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あの頃の想い出
- 1 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)01時34分40秒
- 矢口板で連載していた小説を持ってきました。
内容は名作集板寄りの話だと思いまして・・・
やぐちゅー中心で進めていき、矢口の視点で書きます。
目ざわりかもしれませんが、よろしくお願いします。
- 2 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)01時37分54秒
- 「はい! 税込みで1635円になります!」
「・・・2,035円お預かりします」
「400円のお返しになります! ありがとうございました!!」
・・・オレは何をしているんだろう・・・
こんなことしていたくない・・・でも、あそこにも戻りたくない・・・
オレが「娘。」を脱退してから・・・いや、「モーニング娘。」というグループがなくなってから
もう二ヶ月も経っていた。
残りのメンバーのみんなはそれぞれの道を歩き始めていた。
なっちとカオリンはソロとして別のレコード会社でデビューした。
ごっちんは「プッチモニ」のリーダーとして、よっすぃーと新たなメンバーに梨華っちを加えて活動している。
圭ちゃんはソロ活動をしたいために、「プッチ」をやめて今はあちこちのレコード会社をまわっている。
ののちゃんとあいぼんは「ミニモニ」として今では「プッチ」を凌ぐほどの人気を得ている。
そして・・・ゆーちゃんは・・・
オレは「モーニング娘。」がなくなったときに全てを捨てた。
あちこちからオファーがかかったし・・・事務所も「タンポポ」と「ミニモニ」のリーダーとして、
売っていくつもりだったらしい。
でも・・・どうでもよかったんだ。そんなのは・・・どうでもよかった。
あんなことがあったから・・・
どうでもよくなったんだ・・・
- 3 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)01時38分29秒
- 「なあ、矢口・・・うちが辞めたら次のリーダーはあんたやで」
「ちょ、何言ってんのよ・・・ゆーちゃんがやめるなんて考えられないよ」
「ここだけの話や・・・なっちは例の男とのスキャンダルがあったし・・・カオリはトークが出来へん。
センターの経験もない圭じゃかなりキツイ仕事や・・・でも、矢口なら出来る」
・・・オレは黙ってゆーちゃんの話を聞いていた。
その横顔が凛々しくて思わず視線を逸らして下を向いてしまったが。
やっぱり・・・カッコいいよ、ゆーちゃん・・・
「オ、オレじゃゆーちゃんみたいにみんなをまとめることなんか出来ないよ」
「だいじょぶや・・・なっちやカオリはきついかもしれへんけど、矢口のあとに入ったメンバーは
みんな矢口になついてるやん。それはちゃんと人をまとめる力がある証拠やと思うんや・・・」
「・・・」
「ま、うちがおる限りはカンケーあらへん話やけどな。いざって時はホンマに頼むで・・・」
「そ・・・そんな話しないでくれよ。まるで・・・ゆーちゃんがどこかに行っちゃうみたいじゃんか・・・」
すると、不安そうなオレの髪をゆーちゃんは優しく撫でてくれた。
頭を自分の肩のほうに引き付ける。
「うちは・・・少なくとも、矢口の前からは姿を消せへんよ。ただ、うちもトシや。
何があるかわからへんから話しただけや・・・びっくりしたか?」
「・・・」
「ごめんな・・・」
そう言って・・・オレにキスをする。
ファーストキスもゆーちゃんにとられた・・・最初はビックリしたけど・・・
今では相手がゆーちゃんですごく嬉しかった・・・
- 4 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)01時39分21秒
- 「まりっぺ! 今までどこにいたんだよ!?」
「どうしたの・・・? なっち? ちょっとシャワー浴びてただけだって・・・」
「早く・・・早く来てよ!! ゆーちゃんが・・・ゆーちゃんが・・・」
オレは・・・目の前が真っ暗になった。
涙声のなっちの声・・・電話を代わった時のカオリンの慌てぶり・・・
全てが事実だと叫んでいる。
信じられない・・・信じたくない・・・
「早く・・・早く来てよ!! まりっぺ! 病院の名前は・・・」
「・・・」
「さっきから・・・うわ言みたいにゆーちゃんがまりっぺのことを呼んでいるんだよ!?
もしかしたら・・・もしかしたら・・・」
「・・・」
もしかしたら・・・もしかしたら・・・
なっちの声がオレの心にとどめをさす。
事実・・・事実なんだ・・・
「・・・」
「・・・今からカオリがそっちに行く。部屋から絶対出ちゃダメだよ? 分かったね!?」
「・・・」
「まりっぺ!! しっかりしてよ・・・まりっぺがしっかりしないと・・・
ゆーちゃんホントにダメになるかもしれないんだよ!?」
ダメになるかもしれない・・・ダメになるかもしれない・・・
オレは・・・持っていた受話器を思い切り投げつけた。
ごんっとフローリングを叩きつける音が響いたが・・・何も変わらなかった。
何も・・・何も変わらなかった・・・
- 5 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)01時40分14秒
- 「・・・ゆーちゃん・・・?」
「まりっぺ・・・」
ベットに横たわっているゆーちゃんは・・・白かった。
綺麗でサラサラの髪には痛々しいほど包帯が巻かれていてよく見えなかった。
口許には酸素吸入がつけられていて・・・
「手術は・・・成功したんだって・・・でも、助かる可能性は・・・ゆーちゃん次第だって・・・」
「なんで・・・なんで・・・」
「事務所から帰る途中に・・・車に轢かれて・・・そのままひきずられて・・・」
なっちは・・・下を向くとぼろぼろと涙を流し始めた。
それが嗚咽に変わると・・・カオリンがなっちの背中をさすった。
「轢き逃げした奴は捕まったよ・・・でも、でもそんなことしたって!!」
「圭ちゃん! 落ち着きなよ!!」
「まりっぺ・・・ゆーちゃんはここに運ばれるまで・・・ずっとまりっぺの名前を呼んでたんだよ・・・」
・・・・・・
「とりあえず・・・辻と加護はもう家に帰りな。ここはあたしたちがいるから・・・
何かあったらすぐに連絡する・・・」
「・・・わかりました」
「まりっぺ・・・あたしたちは外のロビーで待ってるよ。だから・・・だから、ゆーちゃんの側にいてあげて・・・」
・・・・・・
「まりっぺ!!」
圭ちゃんは・・・オレの頬を引っぱたいた。
一瞬、視界がブレる――すぐにカオリンとごっちんが止めに入る。
「ちょっと! 圭ちゃん・・・」
「まりっぺ!! この中で一番ゆーちゃんと仲がよかったのはまりっぺだよ!
だから・・・! だから、ゆーちゃんを安心させることが出来るのは・・・まりっぺしかいないんだよ!!」
「・・・」
「何もしなかったら・・・このまま何もしなかったら・・・あたしはまりっぺを許さない・・・」
・・・・・・
「とりあえず・・・みんな出て行こうよ・・・まりっぺ。頼んだよ・・・」
カオリンは泣き崩れているなっちとうなだれている圭ちゃんを連れて部屋を出た。
・・・病室は静かだった。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月27日(水)02時06分52秒
- おもろ〜い。続ききぼー。
- 7 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)02時09分28秒
- 「・・・」
「ねえ・・・ゆーちゃん・・・起きなよ・・・」
オレは・・・ベットに横たわっているゆーちゃんを揺り動かした。
その姿はどうしようもないくらいに・・・静かだった。
「ねえ・・・ねえ・・・帰ろうよ・・・明日ジャケ写あるんだから・・・帰ろうよ・・・」
「・・・」
「ねえ・・・ねえ・・・ねえ!! ねえってば!! ゆーちゃん!! 帰ろうよ!!」
オレはがくがくとゆーちゃんを揺すった。
その反動で――布団の中から手がはみ出した。
ぶらりと・・・力なく、落ちる。
「お願い・・・お願い・・・ゆーちゃん・・・目を覚ましてよぉ・・・」
「・・・」
「こんなことに・・・どーしてこんなことになったんだよぉ!!
約束したじゃんかよ!! オレの前から姿を消さないって・・・約束したよぉ・・・」
落ち込んでいた手を握る。
暖かい・・・いつも握る手と同じだ・・・何も変わらない・・・ゆーちゃんの手・・・
でも・・・でも・・・どこか冷たい。
「お願いだよ・・・お願いだから・・・オレを置いていかないでよぉ・・・」
力強く握り、額に押し付けた。
その手は――握り返されない・・・弱々しくも握り返されない・・・
・・・涙で手の甲が濡れる・・・
「誰でもいいよぉ・・・誰でもいいから・・・助けてよ・・・ゆーちゃんを・・・助けてよ・・・」
- 8 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)02時09分55秒
- 「・・・」
「ねえ・・・ゆーちゃん・・・起きなよ・・・」
オレは・・・ベットに横たわっているゆーちゃんを揺り動かした。
その姿はどうしようもないくらいに・・・静かだった。
「ねえ・・・ねえ・・・帰ろうよ・・・明日ジャケ写あるんだから・・・帰ろうよ・・・」
「・・・」
「ねえ・・・ねえ・・・ねえ!! ねえってば!! ゆーちゃん!! 帰ろうよ!!」
オレはがくがくとゆーちゃんを揺すった。
その反動で――布団の中から手がはみ出した。
ぶらりと・・・力なく、落ちる。
「お願い・・・お願い・・・ゆーちゃん・・・目を覚ましてよぉ・・・」
「・・・」
「こんなことに・・・どーしてこんなことになったんだよぉ!!
約束したじゃんかよ!! オレの前から姿を消さないって・・・約束したよぉ・・・」
落ち込んでいた手を握る。
暖かい・・・いつも握る手と同じだ・・・何も変わらない・・・ゆーちゃんの手・・・
でも・・・でも・・・どこか冷たい。
「お願いだよ・・・お願いだから・・・オレを置いていかないでよぉ・・・」
力強く握り、額に押し付けた。
その手は――握り返されない・・・弱々しくも握り返されない・・・
・・・涙で手の甲が濡れる・・・
「誰でもいいよぉ・・・誰でもいいから・・・助けてよ・・・ゆーちゃんを・・・助けてよ・・・」
- 9 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)02時14分15秒
- 「・・・」
「ねえ・・・ゆーちゃん・・・起きなよ・・・」
オレは・・・ベットに横たわっているゆーちゃんを揺り動かした。
その姿はどうしようもないくらいに・・・静かだった。
「ねえ・・・ねえ・・・帰ろうよ・・・明日ジャケ写あるんだから・・・帰ろうよ・・・」
「・・・」
「ねえ・・・ねえ・・・ねえ!! ねえってば!! ゆーちゃん!! 帰ろうよ!!」
オレはがくがくとゆーちゃんを揺すった。
その反動で――布団の中から手がはみ出した。
ぶらりと・・・力なく、落ちる。
「お願い・・・お願い・・・ゆーちゃん・・・目を覚ましてよぉ・・・」
「・・・」
「こんなことに・・・どーしてこんなことになったんだよぉ!!
約束したじゃんかよ!! オレの前から姿を消さないって・・・約束したよぉ・・・」
落ち込んでいた手を握る。
暖かい・・・いつも握る手と同じだ・・・何も変わらない・・・ゆーちゃんの手・・・
でも・・・でも・・・どこか冷たい。
「お願いだよ・・・お願いだから・・・オレを置いていかないでよぉ・・・」
力強く握り、額に押し付けた。
その手は――握り返されない・・・弱々しくも握り返されない・・・
・・・涙で手の甲が濡れる・・・
「誰でもいいよぉ・・・誰でもいいから・・・助けてよ・・・ゆーちゃんを・・・助けてよ・・・」
- 10 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)02時17分09秒
- 三回も書き込まれてる・・・
とりあえず、気にしないで下さい(わら
- 11 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月27日(水)02時44分13秒
- ・・・どれぐらい時間が経ったのか・・・
オレはずっとゆーちゃんの手を握りつづけていた。
心配したカオリンが休むように言ったけど・・・できなかった。
休めなかった。こうやって手を握っていないと・・・ゆーちゃんが離れていきそうで・・・
「・・・」
ひたすら祈りつづけることしか出来なかった。
ゆーちゃんの手を握りつづけて・・・祈りつづけて・・・
「・・・お願いだよ・・・何でもいいよ。神様でも悪魔でもいいよ・・・ゆーちゃんを助けて・・・」
不意に――手のひらに何かを感じた。
ごそごそと動く何かを確かに感じた。
「ゆーちゃん!!」
オレはゆーちゃんの手を握りなおした。
どこにも行かないように・・・オレだけでも分かるように・・・
両手でしっかりと・・・この世界に繋ぎとめるように握りしめると・・・
ゆっくりと・・・その手が握り返された。
「み・・・みんな!! ゆーちゃんが・・・ゆーちゃんが・・・」
部屋の壁に寄りかかって寝ていた圭ちゃんが身を乗り出すようにゆーちゃんを覗き込む。
椅子に座っていたカオリンもなっちも・・・朝一にかけつけたごっちんも・・・
全員が固唾を飲んで見守った。
「こ・・・ここ・・・は・・・みんな・・・?」
苦しそうにかすれた声を出した――ゆーちゃんの声・・・
ゆーちゃんの声だった・・・まぎれもなく・・・まぎれもなく・・・それはゆーちゃんの声だった。
「や――やったぁぁぁぁっっ!!」
一斉にみんなが大声を張り上げた。
なっちとカオリンはお互い抱き合って喜んだ。
圭ちゃんは大きくため息をついただけだったけど・・・その目には溢れんばかりの涙でいっぱいだった。
ごっちんは驚いたのか、何が起こっているのか分からないのか・・・その場に茫然と座り込んでいた。
「とりあえず、医者を呼んでくる!」
「ゆーちゃん!! ゆーちゃん!!」
個室は・・・病院とは思えないほど大声で盛り上がっていた。
「・・・心配・・・かけた・・・みたい・・・やな・・・」
「・・・」
「助け・・・て・・・くれたんか・・・あんたが・・・」
「ゆ、ゆーちゃん・・・?」
「ありが・・・とな・・・誰だか・・・分から・・・んけど・・・礼は・・・必ずする・・・で・・・」
- 12 名前:名無し 投稿日:2000年09月27日(水)19時08分45秒
- いちごま嫌いじゃないけど、懐古主義っぽくなっちゃうよね。
時代はやっぱやぐちゅ〜。
んで、感想。面白い。
でも個人的には一人称おれじゃないほうが良かったかな。
なれれば平気になると思うけど。
- 13 名前:ジタン 投稿日:2000年09月28日(木)00時08分15秒
- やぐちゅ〜が一番だな〜。ゆうりか書いてるけどね。。。
- 14 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月29日(金)01時36分38秒
- >>12
一人称の「オレ」は確かに書き始めて違和感を覚えました。
「おいら」とか「あたし」とかあったんですけど・・・
「おいら」は妊婦で使われているので・・・まあ、慣れちゃって下さい(わら
>>13
ゆうりかを書いているんですか?
今度また見に行きます。わざわざこのスレを見つけてくれてありがとうございます。
- 15 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月29日(金)01時52分20秒
- 「中澤を無期限休養にするか・・・それとも思い切って『モー娘。』を解散させるか・・・か」
「・・・ええ頃合やな。最近は『プッチ』や『ミニモニ』のほうが脚光を浴びとる。
『娘。』の人気は下降気味や・・・解散やな。中澤以外に『娘。』を引っ張る奴がおらへん」
「じゃあ・・・」
「『プッチ』と『タンポポ』、それに『ミニモニ』・・・活動は三つに分かれるな・・・」
「安倍は・・・どうします?」
「後藤をセンター据えている今や・・・適当にレコード会社紹介してソロやな。
最初の二曲は俺がプロデュースする・・・」
・・・オレはつんくさんがレコード会社の誰かと話しているのを立ち聞きしてしまった。
『娘。』がなくなる・・・休養ではなく解散・・・それはゆーちゃんを切り捨てることだった。
・・・もう限界だ・・・
ゆーちゃんのいない『娘。』に自分の居場所はない・・・見つかるわけもない・・・
急に、この世界に身を置いていることに圧迫感を覚えた。
ここにいるのが・・・苦しかった。あれほど楽しかったはずの仕事が今は・・・つまらなかった。
当たり前だった。苦しい時・・・つまらないとき・・・支えてくれたのは常にゆーちゃんだった。
でも・・・今はいない・・・
オレはまるで自分の半身を失ってしまったような脱力感で一杯だった。
- 16 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月29日(金)02時10分34秒
- 「・・・どうして・・・どうして? なんで辞めるとかいうの!?」
「・・・」
楽屋で・・・オレはカオリンに詰め寄られていた。
他のメンバーは・・・その勢いに圧倒されて黙ってこちらを見ていた。
ただ、圭ちゃんだけが・・・何かを言いたげな瞳で見つめていた。
「まりっぺがいなきゃ・・・ダメじゃんかよ。ゆーちゃんは戻ってくるよ・・・必ず」
「・・・」
「『娘。』に帰ってきたゆーちゃんを出迎えなきゃいけないんだよ? 辞めるなんておかしいよ!」
「・・・疲れたんだよ・・・今のオレはみんなの足手まといしかならない・・・」
オレは脱退の意思を告げた。
理由は本当に疲れていたこと・・・まだ、みんなは『娘。』がなくなることを知らない。
ゆーちゃんが元気になっても・・・その居場所はどこにもない・・・
オレは居場所を完全に失った。
ゆーちゃんのいないところに・・・オレの居場所はない・・・
「そんなことないよ! カオリなら・・・まりっぺと同じ立場だったらこんな風に仕事してないと思うよ・・・
でも、まりっぺは仕事をしてるじゃん! それって強くなきゃ出来ないことなんだよ?」
「・・・」
「カオリンの言う通りだよ・・・まりっぺはまだ『娘。』を辞めちゃダメだと思う・・・」
ずっと黙ってきていたなっちが不意に口を開いた。
「ゆーちゃんが戻ってきた時にまりっぺがいないでどーするの?
確かにまりっぺが投げやりになる気持ちは分かるよ・・・でもね、辞めたらゆーちゃんだって・・・」
「・・・だよ・・・」
「えっ?」
「知らないからだよ!! みんなは・・・知らないからそんなことが言えるんだよ!!」
気がつくと・・・オレは叫んでいた。
頬には涙が伝っている。
「・・・何を知ってるの? 話してごらん? まりっぺ」
やっぱり・・・圭ちゃんは怪しいと思っていたみたいだった。
- 17 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月29日(金)02時28分46秒
- 「聞いたんだよ!! つんくさんは・・・ゆーちゃんがいなくなったのをいい機会だと思って・・・
『娘。』を解散させるつもりなんだよ・・・」
「・・・」
「みんな・・・『プッチ』と『タンポポ』と『ミニモニ』にいるでしょ・・・?
これからはそれぞれみんな別で活動していくみたいなんだよ・・・」
「あ、あたしは・・・どうなるの?」
「なっちは・・・ソロとしてデビューさせるみたいなこと言ってた・・・」
オレの言葉に・・・メンバーの全員が沈黙した。
「・・・知ってると思うけど・・・ゆーちゃんは記憶がまだ完全に戻ってないんだよ・・・
みんなのことはちゃんと覚えているのに・・・オレのことは・・・」
「・・・」
「もう何をやっても・・・歌っても、踊っても楽しくないんだよ!!
みんなの励ましはすごく嬉しいよ・・・でもね、それがオレにとっては・・・重荷なんだよ・・・
ゆーちゃんがオレのことを思い出してくれないと・・・前に進めないんだよぉ・・・」
涙が溢れて・・・視界がぐにゃぐにゃになる。
自分の嗚咽で音が断絶される。
何もかもが・・・イヤだった。ここにいること。歌っていること。踊っていること。
ありとあらゆる・・・全てが。
「もう・・・ここには来ない・・・ごめんね。それと・・・今までホントにありがとう・・・」
オレは・・・楽屋を出た。
その日、矢口真里という名の『モーニング娘。』というメンバーが・・・
永遠に消えた。
- 18 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月29日(金)23時06分07秒
- 「矢口真里! 失踪!!」
「メンバー内の対立が激化! 休養中の中澤裕子が影響か?」
・・・オレが辞めた次の日の新聞と週刊誌にはそんな見出しで溢れていた。
髪型とファンデーションを変えて・・・東京をさまよい歩いた。
ケータイの電源は切りっぱなしだ。
ただ・・・会社の方には公衆電話から連絡を入れておいた。
「・・・辞めさせてもらいます。本当にありがとうございました・・・」
ただ、一言だけ告げて・・・電話を切った。
もしかしたら分からないかもしれない。でも・・・思い残すことはない。
ほんとは・・・ゆーちゃんの顔を見たかった。声を聞きたかった。
でも今は動けない。病院にはたくさんの報道陣がいるだろう。
「・・・ゆーちゃん・・・」
実家に帰ろうとも思った・・・
ただ、それも今はできない。もう少し事態が落ち着くまでは家には帰れない。
正直言ってツライ・・・でも、あのままみんなといるほうがもっとツライに決まってる。
何より寝る場所がないのに苦労した。
17歳の女の子を一人で泊めてくれるようなホテルはないし、顔がバレると・・・
昨日の夜はカラオケボックスで一夜を明かした。
「・・・あれ? もしかして・・・まりっぺ・・・?」
かけられた声に・・・オレは反射的に荷物を抱えて走り出そうとした。
なかなか大きなバックが邪魔をしてうまく走れないけど・・・とまれなかった。
「ちょ、ちょっと待って・・・うちやて!」
「・・・」
聞いたことのある声だった。
ホントは・・・この声を聞けて自分が救われたような気がした。
「・・・みっちゃん・・・」
- 19 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年09月29日(金)23時33分49秒
- 「しばらく家におるとええよ・・・こんな時に外歩いてたら何されるかわからへんから・・・」
会うなりみっちゃんは何も聞かずにタクシーに乗せてくれた。
そして・・・マンションに着いた。みっちゃんの家だった。
「今、まりっぺの失踪で芸能界は話がもちきりや・・・テレビつけてビックリしたわ」
「もう・・・疲れちゃったんだよ・・・ゆーちゃんがいないから・・・」
「まりっぺはホンマにゆーちゃんっ子やなぁ・・・いつか辞めるとか言い出すと思っとったけど、
まさかこんな大胆に失踪するとは思わんかった」
「ここには・・・マスコミとかきたの?」
「誰もきてへん。うちは最近ここに引っ越してきたばかりやし。
ははっ・・・マスコミすらうちのこと忘れてるらしいで・・・」
冷蔵庫を開けて、みっちゃんはミネラルウォーターを渡してくれた。
その心遣いに・・・オレは涙が出そうになった。
「・・・ありがと・・・」
「昨日の夜はどうしたん?」
「・・・カラオケボックスで寝てた。それから・・・実家の方に帰ろうかと思ったけど・・・
たぶん、マスコミがいるだろうし・・・ホントにどうしようかと思って・・・」
「困ってるんやったら早ようちのところに連絡くれればよかったのに・・・
あ、そーか・・・ケータイ切ってるのか・・・」
「・・・みんなには悪いことしたと思ってるよ・・・でも・・・もう『娘。』がなくなるから・・・」
オレの言葉に・・・みっちゃんは驚いたようだった。
「『娘。』が・・・なくなるやて?」
「・・・うん・・・つんくさんが誰かと話してるの聞いたから・・・多分・・・」
「そんな! じゃあ、ゆーちゃんが退院しても・・・」
「今すぐには解散しないと思う。オレがいなくなってるから・・・そのことで手一杯だと思うし・・・
もう・・・どうしていいか分かんないんだよぉ・・・」
最近泣いてばかりだ・・・
思い出しては泣いて・・・現実を見れば泣いて・・・
「・・・ゆーちゃんに逢いたいよぉ・・・声が聞きたいよぉ・・・」
「今は・・・ダメや。ノコノコ病院に行ったらマスコミが黙っておらへん」
「・・・」
「うちが行ってくる。今の状況を話さないかん。きっと・・・ゆーちゃんも心配してるから・・・」
「お願い・・・解散のことは教えないで・・・きっとショック受けると思うから・・・」
「・・・分かってる。後で自宅の方に電話するから。二回鳴ったら出てちょうだい」
- 20 名前:ジタン 投稿日:2000年09月30日(土)09時07分04秒
- わ〜いわ〜いみっちゃん登場〜!みっちゃん大好きです!
やっぱりみっちゃんは優しいのだー。
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月01日(日)13時22分37秒
- 続き希望ー!
- 22 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月02日(月)01時55分55秒
- >>20
みっちゃんは登場させるつもりでした。
娘。が今の段階では絡みにくいのであくまでそのフォローとして・・・ですが。
この小説の中では割とキーパーソンかもしれません。
でも、みっちゃんを悪人にして書くっていうのは難しいなぁ・・・
>>21
はい! 今、書いてるんで続きを見せます(わら
- 23 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月02日(月)01時58分16秒
- みっちゃんが出かけてから一時間ぐらい経っただろうか・・・
電話が鳴った。すぐに切れて・・・二度目が鳴る。
「もしもし!」
「ちょ、早いわ! ビックリしたで!」
「ゆーちゃんは!? ゆーちゃんはなんて言ってた?」
みっちゃんは・・・電話の向こうで黙り込んだ。
「・・・まりっぺ。今テレビ見てる?」
「ううん。電話がかかってくるの待ってたから・・・」
「じゃあ・・・どこでもええから・・・そや、日テレに変えてみ・・・」
何を言っているのか分からなかったけど・・・
オレはすぐ側にあったリモコンで電源を入れた。
それから・・・番組を変える。
「・・・」
オレはその画面を見て・・・凍りついた。
その身体だけじゃなくて、心も凍りつくように・・・動かなくなった。
耳が聞くことを拒んでいる・・・目が見ることを拒んでいる・・・
画面は記者会見を映していた。
そこには・・・みんなが、昨日までメンバーだったみんなの姿が映っていた。
『モーニング娘。ついに解散!!』
画面の左下にはポップ体でそんな風に書かれていた。
オレは・・・受話器を持ったままぺたりと腰を落とした。
・・・断片的に聞こえてくる・・・
「・・・中澤さんの無期限休養と矢口さんの謎の失踪が関係あるんですか?」
「それは・・・関係ありません・・・それぞれのグループの方に専念したいということが・・・
あるので・・・だから・・・ゆーちゃんもまりっぺも・・・関係ないんです・・・」
会見に臨んでいた圭ちゃんは・・・泣いていた。
休養も失踪も関係ないのに・・・プッチに専念できるはずなのに・・・泣いていた。
それは、みんなも一緒だった。
なっちも、カオリンも、ごっちんも、よっすぃーも、梨華っちも、あいぼんも、ののちゃんも・・・
みんなが・・・泣いていた。
「・・・オレは・・・なんてことを・・・」
「・・・」
オレが声を詰まらせているのを・・・みっちゃんは黙って聞いているようだった。
- 24 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月02日(月)02時25分07秒
- 「・・・つんくさんがとった対応は話題性としてはバッチリかも知れへんな・・・
でも・・・あんまりや・・・やりすぎやて・・・」
「・・・」
「ええか・・・何とかして病院にくるんや。ゆーちゃんがえらい泣いてるんや・・・
うちが見たことないくらい・・・泣いてるんや・・・まりっぺ。あんたしか慰めることできへんよ・・・」
「そんなこと・・・そんなこと、オレには出来ないよ!!
確かに辞めた理由は疲れたことだけど・・・時間稼ぎが出来るかもしれないから辞めたんだよ!
オレの話題でごまかして・・・解散を引き延ばそうとしたんだ・・・」
「・・・」
「でも・・・オレの行動は逆に解散を早めちゃったんだ・・・ゆーちゃんの居場所を壊したんだ・・・
そんなことしたオレがどのツラ下げてゆーちゃんに会わなきゃいけないんだよ!!」
「いい加減にしいや!! まりっぺ!!!!」
今まで聞いたこともないような声で・・・みっちゃんは叱りつけた。
電話口からもその勢いとか・・・怒りみたいなものが伝わってきた。
「そんなのは結果や! グループっちゅーもんはできたら最後は必ず解散するんや。
まりっぺのせいやない・・・解散が引き延ばせても一月ぐらいが限界や・・・
芸能界は流れが早いんや・・・覚えられるのも忘れられるのもホンマにあっという間や・・・」
「・・・」
「いつまで現実逃避するつもりや・・・確かにまりっぺが一番ツライのは分かってるよ・・・
でも、みんなだってツライんや・・・娘。のメンバーやないうちかて・・・
みんなまっすぐ現実を見てるやん・・・ゆーちゃんだってそうなんやよ!」
「・・・みんながマスコミと向かい合ってるんや・・・現実と向かい合ってるんや・・・
なら、まりっぺは・・・ゆーちゃんを慰めないと・・・それが現実やないのか?」
「・・・・・・分かった。すぐに行くよ」
電話を切ると・・・オレは家を出ようとした。
不意に鏡台の方に視線が流れた。
このまま行けば・・・病院に入れてくれないかもしれない・・・
鏡台の引き出しの中を探る。そこに・・・探しているものが見つかった。
・・・ハサミ・・・
- 25 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月03日(火)03時42分06秒
- オレは急いでタクシーを捕まえるとすぐに乗り込んだ。
病院の場所をお願いする。ここから大して距離は離れていない。
今は帽子は被らずにサングラスだけをしている・・・
「お客さんの行く病院って・・・モーニング娘。の中澤が入院してるとこらしいですよ」
「そ、そうなんですか・・・」
個人タクシーに乗ったせいなのか・・・運が悪かったのか・・・
ドライバーは30代ぐらいの若い人だった。
もしかしたら・・・バレるかも知れない恐怖があった。
「誰かのお見舞いにでも行くのかい?」
「え、ええ・・・高校の友達がバイクで事故っちゃって・・・大したことないんですけど、
まだ行ってないから・・・それで・・・」
とってつけたようなウソだが、自分の中ではうまく言えた。
案の定・・・ドライバーの人も信用してくれたみたいだった。
「そうかい。気をつけたほうがいいよ。何たって命は一つしかないんだからねぇ・・・
さっきから気になってるんだけどさぁ・・・お客さん、もしかして・・・」
「・・・」
オレはミラーから自分の姿を見られて、ドキドキした。
この人が・・・娘。のファンだったらきっと誤魔化せないだろう・・・
いくら・・・いくら誤魔化しても・・・顔は騙せない。
- 26 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月03日(火)03時42分36秒
- 「モー娘。の矢口真里・・・に似てるって言われたことあるでしょ?」
「・・・た・・・たまに・・・ほら、彼女はし、身長低いし・・・オレ・・・じゃない、あたしもそうだから・・・」
「なんか・・・髪形が違うもんね。彼女は長かったような気がするけど、あなたは短いもんね」
誤魔化せた・・・さすがに髪を切るとだいぶ印象が変わるらしい。
毛先まで切るほど時間もなかったけど・・・バッサリ切った。
腰にかかるぐらいまであったのに・・・今は肩よりも上だ。
躊躇はなかった。ゆーちゃんに逢えるんだったら髪なんかいくらでも切れた。
「そういえば解散するんだよね。今日は会見でテレビもラジオも同じことばかりだよ。
しかし・・・あんなに人気があったのに、解散するって・・・時代かねぇ・・・」
「・・・」
オレは・・・話を聞くのをやめた。
今することは・・・ゆーちゃんに逢うこと。そうじゃなくても・・・逢いたい。
あの声が聞きたい。あの手で髪を撫でて欲しい。あの唇でキスして欲しい・・・
ラジオのニュースが聞こえてくる。
やっぱり娘。の解散を伝えるニュースだった。
・・・泣き出さないように我慢するのが精一杯だった。
- 27 名前:ジタン 投稿日:2000年10月03日(火)15時25分29秒
- 矢口髪切っちゃった〜!でも似合うんだろうな〜。
続き楽しみだ〜
- 28 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月04日(水)01時13分41秒
- >>27
具体的なイメージはどんなのがいいですかね?
鈴木あみ・・・とかここでは禁句ですか(わら
俺的には髪の短い田中麗奈みたいなカンジですけど・・・
- 29 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月04日(水)01時14分36秒
- 病院の入口には報道関係者の車でごった返していた。
見たことのあるテレビ局や新聞社の車は・・・一種の凄みを感じた。
世間に娘。が浸透している証拠だと感じたのだ。
「こりゃ・・・思ったよりすごいな・・・」
「あ、ここでいいです・・・」
「ここじゃ通常口から遠いよ。ちょっと待ってな・・・」
すると、わずかの車間を縫うようにタクシーが駆け抜けた。
あれだけギッチリ詰まっている車をかすらせずに通り過ぎるなんて・・・映画を見ているようだった。
そして通常口が見えたが・・・そこを通り過ぎる。
「ちょ、ちょっと・・・」
「あんたが・・・ここから入ったら問題になるぜ。髪型変えたぐらいじゃマスコミは騙せないよ」
「・・・」
バレた・・・
このドライバーは・・・気づいていたのだ。オレが矢口真里であると。
入れないかもしれない・・・ゆーちゃんの顔を見れないかもしれない・・・
「俺は看護婦とかが入れる専門口みたいなのがある所を知ってる。理由を話せば通してくれるだろうよ」
「・・・?」
「俺はな・・・こんなトシじゃなんだが、モー娘。のファンなんだよ。
中でも矢口真里って言うのは・・・俺の中では別格なんだよ!」
ききっ!
思い切りハンドルを切ると、タクシーが止まった。
「次は・・・中澤だ。その二人がいなくなったら・・・俺の中でモー娘。はあってないようなもんだ。
でも、これでなんとかなるんだったら・・・頼む・・・」
「・・・」
「行けよ! 裏口もマスコミが張ってるだろうから・・・時間稼ぎはやってみる。
お礼は・・・モー娘。の復活でチャラだ」
「・・・ありがと・・・」
ドアが開いて・・・オレはすぐ側に見える勝手口のようなところに向かって走った。
・・・ファンというものがこれほど心強いものだと感じたのは生まれて初めてだった。
- 30 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月04日(水)01時39分48秒
- 入口で看護婦に止められたものの、オレが事情を話すとすぐに通してくれた。
病院内にマスコミが張っている可能性はあったけど、ここまでくれば邪魔をされることはない。
エレベーターに乗る時間も惜しいと階段を駆け抜ける。
目的の階に着く頃には息は切れていた。
それでも足は止まらない。
やがて・・・ロビーの辺りでみっちゃんらしき人影が見えた。
「みっちゃん!」
病院だということも忘れてオレは大声を上げて、手を振った。
向こうは誰だか分からなかったみたいで一瞬驚いたようだけど・・・すぐに駆け寄ってきた。
「ご、ごめん・・・時間がかかっちゃった・・・」
「ま、まりっぺ・・・その髪・・・」
「そんなことより! ゆーちゃんは・・・ゆーちゃんは・・・」
オレが部屋に向かおうとすると、みっちゃんは腕をつかんだ。
「な・・・何すんだよ!」
「ゆーちゃんは・・・まりっぺに逢いたないってゆーてる・・・」
腕をつかんだまま・・・みっちゃんは苦々しく言った。
オレは・・・固まった。
「ゆーちゃんは・・・解散したのがまりっぺのせいやと思ってる。
あたしが来た時は・・・ゆーちゃんはまりっぺに逢いたいわ、ってゆうてたんよ・・・
でも・・・テレビをつけてから・・・」
「・・・」
「まだ・・・まだ、まりっぺのことを分かってへんから・・・自分の感情が先に立ったみたいや・・・
今は逢わへんほうがええ。お互いのためや」
「・・・カンケーないもん・・・オレと・・・ゆーちゃんは・・・そんなに薄っぺらな関係じゃないもん!」
みっちゃんの手を振り切って・・・オレはゆーちゃんの病室の扉を開けた。
- 31 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月04日(水)02時17分15秒
- ノックもせずにオレはゆーちゃんの病室に入った。
ベットから上半身を起こしていたゆーちゃんは・・・抜け殻のようだった。
力なくすぼんでいる手のひらにはリモコンがあり・・・その先にはテレビがあった。
ワイドショー番組で・・・おそらくはここで解散の話を見たんだろう。
でも・・・今は別の事件を取り上げていた。
「・・・ゆーちゃん・・・」
オレの声にぴくりと身体を動かし・・・うなだれた首だけをこちらに向けた。
凍りつくほど冷たくて・・・ナイフのように鋭い双眸をしていた。
オレは・・・始めて見るそのゆーちゃんの姿に恐怖を覚えた。
「その・・・なんて言っていいかわかんないけど・・・」
がちゃん!
ゆーちゃんは・・・そのままの態勢でリモコンを窓ガラスに投げつけた。
ものの見事にヒットして・・・砕ける。
「ゆーちゃん!」
「うっさいわ!! あんたは・・・あんたは・・・何てことしてくれたんや!!
せっかくみんなで積み重ねてきたものを・・・積み重ねてきたものを!!」
「ゆーちゃん! 頼むから落ち着いて・・・」
「気安く人の名前呼ぶな! ホンマにあんたは・・・あんたは何者なんや!?
なっちやカオリは同じメンバーやて言うけど・・・同じメンバーが娘。を壊すわけあらへん!!」
「ゆーちゃん!!」
窓ガラスが割れた音を聞いたのか・・・みっちゃんが駆けつけた。
「確かに最近の人気は下降気味やったかもしれん・・・でも、うちがデビューできたのは
娘。のおかげなんや!! それを・・・それを・・・勝手に壊して・・・」
「ゆーちゃん! それは言い過ぎやよ!!」
「みっちゃんは黙っとき! 自覚があらへんからこんなことするんや・・・
自分が娘。の一員である自覚がないから平気で逃げたりできるんや!!」
「・・・」
ゆーちゃんは苦しそうに胸を押さえながら続けた。
話すその一時も・・・俺から目を離さない。
「明日香は勉強するために・・・彩は結婚と夢のために・・・紗耶香はソロデビューのために・・・
辞めるには必ず大切な理由があんねん!! それも自分のためや・・・全部が自分のためや!!
でも・・・あんたのしてることは・・・違うやろ!? ツラくなったから・・・逃げてるだけやん!!」
オレは・・・何も言い返せなかった。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月04日(水)03時02分02秒
- …続き気になる。
- 33 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月05日(木)02時33分25秒
- 「ゆーちゃん・・・少し言い過ぎやて・・・」
「・・・うちは・・・あんたのことが分からへん。みっちゃんや娘。のみんなから聞いても・・・
ホンマに実感が湧かん。今日のニュースで・・・ますます分からなくなった」
「ゆーちゃん・・・!」
みっちゃんが何度もフォローに入ってくれているけど、ゆーちゃんは止まらない。
オレは・・・じっと立ち尽くしていることしか出来なかった。
「あんたは・・・うちを好きなのは分かる。でも・・・うちは・・・」
「ゆーちゃん! それ以上ゆーたら、あたしだってこれ以上黙ってへんで!」
「・・・嫌いや。あんたが・・・まりっぺが嫌いや! 二度と顔なんか見たないわ!!」
目の前が・・・暗転した。
もう・・・もう・・・何を見ていけばいいのか・・・分からない・・・
何を目指して歩いていけばいいのか・・・分からない・・・
「こんなところで・・・うちも黙ってるわけにはいかへん・・・事務所に連絡とらんと・・・
みっちゃん・・・すまんが、肩かしてくれへんか・・・公衆電話のところでええんや・・・」
「・・・じっとしてるように・・・言われてるやんか・・・」
みっちゃんは・・・泣いていた。
オレが泣けないのを分かっているのか・・・代わりに泣いてくれているように見えた・・・
「・・・ならええわ・・・自分で行く・・・」
足を付き・・・ふらふらしながらも立ち上がる。
側にある壁に手をつきながら這いつくばるように歩く。
その視線の先に・・・オレの姿はない。
「・・・事故で記憶がなくなろうが、無期限休養になろうが・・・うちは絶対諦めへん・・・
ここまで頑張って来たんや・・・ここ・・・ま・・・で・・・」
オレの真横を通り過ぎようとして・・・そして崩れ去った。
床に沈んでいるゆーちゃんは・・・動かなかった。
「ゆーちゃん!!」
みっちゃんが・・・ナースコールのボタンを押したのが見えた・・・
- 34 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月06日(金)23時27分41秒
- ゆーちゃんは静かにベットに横たわっていた。
あれからすぐに医者が来て・・・診察したけど、命に別状はなかった。
ずっと眠っていた身体が興奮した意識について行かなかったのが原因だった。
要は気を失ったままなのだ。
「・・・まりっぺ・・・どうする? 帰るんやったら、カギ渡しておくよ・・・」
「・・・」
「うちは・・・ゆーちゃんが起きるまでここにおるつもりや」
みっちゃんは・・・遠回しにオレを帰らせようとしているのかもしれない。
そうだろう・・・今、オレはゆーちゃんの回復を妨げているのだし・・・
それにハッキリ言われたんだ・・・キライなのだ。オレのことが・・・ダイキライなんだ・・・
「分かった。ロビーで待ってな・・・ゆーちゃん目覚めたら・・・一緒に帰ろう・・・」
「・・・」
「まりっぺ・・・」
どうしたらいいんだろう・・・
ゆーちゃんは俺がキライなんだよ・・・二度と顔も見たくないんだよ・・・
でも、オレは? オレの気持ちは・・・?
・・・何を言われても・・・ダイキライって言われても・・・
オレはゆーちゃんが好きだ。今でも・・・好きなんだよ・・・
「・・・イヤ・・・帰るのはイヤ・・・」
「・・・」
「このまま・・・帰れないよ。ゆーちゃんにキラわれたままじゃ・・・帰れないよ!
確かに逃げてたよ・・・ゆーちゃんがいなくなって、不安で・・・逃げてたよ・・・
でも! 今日ゆーちゃんに言われて・・・変えなきゃいけないって思ったんだ・・・
だから・・・だから・・・キラわれたままじゃ・・・イヤだよ・・・」
みっちゃんは微笑んだ・・・オレがそう言うのを待っているようだった。
「・・・らしくなってきたやんか。いつものまりっぺはそんな風に考えるべきや。
そろそろ、目覚める頃やし・・・うちがロビーで待ってるよ。
まりっぺがちゃんと言えば・・・ゆーちゃん分かってくれるよ。記憶がなくても・・・」
・・・みっちゃんは部屋を出て行った。
オレは・・・怒られることを覚悟して・・・その手を握っていた。
ゆーちゃんの手は暖かかった。
- 34 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月06日(金)23時36分44秒
- しばらくしてから・・・ゆーちゃんは目を覚ました。
目の前にオレがいることが信じられないのか・・・何度もまばたきをして・・・
再び、確認したみたいだった。
「・・・」
「よかった・・・起きた・・・」
「・・・みっちゃんは・・・?」
バツが悪そうに・・・ゆーちゃんはそっぽを向いて全く関係ないことを訊いてきた。
オレはちょっと笑いそうになって・・・ガマンした。
「うん・・・今、ロビーにいるよ。ゆーちゃんが起きるまでは待ってるって・・・」
「・・・そうか・・・あのさ、悪いんやけど、手を離してくれへんか・・・」
オレはまじまじと自分の手を見て・・・急いで布団の中に戻した。
顔が赤くなるのが分かる。
「ご、ごめん・・・」
「何でここにおんねん・・・うちが言うたこと・・・分かってへんのか・・・」
「・・・」
「・・・謝ってもどうしようもないことは・・・分かってるよ。
娘。は解散しちゃったし・・・オレは多分事務所をクビにされると思う。
でも・・・逃げないって決めたんだ・・・自分の気持ちに・・・」
「・・・」
「どうしても・・・どうしても、ゆーちゃんが・・・スキなの。ダイスキなの・・・
キライって言われても、二度とカオ見たくないって言われても・・・でも、スキなの。
オレの記憶がなくたって・・・キラわれたって・・・スキなんだもん・・・」
オレは布団をぐっと握りしめた。
泣いちゃいけないと分かってても・・・ナミダが溢れる。
どうしても分かって欲しかった。オレの気持ちの何万分の一でもいいから・・・伝わって欲しかった。
- 35 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月06日(金)23時37分56秒
- 「・・・あー!! 分かった! うちが悪かった! そうしとこーや」
「・・・?」
「あん時は・・・娘。の解散でアタマがいっぱいやった。それで・・・まりっぺが来たから・・・
誰かのせいにせんとやってられへんかった・・・別になっちでもカオリでもよかったんや・・・
メンバーの誰かだったら・・・よかったんやと思う。ホンマに・・・悪かったな・・・」
「・・・」
ゆーちゃんは・・・オレのアタマを抱きしめてくれた。
短く切ったオレの髪を・・・いつものようにやさしく撫でてくれる。
「短くしても・・・カワイイなぁ。ちょっと長さが均等やないけど」
「へへっ・・・急いで切ってきたからね。ついでだから髪を黒く戻そうかと思ってんだ・・・」
「後でうちが切り揃えてやるわ・・・ん? 何や? じっとこっち見て・・・」
記憶がなくても・・・分かってほしい。
いつもしてくれたように・・・してほしい。
「・・・ん・・・」
オレは・・・何とかやっていける・・・ゆーちゃんさえいれば・・・
ゆーちゃんさえいれば・・・
- 36 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月06日(金)23時40分16秒
- 33と34の間に入るレス
ゆーちゃんは静かにベットに横たわっていた。
あれからすぐに医者が来て・・・診察したけど、命に別状はなかった。
ずっと眠っていた身体が興奮した意識について行かなかったのが原因だった。
要は気を失ったままなのだ。
「・・・まりっぺ・・・どうする? 帰るんやったら、カギ渡しておくよ・・・」
「・・・」
「うちは・・・ゆーちゃんが起きるまでここにおるつもりや」
みっちゃんは・・・遠回しにオレを帰らせようとしているのかもしれない。
そうだろう・・・今、オレはゆーちゃんの回復を妨げているのだし・・・
それにハッキリ言われたんだ・・・キライなのだ。オレのことが・・・ダイキライなんだ・・・
「分かった。ロビーで待ってな・・・ゆーちゃん目覚めたら・・・一緒に帰ろう・・・」
「・・・」
「まりっぺ・・・」
どうしたらいいんだろう・・・
ゆーちゃんは俺がキライなんだよ・・・二度と顔も見たくないんだよ・・・
でも、オレは? オレの気持ちは・・・?
・・・何を言われても・・・ダイキライって言われても・・・
オレはゆーちゃんが好きだ。今でも・・・好きなんだよ・・・
「・・・イヤ・・・帰るのはイヤ・・・」
「・・・」
「このまま・・・帰れないよ。ゆーちゃんにキラわれたままじゃ・・・帰れないよ!
確かに逃げてたよ・・・ゆーちゃんがいなくなって、不安で・・・逃げてたよ・・・
でも! 今日ゆーちゃんに言われて・・・変えなきゃいけないって思ったんだ・・・
だから・・・だから・・・キラわれたままじゃ・・・イヤだよ・・・」
みっちゃんは微笑んだ・・・オレがそう言うのを待っているようだった。
「・・・らしくなってきたやんか。いつものまりっぺはそんな風に考えるべきや。
そろそろ、目覚める頃やし・・・うちがロビーで待ってるよ。
まりっぺがちゃんと言えば・・・ゆーちゃん分かってくれるよ。記憶がなくても・・・」
・・・みっちゃんは部屋を出て行った。
オレは・・・怒られることを覚悟して・・・その手を握っていた。
ゆーちゃんの手は暖かかった。
- 37 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月06日(金)23時45分03秒
- なぜかレス数がズレてるし・・・
まあとりあえず、一段落つきました。
ここまでやぐちゅーっぽくなかったんですけど、
ここから先はかなりやぐちゅー色を出していく(予定)です。
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月07日(土)13時52分14秒
- 出していって下さい!やぐちゅー最高ですからね。
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月07日(土)16時28分35秒
- ・・・が多くて読みにくい。
もうちょっと減らしてくり。
- 40 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月07日(土)23時56分16秒
- >>38
今まではだいぶみっちゃんが幅を利かせていましたが、
これからはフォローにまわると思います。メンバーも絡ませていきたいと
思ってます。やっぱりやぐちゅーは書いててもいいもん(わら
>>39
三点リードの数が多いのはクセなんです。なくそうなくそうと思ってるんですけど。
読みにくいという意見が出たので意識的に減らしてみます。それでも多いかも。
- 41 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月08日(日)01時25分44秒
- 「よかったねー。散歩できるようになって」
オレは車椅子を押しながらゆーちゃんと外に出かけた。
外はすでに紅葉が始まっていて、枯れ葉が舞い始めていた。
「そうやな。ホンマは真里と一緒に歩きたいんやけどな・・・」
「何言ってんの! リハビリしてるんだし、すぐに歩けるようになるよ。そしたらさ、どっか行こうよ」
「温泉・・・とかええかもなぁ。寒くなる季節やし」
あの事故で一番ひどくケガしたのは頭だった。
頭蓋骨の陥没骨折をしていて、何よりこのケガが心配の種だった。
他のケガはそれに比べれば大したことなかったのは唯一の救いだった。
右足首の骨折、肋骨の数本に裂傷程度で内臓にダメージがなかったのは奇跡らしい。
ゆーちゃんは、あの日以来・・・オレが娘。を辞めて以来「真里」と呼ぶようになった。
別にそう呼ぶように決めたわけじゃないけど、いきなりゆーちゃんが言い始めたのだ。
・・・すごく嬉しいけど・・・
「でもさ、何で退院させてくれないんだろうね? もう松葉杖があれば生活できるし、
オレが助けられるから・・・記憶喪失って入院しなきゃいけないのかな?」
「・・・」
「ま、でもアタマのケガだから甘く見ないほうがいいかもね・・・ってどうしたの?」
「なあ・・・真里・・・」
ゆーちゃんは車椅子に寄りかかりながら立ち上がろうとした。
「ちょ、ちょっと!」
「そこのベンチに行くだけや・・・」
「肩貸すよ。あんまり無理しちゃダメだよ・・・」
「・・・何でもあらへんわ。うちが今まで頑張りすぎてたから、神様が休みをくれたんや。
じっくり身体を直すことだけ、考えればええんやな・・・」
「そ、そうだよ。無理しちゃダメだよ・・・」
ゆーちゃんの横顔が悲しそうなカオだったのを・・・オレは見た。
ひどく憂鬱そうで、悲しくてどうしようもないっていったカンジのカオだった。
何か・・・自分の中で不安が渦巻き始めていた。
- 42 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月08日(日)01時55分14秒
- 「ちょっと出かけてくるわー」
「あれ・・・みっちゃん、今日は出かけるの?」
「事務所にな。なんや、レコーディングのことで話があるゆーてな・・・まりっぺは?」
「ゆーちゃんが歩けるようになったからねー♪ そろそろ退院できるか聞きに行こうと思ってさ」
娘。が解散して二週間が経った。
マスコミの報道はだいぶ下火になってきたけど、週刊誌には連日のように記事になっている。
オレは・・・髪を黒くした。戻したって言ったほうがいい。
真っ黒のショートヘア。すれ違っても矢口真里だと気づく人はいなかった。
「最近、ゆーちゃんの回復ぶりはすごいよなぁ。スキな人が側にいるって言うのは
ホンマにええことなんやとつくづく思うわ・・・」
「へへっ・・・まーねーって言いたいんだけど、ここ二、三日熱を出してるみたいなんだよ。
ずっと身体がだるいって言ってたでしょ?」
「そやなぁ。でもさ、殴り合いした次の日とか熱が出るって言うやん? それとちゃうの?」
「ぶう! ゆーちゃんと殴り合いなんかしてないもん!」
「ははっ・・・でも、入院してるんやから、それぐらいあるかもよ。医者に聞いてみたら?
でも、車に轢かれても死なんかったんや。だいじょぶだと思うで・・・ほな、行ってくるわ」
みっちゃんの言うとおりかもしれない。
あれだけお酒を飲んでもまるで酔わなかったゆーちゃんだし・・・
風邪をひいてもあんまりダウンしなかったから、だいじょぶかな。
「・・・それじゃ、オレも出かけようかな。今日は何着てこうかなぁ」
最近の悩みはゆーちゃんと逢う時の格好だ。
やっぱりゆーちゃんの前ではカワイクしていたいもんね。
- 43 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月09日(月)02時45分01秒
- 「すみません・・・お呼び立てするようなことをしてしまって」
「いえ、構わないですよ。ちょうど昼休みでしたから」
病院に着いてから、オレはゆーちゃんの担当医に会った。
内科の部屋を一つ借りて、話をすることが出来た。
「あの、聞きたいことがあるんです。二、三日ずっと微熱を出してるじゃないですか。
それってだいじょぶなんですか?」
「え、ええ・・・最近冷え込みがひどくなってきましたから。ただの風邪の症状ですよ」
「・・・」
「・・・」
沈黙。
おかしかった。医者の態度が明らかに変だった。
不自然すぎるのがオレにも分かった。
「確かにゆーちゃんは記憶がないですよ。オレのことに関してですけど・・・
なのに、どうして退院させてくれないんですか? 片足しか骨折してないんだから、
入院するほどじゃないでしょう? それってやっぱり変じゃないですか?」
「・・・」
「お願いです・・・答えてください。もしかして、何かあったんですか?」
医者は苦々しく机に頬杖をついた。
大きくため息をついて・・・こちらを向いた。
「中澤さんは・・・分かりました・・・」
「・・・」
「落ち着いて聞いてください。一から順に話します・・・」
どくん・・・どくん・・・
医者の真剣な表情で、オレの心臓は高鳴った。
いい意味ではなかった。恐怖とか心配とか、悪い意味で・・・
「中澤さんが轢き逃げに遭った時・・・検査しました。胸部を強打されたようだったので、
レントゲンを撮りました。それが・・・ここにあります。見てください」
医者は引き出しの中の茶封筒からネガを取り出した。
それを蛍光版に差し込む。
「これは肺のレントゲン写真です。肋骨の数本にヒビが入っていますが、
大切なのはここです。ここを見てください」
「・・・」
「肺の下の方・・・ここは横隔膜って言うんですけど、ここに影があります。
申し上げにくいんですが・・・ここに影がある可能性は一つしかないんです」
どくん・・・どくん・・・
イヤな鼓動は現実のものとなりつつある。
ひどい・・・現実ってホントにひどすぎる。
「ガンです。肺ガンなんですが・・・」
「ここを切り取れば! ここを切り取れば・・・助かるんじゃないんですか!?
よく言うじゃないですか。ガンはその部分を切除すれば、あとは何とかなるって・・・」
医者は軽く頭を振った。縦ではなく・・・横だった。
- 44 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月09日(月)02時53分31秒
- 「あなたの望みを潰すような言い方しか出来ませんが・・・これだけ大きな影があると、
横隔膜を全部切除しなければいけないんです。それだけならまだしも・・・」
「・・・」
「おそらくは肺の方へ転移してるはずです。ガンにも種類があります。腫瘍のようにできるものと、
砂を撒き散らしたように粒にできるものがあります。この大きさで、肺に影がないってことは・・・」
「事故を起こす前に身体の不調を訴えてませんでしたか? 長いこと風邪をひいているような・・・」
「・・・言ってました。なかなか風邪が治らないって・・・」
「典型的な症状です・・・初期症状の。どれぐらい前か分かりますか?」
「ちょっと分かりません・・・でも、だいぶ前から・・・言ってたと思います」
「そうですか・・・」
オレはアタマの中が真っ白だった。
信じるとか、信じないとか、そう言う次元じゃなくて・・・
許せなかった。神様が。ゆーちゃんに残酷なことをする神様が許せなかった。
「末期ガンなんです。いつどんなことがあってもおかしくないんです。だから、入院していただいて・・・」
「・・・」
「医者のクセに望みのないようなことを言ってしまって、すみません」
「黙っていた方が・・・いいんですね。ゆーちゃんに・・・」
すると、医者の気難しそうな顔がさらに歪んで見えた。
これ以上関わりたくないような・・・親からしかられるのがイヤな子供のような顔をした。
「中澤さんは・・・知っています。自分がどんな状況におかれているのか。
そして、自分の命が長いこと持たないことも・・・分かっています」
オレは医者の言葉に耳を疑った。
知ってる・・・ゆーちゃんは自分のことを・・・ガンのことを知ってる?
「・・・諦めてるんです。治療も手術も。自分が死ぬのを・・・ただ、待ってるだけなんですよ」
- 45 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月09日(月)04時01分07秒
- ゆうちゃん!だから1@にしとけって言ったのに!!
- 46 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月10日(火)02時17分33秒
- >>45
??? 意味分かんないですけど・・・レスありがとうございます(わら
- 47 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月10日(火)02時41分16秒
- オレはすぐにゆーちゃんの部屋に向かった。
知っている。自分を苛んでいる病気を知っている。
じゃあ何で・・・何で諦めてるの・・・?
部屋の扉を開けようとして・・・止まった。
聞こえたのだ。ゆーちゃんの歌声が。
久しぶりに聞くゆーちゃんの歌だった。
せつなさも、優しさも、さびしさも・・・
すべて光にかえて・・・
自分に魔法をかければ・・・
聞いたことのない歌だった。ゆーちゃんがよく口ずさむ歌でもなかった。
その歌声はとても儚そうで、でも美しい旋律を奏でていた。
歌がうまいとかじゃなくて・・・キレイだった。ホントにキレイだった。
「・・・」
「ちょ、なんや・・・こっぱずかしいわ。立ち聞きしとったんかい」
扉を開けるとゆーちゃんは顔を赤くした。
いつも通りだ。事故を起こす前と何も変わらないゆーちゃんの態度だった。
責められないよ。そんな顔されると怒れないよ・・・
「なんや? 何でそんな泣きそうな顔してねん? みっちゃんにでもイジメられたか?」
「・・・違う・・・」
「じゃあどうしたん? 最近、真里は泣きすぎやで。娘。の頃は全く泣いてへんかったやん・・・」
オレは耳を疑った。
今の言葉は、今のゆーちゃんから出てくるわけがない。
娘。の頃は全く泣いてなかった・・・娘。の頃は。
「記憶がないって・・・それまでウソついてたの?」
ゆーちゃんはしまったといった様子を見せたが、取り繕うことはしなかった。
黙っていた。唇をかんで・・・
「ゆーちゃん・・・ガンなんだってね。それに今の言葉は・・・どういうことなの?」
- 48 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月10日(火)03時08分46秒
- ベットに半身を起こしたゆーちゃんは落ち込んだ様子もなく、オレを見た。
その瞳には力があった。末期ガンだとは思えないほどの強さだ。
いつもと同じ・・・ライヴでみんなをまとめる時と同じ強さがまだある。
「医者に聞いたんか・・・まあ、真里には口止めしといてくれと頼んだわけやないからな」
「何で!? 何でそんなに落ち着いてるの!? 自分の命が・・・」
「いつ死んでもおかしないんやろ? 自分の身体は自分が一番よー知ってるわ。
毎日毎日、少しずつ身体が悲鳴上げてるのがしっかり聞こえるわ」
あまりの落ち着きに、オレが苛立った。
神様でもないのに、悟っているような雰囲気があった。
諦めているのが分かった。
「諦めないで!! お願いだから諦めないで!! 手術受けて・・・元気になって!!」
「話、聞いたんやろ? 手術しても遅すぎなんや。横隔膜と肺を全部取らなあかん。
そんなことして生きとる奴はおらへんわ」
「・・・」
「なんてゆーか忘れたけどな・・・肺に出来たガンは取りきれへんほど小さいらしいんや。
しかもたくさんあるらしいで。分かるかなぁ・・・逸見さんがかかったガンと一緒や」
オレは誤解していた。そして、医者も誤解している。
ゆーちゃんは死ぬのを待っているんじゃない。準備しているんだ。
諦めたんじゃない。受け入れたんだ。自分の今いる状況を。
「オレは・・・どうすればいいんだよぉ・・・娘。も失ってゆーちゃんも・・・」
「うちはまだ死んでないわ! でも・・・ごめんなぁ。そんなに長そうやないのは確かや・・・」
「・・・」
「ごめんなぁ・・・ホンマにごめんなぁ・・・」
ゆーちゃんは泣いていた。
初めて下を向いて・・・布団を力いっぱい握りしめていた。
- 49 名前:裕子の客@45 投稿日:2000年10月10日(火)04時03分05秒
- >>46
ほら、あんまりタールの重いタバコって体に毒ですよね?
それで1@のタバコだったら、まだマシかなって思いまして・・・。
分かりにくかったですね。すんません。
- 50 名前:ジース 投稿日:2000年10月11日(水)22時22分15秒
- あれ・・BOOTREGさんのも消えてません?消えてるよ〜・・。
頑張って下さい!
- 51 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月12日(木)03時00分01秒
- >>49
昨日もつけたんですが再度レスを。ありがとうございます。
ゆーちゃんは1ミリでもタバコ吸ってるんですかね?
周りの副流煙にやられたと思ってください(わら
>>50
ご指摘通り、俺のUPした奴も板飛びしてました。
最近、落ち着かないけど、しょうがないっすね。
ここで書かせてもらってるだけありがたいことですから。
わざわざ俺の小説にレスなんか付けてもらってありがとうございます。
それと・・・消えたレスにあったんですが、
「オレ」の表記に違和感を覚えた、というものがあったので・・・
これから「あたし」で書きます。書いてる俺自身も失敗したと思ってましたから。
おかしいと感じたり、こうしたほうがいいと思ったら遠慮なくレスお願いします。
- 52 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月12日(木)03時01分19秒
- 「うちかて・・・死にたない。娘。はなくなっても一からやり直したいわ・・・
でも、それも叶わない身体や。だから・・・だからじゃあらへんけど・・・」
「・・・」
「真里とはちゃんとやっていきたいんや・・・スキだって言ってくれた真里の気持ちに、
少しでも答えてやりたいんや。だから、ここまで頑張ってこれたんよ・・・」
「記憶がないってウソをついてたって・・・それは間違いや。
最近までホンマに記憶がなかったんよ。娘。が解散してから・・・真里が来て、あの次の日に、
急に記憶が戻ったんや。いつ言おうかタイミングを計ってたって言って欲しいわ・・・」
「ねぇ・・・あたしは、どうすればいいの・・・?」
「・・・ここに来てくれへんか?」
あたしはゆーちゃんに導かれるように近づく。
布団から起き上がったゆーちゃんは・・・めいっぱいあたしを抱きしめた。
苦しくなるぐらい・・・
「一緒にいて欲しいんや・・・真里がおらへん生活なんか考えられへんよ・・・
イヤでもええんや・・・少しの時間でええんや・・・」
「・・・違うよぉ・・・ゆーちゃんいないと、あたしも生活できないよぉ・・・」
ゆーちゃんは短くなったあたしの髪にキスをする。
まさぐるように首元に小さな手を回す。
「・・・ひなたのカオリがするなぁ・・・真里はいっつもそうやな・・・元気な太陽の匂いがする」
「な、何よぉ・・・それ・・・」
ゆーちゃんがあたしの頬を撫でる。
熱っぽい暖かい手と・・・少しやつれたように見える顔立ち。
「・・・」
キス。
これだけあればあたしは何もいらない・・・ホントに何もいらないんだよ・・・
- 53 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月12日(木)03時02分50秒
- 娘。が解散して三週間経った。
いつも通りに病院に向かうと・・・病室から笑い声が聞こえた。
どこかで聞いた声も混じっている。
「ゆーちゃん?」
「あ、まりっぺだ!? 全然雰囲気違うー」
ビックリした・・・
少し広めの個室だけど、部屋の中は狭く感じられた。
ものすごい久しぶりだった。娘。の・・・いや、元娘。のメンバー。
なっちとカオリと圭ちゃん・・・いわゆる「年長組」のメンバーだった。
「ど、どうしたの・・・みんな・・・」
「ゆーちゃんのお見舞いに来たに決まってるでしょ? マスコミもだいぶ静かになったからね」
圭ちゃんがパイプ椅子に座りながら答えた。
なっちもカオリも同じように頷いた。
「それと・・・報告に来たんだよ。あたしたちの今後の活動の予定だよ」
「圭ちゃんは? やっぱりいつもどおり『プッチ』で・・・」
「いや・・・あたしは『プッチ』を辞めたんだ。娘。があってのプッチだと思ってたから・・・
まあ、それにレコード会社も辞めてるから・・・まりっぺと一緒なんだけど」
えっ・・・圭ちゃんも辞めたの?
みんな・・・みんな、あたしのせいで・・・
「ち、違うよ・・・まりっぺが辞めたからじゃないよ。あたしはずっとソロデビューしたかったから・・・
これを機会に自分で会社まわって売り込んでるんだよ。こんなこと出来るきっかけがなかったから」
「・・・」
「なっちとカオリはつんくさんがプロデュースしてくれるけど・・・あたしはちょっとね。
ちょっとどうなったか話そうか・・・」
- 54 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月12日(木)03時03分34秒
- 娘。がなくなってから・・・
それぞれ個々のグループで活動することが決まった。プロデューサーはつんくさんのままで。
まず、あたしが辞めたことでタンポポは解散した。カオリのソロデビューの件も重なった結果だ。
そして、圭ちゃんのプッチ脱退で、一時は全てのグループがなくなる話も出たそうだ。
でも、結局は人気のあるグループということで・・・いつもどおりのシャッフルが行われた。
なっちはかねてから決められた通り本格的にソロデビューが決まった。
タンポポがなくなったことでカオリもソロデビューが決まる。この辺は予想通りだった。
プッチには・・・梨華っちが入ったのだ。ごっちんをリーダーにしてよっすぃーと梨華っちで。
そして・・・へその企画だったミニモニが本格的に動いた。ののちゃんとあいぼんの二人で。
正直、ここが一番不安だけど・・・じきに慣れるだろう。
みんな・・・ちゃんと残れた。
ゆーちゃんとあたしを残して・・・
「ってこと・・・娘。はなくなったけど、みんなちゃんと頑張ってるよ」
圭ちゃんの言葉にウソはなかった。なっちもカオリも・・・あの頃のままだった。
娘。で活躍していた頃の光が全く失われていなかった。
- 55 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月12日(木)03時12分50秒
- 「よかった・・・あたしが勝手に辞めたことで迷惑かけちゃって・・・ごめんね」
「もう過ぎちゃったことだよ。みんなも頑張ってるんだから・・・まりっぺも頑張って」
なっちが声をかけてくれた。
娘。が解散して三週間・・・たった三週間しか経っていないのにみんなが遠く感じた。
「それより・・・ゆーちゃんちゃんとゴハン食べてるの?」
「ちゃんと食べてるで・・・何や、急に?」
「カオリの見た感じだけどさ、ちょっとゆーちゃん痩せたよね? 入院ってすると太るって言うじゃん?」
「・・・」
ゆーちゃんは黙り込んだ。あたしも・・・つられて下を向いた。
「ど、どーしたの? カオリ何か変なこといった?」
「今、ちょうど年長組しかおらへんか・・・話しておいてええかもな」
「ゆーちゃん!!」
「構わんて。黙っとったっていつかバレるんや。それに長いこと一緒にやってきたメンバーやし。
黙ってる方が失礼やて」
ベットに据え付けてあるテーブルにあったお茶を飲み干してから、周りを見渡した。
まるで悲しい素振りを見せない・・・ホントに強いよね・・・
「うちな・・・ガンなんや。肺ガン。しかも・・・末期や」
「・・・は?」
「だから・・・肺ガンにかかってるんや。ここから動くことが出来へん」
重苦しい沈黙が流れる・・・
なっちとカオリと圭ちゃんが、あたしの顔を見た。
あたしは・・・下を向いた。
「ちょ、ジョーダンでしょ・・・?」
「・・・」
「ホント・・・なの?」
「・・・ジョーダンでこんなこと・・・言えるわけないじゃん・・・」
喉が詰まる。まぶたが熱くなる。
買ってきた午後の紅茶の缶が・・・少しだけへっこんだ。
- 56 名前:ジース 投稿日:2000年10月12日(木)05時17分50秒
- おっ復活してますね。ご苦労様です。
書かせてもらってるだけありがたく、、ってホントですよね。感謝感謝です。
ここのやぐちゅ〜切なくて好きっすよ〜矢口の裕ちゃんへの愛がなんとも・・。読んでて泣けてきます・・。
僕も、オレよりあたし、の方が好きかな?読んでるうちに違和感無くなりましたけど。
- 57 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月13日(金)01時47分23秒
- >>56
毎度毎度のレスありがとうございます!
書くのは痛いほうが好きですけど、読むのは甘い方が好きなんです。
矢口が一途なのは書いてて楽しいです♪ 割と絵になると思うし。
やっぱり「あたし」にしたのは正解ですねぇ。俺もそう思います。
- 58 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月13日(金)01時48分34秒
- 「ウソ・・・」
三人は驚きを隠せなかった。
一番、逆境に強い圭ちゃんでさえ、椅子から立ち上がったぐらいだ。
「このことはみんなのところで止めておいて欲しいんや・・・ごっちんたちにはまだ刺激が強すぎる。
みんなを信用して言ってるんや・・・頼むで」
「どうして・・・どうして気が付かなかったの? そんな大事なことに・・・」
「全部仕事のせいには出来へんけど・・・ずっとカゼひいてると思ったんやよ。
その時に気づかなきゃあかんかったんや・・・三ヶ月以上もカゼが長引くわけがないって」
「ねえ・・・ゆーちゃんは助かるの? 手術とかすれば治るの?」
「・・・無理や。切除できるようなガンじゃあらへんねや」
「そう・・・じゃあ、何でこんなところにいるの?」
きつい口調だった。
なっちはゆーちゃんのところに詰め寄ると顔を覗き込んだ。
「諦めてるんじゃないの? 短い時間しか残ってないから・・・全部諦めてんじゃないの?」
「ち、違うよ・・・ゆーちゃんは・・・待ってるんだよ」
「何言ってんだよ、まりっぺ! 死ぬのを待ってるってことは・・・諦めてるってことじゃないの!?」
「芸能界に戻って活躍するのは・・・無理かもしれない。でも、どうしてここで寝てるの?
ここで寝てるだけでゆーちゃんはホントにいいの?」
「・・・」
「全部の可能性を捨ててるんじゃないの!? わずかの望みも放棄して・・・諦めてるんじゃないの!?
誰にも迷惑かけないで病院で死んでいくなんて・・・あたし絶対認めない」
あたしは・・・ずっと考えていた。
医者に話を聞いたし、自分なりに慣れない医学書を見てゆーちゃんの助かる方法を探した。
・・・でも、何をしても助からないという事実だけしか分からなかった。
だから・・・
「じゃあ、うちは何をすればええんや・・・教えてくれへんか!?」
「そ、それは・・・」
「そんなもんはあらへんねや!! 何もかもが遅すぎなんや・・・何もかもが・・・」
それでもゆーちゃんは泣かなかった。
布団を握りしめるとその腕が少しやつれているのがはっきり分かる。
「一つだけ・・・あるよ」
「まりっぺ・・・」
「もう病院なんか出ようよ。ここにいても何も見つからないよ。あたしは・・・あたしはね・・・」
「ゆーちゃんと一緒に暮らしたい」
- 59 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月14日(土)01時38分43秒
- 「結構時間かかっちゃったね・・・」
「・・・真里の荷物が多すぎやて。こんなに時間がかかるとは思わへんかった」
新しい生活が始まった。
あたしの望んでいた生活だった・・・ゆーちゃんと離れない生活。
病院側は何も聞かずにゆーちゃんの外出許可を出した。
退院に近い。定期検診はあるものの、そんなことがあまり意味がないことはあたしたちがよく知っている。
残されたわずかの人生を・・・スキなように過ごすようにしろと言わんばかりだった。
「でも・・・案外ええトコやなぁ。びっくりしたわ」
「へへっ、結構探すのに苦労しただけあるからね」
場所は都心から少し離れた小さなアパートだ。
名義はみっちゃんの名前で借りてある。未成年のあたしは承諾がないと家を借りることすらできなかった。
そこでみっちゃんが力を貸してくれた。あと、管理人にはちゃんと事情を話してある。
「ここから・・・何かすることが見つかるとええなぁ。でも、病院おるより気持ちええわ」
「助かればいいとか、長生きすればいいとか・・・そんなことは言わないよ。
でも・・・一緒に暮らしていこうよ。頑張って一緒に・・・歩こうよ」
「・・・」
ゆーちゃんは後ろからあたしを抱きすくめた。
「ちょ、まだ、片付け終わってないんだよ!!」
「関係あらへんわ。時間なんかたくさんあるし・・・何してええか分からへん。
でも・・・真里を抱きしめることだけはしてええんやもん」
「もう・・・」
肩越しにゆーちゃんのぬくもりを感じながら、横を振り向く。
そこには・・・ゆーちゃんの顔。
「・・・んんっ・・・」
いつもより・・・激しいキスだ。
そうだ・・・誰もいない。誰も邪魔されない・・・
二人きりの夜が続くんだ。
- 60 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月14日(土)02時47分59秒
- コンビニでお弁当を買った帰り道に・・・あたしは考えていた。
このまま、ゆーちゃんに身を任せることが・・・ホントに正しいことなのか。
二人にとって・・・あたしにとって本当によいことなのか。
それともやっぱりどこかで・・・後悔しているのかもしれなかった。
娘。を辞めたこと。芸能界を辞めたこと。歌を捨てたこと・・・
せつなさも、優しさも、さびしさも・・・
すべて光にかえて・・・
自分に魔法をかければ・・・
ゆーちゃんの口ずさんでいた名も知らない歌を思い出す。
あたしはせつなさも、優しさも、さびしさも・・・すべてゆーちゃんに見出した。
娘。にいるとき・・・いないときでさえ、すべてがゆーちゃんだった。
光がゆーちゃんだったのだ。
願っていたことなのに・・・二人で暮らすことを願っていたのに・・・
現実になって不安だらけになった。ゆーちゃんは不安から少しは開放されるかもしれない。
でも、あたしは・・・あたしは?
「・・・ただいまぁ」
せつなさも、優しさも、さびしさも・・・
すべて光にかえて・・・
自分に魔法かければ・・・
偶然だった。リビングでお菓子を食べていたゆーちゃんはあの歌を口ずさんでいた。
何の歌なのか分からないけど・・・娘。の頃に歌っていた記憶がない。
意味があるのかもしれない。
「あ、おかえりー。ちょ、来てみ」
「何か面白い番組やってるの?」
「プッチが出てるんや。ほら、何やってんねん!」
せかさせてあたしはゆーちゃんの隣に座る。
確かにそこにはプッチが映っていた。
ごっちんがセンターに左によっすぃー、右に梨華っちがいる。
「・・・何か見慣れない光景だね」
「・・・」
ゆーちゃんはあたしの言葉も聞こえないほど、集中していた。
食い入るように画面に釘付けになっている。
「ゆーちゃん・・・」
- 61 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月14日(土)04時20分13秒
- プッチの歌が終わってから・・・ゆーちゃんはしんみりと呟いた。
「なんや・・・みんな、うちがいなくてもしっかりやってるんやなぁ・・・」
「・・・」
「そんな顔せんでもええやん。誉めてるんやよ・・・みんなを」
「ライヴの前なんか・・・みんな緊張して誰かに助けを求めるような顔してるやんか?
そんな時、うちが声かけると・・・安心すんねん。それは何も真里だけやあらへん・・・」
「・・・」
「うちの娘。での役割はみんなに安心感を与えることやと思ってた。最後の砦みたいな、
そんなもんやと思っとったけど・・・いなくなれば、なればで何とかなるもんなんやなぁ・・・」
その姿に苛立ちや怒りは全くなかった。皮肉ではなく本気で感心していた。
まさに母親が娘を送り出したような・・・そんな感じだった。
「いつか真里もそうなるんやろうなぁ・・・うちがいなくなったら・・・」
「・・・」
違うよ・・・とは気軽に言えなかった。
この生活は永遠には続かない。それはゆーちゃんが一番よく知っているし、あたしもそう思う。
ゆーちゃんがいなくなったら・・・あたしは戻るだろう。あの世界に。
「・・・すまんな。うちの最期に付き合わせてしもうて」
「そんなことないよ・・・」
「世界の誰よりも・・・両親よりも、真里に最期を見てもらいたいんや・・・
うちがここにいたことの証明をしてもらいたいんや」
そう言って・・・ゆーちゃんは急にあたしの手を引いた。
「ちょ、ちょっと! 痛いよっ」
「・・・」
無言でゆーちゃんは布団の上にあたしを寝かせた。
組み敷くようにあたしの腕を固定する。
寂しさにも似た目で・・・あたしに訊ねた。
「抱くで・・・真里はそれでもええか?」
- 62 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月14日(土)04時45分09秒
- 底に秘める力強さを感じるその瞳は・・・娘。の頃のゆーちゃんの瞳だった。
本気であたしを愛してくれるような強さと包容力を併せ持っている・・・完全な姿。
あたしは無言だった。
嬉しい・・・言葉で表せないほど嬉しいけど・・・どこか悲しくもある。
身体を合わせないと・・・お互いの気持ちが繋ぎとめられなくなってきたから。
「・・・行くで」
無言の圧力に耐えられないのか・・・ゆーちゃんはあたしの口を塞いだ。
同時に湧き上がる・・・嫌悪感。
「・・・っ! イヤっ・・・だっ!」
「・・・」
ゆーちゃんはあたしの声を無視して舌を入れてきた。
腰に入っていた力が・・・抜け落ちる。
「ダ・・・メッ! ダメだよ・・・あっ・・・ゆ、ゆーちゃ・・・」
「・・・」
「何で・・・何で・・・いきなり・・・はぁっ・・・こんなことすんの・・・」
あたしの懇願は一切ムダだった。
迷いのない手つきで上着のボタンが外されていく。
「ダメだ・・・って、あっ・・・ダメだよ・・・ダメだって・・・ばっ・・・はぁっ・・・」
「・・・」
「な、何か・・・せっ、せつないよぉ・・・」
自分の吐息の熱さと押し付けられるゆーちゃんの身体に意識が飛びそうになる。
身を任せてもいい・・・悪魔の囁きがあたしを飲み込もうとする。
あたしは必死に食いとどまろうと努力する。
それでもゆーちゃんは止まらない。
ジーパンのベルトは緩められて、チャックとボタンが外された。
「や、やめてよぉ・・・あっ・・・こんなことしても・・・嬉しくない・・・」
「・・・」
「せつなくて・・・苦しいよぉ・・・んんっ・・・意味ないよぉ・・・こんなことしても・・・はぁっ!
あたしに意味ないよぉ・・・」
半裸にされたあたしは空いている手で顔を覆った。
何を言っても今のゆーちゃんにはムダだった。それが分かって涙が溢れた・・・
- 63 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月15日(日)00時00分23秒
- 顔を覆ってゆーちゃんの顔が見えなくなり・・・あたしは目を閉じて、身構えた。
なすがままになるしかない。でも、これでゆーちゃんが喜んでくれるなら・・・
・・・静かになった。
テレビの音が壁を越えてやんわりと聞こえてくるほど・・・静寂に包まれた。
「・・・ごめんなぁ・・・」
「・・・」
ゆっくりと目を開けて・・・ゆーちゃんが視界に入る。
こっちの方向を向かないで涙をこらえているようだった。
「これじゃ・・・うちのしてること、レイプと変わらへん・・・」
「・・・」
「ホンマは怖いんや・・・みんながうちのことを忘れてるのが・・・すごく怖いんや。
あの時やってきたことすべてが否定されそうで・・・」
「せやけど分かってる。みんながうちのことを忘れないのは頭では分かってる。
でも・・・何かはっきりとした証明が欲しいんや。だから・・・真里が・・・」
「・・・分かってるよ。あたしはゆーちゃんを忘れないし・・・キライにならないよ」
「最近分かるんや。もうホンマに長くないのが・・・」
それは・・・あたしにも分かった。
あたしに隠れて痛みに耐えている現場を何度も目撃している。
痛み止めが効かない・・・かといって、モルヒネを打ってごまかすのはゆーちゃんが嫌った。
だから、我慢するしかない。身体を横にして・・・気絶するような痛みに耐えていた。
「変な気分なんやけど・・・真里を抱きたいんや。これ以上ないってぐらい・・・
娘。の頃から少しはあったけど・・・今はそれを抑え切れんぐらい・・・」
「・・・」
「スキなんや」
再び・・・ゆーちゃんが動き出した。
「あっ・・・んんっ・・・!!」
あたしは・・・抵抗しなかった。
押し留めていた理性が飛んで・・・全てが流れた。
- 64 名前:裕子の客@隠れファン 投稿日:2000年10月15日(日)00時35分29秒
- おぉ!なんとディープな展開っ!!
ねえさん、一日でも長く生きてくれ。
- 65 名前:ジース 投稿日:2000年10月15日(日)02時34分09秒
- おおぅ!萌える・・(笑)
レイプ姉さんええね〜絵になるね〜・・。矢口の拒んでる姿がまた萌える・・(笑)
さてさてBOOTREGさんは何処まで絡ませるのでしょう。ここまでかな?それもかなり興味深いっす。
これって結構、、迷いますよね・・。
- 66 名前:ジース 投稿日:2000年10月15日(日)02時36分02秒
- あ、意味分かりづらいっすね。絡ませるって矢口と中澤を、です。
- 67 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月15日(日)03時05分48秒
- >>64
ディープな展開は・・・期待してるんですかね?(わら
そろそろ話も佳境に入ってきましたので、変わらず応援お願いします!
>>65-66
隣のスレで似たり寄ったりなことしてすみません(わら
でも、もともとやぐちゅーのコアシーンは書く予定でした。
初めてドロドロしたんで書いてて変なカンジでした。
多分、ここまででしょう。書いてて拒絶反応も出ちゃいましたし。
でも、分かんない(わら 確かにあってもいいかも・・・迷うなぁ。
- 68 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月15日(日)03時07分13秒
- 外から子供の騒ぐ声が聞こえて・・・あたしは目を覚ました。
日はすっかり上がっていて、寝過ごしたのが分かる・・・
何だか身体中に重りをぶら下げているようなだるさを感じる。
疲れが取れていない。
「・・・」
あたしの側にはゆーちゃんの寝顔がある。
何度も見た寝顔だけど・・・かわいい。起きているときと違ってどこか幼い。
あたしが起きたのか、小さく喉を鳴らして、寝返る。
急に寒さを覚えてそばにあったトレーナーを着込んだ。
ハダカのままでいるには正直、ツライ季節になってきた。
とりあえず、昨日コンビニで買ってきたコーンスープの封を開ける。
「ん・・・あれ・・・真里・・・?」
「あ、起きた? 今、あったかいコーンスープ入れるからね」
「・・・」
ゆーちゃんはまた布団を被りなおした。
下着姿のゆーちゃんが肘を立ててニヤニヤとこちらを見ている。
「な、なんだよぉ・・・こっち見て・・・」
「・・・どうやった? 昨日の夜」
あからさまにイジワルするゆーちゃんを見て何か言い返したかったが、出来なかった。
顔が真っ赤になるのが分かる・・・
言葉に出来ないけど・・・ホントは嬉しかった。
結局、あたしの大事なものは全てゆーちゃんが持って行ってしまった。
でも、後悔なんてなかった。昨日の夜にゆーちゃんに抱かれたことは・・・
あたしにとってこの上ない喜びだった。
「べ、別に・・・普通だよ・・・」
「ふーん・・・普通ねぇ・・・そりゃすごいわ。あんな真里が普通なんや」
「そ、そーゆー意味で言ったんじゃないよっ! でも、あたしは・・・もうちょっとね・・・」
「もうちょっと・・・なんや?」
「・・・もうちょっとやさしくしてほしかった・・・」
「ぶっ・・・ははははっ!!」
ポツリと言ったあたしの言葉に・・・ゆーちゃんは大爆笑した。
布団を身体に巻きつけるようにその場でぐるぐると転がっている。
「も、もういいもんっ。コーンスープあげないんだから・・・!」
「・・・いや・・・ごめんなぁ・・・? っく!?」
ゆーちゃんの顔が痛みで歪んだ・・・
「っくぅ・・・あっ・・・がっ・・・」
「ゆーちゃんっ!!」
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月15日(日)04時34分07秒
- ゆっ裕ちゃん!!何が起きたんだ〜〜!
- 70 名前:たれきりん 投稿日:2000年10月16日(月)02時05分46秒
- なんて・・なんてせつないんだぁぁ!!裕ちゃんも矢口も他のメンバー達も。
矢口が一途で、かわいすぎ。なんだか余韻にひたれるって感じっすねぇ。
裕ちゃんがんばれぇぇ!!
- 71 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月17日(火)02時21分01秒
- >>69
そろそろ異変を起こさないとゆーちゃん不健康じゃないじゃんって
ツッコミ入れられそうなので(わら
この後の展開を楽しみにしててください。頑張って書きます。
たれきりんさん >>70
大御所からのレスにメチャメチャ感激です!!(わら
俺如きの小説読んでいただいて、あまつさえレスなんてありがとうございます!
ゆーちゃん頑張っているように書きますんでこれからもよろしくお願いします。
…ですけど、学校あるんで小説UPは明日に(わら
すみません。
- 72 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月18日(水)00時20分20秒
- あたしは反射的に携帯電話を握っていた。
救急車・・・!
「だ・・・だいじょぶやっ!! 救急車呼ばへんで・・・だいじょぶや!!」
「何言ってんだよっ! 無理しちゃダメだって・・・」
「発作みたいなもんや!! やっと出れたんや・・・病院なんか・・・戻りとうない・・・」
ゆーちゃんは胸を押さえて肩で息をしていた。
身震いするほど冷え込んでいるにもかかわらず、額には脂汗が滲んでいる。
下唇を噛んだせいか・・・赤い糸のように出血している。
「・・・」
あたしは黙ってゆーちゃんの背中をさすった。
だいぶ落ち着いてきたらしく、呼吸が整ってきた。
蒼白の顔色でこちらを振り向いた。
「すまんな・・・」
「何言ってんの。しょうがないでしょ? あたしは分かってるから・・・ほら、カゼでも引くと
大変だから上に服着て・・・」
ゆーちゃんは・・・あたしの胸に顔を埋めた。
病気は自分との戦いだ。孤独で激痛を伴うものでもある。
そうとは分かっていても・・・黙って見ていることは出来ない。
ゆーちゃんがスキだから。ゆーちゃんがタイセツだから。
「・・・」
あたしはゆーちゃんの頬を撫でた。
いつもと逆だった。いつもゆーちゃんからしてもらうことを・・・あたしがしている。
「・・・」
キス。
祈りのこめたキスは・・・血の味がした。
- 73 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月19日(木)02時51分08秒
- ゆーちゃんと同居してから二週間経った。
二人での生活もぎこちないけど、ちゃんと回り始めた。
「・・・ゆーちゃん! いつまでも寝てないのっ!」
「ううん・・・もーちょっとえーがな・・・疲れてんねや・・・」
「寝てるのに疲れちゃうんだよ・・・寝すぎると逆に疲れちゃうんだから。
医者の人も適度に身体を動かしてくださいって言ってたでしょ?」
「ああ・・・夜動かしてるから・・・ええやんか・・・」
すけべーなこと言ってもあたしは動じない。正直・・・慣れてしまった。
ゆーちゃんの体調にもよるけど、今や生活のサイクルに入り込んでしまっている。
色ボケ・・・なんて言われそうだけど・・・
「バカなこと言わないっ!! 掃除の邪魔なんだから布団を片付ける!!」
「・・・分かったがな・・・」
そう言ってやって身体を起こす。
梳ってないショートヘアは乱れ放題なのにさらにぐしゃぐしゃにするからもっとすごくなる。
「テーブルにパンと昨日の残りのシチューがあるからあっためてどうぞ」
「はぁい・・・何か、だいぶ主婦っぽくなってきたなぁ・・・」
pipipipi・・・pipipipi・・・
「おー、ケータイ鳴ってるよ」
「はいはい。今出るよ・・・」
画面には・・・懐かしい名前が映っていた。
- 74 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月19日(木)02時51分42秒
- 「もしもし?」
「・・・やぐっちゃん? あたし・・・後藤だけど」
「おおっ! メチャ久しぶりじゃん!!」
「ちょっと聞きたいことあるんだけどさ・・・今、どこにいるの?」
こころなしかごっちんの声にいつもの元気がなかった。
どこか追い詰められているような感じがした。
「今、家だよ・・・どうしたの?」
「・・・今日発売の週刊誌にさ・・・ゆーちゃんがガンじゃないのかって報道があったんだよ。
それで・・・ホントかどうか聞きたくて・・・」
あたしは・・・固まった。
ゆーちゃんがガンであることはなっちとカオリと圭ちゃんしか知らない。
みっちゃんすら知らないのだ。みっちゃんの場合は・・・ゆーちゃんが伏せて欲しいと言ったらしいけど・・・
・・・バレた・・・
「・・・」
「やぐっちゃん・・・ホントのこと言ってよ。娘。はなくなってもね・・・あたしは元娘。のメンバーだよ。
ゆーちゃんがどうなのか知る権利はあるはずでしょ? みんな心配してるんだよ?
やぐっちゃんとゆーちゃんが辞めてから何してるのか・・・」
「・・・」
「よっすぃーも梨華っちも・・・きっとののちゃんもあいぼんも心配してるよ。
だから・・・ホントのことを教えてよ・・・」
- 75 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月20日(金)01時52分54秒
- 「・・・どうしたん?」
「・・・」
あたしは曖昧に笑うしかなかった。
そもそも、ごっちんたちはあたしがゆーちゃんと一緒に暮らしていることすら知らないのだ。
どうやって説明していいか分からなかった。
「・・・でっちあげだよ」
「?」
「マスコミの・・・でっち上げだって。あたしはまだその記事に目を通してないけど・・・
ゆーちゃんは違うよ・・・だいじょぶだよ・・・」
ごっちんは黙っていた。
小さくため息を吐き出すと・・・いきなり叫んだ。
「どうして・・・どうしてそんなウソつくのっ!!」
「・・・」
「あたしはね、今・・・みっちゃんと病院にいるの。ゆーちゃんが入院していた病院だよ!!
聞いたんだよ? 心配だから聞いたんだよ!? そしたら・・・ガンだって・・・」
あたしは凍りついた。
初めてゆーちゃんのガン告知を聞いたときと・・・ごっちんは同じ反応をしていた。
「ガンだって知って・・・あたしは圭ちゃんに電話したの。そしたら・・・知ってるって。
なっちとカオリも知ってるって・・・知らないのはあたしたちだけだって!!」
「・・・」
「なんで・・・なんでそんな大事なことを黙ってるんだよっ!! あたしたちも娘。のメンバーでしょ!?
年齢とか関係ないでしょ!? ゆーちゃんが心配なのは・・・誰だって一緒だよ!!」
ごっちんの嗚咽で・・・かき消された。
茫然としているあたしを見て、ゆーちゃんも何かに気づいたようだった。
「・・・まりっぺか?」
急に声の調子が変わった。
・・・みっちゃんだった。
「今、そばにゆーちゃんおるか・・・?」
「・・・うん・・・」
「悪いんやけど・・・代わってくれへんか?」
・・・あたしはゆーちゃんに携帯電話を渡した。
全てが明らかになった瞬間だった。
- 76 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月20日(金)23時27分01秒
- ピーンポーン・・・
来た・・・誰が来たのか確かめるまでもなかった。
あたしとゆーちゃんは・・・その訪問者がくるまで一言も言葉を交わさなかった。
「はい・・・」
玄関には・・・みっちゃんが立っていた。
その目はすでに泣き腫らしているように赤くなっていた。
やっぱり・・・知っちゃったんだ・・・
「・・・入って」
「・・・」
みっちゃんは頭を下げて家に入った。
短い廊下を抜けるとすぐにリビングがある。
そこに・・・ゆーちゃんが座っていた。
「・・・」
「ごっちんは・・・どうしたんや?」
みっちゃんの顔を見るなり、ゆーちゃんは全く関係ないことを訊ねた。
あたしは・・・みっちゃんが飛びかかってもすぐに止められる準備だけはしていた。
でも、それは杞憂だった。静かに椅子に座る。
「ごっちんはラジオがあるから帰ったわ。みんなには・・・報告するらしいで」
「・・・そっか」
「・・・」
再び、沈黙が訪れた。
あたしはコーヒーでも淹れようかと思ったが・・・そんな雰囲気ですらなかった。
みっちゃんはただ、静かにゆーちゃんを見ていた。
「・・・ごめんなぁ、みっちゃん。あんたにはなかなか言い出せへんかった」
「・・・」
「なんちゅーか・・・言い出す機会があらへんかった。ほら、なんせトシが一番近いやんか。
一緒に酒も飲んだ仲やし・・・辛気臭い話をしとうなかったんや・・・」
「・・・構へんよ。うちは構へん。でもな・・・でもな・・・」
みっちゃんはゆーちゃんを睨みつけた。
その鋭いまなざしには怒りとは別の・・・猛る感情が満ち溢れていた。
「ごっちんたちにどうして教えなかったんやっ!? 同じ娘。のメンバーなのに・・・
どうして教えなかったんやっ!? 若いからなんて言うのは理由にならへん!!」
「・・・」
「忘れとったんか!? あんたは娘。のリーダーや・・・誰からも一目置かれているリーダーや!!
うちに言わんでもええ・・・でもな、ごっちんは同じ娘。のメンバーや。うちとはわけが違う・・・」
「あんたは自分が思ってるよりも娘。の中で大切な存在や。ただの歯車一つやあらへん!!
みんなをまとめ上げて・・・『モーニング娘。』として機能するためにはあんたしかおらへんかったんや。
それは初めからそうやったやんか・・・なんで・・・それを忘れてんねん・・・」
ゆーちゃんは・・・言葉を噛み締めているようだった。
- 77 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月21日(土)01時47分58秒
- 「娘。の解散が早まったのは何もまりっぺが辞めたことだけじゃあらへんわ・・・
ゆーちゃんがおらへんから・・・誰もまとめることが出来なかったんや」
「・・・」
「ゆーちゃんがまりっぺのことをスキなのは分かってる。でもな・・・
娘。の他のメンバーを・・・ないがしろにしたらあかん。まりっぺがゆーちゃんをスキなように・・・
他の娘。たちもゆーちゃんのことがスキなんやよ・・・」
みっちゃんは泣いていた。
娘。のメンバーじゃないみっちゃんだからこそ・・・誰よりも娘。を見ていたのかもしれない。
あたしがゆーちゃんをスキなように他のメンバーもゆーちゃんがスキ・・・
それは考えるまでもなく、当たり前のことだった。
「・・・そうか・・・うちは・・・とんでもないことしてたんやなぁ・・・」
ゆーちゃんの声は穏やかだった。
諭すように静かに・・・まるで自分に言い聞かせているように・・・続けた。
「娘。にとってうちはタイセツな存在やったんやなぁ・・・みんなが心配してくれるんやなぁ・・・」
「・・・」
「そうか・・・そうなんやなぁ・・・」
声の調子というか・・・素振りが変わる。
あたしとみっちゃんは思わず顔を上げた。
・・・笑っていた。
「すまんな。みんなに世話かけっぱなしやな。ま、それもじきに終わる・・・」
「ゆーちゃん・・・?」
「・・・ホンマ・・・すまんなぁ・・・」
あたしは・・・愕然とした。
ゆーちゃんの顔はすでに蒼白を超えて白くなっていた。
額に滲む脂汗も、握り締めていた拳も・・・全てを見落としていた。
ごとんっ!
テーブルに響いた音は・・・ゆーちゃんが倒れた音だった。
- 78 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月21日(土)02時30分47秒
- また・・・戻ってきてしまった。
あたしは眠りつづけるゆーちゃんの手を握り締めていた。
無機質な白を基調とした部屋。
ゆーちゃんの口許を覆う無生物的なモノ。
静かに波打つ電子音。
「・・・今の段階では比較的落ち着いてきましたね・・・」
「助かる・・・っていう聞き方はおかしいですね。後、どれくらい持ちますか?」
医者は・・・言いにくそうに頭を振った。
「・・・いつ止まってもおかしくない状態です。目覚めれば分かりませんが・・・
本人の体力次第でまだ・・・少しは・・・」
「・・・そうですか。家族の人は来られたんですか?」
「そろそろ来ると言ってましたので・・・」
あたしは椅子から立ち上がった。
「頑張るんだよ・・・ゆーちゃん・・・」
部屋を出て・・・すぐそばのベンチにはみっちゃんがいた。
手を組んで静かに下を向いていた。
「みっちゃん・・・」
「・・・まりっぺ・・・」
「運んできた時よりもだいぶ落ち着いたみたいだよ・・・まだ目覚めてないけど・・・
家族の人が来るみたいだから・・・席を外そうと思って」
「うちのせいや。うちのせいで・・・」
「それは違う・・・みっちゃんが責めたから倒れたんじゃない。もうずっと前から・・・調子を崩してたんだよ。
越してきて次の日にすぐ発作が起きて・・・しばらく落ち着いたんだけど、
それからまた熱を出して寝込んでたこともあったから・・・」
「・・・」
あたしはみっちゃんの隣に座った。
「まりっぺはよく知ってるんやな・・・」
「そりゃね、二週間しか一緒に暮らしてないけどさ、それまでの付き合い長いし・・・
みっちゃんは今日ガンだって知ったけど、あたしはだいぶ前だから・・・心構えもあったし」
「・・・」
「それに・・・ガンについて少し勉強したし・・・また病院に戻ってくると思ってた。
でもね・・・一緒に暮らしてて・・・楽しかったし、嬉しかった。そのとき決めたんだ・・・」
「もう泣かないって。ゆーちゃんの前では・・・ゆーちゃんが生きているうちは元気よく笑ってようって・・・」
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月21日(土)02時44分37秒
- 面白い!
先が気になります
- 80 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月22日(日)02時51分21秒
- 名無しさん >>79
ありがとうございます! やっと続きが書けたんで今上げます。
- 81 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月22日(日)02時54分51秒
- 「強くなったね・・・まりっぺ」
「ううん・・・強くなってなってないよ。ホントはすっごく泣きたくて・・・ツライけど・・・
ゆーちゃんが頑張ってるんだもん・・・あたしだって・・・」
すると、みっちゃんは立ち上がった。
あたしを見て・・・何かを決心したようだった。
「うちも黙ってるわけにはいかへん。何かしたいんや・・・何もしてない自分がイヤなんや」
「何言ってるの・・・みっちゃんはあたしを助けてくれた。居場所のないあたしを・・・助けてくれた。
それにゆーちゃんのお見舞いを欠かさなかったし・・・何より、家を借りる時に助けてくれたじゃん」
「それはそうやけど・・・他にもしたいんや。何かあらへんか? 何でも手伝うで」
突然言われても何をしてもらえばいいのか思いつかない。
何かないかと考えてて・・・ふと思いついた。
ある意味・・・みっちゃんにしか出来ない仕事かもしれない。
「あった。とっても大事な仕事。すごく大変だけど・・・やってくれる?」
「何でもしたるわ! まかせとき」
あたしは・・・ずっと考えてきたことがあった。
ゆーちゃんに送る最期のプレゼントを・・・あたしの上げられる最期のプレゼントのことを。
一人じゃ出来ないことだし、難しいことかもしれないけど・・・無理じゃないと思う。
「あのね・・・」
「・・・」
あたしはみっちゃんに自分の考えを話した。
大胆なプランだ。絵空事とか思われても仕方ない。
それでもゆーちゃんにはどうしても上げたいプレゼントなんだ。
「・・・がやりたいんだ。どうかな? 出来ると思う?」
「す、すごすぎるわ・・・そんな大胆なことするつもりやったんか・・・」
「無理かな? でも、この役は・・・みっちゃんしか出来ないと思う。もちろん、あたしも手伝うから・・・」
「面白いわ!! やったるで。絶対ゆーちゃん喜ぶと思うわ」
- 82 名前:Oー150 投稿日:2000年10月22日(日)04時46分51秒
- 久々に一気に読みました。
相変わらず・・泣けますね・・。
ところで何をするんでしょうか・・。
みっちゃん手助けってとこがポイントっすね。
- 83 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月23日(月)03時55分04秒
- >>82 Oー150さん
レスありがとうございます!
みっちゃんしか出来ないこと…でしょう。多分。
俺の中では結構ビックリするんじゃないかなぁと思うことを矢口はするはずです。
期待していいかもしれません(w
- 84 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月23日(月)04時22分57秒
- しばらくベンチに座っていると・・・ゆーちゃんの部屋に誰かが来た。
女の人だった。見たことのない人だったが、何となく誰だか分かる。
ゆーちゃんのお母さんだろう。
扉を開ける前に目が合って・・・あたしを見た。
誰だか分かったみたいで、近づいてきた。
「・・・もしかして・・・矢口さん? かしら? 隣は平家さんだって分かるんだけど・・・」
「はい・・・」
あたしは立ち上がってゆーちゃんの母親を見た。
どこかゆーちゃんに面影がある。
しゃべりかたは全然違うけど・・・雰囲気はそっくりだ。
「娘から聞いてるわ・・・あの子が迷惑かけちゃってるみたいね」
「そんなことないです・・・あの、ホントは謝らなきゃいけないと思いまして・・・」
そうだ。ゆーちゃんの家族には謝る必要がある。
残り少ない人生を・・・子供の少ない人生を自分のそばに寄せておきたいと思うのは親の考えだ。
あたしはそれを奪っている。だからこそ、謝る必要がある。
「あら? どうして?」
「・・・」
「娘の人生よ。自分の人生は自分で決めるものよ。だから芸能界に入りたいって言ったことも認めたし・・・
ましてや最期にいて欲しい人のところにあの子がいるんだから何も謝ることはないわ」
「むしろね、矢口さんにはお礼を言わなきゃいけないわ。普通の人だったらとっくに
逝ってもおかしくないのに・・・まだ動けるぐらい元気よ。これも愛のチカラかしらね?」
みっちゃんを見て笑う。
ゆーちゃんの母親なのに・・・あたし以上に余裕もある。
ただ諦めてるわけじゃない。あたしとは違った種類の信用が見える。
「あたしは無責任な親かもしれないけど・・・あの子の最期は自由にさせてあげてるの。
あの子が・・・矢口さんと一緒にいたいというから・・・それに従っただけよ」
「・・・ありがとうございます・・・」
「一緒に行かない? あの子も・・・あなたがいなくて不安がってるわ」
ゆーちゃんの母親は・・・やっぱりゆーちゃんの母親だった。
やさしくて、強くて・・・包容力がある。そこを受け継いだと思った。
- 85 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月25日(水)01時28分18秒
- 「・・・真里?」
「ゆーちゃん!!」
部屋に入ってうめくようなゆーちゃんの声にあたしはすぐに近づいた。
苦しげに酸素吸入器の中から声を絞り出している。
あたしはすぐに手を握る。
「・・・なんや・・・また戻ってきてしもうたか・・・」
「・・・」
その声は今日の朝に聞いた声と違ってだいぶかすれていた。
思った以上に身体が悲鳴を上げているのは確かだった。
容態が急変することも考えると…ホントに長くなさそうだった。
「・・・おかん・・・?」
「・・・」
「親が来るようになったんか・・・ホンキでヤバイなぁ・・・」
「あんたは・・・何ゆーてんや」
みっちゃんかと思ったけど・・・違った。
ゆーちゃんのお母さんだった。
「あんたはまだ生きなあかんわ。矢口さんがおるんや。勝手に死んでいくのはあたしが許さんで」
「・・・」
「矢口さんはあんたにまだしてやりたいことがあるそうや。それが終わるまでは・・・何とか頑張りや。
いつ死んでもおかしないって言われてたんや。しばらくなんとかなるやろ?」
ムチャクチャな理論だ・・・
あたしはその話を聞いてて思った。ただ、同時にこの人がゆーちゃんの母親だということが、
ハッキリと分かった。このムチャもゆーちゃんは受け継いでいる。
「・・・」
ゆーちゃんは・・・泣いていた。
あたしを手を振り払って目頭を抑えて・・・涙を拭う。
「あんたに言われんでも・・・分かってるわ・・・そんくらい」
- 86 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月25日(水)01時57分26秒
- あたしは早々にみっちゃんと部屋を出た。
邪魔しちゃいけないと思った。
親子水入らずの時間を・・・残り少ない時間にあたしは立ち入ることが出来なかった。
ゆーちゃんが泣いたのは・・・気が緩んだからだと思う。
両親と過ごすことよりあたしを選んだとはいえ、両親であることは変わらない。
病気と闘って・・・一人で戦っていた中に頼もしい味方が駆けつけてくれたようだった。
「・・・なあ、まりっぺ。相手は親やで」
「分かってるよ・・・」
ハッキリ言って悔しかった。
あたしはどんなに頑張ってもゆーちゃんに対して絶対的な安らぎや癒しを与えることが出来ない。
気が揺るんだってことは・・・どこかでずっと気を張っていたのだ。
あたしといても気を張っていたんだ・・・
「ゆーちゃんの母さんの言う通りや・・・まりっぺがおらへんかったらゆーちゃんはもっと早く・・・」
「そんなこと言わないで・・・」
「・・・すまん」
pipipipi・・・pipipipi・・・
「ケータイ切るの忘れてた・・・」
「まりっぺ!!」
「ごめん・・・あ・・・」
着信の画面を見て・・・あたしはため息をついた。
・・・ごっちんだった。
ロビーの電話が出来るところまで走って電話に出る。
「もしもし・・・」
「あたしだけど・・・ゆーちゃんが・・・運ばれたんだってね」
「・・・うん。でも意識を取り戻したから・・・今はだいじょぶだよ」
「ねぇ・・・どうすればいいの? あたしは・・・あたしたちはどうすればいいの?」
「・・・一つだけお願いがあるの」
あたしはみっちゃんに話したことを・・・ごっちんにも話した。
一つの言葉も聞き漏らさないように息を殺して話に聞き入っていた。
「・・・できる? みっちゃんが手伝ってくれるけど、日程を合わせるのが難しいから・・・」
「なんとか・・・やってみる。ちょっとだけ時間が欲しいんだけど」
「ゆーちゃんの体調もあるし・・・あたしは別件でやらなきゃいけないことがあるから」
「・・・頼んだよ?」
「うん・・・でも、きっと出来るよ。みんななら・・・きっとやってくれるよ」
ごっちんの言葉が現実になるように・・・あたしはこれから忙しくなりそうだった。
- 87 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月25日(水)02時57分48秒
- 「・・・もしもし? あたしだけど・・・うん、久しぶりだね。あのさ・・・」
「そうなんだ・・・それでね、ゆーちゃんのこととかあるから・・・」
「ごめんね・・・うん、あたしの方からも言っておくけど、頼むね・・・うん、元気だって言っておくよ」
「詳しい日程は決まってないけど、体調次第ですぐに行こうと思うから、割と近い間に・・・」
「よかった・・・うん、連絡取れたら教えてね。忙しいところごめんね。じゃあ・・・」
とりあえず、一人はだいじょぶみたいだ。
あとは・・・
「・・・もしもし? 久しぶりだね・・・うん、元気にやってるよ・・・」
「そっちは元気? ああ、そのことなんだけど・・・ホントはダメだと思うけどさ・・・」
「ホントに? さすが〜案外暇なんだ・・・へえ・・・それじゃOKだね?」
「も〜本人より楽しみにしてどうするんだよ!? あくまで主役はゆーちゃんなんだからね・・・」
「うん、そっちの方も頼んであるから。日程は割と近くだろうから、決まったらすぐに教えるから・・・じゃあね」
一番ダメかと思ったけど、何とかなった。
意外とヒマなんだろうなぁ・・・動けないんだもんね。
とりあえず二人目もOKが出た。
・・・つくづくゆーちゃんという人が娘。の中で絶大なカリスマを誇っていたことを思い知らされる。
こんなにあっさりみんなを惹き寄せられるのは誰でも出来るわけじゃない。
「ただいまぁ」
帰ってきたのはみっちゃんだった。
ゆーちゃんが再入院してからあたしはみっちゃんと一緒に暮らしている。
これから起こすイベントのためにはみっちゃんと連絡を密で取り合わないといけない。
そこで借りた家を処分して再び転がり込んだ。
・・・ゆーちゃんはやめとけって言ってたけど・・・
「どうだった!? なんとかなりそう?」
「さっき、マネージャーとっ捕まえて聞いた話によると・・・ちょうど一週間後に日程がかぶらんわ。
そこがちょうど穴なんやけど・・・」
「うん・・・」
「プッチのほうが夜から歌の方があるんや。まあ、CDTVのライヴやからそんなに時間かからへんと
思うけど・・・一度にはムリかもしれんわ」
やっぱり一度に・・・ってわけにはいかないようだ。
どうせ後で合流することを考えたら・・・それもやむを得ないかもしれない。
残された時間は決して多くないし・・・
「じゃあ、決まり! 一週間後に行こう!!」
- 88 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月26日(木)03時04分53秒
- 「ゆーちゃん♪」
「おっす。遅かったやん」
雑誌を読んでいたゆーちゃんはあたしが来るのを待っていたようだった。
病院に運ばれてから2日後には一般病棟に移された。末期ガン患者としては異例らしい。
今では人工呼吸器もないが、代わりに点滴を打っている。
「へへっ・・・」
「なんや? ニコニコして・・・」
あたしは病院に来て担当医と話をした。外出許可のことだ。
本来は絶対安静なのだが・・・事情を話したらすぐにOKが出た。
もう、医者は諦めているのだろう。好きにすればいいと言う感じだった。
「ねぇ、ゆーちゃん。退院したらどこ行きたい?」
「そりゃ・・・やっぱり温泉やろ? 湯治や、湯治。効くとか効かへんとかあんまカンケーあらへんけど。
この前行こうかってゆーてたけど・・・引っ越しでダメやったから」
「そう言うと思った。じゃあ行こうか」
ゆーちゃんは・・・あたしを見た。
何が言いたいのか分かる。あたしの言いたいことが分かんないんだろう。
そりゃそうだよね・・・
「・・・訳分からんわ」
「あのね・・・さっき先生に会って外出許可をもらった・・・ってゆーか退院だね。
一週間後に退院するからちゃんと体調の管理しておいてね」
「ちょ、ちょい待ち!! 話の筋が全く分からん。一から説明してくれへんか?」
「ふふっ・・・あのね、みんなで温泉に行こうかと思ってさ♪ 宿の予約とか完璧だしね」
「へえ・・・ええかもなぁ。それならうちも賛成や。どうせここにおってもしゃーないし・・・
真里とみっちゃんの三人で行くんならゆっくり出来そうや」
「何言ってんの? みんなだよ、みんな」
「みんなって・・・真里とみっちゃんぐらいやろ?」
あたしはガマンしつづけた言葉を言った。これが早く言いたかった。
「違うよ。みんなだよ・・・モーニング娘。プラスみっちゃんの全員で行くんだよ」
- 89 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月29日(日)00時48分17秒
- 「・・・は?」
ゆーちゃんは思いっきり間の抜けた声で聞き返した。
状況を理解できていないようで・・・目をぱちくりさせた。
「あのね、みっちゃんとごっちんに動いてもらってね、プッチとミニモニの日程が重ならない日を探してたの。
それで・・・ちょうどそれが一週間後になるの。その時にみんなで温泉に行こうって・・・」
「・・・」
「カオリとなっちはだいぶ前からオッケーもらってたし、圭ちゃんはヒマだからなんて言ってたけど・・・
みんないろいろ動いてくれたから何とか実現したんだよ」
本当に何とか実現したという感じだ。
しかし、誰一人として無理だということは言わなかったし、ましてやりたくないと言う声はなかった。
みんな絶対やりたいという意気込みで実現したようなものだった。
「みんな、ゆーちゃんがスキなんだって・・・改めて知ったよ」
「・・・」
「ゆーちゃん・・・?」
ゆーちゃんは窓の方を向いていた。
肩が小さく震えている。
「イヤやなぁ・・・最近涙もろくてシャレにならんわ・・・」
「・・・」
「今初めて・・・自分が死ぬのがホンマにヤになったわ。ホンキで死にとうない。
ホンマに、サイコーの連中に囲まれてるのに・・・死にとうないわ・・・」
「・・・ありがとなぁ・・・真里・・・」
「お礼なら・・・あたしだけじゃなくてみんなにしてよ・・・みっちゃんやごっちん、他のメンバーにも・・・」
ゆーちゃんはあたしを見つめた。何が言いたいのか分かる・・・
近づいていき・・・そして、抱きしめられる・・・
「しばらくは二人っきりでこんなこともできんよーになるんか・・・」
「へへっ。カンケーないよ・・・今度の温泉でみんなの前でしちゃおっか?」
「まあ、隠してもバレてるしなぁ・・・ああ、でもこーしてる時がうちにとって一番の治療や・・・」
「ちょ・・・ん・・・」
・・・・・・
二人だけの甘い時間は・・・終焉を迎えつつあることにあたしは気づかなかった。
まだ、こんな日が続くのかと思っていた・・・
- 90 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月29日(日)00時51分06秒
- 次の温泉編で終了となります。
ちょっと当初の予定より長くなってしまいそうです・・・
- 91 名前:読んでる人 投稿日:2000年10月29日(日)21時13分53秒
- うう・・・最近ROMってたけどこれ読んだら我慢できん。
これ読むといっつも泣きそうになる。
- 92 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月30日(月)01時46分51秒
- >>91 読んでる人さん
レスありがとうございます! ちゃんと読んでいただいているようで嬉しいです。
初めはこんなに痛く書くつもりなかったんですけど、今はメチャ痛いですね。
痛いのキライな人は多分読まないんだろうなぁ…と思ってます。
でも、泣きそうになってくれるのはありがたかったりして(w
- 93 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月30日(月)02時11分42秒
- 「・・・みんな、ちゃんと来るかな・・・」
「だいじょぶやて。真里が呼びかけたんや。自分に自信を持つんや・・・」
みっちゃんのマンションの側にある公園であたしとゆーちゃんはみんなが来るのを待っていた。
少し大きめのドラム・バックを抱えてベンチに座っている。
すでに枯葉が舞う季節・・・モーニング娘。がなくなってそろそろ二ヶ月目を迎えようとしていた。
世間からモー娘。という言葉が・・・消えてしまった。
「それより、みっちゃんはどうしたんや?」
「うん。ちょっと事務所に用があるって言ってたよ。すぐに帰ってくるって言ったから・・・」
「車を運転できるのがみっちゃんと圭しかおらへんやから・・・」
そして・・・約束の時間の10分前ぐらいになって一台のタクシーが止まった。
二人の人影・・・それも身体に似合わないほどのバックを抱えた二人。
・・・ののちゃんとあいぼんだ・・・
「やぐちさん!」
遠くから右手を振っている・・・その姿を見て、あたしは涙が溢れそうになった。
今はミニモニの辻希美、そして、加護亜依だ。
でも、あたしの中では娘。の辻加護であり・・・あたしがリーダーだったミニモニの辻加護だ。
「おひさしぶりです。げんきそうですね〜、やぐちさん!」
「アホっ! 中澤さんがおるんやで! もうちょっと話す言葉を考えとき!」
「あ・・・そうだった」
相変わらずのいいコンビを見て、あたしだけじゃなくてゆーちゃんも微笑んだ。
特にゆーちゃんはののちゃんがお気に入りだった。
すでにののちゃんの頭を撫でている。
「つじ〜、久しぶりやな。ちゃんと頑張ってるか?」
「はいっ! なかざわさんのぶんまでがんばりまってますよ」
「そっか・・・テレビでしか見てへんけど、だいぶ様になってるで。頑張りや」
「あ、さっき事務所からプッチモニの人たちが出てきたのを見ましたよ。
何でも夜のCDTVのライヴ、キャンセルしたいとかゆーて・・・暴れてました」
「・・・ホント? あいぼん」
「なんや、マネージャーも振り切って行くみたいなことゆーてました。
すぐにくると思いますよ。結局、大したTVあらへんからって事務所側も目をつぶるってことで・・・」
そんなムチャまで・・・そこまでして、この温泉に来るのかと思うと胸が痛んだ。
やがて・・・向こう側に一台のタクシーが止まるのが見えた。
- 94 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月30日(月)02時36分15秒
- タクシーを降りてきたのは・・・案の定プッチの三人だった。
ごっちんとよっすぃーと梨華っち・・・それに助手席からカオリが降りてきた。
「あ、きましたね」
それから間もなく、二台目のタクシーがきた。
降りてきたのは・・・なっちと圭ちゃんだった。
「なんや・・・うち、すごい光景を見てるような気がするわ・・・」
「・・・」
ゆーちゃんの言うとおりだった。
娘。のメンバーが・・・二度と交じり合うことのなかったメンバーがこうして集まっている。
それぞれの顔は同窓会で再会を喜ぶ生徒のような笑顔で満ち溢れていた。
「あ、ゆーちゃんだっ!」
「なんだぁ・・・ののちゃんたちもう来てるよ〜」
「事務所説得すんの、ちょ〜大変だったのに〜」
大変なことをしたと今、あたしは実感している。
ここにいるメンバーの誰もがゆーちゃんの再会を心から喜んでいる。
全てのメンバーの気持ちが共有しているのが分かる。
ゆーちゃんは・・・震えていた。泣いているわけじゃなく・・・事態のすごさに震えていた。
「こんな・・・あははっ、こんなすごい絵になるなんて想像できんかったわ・・・むっちゃ鳥肌立ってるわ・・・」
あたしは電話をした・・・みっちゃんに。
こんなことで驚いてもらっては困る・・・大変なことをしたのはこれだけじゃない。
「・・・みっちゃん、みんな来たよ・・・そっちは?」
「ちゃんといるで。すぐ行くわ」
「・・・うん」
再会を喜ぶみんなを目の当たりにしていると・・・すぐに車が来た。
公園の前に止まる。
「やっと、みっちゃんが来たよー」
車から降りてきたのは・・・一人じゃなかった。
みっちゃんは確認できる。でも、他の降りてきた人は・・・どこかで見たことがあった。
「えっ!?」
あたしを除いたメンバー全員が同じ声を上げた。
- 95 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月30日(月)03時07分10秒
- 「おっす。みんな元気だったかー? ホントに久しぶりだねー」
ショートヘアで活発そうな顔立ち。意志の強さが見て取れるハッキリとした瞳。
・・・紗耶香だ。
「ちょっと! みんなあたしのこと忘れてないでしょうね? ってゆ〜か走っちゃダメか・・・」
相変わらずの金髪ロングにパーマ。一見するとヤンママに間違えられそうな風貌。
だいぶお腹も大きくなっている・・・彩っぺだ。
「なんかあたしだけ場違いみたいだよぉ・・・知らないメンバー増えてるし・・・」
肩まで伸びる黒髪に少しふっくらした頬。だいぶ外見は変わったが、雰囲気はあの時のまま。
・・・福ちゃんだ。
あたし以外のメンバーはその光景を見て固まった。
まさか、引退メンバーまで来るとは一言も言ってなかったからだ。
「真里っ! これは・・・これは・・・」
「言ったでしょ? モーニング娘。のメンバープラスみっちゃんで行くって・・・
福ちゃんも彩っぺも紗耶香も・・・モーニング娘。じゃん。
いいでしょ? どーせ今はみんな元メンバーだしさ」
引退メンバーは声をかけようか悩んだが・・・ゆーちゃんのためにどうしても来て欲しかった。
まずは紗耶香に電話して・・・そこから仲がいい福ちゃんにも来てくれるように頼んでもらった。
福ちゃんはちょうど高校の開校記念日で休みらしく、運にも恵まれた。
彩っぺは妊娠中でヒマを持て余してたらしく、絶対行くと言ってくれた。
「ちょっと待ってや・・・すごすぎて状況を理解できんわ・・・」
「そ、そんなの・・・みんな一緒だよ・・・」
ごっちんの声も震えていた。
紗耶香はイタズラっぽく笑ってこっちを見ている。
「なんだよー、市井たちが来たのがそんなに意外かー?」
「・・・」
「ゆーちゃんが・・・もう助からないって聞いたら、絶対に来るよ。
明日香だってすぐにオッケー出してくれたんだから」
「ゆーちゃんのために思い出を作ろうよ。そのためにみんな集まったんでしょ?」
その答えに・・・みんなは同意していた。声には出さなくても同意していた。
ここにみんなが集まったのは・・・ゆーちゃんに思い出を作ることだ。
そのためだけに、再びモーニング娘。は結成されたんだ。
「行こうよ。こんなところで時間を潰すのはもったいないよ」
「・・・そうだね、話は車の中でも出来るしさ」
総勢14人・・・温泉旅行は幕を上げた。
- 96 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月30日(月)05時34分15秒
- おおおお・・ええ話や〜・・・(感涙)
- 97 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月30日(月)22時29分30秒
- >>96
激しく同意!!!
- 98 名前:読んでる人 投稿日:2000年10月30日(月)23時31分02秒
- あかん、泣きそうや・・・こういう話弱いのよ・・・
- 99 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月31日(火)00時02分38秒
- なんかこの小説の影響がすごく強くて
実際テレビで本物を見てても
この状況が思い出されてしまう・・・
- 100 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月01日(水)01時20分32秒
- あ・・・レスがたくさんついてる。すんげ〜嬉しい。
読んでくれている人がちゃんといるだけですごい励みになる。
ありがとうございます! だからここで書くのヤミツキになる(w
>>96 名無しさん
レスありがとうございます!
ここまで来るのにだいぶ引っ張ったんで感激していただいてなによりです。
人が多くて、ちょっと収拾つかないかも(w
>>97 名無しさん
激しく同意! ・・・まさか俺の小説にこのフレーズがつくとわ(w
ちょこっと2ch出身の俺にとってはツボフレーズ。ありがとうございます。
>>98 読んでる人さん
涙腺緩いみたいですね。これからクライマックスシーンがあります。
ちょっと意識して泣かせようとかと思ったりしたりして(w
>>99 名無しさん
書いてる俺もたま〜に錯覚する時あります。ゆーちゃん、強そうで弱そうだし。
でも、楽しいのがモー娘。ですから・・・
- 101 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月01日(水)01時21分32秒
- レンタルされたマイクロバスに乗り込むとさすがにきつく感じる。
それでも場の雰囲気はまるで崩れなかった。
むしろ、遠足に行く学生のように――話題が尽きなかった。
「ほらほら、ゆーちゃんは後ろの真ん中に・・・」
「分かってるがな・・・」
ゆーちゃんを取り囲むようにみんなが椅子の向きを変える。
・・・誰もが言葉を待っていた。
「あー・・・何か言わへんといけないんかな?」
「とりあえずね」
「はいよ・・・」
「あのなぁ・・・うちのために集まってくれてありがとなぁ。まあ、何や・・・
みんなが知ってるとおりうちは視線が集まるとキンチョーする小心者やから大したことは言えへん」
その場から小さな笑いが起こる。
「はっきりしてるのは・・・こうしてみんなが一同に集まれるのはおそらく最後や。
みんな娘。を旅立って自分の路を進んでくれてる・・・うちにとってそれは一番嬉しいことや」
「・・・」
「うちは・・・ありがとうとしか言えん。うちの最後の手土産として・・・こんな風に集まってくれたことを
感謝する。ホンマにそれだけや」
誰もが最後だと思っていた。こんな風に集まるのは最後だと思っていた。
だから・・・これが最後じゃないなんて気休めな言葉をかけるメンバーもいなかった。
「ま、湿っぽい話はこれっきりや。どうせ、みんなもいろいろあって疲れてるやろーし。
うちに気を使わんでゆっくり温泉にでも浸かって元気だしや」
それから・・・あの頃が戻った。娘。の頃に時間が戻った。
- 102 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月01日(水)01時56分15秒
- バスの中は水をひっくり返したように騒ぎ出した。
とりあえず、福ちゃんがごっちんや新メンバーの四人に挨拶する。
「あの・・・分かるかな? あたし・・・福田明日香って言うんだけど・・・」
「あたしは・・・会うのは初めてですけど・・・知ってますよ」
「ビデオで見たことあります」
「歌がうまかったって聞いたことあります」
「・・・ごめんなさい。名前だけしか知りません・・・」
「・・・あたしも・・・なまえだけしか・・・」
ごっちん、よっすぃー、梨華っち、あいぼん、ののちゃんはそれぞれ自分の知っていることを口にする。
福ちゃんは・・・肩を落とした。
「・・・そんなもんだよねー・・・」
「ははっ。うちがちゃんと説明したるわ・・・福田明日香。初代メンバーでセンターを任されていた
実力派シンガー。12歳でデビュー。なっちとしのぎを削っていた・・・こんなもんかな?」
「ちょ、ゆーちゃん、それはいくらなんでもはしょり過ぎ・・・しかも、言い過ぎ・・・」
それを聞いて・・・目を丸くしたのはののちゃんだった。
「12さいって・・・わたしとおなじとしでセンターでうたってたんですか・・・?」
「そうよ・・・明日香の歌唱力はズバ抜けてた。センターやって当然だったよ・・・」
「なっち、それも言い過ぎ・・・」
ののちゃんとあいぼんはラブマ以降の曲しか印象に残っていないらしい。
当然、福ちゃんのことは分からない。
そうか・・・ののちゃんたちと同じ歳ですでに福ちゃんはセンターやってたんだっけ・・・
「わたしはあいちゃんといっしょにうたってるだけでも、すごいたいへんなのに・・・
むすめ。のセンターなんて・・・すごいです・・・」
「ははっ・・・そんなにすごいことじゃないよ。しばらくやるうちに辻ちゃんもできるようになるよ」
「ほんとですか?」
「うん。ミニモニだよね? テレビでちゃんと見てるよ」
早くもののちゃんは福ちゃんのことが気に入ったらしい。
これは意外な組み合わせ・・・なんとなく、雰囲気は似てるかもしれないけど。
それよりも・・・こっちの組み合わせはどうなんだろう?
- 103 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月01日(水)02時12分34秒
- 「・・・」
「・・・」
紗耶香とごっちん・・・隣り合って座ってるのに全く会話がない。
たまにごっちんが、そわそわしているのが見えるけど・・・
この二人は娘。のときから、あたしとゆーちゃん以上に怪しかったからなぁ・・・
「そうだっ! ごっちんと市井の方はどうなの? お互いちゃんと連絡とってるわけ?」
まるで鶴の声。
彩っぺのスルドいツッコミにメンバーの視線が一気に集まった。
「な、何だよぉっ! みんなしてイキナリ反応して・・・」
「何ゆーてんねん。ごっちんと紗耶香がどーなったかみんなが一番気にしてるっちゅーねん」
「べ、別に・・・」
紗耶香はテーブルの上のお茶を一気飲みしてみせる。
ごっちんは・・・恥ずかしそうに俯いたままだ。
「で? どうなの、どうなの? やっぱりさ、別れちゃったわけ?」
「彩っぺ!! 失礼なこと言うなっ!! 後藤とはちゃんと連絡とってるし、うまく行ってるよ!!」
・・・・・・
こーなんだよねー、紗耶香の性格って・・・煽られるとすぐにノッちゃうトコ・・・
あ・・・ごっちん、カオ真っ赤だ・・・
「なんやぁ・・・うまく行ってんやったら初めからそう言えばええのに・・・」
「そ、そーゆー、ゆーちゃんはまりっぺとはどうなんだよ!?」
いきなり話題を振られてあたしはしどろもどろになった。
周囲からイタイほどの視線を浴びせられる。
当のゆーちゃんは・・・まるで躊躇もなく、堂々と答えた。
「うまく行ってるに決まってるやろ。同棲したし、すべきことは全部済んだよなぁ?」
「ゆ、ゆーちゃんっ!!」
耳まで熱くなるのが分かる。
周囲から驚きともとれる歓声で湧く。
「えっ〜!!」
「やっぱり、やぐちさん・・・」
「一緒に暮らしてたんですかぁ!?」
「すべきことって・・・やっぱりアレなの〜!!」
「何でそーゆーこと言うんだよっ!!」
周りの声に負けないように、あたしはゆーちゃんを思い切りどついた。
ゆーちゃんは幸せそうに笑っていた。ホントに幸せそうだった・・・
- 104 名前:名無しやねん 投稿日:2000年11月01日(水)02時24分39秒
- マジ泣きそう…(ToT)
- 105 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月01日(水)09時01分19秒
- 今日初めて読んで、泣いちゃいました。
続き楽しみです。
- 106 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月03日(金)02時01分41秒
- >>104 名無しやねんさん
レスありがとうございます!
泣きそうになっている人がかなり多くで書いている方はビックリしてます。
ってゆーか、泣きそうじゃなくて顔文字は泣いてますね(w
>>105 名無しさん
レスありがとうございます!
マメに更新してきたんで最初から読み返すには時間がかかったと思います。
それなのにわざわざ読んでいただいてありがとうございます。
泣きそうじゃなくて泣いちゃったみたいですね。最後は確実に泣かせます(w
- 107 名前:名無しでしょう。 投稿日:2000年11月03日(金)23時35分19秒
- 続きが気になってしょうがない。
- 108 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月03日(金)23時35分24秒
- 車に揺られることおよそ三時間・・・たどりついたのは新しい旅館だった。
四万温泉・・・湯治で有名な温泉らしい。ただ、年寄りの客が多くて若い人はほとんど訪れない。
だからこそ、あたしはここを選んだ。ここまで来て、ファンに囲まれるのはツライからだ。
「へえー。なかなかいいトコじゃん。空気もキレイだし」
「そうだね。山と川があるし・・・明日の昼は川でバーベキューでもやろうよ」
「あ、それいいね〜。やらせてくれるのかな?」
まるで修学旅行に来たような騒がしさだった。
きっと芸能人というレッテルを剥がせば、ここにいる14人はただの仲のいいサークル仲間かもしれない。
モーニング娘。という名前のサークル・・・
「・・・久しぶりや。みんなに囲まれてると思い出すよ・・・あの時の空気を・・・」
「そうだね・・・」
あたしはとりあえずみんなに号令をかける。
「おーい!! みんな荷物持って移動するよー!!」
「「「はーい!」」」
ホントにあの時のままだ・・・ビックリするぐらい時の流れを感じない。
病院でなっちたち三人に会ったときはたった三週間で遠く感じたのに・・・
みんなで会うとまるで変わっていない。
「辻ちゃん、だいじょぶ? あたしも手伝おっか?」
「だいじょぶです・・・あすかおねえちゃんはさきにいってください」
「半分ずつ持とっか・・・よいしょっと」
「・・・ありがとうございます・・・」
辻ちゃん・・・? あすかおねえちゃん・・・?
あたしとゆーちゃんは聞きなれない言葉に思わず顔を見合わせた。
同時に笑う。
「辻ちゃんだって!! 福ちゃんが・・・あすかおねえちゃんだって!!」
「何や、すごいな・・・でも、明日香も一時に比べるとだいぶ人当たりよくなったなぁ・・・
めっちゃクールだったけど・・・」
「ののちゃんは別かもね。あの子は・・・いるだけで場の雰囲気を変えられる子だから・・・」
「そうやな・・・そろそろうちらも行くか?」
- 109 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月04日(土)00時02分52秒
- 「うわぁ・・・すっごい広いじゃん!!」
「でも、みんなで寝るんでしょ? まりっぺ!! ここ何人部屋なの?」
「20人用の部屋だよ。15人用がなくって・・・」
「ねぇねぇ、早く温泉に行こうよ!!」
部屋に案内されてもみんなのテンションは下がらない。
おそらく、旅行に行くこと自体が久しぶりなんだろうけど・・・
まるで学校の先生になったような気分だ。
「あ、カオリ枕投げないのっ!!」
「だいたいみっちゃん、何でカオリの分まで荷物を・・・コラっ!」
「・・・梨香っちもいきなりほうじ茶なんか飲んでないで、部屋の片づけをする!」
「ちょ・・・危ないでしょ! こっちは身重なんだから! お腹に当たったらどーしてくれるわけ!?」
・・・収拾がつかん・・・誰か助けてくれ・・・
あたしがゆーちゃんに一声かけようとしたときだった。
「何やってんやっ!!」
久しぶりに聞くゆーちゃんの声だった。
みんなをまとめ上げる時にいつも出している声だった。
「ここは真里が予約したとこや!! なら、真里の言うことにどうして従わへんねん!?
とりあえず、着いたんや!! 暴れる前にすることがあるやろ?」
「・・・」
「ほら、真里・・・」
一瞬にして場が静まり返る・・・条件反射という奴なのか、ゆーちゃんが叱ると場がこうなる。
普段なら、みんなは下を向いたり、顔をしかめたりするが・・・
あたしは笑ってしまった。ゆーちゃんの地位はみんなの中で少しも揺らいでいない。
それを知ったとたん、笑いがこみ上げてきてしまった。
「あははっ・・・ごめんね〜。笑っちゃって・・・」
「???」
「とりあえずさ、みんなのバックを端に寄せてよ。それから枕の投げっこは今じゃなくて夜ね。
だいぶ車に揺られたからさ、あいぼん気持ち悪いとか言ってるし・・・少し、お茶でも淹れて落ち着こうよ」
すると、みんながごそごそとバックを持って移動を始めた。
あたしはホントに嬉しくなった。ゆーちゃんはみんなの中でしっかり息づいていると分かったから・・・
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月05日(日)23時50分53秒
- 続きが楽しみー
早く見たいのはやまやまなんだけど
いい作品を仕上げてほしいから
マイペースで頑張ってください。
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)00時50分10秒
- 面白い!!
この手の小説ってかまととぶってるか妙にスレてるかのどっちかだけど
なんか自然体でほっとする
- 112 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月06日(月)03時29分05秒
- レスの数が増えて嬉しい今日この頃♪
さんくすの嵐です。
>>107 名無しでしょうさん
俺が小説を上げる5秒前のレスありがとうございます!(w
出来そうったって出来ないタイミングにビックリです。
今、上げます。
>>110 名無しさん
レスありがとうございます!
俺の書いてるクセで、作品のラストは執筆速度が上がります。
そのせいか雑になるんですけど、今回はじっくり腰を据えて書いています。
更新は少し遅くなるかもしれませんが、頑張って書きますんでお願いします。
>>111 名無しさん
レスありがとうございます!
作品を書いている上で最高の賛辞はやっぱり「面白い」です。
痛い話の中にもどこか甘い部分を作りながら書いているんで、カマトトぶったり、
スレてたりしないんだと思います。それでホッとしていただければさいわいです(w
- 113 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月06日(月)03時30分17秒
- ほうじ茶を飲みながら一息つくとみんなはバックの中をがさがさと探り始めた。
いよいよ温泉に入ることになった。
「カオリはちょっと楽しみにしてきたんだよね〜」
「一応、関東県内では有名な温泉場だからね。ちょっと若い人が来ないけどさ」
「でも、あたしたちにしたらそれが一番いいよね? 疲れを取りにきたのにファンに囲まれたらイヤだし・・・
あれ? 紗耶香は入らないの?」
テーブルでほうじ茶を飲んでいる紗耶香は・・・動いていなかった。
側には・・・案の定、ごっちんもいる。
「あ、市井は後で入るよ。何か久しぶりに車で移動したせいか疲れちゃったよ」
「ふ〜ん・・・あれ? ごっちんは・・・」
「ちょい待ち〜な」
ゆーちゃんが割り込んできて、カオリの言葉を遮る。
何を言いたいのかカオリもゆーちゃんの目を見て察する。
「あっ・・・ごめんね。そうだよね・・・」
「まあね・・・ちょっと、話したいんだ・・・」
「なるほど・・・みんな邪魔やゆーわけや」
「そ、そうじゃないけどさ・・・」
ゆーちゃんはバスタオルをマント代わりに身体に巻きつけると部屋を出て行った。
あたしは・・・なるべく、紗耶香たちのことを悟られないように大きな声を出した。
「みんな行くよ!! 温泉の後はすっごい料理が待ってるからね。期待してよし!!」
ぞろぞろと部屋を出て行く一行。なんか不気味な光景だが・・・
大きな部屋は・・・あっという間に静かになった。
紗耶香とごっちんの・・・二人きりになった。
- 114 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月06日(月)04時50分05秒
- みんなは・・・ひたひたとその場で足踏みをした。少しずつ小さくして・・・止める。
誰一人温泉に向かうものはいない。二人には死角の位置に集まって話に耳を傾ける。
どちらかがお茶をすする音が聞こえてくる・・・
「・・・ねぇ、市井ちゃんは温泉行かないの?」
「後で・・・行く」
「あっ、そうなんだ・・・」
「・・・なんかさ、あたしが見ないうちに後藤もしっかりしてきたね」
「そうかな・・・? そんなに変わってないよ」
「あたしはさ、娘。がなくなるって聞いて・・・まず最初に後藤のことが思い浮かんだ」
「・・・ありがと」
「ゆーちゃんが病院送りになって、まりっぺがドロップアウトしたけど・・・娘。は頑張れると思った。
後藤がいるから。後藤がいるから何とかなるって思った」
「・・・」
「でも、ダメだった。つんくさんは話題を選んだんだよ。それはあたしにも分かった・・・
解散会見をテレビで見て・・・不謹慎なことを思ったんだ」
「・・・えっ?」
がさがさと動く音がした。
・・・どうも紗耶香がごっちんのほうに近づいたのだろう。
「もしかしたら・・・もしかしたらだよ? 後藤と一緒に歌えるんじゃないかって・・・心のどこかで思った。
一緒にバンドでも組んで・・・ずっと一緒にいられると思った」
「い、市井ちゃん・・・?」
「最近はずっとメールと電話だけだったよね? なかなか逢えなくて・・・ちょっとつらかったぞ」
「・・・」
衣擦れの音・・・きっと抱き合ってるんだろうが・・・見たいぞ・・・
そう思っている側からゆーちゃんは思いっきり覗いていた。
- 115 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月06日(月)04時51分17秒
- (おおっ! 紗耶香の奴、めっちゃ抱きしめてるで!)
(ほんと!? やっぱりあの二人、出来てたんじゃん!!)
(絵になるなぁ・・・あの二人)
こそこそと周りが盛り上がる。あまり状況を把握していない明日香はしゃがんでいるだけだったが、
隣にいるののちゃんは顔を思いっきり真っ赤にしていた。うあ・・・ウブだなぁ・・・
「ちょ、市井ちゃん・・・苦しいよ・・・」
「あ〜ダメだ・・・こうしてるだけでも、メチャクチャ幸せだ・・・くっそ・・・」
「みんな帰ってきたらどうすんの・・・」
「だいじょぶだって・・・盛り上がってるからしばらく帰ってこないだろ?」
確かに盛り上がってはいるが、まさか自分たちを見て盛り上がってるとは夢にも思っていないだろう。
ゆーちゃんは好奇心旺盛な子供のようにずっとその光景に見入っている。
・・・なんだかチョット嫉妬だな・・・あたしたちがいつもしてることと変わらないじゃん・・・
「やっぱりあたしの居場所はここだ・・・ここにいると一番落ち着く」
「・・・」
「後藤と一緒にいると落ち着く。もしかしたら、メンバーと一緒にいるからかもしれないけど、
ここにいるのが・・・みんなといるとやっぱり落ち着くんだな、やっぱ」
「・・・あたしだってそうだよ・・・市井ちゃんとこうしてると・・・嬉しいし、落ち着くよ。
でもね、それを可能にするのはやっぱりみんながいるからって・・・そんな風に思うんだ」
みんなが・・・静かになった。二人の言葉に重みを感じた。
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月06日(月)16時36分20秒
- 一気に読ませて頂きました。
泣けますね。。。いいハナシです。
これじゃシゴトになりません。
どうしてくれるんですか!(ワラ
- 117 名前:O-150 投稿日:2000年11月08日(水)00時47分26秒
- 久々に一気に読ませて頂きました。
うぅやっぱエエ話や・・(涙)
いちごままで入れて頂いて・・萌えるし・・(ワラ ヨソヨソしいいちごまっていいっす・・。
脱退したメンバーと現メン全員勢ぞろいって壮観だろうな〜・・。それだけで泣けてくる・・。
続き頑張って下さい!
- 118 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月10日(金)01時38分21秒
- う〜ん・・・ラストは完璧に出来ているんですけど、そこまで持って行くのに
ちょっと試行錯誤してます。終わりにはもう少し時間がかかりそうです。
では、さんくすの嵐を。
>>116 名無しさん
レスありがとうございます!
一気に読んでいただいて嬉しいです。ちょっと長いので人離れしそうですけど、
もうそろそろ終わりです。ここまできたら最後まで読んじゃってください(w
>>117 O-150さん
久々のレスありがとうございます!
ちゃんを目を通していただいて嬉しい限りです。
独立した、いちごまを書く技量がないので、ちょっと挿話的にいちごまを書きました。
萌えていただければ幸いです(w
- 119 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月10日(金)01時39分13秒
- 確かにそうだ・・・あたしとゆーちゃんがここまできたのは・・・みんなのおかげだ。
娘。があったから・・・みんながいたから・・・
「・・・ねぇ。市井ちゃん、知ってる? やぐっちゃんとゆーちゃん・・・今じゃすっごい仲いいんだよ?
あたしたちはずっと前から周りに言われてたけどさ・・・あたしが嫉妬するぐらい、仲いいんだよ・・・」
「後藤だって・・・あたしがいなくなってから、よっすぃーと・・・仲いいじゃん?」
「よっすぃーはね・・・違うんだ、梨香ちゃんと今イイカンジなんだよ」
それを聞いてあたしは梨香っちを見た。
・・・メチャクチャ顔が真っ赤じゃんか・・・
「や、やめてくださいっ!」
場の雰囲気に耐えられなかったよっすぃーが大きな声を出した。
「!?」
「バ・・・バカっ! 何やってんや!! よっすぃー!!」
「えっ・・・あ・・・」
時はすでに遅かった。
よっすぃーの声に光よりも早く身を離した紗耶香が詰め寄ってくるのが分かる。
まずい・・・まずいよ・・・
「ゆ〜ちゃ〜ん〜」
「あ・・・あはは・・・何や、そんな怒らんといて〜な・・・」
「こんなところで・・・・何やってんだよっ!!」
「みんな、逃げるでっ!!」
ゆーちゃんの声を合図にみんなは一斉に逃げ出した。
昔にも・・・ゆーちゃんがごっちんと紗耶香を楽屋に二人っきりにして、覗いて怒られたことがあった。
そんなことを思い出しながら・・・あたしは逃げた。
- 120 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月10日(金)23時44分48秒
- 「結局、みんなで来ちゃったねー」
「ああ、でも、いいカンジ♪ 疲れ取れるー」
湯船に浸かっている14人ははっきり言って浮いていた。
年寄りの人が何人かいるけど、あたしたちを見てもモーニング娘。だとは気づかないみたいだ。
「まだ、怒ってるんか? 紗耶香」
「・・・」
露天風呂の石に寄りかかっている紗耶香は明らかに不満そうだった。
髪を上げているところがちょっと男っぽくてカッコいいが・・・そんなのはおかまいなしだった。
「何や? どーすれば、キゲン直してくれんねん?」
「あんなことしてるところ見られたら誰だって怒るに決まってるだろっ!」
「・・・そうかぁ?」
「ゆーちゃんがおかしいだけだよっ! あたしの知らないうちにまりっぺとデキちゃって・・・」
「しゃあないやん。うちがスキなんやもん」
あけすけなゆーちゃんの発言に一同の視線が集中する・・・最もみっちゃんは呆れたような表情だが。
あたしは・・・湯船に潜った。メッチャ恥ずかしい・・・
「あ・・・あのねぇ、言っておくけど・・・まりっぺといくつ歳が離れてるの?」
「うんとなぁ・・・10ぐらいだろうなぁ。あんまりカンケーあらへんよ」
「・・・」
紗耶香はぐっと黙り込んだ。ゆーちゃんがまるで気にしていないからだろう。
あたしも・・・ゆーちゃんの歳を気にしたことはなかったなぁ。
「・・・もういいよ。あたしの負け」
「何ゆーてんねん。『むちゃ幸せ〜』なんてゆーて、ごっちん抱きしめてた紗耶香だってうちは勝てへんわ」
「う、うるさいなぁ! いいだろ! ホントのことなんだから」
すると、隣にいたごっちんがゆっくり近づいてきた。
あたしと一緒で・・・顔を赤くしている。何も温泉が熱いわけだけじゃないだろう。
「・・・お互い大変だよね・・・」
「まあね・・・」
「でもさ、どうしようもなくスキだよね・・・」
「・・・それも、まあね」
「いつまでも・・・続くといいな。こんな時間が・・・」
あたしはいつも、どこかで願っていた・・・時間が止まればいいと。
でも、今日ほど時間が止まって欲しいと願ったことはなかった。
- 121 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月11日(土)00時17分32秒
- 山の幸で溢れ返る食事を済ませてから・・・
部屋ではみっちゃんを始め、圭ちゃんにカオリそれにののちゃんまでが酒盛りを始めていた。
気になることがあって・・・あたしはこっそりと部屋を抜け出した。
「・・・どこ行ったんだろ?」
お酒の席には必ずいるはずのゆーちゃんがいなかった。
トイレにいくといったまま、戻ってこないのだ。
不安がよぎったが・・・黙っていなくなるとはとても思えなかった。
すでに電気の消えたロビーに一つの人影・・・ゆーちゃんだった。
「もお〜、こんなトコで何浸ってんだよー。みんなお酒飲んで暴れてるよ?」
「あ、真里・・・」
「ビールぐらいならだいじょぶだって病院からOK出てるからだいじょぶだって」
あたしは自販機で午後の紅茶を買った。
ゆーちゃんの隣に・・・座る。
「・・・」
「どうしたの? どっか痛む?」
「ちゃうわ・・・ほら、うちって酒を煽り過ぎると、くにゃ〜ってなってしもうて、寝てまうやんか?」
「そうだねー。その時のゆーちゃんってすっごくカワイイからスキだけど」
「・・・何か、酔って寝てまうのがもったいなくてな」
「みんな・・・娘。がなくなっても・・・娘。だったことに誇りを持って生きてるやんか・・・
誰一人、うちが辞めたこと、真里が辞めたことに文句を言わへんやんか?」
「・・・」
「何かな、モーニング娘。って中に入れば、歳とか経験とか過去とか・・・全く関係なくなるんやと思った。
すごい居心地がよくて・・・自分が死ぬことを忘れそうになる・・・」
「真里・・・どうしてくれるんや? この気持ち味わってしもうたら・・・死ねんわ」
「・・・当たり前だよ・・・そのために、あたしは・・・みんなを呼んだんだよ・・・」
ゆーちゃんに寄りかかる。
ちょっと伸びてきた髪を優しく梳いてくれる。ただ、その手のひらはもう・・・やつれている。
長くないのは・・・あたしもゆーちゃんも分かっている。
「そや。今から一緒に温泉に行かへんか? さっきはみんながおったから・・・」
「・・・そうだね・・・一緒に入ろっか・・・」
- 122 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月13日(月)01時50分20秒
- 深夜をまわった時間帯のせいか風呂場には誰もいなかった。
24時間開放されているから入っても構わないのだが、何だか緊張してきた。
ゆーちゃんと二人きりになる時間・・・
「何かやっと湯治に来たって感じがする。結局、みんなうちに頼ってばっかりやから・・・」
「でも、みんなとても楽しそうだから、いいよね」
「まぁなぁ・・・お、ここにあるの、飲みかけのお酒やん?」
なぜか湯殿の側に熱燗とおちょこが盆の上に乗っている。
二本のうち一本は空だったが、もう一本はほとんど飲んでいない。
「ねえ? どーしてこんなところにあるんだろ?」
「分からへんけど・・・この際やから飲んでまうか? だいぶ冷めてるみたいやし」
「やめようよ。何か入ってたりしたらどうするの?」
「どうせ、間もないんや。これ飲んで死んだってあまり変わらへんわ」
ゆーちゃんの行き過ぎたジョークに・・・反射的に顔をしかめてしまった。
「あ・・・ごめんな。そんな意味でゆーたんやないんよ・・・」
「分かってる・・・でも、いっか。あたしも飲むよ。これ飲んで死んだら・・・あたしも一緒だよ」
「ははっ。ま、熱燗やし、だいじょぶやろ?」
湯船にお盆を浮かべて・・・二つのおちょこに日本酒を満たす。
「乾杯・・・」
「・・・乾杯」
露天風呂から見えた空は・・・満天の星々で彩られていた。
- 123 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月13日(月)02時20分35秒
- 「東京からちょっと離れただけなのに・・・夜空が綺麗やなぁ」
「そうだね・・・」
ゆーちゃんはそれを見て一気におちょこの酒を飲み干した。
「真里とこうしてお酒を飲むのすごい久しぶりやな・・・」
「うん。昔はしょっちゅう、ゆーちゃんの家に行って飲まされてたよねー・・・
でも、最初の頃はちょっとヤだったかな?」
「何でや?」
「ほら、ゆーちゃんってビールしか飲まないじゃん? あたしは甘い方がスキだし・・・
それに酔っ払うとゆーちゃん、『矢口ー、ここで踊れー』って言うんだもん』
「・・・そうやったっけ?」
「そうだよ〜。だいたいみっちゃんとかもいてさ、『一緒に踊れ〜』って言うんだよ?
心の中で『なんだよ〜、このヒトは〜』って思ったもん」
逢ったときからゆーちゃんはあたしに目をつけてたのはすぐに分かった。
オフの時は決まって呼び出されていた。しかも、なぜか深夜に・・・
行かないと次の日は口も聞いてくれないので渋々行っていた時期もあった・・・
でも、知らないうちに・・・行かないと不安になってる自分がいた。
「そりゃまぁ・・・真里のことはスキやったし、かわいかったから・・・」
「スキって今のスキと違うでしょ?」
「そうやな・・・ちょっと違うけど、あんまり変わらへんな。どこかで・・・いつも気になってた」
「ゆーちゃんってさ・・・いつからあたしのことをスキだって思ったの?」
「・・・はっきりと分からんけど、最初の頃からずっとだろうなぁ。なんかこう・・・イジめたくなるんや。
うちの思った通りに反応してくれるから、イジメ甲斐みたいのがあるねん」
「ゆーちゃんって・・・根っからのイジメっこタイプだよね・・・」
「それから・・・何やろ? うちのこと構ってくれるんやよなぁ。堂々と、面と向かって
『ゆうこ〜っ!!』なんて言うのも真里だけやし・・・殴ってくるのもそうやし・・・」
「あはは。『FUN』の時にメール送ったしね〜。でも、あの時には、あたしは・・・もうダイスキだった。
気持ちが止まらないくらい・・・ダイスキでしょうがなかったんだよ?」
「うちだってそうや・・・テレビやから『汚い手を使ってイジメてる』なんてゆーたけど・・・
ホンマはむっちゃ嬉しかったんや。言葉に出来ないぐらい嬉しかったんや」
- 124 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月13日(月)02時40分09秒
- 「でも、他のメンバーにキスするのだけはどうしてもガマンできなかった・・・」
「何回キスするなって言われたか覚えてへんぐらいやな。そのことに関しては」
「ゆーちゃんがキス魔だって頭の中では分かってるんだけどね、もしかしたら・・・
誰かには遊びのチュ〜じゃなくて・・・ホンキなのかなって思ったら・・・」
「ホンキのキスと遊びのキスは全然ちゃうわ。遊びは舌入れへんもん」
「・・・そーゆー意味じゃなくって・・・」
ゆーちゃんはあたしを見つめていた。少し上気した頬は赤く染まり、瞳は潤んでいる。
おちょこで二杯しか飲んでいないのだから、酔っているわけじゃなかった。
「そんな話してるから・・・キスしたなった。してええか?」
「・・・ダメです。お酒の勢いでキスなんかされても嬉しくないもん」
「何ゆーてんねん・・・うちが酔ってないの知ってるやろ?」
「・・・」
ゆーちゃんはお酒を口に含むとあたしに口づける。
脳までとろけそうになる濃厚なキス・・・唾液の代わりに喉元に流れるお酒。
あたしの意識が少しだけ飛ぶ。
それでもゆーちゃんはキスをやめない。
「・・・はぁ・・・ん・・・んんっ・・・はっ・・・ん・・・」
なかなか唇を離してくれなくてあたしはちょっとビックリした。
体重をかけられて身動きが取れなくなってきている。
腰の力が・・・不意に抜けた。
「はぁ・・・ちょっと・・・長すぎだよ・・・」
「ホンマのキスをしてくれってゆーから・・・しただけや。遊びのチュ〜じゃあらへんやろ?」
「これが遊びだったらあたし怒ってるよ?」
「遊びは・・・ここで終わらへんからな・・・」
ゆーちゃんの指が湯船に沈んだ。
体を覆っているバスタオルに手がかけられる。
「ちょ・・・ここで・・・?」
「どうせ、誰も来いへんよ・・・みんな部屋で酔いつぶれるわ」
「そ、そうじゃなくって・・・知らない人に見られたら・・・んんっ!」
「う・・・んっ! 真里・・・」
ガラガラガラっ!
不意に開いた引き戸の音にあたしとゆーちゃんはその態勢のまま、ぼんやりとしてしまった。
- 125 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月13日(月)03時47分42秒
- 誰が来たんだ?
- 126 名前:>126 裕子の客 投稿日:2000年11月13日(月)23時43分49秒
- オレだ!
- 127 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月14日(火)02時14分17秒
- 話もだいぶ佳境に入ってきました。今週中に終われば・・・と思ってます。
ラストスパートですね。では、さんくすの嵐を
>>125 名無しさん
レスありがとうございます!
オイシイところで切ってみました。続きをUPするんで、誰なのか
確認してください。意外とフツーです(w
>>126 裕子の客さん
久しぶりのレスですね。ありがとうございます。
思いっきり違いますね(w
でも、ここのスレに来てくれたのは嬉しいです。
- 128 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月14日(火)02時15分17秒
- 「やぐっちゃん・・・? ゆーちゃん・・・?」
熱燗が載ったお盆を持っていたのはごっちんだった。隣には・・・紗耶香もいる。
あたしたちは思いっきり身を離した。
「な・・・なな、何でここに来てんねんっ!」
「いや、みんな部屋で暴れてるからちょっと温泉に入って落ち着こうかなって思って・・・
そんなに怒らなくてもいいじゃん・・・」
「べ、別に怒ってへんわっ! イキナリなんで・・・」
「・・・」
ごっちんは不思議そうに首をかしげるだけだったが、紗耶香は違った。
怒っているのかと思ったら・・・恥ずかしそうに顔を赤くして俯いていた。
何してたか分かったらしい。
「市井ちゃん? どーしたの?」
「な、何でもないよっ。後藤は見ちゃダメだからね。こんなの・・・」
「??? どしたの?」
「・・・」
「それより、やぐっちゃん、バスタオル取れてるよ。女同士だけど、ちゃんとしなきゃね」
知らないうちに湯船にバスタオルが浮かんでいることに気づいて・・・
あたしはいそいそとバスタオルを身体に巻きつけた。
正直言って・・・ちょっとだけ、ごっちんのことを恨んだ。
二人が温泉に入ってきたが、その距離は微妙に開いている。
「もぉ・・・ゆーちゃんってサイテ〜・・・」
「ふん、うっさいわ・・・せっかく、人の楽しみ邪魔しよって・・・」
「分かってたらさ、分かってたら・・・来ないよ。そんなことしてるなんて思わなかったんだもん・・・」
「これで貸し一つや・・・今度うちが覗き行くから覚悟しとき」
口元まで潜って話しているゆーちゃんと紗耶香を見ていて・・・
ごっちんは訳がわかっていないようで思いっきり疑問符を浮かべていた。
- 129 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月14日(火)02時43分08秒
- 「ねえ? 市井ちゃんもゆーちゃんもどーしたの? ケンカでもしたの?」
「あ〜・・・それは違うと思うな。ちょっとね・・・」
「どーしたの? 教えてよ」
「う〜ん・・・恥ずかしいからヤダ」
あたしまで恥ずかしくなってきて、おちょこに残っていたお酒を一気に飲み干した。
それを見てごっちんは・・・立ち上がった。
「ずるいよっ! あたしだけ仲間ハズレじゃんかっ!」
「・・・ど〜しても知りたいんか?」
「「ゆーちゃんっ!!」」
あたしと紗耶香の声がハモった。
「ご、後藤にはまだ早過ぎるよっ。ダメだって・・・」
「何ゆーてんねん、もう高校生や。興味ぐらいはあるやろ?」
「ゆーちゃんっ!! どーしてあたしたちがそれを・・・」
「紗耶香にバレとるし・・・もうええやん。見られたうちらが悪いんやから」
理屈にならない理論をこねまわしていたが、ゆーちゃんの顔は明らかに不敵だった。
この状況まで楽しんでいる素振りがある。あたしは・・・頭を抱えた。
「も〜いい・・・好きにして・・・」
「まりっぺっ!! 何言ってんだよっ!!」
「ゆーちゃんがあーゆー顔したら何してもムダだもん・・・それにあたしが悪いのは事実だし・・・」
「まりっぺ・・・ゆーちゃんの影響受けすぎだぞ・・・」
「でさ! 何してたの?」
「う〜ん・・・平たく言えばなぁ・・・」
ごっちんの目はきらきらと光っている。あー・・・そのいかがわしい想像と寸分違わないことを
してるから、何とも言えない気持ちだ・・・
「えっちや」
「・・・は?」
「だから・・・何度も言わせんといて・・・えっちやて・・・」
ゆーちゃんの言葉に・・・ごっちんは思いっきり湯船に飛び込んだ。
反対方向を向いてばしゃばしゃと顔にお湯をかける。
「ちょ、ちょ、ちょっと・・・そんなの・・・」
「期待を裏切ってへんやろ?」
「そんな・・・そんな、ホントに? ホントなの!?」
「まぁなぁ・・・」
ごっちんに詰め寄られて、ゆーちゃんは恥ずかしそうに頭をかいていた。
- 130 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月14日(火)03時05分41秒
- ごっちんの表情は一気に変わった。
興味津々と言ったご様子だった。
「は、初めてだったの? 今日で何回目ぐらい?」
「あー・・・それはちゃうな。何回なんて数えておらへんし・・・」
「男の人とさ、女の人ってどんなカンジで違うの?」
「それは・・・って、何でそこまで話さなあかんねんっ!! 後は自分で何とかしいや」
ゆーちゃんは乱暴にお酒を奪い取ると、並々とおちょこに注いでお酒を飲み干す。
それは持ってきたばかりの熱燗だからすぐに回っちゃうぞ・・・
「・・・いいなぁ・・・」
「へっ?」
「なんかさ、ゆーちゃんってやっぱりカッコイイよね・・・」
「普通さ、女の子同士だったりするとさぁ・・・いろいろ考えるじゃん? 周りのこととか・・・
あたしだって・・・今はもう関係ないけど、市井ちゃんのことがダイスキだって分かった時、
ちょっといろいろ考えたもん・・・」
「・・・」
「でも、市井ちゃんもあたしが・・・その、ダイスキ・・・だって言ってくれたからっ! その・・・
このままでいいんだなって思って・・・何て言っていいか分かんないけど・・・」
ごっちんの言いたいことはあたしだけじゃなくて・・・三人とも分かっていた。
お互いがスキだって言って支えあわないと・・・たとえ、それが反射的に出るようになっても、
『スキだっ!!』っていう言葉が持つ魔法みたいな要素が大事だって・・・そんな風に思える。
「何や? まだ、二人とも済ませてへんのか?」
「「・・・」」
二人とも顔を真っ赤にして俯いていた。
当たり前でしょ・・・ごっちんのあの反応振りは。
「キスぐらいはしたんか?」
「そ、それぐらいは・・・」
「後藤もすぐに正直に答えない!」
「ははっ・・・何や、紗耶香が出し抜かれてるやんか。うちはてっきり逆かと思ったわ」
「う、うるさいよっ。いいじゃんか、別に・・・」
深夜の時間帯にもかかわらず・・・風呂場は盛り上がっていた。
・・・ここまでは大人の盛り上がりだったのだが・・・
- 131 名前:O-150 投稿日:2000年11月14日(火)08時48分23秒
- なんや〜ごま市井ちゃんとしてないんかい・・(w
とかガッカリしてる僕は風邪ひき中。これを機に小説書きます。
BOOTREGさんも頑張って下さい!
- 132 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月17日(金)01時46分14秒
- いろいろ自分の中で事件が発生したため、更新できませんでした。
今週までに終わるはずでしたが・・・すいません、ちょっと延びるかも。
一応、さんくすを。
>>131 O-150さん
毎度毎度レスありがとうございます! ホントに励みになります。
あくまで自分はやぐちゅ〜派なんで、している、していないは0-150さんに任せます。
書いててあんまりらぶらぶじゃないんで、軽く流してくれるとありがたいです(w
やっぱり、いちごまは難しいですね。キンチョーもしますけど。
- 133 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月17日(金)01時47分43秒
- 「いちーちゃんっ♪」
「ごと〜♪」
お風呂場は完全におかしくなっていた。
酔ってへべれけになっている紗耶香とごっちんが湯船で抱き合っている。
かく言うあたしもちょっと・・・酔っている。
「何や〜やれば出来るやんかぁ〜」
「へへっ。やぐっちゃんたちには負けないからね〜。あたしだって・・・」
「うわ・・・ちょっと・・・」
どぼぉぉんっ!!
ごっちんに思いっきり抱きつかれた紗耶香が支えきれずに沈む。
それを見てゆーちゃんは心底おかしそうに手を叩いた。
「あはははっ!」
「何やってんだよっ〜。紗耶香」
熱い温泉と回りやすい熱燗のせいで、ゆーちゃんもだいぶ酔いが回っているらしい。
あたしを見て・・・近づいてくる。
「やぐち〜」
「・・・なんだよ〜、へへっ・・・」
「ダイスキやっ!!」
さっきのごっちんのように・・・あたしに思い切り抱きついてくる。
酔うと「真里」ではなく、「矢口」と呼ぶのは以前のゆーちゃんに戻るためだ。
あたしはしっかりと抱き合う。
「ホンマ矢口はかわいいなぁ〜。うちだけのものにしたいわ」
「何言ってんだよっ! すでにゆーちゃんのものだけになってるじゃんか・・・」
「ははっ。そうやったっけなぁ〜。うーん・・・えいっ!」
あたしのあごに手をかけると二人を気にせずに口づける。
ほんのりの甘い香りのするキス・・・少しだけふにゃ〜としているものの、キスのうまさはかわらない。
吐息が口から漏れる。
「・・・はぁっ・・・」
「やぐっちゃん・・・なんかちょっとえっちっぽいよ・・・でもゆーちゃんキスうまいな〜」
「ごとー!! ど〜ゆ〜意味だよ、それ。あたしがうまくないみたいじゃんかっ」
「じゃあ、してみてよっ。それで判断するからさぁ」
「よしっ! それじゃあ・・・」
ガラガラガラっ!!
「四人とも・・・何やってんだよっ! こんなところでっ!」
引き戸の開く音と共に聞こえた声は・・・圭ちゃんだった。
その場が一気に静まり返り・・・少しだけ意識がしっかりした。
- 134 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月17日(金)03時13分42秒
- 圭ちゃんに風呂場から叩き出されて・・・部屋に戻るとみんな酔いつぶれていた。
マイペースに飲み物を飲んでいるのは・・・彩っぺだった。
さすがに身重のせいかあまりお酒は飲んでいないらしい。
「おっ。どこにいたの? 四人とも」
「全く・・・露天風呂で酒盛りして暴れてたよっ! 抱き合ったりキスしたり・・・」
あたしたち四人は風呂場でこっぴどく叱られた。
別に圭ちゃんがやきもちを妬いているわけじゃないのは分かるけど・・・
確かにあの場はちょっと行き過ぎたかもしれない・・・とか思ったりして。
そのせいか、ごっちんや紗耶香はもちろん、ゆーちゃんまでもしゅんとしている。
「でも、ゆーちゃん、元気そうでよかったよ」
「?」
「末期でいつ逝ってもおかしくないなんて言われてるから、少しは陰でも背負って
暗くなってるかと思ったら・・・前と全然変わってないどころか、むしろはじけちゃってんだもん」
「そりゃ・・・まぁなぁ・・・いろいろあったけど・・・」
「真里のおかげや・・・全部が全部、真里のおかげなんや。うちがこうして今までこれたのは・・・
みんなと会ってご飯食べたり、酒飲んだり、風呂に入ったり出来るのは・・・全部真里のおかげなんや」
「・・・やぐっちゃん、カッコいい〜・・・」
「ご、ごっちんっ!! 茶化さないでよっ。恥ずかしい・・・」
「なるほど・・・まりっぺなら、それぐらいやるかもね・・・」
彩っぺはすぐそばで酔いつぶれて寝ているみっちゃんの髪を触りながら、話した。
「みっちゃんがね・・・ずっと言ってたよ。まりっぺがいるからゆーちゃんは生きてられるって。
こんな風にみんながお酒飲んで、ゆーちゃん祝福して・・・元気づけられるのはまりっぺのおかげだって」
「・・・」
「人の生き死になんて・・・ホントに表裏一体だと思った。ゆーちゃんがいついなくなるかもしれない・・・
でも、あたしからは新しい命が生まれてくる・・・そう思ったら何が悲しいのか、何が嬉しいのか、
それだって・・・表面的に決められないと思った」
「もし・・・元気だったら、ゆーちゃんとまりっぺはここまで行かなかったかもしれないし・・・
お互いを深く愛し合ったり、好きになったりしなかったかもしれない・・・
だからさ・・・ゆーちゃんが幸せそうな顔をしていれば、きっと・・・死とか関係ないんじゃないかと思った」
- 135 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月17日(金)03時36分32秒
- せつなさも、優しさも、さびしさも・・・
すべて光にかえて・・・
自分に魔法をかければ・・・
ゆーちゃんはいきなりあの歌を口ずさんだ。
あの時・・・病室で、マンションで歌っていた歌。
キレイな旋律を奏でている反面・・・どこか儚げに聞こえる。
「・・・何? その歌?」
「うちがな・・・入院してた時にラジオから流れてきた曲なんや・・・
うちにタイセツなことってもしかしたら・・・自分に魔法をかける事なんやないかって思ったんや」
「・・・」
「また、この歌の題名が分からんやけど・・・知らんままでいたほうがええような気がしてな。
ごめんな、いきなり歌いだしたりして・・・」
「・・・それじゃ、そろそろ寝ようか? 明日は川でバーベキューやるんでしょ?」
「そうだね。みんな寝ちゃってるけど・・・どうせ、一晩寝ればみんな元気だもんね」
「少し片付けた方がいいかな?」
「ええよ。かったるいし。布団持ってきて適当にかぶって寝ようや」
それから・・・酔いつぶれているみんなに一枚ずつ布団をかけていく。
福ちゃんとののちゃんは一緒に寄りかかって寝ているし・・・梨香っちとよっすぃーもそうだった。
見事にカップリングされた光景を見てあたしは運命を感じた。
娘。の中で惹かれあう糸は・・・決してあたしたちだけじゃないのだと思った。
「・・・一緒に寝ぇへんか?」
「・・・もちろん・・・」
寒さをしのぐように・・・あたしたちはお互いを抱きしめた。
死の抱擁から取り払うように・・・あたしは自分の身体を一杯に広げてゆーちゃんを包んだ。
それに答えるように抱きしめるゆーちゃんは・・・怯える子供のようにしがみついてきた。
離れたくない・・・別れたくない・・・
その意志がしっかりと伝わってきてあたしは泣きそうになった。
ゆーちゃんの吐息が寝息に変わるまで・・・あたしは片時も抱きしめている手を離さなかった。
- 136 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月18日(土)00時47分39秒
- 「・・・うおーい・・・みんな起きろ〜」
布団の中から誰かの声が聞こえてあたしは目を覚ました。
暖かい布団から這い上がろうとすると・・・ふと、差し伸べられた手につかまえられた。
・・・ゆーちゃんだった。
「・・・おはよ〜・・・」
「何や、まだ起きておらんかったんか?」
「うん・・・ゆーちゃんが寝つくまで起きてたから・・・ふぁ・・・」
すると、ゆーちゃんはあたしの頬に手を伸ばした。
そのまま・・・口づける。
(ちょ、ちょっと・・・寝起き一発目から・・・あっ・・・ヤバ・・・)
「・・・何かドキドキするなぁ・・・見られてるかも知れへんで」
「な、何言ってんだよぉ・・・ちょ・・・」
ゆーちゃんの手がするするとTシャツの中にもぐりこむ。
「こんなトコで・・・バレたらどーすんの・・・はぁ・・・」
「・・・知らんわ。バレたらバレた時やて・・・」
「・・・」
ブラが半分ほど上まで押し上げられて、あたしは急に息苦しくなった。
朝からこんなことになるのは・・・初めてじゃなかったけど、見られているかもしれない、と
思うだけで、力が入らなくなる。
「う・・・んんっ・・・どうして・・・はぁ・・・朝イチで・・・」
「圭と紗耶香のせいや。温泉で邪魔されたからな。ここでしとかんと・・・うちがイヤや」
「・・・」
あたしは耐えられなくなって布団を端を掴む。
声だけが漏れないように・・・必死に息を飲む。
ばさっ!!
急に掴んでいたものが取り払われて、あたしは愕然とした。
・・・カオリが上から見下ろしている。どうやらさっき聞こえた声はカオリだったらしい。
「えっ・・・あっ・・・」
「まりっぺ〜・・・朝から何してんだよ〜」
「いや、その・・・」
ゆーちゃんは・・・隣でくすくす笑っている。
起きて周りを見回すと・・・みんながニヤニヤとこっちを見ている。
あたしは・・・状況を理解した。
「ゆ〜ちゃ〜ん〜」
「へへっ・・・どうや、みんな? ゼッタイ拒まへんやろ?」
あたしは・・・思いっきり枕をゆーちゃんに投げつけた。
- 137 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月18日(土)01時29分31秒
- 「・・・」
「そんな怒らんといてな。軽いジョークやて」
「・・・(ずるずる)」
あたしは無言で朝ゴハンの味噌汁をすすっていた。
さっきのは・・・いくらなんでもヒドすぎる。あーゆーことはジョークにされるとすごくツライ。
ましてや、みんなに見せつけるために一芝居打っていたのだから・・・余計にツライ。
「ほら・・・だから、やめようって言ったんや。まりっぺは真面目なんだから・・・」
「何ゆーてんねん! みっちゃんかて賛成してたやんか」
「でも・・・わたしは何か悪いことしたって気がします・・・」
「梨華ちゃん・・・」
あたしは誰にも目もくれずにもくもくと朝ゴハンを食べ続けた。
「やぐちさんがかわいそうです・・・やっぱりあやまらないといけないですよ」
「辻ちゃんの言うとおりかもね・・・」
「何や、何や!! そもそもこれをやろうってゆーたんは誰なんや?」
「・・・あたしだけど・・・」
「ちょ、ちょっと待て!! 確かに後藤が提案したけどさ、ノリ気だったのはゆーちゃんだろ!?」
「うちかて、朝からあんなことフツーはせえへんわ!! 多分・・・」
「ちょっとっ! あたしを挟んで訳わかんないことで議論しないでよっ!!」
耐えられなくなってあたしは騒がしくなったみんなをぴしゃりと黙らせる。
その声に・・・周りは水を打ったように静まり返った。
あたしは何だかその沈黙に耐えられなくなって・・・箸を置いた。
「・・・朝風呂に行ってくる・・・」
バスタオルをハンガーからむしりとると大股で部屋を出て行った。
あたしを止めようとするメンバーは・・・誰もいなかった。
- 138 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月18日(土)23時15分53秒
- やぐちそんなに怒らなくても・・・
- 139 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月19日(日)00時02分56秒
- 長くなりすぎたこの話も佳境に入ってきました。
そろそろ終わりですねぇ・・・と言いつつも、なかなか終わらないし(w
まあ、じっくり書いているんで・・・とりあえず、さんくすを。
>>138 名無しさん
レスありがとうございます!
矢口が何でそんなに怒っているのかは読んでいただければ分かります。
そーゆー風に書きましたので(w
- 140 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月19日(日)00時03分42秒
- 「ふ〜んだ・・・」
朝と言ってもそんなに早い時間じゃないせいか、風呂場には結構な人がいた。
そのほとんどが老人で、あたしを見ても声をかけてくる人は誰もいなかった。
湯船に身体を預けて・・・くつろぐ。
「・・・何であんなことしたんだよ・・・」
ゆーちゃんがあたしを求めることに関しては何も言わない。むしろ、嬉しい。
でも、あたしなりにそのことを考えることもある。つまり・・・人前で見せるかどうかという問題だ。
あたしは断じてノーだ。あんな状態を他人に見られるのはゼッタイに・・・シラフなら耐えられない。
でも、ゆーちゃんは違う。大雑把で明け透けで、むしろ周りに見られることがスキらしい。
性格は微妙に繊細に出来ているくせに、そーゆーことは全然だいじょぶらしい。
あたしからすれば・・・悪く言えば、ヘンタイ以外の何者じゃない。
「ゆーちゃんのばか・・・」
あたしはぶくぶくと顔を湯船に潜らせた。少し眠かった頭も今やはっきりしている。
でも・・・それでも、あたしはゆーちゃんがスキでしょうがない。テレくさいけど・・・愛してる。
ゆーちゃんはあたしを見て「愛してる」って言うことが多い。道の真ん中でも平気で言う。
自分の気持ちにものすごく忠実で真っ直ぐだ。あたしも真っ直ぐな方だけど、ゆーちゃんには適わない。
あたしの顔はいっつも真っ赤になってばかり・・・
(なんだよ・・・あんなことされても・・・ゆーちゃんのことばっかり考えてる・・・)
何だか少し言い過ぎたような気がしてきた。
もしかしたら、悲しんでいるかもしれない。心の中では泣いているかもしれない。
あたしが謝らないといけないのかもしれない・・・
(そうだね・・・謝らないといけないのかもね・・・)
そう思って、顔を湯船から上げて・・・あたしは思わず目を疑った。
ゆーちゃんがいた。気まずそうに頭をかきながら・・・あたしの側に入ってきた。
・・・しばらく、あたしたちの間に気まずい間が生まれた。
- 141 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月19日(日)00時46分05秒
- あたしはそっぽを向いていた。
少し熱いお湯のせいで半分のぼせていたが、じっと上を見て・・・晴れ渡る空を見ていた。
「・・・あのぉ・・・ちょっと話をしまへんか?」
「・・・」
「まあ、ええわ・・・あのな、こー見えてもうちは芸能人やったんです、はい」
「へえ・・・そうなんですかぁ?」
「ま・・・まぁ、しがないグループのリーダーやってたんですけどね・・・」
「結局、どーだったんですかぁ? 解散でもしちゃったみたいですねぇ」
あたしは思いっきり白々しく答える。
ゆーちゃんは・・・たじろいだ様子で話を始めた。
「まあ、その通りなんですわ。リーダーのうちが事故っちゃいまして・・・
記憶が飛ぶほどで・・・まあ、戻ったんですけど、それからいろいろあって解散ですね」
「・・・大変ですね・・・」
「そーこーしているうちに身体にガンが見つかりまして・・・末期やゆーんですよ。
助からないなんて言うんで・・・どーしよーかと思いましたよ」
あたしは耐えられなくなってきた・・・お湯の熱さだけじゃなく、話の内容にも・・・
ゆーちゃんはいかにも他人に話す素振りであたしに話し続ける。
「でも・・・こんないつ死んでもおかしくないうちの身を案じてくれるメンバーがいるんですわ。
その子はむっちゃ歳が離れてるし、女の子やけど・・・うちのことがスキだって言ってくれるんよ。
うちだってその子が・・・言葉に出来へんぐらいスキでスキで・・・」
「・・・」
「うちのグループって歳の差が結構あるんですわ。その子とだって・・・10ぐらい離れてます。
でも、その子がおらんかったら・・・うちはもう死んでますね。確実に」
「・・・」
「今はその子がいない生活が考えられないってゆーか・・・いないと生活じゃないんですわ。
命の次に大事とかじゃなくて・・・うちの命なんです」
あたしは・・・いよいよ耐え切れなくなって、ゆーちゃんに抱きついた。
「ごめんねっ!! ゆーちゃんっ!!」
「ははっ・・・構へんよ。ホンマに謝らあかんのはうちのほうなんやから・・・ごめんなぁ・・・」
「違うよっ! 違う・・・違うんだって・・・」
あたしは・・・急に目の前が白くなっていくのが分かった。
「ま、真里・・・?」
「・・・のぼせた・・・」
あたしの意識は飛んでしまった。
気分が悪かったけど、ゆーちゃんの本心が聞けて・・・わだかまりが解けて・・・
嬉しかった・・・
- 142 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月19日(日)01時15分17秒
- 「だぁ〜・・・あ〜つ〜い〜」
「・・・バカだよね〜、まりっぺ」
「う、うるさいっ・・・って、ああっ・・・」
あたしはゆーちゃんに部屋まで運ばれて季節外れにウチワで顔を煽がれていた。
ゆーちゃんの膝枕・・・気持ちいいけど、みんなの注目を浴びているのが何とも恥ずかしい。
「まだ、大声出したらあかんわ。このままじっとしとき」
「何だかんだ言ってさぁ〜、結局、一番見せたがり屋ってまりっぺなんだね〜」
「違うよぉ・・・たまたま、こーなっただけだって・・・」
「意外と大胆やから。キスもえっちもな」
「ゆ、ゆ〜ちゃん・・・」
あたしは側に置かれていた午後の紅茶を口に含んだ。
まだ、言い返すほど身体が戻って来ていない。情けないが・・・立ち上がることも出来ない。
のぼせて失神したのは生まれて初めてだった。
「・・・気持ちい〜・・・」
「あんな熱い湯船にずっと浸かってたらのぼせて当然や。うちが行ってよかったよ、ホンマに」
「ごめんね・・・」
「・・・構へんよ・・・」
ゆーちゃんの手があたしの前髪を梳った。
温かいゆーちゃんの手は・・・微熱を持つ独特の温かさだった。
「こらこらっ! ここはゆーちゃんとまりっぺの愛の巣じゃないんだぞっ!」
「あ、ごめん・・・」
「・・・とりあえず、出かける準備しようよ。テーブルの上を片付けて・・・みんなお風呂に行ったね?
まりっぺが元気になったら出かけるよ」
こんな時にリーダーシップを発揮するのはやっぱり圭ちゃんだった。
やはり、次期モー娘。のリーダーと囁かれただけのことはある。
「ほらほら・・・カオリっ! 枕投げは夜にさんざんやったでしょ!
梨華ちゃんもお茶ばっかり飲んでないで片付けて・・・ああっ、辻は寝てるし! 福ちゃんまで・・・」
「・・・何か、みんな好き放題やってるね・・・」
「ええんちゃうか? 楽屋の中ってこんなもんやったし・・・」
20人部屋という人数の割には意外と狭く感じる部屋だが・・・
みんながその中を縦横無尽に駆け巡っている。
あと、どれくらい・・・何時間この光景を見ていられるのだろうか・・・
少なくとも、今日の夕方までにはここを発たなければいけないのは確かだった。
- 143 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月19日(日)01時19分49秒
- 今日はこの辺にしときます。
ファイナル・カウントダウンが迫ってますね〜。
ここまで読んでくださった皆さん、めんどくさがらず読んでください(w
あと少しで終わりです。
- 144 名前:T.N 投稿日:2000年11月19日(日)01時21分58秒
- この小説、マジ裕ちゃん痛いです。でも、めちゃくちゃ先が読みたいです。頑張ってください。
- 145 名前:トーア 投稿日:2000年11月20日(月)01時14分48秒
- 読んででどんどん引き込まれる。面白くて、それでいて涙も出てしまったぐらいで・・・サイコーです。
続きが気になって寝れません。続き楽しみにしときます。
- 146 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時26分02秒
- とうとうこの日がきました・・・最終回です。
修正も終わり、一応、作品が完成しました。詳しくはあとがきで。
それではさんくすを。
>>144 T.Nさん
レスありがとうございます。
甘い小説が多い白板でもかなり痛めに書いてます。
でも、意識して痛くしてるわけじゃないんですけどね・・・
>>145 トーアさん
レスありがとうございます!
作品に引き込まれて、ナミダしてしまう・・・サイコーの誉め言葉です。
ありがとうございます。続きが気になって寝れなくなるのも今日で最後ですね(w
- 147 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時27分05秒
- 「すっご〜い・・・キレイな川じゃん〜」
「あ、魚も泳いでるし。釣りとかできそうだよー」
バーベキューセットを持ち込んで川でアウトドア気分に浸っているのは・・・あたしたちだけだった。
もともと湯治目的で訪れる地にこんなことをする人はあまりいない。
でも、なぜかホテルでは道具の貸し出しをしていた。それを理由でここを選んだわけだが・・・
「ねえねえ! さっそくだけどさ、準備して・・・」
「釣り竿とかあるじゃん! なっちもやらない?」
「あ、やるやる・・・カオリやったことあるの?」
「ううん。知らない。でもやろうよ」
「・・・つ〜か誰も聞いてないし・・・」
誰一人としてあたしの言葉に耳を貸してくれない・・・と、思ったら、よっすぃーがコンロを出し始めた。
「わたしが手伝います。梨華ちゃんも・・・」
「ありがと・・・あれ? ゆーちゃんは?」
「・・・あそこで折りたたみの椅子出して座ってます。ほら」
よっすぃーの指差したところに・・・ゆーちゃんは座っていた。
みんなから少し離れた場所で・・・みんなが見渡せる場所で頬杖を突いて見ていた。
あたしはたまらず声をかける。
「ちょっと〜! ゆーちゃんの見てないで手伝ってよ〜」
「・・・あ〜分かってるがな・・・何かちょっと眠いんや。一眠りしたらな〜」
「もお〜・・・ホントにどうしよっか・・・」
「・・・わたしたちだけでやりましょうよ・・・」
がたがたと重たいコンロを持ち上げてながら・・・あたしたちは悪戦苦闘した。
全ての準備が整うのにするのに・・・20分ぐらい時間がかかった。
- 148 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時27分42秒
- 「ふぃ〜・・・出来たよー。ほら、みんな焼くのぐらい手伝ってよ〜」
「はぁい!」
釣りにハマっているカオリとなっちは返事をしなかったが、焼く事になるとぞろぞろと集まってくる。
・・・見てるだけなら、手伝えよ・・・
「お肉はそこにあるから・・・ほら、先に油引かないと・・・」
「あれ? キャベツはどこにあるの?」
「野菜は向こうの袋に入ってますよ。取ってきますか?」
「あ〜、悪いんだけど、ゆーちゃん呼んできて。出来たからさ」
よっすぃーが野菜を取りに行き・・・ゆーちゃんのところに近づいた。
あたしは偶然にその光景を見てしまった。ゆーちゃんを揺さぶっているよっすぃーの姿を。
そして・・・頬杖が崩れるその光景を・・・
「・・・ゆーちゃんっ!!」
あたしは持っていた箸を放り捨てて・・・ゆーちゃんのところに全力で走った。
よっすぃーは・・・その場でぺったりと腰を落としていた。
「中澤さんが・・・中澤さんが・・・」
「・・・ゆーちゃんっ!!」
あたしは崩れているゆーちゃんの腕を取った。まだ温かい・・・でも、脈がない。
力なくうなだれる首元に手をやる。まだ温かい・・・でも、脈がない!
あたしは・・・頭の中が真っ白になった。
「みんなっ!! 救急車・・・救急車呼んでっ!!」
「・・・まりっぺ・・・」
「何してんだよっ!! みっちゃん、救急車を・・・」
「・・・よく顔を見てみいや・・・ゆーちゃんの顔を・・・」
みんなが集まってきた。
あたしは・・・ぐったりとしているゆーちゃんを見た。
微笑んでいた。
いつもと同じように・・・あたしに微笑みかけるように・・・笑っていた。
苦しさなんか微塵もないその姿は・・・幸せを象徴している笑顔そのものだった。
あたしは・・・水をかけられたように落ち着いた。
- 149 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時28分22秒
- 「・・・行っちゃった・・・」
あたしは・・・静かにそうつぶやいた。
その姿が何だか酔いつぶれてふにゃ〜としている姿に似ていて・・・あたしは驚かなかった。
不思議と・・・悲しくもなかった。
「・・・まりっぺ・・・」
「とうとう行っちゃったね・・・みんな・・・ゆーちゃんが・・・ゆーちゃんが・・・行っちゃったよぉ・・・」
「・・・」
あたしは・・・力なく崩れているゆーちゃんを身体を抱きしめた。
ぼんやりと所在なさそうに固まっている腕は・・・あたしを抱きしめようとはしなかった。
いろいろな想い出が・・・頭を巡り、巡り行き、消える。
「うっ・・・うっ・・・ゆーちゃん・・・」
「やっと・・・旅立てたんやなぁ。思い残すことなく、やり残すこともなく・・・みんなに見送られて・・・」
「みっちゃん・・・」
「まりっぺ・・・よう頑張ったな。ゆーちゃん、ちゃんと旅立てたで・・・」
あたしは・・・肩に手を置いていたみっちゃんに抱きついた。
みんなが・・・メンバーのみんながゆーちゃんを取り囲んでいた。
でも、誰も目を背けていない。全員が・・・しっかりとゆーちゃんを見ていた。
「これじゃ・・・ゆーちゃん、風邪引いちゃうよ。ちゃんと温かくしないと・・・」
なっちが着ていたコートをゆーちゃんにかけた。
「じゃあ、カオリは・・・手袋だね。ほら、ゆーちゃん・・・」
「あたしは・・・」
それから・・・みんなが自分のものをゆーちゃんに身につけさせた。
指輪やサングラス、手袋やマフラー・・・持っているものを一つずつ、ゆーちゃんに持たせた。
みんなの祝福を受けたゆーちゃんは・・・幸せそうな顔をしていた。
「・・・あたしは・・・あたしは・・・」
あたしは・・・ゆーちゃんの前髪をかきあげるように頭を持ち上げた。
ゆーちゃんとするキス・・・数え切れないほどキス・・・そして、ラストキス・・・
最期のキスまで・・・ゆーちゃんは温かかった。
- 150 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時28分52秒
- ★ ☆ ★ ☆ ★ ★ ☆ ★ ☆ ★
「はい! 税込みで1635円になります!」
「・・・2,035円お預かりします」
「400円のお返しになります! ありがとうございました!!」
・・・あたしは何をしているんだろう・・・
こんなことしていたくない・・・でも、あそこにも戻りたくない・・・
あたしが「娘。」を脱退してから・・・いや、「モーニング娘。」というグループがなくなってから
もう二ヶ月も経っていた。
残りのメンバーのみんなはそれぞれの道を歩き始めていた。
なっちとカオリンはソロとして別のレコード会社でデビューした。
ごっちんは「プッチモニ」のリーダーとして、よっすぃーと新たなメンバーに梨華っちを加えて活動している。
圭ちゃんはソロ活動をしたいために、「プッチ」をやめて今はあちこちのレコード会社をまわっている。
ののちゃんとあいぼんは「ミニモニ」として今では「プッチ」を凌ぐほどの人気を得ている。
そして・・・ゆーちゃんは・・・
あたしは「モーニング娘。」がなくなったときに全てを捨てた。
あちこちからオファーがかかったし・・・事務所も「タンポポ」と「ミニモニ」のリーダーとして、
売っていくつもりだったらしい。
でも・・・どうでもよかったんだ。そんなのは・・・どうでもよかった。
あんなことがあったから・・・
どうでもよくなったんだ・・・
- 151 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時29分32秒
- 「――はいっ!! オッケーですっ!!」
ディレクターのかかった声にあたしは自分自身を元に戻した。
役者というのは思ってもいないことを考えながら演技しないといけないらしい。
「いや〜、矢口さん、役者としてでも十分やっていけるよ」
「ありがとうございます!! でも・・・」
「ああ、分かってるよ。こんなモー娘。脱退の真相をドラマ化するのがイヤなんだろ?」
「え、ええ・・・まあ、こんなキャスティングまるっきりウソじゃないですか?」
今度、春の特番で、モー娘。のメンバーでスペシャルドラマが行われるのだ。
モーニング娘。の解散をドラマにするらしいが・・・事実は正反対だ。
特にあたしは急に脱退をしたために、ウェイトレス役なんぞをやらされてる。
急に仕事をなくしたから、フリーターとして働いているという設定らしい。
「まあ・・・わたしたちは事実を知らないし、メンバーの誰一人としてその事実を話そうとしないしな」
「・・・」
「ま、この話はフィクションというコトで作っているからな。事実は関係ない。あまり気にするな」
「そうですね・・・」
あたしは・・・芸能界に復帰した。
事務所は違う。アーティストとして復帰したかったが、いきなりそういうわけにもいかないらしい。
ドラマのエキストラをやったり、脇役をやったり・・・こんな役までやったりしている。
でも、歌手になることを・・・あたしは諦めない。
モー娘。のメンバーだった誇りと、歌いたくても歌えなかったゆーちゃんの遺志を・・・継いでいる。
くじけそうな時、つらい時にはあの時の歌を・・・ゆーちゃんが歌っていたあの歌を思い出す。
せつなさも、優しさも、さびしさも・・・
すべて光にかえて・・・
自分に魔法をかければ・・・
無限大の力になる・・・
あたしの中からあふれる無限大の力の源は・・・ゆーちゃんだ。
せつなさも、優しさも、さびしさも・・・すべてはそこにある。
あの頃の想い出に・・・
−FIN−
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月20日(月)01時40分16秒
- お疲れ様です。
涙なしでは読めませんね・・・
余韻に浸ってます
- 153 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月20日(月)01時40分55秒
- 〜あとがき〜
はい! これにて「あの頃の想い出」は終了です。当初、考えていた量の二倍近くまで
話が膨れ上がってしまい、中盤は中だるみしてしまった感もありますが、最後まで書けて
よかったです。このようなラストは、作品の初めに完成していたので初志貫徹しました。
どんなレスが出てくるのか楽しみです。
それと「マメに更新する」と決めて書き始めたので、その辺りも何となく達成できたようで(w
よかったです。いろいろ勉強になりました。それと、作中でゆーちゃんが歌っている歌の題名を
知っている人がいたらぜひレスを。わずかに4フレーズですが・・・調べてから小説で使えよってつっこまれそう(w
最後に、この作品を見てくださった全ての人に・・・ありがとうと言いたいと思います。
拙筆で誤字や脱字も目立ったと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。
特に0-150さんにはこの場を借りてレスを。マジ小説、楽しみにしてますよ(w
宣伝になりますが・・・現在青板でも話を書いてます。興味があるならぜひ顔を見せてください。
向こうは痛めではなく甘めですが・・・もともと甘書き志向ですから。
では、以上です。ありがとうございました〜。
- 154 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月20日(月)03時06分31秒
- 久々に泣いたよ。
ありがとう、そしてお疲れさま作者さん!
- 155 名前:裕子の客 投稿日:2000年11月20日(月)03時11分12秒
- お疲れさん、やぐ・・・あわわ。
よかったよ。
- 156 名前:名無し娘。 投稿日:2000年11月20日(月)07時57分52秒
- お疲れさまでした。おもろかったです。
でも、実は最後まで中澤の奇跡の完治を期待してたんだけどね
- 157 名前:ま〜 投稿日:2000年11月20日(月)08時03分23秒
- おぉぉぉぉぉ・・。泣いてしまった・・・・。
お疲れ様でした。
- 158 名前:読んでる人 投稿日:2000年11月20日(月)10時30分38秒
- 俺もどっかで中澤の病気が治るのを期待していた。
でもこれはハッピーエンド・・・かな?少なくとも俺はそう思う。
- 159 名前:いずのすけ 投稿日:2000年11月20日(月)13時17分23秒
- ありがとう というきもちでいっぱいです。おつかれさまでした。
- 160 名前:河原祐也 投稿日:2000年11月20日(月)18時06分17秒
- お疲れさまですー。
いやぁ、今一気に読み返してみました。何故かイエモンのJAMを聞きながら(笑)。
ほんと泣きました・・・・・・・・。ありがとうです。
妊婦も・・・・・・・・・・。
- 161 名前:どら 投稿日:2000年11月20日(月)20時58分12秒
- 感動しました。良かったですよ。
ラストのところ「フレンズ」と似ているような気がしたけど・・・。
- 162 名前:HOPE LIGHTS 投稿日:2000年11月20日(月)22時54分50秒
- まじ泣きました!!
ほんとお疲れさまでした。
みんなに囲まれてとても幸せそうなゆうちゃんの顔が目に浮かんできました。
有り難うございました。
- 163 名前:某板某コテハン 投稿日:2000年11月21日(火)00時12分11秒
- >>153
意地になってSherlock使いまくって見つけました。さすがインターネット(藁
倉木麻衣のアルバム「delicious way」の中の「Stepping ∞ Out」という曲だそうです。
- 164 名前:トーア 投稿日:2000年11月21日(火)00時37分41秒
- 感動しすぎていまの気持ちが言い表せない・・・。そのくらい感動した。
感動のしすぎで眠れないかも・・・。
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月21日(火)00時46分44秒
- 裕ちゃんの最後のシーンとこすげー「じーん」と
きました。
今はちょっとひたりたいので、しばらく時間をおいてから
読み返したいですね。
作者さん、お疲れ様でした!
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月21日(火)02時36分00秒
- 「フレンズ」パクリじゃん。
がっかりしたよ…
- 167 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月21日(火)02時44分42秒
- うわ・・・ものすごい数のレスにビックリ・・・
ホントにありがとうございます! 俺が嬉しくて泣きそうです。イヤ、マジで。
>>152 名無しさん
レスありがとうございます。
リアルタイムで見ていたのか、たまたまのか分かりませんが、
いち早く読んでくれて嬉しいですね。どっぷり余韻に浸ってください。
>>154 名無しさん
レスありがとうございます。
こんな小説で泣いていただいて嬉しいです。ちょっと痛すぎかなぁと
思ってもいますけど・・・
>>155 裕子の客さん
レスありがとうございます。
やぐ・・・って、何のことでしょ?(w
隠れフ・・・なんでしょーけどね(w
>>156 名無し娘。さん
レスありがとうございます。
奇跡の回復も・・・正直悩んでいましたけど、
あの状況でどうすればそーゆー方向に持っていけるのか難しいんで・・・
- 168 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月21日(火)02時55分08秒
- >>157 ま〜さん
レスありがとうございます。
青板も期待してます! 泣いていただいて感謝です♪
>>158 読んでる人さん
レスありがとうございます。
中澤、奇跡の復活を願っている人がここにも・・・
そー言われると、もしかしたら奇跡の復活の方がよかったのかも(w
でも、痛めなんで・・・これでいいと思ってます。
>>159 いずのすけさん
レスありがとうございます。
ありがとう・・・確かに、この作品に関してはその一言で終わるのがいいかもしれません。
長い話に付き合っていただいて感謝です♪
>>160 河原祐也さん
レスありがとうございます。
何か久しぶりって感じがするのは気のせい?(w
俺は「いつかのメリークリスマス」聴きながら書いてました。
妊婦って・・・石黒?(w また、頃合見て書きますよ。
- 169 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月21日(火)03時08分47秒
- >>161 どらさん
レスありがとうございます。
ラストが「フレンズ」って・・・それは言わない約束で(w
書いて読み直したらそんなカンジですね。まんまじゃないんで勘弁してください。
>>162 HOPE LIGHTSさん
レスありがとうございます。
ゆーちゃんは最初からずっと悲劇っぽかったんで、最期はみんなに看取ってもらいました。
幸せそうだと伝わってくれれば幸いです。
>>163 某板某コテハンさん
レスありがとうございます。
もしかしたら、どこかでお会いしたことがあるのかも(w
聴いてみたら確かにありました。教えてくださってすごくスッキリしました。
でも、最後は「無限大の強さになる」が正しいみたいですね。
>>164 トーアさん
レスありがとうございます。
感動しすぎてまた眠れなくしちゃってるみたいですね(w
レスをつけてもらっている時点で感動が伝わってるのが分かります。嬉しいですね。
>>165 名無しさん
レスありがとうございます。
最後のシーンは力を入れて書きました。こんな小説でもひたってくれるなら、
書いてた甲斐があります。
>>166 名無しさん
レスありがとうございます。
「フレンズ」パクリの二例目ですね。露骨にパクった覚えはこれっぽっちもないんですが、
読み返したら、そう思われてもしょーがないですね、こりゃ。
ただ、全てが「フレンズ」パクリでないのは読んでいただければ分かると思いますが。
最後だけが、たまたまそうなってしまっただっただけと解釈していただければ幸いです。
以後、気をつけたいと思います。
- 170 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月21日(火)03時12分34秒
- 〜一言〜
ただ今、構想中の長編小説をここで書こうか・・・と思ってます。
題名は「あの頃の想い出」と前回と同じですが・・・話は違います。
やぐよし中心に話を書こうと思います。若干痛めですが・・・基本は甘めで行くかと。
その際はよろしくお願いします。
- 171 名前:YUKI 投稿日:2000年11月21日(火)16時15分28秒
- やぐよし♪やぐよし♪♪
- 172 名前:0120 投稿日:2000年11月21日(火)22時35分28秒
- おつかれさまでした。切なくて、とても感動しました!
次はやぐよし!!楽しみに待ってます〜。
がんばってくださいね。
- 173 名前:Hruso 投稿日:2000年11月22日(水)01時10分27秒
- お疲れさまでした。
今日初めて読んで、いっきに全部読んでしまいました。
甘めのやぐよし、頑張って下さい。
- 174 名前:トーア 投稿日:2000年11月22日(水)23時34分18秒
- おつかれさまでした。
次回作楽しみにしています。よっすぃ〜ファンなので。
- 175 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月23日(木)01時58分19秒
- 作品の余波がまだ続いてる・・・かなりビックリ。こんなに見てると思わなかったです。
ホントに嬉しい限りです。二度目のレスもつけさせてもらいます。
>>171 YUKIさん
レスありがとうございます。
甘めのやぐよしはプロットが頭の中で出来てる段階でまだ文字に起こしていません。
ただ、作品としてここで書くことは決まりかと思います。
今度は甘く書くつもりなので、よろしくお願いします。
>>172 0120さん
ここまでレスつけていただいて嬉しいです。
この話は「せつなく」ですが、今度は・・・「ほのぼの」かな?
ちょっと決まってませんが、やさしく、甘めにいくつもりです。
>>173 Hrusoさん
レスありがとうございます。
別のスレでよくお見かけするハンドルなので初めてって感じがしませんね(w
甘いの好きな方だと思っていたのですが・・・こんな痛い話も読んでいただいて嬉しいです。
今度書くやつは甘めなんでよろしくお願いします。
>>174 トーアさん
二度目のレスになりますね。ありがとうございます。
よっすぃ〜は俺もスキなんでめいっぱい愛情注いで書きます。
- 176 名前:O-150 投稿日:2000年11月23日(木)05時17分43秒
- お疲れ様でした!
さっき全部読んで感動してました。凄く素直なスレてない話でホント好きです。
最後に僕なんかにコメント付けてくれてありがとうございます。お陰で更新できました。
しかしホントマメに更新してて凄いですよね・・。気持ちのテンションを保てるのがなんとも凄い。。
やぐよし楽しみにしてます!
- 177 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年11月24日(金)02時14分28秒
- 誰かが小説あぷろだにこの小説を上げてくださいました。ありがとうございます!
やり方が分からなくて困ってたんですよ。実は(w
>>176 O−150さん
ホント〜にレスつけてくださってありがとうございます!
この作品の半ばあたりからレスをずっとつけていただいて、随分励みになりました。
いちごまというやぐちゅーよりもさらにプレッシャーのかかる作品を
見事に甘く書かれるので、いつも楽しみに読んでます。
マメに更新って・・・単に夜の時間が暇なだけです(w
寝る前っていい話が割と思いつくんでぱぱっと書くんです。
やぐよしは・・・甘めに書きます。痛めの方がスキだからちょっと悩むかも。
- 178 名前:りるる 投稿日:2000年11月29日(水)20時46分14秒
- ども。気になって2日がかりで読んじゃいました。
おいらはやっぱり痛いの大好きです。(わら)
149と150の切り替わりで胸にグッてきました。
甘めも痛めも頑張ってください!
- 179 名前:Hruso 投稿日:2000年12月01日(金)03時47分06秒
- 感想書き込んでいるだけの自分の名前を覚えていただいててありがとうございます。
自分は痛めも好きですよ。
なので甘めの中に痛めの入るBOOTLEGさんの次回作はとても楽しみです。
- 180 名前:いずのすけ 投稿日:2000年12月01日(金)11時12分07秒
- 次回作のやぐよし、期待してます!
- 181 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月02日(土)01時41分05秒
- そろそろやぐよしの新作逝きます。
…とは言うものの、青板優先で書いているので更新は今回は遅めです。
題名はスレ名通り「あの頃の想い出・やぐよしver」と言うコトで…
では、どうぞ!
- 182 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月02日(土)01時42分01秒
- 「ただいまぁ〜」
ひさしぶりに自宅の空気を吸えてあたしは嬉しかった。
ツアーが日程の大半を占めていて…正直シャレにならなかった。
それでも乗り越えられたのは…矢口さんのおかげだった。
「あのはじっけっぷりだけは真似できないよ…でも、そこがすっごいカワイイんだけどね♪」
今日のライヴを思い出してあたしは思わず微笑んだ。
あの小さな身体から想像も出来ないぐらい元気があふれている。
あたしがもっとも尊敬する人であり…スキな人でもある。
「はぁ〜…矢口さん…」
あたしは…いかがわしい想像をしていた。
矢口さんと一緒に暮らしてみたい。一緒にご飯を食べたい。一緒に寝たい…
呼吸をすることすら、一緒にしてみたい。その息づかいをあたしだけが感じてみたい。
「…むなしい想像してもしょ〜がないや…とりあえず、タマゴタマゴ♪」
がさがさと冷蔵庫をあさる。
久しぶりに開ける冷蔵庫は冷たくて…凍り付いているような冷たさだった。
そこから、タマゴを取り出して…ナベに水を張る。
「やっぱりこれ食べないと…寝れないもん♪」
- 183 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月02日(土)01時42分38秒
- 「な…なぁに…これ?」
あたしは出来上がったゆでタマゴを見て、思わず唸った。
タマゴの殻に…緑色の斑点が浮かんでいる。楕円形を描いているが、毒々しい色ではない。
ゆでる前までは真っ白いタマゴだったのに…
「腐っちゃったのかな…?」
とりあえず、冷水に浸しながら、殻をはがしてみる。
あたしが予想したのとは反対で…タマゴはつるつるに白かった。
心配になって包丁で真っ二つにしてみたが…ただのゆでタマゴだった。
「…だいじょぶだよね? ニオイもただのゆでタマゴだし…」
あたしは塩を振って、マヨネーズをかけると…半切れだったタマゴを口に放り込んだ。
…うん、おいしい。ちゃんとしたゆでタマゴの味だ。
「でも、何で緑色の点々なんか出てたんだろ? ゆでる前まで出なかったのに…」
あたしは深く考えないことにした。
もし、何かあっても多分お腹を壊すぐらいで済むだろう。死ぬことはないはずだ。
ゆでタマゴを食べて死んだ人なんか聞いたことない。
「明日も早いし…そろそろ寝ないと…」
あたしは残りの半切れも口に放り込んで大きく伸びをした。
眠くなってきた…明日もがんばろっと。矢口さんにも逢えるしね♪
- 184 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月02日(土)01時43分20秒
- pipipipi…pipipipi…
あたしは携帯の音で目を覚ました。
時間は朝の六時半。目覚める時間には早すぎる時間だ。
ベットからごそごそと這い上がると、何とか携帯を取る。
「ふぁ…もしもしぃ…」
「あ、あの…矢口さん…ですか?」
「はぁい…よっすぃ〜…おはよ」
「えっと…その…」
恥ずかしそうにもぞもぞしているよっすぃ〜の声を聞きながらあたしは身体を起こした。
何だか少しだけ…目が覚めた。
「うぅん…どしたの? こんな朝から…」
「あの…ちょっとウチに来てくれませんか?」
「えっ!?」
あたしはその声に耳を疑った。
…誘われてる? いやいや、そんなことはないよね。朝だし…
でも…真剣な様子だし…どうしよ。あたしがドキドキしてきちゃった…
「ど、ど〜したの? 電話じゃ話せないこと?」
「…はい…あの、矢口さんしかいえない…こんなこと…」
「分かったよ。今から用意していくから…一時間ぐらい時間かかるけど…」
「…ありがとうございます…」
何か…よっすぃ〜の身にあったのかな…?
もしかしたら、男の人にへんなことされた? そうだったら…
あたしは許さない。よっすぃ〜を傷つけることは許さない。
「ううん。もっと早く行くよ。頑張って30分ぐらいで…」
「はい…」
「じゃ、いったん切るよ? 家だね? そこをじっとしててね」
「…はい…」
あたしは…飛び起きるとバスルームに駆け込んだ。
- 185 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月02日(土)01時54分16秒
- ピーンポーン…
あたしは息を切らせながら、階段を上った。
よっすぃ〜の住むマンションまで結局1時間もかかってしまった。
どうしよ…何かあったら…
「…返事がないじゃんか〜…お〜い…」
あたしはドアノブをひねって見た。
…空いてる?
「おじゃましまぁす…」
ゆっくりと扉を開けて…中に入った。
入口から伸びる短い廊下には誰もいない。
玄関にはいくつか靴が並んでいるけど、男の人のものはない。
(よ…よかったぁ…何かされたわけじゃなさそうだね…)
「お〜い…よっすぃ〜…あたしだよ〜、ヤグチだよ〜…」
「……」
しかし、その声は返ってこない。
あたしはいそいそとブーツを脱いで部屋に上がる。
「…矢口さん…」
「! よっすぃ〜!! どこにいるの!?」
「あの…ここです…」
「だから、どこに…」
不意に…服のすそを引っ張られてあたしは下を向いた。
小さな女の子だった。幼稚園に行っているぐらいの歳の女の子。
ショートヘアの似合うその辺にいる小さな女の子だった。
「…あの…矢口さん…」
「よ…よっすぃ〜〜〜〜!!!!」
あたしはその場で腰を抜かしてしまった。
よっすぃ〜が…小さくなっている!? あたしよりも…ずっと小さくなってるじゃんか!!
- 186 名前:O-150 投稿日:2000年12月02日(土)05時11分07秒
- おっと急に凄い展開!(w
しかし・・ホント更新早いですね〜・・頭が下がります。。
新連載頑張って下さい!
- 187 名前:あつし 投稿日:2000年12月03日(日)00時04分40秒
- 楽しみにしてます
- 188 名前:りるる 投稿日:2000年12月03日(日)23時44分36秒
- あっ!新作が・・・
しかもいきなり急展開でいい感じ♪
続き楽しみにしてます!
- 189 名前:いずのすけ 投稿日:2000年12月04日(月)01時34分25秒
- え!?小さく?
かわいいかも・・・。
この後の展開が楽しみです。
- 190 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月05日(火)10時10分05秒
- ミクロモニか、、、
- 191 名前:裕子の客 投稿日:2000年12月05日(火)12時33分09秒
- チビよっすぃーに「バイセコー」を歌わせたい。
もちろん幼稚園の制服着せてな。
- 192 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月06日(水)01時38分07秒
- ちょっと時間が空いてしまってすみません。
ちょこっとだけ更新します。話は少し詰まり気味ですが…
ではさんくす〜
>>186 O−150さん
第一号レスありがとうございます♪
まあ、最初は書きためてたものがあったんで…ちょっと今は考え中ですね。
>>187 あつしさん
レスありがとうございます♪
某板でもレスつけていただいた記憶があるので覚えております(w
こっちも頑張って書いていきます。
>>188 りるるさん
はい♪ 最初から急展開ですが、すぐに真っ直ぐになります(w
あくまで「甘く」行くので…
>>189 いずのすけさん
よっすぃ〜を小さくしたらかわいいと思いますね〜。今もそうだし(w
6〜7歳ぐらいをイメージして書いてます。
>>190 名無しさん
レスありがとうございます♪
あえて矢口を小さくせずによっすぃ〜にしてみました。
これ以上矢口を小さくしてもしょうがないので(W
>>191 裕子の客さん
こちらも再び顔を出していただいて嬉しいです♪
早くも妄想爆発ですね(w
「1,2,3!」よりも「バイセコー」の方が確かに…(w
- 193 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月06日(水)01時38分44秒
- あたしは矢口さんを見上げて…ナミダが出そうになるぐらい安心した。
朝起きたら…あたしの身体は見事に小さくなっていた。
鏡の前に立って幼稚園ぐらいの頃に自分が戻っていた。
「あ…あ…」
「驚かせてごめんなさい…あの、起きたらこうなってたんです…」
「……」
「とりあえず、誰か呼ぼうと思ったら矢口さんしかいないなって思って…ごめんなさい」
矢口さんは…あたしを急に抱きしめた。
えっ? ええっ?
「カ…カワイイっ! よっすぃ〜の子供みたいだ〜!!」
「あ、あの…」
「ご…ごめん〜…とりあえず、話聞くよ。上がっていい?」
「はい…」
リビングの扉を開けようとして…手を伸ばす。
あ、あれ? こんな高さも届かないの…?
「…ごめんなさい…ドアを開けてください…いつものクセで締めちゃった…」
- 194 名前:0120 投稿日:2000年12月09日(土)09時13分55秒
- 小さいよっすぃ〜、かわいいですねー。
矢口より小さいなんて!!
続き楽しみに待ってま〜す。
- 195 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月10日(日)03時13分25秒
- やぐちゅー「あの頃」に比べて更新速度がドンガメ並でホントにすみません。
なかなかこちらを書く機会がなくて…って言い訳ですね(w
では、さんくすを〜
>>194 0120さん
今は青がどうも大事なのでそちら優先です。
でも、すぐに白に戻すんで頑張ります。
- 196 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月10日(日)03時14分20秒
- 「原因は分からないの?」
「はい…ベットから起き上がろうとしたらジャージがダブダブで…どうしていいか分かんなくって…
誰に頼っていいか分からなくて…とりあえず矢口さんに…」
「あ〜っ! よっすぃ〜泣かないの!! よしよし…」
矢口さんに頭を撫でられると…なんだか少しだけ落ち着いた。
こんな変わり果てた姿になっても矢口さんはあたしをキライになったりしない。
…矢口さん、だからスキです…
「身体はちっちゃいけど…記憶とか、そーゆーのはだいじょぶそうだね」
「昨日のこととかもちゃんと覚えてます…あっ!!」
「ん? 何か原因でも分かったの!?」
「直接の原因か分かりませんけど…もしかしたら…」
「ど、どんなこと?」
「あの…昨夜家に帰ってきてゆでタマゴ食べたんです」
あたしの言葉に…矢口さんは呆れたようにため息をついた。
「それって…いつものことじゃんかよ〜」
「あの、そうじゃなくって…そのタマゴがちょっとおかしくって…
何かゆでる前までは普通のタマゴだったんですけど、ゆでると緑色の斑点が…」
「…ヨッシーのタマゴじゃん…」
「……」
「あ、ちょ、泣かないでよ〜!! ジョーダンだってば!!」
「…そのむいたカラ、台所にあると思います」
あたしはとてとてと台所に向かった。
ヤバイ…この高さじゃ何も見えないし…蛇口にも届かない…
「…あ〜、ヤグチが見たげるよ…よいしょっと」
「えっ…えっ!?」
突然、矢口さんに抱きかかえられてあたしは戸惑った。
こ…こんなに矢口さんのカオがそばに…
「ど〜れ? この三角コーナーに入ってる奴?」
「……」
「ちょっと!! よっすぃ〜ってば何ぼぉ〜としてんだよ」
「あ、は、はい…これです」
- 197 名前:あの頃の想い出で泣いた人 投稿日:2000年12月10日(日)06時59分14秒
- おもしろいですね。
期待してます。
- 198 名前:まぐらだ@裕子の客 投稿日:2000年12月10日(日)18時25分20秒
- なんとヨッシーの卵だったとは・・・。
「真里」だけに矢口がマリオ?。
ごめん、寒かったな。
- 199 名前:いずのすけ 投稿日:2000年12月11日(月)10時56分49秒
- ふたりのやりとりが想像できて楽しいなあ。
- 200 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月15日(金)01時17分13秒
- 制作状況がものすごい芳しくありません。ごめんなさい。
書きたいネタがあるんですが、そこまでたどり着けないんです。
言い訳はこの辺にして。さんくす〜
>>197 あの頃の想い出で泣いた人さん
レスありがとうございます♪
ものすごいゴテゴテしいハンドルにビックリです(w
制作はドン亀ですが、書いていくのでよろしくおねがいします。
>>198 まぐらだ@裕子の客さん
まぐらだって…もしかしてあのまぐらださん? ちゃうよね?(w
ヨッシーのタマゴは斑点が出てるからネタで出しただけです。
そうか!「真里」なだけにマリオ…使えばよかった(w
>>199 いずのすけさん
だいぶ前に言ったんですけど、甘めなんで(w
二人の距離を徐々に狭めていければいいなぁと思ってます。
- 201 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月15日(金)01時18分18秒
- 「あ…あれ?」
「フツ〜のタマゴのカラだね。ホントにそんなタマゴ食べたの?」
「し、信じてくださいっ!!」
「ちょっと…耳元で怒鳴らないでよ…ん?」
あたしは不意に気が付いた。
よっすぃ〜を抱き上げてるじゃん…あのよっすぃ〜を。
こうやって近くでカオを見るの初めてだな…ちっちゃくてカワイイ。
ゼンゼン普通のよっすぃ〜と魅力が変わらない。
「あ…ごめん。降ろすね」
「はい…」
「とりあえず…どうしよっか? お医者さんにも連れてくわけに行かないし…」
「あ、あたし…モーニング辞めなきゃいけないのかな…そしたら、あたし…」
「そんなこと、ないよ!!」
思いっきり叫んじゃって…よっすぃ〜はビックリしているようだった。
あたしは何て言っていいか言葉を選ぼうとして…天井を見上げた。
「ヤグチが…ゼッタイ何とかしたげるから。教育係がこんなときに何も出来ないんじゃ…」
「矢口さん…」
「ゼッタイゼッタイだいじょぶだから…」
「…はい…」
とことこと歩み寄ってきてよっすぃ〜はあたしの足に抱きついた。
こ…これじゃあたしの子供みたいだ…
「今日はカゼひいたとか言っておくから…あ、一人ぼっちにしておくわけにいかないね…」
「……」
「そうだ…身体が大きくなるまでさ…」
あたしは一呼吸あけて見上げるよっすぃ〜の髪を撫でながら…
「家で一緒に暮らそっか?」
- 202 名前:MAKING 投稿日:2000年12月15日(金)23時10分35秒
- おもしろい。続きは早く見たいけどクオリティ重視でマターリ頼みます。
- 203 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月21日(木)01時11分08秒
- >>202 MAKINGさん
レスありがとうございます♪
一生懸命書いてますけど…いかんせん、抱えているスレが多くて…
身から出た錆ですけど。必ず完結はさせるんで長い目で見てやってください。
- 204 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月21日(木)01時11分46秒
- あたしは何を言われているか分からずに…きょとんと矢口さんを見上げた。
矢口さんは困ったように頬をかきながらあさってのほうを向いていた。
「い…いいんですか? 今のあたし…何も出来ないんですよ?」
「だいじょぶだよ〜…その、よっすぃ〜と一緒ならさ…」
「…あ、ありがと…う…ございますぅ…」
ナミダで喉が詰まって…あたしはしっかりとお礼が出来なかった。
掴んでいる矢口さんのスカートをぎゅっと握りしめる。
「あはは。そんなに泣かれると、ヤグチも困るよ〜」
「ご、ごめんなさい…」
「よしよし…」
矢口さんはホントに子供を扱うようにあたしの髪を撫でた。
されたことのない矢口さんのその行動に…あたしは身震いがした。
嬉しくて…身震いがした。
「でも…困ったね。このこと黙ってなきゃいけないけど…誰かに助けてもらわないと…」
「中澤さん…は…」
「……」
「あ…ご、ごめんなさいっ!! 別にそんなつもりじゃ…」
最近になって矢口さんは中澤さんと別れたらしい…という話を聞いていた。
お互いが全く口を聞かなかった時期もあったし…かなり激しくやりあったということは周知だった。
正直…あたしは嬉しかったけど…
「そ〜だね。このままじゃ何ともならないし…ゆうこなら何とかできるかもね」
「……」
「そんな不安そうな顔をしないでよ〜。ゆうこはリーダーだし」
「そう…ですね」
「じゃ、ちょっと…連絡してみるね」
そう言って矢口さんは…バックからケータイを取り出した。
- 205 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月23日(土)02時14分00秒
- 「…もしもし?」
「お、おう…何や、ケータイみて…ちょこっとビックリしたわ」
「あ、そ〜だね」
「……」
「……」
し…しまった…何を話していいか分からん…
プライベートで電話をかけたのは別れたあの日以来だ。
もう関わらないと…決めていたのに。
「あ、あのさ…悪いんだけど、家に来てくれないかな?」
「は…はぁ?」
「そーゆーことじゃないよ!! あのね…来るって言ってもヤグチの家じゃなくて…よっすぃ〜の家だよ」
「な、何や…そりゃ」
「順を追って話すけど…ヤグチのこと、信用してね」
「…分かったわ…」
「あのね、今日の朝、よっすぃ〜から電話かかってきて…チョット来てくれって言われたの」
「……」
「それでね…行ってみたら、よっすぃ〜が…」
「よっすぃ〜…ちっちゃくなってるんだわ」
あ…やっぱり沈黙した。
ま、無理もないよね…実際この場所に来てもらわないと誰も信用しないか…
「…矢口、フザけてるんやったらマジ電話切るで?」
「フ、フザけてないよっ!! こんなことジョーダンで言えるわけないでしょ?」
「まぁ…いくら矢口でも、もっとマシなジョーダンつくか」
「……」
「そんなに怒るんやないって。軽いジョークやんか」
あ…ヤバイ。あたし本格的にゆうこと会話を楽しみ始めちゃってる…
この辺でこのキモチを押さえ込んでおかないと…またあの頃に逆戻りだ。
「それで…今日はレッスン休むと思う。なんかよっすぃ〜、不安そうだし」
「教育係なんや。ちゃんと面倒みとき。うちからうまいこと夏先生に連絡しといたる」
「あ〜、それはありがたいんだけど…様子だけ見てくれないかな?」
「…その方がええかな?」
「ま、ゆうこ、い・ち・お・う! リーダーだし…メンバーには黙っておいてね!!」
「…分かってるわ。ちょい時間かかるけど、よっすぃ〜の家やな? ほな」
ふぅ…こんなモンかな…
でも、意外とゆうこもサバサバしてたから…あんまりあたしも気にしちゃダメかな?
「あ、ゆうこ、今から来るってさ」
- 206 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月23日(土)10時38分30秒
- とても、読みやすくてツボにはまりそうです!
やぐよしの組み合わせは、さわやかって言う感じでイイッスね!
でも・・・矢口は、裕ちゃんに未練がありそうな???
ってことは、絡みにゆうなちとか、ゆうごまとか・・・あるのですか?
とても楽しみだ!
- 207 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月24日(日)02時02分51秒
- >>206 名無しさん
レスありがとうございます〜
矢口はゆーちゃんに未練がって…意外とそこは大事っぽい気がする(w
基本的にやぐよしメインで、ゆーちゃんが割り込んできて、
予定ですけど石川が出てくる…展開です。
ゆうなちはちょっとありませんし…ゆうごまはこの前やったので(w
多分ないと思います。
- 208 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年12月24日(日)02時03分23秒
- あたしは電話する矢口さんを見て…なんとなく理解できてしまった。
きっと矢口さん、中澤さんと別れたこと、どこかで後悔してるんじゃないかって。
今の矢口さん、イキイキしてたもん…
「よっすぃ〜。もうだいじょぶだよ。テキトーに理由つけてしばらく休めるから…」
「は、はい…」
「とりあえずカラダが元に戻らないとテレビにだって復帰できないし…
後は…その服装だね」
矢口さんがあたしの服を掴んだ。
…そうだ…ずっとこのジャージのままだ。しかも、ハカマみたいになってるし。
「これだけちっちゃいと…ヤグチの服もちょこっと緩いだろうな〜」
「…どうすればいいんですか?」
「後で買いに行けばいいじゃん。どうせヤグチのうちに泊まるんだしさ〜」
「嬉しそうですね。矢口さん」
「ん? そ〜かなぁ〜…そんなことないよ〜」
キゲンがいいときの矢口さんそのままだった。
あたしは…どちらなのか分からなかった。
久しぶりにプライベートで中澤さんに会えることなのか…それとも…
あたしとしばらく一緒に生活できるのなのか…分からなかった。
「ゆうこのウチ、ここから結構近いから…すぐに来るんじゃないかな?」
「あ…そうだ、何か飲みます?」
「飲みますって…よっすぃ〜、自分のコト、忘れちゃってるでしょ?」
「あ…そうだった」
「ん〜、じゃあヤグチが紅茶淹れてあげるよ。朝からドタドタしちゃってよっすぃ〜も落ち着いてないでしょ?」
そう言って矢口さんはリビングに立った。
あ…ヤカン探してるみたいだけど…そこにはないし…
第一、あの高さじゃ…矢口さんにはムリ…
「よっすぃ〜…ヤカンどこのあるの?」
「あの…その高いトコに…」
「……」
上を見上げて…矢口さんは困ったカオをしていた。
「踏み台とか…ないよね?」
「…すいません、ないです…」
- 209 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月24日(日)04時04分24秒
- ああ・・・もうひたすら、ちっちゃくなったよっすぃーが可愛い。
ハカマみたいになったジャージって・・・ああ。
- 210 名前:名無しさん 投稿日:2000年12月24日(日)04時59分55秒
- 「殿、殿中でござる!」ってやつね。
- 211 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月06日(土)10時15分21秒
- なんかこの雰囲気いいね。ほのぼのって感じで。でもこれからひとはらんありそう
な展開。どうなんるんだ?続き期待しています。
- 212 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月10日(水)03時15分36秒
- こちらの板では今年度初めてですね。
ただ今、青板がクライマックスなのですが、そちらが終わり次第、
またこちらに重きを置いて書きたいと思います。
>>209 名無しさん
ちっちゃいよっすぃ〜カワイイでしょうね〜。元もいいんだから(わら
これからどうなるのか…考えてます。
>>210 名無しさん
このレスの季節ならタイムリーなツッコミですね(わら
>>211 名無しさん
この前がえらい痛めになってしまったので…今回は甘めにと言うコトで。
一波乱は…あるかもしれません。まだ決まってなかったりする(わら
- 213 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月14日(日)01時04分24秒
- かなりおもしろいです。
かわいいっす。ちっちゃい二人を見たい
続き期待
- 214 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月14日(日)21時00分05秒
- 続き早く読みたいっす。お願いします、ドーンと。
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月18日(木)03時01分35秒
- まだかな?
楽しみに待ってるのですが…
- 216 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月19日(金)02時22分44秒
- ども。お久しぶりです。
今度は青ではなく、ここを中心に執筆していきたいと思います。
書いてない間、少しずつプロット考えていましたので…頑張って書きます。
>>213 名無しさん
小さい同士の二人ですがそれは完全に逆転してます。
だいたい俺の中でよっすぃ〜が120センチぐらいなので…
25センチ差ですね。カオリと矢口ぐらいの差があるらしい…って今気づいた(わら
>>214 名無しさん
はいっ! さっそく上げさせていただきます!
>>215 名無しさん
すいません。テスト期間でなかなか落ち着いて話が書けなくて…
でも、書いてる俺っていったい何?(わら
一段落ついたのもあるんですけどね。
- 217 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月19日(金)02時24分23秒
- ピーンポーン…
仕方なく冷蔵庫に入っていた午後の紅茶を飲んでまったりしていると…
インターホンが鳴った。時間からして…たぶん、ゆうこだろう。
「中澤さんかな?」
「そうだろ〜ね。それじゃ…」
あたしは歩きなれた自分の部屋のように気軽に扉を開けた。
そこには…久しぶりのプライベートで見るゆうこの姿があった。
「お、矢口…」
「お、おっす…」
「どうなんや? 早よ、よっすぃ〜の姿が見たいわ」
「あ、そこにいるよ…」
とまどうあたしを全く無視してゆうこは扉を押し開けた。
あたしのスカートをぎゅっと握りしめているよっすぃ〜を見て…
こともあろうか、ゆうこはあたしをシカトして押しのけた。
「か…かわいいっ!!」
チカラいっぱい抱きしめられてよっすぃ〜は困ったようなカオをしていた。
あたしと同じコトしているせいか、きつく叱ることが出来ない。
「どうしたんでちゅか〜? よっすぃ〜」
「いや…その…中澤さん…」
「カワイイでちゅね〜。ホンマによっすぃ〜の子供みたいやわ〜」
…おいおい…
何で幼稚園児ぐらいの子供を見て赤ちゃん言葉で話しかけてるんだよ…このヒトは。
「あのね…ゆうこ…」
「いい子いい子してあげまちゅよ〜。どっかにアメとかあったっけかな?」
「おい…ゆうこってば!!」
「何やねん!! 邪魔せんといてや!!」
「よっすぃ〜がちっちゃいからそのキモチ分かるけどさ…中身はそのまんまだよ」
よっすぃ〜を抱きしめているゆうこの動きが…止まった。
ぎぎっとばかりに首だけをよっすぃ〜の方に向けて一言だけ言葉にした。
「…マジかい…?」
「…すいません。マジです…」
- 218 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月19日(金)02時48分26秒
- 「…なるほどなぁ…」
今までのいきさつを一通り話した。
ヘンなタマゴ(ヨッシーのタマゴと命名)を食べてよっすぃ〜が小さくなったこと。
それであたしが呼び出されたこと。
それを聞いたゆうこは…格別驚いた様子を見せなかった。
「これじゃテレビに出れへんしな。声だってカワイイ子供の声に戻ってるから…」
「レコーディングだってできないよ。でも…メンバーには黙っておきたいんだよ」
「まぁ、そうやろな。遊ばれるのがオチやし…マスコミにバレたらシャレにならんで」
「どっかの研究所とかに連れてかれたりしたら…ヤグチ悲しいよ…」
タマゴを食べて小さくなったなんてことが知られたりしたらカラダのあちこちを調べられるだろう。
そんなことがよっすぃ〜にされたりしたら…想像するのだってイヤだ。
このまま黙ってるにはどうすればいいんだろう…
「…ま、テキトーな病気にかかったって言って入院したってウソつくのが一番やな」
「そんなこと…どうやってするの? メンバーにだって黙ってられる?」
「ちっちっ…これでもうちは大阪でOLやってた時期があんねやで」
「…それと何がカンケーあるんだよ?」
「入社間もない時はさんざん合コンやったんや。そん時に医者ともやったことあんねん」
そうだっ!! そのヒトに頼んでよっすぃ〜が病気で入院しているってコトにしてもらえばいいんだ。
「芸能界だから詳しいことは言えない」とか言えば、よっすぃ〜も連れてくることないし。
「ナイスアイディアじゃん!! ゆうこもたまには冴えてるじゃん!!」
「…たまにはだけは邪魔やで。まあ、そいつとはある程度、連絡取り合ってるから何とかしてくれるで」
「あ…あの…」
黙ってあたしとゆうこの話を聞いていたよっすぃ〜が…気まずそうに割り込んできた。
「あたし…モーニングに戻れるんですか…? このまま小さかったら…」
「……」
「ま…小さくなって一日経っておらんねや。もう少し様子を見てそのことは考えような」
「はい…」
「教育係が矢口なんや。だいじょぶやて。矢口も…あんまりよっすぃ〜不安にさせたらあかんで」
「わ…分かってるよ…」
…やっぱり、こーゆートコはリーダーだと思う。
細かい配慮とか…よっすぃ〜を不安にさせない言い方とか…
あたしが欲しいものを持っている。だからゆうこはカッコいいんだよ…
- 219 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月20日(土)04時36分13秒
- 年末のおねもーを見てから、「矢口の前での」よっすぃ〜萌えな自分。
>あたしのスカートをぎゅっと握りしめているよっすぃ〜
このへんがツボ。
- 220 名前:名も無き読者 投稿日:2001年01月20日(土)07時15分59秒
- 何て言うかその…個人個人のセリフがごく自然のような気がします
ホントにこんな風に会話してそうって言うか。
姐さんの赤ちゃん言葉、矢口に邪魔され怒ったり首だけ動かすところ好きです♪
唐突ですが、やぐっちゃん誕生日おめでとう。
是非ちっちゃいよっしぃ〜をミニモニ。に(笑)
- 221 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月21日(日)01時16分51秒
- ををっ!? ボタンがセクシービーム☆に変わってる!!
やっぱり矢口が誕生日だったせいだろうなぁ。とりあえずおめでとうエイティーン(わら
一応、結婚できる歳なんだよな…「妊婦」みたいにならんといいけど(わら
>>219 名無しさん
小説の資料のために見たほうがいいんだろうけど…おねもー見てなんですよ。
でも、矢口が側にいる吉澤ってなんかモゾモゾしてて萌えますね。
>>220 名も無き読者さん
なるべく「ネタスレ」的要素も取り込んでみようと…がんばってます。
吉澤をミニモニ。にって…小さすぎですね(わら
- 222 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月21日(日)01時17分32秒
- 「…結局、こんなんまで付き合わされるわけかいな…」
「いいじゃんかよぉ〜」
あたしはデパートの中にいた。帽子を目深にかぶり、赤のグラサンをしている。
隣にいるゆうこも似たり寄ったりな格好をしている。
…ついでだから、よっすぃ〜の服を買いに来たのである。
「まぁ、少しヤボ用で遅れるって連絡入れてるし…ええんやけど…」
「よっすぃ〜、やっぱりクルマの中に残してきたら危なかったかな?」
「いや、そうやなくてなぁ…」
通り過ぎるヒトがどーゆーわけかあたしたちを見る。
あれ…? バレバレかな…?
「そんなに腕組んで歩いてると…みんな驚いてるで」
「ええっ!? ヤグチたち…バレバレなの?」
「今気づいたんかい…メチャクチャバレバレですよ…」
あたしは…正直周りのものを見ているほどの余裕がなかった。
ちょこっとだけ、ほんのちょこっとだけ…嬉しかった。
久しぶりにゆうこと買い物ができて嬉しい…
「あ、あんまり気にしなくていいじゃんかよ〜」
「…矢口はそれでもええんか?」
「? どして?」
「いや…何でもあらへんわ。あ!! そこにGAPあるやん!! チョット見てこうや」
ゆうこに腕を引っ張られ…少しだけ昔の時間が戻ったような気がした。
あの時、もうゆうこと別れてやるって決めたとき…
あたしもゆうこもその場で大泣きした。何のために別れるのか…別れたのか…
ゼンゼン分からない別れ方をしたんだ。
でも、ハッキリと分かってることは、昔のようにあたしもゆうこも戻る気があまりないというコトだ。
「このトレーナーなんかカワイイなぁ。よっすぃ〜に似合いそうやで」
「え〜!? あたしはこっちのパープルのトレーナーの方がいいな」
「どうせ、しばらく矢口の家泊めるんやから、一週間分ぐらい欲しいわなぁ〜」
「でも、いつ元に戻るか分からないし、徐々に戻ってきたら…着れないよ」
「大きくなってきたら矢口の服を貸せばいいがな。あ〜。このニット帽も被ったら合いそうやわ〜」
母性本能…なのかな? こんなゆうこを見るのは初めてだ。
まあ、小さいよっすぃ〜がカワイイからそのキモチも分かるんだけどね…
- 223 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月21日(日)01時38分20秒
- 遅い!!
買い物に出かけてくるって言って一時間もあたしはクルマで放置されてる。
誘拐されたって文句言えないじゃん!! あたしだって…行きたいのに…
「はぁ…」
あたしは裾をまくりあげたヒスジャーを見ながら、自分を改めて確かめた。
小さい!! カオも腕も手のひらも…全部が小さすぎる。
手のひらに収まる携帯電話がこんなにも大きいものだとは思わなかった。
「寂しいなぁ…」
親がパチンコのために子供をクルマに置き去りにするって聞いたことあるけど…
その子供の気持ちがちょこっと分かったような気がした。
寂しすぎる!! しかも中澤さんのクルマはタバコ臭いし…
pipipipipi…pipipipipi…
げっ!! 電話じゃん!!
…あれ…? 梨華ちゃんからだ…どうしよう…声も変わってるから出たらヤバイかな…?
ええいっ!! 寂しいから出ちゃえっ!!
「も…もしもし?」
「あ、よっすぃ〜? おっは〜。梨華ちゃんだよ〜♪」
自分から電話しておいて『梨華ちゃんだよ〜』なんて言うのはホントに梨華ちゃんしかいない。
あたしより年上なのに…話しているとちびっこたちと同じぐらいに感じる時がある。
そこが梨華ちゃんのカワイイトコなんだけどね…
「おっはぁ〜」
「あれ〜? 今日のよっすぃ〜、声がカワイイ〜(はぁと)」
「梨華ちゃんの声のほうがずっとカワイイよ…」
「練習休むんだってね? カゼでも引いたの〜?」
「う、うん…だからちょっと声がおかしいんだと思う…」
「大変じゃん!? 歌うのにノド痛めちゃったら…そうだ! わたしノドにいいやつ知ってるよ」
「え? いや…だいじょぶ! 明日にはよくなるから…」
「カゼを甘く見ちゃダメだよ!! 今日、リハ終わったらよっすぃ〜の家に行くから…じゃあね」
「じゃあねって…ちょっと!!」
電話が切られてるし…こんな姿を梨華ちゃんに見られたらメンバー全員に知れ渡っちゃうよ。
マズイ…マズイよ…
「ただいまぁ〜」
「あ、矢口さん。中澤さんっ!! 大変なことになっちゃいました!!」
- 224 名前:ミルクチョコ 投稿日:2001年01月22日(月)05時16分02秒
- はぁ〜・・・
よっすぃ〜かわいすぎです
それに声もかわいくなってるなんて・・・
おれもヨッシーのタマゴ食おっかな〜(爆
- 225 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月22日(月)17時30分31秒
- かわいいね。
石川が絡んできて、今後も楽しみです。
- 226 名前:河原裕也 投稿日:2001年01月24日(水)21時55分03秒
- 石川ちゃん、かわいい(藁
- 227 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月25日(木)01時18分41秒
- マメに更新すると言いつつ、青板に浮気してしまいました。
今度はちゃんと白の方に戻すんで…頑張らんとなぁ、俺。
>>224 ミルクチョコさん
よっすぃ〜の声は子供っぽく、どこか石川っぽく(わら
そんなカンジで意識してます。小さくなるなら俺もタマゴ食いたい…(わら
>>225 名無しさん
石川は…チョイ役です。特に複雑に絡む予定は(今の段階では)ありません。
青板でいしやす書いているので…活躍はそちらと言うコトで(わら
かといってゆーちゃんじゃなぁ…やっぱり石川かな?(わら
>>226 河原裕也
お久しぶりですね〜。「妊婦」以来ですか…
石川の電話シーンは書いてる俺もツボに入りかけました(わら
かわいいよなぁ〜、石川…最近、マイブームは石川です(わら
- 228 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月25日(木)01時19分22秒
- 「…石川にはうちがうまいこと言っておくから任せときや」
「すみません…」
「それによっすぃ〜の家に行ってもおらへんわけやから…だいじょぶやろ?」
あたしはクルマの中で手早く着替えた。
GAPのトレーナーにジーンズ、靴だけがナイキだったが…
どうも二人の好みが混じったみたいだ。でもぴったりの服で気分はいい。
「ごめんね〜。ゆうこにメーワクばっかりかけちゃって…」
「今日はしょーがあらへんよ。よっすぃ〜がこんな状況なら…」
「……」
あたしは両手でケータイをいじっていた。片手だと重くて扱えない。
隣で矢口さんがじっと見ていて…いきなり抱きしめられた。
「カワイイっ!! ちっちゃい手でケータイを両手でもってるトコがたまんなくカワイイっ!!」
「あー…いちおう、梨華ちゃんに来ないでくれってメール打っておきます」
「そーしてくれるともっと説明しやすくてええわ」
「ちょ、二人ともヤグチのコト、無視しないでよぉ〜!!」
矢口さんに抱きしめられて嬉しいけど…その、キモチの方向が違うから素直に喜べない。
ちっちゃいあたしを見てカワイイと思ってるから…普通のあたしじゃないから…
普通のあたしに戻った時に、中澤さんみたいに…矢口さんに抱きしめられたいな。
「ところで…帰ってくるのが少し遅かったですね。何かあったんですか?」
「ゴ、ゴキゲンナナメみたいやね…よっすぃ〜…」
「そんなことはありません。一時間以上も放置されて寂しかったですけど!」
「いろいろよっすぃ〜の服を見てたら…あれもいいし、これもいいってなっちゃって…」
「…心配すんなや。よっすぃ〜が思ってるようなことは何もあらへんから…」
ウインク一つして中澤さんがあたしに小声で言う。
あたしが矢口さんのコト、スキなの…知ってるのかな?
「でも、そのおかげでよっすぃ〜…こんなにカワイイじゃん♪」
「そうですか?」
「そ〜だよっ!! 普通のよっすぃ〜もいいけど、ちっちゃいよっすぃ〜もチョ〜カワイイ〜♪」
…普通のよっすぃ〜もいい? じゃあ、あたし…矢口さんにスキだって思われてるのかな?
わかんないや。今日の矢口さん、あたしの行動全部に「はぁと」になってるし…
悪い気がしないからいいけど…いつになったら元に戻れるんだろ…
- 229 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月25日(木)01時20分33秒
- 「矢口さん…」
「あはは…ゴメン。チョット部屋かたづける…」
中澤さんに矢口さんの家まで送ってきてもらい…
あたしは初めて矢口さんの家に入った。ちょっとドキドキしたけど…
部屋に入ってビックリした。
「…どーしたらこんなに散らかせるんですか?」
「そんなに不思議そうに言わないでよ〜。洗い物とかちゃんとしてるから…」
「雑誌とか写真とか…すごいですね〜…」
床が見えないくらい雑誌と写真が散乱している。
どこかで見たことある写真もあれば…ファッション誌もある。
しかも、この雑誌…一年ぐらい前っぽいぞ…
「と、とりあえずさ、荷物をヤグチの寝室に置いてきなよ。そのうちに片付けるから…」
「あたしも少し手伝いますよ。雑誌を積むぐらいなら出来ますから…」
「ゴメンね〜…」
ふと、一枚の写真が目に飛び込んできた。
…この写真…矢口さんと中澤さんが写ってる…
ミッキーが隣にいるけど、クリスマスの時の写真じゃない。服が違う…
「ちょ、よっすぃ〜っ!!」
「ゴ、ゴメンなさい…」
矢口さんはむしりとるように写真をあたしから取り上げて…小さくため息をついた。
何かを思い出すように…やさしげな瞳に変わる。
「うわぁ…この写真ね、ヤグチがゆうこと何回目かのデートの時の写真だ…」
「……」
「ディズニーランドに行きたいっ!! ってごねて…連れてってもらったの…」
「矢口さん…」
「もう、こんな風に戻れないなぁ…しょうがないけど」
意外とサバサバした雰囲気で写真をテーブルに置くと再び掃除を始めた。
あれ…? あたしの予想と違うような…
「ほらっ!! 荷物を寝室に置いてきてよ〜。ゴハンも食べなきゃいけないし…」
「あ、は、はい…」
もう…矢口さん、中澤さんのコト、気にしてないみたいだ…
こんなコト思ったら二人に悪いけど…チョット嬉しいな…
あたしにも入り込めるスキがあるんだもん…
- 230 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月25日(木)12時48分45秒
- ちびよっすぃーかわいい
矢口と裕ちゃんもいい感じ。
- 231 名前:名無すぃ 投稿日:2001年01月25日(木)20時07分57秒
- GAPのトレーナーにジーンズかぁ〜
「ぼく〜?お母さんどうしたの〜?」
なんて男の子に間違われたりして(笑)
それでもかわいい!!
- 232 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月26日(金)02時58分52秒
- ちょっとずつ軌道に乗ってきていいカンジで書けてます。
ラストはずいぶん前に出来ているんですけどね…そこに向かって走るだけです(わら
>>230 名無しさん
ちびよっすぃ〜がメインで…かなり自分でも頑張って書いてます。
子供の描写って初めてなんで意外と苦労しています。
>>231 名無すぃさん
俺と同じコト考えてるヒトって意外といるんですね(わら
ちびよっすぃ〜はボーイッシュなカンジそのままです。
ちなみにこのあとUPする部分で「」部分借りました。ありがとうございます(わら
- 233 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月26日(金)03時00分46秒
- 「はい、よっすぃ〜…あ〜んして…」
「矢口さん…」
「な〜に〜?」
あたしはまるで赤ちゃんのような扱いだ。
部屋の片付けが一段落して…コンビニで買ってきたおべんとを食べていたときだ。
矢口さんは…ホンキで楽しそうだった。
「一人で食べられますよ…幼稚園に通うぐらいなんですから…」
「え〜? でも、いいじゃんかよぉ〜」
「…じゃあ、一口だけ」
あたしはフォークに刺さっていたハンバーグの欠片を口に頬張った。
…カラダが小さいせいかすぐにお腹がいっぱいになる。
おにぎり一つ半ぐらいで満足できるぐらいだ。
「そ〜言えば…よっすぃ〜ってどんな幼稚園児だったの?」
「そうですね…フツーだったと思います。あ、でもナキムシだったかな…?」
「何か…この頃からチョット大きいね〜。ヤグチなんか幼稚園の時からちっちゃかった」
「でも…何かフシギなカンジです。矢口さんを見上げるなんて…」
視界が違うせいか、矢口さんがとても大きく見える。
あたしと矢口さんを外から見れば姉妹にしか見えないけど…あたしのココロは15歳だ。
当然、矢口さんに対する…コイゴゴロもある。それは小さくなっても失ってない。
「でも、ショートヘアだから何かオトコノコみたい。う〜ん…カワイイっ♪」
「よく言われましたよ…『ぼく〜』なんて…」
「今日はいろいろ話せるから…誰にも邪魔されずによっすぃ〜といれるから…嬉しいな」
そうだ…しばらくあたしと矢口さんはこの部屋で一緒に暮らすんだ。
どこかでずっと…願いが叶うなら、矢口さんと一緒に暮らしてみたい…そんな風に思ったコトがある。
それがこんなカタチで実現するとは思わなかった。
そうじゃん…一緒に暮らすってコトは…夜も一緒ってコトじゃん!!
ど、どうしよう…自分のことでいっぱいですっかり忘れてた…ドキドキしてきちゃったよ…
「どしたの? カオが赤いよ?」
「あ…あはは…な、何でもないです…」
- 234 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月26日(金)03時04分16秒
- 〜おわび〜
>>227 のレス部分で河原裕也さんの「さん」を付け忘れました。
失礼なコトしてすみません。河原さんにはこの場を借りて謝罪します。
- 235 名前:河原裕也 投稿日:2001年01月27日(土)16時05分16秒
- >〜おわび〜
いやいやいいすよ(藁。
っていうか全然気づいてなかったのに(藁
- 236 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月29日(月)16時10分58秒
- よっすぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
かわいすぎっすよ〜〜!
- 237 名前:名無すぃ 投稿日:2001年01月29日(月)18時56分56秒
- すぐにお腹いっぱいって、かわいすぎ!
街で幼稚園ぐらいの子を見かけると、
「よっすぃ〜の背こんぐらいか?」って想像してしまう自分がこわい・・・
- 238 名前:いずのすけ 投稿日:2001年01月29日(月)23時25分18秒
- 久しぶりに来たらいっぱい進んでた(苦笑)
かわいいなあ、やっぱり。
- 239 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月30日(火)03時54分22秒
- 今日、二度目のUPですね。こんな時間までなにやってんだか(わら
マイPCからのUPではないのでちょっとヘンなカンジです。
>>235 河原裕也さん
いくらお互い知っているからといって呼び捨ては…(わら
例の小説、最近UPされているようで読んでます。
続き期待って…ここでレスつけるなよ俺(わら
>>236 名無しさん
一応主人公なので…カワイク行こうかと思って頑張ってます。
この話もちょっと長くなりそうな、そんな感じがしてきました。
>>237 名無すぃさん
ふっふっふっ…だいぶこの小説の中毒になってますね(わら
カラダも小さいんでやはり食べるのも少なめということで…
>>238 いずのすけさん
ホントにお久しぶりですね!
マメに更新しているんでいっぱい進んでるかと…(わら
ここ最近はホントに書くことに没頭してて、生活の中心が小説のネタになってます(わら
- 240 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年01月30日(火)03時57分06秒
- 「よっすぃ〜、オフロ入る?」
「は…はい…」
「チョット待ってね〜。今、お湯張ってくるから…」
…ついに来た…来てしまった!!
一緒に暮らすんだから日常になるとは思うけど…
矢口さん、あたしと一緒に入りたいとか言い出したらどうしよう…
「よっすぃ〜一人じゃ入れないからいっしょに入ろ〜ねっ♪」
「……」
「ど〜したの? そんなあからさまにため息なんかついて…」
今、改めて思った…っていうか、確認した。
矢口さん、分かりやすすぎる…もう少し、何ていうか…恥じらいみたいなのないのかな…
あたしが…こんなにドキドキしてキンチョーしてるなんて…気づいてないんだろうな…
「あ、もしかして、ヤグチと一緒に入るの恥ずかしい?」
「えーと…それはチョットありますけど…」
「イヤだったら…いいよ。何かあったら呼んでくれれば行くからさ…」
「……」
矢口さん…ホントにあたしと一緒にいるのが嬉しいんだなぁ…
そんなにくるくる表情変えられるとあたしも…何か、困る。
あたしの方が年下だし…今では姿も年下だけど…矢口さんはあたし以上に子供っぽい。
そこがすごくカワイイんだけどね。
「いっしょに…入ってください。シャワーとか届かないし…」
「…ホントに?」
「はいっ。あたしも矢口さんと一緒に…オフロ入りたい…です」
「……」
最後の方がチョット途切れてしまったのは…しょうがないと思う。
カオが真っ赤になって、俯いてしまったのも…しょうがないと思う。
…矢口さん、すごく嬉しそうに笑ってくれたら…このままでいたいって思ったのも…
しょうがないのかな?
- 241 名前:沙耶香じゃない! 投稿日:2001年01月31日(水)04時14分23秒
- わぉ更新ですねっ、チェックしておいてよかった♪
いっしょにオフロって・・・そんなぁ。
BOOTLOGさん、それは禁じ手です(笑)
- 242 名前:沙耶香じゃない! 投稿日:2001年01月31日(水)04時24分25秒
- ごめんなさい、BOOTLOGさんでは無くBOOTLEGさんでした。
こんな事で板汚して申し訳無いです・・・。
- 243 名前:名無しさん 投稿日:2001年01月31日(水)05時28分59秒
- なんか、無邪気によっすぃ〜をかわいがる矢口と、
かわいい外見とのギャップに戸惑い気味のよっすぃ〜がいいですね。
- 244 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月03日(土)03時07分41秒
- 病み上がりです。詳しくは青で語っているのでここでは話しませんが…
ここ数日死んだように寝ていたので眠れません。
だからUPです。寝れない時はUP、これ基本です(わら
>>241-242 沙耶香じゃない!さん
一緒にオフロは…どうでしょう? 読んで下さい。
ま、いちおう見た目が園児なので、ディープはイロイロまずかろうと(わら
汚しただなんてとんでもない! 気の済むまで書き込んで下さって結構ですよ。
俺は内容と差し支えないトコはほとんど言わないですから(わら
>>243 名無しさん
矢口は頭の中ではよっすぃ〜が15歳だと分かってるけど、実際は
分かってないんですね〜。逆に自分の姿と意識にズレがあるから、
どうしても戸惑うよっすぃ〜がいる…そこがこの小説で書きたいトコですね。
- 245 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月03日(土)03時08分18秒
- 「ほら〜、よっすぃ〜ちゃんとアタマ洗って〜」
「……」
「あ〜カワイイっ♪ ヤグチがアタマ洗ったげる〜♪」
ま…まぁ、しょうがないかな…あたしがこんな姿だし…
あたしはずっと俯いたままで矢口さんを見上げることすら出来ないのに…
でも、えっちな気分ゼロじゃん…これじゃ妹のオフロだよ…
「よっすぃ〜、目、つぶっててよ〜」
「あの…矢口さん、あたし…中身はそのままですよ…」
「うん。分かってるよ〜。おぉ〜…シャンプーの量が少なくて済むじゃん…」
…分かってないよ…しかも、そんなコトはどうでもいいじゃん…
何だかドキドキしてたあたしがバカみたいじゃん。
そりゃ確かにオフロで…その、ヘンな気分になっちゃうかもって期待したけどさ…
やっぱりあたしは『ちびっこよっすぃ〜』なんだなぁ〜…
ざばぁぁっっ…
「じゃあ、先にオフロに入ってていいよ。ヤグチはカラダ洗うから〜」
「…はい」
「あれ? 元気ないね? ノボセちゃった?」
「い…いえ!! そんなコト…は…!!」
反射的にカオを上げたのがいけなかった。
湯気にくゆる悪い視界なんてこの近いキョリじゃまるで意味がない。
あたしは…ハダカの矢口さんをまじまじと見てしまった。
「?? ホントーにだいじょぶ? キモチ悪いんじゃないの?」
「だいじょぶです! だいじょぶですから!!」
…それ以上近づかないで下さい…
あたし…おかしくなっちゃいそうです…
後半の叫びは言葉になるわけもなかった。
ばしゃばしゃと意味もなくカオを洗ったり…水面にカオをつけたりして何とかゴマかした。
…このままずっと一緒にオフロだったら…あたしの身が持たないよ…
- 246 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月04日(日)20時28分27秒
- か、か、かわいい・・・♪
たまらないっす!頑張ってくらさい。
- 247 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月06日(火)02時45分34秒
- 続きまだかな?
楽しみにしてます。
- 248 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月06日(火)19時20分36秒
- よっすぃーかわいい〜〜♪
楽しみにしてま〜〜す
- 249 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月07日(水)02時20分14秒
- だいぶ復活しました。もうだいじょぶです。
今年のカゼはノドにきますよ。セキが止まらん…
受験シーズンですが、小説読んでリフレッシュしてくれれば幸いです(わら
>>246 名無しさん
最近の路線があっという間に「カワイイ」になってしまいました。
たまにはいいかなぁ〜と思ってますけど(わら
頑張って書きます! ちょい長くなりそうですが…
>>247 名無しさん
はい。さっそく続きをあげさせてもらいます!
>>248 名無しさん
ちびよっすぃ〜大人気ですね。俺的には「〜」が多い、
マターリ矢口がスキなんですけど…やっぱりみんなとスポットが違うね(わら
- 250 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月07日(水)02時20分49秒
- 「それじゃよっすぃ〜…」
「……」
「ど〜したの? オフロ出てからチョットおかしいよ〜?」
明日はレッスンに行かないといけないってコトで…もう寝ることになった。
矢口さんとあたしは…ある意味当然だけど…一緒のベットで寝ることにした。
あたしは…理由の行き場のない怒りを感じていた。
(あたしがちっちゃくて矢口さんにとってカワイイのはいいよ…でもさ、ヒドくない!?)
あたしのキモチを分かって欲しいよ…15歳のあたしのキモチを分かって欲しい。
これじゃまるで…ちびっこよっすぃ〜だけがかわいがられてて…
いつものあたしがどうでもいいみたいに思えるのだ。
「…何でもありません。矢口さん、明日早いんだから寝てください」
「お、怒んないでよ〜…何で怒ってるのか分かんないよ…」
「…別に怒ってませんよ…」
「……」
確かにあたしは怒っている。苛立っている。
矢口さんに当たってもしょうがないコトなのに…怒ってる。
あんなに悲しそうなカオしてる矢口さん…初めて見ちゃった…
ごそごそとあたしと矢口さんはベットに入る。
当然、あたしたちは背を向けてしまった。
布団の端を持ってぐっと悲しみに耐えている…矢口さんを背中に感じた。
「…矢口さん…」
「……」
「…ゴメンなさい…」
あたしはスナオに矢口さんの背中に抱きついた。
随分ちっちゃくなった手だけど…その手で肌触りのいいジャージを握る。
すると、矢口さんが…振り向いた。
- 251 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月07日(水)02時45分51秒
- 「よっすぃ〜…」
「あたし…なんて言っていいかわかんなくなっちゃって…それで矢口さんに当たっちゃって…」
「……」
あたしはよっすぃ〜の方にカラダを向けた。
ハナをすすりながら…チョットだけ泣いている。
おそるおそるあたしを見上げると…思いっきり抱きついてきた。
「…あたし…矢口さんのコト、スキです。ダイスキです」
「ヤグチもよっすぃ〜のコト、スキだよ…」
「違うんです…違います。あの…矢口さんのコト…」
「矢口さんがいとおしいんです…愛してるんです…」
よっすぃ〜のジャージを掴む手に力がこもる。
あたしは…戸惑わなかった。前にいるよっすぃ〜が…
いつものよっすぃ〜と何にも変わってなかった。
「…嬉しい…よっすぃ〜にそう言われて…ヤグチ、嬉しい…」
「ホントですか!?」
「ヤグチと同じキモチだから…ヤグチと同じコト考えてるから…嬉しいよ…」
「矢口さん…」
よっすぃ〜を…ちっちゃくなってもっとカワイイよっすぃ〜を抱きしめる。
ホントに自分の胸に収まってしまうぐらい…このまま消えちゃうんじゃないかって…
不安になるぐらいあたしに納まる。
「こうしてていいかな…? ヤグチ…よっすぃ〜を離したくないよ」
「…はい…」
あたしはよっすぃ〜のナミダを人差し指で掬う。
珠のような粒のナミダはそれだけで宝石のような輝きを持っている。
優しく頬を撫でる…
「…矢口さん、キスしていいですか…スキだから…キスしたい…」
「いいよ…」
小さくなった唇があたしの唇と触れ合う。
カラダが小さくなっても…よっすぃ〜とキスするとドキドキする。
初めてだったから…スキだったよっすぃ〜とキスできたから…
嬉しい…ホントに嬉しいよ…
- 252 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月07日(水)03時44分28秒
- お〜おお〜いいっすねえ
- 253 名前:MG−X 投稿日:2001年02月08日(木)07時00分30秒
- なんてこった!(わら
まさかキッスで・・・。
- 254 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月09日(金)02時45分10秒
- ども。久しぶりっす。
ちょうど話の大きな区切りまできました。
次から展開が急になる…かもしれません(わら
この話のプロットは大まかに出来てるんだけどな…
>>252 名無しさん
とりあえず、やぐよしを引っ付けました。
なんとなくゴーインだったのがちょっと直したいトコかな?
>>253 MG-Xさん
まさかキスで…当然、戻るわけはありません(わら
それで終わりにしてもいいんですけど、やはり最後が決まっているので…
- 255 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月09日(金)02時45分44秒
- titititi…titititi…
聞きなれない目覚ましの音がして…あたしは目を覚ました。
起き上がろうとして…ふとカラダが動かないことに気づく。
矢口さんに…抱きしめられたままだ。
「矢口さん…起きてください…」
「…ふぁ…」
「目覚まし鳴ってますから…」
「…うぅん…まだネル…」
寝ボケまなこの矢口さんはあたしを抱きしめなおす。
…あたし、枕と間違えられてる気がする…
「矢口さん! 今日はレッスン行かないとダメです…」
「分かってるよぉ〜…よっすぃ〜…」
ネボケたカオで笑みを作るとごそごそとあたしから手を離した。
そしてそのままぐっと伸びをする。
…寝起きの矢口さんだ…ノーメイクじゃないけど…
「いたた〜…慣れない腕枕してたから右手痛いよ〜」
「だいじょぶですか…」
「うん。ヘタクソなヤグチのせいだもん。されるほうが多かったから…」
「えっ?」
「な、何でもないよ〜。さぁてと…今日も一日がんばるぞぉ〜!!」
寒い部屋のエアコンを入れて…矢口さんがキッチンに立つ。
徹夜明けで何度かこんな光景は見たことあったけど…
今日は心境も何もかもが違う。ホントに…恋人同士の朝なのだ。
「よっすぃ〜は…紅茶だね。コーヒーなんてゼッタイダメだよ」
「朝は紅茶がいいです…コーヒーお腹痛くなっちゃうから…」
「分かってるじゃん。『モーニングコーヒーが飲みたいですぅ』とか言ったらどうしようかと思った」
「…あたしはそんな風に話しませんよ…それは梨華ちゃんです…」
ホントにただ抱き合って寝てただけだけど…矢口さんのネガオを近くで見た。
…むちゃくちゃカワイイ。規則的に寝息を立ててたときはこのまま時間が止まって欲しいって思った。
ちっちゃくなれてホントによかった。こんなに矢口さんの側にいられるから…
なんか、おっきくなるのヤになってきちゃった…このままのほうがいいよ…
- 256 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月09日(金)03時20分45秒
- いいよ!ちっちゃいままで!
それにしても矢口の態度は一体・・・波瀾がありますね
- 257 名前:たれ。 投稿日:2001年02月10日(土)02時53分34秒
- やっぱりよしやぐいいですよねぇ。
端々に裕ちゃん関係の言葉が出てくるのがツボです。
がんばってください!
- 258 名前:いずのすけ 投稿日:2001年02月10日(土)23時11分15秒
- ちいさいことはいいことだ!?
最近吉澤さん気になって仕方ない。
やぐよしいいですね。がんばれー!
- 259 名前:hey! 投稿日:2001年02月11日(日)15時51分11秒
- もしかして、BOOTLEGさん
昨日の深夜にモームスのソロ曲集を
某サイトのUP板で落としてました?
- 260 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月12日(月)02時48分16秒
- 久しぶりです。青の方が終了したんでしばらくはここを集中して書きます。
まだ青の組み合わせの話がハッキリ思いつかないので…
>>256 名無しさん
小さいままで…果たして本当にいいんでしょうか?(わら
さっそくよっすぃ〜が答えを出しています。
>>257 たれ。さん
も…もしやこのハンドルは…あのお方では…
ありがとうございます!! お久しぶりです!! 違ったらどうしよう(わら
ゆーちゃんが矢口と仲がよかったという過去は…ちらつかせてます。
気づいてくれているようで嬉しいです。
>>258 いずのすけさん
最近よっすぃ〜と石川がオレの中でもマイブームです。
でも小さいことがいいことなのかは…?(わら
>>259 hey!さん
人違いだと思います。昨日深夜はネットをしてませんし…
それにソロ曲集は…もうありますので集めなくてもだいじょぶですから(わら
意外とBOOTLEGというハンドルは多いですよ。語りではなく。
- 261 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月12日(月)02時49分03秒
- 「それじゃ…何かあったらケータイの方に電話するから…」
「はい…行ってらっしゃい。早く帰ってきてください」
「うん。レッスン終わったらすぐに帰るからね〜」
矢口さんと朝ゴハンを食べているときに…嬉しいことに気づいた。
あたしの身長が…少しだけ伸びていたことだ。
昨日測ったときよりも5センチも伸びていた。
「矢口さん…あたし…」
「火とか気をつけるんだよ? しばらくは家から外に出かけないこと」
「はぁい…」
「メールとかするから心配しないでよ〜」
そう言って矢口さんはあたしのアタマを撫でた。
今日の矢口さんはいつにも増してカワイク感じるよ…
でも…仕事に行っちゃうから…
「…あたし…小さいままでもいいとか思いました」
「…?」
「でも、小さいままだと…矢口さんと一緒にいられない…チョットしかいられないんですね…」
「……」
矢口さんと一緒に寝たりオフロ入れたり出来るのは嬉しいよ…
でも、仕事に行ったら…あたしは一人ぼっちだ。矢口さんと一緒にいられない…
結局、仕事をしている時のほうが矢口さんと長くいられるんだよね…
「早く…元に戻りたいです。矢口さんと一緒に仕事して…デートして…」
「よっすぃ〜…」
「……」
「だいじょぶだよ。ゼッタイに元に戻れるから…だいじょぶだよ…」
玄関先で矢口さんがあたしを抱きしめてくれる。
思わずナミダが溢れそうになるけど…あたしはそれをガマンした。
ナキムシにならないって…決めたから。
「…ん…」
「それじゃ…行ってくるね」
「…はい」
唇に熱い感覚が残ったまま…あたしは矢口さんを見送った。
- 262 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月12日(月)03時18分56秒
- 「…連絡は一応ついたわ。仮装入院できるみたいやで」
「ホント? よかった…ヤグチそれだけが心配だったよ〜」
「でもな…問題が一つ残ってんねん…」
ゆうこはそう言って向こうを…あたしたちと反対側のほうを指差した。
楽屋の鏡の前で…ずっと俯いてる石川がいる。
なんだか…えらいショック受けてるみたいだな…
「…ゆうこ、石川に何て言って説明したの?」
「いや…その、矢口と一緒におるから邪魔したらアカンって…」
「げっ!! どーしてそんな説明にもならない説明したんだよぉ〜!!」
「く…苦しいがな…首締めんといて…」
よっすぃ〜と石川が仲がいいのは加入当時から言われてた。
そして、二人ともホントに仲がよくって…特に石川はよっすぃ〜のコトを気に入ってたみたい。
あたしはその時…ゆうこと付き合ってたからなんとも思わなかったけど…
今は違う。この事態を石川が知ったりしたらライバルになる可能性だってあるんだもん。
「…なぁ、矢口。昨日…どうしたんや?」
「へっ?」
「だから…まさかとは思うけど…よっすぃ〜と何かあったんちゃうかなぁ〜と思ったんよ」
「そ、そそ、そんなことございません!!」
「…相変わらずウソつくのがヘタやなぁ…ま、ココロの支えにはなってやるんやで」
ゆうこは笑いながら午後の紅茶を飲み干した。
…もうあたしとゆうこは過去の出来事になっている。
ゆうこがこんなに笑うから…あたしも笑うしかない。
実は…ココロは迷ってるかもしれないのに…
「とりあえずさ…石川には何か言っておかないと…かわいそうだね」
「矢口の口から説明したほうがええと思うんや。その方が石川も納得するし…」
「なんて言えばいいんだよ〜? まさか、ちみっちゃくなりました〜なんて言えないし…」
「…ちゃんと説明出来へんなら黙っておいたほうがええな。うちはもう…関わりたくあらへん」
ゆうこはそう言って鏡の方にカラダを向けた。
あたしは…最後の言葉のイミが分からなくて目をぱちくりした。
「…もう勘弁してな。うちかて人間や。しかも…」
「……」
「…すまん。何でもあらへん。何かあったらうちに言ってくれればええから…」
意味深なコトバに…あたしは動けなかった。
どうしよう…問題が山積みだよ…
- 263 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月12日(月)04時01分15秒
- これは。。。波乱の幕開けかな?やぐちゅーといしよし?
なんかこのシュチュエーションどっか似たのなかったですか?作者さん!(笑
私の記憶が正しければ。。。やぐよしに、やぐちゅーとよしごまを絡めて。。。
波乱後やぐよし。。。カワイソウという事でごまゆう!
ってことは。。。最後りかちゅーで救ってあげるという事ですか?
確か、他板でりかちゅー始めるのですよね!(笑
すべてが終わってからでいいので又久しぶりに、本編がやぐちゅーな痛め描いて下さい!
- 264 名前:hey! 投稿日:2001年02月13日(火)00時23分25秒
- >>260
そうでしたか。すみませんでした。
ところで、BOOTLEGさんの小説最高です!
展開が面白いです!楽しみにしてるので、
がんばってください!
- 265 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月13日(火)02時34分37秒
- 予定通りに展開が急になってきました。
話はまだまだ長そうですが…これも長編になりそうです。
>>263 名無しさん
これだけ話を書き散らすと似たり寄ったりになりますね〜(わら
でも、青のりかちゅーはこことゼンゼンカンケーないです。
あくまで「やぐよし」なので…痛めやぐちゅーはしばらく書きたくないです。
だって書くと悲しいんだもん(わら
>>264 hey!さん
いえいえ。誤解なんて誰にもありますよ(わら
頑張って書くのでよろしくお願いします。
- 266 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月13日(火)02時35分18秒
- 「あの…石川?」
「あ、矢口さん…」
あたしは…話しておくべきだと思った。
もちろん、事実じゃないけど…ウソでもついておかないといけない気がした。
石川はあたしのライバルかもしれないけど…同じメンバーなんだ…
「……」
「あのさ…よっすぃ〜のコトで話があるんだけど…」
「!」
「聞きたい? あ、昨日のゆうこの話はあんまり気にしないでね」
石川は…あたしをぐっと睨みつけた。
あたしはウソをつくことにした。ウソでも安心させないと…ダメだと思った。
「よっすぃ〜…入院することになったの」
「えっ…?」
「理由は…その、ここんトコずっとライヴあったりしたせいか…過労でね」
「どこなんですか? よっすぃ〜はどこに入院してるんですか!!」
石川の語尾がキツクなる。周りのみんなが…何事かと振り返るぐらいだ。
あたしは…俯くしかなかった。
「それは…言えない。よっすぃ〜の両親が…ゆっくり休ませたいって…」
「矢口さんは! 矢口さんは知ってるんですね!?」
「ヤグチだって知らないよ。昨日…たまたまよっすぃ〜から電話あって…」
「ウソ!! そんなウソ、ゼッタイ信じません!!」
すると…ゆうこがあたしたちの間に入ってきた。
「石川、ええ加減にせぇや…矢口はホンマのコト言ってるで」
「…中澤さんはいつも矢口さんの味方ですね」
「……?」
「よっすぃ〜が昨日来なかった時も中澤さん、遅刻した…矢口さんに呼び出されたからでしょ?」
「石川!! ゆうこに文句言う気かよ!!」
あたしは石川に詰め寄ってしまっていた。
それをゆうこがすぐに近づいてあたしと石川の間に入る。
ゆうこは…下唇を噛んでいた。
「明日…事務所から正式に吉澤が休養に入ることが言われるから…」
「中澤さん…!」
「それに従いな!! それが出来ないなら…石川も来なくてええわ」
「……」
石川が…部屋を出て行くのをみんな黙って見ていた。
よっすぃ〜がいなくなったことでどこかがちぐはぐになっていた…
すでに、事態は深刻になっていた。
- 267 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月13日(火)03時12分25秒
- 「…あんま気にせんといた方がええで…」
「うん…」
気を利かせて…ゆうこが家まで送ってくれることになった。
そのクルマの中で…
「今日ね…ヤグチってやっぱり優遇されてるんだなって思っちゃったよ」
「? 何でや?」
「ゆうこはヤグチにイロイロしてくれるじゃん? それが…石川にはあんな風に見えたんだって…」
「……」
「他のメンバーでも石川と同じ考えのヒト、きっといると思うよ…」
ゆうこはタバコを加えたまま前を向いていた。
困ったように…前髪をかきあげて、ため息をつく。
「じゃあ…どないすればええんや? 矢口とキョリ置くんか? それともみんなとベタベタするんか?」
「…どっちもゆうこには出来ない気がする…」
「矢口をヒイキするのは…しょうがあらへんわ。別れたって…スキなんやから」
「…えっ?」
「ラヴやあらへん。今の矢口はライクの方や」
ゆうこがあっさりそう言ったから…あたしは吹き出してしまった。
そうだね…ゆうこの言うコトが今のあたしたちの関係を象徴してるかもしれない。
「やっぱり…よっすぃ〜には言ったほうがいいね。今日のコト…」
「まさかよっすぃ〜がおらへんだけでこんなコトになると思わんかったわ…」
「ちっちゃくなって…よっすぃ〜自身も大変だけど、みんなも振り回されてるね…」
「早よ戻ってもらわんとな…」
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月13日(火)04時07分07秒
- 作者さんへのお願い!
ちょっとでもいいのでやぐちゅーの経緯(簡単でもいいので)
始まりと別れを書いて下さい!
それが気になってまーす!
- 269 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月15日(木)00時47分45秒
- 実はマイHPがリニューアルしました。持ってたんですよ、誰も来ないHPを(わら
アドレスの方は「モー板名作集・出張所」のスレに張り出してあるんでそちらから。
気が向いた方、ヒマな方、何か知らんが覗きたい方はどうぞ。
>>268 名無しさん
えーとそれに関してはストーリー上で細かく断片的に書いていくつもりです。
あまりおおっぴらに書くとやぐちゅーになりそうなので、
少し分かりにくいかもしれませんが…散りばめた情報で想像してください。
途中でハッキリ書くシーンもあるかと思いますので、そこで。
- 270 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月15日(木)00時49分34秒
- 「ただいまぁ…」
いつもは黙って帰ってくる家だけど…今日から違う。
よっすぃ〜がいるのだ。今日はイロイロあってホントに疲れたけど…
やっぱりスキなヒトが家にいるのは違う。
「あれ…? よっすぃ〜…」
部屋はすでに真っ暗だった。
リビングにも電気がついていない。
確かに12時回っちゃってるから…寝ちゃったのかも。
「…あ、寝てる…?」
「……(すーすー)」
「思いっきり寝てるじゃん…ってあれ…?」
よっすぃ〜はソファで思いっきり寝ていた。
テレビのリモコンを握ったまま寝ている姿が愛らしい。
でも…違和感を感じた。何か…ヘンな感じだ。
「うぅん…」
「何でこんな服がキツキツなんだろ? 昨日と違うような…?」
あたしはそこまで来て初めて感じた違和感の正体が分かった。
苦しそうに寝息を漏らすのもしょうがない。
「今日一日でだいぶ戻ったんだ…何かいつものよっすぃ〜っぽくなってる…」
「ふぁ…」
「よっすぃ〜…おはよ〜。ヤグチ帰ってきたよ〜」
「あ…ふぁ…おかえりなさぁ〜い…矢口さん…」
声も…寝起きでしゃがれているけど、子供っぽさはだいぶない。
確実に…元に戻ってるよ…
「よっすぃ〜! だいぶ元に戻ってるよ!!」
「…?」
「あ、そうだ…てーけつあつなんだった…」
「矢口さん…何か苦しいです…」
そう言ってよっすぃ〜はジャージのチャックに手を伸ばす。
中に着ていたTシャツがパッツンパッツンで…ちょっと出てきた胸が強調されててえっちっぽい。
あたしは…思わず視線を外してしまった。
「こ、ここで脱がないで…ヤグチの服があるから…それに着替えて…」
「はぁい…」
「寝室のクローゼットにイロイロあるから…」
どうしよう…よっすぃ〜、だんだん元に戻ってきちゃった…
大きくなって嬉しいけど…なんかあたしがドキドキしてるよ…
- 271 名前:ま〜 投稿日:2001年02月15日(木)01時17分26秒
- いいっすね〜。
最近矢口がかわいいと思ってきてます。
Tシャツがパッツンパッツンを想像してしまった・・♪
- 272 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月15日(木)02時53分01秒
- >>271 ま〜さん
これはこれは…遠路はるばる白板まで(わら
なんか切なくなっちゃってます。ちょっと進路変更したいけど…
このまま行きそうな予感も…
- 273 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月15日(木)02時53分31秒
- 「あ…だいぶ大きくなってきた…」
「…ホントだ…」
あたしはよっすぃ〜と並んでみた。
すでに身長はあたしと同じぐらいになっている。
今日だけで…20センチ近くも伸びてしまったみたいだ。
「カラダのほうはだいじょぶ? どっかイタイとか…ない?」
「はい…だいじょぶです。ひとりだったから…ゼンゼンおっきくなってるのにきづかなかった…」
「でも、もうヤグチと同じぐらいだよね〜。どれぐらいの頃?」
「えっと…小学四年生ぐらいかも…あたしはここから身長が伸びましたから…」
し…小学四年の時にあたしはすでに身長が並ばれてたのか…
いいなぁ…ヤグチが四年のときなんかもっと小さくて…一年生に間違えられたこともあった。
でも、この頃から大人っぽいカオダチしてるな…
「矢口さんの服もピッタリです。大きくなれってお願いしたせいかも」
「…あのね。今日ね…イロイロあったんだ。大変だったんだぞっ」
「そうなんですか…?」
「特に…石川がね…」
よっすぃ〜は…はっとしたように表情を変えた。
そのカオを見て…あたしはやっぱり話すべきだと思った。
自信過剰なんて言われるかもしれないけど…あたしには石川を上回る自身がある。
「梨華ちゃんが…どうかしたんですか?」
「うん…あのね…」
あたしは今日の出来事を大まかに話した。
もちろん、石川がよっすぃ〜を心配しているトコは詳しく話したが…
その話を聞いたよっすぃ〜は…俯いた。
「そう…ですか…」
「石川にホントのコトを言うべきか迷ったけど…ヤグチだけじゃ判断できないと思った」
「……」
「だからよっすぃ〜に任せるよ。言うのか…黙ってるのかを。もちろん、どっちでも協力するよ」
しばらく俯いたままで…カオを上げるとよっすぃ〜はあたしに抱きついた。
ナミダが流れていた…泣いていた…
「あたし…新しいメンバーだから、いなくてもだいじょぶだって…勝手に思い込んでた…」
「……」
「でも、違うんですね…あたしもいなきゃいけないんですね…」
「…そうだよ。よっすぃ〜がいないと…ヤグチだけじゃなくてみんな寂しいよ…」
昨日や今日の朝と違って同じ高さで抱き合ってるから…ドキドキする。
よっすぃ〜の柔らかい髪や…カラダを五感が支配している。
鼻元をくすぐる香りが…自分の中で幸せを助長する。
「早く…早く戻りたいよぉ…元気な姿を…梨華ちゃんにも見せてあげたいよぉ…」
- 274 名前:すなふきん 投稿日:2001年02月15日(木)22時29分38秒
- よっすぃーの成長過程が面白い!
期待してます^^
- 275 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月18日(日)02時36分34秒
- あちこちの板に浮気してしまってナカナカ戻れませんでした(わら
ちゃんとこっちが主だって言ってるのにね…頑張って書こうっと…
>>274 すなふきんさん
よっすぃ〜の成長過程は規則的にしようか悩んだんですけど…
やはりイロイロ変化に富んだ方がいいと思いましてイッキにデカくしました。
- 276 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月18日(日)02時37分10秒
- 「それじゃ…ヤグチはシャワー浴びてくるね。先寝てていいよ」
「あたしも一緒に入っていいですか? テレビ見て寝ちゃってて…」
「えっ!?」
「…何か不自然なコト…言いました?」
こんなによっすぃ〜大きくなってるのに…一緒にオフロ?
小さい時はまだだいじょぶだったけど…意識しちゃう。ちゃんとしたよっすぃ〜として…
でも…あたしは一緒に入ってもいいな…ってゆーか、入りたい。
「あ、あのさ…昨日は、その、よっすぃ〜ちっちゃかったじゃん?」
「…あ! そうですね」
「……」
「……」
何かハズカシイ気分になって…俯いてしまう。
どうしようもないほど、重たい空気にあたしは…何も言えなかった。
よっすぃ〜は…くるっとあたしに背を向けた。
「ゴ、ゴメンなさい…チョーシに乗ってますよね? あたし…」
「そんなことないよ! よっすぃ〜が一緒に入りたいなら…あたしは別に…」
「……」
「わかった! やっぱり一緒に入ろ? 昨日みたいに…ヤグチがアタマ洗ってあげる♪」
思いっきりカワイク振る舞ってもよっすぃ〜はこっちを見てくれない。
でも、あたしは自信がない。今のよっすぃ〜は普通のよっすぃ〜とほとんど差がないくらいだから…
理性が持つか分からない。
「一緒に入らないと…ヤグチが服脱がしちゃうぞ〜!!」
「きゃあっ!!」
とさ…
そんなにチカラいっぱい押したわけじゃないけど…よっすぃ〜はソファによろけてしまった。
イキオイに流されて…あたしはよっすぃ〜の上に乗ってしまう態勢だ。
をや…この態勢は…
「…矢口…さん…」
とろんと必要以上に潤んだ瞳と甘く呼びかける声…
あたしのアタマは…白くなりかけていた。
- 277 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月18日(日)03時08分02秒
- これじゃ…いつものよっすぃ〜と何も変わってない。
あたしの中じゃ…元に戻っているって言ったって過言じゃない。
抱いてしまいたい…どうしても、よっすぃ〜を抱いてしまいたい…
「…スキだよ…よっすぃ〜…」
「…はい…」
「ゴメン、今だけ…ひとみって呼ぶね…」
あたしは…静かによっすぃ〜…イヤ、ひとみに口づけた。
唇の周辺をイロイロな角度から口づける。
ひとみの息づかいが荒くなって…カラダが寝返る。
「…矢口さん…」
「真里って呼んで…」
「…そんな…ハズカシイです…」
「ひとみ…」
初めて深く唇を沈めて…舌を遊ばせる。
ひとみはそれを抵抗なく受け入れて…お互いを絡ませる。
カラダが熱いせいか…唾液の温度もあたしに比べて温かい。
「んっ…」
「行くよ…」
ひとみの着ているジャージのチャックを半分だけ下ろして…
その中に手を忍び込ませる。
わずかに膨らみを見せる…誰も触れたことのない丘に手が伸びる。
「はぁ…んっ…」
服の上から軽く刺激を加えただけでもカラダをよじらせる。
すでにひとみのカオは紅潮して…ハズカシそうに右手でカオを隠している。
あたしは…コトバにならないものがぐっとこみ上げてきた。
「ひとみも…手を動かして…」
「…んっ…あ…分かん…はぁ…ないです…」
「ここに…手を入れて…」
「……」
ひとみの手がぎこちなく…あたしの服の中にもぐりこんだ。
…ヤバ…あたし、もう感じてる…早すぎじゃん…
「…そこ…をっ…そんな風に…」
「これで…いいんですか?」
「……」
声にならずにあたしは頷いた。
もう…ダメだ…イッキに行くしかない…
♪〜♪〜♪〜
…どこからともなく聞こえてきた電子音…このメロディーは…
こんな時に…なぜ、この着信音が…
♪Pa!Pa!Pa!Pa! 踊ろう 騒ごう Pa!Pa!Pa!Pa! ぱぱぱだぴょ〜ん…
…自分の歌っている歌が…こんなにジャマをするとは思わなかった…
ぱぱぱだぴょ〜んじゃねーよ…ホンキで…
- 278 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月18日(日)03時11分17秒
- ああ…ハズカシイ…何を書いてるんだ、俺は…
読み返してなんてハズカシイ…えっちシーンはどうもニガテだ…
あ〜!! ハズカシ過ぎだぞ、俺…
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月18日(日)03時13分26秒
- “ぱぱぱだぴょ〜んじゃねーよ”って(わら
しかし誰からの電話か気になる・・・
- 280 名前:すなふきん 投稿日:2001年02月18日(日)13時50分34秒
- サイコーですよ〜!!
矢口が自分の歌にきれてるとこがさいこーです^^
- 281 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月19日(月)00時19分22秒
- 中澤登場?
矢口、吉澤、中澤、石川全員娘の中でも、
好きなメンバーなので気になってしょうがない今日この頃
- 282 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月19日(月)00時25分31秒
- 登場人物より先に作者が悶えちゃってる(藁
読んでる方は、入っちゃえば作者のことなんか忘れちゃうし、堂々といきましょう。
あ、このシーンはもう終わっちゃったか。
よっすぃーが大きくなってきちゃってちょっと残念。
- 283 名前:ま〜 投稿日:2001年02月19日(月)23時40分30秒
- 矢口・・・。大事な時には携帯の音は消しておかないと・・・。(w
- 284 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月20日(火)04時11分37秒
- 今度はこちらです。今日は頑張って書いてるなぁ〜、俺(わら
チョット夜更かししすぎですね。ガッコウ休みだからいいんだけど…
>>279 名無しさん
さすがにえっちしようとか思ったときにあの曲はツライはず(わら
電話の相手は…次で分かります!
>>280 すなふきんさん
自分の歌だからやり場のない怒りと着メロにした自分のせいだと言うコトで…
逆ギレですね。赤板のほう、楽しみにしてますよ!
>>281 名無しさん
中澤かどうかは…ズバリ次で分かります!
この長編に関しては自分のスキなキャラのみでやってますね。
>>282 名無しさん
悶えるというか…書いてるとモノスゴイ恥ずかしいです。
「スキだ」とか「愛してる」とか言ってるシーンの方がよっぽどラクです。
えっちシーンって難しいんですよ…どこまで書いていいかとか、表現とか。
よっすぃ〜は…これからどうなるんでしょう? 果たして…?(わら
>>283 ま〜さん
毎度のレスありがとうございます♪
携帯と一緒にマナーも携帯しないとこーゆーことになりますよ(わら
- 285 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月20日(火)04時15分38秒
- 「ゴメン…チョット…」
あたしはバックの中から半ば投げやりに携帯を出す。
ゆうこだったりしたら…ゼッタイ次の日とっちめてやる…
「…もしもし?」
「あ…あの…矢口さんですか?」
石川だった。タイミングと間の悪さはこのコには勝てない。
半分、逆ギレしてたけど…あたしはそれを抑え込んだ。
「どうしたの? 珍しいじゃん? 石川がかけてくるなんて…」
「いや…あの…今日のこと、なんですけど…」
あたしの空気がぐっと冷え込んだ。
意識も精神も自分の下に…しっかりと帰ってきた。
「うん、だいじょぶだよ。ヤグチあんまり気にしてないから…」
「ゴ…ゴメンなさい…わたし…身勝手なコト言っちゃって…」
「だいじょぶだってば〜。よっすぃ〜のコトが心配だからでしょ? キモチはヤグチも分かるから…」
「…やっぱり…矢口さんはやさしいですね…」
「なんだよぉ〜、誰かにそう言えって言われたみたいな言い方じゃん〜」
「いや、あの…ホントにそう思います。でも…やっぱり中澤さんはスゴイですね…」
「へっ? ゆうこ?」
「あの…実は今日、仕事が終わった後に、中澤さんに相談したんです…」
ゆうこに相談? あ…そっか…最近、ゆうこは石川のコト、スキみたいだしね…
イロイロあたしのいないところでは…ちょっかいを出してるみたい。
まだ、やっぱり、気を使ってんだろうなぁ…
「そしたら…『矢口にちゃんと石川の思ってることを言った方がええ』って言われて…」
「……」
「だから…電話しました。そしたら…中澤さんが言ったとおりに矢口さんが答えるから…」
「…まあね…ゆうこは、ヤグチのコト、何でも知ってるから…」
…困った…石川がそんなコト、言うから…
イロイロ思い出してきちゃったじゃんか…忘れたいとは思わないけど…
思い出さないようにしてたのに…
「ゴメンなさい。明日からは…ちゃんとやります」
「うんっ! 石川も…頑張ってね。よっすぃ〜の分まで…」
「…はい。それじゃあ…」
携帯を切って…あたしはよっすぃ〜の視線が気になった。
ずっと、片時も目を離さず…あたしと石川の電話に耳を傾けていたから…
「矢口さん、あの…」
「ゴメン、チョット…オフロ入ってくるね」
「……」
「今日は…一人で入らせて…お願い…」
あたしは…その答えを聞かずにバスルームに駆け込んだ。
…胸がちくりと痛かった。
- 286 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月20日(火)04時43分10秒
- ああっ矢口っ・・・よっすぃーが可哀相・・・
しかしやっぱりこういうタイミングの電話は石川だったか(笑)
- 287 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月21日(水)02時30分59秒
- ずっと書かずにいたやぐちゅーがなぜ別れたのか…今日ハッキリします。
イヤ、あんまりハッキリしてないかもしれません(わら
読んでいただければその理由が分かると思います。
>>286 名無しさん
タイミングの悪さはやはり石川かと…中澤でもよかったんですけど、
そうするとやぐよしでなくなる可能性がありましたので(わら
ゆーちゃんはキャラ強いですから。
- 288 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月21日(水)02時31分58秒
- あたしはぼんやりとシャワーを浴びていた。
思い出してしまった…なぜ、ゆうこと別れたのか…どうしてこうなったのか…
(ラヴやあらへん。今の矢口はライクの方や)
分かってる…別れた理由があたしにあるのは分かってる。
でも、あの時は…ショックだった。ゆうこの中ではあたしは過去の出来事にされていた。
あたしだってゆうこは過去の出来事になっている…よっすぃ〜の前だけでは。
一人でいるときは…部屋を見渡すたびにゆうこの匂いがした。
写真であったり、CDだったり、雑誌だったり、アクセサリーであったり…
それこそ、見渡すほとんどのものにゆうこの匂いがしみついている気がした。
(それだけじゃないね…きっと、このカラダだって…)
自分のカラダを見渡して…そう思った。
拭い去れない「何か」があたしのカラダには刻み込まれている…
ゆうことの思い出かもしれない。
ここまで思っても、ゆうことやり直したいとは思わない。
やっぱり今はよっすぃ〜のコトだけがスキだし…でも、気になる。
ゆうこはあたしの一部になってるのかもしれない。
別れるとか…キライになるとかそんな次元じゃなくって…
「失礼だね…ヤグチはよっすぃ〜に対して失礼なコトしてる…」
あたしは理由もなく、ゆうこと別れた。
歯車が噛み合わなくなっていくのが手にとるように…お互いに分かっていた。
それにはホントに理由がない。仕事が忙しいわけでもない。
ただ何となく…ゆうことこれ以上、やっていくこと自体に無理があるような気がした。
お互いがダメだねって言った時に…あたしもゆうこも、だから、大泣きしたんだ…
「…矢口さん!」
どっぷりと一人の世界に浸っていると…誰かの声に呼びかけられたような気がした。
現実だった。曇りガラスの向こうには…よっすぃ〜の人影があった。
- 289 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月21日(水)03時10分18秒
- あたしはぐっと拳を握った。
震えてる…こんなコトを矢口さんに聞くのはゼッタイにできないと思っていた。
でも、ゼッタイに聞かないといけないコトだって…そんな風にも思っていた。
「よっすぃ〜…」
シャワーの水音が消えた。
矢口さんの影は曇りガラスの向こうで全く動こうとはしない。
あたしは…見られているコトを意識しちゃって、俯き加減に訊ねた。
「…どうしても知りたいんです…矢口さんと中澤さんのコト…」
「……」
「梨華ちゃんと電話している時に…思いました。中澤さんのコト…矢口さん、スキなんじゃないかって…」
…矢口さんは何も答えてくれなかった。
ただじっと…黙っているだけだった。
「お願いです…答えてください…あたしは矢口さんがスキなんですから…」
「…違うよ。ヤグチはよっすぃ〜のことがスキだよ。ホントなんだ」
「じゃあどうして…」
「説明するのが難しいんだよ! ヤグチとゆうこのカンケイって…コトバにしにくいんだ」
あたしは目の前の曇りガラスがどうしても邪魔だった。
今の矢口さんの表情がどうしても見たかった。
どんなカオをしているのか…見たかった。
「でも、もう…恋人同士じゃないんだ。スキだよ、ゆうこのコトはスキだけど…違うんだよ」
「矢口さんに中澤さんが必要なのは分かります…でも…」
「……」
「あたしには…中澤さんの代わりはできません。でも…中澤さんとは違った方法で…」
「矢口さんのコトをスキになることはできると思います」
あたしは…ゆっくりとバスルームのドアを押し開けた。
一糸纏わない矢口さんが…ナミダを流していた。
自分がハダカであるコトを忘れて…あたしに抱きついてきた。
「ありがと…よっすぃ〜…」
「何でも聞きますから…どんなことだって…何聞いたって矢口さんと一緒ですから…」
「お願い…ヤグチのコト、スキになって…」
「…はい」
あたしは濡れぼそった矢口さんをずっとずっと抱きしめていた…
- 290 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月21日(水)21時12分52秒
- 切ないです。どうなるんだよぉ。
- 291 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月22日(木)00時48分40秒
- とりあえず話の本筋としては折り返し地点を回りました。
これから先の話は少し切なくなると思いますが…
「甘め」を忘れずに書いていきたいと思います。出来るかな…?(わら
>>290 名無しさん
一応、やぐちゅー問題はこれで解決です。
また、これから新たな問題が勃発すると思いますが…
- 292 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月22日(木)00時49分13秒
- 「う…ん…?」
カーテンの漏れ日がカオにさして…あたしは目を覚ました。
隣には…矢口さんが寝ている。子供のようにぐっと…あたしの手を握ったままだ。
そっか…あの後…
「矢口さん…そろそろ行く時間ですよ…」
「…っんっ…いやぁだぁ…ヤグチ眠いもん…」
「起きてください…遅刻しちゃいますよ…」
「…眠いからヤ…疲れてるもん…」
あたしは腰の辺りにだるい倦怠感を感じた。
あの後…思い出すだけでも、ビックリするぐらい…矢口さんと求め合った。
何度も何度もカラダをよじらせて…細い矢口さんの指で…
あたしは頬の辺りに熱を感じた。
あんなコト…矢口さん以外と出来ないよ…恥ずかしすぎて…
「…よっすぃ〜…今何時…?」
「8時25分ですけど…だいじょぶですか?」
「ウ…ウソッ!? ど、ど〜しよ!? 遅刻だよ! 完全に!!」
そう言って矢口さんは携帯の電源を入れると…メールのチェックをする。
…あ…何か来てるみたいだ…
「やっばぁ〜…みんなから催促のメールが来まくってるじゃん…」
「あたしも…」
「あ、よっすぃ〜はまだ寝てなよ。昨日は…ちょこっと疲れたでしょ?」
「えっと…それは…」
「あははっ。石川には黙っておいてあげるよ」
ベットの脇に脱ぎ捨ててあったシャツを着ると矢口さんはリビングへ向かった。
石川…? 石川って…ああ、梨華ちゃんのコトか…
なんだ…あたしもまだ眠気が冷めてないじゃん…
「ごめんね〜。ゴハンは冷蔵庫のもの、適当に食べておいてね〜…」
「はぁ〜い…いってらっしゃい」
「あ、そだそだ…時間なくても…」
リビングから外に出かけた矢口さんが再び寝室の方に戻ってきた。
えっ? 何か忘れ物でもしたのかな…?
chu!!
「モーニングキッス♪ やっぱりこれがないとね〜」
「…ふえ?」
「んじゃ、行ってくるね〜。あ、メールするから…」
「……」
あたしは…茫然と矢口さんを見送った。
- 293 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月22日(木)03時25分42秒
- ああっ、今度はとばされてる(泣
切なくなりますか。ここのよっすぃーにはあんまり悲しい思いをして欲しくないというか、
矢口もよっすぃーを中澤との大人な世界に巻き込まず、ちゃんと可愛がってやって欲しいというか、
何言ってんだ俺?(笑) はまっちゃってるな、この小説に。
- 294 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月24日(土)00時38分47秒
- すっげー書きまくってる気がします、最近。
何か書きモノを初めて以来の「書き病」が発症しそうです(わら
>>293 名無しさん
スイマセン、あのシーンをちゃんと書くと俺が耐えられそうにないので(わら
切なくなりますが、やぐよしが中心であることは揺るがないです。
矢口はなるべくよっすぃ〜に悲しい思いをさせないと思いますよ。
これから矢口が恩返しする番ですから…
- 295 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月24日(土)00時40分14秒
- 「…ですよ〜。えー、違いますよ〜。あははっ…」
矢口さんが出かけてからあたしはぼんやりとテレビを見ていた。
なんだか矢口さんがいなくなるとやっぱり寂しいなぁ…
「はいっ! それでは今日の曲はタンポポの『恋をしちゃいました』です〜」
「…あ、矢口さんだ…」
冷蔵庫に入ってるミネラルウォーターをコップに入れながらテレビを見ている…
あ、隣に梨華ちゃんもいるよ。カワイイな…はやくみんなに会いたいよ。
みんな…どうしてるのかな…
「……?」
ふと、気がついてあたしは青くなった。
コップを乱暴にテーブルに置くとテレビに映し出されている四人をじっと見た。
まずは…矢口さんだ。あたしのスキな矢口さん…
その隣にいるのが梨華ちゃんだ。淡い雰囲気がどことなくカワイク見える。
でも…でも…矢口さんの隣にいるヒトは? その側にいる小さい子は?
髪が長くて、チョットキレイ系の女のヒトは? 子供っぽくて笑顔にクセのあるこのコは?
「…誰なの? このヒトたち…誰なの!?」
「はい。タンポポは『モー娘。』の中のメンバーで構成されてるんですね〜」
「あたしは加護ちゃんがスキなんですよ〜。あんなカワイイコを妹に欲しいですね」
…加護…加護ちゃん…?
そうだ! あたしと一緒に…えーと、モーニング娘。に入ったコだ。
何で…何で、加護ちゃんのことが分からないの…?
「…それで飯田さんは…」
飯田さん…? 飯田さんは…そうだ…初期メンバーのヒトだ…
矢口さんと一緒にタンポポやってて…
どうして? 分からない…何で、メンバーのコトが分からないの?
…ぼんやりと腰を下ろして…あたしは愕然とした。
「記憶が…なくなりつつあるの…?」
- 296 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月24日(土)00時52分08秒
- あたしは急いで電話帳にあるメモ帳を乱暴に破った。
ペンを取り出して…書き出してみることにした。
モーニング娘。のメンバーの名前を…覚えている限り…
「まずは…矢口さん、梨華ちゃん、それから飯田さんに、加護ちゃん…」
あたしの視界がゆっくりと歪んでいく…
他にも…他にもたくさんいるはずなのに…名前が出てこない…
その中にあたしが入っていることに気がつかないほど…気が動転している。
「思い出せ…思い出せ…他にもいるはずだよ…」
記憶の枝をたどればたどるほど、あたしは絶望に陥った。
名前だけしか覚えていない二人…飯田さんと加護ちゃん…
今、見たヒトは名前だけしか思い出せなくなっている…
「いるはず…あたしは…何か、タンポポみたいな…何かに…入ってたじゃん…」
ぼんやりと…人影がちらついた。
カワイイコだ。あたしと同じ歳だったはずだ…何で、そんな情報しか思い出せないの…?
肩ぐらいの髪で…人気がある子だ。
「人気がある…あるの…に、どうして…思い出せないの!!」
メモ帳に書いてある名前がナミダで滲む…
たった四人だけだった。あたしの記憶にある名前は四人…正確には二人だ。
たくさんいるはずの…二人だけしか思い出せない…
「…矢口さんのと思い出はこんなにハッキリ覚えているの…いるのに…」
手のひらからペンが転がった。
テレビの向こうではタンポポとかいうグループの歌が聞こえていた…
今のあたしが…初めて聴く曲だった。
- 297 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月24日(土)02時05分09秒
- おぉ、すごい展開だ。なんか悲しくなってきたぞ。
続き気になる。
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月24日(土)04時04分29秒
- おお、新展開。体も戻りきってないのに次の災難が。
矢口、力になってあげて。
- 299 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月25日(日)01時39分19秒
- ちょうどこの辺からが話のヤマ場ですね。
行き当たりばったりそうですが、実はシナリオどおりの展開です。
この話に関してはラストから遡った書き方ですので・・・
>>297 名無しさん
記憶がなくなっていくのは理由があるんです。
カンのいいヒトなら次を読んだら分かるかもしれません。
悲しい展開は俺のクセです。切なくしか書けないのかも知れません(わら
>>298 名無しさん
てってーてきによっすぃ〜は弱くなってしまいます。
この前の恩返しとはここで矢口がするんですね〜
どういう風に矢口が支えていくのかを見ていてください。
- 300 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月25日(日)01時40分54秒
- …あたしにはさらに追いうちがかかっていた。
借りている矢口さんの服が…大きく感じている。
胸の辺りには…昨日までは感じなかったゆとりを感じる。
「あはは…あたしは…ダメだ…」
力なく笑う。笑うしかなかった。
何が理由で大きくなってきたカラダが…元に戻ってきたカラダが…
どうして小さくなり始めたのか分からなかった。
全てはあの日に食べたゆでタマゴのせいだ。
「もうダイキライだ…タマゴなんて…ダイッキライだっ!!」
テーブルに思い切り手を叩きつける。
溢れんばかりに注がれていた水が小さな音を立てて倒れる。
水がテーブルから…床にこぼれる…
「あたしの記憶みたいだ…」
コップにとどまらずに溢れ出る水は…あたしの記憶のようだ。
倒れてしまえば水は全部なくなる…記憶もそうなるのかもしれない。
ゼンブゼンブ…ありとあらゆることまで…
「もう…イヤ…こんなコト…イヤ…」
痛みもなくカラダは縮んでいくようだった。
コワくて鏡で自分を見ることが出来ない。
あたしは…下唇を噛み締めた。
「…矢口さんとの記憶は…ゼッタイになくさせないんだから…ゼッタイ…!」
緩慢に記憶がなくなっていく自覚は…じわじわとあたしに打ち寄せている。
あたしは覚えているコトを紙に書き出した…自分の名前、生まれ、年齢…
思いつくことは片っ端から書き出した。
そうしないと、何もかもがなくなりそうな気がするから…
- 301 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月25日(日)02時18分09秒
- 「はぁ〜い!! とりあえず、そこまでで休憩いれよっか!」
大遅刻してメンバーにも夏先生にもムチャクチャ怒られたけど…
なんとかなったみたい。一生懸命頑張ったし…よっすぃ〜と一緒になれたし…
いまのあたしは絶好調だ。
「ふぃ〜…疲れちゃったぁ〜」
「何言ってんだよ! まりっぺが一番遅刻してきたじゃんか〜」
「まあ、そうだけど…疲れる時はヤグチでも疲れるんだよ」
ポカリを一気飲みすると…だいぶカラダが落ち着いた。
時間もまだあるみたいだし…どうしよっかな? よっすぃ〜に電話でもしてみようかな?
「あ、矢口…」
「ゴメン、ゆうこ…チョット」
「あ、ああ…電話な。ええで。すまんな」
「ゴメンね〜」
あたしは一応、石川に気づかれないように…携帯を持って部屋を出た。
メールを問い合わせると…案の定、届いている。
「あ、よっすぃ〜からだ…」
「矢口さん。お願いです。メールに気づいたら電話してください」
チョットビックリして…あたしは送信された時間を確認した。
今からだいたい一時間前に送ったメールだ。その後には来てないけど…
なんとなく、胸騒ぎがした。
「…もしもし?」
「あれ? よっすぃ〜だよね…?」
最初に電話を受けて、よっすぃ〜の声が…さっきと違うと思った。
小さくなった時の声に似ているような気がした…
「…はい? よっすぃ〜…ですか?」
「ヤ、ヤグチだよぉ〜…だいじょぶ?」
「…矢口さん…ですか?」
「な、何を言ってるの…?」
電話の向こうにいるのが…なんだかよっすぃ〜じゃないような気がしてあたしはドキドキした。
ワルイ意味でのコドウがイヤというほど高鳴っている…
「よかった…間違えているのかと思いました」
「ど、ど〜ゆ〜ことだよ!!」
「…あたし…記憶が…記憶がぁ…なくなりそうなんです…」
「訳分かんないよ…ちゃんと説明して…」
「カラダも縮んでます…ハッキリ分かるぐらいカラダも…小さくなってます」
「……」
「カラダの大きさにあわせて…記憶もどんどん小さくなっているみたいなんです…」
あたしの目の前は真っ暗になった。
- 302 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月25日(日)20時31分18秒
- どういうことですか?記憶がなくなるなんて。
- 303 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月26日(月)01時58分36秒
- よっすぃー、けなげ(萌 とか言ってる場合じゃなさそうだな。(笑)
切なくしかって、甘く書くのもコツ掴んでたじゃないっすか。
まあこういう展開になると、おおっ本領発揮か? などと期待しちゃいますけど。(笑)
- 304 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月26日(月)03時24分45秒
- やっぱり痛くなってしまいました。何ででしょう? スレの題名のせい?(わら
ある程度は痛くなるとは思っていましたが、まさかこれほどとは…
でも、話は「甘め」ですよ。分かるヒトは分かってください(わら
>>302 名無しさん
次に上げるものを読んでいただければ分かると思います(わら
>>303 名無しさん
ケナゲなんて言ってる場合じゃないですよ、ホントに(わら
甘く書くコツはここでは通用しません。話が膨らみすぎているので…
本領発揮というか…自分の庭でプレーしててやりやすいですけどね(わら
- 305 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月26日(月)03時26分34秒
- 「ヤグチ今から帰るよ! そのままじゃよっすぃ〜…」
「…もう、遅いかもしれません。今のあたしは…」
「……」
「矢口さんのコトは…ほとんど思い出せません。ゴメンなさい…」
あたしは…ケータイを切った。
よっすぃ〜の背が小さくなってしまった時点で気づくべきだった。
今のよっすぃ〜の状態がきわめて危険であることを…すっかり忘れてしまっていた。
少しずつ大きくなるのを見て安心してしまった。
イキナリ小さくなったんだから…大きくなったって、また小さくなるコトを考えなかった。
あたしの失念だった。
「ヤグチは…どぉすればいいの…? 何をすればいいの…?」
ぼんやりと…歩き始める。
記憶がなくなる…その言い方は正しくないかもしれない。
よっすぃ〜の成長の過程にあわせて…記憶もそれに応じた頃に戻るのだろう。
だから…あたしが教育係なんて記憶は真っ先に消えてしまうだろう。
昨日のコトも、あたしがよっすぃ〜をスキなことも、一緒にオフロに入ったコトも…
ゼンブ消えてしまったんだろう。
「矢口!」
「……」
「どないしたんや…? よっすぃ〜から何かあったんちゃうか?」
しばらく戻ると…ゆうこが心配そうに、あたしに駆け寄ってきた。
それに応える元気すらなくて…あたしはカオを上げるだけで精一杯だった。
「…何でもないよ。今のはよっすぃ〜からじゃなかった」
「……」
「ゴメン。ヤグチ…今から帰る。しばらく休むかもしれない…」
「矢口! うちには教えてくれへんか!? リーダーとしてでもええんや!!」
…あたしはゆうこに頼りすぎている。よっすぃ〜はそれが心配だったようだった。
もしかしたら、そのコトで小さくなったかもしれないんだ…
だから…
「これは…ヤグチの問題だよ。ゆうこにはカンケイない…」
「カンケイないってコトはあらへんやろ!!」
「よっすぃ〜との問題は!! あたしとよっすぃ〜との問題には…カンケイないよ」
「……」
「ゴメン。ゼンブ終わったら…分かるよ。きっと…」
あたしは…立ちすくむゆうこの隣を静かに通り過ぎた。
- 306 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月27日(火)02時12分57秒
- タクシーに乗っている…あたしはずっとケータイを握りしめていた。
メールボックスの大半はよっすぃ〜とのやりとりで埋まっている。
昨日まではいつものよっすぃ〜と一緒だったのに…
「……」
電話の後…結局、よっすぃ〜から何一つ連絡がなかった。
向こうから電話をかけてくることもなければ…かけても出ることすらなかった。
ひたすら、後悔していた。
(ヤグチのせいだ…ヤグチが優柔不断だったから…こんなコトになったんだ…)
あたしはケータイを持ったまま祈りつづけた。
せめてあたしが帰るまでは…あたしとの記憶を覚えておいてほしかった。
モーニング娘。として過ごした記憶だけは…忘れてほしくなかった。
ここから自宅までは30分くらいで着く。
昼間のせいか車の流れもよく、すぐに着きそうだった。
あたしは…たまらずに頼んだ。
「お願いします。もう少し急いでくれませんか…?」
「これで精一杯なんだけどねぇ…」
「そうですか…」
何気なくよっすぃ〜とのやりとりが残っているメールを見る。
(みんな、一生懸命みたいですね。梨華ちゃんだいじょぶですか?)
(だいじょぶみたいだよ。『よっすぃ〜を驚かせるんだ!』って言って頑張ってるよ)
(あたしもそこに早く戻りたいです。みんなの声が聞きたいです)
(ヤグチだってみんなに自慢してあげたいよ! よっすぃ〜と仲いいんだって♪)
(…恥ずかしいですけど、あたしもみんなに見てもらいたいです)
思わずナミダが溢れた…
こんなに近づいたのに…こんなに吐息を感じたのに…
すでに遠くなりかけていた。見えなくなりそうだった。
(よっすぃ〜…頑張ってよ!!)
あたしはひたすら祈ることしか出来なかった…
- 307 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月27日(火)02時56分05秒
- 部屋に着くとあたしは…急いで扉を開けた。
乱暴に靴を脱ぎ捨てると、リビングへ爆進する。
テレビの音が聞こえてきた…
「よっすぃ〜!!」
部屋に入って…あたしは立ち尽くした。
床には足の踏み場もないほど、紙が散乱している。
広告だったり、ノートだったり…それにはいろいろ書いてある。
「……」
ソファの上には…よっすぃ〜が寝ていた。
ブカブカのあたしの服を着て…静かに寝息を立てている。
姿は小さくなってしまっているけど、生きていることが分かってあたしは胸を撫で下ろした。
「これは…どういうコト…」
散乱する紙の一枚を拾い上げてあたしはそこに書かれている文字を見た。
いつもよっすぃ〜が書く字に比べるとどこか汚い。
まるで、覚えたての字を思い出しながら書いているようだった。
(吉沢ひとみ。15さい。しょうわ60ねん4月12日生まれ)
震える手であたしは他の紙を見てみた。
何もかもが…よっすぃ〜に関するコトだった。
「…これ…手紙…」
テーブルの上には倒れたコップとメモ帳に書かれた手紙があった。
あたしはそれを乱暴に取り上げると…それを黙読した。
……
矢口さん。おかえりなさい。今日もレッスンとリハおつかれさまです。
きっとこの手紙をよむころにはあたしはただの子どもになっていると思います。
だから、おぼえている今のうちに…おねがいしたいコトがあります。
万が一、あたしのきおくがなくなっていたら…親にれんらくしてください。
小さくなったことをあたしのお母さんとお父さんに伝えてください。
これ以上矢口さんやみんなにめいわくをかけられません。
モーニングむすめとしてみじかい間でしたけど…ホントに楽しかったです。
矢口さんと知り合えたことがホントにあたしにとって…たからものでした。
スキでした。ダイスキでした。矢口さんのコトが…スキだったんですよ、あたし。
もしかしたら、もう知ってるかもしれませんね。おぼえてないけど、なんとなく言った気もします。
こうしているうちにもどんどんきおくがなくなっているような気がします。
カラダもみるみる小さくなっています。こんなカラダになったのがいつだったのかも分かりません。
だから…ハッキリ分かる今のうちにおねがいします。あたしの家のでんわは…
……
その手紙を持ったまま…あたしは床に腰を落とした。
ナミダすら流れなかった。
- 308 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月27日(火)04時09分23秒
- ・・・(涙)
某小説を思い出したけど、こういう喪失の仕方ってのが、ある意味一番悲しいやね。
それと最近の更新ペースも凄いっすね。読者としては嬉しい限りですが。
- 309 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月28日(水)02時53分13秒
- 更新が早いのはすごく嬉しいことですね。楽しみが増えますから。
- 310 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月28日(水)04時18分04秒
- そろそろこの話も終わりになります。
今日のUPでは終わりませんが…たぶん、今度が次くらいには終わります。
ラストは完成しているので…そこに向かって走るだけです(わら
>>308 名無しさん
最近は「書きたい病」が発病中なので書きまくってます。
疲れるし、HPも開設したし、生活も逆転しちゃったけど…
一時的なものだからそれに乗っちゃってます。
>>309 名無しさん
自分で言うのもヘンな話ですがホントに俺って更新早いなぁ(わら
でも、更新って早い方がいいのかな? 早すぎると量が多くて読まないヒトもいるんじゃ…
最近、滞りなく更新することに疑問を抱いたりしてる(わら
決してラクしたいとか、そーゆーわけじゃないよ、ホントに(わら
- 311 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年02月28日(水)04時18分35秒
- 「…ふわぁ〜…」
「……」
「ぅん…よっくねちゃったぁ〜」
「…おはよう」
あたしは目を覚ましたよっすぃ〜の驚かさないように…ゆっくり微笑んだ。
寝起きのよっすぃ〜のカオが案の定こわばった。
誰だか分からないヒトが…目の前にいるのだ。驚きもするだろう。
「ここ…は…?」
「ここはね…よっすぃ…じゃない、ひとみちゃんの家だよ」
「ちがうよ…あたしのいえはもっとはたけとかあるよ。おねえちゃんはだれなの…?」
やっぱり…全部の記憶がなくなっていた…
ココロの準備は出来ていたけど、こうして他人行儀なコトを言われるとショックが大きい。
ナミダが出そうになるのをこらえる。
「お姉ちゃんは…ひとみちゃんのお母さんのお友達なんだよ…」
「そーなの?」
「そう。お母さんね、チョットお出かけするって言って…ヤグチにひとみちゃんを預けたの」
あたしはココロに決めていた。
大きくなるまで…あたしが責任を持って一緒に暮らすと…
ゆうこがなっちを預かったみたいに…あたしはよっすぃ〜を預かる義務がある。
教育係だから…友達だから…恋人だから…
「やぐ…ち?」
「そう。お姉さんの名前はヤグチって言うの。矢口真里」
「…おかあさんはすぐにかえってくる?」
「チョット遅くなるかもしれないけど…必ず帰ってくるよ。それまでひとみちゃん、よろしくね」
あたしはよっすぃ〜と同じ目線で手を差し伸べた。
こんなに…小さくなってる…あたしが最初に見た以上に小さい。
オムツとかいるかもしれない…
「やぐち…おねえちゃん…」
「うん?」
「なんで…ないてるの?」
差し出した手が震えていた。
知らないうちにナミダが溢れていた。
…こんな姿のよっすぃ〜を見るのが…ホントにツラくて、苦しい…
「ないちゃだめだよ。なくと『なきむしおばけ』がいじめにくるんだから」
「そう…だね…ごめんね…」
「おねえちゃん…いっしょにあそんでくれる?」
「もちろんだよ。ひとみちゃんの気が済むまで…遊んであげるよ」
- 312 名前:名無しさん 投稿日:2001年02月28日(水)21時00分58秒
- これがおわったら、まきまりかやぐのの書いて欲しいです。
今はやぐよし最後どうなるのか気になって仕方ないです。
- 313 名前:ま〜 投稿日:2001年02月28日(水)21時33分13秒
- 矢口・・・、頑張れ!!(涙
- 314 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時23分19秒
- 今書き終わりました。この話も結構長くなりましたね。
詳しいことはあとがきで…
>>312 名無しさん
まきまりややぐののですか…長編では結構ツライですね〜
青板ではまきまり辺りを書けたらいいんですけど…考えときます。
>>313 ま〜さん
頑張った矢口がこれから…明らかになります。
- 315 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時24分16秒
- ドン底で…救いようがない状況だったけど…
一つだけ、安心できる要素があった。
よっすぃ〜は…以前と変わらずあたしにとてもなついてくれる。
「これって…やぐちおねえさん?」
「そうだよ〜…ヤグチね、テレビに出るお仕事してるんだ。歌手なの」
「いいなぁ〜。ひとみもかしゅになりたいよ〜」
「ひとみちゃんならきっといい歌手になれるよ」
雑誌を見ているよっすぃ〜はあたしにベッタリだった。
座っているあたしの膝の上に乗ってあれこれ指をさしている。
あたしのコトは初めて見るはずなのに…実の姉のようになついてくれる…
そこが逆にわずかな望みがあると思えた。
「ひとみちゃん、お腹減った?」
「うん!」
「それじゃヤグチがゴハン作ってあげるよ。何食べたい?」
「ゆでタマゴ〜!!」
この頃からよっすぃ〜はゆでタマゴがスキだったらしい。
あの一件以来タマゴを食べている姿は一度も見たことがなかったけど…
「分かった! それじゃ…作ってあげるね〜」
「やぐちおねえさんは…おかあさんはいないの?」
「…ヤグチは一人暮らししてるんだよ。ちゃんとおうちに帰ればいるよ」
「…おかあさんにあいたいな…」
寂しいのかあたしのスカートの裾を掴むとしくしくと泣き始めた。
あたしはしゃがんでアタマを撫でで上げた。
「ひとみちゃん、泣いちゃダメでしょ? 『ナキムシお化け』がくるんじゃなかったっけ?」
「うん…うん…」
「お母さんには…ちゃんと会えるから心配しないで…」
「やぐちおねえちゃん…」
よっすぃ〜に抱き付かれて…あたしは悩んでいた。
このままこの状況をでいることがホントにいいことなのか…
あたしのエゴでよっすぃ〜をここに置くべきなのか…
もう少し…時間がほしかった。
- 316 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時24分55秒
- 「……」
「寝ちゃったね…こんな時間じゃ…」
あたしが驚くほどゴハンをしっかり食べて…
タンポポが出ていた「HEY!HEY!HEY!」を見て、よっすぃ〜が大騒ぎして…
テレビが終わる頃にはソファで横になっていた。
「小さくなるのが止まらないようなら…ヤグチは…」
とりあえず、一週間はうちにおくつもりだった。
それから先は…状況次第になると思った。
少しでも大きくなったら面倒見たいし…そうじゃなかったら…
そうじゃなかったら、素直に、両親に話そうと思った。
小さいままならここにいるよりも両親と過ごしたほうがいいに決まっている。
どちらにせよ…八方ふさがりだった。
「……」
何気なく、よっすぃ〜が書き散らしたノートをめくった。
パラパラとまばらにイロイロ自分自身のことが書かれている。
仲のいい友達や学校行事についても書いてある。
途中からは日記のような文体に変わっている。
これは…昨日の日付になってる…
……
昨日、矢口さんとあたしは初めてお互いのキモチを確かめ合った。
肉体的じゃなくって精神的にも『このヒトならだいじょうぶ!』って思えるぐらい…
矢口さんのコトがスキになった。
早く一緒に仕事がしたい。矢口さんと一緒に歌いたいし、ダンスがしたい。
レッスンはツライし、帰りは遅くなるし、学校にも行けないけど…
それでも今、こうして振り返ると楽しいことでいっぱいだと思う。
こんな大事な記憶がなくなるなんて…ゼッタイにイヤだ。
矢口さんとあんなに近づいたのに…ゼッタイに離れたくない。
あたしには矢口さんしかいないんだから…
……
「…っく…んぐ…」
テーブルにあたしは突っ伏してしまった。
大声を上げて泣きたいキモチを少しでも抑えこもうとする。
もう…こんな状況にココロが耐えられそうになかった。
よっすぃ〜に気づかれないように…あたしは寝室へ駆け込んだ。
そのままベットに倒れ込むと…チカラいっぱい布団を握りしめた。
ガマンしていたナミダがとめどなく流れた…
「お願いだから戻ってよ!! あたしのよっすぃ〜に戻ってよ!!」
布団が千切れるんじゃないかってくらいに思いっきりチカラを込める。
カラダに針金が入ったようにつるような痛みが走った。
それでも構わずに…あたしは布団を握り続けた。
「ヒドイよ…スキなのに…こんなによっすぃ〜のコトがスキなのに…ヒドすぎるよ!!」
…あたしのココロは…もう限界だった。
- 317 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時25分50秒
- どんっ!
…向こうの部屋から聞こえてきた音で…あたしは目を覚ました。
知らないうちにナキ疲れて眠ってしまっていた。
やんわりとテレビの砂嵐の音が聞こえて…だいぶ寝てしまったと思った。
「…よっすぃ〜をベットにつれてこないと…カゼひいちゃうよ…」
あたしはぼんやりとしたアタマを振り切らずにリビングに足を伸ばした。
…さっき何が落ちたんだろう…よっすぃ〜かも…
「…よっすぃ〜…」
扉を開けて…あたしは電気をつけた。
そこにいるよっすぃ〜を見て…あたしは固まった。
「…えっ!?」
ビリビリに破けてしまった子供服…ソファに倒れている全裸の女のヒト。
…よっすぃ〜だった。
「も…元の…大きさに戻ってる…?」
「…?」
あたしが駆け寄ろうとすると…よっすぃ〜はむくりとカラダを起こした。
眠たげに辺りを見回して…あたしを見つける。
「あ…矢口さん、おはよ〜ございます〜」
「……」
「…矢口さん…?」
「……」
何も考えられなくって…あたしはハダカのよっすぃ〜に思い切り抱きついた。
その反動でよっすぃ〜があたしを支えきれなくて…
ソファに倒れ込む。
「ど、どうしたんですかぁ〜?」
「…よっすぃ〜だ…よっすぃ〜だ…」
「!! なんであたしハダカなの!? チョット…やぐ…」
「……」
あらんチカラで思いっきり抱きしめて…これでもかというキスをする。
はらはらと溢れた今日何度目かのナミダがよっすぃ〜のカオを濡らした。
ああ…よっすぃ〜なんだ…ホントによっすぃ〜なんだ…
「…んんっ! チョット矢口さん…」
「嬉しいよぉ…よっすぃ〜なんだ…あたしが逢いたかったよっすぃ〜だよ…」
「…? スミマセン、あたしアタマがイロイロなんかあって…思い出せないです…」
「いいよ…あたしだって分かってくれたんだから…それだけでもいいよぉ…」
直接触れているハダから感じるよっすぃ〜の熱気が…
あたしをとろけさせた。もう何もいらない。よっすぃ〜さえいてくれれば何もいらないんだ。
よっすぃ〜が…戻ってきたよ…
- 318 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時26分46秒
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おはよ〜ございまぁ〜す!!」
チョット大きめのバックを抱えて…あたしは戻ってきた。
いつもの楽屋。いつもの空気…そしていつものメンバーだ。
モーニング娘。という…あたしの家だ。
「よっすぃ〜!!」
「退院おめでと〜!! よかったね〜…元気になって!!」
あたしはみんなから手厚い歓迎を受けた。
中澤さん、飯田さん、安部さん、保田さん、ごっちん、梨華ちゃん、加護ちゃん、辻ちゃん…
どうしても逢いたかったメンバーだった。
「…矢口さん」
「よっすぃ〜…おっはぁ〜」
「…おはようございます」
矢口さんだ。小さくなったあたしに全てを注いでくれたヒト。
これからあたしが期待に答えなければならないヒトだ。
そして…あたしがダイスキなヒト…
「…元気になったみたいだね?」
「はい…記憶もだいぶ戻ってきました。まだ少し…曖昧なトコもありますけど…」
「それは時間が解決してくれるって…だいじょぶだよ」
「はい…」
「心配したで〜…よっすぃ〜」
「ええと…中澤、さん、ですか?」
「そうや。どうした? 休みすぎでチョットアタマがぼんやりしてるんちゃうの?」
「そうですね…本調子じゃないけど頑張ります!」
「…吉澤が戻ってきたから始めるよ〜」
「「「「はぁ〜い!!」」」」
みんなが…あたしが戻ってきたことを喜んでくれてる…
よかった…ここに戻って来れて…ホントによかったよ…
「先行ってるよ〜」
「はぁ〜い…」
……
- 319 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時27分32秒
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「よいっしょっと…」
どさっ!!
「あっちゃ〜…カンペ、ブチ撒けちゃったよ〜…」
……
「えっと…さっきの人は中澤さんでよかったんだね。あ〜安心した…間違えたかと思った」
パラパラと小さなノートをめくりつづける。
えっと…モーニング娘。のリーダーだったね。他には…
最後のページある…矢口さんの写真。
「このヒトだけは…もう、ゼッタイに泣かせられないんだから…ゼッタイに…」
ぐっとチカラを込めて…ノートをバックに戻す。
他にも何冊かノートがバックの底に見えた。
「とりあえず…今日は名前とカオは一致させよう…こんなコトがバレるわけに行かないんだから…」
あたしは手早く着替えると…楽屋を後にした。
ホールは確か…向こう側だったかな? みんながあっちに行ったんだからそっちだろうね…
さあ、頑張ろう! 吉澤ひとみは今日からモーニング娘。に入ったんだから…
−FIN−
- 320 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月01日(木)01時32分59秒
- 〜あとがき〜
これにて「あの頃の想い出やぐよしver」は終了です。
とまあ、こんなラストになっていますが…このラストはこの作品を書く前から
決まっていました。こーゆー終わり方にして肩透かしをさせてやろうと(わら
一応「甘め」ということでこんな終わり方になりましたが…
どうでしょう? 分かっていただければ幸いです。
あまり多くを語るとネタバレになってしまうのでこの辺にしておきます。
詳しいことは帰ってくるであろうレスで語りたいと思います。
では、今度は別の板で会いましょう(わら
- 321 名前:すなふきん 投稿日:2001年03月01日(木)23時14分22秒
- いいですね〜^^
サッパリした終わり方で安心しました(笑)
最後の「今日からモーニング娘。に入ったんだから」ってところがすごい良かったです。
- 322 名前:ま〜 投稿日:2001年03月02日(金)00時02分46秒
- よかったです・・・。
感動してしまいました・・・。
途中はどうなることかと思いましたけど。(w
とりあえず、
矢口!吉澤!がんばれ!ついでに中澤も♪
- 323 名前:かもん 投稿日:2001年03月02日(金)23時38分00秒
- ずっと読ませて頂いてました。
感動しました。
肩透かしというか、そう来たか、という感想を持ちました。
モー娘。に入ったよっすぃ〜に幸あれ!
ということで、別の板のほうも楽しみにしています。
- 324 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月03日(土)00時04分33秒
- お疲れ様でした。改めて題名をみてみると感慨深いものがありますね。
甘めと言いつつも、これはこれでかなり切ないラストような気もするし。
でも吹っ切れた感じの、前向きなラストでもありますね。
いずれにせよ、二人の「絆」の強さを、全編を通して感じました。愛の力か。
- 325 名前:やぐ×2 投稿日:2001年03月04日(日)02時24分57秒
- 初めてお邪魔します。2作品とも一気に読まさせていただきました。
陳腐な物言いですが「感動」の2文字しか出てきません。
残業の疲れもなくなりました。
いい作品をありがとうございました。
- 326 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月04日(日)03時40分51秒
- こんなにレスが…むちゃくちゃ嬉しいです♪
最近は別のトコで書いてるためにここで書けませんが…(わら
>>321 すなふきんさん
いちおう「甘め」と言うコトでしたので…この前よりもソフトに終わらせました。
何気に痛かったりする終わり方でもあるんですけどね…
>>322 ま〜さん
確かに途中は甘くなりすぎてしまい…しまいにはえっちっぽくもなってしまい(わら
ですが、最後はやはり俺らしく痛め! ということになりました。
>>323 かもんさん
記憶が戻っているようにみんなは思ってるけど、実は…というオチです。
続編がありえそうですけど、ありません(わら
これからよっすぃ〜も頑張るでしょう…
>>324 名無しさん
題名を意識した話だったので…これは当初から決まっていました。
遡って作品を作ったと言ってもいいですね。珍しいパターンでした。
最後に愛は勝つ! というコトにしておいてください(わら
>>325 やぐ×2さん
こんなに長い話を立て続けに…しかも残業後に…
感動してくれればホントに嬉しいです。読んだ挙句に疲れられても困りますし(わら
他の板にも作品を書いているので気が向いたらぜひどうぞ!
- 327 名前:砂糖位置 投稿日:2001年03月04日(日)18時55分02秒
- むちゃくちゃ感動しました!!
こんなに泣いたの久し振り・・・。BOOTLEGさんの娘。に対する愛情が
ひしひしと伝わってきます。もっとBOOTLEGさんの作品が読みたい!!
- 328 名前:名無しさん 投稿日:2001年03月04日(日)23時29分54秒
- 掛け持ち大変でしょうけど、「あの頃の想い出」シリーズも続けて欲しい。
- 329 名前:Hruso 投稿日:2001年03月07日(水)21時12分56秒
- あまりにも衝撃のラストでなんと感想を書いてよいか分からず
書きそびれてしまいました。
そしたら中澤さんがこんなことに・・・。
- 330 名前:BOOTLEG 投稿日:2001年03月26日(月)01時38分34秒
- みなさんレスありがとうございます。
この作品を持ちまして、「あの頃〜」は完結にします。
ついでにBOOTLEGというコテハンも捨てて、名無しに戻ります。
ホントに今までありがとうございました。
- 331 名前:悶悶 投稿日:2001年04月02日(月)18時03分05秒
- 今日この小説を初めて見てやぐちゅーから3時間かけて今読み終わりました。
今まで色んな小説を見てきましたが俺の中で3本の指に入るぐらい集中して読みました。
点数にして98点です!あえて100点にはしませんが次の作品にもかなり期待しています。
あと最後の方で中澤がなっちを預かったとありましたがそこだけ意味が解りませんでした・・
- 332 名前:Oー150 投稿日:2001年04月05日(木)03時08分12秒
- あぁ・・・久々にBOOTLEGさんの小説を・・読めた・・
やはり切ないの最高に上手いっすね〜・・
少しづつ元の大きさに戻っていく時の矢口の心理描写が凄い萌えました
勿論途中のあのシーンも最高に萌えたけど(w
僕はいしよしよりやぐよしの方が好きなんで、かなり楽しかったです。
今の娘の中では矢口一番萌えなんで。
っていうか名無しに戻るって・・もう書かないんですか!??!
- 333 名前:元作者 投稿日:2001年04月05日(木)23時59分31秒
- >>331
おそらく小説投票か何かで読まれた方ですね。
ありがとうございます。三時間もよく頑張りましたね(わら
現在、別の板で作品を書いていますので、そちらにどうぞ。
それと中澤がなっちを預かったというのが、どこか探したら…ありました(わら
これは最初にモーニング娘。が結成されたときに、なっちを東京に上京されるとき、
ゆーちゃんがなっちの両親に「なっちを預かります」と言ったコトから
預けた、という風に書きました。確かにあの文脈からは分かりにくい…
>>332
ありがとうというよりもお疲れ様っていうカンジですね(わら
他人の小説を読むと書く気がなくなるらしいですから…
わざわざ読んでいただいて嬉しいです。
途中のあのシーンはやっぱり拒絶反応出ちゃいました。
Oー150さんも書かなかったようですが(わら
名無しに戻るとは白板だけ、という意味です。
別の板でハンドル変えてしこしこ書いてます。続き書かないと(わら
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