『  GET  』

1 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:29
小説書きます。
色んな人が出てくると思います 多分
2 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:30
「あっ!」
思わず手を離してしまった。
平家さんは顔をしかめて人差し指を口元に当てた。
「しっ、静かにせい。お客さんいはるやろアホ。
しかしあんた皿割るの何枚目や?ええ加減クビにするで」
「いや…それだけは」
慌てて破片を拾おうとすると、
平家さんは「危ないで」と言ってホウキとチリトリを持って来てくれた。
なんだかんだいって、やっぱり優しい。
お皿を割るのはここで働き出してからもう5枚目。
だけどあたし、それほどおっちょこちょいってわけじゃない。
家でお皿とかコップとか、割った事なんてないし。

破片を全部拾い集めたあたしは、チリトリを持ったままその場に立ち尽くした。
カウンターから見える景色があまりにも綺麗で、
あたしはまたチリトリを落とすところだった。
3 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:31
一ヶ月前、ふと通りがかった小さな店にあたしは惚れた。
辺りには木が生い茂り、
色とりどりの花々がプランターにきちんと並べられ、飾られている。
洒落た真っ白な看板には、「GET」と書かれてある。
そして大きな窓があり、小さなドアがあった。
何の店かも解からぬまま、その雰囲気に惹かれたあたしはドアの取っ手に手を伸ばしていた。
カランカランと鐘が鳴り、「いらっしゃいませ」という女の人の声がした。
カウンターの中にコーヒーカップを拭いている女の人が1人と
窓際の席にカップルが一組いるだけで、店の中はガランとしていた。
どうやら喫茶店らしい。
あたしはカップルから一番遠い、カウンター席に座った。
テーブルの上には小さなメニューがあった。
「えっとじゃあ…コーヒー」
「はい」
その女の人は綺麗だった。大きな目に金色の髪、華奢な体。
モデルのようだとも思ったけど、コーヒーを入れる姿はとても様になっていた。
4 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:32
「どうぞ」
あたしは彼女に見とれていたみたいだ。
ハッと我に帰ると、あたしの目の前には湯気のたつコーヒーが置かれていた。
「あ…どうも」
あたしは熱々のコーヒーをすすった。
美味しかった。
カッケーからと無理してやっと飲めるようになったコーヒーを
美味しいと思ったのは初めてだった。

女の人も黙って食器を拭いていた。
カップルも、ほとんど会話をしなかった。
時々その沈黙を小鳥たちの声が破る。
あたしにはそれがとても心地よかった。

5 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:32
コーヒーを飲み終えたあたしは残り少ない小遣いで支払いを済ませた。
我ながら有意義な時間とお金の使い方だったと感心し、ニヤッと笑った。
それに気が付いたのか、女の人は不思議そうにあたしを見たので
恥ずかしくなってふいっと後ろを向いた。
カップルが、目に映った。
6 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:32
昔どこかで見た映画のようだった。
大きな窓から太陽の光がいっぱいに射し込む。
そこから見える大きな木を風が揺らし、木の葉が舞う。
窓の横には一組のカップル。
女性が長い髪をかきあげる。
二人は言葉も交わさずに、お互いを見つめている。
優しく微笑みながら。

あたしはその画に見とれてしまって、握っていた財布を落とした。
鈍い音がして、あたしは我に帰った。
そして、すぐにこう叫んだんだ。
「ここで働かせてください!」
7 名前:(0^〜^0) 投稿日:2003/10/09(木) 18:46
女の人は驚いて、それから困ったような顔になった。
そして、苦笑しながら言った。
「そんなに儲かってないねん。バイト代なんて払えないわ」
「いいんですそんなの。ただここで働きたいんです。タダ働きでいいですから」
「本気で言うとるのん?」
今まで全然気付かなかったけど、この人、関西人みたいだ。
関西弁好きなあたしとしてはなんとなく嬉しい。
「このお店が気に入ったんです。本当に、バイト代はいいですから」
どんなに言っても首を縦に振らない彼女に、あたしはしつこくしつこく頼んだ。
10分くらい経ってやっと彼女は「そんなに言うなら…ええよ」と呟いた。
それでも、納得したような顔ではなかったけれど。

胸が躍るというのはこういう気持ちなのか。
これからずっとこの画を見ていられるんだ。
困惑顔の女の人を尻目に、あたしの頬は緩みっぱなしだった。

その日から、あたしのタダバイト生活が始まった。
8 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/09(木) 22:43
面白そう
いろんな人が出てくるんでしょうか?続き期待してます。
9 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/13(月) 08:38
導入部分で惹かれた
続き期待してるっす
10 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/11(火) 14:51
待っています。
11 名前:名無し作者 投稿日:2004/03/05(金) 03:41
作者さんが書かないなら続き書いてもいい…?
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/05(金) 11:36
いいと思う。読みたい。

Converted by dat2html.pl v0.2