ブランコの思ひ出 2
- 1 名前:PUNK 投稿日:2002年07月07日(日)08時12分41秒
- 同じ板『ブランコの思ひ出』
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=purple&thp=1023876662
の続きです。
- 2 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月07日(日)08時15分44秒
「ヒント1、傘を貸してあげると言ってるのによっすぃーが濡れてしまうことの方を優先的に心配する。
ヒント2、雨の中ワザワザ走ってまで一緒に学校に行こうと誘う。もうこれで分かったでしょ?」
「え?分かったも何も…それは何に対してのヒントなの?」
「はぁ…。よっすぃー今後は自分の事、『勘がいい方だ』なんて言わない方がいいよ」
まったくもって、里田の言わんとする事が理解出来ない。
梨華ちゃんが走った理由について尋ねてるんだよね?
なのに、里田がヒントを出すのはなぜ??
「じゃあ、ヒント3!これはスペシャルヒントだからね。耳かっぽじって良く聞くんだよ」
「はい…」
言われたとおり何となく耳をかっぽじってしまう。
「ヒント3、石川さんの顔の色。さあ、これでもう鈍感なよっすぃーでも気付いたでしょ?」
梨華ちゃんの顔色?
え、何?変な色でもしてたっけ?
「梨華ちゃん具合でも悪そうだった?」
「…よっすぃーって鈍感とかってレベルじゃないね。バカだよ、ヴァ・カ」
V・A・K・A…ヴァカ?
里田が一瞬、発音を教える英語の教師みたく見えた。
- 3 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月07日(日)08時18分53秒
「っていうか、ごめん…。里田がヒントくれてる理由すらもよく分かってないんだけど…」
ここまで会話が噛み合わないと、あたしって本当にヴァカなのかもしれないと思えてきた。
普通の人は里田が何を言いたいのか理解出来るのかな?
「私が言おうとしてることは、あくまでも勘なんだよね。
けど石川さんが走ってきた理由は、10人中11人が私と同じ答えをすると思う」
10人中11人…
10人の人が同じ答えで、そこに参加してないはずの人(例えば通りすがりの人)までが同意するってことかな?
まあ、いいや。
どちらにしても、勘と言うよりは、ほぼ確信に近い話なのかもしれない…
一体、梨華ちゃんが走ってきた理由は何なんだ?
「わかった。あたしが10人中12人目になるから、答え教えてよ」
「でもその前に約束して。私がこれから言うことに対して気を悪くしないでね」
「え、何?気を悪くする話なの?」
「もしかしたらね。けど約束してくれないんだったら話さない」
- 4 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月07日(日)08時20分50秒
そんなの事前に言われても…嫌な話だったら気を悪くするだろうし…。
気を悪くするってことは良い話ではないってことだろうし。
梨華ちゃんの事で気を悪くすると言えば何だろう?
思いつくのは一つ。
頭の怪我の事。
だけど、それが『走ってきた事』に繋がるとは思えないし…
「分かった。絶対に気を悪くしないし、怒らないから教えて…」
里田は急に立ち止まると、あたしの方を向いた。
「石川さんは…」
梨華ちゃんは…
「…たぶん」
た、たぶん…?
「…よっすぃーの事が」
あたしの事が…
「…好きなんだと思うよ。恋愛対象としてね」
好き?
恋愛対象…………………
??
「………っぷ…あははははははははは」
里田ってちょっと変わってる奴だとは思ってたけど、
ここまで可笑しなことを言う人だとは思わなかった。
可笑しく過ぎてお腹が痛い。
- 5 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月07日(日)08時22分13秒
「ちょ、ちょっと、何で笑うのよ?」
「……だ、だって…り、梨華ちゃんがあたしを好きって…。里田、あんたは面白い!
10人中11人…いや、あたしを含めて12人が大笑いしてくれるよ」
「じゃあ、何でワザワザ走ってまで『よかったら一緒に学校いかない?』なんて言いに来るのよ?」
「梨華ちゃんはそういう子なんだよ。律儀というか…まあ、変わってるって言い方もあるかもしれないけど」
「よっすぃーが雨に濡れる事を心配するのは?」
「あたしだって、誰かに傘貸して上げるって言われたら、その人は濡れないんだろうか?って心配するよ」
「じゃあ、あの顔は?あんなにまで顔真っ赤にさせちゃってさぁ…」
「それは、傘が赤いから反射で赤かったんじゃないの?走ってきたからってのもあるだろうし」
「よっすぃーさぁ、今までの石川さんの自分に対しての言動とかを違う視点で見てみ?何か思い当たる事あるでしょ?」
今までの梨華ちゃんの言動…。
「でも、残念ながら里田の推理は間違ってるよ。そんな事は絶対にありえない」
「ま、よっすぃーがそう思いたいなら、そう思ってなさいな」
- 6 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月07日(日)08時23分18秒
「うん、そんなことはないから…」
だって、あの梨華ちゃんだよ?
そもそも好きな人がいるって言ってたし。
うん、好きな人がいる…って。
その人は…
かっこよくて、優しくて、梨華ちゃんより背が高い人…
そりゃ、あたしは確かに梨華ちゃんに優しくしてるし、背も高い。
でもかっこいいって…あたしは男じゃないんだから…ねえ…。
………昨日の梨華ちゃん、あたしに何て言ってくれたんだっけ…
────『私がいるから……』
まあ、どうでもいいや。
違う視点で梨華ちゃんの言動見直したって、何も変わらないんだから。
────『私がいるから…もうひとみちゃんを…傷付けさせたりはしない』
いやいや。
何も変わらないんだ。
里田の勘違いに付き合ったって何も。
そういえば昨日、手を繋いだね…
中々離してくれなくて……
いやいや。
だから何も変わらないってば。
梨華ちゃんが、あたしを好きなんてことは…ありえない…
そう……ありえない…
うん……ありえない……はず…
たぶん……ありえないと……思う…
- 7 名前:PUNK 投稿日:2002年07月07日(日)08時31分53秒
- 更新完了です。
いやはや、中途半端な形でスレの移動となりまして申し訳ございません。
にしても、話がこんなに長くなるとは思いもしませんでした…
前スレ>311 オガマー様
レスありがとうございます。
マジだYO!
そういう事だったんです…。すまない、ごちん。
前スレ>312 なっつぁん
レスありがとうございます。
確かに梨華ちゃんには話せないですね。
話してもたぶん、誰よりも泣いてしまうでしょうし…
前スレ>313 名無し読者様
レスありがとうございます。
ごっちんが今後どうなるか…
今回はちょっと、ごっちん登場なかったのですが、次回に判明するかと…
そんなこんなで、本日これから出張のようなものに行きます。
ので、次回更新は来週明けになってしまうかな…
- 8 名前:ガガーン!!ビビンバ!! 投稿日:2002年07月07日(日)14時22分06秒
>>反射的に赤くなっちゃったんじゃないの?
に大笑いです。っていうかごっちーん!どうなるんですかー?
- 9 名前:オガマー 投稿日:2002年07月08日(月)02時28分00秒
- よすぃー
ちょっとは、ねぇ?(何)
新スレおめでとうございます!!(でいいのかな?笑)
これからも楽しみにしていますねぃ♪
- 10 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月08日(月)18時56分48秒
- 作者さん、こんにちわ!
そして新スレおめでとうございます。
新キャラに里田さんも登場してましたね〜
それにしても、よっすぃ〜のウルトラ鈍感!!
ちょっと梨華ちゃんに同情しちゃいました(笑
吉澤が梨華ちゃんの想いに気づくのは、いつの日でしょう・・・
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)14時29分27秒
- ごっつぁん・・・そんな・・・・そんな・・・・・
よすこ、ごっつぁんを救ってあげてくれーー
- 12 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)04時53分59秒
−4−
里田と駅前で別れてから、真希が待つ喫茶店に入った。
店内の一番奥の席で真希は少し苛立った様子でプリンを食べていた。
しかもプリンは合計で…ん?5皿?
「ごめん、遅くなったね…」
「本当に遅い」
真希は一言そう言い放つと、再び黙々とプリンを食べつづけた。
「あの…なんで5個も?」
「食べたいから」
「そ、そう…」
なんか、真希はえらく機嫌が悪いようだ。
あたしが遅くなった事だけが原因だとは思えない。
「腹が減っては戦は出来ぬ」
「え?」
すっとんきょな顔をしたあたしに対して、真希は少しだけ穏やかな顔になる。
「色んな意味で戦になると思うからさ」
「戦?何と戦うの?」
「敵はいるようでいない。自業自得だから…」
先程と同様、真希の言わんとすることが判らない。
里田に言われた言葉を思い出した。
『ヴァカ(VAKA)』
あたしはヴァカだから真希の言いたいことも理解出来ないんだ。
やっぱ今後『勘はいい方だ』なんて口にするのは止めよう。
- 13 名前:相談役?吉澤ひとみ 投稿日:2002年07月14日(日)04時55分56秒
「とりあえず、ひとみも何か頼みなよ」
真希に言われてあたしもプリンと紅茶を頼んだ。
さすがにプリンは1つのみだけど。
「ここ来るまでに梨華ちゃんに会わなかった?」
梨華ちゃんという言葉に妙にドキっとしてしまう。
里田にあんなことを言われたから。
考えないようにしてても、あたしの頭の中から離れない。
梨華ちゃんはあたしを…好き?
「ああ、学校出るときに会ったよ」
「一緒に帰ろうって誘われた?」
「うん、でも用事があるって断ったから」
「落ち込む梨華ちゃんの姿が目に浮かぶねぇ」
「いや、別に落ち込んではいなかったけど…」
「そ、ならいいけど」
真希はニヤリと笑った。
何ですかその笑いは?
もしかして真希まで里田と同じ事を思ってるんじゃ…
「で、大事な話とは何でしょうか?」
あたしは話を切り替えた。
今は梨華ちゃんの事は関係ない…。
真希の話を聞かなくては。
- 14 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時01分07秒
「まあゆっくり話すから、先食べなよ」
店員さんがテーブルにあたしの紅茶とプリンを置いた。
プリンを一口食べる。
ああ…美味しい。
「そういえば、昨日具合大丈夫だった?」
「ああ、今のところは大丈夫だよ。それより、ひとみの方が大変だったらしいじゃん」
「え?あ、うん…」
梨華ちゃんに話を聞いたのかな?
「よくおんぶしたよね。あたしだったら酔っ払ったタチの悪い梨華ちゃんなんかは放って置くよ」
「…あのさぁ、真希はどこまでの話を梨華ちゃんから聞いたの?」
あたしの問いかけに薄ら笑いを浮かべていた真希の顔は神妙になった。
やっぱ真希は全部知ってるんだ。
「ごめん。ほとんど…大抵の事は聞いた。あ、でも梨華ちゃんを責めないでね。
あたしが強引に口を割らしたようなもんだから…」
「いいよ。いずれは話そうと思ってたし…」
「ごめん…」
「何で真希が謝るの?」
「いや…だって、ひとみも今は辛い時期なのに…」
- 15 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時03分31秒
- 「別に辛くなんかないよ。もう済んでしまった話だし。早いところ切り替えていかないとね」
「けど…あたしはこんな時に、もっと嫌な話をひとみに相談することになるから…」
真希は俯いたまま下唇を噛み締める。
「あたしは何を相談されても大丈夫だよ」
どんな話かは想像もつかないけど、あたしは真希に笑顔で答えた。
「来ないんだよね、生理がさ。
最初はただの不順かなって思ってたんだけど、昨日トイレで吐いて…。
もしかしたらそうなのかもしれないって思い始めて」
生理が来ない……
トイレで吐く……
え!?────
「思い当たる節が自分にはあるからさぁ。バカだよね…。
あんな男に惚れてた自分が情けないよ。後悔しても遅いんだけど…。
でも一人だとすっごく不安でさ。もしそうだったらどうすればいいんだろうって…」
真希はボロボロと涙を流していた。
「真希…」
- 16 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時05分31秒
- 「…やっぱ堕ろすしかないよね。産む事なんか出来ないもん。
赤ちゃんには可哀想だけど、あたしはママにはなれないからさ。
最低だよね。本当に最低。知識があるのにさ、避妊して欲しいって言えないんだもん。
男の方がバカだと思ってたけど、実際はあたしが一番のバカ。いっつもそう。
大変な事になってから自分のした行動の間違いに気付くの。遅いっちゅーのにさぁ…バカだよ、バカ…」
「けど、まだ確定した訳じゃないし…」
「でも、もしそうだったらどうすればいいの?
お母さんに子供堕ろすからお金貸してって言えばいい訳?」
「そんな…。堕ろすとか…お金をどうするとか…
そういう事よりも先に、きちんと事実を確認しなきゃ。
辛いのも判るけど、泣いてても何も変わらない。
あたし、検査薬買ってくるからさ。真希についててあげるから…ちゃんと調べようよ」
スプーンを強く握ったまま震える真希の拳に、あたしは手を置いた。
- 17 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時06分17秒
「…あたし怖いんだ…」
「うん…」
「昨日からずっと考えてて…眠れなくって…」
「うん…」
「ひとみに相談しても迷惑なんじゃないかなって…」
「そんなことないよ」
「梨華ちゃんには…言わないでね」
「うん…絶対に言わない」
「もし…子供が出来てたら…ひとみ軽蔑する?」
「軽蔑なんかしないよ」
「なら、大丈夫だよって言って。子供なんか出来てないって」
「うん…真希大丈夫だから。子供は出来てないよ。生理は遅れてるだけ」
「ありがとう、ひとみ」
「うん、いいよ」
店員さんが、泣きじゃくる真希に対して心配そうにあたしの顔を見た。
あたしは「大丈夫です」と返事する変わりに小さくうなずいた。
大丈夫、真希は妊娠してない。
もし子供が出来てたら…
その時はその時で考えよう。
身体までを震わせて泣いている真希が、いつもより小さく見えた。
- 18 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時07分23秒
−5−
妊娠検査薬なんて物を買うのは、なんせ初めての事でして…
薬局の前で真希を待たせて、一人店内に入ったあたしは何度となく同じ場所を行き来していた。
「何かお探しですか?」
あたしの動きをやはり不審に思ったのであろう。
店内にいた中年の女性の薬剤師さんに声を掛けられた。
この人…誰かに…似てるような…
「妊娠検査薬?」
「はぁ…はい…」
薬剤師さんは、掛けていたメガネをはずすと、ヤレヤレといった顔でこちらに歩いてきた。
「別にどれを使っても同じだけど…。これが一番売れてるわね」
一番上の棚にあった箱を指差した。
確かに、種類によって違う判定をされても困るよな。
- 19 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時08分45秒
「じゃあ、これにします」
「使い方は分かる?」
「はい…たぶん分かります」
そのままレジへと向かう。
あたしは今この人にどんな風に思われているのだろうか?
『ったく最近の若い子は…』
はたまた
『出来てても、どうせ堕ろすんでしょ』
例えそんなことを思われてなかったにしても、今後この薬局を使うのは止めよう。
「私の娘がね…あなたくらいの年齢の時に子供を堕ろしたのよ」
「え?」
おばさんは、そのまま無言で検査薬を袋に入れた。
「もう社会人になったけど。今でもそのことを後悔してるわ…」
「そうですか…」
「結局、残ったのは傷だけよ。心と身体にね…」
あたしは、おばさんから紙袋を受け取ってカバンに閉まった。
「もっと自分を大切にしなさい…」
「…はい」
「って外の子に伝えてあげて。あなたじゃなくて、あの子なんでしょ?」
おばさんは、外で俯いたまま立っている真希に視線を送った。
なんだ…
おばさんは気付いてたんだ。
- 20 名前:相談役?吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年07月14日(日)05時10分30秒
- 「ごめんなさいね。他人の私が好き勝手な事、喋っちゃって…」
「いいえ…とんでもないです」
「困った事があれば…。まあ困った事にならないのがベストなんだけども…
もしもそうなった時は、相談なら乗ってあげれると思うから。遠慮なくいらっしゃいよ」
それまで、どちらかと言えば無表情に近かったおばさんの顔は、優しい笑顔になった。
「はい…ありがとうございます」
あたしは、おばさんにお辞儀をしてお店を跡にした。
店から出てきたあたしに気付くと真希は小走りで掛けよってきた。
一度止んだと思われた雨が、再び降り出していた。
「ひとみ…ごめんね…。あたしが買いに行けばいいものの…」
「ううん、平気だよ。それより、どっかで傘買おうよ」
「そうだね…そこのコンビニで…あっ」
道を挟んだコンビニの方を見ながら指差した真希は、なぜかそのまま固まってしまう。
ダブルフリーズ状態とでもいうのだろうか?
あたしもコンビニの方に視線を送ると、そのまま固まってしまった。
コンビニの前には…
赤い傘を差した梨華ちゃんが、こちらを見ながら立っていた…
- 21 名前:PUNK 投稿日:2002年07月14日(日)05時23分25秒
- 短めですが、更新完了です。
カンヅメ状態で働かされて…久々に地獄でした。
>8 ガガーン!!ビビンバ!!様
レスありがとうございます。
ごちーんがどうなるかは、もうちょい先送りです。ごめんなさい。m(__)m
赤い傘は、わたくしのお気に入りなのですが、
本当に反射で顔が赤く見えるんですよね。(笑)
>9 オガマー様
レスありがとうございます。
よっちぃーね…
何かたぶん、ちょっとは…気付き始めてるのか、、、どうなんだ?
>10 なっつぁん様
レスありがとうございます。
里田さんの登場がその後あるかどうかは、やや微妙でして…
何かでまた登場させたいなとは思ってるんですがね。
吉が気付くのが早いのか…梨華タンが告るのが早いのか…
>11 名無し読者様
レスありがとうございます。
果たして吉がごっちんを救ってあげれるのか否か…
次々回ぐらいには確実に判明いたしますので。
それでは、アディオ〜ス
- 22 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月14日(日)14時03分56秒
- ごっちん、切ない…。
よすのニブチンぶりに笑いますた。
(マ⌒_ゝ⌒イ) <10人中11人
すごい比率だ(w100パーセント軽く越えてるし。
- 23 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月14日(日)22時17分47秒
- あらら・・・ 梨華ちゃんに見つかっちゃいましたね。
この後どうなってしまうんでしょうか!?
立たずむ梨華ちゃんは何を思うのか・・・
あれこれ想像しちゃいますが、作者さんの更新を
黙って見守っております。
- 24 名前:オガマー 投稿日:2002年07月14日(日)22時34分58秒
- ああ!
なんてこったぁ(氏
ドキドキしながら更新待ち…
- 25 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)04時47分22秒
−1−
最初はまっすぐ家に帰るつもりだったけど、
ひとみちゃんに新しいハンドタオルをプレゼントしようと思い、私は駅前に向かった。
雑貨屋さんで、水色とピンク(ひとみちゃん、ピンクは嫌がるかな…)のハンドタオルを購入してから、
特に目的もなく商店街を歩く。
そんな時、薬局前で俯いている真希ちゃんを見かけた。
(何してるんだろ?)と思い真希ちゃんに近づこうとしたら、薬局からひとみちゃんが出てきた。
真希ちゃんは今日、お姉ちゃんと出かけるって言ってたのに…
ひとみちゃんは、里田さんと約束してるって言ってたよね?
- 26 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)04時48分21秒
「「やあ、梨華ちゃん…」」
明らかに引きつった笑顔で、真希ちゃんとひとみちゃんはこちらにやってきた。
「コンビニで傘買おうと思ってね…」
真希ちゃんは棒読みセリフを言う。
「そう、傘を…雨また降り出しちゃったね…ははははは」
ひとみちゃんは、ワザとらしく笑い声をあげた。
「別に買う必要なんてないよ。私がこの傘返せばいいんだよね」
すごく嫌な言い方だったと思う。
私は傘を畳んで、ひとみちゃんに突き出した。
「いいよ、いいよ。これは梨華ちゃんに貸したんだから…」
「私がコンビニで傘買うから。二人でこれ使えばいいじゃん」
強引にひとみちゃんに傘を渡してから、視線を合わせないまま私はコンビニへ入った。
別にひとみちゃんが悪い訳じゃないし、真希ちゃんが悪い訳でもない。
ただ勝手に私が嫉妬してるんだ。
何か、二人が隠し事をしてるように思えたから…
- 27 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)04時50分33秒
傘を購入してからコンビニを出ると、二人ともバツの悪そうな顔をしながら立っていた。
私は二人を無視するかのように歩き出した。
「梨華ちゃん、何か怒ってない?」
「別に怒ってないよ」
真希ちゃんの方を一度も見ないまま私は答えた。
明らかに怒ってる態度で。
「やっぱ怒ってるじゃん…」
「怒ってません!」
「怒ってるよぉ」
「怒ってないってば」
「絶対に怒ってる」
真希ちゃんは、私の頬を指で突っついた。
「じゃあ、何で二人して嘘付くの?真希ちゃん、お姉ちゃんと出かけるって言ってたよね?
ひとみちゃんも、里田さんと用事があるって…」
「それは…そのぉ」
真希ちゃんはそのまま俯いてしまう。
ひとみちゃんは、数歩前に出てから、雨に濡れないよう真希ちゃんを傘の中に入れた。
「梨華ちゃん、ごめん。別に嘘付くつもりはなかったんだけど…。ちょっと恥ずかしい事を、私が真希に頼んだんだ」
「「え?」」
あたしも、なぜか真希ちゃんも驚いた顔をしてひとみちゃんを見た。
- 28 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)04時51分42秒
「えっとですね…そう、そう。あたし、なんか水虫になったらしくて。
で、その薬を買うのが恥ずかしくって真希に頼んだんだよね。
真希なら普通の顔して買ってくれそうじゃん」
は?水虫?
ひとみちゃんが??
「とは言うものの、さすがの真希でも水虫の薬を買うのは恥ずかしいって…。
結局は自分で買ったんだけどね」
「…そう…なんだ」
「梨華ちゃんには、こんな話するの恥ずかしいから言わないでって、あたしが真希に頼んだんだ。
ごめんね…素直に言えば良かったんだけど。はははは」
「ごめん、ひとみ…」
なぜか真希ちゃんはひとみちゃんに謝った。
「ん?なんで真希が謝るの?薬を買わせようとした私が悪いのにね。
こっちこそごめん。変なお願いしちゃって」
そっか。
恥ずかしくて、言えなかったのか。
だから、私に嘘ついて…。
でも、そんなの素直に言ってくれればいいのに。
私だったら…
私に頼んでくれたら、水虫の薬、1つや2つ。
平気で買ってあげたよ?
ひとみちゃんの為なら恥ずかしくないもん。
それにしても、ひとみちゃん…。
水虫って…
かゆいですか?
- 29 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時09分38秒
−2−
「じゃあ明日の朝、ここで」
家の前で真希ちゃんとひとみちゃんに手を振る。
「うん、また明日」
ひとみちゃんも、真希ちゃんと私に手を振りながら家の方に後ずさりする。
「明日の朝?ああ…なるほどね」
ひとみちゃんと明日から一緒に登校することを理解した真希ちゃんは、私達に手を振る事もなくそのまま家に入って行った。
「ただいま」
「お帰りなさい。傘持っていってたの?タオル持ってこようか?」
私の声に、リビングにいると思われるお母さんが反応した。
「大丈夫だよ、タオルなんて………」
私は靴を脱ぎながら、返事をする。
タオル?
あっ!
ハンドタオルのこと忘れてた。
どうしよう?
明日、渡した方がいいかな?
あ、でもすぐにあげたいな。
思い立ったら吉日って言うもんね。
私は傘も持たずに、再び玄関のドアを開けた。
- 30 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時10分34秒
「「あっ」」
あれ?
確か、一度家に帰った…はずだよね?
なぜか真希ちゃんの家の前には、赤い傘を差したひとみちゃんが制服姿にカバンを持ったままの姿で立っていた。
「ど、どうしたの?梨華ちゃん…」
「いや…ひとみちゃんこそ…」
「えっと…そのぉ…あっ、真希と勉強会する約束をしてたのを忘れておりまして…」
「あ、そうなんだ…」
真希ちゃんと勉強会…。
私の事は誘ってくれないのかな…。
「うん…。ってか梨華ちゃんはどうしたの?傘も差してないじゃん。濡れちゃうよ?」
ひとみちゃんは、私の腕を優しく引っぱって傘の中に招き入れた。
顔の距離が近すぎます…。
「あ、これをひとみちゃんに渡そうと思って…」
私はカバンから包装された品を、ひとみちゃんに差し出した。
- 31 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時11分30秒
「ん?何これ?開けていいの?」
「うん。昨日、映画館で…ひとみちゃんがくれたから…」
ひとみちゃんは片手で器用に包装紙を開いた。
「おお!ハンドタオルじゃん」
「ピンクなんて、ひとみちゃん使わないかもしれないけど…」
「いや、ピンクでも何色でも嬉しいよ。梨華ちゃんから貰えるなんて…」
いつもの優しい笑顔を私に向けた。
(梨華ちゃんから貰えるなんて…)
優しい笑顔と、その言葉のせいで、自分の顔が赤くなるのが分かる。
「ん?梨華ちゃん熱あるの?顔が赤いよ?」
ひとみちゃんは、そっと私のおでこに掌を当てる。
そんなことされたら、余計に赤くなっちゃうよ…
「少し熱いかも」
「ううん、大丈夫だよ…」
違うんです。
熱があるんじゃなくて…
こんな近い距離でひとみちゃんに見つめられて…
私のおでこを触るから…
- 32 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時13分01秒
ひとみちゃんは、そのまま掌を上のほうにずらした。
私の前髪は持ち上げられた状態になって、ひとみちゃんの視線は…
おでこに残る傷跡に向けられた。
「梨華ちゃんが…いつも前髪を下ろしてるのは………」
ひとみちゃんは、なぜかすごく悲しそうな顔をする。
「………やっぱりこの傷のせい?」
ねえ、ひとみちゃん。
その悲しそうな顔は、私への同情?
おでこの傷がそんなに痛々しく見える?
「それもあるけど…。でも、おでこ出すのは、似合わないから…」
私の前髪を持ち上げているひとみちゃんの手の小指が、傷跡を優しくなぞる。
真希ちゃんにキスされる時よりも、胸が痛い…
痛い…
痛い…。
「痛かった?」
うん。
すごく痛いよ。
胸が張り裂けそうなくらいに…
「怪我した時…痛かったよね?」
なんだ、そっちか…
「うーん、私には…記憶がないから…。痛かったとしても覚えてないよ…」
「…そっか」
ひとみちゃんの掌が、おでこから離れてしまう。
もっと触れていて欲しかったな…。
- 33 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時14分20秒
「やっぱ、熱あるんじゃない?」
「違うよ…熱はないと…思う」
「じゃあ、何で…」
今度は、私の頬にひとみちゃんの手が触れる。
「何でこんなに顔が赤いの?」
頭の中がパニック状態です。
石川梨華。高校2年生。えっと、17歳。
出席番号は…2番か。
落ち着いて、落ち着いた方がいいと思うよ、自分。
………。
ちがっ、出席番号は4番じゃん!
2番は、去年のクラスの時だ。
今のクラスは苗字に『あ』が付く人が3人もいるから…。
会田さん、阿久津さん、雨宮さん…。
って、そんなの今は関係ない話だった。
『何で顔が赤いか?』を尋ねられてるんだよ?
何でって…
何でって…
そんなの答えられる訳ないよぉ…。
- 34 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時15分33秒
「っぷ…あははははは」
ひとみちゃんは、突然吹き出した。
「何、梨華ちゃんそんなに困った顔してるの?傘が赤いからに決まってるじゃん」
「へ?」
私の動揺をよそに、ひとみちゃんはとぼけた笑顔を向ける。
「あたしの顔も赤く見えない?」
言われてみれば、確かに赤いかも…
「赤い傘は差すと、顔が赤く見えるんだよね」
安心感なのかどうかは分からないけど、体から力が抜けていった…
私は、ひとみちゃんに笑顔を向ける。
それは、精一杯の照れ隠し。
「ひとみちゃんが…訳分からないこと言うから…色んな事を考えちゃった」
私の言葉に対しても、ひとみちゃんは相変わらずおとぼけ笑顔のままで…
「確かに訳の分からない質問だったね。ごめん。
でも冷静に考えればすぐ分かると思ったんだけどなぁ。
何で顔が赤くなるかなんて……好きな人の前じゃあるまいし」
- 35 名前:石川梨華の目撃 其の一 投稿日:2002年07月17日(水)05時16分56秒
『好きな人の前じゃあるまいし』
『すきなひとのまえじゃあるまいし』
『スキナヒトノマエジャアルマイシ』
あれ?
こういう顔するのってどういう時だっけ?
何で、とぼけた顔してるの?
そっか。
気付かないフリをする時だ。
とぼけた顔するのは…。
でも、何を気付かないフリしてるんだろ?
────『好きな人の前じゃあるまいし』
ああ…
私の気持ちにワザと気付かないフリしてるんだ、ひとみちゃんは…。
って言うか…
バレちゃったんだね、私の気持ち。
- 36 名前:PUNK 投稿日:2002年07月17日(水)05時28分03秒
- >22 ごまべーぐる様
レスありがとうございます。
10人中、11人…110%ですね(笑)
よくお盆とかに、「新幹線の乗車率が150%」とかってニュース見るたびに、
「ヲイ!」って突っ込みたくなります。
お好み焼き、食べてきます。ついでに行けたらUSJにも。
>23 なっつぁん様
レスありがとうございます。
黙って見守って頂いてうれしゅうございますが、
何気にレス次第で内容変えたりもしちゃう、気の弱い作者なんです(笑)
>オガマー様
レスありがとうございます。
あたくしとしては、オガマーさんの作品に
ドキドキな日々ですわ(笑)
さてと、遅刻しないように頑張らなきゃ…。
といっても、遅刻しても誰も怒らない会社って一体…。
転職するかな。
- 37 名前:オガマー 投稿日:2002年07月17日(水)10時49分13秒
- 梨華たん?
何故そんなに冷静なの…(笑
ってかよしこのいいわけが不器用なのとその優しさに萌えw
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)12時01分51秒
- どうも初めまして。
とてもイイ!です。
更新頑張って下さい!
- 39 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)20時35分18秒
- いつも、楽しく読ませていただいてます。
ああ、石川さんに幸あれ……
でも、後藤さんも……気になります。
- 40 名前:39です 投稿日:2002年07月17日(水)20時38分06秒
- すいません、途中で送信してしまいました。
更新楽しみにしてます。
これからもがんばってください!!
- 41 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月18日(木)00時56分40秒
- 作者さん更新お疲れです
何だか梨華ちゃんの心が痛い! 読んでて胸がチクチクする感じが・・・
梨華ちゃんの想いがよっすぃ〜の心を動かせる日は来るのでしょうか。
しかし、とっさに後藤をかばってウソつくよっすぃ〜
ある意味男らしいですよね!(w
梨華ちゃんの傷痕を見るたび、よっすぃ〜は
どんな心境なんでしょうか・・・
次回の展開もすごーく気になっております。
- 42 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時27分18秒
−1−
家のチャイムが鳴って、玄関のドアを開けると、
片手に包みを持ったひとみが立っていた。
「お邪魔します…」
ひとみは、傘を畳んでから家に入った。
手にもっている包みが気になったけど、あたしはひとみに先に部屋に行ってもらうよう伝えてから、
飲み物を取りに台所へ向かった。
家には誰もいなかった。
お母さんの帰りは夜になるし、お姉ちゃんは結婚した上のお姉ちゃんの家に泊まりにいってる。
ユウキは、姉がいないことを良い事に友達とどっか遊びに行ってるようだし。
正直、家族がいなくて安心した。
だって、誰かが家にいるのに検査するのって嫌だもん。
ましてや…もし出来ていたりなんかしたら…家族に合わす顔がない。
- 43 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時28分58秒
コップにジュースを入れて、テーブルにあったお菓子を適当に持って部屋に行くと、
ひとみはベッドに目を閉じて寝転がっていた。
「ねえ、真希はどんな時、顔が赤くなる?」
テーブルにコップを置くと、ひとみは上半身をひょいと起こしてから、あたしに尋ねてきた。
「顔が赤くなる時?どんな時って…走った後とか、恥ずかしい時とかな」
「そっか…」
ひとみは自分のカバンに先程手にしていた包みを閉まってから、
続けて薬局の袋を取り出した。
「まさか、あそこで梨華ちゃんに会うとはね…驚いた」
「うん…。ひとみに嘘付かせちゃったね、ごめん」
「別に構わないよ。もっとまともな嘘付けば良かったんだけど」
ひとみは、自分が梨華ちゃんに付いた嘘を思い出したのか苦笑する。
「梨華ちゃんは今ごろ『ひとみちゃんが水虫なんて…』って嘆いてるだろうね。はははは」
あたしは、ひとみを想う梨華ちゃんの気持ちを考えてみた。
好きな人が水虫で薬買うのに悩んでたなんて…。
- 44 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時30分19秒
ふざけて発言したつもりだったのに、ひとみはあたしとは対照的な顔つきになった。
水虫ネタに、ちょっと調子に乗りすぎたかもしれない。
「ごめん…調子に乗りすぎた」
「いや、それはいいんだけど…。あのさ、梨華ちゃんって……」
そのまま、何かを考え込んでしまう。
「ん?梨華ちゃんがどうしたの?」
「うーん…まあ、いいや。それより、これ…」
ひとみは薬局の紙袋から一つの箱を取り出した。
あたしは、ひとみから箱を受け取ると、それをまじまじと眺めた。
こいつが、あたしの運命の鍵を握ってるんだ。
お前に全てを託すんだぞ?
分かってるのか?
「使い方は箱に書いてあるとおりだと思うんだけど…」
あたしの険しい顔つきは、使い方を読んでいると思われたようで、
ひとみは気遣うように言葉をかける。
- 45 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時31分28秒
「んあ?ああ、ここに、おしっこかければいいんだよね…」
「うん…」
「で、1分後に何も変わらなければ陰性。赤いラインが出たら…あたしはママなんだね」
「ママって言うか…まあ、陽性って事だね…」
「何か、ドキドキする」
「うん…」
「ラインは赤だけなのかな?違う色が出たらどうしよう?」
「違う色は出ないんじゃない…」
「青とか黄色とか…」
「赤色しか出ないよ」
「ひとみ…ノリ悪りぃ」
「へ?」
ひとみは、すっとんきょな顔をした。
- 46 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時32分26秒
「こういう時はさ、ふざけた会話をしたいのよ」
「はあ…」
「じゃ、もう一回行くよ?赤色しか出ないのかな?」
訳の分からないネタフリをひとみにする。
頼むから、緊張するあたしを笑わせてくれ。
「違う色も出るよ」
ひとみは困惑顔ながらも、あたしに答えくれた。
「何色が出るの?」
「えっと…青だったら明日は晴れ。黄色だったら、ブービー賞…」
「晴れは分かるけど…ブービー賞って?」
「いや、適当に言っただけで…」
「もう、ちゃんと最後までふざけ通してよ!」
あたしは、何ひとみに怒ってるんだ?
- 47 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時33分33秒
「ごめん…ブービー賞ってのは…えっと、惜しかったねって事」
「何が惜しかったの?」
「もうちょっとで妊娠でしたよって意味…。
いい線行ってたんですけど、もうちょっと頑張りましょうって」
「それは、あたしは喜ぶべきことなの?」
「真希は喜んでいいんじゃない?ただ、ほら…結婚してて子供が欲しい人にしてみたら、
残念でしたねっていう意味で。人によって使う時の状況が違うから、ブービー賞ってこと」
「そうなんだ」
「…うん。ごめん…あたしに的には、これがいっぱいいっぱいのギャグなんだけども…」
「いいよ。ってか、赤色しか出ない訳だし」
「そうだよね…」
「じゃ、トイレ行ってくる」
箱を持って立ち上がると、ひとみは慌ててあたしの腕を掴んだ
- 48 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時35分04秒
「もう行くの?」
「うん。だって、待ったところで結果は同じなんだし…」
「で、でも…一人で大丈夫?」
「一人でって…。まさかひとみにトイレまでついてきてもらう訳にもいかないし…」
確かに一人では心細いが、二人でトイレに入るのは無理がある。
ましてや、ひとみの目の前で用を足すなんて出来やしない…。
「そうだよね…」
「じゃ、行ってきます」
ひとみに背を向け、部屋のドアを開けると背後から小さく声がした。
「行っトイレ…」
行っトイレ?
行っといで?
思わず口元が緩んでしまう。
あたしの緊張をほぐすための、ひとみなりの精一杯のギャグなんだろうな。
うん、さっきのブービー賞よりは面白いよ、ひとみ。
- 49 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時36分07秒
−2−
(142、143、144…)
便座に座って俯きながら、心の中で数を数える。
1分間ってのは60秒だから、とっくに1分は過ぎているはず。
(151、152、153…)
怖い。
結果を知るのがすごく怖い。
もし、赤い線が出ていたら?
確実にあたしのお腹の中で赤ちゃんは成長を続けている訳で…
あたしがこうやって数を数えている間もどんどん成長している訳で…
赤い線は出ていないのかもしれないけど、未だに怖くて検査薬を見れないでいる。
- 50 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時37分27秒
「真希?」
ドアを叩く音と同時にひとみの声がした。
「ごめん、心配だからここまで来た…」
あたしは数えるのを止めて、検査薬を放置したままトイレから出た。
「どうだった?」
ひとみは心配そうにあたしの顔を見つめる。
「分からない…」
「え?」
「怖くてまだ見てない」
「そっか…」
「ひとみが見てきて」
あたしは、すがるようにひとみの手を握った。
「自分じゃ見れないから…トイレの横に置いてあるから見てきてよ」
「えっ…だって…」
「お願いします」
力強くひとみの手を握って頭を下げる。
- 51 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時39分18秒
「ちょっと、真希顔上げてよ…。分かった見てくるから…」
手を引き剥がすと、ひとみは肩に手を置いてお辞儀しているあたしの体を起こさせた。
「本当に自分で確認しなくていいの?」
「…うん。結果がどうであれ、ひとみから聞かされたほうが楽になれる」
「じゃ、見てくるよ」
「うん、気をつけてね…」
「え?何を気をつけるの?」
「結果に驚かないでねって事」
「うん、分かった。気をつけるよ」
ひとみは、ゆっくりとトイレのドアを開けると一度あたしの方を見る。
あたしがうなずくと、ひとみは深呼吸してから中に入っていった。
- 52 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時40分01秒
−3−
「明日は晴れるよ」
トイレから出てきたひとみの第一声はそれだった。
明日は晴れ?
「え?それって青い線ってこと?」
「あはははは、ウソウソ。青い線も黄色の線も、赤い線も出てなかった」
ひとみは、満面の笑みを浮かべた。
青い線も、
黄色の線も、
赤い線も出てない…
あたしは、『ママ』になってなかった。
- 53 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時41分16秒
一気に緊張が解けて、あたしはその場に座り込んでしまう。
同時に、笑いが込み上げてきた。
「あはははははははは」
「見てごらん?何も出てないでしょ?」
ひとみもあたしの隣に座り込むと検査薬を差し出した。
本当だ。
何の線も出てない。
あたしはすごく嬉しかった。
ママじゃなかったことが。
今夜は安心して眠れるんだね。
「真希泣かないでよ…」
気付いたら涙がこぼれてた。
ひとみは手であたしの涙を拭ってくれる。
「ありがとう、ひとみ…」
「良かったね…」
頭を撫でてくれるひとみの手が愛しく思えた。
あたしはその手を取ると、そのまま口元に近づけてキスをした。
一瞬、ひとみは驚いた顔をしたけど、あたしが笑顔を向けるとひとみも笑ってくれた。
- 54 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年07月18日(木)18時42分29秒
「これはお礼のキスだよ」
「それがお礼なの?」
「うん、あたしの精一杯のお礼…」
もう一度、ひとみの手に感謝のキスをした。
「もう心配かけないでね」
「うん」
「次、検査薬使うのは、結婚してからだよ?」
「うん」
不安材料のなくなったあたしは、甘えん坊になってしまったようで…ひとみに抱きついた。
勢い余って身体ごと倒れこんでしまう。
「痛いよ、真希…」
「ごめん。もうちょっとこのままでいさせてよ」
「変な真希…」
「誰かに甘えたいの。不安から解放されたから…」
「なるほど」
ひとみも優しく抱きしめ返してくれた。
こんな光景、梨華ちゃんに見られたら怒り狂うかな?
梨華ちゃんごめんなさい、今だけひとみを貸して下さい。
- 55 名前:PUNK 投稿日:2002年07月18日(木)18時48分56秒
- 更新終了です。
やっとここまで来れたって感じです。
>37 オガマー様
レスありがとうございます。
意外な所で梨華タンは冷静なのですな。
>38 名無し読者様
レスありがとうございます。
駄文ですが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
これからも頑張ります。
>39 名無し読者様
レスありがとうございます。
BATTLEって時計ですか?
今度探してみます。今年に入って時計がすでに3個壊れてます…(泣)
>41 なっつぁん様
レスありがとうございます。
なんとなく、アフォな吉澤さんでも梨華ちゃんの気持ちに気付かれつつあるようで…
この辺の話はまた次回に発展していくかと思われ。。。
明日から大阪に乗り込むので、次回の更新は週明けになるかと思います。
それでは〜ハロプロライブ楽しんで参りますm(__)m
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)01時08分55秒
- ゴチン…ヨカタ…(泣
- 57 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月23日(火)14時14分41秒
- 同じく、ヨカッタ(涙
- 58 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)18時52分33秒
−1−
「…………」
それにしても、いつまでこの体勢でいればいいのだろうか?
真希に「もうちょっとこのままで…」って言われてから10分は経ったよね?
この体勢だと真希の顔が見れない。
ちょっと顔をずらしてみたけど、見えるのは真希の左頬だけ…。
「真希…」
小さな声で、呼んでみた。
「………」
ったく、反応なしかよ。
「ねぇ、真希」
背中を叩いてみた。
「………」
やっぱり反応がない…。
ん?
ってか…
真希…あなた、寝てませんか?
- 59 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)18時54分12秒
不安から解放されて、一気に安心したのだろう。
昨日は全然寝なかったみたいだしね。
もうちょっとこのままでいさせてあげようかと思ったけど、誰か帰ってきてこの光景見たら………。
「おい、真希起きろー!」
「ん…」
身体を大きく揺らすと真希はやっと気付いたようで、目をこすりながら起き上がった。
「…ごめん、寝てた。安心したら急に睡魔が襲ってきちゃってさ…」
「それはいいから、ちゃんとベッドで寝なさい」
あたしも起き上がったものの、身体がしびれて力が入らない。
「ごめん、重かった?」
寝ぼけ眼でニヤリと笑いながも、真希は手を差し出してくれた。
「うん、中々重かったよ」
真希の手を取り、勢い良く立ち上がってみせる。
「ひとみに抱きつくと、中々寝心地よかったよ」
「それは、何よりで」
真希から手を離そうとしたものの、逆に強く握りしめられる。
「部屋戻ろう」
そのまま、あたしの手を引っ張って階段を駆け上る。
- 60 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)18時55分35秒
───手を繋ぐ
学校などで、友達とたまに手を繋ぐ事はある。
特に何の意識もしないまま。
昨日、何度となく梨華ちゃんと手を繋いだ。
あたしは、梨華ちゃんと手を繋ぐなんて久々だなって思ったくらいで、それ以外は何も考えなかった。
そう、何にも考えないで手なんて簡単に繋げる。
いや、繋げたんだ。
なのに、今は違う。
手を繋ぐことの意味を考えてしまう。
『手繋いでくれたら歩けるよ』
酔っ払ってた梨華ちゃんは、昨日そう言ったね。
梨華ちゃんは、何も意識しないでそう発言したのだろうか?
もしかしたら、自惚れなのかもしれない。
ううん、自惚れであって欲しいと思う。
梨華ちゃんがあたしを好きだなんて…
これは、自惚れだ。
- 61 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)18時56分56秒
−2−
「ジャ〜ンプ!」
部屋に戻るなり、真希はベッドにダイブした。
「じゃ、あたし帰るから」
自分の荷物をまとめてから、真希にそう告げた。
「ええ!?帰っちゃうの?」
「だって、真希寝るんでしょ?」
「まだ寝ないからさぁ、もうちょっといなよ」
「でも…」
「大丈夫、大丈夫。あたしは元気なんだから、はい。ここに座って」
ベッドの上を叩いてから、真希はあたしのカバンを奪い取った。
「っつーか、ひとみのカバン軽すぎない?教科書とかちゃんと持ち歩いてるの?」
「だって教科書持ち歩くなんて…」
真希の手があたしのカバンのチャックに触れる。
まさか、勝手に開けるんじゃ…
「ちょ、ちょっと勝手に…」
「ん?何これ?」
時はすでに遅し。
真希は、ハンドタオルの包みを広げた。
- 62 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時01分16秒
「ハンドタオル…買ったの?」
「いや…それは…」
「自分で買うのに、わざわざこんなプレゼント用に包んでもらわないよねぇ。
ってことは、誰かから貰った?そうでしょ?」
「ま、まぁ、そうだけど…」
あたしは、ニヤニヤと笑っている真希から包みを取り上げて、
再びカバンの中に閉まった。
「あっ!もしかして、また誰かから告られた?『吉澤さんが好きです』とか言われちゃったりして」
「そんなんじゃないよ…」
「けど、誕生日じゃあるまいし…。タオルくれた子が何も言わなかったにしても、
その子はひとみに気があるね。絶対に」
真希の、その自信ある発言が怖く思えた。
と同時に、あたしはある事を確認したくなった。
先程から感じていることが、自惚れなのかどうかを…。
- 63 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時02分43秒
「そんな事ないと思うよ。これをくれた人に、使い古しのタオルをあげたことがあって。
そのお礼にくれただけだし…」
「いやいや、ひとみは女心を分かってないね。
普通だったら、そのタオルを洗ってまんま返すよ。
なのに、わざわざ2枚も…しかもこんなかわいらしい色のタオルをプレゼントする?
やっぱひとみに気があるんだって。その子にしてみたら、使い古しだろうと、
ひとみがくれたタオルが宝物になってるはずだよ。
『吉澤さんの匂いがするぅ〜』とか言って匂い嗅いじゃってるかもよ?」
ケタケタ笑う真希をよそに、あたしはあのタオルを梨華ちゃんが匂い嗅いでるところを想像してしまった…
いかん、いかん。
「で、誰よ?タオルくれた子は?あたし知ってる人?バレー部の人?クラスの子?
あ、分かった。1年生でしょ?最近、1年も結構ひとみの事、噂してるみたいだよ?」
自分の心配事がなくなると、人はこうも変わるのだろうか?
真希はすごく楽しそうはしゃぎだした。
- 64 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時03分47秒
「真希も知ってる人だよ」
「ウソ!?えっ、誰だろう?」
「っていうか、タオルあげた時、真希もその場にいたし…」
「は?あたしもいた?」
「うん、昨日のことだから…」
「…あっ」
どうやら、真希もやっと思い出してくれたらしい。
「これは…梨華ちゃんがくれたんだよ」
あたしは、表情一つ変えないでそう告げた。
「あぁ、なんだ。梨華ちゃんか」
真希は、あたしとは目を合わせないまま笑顔を作った。
「そういうところ、梨華ちゃん律儀だからね。はははは」
あたしには分かる。
その笑顔が作り笑顔であることくらい。
- 65 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時06分55秒
「ねぇ、真希…」
「ん?」
真希は作り笑顔のまま、あたしの顔を見る。
「真希は…知ってる?梨華ちゃんの好きな人の話…」
「いや…知らない…。うん。梨華ちゃんに好きな人がいることも知らなかった」
「梨華ちゃん、好きな人がいるんだって」
「へぇ、そうなんだぁ」
いつもより、トーンの高い棒読みセリフ。
さっき、コンビニの前で梨華ちゃんに声掛けたときと同じだ。
真希は何かを知ってる…
もしくは、何かを感づいている…
- 66 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時08分04秒
「梨華ちゃん教えてくれないんだよね、好きな人の事について。でも真希にはその事を相談してるって……」
「はぁ?違うよ、あたしだって今日初めて聞いたんだから」
「やっぱ、知ってんじゃん」
「あっ………いやぁ………」
そのまま、真希は口篭もってしまった。
「相手が誰だか知ってるんでしょ?」
「………知らないです」
「嘘、知ってるでしょ?」
「………知ってるけど、言えない。ごめん」
「何で言えないの?」
- 67 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時09分35秒
「うぅ………こういうのはさぁ、本人から聞くのがいいと思うから」
「なるほど」
「………うん」
「で、真希は…梨華ちゃんの恋を応援してるの?」
「そりゃ、応援くらい……」
「してるの?」
「……してるよ。ってか、何でひとみがそんなにムキになって聞いてくるのさ?ひとみ変だよ」
「そうだね、自分でも変だと思う…」
「何がよ?」
「梨華ちゃんの好きな人………自分なんじゃないかって…思ってしまう……」
そのまま、あたしも真希も無言となった。
この沈黙が全てを語ってる気がする。
『違うよ、それはひとみの勘違いだよ』って言って欲しい。
『それは自惚れだ』と。
- 68 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時10分22秒
重い空気の流れる中、俯いたままの状態で真希はやっと口を開いてくれた。
それは、あたしの考えが自惚れでない事を決定付ける。
「……そうだよ、梨華ちゃんの好きな人は……ひとみだよ」
梨華ちゃんの事を色々と思い出してみる。
最近は毎日メールのやり取りをした。
電話でも色々と話すようになった。
昨日は、一緒にTシャツを選んだし。
それから…
飯田先輩に対して、泣きながらあたしを庇ってくれた。
『ひとみちゃんを傷つけさせてりはしない』って。
梨華ちゃんは、あたしにとっては幼馴染で…
でもあたしは、梨華ちゃんに怪我させて…記憶をなくさせた。
そんな、あたしを梨華ちゃんは好き?
- 69 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時11分20秒
「でも何で気付いた?まさか鈍感なひとみが気付くとは思わなかったよ…」
あたしは、帰り際の出来事を真希に話した。
里田に言われるまでは、そんなこと考えた事もなかったと。
事実、帰りに里田に会うことがなければ、今こうして知ることもなかったはずだ。
何も知らないで、明日も明後日も、梨華ちゃんに対して普通に接していただろう。
けど、知ってしまった今、あたしはどのように梨華ちゃんに接すればいいんだろうか?
「まあ、確かに梨華ちゃんの行動は分かり易すぎるよね」
「あたし……どうすればいいんだろう?」
「どうすればって…」
「梨華ちゃんに対して…どうすればいいんだろう?」
「……梨華ちゃんが何も言ってこない限りは今まで通りにしてれば…」
「そうだよね…」
確かにその通り。変に意識することはないんだ。
その事を意識しないで済む方ほうは…
- 70 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時12分39秒
「今のは聞かなかったことにする」
「なんで?」
「意識しちゃうと、ぎこちなくなると思うから」
「まあ、ひとみがそうしたいなら…」
そうだよ、忘れよう。
梨華ちゃんに対しては、普通に…今まで通りに接する…
「ただ、梨華ちゃんは…いい加減な気持ちじゃないと思うから…」
「うん」
「今は考えられないにしても…告白とかされた時は、きちんと考えてあげて欲しいと思う」
「…分かってる」
「で、どうなの?」
「何が?」
「もし告白されたら」
「だから、今は聞かなかったことにするって言ってるじゃん」
「でもいずれ…」
「今は考えられないよ」
「そっか。そうだよね、うん」
- 71 名前:吉澤ひとみの自惚れ? 其の一 投稿日:2002年07月26日(金)19時14分18秒
「あのさ真希…」
「ん?」
「ちょっと楽しんでるでしょ?」
「………いや、楽しんではいないけど…」
「ちょっと面白いと思ってるはず」
「……うん。だって…どうなっちゃうんだろうっていう…楽しみというか…
ちょっとドキドキするけども…いや、ちゃんと相談には乗ってあげるよ?
あ、でもあたしは梨華ちゃんからも相談されてるんだ…。
うーん、あたしはどちらかと言えば梨華ちゃん派か…困ったな…」
真希は腕を組んで考え出す。
いやいや、困ったのはあたしの方であって…
「まあ、こういう事は、あたしが口を挟まない方がいいんだね。だって、どっちつかずになっちゃうでしょ?
黙って二人の行方を見守ってますわ。ははははは」
二人の行方って…
もういいや。
取りあえず、聞かなかったことにしたんだし。
考えるのは止めよう。
そして、こんな時でも楽観的な真希を頼りにするのも…止めた方が良さそうだ。
- 72 名前:PUNK 投稿日:2002年07月26日(金)19時18分05秒
- 更新完了です。
また仕事がちょいと忙しかったりして全然続きを書けないでおりました。。。
>56 名無し読者様
レスありがとうございます。
いやはや、ごっちん、えがった。。。
>57 ごまべーぐる様
レスどうもです。
同じく同じく、ヨカッタ(涙
土日にがんがって、続きを更新したいと思ってます。m(__)m
- 73 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月26日(金)21時59分00秒
- 更新乙です。
よっすぃーがやっと気付いたか・・・(w
よっすぃーがどうするのか期待!
- 74 名前:オガマー 投稿日:2002年07月26日(金)22時16分14秒
- よっすぃ〜ってどうなんだろう?
今まで考えなかったけど、ここのよっすぃ〜の思いってどうなんだろうなぁ
うーん、
とりあえず更新楽しみにしてますw
- 75 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月27日(土)00時42分39秒
- ぶはー、ごっちんに何もなくてよかったよかった
でもかわりによしこと梨華ちゃんが大進展!
まだまだドキドキで交信お待ちしております。
- 76 名前:なっなし〜 投稿日:2002年07月27日(土)04時51分09秒
- 右に同じく…良かった…
そして、どうなんだ(O^〜^O)
これからの展開、とても楽しみです。
- 77 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月28日(日)23時45分18秒
- ついに吉澤さん、梨華ちゃんの想いを確信してしまいましたね!
吉澤さんの心中やいかに・・・
しかし後藤さん頼もしいですね。
自分の悩みが消えて晴々って感じも・・・(w
2人が深刻に話してる今、梨華ちゃんはどうしてるんだろ?
次回も楽しみにしております。
- 78 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時35分03秒
−1−
朝、ひとみちゃんと登校する…
けど真希ちゃんがいない。
何でだろ?
ひとみちゃんは制服着てるのに、私はパジャマ変わりのジャージ姿…
これまた何で?
半歩前に進んで歩くひとみちゃんの後ろ姿を見ながら、私は必死に着いていく。
ここって駅の裏手側にある飲み屋街だよね?
学校へ行く道とはまったく反対なんですけども…
「梨華ちゃん…」
ひとみちゃんが突然立ち止まって振り返る。
急に話し掛けられて私は緊張してしまう。
「学校さぼらない?」
ひとみちゃんの笑顔に、私はうなずいて返事した。
私も学校へ行きたくなかったから。
だって、私…制服着てないんだもん。
こんな格好で学校なんか行けないよ。
私は、差し出されたひとみちゃんの手を握って歩き出した。
もう、ひとみちゃんの後ろ姿を見なくていいんだ。
今度は、横に並んで歩けるんだね。
- 79 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時36分00秒
誰もいない街中を、ひとみちゃんとただひたすら歩く。
私達だけの世界だと思えた。
ここには、私とひとみちゃんしかいないんだ。
そういえば、ひとみちゃんは気付いてるんだったね。
私の気持ちに。
ちゃんと、自分の口から伝えたいと思った私は、立ち止まってひとみちゃんと向かい合う。
「ひとみちゃん…今から言う事を、ちゃんと聞いて欲しいの」
私の言葉にひとみちゃんは優しく微笑む。
「どうしたの?」
「私ね、ひとみちゃんが…ひとみちゃんの事がね…」
「おーい、梨華ちゃーん、ひとみぃー」
絶妙なタイミングで、背後から真希ちゃんの声がした。
あれれ?
ここって、私とひとみちゃんだけの世界じゃなかったの?
「こんなとこで、何やってるのよ?」
普段着姿の真希ちゃんは、赤いリュックを背負っていた。
「今、梨華ちゃんの話を聞こうとしていたとこなんだ」
ひとみちゃんは、相変わらずの優しい笑顔で…
「何の話なの?あたしも混ぜてよ」
真希ちゃんは、リュックを下ろす。
何も入ってないと思われるそのリュックは、とても大きなサイズのものだった。
- 80 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時37分46秒
「「で、梨華ちゃんどうしたの?」」
二人同時に言葉を発する。
で、私は何を話そうとしてたんだっけ…
「えっと…忘れちゃった…」
「なんだよ…梨華ちゃん。わざわざここまで来たのにさ…意味ないじゃん」
真希ちゃんはとても怒っているようだった。
「そうやって、梨華ちゃんっていつも逃げてばっかり」
違うの、逃げてるんじゃなくて…
本当に何を言おうとしてたのか、覚えてなくて…
「梨華ちゃん、今、告白しようとしてたんでしょ?
こういう事くらいは、ちゃんと自分の口で言いなさい」
真希ちゃんに背中を押される。
そうだ、私、ひとみちゃんに気持ちを伝えようとしてたんだったね。
「えっと、あのぉ…私はひとみちゃんの事が…」
「ちょっと待って」
ひとみちゃんは、私の口元を手で押さえる。
「ごめん。それ以上何も言わないで。聞きたくないんだ」
口元からゆっくり手を離すと、ひとみちゃんはそのまま立ち去ってしまった。
その後ろ姿から、私の事を拒んでいるのがよく伝わった。
- 81 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時39分27秒
私はそのまま立ちすくんでしまう。
ちゃんと気持ちを伝える前に、私はフラれちゃったんだね…
「梨華ちゃん大丈夫?もう行こうよ」
真希ちゃんに肩を叩かれると同時に、私はしゃがんで泣き出した。
私の気持ちはひとみちゃんにとっては迷惑で…
だから受け入れてもらう前に拒まれてしまって…
それが悲しくて、けど悔しさもあって、その気持ちを私は全て涙に代えた。
気付いたら、私は赤いリュックの中にいた。
どうやら、そのリュックを真希ちゃんが背負って歩いているようだった。
外から真希ちゃんの声が聞こえた。
「あたしだって、いい加減に疲れるんだよね。梨華ちゃんの面倒見る事が」
ごめんなさい。真希ちゃん…
真希ちゃんにはいつも迷惑ばかり掛けてるよね、私…
- 82 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時40分13秒
「今日も梨華ちゃんが困るだろうって思って来たんだけど」
そのためにわざわざ、このリュックを持ってきてくれたのかな…
っていうか、私が失恋する事わかってたの?
「梨華ちゃんのことをいつまで助けてあげれるか、分からないよ」
そうだね。
真希ちゃんに頼ってばかりいてはダメだ。
ちゃんと自分の足で立って歩いていかなきゃ。
ありがとう、真希ちゃん。
「けど梨華ちゃん…。安心してね、これは夢だから」
夢?
なんだ…これは夢なのか。
さっきまで居心地が悪かったはずリュックの中で、私は安堵感に包まれた。
自分の掌を広げて見つめてみる。
私の掌はお風呂に入った後のように真っ赤だった。
そっか、リュックが赤いから…
赤く見えるんだね。
- 83 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時41分49秒
−2−
制服を着てるのに、何度も自分の服装を確認してしまう。
変な夢を見たからだ。
大丈夫、これは制服。
ジャージじゃない。
家の前で、真希ちゃんとひとみちゃんを待つ。
昨日、ひとみちゃんと一緒に登校する約束をしたものの、会うことに気まずさを感じていた。
赤いリュックに入ったのは夢だったけど、昨日ひとみちゃんに言われた事は現実だから。
────『好きな人の前じゃあるまいし』
「おはよう〜梨華ちゃん」
背後からノーテンキな真希ちゃんの声がした。
振り返ると真希ちゃんも当たり前だけど制服姿で、もちろん赤いリュックは背負っていない。
「おはよう、真希ちゃん。今日は早いね」
「んぁ。昨日は早くに寝たからね。気分もいいし」
よほど睡眠を多く取れたおかげか、珍しく朝から真希ちゃんは笑顔だった。
- 84 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時42分32秒
「昨日は…ひとみちゃんと勉強してたんでしょ?」
「え?ああ…。うん、あんまりしなかったけどね」
「あのさ、真希ちゃん。昨日、ひとみちゃん…どんな様子だった?」
ひとみちゃんが真希ちゃんに、何か話してるんじゃないかなって思った。
私の気持ちに気付いて…
その事を、真希ちゃんに相談してるんじゃないかと。
私の言葉に真希ちゃんは、一瞬顔を歪ませたがすぐに笑顔に変わった。
「どんな様子って?どういうこと?」
「あのね、昨日…」
「おはよう」
背後からひとみちゃんの声が聞こえて、私は言葉を止めた。
私は、静かに一度深呼吸をする。
そして、何も考えずに後ろを振り返った。
「おはよう、ひとみちゃん」
そこにはいつもと変わらないひとみちゃんの笑顔があって…
- 85 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時44分06秒
−3−
真希ちゃんを真中に挟んで、3人横に並んで歩く。
会話らいし会話をひとみちゃんとは交わせないまま。
意図的に私はひとみちゃんを避けていたかもしれない。
ひとみちゃんの方も、私には直接言葉を掛けてくる事はなかった。
そんな空気を知ってか知らずか、真希ちゃん一人だけがずっと喋りつづけていた。
「…なんだよね。って、梨華ちゃん人の話聞いてる?」
「あ、うん。聞いてるよ」
全然聞いてなかったけど、私は慌てて顔をあげて返答した。
「なんか、さっきからあたし一人で喋りとおしてない?ひとみも全然喋らないし…」
「そんなことないよ」
「じゃ、何か喋ってよぉ」
「何か喋ってって言われても…。うんとね…じゃあ二人は朝ご飯何食べた?」
しぶしぶ、質問するひとみちゃん。
「あのさ、ひとみ。お見合いしてるんじゃないんだから。そんな取って付けたような質問じゃなくて、もっと普通の会話できないわけ?」
「だって…普通の会話って言われても思いつかないんだもん」
「もういい。じゃあ、次は梨華ちゃん。はい、どうぞ」
え?私?
普通の会話のネタフリしろってことですか?
- 86 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時44分57秒
「えっと…普通の会話…。あっ、今日変な夢を見た」
「お、会話らしい会話だね。で、どんな夢なの?」
真希ちゃんは興味津々に喰らいついてきた。
「あんまり大した夢じゃないんだけど…パジャマで学校に行こうとする夢で…」
「一人で?」
「いや…この3人で…」
「あたしもひとみも夢に出てきたの?」
「うん…」
ひとみちゃんと一瞬、目が合った。
時間にすれば、1秒もないコンマの世界。
そのコンマの世界で、私の思考はすごい勢いで動き出す。
どうしよう…
顔が赤くなっちゃうんじゃないかな…
そう思ったのも束の間、ひとみちゃんの視線はもう私からは外れていた。
正確に言うならば、
ひとみちゃんの方から、目を逸らされた。
これは夢と同じだ。
ひとみちゃんは、私を拒む。
- 87 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時45分50秒
「で、パジャマで学校に行ったの?」
真希ちゃんは、話の続きを聞いてきた。
「いや、サボろうかって事になって…」
「みんなパジャマ姿だったの?」
「ううん。パジャマは私だけで…。真希ちゃんは私服だった。ひとみちゃんは制服着てたけど…」
「はははは、梨華ちゃんの夢の中で真面目に学校に行こうとしてたのは、ひとみだけなんだ」
「そうだね。実際に、ひとみちゃんが一番真面目だと思うし」
真希ちゃんにつられて笑いながら、私は再び、ひとみちゃんに視線を送ってみた。
「一番真面目なのは、梨華ちゃんだよ」
「何で?梨華ちゃん、パジャマなんだよ?」
「だって、パジャマ姿でも学校に行こうとするんでしょ?梨華ちゃんは偉いよ」
再び、ひとみちゃんと目が合う。
今度は、コンマの世界なんかじゃない。
何秒経っても、ひとみちゃんは私の事をじっと見ていて…
ひとみちゃんの両手が私の頬を包んだ。
- 88 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時47分36秒
「それに…」
気付いたら、私の目の前にひとみちゃんの顔。
あれ?真希ちゃんはどこにいったんだろ?
私は真希ちゃんの姿を探そうと首を動かす。
けども、ひとみちゃんは手に力を入れてそれを阻止した。
「梨華ちゃんはパジャマ姿であたしに告白してくれるんでしょ?」
「何でそれを…」
何でそれを知ってるの?
と言いかけた私の唇に温かい感触が伝わった。
あ…
これってキス?
よく分からないまま、私は目を瞑った。
それから、ひとみちゃんの背中に両腕を回す。
ああ、私…
今ひとみちゃんとキスしちゃってます。
キスなんてするのは初めてだったけど…
結構、気持ちがいいもんだなぁって思ったりしてしまう。
ひとみちゃんは、ゆっくり私から唇を離した。
私は、目を開けてからひとみちゃんと見つめ合う。
ちゃんと言わなきゃ。
自分の気持ちをひとみちゃんに伝えなきゃ…
- 89 名前:石川梨華の夢 其の一 投稿日:2002年07月30日(火)00時48分40秒
「えっと、あのぉ…私はひとみちゃんの事が…」
「ちょっと待って」
ひとみちゃんは、私の口元を手で押さえる。
あら?
この場面って、確か…
「梨華ちゃん…これは夢だから」
………なるほど。
これも夢なんですね。
それなら怖い物なんかない。
私は再びひとみちゃんの背中に腕を回すと、今度は自分からキスをした。
ひとみちゃん…ごめんなさい。
せめて夢の中ぐらい好き勝手に…
ああ、本当にごめんなさい。
- 90 名前:PUNK 投稿日:2002年07月30日(火)01時08分38秒
- 更新完了です。
ああ…うさぎうさぎうさぎうさぎ…
ちゃんとビデオセットしておくべきだった。(ToT)
>73 名無し読者様
レスありがとうございます。
よっすぃー、どうするんだろう?(他人事)
>74 オガマー様
レスありがとうございます。
確かによっすぃーはどうなんだろう…
はぁ、それよりもウサギ梨華ちゃんが…(笑)
>75 名無し読者様
レスありがとうございます。
一難去ってまた一難が好きなものですから…
今後は…
それにしても梨華ちゃんのウサギ姿が…(泣)
>76 なっなし〜様
レスありがとうございます。
これからの展開よりも、作者的には今、梨華ちゃんのウサギが…(泣)
>77 なっつぁん様
レスありがとうございます。
吉澤さんの心中よりも作者の心中は梨華ちゃんのウサギにあって…(しつこい)
いやはや、今後も楽しみにして下さると嬉しい限りでございます。
ああ、梨華タンウサギタン…(OT〜TO)
- 91 名前:オガマー 投稿日:2002年07月30日(火)01時30分53秒
- 更新乙っ!
うさぎうさぎ…一回も見れてないうえに一ヶ月後な罠…
こ、この展開は(小説に戻ってます
レス読んで我輩もウサギウサギウサギ……
- 92 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年07月30日(火)13時23分49秒
- 1の方から一気に読ませて頂きました
うぅ・・・ 辛いなぁ
3人がどうなっていくのか見守りたいです
相変わらず気の利いたレスが出来ないなぁ・・・( T▽T)
- 93 名前:後藤真希の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時34分09秒
−1−
梨華ちゃんがあの時、怪我をしてなくて…
ひとみもおばあちゃんの家に預けられる事もなかったら、
あたし達は今ごろどんな風に過ごしていたのだろうか?
それでも梨華ちゃんは、ひとみの事を好きになっていた?
ひとみも負い目を感じることなく、梨華ちゃんの気持ちにすぐに答える事が出来た?
世の中に『もしも』ということは、ありえない。
だから、あたしがどんなに考えたところで答えは出てこない…。
ひとみが梨華ちゃんの気持ちを知ってしまった今、ひとみはどのように梨華ちゃんに接していくんだろう?
今まで通りにするって言っても、
梨華ちゃんの気持ちはどんどんひとみに惚れこんで行くだけだと思うし…
かといって、ひとみが急に梨華ちゃんを無視することもないだろうし…。
ってか…
あたしは、どうすればいいんだろう?
二人がもしも、付き合ったら…
お邪魔虫な存在になってしまうの?
なーんか、それはそれで、寂しいな。
- 94 名前:後藤真希の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時34分54秒
あぁ…
みんなが、幸せになるのって難しいんだね。
誰かが必ず傷つかなきゃならないんだ。
梨華ちゃんのことは傷つけたくない。
ひとみは…もう充分傷を負っている…。
やっぱ、一番無傷なあたしが…
傷つかざる負えないんだろうな。
今まで傷つかないように生きてきたのにさぁ。
はぁ、怖いよぉ。
本当のことを知ったら…
梨華ちゃんも、ひとみも、
あたしから離れていくんだろうな…。
あら?
やっぱまだ胃が痛いかも。
- 95 名前:後藤真希の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時35分46秒
−2−
胃にものすごい痛みを感じて目を覚ます。
時計を見たら朝の6時前だった。
取りあえず胃薬でも飲もうかと、自分の部屋を出る。
「あら、早いお目覚めね」
部屋を出た廊下で、これから寝ようとしているお母さんに会った。
朝からお母さんと会話するなんて何年ぶりだろうか?
「なんか胃が痛くってさぁ。目が覚めちゃった」
「あら…食べ過ぎ?今薬持ってきてあげるわよ」
そのまま、お母さんは階段を降りて行った。
今頃になって気付いた事がある。
あたしは、いつの間にか…
お母さんよりも背が高くなっていたんだ。
なんかそれが、妙に寂しく思えた。
- 96 名前:後藤真希の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時36分48秒
しばらくしてから、お母さんが水の入ったコップと薬を部屋に持って来てくれた。
「はい、これ飲みなさい」
錠剤を2粒口に入れてから、水を一気に飲み干す。
「しばらくしたら、少しは痛みが治まると思うけど…。いつから痛むの?」
「う〜ん…この前の日曜日くらい。あまりの痛さに吐いたから…」
「ちゃんと病院に行って診てもらったら?」
「そだね。痛みが続くようだったら、行ってくるよ」
「何気に真希は繊細なところがあるからね…」
「何気にって…失礼な」
「じゃ、お母さん寝るから。このまま起きてるの?」
「ん、起きてるよ。おやすみなさい」
お母さんが部屋を出ようとしたときに、あたしは再びお母さんに声を掛けた。
「あのさ、お母さん」
「ん、何?」
「あたしってさ…いい子なのかな?」
「ふふ、どうしたの急に?」
「いやぁ、何となく…。いい子に育ってきたのかなって思って」
- 97 名前:後藤真希の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時38分07秒
お母さんは、あたしの近くまで来ると髪の毛を撫でながら答えた。
「そうだね。お姉ちゃんたちや、ユウキよりも手は掛からない子だったわね。
あまりお母さんに甘えてくる事もなかったし、幼い頃から家のこと手伝ってくれたし…
いい子に育ってくれたと思ってるわよ」
「そっか…。じゃあ、もしも、あたしが悪い子だったら…お母さん悲しむ?」
「もちろん、悲しむわよ」
「分かった。ありがとう」
「何か悪いことでもしたの?」
「ううん、大丈夫。あたしはいい子だからね」
お母さんにニッコリと微笑むと、お母さんも笑顔を返してくれた。
「じゃ、おやすみなさい。ちゃんと病院に行くのよ」
「はーい、おやすみなさい」
お母さんが部屋を出て行ってからベッドに寝転がる。
いい子か…
いい子なんだってさ、あたしは…。
いい子いい子いい子いい子…。
今日も早めに学校に行こうかな。
保健室で保田先生と話しでもしよう。
- 98 名前:石川梨華の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時39分27秒
朝食を終えて、部屋に戻って身支度を整える。
えっと、教科書は昨日のうちに入れたでしょ?
あとは…
あ、携帯携帯と…
ディスプレイに新着メールと表示されている。
誰だろ?
ひとみちゃん?
いや、まさかね…
【今日も先に行ってまーす】
真希ちゃんからだ。
今日も早いなんて…珍しすぎるな。
また今日も雨降るんじゃないかしら?
一応、折りたたみ傘持っていこうかな?
ちょっと待て。
真希ちゃんがいないってことは…
うそぉ?
ひとみちゃんと二人で登校するの?
それは困るよぉ…
だって、昨日のこともあるし…
あんな夢見ちゃったし…。
やばい、緊張してきたかも…。
普通にしなきゃ、普通にね。
やっぱ、無理かも…。
- 99 名前:石川梨華の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時40分32秒
−2−
結局、あたしもいつもより早く家を出た。
ひとみちゃんに嘘のメールを送ってから。
【ごめんなさい。日直だったの忘れてたので先に行ってます。真希ちゃんも早くに出たみたいです。】
なんで、ひとみちゃんに嘘付かなくちゃならないんだろう…
意気地ない自分が情けない…。
でも、まともにひとみちゃんの顔を見れる自信がなかった。
あんな夢見なきゃ良かった…
夢って自分の欲望だってよく言うよね。
あたしはひとみちゃんとキスしたいのかな?
けど、ひとみちゃんにフラれたいのかな?
ああ、でもどうすればいいんだろう…。
ひとみちゃん、絶対に気付いてるよね。
私の気持ちに…
- 100 名前:石川梨華の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時41分46秒
けど、何で気付いたんだろ?
そんなに分かりやすい行動だったかな。
ただ、タオルあげただけだよ?
酔っ払って、手繋いだだけだよ?
飯田先輩の前で「私がいるからひとみちゃんを傷つけさせたりしない」って言っただけだよ?
…………。
やっぱ、分かりやすい行動だったかも。
よし、このまま勢いに任せみようか?
開き直って、
「ああ、そうですとも!私はひとみちゃんが好きなんですよ!」って…
それが出来たら今ごろ悩んでないよね。
じゃ、嘘ついてみる?
「はぁ?私がひとみちゃんのこと好きな訳ないじゃーん。バッカみたぁーい」
…………。
ははははは。
バカなのは、私だ…。
- 101 名前:石川梨華の朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時43分13秒
やっぱ、普通に振舞うしかないんだろうな。
顔色変えずに…赤くしないで…。
顔色って何色になるんだっけ?
青か…。
顔色が青くなるには、具合悪くなればいいのかな?
気持ち悪い事を想像するの?
何を??
ヘビが私の身体を這ってるのを想像しよう…
きゃぁ〜〜〜〜〜!!!!
やめてぇ〜〜〜〜!!!!
無理。
青くなるどころか、涙まで出そうだ…。
はぁ…やっぱり私は相当なバカかも。
- 102 名前:吉澤ひとみの朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時44分33秒
−1−
梨華ちゃんからのメール。
【ごめんなさい。日直だったの忘れてたので先に行ってます。真希ちゃんも早くに出たみたいです。】
携帯を見て、なぜか胸を撫で下ろした。
自惚れじゃなくなってしまった今、梨華ちゃんと普通に接する自信がない。
意識的に避けちゃいそうだし…。
かといって、今まで通り接するの?
ソレハムズカシイ…
でも今まで通りにするしかないんだよね?
まあ、いいや。
聞かなかったことにしてるんだし。
関係ないって思わなきゃ。
今までだって、誰かに告白されたことはある。
その時は答えないで逃げた。
それが一番無難だと思ったから…。
今回も逃げるのかな?
けど、相手は梨華ちゃんだよ?
あたしが一番傷つけたくない相手だよ?
受け入れる事が出来たら楽なんだろうけども…
あたしは、梨華ちゃんを恋愛対象としてみる事なんて出来ないよぉ。
梨華ちゃんを傷つけない方法。
これが今のあたしの課題だ。
- 103 名前:吉澤ひとみの朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時45分38秒
−2−
玄関の覗き窓で、向かいの家を確認する。
とっくに梨華ちゃんは家を出てるだろうけども、一応確認。
よし、いないぞ。
大丈夫だ。
ドアを開けて家を出る。
今日は、昨日の雨が嘘だったかのように晴れていた。
昨日、真希に言ったもんね。
『明日は晴れるよ』って。
妊娠検査薬による天気予報は当たるんだな。
家の門を開けようとしたところで、向かいの梨華ちゃんの家のドアが開いた。
瞬間的に、身体をしゃがんで隠してしまう。
でも、梨華ちゃんはとっくに出かけてるはずだから…。
恐る恐る顔をあげると、何かの袋を手にした梨華ちゃんのお母さんが周りをキョロキョロしながら立っていた。
ボーっとしながら立っていたあたしとは当然目が合ってしまう。
- 104 名前:吉澤ひとみの朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時46分56秒
「あっ…おはようございます」
「あら…ひとみちゃん…おはよう」
おばさんは、遠慮がちに挨拶した。
そりゃ、そうだよね。
自分の娘を怪我させた人間に…
記憶をなくさせた人間に、笑顔なんて作れない…。
おばさんは、しばらく何かを考えてから意を決したように、あたしの方を見た。
「ひとみちゃん…ちょっとお願いしてもいいかしら?」
「なんでしょうか?」
「これ…今日体育があるっていうのに…梨華忘れていったみたいで…」
おばさんは、袋の中を開けて見せてくれた。
中にはジャージと体育着が入っていて。
「私が届けてあげればいいんだけど、これからちょっと用があるから…悪いんだけどもひとみちゃんに…」
「それなら、あたしが梨華ちゃんに届けてあげますよ」
あたしは目一杯の笑顔を作って答えた。
それを見たおばさんも笑顔に変わる。
「ごめんなさいね。梨華がしっかりしてれば頼まないで済んだのに…」
「いや、全然構いませんよ。同じ学校なんですから」
「じゃあ、お願いするわね」
おばさんから、袋を受け取る。
頼みごとをする相手が真希だったら…
おばさんは、こんなに遠慮がちに頼まなかったんだろうな。
- 105 名前:吉澤ひとみの朝 其の一 投稿日:2002年07月31日(水)02時52分44秒
「ちゃんと梨華ちゃんにお届けします。それでは…いってきます」
おばさんにお辞儀をして歩き出したところ、再び声を掛けられた。
「あっ、ひとみちゃん!」
「はい?」
振り返ると、おばさんはとても優しい笑顔で…。
「また、うちに遊びにいらっしゃいよ。そのぉ…昔みたいに、気軽にね」
遊びにいらっしゃいよ…
昔みたいに…
その言葉が、すごく嬉しくて…
なんだか涙が出そうになった。
「はい、遊びに行かせて頂きます」
「気をつけていってらっしゃいね」
「行ってきます」
あたしは、おばさんに笑顔で手を振る。
誰かに、こんなに元気良く「行ってきます」なんて言うのは久しぶりだった。
小学校の頃、おばあちゃんに見送られて以来かな?
あたしにとっては、とてもすがすがしい朝となった。
頭の中に常にあったモヤモヤみたいなものが、少しだけ晴れた気がした…。
- 106 名前:PUNK 投稿日:2002年07月31日(水)02時56分43秒
- >91 オガマー様
レスありがとうございます。
この展開は!!!!
やっと、ウサギ罠から解放されましたので、真面目に話が出来ますぞよ(笑)
>92 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
3人の事を見守ってやってください。
レス頂けるだけで充分にうれしゅうございますm(__)m
この連載が終わったら転職しよっかなぁ〜なんて考えてみたり、みなかったり…。
- 107 名前:なっなし〜 投稿日:2002年07月31日(水)03時23分12秒
- 梨華ママに(OT〜TO)
うむー切ない…だが面白い…
今後の展開にますます期待!
- 108 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年07月31日(水)08時07分19秒
- うんうん 3人とも健気だよホントに
- 109 名前:オガマー 投稿日:2002年07月31日(水)15時17分20秒
- ヲレなきますた…
ジーンとしましたー。
梨華ママサイコー!!
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月01日(木)15時49分32秒
- 85年組の3人は最高なんだ。最高なんだよ・・・。
2人じゃだめなんだ。だめなんだよ・・・。
- 111 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)18時55分17秒
−1−
「今日はこんないいお天気なのに…また雨でも降られちゃうのかしら?」
保田先生は保健室に入ってきたあたしの顔を見るなりこう言った。
「二日連続で早くに登校するなんて、本当珍しいわね」
「昨日の話なんですけどね…」
あたしは勝手に、先生の目の前にある丸い回転椅子に腰掛けた。
「昨日の話?ああ、悩みごと?」
「ええ。取りあえずは、解決しまして」
「そう、よかったわね。一人で解決できたの?」
「結局、ひとみに相談したんですよ」
「吉澤に?いいアドバイスでもしてくれた?」
「うーん…アドバイスというか…。まあ、でも結果としては、ひとみに相談して正解だったかな」
「結果オーライって事ね。後藤、何か飲む?コーヒーか紅茶しかないけど」
先生は、部屋の隅に置いてあるポットを指差した。
- 112 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)18時57分41秒
「あ、いいです。コーヒーとか飲むと、眠くなくなっちゃうから」
「それって、授業中に眠れなくなるってこと?」
「まぁ、そういうことですかねぇ…はははは」
「ったく…。他の先生の前でそんな事言っちゃダメよ?」
「大丈夫です。人を選んで発言してますから」
「私ってナメられてるのかしら?」
「いや、違います。保田先生を慕ってるんですよ。だから、今日来たんです」
そうだ。
あたしは保田先生と話がしたくて、ここに来た。
なんとなく…
保田先生には、全部話しておきたかった。
「嬉しい事言ってくれるじゃない。けど褒めたところで、何にもあげないわよ?」
「そんなの分かってますよ。先生に…全部話しておきたかったんです」
「悩んでいた事を?」
「うん…話せば、もっとスッキリ出来るかなって思って」
「後藤が話したいんだったら、ちゃんと聞くわよ。ちょっと待っててね」
先生は立ち上がると、出入り口の扉の鍵を閉めた。
- 113 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時00分25秒
「誰かが来たら、後藤も話づらいでしょ?」
保田先生はニッコリと微笑む。
「この前…買い物してる時…吐いたんですよね。急に気持ち悪くなっちゃって…」
「うん…」
「で、よくよく考えてみると、最近生理が遅れてるなって思って…。だからもしかしたら…」
「妊娠してるんじゃないかなと?」
「…はい。心当たりもあるし…」
「そう…」
「昨日、先生が『悩んだら友達に相談する』って言ってたでしょ?
あたし、最初は一人で解決できるかと思ったんだけど…。
やっぱ無理だと気付いて…。で、ひとみに全部話したんですよ」
保田先生は表情一つ変えないで、あたしの言葉に耳を傾けてくれていた。
「ひとみも最初は驚いてたけども、すぐに検査した方がいいって言ってくれて。
で、薬局で検査薬を買って…。というか、ひとみが買いに行ってくれたんですけどね…。で、家で調べたんです」
- 114 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時02分02秒
「どこの薬局?」
「駅前の薬局ですけども…それが何か?」
保田先生は一瞬、眉間にしわを寄せる。
「いや、何でもない。続きをどうぞ」
「はい…。えっと、家で調べて…。あれって緊張するもんなんですよね。怖くて自分じゃ見れなくて…。結局、ひとみに見てもらったんです。それで、結果は…あたしはママじゃないってことで」
「陰性だったのね?」
「うん。でも、本当に怖かった。ほら、検査薬って1分くらいで結果出るんですけど、もうその1分が耐えられないくらいに長く感じられて…。あんな思いは二度としたくないな…。けど、ひとみがいてくれてすごく助かった。一人だったら今も悩んでたと思うし…」
「親にはそのこと話したの?」
「ううん。話してないです。うちって片親じゃないですか?お父さん死んじゃったし…。お母さんにあまり心配掛けたくなかったから…」
「心配を掛けたくない…うん…。そうね。でも、親ってのは子供の心配をするのが仕事でもあるのよ?」
「だけど…お母さんが悲しむとこ、見たくない…」
- 115 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時05分42秒
「………私は…親を悲しませたわよ…。後藤と同い年の時にね」
「え?」
「うん…。別に話すことじゃないかもしれないけども、私もね。
後藤と同じ事で悩んだ事あったから」
「…それって…」
「私の場合はね、結果として親を悲しませちゃったわ。
妊娠してるんじゃないかって思って…。
後藤と同じように友達に相談してから検査薬で調べたの。でも陽性だった。
当時付き合ってた彼に相談したけど、金出すから堕ろせって言われただけで…。
生んでくれって言われたい訳じゃなかったけど、
もっと自分のことを心配してもらいたかったのよね…。
結局、私は母親に全部話して…。すっごい怒られたわよ。
もうメチャクチャにね。殺されるんじゃないかってくらいに怒られて。
でもね、母親が怒りながらも泣くのよ。
結果としては子供を堕ろして、彼とも別れたけども…。
それで学んだ事が多かったな…。
一番は母親の愛情。誰よりも私の事を心配してくれたから…」
先生があまりにも淡々と話すので、あたしは何も言えなかった。
保田先生が子供を堕ろした?
- 116 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時10分18秒
- 「世の中で、自分の事を一番心配してくれるのって…やっぱり親しかいないのよね。
もちろん友達も心配してくれたし、精神的な支えにもなったけど、
私の事を叱ってくれたのは、親だけだったわ。知識があるのにね…。
セックスしたら、子供が出来るかもしれないっていう知識が。
相手のことが好きだから、嫌われたくないからって理由だけで避妊して欲しいとかって言えなくて。
そういう事、全て含めて叱ってくれた。自分自身すごく傷ついて…。
心にも身体にも。本来は妊娠って自然のことでしょ?
それを人工的に止めさせる訳だから、身体的に相当の負担になるのよ。
もしかしたら、二度と妊娠することが出来ない身体になるかもしれないんだし…」
二度と妊娠することが出来ない身体…
保田先生は今も、その不安と戦ってるのだろうか?
- 117 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時11分31秒
- 「私が養護教諭になった理由。
若い子にちゃんとした知識を学んでもらいたいなって。
今回、後藤は幸いにも妊娠しなかった。
でも、あなたはもしかしたら、私の二の舞になってたかもしれない。
子供を堕ろして、二度と妊娠できない身体になってたかもしれないってこと…
その事を、ちゃんと認識して欲しい。
子供出来てなかった、よかったぁ…だけじゃなくてね。
何がどう自分にとって良かったのかってことを」
ちゃんと認識…
しなきゃいけないんだよね?
今回のことで…
あたしは学ばなきゃいけないんだ。
- 118 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時12分42秒
「たぶんね、吉澤が昨日検査薬買った店って、あれうちの薬局よ」
「え?うちの薬局って??」
「うちの実家って薬局やってんのよ。駅前でね。母親は薬剤師なのよね」
じゃあ、あの店内にいたのは保田先生のお母さんだったんだ…。
「母親にはね、もしうちの制服着た子が検査薬買いに来るようなことがあったら一言知らせてねって言ってあるんだけど、全然そんな話してくれなかったから、母親は私よりもお客さんの味方みたいね」
「……その話を…子供堕ろした話を…あたしなんかにしていいんですか?」
「後藤を信じてるから話すのよ。後藤は、もう二度と同じ間違いをしないと思うから」
保田先生は、じっとあたしの顔を見た。
先生の目は、あたしの事を信じてると言ってくれてるような気がした。
- 119 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時14分14秒
「…そうですね。あたしもちゃんと認識します。今回のことで…」
「けど…生理が来ないっていう問題がまだ残ってるわね…」
「っていうか、胃が痛いんですよね。今朝も痛くて…それで目が覚めた」
「胃が痛い…ストレスかしら?」
「どうだろう?ストレスが溜まるタイプの人間じゃないと思ってたんですけども」
「確かに後藤とストレスって無縁な感じするわねぇ」
「後藤は何気に繊細なんですよ」
今朝、お母さんに言われたことを、まんま伝える。
「他に悩んでる事でもあるの?どちらにしても、一度病院で診てもらった方がいいと思うけど」
「悩んでる事…うーん、悩みなのか何なのかがもう分からない…。昔から…ずっとそうだから」
「昔からって何が?」
「自分が傷つきたくないから…」
あたしの言葉に保田先生は首をかしげた。
- 120 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時16分09秒
「それに、お母さんも悲しむから…。みんなが、あたしから離れて行っちゃうと思うし…」
「後藤が言いたい事がよく分からないんだけども…ただ、後藤のことが好きな人は、簡単には後藤から離れて行かないと思うわよ?」
「いや…絶対に離れていくと思います。あたしは本当は悪い子だから…」
「そんなことない。後藤はいい子だよ」
保田先生は、あたしの頭を二回ポンポンと叩いた。
全てを吐き出したくなる。
あたしを信じてくれる人に、全部吐き出せば…
この胃の痛みも取れるんじゃないかなって。
チクチクチクチク…
この胃の痛みが取れるかどうか…
試してみる価値が今ここにあるのかな?
また、胃が痛みだす。
チクチクチクチク…
吐き出しちゃえ
いや、まだ止めた方がいい…
吐けば楽になるかもよ?
吐いたら余計に苦しむよ…
─── じゃあ、まだ言えないんだね?自分の犯した罪のことは…
- 121 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時18分49秒
「後藤どうしたの?大丈夫?」
お腹を押さえながら顔を歪ませるあたしに、保田先生は心配そうに声を掛けた。
「少し横になったら?担任の先生には私から話しておくから…」
「いや…大丈夫です…」
チクチクチクチク…
「大丈夫じゃないわよ!顔色悪いし、冷や汗もかいてるし…少しだけでも横になっていきなさい」
保田先生は、あたしを強引に立たせてベッドまで連れて行く。
ベッドに寝転がり布団の中に入ると、胃の痛みが大きな波となって襲ってきた。
チクチクチクチク…
何でこんなに痛いんだろう?
これが、あたしに与えられた罰なのだろうか?
- 122 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月08日(木)19時20分31秒
「薬は飲んだ?」
「今朝…飲みました…」
チクチクチクチク……
「ちょっと様子見て…それから、ちゃんと病院に行った方が良さそうね。私はちょっと職員室に行くから…すぐ戻ってくるけど大丈夫よね?」
先生は、横のカーテンを閉めて出て行こうとした。
「……保田先生…」
チクチクチクチク…
「ん?」
「…あたし…やっぱりいい子なんかじゃない…」
チクチクチクチク…
「まだ、そんなこと言ってるの?」
保田先生は首をかしげた。
もう吐き出してしまおう。
この痛みから解放される為にも…
保田先生は、あたしを信じてくれる。
あたしも、先生を信じたい…
そして、心底楽になりたいんだ…
「あの…あたし…」
チクチクチクチク…
- 123 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 124 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 125 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 126 名前:PUNK 投稿日:2002年08月08日(木)19時37分35秒
- 更新終了です。
ああ、腹減った。(;_;)
>107 なっなし〜様
レスありがとうございます。
梨華ママと吉の間にあるであろうわだかまりを早いとこなくしてくって…。
じゃないと、この話が進まなかったってのもあるんですが(笑)
>108 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
健気な彼女たち…。
本物の3人も健気なんでしょうね…。
>109 オガマー様
レスありがとうございます。
あたくしは、オガマーさんのレスにジーンですわ(笑)
( ^▽^)<キスガシタイ
続きを楽しみにしております。
>110 名無し読者様
レスありがとうございます。
うん、85年組。
3人いてこその85年組ですな…
そんなこんなで、これからはマメに更新できるようジャンガリ…(ハムスター飼ってますた)
いや、
ジャンガラ…(ラーメン美味いよね?)
いや、
ブルガリカ…(の時計欲しいなぁ)
いや、
ガリガリ…(君のコーラ味最近見かけないな)
ガンガリます。
- 127 名前:オガマー 投稿日:2002年08月08日(木)23時17分54秒
- ごっちーーーーん!!
謎がまた一つ?
更新がんがってくださいねw
- 128 名前:なっなし〜 投稿日:2002年08月09日(金)01時44分41秒
- 交信だ!!ヽ( ゜皿 ゜)人( ゜皿 ゜)人( ゜皿 ゜)人( ゜皿 ゜)ノ〜♪
うむぅ、そんなことがあったのか…( ´ Д `)<ZZZ
寝てる場合じゃない!!ってな雰囲気にドッキドキ
マターリがんがって下さい(w
- 129 名前:PUNK 投稿日:2002年08月09日(金)04時48分11秒
- 今気付いたんですが、
内容飛ばして更新してました。。。(汗)
ちょっと、修正します。m(__)m
- 130 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月09日(金)12時37分29秒
- 一体過去に何があったというのであろうか?
まさか・・・
>作者殿
私もそう思いますよ
- 131 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月12日(月)17時18分59秒
- ── <コンコン> ──
入り口の扉をノックする音が聞こえて、あたしは喉まで出かかっていた言葉を止める。
保田先生は、あたしに待ってるように伝えてから、カーテンを開けて出て行った。
「はーい?今開けるから待っててね」
保田先生の声と共に、扉が開く音がした。
「あら、イシカワじゃない…」
イシカワ?
イシカワって、梨華ちゃん?
「何で鍵が閉めてるんですか?私、保田先生をずっと探してたんですよ。でも、職員室にもいらっしゃらないし…もしかしたらと思ってノックしたら…」
やっぱり、この声は、
梨華ちゃんだ…。
- 132 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月12日(月)17時19分59秒
「いや、ちょっとね…。それよりどうしたの?」
「先生に、お話というか、相談というか…」
梨華ちゃん…どうしたんだろう?
「あら…そうなの…。うーん、話をすぐに聞いてあげたいんだけど、今ちょっと先客がいるのよね…」
「あっ、じゃあ、また今度でいいです。全然、急ぎの話ではないので…」
「なら、放課後にいらっしゃい。お昼休みでも構わないけども、あの時間帯は色んな生徒が出入りしてるから…」
「分かりました。放課後またお邪魔します」
再び扉が開かれる音がする。
失礼しますと律儀に挨拶をしてから、梨華ちゃんは保健室を出て行ったようだ。
- 133 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月12日(月)17時20分43秒
「ふう、どうやら最近は悩める生徒が多いようね」
保田先生は、ため息を吐きながら、カーテンを開けた。
「今の梨華ちゃんですよね?」
「そうよ」
「梨華ちゃん…何かに悩んでるのかな?」
「…その辺は後藤の方が詳しいんじゃないの?」
「うーん…梨華ちゃんの悩んでる事といったら……一つだけ思い当たる事はありますけど…けど、一体どうしたんだろ?」
「石川のことだから、後藤にもそのうち相談するんじゃないかしら?それより…さっき何か言いかけてなかった?」
「あっ、その話はやっぱいいです。あんまり大した事じゃないし…」
- 134 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月12日(月)17時21分24秒
突然の梨華ちゃん登場で、あたしの吐き出したい気持ちは一気に冷めてしまった。
というか、このタイミングで梨華ちゃんが来たということは…
まだ、話すべき時期ではないんじゃないかと…。
なんとなくそんな暗示をされてるような気がした。
「あたし…やっぱ教室戻りますよ」
「無理しなくていいのよ?今回は仮病じゃないってことくらい、分かってるから」
ベッドから起き上がるあたしの肩を、保田先生は押さえた。
けどあたしは、先生の手を振り払うと、ベッドから降り立つ。
こんな胃の痛みなんて…
大した事ないよ。
大丈夫…痛くなんかない…。
チクチクチクチク……
- 135 名前:保田先生と後藤さん 其の一 投稿日:2002年08月12日(月)17時22分09秒
「また…何かあったら…遊びに…いや、寝に来ますから。はははは」
チクチクチクチク……
「ちょっと、無茶しないで!ちゃんと寝てなさいって!」
「いや、大丈夫ですから…」
チクチクチクチク……
あたしは、カバンを手にすると、前かがみの状態で歩き出す。
チクチクチクチク……。
保田先生は、あたしの肩を掴みながら引きとめようとしてて…
その力がすごく強くて、一瞬体のバランスが崩れたと思った瞬間…
あたしの目の前は真っ暗になった。
どうやら…
あたしは気を失ってしまったらしい…。
- 136 名前:PUNK 投稿日:2002年08月12日(月)17時27分14秒
- すんません。
本当、何も考えないでUPしてたら、
梨華ちゃん登場シーン抜かしちゃってました…
取りあえず、その部分を再UPです。
>127 オガマー様
レスありがとうございます。
謎なのは、自分が小説書いてること自体が一番の謎なんです(意味不明)
ってか、新作かなり期待してますぞよ!
>128 なっなし〜様
レスありがとうございます。
マターリがんがります。m(__)m
>130 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
過去に…あったのは…
うぐぅ。
まさかなのかどうなのか…。
ちょっと今週いっぱいは忙しくなりそうな予感なのですが、
一回くらいは更新できたら頑張ります。
- 137 名前:オガマー 投稿日:2002年08月12日(月)19時10分12秒
- ああ、なるほどそういうことかー。
確かにちょっとdドル…と思ったけど、これはこういう演出なのか?と
納得してました(笑
修正ごくろうさまですw
- 138 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月13日(火)08時02分06秒
- ふむふむ
- 139 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年08月17日(土)05時42分15秒
- ( `.∀´)ヤッスー、カコイイ!
こんな先生のいる学校っていいなぁ。
- 140 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月22日(木)07時53分33秒
- いい先生に出会えてたら学園生活が愉しかったかも
- 141 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時13分23秒
−1−
昇降口で、靴を履き替えてると背後から声を掛けられた。
「おはよ、吉澤」
振り返ると、朝から爽やかな笑顔の市井先輩が立っていた。
「あ、おはようございます…せ、先日はどーもでした」
ここ数日で色んな事がありすぎて、
市井先輩達と一緒に食事をしたのが、随分前の事のように感じられた。
「いや、こっちこそ…。ちゃんと帰れた?」
「酔っ払った梨華ちゃん介抱するのは苦労しましたけど、ちゃんと帰れましたよ」
「そっか…」
そのまま、お互い黙ってしまう。
恐らく、市井先輩もこの前の出来事を思い出しているのだろう。
- 142 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時15分21秒
「先輩は…あのぉ、その、大丈夫だったんですか?」
「えっ?」
「いやぁ…えっと、ちゃんと仲直り出来たのかなぁって…飯田先輩と…」
「ああ…ははははは。うん、まあ、仲直りっていうか…。あれは、完全に酔っ払いのたわごとだったしね。あたしが悪いところもあったんだけど…それは、それで…。何て言うのか…うん。ま、今まで通りっつーか…」
「要は仲直りしたってことですか?」
「まあ…そういう事…です」
先輩は照れくさそうに、笑った。
そんな先輩が妙にかわいらしかった。
「いや〜ん、先輩照れちゃって」
からかうように、先輩の頬を人差し指で突いてみる。
案の定、強烈なアタックを頭で受けてしまうのだが…
- 143 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時16分34秒
「大人をからかうな!」
「痛ってぇ…。なんですか、大人って…。あたしと1つしか変わらないじゃないですか…」
「高3からは、大人なんだよ」
「じゃ、あたしも来年は大人の仲間入りですね」
「吉澤は、ダメ。来年も子供。20歳過ぎても子供」
「じゃ、市井先輩だけはどんどん老けておばちゃんになって…」
先輩が再び手をあげたので、あたしは頭を抱え込む。
もう一発食らってしまったら、絶対にタンコブが出来るのは間違いないだろう。
しかしいくら待てど、先輩のアタックを受けることはなくて…
おそるおそる顔を上げてみると、先輩は手を上げたまま何か考えてるようだった。
「あら?どうしたんですか?」
「いや………うん」
先輩は、そのまま廊下に向かって歩き出した。
どうしたんだろう?
もしかして、あたしの発言に本気で腹を立ててしまってるのかな?
- 144 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時18分12秒
「ごめんなさい、ちょっとフザケ過ぎました…」
あたしは先輩の後を追いかけてから、頭を下げて謝罪した。
「は?」
「ちゃんと謝ります。ごめんなさい」
「何が?」
「え?怒ってるんじゃないですか?」
「あっ…。別の事、考えてた。ごめん」
「別の事?」
「何ていうか…あたし達は確実に年を取っていくんだなって思って…」
『あたし』ではなく『あたし達』という表現。
おそらく、それには飯田先輩も含まれてるんだろう。
「…例えば、目の前に困ってる人がいるとするでしょ?助けてあげたいんだけど、今の自分はとても無力で…すぐに助けてあげる事が出来ない。だったら、自分はそれを黙って見過ごせばいいのかな?それとも、無理してでも助けてあげるべきなのかな?」
「…あのぉ、おっしゃりたいことの意味がよく分からないんですけども…」
あたしは、先輩の言いたい事が理解出来なくて、素直に自分の思ったことを伝えた。
しかし、あたしの声が届いてなかったのか…先輩は、なおも会話を続ける。
- 145 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時20分42秒
「時間が解決してくれる事って多くあると思うんだ。それが一番楽な方法かもしれない。自分の傷が少なくて済むから。だけどその間…傷を負い続ける人がいるんだよ。開き直ったって、確実に…傷ついてて」
先輩はそのまま立ち止まると、あたしの肩を掴んだ。
「吉澤だって…」
真剣な眼差しで、あたしを見る。
「知ってるんでしょ?」
知ってる?
え?
何をですか?
そう口にしようとした時、誰かがあたし達の横を全速力駆け抜けていった。
あら?
今の梨華ちゃん?
「今の石川…だよね?」
市井先輩も駆け抜けていった人物の正体に気付いたようだ。
あたしと市井先輩は、全速力で走ってる梨華ちゃんの後ろ姿を呆然と眺めた。
- 146 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時22分30秒
「なんか、すごく急いでるようだけど、どこに行くんだか…」
「…んートイレ。な訳ないか…どこだろ?あ、あたし梨華ちゃんにジャージ渡さなきゃいけないんだ」
「ジャージ?」
「梨華ちゃんジャージ忘れてったみたいで…梨華ちゃんのお母さんに頼まれたんですよね」
手にもっている袋を先輩に見せつつ、そう答える。
「ジャージ忘れた事に気付いて取りに帰ったんじゃ…」
「けど、昇降口通り過ぎて行きましたよ?」
「そっか。っていうか、追いかければ?ジャージ渡さなきゃ行けないんでしょ?」
「ああ、そうですね。じゃあ」
「うん、また」
先輩にお辞儀をして、そのまま別れようとしたところで、さっきの会話を思い出す。
- 147 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時23分24秒
「あ、市井先輩!」
歩き始めてた先輩は再び立ち止まって振り返った。
「ん?」
「さっきの話。あたしが知ってるって…何をですか?」
「いや…うーん、何でもないや」
先輩は少し顔をしかめてから、笑顔で答えた。
「まあ、知らぬが仏だよ。じゃあ、石川によろしく」
そのまま、先輩はあたしに背中を向けて歩き出した。
知らぬが仏…
一体何なんだろうか?
少し気になったものの、あたしは梨華ちゃんを追いかけることにした。
- 148 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時25分41秒
−2−
追いかけてみたものの、梨華ちゃんの姿はすでに見当たらなくて…
走っていった方向から考えられるのは、進路指導室か、保健室か、
はたまた渡り廊下を行ったならば職員室か…。
今、梨華ちゃんを追いかけなくても教室に行ってクラスの子にジャージを預けた方が話が早いんじゃないかな?
うん。
その方が、梨華ちゃんに会わなくてもいいし…
ん?
あたしは梨華ちゃんに会いたくないのか?
いや、違う。
そういう訳じゃない。
じゃ、どういう訳?
うーん…
やっぱ本人に直接、ジャージを渡そう。
梨華ちゃんのお母さんとも約束したんだから。
そうだよね。
- 149 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時26分58秒
取りあえず、一番近い進路相談室に向かう。
扉をノックしたものの返事はない…
引き戸を開けてみたが、鍵がかかってた。
「ここじゃないか…」
次は保健室。
扉の前に立つと、中から圭ちゃんの声が聞こえてきた。
(…だいぶ……てきて……とりあえず…寝てるから……あとで病院に……)
誰かが具合悪くて寝てるんだろうか?
あたしは、ノックしてから扉を開けた。
「失礼しまーす…」
室内には誰もいないように思えたが、
ベッドを囲うように閉められているカーテンの中から圭ちゃんが顔を覗かせた。
「あら、吉澤まで心配して来たの?」
「え?」
心配して来た?
誰を?
「ひとみちゃん?」
続けて、梨華ちゃんも顔を覗かせる。
しかし、その目には涙をいっぱい浮かべていて…
- 150 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時29分52秒
「どうしたの?梨華ちゃん?」
あたしは荷物を近くの椅子に置いてからカーテンの中に入る。
ベッド上には眠りについている真希の姿があった。
「え?真希どうしたの?」
「…っき、さっき…倒れたんだって……」
梨華ちゃんは、涙声でそう答えた。
「え?」
真希が倒れた?
何で?
「取りあえず今は落ち着いてるけども……あとで病院に連れて行くわ」
「昨日は元気だったのに…真希ちゃん…」
梨華ちゃんは、心配そうに真希の寝顔を眺めていた。
あたしは、昨日のことを話しておいた方がいいと思った。
検査薬では反応なかっただけで、もしかすると本当は妊娠しているのかもしれないと思ったから。
- 151 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時31分50秒
圭ちゃんの側に近づくと、梨華ちゃんには聞こえないくらいの声で話掛ける。
「圭ちゃん…昨日…実は真希…」
「聞いてる。後藤から…」
圭ちゃんも同じく小さな声でそう呟いた。
「さ、そろそろチャイム鳴るわよ。あなたたちは、教室に戻りなさい」
「で、でも…真希ちゃんが」
「ちゃんと私が責任もって病院につれていくから」
「けど…」
「何かあれば連絡するから。とりあえず今は何も心配しないで授業を受けなさい。ほら、吉澤もボーっとしてないで」
圭ちゃんに肩を思い切り叩かれる。
そうだね。
今は、圭ちゃんに任せよう。
あたし達がここで心配してたって、何も解決しない。
「梨華ちゃん、教室に戻ろう」
あたしは、梨華ちゃんの腕をやや強引に引っ張ってカーテンの外に出た。
- 152 名前:ジャージを届ける吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年08月22日(木)17時33分51秒
「じゃあ圭ちゃん。真希をお願いします!」
自分の荷物を手にとってから、カーテンの中にいる圭ちゃんに向かって叫ぶ。
圭ちゃんは、一瞬こちらに顔を出してから笑顔でうなずいてくれた。
「先生…やっぱ私も一緒に病院に…」
再びカーテンの中に入っていこうとする梨華ちゃんをあたしは引き止めた。
「梨華ちゃん、真希は大丈夫だから。今は圭ちゃんに任せよう」
「でも………」
「大丈夫…うん、大丈夫だから。梨華ちゃん、心配しないで。真希は大丈夫だよ。」
何が大丈夫なんだか分からない。
でも自分にも言い聞かせたかった。
真希は大丈夫だと。
そのまま、あたしは梨華ちゃんの手を引っ張って保健室をあとにした。
- 153 名前:PUNK 投稿日:2002年08月22日(木)17時41分04秒
- 少々ですが、更新しました。
今、医者からスランプって言われてます。(嘘)
>137 オガマー様
レスありがとうございます。
あまりにもとびすぎてるので、そんな演出はありえないです(笑)
dどる。お、初めて使った→d
>139 ごまべーぐる様
レスありがとうございます。
保田先生が教師って、ちとありきたりなんですけどね…。
ベース〜のやっすーの方がかっけぇーっすよ。
ちょっと一匹狼なとこがグー!
>140 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
私もそう思います。
でも私もここの後藤さんのように、週一のペースで保健室でサボってました。
保健の先生がとてもいい人で、助かりました。
さて、これからは真面目に更新して
ゆきたいと
思って…
るんですけどもね…(弱気)
- 154 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月23日(金)08時12分19秒
- 市井は何を知っているのだろう?
後藤が思い悩んでることに関係があるんだろうか
うーん気になるぅ
- 155 名前:オガマー 投稿日:2002年08月23日(金)08時19分07秒
- 少々頭が混乱してきました(笑
読み返して整理したいと思いまふ(w
- 156 名前:ジャージを渡される石川梨華 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時22分41秒
−1−
ひとみちゃんに手をひかれながら、廊下を歩く。
次々と流れる涙を拭きながら…。
登校してきたら、真希ちゃんの机の上にはカバンはあるものの本人の姿はなかった。
どこに行ったんだろう?
そんなことを考えていた時だと思う。
職員室から戻ってきた子が教室に入るなり
「なんか、後藤さん保健室で倒れたらしいよ」
誰に言うでもなく、みんなに聞こえるようにそう言った。
真希ちゃんが倒れた?
私は、そのまま保健室までダッシュした。
保健室で眠る真希ちゃんの姿を見たら涙が出てきた。
保田先生は今は落ち着いてるからって言うけども…。
しばらくしてから、ひとみちゃんも保健室に来たんだよね。
ひとみちゃんの顔見たらもっと涙が出てきた。
自分は弱い人間だなって思う。
辛いのは真希ちゃんの方なのに。
ひとみちゃんは「真希は大丈夫だよ」って言ってくれるのに。
私には泣く事しか出来ない。
昔から何かあれば、私はただ泣くだけだ。
- 157 名前:ジャージを渡される石川梨華 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時24分12秒
−2−
教室の前に着くとひとみちゃんは私から手を離し、袋を差し出した。
「これ。梨華ちゃんのお母さんから預かったんだよ」
「え?」
「ジャージ。忘れてたでしょ?」
袋の中を覗くときれいに畳まれたジャージが入っていた。
「そうだ、忘れてた…」
「家を出たら、梨華ちゃんのお母さんが袋片手に困った顔してて。話聞いたら梨華ちゃんがジャージ忘れたって言うから」
「ごめんね、わざわざ…どうもありがとう」
「そんなお礼言われるほどのことでもないよ」
ひとみちゃんは少し照れくさそうに笑う。
「真希ちゃんの事…何かあったらすぐにひとみちゃんに連絡するね」
「うん」
「真希ちゃん…大丈夫だよね」
「うん…大丈夫だよ」
「絶対に大丈夫だよね」
「絶対に大丈夫だから…」
ひとみちゃんは私の頭をポンポンと2回、軽く叩いた。
それで私はまた涙をこぼしてしまう。
- 158 名前:ジャージを渡される石川梨華 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時25分27秒
「梨華ちゃん…泣いちゃダメだよぉ…」
私の頭を撫でてくれるひとみちゃんの手が温かかった。
「梨華ちゃんが泣いたら、真希が悲しむよ…」
「…うん」
「楽しいこと考えよう。そうだ。テストが終わって真希も元気になったら、またどっか3人で遊びに行こうよ」
私を元気付けようとしてくれるひとみちゃん。
やっぱり私はこの人が好きだなって思う。
「どこがいっかなぁ。また映画見る?あ、でも真希が寝るしなぁ…」
気付いたら、私は泣き止んで笑顔を見せていた。
「けど、ひとみちゃん部活休めないんじゃないの?」
「うーん…まあ一日くらいならサボれるっしょ。別に遠出しなければ、部活終わった後でもいいし」
「そうだね」
「あっ!あたし、梨華ちゃんちに一度遊びに行ってみたいな」
うち?
確かに考えてみると、ひとみちゃんがうちに遊びに来た事はないけど…
- 159 名前:ジャージを渡される石川梨華 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時26分42秒
「うちなら、別にいつでも構わないけども…」
「じゃあ、近々梨華ちゃんちにお邪魔させてもらおうかな」
「でも、あたしの部屋、汚いよ」
「そんなの承知してるよ」
「え?何で?」
「だって昔…あっ」
ひとみちゃんは、一瞬きまづそうな顔をしたものの、言葉を選びながら話を続けた。
「うん…子供の頃、梨華ちゃんちで遊んだ事があるから…真希と3人で…」
「そっか…」
「梨華ちゃん、お母さんに怒られてたよ。部屋片付けなさいって。だけど梨華ちゃん、面倒臭いって言って自分では片付けなかったからね、はははは」
ひとみちゃんは思い出したように笑う。
私には記憶にない思い出話…。
「なんか…ひとみちゃんがその頃の話するなんて初めてだね」
「…そ、そうだっけ」
「うん…真希ちゃんも…私に気を遣ってか…あまりその頃の話はしないし…」
「………ごめん、なんか変な話しちゃったね」
ひとみちゃんは申し訳なさそうな顔をした。
- 160 名前:ジャージを渡される石川梨華 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時29分33秒
「なんで謝るの?別にひとみちゃんは悪くないし、変な話でもないよ。それよりも、私は知りたいと思ってる。自分には記憶のない頃の話をもっと知りたい」
「…うん」
「教えてよ、ひとみちゃん…。その頃の話をもっと」
「うん…でも、あんまり覚えてないよ。幼稚園の頃の話だし…」
「少しでも覚えてることを…何でもいいの。こんなことがあったとか、あんなことして遊んだとか」
「そっか、分かった…」
ひとみちゃんは、なぜか寂しそうに唇を噛み締めた。
なんでだろう?
私に対して申し訳なく思ってるのかな?
記憶を失った私に対して…。
「じゃ、教室に行くね…」
手を振りながら自分の教室に向かうひとみちゃんを私は呼び止める。
「ひとみちゃん!」
「ん?」
振り返ったひとみちゃんの表情は、いつも私に見せてくれる笑顔で…。
- 161 名前:ジャージを渡される石川梨華 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時30分36秒
「同情しないでよ」
「え?」
「気をつかったり…しないでよ」
「何のこと?」
「私の頭のこと。怪我したことを」
「…梨華ちゃん」
「もっと対等に接してよ。私だって真希ちゃんと変わらないから。頭少し悪いかもしれないけど…私は私だから」
ひとみちゃんの表情から笑顔が消える。
それでも私は言葉を続ける。
「ひとみちゃんが、私に優しくしてくれるのは…同情からでしょ?そんなの私は嬉しくないよ…」
チャイムが鳴る。
廊下から先生達が歩いてきた。
ひとみちゃんは何か言おうと口を開いたけども、それを諦めたのか、そのまま黙って教室に入っていった。
その後ろ姿は、とっても寂しそうに見えた。
何で私は急にあんなことを言ってしまったんだろう?
何でひとみちゃんは何も答えてくれなかったんだろう?
色々な思いが交差したけど、ハゲタカに注意されて私は教室へと戻った。
- 162 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時32分18秒
−1−
保田先生が運転する車で、病院に向かった。
目が覚めてからも胃の痛みは治まることを知らない。
病院に着くなり一度倒れた事もあって、すぐに検査となった。
保田先生はその間、主治医となる医師と色々と話をしているようだった。
恐らく、妊娠の可能性があることも話してるのだろう。
検査はすぐに尿検査があった。
やっぱり妊娠の可能性が一番高いからであろう。
その検査が終わったら、今度は血を抜かれた。
中年の女性の看護婦さんが、私の左腕に針を刺す。
一瞬チクっとした後、注射器の中はあたしの血でいっぱいになった。
合計で5本分の血を取られた。
これで貧血になったりする人もいるんじゃないかな…。
その後は、胃カメラだ。
これが最悪だった。
バリウムというものを初めて飲んだ。
一気に飲めと言われても、そんなの無理。
何度も吐きそうになる。
涙目で看護婦さんに訴えてみたものの、笑顔で
「頑張って飲み干してください」って返されるだけ。
ちくしょう、飲んでやろうじゃないか!
- 163 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時33分12秒
その後も色々な検査は続き、かれこれ2時間以上。
結構検査と検査の間の待ち時間も長くて、それにちょっとイラついた。
検査よりも先に、この胃の痛みを取って欲しかった。
一通りの検査が済んだ後、今度は診断室のベッドに横になった。
点滴を打たれる。
病院というのは、何かにつけて針を使うんだな。
胃の痛みの方がすごくて、針の刺す痛みはちっとも感じなかった。
診断室のベッドに横になってから30分が過ぎた頃、
点滴のお陰か、胃の痛みがだいぶ治まってきた。
と同時に、今度は睡魔が襲ってくる。
このまま、心地よく眠ってしまおうか…
そう思った時、ドアの開く音が聞こえた。
「大丈夫?」
保田先生は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「検査でかなり疲れましたけどね。もう結果って出たんですか?」
「色々と調べてもらってるから…すぐには細かいところまでは分からないけども、とりあえずの報告をしようと思って」
「取りあえずの報告ですか?」
保田先生は、ベッドの横にあった古びた椅子に腰をかけた。
- 164 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時34分27秒
「うん、とりあえず、後藤が一番心配してるであろう結果から」
一番心配してるであろう結果。
あ、妊娠のことか。
「尿検査では妊娠の可能性はゼロですって」
ゼロ。可能性はない。妊娠はしていない。
「はぁ…やっぱ検査薬は正しかったんですね」
「そういうことね。で、まだ詳しくは分からないけども、胃カメラの結果。かなり胃が荒れてるって…」
「胃が荒れてる…うん。確かに胃がすごく痛いです」
「恐らく極度のストレスから来てるんじゃないかって話よ。それで生理が遅れてる…」
「そうですか…」
「あと、最近あまりちゃんと食事も取ってなかったでしょ?」
「あまり食欲なかったから…」
「そういうのが積み重なった結果が、これよ」
先生は、ヤレヤレといった表情をした後、笑顔を見せた。
- 165 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時36分42秒
「でもとりあえずは、一安心ね。ったく、最初は驚いたわよ…。急に倒れるんだもん」
「じゃあ『今から倒れます』って言って倒れれば良かったのかな」
「そういう問題じゃないでしょ…」
「自分でも驚きました。まさか倒れるなんて…」
「明日になったらもっと詳しい診断結果が出ると思うから。今日はゆっくり休みなさい」
「え?今日はあたし、この後どうするんですか?家に帰れる…」
「わけないじゃない。今日は入院よ。たぶん、明日の結果次第だと思うけど、2,3日は絶対安静だって」
「その間、ずっと入院ですか?」
「たぶんね…」
入院なんて初めてだ。
ちょっとだけワクワクする。
- 166 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時37分12秒
「へぇ、入院。ちょっとかっこいいね」
「ちっともかっこよくないわよ!ストレスで、しかもちょっとした栄養失調だったのよ。どこがかっこいいのよ」
「あ、でももうすぐテストなのに…勉強できないじゃん」
「勉強する気もないくせに」
「ばれました?」
「ばれてます。あ、そうそう。さっき、ご自宅に電話したけど、留守なのよね。親御さんの緊急の連絡先とかあれば教えて欲しいんだけど」
「あ、この時間は…お母さんがいるかもしれないけど、寝ちゃってると思うし…。お姉ちゃんは…今日は戻ってくるかな。お姉ちゃんとかでもいいんですかね?」
お姉ちゃんの携帯番号を先生に教えると、先生は電話してくると言って、部屋を出て行った。
考えてみると、カバンを教室に置きっぱなしだ。
たぶん、梨華ちゃんが持って帰ってくれるんだろう。
そういえば、今日は梨華ちゃんに会ってない。
私が倒れたこと知ってるのかな?
そして、そのことを心配してくれてるのだろうか?
- 167 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時44分03秒
−2−
先生が戻ってくると、部屋の移動となった。
私が入院する部屋は、いわゆる大部屋ってやつで、4人部屋の一番窓側だった。
ドラマとかで見る個室を勝手に想像してたので、ちょっと期待はずれだ。
2時をちょっと過ぎた頃、お母さんとお姉ちゃんが入院の準備を整えて、病院に来てくれた。
お母さんは、あたしの顔を見ると少しだけ涙ぐんだ。
お姉ちゃんも「人を心配させないでよ」と怒りながらも、目に涙を浮かべていた。
涙は人に移るのだろうか?
あたしも、そんな光景になぜだか目頭が熱くなってしまう。
保田先生は、お母さんたちと挨拶を交わした後、学校へ戻っていった。
明日、また来るわねと言って。
今回は、この人のお陰でかなり救われた。
感謝感謝です。保田先生。
- 168 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時45分51秒
- お母さんたちが入院手続きをすましてる間、あたしは病室を見渡してみる。
正面のベッドには同い年くらいの女の子が眠っていた。
何で入院してるのかまでは知らない。
だけど、身の回りにあるものからして、随分長く入院している事だけは分かった。
そのお隣は、お年よりのおばあちゃん。
この人も長い間、入院しているようだった。
私のお隣は、20代半ばくらいの水商売風の女性だった。
この病室内では、かなり目立つ金髪。
その容姿からは想像も出来なかったが、彼女は黙々と本を読んでいた。
「こんにちは」
あたしの視線に気付いたのか、彼女は本を閉じると笑顔で話し掛けてきた。
その顔を見て驚いた。
入院してるのに、化粧はバッチリで、しかもカラーコンタクトまで入れてたから。
「…ども、こんにちは」
あたしも、それなりの笑顔を返す。
「今日から入院?」
「はい。でもすぐに退院できると思います」
「それは何よりね」
「もう長いんですか?入院生活」
「ううん。先週から。お酒の飲みすぎでね、内臓やられちゃった」
関西訛りのイントネーションからだろうか。
妙に親近感がわいた。
- 169 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時46分58秒
「あたしはストレスが溜まりすぎたみたいで。そういうタイプの人間じゃないんですけどね」
「確かに。見た目はいまどきのギャルって感じやし」
あまりにもストレートなその言葉に、思わず吹き出してしまう。
「何で笑うねん」
「いや、物事をストレートに言う人だなと思って」
「だってね、ここで『そんなことないですわよ。あなた繊細そうよ』なんて言われたら、絶対にひくやろ?」
「ええ、ひきますね」
「だったら、思ったことバシって言った方がええねん」
何を満足してるのか、彼女は頭をウンウンと頷かせる。
「ああ、あたし中澤。中澤裕子。裕ちゃんって呼んでね」
そう、ウィンクしてみせる中澤さんは、ちょっとお茶目な人だ。
- 170 名前:後藤真希の検査 其の一 投稿日:2002年08月26日(月)23時48分03秒
「あたし、後藤真希って言います。好きなように呼んでください」
「好きなようにって。普通、『友達からはゴマキって呼ばれてます、えへっ!』とかって言わない?」
「別にゴマキって呼ばれてないですし…それに『えへっ』って…」
「例え話やないのぉ。んじゃぁ、後藤って呼ぶわ」
「それ、まんまですね…」
「まんまじゃ、悪いんか?」
ウィンクしたり、眉間にしわ寄せて睨みつけたり、表情の忙しい人だ。
「いや、それで構わないです」
「あと、敬語はやめてな。なんか、そういうのむず痒いっちゅーか…」
「分かりまし…」
そこまで言った後で、再び睨まれる。
「んあ、分かった」
「それで良し!」
2,3日の入院生活も、この中澤さん…
いや、裕ちゃんのお陰で少しは楽しくなりそうな気がする。
- 171 名前:PUNK 投稿日:2002年08月26日(月)23時54分33秒
- 更新完了です。
うぁー、全然進まない。
進めない。
この話っていつ終了するんだろうか…。
>154 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
本当、いちーちゃんは何知ってるんだったか、自分も分からなくなってきますた。
>155 オガマー様
レスありがとうございます。
自分も分からなくなってきたので明日読み返してみます(いい加減作者)
最近どーも気力がなくって。
なのに全然違う短編書いてみたりして。
一体、何様のつもりなんだ?って自分を小一時間(ry
そんなこんなで、明日から再び執筆がんがります。
- 172 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月27日(火)01時14分26秒
- 永延にですよ。永遠に・・・
- 173 名前:オガマー 投稿日:2002年08月27日(火)01時59分57秒
- でも、なんとなく進展している雰囲気しますよ?
短編書いてるんスか?
PUNKさんの短編っていうのも読んでみたいなぁ♪
続きがんがってくださいねw
- 174 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年08月27日(火)08時02分25秒
- 三人三様の辛さ・・・
うーん それぞれが幸せになるってどうすりゃぁいいんだろう
- 175 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)20時45分35秒
- 忙しいのでしょうか…
更新待ってます
- 176 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月05日(木)20時48分30秒
- マターリと待ちますだ
- 177 名前:PUNK 投稿日:2002年09月11日(水)16時25分55秒
- >明日から再び執筆がんがります
こう言っておきながら、全然続きが書けないでおります。
放棄するつもりは全然ありませんが、しばらくは更新できないと思われます。
こんな駄文にも関わらず、読んでくださってる方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ごめんなさい。
>172 名無し娘。様
レスありがとうございます。
永延にですか…永遠…。そんな気がします。
>173 オガマー様
レスありがとうございます。
短編、消しちゃいました。ダメ人間の証です。
助けて下さい…。
>174&176 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
更新できずに申し訳ないです。
3人の幸せ…。はぁ…。幸せにしてあげなきゃね…。
>175 名無し読者様
レスありがとうございます。
忙しくないのに、更新できなくてごめんなさい。
毎日、書かなきゃとファイルを開いてはいるのですが…
頑張ります。
- 178 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時13分09秒
−1−
放課後、梨華ちゃんの教室前の廊下。
あたしは、そこにしゃがみこんで、梨華ちゃんのクラスのホームルームが終わるのを待つ。
お昼休みに、梨華ちゃんから真希が病院に言った事の報告を受けた。
放課後には何らかの結果が出てると思うとの事だった。
それにしても、このクラスはホームルームが異常に長い。
担任がハゲタカだから仕方がないのだが…。
廊下にしゃがむこと15分。
やっと梨華ちゃんの教室から号令がきこえた。
うちのクラスでは、日直が号令を掛ける係だが、梨華ちゃんのクラスでは違うだようだった。
だって、今日梨華ちゃん日直のはずなのに、聞こえてきたのは全然違う人の声だったから。
ドアが開かれて、真っ先にハゲタカが出てきた。
一瞬目が合ったので、あたしが小さくお辞儀をする。
なのに、ハゲタカはそのまま歩き去っていった。
なんだよ、感じ悪りぃ。
- 179 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時14分16秒
数名の生徒に続いて、梨華ちゃんも教室から出てくる。
「ごめん、ひとみちゃん。かなり待たせちゃったよね」
梨華ちゃんは、申し訳なさそうに顔の前に手を合わせた。
「ううん、そんなに待ってないよ」
笑顔で梨華ちゃんに答える。
なのに梨華ちゃんはちょっと曇り顔。
ああ、そっか。
梨華ちゃんはもっと対等に接して欲しいんだっけ。
でも、仕方ないんだよ。
ここ数年の条件反射っていうのかな。
梨華ちゃんを見たら「優しくしなきゃ」と思ってしまう。
「ハゲタカのホームルームって長いよね。しゃがみすぎて足がしびれたよ、あはははは」
間が抜けたようなあたしの笑い声は、ちょっとタイミングが遅かったようで…。
- 180 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時15分52秒
「ひとみちゃん…ごめん。朝、私が言った事は忘れてね。真希ちゃんのこととかあったし…私ちょっと変だったんだと思う」
梨華ちゃんが作った笑顔はちょっと不器用だったけども、あたしはその言葉に無言で頷いておく。
そのまま、二人の間に重い空気が流れた。
梨華ちゃんは、俯いた状態で。
あたしは、そんな梨華ちゃんを上から見下ろすような感じで…。
昨日の真希の言葉を思い出してしまう。
『……そうだよ、梨華ちゃんの好きな人は……ひとみだよ』
今、目の前で俯いている人は、どうやら、あたしの事を好きでいてくれているらしい。
ねえ、梨華ちゃん。
こういう時は、あたしは何て言えばいいんだろう?
どうすれば、梨華ちゃんは喜んでくれる?
どうすれば、梨華ちゃんを傷つけないで済む?
- 181 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時18分09秒
「あ、そういえば保田先生がもう学校に戻ってきてるみたい」
真っ先に伝えたかったであろう言葉を、梨華ちゃんはまるで今思い出したかのように口にした。
何だか申し訳ない気持ちになってしまう。
あたしがもっと上手なセリフを言えたなら、梨華ちゃんに気を遣わせないで済むのに…。
「だから、今から話を聞きに保健室に行こうと思って…」
視線を合わせないで淡々と話す梨華ちゃんに対して、あたしはどんな表情をしてるんだろうか?
「ひとみちゃんも一緒に行く?」
梨華ちゃんは顔をあげてあたしに尋ねた。
やっと梨華ちゃんと視線が合う。
でも、そこではっとした。
だって…
梨華ちゃんが目に涙を溜めてたから…
- 182 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時19分44秒
「…梨華ちゃん。どうしたの?」
「なんでもない…。ごめんね」
再び無理に笑顔を作ってみせる梨華ちゃん。
「いや、だって…」
あたしは腕を伸ばして、梨華ちゃんの肩に手を置こうと。
「ごめん。何だろ?変だよね、私…」
梨華ちゃんは、あたしの手を避けるように退いた。
「変って…べつに…」
「変だよ。変じゃん。ひとみちゃんと話すと…ひとみちゃんだって変だよ」
とうとう梨華ちゃんの目から涙がこぼれてしまう。
ずるいよ、梨華ちゃん…。
何で泣くの?
あたしは何をしてあげればいいの?
- 183 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時22分42秒
「全然変じゃないよ。あたしは変なのかもしれないけども…。梨華ちゃんは変じゃないから…。行こ、保健室に…」
あたしは言葉を知らない。
梨華ちゃんの涙を止めてあげることが出来るセリフなんて分からない。
けど、今自分が梨華ちゃんに掛けた言葉が支離滅裂なことだけは分かる。
梨華ちゃんは変じゃないから…保健室に行こう
他の人が聞いたら、不思議に思う会話だね。
「…ふっふふふ」
今言った自分の言葉が可笑しく思えて笑ってしまった。
梨華ちゃんは、突然笑い出したあたしを不思議そうに見つめる。
「やっぱ変かもしれない。あたしも、梨華ちゃんも。あはは、変だよ」
「え?」
「いいじゃん、変でも。何で変なのかが分からないけど…変だって構わないよ」
「ひとみちゃんの言いたい事がよく分からないよ…」
梨華ちゃんは、ちょっと拗ねたように口を尖らせる。
- 184 名前:待ち人 吉澤ひとみ 其の一 投稿日:2002年09月11日(水)18時23分41秒
「自分でもよく分からない。けど、それでもいいっかなぁって。だから、行こ?保健室に」
あたしは手を梨華ちゃんに差し出す。
梨華ちゃんは、一瞬戸惑いながらも笑顔を作ってあたしの手を掴んだ。
そのままあたし達は廊下を歩き出す。
梨華ちゃんと手を繋ぎながら。
これでいいんだ。
梨華ちゃんに『対等に接してよ』と言われたって…
あたしは今まで通り何も変わらない。
梨華ちゃんが笑顔になってくれるなら…
あたしは≪梨華ちゃんが好きなひとみちゃん≫でいようと思う。
- 185 名前:PUNK 投稿日:2002年09月11日(水)18時34分56秒
- 短めですが、久々に更新しました。
この後はまったくもって書いてません。
明日、異常に頑張ってみようとは思ってます。
前向きに前向きに。エイエイエオー
- 186 名前:オガマー 投稿日:2002年09月11日(水)20時12分47秒
- 僕でPUNKさんを助けられるのなら、助けますが、何か?
がんがってください。
なんだか優しい気持ちになれました。
- 187 名前:オガマー 投稿日:2002年09月11日(水)20時15分13秒
- ageてしまいました。どうやらダメ人間は僕のようです。
すみません、すみません。
- 188 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月11日(水)20時52分58秒
- むーん 切ない
>作者殿
あっしもなんかお手伝い・・・
って駄レスすることしか出来ませんが・・・
>オガマーさん
ドンマイ
- 189 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時30分16秒
夕方になって、梨華ちゃんがキレイな花束を持ってお見舞いに来てくれた。
梨華ちゃんは、病室に入ってくるなり目に涙をいっぱい溜めて走ってきて…
「真希ちゃん、大丈夫!?」
点滴台さえも倒しそうな勢いで、梨華ちゃんはあたしに抱きつく。
「あ、うん。大丈夫だよ。それよりも梨華ちゃん、ちょ、重た…ってか、点滴が…」
「あっ、ごめんね…」
「ははは、なんかドラマみたいなシチュエーションやね」
お隣の患者さん…裕ちゃんはニヤニヤと笑いながら、慌てて点滴台を支えた梨華ちゃんに話し掛けた。
「あ…どうも…」
梨華ちゃんは裕ちゃんに、恐縮そうに頭を下げた。
いや、たぶん裕ちゃんの容姿に怯えてたのかも。
- 190 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時32分58秒
「どうもぉー」
裕ちゃんもわざとらしいくらいの笑顔で梨華ちゃんにお辞儀する。
で、そのまましばらくの沈黙。
すると裕ちゃんはあたしの事を睨みだす。
え?あたし何かしましたか?
すっとんきょな顔していると裕ちゃんは顎で梨華ちゃんのことを指した。
は?何?
裕ちゃんは軽く舌打してから、ブツブツと小言を呟く。
モソモソと座りなおすように身体を動かし、横髪を耳に掛けながら、再びわざとらしい…ちょっと不気味な感じの笑顔で
「こんにちは。中澤裕子って言います」
と、妙に甲高い声で梨華ちゃんに挨拶。
もしかして、梨華ちゃんの声色を真似たんだろうか?
「あ、ごめんなさい。私、石川梨華…17歳です。あの、真希ちゃんとは家が隣の者で、その…」
梨華ちゃん、あたふたと挨拶。
「そんなビビらんでも…。っつーか、こういう時の挨拶は共通の知人である後藤がするもんやろ」
再び、裕ちゃんに睨まれる。
あ、そういうことか。
あたしに梨華ちゃんを紹介しろという意味で睨んでたのね。
にしても、その眉間のしわ…。今なら10円玉挟めるんじゃないかな?
- 191 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時34分45秒
「あ、ごめんなさい。えっと、梨華ちゃんです」
梨華ちゃんを裕ちゃんに紹介。
「もう名前は聞いたわ」
「えっと、この人、お隣の患者さんで中澤さん」
今度は裕ちゃんを梨華ちゃんに紹介。
「さっき自分で挨拶した」
テンポの良い突っ込みが入る。
「えーっと、梨華ちゃんは隣の家に住んでて…」
「それも聞いた」
「で、学校も同じでクラスも一緒で」
「ってか、石川さん。このゴマキちゃんはいっつもこんなノンビリ調子なん?」
裕ちゃんは、あたしの言葉を無視して梨華ちゃんに尋ねる。
何だよ、紹介しろっていうからしてあげてるのに…
その前に、ゴマキ言うな…。
「え?ゴマキ……。あ、はい。真希ちゃんは、ノンビリというかマイペースというか」
「ほほーう。マイペースね。ま、マイペースな人間でもストレスは溜まるっちゅうことやね。あ、ごめんな。変な姉ちゃんだと思わんといてや」
充分に変なおばちゃ…姉ちゃんだとは思う。
けどもそれは自分の中に閉まっておこう。
これ以上ストレスを溜め込みたくはない。
- 192 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時36分34秒
「まぁ、何もないけどゆっくりしてってや。お姉さまは、散歩に出かけます。でわ、失礼」
裕ちゃんは自分のベッドから降りると、私のベッド周辺にあるレールカーテンを閉めてくれた。
「面白い人だね。中澤さんって」
カーテンが閉められるのを見届けた後、梨華ちゃんはクスクスと笑いながら言う。
「うん。でも見た目ちょっと怖いし、若いんだか、おばちゃんなんだか…」
と口にしたところで、一瞬カーテンがユラユラと動く。
その隙間からは、するどい視線が…
早く散歩に行けよ。
「ああ、でもいい人だと思う。うん、いい人だよ、面白いし、キレイな人だしぃ」
わざとらしいくらいに大きな声を出す。
すると機嫌の良さそうな鼻歌が聞こえてきた。
とても単純な人らしい。
「あ、これ花束。食べ物にしようかなって思ったんだけど、保田先生から真希ちゃんは胃炎だって聞いたから…」
「わざわざいいのに…でもありがとうね」
梨華ちゃんから花束を受け取り、ベッド横にある台の上に置く。
- 193 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時37分54秒
「そっか…花瓶がないよね。ごめん、どっかから借りてくるね」
「いいよいいよ。後でお母さんかお姉ちゃんに持ってきてもらうから。少しくらいなら水に差さなくても大丈夫でしょ?」
「大丈夫だと思うけど…お母さんとか来てるの?」
「うん、お姉ちゃんと一緒に来たけど、もう帰ったよ。だって、ここにずっと居てもらってもあんまし大した病状じゃないしさ。お母さんは仕事もあるしね。お姉ちゃんが夜また来てくれる」
「けど、お母さん達も心配したでしょ?」
「うん。まあ、梨華ちゃんみたく泣きながら抱きつきはしなかったけどね」
「だって…本当に心配したんだから…真希ちゃんが倒れるなんて…」
「…ありがとう、梨華ちゃん」
梨華ちゃんがお見舞いに来てくれたこと。
花束を買ってきてくれたこと。
病室に入るなり目を潤ませながら抱きついてくれたこと。
すごく嬉しかった。
倒れたあたしの事を、やっぱり梨華ちゃんは心配してくれてたんだ…。
- 194 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時39分29秒
「あ、そうだ。ひとみちゃんもね、今こっちに向かってるの」
梨華ちゃんは、思い出したかのようにひとみの名前を口にする。
とびっきりの笑顔で。
ひとみって名前を発するだけで嬉しくなるものなのかな?
「ひとみ?一緒に来なかったの?」
「うん。途中まで一緒だったの。でも電車に乗る前に、忘れ物に気付いて…ひとみちゃんそれを取りに行ってくれてて」
「忘れ物?」
「そう。真希ちゃんの荷物を。カバン学校に置きっぱなしでしょ?ホームルームまではちゃんと覚えてたんだけどハゲタカの長い話聞いてる間に忘れちゃって…」
「いいのに。別にカバンなんていつでも…」
「ダメだよ。だって、入院してる間でもテスト勉強するでしょ?」
「え?入院してる時くらい勉強の事は忘れたいよ」
「ダメダメ、真希ちゃん。補習受けたいの?」
「いや、それは…勘弁だけど…」
- 195 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時41分06秒
「せっかく、ひとみちゃんが取りに行ってくれてるんだし。ちゃんと勉強してよね」
「はいはい。梨華ちゃんにとって、あたしが補習受けることよりも大好きなひとみちゃんが取りにいってくれた教科書を開かない事の方が悲しいんだったら、ちゃんと勉強しますよ」
ちょっと嫌味な言い方だったかな。
と思ったら案の定、梨華ちゃんは口を尖らせていた。
「…ひどいよ真希ちゃん…。そんな言い方…。私は真希ちゃんの事を心配して…」
「ごめん…ちゃんと勉強するってばさ。自分の為に」
それでも梨華ちゃんは拗ねていて…
「ああ、もう。ごめーん、悪かったよ。だって梨華ちゃん、ひとみの事になるとムキになるからさぁ。ちょっと面白くてからかいすぎた。ごめんなさい」
丁寧に頭を下げて謝罪。
これなら許してくれるだろう。
うん、こんだけ謝れば…
って、あら?
- 196 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時42分39秒
「………………」
「梨華ちゃん?」
何の返事もないので恐る恐る頭をあげてみる。
梨華ちゃんは何か考え込んでいる様子で…。
「…どうしたの?」
「やっぱ、ムキになってるよね?」
「え?何が?」
「ひとみちゃんの事…私、ムキになってるよね?」
「いや…ムキになってるっていうか…。でもまあ、好きな人の事だったら誰だって…」
「たぶんね、バレてる。私の気持ち…ひとみちゃんに」
梨華ちゃんの言葉にドキっとした。
昨日…あたしは、ひとみに話してしまったから。
その事で、ひとみは梨華ちゃんに何か言ったんだろうか?
「何でそう思うの?」
探るように、梨華ちゃんへ質問。
こういう時のあたしは、ちょっとずるい。
「だって…自分でも分かるもん。ムキになってるって…。だからぎこちなくなっちゃう。普通に話をしたいって思ってっても…ひとみちゃんの前だとギクシャクしちゃう…」
どうやら、あたしがひとみに話してしまったことは知られてはいないみたい。
それで胸を撫で下ろす。
って、やっぱあたしはずるい…。
- 197 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時46分26秒
「でもひとみって鈍感だからね…。それくらいの事じゃ気付かないんじゃないの?」
「ううん。今日ね…ひとみちゃんに言ったの。もっと普通に接して欲しいって。真希ちゃんだって気付いてるよね?ひとみちゃんが…私に優しくしてくれる理由。頭の…怪我のことがあるから…。私に同情してるから…」
違うよ、梨華ちゃん。
ひとみは同情してるんじゃない…。
責任を感じてるから…だからひとみは、梨華ちゃんに…
「ひとみちゃん…すごく困った顔してた…。そういうこと言う私に…私の気持ちに…気付いたから…」
梨華ちゃんはおでこの傷跡にそっと触れた。
その姿を見て、あたしの胃は再びチクチクと痛みだす。
そうだ。
これが原因だっけ……。
「怪我を…してなかったら?って考える事があるの。そしたら、もっと私に対するひとみちゃんの態度は違ったんじゃないかなって…。けど、傷を負ってる私にひとみちゃん…優しくしてくれて…」
梨華ちゃんの目から涙がこぼれた。
あたしの胃は更に痛んで…
- 198 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時48分29秒
「この傷がなかったら…私はひとみちゃんを好きになってなかったのかなぁって…」
泣きながらも無理して笑顔を作る梨華ちゃんを、助けてあげられるのは誰なんだろう?
ひとみ?それともあたし?
今、理解できるのは梨華ちゃんが泣いているということ。
あと、胃が痛いということ。
「梨華ちゃん…」
あたしは手を伸ばして、梨華ちゃんのおでこの傷に触れた。
「あたしが知ってる梨華ちゃんは…おでこに傷がある梨華ちゃんだから…」
手でそっと前髪を持ち上げる。
「この傷がなかったらなんて…ありえないんだよ」
あたしは、梨華ちゃんの傷に口元を近づける。
梨華ちゃんは、目を閉じる。
いつもの儀式…。
自分を奮い立たせるための…
唇が梨華ちゃんの傷に触れて、あたしは梨華ちゃんの体温をそこに感じた。
少しだけ、胃の痛みも治まったような気がした。
- 199 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時49分39秒
「おーい、ゴマキちゃーん!お客さ…あっ。すまん…」
背後からカーテンの開かれる音と同時に裕ちゃんの声。
梨華ちゃんのおでこから唇を離して振り返ると、裕ちゃんがいて…
その後ろには、二つのカバンを手にしたひとみが立っていた。
「ひとみ…」
「ひとみちゃん…」
明らかに自分が動揺しているのが判った。
梨華ちゃんの声も震えていた。
今の…梨華ちゃんの傷跡にキスをしたこと…
ひとみに見られた?
- 200 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時51分05秒
「あっ、いやぁ、すまんね。この子がね、廊下をウロウロ迷うように歩いてて…その、ほら、同じ制服やし、君らの友達だろうと思って連れて…」
裕ちゃんも、この気まずい雰囲気を感じ取ったのだろう。
まるで何か言い訳するような口調だった。
「せやから、うん…。すまん、いきなりカーテンを開けて…」
頭を下げる裕ちゃんに梨華ちゃんが慌てて声を掛ける。
「いや、その…別に怪しい事をしてた訳じゃないんで…そのぉ、真希ちゃんが落ち込んでる私を…」
何か救いを求めるような目で梨華ちゃんはあたしを見た。
「そうそう。梨華ちゃんが何か落ち込んでたんで…。別に…変な意味じゃないんですよ」
頭の中が真っ白だった。
確かに気まずい事をしていた訳じゃない。
でも…ひとみは…
見てはいけないものを見てしまったような顔をしていて…。
- 201 名前:後藤真希の入院生活 其の一 投稿日:2002年09月20日(金)18時53分04秒
「そうなん?何か変なこと考えちゃって…やーねぇ…おばちゃんは、はははは」
裕ちゃんは笑う。
「そうですよ、はははは」
梨華ちゃんも笑う。
「裕ちゃん、いやらしいよ。はははは」
あたしも笑う。
何がおかしいんだろ。
とりあえず、みんなして「はははは」と笑う。
笑っておけば流せると思ったから。
はははははは…
「あー、ちょっと家に電話をしてくる…うん。帰りが遅くなること言ってなかったから…」
けど、笑うことでは流せない人物がいて…。
ひとみは二つのカバンを持ったまま、病室を出ていった。
その後ろ姿を呆然と見つめながら…私達の笑い声も小さくなっていく。
あたしは梨華ちゃんの傷跡にキスをした。
ひとみは、それを目の当たりにした。
見たくなかったはずだ。
梨華ちゃんの傷を…
自分の責任として感じてるから…。
あたしだって、ひとみだけには見られたくなかった…。
- 202 名前:PUNK 投稿日:2002年09月20日(金)19時00分55秒
- 更新完了です。
えっと、何だろ?
この小説は何が書きたいのかがちょっと自分でも判らなくなってきてるような気がしますが…。
>186 オガマー様
レスありがとうございます。
ええ、助けてください。マジで。
そうですね、とりあえず夜な夜な遊んでくださいな。
age,sageはそんなに気にしないで下さい。
別にsageにこだわってるという訳でもないんで…。
でもageたんですね…オガマーさん…。そうか。
>188 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
オガマーさんへの励ましもどうもです。
いやはや、毎度ながらレス頂けると、
「よーしっ、続き頑張っちゃうぞ!」って思うのですが、
すぐに「やっぱ無理」になってしまうのが、最近の傾向でして…。
いつもありがとうございます。m(__)m
そんなこんなで、ごっちん卒業も数日後に迫ってまいりました。
ああ、ごっちん…。
今まで楽しませてくれてどうもありがとう。
これからも勝手に楽しませて頂きますので、ソロ活動…頑張って下さい。
- 203 名前:オガマー 投稿日:2002年09月20日(金)20時37分58秒
- コワイよぉ…。
レス読んだ途端に小説の感想が吹き飛んだよぉ…(ガクガクブルブル
ってのはおいといて。
真希ちゃんの気持ちが気になります。
ひとみちゃんの気持ちも。
梨華ちゃんの気持ちが今は一番わかってるのかな?
更新お疲れさまです。
祐ちゃんおもろい。
- 204 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年09月21日(土)20時20分48秒
- 衝撃的なシーンだな
心の傷は癒されるのだろうか?
今日から3dayですね
あっしは明日夜に
- 205 名前:コウ 投稿日:2002年09月27日(金)22時00分53秒
- うぅ・・・
真希ちゃんは一体・・・
続きが気になって気になって眠れません。
真希ちゃんの大きな愛と衝動的な行動がツボです。
作者さん、期待してます。
- 206 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)18時55分28秒
−1−
病室を出たものの、何処へ向かえばいいのかが分からない。
このまま家に帰るわけにも行かない。
しばらくしたら、またあの病室に戻らなくてはならない…。
当てもなくただ、病院内を歩いてみる。
息が苦しい。
真希が梨華ちゃんのおでこにキスをした。
ただ、それだけのこと。
それだけのことなのに、何でこんなに息が苦しいのだろう?
さっき、真希の荷物を取りに学校へ戻った。
カバンを手にしたらすぐに病院に向かうはずだった。
あの子に会うまでは…そのつもりだった。
真希達のクラスに入ると、一人の生徒が日誌をつけていた。
その時から嫌な予感はしてたんだ。
- 207 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)18時57分06秒
「真希の机ってそこだよね?」
その子が座る後ろの席を指差して、あたしは訊ねた。
彼女は特に言葉を発しないまま頭だけを縦に振って答えた。
沈黙ほど嫌な空気はない。
あたしは、特にその子と話したい訳でもないのに、なぜか話し掛けてしまう。
「今から真希の病院に見舞いに行くから、カバン持っていこうと思って…」
それでも彼女は特に何か言葉を発するわけでもなく淡々と日誌をつけていた。
あら?
今日の日直って確か…。
「今日の日直って…梨華ちゃんじゃないんだ?」
それを訊ねたが間違いだったのかな。
梨華ちゃんの名前を出さなきゃ良かったんだ。
そのまま、カバンを手にしてとっとと教室を出てしまえばよかったのに…。
彼女は手に持っていたシャープペンをそっと机に置くと、静かに振り返った。
「日直は私だけど…それが何か?」
表情も作らず、少しだけ不機嫌そうに答えた彼女には好感が持てなかった。
真希が胸倉を掴んでしまった気持ちが少しだけわかった気がする。
- 208 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)18時59分14秒
「いやぁ…梨華ちゃんから今朝、日直だって聞いてたから…」
「石川さんの勘違いじゃないの?」
「そっか…」
「石川さんって…そういう間違い多いしね」
そういう間違い?
彼女の言い方には何処となくトゲトゲしさを感じた。
「梨華ちゃんは、結構そそっかしいところあるからね。じゃあ、失礼しました」
梨華ちゃんへのあたし出来る精一杯のフォロー。
これ以上彼女との会話と続けたくはなかったあたしは、真希のカバンを手にしてから教室を出て行こうとした。
「ねえ、吉澤さん」
呼び止められて、足が止まった。
聞こえないフリして出て行けばいいのに…。
出て行くことは出来なかった。
「私…昔吉澤さんに手紙出したの覚えてる?」
「……うん…覚えてるよ」
振り返ると彼女は少し睨むような眼差しであたしのことを見ていた。
何となく嫌な汗をかいてしまう。
「どうして…あの時、何の返事もくれなかったの?」
「……いや…。その気持ちに…気持ちは嬉しいけど…」
気持ちは嬉しいけど、それに答える事は出来ないから…。
ただ、それだけのことだった。
- 209 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時00分36秒
「もうね、別に今はどうでもいいんだ。けどね、手紙出すにはそれなりに勇気がいったんだよ。それだけは覚えててよね」
「ごめん…。うん…ちゃんと覚えておく」
「あと…最後に質問してもいいかな?」
「うん、どうぞ…」
「子供の時、石川さんを怪我させたって本当なの?」
今自分が立っているのか座っているのかが分からない感覚。
もしかしたら倒れているんじゃなかろうか?
いや、立ってる。
ちゃんと二本足で立っているはず。
だけど、座り込みたい気分…。
大声も出してみたい。
いや、廊下を走り出してみようか?
それはみっともない、やめておけ。
じゃ、どうすればいい?
- 210 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時02分37秒
「やっぱ本当なんだ?」
彼女の声で現実に引き戻される。
「うん、本当だよ」
自分の声なのに、違う人の声みたいだった。
「それは、わざとなの?」
この人の声は、あたしの脳に直接響いてくる。
聞こえないように耳を塞いでも、たぶん、直接響いてくるのだろう。
「どうだろ…。もしかしたらわざとだったのかもしれない」
「何で?」
何で?何であたしは梨華ちゃんをブランコから突き落とした?
あたし、わざと突き落としたんだっけ?
- 211 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時03分38秒
「たぶん…」
そうだ。やっぱあれば事故なんかじゃないよ。
あたし、わざと梨華ちゃんをブランコから突き落としたんだ。
今なら児童相談所の人に素直に答えることが出来るよ。
ああ、あたしは悪い子だったんだね…本当に。
「行かせたくなかったから。梨華ちゃんを学校に…行かせたくなかった…だから…」
彼女は何か怖いものを見るような目をしていた。
あははは、彼女は今、あたしの事を完全にびびってるんだろうな。
だって、自分にとって憧れの存在だったはずの吉澤さんが…狂気じみたこと言いだしたから。
でもね、嘘じゃないよ。
たぶん、本当のこと。
「…あたしはわざと梨華ちゃんをブランコから突き落としたんだよ」
- 212 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時04分45秒
−2−
病院内を歩いてると売店を見つけた。
別に飲みたくもなかったが、ジュースを買った。
それから、目の前あったソファーへ腰掛ける。
さて、どうしようか。
これを飲み終えたら病室に戻った方がいいのかな。
でも、どんな顔をすればいいのだろう。
どんな言葉を交わせばいいのだろうか。
「おう、姉ちゃん!ここにおったんか?」
横から声を掛けられて見上げると、先ほど真希の病室へ案内してくれた金髪の女性が立っていた。
「全然戻って来へんから、また迷子になってんちゃうかなって…ってか、自分。美味そうなもん飲んでんなぁ」
金髪のお姉さんは、あたしが手にする缶ジュースをまじまじと見つめた。
「ああ、喉渇いたぁ…。でも財布持ってないしぃー」
わざとらしいくらいに甲高い声を出して言う。
要は「おごれ」ということが言いたいのだろう。
- 213 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時05分45秒
「何がいいですか?おごりますよ」
「え?ホンマぁ?悪いなぁ。同じのでええよ」
あたしは売店で同じ飲み物を買ってから、手渡した。
「何か悪いなぁ。無理ヤリおごらせちゃったみたいで…」
明らかに無理ヤリおごらされていた。
そう思ったがあえて口には出さなかった。
こういう人には1つ物を言えば10返ってくるだろうから。
「あ、そういえば名前は?あたしは中澤裕子。裕ちゃんって呼んでな」
中澤さんこと裕ちゃんは手を差し出した。
「吉澤…吉澤ひとみって言います」
あたしも中澤さんに手を差し出して握手をする。
人とこういう形で握手するなんて初めてだ。
これが世間のコミュニケーションというものなのだろうか。
いや、この人ならではなのだろう。
「あんな、一つお願いがあるんやけど…」
中澤さんは、人間にすがる子猫のような目つきであたしのことを見た。
何だ?次は何をおごれというのだろうか?
- 214 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時10分02秒
「これ、開けて」
中澤さんはあたしが買ってあげた缶ジュースを差し出した。
おい、いい年して(何歳かは知らないが)缶ジュースすら開けられないのか?
「爪がな…ほら、見て?キレイでしょ?」
中澤さんは自分の爪をあたしに見せる。
とても長くてキレイなネイルアートが施された爪。
「付け爪なんやけどね。だから自分では開けられんの」
なるほど。
飲み物は飲みたいが、爪を傷つけたくはない。
あたしは中澤さんの缶ジュースのフタを開けてあげた。
中澤さんは缶ジュースを受け取るとゴクゴクと勢いよくジュースを飲んだ。
本当に喉が渇いていたのだろうか?
10秒足らずでほどんどを飲み干したようだった。
「はぁ、美味しい。あれなん?ひとみちゃんは、ゴマキちゃんのクラスメイト?」
は?
ゴマキちゃん?
真希のことだろうか。面白いあだ名をつけたりするものだ。
- 215 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時11分09秒
「クラスメイトじゃないですけど、同じ学校です。っていうか、家が近所で…」
「お、じゃあ、あのアニメ声の…えっとなんて子だっけ。えーと…」
「梨華ちゃん?」
「そうそう、梨華ちゃん。じゃあ、3人とも幼馴染みなんや?ええなぁ、幼馴染が多くて」
「そうですね…幼馴染み…」
そのままあたしは言葉をつまらせてしまう。
そんなあたしに気を遣ったのか、中澤さんは軽く咳払いをした。
「まあ、あれやな。あれって何や?えっと…」
中澤さんは考え込むように額に指を当てる。
「いいですよ。そんな…気を遣わないで下さい…」
「いや、別に気なんて…うん……。やっぱ見ちゃいけなかったんかなぁ」
中澤さんはシミジミと天井を見ながら呟いた。
- 216 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時14分17秒
「どーなんでしょ?自分でもよく分からないです…」
「うちもなぁ、よう分からんけど…。ただ、あんたが傷ついたんやないかな…っちゅうことだけは分かった」
「傷…ついてるんですかねぇ…。どうなんだろ?キスしてたことが…どうのこうのって訳じゃなくて…。たぶん、あの二人の間にしか存在しない空間…世界があって…。そこには、あたしは入ることが出来なくて…」
「……うん」
「入る事が出来ないのも、自分のせいなんですけどね…。自分が犯した罪が作り上げた世界でもあるし…」
今日初めて会った人に、何を話してるんだろう?
だけども、あたしは吐き出したかった。
何となく…中澤さんは受け止めてくれるだろうから。
- 217 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時15分35秒
- 「なかったことにしたいって思うんです。その方が楽になれるから。あたしも、真希も、たぶん梨華ちゃんだって…。だけど、ダメなんですよね。あったことは変えられない。過去は変わらない」
「……うん」
「結局は…傷つけた人、傷ついた人がいて、それを慰める人がいる。それでバランスが取れてる…それが、あたし達なんです…」
「…そっか」
「って、全然意味わかんないっすよね。ごめんなさい…」
「うん、ホンマに分からん…」
「………ですよね…。」
普通こういう時って、嘘でも慰めてくれるものじゃないんだろうか?
と思ったが、まあ、中澤さんにしてみれば事実を言ってるだけであって…。
少しでもこの人に何か期待したのが間違いだったのだろう。
「まあでも、分からんことないこともないなぁ」
「はい?」
今さっき「ホンマに分からん」言ったでしょうに…。
分からんのは中澤さんの方だ。
- 218 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時19分43秒
「何があったのかまでは知らん。けどな、ひとみちゃん。あんたは現実をちゃあんと把握してる、それを理解してる。でしょ?」
「ええ…まぁ…」
「だったら、それでええやん。何も逃げる事はない」
「いや、別に逃げてなんか…」
逃げた訳じゃないと言いたかったが、やめた。
事実、あたしはあの場から逃げたから。
あの二人の世界からあたしは逃げたから…。
「逃げたやん。うさん臭い理由、テキトーに作ってさぁ。さっきあの場から逃げたやん」
何で今日初めて会った人にここまで、睨まれなきゃならないの?
ってか、中澤さん…。眉間にしわ寄り過ぎてますよ…。
「そ、それは…」
「ガタガタ言い訳ぬかすな。あんなぁ、自分だけが悲劇のヒロイン気取りで何?気分ええの?あんた達の間に何があったんかはホンマ知らんよ。でもなぁ、あんたが逃げたって、あの二人も傷ついてんやで?あの、アニメ声…えっと、あ、梨華ちゃん?そう、梨華ちゃんって子、泣いとったよ」
え?梨華ちゃんが泣いてた?
- 219 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時21分57秒
「まぁ、気持ちは分かるよ。でもしゃあないやん。あの二人は…もう時間の問題やな…素直に現実を受け入れるしか…」
中澤さんは、あたしの肩を2回軽くポンポンと叩いてから、
「まあ、失恋には新しい恋が一番や…」と。
…は?
失恋??
「え?あのぉ…失恋って…」
「今なら泣いてもええよ。二人には黙っててあげるから…」
「いや、泣いてもいいって…別に…」
「素直になれん子やねぇ。でも、分かるよ、強がりたい気持ち…。姉さんもなぁ、昔…。ああ、思い出すだけでも涙出るわぁ。あれは何年前やったかなぁ。恋人をなぁ、親友に取られて…ああ、切ない…」
中澤さんは泣くように目元を押さえた。
もちろん、涙などはこぼれてないのだが…。
「あのぉ、中澤さん…何か勘違いを…」
「は?勘違い?」
- 220 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時23分43秒
−3−
あたしは、その後しばらく笑いが止まらなかった。
原因は中澤さんの勘違い。
彼女は勝手にあたし達3人の仲を色恋沙汰というフィルターを通して見ていたようだ。
あたしが梨華ちゃんを好きで、真希も梨華ちゃんが好きで…。
二人から愛されている梨華ちゃんは、あたしと真希の間で揺れている。
これが、中澤さんが勝手に想定したあたし達の色恋沙汰らしい。
「なんや、自分!はよう言わんかい!」
「だって、中澤さん勝手に一人で話して、あたしに話す機会くれなかったじゃないですか」
「すっかり恋愛のもつれだと思ってたのに…。あーあ、つまらん」
「つまらんって…恋愛のもつれじゃないですけど、一応これでも傷ついてるんですよ、私は…」
「あ、すまん。そうやったな。で、何?何があったん?」
次の楽しそうなネタを探す目というのだろうか?
中澤さんの目は、ギラギラと輝いていて…。
「いや、何かもういいんです。笑ったら、ちょっとすっきりしました」
- 221 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時26分55秒
「そっか。ならあたしも勘違いした甲斐があるっちゅうか…。まあ、あれだ。どちらにしても…」
中澤さんは、とても真剣な顔つきであたしのことを見た。
ギラギラしてるように見えたその瞳は、どうやらカラーコンタクトが入っていたようだ。
なんだかビー玉みたいだなって思ってしまう。
「…逃げたって何も変わらんよ。ちゃんとそれを…現実をきちんと受け止めなぁあかん…」
「…そうですね」
「ん。逃げないで…現実を受け止めることで…償えることもあるしなぁ…」
そのまま、あたしと中澤さんは無言でソファーに座りつづけた。
けども、その沈黙はけして居心地の悪いものではなかった。
二人の間に流れていく静かな空間…。
そこにあたしは無言のまま問い掛ける。
- 222 名前:悩みと相談、そして決意 其の一 投稿日:2002年10月02日(水)19時28分36秒
「あたしは梨華ちゃんをワザとブランコから突き落としました」
───「それが事実なら、それを受け止めなさい」
「そのせいで梨華ちゃんは頭に障害が残りました」
───「それも事実なら、それを受け止めなさい」
「真希が梨華ちゃんにキスをしてました」
───「それも静かに受け止めなさい」
「あたしはこれからどうすればいいんでしょうか?」
───「現実を…現実だけを受け止めてればいいんだよ」
あたしの心の問いかけに答えてくれる声は、すべて中澤さんの声に聞こえた。
あたしは、現実を受け止める。
そう、受け止めるんだ。
それで償えるなら…あたしは全てを受け止めよう。
あたしが梨華ちゃんへの告白を決意して実行に移したのは、それから一週間以上過ぎた日…
テストが終わった日の放課後のことだ。
- 223 名前:PUNK 投稿日:2002年10月02日(水)19時31分25秒
- 更新完了です。
ちょっと最後を隠す為に、レスは一個一個返させて頂きます。
- 224 名前:PUNK 投稿日:2002年10月02日(水)19時32分23秒
>203 オガマー様
レスありがとうございます。
真希ちゃんの気持ち…
そうですね、彼女が一番分かっている。
だからこそ苦しんでいる。
ええ、人を苦しめるの大好きな作者です。
- 225 名前:PUNK 投稿日:2002年10月02日(水)19時34分17秒
- >204 むぁまぁ様
レスありがとうございます。
衝撃的なことは次への発展へ繋がる訳でして…。
まあ、このようになってしまった訳なんですが…この展開どうなんだろ?と
作者自身もよく分かってなかったりで…。
22日の横アリ行かれてたんですか?
あたくしも行きました。
- 226 名前:PUNK 投稿日:2002年10月02日(水)19時37分43秒
- >205 コウ様
レスありがとうございます。
このような続きで果たしてコウさんが眠りにつくことが出来るのかは分かりませんが…。
睡眠はきちんとお取り下さいませ。
で、後藤さん…。
今後のキーパーソンはこの人なんですよね、やっぱり。
次回の更新がいつになるかは、ちょっと分からないのですが、
最低でも、今月あと一回は最低でも更新したいなと思っております。
うーん、無理?
- 227 名前:フライハーフ 投稿日:2002年10月02日(水)23時02分33秒
- PUNKさん
更新お疲れ様です。
辛い告白になりそうですね。
でも、言わないと、3人は先に進めないんでしょうね・・。
あまり無理なさらぬよう、体に気をつけて頑張って下さい。
- 228 名前:オガマー 投稿日:2002年10月03日(木)07時18分18秒
- ぉぉ、
ついに決心したのかー。
中澤さんカッケー。そしてかわいい(笑)
続きすんげぇ楽しみにしてますw
- 229 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年10月03日(木)12時46分33秒
- そうか とうとう告げるのか・・・
後藤はどうするんだろ?
辛いな・・・
>作者殿
傘をなくして雨に濡れて風邪ひいちゃいましたが行ってよかったです
- 230 名前:コウ 投稿日:2002年10月05日(土)15時41分08秒
- ますます眠れないです!
続きが気になるよぉ…。
すごく好きな作品なので、作者さん、尊敬してます。
あぁ、この三人はどうなるんですか…一体…?
- 231 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月14日(月)12時46分44秒
- 結末ばかりは、作者さんにしか分かりませんが
真希を責め続けるものは何? 何が真希を責めるの?
真希、罪ってなーに?
気になります。
- 232 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月24日(木)21時03分18秒
- マターリまってるよ
- 233 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年11月01日(金)12時30分46秒
- マターリとほぜむ
- 234 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年11月22日(金)12時29分48秒
- ほぜむ
- 235 名前:石川梨華の日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時08分33秒
朝起きたらメールする。
【おはよう】
学校着いたらメールする。
【今学校に着いたよ】
お昼休みもメールする。
【お昼何食べた?】
放課後もメール。
【部活頑張ってね。図書室で少し勉強します。】
夕方。
部活を終えたひとみちゃんと共に下校する。
夜。
寝る前にひとみちゃんと電話で話す。
私が電話を掛けたり、ひとみちゃんから電話が掛かってきたり。
テストが終わった日から、
私は日記をつけるようになった。
その日にあったことを書きとめようと思ってたのに、
今読み直して見ると、ほとんどひとみちゃんのことしか書かれてない。
しばらく読み返すのは止めよう。
恥ずかしくなるから…、ね。
- 236 名前:吉澤ひとみの日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時11分00秒
朝起きたら携帯を見る。
【おはよう】
だから返信をする。
【おはよう、今日もいい天気だね】
朝練を終えて教室に戻ってから携帯を見る。
【今学校に着いたよ】
だから返信をする。
【今、朝練終わったよ】
昼休みもメールが届く。
【お昼何食べた?】
だから返信をする。
【今日は売店で買ったパン食べた】
放課後もメールが届く。
【部活頑張ってね。図書室で少し勉強します。】
だから返信をする。
【部活終わったら図書室に迎えに行くね】
夕方。
梨華ちゃんと共に下校する。
夜。
梨華ちゃんと電話で話す。
自分から掛けたり、梨華ちゃんから掛かってきたり。
- 237 名前:吉澤ひとみの日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時13分02秒
テストが終わった日、
あたしは梨華ちゃんに告白をした。
何て言ったのか細かくは覚えてない。
「梨華ちゃんが好きです」とかそんな感じに伝えたと思う。
梨華ちゃんも「ひとみちゃんが好き」と言ってくれた。
だからと言って、あたしと梨華ちゃんの間に、何か大きな変化が訪れた訳でもなかった。
手を繋いで歩く訳でもなく、ましてやキスしたりする訳でもない。
だけど梨華ちゃんは、あたしと一緒に過ごす時間をとても大切にしてくれているようだった。
それはそれですごく嬉しく思う。
だからあたしも梨華ちゃんと一緒にいる時間を大切にしたい。
いや、とても大切にしてる。
梨華ちゃんとの間には、特に大きな変化はなかったけど…。
あたしと真希の間には確実に大きな変化が訪れていた。
真希とあたしはお互いがお互いを意識的に避けるようになっていた。
- 238 名前:吉澤ひとみの日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時15分31秒
原因は分かっている。
あたしが梨華ちゃんに告白したからだ。
自分の気持ちを偽って…梨華ちゃんに、告白したからだ…。
けどさ、真希。
あたしは梨華ちゃんに告白してから、すごく楽になれたんだよ。
少しだけかもしれないけど、償う事が出来たから。
それにね、今のあたしなら、もう逃げ出さないよ。
真希が、梨華ちゃんの傷口にキスしていても…。
あたしは逃げださない。
現実を全て正面から受け止める事が出来るから。
- 239 名前:後藤真希の日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時17分27秒
朝、梨華ちゃんの電話で起こされる。
学校に着く。
寝る。
昼、梨華ちゃんに起こされる。
昼食食べる。
寝る。
放課後、一人で帰る。
(週に1回、病院に通う)
- 240 名前:後藤真希の日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時19分06秒
あたしの入院生活はわずか2日間だった。
退院の日、裕ちゃんと携帯番号とメアドを交換した。
その後、彼女は毎日のようにメールを送ってくれる。
内容は大した事ない。
ご飯がまずいだとか、美容室に行きたいだとか、若い医師が担当になって嬉しいだとか。
あたしはテストが始まるまで学校を休んだ。
その間も梨華ちゃんは学校帰りに家に来てくれた。
試験に出る範囲を事細かに教えてくれた。
- 241 名前:後藤真希の日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時20分55秒
テストが始まって、あたしたち3人は毎朝一緒に学校へ登校した。
端から見れば、いつもと変わらぬ仲良し3人組だと思う。
だけど、あの日以降、あたしとひとみの間には確実な変化があった。
病室を出て行ったひとみが戻ってきた時、彼女はどことなく吹っ切れた様子だった。
その様子は、あたしという存在を無視するような…
考え過ぎなのかもしれない。
そう思ったけど、ひとみはすでにある決意をしていて…
わざとあたしに対して距離を置いたんだ。
だから、あたしもそれに従った。
ひとみの決意が何だったのか。
その時は分からなかった。
だけど、テストが終わった日、梨華ちゃんからもらった電話で全てが分かった。
- 242 名前:後藤真希の日常 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時21分50秒
ひとみ…逃げたね。
楽な方に…逃げたね。
何で?
間違ってるよ。
梨華ちゃんが、ひとみの本心知ったら…
いや、違う。
真実を全て知ったら…
その時は、誰が梨華ちゃんを慰めてあげる?
じゃあ、あたしはどうすればいい?
ずるいよ、ひとみ。
せこいよ、ひとみ。
むかつくよ、ひとみ。
なーんてね。
やっぱ、一番ずるいのは…
あはっ、このあたしだよね。
- 243 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時23分08秒
−1−
「ケンカしたの?」
3人でいるときは出来るだけ普通に接してたつもりだ。
いつも通り、くだらない会話してみたり。
こっちからも話し掛けてみたり…。
なのに、今日の帰り道で梨華ちゃんに訊ねられた。
「ねえ、真希ちゃんと何かあったの?」
どう答えていいのか分からず
「別にケンカなんてしてないよ」
って笑いながら答えたものの、梨華ちゃんはその言葉を信用してくれてないようだった。
別れ際、「早く仲直りしてね」って言われた。
仲直り?
そもそもケンカなんてしていないんだから。
仲直りも何もない。
- 244 名前:古い恋と新しい恋? 投稿日:2002年11月23日(土)07時24分26秒
−2−
飯田先輩から電話があったのは、この日の夜だった。
携帯のディスプレイに表示された先輩の名前を見て、何ともいえない気分になった。
未練?
違うでしょ。たぶん。
直感的に、あたしの脳は『通話ボタンを押すな』と指令する。
けど、その指令を無視して、あたしの指は通話ボタンを押してしまう。
あたしの脳の指導権は、あまり強くないらしい。
「もしもし」
携帯越しに先輩の声を聞くのは久しぶりだなぁなんて考えてみる。
傍観者なのか、自分…。
いや、ちょっと…なんだろ。
うん、そうだ。
気恥ずかしいんだね。
- 245 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時25分09秒
「吉澤?」
「電話なんて…久しぶりですね」
「そうだね」
そこで会話は途切れる。
いい具合に。
続きの言葉はあたしが発するべきなのかな?
いや、向こうが用あって電話してきたんでしょ?
だったら、相手の出方を待つとしよう。
「あのね、」
先輩の発する一言で、今この人はどんな表情をしているのかが想像つく。
市井先輩も電話で相手の表情を想像したりするんだろうか?
なんて考えてしまう自分がバカバカしい。
「紗耶香から聞いてる?」
「何をですか?」
「圭織たちのこと」
「たちって…飯田先輩と市井先輩のことを、ですか?」
「あぁ…そっか」
わからない。
会話が噛みあってないことだけは、わかる。
- 246 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時26分13秒
「あのぉ、どういう意味でしょうか?特に市井先輩からは何も聞いてないですけども…」
「なるほどね…」
「いや、なるほども何も…」
「じゃ、何も聞かされてないってことだよね?」
「…ですから、そういうことになりますねぇ」
「なら、いいや」
「いいやって…。いいなら良いですけども…何かあったんですか?」
「あっ!圭織の事、気になるの?」
「気になるも何も…」
これって何なの?
新手なイタ電?
「吉澤は気にしてくれるんだ?」
「まあ、気にします。で、ご用件は何なんですか?」
「…何か冷たくなったね」
いつと比べて冷たくなったというのだろうか?
- 247 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時28分01秒
「吉澤は何も聞いてないんだよね?」
「ええ、何も…」
と答えたところで思い出す。
────『吉澤だって…知ってるんでしょ?』
いつだったか…あれ?いつだったっけ?
ああ、真希が倒れた日の朝だ。
あの時、市井先輩は何かをあたしに話そうとしてたんだ。
その事と、今、飯田先輩が言わんとすることは同じ事なんだろうか。
「たぶんね紗耶香、吉澤に何か話をしてくると思うの。圭織のことで」
市井先輩が、飯田先輩のことで、あたしに何か話し掛ける。
「大したことじゃ…うーん、紗耶香にとっては大した事なのかもしれないけど、圭織にしてみたら、どうでもいい話なのよ」
あたしが好きだった人を奪った人物にとっては大した話。
あたしの好きだった人にしてみたら、どうでもいい話。
飯田先輩の言葉を客観的に分析している自分と、
飯田先輩の言葉の真意を探ろうとしている自分がいるような気がした。
- 248 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時29分10秒
「だけど、それは嘘なの」
「嘘?」
────(この人たちは)
「話そのものが作り話なの」
「なんで嘘つくんですか?」
────(自分達の問題を…)
「ちょっと紗耶香をからかいたくなって…」
「からかう…」
────(なんでいつも)
「だから、鵜呑みにしないで欲しいの」
「………」
────(あたしまで巻き込もうとするの?)
- 249 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時30分15秒
「紗耶香が妙にバカげた話をしてくると思うけど…鵜呑みにしないでね」
「飯田先輩…」
「ん?」
「あたし今…梨華ちゃんと付き合ってるんですよ」
自分が新しい道を歩んでいることを伝えたかった。
先輩のことは忘れて、あたしは梨華ちゃんと…
それで先輩は、少しでも嫉妬してくれるかなって。
そんな下らない計算までしてみたり。
だけど、どうやらそれは、『無駄な努力』のようで…
「らしいね。話聞いた時は驚いたよ」
「はぁ?」
聞いた?誰から?
- 250 名前:古い恋と新しい恋? 其の一 投稿日:2002年11月23日(土)07時32分03秒
「まさか吉澤が石川を選ぶとは思わなかったし…」
「あのぉ、誰から…聞いたんですか?」
「何を?」
「そのぉ、あたしと梨華ちゃんが…付き合ってるというか」
「ああ、石川本人だよ?」
はあ??
梨華ちゃん?何?
飯田先輩に、話してたの?????
「梨華ちゃんから?」
「うん、そうだよ。『聞いて下さいよぉー。私、ひとみちゃんに告白されたんですぅ』って」
先輩の似てるような似てないような梨華ちゃんのモノマネがなくったって、報告する梨華ちゃんの姿は想像できる。
「あははは、そうでしたか、ははははは」
あたしの顔って今、ものすごく引きつってるんだろうな…。
飯田先輩との電話が終わるなりすぐ、あたしは梨華ちゃんに電話した。
- 251 名前:PUNK 投稿日:2002年11月23日(土)07時36分38秒
- しばらく更新出来ないだろうと思ってたのですが、
珍しく早起きしたので、努力してみました。
これからは、本当にマメに更新出来るよう、頑張ります。と宣言することによって
自分に鞭打ってるのですが…。
合言葉は『2003年に持ち込むな』これで行きます。
万が一2003年に持ち込んでしまったら、自動的に合言葉は
『2004年には持ち込むな』に変わります。
- 252 名前:PUNK 投稿日:2002年11月23日(土)07時51分51秒
- >227 フライハーフ様
レスありがとうございます。初めまして?(ある意味で)
フライハーフさんも無理なさらない程度に更新頑張って下さい。
かなりお気に入りの作品ですよ。
>228 オガマー様
レスありがとうございます。
中澤さん、出してしまった事を後悔。
ある意味で更新出来ないのはこの人がいるせいなんですぅー!!!(`ε´#)ブーッ
(いい訳)
>229 むぁまぁ様
レス並びに保全、ありがとうございます。
後藤さんの出方は、ちょっと私自身もまだ考え中だったり…
ちょっと時間を掛けすぎたかもしれないです…。
>230 コウ様
レスありがとうございます。
そんな尊敬されるような人間じゃないです。
調子に乗りやすいので…
次回の更新も期待しないでぐっすりとお眠りくださいませ。
>231 ひとみんこ様
レスありがとうございます。
真希の罪ですか…。
近々、ご報告致します。
それにしても、罪になるのかなぁ、どうなんだろ。。。
>232 名無し読者様
レスありがとうございます。
こんなに更新遅くても、マターリ待ってて下さいますでしょうか?
次回はいつ更新出来るか分かりませんが、
年内には必ず…。
- 253 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月23日(土)08時44分04秒
- 更新、期待してます。
出来れば「明けましておめでとう」は、新スレで言いたいですね。(w
- 254 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月24日(日)09時17分13秒
- ヒサブリに全部読み返してしまいました。
【結論】やっぱ面白いっす。
今回部分では特に、圭織の言ってることがすげー気になる…
ということで、>PUNKさま
是非とも、『2003年に持ち込むな』の方向で…ひとつ…どうか…ナムナム
- 255 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年12月04日(水)08時25分25秒
- そうか吉澤は告白したのか・・・ 別な意味で
でもいつか本当の告白をしなければならない時がやってくるんだろうな
切ないね
>作者殿
まマターリと行きましょう
- 256 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月18日(水)18時37分58秒
- ホゼム
- 257 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月01日(水)21時19分32秒
- あけおめ、ことよろ保全
- 258 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年01月06日(月)08時24分15秒
- あけおめです
- 259 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月17日(金)01時47分27秒
- 保全
- 260 名前:石川梨華の日記 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時12分56秒
今日、ついに言ったよ。
ひとみちゃんに、真希ちゃんと仲直りしてねって。
ケンカなんかしてないよって言うけど、少しは進展があるんじゃないかなって私は密かに期待してしまう。
仲直りなんてすぐに出来るよ。
だって、私よりも二人の絆は強いと思うから…。
でも何かそれってちょっと寂しいね。
で、さっきの電話は何だったの?
「飯田先輩に何喋ったの?」って…。
ひとみちゃん、やっぱ飯田先輩の事気になるのかな?
ねえ、私たちの関係って何なの?
付き合ってるの?
何でひとみちゃん私に「好きだよ」って言ってくれたの?
訳わかんない。
…さっきは、ひどいこと言ってごめんなさい。
明日、きちんと謝ります。
そういえば今日は言えなかったね。
おやすみなさい、ひとみちゃん。
- 261 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時21分32秒
−1−
「ねえ、早起きは何もんの得なんだっけ?」
「三文」
「さんもんって何?スモークサーモン?」
「………はぁ。そうね、サーモンかも」
「ちぇっ、何だよ。ノリ悪いなぁ」
梨華ちゃんの電話より早くに目が覚めた。
部屋を出たらお母さんがちょうど寝室に向かうところだった。
あたしが珍しく早起きしたことに驚いたのだろうか。
目をまん丸にしていた。
だから、あたしから話掛けたんだ。
じゃなきゃ、「あら珍しいわね」とか「雨でも降るのかしら?」とかって言われるから。
別に「三文」だろうが「サーモン」だろうがどっちでもいいんだけど。
一日が始まる会話ぐらいは、嫌な気分は味わいたくないでしょ。
- 262 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時22分23秒
ご飯も食べずに準備をする。
時々、窓から向かいの家を覗いてみる。
大丈夫、まだ出てないはずだ。
寝癖が気になったが直している時間もあまりないだろう。
学校で直せばいいや。
梨華ちゃんに電話しようと思ったけど、
何か色々と尋ねられるのも面倒だからメールで済ます。
【用があるんで先に行ってんね】
ベット脇の時計に目をやる。6時28分、もうすぐだ。
再び窓から向かいの家を見る。
しばらくすると人が出てきた。
…ひとみだ。
- 263 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時23分00秒
−2−
ひとみの跡を付けながら何でこんなことをしているんだ?と自分に問い掛ける。
普通に話し掛けようって思ってたのに。
でも、どうもタイミングというものが分からない。
「おはよう」とか「やあ」でも何だったいいじゃないか。
言葉を発すれば彼女は振り返ってくれるはずだ。
それにしても、ひとみって歩くの早いのね。
赤信号でひとみが立ち止まる。
あたしはかなり距離を取った位置で立ち止まる。
今がチャンスなのかもしれない。
少しづつ、ひとみとの距離を縮める。
肩を叩いて一言。
「やあ、おはよう」
これでいいはず。そう、それで…
- 264 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時23分59秒
あたしの手がひとみの肩に伸びかかった時、
当のひとみ本人がこちらに振り返った。
あたしはびっくりしてしまって、伸ばして手をそのままの状態で…
固まってしまった。
「何の用?」
表情一つ変えないで、でもあたしから視線を反らすこともなく、ひとみが訊ねてきた。
「あっ……いや、その…」
何も言えないあたし。
「………用があるから、あたしの跡、つけてたんじゃないの?」
何で気付いたんだろ?
ひとみは、後頭部にも目が付いてる?
その髪の毛をかき分けたら第三の目があって……なんちゃって、あは。
そんなことを考えたらちょっとおかしくなっちゃって、にやけてしまった。
- 265 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時25分03秒
「何笑ってんの?」
「いやぁ、別に…」
信号が赤から青に変わる。
でも信号を背にしているひとみは、当たり前の話だが気付く訳はなく。
「…青だよ?」
「えっ?」
あたしが指差した方を見る、ひとみ。
「やっぱ、第三の目はないのか…」
「はぁ?」
「いや、なんでもない…」
「……で、用件は?」
用件は…
いや、あるんだけど。
「やあ、おはよう」をきっかけに話だすつもりだったのに。
何か今のこの雰囲気だと何も話せなくなる。
ああ、自分のこういう性格を恨みたくなる。
- 266 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時26分28秒
「…………なんもない」
「そう…」
「うん……じゃ、あたし行くから」
そのまま、ひとみを抜かして信号を渡ろうと歩き出す。
すると思い切り肩をつかまれた。
「なによ?」
つい、あたしは声を荒げてひとみを睨むようなことをしてしまう。
用があったのは、あたしの方なのにね。
「……赤だよ?」
「へ?」
ひとみが指差す方を見る。
信号はすでに赤に変わっていた。
「やっぱ第三の目はないのか」
ひとみは、先ほどと立場が逆転したのが嬉しいのか、少しニヤついている。
ちくしょう、人の言葉パクリやがって…。
- 267 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時27分42秒
「………残念ながらないようだねって、第三の目の意味解ってんの?」
「心にある目」
「ちげーよ」
「じゃあ、おでこにある目」
「ねーよ」
「ってか知らねーよ」
吉澤ひとみ、ぶち切れる。
「知ったかぶんなよ」
後藤真希、食ってかかる。
「うるせーよ」
吉澤ひとみ、ネタ切れ。
「あっち行けよ」
後藤真希、追いやる。
「お前があっち行けよ」
吉澤ひとみ、負けず嫌い。
「お前なんか、赤信号で渡って轢かれちまえ!」
後藤真希、意味不明。
「青信号で轢かれてやるよ!」
吉澤ひとみ、それは厳しい。
- 268 名前:尾行するゴマキ 其の一 投稿日:2003年01月24日(金)17時29分26秒
そのまま、あたしとひとみは学校に着くまで二人でずっと言い合いをした。
「何で跡つけてるって分かったんだよ!」
「山岡さんちの駐車場には鏡付いてるから、後が丸見えなんだよ!」
と怒りながらも無駄に丁寧な反論?までしてくれた。
「やあ、おはよう」は言えなかったけど、
ひとみとの関係が修復されるのは、とても簡単な事だった。
これからは、また普通に話せる。
うやむやを抱えたままだけど、あたし達の仲は修復されたようだ。
それにしても、
「早起きは何文の得か知ってんのかよ!」
「知らねーよ!」
「三文の得だよ!」
「何だよサーモンって!」
「……………」
「黙ってないでつっこめよ!」
ひとみと同じレベルのボケだったとは…
あたしもまだまだ甘いな。
- 269 名前:PUNK 投稿日:2003年01月24日(金)17時39分48秒
- 短めですが、更新しました。
あけましておめでとうございます…
になっちゃいましたね。くはぁ。
>253 ひとみんこ様
レスありがとうございます。
古いスレでの「あけましておめでとう」どうもすみませんです…。
>254 名無し読者様
レスありがとうございます。
『2003年に持ち込むな』は無理でした。
『2004年に持ち込むな』で頑張ります。
>255、258 むぁまぁ様
あけおめです。
レスありがとうございます。
マターリすると、マターリし過ぎて、作品の存在すら記憶から排除されてしまうようです。
でもまあ、マターリといきますです。
>256 名無し読者様
ホゼムありがとうございます。
>257 名無し読者様
あけおめことよろ、ホゼあり。
>259 名無し読者様
保全どうもありがとうございます。
次回はあまり期間置かないで更新出来るように努めたいと思います。
ちょっと、頑張れそうな気がしてきたんですが、それはあくまでも予感です。
ちなみに感は、よくはずすタイプです。
関節は一度だけ、はずしたことあります。
- 270 名前:オガマー 投稿日:2003年01月24日(金)21時49分02秒
- 更新お疲れサマです。
微笑ましい二人でした。
ええ、爆笑しました。
がんがってくださいね。
- 271 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月24日(金)22時05分40秒
- あー、イイ!やっぱり面白いな。。。
- 272 名前:名無しどくしゃ 投稿日:2003年01月24日(金)23時30分05秒
- ワーイ!!更新待ってましたぁー!
ごまよし爆笑モンですがなw
続き待ってまーす
- 273 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年01月29日(水)13時01分57秒
- うんうん 二人はこうでなくっちゃね
>作者殿
更新嬉しかったです
マターリとね
- 274 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年02月12日(水)12時14分16秒
- ほぜむ
- 275 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年02月26日(水)08時04分13秒
- 保全なのだ
- 276 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月02日(日)00時17分48秒
- ほぜむ。
- 277 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月02日(日)22時16分51秒
- >276
保全はいいけどあげないように
- 278 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年03月15日(土)14時52分50秒
- んぁ、保全だよ〜
- 279 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月02日(水)02時28分41秒
- hozen
- 280 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月19日(土)04時29分30秒
- ほ
- 281 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)11時36分41秒
- ぜ
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月11日(日)14時07分40秒
- む
- 283 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年05月22日(木)12時32分14秒
- ほぜむ
- 284 名前:吉たまご 投稿日:2003年06月07日(土)09時52分30秒
- 続きが楽しみ・・・
- 285 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年06月23日(月)18時37分58秒
- ほぜんだよ〜
- 286 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月13日(日)00時16分11秒
- 待ってるよ〜
- 287 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月04日(月)11時30分56秒
- 保全
- 288 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月24日(日)22時15分36秒
- ほ
- 289 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月26日(火)01時04分38秒
- 待つ。
- 290 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月31日(日)01時50分28秒
- ここは素晴らしい保全スレでつね。
- 291 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月06日(土)03時15分43秒
- なんか急に読みたくなって、また読み返しました。
何回読んでも引き込まれます…。
やっぱり最高です、作者さん。
この作品にはぜひ完結を…。
- 292 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月07日(日)23時56分33秒
- きっと関節がはずれたままで
キーが打てないのさ
マターリ待つよ
- 293 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/25(木) 15:04
- 作者さんここの小説書くの
飽きたって言ってたよ。
- 294 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/26(金) 01:38
- >>293
ソースは?
- 295 名前:全部読んだよ 投稿日:2003/09/29(月) 20:35
- すごくおもしろかったよ!
でも完結してなくてちょっと残念・・・
作者さん、私はいつまでも待ってますからねー(*´∀`*)がんばって
- 296 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/02(木) 01:07
- >>293
情報元はどこ?
- 297 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 15:52
- Q49 書いてる&見てる方、小説を書く&見る上でのNGワードはある?
自分で書いててあれなんですが梨華ちゃんが発する「ひとみちゃん」
最近これがダメなんですよ。はい…
Q50 Q49で「はい」と答えた方、またそのNGワードは? 理由は?
わかんない。
でも「ひとみちゃん」って文字打つだけで、鳥肌立つようになりました。
Q54 娘。小説を書いててつらかったこと、嫌だったこと等
更新出来ない。
完結する前に飽きてしまうこと。
って自分のサイトで言ってるよ
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/04(土) 02:06
- >>297
なるほどね、じゃ落とすか
- 299 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/18(土) 12:42
- 作者さん続きまだー?
- 300 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/02(日) 00:29
- 放棄か…
惜しい作品を亡くした。合掌。
- 301 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/02(日) 23:41
- 誰か続き書いてよ。
- 302 名前:hozen 投稿日:2003/11/23(日) 05:24
- ここはいつまでも保全します
- 303 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/29(土) 03:40
- >>297
マジですか。。
- 304 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/03(水) 10:37
- >>303
マジですよ
- 305 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/08(月) 02:49
- でもそれって最近のアンケートじゃないよね?
まあマターリと待ちましょ。
- 306 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/08(木) 00:53
- ほぜ
- 307 名前:代打:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 17:06
- 最近、検索してここ知った者です。
作者さん一年間放置のようで・・・。
勝手に「代打」で続き書かせて頂きます。
まあ「アナザーエンド」とお考え下さい。
原作のエンドは別にあるということで。
経験者ではありますが、文体の違いにはご了承の程どを。
更新ゆっくりでしょうが、早めに完結させます。
- 308 名前:代打:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 17:44
- 1
あたしたちは、学校への短い道のりを並んで歩いていった。
何となく気まずい空気が流れる。
なんでだろう…。
梨華ちゃんが思ってるみたく「けんかしてる」わけじゃないのに。
何か言わなきゃと思っていたら、ひとみはゆっくりと口を開いた。
「あのさ、真希」
「んー?」
「あたし、気にしてないから」
「…何を?」
「こないだ、病院で。梨華ちゃんの傷に、真希キスしてたよね?」
「あ、あれは…」
「判ってる」
「へ?」
- 309 名前:代打:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 17:44
- 予想外のひとみの反応に、あたしは驚いた。
「ずっと、考えてたんだ。真希の気持ち。梨華ちゃんの傷について、どう思ってるのかっって。…あたしは申し訳ない気持ちとか、自分を責める気持ちとか、そいうんだけど…。真希はどう思ってるのかなって。今まで、考えたこともなかった。許されないよね?そんなこと」
「ひとみ…そんな、そんなことないよ」
「つらいよね。真希だって。梨華ちゃんに本当のことも言えない。悪い事してる訳じゃないのに、ちょっと後ろめたい…。それで、あんなことしてたんでしょ?梨華ちゃんを慰めようとして?全部あたしが悪いのにね…。ごめんね、真希」
ひとみ……。そんなこと考えてたなんて、全然知らなかった。ずるいとか、せこいとか思ったりして、ごめんよ、ひとみ。
- 310 名前:代打:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 17:45
- 「ううん。そんなかっこいいもんじゃないよ。あたしが梨華ちゃんの傷に触れるのはね。
あたしが何か落ち込んでて、慰めて貰う時なんだ。梨華ちゃんのつらさに比べたら、あた
しの悩みなんか大したことないって。…あたしの方こそごめんね、何か自分が一番可哀相
とか思っちゃって。一番つらいのは、ひとみだもんね。梨華ちゃんだって凄くつらい。あ
たしなんか、全然無傷なのに、自分が被害者みたいに思っちゃった」
我ながらかっこいいこと言うじゃない。
いささか自慢げに思っていると、ひとみはなぜかクククと笑い出した。
「ぷははははは。真希が?そんな繊細に?似合わねー!!あははは…」
ひとみは体をくの字にして笑っている。
なんだよコイツ!人が真剣に悩んでたってのに!
- 311 名前:後藤登校中 投稿日:2004/01/24(土) 17:46
- 「ちょっと何よ人のことバカみたいに。あたしは悩んで胃を痛めちゃうようなか弱い女の
子なんですからね!」
「あれえ?あれは食べ過ぎじゃなかったけ?」
あたしの怒りのメーターは頂点に達した。
それに感づいたか、ひとみは脱兎のごとく逃げ出す。
「待て!こら!」
「朝練遅刻しちゃうから、じゃーねー!」
ひとみを追いかけながら、あたしはこんな風にひとみと笑い合うのは久しぶりだな、とな
ぜか思っていた。
…ああ、久しぶりに走ったら疲れた。今日の授業は眠って回復させないと。
- 312 名前:石川さんリーチです。 投稿日:2004/01/24(土) 17:57
- 1
メールの着信音で、私は目が覚めた。
もともと目は覚めていたんだけど、なんかベッドから、出られずにいただけだけど。
この着信音は真希ちゃんからだ。だったらすぐに見なくてもいいかな?
ひとみちゃんからだったら、電話に飛びついて見ちゃうんだけど。
…ごめんなさい、真希ちゃん。
私はベッドから手を伸ばして、充電器に立てておいた電話を取った。
【用があるんで先に行ってんね】
用事?なんだろう?こんなに早く?じゃあ傘持って行こう。
そんなことより…。
今日はとっても、とっても大変な日なのです。
今日の4時間目は英語なんです。そう、テストが返って来ちゃうんです。
- 313 名前:石川さんリーチです。 投稿日:2004/01/24(土) 17:58
- 「全教科平均点以上とれたらね。頑張って」
ママはそう言った。私が、またテニス始めたいって言ったら。
一生懸命勉強したかいあってか、ギリギリだけど、今のところは全部セーフ。
数学なんかは平均点ちょうどだった。
で、今日は苦手の英語の返却日。…すっごく怖い。
だから、真希ちゃんと一緒に学校行って励まして貰いたかったけど、仕方ないよね。
私は「ポジティブ、ポジティブ」と口の中で唱えながら、着替え始めた。
- 314 名前:石川さんリーチです。 投稿日:2004/01/24(土) 18:04
- 2
朝・・・ひとみちゃんには会えず。真希ちゃんは、もう寝てた。用事って何だったの?
1時間目・・・古文。先生が風邪で自習だった。真希ちゃんはずっと寝てた。
2時間目・・・体育。真希ちゃんがいなかった。ずっと教室で寝てたみたい。
3時間目・・・日本史。「柴田勝家」という人が出てきて、柴ちゃんを思い出した。
また一緒にテニスしようね。ああ、あと1時間。
4時間目・・・
- 315 名前:後藤さんの気楽な午前中 投稿日:2004/01/24(土) 18:20
- 1
眠い。
昨日一晩悩んで、朝は走るという大仕事をやってのけたのだから、仕方ない。
自習、体育は寝ていられたけど、3時間目は先生に起こされた。
この日本史というヤツがまた最悪。
「ひでよし」が「みつひで」と「かついえ」を倒した話。
なんで秀吉さんと明智さんの戦いなのに、「山アの戦い」なの?この時点でギブ寸前。
で、その秀吉さんと柴田さんの戦いの名前が暗号に近い。
…後藤城、落城。おやすみなさい。
案の定、お昼に梨華ちゃんに起こされるまで、そのまま熟睡を続けた。
起こしてくれるのはいつものことだけど、今日はちょっとなんか違った。
- 316 名前:後藤さんの気楽な午前中 投稿日:2004/01/24(土) 18:21
- 「真希ちゃん!真希ちゃん!起きてよー」
どうしたのさ梨華ちゃん?何か良いことあった?ひとみにでもチューされた?
「真希ちゃんってば!」
はいはい…。今起きますですよ。
「んあ…おはよう」
「真希ちゃん!やったよ!またテニスできるの!」
「ええ?」
「ほら、見て!ほら」
梨華ちゃんは一枚の紙を顔の前に出した。近すぎて読めない。
うまく焦点を合わせると、英語のテストだと判った。点数が…61点。
- 317 名前:後藤さんの気楽な午前中 投稿日:2004/01/24(土) 18:21
- 「この点数見た時、どうしようって思ったの。でも平均点60点だって!よかったー」
梨華ちゃんはそう言って、そのテストを抱きしめた。
「そう、よかったね」
イマイチ状況が判らなかったけど、梨華ちゃんは嬉しいらしい。
そんでもってテニスが出来るって…え?
「テニスが出来るって?」
「ママがね、テストが良かったら、また始めて良いって」
「へえ!よかったじゃない」
「うん。…あ、これ真希ちゃんのテストだって」
「あ、ありがと」
- 318 名前:後藤さんの気楽な午前中 投稿日:2004/01/24(土) 18:23
-
あたしは梨華ちゃんから綺麗に二つに畳まれた紙を受け取り開いた。
…げ!
「ああ、よかった!嬉しいな!ひとみちゃんも褒めてくれるかな!」
一人有頂天になっているお嬢様を尻目に、さすがのあたしも目が覚めてしまった。
ちょっと…11点って、さすがにやばいかしら。
「真希ちゃん、早く食堂行こう。席混んじゃうよ」
「うん、そだね…」
梨華ちゃん感謝してよね。平均点が下がったのはあたしのお陰なんだから。
- 319 名前:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 18:24
- ホント、うざかったら言って下さい。
っていうか、ここ人いるんでしょうか?
検索してきたので、判りませんので…。
- 320 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 18:46
- 続きを書くんだったらPUNKさんの許可を取ってからにした方がいいんじゃないの?
- 321 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 19:21
- だな。正論。
- 322 名前:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 19:35
- どうも失礼を。
作者の方とは今もコンタクト可能なのでしょうか?
1年放置されているようなので、「音信不通」なのかと思ったのですが。
- 323 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 21:06
- 長い間放置されてても一応尋ねてみるのがマナーでは?
で、一定期間レスを待ってみるとか。
PUNKさんの場合は個人のサイトも持ってらっしゃるので
そっちで聞くのも手だと思います。
- 324 名前:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 22:01
- どうも。
では、「こういう形で続けてもよいか?」ということで、
しばらく反応を待とうと思います。(個人サイト知らないので)
- 325 名前:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 22:05
- 作者さま。
>>307-318のような形で、この場をお借りしても良いでしょうか?
上に上げたように、「アナザーストリー」とお考え頂きたいのですが。
よろしければ、可否の旨をこちらに頂けたらと。
- 326 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/24(土) 22:54
- 復活したかと思ったのに…鬱だ。
作者はもちろん、待ち続けてる読者だっているんだよ。
ま、ほぼ放棄作品だし返答まで期限区切っていいんじゃないの?
一ヶ月とかさ(それくらい待ってもバチは当らんだろ)。
- 327 名前:検索者 投稿日:2004/01/24(土) 23:04
- 概ね不評なので、前言撤回します。
スレ汚し失礼しました。
- 328 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/01/31(土) 20:44
- ochi
- 329 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/06(金) 01:45
- 続きが読めるのはすごく嬉しいんだけど
なんか違う。
- 330 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/08(日) 01:24
- ちらりと春以降に復活みたいなこと見かけたから
予定より早く復活したかと思った…
作者が違えば意味がない。
一読者の意見にすぎませんが。
- 331 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/08(日) 01:28
- 削除依頼出したら?
許可取ってないんだから
- 332 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/08(日) 10:50
- そのうち倉庫逝きなんだからその必要なし
- 333 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/02(火) 00:18
- 保全
- 334 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/14(日) 14:46
- 続きが書かれてたので、作者出にくいらしいですが…。
- 335 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/14(日) 15:03
- そういうウソはいいですから。
どっちにしても一週間以内に生存報告なければ倉庫落ちでしょう。
ありがとう、そしてさようなら。
- 336 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/14(日) 15:50
- ハハハ
嘘だと思うんだ?だめじゃこりゃ
- 337 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/03/16(火) 15:49
- 1年以上音沙汰なしだからね・・・
その間ネットに繋いでないわけではなかったのだし、何か一言くらいあってもよかったのでは・・・
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