両脇に座り
安倍先生を囲みました。
176 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/12(土) 11:45
「なっつぁん、今日は、おごってもらうで。」
安倍先生は、背中に寒気を感じながら
「なんだべさ。」
と動揺して、思わずなまってしまいます。

「なんで私が、おごらなきゃならないのよ。」
「あんたなー、教育者がそんなことして、ええと思てるのー?」

「そんなことって?」
「あんた、今日、朝帰りしたやろ。ていうか家帰ってへんやろ。どっから来たん?」
「・・・・・・・!」(絶句)
「口止め料や。」

保田先生もニヤニヤしながらプレッシャーをかけます。
「なっち、・・・・ばれてますから、残念!」

「・・・なっち切りや!・・・・行くでー。」

今日の保田先生は、いつものメンバー+安倍先生で飲みに行くことになりました。
安倍先生は、携帯を出しメールを打ち始めます。

それを見てすかさず、中澤先生がよこやりをいれます。
「なっつぁん、彼氏に今日は、緊急ミーティングや、言うといてや。」

「返さへんでー、圭ちゃん、今日は何から飲むー・?」
安倍先生、顔色が悪いです。



177 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/18(金) 23:09
(3) お昼寝

安倍先生は、お昼寝の前にお話を読んで聞かせてくれます。

お話が終わって、お昼寝の時間になりました。
梨華ちゃんは、ひとみちゃんの隣に布団をぴったりつけ
「うふふふ・・、一緒に寝よっ。」
と言って、可愛く笑っています。

「うん。」
次に、「ね〜え。」と言って手を伸ばしてきました。
ひとみちゃんも、すぐに分かって
二人は、布団の中で手を繋いで、目をつぶりました。

でも、ひとみちゃんは、なんだか嬉しくて、顔がニヤけてしまいます。
安倍先生が
「ひとみちゃん、笑ってないで、早く寝ましょう。」
と言って子供達の間にはいって、寝たふりをしました。

「グー、グー・・・」
誰かの寝息が部屋に響きわたり、やがて全体がシーンと寝静まりました。
178 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/18(金) 23:40
ひとみちゃんは、まだ眠れません。
「あっ!そうだ。」
いい事を思いつき、梨華ちゃんの手をグイっと引っ張りました。

梨華ちゃんも、まだ寝ていません。
「なに、なに?」
って、嬉しそうに顔を寄せてきます。

「あのね・・・」
と言いながら、ひとみちゃんは、布団を二人の頭にすっぽり掛けました。
薄暗い布団の中で、お互いの目だけがはっきり分かって
見つめあい、『ふふふ・・・』と笑いあっていました。

ひとみちゃんは、前からやってみたい、と思っていた
ある冒険に、梨華ちゃんを誘ってみました。

「いいよ。」
梨華ちゃんは、快諾してくれて
二人は、怪しい笑いを浮かべて、やがて寝てしまいました。
179 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/19(土) 00:47
「♪おきよ、おきよ、よいこの、うめ組さん。」
『ちょうちょ』の替え歌で、先生達が子供達をおこします。
   ?
「スー、スー、スー・・・」
「はあ?」
「安倍先生?」
ぐっすり、寝込んでいるのは、安倍先生です。

中澤先生は、「チッ!」と舌打ちをして
「うめ組さーん、集まって下さーい。」
と、子供たちを安倍先生の回りに集めました。

「さあ、みんなで、安倍先生って言いますよ。せーのー!」
「あべせんせー!」

「えっ?」
大声で呼ばれて、安倍先生はびっくり。
鳩が豆鉄砲食らった様な顔で(・・どんな顔?誰か教えて)

さらに
子供達と保田先生と中澤先生が、ニヤニヤ笑っているのを見て
真っ赤になってしまいました。

仕事が終わり、今日も飲みに行った保田先生は、
安倍先生の話題で大いに、盛り上がりました。
180 名前:paco2 投稿日:2004/06/19(土) 06:50
間違えました
(3)お昼寝 × → (4)お昼寝 ○
181 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/06/20(日) 08:31
更新時間を見ると、直接入力してるように思えるのですが
メモ帳などに入力した物をコピペすると楽ですよ。
182 名前:paco2 投稿日:2004/06/21(月) 00:34
181>名無飼育さん様
有難うございます。せっかく頂いたご助言ですが、
いまひとつ、パソコンオンチなもので、メモ帳などの使い方が分かりません。
なので、ちょっとなさけないのですが、これからも
脈絡のあるような、無いような駄文を書き続けていくつもりです。
本当に、気遣って下さって有難うございました。
183 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/21(月) 00:46
(5)お昼寝で見た夢

ひとみちゃんは、ちっちゃい布団の中で、梨華ちゃんと笑いあって
そのうち寝てしまいました。
そして、夢をみました。
184 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/21(月) 01:17
***************

目の前には、敵が二人。
先ほどの戦いで、手傷を負った梨華ちゃんは、
すっかり戦闘能力を失っています。

「梨華ちゃんを守らなくては。」
ひとみちゃんは、隠し持っていた銃の安全装置をはずし、梨華ちゃんに渡しました。
「ひとみちゃん、これは?」
「敵が来たら、撃って。両手でしっかり持って撃つんだよ。」
「ひとみちゃんは?・・・」
梨華ちゃんは、泣きそうな顔でひとみちゃんを見上げました。

「・・・・・・いくぞ!」
ひとみちゃんは、青白い顔で前を見据えて
わざと目立つように、躍り出て行きました。
瞬間、二人の敵はひとみちゃんに襲い掛かります。
「死ね!」
バシッ、シャッキーン、スバッ・・・
ひとみちゃんは、まるで、剣の舞を踊ってるみたいに
体をかわしながら、二人と戦います。

「あぁぁぁ・・・・」
ひとみちゃんの悲鳴と共に、血しぶきが飛びます。
ひとみちゃんは、膝まづき、敵の剣がキラリと光って振り下ろされました。
ひとみちゃんは、必死で叫びます。
「梨華ー!撃てー!」
バーン!
「うううう・・・・苦しい。」

***************
185 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/06/21(月) 01:34
すると、その時、
『♪おきよ、おきよ、よいこの、うめ組さん。』
と先生の歌が聞こえてきました。

「あっ、夢だったんだ、よかった。」
ひとみちゃんは、ほっとしました。
でも、布団の中で汗びっしょり。
おまけに、酸素不足で息苦しくて、何かすごく疲れました。

そのころ、梨華ちゃんはというと、
布団から飛び出し、ひとみちゃんの頭のあたりに足を乗せ寝ていたのでした。
186 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/01(木) 12:20
(6)お昼寝で見た夢の続き

ひとみちゃんの家は、4人家族です。
お父さんは、いつも朝早く出て、帰りは遅くて、一緒にご飯を食べた事がありません。
弟は、まだ小さくて手が掛かるので、お母さんが付きっ切りです。
だから、ひとみちゃんは、
「お姉ちゃんなんだから、しっかりしなさい。」
といつもお母さんに言われていて、自分の事は自分でできる子です。
今夜も、お母さんに怒られないように
さっさと夕食を食べて、どんどんお風呂にいって、どんどん布団に入りました。
ひとみちゃんは、布団の中で、今日お昼寝で見た怖い夢のことを思い出して
空想にふけっていました。
「あの続きは、どうなったのかな?あたしは、死んじゃうのかな?」
と、気にしていると、また夢をみました。
187 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/01(木) 22:08
***************

バーン!
ひとみちゃんは、梨華ちゃんに「撃て!」と言ったと同時に体をひねり、
地面に伏せたので、梨華ちゃんの撃った玉は、見事に敵のわき腹に命中しました。
「うううううう・・・苦しい。」
「・・・重い。」
ひとみちゃんが伏せたその背中の上に、敵が倒れこみました。
もう一人の敵は、これを見て逃げていきました。

助かったけど、今の音で自分達の居場所がばれてしまったのは確実。
時間がない。
「梨華ちゃん、大丈夫?」
ひとみちゃんは、梨華ちゃんに駆け寄りました。
「ひとみちゃん、あたし怖かった。もしひとみちゃんに当たってたら・・・」
梨華ちゃんは、銃を握り締めブルブルふるえています。
ひとみちゃんは、梨華ちゃんをぎゅっと抱きしめ、
銃を自分の懐へしまいました。

188 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/01(木) 22:57
「梨華ちゃん、時間がない、逃げるよ。歩ける?」
「・・うん?ひとみちゃんこそ、血が出てるよ、大丈夫?」
ひとみちゃんは、青白い顔で口だけ笑って
「大丈夫、じゃない痛いよやっぱ。」
と、いつもは吐かない弱音を、冗談めかして言いました。

「・・・馬鹿。」
今度は梨華ちゃんが、泣きながら優しく抱きしめてくれました。
梨華ちゃんの涙は、ひとみちゃんの頬にも伝わり
なんとなく、冷んやりしました。

「さあ、行くよ。峠を越えれば仲間がいるから。」
そう言うと、ひとみちゃんは、梨華ちゃんをおんぶして歩き始めました。
「ひとみちゃん、ごめんね。重たいでしょ?」
「うううん、梨華ちゃんなんて、軽ちんだよ。」
ひとみちゃんは、笑って言いましたが、そんな訳ありません。
だって、ひとみちゃんは、左手をダランとして、右手だけで背負ってくれているのです。
梨華ちゃんは、背中に顔をつけ泣きました。
涙で背中が、じわっと湿ってきます。
気がつくと、夜露で濡れた雑草を掻き分けて歩いているせいで
腰のあたりまで、すっかり濡れていました。
「足元が、冷たいな、・・冷たいな・・・冷たいな・・・・」

******************

「冷たいな、何か冷たいな?あれっ!」
ひとみちゃんは、何か冷たいのを感じて目を覚ましました。
「・・・・えっ、やばっ、おねしょだよ!」
ひとみちゃんは、寝返りしているうちに
いつの間にか弟のおねしょ布団の上に寝ていて、
自分のパンツまで弟のおしっこで湿っていたのでした。
189 名前:もも 投稿日:2004/07/11(日) 03:56
保育園ものですか?可愛いっすね!
楽しみだわぁ〜次回の更新をお待ちしてます。

作者さま、エロも書けて、可愛いのも書けて素敵です!
190 名前:paco2 投稿日:2004/07/12(月) 22:42
189>もも様
有難うございます。
そう言って頂くとものすごく励みになります。
文才が無くて、極微量しか更新できないのですが、頑張ります。
191 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/12(月) 23:54
(7)日曜日

ひとみちゃんと梨華ちゃんの住んでる町は
Jリーグができるもっと前からサッカーの盛んな町でした。
お昼休みに、普通の会社員がサッカーをやったり、
町内対抗サッカー大会があったり、
そんな町で育ったひとみちゃんのお父さんも、子供の頃からサッカー一筋です。
普段は、仕事が忙しくて、ひとみちゃんと顔を合わせることもないのに
日曜日の支部リーグの試合の日ともなると、
朝早くから家族を車に乗せ、
コートの整備や、ライン引き、テントの設置など率先してやってくれるお父さんです。
もちろん、試合にも出ます。
でも、こっちの方は最近運動不足で、いいところを見せられないのですが、
試合後の打ち上げでは、結構もててしまって
2次会の後、朝帰りするのはお母さんには秘密にしているお父さんでした。

ひとみちゃんも、そんなお父さんのすすめで
保育園の年少さんになってから、少年サッカーに入りました。


192 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/19(月) 00:04
今日は練習試合の日です。
いつもと違って、目前に迫る、県サッカー協会主催の公式戦があるため
河川敷のコートを借りて、強豪チームを招待しての大きな練習試合です。

ひとみちゃん達は、朝から保育園前に集合しました。
「梨華ちゃん、おはよう。」
「ひとみちゃん、おはよう。エヘッ。」
梨華ちゃんは、ひとみちゃんに誘われてサッカーチームに入ってから、
初めての試合で、おそろいのユニホームを着て、なにかワクワクしています。
だんだん、同じユニホーム姿の子供達が集まってきて
日曜日の静かな街で、ここだけが熱気を帯びています。

「皆さん、おはようございます。」
道路をお掃除しているおじさんも、ニコニコして楽しそうに声をかけます。
バーコードみたいなハゲ頭で、黒ずんだ顔の変なおじさんは、
実は、ここの園長先生でした。

「いってきまーす。」
「バイバーイ。」
全員そろったところで、バスに乗り込み
見送りに来てくれた人達に手を振って、出発しました。
193 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/19(月) 06:26
安倍先生と保田先生も、応援という形で一緒にバスに乗りました。
でも、実際は、普段の仕事と変わりありません。

「みきちゃん、鼻かんだら、ティッシュはゴミ袋に入れなさいよ。」
「ののちゃん、まだお菓子を食べちゃいけませんよ。」

「ねー、なっち、今日は給料でないんだし、親もいるからいいじゃん、ゆっくりしなよ。」
「そうはいかないわよ。あっ、圭ちゃん、今日二日酔いなんでしょ!」
「・・・まーね。・・・う〜、バスって気持ち悪い、寝かせて。」
「吐かないでよ。」
194 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/19(月) 07:30
「ねえ、なっち、ピアノの彼氏とはどうなってんの?」
「どうって?」
「うまくいってる?」
「うん。」
「いいわねー。」

「あのさー、ホットペッパーの7月号見た?」
「なによ、いきなり。見てないよ。」
「表紙のマンガのところに、心理テストが載ってたの。知らないのなら、面白いからやってみる?」
「うん。」

「じゃーね、好きな人に求める3つの条件言ってみて。」
「・・・・えーっと。」

「愛情、家庭的な人、センスのある人・・かな?」
「じゃー、さらにもう一つ加えると?」
「・・・経済力かな、アハッ。」

「あのね、これって4つめが、一番求めているものなんだって。なっち、結局は、お金なんじゃん。」
「なーに?圭ちゃん、ひどーい。」
「いーじゃん、私なんて最初から全部お金だよ。お金、お金、お金、お金。」
ハハハハハ・・・・

ワイワイ、ガヤガヤしてるうちに、バスは会場に着きました。
195 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/24(土) 13:36
第一試合は、ほかのチーム対ほかのチームだったので
監督は、子供たちを集め
コートのわきで練習を始めさせました。
ほとんど、遊びの延長なので
すぐに、バラバラになって止めてしまいます。

ひとみちゃんもボールを置いて、家から持ってきたカードを
梨華ちゃんに見せました。

「すごいね、こんなに持ってるの?」
「うん、お小遣いためて買ったんだよ。」
「へー、お小遣いって、いくらもらっているの?」
「一日10円だよ。」
「へー。」
「貯金して、溜まったら買うの。」
「ふーん。」

「なに?なに見てんの?」
「見せてー。」
「あっ、みき、このキラキラカード持ってない。いいなー、欲しーい。」
「これ?だめ。一枚しかないから。」

まきちゃん、みきちゃん、ほとんどの子がひとみちゃんを囲み
おしゃべりを始めました。
196 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/07/24(土) 15:30
「こら!おまえら、なにやってんだよ!・・・集合。」

第二試合は、モ保FC対イエロー幼稚園なので
監督は、子供たちを集めました。

「はい、よく聞いて。ラフプレーはするな。ボールは一人でもたない。なるべくパスしろ。分かったか?」
「はい!」
「じゃあ、並んで。」

モ保FCとイエロー幼稚園の子供たちは
センターラインをはさんで、向かい合わせになり、あいさつをします。

「「よろしくおねがいしまーす。」」

ピー!

キックオフの笛が鳴りました。
197 名前:もも 投稿日:2004/07/29(木) 03:13
更新おつかれさまです。

保育園のサッカー可愛いっす。v
ひーちゃんはやっぱりキャプテンなのかな?

更新楽しみに待ってますYo! ( ^▽^)人(^〜^0)
198 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/04(水) 23:17
197>もも様
ありがとうございます。
なにをやっても、かっこいいひとみちゃんには、頑張ってもらうつもりです。
では、キックオフ!
199 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/04(水) 23:48
まきちゃんからひとみちゃんへボールが渡り、試合がはじまりました。

ひとみちゃんは、ボールを前へ、前へ、ドリブルで進みます。

敵は、ほとんど全員で

ひとみちゃんの前に立ちふさがります。

あっという間に、身動きがとれないくらい

敵も味方も、ひとかたまりになって

ボールを蹴っても目の前の子の足に当って戻ってくる。

相手チームの子も、

たまたま、自分の足にボールが当ったので、蹴っちゃった。

みたいな。ゲームだか、なんだか、ごちゃ、してるばっかりで分けわかりません。


200 名前:paco2 投稿日:2004/08/05(木) 12:24
199>訂正
ごちゃ、してるばっかりで → ごちゃ、ごちゃ、しているばっかりで
201 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/05(木) 12:42
「なにやってんだよ、あいつら!」

この様子を遠くから見ていたひとみちゃんのお父さんは、

いらいらして、たまらず叫びました。

「おまえらー!団子になるなー!広がれー!」

周りのご父兄もびっくりするほどの大声で

さすが、モーニング建設(株)の現場監督は、だてではありません。

「ちょっと、誰?あの人?」

「やっちゃん、かしら?」

「やーね、あそこのチーム、怖い。」

反対側の応援席の母親達が、指をさしてひそひそ話しをしています。
202 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/08(日) 16:19
「こらー!ひとみ!行けー!」

「なにやってんだ!バカやろう!」

ひとみちゃんのお母さんと梨華ちゃんのママは、顔を見合わせて苦笑い。

「すいません。恥ずかしいわ。」

「そんなこと無いですって。熱心で素敵ですわ。」

梨華ちゃんのママは、見え透いたフォローをします。

「ああ見えてもね、うちの人、県立モーニング東高校時代に、全国大会まで行ったことあるんですよ。」

せめてもの言い訳を、ちょっと誇らしげにカミングアウトするひとみちゃんのお母さん。

「えっ、東高ですか?すごい。・・あの、もしかして大学は筑波とか?」

「ええ。」

ひとみちゃんのお母さんの回りに、勝ち組オーラが・・・・

梨華ちゃんのママは、目の前で繰り広げられている

罵声を飛ばすフリーガンのような、ひとみちゃんのお父さんが

以外なほどの高学歴なのに、マジ、びっくりしました。

『人は、見かけによら無いものね。』

「えっ、今、何かおっしゃった?」

「いえ、いいえ、・・素敵ですわ。ホホホホホホ・・・・・」

203 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/23(月) 23:55
誰がボールを蹴ったのか、
中央のごちゃごちゃしたところから
ぽつんと離れたところにいた梨華ちゃんのところへ
ボールが転がってきた。

梨華ちゃんにとって活躍できる絶好のチャンス!
のはずが

ボールをじっと見つめて、梨華ちゃんは困っていた。
足が出ない。
204 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/24(火) 13:49
「梨華ちゃん、頑張って!」
「梨華ちゃん、蹴るのよ!」
「梨華ちゃん、早く蹴りなさい!」
安倍先生やお母さん達は必死です。

敵のイエロー幼稚園の子供達が走ってきて、
周りを囲まれてしまっても
梨華ちゃんは、まだ考えています。

「早く蹴れ!!」
割れるような大声で、ひとみちゃんのお父さんに一喝され、
梨華ちゃんは、ちょこんと、ボールを蹴りました。

コロコロと転がったボールは
目の前の敵の足元へ、ナイスパス!?

それを貰って、梨華ちゃんの横を通り抜けて
イエロー幼稚園の子がボールのむかって、まっしぐらに走ります。

「なにやってんだよ、おい!」
ひとみちゃんのお父さんは、がっかりしてます。

「すいません。」
梨華ちゃんのお母さんは、小さな声で謝りました。
205 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/27(金) 00:59
204>ごめんなさい。訂正いたします。
ボールのむかって、まっしぐらに走ります。(×)
      ↓
ゴールにむかって、まっしぐらに走ります。(○)
206 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/27(金) 01:24
梨華ちゃんは、落ち込んでいます。
ミスして、怒鳴られて
小さな胸が張り裂けそうに痛みます。

その場に立ち尽くしている梨華ちゃんを見た安倍先生は
『梨華ちゃんの気持ちをつぶしちゃいけないわ。』
と思い、大声で

「梨華ちゃん、それでいいのよー!頑張ってー!」
と叫びました。

安倍先生の声に気づいた梨華ちゃんは
チラッと、先生の顔を見て走りだしました。

『先生、ありがとう。』
梨華ちゃんは、なぜか、自然に涙が溢れてきます。

苦しい時にかけてもらった言葉が
涙が出るほど嬉しいなんて、生まれて初めて知りました。

梨華ちゃんは、安倍先生の優しさにふれて
それから、なんだか、勇気と力がわいてきました。
207 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/27(金) 06:50
ボールをもっていったイエロー幼稚園の子は、
自分とゴールの間に誰もいないのを見て
すかさず、シュートを放ちます。

ボールがゴール前まで飛んできた時
・・ダッダッダッダッダ・・
ひとみちゃんが走りました。

『やっべっ!』
ひとみちゃんは、おもいっきりジャンプしました。
ドン!
鈍い音が響き
ゴホッ、ゴホッ、
ひとみちゃんが咳き込みます。

ジャンプ1発。胸で止めたボールは、ラインの外にでました。

「いいぞ!ひとみ!」
ひとみちゃんのお父さんの目が、キラリと光ました。
208 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/08/29(日) 21:33
その後、両チームとも点が入らず
前半戦が終了し、
子供たちは、監督のもとへ集まります。

監督の話が終わり、短い休憩のちょっとの間に
ひとみちゃんのお父さんは、ひとみちゃんを呼んでアドバイスして
『おもいっきりいけ!』
と激を飛ばしました。
209 名前:もも 投稿日:2004/08/31(火) 09:10
わぁ〜い更新されてる。

作者さま、更新お疲れさまです。

ひーちゃんパパの熱い応援が笑えていいです!
かっけぇ〜ひーちゃん応援してます。

時々覗きに来てますから、更新頑張ってください。
210 名前:paco2 投稿日:2004/09/01(水) 10:42
209>もも 様
読んでいただき有難うございました。
感想とか書いて下さると本当にうれしいものいですね。
これからも、少しづつですが頑張っていきます。
211 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/01(水) 11:23
後半戦開始。

子供たちの動きが、良くなっています。
短いパスも繋がるようになり、お互いを呼び合う声も出てきました。
しかし、動きが良くなってきたのは、敵も同じことでした。

イエロー幼稚園の子が、ドリブルでボールを運びます。

「ボールを止めろ!ディフェンス!!」
ひとみちゃんが声をかけます。

ザザザザザッー・・・・
あさみちゃんが、素早く反応し、スライディングでボールを取りにいきます。

敵は、ボールを軽く浮かせ
難なく、あさみちゃんを飛び越えて行きました。

ひとみちゃんの声を聞き、梨華ちゃんも走ります。
イエロー幼稚園の子の前に立ちはだかり、進行を止めました。
ボールを取ろうと足を出しますが
簡単に抜かれてしまいました。

『あ〜、また失敗しちゃった。』
でも、もう梨華ちゃんは、落ち込みません。
212 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/01(水) 11:45
梨華ちゃんが、敵の動きを止めたのが功を生じました。

後ろから、敵を追ってきたみきちゃんがイエロー幼稚園の子に追いつき
梨華ちゃんを抜いた直後、スライディングしました。

「あっ!」
ボールを奪われ、みきちゃんにつまづいて倒れた敵は
砂を手で握り締め、悔しくて
おもいっきり、みきちゃんを睨みつけました。

みきちゃんが奪ったボールは、
キーパーののちゃんの好判断で
前にいるひとみちゃんにロングパスで送ります。

「ひとみちゃーん、頼む!」
213 名前:もも 投稿日:2004/09/04(土) 15:42
更新お疲れさま

作者さま、
こちらこそ楽しく読ませて頂いてありがとうございます。
少しずつでも、是非続けてください。mm(_ _)mm

ひーちゃんのシュートが決まるのか?気になります。

次回の更新を楽しみにお待ちしてます。
214 名前:paco2 投稿日:2004/09/05(日) 13:26
213>もも 様
有難うございます。
そう言っていただけると、本当にうれしいです。
ひーちゃん、梨華ちゃん、共々ハッスルハッスル、頑張ります。
215 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/05(日) 16:10
ひとみちゃんは、フリーの状態でののちゃんからパスをもらいました。

「ひとみー!がんばれー!」
お父さんが叫びます。

「ひとみー!決めろ!!」

『ひとみ、見せてくれ。俺が教えた一子相伝のあのシュートを』
お父さんは、心の中で祈ります。

ひとみちゃんは、ゴール前までドリブルでダッシュ。

敵も、猛ダッシュで、ひとみちゃんにぶつかってきます。

ドン!
「痛てっ・・わざとぶつかったな!ショルダーチャージかよ?」
ひとみちゃんは、少しふらつきました。

それと同時に
「ファールだろ!審判!」

ひとみちゃんのお父さんが叫びます。
「バカ野郎、ファールとれよ、あの審判、どこのオヤジだ。」

お父さんのわめき声で、かえってビビッた審判は
ファールを取りそこね、空気がピリピリとはりつめます。




216 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/05(日) 16:44
ひとみちゃんは、体制を崩しながらも、敵をかわし
シュートの姿勢にはいりました。

「今だ!決めろ!ひとみ!」

ズバーーーーーッ

「入れ!モーニングショットだ!!」

ビューーーン

ボールは、キーパーの頭上をわずかに超え、ネットを大きく揺らしました。

ワーワーワーワー
安倍先生や、お母さん達の大歓声が沸きあがります。

「やったぞ!・・・奥さん見ました?」

と何気に、梨華ちゃんのママの肩を抱いて、ひとみちゃんのお父さんが
「目が覚めるようなシュートでしょ、名付けてモーニングショットです。アハハハ・・・」
と解説してくれます。

『あっ、それ、TVコマーシャルのぱくりじゃないの?』
と梨華ちゃんのママは思いましたが、口では

「素敵ですわ。」
と角が立たないように言い、
目に光を入れながら、にっこり微笑んでひとみちゃんのお父さんの顔を見上げました。


217 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/06(月) 11:35
「かっ、かわいい・・・・」
「えっ?」
梨華ちゃんのママは、顔がポーっと赤くなりました。

ドキッ、ビクン。
「いっ、いえ、こっ、子供たち、かわいいですね。」

とっさに誤魔化した、ひとみちゃんのお父さんは
肩を抱いている腕が硬直して、ぎこちなく腕を下ろしました。

「アハッ、アハハハ・・・・恐縮です。」

ひとみちゃんのお父さんは、股間が熱くなり
フーン・・と、熱い鼻息を漏らしますが、冷静を装って

「おい、母さん、母さん・・・」
と、ひとみちゃんのお母さんを探しますが、呼ぶ声は上ずって
焦点の合わない目は、宙に向けられていました。

ピーッ。
やがて、1回戦がおわり、子供たちが戻ってきました。
218 名前:もも 投稿日:2004/09/11(土) 01:25
更新お疲れさまです。

ひーちゃん&りかちゃんの大活躍期待してます!

ひーちゃんパパの暴走ぷりも笑えます。
次回の更新も楽しみに待ってます

( ^▽^)人(^〜^0)
219 名前:paco2 投稿日:2004/09/15(水) 15:28
218> もも様
読んで下さって有難うございます。
ひとみちゃんのお父さんは、梨華ちゃんのママに一目惚れっぽいです。
でも、そこは、理性ある社会人としてわきまえて、おられるので
ノープロブレムのはずですが、なぜか
理性と感情が、ギクシャクしておられます。
220 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/15(水) 15:42
1回戦は、辛くも 1−0 で勝ちました。
監督は、次の試合の審判をしなければなりません。

ひとみちゃんのお父さんは、監督がいない間、
子供達の練習を見させて欲しいと、監督に申し出ました。

監督は、『是非とも、お願いしたい。』と二つ返事で
喜んでくれました。
221 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/15(水) 23:25
「みんなー、集まれー、練習するぞ。」

ひとみちゃんのお父さんは、子供達を2列に並ばせ、パスの練習をさせます。
次は、お父さんが出すパスを受けて、シュートする練習。
そして、子供同士で、ワン・ツーパスして、シュートする練習。

短時間で得点をあげられるチームを作らなくてはなりません。

お父さんは、考えました。
『やっぱり、ひとみにボールを集めるか?』
222 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/16(木) 00:08
「はい、止めー。集合!」
ひとみちゃんのお父さんは、子供達の練習の成果を誉めたあと
休憩時間に、おにぎりを1個だけ食べておくように言いました。

「梨華ちゃーん、おにぎり持ってきた?」
「うん。」
「一緒に食べよ。」
「いいよ。」

ひとみちゃん達は、荷物が載せてある青いビニールシートの上に
靴を脱いで座り、それぞれのバッグの中から、おにぎりを出して食べ
お母さん達が用意してくれた麦茶を飲みました。

「バナナの差し入れだよー。」
安倍先生と保田先生は、ニコニコしながら、
一人一人にバナナを分けてくれます。

青い空の下、無邪気な笑い声が響きピクニックのような一時が過ぎてゆきました。
223 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/30(木) 14:58
2回戦は、モ保FC VS お台場幼稚園です。
こちらの幼稚園は、お医者様のご子息や、帰国子女といったハイソサイティな
お子様達のチーム構成で、応援席もかなり華やか。
ユニホームは、既製品の色を嫌って、特注のユニホーム。
コーチは、Jリーグの選手だった。

でも、試合の方は全然弱くて、モ保FCが楽勝。
ひとみちゃん、ミキちゃん、マキちゃん達は、
シュートの練習みたいに、点を重ねていった。
224 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/09/30(木) 15:18
3回戦は、モ保FC VS 吉本幼稚園です。

「あんたらみたいな、仲良しグループの、お遊びへたくそサッカーになんか、負けへんで!」
さっそく、吉本から、言葉による先制攻撃が飛んできました。

『へたくそかどーか、終わってから言ってみろ。』
挑発された、その言葉でスイッチの入ったひとみちゃんは
大きな目を見開き、相手をにらみ付けました。

「みんな、集まって。」
ひとみちゃんは、全員を集め、円陣を組みました。
「最後の試合、がんばろう!」
「モ保FC−・・・ファイト!」
「オー!!」

みんなの闘志がひとつになり、試合が始まりました。
225 名前:もも 投稿日:2004/09/30(木) 20:52
更新お疲れさま。

しばらくこちらに来なくてすいませんmm(_ _)mm
吉本に負けるなぁ〜みんな頑張れ!!
( ^▽^)人(^〜^0)
ひーちゃんシュート炸裂ですね!
226 名前:paco2 投稿日:2004/10/07(木) 22:55
225>もも 様
読んで下さってありがとうございます。
いつも、励まされています。
では、今回もひとみちゃんに頑張ってもらいます。
227 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/07(木) 23:28
吉本は、確かにチャイルドサッカーのレベルを超えたサッカーをしてきます。
前半戦、早くも、モ保FCは攻め込まれ、守備固めを強いられていました。

「まずい!吉本のパスが通った。」
「ゴール前、気をつけろ!」
ひとみちゃんは、全体を見渡し、指示を出します。

しかし、その言葉の直後
吉本は、ロングシュートを放ちました。

「ののー!」
ひとみちゃんが叫びます。

キーパーの、ののちゃんは、両手を広げボールに立ち向かいます。
ビューン
「きたっ!・・・ゴールは割らせない!」
ののちゃんは、ボールに飛びつきます。
ズルズルズル・・・・・
間一髪!ののちゃんは、ボールを止めましたが、
ユニホームは泥だらけ、ほっぺのかすり傷からは、血がにじんでいました。
228 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/07(木) 23:54
「いけー!」
ののちゃんは、敵が戻る前に、おもいっきりキックして、ボールを遠くへ飛ばしました。

「ナイスセーブだよ、ののちゃん。今度はこっちの番だ。」
ボールをもらった、みきちゃんは、ひとみちゃんの動きを目で追い
一瞬立ち止まりました。

「アーッ・・・」
ドテッ!
立ち止まったのが命取りでした。
みきちゃんは、激しく倒されました。
吉本が、二人がかりで、スライディングタックルしてきたのです。

「痛たたたた・・・」
襲ってきた、どちらかの子がわざと
みきちゃんの足をねらったのに違いありません。
みきちゃんは、足が痛くて立てませんでした。

立ち上がれない、みきちゃんを見て
吉本の子が、「フッ。」っと笑って走っていきました。
229 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/08(金) 00:30
「くそー、これくらいで負けるもんか!」
立ち上がったみきちゃん。
照りつける太陽の下、頭がクラクラします。

反対のサイドでは、お腹を押さえてかがんでいる梨華ちゃんがいます。

一進一退、何度もシュートを打たれながら
その度に、ののちゃんは必死でボールに飛びつきます。

試合は、死闘の様子を呈してきて
みんな持てる自分の力を精一杯発揮してプレーしています。

ひとみちゃんは、今までにない気持ちが沸き起こっているのを感じました。
なんだか、ワクワクしてくるのです。
230 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/08(金) 11:48
後半戦、吉本にも疲れがみえはじめ
ボールがひとみちゃんに集まりでしました。

ののちゃんから、もらったボールを、まきちゃんは
わざと足元で遊ばせて、敵をひきつけます。
吉本が必ず2人がかりで、
ボールを取りに来ることがわかっていたので
その間に、『走って。』と
ひとみちゃんにアイコンタクトで伝えました。

敵が動いてできたスペースに、まきちゃんはパスを出し
ひとみちゃんは、すばやくボールを受け取りました。

「甘いなー!」
「そんな事、お見通しやでー!」
ひとみちゃんをマークしている2人が、すかさず襲ってきます。

ひとみちゃんは、チャージされる前に、
ポーンっとボールを真上に高く上げました。
落ちてくるボールが、ひとみちゃんには
スローモーションのようにゆっくり見えます。
231 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/08(金) 12:08
向かってくる敵も、止まっているように見えます。
不思議な空間の中で
落ちてきたボールを胸でワントラップして、浮かんでるボールを
全力でキックしました。

ワーッ・・・という歓声と
アーッ・・・という悲鳴が、コートの周りで入り乱れました。

「・・・痛てー・・・」
ユニホームをつかまれ、倒されたひとみちゃんに
まきちゃんが抱きついてきました。

「やったねー、ひとみちゃん!」

立ち上がったひとみちゃんに、みんなが抱きついてきます。
「すごいよ、すごいよー!」
「ひとみちゃん、最高ー!」

ひとみちゃんのシュートは、見事に決まっていたのでした。
232 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/08(金) 12:33
ひとみちゃんが、振り返ると
ゴールの前でぴょんぴょん飛び跳ねて、手を叩いて喜んでる、ののちゃんがいました。

二人は、目と目が合って笑いあいました。

『ありがとう、ひとみちゃん。』
『ありがとう、ののちゃんのおかげだよ。』

声は届かなくても、気持ちが通じあいました。


試合は、互いの力を出し切って
モ保FCが、満身創痍のなか、この1点を守り抜き勝ちました。
233 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/08(金) 12:53
その後、ひとみちゃんのお父さんは、日曜日になると
自分のチームの練習が終わったあと
コーチとして、監督と一緒に、モ保FCにサッカーを教えてくれる事になりました。

年に1回おこなわれる県のチャイルドサッカー公式戦で
モ保FCは、大活躍。
モーニング保育園にピカピカの優勝カップを持ち帰りました。
234 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/08(金) 13:24

(8)卒園

秋は、運動会と遠足とバザーと生活発表会。
冬は、クリスマス会、餅つき大会、自分で作った凧揚げ大会。豆まきにひな祭り。
でもって、日曜日はサッカーの練習。

こうして、保育園の生活は、楽しく過ぎ去っていきました。



235 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/11(月) 23:24
モーニング保育園の歌を歌い終わり、卒園式は終わりました。

「ずっと、友達でいようね。」
「うん。来週の日曜日も一緒に遊ぼうね。」
「うん。遊ぼう。」

そんな言葉を最後に、ひとみちゃんと、梨華ちゃんは
それぞれの家に帰って行きました。

子供の頃の約束なんて、覚えていても
自分では、どうしようもできないものも、ありました。

ひとみちゃんも梨華ちゃんも、それっきり。

やがて、桜の花が満開の頃、
ひとみちゃんは、モーニング市立第一小学校へ、
梨華ちゃんは、モーニング市立第三小学校へと入学しました。
236 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/11(月) 23:40
6年間、音信不通にまま、二人は元気に美しく成長していきました。

そして、6年生になった頃
ひとみちゃんは、ミス第一小学校
梨華ちゃんは、第三小学校ナンバーワン美少女と噂されるようになり
男の子たちの憧れの存在になっていました。



237 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/12(火) 00:05
モーニング第一中学校は、4つの小学区が集まってできています。

ひとみちゃんと梨華ちゃんは、隣どうしの学区だったので
中学は、同じ中学校に通うことになりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

モーニング第一中学校の、軽音楽部の寺田先生は
音楽活動は、実力はもちろんの事、ビジュアルも大切だという、信念のもと
毎年、可愛い子ばかり集めていました。

今年度は、噂のミス第一小学校の吉澤ひとみと
第三小学校ナンバーワン美少女といわれている、石川梨華を絶対入部させようと
てぐすねをひいて、待っていました。
238 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/12(火) 00:33
入学式も終わり、さっそく、各部活の勧誘やオリエンテーションが始まります。

寺田先生は、生徒に混じって、英語からみの軽口とにこやかな笑顔で
積極的にアピールして、数人の女の子を入部させました。
もちろん、ひとみちゃんと梨華ちゃんんの名前もはいっています。


初めての部活の日、入部のあいさつで

「吉澤ひとみです。よろしくお願いします。」
「石川梨華です。よろしくお願いします。」

と、その名前を聞いて、二人はハッと互いの顔を見合わせました。

「梨華ちゃん!?」
「ひとみちゃん!?」

名前を確認しあって、びっくりしました。
制服を着ていて、大人っぽく見えたせいか、近くにいても全然気が付かなかったのでした。



239 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/12(火) 00:49
モーニング保育園卒園以来の再会の喜びと共に
ひとみちゃんは、思いました。

「あんなに、黒くて丸くて小っちゃかったのに、梨華ちゃん綺麗になったね。」

梨華ちゃんも思いました。

「ひとみちゃん、背、伸びたね。分らなかった・・・すごくかっこいいかも。」

懐かしさ以上に二人は、何かときめくものを感じました。
240 名前:私立モーニング保育園 投稿日:2004/10/12(火) 01:28
授業が終わって、大急ぎで音楽室へ向かう梨華ちゃん。

「ひとみちゃんは、もう来てるかな?」

そーっとドアを開けてみました。

「梨〜華ちゃん、待ってたよ〜。」

そこには、一足先に来ていた、ひとみちゃんが笑って立っていました。

「ひとみちゃん、会いたかった。」
「梨華ちゃん、私も。」

「ひとみちゃん、どうしてたの?・・お父さんは元気?」
「うん、ハハハハ、相変わらずだよ」

二人は、しっかり抱き合い、喜びあいました。

おしゃべりが途切れたとき
梨華ちゃんは、恥ずかしそうにうつむきます。

ひとみちゃんは、梨華ちゃんの顔を覗き込むように
微笑みながら、言いました。
「・・・梨華ちゃんのこと、忘れたことは無かったよ。」

「私も、ひとみちゃんのこと、ずーっと思ってた。」

こうして、私立モーニング保育園を卒園して6年後、再びふたりは
毎日保育園で遊んでいた時のように、一緒に青春時代を歩き始めました。


   おわり
241 名前:paco2 投稿日:2004/10/12(火) 01:45
ここまで読んで下さいまして、有難うございました。
この話は、もっと長く続ける予定でしたが、
美勇伝のCDを毎日聞いているうちに、梨華ちゃんの子供としてのイメージが
わかなくなり、中途半端なのですが、終わることにしました。
また、駄文がうかんだら戻ってくるつもりです。
242 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/13(水) 20:16
ギャグや小ネタが満載で良かったです。楽しかった。
243 名前:paco2 投稿日:2004/10/15(金) 12:57
242>名無飼育さん 様
ありがとうございます。
そう言っていただけると、本当に嬉しくて、また調子に乗って
思いついたまま、駄文を書いてみようと思いました。
よろしかったら、また読んでみて下さい。
244 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/15(金) 13:31

(1) 別れ

「お願いです。別れて下さい。」

初めて会った人から、何でこんなことを言われなければならないの?
目の前に積まれた大金。
梨華の目からは、とめどもなく涙があふれ流れた。

「あの人は、・・・保田さんはこの事を知ってるのですか!?」
「・・・たぶん、ご存知ではないかも・・・・」

「そんなの、おかしくないですか!」
「すみません。・・だから、こうしてお願いに上がっているんじゃないですか。」
「お願いって、私たち、愛し合っているのに、どうして・・・」

ううう・・・・・梨華は、声をあげて泣いた。
245 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/18(月) 22:39
いいなずけがいるなんて、聞いたことがなかった。
保田さんは、ウソがつけるような人じゃないし
梨華には、何でも打ち明けてくれた人。

なのに、『いいなずけ』のことを隠していたの?
そんな・・・


弁護士の名刺を置いたその男は、話をつづけた。

「石川さん、彼は、将来この大学病院を有名にしてくれる人間です。
彼が、進むべき道は、ほぼ決められている。」

「彼が今、研究している事、知っておられますか?」

この男が、何を言いたいのか、梨華にはまだわからなかった。
246 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/18(月) 23:30
「保田さんの研究と、私たちの結婚と、どういう関係があるのですか?」

「関係が無いといえば無いが、あると言えば大いにあります。」

その男は、穏やかな口調で話しを続ける。

「あなたも、分っていますよね。医学部がどんな構造になっているかって・・・
彼の研究の成果がもたらす意味も。」

「・・意味って。」

「理解して下さい。」

しばらく沈黙がつづいた。

「それは、・・・分ります。でも、それと結婚とは・・・」

梨華が言い終わるまえに、男は口を開いた。

「彼の頭脳は、というか研究は、彼ひとりのものじゃない。体裁よく言えば人類の財産?
・・というか、大学の・・というか・・まあね。」

と、男は、言葉をにごした。

「・・実は、彼には、見合いの話がありましてね。」
「それは、断ったって!・・・」

「さっきは、いいなずけって言いましたよね!違うんですか?」



247 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/18(月) 23:52
梨華は、お見合いの話は、保田から聞いて知っていた。
でも、『愛する人は、梨華チャンだけだよ。』と言ってくれて
会う気もないと、言っていた。
その言葉を今でも梨華は、信じている。

「どちらでも同じ事です。石川さん。
そのお相手の方が、どちらのお嬢様か、ご存知ですか?」

「えっ!」

『白い巨搭』に例えられる大学医学部。
そこは、人の命を救うという、神聖にして崇高なところ。
しかし、人の命に値段をつけ、
政治や利権がからむ、欲望の巣窟でもある。
神と悪魔が共存している空間。

その頂点にたつ教授。
梨華もそこで働くひとりだから
男の言いたい事が、さっき、わざと失言した意図が見えてきた。

「寺田教授の陰謀?」
248 名前:もも 投稿日:2004/10/22(金) 03:28
新作ですか??前作同様、楽しませて頂きます。

うれしぃ〜保育園も面白かったですよ。
こちらは、陰謀が気になりますねぇ〜

作者さま〜まったり待ちますから頑張ってください。
(((o(^。^")o)))ワクワク
249 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/27(水) 23:31
248>もも様
ありがとうございます。
面白かったと、言っていただけて本当にうれしいです。
今回は、始めは重苦しい話になりますが、徐々に明るくしていきたいと
おもっています。よろしかったら読んでください。

250 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/27(水) 23:57
『寺田光子』・・・教授のご息女
梨華の頭の中で繰り返されるその名前。
目の前が真っ白になる。

梨華との会話の途中で男の携帯にメールがはいった。

『いつもお世話になります。例の件は?』

男はニヤリと笑い
「あっ、ちょっと失礼致します。大切な仕事の用件が入りましたので。」
と言って、席をはずした。


「もしもし、寺田教授でいらっしゃいますか?その事ですが
今、話しておりますが、先方はまだ納得してません。私の力不足で申し訳ございません。
・・・・はい、承知いたしました。・・はい、失礼します。」

男は、愛想笑いをしながら戻ってきた。
先ほどとは少し態度が違っている。
251 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/28(木) 10:05
弁護士を名乗るその男は、梨華の目を見つめ、軟らかい表情で切り出してきた。

「私は、保田さんと貴方のために言っております。」
「・・・・・・」

「あなたは、彼の才能をつぶす気ですか?」
「ハァ?」

「石川さん、万が一の話ですが、彼が医療ミスをおかして
医師免許を剥奪されたとしたら、どう思われます?」
「・・・・なぜ、そんな事突然言われるのですか?・・・」

「あり得ないとでも思っていらっしゃるのですか?」

言葉は丁寧だが、ドス黒い脅しをかけてくる。

「心臓外科医なんて、自分がミスしなくても、リスクの多い手術をされているわけだし
もし、裁判とかになって責任取らせれたらどうします?・・石川さん。」

男は、さらに追い討ちをかけてくる。
「教授を敵に回すのは、保田さんの為にどうかと思いますが・・・」

梨華の顔が青ざめていく。
『保田さんを、陥れるというの?・・私の返事しだいで?』

252 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/28(木) 23:30
保田さんが、はめられる
権力の前で引き裂かれていく恋。
保田を愛している梨華の心に、くさびが、打ち込まれ
梨華は、血へどを吐きながら奈落の底に落ちてゆく。

梨華は、出会った頃の事を思い出していた。
253 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/29(金) 00:05
保田と出会ったのは、就職してからしばらくたってから。
暑気払いのビールパーティがあり、梨華が座ったすぐ近くに保田がいた。
まだ、特別に誰かと親しいわけでもなかった梨華は、まわりに話しをあわせ
ニコニコ座っているだけだった。

そろそろ、一次会が終わりそうな頃

「ねえ、2次会決まってる?」

と、おとなしく微笑んでいる梨華に保田が声をかけてくれた。

「えっ、まだです、・・・ねえ、ミキちゃん2次会決まってったっけ?」

隣に座っている同僚のミキちゃんにきいてみると、首を横にふって

「決まってないです。」
と、満面の笑顔で保田さんに返事をしてくれた。

「じゃ、僕達といっしょにいこうよ。」
と誘ってくれて、私達は二次会に連れて行ってもらった。

今でも鮮明に覚えている。それが、保田との出会いで
ふたりが恋人同士になるのに、時間はかからなかった。

254 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/29(金) 00:21

梨華は、目の前の男の話をききながら

、昨日までの思い出が、走馬灯のように蘇ってくる。

『保田さんの為に身を引く?
そうすることが、愛の証なの?
保田さんのため、保田さんを愛しているから・・・さようなら』

梨華は心の中でつぶやいた。
255 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/29(金) 12:13

その頃、寺田教授は、大学の自室で弁護士に状況を聞いたあと
内線電話をかけた。

「婦長さん、寺田教授からお電話です。」
伝票の整理をしている中澤婦長に電話がはいった。

「なんやねん、こんな時間に。
また、緊急手術を割り込みさせる気か?かなんなぁ、もう。」

毎日のように緊急手術が入り、最近手術時間の調整のために
各科に謝りまくっている中澤婦長は、
教授からの電話・・という言葉にうんざりしている。

「はい、中澤です。・・・はい、すぐうかがいます。」

「矢口―、ちょっと寺田教授に呼ばれたんで行ってくるわ。何かあったらPHSで呼んでや。」

中澤婦長は、近くにいたスタッフに声をかけ教授の室に出向いた。
256 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/29(金) 12:23
「失礼いたします、中澤です。」

「あー、悪いな忙しいとこ、呼び出して。
あのな、明日、僧帽弁置換のオペあるやろ
その時な、この新しい糸を使こーて欲しいねん。」

「はい。」

「試供品やけどな、業者が沢山持ってきよったんやわ。
主治医の保田君には、言うとくさかい、これ手術室に置いといてくれへんか。」

中澤婦長は
『また、裏金もたったな、このオッサン。』
と思いながら、縫合糸の入った箱を受け取った。
257 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/10/29(金) 12:30

「あのなー婦長、矢口と付き合ってるんやて?」

突然の教授の言葉に、中澤はドキッとした。

「かめへん、かめへん。そんなん、かめへんって。
俺は能力主義や。アメリカやったら普通やし
中澤婦長がおらんかったら、あの手術室は回らへんやろ。
ただな、変な噂は立てとないねん。
あんたの事は俺が守ったる。
そやけど、ちょっと協力して欲しいことがあるねん。」

中澤婦長の顔が曇った。

258 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/01(月) 12:06
寺田教授が要求してきたものは
明日の保田が執刀するオペの清潔介助に、矢口をつけろ
という条件だった。
理由は、患者が高齢なため極めてリスクが高いので
慣れているナースがいいからということだったが
それだったら、もっと適任者がいるはず
なのに、何故、矢口なのか?
中澤婦長の胸に不安がよぎる
何か、起きた時の私への口止めの為?
矢口は人質?

いずれにしても、手渡された縫合糸の箱がぶきみにおもえた。
259 名前:paco2 投稿日:2004/11/01(月) 12:23
お詫び。
これは、妄想小説で、全てフィックションですが
血とか解剖とか苦手な方には、不快な表現が含まれます。
申し訳ございません。
260 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/02(火) 13:24
心臓外科のオペ日は、手術室全体に緊張感がただよう。
今日の1例目は、保田先生が執刀する僧帽弁置換術だ。

中澤婦長は、落ち着かなかった。
手術前に患者さんのところへ、訪問したとき
すでに、状態は心不全になりかけていて
このままだと、半年はもたないと言われているひとだった。
『保田先生は、腕はええけど、今日は、ヤバイかもなぁ』
中澤婦長の心配はつきなかった。
261 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/02(火) 13:27
ピッ、ピッ、ピッ・・・・・・・心電図の小さな電子音
酸素と笑気がチューブに送り込まれる、乾いた音
バイオクリナーから、常に新鮮な空気が送り込まれ満たされているはずなのに
消毒液のかすかな臭いが漂っている室内

点滴注射、中心静脈測定用、動脈圧測定用チューブ
電気メス用の体極板、心電図のコード、排尿チューブ
体のあちこちに、いろんなものを着けられて
全身麻酔のかかった患者が寝かされている。
262 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/02(火) 22:58
消毒液が塗られた患者の体に
濃い緑色の布が何枚も重なりあい
手術部位は、薄いドレープがかけらた。

保田も介助の医師も特別な緊張感はなく、いつも通りに手術が始められる。

「MVR(僧帽弁置換術)、よろしくお願いします。」
「お願いします。」
保田と向かい側に立っている医師たちがあいさつをする。

「おっ、今日は、矢口か。よろしくな。」
保田は気さくに声をかけ、目で笑ってみせる。
これだけで、全体の緊張感がほぐれいい雰囲気に包まれる。

「メス。」
「はい。」
矢口は、保田が差し出した手に、ちょうどいい強さでメスをわたした。
263 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/07(日) 23:29
患者の胸にスーっと、音も無くメスがはしる。
皮膚が裂けて15cmほどの白い直線が現れ
皮下の切断された血管から、じわじわと血液がにじみでてくる。

「コッヘル。」
「はい。」

メスに付いた血液を素早くふき取って、片付けて
止血かんしを、次々と手渡していく矢口。
保田は、その、かんしで出血しているところを、つまんで潰していく。

「電気メス。」
「はい。」

ジュウ、ジュウ、ジュウ・・・・

電気メスで切られていく皮下組織から、煙があがり
焼肉屋のような煙の臭いが少しただよう。

あっと言う間に胸骨の骨膜まで切開される。
出血は、ほとんど無い。
保田は、寺田教授が信頼する名医なのだ。
264 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/07(日) 23:45

「ケリー。」
「はい。」
「線鋸。」
「はい。」

胸骨の上端に、針金状ののこぎりが、通される。
「ホルダー。」
「はい。」

ゴリ、ゴリゴリゴリ・・・ゴリゴリ・・・・
鈍く響く音。
線鋸の両端を、左右に引き上げながら、胸骨の付け根をゆっくり切っていく音。
その、ギザギザした鋼線は、肉と骨のかすが絡みつき
ヌルヌルになり、骨を切断していく。

「カッター。」
「はい。」

円形の歯が付いた電動のこぎりが、手渡される。

ウィーン・・・ガリガリガリ・・・・ガリガリ・・・
飛び散る骨髄と、骨片。
胸骨が、縦に真っ二つにきられていく。

265 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/13(土) 00:46
「矢口、歯に気をつけろ。」
保田は、もち手が熱くなっている大工道具のようなこの機械を矢口に返す。

「ボーンワックス。」

保田は、人差し指を矢口に向けた。
矢口は、ボーンワックスを少しずつちぎって保田の指に乗せ
保田は、胸骨の切断面にそれを塗りつけるいく。

「胸開器。」
「はい。」

矢口は、小さな胸開器に続いて、大きな胸開器を保田にわたす。

ギリ、ギリ、ギリ、ギリ・・・

胸開器のハンドルをゆっくり回し
少しずつ肋骨を左右に広げてゆく。
心のうの中で、懸命に動いている心臓が透けて見えた。
266 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/16(火) 23:55
心のうが、切開され左右に広げられると
心臓が姿を現す。
鶏肉の脂身のような、うす黄色い脂肪が、結構べったりくっついている
肥大ぎみの心臓は、無影燈の光に照らされて
収縮する度に、キラキラして見える。

「人工心肺の準備できてますか?」
と、保田が確認する。

「はい。ポンプOKです。」
と臨床工学技師と人工心肺係りの医師が同時に返事をする。

「ヘパリン(抗凝固剤)は?」
「入りました。」

保田の指示で、着々と開心術の準備が進められていく。

「動脈側カニューレ。」
「はい。」
「ゆっくり、流して下さい。」

保田は、動脈の中へ、空気が入らないように
人工心肺回路に満たされている乳酸リンゲル液を
少しずつ流しながら、カニューレを挿入していく。

267 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/16(火) 23:59
「静脈側カニューレ。」
「はい。」

上代静脈と下大静脈に静脈側カニューレが挿入されていく。
矢口は、保田が言う前に次の準備をしている為
保田は手を止めることはなく順調に進んでいく。

「それでは、人工心肺回しますよ。」
「はい。」
「いいですよ。」
「号令お願いします。」

「スリー、ツー、ワン、ゼロ、ポンプ、スタート!」

保田のスタートの声で、人工心肺が回り始めた。
そして、保田と梨華の人生も、角度を変えてスタートし始めた。

268 名前:paco2 投稿日:2004/11/17(水) 00:06
267>間違えました。
上代静脈× → 上大静脈○
269 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/23(火) 11:20
「冷却開始します。」
「お願いします。」
「呼吸停止します。」
「大動脈遮断。」
「心筋保護剤入れます。」

心臓の動きが完全に止まった。

「あ、あーあっ、ご苦労さん、ご苦労さん。」

保田が左心房にメスを立てた時
手術用のガウンに着替えてきた寺田教授が割り込んできた。

「教授、こちらに来られますか?」
保田は、手を止めて寺田に最大限の敬意をはらう。

「いや、ええわ。保田君に任せるわぁ。」
「はい。じゃあ。」
「看護婦さん、ライト合わせたってやー。」

寺田の言葉が緊張感が生む。
無影燈の光が集まる真ん中に保田が立つ。
「汗、拭いて。」
保田は、無影燈の焦点を合わせに来たナースに、汗を拭いてもらう。
頭を包んでいる帽子はすでに汗が染みて、半分くらいまで色が濃くなっていた。
270 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/11/23(火) 11:45
左心房を開き、僧帽弁を切除する。
計測器で、そこのスペースをはかった。

「人工弁出して下さい。」
介助の医師が人工弁をホルダーに付け
保田が糸を掛けやすいように、ささげ持つ。

「縫合糸。青色からいこうか。ちょうだい。」
「はい。」
矢口は両端針のもう一方の針が引っかからないように
手を添えて縫合糸を渡した。

「あれっ?これ、いつものと違うじゃん。」
手渡された持針器を見て、保田が不信に思った。

「あっ、すまんな、今日はこれ使こてみてくれへんか?」
すかさず寺田が口をはさむ。

「はい。」

教授には、絶対服従の保田であった。
少し使いづらいと思いながらも
人工弁に青糸と白糸を交互にきれいに掛けていった。

271 名前:paco2 投稿日:2004/11/26(金) 10:02
265> 間違いました。
   胸開器 × → 開胸器 ○
書いてる時は、いっぱい、いっぱいなので全然気が付きませんでした。

272 名前:paco2 投稿日:2004/12/02(木) 10:53
いしよしが大好きな私です。
今回、話の途中ですが、バク天のパラパラ漫画風の
昔話を思いついたので、書いてみました。

美勇伝の伝の字にちなんで
もし梨華ちゃんが天女だったら
梨華ちゃんの天女伝説です。
273 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 10:56
昔、駿河の国の江尻というところに
よっすぃ〜。というあだなの漁師がすんでおりました。
よっすぃ〜。は貧しいながらもとても働き者で
朝は、暗いうちから舟を出し
漁が終わると、日が沈むまで畑仕事をがんばりました。

ある日、よっすぃ〜が漁に出ようと砂浜を歩いていると
12人くらいの天女が、天から舞い降りてきて
松の木に羽衣を掛けて、水際で遊びはじめました。

「おっ、すげー、天女じゃん。」

よっすぃ〜は驚いて、目を丸くして見ていると
一人だけ、ちょっと地黒でとびきり可愛い天女に惹かれました。

「よし、いいこと考えた!」
よっすぃ〜は、その娘が好きになり
その娘の脱いだピンクの羽衣を隠してしまいました。
274 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 11:00
「あっ、人間がいるわ!」
「きゃー、逃げましょう!」

よっすぃ〜に気づいた天女達は、慌てて羽衣をまとって
空に舞い上がっていきました。
でも、一人だけ飛べない天女が、胸を押さえてうずくまっています。

「あのー、どうなさったのですか?」
よっすぃ〜は、白々しく声をかけました。

「見ないで下さい。こっちへ来ないで!」

天女は、恥ずかしそうにいいました。
さらに、よっすぃ〜が近づいていくと

「私は、羽衣がないので天に帰れなくなりました。」
と泣き出しました。

「よかったら、これをお召し下さい。」
よっすぃ〜は、着物を脱いでやさしく天女にかけてあげました。

「さあ、おいで。こんな所にいつまでもいられないから、
ひとまず、俺の家に行きましょう。娘さんのお着物は
どこかから借りてきますから。」

こうして、よっすぃ〜は、天女を連れて家に帰りました。
275 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 11:05
「あの、お名前を教えていただけませんか?」
ドキドキしながら、よっすぃ〜が聞きました。

「私は、豊歌能梨華姫と申します。皆からは梨華ちゃんと呼ばれています。」
「あっ、俺は吉澤瞳丸。よっすぃ〜って呼んで下さい。」

その夜、よっすぃ〜は貧しいながらも精一杯のご馳走を作ってもてなし
明日は梨華ちゃんに天上に帰っていただくつもりでいました。
ところが、よっすぃ〜が嬉しさのあまり寝付かれないでいると
梨華ちゃんの寝ているほうから、カチカチと変な音が聞こえてきます。
『どうしたのだろう?』
と、よっすぃ〜は思い声をかけました。

「姫ぎみ・・梨華姫様・・・梨華ちゃん、どうなされました?」

「・・・・・・」

「泣いておいでになられるのですか?」

「いいえ、かってに体が震えてくるのです。」

と梨華ちゃんは、歯をカチカチ鳴らしながら答えました。
276 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 11:09
「なるはど。お寒いのですね。
暖かい、しとねが無くてなくて申し訳ございません。
さぞや、お困りでしょう。
でも、よい方法がございます。」

と言って、よっすぃ〜は梨華ちゃんをギュっと強く抱きしめました。

「あっ!」
と叫んで、梨華ちゃんは逃げ出そうとします。

「お姫様、心配はいりません。
東の空が白み、日が昇るまでこうしているだけですから。」

と、よっすぃ〜が言うと
梨華ちゃんは、安心してよっすぃ〜の胸に顔を埋めました。よっすぃ〜は

「おおっ!」
と驚きの声をあげ
『なんという、美しい姫なんだろう。』
と思うと、我慢していた衝動が抑えられなくなり
契りを結んでしまいました。
277 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 11:11
こうして、梨華ちゃんとよっすぃ〜は夫婦になったのです。

よっすぃ〜は、以前にも増して働き者になり

梨華ちゃんは、天女のころ造っていたお神酒造りを始めました。

梨華ちゃんが造るお酒は、不思議な力があり
その酒を飲んだボケ老人の頭が冴えたとか
労咳で弱っていた人の咳が治ったとか
あきらめていた老夫婦に子供ができたとか
うわさが噂を呼んで、飛ぶように売れて
よっすぃ〜夫婦は、大金持ちになりました。
278 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 11:18
そんなある日、よっすぃ〜はとうとう隠していた羽衣の事を
打ち明けました。

「ごめんね、梨華ちゃん。
羽衣を返したら、梨華ちゃんが天に飛んでいってしまうと思って
怖くて言えなかった。今までうそついててごめん。」

けれど、梨華ちゃんはニコニコしながら言いました。

「うううん。いいの。
はじめは確かに困ったけど
よっすぃ〜って、須佐之男命(すさのおのみこと)様よりかっこいいし
天上界って、恋愛禁止だったから
初めて抱かれた時嬉しかった。
それと、天上界に住んでいても味わったことのない
天国にいるようないい気持ちっていうの教えてもらったし
エヘッ。
私、天に帰りたいと思ったことないわよ。」

「梨華姫、愛してる。」
「うっふん、よっすぃ〜。私も。」

こうして二人はいつまでも幸せにくらしました。
279 名前:新羽衣伝説 投稿日:2004/12/02(木) 11:22
それから数百年、天女が羽衣をかけた松は今でもあおく、

よっすぃ〜夫婦が住んでいた場所からは、清水が湧き出て

この村は、干ばつがきても人々が困らずに暮らせたということです。

                  おわり
280 名前:paco2 投稿日:2004/12/17(金) 01:54
昔話を書いてみたかったので、途中に入れてしまいましたが
話を元に戻すことにします。
281 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/17(金) 01:56
人工弁にかけられた糸を
慎重に心臓に縫い付けていく保田。
いつもより、時間が長く掛かっている事に
心配になった矢口はの時計を見ると
30分近く遅れがでているような気がしました。

「細長いメーヨー!」
人工弁を付け終わり、余分な糸を切りそろえ
切開した左心房を閉じていきました。

「熱いガーゼ。」
矢口は、少し熱いめの生理食塩水に浸したガーゼを
保田に渡し、保田は止血の意味と体温を戻す意味で
熱いガーゼで心臓を温めました。

282 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/17(金) 01:58
体温は、すでに37℃に戻され
心臓がかすかに動きはじめました。
手術は出血も少なく、人工弁も正しく付き成功したのですが
終わった後、心臓の自発運動が現れません。

「心室細動だな、除細動器準備して。」

保田は、心臓に電気ショックを与え
正常な動きに戻すために除細動器を使うことにしました。

「DC除細動 150ジュール。」

「はい、150ジュール合わせました。」

「はい、いきます。危ないから皆離れて。」

ドン!

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・・ピピピピ・・・・

「ダメです。心電図、正常な波形がでません。」
283 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 13:53
「もう一回除細動。」

ドン!

ピッピッ・・・ピピピ・・・ピーーーーー

「先生!心電図アレストです!」

「よし、もう一回除細動。離れて皆。」

ドン!

保田は、動かない心臓を直接手でマッサージしながら
心臓が自ら動き出すまで、除細動を繰り返し行い

ピッ、ピッ、ピッ・・・・

ようやく、心電図の規則正しい電子音が聞こえ始めました。
284 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 13:55
「自発でました。心電図の波形はサイナスリズム(洞調律)です。」

看護師の言葉にその場の全員が安堵しました。

「血圧は出たかな?脈、触れますか?」

「肘動脈ではまだ触れません。」

看護師の報告を否定するように、それまで黙っていた寺田が口をはさんだ。

「この心臓の動きやったら、血圧80はあるやろ。
もっぺん計ってみて。大丈夫やで。」

そう言われた看護師は、再び血圧を測り直しましたが
返事ができない状態でした。

「大丈夫や、後は保田先生よろしく。」
と言うと、寺田教授は手術を降りて、控え室に戻っていきました。
285 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 13:57
寺田教授が退室すると、保田は手を早めました。
「尿は出てますか?」
保田は心配して聞きました。
「血圧が低すぎて、まだ出てません。」

「早く閉じてICUに行こう。
IUCに連絡して、バルンパンピングを準備しておいて下さい。
30分後に行きます。」

保田は、指示をだすと
あっと言う間に手術を終え、
人工呼吸のアンビューバックを押しながら、手術室を後にした。
286 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:02
「保田さんに会いたい。」

梨華は、何度もメールを入れました。
今日がオペ日で、すぐに会えない事くらいは判っていましたが
そうせずには、いられない追い詰められた気持ちで
孤独な時間を梨華は耐えていました。

午後になり、夕方になり、夜になっても
保田からは、返事がこない。

「なにか、あったのかな?もしかしたら?」
梨華の胸に絶望的な不安が過ぎりました。
287 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:05
12月22日。
私、小川は人生の岐路の立たされていました。
結婚は、2番目に好きな人とすると幸せになれる。
とか言われて、お見合い10回目にして
とうとう、結婚を決めてしまいました。

お相手はというと、同じ会社の人で海外事業部の人。
うちの部長に、いい人がいるので、会ってみて欲しい
と頼まれたのがきっかけです。

初めは、友達としてならいいかなって
でも、結婚の対象じゃないなーって思っていたんですけど
仕事が終わってから、夜のデズニーランドに行ったり
ドライブしながら、色んな話をしているうちに
見た目は悪いけど、話題が豊富で退屈させないし
とっても紳士的で
自分が言うのも変ですけど、さすが、一流商社の男性って感じの人です。
実家のお父様は、小学校の校長先生をされていて
妹さんは、銀行のOLさん。
私にとってはこんな良い縁談はないかもしれないって思って
『決心』しました。
288 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:07
職場の人にはまだ、秘密にしています。
でも、先輩にだけは、打ち明けようと思います。
12月24日に彼とホテルニューオータニで一泊デートするその前に。
先輩に聞いて欲しいことがあったから。

*****************

「吉澤さーん、今日なんか用事ありますぅ?」

「別にないけど、ご飯でも食べて帰る?」

「はい。いいんですか?」

「いいよー、明日は休みだし、そんじゃ、どこに行くか。」

吉澤さんは、気楽にOKしてくれました。
289 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:09
吉澤さんと私は、電飾で綺麗に輝く街路樹の繁華街に来ました。
ちょっと吹き抜ける風が冷たかったので
吉澤さんの左腕に自分の腕を絡めて
胸を吉澤さんに押し付けるように、くっついて
『吉澤さん、私を感じてくれてますか?』
って思いを込めて
笑っておしゃべりしながら、歩きました。

「まことは、さ、何か食いたい物とかある?」

「えー、何でもいいですぅ。」

「あっ、言ってもいいですか?」

「いいよ。」

「あの、カクテルとか飲みたいです。」

「へっ?・・・カクテル?わかった。じゃ、あそこに行こう。」
290 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:10
吉澤さんが連れてきてくれたのは
ビルの2階にある目立たないけど
おいしいことで有名なフランス料理のお店で
店内は、テーブルの間隔がけっこう離れていて
グリーンで目隠しされた、シンプルだけど
高級感の漂うお店でした。

「吉澤さん、私2万円しかお金もってないんですけど。」

「まことは、そんな事心配しなくていいから。」

と、吉澤さんは、いつものようにニコニコ笑いながら
メニューを広げて見せてくれます。

「何が食べたい?」

「えっとー・・・」
291 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:11
どれも高そうなので、迷っていると

「じゃ、生ガキとエスカルゴ、スモークサーモン
カニのキッシュ、手なが海老のフラン
ワインはシャブリで、まことは、オリジナルカクテルでいいかな?」

「お肉も食べたい?」

吉澤さんは、さらっと言ってくれます。

「あーぁ、あのぉー食べたいですけど。」

「お金は心配するなって言ってんだろ!」

「じゃ、フォアグラのテリーヌと子羊のメダイヨンもね。」

吉澤さんは、折角だからって、二人でクリスマスパーティーをやろうって
デザートもクリスマス限定のケーキを注文してくれて
どんどん、飲ませてくれます。
292 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:12
「吉澤さん、私どうなっちゃうかわかりませんよ。」
って言ったら

「まこと一人分くらい面倒みてあげるから大丈夫だよ。」
だって。

「吉澤さん、そんな嬉しいこと言ってくれちゃって誤解しますよ?」
私は、お酒で真っ赤な顔になりながら
目を見つめて言いました。

結局、おいしい料理に夢中で肝心な事は、話すことができなくて
お腹がいっぱいになって
お店をでることにしました。
293 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:13
吉澤さんは、タクシー乗り場に向かっています。
まだ帰りたくない私は立ち止まって
吉澤さんの左腕を両手で抱きしめて、肩におでこを乗せて
泣きまねをしました。

「吉澤さん、まだ帰りたくないです。グスッ。」

「小川、じゃあ、まだ悩み事聞いてなかったし、家に来る?」
って、頭をいい子、いい子、しながら髪の毛にキスしてくれました。

「えっ?」
びっくりして、まばたきするのを忘れてた目を見て吉澤さんは

「ウソ泣きかよー!おまえ。」
でっかい声で怒られましたが
気持ちよく自分のマンションに連れてきてくれました。
294 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:14
順番にお風呂に入ってから
吉澤さんのベッドの中で二人並んで寝っころがって
ぼんやり、上を向いてたら
優しくて低い声が、切り出してくれました。

「小川さ、何か私に話したい事があったんでしょ?なんだっけ?。」

「あのー、吉澤さんは、彼氏がいらっしゃるのですか?」

勇気を出して聞いてみたのに
吉澤さんは、なーんだって、言ってへらへら笑いだして
やっと口を開いてくれました。

「まあね。でもね、想う人には、想われなくて
想わぬ人からは、想われたりして・・・ふふっ、はははは・・
ないしょだけどね、先週ふられちゃたんだ。あたし。
『おまえは、俺がいなくいても大丈夫だろ』だってさ。
女は、少しくらい抜けてるほうがいいんだって。
ふん、何言ってんだか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・小川は?」
295 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:15

「あの、私、来月結納するんです。」

「えーっ!」

吉澤さんは、ガバッっと起き上がり、私を見下ろしました。

「はははは、そーっか。そっか。それが言いたかったんだ。
おめでとう。早く言ってくれれば良かったのに。
心配して損しちゃったじゃない。
いいよ、いっぱい聞いてあげるよ。おのろけ。」

吉澤さんは、私に寄り添い、ニヤニヤ顔をのぞきこんで
肩を揺すって、どんな人なの?早く言え!とうるさく、急かします。
でも、私が言いたかったのはそんな事じゃなくて。
296 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:16
「げっ、月収80万?海外事業部ってすげーな
あたし、来年度マジで海外事業部移動希望しようかな?
で、結婚式はどこでやるの?
やっぱ、あれ?社長とか代議士とか呼んで
スモークたいたり、せり上がったり、
イリュージョンとかで一瞬に消えたかと思ったら
次の瞬間、お色直しして、天上から降りてくるとかするの?」

「そんなのしませんよ。普通です。」

「じゃ、つまんねーじゃん呼ばれた方は。
ま、我慢するか。
あたしさ、今年は3回も同級生の結婚式にでたんだよ
あーぁ、来年はついに後輩の結婚式か・・・
受付とか司会とかもう頼んだの?
あたしでよければ、やってあげるよ。
もう、慣れすぎちゃってほとんどプロだし。」

「ありがとうございます。」
297 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:17
「あ、あのー・・」
私は、冷や汗がでてきました。

「ん?」
吉澤さんの顔はゆるみぱなしです。

「あのー、吉澤さん、キスってしたことありますぅ?」

「アハハハハハー、なにそれ?」

「まじめに聞いて下さいよ。」

「あ、うん、ごめん。あるよ。」

「わわわわー、わたしはー、ゴニョゴニョゴニョ・・・
おおおお、おねがい・・・したいん・・・」

「よっ、吉澤さん。」

「小川、それって違くねー?」
298 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:19

「違うんです。吉澤さん。聞いてください。
本当は、入社以来、ずっと吉澤さんに憧れていて
目が合うだけで、ドキドキしていました。
お茶を入れるときは、一番おいしいタイミングで入れて
部長や係長のお茶は、出がらしにして
吉澤さんがおいしいって言って下さると、小さくガッツポーズしてました。
吉澤さんの近くにいる時は、香りが嗅ぎたくて、空気を吸って、吸って
吸いっぱなしで胸が苦しかったです。」
299 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:20
「私は、吉澤さんが好きです。
ごめんなさい。女の私が変ですよね。
・・・・・・・・・・・・・
だから、打算的に決めたんです。結婚。
部長が紹介してくれた人がいい人だったから。
平凡な幸せが一番かなって思って。
でも、最近結婚を目の前にしてマリッジブルーっていうか
これでいいのかなって考えるようになって
そしたら、やっぱり吉澤さんへの思いが断ち切れなくて
最後に思いでを作って、この気持ちを封印しようと思いました。
今夜は本当にありがとうございました。」

言いたかった事がやっと言えた。
いっきに言い終わった後、恥ずかしくて、目を閉じると涙がすーっと流れました。
300 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:20
私が、目を閉じて横を向いてしまうと
吉澤さんは、私の頬に手を当て
指で涙を拭ってくれました。

「小川、おめでとう。大人になったんだね。祝福のキスをさせて。」

と言って、私の顔にかかった髪の毛をかきあげ
おでこ、目、そして唇にふわっとキスをしてくれました。

ぞくぞくきました。
自分を縛る鎖が一気に弾けとんで
自分でもびっくりするくらいの勢いで
吉澤さんの首に両腕を回していたんです。

「吉澤さん好き。抱いてください。」

吉澤さんは、何も言わず、ギュって力いっぱい抱きしめてくれました。
301 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:21
「まこと。」

「吉澤さん、私結婚したくない!」

息ができないくらい強く押し付けられた胸にむかって叫びました。
吉澤さんは長い時間そうして抱きしめていて
ふっと締め付ける力をゆるめると
ニコニコ笑って

「まことなら、いいお嫁さんになれるよ。
心配なんかいらない。大丈夫だよ。
まことの決心は間違ってないと思う。
私はいつだって、まことの側にいて応援してるから。」

そう言って、私を包みこむように抱きしめていてくれました。

302 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:22
吉澤さんは腕枕をしてくれている手と反対側の手を私の胸の前で組み
静かな寝息をたてていました。
私は吉澤さんのぬくもりと香りに包まれて
私の体を縛っている腕を
何度も何度も、いたずらするみたいに、幸せな気持ちでなぞっていました。

「吉澤さん。」
小さな声で呼んでみたら起きちゃったみたいで

「どうして欲しいの?」
って、優しく聞いてくれました。

私は、黙って吉澤さんのほうへ、向き直って
顔を見上げてると、せつなくさが込み上げてきて

「朝が来なければいいのに。
・・・出会わなければよかった。
・・・欲しい。あなたが欲しい。」

吉澤さんの手をとって、自分の胸に当てていました。
夜明けにはまだ少し早い部屋の中で
吉澤さんは、深く長いキスをして、私のパジャマの
ボタンをひとつずつはずしていきました。

303 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:23
年が明けて、私は、吉澤さんが、危惧してたとうりの
来賓のスピーチが多めの結婚式を終え
彼と一緒に○井物産カナダ支店へ転勤することになりました。

まもなくして
吉澤さんも人事異動の希望が通り
なぜか、いきなり東南アジアの支店へ
飛ばされてしまうことになりました。
304 名前:熱砂の思い出 投稿日:2004/12/22(水) 14:24
華やかな、ディスプレーで彩られた年末の
12月22日は
私にとっては、クリスマスイブよりも大切な日です。
だって、初恋が叶った特別な記念日ですから。
今でも世界で一番大好きな
吉澤さんと二人で過ごしたあの夜は、一生忘れません。

私はこちらへ来てから、お料理教室に通っています。
12月はホームパーティ用のクリスマスケーキ作りで
マジパンで作ったかわいいサンタクロースを飾りました。
私のサンタさんは、(0^〜^)こんな顔でスタイル抜群。
それは、私のサンタさんが、よっすぃ〜サンタさんだから
『かっけーサンタさん。』
先生にも、主人にも、かわいいねって、誉められました。

305 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/18(火) 22:48
私、吉澤ひとみは後輩の小川真琴を寿退社で送り出して
自分もあわただしく、○井物産東南アジア支店に移ってきました。

「支店長代理?ですか私が?」

転勤早々に、支店長にそういわれて驚きました。

「あの、本社からはなにも聞いてなかったのですけど。」
「すまんな。急なことで。仕事の引継ぎは大して多くないから大丈夫や。」

まんま、大阪ミナミの帝王みたいな外見なのに、この支店長
私に遠慮っぽくハの字眉毛で話す顔が可笑しかったのですが、
わざと真顔で抗議するみたいに聞き返しました。

「って言われましても、あさってからって。何故ですか?」
「いやー、本当に申し訳ない。実家の母が危篤なんや。日本に帰らないとあかんのや。」
「そうだったんですか。」
「仕事の方は大丈夫。たいがいのことは、秘書で通訳のミセスカゴが判っているから。安心してええ。信頼できる人やさかいな。」

支店長に紹介されて、ミセスカゴは軽く会釈して
「ヨロシク オネガイシマス。」
と笑顔で流暢な日本語を披露してくれたました。
306 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/18(火) 23:04
後で判った話なんだけど
ミセスカゴがこっそり教えてくれたことによると、今の支店長は
10年近く支店長をやっていて、一度も日本に帰らず、家族もよばないで
若くて綺麗な現地妻と同棲していて
業績が良かったので、会社もそれをずーっと容認してたのだけれど
それを知った妻が怒って、離婚訴訟を起こしたらしいのです。
それで、裁判所から呼び出しをくらって
慌しく帰国することになったようです。

確かに、この国はお金にさえ困らなければ住みやすいと思う。
食べ物は豊かだし、仏教国なので治安もいい。
女の人は、清純で綺麗な人が多くて
たしかに、男性だったら、天国なんだろうなって考えていたら
いきなり、ドアが開いて女の子が入って来ました。
307 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/18(火) 23:22
「コンニチハ。」
「・・・?」
「オカエリ アイボン」

私が怪訝そうな顔をしていると、ミセスカゴが

「ワタシノ ムスメデス ヨロシクオネガイシマス」

と言って、アイボンって名前の女の子の頭を押さえつけて
私に向かって下げさせた。

「日本語喋れるの?」
と、その女の子に尋ねると

「ウン オールOK ヤ ノープロレン ヤデ」
と悪戯っほく笑って答えてくれました。

「へっ?でも何で関西弁なの?」
今度は、ミセスカゴに尋ねると、この子は支店長に小さい時から可愛がられていて
関西出身の支店長から日本語を教わったせいで
関西弁なまりの日本語を覚えたんだって説明してくれました。

「オッチャン ドコイキヨッタン?」

「オッチャン?」

「スミマセン シテンチョウサン ジブンノコト オッチャン ッテヨバセテタンデス」
308 名前:paco2 投稿日:2005/01/19(水) 00:00
石川梨華様 お誕生日おめでとうございます。
今年はモーニング娘。をご卒業されますが、これからもずーっと応援していきます。
そして、益々お綺麗になっていかれる梨華ちゃんを見ながら
いしよし小説を続けさせて頂きたく存じ上げます。
309 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/19(水) 00:12

「はあ・・・そうなんですか。」

初日から驚く事ばっかり。

世界経済を動かす一流商社のオフィスなのに
サンダル履きの学校帰りの女の子がずかずか入ってきたりして
支店長のことを、おっちゃん呼ばわりして
本社じゃ考えられないこの雰囲気は何?
なんて面食らっていると、また女の子が喋りだしました。

「アンタ ダレヤ?」

「あんたって、あたし?」

「スミマセン バシッ!ボコボコ! ×××××××!」

ミセスカゴはアイボンを叱りつけた。

母親から、私が今日から事実上の支店長になった事を教えられ
アイボンは小さな声で謝った。

「ゴメンナサイ」

「いいんだよ。別に気にしなくても。私は吉澤。」

「ヨシザ?」

「違う、よっし。ううん、よっすぃ〜って呼んで、よっすぃ〜。」

「ヨッスィー?」

「OK よっすぃ〜。 OK! 今日から友達になろっアイボン。」

「エエデ ヨッシィー トモダチヤ トモダチ トモダチ」
310 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/01/25(火) 19:02
はじめまして。
手術のシーン凄いですね!
かなり詳細に書かれているので
感心してしまいました。
やすいしはどうなってしまうのか?
そしてよっすぃ〜は・・・?
311 名前:paco2 投稿日:2005/01/28(金) 13:25
310>名無飼育さん様
有難うございます。そう言っていただけると嬉しいです。
書くことの難しさを痛感しながら、少しずつ話を進めていこうと思っています。
312 名前:paco2 投稿日:2005/01/28(金) 13:26
アイボンはかわいい。
人懐っこい瞳に無邪気な笑顔。
物怖じしない度胸のよさで、支店長が可愛がってたのもよく分かる。
会ったばかりなのに、妹のような気がしてきた。

机の上の書類を片付けながら
母親のミセスカゴに甘えているアイボンを見ていて
今日、夕方一緒に食事したいなって思って
ミセスカゴに聞いてみた

「ミセスカゴ、今日夕食一緒に食べませんか?アイボンも連れて。」

と言うといち早くアイボンが手をたたいて喜んでいる。
私は、アイボンの目を見てニコニコ笑う、するとアイボンは

「ヤスーテ ウマイ ミセ オシエタルデ」

とか、のたまう。
生意気な言い方でちょっとムカついたけど
たぶん、本人はそんな気じゃなくて単に、おやじな日本語を教えた支店長の責任。
せっかく可愛い子なんだから、将来役の立つように正しい日本語を教えてあげようと思う。
313 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/28(金) 13:29
キャハハハー
キャッ、キャッ
アハハハー
ミセスカゴに連れてきてもらったこの店は、外見はきれいじゃないけど
地元の人には人気があるらしく、すごく混んでいてる。
それにも増して、先ほどから目の前では、アイボンが、連れてきた友達のノノと大はしゃぎ。
お互いのジュースを飲み比べたり、ふざけあったり。

ミセスカゴの解説によると
ラーメンの香辛料を少しずつ足していって、どちらが辛いものに強いのかを競ってるらしい。
私も、ちょっとその辛さに興味があったので、参加させてもらった。

「アイボン、よっすぃ〜も食べたい。」
と激辛と化したラーメンを指差してみた。

「ダメ ヨシザワサン ヤメタホウガイイ」
と必死で止めにかかるミセスカゴを無視して

「マケタラ バツゲーム アルデ」
と、アイボンは、ニヤニヤしながらラーメンを目の前に置いてくれた。
314 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/28(金) 13:31
ズルズルっと少し麺を食べて、一口スープを飲む。
ウエッ!なんだこれは?って顔をしてしまう。

キャハハハー
「ヨッスィー マケタ!」

と、アイボンとノノは大喜び。
でも悔しいから、全然平気だよってふりをして、アイボンにラーメンを回した。

アイボン、ノノ、ヨッスィー、アイボン、ノノ、ヨッスィー・・・・・

「辛れ〜!!」

ついに耐えられなくてギブアップ。
私はバツゲームとして、アイスクリームをおごらされ、
帰りに、二人を交互におんぶして歩かされた。
315 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/01/28(金) 13:33

所変われば、品も人も変わる。
郷にに入れば郷に従おう。
これから熱帯のこの国で仕事とリゾートライフ、どちらも頑張って
人生を楽しんじゃえ!

と思ったのはその時だけで。

家に帰って来たら、襲ってきた腹痛と下痢。
ウウウウウ・・・
これだったのねー。
私はトイレの中で、今さらながらに
『食事は、ノーホットって言うんだよ』
って教えてもらた言葉を思い出していた。
316 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/02/09(水) 14:31
ルルルルルー
いつものように電話がなり、仕事が始まる。
日本にいた時とあまり変わらない光景。

ミセスカゴはこちらの言葉と日本語をうまく使い分けてすぐに対応している器用なもんだ。

「×××× ハイ マルイブッサンデス・・・・・」
「ヨシザワサン ホンシャ カラ デンワデス」
言うと同時に電話を転送してくれる。

「はい、吉澤です。・・・はい、おかげさまで。・・・・・・・
材木?ヒノキですか?・・・・はい、調べておきます。」

ヒノキ?チーク材じゃなくてヒノキの原木?
これまで、手がけたことのない物を輸入しなくてもいいだろうに
と疑問を抱きながら、私は本社からの電話を切った。

ルルルルー

「×××× ・・・・ ヨシザワサン ジャイカ カラデス」

「はい、いつもお世話になります。・・・・はい、予定を見て後日連絡致します。」

ルルルルルー

「××××・・・・」
317 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/02/09(水) 14:33
電話は鳴り続ける。取引業者から、船会社から、銀行から、本社から・・・・
忙しすぎる。頭と体がついていけない。勘弁してよって誰かにグチりたくなる。

日本の商社マンが企業戦士と呼ばれていたのは、過去の話だと思っていたら大間違いだ。

そういえば、今年も日本じゃ、サラリーマン川柳の季節だよね。

う〜ん。今年はなにかな?

支店長だったら
「妻よりも 数倍可愛い 現地妻」

「ミセスカゴ 夫はどんな 男なの?」

「社宅だと 電車男にも なれやしない」

って、私は女だから
「リーゾートで 誘って下さい 人魚姫」
うふっ。

「結果だせ と言う前に 経費だせ」

「インサイダー 取引ばれて 取り締まられ役」・・・・

いけない。どんどん浮かんでくるけど仕事しなきゃ。
318 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/02/18(金) 13:34
「ミセスカゴ 今日時間ありますか?」

困った事が起きた時はまず、ミセスカゴに相談する。
これは、支店長の助言でもあり

この情報通の奥さんは
実は、ダンナが『カーゴ』という運送会社をやっていて
彼の話から、この国の株式市場や現場のニードが読み取れるという
恐るべし、ミセスカゴ。
ってな人なのである。

ミセスカゴは、私の気持ちに快く承知してくれて
子供の世話があるので、自分の家で話をしようと言ってくれた。

アイボンにまた会える。
そう思うと、仕事を忘れてなんか嬉しくなってくる。
帰宅途中でアイボンの好きなマンゴスティンやお菓子やお惣菜をいっぱい買い込んで
家に連れてきてもらった。
319 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/02/18(金) 13:36
「ヨッスィー!」
キャハハハー

「ヨッスィー!」
アハハハー

アイボンと遊びにきていたノノが私を見つけると二人同時に飛びついてきた。

「ヨッスィー アソボウ」
「ヨッスィー アソボウ」

「ヨッスィー キテ」
「ヨッスィー キテ」

二人に両方の手を引かれ奥へはいっていく。

「ヨッスィー コッチ」
「ヨッスィー コッチ」

ノノって子は、日本語がしゃべれないので、アイボンの言ったことを
必ず、オオムがえしのように繰り返す。なんか間抜けっぽいけど
それはそれで、この子なりに私を歓迎してくれてるのかなって、気持ちが伝わってきて、嬉しい。
320 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/02/18(金) 13:38
何して遊ぶんだろうと思ったら、TVゲーム。
スーパーマリオだった。

こういう国の子は当然外で遊んでるんだろなんて思っていたので
ちょっと意外な気がする。

でも、これなら大得意な私だから、二人の前でお手並みを披露してちょっと威張れる。
この間の辛いもの対決のリベンジだ。

どんどんクリアして二人の知らないステージが展開される。
うん、私を見る目がちょっと変わってきた。
つかみは OK 大成功。
私は、あっという間に、子供達のカリスマにのしあがってしまった


「アイボン テツダッテ」
ピコ ピコ ピコ ピコ、ゲーム音の向こうから
ミセスカゴが呼ぶ。

「イマ ソウイウ キブン ジャナイ」
アイボンは、ゲームを止めようとしない。

「アイボン!!」
ペッシ!
いきなり頭を叩かれて驚いたのは私の方だった。
さすがに、母は強い。
アイボンとノノと私はゲームを止めテーブルに着いた。
321 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/02/21(月) 08:24
「オイシイ」
「オイシイ」

アイボンとノノは、私が買ってきたお惣菜を美味しそうに食べてくれてる。


その間に私は、ミセスカゴに仕事の話をした。
昼間、本社から調査の依頼があったヒノキの件だ。
なにやら、日本の有名なお寺さんが、大だい的に本堂の建て替えやら、
施設の建て増しを行うとかで、大量のヒノキ材を探しているとかで、打診があったのだそうだ。

ミセスカゴの話によると
ヒノキはこの国の北部地方に原生しているらしいのだが、一般的にあまり知られてなく
隣国との国境の近くとあって、少数民族や、ゲリラ、なども潜んでいて
かなり危険な地区らしく、政府も開発には消極的で、資源保護の名で手付かずで置いてあるらしい。
ところが、一方では、建築ラッシュにわく中国が、雲南省あたりから頻繁にトラックを
出入りさせているという噂もあるいわく付きの場所らしい。

とりあえず、ミセスカゴのダンナが段取りをつけて
近いうちに案内をしてもらえることになった。
322 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/02(水) 23:16
保田は、ICUに入ってすぐにやれる事は何でもやった。
バルンパンピングを挿入し
ドーパミンやノルアドレナリンなどの薬物も多量に使い続け
緊急検査を出すため引っ切り無しに採血をおこなう。

でも、動脈圧が上がらない。
ショック状態が続いている。
尿が出ない。
腎不全をおこしている。
モニターには、異常な波形の心電図しか映し出さない。
このままでは、24時間もたない。

保田は、早い時間に決断をせまられた。

もう一度、人工心肺を回す。
生かせておくには、これしかない。


保田は、患者の家族を集め、深刻な状況の説明をはじめた。
かなり、厳しい話。
重苦しい空気が流れる。
青ざめていく家族。

「先生、よろしくお願い致します。」
家族全員で頭を下げる。

「最善の努力を尽くします。」
期待に応えられないことが判ってても
保田も、そう答えるしかなかった。
323 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/02(水) 23:19
手術後48時間。
アラームが鳴り続けている。
患者の心臓は、もう、ピクリとも動かなくなっていた。
もうこれ以上何をやっても意味がない。

保田は、苦渋の選択をしなければならなかった。

人工心肺をはずすタイミングを寺田教授に相談すると
ICUにやって来た寺田は
保田が睡眠もとらず、48時間も付きっきりで頑張ったことを労い
深々と、家族に頭を下げてから、最後の言葉を告げた。

「・・・残念ですが、ご臨終です。」

ワー・・・・・!!
「あんた!あんた!目を覚まして!」

すがりつく家族の声が病室に響き渡っていった。
324 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/02(水) 23:25
亡くなった患者の葬儀もすまないうちに
手術の翌々日に死亡したのは、医療ミスがあったにではないかと
疑いをもった家族が、カルテの開示を求めてきた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

白っぽい無機質な廊下に自分の足音だけが響いている。
消灯時間が過ぎて、誰もいない薄暗い空間。
普通の人なら幽霊が出そうで怖がるような雰囲気なのだが
保田は、この空間に妙な癒しを覚えながら
寺田教授の室に向かってゆっくりと歩いていった。

「失礼します。保田です。」

「おっ、保田先生待ってたで。君も総務課課長から聞いていると思うけど
患者の家族が文句言うってきよったんや。難儀やなぁ。」

「はい、でも医療過誤はありませんから、大丈夫です。」

「そら、わかってる。こっちは、ビデオテープ見られたかて、
何を調べられたかって、いっこも落ち度なんてあらへん。」

「そんなことはええねん。訴えられたかて、負けへんで。
裁判になったら、わしが全部証言する。
違うねん。そんなことと、ちゃうねん。
わしが心配しているのは、君のことや。」
325 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/02(水) 23:31
「こんな事で君の経歴を傷つたくないねん。
これを機会に君、留学せえへんか?
前から話はあったんや。」

「えっ、そんな逃げるみたいにですか?」

「違うって、ほんまに話がきてたんやって。
ただ、わしがな、君を手放すことを迷ってただけや。
ええ話やろ、行って来なさい。
もう、飛行機の切符は買うてあるんやから。」

保田はあまりに突然な話しで、すぐには返事が返せなかった。

寺田は彼を説得するため、ソファーに座らせ話しを始めた。

「あんな、ちょっと聞いてくれや。
わしはな、君にこの教授の椅子を引き継いで欲しいと思ってるねん。
わしな、夢があるねん。それを叶えてくれるのは君しかおらへん。」

保田はうつむいて黙っていた。
326 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/09(水) 00:33
「わしはな、若い頃、北海道のS医科大学の医局におったんやわ。
卒業したてで、まだ何にもでけへん頃な。
昭和43年や。
そこで、日本で初めて心臓移植が行われたのは、知ってると思うけど。
あれは、ドナーの死亡の判定が曖昧で
生きてる人の心臓を摘出して、移植されたと言われている。
惨い事や。大きな社会問題になって裁判になった。当然やろ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そやけど、こんな事言ったら、患者さんとドナーとして、犠牲になられた方には申し訳ないんやけどな、心臓外科医として俺の大きな目標となったんや。

今やったら、脳死判定の基準もできた。免疫学も発達して、免疫抑制剤も色々ある。
臓器移植法の改正案が今年にでも成立しようとしている。
法律的にも医学的のも、お膳立てができたわけや。
腎移植、肝移植、角膜移植は成果をあげてる次はいよいよ・・・
でも、まあ、心臓移植はこれからもあり得ないやろうけどな。
それでもな、未来は何が起こるかわからん。
もし、それが必要とされた時に、今度は絶対に助けてあげたいんや。
わしな、TVで心臓移植のために渡米したっていう報道見るたびに悔しいねん。
技術的になら日本でも充分できるのにな。

そう思ててもな、年には勝てへん。
外科医は体力や。わしはもう、あかんわ。
手術は好きでも、老眼で手元がよう見えへんし
鈎引きとか、吸引係りしかできひんわ。
そやから、わしは、君に夢を託したいんや。
君ならできる。勉強してきてくれ。」
327 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/09(水) 00:39
言い終わったあと寺田は、書類と旅券をテーブルの上に差し出した。
保田は、黙ってそれらに視線を落とす。

「明日からですか?」

驚いた保田が、寺田を見ると
寺田は、口をへの字に結び、目をそらして横を向いた。
俺の言う事に従えと言わんばかりの態度だ。

「急なことでびっくりしたと思うけど大丈夫や。
大学のことも、住む所も光子に頼んどいたから
心配せんでええ。
空港に着いたら待っててくれてる。」

「お嬢様は、留学されていたのですか?」

「そぉーや。」
328 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/09(水) 01:07
訴訟を利用して、お為ごかしに自分を追い払う工作か?と思っていたが
どうやら、違っていたようだ。
追放されるよりもっと厄介かもしれない。
『もう、ここには帰っては来れない。』
保田はそう思った。

「有難うございます。行かせて頂きます。」
従うしかない。それが、医学部というものだ。
保田は、覚悟を決めた。

「ほんなら、お気張りや。」

「・・・・・・・・・・・・・・失礼します。」
保田がドアを開け、出て行こうとした時、寺田が再び声をかけた。

「保田先生、落し物預かってるで。」

寺田の引き出しから出てきた物は、保田の携帯電話だった。

「オペ室の洗濯物に混じって入ってたんやって。
中澤婦長が届けてくれよったわ。
おまえ、年がら年中、オペ着着てるやろ。
病棟回る時かて、オペ着の上に白衣着てるだけやし
仮眠室で寝るときも、風呂に入る前も新しいオペ着もっていくそうやないか。
そやから、どっかで落としたんちゃうか?
向こう行ったら、気をつけや。」

『そんなはず無い。』
保田は、今、はめられた事に気付き、歯を食いしばり、悔し涙をこらえて頭を下げた。
329 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/09(水) 08:33
『彼に会いたい。』

弁護士の男が帰ったあと
梨華は、身を引く決心をしていた。
でも、最後にもう一度だけ保田に会たい。

オペ日で連絡のとれない長い一日が過ぎ
朝から携帯にかけてみた。
でない。メールしても返事が返ってこない。
病院にかけると
『処置中です。』と断られる。
いつまでたっても、『処置中です。』と言われてしまう。
ただ、保田がICUにいる事だけはわかった。

梨華の焦燥感は、空しさにかわっていき
自分自身をどんどん、闇の中に追い込んでいった。

『こんな人じゃなかたはず。』
『どんなに好きでも結婚できない?』
『もう死にたい。』

心が壊れていくのなんて、簡単だった。
330 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/09(水) 15:08
いつも読ませていただいてます。
物語がどう繋がっていくのか楽しみにしています。
331 名前:paco2 投稿日:2005/03/13(日) 23:25
330>名無飼育さん 様
そう言って頂けると、本当にうれしいです。
大まかな話の流れは考えているのですが、ほとんど毎回、暗中模索状態で少しづつ
進めています。自分でもちょっと不安。でも頑張ります。
332 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/13(日) 23:27
梨華は薬を飲んだ。
そして、手首のカミソリを引いた。

っ痛。
赤い血が流れていく。

もう、このまま眠りたい。

梨華は、弛緩した後、嘔吐して部屋が汚れないように
頭をビニール袋の中へ入れ目を閉じた。

何も聞こえない。
目に浮かんだ、保田さんの顔はすぐにぼやけて消えていった。
朦朧とした中でしだいに感覚を失っていく。
333 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/13(日) 23:30
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「梨華!梨華!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「誰かが呼んでる?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「梨華!梨華!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「誰?優しい声。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「梨華!死ぬな!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「誰なの?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「梨華!生きるんだ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「誰?」
334 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/13(日) 23:33
「石川さん、目を開けて!」
「梨華ちゃん、梨華ちゃん!」

梨華は、目を開けた。

「よっかった!梨華ちゃんが目を開けたよ!!」

そこには、泣いているミキちゃんとお母さんがいた。

「あっ、ミキちゃんごめんね。」

「ママ、ごめんなさい。ここはどこ?」

「病院だよ。」

「なんで?」

「ミキちゃんが見つけてくれたんだよ。」

「死なせて欲しかった。」

「なに、馬鹿な事言っているの!みんな梨華ちゃんを愛しているんだよ!
死にたいなんて言わないで。」

「ウ・・・・梨華ちゃん、梨華ちゃんが苦しかったのお母さん分ってあげれなくて御免ね。」

泣きながら抱きしめる母の腕の中で
宙を見つめる梨華の目からは、とめども無く涙が溢れ流れた。

335 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/13(日) 23:36
「もしもーし、わしや。」

「はぁ?ワシワシ詐欺はお断り。」

「裕ちゃん、何言うーてんねん。今日飲みに行かへんか?」

「何で?良心の呵責ですか?罪滅ぼし?謝る相手は私と違うでしょ。」

「痛いなぁ、そんな事言わんといてーな。会いたいねん。」

「ふーん、ほんなら、何時?」

暴君で気位の高い寺田が
ストレスがたまった時、辛い時に
鎧を脱ぎ捨て、素に戻れる相手は
若い頃から共に励ましあい、本気で愛した中澤だけだった。
336 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/14(月) 00:45
会うのは、いつもの高級ホテルのセミスイートルーム。

「裕ちゃーん、裕ちゃーん。」
寺田は、中澤の脚を撫でながら、唇を寄せてくる。

「甘えん坊さんやな、今日は何かあったん?」
中澤も手を優しく握りしめ、寺田にしなだれかかる。

「べつに。保田をな、留学させることにした。
そんな話はええやん、それよりもう、我慢できひん。」

「あかんって。話してくれな分らへんやん。」

寺田は、裕子の言葉を無視して、服を剥ぎ取ると、遠慮なくパンティの中に手を入れてきた。

「裕ちゃん、こんなに濡れてるやん、嬉しいなぁ。」

寺田は、下着も剥ぎ取り、露わになった綺麗な乳房をぺちゃぺちゃと
いやらしい音をたてながら何度も乱暴に吸って
裕子の体に酔いしれた。

「裕ちゃん、裕ちゃん綺麗やで。」

寺田は、裕子の繁みに舌を差し込む。
小さなふくらみをペロっとなめ上げると、裕子の体がピクっと動く。

「ええか?これ、ええか?」

何回も繰り返し、割れ目の中もペロペロかき回す。

「あん・・いや。」

裕子が悩ましい声をもらした。
337 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/14(月) 00:47
「裕ちゃん、ねぶって、なー、ねぶってくれへん?」

懇願されて、裕子は寺田のそれを口に含んだ。
半立ちのそれは、たちまち口の中で大きくなってくる。
歯を立てないように、舌の表や裏を使って付け根から先っぽまで、ねっとりなめ回す。
横笛のようにくわえて、唇と舌を這わせる。
亀頭をなめながら、舌先で尿道口をくすぐる。

「あぁ〜、裕子感じ過ぎるわ。・・・上に乗って。」

呼吸を乱しながら、寺田は中澤を騎乗位にさせた。
裕子は股を大きく開らき寺田のモノを求めてこすり付けてくる。
裕子の秘部は、キラキラ妖しく光っていた。
338 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/14(月) 00:51
「早く、早く入れて。」

裕子は鼻に掛かった声で囁くように、寺田を誘う。

「欲しいんか、欲しいんか?裕ちゃん。」

寺田は大きくなったそれを裕子の中へ滑り込ませていく。

「あっ、あ、あぁぁ〜」

敏感な裕子の肉襞は寺田を包み込むと自ずからヒクヒクと動き出す。
裕子は、腰を上下させ、寺田を絞り上げる。
寺田も腰を突き上げ、裕子の奥を攻め上げる。

「あ〜」

かん高い掠れた声を上げ、眉間に皺を寄せた苦しげな表情で
裕子は脱力し倒れこんできた。

「裕子、いいよ。あ〜裕子、裕子、かわいいよ。」

寺田は、裕子と繋がったまま、上になり、さらに攻め続けた。

「あぁ〜」

裕子は悲鳴に近い声を上げる。

「うっ、うううー」

寺田もまた、裕子に自分の思いの全てを受け止めてもらい。果てた。
339 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/14(月) 00:52
ベッドの中で、甘い余韻が薄らいできた頃、寺田は口を開いた。

「裕ちゃん、御免な。」

「私は、ええって。つんちゃんの気持ちは分ってる。
ほんまは、保田先生に手を突いて謝りたいんやろ。
そう思うたら、石川梨華の面倒も見たりや。」

「分ってる。・・・因果な商売やなぁ。つくづく嫌になるわ。
あの時、裕ちゃんと駆け落ちしてたら良かったな。」

「何言うてるの?今さら、遅くさいわ。」

寺田は黙って裕子を抱きしめた。

340 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/18(金) 01:39

(2)出会い

梨華は、診断書を書いてもらい、病気休暇をとって、家で過ごしていた。
家族が、やさし過ぎるのが辛い。


午後の明るい日差しの中で、舗道の街路樹の葉が光と影を綾なして
住宅街を優しい色で縁取っている。
前かごに、花束を入れゆっくり自転車で走る梨華は
趣味で通っている生け花教室の帰りだった。


「梨華ちゃーん、おーい、梨華ちゃーん。」

信号待ちしていた横断道路の向こう側で、手を振る人がいる。

「えっ?うそ!」

彼女は、高校からの友達で、学生寮も同じ、職場も同じ。
いつも一緒に遊んでたマキちゃんだった。

梨華は自分の目を疑ったが、やっぱりマキちゃんで
青信号に変わったとたん、お互いに飛び出して行った。

「ねえ、びっくりしたよ。なんでいるの?」

「昨日帰ってきたんだ。連絡しようと思ってた。」

少し日焼けしたマキちゃんの笑顔は、美しかった。
341 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/18(金) 01:43
ふたりは、とりあえず近くの喫茶店に入って、隅っこに座った。

「梨華ちゃん、ぜんぜん変わらないね。」

「マキちゃんこそ全然かわらないよ。綺麗になったんじゃない?」

何年も会ってなかったのに、あの頃と同じ気持ちで自然に話ができる
梨華はそれが嬉しかった。

「梨華ちゃん、今日は休みなの?」
何気なくマキが聞いてきた。

「うん。休んでるの。」
梨華は、マキに今の自分のことをありのままに話し

「バカでしょ、私って。」
って、手首を見せて自嘲してみせた。

「梨華ちゃん・・・・」

マキは、泣きそうな顔をして真剣に聞いてくれる。
342 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/30(水) 15:23

「ねえ、梨華ちゃん、苦しかったでしょ。梨華ちゃんは優しすぎるから・・・・。」

そう言ってマキちゃんは、こみあげてくる涙を押さえきれませんでした。

「梨華ちゃんの気持ち分るよ。ウッゥゥゥゥ・・・
梨華ちゃんってー、昔からすごい真面目だもん、いっぱい悩んで
どうしたらいいか、分らなくなって
自分が悪いんだって、思っちゃって
・・・死にたくなったちゃったんだよね・・・
分かる、分かるよ。
私だって、失恋する度に何もかも嫌になって
もう、全部終わっちゃえばいいんだって、思ったことあったもん。」

マキちゃんは梨華の心に深く刻まれた傷をおもうと涙が止まらなかった。

梨華もまた、マキの過去を思い出し、頬に涙がつたわっていた。
343 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/30(水) 15:25
マキちゃんと一緒に遊んでた頃
マキちゃんには、2年くらい続いている彼がいて
梨華の彼氏と4人で、よくWデートをして
飲みに行ったり、泊りがけで旅行に行ったりしていた。
マキちゃんの恋愛は、いつも本気で重かった。
まだ、遊びたいお年頃の年下の彼とは、だんだん気持ちがすれ違っていき
彼の浮気が原因で
大喧嘩して・・・マキちゃんは半狂乱になって・・・
別れた。
気持ちを吹っ切る意味で、マキちゃんは、仕事を辞めて
バイトしながら専門学校に行き
結局、今の仕事を本業にしてしまった。
344 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/30(水) 15:36
マキちゃんは、ハンカチで目頭を押さえながら、
梨華を慰める言葉をさがしていた。

「ねえ、梨華ちゃん、例え話なんだけど
イソップ物語のきつねとぶどうの話、知ってる?
きつねは、ぶどうを食べたいけど、ジャンプしてもどうしても手が届かない。
それで、どうせ酸っぱいに決まってるって考えて食べるのを諦める話。?」

「うん、知ってるよ。」

「どう思う?」

「どうって?」

「・・きつねのこと、意気地なしだと思う?
でもさ、きつねは、努力をおしんだわけでもなければ、
さじを投げたわけでもないじゃん
ただ、諦めるっていう悔しい気持ちで自分が傷つかないように
納得できる都合のいい屁理屈考えて
自己完結しちゃった。
やっぱ、きつねは、負け犬だと思う?
ちがう、負けぎつねか?アハッ」

「・・・・・・・・・・・・」

梨華は答えたくなかった
容易いな言葉で、結婚しても、きっとうまくいかなかったよとか
家柄が違いすぎるよとか
わかったような事を、誰にも言われたくない気持ちのほうが強かったから。
345 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/30(水) 15:37

「ごめんね、偉そうなこと言っちゃって。
これは、これでいいんだよ。
いつまでも、ぶどうの事かんがえていても仕方ないじゃん。
・・・・・・・・・・・・・
梨華ちゃん、時間が解決してくれるって。」

マキちゃんは、優しく笑って、それ以上の言葉は濁した。


「ねえ、梨華ちゃん、ふられ女の同盟でも作ろうか?」

「えへっ?作ってなにするの?」

「太陽に向かってさ、逃がした魚は小さいぞーとか
残り物には福があるーとか
健康的に叫んでさ
出雲大社とか、玉造温泉に縁結びツアーに行くの、どう?」

「名前はね、えーっと、ばかちん女塾とか美妙伝とかつけてさ。」

「ばーか、おもいっきし、負け犬じゃんよ。」

「梨華ちゃん、ポジティブだよー。」

「どこがー?・・・でも、ありがと、マキちゃん。」
346 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/03/30(水) 15:41
「ねえ、いつまでこっちに居られるの?」

「今月の終わりくらいまでかな。」

さっきまで冗談を言っていたマキちゃんの顔が急に歪んで梨華を見つめた。

「梨華ちゃん、死ぬなよ。死んじゃやだよ。」

声が震えて大きな瞳からは、再び涙がこぼれ落ちていた。
涙声なのは梨華も同じだった。

「マキちゃんもだよ。
また、エイズの子供達のところに行くんでしょ。
今度も絶対、帰って来てね。
それで、また会おうね。約束だよ。」

『マキちゃんも、死なないでね。』って心から祈った梨華は
人の命が尊さにハッと気が付き我に返った。

347 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/11(月) 21:07
(3) よっすぃ〜だっぞ〜。

ヒノキの調査に行く日が決まった。

ミセスカゴのダンナは、仕事を1週間ほど休んで案内してくれることになり
車、ガソリン、水、食料、全てを準備してくれた。
もちろん、その分の経費は○井物産で出し、人件費は2人分だすことになった。
というのは、信用のおける通訳をさがす時間がなかったため
危険を承知でアイボンも連れて行くことにしたからだ。

アイボンは頭のいい子だから、学校を1週間くらい休んでも全然困らないし
この国では、家業を手伝ったり、農作業のため学校を休むのは普通に許されている。
でも今回のアイボンの場合は、家業の手伝いといえなくもないが
吉澤の心はちょっと痛んだ。


カゴダンナは出発前、荷物を沢山積めるトラックにするか4WDにするか迷った結果
安全を考慮して、4WDをだすことにした。

この車は以前、国が古くなった軍用車を
中古車として売りに出したときに
ボディの錆や凹みが少ないものを見つけて買ったものだった。
ダンナは、それにかなりのお金を注ぎ込み
色を塗り替え、エンジンを載せ替え、部品を交換し、タイヤも交換して
ほとんど新品同様の軍用車時代よりもパワーアップした自慢の4WDに仕立て上げていた。
348 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/11(月) 21:11
市街地を走る、電信柱と張り巡らされた電線で空を覆われた狭い道
どこか、日本の田舎に似てる住宅地をすり抜けるように
カゴダンナは、楽しそうに車を走らせる。

しばらく行くと今度は産業道路を走っているのか
時々荷物を満載したトラックが行き交う。

「パパ、あのトラック何の草を積んでるの?」

「アイボン、あれは、さとうきびだよ。工場に持ってって砂糖にするんだよ。」

「パパ、お坊さんだよ。」

黄色い袈裟を着たお坊さん達が托鉢で歩いている。
テレビで見たのと同じ風景だと吉澤は思って眺めていた。

アイボンは初めて目にする物珍しい事にいちいち父親に質問をぶつけてくる。
吉澤は話の半分も理解できなかったけど
いい親子だな、やっぱりアイボンは可愛いなと思いながらそれを聞いていた。

349 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/11(月) 21:14
もう8時間以上走っている。
アイボンはすっかり寝てしまい
目の前には一面に広がった自然の緑がまぶしく、どこまでも続いている。
カゴダンナは、車を道路わきに止めた。

「アイボン、起きろ。トイレ休憩だぞ。」

起こされてアイボンは車からぴょんと飛び出て
道路標識の向こう側に歩いていった。
戻ってくると、よっすぃ〜もトイレと言う。
って言われても、トイレなんか無いし、野ション?
出ないからと断ると、カゴダンナが
これから先はトイレに行けないから、無理やりでも今済ませておくようにと言われた。

しぶしぶ、背の高そうな草むらの繁みの中にしゃがむ。
パンツをずらしてお尻をだすと、チクチクと雑草の葉っぱの先がお尻をつつく
「痛て!」
シャー・・・。
金色のシャワーを浴びて、葉っぱの上で水滴がキラキラ光って、とても綺麗だ。
野ションって案外気持ちいいな。癖になりそう。と吉澤は思った。

350 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/11(月) 21:17
舗装された道路が終わり、ボコボコ道を土煙を上げながら走る4WD。
スピードをいっこうに落とさないので、車が跳ね上がった拍子に
アイボンは頭をぶつけてしまった。

「パパ、乱暴な運転はやめてよ。」

「御免なアイボン。お天気が変わりそうだから急いでるんだ。しかりつかまってろよ。」

見ると、前方の山の上には、真っ黒い雲がかかっている。

日差しが失せると同時に雨がザーと降ってきた。
熱帯独特のいきなりの大雨は
ワイパーを早めても、前が全然見えない。
泥を飛ばしながら走ってきた道は、やがて川のようになってきた。

「よっすぃ〜、今日はこの辺で野宿しましょうか?」

カゴダンナはこの雨じゃそれほど先には進めないと判断し
泥水の川となったとは言え、一応国道という安心感もあり
ここで一夜を明かすことにした。
351 名前:paco2 投稿日:2005/04/12(火) 07:07
吉澤ひとみ様
20歳のお誕生日おめでとうございます。
よっすぃ〜の美しさとかっこよさは無敵です。
これからも頑張って下さい。応援しています。
352 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/21(木) 23:29
「あー、疲れたー。」

大きく伸びをしたアイボンは、シートを倒しゴロンと寝転がった。
私がおいでと手招きすると、嬉しそうに這って来て膝の上に座り
両手を首に回し甘えてくる。
車の外は激しい雨。
少し不安な気持ちは私も同じ。
両親に対してはもう、こんな甘え方が出来ないんだろう
甘えてくるアイボンを抱きしめてると
私も気持ちが癒された。

「アイボン、よっすぃ〜の脚が痛くなるから、降りろ。」

カゴダンナは、おこわご飯の弁当をわけながら、アイボンを叱った。

「色気づきやがって・・・」と小言を言われ
アイボンはうつむいてしまった。
353 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/21(木) 23:31

3人は簡単な夕食を済ませ、カゴダンナと私は4時間交代で寝る事にした。

私が運転席に移り、カゴダンナは後ろにいって、座席をフラットにして毛布をひっかぶると
すぐに寝息が聞こえてきた。

雨はもう、すっかり上がっていて、車は夜の帳に包まれている。

「なー、よっすぃ〜、なんか話しよう。」
アイボンが小いさな声で話しかけてきた。

「よっすぃ〜は、恋人とかいるの?」

「うん?ふん・・・アイボンは?・・クラスの中で誰か好きな人とかいる?」

「ううん。クラスの子はいないけど、好きなは人いる。」

「どんな子?カッコイイ子?」

「うん。すごくカッコイイ。近くにいるだけでとドキドキする。」

「へー、そんなに素敵な人?話したことあるの?その人、アイボンの気持ちは知ってるの?」

「話はしたことあるけど、鈍感な人やから気づいてないと思う。別にええねん、それで。
恋人とか、おるかもしれへんし。今のまんまでええのや。側にいるだけで幸せやさかい。」

「ふーん、健気だねアイボンは。私だったら自分から言っちゃうけどな。」

「ほんなら、よっすぃ〜は、告白した相手と今でも続いてるの?」

「へっ?へへへ・・・ふられた。」

「おい、なんやそれ、何のアドバイスにもなってへんやんか。頼むでよっすぃ〜。」

(ぁ〜ぁ、鈍感な兄ちゃんやなぁ。)

あきれ顔でアイボンがよっすぃ〜を見ると、
ちょっと怒ったふりをして、もう寝ろと、頭から毛布をかぶせられた。
354 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/21(木) 23:36
「あーん、やめてよ、よっすぃ〜。」

アイボンが、かぶせられた毛布から顔を出したその時だった。
黒い影がフロントガラスを横切った。

「わっ、今のなに?」

「えっ?」

「なんかあっちへ走っていったよ。」

アイボンは、ぶるぶる震えながら、漆黒の闇のほうを指差した。

「怖い。」

「大丈夫だよアイボン、この中にいれば。この車はね、象に踏まれても壊れないって
パパが言ってたよ。だから、大丈夫。」

吉澤は、助手席のアイボンのほうへからだを乗り出し、落ち着かせようとした時

『ウウウー・・』

胸に響くような、低い猛獣の声が遠くで聞こえた。
355 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/04/21(木) 23:40
「キャーッ!」

「静かに。」

吉澤は、アイボンが騒がないように、ぎゅっと抱きしめ、手で口を塞いだ。

ガリ、ガリガリ。
車を爪で引っかく音。何かがドアの外に居る。

「あわわわわ・・」

アイボンは言葉を失い腕の中でブルブル震えている。

吉澤も恐怖で硬直していたが、勇気を出してそっと窓の外に目をやった。

「わっ。」

緑色に光る目がこっちを覗いている。

『落ち着け吉澤。動かなければ大丈夫だ。』

吉澤は、必死に冷静さを保ち、気配がなくなるまで、アイボンを抱いていた。

どのくらいの時間だったのか、やがて獣の気配は消え
車の中は、カゴダンナの寝息だけが聞こえていた。
356 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/05/18(水) 22:22
ドーン!!
いきなりだった。
何かが、車にぶつかり、大きく揺れた。

「キャーッ!」
アイボンが悲鳴をあげる。
吉澤はアイボンを包むように、さらに強く抱きしめ耳を塞いだ。

ウォー
ガル〜〜・・
ジャリジャリ・・
キーッ!!

闇を切り裂く声は、餌食になった動物の断末魔の叫びだった。
しかし、それは長い時間は続かなかった。
やがて、闇は何も無かったかのように静まり返る。

吉澤は、足の先から頭のてっぺんまで全身総毛立ちながら
震える手で、ヘッドライトをつけてみた。
その瞬間だった。
獲物をくわえ興奮したトラがキッと吉澤の目を睨みつけ
大きな口で雄叫びをあげ
車に向かって突進して来た。
その目は、野生というより狂人の目に近い感じで
吉澤から視線を反らさない。

ガオゥーッ・・

ジャンプ一発、トラはボンネットに駆け上がり
フロントガラス一枚越しの吉澤の目の前で牙をむいた。

「ギャー!!」

吉澤は、とっさにエンジンをかけ車を急発進させた。
ブオー〜ン!
トラは振り落とされて、ズルズルと滑り落ちていき視界から消えてった。
吉澤は、無我夢中で車を走らせた。
357 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/05/18(水) 22:25
空が、夜明け前の濃い青色になり始めた頃
車を飛ばしてた吉澤の恐怖心も落ち着いてきた。

助手席に目をやるとアイボンは、あれから気絶して、その後ずーっと安らかな顔で眠っている。
カゴダンナは、二人があんなに大騒ぎしたのに一度も起きなかった。

吉澤は車を止めて、
カゴダンナを起こして運転を替わってもらい横になると
さすがに疲れきっていたのですぐに寝てしまった。


吉澤の目が覚めたときは、すでに周りの景色は木や草がおおい茂り
山に囲まれていた。
目的の村まではもうすぐだ。

道の下を流れる川の水が澄みきっている。
遠くで水牛が水を飲んでいる。
はじめて見る風景なのに、吉澤はどこか懐かしい気持ちで
それらを眺めていた。
358 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/06/22(水) 09:23
輪だちの後がくっきり続く林道を4WDはゆっくり登っていく。
大型トラックがようやく1台通れるくらいの道幅で
谷側は切り立っていて、下が見えない。
吉澤は頭がクラクラしてきた。

「あと、どのくらいで着きますか?」

「ここからだと、15分くらい。」

「ヨッスィ〜、ドナイシタン?カオイロワルイデ。」

通訳しあと顔を見られた吉澤は、アイボンに心配されて

「うん、大丈夫・・・ちょ、ちょっと酸素が薄いから・・・」

なんて、バレバレのやせ我慢を言ってる自分がちょと悲しかった。
359 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/06/27(月) 11:32
現地の案内は、ここら辺に昔から住んでるマリ族(実際のマリ族とは関係ございません)
の男が案内してくれることになった。

吉澤たちは、案内されるままに歩きまわる。
山は奥深く、雑木が織り重なり合い、密生している中に
ヒノキの巨木があっちこっちに生えていて
その一本、一本が、素人の目にも、高価な代物であることが一目でわかる見事な眺めだった。

「すげーな。」

吉澤は感動している暇も惜しみ、デジカメに何本ものヒノキを撮影し
カゴダンナと案内人の男に協力してもらいメジャーで計測して
映像とデータを持ってきたパソコンから、ミセスカゴのパソコンへ送信した。

資料を送りながら、吉澤は心配になってきた。
こんな所から、木を切りだして運ぶ?重機をどう確保するか
トラックは何台必要なのか
道路はどこまで入り込んでいるのか
人足は100人以上雇うとして、人が集められるのか
雨水を貯めて、飲料水としているこの地区で
飯場と食料と水をどうするか

現場の厳しさは、想像以上だった。
360 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/07/12(火) 23:31
「アレ?ダレカイル。」

アイボンが指さした先を見ると
見たことのない帽子と民族衣装を着た原住民?らしき人間がこっちを見ている。

「オグー!!」

いきなり案内の男が、怒りの雄叫びをあげた。
カゴダンナも緊張した面持ちで、とっさにアイボンを自分の方に引き寄せる。
何かヤバイことになってる。
理由のわからない吉澤も危険な空気だけは感じていた。

案内の男はオグ族の男を睨みつけ、後ずさりしながら吉澤達に車へ戻るように示した。
3人は山道を駆け下りて行く。
走りながら吉澤が、カゴダンナにおんぶされているアイボンに理由を聞いてみると
アイボンも背負われながら言葉が途切れ途切れに教えてくれた。

「マリ族、オグ族、ナカ悪い。マリ族の娘。オグ族にヤラレタ。」

「オグにマリの娘がヤラレタ?」

民族の争いとか無縁の地に育った吉澤にとって
憎しみを顕に威嚇し合う男達の姿を目の当たりにして
強烈なカルチャーショックを感じていた。
361 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/07/12(火) 23:36
車まであと3m。
逃げ込める・・・・はずだった。

「アー!」

叫び声と共にカゴダンナが足元に倒れこむ。
背負われていたアイボンは、地面に放り出された。

「アイボン! 大丈夫?」

駆け寄ろうとした吉澤は、急に腕を引っ張られ、瞬時に羽交い絞めにされた。

「えっ?なに!」

背後に彼らがいるなんて気付かなかった。

が、今、目の前には、さっき見た民族衣装をきたオグ族の男数人に囲まれていた。
362 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/08/17(水) 23:24
カゴダンナはしばらくうめき声をあげていたがやがて、動かなくなってしまった。

カチャ
何かの金属音をたてて、浅黒い顔の男がアイボンを抱き起こし
太い腕でのどを締めあげた。
ウー・・・オェー・・
声にならない声を絞り出すアイボンは、後ろ手で手錠を掛けられ
顔色がみるみる間に変わっていく。
周りで見ている男らは、いやらしい目つきでアイボンをながめ、薄ら笑いさえうかべている。

「アイボーン!・・離せ、この野郎!・・その娘は違うんだ!」

吉澤は必死でもがき、叫ぶ。
けれど、男二人に押さえつけられては身動きがとれない。

「アイボン、アイボーン!!」
「ヨッスィ〜、助けて・・・」

窒息寸前のうっ血した顔で、搾り出すような声で助けを求めているアイボンが
吉澤の目の前で今レイプされようとしている。

男たちは、アイボンの服に手をかけた。

「止めろー!」

吉澤は喉が切れるくらい叫びつづけた。
363 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/08/17(水) 23:29
「さあ、早く脱がせろ。」

興奮した男たちの上ずった声と、奇声が入り乱れて
アイボンは袖を抜かれ、飾り気のないブラジャー姿にさせられた。
白い肌と意外に大きな胸が、男たちの欲望をかりたてている。
乱暴にホックがはずされ、ブラジャーが剥ぎ取られると
ピンク色の乳首がさらけ出された。

「早くしろ、パンティもだ!」

白いパンティが下げられると
待ちきれないようにズボンを脱ぎ尻を出した男が覆いかぶさっていく。
他の奴等もまた、飢えた狼のように、アイボンに群がっていった。

「止めろー!」
身震いしながら吉澤は、泣き叫ぶことしか出来なかった。
364 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/08/17(水) 23:50
「ワーーーー!!」

その時だった。
いきなり、4WDドアがパッと開き
切迫したわめき声と共に、バールのようなものを振り回しながら
ノノが飛び出してきた。
ノノはそのまま群がる男たちに突進してゆき
めちゃくちゃに殴り始めた。

「ウォー・・・」
「アー・・・」

背後から殴りつけられた男たちはのけぞり、アイボンから離れていく。

突然の出来事に驚いたのか吉澤を押さえつけていた男たちの力が一瞬ゆるんだ。
そのすきに、スルリと男たちの腕をすり抜けた吉澤は振り向きざまに
回転の勢いをかりて裏拳でおもいきっり、男の顔面をヒット
もう一方の男には急所をトゥキック。
二人の男はあとずさりしたが、
急所に手を当てている野郎の下顎をもう一度突き上げるように蹴り上げ
もんどりうって倒れた男の急所を靴のヒールで踏み潰した。
顔面をくらわせた方の奴はランニングエルボーで倒し
今度は足元に落ちていた石を眼球めがけて投げつけ目潰しで立てなくしてやった。

「ノノ、アイボン!!」

吉澤は男から奪ったナイフを隠し持ち駆け寄った。
怒りは頂点に達している。
365 名前:paco2 投稿日:2005/11/25(金) 15:18
「ハァー? お尻を出した子が一等賞だってかーっ!この野郎!」

ズブッ!

吉澤は、ズボンを下げアイボンに覆いかぶさっていった男の背後に飛びかかり
おもいっきりナイフを突き立てた。

「アーーー」

ドンッ・・・・

のけぞり倒れる男の体で地面が振動する。
カサカサと音を立て押しつぶされる下草に赤いしずくがしたたり落ちた。
立ち上がった吉澤は、、ナイフを手に男達の顔を鋭い眼差しで見回し
そいつらの目の前で倒れてる男の頭を一蹴りしてやった。
グチャ・・・
蹴られた頭は岩にぶつかると鈍い音と共に岩が頭にくいこみ
血だまりができて、静かに広がっていく。
頭が潰れた男の体が、ピクっとした後に
ブクブクと口から泡と大量の血液が流れ出し
耳の穴、鼻の穴、目からさえも脳脊髄液の混じった鮮血がサラサラと流出した。
間もなく体じゅうが、ひきつけたように、激しく痙攣し、やがて二度と動かなくなった。

「ノノ! アイボンを車に連れて行け!」

凍りついた空気を裂くように吉澤は怒鳴って
ノノの手からバールを受け取り二人をかばうように立ちはだかった。

泣きじゃくるアイボンは、手錠を掛けられたまま、ノノに抱えられてよろよろと4WDに向かう。
366 名前:paco2 投稿日:2005/11/25(金) 15:20
しかし、男たちがそれを黙って見ているはずはなかった。
ノノたちが歩き始めると
一人の男がナイフを振りかざし吉澤に襲いかかってくる。
とっさに、かわしたつもりだったが
すり抜けたナイフが吉澤の皮膚を切り裂く。
流れる血液でヌルっとした感触が指に伝わり
一瞬の脱力で吉澤の手から、握っていたバールが落ちていった。
だが、それが合図だったかのように
周りの男たちはいっせいに吉澤に襲いかかっていった。

バキューン・・・・

吉澤が、やられると覚悟した時
銃声が鳴り響き、目の前の男が顔を歪め崩れる。
驚く吉澤に
「ダンナサーン!」
と叫びながら戻って来た案内人のマリ族の男の声が聞こえてきた。
うろたえ、逃げ出す男たち。
膝をついた吉澤が見上げた視線の先には
息を切らした男の手に、トカレフが握りしめられていた。
367 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/11/27(日) 19:54
現地を案内してくれ、命の恩人でもあったマリ族の男と村の長老に充分過ぎるほど金を払い
吉澤は帰り道を急いだ。

4WDの後部座席では、カゴダンナが横になり、眠っているようにみえるが
苦しそうにあえぎながら息をしている。
心に深い傷を負ったアイボンは、ずーっと放心状態のままだ。

吉澤は、アイボンをいたわりながら肩を貸してやってるノノに声をかけてみた。

「ノノ、ありがとう。ノノのおかげで助かったよ・・・・・・って、やっぱわかんねーだろうな。」

とつぶやくと、以外にノノからすぐ返事が返ってきた。

「ワカリマス。ニホンゴ、スコシ シッテマス。」

「えっ、ノノ、日本語わかるの?」

「スコシ、シッテマス。」

「オー、ノノー、ワンダフル!・・・・ビューティフル!雨が降るー アイボン、グッジョブ!ジョブ・ディバ!ブラボー!」

吉澤は一気に嬉しくなり、傷口が腫れあがった片方の手の親指を立て
やけくそなノリで大げさに明るく笑い出し
「エヘヘヘッ・・」とノノも、はにかんだ様子で連れて笑うと
さっきから、黙りこくっていたアイボンも、おどけた吉澤を見て笑顔に変わって
やがて、3人の笑い声で車の中は一転して奇妙な幸福感に包まれた。
368 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/11/27(日) 19:56
和らいだ雰囲気の中で、吉澤は
やっとアイボンには触れてはいけない話しの口を切ることができた。

「アイボン、・・・アイボン大丈夫?アイボン、ちょっと聞いて。
今日はさ、全体的に山でケガをしたけど
なんにも変わったことはなかったし、なにも見なかった。
だから全体的にこのまま、山でケガをしたことにしよう。」

アイボンはヨッスィーの言った事があまり理解できなかったが
たぶん、自分のことを気遣ってくれて
今日の出来事は山でケガをしたと言う事にして
皆で口裏を合わせるように
ノノと父親に、吉澤の命令として伝えた。

車の外はだんだん暗くなり始め、宵闇が迫ろうとしている。
舗装道路に入り、静かになった車の中から
夕日でオレンジ色に照らされた雲の波をぼんやり眺めるアイボンは
超然とした、いい気分になり、
すでに寝ているノノに寄り添い、横になった。

吉澤は、休憩も取らず、アクセルを踏み続けた。
少し霧がかかっているのか道路を照らす街灯の光が浮かびあがって幻想的だ。
本社へ報告する文章はすでに頭の中で完成させている。
そして、今日の記憶も深い霧に閉ざそうと思った。
369 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/11/30(水) 17:28
吉澤が会社に戻り、何日かが過ぎた。
吉澤達の事件のことは、「北部の部族間で争いがあった」というニュースが流れただけで終わり
どこからも、呼び出されることもなく
再び、忙しい日常をむかえていた。

そんな中、今日は時間休をとり吉澤は、会社の近くの総合病院に来ている。
ケガは1週間ほどで治ったのだが、変な皮膚病にかかったらしく
薬を飲んでいても、蕁麻疹のような痒みと発疹が消えない。
はっきりはしないが、原虫のようなものが皮下にはいりこんでると言われ
しかたなく通院させられている。

吉澤が所在もなく、順番待ちでボンヤリと待合の椅子に座っていると
目の前の、窓口に飾ってある花瓶の花を差し替えているナースがいた。
どこの国でもやることは同じだなと、ただ漠然と眺めていただけなのに
その視線に気が付いたのかナースは、何度もチラチラと吉澤の顔を振り返って見た。
肌の色が異なる外国人が珍しいのかなと思って、気付かないふりをしていると

「・・ヨシザワ・・・。」

と、名前が呼ばれ、やっと自分の番が回ってきた。
370 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/11/30(水) 17:31
「あのー、日本の方ですか?」

吉澤が診察室からでてると、いきなりどこかから声を掛けられびっくりした。
誰だろうと思い、怪訝そうな顔で周りを見渡すと、
先ほどの花の世話をしていたナースがニコニコと笑って立っている。

「えっ、はい。あのーあなたですか?今のは。」
吉澤はまさかっていう気持ちで不思議そうにナースの顔を見て聞いてみると

「はい。驚かせちゃってすいません。あの、さっき吉澤って日本人の名前っぽかったから
もしかして、そうかなと思って聞いてみました。・・なんかいきなりで、すいませんでした。」
と繰り返し誤ってくれた。

唐突に話しかけてきたその人は石川さんという日本人のナースで
青年海外協力隊としてこちらに来ているのだと、簡単に自己紹介してくれて
吉澤は、こんな所に日本人のナースが居ると思うと、ちょっと心強くて嬉しい気持ちになり
社交辞令以外に名刺を渡す時、是非ここに電話を下さいと念を押して会社に引き返していった。
371 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/02(金) 14:38
吉澤は、石川さんから電話がくるのを内心、密かに待っていた。
日本人同士として親しくなりたかったのもあるが
営業畑の第六感が働いて、あの病院の医師の名前が解れば、ビジネスチャンスが生まれると思ったからだ。
しかし、石川さんからは何の連絡もなく
考えてみれば用事も無いのに電話がかかってくるはずはなかった。
半分あきらめてもみたが、それでも病院で会えるかもしれないと密かに期待しつつ
次の受診の日も、また次の日も病院に行くたびに必死で石川さんを探していた。
結局、石川さんを見つけられず、吉澤の皮膚病は完治してしまった。
372 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/02(金) 14:39

(4) 星降る夜に

午後の会議が終わって戻ってくると、大使館から電話がはいっていた。
月末に意見交換会及び懇親会の立食パーティーを行うというものだった。。
吉澤はあまり堅苦しい席は、好きではなかったが
今回は大使主催ということで、華やかでちょっと楽しそうだ。
色んな人が集まるだろうし、誰かいい人がいるかもしれない。
ここは商魂を捨てて、一女性として、独身のイケメン外交官とかをゲッツ!したい。
吉澤は、カップリングパーティーにでも出るくらいの意気込みで、臨むことにした。

鏡に向かって、口紅を引き直し、ヘアースタイルを整える。
にっこり笑って、左右両方から見た笑顔を確認する。
「よし、今日もかわいいぞ!」
って、オイ、あたしゃ、道重かって?
つい、後輩の『ナルシスト道重』の振り真似をした吉澤は
ひとり、のりつっこみした、お調子者の自分に、にが笑いをしていた。
373 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/02(金) 15:05
パーティー会場に入り
とりあえず、ドリンクをもらって、まわりの人と名刺交換をしていると
奥の方から知ってる顔がやってきた。
ODAの里田まいちゃんだ。

「よっすぃ〜、来てたの?何?今日は、ばかに綺麗じゃん。」

まいちゃんは、大きな目を丸くして、日焼けした顔に白い歯を見せ、ニカーっと笑う。

「まいちんも、こんな服、持ってたんだ。へ〜へ〜へ〜へ〜、100へ〜。」

吉澤は冷やかした口調でかえし
その後、反撃してやろうと思ったが、言葉が続けられなかった。

「こんにちは、吉澤さん。」

まいちゃんの隣にいる女の子が満面の笑顔で口を開いたから。

「い、石川さん!!」

吉澤はその場で、約3分間固まってしまった。
石川さんは、きゃしゃな体に、大きな胸で、瞳がキラキラ輝いて
女の子らしいしぐさで、控えめなのに、すごく洗練されていて、光っている。
374 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:34
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
375 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/13(火) 09:17
「もしもーし、よっすぃ〜・・・・よしこー・・・どしたの?」

驚いたのは、里田の方だった。
吉澤は、石川さんを凝視して時間が止まっている。
梨華ちゃんも笑顔をくずさす、それに応えている。

「ちょっと、吉澤さん! 知り合いだったの?梨華ちゃんと。」

「あっ、梨華ちゃんって言うんだ?」

「はい。」

「あたしが、質問してんのに もう!答えてよ。」

「ごめん、病院で偶然にね・・・」

「えー。」

「知らなかった。よっすい〜病気してたの?」

「病気じゃなくて、蕁麻疹になっちゃったんだよ。」

「あっ、そうだったんですか?」

「そう、そう。」

「そう、そうって、どっち向いて言ってんのよ・・・あたしが聞いてんじゃん!」

里田は、二人から軽く疎外されつつ
吉澤と石川さんの何気ない会話は途切れなく続いている。
376 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/13(火) 09:19
「よっすぃ〜、梨華ちゃん、せっかくなんだからさぁ、お料理食べようよ。」

里田は、しびれを切らして
寿司や日本食の置いてあるテーブルに連れて行き、皿に料理を盛り合わせる。

「梨華ちゃんは、何が好き?」

「私は何でも食べれます。でも甘いものが好き。」

「ごめん、それは、あっちのテーブル。」

答えが的外れで、照れ笑いしながら、少し赤くなってうつむいた梨華ちゃんに
気がつけば、見惚れてる吉澤の頬も赤くなっている。

「あのさぁ、私思ったんだけど・・・・・・・とりあえず、乾杯しない?」

里田が気を取り直して場を盛り上げてくれる。

「そうだね。」

「そうですね。」

「じゃ、かんぱーい。」 「「かんぱーい。」」

グラスが、カチン、カチンと音をたて
コップの中で小さな嵐が巻き起こる。
吉澤は、波立つグラスの向こうの梨華ちゃんの笑顔を眺め
胸がドキッとしたのを感じていた。
377 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/13(火) 09:27
吉澤は、同業者の友人と談笑しながらも
離れた所にいる梨華ちゃんをずーっと目で追っている。

梨華ちゃんが話してる。
梨華ちゃんが笑う。
梨華ちゃんがまばたきする。
梨華ちゃんが写真を撮っている。
梨華ちゃんが誰かの手に触れた。

酔いが回っているせいか
梨華ちゃんと一緒にいる相手に激しい嫉妬を感じて、体が熱くなる。
はじめて覚えた、不思議な焦燥感に吉澤自身が戸惑っていた。

378 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/18(日) 14:38
パーティーが終わり、外に出ると空気が爽やかで心地良い。
フワっと吹いてきた風に前髪があおられて梨華ちゃんは、目を細める。
むき出しになった綺麗なその人の横顔を見ながら、吉澤は切り出した。

「また会いたいな。もうすぐ、クリスマスだけど、梨華ちゃんは何か予定ある?」

帰り際、少し寂しく感じてた石川は伏せ目がちに首を横に振った。

「じゃあ、今度ご飯一緒に食べに行かない?あたし、いいとこ知ってるし。」

「メールアドレス教えて、連絡するから。」

吉澤が性急にメアドを聞くと、梨華ちゃんも嬉しそうに教えてくれた。
それから、吉澤と梨華ちゃんのメール交換は毎日続いた。
379 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/18(日) 14:40
22時。仕事が終わり、携帯をとりだす。
吉澤は梨華ちゃんのメールアドレスを見てふっと切なくなる。

先日誘った飲み会で梨華ちゃんの瞳が涙で潤んでいた。
吉澤には原因がわからない。
いつものように、アイボンとノノが悪ふざけを始め
テーブルがぐちゃぐちゃになってしまったり
罰ゲームで串をくわえて ワン!と言わされたり
スカートめくられたり、椅子に座る時カンチョウされたりしてたけど
梨華ちゃんは、嫌な顔をせず結構、楽しんでいるようにみえた。
あんなに笑ってたのに、・・・梨華ちゃんが泣いた。

心の中をもっと知りたい。
梨華ちゃんのことを考えると胸が苦しくなる。
まだ起きてるはずと思いながら吉澤はメールした。
380 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/18(日) 14:41
こんばんは。
今日は残業で会社からこれを書いていまーす。
梨華ちゃんは今、なにをしてますか?
声が聞きたいけど、ダメ?
もしかして、仕事中?

今日は一つお願いがあります。
今度、梨華ちゃんにどうしても見せたいものがあるので
12月22日の午後から休みを取って下さい。
楽しみにしててね。
お返事待ってます。
では、おやちゃみ。
From よっすぃ〜  
381 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/18(日) 14:42
メールの返事はもちろんOK。
よっすぃ〜が自分のために何か計画を立ててくれている。
何かを持ってきてくれるのかしら?
部屋をきれいに片付けながら、梨華ちゃんはよっすぃ〜のことを思っていた。

出会いは、偶然だった。
それが里田さんから紹介され、知ってる人から、友達になり
メールで毎日会話して
どんな事でも相談にのってくれる頼れる親友になった。
大事な人。傍に居てくれないと困る人。
『大好きだよ、よっすぃ〜。』
梨華ちゃんは、一緒に撮った写真のよっすぃ〜にそっと囁きかけ
よっすぃ〜が来てくれるのを待ちわびた。
382 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/21(水) 15:30
「こんにちは、梨華ちゃーん、よっすぃ〜でーす。」

はき潰したGパンに色褪せたTシャツで
大きなバックとヘルメットを手にさげてやってきた吉澤は
いつものキャリアOLの片鱗も見えない。

「・・・・あの、・・・人違いかと思ってちょっとびっくりしちゃった。まあ、上がって。」

可愛い声で歓迎はしたものの梨華ちゃんは
裏切られたみたいな、ちょっと複雑な気分になっていた。

「あー、いい匂い。なんの匂いこれ?」

部屋に入るなり、深呼吸して吉澤はあたりをキョロキョロと見渡す。

「クッキー焼いてたの。」

「へー、手作りクッキー食べさせてくれるの?美味そう。
・・・ねえ、梨華ちゃんちょっと聞いていい?
どうしてさっきから、しかめっ面してんのよ。」

吉澤は、梨華ちゃんの不満顔を見逃さなかった。

「しかめっ面なんかしてません。」

「あっもしかして、これの事?気になってた?これは、お泊りグッズだよ〜。」

吉澤はわざと梨華ちゃんの気持ちを逆なでするようにニヤニヤしてバックを指差した。

「知りません!」
383 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/21(水) 15:34
「よっすぃ〜、コーヒーでいい?」
「うん」

「梨華ちゃん、何か入れ物ない?」

いきなりそう言われても意味がわからず、梨華ちゃんは吉澤の顔を見た。

「あのね、今から出かけるからさ、クッキーも持っていきたいなって思って。」

「出かけるってどこへ?」

「見せたいものがあるって言ってたでしょ。そこ。」

「どこ?」

「海。ダイヤモンドヒルズの頂上だよ。行ったことないでしょ。
きれいなんだよ、夕日が。最高だよ。」

「・・・・・うん。(やっぱり、よっすぃ〜って素敵。)」

ボロい格好のよっすぃ〜が頼もしく思えた瞬間だった。
384 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/21(水) 15:38
ブルブルブルブル・・・・
カゴダンナから借りてきたバイクは、ホンダのスーパーカブ。
この国では一番ポピュラーなバイクだ。

「ねえ、よっすぃ〜免許持ってんの?」
「持ってるよ。あたし大型持ってるもん。国際免許も持ってるし。ヘヘッ。」
「カッコイイ。」

「梨華ちゃん、二人乗りってしたことある?」
「ううーん初めて。」
「あのね、こうやってあたしの腰に手を回してつかまって。」

吉澤は、梨華ちゃんの両手をつかんで、お腹の前で組ませる。
梨華ちゃんは、恥ずかしくって遠慮っぽく手を引っ込めた。

「アハハ・・・くすぐったいよ。ちゃんとつかまらないと危ないよ。」

言われたとおりにすると、胸がよっすぃ〜の背中にぴったりとくっ付く。
自分より一回り大きな背中は壁になって、前が見えないけど
よっすぃ〜のむくもりが伝わってきて案外気持ちよかった。
385 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/21(水) 15:42
バイクは海へと走り出した。
太陽が西に傾きかけている。
街路樹で見え隠れするオレンジ色の光は、ストロボみたいに
コマ送りで二人の顔を照らしている。

「梨華ちゃん、寒くない?」
ボーボー聞こえる風の音に混じってよっすぃ〜の声が聞こえた。

「大丈夫!」
大声で返事したのに、梨華ちゃんの声は届かない。

「聞こえないー。大丈夫?」

「大丈夫!」

「聞こえないー。」

「バカー!」

「バカは承知。」

「聞こえてるじゃん。」

道は上り坂になりすれ違う車はもういなかった。
386 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/23(金) 09:17
赤茶けた土の道路にかわり、トロトロとバイクが登っていく。
道が終わったところでバイクが止まった。
海に突き出た小高い山ダイヤモンドヒルズの頂上に着いたのだ。

「着いたよ。ごめんね、寒かったでしょ?」
バイクを下りた吉澤が、梨華ちゃんの肩に腕を回すと、少し冷んやりしている。

「本当はね、ちょっと寒かった。でももう平気だよ。
それより、すごいね、ここ。見晴らし最高だね。」

そう言って海を見渡して笑顔を作る。
そんな人に気を使かって強がる梨華ちゃんもかわいいなと吉澤は思った。

海に面した緩やかな斜面にレジャーシートを広げて吉澤は座った。
眼下に広がる海と、リゾートホテルが立ち並ぶビーチが居ながらにして一望できる。

「梨華ちゃんもおいでよ。」

呼ばれて吉澤の隣に腰を下ろしかけた梨華ちゃんは
手を引っ張られて、膝の上に座らされた。
387 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/23(金) 09:19
背中から包み込むようによっすぃ〜に抱かれた梨華ちゃんは
伝わってくる温もりで冷えた体と気持ちまでもほぐれていく。

「ぅん、温かい。」

もたれかかるように、よっすぃ〜に体をあずけると
吉澤は何も言わずに抱き寄せてくれた。

「きれいだね。」
「・・・ん。」

目の前には、宝石をちりばめたようにキラキラと光る海に
大きな太陽がゆっくりと沈んでいく。
水平線に夕日が触れた時そこから真直ぐ、金色に輝くラインが海を渡って二人のほうへ伸びてきた。
眩しい光のベールに包まれて、梨華ちゃんは顔を輝かせ
吉澤は抱きしめている梨華ちゃんの手を握った。
388 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/23(金) 09:20
「あっ、宵の明星見つけた。」

照れ隠しに吉澤が叫ぶ。
黄昏てきた薄明かりの中で、ひときわ明るく金星が輝いている。
つられて、空を見上げた梨華ちゃんに持ってきた毛布をかけてあげると
『ありがとう。』って振り向いた梨華ちゃんは、まばたく星より美しく見えた。

「こうやって、星空って見たことある?」
「ないよ。初めてだよ。」
「私はあるよ。ほら、いつだっけ、しし座流星群が見えた年。
あの時、うちさぁ、パパと私と弟で車で山まで行ってさあ、
寝転がって流れ星見てたの。きれいだったよ。」
「へー、いいな。私はあの時は仕事で見れなかったんだ。」

「ねえ、梨華ちゃんは、どうしてジャイカに参加したの?」
「友達がね、やってるコがいてね、そのコの話に感動したっていうか、感銘したっていうか・・・」
「偉―いねー。」
「よっすぃ〜は何でこの国に来たの?」
「あたしはね。商社マンとして海外で活躍してみたかった。
と言ったらかっこいいけどホントはね、仕事と遊びと両立できるかなと思って・・・。
あー、でも甘かったなぁ。」

二人はそれぞれ自分の事を打ち明けた。
よっすぃ〜は後輩の小川真琴の結婚話を
梨華ちゃんは、保田さんとの思い出を話し
気がつけば、満天の星空で、まるで星が降ってくるような夜になっていた。
389 名前:熱砂の思い出 投稿日:2005/12/27(火) 09:04
吉澤はバックを枕に、梨華ちゃんはよっすぃ〜の腕を枕に
二人並んで毛布にくるまって、星空を見上げている。
まわりは、静かな夜風と虫の声だけが聞こえていた。

「梨華ちゃん、この方向見て、明るい星が4個見えるでしょ。あれが南十字星だよ。」

よっすぃ〜は、腕を伸ばし南の空を指差した。

「見えた?」

「あっ、ホントだ!十字架になる。」

「ね!綺麗でしょ、あたし、これを見せたかったんだ。
日本じゃ、絶対に見られないからね。
せっかく観光で来てもつい見落としちゃう人って多いって聞いた事あるから。
一度は見ておかないとと思って。」

「よっすぃ〜って優しいんだね。ありがとう。」

梨華の目には、サザンクロスがにじんで映っていた。
390 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/08(日) 19:56
「ねぇ梨華ちゃん・・・まだ保田さんのことが好き?」

吉澤は、梨華ちゃんの今の気持ちを聞いてみたかった。
けど、梨華ちゃんは、黙って夜空を見上げてるだけだった。

「ごめんね。・・・・・」

何も言わなくても、梨華ちゃんの傷ついた想いが痛々しいほど伝わってくる。
吉澤は、梨華ちゃんの頭を胸に抱いて
母親が子供にそうしてやるようにポンポンしてあげると
じわっと、梨華ちゃんの熱い涙がTシャツに染み込んできた。

「泣きなよ。」

吉澤は次に言おうとしたことを飲み込んで
月に照らされた梨華ちゃんの横顔が涙で濡れていくのをじっと眺めていた。

「辛かったんだね。梨華ちゃん頑張ったんだね。」

吉澤が言葉少なめにいうと

「今でも保田さんの声が・・・・・梨華、梨華、愛してるって・・・聞こえてくるの・・・」

梨華ちゃんは、いままでこらえていた保田さんへの想いが一気に駆け巡り
のどの奥から絞り出るような声で言って、泣きじゃくった。

梨華ちゃんのくぐもった声は、吉澤の胸に直接響いてくる。
吉澤も星空を仰ぐと
自然に涙が溢れて、頬に一筋流れていくの分った。
391 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/08(日) 19:57

「ねえ、梨華ちゃん、私たち親友よね。」
突然こんな事を言い出した吉澤の涙はもう消えて、優しく笑っている。

「私達、親友よ。」
涙をふいて、とりあえず梨華ちゃんもよっすぃ〜に合わせてみた。

「親友は、親友が悲しい時、慰めてあげるのが親友よね。」
「親友は、親友が悲しい時、慰めてあげるのが親友よね。」

「親友は、親友が寂しい時、そばに居るのが親友よね。」
「親友は、親友が寂しい時、そばに居るのが親友よね。」

「ってことで、私じゃダメかな?」
「えっ、何が?」

梨華ちゃんがよっすぃ〜の顔を見上げると
吉澤は、わざと神妙な顔つきで胸に手を当て

「私こと吉澤ひとみは、転勤してきたこの地で出会った梨華ちゃんを運命の人だと思い
この先、幸せな時も不幸な時も、変わることなく、親友として愛することを
星空の神々と南十字星に誓います。」

とさらに真剣な表情で言い放った。

「・・・バカっ!なにそれ。」

うつむいてしまった梨華ちゃんを吉澤は、もう一度やさしく抱き、髪にそっとキスをした。
392 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/12(木) 13:23
梨華ちゃんが顔を上げた時はもう、ふわりとした笑顔になっていた。

「よっすぃ〜、私ね、よっすぃ〜だったら抱かれてもいいよ。」
「えっ?」

予想もしてなかった梨華ちゃんの一言に
吉澤はしばらく、ぼんやりと海岸の街の灯りを目でたどりながら言葉の意味を考えていた。

「過去は過去。だから、保田さんのことがいい思い出に変わるまでさ
あたしには、どうすることも出来ないかもしれないけど
でも、梨華ちゃんを泣かせるようなことは絶対しないから
これからも女同士、楽しく遊ぼ。」

「よっすぃ〜。」

よっすぃ〜の優しさが、梨華ちゃんの顔をまた泣き笑いにさせる。
吉澤は、梨華ちゃんのほほを両手で包んで唇にキスをした。
393 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/12(木) 13:25
「そろそろ、帰ろうか。」

吉澤は、持ってきた上着を梨華ちゃんに着せてバイクに乗せた。
なだらかな坂道をゆっくり下っていくバイクは
流れ星のように街に溶け込んでいった。

「よっすぃ〜、いいとこだったね。」
「なにー?聞こえない。」

「きれいだったね。」
「聞こえないよ。」

バイクで走りながらの話はやっぱり無理っぽい。
梨華ちゃんは、ギュって吉澤の背中にしがみ付いた。

「よっすぃ〜、スキ。」
「知ってるよ。」
「へっ?」

返事が返ってきたと思ったら、バイクは赤信号で止まった。
394 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/12(木) 13:26
「ねえ、のど渇かない?」
「うん。渇いた。」

シャワーを浴びてきた梨華ちゃんは
冷蔵庫を覗きペットボトルに手を伸ばす。

「あたし、ビールがいいなっ。」
「じゃ、私も、私もーー。」

梨華ちゃんは、自分より1こ学年が上なのに
時々、無邪気でかわいいなって吉澤は思ってしまう。

「何?あたし何か変?・・そんな笑わないでよ。」
「ごめん、変じゃないよ、可愛いいパジャマだなっと思って。」

「ふふっ、ありがと。」
おだてるとすぐ機嫌が直る梨華ちゃん。

「梨華ちゃんの乳首さぁ、ふたご座のカストルとポルックスみたいだよ。」
って、調子にのってからかうと

「どこ見てんのよー!!」
と両手で胸を隠し本気で怒り出す梨華ちゃん。

ビールを飲みながら吉澤は噴出しそうなのを必死でこらえ
口の中で体積が増えたビールが鼻の粘膜を刺激する。

「電気消してもいい?」
「もう寝るの?」
「うん。」

酔いが回ったのか吉澤は大きなあくびをしてベッドの端っこで壁に向いて横になった。

「ねぇ・・・・」
「ん・・・・・・」
「よっすぃ〜、もう寝っちゃった?」
395 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/14(土) 10:34
梨華ちゃんも寝ようと思ったけどなかなか眠れない。
ベッドの横のカーテンを少し開けて夜空を眺めていると
とりとめもなく色々なことが思い浮かんでくる。

昨日まで保田さんの事を思い出すと、苦しいほど会いたくなった。
保田さんほどの人はいないと思っていた。

でも、いま、隣で寝ている自分と同じボディソープの香りのするよっすぃ〜の背中を見ていると
そんな事を忘れちゃって、とっても優しい素直な気持ちになれる。
何の悩みも無く遊んでいた子供の頃、こんな気持ちだったような気がする。

梨華ちゃんは、さっきまでしがみついていた背中にそっと触ってみた。
向かい風から、守ってくれたよっすぃ〜の背中が大きくて愛しく思える。

自分のためにわざわざ、あんな所まで連れてってくれた、よっすぃ〜。
よっすぃ〜と一緒にいると、保田さんのことが忘れられそうだと思った。
396 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/14(土) 14:41
少しウトウトしてたのか、目が覚めると窓の外が明るくなってきている。

「よっすぃ〜。」
「なに?」

「あれ、眠れなかったの?」
「・・・よく寝たよ。」

よっすぃ〜の眠たそうな声が返ってきた。

「・・・手・・・」
梨華ちゃんはよっすぃ〜の背中に寄り添い、腕をたどって手を繋いだ。

「もう、帰るの?」
「・・・・・・・・・・・・」

向こうからは規則正しい寝息だけが聞こえてくる。

『起きたら、よっすぃ〜は帰えっちゃうのかな?』
梨華ちゃんは、よっすぃ〜がいなくなることを考えただけで、不安や淋しさがこみあげてくる。
397 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/18(水) 23:10
「帰らないで、よっすぃ〜。」
胸から湧き上がってくる熱いものを感じながらよっすぃ〜の背中にささやいた。

「んー、梨華ちゃんどうしたの?」
よっすぃ〜は、面倒くさそうに眉間に皺を寄せ梨華ちゃんの方へ向きを変えると
ほおを紅潮させ昂ぶったようないつもと違う梨華ちゃんがいた。

「帰らないで・・・・。」
潤んだ瞳でよっすぃ〜を見つめ、声は掠れて最後まで聞きとれない。

「大丈夫だよ、今日はお休みとってあるし、ずーっと梨華ちゃんっ家にいるよ。」

吉澤は、自分のせいだと思った。
自分が保田さんのことを思い出させたから泣かせちゃったんだと。

「ごめんね、梨華ちゃん。私が悪かったよ、保田さんのこと思い出させて、ホントゴメン。」

吉澤が誤るとそうじゃないと梨華ちゃんは首を振り、よっすぃ〜の唇に自分の唇を重ね合わせ狂ったように吉澤を求めてきた。
柔らかくて熱い唇はよっすぃ〜をクラクラさせる。

「待って梨華ちゃん。」
吉澤は恐る恐る梨華ちゃんの肩に手をかけ体を離した。
梨華ちゃんは、上ずった声で『好き』と言って懇願するように吐息をもらす。
梨華ちゃんの気持ちに吉澤は、どうしていいのか分らなくなってしまった。
398 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/18(水) 23:13
「・・・・よっ・・・すぃ〜・・・・」
梨華ちゃんは催眠術にでもかけられたような表情で
無口になった吉澤の胸に倒れこんできた。

「・・・・して・・・・」
よっすぃ〜の手をとり、自分の下腹部にいざなう。
薄手のパジャマ越しの指の感触が、梨華ちゃんの体を一層熱くさせる。
名前を呼ぶ甘い声と甘く熱い吐息は吉澤の理性を徐々に溶かしていく。

「いいの?・・・梨華ちゃん・・・わたしも・・・すきだよ・・・・」

吉澤は体位を入れ替え梨華ちゃんの上になり、夢中で唇をむさぼった。
口をこじあけ舌をからめる。温かくてつるっとした舌は吉澤の唇と舌で愛撫を続けられた。

「っん・・・・・あっ・・・・・」
首筋に唇を落される。柔らかい肌に跡が残るくらい強く吸われる痛みは
刺激となって梨華ちゃんのあそこを感じさせる。

ボタンをはずし唇を胸に滑らせていく。
形の良い乳房をわしづかみにすると、梨華ちゃんは甘い声で小さな悲鳴をあげた。
399 名前:paco2 投稿日:2006/01/19(木) 00:00
石川梨華様 お誕生日おめでとうございます。
美勇伝、ガッタスetc 梨華ちゃんの全てが大好きです。
これからもずーっと、ずーっと応援していきます。頑張って下さい。
400 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/21(土) 14:50
胸に感じた痛みは、快感にかわり全身に広がっていった。

よっすぃ〜の唇はくびれた腹を這い、舌が小さな窪みをなめ回す。
「あーぁ・・っ」
梨華ちゃんは腰をわずかに浮かせて、喘ぎ声をもらした。
よっすぃ〜は梨華ちゃんの両足を肩に掛け
荒らされてない艶やかな繁みに分け入った。
窓から差し込む朝の光が、繁みからのぞくピンク色のバラの華びらのような陰唇を際立たせる。
すでに、膨らんでいるつぼみと肉華弁は露でしっとり濡れて
愛されることをを待っているようだった。

よっすぃ〜は蕾を唇で包み、舌先でいたぶり、吸い上げる。
脚の付け根から尻の割れ目に指を滑らせると
華びらから、溢れ出した蜜でヌルヌルしている。
愛液のからみ付いた指で肛門を優しく撫でてながら、膝裏にキスをした。

「いやんっ。」
梨華ちゃんの体が跳ね上がった。
脚の付け根、膝の表裏、足の指の隙間・・・・
よっすぃ〜は慈しむように丁寧に愛撫する。
感じすぎて蜜つぼから溢れ出た愛液はシーツに広がり染み込んでいく。

「・・・欲しい・・・」
目を細めて、喘ぎながら淫らに蜜を垂れ流している梨華ちゃんを見てると
吉澤は、愛しさが爆発しそうになる。

「・・・・・よっすぃ・・・して・・・」
梨華ちゃんは脚を絡めて、おねだりするみたいに体を押し付けてくる。
吉澤はもうを自分を抑えられなかった。
401 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/01/21(土) 14:52
「梨華ちゃん・・・どうしてほしいの?・・」

吉澤は、ヌルヌルしてる割れ目を触るか触らないかくらいの感覚で指を往復させた。
クリトリスに指先がかかると、梨華ちゃんはビクンとなって吐息をもらす。

「黙ってたら分らないよ・・・梨華ちゃん」
「・・はやく・・・・しいの・・・」
「・・・んっ・・・・あっ・・あん・・」
梨華ちゃんは腰を上下させ吉澤を求めた。

「・・・もっと・・ちゃんと言ってみて・・・」
「アァ・・・よっ・・・すぃ・・・好き・・・・よっすぃ〜が・・・欲しいの。」
「梨華ちゃん、梨華・・・・」
「あ・・・・ぁ・・・・・・」

吉澤の指はゆっくり華びらの奥へ入っていった。
梨華ちゃんの中は柔らかくて暖かい。
よっすぃ〜が微かに指を動かすと
梨華ちゃんにギュッと締め付けられた。
指の付け根を愛液が滴り流れ手がねっとりと濡れる。
梨華ちゃんの口をキスで塞ぎながら、指を抜き差しすると
締め付けている肉ひだがヒクヒクと痙攣した。
吉澤が指の動きを加速すると、掠れた声が小刻みにうめく。
指をもっと深く入れ、体を突き上げる。
梨華ちゃんは狂ったように激しく腰を動かした。
よっすぃ〜は指を曲げたり伸ばしたり、かき回したり、梨華ちゃんの体を味わった。
ジュブジュブジュブ・・・・・・・
サラサラの愛液がふき出し吉澤の体も濡らしていく。

「梨華ちゃん、かわいいよ。」
「いや〜っ・・・・・・・・」
悲鳴のような嬌声をあげて梨華ちゃんの意識が遠のいていった。
402 名前:paco2 投稿日:2006/04/12(水) 22:08
吉澤ひとみ様お誕生日おめでとうございます。
ますます、美しくてかっこいいリーダー&キャプテンのよっすぃ〜大好きです。
最近、更新が滞っていますが、最後まで頑張るつもりです。よろしくお願い致します。
403 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/25(火) 22:40
初めて来ましたがおもしろいです。
最後まで頑張って下さい。待ってます。
404 名前:paco2 投稿日:2006/07/10(月) 09:25
>403名無し飼育さん 様 ありがとうございます。
そう言っていただけると本当に嬉しいです。
最近忙しかったので間が空きすぎて、ストーリーが繋がっていくか不安ですが、頑張って少しずつ書いていくつもりです。
405 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/10(月) 09:27
ゆるくウェーブのかかった髪が、汗ばんだうなじにまとわりつき
肩でリズムをとるような息をしながらエクスタシーのまどろみの中にいる梨華ちゃんは
投げ出された体が淡い光りに縁取られて
生まれたてのヴィーナスのようだった。
よっすぃ〜は、そっとシーツを掛けてやり、梨華ちゃんに寄り添った。

「梨華ちゃん、・・・・・大好きだよ。」

耳元で囁くよっすぃ〜の声は、梨華ちゃんを幸せな気持ちで満たしてくれる。
よっすぃ〜は、梨華ちゃんの乱れた髪を手ぐしで整えてやり
剥き出しの肩に優しくキスを落とした。
「あっ・・・」
敏感になってる体はピクっとなり、梨華ちゃんはせつなそうに眉間を寄せ小さく声をあげた。
思わずギュっと腕に力を入れ抱きしめると
折れそうなほど、きゃしゃな身体はいっそう柔らかくしなり、腕の中にすっぽりおさまった。

「梨華ちゃん、疲れっちゃた?ごめんね。」

よっすぃ〜の優さと温もりに包まれて
梨華ちゃんは微笑んだような顔で、まぶたを閉じていた。

「・・・・梨華ちゃん・・・
・・・・愛してる・・・
・・・・曖昧な気持ちじゃないからね。」

よっすぃ〜は、梨華ちゃんの小さな手と自分の手を重ね合わせ、指を絡めた。

「手首の傷、知ってたよ。
・・・・つらかったんだね。
梨華ちゃん・・・・梨華・・・梨華・・・・もう死のうなんて考えないで・・・・死ぬな
そんな思いはもう二度とはさせないから
・・・一緒に生きていこう・・・・・・・・梨華・・・梨華・・・。」

よっすぃ〜のやわらかい声は、静かな部屋に染み込んでいった。
406 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/10(月) 09:32
まどろみの中で梨華ちゃんは、自分を呼ぶ声を聞いていた。

『・・・・・梨華・・梨華・・遠くで、誰かが呼んでいる。
・・・・・・梨華・・梨華・・前にも聞いたことがある、同じ声。いつだっけ?
・・・・・・梨華・・梨華・・死ぬな・・・・って、あっ!』

梨華ちゃんは、ゆっくり目を開いた。
そこには、おだやかな笑顔で自分を見つめるよっすぃ〜がいる。

「よっすぃ〜。」
「ん?」
「・・・私、この場面、知ってる!前に夢で見たのと同じ!あの時の声はよっすぃ〜だったんだ!」

梨華ちゃんが何を言い出したのか判らなくて驚いるのは吉澤の方だった。

「そうか、思い出した、あの声は、よっすぃ〜だったんだ、よっすぃ〜!ありがとう。」
ひとりで納得した梨華ちゃんは、嬉しそうによっすぃ〜の胸に顔をうずめ
胸にすがりついた。

「梨華ちゃん?、わけわかんないんだけど、どうしたの?教えて。」
戸惑いを隠せない吉澤は苦笑するしかなかった。
407 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/10(月) 09:43
「よっすぃ〜、あのね、デジャブって知ってる?
・・・運命ってさ、信じる?」

頬を紅潮させ梨華ちゃんは興奮気味に語り始めた。

「私ね、保田さんのこと本当に愛していたの。私の青春そのものだったし。
だから、あの日、保田さんと別れるくらいなら死んだほうがましだと思って、お薬のんじゃったの。
だんだん眠くなってきてね、もしあのまま眠ってしまってたらきっと、死んじゃってたかもしれないと思うんだけど、
でもね、あの時、ぼんやり遠おのいていく意識のなかで、誰かが私を呼ぶ声が聞こえてきたの。『梨華、梨華、死ぬな。』って。誰か分らなかった。知らない人の声だったから。
でも、誰かなっておもったの。
眠たかったけど目を開けてみた。そしたら泣いてるママとミキちゃんがいた。
でも、あの声は、ミキちゃんでもないし、ママでもないし
だから、ずーっと幻聴だと思ってた。
けど、今わかったの。・・・あの時の声は、よっすぃ〜だったんだ。
よっすぃ〜が今言った言葉と同じだったから、はっきりと思い出したの。
あの時、よっすぃ〜が未来から私を助けてくれたんだ。
って言うか、私たちめぐり合う運命だったんだよね、きっと。
わー、なんか不思議。そう思わない?」
408 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/11(火) 15:38
「運命?」
吉澤が聞き返すと、梨華ちゃんははにかんだように微笑んだ。

「そうなの?梨華ちゃーーーん、かわいい過ぎだよ。
ほら、やっぱりピンクの糸で繋がってたんだね。」
ふざけた口調で吉澤は、梨華ちゃんの足首にひっかかっている丸まってヒモのようになった下着を
足の指にはさんで引っ張って見せた。
「バカ!なにしてんのよ!人が真剣に話してるのに、もう知らない!」
下着からさっと足を抜き、梨華ちゃんは横を向いてしまった。
「ごめん。」
「・・・・・・・」

怒った時の梨華ちゃんは、唇を少し尖らせていつもより厚くて色っぽい口元になる。
吉澤は、性急に梨華ちゃんの唇を奪った。
よっすぃ〜の舌が梨華ちゃんの中で暴れる。
荒々しく胸を揉んで、いきなり蜜をたたえた場所に指を2本押し込んだ。
「あぁ・・・」
「信じるよ。運命。梨華ちゃん、愛してる。いっしょにいこう。」
よっすぃ〜の想いは、梨華ちゃんのあえぎ声に消されていく。
梨華ちゃんの身体は、激しくのけぞり
よっすぃ〜の白い背中には、幾筋もの爪跡が刻まれていった。
409 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/21(金) 10:10
梨華ちゃんが、シャワーを浴びてキッチンのドアを開けると、香ばしいにおいが漂っていた。
ピンクのテーブルクロスの上には大盛りの生野菜とゆで卵が並んでいて
湯気のあがったカップが2つ。
「パンは2枚でいい?」と聞きながら
ジャムよりも甘い笑顔のよっすぃ〜が、トーストにバターを塗って待っててくれた。
梨華ちゃんは、ちょっと照れながらテーブルにつき
二人は遅い朝食を食べ始めた。

ピピピピッ・・・
まったりした空気を裂くように携帯がなった。

「あら、誰かしら?・・・うそっ!」

ガチャッ。
急に低くなった梨華ちゃんの声を聞いて吉澤は飲みかけのコーヒーをテーブルに置いた。
梨華ちゃんに目をやると強張った表情で携帯を握りしめ、その場に立ち尽くしている。

『もしもし、梨華ちゃん?本当に梨華ちゃんなのか?
ずっと探してたんだ。
梨華ちゃんの声がどうしても聞きたくて
きみにどうしても逢いたくて
ねえ、聞こえてる?梨華ちゃん?』

携帯からかすかに漏れて聞こえてくる男性の声に、もしかして保田さんでは?という不安が吉澤の心に影を落とす。

「梨華ちゃん、電話、替わって。」
相手に聞こえないように、吉澤が携帯を取り上げようとしたら
梨華ちゃんは、黙ってくびを横に振って、それを拒んだ。

「・・・どうして今頃・・・なんで分ったの?・・・・
・・・・こっちから電話するから、番号教えて。
・・・・大丈夫、かならず電話するから。」

メモを取り、早々に電源を切った梨華ちゃんは、蒼ざめて呆然としていた。

「今の誰?保田さんじゃないの?」
「うん。」

心配そうに見守ってい吉澤は、微かに震えている梨華ちゃんの肩を抱きソファーまで連れて行ってやった。
410 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/21(金) 10:14
「よっすぃ〜、あのね。」
「なんにも言わなくてもいいよ。梨華ちゃんの気持ちは分ってるから。」

吉澤は梨華ちゃんの膝のあたりを軽くポンポンと叩いて落ちつかせようとした。

「酷いと思わない?どれだけ、助けてって叫んでも、来てくれなかったくせに
今さら、何よ!何なのよ!何の話があるっていうの!」

思い詰めたように梨華ちゃんは、両手で顔を覆い声を殺して泣いていた。

「私、あんな辛い思いをさせられたのよ、・・もう忘れるって決めたのに・・・
でも、あたしってやっぱバカだよね。・・・・・逢いたいの。」
ううう・・・・
「よっすぃ〜、ごめん。もう、わかんない。本当にどうしていいかわかんない。私あたまが混乱してて・・・わかんないよ。」

ジレンマに苦しむ梨華ちゃんの姿を見て吉澤は、何とも言えない複雑な気持ちになっていた。

「梨華ちゃん、悩むことないよ。電話してあげなよ。待ってるよきっと保田さん。
梨華ちゃんだって聞きたい事とかあるんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「大丈夫だよ。あたしが付いてる。とりあえず電話してみなよ。」
411 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/24(月) 23:25
よっすぃ〜、ホント良い人だよ〜〜。
梨華ちゃんこんなに良い人はいないよ。早くよっすぃ〜だけを愛してあげて。
412 名前:paco2 投稿日:2006/07/26(水) 12:02
>411 名無し飼育さん 様 
読んで下さってありがとうございます。レスいだだくと励みになります。
よっすぃ〜って本当に素敵な人だから、絶対幸せになってほしいと願っています。
413 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/26(水) 12:08
梨華ちゃんが迷ってる間に、よっすぃ〜は、テーブルの上を片付けた。
二つ並んだモーニングコーヒーは冷たくなって、トーストの香りも失せている。

『ハァー。』
流しで皿を洗いながら、吉澤は空しい溜息をもらした。

『私が女じゃなかったら、きっと違う事言ってたな。
そんな薄情なヤツなんて、ほっとけばいいじゃんって
でも梨華ちゃんの幸せを考えたら言えない言葉もあるんだよな。
・・・叶わない恋か?運命ってなんだよ。』

苦笑いするのよっすぃ〜の目からは、一滴の涙がこぼれていった。

しばらくして覚悟を決めたのか、梨華ちゃんが話しかけてきた。

「よっすぃ〜、あの、お話があるの。来週の日曜日にね・・・・」

「あ〜、分った。頑張って梨華ちゃん!」

「私まだ、何にも言って無いじゃん。」

はにかんだように笑う梨華ちゃんの話のその先は聞きたくないと吉澤は思った。
414 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/26(水) 12:13

(5) 熱砂の思い出

待ち合わせのキャメイパシフィック航空ホテルのロビーを見渡す梨華ちゃんは
自分のことを救いようのないバカだと、ちょっと後悔しながら、保田さんを探していた。

「梨華ちゃん、元気だった?」
後ろから不意にかけられたその声は、あまりにもいつもどうりの保田さんで・・・

「保田さん。」
梨華ちゃんの張り詰めてた気持ちは一瞬にして消え笑顔になった。

「梨華ちゃん、こっちに席予約してあるんだ。」
「あっ、うん。」
「どうかした?」
「うううん、なんでもないよ。ちょっとびっくりしただけ。」

二人の間には何も無かったかのような自然な態度
もともと端正な顔立ちの保田が、よりかっこよくスーツ姿でエスコートしてくれる。
保田の優しい心遣いに梨華ちゃんは、嬉しさと懐かしさがじわーっとこみ上げてきていた。

「昼間だけど、ワインとかたのんでもいい?」
「うん。」
「あっ、そうだ、梨華ちゃんって甘いものウェルカムなんだよね。」
「うん。」
「じゃあ、モーゼルのピースポーターのアウスレーゼハーフボトルでいいね?」
「あっそれ、前に長野に行ったときペンションで飲んだやつ!」
「ふふふ・・覚えていてくれた?あとは、お店のおすすめ料理と、デザートはシャーベットでいいかな?」

保田はさりげなく梨華ちゃんにウインクして笑って見せて
微妙に英語が下手そうなウェイトレスに丁寧に注文をしてくれた。
415 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/26(水) 12:49
保田さんの話は、話題が豊富で、飽きることなく楽しく聞かせてくれる。
梨華ちゃんは、そんな保田の愛情に、ささやかな幸せと安らぎを感じていた。

ただ、なぜ二人がこんな事になってしまったのかっていうことと
それを口にしたら、お互いに壊れてしまうのが解っているから
本当の気持ちを言い出せないでいて
時間だけが過ぎていくのが、梨華ちゃんにはもどかしかった。

デザートを食べ終わったとき、保田は突然梨華ちゃんの手をとった。

「梨華ちゃん、好きなんだ。俺についてきてほしい。」
保田の目は真剣だった。

「俺、悔しかったよ。梨華ちゃんと別れさせられたことを知った時
寺田教授のこと恨んだ、自分自身も攻め続けた。
でも、どうしようもなかったんだ。
だから、誰よりも偉くなって、こんな奴等を見返してやろうと思った。
心だけは、梨華ちゃんのこと思って必死になって勉強してきた。
梨華ちゃん、ごめんね。今まで辛い思いをさせてきて
本当にごめん。」

「・・・・・あの、手離して。」

「俺、実は明日、日本に帰らなきゃいけないんだ。
母親がどうしても断れないお見合いを受けちゃったみたいで。
寺田教授のこともあるけど
そろそろ、身を固めなきゃいけないと思ってる。
梨華ちゃん、僕と結婚してください。」
416 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/27(木) 00:05
どうしても断れないお見合いって・・・・そんな態度でプロポーズなんてする奴。
受け入れても梨華ちゃんをきっと守ってくれないよ。
417 名前:paco2 投稿日:2006/07/27(木) 15:43
>416 名無飼育さん 様
読んで下さってありがとうございます。私もそう思います。
梨華ちゃんには梨華ちゃんの全てを愛してくれる人と結ばれてほしいと思っています。
418 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/27(木) 15:48
「待って、保田さん。
私、仕事だってあるし、そんな事今いわれても気持ちの整理がつかないわ。」

「ごめん、言うとうりだね。梨華ちゃん、・・怒った?」

保田は、梨華ちゃんを引き寄せそっとキスをした。
梨華ちゃんは嬉しかった。涙が溢れ、何も言えなくなってしまった。


「よっすぃ〜、大変や、梨華ちゃんとイケメン男の顔が近いで!」
「よっすぃ〜、リカチャン、オカサレテル!」
「ノノまでなんだよ。・・・・チキショウ、何やってんのかな、あの二人。」
「見てきてあげようか?」
「うん。そうだな。」

「よし、強制終了させてきて。行け、アイボン。」
「まかしときー。ノノ行くで。」
「OK。」

アイボンとノノはゆっくりテーブルに近づいた。

「「せーの、梨華ちゃん!」」
「キャッ!」
「オーッ!」

両サイドから急に現れた女の子たちに保田と梨華ちゃんは驚いた。
419 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/27(木) 15:52
「こら!あんた達!何しに来たの?」

キャハハハ、アハハハハ・・・・
ハハハハ・・・・
「×××××××(笑いすぎてお腹痛いよ)」
ハハハハハハ・・・

「梨華ちゃん、知ってる子?」
「ええ。   ・・・ちょっと待ちなさいよ!・・・どうしてこんな所にいるのよ。
あっ、もしかして、よっすぃ〜がいるの?」

「えっ、何?」
「うううん。何でも無い。」

アイボンとノノは大笑いしながらさっとどこかへ消えてしまった。

「そろそろ、出ようか。」
「はい。」
保田は、ホテルのフロントに向かった。
420 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/27(木) 15:57
「よっすぃ〜、やばいで。あの男、梨華ちゃんを室に連れ込む気やで。」

「よし、じゃあ、ミッション発動、純潔のハイビスカス作戦。開始しよう。」

「オー!」

「じゃあ、二人は梨華ちゃんの目をひきつけて
私はフロントにいって、ヤツに手渡されたキーの番号を盗み見る
その後同じフロアーの室を借りる。
室番号をサインで送るから先回りするか、梨華ちゃんの後をつけて、その後合流
携帯はマナーモードにして、会話は話だけ聞く、返事はしない。OK?]

「OK。」
421 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/27(木) 16:02
「梨華ちゃん、そのへんに座ってよ。」

保田は、冷蔵庫で飲み物をさがしながらチラっと立っている梨華ちゃんの方を覗きみた。

「ずいぶん大きなベッドね。」
「あー、Wベッドだよ。俺、いつもゆったり寝たいから、Wベッド予約するの。」
「へー、そうなんだ。」
「オレンジジュース、飲まない?」
「ありがとう、あー、おいしい。けどアルコール入ってる?これ。」
「・・・・・・・・・・・・・・」

なぜか保田は、返事をしなかった。

「梨華、こっちに座らない?フカフカして気持ちいいよ。」
「えっ?私はここでいいわ。」

梨華ちゃんが動こうとしないので、保田は梨華ちゃんの手をつかんで引き寄せた。
422 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/27(木) 16:53
「もう、待てない。」

低い声でつぶやくと、荒々しく投げつけるようにベッドに梨華ちゃんを押し倒した。
噛み付くような乱暴なキス。こじ開けられた口の中で暴れる舌。激しく吸われる唇が痛い。
今までとは様子が違う保田の容赦ない扱い。
梨華ちゃんが必死で閉じている膝をわって
保田の指が脚のすき間に入ってきた。

「いや!止めて!」

「・・・好きだ・・・愛してる・・・・梨華・・・・。」

「梨華がほしい・・・・梨華の全てが欲しい・・・我慢できないよ・・・・。」

保田が少し身体を離したとき、下腹部の黒い毛に覆われたいきり立ったものから
粘り気のある透明な糸が垂れた。

『嫌だ違う、こんなんじゃない。
こんなの、愛なんかじゃないわ。よっすぃ〜はこんな事しないわ。』

保田に抱かれながら、梨華ちゃんはよっすぃ〜の愛を感じていた。
熱くなった保田のものが、梨華ちゃんの秘部に押し付けられた。

「おまえも欲しいんだろ。好きだったじゃないか。・・・いかせてやるよ・・・・」

「いや〜〜!よっすぃ〜、助けて!・・・・・」
梨華ちゃんの悲鳴がドアの外まで聞こえてきた。
423 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/27(木) 22:18
よっすぃ〜、早く!早く!助けてあげて!
424 名前:paco2 投稿日:2006/07/30(日) 08:26
>423 名無飼育さん 様
読んで下さってありがとうございます。
梨華ちゃんのためなら、よっすぃ〜は例え火の中、水の中危険をかえりみない行動派だよ。きっと。
425 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/30(日) 08:29
「よっすぃ〜、遅かったやん。」
「ごめん。二人とも誰にも見つからなかった?」
「あたりまえや。それより梨華ちゃんが部屋に入ってから、もう15分もたつで。」
「やべーな、アイボン行くから。ノノは、ドアを開けて、隠れて待ってて。
アイボンは捕まりそうになったら、この催涙スプレーを男の顔に吹き付けて逃げろ。さっ、行くぞ。」

保田の室の前にしゃがみこんだよっすぃ〜は、さっそくピッキングの道具を取り出した。
アイボンはドアに耳をくっつけ中の様子をうかがっている。

「何にも聞こえへんなあ。よっすぃ〜ちょっと聴診器かして。」
アイボンはよっすぃ〜のポケットから聴診器を取り出しドアに当てた。

「聞こえへんなあ。よっすぃ〜まだか?」
「ごめん、練習した時はすぐ開いたのにな。」

「あっ、梨華ちゃんの声や!よっすぃ〜早よして、梨華ちゃんが危ない。」

よっすぃ〜にもその声は聞こえていた。
「くそー!・・・・あっ、開いた。」
426 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/07/30(日) 08:33
「梨華〜!」

よっすぃ〜は突入すると、さっとベッドに飛び乗り保田の背後から髪の毛をわしづかみにし首を締め上げ梨華ちゃんから保田を引き離した。

「痛ててて・・何すんだ!」
「テメーこそ、何やってたんだよ、コラ〜!」
「くくく・・・苦しい・・・」

「アイボン早く!」
吉澤に急かされてアイボンは、乱れた服のままの梨華ちゃんを連れ出した。

「誰だ、おまえは!」
保田が苦しそうに怒鳴った。

「シークレットサービスだよ。ボランティアの!」  
ボカッ!  プシューーーー
吉澤はおもいっきり保田の腹部を蹴り上げ、催涙スプレーを顔面に吹き付けた。

「あ〜うううう〜・・・・」

「テメー、梨華ちゃんの気持ちを考えた事があるのか!このクズ
今さらどのつらさげて来てんだよ、バカヤロウ!」

バシッ。
吉澤はうずくまる保田の胸ぐらをつかみ、立ちあがらせて一発パンチをくらわせた。
目が開けられない保田はフラフラと床に崩れた。

「おい、スーツケースとズボンは窓の外に置いとくから早く取りに行かないと盗まれちゃうよ。」
「おい!待てよ。」
「あほっ、待つわけネーダロ。」     
「チクショウ、訴えてやる!」
「どうぞ、証拠写真も撮ってあるから、公表しますよ。訴えて下さい。」
「・・・・・・・・」

プシューーー プシューーー プシューーー
吉澤は盛大にスプレーを撒き散らし、火災報知器のボタンを押した。
リリリリリリ・・・・・

「おい、止めろ!何すんだよ。」
「助けを呼んだ。火遊びしてたら鳴っちゃいましたって言うんだな。」

ホテル内に、けたたましい警報のベルが鳴り響いた。
427 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/31(月) 21:49
よっすぃ〜、カッケー!!
428 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 23:43
更新お疲れ様です。

ん〜。梨華ちゃんも悪いよキスを受け入れてホテルの部屋に着いていったら
バカな勘違いヤローならOKだと思うよ。それに付き合ってたわけだし少し、慎重さに欠けたね。
429 名前:paco2 投稿日:2006/08/03(木) 19:06
>427名無飼育さん 様
読んで下さってありがとうございます。
そう言って頂けると本当に嬉しいです。よっすぃ〜のカッコよさは、最高だと思っています。
430 名前:paco2 投稿日:2006/08/03(木) 19:08
>428名無飼育さん 様
読んで下さってありがとうございます。
梨華ちゃん・・・確かにそのとうり。男はみんな狼だよ。
431 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/08/03(木) 19:10
「梨華ちゃん、大丈夫だった?」

よっすぃ〜が戻ると、三人が小走りに寄ってきた。

「よっすぃ〜。」
「よっすぃ〜。」
「よっすぃ〜、怖かった。」
吉澤を囲むように一塊になってぎゅっと抱き合う。

「怖い思いをさせてごめんね梨華ちゃん。私のせいだよ。あの時行くのやめなって強く言っていたらこんな事にはならなかったのに。」

「よっすぃ〜の責任なんかじゃないわ、私が悪いの
よっすぃ〜に止められてもたぶん私、保田さんに会っていたと思うし、ごめんなさい。」

謝りながら自分を見上げる梨華ちゃんの顔が少しだけ微笑んでいたので吉澤は一安心した。

「さっ、逃げるよ。アイボンとノノもおいで。」

ホテルの従業員が上がってくる前に部屋からでなければならない
吉澤たちはエレベーターが早く下りてきてくれることを願った。
432 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/08/03(木) 19:11
一階につくと、フロアーの客がざわついている。
梨華ちゃんたち三人はさっと人ごみに紛れ、吉澤はフロントに向かった。

「何かあったんですか?火事ですか?」

非常ベルが断続的に鳴り響くフロントで心配そうに、吉澤が尋ねた。

「今、確認しておりますがたぶん誤報なので、お客様ご安心下さいませ。」
と、ピリピリしながらも申し訳なさそうにフロントの従業員が言い訳をした。

「たぶんって、どういうことですか?!」
吉澤は、急に声えを荒げ、不安だとか危険だとか信用できないとか思いつくままにクレームをつけ捲くし立てた。

「申し訳ございません。たまに気温が高い日など火災報知器が鳴ることがあるものですから、ご迷惑をおかけしてすみません。」

ヒステリックな客の態度にむかつきながらも、ホテルマンらしく丁寧にひたすら謝る従業員に
吉澤は、あっさり宿泊をキャンセルし
何食わぬ顔で平然とホテルを出ていった。
433 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/08/03(木) 19:29
吉澤は傷心の梨華ちゃんを自分のマンションに泊まらせることにした。

「梨華ちゃん、疲れたでしょ?今日はもうお休み。」

さっきから何度も溜息をついて、ソファーに座り込んでる梨華ちゃんに
背中を押すように立ち上がらせパジャマを渡す。

「よっすぃ〜は今日どこで寝るの?」
「私はソファーでいいよ。」
軽く返事したのに
「・・いやっ、よっすぃ〜行かないで、傍にいて。」
色っぽい仕草で、子供ぽくつぶやく梨華ちゃんに
心臓がドキッっとするのを感じた吉澤だった。

♪♪♪・・・

梨華ちゃんの携帯が鳴った。とたんに空気が重くなる。

「梨華ちゃん、メールだよ。」
保田からに違いないと二人は確信していた。

「よっすぃ〜、私怖くて開けられない。」
梨華ちゃんは手を伸ばし、携帯を差し出した。

「読んでもいいの?」
「うん。かわりに読んで。」
吉澤はメールにさっと目を通してから声に出して読んだ。

『梨華ちゃん御免ね。
誤ってすむ事じゃないことくらいは解ってるけど本当にごめんなさい。
知らず知らずにいつの間に広がっていった心の距離を
あんな事で簡単に解消できるわけないものね
全部僕のせいなのに、なにやってたんだか・・・
たぶんこれが最後のメールになると思います。
最後に一言いわせて下さい。
梨華ちゃんは素敵な彼ができたんだね、ちょっと安心しました。
いつまでもお元気で&お幸せにね。
梨華ちゃんに永遠の片思い・・・保田圭』

「・・・・・・・・・」
うつむいて黙りこんだ自分の頭をポンポンとたたいてくれる
よっすぃ〜の手が大きくて温かいなと梨華ちゃんは思った。
434 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/06(日) 22:52
よっすぃ〜の愛って海よりも深いって感じですね。
435 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/09(月) 22:28
待ってます。
436 名前:paco2 投稿日:2006/10/25(水) 18:20
>434 名無氏飼育さん 様
読んで下さってありがとうございます。
リーダーになってからのよっすぃ〜って、まさにそんな感じがします。よっすぃ〜は素敵。

>453 名無氏飼育さん 様
ありがとうございます。2ヶ月以上も更新できてませんでした。
今回も少ししかかけませんでしたが、ゆっくり最後まで頑張るつもりです。
437 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/10/25(水) 18:24
土曜日の昼下がり。
吉澤は会社の近くのオフィス街を梨華ちゃんと歩いている。
いつもよりは人が少なめとは言っても交差点ではかなりの人ごみ。
バッチリ柄物のワンピースでおしゃれを決めてきた梨華ちゃんは
通りすがりの人の目を引く可愛いさだった。
なのに・・・

「ちょっと、よっすぃ〜待ちなさいよ。」
吉澤の鼓膜にキンキンした声が響いた。

「へっ?梨華ちゃんどーしたの?」
「もう、知らないんだから・・・」

彼女はツンとして、よっすぃ〜を追い越してスタスタと歩いていってしまった。

「梨華ちゃ〜ん、ごめん。」
「ごめんね、梨華ちゃん。」
「ホントごめん。梨華ちゃん待って〜」
438 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/10/25(水) 18:26
突然怒り出す梨華ちゃん。
理由がわからなくても、とりあえず吉澤はあやまる。ひたすらあやまる。
保田事件から一ヶ月、何も無かったかのように元気を取り戻した梨華ちゃんだったが
最近、なぜかちょっとした事で不機嫌になることが多くなってきた。

「よっすぃ〜はさぁ、昔っからそうなのよ。」
「ごめん。でも昔っからっていっても・・ね。」
「ホント、自分勝手なんだから。」
「ごめんね。なんかやっちゃったけ?」
「私の事なんて、もうお構いなしで結構ですから。」
「え?そんな。ごめんね梨華ちゃん。」
「ごめんってなにが?」
「・・・だからよく分かんなくて、ごめん。」
「もう、最低!」

梨華ちゃんのご立腹は治らない。
吉澤は、いきなり前を歩く梨華ちゃんの手を取り引き寄せた。

「梨華っ。」
「なによー、離してよ。」
梨華ちゃんが振りほどこうとする手に力を込める。
「好きだよ。離さない。」
「じゃぁ、なんでさっき手をつなごうとした時、手を引っ込めるの?
私、すごい傷ついっちゃったじゃない。」
「へっ、いつ?気が付かなっかったごめん。」
「・・・・・・・・」
439 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/10/25(水) 18:27
吉澤には分っていた。

梨華ちゃんが、わざとわがままを言って甘えたがってるってこと

アヒルみたいに唇を尖らせて、キスしてくれるのをを待っているってこと

だけど、梨華ちゃんの心の中の苦しみや焦燥感みたいなものを感じるたびに切なかった。

梨華ちゃんの心を満たしてあげたいけど

男で傷ついた心は、男でしか癒されないのだろうか?

言葉にならない感情をぐっと飲み込んで

たどり着いたレストランの窓際に座り

柔らかな日差しに照らされた梨華ちゃんの顔を見つめて苦笑するしかない吉澤だった。
440 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/10/25(水) 18:30
「ねえ、梨華ちゃん、今度海に行かない?」

吉澤は、メインディッシュの肉を切り分けながら、さり気なく誘ってみた。

「えっ、海?」
「最近、忙しかったしさ、いろいろあったじゃん。たまにはのんびり遊ばない?」
「水上ホテルとかに泊まってみようよ。」
「よっすぃ〜、なんかHな事考えてるでしょ?」
「ちげーよ。アイボンとノノも一緒だよ!」

吉澤が、ついでっかい声で反論すると
梨華ちゃんはよっすぃ〜の目をまじまじと見つめた。

「やだ。」
「なんでだよ〜」
「だって、二人がいいもん。」
「へっ、そこ?梨華ちゃん酔ってる?」

梨華ちゃんは、悪戯っぽく笑ってみせた。
441 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/27(金) 00:01
更新お疲れ様です。
よっすぃ〜!
男で傷ついた傷は男にしか癒せないなんて事ないからね!
その反対はあると思うけど。ガンバレ!!
442 名前:paco2 投稿日:2006/11/07(火) 08:42
>441 名無飼育さん 様
読んで下さって有難うございます。そう言って頂けると本当に励みになります。
443 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/11/07(火) 08:46
『約束の週末。
カゴダンナから借りてきた車は、年代者のトヨタのセリカで
よっすぃ〜はカッケーを繰り返して喜んでいるけど
日本では見たこともない車だけに私はちょっと不安気。
混雑した市街地をやっと抜け、よっすぃ〜はときどき道路標識の地名を声に出して読みながら
私に、〜そうだよね?って聞いてくる。
(聞かれてもわかんないよ)
いつもは、にやけてるよっすぃ〜だけど、今は違う。真面目な顔して運転してる。
チラ見するよっすぃ〜の横顔はキリっとして整いすぎてて、素敵。また惚れ直しちゃった。』


「ねえ、梨華ちゃん、あんま見つめないでよ。あたしの顔に穴が開いちゃうよ。」
「うふっ、照れ屋さんなのね。カワイっ。」
「キモイよ〜」
吉澤は梨華ちゃんの脚をポンとたたいて仕返しをした。

「ちょ、ちゃんと前見て走ってよ!」
「ふっ、お姫様の生足そそられるなぁ〜」
「この!エロオヤジ!」
「結構ですよ。ホテルに着いたら、あ〜んなことやこ〜んなことやっちゃお☆カナ。」
「そうね。パラセイリングにシュノーケリングにウェイクボードなんていいわね楽しみ。」
「そうそう、69に騎上位に愛のゆりかごなんていいですね楽しみ〜。」
「もう、バカ。」

見ためと中身の超ギャップ。
よっすぃ〜の暴走ぶりにあきれ返った梨華ちゃんは溜息をつてしまう。
『よっすぃ〜ってホントに女の子?』って聞いてみたいけど、それは禁句?でしょ?
444 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/11/07(火) 08:51
「よっすぃ〜、すごーい綺麗だよ!」

青い空、一面に広がるエメラルドグリーンの海。
部屋に飛び込むなり、テラスに出た梨華ちゃんは目を見張った。
吉澤も、ボーイにチップを渡しバッグを置いて、梨華ちゃんと並んで海を眺めた。

「水上コテージじゃなくてごめんね。この時期さぁ観光シーズンでどこもいっぱいだったんだ。」
「ううん、十分素敵だよ。むしろそういうとこってさ、新婚さんばっかりでしょ。」
「たぶんね。」
「だから、ヤダ。」

吉澤は、そっと梨華ちゃんを引き寄せる
最高だねってつぶやくと
梨華ちゃんは、うんと言ってよっすぃ〜の肩に頭を傾けた。

「ねえ、まだもうちょっと海に行かないで部屋にいよか。」
「そうだね。ちょっと疲れたしね、休む?」
「ごめんね、運転疲れたでしょ?」
「じゃなくて、朝早かったから急に眠たくなってきた。ふわ〜。」

よっすぃ〜は大あくびをしてベッドにゴロンと寝そべり自分の隣をポンポンってたたいた。

「・・・・ん・・・」
「梨華。」
445 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/11/07(火) 08:57
寄り添う梨華ちゃんに甘く優しい声で愛してるってささやいて、長―いキスをしてくれる。
梨華ちゃんは、こんな時が一番幸せだなって感じていた。
よっすぃ〜のしなやかな長い指が梨華ちゃんの体を這い、パンティの上からスーっと割れ目に滑らせた。

「あんっ。」
ゾクっとして思わず甘い吐息が漏れる。

「よっすぃ〜、欲しくなっちゃうよ。」
「ふふっ・・おねだ  梨華?」
「う〜ん・・早く頂戴。」
「ねぇ〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「よっすぃ〜・・・寝ちゃったの?・・・・・酷い!愛が足りないよ〜!」


梨華ちゃんは、赤ん坊みたいな顔して眠ってしまったよっすぃ〜の首を絞め身体を揺すった。
吉澤の頭が左右に揺れる。
さすがに、お姫様の逆鱗に気づいたよっすぃ〜は目を閉じたまま、微笑んで
腕をすーっと伸ばして引き寄せ胸の上で梨華ちゃんを抱きしめおとなしくさせた。

「ずっとこうしてたい。時間が止まればいいのにね。」
よっすぃ〜の声が胸から聞こえる。
「私も、ずーっと一緒にいたい。」

よっすぃ〜の温もりと抱きしめてくれる腕の力強さ。
梨華ちゃんは、よっすぃ〜の真心を信じてみようと思った。
446 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/11/07(火) 09:03
マリンスポーツの申し込みは、締め切り時間を過ぎてしまったので
二人は、遊ぶのはあきらめてホテルのプライベートビーチのパラソルの下で寝そべっていた。

波の音が聞こえる。
見上げた空はどこまでも澄んでいて
椰子の木が潮風に揺れていた。

「なんか、ロマンティックね。」

梨華ちゃんは目を閉じて胸いっぱいにリゾートの風を吸い込む。
一瞬、全ての音がふっと消え、頭の中が真っ白になってめまいを感じた。

どのくらい眠っていたのか、気が付くとよっすぃ〜がいない。

「よっすぃ〜!どこ?」

よっすぃ〜を探し求め自然に涙があふれ出す。

「おーい、梨華ちゃーん。」

よっすぃ〜は、波打ち際で笑いながら大きく手を振っていた。
447 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/12/16(土) 21:25
「よっすぃ〜、一人にしないでよッ。」
お怒りモードの梨華ちゃんが、噛み付くような勢いで近づいて来る。

「見て、見て、すごいでしょ?これ。」

そんな梨華ちゃんなど尻目に、よっすぃ〜はニヤニヤと得意満面の笑顔で
足元の巨大な砂のお城を指差した。

「お城?一人でつくったの?すごいね。」
「ふふっ・・作品名『サンドキャッスル@ザビーチ』サクラダ・ファミリア風味だよ。」
「あー、ガウディーの?そう、こんな感じだもんね。」
「あたしさぁ、子供の頃から粘土とか砂遊びとか大好きだったんだよね。」
「へ〜さすが、よっすぃ〜天才。上手だね。」
「ふぉふぉふぉふぉ・・・・・・」
「何?その笑い方。」

何か陰謀をたくらんでいるような顔でよっすぃ〜は梨華ちゃんを見つめる。
梨華ちゃんは、よっすぃ〜の天真爛漫っぷりに、さっきまで言おうとしていた文句が言えなくなってしまった。

「ねえ、梨華ちゃん、お城にね宝物があるんだけどちょっと探してみて。」
「え〜宝物って何?」
「いいもんだよ。探してみて何処にあるのでしょう〜か?」
「壊すのもったいないじゃん。」
「いいから、いいから、どうせ壊れるし。」

うながされて、梨華ちゃんはトンネルを掘るように砂の城を掘り始めた。
448 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/12/16(土) 21:29
「そんなとこじゃないんだけどなー。」

見ていたよっすぃ〜がしびれを切らして口を開いた。

「ヒント!お姫様が住んでる場所。」
「あっ、じゃ塔の上だね。」

梨華ちゃんは、一番高い塔をそっと崩した。

「あった!これ?」

出てきたなは、ガチャポンの丸いケースだった。
中には手紙が入っている。

「読んでいい?おめでとう!渚のプリンセス。宝物のありかはホテルの冷蔵庫の中です?
え〜、何これ。」
「ふっ・・・」
「まさか、ドリアンとか?」
「・・んなわけねーっじゃん。」


あきれ顔の梨華ちゃんとよっすぃ〜の足元に、ザブン、シュワシュワ〜っと満ち潮が押し寄せて来ていた。
ザブン、シュワシュワ〜。やがて、波が少しずつ城壁を削り取っていく。


「梨華ちゃん、戻ろう。」
よっすぃ〜は手を差し伸べた。
449 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/12/16(土) 21:35
シャワーを浴びて宝探し開始。
梨華ちゃんは、まず冷蔵庫を開ける。いつの間に入れたのか手紙が入っていた。

「お疲れ様。冷たいものはテーブルで飲んでね。テーブルにはメッセージが届いてますよ?」

「また?」とめんどくさそうに梨華ちゃんは次の手紙を読んだ。

「宝物は梨華ちゃんのベッドの枕の下です?・・・・・ちょっと〜、変なものじゃないでしょうね。」
「そんなもん、お宝じゃないし。」

変態扱いされたよっすぃ〜は、あわてて全否定する。
梨華ちゃんは枕の下の手紙を読んだ。

「お姫様の素敵な宝物は、クローゼットの中・・・・・」

クローゼットの中の手紙には
「よっす〜のパーカーの左ポケットの中を探ってみて。」
と書かれてあった。

「パーカーって今、着ているやつ?」
そう言って、よっすぃ〜の方を見ると、彼女はニヤニヤと笑ってポケットに手を突っ込んでいた。
450 名前:熱砂の思い出 投稿日:2006/12/16(土) 21:57
「もう、ふざけないでよ。・・・・・何それ、何持ってんの?」

梨華ちゃんがそれ以上つよく言えなかったのは
神妙な面持ちで、よっすぃ〜がポケットから小さな箱を取り出し梨華ちゃんに見せたからだった。

「給料の3か月分とか無理だけどね。」

唖然として立ち尽くす梨華ちゃんに、よっすぃ〜は小箱のふたを開けて
ブリリアンカットがキラキラと輝く指輪を見せた。

「梨華ちゃん、あたし、ずーっと梨華ちゃんと一緒に歩いていきたい。」

「えっ?」

突然の告白に梨華ちゃんは言葉を失ってしまった。

「梨華ちゃん一緒に住もう。そしたら楽じゃん、毎日会えるし。デートした後も別れて淋しい思いをしなくてもいいんだよ。」
「・・・・・・・・・」
「大丈夫、あたしを信じなって。これからの事もちゃんと考えてあるから
・・・・これ、受け取って下さい。」

梨華ちゃんは黙ってうなずいて左手を前に出した。
451 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/17(日) 01:42
いたずら心たっぷりのプロポーズ最高です。
452 名前:paco2 投稿日:2007/01/04(木) 14:26
>451 名無飼育さん様
読んで下さって有難うございます。そう言って頂いて私も最高に嬉しいです。
こんな駄文ですが最後まで頑張ります、よろしかったらまた読んで下さい。
453 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/01/04(木) 14:33
よっすぃ〜は、薬指にすーっと指輪を通す
ダイヤの指輪がぴったりとはまった。

「梨華ちゃん綺麗だよ。」

「これって・・・・そういう意味だと思っていいの?」

梨華ちゃんは震えて消え入るような声でよっすぃ〜の気持ちを確かめた。

「梨華ちゃん聞いて、初めて梨華ちゃんに会った時からあたしの中で何かが変わったの・・・
今まで色々考えてきた
何が正しくて、何が正しくないかなんて解んないだけどさ、でもこうすることで
梨華ちゃんの背負ってきたものが、軽くなったらって生意気にも思ってさ
チュッ
梨華ちゃんは、もっといっぱい我まま言って、もっといっぱいあたしに甘えて欲しい
全部受け止めてあげるから
梨華ちゃんの全てを愛してるから。」

「よっすぃ〜、ありがとう・・・・あなたに会えてよかった・・・」

梨華ちゃんの瞳から一筋の涙が光る
よっすぃ〜の真心は臆病だった梨華ちゃんの心の枷を外して翼を与えてくれた。

次の日はおもいっきり海で遊んだ。旅行から帰ってきてからは
梨華ちゃんは、よっすぃ〜の部屋にお泊りすることが多くなっていった。
でも、一緒に暮らすという約束はついに果たされないまま
日々は過ぎてゆき、梨華ちゃんのジャイカの活動は終了してしまった。
454 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/01/04(木) 14:36
12月の街は華やかなイルミネーションで煌き
今年もクリスマスイブがやってきた
梨華ちゃんは、デパートのアルバイトが終わると
『飲み放題のクリスマスパーティー』のお誘いを断って、早々に家に帰ってきた。
こんな日はやっぱりよっすぃ〜を身近に感じていたい
なのに今日にかぎって、一度も電話してこない
自宅にはいないし会社にもいなかった、朝からずっと行方不明状態だ。

「どうして?」

梨華ちゃんは部屋にコーヒーとブッシュドノエルを持ち込んでキャンドルを灯す

「よっすぃ〜、メリークリスマス。」

写真たての笑顔のよっすぃ〜が、オレンジ色の炎に揺らめいている
1ヶ月くらい前に送ってくれるって言ってたクリスマスプレゼントは
楽しみにして帰って来たのにまだ届いていなかった。
ラジオから流れてくるクリスマスソングが最低ナイト、放りーナイト に聞こえてくる・・・

「サンタさん、もうすぐイブが終わっちゃうよ。」

梨華ちゃんは、窓をあけて星空を見上げた。
455 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/01/04(木) 14:38
♪♪♪・・・

「もしもし、こんな時間になってごめんね、寝てた?よね。」
「よっすぃ〜?」
「うん。」

突然かかってきた電話
一日中ずっと待ってたよっすぃ〜の声を聞いたとたん、胸に熱いものがこみ上がってきた。

「起きてたよ。今日は何してたの出張だった?」
「いや、ちょっとやぼ用。」
「・・・よっすぃ〜、会いたいよ。」
「梨華ちゃん、泣いてるの?」

よっすぃ〜の心配そうな声がする。

「・・・・・・・・・」
「淋しかった?ごめんね。もうじき迎えに行くから待っててね。」
「うん。」

会話が途切れた。
456 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/01/04(木) 14:40
冷たい風は寝静まった街の街路樹を揺らし
枯葉がカサカサと音をたてて吹き溜まりに集まってくる
乾いた足音を響かせながらよっすぃ〜は携帯をかけていた。

後ろから来た一台の車のライトが吉澤を照らし出し横をかすめて少し先で止まる
ちょっと驚いた吉澤は携帯を切った。

「おやすみ〜・・・じゃね〜」
バタン!
楽しそうに声を弾ませた女の子が、彼氏に車で送ってもらったところだった。
上機嫌で彼に手を振るその姿は、梨華ちゃんと重なって見えてしまう。
幸せそうな恋人たち・・・
話の途中で電話を切ってしまった吉澤は思い出したように足を早めた。
457 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/01/04(木) 14:43
ピンポーン、吉澤は真っ暗な玄関の呼び鈴を押した。

「どちら様ですか?」。

しばらくしてから、奥の方で女の人の声がする。

「夜分恐れ入ります、吉澤です。」

門灯が点き、ガチャッと音が聞こえたが、家の人が一瞬ドアを開けるのをためらっているのがわかる
ゆっくり扉があいて怪訝そうな顔した女の人が顔をのぞかせた。

「はい、どちら様?」
「よっすぃ〜。」
「梨華ちゃん、お久しぶり。」
「なんで?そうならそうって言ってくれればよかったじゃん。」
「さっき電話したじゃん・・・」

二人は梨華ちゃんのママの頭越しに言葉を交わした。

「もっと、ちゃんと言って欲しかった!」

梨華ちゃんは少し拗ねてわざと怒ったふりをする。

「マア、マア、マア、マア、エエヤン、エエヤン、リカチャンホンマハウレシイクセニ
フーフゲンガハヤメテヤー。」
「コイビトドウシ、ミタイデスヨ。」

その時、憎まれ口をたたいて梨華ちゃんをからかうのが大好きなアイボンとノノが
よっすぃ〜の後ろから現れた。

「この子たちは誰?なんで日本語しゃべれるの?恋人同士?誰と誰が?」

梨華ちゃんのママは突然のことで何が何やらわからなくて
玄関先で盛り上がってる深夜の訪問者をとりあえず家の中へ通した。
458 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/01/04(木) 14:50
アイボンとノノを寝かせた後
吉澤は昭和風の応接セットのソファーに座って梨華ちゃんが育った家をきょろきょろと観察をしていた。

「よっすぃ〜、お待たせ。」
「梨華がお世話になりました。」

梨華ちゃんの後から、梨華ママもわざわざ紅茶とケーキをもって入ってきた。
ママは吉澤の向かい側に腰を下ろした。

「吉澤さんって商社の支店長さんやってらっしゃるんですってね。すごいわ。」
「あの、支店長代理ですけど。」
「語学にご堪能な方なんですねご立派ですわ。でご趣味は?」
「はぁ?」

お見合いみたいな流れになってる。
ママはあなどれないと思った吉澤は梨華ちゃんに助けを求めて顔を見た。

「もう、ママ止めて。よっすぃ〜は疲れているんだよ
明日みんなでディズニーランドに行くんだから早く寝なきゃ。」
「はいはい、ごめんね梨華ちゃん。じゃ、おやすみなさいよっすぃ〜」
「ちょっとママ!」
「おやすみなさい。」

娘に叱られてママはしぶしぶ部屋を出て行った。

「ごめんねママが失礼なことばっかり言っちゃって。」
「いや〜今マジやばかったよ。『お嬢さんを下さい。』って言いかけっちゃったもん
ホントに言ったらママはどんなを顔したんだろうね。」
「バカ・・・・・ふふふ・・・・」
「ハハハハ・・・・」
吉澤と梨華ちゃんは声を殺して腹筋が痛くなるほど笑い転げた。
459 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/19(月) 22:36
言っちゃえばよかったのにw
460 名前:paco2 投稿日:2007/04/25(水) 09:12
>459名無飼育さん様
読んで下さって有難うございます。そう言って頂けるとよっすぃ〜も勇気100倍になります。
本当はクリスマスに終わらせたいと思っていたのですが、忙しくて無理でした。
でも、もう少しで終わるつもりでいます。
461 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/04/25(水) 09:14
「よっすぃ〜、素敵なサプライズありがとう。」
梨華ちゃんは、改めてよっすぃ〜に感謝した。

「私、アイボンとノノに会いたかったし、クリスマスにみんなでディズニーランドへ行けるなんて最高に幸せ、ハッピー。」
「いいえ、どう致しまして。人が多すぎて色々乗れないと思うけどね。」

梨華ちゃんの両手を広げる奇妙なリアクションに、よっすぃ〜は片方の口角を引きつらせて皮肉っぽく笑った。

「あのさ、お土産があるんだけど。」
よっすぃ〜は、にやけた顔でバッグの中をのぞきコルク栓がしてある小瓶を取り出した。

「ほれ。」
「あっ、これってあそこのビーチの砂?」
「うん、そうだzu。バカにされると思って黙ってたけど
帰る時に、お土産に焼けてサラサラしてた砂だけビニール袋に入れて持ってきたの
あたしのデスクにも同じの飾ってあるんだよ。」
「へ〜ちょっと見せて懐かしい。思い出すわね、また行きたい。」
「海がきれいかったもんな。」
「うん、沈む夕日にも感動したね。」
「ロケーションが最高で圧巻だったな。」
「世界遺産に登録したいくらいにね。」
「ホテルの食事もうまかったしな。」
「三ツ星レストランだっけ?」
「マジはんぱねぇ〜また行きたい。」

瓶の中の砂浜は二人の思い出のビーチだった。
梨華ちゃんは目の高さに小瓶を持ち上げて中の砂を眺めてとびっきりの笑顔になった。
462 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/04/25(水) 09:19
「ねえ、よっすぃ〜、あたしって、もしかして愛されてるぅ?」
「・・ああん?何だよいきなり。」

梨華ちゃんは、おどけた後でよっすぃ〜を見つめながら
急に色っぽくよっすぃ〜に寄り添うように座ると首に腕をまわし唇を重ねてきた。
やわらかな唇が触れあうと、互いに抑えていた激しい気持ちがこみあげてくる。

「梨華ちゃん・・・淋しかったよ・・・。」

よっすぃ〜は梨華ちゃんの気持ちに応えるように唇を離さないまま『愛してる』とつぶやいて
少し開いた唇の間から舌を入れて梨華ちゃんの舌を絡め激しく吸った。
混じりあう唾液と息ができないくらいきつく抱きしめられて
梨華ちゃんは、甘い吐息をもらして、よっすぃ〜の服を掴みしがみついた。
『私こうしてもらうのをずっと待ってた。』
よっすぃ〜の荒々しい息づかいに愛を感じながら
梨華ちゃんは心の中でそう叫んだ。

カチャッ。
ふいに、ドアが開きママが引き返してきた。

「梨華ちゃん、明日何時に出かけるの・・・・・・あっ!」

キスを見られてしまった。
463 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/04/25(水) 09:25

「梨華ちゃん・・・」
ママの凍りついた表情がその場の空気を気まずさを通り越して重苦しいものに変えていく。


「あの、違うんです。あの・・・あの・・・あの・・・」
吉澤はいい訳しようとしたが、しどろもどろで言葉が出てこない。

「ママっ・・・違うの、誤解しないで、よっすぃ〜とはそんなんじゃないの。」
『きっと別れさせられる。』と思った梨華ちゃんは
許しを請うみたいにじっとママを見つめて、壊れた人形のようにいつまでも首を振り続けた。

緊張感で張り詰めた吉澤は、ここで逃げてはいけないんだと
自分に何度も言い聞かせ、勇気を奮い起こした。
464 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/29(日) 23:40
よっすぃ〜ガンバレ!!
梨華ママなら許してくれると思うよ。
465 名前:paco2 投稿日:2007/06/12(火) 12:31
>464 名無飼育さん様
読んで下さって有難うございます。恋愛の愛と親子の愛と天秤にかけなきゃいけない事態に
難しい問題ですが、頑張ります。
466 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/06/12(火) 12:33
「聞いて下さい、キレイ事を言うつもりはありません・・けど・・・・」

吉澤は素直に自分の気持ちを言うつもりでいた
しかし逆効果になってはおしまいだ。

「ちょっと待って!」
先制攻撃を仕掛けてきたのは、ママからだった。

「言っとくけど簡単に人間として愛してるとか、尊重してるとか、梨華の人生に責任をもつとか
安っぽいヒューマニズムなんか口にしないでちょうだいね
あなたが今語ろうとしているいわゆる『愛?』は、私達家族や梨華にとって
ある意味残酷な感情だってことが分かってるの?
梨華の人生をメチャメチャにしないで、迷惑なのよ!」

吉澤は考えてた事を先に痛烈に批判され、心の中を見透かされてるようで怖かった。
467 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/06/12(火) 12:36
「下世話な詮索をするのは止めて下さい。
そんなんじゃありません。
梨華ちゃんとは全部ひっくるめて理解しあえる親友同士なんです。」

吉澤が言い逃れると、突き刺さるような視線が返ってきた。

「誤魔化さないで!」

バシッ!
ママは平手で吉澤の頬を殴っていた。
痛みで歪むよっすぃ〜の顔。

「止めてー!」
梨華ちゃんは狂ったように絶叫した。

「よっすぃ〜は悪くないの、よっすぃ〜は命がけで保田さんから私を救ってくれたの。
よっすぃ〜がいなかったら、私はまたバカを繰り返してた・・・」

保田という名前を聞いて母親の顔色が変わった
「保田さんって、梨華ちゃんどこかで会ったの?」

黙ってうなずく娘に信じられないと言った顔でママは目を細めて再び手をあげた。

「バカ!」

「あっ!」

振り下ろされた手は梨華ちゃんの頬を打つ寸前で吉澤の手が、がっちりと掴んでいた。

「痛い!放しなさい。」
「放しません、梨華ちゃんはもう十分痛みを味わっています。」

吉澤は迷いから吹っ切れたように堂々と母親の腕をねじりあげながら
親子の間に割って入ってきた。
468 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/06/12(火) 12:38
「あなたが守りたいものは何なのですか?梨華ちゃんじゃなくて世間体なんですか?」
吉澤が強い口調で母親を問いただした。

「ふっ・・よくもぬけぬけと開き直ったの?ふざけないで!」

バシッ!
ママは、空いた手でもう一度吉澤を殴った
髪が乱れ顔が横を向く
でもあえて殴られた吉澤はビクともしないで、梨華ちゃんの前に立ちはだかっていた。

「愛って言葉で全てを許してもらうつもりはありませんけど
あたしは梨華ちゃんの笑顔が大好きで
いつでも梨華ちゃんが笑っていられるようにしてあげたい
梨華ちゃんのためだなんて、そんなおこがましいこじ付けはしません
そうすることが事が自分は幸せに思えるんです。
セックスの延長線上にある結婚なんかよりも
もっと強い、互いを思いやる深い友情で結ばれた絆だってあるんです。
その気持ちが愛っていう名前がついたものなら
私は梨華ちゃんを愛しています。」

吉澤は掴んでいた母親の腕を離した。
469 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/06/12(火) 12:44
三人は黙りこくり、壁掛け時計の秒針の動く微かな音だけが部屋に響いていた。
梨華ちゃんはむねに熱いものがこみ上げてきた
吉澤は『やっちまった。』と後悔していた
そして母親がくちを開いた。

「よっすぃ〜は凄い子ね、ママが惚れちゃいそう。」

予想もしてなかった言葉に驚いて吉澤が顔をあげると
今にも泣き出しそうな梨華ちゃんを見つめている母親がいた。

「ママ・・・。」

吉澤の告白に戸惑いながらも結局は二人の事を
許してくれたママの姿が梨華ちゃんには辛かった。
470 名前:熱砂の思い出 投稿日:2007/06/12(火) 12:48
「よっすぃ〜、リカちゃん、ハヤク、ハヤクー」
「ハヨセーヤ、オイテクデー!」
「こらっ、走るな!ノノ。」

翌朝、アイボンとノノは声を弾ませよっすぃ〜達を急き立てた。

「突然おじゃましてご迷惑をおかけしました。では行ってきます。」
吉澤は玄関で丁寧に頭を下げる。

「気をつけていってらっしゃいね。」
夕べの事は何も無かったかのようにママは笑顔でみんなを送り出してくれた。


早朝の薄暗い駅までの道を、よっすぃ〜と梨華ちゃんは並んで歩いく。
アイボンとノノは鬼ごっこをしながらその後を小走りに着いてきた。
駅に近づくと高層ビルの間からピューと空っ風が吹き抜けてゆき
クリスマスのディスプレイがちぎれそうに揺れていた。

「寒い。」
梨華ちゃんは首を縮め小さくつぶやくと
よっすぃ〜はさりげなく繋いでた手を自分のコートのポケットの中へ入れてくれた。

「暖かい。」
「うん・・・・・・・梨華ちゃん、私この手は一生離さないからね。」

よっすぃ〜はギュッと手を握り、梨華ちゃんを見て三日月のような目で笑った。
梨華ちゃんは小さくうなずき、冷たい頬が薄く赤く染まっていった。

おわり
471 名前:paco2 投稿日:2007/06/12(火) 12:54
中途半端な気もしますが一応、「熱砂の思い出」は完結しました。
読んでくださった皆様、感想を書いて下さった皆様に心から感謝致します。
本当に有難うございました。
472 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/15(金) 00:19
完結お疲れ様でした。
二人が幸せになって良かったです。

次回作も、楽しみに待ってます。
473 名前:paco2 投稿日:2008/01/04(金) 11:58
>472 名無飼育さん様
最後まで読んでくださって有難うございました。
駄文しか書けないのですが、いしよしを妄想することが楽しいので
また何か思いつきで書こうと思います。よろしかったら読んでみて下さい。
474 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:02
今年は8月がまだ1週間も残っているのにもう学校が始まる。

「先生さよなら〜」
「さよなら。」
「よっすぃ〜、さよなら〜」
「さよなら。おまえ、宿題忘れんなよ。」
「ほら、水筒忘れてる。」

靴箱の辺りに並べられた沢山のバッグや帽子をチェックながら
親がむかえに来た子供たちに順番に声をかける。
言う事もやる事も子供らしくて楽しく遊んだ奴等と明日から会えなくなるのは淋しいなと思いながら
学童保育の子供たちを全員帰し
吉澤はお世話になった常勤の方々にご挨拶をして無事に夏休みのバイトが終わった。
ピタッピタッと自分の足音が響く暗くなった駐輪場に行き
愛車のママチャリを押して出して夜空を見上げると
子供たちの笑顔のようにキラキラと星がきらめいていた。

「おまえら、次は冬休みにな・・・・」

気持ちを入れ替え吉澤はいつものコンビニに向った。

「いらっしゃいませー。」

自動ドアが開くとあいつが200%の笑顔で迎えてくれた。

『梨華ちゃん笑い過ぎだよ』と照れながらも中へ入っていくと
レジには数人のお客さんが並んでいて
あいつと微妙な距離で待たされるのも嫌なので
人がいなくなるまで隠れて雑誌を座り読みして待つことにした。
475 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:05
事件は起きた。

雑誌をまったりと読みふける時間を切り裂くようにキャー!という叫び声が店内に響きわる。
吉澤がビクっとして声のするほうを見ると
さっきまでレジに並んでいたお客さんはいなくなり
いつの間に入って来たのか汚い身なりの怪しい男が
呂律の回らない口調で梨華ちゃんの手を掴みからんでいるところだった。

「ねーちゃん・・・・・・・」

気持ち悪いしわがれた声
梨華ちゃんはこっちが怖くなるような凄い形相でワナワナと震えていた。

「やっべ。」

その様子見て吉澤はとっさに手近にあった飲料水のボトルをおもいっきり男の背中に投げつけた。
梨華ちゃんから手を離させるにはそれで十分だった。

「イシカー逃げろ!」

その声で男が振り返った瞬間吉澤は持ってた雑誌で顔をおもいっきり殴りつけ相手がひるんだところで下腹部を蹴りうずくまった背後から羽交い絞めし押さえつけた。

「ぐぁー!」

男は身体を解こうと大声を出して暴れ始める
騒ぎを聞きつけ奥で働いていた店長が飛び出してきた。

「店長、強盗です。」

吉澤が叫ぶと
もみ合いながらも店長も必死に男を押さえつけた。
476 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:09
「離せー!」

狂ったように男が吼える。

「ぁんだとゴラァ!警察呼ぶぞ!」

吉澤が負けずに恫喝すると男は暴れるのを止めた

「おい、なにやったんだお前!」

店長が凄い迫力で男を睨みつける。
男はコンビニの裏の公園で生活している浮浪者で
たまに店に来る店長も困っていた奴だった。

「弁当が目当てか!」

店長が怒鳴ると男は小声で『ダンボールが欲しかった』と言い訳しながら
『もう2度と来るな』と店から追い出されていった。
477 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:11
「怖かったね、梨華ちゃん大丈夫だった?・・・・・」

吉澤が呆然と立ちすくんでいる梨華ちゃんに声をかけると
その瞬間何も言わずに彼女は駆け寄りしがみついてきた。

「・・・・・・・・」
「もう、大丈夫だよ梨華ちゃん。」

吉澤は戸惑いながらも震える身体を受け止める
涙をためた梨華ちゃんの黒い瞳が揺れていた。
思わず腕にぎゅっと力を入れると
ふわっとした柔らかい梨華ちゃんの感触にドキッとした。

『可愛い』・・・・吉澤がこんな風にキショイ相棒のことを意識したのは初めてだった。
478 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:18
数日後二人は夏休みを利用して『お宝アイランド』という雑誌に投稿する為に
ある事の調査に出かけた。

ピンポーン

「おはよう、よっすぃ〜来たよ。」
「おう、ちょっと待ってて。」

吉澤は部屋中のコンセントを抜いてぐるっと見渡し戸締り確認をする。

「ねえ、よっすぃ〜梅酒持ってきたよ。夜一緒に飲もうね。」

玄関先で梨華ちゃんが突拍子もないことをほざいている。

「えっマジで?」
「どうかした?」
「いらないよお酒なんて。地酒とか飲もうよせっかくだから。」

吉澤は梨華ちゃんの厄介なお荷物のおかげでバッグがグチョグチョになんじゃないかと心配になった。

「重いから置いてきなって。」
「だって甘いのしか飲めないんだもーん。」

梨華ちゃんは小首を傾けニコッと笑う

「もーんってか。チッ、じゃあたしが持つからこっちによこしな。」

バカバカしいと思いながらも、白い歯がキラリ光る極上の笑顔を向けられると
これがいわゆる『梨華ちゃんマジック営業用』だと分かっていても
吉澤はあの日以来、梨華ちゃんをつい甘やかしてしまう
仕方なく梅酒をビニル袋で密閉し重くなった自分のバックを背負った。

「さあ、出発するよ。」
479 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:23
吉澤はフルフェイスのシ−ルドを下げレバーをキックしてエンジンをかける
ちょっといい感じのマフラーの音が心をワクワクさせてくれる。
梨華ちゃんがエンジンをかけたのを見て手で合図しバイクをゆっくりスタートさせた。

二人は国道を山に向かって走る。
吉澤はバックミラーに写る梨華ちゃんに目をやりながら
路肩を走り人や車をぬって、渋滞をぶっちぎり快適に飛ばしていった。

1時間ほど走ると辺りにほとんど家が見当たらない田舎になってきた。
でもまだ道幅は十分広くて対向車がきても余裕で
遠くに折り重なる山のグラデーション楽しみながら走れる
やがてセンターラインが黄色になり道幅が狭くなると高さを増した山が左右からぐんと迫ってきた。
短いトンネルを2つくぐりカーブを曲がると峠へつながる勾配のある坂になっていた。
前方には雲ひとつない青空が広がり
エンジンの音を山肌に轟かせ坂道を上ると
空に向かって舞い上がる飛行機に乗っているようで気分爽快だった。
480 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/01/04(金) 12:29
峠を越えると道がふたてに分かてている。
吉澤は合図を出してして林道の方へと入って行った。
カーブが続く緑のトンネルをの道を
右に左にバイクを傾け体重移動し身体でバランスを捕りながらカーブを攻めて行く
吉澤のまねが出来ない梨華ちゃんはどんどん距離が離され
あっという間に吉澤の背中が見えなくなってしまった。

山あいの平坦な道に出ると屋根に『釣り道具、お食事』と書いてある小さな店が見えた
吉澤はその前でバイクを止めて梨華ちゃんを待っていた。

「よっすぃ〜速かったね、さすが隊長。」

バイクを降りて梨華ちゃんが大げさにおだてると思った通り自慢気に
『カーブでもスピード落ちなかったでしょ』と破顔一笑して飄々としている

「梨華ちゃん、おしっこタイムだよ。お昼前だけど鮎の塩焼きでも食べていくか。」
吉澤は手櫛で髪を直しながら梨華ちゃんを誘った。

「いいね。朝ごはん食べてなかったし何か食べよ。」
二人はメットとグローブをバイクに引っ掛け店の中に入って行った。
481 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/14(月) 17:55
おしっこタイムて!w
続き楽しみにしています。

482 名前:paco2 投稿日:2008/02/12(火) 09:31
>481 名無飼育さん様
読んで下さって有難うございます。適当につけたタイトルなのでどんな方向に話が進んで行くのか分かりませんが、気長に書いていこうと思っています。
483 名前:paco2 投稿日:2008/02/12(火) 09:32
山の天気は変わりやすく目的の深嶽温泉に着いた頃には雨が降り出してきた。

「寄り道しなきゃよかったね。」
「よっすぃ〜の普段の行いが悪いんじゃないの。」

旅館に着いた二人は早速お出迎えに来た仲居さんに連れられて
もわーっと温泉のにおいが漂う迷路のような廊下を歩き
男湯女湯、家族風呂露天風呂の場所を一通り案内されて部屋にたどり着いた。
部屋の入り口は玄関風の格子戸になっていて、さらに奥のふすまを開けると
座敷の中央にピカピカの漆塗りの座卓がデンと置かれ市松模様の襖紙が目を引く
日本の文化が圧縮されたような和室になっていた。

「「おおーっ!!」」
「やっぱ日本人は畳だよね〜。」
「なんか癒されちゃうね〜こういう感じ。」

吉澤は無造作にバッグを置き座卓の前に腰を下ろした。

「梨華ちゃん温泉饅頭あるよ、お茶いれるからまったりしよ。」

吉澤はコポコポと急須にお湯を注いだ。

「ねえ、雨で中まで濡れちゃったし先に温泉に行かない?」

薄手のジャンバーが肌に張り付き梨華ちゃんがもがいていると
饅頭をくわえた吉澤がさっと手を伸ばして脱がせてくれた。

「いいね温泉入ろう、楽しみ〜」
「ねぇ、着替えは浴衣でいいでしょ。」

梨華ちゃんはクローゼットから浴衣を取り出しひとつを吉澤に渡した。
484 名前:paco2 投稿日:2008/02/12(火) 09:34
二人で温泉に来るのは久しぶりで
脱衣所で一緒に脱ぐっていうのはちょっと恥ずかしい気分になる。
背中を向けてゴソゴソしている梨華ちゃんも多分そうなのだろう
吉澤はどんどん先に行っちゃた方が思いやりかなと思い風呂場に向かった。

昼間の温泉は誰も入ってなくて気持ちがいい。
吉澤が手足を伸ばし悠々とつかっていると
ガラガラっと後ろのガラス戸が開き梨華ちゃんが入って来たのか分かった。
ザーザーと盛大に流れるお湯と湯気で白く風呂場が曇ってくる
体を洗うボディシャンプーの香りが鼻をくすぐり
時々コンッと桶を置く音が壁にこだまして
まさに温泉気分を満喫させてくれた。

掛け湯を済ませた梨華ちゃんが気持ちいいねと微笑みながら湯船に入ってきた。
梨華ちゃんは吉澤の横に身を寄せて座ると
吉澤はつい、気になる胸をチラ見した。
『デカ・・・また成長してる?』
485 名前:paco2 投稿日:2008/02/12(火) 09:37
「梨華ちゃん、けっこう胸あるね。」
「や〜だよっすぃ〜、何見てんのよエッチ。」
「うるせぇー。自然に目にはいってくるつーの。」
「オヤジ目線入ってるし。」
「うるせえ、梨華ちゃんだって叶姉妹とか入ってきたらそのくらい見るだろ?」
「・・叶姉妹?あたしが?えへへっ・・・・・・・・」
「・・(やば、余計な事言っちゃったカナ?)・・」
「叶姉妹フ〜!」
「アチャー・・・・」

梨華ちゃんのテンションは急上昇した。

「ちょ、水がかかるよ両手挙げんな。・・・・あー、もう出ようかな。」
「え〜まだいいじゃん。」
「じゃさ、ちょっと触らせてくれる?」
「・・・いいよ・・・ちょっとだけだよ。」
「うい〜〜〜。」

「お肌スベスベになってきたね。」
「そう言えばさ、ここってゲルマニウム温泉なんだって血液のにごりを取ってくれるらしい。」
「デトックス効果だっけ?」
「うん、なんか言うね。」
「老廃物出て行け〜フォ〜」
「だから、水がかかるから止めろ。」
「マイナスイオンフォー!」
486 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/02/29(金) 18:26
吉澤は梨華ちゃんをイメージモデルにして温泉レポートを書いていた。
前回は硫黄成分の美白効果か? ―黒子さんの露天風呂ライフ―
前々回は血の池軟膏は肌荒れに効く? ―年齢肌、曲がり角―
そして今回はゲルマニウム温泉の効用であった。

梨華ちゃんのはしゃぎぷりを見ていると今回は
ゲルマニウム温泉の発汗作用により
脳内ドーパミン(快楽ホルモン)が大放出されてる様子で
結果おっぱいをプッシュされるという迷惑行為でさえ楽しみ
イケイケのポジティブ梨華ちゃんになっている
これはもう、『効き湯』に○
・・・と吉澤は心の中でメモった。
487 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/02/29(金) 18:28
「梨華ちゃん最初はビールで乾杯しよう。」
「「乾杯〜!」」

浴衣を着ての夕食は、梨華ちゃんの湯上りの胸元がやけに色っぽくて
向かい合っているだけで吉澤は恥かしくなる
とりあえず照れをお酒で誤魔化そうと、どんどん呑み始め
しだいに饒舌になっていった。

「ワンランク上のヤマメの塩焼き頂きまーす。おいすぃ〜。」
「うん、美味しいね。」

「ねえ梨華ちゃん、あたし今ピコーンときたんだけどね、オスでもヤマメ(山女)なのは何でだと思う。」
「は?何いきなり。そういう名前だからしょうがないじゃん。」
「違うんだなーヤマメって夫婦なんだよ、離婚するとオスがヤモメになちゃうから別れられないの。」

「ハハハ・・・よっすぃ〜面白い、スピッツスピッツ。」

お酒がすすみ、壊れ始めた梨華ちゃんは笑い転げている。

「梨華ちゃんスピッツってなによ?」
「尾も白い。アハハハ・・・」
488 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/02/29(金) 18:31
「梨華ちゃんウーロン茶頼もうか?」
「ハハハ・・ちょっと酔っぱらったけどまだ呑めるよ〜
ってか、よっすぃ〜ちょうだい、もっと欲しくなっちゃう〜〜」
「それは言う相手が違うでしょ、梨華ちゃんって酒で失敗するタイプかもね。」
「そんなこと無いもん、あっそうだ良いこと考えた豆飛ばし大会やろ、で負けたら一気ね。」

食べ物を粗末にしちゃダメだよと、たしなめる吉澤の目の前で梨華ちゃんは
両方の鼻に枝豆をつめ、顎を突き出しフーン!と飛ばした
発射された豆は足元にポトリと落ち
梨華ちゃんはその勢いでヘナヘナとへたり込んで顔を緩ませている。

「全然、飛ばなーい。次、よっすぃ〜やって。」
「もう梨華ちゃんって酒乱か?今までしゅらんかった。」

一回だけだよと言って吉澤は片方の鼻に枝豆を詰め
ハァァァ〜っと思いっきり口から空気を吸い込むと
片方の小鼻を指で押さえフーン!
放物線を描いた豆は部屋の隅に飛んでいった。

「ハハッよっすぃ〜凄―い♪お豆が飛んだ〜お豆が飛んだ〜あなたはひとりで生きられるのね♪」
「さっ片付けるか。」

梨華ちゃんの替え歌にはつっこまず
吉澤はフロントに電話して料理を下げてもらい
もう一度梨華ちゃんを引っ張ってお風呂にいった。
489 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/02/29(金) 18:36
部屋に戻って来ると、冷房が効いているのか
昼間の暑さに比べると、うその様に涼しくて
ふかふかの布団に入るのが心地よかった。

「ねえ、よっしぃ〜って誰か好きな人いる?」

梨華ちゃんはさっそく女の子トークを始めた。

「いるよ。」
「好きな人いるんだ。」
「いるけど、その人とは絶対につい合えないんだ。」
「なんで?相手の人結婚してる人?」
「結婚はしてないけど、あたしのことなんか何とも思ってないから。」
「それでも好きなの?」
「そのひとの笑顔見てるだけで幸せだから。」
「近くにいる人?会社の人?」
「うん、仕事関係の人かな。」
「誰、誰教えて、私の知ってる人。」
「秘密。」
「なんでー、あたしっち親友じゃん。」
「言ったらさー、梨華ちゃんこれからそういう目で見るじゃん。」
「いいーじゃん。」
490 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/02/29(金) 18:39
「梨華ちゃんは好きな人できた?」
「まあ。」
「うそ!誰。」
「誰でもいいじゃん、よっすぃ〜が教えてくれたら教えてあげる。」
「ブー、・・・・・やっぱ好きな人いるんだ。」
「じゃ、せーので同時に名前言ってみない?」
「そんな手には乗りません。」
「ケチ。」
「ケチって、人の気持ちも知らないでそんなこと言わないでよ。けっこう真剣なんだから。」
「思い切って告白したら?」
「だからそれが出来ないの、撃沈の可能性が高いんだって。」
「あーぁ、よっすぃ〜の好きな人が誰なのか気になって寝られないじゃない。」
「・・・・・・・・・」
491 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/03/04(火) 09:25
「ねえ、その人って誰か付き合ってる人いるの?」
「分かんないけど、好きな人はいるらしいよ。」
「・・・片思いか、苦しいね、私協力してあげる。」

梨華ちゃんは楽しそうに身を乗り出し顔を寄せてきた。

「いいよ、今の関係が変にこじれっちゃたら嫌だもん。」
「飲み会に誘うとかは?」
「もう何回も行ってるし。」
「じゃ私も見たことあるのかなその人、よっすぃ〜の気持ちに全然気づかないの?鈍感な人?」
「だってそういう場所じゃあたし自分の気持ちを出さないから、分かんないでしょ。」

「うん確かにね、・・・年上?年下?どっち?」
「1個だけ年上。」
「じゃ私と同じ年か、誰だろ?」

「その人に何かプレゼントはしたことある?」
「誕生日プレゼントあげたことあるよ。」
「何あげた?」
「結構高いTシャツとかバッグとかあげたよ」
「ピンとこないんだ最悪なヤツだね、値段と愛に気づけよって話じゃんね。」
492 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/03/04(火) 09:28
何も知らずに興味津々で誰かを想像している梨華ちゃんに
吉澤は『好きなのは梨華ちゃんだよ』とは言いたくても言えない複雑な気分だった。

彼女とは共に泣いたり笑ったり色んな体験をしてきた仲間だし
親友だし、誰より大事なヤツだから絶対に失いたくない存在なわけで
お互いの距離を保って今までみたいに楽しくやっていくのがベストだと思っていた。

でも、キラキラと瞳を輝かせ恋バナに興じる梨華ちゃんを見ているとドキドキしてくる
抱きしめたい切ない想いを心の中へ押しとどめて
吉澤はちょっと首を伸ばして梨華ちゃんのおでこに自分のおでこをくっ付け
最高の笑顔をプレゼントした。
『えっ』と戸惑ったような梨華ちゃんの顔はあっという間に
これ以上無いくらい真っ赤に染まっていった。
493 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/03/09(日) 14:59
「イェ〜〜イ!」
「・・・・・・・・・・・」
「梨華ちゃん、写真撮ろうか?。」

吉澤は自分の布団を捲り、いたずらっ子のように手招きすると
えへへっと照れ笑いして梨華ちゃんは素直に布団の中に入ってきた。

「フフッ、誰にも見せられない秘密の写真だね。」
「絶対、二人だけの秘密にしとこうね。」
「うん。」

吉澤は手をグーンと伸ばしてカメラを持った。
カチッ
「ちょっと見せて・・・」
「あー切れてる、もうちょっとくっつこうか。」
カチッ
「ねえもう一枚、肩組んで撮ろう?」
カチッ
「ねぇちょっとさ、両肩出して、布団を胸まで掛ければさ、何にも着てないように見えるじゃん、やってみない?」
「ええっ、恥ずかしいヤダー。」
「面白いから、一枚撮ってみようよ。」
悪ノリしてきた吉澤は浴衣を胸まで下げて布団をかぶった。

「・・・えー、このくらい下げればいい?」
「うん、それで片腕を出して・・」
カチッ
「どんな感じ?見せて。」
「ほら、梨華ちゃん可愛いじゃん。」
「アハッ・・恥ずかしい・・・裸みたいじゃん。」

カメラの中では、寄り添った二人幸福そうに笑っていた。
494 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/10(月) 23:49
イチャイチャいしよしサイコー!!
495 名前:value 投稿日:2008/04/02(水) 22:11
<p>
496 名前:paco2 投稿日:2008/04/24(木) 19:49
>494 名無飼育さん様
読んで下さって有難うございます。お互いに憧れている同士の友情って素敵だなって思います。
497 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/04/24(木) 19:52
深嶽温泉には三好神社という古い神社があり
ここの夏祭にあわせて来ていた二人は
両側にぎっしりと露天の屋台が立ち並ぶ参道を人の流れにのって歩いていた。

「お好み焼き屋さん、たこ焼き屋さん、クレープ屋さん・・・食べたいな〜」

それ程でもないのが分かっていても屋台から漂ってくる煙と美味しそうな匂いは
大の大人でさえ無邪気にさせてしまう。

「いいよ、帰りにねつーか、梨華ちゃんきょろきょろし過ぎ。はぐれたら困るだろ。」

人ごみの中で先を行く吉澤は梨華ちゃんと手を繋いでグイっと引き寄せた。

「待ってよっすぃ〜。」

腕をひっぱられた梨華ちゃんは少し前のめりで小走りになり
周りの人にぶつかりながら吉澤と並んだ。

「ハハッ、こうして歩くの久しぶりだね。」
「うん、小学校低学年ぶり?」
「そうそう、手つなぎ遠足とかあったね。」
「あの頃から変わらないね、梨華ちゃんの手、ちっちゃい。」
「あたし手足がちっちゃいんだよね。」
「可愛くていいじゃん、チャームポイントだよ。」

からかうように笑った吉澤は梨華ちゃんの手を確かめるように指を動かした。
彼女の指先から伝わる圧力は梨華ちゃんの心をキュンと締め付ける。
梨華ちゃんは繋いだその手を子供の頃とは違う想いで握り返した。
498 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/04/24(木) 19:55
神社の境内に入り御影石を敷いた道を歩く
おみくじがいっぱい結んである立ち木の前を通り過ぎて
二人は賽銭箱の前に立った。
チャリーン、ガラガラ、パンパンッ。
簡単に参拝を済ませた吉澤は神社の歴史が書かれた立て札を読んでいた。

「よっすぃ〜は何てお願いしたの?」

長々と願い事をしていた梨華ちゃんが吉澤の顔をのぞきこんだ。

「ん?仕事が増えますようにって、梨華ちゃんは?」
「秘密。」
「え〜っ!・・・だったら聞くなよ。」
「だって言っちゃったら願い事が叶わなくなっちゃうもん。」
「ひどい、あたしの場合、死活問題なんだからねっ言わせるな!」

ハァ〜っと力が抜けてうつむいた吉澤を
梨華ちゃんはせきたてるように腰に手を回し後押しして歩かせた。

「よっすぃ〜お仕事、行くよ。」
「うん。」

境内の奥の方から笛の音が聞こえはじめていた。
499 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/04/24(木) 19:59
お祭りのメインで御神体に奉納される神楽はすでに始まっていた。
何重にも取り囲まれた人だかりの舞台の上では
いにしえの煌びやかな衣装をまとった保存会の人達が
幻想的で豪快な舞いを披露していた。

「きれいね。」
「うん。凄いね〜。」
「いい写真撮れてる?」
「うん、バッチリデース。」

吉澤は繰り広げられてく舞台に魅了され夢中でシャッターを切っていった。
500 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/04/24(木) 20:01
「よっすぃ〜?もう終わった?」
「え?まぁ・・・・」
「どうしたの?ボーっとして、疲れた?」
「あーゴメンなんでもないよ。」
「ホントに大丈夫?」
「・・・すごい綺麗だと思わない?あの巫女さん。」
「あっ、そう?!」

梨華ちゃんは一瞬吉澤を睨んでそっぽを向いた。

「ええ〜?あの〜被写体として白い着物と赤い袴が鮮やかで綺麗だなって思って・・・梨華ちゃん何か怒ってる?疲れた?もう帰ろうか?」
「知りません。」
「ごめん機嫌なおしてよ、ラムネ買ってあげるからさ。」
「子供じゃないんですから、いりません。」
「ごめん悪かった。」

吉澤は自分の不用意な一言で梨華ちゃんが不機嫌になったことぐらいは分かっていた
でもこんな時に梨華ちゃんが時々見せる感情をどう扱っていいのかが分からなくて
背中から一瞬ぎゅっと抱きしめ梨華ちゃんに謝った。

「五平餅も食べたいから・・・買って。」

腕の中でちょっと顔を赤くした梨華ちゃんがつぶやく
答える代わりに吉澤は梨華ちゃんの髪にキスをした。
501 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/10(火) 16:54
梨華ちゃんがスネた時のテンションの下がりようは半端なくひどい
ブラック化した梨華ちゃんのオーラが
水深2000mくらいの圧力で吉澤の両肩に重く襲いかかってくるのだった
しかし、今日は神社のご利益なのか?立ち直りが超早かった。

「よっすぃ〜、さっきはごめんね・・・私ちょっと悔しかったの。」
「悔しかった?」

プライドが高くて仕事で愚痴を一切こぼさない梨華ちゃんが
珍しくストレートに気持ちを吐き出した。

「よっすぃ〜が夢中になってたからさぁ
よっすぃ〜を夢中にさせるなんて羨ましいなって・・・巫女さんにやきもちやいちゃった。」
「やきもちって・・・」
「どうせ私なんか、芸なしだからそんな資格ないんだけどね。」

自虐的に告白する梨華ちゃんは口元が少し歪んで見えた。

「バ〜カ、可愛い奴!あたしは梨華ちゃん撮ってるときだっていつも夢中だよ。」

吉澤は梨華ちゃんから目を逸らし、できるだけクールに応えた。

「で、どうする?もう帰る?」
「ん?よっす〜は?」
「あそこ寄って行きたい、お神酒をふるまってるみたい。」

吉澤は行列のできてる特設のテントの方を指差し歩いていった。
502 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/10(火) 16:58
巫女さんについでもらったお神酒を一口で飲んだ梨華ちゃんは
頭がポワっとして、気持ちがよくなった。

「お神酒って結構おいしいわね。」

「うん、おいしいね。ここらへんの地酒かな・・・」

吉澤は数秒考えていた。

「決めた!温泉と地酒は私の研究テーマだから
今夜は温泉に酒を浮かべて飲もう。」

「え?・・・お風呂にアルコールは持ち込み禁止じゃないの?」

「だから、いいこと考えたんだあたし。今日帰ったらさ、家族風呂予約してさ
化粧水持ってくふりしてお酒を持ち込めばいいんじゃない?」

「・・・そうだね、ペットボトルでもばれないかも。」

「ペットボトルいいね、温泉に浮かべれるし、ぬる燗で呑めるじゃん。」

「え〜、それちょっと汚いんじゃない・・・・」

「梨華ちゃん、善は急げだよ早く帰ろう。」

急き立てる吉澤に梨華ちゃんは苦笑いした。
503 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/10(火) 16:59
「本当はお盆を浮かべてお銚子とおちょこで呑みたかったのにね。」

と言いながら吉澤は桶にペット酒を入れてプカプカ浮かべて遊んでいる。

「うん、情緒的なもんが欠けるかな、カビの生えた桶じゃね。」

「梨華ちゃん飲んでみる?」

「いやー、私はちょっと・・・遠慮しとく。」

「じゃあたし飲んじゃうよ・・・・・・・・・
う〜ん、うまい!
なんか、こう、パーっと開放的な気分になる。」

「裸なんだし、これ以上開放したら困るじゃん。」

「アハッ・・・・・梨華ちゃんのエッチ・・・」

「よっすぃ〜・・・顔赤いよ、やっぱお風呂だと酔いがまわるの早い?」

「ん?わかんないけど、楽しいよ〜」
504 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/10(火) 17:01
プクプクプク・・・・・

「梨華ちゃん見て、おならだよ〜」

吉澤は空になったペットボトルを沈めてはしゃいでいる。

「・・・ちょっと〜!こっちに近づけないでよ。」

梨華ちゃんに叱られて吉澤は膝の隙間からぶくぶくさせた。

「お〜スゴイスゴイ。」

「ハハハ・・・よっすぃ〜そんなとこから止めて・・・おかしい・・お腹痛い・・・あたしもう、出るね。」

「ねえ、梨華ちゃん。」

吉澤は立ち上がりかけた梨華ちゃんの腕をぐっと掴んだ。

「痛い。」

次の瞬間ザバっと梨華ちゃんは湯船に引き戻される。

「まだいいじゃん、カラスの行水じゃもったいないよ。」

「だって、私すぐのぼせちゃうから・・よっすぃ〜だって酔っ払ってるから早く出よ。」

「・・・じゃあ、3と3の倍数のときアホになって10まで数えてたら一緒に上がろう。
いくよせーの・・・・1、2、さ〜ん、4、5、ろ〜く、7、8、きゅ〜〜、10。」


湯船につかり向かい合っておもいっきりアホになる二人だった。
505 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/11(水) 21:19
これからの展開がどうなるかワクワクしています。
次の更新を、楽しみにして待ってます!
506 名前:paco2 投稿日:2008/06/27(金) 17:10
>505 名無飼育さん様
読んでくださって有難うございます。少しずつしか更新しか出来ませんが書き続けていきたいと思っています。よろしかったらまた読んで下さい。
507 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/27(金) 17:12
風呂上りに梨華ちゃんはジェイソンみたいなマスクの美白パックをしている。
化粧水を塗っただけの吉澤は不気味な彼女に背中を向けて先にゴロンと寝転がていた。

「ねえ梨華ちゃん、明日は早く出るよ。」
「何時頃?」
「飯食ったらすぐ。」
「・・・・・・・・」

梨華ちゃんが、5,6分無口なジェイソンに変身してる間に
ふざけ過ぎて疲れたのか吉澤はスースーと寝息を立てていた。

「よっすぃ〜もう寝ちゃったの?」

マスクを外した梨華ちゃんが吉澤の顔を覗き込んだ。
伏せられた長い睫毛の整った顔に無造作に前髪がかぶさっている
梨華ちゃんはそっと髪の毛をかき分け唇に触れてみた
とその時『ウ〜ン』と寝返りをした吉澤の肘が胸を直撃した。
コホッ、コホッ。と小さく咳き込む梨華ちゃんの上に
さらに、背中と太腿がドサっと押しつぶすように倒れてきた。

「キャッ!・・・よっすぃ〜重い、息ができないよ〜起きて〜」
「ん?梨華ちゃん何やってるの?そんなとこで。」
「虐げられてんの。」
「あ・・ごめん寝相悪くて。」
508 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/27(金) 17:13
吉澤の背中の下からゴソゴソ脱出して無理して手を抜いた梨華ちゃんは
浴衣の袖だけ引っ張られ、片方の胸がはだけてしまった。
あわてて胸元を隠した梨華ちゃんに
吉澤はドキドキして体がこわばった。

「梨華ちゃんって色っぽいね、今すごく色っぽかった。」

気持ちがばれるのが怖くてわざと冗談っぽく言うと
梨華ちゃんがぎゅっと抱きついてきた。

「どうしたの、梨華ちゃん。」
「ありがと、それ、ほめ言葉?」
「うん。」

吉澤は照れ隠しに頭を撫でて返した。

「ねえ、よっすぃ〜。」
「ん?」
「私のことどう思ってる?」
「どうって?」

梨華ちゃんはためらいがちに間をとった

「私は好きだよ・・・・よっすぃ〜のこと友達としてじゃなくて。」
「え?」
「嫌?」
「嫌じゃない・・・・嬉しい。」
「ホント?」
「本当に。」
509 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/27(金) 17:19
「でも、よすぃ〜って誰か好きな人いるんでしょ?前にそう言ってたじゃん。」
「あっ・・・それ・・・うそ。」
「うそだったの?」
「うそじゃないけど・・・」
「どっち?」
「わかんないかな?」
「わかんないよ。」

「あのね、」と言って吉澤はクルっと体を反転して梨華ちゃんを見下ろした。

「思い出して欲しいな〜、誕生日のプレゼント
ただの友達に7万5千円のバッグをプレゼントする奴がいると思う?」
「それって・・・ピンクの」

梨華ちゃんが言い終わる前に吉澤の唇が頬に触れた。

「梨華ちゃん、ずっと前から好きだった。」

吉澤が囁くように耳元で告白すると
ゆっくりと梨華ちゃんは瞼を閉じた。

「・・・好き・・・よっすぃ〜・・・」
「梨華ちゃん・・・」

吉澤は梨華ちゃんの唇に唇を重ね徐々に激しいキスをしながら
梨華ちゃんの浴衣の合わせに手を滑らせていった。
510 名前:研究家よっすぃ〜。 投稿日:2008/06/27(金) 17:38
翌朝、吉澤の腕の中で目が覚めた梨華ちゃんは
まだ自分の中によっすぃ〜がいるような、変な感じがしていた。
隣の布団に戻ろうとすると吉澤の腕はビクとも動かず
逆に胸に抱き寄せられてしまった。

「よっすぃ〜・・」
「おはよう、梨華ちゃん。声かすれちゃたね。」
「・・・・・・・・・・」

夕べ、生まれて初めて知ったセックスの快感に
自分が分からなくなるほど乱れた梨華ちゃんは吉澤の言葉が恥ずかしかった。

「まだ起きるのは早いよ、もう一度抱いてもいい?」

吉澤は梨華ちゃんの返事も待たずに何もまとってない腰に手を回し
蜜で潤った華弁のその奥へ指を差込みゆっくり動かした。

「・・・まだ熱いよ・・・ここ・・・感じる?」
「あっ・・・いや・・・」

声をあげる場所を引っかくように指を曲げたり伸ばしたりすると
梨華ちゃんは無意識にピクピクと震えだし
指の動きに合わせて溢れ出した水でシーツを濡らしていく

「・・・あぁ・・・あぁ・・・」

梨華ちゃんは吉澤の背中に爪を立てた。

「・・ぃや・・・」

声を振るわせた梨華ちゃんは体の力が抜け意識が遠のいていった。
511 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/28(土) 22:48
思いが通じ合ってよかったです。

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