李
- 1 名前:いこーる 投稿日:2004/12/12(日) 18:01
- 須藤×嗣永。キッズ全員出ます。リアル。長編の予定です。
- 2 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:01
- 小学生限定のオーディションが開催されると聞いて応募した。
家族は反対しなかった。
「茉麻がしたいなら応募する?」
私はしたいと答えた。
やってみたいと答えて、それから応募した。
それが当たり前だと思った。
なぜそんな気分になったか
今となっては思い出せない。
それでも応募すると決まってから
私はずいぶんわくわくした。
一次審査の日が近づくにつれ
わくわくの他にどきどきが混じるようになった。
どきどきは当日まで続いた。
- 3 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:02
- 国際展示場正門駅を降りるとお店ができていた。
写真や下敷きやはちまきがずらりと並んでいた。
まるでコンサートみたいだと思った。
オーディションでもこういうふうになるのかと考えて
私は不思議と納得してしまった。
それらのお店をみて女の子たちがはしゃいでいた。
私ははしゃぎはしなかったが
「新垣」のグッズだけ少ないように感じた。
行列は長かった。
大きな列が続いて先頭が見えない。
書類を持ってその最後尾についた。
並んでいる途中
父親が自信はあるかと聞いてきた。
わたしは黙ってうなづいた。
「へぇ、自信あるんだぁ」
母親がそう言った。
実は自信があったかなかったか
それも今となっては思い出せない。
「それにしては固いわよねぇ」
私が緊張していると母親は知っていた。
- 4 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:02
- 私の前にはおさげの女の子がいた。
待ち時間が長かったから
私はずっとそのおさげを眺めていた。
肩よりももう少し伸びた髪が
ふわふわしそうにぶらさがっている。
女の子が右を向くと
おさげがぴょこんと反対側に跳ねる。
左を向くと
これまたぴょこんと反対側に跳ねる。
それを観ているのが面白かった。
面白かったからずっと観ていた。
私はその女の子を勝手に
アラレちゃんと呼ぶことに決めた。
赤い縁のメガネをかけていたのだ。
- 5 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:02
- 「それにしても長いわねぇ」
母親が言った。
全部で27958の応募があったと聞いている。
巨大な数だと思った。
モーニング娘。が13人なのだから
これは巨大である。
考えてみたら何人選ばれるのか私は知らない。
1次審査だから結構残るだろうと思う。
しかし巨大だから結構削るだろうと思う。
- 6 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:02
- 突然おさげがふわりと浮かんで
アラレちゃんの顔がこちらを向いた。
「あやや好きぃ?」
アラレちゃんが話しかけてきた。
私は上目遣いにアラレちゃんを見返しながら
こくりとうなづいた。
「でも一番好きなのはごっちん」
私はそう言った。
アラレちゃんは「そお」と答えてから
にこぉと笑う。
「あややの写真見る?」
私はもう一度うなづいた。
- 7 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:02
- 見せられた「あやや」の写真はきれいにファイルされていた。
昔の「あやや」。
最近の「あやや」。
アラレちゃんは「全部公式だ」と言った。
見ると写真の下にはハロプロの文字が書いてある。
「この字が書いてないやつは?」
「コンサートで買ったやつ」
会場限定写真には字が書いてないのだとアラレちゃんは言った。
「どうしてあややが好きなの?」
私は聞いた。
別に聞かなくてもよかったが、なんとなく聞いてみた。
「かわいくて、おもしろくて、いろんな服を着られて……」
アラレちゃんは指を折りながら「あやや」の良さを挙げていった。
アラレちゃんの手を引いていたお母さんが
「あややになりたいんだもんねー」
と言った。
- 8 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:03
- このコは「あやや」になりたがっている。
私は、と考えてみた。
私は「ごっちん」になると思わない。
そもそもなにかになると思っていない。
ではなぜオーディションなど受けるのかと聞かれたら
私はなんと答えるだろう。
なんとも答えないだろうか。
私はふとおかしくなった。
理由なく、こんな所へ来ているのがおかしかった。
それと同じくらい
理由がみつからないのを寂しく感じた。
- 9 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:03
- オーディションはそれぞれの机に分かれていた。
6つか7つか。
それぞれに審査の人が2人いた。
私はアラレちゃんに手を振って、ブースに並んだ。
「小学4年生の須藤茉麻です」
自分の番が来ると歌を歌った。
全部ではなくちょっとだけ歌った。
声をあまり出さなかった。
ひどい上目遣いだった。
やはり緊張していた。
「どうして受けてみようと思ったの?」
そう聞かれた。
「それが当たり前と思ったんです」
「どうして?」
「えっと……覚えてません」
「え?覚えてない?」
「覚えてないけど、応募するときそう思ったんです」
審査の人が手元の書類に何かメモを取ったようだった。
- 10 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:03
- 「目標はありますか?」
「目標は合格することです」
「そうじゃなくって」
審査の人は手を組んで聞いた。
「そのあとの目標は?」
「……」
「こんな芸能人になりたい!みたいなのは?」
「……」
私の顔が更に下を向いた。
それで目だけを前に向けていた。
「憧れている人とかいる?」
「ごっち……後藤真希さんです」
「ふーん。目標は後藤真希さんね」
「……」
- 11 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:03
-
「どうだった?」
「お腹すいた」
私の発言に両親が呆れていた。
「ご飯は結果発表のあとね」
- 12 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:04
- アラレちゃんも待っていた。
アラレちゃんは私の他にも友達を作っていた。
結果発表の会場はミュージアムになっていて
モーニング娘。や「あやや」や、いろいろ展示があった。
真ん中には大きなミニモちゃんがいた。
時間があったので、私は待っているコたちを眺めた。
アイーンをしている小さなコがいる。
ミニモニ。の服を着てアイーンをしている。
「なっち」のうちわを大切に抱えたコがいる。
みんな好きなんだと思った。
学校では私くらいアイドルが好きなコはそんなにいない。
ここではみんな好きなのだ。
そう思うとこれまで知らない集団に見えていたのが
仲間のように思えて不思議だった。
- 13 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:04
- 大きな音がして会場がしんとなった。
電光掲示板に数字が次々と浮かび上がっていった。
私はぼうと掲示板を見ている。
「うわ!茉麻あったよ!!」
そう言われてなお
私はぼうと立ったままだった。
- 14 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:04
- アラレちゃんは不合格だった。
アラレちゃんのお母さんが
「残念だったね」
と言った。
アラレちゃんは
「楽しかった!」
そう答えた。
「あややもあんなふうにいろいろ聞かれたんだね」
そう言った。
- 15 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:05
- 大きな階段の脇にあるイタリアレストランに入るということで
アラレちゃんとはお別れになった。
「頑張ってねー」
そう手を振ってアラレちゃんは行ってしまった。
アドレスを教えてなかったなと、そのとき思った。
「あやや」になりたいと言っていたコは
「あやや」と同じような体験ができて楽しかったと言う。
私は「ごっちん」と同じような体験をしたのだろうか。
- 16 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:05
- 食事中に母親が聞いていた。
「まあ、どうする?このまま合格しちゃったら」
私はドリアに夢中な振りをして答えなかった。
―――「そのあとの目標は?」
審査中に聞かれたことを思い出す。
―――「こんな芸能人になりたい!みたいなのは?」
ドリアの味が口の中にある。
ちょっとの期待があった。
その片隅あたりに
これまでにはないような不安がある。
本当に合格したら
私は何を目標にするのだろう。
どんな人を目指すのだろう。
そういう不安だった。
- 17 名前:1 投稿日:2004/12/12(日) 18:05
- ハロー!プロジェクト・キッズオーディション
1次審査
27958人→1610人
- 18 名前:ななしいくさん 投稿日:2004/12/13(月) 03:53
- たのしみだとゆいたいです
- 19 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:11
- 2次審査の会場は1次審査と同じ駅の反対側にあった。
木目の床がきれいな会場は
1次審査のときとはなにか、
時間の進み方か空気の流れ方か、
あるいはその両方が違うように思えた。
きっと楽しみに来ているコが減って
反対に戦いに来ているコは増えているのだと思った。
私の場合はどうだろうと考えてみて
楽しみでも勝負でもないのだという気がしてくる。
じゃあ何か、よくわからない。
「でっかい宇宙に愛がある」には
「僕らもできることを必死でみつけたい」
といった意味の言葉があった。
私の場合、自分にできることというのがつまり
芸能人になることなのだろうかと考えた。
そう思うほうがいい気がした。
いい気がしたがそれも違うという気もする。
私は何がしたいのだろうと不思議に思った。
- 20 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:11
- オーディションはそれなりに準備をしてきた。
1次審査のときは自分の歌がまずい気がした。
だからそれなりに練習をしてきた。
練習のとき母親からもっと笑うようにと言われた。
私は笑わないことはない。
面白ければ笑うしおかしければ笑う。
しかし笑えといわれても
顔のどこに力を入れて笑っているのか知らない。
自分のしたいことがわからないせいだと思った。
「そんな怖い顔じゃ受かんないよ」
そう言われた。
- 21 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:11
- 私は怖いのではなく怖がっているのだと言った。
私は怖がっていた。
これは前にはないことだ。
緊張することはよくあったが
怖がることはめったにない。
お化けはわりと平気だ。
バレーボールでボールが飛んできても怖くはない。
ジェットコースターは大好きだ。
ただ今回ばかりは怖いと感じた。
落ちるのが怖かった。
それと同じくらい
受かるのが怖かった。
そうなるとこれまでは当たり前と感じていたものが
ちっとも当たり前ではないように思える。
もう一度
私は何がしたいのだろうと不思議に思った。
- 22 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:11
- 番号のついたテープをもらって胸に貼った。
1次審査とは違い
順番はすぐに回ってきた。
私は練習してきた歌を歌った。
練習の時よりもずっと小さな声だった。
笑いはしなかった。
「合格すると思いますか?」
そんなことを聞かれた。
「思います」
私はそう答えた。
- 23 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:12
- 「オーディションはどうですか?」
そうも聞かれた。
「楽しいです」
「楽しい?」
「友達もできました」
私はアラレちゃんの顔を思い出していた。
「もし合格したら何がしたい?」
「後藤真希さんがこれまでやったこと……」
「ん?」
後藤さんはオーディションのとき
何を考えていたのだろうと、突然そんなことを思った。
後藤さんは合格した時
どんなふうに嬉しかったのだろうと、そんなことも思った。
「後藤真希さんと……」
後藤さんはどんな思いで歌っているのだろうと
そう考えるとそれが知りたくてたまらなくなった。
「後藤さんと同じ気持ちになりたい」
- 24 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:12
- 終わると私は母親のもとへと駆けていった。
結果は気にならなかった。
お腹がすくこともなかった。
なんとなく
アラレちゃんの楽しそうな顔がわかった気がした。
そうして
私が何をしたいのか、それもわかった気がした。
結果は合格だった。
怖い気持ちはなくなっていた。
後藤さんと同じ気持ちになるために
もっともっと進まなくてはならない。
私は母親にまた歌の練習がしたいと告げた。
- 25 名前:2 投稿日:2004/12/14(火) 20:12
- ハロー!プロジェクト・キッズオーディション
2次審査
1610人→299人
- 26 名前:いこーる 投稿日:2004/12/14(火) 20:13
- >>18
私も書くのが楽しみです
- 27 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:28
- 3次審査は普通の建物だった。
2次までの会場よりも天井が低くて
それで人数の削られてきたことを実感した。
審査はあと2つである。
ここまで来たのだと思った。
そして
ここでも受かってやると思った。
勝ちたいと思った。
それは地域のバレーボール・チームで
大会に出たときと同じ気持ちだった。
2次審査のときと同じ番号を胸につけた。
- 28 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:28
- 横並びの椅子に座って自分の番が来るのを待つ。
3次審査は歌の他にも
写真撮影とセリフ朗読の審査があった。
撮影は準備のしようがないが朗読するセリフは
当日最初に配られていたので待ちながら練習ができた。
後藤さんがどこかで
「セリフは少ない時間でも何度も練習してつめこむ」
と言っていたと思う。
私は同じことをすればいいのだと思って
何度も何度もセリフを読んだ。
- 29 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:29
- 段々と椅子を移動していく。
1人、また1人と呼ばれ
そのたびにドアが近くなっていった。
審査の前に私にカメラが向けられインタビューを受けた。
「緊張してますか」
「してます」
「自信はありますか?」
「……」
私は上目遣いにカメラを見た。
私は2次審査を終えてずっと
先に進みたいと言い続けて練習してきた。
そこに自信はあったろうかと疑問に思うと
途端に胸の底が寒くなったような気がした。
「……わからない」
そう答えた。
2次審査で自分の目指すものがなんとなくわかった。
でも自信はない。
上手く笑うことができないし
大きな声で歌うことも、緊張の中では難しかった。
そんな私が、そもそもこんな中にいること自体
悪いことをしているような気になってくると
途端に早く帰りたくなった。帰ってしまいたかった。
- 30 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:29
- 審査の部屋は黒い幕に覆われて狭い感じがした。
写真撮影のとき笑顔を作るように言われた。
私はどうにか、普段自分が笑っているときと
同じ顔をしてみたが上手くいかない。
セリフの朗読は紙を見ながらやった。
セリフは覚えていたから紙はいらなかったのだが
どうしても審査の人の顔を見ることができなかった。
それで紙を見ている振りをして朗読した。
自分のできが余りにひどくて、私は変にしらけてしまった。
何だったのだという気になる。
当たり前と思ったから応募して
後藤さんと同じ気持ちになりたいと言ってはみたが
それがどうすればできるか知らないし
知ったところで本当にできるのか
それも知らない。
そこまで考えて私のしてきたことは
何だったのだという気になる。
何を目標にこんなところまで来たのか。
- 31 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:29
- 合格して歌手になるのが夢だと誰かが言っていた。
なるほど夢なのかもしれない。
私の場合それがすぐ覚める夢だったのだ。
私は学校のことを考えた。
落ちてたらまた、普段の学校に戻るのだ。
アイドルになるなんて考えてたことは一切忘れて
学校にいるだろうと思うと
それもまた悔しかった。
自分の考えを思い返してみておかしくなった。
目標とか、この際関係ない。
単なる負けず嫌いだ。
「……負けたくない」
独り言でそう言うと
審査の人が聞いてきた。
「負けるのは嫌い?」
私は目に涙をいっぱいためながら言った。
「だいっきらい!」
そう言うと審査の人は何かを書いた。
- 32 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:29
- 全部終わってみると思いのほか気分はすっきりしていた。
自分の性格が一つわかったのがすっきりした。
私は単に負けたくなかったのだ。
誰かに負けるのが嫌だったのだ。
待っていた母親にそのことを話したら
「あんたは頑固で意地っ張りなだけだよ」
と言われた。そういいながら顔は笑っていた。
「お疲れさま、お腹すいたでしょう」
「うん」
私は母親の手を取って笑った。
自然に笑った。
ここでも合格していた。
- 33 名前:3 投稿日:2004/12/15(水) 20:29
- ハロー!プロジェクト・キッズオーディション
3次審査
299人→15人
- 34 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:57
- 最終審査の日はお腹がすかないように多めにご飯を食べた。
私が多めに食べたのだから多い。
天王洲のスタジオに入るともう何人かのコがいた。
10人くらい見えた。数えはしなかった。
ほとんどのコは緊張しているのが表情からわかった。
大人っぽい顔をしたコがMDを聞きながら
そのコも音楽に合わせて歌っている。
練習しているのだろう。
曲は「そうだ!We’re ALIVE」だった。
ほとんどが緊張している中
ちょっと笑っているコがいた。
背はあまり高くない。
見ていると笑顔の意味が知れた。
自信があるのだと、それでああいう顔になるのだとわかった。
そのコがこちらを向いたので目が合った。
「こんにちは」
「こんにちは、須藤茉麻です」
そのコは
手を差し出してきた。
「鈴木愛理です」
愛理ちゃんと私は握手をした。
- 35 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:57
- 最終審査はいろいろなことをした。
ここでも2次審査と同じ番号を胸につけた。
これまでより長く歌を歌った。
「チュッ!夏パーティ」を歌った。
「チュッ!夏パーティ」は
オーディションで合格した「紺野」や「新垣」が歌った曲だから
きっと合格しやすい曲なのだと言われ、この曲にした。
やはり声が出せなかった。
声が出なかったので不合格だと思った。
これで歌を試されるのも終わったのだと思うと
変に寂しい気分になった。
ひょっとすると私は
このオーディションで、
歌を聴いてもらうのが好きになったのだろうか。
しかし歌が下手で声も出ない自分が
こんな気持ちになるのは変だとも思う。
でもあるいは歌が上手くなったら
もっと自信を持って歌を聴いてもらえるだろうかとも思う。
上手くなりたいと、急に思った。
- 36 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:58
- 演技審査があった。
セリフを覚えて言われたとおりに演技をした。
5人のグループになって演技をした。
愛理ちゃんと同じグループだった。
腕を吊ったコがいたので事情を聞くと
ローラースケートで遊んでいたときに怪我をしたらしい。
そのコは梨沙子ちゃんと言った。
審査の途中で「つんく」が入ってきた。
私はさすがに驚いた。
みんな驚いていた。
「つんく」からは「他のコがカメラに入るように気を配って」と言われた。
身体の大きい私がもたもたしては他のコが困るから
私は邪魔にならぬよう、なんとか工夫して立った。
ただ立つ場所を工夫している間にセリフを忘れてしまった。
このことは後で母親に報告した。
「それは協調性のテストだわ」
母親はそう言った。
協調性はよくわからなかったがきっと
他のコのことを考えろということなのだろうと理解した。
- 37 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:58
- 演技審査が終わって控えに戻ると声をかけられた。
「声、大きいね」
そう言われた。
そう言ったコはなるほど、細いかわいい声をしていた。
さっき演技審査で一緒だったコだ。
私は首を振って言った。
「演技のときは大きかったけど、歌のときは小さかった」
「……そうなんだ。何歌ったの?」
「チュッ!夏パーティ」
「ふーん。石川さん?」
この質問は「石川さんのファンなのか」という意味だろうと理解して
「後藤さん」
と答えた。
- 38 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:58
- 「私は「恋をしちゃいました」を歌った」
かわいい声のコはそう言った。
「石川さん?」
「うん。大好き」
お互い演技審査のときに自己紹介はすんでいたが
私はもう一度、自己紹介をした。
「須藤茉麻です」
私が手を差し出すとくすっと笑って
「嗣永桃子です」
桃子ちゃんは握手をしてきた。
その微笑みが声とよく合っていてかわいい。
- 39 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:58
- 「大人っぽいコいたよね。茶髪の」
「ああ、雅ちゃんっていうんだって」
桃子ちゃんが教えてくれた。
「愛理ちゃん歌上手なんだよ」
「へぇ」
歌の上手なコがいる。
きっと愛理ちゃんだけじゃないだろう。
かわいい声の桃子ちゃんがいる。
大人っぽいコは雅ちゃんというらしい。
みんな私より合格しそうだった。
- 40 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 21:58
- カメラを向けられインタビューを受けた。
私は上目遣いで応じた。
「後藤真希さんに伝えたいことは?」
「よろしくお願いしますって受かったら言いたいです」
なんとかそれだけ答えて、私は逃げるように戻った。
- 41 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 22:01
- 面接審査があった。
「つんく」と面接した。
「自分の好きなところは?」
練習で母親に聞かれたのと同じ質問だった。
「頑張り屋で素直なところです」
母親に言われた通り答えた。
「モーニング娘。を超えられると思う?」
「……」
この質問は練習していなかった。
練習していなかったので思った通りを答えた。
「一生懸命やれば超えられると思います」
「つんく」の後ろにカメラがずっとあったのが気になった。
あんまり気になったので応答の間がおかしくなってしまった。
私にモーニング娘。を超えることができるだろうか。
それはわからない。
でも後藤さんと同じ気持ちになりたいと今でも思うし
負けたくないと、今でも思う。
たとえモーニング娘。であっても負けたくない。
私は頑固で意地っ張りだ。
- 42 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 22:02
- 全部の審査が終わって解散となった。
帰る前に桃子ちゃんとアドレスを交換した。
「じゃ、発表のときね」
桃子ちゃんは元気に手を振っていた。
私は桃子ちゃんに
石川さんのようになりたいのかを聞きそびれていた。
メールしようかと思ったが
上手く聞けそうになかったのでやめた。
合格でも不合格でも、発表の時もう一度は桃子ちゃんと会う。
そのときは聞こうと思った。
そして
できれば桃子ちゃんと一緒に
何かしてみたいと思った。
- 43 名前:4 投稿日:2004/12/21(火) 22:03
-
ハロー!プロジェクト・キッズオーディション
最終審査終了
合格者発表は6月30日「ハローモーニング」生放送にて
- 44 名前:ななしどくしゃ 投稿日:2004/12/22(水) 23:09
- ついに桃子登場ですね
これからどーなるか、たのしみです
- 45 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:32
- 結果発表の日、控えに入るとすぐに
私は桃子ちゃんを探した。
桃子ちゃんはすぐに見つかった。
私が桃子ちゃんのそばまで行くと
桃子ちゃんが隣の椅子に置いた荷物をどけてくれた。
「緊張するね」
「うん」
「石川さんいるんだって!どうしよう」
「へぇ」
私は控えを眺めてみた。
みんな変わっていないようだった。
オーディションのときは腕を吊っていた梨沙子ちゃんが
簡単な包帯になっていたのだけは違っていた。
みんな緊張していた。
モーニング娘。とテレビに出るのだから緊張するに決まっていた。
- 46 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:32
- 「緊張する。でもチャンスだよね」
桃子ちゃんがそう言った。
「チャンス?」
私は首をかしげて聞いた。
「テレビに映る。
みんなに見てもらえる」
桃子ちゃんはそう答えた。
「みんなに、見てほしいの?」
「うん。だってせっかくだもん!」
それを聞いて私は少し黙った。
せっかくというのは何だろうと考えた。
テレビに出るのだから確かにせっかくだ。
しかしせっかくだからみんなに見てほしいというのは
私にはよくわからない。
- 47 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:33
- 「桃子ちゃんは、みんなに見てほしいんだ……」
そう言うと桃子ちゃんは照れながらうんとうなずいた。
「茉麻ちゃんは?茉麻ちゃんはどうして芸能人になりたいの?」
「私は、後藤さんと同じ気持ちになりたいって思った」
「同じ気持ち?」
私はそうだと言った。
桃子ちゃんにそれで伝わったかはわからないが
桃子ちゃんはそれ以上聞いてはこなかった。
そうして私は
この前聞けなかった質問をした。
「桃子ちゃんは、石川さんになりたい?」
「んー」
桃子ちゃんは天井を見つめて考えた。
考える桃子ちゃんはかわいかった。
- 48 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:33
- 「憧れる。石川さんに……。自分も…ああなりたいって思う」
桃子ちゃんは考えながら話しているのだろう。
途切れ途切れにそんなことを言った。
「目標あるんだ…」
「茉麻ちゃんだって後藤さんが目標でしょう?」
「同じ気持ちになりたいとは思うよ……」
私は上手く答えられなかった。
後藤さんを目標にするということは
そういうふうに成長するということだ。
歌も上手くなってダンスも上手くならなくてはいけない。
私の考えている「後藤さんと同じ」はそれとは違う気がした。
- 49 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:33
- 控えに大人の人がやってきて
合格発表のことをみんなに教えた。
出番がきたら順番に前に出て行ってお辞儀をする。
そして言われた場所まで歩いていく。
「場所はしっかり覚えておいて」
「はい!」
私の場所は向かって右端だった。
桃子ちゃんとは遠い。
「じゃあ、セットの裏まで行きます」
そう言われてみんなが控えから出ていった。
- 50 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:33
- 「いよいよだね」
桃子ちゃんが自分を抱くように
両腕をさすっている。
「緊張するね」
「うん」
「石川さんに会うんだ……」
桃子ちゃんはそう言った。
私も緊張した。
歩いていて、歩いているという気がしない。
手もどこへやったらいいかわからなかった。
どこへやったらいいかわからない手がぶらぶらとして
ときどき桃子ちゃんの手に触れた。
背の高い分、私の手の方がちょっと高かった。
何度目かにぶつかったとき
桃子ちゃんは手を少し持ち上げて
私の手を握った。
桃子ちゃんの手は細くてあたたかかった。
ちょっと汗をかいていた。
「……」
「……」
緊張していたからお互いの表情を見ることはなかった。
- 51 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:34
- セット裏で待っている間
表の声が聞こえてくる。モニターで画面も見えた。
中澤さんの声がした。
安倍さんの声がした。
石川さんの声がしたとき、私は桃子ちゃんをちらっと見た。
桃子ちゃんは声を聞いて一瞬、ほっとしたような顔をした。
しかしすぐに、一層かたい顔になった。
つないだ手がぎゅっと握られた。
その手から、とくんとくんと
桃子ちゃんの脈が感じられる。
桃子ちゃんにも私の脈が伝わっているだろうか。
私は目を閉じて桃子ちゃんのリズムを感じた。
忙しいリズムだった。
それでも何も感じてないときより
忙しい脈拍でも
桃子ちゃんを感じている方がよかった。
安心できた。
- 52 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:34
- 「はい、じゃあ出て行く順番に並んで!」
大人の人がそう言うので
私は桃子ちゃんの手を離して言われたところに並ぶ。
私の一つ前は、大人っぽい雅ちゃんだった。
その一つ後ろに村上愛ちゃんがいる。
このコは最終審査の日、唇に傷があったので覚えていた。
その後ろにちょっとたれ目のコがいる。
その後ろが桃子ちゃんだった。
私が桃子ちゃんを見ると
桃子ちゃんはふにゃあと泣きそうな顔をした。
さっきまでつながっていた手が空気をつかんでいる。
温かい手が離れているのは落ち着かない。
自分の手がどこにあるのかすらわからないような感じだった。
- 53 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:35
-
音楽が流れる。
列の先頭から順番に出て行った。
雅ちゃんが出て行った。
次は私である。
私は目を閉じて深呼吸をした。
そして
出て行った。
出て行った場所は明るくて音楽も大きかったので
なおさら緊張してしまった。
私は真ん中まで行ってぺこりとお辞儀をした。
左を向くと飯田さんが見守っていた。
飯田さん、安倍さんの前を通った。
矢口さん、保田さんの前を通った。
そして覚えていたとおり右後ろに立った。
正面にカメラがある。
私の左では石川さんとアナウンサーの女の人が座っていた。
石川さんのいるニュースのセットは
テレビで見ていたよりも小さい感じがした。
- 54 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:35
- みんなが並び終わった。
桃子ちゃんがどうしているか気になったが
カメラが多くて横を見てはいけない雰囲気だったので
じっと前を見るしかなかった。
矢口さんがマイクを持って候補者のインタビューをする。
「おっきいコいるね」
私にもマイクが向けられた。
「緊張してる?」
「……」
モーニング娘。の矢口さんに
声をかけられたのが嬉しくて笑ってしまった。
何か答えなくてはと思ったが
身体が痺れたみたいで声が出ない。
私はぎくしゃくとうなづいた。
- 55 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:35
- 何人選ばれるだろうか。
誰が選ばれるだろうか。
私はどうだろうか。
桃子ちゃんは合格しているだろうか。
これからも一緒にいられるだろうか。
……一緒に合格したい。
せっかく出会えた友達だ。
桃子ちゃんと一緒にやっていきたい。
「つんく」の顔が画面から見えた。
いよいよ合格発表である。
- 56 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:35
-
「今日、そこにいる15名、合格です。全員合格です」
- 57 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:36
- 最初に喜んだのはモーニング娘。の人たちだった。
「やったー」
「おめでとう!」
パチパチと拍手をもらって
ようやく自分が受かったのだと分かった。
合格していた。
胸の底から嬉しい気持ちがわっと出てきた。
- 58 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:36
- 安倍さんが桃子ちゃんにマイクを向けた。
桃子ちゃんは
「嬉しい」
と答えた。
良かった。
桃子ちゃんと同じだ。
桃子ちゃんと同じ気持ちだ。
これからも……
- 59 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:36
- テレビが終わるとすぐに記者会見を受けた。
一人一人今の気持ちを言っていく。
順番が回ってきても私は何を言っていいかわからなかった。
「モーニング娘。に会えてよかったです。
これからもがんばります。
よろしくお願いします」
途切れ途切れにそう答えた。
桃子ちゃんは
「今の気持ちは緊張してるけどドキドキで、でもとっても嬉しいです」
と言った。
かすれ声で感激しているのがわかった。
- 60 名前:从o゚ー゚从 投稿日:从o゚ー゚从
- 从o゚ー゚从
- 61 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:39
- 控えに戻る。
全員が力の抜けたような顔をして
それでも嬉しい気持ちを抑えない顔をしていた。
私は不思議な夢にいるみたいだった。
これからいろいろなことができると思ってワクワクした。
「これからもよろしく」
桃子ちゃんにそう言うと
桃子ちゃんはくすぐったそうに笑った。
- 62 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:39
-
憧れていた人たちと一緒に
好きになれそうな友達と一緒に
私は何をするだろう。
何だってできるだろう。
- 63 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:39
- お互いにお迎えが来ていたのでお別れになった。
「じゃあね」
「うん、またね」
桃子ちゃんが私に手を振った。
夢みたいな心地が抜けないまま
私も手を振り返した。
家に帰ってもふわふわしながら立っている感じが残っていた。
桃子ちゃんが何度もこっちを振り返ったのだけ
はっきりと頭に入ってずっと残っていた。
- 64 名前:5 投稿日:2004/12/28(火) 16:40
-
ハロー!プロジェクト・キッズオーディション
合格者15名
5年生
梅田えりか・清水佐紀・矢島舞美・嗣永桃子
4年生
徳永千奈美・須藤茉麻・夏焼雅・石村舞波・村上愛
3年生
熊井友理奈・中島早貴
2年生
菅谷梨沙子・鈴木愛理・岡井千聖
1年生
萩原舞
- 65 名前:注 投稿日:2004/12/28(火) 16:49
- 1
>>3 国際展示場正門駅
東京ビッグサイトへの最寄り駅。埼京線→りんかい線の直通ラインは2002年11月より。したがってオーディション時点ではゆりかもめ利用者の方が多かったと思われる。
>>7 コンサート会場限定写真
現在では会場限定写真にもロゴはついているが、松浦亜弥コンサートツアー「ファースト・デート」の会場限定写真にロゴはついていなかった。
>>9 一次審査の質問
一次審査は歌をワンフレーズ披露するのみ。質問は創作によるもので、実際にはここまで突っ込んだ質問はなかったと思われる。
>>12 ミュージアム
会場にはメンバーの写真などが展示され、中央には巨大なミニモちゃんも置かれていた。オーディションではあるが1つのイベントとして楽しめるような配慮があった。
>>15 イタリアレストラン
レストランの大手チェーン。お得度たっぷりのドリアは庶民の強い味方。須藤茉麻がそこで食事をしたのは作者の創作。
- 66 名前:注 投稿日:2004/12/28(火) 16:54
- 2
>>19 2次審査の会場
TFTホール Hall500
>>23 後藤真希のオーディション
後藤真希が合格したオーディションの開催は1999年。当時、須藤茉麻は小学1年生であった。
3
>>27 バレーボール
須藤茉麻はバレーボール経験者
- 67 名前:注 投稿日:2004/12/28(火) 16:59
- 4
>>34 天王洲
テレビ東京、天王洲スタジオ。
>>35 紺野・新垣が合格したオーディション
2001年開催「LOVEオーディション21」。当時、須藤茉麻は小学3年生。
>>36 5人のグループ
嗣永・徳永・須藤・菅谷・鈴木(年齢順)
>>43 6月30日「ハローモーニング」生放送
キッズ決定スペシャルはハロモニ史上初の生放送であった。
- 68 名前:注 投稿日:2004/12/28(火) 17:05
- 5
>>52 ちょっとたれ目のコ
徳永千奈美。……ちょっと?
>>53 アナウンサー
テレビ東京、龍田梨恵アナ。
>>53 ニュースのセット
ハロモニの人気コーナー。ハロプロニュース。
- 69 名前:いこーる 投稿日:2004/12/28(火) 17:09
- やっと一区切りついたので注を入れました。
……投稿ミスorz
まだまだ続け……
>>44
よーやく登場になりました。
これからはずっと登場させていきたいと思います。一応メインだし。
- 70 名前:いこーる 投稿日:2004/12/28(火) 21:41
- 削除依頼に茉麻で応えていただけるとは……
感激です!
- 71 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:26
- モーニング娘。と一緒に映画に出る、その準備のために集まった。
大泉学園の近くにある撮影所まで車で移動した。
ちょっとした商店街を抜けて行く。
このすぐ近くに映画館があって、そこにハロプロショップがあったと
梅田えりかちゃんが教えてくれた。
梨沙子ちゃんが見てみたいと言ったが今はもうないらしい。
合格発表から1週間が経ったよく晴れた日だった。
おかげで蒸し暑かった。
シャツが汗でべったりとくっついて気持ち悪い。
門をくぐってぞろぞろと建物の中に入ると
冷房が効いていてようやく涼しくなった。
- 72 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:26
- 小さな建物の廊下を歩いて部屋まで行く。
紙が貼ってあって監督さんの名前が書いてある扉をくぐると
机があって大人が何人か座っていた。
向かいには椅子が15脚並んでいる。
そこに学年順に座った。
私の両隣は舞波ちゃんと千奈美ちゃんだった。
1人ずつ自己紹介をしたあと机を並べて
渡されたセリフを、千奈美ちゃんと愛ちゃんと練習した。
私はセリフを読みながら、
耳は桃子ちゃんの声を聞き分けていた。
桃子ちゃんが早口にセリフをしゃべっている。
その早口が気になってしまった。
「次、茉麻ちゃんだよ?」
愛ちゃんにそう言われてはっとなった。
- 73 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:26
- 愛ちゃんははっきりしたコで
なんでもきっちりさせるのが好きらしい。
みんなの言ったことやしたことに
つっこみをいれることもあった。
そこらへん、のんびりな私とは違っていた。
一緒にせりふを読んでいると
なにかペースの遅い私がまずいような気がした。
- 74 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:27
- 大人の人を混ぜて読みあわせをした。
私は主人公になって仔犬を飼わせてもらえるように
一生懸命説得した。
オーディションのときよりは上手くいったが、
愛ちゃんと比べてどうだろう。
上手くない気がした。
桃子ちゃんが読んでいるのを聞いて
私はなぜか力が入った。
桃子ちゃんは何度か話し方を注意されていた。
早口になるので間を空けるように言われていた。
上手くいかないので注意の声もだんだんと大きくなる。
その度に桃子ちゃんの返事も大きくなった。
反対に顔は情けなくなっていく。
きっと、声も小さくしたいのだと思う。
それでも負けないように桃子ちゃんは大きな声を出していた。
- 75 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:27
- 休憩時間になると
桃子ちゃんと私は並んで廊下の椅子に座った。
「……疲れちゃった」
桃子ちゃんがそう言った。
読みあわせのとき
何度もやり直しをさせられたのがこたえたのだろう。
「私だけ、何度も読んでたよね」
「うん」
「私、緊張して全然思ったとおりできなかった」
「……そう」
桃子ちゃんは下を向いたまま
こちらに身体をあずけてきた。
本当に疲れているのだろう。
私は自分の腕に桃子ちゃんの腕がくっつくのを感じながら
ただ黙っていた。
- 76 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:27
- 桃子ちゃんの呼吸に合わせて
くっついた腕も上下する。
「ふぅ」
ため息のとき
上下するリズムがちょっと狂った。
桃子ちゃんが隣にいるのは心地よかったが
そのときばかりは居心地が悪かった。
桃子ちゃんがため息をつくと
私も一緒につらい気分になった。
慰めるはずの私まで落ち込んでは仕方ないのだが。
何か言ってあげた方がいいかと思ったが
何て言っていいかわからなかった。
- 77 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:27
- 次の週には
映画のポスターに使う写真を撮った。
一人一人撮って、全体でも撮った。
笑った顔をするように言われたが上手くいかなかった。
どうして自分は笑うことができないのだろうと
しらけてしまった。
ここでも上手くいかないなと思う。
桃子ちゃんが撮っているところを見て
なおさらそう思った。
桃子ちゃんはいつもの笑顔、
見ているほうまでくすぐったくなるような
人懐っこい顔で撮っていた。
カメラが外れると
ふと
無表情に戻る。
するとさっきまでの楽しそうな顔はどこかに行ってしまい
あとには何も残らない。
何もなかった。
- 78 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:28
- 私は怖いと感じた。
笑顔が突然なくなるのだから怖い。
本当は、先週のセリフ読みのことをまだ気にしていると
カメラが外れたときの表情でわかった。
上手くいかない自分を抱えたまま
桃子ちゃんは今日まで来てしまっていた。
それでもカメラが向くとすぐに笑った。
- 79 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:28
- ああこのコはすごいな、と思った。
桃子ちゃんは小さな唇をくっと広げてちょっと歯を見せて笑う。
すると普段の近寄りがたい雰囲気がぱっとどこかに散っていき
不思議ともっと見たい、もっと知りたい、と思えてくる。
強いのだと思う。
心の中が弱っていても
カメラに対して外に対して
そういうものを絶対見せない頑固が
桃子ちゃんにはあるのだと思う。
その危うい感じもまた、桃子ちゃんの魅力なのかもしれない。
でも
見ていてちょっとつらかった。
弱った自分を見せないで
強く見られようとする桃子ちゃんはいかにも苦しそうだった。
- 80 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:28
- 休み時間になったら私は桃子ちゃんのそばに行こう。
桃子ちゃんも私には、私に対しては
弱ったところを見せてくれる。
だから私が桃子ちゃんのそばにいよう。
桃子ちゃんと一緒にいてあげよう。
そう決心できた。
決心できて私は
自分のときも笑えると思った。
桃子ちゃんが笑ってる。
不器用な自分も笑ってみようと、そう思った。
その気持ちが自信になって、続けて感謝になった。
私は心の中で桃子ちゃんに感謝した。
- 81 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:28
- 休み時間の前に全体で撮影した。
今度はいい笑顔で、上手な笑顔で撮りたいと思った。
15人が集まってカメラがこっちを向いた。
上手くいくかちょっと心配だった。
仔犬も一緒になって撮影した。
仔犬がかわいかったので
さっきよりも力の入らない笑顔になれた。
みんな仔犬を眺めながら
本当の微笑みをしていた。
私にもできた。
かわいいものと一緒のとき
好きなものと近くにいるとき
私は普通の笑顔になれる。
考えないで笑顔になれる。
- 82 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:28
- 「……そっか」
そういうことなのだと気がついた。
ちょっと仕事がわかった。
好きなものがあればいい。
それがなくても
一緒のことを考えたらいい。
一人でいるときも
一緒にいると思えば
想像でも
好きなものが近くにいると思えば
私でも笑える。
- 83 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:28
- 好きな人と一緒だと思えばいい。
心の中だけでもそう思えばいい。
そうすれば
いい顔で写真が撮れる。
いい顔で歌える。
仕事ができる。
なにもかもがはじめての映画撮影の中で
一つコツを発見した。
休み時間になって私は
桃子ちゃんのところまで走った。
「桃ちゃん」
「茉麻ちゃん」
いい感じの笑顔で走った。
- 84 名前:6 投稿日:2005/01/11(火) 20:29
-
ハロー!プロジェクト・キッズ
映画出演に向けて本格始動
- 85 名前:ななしいくさん 投稿日:2005/01/14(金) 00:10
- 元々桃子が好きで茉麻は興味なかったんですが
作者さんのすもも短編小説読んで以来、茉麻がかなりの推しになりました
毎回楽しみにしてます、がんばってください
- 86 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:21
- 人は自分の顔を直接見ることができない。
鏡に写したり写真に撮ったりビデオに撮ったり
そういう動作をしてようやく自分の顔を知る。
それでも
友達の顔を見るように簡単に目に入ってくることはない。
見よう、見てみようとしてようやく知る。
遠いのは自分の顔なのだと思う。
私の場合
特に笑った顔。
- 87 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:22
- 代々木でハロプロのコンサートがあり
そこに私たちも出ることになった。
会場はとても大きいらしい。
そこで大勢の前で挨拶をすることになった。
私は朝からワクワクしていた。
はじめてステージに立つ。
どんな顔で
どんな声でいるのだろうと思うとワクワクした。
本当は
ワクワクの底に怖い気持ちもあったが
それよりも楽しみな気持ちが強かった。
桃子ちゃんと会えるからかもしれない。
- 88 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:22
- 車で会場まで行く。
会場の向かいが公園になっていて木々の緑が深い。
葉っぱのあいだから日差しがもれているのがきれいだった。
私は今日が思い出の一日となるように目を閉じてお祈りした。
公園の木に向かってお祈りするのはおかしいとわかっていた。
でも大きくて深くて、しかも生き生きとした木が
私には頼もしく思えた。
ずっと続く命。私の新しい活動が今日、はじまる。
その記念に大きな木はふさわしかった。
ワクワクしているくせに祈っている自分がおかしかった。
やはり私は
初ステージを怖がっていたのかも知れない。
- 89 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:22
- 会場に入るとすぐに
みんなで集まって説明を聞いた。
みんなとは違うことを言うように
最初にそう言われた。
部屋で練習する。
とりあえず言ってみたいことを言ってみて
誰かと同じになったらそのとき考え直すことになった。
時間はあまりないからその中で印象付けるように
とアドバイスをもらった。
順番に言ってみる。
気合入ってるとか感激しているとか
みんなそういうことを言った。
私はなんだ普通だな、と思った。
中には
普通で印象付けられるような元気なコもいた。
しかし私の場合はどうだろう。
普通ではまずい気がした。
千聖ちゃんがブラシを片手にもってマイクの代わりにしていた。
- 90 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:22
- 雅ちゃんは「よろ〜」だった。
確かにこれなら同じにならない。
私は「ふんばりまぁす」と言ってみた。
これも同じにならない。
こうして各自のセリフが決まった。
- 91 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:22
- 練習している間ずっと
カメラが私たちを撮っていた。
落ち着かなかった。
ずっと顔を覗かれているのが落ち着かなかった。
芸能人になったのだからいつも映るとわかっている。
それに憧れていたしそれを目指してきた。
それでもまだ
こういうのには慣れない。
なにか
自分の知らない部分が流れ出していくみたいで
ちょっと怖かった。
- 92 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:22
- 例えば
朝、鏡で寝ぼけた顔を見て
普段とは違う自分の顔を見て
これが私かと不気味に思うことがある。
そういう顔がテレビに出ると思うと嫌だ。
そう考えて
本気で
怖いと思った。
自分がどんな顔しているかわからないで
どうしてステージなんかに立つのだろう。
確認しなくちゃ……
「すみません!」
私は突然、手を上げた。
「ちょっとお手洗い」
- 93 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:23
-
私はトイレに駆け込だ。
鏡にぐいと自分の顔を近づけて覗き込む。
頬がぷぅとふくらんで
下唇が少し出ていた。
緊張しててこうなったのだろうか。
考えてみた。
考えてみたが答えはわからない。
私は頬を持ってくにくにとやってみる。
かわいい顔には違いない。
しかしいかにも無防備な感じがした。
この顔が笑ったり怒ったりしてるのだ。
自分の知らないところに自分の気持ちが出ている。
自分の見えない心が、他の人にははっきりわかる。
そう思うと自分の気持ちが自分のものではないような気がした。
カメラを通して自分が流れていく気がした。
「……どうしよう」
- 94 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:23
- ますます怖くなった。
ステージなんかに出るのがおかしい気がした。
よくわからない自分の顔。
それを
何千人に見せなくてはならない。
鏡の中で私の目はもっと大きくなっていた。
おびえていたんだと思う。
大丈夫だと自分にいいきかせる。
笑えばいい。
笑って出ればいい。
みんな一緒に出る。
桃子ちゃんも出る。
そう思って
笑顔になればいいのだと言いきかせてやってみようとしたが
自分の笑顔がよくわからない。
笑おう笑おうとするうちにだんだん泣けてきた。
……やばい
- 95 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:24
- ……やばくなってきた。
そのとき
「どうしたの?」
後ろから声がした。
桃子ちゃんの声だった。
私は走って桃子ちゃんのところまでいく。
そうして
抱きついた。
「ど……どうしたの?」
桃子ちゃんに抱きついたのははじめてだった。
私は何も言わずにぎゅうとやる。
こうしているのがいいと感じた。
こうして
自分の顔を見せないで
それでも身体で
自分がいる、桃子ちゃんがいるとわかる。
すごく心地よかった。安心できた。
- 96 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:24
- 「茉麻ちゃん?」
「ん……もうちょっと」
もうちょっと
桃子ちゃんと一緒に
桃子ちゃんを感じて
ゆっくり
自分の中の不安がゆっくり鎮まっていく。
「ごめん、ありがと」
私はお礼を言った。
桃子ちゃんはくすっと笑って
「どういたしまして」
と言った。
「茉麻ちゃん」
「ん?」
「みんなが、遊ぼうって!」
- 97 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:24
- 部屋に戻るとみんなが私を待っていた。
「茉麻ちゃんもやろう!」
聞くとみんなで「はないちもんめ」をやるようだ。
チームわけをしてみんなで遊ぶ。
一度、
私がターゲットになった。
相手は結構負けず嫌いの千聖ちゃんだった。
「茉麻ちゃん頑張って!」
「千聖!茉麻ちゃんとってきてよ!」
『じゃ〜んけ〜ん』
『ポンッ!』
岡井千聖:グー
須藤茉麻:パー
勝った。
- 98 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:24
- 列に戻って仲間と手をつないだとき
ちょっと離れたところにいた桃子ちゃんが
にゅうと首を出して私に言った。
「茉麻ちゃんて嬉しいときゲラゲラって笑うんだね」
私は目を丸くして止まってしまった。
じゃんけんに勝ったとき
私は笑ったろうか。笑ったような気がする。
自分の笑い方を友達に教えられたのは初めてだった。
嬉しかった。
ステージに立つ前に教えてもらって嬉しかった。
桃子ちゃんのおかげで
怖い気持ちはほとんどなくなっていた。
- 99 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:25
- いよいよ本番が近づいてきた。
通路に立って出演者全員で掛け声をするという。
私たちは15人でならんで挨拶をした。
「よろしくおねがいします」
子どもだからだろう。
先輩たちはみんな私たちを覗き込むように見ていた。
待っている間
セリフの練習をしているコがいる。
じっと固まって動かないコもいる。
曲の衣装とカツラをした保田さんが私たちの前に来た。
「緊張しなくていいんだよ。お客さんは味方なんだから」
そう言って私たちに笑いかけてきてくれた。
- 100 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:25
- 出番が
来た。
私たちはスタッフさんの合図でどんどん
ステージに出て行った。
走って出て行った。
階段を駆け上がるとライトがまぶしい。
千奈美ちゃんの隣に並んで
前を向くと
お客さん一人一人の顔がよく見えた。
- 101 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:25
- ライトと歓声が私たちに向けられている。
すごい
まぶしい……
- 102 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:25
-
頭の中が真っ白だった。
私は感激で震えていたのと
自分のセリフが上手く言えたことだけしか
覚えていない。
- 103 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:25
- みんなの前でしゃべった。
変な顔だったかもしれないけれど
それも今となっては気にならない。
私の覚えてないところで
私を見ている人がいて
それが
言葉にならないくらいすごいと感じた。
すごく
嬉しかった。
- 104 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:26
- 部屋に戻ってすぐ
ボックス席に移動する。
ここで
先輩たちのステージを見た。
モーニング娘。さんが新曲を披露していた。
色がたくさんのライトを浴びて
先輩たちが生き生きと踊っていた。
動きも表情もすべてが生き生きしていた。
私は
心臓に響くスピーカーの音の中で
自分もなれると思った。
私の笑った顔を見てくれる桃子ちゃんがいる。
一緒に感激できる友達がいる。
私にもいつか
生き生きした表情でみんなの前に立つ日がくる。
- 105 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:26
- いつになるかわからない未来のことを想像して
胸がドキドキした。
想像の中では桃子ちゃんも一緒だった。
桃子ちゃんと一緒に笑っていた。
いつか……
コンサートをやって
一緒に笑いたいね!
私はステージを真剣に見つめてる桃子ちゃんをちらっと見た。
歓声の止まないコンサート会場で
私にちょっと
未来が見えた。
- 106 名前:7 投稿日:2005/01/18(火) 21:26
-
ハロー!プロジェクト2002年夏。代々木国立競技場第一体育館。
7月28日昼公演にてキッズ15名顔見せあいさつ
- 107 名前:注 投稿日:2005/01/18(火) 21:28
- 6
>>71 撮影所
大泉・東映撮影所
>>71 ハロプロショップ
ハロプロショップ・大泉学園店は2002年5月終了。
>>72 貼り紙
東映では「○○組」と撮影チームを映画監督の名前で呼ぶ。部屋の前に張り紙をする場合も同様の呼称が用いられる。
- 108 名前:注 投稿日:2005/01/18(火) 21:31
- 7
>>87 ハロプロのコンサート
ハロー!プロジェクト2002夏「ONE HAPPY SUMMER DAY」。
>>88 公園
代々木公園。第一体育館の前は木々に囲まれ落ち着いた雰囲気。
>>90 「よろ〜」
「よろ〜」はあぁ!デビューで再び炸裂。おじゃマルシェ紺野もお気に入りになりました。
>>97 はないちもんめ
はないちもんめの詳細については非公開のはず。須藤茉麻がじゃんけんしたのは作者の創作による。
- 109 名前:注 投稿日:2005/01/18(火) 21:32
- >>98 「茉麻ちゃんて嬉しいときゲラゲラって笑うんだね」
けっこう太い声で豪快に笑う。めったに観測できない貴重なもの。
>>99 カツラ
金髪のカツラ。「幸せきょうりゅう音頭」の歌衣装の一部。
>>104 新曲
『Do it! Now』
- 110 名前:いこーる 投稿日:2005/01/18(火) 21:34
- >>85
ありがとうございます!
私も茉麻ちゃんの魅力にはまって抜け出せなくなってます。
短編と違って結構むずかしいですが頑張ります。
- 111 名前:いこーる 投稿日:2005/02/01(火) 21:35
- 家に電話がかかってきて
映画の配役が決まったことを知った。
私はミニモニ。さんの映画に出る。
私は桃子ちゃんと一緒か気になった。
それを聞こうと思った。
しかしその前に
「須藤は一番年上だから、しっかりね」
と言われて私は黙った。
桃子ちゃんは私よりも年上だ。
つまり桃子ちゃんは違う方、モーニング娘。さんと映画に出るのだ。
「あ……あの」
「何?」
「桃子ちゃんはどんな役なんですか?」
「嗣永は主役」
「そうですか」
- 112 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:36
- 私はがっかりした。
桃子ちゃんと一緒にできない。
練習までは15人みんな一緒だったのに
今日からは別々にやらなくてはならない。
「私……選ばれなかったんですか?」
「いや、ミニモニ。の方で頑張って欲しいって」
電話ではそう言われた。
そう言われてなお、選ばれなかったのだという気持ちになってしまう。
変な話だが、私は桃子ちゃんに裏切られたような気持ちになった。
自分は選ばれないで、桃子ちゃんは選ばれて主役になる。
そう思うと私は急に腹が立った。
怒るのがおかしいとはわかっている。
電話で選ばれなかったわけではないと言われたし
たとえ選ばれなかったのだとしても、桃子ちゃんのせいではない。
それなのに裏切られたと思った。
部屋のベッドにうずくまって少し泣いた。
枕が少し濡れた。
- 113 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:36
- 私はいつも少しだけ泣く。
たいていの嫌なことは少し泣けば治まる。
ちょっとの涙で、私はすっきりすることができるのだった。
桃子ちゃんは悪くない。
むしろ主役になるなんてかっこいい。
裏切られたわけじゃない。
そう考えているうちに涙は止まった。
桃子ちゃんに電話でもしようかと思った。
桃子ちゃんは悪くない。
私が取り残されただけだ。
私が置いていかれただけだ。
- 114 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:36
- そう思うと
今度はまた
「……」
別の悔しさがやってきた。
私はもう一度うずくまって泣いた。
電話をするのはやめた。
桃子ちゃんに電話をして
八つ当たりにでもなったら
私はまた泣くだろうから電話はやめにした。
桃子ちゃんのことになると
気持ちが勢い任せになることが多い。
なぜだろう、考えてみてもわからなかった。
- 115 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:36
- 次の日も電話がかかってきた。
母親がでて「あらまぁ」ばかり言っている。
きっと大変な話なんだろうと思った。
しばらくして母親は私に受話器をよこした。
「誰?」
「ちゃんと聞いておきな。大事な話だって」
私は受話器を持って話す。
- 116 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:36
- 「後藤真希と保田圭がモーニング娘。を卒業する」
「そうですか」
私は普通の声でそう言った。
びっくりしていたが、そういう声は出なかった。
ただ普通に受け応えた。
卒業は久しぶりだった。
中澤さんのとき以来だ。
「それで、プッチモニのメンバーが大きく変るのね」
ああなるほどと思った。
保田さんも後藤さんもプッチモニだから
その2人がいなくなるとまた、メンバーを変えなくてはならない。
「でミニモニ。とタンポポも変る」
「え?……」
「平家みちよはハロプロを卒業」
これはどういうことだと思った。
どうしてこういろいろ変るのだと不思議だった。
- 117 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:36
- 「矢口がね、キッズたちとユニット組むことになって……」
「……」
大変なことになった。
私は話をぼうと聞いているしかなかった。
私たちとユニットを組む。
そのために矢口さんはミニモニ。を卒業するという。
そこまで聞いて私にようやく
大変なことになったという実感がやってきた。
ハロプロ・キッズが編成されてすぐ
あっちこっちでメンバーの変更がある。
矢口さんがキッズとユニットを組むためらしい。
このときになって私は
キッズというのが大変なものだとわかったのだ。
- 118 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:37
- 私たちが入った。
それからまだ何もしていない。
映画も撮り始めているわけではないし
コンサートだってちょっと出ただけだ。
それなのに私たちは
大きな動きの中にいる。
そのことが
ちょっと怖かった。
- 119 名前:8 投稿日:2005/02/01(火) 21:37
- 電話を切ると私はすぐにでも桃子ちゃんに電話したくなった。
「……」
でも映画が別だと昨日言われてから
桃子ちゃんとも話しにくくなっていた。
そんなのは私の勝手な話だとわかってはいた。
でもどうしても電話をかけられなかった。
こういうことは重なるのだ。
桃子ちゃんに対して変に遅れた気持ちがある。
それとは全く別のところでハロプロ新編成のことが
ずんと大きく迫っていた。
悪いことは重なる。
新しいユニットができる。それはいいことかもしれない。
けれども私は、ただではすまなくなったと
そればかりが気になっていた。
私にはそういういろいろがまざった気持ちが
どうにもならないくらい大きくなるのを
じっとこらえているしかなかった。
- 120 名前:いこーる 投稿日:2005/02/01(火) 21:37
- 短いですがここまで
- 121 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:44
- 映画に出るための記者会見が開かれるというので
私たちはお台場に集合した。
モーニング娘。さんたちと一緒に並んで会見するらしい。
私はミニモニ。さんと一緒になる。
朝起きて鏡を見ると、前髪がちょっと曲がっていた。
櫛を使って引っ張るとぴんとまた元に戻ってしまう。
思った形になってくれない。
整髪料をつけてもう一度ひっぱる。
今度は少し粘ってくれたが
しばらくするとまたぴんと元の場所に落ち着く。
3度目に引っ張ると今度はどうにかとまってくれた。
- 122 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:45
- 「どうしたの?茉麻。ずっと鏡見て……」
母親から声をかけられた。
「前髪がおかしい」
と私は答えた。
「いつもと同じよ」
「だって……」
「今までそんなことあまり気にしてなかったでしょう?」
母親にそう言われて私は黙った。
確かに母親の言うとおりだ。
私は前髪とか、あまり気にしたことはない。
それがどうにも気になる。
なぜだろう。
考えたがわからなかった。
- 123 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:45
- 出かける前に一つため息がでた。
今日は映画の記者会見だ。
これまでにないくらいモーニング娘。さんと話せるかもしれない。
それはうれしいことだった。
それでも私はため息をついてしまう。
2つのことが相変わらず気になっていた。
桃子ちゃんが主役になったのに、自分が選ばれなかったこと。
それと、
キッズを巻き込んでハロプロが変わってしまうということ。
- 124 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:45
- 映画のことは桃子ちゃんと一度話したかった。
今、自分の中にあるもやもやは
桃子ちゃんと話せば消えてくれるかも知れない。
そう思った。
選ばれなくて悔しかった。
桃子ちゃんに置いていかれた気がして悔しかった。
そんな身勝手な気分は
桃子ちゃんに一言応援を言うだけでなくなってくれるはずだ。
会えばいい。
会って「主役がんばってね」と言ってあげたらいい。
でも
上手く言えるか、不安だった。
悔しい気持ちが先に出て上手く言えないかもしれないと思うと
桃子ちゃんと会うのが怖くなってきてしまう。
- 125 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:45
- ハロプロのことはもう何が何だかわからない。
キッズが入ってハロプロが変わる。
しかも、私たちの知らないうちに変わる。
小川さんはデビューしたとき
「5期が入ってモーニング娘。が変わったね
と言ってもらえるようにがんばりたい」
ということを言っていた。
それを聞いてなるほどと思ったものだ。
今
キッズが入ってハロプロは変わろうとしている。
しかし
こういう変わり方は小川さんの言っていたこととは違う。
私たちががんばって変わったのではない。
キッズがいる。それだけで変わってしまうのだ。
もちろんキッズがいなくてもモーニング娘。は変わったろうと思う。
それでもこういう変わり方にはならないだろうと思う。
それがずんと重かった。
- 126 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:46
- レインボーブリッジを渡って記者会見の会場まで行く。
この近くに夏休み限定でハロプロショップが置かれて
買い物ができるらしい。
そのすぐそばで記者会見をする。
よく晴れた日だった。
お日様の光が車の窓からじりりと照って汗をかいてしまった。
桃子ちゃんと会う。
モーニング娘。さんたちと会う。
私は落ち着かなかった。
- 127 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:46
- 控えに入るとまずはメイクをするという。
本格的な記者会見なのだ。
私はヘアメイクさんにお願いして前髪を直してもらった。
やってもらうときれいに左右に別れる。
髪を直してもらっている途中に桃子ちゃんも部屋に入った。
私は鏡越しに桃子ちゃんと目を合わせようとした。
一度も合わなかった。
一度も合わなかったもんだから不安になった。
避けられているわけではないだろうが
例の発表があってから一度も桃子ちゃんの目を見ていない。
桃子ちゃんがどんな気持ちでいるだろうと思うと
気になって仕方がなかった。
結局、桃子ちゃんと話す機会を得ないまま
時間になってしまった。
- 128 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:46
- キッズ全員で広い部屋に移動をする。
そこでモーニング娘。さんが来るのを待って記者会見だ。
見るとみんな緊張していた。
こうしてみんなで緊張するのはこれまでもしょっちゅうあった。
今回もこれまでとおんなじだった。
大勢の前に立つのに緊張する。
それと同じくらい
モーニング娘。さんに会うのに緊張する。
そろそろ先輩たちにも自分たちのことを覚えてもらいたい。
これまでもキッズはいろいろ知られていた。
しかしそれは一括りでの話だ。
キッズというかたまりが知られているだけの話だ。
しかしいつまでもそのままでいいわけではない。
- 129 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:46
- 私たちは
ハロプロ新編成に関わっている。
ハロプロの一員なのだ。
何ができるでもないが、
先輩たちには
きちんと私たちのことをわかっていてほしい。
特にキッズとユニットを組む矢口さんには。
キッズとユニットを組んでミニモニ。を抜ける矢口さんには。
私は目を閉じて深呼吸した。
いろいろのことを考えすぎた。
ハロプロのこと。
桃子ちゃんのこと。
- 130 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:46
- あれこれ考えても結論はでなかった。
しかし不思議と私は落ち着いていた。
今日、
なるようになるしかない。
そう思って落ち着いていた。
- 131 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:47
- 「おはよーございまーす」
声がしてモーニング娘。さんたちが入ってくる。
キッズの誰かが立ち上がって
それでみんなして立って挨拶をした。
先輩たちはそれぞれ
手をつないだりくっついたり
仲よさそうに入ってきた。
私は自分たちのことを考える。
私たちも仲良しだが
モーニング娘。さんたちはまとまった感じがあった。
それぞれで歩いていても先輩たちはまとまっていた。
- 132 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:47
-
いいな。
私たちも
あんなふうに
- 133 名前:8 投稿日:2005/03/01(火) 20:47
- 私は自然、桃子ちゃんのことを考えていた。
一緒にいることは決して長くない。
しかも映画が別々になっている。
話がしたい。
「仔犬ダンに出演の方、先に会見入りまーす!」
私は桃子ちゃんを見た。
すると一瞬、桃子ちゃんと目が合った。
しかし
無表情で行ってしまう。
私は何も言えずに
桃子ちゃんの背中を見送るばかりだった。
- 134 名前:いこーる 投稿日:2005/03/01(火) 20:47
- 今日はここまで
- 135 名前:ななしいくさん 投稿日:2005/03/05(土) 03:13
- おぉ、更新されてる!
いつもメチャメチャ楽しみに待ってます
いこーるさんの書く茉麻、かなり好きですよ
- 136 名前:いこーる 投稿日:2005/06/16(木) 23:02
- >>135
うおぉ。長時間放置申し訳ありませんです;汗
じっくりゆっくりやってまいります。よろしくおねがいします。
- 137 名前:いこーる 投稿日:2005/06/16(木) 23:02
- てことで更新します
- 138 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:02
- 桃子ちゃんたちが記者会見をやっている間
私たちミニモニ。組は部屋で待機していることになった。
ミニモニ。さんと一緒だ。
私たちは近くの椅子に座っていた。
そこへ
高橋さんが声をかけてきた。
私たちの前にしゃがみこんで顔をのぞくように話してきた。
「何年生?」
「4年生です」
「それじゃ一番お姉さんだ」
「はい」
「頑張ってね」
私は上目遣いに高橋さんを見た。
照れくさくてどうにも上目遣いになってしまうのだ。
- 139 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- ミニモニ。組の中では一番年上と前から言われていた。
だから今更照れることもなかった。
しかし高橋さんからそう言われることは
他の大人の人から言われるのとはまるで違っていた。
自分の頑張りが
自分の仕事がこの人たちのためになると思うと
胸の中がわくわくと沸きおこるのだった。
前に学校で聞いた「自覚」という言葉が
今の私に当てはまるだろうか。
私は自分が大事な役割なのを感じた。
キッズがどう思われるか
それが私で決まると感じもした。
大げさかも知れないけどそのときの私には
キッズの将来を動かしてやろうという気持ちがあったのだ。
- 140 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- ミニモニ。さんたちは舞ちゃんに話かけていた。
矢口さんは膝の上に舞ちゃんをのっけて楽しそうにしていた。
「かわいー」
そう言う矢口さんは本当に楽しそうだった。
声がいつもより高く聞こえた。
舞ちゃんはかわいい。舞ちゃんだけじゃなくて
梨沙子ちゃんも、愛理ちゃんもかわいい。
私はお姉さんだ。
先に記者会見に行っていたメンバーが戻ってきた。
私は桃子ちゃんのところに行こうとした。
しかし桃子ちゃんは佐紀ちゃんと話をしていた。
私は話しかけるのが上手くいかず
結局そのまま記者会見になってしまった。
- 141 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- 豪華なホールだった。
向こうの壁が見えないくらいに人が立ち並んでいた。
みな自分のカメラやマイクに忙しい。
キッズのほとんどが一列目に
一部が二列目に立っていた。
カメラがもう近かった。
カメラがたくさん並んで私たちを見ている。
あんまりたくさんだったので私の心が忙しくなった。
私は4人のことを考えていた。
お姉さんと言われた。
私はお姉さんらしくなろうと思っている。
カメラの前でみんなの前で
自分をお姉さんと見せようとしている。
しかし
見せようとしていると言っても
急によくなるわけではなかった。
笑顔は苦手だし声も小さい。
これでは全然頼りない気がした。
お姉さんにふさわしくない気がした。
ここでも思ったとおりにならない。
せめて笑えたらいいと思った。
- 142 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- 石川さんが後ろでマイクを持ってしゃべっている。
ゆっくりのペースで耳に心地よい高さだった。
私はどうにかして笑いたかった。
笑って多少とも余裕のあるところを見せてやりたかった。
お姉さんと言われたことがよほどきいたのだと思う。
本当は自信がなかったのだと、そんなことも思う。
桃子ちゃんが主役になって
自分は選ばれなくて
選ばれなかった私がこうして一番年上でいる。
そこに自信がないのだ。
でもカメラはそこにある。
4人の中で一番大きい私を撮っている。
それなら自信がなくても笑わなくてはいけない。
私はハロプロだ。笑うときは笑わなくてはいけない。
- 143 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- 私の頭には初めてのスチル撮影のことがあった。
あのときは上手く笑えずにいたのを
桃子ちゃんを見習ってやってみた。
桃子ちゃんは隣にいないけれど
桃子ちゃんが隣にいるなら笑顔だ。
桃子ちゃんはこういうときは笑顔のはずだった。
桃子ちゃんが好きだから
桃子ちゃんが笑顔のとき
私は笑顔になりたいと思っている。
- 144 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- そう思っても上手くいかない。
今、桃子ちゃんは私を置いて主役になってしまった。
それを考えて
桃子ちゃんに頼って笑顔になろうとしている自分にしらけてしまった。
でもそれとは全然逆の気分も湧いていた。
私はカメラの前でいい顔をしてやろうと思った。
なぜそんな気分になったか、そのときはわからなかった。
きっと悔しかったのだと思う。
オーディションの途中で見つけた
頑固で意地っ張りな自分を感じた。
負けず嫌いが出てきた。
桃子ちゃんに負けたくないという気分がふいに熱くなって
私の気持ちを変えたのだ。
そして
私は笑顔になれた。
- 145 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:03
- 私の心は不思議に静まっていた。
私は私の笑顔の中にパワーを込めていた。
こっちもいい映画にしたいと願いを込めた。
それは据わりのよい気持ちだった。
桃子ちゃんを好きな自分がいる。これは自分だ。
頑固で意地っ張りな自分がいる。これも自分だ。
そして今は、頑固で意地っ張りの方が仕事をしているのだ。
- 146 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:04
- 記者会見が終わってみると私は疲れていた。
その後のミニモニ組は流れ解散だった。
ホテルの廊下を歩いている。
柔らかい絨毯の上をおぼつかない足取りで
それでも行く先から目を離しはせずに歩いている。
それも心地よかった。
桃子ちゃんとは話せずに終えてしまったのが心残りだったが
それも仕方なかった。
ホテルの外にでると母親が待っていた。
近所の公園の駐車場に車を停めてあるというので
みんなとは別れて母親と歩いた。
潮の匂いがした。
疲れた私に潮の匂いはちょっとうっとうしかった。
帰りの車はずっと眠っていた。
- 147 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:04
- 私は夢を見た。
夢には桃子ちゃんがいた。
1人の桃子ちゃんはピンクの服を着て
私の腕にぶら下がってくすくす笑っている。
もう1人の桃子ちゃんはキラキラの服を着ていた。
キラキラの衣裳を着ていた。
そっちは私を指差して睨んでいた。
睨まれたのが頭にきて私も睨んでいる。
すると私は自分に力がついていることを感じた。
なぜそう感じたかはわからないが自分の力を感じた。
- 148 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:04
- 腕にぶらさがっていた方の桃子ちゃんは
私の顔におびえて走って逃げて行ってしまう。
私は桃子ちゃんを追いかけた。
必死に追いかけても桃子ちゃんには追いつかない。
追いかけているうちに
その桃子ちゃんはどちらの桃子ちゃんだか
私にはわからなくなっていた。
目が覚めたとき
私は泣いていることに気がついた。
- 149 名前:9 投稿日:2005/06/16(木) 23:04
-
映画撮影記者会見・ハロプロ新編成発表
8月1日お台場にて
- 150 名前:いこーる 投稿日:2005/06/16(木) 23:05
- 以上になります
- 151 名前:ななしいくさん 投稿日:2005/12/12(月) 05:47
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 152 名前:ななしいくさん 投稿日:2005/12/29(木) 00:28
- 続き読みたいです。
- 153 名前:いこーる 投稿日:2006/02/12(日) 20:30
- すみません。全然更新してないですが、
保全させてください。
- 154 名前:いこーる 投稿日:2006/08/11(金) 14:11
- 生存報告。必ず戻ってきます
- 155 名前:ななしいくさん 投稿日:2006/08/16(水) 15:05
- 楽しみに待ってます。
- 156 名前:ななしいくさん 投稿日:2006/12/04(月) 00:00
- 作者さんまだかなぁ…
- 157 名前:ななしいくさん 投稿日:2007/09/28(金) 00:58
- おっ!生存報告
いこーるさんマッタリ待ってます
- 158 名前:ななしいくさん 投稿日:2009/02/02(月) 20:15
- いこーるさんってあのいこーるさんですか?
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