友人がふと立ち止まった事に気づいた女の子は大声を上げた
「明日香ぁー、なにしてるのよぉー、もう高校入学早々
遅刻しちゃうよう」
桜の白い花が舞い散る公園、そこをつっきれば学校への近道
季節は4月
全てがはじまる季節、全てが終わった後の季節
「あ、ごめん、今行くーー」
明日香は公園の大きな池の方角を見た。そこから
なにか 呼ぶ声が聞こえたのだ。昔、よく聴いた声の、、
春の光をたたえた池の水面は静かに凪いでいた。
ふと、頭の中を過ぎる記憶、自分がいたころの8人の仲間との
懐かしさと痛みの記憶。すでに自分の中から切り捨てた過去、、
そのグループは彼女が脱退した後、緩やかに凋落していった
そのころから、一緒にメインだった少女の顔に翳りが多いこと
が気になってはいた。しかしグループは、明日香の知らない
少女が入って、復活し、人気が爆発。そして、友人がまた
一人抜け、知らない少女が4人入り、、
その間、グループの顔ーーかつての彼女の友達、いや敵が
精彩をなくし、肉体的にもその徴候が現れてくるのを
明日香は冷やかに見つめていた。恩讐の気持ちがないませに
なりながら。その子の声がいま聞こえたのだ、、、
「明日香、早くー、もう、」まさかね・・
「わかった、いまいくー」明日香は友人に足を向けた
その明日香の背中を見つめる、折れそうなほどのか弱い美少女
誰もがもっている記憶の姿、もう失われてしまった「彼女」
静かに微笑む
「、、ねえ、私のこと、忘れないでね・・・」
明日香が振り向いたとき
水面の上に、薄青色の女の子の姿が一瞬だけ現れ、
そして消えた。
叫ぶ明日香
彼女は黙っている
あなたが、あたしにしたこと、忘れたの!
どれだけ あなたの悪意があたしを押し潰そうとして、
あたしを抹殺しようとしたか!あたしがどれだけの孤独を、
屈辱を、痛みを、受けたと思っているの!
永遠に消えない傷痕があたしの胸を貫いているのよ!
彼女は黙っている
だから、あたしは全てを棄てて、全部あなたにあげて
逃げ出したのよ。そう、全部、あなたにあげたじゃない!
だから、もうわたしの前にあらわれないで!
今の姿が、本当のあなたのすがたよ!
惨めに,永遠の敗者として 呼吸していなさいよ
欲望に塗れた惨めな姿をさらして、生き続ければいいのよ
全て自業自得よ、あなた自身が選んだ醜悪じゃない!
彼女は黙っている
「でも・・」
静かに彼女は微笑む その笑みは突き抜けていた
何のためにも、なにも目的のない、真っ白な微笑み
「わたしの事、忘れないでね」
そして、彼女は消えた
明日香は涙を一筋流しているのに気づいた
血の味がした