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『オムニパス短編集』2ndstage〜怖い話編〜
- 1 名前:第2回支配人 投稿日:2001年07月01日(日)18時24分16秒
- これより第2回オムにパス短編集を始めます。
今回のテーマは「怖い話」です。
怖い話といっても、怪談話とかの限定ではなくちょっとでも怖い話っぽかったらよしとします。
その辺りの判断は作者さん自身にお任せします。
なお、この企画では作者さんのHNは公開しないようにお願いします。
投稿期限はだいたい2週間後を予定しています。
締め切り後には作品投票も行いますので、そちらもご参加ください。
ここに参加したい作者さんはまず参加方法をご覧になってからどうぞ。
参加方法は以下の通り >>2
ここを見ない方は投稿を禁じます。
感想レス、その他、作品以外の書き込みは禁止します。
基本的な流れは前回と同じなので、参考にして下さい。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=purple&thp=989646261
なお、感想レスはこちらへ
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=989645892
前回の投票結果
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=990637157
- 2 名前:第2回支配人 投稿日:2001年07月01日(日)18時25分32秒
- (参加方法)
登録するとき
・作者さんは、自分の作品が100%の状態(始まりから終わりまでの状態)で
『オムニバス形式の短編集スレの参加者募集!』(以下、登録スレ)にて、登録を行う。
※その時の書き込み例は下記の通り。
『★〜番目で、「○○○○(タイトル名)」を書きます。』
・「〜番目」は順番に沿って間違いのないように書き込む。
もし、タイムラグでほかの作者さんと(登録のタイミングが)被ってしまい
同じ番号が2つ(複数)出来てしまった場合には、若いレス番号の方を優先してその番号を取得し、
被ってしまったほかの作者さんは、再度登録をしなおす(書き込み例は上記と同様)。
ただ、再度登録しなおし、というのが誰から見ても分かるような但し書きをすること。
投稿するとき
1.書き込む直前に、必ず登録スレに
『これから「○○○○(タイトル名)」を書きます』
と書き込む。
2.番号取得後、1時間以内にここに投稿する。
「名前欄」には「タイトル名」、「メール欄」には「登録番号」を必ず記載する。
「10レス以内」で文章をまとめたものを一気に投稿する。
※次に書き込む作者さんに迷惑がかからないようにするため。
なお、あとがきは10レス含みませんが、1レス以内に抑えて下さい。
もし、書き込み(登録スレ)から24時間以内に更新されなかった場合、
その作者さんの登録番号は登録キャンセル/中断と見なします。
そのときは次の登録番号の作者さんが投稿して下さい。
無効になった作者さんは再度登録し直す必要があります。
登録番号が無効になった場合、登録スレに
『〜番が無効になりましたので、次の「○○○○(タイトル名)」をこれから書きます。』
のように書き込み、その書き込みから1時間以内に投稿を行って下さい。
※ただし、番号が無効になってから、更に1時間以内に、次の作者さんの
書き込みがない場合には、その作者さんの番号も無効になります。
>>3 につづく
- 3 名前:第2回支配人 投稿日:2001年07月01日(日)18時26分15秒
- 3.作品の最後には終了を示す語句を必ず入れる。
書き込まれている小説が完結した時点で、次の順番の人が書く権利を得ます。
なお、あとがきも含め、全てが終了した場合には、登録スレに
『投稿終わりました。次の方どうぞ』
と、こんな感じで一言書き込むようにして下さい。
4.やむをえない事情(PCの故障など)で中断した場合、続きを書く前に
「>>33-35」
と前の部分にあたるリンクを続きの一番最初の部分に必ず入れようにして下さい。
※開始宣言があったら、紫板のそのスレで邪魔をしない。
これはマナーです。他の作者さんに迷惑をかけないように注意して下さい。
それでは、みなさんの投稿お待ちしております。
登録スレッドはこちら
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=989174315
- 4 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時49分01秒
ちょうど母親が旅行中に、真希が家に遊びに来た。
明日は久しぶりのオフらしい。
どうせそのつもりだったのだろうが、律儀に泊まっていいかと訊ねてきた。
いいよ、と言うと、やったーっと叫んで、真希は嬉しそうに、ニタ〜と笑った。
冷たい麦茶を飲みながら、リビングルームのソファーに二人並んで腰掛け、テレビを見ていると、ちょうど夏のホラー特集と銘打って、日本全国の心霊スポットを紹介したり、心霊写真の鑑定なんかをしている。
インチキくさい企画だなぁ。
紗耶香はぼんやりとテレビ画面を眺めた。
- 5 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時49分45秒
「ねぇ、市井ちゃん、‥‥市井ちゃんの一番怖かった体験って何?」
じっとテレビを見つめていた真希が聞いてきた。
「ん〜?‥‥怖かった体験ねぇ」
「うん」
「あっ、そうだ」
思い当たる事があったのか、紗耶香はぽんと膝を叩いた。
「あたしさ、前に、友達5〜6人で、夏休みに勉強会とか親に嘘ついて、ペンションに泊りがけで遊んだことあるんだよね」
紗耶香がいつもより低い声で話し始めた。
「うん、それで」
真希はごくりと唾を飲みこんだ。
- 6 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時50分53秒
「もちろん、ご飯とか洗濯とか、自分達でやるんだけど‥‥」
「ふんふん」
「‥‥なくなるんだよね」
「‥‥何が?」
「‥‥いや、あたしの‥‥Tシャツとか、下着とか‥‥」
「はぁ!?」
真希が紗耶香の手をぎゅうっと握り締めた。
「後藤、痛いよ。‥‥だから、あたしのものがなくなるの」
「他の人のは‥‥」
「あたしのだけなんだなぁ、これが。‥‥不思議でしょう?」
「‥‥それって、どういう‥‥」
真希の顔が蒼白になった。
唇が小刻みに震えている。
変なやつ、あんた、よく霊が見えるんでしょう?
紗耶香は真希を見て、小さく笑った。
- 7 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時51分52秒
「薄暗くって、シーズン中なのに、うちら以外客のいないペンションでさ‥‥それに、友達はみんな女の子だしさ。何か、もう、怖くって、怖くって。‥‥みんなで布団をくっつけて、抱き合いながら眠ったんだ」
紗耶香はフルフルと震えるフリをしてみせた。
真希は無言で、紗耶香の手を握り締めている。
「結局、何も起こらなくってさ。でも、楽しかったなぁ」
紗耶香は懐かしそうな口ぶりで、ニコニコと笑った。
- 8 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時52分43秒
「‥‥結局、何だったの?」
真希がポツリと聞いてきた。
「それが、後で、その時一緒に行かなかった友達に聞いたんだけど、そのペンションに来ていた友達の何人かが、あたしを好きだったんだって。‥‥だから、その子がもらったんじゃないの〜って。‥‥アハハハ‥‥あたし、仲間内では、密かに、王子って呼ばれてたんだって。アハハハハ‥‥王子だって、笑っちゃうよ。‥‥アハハハハ‥‥怖いよね、怖すぎる話でしょう?‥アハハハハ‥‥」
紗耶香は笑いながら真希を見た。
- 9 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時53分45秒
「ふーん、王子か‥‥」
真希が低い声で呟いた。
「ご、後藤?」
てっきり真希も大笑いしてくれると思っていた。
思惑が外れてしまい、紗耶香は焦った。
どうやら真希のご機嫌を損ねてしまったらしい。
- 10 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時55分01秒
- ‥‥ねぇ、市井ちゃん‥‥その、市井ちゃんを好きだった子とも、一緒に眠ったんだよね?」
真希がニッコリ笑いながら、聞いてきた。
「‥‥ん‥‥まあね」
紗耶香は真希の笑顔が恐ろしくて、視線をそらしてしまった。
「抱き合って、眠ったんだよね?」
「‥いや、その‥‥そうとも‥言うかな?‥‥」
「市井ちゃん、あたしの顔、見てよ」
紗耶香はおそるおそる真希を見た。
- 11 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時55分50秒
真希の愛らしい顔が、般若のような形相に変わっている。
真希はものすごい力で紗耶香をソファーに押し倒した。
「ま、待てっ。落ち着いて話し合おう!」
「うるさいっ。この女ったらし」
真希は有無を言わさず、紗耶香の首筋にかみついた。
「‥‥あっ‥」
紗耶香は思わず、声をあげた。
- 12 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時57分35秒
それから――
王子様は、ムシャムシャと鬼に食べられてしまいましたとさ。
- 13 名前:鬼と王子の話 投稿日:2001年07月01日(日)20時58分06秒
- おしまい
- 14 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時02分24秒
- 都内のある高級料亭
金髪色眼鏡小太りの男とこの席に似合わない田舎モノが向かい合わせに座っている。
「いやーほんま今日は楽しかったわ。」
「よろこんでいただけてこちらもうれしいかぎりです。」
「で今日は何や?なにもなくてこんな席を設けたわけじゃないやろ?」
「ははは、じつはあらたまって相談が……」
そういうと、きちんと座り直し。
「前回の一連の放送を見ていた某スポンサーがですね、あの三人を非常に気に入りましてね。ぜひとも自分たちの企画に使いたいとオファーがあったんです。」
そう告げると上目ずかいに相手の返事を待つ。
「う〜ん……」
ちょっとのあいだ天井を見、首を一回ひねるとおもむろに。
「石川も最近人気があるんでね、なかなかまとまった期間の出向はむずかしいんやないかな〜」
「そこをあなた様のおちからで何とか……」
そっと差し出す小ぶりの包み。
「『トム・ド・花畑』チーズ?わしチーズはちょっと……ん……これは!?」
重さを確かめ匂いを嗅ぐ。そしてにっこり笑うと。
「なにやら黄金のニオイがするのは気のせいかの〜……」
「オールジャパンナチュラルチーズコンテストで優秀賞をとった一品でございます。」
そう言い、にっこりと笑い返す。
「よしたけおぬしも悪じゃの〜」
「いや〜つんく様ほどでは……」
「「わっはっはっは」」
ひとしきり、うれしそうに笑いあった後。
「まあ知らぬなかでなし、なんとかしましょ。」
「ありがとうございます。」
そう言うとそっとにじり寄ったよしたけが声をひそめて。
「つきましてはそのことに関してスポンサーからひとつ条件が……」
「条件?」
悪党たちの夜はふけてゆく。
- 15 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時03分03秒
- 「え〜なんでです〜あたしだめです〜」
「もう決まったことだから」
「でも〜」
「もう決まったこと」
「だって〜」
「もう決ま(略」
「え〜ん」
その日少女の泣き声だけがいつまでも部屋に響いていた。
- 16 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時03分59秒
- 楽屋にて(1)
「矢口さ〜ん」
「どうしたヨッスィー?」
「毎晩梨華ちゃんから電話で泣かれちゃって……どうしても、あれやらなきゃいけないんですか?」
「今回はスポンサーが大々的にキャンペーン張るらしいしな。あれは克服しなけゃならんだろ。この前みたいに牛の乳しぼりなんてことでお茶を濁すわけにもいかんし、第一あれは『リカたんハッハッ』なんて言ってるあぶないヲタを喜ばせただけだろ?」
「はー、それもそうですね。でも梨華ちゃんの気持ちを考えると、できるならかわってあげたい……」
「優しいなヨッスィーは。」
「……毎日新鮮な玉子食べ放題なんて……」
「玉子かよ!!」
- 17 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時04分51秒
- 楽屋にて(2)
「は〜」
「どうしたヨッスィー」
「いや梨華ちゃんなんですけど……」
「なんだまだTEL攻撃うけてるのか?しょうがねーなー。」
「いえ、なんか修行のじゃまになるからって携帯とりあげられちゃたらしいです。」
「じゃあいいじゃねーか、なに悩んでんだ?」
「これなんですけど」
カバンからぶ厚い封筒をとりだすと矢口に渡す。
「いいのか読んで……なんだこりゃ!」
その手紙にはポジティブの文字が延々と繰り返されていた。ところどころ涙であろうか文字が滲んでいる。
「キャハハハ、すげー何枚あるんだ。……ぷっ……ところどころネガティブって間違えてるし……ひ〜……さいこ〜〜。」
文字通り腹を抱えひっくり返って笑っている矢口。
しばらくしてやっと落ち着いたか、吉澤に聞く。
「で、なにやっぱり心配なのか?」
「毎日来るんですよね。それ。」
ほほがゆるむのが止められない吉澤。
「なににやけてんだよ。もしかしてのろけか〜こいつ〜」
「いっしょに、玉子も送ってきてくれるんですよ〜それが新鮮でおいしいんですよね〜」
「って、また玉子かよ!!」
- 18 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時06分29秒
- 楽屋にて(3)
「は〜」
「どうしたヨッスィ〜また梨華ちゃんがなにかやったか?」
「いえ最近手紙がこなくなったんですよ、今頃なにしてるのかなって思って……」
「教えてあげましょうか。」
「ひっ、保田さんいつのまに……」
「石川はね脱走を試みたの、でスタッフはこのままじゃ駄目だと悟って、山ごもりさせることにしたの。」
「山ごもりっていったい……」
「恥ずかしくて街に下りられないように、眉毛を片方剃らせたらしいわ。」
「空手バカ一代かよ!」
「しかも、モーたいの他に、ある深夜番組がタイアップするらしいわ。」
「電波少年かよ!」
(矢口さん……。でもだいじょうかな梨華ちゃん……)
「だいじょうぶよ、吉澤。」
「ひっ、いつのまに……なんでわかるんです飯田さん。」
「かおりにはわかるの。いま石川は充実した日々を送っているわ。」
(なぜかはわからないけど、説得力あるな飯田さんの言葉は……でも梨華ちゃん……)
「なに、まだ梨華ちゃんのこと心配なの吉澤?」
「手紙がこなくなってから玉子も送ってこないんですよね……」
「「「結局玉子かよ!!!」」」
- 19 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時09分44秒
- 梨華ちゃんをのぞくあたしたち新メン三人は今日も元メンとの差をうめるべく居残りでダンスレッスンをしていた。
「じゃ〜今日はここまで。」
「「「おつかれさまでした。」」」
あいさつと同時にべったりと床に腰をおろしたわたしたちに夏先生が。
「あっそうだ。石川戻ってきてるらしいよ。」
「えっホントですか。」
「いまごろ控え室にでも挨拶にきてるんじゃないかな。」
「は〜そうですか。」
ツンツン
袖を引っぱってあいぼんがあたしに話しかけてきた。
「な〜ヨッスィー、梨華ちゃんてなおったんかな〜」
「戻ってきたってことはそうなんじゃない?」
「ふ〜ん。」
なにか考えていたかと思うとニコッと笑った。
(あっ、またろくでもないこと思いついたな。)
だいたいあんな笑い方をするときはそうだ。
「ののちゃんちょっと…」
となりの辻ちゃんに耳打ちをしている。
「え〜、最近誰も笑ってくれないし、やりたくないな……」
「あほか、ここからが勝負や。これからの一回一回が、一生の持ちネタになるかどうかの瀬戸際なんやで!」
「でも……」
「いやならいいんやで、コンビ解消するか〜。こんどはヤッスーと組もうかな〜。あの顔はお笑いとして天性の才能や。ある意味天才的やで……」
(…………)
「……や、やるから。がんばりま〜す。」
「は〜」
一回ため息をつくと
「じゃいこうか。」
二人に声をかけ立ち上がる。
- 20 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時11分05秒
- (しばらく会ってなかったけど、少しは変わったかな)
三人で控え室へと向かう。うしろでは二人がなにやらネタの打ち合わせをしているようだ。
部屋の前まで来ると、なにやら騒がしい。ときどき特徴的な高い声が混ざっている。
そっとドアを開けると
「…………。」
「……じゃないです〜。」
(あっ、梨華ちゃんだ)
向こうをむいて先輩たちと話をしている。
「で、石川〜特訓はどうだった?」
「え〜と……あっ、玉子がすごくおいしかったです〜」
「玉子かよ!」
(……矢口さん)
「そうじゃなくて、あれは克服できた石川?」
飯田さんが聞くと
「もう完璧です。」
チャーミーポーズで親指をたてている。
「チャーミーに弱点はなくなりました。無敵です〜。」
嬉しそうに話している。
「よしっ、いまや!!」
さっと辻ちゃんをドアの内側へ押し込むあいぼんが見えた。
(……だいじょうぶかな梨華ちゃん……)
『コケッコッコッココケッココケッコ……』
部屋にひびく辻ちゃんの声
その声に反応して振りかえる梨華ちゃん。その顔には微笑みが浮かんでいる。
(修行の成果がでてる。やったね梨華ちゃん!)
そして辻ちゃんの前にかがみこむと……
「ほいっ!」
コキッ
(へっ……)
- 21 名前:カントリー修行 投稿日:2001年07月01日(日)23時11分41秒
- モーたい番組編集室
番組のコーナー『石川梨華のカントリー修行』で使う山ごもりのVTRをチェックしていたスタッフは頭を抱えていた。
「ほいっ」…ポキッ…「ほいっ」…ポキッ…「ほいっ」…………
モニターにはニコニコうれしそうに笑いながら軍鶏をシメテいる映像が延々流れている。
fin
「ね〜ひとみちゃん知ってる?このあと首からパッツリおとして逆さまに吊すのよ。」
- 22 名前:さよなら私 投稿日:2001年07月02日(月)02時38分09秒
- ある日、背中が痛くてしょうがなくなってた。
鏡に背中を映して見ると、背骨の辺りが黒ずんでた。最初は日焼けだと思ってたけど、違
った。
日が経つにつれて、じーんじーんってどんどん痛みがひどくなってって、寝ることもでき
なくて、そのせいで頭痛くて、イライラして、みんなに当たって、文字通り"最悪"ってやつ。
明日病院に行こうって決めた日の夜だった。背中が、ううん、背骨が盛り上がった。ほん
の、ほんの一瞬だけだったけど。
怖かった。
だって、骨が動いたんだからさ。
パニクった。
長いTシャツ一枚で外に出て、走った。
たぶん、叫んでた。
でも、雨が降ってたから。たくさん。だから誰も気づかなかったと思う。
後藤真希が深夜に裸足で大絶叫、なんてね――
「うっ…」
私は、頭から水溜りに転んだ。
口に入った水が気持ち悪くて履きそうになった。
濡れた前髪の隙間からぼやけた街の明かりが見えた。
「うっ…ぐぅ……」
背中が痛かった。転んだせいじゃなくて。
届かないとわかっていたけど、少しでも楽になりたくてさすろうとしたけど届かなかった。
痛い、痛い、痛い、痛いよぉ――
- 23 名前:さよなら私 投稿日:2001年07月02日(月)02時38分39秒
- 水溜りに、念のため首から下げてた携帯が落ちちゃってた。
ディスプレイが壊れてたけど、かろうじて字が読めた。
なんでもいいからかけてみた。
つながった。
「…ごっちん?」
眠そうな梨華ちゃんの声。
「梨華ちゃん、助けてぇ…」
私は情けない声ですがった。
そのあとのことはよく覚えてない。
気がついたら、梨華ちゃんの部屋についてた。
梨華ちゃんは泥だらけの足を拭く気力もない私の足を、嫌な顔ひとつせずに拭いてくれた。
「お風呂入ったほうが早いね。」
泥水で臭くなった頭を拭いて、梨華ちゃんは言った。
ため息が顔に届いた。
私は溶けそうになった。さっきまでの混乱はどっかいっちゃってた。
梨華ちゃんのTシャツ、ちょっときつかった。
私、やっぱ肩幅あるのかな…
「はい。」
梨華ちゃんが水を差し出してた。
私は精一杯の笑顔で応えて、受け取った。
けど、次の瞬間にはフローリングに水溜りができてて、私はまた頭から倒れてた。
- 24 名前:さよなら私 投稿日:2001年07月02日(月)02時39分25秒
- これでもかってぐらい、背中が痛くなっていた。
普通じゃない。
心臓も異様に高鳴ってるし。
背骨が音を立てて鳴っているのが嫌でもわかった。
「ごっちん…」
梨華ちゃんの手が、うつぶせの私の背に伸びる。
ばれる…こんな普通じゃないの…嫌われる…
私は跳ね起きて梨華ちゃんから離れた。
「ごっちん…背中…」
梨華ちゃんは今ので背中がおかしいって気づいちゃったみたい。
こうなったら、もう、話す以外――って言うかもう話したい。
私は、Tシャツを脱いで、梨華ちゃんに背を向けた。
ふと、肩越しに見た鏡に映った私の背中には、縦長の赤黒い痣ができていた。
一番盛り上がってる部分が少しだけ裂けて、血が滲んでた。
「……もっと早く言ってくれればよかったのに…」
あったかい梨華ちゃんの手が伸びてきた。
私は、楽になったのかなんなのかわかんないけど、泣き出してた。
辻ちゃんみたいにうあーんって。
- 25 名前:さよなら私 投稿日:2001年07月02日(月)02時40分20秒
- 梨華ちゃんは、床に布団を敷いて、うつぶせに寝る私の背中をさすり続けてくれた。
雨はいつの間にか止んでて、電気が消えた部屋は月明かりで青くなっていた。
「いつから?」
「一週間ぐらい前から。」
「どんな感じ?」
「痛いの。背骨が飛び出てきそうな感じ。それにね…なんか別の生き物がいるみたいな…」
「よしてよ…」
「本当だよ。怖いよ……。蝉みたいになっちゃったらどうしようって本気で怖い…そうい
う映画あったじゃん…」
「脱皮ってこと? そんなこと…」
「あったら! あったら…どうすんのさ? この背中が裂けて、私が…別の生き物として
這い出てきたら…」
いきなり起き上がったもんだから、落ち着かせていた傷口が派手に開いた。
梨華ちゃんすかさずはガーゼを貼りなおしてくれた。
気まずくなって、無言が続く。
って、梨華ちゃんといる時はいつもそうだったかもね。
「もし…」
梨華ちゃんの手が剥き出しの背中に伸びた。
「もし、ごっちんが別の生き物に変わっちゃったって、ごっちんはごっちんだから…」
背中に、柔らかい感触。
口……唇?
うあー、なんか…えっち…だ。
梨華ちゃんが横に並んで寝ッ転がった。
さすがに、まともに顔を見れそうにない。
もしかしたら、梨華ちゃんのことが好きになったのかもしれない……女の子を好きになるなんて……
複雑に思ってても、どっかワクワクしていた。
恋……梨華ちゃんに恋。
- 26 名前:さよなら私 投稿日:2001年07月02日(月)02時41分19秒
- 起きた時、私の見る世界は変わっていた。
全てが広く見渡せて、どこへでも行けちゃう感じ。
自分の顔を見て、つくづく「魚」だなって思った。
梨華ちゃん貸してくれたTシャツ、ボロボロだ。血で真っ赤だし……
「ごっちん……」
梨華ちゃんは梨華ちゃんの隣にいる「私だった私」を見て驚いていた。
背中が裂けて、内臓丸見えだからもっと驚いていいはずなんだけど。
私は、フローリングを音を立てて進んで、梨華ちゃんに姿を現した。
梨華ちゃんと目が合う。
私は、鏡に映った自分を見る。
視界が広いから嫌でも目に入っちゃうんだな、これが。
緑色の鱗肌。
そう。
私はイグアナになっていた。
原因なんて知ったこっちゃない。
もう、戻れない。
それだけは確信できた。
もう、恋をすることも、できないんだ……
こうやって、考える力はあるみたいだけど、しゃべる事は全く出来ない。
梨華ちゃん、気づくかな?
「おいで。」
梨華ちゃんの笑顔。
私は慣れない足取りで近づいて、梨華ちゃんの胸に飛び込んだ。
-完-
- 27 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時39分48秒
- 簡単だったんだ。
あのとき、あの子を見捨てることぐらい。
でも、救うことだって簡単だったはずなんだ。
ホラ、隣で、潰した。
- 28 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時40分24秒
- 「梨華ちゃん。相談があるんだ……。」
そう、ひとみちゃんに言われた。
とりあえず、「なぁに?」って答えた。
別に、それほど内容が気になっていたわけじゃない。
社交辞令?ちょっと違うかな。
ま、似たようなもの。
「……私……脅されてるの……。」
ひとみちゃんの言葉は、
さすがに、ちょっとショック。
次に出てくる言葉は決まってる。
「誰に!?」
その次も。
「なんで!?」
ひとみちゃんがもう一回口を開くのには、
結構時間がかかった。
「男の人……。知らない人。
……。お風呂、覗かれていて……。
写真……。撮られちゃった。
バラ撒かれたくなかったら、5000万用意しろって……。」
「5000万!?」
「……梨華ちゃんにどうにかしてって頼みたいわけじゃないんだ。
ただ、その……。みんなに、メンバーのみんなに……。
お金を貸してくれるように頼んでくれないかな……。
もちろん、何年かかってでも絶対に返すから……。」
「……。」
「梨華ちゃん……。」
「あのさ……。」
「……。」
「……事務所に……言ったらどうかな。
事務所なら、5000万ぐらいなんとか……。」
「……。」
「……。ダメ、かな。」
「……そのせいで……。
モーニング娘。クビになっちゃうかもしれない……。
お金、出してもらえないかも知れない……。
私にとっては、事務所なんかより、メンバーの方が信用できるから……。」
「そっか……。」
- 29 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時41分04秒
- 結局、その場では、今度、一緒に他のメンバーに頼もう、って、言うことになった。
でも、私は、事務所に、お金のことを、ひとみちゃんに秘密で、頼んでみたんだ。
……なんであんなことしたんだろ。
……ひとみちゃんがクビになるかもしれないって、少しは予想できてたかも知れないのに。
……ともかくとして、吉澤ひとみは、モーニング娘。を、無理矢理に脱退させられた。
同時期に、その風呂場を盗撮した裸の写真が、出回った。
吉澤ひとみは、芸能人としての立場も社会人としての立場も、一気に失った。
最後にあの子と話したときは、どんな言葉を交わしたんだったかな……覚えてないや。
- 30 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時42分05秒
- 一年ぐらい経った。
なんでか知らないけど、新宿に行って、
風俗街に迷い込んだんだ。
そこで、見ちゃった。
元モーニング娘。の吉澤ひとみが、
何か、悪そうな感じの男の人と歩いているのを。
吉澤ひとみの服装は、
これまでに私が見たことのあるどんなものとも違って、
派手で、下品だった。
私は、隠れながら、二人の後を、付けてみた。
- 31 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時42分40秒
- 二人は、路地裏で、何かをしていた。
私にはとても言えないような、ことを。
吉澤ひとみがあんなことを、こんな場所でしているなんて。
……行為をしている吉澤ひとみと、目が合ってしまった。
瞬間、立ち上がった。手を、男の人に伸ばすと、
思いっきりひっぱたき、ひっかいた。
男の人は、呆気にとられるままに、倒れ込んだ。
そのまま吉澤ひとみは、近くにおいてあったビールケースを掴んで、
男の人の頭を、殴った。何度も、何度も、殴った。
気が狂ったかのようだった。
いや、間違いなく気が狂っていた。
すごい、血だった。始めて見る量だった。
何か違う物に見えた。理解できなかった。
何が理解できなかったんだ?
あれ?血か。あれ?あーわけわかんない。
とにかく、男の人が、絶命しているのは明らかだった。
そうすると、吉澤ひとみは、ビールケースをかなぐり捨てた。
指を、男の人の目に、突っ込んだ。
変な音が、聞こえるはず無いほどの距離があるのに、聞こえてきた。
もう、そこから先のことは、言いたくない。
言ったら、吐く。おかしくなる。気持ち悪い。
とにかく私は、訳もわからぬままに、
ただ、泣き叫びながら、その場を走り去ったんだ。
- 32 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時43分35秒
吉澤ひとみの死体と、男の人の死体が重なって見つかったのは、
その日の夜中だった。
二人は結婚して夫婦になっていたらしい。
そういえば、吉澤ひとみは16歳になっていた。
旦那が多分に、盗撮を仕掛けた人間だったんだ。
- 33 名前:save me 投稿日:2001年07月02日(月)03時44分32秒
- 一体、なんだったんだろう。
あの日私が見たものは。
一年以上前、私が執った行動の意味は。
ねぇ。
終了です。
- 34 名前:KOKORO 投稿日:2001年07月02日(月)14時07分45秒
- 「Hello!Project大運動会」終了後の楽屋。
中澤裕子は矢口真里にこう言った。
「大変や…」
「裕ちゃん?どうかしたの?」
「ウチな、脅されとるんや…」
「ええっ?誰に脅されてるの?」
「知らない人…もし脱退を取り消さなかったらウチの命はない、って言ってた」
「どうしよう…」
真里はこう言った。
「他のメンバーに相談してみては?」
さらに真里はとりあえず裕子に言ってみた。
「わかった、やってみる…」
裕子は賛成した。
- 35 名前:KOKORO 投稿日:2001年07月02日(月)14時24分23秒
- 「犯人はおそらく、熱狂的な長嶋信者のようです。」
シェキドルの末永真己はこう言った。
さらに真己はこう続けた。
「脱退発表の翌日にこのような事を計画していたのではないかと思います」
「娘。信者であり長嶋信者でもある人がこの犯行を計画するとは思えん」
飯田圭織は言った。
と、そこにつんくがやってきた。
「大変な事になりました。」
つんくは言った。
「そうなんですよ、中澤さんが狙われています。」
辻希美はこう答えた。
「犯人の特徴は年齢が15歳くらいで、女性だということです」
「どうするの?」
「こうなれば警備を強化しなければいけません。」
つんくはそう言うと、娘。達を立たせた。
「こちらに非常口があります。そのドアを開けるとマイクロバスを待たせてありますので気を付けて帰るようにしましょう。」
「わかりました」
娘。達はこう言うとつんくの言う通りに非常口へと向かい、ドアを開けた。
そしてマイクロバスに乗り込む。
しばらくするとマイクロバスは走り出した。
- 36 名前:KOKORO 投稿日:2001年07月02日(月)14時44分18秒
- そしてここは、とある森の中。
マイクロバスはここを走っていた。
するとバス全体にすごい衝撃が走った。
「どうしました?」
運転手はこう言いながらバスから降りた。
するとバスの前にある女性が倒れていた…
「どうした?」
裕子がそう言いながらバスから降りる。
すると女性は裕子に襲い掛かってきた!
「そんな…何でお前が…」
裕子は言った。
「あなただけは絶対許さない…」
「や…やめて…くだ…さい…」
女性は裕子の首を絞めている。
と、その時である。
圭織はその女性に飛び掛かった。
「この女が犯人よ!」
そしてこう言った。
- 37 名前:第2回支配人 投稿日:2001年07月02日(月)18時30分00秒
- 5番目の作品「KOKORO」は中断とします。
この作品の作者さんは
>>3
に書いてあるルールの通りに書いて下さい。
また作品を再び書き始める前に登録スレで再開しますと宣言してください。
次に作品を書く方は6番目でお願いします。
- 38 名前:KOKORO 投稿日:2001年07月03日(火)13時27分26秒
- 結局、この女性は逮捕された。
その後の取調べでも女性は犯行を認めているという。
そして4月15日。
裕子は3年間のモーニング娘。としての活動を終えた。
同日、その女性は刑務所内で自ら命を絶った。
−完−
- 39 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)20時59分26秒
- 「いいですか、これ、本当にあった話なんですよ」
加護のもったいぶった低い声が、うす暗い部屋に響いた。
ベッドの脇のスタンドを一番暗くつけると、壁が朱色がかったライトに照らされて、かえって
薄気味悪くて良い。そう提案したのは吉澤だ。
静まりかえった室内には、九人の少女が額を寄せあっていた。普段はかしましい彼女たちが
静まりかえっている光景は、それだけでじゅうぶんホラーだ。
夏のコンサート最終日恒例、怖い話大会。中澤時代は不参加も許されたのだが、現リーダー
飯田の
「カオリ、みんなで参加することに意義があると思う」
の言葉に、全員が出席を余儀なくされていた。
「稲川淳二の怖い話」を片手に、口真似まじえて大熱演の加護。
前のめりで話に聞き入る吉澤。
無表情のままお菓子を食べつづけ、ときおりぼそりと「あーいるよね」などとつぶやく後藤。
両腕を吉澤と後藤に絡ませて、顔をこわばらせながらも、どことなく嬉しそうな石川。
「こわっ! こわっ!」と人一倍連呼して、隣の阿倍の肩をぺちぺちたたいている矢口。
この照明状態で目が合ったら怖いので、みんなそちらを見ないようにしている保田。
聞き手の目を順番に見つめながら、さっきから一番多く話しつづけている阿倍。
食い入るような三白眼で見つめるものだから、話し手に「カオリのが怖いよ」とつっこまれる飯田。
そして、その飯田にへばりつきながら、半べそをかいている、辻。
- 40 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時04分01秒
- 「この話のタイトルはちなみに○○○○っていいましてぇ……。あ、聞いた。もうみんな聞きましたねぇ……」
辻の恐怖は、さっきの安倍の「ごまあざらしを連れて夜な夜な牧場を徘徊する少年の霊」の話から、もう表面張力
いっぱいいっぱいだった。部屋の中にぼんやり浮き上がっているみんなの顔を見るのも怖くて、飯田の腰にぴったりと
顔をつけて、目をぎゅっとつぶっている。当然視界はまっ暗で、そのせいか、恐怖はまったく拭い去れない。
「辻、だいじょぶ?」
飯田が辻の背中をぽんぽんとたたいた。
「こわいです」
ますますしがみつきながら辻はつぶやく。
本当に怖かった。
ちょっと油断したら、実はただのあざらしなのに飛び散った血でごま模様になったあざらしを背中におぶって、
耳たぶが半分ちぎれた男の子が「マジっすか、マジっすか」と連呼する光景が意識の真ん中に浮かび上がる。
辻はぶるぶるっと犬のように体を震わせた。
「しょうがないなあ、辻は」
飯田はくすくす笑うと、「ね、みんな。電気だけつけない?」と呼びかけた。
不服そうに「だめですよ。感じでないじゃん」と反抗するのは吉澤。
「そうですよお」
「きゃっかー」
石川、後藤。
「なにカオリ、怖くなったんだ」
からかうように保田がいい、「辻でしょー」と矢口のあきれた声がした。
「まったく、カオリは辻に甘いよ」
「あ、でもほんとビビっちゃってるよこのこ。おい。ツージーだいじょうぶぅ?」
安倍の手が辻の頭をなでる。「辻、怖かったらいんだよ。向こうの部屋行く?」
みんなの注目が自分に向いてしまったことを感じて、辻はいたたまれなかった。
自分のせいでせっかくみんな楽しくしている雰囲気が壊れてしまう。
だいじょうぶ、そう強がろうとしたとき。
「あかん。のの、最後までちゃんと聞きや」
冷たい声がした。
思わず顔を上げると、加護がこちらをじっと見ていた。つぶらな目がまっすぐ自分にあてられているのが暗くてもわかる。
「こら、加護。またそういう意地悪いう」
「だって矢口さん、せっかくみんなで話してんのに、一人だけ帰るなんてシケシケじゃないですかー。
それにこの話はぁ……」
「あー、加護すねたよ、カオリが辻ひいきするって」
「そんなことゆってないじゃないですか」
「もう電気つけちゃう? ジーツー泣きそうだもん」
「後藤さんまで、なんでつけるんですか? そんなんのののワガママやん」
- 41 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時07分39秒
- 辻は立ち上がった。
「辻?」
飯田が心配そうに見上げる。泣きそうに震える唇をかんで、辻は加護をにらみ返した。
加護はたじろぐような顔になるが「なんや、いうてみ」とすぐにふんぞり返る。
「かえる」
「え?」
「かえるっ!」
「あ、辻!」
「こら、のの! ちゃんと聞きって……」
辻は部屋を飛び出した。
――あいちゃんのばか、あいちゃんのいじわる、あいちゃんのぷにぷに。
……ぷにぷには辻もだけど。
明るい廊下に出ると、辻はドアに向かって思いきりアカンベーをした。さらに、ドアにケリを入れる真似もしておく。すこしだけすっきりした。
腹が立って怖かったことを一瞬忘れていた辻だが、静まりかえった廊下に、ふたたび恐怖がよみがえってきた。油断をしたら、ごまあざらしの
残像がふたたび脳内にわきだしてくる。
「どうしよう」
辻はぐるぐると回った。
照明は煌々とついているものの、人気がない。遠くから、エレベーターの止まるチンという音がかすかに聞こえてきた。ますます怖くなって、
落ち着かない手をジャージのポケットに突っ込む。
さっきまでいた部屋は飯田、保田の部屋。自分と加護の部屋は隣だから、飛び込んでしまえばそれまでだけど、こんな夜にホテルの部屋で
一人きりは、怪談話より怖い。
今戻ったらみんながいる。だけど、きっとまた怖い話がはじまるのだろう。もし自分が泣いてしまったらどうなるだろう。
――飯田さんやよっすぃーは、もうやめようっていうに決まってる。そしたらみんなどう思うだろう。あいぼんはどう思うだろ、
辻のこと、弱虫だって思うに決まってる……。
- 42 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時11分22秒
- がちゃり。
さっきまでいた部屋のドアノブが動いたのを見て、辻はとっさに隣室のくぼみに隠れてしまった。
「いないや」
聞こえてくるのは飯田の声だ。
飯田さんだ。思わず辻はつよがりも吹っ飛んで飛び出しそうになった、が。
「大丈夫ですよ」
加護の声だった。辻の足はぴたりと止まる。「のの怖がりやから、ぜったい一人でなんて寝れへん。
すぐ『いいださ〜ん』ゆうて戻ってくるわ」
「部屋入ったんでしょ」
脳天気な声は矢口のもの。
「大丈夫だって、カオリ。隣の部屋なんだぜ、怖くなったらすぐ戻ってくるよ」
「でも……」
「もう。いまどき過保護は、はやんないよ〜。ほら、加護の話聞いてやらないとまた拗ねるから」
「拗ねてません。ののには後でちゃんと続き話したらな……」
ふたことみことの聞き取れない言葉のあと、大きな音をたてて部屋のドアは閉じられた。
沈黙がひろがる。
辻は唇をとがらせた。
「あいちゃんのばか。なんでそんなに辻に怖い話したいのさ……」
思わずひとりごちる。
飯田さんが迎えにきてくれる――ひそかな期待はあっさりうち砕かれてしまった。
もう後には引けない。
――辻だって、一人で寝るくらいできるもん、あいぼんのばか。タンポポのばか。飯田さんのばか。
ばかばかばかばか。このドア入ればいいだけだし、目ぇつぶって走って入って、お布団かぶって朝まで寝ちゃえばだいじょうぶだよ。
加護と自分の部屋の電気はついたままだった。
辻は部屋に飛び込むと、そのままベッドにダイビングした。
ベッドの上にがちゃがちゃ置きっぱなしだった小物や服が体にあたる。目を開けるのが怖いから、つぶったまま、手足をめちゃめちゃに動かして全部を床に払い落とした。
さっきの話の内容がぐるぐる頭をまわり、眠れそうにないと思いながらも。
疲れた体は感情に逆らってとろけてゆく。
そしてそのまま。
シーツを頭までかぶって、辻は眠りについた。
- 43 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時15分32秒
- 物音で辻は目を覚ました。
一度寝てしまえば朝まで起きない自分にしては珍しいことだ。閉じていたまぶたを開くと、隣のベッドの脇で、いちばん暗くスタンドをつけて、加護が自分の荷物を探っている。
「あいぼん……」
「おおっ! 起きてたん、のの。びっくりさせんといてや」
加護は大げさにため息をつくと、辻の枕元にやってきた。
「うん。今起きた」
暗闇にぼんやりと加護のちいさい顔が浮かんでいる。今の照明のつけかたは、さっきの怖い話の時と同じだ、と辻は気がついた。そして、自分が加護に対して怒っていたことを思いだす。
加護が戻ってきたらぜったい無視してやると決めていたのに、普通にしゃべってしまっていた。
もう怒っているのもばからしくなって、辻はふたたび口を開く。
「怖い話終わったの?」
「うん。後藤さんの話でしめやった。あれはほんま、しゃれにならんかったわ」
加護も、なにごともなかったかのような口調だ。
「話さなくていいからね」
辻は耳をふさいだ。
「あっ」
加護が目を丸くする。「思いだしたわ、のの、のの」
ぐいっと辻に顔を近づける。真剣な顔だ。辻は嫌な予感がした。
「さっきのあたしの話あったやん、あれ……」
辻は最後まで聞かなかった。ぴったりつけた手のひらで、耳をめちゃめちゃにこする。
- 44 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時16分45秒
- みょむみょみゅみみゃみょみょみょみょ……。
皮膚のこすれる音で加護の声はまったく聞こえない。
加護は口をぱくぱくさせている。
『もー、あいちゃんなんでまだ怖い話するのぉ!?』
手を動かしながらさけぶと、加護はあきらめたように口を閉じた。それを確認して辻は手を離す。
「ひどいよ、あいちゃん。せっかく仲直りだと思ったのに!」
「いや、ちゃうねんて、さっきの話な……」
辻はまた耳をふさいだ。
みょむみょみゅみみゃみょみょみょみょ……。
『聞きたくないってゆってるじゃん!』
今度は加護はあきらめなかった。辻の腕をつかむと、耳から引き離そうと引っ張る。
ぜったい話すもんかと、辻は思いきり耳を押さえつけた。
加護はますます力を入れて辻の腕を引きはがそうとする。
眉をつり上げて、こちらをにらんでいるその顔が、なぜだか加護ではなくて、別の人の顔のように見えて、辻は恐ろしくなった。
「ちょ……聞、き……のって、なぁ…の」
「やだやだやだやだやだやだやだやだぁぁ!」
どん。
辻は加護を力いっぱい突き飛ばした。
加護はあっけなく吹っ飛ぶと、自分のベッドにごろんと倒れた。はっとしたようにこちらを見る。
怖さと怒りで辻の涙腺は爆発寸前だった。
「あいぼんのばかっ!」
辻は部屋を飛び出した。
- 45 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時18分30秒
- 辻は飯田のベッドの中にいた。
横に寝ている飯田に、こんなに怖がっているのにまだ怖い話をしてくる、加護のひどい仕打ちをしゃくり上げながらも熱弁していると「怖がるからかえっておもしろがられるのよ」と隣のベッドから保田が茶化してくる。
「だって怖いんです」
「そこはガマンよ」
「怖いんです!」
「まーまーまーまー」
飯田が節をつけて辻のお腹をたたいた。「明日ちゃんといっとくよ。加護もほんとイタズラ好きだからさ。辻怒っちゃって、きっと今頃反省してるよ」
「逆に怖がってるんじゃない? あいつだって一人で寝るの絶対怖いと思うもん」
「あはは。そうかもねー」
年長組二人の声を聞いているとすこしずつ落ち着いてくる。もともと立ち直りの早い辻はもう泣き笑いの顔になっていた。
ベッドサイドの電話が鳴った。
「加護だ」
保田が素早く取る。
「もしもし。加護ちゃん? ……うん、うん、いるよ。え? だーめ、あんたまた怖い話する気でしょ。だめだって。……うん、信用できない。………。って、ヒイキ? ハァ? してないでしょ! バカ、なんであんたまで泣きそうになってんのよ……。え、カオリ? カオリに代わるの? ……ちょっと待って」
保田は受話器をつきだした。
「加護。カオリに代わってって」
飯田は首をかしげながらも、受話器を受け取った。保田と違ってちいさい声なので辻にはよく聞こえない。
「ったくもう、わけわかんないこといってるよ」
ぶつぶついう保田に、辻はうなずいた。
だんだんまた腹が立ってくる。
――どうしてそこまでしてあたしに怖い話を聞かせたいんだろう。ヒイキだなんて、あいちゃんのがよっぽどヒイキされてるくせに。あいちゃんのばか。あいちゃんのばか。もうぶりんこも解散だ。
- 46 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時24分48秒
- がちゃり。
飯田が受話器を置いた。
なんだか笑いをこらえるように、顔が強ばっている。
保田は布団をはね飛ばすと、ベッドの下に置かれていたサンダルをつっかけた。
「あれ、圭ちゃんどっか行くの?」
「加護んとこ。説教してやる」
「あ、それいいよ。加護べつに悪気があった訳じゃないみたい」
辻はきょとんと飯田を見つめた。
――なにをいってるんだろう、飯田さん。あいぼんはムリヤリ怖い話聞かせようとしてくるのに。
保田はベッドをあごでさした。
「どっちにしろ、辻がここだったら向こう一個空くでしょ。あっちで寝るわ」
「やさしいじゃん」
「べーつに」
保田はさっさと部屋を出ていってしまった。辻と飯田だけが部屋に残る。
「いいださん……」
不思議そうな辻の顔を見て、ベッドに半身起きあがった飯田は愉快そうに笑った。
「加護ね、さっきの電話なんだけどね」
「はい」
「さっき加護がしてた怖い話あったじゃん? あれ……」
みょむみょみゅみみゃみょみょみょみょ……。
辻はまた両耳を思いきりこすった。
困ったように動かしていた口を閉じてしまった飯田をにらむ。
『飯田さんまでなんで怖い話するんですか!なんでみんな辻にそんな、いじわるばっかりするの!?』
思いきりさけぶ。
飯田はまた口をぱくぱくさせた。
みょむみょみゅみみゃみょみょみょみょ……。
『飯田さんのばか! あいぼんにセンノウされてるんだ!
辻怖いの嫌いなの知ってるのに! みんななんで、なんでっ……なんでみんなで辻いじめるんですかっ! なんで、なんっ……』
涙がでてきた。
あとからあとから出てくる。泣きながら辻はさけんだ。
『怖いのやなんですっ。やだやだやだやだやだやだやだやだやなんですっ!』
大きな声を出しすぎてのどが痛くなってくる。
飯田がそっと辻の手首をつかんだ。
しゃくりあげながら、その顔を辻は見返す。
(ツ、ジ)
飯田の唇がゆっくりと動いた。辻は首をぶんぶん振る。
(ダ・イ・ジョ・ウ・ブ)
飯田はうなずいた。辻の目をのぞき込む。
(シ・ン・ジ・テ)
その目は、飯田のいつもの真剣でやさしい目だったから――
辻の手は魔法にかけられたように、耳から離れていた。
- 47 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時34分16秒
- 「あの怖い話、呪われる話だったんだって」
飯田の言葉に辻はもう一度耳をふさぎそうになった。が、がっちり飯田の長い腕に羽交い締めされていて、辻の怪力でも振りほどけそうにない。
「おっと。暴れないの。ちゃんと聞きなさい。怖くないから。でね、あの話のタイトルを聞いた人は、話を最後まで聞いて、呪いを解く呪文を唱えないと、呪われるって話だったのよ。そういやもうみんな大ブーイングだったわ。おーもしろかった。あ、でね、その後みんなで呪文唱えたんだけど、辻途中で逃げちゃったから、最後まで聞けなかったでしょ。で、加護が、辻が呪われちゃったら大変だって、あわてて呪文と話のつづき、教えようとしたんだけど、あんたすっかり怖がっちゃって聞かないもんだから、焦ってたの。ったくもう、かわいいねぇ。加護電話で半泣きだったよ」
飯田の言葉に、縮こまっていた心がすこしずつとけて行く。
「そうだったんだ、あいちゃん……」
『のの、聞いてっ! 聞きって、なあ』
さっきの加護の真剣そのものの顔が頭に浮かぶ。怖いくらいのあの形相は、自分を思ってのものだったのだ。けっして、いじわるで聞かせようとしていたわけではなかった。
「明日、ちゃんと仲直りしなよ?」
おでこをくっつけて、飯田がこちらをのぞき込む。辻はこくんとうなずいた。
「よろしい」
飯田は満足げに辻をぎゅっと抱きしめる。「これにて一件落着ってか」
「飯田さん、でも呪い……」
「あ、そうだった。すっかり忘れてたや。あんまりにも嘘くさいんだもん」
「どんなのですか?」
辻はまだ不安がぬぐい去れない。
「えーとね。加護がいうには話の方は、もういんだって。呪文だけ唱えろって。それが傑作。この話を聞いた人は、夜の十二時までに『三人祭、7人祭、10人祭、みっつ掛けると何人祭?』っていってもらって、正しい答えをいわないと呪われる』んだって。ぜってぇ嘘でしょ?」
辻は爆笑した。
「うそだー」
「でね、その呪いの内容がまた嘘くさいの。
『それをしなかったものは、十二時になると妖怪の世界に飛ばされる』って、どーよ、これ?」
「どーもこーもですー」
あははは、と二人で声を合わせて笑う。
「でもま、いちおうやっとこっか?」
「そうですか?」
「うん、まあせっかく教えてくれた加護の顔を立てて。行くよ」
- 48 名前:あなたの知らない世界 投稿日:2001年07月03日(火)21時37分51秒
- 飯田は半分笑いながらとなえた。
「三人祭、7人祭、10人祭、みっつ掛けると何人祭?」
辻は元気よく答える。
「20人祭りぃ〜」
ベッドサイドに置かれていた保田のデジタル時計がピピ、と鳴った。
十二時。
「あれ、間違えちゃった……」
辻はてへへと笑う。
ふと、飯田の長い髪が視線の端で動いた。
――あれ、飯田さん、また髪の毛黒くしたんだっけ……。それに、なんでふわって……。今、ふわって……。
辻は顔を上げた。
いつもの飯田の顔。
こぼれ落ちそうにまっ赤な目が、にっこりと細められた。
おわり
- 49 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時16分55秒
- ヤグチは走っていた。遅刻しそうだったからだ。
今日はオールナイトニッポンの日。
何故か、今日の仕事はそれしかなかった。
不思議な日もあるものだ。でも深くは考えなかった。
おかげで午前中はゆっくり体を休める事ができた。
・・・・・休みすぎた。昼寝してたら、寝すぎて今遅刻しそうだ。
- 50 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時19分08秒
- 「ギリギリセーフ!」
音をたててドアを開けた。
スタッフに軽くたしなめられながら、今夜の打ち合わせを始めた。
と、その途中。
「あ、そうそう。変なFAXが届いてたんだけど・・・・・・」
「え?どんなのですか?」
「えっと、あ、これ」
「えっと、ナニナニ。『ようこそ!よっすぃ〜教へ!』」
紙面には手書きの文字が印刷されていた。
「・・・・・・何これ」
「そんなの僕がわかるわけないでしょ」
「いやだからってヤグチに言われても・・・」
「わかんないんですか?」
「わかるわけないじゃないですか。謎FAXって事にしておきましょう」
それで話は終わった。
なんなんだろう。妙に気になった。
しかしそれ以上考えても答えがでるはずはない。
ヤグチは打ち合わせに集中した。
- 51 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時19分49秒
- 無事ラジオの仕事が終わって、ヤグチは家に帰った。
FAXの事が気になっていた。
お風呂に入っていても、ご飯を食べていても。
何故か気になっていた。何かが、ひっかかっていた。
ベッドに入って考えた。でもそれが何かはわからなかった。
暗闇は、何もヤグチに教えてくれなかった。
- 52 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時20分38秒
- 目を覚ますと、時計は八時を指していた。
あのFAXのことは、まだ気になってはいたが昨日ほどではなくなっていた。
今日は遅刻しないですみそうだな。ヤグチは思った。
着替えて、洗顔等をすませ、軽い朝食をとって家を出た。
足取りは軽かった。
「おはよう〜」
楽屋のドアを開けた。
梨華ちゃん、かおり、圭ちゃんがいた。
何か違和感を感じた。
「おはよう。矢口」
「おはよございます、矢口さん」
「おっは、矢口」
口調は普通だ。いつもとなんら変わりはない。
でも、どこかが違っている。
突然後ろのドアが開いた。
「うわ、危ないよ、やぐっつぁん。そんなとこにいちゃ」
「あ、ごめん」
「どしたの。ごっちん」
「あ、やぐっつぁんにドアをぶつけるとこだった」
「気をつけなよ」
「は〜い」
それから次々にメンバーが入ってきた。
ごっちん、なっち、辻、加護。
気づいた。よっすぃ〜がいない。いつもなら早く来ているのに。
これが違和感の正体かな。いや違う。
「よっすぃ〜まだ来てないね」
何気に口に出した言葉に、みんなは反応した。
「そういえば、矢口はまだだっけ?」
「そうみたいですね」
「じゃあ、やっとく?」
何の話かわからなかった。何がまだなんだろう。
- 53 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時21分18秒
- そこで気づいた。
みんな、一様にある部分が変化しているんだ。
それは、首。そして、頬袋。
みんな首がちょっと長くなり、頬袋がちょっと出ていた。
それは、私がよく知っている人の特徴だ。
「おはよう」
私のよく知っている人が姿をあらわした。
「あ、矢口さん、昨日FAX読んでくれました?」
「あ、あれよっすぃ〜だったの?」
ヤグチは何か得体の知れない恐怖を感じていた。
心なしか声が上ずっているように思う。
「そうです」
満面の笑みでよっすぃ〜が答えた。その笑顔が何故か怖かった。
気づくと、みんながヤグチを囲んで見つめていた。
- 54 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時22分12秒
- 「矢口もよっすぃ〜になろ」
「かおり何言ってるの」
「楽しいですよ」
「梨華ちゃん・・・・」
みんな目がおかしい。
いつの間にかヤグチは壁際に追い詰められていた。
「ねぇ、冗談なんでしょ?ねぇ、よっすぃ〜」
「冗談?ひどいなぁ。そんなに私の事キライですか」
「そうじゃなくてさ、わかんないよ、ヤグチには。何でみんなよっすぃ〜みたいになってんの?何で?」
言ってる間にも、ヤグチとみんなとの距離は縮まっていく。
「何ででも」
一歩。
「よっすぃ〜が好きだから」
また一歩。
「よっすぃ〜と一緒がいいから」
さらに一歩。
「みんな、みんなどうしちゃったの」
「どうもしないよ」
ごっちんの息がかかる。
「おかしいのは矢口だよ」
なっちがヤグチの肩に手を置く。
反射的に目を閉じてうずくまった。
何かが私の両頬をつかみ、無理やり顔をあげさせた。
それはよっすぃ〜の両手だった。
どんどんよっすぃ〜が近づいてくる。
「やめて!よっすぃ〜!」
- 55 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時23分03秒
- 目が覚めた。
ヤグチは両手を虚空に突き出していた。
体中汗だらけになっていた。
夢。そう、夢だったのだ。あれは。
よかった。心の底からそう思った。
- 56 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時23分45秒
- とりあえず顔を洗おう。ヤグチは洗面所に向かった。
目がシパシパして視界がぼやけている。
冷たい水で顔を洗う。心にまで染み渡るようで、気持ちよかった。
と、携帯が鳴った。メール着信だ。
顔をタオルで拭きながら携帯をとりにいった。
- 57 名前:ようこそ!よっすぃ〜教へ! 投稿日:2001年07月03日(火)23時24分46秒
- とりあえず携帯を持って洗面所に戻った。タオルを戻すためだ。
タオルを戻して、メールを見た。よっすぃ〜からだった。
「おはようございます^^どんな感じですか?」
いまいち内容がわからなかった。
返信しようとした時、ヤグチは信じられないモノを見た。
鏡の中に、ヤグチが居た。
ただし、首がちょっと長くなり、頬袋がすこし出ているヤグチだった。
「・・・・ウソ」
思わずつぶやいた。
またメールが着た。よっすぃ〜からだった。
「ようこそ!よっすぃ〜教へ!」
- 58 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時34分54秒
- 「だってみんな、じまんするんだもん。」
つじはばんぐみのなかでないてしまいました。
みんなわらってくれたのでよかったとおもいました。
でも、ばんぐみがおわったあと、やぐちさんにつくえのしたによびだされていわれました。
「つじ!おいしいとこぜんぶもっていくんじゃね〜!」
いつもやさしいやぐちさんとちがってすごくこわかったです。
- 59 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時35分52秒
- つぎのひ、こんどは、ほんばんちゅうにまちがえてしまいました。
なきそうになったけど、やぐちさんにまたおこられるとおもい、がまんしてわらいました。すたっふのひとがわらってくれたのでよかったとおもいました。
でもこんどは、やすださんにかいだんのおどりばによびだされました。
「つじ!まちがったのにわらってごまかすんじゃない!」
いつもこわいかおのやすださんは、いつもどおりこわかったです。
- 60 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時36分58秒
- そのつぎのひ、こんどはまちがえなかったです。
ないたり、わらったりしないようにきをつけてじっとしてました。
ばんぐみもなにもおこらずにぶじにおわってよかったとおもいました。
それなのにこんどは、ごとうさんにおといれによびだされました。
「つじ!きゃらがかぶってんだよ!」
いつもねむそうなごとうさんは、やっぱりねむそうだったけどこわかったです。
- 61 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時37分42秒
- つじは、どうしていいかわからなくなり、いいださんにききにいきました。
いいださんは、こうしんちゅうで、つじのこえがきこえないみたいでした。
あきらめておうちにかえりました。
- 62 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時38分36秒
- (あしたはどうしよう。)
それをかんがえると、ぜんぜんねむれません。
しばらくごろごろしていましたがあきらめて、おとうさんといっしょにてれびをみました。
(あっ、これだったらみんなおこらない。)
てれびでいいことをやっていたので、あしたはこれをやろうとおもいました。
あしたのよういをしてふとんにはいりました。こんどはねむれそうです。
(はやくあしたがこないかな。)
- 63 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時39分11秒
- (あしたはどうしよう。)
それをかんがえると、ぜんぜんねむれません。
しばらくごろごろしていましたがあきらめて、おとうさんといっしょにてれびをみました。
(あっ、これだったらみんなおこらない。)
てれびでいいことをやっていたので、あしたはこれをやろうとおもいました。
あしたのよういをしてふとんにはいりました。こんどはねむれそうです。
(はやくあしたがこないかな。)
(あっ、まちがえちゃった!)
きょうはさいしょからまちがえてしまいました。
でもだいじょうぶ。
つじは、ぽしぇっとから、ほうちょうをとりだしました。
みんなおどろいています。
- 64 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時42分06秒
- (えーと……)
「たいへんもーしわけない。このうえは、はらかっさばいておわびします。」
(やった、いえた!!)
つじはおもいっきり、おなかにほうちょうをさしました。
すごくいたいです。なきそうです。でもがまんしました。
しばらくするとこんどは、だんだんきもちがよくなってきました。
- 65 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時43分57秒
- (……ん?……)
かおのまえでだれかがはなしています。
めをあけると、いいださんがないています。
(いいださん、ほんばんちゅうにないているとやぐちさんにおこられますよ……)
だんだんいいださんのかおがぼんやりしてきました。
ぜんぶみえなくなるとこんどは、とおくからなにかがやってきます。
(……なんだろう?)
- 66 名前:「ののの選択」 投稿日:2001年07月03日(火)23時45分51秒
「……あげぱん……」
おしまい
- 67 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時14分36秒
- 若い男は扉をノックした。
予想通り返事はない。
「お願いします。」
背中が丸まった老女に言った。このマンションの管理をしている人間だ。
老女は震えながら「は、はい。」とうなずき、ポケットから鍵を取り出した。
開けた途端、部屋の中から異様な匂いが鼻を襲う。老女は慣れていないので、うめき声とともに顔をしかめる。
若い男は老女を自分の部屋に戻るように促した。
老女は興味も少なからずあっただろうが異常な匂いがそんな興味を奪ったようで口を押さえて逃げ出す。
慣れている男の方はこの匂いが何なのか知っていた。それにしてもこれは異常すぎる。
「入りますよ。」
口元にハンカチを押しつけながら、後ろにいる定年間近の上司に確認すると、表情一つ変えずにうなずいた。
- 68 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時19分48秒
- 部屋に入ると一人の少女の背中が見えた。
髪が長い。ベッドに向かって何かをしている。
しかし、最初に目を釘付けにしたのはその部屋の光景で少女の姿ではなかった。
この少女は敵だ。こちらの存在に気付くと逃げ出すかもしれない。
襲ってくるかもしれない。少女の行動に注目すべきである。
しかし、周りの光景はそんな常識を失わさせていた。
「なんだよ、これは…。」
若いとはいえもう29歳。それなりの場数は踏んでいるつもりだった。
そんな人間でもってしても、失神しそうになり、少しでも精気を戻すため首を振った。
「あなた…たちは…?」
少女は二人の存在に気付き、振り返る。年は15と聞いている。
中途半端な妖艶さとまだまだ残るあどけなさを兼ねそろえた美人だ。
そして、一目すればその表情には大事なものを喪失している人間であることは遼然だった。
「こういう者です。」
若い男はスーツの裏ポケットから警察手帳を取り出した。
「刑事…さん?」
「はい。お話を伺いたいので署まで来ていただけませんか?」
ここで息をしていると変になる。男――若い刑事は早く出たかった。
「ここから…離れたくない…。」
少女は耗弱しきった顔から静かに、ゆっくりと拒絶した。胸には手紙大の何かを抱えていた。
「しかし…。」
「絶対、いや…。出たら私…どうにかなりそうだから…。」
一言一言を少女は精一杯に呟く。若い刑事は少女の矛盾に眩暈がした。
この少女は異常だ。
こんな部屋の中で、こんな匂いに埋もれているほうがどうにかなるに決まっている。
- 69 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時21分20秒
- 老刑事が後ろから肩を叩く。
「まあ、いいじゃないか。しばらくここで話を聞こうか。いいかな?」
数十年の重みの皺を刻んでいる顔からは平常心の言葉が出る。
少女は無抵抗の子供のように閉口したままうなずいた。
若い刑事は口を歪ませて抵抗するも、上司である老刑事に逆らえるはずはない。
「わかりました。」とやむなく答えた。
「お茶…飲みます?」
少女は二人ににこりと微笑みながら平坦な口調で言った。
「じゃあ。」と言い座布団に座る老刑事。若い刑事はうんざりする。
「逮捕しなくていいんですか?」
台所へ向かう少女を見てから、若い刑事は横に座る老刑事に囁いた。
「もし、逃げられたらどうするんですか?」
台所は玄関の隣りにある。逃げようと思えば逃げられる。
「あの子は逃げないよ。そんな意志があるのならとっくに抵抗してるよ。」
「しかし…。」
本当のことを言うと、早くこの場を離れたいという一心だった。
ここにいると現世を捨てたような錯覚を覚える。
それにさっき食べた蕎麦が逆流しそうで堪えるのに必死だった。
「ふふふ、お客さん来てるんだー。ちょっと待ってね…」
台所から少女の声が洩れてきた。ここには刑事二人以外には少女一人のはずだ。
少女が”何”に言っているのか、想像はついた。
そして体中を走る戦慄の波動。
「どうぞ、おいしいですよ…。」
少女はお茶の入った客用の湯飲茶碗に茶請を添えて、二人の刑事の前に置く。
「ありがとう。」
躊躇うことなく老刑事は湯飲に口をつける。
一瞬「毒が入っているのでは?」と警戒した若い刑事は己の度胸のなさが悔しくもあった。
- 70 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時24分56秒
- 若い刑事が少女を座るように促すと、少女は素直に従った。
その際、ベッドにある”物”に微笑みかける。
あまりにも自然な動作だったため、思わずその視線の方向に若い刑事は目を向けてしまう。
「あそこだけは見るべきじゃない。」と一度見てしまってから固く誓ったはずなのに。
とうとう胃の中のものが逆流してしまう。
「どうした?」
老刑事は横に向かって心配そうに聞くと、「ちょっとすみません。」と言って、立ち上がり、トイレの場所を聞き、走り出した。
「どうしたんですか?あの若い人…。」
不思議そうに尋ねる少女に「さあ?」と老刑事は柔らかな笑みを浮かべる。
まるで娘を見るような柔和な眼差しは少女の心を少しだけ開かせていた。
その目そのままに老刑事は声をかける。
「一人暮らしって大変でしょ?この前始めたんだよね。」
「よく知ってますね。大変ですよ。トイレ掃除が一番嫌ですねー。」
「寂しいでしょ?」
「いや、それはないですよ。だって一人じゃな―――」
「うわああ!!!」
台所から若い刑事の叫び声とともに転ぶ音、体の一部をぶつける音が少女の口を遮った。
少女は漸うに問う。
「何なんですか?さっきから何か慌しい刑事さんですね…。」
顔を少ししかめながらも口ぶりはあいかわらず抑揚がない。自分で出したお茶を静かに飲む。
「まぁね。ところでもしかして、お手洗いにも…あるの?」
老刑事は枕元の”物”を指差しながら聞くと、少女は振り向き、そして優しく微笑む。
「はい。だってそうしないとトイレに入った時に離れ離れになっちゃうじゃないですかぁー。」
「離れ離れ…ねぇ…。」
強弱なく喋る少女を老刑事はただ暗愁たる思いで見つめる。
「どうも…失礼しました。」
困憊な面持ちの若い刑事が戻ってきた。抵抗からか少女の方を睨む。
しかし、その眼光は少女にはすり抜ける。
「あんまり驚かさないでくださいよぉ…。」
なんて薄い表情の中から若い刑事に笑顔を見せた。
- 71 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時30分13秒
- 「どこまで、話しました?」
若い刑事は捉えようもない恐怖を、「これは苛立ちなんだ」と思い変えながら老刑事の隣りに座る。
「いや、君が戻って来るまで雑談しとった。」
「雑談って…。」
若い刑事は呆れる。
「あのぉ〜…。」
少女は二人のやりとりを聞きながら口を開く。
「刑事さんってことは…やっぱり私、悪いこと…したんでしょうか?」
罪悪の欠片もない無邪気な戸惑いを見せる。
「はぁ?」
眉をひそめて若い刑事は少女を見た。
「君はこの状況で一体どう…。」
この子は非常識ということはわかっている。もしかしたら精神異常者かもしれない。
だからといって、許されるべきではない。是か非か問うものですらない。
これは絶対的な悪なんだ。拳を震わせ、睨んだ。
「まあまあ、落ち着いて。」
老刑事は怒り心頭の若い刑事を諌める。
「そんなこと言ったって、変すぎますよ!!」
「一体…いくつに分けたんだい?」
一人気持ちが昂ぶっている若い刑事にきょとんと顔を据えている少女に向かって、老刑事は訊いた。
「分けたって…?」
「あれとか。」
何のことかわからなそうに首をかしげる少女に向かって、さっきと同じ方向を指差す。
すると、今度は振り返らずも何を指しているのかわかったようだ。
「ああ。え〜っと…。」
少女は鏡の下、台所、トイレ、枕元…と顔を向けながら数える。
その先にはちょっと前まで一つだった”物”があった。
「6つ…かな?」
「どうやって分けたの?」
「え〜っと、のこぎり。最初包丁だったんだけど、結構硬いんだよね。わざわざ買ったんだ。」
「どこでしたの?」
「この部屋。家の外でやると持ってくるのが面倒くさいし。」
三人を囲むテーブルに向かって指さす。若い刑事はこの部屋がドス黒い赤色で埋もれていく様を幻想した。
- 72 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時33分50秒
- 「なんでそんなことしたの?」
「もちろん、ずっと一緒にいたかった。それにどこにいたって一緒にいてほしかったんだもん。あ、そうそう、携帯用。だから全部で7つか」
と言って、近くにあったブランド物のバッグから取り出した”物”。
「うわっ!」
頓狂声を出したのはこれで何度目だろうか。
「静かにしてくださいよー。」なんて言いたげに口を歪ませる少女に若い刑事は目を逸らす。
この部屋が少女の欲望の果てなんだろうか?
若い刑事の捉える残酷の定義を超えていた。
その先に少女は彼女にとっての崇高な愛の形を見ていたのだろうか?
「だって、ここには市井ちゃんがいっぱいいるんだもん。」
妖しい笑顔。えくぼを作り、あどけなく眼を瞠った。
- 73 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時38分15秒
- 少女の手の平には人の指。
「薬指なんだよ。しかも左。ホラ指輪付けたんだ。綺麗でしょ?」
台所には左腕。
「市井ちゃんって左利きなんだよねー。はさみとかもこっちの手を使うんだよ。ちょっと使いにくそうなんだよねー。」
テレビの上には右腕。
「『母さん』なんて言われているけど、爪長くって家事向きじゃないんだよね。今度切ってあげよっかなー。」
トイレには左足。
「右足と左足とじゃ少し太さが違うんだよねー。こっちの方が細いんだ。」
風呂場には右足。
「でも私的にはこっちの足の方が好きだなー。だってすっごく綺麗なんだもん。」
鏡の下には胴体。
「ちょっと離れてるけど綺麗な胸とか、くびれた腰とか私、憧れているんだ。」
そして。
枕元には生首。
「いっつもね、市井ちゃんが近くにいるんだよね。カッコいいでしょ。見るだけで、もうドッキドキ!!ね?市井ちゃん!」
- 74 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時39分10秒
- 生首に向かって少女は微笑んだ。
若い刑事はこの少女から感じる圧倒的な恐怖感を憎悪に昇華させる。
もし、銃を持っていたのなら、この少女をためらうことなく撃ち抜いていただろう。
この世界にいてはいけない生物だと直感しているからだ。
若い刑事は憎悪に身を任せて立ち上がった。
すると、老刑事はその腕を押さえ、座るようにと鋭い目で言う。若い刑事の心を察しているようだ。
これが定年間近の人間の放つ光か?と思うくらい強い目だった。なす術なく若い刑事は腰を落とす。
老刑事は鬱気を抱えながら口を開いた。
「写真を持っているだけじゃ駄目だったのかな?」
ずっと少女が抱えていた写真立て。
その中には、目の前にいる少女と枕元にいる少女が体を寄せ合いながら笑っている写真が入っていた。
邪気が何もない純粋無垢な二人。多分、ほんの数週間前だろう。
この少女にとってこの写真の中の二人は理想の愛の形ではなかったのだろうか?
少女は「うん。」とうなずく。
「だって、所詮は写真だもん。本物はどっか私の知らないところにいるんだもん。だからいや。」
「今市井さんの傍にずっと居られて幸せ?」
「うん!」
「本当に?」
「うん!!」
「違うね。」
即座に老刑事はそう言った。
- 75 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時41分49秒
- 「え?」
老刑事は今までずっと、少女に対しては実の娘のように優しげに見つめていた目を翻す。
刑事として培ってきた鋭い眼光。そのギャップは少女の笑顔を不自然に壊した。
「君はね、まだ市井さんの全てを手には入れていないんだ。」
重そうに腰を上げる。
トイレから、台所から、テレビの上から、鏡の下から、風呂場から、枕元から、
そして少女の手のひらからパーツを持ってきて、パズルのように目の前のテーブルの上に置く。
「ちょっと…止めてくださいよ…。」
少女は狼狽を含んだ低いトーンでそう言ったが、若い刑事もそれには同意だった。
近くでみると、あまりの生々しさにもう何も残っていないはずの胃からまた何かをもどしそうになる。
「何かが足りないんだ。」
「…?」
「そして君も気付いているはずだ。」
集めて一つになった腐臭体。老刑事は意外に綺麗だと思った。若い刑事はテーブル上の”者”を見ることすらできない。
「君は失ったものを知っている。」
「やめ…てください。」
「そして、二度と戻らないことも知っている。」
「これ以上…。」
「だから、君は今そんなつらそうな顔をしてるんだ。」
「ダ…メ…。」
「君は市井さんの何を手に入れていない?」
「…」
「何が足りない?」
- 76 名前:何かが足りない 投稿日:2001年07月06日(金)01時47分27秒
- 静寂。
場を包むのは目の前のテーブルからの異臭のみ。
少女は重々しそうに口を開いた。
「…心…。」
老刑事はほっとしたようにうなずいた。
まるで、「やはり君もまだ人間だったんだね。」とでも言いたげに。
「そう、君は人の最も大切なところを手に入れていなかったんだよ。」
少女は泣き崩れた。そして、艶かしく生首を抱きしめる。
「こんなにいつもそばにいるのに…どうして、市井ちゃんの心はここにはないの!?何で私を見つめてくれないの!?市井ちゃん、私をかわいいって言ってよ。頭を撫でてよ!!」
その泣き声は残酷に二人の耳を貫いた。
この少女は後悔をしないだろう。
しばらく経ったら「それでも体はずっと一緒だね。」と喜ぶだろう。
たとえ、心が欠如していても少女の崇高な愛を受け入れられる唯一の”者”だからだ。
少女は涙で埋もれたその顔を生首に近づけ、唇を重ねた。
気のせいだろうか。
生首は少し笑っているような気がした。
(終)
- 77 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時18分14秒
- 「はい、あ〜ん」
「あ〜ん」
「おいしい?」
「うん。」
「なんだ〜新婚旅行じゃないんだぞ〜」
矢口のヤジが飛ぶ。
「だって〜ひとみちゃんとチャーミーはアツアツなんですもの〜。」
負けじと石川が応戦する。
娘。たちはシャッフルユニットのキャンペーン前に合宿と称して、一泊二日の旅行に行く
ことになっていた。場所は映画「ピンチランナー」で泊まったホテル。何でも「初心に返
れ」と言う事務所のありがたい考えらしい。
「吉澤は男前だから。」
飯田が言う。
「そうそう、おっとこまえ〜」
「「「「おっとこまえ」」」」
一斉にコールが上がる。
吉澤は、髪をかき上げ、
「いや〜それほどでも。」
と、キザに言い放つ。
バスの中は歓声であふれた。
- 78 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時19分56秒
- 「よっすぃ、もっと食え〜」
矢口が吉澤に絡んでいる。
ホテルへ到着したときにはずいぶん遅くなっていた。
そこで夕食を兼ねたミーティングと呼ばれる宴会がさっそく始まった。
「矢口さん、未成年なんだから……」
「うるさーい、かたいこと言うなよ〜」
完全に親父モードに入っている。
「ほら、肉食え肉!!好きだろ〜矢口のもやる。」
(肉嫌いなの知ってるくせに……)
更に肉をのせようとする矢口に
「今ダイエットしてるんで、これくらいで。」
「なんだ〜こんなにスマートなのに、それはもしかして矢口に対するいやみか〜」
(矢口さんそれはきついです。)
マネージャー、メンバー、ファンにまでことあるごとにやせろと言われている吉澤にとっ
て矢口の言葉の方がいやみに思えた。
「だいたい偉そうに言っても入った頃は、寂しいから一緒に寝てくださいなんて枕もって
部屋にきてたくせに〜」
「矢口さんへんなこといわないでくだいよ〜そんなことしてません。」
「なにーオイラがうそついてるっていうのか〜だいたいよっすぃは……」
酔っぱらいの話にまともに対応しても無駄だと思った吉澤は、視線がはずれた少しの隙を
ついて、席を離れた。
自分の席に戻る途中、最年少ふたりの席が目にとまる。
「あれ、ののもあいぼんもずいぶんおとなしいね。食事おいしくない?」
こんな席だといつも以上にうるさいふたりが今日はずいぶん静かだ。
「おいしいです。なあ、のの。」
「へい、おいしいれす。」
緊張した口調でふたりが返事を返す。何か違和感を感じて隣の石川に
「ねえ、梨華ちゃん、あのふたりどうかしたの?」
そっと耳元でささやく
「さあ……。」
石川は耳まで赤く染めてうつむいてしまった。
(あれ、梨華ちゃんも変だな……)
「え〜と、何か心配事でも……」
詳しく石川に聞こうとしたが、吉澤がいないことに気がついた矢口に呼ばれて、その返事
を聞くことはできなかった。
- 79 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時21分36秒
- 「どっこいしょっ」
ついに酔いつぶれてしまった矢口を吉澤が部屋まで運んだ。
「……よっすぃどこにも行くなよ……」
ベッドのうえの矢口はまるで母にすがる幼児のように吉澤の手を離そうとしない。
「よっすぃと離れるのがホントにいやなんだね。」
安倍がポツンとつぶやく
(シャッフルで離れたぐらいで大げさだな。)
そう思いはしたが、矢口の寝顔を見ていると愛しさがつのる。
そっと髪をなでていると安倍がふいに声をかける。
「よっすぃ……」
吉澤がはっとして顔を上げると
チュ
突然の出来事に硬直する吉澤
その様子を見て少し笑いながら安倍が言う
「ねえ、なっちがずっと好きだったの知ってた?」
ぶんぶん首を横に振る。
安倍は矢口の手を優しくはずしながら
「気にしなくていいから、よっすぃが誰を好きか知ってるし……ただなっちの気持ちを知
ってほしかっただけ。」
「……」
「ほら、行ってあげな。きっと待ってるから。」
吉澤の背中をポンと叩くとにっこりと微笑む。
「じゃあ矢口さんのことお願いします。」
そう言ってドアを閉めるとき安倍の背中がかすかにふるえている気がした。
- 80 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時23分06秒
- (安倍さんがあたしのこと……)
吉澤は嬉しくもあったが、それ以上に戸惑っていた。
(今までそんな気配なんてなかったのに……それともあたしが気がついていなかっただ
けなんだろうか。)
ラウンジのソファーに深く腰を下ろししばらく自分の思考のなかに浸っていた。
「吉澤。」
突然の呼びかけに顔を上げるとそこには、風呂に入ったんであろう髪をアップにした飯田
が自分をみつめていた。
「ねえ、ちょっと時間ある?」
「あ、だいじょうぶですけど。」
それを聞いた飯田はちょっと考えて
「ここじゃなんだし、外出ようか。」
「は、はい。」
立ち上がった吉澤は、さっさと出口に向かう飯田の後を追う。
外には涼しい風が吹いていた。無言で歩き続ける飯田の後をついていきながら、吉澤は
そのうなじを見つめていた。
(なんかすごくいろっぺーなー。)
ふいに飯田が立ち止まる。
「ねえ、吉澤はかおりのこと好き?」
「えっ。」
吉澤は聞き返す。
「今なんて……」
飯田は振り返るとその吸い込まれそうに大きな瞳を輝かせてもう一度聞いた。
「だから、かおりのこと好き?」
「……」
あまりに突然のことで絶句していると
「かおりは吉澤のことが好き!」
そう言い抱きついたかと思うとくちびるを……
(えー、なに、どうして、どうなってるの〜)
パニックに陥る吉澤。それを知ってか知らずか、飯田の舌がくちびるを割って入ってくる。
抵抗できずにいると今度は吉澤の舌を探ってきた。
(あっ……)
その刺激に吉澤の意識がとぶ。
そのままどれくらいの時間がたったのであろう。
がさっ
その音にわれに返る吉澤。
(梨華ちゃん!!)
両手で飯田を押し返すと、あわてて振り返る。
そこには口を押さえ目に涙を浮かべた……
「ごっちん……」
吉澤は安堵とともに後藤の様子に不思議な気持ちを抱いた。
「ばかやろー」
後藤はそう一言叫ぶとホテルに向かって駈けていってしまった。
(なんだぁ〜ごっちんにどうして怒鳴られなきゃいけないんだ。)
「いきなよ。」
その声に振り返る。そこにはにらむようにこちらを見つめる飯田の顔があった。
「いきなよ、かおりには本当はわかってたの。吉澤が誰を愛しているか。だから追いかけ
てあげて。」
そう言ったかと思うと飯田は後藤とは反対のほうへ駈けていってしまった。
残された吉澤は呆然とその場に立ちつくしていた。
- 81 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時24分29秒
- ホテルへと歩きながら吉澤は考えていた。
(安倍さん、飯田さん、今思えば矢口さんもいつもと違っていたし……)
それにしても不可解なのは後藤の態度だった。
(ごっちんは、あたしと梨華ちゃんのこと知ってるんだし、あれくらいのことで動揺する
性格じゃないはずなのに……)
そんなことを考えながら自分の部屋へ戻ろうとしていた。
「吉澤!」
その声に振り向いたとたん
ばちん!
「いってー……なにするんすかー」
そこには腰に手を当て仁王立ちになっている保田の姿があった。
「いったいあたしがなにを……」
そこまで言って吉澤は息をのんだ。保田の目に涙を見つけたからだ。
「いま泣きながら後藤が走っていったよ。なにがあったかは聞かない、でも……」
保田は、そこで一呼吸おいて、自分を落ち着けると続けた。
「もう一緒にいられる時間は少ないんだから、きちんと話し合った方がいい。」
驚いた吉澤は聞き返す。
「えっ、それってもしかして。」
「後藤部屋にいると思うから、行ってあげて。」
そこまで言うと保田は吉澤の肩を二度たたき、立ち去った。まっすぐ前を向き涙を流しな
がら。
- 82 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時25分59秒
- 後藤の部屋の前で吉澤は悩んでいた。ここに来るまでずいぶん考えていたのだが、結論は
出なかった。
(うわさにはあったけど、まさか本当だったなんて……ずっと一緒にいたのにそんなこと
ごっちんから一言も言われたことはなかった。)
(反対するにしても本人の意思だったらしかたないんだよね。)
何度考えても堂々巡りだった。
がちゃ
急にドアが開いて後藤が顔を出した。
「や、やあ。元気」
気持ちの整理がつかないままの吉澤は間抜けな挨拶をしてしまう。
目を丸くしていた後藤だったが、それを聞くと思わず吹き出してしまった
ひとしきり笑うと一回ため息をつき
「どうぞ……」
吉澤を部屋に招き入れる。
- 83 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時29分14秒
- テーブルを挟みソファーに腰掛けたふたりが一言も話さないまま時間だけが過ぎていった。
最初に言葉をかけたのは吉澤だった。
「ごっちん保田さんから聞いたんだけど……」
後藤の体がピクリと反応する。顔はまだ伏せたままだ。
ためらいがちに吉澤は言葉を続ける。
「あたしが言うべきことなのかわからないんだけど……」
「……なんでなの。」
「えっ?」
「なんでやめるの。」
吉澤は後藤の言っていることが理解できなかった。
「やめるってあたしが?」
「とぼけないでよ!みんなが話してるの聞いたんだから!」
そう言いきると、後藤は吉澤をにらみつける。
(何であたしがやめることになってるの。ごっちんがソロ活動に専念するから娘。を卒業
するって話じゃないの……)
混乱してくる吉澤。
「ずっと娘。でやっていくって。プッチだって圭ちゃんと三人でがんばるって言ってたじ
ゃない!」
「……。」
「プッチの合宿の時だって、これから先いつまでも一緒だって……だからあたし……」
(プッチの合宿……)
「ごっちん、ちょっと待って。なにそれ」
「いつもだ、いつもあたし一人知らないで、勝手に決める。事務所も親も……」
(おかしい。何か間違ってる。ここに来てからどこかずれてきている。)
- 84 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時30分24秒
- 吉澤の体の中で警報が鳴り出す。後藤はうつむいてなにごとかつぶやいている。
(ここから、離れないと……)
そっと腰をうかせ、ゆっくりドアの方へ移動する。
ゆっくり。
ゆっくり。
(よし!いまだ!)駆けだそうと立ち上がった瞬間。
「うごかないで!!」
突然のするどい声に吉澤の動きが止まる。視線を移すといつの間に取り出したのか後藤の
手には果物ナイフが握られていた。
「ごっちん……」
よほど強く握りしめているのかナイフの先が小刻みにふるえている。
「あぶないから、それを渡して。」
手を出そうとすると、大きく首を振る。
「だめ。これを渡すと出て行っちゃう。」
「そんなことしないから……」
それを聞くと後藤は寂しそうに笑いながら言った。
「みんな知ってるの。あたしがなにを頼んでも、泣こうと、一度決めたことは絶対やるっ
て。そしてもう二度と会えないんだって。」
その顔は狂気と言うよりも悲しみにあふれていた。
- 85 名前:オトコマエ 投稿日:2001年07月07日(土)03時32分38秒
- とても説得できる状態ではないと吉澤は判断した。
(だめだ、とりあえずここから逃げなければ……でも出口にはごっちんがいるし)
(窓から……!)
(ここは二階だし飛び降りればなんとかなる!)
吉澤は、素早く窓際へ駆け寄るとカーテンを一気に開いた。
後ろから走り寄る気配がする
窓の縁に手をかけ一気にあけようとしたそのとき……
「えっ」
吉澤の動きが止まる。つぎの瞬間。
ドンッ!!
「うっ」
背中に鋭い痛みが走り、窓に掛けた手から力が抜ける。
「どこにも行かないで……」
耳元でごっちんがささやく。
気が遠くなりそうな痛みのなか、むりやりまぶたをこじあける。
そこには……
窓ガラスに映るふたり。
ごっちんの嬉しそうな顔と……
さわやかに笑うあの人の顔。
あたしも憧れていた。
オトコマエの……
(fin)
- 86 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時47分03秒
- 「あ〜、だる〜い。仕事したくない〜」
机の上に上半身を預け、いつものように無表情でごっちんがぼやいていた。
ソロだのドラマだの、私とは比べ物にならないほど忙しいのだから仕方ない。
そのせいかダイバーなどの聞いている人が比較的少ないものでは気を抜きがちだ。
「あんたねぇ、贅沢言ってんじゃないの。人気があるうちが花よ」
「保田さん実感こもってますねぇ」
「あんたといい、石川といい、一言多いのよ新メンは!」
「そんなこと言われても…」
「だいたいね、あんた達プロとしての自覚が…」
またお説教が始まった。
うんざり顔の私の後ろでぼそりと疲れた声がした。
「後藤が二人いたら便利なのに」
- 87 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時47分50秒
- その話をして一月程たったころ。
私の前には最近仕事が減ったと嬉しそうに笑うごっちんがいた。
興奮しているのか瞳の端が血走って赤い。
見せられた手帳は確かにスケジュールが半分くらい減っている。
ごっちんの仕事は、まったく減っていない筈なのに。
手帳から顔を上げると、ごっちんがピスタチオをころころと
手からこぼしながら食べていた。
にこにこ
ころころ
殻を剥く指先が、精神異常者のように震えていた。
- 88 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時48分34秒
- 私はその時、余りの忙しさに精神に異常をきたしてしまったのだと思った。
そうとしか思えなかった。
今思えばごっちんは自分の身におきている何かに怯えていたのかもしれない。
それとも、その時点ですでに気が狂れてしまっていたのだろうか?
- 89 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時50分51秒
- しばらくたったある夜、ごっちんから電話がかかってきた。
手帳を昨日の楽屋に忘れたから翌日のスケジュールを教えて欲しいと
受話器ごしにのんびり笑っていた。
それがごっちんと喋る最後の機会だなんて、到底予測なんかできない。
なのに私は、絶対に教えてはいけない事を教えてしまったような
言いようのない不安に包まれていた。
- 90 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時51分55秒
- 嫌な予感は的中した。
翌日、私は朝からずっと胸騒ぎがして楽屋を出たり入ったりを繰り返していた。
辻と加護のからかいも、その他のメンバーの怪訝な目も、私には気にならなかった。
何度目かの扉をくぐったところで廊下の向こうから歩いて来るごっちんを見つけた。
安堵感を覚える暇もなく、私の目はごっちんの横の角から走って来る人物に
釘づけになった。
だってその人も後藤真希だったから。
ニタニタと見る人の背筋を凍らせるような笑みを浮かべて走っている。
もう一人の、何も知らずのんきに歩いている後藤真希に向かって。
- 91 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時53分12秒
- 「危ないっ!!」
思考よりはやく口が動いた。
そうだ危ない。このままだとぶつかってしまうじゃないか。
同じ人間が二人いるという異常な光景から考えるとなんともバカらしい言葉だ。
注意のかいもなく二人の後藤真希はぶつかって、
消えた。
二人がぶつかったであろう場所には何一つ落ちていない。
持っていたバッグも、かけていたサングラスも、
すべて跡形もなく消え去った。
ごっちんがそこにいたと証明するものはすべて消えたのだ。
まるでついさっきいた後藤真希が幻覚だとでも言うように。
不意に耳の奥でジーっと蝉の鳴き声のような耳鳴りがして、
目の前にテレビの砂嵐の画像が広がる。
ワルイユメヲ ミテイルンダ…
呟いて、私は気を失った。
- 92 名前:連鎖 投稿日:2001年07月08日(日)00時56分00秒
- ――だから後藤真希なんて娘。には最初からいないんだって!
違う! いたんです。モーニング娘。の中心で、一番人気で。
私と保田さんとごっちんでプッチモニを…
――吉澤とあたしと ”あの子” でしょ? 後藤真希なんていなかったわ!
私…私はあの子なんて知らないっ!! 知らない知らない知らない!!
――わかった! わかったから落ち付きなさい!!
このまま話しても堂々巡りだわ。
そ……そう…ですね、焦ってもなんにも…なりませんよね。
――ったく。あ、テレビでも見る?
ああ、見ます。
――そうそう、今娘。の出た番組やってるのよ。
へぇ……あ・あれ?
――どうしたのよ?
「私、こんな番組でたっけ…」
ENDLESS END
- 93 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時33分43秒
夜中の話し声が気になり出したのは、このアパートでの生活が始まって二週間も過ぎた頃だった。
それまでは娘。の活動のことで頭が一杯で、周囲の細かいことに注意を向ける余裕がなかった。
私が明かりを消して布団に入るのは、午前零時を少し過ぎたくらいだ。
ゲームに夢中になってもっと遅くなることもあるが、午前一時までには寝る。
多分、午前二時くらいからだと思う。
隣の部屋から薄い壁越しに、声は届いてくる。
くぐもった男の声で、何と言っているのかは聞き取れない。
声は一人のものだけで、相手の声は聞こえない。
もしかしたら電話口で話しているのかも知れなかった。
ただ、あまり楽しげな声ではない。
ブツブツと同じペースで声は暫く続き、唐突に止む。
私は暗いまどろみの中で、なんとなくそれを聞いていた。
よくもまあ、毎夜毎夜話しているものだとは思ったが、
それほどうるさい訳でもないので放っておいた。
まあ家賃が二万四千円と、今時珍しい安さなので、
多少のことは仕方がないとも思っていた。敷金も要らなかったことだし。
- 94 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時34分43秒
でも声は、夜毎に、少しずつ大きくなってきた。
同じ男の声で、内容が聞き取れないのも変わらないが、
たまに誰かを罵っているような、激しい口調が混じるようになっていた。
ひどい奴だな、隣人の迷惑も考えないで。
一週間くらいは我慢していたけれど、声は次第に耐え難い大きさになってきて、私も流石に腹が立ってきた。
一度会って、文句を言っておかないと。
翌朝、そう考えながら私は部屋を出た。うるさい隣の部屋は……。
その時になって、私は勘違いに気がついた。
私の部屋は二○四号室で、二階の端にある。
声が聞こえてくる方の壁は、建物の外壁となっていて、隣の部屋など存在しないのだ。
とすると、あの声は何処から聞こえてくるのだろう。私は気味が悪くなった。
仕事から帰って、私は自分の部屋を見回した。
- 95 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時35分58秒
一つだけ、気にかかっていたことがあった。
内装の壁紙は、元は真っ白だったと思われる、色褪せて黄ばんだものだった。
ただし、一部だけ、新しい壁紙になっているところがあった。
私の胸辺りの高さで、五十センチ角の正方形になっている。
周りの色と不調和で目立つので、私はいずれポスターでも貼って隠そうかと思っていたのだ。
その部分は、声の聞こえてくる側の壁にあった。
壁がくり抜かれていて、中にスピーカーなんかが仕掛けてあるのだろうか。
いや、そんな馬鹿なことをして、誰に何の得がある。
その新しい壁紙を剥いでみようかとも思ったが、私は一応そのままにしておいた。
だが、その夜の声は更にひどいものになっていた。オレンジ色の闇の中で目覚まし時計を見ると、
やはり午前二時。ボソボソと喋り続ける声に怒りを堪えていた私は、突然の大声に驚いて身を起こした。
「馬鹿野郎!」
その時は、はっきりと聞き取れた。部屋中に響き渡るような声だった。
壁の向こうの声は続けて怒鳴った。
「死ね、この馬鹿!」
「うるさい、黙れ!」
私は反射的に叫んでいた。
声が止んだ。
- 96 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時36分38秒
なんだ、最初からこうすれば良かったんだ。今まで黙っていて損した。
自分の心臓の鼓動を感じながら、私がそう考えた時、更に大きな声が部屋を揺らした。
「何だと、殺してやるぞ!」
訳が分からなかった。声は何処から聞こえてくるんだ。
正体は何なんだ。何故私に、こんなことを言う。
私は立ち上がり、明かりを点けた。
部屋には私以外、誰もいなかった。跳ねた布団と、
机と本棚とテレビとゲーム機とMDプレーヤー。押入れも開けてみたがやはり空だ。
「殺してやる!」
私は振り向いた。
声は、やはり壁の方から聞こえていた。
あの色違いの新しい壁紙が、こちら向きに膨らんで、微妙な凹凸を作っていた。
それは、人の顔に似ていた。
何だ、これは。
- 97 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時37分26秒
「馬鹿野郎、死ね、この糞野郎!」
叫びと共に、丁度口に当たる部分の壁紙が、プカプカと膨らんだり凹んだりしていた。
よく分からないが、とにかく、この気味の悪いものを、なんとかしなければならない。
私は、押入れの奥から、道具箱を引っ張り出した。
「殺してやる、殺してやるぞ!」
怒鳴り声は続いていた。うるさくて堪らない。
私は、金槌を取り出した。
「この馬鹿やろ……」
私は、壁紙の膨らみに向かって、金槌を力一杯叩きつけた。
ゴシャリという嫌な感触が伝わってきた。
甲高い悲鳴が上がった。
私は、何度も、何度も、金槌を叩きつけた。
やがて、悲鳴は止み、声も聞こえなくなった。
新しい壁紙は、顔とは別のものに変形していた。
ざまあみろ。
金槌を持つ私の手は、小刻みに震えていた。
別に可笑しくもないのに、ヘクヘクと、笑いのようなものが沸き上がってきた。
- 98 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時38分32秒
少しの間、じっとしていると、それも止まった。
私は金槌を仕舞い、明かりを消して寝た。
翌朝起きて、壁を確かめた。あれは夢だったのかも知れないと思いながら。
あの新しい壁紙の部分は、丸く膨らんでいた。
私は思いきって、白い壁紙の角に爪を差し込み、少しずつ、慎重に、引き剥がしてみた。
ある部分まで進むと、中からドッと赤い液体が溢れ出した。
私は慌てて避けたが、ズボンの裾に数滴かかってしまった。
それは、血だった。
私は、新しい壁紙を、完全に引き剥がしてみた。
そこには、血で赤くなっていたが、平らな木製の壁しかなかった。
単に、壁紙の破れを新しい紙で補修しただけのように見えた。
私は納得が行かなかったが、雑巾で血を拭き、ズボンを履き替えて仕事へ向かった。
その夕方、私はテレビのニュースを観ていて事件のことを知った。
昨日の真夜中に、中年の会社員が自宅で異様な殺され方をしたらしい。
寝室で、顔をグチャグチャに潰されていたそうだ。犯人は捕まっていない。
金品も盗られておらず、動機は不明だという。
- 99 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時41分36秒
被害者は私の知らない名前だったし、場所は他県だった。
元々彼と私とは全く関係がなかっただろう。
でも、もしかすると、私が殺したのかも知れなかった。
私は実家に電話して、この部屋は妙なことが起こって気味が悪いので引っ越したいと頼んでみた。
「入ったばかりなのに、馬鹿なことを言うな、ひとみ」
私の話を聞こうともせず、父親は答えた。
「ひとみ、そんなことより学校をサボったりはしてないだろうな。
メンバーの後藤真希さんは学校を辞めたそうじゃないか。
仕事があるからって気を抜くなよ。父さんは留年も退学も許さんからな」
私は絶望して電話を切った。これからも暫くは、このアパートで生活しないといけないらしい。
壁紙の破れた部分は、変わらず平らな木肌を晒している。
どうかずっとそのままであって欲しい。私はそう願いながら、いつもの時間に床に就いた。
そして、声が聞こえてきたのは、やはり午前二時頃だった。
- 100 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時42分21秒
これまでとは別の男の声になっていたし、くぐもってもいなかった。
部屋の中で、直接私に喋っているような声だった。
聞き覚えのある、声だった。
「この馬鹿が!」
声は言っていた。
「死ね、この役立たず!」
畜生。負けるか。
私は明かりを点け、金鎚を取り出して壁の前に立った。
壁紙の、剥き出しになった破れ目に、木目ではなく、凹凸のある肉の塊が浮き上がっていた。
それは、憎悪に醜く歪んだ、人間の顔だった。
それは、私の父親の顔だった。
「この馬鹿野郎、死ね!」
父親の顔をしたものが、私に向かって怒鳴った。唾が飛んで私の顔にかかった。
私は、金鎚を振った。
父親の顔をしたものが、凄まじい悲鳴を上げた。
こちらの鼓膜が破れるかと思うほどだった。
うるさいな。
私は続けて金鎚を振った。また悲鳴が上がった。
血みどろの顔が泣いているような怒っているような目で私を睨んだ。
- 101 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時43分09秒
何だ、その目は。あんたが悪いんじゃないか。
私は繰り返し、金鎚を叩きつけた。
骨が折れる感触、肉が潰れる感触、つんざくような悲鳴。
血が、父親の顔をしていたものから流れ出した。
それは絶え間なく流れ続け、次第に勢いを増し、私の足を濡らした。
ざまあみろ。死ね。死ね。私は高揚感に包まれながら、金鎚を振り続けた。
今や、壁全体から大量の血が滲み出していた。水位が増し、足首までが血の海に浸かっている。
布団も血でぐしょぐしょだ。ひどいな。今夜は何処で寝ればいいんだ。
どのくらいの時間が過ぎたのか、分からない。目覚まし時計は血の海の中だ。
父親の顔であったものは、今や、潰れた赤い肉の残骸に変わっていた。
柔らかそうなスポンジ状の欠片はもしかしたら脳味噌だろうか。
はは。ざまあみろ。
私は荒い息をつきながら、またあの衝動が込み上げてくるのを感じた。
ヘク、ヘク、と、妙な笑い声が口から自然に洩れてくる。
- 102 名前:Face 投稿日:2001年07月08日(日)19時44分46秒
突然、電話のベルが鳴った。
私は電話機を血溜まりから引っ張り上げ、受話器を取った。
「大変、大変なのよ。と、とと父さんが……」
母の声だった。かなり動転しているらしい。
「父さんが死んだんでしょ」
私の返事に、電話口の向こうで絶句する母親の気配が伝わってくる。私は電話を切った。
笑いの衝動の余韻に身を任せようとした時、別の怒鳴り声が部屋を轟いた。
「くたばれ、この糞野郎!」
聞き慣れた、若い声だった。この声を、間違う筈がない。
私は血みどろの壁へと振り向いた。
さっきまで、父親の顔の残骸があった場所に、別の新しい顔があった。
激しい憎悪に歪み笑っているのは、私の顔だった。
「殺してやるぞ、はは、ざまあみろ!」
私の顔をしたものは、私の声で叫んだ。
はは。ははは。
笑いの衝動が、再び高まってきた。
はは。
私は、笑いながら、笑っている私の顔に、渾身の力で金鎚を叩きつけた。
【終】
- 103 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時39分01秒
- 「り〜かちゃん、り〜かちゃん、ど〜してそんなに可愛いの。そ〜よ、よっすぃ〜はす〜きなのよ〜」
作詞ポジティブッシュ吉子、作曲ぞうさんを作った人の「梨華ちゃん」を口ずさみながら、私は楽屋へ向かっていた。
来る途中にかかってきたマネージャーさんの話によると、手違いで2時間ほど待ちになるらしかった。
梨華ちゃんとしている時間が増える。うふふ。思わず顔がにやけてしまう。
最近梨華ちゃんは矢口さんと話していることが多いから、今日はいっぱい喋ろうっと。
今日もがんばろう。そう思って歩いていった。
- 104 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時39分54秒
- ドアを開けると、嫌な、さびた鉄のような匂いがツーンと鼻の奥に広がった。
一瞬、異世界にまぎれ込んだのではないか、という錯覚にとらわれた。
しかし、それは現実だった。
楽屋の壁は赤く染まり、床には赤い水溜りや染みが何個もできていた。
「え?」
思わず声をあげた。
状況が理解できない。
何で、みんな倒れているの?
何で誰も動かないの?
視界のすみで、何かが動いた。
見ると、それは新リーダーの飯田さんだった。
私は飯田さんに駆け寄って抱き起こした。
「飯田さん!何があったんですか?みんなは?梨華ちゃんは?どうなったんですか?」
「・・・・よ、しざ・・・わ?」
コヒュ、と痛そうな息をして、飯田さんが息もたえだえ、といった感じで喋った。
見ると、喉が真一文字に切り裂かれている。これでは息をするのもツライだろう。
「そうです!飯田さん、何があったんですか!?今、救急車を・・・・」
がし、と腕をつかまれた。
「あ・・・・・ご、とうを・・・・」
それきり、飯田さんは動かなくなった。
「え?ごっちん?ごっちんがどうかしたんですか?」
身体を揺さぶっても、力なく揺れるだけ。
「ウソ・・・・でしょ?ねえ、飯田さん?ねぇってばぁ!」
ウソじゃなかった。飯田さんは、ただの肉の塊になってしまったんだ。
不思議と悲しくはなかった。多分、まだ理解しきれてないんだと思う。
それとも、この異常な状況に、ココロが麻痺しちゃったのかもしれない。
それにしても、さっきの飯田さんの言葉はどういう事なんだろう。
救急車を呼ぶことを、すっかり私は忘れていた。
- 105 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時41分39秒
- 私は、倒れているみんなに声をかけてまわった。
安倍さんは、飯田さんと同じく、喉を真一文字に切り裂かれている。
身体には、何度も刺された傷があった。酷い。
安倍さんだけじゃなかった。
辻、加護、保田さんも同じように、喉を真一文字に切り裂かれて、身体をメッタ刺しにされて・・・・・死んでいた。
梨華ちゃんと、矢口さんと、ごっちんはいなかった。少し安心した。
ガタン。
振り返ると、ごっちんが顔を青白くして立っていた。
「何、コレ?」
「ごっちん」
「ねぇ、よっすぃ〜、何でみんな倒れてるの?」
「わからないよ・・・」
「ねぇ、冗談なんでしょ?いつもみたいに辻加護がふざけてて、それにみんなのってるんでしょ?」
「・・・・」
「よっすぃ〜!何とか言ってよ・・・・」
「違うよ、ごっちん」
「え?」
「みんな、ホントに―――死んでるんだ」
その時、私は思った。
飯田さんが言った言葉。言おうとした言葉。
あれは、「後藤に気をつけろ」って言おうとしたんじゃないんだろうか?
じゃあ、今のごっちんのこのしぐさは、演技?
まさか。そんな風には思えない。でも、ごっちんはドラマもやってるし。
ごっちんの力があれば、喉を真一文字に切り裂く事は可能かもしれない。
わからない。
「ねぇ、よっすぃ〜は大丈夫なの?」
「え?ああ、うん」
「そうなんだ、よかった・・・」
馬鹿な私。ごっちんは私の無事を聞いて安心してくれている。
こんないい娘を疑ったりして、私ってホント馬鹿だ。
大体、ごっちんは荷物を持ってきている。つまり、今来たということだ。
じゃあ、ごっちんにこんな事はできるはずがない。
ごっちんは私を抱きしめた。私もそれに答える。
ごっちんは震えていた。無理もない。私だって今すぐ叫びながら逃げ出したいくらいなのに。
- 106 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時42分47秒
- 突然、衝撃が私たちを襲った。
驚いて離れると、ごっちんの顔は、何が起こったかわからないような顔をしていた。
私も何が起きたのかわからない。
ポタ。ポタ。
ごっちんの下に血が落ちた。
何で?
鏡に映されたごっちんの背中には深深とナイフが刺さっていた。
ごっちんの向こうには矢口さんがいた。
肩で息をしている。
矢口さんが背中からナイフを抜くと、ごっちんが倒れた。
「よっすぃ〜・・・たすけ・・・」
私は恐怖で動けなかった。
倒れたごっちんに矢口さんがまたがった。
そして、ごっちんの喉にナイフをあてた。
「やめてぇぇぇ!」
願いも虚しく、ごっちんの喉は、真一文字に切り裂かれた。
鮮血が吹き出し、私に飛びかかってくる。
私は動けなかった。身体が震え始めた。
「や、矢口さん・・・?」
「えへへ、やっと会えたね、よっすぃ〜」
笑顔の矢口さんは怖かった。笑顔が、怖かった。
「な、何で・・・全部、矢口さんが・・・・?」
「だってさぁ、みんなよっすぃ〜はかっこいいとか、よっすぃ〜の事好きだとか言うんだもん」
「・・・・え?」
「よっすぃ〜は、私のモノなのにさ」
目が異常だ。狂ってる。何で?何でこうなっちゃったの、矢口さん。
「だから、みんなを消したの」
「ごっちんなんか、抱きしめちゃってさ。大丈夫?痛くなかった?馬鹿力だからねぇ、ごっちん」
「アハハハハ」
「梨華ちゃんは」
「え?」
「梨華ちゃんはどうしたんですか?」
努めて冷静を装って私は話しかけた。
「梨華ちゃん?さあ?どっかで死んでるんじゃない?キャハハ」
矢口さんの言葉が頭の中で響く。
どっかで死んでるんじゃないの?
ドッかでシンデルンジャないの?
どッカで死ンでるンじゃナいノ?
キャハハハ
キャハハハハ
キャハハハハハ・・・・・・・
私は矢口さんを突き飛ばした。ナイフが手から落ちる。
それを手にとる。矢口さんに向かって構える。
矢口さんは起き上がって私を見つめた。
「何で怒ってるの?」
「・・・・」
「私はよっすぃ〜のためにやったのに」
「・・・・」
「よっすぃ〜」
「ウルサイ!梨華ちゃんを、梨華ちゃんを返せ!」
「・・・・」
私は目を閉じて叫んだ。
「矢口さんなんか、ダイキライだ!」
- 107 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時43分47秒
- ドン!
衝撃が私を襲った。
目を開けると、私が持っているナイフが、矢口さんの喉元に突き刺さっている。
肉を切り裂く感触が、伝わってきた。
慌ててナイフを抜いた。
直後、血をまきちらしながら、矢口さんが私にもたれかかってきた。
血が私に降りかかる。私の身体は、赤く染まっていた。
矢口さんはもう動かなくなっていた。
何で?何でこうなったんだろう?
私は今日もみんなと楽しく仕事をしようと思ってたのに。
それだけなのに。
何が矢口さんを狂わせたの?
私が狂わせたの?
私の思考は、そこで止まった。
ロッカーの中から、音がする。
梨華ちゃんかもしれない。
そう思って、ロッカーに駆け寄った。
扉を開ける。
そこには、私が探していた人がいた。
「梨華ちゃん、大丈夫!?」
「ん・・・・よっすぃ〜・・・」
大丈夫ではなかった。お腹から血が出ている。
でもまだ生きている。希望はある。
梨華ちゃんに背を向けて、ケイタイで救急車を呼ぼうとした。
「待っててね、すぐ救急車を・・・」
- 108 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時44分29秒
- ドン!
今日三回目の衝撃が、私を襲った。
肉を裂く感触。
さっき私が感じたものと違うところは、さっきは私が刺したけど、今度は私が刺されたって事だった。
自分の背中を鏡で見ると、ナイフが生えていた。
不自然で、気味が悪かった。不思議と痛みは感じなかった。
- 109 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時45分17秒
- 私の目の前に立っている、愛しい少女が喋りだした。
「フフフ、これでよっすぃ〜は完璧に私のモノだね」
「矢口さんは、何か勘違いをしてたね」
「矢口さんにずっと『よっすぃ〜は矢口さんの事が好きなんですよ』って言ってたらその気になっちゃって」
「今日楽屋に来たら飯田さんを刺してるんだもん、ビックリしちゃったよ」
「私も刺されちゃったけど、幸い傷も浅かったから何とかロッカーの中に隠れて助かったんだ」
「でも結構イタイよ、よっすぃ〜」
「多分、私はもう助からないと思う」
「だから、よっすぃ〜も一緒に死のうね」
「嬉しいな、よっすぃ〜も一緒なんて」
- 110 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時45分54秒
- 梨華ちゃん、何言ってるの?
梨華ちゃんが、全部やったの?
矢口さんを狂わせたのも、梨華ちゃん?
梨華ちゃんも、狂ってるよ。
ああ、目の前が暗くなってきた。
これは、夢。
夢なんだろうか。
いや、夢のはず。
夢であってほしい。
みんな、みんな狂ってるよ。
オカシイよ。
- 111 名前:夢だったら 投稿日:2001年07月14日(土)01時46分25秒
- ・・・・・私が、狂わせたんだろうか?
再び疑問が浮かんでくる。
狂わせたのが私なら
クルッテルノハワタシ・・・・?
絶望と哀しみの中にいるのはもう疲れた。
眠くなってきた。寝よう。
そう思った瞬間、私の唇に何かが触れた。
それは梨華ちゃんの唇だったかどうかは、私にはわからない。
深い闇に、私は落ちていった。
―了―
- 112 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時29分43秒
- 「ねえ、あの娘が産まれてから、私、よく思うの」
誕生日に買ってあげたワンピースを着た彼女は、その綺麗な指を組み替えながらそう僕に言った。
僕は返答する前にシャンパンをあおる。
気分がいいから、と手のかかったイタリアンにシャンパンを用意していた彼女が、ぼくのプレゼントしたものを身につけてくれているのは嬉しい。
彼女に服をプレゼントするのは、そりゃあ緊張するから。
「なんて?」
シャンパングラスを口から離し、ゆっくりと僕は尋ねる。
別に僕のレスポンスを待っていた訳じゃなかろうに、彼女は落ち着いてフルーツトマトを噛み締める。
バジリコを効かせずぎたと言っていたそのサラダだって、僕に料理を作ってくれたどの女の子のよりも美味だった。
「私がモーニングに入ったのは、本当に幸せだったってこと」
この“モーニング”というのが世に言う“モーニング娘。”だってことは、僕達のささやかな誇りになっている。
日本語の「プライド」とは違うけど、英語の「pride」にピッタリの感情。
自分で言うとすごくおかしいけど、品のある愉しみ方だと思ってる。
「それってモーニングに入らなければ僕に出会えなかったってこと?」
もちろん、こんな自惚れた発言、自信家でもフェミニストでもない僕が茶化さずに言えるはずがない。
それでも彼女はわざとっぽくタメ息なんかついちゃって、手を動かしながら答える。
「そんな新婚みたいなこと、いつまでも言ってるわけないでしょ」
そのナチュラルな言い口に、僕は少しドキリとしてしまう。
「いつまでもロマンチストなんだから」
「けっこうなことじゃないか」
パスタを頬張りながら、僕はのんきにそう答える。
「それ、自分に使う言葉じゃないわよ」
口をすぼめてそう言う彼女は本当に愛らしい。
結婚して1年少々の自分の妻だから、当然と言わば当然かもしれない。
でも若い彼女にちゃんと可愛らしさを感じてあげられる僕は(毎度自分で言うのも変なことなのだが)良い夫だと思う。
そんな慈しみ深い目で彼女を見ていると、シャンパンをふくんだ彼女はやはり愛らしく声をあげるのだった。
「そうじゃなくってさ
私、女子校みたいな所にいたでしょ」
- 113 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時30分14秒
- 「女子校みたいなとこ・・・・だったの?」
「うん、今も変わらないと思うけど」
僕は今でもたまに見かける彼女の後輩達を思い出してみる。
うーん、僕にはあのやんちゃざかりのちびっ子の印象しかなくて、その女子校みたいなっていう印象はあんまりない。
「で、女子校みたいな所がどうして幸せにつながるん?」
フォークいっぱいに突き刺したサニーレタスを口に持っていったため、最後のあたりは随分モゴモゴとなってしまった。
「人間関係って男と女でできてるんだな、って」
食事中に、そんな言葉で煽らないでくれよ。
急な言葉に僕は少し咳き込みつつ、
「大丈夫?」
ああ、大丈夫、と右手を出して、立ち上がろうとした彼女を制止した。
「まあかたっぽしかいないって、考えてみれば特殊な環境だよな」
「でもさ、モーニングは単なる女子校とは違うわけじゃん」
そりゃあそうだ。
何万っつう乙女が憧れている、夢のようなテリトリーを動いているんだ。
でもそんな事を彼女が言い出すのは、彼女がそのテリトリーを外れて久しいからなんだろうな。
徐々に移行して入るもののそのエリアから外れることなく歩いている僕としては、彼女の考えが主婦っていう枠組みに素直に添ったものに思えた。
「一歩楽屋からでれば、周りには常に男性の視線」
「スタッフも?」
「だからさ、こっちをどう思ってるか、とかじゃないわけ」
「その言い方って自意識過剰気味じゃない?」
「そうじゃなくてもさ、やっぱ楽屋ってのは聖域なわけじゃない」
「聖域、か」
- 114 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時31分16秒
- それは僕もよく分かる気がする。
なんたってビジュアル系と呼ばれたバンドをやってたんだ、昔はみんなメイクがすごかった。
芸能界入ってからもそうだったけど、デビュー前に大きな箱でやってた頃は本当に楽屋が聖地に思えた。
そりゃステージ立ってる時のほうが気持ちいいに決まってる。
でもやっぱり楽屋ってのは“安心”できるところだから。
「けどさ、聖域ってのは神聖視しすぎじゃないかな」
「だって私、ほぼ無神論者だもの」
「まあ、そっか」
「そうよ」
そう言って彼女はフォークにパスタをからめる。
「じゃあステージがベッドで楽屋がシャワーってのは?」
僕がいたずらっぽく目を輝かせていると、彼女は「バカ」の返答ひとつで一蹴した。
「で、話を戻すと、男と女」
「男と女」
「‥‥なんかバカにしてる」
あ、ヤバイぞ。
彼女が本当に不機嫌になろうとするのは、流石に僕でも察知できる。
隆一ならそういうのもお得意なんだろうけど、鈍チンな僕は気付くのがおくれてそのまま膨れっ面をされてしまうことも少なくない。
なんとか取り繕って彼女の話を聞く。
「でさ、そういう状況下におかれると、彼女達はレスボスに身を置こうとするのよね
置こうとする、ってよりは空気が流されるって感じだけど」
- 115 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時31分47秒
- 「ねえ、一つ聞いていい?」
「古代ギリシャの詩人にサッフォーって人がいるのよ……」
僕が尋ねる前に彼女はレスボス島の説明をしてくれた。
ということは、彼女は僕が知らないであろうことを分かってて、そんな故事を用いたのだろうか。
そう考えると、なんだかなあ
「つまりモーニング娘。はレズってこと?」
どっか違うことは分かってても、あえて雑把にまとめてみる。
「どうしてそう即物的かなあ
そうじゃなくってさ、女を観察しだすってこと」
「みんなして?」
なんかがっついている自分がいるなって思いつつ、僕は彼女の話を催促する。
「下の娘達の戯れもさ、それこそ女子校ノリってやつになってくのよ」
彼女は腹立たしげな様子は全く見せず、ただ息をつく。
「でも私が言いたいのはそういうヴァージンハーツじゃなくってさ、
その・・・女を見だしちゃうんだよね」
「そう」
なんか今さらにして心配になってきた自分がいるのは、さすがに笑ってしまう。
それほど彼女の言い方が僕をドギマギさせるに十分だったってことかな。
「それって君と中澤さん?」
「と保田圭ちゃん、んなもんだったかな」
「それじゃモームス全体がそのレスボスってわけでもないんじゃない?」
「でもね、下の娘達も結局は同じことなのかも知れないな
だからやっぱりそういう空気があったんだよね」
- 116 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時33分07秒
- 「でもさ、メンバーに恋するわけではないの」
「じゃないン?」
それじゃ辻褄が合わないように思って、僕は口に料理が入ったまま短く尋ねる。
「『女でもアリなんじゃないか』って思うようになるだけ」
「それで恋が始まったりとかは‥‥」
「可能性的にはないとは言い切れないけど・・・
いやに突っ込んでくるのね」
そんなこと急に言われたもんで、僕は慌てて否定してグラスに口つける。
「まあでもあくまでそう思うようになるだけなの」
「はあ、そうなんっスか」
男としては貴重な講議を聞いているようで、なんだか恐縮してしまう。
「世の中の半分は異性だけど半分は同性なわけじゃない
好きになった相手の性別がどうであるかなんて、2分の1の確率じゃないか、ってね」
分からなくも無い考え方だと思う。
説得力のあるその理論も彼女に言わせると言い古されたものらしい。
「ところがすぐに壁が見えるんだよね」
「重い荷物が運べないとか?」
「まさか」
彼女は肩をすくめてそう言った。
「どうしても男に恋しようとする自分がいるのよ」
- 117 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時34分29秒
- そう言った彼女の様相は、とても魅惑的なものだった。
いつのまにかテーブルに置かれたフォークもそうだし、もちろんピアスなんかもそういう風に魅せていた。
「結局ね、絶対的な壁を知るの
でもその壁を知るまではずっと戯れてるのかな」
さっきから彼女がくり返している“戯れ”という言葉だが、彼女の口ぶりからニュアンスを感じ取るに、少なくともそれは関係のある男女のじゃれあいのようなものではない。
どちらかと言うと少年と子犬がじゃれあっているようなイメージがある。
「その絶対的な壁ってのは?」
僕が尋ねると、彼女は無言でベビーベッドに目をやった。
「そっか」
「うん」
示し合わせたように二人とも席を発ち、ベビーベッドを覗く。
「そりゃ女同士じゃ子供は作れないもんな」
「エッチ」
一瞬ビクっとしてしまったが、こちらを向いた彼女の目はちゃんと微笑んでいた。
「こんなこと言うとちゃんとしたレズビアンの人とかに怒られそうだけどさ、
女同士の愛は本物の愛じゃないと思うの」
「言い切るね」
「それは私があなたと出会えたからだとは思うけどさ、とにかく男と女でなくちゃ、って」
僕達の可愛い娘に強いまなざしを向けている彼女を見て、僕は思わず引き寄せて抱き締めた。
別にキスをしようなんてのじゃない。
肩を抱きとめたかったんだ。
「無神論者なんて言ってたのに、ちょっと矛盾してるかも」
「え?」
「子供が絶対的なんて政治とか宗教とか、そういうのっぽいじゃん」
僕の言葉を聞いて、彼女は僕の胸から肩を離し、ちゃんと僕の顔を見る。
そしてにっこり笑ってこう口にした。
「それは違うわ」
- 118 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時35分25秒
- 「怖い話していい?」
「いきなり何?」
彼女は微笑んだまま続ける。
「別に怪談とかじゃないの
ただとっても怖い話」
「‥‥いいよ、してみなよ」
本当は聞きたくなかったが、そう言えない。
そんな僕の気持ちを彼女は敏感に感じ取ったらしい。
「そう怒らないで。例えばの話よ、
もしこの娘が私達の前から急に姿を消したとするじゃない」
言われただけでぞっとしてしまう。
「その時点で僕には怪談だよ」
「そうでしょ、それが愛なんじゃないかって思うの」
僕は目を丸くした。
これまで断定口調で自信満々に話をすすめてきて、その結論が、そんな、、、、
「あなた、この娘がいなくなったら毎日写真を見ながら病気みたいに呟くわよ」
「だろうね」
面白そうにそんなことを宣う彼女を不謹慎だと思いながら、僕はふて腐れたように返す。
「もしもそんなことがあったら、本当に病気になっちゃうよ」
「でしょ
その感情の中に政治とか宗教とかがある?」
そんなことを言われても困ってしまう。
まさに僕らの愛の結晶である愛娘に慈愛のまなざしをかたむけながら、愛くるしい彼女がそう僕に言うのだ。
当惑した僕の表情を彼女が覗き込むようにしてきたので、僕は幸せなため息と共に答える。
「確かにそれが本当の愛なのかもしれない」
- 119 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時36分06秒
- 「生き物としての本質なんじゃないかな」
「種を残すことが?」
「そう」
「それってさっき僕が言った子供作るってのとどこが違うの?」
「ただ作るだけじゃダメ
子供を愛することまで含めて生き物としての本質なの」
彼女言いたいことがなんの障害も無く伝わってきた。
子供をつくるだけで育てない親なんて最低だと思うし、だからやっぱり愛ってのが彼女の言う本質にあるはずなんだ。
「だからね、アメリカみたいに同性愛のカップルが人口受精とか養子とかでファミリーをつくるの、あれはあれで本物だと思う
ただやっぱり本質からは外れたことなわけだし、それでちゃんとパートナーを愛して子供を愛することは難しいんじゃないかな」
難しいことだろうとも。
僕達が単なるラブゲームから、ここまでこういった家庭を気付きあげることが出来たのは、多分に男と女であることが深く影響しているだろう。
「それで戯れ」
「そう、まさにそう」
彼女は再び僕のほうに顔を向け、僕の返答を大喜びで肯定した。
「男同士の愛も本物じゃないかも」
とくに深く考えずにそう口に出してみる。
「どうだろ、周りにいないから」
彼女は人さし指を顎にもっていくポーズをとりながら、軽く思案した後、そう答えた。
「断定しないの?」
「だって、私は男性同性愛者だった経験がないもの」
カラッと彼女は言い切った。
「男と女以外の愛が本物じゃないなんて、やっぱり私があなたと出会ったから言うことだと思うの」
「それじゃ、あんまり意味がないんじゃない?」
彼女は横目で僕に微笑み、照れたようにはにかんだ。
「いいじゃない
少なくとも私とあなたの間には、この娘がいるんだから」
- 120 名前:怖い話 投稿日:2001年07月14日(土)06時37分08秒
- そうか、僕と彼女の間でならいいんだ。
少なくとも僕らの中では子供こそが愛であって、だからホモセクシャルへの憧憬は戯れに過ぎない。
そういうことにしておこう。
「ねえ、さっきの『怖い話』だけどさ、」
「うん」
「考えてみると本当に怖くなってきちゃった」
僕がそう言うと、彼女は手を口許に運んで笑った。
「娘の心配ができるのも、愛があるからよ」
僕達がこんな幸福論に浸っていられるのも、全て彼女の考え方のおかげかもしれない。
そう思って僕は彼女の後ろ髪をすっと撫でた。
『ねえ、真矢さん
あの娘が産まれてから、私、よく思うの
私がモーニングに入ったのは、本当に幸せだったんだなって』
〜fin〜
- 121 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時16分26秒
- 太りたくない。
昔みたいな体型に戻ったら
せっかく入れたモーニング娘。にいられなくなっちゃう。
だって私は安倍さんみたいにかわいくないもの
だって私はよっすぃーみたいに背が高くないもの
だって私はののみたいにいつもお腹が空いてるキャラじゃないもの。
ぶくぶく太って、甲高い声で、ものすごく醜い人になってクビになるんだ。
嫌だ。絶対に太りたくない。
どんな事をしても、絶対に太っちゃいけない…
- 122 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時17分16秒
- 「梨華ちゃーん。ご飯食べに行こーー!」
「あ、あいぼん…ごめんね、もう食べちゃったんだ私」
「えっいつ?」
あっ!
ずっと一緒にいながら『もう食べた』筈ないじゃない。
ど、どうしよう…どうしたら隠し通せるかしら。
「あっわかったー! 梨華ちゃん今朝食べすぎたんやろ。
恥ずかしがらんと言えばええやん」
「そうっ、そうなの、うん。昨日お母さんが作りにきてくれて、ついつい」
「ふぅん。ちゃんと3食とらなきゃ病気になっちゃうって。
さっきテレビで言ってたからさ気をつけなよ?」
唐突にうしろから声がかかった。
ドキリと心臓が跳ね上がる。
私がかろうじて認識できる程度の軽い冷たさを含んでいたからだ。
…気付かれたのかもしれない。
- 123 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時17分47秒
- 「よ、よっすぃー…」
「なんの受け売りなん?」
「お嬢さんどちらから?」
「ああ、おもいっきりかぁ」
手のひらに汗が滲んでいる私を置いて、あいぼんといつも通りの会話をしている。
気のせいだろうか…? 本当に?
すごく鋭い目に射貫かれた気がしたのに…
「亜依ちゃーん! はやく行こー―!!」
「おーう! じゃあうち行くわ。バイバイいしよし〜」
「いっ、いしよしって言うな!」
あいぼんはインターネットで「いしよし」という単語を発見してから
その呼び名がお気に入りになったらしい。
よっすぃーは呼び名の持つ意味に嫌悪感があるのか、聞くたびに
真っ赤になって怒ってる。
きっと私とそういう関係だなんて想像すらしたくないんだろう。
- 124 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時18分21秒
- 「まったく加護のやつはぁ」
苦笑いをしてあいぼんを見送っていたよっすぃーが
私の方に振り向いた瞬間真顔になった。
また心臓が跳ねる。
「梨華ちゃん」
「な…なに?」
「あのさ…本当に最近ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ。なんで?」
「だってなんか…痩せたっていうか…やつれたっていうか」
「そんなことないよ…」
「病院行った方がいいよ。今度のオフに…」
既に私は知っていた。
よっすぃーには私の気持ちなんてわからないって。
ねえよっすぃー。
あなたはきっとスポーツ万能で小学校も中学校もクラスの中心だったんでしょう?
太っててブスでいじめられてた私の気持ちなんて、
絶対に太りたくない私の気持ちなんて到底わからないんでしょう?
- 125 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時19分26秒
- だけどよっすぃーは優しいから、とても優しいから、私は困らせたくはない。
「あたしも付き添ってあげるし、なんだったら事務所にもあたしが…」
「いいの。少し疲れてるだけ、すぐにいつものポジティブ石川にもどるよ」
「疲れてる…だけ?」
「そうだよ。大丈夫、気にしないで」
「う…うん」
偽りの笑顔をおめんみたいに貼り付かせてよっすぃーに言い含めた。
ふふ。納得してない顔だね。
でもね。
あなたも私が太って醜くなったら
こんなに優しくなんてしてくれないんでしょう?
私が太らないこと…ううん。
私が痩せることは、私にとってもよっすぃーにとっても良いことなんだよ。
私頑張って痩せるね。
そうしたらよっすぃー「いしよし」って呼ばれても怒らないでいてくれるかな。
- 126 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時20分25秒
- 127 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時21分10秒
- 「脱退?」
「そうや、脱退…してくれ」
「なんでですか!? だって私…」
フトッテナイノニ
「体重35kg。これがどんな大変なことかわかるか?」
「大変?」
ヤセテルジャナイデスカ
ドコガイケナインデスカ
「そこの鏡で見てみぃ。目がおかしいくらい窪んどる、頬も、鎖骨もや」
「アイドルは痩せとればええわけじゃない。特にモーニング娘。は健康的で
どこにでもいる女の子を……」
だんだんつんくさんの声は遠のいていった。
- 128 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時21分51秒
- 言い訳のしようもない。目の前に立っている女の子は私。
体中の贅肉を落とそうとして骨と皮になった少女。
骨と皮。
醜い。
脱退。
クビクビクビクビくびくびくいんhkhkkひ
「石川? 何やって……っ!? 誰か、誰か来てくれっ!!」
- 129 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時22分29秒
- 窓枠を乗り越えると目の前がピンク一色になった。
ああ、世の中にはこんなにキレイなものがあるんだね。
はやまっちゃったかなぁ。
不意に真下によっすぃーの姿が見えた。
ねえよっすぃー、私やっぱりバカなのかな? 痩せすぎちゃったよ。
心の中でそう問い掛けると、いきなりよっすぃーは必死な形相で
両手をいっぱいに広げた。
受け止めてくれるつもりなの?
こんな醜い私を?
道ずれになって死んじゃうかもしれないのに?
うふふっ…よっすぃーもバカだね…私と一緒……
無性に嬉しくなって顔中に笑みが広がっていくのがわかった。
- 130 名前:ピンクの太陽 投稿日:2001年07月14日(土)10時23分04秒
-
私の大好きなピンク色をした太陽が
宙を舞う私を包み込んでいた。
END
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月14日(土)17時04分33秒
- 目の前に貼られた薄いベールの向こう側に倒れている人がいた。
頭をむこう向きにしてうつぶせになっているその顔はこちらからは見えない。
しかしあたしはその人が誰なのか知っていた。
(市井ちゃん!)
あたしは声を出そうとするがその言葉はのどの先から外へは出ていかない。
市井ちゃんの足元からしみ出した赤い液体はゆっくりとあたしの足元へと流れてくる。
突然目の前に黒い人影が現れる。
その影は市井ちゃんのそばに立つと手に持っていたモノを振り上げ……
「やめて〜」
ガバッ
「はっ、はー……」
びっしょりかいている汗をパジャマの袖口で拭きながら思った。
(またこの夢か……)
- 132 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時07分26秒
- 「ん〜、今日もいい天気だな〜」
朝早くから庭の花壇に水をやる。
(なんでこんなめんどーなこと続けているんだろ?全然あたしらしくないし……)
「だいいち、ねむ〜い!」
目の前にはあたしの気持ちなど関わりなくスクスク育ち、つぼみが今にも弾けそうな草花が早朝のさわやかな風にゆれている。
「明日には咲くかな?」
あたしは目覚めの鬱な気分を少し晴らしてくれたその子たちにちょっと感謝した。
- 133 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時09分10秒
- んふぁ〜
「ずいぶんダルそうだね。」
ラジオ収録の合間に机に突っ伏しているとよっすぃに言われた。
「ん〜ちょっと睡眠不足で……」
「吉澤心配することないってもとに戻っただけよ。」
「ひどいな〜圭ちゃんは」
「実際そうかもね、あんなに張り切って仕事しているごっちんなんて初めてみたかも……」
「よっすぃまでひどいよ〜」
あたしは一週間前舞台から落ちて頭を打ったらしい。らしいというのはあたし自身そのことを覚えていないからだ。病院で目が覚めてしばらくたってから事故前の数週間の記憶がすっぽり抜けてることに気がついた。
「で、少しは思い出せた?」
「ん〜、所々は覚えてるんだけどはっきりとつながらないんだよね。」
お医者さんは一時的なものだから心配しなくてもいいと言ってくれた。
(そのせいであんな夢をみるのかな?)
「紗耶香から連絡はないの?」
ズキッ
「ないよ。市井ちゃん携帯の番号教えてくれないし……」
「それはあんたが毎晩かけては朝まで長電話するからでしょう。」
「……」
「あたしの方にもないのよね。こっちからかけてもつながらないし……」
……『圭ちゃんには内緒』
「えっ!」
「なに、どうしたの急に大きな声出して」
「う、うん、なんでもない。」(何か大事なこと思い出しかけた……)
「……まあいいわ。何か連絡あったら教えてね。あと、打った場所が場所なんだから無理しちゃ駄目よ。」
「うん、わかってる。ありがとう圭ちゃん。」
- 134 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時10分49秒
- (あっ、またこの夢だ。)
毎日のように同じ夢を見ていると自分でも「ああ、これは夢なんだ。」ってことがわかってくる。そしてこれから何を見るかも……
市井ちゃんがあそこに倒れていて、黒い人影があたしの前に立ちはだかる。そして手に持っているスコップを……スコップ……!?
「やめて〜」
声が出る!?
黒い人影がゆっくりと振り返る。その顔は……
あ……た……し……
不思議そうな顔をして振り返った「あたし」は「あたし」と目を合わせ「あたし」を確認するとニッと笑った。
そして「あたし」は、市井ちゃんの方へ向き直るとスコップを持った両手を振り上げ、市井ちゃんにむかって……
- 135 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時12分32秒
- 「いや〜〜」
ハッ…ハッ…ハッ……
「あたしが市井ちゃんを……」
(スコップ!!)
あたしはベッドから跳ね起きると、急いで玄関へ向かった。
スコップは……「下駄箱の裏」
なんで知ってるの!?
おそるおそる手をのばし探ってみる。
「……あった……。」
ゆっくりと手に触れたそれを引き出す。
血のあと。
持ち手のところにこびりついた茶色いシミ。
市井ちゃんの……
ちがう!あたしの!
手をみる。右手の甲についている深い傷跡。
……『いたーい』
……『ドジだなごとーは』
……『いたい、いたい』
……『こら、振り回しちゃ駄目だろう。ほら手をかして』
あたしたち、なにをしてる!?
花壇!!
あの花壇は市井ちゃんと一緒に作ったんだ。
あたしは、玄関をそっと開けた。
そこには……
- 136 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時14分27秒
- 朝日に照らされた花壇。
赤く花の色に染まった。
あたしにはその赤色は、赤い花というよりも白い花が赤く染まって出来たように思えた。
なにに?
血……
だれの?
市井ちゃんの!!
裸足で駆け寄ると花を引き抜いた。手当たりしだいに。
「市井ちゃん、市井ちゃん、市井ちゃん、……」
すべてを引き抜くと玄関まで引き返しスコップを持ってくる。
感情の命ずるままそれを地面に突き立てようとしたが寸前でおもいとどまる。
(焦っちゃ駄目だ。)
(市井ちゃんを傷つけちゃいけない。)
端から少しずつ掘り返す。
ゆっくり
スコップの先がカタいものに当たる感触が伝わってきた。息が止まる。
ふるえる指先で確かめてみる。
(ちがった。)
また少し掘り進める。
- 137 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時16分31秒
- ……………………
(いない。)
花壇の端まで掘り起こし深さは粘土層まで突き当たったがなにもでてこない。
ある時点から掘り進めるごとに血の気が引いていくのが自分でもわかった。
その場に座り込む。
(なんで、なんでここにいないの。どこにいったの……)
だれか……
だれかが連れていったんだ。
だれ?
……『紗耶香から連絡ない?』
「圭ちゃん……」(そうだ圭ちゃんだ!)
あたしが、入院しているときだ!
月明かりの下、嬉しそうに花壇を掘り返す圭ちゃん。
引いていた血が一気に頭まで上ってくる。それといっしょに涙があふれてきた。
(返してもらわなくっちゃ……)
(そうだ!返してもらわなくっちゃ!市井ちゃんは圭ちゃんのじゃない。あたしのものだ!)
あたしは決心するとあわてて立ち上がった。
「…………!?」
動きが固まる
息をのむ。
心臓がバクバクいっている。
なぜなら目の前に不思議そうな顔であたしを見つめている人がいたから。
- 138 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時18分07秒
- 「よっ!なんでこんな早くに起きてんだ〜」
「市井ちゃん……市井ちゃんなの!?」
「なんだよ。ちょっと会わないだけで忘れちまったのか〜傷つくな〜」
市井ちゃんは肩から下げた大きなバッグを地面に置き、すねたような顔をしてからプイッと横を向いた。
「市井ちゃ〜ん」
あたしはダッシュで駆け寄るとその腰に抱きついた。突然の衝撃に耐えられなかった市井ちゃんは、あたしと一緒に倒れ込む。
「いてーよ、ごと〜」
「ほんものだよね?」
あたしは、市井ちゃんのあちこちをペタペタさわって確かめる。
「くすぐってぇーからやめろって。なに泣いてんだ。すぐ帰ってくるっていっただろ〜」
「帰ってくる?どっかいってたの?」
「まだ寝ぼけてんのか?留学の下調べにイギリス行くって言っただろう。」
不思議そうな顔をして市井ちゃんがそう言った。
……『イギリス?』
……『ちょっと、準備のためにね。でも誰にも言うなよ。圭ちゃんにも』
……『圭ちゃんにも……でもなんでごとーには言ってくれるの?』
……『後藤は特別だから……』
……『特別……』
(特別……)
(そうだ。その言葉がうれしくて、自分らしくないと思いながらもあんなに張り切って仕事が出来たんだ。)
「心配だな〜。ぽーっとして思わず圭ちゃんに口をすべらせちゃった。なんてことになってないだろうな〜?」
市井ちゃんのその言葉にあたしはあわてて答える。
「言ってないよ〜誰にも。だって約束だもん。」
「そーかー。よーしえらいぞ〜」
「アハッ」(市井ちゃんにほめられた。)
市井ちゃんは乱暴にあたしの頭をかき回してくれた。
- 139 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時20分37秒
- 「じゃあ、ご褒美におみやげをあげよう。しっかしこんな早くにごとーが起きてるなんて思ってなかったから、玄関先に置いて帰ろうと思ってたんだよな……」
そう言いながら市井ちゃんは後ろに置いてあったバッグのなかを探り始めた。
「それで、むこうでの話はどうなったの……」
「ん〜、何とか大丈夫みたい。こっちでの手続きが済み次第出発、かな?」
「ふ〜ん……」(そっか、いよいよ行っちゃうんだ……)
そっと立ち上がり、花壇のところまでもどる。
「それより、その花壇はなんだ〜、宝探しでもしてたのか。」
(宝探し……)
「うん、とっても大事なモノ。あたしの命より。」
「それってすげ〜。で見つかったの?」
腰をかがめて落ちていたそれをひろう。
「うん、なくなったと思ってたんだけど、今見つけた。」
「よかったじゃん。でも花壇どうする?また手伝ってあげようか。」
まだバッグの中をゴソゴソやっている市井ちゃんの後ろに立つ。
「ううん、ひとりでやる。ひとりでやらなくちゃいけない気がする。」
あたしは手に持ったそれを頭上高く振り上げた。
- 140 名前:赤い花の咲く 投稿日:2001年07月14日(土)17時22分53秒
- ふぁ〜
(ねむい。)
あたしは、花壇に水をあげながら今日何回目かのあくびをする。
(なんで、こんなに眠いのに毎日早起きするんだろう?)
昨日考えたことを今日も考える。
「それにしてもいつになったら芽が出るんだ〜こいつらは……」
その気配さえ感じさせない盛り土にむかって文句を言う。
でも……
でもあたしは知っている。
そこには真っ赤な花が一面に咲くことを……
END
- 141 名前:カルテ 投稿日:2001年07月15日(日)11時07分33秒
- あ、どうも。よろしくお願いします。
はい、モーニング娘。の石川梨華です。
サイン? いいですよ、じゃああとで。
……あら、そんなことまで知ってるんですか?
じゃあコンサートとかもいらっしゃったことあるんですか?
うわあ、ありがとうございます。
ところで、今日うかがったのは……、ええ、そうなんです。
そうなんですけど、事情がありまして……、ちょっと話が長くなっちゃうんですけど、聞いてもらえますか?
- 142 名前:カルテ 投稿日:2001年07月15日(日)11時09分44秒
- 私、最近パソコンを買ったんですよ。
そしたら、インターネットにはまっちゃって。
お気に入りのサイトは、2ちゃんねるという掲示板の、モーニング娘。板(狼)というところです。
え、モー板住民なんですか? あそこ面白いですよね。
ネットはじめたばかりの頃は、普通のファンサイトを見て回ってたんですけど、
掲示板への書き込みは事務所から止められてるから、すぐに飽きちゃって。
だから、保田さんに相談したんですよ。
ほら、保田さんてネットに詳しいじゃないですか。すぐにモー板を教えてくれて。
でも、保田さんもまさか私が居着いちゃうとは思わなかったみたいですけどね。
「石川には刺激強すぎるかもしれないけどねー。ところで、しないよね?」
って言ってましたし。
う〜ん、まあ最初はビックリしましたけどね。悪口とか見て凹んだり。
でも、石川はポジティブですから、そんなの気にしないようにしたんです。
そしたら、結構面白くて。
小説とかも好きですよ。
私とよっすぃ〜がエッチなことしてるのとか、最初は苦手でしたけど。
そのせいで、よっすぃ〜を見るとどきどきするようになっちゃって困ってるんですよ。
- 143 名前:カルテ 投稿日:2001年07月15日(日)11時10分29秒
- あ、すみません、じゃあ本題に。
そのモー板でのことなんです。
2週間くらい前の、「キリ番取ったやつの願いがかなう」ってスレッドの覚えてます?
知らない。あ、そうですか。とにかくそういうスレが立ったんですよ。
私、そういうくだらないスレが結構好きなんですよ。
だってコピペで荒らすのに最適じゃないですか。
荒らし? ええ、実はよくやってます。ストレス発散できますよ。
そのときは私以外にも荒らしがいたみたいで、あっという間にスレが育っていきました。
- 144 名前:カルテ 投稿日:2001年07月15日(日)11時11分00秒
- 荒らしの合間にも一応は、キリ番をねらったっぽい願い事レスが混ざってはいたんですけど、
どれもうまくいかなくて、やっと700がうまくいったんですよ。
内容はたいしたことじゃなかったんですけど。
え〜? いや、それは私の口からは……。
……「包茎が直りますように」だったと思います……。
- 145 名前:カルテ 投稿日:2001年07月15日(日)11時12分21秒
- ……しばらくしてその願いがかなったっていうレスがついて、
もちろんそのときは自作自演だと思いましたよ。
でも、それを見たらしい名無しちゃむが
「ちゃむが復帰しますように」
ってコピペし始めて、800と900を連続getしたんですよ。
それを聞くと信じてもらえると思うんですけど。
だって、あの会見はその1週間後ですよ。
そのときはまだ、私も市井さんが復帰するなんて知らなかったんです。
- 146 名前:カルテ 投稿日:2001年07月15日(日)11時13分45秒
- 結局そんな調子で1000までいって、そのスレは終わったんですけど、
1000をとったのが私なんです。
「しないよ」って。
それ以来、本当にお通じがなくなってしまって……。
下剤も効かないんです。
先生、どうにかしてください……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆終了◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
- 147 名前:第2回支配人 投稿日:2001年07月16日(月)00時46分45秒
- 2ndstage終了しました。
作者の方々お疲れ様でした。
現在今回の作品の投票を行っていますので、是非参加してください。
くわしくはこちらまで
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=995210685
第3回も開催予定なのでよろしくお願いします。
- 148 名前:第3回支配人 投稿日:2001年09月05日(水)04時18分12秒
- オムニバス短編集〜3rd“夏の”パラダイス、開催中です。
今回のテーマは「夏の…」です。
9月に入ろうかってのに何言ってんだって感じですが、まああんまり気にせずばしばし参加して下さい。
今回特に作者参加が少なめです。
腕試しでも、息抜きでも、ただ感想もらうためだけでもいいので、作者のみなさんはどんどんエントリーしてください。
もちろん、読者のみなさんにとっても読みやすいオムニバスになっているはずです。
本当にバラエティーに富んだ作品が集まってます。
短編好きな人は是非!
まあとりあえず投稿用スレッド(本スレ)に行ってみてくださいな
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=flower&thp=998168613
〜引っ越してきたばかりのみなさんへ〜
オムニバス短編集はm-seek住民によるコンテスト企画です。
いくつかの制限のもとで名作集の作者さん達がその腕を競います。
参加作品には多くの感想や批評がつきます。
作者参加(作品投稿)でも、読者参加(感想書き込み)でもいいので、この機会に↑の投稿用スレをのぞいてみてください。
- 149 名前:第3回支配人 投稿日:2001年09月05日(水)04時18分45秒
- 以下は関連スレッド一覧
感想スレッド
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=989645892
登録スレッド
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=989174315
企画運営スレッド(前回投票所)
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=995210685
- 150 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月13日(土)10時59分38秒
- 第3回オムニバス短編集反省会が終了しました。
これより運営スレでは第4回の話し合いがはじまります。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=1000654631
まずは次回テーマ案の募集・決定。
その後、第4回の支配人を選出します。
支配人は一度でも読者又は作者での参加経験がある人なら、誰でも立候補できます。
なお、感想スレでは引き続き作品に対する感想他をお待ちしております。
第1回
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=purple&thp=989646261
第2回
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=purple&thp=993979456
第3回
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=flower&thp=998168613
- 151 名前:第四回支配人 投稿日:2001年10月25日(木)22時34分58秒
- 『オムニバス短編集』4th Stage 〜ノベル・ア・ラ・モード〜 の告知です。
テーマは「食べ物」。
今回は入れなければいけない言葉もNGワードもありません。
作者の皆さんが「食べ物(または飲み物)」をテーマとしているならば
どんな作品でも結構です。
タイトル、文中に食べ物が出ていなくてもかまいません。
投稿期間は11月4日(日)から11月17日(土)まで。
作品は25レス以内に収めてください。
詳しくはまたこのスレッドにて告知させていただきます。
既に評価を得た方。
前回の雪辱に燃える方。
初めて小説に挑戦しようという方。
どなたでも参加できるようにしてあります。
我こそはという方ふるってご参加ください。
みなさんの作品をお待ちしています。
なお、現在も打ち合わせを以下のスレッドで行っています。
興味のある方はぜひ覗いてみてください。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=1000654631
- 152 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 153 名前:第四回支配人 投稿日:2001年11月22日(木)09時58分09秒
- 現在、オムニバス短編集投票受付中です。
『食べ物(飲み物)』をテーマにしたバラエティあふれる作品が集まっています。
ぜひ、ご覧いただき投票に参加してください。
『オムニバス短編集』4th Stage 〜ノベル・ア・ラ・モード〜
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=white&thp=1004797991
『オムニバス短編集』4th Stage 〜ノベル・ア・ラ・モード〜投票所
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=1004798175
『オムニバス短編集』感想用スレッドvol2
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=1006011538
なお投票締め切りは11/25(日)AM8:00です。
- 154 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月24日(土)23時28分21秒
- 締め切りまで後わずか
ぜひとも投票を!!
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