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諸人こぞりて

1.さやか

(…貴方は自分の我侭で全てを捨て様とした。
 私が、何度止めようとしても、
 貴方は己の小さな正義に頑固にしがみついたままだったじゃない?
 その結果が今の全てを失った貴方の様…
 どうして貴方は私の忠告を受け入れることが出来なかったの?
 貴方が、常々口にしている人間像は只の空想だったの?
 …でも、もう手遅れだわ。忠告は全て今罰として現実になったのよ。)

(違うッ・・・違うッ・・・私は悪くないモン・・・間違ってなかったモン・・・)

また、いつもの夢。毎晩リピートされる夢。
どんなに否定しても決して終幕を迎えない夢。

傍らでちょこんと丸まっている猫を抱き寄せて頬擦りする。
涙で濡れるのも嫌がらず猫はじっと大人しくされるがままだ。
温もりを感じると、さやかの涙は余計に止まらなかった。

2.武道館

5月21日武道館でのコンサートもフィナーレにさしかかった時、
それは起きた。耳を劈く様な轟音。崩れ落ちる天井。
星屑の様に舞い落ちる割れたガラスの破片。全てが壊れ、降りそそいだ。
歓声が悲鳴に変わり、熱気は悲劇に変わった。

3.まき

(・・・この日が来なければ良かったのに・・・)
思いは、唐突に打ち破られた。壊れていく武道館。
数瞬。決断した。壊れかけていた、まきの心が輝きを取り戻した。

幼い日に自ら封印した能力。錆付いていたかも知れない。
まきは殆ど全ての命の炎を其れにつぎ込んだ。

(誉めてくれても、貶してくれても構わない。
 生まれ変わっても、ずっと一緒に居させてく・・・)

4.こねこ

気がついた時、最初に目に飛び込んできたのは
一匹の子猫だった。まるでさやかを心配するかの様に傍らに控えていた。

ステージ衣装のまま、どうしてこんな所に倒れているのだろう?
あの武道館での光景は・・・

歩き出した、さやかに猫は、しつこくついて来た。
(ふぅーん。ぽえーんとした顔だけど案外押しが強いんだ・・・)

TVのニュースで武道館の事件を見て、
さやかは初めて現実感をもった。
悲しみは一度堰が切れると一向に止まる気配すらなかった。

5.こころのささえ

「きゅ〜ん」
慰めてくれるかの様に擦り寄ってくる猫、その一風変わった鳴き声、
決して整ってはいないけれど、可愛げのある顔。
ふにゃふにゃした中にも芯を感じさせる態度。

壊れかけたさやかの心は救いを求めていた。
さやかは猫の名前を「まき」にしようと決めた。

                    おわり