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友達のままじゃいられない

1 名前:aki 投稿日:2002年05月27日(月)00時14分30秒
同じ板で書かせてもらっているものです。
雪でも書いていますがまたまたちょっと浮気を…。

話はいしごま、です。
少し書き溜めてある物なので更新は出来る限りいい感じに
載せていきたいとは思ってるんですが、たぶんマイペースに…。
レスはやる気と励みの源なので出来ればください^^;

それでは長くなりましたが、始めます。
最後まで今の意欲が続く事を祈りつつ…。

サブタイトルは「親友と恋人の狭間」な感じで。
ではよろしくお願いします。
2 名前:親友の彼女 投稿日:2002年05月27日(月)00時18分09秒


――――――


「あの……好きなんです…。女の子同士で変かもしれませんけど…本当に…。
私と…付き合ってもらえませんか…?」


…まただ…。
もう数え切れないほど耳にしたそのセリフ。
今まであたしが断ってきた人の数を知ってここにいるの…?


「ごめん。今好きな人がいるんだ」


あたしはいつもの何ら変わりないお決まりの言葉で返事をする。
途端に目の前の彼女は表情が曇り沈んでしまった。
落胆の中に見え隠れする予想が的中したような諦めの顔。
もう何度も見た。

「それじゃあね」

あたしは彼女を下手になぐさめることなくその場を後にした。


3 名前:親友の彼女 投稿日:2002年05月27日(月)00時19分51秒



―――ビュー…――


屋上での告白。
あたしはいつも通り呼び出されたその場所で告白を受けいつも通りさっさと断り
校内へと帰ろうとしていた。
そんな時屋上のドア付近で一際強い風が横から吹いた。
「………」
あたしは黙ったまま風に泳いだ髪を押さえる。
そしてそのまま階段を下りていった。


4 名前:親友の彼女 投稿日:2002年05月27日(月)00時20分51秒

「……はぁ……」

これで何度目だろう…。
まったくあたしがどれだけ今日のこの日まで告白され続けても今まで一度も
それを受け取ったことがないってどうして出回らないんだろう。
それとも出回ってるのかな…?
それなのにもしかしたら…ってほんのわずかな期待が後押しして告白してくるんだろうか?
お願いだから少しはこっちの身にもなってよ…。

……あたしが告白されたいのは…。
好きになって欲しいのは、そういう関係になりたいのは…
あなたじゃないんだよ…。



5 名前:親友の彼女 投稿日:2002年05月27日(月)00時22分48秒


「――――あ、ごっちん!!」
「………」
階段を下りて廊下に足が着いた時、ちょうど不意に声を掛けられた。
あたしは誰かと思い後ろに振り向く。
…本当は、心の底で彼女だという事に気付いていて、本当は心の奥深くで
沈んだ気持ちから微かに回復した自分がいる。

「梨華ちゃん」

そこには階段を自分とは逆にこちらへ上ってくる彼女の姿があった。
あたしは踊り場で立ったまま笑顔で手を振りながら上ってくる梨華ちゃんの
姿を待ちずっと眺めていた。
「今から帰り?一緒に帰ろうよ!」
踊り場までやって来ると梨華ちゃんはあたしに飛びきりの笑顔でそう言った。
屈託のない子供みたいな純粋な笑顔にあたしは言葉を返す事も忘れある意味
感心するようにじーっと見つめ返してしまう。

6 名前:親友の彼女 投稿日:2002年05月27日(月)00時24分10秒

「?」
「あ、ごめん…。今鞄取ってくる」
「うん!」

あたしは首を傾げる梨華ちゃんに慌てて答えると鞄を取りに教室へ戻った。
梨華ちゃんは鞄を両手で下げながらそんなあたしの後に嬉しそうに着いて来る。
あたしは先に足早に教室に急いで向かうと机の上にあった鞄の手提げの部分を雑に
掴むとそのまま廊下を後ろから着いてきた梨華ちゃんの元へ合流しそのまま
学校を後にし一緒に帰っていった。


7 名前:作者 投稿日:2002年05月27日(月)00時30分52秒
すいません、初めの更新ですがここまで…。
短くて申し訳ないです。

それと実は…タイトル結構悩みました(爆)
結局書いてた時ふと思いついたのにしたんですが…。陳腐でしょうか、
ん〜って感じでしょうか(謎)
もう一つもう少しこれより真剣そうなのも後に浮かんだんですが
内容からもやっぱりこれで(爆)
それはそれで後にサブタイトルで使おうと思ってるんですが
どうでしょう…?(悩)
自分的にはまだん〜って感じで今も考え中です^^;
8 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月27日(月)00時42分00秒
おおakiさんの新作ですか。楽しみです。
いいと思いますよ。
9 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月27日(月)01時09分49秒
新作だ〜♪
学園モノだ〜♪
楽しみしております。
10 名前: 投稿日:2002年05月27日(月)02時16分58秒
いしごま好きです♪
楽しみにしてます!
頑張ってください!
11 名前:デートの約束? 投稿日:2002年05月27日(月)15時52分16秒


―――――――

「それでねぇ、今日数学の時先生に当たっちゃって――――」
「……」

学校の帰りの寄り道。
あたしと梨華ちゃんは駅前のバーガーショップでジュースとポテトだけを
頼み二人で四人席の所へ座ると他愛ない話に下校後の暇な時間を一緒に過ごしていた。

「その時は友達がこっそり答え教えてくれたから良かったんだけど―――ってごっちん
聞いてる?」
「ん?あ、聞いてるよ」

頬杖を着いてぼんやりなくなりかけたジュースのストローを、音を立てて吸っていた
あたしに梨華ちゃんは話しながら気付き相槌も何の態度も示さないあたしに
いぶかしげな表情で顔を覗いてくる。

12 名前:デートの約束? 投稿日:2002年05月27日(月)15時53分56秒

「それじゃぁ、あたしが何話してたか答えて?」
「えっと……。何だっけ?」
「…もういいよ」
「あ、ちょっと待ってよ……あ、そうそう数学の授業の時先生に当てられたんでしょ?」
「…もうごっちんちゃんと聞いてよ」

頬を膨らませて少し機嫌を斜めにしてしまった梨華ちゃんはそっぽを向くように
あたしから体全体を反らし横を向くとそのまま自分のジュースを手に取り怒ったように
一気に飲むことに専念してしまった。

「ごめんー。ごめん梨華ちゃん。次はちゃんと聞いてるからさ…」

頬を膨らませてご機嫌斜めの梨華ちゃん。
だけどその行動の全てが女の子らしくて可愛くて全然怖くない。
むしろもっと見ていたいなって……それどころかもっと怒らせてみたいな、なんて
思ってる。…重傷かもね、これは…。

13 名前:デートの約束? 投稿日:2002年05月27日(月)15時55分28秒

「…本当に?」
「本当本当」

横を向いたままちらっと梨華ちゃんは横目であたしを確認する。
ふてくされた様子が本当に小さな子供みたいで本当に爆発しちゃうぐらい可愛くて
しょうがなかった。
梨華ちゃんは必死なあたしの様子に機嫌を直したように笑顔で気を取り直すと
こっちにまた向き直って言った。

「それじゃあさぁ!明日遊ばない?」
「何?突然」
「ダメかなぁ。明日土曜日でお休みだし…。今やってる映画とかおもしろそうだし…
それにごっちんとこの頃買い物行ってないじゃない?」
「あぁ、そういえば…そうだけど…」

突然目をきらきらさせた梨華ちゃんにあたしは少し戸惑って答える。
変化の早さに少し感心してしまった。
14 名前:デートの約束? 投稿日:2002年05月27日(月)15時56分26秒

「だから行こうよ!そしたら許してあげる!」
「…分かりましたよ。お嬢様」

観念するようにふっと笑い言ったあたしに梨華ちゃんは嬉しそうに笑顔を浮かべると
楽しそうに笑った。
いつもと至って変わらない様子。
他愛無いけどすごく幸せに満ちてるこの時間が退屈だらけな日々の中であたしが
一番好きな時間だった。
ずっと続くといいなって、密かに願ってる。


15 名前:aki 投稿日:2002年05月27日(月)16時03分36秒
プチ更新ですが今はここまで…。夜にもう一度更新するかもしれないです。

8:いしごま防衛軍さん
>いつもレス本当にありがとうございますm(__)m
 また新作です^^;
 …この話、学園モノでしかも結構青春…(爆)というか
 16歳ぐらいの年相応な恋愛系になりそうなので題名こうしました^^; 
 違和感がなければ幸いです。

9:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
 私も学園モノ好きです(w
 がんばります。

10:翔さん
>レスありがとうございます。
 いしごま好きですか、私も好きです(w
 金板の方、このHNじゃないですがレスしたことあります(w
 楽しみにしてます。
 私もがんばりますっ。
16 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月27日(月)17時07分49秒
新作ですね!
akiさんのはいつも読まさせて貰っています(w
今回のはどうなって行くのか楽しみにお待ちしております。
17 名前:rika-mode 投稿日:2002年05月27日(月)19時42分48秒
ちょっと、やわらかな(ってこんな表現ヘン)感じのお話ですね、今回。
でも、やっぱ、ちょっと切ない感じはでてくるのかなぁ?
楽しみです♪
18 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時32分23秒


「ねぇねぇ、君達あの有名な私立の高校の子?二人とも超可愛いね〜」
突然あたし達の時間をそんな声が割り込んできた。

「…何?」
あたしはあからさまに不機嫌な声で後ろに振り向く。
するとそこには二人の同じ男子高校生がジュースやらバーガーやらの乗ったトレーを
持つ姿があった。
…絵に描いたようなちゃらちゃらしてる感じの男二人。
だらしない制服に両耳ピアス。まるで渋谷にふら付いてるような男だ。

「席ないんだけどさぁ、ここちょうど二つ空いてるし。いいかな、座っても」
軽いノリで話し掛けてくる男をあたしは睨みつけながらすっと瞳に入った目の前の
梨華ちゃんを横目で見た。
「……」
そこには戸惑うようにして体を強張らせる梨華ちゃんがいて、あたしの中の
怒りが余計に胸の中で膨らんだのが自分でも分かった。
19 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時33分50秒

「そっち。空いてるじゃん」
「冷たいこと言わないでよ〜。二人とも超可愛いしさ〜なんか話そうよ」
「だからそれがやだっつってんの。とっとと失せてよ。邪魔なの」

あたしの口にした言葉に男が顔を引きつらせながら体を強張らせるのが目に入った。
たぶんこんなこと女の子に言われた事がないって感じに見える。
男はどこか戸惑うようにしてその場に固まるように立ち尽くしてしまった。

「……」
次第に前からバーガーショップにたむろしていた同じ女子高校生達がこっちの
様子に対して指差して見出したり、小さな声で笑ったり話し出してる。
この空間一体があっという間にその空気に包まれてしまった。

男ははっと気付くようにするとざわめき始めた周りの空気を横目で確認し
そのまま微かに顔を赤らめ逃げるようにしてどこかこちらからは見えない向こうの
方へ見えなくなってしまった。

20 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時35分21秒

「ひゅー、やるね」
「今の見た!?超馬鹿じゃん。今の男―!!」

周りの制服に身を包んだ同じ高校生が楽しそうに声を上げる。
あたしは至って何もそれに反応を返す事なく梨華ちゃんのほうへ再び向き直った。

「…ごめん。嫌だった?あんな言葉使い…」
どこか沈んだ雰囲気と困ったような梨華ちゃんにあたしは上目遣いで機嫌を悪く
してしまったのか心配しながら尋ねる。
だけど微かに俯いていた梨華ちゃんの顔がぱっと上に上がるとそこには
優しい表情の梨華ちゃんがあった。
21 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時39分00秒

「ううん!そんなことないっ。あたしがああいう男の人が苦手だって知ってるから
真希ちゃんはっきり断ってくれたんでしょ?だから……嬉しかった」
「梨華ちゃん…」

気持ちをそのまま素直に感じたまま言葉にしてくれる梨華ちゃんの姿にあたしは
ただ梨華ちゃんを見つめたまま自然と声を漏らす。
嬉しかった…
そんな何気ない一言が、まさか自分の事を…なんて淡い期待を胸に過ぎらせる。
さり気なくごく自然な形で言いのけてしまう梨華ちゃんのセリフには時たま
どきっとさせられることがある。
だけどまさか現実にそんなことがあるわけないから、あたしはすぐにそんな
妄想じみた考えを否定するけど。

「――ううん。あたしも嫌だから、あぁいう感じの男…。それに梨華ちゃんが
そう言ってくれるだけであたしも嬉しいし…」

あたしの恥ずかしくて俯きながら言った言葉に梨華ちゃんは意外なのか少しびっくりした
ように目を見開いて一瞬あたしを見たが、すぐにそのあたしの大好きな笑顔で
答えてくれた。
くさいセリフでも、この笑顔を見れるだけで言った価値はあるとあたしに思わせてくれる。
22 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時40分47秒

「優しいね、真希ちゃん」
とびきりの笑顔にあたしはつられるようにして笑いながら心の奥底で密かに呟く。
…本当に、本当にそう思ったんだよ梨華ちゃん…。
決り文句とか、お世辞とか、気を使って言ったとかそんなんじゃない…。
付け足せば…それだけの理由じゃないんだよ。
本当はあともう一つ…。

「あ、そういえば真希ちゃん今日も告白されたんだって?」
「え?」
「あたしのクラスの子が言ってたよ。真希ちゃんってよく告白されるよね。
クラスの間でももてるって有名だもん。あ、帰る時屋上から戻って来たのって、
そのせい?」
「あ……」

突然の梨華ちゃんの言葉にあたしはしばし言葉を失う。
途端に困ったようにし黙り込んでしまったあたしに梨華ちゃんは首を傾げ終いには
おろおろしながら焦り出してしまった。
23 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時42分54秒

「あ…もしかして変な事聞いちゃった…?嫌だったかな…ごめん…」
「ち、違うの。違うんだけど…」

あたしはそう言いかけながら言葉を失い心の中で一人大きくため息をついた。

違うんだよ…梨華ちゃん…
どんなにもてたってあたしには意味がない…
どんなにたくさんの人から告白されたって、あたしには関係ない。
だってあたしは…。

目の前でおろおろしながら首を傾げる梨華ちゃんにあたしは咄嗟に目を反らす。
微かに顔が熱くて、紅くなってる気がしたから。
はぁ…
梨華ちゃん知ってる?
毎日マイペースにのんびり過ごしてるあたしでもね…
一番つらい事があって…
それは梨華ちゃんにその事について触れられることなんだよ…?
しかも何も知らないようなその純粋な笑顔と、その事に対して何も感じてもいない
ような梨華ちゃんの様子…。
一番それが胸に響くんだよ…。
24 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時50分02秒

「で、でもすごいよね!告白されるなんて。あたしなんて全然そんなことないよ」
「…すごくなんかないよ…。告白されたって…別に好きでもない人からだから
嬉しくも何ともないし…」

それに梨華ちゃん、あなた。
気付いてないけど裏ではすっっっごくもてるんだよ?
特に男子から…。
うちは私立の女子校だしまずそういうの心配ないけど…
文化祭の時なんかやばいんだから…。
可愛いし女の子らしいし、スタイルはいいし、こんなに男の子にもてるであろう女の子を
あたしは梨華ちゃん以外に見たことないし…。
いつ梨華ちゃんに告白の魔の手が伸びるか…
はたまた気持ちをさらわれて行ってしまわないか…
あたしは毎日気が気でないんだから。
だから近づく男を近づけさせないんだもん。
いつも必死になって梨華ちゃんを守って男に睨み聞かせてるのはそのせい…。
25 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時51分20秒

「でもさぁ…何で誰とも付き合わないの…?」
不意に梨華ちゃんはジュースをトレーの上に置くと首を傾げて改めるようにして言った。
「……」
あたしは梨華ちゃんの言葉に再び黙る。
この次は今さっきよりも深刻で、自分が少なからず平静を装いながら動揺している
事が自分でも分かっていた。
突然表情が重くなり黙ったあたしに梨華ちゃんはまたも心配そうにする。

「ご、ごめんあたしまた…」
「好きな人がいるから」

口を開きかけた梨華ちゃんに、あたしは間髪入れずそう答えた。

「え?」
「好きな人がいるから。だから受け取らないの。断ってるの」
「……そうなんだ…」

今さっきまでとは違い、いきなり真面目な表情とその言葉に梨華ちゃんは
ただそれだけ言葉を返してくるだけだった。

26 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時52分43秒

あたしは黙ったまま何気なくジュースのストローを動かし、横目でちらっと
梨華ちゃんの様子を伺った。
だけどそこには淡い期待も空しく呆然と、唖然とした表情の梨華ちゃんがいるだけで。
あたしは心の中で密かにため息を付く。

「すごいね…。そんな好きな人がいるんだ…」

ただひたすらに想い続ける健気なあたしの様子にか、梨華ちゃんは関心したように
声を漏らす。

「………」
あたしは心の中で小さくそれに突っ込みを入れながら、いつものごとく早々に諦めると
ふぅっと小さく息をつき、雰囲気を変えるように話を変えていった。


27 名前:守らなきゃ!  〜鈍感な彼女〜 投稿日:2002年05月27日(月)21時53分50秒

「それじゃまた明日」
「うん!明日ね!!」

それからあたし達はポテトを食べ尽くし、空になったトレーを戻すと
駅前で手を振りながら分かれそれぞれの帰路へとついていった。
あれから明日についての予定を決めて、どこで待ち合わせかと時間を決めると
店を後にした。

「………」
明日は土曜日。
梨華ちゃんはそう思っていなくてもあたしにとっては久しぶりのデート。
つかの間の二人っきり。
そう思うと今さっきの梨華ちゃんの言った事も忘れ顔が自然と緩むのが
分かった。
たとえそういう関係じゃなくても、今はこの時を楽しもう。
あたしは心にそう言い聞かせると足取り軽く家へと帰っていった。



28 名前:aki 投稿日:2002年05月27日(月)21時59分33秒
更新終了です。

16:ぶらぅさん
>レスありがとうございます。新作です^^
 おぉ、いつも読んで下さってるんですね。嬉しいです。感激と感謝です(w
 
17:rika-modeさん
>レスありがとうございます^^
 そうですね。今までの中では「とある〜」以来ですかね、結構あまり重く
 ない感じのは…。
 切なく…なるのかな?って所です^^;
 まだその辺りまで行ってないんですがでもたぶん楽しさみたいのが
 重視できたらいいなと思ってます。がんばりますっ。
 
29 名前: 投稿日:2002年05月28日(火)02時20分41秒
更新おつかれさまです!
梨華ちゃん、鈍感ですネ!さすがって感じです!そんなところが、かわいいですけど!
ごっちんも、かわいいっス!
30 名前:名無しです 投稿日:2002年05月28日(火)02時28分19秒
うんうん♪分かる分かる^^分かります^^
守らなきゃ!って。
カワイイッスねごっちん♪もちろん、梨華ちゃんも^^

このまま素直に続いていくのか、はたまた新たな障害がくるのか…
色々な期待を込めつつ(w→sage

これからも頑張って下さいね〜
31 名前:すれ違いだかけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)18時55分28秒



「――ごめんっ!待たせちゃった!?」
「ううん。大丈夫。今来たところ」

それから翌日。
あたし達は渋谷で待ち合わせて合流するとまずは映画へ、
二人は目的の場所へ一緒にぶらぶら街を歩いていた。
「約束の時間10時なのに。真希ちゃん早いね」
時計を見るとまだ9時50分。
約束の時間から言ったら梨華ちゃんは全然余裕だしちょうどいい時間。
だけどあたしはどうしても昨日早くに寝付けなくて、しかもやっと寝たと思ったら
眠りが浅くていつも学校に行く時と同じかそれより前に早く起きてしまった。

「…まぁね」
歩きながら梨華ちゃんにそれだけ答える。
いつも待ち合わせとかすると自分は絶対に遅刻していくはずなのに。
朝はとびきり弱いはずなのに。
まるで遠足を楽しみにする子供みたいに我ながら純な自分に、人知れずふっと小さく
呆れるように笑ってしまった。

32 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)18時57分09秒

「映画は何見るの?…―――!」
「もう決めてあるんだ!時間もちゃんと調べてあるよ!だから大丈夫!」

そういうと梨華ちゃんは少しだけあたしより前を歩いて不意にあたしの手を取った。

「前真希ちゃんと話してた映画!いいかな…?」
「う、うん」
「良かった!それじゃ行こう!」

それからと言うものの、昨日のことがあるから梨華ちゃんの言葉に必死に耳を
傾けて必死に返事をしたり相槌を打ってたりしたけど、あたしの意識はまるごと
この繋がれる手に注がれていて何が何だか分からないうちに街を移動してた。

「……」
(梨華ちゃんってこういうの嫌じゃないんだ…)
中には友達同士でも手を繋ぐのを嫌がる子がいる。
恥ずかしがる子もいれば全然気にしないで人前でべたべたする子もいるけど…。

33 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)18時58分40秒

(…梨華ちゃんがそういうの気にしないタイプで良かったはあとはあと

むしろ梨華ちゃんはどちらかと言うと今さっきの後者に当たるタイプ。
たまに抱きついてきたり手を繋いできたり、顔をすぐ目の前に近づいてきたり。
周りから見れば変に誤解されるような。
もっともされる本人が一番誤解してしまうようなことを平気でする。
たぶん、異性に対して必要以上に構える分同性に対しては心を許してるんだろう。

(嬉しいような…。だけど結構つらいような…)

梨華ちゃんが自分以外のほかの誰かに同じような事をしてるのは見たことがないけど、
別に特別視してそういう事をしていないこともちょっとショック。

34 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時00分33秒

「…ちゃん。…真希ちゃん!!」
「は、はい!」
「??どうしたの?」
「え?あ、な、何でもない!」
いつのまにか目の前には大きな映画館が立っていてあたしは今気付いたようにそれを
見上げてしまった。

「もう着いてるよ?…もしかしてまた話聞いてなかった?」
「!そんなことない!聞いてたよちゃんと」
本当に?といぶかしげな表情で聞く梨華ちゃんにあたしは強く首を縦に振った。
そんなあたしに梨華ちゃんはすぐに笑顔になる。

35 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時01分48秒

「行こう!」
「う、うん」

梨華ちゃんに手を引っ張られながら、あたしはその後を慌てるように着いて行った。
目に入る繋がれた手。
感じるのはただ梨華ちゃんの手のぬくもりだけでそれにあたしのぬくもりが
交わりたぶん梨華ちゃんにも伝わってる。
唯一繋がってる二人の部分にあたしは今更ドキドキしながら顔を赤らめた。

(…いつか……)

いつかこの二つの手が、指を絡ませて繋ぐ恋人繋ぎになればいいのに…。
実際そうなった時今でも充分ドキドキしている自分はその時一体どうなってしまうのか。
予想もつかない憧れの夢の話にあたしはすぐにかき消すように頭を軽く左右に振った。


36 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時04分42秒

映画はこてこてのラブストーリー……ではなくその隣のアニメ映画だった。
アメリカで大ヒットし、小さな子供を中心とした大人でも楽しめる感動の
ストーリー。
実際に映画館に来てる人も意外におばさん方や比較的大人の人。
恋人同士で来てる人もいれば中学生の友達同士で来てる子、
更には小学生同士の子もいればもっと下のお母さん連れで来てる子もいて幅は
上から下まですごく幅広かった。

最初の方はやっぱりアメリカ特有ハイテンションのギャグだらけのコメディで
始まり、後のほうは映画館内の人間を涙で満たすようなそんなストーリー。
案外アニメだけどヒットした理由がわかるほどおもしろくて、あたしも
珍しく映画にくぎ付けになっていた。

だけど不意に頭を掠める事は一つ。

37 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時06分07秒

「……」
隣の梨華ちゃんにちらっと暗闇の中、目を向ける。
だけどそこには周りの人同様、映画に夢中になっている梨華ちゃんがいて
あたしは密かにため息を付く。

これがちょー甘い、そして切ないラブストーリーとかなら。
それかちょー深い愛を描いてるようなラブストーリーなら。
映画を見た後、あたし達を取り巻く雰囲気とか空気が微妙な物に
変わるんだろうけど。
はたまた手なんか繋いじゃったりしてさ…。
映画どころじゃないんだろうけど…
これじゃ無理だわ…。

あたしはふぅと落胆するようにため息をまた一つこぼすと、クライマックスに
近づいている映画の画面へと静かに顔を戻しそのまま深い静寂を壊さないように
慎重に腕を動かし隣に誰もいない肘掛に肘をつき、そこに首を乗せると
下手な考えを全てかき消し自分も映画へとぼんやり意識を傾けていった。


38 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時07分56秒

―――――――


「おもしろかったねー!!」

一時間半の映画を見終わり今は太陽の気持ちいい最高の天気の空の下。
人の波に乗り映画館前までやって来ると改めるようにあたし達はずっと
座っていた体を背伸びしたり気を改めていた。
「そうだね〜…」
あたしはぼんやり梨華ちゃんに返事しながら今出て来た映画館の正面、
映画のポスターに目をやった。
今見てきた方じゃなくて……そう隣の方。

「……」
なごり惜しむようにそのハリウッドの有名女優と俳優が映るポスターに目を向けながら
心の中で密かに呟く。

(…梨華ちゃんはあぁいうラブストーリーとかは興味ないわけ?今観た映画も
すごいヒットしてるけどあっちだって……)

向こうも当然こっちと匹敵するぐらいに若い男女に支持を得ていた。


39 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時11分05秒

「?どしたの?」
「…なんでもなーい」
少し露になってしまった感情にあたしはもう気にする事なく返事してしまった。

「?」
突然ご機嫌斜めになったあたしに梨華ちゃんは不思議そうに首を傾げる。
…なんて罪な動作なの。仕草なの。
それにも少し矛盾な不機嫌を感じるとあたしは一人ですたすた歩いて行ってしまった。

「あ!ちょっと待ってよ〜!何なの?一体〜」
後ろからいつものいじめたくなるような可愛い声が追いかけてきた。



40 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時12分50秒



「あ、これ可愛い〜!これも〜!」

それからショッピング。
あたし達はどちらかと言うと買い物よりも遊ぶ時間優先にし、周りの
可愛い服を見ながらお店の中を歩いていた。

「これいいなぁ。でもあたしに似合うかなぁ?」
「似合うんじゃない?梨華ちゃん可愛いし」

服を手にとって自分の前にやり鏡を見る梨華ちゃんにあたしは後ろから
声をかける。
不意に自然と出てしまった言葉にあたしは思わずばっと口に手を当ててしまった。

「本当?じゃぁ着てみる!」
そんなあたしに至って気にすることなくまじまじとあたしの顔を覗き見つめてくる。
更に顔が紅くなりそうになったけどそのまま梨華ちゃんはさっさと試着室へ
向かって行ってしまった。

41 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時14分07秒

「……はぁ…」
思わず口から取って出た言葉にあたしはどきまぎするように息をつきながら
まだ今さっきの自分の言葉が信じられず梨華ちゃんが行った後も少しそこで
ぼーっとしていた。

(…何言ってるんだあたし…)

別に友達同士だから普通だけど。
明らかにあたしはそう思って言ってないから余計に思う。
…まるで下手に気を振りまいてるじゃん、あたし…。
中にはこんな言葉にドキッとするような子とか、意識したり気を持ったりする子とか
いるんだろうけど…。
その変に関しては安心だけどやっぱり少し落ち込む。

…まぁ、いいか。
本当にそう思ったんだし。

そう自分に納得をつけるとあたしはさっさと梨華ちゃんの向かった試着室へと
向かっていった。


42 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時16分40秒

結局その服はめでたく梨華ちゃんの手に渡り、それからまだあたし達は
いろいろ時間を潰していた。
途中お店で見かけた服に梨華ちゃんから薦められ、とりあえず試着し、
結構可愛いのであたしもその服を買うことにした。

…梨華ちゃんが薦めた服はどちらかというと大人っぽい、あたしにはまだ早いん
じゃないって感じの服だったけど、ジーンズを組み合わせて着ると意外に
そうでもなく尻込みするあたしはとうとう梨華ちゃんに背中を押され買うことに
なってしまった。


43 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時19分35秒

ショッピングの後は少し遅めのランチ。
向かった先は外からはラフな古い木造の洋風レストラン。
でも中は薄暗くおしゃれな淡いオレンジや赤のランプにぼんやり照らされている
意外に知られてない穴場なお店。
カウンターやグラスなどがそこから連れ下がっていたり、中にいるのは白と黒の
どこかシンプルだけどおしゃれに決まってる綺麗なウエイトレス。

「わぁ、真希ちゃんすごいところ知ってるねぇ」

一見レストランに見えない外観はこんなに人の行き交う街中でもみんな知らずの
うちに通り過ぎてしまう。

「ふふん。友達に極秘で教えてもらったんだ〜」

あたしは得意げに言いながら、今更ながらその親友にかなり感謝していた。

席につき、手渡されたメニューからそれぞれ注文し、しばらくしてテーブルに
運ばれてきたおいしそうなパスタにを口に運びながらあたし達はいろんな話をした。


44 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時21分31秒

「楽しかったね〜。そういえばさぁ、映画のあの場面―――」
「……」

向かい合うようにして食べながら話す梨華ちゃんには悪いけどやっぱり
頭に入っていなかった。
トマトソースのパスタを口に運んでいくたびにまるでCMみたいに上手に
口に頬張りパスタをすする仕草と吸い込んでいくパスタに不埒ながらあたしは
ぼんやり目を奪われていた。
ジュースを飲んだり、唇の周りについたソースを舐めたり、指で拭ったり…。

「っ!」
そんな仕草に心奪われていたことにはっと気付きあたしは目を下に向けると
夢中でパスタをフォークに絡めた。
はぁ、体に毒。
パスタを食べながら梨華ちゃんを目の前にするのはそれ以外表現できないと
本気でそう思った。



45 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時24分11秒

ランチを食べお腹を満たした後は、ぶらぶらと買い物袋を手に街をぶらついていた。
雑貨店に入ったりCDショップに入ったり、デパートでぶらぶらしたり、
そうこうしている間も話しは二人の間で途切れることなくまた笑顔も絶えなかった。

「あ、もうこんな時間だ」

隣で梨華ちゃんが微かに日が傾きかけたことに腕時計に目をやった。
一緒に覗き込んだ梨華ちゃんのその腕時計はちょうど午後5時、1分前を指していた。

「…そろそろ帰ろっか」
「うん」

まだ太陽は空に上っているけどそれも後わずかで思っているよりも早く
沈んでしまう。
暗くなる前に明るい間に今日一日を過ごしてしまいたかった。
二人でいるのに空が暗くなり、街も夜に近づいていく様子はどこか胸が
切なくなる。

46 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時27分22秒

「それじゃぁまた明日学校でね!」
「うん」

電車が駅から全く別なので駅前で別れることにする。
梨華ちゃんは買い物袋を持ちながらも手を上げて必死に振ってくれた。
そんな姿が妙に可愛らしくて小さくあたしは笑ってしまう。
それから梨華ちゃんが後ろを向き、向こうの改札口を目指して歩いていく。

「………」
その後ろ姿をずっとあたしは見つめていた。
遠くなる距離。
考えてみればあたしからすると梨華ちゃんがたとえ目の前にいてもあたしの視点から
は離れすぎてる。
だけど姿が小さくなるまで離れると、もっと不安だし嫌だった。
あたしが見えない隙に、何かあったら…
なんて不安が心を過ぎる。
それならまだ望む関係には遠くても、手の繋げる距離に居られるほうがいい。
手を伸ばせば触れられる距離でいられることだけでも何かに感謝したくなる。

47 名前:すれ違いだらけのデート当日? 投稿日:2002年05月28日(火)19時29分35秒

「……」
あたしは梨華ちゃんの姿が視界から見えなくなった所でようやくしばらくしてから
体を向こうへ向き直らせた。


「……はぁ…」

側にいられるだけでいい、けど…
それだけじゃ物足りない…。
こんな矛盾した気持ちにあたしは小さくため息をつき帰路へとついていった。



48 名前:aki 投稿日:2002年05月28日(火)19時37分08秒
更新終了です。毎日更新するのは結構懐かしいです(w
しかし改めて直して載せると間違いがあるもんですね…。
書いてて思ってましたがごっちんため息多いです^^;

29:翔さん
>レスありがとうございますっ^^
 鈍感です。かなりの鈍感です石川さん(w
 これからもっとそれが発揮されていきそうです^^;
 二人とも可愛い感じに書けてるみたいで嬉しいです。がんばりますっ。

30:名無しですさん
>レスありがとうございますっ!
 後藤さんの気持ちが分かってくれる方がここに!(w
 嬉しいですっ。共感できてくれたら嬉しいなって感じのキャラクターなので
 嬉しい限りです。
 期待sage<感激です(w 励みにやる気!
 がんばりますっ! 
49 名前:俵屋宗達 投稿日:2002年05月28日(火)22時57分35秒
感動。akiさんの新作に乾杯。 悩むお年頃なごっちん最高。 ごっちん、ため息ばかり付いてると幸せが逃げちゃうぞー!
50 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月29日(水)00時37分13秒
初レスです。
鈍感な( ^▽^)にかなり萌えました(w
・・・実はかなり初期からのファンです。
がんがってください!
51 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月29日(水)03時20分18秒
うぐぐ(+−+)やっと大学のレポート書き終えました。
二日かけてやっとできた。
ごっちん切ないよ。梨華たんは本当にごっちんの気持ちに気づいてないんですかね。
ごっちん頑張れ!!梨華たん可愛いすぎるよ。
ひそかに梨華たんを守っているごっちんには必ずいいことがあるはずだ。
更新楽しみに待っています。題名はぴったしだと思いますよ。
52 名前:後藤さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時09分37秒



それから真っ直ぐ家に向かって寄り道することなく帰るとそのまま一直線に
あたしは自分の部屋のある二階を目指した。

「あ、おーい!もうすぐ夕飯だよ〜?」
「分かった!」

そのまま階段を登り真っ直ぐ2階へどたどた足音を鳴らしていくあたしに
キッチンの方からあたしに気付いたらしきお姉ちゃんの声がしてきた。
微かに夕飯のおいしそうな匂いを鼻に捕らえあたしはそれだけ言葉を返すと
そのまま部屋を目指して廊下を足早に歩いた。


「…はぁ…!」

疲れた…。
さすがに疲れたよ…。
荷物を肩に背負ってただここまでの距離を足早に渋谷から帰ってきただけだけど
疲れた。
気だるい体をそのままベッドに横たわらせようとした時ちょうど階下からまた
大きな声がしてきた。

「真希―!夕ご飯だから降りてきてー!」
「…は〜い!」

タイミング良すぎるその声にあたしは一旦間を置きうな垂れるようにため息を
つくと改めて大きな声で返事し部屋を出て行った。

53 名前:後藤さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時11分46秒

――――――


「……はぁ……」
夕飯は家族みんなで食卓を囲み定番だけど和やかな雰囲気の中いつも通り
みんなのお腹の中へと満たされていった。

そして今はつかの間の休み。
あたしは今さっき出来なかった、ベッドに体を横たわらせのんびり疲れを癒し
気ままに自由な時間を過ごしていた。

「………」
額に手の甲を置くようにして真っ白な何もない殺伐とした自分の部屋の天井を
眺める。

疲れた…。
何でだろう。
…たぶんいつも普通に生活してるのでは感じないほどの緊張を今日味わったから
だと思う。
その分自分がいつもぐーたら生活している時なんかには味わう事が出来ないぐらいの
嬉しさと楽しさがあって。
いつものんびり生活してるからこんな感情の激しい揺れ動きに体が着いていって
ないんだと思う。

54 名前:後藤さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時14分16秒


…楽しくて楽しくてしょうがなくて、幸せで幸せで仕方がないぐらいで
ずっとずーっと梨華ちゃんと時間を過ごしていたくなる。
その反面ふとした梨華ちゃんの行動や仕草、言葉に思わずどきっとしてしまう
時がある。
それも好きだからしょうがないけど…あたしってこんなうぶだったかな…。

「……」
瞳を閉じて今日の事、今日過ごした事、何より梨華ちゃんの顔を思い出す。
可愛い笑顔、純粋で無垢な性格。
その全てが愛しくて時に…いらだちを感じる。
こんなにも好きなのに、こんなにもあたしは胸を高鳴らせているのに。
梨華ちゃんはそんなあたしの視線には微塵も気付かない。
それよりか罪深いことをあたしに対して平気でする。
それもどれも意識してやってることじゃないから、腹が立つ。

あたしは今まで梨華ちゃん以前に誰も好きになったことがない。
他人に対してもほとんど興味なかった。

55 名前:後藤さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時15分57秒

ただぼーっと辺りの人間関係を見たり、必要な時はそれに応じた行動を取ったり
するだけだった。
なのに…。

「……はぁ…」
いつのまにか梨華ちゃんはあたしの心を奪っていて。
気付いた時には遅かった。
かなり梨華ちゃんにのめりこんでる。
つまらない嫉妬とか時には他の誰かから梨華ちゃんを守っていたりする。

…なんか微妙に悔しいよ…。
知らない間にあたしの気持ち傾けさせておいて、それでいて梨華ちゃんは何も
知らないし。
挙句の果てあたしにとってつらい事とか平気で言うし。
今みたいに楽しかったり嬉しかったり、逆にはつらかったり悲しくなったり切なく
なったりするのも梨華ちゃんの行動次第なんて…。
どんなに切なくても、梨華ちゃんの笑顔を見るだけでまぁ、いっかって思っちゃう
なんて…。

56 名前:後藤さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時18分09秒


「……もうっ…」
純粋な笑顔、微笑みかけてくるその無垢な仕草。
あたしはどれに対しても梨華ちゃんに溺れてる…。
でも違う…。
梨華ちゃんはただ友達に対して笑ってくれたり接してくれてるんだろうけど…

あたしはそれじゃ満足できないの。
満たされない。我慢できない。

ある意味すれ違ってるあたし達の関係の解釈。

あたしは友達のままじゃいられない…。





57 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時19分52秒

――――――


「……ふぁ〜……」
楽しかった。
だけどさすがに疲れた。
街中を一日で廻ったしあまり休憩もしなかった。
休憩してる暇がすごく惜しくてそれをしてる暇があるならもっと真希ちゃんと
時間を過ごしていたかった。
けど久しぶりの買い物のせいかいつもよりも真希ちゃんと過ごすのが楽しくて
嬉しくてなまっていた体にはちょっとはしゃぎすぎたみたい。

「……♪」
駅前で待ち合わせした事、映画を見たこと、買い物をした事、
今日会ったことをベッドの上でうつ伏せになりながら瞳を閉じて思い出してみる。
ごっちんが連れて行ってくれたパスタ屋さんはすっごくおしゃれで綺麗で
おいしかった。
雰囲気も良くて話も弾んだ。

58 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時23分28秒

それからお店で二人で見ながら買った服の袋を持って街中を歩く。

その時ごっちんは気付いてなかったみたいだけど町を歩く人がちらちらごっちんの
方を見てた。
それはどれも嫌な視線とかそういうのじゃなくて、隣にいるあたしでも分かる、
注目されてるっていうかふと見てしまうっていうか、自然と視線がごっちんに
集まってる感じだった。
ごっちんは気付いてなかったみたいだけどあたしはそんなごっちんの隣にいられる
のが嬉しくて、一緒に時間を過ごせるのが幸せで繋いでた手に自然と力を入れて
そのまま無意識に軽く腕を絡めてた。

ごっちんも全然それに嫌がる風もなくて前を向いたままなぜか微かに顔が向こうに
そっぽ向いちゃったけど振りほどく事もなくそのままでいてくれた。


59 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時27分45秒

「………」
ごっちんは男女問わずみんなから注目を浴びる。
高校に入ってからもごっちんが学校では女の人、外では男の人から声を掛けられたり
告白されたりするところを何度も見かけた。

自然と視線を集めてしまって、自然と見た相手の心を奪ってしまう。
何もしてないし、それを意識してやってる事じゃないから益々所構わず気を持たせたり
気持ちを自分に傾けさせてしまっている。

誰にもくっ付かないしべたべたしないし、一人でも平気でそれでいて何でもそつなく
こなしてしまうからそれも憧れの対照になるし、どれも全部気にしてやってる事じゃ
ないからまんべんなくみんなに普通の態度を取っていてみんなに優しい。

それに加えあの容姿にさらさらなストレートの茶パツ、スタイルの良いラインの綺麗な
体に、女の子にはちょうどいいぐらいの身長。
男の子っぽいけど本当は女の子らしい性格は性別関係なく夢中にさせるのは納得できる。

そんな誰にもとらわれないありのままで自然体なごっちんから発せられたあの一言。


60 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時29分39秒


『好きな人がいるんだ』

冗談にしては真面目すぎるその表情と言葉と雰囲気にあたしは少なからず驚かされていた。
あたしが知る限りでもものすごい量の人から告白されてるし、もてるけど、
どれも全部断って気持ちを受け取っていなかった。
むしろ迷惑そうにしていて本当に困ってるみたいであたしはごっちんが恋愛とか
そういうのにあまり興味がないのかと思っていた。

だけどあの時の真面目な瞳。
あれは絶対に嘘なんかついてなくてありのままの気持ちを口にしたことがあたしに
だって分かる。
特に目の前であたしに対して言った言葉なんだから尚更だった。

ごっちんに好きな人がいる。
その事実は結構衝撃的で驚かされた。

61 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時32分14秒

…別に好きな人がいるっていうのは不思議なことじゃないしごっちんだって一応
年頃の女の子だからいたっておかしくない。むしろ居るほうが当たり前かもしれない。

だけどあまりにも唐突すぎてあたしはカウンターをくらったみたいにぼんやりと
してしまった。


『好きな人がいる』
だから告白を受けない。

『好きな人以外の告白なんて迷惑。その人じゃないから』
…ごっちんのあんなに真面目な表情は初めて見た。

それだけ本気だってことだし本当に好きだってことだよね。
だけどちょっと苦しそうな感じだった。
ため息交じりでいかにも伝わらない片思い…って感じで。
ごっちんに好かれてるのに気付かない人がいるの?って思った。

62 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時36分27秒

だけどごっちんに好かれるなんてその人すごく幸せな人だよね。
たくさんの人がごっちんに想いを寄せても報われないのにその人はそのごっちんから
想いを寄せられている。
すごくその人は運のいい人だ。

どんな…人なんだろう…。
ごっちんが好きになる人だもんね、しかもあんなに真剣に。
たぶんすごく素敵な人なんだろう。
あたしは知ってる人なのかな?
それとも違う学校?小さい頃からの知り合いとか、今は遠くにいる人とか?

いろんな考えは過ぎるけどどれも確信には当然いたらない。
ごっちんの好きになる人はどんな人なのか興味がある。
だって学校でも廊下を歩いてると振り向かれるし密かに有名だったりするし。
それに何より親友のごっちんはどんな人が好きなのか、気になった。

今片思いなら、いつかその人に告白する時が来るのかな…?
だったら叶うといいよね。幸せになって欲しいもん。
…でも、そうなると…

63 名前:石川さんの場合 投稿日:2002年05月29日(水)19時38分05秒

「………」
枕に顔を埋め、うつ伏せになりながら瞼を開けた。

親友…とか友達…なんかより恋人優先になるのかな…。
不意に頭を掠めた考えに今さっきまでとは反対に不安が心を過ぎった。

友達と遊ぶよりも、恋人とデートするのが優先になるのかな…
…そうだよね、だって『好きな人』だもん…。
そうなると…友達はニ番目でやっぱり恋人が一番…?
…ごっちんはそういうのあからさまにしないとは思うけど…でもやっぱり…。

幸せになっては欲しい、けど…
なんか…やだな…。そういうの…。

『二番』なんて…なんか寂しいよ…。



64 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時45分17秒

――――――


「……っ!」
普通に接してくる態度、笑顔、行動。
それはどれも全部「友達」
どきっとするようなことも全部梨華ちゃんにとっては違う。そうじゃない。

…違うの…違う…
あたしが欲しいのは「それ」じゃない。

「友達」…なんて嫌なの…。
あたしは友達のままでなんかいたくない、我慢できそうもない。

…友達のままじゃいられない…。


仰向けだった体を反転させばふっと枕に顔を埋める。
うつ伏せになり真っ暗闇の視界の中であたしは梨華ちゃんの笑顔を思い浮かべていた。
一旦暴走し始めた考えは、とうとう綺麗事ばかりの真面目な理性では
止められなくなってくる。

65 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時47分41秒

「……」
抱しめたい、その体。
キスしたい、その唇に。
本当はもっと触れたい、梨華ちゃんに。
ただ感じたままにその華奢な体を抱きしめて唇だけじゃなくて、体中の至る所にキスをしたい。
その柔らかくて綺麗な肌に、貪りつくように痕を残したい。
っていうか…Hしたいよ…。

そんな事を思っているうちにあたしの体は熱を帯びてくる。
梨華ちゃんと一緒にいるとき必死に抑えつけている醜い欲望が露になる。


66 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時51分17秒

暗闇の中で、今さっきまでとは違う「梨華ちゃん」が現れる。
その梨華ちゃんはもう「友達」じゃなくてあたしが望む存在のままの姿。
優しくて女の子らしくて純粋な性格はそのまま、だけどあたしが望む事を
何でも素直に純情に従ってくれる。

…さらけ出された欲望は本能に素直で、あたしはそのまま妄想の中で
欲求を果たそうとしてしまいそうになる。
それに梨華ちゃんも何も言わないまま受け入れてくれる。
現実で出来ない事…
本当はこの現実でもそうなって欲しい事…
だけどこれは全く現実とは異なる物で、純情な「愛」とは裏腹にそれは
理性と一緒に「裏」に追いやられ
ここでは現実とは違う空間を生かすように思ったまま行動してる。


67 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時52分48秒

「……!」
微かに現実の中で自分の腰がもぞもぞ動いた事にあたしは目を覚ました。
「…ばか……」
小さく呆れたように声を漏らしながらあたしはベッドの上に座るようにして
上半身を上げた。

…大好きな梨華ちゃん
想っても想っても想いは届かない。

「……あたしって最低…」
額に手をやるとあたしは自責の念に駆られ沈んでいく。

こんなにも愛しい梨華ちゃんを、
こんなにも大切で誰よりも愛しい彼女を、
自分の本能や欲望に従ってたとえ妄想の中でも汚すなんて。

68 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時56分07秒

誰にも渡したくない。
誰にも触れさせたくない。
たとえ、あたしでも許されない。梨華ちゃんを汚すことは。

たまにそのあまりにも汚れ無き純粋な存在が疎ましくもなる。
…時に自分の欲望でめちゃくちゃにしてやりたくなる時もある。

その純粋無垢な存在は時にまるで重圧のようにあたしを苦しめ狂わす。


…誰よりも失いたくない。
他の誰かなんかに奪われたくない。
だけど、あたしの中のほんのわずかな理性と弱さが、立ち上がろうとするあたしを
押し留める。

…もし、こんな事を考えてる自分を梨華ちゃんが知ったとしたら、
あたしは軽蔑されてしまうのだろうか…。
妄想の中だとしてもあたしは梨華ちゃんを使ってる。
…たとえ優しい梨華ちゃんでもそれは複雑で…嫌に決まってるよね…。

あたしの中には本当に心の奥深く、深層心理に近い辺りで欲望に純情な獣が
眠ってる。


69 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時58分09秒

梨華ちゃんはあたしを「友達」として見ているのに、あたしは「恋愛対象」
あるいは「欲求」の晒す存在として見てる。

もしそれを梨華ちゃんが知ったら…知ったりしたら…
絶対に友達としてなんか見てはくれなくなる。

今は普通なこの関係にももう戻れなくなる。
それだけは嫌だ…。

自分にとってこれ以上ない不安は梨華ちゃんに軽蔑の眼差しで見られること。
その不安はわずかに芽生えた勇気さえも惜しむことなく摘むんでしまう。

梨華ちゃんは優しい。
たとえあたしがもし梨華ちゃんに本当の気持ちを伝えたとしても、もしかしたら
真剣に考えてくれて本当にもしかしたら受け入れてくれるかもしれない。

…本当に奇跡的に、もしかしたら…本当にもしかしたら恋人に…なれるかもしれない。


70 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)19時59分57秒

そしたら今の自分が知りもしない未知の関係やすばらしい出来事が待ち望んでいるのかも
しれない。たったわずかな勇気でそれは開かれる。

だけど、もしもダメだったら…。
ぎこちないまま関係は引きづられ挙句の果てには何もかも壊れてしまうかもしれない。
逆に、恋人になれる可能性なんてほとんど0に近くて、そうじゃないほうが
大きい。

…そうなったらあたしは生きていけない。
あたしにとって梨華ちゃんは全てで、一緒にいられるのなら苦しくても
想いを伝えないほうがいい。
あまりにもリスクの多すぎる「恋人」にわずかな期待をかけるには、
失う物の存在が自分にとって大きすぎる。…苦しすぎる。
71 名前:欲求不満  −悩み多き年頃ー 投稿日:2002年05月29日(水)20時07分58秒

だったらこのままの方が…。

…でもそうこうしてるうちに他の誰かがあたしの知らない間に梨華ちゃんに
告白なんかしたら…

今日だってパスタ屋さんに入った時も街中歩いてた時も男の視線はちらちら
梨華ちゃんに注がれてたし…。

しかも梨華ちゃんは誰にでも優しいから…。他の誰かに強引に迫られて断りきれなくて
それで…。

そんな最大すぎる不安にあたしはそんな事を考えた自分を責めるように
頭を左右に振る。

「……ふぁ……」

いつものらせん状に繰り返すまるで方程式に似た考えにあたしは小さくため息する。
どれもこれも答えは出てこない。
しかもどれに対しても何が待ち望んでいるのか分からない。

こうして今日も夜が更けていく―――



72 名前:aki 投稿日:2002年05月29日(水)20時26分52秒
悩み悩みなごっちんと鈍感鈍ちん梨華ちゃんです(笑)

49:俵屋宗達さん
>ありがとうございます〜(T_T)
 そんな言葉言ってくれるなんてこちらの方が感動、感動の嵐です(泣)
 本当に、感謝ですm(__)m
 ごっちん悩みまくりです^^;

50:ごまべーぐるさん
>ありがとうございます(T_T)
 いろんな所で見かけていたので初レス!嬉しいです!
 これからもっと石川さんの鈍感ぶり発揮されていきます^^;
 初レス、もっと早くに頂きたかったです(w
 がんばりますっ!

51:いしごま防衛軍さん
>レポート、お疲れ様です^^
 鈍ちん梨華ちゃんに悩みごっちんですが
 恋する乙女のパワーは強し!のはず、です^^;
 題名私もこっちで良かったと思いました。 
 もう一つはちょっと真面目になってしまって…。
 ぴったしですか、良かったですっ。 
73 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年05月29日(水)20時36分58秒

微妙にリアルタイム♪
梨華ちゃんはごっちんに集まる視線が、ごっちんは梨華ちゃんそのものが、
気になってるんですね〜。梨華ちゃん鈍すぎ!!
私は明日一日なぜかテスト三昧。ふえ〜ん、akiさん助けてください〜(涙

74 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月29日(水)21時00分39秒
鈍ちん梨華たん可愛いです。ごっちんも何気に鈍感な気がしました。
ああこの二人が交わるときはあるのだろうか?梨華たんの鈍感さからいくと
当分ないような。ごっちんが切ないです。
更新楽しみに待っていますよ。
75 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月29日(水)21時36分15秒
悩むごっちんと鈍感な梨華ちゃんいいっす〜(w
akiさんの文章にはいつも引き込まれます。
どうやったら気づいてもらえるのか(w
この後どうなっていくのか気になります。
76 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)20時59分12秒

―――――――


「ふあ〜……」
昨日はあれから永遠に考えに頭を働かせ気付いた時には真夜中を時計が
過ぎ、慌ててお風呂に入って眠りについた。

そして今日も寝不足。
あまりにも不規則な生活に今日もあくびが出た。

「あっ!ごっちーん!!」
「ん〜…?」

学校への登校途中、後ろから突然自電車のベルの音と声を掛けられあたしは
のんびり気だるい体を後ろへ振り向かせた。

「おっはよー!珍しいねーこんな朝早いの!昨日は楽しかったー?」
「…おはよう」

自転車に乗り笑顔で手を振ってこっちに走ってきたのはあたしの親友の一人、
吉澤ひとみだった。
そう、昨日あんなに疲れてたはずなのにやっぱり慌てて寝たせいか、それか
明日の事を考えてか今日もまたこりず早く起きてしまった。
しかも一旦起きたらもう眠れない。
あたしは仕方なくまだ睡眠を欲している体を奮い立たせるとのんびり家を出た。

77 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時02分45秒

「楽しかったー?」
「…何が?」
今日もよっすぃーは朝からテンションが高くて元気。
あたしは目じりに涙を溜めながら質問の内容が分かってるくせに答えない。

「だから昨日のデートー!久しぶりだったんでしょ?」
「まぁね…」
そこそこに。あたしは後にそう付け加えた。

「何かだるそうだけど、どうしたの?」
「…昨日遅くに寝ちゃってさ…」

その上今日この時間じゃあまりにもきつい。
まだ完全に起ききってない瞼を擦りながらあたしはゆっくり自転車を漕ぐよっすぃーに
答えた。
「ふーん。あ、乗れば?」
「うん。そうする」
学校から比較的家が近いよっすぃーはいつも自転車で学校に通学している。
あたしはいつもの深い青色の結構地味なよっすぃーの自転車の籠に自分の鞄を
放り込むと、後ろの二人乗りように改造されている自転車のフレームの足置きに飛び乗った。

78 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時06分19秒


「あ、そうそう。この前教えてもらったパスタ屋さん。あそこ良かったよ」

自転車に乗り込んでからしばらく経ちあたしはよっすぃーの肩に手を置きながら
のんびりと言った。

「でしょー?あそこいいよね〜。あたしも先輩に教えてもらったんだー」
よっすぃーは自転車を漕ぎながら微かにこちらに顔を向け答える。
実は昨日のパスタ屋さんを教えてもらったのは唯一あたしの梨華ちゃんへの
気持ちを知ってる友達、兼親友のよっすぃーだった。

「すごくおいしかったー。雰囲気も良かったしー…」
朝の新鮮でさわやかな風を切り、心地よく肌に感じながらあたしは周りののどかな
風景に目を細め返事する。

それからなにやら前でよっすぃーが自転車を漕ぎながら何か言ってたけど
疲れでだるい体にあたしは耳を傾けることは出来ても頭で意味を変換することが
出来ずぐたーっと両手を組みそれをそのままよっすぃーの両肩に乗せて顎をもたれさせてしまう。

79 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時09分12秒

「重っ!まじで事故る!」
「…はぁ…後藤真希もう限界です」
「え?」
あたしが不意に口にした言葉によっすぃーが文句を零しながらも気付いたように
聞き返す。

「……もう疲れたよ…。これがまだ普通の恋愛だったらもっと上手く行くんだろうけど…」
「……」
あたしの言葉によっすぃーはすぐに意味を察すると関心を寄せながらも気を使わせてか
何も聞かずただ前を向いて自転車を学校へ進ませていた。

「だってさー普通に考えても変じゃん?女の子が女の子を好きになるなんて。
あたしはどうして周りの知らない子があたしに対して同じ女の子同士なのに普通に
告白してくるのかさっぱり分からないよ」
「…う〜ん…」

あたしの言葉によっすぃーは考えるように声を唸らす。
考えないもしないでどうでもいい事を口にしてはいけないと思ってかよっすぃーは
いつもあたしが相談する事に対して同じように真剣に考えてくれる。
そして言葉を選ぶようにしながら慎重に答えてくれた。

80 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時11分48秒

「そんなに…構えなくていいと思うよ。実際に好きになってるごっちんから
したら難しいんだろうけど…。でもごっちんは別に女の子が好きってわけじゃ
ないんだし…。う〜ん、そりゃ梨華ちゃんも女の子だけどさ」
「……」
「ごっちんが好きになったのは梨華ちゃんで、その梨華ちゃんは女だった。
でも女の子の梨華ちゃんをごっちんが好きになったのは事実で、もしそうじゃなかったら
好きになってか分からないんだよね…」

同じようにして考えるように言ってくれるよっすぃーが何だかふと哲学者のように思えた。

「…ごめん、あたしのことなのに頭使わせちゃって…。こんなの自分で考えろって
感じだよね…」
「んーん!全然平気!っていうか頼ってよもっと。その分あたしの時にも
遠慮なく頼らせてもらうから」

あたしが言った言葉によっすぃーはにかっと笑うとそう振り向きながら言ってくれた。

「ありがと」

少し照れくさくて、あたしは体勢を整えながらそう視線を外しながら答えた。

81 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時12分51秒

「でもさーごっちん学校の授業より頭使ってるでしょー。パンクしないー?」
「…失礼だぞ」
いつものおふざけモードに戻ったよっすぃーにあたしは小さく笑いながら
後頭部に軽くデコピンを食らわす。

「あたっ!」
不意打ちのそれによっすぃーは思わず頭を前にのめると笑いながら返事した。

それからあたし達は目の前に開けた学校を目にしながら、他愛無い会話に
笑顔を溢れさせ一緒に登校していった。



82 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時15分01秒

―――――

学校に着くとあたしはよっすぃーの自電車からぴょんと飛び降り鞄を受け取った。

「サンキュ」
「ううん。いいんだ。それより…」

軽く伸びをしながらよっすぃーに言う。だけど目の前のよっすぃーはいつのまにか
真面目モードに変わっていた。
よっすぃーも学校の門の前で自転車から降りここからあたし達は分かれてよっすぃーは
自転車を置きに自転車置き場まで歩いていく。
そんな時、まだ朝も早く生徒がまばらな門の前でよっすぃーがあたしを呼び止めた。

「?」
「さっきの話の続きだけど、あたしは別に変じゃないと思うよ。恋愛にルールとか
ないわけだし。女が女を好きになってもその反対でも。その本人が真剣であれば」
「よっすぃー…」
「男女でも遊びで付き合ってる恋愛なんかより全然いいと思う。…それと、ごっちんは
同じだよ。ごっちんを好きになって告白してくる女の子も、みんな変わらない。
ただ好きになったのが梨華ちゃんってだけで、みんなと同じだし何も違わない。
誰よりも一番好きだって気持ちは…」

83 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時17分06秒

「…そうだね、ありがとう…」

一瞬の間を置き、少し俯きがちにあたしは答えた。
こんなに真剣に考えてくれる親友に感謝の気持ち、それと言ってくれた言葉に
あたしの心もどこか落ち着きを取り戻しこの朝ののどかな風景と重なっていた。

「んじゃ吉澤ひとみ自転車置いてきま〜す!」
それからすぐによっすぃーはまた一瞬でいつものよっすぃーに戻ると自転車を引いて
にこにこしながら向こうへ歩いていってしまった。

「あ〜い…」
あたしもその後ろ姿にひらひらと手を振って答える。


「……」
まだほとんど生徒のいない校庭。
空気も新鮮でいつも登校時間ぎりぎりに来るあたしにとっては何だか新しくて
不思議な光景だった。
よっすぃーに向かって振っていた手を上げたまま、あたしはぼんやりそこに
立ち尽くす。

84 名前:親友 吉澤ひとみ 投稿日:2002年05月30日(木)21時18分38秒

『何も違わない。誰よりも一番好きだって気持ちは…』 

誰よりも好きだって気持ちは。


あたしの心の中でその言葉が透き通るように繰り返し、あたしはふっと小さく笑みを
零した。

「らしくないぞ。よっすぃー…」

…少し焦りすぎてたのかもね、あたし…。


体の中を何かがすっと風のように抜けていくように、あたしの心の中は今はもう
透明に透き通っていた。

『ありがとね、よっすぃー…』



85 名前:aki 投稿日:2002年05月30日(木)21時44分12秒
今回短いですがここまでで更新終了します。

73:俵谷宗達さん
>リアルタイム!ありがとうございます。嬉しいですっ。
 私も書いてて思います。かなりの鈍感だと…(w
 今日はテスト三昧だったんですね、出来る事なら助けてあげたいです^^;
 でもその先には解放が待ってるはず!がんばってください^^
 文章表現、ありがとうございます(T_T)もう感激です。感謝です(w
 しかし…調子とタイミングが合わないと全くダメダメなんですけどね…^^;

74:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 そうですね、後藤さんも結構人の事言えないです(爆)
 二人とも自分の事に関しては全くの鈍感さんです…^^;
 がんばりますっ。

75:ぶらぅさん
>良い感じに書けてますか(w 良かったですっ。
 文章誉めてくださるのは一番嬉しい事です(T_T)
 感動で涙、涙の日々…。
 実は、結構書き溜めていってるものがこっちと差が大きいので気になるところも
 今書いてるか…たぶん書き終わってる辺りです。
 結構、良い感じに書けてると思います(w …書けてたらいいです(爆)
 がんばりますっ。
86 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月31日(金)09時51分44秒
よしこの登場ですか。なんかすんごく梨華たんとごっちんの関係
に関わってきそうですな。気になる。更新楽しみに待っています。
akiさん、頑張ってください!!(^−^)/
87 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時01分13秒

――――――


それからいつも通り平常の授業はのんびりと進みやっと四時間目の数学が
終ったところであたしは突っ伏していた机からばっと離れ机の横に下げられている
鞄の中から財布を取り出すと椅子を立った。

「んじゃあたしお昼買いに行ってくるわ」
「今日も先輩と?」
「うんっ!」

窓側の列の一番後ろの席を立つと前の席のよっすぃーが前を向いたまま微かにこちらを
見ながら聞いてきた。
あたしはその質問に今まで机の上でぐーたらしていたのとはうって変わって自分でも
分かるぐらいに元気にはしゃいで答える。
同じ事を感じたのかそれによっすぃーが小さく笑みを零した。
「じゃね!」
あたしは財布を片手に教室をダッシュで出て行った。

「…大人っぽいようで、結構子供な感じがいいかもね〜」
教室を出て行く間際聞こえたようなよっすぃーの呆れるように笑いながら呟いた
言葉は、聞こえたような気がしたけどその時のあたしは梨華ちゃんとのお昼に
うきうき胸を弾ませていたせいか聞き取ることが出来なかった。

88 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時03分32秒


「――梨華ちゃ〜ん!!」
「あ、ごっちん」
「お昼食べよ〜!!」

売店で買って来た袋を片手に持ち上に上げながら、元気よく無邪気に教室の
ドアの前から大きな声で叫ぶ真希ちゃんにあたしは思わず笑みを零してしまう。

「ちょっと待ってて〜…」
あたしは四時間目の国語の教科書やらプリントやらノートを急いで机の中に
押し込むと鞄の中からお昼のお弁当を取り出して急いで教室の前で待つごっちんの
元へ駆け寄った。

「それじゃ行こうか」
「うんっ!」

いつものことだけどお昼になると特に明るくて元気のいいごっちんの可愛い笑顔に
あたしは素直に可愛いなと感じてしまう。
いつもはクールで大人っぽい印象のあるごっちんがこの時に限っては大きなギャップが
あってそれがすごく可愛かった。

それからあたし達は昼食時で賑わう廊下を一緒に並んで歩きながらいつもの
あたし達の場所へ他愛無い話と共に向かっていった。


89 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時06分06秒

「あ、それいいなぁ〜」
「あげよっか?」
「いいの!?」
「うん。いいよ。ごっちんパンだけじゃ体もたないんじゃない?」
「それじゃお言葉に甘えて〜…」

あたし達はいつもの屋上の指定席に来るとそこでお昼を共にしていた。
昼食時の屋上って結構人がいるようでうちの学校はあまり利用している人は
いなかった。
いたとしても一年生ぐらいのまだ可愛い生徒達が本当に向こうの向こうで
見えるか見えないぐらいの距離の方で2、3人で食べてるのがたまにあるぐらい。
風が強い日と雨の日は中止にするけどそれ以外はいつもごっちんとここで
昼食を一緒に食べていた。

売店で食パンのサンドイッチ二つとオレンジジュースだけのごっちんは
もぐもぐ食べながらあたしの食べるお弁当の中身に興味を示す。

あたしはほとんどお母さんがいつも手作りでお弁当を作ってくれて学校に
持って来ていた。高校までお弁当持参な子は珍しいけどそれでもいつも
一生懸命作ってくれるお母さんに感謝しながら持ってきている。

90 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時08分20秒

「はい。あ〜んして」
「あ〜んはあとはあと

ごっちんが興味を示したのは定番の卵焼きでうちのは結構甘めに作ってある。
うちのお母さんが作るのはいつも定番のメニューでごっちんはそれがいつも
気になるみたい。
それと気のせいか、お昼の時と、特にお弁当を食べさしてあげてる時これ以上ない
ぐらいにごっちんは幸せそうな顔でいる気がする。
特にあげたのを食べてる時なんかあたしが見ていてもつられちゃうぐらいに
幸せそうで、可愛い笑顔で一杯になる。

そんなに手作りのお弁当食べるの嬉しいのかな?


「おいしい〜はあとはあと甘くて最高〜はあとはあと
「ごっちん卵焼き、甘いのが好きなの?」
「うんはあとはあと
ごっちんはにこにこしながらほっぺに手を当てて卵焼きを味わってる。
そんなごっちんが少し不思議だけどあたしも嬉しくなって小さく笑ってしまう。

91 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時09分59秒

「ウィンナーもあげよっか?」
「え!?いいの!?」
「うん?」
「で、でも悪くない…?」
「何で?だってごっちんすごく美味しそうに食べてくれるんだもん。それともいらない?」
「い、いりますいりますっ!超欲しいっ!」

いつもでは考えられないほどに無邪気であたしの言葉にも必死になって返事する
ごっちんはこの時でしか見れなくていつもでは出来ないような意地悪もあたしらしく
ないけどしてしまいたくなる。
目の前のごっちんは目をきらきらさせて喜んでいた。

「はい。あ〜ん」
「あ〜んはあとはあと
ごっちんはフォークに刺されたたこさんウィンナーを頬張りもぐもぐさせながら
やっぱり子供みたいに純粋な笑顔が絶えない。
そんなにお弁当が好きなのかな?

92 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時12分12秒

「たこさんウィンナー♪」
「…どう?おいしい?」
「うんはあとはあとおいしいよ〜。こんなおいしいの食べた事ない♪」
「そんなにおいしい?う〜ん…」

あたしはもう一つあったお弁当の中のたこさんウィンナーを刺してまじまじと
見てしまう。
至ってどこの家庭でもあるウィンナーだけど…。
別にウィンナーまで手作りなわけでもないし…。

「……」
あたしはしばらくの間ウィンナーを見つめていた後ぱくっとそれを食べた。

「!」
「?」
目の前で「あっ!」と小さく声を漏らしたごっちんに気づいてそっちを見ると
あたしの方をまじまじ見ながら目を大きく見開いて余計に目をきらきらさせている。
「なぁに?」
「…えへへ」
「?」
あたしの尋ねた言葉にごっちんは顔をくしゃっとさせてはにかむように微笑む。
どこか頬が赤く染まって見えたのは気のせい?

93 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時13分33秒

「ねぇ一体どこがそんなにおいしいの?」
「ごっち〜んっ!!」
あたしがごっちんにそう尋ねた時ちょうど屋上に突き抜けるような透明な
大きな声と重なった。

「「?」」
あたしとごっちんは首を傾げて声のした方に一緒に振り向く。
すると屋上のドア前からこちらに駆け寄ってくる吉澤さんの姿があった。

「やっぱりここにいたんだ!」
「どしたの〜?」

吉澤さんはごっちんと同じ二年生で同じクラスの子。
ごっちんとすごく仲が良くて同学年の子のなかじゃ一番の親友みたい。
実際吉澤さんも大人っぽくて白い肌に大きな瞳は独特な印象を人に与える。
この二人が揃うと逆にあたしも同じ年か、それかもっと下に見えちゃうぐらい。
それぐらい吉澤さんはごっちんと一緒にいると様になる。

94 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時15分05秒

「あ、おはようございます…じゃなくてこんにちは」

ぺこっと小さく頭を下げる吉澤さんにあたしも「こんにちは」と頭を下げた。
それでもやっぱり年上で先輩なんだなって実感して何だかおかしかった。

「今はもうお昼だよ〜よしこ〜」
「分かってるよ。でも何かいきなりこんにちはって変じゃない?」
「そうかも」

あれ?と思ったときにはごっちんはいつものごっちんに戻っていた。
何だか今さっきのギャップのせいか分からないけどいつもよりもクールになって
どこかやる気のなさそうなのは気のせい?

「…ちょっと、怒らないでよ。あたしだって悪いかなとも思ったんだけどさ…」
「怒ってなんかないよ〜。何言ってるのよしこ」

あたしが首を傾げていると目の前で吉澤さんがそんな事を小さくごっちんの
耳元で囁き、肘でごっちんを突く。
でもごっちんはやっぱり気のせいじゃなかったらしくてそんな吉澤さんに
ぼんやりとした口調で答えてる。

何だか秘密の会話みたい。

95 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時16分28秒

「?何の事?ごっちん怒ってるの?」
思わず不思議になっちゃってあたしはごっちんに尋ねてしまった。

「!」
「え!?あ、な、何でもないんですよ!!」

あたしの言葉にごっちんは一瞬びくっとしたように体を反応させると
途端に顔がかぁっと紅くなってしまった。
隣にいた吉澤さんも同じで同じようにびくっとすると隣のごっちんの異変に
気付いたのか慌ててフォローするように返事されてしまった。

「何か変なこと言っちゃった?あたし」
「だ、大丈夫大丈夫です」
吉澤さんは両手を前に出し否定するように左右に振るとかなり大げさなアクションで
あたしにまるでごまかすように答える。

「?」
まだ納得がつかなかったけど二人とも何だか慌ててるみたいだしこれ以上話に
突っ込むのはやめておいた。

96 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時17分41秒

「それよりねごっちん…。…実はまた手紙がさ…」
「!またぁ〜?」

吉澤さんが気を取り直したようにしてあたし達の間にちょうどいい感じに体勢を
整えるとそこで言った言葉にごっちんがまるで嫌な物でも見るようにけだるそうに
声を発した。

「もう、答え知ってるんだから受け取らないでよ〜…」
「ごめん〜。だってさぁ、あたしも出来るだけ当たり障りないようにやんわり
断ろうとしてるんだけどどうしてもって必死に頼まれちゃうとさ〜…」
「もう…」
「頼まれるこっちの身にもなってよ。んではい、これ」
「……」

ごっちんは吉澤さんに手渡された薄いピンクの手紙を面倒くさそうに受け取ると
小さく封をしていたシールを剥がし中身を取り出した。

97 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時22分23秒

「…午後12時40分に校舎裏…。ってもうあと少ししかないんじゃん!」

ほとんど文面は読んでないみたいで一気に視線を手紙の一番下の方へ
持っていくととたんにごっちんは声を上げた。

「あらら〜。言っとくけどあたしのせいじゃないからね」
吉澤さんも同じように困ったようにしてごっちんに答える。
あたしはごっちん、吉澤さん、と交互に顔を見た後ピンクの手紙をもう一度見た。

「あっ!もしかしてラブレター!?」
手紙の後ろの剥がしたシールがハートマークなのに気づきあたしは今更声を上げる。

「そう。ラブレター…」
ごっちんはうんざりしたようにうな垂れてため息をこぼすと小さくそう答える。
あたしは初めてみるラブレターに興味深々で思わずまじまじとそれを見つめてしまった。

「…気になる?」
「え?」
ずっと上からごっちんの視線を感じていたと思ったら次に聞こえた声にあたしは
突然すぎて意味が分からず聞き返す。
だけど聞き返したあたしの表情をごっちんは何も言わないまましばらく見つめていると
不意にふっと顔を外してしまった。

98 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時25分18秒

「ったく…これじゃもう行かなきゃいけないじゃん…。ごめん梨華ちゃん、
お昼の途中に…。あたしももう行かなくちゃ…。よしこ、お昼食べ終わるまで
梨華ちゃんと一緒にいてくれる?」
「もちろん」

吉澤さんの答えに「ありがと」と優しい笑顔で答えるとごっちんは紙パックの
オレンジジュースを手に取り食べ終わった残骸の入った袋を持ち上げると
ごっちんは「それじゃまたね!本当にごめん!」と両手を合わして謝りながら
屋上を出入り口のドアに向かって走っていってしまった。

「……」
あたしはごっちんが出て行ってからしばらくして遅れてガタンッと音を立て、
閉まるドアを見つめていた。

…風がすっと抜けるように屋上を走る。
何だかごっちんがいなくなってしまった後の屋上は無性に寂しかった。

99 名前:うっきうきのお昼休み♪ 投稿日:2002年05月31日(金)15時27分23秒

「ごっちんも大変ですよね〜。しょっちゅう手紙もらってるし。そのたびに
断ってる姿見てるともてすぎるのも嫌だなって思いません?……」
「……」

胸にぽっかり穴が空いてしまったような、寂しくてよく分からなくて
一気に押し寄せた物足りなさにあたしは無意識に自分の胸に手を当てる。
何か自分にとって一番大切で重要な物が失われてしまったような、そんな
焦燥感にも似た感覚にあたしは戸惑い訳が分からなくなってしまう。

『好きな人がいるんだ』

あの時のごっちんの言葉が再び脳裏に蘇って透き通るように聞こえた時、
そんな感覚は今までに増して自分を不思議な感覚に取り込んでいた。



100 名前:aki 投稿日:2002年05月31日(金)15時31分55秒
更新しました。
載せながら二人のシーンにこれでいいのかと自問してました…(w

86:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございますっ。
 よしこ登場しました。欠かせないキャラクターになりそうですが…
 どうなるかは続きを(w
 がんばります!
101 名前: 投稿日:2002年05月31日(金)18時49分43秒
ごっちん、かわい〜です!
梨華ちゃんも、ごっちんに対する気持ちに、
変化が・・・。
続き待ってます!
102 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月31日(金)21時20分07秒
昼休みの屋上で
「ハイ、あ〜んして!」ですか。
青春だなぁ(w

 ( *´ Д `)<…たこさんウィンナー

うらやましいぜ、ごま(w

103 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)10時53分54秒
面白いし、更新も早いので読みやすいで。
続き楽しみにしてます、がんばって下さい。
104 名前:手紙の場所へ  いつものように  投稿日:2002年06月01日(土)20時23分44秒



「………」
後藤はそれから屋上を後にすると早まる心を必死に落ち着かせ
なんとか平静を保とうとしながら階段を下り、廊下を足早に突っ切っていた。

(…もうっ!!…ばかぁ〜!!!)

自分が一日の中で一番の至福の時を邪魔された事に後藤は内心心の中で最大に
腹を立てていた。

(せっかくの梨華ちゃんとのお昼タイムを……)

風を切りものすごいスピードとぶすっとした表情に廊下を歩く生徒達が
何かと振り向く。
その視線はすぐに後藤だという事に気付くと友達同士で何やら囁きあったり
どこかざわつき始める。
後藤はこれ以上誰かに足止めを喰らうのは嫌だったため全て見ない振りをし、
ただ一直線にその手紙に書いてあった校舎裏を目指していた。

105 名前:手紙の場所へ  いつものように  投稿日:2002年06月01日(土)20時26分44秒


(しかも梨華ちゃんの前で手紙貰うなんて〜!!!)

それでも断ることが出来ない自分にため息。
よく漫画とかお決まりのシーンだと手紙貰った直後に破って捨てたりしてるけど…。

「……」
後藤は無意識に自分の中で働く感情に気付いていた。

同じ女の子同士が、異性に告白するのとでは比べ物にならないぐらいの勇気を
振り絞って自分を呼び出した。
それは到底自分には出来ない事。
それを必死に行動に移し、今も緊張しているであろうその人物の事を思い浮かべると
同じ「女の子を好きになった」者同士その手紙を破って捨てるとかその場所に
行く事をわざと無視するなんて事は絶対にしたくなく、出来なかった。

「…まったく……」

心底バカらしい自分の性格と何十回も告白されても、その考えに嫌気がさしても
取り消さない自分に後藤はほとほと呆れてしまう。

それよりも何より、手紙を貰ったのが自分の恋する人の前で、しかもその人は
自分が他の誰かにラブレターや告白を受ける姿を見ても何とも思わない事が
何より悲しくやるせなかった。



106 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時31分19秒
 
―――――――


「……ん?」

あれからごっちんと別れた後あたしは一緒に屋上に残ってくれた吉澤さんと
それからの時間を過ごした。
他愛無い会話と共にお昼を食べ終わり次の時間までにはちょうどいい時間帯になったため
あたし達は屋上を後にし、それぞれ自分の教室へ戻るためあたしは屋上のすぐ下の
教室へ、吉澤さんはそのもう一つ下の教室に戻るために階段の踊り場で
手を振って別れた。

それから自分の教室までの長い廊下。
あたしはお弁当を片手にのんびり、お昼のためどこか寂しい殺風景な廊下を
歩いていた。
そんな時窓から下に見覚えのある姿にあたしは気付く。

107 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時34分03秒

「…ごっちん?」
窓に近づき一番自分と親しいその人の姿にあたしはしばらくして気がついた。

さらさらで綺麗なストレートの、茶色を帯びた腰辺りまで伸びた髪。
すらっとした体格でもスタイルは抜群に良くて体のラインも女の子というより
どちらかというと女性らしいそれはごっちんにしかあたしは見たことがない。
それに独特の人を寄せ付ける雰囲気は背中からも感じられあたしは吸い寄せられるように
ごっちんの姿を見つめていた。

「……」
この窓から見えるのはちょうどこっちの校舎と離れて別にある体育館の間の辺りで
人気のない校舎裏。
ごっちんの姿をしばらく見つめていた後そのまま真っ直ぐそのごっちんが見ている方、
目の前の方へ目を向けてみた。

108 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時36分28秒

「!」
するとそこには同じ制服を着た女の子がいた。
顔を赤らめて俯きながら必死に何かごっちんに話し掛けてるみたい。
その様子と言ったら遠くから見ているこっちにも分かるぐらい緊張していて
体が強張っていた。

…告白……今さっきの手紙の人かぁ…。

あたしは今さっきごっちんが屋上で貰っていた手紙を思い出す。
校舎裏だし時間もそれぐらいだしたぶんきっとそうだ。

…ん〜……たぶん同じ学年の子じゃないはず……一年生の子かな…?


「……っ」
そんな事を思っているうちにあたしははっと気が付いた。
これは覗きと変わらないっ!
人の告白する場面を盗み見るなんて趣味が悪すぎる…!

あたしは何か罪悪感を感じ、ばっと後ろに振り向き自分の辺りを見渡した。

109 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時38分46秒

「……」
しかし運が良いのか悪いのか、自分の周りにはお昼休み真っ只中のため
誰も廊下など歩いていなかった。
教室から微かにざわめきが聞こえてくるけどそちらからも自分の姿は見えない
位置にいるみたい。
あたしは内心どぎまぎしながら胸に手を当て、もう一度辺りを見渡した後
ちらっと校舎裏の方に再び目を向けてみた。

「……」
まだ終ってない…。
告白という物をしたことがない自分には分からないけど相当な勇気と伝えたい言葉は
やっぱり時間を有するものなのだろうか?

あたしは内心やっぱり見ていたい気持ちとそんなのダメ!と心の中で叫ぶ真面目な
理性に密かに胸の中で葛藤していた。

(…ダメダメ。人の告白見るなんてやっぱりダメなことだよ…)

ふぅとため息を付くとあたしはそこを後にしようとした。
窓から顔を外し再び向こうに歩き出そうとした、その時…


110 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時41分21秒

「!」
不意に目の前に一気に表情が曇ったその女子生徒の姿が映った。
俯いていた表情はたぶんごっちんの言葉に耳を傾けているためか今はもう
上にあがっている。
しかしその表情は沈んでいて絶望的。
あたしは歩き出した足も止めて頭の中で暴走する、気になる気持ちに逆らえず
いい子ちゃんの理性を押しのけて窓に再びくぎ付けになってしまった。

「……」
当然こちらからは何を言っているのかも分からない。
それよりも微かな音などかき消してしまうようなほど自分の胸の中で心臓が
波打ち、鼓動を打っている。

…女の子の表情はそれからも明るくなることはなく、そのままあたしは居た堪れない
気持ちになってごっちんの方へ目を移した。

背中しか見れないごっちんはそれでも今さっきまでとは違い話しているためか
少し体が微動だにしている。
たぶん彼女に何か言葉を返しているんだろう。

111 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時43分44秒

「……」

…断ってるのかな…。
屋上でのごっちんと今の女の子の表情を見ればそれはもはや確信に近いものだった。
女の子の体は次第に小さく震え出し手が顔を覆ってしまった。
ごっちんの体がとたんに止まり、たぶん困っているんだろうと思う。
マイペースだけどごっちんの優しい性格と人を気遣う所は絶対にそんな少女の
姿に罪悪感を感じているはず。
いくら手紙を貰ったとしても、それを無視しない所からもごっちんの誠実さと
真面目さが普段からにじみ出ている。

あたしはごっちんの気持ちも女の子の気持ちも何となく察してしまって同じように
胸がズキッと痛くなってしまった。

112 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時45分38秒

(…でもごっちんどうして……)

同情で付き合うことなんてごっちんはしない。
たとえ相手がどれだけ真剣でも可哀相でも。
ごっちんはあたしが知る限りかなりの人数の人を今まで振ってきている。
ただ真面目に告白に立ち会って、それで今までずっと断り続けている。
そんな誠実な姿はあたしに不意に疑問を湧かせる。

(……なんで…?)

非情になりきれない姿はどこか自分のことでもないのに近くに感じられて、
告白を受け取るたびにうんざりとした表情、困ったような様子。
だけどそのたびにちゃんと自分の口で相手に断っている。


『好きな人がいるから』


「!」
不意に頭に霞めた言葉にあたしはびくっとしてしまう。

113 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時47分07秒


『好きな人がいるんだ』

…だからなの…?
だからそんなに真剣に一つ一つの告白にしっかり向き直るの?
…どれだけ告白されても気持ちが揺ぎ無い、強い想い。

「……」
(…ごっちん…)

どれだけ面倒くさい事でも行動させてしまうほど、真面目な気持ち。
…それだけその人の事が好きなの…?
ごっちん…。

「…っ…」
再び胸の中でずきっと痛みが走ったのをあたしは感じた。
今さっきの物と違って今度は本当に体に刻まれるような痛みにあたしは顔を
歪めてしまう。

114 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時55分03秒

(…痛い…)
胸に手をやる。
その痛さからあたしは顔をとっさに俯かせてしまった。

…向こうに見えるごっちんはとうとうそこから体を動かし、校舎の中へ戻っていって
しまった。

ごっちんのいなくなった校舎裏。
少女は一人残されて佇み、涙にくれる。

…胸の中で打つ鼓動がどんどん激しくなってくる。
今さっきの物とは違う痛さ、胸にやる手の意味。

…ごっちんの去っていく時の横顔はすごく綺麗で、他の誰にも見たことがないし
ごっちん自体にも今まで見たことがないぐらいのもの。
りりしくて強くて大人びているけど…どこか寂しげではかない優しい表情。

人の痛みが分かる彼女の性格に、この行動はたぶん一番つらいはず。
それでも逃げない、相手の前に立つ優しさと強さ。
115 名前:見てしまった…!  思いがけない親友への告白  投稿日:2002年06月01日(土)20時57分44秒

(…ごっちん……)

それだけ強い想いはたった一人のために。
あたしには分からない、ごっちんの胸の中に密かに想われ続ける人。
…いつかその人と結ばれたら、「親友」よりもやっぱり「恋人」を取ってしまうの
だろうか。

…やだ……
…やだよ…そんなの…。
だって寂しすぎる…。

ごっちんが遠くなってしまう気がする。
いつも笑顔を振り撒いてくれるごっちんが…。

…出来ることなら…誰にもくっ付かないでいてほしい。
渡ってほしくない、譲りたくない彼女の存在。
…でも…どうして…?
この気持ちは一体なんなのか。
どういう感情の元からなのか。
自分が感じているはずの気持ちなのにその真意が分からなくて、
掴みきれない自分の感情の渦にあたしは振り回されている。

「……」
(…友達からの嫉妬?執着心?それとも…)

それ以上どれだけ考えても、石川の中でこの答えが出てくることはなかった―――






ところが、このうやむやした気持ちを引きづりながら石川は思ってもいなかった
出来事に遭遇することになる。


「え…えぇ〜〜〜!?!?!?!???!」





116 名前:aki 投稿日:2002年06月01日(土)21時13分36秒
本日の更新終了です。
やっぱり、学園モノというかこういう楽しい感じのは書いてても楽しいです。
それよりも何より皆さんの温かいレスが励みとやる気になり、この更新の早さと
更新に負けない執筆の速さを生んでくれてると本当に感じてます。
ありがとうございますm(__)m 皆さんのおかげでとても楽しく書けてます。

101:翔さん
>レスありがとうございます。 
 ごっちん、可愛いですか^^良かったですっ。
 好きな人の前だけでは可愛くなるごっちんは書いてても楽しいです。 
 がんばりますっ!

102:ごまべーぐるさん
>レスありがとうございます。
 この場面、書いてても更新していても一人自問自答してました^^;
 鈍感って恐ろしいです(w
 
103:名無し読者さん
>ありがとうございます(T_T)
 毎日更新できるのは本当に皆さんのレスのおかげです。
 がんばって今のペースを保っていきたいです。
 がんばりますっ! 
117 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月01日(土)21時21分07秒
何だかんだと言ってもちゃんと相手に真剣に答えてるし、ここのごま、いいやつですよね。
いしかーさん…ある意味才能かも(^^;;
118 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月01日(土)21時34分37秒

すごい優しいぜ、ごっちん!!
そうですよね、その勇気を踏みにじる事はできない・・・・。
けど、わかっていても無視する人っていますよね〜。
テスト無事、終わりましたよ。
できごとがなんなのか、待ってます。
119 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)22時43分36秒
akiさんの小説は更新が早くて楽しみです。
1日1回は確認してますよ(w

それにしても、続きが気になって仕方ない…
120 名前:JAM 投稿日:2002年06月01日(土)23時19分53秒

わーーーーーーーー!超超超出遅れてるーーー!!!
スミマセン。前作といい今作といい・・・。
いや、しかしゴチーンとチャーミーの気持ちは同じなのに
全然気づかないところにこっちは焦らされっぱなしです。
ああ、はやく気づいて欲しいです・・・

毎日更新するのは大変だと思いますが
ムリせずにがんばって下さいねー。
121 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月02日(日)00時32分09秒
うおーー熱々な光景だったのにー。梨華たん鈍感すぎですな。
更新楽しみに待ってますよ。頑張ってください。
122 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月02日(日)00時42分42秒
続けてすみません。なんかずれてたみたいです。
梨華たんに何がおきるんでしょうか。梨華たんはごっちんに対する気持ちに
気づきはじめているんですな。
123 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時32分35秒


キーンコーンカーンコーン…


授業も全て終わり退屈なホームルームも済み、今は生徒達が下校やら部活やら
談笑やらでにぎわう放課後。
学校という定められた一日の過程がこの瞬間に終わりを告げ、これからの時間は
それぞれ個々の自由な時間となる。

「ふふ〜♪」
後藤真希は相変わらず鼻歌交じりに教科書やノートを鞄の中に片づけていた。

「ん?どうしたの?ごっちん」
「ふふふー♪」
満面の笑顔で鞄に全てを仕舞うと、後藤は机の上をふーっと息を吹きかけ綺麗に
すると後ろの席の吉澤に向かって体を反転させた。

124 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時34分24秒

「これから梨華ちゃんとデートなんだ〜。ほら、駅前に新しく出来たお洒落な
喫茶店知ってる?あそこに行こうねって約束してあるんだぁはあとはあと

後藤の言葉に吉澤は頷きながら「あぁ、なるほどね」といつものようにその理由
に納得する。

「あそこねー。アイスクリームとかケーキとかおいしくて評判いいらしいよー」
「ふ〜ん。そうなんだぁ……ん〜…」
「はい」
「あ、ありがと」

後藤は後ろの席で座りながら制服から体育着に着替える吉澤と話をしていたが
半そでの体育着が被ったまま顔が出ないで苦戦している吉澤にシャツをくいっと
引っ張り助けてあげた。

「今日そういえばよっすぃー部活か」
「そうそう。そうなのよ」
下は既に半ズボンのジャージに着替えられてあり吉澤は脱いだ制服を綺麗に
畳みながら机の上に整理して置いていく。

125 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時37分24秒

「で。話を戻して、だからごっちんご機嫌なんだ?」
「そうなの〜はあとはあと
にまっと再び笑顔に戻った後藤に吉澤はつられながらそんな後藤の様子にふっと小さく笑ってしまう。

「ん?なぁに?」
「あ、いや…。可愛いなぁって。思ったの」
眉を寄せいぶかしげな表情で首を傾げる後藤に吉澤は慌てて「別に他意はないからね」
と後に付け加える。

「だってさ、何か本当に一途に恋してるって感じじゃない?羨ましいよほんと」
「そうかな〜?」
「そうだよ。だってごっちん、先輩のこと話すとき全然いつもと表情とか雰囲気が
変わるもん」

吉澤の言葉に後藤は一瞬動作が止まりぱちぱちと何度か瞬きをした。

「そう?」
「そうだよ」

自分で気付いてないのか後藤は確認するように再び聞き返す。
吉澤は後藤の言葉に顔を縦に振り強く頷く。


126 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時38分43秒

「いいよね。羨ましい」
「でも…よっすぃーだってもてるじゃない」
「もう、どれだけたくさんの人からもててもしょうがないってごっちんが一番
知ってるはずでしょ?」

後藤は吉澤の言葉に一瞬間を置いてから「あぁ」と納得するように頷きながら答えた。

「だからいいなって……あぁもうこんな時間だっ!」
吉澤は後藤と話しながら不意に視界に映った教室の時計に大きな声を上げた。

「ごめん!ごっちん、あたしもう行かなきゃ!」
「あ、うん。大丈夫大丈夫」
ガタッと椅子を引いて立ち上がった吉澤に後藤は椅子に座ったまま下から答える。


「部活がんばってね!バレーボール部吉澤ひとみ!」

教室を足早に進みドアから出て行こうとしたとき後藤は口元に手を添えると
少し大きめの声で吉澤の背中にそう叫んだ。

127 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時40分44秒

「ごっちんこそ!デート楽しんでこいっ!」

吉澤は振り向きドアの向こうからにかっと笑うと教室の後藤にそう叫んだ。

「また明日」そう去り際に後に付け加えると吉澤は教室のドアから駆けていき
見えなくなってしまった。


「また明日」
後藤はその言葉をどこか深く踏みしめるように言うと吉澤の消えていったドアに
向かってひらひらと手を振り友人が繰り出しているのだろうかろやかな足音に
対して小さく微笑んだ。



128 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時44分08秒



「―――んじゃ、あたしも行きますかぁ」

よっすぃーがいなくなった後気付くと教室はあたし一人でさっきまでよっすぃーと
あたしだけだった事に気付く。
帰り支度中だった事にも気付いてあたしはそのまま机の中を覗いて忘れ物が
ないか確認すると鞄を手に持ちがらっと椅子を押して席を立った。

「ふふ〜♪梨華ちゃんとの放課後デート〜はあとはあと

よっすぃーと話して少し落ち着いていたけどやっぱりうきうき気分は止められず
あたしはにまっと笑顔を零すと教室を歩きドアに向かった。

「ケーキ食べちゃって〜、また食べさしてもらっちゃったりして〜はあとはあと
アイスクリームなんてもう、ほっぺについたら取ってくれたりなんかしたり〜はあとはあと

今から既に暴走しかけている妄想にあたしはこの時は全く気付かないまま
その情景を思い浮かべながらとろけるようにほっぺに手を当てた。

「待ってて〜!梨華ちゃん今すぐに行くから〜はあとはあと

あたしは教室のドアまでのんびり妄想に浸りながらやってくるとその取っ手に
手をかけようとした。


129 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時45分36秒


「……ん…?」


ドタドタドタドタ…


「……?」


ドタドタドタドタドタ…


…空耳?
今確かになんか意味不明な荒々しい足音が聞こえたような…。

ドタドタドタドタドタ…!!

何か…しかもこっちに近づいてきてない…?

ドタドタドタ――――!!!

しつこいぐらいにその地響きのような足音は続き、しかも徐々に確かに自分に向かって
勢いを止めないまま近づいて来る。

130 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時48分35秒

「な、なんだぁ〜〜!?!?」

地震じゃない!
誰か校内でマラソンでもしてんのぉ!?
…ここ私立の女子校じゃないのかぁ…?

あたしはそれとも怪獣?なんて胸の中で呟いたりしながらその荒々しい足音が
近づいてくるのをどうすることも出来ずただその場に立ち尽くしていた。

「?!」

ドタドタドタ―――……。

不意に今までずっと続いていた足音が止まり静かになる。
しかしその止まった先がどう考えてもあたしの今いる場所から一枚の壁を隔てて
向こうのような気がしてならなくてあたしは鞄を抱しめたままその得たいの知れない
ものに言葉を発せなくなってしまう。

131 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時49分39秒

う、うわ〜ん…(泣)
梨華ちゃん助けてぇ〜!
まだ放課後デート果たしてないのにこんな所でしねないよぉ…(マジ泣き)
梨華ちゃ〜ん!!


ドアのぼやけた鏡の向こうから見えるその人物の姿と荒い息を吐く様子にあたしは
本気で泣きそうになりつつ得たいの知れない物体に壁ごしに対面したまま
一歩も動けなかった。



132 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時51分14秒


ガラッ!!


「う、わぁ!!」
「―――真希ちゃん!!」

突然いきおいよく開いたドアにあたしは驚いて後ろに仰け反るようにしてかなり
後ずさってしまった。

「…へ?」
ドアから現れたその人物にあたしは鞄を頭の前に構えぎゅっと目を瞑っていたが
その聞き覚えのある声にあたしは瞳を開いた。

「…梨華ちゃんっ!!」
恐る恐る顔を覗かせた先には息を切らす梨華ちゃんの姿があってあたしは思わず
大きな声を上げてしまう。

「真希ちゃん…」
「ど、どうしたの!?な、何で梨華ちゃんが…。ろ、廊下は走っちゃいけないんだよ〜!?」

恐怖から突然思ってもいないことで解放されたせいか、自分でも意味不明なことを
口が勝手に発していく。

133 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時54分04秒

「真希ちゃん〜…」
「…梨華ちゃんもしかして迎えに来てくれたの?しかも走ってまで?もう、今から
ごとーが迎えに行ってあげようと思ってたのにぃはあとはあと

どことなく梨華ちゃんがいつもに比べて情けなさそうな表情をしてる気が
するけどあたしの中でとにかく放課後デートが突っ走ってしまいうきうき気分が
止められない。

「真希ちゃん〜…(泣)」
「????――――梨華ちゃん!?」

いつもの倍かそれ以上に情けない表情と声で梨華ちゃんはすたすたあたしに一直線に
近づいてくると、あたしが首を傾げている間もなくぎゅーっとしがみついて来た。

134 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時55分30秒

「ちょ、ちょっと!?梨華ちゃん!?」
「うぅ〜…」

思ってもいない突然の梨華ちゃんの行動にあたしは成す統べなくただ戸惑うことしか
出来ない。
あっという間に今まで胸の中で弾んでいた「放課後デート」も頭の中から消え去ってしまい
今はもう心臓がばくばくに飛び跳ねている。

「り、梨華ちゃん…あの…」
「……」

顔を胸に埋めたまま何の応答もなくただしがみつく梨華ちゃんにあたしは
戸惑いどうすることも出来ずただその場に立ち尽くしてしまう。

ちょ、ちょっとこれ…現実…?
ほっぺをぎゅーっとつねってみるけど…痛い…。
それじゃぁこれは何?
目の前に映る自分の体にしがみ付いている梨華ちゃんと感じるぬくもり。
こ、こんなことあるわけない…。
現実にこんなことあっていいわけが…。


135 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時58分21秒

あたしは妄想に限りなく近いこの現実に必死に何とか理解しようと理性を震わせるが
感じる確かな梨華ちゃんのぬくもりに微かにくらくらと目眩を覚える。

「り、梨華ちゃん…?」

あたしは体にしがみ付いたままの梨華ちゃんにもう一度声をかけてみる。

「…うぅ…」

だけど微かにくぐもった声で唸ったかと思うけどすぐに聞こえなくなってしまう。
それからも梨華ちゃんからの応答がない。

「……」
(ドキドキ…)
あたしは瞳に映る梨華ちゃんの姿にもう堪えることが出来ず早まる心臓を
感じながら理由もわからないけどそっと梨華ちゃんの背中に腕を回してみようかな
っと思った。

…回そうとした。


136 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)21時59分27秒

「聞いてよ真希ちゃん!!」
「!?」

その時突然梨華ちゃんはあたしの体からばっと離れ、いきなり大きな声であたしに
叫んだ。
あたしはあまりにもタイミングが良すぎるその行動と突然の梨華ちゃんの声に
びくっと反応し、そのまま触れそうになったこのやり場のない手に気付いてばっと
元に戻した。

「ど、どうしたの?梨華ちゃん」
あたしは不自然すぎるほど平静を作ってどぎまぎしながら梨華ちゃんに向き直る。

「……」
だけど梨華ちゃんはまたあたしの両腕を前から掴んだままこくんっと俯いて
しまった。

137 名前:衝撃の事実 投稿日:2002年06月02日(日)22時00分55秒

「?」
「真希ちゃん…あのね…」

梨華ちゃんは意を決したように小さく呟くと少し間を置きあたしの耳元に
近づくと小さな声であたしにしか聞こえないように囁いた。

「え…?―――えぇ〜〜!?!?!???!!?」
「ど、どうしよう〜…(泣)」

梨華ちゃんから発せられたその言葉にあたしは思わず信じられず学校だと
いう事も気にしないで大きな声で叫んでしまった。

「こ、告白されたぁ〜〜!?!?!?!!?」
「そうなの〜…」


『告白されちゃったの』


耳に入ったはずのその悪魔の事実は一瞬理解出来ず微かな時間を有し意味を理解する。
あたしは恐れていた未来が現実になった衝撃的な出来事とその梨華ちゃんから
発せられるとは思ってもいなかったその言葉が実際発せられた事に、あたしは
思わず気を失いそうになった。



138 名前:aki 投稿日:2002年06月02日(日)22時10分28秒
117:ごまべーぐるさん
>レスありがとうございます。
 愚痴は出てもとことん真面目なごっちんです^^;
 鈍感…それはある時天性の才能なのかもしれませんね…。
 そんな梨華ちゃんも好きなごっちんです(w

118:俵谷宗達さん
>優しく真面目なごっちんです。
 たぶん恋をしてなくてもそもそも真面目なのかも…。 
 テストお疲れ様です^^

119:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
 本当ですかっ、ありがとうございます。感謝感激…。
 楽しんで頂ければ幸いです。
139 名前:aki 投稿日:2002年06月02日(日)22時15分24秒
120:JAMさん
>久しぶりですねっ!
 いえいえ、読んでいただけてレス頂けるだけで嬉しい事です。
 前作も目を通してくれたみたいで感謝です^^
 なんか「ゴチーンとチャーミー」 ←これに笑いました(w
 毎日更新するのは…<ありがとうございます(T_T)がんばりますっ!
 
121:122:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 まだまだ、道のりは長いです…^^;
 学園モノらしく?両思いまではもう少し険しい…?
140 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月02日(日)23時12分44秒
ごっちん大ピンチですな。確かにこの二人の鈍感ぶりからして
両想いになるのはどうぶん先のようですな。うーん、なんかよしこが
気になりますねーなんかあるのだろうか?更新楽しみに待っていますよほ。
141 名前:rika-mode 投稿日:2002年06月03日(月)17時13分11秒
すっごいワクワクな展開〜!!
ごっちんと梨華ちゃんにとってはいい迷惑なんだろうけど(笑)
遠回りしながらだんだん通じ合っていくんだろうなぁ〜。
けっこう、一気読みしちゃったです。
続きが楽しみー♪
142 名前:告白された彼女の気持ち 投稿日:2002年06月04日(火)15時56分20秒


「こ、告白されたって…それ一体誰から〜?!」
「こ、告白っていうか…実際には言われたわけじゃなくて…だから…そういう
んじゃないんだけど…その…」

梨華ちゃんもそうとう動揺してるのか言葉が上手く繋がらない。
しどろもどろしながらゆっくりと必死に言葉をつむいでいってる。

「て、手紙を貰っちゃったの…」
「!?ど、どんなやつ!?」

あたしは梨華ちゃん以上に動揺してただ事じゃない風に梨華ちゃんに詰め寄る。
いつもならびっくりするだろうけど梨華ちゃんも自分の事で精一杯のせいかあたしの
様子にも気付かない。
変だと思われてもあたしにしては本当にただ事じゃないからしょうがない。

143 名前:告白された彼女の気持ち 投稿日:2002年06月04日(火)15時57分40秒

「あ、会ってはないの。その…クラスの友達から受け取ったんだけどその…」
「読んだの!?見たの!?何て書いてあったの!?」

会ってはない。
その事実があたしの心臓を一瞬だけ落ち着かせるけどすぐに元に戻る。
一度爆発したこの鼓動は当分洗いざらい事実を確かめなきゃ止まりそうもない。

「付き合ってくださいって…。あまり文章書いてなかったんだけど一目ぼれだとか
何とか…」

口をもごもごさせて俯き言う梨華ちゃんにあたしは絶句する。
な、な、なんてこと……。

「ど、どうしよう…こんなの初めてで…」
「だ、だめ!やだ!絶対嫌!」
「え?」

今までずっと自分の事でおろおろしきっていた梨華ちゃんだけど、不意に口にした
あたしの言葉に目を見開いて顔を上げた。

144 名前:告白された彼女の気持ち 投稿日:2002年06月04日(火)16時03分27秒

「あ、いや…。その…とにかく、断って!!」
「こ、断ったよぉ!手紙友達に頼んで戻してもらったもん。ごめんなさいって、
伝えてもらうように言ったし…」
今更のあたしの言葉に梨華ちゃんは当然と言うように声を上げて困ったようにして
答える。

「……」

断った。
――――断ったん…だよね…?
…はぁ……良かったぁ…
あたしは人生の中で一番深い安堵のため息を着いた。
良かったよぉ…。
次第にじんわり熱い物が瞳から込み上げてきそうになって済んでのところで堪えた。
だからあたしも半分涙目。

「もう…こんなの初めてだから…びっくりしたんだよぉ…?」
梨華ちゃんもあたしと同じ半泣き状態で指で瞳の近くを掬いながら訴えるように
呟く。
あたしはそんな梨華ちゃんの姿に確かに断ったんだという事実が確信出来て
次第に心臓が治まりかけてきたことを感じていた。

145 名前:告白された彼女の気持ち 投稿日:2002年06月04日(火)16時04分58秒

「で、でも…何で断ったの…?」

安心の事実を知ったから聞ける質問。
本当は聞きたくなかったけど同じ梨華ちゃんを好きになった者の告白として
聞かずにはいられなかった。

「だって…一度も会ったことない人だよぉ?何か怖いよ…」

あたしは梨華ちゃんの言葉に納得するように頷く。
確かに梨華ちゃんの性格から考えて、そう考えるのが普通そうだ。

「それに…あたしには分からないよぉ…一度も話した事もないのに好きになるなんてぇ…」
「…そうだよね…」

困ったようにまだ戸惑いを隠せないのか梨華ちゃんは始めての告白に
動揺を隠せないようだった。
あたしは俯いて小さくなる梨華ちゃんの頭をぽんぽんと軽く撫でてあげた。

146 名前:告白された彼女の気持ち 投稿日:2002年06月04日(火)16時06分44秒


「何にもお互いの事…知らないのに…」

梨華ちゃんは小さく呟きながらあたしに近づきぎゅっと再びしがみ付いてきた。

「うん…」

この時の梨華ちゃんの気持ちがよく分かって、あたしはこの時何も考えずにただ
その体を抱しめ返していた。



147 名前:aki 投稿日:2002年06月04日(火)16時33分01秒
140:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 もう後藤さんにとっては大問題です^^;
 今回の更新で何とか免れましたが…。
 がんばりますっ。

141:rika-modeさん
>レスありがとうございます^^
 ワクワクな展開ですか(w すごく嬉しいですっ。
 ごっちんにとっては確かにいい迷惑ですね(笑)
 遠回り…<いい所つきますね(w やっぱり学園モノ、ということで。現実には
 あまりないような純な恋愛を書きたいと思ってます。(私の中の勝手な解釈なんですが^^;
 一気読み、嬉しいです。結構長くなってますが本当にお疲れ様です。
 続きも楽しみに答えられるといいです^^   

148 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月04日(火)17時16分29秒
おお!!更新されておる!!抱きしめかえしたって・・・・。
もう行け行けムードじゃないすか〜。前回レスしなくてごめんなさい。
頭を撫でてあげるなんて・・・優しすぎる!!

|(^▽^)|<人間って・・悲しいね・・・。
(●´ー`●)<どうして?
|(^▽^)|<一度もあった事がない人に告白されるなんて・・そんなの、怖すぎる!
  (´Д`)<僕にはわか〜る。
|(^▽^)|<いやっ、文麿様っ。

↑というイメージが・・・。すみません。
149 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月04日(火)21時57分06秒
もしかしていい感じになってきてる??
次の更新楽しみにしてます。
更新多いと大変でしょうが、がんばって下さい。
150 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月04日(火)22時36分13秒
いしかーさん的には初めてなんだろうけど、今までただ気づいてなかっただけという
気も…。

いい雰囲気です。ゆけ、ゴチーン!!( ´ Д`)<んあ〜
151 名前:見抜かれていく気持ち 投稿日:2002年06月05日(水)14時46分36秒

――――――


それから下校。
どことなく気まずい雰囲気を抱えながらあたしと梨華ちゃんはとりあえず
学校を後にすべく、教室を後しに昇降口に向かって階段を下りていた。

「……」
さっきからしばらく経つけど会話はない。
梨華ちゃんはずっと俯きがちで何か考えているみたいだったしあたしも
そんな梨華ちゃんの邪魔をしちゃ悪いと思ってあえて何か声を掛けられるまで
何も自分から口にしなかった。

帰る頃には既に日も傾きかけ、落ち始めた太陽は校舎内に黄昏時の淡く紅い
光を校内のすべての窓から一気に降り注いでいて学校全体は赤一色に染まっていた。
それが何だか余計に不思議な感覚と気まずさを増徴させている気がする。


152 名前:見抜かれていく気持ち 投稿日:2002年06月05日(水)14時53分28秒

「真希ちゃん…」
「ん?」

階段を下りながら不意に少し前を歩く梨華ちゃんから声が聞こえてあたしは
普通と変わらない様子を作って出来るだけ普段通り返事する。

「あたしね…分かった気がする。今までの真希ちゃんの気持ち…」
「……」

あたしは梨華ちゃんのその言葉に自然と口を塞ぎ黙りこんでしまった。

「初めて、たぶん分かったと思う…。好きでもない人から告白されるのって…
最初は嬉しいのかなって思ったけど案外実際はそうでもなくて…」
「…うん…」
「ただ戸惑うだけだし…。何も知らないまま顔だけ見て付き合うとか付き合わないなんて
決められないし…」

梨華ちゃんは歩く速さを更に遅めながら考えるようにして言葉を慎重に並べていっていた。
あたしはただそんな梨華ちゃんの言葉に梨華ちゃんとはまた違う気持ちで
耳を傾ける。

153 名前:見抜かれていく気持ち 投稿日:2002年06月05日(水)14時56分20秒

「それに…断るのって…何だかつらいよ…。だってその人の気持ちが報われるか
それともだめになっちゃうかは…あたしに委ねられてるんだもん」

ぼんやりと言葉を繋いでいきながら梨華ちゃんは不意にくるっと体を反転させ
鞄を前に両手にもちながらあたしの方へ振り向いた。

「…真希ちゃん…今日お昼休みの時また告白されてたよね…?」
「――!」

目の前に向き直って言った梨華ちゃんの言葉にあたしはいつもとは違い
びくっと反応する。
それは、振り向いた梨華ちゃんの瞳があまりにも切なくて、苦しそうで、涙で
濡れるように潤んでいたから。

真っ直ぐあたしと向き合って、ただその瞳であたしを真っ直ぐ前から見つめてくる。
その瞳は、こんな時にもあたしをドキドキ興奮と緊張の入り混じった気持ちにさせ
すぐにでも簡単に理性を押しのけてしまいそうになるぐらい胸を高鳴らせる。

だけど、梨華ちゃんがどうしてそんな瞳をしているのかが分からなかった。

154 名前:見抜かれていく気持ち 投稿日:2002年06月05日(水)14時58分28秒

「あ…うん。ほら、屋上で手紙貰った人。…って…もしかして梨華ちゃん…見てたの…?」

梨華ちゃんの微妙な言葉のニュアンスにあたしははっと気付くとうやむやに
答えていた俯きがちの顔を上げて梨華ちゃんを見た。

「…ごめん…」
あたしの気付いた様子に梨華ちゃんはそれだけ呟きまた前に向いてしまった。
それから少しの沈黙があって、それを崩したのは梨華ちゃんの方だった。

「泣いてた…よね…。その人…」
「……」

静かな学校の階段で、小さいけど梨華ちゃんの声は上に抜けるように綺麗に
聞こえる。
あたしは梨華ちゃんのその言葉にもうどう答えたらいいのかも反応していいのかも
分からなくてただ黙って俯いてしまった。

155 名前:見抜かれていく気持ち 投稿日:2002年06月05日(水)14時59分55秒

「本当に…つらそうだった…。だけど…」
「!」
「真希ちゃんの方がもっとつらいんだよね?断ってる真希ちゃんの方が…もっと…」

黙り込んでしまったあたしに梨華ちゃんはまた向き直ると今までよりもぐっと近づいて
真っ直ぐあたしの瞳を捉えたまま言う。

「真希ちゃんてさ…いつも断ってるのにそれでも手紙貰うといつもその場所に行く…。
絶対無視とかひどい事しない…。優しいよね…ちゃんと告白を受けて、真っ直ぐ
断ってるんだもん…」
「……」

梨華ちゃんの言葉は本当に綺麗に澄み切っていて、あたしの胸の内をずばっと
見事に当てていた。
見抜かれた相手が自分の想う人のせいか、あたしの胸はびくびくするようにドキドキ
していたり緊張していたりする。

156 名前:見抜かれていく気持ち 投稿日:2002年06月05日(水)15時00分59秒

「…『好きな人がいる』から…だからみんな断ってるの?だからつらくてもいつも
相手と向き合ってるの?だからそんなに…全てに真面目なの…?」
「!」
「そんなに好きな人って…一体誰…?」

梨華ちゃんはあたしをすぐ目の前で見つめたまま、切ない表情のままであたしに
そう言った。




157 名前:aki 投稿日:2002年06月05日(水)15時25分14秒
148:俵谷宗達さん
>レスありがとうございます。
 行け行けムードですね(笑)しかしこの更新少し期待を裏切ったのではと
 思います(爆)後藤さんの妄想モードならこのまま一発OKなんでしょうけど…。
 ハロモ二の二人は萌えますねぇ(w ごっちん男役さまになってます(笑)

149:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
 微妙な空気と雰囲気です^^;
 すいません、更新分けちゃいました(++)
 次の更新はたぶん分けないでいこうと思ってますが何しろ全部まとめると
 ワードで7,8枚ぐらいなので…(爆)
 がんばります。

150:ごまべーぐるさん
>レスありがとうございます。 
 (;^▽^)<ギクッ
 私も言われてそう思いました(爆)とりあえず実際には初めてということで…^^;
 ( ´ Д`)<やるときゃやるのさぁ〜…?   …だといいんですけど…。
158 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月05日(水)20時37分03秒
>そんなに好きな人って、誰?
梨華ちゃん、あなただぁーーーー!!
ミュージカルの後藤主任カッコイイ♪惚れちゃいました。
159 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時08分52秒



「あ……」
あたしは不意に言葉にただ戸惑うように言葉を漏らす。
だけど梨華ちゃんの真剣な瞳は目の前にあってこれは現実であることに気付かされる。
流れる時間の全てが長く感じられあたしは出来るだけ早く答えようとするけど
何も言葉が出てこない。

「そんなに…大切な人なの…?」

梨華ちゃんはなかなか口を開かないあたしにますます悲しそうにして問い掛ける。
だけどあたしも、突然のその人からの思ってもいない言葉に頭はすぐに回転しない。
あたしが困ったように、ただ戸惑うように言葉を捜していると梨華ちゃんがはっと
気付いたようにまた前に向き直ってしまった。

「ご、ごめん…。気にしないで…今の…」

背中の向こうから聞こえてくる声にあたしは心の中で密かに小さく自分でも
気付かないほどにため息をついていた。
だけど胸の中の緊張はやり止まなくてあたしの心臓はただまるで早鐘のように
体を波打つ。

160 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時10分46秒

「き…気になるの?」

気付いた時には、あたしはそんな言葉を梨華ちゃんに対して投げかけていた。
自分でも意識して発した言葉ではないその突然のセリフの存在にあたしは
ますます緊張を昂ぶる。
あたしの言葉に梨華ちゃんの背中が一瞬びくっと跳ねた気がした。

「き、気になるよ。だって友達じゃない」
「――!」
「…友達だもん。ごっちんの好きな人くらい気になるよ…。…あたし、少し
不安なの…ごっちんに好きな人が出来たらごっちん…あたしから離れていっちゃうんじゃ
ないかって―――」

…一番重要な場面で悪いけど…あたしはそれ以降の梨華ちゃんの言葉は全く
耳に入っていなかった。


161 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時13分52秒


『友達だから』

…そうだよね…。
普通に考えてみればそれが普通だし何も梨華ちゃんは悪くない。
だけど、その言葉は今のあたしには残酷すぎる。
微かな淡い期待も見事に打ちひしがられてあたしはもう何も考えられなくなってしまった。

…今さっきまで高鳴っていた心臓も嘘みたいに今は静かに力尽きたみたいに
ただ黙々と胸の中で鼓動を打っている。


「やっぱり…好きな人って出来たら友達なんてニの次になっちゃう…?
何だかそんなの寂しくて―――」


「あたしずっと真希ちゃんとはこうしてたいって…いつまでも一緒にいたいなって
想ってるから…だから余計に…」


何かまるで言葉を選びながらもやけに慎重で確かめながら並べていくような梨華ちゃんに
あたしはいらだちさえも感じる。
嫌でも耳に入ってくるその言葉はすべてあたしに対して冷たい。
そんなことをしてるとも梨華ちゃんは夢にも想わないんだろう。
だから…つらすぎる…。


162 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時18分37秒

「離れたくない…。…何だか…真希ちゃんに好きな人が出来るなんて…少し寂しいよ…」

石川はつい口から取って出そうになった「嫌だ」と言うセリフを言いそうになった所を
済んでの所で口の中に留めた。

…そんなの失礼だ。
親友に好きな人が出来るのは逆に喜ばしいこと。
しかもこんなに一途で、真面目で真剣なのに。
それを嫌だなんてあまりにも自分勝手、我侭すぎる。

今まで抱えていた気持ちを言葉に変換して相手のその人に告げていくたびに、
考えるようにして言葉を選ぶけどそのたびにあたしの中で新しい発見と疑問が湧いてくる。

この気持ちは一体何なのか。
親友だから離れたくない。
親友だから一緒にいたい。

だけど…自分でもよく分からないのに言葉の持つ意味がどことなく違う気がする。

163 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時20分24秒

でも…これを友情からの嫉妬心としか自分の中で説明する事が出来なくてあたしは
まだ疑問を抱える言葉を並べていく。
自分でもよく分からない気持ちを、とにかく全て言葉にし打ち明けて、真希ちゃんに
伝えて少しでもその中から隠れている確かな気持ちみたいのを感じ取って欲しかった。
確かな言葉からではなく、感覚的に…。

自分でも分からない気持ち、打ち明けながら真希ちゃんに気付かせてほしかった。
でも…あたしの中でそれはまだぐるぐる渦巻きのように廻っていてしかも不透明で
何か掴めない。



164 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時22分27秒


「………」
後藤はそんな石川の真意など知る由もなくただ絶望に打ちひしがれていた。
嬉しいはずの言葉も全て「友情」からだと思うと悲しくて涙も溢れそうになる。
こんなに自分は想っているのに、なのに伝わらない。
想っているだけじゃ伝わらないなんてよく聞くけど、こんなに自分の気持ちは
強いのに、自分でもコントロールできなくなるぐらいに好きなのに、彼女には
伝わらない。
それはあたり前のことだけど…傷つかずにはいられない。
悲しくて、つらくて、この冷たい現実を恨みたくなる。

…ひどいよ…。
梨華ちゃんはただ前で話し続けるけど、あたしの意識はもう完全に自分の中に
向けられていて耳からどうすることも出来ず入ってくる音も今はもはや脳に届かない。


165 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時24分02秒

『好きな人が出来た』
もしそんなこと梨華ちゃんの口から発せられたらどうしよう。
今も、そう恐れていた未来は少しづつ現実になり変わってきてようとしてる。
ただ唯一の救いはまだあたしと梨華ちゃんが「友達」だという関係だけ。
まだ告白もしてない。
だからこれはある意味まだ一番の絶望じゃなくて、だけどある意味つらすぎる。

自分の気持ちを整理したわけでもなく決心したわけでもない。
なのに突然の言葉はまるで勝負する前に負けを予告されたみたいで…。
不意打ちの出来事にあたしは成すすべない。

…今目の前にいる梨華ちゃん。
いつか誰かの物になってしまうのだろうか。
今は告白されても断っている。
たぶん、これからどんどん告白され続けていくはず。

166 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時25分51秒

そのうちに梨華ちゃんの中で考え方が変わって初対面の人でも時めいたり
したらどうする?
男女の恋愛には、何のしがらみも束縛も世間の目もルールもない。
自由な恋愛に梨華ちゃんは真っ直ぐその性格からのめりこみ突き進んでいってしまうかもしれない。
そんな現実を考えるだけでもあたしは堪えていた涙が溢れそうになるのを感じる。

今にも、もし一人だったら泣き出してる。
この計り知れない不安に…。

…もうどうなってもいいから告白してしまいたい自分と、それでもまだ絶交されたら、と
不安に怯えそれなら「親友」の肩書きのままの方がいいと思う自分がいる。

本能に近い悪魔と、理性に忠実な天使が争う。
逆にそれは反転する事もあって、現実の新しい未来に向かって進もうとする天使も
いれば、逆に利己的で現実的で悲観的な悪魔もいる。

計算できる事でもないし何が起こるか分からない。
その時一体梨華ちゃんがどんな態度を示すのか分からないし、同時にあたしがその時
どうなってしまうのかも分からない。
だけど…今はもう、考える力がなくなるくらいに…つらすぎる…。

167 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時30分40秒


「………」
ただ俯きながら何の返事もなく黙り込む後藤に石川がようやく気付く。
それからずっと自分が一方的に話していたことに気付いて石川はなにやら沈んだ
表情と様子の後藤に声を掛けようとした。

「!キャッ!!」
「!?―――梨華ちゃんっ!!」

しかし、階段を下りながら後ろに振り向こうとした石川の体勢が崩れ、体が後ろに向かって
吸い込まれるように傾いていった。

「――危ないっ!!」
突然の悲鳴に、後藤はすぐにはっと意識を戻すと目の前を見た。
するとそこにはまるでスローモーションのように後ろに倒れていく石川の姿があって――
後藤は無我夢中でその空を泳いだ細い彼女の手を掴んだ。

168 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時33分46秒

「キャッ!?」
ぐいっと今出来る最大の力を注いで石川の腕を目一杯引っ張ると、今度は勢いよく
体になだれ込んできた石川の体を受け止めるように強く抱きしめた。
「っ!」
そのまま受け止めたのはいいものの、自分の体ごと後ろに倒れていってしまいそうになって
済んでのところで後藤は階段の手すりにぎゅっと捉まった。
後藤向きに斜めに体勢を崩しながら、それでもやっと二人の体は引力と重力に解放され
その場に留まった。


「……はぁ…びっくりした…」

後藤は一瞬の間を置いてから二人とも助かった事に肩を撫で下ろす。
目の前には結構まだ段の連なる残りの階段。
踊り場まで距離は結構あってもしここから落ちてたらひどいことになっていたかもしれない。
そう思うだけで今の状況にほっと心から胸を撫で下ろす。

しかし不意に風に流れる髪が目の前を通って、階段の踊り場を見る自分の視界も
何かそれ以外のものに仕切られていることに気付く。

169 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時35分46秒

「―――え?」
「……」

それからどんどん自分に意識は傾いていって、制服越しに伝わってくる温かいぬくもり、
甘い香りに感じる吐息。
自分の物とは違うもう一つの心臓の音と顔のすぐ横にある茶色の髪と体の存在が
すっと目に入ってあたしの体は途端に強張り緊張で心臓はばくばく、がちがちに固まって
しまった。

「ご、ごめんね…。ありがとう…」
「あ……」

一つの段に二人で何とか乗っているせいか、あたしの手すりに捉まる手もあって
無理な体勢からすぐに解放する事が出来ない。
梨華ちゃんはあたしの胸の中で俯きながらうずくまっていて表情の見えない、くぐもった
そんな声が聞こえてくるだけだった。

だけどはっとして見た梨華ちゃんの耳は真っ赤であたしはそのまま梨華ちゃんの腰にやる
自分の手に気付く。
その腕はただひたすら梨華ちゃんを助けようととした物だけど今はあたしと梨華ちゃんの
体をただきつく密着させるだけの物になっている。

170 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時37分36秒

「……」
「わっ!ご、ごめん…!!」

梨華ちゃんの意識が黙りながらも何となく見ていてもあたしのその手に注がれている
気がして、あたしはばっと今更のように腰から手を離す。

「あっ…!」
それにまた体勢が崩れて、梨華ちゃんは不安げに声を漏らしながらよろめいた体を
あたしの体に困ったように添えていた両腕でぎゅっとあたしに抱きついてきた。

「!」
今さっきよりもはるかに状況がどんどんまずい方向に向かっていってる事に
あたしの体はもはやかちーんと固まってしまった。

「「ご、ごめん…」」

梨華ちゃんの声とあたしの声がはもるように重なる。
あたしの言葉は突然離してしまった事に、梨華ちゃんは…梨華ちゃんなりに。

改めるようにあたしは梨華ちゃんの腰にもう一度手をやるとゆっくり自分が上の段に
上って梨華ちゃんをその今二人が窮屈に乗っていた段に立たせてあげた。

171 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時39分56秒

「あ、ありがとう…」

梨華ちゃんはゆっくり抱きついていた腕を離すと階段の手すりに捉まって
一息ついた。

「ううん。いいの別に…。何もなくて良かった…」

あたしは目の前で確かにけが一つしてない梨華ちゃんの姿に今更ほっとするように
安心を体に感じた。
いままで張り詰めていた物が切れてあたしははぁっとうなだれるように手すりに軽く
もたれかかる。
梨華ちゃんはその間ずっとあたしを見ていたような気がした。


172 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時41分47秒

「…かっこいいよね。真希ちゃんて。みんなが告白する理由も分かる気がする」
「え?」

不意の言葉にあたしはばっと顔を上げた。
だけど梨華ちゃんも意識して言った言葉じゃないのか途端にぼっと顔を紅く染めると
「な、何でもない…」とだけ言い返して手を左右に振りながら階段を下っていってしまった。

「……」
確かに聞こえたような気がしたその言葉にあたしは自分の耳を疑ってその場に
立ち尽くしたまま踊り場についた梨華ちゃんをぼんやり目で追ってしまう。

「は、早く行こうよ。新しく出来た喫茶店行くんでしょ?」
「あ、う、うん」

突然の出来事に、あたし達の中のわだかまりも消えて梨華ちゃんは気を取り直すように
いつもとは違いぎこちない笑顔を必死に作ってあたしを促す。

173 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時45分35秒

「…真希ちゃんが男の子だったらさ。絶対にもててるよ。あ、今も充分もててるけどね、
たぶん今と同じかそれ以上に男女から、特に女の子からもてると思う」

あたしが階段の踊り場に足を着かせた時、梨華ちゃんはそう言った。

「あ、でも!あたしは女の子の真希ちゃんの方がいいけどね。…あたしもアタック
しちゃおうかな〜」


石川はこの時今までで一番自分の中で自分の奥深くに眠る本当の気持ちにこの思い切って
言った言葉が一番近いような気がした。
今までで一番わだかまりが消えて透明になった気がする。
そんな事に気付いていた時後藤の表情が瞬時にびくっとしたかと思うと、変わった。

「…梨華ちゃんなら…いいよ…」
「え?」
「梨華ちゃんならあたし…絶対にOKする」
「…あ……」

途端に真剣な表情になり呟くように真面目に発した後藤の言葉が今自分の言った
ことに繋がることに気付く。

174 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時47分26秒

「ま、真希ちゃん…あの……」
「……」

自分の中で何かがはじけたことに気付く。
後藤はふと口にした石川の言葉にもう自分の中に眠る感情を押さえることが出来ず
ただ無我夢中で石川の体に抱きついた。

「!ま、真希ちゃん!?」
「――好きなの!!」
「…え?」
「好きなの…あたし…梨華ちゃんのことがずっと好きだったの…!」

後藤は石川の体を今さっきよりも強く強く抱きしめると、切なくなった声を
震えないように必死に奮い立たせながら、彼女のぬくもりを感じながら叫んだ。




175 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時53分05秒


「……真希…ちゃん…?」

屋上まで一気に抜ける階段の吹き抜けに、後藤の言葉は透き通るように綺麗に
その場に響き渡った。
もう誰もいない校舎。
日もとっくに沈んで暗くなり始めた校舎は更にその声の透明度を上げる。

「ずっと好きだった…。高1の時、初めて声掛けてくれた時から…」
「……」
「それから今までずっと…ずっと梨華ちゃんだけを想ってた…!」

突然の告白に石川は戸惑い何も行動を起こす事が出来なくなってしまう。
思ってもいない時に、予想もしなかった彼女の気持ち。
夢にも思わなかった彼女の強い気持ちの向かった先。
それが自分なんて。
今耳にした事実がどうしても信じられず、すぐにでも現実から逃れてしまいそうになるが
密着する体から伝わる激しい鼓動と苦しそうに吐く彼女の吐息が、それが現実の物で
あることを自分に告げる。

何も出来なくて、何も言葉を発する事も出来なくて、
ただただ戸惑うばかりのあたしに抱きしめていた真希ちゃんの手が頬に触れた。

176 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)21時58分46秒

「!」
その手は優しく頬から顎に流れて、優しく上に持ち上げると次にあたしの
唇は真希ちゃんによって奪われていた。


「っ…ん…!」
強く押し当てられた真希ちゃんの柔らかい唇に戸惑いながらも驚きと不思議な感覚に
追いやられ、綺麗な唇と優しく触れるその柔らかい感触の気持ちよさにあたしは
自然と酔いしれる。
だけど触れているだけの唇が徐々についばむように優しくキスして来た事に
あたしはぎゅっと目を閉じた。

「…ぅん……」

初めての感触に戸惑う暇もなく真希ちゃんの唇はあたしを奪っていく。
激しくなってくるそれにも優しさは最大に含まれていてあたしは強く抵抗することも
忘れてしまう。
初めてのキスは、あまりにも甘くてとろけるようで、今の状況にそぐわないのに
あたしの意識を奪う。
ぎゅっと瞳を閉じ、ただ始めてのそれに真希ちゃんにリードされながらあたしはどうする
事も出来ずただ真希ちゃんの制服をぎゅっとしがみ付いていた。

177 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)22時00分16秒

「ん…っむぅ…!」

だけどキスに酔いしれていたあたしに次の行動は目が冷めるように顔をしかめた。
ついばむようなだけだったキスは次第に深くなってきて更に激しく求めてくるようになる。
微かに抵抗を覚えあたしは顔を動かそうとするけどそれも頬に添えられる手で強引に
力を奪われてしまう。

「真希ちゃ…ん…!」

一瞬離れた唇にあたしは真希ちゃんの名前を呼ぶけど目の前にいるはずの真希ちゃんは
いつもの真希ちゃんとはもう違くてまるで我を忘れているようだった。

「んん……!」

もう一度奪われた唇にあたしは両手を押し出して抵抗するけど、それも真希ちゃんの
手に捉まれてしまう。
頬にやっていた手は流れるように腰にまわって離れる事も許されない。
密着してた体がもっと近づいて自然と交わすキスも深くなる。

178 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)22時02分09秒


「ん…っやぁ…!」
「!」

今まで耳にすることしかなかった未知の感覚と押し寄せてくる何か深い熱くて
戸惑うようなそれにあたしはとうとう堪えきれず真希ちゃんの体を前に突き出した。

「…あ……」

真希ちゃんは今のあたしの抵抗にやっと我に戻ったのか瞳にようやくあたしの
存在を映してそれだけ声を漏らす。

「うっ……」

あたしはもう頭の中がめちゃめちゃにパニックしてしまって、ただ口元に今の感覚が
現実のものだったのかと確かめるように手をやることしか出来ない。

「ご、ごめ…あたし…」

真希ちゃんは今更自分のしたことに気付いておろおろ困ったように声を震わす。
だけどあたしにはもう真希ちゃんの今まで抱えていたんであろう気持ちとか切なさとか
分かってあげる余裕がなくて、気付いたときには酷いことを口にしてた。

179 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)22時03分31秒



「…あたしの事…ずっとだましてたの…?」
「!違う!だましてたわけじゃないっ!!」
「……」
「あたしは…ただ…」
「…あたしはごっちんのこと…友達だって…親友だって思ってたのにっ…!」

梨華ちゃんは瞳に涙を浮かべると口元を押さえたまま見ていても胸が
しめつけられるような表情でそれだけ言い捨てるとあたしを置いて逃げるように
向こうへ駆けていってしまった。


「!――梨華ちゃんっ!」

あたしは梨華ちゃんの消えていった階段のらせんの下を急いで手すりの上から
見やるけど、梨華ちゃんの姿は階段を下る足音と共にはるか向こうへ消えていってしまった。

180 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)22時07分47秒

「……」
姿、存在が見えなくなってしまった彼女を、今から追う気力はもうなくて、
あたしの中でいまさっきの梨華ちゃんの言葉だけがぐるぐる頭の中で廻る。


『騙してたの!?』

違う…
違うの梨華ちゃん…。
騙してたわけじゃない。
騙そうと思ってたわけじゃない…。
だけど…あたしはもう…。

あたしの中の感情は梨華ちゃんを親友に見ることをかたくなに拒んでいる。
それは本能に近い感情で理性では止めることは出来ない。
今の今までずっと梨華ちゃんがあたしの事をただの親友として見ていたのなら
結局はあたしの秘めていた感情は梨華ちゃんを騙していた事になるのかもしれない。

ずっと梨華ちゃんにとって良い親友を演じてて、本当はずっとあたしは親友なんかより
もっと深い愛情で梨華ちゃんを見つめていた。
それは普通に同性の友達に抱く気持ちとは全く異なる感情で、時に性的な欲求を含んだ面で
梨華ちゃんを見たことがないと言えば嘘になる。否定は、できない…。

181 名前:感情の臨界点  ―限界― 投稿日:2002年06月05日(水)22時10分03秒

騙すつもりは微塵もなかったけど、結果的に梨華ちゃんを騙すことになっていたのかもしれない。
まるで夢から覚めた空虚な気持ちに襲われた。
今さっきまでの普通の日々がまるで今はもう望んでも望んでも届かない夢の
話のようにさえ思えてくる。
毎日の日々が、今まで生きてきた中で一番愛しくてしょうがなくなる。
…そうしてしまったのは結局全て自分のせいで。
止められなかった感情にあたしは今更どうしようもない気持ちで追いやられる。


「…くそっ…!」

梨華ちゃんのいなくなった踊り場であたしは一人冷たい壁を殴った。
いくら悔やんでも取り返しはつかない。
これは現実で夢の中の話ではない。
決して予想していなかったわけではない恐れていた現実に、あたしは今更後悔の念に
追いやられていた。




182 名前:aki 投稿日:2002年06月05日(水)22時19分43秒
更新やっと終りました(−−;)
途中文字化けしてしかも表示されなかったのでびびりました(汗)

158:俵谷宗達さん
>レスありがとうございます。
 見事な突っ込み、笑いました(笑)
 お、ミュージカル見に行かれたんですか。いいなぁ、私も出来れば
 行きたいんですがね…。
 新しい話、同じ板ですね。よろしくお願いします^^
 がんばってくださいっ!読みます!(w
183 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)22時22分13秒
リアルタ〜イム♪
まぁなんてシアワセ・・・。
ああ、ごっちんせつないっす!!
梨華ちゃん!!すなおになってえぇぇ!!
184 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月05日(水)22時50分18秒
大量更新ご苦労様です〜
なんだかせつないですね〜
ハッピーエンドになるといいな〜
185 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月05日(水)23時33分48秒
ああごっちん。切ないですなあ。なんか胸が痛みましたよ。
梨華たんはごっちんに対する気持ちがもう少しではっきりするところだった。
しかし、ごっちんはもう臨界点に達していて両想いであるはずの二人が
たった少しの時間のずれでなんとも言えない事態になってしまった。
梨華たんは思ってもいないことを言ってしまったのだろうが、それはごっちん
にとってわずかな可能性をかけて勇気を振り絞って伝えた気持ちを否定するも
のだった。ごっちんの痛みははかり知れないと思います。
梨華たんもごっちんにあまりにも酷いことを言ってしまったと自分を責めて
相当つらい思いをするのではないでしょうか。ああなんでこうなるんだーー。
すんごくこの後が気になる。この二人が幸せになれることを願っています。
akiさん、頑張ってください。長くなってしまってすみません。
186 名前:俵屋宗達 投稿日:2002年06月06日(木)02時46分30秒
リアルタイムで携帯から読んでたんですが、
眠くて寝ちゃいました。
ごっちん、切ないよー。
187 名前:rika-mode 投稿日:2002年06月06日(木)08時33分38秒
更新おつかれです・・・。
とうとう押さえきれずに、ごっちん、いっちゃいましたかー。
せつない、せつない(T_T)
りかちゃん、早くパニくった頭を冷静にしてくださ〜い!
どっちも深く傷つく前に・・・。
188 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月07日(金)00時35分42秒
あ〜、すれ違いが切ない…。

続き、楽しみにしてます。
189 名前: 投稿日:2002年06月07日(金)19時40分18秒
ごっちん・・・せつないです。
梨華ちゃんも、いろんなことがありすぎで、わからなくなっちゃったんですね。
続き待ってます。
190 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時14分23秒



それから一週間の月日が経つ―――

あれからというものの、あたし達二人の間で会話もなければ接触すらもなく、
この一週間はあたしの人生の中で一番つらくて長い物だった。



「…焼きそばパンくださ〜い…」

そして今日もお昼休み。
寂しい一週間は梨華ちゃんとの接触0の記録をどんどん更新していき、そして
今のこの時間も益々記録が塗り替えられていく。

…こんなに梨華ちゃんと話すらもしなかったのは初めてだ。
そもそも学年も違うし。
学年が違ければ教室も違う。
三階と四階、その間のたった一階の階段の差は今はもう果てしなく遠くて
仕方がない。
家も近いわけでもないし学校で会う機会がなければ後は駅前で分かれるしかない。
それでもあたしは毎日のほんの少しの時間でも梨華ちゃんと一緒にいられる時が
嬉しくて幸せだった。

…今から思えばそれだけで良かったのかもしれない。

あたしは多くを望み過ぎた…?


191 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時15分30秒

「あいよ。やきそばパン。これで最後だよ」
「…ども」

売店の向こうからやってきたおばちゃんにあたしはやきそばパンを受け取ると
それから紙パックのコーヒー牛乳も頼んだ。
おばちゃんはのろのろしながらクーラーボックスから茶色のコーヒー牛乳を
取り出しあたしに手渡す。


「…今日も……」
あたしはまるで力尽きたようにのろのろしながら足取り重くその場を後にする。
騒がしい廊下を歩きながら途中いろんな視線を感じたけどあたしは全く無視で
ただひたすら屋上を目指していた。



192 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時16分54秒


――――――


「あ、おーいっ!!ごっちーん!」
「……」

風の強い屋上には先に来ていたよっすぃーの姿があって、あたしがぼんやりドアから
やってくると姿を見つけるなり手をぶんぶん振ってきた。
…屋上でのお昼は今日も梨華ちゃんの姿はなくて。
あたしは堪えていた物がじわーっと込み上げてくるのを感じた。

「う、うぐ……」
「ごっちんー!遅いぞ〜!…ってあ、あら…?」
「よしこ〜…」

目の前まで来たあたしによっすぃーは気付いてコンビニ弁当を手に持ちながらあたしを
見上げる。
だけどあたしの異変によしこはすぐに気が付いた。

193 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時18分26秒

「うぐぅ…お昼も…通学も…帰るのも、放課後デートも、挙句の果て電話もメールも
出来ないなんてぇ……。こんななら告白なんてするんじゃなかったぁ…!!」

焼きそばパンを握り締めながらあたしは溢れ出るものを我慢できなくて突っ立ったまま
学校にも関わらず号泣してしまった。

「ごっちん涙出てるぞ」

よしこは何を思ってかこんな非常事態に負抜けたことを言う。
そのせいかあたしの中では更に何かがぷっつん切れて今よりももっと堪えられなく
なってくる。
涙はまるで滝のように止め処なくあたしから溢れ出た。

「だってさぁ…!し、しょうがないじゃん、あの時は気付いたら梨華ちゃんに告白
してたんだもん〜!!あたしだって止めなんなかったんだもん。大体梨華ちゃんが
階段でこけそうになったりするからぁ…」

やけっぱち状態で八つ当たりとも取れる感情があたしから放たれていく。
だってもうこんなの我慢できない!

194 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時21分04秒

「あーよしよし。ごっちんはよくがんばった」

よしこはうんうんと頷くようにしながらつらそうな表情を作って止め処なく溢れる涙を
手の甲でただ拭うマジ泣き状態のあたしの頭をぽんぽんと撫でる。
もう本当にあたしの顔は既に涙でぼろぼろでこんなに号泣したのは人生で始めて
かってぐらいだった。

「あたしだってがんばったんだからぁ…鈍感の梨華ちゃんの前であたしなりにずっっっと
我慢してきたんだからぁ…なのに梨華ちゃんあたしに騙してたのって……うっ……
もうやだぁ〜!!」
「よしよし。ごっちんくじけるなぁ」

あうぅと情けなく泣きだしたあたしによしこはただ同情するように頷きながら
頭を撫でてくれる。
こんなの高2の女子高生がすることとも自分でも思えないけどしょうがない。

だってメールはおろかこの一週間梨華ちゃんの声すら聞いてない!!
あたしからは当然話し掛けられないし梨華ちゃんもずっとあたしを避けてるみたいだし
これじゃどうしようもない。
一日で一番の楽しみだったお昼タイムがないことだけでもあたしは大打撃なのにっ!

195 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時23分04秒

「ん〜…。たぶん石川先輩戸惑ってるんじゃないかなー…ねぇ、ごっちん」
「何よ〜」
「先輩たぶん戸惑ってるんだよ。だから避けてるだけだと思うし…。その騙してたのって
セリフもごっちんと同じでただ衝動的に言っちゃったことなんじゃないの?」
「だ、だって…よしこはあの時の梨華ちゃんの顔見てないから言えるんだよぉ…」

まるで信じられないといったような、そんな表情。
あたしはあんな瞳で梨華ちゃんに見られたのは初めてで胸が締め付けられるぐらい
痛かった。

「だってずっと親友だと思ってた人から告白されたんだよ?しかも突然。
だったら戸惑うのは当然じゃない。たとえ女の子同士じゃなくても」
「違う!絶対に梨華ちゃんはあたしのこと軽蔑した!絶対にあたしの事嫌いになった!
もうこれからずっと口聞いてくれないかもぉ〜!!」

よしこは暴走するように泣き続けるあたしに困ったようにため息を付く。

…だってさぁ!
一旦暴走し始めた悲観的考えは止めることが出来ないんだもん!
こんなのあたしらしくないけど今のあたしにプラス思考に物事考えろなんて絶対無理!
絶望的未来しか思い浮かばないっ!


196 名前:後藤さんの後悔 投稿日:2002年06月07日(金)22時24分24秒

「…石川先輩はごっちんにとってそんな人だったのかぁ〜?」
「!」
「ごっちんの好きになった石川梨華って人はそんなひどい人だったのかぁ?ごっちーん」
「……」

よしこの言葉に黙り込んだあたしによしこは少し間を置いてからゆっくりあたしと
同じ目線に向き直って言った。

「もうちょっと信じてあげようよ。ごっちんの好きになった人」
「…でも……」
「ごっちんがそんなんでどうすんの。目指せ恋人、目指せ彼女でしょ。
もう少し先輩を信じてあげよう」
「……」
「きっと戸惑ってるだけのはずだから…」
「……うん…」

優しい表情でそう言ってくれたよしこはまるで子供をあやすお母さんみたいで
あたしは自然と促されるように涙を拭いながらも小さく返事してた。




197 名前:aki 投稿日:2002年06月07日(金)22時36分11秒
レス皆さん本当にありがとうございます。
更新少し遅くなっちゃいました(++)
…どうしてもサッカーを見てしまって夜の時間が上手く取れない…(爆)

183:名無し読者さん
>リアルタイム、ありがとうございますm(__)m
 私の中では…あまり切なくしたつもりは本当の所なかったんですが
 切なくなっちゃいましたね^^;
 素直が一番…。

184:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
 まだまだ終わりまでには掛かりそうです。たぶん…。
 確かに今までのこの話の中では唯一切なくなった場面かも…。

185:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 口にしてはいない胸の内での気持ちのすれ違いですね。
 二人とも真剣です…。
 ありがとうございます。がんばります。
198 名前:aki 投稿日:2002年06月07日(金)22時47分19秒
186:俵屋宗達さん
>長くなっちゃいましたからね^^;
 私も大量更新は疲れます。 
 でもリアルタイム嬉しいです。
 がんばりますっ。

187:rika-modeさん
>ありがとうございますm(__)m
 たった一言が展開を多く変えちゃいましたね…。
 しかもとてつもなく鈍感のせいかその分反動が大きく…。
 
188:ごまべーぐるさん
>レスありがとうございます。
 がんばりますっ。どうにか上手く時間を取って…(汗)

189:翔さん
>レスありがとうございます。
 後藤さんも石川さんも、もうお互い一杯一杯…ですね。
 続き、何とかがんばりますっ。
199 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月08日(土)03時20分47秒
ヨスコ、いいヤツだな。
それにしても、やきそばパンにコーヒー牛乳って。
いしかーがいなくなった途端、昼ごはんがすごい栄養に偏りが。
やっぱり、ごまは梨華ちゃんがいなきゃダメなんだね。
200 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月08日(土)08時04分46秒
よしこの言葉に感動いたしました。そうだその通りだ。ごっちん頑張れ!!
梨華たんの戸惑いはすごいものだと思いますが、幸せになれる日を待っております。
楽しみにしてますよほ。
201 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月08日(土)15時56分41秒
ヒサブリです♪新作も読んでますよ。
梨華姫と真希姫がくっつかないなんてそんなの悲しすぎる!!
いしごまといえば、よしこは悪役回りなんで(汗)
この話は良い役なんでよしこに期待してます♪(謎)
202 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時22分41秒



その頃の三年教室。

自分の真上で後藤が号泣しているとは露知らず石川は石川で自分の教室で
クラスメイトの柴田と共にお昼を共にしていた。

「ん〜…あれぇ?いいの?今日もまたお昼?」
「……」
「いつもは屋上で食べてるはずなのに」
「……」
「そういえばいっつも教室に満面の笑顔でいっつも同じ時間にやってくるあの
後藤さんとか言った二年生の有名人はどこ行ったぁ?」
「……」

黙ったままのあたしに柴ちゃんはとうとう顔をしかめる。
何の応答なしのあたしはただ持参しているお弁当を黙々と口に運ぶだけで
ほとんど事務的にお昼を食べていた。

203 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時24分02秒

「ちょっとぉ。聞いてるの〜?石川さ〜ん?」
「…聞いてます」

やっと一言口を開いたあたしに柴ちゃんは「何だ。聞こえてるんじゃん」と
口を尖らして愚痴を零す。
だけどあたしはそれ以降何も言葉も思い浮かばなくてぼーっとしながらお弁当に
集中する。

「なになに?ケンカでもしたの?それとも何かすれ違いでもしたの?」
「…違います」
「それじゃ何よ〜」
「何でもない」

追求してくる柴ちゃんにあたしは目を伏せながらただそれだけ一言答えるだけ。
とうとう柴ちゃんも拗ねて頬を膨らませながら「梨華ちゃんのアホー」なんて愚痴を
零しこちらを気にしつつもお昼を食べることに集中してしまった。

204 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時26分01秒

「…何でもないの…」

あたしは呟くようにそう自分にどこか言い聞かせるようにして言う。
それは目の前の柴ちゃんの耳にも届かなかったみたいで何の返事もしてこない。

あたしは俯きがちだった視界に今更ぼんやり目の前に映るものを捉え、そのまま
机に肘をつくと考えるように頬杖をついた。

…本当は…なんでもないわけない…。


『本当はずっと梨華ちゃんのことが好きだったの…!』

あの時の真希ちゃんの真剣な表情と一途な瞳が脳裏に浮かぶ。
一週間前のことがつい昨日のことのようでそれはあたしの頭から離れない。
本当は、ずっと、あたしのことが好きだった。
確かに真希ちゃんの口から発せられたその言葉にあたしは自分の耳を疑う。

だけどその後の情熱的なキスと我を忘れたような真希ちゃんの行動にあたしは
信じずにはいられない。

…初めてのキス…。


205 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時27分34秒

「……」
あたしは自然と自分の唇に指先で触れる。

初めてのキスはすごく情熱的で感情を激しく深くぶつけてくるものだった。
だけど強く求めてくる中にも真希ちゃんだけの優しさがあって、それはあたしに
あの時今まで感じたこともないぐらいの感覚に陥らせた。
甘くてとろけるような想像も越えるぐらいのキスの心地よさ。
あたしはそれに今も思い出しながらどくんと心臓を跳ねさせられる気持ちから
離れられない。

今も思い出しながら心臓をドキドキさせ、あたしはキスの余韻に浸りながら
同時に真希ちゃんが冗談とかじゃなくて本当に本気だということに気付かされる。

206 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時29分23秒

考えてみればすぐ分かることだけど、真希ちゃんはずっと「誰か」に片思いを
し続けていた。
そしてずっと誰かからの告白も断り続けていた。
その間も当然あたしは真希ちゃんの側にいて、ずっと普通に接してきたけど、
もし真希ちゃんが好きだった人が本当にあたしだと言うのなら、今までずっと
真希ちゃんはあたしのことを「好きな人」として見ていたことになる。

そうなると、あたしが真希ちゃんと話してた内容もどこかおかしくなるところがあって、
真希ちゃんはずっとあたしとの恋愛話で本当に「あたし」に対して話していたことになる。

…つまり、今までずっと真希ちゃんが言っていた「好きな人」の事についてが…
…あたし…ってことになってそれで…。

207 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時31分17秒

「……」

あれから一週間。
ずっと考え続けていたけどいつもここで考えは中断されていた。
あたしは困ったようにうな垂れるようにして額を手で覆う。

…だったら…あたしはずっと親友だと思ってた真希ちゃんはずっとあたしの事を
「恋愛」の対象で見つめていたという事?

その感覚が分からない。
たぶん真希ちゃんになってみないと絶対に分からないことだと思う。
自分が「好き」なのに相手は自分を「親友」だと思ってて…?

…だったらあたし…今までずっと真希ちゃんにひどい事言ってる……でも…。
…真希ちゃんがあたしのことを好き…?

それが一番分からなくて。
だって今までずっと親友だったはずなのに…突然『好きだった!』なんて言われても
実感湧かない。


208 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時32分30秒

たった一つだけ言える事は、あたしが親友だと思っていたとしても真希ちゃんは
そうは思っていなかったという事。
あたしは今までずっと真希ちゃんに残酷な事を言い続けていたのかもしれないけど
同時にあたし達は今までずっと真希ちゃんがあたしにそういう感情を持ち始めた時から
ずっと一緒にいる時間とか見ている物の解釈がすれ違っていてちぐはぐにおかしく
なっていることになる。

…あまりにもあたしにとっては非現実的なことで、突然な事にあたしは上手く解釈
する事も出来ない。


209 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時33分46秒

「……ねぇ、柴ちゃん…」
「ん〜?」

机に肘を付き頭を覆いながらあたしは目の前の柴ちゃんを呼びかける。
相手の柴ちゃんは不満そうにまだ拗ねてるみたいで面倒くさそうに低い声で答えた。

「…もしさぁ…自分が友達だと思ってる人から突然告白されたらどうするー…?」
「んぇ?」
「…だからぁ…もし自分が親友だと思ってる人から突然告白されたらどうする?って
聞いたのぉ」

あたしは自分でも分からないけどいらつきながら机の上にあったイチゴ牛乳に
手を伸ばした。
ちゅーっとそれを吸いながらあたしは心の中で小さくため息を付く。

210 名前:石川さんの後悔 投稿日:2002年06月08日(土)20時34分38秒

「……ねぇ…それって…もしかして後藤さん?」
「――ぶっ!」

突然の不意打ちの柴ちゃんの言葉にあたしはイチゴ牛乳を吸いながら
紙パックの中で小さく噴出す。

「あれ…まさか…本当に?」
「……」

ストローを加えたままあたしは顔が火照って来た事に気付きただ困ったように
俯きながら顔を紅く染め、ただ図星と嫌でも表現する事しか出来ないでいた。




211 名前:aki 投稿日:2002年06月08日(土)20時49分40秒
更新終了です。
載せにくかったので一旦上げちゃいました。

199:ごまべーぐるさん
>焼きそばパンにコーヒー牛乳ってかなりそういえば偏ってますね…。
 書いてる時あまり気付きませんでした(爆)
 成長期なのに…(汗)

200:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 考えてますね、石川さんも。
 続き、明日も書けなさそう…(T_T)
 W杯…ルールがあまり分からなくても何だかんだで見てしまうんですよね…。

201:梨華っちは文麿の応援団さん
>久しぶりですね。レスありがとうございます。
 ですね、いしごまで吉澤さんはいつも悪い役になるのが多いみたいです。
 ただ考えてみると私の話の中ではいつも良い役かも…。どうしても反感買うような
 嫌な役って書きたくないんですよね…。
 がんばります。
212 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月08日(土)21時03分43秒

そ、そろそろ続かない〜〜?!
そんな事いわんといてくださいよ。梨華ちゃん、まず自分の気持ちを
確かめるんだ!!
213 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月08日(土)21時48分18秒
本日2度目の登場!!
ブラジルが4点目入れました^^
ってことで、梨華姫もあんなに悩んじゃって…
真希姫のコト、好きなんじゃないですかね?
柴ちゃんの返答に期待大♪明日は腕相撲対決♪
214 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月09日(日)13時31分52秒
梨華たん悩んでますなあ。いったいどんな結論を出すのか気になる。
今日は日本対ロシアですね。
215 名前:vivi 投稿日:2002年06月10日(月)14時21分44秒
akiさんにレスするのは2回になります。しかしここの後藤は僕そっくり
(モテないけど)な感じがして親近感がもてます。
普段クール→頭の中はネガティブ→不満と不安がつのる→爆発
というのは僕が今の彼女をゲトしたのを再現しているかのようでした。

ところで昨日のハロモニの石川はやけに美人だったと思うのは僕だけでしょうか??
頬の肉も大分とれた気もするし・・・。気のせいか、最近石川不足だったし。
216 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)15時01分28秒
ナイスだ、柴っちゃん!
てか、周りから見たら一目瞭然なんでしょうね(^^;;
217 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時04分48秒



「いやぁ、まさかあの後藤真希が落ちるとはね」
「……」
「大ニュースだわ。梨華ちゃんすごい事だぞ」
「…あのね…」

今さっきまでのご機嫌斜めもどっかに行っちゃって柴ちゃんはあたしの身に
起こった出来事に息を高揚させ少し興奮気味に話してる。

うちのクラスはどういうわけかみんな食堂や外でお昼を食べるのが習慣で
教室はあたし達以外誰もクラスメイトはいなくてがらんとしてるからいいけど
それでもあたしは声を小さくして答えずにはいられない。

「…ちゃんと聞いてよ」

人事だと思ってわくわくしてる柴ちゃんにあたしはため息混じりにうな垂れながら言う
けどもはやこうなってしまった柴ちゃんは誰にも止められない。


218 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時06分00秒

「だってさぁ、あの後藤さんっていったら他校の男子からもうちの生徒からも
かなり告白受けてるじゃない。そんな後藤真希を落とすなんて、梨華ちゃんやるねぇ」
「…人事だと思ってぇ…」

不意のこととはいえ彼女にばらしてしまった自分の単純さにため息を漏らす。
真剣に相談に乗ってくれる時もたまにあるけどほとんどがこんなテンションで
おもしろ好きだから…。

「ごめんごめん。んで?何て言われたの?」
「…ずっとあたしのことが好きだったって」
「わぉ!かっこいい告白ぅ!」
「……」

その時の事実があたしの口から発せられるごとに柴ちゃんは好奇心から楽しそうに
声を上げる。
…人の事だと思って…。
あたしとは違い全く悩み0で今楽しく過ごしてる柴ちゃんが少し憎たらしい。

219 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時07分25秒

「んで!次は次は〜?」
「……」

これから先の事を言うべきか言わないでおくべきか迷ったけどこれ以上自分の中に
溜め込んで悩み続けても答えが出そうもなかったからたぶん友達の中でも一番信用
出来る柴ちゃんには打ち明ける事にした。

「…キスされた…」
「!!マジでぇ!?」
「……」
「ちょっとほんとに!?それってまさか無理やり?」

柴ちゃんの言葉は今日に限ってずばずば的中するからあたしはそれに回避することが
出来ずただうな垂れたまま静かにかぁっと顔を紅くする。
そんな様子はさっきからただ図星ですと柴ちゃんに伝えてるだけで。

「…うっわぁ…これは衝撃的事実だね。梨華ちゃんの初キスが強引に奪われたとは」
「ちょっと真面目に聞いてよ〜!!」

どんどん話がそれていくからあたしは溜まらず顔を上げ柴ちゃんに抗議する。
だけど柴ちゃんはそんなあたしに構うことなくほとんど無視で一人話し続けてる。

220 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時08分48秒

「まぁ、後藤真希だからいいじゃん。その辺の変な男よりはだんぜんいい初キスだよ」
「……」

フォローしてるつもりなのかどうなのか柴ちゃんは立ち上がったあたしをどうどう
治めながら席に座らす。
いくらいっても既に無駄だという事に気付きあたしはぺたんと力抜けるように
席に着席してしまった。


「はぁ…どうしよう……」
「…で?梨華ちゃん何て言ったの?」
「え?」
「だから梨華ちゃん後藤さんになんて返事したの…?」

また悩み始めそうになったら柴ちゃんが今度は少し真面目な顔つきでそう尋ねた。
あたしは聞き返してもその意味が突然ですぐに理解出来ず少し混乱気味に今の言葉の
意味を考え直してみる。

221 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時09分56秒


『何て返事したの…?』


返事…?
返事って…確か…えっと……。
突然真希ちゃんに告白されて、強引にキスされて…もう何が何だか分かんなくなっちゃって
それであたし…。



「あ……あぁ〜〜〜!!!!」

パニックから奥深くに眠っていた一番の衝撃的事実は何と柴ちゃんの言葉で思い出された
であった。



222 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時12分07秒


「ど、どうしよう……」

あたしは柴ちゃんの言った事に対しての『それ』に気付き、たまらずおろおろ
口元に手を当てて何かに助けを求めてしまう。

「何?どうしたの?」

突然叫んだにも関わらずやっぱり柴ちゃんはマイペースで、突然挙動不審になった
あたしにも普通に話し掛けてくる。


「どうしよう…あ、あたし…ひどい事言った……!」
「え?」
「すごいひどい事言っちゃった…。ど、どうしよう…。あ、あんな事言うつもりなかった
のに…突然の事とはいえあ、あたし…」
「ちょっと梨華ちゃん!落ち着いて!」

柴ちゃんはパニック状態のあたしの両肩を前から掴んで落ち着かせるようにそう
強く言ってくれるけど思い出してしまったその自分の行動にあたしはただうろたえるように
おろおろする事しか出来ない。

223 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時13分58秒

「何て言ったの?」
「…だ、だ、だ、だってあの時はあまりにも突然で…。ずっと真希ちゃんのこと親友だと
思ってたし…だからあたし思ってもないこと…」
「だからなんて言ったの?」
「……」

いぶかしげな表情で首を傾げる柴ちゃんにあたしは一呼吸ついてから少し落ち着かせようと
努力して柴ちゃんの耳元に近づいた。

「ずっと騙してたのって!?そんなこと言ったの!?」
「っ!!ちょ、ちょっと大きな声で言わないでよー!!!」

誰もいないけどその言葉は自分が言ったにも関わらず自分の胸にずきっ!っと突き刺さる。


224 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時14分58秒


「あーらら…。突然のこととはいえなんて残酷な事を…」
「だ、だって本当に混乱してたんだもんー!!!で、でもそうなの…あたしが
言ったって事は本当でもう取り消せない事実で…」

ここまでひどいことをして言い訳してる自分にも嫌気がさしてあたしはどうにか
落ち着こうとしながら自分の過ちを認めるけどやっぱりそのとんでもない事実に
あたしはもはや体の力も抜けただ放心状態で独り言のように呟いてしまう。


225 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時16分20秒


『ずっと騙してたの!?』


だ、騙してたの!?だなんて…
な、なんてひどいことを…。
真希ちゃんは真希ちゃんで苦しんでたはずだし、あの時の告白もキスも衝動的な
事からに決まってる。
ずっと悩んでただろう真希ちゃんにあたしは何て事を…。
真希ちゃんがずっと悩み続けている間あたしはいっつもマイペースで真希ちゃんに
話し掛けてたくせに…。
ば、ばかぁ…!!


重く深い自責の念に駆られながらあたしはじわーっと涙が体の底から滲むように
溢れ出てきそうになるのを感じる。

226 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時18分34秒


「ど、どうしよう〜!!突然のこととはいえあんな事真希ちゃんに叫んじゃうなんてぇ!!
衝動的とはいえあたしなんて事を…。き、嫌われちゃったかな…絶交かな…。それとも
傷つけちゃったかな…いや絶対に傷つけてるよー!!ごめん〜真希ちゃん…ごめんなさい〜!!!」

ほとんどマジ泣き状態で一度溢れた物は堰を切ったようにもはや止めることが出来ず
あたしは後悔と自責にただ洪水のように涙を流す。

「わっ、泣くなよ〜。これじゃまるであたしが泣かしたみたいだよー」
「…ううん、柴ちゃんは思い出させてくれたんだから無実だよ…だって忘れたまま
だったらあたし本当にもうどうしょもなくて罪深い人間になってた…」

涙は止まらないからあたしは鼻声で困ったようにする柴ちゃんに言う。


227 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時20分31秒

「で、でも本当にどうしよう…真希ちゃんきっともうあたしの事なんか…」
「ダメでしょそれじゃ。う〜ん、そうだねぇ。こうなったら梨華ちゃんから出るしか
ないってことだよ」
「どういう意味〜…?」
「きっと後藤さんも悩んでるはずだよ。声を掛けたくても掛けられない状態。
たぶん梨華ちゃんの反応が怖いんだよ。だから今度は梨華ちゃんの方から後藤さんに
向かっていかなくちゃ」
「で、でも…この一週間なんだかんだで何も話さないまま過ぎちゃったし…」
「だから梨華ちゃんの方から行くんでしょ?……ちゃんと自分の気持ち考えて
整理してからだけどね…」
「で、でも…こんなんじゃ考えられないよぉ…。それに…いくら考えたって
あたし自分の気持ちが分からないの…」
「今は分からないだけできっといつか分かるはずだよ。それは後藤さんと接して
いくうちにかもしれないし、ふと突然かもしれないし」
「…う〜…」

いつのまにか柴ちゃんはあたしを慰めるように頭をぽんぽん撫でていてくれて
あたしはその手の下で涙を拭いながら言葉にならない声で唸るように答える。


228 名前:相談相手は柴田あゆみ 投稿日:2002年06月10日(月)18時22分38秒


「うじうじしてても始まらないでしょ。梨華ちゃんがそんなんでどうするの」
「うー…」
「ほら、ポジティブポジティブ!!」
「うぅん…」

柴ちゃんの励ましにあたしは自信なさげに返事した―――



229 名前:aki 投稿日:2002年06月10日(月)18時38分52秒
更新終了。

212:俵谷宗達さん
>何とかがんばってます(汗)
 まだ自分の気持ちに戸惑っている最中ですね、石川さん。
 続きも何とかがんばりますっ。

213:梨華っちは文麿の応援団さん
>レスありがとうございます。
 ブラジルは確か強い…ですよね?(自信ない)
 昨日日本勝ちましたねっ。
 まだ…悩んでますね。石川さんも。
 がんばります。

214:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 悩み悩みです。そもそも真面目な性格ですし…。
 結論に至るまでの過程がどうにもこうにも…(謎)
 日本勝ちましたね。

230 名前:aki 投稿日:2002年06月10日(月)18時39分23秒
215: viviさん
>レスありがとうございます^^
 しかしここの…>おぉ、そうですか!!後藤さんも上手くいくといいんですが…^^;
 確かに近頃徐々にやせてきてるかもしれませんね。私も美人だと思いましたよ(w
 
216:ごまべーぐるさん
>ナイスですか!柴っちゃん!(笑)
 確かに、これほど分かりやすい人も少ないかも…^^;  
231 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)19時09分30秒
いしかーさん、意識せずにあんな事を…。
改めて読むと、確かに『キライ』と言われるよりヘコむかも。
232 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月11日(火)00時25分20秒
akiさん!お久しぶりです!
久しぶりに来てみたら凄く進んでいたので頑張って読みました(w
石川と後藤・・・どうなるんでしょう。
また前みたいに普通に喋れるような日々になれることを祈っています。
キライって言われるのも嫌ですけど騙してたもズキッってきますよねぇ・・・
233 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月11日(火)06時01分13秒
そうです。日本勝ちました。
梨華たん今頃思い出したんかい。ごっちん大変だ。
柴たんに敬礼ですな。
234 名前:メール来たっ! 投稿日:2002年06月11日(火)13時54分40秒

――――――


「!」
今はつかの間のお昼休みも終って眠気誘う午後の授業。
五時間目の古典を担当の先生が教科書片手になにやら訳の分からない言葉で
話しながら黒板にチョークで白い文字をかつかつ乾いた音をたて説明を書き込んでいる
時、あたしの元に一枚のメールが届いた。

机の下に隠してぶるった携帯を取り出し見つからないように誰かからか確認する。
その送信名の名前を見てあたしは驚愕した。


「ひ、ひえ!!ちょっとよしこ!め、メールが来たっ!!」

あたしは思わずその送信者の名前に動揺を隠せず後ろの席にいるはずのよしこに
慌ててぶんぶん手を振る。
だけどその声は今の時間には少し大きかったらしい。

235 名前:メール来たっ! 投稿日:2002年06月11日(火)13時56分12秒

「あ……」
昼寝に没頭していた子もノートに真面目に黒板のそれを書き写していた子も、同じように
携帯を隠れて弄っていた子も、突然のあたしの声に何かとみんな振り向く。
クラス全員の視線と、よしこの「……」の表情が向こうから背中に見えた気がして
あたしは思わず間抜けに声を漏らす。

「…後藤さん。今は授業中です」
「す、すみません…」

先生の困ったような顔にあたしは俯いて気まずそうに答える。
クラスメイトの小さなざわめきとよしこの「はぁ…」って小さなため息が聞こえた
気がした。
どことなく五時間目ののんびり、だるい雰囲気にあたしの失態はすぐに時間の流れと
共に流れていったけどあたしの中の動揺と興奮は冷めやまらず机の中にとっさに隠した
携帯をもう一度取り出し手にとってみた。

236 名前:メール来たっ! 投稿日:2002年06月11日(火)13時57分15秒


【梨華ちゃん】

画面に確かにそう表示されている。
その下には新着のメールが一通届いています。といういつものメッセージ。
だけどその文字はどれもいつもとは全く違う、異なる物に思えた。
手紙のマークがぴかぴか何度も点滅するけど、今のあたしにはそれをすぐに開く
勇気はなかった。

「……」
この手紙の中に、何が示されているのかが何よりすごく不安で、梨華ちゃんとの
一週間経って始めての接触に喜ばずにはいられないけど、一旦狂い始めた歯車が
これ以上もっとすれ違っていかないか、そんな不安がこの手紙の存在自体をまるで
かき消したがっているようだった。


237 名前:aki 投稿日:2002年06月11日(火)14時21分40秒
短いですが更新終了。

231:ごまべーぐるさん
>こういう一言って言った方は忘れてるのに言われた方は結構長く
 覚えてるってことよくありますね…。
 この場合は頭の中が真っ白だったからでしょうけど…^^;

232:ぶらぅさん
>お久しぶりです^^レス嬉しいです、ありがとうございます。
 結構長くなってますね(汗)大丈夫でしたか…?
 読んでくださって嬉しい限りです。
 『騙してた』ってやけに現実的…な感じがするのは私だけ…?^^;

233:いしごま防衛軍さん
>自分のことで一杯一杯だったんでしょう^^;
 柴ちゃん大活躍です。
 
 
238 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月11日(火)18時15分58秒
最近の女子高生は授業中に隠れて携帯メールのやりとりするんですね。
自分が授業中に隠れてやった事と言えば、早弁と内職くらいです。
時代を感じますた(^^;;
梨華ちゃんのメール内容は次回ですね。楽しみにしてます。
239 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月11日(火)19時40分44秒
頑張って読みましたので大丈夫です(w
騙す…自分はわかりませんが、友達がよく騙す行為をしています・・・(^^;
ほどほどにしなよと思うのですが(^^;ゞ

石川さん、いったいどんなメルを送ったのでしょう。
240 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月12日(水)02時07分24秒
交信お疲れさまです♪
急展開ですね…というか真希姫迷惑すぎだと思われ(汗)
まぁ、喜び方的には真希姫らしいケド…。
この間のハロモニ。とか梨華姫のコトずーと見てるし( ´ д `)さん
241 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月12日(水)05時31分46秒
うおーーーごっちんにメールが!!楽しみです。
確かに5時間目は眠いから周りの人にとってはたいしたことではないなあ。
でもごっちんにとっては違う。
242 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時04分01秒



「ねぇ!!ちょっとちょっとよしこ〜!!!」
「ん?」

五時間目も終って今はホームルームも終わり放課後に入る前の生徒達にとっては
嫌な掃除の時間。
あたしはエプロンを付けて教室を床をほうきで掃くよしこの後ろ姿に慌てながら
駆け寄った。

「どしたの?ごっちん」
「……」

後ろからやってきたあたしに向き直り、よしこはほうきを両手に持ったまま首を
傾げてうな垂れるあたしを見下ろす。
あたしは何とか胸の内を落ち着かせようと膝に手を付き俯いていたけど、やっぱり
いつまで経っても治まりそうにないのでずっと待っていたよしこの顔を見上げると
改めて息を吸い言った。

243 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時05分37秒

「メールが来たのっ!!梨華ちゃんから!!」
「あぁ、それでさっき授業中何か言ってたのね」
「ちょっと!メールが来たんだってば!梨華ちゃんから!」
「で、何だって?」
「………」

いたって普段通りのよしこにあたしは少し気抜けする。
だけどその次の質問にあたしは何とも返事する事が出来ずただ俯いて黙ってしまった。

「ごっちん?」
「…あ、開けてないの」
「え?」
「…まだ開けてないの…」

事実は隠し切れなくて自分のことながら情けないと感じてもよしこにはそのまま
事実を伝えるしかない。
たった一人自分の気持ちを知る親友に、あたしは躊躇いがちに自分の勇気のなさを
告げる。

244 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時07分12秒

「…開けなくちゃ…先輩の気持ち分からないよ…?」

よしこはいつになく優しい口調でそう問い掛けてくれる。
そんなよしこの態度が余計にあたしの中の弱虫な自分を露にさせあたしはとうとう
今まで押し殺していた不安の感情を爆発させた。

「だってっ!だってもしつらいこと書いてあったらどうする!?絶交とか…もう
会いたくない…顔も見たくない…軽蔑した…とかだったら……あたしもう…」

気付いたら自分はよしこの両手を掴み必死に問い詰めていた。
それをよしこにどれだけ問い詰めたとしても、無駄な事とは分かりつつも
あたしの体はただ自然と本能に従うようによしこに不安をぶちまけていた。
だけど最後は自分の言ってることにすら不安を感じて、消え入るような声になってしまう。

「…大丈夫だよ。今さっきお昼休みの時言ったでしょ?…ごっちんが好きになった人は
そんな人じゃない」
「でも…!」
「あたしは信じられるよ。ごっちんの好きになった人のことを。ごっちんは
信じてあげられないの?」
245 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時09分25秒

「………」
絶望を感じるあたしによしこはただ宥めるように問い掛ける。
自然と掴んでいた手に力も失われていって崩れ落ちる両腕をよしこが支えてくれた。

「…信…じる」
「よしっ。ならそのメールを開けなくちゃ」
「……」
おぼろげに梨華ちゃんへの思いを口にするけどでもまだ不安でしょうがないあたしの
顔を見てよしこはぽんっと頭を撫でた。

「だーいじょうぶ。絶対に大丈夫だよ。あたしがついてるから」
「…うん…」

よしこの言葉にあたしの中でほんのわずかに芽生えていた勇気がほんの少しだけ
今さっきまでより膨らんだのを感じて、あたしは小さく答える。
そして制服のポケットから今さっきのままになっていた自分の携帯をおもむろに
取り出した。

246 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時10分11秒

「…開けるよ…?」
「いつでもどうぞ」
縋るようなあたしによしこはにこっと笑って答える。
あたしはよしこの与えてくれた勇気に奮い立たされ、背中を押されるような
安心感を感じながら、メールの確認ボタンを押した。



247 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時12分14秒



少しの間が空いて、ぱっと画面に文字が現れる。
あたしは思わず目を背けたくなったけど目の前に現れた梨華ちゃんからのメッセージに
自分を叱咤し、思い切って携帯の画面に見入った。
よしこもゆっくりあたしの後ろに移動して両手で必死に携帯を持ちふるふるメールの
中身を確認するはたから見れば異様なあたしの格好の背中から携帯を覗いていた。

「……」
あたしは一言も読み落とさないように慎重に慎重に一言一言確かめるようにしながら
メールを読んでいった。



【真希ちゃんへ
 あの…突然で悪いんだけど今日の放課後あたしのクラスに来てくれるかな…?
 嫌だったら別にいいんだけど…、出来れば来て欲しいの。
 会って話したいことがあるから…。…待ってるね  梨華 】



読み終わった時、後ろでふぅっとよしこが小さく息をついたような気がして
それにずっと読みながら読み終わった後も放心状態だったあたしははっと我に帰った。

248 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時13分18秒

「よ、よしこ…メール…」
「ふぅ、良かったじゃない。良かった良かった」

まだ信じられないあたしは確認するようによしこに向き直る。
よしこは後ろで腰に両手をやり安心するようにため息を零していた。

「ど、どうしよう…。放課後来てだって…。話したいこと…話したいことって
何だろう…!?」
「そりゃ梨華ちゃんの話したいことなんだろうね」
「こ、怖いよぉ〜!!!やっぱりその時もう二度と会わないで、とか絶交!とか
言われるんじゃないのぉ〜!?!?」
「……ここまで来てまだそれかい」

この世の終わりのように叫ぶ後藤に吉澤はもはや呆れ気味に突っ込みを入れる。
だけど今のあたしには理性とか常識とか普通、なんて言葉耳に入ってこない。


249 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時14分33秒

「ど、ど、ど、どうしよう〜〜!!吉澤ひとみぃ〜!!!」
「まぁ、その時になって考えるしかないさ。とにかく今はまだ決別されたわけ
じゃないんだから安心しないと」
「け、決別…」
気を聞かせたつもりが全く逆効果になったのに吉澤は焦って後藤に言い直す。

「あ、だ、だから!たぶんごっちんが考えるようなことはないよ!たぶん!
どちらにしてもその時になんないと分かんないわけだし…!」
「たぶん…」

自分で言ってても気付いていたがやけに「たぶん」に力を入れて連呼してしまったのに
ごっちんが鋭く気付く。
メールの様子や先輩の性格から見てたぶん大丈夫だろうとは思うけどあたしも
神様じゃないから絶対とは言い切れない。

250 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時15分42秒

「あぁ…だから…きっと大丈夫だって…!」
「…うぅ…」
「不安なんて吹き飛ばせ!後藤真希!!」
「どわっ!」
まだうずくまって不安に怯えいつになく弱虫なあたしをよしこがとうとう
慰めることも飽きたのかばしっと背中を強く叩いた。
その不意のバカ力にあたしが前につんのめったのは言うまでもない。


「いったぁい…!」


…だけど、叩かれた背中と前に飛ばされた体が、同時に体の中に悪循環に流れる
溜まった、黒くにごるようなうやむやも一緒に吹き飛ばしてくれたような気がした。
それと同時に勇気を体に満たしてくれるように……。

251 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時17分26秒


―――――――


「ど、どうしようぉ〜……とうとうメール出しちゃったよぉ……!」

その頃ほぼ同時刻に後藤達がいる真上の三年生の教室では一人少女が今にも泣き出し
そうな情けない声を上げていた。

「いつまでいってるのよぉ!梨華ちゃんあきらめが悪すぎ」
「だ、だって!ずっとずっとずっとずっと出すか出さないか迷って携帯をいじってたら
つい間違えて送信ボタン押しちゃったんだもん〜〜!!」

教室では二人、少女がそれぞれエプロンに着替え、教室の掃除をしていた。
その中の一人、石川がピンクのエプロンをつけて情けない声と共に隣の柴田に泣きつく。

「気付いたら送信しちゃってるしぃ〜!!取り消そうにももうこうなったら取り
消せないし……まだ決心も覚悟もついてないのに…あたしはどうしたらいいのか…」
「…あのねぇ、別に死ぬわけじゃないんだし、これ以上どれだけ悩んだとしても
どっちにしろ梨華ちゃんは後藤さんにメールを出してたのよ!それがただ単に少し
早まっただけ!いい加減に往生際につきなさい!」
「ひ、ひどいっ!!柴ちゃんあたしにあきらめろって言うの!?」

252 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時19分28秒

そんなのひどすぎるっ!!
そう後に付け加えまるで泣き崩れてしまうようにうずくまる石川に柴田は呆れて
何かに助けてと救いを求めながら掃除にぼんやり没頭していた。

「それじゃぁ、梨華ちゃんは一生後藤さんとこのままでいいって言うの?
廊下をすれ違っても何となく気まずい雰囲気にお互い顔を反らしてしまうような」

その時の後藤と石川をつい想像してしまって柴田はだめだめと焦って目の前の
親友の姿に頭の上の白い、想像のもやをかき消した。

「!!そんなのいやぁ〜!!!」
「だったら観念しなさいっ!!」

まるで我侭に泣きじゃくる子供を宥めるようなお母さんみたいな気がして柴田は
目眩を覚える。
…こんなならただの好奇心で梨華ちゃんの恋愛話なんか聞くんじゃなかったよ…。
今更石川のネガティブ思考に柴田は同じように胸の中でしくしく泣いていた。

253 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時21分39秒

「…ったく。梨華ちゃん謝るつもりなんでしょ!?この前のこと!!」
「っ!!」
本筋がすれていってしまっていることに柴田は忘れかけていた無残な石川の
失態を言い聞かせた。


「……」
そうだ…そうだよ…。
謝るんだったんでしょ!?あたしは真希ちゃんに…。


『ずっと騙してたの…!?』
あの時あたしは真希ちゃんに突然のこととは言えあの時には最低な言葉を
真希ちゃんに叫んでしまった。
それは絶対に言ってはならないことでたとえ衝動的なこととはいえ許されない行為。
あたしはそれを真希ちゃんに対して謝らなければならない。
その後のことはどうなるか分からないけどあたしにはしなければいけないことがある…。

254 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時22分48秒

親友だと思っていた友達から突然の告白。
その真面目な姿と一途なキスは真希ちゃんが冗談ではなく本当に本気だということは
一目両全で。

普通に恋愛するよりもはるかに悩んできたであろう真希ちゃんにあたしは感情に任せて
ひどいことを言ってしまったことを謝らなければならない。

あたしはその日、今日のこの日まで真希ちゃんが自分に恋愛感情を抱いているなんて
思いもしなかった。
確かに真希ちゃんは男女問わず誰からの好かれ、ものすごい量の告白を受けているのに、
ただひたすら断ってあたしとの時間をただたくさん笑顔で過ごしてくれた。

だけどそんな時間の中で真希ちゃんが自分を見る目が、恋愛感情が含まれているなんて
夢にも思わなかった。


255 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時24分11秒

あたしは真希ちゃんの恋愛対象で見たことは一度もない。たいがいの女の子は
同性の友達に対してそうだと思う。
だから真希ちゃんはあたしに今まで告白してこなかったのだ。
想いを口にしたらこうなることは分かっていたから…だから真希ちゃんは今の今まで
本当の気持ちを隠してきたはず。
あたしの気持ちも考えて、戸惑うはずだと気遣って…。

真希ちゃんがそういう優しい子だって分かっていたはずなのに、「騙してたの」
なんて何も考えずに傷つけるような最低なことをぶつけてしまった。
何となく真希ちゃんに嘘を付かれた気がして、一人だけ騙されたような気がして
真希ちゃんのそれまでの気持ちなんて考えもしなかった。

そして真希ちゃんの気持ちから逃げてきてしまったのだ。
突然の告白に驚きはしてもあたしは逃げるべきじゃなかっただとう。
今更後悔と自責の念に駆られる。
親友として、一人の告白された者として、真希ちゃんの気持ちにきちんと向き直る
ことが一番大切であたしがしなくてはいけないこと。

…どう答えたらいいのかは分からない。
だけど今はあたしは真希ちゃんに謝らなければならない。


256 名前:メールの裏と表には 投稿日:2002年06月12日(水)20時25分05秒

「………」
…あの時の、あたしが感情にまかせてひどいことを叫んだ時の真希ちゃんの顔が
脳裏に浮かぶ。

傷ついたような悲しい瞳、絶望を感じたその表情。

今更のように、あたしの胸にズキッと重く深い痛みが圧し掛かるように走った。
あんな表情を真希ちゃんにさせてしまったのはほかでもないあたしの言葉。

過ぎっていた子供じみた不安も、あたしのしてしまった事をこれからしなくては
いけない事に、自然と色褪せ消えていっていた―――



257 名前:aki 投稿日:2002年06月12日(水)20時40分46秒
すいません…途中かなり文字だらけの場所がありましたね…。
重かったらすいません(+_+)

238:ごまべーぐるさん
>携帯はあっという間に普及しましたねぇ。
 授業中、私はメールのやり取りはしたことありませんでした^^;
 メールを廻って…どっちもどっちって感じです…^^;

239:ぶらぅさん
>うちの学校でもやっぱり漫画とかお菓子はありましたね(w
 挙句の果てにはトランプで昼休み遊んだり…。
 メールの内容…こんな感じでした^^;
258 名前:aki 投稿日:2002年06月12日(水)20時45分09秒
240:梨華っちは文麿の応援団さん
>ありがとうございますm(__)m
 一週間ぶりですからね^^;
 五時間目のあのほんわかした雰囲気には結構大きいかも…。
 ハロモ二<私も思いました(w

241:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 思わず声が出ちゃいましたね^^;
 やっぱりこれだけ好きな人からのメールですからね…。
259 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月12日(水)21時00分23秒
間違えて送信したのか(^^;;
いしかーさんのいじいじ具合が目に浮かぶようです。
260 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月13日(木)05時35分59秒
いえいえおむくありませんよほ。この後どうなるか気になります。
261 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月13日(木)13時04分26秒
ああーーすみません。重くありませんよ。誤字がありました。
今は大学で読んでるんですが、やっぱりakiさんの小説はいいですねー。
じーん、ときます。更新楽しみに待っています。
梨華たんはどんな決断をするのだろうか。
262 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時27分08秒



あのメールを貰ってから五時間目、そしてホームルームから掃除の時間まで
あたしの心臓はばくばく体の中で飛び跳ねていた。
担任が教室の前でいろいろなんか話してたけどあたしの意識は完璧に携帯に注がれていて
何も耳に入ってこなかった。

「………」
掃除も終って綺麗に整頓された教室の机に上半身を突っ伏して携帯を開き
くぎ付けになるようにして見る。
そこには今さっき開いた梨華ちゃんからのメール。
その全てに一文字一文字あたしは確かめるように目を見張っていた。

『放課後、クラスに』
『会って話したいことがある』
『出来れば、来て欲しい』

何度も何度もその文字を見ているとまるでなんかの暗号みたく思えてくる。
だけど最後の『梨華』って名前がまぎれもない梨華ちゃんからのメールだという事に
変わりなかった。
「…どうしよう…」
情けない声を出してあたしは腕の中に額を埋める。
会って話したいことって…なんだろう…。
時計の針が一秒一秒進むごとにあたしの気持ちは追い詰められていって、
せっかく一週間ぶりに合える梨華ちゃんとのその時も、今のあたしは悪い考えに
時間を止めてしまいたいほどだった。



263 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時28分32秒


そして放課後。

「そ、それじゃ行ってきます」
「がんばって」
あたしはほとんどクラスメイトのいなくなった教室でずっと机にうな垂れるようにして
考え、そしてつい一週間前までいつも梨華ちゃんを迎えに行っていたその時間に
なった時あたしはすくっと椅子から立ち上がった。
「……うぅ……」
がらっと椅子を引いて立ち上がったもののあたしは緊張から体が動かない。
「ほら、ごっちん。ファイト!」
このときもよしこは部活の日で、体育着に着替え終わりずっと部活が始まるまで
一緒にいてくれた。

「…うん…」
立ち上がったあたしの肩によしこがぽんっと手を置く。
あたしは自信なさげに小さく頷くとよしこと一緒に教室を出た。

264 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時29分55秒

「がんばれ!ごっちん!」
「…うぅ…」
「たぶん大丈夫なはず!」
「うぅ…」
よしこのはげましの言葉にあたしは小さく唸りながら頷く。
あたし達がいるのは教室のドアの前。
ここからはよしこは体育館へ向かうため、あたしは三年生の教室に行くために
分かれなければいけない。
よしこは片手にバレーのボールを持ってあたしに向き直っていた。

「もし先輩が戸惑ってるようならごっちん、押しちゃいなよ?」
「…う…ん…」
「だいじょうぶだいじょーぶ!!ファイト!」
「うん…」
それから時間が来て、よしこは迎えに来た下級生と共にすぐそこの階段へ向かって
姿が見えなくなってしまった。
「…ファイトぉ……あたし…」
頼みの綱のよしこもいなくなって、あたしは小さくうな垂れるとくるっと体を
反転させた。

265 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時31分43秒


「………」
廊下、階段、廊下…
あたしはいくつかの教室の横を通りながらこのいつもの道を歩いていた。
…いつも梨華ちゃんを迎えにうきうきで走っていたこの道。
今はもう遠くて長くてしょうがない。
何かもう…教室に辿りつく前に力尽きそうだよ…。
緊張で強張る体があたしに右足と右手を同時に進行させる。
直そうと思ったけどまるで体がロボットみたいになって直せなかった。

「……3−B…」
教室の前にたどり着いた頃には廊下はがらーんと殺伐としていた。
体育館や外からは部活の掛け声が聞こえてくるけど今はもう一般の生徒は
下校してしまった時間。
誰もいない廊下で、あたしは教室のドアノブに手を掛けようとして動きを止めた。
(…この中に…梨華ちゃんが…)
今来た道を戻りそうになる体を、もう自棄に近い形であたしは教室へくぐらせた。


266 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時33分55秒


ガラガラ…


「…あ……」
教室のドアを横にゆっくり開く。
すると教室にはちょうど真ん中の所に梨華ちゃんが立っていて、突然のドアが
開いた音にびくっと反応すると入ってきた人物を確かめるように俯いていた
顔を上げた。

「………」
目がばっちりあって、あたしは何か声を掛けようとおもって口を開くけど気の利いた
言葉は何も出てこない。開きかけた口は音を失って情けなく動きを止めてしまった。


「……」
とっさに目を下に背けてしまった後藤に石川は微かに悲しそうに後藤の顔を見ていた。
だけど石川からもやっぱり気の利いた言葉を発するのは今この場には無理だった。


267 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時35分49秒


(…梨華ちゃん……綺麗……)
今更だけど後藤はどきどきする。
教室には誰もいなくて、ただがらんとした空間にまるであの時と同じように
夕日が真っ直ぐ差し込むように教室に降り注ぐ。
教室は真っ赤に紅く綺麗に染まって、どこか憂いを秘める彼女の横顔を綺麗に
映し出していた。


268 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時38分19秒


「……」
石川は後藤にメールを出してしまった、その後のホームルーム後の柴田との
やり取りを思い出していた。


―――――

「ど、どうしよう〜…もう放課後だよ〜…」
教室からはだんだん人が少なくなっていって徐々に柴田と石川の二人を残していく。
そんな中石川は今にも泣きそうな声で柴谷泣きついていた。
「だぁ!もういい加減にしなさい!遅かれ早かれくるものなのよ!」
机の上に座って、柴田は半泣きで泣きつく石川を言い聞かせるようにして
体を離そうとする。
「だ、だってぇ…」
体を引き離され石川は情けない表情を露にし柴谷泣きつく。
柴田ははぁと重いため息を吐いた。
「とにかくっ。梨華ちゃんそれでも一応後藤さんよりはお姉さんなんだからしっかり
しなきゃだよ。こんな時こそ、年上なんだから後藤さんをリードしてあげなくちゃ」
「…お姉さん…?」
柴田は石川の真面目な性格と負けず嫌いな性格を知っていた。

「…年上……」
そんな柴田の思惑など知らず、石川は石川で自分の課せられた責任に自分を
奮い立たそうとしていた。

―――――


269 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時40分21秒

(…そうよっ!あたしは年上……なんだし、こんな時こそあたしがしっかり
しなくちゃ…)
石川は後藤が入ってきてからずっと壊れない沈黙にすっと顔を上げた。

「真希ちゃん!」
「は、はいっ!!」
「あ、あの……」
勢いで口を開くがそこまで言いかけて言葉を失う。
後藤が石川の突然の声に顔を上げたと同時に再び視線がばちっと合って
やっぱりぼっととっさに顔が紅くなってしまった。

「い、いやあの…その…」
一週間も初めて会っていなかったせいなのか、後藤の顔がやけに今日は切なさ
からか色っぽく大人びて見えて石川はどぎまぎする。

「「………」」
再びまた気まずい沈黙が流れた。


270 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時41分55秒

――――

教室に二人しかいなかったがそこにはもう一つ覗く目が二つあった。

「…あちゃ〜、こりゃだめだわ」
教室の窓の隙間から微かに覗く瞳は妖しげに。
そこには廊下から腰をかがめて怪しく中の様子を覗く一人の少女の姿があった。
「ったく。二人ともうぶだなぁ」
柴田は一旦隙間から顔を離してはぁと小さくため息をつく。

(やれやれ、まったく梨華ちゃんも後藤さんも。噂とは全く違うわね)

後藤の石川の前での様子に柴田は新発見したように小さく頷く。
クールで大人びていて何事にも動じない有名な下級生。
そんな評判はまるで一人歩きだということに柴田は頷かせていた。


271 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時43分44秒


「…あちゃ〜…ごっちんファイトだよ〜…」
「!?」
突然聞こえた声に柴田はばっと振り向く。

「だ、誰!?」
出来るだけ小さく心がけるが声は自然と大きくなる。
だってそこにいたのは体育着に何だか怪しくタオルを頭に巻いている
同じ生徒だったから。
「へ?あ」
その人物は柴田の姿に気付くと間抜けに声を漏らす。
二人の視線がばっとあった。
「ちょ、ちょっと一体……もしかして関係者?」
「そういう先輩は……関係者ですか?」
二人は教室のドアとドアの向こうから離れていた体をそろそろ屈みながら近づけた。

272 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時45分04秒

「あ、もしかしてあなた吉澤ひとみ!?あのバレーボールの…」
「お!私ってもしかして有名人〜?」
吉澤は柴田の言葉に得意げに嬉しそうに体をくねらせた。
「…後藤さんのお友達?」
「そうです♪」
独特のテンションの吉澤に柴田は一旦間を置いてから気を取り直すように
尋ねた。吉澤はそんな柴谷ににこにこしながら答える。

「…覗きですか?」
「先輩こそ」
いかがわしい物をみるような柴田に吉澤はにこっと質問を交わす。
上手いこと質問を交わされ柴田はぎくっと顔をしかめる。

273 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時46分32秒

「…あなた…」
「あっ!変化あったみたいですよ!?」
「うわっ!!?」
吉澤は顔をしかめて何か言いかけた柴田関係なしに中から聞こえた物音に
体勢を戻した。
…しかし今さっきと違うのは柴田もひっくるめて。

「ちょ、ちょっと苦しい〜!」
首を腕で巻かれ成すすべない柴田は苦しそうに声を上げる。
突然の不思議な同じ生徒との出会いに柴田は覗きなどしなければ
良かったと後悔する。



274 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時48分15秒

――――

「「あ、あの……、!」」
二人が教室のドアの前と真ん中から同時に呼びかけて声が重なる。
二人はそれにまた黙り込んでしまう。

「り、梨華ちゃんからどうぞ」
「ううん、真希ちゃんから…」
「「………」」

らちがあかないさっきからのやり取りに後藤はぐっと顔を上げると言った。
…同時に石川も先輩なはずの自分に情けなさを感じていた。
こんな時、年上の自分がしっかりしなくてはいけないのに…。

「「ご、ごめん――!!」」
二人の声がまた重なった――


275 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時51分25秒

「「あ……」」
再び交わった言葉に二人は顔を上げ思わず互いを見合わせた。
しかし後藤はぐっと堪えると黙りそうになった自分を奮わせた。
「ご、ごめん!この前あんな事突然しちゃって…その…あたし……」
俯くように顔を下に下げると後藤は一気に溜め込んでいた気持ちを爆発させた。

「あ、あたしあんな事するつもりじゃ…ほ、本当に、本当にあたし……」

まくし立てるように顔を俯かせて叫ぶ後藤に石川は呆然と後藤を見てしまって
いたがはっと気付く。
「あ、あたしこそ!…あんなこと言って…ごめん……」
「――!」
「…ごめんね…」
悪そうに顔を横に背けながら謝る石川に後藤は顔をばっと上げると石川の顔を見た。

276 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時52分48秒

そこにいるのはいつもの梨華ちゃんで。
悪い考えと緊張は一気に体から抜けていった。
「突然のことで…驚いちゃって……」
「あ……」
思いもしなかった石川の言葉に後藤の中にはいつもの気力が戻っていく。
もうだめと思ったがその言葉は確かに自分の体の中に浸透していって後藤は
微かに希望を心に芽生えさせた。

「ごめんね…あんな事言うつもり…なかったの…」
「…梨華ちゃん……」
そんな時後藤の脳裏に今さっきの吉澤の言葉が蘇る。
『戸惑ってるようならごっちんから押さなきゃ!!』
その言葉が頭に過ぎると同時に後藤はかっと目を見開いた。
俯いていた顔をばっと上げ、そして石川に向かって距離を縮めていった。

277 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時54分35秒

「…!?ま、真希ちゃん!?」
「す、好きなの!!その気持ちは変わらない…!!」
「ま、真希ちゃん」
「本当に…本当に好きなの…。だからあの時のキスだって冗談とかじゃなくて
本当に…」
「う…ぁ…」
石川は目の前までやってきた後藤から思わず体を後ろに退く。
しかし一度はじけた後藤は構うことなく石川の両腕を前から掴み、離れないように
前に向きなおさせる。
後藤の顔が、唇がすぐ目の前までやって来た。自然と後藤の唇に視線を奪われる。

「あ…ぅ…」
あの時自分の唇を奪ったそれがすぐ目の前まで来て、石川はどぎまぎしながら
顔を横に背ける。

278 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時56分36秒

「梨華ちゃん…」
「!」
切なげに呼ばれたと思うと後藤の顔はすぐそこにあった。
顔を戻すと同時にすぐ自分の唇と後藤の唇がすぐに触れてしまいそうな
ぐらいの距離にあって、後藤はすっと瞳を閉じながら自分にキスをして
こようとしている所だった。
「ダ、ダメ!」
「っ!」
石川は抱きしめらた体の中で必死に両手を後藤に対して前に出した。
後藤はその言葉にびくっと反応するとすぐに瞳を開き、力を無くして石川の手に
よって呆気なく体を離されてしまった。

「梨華ちゃん……」
「こ、困るよ」
「!!」

後藤の頭の上にまるで重いタライが落ちてきたような衝撃を走った。


279 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時57分57秒


「「あちゃ〜…」」
それは教室の外の二人に対しても同じだった。



「………」
まさにガーンと頭に重い衝撃が落ちて、後藤はふらふらと石川から体を離した。

「ご、ごめん…」
もうダメだ…。
ふられた…。
後藤は力なく石川の言葉に留めを指されるとふらふら石川から背を向け
教室を出て行こうとした。

「あ、ち、違うの!!待って真希ちゃん!!」
石川は慌てて後藤の背中を追う。
ドアに向かってふらふら歩いていく後藤の腕を後ろから無我夢中で掴み
ばっと前に振り向かせた。
「違うの…。ごめん…ちょっと…びっくりしちゃって……」
石川は慌てて俯きながらも必死に言葉を紡ぐ。

280 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)19時59分32秒

「……」
しかし後藤は既にぼーっとしてしまって石川の姿がぼんやり視界に映るだけ。

「ごめん…。今日は…この前真希ちゃんに対してひどいこと言ったから…それに
対して誤ることしか考えなくて…。告白の返事のこととか考えてなくて…それで……」
石川は応答のない後藤に慌てた。
早く何か誤解を解かなきゃ…・
ぐっと俯いていた顔を上げると、石川は顔を赤く染めながらも必死に口を開いた。

「ず、ずっと一緒にいたい!!」
「……へ!?」
突然の石川の言葉に後藤は意識を取り戻すと石川の顔を驚いて見つめ返した。

281 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)20時01分29秒

「あ、あたし…真希ちゃんのことが好き…。だから離れたくない。側にいたい…。
だから…真希ちゃんが他の誰かが好きなんじゃなくてあたしの事が好きだって知った
時びっくりしたけど…嬉しかった…」
「……」
必死な石川の姿に後藤はぼーっと石川を見てしまう。
しかし石川は堰を切ったように一度弾けたのを合図に気持ちを爆発させたように
言葉を続けた。
「一番大事な人だから…離れたくない…」
「だ、だったらっ……!」
ふられたと思った所にこの石川の言葉は後藤は希望を持たせた。
ばっと腕を前から掴むと期待に表情をほころばせて石川に詰め寄る。

282 名前:その場所へ… 投稿日:2002年06月13日(木)20時02分20秒

「――で、でもっ!」
後藤の様子に石川はほっとするが慌てて付け加える。

「まだ…分からないの…真希ちゃんへの気持ち…。だから…」
「このままが…いい…」
「へ!?」
石川の言葉に後藤は間抜けな声を一つ上げる。
「真希ちゃんへの気持ち…ちゃんと考えるから…。今はまだこのままで…いて…」
「…梨華…ちゃん……」
後藤の胸の中に一気に複雑な気持ちが押し寄せた。




283 名前:aki 投稿日:2002年06月13日(木)20時08分34秒
更新しました。
大量になりましたが…しすぎでしょうか…(爆)

259:ごまべーぐるさん
>勇気があるのかないのか…^^;
 二人とも似た物同士ですね…。

260:261:いしごま防衛軍さん
>あぁ、本当ですか。良かったです。
 ありがとうございますm(__)m私の書く話なんかで何か感じてくれれば
 幸いです。がんばりますっ。
284 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月13日(木)23時19分37秒
交信お疲れ様です♪(てか今、かおりん交信中、でもあややPV堪能中)
このあとが気になりますね〜。
というか覗き2人組みの反応が気になるのはウチだけ?
285 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月14日(金)13時08分54秒
ああなんとも言えませんなあ。ごっちんの気持ちが複雑になるのは仕方がない。
梨華たんも相当戸惑っているのだろうが、ごっちんはメルトダウン寸前かと
オモワレ。更新マターリドキドキしながら待っていますよほ。頑張ってください。
286 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月14日(金)18時31分26秒
ヨスコさん、頭にタオルですか。
いつぞやのハロモニのコントを思い出しました。

(0゜3゜0)<ノーゾキデェース
287 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月14日(金)19時39分45秒

よしこ、頭にタオル・・・・あぁしもしてますよ、部活の後。
体操着の袖膜って・・・・。梨華ちゃん、言えて良かった・・・・。
あのままごっちん帰るかと思いましたよ。
288 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時49分07秒

――――――


嬉しいのか悲しいのか。
自分の中でさまざまな感情が廻っていて後藤はどれが本当の気持ちなのか
分からなくなる。
混乱する頭を抱えながら昨日のことを思い出した。
あれから二人で一週間ぶりに梨華ちゃんと下校することが出来た。
会話は何となくぎこちなくて流れる空気もどことなく気まずい感じだったけど
それでもあたしにとって一週間ぶりの梨華ちゃんとの時間はこれ以上ないほど
嬉しい物だった。

289 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時51分11秒


…だけど、今良く考えてみる。
あたしは梨華ちゃんに告白した。
梨華ちゃんはあたしの気持ちを知っている。
一週間のつらい毎日があって、そして緊張の中やっと前みたく戻る
ことが出来た。
…だけどちょっと待って。
関係は別に何も変わってない。
告白したけど梨華ちゃんとの関係は今まで通り。
…別に…、
別にいいんだけどね。
梨華ちゃんと一緒にいられるだけであたしは満足。
…なんだけど…。
これって告白した意味はあるの…?



290 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時52分59秒


「…う〜ん…」
後藤は翌日朝早く学校に来ると誰もいない教室ですがすがしい朝日を
体にうけながら机の上に突っ伏していた。
あれほど世界の終わりぐらいに絶望的だったその時も、
今は微塵も感じなくて今までの平和な日々に戻ってる。
一世一代の告白も何となくあったのかなかったのかって感じになってる。
…なんか……う〜ん……。

「………」
答えは出なくてあたしは机の上に突っ伏したまま頭を抱える。
あの時だって、キスは拒否されちゃったし…。


291 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時54分14秒


―――ガラッ

後藤が教室で一人頭を抱えていると、不意に教室のドアが開いた。
「?…よしこ…!」
「ん?あ、ごっちん早いね!」
ドアの前には体育着のよしこがいた。
バレーのボールを持ってよしこは半そで半ズボンの体育着の姿でそこに立っていた。
「いやぁ、いやぁごっちん!」
「???」
自分の姿を見るなりやけにハイテンションで近づいてくる吉澤に後藤は首を
傾げる。
何でか聞く暇なくあっという間に吉澤は後藤の目の前までやって来た。
「いやぁ、ごっちん」
「?何?」
「昨日は気の毒だったねぇ…」
「へ…?」
突然の吉澤の言葉に後藤は首を傾げる。
しかし目の前にはただうんうんと残念そうに頷く吉澤がいて。
後藤ははっと気が付いた。

292 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時56分13秒

「あ!!もしかして昨日……見てたの!?」
「いやね、部活のコーチが休んじゃって昨日は来てる子も少なかったからすぐに
お開きになったのよ。だからちょっと様子を見にね…」
「ひっどぉ〜!覗いてたのぉ!?」
「あはは。…そんなことより」
吉澤は頬を膨らます後藤に構わず話題を変えるように後藤にぐっと近づく。

「?」
「これからどうするつもり?」
「どうするって………どうしよう…」
吉澤の言葉に後藤はとっさに答えようとしたが何も言葉が出てこない。
だって…もう二度と話もしてくれないかもって思ってたからあたしはもう
親友って関係のままでもいいかなって思うようにもなってる。
望みすぎて全てを失うならそれ以上怖い物はない。
でも…せっかく告白して、梨華ちゃんもとりあえず受け入れてくれて、
それなのにこのままっていうのも…結構つらい…。

293 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時57分40秒

「…がんばって…もう少し押してみようかな…」
「おぉ!ごっちんらしくないポジティブ!」
「…えへへ」
よしこの言葉にあたしは照れ笑いを零す。
絶望、希望、いろんな気持ちを味わってあたしは少し開き直ったみたい。
それがいいのか悪いのか……。



294 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)19時59分26秒

……

―――――


「いやぁ、梨華ちゃん。昨日はお疲れさん」
「へ?」
「お疲れさぁん」
「……もしかして柴ちゃん…」
石川は柴田の言葉に眉をしかめて何かと察する。
柴田はその石川の表情に「あはっ」と誤魔化すように乾いた笑いを零した。
「もう!覗かないでよぉ!!」
「まぁまぁ梨華ちゃん。それより昨日のはダメだ」
「え??」
「…やっぱり気付いてない」
突然の柴田の意味不明な言葉に石川は首を傾げる。

「昨日後藤さんに何て言ったの?」
「どれのこと?」
「告白に対してのこと」
「あ、えっとねぇ……。このままでいてって…確かそう言った」
「…それって後藤さんにとってすっごく残酷なことだと思うよ?」
「…え!?」

295 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)20時01分06秒

気持ちの解釈が合わない柴田の言葉に石川は不意のことでびっくりする。
しかし柴田は自分を見つめるままため息をこぼしていて、石川は何が何だか分からなくなる。
だって…昨日あたしなんか変なこと言った…?
逆に…結構上手くいったと思うんだけど…。

「告白して恋人になりたいって言ってる後藤さんにこのままでいてって…いうのは…
うん…まずいかと……」
「こ、恋人だなんて…」
柴田の言葉に石川はぽっと頬を染める。
両手で頬を押さえる石川に柴田は呆れながらも言葉を続ける。
「さて、これからどうするの?石川さん」
「え?どうって…」
「後藤さんと、どうしていくつもり?」
「…だって…あたしまだ自分の気持ち分からないんだもん…。出来れば…
このままでいたいなって…」
「はぁ、それじゃ後藤さんが可哀相でしょ」
「うぅ…うん……」
上手くいったかと思っていたがその思ってもいない事実に石川は自信をなくす。

296 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)20時05分12秒

「でも…このままじゃいけないのかなぁ…」
「ちゃんと考えなさいっ」
「だ、だって…でも……あの…その…」
「……」
「考えるって…でも…考えるっていったら…真希ちゃんと…その…」
「そう!親友か恋人かってことよ!!」
「…恋人…だなんて…そんな…」

照れてそこから話が進まないため柴田は思い切って言い放った。

「親友と恋人じゃすることが違うでしょ!!」
「!!」

ぼんっと一気に顔を赤らめると石川は下に俯きなにやら一人事を呟き出してしまった。
ついには右手と左手の人差し指を押し合ってもじもじする始末。

297 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月16日(日)20時09分45秒

「…す、することって…そんな…そんなこと……」
「…とにかくっ!いつまでもこのままでいたいなんてダメ!そういうのはルール違反
だよ!親友以上恋人未満なんて後藤さんが可哀相でしょ!?」
「うぅ…うぅん…わかったぁ…」
うやむやな気持ちを引きずったまま石川はそれだけ答えると一人考えをめぐらした。
しかし結局は一人で考えて答えが出ることでもなく石川と後藤の関係は
日に日に石川が望んでいたような今までのような日々に戻り始めていた。



298 名前:aki 投稿日:2002年06月16日(日)20時23分20秒
更新終了です。

284:梨華っちは文麿の応援団さん
>ありがとうございますm(__)m
 後藤さんと石川さんがどこか似てるようにこの二人もどこか
 通じ合ってるものがあるような気がします^^;
 
285:いしごま防衛軍さん
>後藤さんも石川さんも自分達のことで目一杯で相手の事まで
 考えるまでに至ってませんね^^;
 ありがとうございます。がんばります。

286:ごまべーぐるさん
>まさにそれです^^;
 ちょこっと思い浮かべつつ頭にタオル載せちゃいました…(w
 
287:俵谷宗達さん
>部活後の定番の格好ですよね。
 あのまま帰っていたら…まずい事になってたでしょうね…^^;
299 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月16日(日)21時01分37秒

もじもじする梨華ちゃん最高♪
ついつい笑いました。akiさん無理せず頑張ってくださいね。
300 名前:vivi 投稿日:2002年06月16日(日)21時43分04秒
 梨華たん目覚めろっ!!
301 名前:vivi 投稿日:2002年06月16日(日)21時44分32秒
上げてしまいました、ごめんなさい。
302 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月16日(日)23時29分45秒
>右手と左手の人差し指を押し合ってもじもじする始末。

いしかーさんならしそうですね。実際してるヒト見たことないですけど(w
ムリなさらず、マターリと。。。



303 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月17日(月)06時24分26秒
ここは梨華たんが立ち上がらないとだめですな。
この後どうなるのか楽しみです。更新マターリ待ってますよほ。
304 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月17日(月)23時12分26秒
柴っちゃん、頑張ってくれてますね〜。
それでこそ親友!!
真希姫の気持ちに素直に答えて下さい、梨華姫(泣)
あと、20日まで3日か。。。
305 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時38分46秒


あれから翌日。
すぐに二人は登校も下校も放課後も電話もメールも毎日するようになった。
全てが今までと同じ。
今までと同じような日々。
…小さな疑問を抱えながらも。


306 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時39分49秒


後藤は後藤で考えていた。
これ以上関係が気まずくなるのは嫌だ。
それよりも、この前みたく一週間も話さないなんて事はもう絶対に嫌だ!
何だかよく分からない関係だけど、これ以上ごちゃごちゃして梨華ちゃんと距離が
離れるのも嫌だし。
一応告白もして気持ちも伝えたのだからもう少し冷静に梨華ちゃんの反応を見ようと。
そしてしばらくはこのままでもいいやと。
そう思っていた。

307 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時41分34秒


石川も石川で考えていた。
毎日毎日考えていた。
後藤に対しての自分の気持ちは一体何なのか。
親友でいたい。
なのに後藤が誰かに告白されているのは嫌だ。
自分から離れていってしまうのも嫌だ。
望んでいることの全てが自分勝手で我侭だと分かる。
なのに自分の気持ちが分からない。
果たしてこれは友達からの嫉妬心なのか、友情が少し強まったものなのか。
それとも…自分の心の奥底で無意識に否定している「その」気持ちからなのか。
だから嫉妬したり自分と片時も側にいて欲しいと願うのか。
…分からない。
自分の気持ちに素直にならないまま頭で考えているうちはこの答えは出てくることは
なかった。
その事実に石川はまだ気付いていなかった。
だから思った。
このままうやむやなままで関係を続けられないかと。
…出来れば告白は聞かなかったことに、自分に対する気持ちも自然と中和されて
いかないかと。
全く後藤に対しての事を考えない、配慮のない事だと分かっていても、
石川は心の奥底で自分でも気付かないうちにそう思っていた。
このままいつまでも今までと変わらない関係でいられたら…と。



308 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時42分51秒

金曜日。
明日を休日と控えた学校での放課後。
「よしこ〜!!」
「ん?ごっちん。どうしたの?」
「明日ね…梨華ちゃんに家に誘われちゃったんだぁ〜!!………」
「……」
無邪気に喜ぶのもつかの間すぐに沈んだ様子になった後藤に吉澤は
気まずいながらもなぜか気付く。

「……嬉しい〜…んだか悲しんだか…」
「…がんばれ」
はぁとうな垂れる後藤に吉澤は肩にぽんっと手を置く。

「…はぁ…」
親友以上恋人未満の関係はいまだ続いていた。
それでも一週間全く声も交わさなかった時や、もしあの時拒絶されていたら、
という事を考えると比べるまでもなく今の状況は恵まれている。
だけど…。

309 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時45分59秒

「……もう限界だよ…」
親友以上、なのはいいんだけど。
恋人未満、の言葉にあたしはいつも打ちひしがれる。
一世一代の告白は無難に終ったけど、どうしても恋人未満の言葉はあたしに
ついて回る。
あたしの欲求は日に日に溜まるばかり。
本当に限界なぐらいに苦しくてしょうがない。
…溜まっていくものは発散する場所はないし…。
それでも梨華ちゃんの笑顔を前にすると何も言えなくなってしまう。
その純粋な笑顔にあたしはただ成す術なくつられて笑うばかり。

理性で止めるのもいい加減限界だ…。


嬉しいのか悲しいのかもはや分からなくなってきた明日の予定に後藤は
重くうな垂れた。

310 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時47分35秒



そして土曜日。
恋人だとか親友だとか、いろいろ悩むし考えるけど、
結局はあたしにとって梨華ちゃんとの時間は幸せで嬉しい以外の何物でもなかった。
いつも一緒にいるのに会えない時間は寂しくてすぐにメールでも電話でも
梨華ちゃんに会いたくなっちゃう。
何度もするのは…と思うけど梨華ちゃんは絶対に嫌な顔なんかしなくて
いつも優しく受け取ってくれる。
だから、梨華ちゃんとの過ごす時間が増えれば増えるほど、長くなれば長くなるほど
あたしの気持ちは募る一方だった。

実際昨日も、夜はうきうきしちゃって早くベッドに入っても寝付けなかった。
それでも必死になって肌の調子のためにも早く寝て、朝も早く起きると
真っ先に髪をブローして納得いくまで整えて、メイクもばっちりしつこくない
程度に完璧にきめた。

311 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時51分52秒


「……暑っ…」
外に出るとそこはもう真夏日。
何だかセミの音が聞こえてくるぐらいに太陽はさんさんで雲は夏みたいな
立体的な入道雲の小さいのが一つ、空に浮かんでる。
やばいぐらいの太陽の光に肌への紫外線対策も完璧…にしてあたしは家を出ると
いつもの最寄りの駅へと向かった。


「…暑い…」

駅をいくつか通り過ぎ、梨華ちゃんの家の近くの駅で電車を降りると
あたしはビルの頂上に表示されている気温の数字にため息をつく。

只今の気温…30℃



312 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時53分32秒

「…暑いよぉ…」
駅の前には土曜日の休日のため同じ年齢の子とかしかいなくて少なかったけど
みんなこの暑さに参っているようだった。
急いで日陰に走っていってる。
…今日梨華ちゃんの家で遊ぶって正解だよね…。
こんな暑さじゃいくらなんでも耐えられない。
かといってプールが開いてる季節でもないし…。

駅から比較的近いという梨華ちゃんの家。
梨華ちゃんは駅に迎えに来ようかといったけどあたしは断った。
だって梨華ちゃんが外出るとみんな周りの男が梨華ちゃんを見るんだもん。
特に今日は暑いって天気予報で昨日から言ってたし、薄着の梨華ちゃんを
周りの知らない誰かの目にさらしたくないしっ!
早く梨華ちゃんに会いたいけどこの暑さに耐えるのはあたしだけでいい…。
はぁ、早く梨華ちゃんの家に行かないと…。

313 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月19日(水)19時55分14秒

「……暑い…」
何か途中でおみやげを持っていこうと思ったけどこの暑さだからやめた。
ケーキとか、アイスとか全部アウトだし…。

目の前がゆらゆら揺らめく道をあたしは出来るだけ日陰を見つけて
梨華ちゃんの家までのろのろと目指していった。



314 名前:aki 投稿日:2002年06月19日(水)20時14分29秒
更新終了〜。

299:俵谷宗達さん
>最高ですか、良かったですっ(w
 ありがとうございます(T_T)がんばりますっ!

300:viviさん
>レスありがとうございます^^
 上げても下げてもOKなので大丈夫です。ありがとうございます。
 目覚める…のか石川さん(^_^;)

302:ごまべーぐるさん
>レスありがとうございます。
 私も見た事ないです^^;
 ムリなさらず…<ありがとうございますっ。がんばります!

303:いしごま防衛軍さん
>立ち上がれるのか…^^;
 後は梨華ちゃんが行動するだけなんですけどね…。

304:梨華っちは文麿の応援団さん
>柴ちゃんなんだかんだ言いながらやっぱりいい友です(w
 素直、素直…素直が一番なんですけどね…。

315 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月19日(水)20時41分27秒

最近温度変化はげしいですよね。
ごっちん頑張れ!違う意味でとろけてるごっちん…。ファイト!
316 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月19日(水)21時56分11秒
22日でしたね〜>梨華姫写真集
まぁ、そんな事はドーデモ良いんですケド
急展開???マジですか!?
でも余計汗かくしな…って変態なんで逝ってきます。
317 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時18分56秒


ピンポーン


「……来ましたよぉ〜…」
聞こえてないと分かりつつあたしは梨華ちゃんの家のインターホンを
鳴らして独り言を呟く。
「………」

ピンポーン

黙ったままもう一度ベルを鳴らした。
駅から梨華ちゃんの家までは約7分。
一度梨華ちゃんの家には来た事があるから迷わず来る事が出来た。
…それはいいんだけどさ…。
もう暑いの嫌だ…。

318 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時21分09秒

「…梨華ちゃんや〜い」
もう一度ベルを鳴らそうかと思ったけどやめた。
迷惑だし、何より家の中からドタドタ忙しく階段を降りてくるような音が
外にも伝わってきた。
「後藤真希で〜す…」
「はい、は〜い!」
ドアの向こうからくぐもった梨華ちゃんの慌てた声が聞こえてあたしは
少しだけ元気を取り戻す。
それからすぐにガチャッと音がしてドアがあたしの方へ開いてきた。

「ごめ〜ん!真希ちゃん――」
「梨華ちゃ……―――ぅわぁ!!」
「え??」

やっと梨華ちゃんの姿が、そしてこの暑さから解放される…って思ったら
ふっと顔を上げた先の光景にあたしは思わず後ろに仰け反った。

319 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時30分17秒

「ちょ、ちょっと…梨華ちゃん……」
「え?どうしたの?」

目の前に現れた梨華ちゃんはなんと肩がひも状で薄いピンクの今時な感じな
可愛い(色っぽい)キャミソールに細い太股が眩しいかなり短い超ミニスカートと
いうかなり肌の露出が激しいいでたちだった。

「真希ちゃん?どうしたの?」
「ぅ…あ……」
ドアノブを握りドアを開いた格好のままあたしの様子に首を傾げる梨華ちゃんの
前であたしは思わず足を後ろに引いてしまう。
だって梨華ちゃんは気付いてないみたいだけど…かなり…やばいもん…。

「?暑いでしょ?早く入ろう?」
「う…ん…」
近づく梨華ちゃんにあたしは目線を下にして言葉に従った。
ドキドキドキ…
っていうか…ドキドキっていうかもうドクンって感じ…。
心の中の動揺を必死に押さえようとしながら家に入って靴を脱ぐとすぐに
目の前に人影が出来てあたしは顔を上げた。


320 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時32分03秒

「こんにちは。真希ちゃん」
「あ…こんにちは…」
顔を上げた先には、上品で綺麗な女の人…つまり梨華ちゃんのお母さんがいて
あたしはすぐにぺこっと頭を下げた。

「ゆっくりしていってね」
にこっと微笑むその表情はどことなく梨華ちゃんに似ていて優しそうな
雰囲気と物腰の柔らかさに梨華ちゃんのお母さんだなと今更納得する。

「あ、はい。ありがとうございます…」
あたしは上手い事もろくにいえなくてただそれだけ返事することしか
出来なかった。
でも梨華ちゃんのお母さんはそれでもそんなあたしににこっと微笑み
その場を後にして行った。


321 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時36分52秒

「真希ちゃん!外暑くなかった?大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
玄関のドアを閉めてこっちに近づいた梨華ちゃんにあたしはすぐに顔を戻すと
そう答えた。
梨華ちゃんも家に上がって、これから梨華ちゃんの部屋のある2階に向かおうって
時になった時少し気になったことにあたしは階段を登る前に尋ねた。

「…あのさ…」
「うん?」
「今日って…家族の人いるの?」
「うん。お母さんと妹がいるよ。お父さんは仕事で出かけててお姉ちゃんは
部活。でもどうして?」
「!う、ううん!!何でもないっ!!」

かなり慌てて首を左右に振り答えるあたしに梨華ちゃんは一瞬小首を傾げたけど
すぐに階段を登っていった。

「………」
少し複雑な気分を抱えたままあたしも梨華ちゃんの後に倣った。
…出来るだけ上を見ないようにして…。


322 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時44分44秒

「それじゃちょっとジュ―スとか持ってくるね」
「あ、うん…」
部屋に入ったと同時にすぐに引き返した梨華ちゃんの後ろ姿を見送りながら
あたしは部屋の中央にこじんまりと座った。
「…お構いなく〜…」
最後に付け加えたけどもうその頃には部屋のドアが閉まろうとしてて外からは
梨華ちゃんの階段を下る音が聞こえてきた。

「………」
梨華ちゃんのいなくなった梨華ちゃんの部屋であたしは部屋の真ん中で座りながら
辺りを見渡した。
…部屋は綺麗に片づけられていて、どことなく女の子らしい雰囲気を漂わす
いかにも梨華ちゃんっぽい部屋。
目の前にある部屋の中央の机と勉強机、それに小さな本棚と……あたしのちょうど
後ろにはベッドがあって部屋を占めている。
…やっぱりベッドはピンクでまとめられていた。

323 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時47分55秒

「……」
今までにも何度か梨華ちゃんの家には来たことがあった。
けど、今はもう今までとは意味が違う。
…梨華ちゃんはどうか分からないけど、とにかく今はもう『親友以上』なのだから…
…『恋人未満』でもあるけど…。


「飲み物、紅茶しかなかったんだけど……いいかな?」
「!!大丈夫っ!!」
「?」
突然バンッとドアが開いてトレイにカップとケーキの乗ったお皿二つを
持って現れた梨華ちゃんにあたしはびくっと反応して慌てながら答えた。

「真希ちゃんモンブラン好きだったよね〜」
あたしの不自然な態度にも至って気にする様子もなく梨華ちゃんは楽しそうに
机の上にトレイを置きケーキの乗ったお皿を机の上に置いていく。

324 名前:お家訪問 投稿日:2002年06月20日(木)17時49分31秒

「あ、ありがとう〜…」

あたしは内心かなりどぎまぎしながら、梨華ちゃんの出してくれたケーキに
不自然に対応していた。
だけど梨華ちゃんは全くいつもと一緒。
可愛い笑顔、様子、態度。
いつもと何も変わらない。
今日の予定。
それは梨華ちゃんの家で遊ぶ事。
でもなんか……どっか解釈が食い違ってるって思ってるのはあたしだけですか…?




325 名前:aki 投稿日:2002年06月20日(木)18時00分04秒
更新終了〜。

315:俵谷宗達さん
>雨に晴れてもじとじとしてて露は嫌ですね〜(+_+)
 早く空けて夏休みになって欲しいです(w
 ( ´ Д `)<んぁ〜、がんばるよ〜。いろいろと…。
 
316:梨華っちは文麿の応援団さん
>写真集出ますね〜。22日ですか…。
 急展開…かもですね。ごっちん大変です(w
 (;´ Д `)<キャミソールは反則だぁ〜…。
 ( ^▽^)<?
326 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月20日(木)19時39分05秒
梨華たん反則ですな。そりゃーごっちんだって興奮しますよ。
梨華たんは今のままでいたい、ごっちんはもう限界にきている。
そこにきて梨華たんの萌え萌えな格好、ごっちんはどうなるのか。
更新楽しみに待っていますよほ。
327 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月20日(木)19時44分32秒

そーだー!反則だぁ!!

( ^▽^)<文麿様の為に…
( ´ Д `)<誰、そいつ。
( ^▽^)<え、あ、その…
( T Д T)<うえーん、梨華ちゃん好きな人いたんだ…嘘付いたんだー
(;^▽^)<いや、違うの、文麿様はね…(汗
( T Д T)<サヨナラ梨華ちゃん…お幸せに・・。

↑変なことかいてしまいました。いってきます。
328 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月20日(木)23時14分56秒
スイマセン前回上げてました。(汗)最近、PCの調子悪いんで…(謎)
キャミソールか…今年は、スモックブラウスが流行ってるからあんま見掛けないですケドね。
梨華姫ヤパーリ可愛いな♪
てか( ´ д `)さん、今すぐ襲いなさい!(w
329 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月20日(木)23時59分56秒
( #´ Д`#)<り、梨華ちゃん…

( ^▽^)<?

無意識の犯罪(w 萌え〜。
330 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時38分42秒

「今日暑かったでしょ?駅に迎えに行っても良かったのに――」
「……」
「あ、部屋綺麗でしょ?昨日がんばって綺麗にしたんだぁ――」
「…うん…」
「ケーキ美味しい?近くの美味しいって評判のところで買ったんだよぉ。この
ケーキ」
「…うん…」

梨華ちゃんとの会話はやっぱりほとんど意識が向かわなくて。
あたしの意識はもろに目の前に座る梨華ちゃんに注がれたまま。
…恥ずかしくて出来るだけ気付かれないように目線を下に降ろすけど気になって
しょうがない。
だって、キャミソールは何だか可愛いデザインなのにどこか大胆でスカートだって
それ短すぎ…。今日迎えに来てもらわなくて良かった…。

331 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時40分36秒

「…ねぇ、聞いてるぅ?」
「!聞いてるよ」
「…そう?」
俯きがちのあたしの顔を覗きこむように梨華ちゃんが少し前に出てあたしを見た。
あたしは少し慌ててすぐに答える。
だけど梨華ちゃんはいぶかしげな表情のまま少し怒っちゃったみたい。


「こ、このモンブラン美味しいねぇ!甘さもちょうど良いし〜今まで食べた中で
一番美味しいみたい〜!」
「…本当?」
「……へ、部屋綺麗だね!この前着たときはもう少し…ちらかってたけど…」
「……」

まずい事言っちゃったかな…。
っていうかそもそもあたしが話し聞いてないのがいけないんじゃん…。
バカ…あたし…。
ちらっと上目遣いで梨華ちゃんを見るけど、もう既に梨華ちゃんを怒らせちゃっていて
あたしは慌てて気を取ろうとするけどどれも効果なしで
こんな自分に自己嫌悪を感じてもう俯きながらモンブラン一筋になってしまった。


332 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時42分47秒

「……」
もぐもぐモンブランを食べてどんどんモンブランをフォークから口に運ぶしか
出来なくてあたしは俯きながら一人うんうん心の中で自己嫌悪に唸っていた。
「…ふふ。可愛い。真希ちゃん」
「え?」
「焦った?ちょっと怒ったふりしてみちゃった」
机に両肘を尽きその手の上に顔を載せにこっと笑って言う梨華ちゃんの
言葉にあたしは唖然とする。
「だって真希ちゃん全然あたしの話聞いてくれてないみたいなんだもん。
…本気で怒っちゃうよ?」
「…ごめんね」
笑いながらだけどどこか拗ねるようにして言う梨華ちゃんにあたしは素直に
そのまま目を伏せながら小さく答えた。

「あ、本気にしないでよぉ。真希ちゃん…」
いつもこうな自分に自己嫌悪して何だか無意識に目が潤ってた。
そんなあたしに梨華ちゃんは慌てて前に乗り出して髪を優しく撫でてくれる。

333 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時45分32秒

「…何かいつもより真希ちゃんが年下に見えるよ」
梨華ちゃんは優しく微笑みながらあたしの頭を撫でる。
あたしもこの時ばかりはやけに自分が梨華ちゃんより年下に思えた。
「…!」
だけどはっと気が付いて、あたしはさっと梨華ちゃんから目を背ける。
だって…机に乗り出してるせいか梨華ちゃんの…胸の谷間がキャミソールから
覗けてどうしようもなかったんだもん。

「?どうかした?」
「…ねぇ…いつもそういう格好してるの…?」
「え?」
あたしの言葉に梨華ちゃんは自分を見て「これ?」とあたしに尋ねた。
「うん」と小さく頷き答える。

「だって今日暑いでしょ?真希ちゃんだって薄着じゃない」
「…そうだけどさぁ…」

334 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時47分51秒

今日のあたしの格好も梨華ちゃんと同じ感じで肩が大きく開いてる系のTシャツ
にミニの短パンのジーンズだけど…。
何だか…そう、梨華ちゃんの体型が同じような物を着ても何だか色っぽく…
っていうかHな感じになるんだよ…。
胸だってあたしより大きいし…腰は細いし…体のラインは女の子らしくて
華奢で…。

「……」
何だかあたしの方が拗ねた気持ちになって不満げに返事するとまたケーキに戻った。
…何だかあたし一人でいろいろ考えちゃってる…。
何だか切なくて何だかおもしろくなくて何だか…やきもきするように複雑で
少し目が潤んだ。

335 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時49分24秒

「?あ、真希ちゃん…」
「?」
梨華ちゃんはそんなあたしの様子に首を傾げてたけど何かに気付いたような声を
発したかと思ったら次にあたしの頬に一つ自分のものとは違う感触を感じた。

「ケーキついてるよ」
「!」
あたしのほっぺについたらしきケーキのかけらを何と梨華ちゃんが指で拭った!

「あ……あっ!」
そのままそのかけらをどうするのかと目線で追いかけてると何とそのまま
梨華ちゃんはその指を口に咥えた。
「可愛いねはあとはあとあ、あたしのも食べる?」
「え?あ、う、うんっ!」
さっきまでの不機嫌もどこ吹く風って感じに、フォークで差し出された
ショートケーキにあたしは満面の笑みで答えていた。


336 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時50分49秒



それからは、いろんな話をしたり雑誌を見合ったりテレビをつけて見たり…。
楽しい時間を梨華ちゃんと二人で過ごしていた。
外は相変わらず真夏の太陽光線びしばしであたし達は部屋のクーラーで
涼しい快適な中他愛無い時間を過ごしていた。

幸せで楽しくてしょうがないけど、でもすぐにあたしの意識は梨華ちゃんに戻る。
いつのまにか梨華ちゃんはあたしの隣に来ていて並んで座る形になっていた。
机の上には一つのテーマパーク紹介の雑誌があって、梨華ちゃんは楽しそうに
それのページを捲っている。
337 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時52分20秒

「……」
いつのまにかあたしの視線は梨華ちゃんにだけに注がれていた。

「あ、ここ結構近いね。新しくオープンしたんだって!観覧車とかあるよ〜」
楽しそうに笑顔で梨華ちゃんはページの写真にくぎ付けになる。
そこにはここから近い場所に新しいテーマパークが出来たらしく新しく
紹介されてあった。
だけど…あたしはもう既に梨華ちゃんだけしか視界に入ってなくて。
…綺麗な胸元、細いのに大きめな胸…胸は大きいのに細くて綺麗な腰、女の子らしい
体のライン…細い腿に綺麗な足…。
短すぎるスカートから窮屈そうに覗く綺麗に斜めに折りたたまれた…足…。
知らず知らずのうちにごくんと唾を飲み込んでた。

すぐそこに…すぐ隣にいる梨華ちゃん…。
ぬくもりも、吐息もすぐ側に…。

338 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時53分24秒

「ここ今度行こう?…真希ちゃん?」
雑誌から目を離してあたしに問い掛けたと同時に梨華ちゃんが後ろに振り向き
あたしを見た。それにはっと気付く。
「う、うん…」
「?…どうかした?」
あたしの異変に気付き梨華ちゃんはそっと目の前まで近づく。
微かに手が触れてびくっとした。

「…ね、ねぇ…」
優しい、甘い香りと梨華ちゃんの姿にもう我慢できなくて、あたしは
口を開いた。


339 名前:親友以上恋人未満 投稿日:2002年06月22日(土)21時54分42秒

「うん?」
「梨華ちゃんてさ…あたしの気持ち…知ってるんだよね…?」
「え?」
「あたしの気持ち…梨華ちゃんに対する気持ち…忘れてないよね?」

梨華ちゃんは一瞬間を置いたけどあたしの言葉にすぐに何か察し
とたんに顔をかぁと紅く染めた。
戸惑うように困ったようにとっさに梨華ちゃんの視線が下に背けられて
動揺するように目が泳いでいる姿にあたしは気付いた時に動いていた。



340 名前:aki 投稿日:2002年06月22日(土)22時04分27秒
…変なところで切ってしまってすいません(++)
ここで切らないとちょっとこっちがいよいよ大変に…。

326:いしごま防衛軍さん
>その反則に石川さん自体が気づいていないという…^^;
 そもそもこの中途半端な関係がもやもやを出してるんですよね。
 困ったもんです…^^;

327:俵谷宗達さん
>いえ、見た時思わず笑いました(w
 レスありがとうございます^^

328:梨華っちは文麿の応援団さん
>いえいえ、大丈夫です。ただ一応下げてるだけなので。
 あぁ…私のパソコンもやばいです。とにかく古いので…。
 間違って変な所押したのがまずかった。。
 今年は…<お、そうなんですか?実はあまり服に詳しくないんですよね…^^;
 
329:ごまべーぐるさん
>気を使わないで相手を招く…これも女の子同士の特権…?
 いや、でも石川さんの場合だと気づいてないだけですね…^^;
341 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月22日(土)22時10分31秒
サカー見ながらリアルタイム。
鼻血出そう…

いしごまマンセー!!
がんがってください!!
342 名前:vivi 投稿日:2002年06月22日(土)23時40分27秒
ゴチーン、まだだ!!まだタイミングが・・・・
343 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月23日(日)09時41分18秒
ごまさん、キミもいしかーさんのコトは言えんぞ、と言ってみるテスト。

( ´ Д`)<んあ?

( ^▽^)<(真希ちゃん…カワイイ♪)

その格好は充分刺激(ry

344 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月23日(日)16時30分08秒
ついにごっちんが行動に移しましたか。うーん、この後が気になります。
前みたいにすれ違いにならなければよいが、梨華たんもここははっきりとする
ところだとオモワレ。更新楽しみに待っています。
akiさん、頑張ってください!!
345 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月23日(日)19時51分53秒
子供っぽいごっちんにお姉さんな梨華ちゃん最高!!
続き大期待です!!
( ´ Д`)<忘れてない、よね?
( ^▽^) <!!
( ´ Д`)<忘れてたの?!
( ^▽^)<いや、覚えてるよ…でもね、その…
( TДT)<やっぱ文麿が好きなんだ、後藤なんて眼中にないんだ〜(泣
(( ^▽^)/<ち、違うよ。文麿様はね、あたしのなかでは…
( TДT)<いいよ、どうせ。窓から忍び込むうとするくらい好きなんでしょ。
( ^▽^)<!見てたの?
(((TДT)<梨華ちゃんのバカヤロー!!
( ^▽^)<そんな、見てたなんて、梨華はずかしいはあとはあと

↑自分の小説かかないで何やってるんだって感じですね。ごめんなさい。
346 名前:すれ違う二つの気持ち   投稿日:2002年06月26日(水)23時27分08秒


「…っん…!」
気付いた時には目の前に真希ちゃんの顔があって、戸惑う暇もなくあたしの
唇は真希ちゃんによって奪われていた。

「…ぅ…ん…」
触れた唇は一瞬離れるけどそれで終るわけがなくて、あたしの唇は真希ちゃんの
唇に挟まれるように、ついばまれるように触れられていく。
「…んぅ……ぅ…」
だんだんキスが深くなってきてあたしはぎゅっと目を瞑る。
優しいキスに甘い感覚が体に広がっていく。
あたしは形だけの抵抗を真希ちゃんに手を前に出して示すけどすぐに
その手も捉まれ逆に絡まるように強く一つに握り締められてしまう。

…初めてのその握り方にも何だかドキドキして。一つ一つの指に真希ちゃんの
ぬくもり…体温を感じて何だかくすぐったい。


キスの感覚に酔いしれてきそうになって力も抜け、つい微かに開いてしまった唇に
真希ちゃんはすぐに求めるように舌を入れてきた。


347 名前:すれ違う二つの気持ち   投稿日:2002年06月26日(水)23時31分36秒

「ん…!…ぅん…っはぁ…」
微かにちょんっと真希ちゃんの舌があたしのと触れてあたしはとっさにびくっと
反応し舌を中に引っ込めてしまう。
だけどその間にも真希ちゃんの舌はどんどんあたしを求めていて、もっと
中に触れるように顔を横にしてきつく唇を合わしていた。

「…ふぁ…ま、真希ちゃ…っ…」
途中間が開いて名前を呼ぶけど真希ちゃんは離れた距離をすぐに戻すように
舌を中に這わしてあたしの中を駆け巡った。
ぎゅっと瞑っていた瞳も微かに開き、薄く開いた間から真希ちゃんを見るけど
もう完全にキスに没頭していた。

「はぁ……んっ…ん……」
次第に誘うように舌に優しく触れられ戸惑いながらも自分も真希ちゃんへと向かって
差し出すとすぐにリードされながら絡められてしまった。
…恥ずかしい、小さな水音が部屋に静かに木霊する。
少し息苦しくなって途中一瞬離れる間に息を吸うけどすぐにキスは続けられて
強く求められるキスにあたしは成す術なかった。

348 名前:すれ違う二つの気持ち   投稿日:2002年06月26日(水)23時34分33秒


「…あっ…」
「………」
そのままあたしの体はキスを求められていたためあたし側に斜めになっていた
こともあって流れるように優しく床に押し倒された。
そのまま一旦離れた唇をすぐに求めるように唇を近づけようと、あたしの体の
上に覆うように被さってこようとした真希ちゃんの顔がまたすぐ目の前まで
やってきた時あたしは慌ててそれを遮った。
「ま、待って!お、お母さんとか、妹も…下に…いるし…」
「…お願い…」
「―――!」
「お願い、梨華ちゃん…」
目の前に、上にあった真希ちゃんの表情は…すごく切なかった。
つらそうで切なそうで…。
だけどそう言ったときの真希ちゃんの瞳はすごく…真摯で情熱的だった。

「あっ…」
「好きなの…梨華ちゃん…」
偽りないその囁かれた言葉にあたしは誘われるようにすぅっと抵抗の力も
体から抜け、いつのまにかドキドキしながらも真希ちゃんの行動に従っていた。


349 名前:すれ違う二つの気持ち   投稿日:2002年06月26日(水)23時37分11秒


「…んっ……」
ノースリーブの上から、薄着のためほとんど直と変わらないぐらいの感覚で
真希ちゃんの手が優しく胸に触れる。
初めての事で、しかも突然で思わずびくつくように体を跳ねさしてしまう。

「……」
真希ちゃんはすぐにあたしの気持ちを察してか胸からはそっと触れただけで
手を離した。
そしてそのまま唇があたしの唇とも、ほっぺともつかない場所にキスを落とした。

「…っ…」
優しい、安心させるようなそれに思わず顔を紅くしてぎゅっと目を瞑る。
そのまま真希ちゃんの唇はほっぺ、耳元、首筋、鎖骨と、微妙な個所を
いくつも触れながらあたしの肌に口付けていった。
自然と、自分でも驚くぐらいにそれはあたしの中の緊張を和らぐ。
すぅと体から今までの強張っていた緊張が抜けたと思ったとき、改めて
真希ちゃんの手があたしに伸びた。

350 名前:すれ違う二つの気持ち   投稿日:2002年06月26日(水)23時39分20秒

「…ぁ…」
髪を掬うように触れて、そのまま逆の頬にキスを落とされる。
優しく大事な物に愛しむようなその行為にあたしは今更真希ちゃんの気持ちの
強さと優しさに気付いて胸を一杯にした。

手はそのまま撫でるように首筋、肩、腰と回ってお腹に触れた。
服の上からだけどその優しい愛撫にあたしは体を震わす。
そして徐々に上に上がっていって、とうとう胸に覆うようにして触れた。

「あっ!…んっ…」
優しく置くだけのようにしていたその細く綺麗な手が少しだけ力を入れて
改めて胸に触れた時、思わず声があがる。
あたしは無意識に声が出てしまった事に顔を赤らめすぐに口をぎゅっとつぐんだ。

351 名前:すれ違う二つの気持ち   投稿日:2002年06月26日(水)23時41分09秒

「ぅん…っあ……ん、やぁ…」
それも次第に感じるには十分なほどな優しい力が入ってきて服の上から
円を描くようにして撫でられる。
胸に触れている間も引くつく首筋には吸うように唇が触れて、どんどん
理性とは裏腹に体は熱く昂ぶってくる。

…下にはお母さんも妹もいるのに…。
もし突然部屋に入ってきたら…こんな所見られたら…。

そんな考えが余計に体を上気させこんな事をしてる自分に羞恥心を感じさせ
顔をかぁと紅くさせる。
そうこう考えているうちにも、真希ちゃんの手が洋服の中に下から
滑りこんできた。



352 名前:aki 投稿日:2002年06月26日(水)23時49分41秒
更新終了です。
やっぱり変なところで切ってしまってすいません(+_+)
なにしろ書き溜めているものに余裕がないもので…。

341:名無し読者さん
>初レスありがとうございますっ。
 今回は更にこんな感じになりましたが大丈夫でしたでしょうか…^^;
 いしごまの二人はいるだけで絵的に怪しげですよね(爆)
 ありがとうございます!がんばりますっ!

342:viviさん
>やっぱりこの前のことがあってでしょうか…。
 少し石川さんも柔らかく(?)なっていっているのかも…。
 レスありがとうございますっ。

343:ごまべーぐるさん
>今回に限ってじゃないんですが…、データが消えると実際に
 目の前に真っ白です(汗)一番堪えますね…。
 ( ´ Д`)<?
 ( ^▽^)<?
 お互い自分の事には鈍いです(w
353 名前:aki 投稿日:2002年06月26日(水)23時55分49秒
344:いしごま防衛軍さん
>全ては石川さん次第なんですよねぇ…。
 こういうあやふやな関係って現実にもあるような…?
 どうしても自分から答えを出すことに躊躇っているみたいです。

345:俵谷宗達さん
>続き、喜んで貰えていたら嬉しいです(w
 いえいえ、いつも楽しいレスありがとうございます。
 いつも楽しく読ませて貰ってます(w
 小説の方も待ってます^^

354 名前:俵屋宗達 投稿日:2002年06月27日(木)16時31分59秒

(o^~^o)<お、お、お、おぉ〜〜…。
いやぁ、ごっちん照れるなぁ!←お前が照れてどうするんだよ。
akiさんって萌え〜な話も上手ですよね。普通の小説も上手ですし…
羨ましすぎますよ。自分の方はもうすぐです。ごめんなさい。
355 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月27日(木)23時15分34秒

も、も、萌え〜〜〜〜〜〜


萌え死ぬ・・・けどそれが本望!
356 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年06月28日(金)15時03分26秒
ウチがどっか逝ってる間にこんなにも交信されてる(感涙)
勉強頑張って下さい!!ウチも仕事やらんと(爆)
真希姫やりますな〜^^この展開にカナーリ期待していた。(w
ということでウチはマターリ保全で逝きます。(謎)
357 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月28日(金)19時44分35秒
あやふやな関係ですか。梨華たんがあと一歩踏み出すだけでうまくいくと
思うんですけどねー。ってか萌え萌え萌えです。もうたまりません。
更新ドキドキしながら待っています。
358 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月29日(土)08時15分50秒
結構イイ年をした大人なのですが、ドキドキしてしまいますた(^^;;
お体に気をつけて勉強のほうもがんがってくださいね。
マターリ、お待ちしてます。。。
359 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時14分46秒


「…あっ…や、やぁ…んん…」
手を服の中に滑り込ませ直にそっと梨華ちゃんに触れる。
服の上からと同じように覆うようにして触れた時には、服の上からとでは違う
感触があった。
それはもちろん直の梨華ちゃんの体温、ぬくもりと、綺麗な肌の感触、
ずっとあこがれてた…胸…そして…。
確かに手の平に感じる梨華ちゃんの変化にあたしは驚きと喜びで胸が
一杯になった。
自分の愛撫で感じてくれてるんだぁ…って思った。
だからもう止められなかった。

360 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時16分41秒

…目の前には自分以外誰にも触れられた事のない梨華ちゃん…。
誰にも見られたことのない体…こんな事をするのは自分が始めて…。

恥ずかしさからぎゅっと瞑られた瞳、横に背けられる顔。
漏れる吐息、可愛い甘い声。
みだらな格好、妄想に近いぐらいの嫌らしい姿…。
苦しそうに吐く息と、堪えるような表情。

…こっち見てよ…梨華ちゃん…。
顔が見たい。見て欲しい…。
あたしを見て…。
真っ直ぐなあなたの瞳で…見つめてほしい……


あたしは目の前の愛しい人の姿に充分に興奮を昂ぶらせ、体を熱くさせていた。
そして、もっともっと梨華ちゃんを感じたくて、感じて欲しくて、
体が本能に忠実に動いていくのを感じていた。


361 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時20分16秒



「…あん…やっ…真希ちゃ…んっ…」
服に潜りこんできた手はそのまま今までとは違い大胆にあたしに触れてくる。
わずかだった初めての甘い感覚もどんどんそれと共に体を支配してくる。
あたしはあまりにも突然のそれに戸惑う事も出来ない。
体の昂ぶりを示すその場所は既に形を成していて真希ちゃんはそっと指で
その部分に摘むようにきゅっと触れた。
勝手に口から漏れていく出した事もない、出すとも思わなかった自分の甘い声に
自分で恥ずかしくなる。
何とか口を塞いで漏らさないようにしようと思っても、気付いた時には
声が吐息と共に溢れてた。

362 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時22分04秒

「ぅん…やぁ…恥ずかしいよぉ……」
ぎゅっと瞳を閉じるけどそれだと感覚がただ触れられるその場所に集中して
しまって逆効果だという事にやっと気付きあたしは薄く目を開いて真希ちゃんを
見ないように、自分の感じてる顔を出来るだけ見られないように横に背けた。
視界に部屋の一旦が入る。それはつい今まで自分が普通に生活していた場所。
…こんな事、自分の部屋ですることになるなんて…。
恥ずかしさと何だかよく分からない複雑な気持ちで一杯になる。
しばらくの間ずっとその部分を触れられていたけど、次の行動にあたしは
思わず目を見開いた。

「――ま、待ってっ!それは…あ、だ、だめ…!」
「あ……」

真希ちゃんのもう片方の手が不意に服の下に向かって上へと捲ろうとしたのに
あたしは思わずその手を掴み遮った。

363 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時24分45秒

「梨華ちゃん…」
「は、恥ずかしいよ……ダメ…やだよぉ…」

恥ずかしさに目も潤い初めて、半分涙目になる。
必死に下から真希ちゃんに訴えるけど真希ちゃんはしばらくの間あたしの
顔を見ていたかと思うとすぐに行為を再開してしまった。
「あ、や、やだよぉ…待っ……!」
押さえていた手は逆に捉まれ、さっきと同じように指を一つ一つ絡めるように
して握り締められてしまう。
床に押さえつけられるように両手が奪われ完璧に抵抗できなくなってしまった
あたしを、改めて真希ちゃんが服に手をかけた。

「や、やだぁ…」
電気は明るい。カーテンは閉まってるけど何だか微かな隙間が恥ずかしい。
成す術なくそのままあたしの上半身は服を上まで捲られ真希ちゃんの目の前に
露になってしまった。
これ以上ないぐらいの恥ずかしさにあたしは顔を横に背ける。

364 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時26分55秒

「………綺麗だよ…」
しばらくただあたしの体をぼんやり見つめていたと思った真希ちゃんが不意に
そんな事を口にした。
それにもびくっと感じてしまっている自分がいて今すぐにでも服を戻したい
衝動に駆られるけど抵抗は奪われてしまってどうする事も出来ない。
「……」
「――あっ…!」
両腕を捉まれたままそこにすっと生暖かい柔らかい感触が触れた。
今までとは違うその感覚にほとんど何か頭に過ぎっていたけど反射的に
慌てて背けていた顔を前に戻した。

「やぁ…!」
後で見なければ良かったと心から思う。
だってそこには自分の胸辺りに真希ちゃんの顔があって、さらさらな髪の
反対にはさっきまでキスをしてたその唇があたしのそこに触れてたんだから。
ちゅっと軽く口付けするように触れるとそれはそのまま軽く舌を出して
拭うように触れる。

365 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時28分42秒

「!」
びくんと体が跳ねて思わず目を閉じた。

「あんっ…やだ……真希ちゃ、ん…」
何度も何度も触れるたびに徐々に触れる長さは増えていって感じるぐらいに
嫌らしくなってくる。
もう抵抗する力もそれに奪われて力のなくなったあたしの片腕から手を離すと
もう一つのそれにも手が触れた。

「ぅん…もう…やだよぉ…」
あたしは溜まらず両腕を交差させて顔の上に覆った。

もう自分の下半身がどうなってるのか見なくたって分かる。
突然で、あたしには戸惑うことしか出来ないその強い快感にあたしは
自然と体の底が熱くじわっと込み上げてくるのを感じた。



366 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時32分53秒



「………」
行為に夢中になってた。
梨華ちゃんを味わうことだけに夢中になってた。
だから気付かなかった。
あたしはそのまま今まで堪えていたものを吐き出すように愛撫を続けていた。
そしてそのまま一番の昂ぶりを示すその大事な場所へ手を這わせようとしていた。
だけど、不意に目の前に両腕を顔の上で交差させる梨華ちゃんの姿が目に映って、
あたしは思わず無意識に近いぐらいにそっちに近づくとその交差する腕を
優しく掴み解いた。


「……梨華ちゃん…」

締め付けられるような気持ちに襲われる。
そこにいたのは恥ずかしさから顔を紅く染め、突然の快感に戸惑うしか出来ない、
涙を目じりに溜め微かにこめかみに向かってそれを流している梨華ちゃんの姿があった。

367 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時34分29秒


「…ごめん…」

どうしようもないつらい気持ちになって、あたしは梨華ちゃんから体を離した。
ゆっくり体を梨華ちゃんの上から離して少し距離を置いた場所に体を置く。
もうこの時はさっきまでの興奮も本能も欲望も全く残ってなかった。

「…?」
突然行為を止め、謝罪の言葉を発したあたしに梨華ちゃんは腕の中から
戸惑うようにしてあたしの様子を確認するように潤った上目遣いで見てくる。
…余計にやるせない、切ない気持ちになった。

「真希ちゃん…?」
「…ごめんね…」

梨華ちゃんは服も戻さないまま離れたあたしを確認するように上半身を起こす。
それからすぐに気付いて服をばっと下に戻した。

368 名前:すれ違う二つの気持ち 投稿日:2002年07月05日(金)19時37分07秒

「…あ、あたし真希ちゃんのこと好きだけど…その…」
梨華ちゃんはあたしが中断した事に察したように慌てて言葉を繋ぐ。


「と、友達のままじゃ、ダメなの?あたしはずっと真希ちゃんと親友でいたいの…。
ずっと側にいたい…離れたくないの…」
「…友達のままじゃ…あたしは我慢できない…」
「!…」
「あたしは梨華ちゃんがあたしに求めてる物とは違う感情でもっと深く梨華ちゃんを
求めてる…。…とめられないの」
「…真希ちゃん…」


あたしから離れて部屋の隅で小さく座り、目を横に背けながら呟く
真希ちゃんに、この時たぶん初めて今更真希ちゃんの自分に対する想いの強さを
実際に感じた気がした…。



369 名前:aki 投稿日:2002年07月05日(金)19時53分00秒
本当にぎりぎりだったみたいですね…。
更新分何とか入りきったので良かった良かった…。
あまり長くだらだらするのもどうかなって思ってたんですけど
2スレ目になりそうですね…。
次もこの板にしようと思ってますので次回の更新は新しいスレに
なりますね。これからもよろしくお願いしますm(__)m

354:俵屋宗達さん
>ありがとうございます(泣)
 そう感じていただけるだけで感動です(T_T)
 
355:名無し読者さん
>萌えていただけましたか(笑)
 良かったです^^
 書いたかいがあります(w

356:梨華っちは文麿の応援団さん
>ありがとうございます(T_T)
 がんばります、勉強。仕事、がんばってくださいっ。
 期待に答えられていれればこれ幸いですっ。
 マターリ保全<ありがとうございますっ!

357:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます^^
 どっちつかずから新しい未知の関係はやっぱり怖いんでしょう…。
 萌えが三つも(w
 がんばります。
 
358:ごまべーぐるさん
>ありがとうございます(T_T)
 勉強、がんばりますっ。小説も、なるべく時間を見つけ次第
 がんばります! 
370 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年07月05日(金)21時13分54秒
うわぁ〜肌と肌が(爆)触れ合ってるんですけど>M駅
もちろんいしごまの(ハァハァ

>>あたしを見て…。
>>真っ直ぐなあなたの瞳で…見つめてほしい……
なんかセクシー8の匂い(真希姫)を感じるのは気のせい?(w
お引越しすか?これからもガムバッテくださいな♪
しっかしココの真希姫、なんっていうかカッコよすぎなのですケド>言葉とか
371 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年07月05日(金)23時53分34秒
ごっちんの気持ちわかりますよ。切ないですなあ。さあ梨華たんはどうするんでしょうか?
372 名前:vivi 投稿日:2002年07月06日(土)04時01分11秒
む、難しい展開に・・・・・とにかくゴチーン頑張れ!!
それと
>抵抗は奪われてしまって
という表現が僕的にイイ感じでした。

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