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スタンド娘。
- 1 名前:うずモニ。 投稿日:2001年05月25日(金)04時27分44秒
- この板に好きな小説が多いので、ここで書かせていただきます。
「○ョ○ョの奇妙な冒険」と「モーニング娘。」が好きな方は、楽しく読めると思います(w。
それでは、どうぞ。
- 2 名前:1−1 額に汗、テレビ局 投稿日:2001年05月25日(金)04時28分59秒
- 季節は、夏を迎えようとする5月。
日テレの制作デスクで、忙しく働くチームがあった。その名は「真夏の怪談
娘。特番」チーム。私立霊命女学園で娘。の夏特番を撮ろう、という企画で結
成された。
霊命女学園、通称霊女(れいじょ)といえば、幽霊騒ぎが後を立たず、半年
前に閉校した噂の高校だ。昼間から机が飛び交う、変な声が聞こえるなど、怪
現象がすごかったらしい。
企画も詰めの段階で、仕事場はばたばたと慌ただしくなっている。
「デスク、おどかす仕込みはどれくらいで?」
「んー、霊女だからな。場所だけで十分肝だめしだろ、要らんな。」
「はい。」
「デスク、中澤の参加はどうしますか?」
「まだ、元メンバーでいける。参加だ。」
「はい。」
アイデアが練られ、この特番の目玉は<ソロデビュー権>に決定した。
ある物のありかを示すひらがな10文字の文を、1文字ずつのカードにして、
同じ文字のカードを3枚作り、30枚を校舎に散らばらせる。そのカードをち
ゃんと10文字そろえ、謎を解いた娘。にソロデビューを与える。
最初に娘。一人一人に、カードの隠し場所が一箇所書かれた紙が渡される。
その情報をもとにカードを集める。
怪現象の起こる不安の中、一人で探すもよし、誰かと組むもよし。
「ナイスアイデアやな! 競争はモーニング娘。の基本やでこれ。」
とつんく♂Pもニヤリとした。
このようなスタッフ、関係者をよそに、事態は思わぬほうへ進んでいく。
- 3 名前:1−2 娘。たちの思惑 投稿日:2001年05月25日(金)04時31分04秒
- 数日後、日テレの小会議室にモーニング娘。9人が集められ、特番企画が伝
えられた。
「ええ〜、これマジッすかー!?」
渡された脚本をめくっていた矢口が、喜びの声をあげた。中澤も参加するの
が驚きだったようだ。
保田も、中澤の顔を思い浮かべていた。
「裕ちゃん、来るんだ…。」
「ひさしぶりだべ…。」
「モーたい、以来だねー。」
「どうしてんのかなあ?…」
ざわつく娘。たちの中、スタッフが説明をはじめた。
「えー、ということでですね。中澤裕子含め10人でやります。ホン読んでも
らうと分かるんですけど。この番組で、ソロデビューする一人を決めます。」
ぴたっ、と娘。たちの声が止んだ。ソロデビュー。この言葉に反応せずには
いられない。
スタッフは娘。たちを見まわした。
「お、静かになったね。この今使われてない女子高のね、校舎のどこかに<あ
る物>が隠してあります。ある物がなんなのかは、校舎に散らばっている『ひ
らがな1文字のカード』を10枚集めて10文字の文を作ると分かります。<
ある物>を見つけた人がソロデビューです。『ひらがなカード』は、同じ文字
のが3枚ずつ、30枚散らばってるから頑張って探してね。
まず校舎に入る前にね、みなさんに{教室を記した紙}が渡されます。その
部屋のどこかに『ひらがな1文字のカード』が隠してあります。これでまず、
みんな1文字はゲットできますね。そこから自分の持ってないカードを探して、
一番先に文を作った人が、<ある物>をゲットして、勝ちです。」
- 4 名前:1−2 娘。たちの思惑 投稿日:2001年05月25日(金)04時32分04秒
- ソロ話の前とは、あきらかに場の空気が変わっていた。
矢口は台本読むフリして、たくらんでいた。
(ミニモニではしゃいだし、そろそろ矢口もセクシーソロでしょ。)
保田は外の景色を、遠い目をして見つめていた。
(ソロ…私にもソロ…歌なら、負けない。)
飯田は壁を見つめ、交信していた。
(・・・・昔うたばんでソロで、『メモリー』歌ったなあ。あんとき気持ちよ
かったなあ・・・・)
安倍はスタッフのほうを向いたまま、迷っていた。
(ソロなんかやるより、今のポジションが気楽でいいべ。でも後藤のソロはど
っか許せなかったべ…うーん。)
石川はワルく考えていた。
(カントリーで、知名度はあがったはず。ここでの私のソロはあり…。)
後藤は寝そうになっていた。
(zzz………ソロめんどいもんなあ。他のメンバーがやればいいや………)
吉澤はわくわくしていた。
(ごっちんもデビューしたし、あたしも狙うぞ!)
辻加護は顔を見合わせ、同じことを考えていた。
(ぶりんこう○これす…)
(ぶりんこデビューやな…♪)
それぞれの思惑を胸に、会議室にしばらく妙な沈黙が続いた。
- 5 名前:1−3 校門前の心理戦 投稿日:2001年05月25日(金)04時33分13秒
5月のよく晴れた暑い日に、収録は行われた。
娘。たちは、<午後1時に校門前に集合>の予定だった。
中澤姐さんは一人、15分前に現場に着いて、久しぶりのメンバーとの再会
に思いをはせていた。
しばらくすると、格好からしてもうやる気まんまんの矢口がやってきて、中
澤を見つけてはしゃいだ。
「久しぶりー! なんか…てれるね。」
「そうやなあ。なんやかんやでぜんぜん会ってへんしなあ。元気でやってるか
?」
中澤は矢口の頭に、手のひらをそっと置いた。
「やってるぜー。」
中澤を見上げる矢口も嬉しそうだ。
それから、保田や飯田、吉澤石川など、やる気のメンバーが次々とやってき
て、姐さんとの再会を懐かしんだ。
- 6 名前:1−3 校門前の心理戦 投稿日:2001年05月25日(金)04時34分00秒
- 1時ちょうどになったが、まだ安倍、後藤、辻、加護が来てなかった。安倍
と後藤はほどなく来たが、辻加護は15分遅刻した。
辻と加護はどうやら昨日の仕事の後、ぶりんこの新曲の歌と振りを考えてい
て、それで寝坊したらしい。
「いいのできてんなー。」
「れすねー。」
と、無邪気に笑う二人を、他のメンバーは微笑で迎えたが、心は違うメンバー
もいた。
(ガキども、やる気か。)保田
(…させない。)石川
そんな二人の空気を感じた元メン中澤姐さんは、苦笑いで辻加護をたしなめ
た。
「あんたら、遅刻したらまずあやまりなさい。」
いまだ中澤の影響力はすごい。辻加護の態度がすっと変わった。
「ごめんなさい。」
「ごめんなさい…。」
「やっぱ裕ちゃんすごいねー。私らのいうこと聞かないもん。」
保田は、やれやれといった感じだ。
「まだ、わがままゆうてるんか、このちっさいコンビは?」
中澤は辻と加護の頭をぐりぐりした。
「いってませんよー。」
「いいこれす。」
「うそつけ!」
甲高い声で矢口は言うと、辻と加護の頭をポコ、ポコっと叩いた。
明るい笑い声が、メンバーに広がった。
- 7 名前:1−3 校門前の心理戦 投稿日:2001年05月25日(金)04時34分33秒
- スタッフはモーニング娘。が全員(と中澤)揃ったのを確認し、指示をはじ
めた。
「えー、それではですね。この封筒をひとり一つ取ってください。」
スタッフの手には茶封筒が広げられている。一人一人順番に、封筒を引きぬ
いた。
「この中にね、{教室の紙}が入ってますからね。あ! 加護ちゃん、まだ見
ちゃダメだよー。見るのは校舎に入ってからね。」
先に封筒を見ようとしていた加護は、テレ笑いした。
配られた封筒をまじまじとみていた飯田が、質問した。
「この数字、なんですか?」
飯田の茶封筒には、右下に小さく「5」と書いてあった。
「この数字はね。飯田さんは5だから、5番目に校舎に入るってことです。一
人ずつ順番だから。」
「じゃあ、あたし10だから最後だー。」
だるそうに後藤が言った。
「辻、1れす。いちばんれす。」
「あ、なっちは3だべ。」
こうして、娘たちが校舎に入る順番は、辻、加護、安倍、吉澤、飯田、保田、
矢口、石川、中澤、後藤の順に決まった。
- 8 名前:1−3 校門前の心理戦 投稿日:2001年05月25日(金)04時35分33秒
- 何が起こるか分からない。デビューの証の<ある物>とはなんなのか。不安
げなメンバーの中、加護が辻に耳打ちをしている。
「ののちゃん、先いってな、………で、………な。」
「りょうかーい。」
(無邪気やなあ)
辻と加護を見て、中澤は思った。
(たぶん校舎にはいろいろ仕込んであるやろうな。ソロデビューは見せかけで
肝だめし特番、ってのもあるやろうし。これは油断できへんな。うちはとりあ
えず矢口を助けよかな。)
中澤はすばやく観察した。矢口を見ると、下を向いてなにやら考えている。
(いとしのやぐちー。ソロ狙ってんのやったら助けたる。)
飯田と保田は校舎を見つめている。石川は封筒をじっと見つめ、吉澤はスタ
ッフの動きを見ている。
(こいつらはやる気やな。気を付けとかんとな。)
辻加護は、二人でなにやらひそひそ話して笑っている。
(ちびちゃんたちは、この番組にも、ソロデビューにもわくわくしてるようや
な。ちょっと見張っとかなな。)
後藤は少し眠そうに、ケイタイをいじっていた。
(後藤はなに考えてるか分からんなあ…。どうでもいいんかな。)
安倍は宙をボーっと見ていた。
(やる気かと思たけど、そうでもないみたいやな。どうしようかな、ってとこ
か。)
わずか数秒で、昔の同僚の心を見抜くあたり、さすが姐さん。
時計を見ていたスタッフが、顔を上げた。
「はーい。じゃ、モーニング娘。の皆さん、スタートです。1番目は辻ちゃ
ん。頑張ってねー。」
「はい!」
元気よく返事した辻は、たたたーっと正面玄関へ走っていった。
(元気よすぎると、すっころぶでー)中澤
(辻に負けるわけにはいかない)保田
(辻ソロ…ちょっと無理っぽいべ、声的に)安倍
(やっぱ仕掛けとかあんのかなあ…)飯田
(辻、やる気だなあ。やっかいかも)矢口
(一番は、有利か不利か……)石川
(よし、元気よくいくぞ!)吉澤
(んー、お腹すいたかなあ…)後藤
(ののちゃん、まっとって)加護
その姿をそれぞれの思いで見つめる、残りの9人。
世紀の大特番の、幕が開けた。
- 9 名前:ごまモニ。 投稿日:2001年05月25日(金)04時53分44秒
- ここまで、プロローグです。
そんなに長くなる予定ではないので、どうかお付き合いください。
- 10 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月25日(金)05時20分32秒
- 「○ョ○ョの奇妙な冒険」は読んだことないけど、
メンバーそれぞれの思惑の中で、話がどう展開していくのか?
たのしみ〜
- 11 名前:うずモニ。 投稿日:2001年05月26日(土)02時04分38秒
- >>10
レスありがとうございます。
楽しみにしていただけて嬉しいです!(泣)。
週2の更新を予定していますので、よろしくお願いしますm(__)m
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2001年05月26日(土)14時23分27秒
- 姐さん参戦うれしな
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月27日(日)03時42分59秒
- 今のところスタンドが結びつかない…
もう有るのか、目覚めるのか?そのへんも期待!?
- 14 名前:2−1 気まぐれじいさん 投稿日:2001年05月28日(月)23時38分03秒
-
(みんな、そんな変わってへんなあ…。)
辻に続いて次々に校舎に入っていくメンバーを見ながら、中澤は懐かしさが
こみ上げてきた。
いつまでたっても無茶させられるんやなあ、モーニング娘。は…、と少し切
なくなる。
「じゃ、中澤さんお願いします。」
スタッフの声で我に返った。
「あ、はい。」
(久しぶりの無茶企画や。なんや燃えてまうな。)
後藤一人を残して、中澤も校舎へ向かう。
玄関に入るとすぐ封筒を破った。
『3−E』
中の紙には、そう書かれていた。
「3階か、年にはキツイでこれ。」
ぶつくさいいながら、学校の階段を上がる姐さん。
(矢口はどこにいったんやろうなあ。玄関らへんには誰もおらんかったし…)
- 15 名前:2−1 気まぐれじいさん 投稿日:2001年05月28日(月)23時39分41秒
- 3−Eの教室は3階の端っこにあった。
窓からは明るい光がさしこんでいた。
天気は快晴。少し風もあるようで、校庭の木々が揺れてるのが見える。校門
のあたりには、数台の中継車と、スタッフが大勢いる。
教室は意外に片付いていて、教卓にはホコリも積もってなかった。人差し指
で教卓をなぞって、教室を見まわした。
(わりにきれいやな。特番やゆうて掃除したな。)
まず教卓の引出しを開け、中を確かめる。チョークの箱と、壊れた黒板消し。
赤や黄色の磁石、小テストのプリント。カードらしきものは見つからない。
(あと、生徒の机の中か。しんどいなー。)
端から一つ一つ、生徒の机の中を調べる。
「なんやこれ。」
指にがさっとした感触が伝わった。引っ張り出してみると…
「パンやんけ。」
紙袋に入った菓子パンだった。出してみるとカッチンカチンになっている。
(女だけやったら、こんなもんやな。)
机を全部調べたが、カードは出てこなかった。
(どこやろ? あと調べてないのは…)
教室の奥のほうに掃除用具入れがあるのを見つけた。
少し扉のゆがんだロッカーをガゴン! と開けると、赤地に金で縁取られた
トランプ大のカードが、扉の裏にはさまっていた。
「これか…」
そのカードには、太字で『あ』と書いてあった。
(うちのカードは『あ』か。これじゃ、なんも分からんな。とにかく矢口に会
わんと。)
- 16 名前:2−1 気まぐれじいさん 投稿日:2001年05月28日(月)23時40分26秒
- 中澤が3−Eを出ようとしたそのときだった。
≪ピンポンパンポーン♪≫
黒板の上のスピーカーが鳴った。
(なんやろ、スタッフの放送か?)
≪……あ、あー。あーあー。おほん。皆さん元気かな。なんや久しぶりの客
やから、こっちも緊張しとってな。こう若いおなごが多いと嬉しいの〜う。≫
「なんや?」
中澤はスピーカーをにらんだ。
≪え、わし? わしはこの学校の主じゃー。と言っても幽霊じゃけどな、ひ
ゃはは。………あ、なんか寒い空気かんじるのう。…信じてないのう。じ
ゃ、証拠見せとこうかのう。皆さんちょっと外見といてくれ。≫
(なんやねんこの爺さんは…)
中澤はつかつかと窓際によると、外を見た。
晴天のままだ。ぎらぎらした暑そうな校庭。スタッフも外に大勢いるし、外
の様子に変わりはない。
(ふかしかい…)
と思ったとき、中澤は外に霧が出てきてるのに気付いた。
(霧や。……霧? このクソいい天気の日に霧?)
- 17 名前:2−1 気まぐれじいさん 投稿日:2001年05月28日(月)23時41分19秒
- その霧のような白いもやは、徐々に徐々に校舎をつつんできていた。
遠くの景色が見えにくくなり、そしてスタッフの姿が確認できなくなって、
しばらくして霊女の校舎からは外が全く見えなくなった。
もやのため日光が入ってこなくなって、教室は急に薄暗くなった。
≪ふー、やっとできたわい。これで外からはだーれも入ってこれんし、ここ
から出ることもできん。分かったかな? わし、ゆーれいじゃ!≫
中澤は窓をがらっと開けて、もやをにらんだ。なにもみえない。
(さっきまで快晴やったのに、一気に曇りや。いや、曇りっちゅうか、めっち
ゃ濃い霧やん。どうなっとんねん。これも仕込みやろか?)
爺さんがまた喋り出した。
≪いっとくがな、外のやつらの仕業じゃないぞぃ。こんな晴れの日に霧なん
て無茶苦茶じゃろ? でもわし、できるんよなあ。だってゆーれいやし。≫
中澤はあきれて、近くの席に腰掛けて足を組んだ。
(だめや、このじいさんアタマ沸いとる…。)
≪でな、でな。あんたらここで、なんや勝負しよったようやの。わしな、半
年前からだーれもこんくてヒマしとってのう。こうな、おなごの争うのを
見るの、わし大好きでな、ぐひひ…。ん? ま、まあわしのことはいいん
じゃ。≫
(エロじじいが。)
≪でな、でな。わしから武器をぷれぜんとしようと思ってな。武器っていって
も、拳銃とか刀とかじゃないぞ。心の武器じゃ。≫
- 18 名前:2−1 気まぐれじいさん 投稿日:2001年05月28日(月)23時41分55秒
- (心の…武器?)
中澤は上目づかいでスピーカを見た。
≪かなえたい思いがあるじゃろ? 日ごろのうっぷんがあるじゃろ? それを
ここでかなえてやろうっていうんじゃよー!! いえーい!≫
(いえーい……イタいわ。)
じいさんをばかにしながら、中澤はちょっと思っていた。
(うちの、願いは…矢口の助けになることやな。タンポポとミニモニ、ふたつ
もがんばってたしなあ。)
ユニットかけもちは加護もなのだが、加護のことは姐さんの頭になかった…。
(もうソロで出てもええよなあ。矢口の助けになりたい…。)
≪準備はいいかのう? その思いをつよーく持って、スピーカの下においで。≫
「あほかっちゅーはなしや。」
そう言いすてて席を立ち、矢口を探しに教室を出……ようとした。が、足が
動かない。体もなにかに縛られたみたいに、少しも動けない。
「な、なん、や…。」
≪皆さん動いちゃダメじゃ。いくぞー。1ー、2ー、3ー、ダァーー!!≫
じいさんのかけごえと共に、スピーカーから青白い光が広がり、中澤を包ん
だ。意識が薄れていく……。
(…なんで、猪木、や、ね、ん……)
中澤はその場に倒れこんだ。
- 19 名前:2−1 気まぐれじいさん 投稿日:2001年05月28日(月)23時43分17秒
その頃スタッフは、校舎を取り巻く異様な濃さの霧に、パニックしていた。
「な、なんだあの霧は? どうなってんだ??」
「教室カメラの映像途絶えました!」
「おい。誰か行って見て来い!」
若いADが3人、恐る恐る霧の中へ入っていった。
数十人のスタッフはそれを緊張して見ていたが、3人の姿が霧に消え、しば
らくすると、3人が戻ってきた。
「おい、どうだった?」
スタッフが声をかけたが、3人のADはみな、ぽかんとしている。
「…いや、どうだったっていわれても…。」
「…おれら、真っ直ぐ歩いて行ったんですよ。校舎のほうに。進んでったら、
またここだったんですよ。」
「…おかしいなあ。」
ひげのディレクターが大声を上げた。
「ばかやろう! ふざけたこといってねえで、ちゃんと真っ直ぐ歩いてって、
中見てから帰って来い!」
ADたちはしぶしぶ、もう一度深い霧に向かって歩き出した。
3人の姿が霧に完全に溶け、またしばらくして、戻ってきた。さっと同じ、
ぽかんとした顔をして…。
ディレクターはため息をついた。
「はぁー…、どうなってやがんだ…。」
- 20 名前:うずモニ。 投稿日:2001年05月28日(月)23時53分07秒
- >>12
レスありがとうございます。
中澤姐さんの登場頻度は高いので、ご期待ください(w。
>>13
レスありがとうございます。
スタンド能力に目覚めるのは、幽霊じいさんの仕業です(w。
ちょっとお茶目なじいさんですね。
月曜深夜、木曜深夜の、週2回更新を予定していますので、
お読みになってる皆様、よろしくお願いしますm(__)m。
- 21 名前:通り縋りのJoJo好き 投稿日:2001年05月29日(火)00時36分50秒
- 個人的に、好きなジャンルですね。
ところで、戦うと言う事は、誰かが死んじゃったりするんですか?
あまり残酷なのは、嫌なので、死なせる場合は、綺麗な散り際を演出して下さい。
(アヴドゥルやイギー、ナランチャみたいな感じにして、欲しいな。)
この後の展開、期待しています。
- 22 名前:うずモニ。 投稿日:2001年05月30日(水)09時14分39秒
- >>21
通り縋りのJoJo好き、さん。レスありがとうございます。
好きなジャンルですか、嬉しいです。
モー娘。にスタンドをつけたら?という妄想からスタートしたお話です。
戦いはあるのですが、誰一人として死にません…(^w^;)。
期待にこたえられるよう進めていきたいです。
- 23 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月31日(木)02時24分56秒
- 軽い感じで読めそうでホッとしています。
スタンドも矢とかでてくるかと思ったら、幽霊とは・・・
それぞれに、どのような能力がつくか楽しみ。
- 24 名前:2−2 玄関でお昼寝 投稿日:2001年05月31日(木)23時38分16秒
-
中澤姐さんが3階へ向かっている、ちょうどその頃。
校舎に入るのが一番最後の後藤は、玄関に入ってくるなり座り込んだ。
これは後藤にやる気がなかったからじゃなくて、封筒の中の紙に『玄関』と
書かれていたから。
けど、ひらがなカードを探そうとしないところは、やる気がないといえる。
(あーあ、めんどくさいなあ。)
後藤は昨晩もなんだかんだ夜更かししてて寝れなくて、今日は(いつもより
も)眠かった。
急だったソロの仕事も終わった。プッチの新曲もない。忙しい頃と比べて少
しのんびり出来るようになった。
(これでソロなんか決まったら、また忙しいよな。)
そのとき、あの、放送がかかった。
≪ピンポンパンポーン♪≫
・
・
・(このひと、わけわかんないや。)
・
・(あれー?、なんか外白くなってる。)
・
・(あたしの思い? なんだろう…)
・
・
≪スピーカの下においで。≫
(あたしの思い? あたしの思いは…)
≪1−、2−、3−、ダアーー!!≫
青白い光に包まれ、後藤の意識が遠のいていく…。
(…なんか、ペンギンのCMで聞いたことある……)
- 25 名前:2−2 玄関でお昼寝 投稿日:2001年05月31日(木)23時39分20秒
-
しばらくして後藤は目を覚ました。ぼやけた頭で、さっきのことを思い出し
ていた。
(願いをかなえる、なんて言われたから、無茶なお願いしちゃった。「いちー
ちゃんを、モーニング娘。にもどして。」…なんて、ね。)
「はーあー…。」
後藤は深いため息をついて、座りなおした。
(…眠い。このまま寝ちゃお……)
後藤の意識が再び遠のこうとしたとき、すたすたとこっちに近づいてくる足
音がした。この足音は、たぶん…。
「ごっちん! なにこんなとこでねてんのー?」
後藤が見上げるとそこには、綺麗で男前の顔がある。
やっぱり吉澤だった。
「んー、きのう、あんま寝てなくて。」
「なにいってんのー? ソロ勝負だよ。頑張らなきゃ。」
「んー…。」
「ま、いいや。それよりさっきの放送聞いた? わけわかんないけど、急に霧
出てくるしなんかすごいねー。」
「んー……」
「こら、寝るな。」
吉澤は反応の鈍い後藤の体をゆすった。
- 26 名前:2−2 玄関でお昼寝 投稿日:2001年05月31日(木)23時42分21秒
「でさ、でさ。なんか願いかなえてくれるとかいったじゃん? ごっちんなに
お願いした?」
「んー、なんにも…。」
「なんにもー?! ダメモトでいのりゃよかったのによー。」
「え、なんかもらえたの?」
「うん。」
後藤の目が少しさめた。
「へー、どんなの?」
「ちょっと面白いチカラ…。」
「それじゃわかんないよ。」
「スカッとするチカラ。」
「わかんない。」
ははは、と吉澤は落ちついた声で笑った。
- 27 名前:2−2 玄関でお昼寝 投稿日:2001年05月31日(木)23時45分39秒
-
「ひらがなカード見つけた? あたしのこれなんだけど。」
吉澤がポケットから取り出したカードには、太字で『へ』と書いてあった。
「んー、探してない。ずっと座ってた。」
「ごっちんの部屋ってどこ?」
「玄関。」
「ここじゃん! あたし探すよ。」
「どうぞどうぞ。」
「見つけたら、あたしもらうよ?」
「どぉーぞ、どぉぞ。」
今度の後藤の返事は、手振りつきだった。
吉澤は下駄箱やら傘立てやらをがさがさと捜した。しかし見つからない。
「…下駄箱おおすぎんだよなあ。」
「よっすぃーは、教室どこだったの?」
後藤にそう聞かれ、腰をかがめて下駄箱の中を見ていた吉澤は、1−C、と
短く答えた。
「ん? ごっちんちょっと、ケツどけて。」
後藤が座ってる下には、緑色の玄関マットが引いてあった。
「エー…。」
不満を言いながらも、後藤は素直にどいた。
吉澤がマットをぱっと持ち上げると、そこにはひらがなカードがあった。カ
ードには太字で『ぴ』と書いてあった。
「ぴ、へ…。へ、ぴ…。んじゃそりゃ、わけわかんねえ。」
吉澤はぶっきらぼうに言うと、二つのカードをポケットにしまった。
- 28 名前:2−2 玄関でお昼寝 投稿日:2001年05月31日(木)23時50分37秒
-
「よし、2枚ゲット。」
「がんばるねー。あたしここで寝てるよ。」
吉澤は、不思議だなー、という顔をした。
「ふーん…ま、ごっちんは一回デビューしてるしね。あたし今回狙ってんだ。」
後藤は疲れた顔をみせた。
「ほんと、あのデビュー参ったよー。すっごい急だったもん。もうソロいいや。」
「そっか。よし、あたしが頑張る!」
「がんばってねー。カード探すの大変だね。」
後藤がそう言うと、吉澤はちょっと不敵な笑みを浮かべた。
「だいじょうぶ。探さなくていいから。」
「え、なんで??」
「だーかーらー、メンバーから奪いとんだよ。」
吉澤はいつもよりも男らしい言い方をし、後藤は驚きの表情になった。
「マジ? とるの?」
「うん。せっかく面白い≪能力≫あるし、取ってやる。」
後藤はちょっと考えてる顔になった。
「…取らなくても、見せてくんないかな?」
「けっこうみんなヤル気だったし、たぶん隠すね。」
「ふーん…。ちょっと怖いけど、ま、いいや。がんばれー。」
「おう!」
じゃーねー、と言って吉澤は好敵手(?)を求めて動きだした。
ばいばーい、と吉澤に軽く手を振って、後藤の意識は再び沈んでいく。
((( むにゃむにゃ……あれ、いちーちゃん?……え、モー娘。にもどって
くるの?!…… )))
幸せな夢に包まれ、後藤は首をかたげてうれしそうに眠る。
その横で、小さなフランス人形が、後藤と同じ姿勢でうれしそうに眠っていた。
=
≪スタンド名:ロミオ&ジュリエット 能力:いつでも市井の夢をみれる。
スタンド射程:後藤のとなり≫
=
- 29 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月01日(金)00時04分42秒
- >>23 さん。
レスありがとうございます。
後藤だけスタンド出てきました(w。
今後いろいろスタンド出てきますんで、どうぞよろしくm(__)m。
- 30 名前:通り縋りのJoJo好き 投稿日:2001年06月01日(金)02時04分05秒
- 更新したみたいですね。
それにしても、後藤の能力の、あまりのくだらなさに、爆笑してしまいました。
まぁー、普段からやる気ナッシングな、後藤らしいかも…。
ところで後藤の出番は、これで終了なのでしょうか?
(私的には、それでも良いですが…。)
それにしても、好戦的に成っている、吉澤のスタンド能力が、少し気に成りますね。
次回も期待しています。
- 31 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)03時48分41秒
- ホント後藤のスタンド面白い〜
他の人のも面白い能力なのかな?
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月01日(金)23時51分59秒
- ロミオ&ジュリエットだって・・いい! すんげぇーいい! 大期〜待!!!
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月02日(土)02時45分12秒
- スタンドは使い方しだいだと思うけど
どうしようも無いな、後藤の能力は……ま、本人は幸せだろうけど。
まだいるんでしょ作者さん、面白い願いをした人(w
- 34 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月02日(土)08時53分24秒
うお! たくさんレスをいただいている! ありがとうございますm(__)m
>>30 通り縋りのJoJo好きさん
またまたレスありがとうございます!
後藤のスタンドに爆笑してもらえましたかー(w。
後藤の出番については、まだ決まっていませんが…考えます。
吉澤のスタンド、少し気になりますか? ありがたいことです。
月曜深夜の更新で、吉澤のスタンドが登場しますので、ごひいきにお願いします(w。
>>31 名無し読者さん
レスありがとうございます。
後藤のスタンドが気に入ってもらえたようで…うれしいです(泣)。
他のメンバーも、ちょっと変わったスタンドを身に付けています。
これから出てきますので、どうぞお楽しみにm(__)m。
月曜の更新で、吉澤のスタンドが出てきます。
>>32 名無しさん、さん
レスありがとうございます。
≪ロミオ&ジュリエット≫、気に入っていただけたみたいですね(w。
すんげーいい!とまでいっていただいて……(泣)。
後藤のスタンドの名前は、もうこれしかないという感じです。
ちょっと悲恋だとかロミオは市井?とか、いろいろ掛かってますし。
続けて読んでいただけると嬉しいです、どうぞよろしくm(__)m。
>>33 名無し読者さん
後藤の能力はほんとどうしようもない(w。
他になんかお願いなかったの? って感じです。
ゼンゼン実用的じゃありませんねぇ。
他のメンバーも、それぞれ変わったお願いをしたみたいですよ(w。
これから徐々に出てきますので、よろしくm(__)m
- 35 名前:2−3 スナイパーとお茶目なやつ 投稿日:2001年06月05日(火)00時16分14秒
-
後藤と吉澤が玄関で話していた、その頃。
3−Eで倒れこんでいた中澤は目を覚まして、重い頭を振りながら3−Hの
隣の階段を降り、2階で矢口を探していた。2−H、2−Gとチェックし終わ
り、今2−Fをチェックした。
(矢口おれへんなあ…)
次に2−Eをチェックしようとしたとき、2−A側の階段から、誰かが教室
にすっと入るところが、遠くに見えた。その誰かは中澤に気付かなかったよう
だ。
(はっきり見えへんかったけど、あの背は飯田か吉澤やな。)
どちらにしても、やる気だったメンバーだ。矢口を勝たせたい中澤姐さんに
とっては、やっかいな奴。
(ここは矢口のためやし、ちょっとけん制しとこか。)
中澤は足音を立てぬように注意しながら、2−D、C、Bと横目でチェック
し、2−Aの後ろの扉に背をつけ、顔半分だけ出して、中を見た。
吉澤がこちらに背を向けて、教室の前の教卓でなにやら並べて見ていた。
(吉澤か。)
ここは軽く脅かして、優位に立つのがいい。中澤は突然声をかけた。
- 36 名前:2−3 スナイパーとお茶目なやつ 投稿日:2001年06月05日(火)00時17分14秒
「カード見てんのか?」
静かな教室に中澤の声が響き、吉澤はパッと振り向いた。
「中澤さん…。」
吉澤は驚いていたが、そうですよ、と無表情に戻って言うと、教卓の上のカ
ードをしまった。
中澤は教室の中に入り、教室の前と後ろで、吉澤と向かい合った。
「カード、何枚集まりました?」
今度は吉澤が質問した。
「1枚やで。自分のだけや。」
「なかなかみつかんないですよね。」
「吉澤は?」
「2枚ですよ。」
2人はお互いの距離を変えぬまま、緊張感を保って会話を続ける。
「よう見つけたなあ。」
「いえ、ごっちんのをもらったんです。」
中澤は軽く、口元だけで笑った。
「なんやあいつは、やる気ないなあ。」
「ですよね。」
吉澤も、口だけ笑った。
- 37 名前:2−3 スナイパーとお茶目なやつ 投稿日:2001年06月05日(火)00時18分21秒
少し間を置いて、中澤は切り出した。
「…あんな、うちは正直矢口を応援してんねん。やから吉澤も協力して、その
カード見せてくれへんか?」
声のトーンに全く媚びをださずに、そう中澤は言った。
「…それはちょっとできないですね。あたしもソロやりたいんで。」
中澤の目をまっすぐ見て、吉澤はそう返した。
「やっぱな…、やる気や思ったんや。ま、ええわ。邪魔したな。」
と言って中澤が教室を出ようとしたとき、ドン、という音と共に、中澤の前
の机が上に飛び、ガン!と倒れた。
驚いた中澤が吉澤のほうを見ると、吉澤の後ろに、いや、前にか、銀色の金
属のような人間の姿があった。その影が、指を机に向けてはじいた格好で立っ
ていた。
=
≪スタンド名:パールハーバー 能力:爆撃 スタンド射程:1m≫
*近距離パワー型、人型。
=
「悪いけど、中澤さんのカードもらいますよ。」
吉澤は先ほどと同じく、口だけ笑った。
(なんやあの銀色の? 今、机飛びあが……)
中澤に暇を与えることなく、銀色の人影は指を次々と、机に向けてはじいた。
ドン、ドン、ドンとあちこちの机が上に飛んだ。
(まさか、これが吉澤の……マジかいな…)
机が壊れなかったとこを見ると破壊力はそんなになさそうだが、当たれば怪
我は間違いない。
「カード、もらえないと、当てちゃいますよ。」
と吉澤は言った。マジ顔だった。
- 38 名前:2−3 スナイパーとお茶目なやつ 投稿日:2001年06月05日(火)00時21分04秒
「…それがもらった武器か? 危ないなあ。」
動揺をなんとか隠して中澤が聞くと、吉澤は嬉しそうに答えた。その瞳に冷
たい光をたたえ、外を見ながら。
「そうですよ。あのじいさんが≪うっぷん≫って言ったとき、いろいろやなこ
と思い出したんですよ…。あたし、最初、天才的に可愛い、とか言われてたの
に、今じゃキャラ立ちしてないとか、歌がダメだとか、できるのはパンチラぐ
らいだとか言われて。メッシュ入れても、似合ってないやめろ、って言われる
し…。」
吉澤が演説してる最中に、中澤はそれを聞くフリをして、真剣に考えていた。
(とりあえず身を隠さな、撃たれる。でもどこにや? なんとかして身を隠さ
なな、なんとかして……)
吉澤は外を見つめたまま、言葉を続ける。
「ヲタクからの手紙も、よっすぃー痩せてね☆、とかムカつくし。そういうの
全部ふっ飛ばしてやりてえ、って…。そしたらこのチカラもらえて……」
吉澤は中澤のほうを向いた。
「だから中澤さ…………あ、あれ??」
吉澤は中澤のほうを見つめて驚いている。目は中澤に向いてるのに、姿が見
えてないようだ。
「いない?!」
吉澤は、さっきと同じ場所にいる中澤を見失って、教室を見まわしておろお
ろしている。
(なに言うてんねや? うちここにおるやん??)
≪パールハーバー≫で机をやみくもに撃ち、吉澤は明らかに動揺している。
(どうなっとるんや??)
ドン、ドン、と爆発音が鳴り響いて、教室の机が乱れ飛ぶ。
そんな中、中澤のパンツのすそが、なにかに引っ張られた。見るとそこには、
小さな、ピエロがいた。リスぐらいの大きさの。
=
≪スタンド名:トゥルーマンショー 能力:幻影 スタンド射程:50m≫
*矢口を助けるために発現した能力
=
- 39 名前:2−3 スナイパーとお茶目なやつ 投稿日:2001年06月05日(火)00時21分57秒
-
「なんや、こい……」
声を出そうとする中澤に、ピエロは人差し指で口を押さえるポーズをし、ニ
カッと笑った。そしてやみくもに撃ちつづける吉澤を指さして、その指で自分
の赤い鼻をさした。
(こいつがやったっていうんか。)
ピエロは、撃ちつづける吉澤のうしろにスゥーッと飛んで回り込むと、ポケ
ットから2枚のカードを引きぬいた。吉澤はまったく気がつかず、机を撃ちつ
づけている。
カード2枚を背中に抱えてスゥーッと戻ってきたピエロは、中澤の肩に座る
と、二枚のカードをわたして「シャベッテイイヨ」と耳元でささやいた。
「吉澤!」
中澤は大きく叫んだ。
吉澤は、中澤のいる教室の真ん中………ではなく、パッと教室の隅、を見た。
「…そこにいたんですか?」
全く目線があってない。中澤は吉澤を見てるのに、吉澤は顔をそらして、中
澤の左のほうを見つめている。
吉澤は突然、中澤の左のほう、誰もいない空間に向けて撃った。ガァン!と
いう音がして、そこにあった掃除用具入れが揺れる。
しかし、当然ながら中澤は無傷。
吉澤には、弾が中澤をすりぬけたように見えたのだろうか? 顔に恐怖の色
がさした。
中澤の肩にいるピエロが、「モットモット」とささやく。
「うちにはきかんねんそれ。もうやめとき。あと、カードはもらったで。」
中澤は目の前で2枚のカードをひらひらさせた。
吉澤はハッと自分のポケットに手をやり、2発を中澤(の幻影)に向けて撃
った。
再び、掃除用具入れがガン!ガァン!と鳴ったが、またも中澤は、当然無傷。
「な、なんで……?」
恐怖で戦意をなくした吉澤は、立ち尽くした。
「それ、アブナイからあんま使わんとき。」
中澤は、そう優しく諭すと、2−Aの教室を出ていった。
中澤、カード3枚『あ』『へ』『ぴ』。
吉澤、カード0枚。
後藤、カード0枚(当然)。
- 40 名前:通り縋りのJoJo好き 投稿日:2001年06月05日(火)02時21分49秒
- 更新されたみたですね。
吉澤って、危ないヤツだったんですね。(w
爆弾スタンドですか、使い様によっては、(爆弾スタンドといえば、キラークィーン)の様に、結構強い部類に入るんでしょうけど…。
相手が悪かったですね。
吉澤、チョット、お馬鹿チャン。
姐さん、ヤル→。
姐さんの最後の台詞が、大人て感じでカッコイイですね。
やっぱりスタンドは、パワーだけでは無く、頭も使わないと…!ですね(w
次回も、期待しています。
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月05日(火)08時45分33秒
すごく楽しく読ませていただいてます
それに娘。みんなのスタンド名に惹かれますね・・・
「ロミオ&ジュリエット」「パールハーバー」「トゥルーマンショー」
いずれも職業柄よく目にしていますので・・・
他のメンバーのスタンド名も楽しみにしてます!!
- 42 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月05日(火)15時50分05秒
>>40 通り縋りのJoJo好きさん
またまたレスありがとうございます!
吉澤はずいぶん好戦的なスタンドですね、ちょっと危ない(w。
一方、姐さんはその強いイメージとは違い、かわいらしいスタンドです(w。
スタンドはパワーだけでなく頭も…そうですよね。
道具の使い方の上手さ、のようなものでしょうか。
そのあたり、姐さんはうまいですねぇ。年季が違います(w。
期待していただいて、嬉しい限りです。ありがとうございます(w。
木曜深夜の更新、お待ちくださいm(__)m。
>>41 名無し読者さん
レスありがとうございますm(__)m。
楽しく読んでいただいてるようで、嬉しいです。
スタンド名、気に入っていただいて光栄です…(泣)。
このモチーフは、今回やりたいことの一つでした。
他のメンバーのスタンドも、ご期待に添えるものになってるかと思います。
お仕事、頑張ってくださいm(__)m。
- 43 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月05日(火)19時06分13秒
- やれやれだぜ。まさかこんなにおもしろくなるなんて、
夢にも思わなかったぜ。・・・いや、ホントおもしろいです。
今回での戦いでは、原作の「どれだけスタンドが強くても、
本体が使いこなせなければ意味が無い」っていうのを見事に再現してますね。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月05日(火)21時07分32秒
- 裕ちゃん格好いいです。裕ちゃんファンには嬉しいなっと。
そういえば主役はいるのかな?
- 45 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月08日(金)01時44分30秒
>>43 名無しスタンドさん
レスありがとうございますm(__)m。
楽しんでいただけてるようで嬉しいです。
スタンドの「要は使う人の精神力」っていうところが自分自身好きで、
そこが出せたようで良かったです。
最後まで面白く、進めていきたいです。
>>44 名無し読者さん
レスありがとうございますm(__)m。
主役というのはいませんが、中澤姐さん視点が多くなると思います。
なので、今後もきっと嬉しい内容に…(w。
それでは、「2−4 中澤、音楽室へ」です。
- 46 名前:2−4 中澤、音楽室へ 投稿日:2001年06月08日(金)01時46分44秒
-
吉澤からカードをいただいた中澤は、廊下を歩きながら、3枚のカードを手
に広げていた。
『あ』、『へ』、『ぴ』と並べたカードをみて、文を考える。
(『あ』はどんなんでもありやからなー。『へ』は、「どこどこへ、」の『へ』
やろか? 『ぴ』もよくわからんな。)
『へ』、『あ』、『ぴ』。
(へあぴ……へあぴん? ちゃうわなー。ヘアピンはないなあ。)
『ぴ』、『あ』、『へ』。
(ぴあへ……ピア、……ピア? ピアって……『ピアノ』ちゃう!?)
「音楽室!」
中澤の顔がパッと輝いた。
今、中澤がいるのは普通教室棟。音楽室がある特別教室棟は、渡り廊下を通
って向こうだ。
- 47 名前:2−4 中澤、音楽室へ 投稿日:2001年06月08日(金)01時48分02秒
-
2−Eのあたりから伸びている渡り廊下を、足早に歩く中澤姐さん。
大きな窓から中庭がみえる。
「ほんま、霧だらけやな。」
姐さんのブルーアイもちょっと曇りがち。
特別棟2階には、美術室、家庭科室、第一理科室、第二理科室などがあった。
(音楽室はいっちゃん上か? うちの高校もそうやったし…)
と、古き良き女子高生時代を想う、中澤姐さん。
特別棟の階段を上がり3階へ行く。
3階には、図書室、視聴覚室、第一音楽室、第二音楽室があった。
(やっぱここか。)
- 48 名前:2−4 中澤、音楽室へ 投稿日:2001年06月08日(金)01時48分50秒
-
階段上がって正面にある図書室、視聴覚室を通りすぎ、突き当たりにある第
一音楽室に入った。
部屋の隅に黒いグランドピアノがあった。
(これやな。)
ピアノの鍵盤のふたをそっと開けてみる。
鍵盤の上に赤い布がかけられていた。それをそっと取った。普通の鍵盤だ。
弦の間や、ピアノの足、かがんでピアノの底も見てみるが、なにも変わった
ものはない。
(…おかしい。ピアノや思ったけど、ちゃうんかな?)
姐さんはピアノの椅子に腰掛けた。
学校の音楽室に入るのは、10年ぶりぐらいだろう。
5線譜の刻まれた黒板がある。音階の書いてある紙や、声の出し方を書いた
紙が壁に貼ってある。
静まりかえった音楽室で、中澤は考えていた。
(ピアノじゃないとしたら、なんやろう? もっとカードあつめなあかんな。
で、やっぱ矢口みつけんと。)
相変わらず霧がかった景色を窓からしばらく眺めて、中澤は音楽室を出てい
った。
- 49 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月08日(金)02時15分19秒
- 2−4、でした。
ちょっと短いです…。
作業用あげ
- 50 名前:名無し 投稿日:2001年06月08日(金)03時39分20秒
- み、短い・・・
けど、上げてくれて良かった。俺だけ上げでカッコ悪かった(ワラ
そして、俺の照準はあいののとヤスへ・・・
- 51 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月08日(金)21時56分48秒
- いつになったら裕ちゃんと矢口は会えるのかな〜
あと、石川のスタンドも早く見てみたいな
- 52 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月09日(土)12時59分05秒
- >>50 名無しさん
レスありがとうございます。
いやー、もうドンドンあげちゃってください(w。
10以下のスレッドになると見づらいし、更新もしにくいので、
適宜あげるようにしております。
あいののは、月曜日に出てきます(w。
ヤッスーはもう少し後になりそうです。
どうぞよろしくm(__)m。
>>51 名無し読者さん
レスありがとうございます。
中澤姐さん、頑張って探してるのになかなか矢口に会えませんねぇ。
石川のスタンド登場は、もう少し後になりそうです。
どうぞよろしくm(__)m
- 53 名前:178 投稿日:2001年06月11日(月)20時03分38秒
- はじめて見ました。
なんか新しくて(?)いい感じですね。
これからはちょくちょく見にくるので更新楽しみにしてます!
- 54 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月12日(火)00時25分07秒
>>53 178さん
レスありがとうございます。
週2回更新(月木深夜)で進める予定ですので、どうぞよろしくm(__)m。
それでは。
「2−5 ちびっこギャング」
です。
- 55 名前:2−5 ちびっこギャング 投稿日:2001年06月12日(火)00時26分08秒
-
音楽室をでて、特別棟3階の廊下を歩く中澤。
視聴覚室の中にも入ってみた。白いパソコンがずらーっと並んでいるが、矢
口はいない。
次に図書室を廊下からのぞいた中澤は、中に辻と加護がいるのを発見した。
(お! やっぱ、あの二人一緒にいんねなあ。)
辻と加護は図書室の机で、漫画を読んでいた(おいおい)。
ぶり○こうんこは、もちろんやる気なのだが、そこはおこちゃま。自分の好
きなものからには逃げられない。
二人のいる机の上には、二枚のカードが置いてあった。
(あ、あいつらカードもってるやん。こりゃ、いただいとかな。)
中澤はガラっ!と図書室のドアを開けた。
その音で、ビクっとこっちを振り返る辻と加護。読んでた漫画を机におき、
ささっとカードをポケットに隠す。
「あ…」
「な、なかざわさん…」
辻と加護はゆっくりと椅子から立ち上がった。
「こんにちは〜。」
中澤姐さんは、低めの声、関西弁のイントネーションで話しかけた。
「今隠したん、カードちゃう?」
辻加護は顔を見合わせた。
「「ち、ちがいますよー。」」
姐さんは、ほー、と言って、ゆっくりと辻加護に近寄る。
「ほんなら見せてもらおか。」
辻と加護は図書室の奥のほうに後ずさる。
中澤は図書室の中央に来た。もっと近寄って、辻と加護を追いつめようとす
る。
- 56 名前:2−5 ちびっこギャング 投稿日:2001年06月12日(火)00時26分54秒
-
そのときだった。
バコン!
「ぁいて!」
姐さんは頭を押さえてうずくまる。後ろから辞書が飛んできたのだ。
振り向くと、そこには辻がいた。辞書を投げおわった格好で。
(な……なんでや?)
ドゴン!!
「いて!」
今度は姐さんの肩に百科事典が落ちてきた。
ななめ上を見ると、本棚の上に加護がいた。
(さっき前に…)
ぱっと前を見ると、やっぱり辻と加護がいる。
姐さんは、前と、後ろと、上をかわるがわる見た。
(辻と加護、辻、加護、…4人いる?!)
「へへへー。」
4人の辻と加護がいっせいにニヤけた。
「なかざわさん…わるいれすけど。」「…すけど。」
「カードいただきますよー。」「…ますよー。」
=
≪スタンド名:ツインズ 能力:分身 スタンド射程:なし≫
*2人でいるときのみ使用可能。スタンド体はない
=
- 57 名前:2−5 ちびっこギャング 投稿日:2001年06月12日(火)00時27分46秒
-
(この、ちびっこども。)
中澤は頭と肩を押さえている。
本とはいえ、辞書と百科辞典はかなりの重さだ。まだズキズキする。
ひょっとすると吉澤の≪パールハーバー≫より、いたいかも…。
特に百科辞典、マジで危ない。
「よーし、やっちゃえー!」
教室の奥の加護@が言った。
それを合図に、4人の辻加護が中澤に本を投げつける。
ドガ!ドガドガドガ!ドガドガ!……
四方から、<本の集中放火>が中澤に浴びせられる。
三方と上からの攻撃。姐さんもすばやい動きでかわしていたが、よけきれない。
辻Aの投げた辞書が、中澤の背中に当たった。
「いて!」
(あかん、当たり所悪かったら、死ぬで。)
中澤はささっと、机の下に避難した。
ドガドガと音を出していた、本の雨がぴたっとやんだ。
「なかざわさん、カードくれたらやめますよー。」
加護@が、テレビ用とは違う冷めた声で、そう言った。机の下の中澤を見る
目も、どこか冷たい。
中澤が、机の下から加護に話しかけた。
「それがあんたらのチカラか?」
辻@が、そうれす、と言った。
「二人でお願いしたんれす。」
相変わらずろれつは回ってないが、加護と同じく冷めた声だ。
加護@が話し出した。
「二人で屋上にいたんですよー。そしたら急に曇ってきて。びっくりしてたら、
願いをかなえてやるって言われて。で、二人で考えて、これをお願いしましたー。」
面白いでしょー? ぶんしーん、と言ってきゃっきゃ笑っている。
加護は、やっぱり中学生には見えない。
「いたずらするんれすー。」
そう無邪気に言う辻も、中学生よりも幼くみえた。
テレビ用に演じているロリキャラが、2人の性格を少しずつ変えてるのかも
しれない。
- 58 名前:2−5 ちびっこギャング 投稿日:2001年06月12日(火)00時29分00秒
-
(こいつら、悪気がないだけにたち悪いわ。)
姐さんは机の下で思っていた。
(ちょっとおどかさなあかんな。)
中澤もスタンドを発動させた。
机の上に、≪トゥルーマンショー≫を出した。
加護のくりっとした目が、見開いた。
「あ、ピエロだ、かわいいー!」
「かわいいれすー!」
≪トゥルーマンショー≫は辻と加護にペコリと挨拶した。今から芸でも始め
るみたいだ。
もうすでにこの時、二人は≪トゥルーマンショー≫の術中にはまっていた。
辻と加護に見つめられる≪トゥルーマンショー≫は、おどけた踊りを少し披
露すると、机の下を指さした。
すると…
「あれ?」
「…なかざわさんいない。」
さっき机の下に隠れていたはずなのに、中澤姐さんの姿はない。
「こっちや。」
図書室の入り口のほうから中澤の声がして、辻と加護がそっちを見た。
「「ぅひぇ!!」」
辻と加護はそうとう驚いた。
それも仕方ない…。なんと入り口には、10人の中澤姐さんがずらーっと並
んでいたのだから。
- 59 名前:2−5 ちびっこギャング 投稿日:2001年06月12日(火)00時30分03秒
-
「「な、かざわさん……」」
辻と加護はマジの恐怖の顔で凍りついた。いつのまにか辻Aと加護Aは消え
ていた。恐怖でスタンド能力が停止したのだ。
10人の中澤姐さんは、ゆっくりと教室に広がりながら辻と加護に近づいて
いく。
真ん中の中澤姐さんが喋り出した。
「うちもなー。同じような力もらってん。あんたらよりちょっと多かったけど
な…。」
姐さんの20個の青い瞳に見据えられて、辻加護はその場にへなへなと座り
こんだ。
教室の端っこに尻もちをついてる辻と加護を、10人の姐さんが取り囲んだ。
辻と加護は、ただおびえて見上げるだけだ。
「…叩いたりせえへんから、カードだそか?」
静かな声で中澤にそう言われ、辻と加護は焦ってカードを渡した。
辻のカードには太字で『の』、加護のカードにも太字で『の』と書いてあっ
た。
「なんや二人とも、『の』、かー。」
恐怖で固まっている辻加護は、返事なんかできなかった。
姐さんは『の』のカード2枚を見て、独りごとを言った。
「『の』あると、やっぱピアノっぽいねんなあ…。」
姐さんはもう一度ちびっこたちに目線(*10)をうつした。
「ほかにもってへんな?」
辻加護は二人そろって、おびえた顔で深くうなずいた。
「ん。ほんなら、ありがとうなー。漫画の続き読んどいてな。」
10人の中澤姐さんは、扉の前で1人になって、すっと図書室を出ていった。
辻と加護は、それからしばらく立ち上がれなかった……。
中澤、カード5枚『あ』『の』『の』『へ』『ぴ』。
辻と加護、カード0枚。
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月12日(火)19時49分28秒
- さすがは元リーダー格好いいですね!
- 61 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月12日(火)20時44分57秒
- シブイねぇ・・・まったく姐さんシブイぜ。
カッコよすぎだぜ!姐さん・・・
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月13日(水)02時50分39秒
- 裕ちゃんがいっぱい、、、なんかすごそう(w
- 63 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月13日(水)03時25分56秒
- やはり姐さん、亀の甲より…経験の差か?
ま、相手が悪かったと思って
次があればガムバレ辻・加護!!
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月13日(水)14時27分30秒
- 面白いです。
生き生き映像が浮かぶ感じ。姐さんかっこいいし。
- 65 名前:41 投稿日:2001年06月14日(木)07時20分31秒
なるほど……辻・加護は2人合わせて「ツインズ」
またまたナイスなスタンド名で……他のみんなも心の中で
予想して待ってます 頑張ってください
- 66 名前:名無し 投稿日:2001年06月14日(木)15時27分49秒
- “ちびっこギャング”ってトコがイイ!
- 67 名前:178 投稿日:2001年06月14日(木)19時36分58秒
- ちびギャンサイコ〜!
もう辻と加護は出ないんですか?
- 68 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月15日(金)02時29分21秒
うおお! レスがレスがレスがああああ! レスだらけ(w
ほんと皆さん、ありがとうございますm(__)m。
>>60 名無し読者さん
レスありがとうございます。
姐さんのかっこよさが出せたようで、良かったです。
元リーダーとして、立場優位ですからね。
>>61 名無しスタンドさん
レスありがとうございます。
姐さん、しぶいですか。よかったよかった。
やはり姐さんは、「新メンバーを軽くいなす。」というイメージです。
精神力ではかなり上、大人ですもんね。
>>62 名無し読者さん
レスありがとうございます。
10人の姐さんは、スタンド能力で辻加護にだけ見えている幻影なんですが、
辻と加護は、10人分身の能力だ、と思ってるでしょうね。
自分も同じような能力だ、と辻加護にうそぶく姐さんが、作者的に好きです。
>>63 名無し読者さん
レスありがとうございます。
辻加護には、つよい相手すぎましたね(w。
何気におびえたフリして、姐さんをはめたつもりの辻加護でしたが、
逆にやられちゃいました。
辻加護に次は……あるんでしょうか?(w 僕もわかりません(w。
- 69 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月15日(金)02時30分15秒
>>64 名無しさん、さん
レスありがとうございます。
映像が浮かぶ感じですか? 嬉しいコメントですm(__)m。
頭の中に浮かんだ情景を、できるだけそのまま写し取るように心がけてまして。
難しくなくてつっかえないような、映像の浮かぶ文章で進めていきたいです。
メアドのとこでも、誉めていただいて…嬉しい限りです。
スタンド設定を丁寧にした甲斐がありました(泣)。
>>65 41さん
レスありがとうございます。
≪ツインズ≫も、わりかしすぐ浮かんだスタンド名でした。
ワンパクな辻加護*2、っていう能力ですね。
「辻と加護4人だったら、まわりはもっと手を焼くだろうな…」
と浮かんできました。
ほかのメンバーのスタンドも取り揃えております(w。
ありがとうございます。頑張りますm(__)m。
>>66 名無しさん
レスありがとうございます。
ちびっこギャングっていうタイトルは、自分でもなかなか上手くつけれたなと(w。
やんちゃな感じが出てますよね。
好き放題やってる感じが、まさにギャングです(w。
>>67 178さん
レスありがとうございます。
ちびっこギャング、略してちびギャン。この略、よい!(w。
『ちびギャン』の活躍は、今後あるんでしょうか?…うーむ(w。
戦いに負けてても死んではいないので、出てくる可能性が無いとはいえません(w。
重ねて、皆さんレスありがとうございますm(__)m。
マジで励みになります。
それでは、「3−1 北の海に、道はなく」です。
- 70 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時38分57秒
# # # # #
さて、ここらで他の娘。たちはどーなってたか、見ていきましょう。
5番目に校舎に入った飯田さんの場合……。
# # # # #
校舎に入った飯田は、玄関前にある校舎の全体図に目を通した。1階、2階、
3階の見取り図が描いてある。
(遠いとやだな。)
そんなことを考えながら、飯田は自分の封筒を破った。
中の紙には「体育館」と書いてあった。
(よかった3階じゃなくて…でも、探すとこ多いか…)
ボーっと宙を見ながら、飯田は体育館のほうへ向かった。途中の廊下に、大
会の優勝トロフィーやら、優勝旗やらが飾られている。
飯田は少し足を止めて、そのトロフィーなんかを見ていた。
(普通に高校行ってたら、部活してたよなあ…)
試合で活躍する姿を思い浮かべて、少し交信した。
職員室、保健室、事務室、校長室を通りすぎて、体育館への通路を通る。
- 71 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時40分28秒
-
体育館の鉄の扉を、ガラガラッと開けて、飯田は中に入った。音一つしない、
静かな空間。逆に耳が痛くなる感じ。
校舎に入るのも久しぶりだが、体育館に入るのはもっと久しぶりだった。
(ピンチランナーんとき以来かあ。)
レンガ色の緞帳の掛かったステージ。下げられたままのバスケのゴール。
ステージ横に用具室がある。扉は少し開いていた。
飯田は用具室へ入ると、入り口の横の壁を探ってスイッチをつけたが、電気
がつかない。
壁を手で探っても、他のスイッチはなかった。
どうやらグローが古いらしい。
しばらく暗闇のなかで目を凝らしていると、パチパチっと蛍光灯がついた。
部屋の隅にはマット、奥には跳び箱がある。
手前には得点板があり、バスケとバレーのボールの籠が目の前にあった。
飯田はなんとなく、バスケのボールを手に取り、タン、タンとドリブルした。
(バスケやりたくなってきたな。)
飯田はそのまま、ドリブルをしながらフロアに出た。
屈伸をしてから、アキレス腱を伸ばし、うーん、と背伸びをした。
フリースローのサークルに入って、両手でシュートしたが、ボールはゴール
にかすらなかった。
(もっかい。)
2回目も外してしまった。
(……)
3回目は、ボードにあたって、ゴールにあたって、外れた。
それからしばらく、ドリブルシュートや、斜めからのセットシュートを繰り
返した。あまりゴールに入ってくれない…。
(…運動不足だ。)
飯田は軽くため息をついて、ドリブルしながら用具室に戻った。
- 72 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時42分34秒
-
用具室の手前のボールの籠の中に、バスケのボールをほかる。
ガコン、と音を立ててボールは収まった。
(カード探そう。)
用具室には物が多くある。
奥に積み上がってるマットを一枚一枚持ち上げて、間にはさまってないか調べた。
マットに染み付いた汗の匂いが、鼻をつく。
1番下のマットを持ち上げても、カードは無かった。
(ふー…、ない)
マットのとなり、跳び箱の1段目を持ち上げて、中をのぞくが、ない。
部屋の隅に並べられてる、卓球台が目に付いた。狭い隙間を通って、卓球台
のそばまで行き、調べる。
卓球台のほうまでは明かりが届いてなく、薄暗い。
一つ一つ卓球台を調べた。すると1番奥の台の間に、トランプみたいなカー
ドがはさまっていた。カードには太字で『そ』、と書いてあった。
「これか。」
飯田はカードを手にして、用具室から明るいフロアのほうへ出た。
明るいところで、カードをよく見る。
(結構ちゃっちい。)
カードを持って立ったまま、飯田は考えた。
(10枚探して言葉作るの、大変だなぁ。後藤とかやる気なさそうだったし、
カードくれるかも。)
(辻加護は、頼んだら教えてくれないかな…)
(よし、メンバーと会おう。とりあえず後藤……)
≪ピンポンパンポーン♪≫
突然、ステージ横の壁についてる大きなスピーカが鳴った。
・
・
・(おじいさんの声だ。)
・
・(あれ? 曇ってきてる。)
・
・(心の武器? うーん、うーむ……)
・
・
・
≪1−、2−、3−、ダアーー!!≫
青白い光が飯田を包み、意識が遠のく。
(……まだ願い決まってないのに………)
- 73 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時44分24秒
・・・・・・
しばらくして、飯田は目を覚ました。体を起こし、ボーっとする頭を振って、
周りを見まわす。
少し離れたところの壁に鏡があった。
近づいて、鏡で自分を見てみるが、別に放送前と変わりは無い。少し髪の毛
が乱れてて、手櫛でさっさっとなおした。
(なんも変わってないじゃん。デマかな? それとも願い遅れたから……)
「かおり?」
突然、遠くからそう聞こえた。
静かな体育館に、よく通る声。
飯田が体育館の入り口のほうを向くと、そこには安倍が立っていた。
「…おう。」
(なっちか…。なっちは、ソロやる気なのかなあ…)
安倍は飯田のほうに向かって、徐々に近づいてくる。
「カード、あったべか?」
飯田も安部のほうに向かって歩く。
「あったよ。」
二人の声が、体育館に響く。
(あんまり、警戒してないなあ)
「なっちも、あった。」
安倍は、わたしもおんなじ、と嬉しそうな顔をした。
さらに二人の距離は近づく。
「ふーん、文字なんだった?」
「…それは、一応勝負だし、いえないべさ。」
「そうだね。」
安倍は飯田の目の前にきて、二人は体育館の真ん中で向かい合った。
それより、と安倍は言った。
「なに、お願いしたべ?」
「怪しかったし、お願いしなかったよ。考えてたら、間に合わなかったみたい。」
「ふーん。」
安倍はなぜかニヤけている。
「なっち見て、なんか気付かないべか?」
(は?)
飯田はもう一度よく、安倍を見た。小さい体にあどけない顔。少しふっくら
した体……あれ?
「…なんか、体細くなったような気がする。」
「気じゃなくて、実際やせたべ。」
確かに安倍は細くなっていた。太ももや肩がすらっとしている。
「ほんとだね…、それって願い事で?」
「そうだべ。」
安倍はにっこり笑うと、右手の甲を目の前にかざした。
そこにふわっと現れたのは、白衣を着て丸めがねをかけた、ちっちゃな博士だった。
=
≪スタンド名:ナッティプロフェッサー 能力:体型操作
スタンド射程:安倍の体の中≫
=
- 74 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時45分54秒
-
小さな博士は丸メガネをくいっと右手で上げると、安倍の手の中に引っ込んだ。
飯田は大きな目をさらに大きくした。
「え! いまのなになに? 小人じゃん!」
「これが、能力みたいだべ。」
「へー、博士のおかげなんだ。」
「そうだべー。」
安倍は少し間を置いて、なっちもソロ狙うことにしたべ、と静かに言った。
(え?)
飯田が安倍を見ると、安倍はまっすぐ飯田の目を見ていた。
「なっちも、ほんとは沈んでたべ。でぶなっちでぶなっちとか、なっちありがと
う。とか、傷つくこともいっぱいいっぱい言われたべ。」
安倍は自分が確認するように話を続ける。
「でも、もう慣れっこになってたべ。モーニング娘。の今の顔は後藤で、なっち
は過去の顔。昔の栄光はもどってこない、取り返せない。そう思ってた、べ。」
(思って、た?)
「この能力でまた、モーニング娘。といえば安倍なつみ、の時代が来るべ。ソロ
デビューにソロパートも…。」
「そのためには、やっぱり後藤は邪魔だべ。なっちのデビューの為に、かおりも
協力するっしょ? やっぱなっちは、モーニングの顔っしょ?」
安倍は真剣な目で飯田に問う。
(うーん…)
「でも、やっぱりモーニング娘。の顔は後藤だよー。みんなよく知ってるし。」
飯田は普通に正論を言った。
「いやだべ。」
安倍の目に無機質な光が帯びた。
「なっちはちょっとぽっちゃりしちゃったから、後藤に替わられたんだべ。なっ
ちが痩せれば、やっぱりなっちが顔っしょ?!」
言葉に少し怒りが混じった。
飯田は困ったが、もともと正直な性格、思ったことを言った。
「……後藤1番人気は変わらないでしょ。なっちも昔そうだったんだし、時代の
流れ……」
ドンッ!!
そこまで喋って、飯田は安部の方からの衝撃に吹っ飛ばされた。
ずしゃっ、とフロアに倒れる飯田。
(な、なに…?)
安倍に押されたように思えたが、安部は足一つ手一つ動かしていない。
「…かおりも、後藤の味方だべか。……じゃ、なっちの敵だべ。」
安部の顔から愛嬌や笑顔は消えていた。
- 75 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時47分53秒
-
(まさか、今の…)
飯田ははっと気付いた。
≪体当たり≫、だ。1歩も動かずに体当たり。
つまり、「一瞬だけ太った衝撃」なんだ。
安部が一瞬近づいたように感じたのは、それでか。
「気付いたべか。ほんとはこれ、やりたくないべさ。一瞬でも、なっちのイメー
ジに関わるし…。能力を逆向きに使ってるんだべ。」
安部は少し嫌そうな顔をした。
「さっきのは手加減したべ。体育館の端までふっとばすぐらいできるべさ。そし
たらかおり、大怪我だべ。ほんとはそんなことしたくないべさ…。協力してくれ
るなら、なにもしないべ。」
優しい口調だが、内容は脅しだった。
「カードくれるっしょ?」
優しい聞き方だ。倒れている飯田を、見下げる安倍。
「嫌。」
飯田は間髪入れずに言った。
「かおりはなっちの味方でも後藤の味方でもないし、ソロもやりたいけど、後藤
が邪魔とか人のせいにしてるなっちには、ソロなんかさせない。」
大きな瞳で安倍を見上げる飯田。
安倍はふぅ、とため息をついた。
「…しかたないべ。動けなくなっても知らないべ!」
ズドンッ!!
飯田は車にはねられたように吹っ飛び、床をすべって、ガンッ、と壁で止まった。
安部は吹っ飛んでいった飯田をみてクスクス笑っている。
「あーあ、これで大怪我だべ…。」
飯田は高い体育館の天井を見ていた。
(すごいな今の衝撃…。)
(あんま痛くないな…。ひどい怪我んときってこんなもんか。)
(手も動かせな……)
飯田の手は、自分の予想に反してすっと動いた。
(あれ? うごく…)
飯田は自分の手を見て驚いた。
(かおりヨロイ着てる…。)
飯田はすっと立ちあがった。ガシュー、ガシュー、と自分の体から音がする。
何事も無かったように立ちあがった飯田をみて、安部が驚いている。
「か、かおりの能力それだべか?! ロボットだべ!」
飯田は自分の体を見た。ヨロイじゃない、銀の装甲だ。
視界が暗いと思ったら、サングラス付きのヘルメットをかぶってる。
(え、これ、かおりの武器?!?!)
=
≪スタンド名:ロボコップ 能力:武装 スタンド射程:なし≫
*身にまとうタイプのスタンド
=
- 76 名前:3−1 北の海に、道はなく 投稿日:2001年06月15日(金)02時51分03秒
-
飯田の視界の端に、ピピピピピーという音と共に、≪ミギアシノ、ジュウヲトレ≫
と緑色のコメントが流れた。
グラスに写っているのだ。
自分の右足を見ると、バシュ、っと装甲から銃が飛び出した。
銃を取り出すとまた、ピピピピピー、と音が鳴った。
≪テキノハラヲウテ≫
(え、銃なんかで撃ったら死んじゃうじゃん)
と思った矢先、ピピピピピー、と音がした。
≪マスイダン、ダ。モンダイナイ≫
(なるほど)
グラスごしに安部を見ると、ピピッ、と四角い照準が安倍に合った。
その照準の上に、≪2.5ビョウゴニ、テキゼンシン≫と出ている。
飯田は銃を構えた。
「もう一度くらうといいべ!」
安倍がそう叫んで、飯田のほうにすごいスピードで近づく。≪ナッティプロ
フェッサー≫の反動を床に使って加速しているのだ。
飯田は敵を十分に引きつけて、下腹部を撃った。
ドウッ! という低い爆発音と共に、≪ロボコップ≫の麻酔弾は安倍を捕ら
え、安倍は腹を押さえて床に崩れた。
焦点の定まらぬ目で飯田のほうを見て、安倍はうめいた。
「かおり、…よう、しゃ……な、い……、べ………」
安倍が動かなくなったのを見計らって、飯田は≪ロボコップ≫の装甲をといた。
麻酔が効いて眠りについている安倍のそばに近寄ると、安倍の足元にはひら
がなカードが落ちていた。
飯田はかかんでカードを取った。太字で『く』と書いてあった。
(麻酔弾が効いてるみたいだし、しばらく起きないな。)
飯田はチラッと安倍の寝顔を見ると、体育館を出ていった。
飯田、カード2枚『く』『そ』。
安倍、カード0枚(熟睡中)。
- 77 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月15日(金)02時59分20秒
- かっくいい
- 78 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月15日(金)02時59分45秒
「3−1 北の海に、道はなく」でした。
これで、後藤、吉澤、中澤、辻加護、安倍、飯田と7人のスタンドが登場しました。
≪ロミオ&ジュリエット≫≪パールハーバー≫≪トゥルーマンショー≫
≪ツインズ≫≪ナッティプロフェッサー≫≪ロボコップ≫
残り3人です。
ご期待くださいm(__)m。
うずモニ。
- 79 名前:178 投稿日:2001年06月15日(金)10時09分54秒
- 飯田って最強なんじゃ・・・。
- 80 名前:名無し 投稿日:2001年06月15日(金)20時28分59秒
- 「北の海に、道はなく」・・・・・・か。なっちの哀愁結構好きなんだよね(笑)
( `.∀´)< そろそろ真打ち登場よ!
うずモニ。さん、頼んますよ(笑)
- 81 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月15日(金)23時14分04秒
- ナッティープロフェッサーでもちょっと笑ったけど、
ロボコップって・・・(W
カオリ、カコイイ!
- 82 名前:通り縋りのJoJo好き 投稿日:2001年06月16日(土)02時53分20秒
- 久し振りに来たら、話がかなり進んでた。(w
さて感想ですが、みんなキャラに合ったスタンドですね。
残る三人のスタンド、かなり凄そうな予感。(w
予想では矢口あたりが凄まじそうだぞぉ!!そんな気がする。(w
果して、ジョジョで言う所の、主役クラスの能力(時を操ったり、物に命を与えたりする。他)を持つメンバーは居るのか?
次回も期待しています。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月16日(土)05時15分18秒
- 残り3人のスタンドはいったいどんな能力を持っているのだろう?
気になるっす!
- 84 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月19日(火)02時00分07秒
皆様、レスありがとうございますm(__)m。
反応が遅くてすみません。
気分的に、書き上げてからでないとレスが出来なくて…。
で、いっつもギリギリなので、更新と同時にレスになってしまいます(^w^;)。
77>> 名無しさん、さん
レスありがとうございます。
ちょっと、飯田かっこいいですよねこれ(w。
リーダーにふさわしいです。
79>> 178さん
レスありがとうございます。
飯田のスタンドは、攻撃力守備力共に高いですね。さすがロボ(w。
スタンドは娘。中、最強かもしれません。
しかし飯田が無敵か、といわれると…。そのあたりが今後…。
80>> 名無しさん
レスありがとうございます。
北の海に、道はなく…。
思いっきりこじ付けなんですが、安倍と飯田の戦いということで、
このこじつけはやりたかった(w。
触れていただいてありがとうございます(w。
なっちの、さみしい感じが出せてよかったです。
今回、保田が登場です。お待たせしましたm(__)m。
>>81 名無しスタンドさん
レスありがとうございます。
スタンド名で笑っていただくことが、1番の喜びです(w。
嬉しいです。
飯田はちょっと、かっこよかったですね。
>>82 通り縋りのJoJo好きさん
レスありがとうございます。お久しぶりです(w。
キャラに合ったスタンド…嬉しいコメントです(泣)。
こんなスタンド持ちそうだなーって妄想を形にしたかったので(w。
矢口のスタンドは、木曜深夜に登場です。
一人だけ主役級の能力というのは、ないですねぇ。
できるだけ、本人たちが考えそうな、持ちそうな能力を与えてます。
ご期待に添うよう、頑張りますm(__)m。
>>83 名無しさん、さん
再度レス(?)ありがとうございます。
残り3人、保田、矢口、石川のうち、二人のスタンドが今夜登場です(w。
残るは矢口だけ、となりました。木曜の更新をお待ちくださいm(__)m。
それでは、「3−2 番犬と姫様」です。
- 85 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時02分30秒
-
# # # # #
続いて、他のメンバーを見ていきましょう。
6番目に校舎に入った、保田さんの場合…。
# # # # #
校舎に入った保田は、さっそく封筒を破った。中の紙には『美術室』と書か
れていた。
玄関付近の見取り図で、美術室の位置を確認する。
(特別棟の2階か。)
久しぶりの高校校舎の雰囲気が、保田には懐かしかった。
玄関前に張ってある、ポスターや掲示物など、ちらちら見ながら廊下を歩く。
1−A、1−B、、、と普通棟の教室が並んでるのが見えた。
保田はなんとなく1−Aの教室の扉を開け、中に入った。
同じような木の机が並んでいて、前には大きな黒板がある。
黒板を背にして教卓に立ち、教室を眺めた。誰もいない教室はがらんとして
て静かで、広く感じる。
次に教室の真ん中あたりの席に腰掛けてみた。
(高校生の時はヤだったけど、久しぶりに来ると、いいな。)
高校中退でフリーターをしてた保田は、授業を受けていた頃のことを思い出した。
(懐かしい…。)
保田は少しの間、席に座ったまま思い出に耽っていた。
- 86 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時03分31秒
-
1−Aの教室を出て、1階渡り廊下に向かい、美術室を目指す保田。
渡り廊下を歩きながら、中庭を見た。
くつろげるよう、可愛いベンチがいくつも置いてある。
さすが私立の女子高校、そのあたりがしゃれてて、お金かかってる。
(あそこで昼ご飯、食べてたんだろうなあ…)
自分の高校にはなかった、きれいな中庭を少しうらやましく思った。
特別棟1階の、端っこに美術室はあった。ガラガラッと扉を開けて中に入る。
教室の壁には、かかげられた生徒の絵。
隅の戸棚には、いくつもの石膏像と、積み重なった画板、スケッチブックに、
絵具や絵筆、美術館系の資料集などがある。
しばし、カードを探すことを忘れて、美術室の雰囲気を楽しむ保田。
生徒作品の油絵を近くでじっと見たり、床に落ちていたつぶれた絵の具を拾
って戸棚に戻したり。
- 87 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時04分07秒
-
ふー、と軽く息をつくと、保田はカード探しを始めた。
美術室は色々な物が置いてあり、探す場所は多い。
(とりあえず、戸棚だ。)
物であふれそうになっている戸棚を、丹念に調べていく。
画板と画板の間を調べ、スケッチブックを一つ一つ取り出してパラパラパラ
とやり、絵具や絵筆をさらって、奥を探る。
戸棚の下についてる引出しも一つ一つ開けて調べるが、折れた筆やカチンカ
チンの絵具、汚れた画用紙や雑巾が出てくるばかりで、カードはない。
(うーーん、ないなあ…。)
かがんで作業をしていた保田は上を見ながら腰を伸ばす。戸棚の1番上にある、
石膏像が目に付いた。
(石膏像、くさい。)
美術室の隅にあったはしごを持ってきて、慎重に上って、石膏像を一つ一つど
けていく。
すると、怒ったような形相の男の像の下にはさまって、カードはあった。
カードには太字で『な』、と書いてあった。
(カードってこれかあ…。)
保田は近くの机に腰掛けた。カードを裏返したり表替えしたりして、確かめる。
(普通のトランプっぽいな。)
そのとき、静かな美術室に霊の(例の)放送が…。
≪ピンポンパンポーン♪≫
・
・
・(うわ! マジで霊!?)
・
・(げ、ほんとに外暗くなってるじゃん…。)
・
・(日ごろの、うっぷん……)
・
・
≪1−、2−、3−、ダアーー!!≫
スピーカーからの青白い光が保田を包み、意識が遠のく。
(……うっぷん、うっぷん………)
- 88 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時05分06秒
-
しばらくして保田は、目を覚ました。
ぼやけた意識の中で、なにか自分以外のものが部屋にいる感じがする。
たおれていた保田の横には、昔飼っていた犬が「ふせ」をした状態で座って
いた。尻尾を振って、嬉しそうに保田のほうを見ている。
「おまえー! なんでここいんのお!?」
思わず声を上げた保田は、犬にほお擦りした。
仕事が忙しくて買ってやれなくて、手放してしまった犬。その存在が今近く
にいることが保田は嬉しかった。
(これが、くれたものなのかな、うれしー。)
保田はもう一度犬を抱きしめようと身を起こした。
ガン!
「ぅいて!」
頭を押さえて苦しがる保田。机に頭をぶつけてしまったのだ。
「くっそー、机邪魔だよ。いってー…」
そんな保田の様子を見ていた犬は、ウォーーーン、っと一つ遠吠えをした。
すると、保田が頭をぶつけた机の上に、黒いブラックホールのような球状の
空間が開いて、その机をシュイイイイイ…と吸いこんで消えた。
「な、なに?……。今のがまさか能力?」
犬は先ほどと同じく嬉しそうに、保田を見ていた。
=
≪スタンド名:スターゲイト 能力:転送 スタンド射程:お散歩程度≫
=
- 89 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時07分53秒
-
頼もしいパートナーを手に入れた保田は、美術室を後にしてほかのメンバー
を探した。
美術室がある特別棟2回には、ほかに工芸室、第一理科室、第二理科室、工
芸室がある。
保田は工芸室をのぞいた。工芸室のドアをそろそろと開けて、中に入る。
木材のにおいと、すこしホコリっぽい空気。人の気配はしない。
(いないなあ。)
保田は工芸室をぐるっと1周まわって、廊下に出た。
(誰かいたら、いきなり飛ばしちゃってもいいし。)
能力を手に入れて強気になった保田は、そんなことを思いながらそっと第一
理科室をのぞいた。
教室の中には、棚をがさがさと探している、石川の姿があった。
(カード見つかったら、石川だけ飛ばしちゃおう。)
- 90 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時08分29秒
-
教室の扉をなんとなく、コン、コンとノックして、保田は第一理科室の扉を空けた。
「はい?」
ノックに反応して返事をしてしまう石川。探している手を止めて振り向く。
「保田さん!」
石川は少し驚き、その次に、保田が連れている犬をみて驚いた。
「どうしたんですかその犬?! かわいいですねー。」
石川は犬を見て喜んだ。
犬のほうは特に反応を見せるでもなく、石川と関係ないほうを見ている。
「かわいいでしょ?」
保田はエヘン、という感じで自慢した。
「うちの犬だよ。」
「え、でもなんで、ここにいるんですか?」
「じいさんの放送あったじゃん。あれで、なんか来たみたい。」
「え! あれって、ほんとに願い事かなったんだ…。」
石川はちょっとボーっとして、さっきの放送を思い出している。
「石川はさー、なにお願いしたの?」
(こいつの能力は……)
保田はさらっと聞いた。
え、あたし? というふうに石川は答えた。
「…なんにもお願いしなかったんですよ。あ、もっとポジティブに! ってお
願いしたような気が…」
「そんなん、いつもじゃん。」
「ですよねぇー。」
二人して、笑った。
- 91 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時09分30秒
-
「カード探し、がんばってる?」
保田は先輩らしく声をかけた。
「はい!」
頑張ってる? という問いにはもちろん元気に答える石川。
「今、カード探してるとこですー。」
石川は戸棚を引き続き探し始めた。
「あたしも手伝おっか。」
「え、いいですよー。だって勝負じゃないですか。」
保田の優しい申し出を、断る石川。
「いいっていいって、あたしあんまりやる気ないから。石川手伝うよ。」
(優しいふりしてるなーあたし。)
「…じゃあ、見つかったら二人のものってことで、一緒に探しましょう!」
石川は毒っ気のない顔で、素直にそう答えた。
「うん。じゃ、そうしよっか。」
(手に入ったらあたしのもんだって。)
心とは裏腹の発言、保田。
二人してガサゴソと理科室の棚をあさる。
理科室にはそれなりに高い実験器具や薬品などが置いてあり、探すのにちょ
っと気を使う。
おそるおそる、薬品をどかして瓶の底を見たり、天秤や秤、電流計などをど
けてその下を見たり。
二人が探しているあいだ、保田の犬はすみっこで「おすわり」中。
- 92 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時10分16秒
-
保田はカードを探しながら、チラッと石川のほうを見た。
石川はグロテスクな標本を取り上げ、その下を探している。
標本を直視できない様子の石川は、泣きそうになりながら頑張って探していた。
(こいつ、かわいらしいなあ。)
保田はちょっと心を動かされたが、すぐに思い直した。
(いかんいかん、カードが優先優先。)
保田は、次は引き出しを…とカードを探し始めたときだった。
「あ! これ…」
と、棚の標本のとこを探していた石川が声を上げた。
石川が手にしているのは、間違いなくあのひらがなカードだった。そのカー
ドには太字で『か』と書いてあった。
「ありましたよー。」
石川は満面の笑みを保田に向けて、嬉しがった。
「よかったねー。」
保田もにっこり笑顔でこたえる。
(悪いね石川…。カードだけ残して消えて!)
- 93 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時11分18秒
-
≪スターゲイト≫の能力で石川を飛ば………そうとしたそのときだった。
保田の頭をよぎったのは、先ほどの石川の満面の笑み。
全く保田を疑っていない笑顔。全幅の信頼。
まだあどけない16歳。可愛い声。女らしい言葉遣い。
華奢な体。かわいらしい仕草。
(なんで、こんなときに石川の笑顔が浮かぶの……)
考えないようにしようとしても、浮かぶのは石川の笑顔笑顔笑顔……。
かわいい可愛いカワイイ……。
「保田、さん?」
飯田ばりに交信している様を不思議がる石川は、保田をじっと見つめる。
(あああー! そんな可愛い顔で、あたしを見ないでくれー!!!)
(…だめだ、あたしはだめだ。
なんてあたしは悪い奴なんだろう!
こんないたいけな石川を騙そうとするなんて!
許せない。自分が許せない。あたしには競う資格がない!…)
苦悩から冷めた保田は、ボソッと言った。
「あ、あたし、帰るわ。」
「?? はい?」
いきなりの発言に驚く石川。
(だめだぁ。驚いてる顔もかわいいいい!)
「あ、あと、任す。石川が、やっぱソロにふさわしいよ、うん。」
ハテナマークが飛びまくりの石川。
(うおお! 困ってる顔もかわいくてしかたない!)
「帰るって………、外でられないじゃないですか?」
「だ、だいじょぶだいじょぶ。あ、あたしの能力ね、ワープできるから。それ
使って帰って、千葉の実家でのんびりするわ。」
保田はテレてるみたいに、早口でまくしたてた。
「…じ、じゃあ、あたし帰るわ、がんばってね。こ、これあたしのカード。は
い、持って。」
無理やり石川の手にカードを握らせると、保田は≪スターゲイト≫を使った。
犬が、ウォーーーンと遠吠え、保田の真上に、「フオンッ」と黒い空間を広げた。
「…じゃ、じゃあ、無理すんなよ。」
恋愛中の中学生のようにそう言い残して、保田と犬は、黒い空間に吸いこまれ
て消えた。
- 94 名前:3−2 番犬と姫様 投稿日:2001年06月19日(火)02時12分14秒
-
一人理科室に残された『めんこいプリンセス 石川』は驚いた顔をしていた
が、保田と犬が消えたあと、急にフフッっとほくそ笑んで、二つのカードをポ
ケットにしまった。
「この能力、、、使える。」
怖い目をしてそう言った石川は、何事もなかったように理科室を出ていった。
……… ゼアズサムシングアバウトメリー 石川梨華に恋をする ………
=
≪スタンド名:ゼアズサムシングアバウトメリー 能力:魅了 スタンド射程:なし≫
*能力射程は石川が見られる範囲。
=
保田、カード0枚。
石川、カード2枚『か』『な』。
- 95 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月19日(火)02時14分58秒
「3−2 番犬と姫様」でした。
作業あげ。
- 96 名前:名無し 投稿日:2001年06月19日(火)03時48分48秒
- ありがとうございます、感服です。
「番犬と姫様」手が込んでて面白かったです。
最初・・・
「やすりかの共闘か?・・・番犬(騎士)圭ちゃんか、いいかも。どんな絵になるんだ?」
読み進めていく内に・・・
「ストレートに圭ちゃんが姫か・・・(・∀・)イイ!!・・・・・って、やっぱりチャーミーかいっ!」
・・・といった具合に素晴らしい妄想の世界に旅立たせてもらいました。
最後は悪りかの登場ですね(笑)
これで( ´д`)と( `.∀´)がどう戦線に復帰してくるのか・・・凄ェ楽しみ♪
- 97 名前:通り縋りのJoJo好き 投稿日:2001年06月19日(火)05時08分02秒
- 更新されましたね。
保田のスターゲイトは、ヴァニラアイスのクリームの様に仲間を消して行くのか?と思いきや、自分が消えるとは…。
ちょっと、オマヌケ。(w
それにしても、ラストでの石川に二面性・ダークさ・腹黒さが良く出てましたね。(w
まさに、「石川に首ったけ!!!」姑息だぁ〜!!(w
はたしてこの能力、石川の事が嫌いであろう中澤姐さんや、電波系の飯田に通じるのか?
そして最後に残った矢口の能力は…?
さらに消えて行ったメンバー達は、JoJoで良くある能力を強化または進化させての再登場をするのか?
色々期待しつつ、次の更新を待ってます。
- 98 名前:178 投稿日:2001年06月19日(火)08時24分14秒
- なんかどんどん能力が強力になってきてますね!
このぶんだと矢口のほうも期待できそうで楽しみです。
- 99 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月19日(火)22時52分30秒
- 保田のスタンドって、原作の方じゃ結構えげつない種類に入ると思う
んすけど。(W 攻撃に防御、更にはトラップとしても・・・
でもそれすら封じてしまう石川のスタンド。恐ろしい・・・
精神に働きかけるだけになかなか手強いですな。ホント、吉澤とは
正反対の性格のスタンドですね。
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月20日(水)20時37分09秒
- おもしろい。続き楽しみです。
- 101 名前:41 投稿日:2001年06月21日(木)05時36分51秒
うんうん……
カオリ、なっち、圭ちゃん、梨華ちゃんそれぞれスタンド
みんな良い感じですね(ロボコップとナッティは最高!!)
圭ちゃんのスターゲイトは本来なら強そうなんですけどね〜
梨華ちゃんの能力(魅力か?)は罪ですね
犬といえばイ○ーを思い出してしましましたが……
それとメ○ーに出てきた犬と……
やぐっちゃんはひょっとすると(頭の中にしまっておこう)
楽しみにしています
- 102 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月21日(木)22時42分11秒
- いや、ほんと面白いです。
どのスタンドも結構よくできてるので、
できるだけいろんな対決が見れたらいいなぁ、なんて思ってます。
(協力したりとか裏切ったりとか)
どうせ死なないんだし(笑)。
続きが楽しみです。
頑張ってください。
- 103 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月22日(金)04時27分36秒
>>96 名無しさん
レスありがとうございます。
保田石川の話、感服と評価され嬉しいです(泣)。
後藤もたぶんまだ玄関で寝てるし、保田も千葉に帰ったとはいえ、
すぐ能力で戻ってこれるので、戦線復帰も、不可能では、ないですね…(^w^;)
>>97 通り縋りのJoJo好きさん
レスありがとうございます。
石川の二面性、ポイントだったので、嬉しいですm(__)m。
石川に首ったけ、ですからね。
石川の能力はもうこれしかありません。チャーミーですしね(w。
>>98 178さん
レスありがとうございます。
矢口のスタンドは、やっと今夜登場です。
お待たせ致しました。
>>99 名無しスタンドさん
レスありがとうございます。
そうです。保田の能力は、実はけっこう最強(w。
なにかと融通の利く能力ですしね。
石川にKOされちゃうのは、やはり道具は使い方、ということで…。
>>100 名無しさん、さん
レスありがとうございます。
そして、100番おめでとうございます(w。
完結まで週2更新でいきますので、どうぞよろしくm(__)m。
>>101 41さん
レスありがとうございます。
ロボコップとナッティがお気に召されたようで…(w。
飯田がロボコップってのは、ありきたりだなと思ってましたが、
そのような最高評価をいただき嬉しいですm(__)m。
ナッティは、能力はもちろん、名前もちょっとかかってたりなんかして、
けっこう作者気に入りです。
>>102 名無し読者さん
レスありがとうございます。
できるだけ、対決を多く入れたいですね。
やっぱ対決が華なので(w。
ありがとうございますm(__)m、頑張ります。
それでは「3−3 愛は戦いを、戦いは愛を」です。
- 104 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時29分22秒
# # # # #
さて。中澤姐さんとの戦いで、完全に叩きのめされた吉澤ひとみ…。
吉澤のその後を見てきましょう。
# # # # #
中澤姐さんにカードを取られた吉澤は、呆然としたままだった。
悠々と2−Aの教室を出ていった、中澤の姿がまだ目に残っている。
(おかしい。確かに当たったはず…)
吉澤は≪パールハーバー≫が撃った弾を調べに、教室の後ろへいった。
弾でゆがんだ掃除道具入れを触る。
(ちゃんと飛んでるよなあ…)
弾が外れたわけじゃない。でも中澤にはあたらなかった。
(かわされた? いや、中澤さんは動かなかった…)
吉澤は掃除用具入れを見つめて考える。
(弾をワープさせたか、もしくは、あそこに中澤さんはいなかったか、……うーむ。)
(中澤さんが突然消えたことも考えると、幻を見せるような能力か。)
「くそっ!」
吉澤は悔しがった。
「もう少し考えてりゃあ…、くやしいなあ…」
ぶつくさ言いながら、吉澤は2−Aを出た。負けた記憶の残る教室には、長
くいたくないのだろう。
吉澤は、まわりを警戒しながら、2階の廊下を歩いた。
中澤の能力は、おそらく幻を見せる能力。どこかにいるかもしれないし、今
見てる風景も幻覚かもしれない。
(まてよ…、カードを持ってないあたしに、もう用ないか。)
吉澤はふーーーー、と長くため息をついて、緊張を解いた。
- 105 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時30分18秒
-
吉澤は一度、1−Cへ向かうことにした。最初にカードを手に入れた場所で
落ちつきたかった。ふがいない自分にも腹が立っていた。
(頭冷やそう。)
吉澤は1−Cの教室へ入ると、近くの席にどかっ、と腰掛けた。
腕を組み足を組み、前の黒板をにらんで考える。
(ちょっと整理しよ。中澤さんは矢口さんを応援してる…。ってことは、二人
は組む、ってことだよなあ…。)
(ほかのメンバーが協力するってのはなさそうだし、組むのはこの二人だけ。
むう、すごい有利…。)
吉澤は足を組み替えた。
(つまり、中澤さんと矢口さんを会わせなければ、勝機が……)
とそこまで考えたとき、廊下を歩く小柄な姿が見えた。
矢口だった。
矢口も1−Cに吉澤がいるのに気付いた。吉澤を見つけて、パッと顔が輝いた。
- 106 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時30分59秒
前の扉を景気よく開けて、矢口が1−Cに入ってきた。
「よっすぃ〜! カード見つかった?」
矢口は明るく聞いた。
「ありましたよ。」
吉澤はクールに答えた。
(まだ矢口さんが組んでないうちに……)
「どれどれ、見せてよー!」
矢口のハイトーンボイスが教室に広がる。
「だめですよー。矢口さんこそ見せてくださいよー。」
矢口はちょっとうろたえた。
「え、いや…、矢口は、まだ見つかってないから。」
「そうなんですかー。」
「う、うん。」
(そんなミエミエの嘘言わなくても…)
吉澤は、ところで、と切り出した。
「中澤さんに会いました?」
矢口は、へ? という表情になった。
「え、会ってないよ。 裕ちゃんどうしたの?」
「矢口さん探してましたよ。応援したいって。」
「マジで?! そっかそっかあ…」
すごく嬉しそうな矢口。
「矢口も、裕ちゃん探しにいこっと。じゃ、よっすぃ〜も頑張ってね!」
さっさと教室を出ようとする矢口を、吉澤は呼びとめた。
「ちょ、ちょっと待ってください。」
「…へ?」
矢口は扉の前で振りかえった。
「矢口さん、あたしのカード、いらないんですか?」
「え、だって<よっすぃ〜の>カードじゃん。あたしはあたしで探すよ。」
矢口はもっともなことを言った。
吉澤は不思議がる。
(…なんで、能力使って奪おうとしないんだろう??)
矢口の顔を見つめたまま動きの止まってる吉澤。
「よっすぃ〜、どうした? なんか変だぞー。」
キャハハ、と矢口は軽快に笑った。
- 107 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時31分50秒
(まさか…)
「矢口さん、お願いしました?」
「お願いって?」
「放送のですよ?」
「放送?」
「かかったじゃないですか、放送。」
「え、なんかスタッフから?」
「は?」
「連絡事項?」
「いや、そうじゃなくて…」
話がかみ合わない。吉澤はめんどくさくなって質問を変えた。
「放送、聞かなかったんですか?」
「うん…。」
「おっかしいなあ。」
矢口は少し考えてから喋りだした。
「その放送って、何時ごろ?」
「えーと、30分ぐらい前だと思いますよ。」
「あー、ちょうどトイレいってたかも。なんか具合悪くて。」
「そうなんですか…」
(ふうむ。)
吉澤は静かに矢口を見ながら、さらに質問した。
「矢口さん、あたしのほかに誰かと会いました?」
「それがさあ、だーれにも会ってないんだよ。けっこう動いてんのに、不思議。」
(能力のことは知らない。チャンス。)
吉澤は座っていた席を立ち、矢口から離れて教室の後ろのほうへ歩いた。
「その矢口さんが聞いてない放送、大事でしたよ。」
え? と矢口が驚く。
吉澤は≪パールハーバー≫を出した。吉澤の傍らに、銀色の影が立つ。
「こういうのもらえたんです。」
「…どういうの?」
矢口は普通に吉澤を見ている。
「矢口さん、見えないんですか?」
吉澤は、これこれ、と指で≪パールハーバー≫を指さした。
「?? なんもないじゃん。」
矢口は真顔にハテナマークがとぶ。
- 108 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時32分39秒
(能力がないから、見えない?… よし。)
吉澤は≪パールハーバー≫で矢口の近くの机を撃った。
ガアンッ!!という音が教室に響き、ガン!と机が倒れる。
矢口はビクッとして、反射的に後ろに下がった。
「な、なに今の……」
倒れた机を見て、矢口は唖然としている。
吉澤はクスッと笑った。
「教室の真ん中の机見ててください。」
矢口が机を見るやいなや、その机はガアンッ!ガン!ガアンッ! という音
と共に宙を舞い、ドガン!と床に落ちた。
矢口もさすがに気付いた。
「今の…よっすぃ〜が?…。」
「そうですよ。」
「なんで、そんな……超能力??」
「ははは。みたいなもんです。当たったら痛いですよ。」
「…よっすぃ〜…。」
矢口は驚きと恐怖の混じった顔で吉澤を見ている。
なんか、と吉澤は話し出した。
「校舎入ってしばらくしてから、放送がかかったんですよ。スタッフじゃなく
て、自称幽霊とかいう爺さんの。で、そのじいさんに頼んだら、超能力がもら
えた。というわけです。多分矢口さんは放送聞こえなかったから、もらえなか
ったんですね。つまり、私は武器があるのに、矢口さんは素手なんですよ。こ
れ、立場違いますよね?」
吉澤は一呼吸おいて、
「カード、持ってるんでしょ矢口さん。くれませんか?」
と、とても静かな声で言った。
矢口は長い話を黙って聞いていたが、その間に冷静さを取り戻した。
武器に臆することなく、吉澤をまっすぐ見据えて言った。
「…おどしてんの? 矢口を。」
「それは取り方だと思いますよ。」
吉澤は口元だけ笑った。
「さっきも見たように、体に当たると痛いですよ。今出してくれるなら何もし
ません。」
しばらく矢口はうつむいていたが、ぼそっと口を開いた。
「……やぐちさあ、そういうの、おどしとかすっごい腹立つんだよね。いくら
よっすぃ〜でもムカツク。当てたきゃ当てなよ。カードは確かによっすぃ〜の
言うとおり持ってるけど、自分からはわたさねえよ!」
意志を吐き出すように、矢口は語尾を強めた。
吉澤は軽くため息をついて、ドン!と矢口に向けて撃った。
矢口がうっ、とうめいて二の腕を押さえる。弾はかすってるだけだった。
「もう一回だけ言います…。カード、ください。」
矢口は吉澤をにらみ、怒りの感情がかあっ、と燃えあがった。
「こんにゃろおおおおお!!」
- 109 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時35分16秒
矢口は吉澤に向かって正面から突っ込む。
吉澤は冷静に努めて、向かってくる矢口の左太ももを狙って≪パールハーバ
ー≫を構えて、撃った。
しかし、弾が当たる直前で、フッ、と矢口の姿が消えた。
いや、吉澤には消えたように見えた。
実際には弾を左にかわした矢口は、吉澤が2発目を打つ前に懐に入り込むと、
素手のパンチでボディブローを2発、からアッパーを打ちこみ、吉澤の体が曲
がったところに飛び膝蹴り。とても小柄な女性とは思えないようなパワーとテ
クニック。
怒りで発動した、矢口のスタンドだった。
=
≪スタンド名:ガールファイト 能力:格闘 スタンド射程:なし≫
*超人的な格闘技の能力。
=
- 110 名前:3−3 愛は戦いを、戦いは愛を 投稿日:2001年06月22日(金)04時36分10秒
「ぅぐっ!」
と吉澤は、悪いものでも口にしたような声を出して、その場にドサッと崩れた。
ハアッ、ハアッと息を切らして吉澤を見下ろす矢口は、自分でも何をしたか
覚えてないような、そんな感じだった。
吉澤が苦しそうにうめきながら喋った。
「や、ぐち、さん、、、弾、見え、て、た?」
まだ息の上がっている矢口も、途切れ途切れに答えた。
「……あ、ああ。……なんか……見えた。……だからよけ、れた。」
少し呼吸を落ちつかせて、矢口が聞いた。
「……銀色の影が、よっすぃ〜の能力?」
はは、と吉澤が笑った。
「見えてんじゃないですか…。」
「急に見えたんだよ。」
参ったなあ、と吉澤が言った。
「…なんか矢口さんには、度胸で負けました。あたしまだまだです。」
「ははは。」
矢口は少し優しく吉澤を見ている。
吉澤は、ごろん、と天井のほうを向いた。
「…あたし、ほんとはカード持ってないんですよ。中澤さんに取られちゃいました。」
「え、裕ちゃんが、奪ってったの?」
「奪われたっていうか、、、負けました。ち、2敗だ。」
「試合じゃねーって。」
戦いを終えた2人の間に笑いが起きた。
矢口は、じゃ、と言った。
「裕ちゃん探しに行くね。」
「はい。」
「元気で…って、元気じゃないか。」
「なんか、、、お腹が痛いです。」
「わりぃわりぃ」
じゃーね、と言って矢口は、教室を出ていった。
倒れたままの吉澤は天井を見つめ、ぼそっとつぶやいた。
「…先輩たちには、かなわねえか…」
矢口、カード1枚『た』。
吉澤、カード0枚(依然)。
- 111 名前:no name... 投稿日:2001年06月22日(金)09時37分47秒
- 哀れだわ… よっすぃ〜…
誰か、吉子を幸せにしてやってください(爆
閑話休題
スタンド名って全部映画のタイトルなんですね。
- 112 名前:ミクロキッズ 投稿日:2001年06月22日(金)10時05分44秒
- やぐっつぁんなかなかやりますねぇ〜
このまま裕ちゃんが味方につけば最強ですね!!
でも裕ちゃんVSやぐっつぁんってゆうのも見てみたいかも・・・(w
- 113 名前:178 投稿日:2001年06月22日(金)19時30分12秒
- とうとう全員のスタンドが出揃いましたね!
やっぱ能力だけで言えば強そうなのは飯田と、もし帰ってくるなら保田でしょうか。
姐さんと梨華ちゃんはまだ底が見えてきませんね。期待できそうです。
姐さんと矢口が組むことになったならどうなるんでしょうか?やっぱものすごく強くなるんでしょうね。
娘は単純そうなのが多いのでやっぱ姐さん有利ですかね(w
- 114 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月22日(金)21時37分08秒
- 矢口のスタンドと性格、えげつねぇ〜!
矢口のは、ビジョンのないタイプなんですな。
一番攻撃的じゃないっすか?
- 115 名前:通り縋りのJoJo好き 投稿日:2001年06月23日(土)00時48分23秒
- 更新見ました。
吉澤、再登場後即リタイアとは…。
つくづく、運がねぇー!!(w
これで少しは改心しろよ!ですね。(w
矢口のスタンドは格闘系ですか。
格闘系と言えば、初期のスタープラチナ(ザ・ワールドが付く前。)ですね。
やっぱり、擬音とかは矢口的キャラなら「キャハハハハ…。」となるんでしょうか?(w
なんかある意味すげー怖いですね、笑いながら殴っている訳ですから…。(w
これからは、カードの奪い合いになってくるんですから、バトルが更に増えそうですね。
今後の展開を楽しみにしています。
- 116 名前:名無し 投稿日:2001年06月25日(月)15時26分56秒
- 圭ちゃんが出ない・・・・・圭ちゃんが出ない・・・・・ごまも出ない・・・・・・うぅぅ
( `.∀´)< これは作者の伏線よっ!
そ、そうだよね・・・・・・あはははは・・・・・やるなぁ、うずモニ。さん・・・
吉澤みたいなキャラって、新しい章に突入すると滅茶苦茶カッコ良かったりするんだよねぇ・・・第2部希望(笑)
- 117 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月26日(火)15時46分49秒
やっと更新です(^w^;)。
「木曜深夜に更新してねえじゃん!」とお怒りのかた、おられましたらすいませんm(__)m。
>>111 no nameさん
レスありがとうございます。
吉澤はまた負けてしまいました…。
そうなんです、スタンドはすべて映画のタイトルなんですよー。
こだわりたかったとこです。
>>112 ミクロキッズさん
レスありがとうございます。
やぐっつあん、なかなかやりますでしょ?(w
姐さんと矢口が戦闘することはあるんでしょうか? うーむ…。
そのあたりこうご期待ということで!(^w^;)
>>113 178さん
レスありがとうございます。
とうとう全員のスタンドを出すことが出来ました!
飯田と保田のスタンドは、戦闘につかいやすそうです。
飯田は性格的にも押して押していく感じで、能力も性格も戦闘向きですが、
保田はその1歩下がった性格から、能力を攻撃的に使わないかもしれないですね。
武器は使う人に因る、というまた繰り返しのセリフ(w。
矢口と姐さんが組んだら……そうとう強いでしょうねこりゃ(w。
姐さんは、精神面で他の娘をリードしてますからね。それだけで強いですね(w。
- 118 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月26日(火)15時47分52秒
>>114 名無しスタンドさん
レスありがとうございます。
矢口のスタンドは、なにげに強いです。攻撃的です(w。
肉弾戦用スタンド能力ですから(w。
矢口は放送を聞いていなかったため、能力に目覚めてはいなかったんですが、
吉澤が怒らせてしまったため、スタンドが発現しました。
矢口も強い能力を手に入れましたね(w。
人は力を持つと性格も変わるもの…。矢口も変わっていくかもしれません…。
ま、こうご期待ということで!(^w^;)
>>115 通り縋りのJoJo好きさん
レスありがとうございます。
よっすぃ〜は張り切って頑張ってるのに、どこかうまくいきませんね(w。
まだまだ先輩には及ばず、というところでしょうか?
矢口は唯一の格闘系ですね。
吉澤の≪パールハーバー≫も一応人型スタンドなんで、
殴ったり蹴ったり出来るんでしょうが、吉澤はそういう使い方をしてませんねぇ。
矢口と吉澤は娘。の中でも男らしい性格なほうでしょうから、
スタンドも好戦的なものになったんだと思います(w。
そうそう、カード!(w
娘。の皆さん、カードがらみで戦ってます。
ちゃんとカードも関わってきますのでよろしくm(__)m。
>>116 名無しさん
レスありがとうございます。
ヤッスーも、ごっちんも出ませんねぇ(w。
後藤は玄関で寝こけてるので、戦闘参加するかは本人のやる気次第。
やる気なさそうだな…ごっちん(w。
保田はただいま千葉の実家で静養中ですが、
≪スターゲイト≫の能力でいつでも帰ってこれます!(w
≪ゼアズサムシングアバウトメリー≫の能力射程は「石川が見られる範囲」なので、
もう魅了は解けています。
さて、保田は帰ってくるんでしょーか!?(w
- 119 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月26日(火)15時53分27秒
ここで、メンバーそれぞれの現在の動きを。
中澤姐さんは矢口を探し中。
矢口は中澤姐さんを探し中。
石川は他のメンバーを探し中。
飯田は辻加護を探し中。
吉澤は矢口との敗戦のまま、ねっころがり中?
安倍は体育館で気絶中。
保田は千葉の実家で静養中。
後藤は玄関で熟睡中。
辻加護は……うーん、なにしてんだろ、ちびギャン(w。
ということで、
「3−4 ちびギャン制圧作戦!」
です。
どうぞ。
- 120 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)15時56分27秒
# # # # #
さて、体育館での戦闘で、安倍に勝利した飯田圭織は…。
飯田のその後を見ていきましょう。
# # # # #
体育館での安倍との戦闘を終えて、他のメンバーを探す飯田は、体育館通路
を通って校舎に戻る。
玄関まできて、校舎の全体図をもう一度見る。
体育館から離れた場所に、特別棟があるようだ。
(特別棟か…いってみよ)
1階渡り廊下のほうへ歩き出したそのとき、柱の影に誰かが座ってるのが見えた。
近寄ってみると、玄関の端っこの壁にもたれて、ぐっすりと眠る後藤だった。
(後藤だ……、寝てるし…)
後藤の隣では、フランス人形が同じかっこで寝てる。
(後藤の武器かな?……ま、いいか)
飯田は後藤の肩をゆすった。
「後藤ー」
「…………」
起きない。
飯田はすぅ、と大きく息を吸いこんだ。
「ご、とおー!!」
「……んーー。……いちーちゃん、うるさいよぉー……」
後藤はようやく、うっすら目をあけた。
- 121 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)15時58分30秒
-
「……あ、カオリー……。いま、夢見てたみたい……いちーちゃんの。」
後藤は、にへー、っとしている。
「はいはいはい、そりゃ起こしてごめんね。…あのさ、後藤カード見つけた?」
後藤は寝ぼけた頭で考えている。
「…んー、……あ、カード? よっすぃーにあげたよー。」
「吉澤に? そっか…。ひらがな、なんだった?」
「…んー、……おぼえてない。」
「おいおい。」
飯田は少し考えた。
(吉澤か。あいつはやる気ある感じだったなあ……。カード、素直に見せてく
れないかも。次にカード見せてくれそうなのは、辻と加護かあ……あいつらど
こかなあ……)
「後藤、起こして悪かっ………、って寝てんじゃん!」
後藤はすでに、くーくー寝息を立てていた。寝ながらニヤけてる。
(幸せそうな顔しちゃって、また市井の夢かな。)
飯田は、また夢の世界に行ってしまった後藤をほかって、渡り廊下へ向かった。
- 122 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)16時00分03秒
飯田は少し薄暗い渡り廊下を歩いて、特別棟に入った。
(上の階から調べよ。)
飯田は階段で3階まで上がった。
目の前にある図書室がやけに騒がしい。どたばたどたばた音がして、きゃっ
きゃきゃっきゃ声が聞こえる。
入り口から中をのぞくと、辻と加護が鬼ごっこをしている。
(辻と加護だ…。よーし。)
飯田はガラガラッと図書室の扉を開けた。
走り回っていた加護が、こっちをむいて一瞬止まった。
「あ、飯田さん。」
「すきありれす!」
そのすきに辻が加護を捕まえた。
「くっそー、つかまってもうたー。」
加護がじたばたしながら、くやしがる。
「ゆだんてっぺき、ってやつれす。」
いばりながら言う辻に、飯田が突っ込んだ。
「…油断大敵でしょ。鉄壁だったらばっちりじゃん…。」
「そ、そうれす!それれす!」
恥ずかしそうに言う辻。
- 123 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)16時01分16秒
-
飯田は辻と加護に聞いた。
「あのさ、カードあった? ひらがなの。」
辻と加護は顔を見合わせた。
そして、二人でひそひそ話している。
うひひひ、と二人そろって笑ったあと、加護が答えた。
「二枚ありますよー。うちとのののぶん。」
「そうれすー。」
にやけている辻と加護。
飯田は、怪しいな、という顔をした。
「なに、笑ってんの? みせないつもりでしょ。」
辻と加護はぶんぶんと顔を横に振った。
加護が明るく答えた。
「みせますよー。ただしー、鬼ごっこで、うちら2人捕まえれたら。」
「そうれーす。」
「は、鬼ごっこ!?」
飯田は大きな声を上げた。
うんうん、と辻加護は首を縦に振った。
「はんいはー、図書室の中だけれすよ。」
と辻が言った。
- 124 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)16時02分27秒
-
(しかたない。つきあうか。)
「いいよー。カオリ鬼だよね。じゃ、10秒目つぶって数えるね。10、9、………」
0!と飯田は叫び、パッと目を開いて図書室を見まわした。
あたりはさっきと違って、しーんとしている。
(背の高い、本棚のかげか。貸し出しカウンターの中か。)
飯田はそう考えながらそろそろと図書室内を歩く。
ガタタッ、と本が落ちる音が、奥のほうから聞こえた。
(あっちか。)
飯田が音のしたほうに静かに近寄ったそのとき、
タタン!
飯田の後ろで誰かの足音がした。
(え??)
いつのまにか背後にいた辻加護は、2人同時に飯田のケツをパーン!と平手ではった。
「いってーーー!!」
いたがる飯田を見て、辻と加護は、ひゃはは! とお子様声で笑って、タタターッと
飯田の背後の本棚の奥へ消えた。
(くそ…、このちびっこめぇ。)
ヒリヒリいたむケツを気にしながら、飯田は辻加護が隠れた本棚の奥へ近寄る。
飯田が本棚の奥をのぞこうとしたそのとき。
パパーーン!!
「いってぇ!!!」
いつのまにかまた飯田の後ろにいた辻加護が、飯田のケツをさっきより勢いよくはり
つけた。
またも飯田の後ろで、高らかに笑うちびっこギャング。
「飯田さんー、なにしてるんですかー??」
「辻たちこっちれすよー。」
タタターッとまた別の本棚の奥に消えた辻加護を見て、飯田も考えた。
(いつのまにか後ろ回られてる……。まさか、武器の力?)
- 125 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)16時03分15秒
-
「あんたたち、なんか能力使ってるでしょ!」
飯田は図書室に響く、大きな声で言った。
「カオリ、もう本気だからね!」
飯田は≪ロボコップ≫を発動させた。銀のヨロイが飯田を包む。
≪ロボコップ≫のグラスを通して、図書室を見回す。
ピピピピピー。
≪ショウメン、2メイカクニン≫、とグラスにメッセージが流れた。
さらに見まわした。
ピピピピピー。
≪ミギウシロ、2メイカクニン≫、とメッセージが流れた。
照準の右上に、≪ゲンザイテキスウ、4メイ≫と出ている。
(は? 4人って……、辻加護の能力って……分身?)
ピピピピピー。
再びバトルメッセージが流れた。
≪ショウメンノ、ホンダナヘ2ハツウテ≫
≪ミギウシロノ、ホンダナヘ2ハツウテ≫
飯田はバシュッ!と銃を取りだし、正面の本棚の上のほうに向けて、ドン!
ドン!と撃った。
ドガガン!と本棚で弾がはじけ、本棚の奥にドサドサドサッ!!と本が落ち
る音がして、
「「うぎゃあ!!」」
という辻と加護の声が聞こえた。
続けて飯田は右後ろの本棚へ向けて、2発撃った。
ドガドガン!と弾のあたった本棚が揺れ、ドサドサドサッ!!とまた本が落ち、
再び「「うぎゃ!!」」という辻と加護の声が聞こえた。
- 126 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)16時04分19秒
-
飯田はふたたびグラスを通して室内を見まわす。
ピピピピピー。
≪ショウメン、2メイカクニン≫
右、左、後ろ、と確認するように見まわしたが、グラスの反応はない。
右上には、
≪ゲンザイテキスウ、2メイ≫
と出ていた。
(分身がとけたのかな。)
飯田は、正面の本棚奥へ近寄った。
本棚奥には、ホームズやらルパンやらの分厚い推理小説に埋もれた辻加護がいた。
飯田は辻と加護の首を捕まえた。
「はい、つかまえた。カオリの勝ちー。」
首をつかまれて目を開けた加護は、飯田の姿を見て驚いた。
「……いいださん、ロボットじゃないですかー!」
その声で目を覚ました辻も、驚いた。
「ロボれす!!」
「これが、カオリの武器。けっこう強いよー。はい、じゃ、約束のカードちょうだい。」
辻と加護に手を差し出す飯田に、加護はきまり悪そうに笑う。
「…えへへ。」
辻が小さな声で言った。
「じつは、カード持ってないのれす……」
「え! ないの!?」
飯田も目を見開いて驚く。
「鬼ごっこしたかったから、嘘ついちゃったんです……ごめんなさい。」
加護が丁寧に謝った。
「ごめんなさいれす。」
辻も謝った。
お子様2人に謝られて、許さないわけにもいかない大人、飯田。
「ま、いいよいいよ。ちょっと楽しかったし。…ケツいたいけどね。」
自分のケツをさする飯田。
- 127 名前:3−4 ちびギャン制圧作戦! 投稿日:2001年06月26日(火)16時05分46秒
-
飯田は辻加護に聞いた。
「カード見つけてないの?」
「見つけたんれすけど、中澤さんに持ってかれたのれす……。」
辻は残念そうだ。
「そっかあ……。ひらがななんだったか覚えてない?」
「のの、でしたよー。」
加護が答えた。
「のの?」
「そうれす。『の』と『の』だったれす。」
辻が下ったらずに答えた。
「へー、二つ同じだったんだー……。」
飯田は少し交信している。
「じゃ、カオリ行くね。」
飯田は≪ロボコップ≫を解除して、図書室の出口にむかう。
(あ、そうだ)
飯田は思いついたように辻と加護にふり返った。
「裕ちゃんの能力、どんなんだった?」
辻と加護の表情が、同時に恐怖で曇った。思い返しているんだろう。
「「 ………… 」」
黙ったまんまの辻加護。
「どうしたの?」
「…怖かったれす。」
思い出しておびえる辻。
加護が小さな声で言った。
「10人の中澤さんにかこまれたんです……。」
「じゅ、10にん?! 裕ちゃんも分身かー。」
飯田も驚いた。
「ありがとね。じゃあねー。」
飯田は辻と加護に手を振り、図書室を出ていった。
(ゆうちゃんが、10人……うぅ、こわ。)
特別棟の廊下を歩く飯田は、10人の中澤を想像して、ちょっとビビッた。
飯田、カード2枚『く』『そ』(変わらず)。
後藤、カード0枚(お昼寝中)。
辻加護、カード0枚(おびえ中)。
- 128 名前:うずモニ。 投稿日:2001年06月26日(火)16時08分58秒
- 「3−4 ちびギャン制圧作戦!」でした。
更新おしらせ上げ。
- 129 名前:178 投稿日:2001年06月26日(火)18時07分50秒
- ちびギャンでましたね〜(w
辻加護は毎回おびえてますね。やっぱり新メンバーがオールドメンバーに勝つのは難しいんでしょうね。
やはり「亀の甲より年の功」(でしたっけ?)って感じですね!
- 130 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)19時50分10秒
- てか、探知も出来るんですか。飯田の能力は。
これって何かを探知してるんですかね?
エアロスミスとかシアーハートアタックみたいに。
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)20時33分10秒
- うわー、飯田強っ!
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月26日(火)20時57分13秒
- 敗者復活するんですねー。
好戦的な吉澤とか、あくまでお遊びなちびっこもいいし。番犬の復帰も楽しみです。
そしてヒロイン(自分の中で(笑))の姐さんの今後は……
- 133 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月26日(火)21時03分46秒
- やっぱメカ系の飯田のスタンドは強いっ!
その気になれば相手をボコボコに出来るはず!
まぁ、本人が悪い人ではないので安心して見れました。
飯田GOOD!
- 134 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年06月26日(火)23時21分20秒
- ポルナレフはいつでますか?
- 135 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年06月27日(水)17時45分48秒
- >>134
その前にSPW財団が出ます。(W
- 136 名前:名無し 投稿日:2001年06月28日(木)20時51分10秒
- ちゅうちゅうちゅうちゅうチュウ・・・(笑)
ちびギャンと飯田の取り合わせは現実でも架空でもいい感じだよねぇ。
お尻を擦る飯田といいワン公と戯れる保田といい、妄想して萌えてる俺は作者に
いい様に踊らされている(笑)
いかん、いかん、け、圭ちゃんを出せ!(w ガルルルルルッ
>>134->>135
2人の掛け合いおもろい、ワラッタ
- 137 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月03日(火)07時04分42秒
- 更新されるんでしょうか?もう更新するのは月曜日だけですか?
- 138 名前:名無し 投稿日:2001年07月03日(火)08時08分13秒
- >>137
作者さんもいろいろあるだろうから、気長に待ちましょ。
- 139 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月03日(火)21時58分31秒
長らく放置して申し訳ありませんでしたm(__)m
やっと更新です。
自分で月木更新を宣言しておきながらこの有様…(^w^;)
もう、完結まで月木更新でいきます!
もちろん、明後日の木曜日も更新です!
>>129 178さん
新メンバーが旧メンバーに勝つのはちょっとしんどいみたいですね。
精神力の差がありますからね(w
>>130 名無し読者さん
飯田の≪ロボコップ≫の能力は何で探知してるかといえば…
それはズバリ、衛星電波です(w
受信してます。(今作った設定……)
>>131 名無し読者さん
飯田は強いスタンドですよ(w
たぶん、加減しなければ人も殺せちゃうのでは……
>>132 名無し読者さん
敗者復活はしてますね。
戦いに負けても、即リタイアにはならないので。
ヒロインの姐さんの、今後にご期待ください。活躍します。
>>133 名無しスタンドさん
飯田は強いっすよ(w
辻加護に対しては、直接撃たずに本を降らせましたね。
先輩としての愛情でしょうか?
- 140 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月03日(火)21時59分46秒
>>134 名無し募集中。。。さん
ポ,ポルナレフですか…シルバーチャリオッツですね。
今後出ることがあるようなないような……(w
>>135 名無しスタンドさん
ス、スピードワゴン財団ですか……
それも出ることがあるようなないような……
(^▽^)しないよ
>>136 名無しさん
3、3、3、、、なぜでしょう。3の文字が頭から離れません(w
お尻を擦る飯田、犬と戯れる保田。
どちらもほほえましい図ですよね。
どんどん、踊ってください。
ノリが冷めないよう踊らせつづけたいです(w
保田の出番はまだあります。どうぞお待ちくださいm(__)m
>>137 名無しさん、さん
ほんと〜〜に申し訳ありませんでしたm(__)m
やっと今日、しかも火曜日に更新です…。
完結まで「月木更新」で突っ走ります!
>>138 名無しさん
気長に待ちましょ……(泣)なんとありがたいお言葉。
勝手に「月木更新です!」って謳っときながら、無断放置…。
深く反省するとともに、きっちり月木更新でいく覚悟をもう一度固めましたm(__)m。
もう一度、読んでくださってる方々へ。
申し訳ありませんでしたっ!m(__;)mm(;__)m
あと数回の更新となるでしょうが、よろしくお付き合いください。
うずモニ。
- 141 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月03日(火)22時03分11秒
それでは、
「3−5 恋せよロボット」
です、どうぞ。
- 142 名前:恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時05分51秒
ちびっこギャングを倒した飯田圭織は、特別棟3階の廊下を歩く。
(裕ちゃん10人って……とんでもないな。)
まだ会わぬ中澤の能力におびえながら、飯田はすたすたと歩く。
(後藤はカード持ってなかったし、辻加護も持ってなかったし……後藤からも
らった吉澤か、辻加護から奪った裕ちゃんか……裕ちゃんは怖いな。吉澤探すか。)
飯田は腹を決めて、特別棟の3階の渡り廊下を渡る。
3階の渡り廊下は屋上になっていて、怪しく曇った空がよく見える。赤い鉄
柵が渡り廊下の両端に張ってある。
飯田は渡り廊下の真ん中で止まり、にごった空を見つめて、ため息をついた。
「はぁ…、ちゃんと出れるのかな…。」
飯田は教室棟3階に入り、教室をのぞいていく。
3−Eをちらっとのぞいてみた。だれもいない静かな教室。
3−D、3−Cとのぞいていくが、人影もなければ物音もしない。
(この階、誰もいないのかな?)
- 143 名前:3−5 恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時07分01秒
飯田は3−Bの教室をのぞいた。
中には、石川がいた。
石川は後ろのほうの席に座ってぼんやりと、曇った外を眺めている。
(石川か。こいつはやる気かな?)
「石川ー。」
飯田の声に気付いた石川が振り向いた。
「飯田さん。」
飯田は3−Bの教室に入り、石川の席に近寄り、話しかけた。
「えー、元気でやってますか?」
「元気です。」
石川はクスッと笑った。
「なんだよ、笑うことないじゃん。」
「だって、飯田さん、かしこまってるから。」
口に手を当てて上品に笑う石川。
「あのさ、吉澤に会った?」
「…いえ、会ってませんよー。」
「そっかあ…。」
飯田は、むー、と腕を組み考えている。
石川は悩む飯田を不思議そうに見つめる。
(一応、聞いとくか)
飯田は静かに聞いた。
「石川、カードみつけた?」
え、カードですか? と石川は言った。
「2枚、見つけましたよー。」
(2枚も手に入れたか。)
- 144 名前:3−5 恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時07分52秒
-
でもー、と石川は言い、次に飯田が予想もしてないことを言った。
「カードは、飯田さんにあげます。」
「は?」
飯田は怖い顔になって石川を見た。怒ってるわけではない。
わけがわからないのだ。
石川は少し暗い顔をして笑った。
「飯田さんのほうがいいですよ。石川は多分ダメだと思います……。」
「なにいってんだよー。これ、ソロかけた勝負だよ。石川にだってチャンスあ
るんだから、投げちゃダメだって。」
「でも、いいんです。石川は飯田さんにソロになってほしいです。あたしはも
っとあとでいいんですよ。歌、ヘタだし……。」
ネガティブ思考は相変わらずの石川。
(たしかに、石川ソロは歌的にキツイかな……)
と、そんなことは心の中だけ。飯田は励ました。
「んなことないって。石川だって上手くなってるじゃん。」
(歌上手くても、石川の声のキャラがな……。売れ線の曲、選びにくいなあ……)
石川は首を横に何度も振った。
「そんなことないです…まだ、ぜんぜんダメですもん…。」
諦めのついた晴れやかな顔をして、石川は元気に言った。
「カードは、飯田さんにあげます!」
はい! と飯田に2枚のカードを差し出す石川。
(うーん……ま、せっかくだし、もらっとこ♪)
- 145 名前:3−5 恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時08分35秒
-
と飯田がカードをもらおうとしたとき、飯田の頭の中に≪ロボコップ≫の
メッセージが流れた。
≪ソノカード、モラッテハイケナイ≫
(は、なんでよ。くれるってんだからいいじゃん。)
≪イヤナヨカンガスル≫
(嫌な予感って?)
≪ワカラナイガ、モラッテハイケナイ≫
宙をにらみつつ、自分のスタンドと心の会話をする飯田。
端から見たら、あーまた交信中か、と思われたことだろう。
(なんだってんだよ…。)
飯田は目線を石川に合わせた。
まっすぐにこちらを見ている石川がいる。
飯田は静かにたずねた。
「…石川、なんかたくらんでない?」
「え? たくらむって…なにをですか?」
純真無垢、という感じで、問い返す石川。
- 146 名前:3−5 恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時09分13秒
-
飯田は石川のカードを受け取らずに、1歩後ろへ下がった。
「あんたも、能力もらったよね? それでカオリのことはめようとして…」
石川は驚き、急に涙ぐみ、机に顔を伏せてしくしくと泣き出した。
「ぅぅ、飯田さん…、ひどいです………。あたし、協力したかっただけなのに、
そんなこと……」
「ご、ごめんごめん! カオリの勘違い! そうだよね、そんなことないよね。」
飯田は慌てて石川のそばに駆け寄って、自分のハンカチをさしだす。
「ほんとごめん。ほら、涙ふいてよー。」
涙の石川は、ゆっくりと顔を上げた。
「…ほんとですか…、ぅぅ、、石川のこと疑ってませんか?」
「疑ってないよ。ね、涙ふいて。」
石川は飯田からハンカチを受け取ると、涙をぬぐった。
「…ありがとうございます。……ハンカチ汚れちゃいましたね……」
「いいっていいってそんなの。」
「…やっぱり飯田さんに頑張ってほしいです……。カードもらってください。」
石川は涙声でそう言うと、飯田に2枚のカードを差し出した。
「う、うん。そこまで言うんなら…もらっちゃうね。」
目の前に出されたカードに少し戸惑いながらも、飯田はカードを受け取った。
石川は飯田の目をまっすぐ見て、満面の笑顔を向けた。
飯田もその笑顔にこたえて、笑いかける。
- 147 名前:3−5 恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時10分06秒
-
そのとき、飯田の心が、捕らわれた。
目の前の石川が、とても可愛く見える。
笑いかける石川の笑顔が、頭から離れないはなれないハナレナイ……
(石川……こんなに可愛いやつだったのか……
石川より先にカオリがデビューなんておかしい。
石川だ。やっぱ石川だ。
石川じゃなきゃダメだよ……
石川をソロデビューさせてあげたいアゲタイ……)
飯田の頬はほてり、瞳には恋の光が宿る。
宙をぼんやり見つめる飯田の顔は、どこか幸せそう。
飯田は熱のこもった声で話しかけた。
「…石川。」
「はい。」
「やっぱ、カオリがおりるよこの勝負。」
「え?」
「だから、石川に協力する。」
「なに言ってるんですか? あたしは飯田さんにソロに…」
「カオリよりも石川だよ!!」
飯田は語気を強め、石川はそれにびびった。
少しおびえた石川を見て、焦る飯田。
「ご、ごめん。おどかしちゃった? 違うんだよ。カオリなんかよりも石川に
ソロになってほしいんだ……だからついむきになっちゃった。ごめんね、ごめんね」
「は、はあ…」
まだ少しおびえている石川。
- 148 名前:3−5 恋せよロボット 投稿日:2001年07月03日(火)22時12分58秒
-
「だ、だから、カードは石川に返すよ。あ、あと、カオリのカードも。はい!」
石川からもらったカード2枚に、自分の持ってたカード2枚足した4枚を、
石川に無理やり渡す飯田。
「あ、ありがとうございます…」
石川の御機嫌を伺うように、あやまる飯田。
「そ、そんなおびえないでよ。ごめん。」
「大丈夫です。おびえてないですよ。」
「カオリのこと、嫌ってない?」
「嫌ってないです。」
微笑む石川。それだけでもう、幸せな飯田。
「そ、そっか。よかったあー。石川に嫌われたら、カオリ生きてられないよぉー。」
よし、と飯田は言って、石川の手を引っ張る。
「吉澤探しに行こう! あいつたぶん、カード2枚持ってるはずだから。」
「え、そうなんですか?」
「うん。カオリが奪って、石川にあげる!」
元気な飯田に連れられて、3−Bを出た石川。
石川姫にメロメロなボディガード飯田は、強気で廊下を進む。
恋は人を強くする。
ときどき姫のほうを振りかえり、姫の微笑で幸せに浸る飯田。
飯田が見てないときに、クスッとダークに笑う石川に、気付くことは、ない…。
………≪ゼアズサムシングアバウトメリー 石川梨華に恋をする≫………
石川、カード4枚『か』『く』『そ』『な』
飯田、カード0枚(恋の奴隷、中)。
- 149 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月03日(火)22時17分37秒
3−5 恋せよロボット、でした。
木曜日もきっちり更新しますので、どうか、よろしくお願いしますm(__)m
- 150 名前:178 投稿日:2001年07月03日(火)22時30分04秒
- 嗚呼、飯田が石川に・・・。
飯田がだめなら他のも期待できない気がするのは僕だけでしょうか。
どんどん石川がダークなキャラなってきますね(泣
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月03日(火)22時53分59秒
- 黒い石川、いいですねぇ。飯田・・かわいい(W
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月04日(水)20時43分39秒
- すごく面白いです!
石川かなり強そうですね。
誰が石川のスタンドに勝てるんだろう?
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月05日(木)18時04分34秒
- 後藤なら勝てるぞ!!(藁
- 154 名前:名無し 投稿日:2001年07月05日(木)23時37分56秒
- あと数回ですか・・・。「いよいよ・・・」といった感じでしょうか?
この物語の結末には何が待ってるんでしょねぇ・・・本当、期待してます。
- 155 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時17分09秒
# # # # #
矢口を探して校舎中を歩き回っている中澤姐さん。
中澤裕子は……。
# # # # #
中澤ゆうこは、教室棟の1階の廊下を歩いていた。
1階の教室の中をのぞきながら、ゆっくりと歩く。
辻加護(ちびギャン)との戦闘のあと、特別棟を探した。
そのあと渡り廊下を通って、教室棟も探した。
また特別棟に戻ってみたり、いったりきたり。
そして今、教室棟の1階にいるわけだ。
- 156 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時18分39秒
-
1−E、1−Dと、順に教室に入り、中を調べたが誰もいなかった。
中澤は次に1−Cに入った。
曇り空だからだろう。教室は薄暗い。
40近くある席には誰の人影もない。
教室を見まわしながらゆっくりと教室の奥へ進む中澤。
その中澤の足裏に、ぐにっとした感覚が。
「あて!!」
いきなりの足元からの奇声に、ビクっと驚き1歩下がる中澤。
なんと床に、吉澤ひとみが転がっていた。
踏んづけてしまったのだ。
「いってぇ……。」
吉澤がのそっと体を起こし、寝ぼけたまま、踏まれた右足を押さえている。
「……吉澤。」
「な、中澤さん?」
吉澤の眠たげだった目が大きく開いた。少し警戒している。
中澤は冷静に吉澤を観察した。
その大きな瞳からは攻撃性が感じられず、襲ってくるふうでもない。
吉澤は、一試合終えたスポーツ選手のような表情をしていた。
(大丈夫、やな)
中澤は優しく話しかける。
「なんでこんなとこ寝てたん?」
「戦って疲れて、そのまま寝ちゃってたみたいです。」
「戦った? 誰と?」
あ、と吉澤は一瞬戸惑い、
「…や、矢口さんです。」
と言った。
中澤が怖い表情になった。
「矢口やとお? 怪我させたりしてへんやろな?」
吉澤の頭にちらっと「二の腕を押さえる矢口」が浮かんで消えた。
「…も、もちろんっすよ。矢口さんは無傷です!」
「ん、ならええわ。」
- 157 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時19分20秒
ほっとする吉澤に、中澤が聞いた。
「で、矢口はどこいったん?」
「あー、中澤さんを探しに行くって言って、教室出てきました。」
「なんや、入れ違いかあ…。」
腕を組み、苦い顔をする中澤。
吉澤は、よっこいせ、と立ちあがった。
「矢口さんも、中澤さんが探してること知ってますよ。言っときましたから。」
「おお、そっかあ。」
「会えるといいっすね。」
「そやな…。じゃ、矢口に会いに行くわ。」
「中澤さん。」
教室を出ようとする中澤を、吉澤が呼びとめた。
「ん?」
「中澤さんの能力って……幻見せること、ですか?」
「んー……。そうや」
中澤は正直に言うか迷ったが、大丈夫だと判断した。
「そうっすかー! やっぱりなー。くっそお。」
吉澤は悔しがったが、顔は晴れやかだった。
「消えたように見えたのも、弾があたんなかったのも幻のせいかあ……」
と、吉澤は少し前の戦闘を思い出す。
中澤も不敵に笑った。
「じつは幻やってん。」
吉澤がもう一度、くっそー、と言った。
「ん。じゃあ、バイバイな」
と、中澤は1−Cの教室を出ていった。
- 158 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時20分05秒
1−Cの教室を出た中澤は、1−B、1−Aを通りすぎて、玄関前にでた。
中澤は玄関前の地図で校舎図を見る。
(あ、体育館まだ行ってないやん。)
中澤は体育館へ向かった。
職員室、校長室、事務室などを通り過ぎ、体育館への通路をとおって、中澤は
体育館のフロアに入った。
教室とは違うだだっ広い空間が広がっている。
静かすぎて耳が痛くなるような感覚。
中澤がフロアを見まわすと、ステージのあたりに誰かがいるのが、小さくみえた。
歩いて近づくとはっきりした。
ちっちゃい背丈、明るい金髪。
矢口だ。
「おお、矢口!!」
中澤は少し早足になって矢口に近づく。
「裕ちゃん!?」
矢口も気付いた。
中澤は矢口のすぐそばまでくると、矢口の肩に優しく手を置いた。
「探したで…。」
「矢口も探したよ。」
「再会のちゅーしよか……」
顔をスーっと近づける中澤。
「うおっ!」
唇が奪われる直前で、矢口は両手で中澤の顔をずらした。
「ええやん、けちやなあ…」
マジで残念がる中澤。
「場所選べよぉー。」
苦笑いする矢口。
- 159 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時21分19秒
キスを逃して悔しがる中澤は、矢口からちょっと離れたとこに、誰かが横た
わっているのを見つけた。
「…誰かいるやん、あそこ。」
「あー、あれなっちだよ。起こしても起きないんだー。」
キャハハ、と矢口は笑った。
中澤は眠る安倍を見た。
「…そんな疲れたんかいな。」
「眠らされてるみたいだよ。」
「ああ、だれかの≪能力≫か?」
「そうだと思う。」
中澤は、まあ、と言った。
「ちょっと座らして。歩き回って疲れたわー。」
中澤はその場に腰を下ろした。
「そんなおばさんぽいこと言うなよー。」
「はいはい、うちはおばさんや。」
矢口がまた陽気に笑って、同じく腰を下ろした。
- 160 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時22分39秒
-
「矢口、吉澤と戦ったらしいなあ。」
「うん。」
「うちもな、戦ってん。吉澤の能力って、なんや撃ってきたやろ?」
「きたきた! 腕かすって痛かった。」
「なんやて!? ちょっと見せえ!」
中澤は焦って矢口の傷を確認する。
「かすり傷だよ。大丈夫だって。」
「吉澤のやつ、「矢口さんは無傷です!」とかぬかしといて、怪我させてるや
んか。あいつほんま許さんで……」
吉澤に対して怒る中澤を矢口がたしなめた。
「まあまあまあ、矢口もよっすぃ〜殴っちゃったしね。おあいこ。」
「殴ったって、≪能力≫でか?」
「矢口のグーで殴ったんだけど、でも能力っていうか…」
「ちょ、見せてみ。」
「え、能力?」
「うん」
矢口は難しい顔をして、床をにらんだり、空をパンチしたりしている。
「うーん……。……怒らないとダメみたい。それに、よっすぃ〜みたいに人が
出てくるわけじゃないんだよ。矢口がすばやくなったり、殴ったり蹴ったりが
強くなるのが≪能力≫みたい。」
「能力にタイプがあるんやな……。そういや、辻と加護のもそういう感じやった。」
「戦ったんだー。どんな能力?」
「あいつら、分身したで。」
「ぶんしん?! すげー! ほんと不思議だね。」
「ほんま、どうなってんのやろうなあ。」
二人の会話が止まり、耳が痛いくらいの静けさが体育館に戻った。
しばらくして中澤が口を開いた。
「うちは、矢口を助ける。…うちの能力は、矢口を助けるためのもんや。じい
さんの放送でもそう頼んだしな。」
そう言って中澤は自分の肩の上に≪トゥルーマンショー≫を出した。
手乗りリス大のピエロが、中澤の肩にちょこんと座った。
「カワイイじゃん! このピエロ、どんな能力なの?」
「んー、…それは言われへんな。」
中澤は少し迷ったが内緒にしておいた。
「けちー。」
「じゃ、キスと引き換え……」
「けっこうです。」
びしっと両手で否定した矢口でした。
- 161 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月06日(金)04時23分23秒
-
≪トゥルーマンショー≫は中澤の肩から立ちあがると、スゥーッと飛んで矢
口の肩に座った。
中澤は微笑んだ。
「矢口を守るための能力や。矢口が持っとき。」
矢口は少し考えてから、照れ笑いで答えた。
「……んー、そうだよね。裕ちゃんはソロデビューしてるし。協力してもらっ
てもいっか。」
「演歌、やでー。」
「演歌でもソロはソロなの。」
「ちぇ。」
二人分の笑い声が体育館に響いた。
中澤&矢口、カード6枚『あ』『た』『の』『の』『ヘ』『ぴ』。
- 162 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月06日(金)04時27分48秒
「3−6 運命の再会」でした。
つ、ついに、中澤ゆうこと矢口真理が再会できました(泣)。
- 163 名前:178 投稿日:2001年07月06日(金)04時43分43秒
- 今回は戦闘は無しのようですね。
これからは矢口中沢対飯田石川という図式になるようですね。
- 164 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月06日(金)17時48分55秒
>>150 178さん
飯田は、石川梨華に首ったけになってしまいました(w
石川は、メンバー唯一の「女の子キャラ」なので、
他のメンバーを惚れさせるのは、ある意味得意技ですから(w
ダークな石川は、スタンド能力と共に、精神面でも有利です。
さて、どうなるですかーー!?(w
>>151 名無し読者さん
黒石川、わかっててやってるので相当ブラックですな(w。
石川に嫌われたくなくて必死な飯田は、なかなかカワイイです。
きっと飯田は、愛する石川の為に張りきることでしょう。
>>152 名無し読者さん
すごく面白い……ありがとうございます(泣)。
石川のスタンドは、精神に働きかけるため強いですね。
≪ゼアズサムシングアバウトメリー≫の発動条件は、「満面の笑み」。
これを至近距離で浴びせるチャンスさえあれば、誰もが石川のとりこ(w
さてさて、どうなるですかー!?!?
>>153 名無し読者さん
後藤は…精神スタンドに対して強そうですね。マイペースだし(w
なにより後藤はすでに「いちーちゃんのとりこ♪」なので、
≪ゼアメリ≫の能力がまーったく効かないかもしれません(w
>>154 名無しさん
はい、あと数回となってまいりました。
戦いも進んできて、カードも集まってきて……
結末へむけて突っ走るのみです!(w
>>163 178さん
うお! リアルタイムで読んでいただいてる(w
今回は、中澤矢口の再会だけでした。ポイントのシーンでしたので(w
中澤矢口VS飯田石川、この戦いは避けられないでしょうね…。
- 165 名前:名無し 投稿日:2001年07月07日(土)20時05分13秒
- 物語は終局へ・・
姐さんとチャーミーをどう描くのか、うずモニ。さん、マジ期待してるよ!
( `.∀´)<・・・(ニヤリ)
最後に笑うのは・・・(w
- 166 名前:名無し 投稿日:2001年07月08日(日)13時25分24秒
- 改めて見たら前レスも「期待してるよ」だった(ワラ
- 167 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月09日(月)02時07分48秒
>>165-166 名無しさん
期待にこたえられますように(゜w゜)…
162で、矢口の表記を間違えてしまいました…。真里だよね真里……
矢口ファンの皆様、申し訳ありませんでしたm(__)m
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月10日(火)17時47分04秒
- 今回の更新は無しですか?
- 169 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)17時53分24秒
またまた更新が遅れておりますm(__)m。
おわびに、娘。たちのスタンドデータを一覧にしてみました。
スタンドデータの一覧の後、本編が続きます。
それでは、
「スタンドデータ」
「3−7 4人祭りは盛大に(前編)」
です。どうぞ。
- 170 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)17時55分30秒
>>168 名無し読者さん
ひじょーに申し訳ないです(泣)。やっとこさ更新です(^w^;)
- 171 名前:スタンドデータ 投稿日:2001年07月10日(火)17時57分23秒
中澤裕子 (スタンド:トゥルーマンショー 能力:幻影
<リス大のピエロ。射程距離50m>
相手に幻覚を見せる能力。相手に嘘の映像を見せられる。
矢口を守るために発現した能力)
保田圭 (スタンド:スターゲイト 能力:転送
<近距離パワー型。犬型(というか犬)>
空間にゲートを開けて、転送してしまう能力。
転送先が遠ければ遠いほど、体力を消費する。)
飯田圭織 (スタンド:ロボコップ 能力:武装
<銀のロボット装甲>
身にまとうタイプのスタンド。
主に、右足に装備されてる銃が武器。
グラスを通してサーチも出来る。)
安倍なつみ(スタンド:ナッティプロフェッサー 能力:体型操作
<白衣を着た博士。ポケットにはいるぐらいの大きさ>
スタンドは安倍のからだの中にいる。
自分の体型を自在に操る能力。太ったりやせたり出来る。)
矢口真里 (スタンド:ガールファイト 能力:格闘
<スタンド体なし>
格闘技全般を使いこなせる能力。
その格闘技の種類は多岐にわたり、
世のほとんどの格闘技の技を使える。)
- 172 名前:スタンドデータ 投稿日:2001年07月10日(火)17時58分19秒
石川梨華 (スタンド:ゼアズサムシングアバウトメリー 能力:魅了
<スタンド体なし>
自分の可愛さに惹きつけて惚れさせてしまう能力。
至近距離での笑顔が、発動条件。
体の力が完全に抜けてしまうほどの媚薬効果を相手に与える。)
吉澤ひとみ(スタンド:パールハーバー 能力:爆撃
<人型。メタリックな感じ>
爆撃の能力。
指をはじくことで、弾丸を撃てる。
近距離パワー型なので力もある。)
後藤真希 (スタンド:ロミオ&ジュリエット 能力:夢想
<フランス人形みたいな>
愛する人(いちーちゃん)の夢をいつでも見ることが出来る能力)
辻希美&
加護亜依 (スタンド:ツインズ 能力:分身
<実体はない>
2*2の4人に分身出来る能力。
二人でいるときのみ使用可能。)
- 173 名前:3−7 4人祭は盛大に(前編) 投稿日:2001年07月10日(火)18時02分23秒
体育館のフロアに座って話す、中澤と矢口。
2人の話題は、お互いの事から、他のメンバーの事になった。
中澤は体育館の入り口を見ながらつぶやく。
「他のメンバー、どうなってんのやろなあ?」
「どうなんだろ? カオリ頑張ってんじゃない?」
「あー、張りきっとるやろーなあ。」
矢口は腕を組んで、考える。
「うーん…辻と加護と吉澤、寝てるなっちは置いといて、圭ちゃん、
カオリ、後藤、石川か…。」
「後藤は、あんまやる気ないおもうで。」
「だろーねー。」
中澤はフロアにごろん、と寝っ転がった。
「たぶん、カオリが残りのカード持ってんのちゃうかな?」
矢口も中澤の横にごろん、と寝っ転がった。
「カオリか……どんな能力なんだろうね?」
二人で体育館の背の高い天井を見つめ、少しボーーーッとする。
十分にリラックスしたあと、中澤が言った。
「おし、ほんなら、カオリ探しにいこか?」
「うん。」
- 174 名前:3−7 4人祭は盛大に(前編) 投稿日:2001年07月10日(火)18時03分31秒
-
そのとき、体育館の入り口に、二人の影が現れた。
「あ、いたいた! ほんとだー。」
と、大きな声が体育館に響いた。
((カオリの声。))
中澤と矢口はパッと体を起こし、入り口のほうへ振り向く。
なにやら元気な飯田と、その後ろに手を引かれているのは、石川だった。
「カオリ…?」
「と石川?」
予想外のペアの登場に驚く矢口と中澤。
飯田は石川を連れて、すたすたと中澤矢口のほうへ近づく。
飯田が元気に、後ろの石川に話しかけた。
「吉澤の言うとおりだったね!」
「そうですねー。」
驚きながらも立ちあがり、突然の来訪者飯田石川を迎える、中澤矢口。
飯田石川は必要以上に近づくことなく、距離を保った位置で止まった。
少し興奮ぎみの飯田が言った。
「吉澤がね、たぶん中澤さんと矢口さんは一緒にいる、って言ってたからさ。」
「…吉澤に会ったんか?」
まっすぐ冷静に飯田を見たままの中澤姐さん。
「うん。吉澤からカード奪おうと思ったんだけどねー。中澤さんに取られちゃっ
たって言ってたから。」
飯田は悪びれる様子もなくそう言った。
奪おう、という飯田の言葉を聞いて警戒する、中澤矢口。
- 175 名前:3−7 4人祭は盛大に(前編) 投稿日:2001年07月10日(火)18時04分15秒
-
中澤は思った。
(えらい好戦的やな。やる気ってことか。)
(石川は従えたんか?)
中澤が石川に目線を移すと、石川はそれに気付いてクスッと笑った。
中澤は再び飯田に目線を戻して、聞いた。
「…なんで石川が一緒にいるんや?」
石川、という言葉を聞いて、とたんに飯田の様子が変わった。
顔が赤くなり、表情がゆるんでいる。
「え、なんでって……、カオリが守ってるからに決まってんじゃん!」
自分の決意を高らかに発表するかのように、飯田は言いきった。
矢口が飯田をにらんで言った。
「はぁ?」
矢口は中澤に答えを求めるように、中澤の顔を見る。
中澤は思った。
(おかしい……、カオリの様子が変や。普通やない。)
石川の方を誇らしげに見つめる飯田に、中澤はピンと来た。
(石川に、あやつられてるんか?)
中澤は探りの質問を飯田に投げかけた。
「石川を守るって…、石川に協力してんのか?」
「うん! カオリは石川の役に立ちたいの。」
大きな瞳でまっすぐに返す、DON’TSTOP恋愛中、飯田。
飯田は一気に喋り出した。
「カオリはさ、石川が1番ソロにふさわしいと思うんだ! 歌だって最近上手
になってきたし。カントリーで別活動したのだっていい経験だよ。度胸もつい
たし…、みんなにも良く知られてるし…、印象に残る声だし……」
「それに、カワイイし、やろ?」
中澤の適切な突っ込みに、照れまくりで喜ぶ飯田。
「そう! そうだよそうだよ、わかってんじゃん裕ちゃん。」
- 176 名前:3−7 4人祭は盛大に(前編) 投稿日:2001年07月10日(火)18時05分21秒
-
飯田は話を続ける。
「だからだからね、石川はね、1番ソロになるべきなんだよ。だからそれにカ
オリも協力してるの。裕ちゃんも矢口も協力してくれない?」
二人を見つめて返答を待つ飯田。
中澤は、一呼吸おいて、返した。
「むりやな…、うちは矢口にソロになってほしいねん。」
飯田はふぅ、とため息をついた。
「やっぱりね……。ま、カオリもダメもとだったからさ……」
飯田の声が落ちつき、冷徹な表情が現れ始めた。
「別にいいんだよ。協力してくんなくても、奪うだけだから。」
飯田はいきなり、ギュオン!!と≪ロボコップ≫の銃だけを右手に発動させ、
中澤と矢口の足元にドンドンドンドン!!と撃った。ガンガァン!と、二人の
脚元に穴があいた。
弾は安倍のときとは違って、麻酔弾ではない。ダメージを与える弾丸だ。
無言で固まる中澤と矢口。
矢口が静かに言った。
「それが、カオリの能力……。」
飯田は矢口をみて、口だけで笑った。
「そうだよー。矢口の能力はどんなの?」
「……いうかよ。」
「なんだよ、教えてよ。吉澤に聞いたんだけどさ、結局教えてくんなかったんだ。」
矢口は、ん? という顔をした。
「吉澤に……聞いた?」
「うん。矢口と吉澤って戦ったんだよね? 吉澤にそう聞いたから、矢口の能
力教えてもらいたかったんだけど。吉澤のやつ強情でさあ……、ちょっと痛め
つけたんだけど、口割らなかったんだー。」
「痛め、つけた……」
矢口の怒りが、徐々に上がっていく。
中澤と石川は、矢口の怒りを感じて後ろに下がった。
- 177 名前:3−7 4人祭は盛大に(前編) 投稿日:2001年07月10日(火)18時06分20秒
-
怒りに震える、矢口。
「…吉澤を、、、痛めつけた?」
「そう。でもさ、矢口に義理立てしてんのか、頑固な…」
「…ゆるさねえ!」
矢口はそう叫び、怒りまかせに飯田に対し突っ込む。
飯田は冷静に矢口を観察する。
矢口のスタンドは現れていない。いや、よく見ると肩に小さなピエロが乗っている。
飯田は思った。
(あれが矢口のスタンド…。パワーはなさそう。)
(返り討ち)
飯田は矢口の腹部に狙いを定めて、ドン!と撃った。
しかし≪ロボコップ≫の弾は、飯田の予想に反して矢口をすりぬけ、体育館
のフロアをドガン!と破壊した。
(え?)
飯田があっけに取られている間に、矢口は自分の間合いに飯田をとらえた。
飯田はとっさに、≪ロボコップ≫を完全に発動させ、装甲をまとう。
怒りで≪ガールファイト≫を発動させた矢口は、飯田の膝にプロテクターの
上から鋭いローキックを入れ、続いて古武術流の肘鉄をドン!!っと、装甲の
上からみぞおちに打ちこみ、痛みで体を折る飯田のあごに、掌底をガキャッ!!
と打ちこんだ。
「ぐ!」
と声を漏らし、装甲に包まれた飯田はフロアにドザァ!と倒れこんだ。
一瞬にして装甲をまとった飯田に驚いた中澤は声を上げた。
「ロボット?!」
矢口を見て心配する中澤。
「矢口! 怪我ないか?!」
「大丈夫。手ごたえもあった。」
中澤のほうを見ずに、受けこたえる、闘神矢口。
倒れた飯田に対し、まだ構えをとかない矢口は、肩を上下させつつ飯田を見ている。
心配そうに見ていた石川が、高い声を上げた。
「飯田さん! 大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫へいきへいき!」
飯田は痛む体をなんとか起こした。
(確かに当たったはず……)
(今の矢口の動き、普通じゃない…。あのピエロの能力?)
(裕ちゃんは…たしか分身の能力…)
- 178 名前:3−7 4人祭は盛大に(前編) 投稿日:2001年07月10日(火)18時07分16秒
-
いろいろな考えが飯田の頭を飛びかった。
そしてその飯田の頭に、バトルメッセージが流れた。
≪ゼンリョクデイケ≫
「ちっ…」
と飯田は舌打ちした。
「言われなくてもわかってんだよ…」
矢口は、さらに構えを固めつつ、飯田に寄る。
「は!」
掛け声と共に、飯田に向かってくる矢口。
その矢口の姿をバトルグラスで捉える。
ピピッと照準が矢口に合い、情報を伝える。
ピピピピピー。
≪ショウメンノテキハ、マボロシ≫
≪ヒダリ30ドホウコウニ、ウテ≫
飯田はメッセージの通り、左に向けてドンドン!と、弾を放った。
少し驚いた矢口は、足をキュッ!と止め、体をひるがえして弾をよけた。
ガンガンッ!と、フロアに二つの穴があいた。
矢口は飯田に対して、先ほどより離れた間合いを取った。
矢口は飯田から目を離さぬまま、中澤に話しかけた。
「裕ちゃん。」
「うん、見破られてんなあ。けど大丈夫や。今の矢口の素早さあったら当たらへん。」
中澤は冷静な判断をした。
飯田はグラスを通して、矢口と中澤をじっと観察する。
照準が矢口の肩のピエロに合い、スタンドのデータが出てきた。
ピピピピピー。
≪ノウリョク:ゲンエイ≫
≪ノウリョクシャメイ:ユウコ・ナカザワ≫
(なるほど。あのピエロは裕ちゃんの能力。となると、辻加護の話は…間違いか。
幻影、で分身能力に見せかけたんだな……)
(でも、能力の謎が解けたところで……。矢口の能力は強い。装甲の上からでも
すごいダメージ…。分が悪い。)
(銃じゃダメだ。かわされる。接近戦で肉を切らせて骨を絶つしかないか……)
素晴らしい判断力で、普段の天然さを微塵も感じさせない、恋する飯田だった。
飯田は戦法を接近戦に切り替えた。
- 179 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)18時12分02秒
「3−7 4人祭は盛大に」でした。
更新遅れてしまい、失礼しましたm(__)m
- 180 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)18時13分26秒
- 「4人祭は盛大に(後編)」に続きます。
- 181 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)18時14分46秒
- 白板の名作、「導かれし娘。」に倣って、コメント無駄打ちです。
- 182 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)18時16分01秒
- うーん、打つ事がない……
- 183 名前:3−6 運命の再会 投稿日:2001年07月10日(火)18時18分13秒
- >>171-178 ←今回更新分です
- 184 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)18時19分26秒
- やば、題のとこ間違えた。かっこわるい…(;−:)
- 185 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月10日(火)18時21分36秒
- それでは、また木曜日にm(__)m。今度こそ、かっちり更新を……
- 186 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月10日(火)18時49分38秒
- いつもながら面白いけど
梨華タンが目立ってない(泣
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月11日(水)19時08分02秒
- 裕ちゃん以外は全員タンポポメンバーって言うのは何か意味があるのですか(笑)?
- 188 名前:名無し 投稿日:2001年07月12日(木)12時07分39秒
- ( `.∀´)<DON'T STOP T&Cボンバー〜♪
恋する飯田、たまんない(笑)
飯田のバトル描写おもしろかったし、赤面デレデレでかわいいし、接近戦に切り替えた
飯田が何を持ってくるのか、姐さんvs清水の対決は見られるのか、楽しみ楽しみ♪
ウォーーーーーン(w
- 189 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)02時58分50秒
>>186 名無し読者さん
レスありがとうございます。
前編では石川の出番がなかったですね。
今日の後編で出てきますm(__)m
>>187 名無し読者さん
レスありがとうございます。
中澤、矢口、飯田、石川…、ほんとですね。タンポポだ(w
しかし、全くの偶然です(w
なんの意図もありませんでした…。
>>188 名無しさん
レスありがとうございます。
おー、犬が吠えてる…(w
恋する飯田は、さてどんな戦いを…(w
つづきは、後編をどうぞm(__)m
それでは、
「3−8 4人祭は盛大に(後編)」
です。
- 190 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時00分22秒
-
飯田は装甲の一部(ヘルメットや、手足のパーツ)をギュイン!と解除し、動き
やすく軽量化した。
防御力は下がるが、それ以上に素早さと攻撃力が上がる。
矢口に向かって素早く間合いを詰める。
(幻影能力に惑わされないうちに、矢口を捉えたい)
ヘルメットを解いて軽量化した今、幻影は見破れない。
矢口も構えた。
飯田の≪ロボコップ≫の攻撃は銃が主だが、それだけではない。
装甲による防御と、装甲によるパワーアップ。
パンチ力、キック力、素早さともに、常人の域を越えている。
飯田のスタンド≪ロボコップ≫は肉弾戦も得意なのだ。
飯田は矢口に向かってパンチを放った。そのパンチをあざやかにかわす矢口。
かわしながら矢口は、装甲の解けた膝にローキックを狙う。
飯田もなんとか、矢口のローを紙一重でジャンプしてかわした。
そしてそのまま、ジャンプの勢いで浴びせるように右足で蹴りを放つ。
しかし闘神矢口は、一枚上手だった。
(巧い)
と心の中でつぶやく余裕すらあった。
飯田の蹴りをかわすでもなく真っ向から防ぐでもなく、両手でつかむように
受け流し、自分の体(たい)を反転させ、その蹴りの勢いを利用して飯田を投
げ飛ばした。
自分の蹴りの勢いで飯田は宙を舞い、体育館のフロアにドガッ!と飯田の体が落ちた。
(くそ……、合気道か……)
- 191 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時00分55秒
-
果敢に戦う飯田の後ろで、はらはらした様子を見せている石川は、実はずるく
考えていた。
(矢口さんの能力、強い…)
(飯田さんの能力にかなう相手はいないと思ったけど、やばい。)
(矢口さんにもわたしの能力浴びせて、恋させる…)
「もう、やめましょうよー!」
石川はいきなり、飯田と矢口の間に割って入った。
「あたし、ソロなんてしなくていいです。飯田さんももう辞めましょうよー。
けんかするの止めてください!」
突然の石川の行動に驚く、矢口と飯田。そしてそれを冷静に見る、中澤。
驚いた飯田が石川に問う。
「石川……? なんで?? ソロしたいんじゃなかったの? そう思ってたから
、カオリは石川の為に……」
「ソロしたいですよ。でもけんかしたくないです!」
とかわいらしい仕草で、少し涙声の石川。
それをみて、ものすごく戸惑う飯田。
「で、でも…奪わなきゃ、カード、手に入らないし……」
飯田は矢口と中澤のほうを見る。
いぶかしげな顔で石川を見る矢口と、矢口を呼んで、なにやら話しかける中澤。
矢口はしばらく中澤と言葉を交わして、2人でうなずく。
- 192 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時01分39秒
-
「そうだね…、ケンカは矢口もやだよ。」
と矢口は言い、緊張を緩めて石川に近づく。
そんな矢口にすごい警戒心を示す飯田は、大声で叫んだ。
「矢口! す、少しでも変なそぶり見せたら、頭撃ち抜くからね!」
飯田は銃を構えている。
「…こわいなあ。なんもしないよ。」
矢口は両手を上げるポーズをした。
矢口は言葉を続ける。
「石川の言うことわかるよ。メンバー同志で争いたくないよね。」
「ぐす……はい。」
石川は涙をぬぐった。
「矢口もソロしたいけど、出来ればけんかしたくないんだ。」
「はい…」
「じゃ、お互いにケンカしなくて済む方法、考えよっか。」
「…はい!」
涙目のまま嬉しそうな顔をする石川。
矢口はすっと、自分の右手を差し出した。
「じゃ、仲直りの握手しよ。」
「はいっ!!」
石川に対してにっこりと笑いかける矢口。
その矢口に対して、何倍もの笑顔で笑いかける石川。
(惚れちゃえ、矢口さん)
≪ゼアズサムシングアバウトメリー≫の発動条件を満たした。
石川の能力が矢口に対して浴びせられる。
・・・≪ゼアズサムシングアバウトメリー 石川梨華に恋をする≫・・・
- 193 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時02分44秒
石川の満面の笑みを見つめていた矢口の態度が明らかに変わった。
なにかの衝動に絶えるように、ぎこちない。
どこかそわそわして、顔には赤みがさしている。
「…い、石川?」
矢口は熱のこもった声でそう言った。
「はい?」
石川はとぼけて返事をした。
息づかいの荒い、やぐっちゃん。
「や、ぐちはさあ、やっぱ石川にソロに、なってほしい、うん。」
銃を構えていた飯田が驚いた。
「はぁ? 矢口なに言ってんの?」
(かかった)
言葉とは裏腹に、心の中で喜ぶ石川。
「…矢口さん、どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも、石川にソロになってほしいんだ。キャハハハ。」
照れ隠しに陽気に笑う矢口。
飯田は、態度が急変した矢口に驚いたが、敵意のなさを確認して銃をしまった。
石川は中澤に確認する。
「い、いいんですか?」
飯田も中澤の反応に注目する。
「…………」
無言で矢口を見つめる中澤。
(やった♪)
心の中でほくそえむ石川。
「じゃ、矢口さ………、あれ?」
さっきまで石川の目の前にいたはずの、矢口がいない。
「なーんてね。」
と石川の背後から、矢口の声が聞こえた次の瞬間、石川の細い首に矢口の手刀が、
トンッ!と入った。
石川と飯田が中澤に気をとられてる隙に、矢口は一瞬のうちに石川の背後に
まわっていたのだ。
(な……ん、で?………)
気絶してガクン、と膝を落とし倒れる石川を矢口が支えて、フロアにそっと寝かせた。
状況を把握出来ていない飯田は、しばらく呆然としていたが、ぽつぽつと話し出した。
「……あれ? カオリ、なにしてたんだろ……なんで石川に協力してたんだろ?」
石川の気絶により、≪ゼアズサムシングアバウトメリー≫の能力が停止したのだ。
- 194 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時03分27秒
-
中澤が、ふーっと深いため息をついた。
「いや、怖かったわー。」
「なかなか矢口も、演技上手でしょ。」
矢口は、ニイッ、と中澤に向けて笑った。
中澤は自慢げに話し出した。
「やっぱ、うちの推測どおりやったなあー。カオリは石川の能力にはまってた。
恐ろしい能力やけど、石川はうちらにその能力を使わん。ということは、一人
しか惚れさせられんとか、近づかんと惚れさせられんとか、そういう限定があ
るはずや。」
優しく矢口に見られながら、中澤は話を続ける。
「そしたら案の定、うまいこと矢口に接近してきた。あ、これは近づかんとあ
かんのや、とうちはピンと来た。後は石川が能力を使う瞬間にこっちも能力使
って、かわせばええ。石川を気絶させて、カオリの目が覚めるかは微妙やった
けど、ま、結果オーライや。」
矢口も話し出した。
「あのままカオリと戦っても多分勝てただろうけど、出来れば傷つけたくない
もんね。石川を倒して、丸く収まるならそれがベスト、ってことでしょ?」
「そう! わかってるやんか矢口くん。さすが、でございます。」
「いやいやー、ほめんといてほめんといて。」
大げさな手振りで否定する、笑顔の矢口君。
中澤は矢口をじっと見つめ、髪をくしゃくしゃっとした。
「ほんまに惚れてもうたかと思ったで。」
矢口も見つめ返す。
「んなわけないじゃん。」
「矢口が惚れんのは、うちだけやもんな。」
「ん、まーそういうことにしとく。」
- 195 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時04分29秒
-
矢口は気絶してる石川に近づき、
「失礼しまーす。」
と言いながらポケットを探った。
ポケットからはひらがなカード四枚、『か』『く』『そ』『な』が出てきた。
「お、全部持ってた。」
「これで10枚、そろったな。」
「並べてみよっか。」
「そうやな。」
矢口は床に座り、石川が持っていた4枚のカードを床に並べた。
中澤もその横に座った。
「矢口の持ってるカードなんなん?」
「ちょっと待って……」
矢口は自分のカードを取り出して、床に置いた。
「た。」
中澤も自分のポケットを探る。
「うちの持ってんのは、5枚や。あ、の、の、へ、ぴ。」
『あ』『の』『の』『ヘ』『ぴ』の5枚のカードを床に並べた。
これで、床には10枚のカードが無造作に並んだ。
「とりあえず、あいうえお順に並べよっか。」
矢口が10枚のカードを並べ替えた。
左から順番に、『あ』『か』『く』『そ』『た』『な』『の』『の』『へ』『ぴ』と、
ひらがなカードが並んだ。
矢口が少し考えて、言った。
「の、な、か、で、〜の中、ってんじゃない? なんかの中に隠れてる…。」
矢口は『の』、『な』、『か』と、カードを手に取った。
「おー、いいかもな。うちが考えたんは、ぴ、あ、の、ピアノな…。」
中澤は『ぴ』、『あ』、『の』と、カードを手に取った。
「え! じゃあ、ピアノの中でいいじゃん?! きまりじゃん!」
「いや、もうな、ピアノは調べてん…。矢口に会う前に音楽室行って、ピアノ
の中捜したけど、なんもなかった。」
「…そっかあ。」
- 196 名前:3−8 4人祭は盛大に(後編) 投稿日:2001年07月13日(金)03時05分22秒
-
床には、、『く』『そ』『た』、、、『ヘ』、のカードが残っていた。
矢口は残った四枚のカードを見つめる。
「くそた、へ……、へ、たそく………」
矢口は、はっと気付いた。
「へ、た、く、そ! これ残りで、へたくそ、だよ!」
中澤も残った四枚のカードを見る。
「お、ほんまや! へたくそ、やな。」
「だからー……、へたくそピアノの中、だよ!」
喜ぶ矢口に対して、うなる中澤。
「んー、でもなあ。へたくそピアノの中っていうてもな、なんもなかって……」
「いや、音楽室じゃないよ。」
矢口は何かわかったのだろう。一人でニヤニヤしている。
「なんやねん。うちにも教えてやー。」
文句をたれる中澤に、矢口は説明しだした。
「ここってさ、あの霊命女学園でしょ? 霊女でロケあるって聞いたから、一応
情報しこんどこうと思って、友達に霊女の情報集めてもらってたんだ。その中に
怪談話もいくつかあったんだけど…、そのうちの一つに、<へたくそピアノの怪>
ってのがあったんだよ。」
「ほー。」
「それって、校長室のピアノが誰もいないのにへたくそな演奏をするってやつなの。」
「なぬ?! 校長室にピアノあるん?」
「多分、あるはず。」
「そおか。音楽室以外にもピアノあったかー。」
中澤はよし、と言い立ち上がった。
「さっそく校長室行くで。」
「おーよ。」
矢口も立ち上がって、ちらっと、飯田を見た。
飯田は、宙を見つめながら、動きを止めている。
矢口の視線を追った中澤が、気の毒そうに言った。
「…完璧に、交信中みたいやな。」
「…うん。」
「ほかっとこ。」
「そうだね。」
突っ立ったまま交信中の飯田、矢口の手刀で気絶中の石川、飯田の麻酔弾で
熟睡中の安倍。
三人を体育館に残したまま、中澤と矢口は体育館を後にし、校長室へ向かった。
中澤&矢口 カード10枚ゲット。
文章解読「へたくそぴあののなか」。
石川、カード0枚、(気絶中)。
飯田、カード0枚、(魅了は解けたが交信中)。
安倍、カード0枚、(熟睡中)。
- 197 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時07分58秒
- 「3−8 4人祭は盛大に」でした。
- 198 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時08分58秒
- 長くはない更新ですが、いちおう無駄書き。
- 199 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時11分43秒
- 次回更新は、月曜深夜に…。
- 200 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時12分19秒
- おお、自ら200レス目を踏みました(w。
- 201 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時12分59秒
- 物語も終局です。
- 202 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時15分40秒
- >>190-197 今回更新分です。
- 203 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月13日(金)03時16分36秒
- それでは、またm(__)m。
- 204 名前:名無し 投稿日:2001年07月13日(金)04時36分53秒
- 赤板/スタンド娘。も「ザ☆ピ〜ス」
この物語も終焉を迎えるわけですね・・・姐さんと矢口が持つ絆の前には石川の見せかけの愛は
通用しなかった、というわけですね。めでたしめでたし、ハッピーエン・・・
ウォーーーーーン!
ウォン!ウォン!ウォー−−−−−−ン(w
おや?なにやら犬の遠吠えが・・・どうやら一筋縄にはいかないようです。
高額納税者をも魅了するあの御方が、地獄の番犬を従え、今か今かと機を窺っておられる御様子・・・
はてさて、2人はこのまま幸福をその手中に収めることが出来るのでしょうか?それとも・・・
次回の更新、心よりお待ち申しております。
※カードの示す在り処・・・どうりで分かんないはずだよ(笑)
- 205 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年07月14日(土)04時22分02秒
- やれやれだぜ、石川。確かに手強い相手だった・・・
だが、あの二人には通用しなかったみたいだな・・・
原作の方も今、非常に気になる展開になってるし、
こっちの方もラストに何が待っているのか・・・?
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)06時33分14秒
- つーか吉澤の安否が気になるんですけど・・・
出番そこそこ多いのにいいとこ無しだしさ・・・
以上、吉ヲタのボヤキでした。
- 207 名前:178 投稿日:2001年07月16日(月)20時14分03秒
- カード集めちゃいましたね。
やっぱ姐さんいいせんいってましたね。
さあそろそろごっちんの出番だ!!
- 208 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月20日(金)06時51分17秒
- 更新期待age
- 209 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年07月21日(土)16時52分56秒
- ん?交信、否、更新はまだか?
- 210 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)13時38分43秒
- 皆様、しばらく放置して申し訳ありません。今日で一気に完結です。
「4−1 校長室、2人。」
「4−2 楽屋さわぎ」
です。どうぞ。
- 211 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時39分33秒
矢口と中澤は、体育館通路を急ぐ。二人とも無言だ。
通路から教室棟に入ってすぐのところに校長室がある。
矢口と中澤は校長室の前で止まり、呼吸を落ちつけた。
「なんか、緊張せえへん?」
「どきどきするね。」
興奮ぎみの2人。
矢口が深呼吸をし、校長室の扉をガラッ!と開けた。
外からの明かりが少ないため、部屋は薄暗かった。
なかなか広い校長室である。部屋の奥に応接用の大きなソファー、テーブルがある。
壁には校長の写真、なにかの賞状、校歌の歌詞などが飾ってある
ピアノは部屋の隅に、確かにあった。
「ピアノある!」
矢口が喜んで声を上げた。
ピアノに近づこうとした矢口を、中澤が止めた。
「ちょ、やぐち…。」
「ん?」
中澤は校長室の大きな木机に目をやっている。
木机の奥に、大きな黒皮張りの椅子があった。
椅子は部屋の外のほうを向いていて、椅子の上から茶色い髪した頭だけが見える。
「だれかいるね。」
矢口も声のトーンを落とした。
無言で椅子に近づく、矢口と中澤。
まわりこんで椅子に座ってる人物を確認する。
「「ご、後藤!?」」
そこには、大きな椅子で寝こける後藤の姿があった。
- 212 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時40分16秒
# # # # #
さて、なんで後藤が校長室で寝ているのでしょう?
後藤が吉澤と話し、飯田に起こされた後。
その後の動きを見てみましょう。
# # # # #
飯田に眠りを妨げられた後藤は、再び深い眠りにつけずに、目を覚ましてしまった。
起きた格好のまま、玄関前のロビーをボーっと見つめる後藤。
「いちーちゃんの夢……。そっか。でも、夢、なんだよなあ……。」
ボツッとそう言った後藤は、首をうなだれた。
(現実じゃない。)
(ほんとのいちーちゃんは、ここにいないんだ…。)
後藤の目がうるみ、一筋の涙が頬を伝った。
横にいるフランス人形≪R&J≫は、後藤を心配そうに見つめる。
≪R&J≫は後藤の服のすそをくいくいと引っ張った。
「ん?」
後藤は≪R&J≫を見た。
「心配してくれてんの? 大丈夫だってー。」
後藤は赤ん坊に微笑むように、笑った。
≪R&J≫はにっこりと微笑みかえし、小さな手で空中に円を描いた。
ふわっとまわった手の先から黄色い光が放たれ、光る円が浮かんだ。
後藤は、不思議がりながら、光る円をのぞきこむ。
その光る円の中にはなんと、市井沙耶香の姿が浮かび上がっていた。
「いちーちゃん!?」
光の中の市井沙耶香は、自分の部屋でテレビを見ながら、ベッドに寝そべっている。
光る円が大きく広がり、明るさを増した。
後藤の目の前に、さっきと同じ格好で床に寝そべっている市井の姿があった。
「……はぁ!?」
市井は状況が理解できず、ふらっと立ちあがり、後藤の姿に気付いた。
「後藤……? なに、ここどこ? なんで?」
=
≪スタンド名:ロミオ&ジュリエットAct2 能力:市井召喚≫
*強制的に市井を召喚する。相手の都合はおかまいなし(w。
=
- 213 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時40分53秒
「いちーちゃん!」
問いには答えずに、後藤は市井に飛びついた。
「おおっと!」
突然飛びつかれて、バランスを崩した市井。
二人ともドサドサッ!と、床に倒れた。
「いってえなあ…」
「ゴメン…」
痛がる市井に、照れ笑いする後藤。
後藤は状況を説明した。
つたない説明ではあったがなんとか納得する市井。
「ここで、収録やってたんだね。」
「うん。」
「で、その能力であたしをよびだしたわけだな。」
「そう。」
「で、カードを集めて、文作って、なんか見つけりゃいいんだな。」
「そう。」
市井は玄関にある後者の見取り図のとこへ歩いていき、図を見ながら言った。
「おもしろそうじゃん。」
獲物を見つめるような、不敵な笑いを浮かべる市井。
その凛々しい横顔に惚れなおす後藤。
市井は後藤のほうに向き直った。
「カード何枚ある?」
「0枚だよ。」
「は?」
「0、まい。」
「いや、言いなおさなくていい。ゼロ…?」
「うん、よっすぃ〜にあげちゃった。やる気だったから、よっすぃ〜。」
「吉澤に……。つーか、話変わるけど、あいつ元気にしてんの?」
「よっすぃ〜? 元気だよ。」
「そっか。」
かつての仕事仲間を懐かしむ市井。そして後藤に目をやった。
「後藤は、元気そうだね。」
「うん。」
「無理すんなよ。」
「スケジュールが、相変わらず無茶だからね〜。」
「はは、そうだった。」
- 214 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時41分52秒
「しかし、一枚もないのか。」
市井は困った表情になった。
「吉澤にやったカード、ひらがななんだったか覚えてない?」
「う〜ん……。」
床をにらんで考える後藤の視界にちょこちょこと≪R&J≫がやってきて、
後藤によく見えるように「ぴ」を空中に書いた。
「ぴ!」
後藤は叫んだ。
「ぴ?」
「ぴ、だったよ。」
「ぴ…。」
宙をにらみ考えをめぐらす、紳士市井。
後藤は、≪R&J≫に対し、心の中で(ありがと。)と礼を言った。
「一文字じゃ、どうにもなんないよね〜。」
ふにゃーっと言う後藤に、ぴしっと返す市井。
「いや、そんなことないぞ。」
「そうなの?」
「うん。文字がよかった。ぴ、のつく言葉なんて少ないからね。」
「ふーん。」
「後藤、なんかぴのつく言葉上げてみなよ。」
「えっと、ピスタチオー、ピーチー、ぴ、ぴ……」
市井は苦笑いした。
「はは、食いもんばっかじゃん。じゃなくて、学校にあるものでぴのつくもんがある。」
「…なに?」
「ピアノ、だよ。」
市井は自信満々で言った。
「そっか! ピアノだよピアノ! いちーちゃんすごい!」
大はしゃぎの後藤に対して、落ちついてる市井。
「まだわかんないけど、とりあえず音楽室行くぞ。」
「うん。」
市井のあとに連れられながら後藤は思った。
(いちーちゃん張り切ってるし、あたしも頑張ろっかな、へへ。)
- 215 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時42分34秒
市井と後藤は、1階の渡り廊下を通り、特別棟に入った。
階段で3階まで上がって、3階奥の第一音楽室へ向かう。
市井は廊下から、第二音楽室にちらっと目をやった。中にピアノはない。
(やっぱ第一か。)
市井と後藤は第一音楽室に入った。
教室の隅に黒いグランドピアノが置いてある。
「後藤はピアノの底を調べて。」
「うん。」
市井は鍵盤と弦を調べ、後藤は底とピアノの脚を調べた。
どちらにも変わったところはなかった。
後藤は、ふぅ、とため息をついた。
「なにもないよー。」
「こっちもないな…。」
市井はじっと考えている。
「おかしいなあ…。ピアノじゃないとすると……スピーカーか? でも、あんな高いとこ
探させるか?……うーーん。」
一人悩む市井を後藤が見つめている。
市井は心を決めた。
「よし、ちょっと外に出て、霊女の情報集めてくる。」
「え、どうやって?」
市井は後藤を優しく見た。
「後藤の能力でだよ。呼び出したんだから帰す事も出来そうなもんじゃない?」
後藤は自分の足下を見た。ヒュオン! と≪R&J≫が現れた。
≪R&J≫はコク、コクと、首を縦に振っている。
「できる、よ。」
「お、やっぱり。じゃ、なんかわかったらワン切りするからさ。もっかい呼んでよ。」
「わかったー。」
≪R&J≫は小さい手で円を描いた。
黄色い光の円が出来て、その中にヒュイイイ…と、市井は吸い込まれていった。
後藤は市井を見送って、ピアノの椅子に座った。
(いちーちゃんと、久しぶりに会ったなー)
(もっといっぱい会えたらいいのに)
(仕事忙しすぎ…)
(……モーニング娘。が人気なくなっちゃえば、暇に……って失業しちゃうか……)
(……………ねむい…………)
…後藤はまたも眠りに落ちた…。
- 216 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時43分12秒
-
眠り姫が眠りに落ちてから30分後、後藤のケイタイが鳴った。
びくっと体を震わせ目覚める後藤。
「……ん、んぁ?」
寝ぼけまなこでケイタイを見ると、着信履歴に「いちー☆さやか」の文字が。
(あ、ワン切りだ。)
後藤は、後藤のひざの上で寝ていた≪R&J≫を起こした。
「ね、いちーちゃん、呼び戻して。」
眠たい目をこすって、大きくあくびをした≪R&J≫は、小さい手を回して光の円を作った。
光の円がぱぁーーっと広がり、さっきとは違う服装の市井が現れた。
「あれ、服違う。」
「さっきの部屋着だから、替えてきた。」
「そっちのほうが、いいね。」
「一応出かけ着だからね。」
市井は自分の服装を確かめた。
「で、霊女の情報だけど、インターネットで調べたらすぐだったよ。」
「へー。」
「もう1台のピアノが校長室にあるらしいんだ。怪談話にそういうのがあった。」
「じゃあそっちのピアノだ!」
「んー、かどうかわからないけど、もう一つ調べるとこが出来たね。」
「よーし、じゃ、いこー!」
先に音楽室を出ようと、歩き出す後藤。遅れてあとを行く市井。
「おい、そんな急ぐなよー。」
市井は思っていた。
(後藤の役に立つチャンスだ。)
後藤は思っていた。
(いちーちゃんに元気なとこ見せたいな。)
お互いを思いながら、運命のカップルは校長室へ向かう。
- 217 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時43分43秒
廊下を歩く後藤に、市井は後ろから話しかける。
「後藤、ザ☆ピースさ、なかなかいいね。」
後藤は振り向いた。
「でしょー。」
階段を降りる後藤に、市井は上から話しかける。
「後藤のサビ、力強くて上手いよ。」
「へへ。」
「『かんどーてきな、でっきっごっとっとぅおお〜♪』ってとこ、かっこいいね。」
「でしょでしょ。」
「『すーべってーを、うっけっとッめっよぅとお〜♪』ってのもいいね、カオリの。」
「カオリ、やるねー。」
「なっちも、なにげに上手くなってるしね。圭ちゃんも吉澤も矢口もきちっと決めてるし。」
「うん。」
「加護と石川も可愛い声、効いてるし。ってなんだあの石川の喋りは? すごいな。」
あと、と市井は言った。
「辻は………、ごめん、どこ歌ってたっけ?」
「え? あれ……、あたしもわかんない。」
「はは。」
市井は後藤の横に並んで話しかける。
「後藤、歌上手くなったね。」
「いちーちゃんだって、上手いじゃん。」
「いやいや。」
- 218 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時44分57秒
市井と後藤は、校長室の前まで来た。
市井がガラッ!と勢いよく、扉を開ける。
「あったあった。」
市井が校長室の隅にあるピアノを見つけて、近寄る。
「ほんとだー。」
後藤もピアノに駆け寄る。
ピアノを前に並ぶ二人。
市井が、鍵盤のふたを開けようとしたが、開かない。
「鍵掛かってるな。あやしい。」
市井はそう言って、校長の大きな机のほうへ歩いていく。
市井は校長の椅子にドサッと座った。
「こういうのって座りたくなるよね。」
ゆらゆらと左右に椅子を揺らす。
「いちーちゃん、可愛い。」
「ま、まあまあ遊んでないで鍵さがそっと。えーと……」
市井は机の1番上の引出しを開けて、中を捜す。
引出しは重かったが、中身はほとんどない。万年筆や伝票のゴミ、領収書などぐらい。
2番目の引出しは、ほんとに空っぽだった。
3番目の引出しを開けようとしたとき、
「いちーちゃん、これじゃない?」
後藤がピアノの鍵を手にして、市井の横にいた。
- 219 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時45分27秒
「うぇ?! なんで? どこにあった??」
「ピアノの上。」
「隠しとけよ全く……」
ぶつくさいいながら後藤から鍵を受け取り、ピアノのほうへ歩く市井。
市井はピアノの鍵を、鍵盤の下の鍵穴にはめて、ガチャッと回した。
静かな校長室に、鍵の開く音が響く。
「開いたな。」
市井はゆっくりと、鍵盤のふたを開いた。
市井と後藤の前に現れた鍵盤の上には、無造作に紙がたたんでおいてあるだけだった。
「…この、紙しか、ないよな……」
市井は、拍子抜けしてそう言った。紙を開くと、そこには活字でこう印刷されていた。
『鍵を見ろ。』
後藤も紙をのぞきこんだ。
「鍵、って……、このピアノの鍵?」
市井から鍵を受け取って、鍵をよ〜〜〜〜く見る後藤。
もちろん見たところでどうなるもんでもない。ごく普通の鍵だ。
後藤は鍵を市井に渡した。
市井も鍵をよ〜〜〜〜く見たが、なーんにも変わらない。なにも起きない。
「普通の鍵だよな……」
- 220 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時46分00秒
-
市井は後藤に鍵をもう一度渡した。
後藤はもう一度よ〜〜〜〜〜く鍵を見た。
「あ!」
後藤が突然叫んだ。
「これ、数字彫ってあるよ!」
「あー、鍵には普通、アルファベットと数字で刻印番号がついてるんだよ。」
市井は冷静に対処する。
「ふーーん、そうなんだー。」
「……でも、この鍵数字だけだよ。」
後藤はボソッと呟いた。
「なに?! かして」
市井は後藤から鍵を受け取った。
鍵には510*****、と確かに数字だけの刻印番号が彫ってある。
8桁の数字を見ながら考える市井。
ハッ、と市井がひらめいた。
「ケイタイだ。」
「え?」
「頭に090つけて、ケイタイ番号になるんだこれ。」
「ケイタイ?」
「たぶん、ここに電話しろってことじゃないか?」
「そっか! そうだよ。ぜったいそうだ♪」
市井に謎を解いてもらい、大喜びの後藤。
というか市井が嬉しそうだから嬉しい後藤。
「たぶん、ここに電話したら後藤の勝ちだよ。」
市井は後藤に鍵を渡した。
「そっかあ。」
- 221 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時46分40秒
市井は、後藤さあ、と言った。
「あんまりソロ、乗り気じゃないの?」
「うーん…前やったし、今度は他のメンバーでいいかなーって。」
「そっかあ…あたしはまた後藤のソロ聴きたいけどな。」
にこやかにそう言う市井を見て、後藤の目の色が変わった。
「…うーし、ソロやる!」
「お!」
「元気出して頑張る!」
「いいねいいねえ。」
素直に誉める市井にのせられる、可愛い後藤。
「えーっと、番号は……」
後藤はケイタイを取り出して、鍵を見ながら電話をかけた。
『おめでとーーう!! 勝者は後藤かあ!!』
ハイテンションで電話に出たのは、つんくだった。
「つ、つんくさん?」
『おう。俺や。』
後藤はケイタイを耳から離して、市井に言った。
「つんくさん。」
「やっぱりな。」
市井は不敵に笑った。予想していたようだ。
後藤はケイタイを耳に戻して、つんくに言った。
「これで、あたしソロですか?」
『そーやで。後藤はソロデビューしてるからあれやけど、ま二曲目ってことやな。』
「はい!がんばります!」
『お、なんやえらい元気やなー。』
つんくも電話の向こうで嬉しそうだ。
「はい!」
『ほんなら頑張ろうやー。明日打ち合わせな。ほんじゃな、また。』
つんくは早口に喋って電話を切った。
「あたし、ソロ決定だって。」
後藤は燃えている。
「いつごろ曲出るかな。楽しみにしとくよ。」
「うん。」
- 222 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時47分25秒
市井は、おし、と言った。
「じゃ、あたし帰るね。」
「…うん。」
寂しさを隠せない後藤。
「なんだよー。また会えるじゃん。」
「…仕事忙しいもん。」
後藤は目を潤ませた。
「メールするからさ。」
「うん。」
後藤は≪R&J≫を呼び出した。
「後藤、頑張れよー。陽世も可愛いぞ。」
市井の言葉に、後藤は泣き笑いした。
≪R&J≫は小さな手で光の円を作り、その円の中に市井は吸い込まれていった。
後藤はふーっと深く息を吐き、校長室の椅子に座った。
窓の外の霧が晴れていくのが見える。
(あれー。霧晴れてきてる…)
晴れていく外を見てた後藤に、特大の眠気が襲った。
≪R&J≫で市井を2往復させたため、慣れない能力に疲れたのだ。
(……ねむ……)
後藤はすぐさま眠りに落ちた。
# # # # #
…というわけだったんですね。
# # # # #
- 223 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時48分13秒
校長室で後藤を発見して驚く、中澤矢口……。
近くで大きな声がしたためか、後藤は目を覚ました。
「……ん〜。」
うっすらと目を開け、矢口に気付いた。
「…やぐっちゃん?」
中澤はピアノに近づき、黒いピアノのふたを開けた。
鍵盤の上に無造作にたたまれた紙がある。
中澤はその紙を取り、広げた。紙には『鍵を見ろ。』と書いてある。
矢口もピアノに近寄り、中澤のもつ紙をのぞきこむ。
「鍵〜?」
「鍵ってなんや…」
「これー。」
後藤は机の上においてあったピアノの鍵を、矢口にほかった。
カシャン、と音がして、鍵が矢口の手の中に納まる。
矢口は受け取った鍵をまじまじと見つめる。
「ちょ、見せて。」
中澤は矢口から鍵を取り、同じようにまじまじと見つめる。
「普通の鍵やん。」
矢口は中澤から鍵を取る。
「普通だね…」
- 224 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時48分52秒
後藤は、得意げに笑った。
「甘いね〜、やぐっちゃん。その鍵の数字見てみなよ。」
矢口は鍵に刻まれたナンバーを見る。
「……これが、なに?」
「普通はねー、アルファベットと数字なんだよ。でもそのかぎ数字だけでしょ?」
「……数字だけだね。」
矢口はよくわかってない。
後藤はさらに話す。
「8桁の数字だけでしょ。」
「……。」
矢口はさらにわからなくなった。
「8桁の数字っていえば、ケイタイでしょー。」
後藤はあっさり答えを言った。
「は? ケイタイって11桁……」
「ちゃう。090の後から8桁や。」
文句たれる矢口をさえぎって、中澤が答えた。
「矢口、ここの番号に電話や。」
中澤にせかされた矢口はケイタイを取りだし、090、510*****に電話した。
- 225 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時50分11秒
『おめでとーーう!! 3番は矢口かー。』
「つ、つんくさん!?」
『おう。お疲れさん。』
「3番って……」
『1番は後藤やってん。』
「で、矢口は2番じゃないんですか?」
『いや、2番は保田や。』
「へ?!」
『後藤のちょっと後にな、電話してきよってん。で、しばらくたってから矢口や。』
「…………」
無言になってしまった矢口に、中澤が話しかけた。
「どないしたん?」
矢口は、電話を耳から話して中澤のほうを向いた。
「圭ちゃんが、2番だって…。」
「はぁ?!」
- 226 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時50分52秒
# # # # #
さーてさて、保田圭がなぜ2番なのか。
保田圭の動きを見ていきましょう。
# # # # #
石川の能力≪ゼアメリ≫で魅了され、実家に帰ってしまった保田圭。
保田は、実家の玄関前にいる自分に気付いた。
「あれ?」
(なんで石川にカード渡して、帰ってきちゃったんだ?)
(石川の笑顔見てたら、急に好きになっちゃって…)
(まさか…)
保田は気付いた。
(あれが、石川の能力? クソ……)
そんな保田の傍らには、保田を見上げる犬。
悔しがる保田を、ものすごい眠気が襲った。
≪スターゲイト≫は、転送物重量、転送距離に比例して疲れがくる。
人ひとりを数十キロ転送するのは、かなりの疲れをうむのだ。
(ヤバ…すごい眠い……)
ふら〜っと玄関へ歩く保田を追い越して、犬は家の壁の影に入って座った。
- 227 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時51分39秒
保田は玄関の扉を開け、久しぶりの実家に入った。
「ただいま〜。」
気の抜けた声で靴を脱ぎ捨てる保田。
保田ママが玄関に現れた。
「圭?! どうしたの、今日仕事じゃなかったの?」
「いや、そうなんだけどね…。ちょっと休ませて…」
「風邪引いたの?!」
久しぶりに見る娘を心配するママ。
「眠いだけ…。」
「布団、準備してないわよ。」
「いい…。ソファで寝る…。」
保田はそう言って、リビングに入るなりソファになだれかると、すぐに寝てしまった。
久しぶりの娘の来訪に驚きながらも、保田ママはタオルケットを取ってきて娘の体にかけ、
寝顔を見つめて優しく微笑んだ。
しばらくして保田は目を覚ました。頭を振り、残った眠気をはらう。
(何時だ…?)
時計を見ると、家に着いてから1時間が経過していた。
保田は体を起こして、ソファから立ちあがり背伸びをした。
机に、クッキーの皿が置いてあり、メモがはさんであった。
『冷蔵庫に麦茶が冷えてます。あまり無理せず体には気をつけて、仕事頑張って下さい。』
(かあさんだ。)
保田は忘れかけていた母の愛に目を潤ませつつ、台所へ行き冷蔵庫を開け、
ペットボトルに冷えていた麦茶を、口をつけてそのままグビグビと飲んだ。
- 228 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時52分41秒
(うし。)
1時間寝たぐらいではまだ完全回復ではないが、のんびりはしてられない。
誰かがカードを集める前に、戻らないと勝ち目はない。
保田は玄関を出て、犬を探した。
犬は壁際で眠っていた。保田と同じように疲れたのだろうか。
(あー、寝ちゃってるか。起こすの悪いな。)
(自分ひとりで、能力使えないのかなあ。確かブラックホールみたいな……)
保田は自分の頭の中で、頭上に浮かぶ黒い球体をイメージした。
すると、目の前にそのイメージの球体がフオン!と現れた。
「おお!」
保田の声に、驚きと喜びが混じった。
「なんだ、できんじゃん。」
(よし、霊命女学園まで飛ぶぞ)
保田の体が、黒い球体に吸いこまれて、消えた。
=
≪スタンド名:スターゲイトVer1.02 能力:転送≫
*特に能力は変わってないが、犬なしでも発動できる。
=
- 229 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時53分28秒
保田が≪スターゲイト≫で降り立った場所は、玄関ロビーだった。
(体育館のほう行ってないな)
保田は体育館へ向かって廊下を歩く。
そのとき後藤の声が、通りすぎようとした校長室から聞こえた。
(後藤?)
校長室の扉をそっと少し開いて、隙間からのぞく。
後藤がケイタイで話しているのがみえる。そして後藤の隣には、市井がいる。
(紗耶香?! なんで…ここに?!)
「つんくさん。」
「やっぱり。」
(電話の相手つんくさん?!)
「これであたしソロですか?」
(先越された!?)
「はい!がんばります!」
(……おそかったかあ。)
保田は校長室の前を離れ、ふらーっと体育館のほうへ歩き出した。
(電話…。)
(そっか、隠されたものって電話か。)
(それで1番にかけたメンバーが、ソロ。)
「なるほどー。」
保田は呟いた。
(後藤で決まりかあ……)
- 230 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時54分02秒
肩を落として歩く保田は、はっと思った。
(まてよ。)
(2番手にも、チャンスあるかもしれない。)
保田は急いで校長室の前に戻って、もう一度中をのぞいた。
窓のほうを向いた椅子に座ってる後藤の、頭だけが見えた。
その頭が、カクンとずれた。
なぜか、さっきまでいたはずの市井の姿は見当たらない。
(あれ、紗耶香いない…)
(後藤…ねてるのか)
(よし。)
保田が校長室に入ろうとしたそのときだった。
- 231 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時54分40秒
「保田さーん。」
玄関のほうから呼ばれた。パッと振り向くと、吉澤だった。
吉澤は右耳を手でふさいだまま、歩いてくる。
(吉澤…、まずいなあ)
保田は心の中で舌打ちし、校長室の扉をそっと閉めて、吉澤に話しかけた。
「おお、どうした? 耳。」
「さっき、飯田さんに撃たれたんですよー。」
「撃たれた?! それって…能力?」
「そうです! 飯田さんの能力ヤバイですよ。」
「こわいなあ。けが大丈夫?」
「え? いやあ怪我してませんよー。」
吉澤はへへ、と笑って右手を耳から離した。耳から血がでてるわけでもなく普通だった。
「これね、耳がおかしくなってるんですよ。
飯田さんの打ってきた弾を跳ね返したときの、キィィィン!!の音で、耳鳴りがするんです。」
「なーんだ。血でてるかと思ったよ。」
「それは大丈夫です。」
吉澤は少し笑って、保田に聞いた。
「ところでですね、飯田さんに会ってないですか?」
「う、うん。」
「危ないですよ。なんか梨華ちゃんに協力してんですよ。」
保田の表情が変わった。
「カオリが…石川に?」
「変でしょー。飯田さんやる気かと思ったのに。」
「それ、石川の能力だよ。」
「え、そうなんですか?」
「た、たぶんねたぶん。」
- 232 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時55分31秒
うろたえる保田に、吉澤が聞く。
「保田さん、校長室入ろうとしてませんでした?」
(きた。)
「いやいや、してないよ。」
うろたえと興奮を隠そうと、早口で保田は答えた。
「ふーーん。」
そうですかー、と吉澤は言った。
「なんか、隠してる気がするんですよね。」
吉澤の興味は、確実に校長室にいっている。
(まずい。)
「吉澤、あのさ、今休みもらえたら、どこ行きたい?」
「へ?」
突然の質問に戸惑う吉澤。
「いいからいいから、どこ行きたい?」
「…うーん、そうだなあ……ハワイとか?」
「あー、日本国内で頼む。」
「んー、じゃ、温泉ですかねー。温泉でのんびりして温泉卵食べたり……」
「どこの温泉?」
「そうですね…群馬の草津温泉とか……前家族でいったんですよね……」
吉澤は温泉の想像に浸っている。
(よし、今。)
保田は≪スターゲイト≫で吉澤の頭の上に黒い球体を出した。
吉澤は違和感を頭上に感じ、上を見た。
「えぇ???」
吉澤は黒い球体にあっという間にシュオーーーン!と吸いこまれて、消えた。
- 233 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時56分48秒
「ふう…。」
保田は一息ついた。
保田は野生の勘で吉澤の行きたいところを聞いて飛ばしたわけだが、それは当たっていた。
≪スターゲイト≫の転送は、転送される人との相性がある。
転送される人が想像もしないようなところは、相性が悪いといえる。
逆に本人が行きたいところというのが、ー番相性がいい。
人でも物でも、適したところに飛ばすのが、無理なパワーを使わない。
(じゃ…、行くか。)
保田が校長室の扉に手をかけた、そのときだった。
「「やすださ〜〜ん!」」
遠くからお子様2人の声が聞こえる。
(お、おいおい…)
ちびギャン辻、ちびギャン加護だった。
玄関のほうからタタタタッとちびっこギャングが走ってくる。
(辻と加護……最悪だ。)
このうるさい二人に騒がれたら、後藤も起きかねない。
保田は玄関のほうへ、自分から近づいた。
「お、おーす…。元気だなーー。」
(ここはもう、先手必勝。)
「ねー、辻と加護さあ…、休みになったら行きたいとこある?」
いきなりの保田の質問に驚いた辻加護は、動きを止めて考えている。
そして2人で相談している。
辻と加護は保田のほうを向いた。
「「ディズニーランドー!!」」
「よしわかった。連れてってやろう。」
辻と加護は大いに喜ぶ。
「え、ほんとですかーーー!!」
「やったのれすーー!!」
「ただし、今すぐだけどね。」
「「え?」」
保田は、辻と加護の上にちょっと大きめの黒い球体を広げた。
辻と加護は、驚いたまんまの格好でシュオーン!と黒い球体に吸いこまれて、消えた。
- 234 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時57分43秒
「……ふーーーー、しんどい…。」
三人も転送した保田は、さすがに疲れた。
校長室の前へ戻り、扉を少しだけ開け、もう一度中を確認する。
後藤はさっきと同じように、首をかたげている。
(大丈夫。まだ寝てる)
保田は音を立てないようにゆっくりと扉をあけて、中に入った。
誰かに廊下から見られないように、きちんと扉を閉める。
薄暗い校長室の中の大きな机に保田は近寄る。
窓の外の霧は、いつのまにかほとんど晴れていた。
保田は窓の外を眺めた。
(勝負が決まったからかな。)
机の上には後藤のケイタイと、なにやら後藤が手にしていた鍵があった。
(ケイタイは、後藤のなんだな。)
(ケイタイが<隠された物>、ってんじゃないのかあ)
保田は椅子の後藤にちかよった。
後藤はやはり、寝ていた。
そっと後藤から離れて、保田は鍵を手にした。
どこにでもあるような、ごく普通の鍵だ。
鍵をしばらく見ていたが、わからない。
- 235 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時58分36秒
保田は後藤のケイタイを手にして、ピピピッと発信履歴を見た。
『090510*****』
(事務所じゃなく、マネージャーでもない。新しくかけた番号だ。)
保田は鍵とケイタイを交互に見た、後藤の姿を思い出した。
(鍵見ながら、ケイタイ…)
保田は、後藤のケイタイと鍵を片手ずつに持ち、見比べる。
目に、鍵の刻印が飛び込んできた。
(510*………、、、あ!)
保田はハッと気付いた。
発信履歴を見て確認する。
(そうか、ケイタイ番号が彫ってあったのか!)
保田は後藤のケイタイで、リダイヤルをしようとボタンを押しかけて、やめた。
「おっとぉ。」
(自分のケイタイで、っと…)
保田は頭を働かせて、自分のケイタイを取りだし、
後藤ケイタイの発信履歴を見ながら番号を打ちこんで、かけた。
- 236 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)13時59分34秒
『おー、保田かあ!』
電話がつながってすぐ、つんくのハイテンション声が聞こえてきた。
(やっぱり)
「はい。」
『お前の前にな、後藤がかけてきてん。』
「はい。」
『で、後藤が勝ちで、ソロ決定やねんな。』
「はい…。」
『保田には、後藤があかんくなったときによろしく頼むかもしれんから。』
「は、はイっ。」
保田の声が上ずった。
『じゃ、お疲れさーん。』
つんくはサッと電話を切った。
保田はすでに切れたケイタイに耳をあて、ぼーっとしていた。
(ひょっとしたら…ひょっとするかも)
能力使用後の激しい眠気が、保田を襲った。
(えへ………え、へ………)
保田はフラフラと部屋の奥のソファに近寄り、ドサッと倒れこんだ。
そしてそのまますぐに眠ってしまった。
# # # # #
…というわけだったんですね。
# # # # #
- 237 名前:4−1 校長室、2人。 投稿日:2001年07月24日(火)14時00分40秒
「あれ〜、裕ちゃんと矢口じゃん…。」
眠たそうな保田の声が聞こえた。
中澤と矢口は、校長室の奥を見た。
ソファから体を起こした保田が、寝ボケ顔でこっちを見ている。
「圭坊! そこにおったんか。」
中澤が驚いてそう言った。
「寝ちゃってたね…。」
まだ眠そうな保田。
後藤も保田の姿を見て驚いた。
「あれ、圭ちゃん、いたんだー。」
矢口はつんくとの電話に戻った。
「矢口、3番ってことは、もうゼンゼン可能性無しですか?」
『いや、ひょっとして後藤と保田が両方ともあかんことになれば、わからんで。』
(んなことあるかよ…)
「わかりました。」
『おお。じゃ、おつかれさん。』
つんくはささっと電話を切った。
矢口は不満そうにケイタイを見つめた。
「くそー、後藤で決まりかあ…。」
「へへへ。」
やる気出てきて、嬉しそうな後藤。
窓の外の霧は完全にはれて、快晴が広がっていた。
- 238 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時01分39秒
- 「4−1 校長室、2人。」でした。
- 239 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時02分19秒
- 「4−2 楽屋さわぎ」はエピローグ的です。深夜に上げます。
- 240 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時04分09秒
- しかし、ほんと長らく放置したままでした(^w^;)
- 241 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時04分50秒
- 4−1 はちょっと長すぎになっちまいました。
- 242 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時05分57秒
- >>210-238 4−1です。
- 243 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時08分31秒
- それでは、またm(__)m
- 244 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月24日(火)14時09分36秒
- うずモニでしたー!!(ミニ○二風)(^w^;)
- 245 名前:名無し 投稿日:2001年07月24日(火)14時56分43秒
- な、なんてこったい!(TwT
面白かったし、あと味いいし、サイコーだよ、うずモニ。さん♪
テスト明けか何かよくわかんないけど、今夜はちゃんと更新に来てね(w
エピローグ大期待♪
- 246 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月24日(火)16時29分19秒
- 嗚呼・・・吉澤・・・
哀れなり・・・
- 247 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月24日(火)20時55分57秒
- やっぱり本物のラブはつよいですねぇ(笑)
後藤がかわいかった
- 248 名前:うずモニ。 投稿日:2001年07月25日(水)03時05分14秒
>>245 名無しさん
エピローグいきます。お待たせしましたm(__)m
>>246 名無しさん、さん
吉澤はどうしてこうもいいとこなしなんでしょうね…不思議です。
>>247 名無し読者さん
可愛い後藤が描けてよかったです(泣)
それでは、
「4−2 楽屋さわぎ」
です。
- 249 名前:4−2 楽屋さわぎ 投稿日:2001年07月25日(水)03時06分15秒
校舎を包んでいた霧が晴れると、スタッフは慌てて霊女に入っていった。
モーニング娘。の安否を確認し、事務所関係者スタッフ共にほっとした。
吉澤はなぜだが草津温泉に、辻加護はなぜだかディズニーランドにいたわけだが、
電話で安否は確認できた。
混乱しているプロデューサーは、
「ま、まあいいじゃん! 無事みたいだしさ! ははは!」
と陽気に笑ってすませた。
特番なのに映像は一つも押さえれなかったが、それは仕方ない。
撮りなおす時間はない。特番枠は、「モー娘。お蔵出しスペシャル!」でごまかされた。
吉澤は事務所関係者が迎えにくる間に、温泉につかったらしい。
辻と加護は事務所関係者が迎えに行ったとき、ちゃっかりとディズニーランドで遊んでいた。
- 250 名前:4−2 楽屋さわぎ 投稿日:2001年07月25日(水)03時07分11秒
怪奇特番からすでに2ヶ月が経った、7月のある日。
日本テレビで「モーたいへんでした。」の収録があった。
ここは「モーニング娘。様」と書かれた楽屋だ。
部屋の隅っこでは、保田と石川が話している。
「石川さあ、あんたつんくさんに≪ゼアメリ≫使ってないでしょーね?」
ギクっとする石川。
「え、もちろん使ってないですよお。」
保田はぎろっとにらんだ。
「ほんとかー?? ピースでいきなりセンターってのは、納得いかないんだけどな…」
「た、たまたまですよぉ。たまたま」
ふーん、と保田は言い、さらに続けた。
「…ソロの写真集も出るらしいじゃんね?」
ギクギクっとした石川は、無言だ。
「これもどうも、≪ゼアメリ≫くさいんだけど。」
「た、ったまたまですよぉ。たまたま!」
強く否定する石川を、ジーっと見る保田でした。
楽屋の入り口では、安倍がADに≪ナッティ・Pro≫で細くなった体を見せている。
「ね、どうだべどうだべ。ほそいべ?」
「あ、ほんとだ。痩せましたねえ。」
飯田は楽屋の机で書きものをしていて、後藤は漫画を読んでいる。
吉澤は≪パールハーバー≫でジュースの空き缶を的にして、撃って遊んでいる。
ガンッ!!
空き缶に何度目かの穴があいた。すでに缶はぼこぼこだ。
「うし!」
ガッツポーズをとる吉澤を、飯田が後ろから、丸めた雑誌でスパーン!と引っぱたいた。
「いて!!」
吉澤は頭を押さえた。
「さっきからうるさい。危ないって。」
「はい…。」
- 251 名前:4−2 楽屋さわぎ 投稿日:2001年07月25日(水)03時08分16秒
矢口辻加護は、ミニモニの仕事でちょっと楽屋を離れていたが、
矢口がどたばたと楽屋に戻ってきて、入り口をあけるなり言った。
「ちょ、ちょっと! 聞いて!」
怒りぎみの矢口のほうを見るメンバーたち。
「さっき辻と加護と3人で、ミニモニの新曲打ち合わせしてたらさあ、
あいつらの様子おかしくて。で、よーーくみてみたら、
≪ツインズ≫で分身したほうの辻加護だったんだよ!」
飯田の目が、キラーンと光った。
「…じゃあ、本体のほうはどっかでサボってるわけ?」
飯田の迫力にびびる矢口。
「う、うん。そうじゃない?」
飯田はスッと立ちあがると、圭ちゃん、といった。
「≪スターゲイト≫で辻加護のとこまで連れてって。」
「へ? いいけど…どこかわからないと…」
飯田は保田の言葉をいったんさえぎって、後藤のほうを向いた。
「後藤。」
「…なにー?」
漫画を読んでいた後藤はふわっと顔を上げた。
「≪R&J≫で辻加護探して。」
≪R&J≫は市井だけでなく、一応他の親しい人も光の輪で探せるのだ。
召喚まで出来るのは、市井紗耶香ただ一人に対してだけだが。
「んー、わかったー。」
後藤は眠そうに言うと、≪R&J≫を呼び出して、光の輪を作った。
光の輪の中には、辻加護が屋上で遊ぶ姿が映し出されている。
「辻加護、屋上にいるよー。」
- 252 名前:4−2 楽屋さわぎ 投稿日:2001年07月25日(水)03時10分13秒
「あいつら、屋上にいやがったか!」
クヤシそうに矢口が叫んだ。
飯田がリーダーらしく冷静に言った。
「圭ちゃん。あたしと…そだな、矢口と。2人送って。」
「うぃーす。」
保田は飯田と矢口の頭上をにらんだ。
「2人とも屋上をしっかりとイメージしてね。じゃ、いくよー。」
≪スターゲイト≫の能力で、飯田と矢口は黒い空間に吸いこまれていった。
屋上にドサドサッという音が響いた。
飯田と矢口が落ちた音だ。
飯田と矢口は文句を言った。
「いってー…。」
「優しくやってほしいよな。」
ケツの汚れをはらう飯田と矢口の姿に、加護が気付いた。
「あ!」
加護が甲高い子供声で叫んだ。
「やばいれす!」
辻も気付いた。
すたたーっと逃げようとする辻加護に対して、飯田は一言。
「…矢口。」
「おーよ。」
≪ガールファイト≫を発動させた矢口は、超人的なスピードで辻加護に回りこみ、
ボディブローを一発ずつ、ドゥ、ドゥとくらわせた。
「「ぐへぇ!」」
辻加護はその場に崩れ落ちた。
飯田はすたすたと、崩れている辻加護に近づくと、首根っこを捕まえて屋上の壁ぎわまで持ってきた。
そして自分の右手にギュン!と≪ロボコップ≫の銃を出し、辻と加護の頭に交互に合わせた。
「あんたら、今度≪ツインズ≫身代わりにしたら、撃つよ。」
と飯田は静かに言った。
「「…はいぃ!」」
と、ビビリまくりの返事をした辻加護は、
矢口に引きずられながらしぶしぶスタジオへ戻っていった。
一人屋上に残った飯田は、テレビ局から見える都会の風景をながめ、ため息をついた。
「リーダーも、たいへんだなぁ…」
ため息をつきながらも、どこか笑顔な飯田でした。
- 253 名前:4−2 楽屋さわぎ 投稿日:2001年07月25日(水)03時11分34秒
そんな感慨にふける飯田の横で、フオン!と音がした。
そこには焦った様子の保田があらわれた。
「か、かおりー。やばい。」
「なに? どしたの。」
「なっちがさあ、プロデューサーを≪ナッティ・Pro≫でフッ飛ばしちゃったんだよ!」
「Tプロデューサー?」
「そう! あいつなっちと仲悪かったじゃん。口ゲンカしたみたい…。」
「ふー、わかった。とりあえず、行こう。」
飯田と保田は、屋上の階段を急いで降りていった。
おかしな能力を身につけてしまった、モーニング娘。
彼女らの苦難は、これからかもしれない。
〜FIN〜
-
- 254 名前:おまけ(ソロ曲) 投稿日:2001年07月25日(水)03時13分12秒
CDデータの記事より抜粋
『 9月19日。
後藤真希ソロシングル第二弾!
「あんちくしょうラブ」
曲はボサノバを基調とした、ロックテイスト! 』
つんく♂「これは、ボサロック、です。新機軸やないかと思います。」
- 255 名前:おまけ(ソロ曲) 投稿日:2001年07月25日(水)03時14分13秒
& & & & & & & &
『あんちくしょうラブ』
作詞作曲 つんく♂ 編曲 BOSSA一徹
お姉ちゃんの この服ちょっと大人っぽい?(ど、うだろう)
そんなこと 気にするわたしゃあ子供っぽい?(ど、うでしょう)
ラフな計画じゃ ラブな関係、むりっぽい?(ど、うやろう)
そんなことばっか うんと考えたら、ねつっぽい…(か、ぜぐすり)
花火のデートは 大好きだけど
あなたの目線を気にしちゃうのよのよ
あんちくしょうラブ (hey! ya!)
あんちくしょうラブ (do! ya!)
なんでこおんな気持ちなの (darida darida)
あんちくしょうラブ (say! ya!)
あんちくしょうラブ (go! ya!)
もーうどおにかなりそうよ (dabada dabada)
夏の定番 オレンジジュースはひやっこい(も、ういっぱい)
日本の現状 経済ニュースわぁややっこい(こ、うぞうかいかく?)
私だって ヲタクはちょっとうざったい(こ、わいもん)
はまっちゃった あの人やっぱ正反対(か、っこいい)
夜眠れないの 暑いからじゃない
遠足の前みたいにドキドキなのよのよ
あんちくしょうラブ (hey! ya!)
あんちくしょうラブ (do! ya!)
ぴしっと浴衣でいこうかな (darida darida)
あんちくしょうラブ (say! ya!)
あんちくしょうラブ (go! ya!)
ギャップで魅力UPだな (dabada dabada)
とどめの水着はいつ出すか 一人戦略会議をぉおこないまーす
あんちくしょうラブ (hey! ya!)
あんちくしょうラブ (do! ya!)
なんでこおんな気持ちなの (darida darida)
あんちくしょうラブ (say! ya!)
あんちくしょうラブ (go! ya!)
もーうどおにかなりそうよ (dabada dabada)
あんちくしょうラブ (hey! yaiyai!)
あんちくしょうラブ (do! yaiyai!)
ぴしっと浴衣でいっちゃうでしょ (da-darida-da)
あんちくしょうラブ (say! yaiyai!)
あんちくしょうラブ (go! yaiyai!)
みんなお先に 幸せいただきまぁーあす (da-badaba-dada)
& & & & & & & &
- 256 名前:¥¥¥¥ 投稿日:2001年07月25日(水)03時17分35秒
- ¥¥¥¥
- 257 名前:¥¥¥¥ 投稿日:2001年07月25日(水)03時18分18秒
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- 258 名前:あとがき(泣き言) 投稿日:2001年07月25日(水)03時19分34秒
ほんとあらの多い作品でございました。
いきあたりばったりがばればれです。
週2回更新も、自ら宣言しといて破ってるし(^w^;)。
「なんで5月の時点で市井と後藤はピースのはなししとるんじゃゴルァ!」
「なんで保田は一人で実家かえっただけでへとへとなのに、
吉澤辻加護と三人も転送できるんじゃゴルァ!(しかも吉澤、群馬まで…)」
「学校でロケやるなら、定点カメラは付けてるだろゴルァ!」
「なにげに漢字変換ミス多いぞゴルァ!」
「説明臭さの強い文章が気になったぞゴルァ!」
書いてから、余計なとこを削ってるんですが、忘れるとこうなります…。
「ラストたたみすぎちゃうか?ゴルァ!」
はい…。ちょっとたたみすぎです。
「吉澤があまりに憐れだろゴルァ!」
はい…。なんででしょう。どうも吉澤=おまぬけ なイメージ持ってます。
もう書いてるときから泣きごと言いたくて言いたくてしょうがなかったです(w。
でも強がったりして、ご期待ください、って書いてました。
反動で、今からうだうだーっと言います(w。
初めてだったんです、書くの。
赤板で書くのもビビッてました。
面白いの多いし…。
でも、テーマにだけ自信があったんで(そりゃ、スタンドだしね…)、勇気を出して始めました。
赤板だとリスクも大きいけど、きっと読んでくれる人も多いだろうと思って。
- 259 名前:あとがき(各チャプター) 投稿日:2001年07月25日(水)03時20分33秒
*「1−1〜3 (プロローグ)」
今読み返すと、文が堅いです。きちっと書こうとしてましたね。
*「2−1〜5 (中澤姐さん視点)」
姐さん視点で書いていくのは楽しかったです。
ちびギャン、人気出ましたね。
予想外でした。
*「3−1 北の海に、道はなく。」
意外にいい組み合わせでした。
安倍の哀愁も、出せててよかったです。
*「3−2 番犬と姫様」
これは個人的には、上手くかけたなと…。
石川の≪ゼアメリ≫みたいな精神スタンドがからむと、話がくつがえしやすかった。
*「3−3 愛は戦いを、戦いは愛を」
タイトルがいまいちでしたね(w。
ひっぱりまくっての、矢口の登場でした。
「お互い好きあってた二人が戦って、より愛を。」
みたいな意味をタイトルにこめたかったのです。
*「3−4 ちびギャン制圧作戦!」
これは、最初のプロットでは、存在しないお話でした。
ちびっこギャングの人気が高かったので、辻加護を再登場させました。
≪ツインズ≫に翻弄される飯田は、書いてて面白かったです。
*「3−5 恋せよロボット」
タイトルから状況から、いい感じで書けました。
石川がからむと書きやすかったですね。
飯田の純情な可愛さぶりも、出てたみたいでよかった。
*「3−6 運命の再会」
矢口を探しつづけていた中澤が、ついに出会えた。
もっとあま〜く、やぐちゅーでもよかったと思います。
心理描写を細かくして、10枚カードゲットを盛り上げたかった。
*「3−7、8 4人祭は盛大に」
タイトル、好きです(w。
4人戦闘をなかなか上手くかけた感じです(w。
*「4−1 校長室、2人」
校長室の2人とは、中澤矢口、市井後藤、のダブルミーニングでした。
回想で時間が飛びすぎるのが欠点か。
*「4−2 楽屋さわぎ」
ほんわかまとまった感じです(w。
*「ソロ曲」
MIDIで作曲もしたかったんですが、技量の無さに諦めました。
しょぼい音を付けるより、歌詞だけで読んでる方に想像してもらった方がいいですもんね。
(後藤のソロ第2弾、どんな曲なんでしょうねぇ…)
- 260 名前:あとがき(その他) 投稿日:2001年07月25日(水)03時21分43秒
*読み返してみると、吉澤の出番は異常に多いですねえ。
いやー、吉澤ひとみ、名脇役だ(w
*保田はもう帰ってこないはずでした。
(帰ってきたのはひとえに、名無し、さんの推しです(w。)
一人だけ出番が少ないというような事は避けれたと思います。
*今見てもらうと分かるんですが、
実は一箇所だけ、名前が「うずモニ。」じゃないとこがあるんです…。
>>9 にある「ごまモニ。」です(w。
「誰がソロかばれるじゃん!」と焦りました。ははは。
実は、ぼかぁ後藤一押しなのです。
*矢口のスタンド、原案では「スチュワートリトル(能力:縮小)」でした。
ちっちゃくなるだけだと一人で戦えないので、やめました(w。
- 261 名前:あとがき(最後) 投稿日:2001年07月25日(水)03時22分28秒
不備が多いストーリーにもかかわらず、突っ込みも無く、暖かく見守っていただきまして…。
突っ込みたかった方、今こそ突っ込んでください(w。
「ここのチャプターの、ここはおかしくない?」とか。
「もっと、だれだれのシーンが見たかった!」とか。
出来る限りの説明(いいわけ?)をしたいと思います。
(ここのチャプターのここに萌え〜、でもゼンゼンいいです。)(^w^;)
最後になりましたが、できれば、
「名前(誰推し)」という風にコメントをいただけたらと思います。
それではm(__)m。
うずモニ。(ごっちん推し)、でした。
- 262 名前:ショートカット 投稿日:2001年07月25日(水)03時29分59秒
- >>210-238 「4−1 校長室、2人」
>>249-255 「4−2 楽屋さわぎ」と、おまけ。
- 263 名前:名無し吉澤推し 投稿日:2001年07月25日(水)04時06分36秒
- 遊び心一杯の設定のドタバタ劇でしたね。
毎回毎回、心地よく楽しませていただきました。
吉澤がおまぬけってのは同意です。ソロを争う時点で脱落です(w
この話の流れ的には、吉澤一匹狼が正解なのを承知で希望すれば
いしよし、よしごま、なんかのコンビが見たかったです。
「よしごま協同部隊」はちょっと想像できるけど
この話でのいしよしは想像できない……ゆえに読んでみたいなと(w
勝手に自分版:ムスメデミー賞。などを(W
魅せる戦いという意味では矢口より燃えました。似合いすぎ(w
【ベストファイター賞:飯田】
コアクマ達が話を引っ掻き回しましたね。小悪魔と子悪魔。
【チャーミー賞:石川】
【やんちゃde賞:辻・加護】
姐さんかっこ良かったです。矢口は裏ヒロイン?
【助演男優賞・女優賞:中澤・矢口】
シーン切り替わりのアイキャッチ。吉澤。
裏方、二番手が似合いすぎ。保田
素直なだけなのに一番黒く見えた。安倍。
纏めて【がんばりましたで賞】(w
主演女優賞はもちろん彼女。
主演男優賞はパートナーに捧げたいと思います。
- 264 名前:いいらさん 投稿日:2001年07月25日(水)18時49分22秒
- いやぁ〜、面白かったです。
何気にタイムリーなネタも多いっすね(笑)
いちーちゃんの前での後藤も可愛くていい感じっす。
でも最後にののちゃんが一言あるみたいです。
( ´D`)<ののもちゃんとそろぱーとあるのれす、しかもさびれすよ!
- 265 名前:名無しチャーミー石川推し 投稿日:2001年07月26日(木)00時39分01秒
- 本当に面白かったぁ。
かっこいい、面白い、可愛らしいの三拍子。
各章のタイトルがグット!原作に負けず劣らずです。
スタンドの名前もその能力もそれぞれに似合ってて、
本当によかった。
やっぱり石川の新曲センターと写真集は
「ゼアメリ」のおかげ?(w
最後にぜひとも新作の期待をいたしつつ、
うずモニ。さん、お疲れさまでした。
- 266 名前:レイコ@いしよし押し(笑) 投稿日:2001年07月26日(木)01時42分26秒
- めっちゃおもろかったっす。
他に無いカンジのもので、ホント、一章一章が丁寧で、
ちゃんとキャラを考えてのスタンドですもんね。
しかも能力がゲームが終わってからも残ってるところが・・・(笑)
やっぱり「ゼアメリ」の力か・・・(笑)
はい、新作期待してまっす。お疲れさまでした!
- 267 名前:名無しスタンド 投稿日:2001年07月26日(木)21時16分58秒
- やれやれ、ようやく終わったか・・・
更新がなかった時は不安になっちまったぜ・・・
っていうかなっち、ホントにスタンドで痩せてくれ・・・
石川、ソロ写真集はスタンド使ったからだろ?
実は石川ヲタだけどさ・・・
( ^▽^)<とっても面白かったでーす♪
ヽ^∀^ノ<みんなー!私のこと思い出してくれたー!?
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月29日(日)00時24分19秒
- う〜む、最後にこんなこと聞くのもどうかと思いますが・・・
石川のスタンドって映画のタイトル?
知らないの俺だけか?
誰かおしえて。
- 269 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月29日(日)00時30分47秒
- >>268
「メリーに首ったけ」の原題(英題)(っていうのかな?)
とにかく多分それだと思われ。間違ってたらスマソ。
- 270 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月29日(日)04時39分13秒
- >>269
ありがとうございます。そうか「メリーに首ったけ」か〜。
作者さんの設定には感心しっぱなしです。
あと感心ついでにせっかく能力が残ったままだからできたら続きを・・・
とにかく面白かったです。
- 271 名前:名無し/やす推し 投稿日:2001年07月31日(火)18時36分04秒
- エピローグ、お疲れ様です。最後まで楽しかったです。というか、更新された直後に
読んだはずが、パソ逝かれてレスが一週間後に・・・(w;
それにしても「ごまモニ。」は気付かなかった(笑)
思い出深いシーンは、全部圭ちゃんが絡んだシーンですね(w
犬と戯れたり、麦茶だったり、石川責めたり、みんな「らしく」って、犬との戯れのモチーフは
ピンチランナーのTVメイキングだったりするのかなぁとか色々妄想しながら読んでました。
「楽屋さわぎ」は妙に萌える。
俺のレスは催促っていうよりは半分ネタだったんですよ。>>103で汗かいてるから・・・(w
出たら出た、出ないなら出ないで適当に合わせようか、と。
だから、更新遅れてんのっての手直しさしちゃってるのかなぁ、悪いなぁと思いつつも
合わせてくれたんで貫かせてもらいました(笑)
一人戦略会議をぉおこないまぁーす♪ってとこが(・∀・)イイ!!
思えば小説板に来た日に、これと出会ったわけで、思い出深い作品です。
一つ心残りなのが、>>137に対して>>138のレスつけたこと。
今、思えば、あれは催促っていうより「読んでます」って意味合いのレスだったのに・・・
>>137さん、すんませんでした、俺がヌケサクでした。
ほんと、楽しかった♪
原作で描かれる人間賛歌
新たな血を組み込まれたモーニング娘。は、どんな人間模様を描いていくんだろうねぇ・・・(w
>>270同意!
気が向いたら書いてね(笑)
そいじゃ
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