デス・ゲームW 〜それぞれの理由〜 完結編

1 名前:flow 投稿日:2002年06月18日(火)21時40分34秒

 同板内の話の続きです。終わりきらなかったので、新たに立てさせて頂きました。
 本当にご迷惑かけます、すみません。
2 名前:flow 投稿日:2002年06月18日(火)21時42分55秒

↓ 前スレです。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=red&thp=1019996678

 話の内容に区切りはありません。それでは再開します。
3 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時43分34秒



 少し間を置いて聞こえてきたのは、聞き覚えのない若い少女の声だった。
 何や? 怪訝そうに眉をひそめて寺田は考えた。一瞬相手の間違い電話ではない
かと思ったが、確かにその少女は自分を名指しで呼んだのだ。

 はて……受話器を握り締めたまま、寺田は言葉を失う。仕事関係ならまだしも、
こんな若い少女の知り合いはいた覚えがない。遊びで付き合う女なら山ほどいる
が、寺田とて議員の端くれだ、あまり下手に番号を教えたりはしない。


 「あんなあ、……俺、ぶっちゃけアンタのこと分からへんけど、誰や?」
 いつもなら必要以上に回りくどい喋り方をする寺田だったが、珍しく率直に尋ねる。
理由は、寺田自身にも分からなかった。ただ、何故か自分の心拍数が上がっている
ことだけは分かった。ばくん、ばくんと不自然に心臓の鼓動が響くのを感じる。

 〈 ――――― 〉

 「おいっ、聞いてるやろ? お前誰か、聞いてんねん!」

 我知らず寺田は口調を荒くする。その訳が、まさか自身の内からくる本能的な恐怖
によるものとは、まだこの時点で寺田はよもや思いもしなかった。
 「なあ、おいっ!?」



4 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時44分07秒



 〈 質問です 〉
 「…何やて? 聞いてんのは俺やぞ、何言うて……」

 〈 第27回個能力開発プロジェクト、優勝者は誰でしょう? 〉

 「……なっ!?」

 視界がぐらり、と揺れるような衝撃を覚え、寺田は危うく受話器を取り落としそうにな
り、慌ててそれを握り直した。汗ばんだ手の平が、受話器に張り付く。
 ( 何で、そんなこと……!? )

 知ってのとおり、個能力開発プロジェクト ――― 要するに『デス・ゲーム』の存在は、
外部に知られることはない。政府の中でも、限られた人間しか知らない筈なのだ。
 まして、このような若い少女の口からその名前が出るとは? 否が応にも激しさを増
す動悸に苦しさを感じながらも、寺田は冷静を努めて返事をした。

 
 「何を言うとんのか、分からへんなあ、電話、かけ間違いやろ……?」
 〈 ねえ、どんな意図があって、こんなゲームさせてんのか知らないけどさ 〉
 「………………」

 〈 途中で抜けるなんてなしだよ。あんたは、係わってんでしょ? この『デス・ゲーム』
   に。ちゃんと、最後まで付き合ってよ 〉



5 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時44分40秒



 「………馬鹿な……!?」


 酒を帯びて赤らんでいた寺田の顔が、徐々に色を失っていく。心地よく酔いの回って
いた体が、一気に醒めていく感じだった。まさか、まさか……。
 聞き覚えのない声、などではなかった。

 自分を冷静な目で見据えていた少女を思い出す。そして、ゲームを進行する上で、
その彼女を圧倒的優勢と評価し得るだけの、個人記録を。「彼女」に関する情報が
次々と寺田の頭の中の引き出しから溢れ出し、寺田は混乱した。


 「まさか、お前は、まさかっ………!?」

 低い声。動揺を感じさせない、自分を睨むような鋭い視線。気だるそうな物言い。
 思い出すその「彼女」の姿が、目の前に現れたような気がして寺田は「ひっ」と身
を竦ませた。頭の中のイメージと、受話器から聞こえる声の主の姿が合致する。
 

 「馬鹿言うなっ、お前は死んだはずやろっ、死んだはずや、死んだんや!!」
 唾を吐くようにして、寺田は受話器に向かって吼えた。ひーっひーっと息を荒くして、
寺田は額に手を当てた。じわり、と汗が手の平を濡らす。
 「そんな馬鹿な………」



6 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時45分19秒



 〈 随分、切羽詰った声してるんだね。昨日の余裕はどこいったのかなあ 〉

 電話の主の少女は、笑っているようだった。完全に自分を嘲る調子のその声に、
寺田はもはや怒りを感じることも出来ぬほど、自分を見失っていた。
 馬鹿な、バカな、ばかな!! 死んだ人間が、どうして俺に電話なんてかけてくる
っちゅーねんっ!?

 それは、紛れもなく恐怖という感情そのものであった。まさに、『デス・ゲーム』に
おいて過去幾多もの少年少女らが体験してきた死への恐怖を、寺田は身をもって
体験していたのである。当然、寺田自身はそんなことを考えている余裕などない。

 
 〈 大事なもの。守らなきゃいけないもの。全部全部、ゲームで失っちゃったんだ。
   ねえ、でもおかしいと思わない? なんかさあ、筋書き全部、決められてたみた
   いな気がするんだもん。知ってる? 『出来レース』って言葉ぁ 〉

 「知らん、知らん知らんっ!! 俺は何も知らないんや、俺は……っ!!」

 〈 あんたの言い分なんて、どうだっていいんだよ 〉



7 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時45分53秒



 少女の口調が変わった。
 人を人とも思わぬような冷たく突き放すような言葉に、寺田は戦慄する。…待て、 
ホンマに俺は知らないねん、知らないんや。

 
 〈 中澤裕子と 〉
 「……!」

 水を浴びせられたように蒼白になり、唇をわなわなと震わせて寺田は黙って電話
の相手の言葉に聞き入っていた。正しく言えば、口を挟むことが出来ないのだ。
『中澤裕子』という名前を瞬時思い出せなかったが、それが今期プロジェクトの対象
施設の園長であることを思い出した寺田は、新たな恐怖に襲われた。

 〈 安倍なつみと、平家みちよ。この3人に共通することは何でしょう? 〉

 「あの、あの、あああああっ……」

 寺田は金魚のように口をぱくぱくと動かした。言葉が出て来ない。いつもは雄弁な
寺田であるが、今は弁明すら、浮かばなかった。
 相手の少女は初めから答えなど期待していない様子だった。寺田の返事を待つこ
となく、畳み掛けるように言ってのける。

 〈 答え。あんたが殺した 〉



8 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時46分25秒



 「ひっ………」


 〈 ねえ。あんたも、ちゃんと参加してんだよ、『デス・ゲーム』に 〉


 “思い通りにならない” から、ゲームなんだよ?

 “予測不可能” だから、ゲームなんだよ?

 “どんでん返し” があるから、ゲームなんだよ?


 この『デス・ゲーム』を発案・企画したのが誰か知らないし、もうとっくに生きちゃい
ないとは思うけど。そんなこともどうでもいいんだけど。

 ゲームってのはさぁ、プレイヤーはもちろんとしても、その企画の実行や運営に携
わった人間だって、参加者になると思うんだよね。 だってそうしなきゃ、不公平って
もんじゃない? そうでなきゃ、うちらは単なる「ゲスト」扱いじゃん。
 だから、あんた達も当然、『デス・ゲームの参加者』なんだよ?



9 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時47分04秒



 「 どうしてお前がっ!? お前は死んだはずやろ、ちゃんと俺かて報告受けとんの
  やで? 監視カメラ、幾つ会場に取り付けられてる思とんねんっ!?
  お前は死んだ、死んだんや!! 木っ端微塵になって死んだはずなんや!!」

 〈分かってるよね。ゲームのルールは、「残り1人になるまで」殺し合うこと 〉

 
 必死に反論を試みる寺田の言葉をまるで無視し、少女は嘲るように言った。寺田
の唇から、涎が溢れ出した。しっかりと口を閉じていることが出来ない。恐怖と驚愕
の為、寺田の心理状態は限界まで追い詰められていた。
 

 「 嘘や、嘘や嘘や嘘やあっ!! お前は死んだんや、死んだはずなんや、優勝し
  たんはお前とちゃうやろっ!? 馬鹿な、バカな ―――― ッ!!」

 まさに発狂する一歩手前の状態で (これこそ半狂乱と呼ぶにふさわしい)、寺田
が喚き散らす。だが、そんな寺田の反応は相手を余計に面白がらせるだけだった。
 電話越しに、少女が笑いながら寺田を挑発する。

 〈 本当に、もう終わったつもりでいるの。終わらせたつもりでいるの? 〉
 「……馬鹿な、嘘やっ!! ゲームは終わったんや、優勝者は……っ!!」



10 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時47分42秒



 優勝者は決まってるよ。でも、あんたじゃない。
 だからこそ、優勝者以外は生きてちゃいけないんだ。とかく、あんたの存在だけは
気に入らない。まあ、これは単なる主観の問題だけどね。
 そもそも、あんたは完全にゲームの大事な参加者なんだから。言ったでしょ、途中
抜けるのはなしだって。


 〈 駄目だよ 〉

 せせら笑うような、あまりに冷たい、突き放した声で電話口の声が淡々と告げる。
 寺田は、全身の毛穴という毛穴から、じっとりと嫌な汗が噴出すのを感じた。電話
口の声は、丸腰の寺田にとって例えようのないほど恐ろしいものだった。まるで、死
神でも相手にしているかの錯覚に囚われながら、寺田は汗の滲んだ手で、受話器
を握り締めた。

 喉がからからに渇いていた。そして次の瞬間、寺田は全身に冷水を浴びせられた
ように身体を震わせ、硬直してその受話器を取り落とした。


 〈 『ゲーム』 はまだ、終わってないよ 〉

 ――――



11 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時48分26秒



  「ひっ」と喘いで、寺田の手から受話器が滑り落ちるが、もはやそれを追う余裕な
ど放心した寺田にはなかった。
 「……………!!」

 
 血の繋がった家族も。
 血の繋がっていない家族も。
 みんなみんな、あんた達に殺されたんだから。ねえ、知ってる?
 “ リベンジ ”って言葉は、『ゲーム』の中から生まれたんだってこと。

 
 「嘘や、嘘や……」


 既に受話器から漏れるその声・言葉に耳を傾ける余裕などなかったし、相手も寺田
が聞いていることなどまるで問題にしないかのような淡々とした口調で、淀みなく一方
的に喋り続けていた。


 お父さんが殺されたのは、生きたまま脱走したのがばれたから。だったら、「死んだ
まま」脱走すればいい。「死んだこと」にして、脱走すればいいんだよ。
 協力者がいたからね、私には。何もかも知っていて、言わなくても全部分かってくれ
る、親友以上の大親友が。死してまだ、協力してくれるなんて、なんて素晴らし、よく
出来た親友なんだろ。ねえ、そう思わない?



12 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時49分00秒



 ねえ、金や権力にしか興味のないあんた達には分かんないかもしれないけど。

 「まさか、まさか、死体は……ちゃんとあったんやろっ!!」

 ちゃんと確認してないんでしょ。だって、バラバラになっちゃってるんだよ。
 それに、さあ? 現場の連中、監視甘いんじゃない?
 小屋の中にはね、既に2人分の遺体があったんだよ。 



13 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時49分45秒



 「っ、ひっ、う、嘘や、うわああああっ……」
 がちがちと歯を鳴らして、子供のように寺田は震え出した。幾つも顔の上を伝う汗
と、だらしなく開かれた口の端から溢れ出した涎で、仮にも若手議員として注目を
浴び、それなりの威厳を保ってきた筈のその顔が、恐怖の感情に支配され、醜く歪
んで壮絶な表情を作り出していた。


 〈 あははは。ねえ、意味分かるよね? “ リベンジ ”の意味。…これは、『ゲーム』
  の “ リベンジ ” だよ 〉


 「まさか、まさか ―――……!? 」


 復讐だ。





14 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時50分21秒


 ――――――


 ――――――――



15 名前: 《24,終焉    市井紗耶香》 投稿日:2002年06月18日(火)21時50分57秒



 ・・・・・・


 
 「 ――― 若手議員として内外よりその手腕に注目を集めていた防衛庁防衛参事
  官人事教育局長寺田光男氏が、本日深夜、都内の自宅マンションにおいて、遺
  体で発見されました。 現場の状況から、警視庁は殺人と断定し、捜査本部を設
  置して捜査を開始しました。 また、同日未明より寺田氏の所属する防衛庁副長
  官の山崎氏を始め、 多数の議員の所在が分からなくなっており、警視庁は同事
  件との関連性も合わせ ―――― 」

 
 ・・・・・・

 ・・・・・・・



16 名前:《エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時51分57秒



 ―――――――


 ―――――



17 名前:《 エピローグ 〜未来〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時52分56秒



 市井紗耶香は、雪の上に寝そべってどんよりと曇った空を見上げていた。冬の空
は低い。手を伸ばせば、あの雲に届きそうだな、などと紗耶香はぼんやり思った。
 その紗耶香の脇腹は、赤いペンキをぶちまけたように赤く染まっている。

 ( ちぇっ、しくじったな……… )
 
 じくじくと、脂汗をかいてその痛みに耐えていたのはほんの数刻前になるが、今は
既に、その耐え難い激痛も和らいでいた。それとも、単純に痛覚を失いつつあるのか
も知れない。どちらにしろ、銃で撃ち抜かれたその傷が、軽いものである筈はない。


 それでも、紗耶香は戻って来たのだった。ただ、生きることよりも自分のたった1つ
の家に ―――― 先に待つであろう、自らの家族に会いに、戻って来たのだった。
 『朝比奈女子園』という名の、孤児院に。



18 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時53分50秒
 


 ただいま、裕ちゃん。
 ただいま、矢口。
 ただいま、みっちゃん。
 ただいま、彩っぺ。
 ただいま、圭ちゃん。
 ただいま、なっち。
 ただいま、カオリ。
 ただいま、明日香。
 ただいま、石川。
 ただいま、吉澤。
 ただいま、松浦。
 ただいま、高橋。
 ただいま、小川。
 ただいま、辻。
 ただいま、加護。
 ただいま、紺野。
 ただいま、新垣。

 ……………そして、後藤? 



19 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》   投稿日:2002年06月18日(火)21時55分25秒



 幼い頃に、仲間らとよく遊んだ園舎の裏に、紗耶香は大の字になって寝転んでい
た。 ( 雪が降ると、よくここで雪遊びしたよなあ…… )
 思い出は、鮮やかに紗耶香の目にその情景を映し出していた。
 『ゆーきやこんこん』、と歌いながら遊びまわる幾人もの少女達。きゃっきゃっと高い
笑い声を上げながら、飽きることなく幼い少女らは雪と戯れる。


 ・・・・・・


 やっぱり、ここにいたぁ。

 ―――― えっ!?
 

 その懐かしく愛しい声に、紗耶香は自分が死にそうな重症を負っていることを忘れ
た訳ではないが、心臓が止まりそうな衝撃を受けた。
 だって、その声を聞くことはもう2度と叶わぬことだと完全にあきらめていたのだ。

 いや、違う。「自分が生きている間」には、決して叶わぬと。



20 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時56分34秒



 しかし、今自分は生きている。紗耶香はまだ、死んではいなかった。死にそうな状
態ではあったのだけれど ( 大量に出血しているのと、傷の痛みで意識すら失いそう
だった )、断言できる、まだ、紗耶香は死んでいない。


 ならば、それは幻聴だったのか? 紗耶香は自問自答する。ああ、そうだろう。
 だって聞こえるはずがないだろう、今さら。アイツの声なんて。
 ……そっか。あっちの世界から、呼んでるんだろう市井のこと。やっばいなあ、幻聴
聞こえるようになるのって、やっぱり死期が近いってことだろ?

 
 「死なないでって、言ったのに」
 そして、今度はさっきよりもずっと至近距離からその声は聞こえたのだった。ぎょっ
と目を見開いて、慌てて身体を起こそうとした紗耶香は、忘れかけていた腹の痛み
に動きを奪われる。「うっ」と呷いて、紗耶香は再び雪の上に転がった。
 
 ……後藤……ッ!?



21 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時57分31秒



 僅かに薄目を開けて、紗耶香はその人影を見上げた。出血のせいか、寒さの為
か分からないけれど、朦朧としていく意識を無理矢理覚醒させるように、紗耶香は
辛うじて動く腕を小さく動かした。

 
 佇む彼女の、足に手を伸ばす。触れる。確かに、そこに彼女はいた。だって、もし
これが幻なんかだったら触れることなんて出来ないはずだ。
 ( ……なんで……? )


 疑問は当然のように浮かんだ。大袈裟なリアクションを取ることも出来ないが、紗
耶香の傍らで自分を見下ろす真希の目は、ちゃんとその疑問を読み取っているよう
だった。真希が紗耶香を見つめたまま、ちょっと頷いて見せる。

 「後藤、死んだと思ってたでしょ?」
 紗耶香が目を見開いたまま、軽く頷いた。

 「でも、もうそんなことどうだっていいでしょ?」
 ……………。 
 少し考えた末、再び紗耶香は頷いた。



22 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時58分22秒



 ( どうでも、いいけどさ…… )
 頷いたものの、紗耶香は僅かに苦笑した。おいおい、何なんだよそれ。馬鹿野郎、
市井の涙を返せ。そんなあっさり出てきやがってさあ。

 「嘘ばっかり。市井ちゃん、泣いてなんかなかったじゃんか」


 紗耶香が頷いたのを確認して、真希はくっと膝を折り曲げて紗耶香の側にしゃが
み込んだ。彼女の自慢の長い髪が、紗耶香の視界の隅でふわりと揺れた。
 真希の目は、紗耶香の腹を赤く染める傷口を捉えていた。『デス・ゲーム』会場を
出る時、警備中の兵士の1人に撃たれた銃創だ。

 「市井ちゃん、痛そう…」

 ふっと、真希の表情が悔しそうに歪んだ。それは軽い変化であったけれど、紗耶
香はそれを敏感に感じ取っていた。何だよ、後藤。撃たれたのは市井だよ?
 唇を軽く噛んで、真希は優しく撫でるように血に染まった服の上から傷に触れる。
 不思議と、痛みを感じなかった。それよりも、何となく彼女の触れた部分にそこは
かとない温かみを感じ、紗耶香は安心したように目を閉じた。



23 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)21時59分25秒



 「まったく、市井ちゃんのバカ」
 しばらく黙って紗耶香の傷に触れていた真希が、不意に口を開いた。呆れたよう
な、悲しんでいるような、怒っているような複雑な声で。
 ――― 後藤。

 再び目を開けて、紗耶香は真希を見据えた。
 ( バカはお前だよ、ったく、何でもかんでも1人で抱え込むなっての… )


 「後藤が、どんな想いで市井ちゃんを生き残らせようとしたと思ってんの?」
 こんな簡単に、死にそうな傷受けちゃってさ。あれだけ生きてって言ったじゃん。
 くどいくらい、言ったじゃん。後藤の苦労が意味ないじゃん。
 ……本当に、バカなんだから、市井ちゃんは。
 ( だけど。後藤、あんた、市井に対してだけは嘘つくの下手だよね )


 紗耶香を軽く罵倒する言葉とは裏腹に、真希の表情は心底嬉しそうに綻んでい
る。ああ。紗耶香はほっとするような、懐かしいような、感慨深さを多分に含んだ溜
息を漏らして真希を見返した。



24 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時00分27秒



 ――― そう。その笑顔が、見たかったんだよ、後藤?


 ふふふ、と真希が口元をうっすらと開いて笑みを零した。寝転んでその真希を見上
げたまま、紗耶香は思った、( ……へえ……天使って、こんな感じなのかな… )
 今までずっと真希に見ていた寂しさや憂いを湛えた影は、いつの間にか払拭され
ていたのだ。紗耶香は素直に、そしてごく自然に、真希を綺麗だと思った。


 「でも、市井ちゃんならそうするかもなって、ちょっとは思ってたけど」

 ――― ちょっと、かよ。っていうか後藤、何処行ってたんだよ?

 「 ちょっとね。……気に食わない虫がいたからさ。知ってる? 市井ちゃん。1匹の
  虫が巣に持ち帰った毒で、巣にいる虫が全滅しちゃう薬があるんだよ、今」

 ――― 知ってるよ。CMやってんじゃん。で、後藤はその虫退治でもしてたってか?

 「まあ、そんなもんだね。ゴキブリ退治」


 クスクスと笑いながら囁くように言って、真希が紗耶香の隣りにゴロリと横になる。
雪埃が小さく舞って、今さらながら、紗耶香は前に佇んでいた真希が、幻影などでな
いことを認めたのだった。
 けれど。



25 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時01分20秒
 


 ( それもこれも、もうどうだっていいことなんだ…… )


 ――― これが、横にいる後藤が幻影だろうが本物だろうが、それが後藤ならいい
んだよ。後藤が、市井の隣りにいるって、それでいいんだ。それだけでいいんだ。 


 「これでようやく、ひとみとの約束も果たせるなぁ」
 ふっと微笑んで、真希が吉澤の名を口にしても、それに紗耶香が心を乱されること
はなかった。もう分かっている。
 ――― そうだったね、後藤。吉澤のところに行くって、約束してたんだっけな。


 「そうだよ、『すぐ行く』って言ってたのに、随分遅くなっちゃった」
  
 ぺろっと舌を出しながら、真希はいたずらッ子のように無邪気に笑い声を上げる。
そんな仕種がたまらなく愛おしくなり、紗耶香は自身の手を、真希の投げ出された
柔らかい手の上に重ねた。何も言わずに、それを握り返してくる真希。 
 「市井ちゃんの手、火傷が出来てる」



26 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時02分19秒



 あ〜あ。こんなことなら、市井ちゃんにあんな告白するんじゃなかった。すごい一
大決心して、覚悟決めて、いっぱい悩んでようやく話したのに。
 だって、市井ちゃんの記憶、全部失われると思ったから。後藤のことも、忘れちゃ
うと思ったから、少しでも後藤のこと、話しておこうと思ったから、告白したのに。 

 「 ……ははっ。後藤、あっちの世界で、市井ちゃんにいっぱい怒られちゃうんだろう
  なあ。…今から、覚悟しとかなきゃ」
 
 ――― 当ったり前だろ? そうだよ、みっちり絞ってやるからな。そうそう、吉澤も
同罪だぞ。後藤がやってること知ってて、何も止めなかったんだから。

 「ええっ?」

 真希が、笑いながら悲痛な悲鳴を上げる。「やめてよ、それじゃあ梨華ちゃんにも
バレちゃうじゃん!」

 ――― あ、それ名案。石川にも一緒に怒ってもらおう、そうしよう。

 「 ……ダメだよぉ〜、あははははっ梨華ちゃんに殺されちゃうってマジで。っていう
  か、梨華ちゃんにバレたらひとみ絶対キレるからぁ〜」



27 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時03分14秒



 言葉とは裏腹に、真希の表情は心底楽しそうに絶えず笑み浮かべていた。真希が、
こんなにも嬉しそうに吉澤以外の友人の名を口にするのは、紗耶香は初めて聞く気
がしていた。というより、それはおそらく事実であるが。

 それでも、真希は本当に楽しそうだったのだ。自分達を縛っていた足枷が、もはや
存在する意味を要しないことに、もう気付いているから。
 ああ。紗耶香は、大きく息を吐いた。変われる。未来は、変えてゆける。 


 ( 本当は、1人で行くつもりだったけど )

 ( どうしても、市井ちゃんが後藤と一緒がいいみたいだから )

 ( 仕方ないなあ。一緒に、連れてってあげるよ )

 ( だから、一緒に行こうね、お姉ちゃん? )

 
 ――― ばぁか。誰がお姉ちゃんだ。市井は、市井だよ。



28 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時04分59秒

 

 真希の、紗耶香を見る目が細められた。口元に微笑を浮かべ、しばらく無言でお
互い見つめ合っていた2人の視界に、白くちらつくものが舞い降りてくる。
 雪が降り始めたのだ。
 
 そして2人はどちらから言うともなく、同時に目を閉じた。やはりどちらの少女も、
穏やかな微笑を湛えたまま。どこまでも安らかな表情で、眠るように。




29 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時05分49秒


 
 ―――


 ひとみ、ごめんね、お待たせっ。
 
 ……ホント、待ったよ。真希遅い。ねえ梨華ちゃん?

 うん、みんな待ってたんだよぉ。 

 本当にぃ〜? 梨華ちゃん、ほんとは後藤来ない方がよかったんじゃないの?

 そっ、そんなことないもんっ。


 ―――――


 結局、みんな揃ったっちゅーわけやな。待ちくたびれたわ。

 きゃははっ。裕ちゃん、始めっからいるもんね〜。

 うっさいわっ! 裕ちゃんはな、園長としてみんなを迎えてやろ思ぅてやな、

 まあ、真打ちは最後に来るもんだからさ。待たせたな、脇役どもっ!あははっ

 アホ紗耶香ぁ、だ〜れが真打ちだよぉっ!


 ―――――



30 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時06分44秒



 ねえ、市井ちゃん?
 なんだよ、後藤?




 世界が白銀に染まり、依然として降り積もる雪は、騒がしい暮れの世相からは完
全に遮断された空間を生み出していた。
 無色、無音の、そして動くものの一切存在しない、喧騒に溢れる俗世間とは切り
離された、もう1つの世界を。そう、そこには自分達しかいない。
 朝比奈女子園で育った仲間たち。そこにいるのは、仲間たちだけ。

 もう、そこに彼女らを迫害する者はいなかった。追い詰めようとする加害者もいなか
った。彼女らがそう望むのであれば、そこは彼女たちだけの世界であり続ける。
 侵略されることもなければ、変わって行くこともない。


 だって、いらないよ。
 後藤も矢口も裕ちゃんもなっちも圭ちゃんも、みっちゃんもカオリもみんなみんな、
市井の大事な人が存在しない未来なら、市井はいらない。
 そんな未来、意味がないじゃん。
 ――― ただちょっと、生き急いだ感じはするけどさ。



31 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時07分28秒



 でも、きっと変えてみせるよ。皆が一緒なら、市井は未来を変えてみせる。
 そんな世界を、きっと、きっと。


 ひらひらと舞い落ちる雪が、真っ白な雪の絨毯の上に寝転ぶ2人の少女の姿を、
徐々に覆い隠していく。少女らの肩に、足に、腕に、頭に降り積もっていく穢れのな
い雪は、彼女らに、優しく白い毛布を被せていくようにも見えた。


 『ゆーきやこんこん、あーられやこんこん』
 『ふってもふってもまだふりやまぬ』
 『いーぬはよろこびにわかけまわり』
 『ねーこはこたつでまるくなる』
 


 きゃははははは………



32 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時08分34秒



 眠るように並んで横たわる2人の少女の顔は穏やかで、閉じられた瞼を縁取る長
い睫毛を、雪が白く彩った。


 降り止まない雪に、次第にその姿を覆われつつある2人の少女の手は、何故かそ
こだけは熱を持っているかのように、雪が積もることはなかった。まるで、雪が触れて
もその熱で、瞬時に溶けてしまっているかの如く。

 硬く繋がれた彼女らの手は、きっと離れることはないのだろう。例え、この先、別々
の未来が待ち受けていようとも。2人の意志は、共に生きることを選ぶだろう。
 否、運命すら、変えていく決意の強さの表れかもしれない。


 ねえ、市井ちゃん?
 なんだよ、後藤?
 約束したよね、一緒に雪を見ようって。


 ―――



33 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時09分33秒



 ―――――


 しんしんと、雪は降り続ける。
 この世の全ての穢れを清めるように。全ての抗争も、悪意も、どんなに深い罪で
さえも、優しく包み込むように。

 

 ―――― ほら見て、雪が……雪がとても。


 
 『ゆーきやこんこんあーられーやこんこん』
 『ほらぁみて、ゆきーまっしろー』
 『まっしろーあははははっ』
 『いちーはゆき好き。だってしろいから』
 『じゃあ、まきも好きいー。だって、いちーちゃんが好きだから』
 『え、どっちが?』
 『どっちってどっち?』
 
 『ふってもふってもまだふりやまぬ……』


 きゃははははははっ
 きゃははっきゃはははははっ……


 ――――



34 名前:《 エピローグ 〜 未来 〜 》 投稿日:2002年06月18日(火)22時10分30秒



 雪が、2人の少女の姿を完全にこの世から消し去る。
 そして、その後、この場所に子供の笑い声が聞こえることは2度となかった。取り
壊された1つの孤児院が、再建されることもなかった。
 もう二度と、その先もずっと、ずっと。

 言い換えるのならば ――――― きっとそう、永遠に。




 「雪がとても、きれいだよ」






35 名前:デス・ゲーム 〜それぞれの理由〜 投稿日:2002年06月18日(火)22時11分27秒



                     - 終わり -




36 名前:flow 投稿日:2002年06月18日(火)22時13分02秒


 終わりました……。
 やっと終了させることが出来ました。長かった、本当に長かったです。
 そして、こんな無駄に長い駄文に付き合ってくださった読者様、ちらっとでも目を通し
 て下さった方々に、本当に感謝申し上げます。ありがとうございました!

 本音ですが、レスは真面目に嬉しかったです。バトロワものという、何も新鮮味のな
 いテーマを取り上げた為、どれだけの方に読んでもらえるかという不安の中始めた
 わけですが、幸運にも気に留めてくださる方がいてくださったので……何とか最後
 まで続けることが出来ました。1人相撲では、決して成し得なかったことだと思って
 います。主要人物も、ありきたりでしたしねえ。

37 名前:flow 投稿日:2002年06月18日(火)22時13分37秒

 作者が言うまでもなく未熟な為、文章的なものや話の流れ上、おかしなところは多
 過ぎるほどたくさんあったと思うのですが、どうかご容赦ください(笑)。
 それと、1スレ目のころからざっと読む限り、書き方が異様に変化しまくっています。
 行間や1行の文字数など、正直滅茶苦茶で読み辛過ぎます。ごめんなさい。
 それもこれも、全て作者の至らなさ故。(それでも読み続けてくださった方、本当に
 サンクスです)

 今日はこれで失礼させていただきます。UPすることでもういっぱいいっぱいです(w
 後日改めて、あとがきようなものを載せてみようかと思います。

38 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月18日(火)22時14分57秒
ほんと、お疲れ様でした。
すっごい、いい作品読ませてもらってありがとうございました。
39 名前:flow 投稿日:2002年06月18日(火)22時15分19秒

 こんな最後の作者の独り言までも読んでくださった方、何度でもお礼を言わせてく
 ださい。ありがとうございます。ボキャブラリーが貧困なため、それしか言えません。
 それでは、これにて 『デス・ゲーム』 終了とします。

 ( もったいない程スレ容量が余っているため、ちょこちょこと何かしら載せていこう
   と思っております。本当にもったいない使い方で申し訳ないです… )

40 名前:flow 投稿日:2002年06月18日(火)22時19分43秒
>38 名無しさん
   リアルタイムですか、早速レスありがとうございます!!
   あとは、余ったスレをどうにか使い切りたいと、それが目標です(w
41 名前:ケンドー・コヴァヤシ 投稿日:2002年06月18日(火)22時24分46秒
長い間お疲れさまでした。これからじっくり読ませていただきます。
わたくし的には、市井の背中で死んでいった矢口に涙が止まりませんでした。
こんな大作に巡りあえて、ホントに幸せです。ありがとうございました。
42 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月18日(火)22時34分37秒
本気で面白かったです。
今まで何度何度も涙腺を爆発させて頂きました。
毎回の更新が楽しみで楽しみで・・・。
本当にお疲れ様でした。
ありがとうございます。
43 名前:はろぷろ 投稿日:2002年06月18日(火)22時57分05秒
お疲れさまです!
ラストが近づいてくるにつれて目頭が熱くなってきました・・・
やっぱり超大作です!
44 名前:都古 投稿日:2002年06月18日(火)23時07分13秒
お疲れさまでした。
途中、何度も涙で画面が見えなくてほんと困りました。
最後の手を繋いで死んでいく2人が切なかったです。
こんな大作と出会えたのを神に感謝です。。。
本当に本当に有り難う御座いました。
45 名前:羊版某小説作者 投稿日:2002年06月18日(火)23時13分27秒
つい最近この小説を知り、最初から数時間かけて読み、リアルタイムでラストに立ち会うことが出来ました。
もう感動の一言です!!
作者様はご自分を未熟などと評されてますが、私などそれにも及ばないです。
どう書いていいか分かりませんが、長期連載、ご苦労様でした。
46 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月19日(水)01時21分05秒
最初から最後まで展開の一つ一つにドキドキしてました
とにかく感動!
いいもの読ませてくれてありがとう!
そして、作者さんお疲れ様でした
47 名前:詠み人 投稿日:2002年06月19日(水)08時03分47秒
何だか、言葉も出ません。とにかく、胸がいっぱいです。
何度この小説で泣かされたか分かりません。放置が多いバトロワという
ジャンルで、ここまでの大作をきっちり書き上げてくれた作者さん、ありがとう。
また最初からじっくり読んでみたいと思います。
48 名前:読者 投稿日:2002年06月19日(水)11時44分28秒
衝撃のエンディングですね。
ハッピーエンドじゃないけど限り無くそれに近い終わらせ方で良いと思いました。
また次回作も期待しています。
49 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月19日(水)11時58分57秒
最高です。
始まった当初からずっと見させていただいていました。途中で飽きるハズもなく。ずっと。
加護や松浦のシーンでは号泣し、市井が矢口をおぶって歩いてるシーンでは、涙で画面が見えないほど泣きました。

こんな感動的で最高な話に巡り合えたこと、言葉では表せないほど感謝してます。
50 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年06月19日(水)18時28分11秒
完結おめでとうございます。
そしてお疲れ様でした。
完結してからレスをしようと思っていたので書き込みは久しぶりになります。
いますごく感動してます。
衝撃的なラストでしたがすごいキレイなエンディングだったと思います。
flowさんには最後まで書き上げてくれてとても感謝しています。
本当にありがとうございました。
終わってしまうと飼育の楽しみが一つ減ってしまいますが余ったスレに作品を載せていただけるとの事なのですごく楽しみです。
51 名前:読んでる人 投稿日:2002年06月19日(水)18時53分44秒
脱稿、お疲れ様でした。
この作品は久々に読み応えのある超大作でした。
ヤグヲタな自分は、バトロワ系で途中で矢口が死ぬと、
だいたい読むのを止めてしまうんですが、この作品は面白かったので
ラストまでしっかりと見届けるコトができました。

良い小説を提供してくれてありがとうございました。
そして、次回作も期待してます。
52 名前:市 ・ 後 ・ 保 投稿日:2002年06月19日(水)19時16分00秒
…そうか…寺田をやったのは…すいません、私は愚かにも、最初読んで勘違いして
ました…。普通気づくはずですが…私も寺田状態だったみたいで…。市井が生き残
って(記憶もそのままで)世界を…っていう風には、やはりいかなかったけど、でも
生きるだけがすべてじゃないって言うか…とにかく、市井も後藤も幸せなラストで
良かったです!市井も「未来を変えてみせる」って言ってますし。
この作品には大いに泣かさせてもらいまして、作者さん本当にありがとうございま
した&お疲れさまでした!なんか今回、場を読めてないようなレスになってしまい
すいませんでした。それでは作者さん、これからも頑張ってください!チャオ〜!
(ってこういうこと書くからいけないのかな…。投稿経験少ないんで…。)
53 名前:3105 投稿日:2002年06月19日(水)19時44分14秒
完結おめでとうございますそしてお疲れ様でした。
ホント感動しましたこんなに感動できる話を読んだのは久しぶりです。
前にレスしたみたいに市井が最後に幸せになれてホントによかったです。
感動を与えてくれてどうもありがとうございました。
次回作楽しみに待ってます。頑張ってください!
54 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月20日(木)14時45分40秒
完結おめでとうございます。
ラストの雪のシーン。綺麗過ぎて言葉も出ませんでした。
ホントに良い作品に出会えたと思っています。
本当にお疲れ様でした。次回作、私も楽しみにしています。
がんばって下さい!!
55 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月21日(金)00時57分42秒
初めまして。
今日一日で引き込まれるように一気に読んでしまいました。
泣きすぎて頭が痛いです。
市井、矢口のシーン。
後藤の告白。『市井ちゃんが好き過ぎて、辛いなぁ、ちくしょぉ』
思い出しても、涙腺がゆるみます。
バトロワ物を読まず嫌いしてたのですが、読んでよかったです。
素晴らしい大作をありがとうございます。
あーでも、明日会社で絶対目が腫れてる。
56 名前:代打矢口 投稿日:2002年06月21日(金)10時30分02秒
完結おめでとうございます。そしてお疲れ様でした。
レスは初めてですが開始からほぼリアルタイムでずっと読ませていただいてました。
ヤグヲタの俺は矢口が市井の背中で死ぬシーンでマジで大泣きでした。
放置が多いバトロワ小説でこれだけの大作を書き上げたflowさんには脱帽です。

やべ、思い出してまた泣きそう・・・。ここ大学のパソコン室なのに・・・。
57 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月22日(土)03時45分31秒
すごかった・・・。「わぁい、いちごま?よしごま?」なんて
よろこんでいた自分が恥ずかしいです。
今年の冬、雪が降ったら、この作品を思い出しそうだ。
そん時も泣いたらどうしよう(w
作者様、大作お疲れ様でした。そして、ありがとう!!
次回作品、楽しみにしています。がんばってください。
58 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月23日(日)01時36分53秒
ようやく、全スレ読破しました。今、感動で胸が痛いです。
市井と後藤のラストシーン、何だか言葉では表せません。とにかく
最後に二人が一緒でよかったです。どうしたって、ハッピーエンドは
ありえない題材だと思っていたのですが、最後まで読み切って安心した
というか。。。
素晴らしい小説をありがとうございました!次作品も期待してます!!
59 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月23日(日)06時25分48秒
スレ全部読みました。ラストも泣いた。なかでも・・・
・・・辻ちゃん編は号泣だぁ。俺、後藤ヲタなのに・・・
作者さんの表現力すごいよ。
ぜひ、また書いて下さい。お待ちしてます。
60 名前:ショウ 投稿日:2002年06月23日(日)19時21分02秒
二転三転する展開、ラストシーン、そして皆さんの感想を見て、
背筋が震えました。本当に感動しましたとしか表せない自分が
もどかしいです。思えば初めから見させて頂いてましたねぇ。
毎日の更新が楽しみでした。終わってしまうのはとても悲しい
のですが、いっぱい感動をくれてありがとうございました。
僕も何か人を感動させるものを作り出してみたいと思いました。

flowさん、本当にお疲れ様でした。
61 名前:読んでた民 投稿日:2002年06月24日(月)01時01分38秒
ついに・・・ついについについに!
完結しましたね・・・堂々たるラストでしたよぉ(震)
ここまで長い長い作品をしっかり書き上げた
flowさんに脱帽!そして感謝!!
何より感動をありがとう・・今後の作品にも期待してます。

62 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)05時32分41秒
ご脱稿お疲れ様でした。
この小説の石川さんが好きです。
一途な感じがとても良くて・・・。

アンリアルバトロワというのはあまり見なかった気がします。
新しいジャンル、とも言えるのでしょうか。
次回もあるのでしたらがんばってください。
63 名前:名無し 投稿日:2002年06月24日(月)15時27分42秒
完結お疲れさまです。
ついに一週間の楽しみが終わってしまったことは、少し悲しいです。
作品の感想はこのレスの多さが、ものがったている通り素晴らしいものでした。
次回作に激しく期待してお待ちしております。
64 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時38分23秒

 読んでくださった上、レスまでくださった方々、感謝の気持ちでいっぱいです……
 つたない言葉申し訳ありませんが、お返事をさせてください。

 >41 ケンドー・コヴァヤシさん
    じっくり読まれると、粗がたくさん見つかってしまうと冷や冷やします(w
    こちらこそ、読んでいただきありがとうございます!初レス嬉しいっす。

 >42 名無し読者さん
    涙腺を何度も爆発ですか……いやあ、書いた甲斐がありました。
    毎回楽しみにしていただいたということで、ほんと作者冥利に尽きます。

 >43 はろぷろさん
    超大作というのは真面目に気が引けるのですが、5スレまで突入したという
    点では「超」長作とはいえるかもしれませんね(w
    毎回のレス、いつも励まされていました。最後までありがとうございました。

65 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時39分20秒
 >44 都古さん
    最後のシーンは気合入れて書いたので、そこを評価していただけて良かった
    です。それにしても、すごい褒め言葉を……、ありがとうございます。

 >45 羊版某小説作者さん
    数時間かけて最初から読んでくださったですか。ああ、恥ずかしいけど嬉しい(w
    より高みを目指せるよう、これからも他の方の小説を読みふけります。
    良ければ何を書いてらっしゃるのか、コソーリ教えてください…

 >46 名無しさん
    最初のころは、ほとんど勢いだけで書いていたので本当に見たくないですが、
    それでも評価して(読んで)くださりありがとうございました!

 >47 詠み人さん
    詠み人さんも、ほぼ初期のころから付き合っていただき、感謝感謝です。
    放置が多い>バトロワとはよく聞く言葉だったので、最後まで意地でも書き
    上げるのが目標でした。本当に終わってよかった(w

 >48 読者さん
    ラストシーンは、最初に浮かんだ構想なのです。ハッピーエンドに限りなく近
    い終わり方、という評価は、自分の感覚にとても近いので嬉しいです。

66 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時40分53秒
 >49 名無し読者さん
    当初から読んでいてくださったのですね…長いことありがとうございました!
    松浦のシーンは、自分的に好きだったので覚えていてもらって感動です。
    最高な話だなんて、涙が出ますよ。
     
 >50 ロ〜リ〜さん
    某チャットで……(略) 完結まで付き合っていただき、ありがとうございました。
    途中で読者さんが離れずにいてくださるのは、本当にありがたいことだと思い
    ます。っていうかありがとうございます!

 >51 読んでる人さん
    ヤグ好きだったんですか!それなのに、最後まで読んでくれたとは(涙
    途中で離れずに読者さんがついていてくれるというのはとにかく嬉しいもので。
    お付き合いいただき、ありがとうございました。      

 >52 市・後・保さん
    >寺田状態だった……ですか、それは確かに混乱ですね(w
    長い話でしたが、納得していただけたようなので良かったです。ちょと安心。
    (場を読めないとかんなことないっす!レスもらえるだけで歓喜っす!!)

67 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時41分50秒
 >53 3105さん
    完結しました、ありがとうございます。
    市井のラストもあんな感じになりましたが、良かったと言っていただけて作者
    も良かったです(w   これからも頑張ります!
 
 >54 名無し読者さん
    ラストは時間かかって書いた分、褒められると素直に嬉しいです。
    良い作品、ですか…いやあ(照) とにかく最後まで締められてほっとしてます。
    読んでくださりありがとうございました。

 >55 名無し読者さん
    会社は大丈夫だったでしょうか(笑) それほど感情移入してくださったことが
    本当に感激ですよ。ありがとうございます。
    後藤の告白シーン、気に入って(?)いただけて、良かった…。

 >56 代打矢口さん
    最初からほぼリアルタイムですか…最初のうちはマジで酷いので(赤面)。
    救われない話なんですが、市井と矢口のシーンは皆さんの評価もまずまず
    のようで、胸をなでおろしてます。レスありがとうございました!

68 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時43分01秒
 >57 名無し読者さん
    いちごま、よしごま、どっちだったんでしょうね、結局(w
    雪は最初からのテーマだったんで、要所要所でちょくちょく使ってましたが、
    冬になっても思い出してくだされば幸いです。

 >58 名無し読者さん
    確かに題材としてはハッピーエンドはあり得ないですよね。
    1スレ、2スレの人数の減り方はすごかったですし。それでも、こんな暗い話
    を読んで安心してくださったようで、ありがとうございます。

 >59 名無し読者さん
    辻編、実は1番平和でした。疑うことを知らない子だったので、少し作者の良
    心も痛みましたが(笑)。
    で、後藤ヲタなのですね、作者と一緒です、ありがとうございます!(w

 >60 ショウさん
    本当に、最初のころからレスをいただいていましたね。
    そして最後までずっと…。感動しましたとの評価、慎んでお受け取りします!
    何と言うか、私も感謝の言葉が見当たりません。ありがとうございました!!

69 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時43分53秒
 >61 読んでた民さん
    とにかく最後まで書き上げることを課題としていましたが、正直ここまで長い話
    になるとは想像してませんでした(笑)。こんなに面倒な話を最後まで目を通し
    てくださり、ありがとうございます。

 >62 名無し読者さん
    確かに、アンリアルは少ないですよね>バトロワ。ただ、個人に焦点を当てる
    時、その方が話を広げやす(略)・・・というわけなので(w
    石川さん、評判悪いんじゃないかと心配してましたが、一安心です。

 >63 名無しさん
    ものすごい量のレスをいただき、私もびっくりしているのですが、それだけ多く
    の方に読んでいただいたのかと涙が出るほど嬉しいです。読んでくださり、
    ありがとうございました!

70 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時44分40秒

 本当に感想の1つ1つに心から感謝の気持ちを述べたいです。
 長い話にもかかわらず、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 そして、次作品に関する応援の言葉もいただきまして、今のところ構想は出来ている
 ものの始めるまでには至らないので……。

 取り合えず、このスレを余らせないため、短めの作品を載せたいと思います。
 ただし、すぐには無理っぽいので(笑)、ぼちぼちと。
71 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時45分52秒
 《デス・ゲーム》作者的キャラ考察

 バトロワ系の小説を書こうと思い至り、何とか書き終わったわけですが、スレが
少々余っていますので蛇足として書こうと思います。
 (ネタバレ含む)

 それでは、年齢順に。
72 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時46分35秒

 中澤裕子  age:28   【2,犠牲】
 『心配せんでええって、裕ちゃんなら平気や』

 ほとんど出番が作れませんでしたね……本当は、中澤は生き残る(というか、ゲーム
自体に参加しない)予定だったんです。が、出足でインパクトが欲しかった為、こういう
結末になってしまいました。
 ただし、園の生徒達の中では母親代わりの存在であった為、名前の出演は何度か
ありましたね。特に、矢口編や市井編では。
 本気でゲームに参加していたら、どうなっていたでしょう。意外と活躍するかな?


 石黒彩   age:23   【12,絶望】 
 『嘘…じゃないのね、死んじゃったのね、殺されたのね…私の家族は』

 当初、この方主役の話はなかったんです。ですが、せっかく「ゲスト」出演しているの
にそれはないよな〜と思い、ああいう話になりました。唯一の家族持ちだったわけです
が、実際外に家族がいる場合、1番未練が出るだろうなあと思いつつ。
 母としての強さを書きたかったんですが、無理でした(w
 あまり小説に出て来ないキャラなだけに、かなり苦労した1人です。

73 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時47分09秒
平家みちよ age:22  【なし】
 今回のごめんなさいNo1はこの人です。みっちゃんいい子なのにね(w
 とりあえず人数を上乗せする為に出たようなもの。関西弁喋ると中澤さんと被るし、ど
うしようかと考えた挙句あの扱いでした。ああ…


 保田圭    age:21  【17,激昂】

 『どかないよ。カオリを、殺人者にはしたくない』
 作者的に、ちょっとイイ役。根本的に、この話は皆どこかマイナス思考で、ネガティブ
気味なんですが、保田がキング・オブ・ネガティブでした(w
 コンプレックスの固まりなのですが、実は市井と仲が良いという裏設定もありつつ、
絡ませるのは飯田・矢口・安倍と年上組みオンリーになりましたね。あ、石川もか。
 本当は友達思いなのに、どうしてもあと一歩を踏み出せずにいたところを、最期の最
期でようやく殻を破れたというイメージで。もうちょっと書きたかった。

74 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時48分47秒
 飯田圭織  age:20  【15,疲労】
 『どうして、なっちが死ぬ直前、手を差し伸べてあげることも出来なかったんだろう』

 現リーダーも、いまいちな役回り。かな? 本当は、辻ともっと絡ませたかったのです
が、辻がトップバッターで狙われるというのが予めの設定だった為、飯田、無念ながら
生きた辻と対面することは叶わず。
 石黒さんと同じく、何を考えているのか想像しにくく、非常に書きづらかったですね。
ボケなのかしっかりしているのか、作者のキャラ作りが下手なせいもありますが(汗)、
もっと掘り下げて書けばよかったと後悔しきり。

 
75 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時49分22秒
安倍なつみ  age:20 【5,崩壊】
 『だって、なっちはなっちなんだよ!? ―― みんな、分かってんの!?』

 彼女を、こんなに早くに消してよいものかと悩みましたが、話の構造上、嫌な性格も
1人はいないといけないし、あまりインパクトのない娘が嫌な役をやってもな〜と思案
した結果、白羽の矢を立てました(w
 親父には見捨てられ、本当に可哀想な役になってしまった……。
 ただ、死に方が非常にインパクトが強かった為、個々の話の回想にはしょっちゅう名
が挙がっていましたね。その意味では重要でした。
76 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時50分04秒
 矢口真里   age:18  【14,失意/20,友達】
 『辛いときはね。泣いていいんだよ、矢口がここにいるからさ』

 作者的1番苦労した人No1!!(w
 矢口が好きな人からしたら、この扱いはどうなんだろうと思いつつ、書いていました。
 彼女に関しては、園での人気者という裏設定があったため、誰からも大事にされて
その結果、回りの人間が次々と(矢口を庇って)死んでいくという、「スク○ーム」的な
話が多かったです。でも書いてて動かしやすいタイプでした。
 バトロワ系では、割と最後まで生き残りやすい娘の1人ですが、そこらへんも色々
考えさせられました。被るとな〜……とか、色々と(w
77 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時50分54秒
 市井紗耶香 age:17  【1,帰郷/11,再会/24,未来】
 『その笑顔が、見たかったんだよ、後藤?』

 記念すべき、本作主役です。もともとの性格としては、もっとあっさりとした淡白な性
格だったのですが、もう片方の主役(後藤)が更に感情の動きの少ないタイプだったの
で、当初より遥かに熱い性格になってしまいました。
 結局、格好よかったのは最初の方のみで、後半になるにつれどんどん情けなく……
が、それは狙いでした。「助からないかも」という現実を知って、弱気になっていく過程
を書きたかったのです。これはもう、市井以外にハマリ役はいません。
 個人的には、吉澤との絡みも書きたかったですね、もっと。
78 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時51分45秒
福田明日香 age:17 【9,焦燥】
 『…私が死んで、誰かが泣いてくれるかな?』

 設定はすごく大袈裟ながら、正直この話の中では全く意味ないし……。使い方を誤
ったと思ってます。なんじゃあの妙な設定は(w
 娘。に興味を持ったのが彼女の卒業後だった為、四苦八苦しながら書いてました。
 誰と絡ませればよかったかな〜と。ただ、安倍が初期段階で死んでしまった為、絡ま
せてみたい相手がいなかったんです。石川との話は、もうちょっと書きたかったかな。
79 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時52分43秒
 石川梨華  age:16 【16,価値/21,一途】
 『 …あたしが、してきたこと……正しいなんて思ってないよ』

 初期段階から活躍しているにも関らず、主役回は随分後になってからなんです。
 まさに、遅れてきた破壊神(w
 石川がいなければ、話がここまで上手く回っていかなかったでしょう。かなり暴れ回り
ましたが、純粋すぎてああなってしまったという感じで。他のバトロワ系でも、石川が
本版「桐山」や「相馬」的な立場にいることは多いと思うのですが、ちょっと趣向を変え
てみました。唯一女言葉が多かった彼女です。嫉妬する気持ちを含め、女らしさを追及
した挙句に出来たキャラでした。
80 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時53分21秒

 吉澤ひとみ age:16  【10,目的/22,約束】
 『ったくこのバカ、どうしてそんな簡単なことに気付かないんだよっ!!』  

 彼女に言いたいのは、「結局お前どっちが好きなんだよ!」………と(w
 市井と同じく、何処か男性的な雰囲気を持つイメージがあるため、優柔不断だったの
でしょうか。とにかく、吉澤についての話を書き始めるとどうにも長くなり過ぎてしまう傾
向があり、一話を終結させるのに苦労しました。
 他の小説で主役頻度の高い彼女ですが、何となく分かる気が…。話を広げやすいん
ですよね。実は、中学生組の何人かが吉澤に憧れているという裏設定もあったのです
が(松浦あたり)、収拾つかなくなるので却下しました(w
81 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時54分43秒

 後藤真希  age:16  【4,無感/18,独白/23,言葉】
 『 …………神様は、残酷だ』

 作者的いろいろ背負ってる人No1でした(w
 唯一、登場人物の中で「ゲーム」のあれやこれやについて知っている設定だった為、
どう動かすか苦労しました。妙に達観していたり、なかなか動きを見せなかったり、説
教くさかったり……。無口な設定のはずだったのに、結局いっぱい喋ってました。
 主役の片割れなのですが、安易ないちごまにはしたくないと、最初から市井との関
係は決まっていました。実は、クールに見えてかなり気持ちの浮き沈みが激しい子で
したね。なんか、改めて考えると相当辛い現実を見据えていた子です。
82 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時55分42秒

 松浦亜弥   age:15  【8,喪失】
 『私のこと、許して』

 この台詞が書きたかった。あの声で、聞いてみたいと(笑)いうのは冗談ですが、加
護と絡ませるというのはずっと考えていたことです。素直になれないながら、本当は皆
の輪の中に入りたいと思っているような、ちょっとヒネクレ気味の(w
 アイドルなのに、それらしき場面が一度も出てこなかった。あちゃ〜


 高橋愛    age:15  【19,混迷】
 『…い、ちいさ……。ありがとございます……』

 なかなか出番がなかったところ、なんとか出せたときはホッとしました。
 最初の方で中学生が次々死んでいってしまったため、「まさか中学生全滅という訳
には……」と思い、出番が延び延びに。
 本当は、市井に殺される予定だったのですが。どうしてあんなことに(w
83 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時58分19秒

 小川麻琴   age:14  【13,震撼】 
 『悔しく、悔しくないんですかっ……!?』

 高橋愛の親友という役割でしたが、結局高橋との絡みのシーンは書けず。中学生
のメンバーは全員あまり動かなかったというか、描きにくかったというか……多分、
中学生くらいじゃ他人を頼るくらいしか出来ないんじゃないかと(言い訳)。
 小川は我が強いという設定だったんですけどね……へタレでしたね。 


 辻希美     age:14  【6,彷徨】
 『サンタさん。辻はプレゼントなんていらないよ?』 
 
 泣ける話にしたかった、というか、唯一疑心暗鬼に陥らず、純粋に人を信じた子で
したね。最初に会ったのが石川でなければ、もっと生き残っていたでしょう。皆に大事
にされて。いやあ、こんな話の中に彼女を投入することが既に残酷です(w
 とにかく、苦労しました。可哀想で。
84 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)21時59分38秒
 加護亜依   age:13  【3,戦慄】
 『うちは、亜弥ちゃんのこと、好きやで』
  
 何か中途半端な役割でした。ああ、もっと上手い使いようがあったろうに。
 アイドルやってるシーンや、辻との絡みも描きたかったんですが、初期のうちは書い
てそのまま上げる、という動作を繰り返していた為……あまり練れていないんですよ。 
 (もちろん、今書いても大して変わり映えしないでしょうが) 


 紺野あさ美  age:14  【7,復讐】
 『わたしは、死にたくない。だけど、生き残ることもできません…』
 
 最後はあっさりでした。もっと粘らせようかとも思ったんですが、あんまり濃いキャラ
にすると、書き辛くて仕方ないので。正直な話。
 新メンの中ではまだ書きやすいタイプでしたが、やっぱり5期メンというのはちょっと
書きにくいものがありますね。というか、小説書くのも初めてでしたけど(w


 新垣里沙   age:13  【なし】 
 ……特に、コメントすることも…(笑)。
85 名前:flow 投稿日:2002年06月24日(月)22時00分46秒

 取り合えず、スレを少しでも埋めようと無駄な足掻きなんぞしてみました。
 ちなみに、この作品のテーマとして、今井美樹の「Sleep My Dear」がずっとバック
で流れているという裏設定が(w
 まあ知ってる方は知ってるでしょうが、詞がいい感じです。(これこそ蛇足だな)


 短編についてはもう少しお待ちください……急遽設定練り直しのため(w
 それでは、いつまでもダラダラと失礼いたしました。また小説をupするときは多分
ageますので、もし興味がちらりとでも沸いたら、よろしくお願いします。

 それでは、レスをくださった皆さん、読んでくれた皆さん、
 本当に本当にありがとうございました!! 

86 名前:羊版某小説作者(あ、羊“板”やった!) 投稿日:2002年06月24日(月)23時39分15秒
いやぁ、作者様のキャラ使いには脱帽ですわ。
私の作も、一応娘。全員(現在は後藤までの計9名)をまんべんなく登場させる予定なのですが、
安倍(主役)≧市井・後藤>…>矢口>福田>中澤>飯田>保田>石黒
…と出演頻度に自分の好みが反映されてるという状況で、まだまだ修行不足です。
現在は第二部に向けて鋭意製作中、娘。全員に活躍させたいと思っています。

え、作品名ですか?
それはまだ秘密っす。でも、ヒントはそこらじゅうにあります。

短編、楽しみにしています。
87 名前:市 ・ 後 ・ 保 投稿日:2002年06月26日(水)20時23分29秒
SLEEP MY DEARですか…なるほど、いいじゃないですか
擦り切れた心が そんなに痛むのなら
この胸に秘めた愛の力で きっとあなたを癒してあげる

短編も頑張ってくださいね!
88 名前:ま〜 投稿日:2002年06月30日(日)21時14分12秒
面白かったよ〜。最近飼育にあまり来てなかったんで、今更感想レス申し訳ないです。
終わってからレスしたかったし。
感想書いたら長文(「2行目から(ry」)って感じになりそうなんで
多くは書きません。一ついえることは大変面白かったです。

ただ、これはちょっと気になってしまったんで。
>>若手議員として内外よりその手腕に注目を集めていた防衛庁防衛参事
>>官人事教育局長寺田光男氏
若手官僚とかなってれば問題なしだけどね。

スレ汚しですまんね・・。
89 名前:flow 投稿日:2002年07月05日(金)21時45分45秒
しばらく骨休みしていました。青板短編を読み漁っています(w
で、スレを埋めるために載せるといっていた短編ですが、あまり短編ではなくなってきて
しまった為、(ダラダラと長くなってしまったわけです) 3回程度に分けて載せようと思っ
ております。
連日とはいかないと思いますが、ほとんど書きあがってはいますので…。

感想レスをくださった皆様、本当に本当にありがとうございます。
言葉足らずですが、返レスさせてください。

>86 羊版某小説作者(あ、羊“板”やった!)さん
   娘。満遍なく登場ですか?羊板でまんべんなくメンバーが登場している作品と
   いうと……(候補はあるんですが、作品名出すのはまずいかな、やっぱりw) 
   短編、あまり短編ではなくなってしまいましたが、良ければ読んでくださいね。
90 名前:flow 投稿日:2002年07月05日(金)21時46分34秒
>87 市・後・保さん
   分かってくださる方がいて、嬉しいです!
   別に歌詞をイメージして作ったわけではないんですけど、結果としてなかなか
   はまるんじゃないかな、と(自分の中ではの話ですが)。短編、頑張ってます!(w

>88 ま〜さん
   ま〜さんのゆうごま好きっす!(感激) とりあえずレスをいただけたことに涙。
   で、ご指摘のアレについては……まあ作者の見識の浅さ、ということで鼻で笑って
   やってください。阿呆なくせに無理した結果です(ニガワラ 
 
 それでは、(スレ埋め様)短編「前編」書かせていただきます。

91 名前: 投稿日:2002年07月05日(金)21時48分17秒


 ――― 理由のない、不思議な出来事。それは、確かにあるんだよ。

                 「 over 」 



92 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時49分16秒

 前編   『変なヤツ』     



 矢口真里は、いつも手袋をはめていることで有名だった。
 小柄な体躯と、明るい金色に染めた髪の毛。黙っていれば普通の女子高生(とは
 いっても、アイドル然とした可愛らしさは普通というには多少語弊はあるだろう) に
 見えるその少女と、真っ黒な皮製のグローブは、余りにも不釣合いだ。

 『きっと、すごい火傷の痕とかがあるんだよ』
 『違うよぉ、あれね、男にフラレたとき手首切って、その傷隠してるんだよ』
 『え〜? 嘘ォ』
 『ホントホント、あたし、あの子と同じ中学校だったもん』
 『あたしは、相手の男が自殺未遂起こしたって聞いたよ』
 『マジでえ〜? 超ハードな中学生活じゃんっ!』
 あはははは、あははははっ……

 ・・・・・・

 ・・・

 噂はつきない。
 「あほらし……」



93 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時50分01秒


 矢口は、自分を醒めた性格だと思っている。少なくとも、そういった噂に左右する事
 もなく、あえて傍観する道を選ぶ自分は。否定も肯定もせず、聞き流すだけ。
 
 だって、意味ないじゃん?疲れるだけだって、いちいち付き合ってたら。ほとんどの
 子達は、面白がって話を盛り上げたいなんだ。
 とかく、人の噂話は面白い。それが、下世話であればあるほどにね。


 「矢口さ〜ん、おはよっ!」
 【やっぱり目立つなあ、矢口さんの背の低さと金髪の頭って】

 唐突に自分を呼ぶ声に、矢口はゆっくりと振り向いた。

 「……おはよ……」
 「相変わらずテンション低いねえ、もっと元気出していこうよっ」
 【こんなに天気がいいんだからっ!】

 ( あんたはそうしてテンション上げて、1人空回ってることに気付いた方がいいよ )
 
 明るく、そして少し意地悪な言い方で表すならば甲高い声で、自分に話し掛けてく
 るクラスメイト ――― 石川梨華というのが本名だ ――― をこっそり横目で見やっ
 て、矢口は胸中でそっと毒づいた。もちろん、口には出さない。



94 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時50分36秒


 【石川さんてば、またあの子に声掛けてる】
 【信じらんない、怖くないのかなあ】
 【脅されてんのかなー、次あたしがターゲットにされたらどうしよう】
 【怖ぁい〜、朝から嫌な人と登校時間被っちゃったなあ…】

 ( るっせえなあ…… )

 手袋をはめていても、相手に触れずとも、朝のぼんやりとしたガードの甘い矢口の
 頭に、無遠慮な周囲の声が次々と流れ込んでくる。
 しかし、そのことで矢口はその声の主らを責めることなど出来はしない。何故なら、
 少女らは実際にそれらを口にして喋っているわけではないのだから。

 全て、そられは彼女らの胸中にのみ呟かれる言葉だ。誰が、その事に対して因縁
 などつけることが出来よう?まして、矢口は揉め事は嫌いだった。
 否、「面倒なこと」が嫌いだった、と言うのが正しいか。



95 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時51分13秒


 「それでねえ、矢口さん。今度の体育祭の種目なんだけど…」
 【やっぱり、クラスに馴染むんだったらイベントがいいきっかけに】

 「矢口さんって、足速いじゃない?」
 【あたしの足が遅過ぎるのかもしれないけど】

 「別に、矢口は参加する気ないんだけど……」

 【えー?】

 ( えー?って。…石川、その顔、はっきり言ってブスだよ )
 瞬間、石川梨華は露骨に不満そうな顔をした。矢口はそれがおかしくて、不意に
 吹き出しそうになる。敵意の欠片もない彼女の心理は、矢口にとって非常に新鮮
 なものだった。
 
 【このまんまじゃ、矢口さんクラスからどんどん浮いてっちゃうのに〜】

 
 ( 大きなお世話だよ。別に矢口は困ってないっちゅーの )
 そう、矢口真里は、人の「心」を読むことが出来た。自分の意志とは無関係に。理由
 など分からなかった。親とて、そんな特殊能力を持ち合わせていなかった。
 突然変異?
 おそらく、そうだろう。持ちたくて、こんな力を持って生まれた訳じゃないんだ。



96 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時53分22秒

 ―――

 「えーと、あのねえ…?」
 【 しょうがないなあ〜、どうしよう、人数足りないって言おうか、それともカッコいい男
  の子、紹介するって言おうか】

 ( あのなあ、……コイツ、アホだね ) 
 一昔前のアイドルのように、目の前のクラスメイトは眉を八の字に寄せて、困った様
 に腕を組む。心の声を聞くまでもなく、相手の考えることが手に取るように分かると
 いうことは、何となく、矢口をほっとさせた。
 知らず知らずのうちに、口元が綻んでいることに気付き、矢口は慌てて表情を引き
 締める。( ああ、ヤバイヤバイ。なんか矢口、変な人みたいじゃん )
 

 ―――

 それでも、矢口がその『力』に初めて気付いたときよりは相当に、彼女がその不思
 議な ――― まあ周囲からすれば「気味の悪い」 というのだろう ――― 力を多少
 なりとも制御できるようにはなっていた。

 しかし、日常生活の場面全て、そうも気を張っていることも面倒だ。何より、疲労度
 が異常に蓄積される。よって、矢口はあまりそういった危険性がないと予測される
 朝の通学時などには比較的、能力を押さえ込むようなことはしなかった。
 


97 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時54分10秒


 「怖い」 「気持ち悪い」 ――― そんな言葉にはもう、とっくに慣れてしまっている。


 「梨華ちゃん、ほら早く行こうよぉ〜っ」
 【あんまり、そんな子と仲良くしない方がいいのに、梨華ちゃんてお人よしだなあ】

 「ごめん、今行くっ!」
 【そうだ、今日、先生に提出物があったんだあー】

 はっとした表情を浮かべると、石川梨華は前方で自分を呼ぶ友人の声に答える様
 に片手を上げると、興味なさ気に口を結んでいる矢口に 「また教室でね」、と言い
 残し、走り去った。

 ( 本当に、お人よしっつーかバカっつーか……矢口のことなんか、放っときゃいい
  のに、変なヤツ )

 ほんの少し、矢口の中に明るい余韻が残る。別にそうと意識しているわけではな
 いのだろうが、石川梨華という屈託のない笑顔に、少しは羨望の思いを抱いてい
 る部分も持ち合わせているのかも知れない。もっとも、そんな石川が 「うらやまし
 いか?」 と尋ねられたら、答えは 「NO」 だけど。



98 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時55分04秒


 それに。
 今の矢口には、そんなことを一切気にせずとも付き合える『友人』の存在があった。
 知り合ったばかりだけれど、その『友人』に対し、矢口はまるで旧知の親友であるよ
 うな安心感を覚えるのだ。
 「――― 大丈夫。矢口は今、1人じゃないから。ね」

 丁度心臓部に当たる胸の辺りをそっと手の平で押さえて、矢口は誰にも聞こえぬ
 よう、至極小さな声で呟いた。


 ・・・・・・


99 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時55分41秒


 基本的に、矢口の力は相手に直接触れることでその思考が伝わってくるという類
 のものだ。彼女が分厚い皮のグローブをしているのはそういう理由である。
 それでも皮肉なことに、年齢を重ねるのと比例して、矢口の「読心術」は飛躍的な
 能力向上を見せた。

 直接に相手に触れれば、相手の思考どころかその人物の造形に係わる非常に深
 い歴史や思念・記憶までも読み取ってしまう。
 また、矢口真里の肥大化した異常な力は、相手に触れずとも、相手が「今」、考え
 ていることは意識・無意識に関係なく感じ取れるようになってしまっていたのだ。


 見たくなくても人の心が読める。
 聞きたくなくても、人の声が聞こえる。


 それらが、果たして苦痛以外の何であろうか。矢口とて、年頃の少女だ、他人の心
 を盗み見ているという罪悪感はどうしても芽生える。

 【ねえ、なんか矢口さんって、ちょっと不気味だよね〜】
 【あの目。何か、すごい怖いんだけどぉ】
 【全部見られてる気がする。……見られてるよね】



100 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時56分30秒

 ( …………… )

 そして、そんな矢口に少なからず警戒を抱く周囲の人間の胸中まで、察してしまう
 ことに、どうして無感でいられよう。矢口自身が望んだわけでもないのに。

 気を張っていないとき、矢口は周囲の「声」が自然と聞こえるようになっていた。
 もちろん、直接相手に触れたその時とは、聞こえる声の大きさもその人間について
 の情報量も、比べ物にならないくらい微々たるものだったが。
 ( いつの間に、矢口は平気になっちゃったんだろう… )

 人の心の声が、ごく自然に耳に入っても動揺せずにいられるようになったのは。



 パタパタと、軽やかな足音。何とはなしに、石川梨華が小走りに去っていく後ろ姿
 に目線を向けていた矢口に、朝から彼女にしては珍しく連続して声が掛けられた。
 「……仲、いいの?」

 「は?」



101 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時57分05秒


 背後から聞こえた、割と低音の大人びた声。どう考えても友好的でないその声に、
 矢口は不審感を隠そうともせず、あからさまに不機嫌な態度で答えた。
 「誰?」
 初めて見る顔だった。ダークブラウンの艶のある長い髪。すっと通った高い鼻梁は、
 どこか中世の彫刻のような印象を感じさせた。なかなかの………まあ、ぶっちゃけ
 た話、『美形』だったのである。眠たげな (と矢口には思えた)瞳で自分を見返して
 くる少女に、矢口はどうしても見覚えはなかった。

 145cmという、高校生にしてはどう見ても小柄過ぎる矢口は、同年代の少女らと
 話すとき、自然と見上げる格好になることが多い。この時も、矢口は下から少女を
 見上げるように鋭く視線を走らせた。
 
 「あの子と、仲いいの?」
 人によっては、そんな矢口の視線に「睨まれている」と勘違いし、怖がる者も少な
 くない。 しかし、目の前の少女はそんな矢口の一睨みなど意に介した様子もなく
 眉1つ動かさない。淡々とした態度。 



102 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時57分42秒

 何より、こんなに接近しているというのに、彼女の「心の声」は聞こえない。深層心
 理に触れるような部分まではもちろん聞こえないとしても、 彼女が今、考えている
 ことや思っていること。少なくともそれらは、矢口の耳には届くはずなのに。
 ( 何だよ、こいつ……何か……何か変……? )

 「……あの子って、石川のこと?」
 「ふうん、石川さんっていうんだ……」

 微妙にスローテンポで話すその少女に、矢口は次第に苛つきを覚え、そんな自分
 に苦笑した。ああ、これくらいでいちいち腹立てるなんて、矢口らしくない。
 感情を押し殺して生活することを覚えた自分が、そんな些細なことに苛つくなんて。
 「言っとくけど、ただのクラスメイトだよ?」 
 「別に、どうでもいいんだけど」
 「どうでもいいなら聞かないでよ」
 「………」

 即座に言い返す矢口の言葉を受けて、少女は無表情に黙り込む。何となく居心地
 の悪さを感じて、矢口は少女を伺うようにその顔を覗き込んだ。
 何かを腹の中で算段しているようにも見えるし、何も考えていないようにも見える。
 


103 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時58分33秒

 ( 変なヤツ…… )
 それが、矢口の第一印象だった。
 贔屓目に見ても、彼女が人を惹き付ける独特のオーラを放っているのは分かる、け
 れど、他人に関心を持たずに生きている矢口にとって、そんなことは関係ないのだ。
 ただ、矢口が彼女に対して僅かではあるが『興味』を持った理由。

 ――― 似ていた。その、世界に心を閉ざしたような内向的な瞳の奥に、ギラギラと
 燃え盛る暗い炎が。他ならぬ、自分と ――― 矢口真里と似通っていたのである。
 ( 何だよ、こいつ? )

 その小さな手を、黒いグローブごとぎゅっと握り締めて、矢口は今度は本当に睨み
 つける様にして、その少女を見上げていた。
 「ねえ」 その視線を感じ取ったのかどうか知らないが、出し抜けに彼女が矢口に声
 を掛ける。内心、びくりとしたものの、矢口は努めて平静な表情で少女を見据えた。

 「…何?」
 「なっち」
 「……は?」
 「って子、知ってる?」
 「知らない」
 「あそ…………」

 ( ……………!? ) 
 瞬間、心臓が口から飛び出るかと思うくらい、矢口の心に衝撃が走る。



104 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)21時59分32秒

 ( 何で、…何で 『なっち』 のことを……? )
 それでも、長年かけて養われたポーカーフェイスという、その愛らしい顔つきには似
 合わぬ表情を作ることを覚えた矢口にとって、その驚きを表に出さないのは造作も
 ないことだった。もちろん、その少女に矢口の驚愕など伝わっていないはずだ。

 「じゃあいいや」

 矢口の返答に納得したのかどうか、少女はあっさりと言い捨てると、くるりと矢口に
 背中を向けた。「っおい、おいっ!」 慌てて矢口は少女を呼び止める。
 「……なに?」
 面倒臭そうに、長い髪を揺らして少女が振り向いた。

 呼び止めた矢口も負けてはいない。「あんた、ガッコは!?」

 まさしく、少女は正門へ向かって歩いて行こうとしていたのである。
 時間は? 朝8時、言うまでもなく登校時間の真っ只中。
 
 少女に対して、矢口があまり警戒心を持たなかったのは、自分と同じ制服を着てい
 たからだった。つまり、同じ学校に通っている生徒である、と。
 ( 元々他人に興味を持たない矢口は、同じ学校内とはいえ、知らない顔が幾らあろ
  うが気にしない。むしろ当たり前だとさえ思っているのだ )



105 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時00分19秒

 それなのに、もう昇降口の目前というのにも係わらず踵を返し、人の流れに逆行し
 て帰ろうとする少女。矢口自身もあまり真面目な生徒とは言い難いが、思った、
 ( おいおい、それはちょっとあんまりなんじゃない? )
 
 ――― 少なくとも、出席確認くらいまでは、いたほうがいいって。風紀委員を偉そ
 うに名乗る気はないけどさ。まして、心配してやる義理もないけど。

 「……あなたはさ、学校来て楽しいと思ってる?」
 「え?」
 妙に冷めた彼女の表情は、高校生にはない色気を醸し出している。そんな少女に
 突如、逆に聞き返され、矢口は一瞬答えに詰まった。
 
 ( 学校、楽しい? 矢口は、矢口は……… )

 「 多分、同じこと思ってるはずだよ。あたしは、学校なんてつまらない。面白くない。
  正直言って、人がたくさんいるのは苦手」
 「!!」
 「 本当に、何のために来てるんだろ、学校なんて。なっちが言わなきゃ、来ようなん
  て少しも思わなかったのに」



106 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時01分03秒

 彼女の、どこか暗く澱んだ視線は、矢口の小さな手にはめられた飾り気のない、黒
 いグローブに注がれていた。ただしその目に宿る感情は、いつも他人に向けられる
 興味本位のそれとは違い、哀れむような、同情するような、不思議に矢口に同調す
 る様な色味が感じられた。
 
 「それ付けてなきゃ、あなたの『力』は抑えられない?」
 「ちょっと、あんたはっ…!」
 「気付かない?」

 矢口の口調が焦りを帯びて、少女はそれを楽しむように口の端をきゅっと吊り上げ
 て小さく笑った。本当に楽しいと感じているのかは別としても。
 「あたしは、気付いたよ」

 茶化すような口調ながら、少女の目は真剣だった。自分より遥かに背の高い少女
 にじいっと見下ろされ続けるのは当然良い気持ちはしないけれど、それより矢口は
 自分の手 (正しくは、それにはめられた手袋だ) に注がれる彼女の視線の方が、
 気になっていた。何となく、落ち着かない。

 ――― まるで、見透かされているような。では、何を?



107 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時01分44秒


 「普通じゃない力、持ってる人。あたし、分かるんだ」
 「!」

 ぎくりとして、矢口の大した物事には動じない強心臓が、激しく音を立て始める。 
 普通じゃない力。それが、何を指しているのか、矢口に分からないはずがなかった。
 「あんた、知ってるの? 矢口の………『力』……」
 「どんな力なのかまでは、分からないんだけどね」

 表情を変えない矢口と、その目の前の髪の長い少女。
 言い表し様のない緊張感が、2人の間に漂う。 

 「 だって、みんな同じ顔。変な力持っちゃったせいで、理不尽な境遇に追い込まれ
  た人。同じ顔してるんだもん。あたしみたいに、すごく、寂しそーな顔」
 「………」

 にひひ、と笑って、少女は少しばかり腰を落とすと、矢口の顔を覗き込んだ。
 ( 理不尽な境遇…… )

 「 ねえ。世の中ってさ、自分とは違う人を排除しようとするものでしょ? すごく、居心
  地悪いと思わない?」
  
 ( 人とは違う力。居心地の悪い、世界 )



108 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時02分31秒

 ――――


 たくさんの人。たくさんの思い。嫉妬、焦燥、憧憬、抗争。
 【気持ち悪ーい】 【すごい無愛想なの】 【嫌な感じだよねー】 
 絡み合う思い。【何でいっつも1人なんだろうね】 自分に向けられる好奇の眼差し。
 畏怖を湛えた、怯えた眼差し。【挨拶しただけなのに、睨まれちゃったよ】
 【独り言多そう。もぉめちゃめちゃキモいよねー】
 【普通にしてりゃ可愛いのに、もったいないよなぁ】
 思い。思い、思い、思い、思い、
 ―――― 重圧。息苦しさ。

 【大体、どうしていつも手袋なんかしてるわけ?冬でもないのにさあ】


 外せない、手袋。

 ( 学校なんて、楽しいから来てるんじゃない。勉強するために来てるんだよ )
 


109 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時03分14秒

 自分の意識とは無関係に、小刻みに震え出す両手を、矢口は手袋の上からぎゅっ
 と力一杯握り締めた。薄く笑う、目の前の少女を見上げる。
 その彼女が、非常に余裕ぶった態度でいるのが気に障った。

 「………今、思ったでしょ? あたしとあなたが、似てる、って」
 「思ってないっ!!」
 即座に矢口が切り返すと、少女は少々呆れたように肩を小さくすくめてみせた。
 相変わらず、飄々とした態度。次第に苛付き始めた矢口を他所に、少女はすうっと
 その長い指を矢口に向けた。いや違う、矢口の手に、向けた。


 「そのグローブは、何のため?」
 少女の視線をゆっくりと辿り、それが自分のはめている皮製のグローブであること
 を確認すると、矢口は口元を歪めて彼女を見返した。
 ( 何が言いたいんだよ…… )


 「 ……あたし、多分分かるよ。怖いんだよね。無意識のうちに、力、使っちゃわない
  ようにって」
 「るさいっ、あんたに、何が分かるって言うんだよっ!!」
 「分かるよって、言ったじゃん。あたしとあなたは、似た者同士なんだよ」



110 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時03分56秒


 熱の篭らない、妙に冷めた彼女の視線に、何処か違和感を覚えていた矢口は、そ
 の正体にようやく気がつき始めた。
 ( 感情がないわけじゃない、この子は。変なんじゃない、この子は。だって…… )


 ―― 矢口と一緒だった、『感情を殺した』、その眼差しは。
 そう、自分が、傷つかないために。 


 「だから思ったんだ。あたしとあなたは似てるから、だから、『なっち』はあなたの所
  に来てないかなって」
 「知らないよ、『なっち』なんて」
 「……あたしね、毎朝登校するとき、あなたに気付いてたよ。黒い手袋はめてる人
  なんてそうそういないし。何より、普通の人とは違うオーラ、感じてた」
 「………言ってる意味が分からないけど?」
 「だから、なっちがいなくなったとき、真っ先にあなたのことが浮かんだ」

 どうにも会話が噛み合わない。( 人の話聞けよ、お前なあ )
 矢口が否定するのもあっさりと聞き流し、軽く笑みさえ浮かべて少女は淡々と喋り
 続ける。次第に、矢口は否定することさえ億劫になってくる。
 それでも。



111 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時04分32秒


 「あなたさ、大事な人、その『力』でなくしちゃったりしてない?」
 「………何言って…」
 
 ずっと感じ続けている、奇妙な憐憫の情。

 「あたしは、なくしちゃったよ、大事な人」
 「…なくした、って…」
 「変な力、持ってるの。普通の人は絶対、持ってない『力』」

 ( 変な力…? )
 少しずつではあるが、矢口は突如齎された不思議な少女との出会いに、妙に胸の
 高鳴りを覚えるのを感じた。勿論、頑固な矢口真里がそれを素直に認めるか否か、
 という点ではそれが必ずしも「良い意味で」とは限らないのだけれど。

 それでも、さっぱり状況が把握できていない矢口にも、分かることが1つあった。
 ( こいつも持ってるってことか? 矢口みたいな、力を )
 

112 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時05分04秒

 「……」

 「お父さんもお母さんも、学校の子も通りすがりの人も。見境なしに」
 「………」

 「あたし、『力』のせいで、亡くしちゃった。いや、違うなぁ。あたしが、殺した」
 「…なっ!?」
 「だから、誰もいないの、あたしには。――― もう。なっちしか、いないんだよ」 

 『なっち』 しか。

 
 子供のように純粋に、他人を求める姿。それは、矢口に幼い頃の思い出をフラッシュ
 バックさせた。決して、思い出そうとはしなかった悲しいだけの記憶。
 必死になって求め続けた、両親を、血の繋がった家族を。

 ――――

 ―――


113 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時05分53秒


 【ねえ、あなた。あの子……真里、ちょっと変じゃない?】 
 ( お母さん、アタシ、変なの? )
 
 【いつも、私の考えてること、言い当てるのよ】 
 ( それって、みんな同じじゃないの?だって、普通に聞こえるんだよ )
 
 【施設にでも預けようかと思ってるんだけど……違うわ、大事な子よ、大事だから】
 ( シセツって、何?楽しいとこ?ねえ、お母さん )
 【そういう妙な出来事を、研究している施設があるのよ。私、知り合いに聞いたの】
 ( お母さんも、いっしょに行ってくれるんでしょ? )

 【真里は、人とは違うのよ!】

 ( アタシ、みんなとは違うの? ねえ、お母さん、どこ行くの? )
 ( お母さん、お父さん、アタシ、いやだよ )
 ( 友達がだれもいないんだよ、暗くて、おとなの人ばっかりで、いやだよ )
 ( お父さん、お母さん、むかえにきてよぉ!! )

 ――――

 そして、2度と会うことはなかった父と母。


114 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時06分30秒

 思い出したくもない過去がふっと脳裏を過り、それを振り払うかの如く、矢口は激し
 く頭を左右に振った。( ちくしょうっ、どうして、今さら……っ!! )

 「ねえっ!!」
 
 知らずうちに、矢口は大声を出していた。そうと意識しないが、相当に興奮状態に
 あったのかもしれない。滅多に ――― というより、初めて聞く矢口の大声に、顔
 見知りの女生徒らが数人、もの珍しそうな表情で振り向く。

 「あんた、『なっち』って子、探してるの!?」
 「………そうだよ」
 ぴくりとも眉を動かさず、少女は答えた。

 「どうして?」
 「 ―――― 」

 口を開こうとして、僅かな刹那、少女はためらった風に見えた。それでも、矢口に
 弱味を見せたくはないのか、ちらりと横目で矢口を一瞥すると、口を一文字に結
 んだままそっぽに視線を逸らす。
 「ちっちゃいくせに、うるさいんだね」
 「ああ!?」
 ( かっわいくね〜、喧嘩売ってんのかよ、ほんとにコイツ! )



115 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時07分10秒


 元来気の強い矢口はそんな淡々とした態度の後藤を、罵倒してやりたい気分に
 駆られる。普段、それほど口数が多いとはいえないけれど、口喧嘩なら、矢口は
 誰にも負けない自信はあった。

 「意外と、感情豊かなんじゃん。いつも不機嫌そーな顔してるけど」
 「うるせっ ――― 」
 反論しようと口を開きかけ、矢口はそのまま言葉を失った。
 「……身長、ほんとに低いんだね」
 「――― !?」
 少女が、不意に矢口の金色の頭に手を乗せたのだ。それが意図的なものなのか、
 それとも単に小さな自分の身長をからかいたかっただけなのか、考えつく前に、彼
 女の論理的な思考は既に頭の片隅からは抜け落ちていた。

 「っ………!!」
 瞬間、怒涛のように激しい感情のうねりが矢口を襲った。皮製のグローブが、何の
 機能も果たさない、無意味な存在であることを辛うじて認識する。
 それでも、それに気付いたときはもう既に遅かった。眩暈するほどの轟音、立って
 いられないほどの激震、心臓が裂けそうな強い悲しみ。
 ( っうわああああああっ…!? )



116 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時07分44秒

 おとーさん、おかーさん。
 ちゃんと、あたしを見てよ。そんな目で見ないでよ。怖がらないで、やめてよ! 

 知ってる? あの子 「化け物」 なんだってえ。触ったら焼け死んじゃうんだよ。
 ゆきちゃんもあきちゃんもみえこちゃんも、 「化け物」 あの子と一緒にいたか
 ら燃えちゃったんだよ。死神!こっち来るなよあっち行け死んじゃえお前なんか
 やだ怖ーい 「化け物」 怖ーい。ええ、うちはもう子供を養う経済力もないです
 からねえ、え?無理ですよお、引き取るなんて。だって、 「化け物」 ねえ。

 やめて、やめて、やめて!!
 あたしは変じゃない、だって、勝手に火がつくんだよ、あたしじゃない!!
 怖がらないで、お願い、いやだ、そんな目で見ないで!!


117 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時08分14秒

 知ってるでしょ、あの子の両親がどんな死に方をしたのか。変な子なんですよ、
 気味が悪いわ。 「化け物」 もちろん、超能力なんて馬鹿げた力を信じてる訳
 じゃないんですよ? でもねえ、嫌じゃないですか、笑いもしないし、いっつも押
 し黙ってるし。お母さんあの子怖いコワイ、 「化け物」 なんだよ話したくないよ
 帰ろうよー。燃やすんだよ、全部もやしちゃうんだよ、あの子が睨むと、全部燃
 えちゃうんだよ。おかしいよ、変だよね怖いよねおかしいおかしいおかしい。


 あたしはっ!おとーさんとおかーさんの子供なんだよ!?
 もういやだ、こんなのいやだっ!!

 ――― ああ嫌だ。気持ちが悪い。どうして、こんな子の相手をしなきゃいけない
 のかしら? 「化け物」 「化け物」 「化け物!」 「ばけもの!!」
 「バケモノ!」 
 「バケモノ!!」
 「バケモノ!!!」
 


118 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時09分13秒

 ・・・・・

 全部、無くなっちゃえばいい。全部全部、燃やしちゃえばいいんだ。
 無くなっちゃえ。おとーさんもおかーさんも、みんなみんな、あたしを「化け物」扱い
 する奴らなんて、

 ―――

 死んじゃえばいいんだ。

 ・・・・・・・


119 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時10分04秒

 【 ………なっちは 】
 《 ………なっちは? 》

 ・・・・・


 「………っ!?」

 思わず、矢口は青ざめた顔で後ずさった。無防備な自分に流れ込んできた無数の
 負の感情の波は、矢口の精神を揺さぶるには余りある程強かった。
 ( 燃える?焼ける?何なんだ、何なんだよ? )

 流れ込んできた「記憶」は、曖昧な負の感情ばかり。目の前の少女自体に関する
 情報はほとんど手に入れることは出来ないまま、矢口はブラックホールとも思える
 様な真っ暗で先の見えない、記憶の渦を抜け出した。

 「見たの?」
 「……………」
 「 …それが、あなたの『力』? 今ね、分かったよ。あなたが、あたしの心ン中に侵入
  してきた感覚」
 「……………」
 一体、何が起きたのかよく分からない。とにかく、この少女が何かとてつもなく深く
 暗い感情を抱えているであろうことは理解出来た。何と言葉を返してよいのやら、
 逡巡して矢口は口を閉ざした。



120 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時10分55秒

 「見たんでしょ、あたしの心ん中。あはは、すごいっしょ」
 自分が何を矢口に「見られた」のか、「読み取られた」のか、分かっているのだろう
 か。だとしたら、彼女が笑っていられるのはとても信じられなかった。
 あんな陰鬱な記憶、どうして人に見られて平気なんだよ?


 ケラケラと一頻り笑った後 (正直言って、無理をしているようにも見えなかった)、彼
 女は不意に口元を引き締めて矢口の顔を凝視する。
 端正な顔が作る真面目な表情に、矢口は理由もなくドギマギした。

 「なっちの存在、見えた?」


 ―――

 ――― 見えた。

 【 なっちは、真希の味方でしょ?】
 《 なっちは、真希の味方だよ 》



121 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時11分37秒

 ――――

 ドロドロした真っ黒な渦の中で、そこだけは純粋に明るい光に満ちていて。
 そこに近付くほど、安堵する気持ちが芽生えるのが分かった。
 光の中心にいるのは少女とも女性とも取れる、年齢不詳の童顔の女。しかし、その
 姿を見るのは初めてだというのに、矢口は何故か考えるまでもなく、「それ」の正体
 を感じ取っていた。

 「あの光の中にいたのが、『なっち』 だね?」
 「そうだよ」

 ――― 両親が、焼けていく記憶。
 ――― 化け物を見る目つきの、周囲の人間に対する憎悪の記憶。
 

 「なっち、綺麗だったでしょ? なっち。なっちの周りだけ、明るかったでしょ?」
 屈託なく笑って、少女は子供が自慢するように、得意げに言った。


122 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時12分21秒

( あれが、なっちだったんだ…… )
 例えるならばそれは、荒れ果てた砂漠の中に見つけたオアシスのような。
 荒れ狂う吹雪の山の中、ようやく見つけた暖かい焚き火のような。


 「 ……『なっち』は、あたしの親友だから」
 ( 親友?なっちが? )

 「あたしン所にいなきゃいけないから。ううん、あたしン所に、いて欲しいんだ」
 ( ってことは、……今まではコイツと一緒にいたってことか、なっちは )

 「今まで学校に真面目に通ってたのだって、なっちがそうしてって、望んだからなん
  だ。なっちが……なのに、なっち、突然いなくなっちゃ…」
 ( 突然、いなくなった? )

 言いかけて、少女は口を噤んだ。「…そこまで、あなたに言うことないね」
 自嘲気味に呟くと、再び彼女は踵を返した。短いタータンチェックのスカートがふわ
 りと舞う。矢口がそれに目を奪われた一瞬の間に、彼女はさっさと歩き出していた。



123 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時13分11秒

 
 「待ってよ、……あのっ」
 慌てて、矢口はその背中を追おうとして ――― 立ち止まった、そうだ、忘れていた
 けど今は登校途中なのだ。一応『受験生』の立場である高校三年生の矢口、推薦
 を狙う身としては、出来る限り内申を下げるような行動は避けたい。

 「後藤真希」

 振り向かずに、少女は答えた。
 たったそれだけのことなのに、矢口は自分が問い掛けようとした内容を先に答えら
 れ、戸惑った。( 分かったの? 矢口が、聞きたいことを? )

 まさかね。偶然だよ。話の流れからして、名前聞くなんておかしなことじゃない。
 あっちは、矢口のこと、前から知ってたみたいだし。

 「どうせ、また会うから。面倒な自己紹介は省くよ。じゃあね」
 立ち止まりもせずに、穏やかな口調で (先刻よりは大分、好戦的な感情は抜け落
 ちているようだった)、それだけ言い残すと少女は ――― 後藤真希は何処かへと
 去って行く。不思議なほど、軽い足取りで。


124 名前:前編 投稿日:2002年07月05日(金)22時13分54秒

 
 まるで、一陣の風が通り抜けたような印象。
 ( また会うから、って。……勝手に決めんなよなぁ… )

 「何なんだよ、あいつ……」
 軽い眩暈を覚えて、矢口は額に手をやりながら溜息と共に誰とも無く呟いた。
 「訳分かんないよ、ねえ、『なっち』?」



125 名前:flow 投稿日:2002年07月05日(金)22時17分42秒

スレ埋め様短編と言いつつ、長いということについては突っ込みはご容赦ください(w
急遽書くことにしたため、作者の自己満足的な内容かもしれません。
客観的に読んだらすごく分かり辛いと思います、すみません。

というわけでショートカット。
 「over」 前編 『変なヤツ』 >>91-124

126 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月05日(金)23時26分18秒
短篇待ってました!
かなり好きな感じの展開です。 flowさんの復帰が予想以上に早くて
嬉しいです。
続きを楽しみに待ってます。がんがってください!
127 名前:ショウ 投稿日:2002年07月05日(金)23時48分43秒
今回はリアルタイムで読ませていただきました!
またまた読者をぐいぐい引き込むような展開で楽しみです。
今回もがんばってくださいな!
128 名前:たぢから(羊版某小説作者とか名乗ってたヤツ) 投稿日:2002年07月05日(金)23時59分13秒
面倒なのでコテハンをバラします。予想当たってましたか?
ま、そんなことは今更どうでもいいですけど。

「over」前編 『変なヤツ』、面白いですね。
短編で終わるには勿体無いくらい、広がりそうな予感がします。
私の好きなラブマ三銃士(なちまりごま)がメインってのもいいですね。
(↑これが本音か!?)

さて… 自分の方も何とかしなければ…
flowさんみたいな作品書きたいっす!!
129 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月06日(土)19時00分50秒
やばいです!!
面白いです!!
短編で終わらせるのは勿体無いです!!
頑張ってくださいレス!!
130 名前:はろぷろ 投稿日:2002年07月07日(日)17時12分52秒
お久しぶりです。
キャラ考察も読ませていただきました。
新垣・・・(w
んで、今回は短編。ほんとにご苦労さまです。
短編とはいっても濃くておもしろいです!
がんばってください。
131 名前:flow 投稿日:2002年07月10日(水)00時26分33秒
何だか訳の分からない展開ながら、目を通していただいた皆様、ありがたき幸せです。
更新、もっと早く出来るかと思っていましたが…遅ればせながら、中編うpさせていた
だきます。よろしくお願いします。

 >126 名無し読者さん
     好きな展開ですか…ありがとうございます!
     最後までお付き合いくださいませ。何とか書き上げますので。

 >127 ショウさん
     リアルタイムですか〜、珍しい(?)ですね、嬉しいです!
     毎回のレスに、本当に励まされます。是非、読んでやってくださいね。

 >128 たぢからさん
     予想当たってました(w  羊で娘。が満遍なく出てくるのといえば、(自分が
     知っている限りでは)限られますからね。1人1人の設定の細かさ、こちらこそ
     見習いたいです!そちらの更新も楽しみにしていますので、よろしくです!
 
132 名前:flow 投稿日:2002年07月10日(水)00時27分04秒
 >129 名無し読者さん
     やばいです!!嬉しいです!!そんなに褒めていただける方がいらっしゃる
     とは……。どうか途中で飽きられませんように(w

 >130 はろぷろさん
     最近は新垣ポイント上がってるんですけども、小説で使うとなるとどうしても…(w
     細かいところまで目を通していただいているようで、感謝です。

 それでは、中編T スタートです。


133 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時28分38秒

 中編T   『ヤグチとなっち』     



 「なっち………今のコ、知ってるの?」

 立ち止まり、後藤真希の姿が完全に視界から消えるのを入念に見定めて、矢口は
 ようやく口を開いた。 といっても、矢口の周りには既に人はいない。もの珍しそうに
 矢口と後藤真希のやり取りを見ていた、他の女生徒達も、とうに校舎の中へと姿を
 消している。

 それでも、その『声』は確かに矢口に言葉を返した。
 
 《 うん。今のコ、ね……なっちが、ヤグチの前にいたコなんだ 》

 控え目でいて、それでもしっかりとした芯の強さを兼ね備えた柔らかい声が、矢口
 の脳裏に直接届けられる。――― 周りには、誰もいないのに?

 《 ヤグチと似てるコだったよ。なっちのことね、怖がらないんだもん 》
 「似てる? 矢口と、今のアイツが? 冗談でしょー」 
 
 ――― 当然だ。その『声』が響いてくるのは、他でもない、矢口自身の頭の中なの
 だから。「一緒にしないでよ、矢口を。あんな変な子と」



134 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時29分31秒


 あははははっと、独自の高い笑い声が響いた。もちろん、矢口の頭の中だけに。
 『なっち』が笑っているのだ、心底おかしそうに。常に人に本音を見せない矢口とは
 違い、彼女はいつも、素直に感情を表していた。
 底抜けに明るいのと、年齢を感じさせない柔らかな声は、ますます不思議な彼女
 を年齢不詳に思わせた。

 《 変な子って、ヤグチだって充分変な子じゃーん 》

 ( あんたもね、 )
 
 心の中で呟いて、矢口はそっと溜息をついた。口にこそ出していないものの、その
 言葉はちゃんと 『なっち』 には届いているはずだ、彼女には隠し事など出来ない。
 何故って? ――― 『なっち』 は矢口の中にいるからだ。
 《 な、なっちが変な子だとぉー?失礼なぁー 》 
 
 …ほら、やっぱりね。ちゃんと、聞こえてる。


 文字通り、『矢口真里の中に居る』 のである。その不思議な女性は。非常に不可
 解で、にわかには信じ難い現象ながら、確かにそれは現実として起こっていた。
  ―――― 彼女は、『なっち』 は、 “実体が存在しない”。



135 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時30分19秒


 ・・・・・・


 『なっち』 が、矢口真里の中にやって来たのは ――― いや、「出会ったのは、」と
 表現するのが正しいのかもしれない ――― 先月の終わりだった。

 その日、矢口は特に争い事も揉め事も起こすことはなく、(要するに、誰とも接しな
 かったということだ、有り体に言えば) ごく平穏な1日を終え、学校から帰宅すると
 ころだった。何も変わらぬ、日常の繰り返し。
 
 そんな毎日がずっと続いていくと思っていた。少なくとも、矢口自身は、そんな生活
 に不満もなく、かといってこの先待ち受けるであろう未来に希望を持つこともなく、
 変化など望んでいたわけではなかった。

 ( …なんだ、あれ? ) 

 通い慣れた街頭の一角で、人だかりを見つけた。
 普段ならば、そんなものを気に留めることもなく素通りしていたであろう。矢口真里
 が、周囲の出来事に関心を持つのは非常に稀であり、それでも、その時に何か引
 き寄せられる「何か」を感じたのかも知れなかった。

 ともかく、矢口は何故か、無言でその人だかりに視線を走らせた後、数秒ためらい、
 その人垣の中へと歩みを進めたのである。


136 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時30分56秒


 「うわあー……怖いねえ…」
 【こういうのって連続で起きると、テレビとかきたりするのかなー】
 「やだ、真っ黒じゃん、すごいくさぁーい」
 【信じらんない、こんなことする人、絶対狂ってるよ】
 「マジひっでーよなぁ」
 【そんな簡単に生き物って燃やせるのかよ。俺もやってみようかな】

 人、人、人、人、人、人、人、人、…………

 ( ………気にしちゃダメだ。馬鹿な奴らの言うことなんて、聞くな )

 厚い皮の手袋を通しても伝わってくる「人」の感情。それは海岸に押し寄せる波の
 ように、絶えず矢口の精神を刺激し続けた。
 自分の意識をガードしつつ、矢口はその波に押し流されぬよう、俯いて誰とも目を
 合わさぬまま、小柄な身体を最大限に生かして、小走りにすり抜けようとした。

 突如、人の波が途切れ、唐突に矢口の視界が開ける。同時に、矢口の目にある
 黒い塊が飛び込んで来た。細く立ち昇る煙。肉が焼けるむせ返るような匂い。
 咄嗟に口元を片手で覆って、矢口は息を止めた。

 ( なんだ、あれ? )


137 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時31分55秒


 矢口は、自分の目を疑った。その黒い塊を凝視して、それがようやく数匹の犬や猫
 であることに気付く。だがしかし、それらは辛うじて元の姿を認識できる程度のもの
 で、ほとんど炭と成り果てていたのだけれど。
 ( なんだよ、誰が、やったんだ? )

 動物愛護精神、などといった、(矢口からすると)偽善的な感情など、彼女は持ち合
 わせているつもりなどなかった。
 しかし、あまりに無残な動物達の死骸に、矢口が憤りを感じるのは決して不可解な
 反応ではない。むしろ、ごく平常な人間の感情とも言えるだろう。

 【ドウシテ】
 ( え? )
 【ドウシテ、ドウシテ】
 ( な、なに!? ) 
 【ヒドイジャン、ドウシテアタシヲオイテッタノ!?】

 どくん。

 ( ――― なんだっ!? )

 しかし、それは不味かった。もうそれは、気付いたときは後の祭りだったのだけど、
 ともかく不味かったのだ ―――― 言い様のない、全身に震えが走る程激しく重苦
 しい「思い」が、矢口に襲い掛かってきたのである。



138 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時32分48秒


 どくん、どくん。

 【ねえ、どうしてよ】 どくん、 【許さない】
 【側にいてよ】 【絶対逃がさない】 どくん、どくん。
 【独りじゃ、辛いんだよ】 どくん。【ダメだよ、絶対ダメだよ】 どくんどくん。

 ( うるさい、うるさいうるさいっ、何だよぉこれ!? )

 【お願い】 
 【お願い】 【ねえ、待ってよ】 【どうしてだよ】
 【独りにしないで、独りにしないで、置いていかないで、お願いだから】



139 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時33分28秒


 ずきん。

 しきりに高鳴っていた胸の鼓動が、今度ははっきりとした痛みに変わった。その痛
 みを感じて、矢口は分かった。これは、その残像思念の主が味わった苦痛だ。

 ( ―――― すごく、すごく……傷ついて、泣いて、どうしようもなく……怒ってる )

 矢口の頭のてっぺんからつま先まで、薄暗い闇に侵食されていくような不快な感
 触に、じわじわと、蝕まれていく。しかし、不意に自分を取り込むその残像思念は、
 何故か矢口にとって完全に理解出来ない非なる感情ではなかった。
 ( 矢口も、感じたことがある……怒り、それに悲しみ…… )

 そう、もう随分昔の話。矢口真里が、自身の能力を自覚し始めた頃、同時に周囲
 の自分に向ける感情の正体を知るようになり感じた憤り。寂寥感。


 なんて、悲しい「思い」だろう。
 他ならぬ矢口だからこそ、突如自分を襲った、『何か』 に深く根付いたその「思い」
 に感応し合い、矢口自身もまた、その「思い」の主に深く共振し、自身も深い悲しみ
 に囚われたのかもしれない。


140 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時34分16秒


 ということは、つまり。
 ( この思念の主も、矢口みたいに変な力を持っちゃって、そのせいでこんな悲しい
  思いをしてるってことなのかな )

 同情心にも似た憂愁の念。
 どこの誰とも分からない「思い」の主に対して思案を巡らせていた矢口の視界に、
 チラリと動くものが目に入った。
 ――― 否、動いたような気がした、のかも知れない。( え……? )

 猫と犬の焼け焦げた死体。未だ燻り、白い煙を細く上げている“それ”からこそ、そ
 の残留思念が思念の正体だと分かるのは一瞬だった。
 
 【 どうして ――― ねえ、なっち! 】


 「わあっ!!」

 目がくらむような眩い光と、強い地震に襲われたような衝撃。立っていることすら
 困難な感覚に、矢口は人込みの中にいることも忘れ大声で叫んでいた。
 

 ―――

 ――――


141 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時34分51秒


 【なんだあ、あの子】
 【あれー、矢口さんじゃん。やっぱり変な人】
 【顔色悪いけど、動物の死骸とか、ダメなのかな】
 【救急車でも呼んだ方がいいのだろうか…いや、まだ仕事中だし】

 顔色の悪い、そして突然悲鳴を挙げた矢口を不思議そうに、或いは好奇の視線を
 向けるように周囲を囲んでいた者達も、その矢口がいつまでもその場から動かず、
 じっと小さな身体を竦ませているのにそろそろ飽きてきたようだった。

 徐徐に動悸が治まっていくのを待って、矢口はおそるおそる顔を上げた。
 自分を襲った正体不明の強い感情に真正面からぶつかったような衝撃は、彼女の
 息を止めるくらい激しいものだった。
 『どうして、ねえ、なっち!』

 ――― おそらく、その『なっち』へ向けて問い掛けられた言葉。それを、矢口が代わ
 りとなって、まともに受けてしまったのだろう。


 【大丈夫っぽいか】
 【いこいこー】
 【動物の死体って、市役所に連絡するんだっけー?警察ー?】


142 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時35分32秒


 それぞれ勝手な「声」を残し、10数分もすると、興味本位の見物人らは三々五々
 散っていき、矢口や動物の死骸に目を向ける者はいなくなった。

 人の波が再び動き出す。動かないのは、矢口だけだ。ゆっくりと、そして深い息を
 ついて、矢口は再び目の前の煙を上げる動物の死骸に目を移した。
 そして “それ” は、まるで矢口だけがこの場残るのを予め予測していたかの如く、
 あまりに上手く、タイミングを見計ったように始まったのだった。
 その「声」が聞こえたのは、実に唐突だったけれど。

 《 ねえ、あなた、不思議な力、持ってるんだねえ 》

 「――― は?」

 空耳かと思った。
 黒目がちな大きい瞳をぱちくりと瞬かせて、矢口は周囲をきょろきょろと見回す。

 《 周りの人の思ってること、聞こえちゃうんだ 》
 ( ……何で… )

 しかし、目に入ってくるのはやたらと早い流れの人の群れ、そして、もはやその存
 在さえとうの昔に忘れ去られてしまったかの様な、焼け焦げた数匹の犬や猫の無
 残極まりない死体。ゴミのように、打ち捨てられているそれらだけだ。
 ( なんだよ、誰だ? 気のせい……? )


143 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時36分10秒


 人の内面の「声」が聞こえる矢口にとって、直接話し掛ける以外にも様々な言葉が
 聞こえてくることは少なくない。むしろ、日常茶飯事と言えよう。
 しかし。――― あくまでそれは「勝手に聞こえてくる」のであって、「矢口に話し掛
 けくる」などといった現象は有り得なかった。有り得ないはずだった。

 《 気のせいなんかじゃないよ 》

 ( ……んだよぉ、からかってるわけ、矢口を? )

 最も一般的な思考で結論づけようとした矢口の脳裏にまた響いてきた声は、彼女
 がこの場を立ち去る体のよい言い訳を、あっさりと払拭してくれた。
 ( 出て来いよ、矢口の声、聞こえてんだろぉ!? )

 半ばヤケクソ気味に、胸中で叫ぶ矢口に、その「声」は再び言葉を返した。
 《 ごめんね、出て行きたいのはヤマヤマなんだけど。なっち、自分のカラダ、持って
  ないんだ 》

 「…は?」
 ( なっち、って誰? )
 思ってもみない案外真面目な返答に、矢口は目をぱちくりと見開いて、思わず間抜
 けな声を上げた。もし、周囲に矢口の様子をしつこく観察している人間がいたとした
 ら、恐ろしく挙動不審に見えたことだろう。


144 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時36分54秒


 《 はじめまして、『なっち』です 》
 「…、なっち?いや、はじめましてとか言われても、何処にいるワケ?」
 《 ここにいるよ、さっきから 》

 「ここって言われても……」

 困惑した表情で、矢口は思わず声を漏らす。それでも、忙しい人の流れの中で、矢
 口のような一少女の囁きを耳に留める者など誰1人としていなかった。

 《 なっちはね。何となく、分かっちゃうの 》

 「何をさ」

 《 人とはちょっと違う人。いつも寂しい寂しい、って思ってる人。本当は、誰かに……
  一緒に居て欲しいって、思ってる人 》

 ( 寂しがってるって……矢口が? )
 《 そしてね。そういう人いると、なっちは、自然とその人の『中に入っちゃう』んだ 》

 ようやく、矢口はその「声」が聞こえてくるのが自分の内側からだということに気がつ
 いた。胸の辺りが、じんわりと熱を持ったように温かい。
 ( ここに……… )
 そのまま、両の手の平で自分の胸をそっと押さえる矢口に対し、諭すように穏やか
 な口調で、その「声」は再び言ったのだ。



145 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時38分24秒


 《 そう ――― ピンポン。なっちは、キミの中にいるのです 》
 
 「はあ……?」

 矢口は、自分の中にいつの間にか『異なる存在』がいることに気が付いた。
 普通ならば、信じられない体験に他ならないだろう。しかし、生まれながらに特殊
 な能力を持って生活してきた矢口真里にとって、それは一般人よりは多少、受け
 入れ難いことではなかったのかもしれない。

 
 ( どんな理屈なんだよ、それ〜。訳分かんないって )
 《 うーん、実は、なっちもよく分からないんだ。気が付いたらこんな体質で 》
 ( それ、体質っていえるの? )
 《 え、言わないの? 》
 ( ………あほ ) 
 
 けれど、それは必ずしも矢口にとっては不快なものではなく、むしろ荒涼とした矢口
 真里という少女の内面を、優しく温めてくれているようにも感じた。
 要するに、「なっち」が矢口の中に入って来たとき、矢口はそれを「快く迎えた」ので
 ある。

 
146 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時39分01秒



 それが、出会い。

 ( まあ、別に勝手にすればいいさ。矢口も暇だしね )
 《 ふふふ。よろしくね、ヤグチ 》

 矢口真里の、ある意味癖ともなっている憎まれ口にも、『なっち』はただ、穏やかな
 笑い声を聞かせていた。初めて、矢口が共に笑い合える存在を認めた瞬間だった。


 ・・・・・・

 本当に、信じられないことだったけど。
 矢口が、こんな何の役にも立たない力を持って生まれたように、世の中に理解出来
 ないことや理由のない不思議なことなんて、いくらでもあるんだよ。
 『なっち』との出会いだって、まさにそれ。

 だから、『なっち』と仲良くなっていくのにだって、理由なんて必要なかったんだ。

 ・・・



147 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時39分49秒


 《 なっちはね、もう自分の名前も、どこから来たのかも、全部覚えていないの》
 
 ( はあ?何だよそれ、そんなことってあるわけ? )

 《 さあ…なっち、難しいことはよく分からないけど。でも、実際こうやってなっちが
  ヤグチの中にいるってことは、あるんじゃないの? 》

 ( 信じらんないよ……矢口の中に、どこの誰とも分からない他人がいるなんてさ )

 《 それはそうだよねえ。でもね、ヤグチの中、あったかいよ 》

 ( …………… )

 《 あ、あーっ!ヤグチ今、エッチなこと考えたでしょぉ 》

 ( うるさいなぁっ、考えてないよんなこと!! )

 《 ふふふ。なっちに隠し事なんてムダなのだぁ 》

 ( …………ったくもぉ )

 《 怒った?ヤグチ 》

 ( 分かってるくせに )

 《 ………へへっ 》

 
 ――― ねえ、なっち。あんた、矢口と一緒なんだね。



148 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時40分43秒

 
 ・・・・・・
 
 ・・・


 他人に心を許さない矢口にしては信じられない程急速に、矢口真里と 『なっち』 と
 いう何処から来たのかも、本名さえも知らぬ彼女は、その親密度を増していった。
 
 ―――――

 ―――

149 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時41分24秒


 キーンコーンカーンコーン………

 ( ……あ )

 気が付けば、すっかり人気の無くなった校舎の手前に1人佇んでいた矢口は、今
 自分が登校途中であったことを思い出す。
 当然ながら、後藤真希の姿はとうに見えず、それどころか頭の上から鳴り響くは、
 まさに始業合図のベルだった。
 ( …あ〜あ……変なこと思い出してたせいで、すっかりガッコのこと忘れてたよ )


 変なことって言うか、それはただ単に 『なっち』 との出会いを回想していただけなの
 だけれど。
 後藤真希という、見知らぬ少女が思いも掛けず 『なっち』 の名前を口にしたせいで、
 柄にもなく動揺していたのだろうか。


 《 何思い出してたのぉ、ヤグチ〜 》

 からかうような明るい口調でなっちが話し掛けてくるのに気付き、矢口は自分の記
 憶を遡る行為を中断し、その声の主に意識を向けた。
 ( 言わなくても分かるんでしょ。勝手に読んでよ )
 《 意地っ張り… 》


150 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時42分03秒


 なっちが苦笑するのが伝わってきて、矢口は何となく自分の子供じみた言葉を恥じ
 た。それでも、あくまで自分からはそれを否定しようとしないのが、頑固な性格の矢
 口らしいと言えばらしいのだが。( ったく、なっちも意地が悪いなぁ )

 しかし、謝罪の言葉を口にせずとも、なっちならば察してくれる。絶対に突き放すこと
 なく、優しく受け止めてくれる。それが何より心地よく、矢口はなっちに依存してしま
 うのかも知れなかった。

 「それよりさ」

 これ以上、自分の気持ちをなっちに読まれることに何となく抵抗を感じ、矢口はわざ
 と声に出して問い掛けた。
 「矢口となっちが出会ったとき、炭になりかけた犬猫の死体があったの、覚えてる?」

 《 あ…… 》

 普段はうるさいくらいに饒舌ななっちが、困ったような声で言葉を失った。
 ――― ああ、やっぱりね。
 これ以上追及せずとも、矢口は今、自分が立てた仮説が間違いなどではないことを
 確信することが出来た。何と言っても、素直過ぎるのだ、『なっち』は。


151 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時42分36秒


 目の前で、両親が焼けていく記憶
 黒焦げになった動物の死骸
 そして彼女が、化け物と呼ばれる所以
 

152 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時43分28秒


 「『後藤真希』の力、なんでしょ?」   

 《 ……ヤグチ…… 》
 弱弱しく自分の名前を呼ぶなっちの声が、どこか咎めるような響きを持っていること
 には当然気が付いていた。それでも、矢口は止めなかった。
 
 「 矢口、知ってるよ。念力発火能力(パイロキネシス)って言うんでしょ。映画にもな
  ったんだよね。……ああ、なっちは知らないかもしれないけど」
 《 ………… 》

 何も言葉を発しないなっちに、矢口は次第に苛立ちを隠せなくなる。冷静に考えれ
 ば、それはまさしく自分以外に『なっちと親しい人がいる』という事実に嫉妬していた
 としか思えないのだけれど、珍しく冷静さを欠いた矢口は、いささか感情的になって
 いた。

 「 ねえ、あいつが、あの猫や犬を殺したんでしょ? 言ってたよね、アイツ、両親とか
  も自分が殺したって」

 《 それは……… 》

 普段なら快活に返事を返してくるはずのなっちが、困っている。言葉を濁している。
 ――― 「アイツ」を、庇おうとしている。ただ、それだけのはずなのに。
 ( 苛々するよ、なっち。何で、あんな訳わかんない子、庇うのさ? )


153 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時44分11秒


 「 こうも言ってたよ、アイツ。両親や友達も、自分のせいで殺したって。なっちだって、
  聞いてたはずでしょ。殺したんでしょ? 人殺しなん ―――― 」

 《 やめてっ!! 》
 「! ―――― 」
 《 ヤグチらしくないよ、そんなこと言うの。お願い、言わないで 》

 ビリビリと、空気が振動する。
 『なっち』 の悲しみの波動を感じて、矢口は悔しそうに唇を噛み締めた。( …ごめん、
 ごめんね、なっち ) 別に、なっちを困らせようと思ったんじゃなくて、そうじゃなくて。

 「だって……何か、アイツ……」 

 ( 矢口より前から、なっちと知り合いみたいだったから。矢口の知らない、なっちを
  知ってるみたいだったから )



154 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時45分02秒


 それは僅かな間だったかもしれない。それでも、2人の間に漂うある種気まずい空
 気は、お互いに言葉を口にすることを牽制しているかのように感じられた。
 会話に困ることなど、短い付き合いだというのになかった2人。『なっち』と話してい
 ないと、こんなにも世界は静かだったなんて。
 
 小さく溜息を付いた矢口を気遣うように、先に言葉を発したのはなっちだった。
 《 ヤグチ? 真希を、責めないであげてね 》

 「何でだよ」
 納得がいかない。
 だって、なっち。アイツ、殺したんだよ? 両親や、友達を殺したのかどうか、そんな
 ことは知らない。だけど、間違いなく、あの炭になるまで焼き尽くされた動物の死骸。
 “あれ”から感じた激しい感情は、アイツのものだ。後藤真希のものだ。

 アイツ、殺したんだよ?  
 なっち、犬とか猫とか、動物好きでしょ。アイツ、その動物を殺したんだよ?
 《 分かってるよ………分かってる、だけど 》
 


155 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時45分38秒


 苦渋に満ちた声で、なっちは続ける。
 《 真希があんなことしたのは、なっちが勝手に真希の元を離れたせいだから 》
 ( でも……… )
 《 あの子も、好きであんなことしたんじゃないの 》

 正直言って、なっちが「アイツ」を心から気遣い、思いやるその言動を聞き続けたい
 とは思わなかったけれど、矢口になっちの声を拒否する方法はない。
 ただ、黙って聞き入れるだけ。

 《 本当は優しい子なの。本当に、優しい心を持ってるんだよ 》

 「なっち……」

 ( 分かってるよ、なっち。変な力持っちゃったアイツが、苦しんでるってことくらい。
   矢口だって、アイツの気持ち、読んじゃったんだから )

 『化け物!』
 『化け物!』
 『化け物!』

 ・
 ・
 ・ 
 ・ 


156 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時46分23秒


 一旦昂ぶった気持ちは、そう簡単には元に戻らない。後藤真希を否定する気持ち
 のどこかで、相反してその彼女に同情する気持ちが生まれる。
 そんな微妙な感情のぶつかり合いに葛藤しながら、矢口は口を尖らせた。
 ――― ああ、すごく、今の矢口ってば子供っぽい。嫌んなるくらい。

 けれど、それこそが人と向き合って生きていく上で必要な「何か」に手を伸ばし掛け
 ている状態であるなどとは、今の矢口真里には気付くはずもなかった。


 《 ……他人を傷つける力はね、矢口。自分をも傷つけるんだよ。すごく、すごーく、
  痛いんだよ。なっちはね、あのコの心の中にいたから分かるの 》

 「………」

 《 真希は、いつも泣いてた。いっぱい、泣いてたよ 》



157 名前:中編T 投稿日:2002年07月10日(水)00時48分19秒

 「over」  中編T  『ヤグチとなっち』 >>133-156
 
158 名前:flow 投稿日:2002年07月10日(水)00時50分08秒
思ったより前回から間が空いてしまいましたが、一応中編T、更新です。
長かったので中編は二回に分けます(汗
次回、中編Uへ続きますので、読んでくださってる方いましたら、どうぞ引き続き
お付き合いいただけたらと思います。
159 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)15時09分41秒
最近は恋愛ものの小説が溢れてる中で、こうんな話があると嬉しいです。
なち推しの自分としては、彼女が主役級というだけで文句なしに楽しみですが、
話の内容も非常にそそられます(w
160 名前:詠み人 投稿日:2002年07月11日(木)13時25分43秒
なんか矢口がクールっぽいのって、新鮮でいいですね。
新作待ってました!楽しみが増えて嬉しいです。
161 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)13時03分11秒
え、放置?
162 名前:はろぷろ 投稿日:2002年07月24日(水)02時32分36秒
あぁ・・・なんかいいところで・・・(w
なっちの新鮮なキャラが良かったです♪

>>161
そういうこと言うのやめましょうや。作者さんに失礼ですよ。

作者さんへ
気にせずがんばってくださいね。続き待ってます♪
163 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月10日(土)14時59分26秒
保全
164 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月15日(木)17時19分06秒
作者さん、まさかショックのあまり・・・
165 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月16日(金)00時59分59秒
ううっ・・・楽しみにしてますから・・
166 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月01日(日)15時34分40秒
保全
167 名前:いち読者 投稿日:2002年09月03日(火)23時20分32秒
作者さーん。デスゲームの4が読めないんですー。
過去スレ見てもつながらないんです。とっても読みたいです。どうにかなりませんでしょうか?
168 名前:たぢから 投稿日:2002年09月03日(火)23時31分13秒
>167
倉庫にありますた。
http://mseek.obi.ne.jp/kako/red/1019996678.html
へどうぞ。
169 名前:いち読者 投稿日:2002年09月03日(火)23時39分54秒
わざわざどうもありがとうございます。早速読んでみますね。
170 名前:ヒトシズク 投稿日:2002年09月08日(日)14時44分26秒
すいません、デス・ゲームUが見れないんですけど・・・
すごい読みたいんですけど・・・・
171 名前:たぢから 投稿日:2002年09月09日(月)00時01分09秒
まとめてみました。各倉庫に過去ログがあります。

I http://mseek.obi.ne.jp/kako/green/1009186112.html
II http://mseek.obi.ne.jp/kako/yellow/1011522453.html
III http://mseek.obi.ne.jp/kako/white/1016115016.html
IV http://mseek.obi.ne.jp/kako/red/1019996678.html
172 名前:ななし 投稿日:2002年09月23日(月)16時57分47秒
保全
173 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月14日(月)02時37分30秒
保全
174 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月11日(月)12時26分28秒
保全
175 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月26日(火)17時07分51秒
保全
176 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月13日(金)16時00分26秒
保全
177 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月21日(土)23時19分43秒
早く書けよ。
178 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月30日(月)22時21分03秒
作者さん待ってるよ〜
179 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)00時50分58秒
もうすぐ半年か・・・
180 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月07日(火)16時13分26秒
hayakuyomitaidesu!
181 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月20日(月)11時04分01秒
保全
182 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月01日(土)16時24分23秒
作者さん待ってるよ!
183 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月22日(土)18時07分59秒
保全
184 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月07日(金)18時58分09秒
保全
185 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)15時32分39秒
保全
186 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月30日(日)20時25分15秒
忌んだ〜!
187 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月02日(水)00時05分29秒
完結編と銘打ってるんだから完結させて下さい
188 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月02日(水)19時44分36秒
>>187
デス・ゲームは完結していますが。
あとsageろ
189 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月14日(月)17時52分32秒
保全
190 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月13日(火)01時58分33秒
保全2
191 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月08日(日)21時53分48秒
保全3
192 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月08日(火)00時52分07秒
保全4
193 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月24日(木)12時44分43秒
放置、1年過ぎたNE
194 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月24日(木)21時58分27秒
1年か…。作者さん大丈夫かな
195 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月26日(土)00時00分56秒
期待してしまうからageないでくれ…
196 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月21日(木)21時02分27秒
保全
197 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/22(月) 00:55
もうだめぽ
198 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/22(水) 02:19
保全
199 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/03(水) 10:27
保全
200 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/28(日) 13:59
保全
201 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/20(火) 21:59
待ってるよ〜
202 名前:名無し 投稿日:2004/03/03(水) 15:01
保全

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