「おっつかれっしたあー!」
今日も元気なモーニング娘。の一員「市井紗耶香」。
「おつかれさまでしたー!」
そして元・最年少「後藤真希」。
「・・・なんか元気ええなー!」
最年長の中澤が市井に言う。
「今日はね、行きつけの焼き肉屋に後藤と行くの!」
「はい、そーです!」
市井と後藤は仲良さそうに、答えた。
「変なヤツにからまれるんじゃないよ?」
「もー、裕ちゃん。わかってるって。」
市井「さ、行こうか後藤。」
後藤「うん!」
市井「じゃ、お先失礼しまーす。」
メンバー「バイバーイ」
市井と後藤は笑顔で楽屋を後にした。
安倍「おなか空いたー」
飯田「じゃ、どっか行こうよ、みんなで」
中澤「いや、もう予約してあるで。」
飯田「なんだ。裕ちゃん!早くいってよ」
残りのメンバーは中澤を先頭に
予約した店へと足を運んだ。
市井「ついたよ。後藤」
後藤「うわぁー、まぶしい」
そこはできたばかりの焼き肉屋で夜に映えるネオンがまぶしかった。
市井「さて。入ろうか?」
後藤「うん!」
中にはいると焼き肉の独特のニオイがしてきた。客は夜遅いということでほとんどいない。
市井「うーん♪やっぱこのニオイがたまらない!」
後藤「じゅる・・・」
従業員「い・・・いらっしゃいませー!」
従業員は突然のモー娘。の二人の訪問で動揺気味。
市井「二人です。」
従業員「あ・・・お・・・お好きな席へどうぞ!」
市井「奥行こう!」
後藤「いいよー」
二人は店の一番奥へと入っていった。
市井「よっこいしょ」
後藤「ふー」
市井「後藤、何食べる?」
後藤「とりあえずなんか飲まない?ノドカラカラでさ」
市井「うん。いいよ。」
と、次の瞬間
?「引火した!引火!!伏せろ!!!!伏せろ!!」
市井「え・・・何があったの・・・」
ドカーン・・・。
すごい爆発音とともに辺りは火の海。市井と後藤以外脱出中。
市井「えー!???何これ???」
後藤「爆発したんですよ!!早く逃げないと!!また爆発するかもしれないし!!」
火は二人の近くでも燃えていた。奥の席なので逃げるのは困難。
しかし不幸中の幸い、窓は二人の近くにあった。
市井「後藤・・・割るよ。窓。」
後藤「え・・・」
市井「それしかないの!死にたいの!?」
後藤「・・・わかった!」
市井「よし、、、イス、、、か、、、」
市井は後藤からイスを受け取るといきなり窓にたたきつけた。
市井「おらっ!!」
バキっ・・・と鈍い音を立てたガラスはなんと割れなかった。
市井「強化ガラス・・・?」
後藤「ど・・・どうする?もう火が・・・」
市井「あ!消防車来たみたいだよ・・・」
後藤「助かった・・・?」
市井「はぁ、奥を選んだのが間違いだったかな・・・」
後藤「あ、はしご」
消防車のはしごはあっという間に二人の目の前に来た。
隊員「非常口!あるから!!そっからでて!」
見ると小さい非常口があった。
後藤「よし!行こう!」
市井「おう!」
火はもう直前まで来ていて、ガラスを焼いていた。
市井「後藤は行ったか?じゃ私も行こう!」
しかし、悪夢はここから始まった。
パリンパリンパリン・・・
いっせいに割れるガラス。眼に見えない細かい破片が飛び散る。
市井「や、やべー・・・」
その時キッチンの方で再び小爆発がおこった。
風と破片は市井に向かってふいた。
市井「きゃぁっ!!目が!目が!!」
破片が大量に市井の目の中に入っていった。
市井「痛い・・・。痛い。・・・」
後藤を下におろした隊員が戻ってきた。
隊員「大丈夫か!早くのって!」
その時市井の目の力はほぼ奪われていた。
市井「う・・・うう・・・」
隊員「おい・・・大丈夫か?」
下に降りた市井は目を押さえていた。
隊員「君・・・目に何か入ったのか?」
市井「細かいガラスの破片が・・・入ったと思います。」
後藤「!」
後藤は驚いた。
隊員「おい!それを早く言え!誰か!救急車呼べー!」
もう一人の隊員が救急車を呼ぶ。
後藤「市井ちゃーん!!市井ちゃーん!!!」
市井「う・・・後藤?な、なに、そんな大声出さなくったって。耳は聞こえてるよ」
後藤「・・・目・・・大丈夫?」
市井「・・・すっごくいたい・・・」
後藤「目・・・あけられる?」
市井「無理・・・痛い・・・」
後藤「・・・そう・・・」
数分後、救急車、到着。
医者「さぁ、急いで。」
市井「後藤・・・手伝ってくれる?」
後藤「うん・・・」
市井と後藤の顔には不安が見え隠れしていた。
救急車内。
市井「痛い・・・」
医者「目は開けられないのか・・・」
後藤「市井ちゃん、どうなるんですか!?」
医者「手術はしなきゃな。最悪の場合・・・」
医者「失明・・・」
市井「・・・!」
後藤「そ、そんな・・・」
後藤の目からはとめどなく涙があふれた。
市井「失明・・・」
医者「でも、私たち医者は全力を尽くす。余計な心配はしないで
治ることだけ考えて。」
市井「はい・・・よろしくオネガイします。」
後藤「市井ちゃん・・・」
市井「・・・」
病院。
医者「すぐに手術室へ向かう。」
市井「・・・」
市井は医者にかつがれて、手術室へと運ばれた。
後藤「い・・・市井ちゃん!」
後藤もその後を追う。
・・・手術室前。「手術中」という赤いランプがつく。
がんばれ、と後藤はつぶやいた。
市井「痛いー!!痛いー!!!」
手術室から痛々しい悲鳴が聞こえてきた。
市井「やめてー!!!痛い!!!!い・・・うう・・・」
後藤は悲鳴を聞き、涙をボロボロ流した。
医者「これは・・・ひどい・・・」
市井の目の中には細かいガラスの破片が大量に入っていた。
医者「まず、麻酔をうつ。」
後藤「市井ちゃん・・・市井ちゃん・・・がんばって・・・」
今の後藤はこれしかいえなかった。
それから30分後。
医者「これから手術を始めます。」
市井は麻酔の効果で深い眠りについていた。
夢を見た。誰もいない世界の夢。
「私は失明したの?何も見えない、何も聞こえない・・・」
暗闇の中を手探りで歩く。その時、なにかに体が当たる。
さやか・・・。
誰?・・・私?私自身と会話してるの・・・?
さやか、みんなはなれていったわ。もうたよりは自分しかいないの。
「そんな・・・心細すぎる、一人は嫌だ。」
さやか・・・。もうあなたは人を見ることができない。
「・・・何?嘘・・・嘘よ、嘘・・・」
もうあなたは一人ぼっちになったの。何も見えない、未来も。現実も。
・・・さやか、光が見える?
「みえない・・・」
・・・さやか、何が見える?
「何も見えない・・・」
もう一人になったんだよ。
モーニング娘。という光から一人になったんだよ。
「なんで・・・」
あなたに光が見えなくなったから----------------
市井「・・・っ」
気付いた時 辺りは真っ暗であった。
市井「夜・・・なの・・・?」
後藤「い・・・市井ちゃん!」
ここは病室のベッド。
ベットの横でずっと付き添っていた後藤。
後藤「今は・・・朝・・・」
市井「・・・この包帯のせいか」
市井「・・・失明するのかな」
後藤「手術は成功したって言ってた。大丈夫!回復する!」
市井「・・・そうなの。よかった・・・」
市井はふうっとため息をつくと、また横になった。
矢口「さ、さやか!」
モー娘。のメンバーが見舞いに来る。
市井「その声は・・・矢口?」
矢口「・・・さやか・・・」
矢口の驚きは涙に変わる。
保田「泣くなーっ」
飯田「治るんだから!」
安倍「がんばって。さやか」
市井「・・・ありがと」
後藤「大丈夫、市井ちゃん、強いから。」
しばらく、今後の事について軽く話すと、メンバーは帰っていった。
後藤はそのまま看病を続けることにした。
市井「後藤・・・」
後藤「何?」
市井「・・・暗い」
後藤「ん?」
市井「何をしても、何分、何時間経っても、暗いの・・・」
後藤「・・・」
市井「・・・おかしくなっちゃいそう・・・」
後藤「・・・」
市井「いやー、やっぱ目って大事だねー。」
市井はため息をつく。
市井「なんか・・・今の私・・・死んじゃったみたい。」
後藤「・・・」
市井「ははー、悲しいな、何も見えないのは・・・」
後藤「・・・」
市井「・・・」
後藤は黙ったままうつむいていた。
市井「・・・失明したときは・・・その時は・・・私、死ぬよ。」
後藤「!・・・」
市井が弱音を吐く。めったに弱音をはかない市井。
今回はさすがに精神的につらいようだ。
後藤「死ぬの・・・?」
市井「・・・うん。今だって生きてるかどうかもわかんないんだよ。」
後藤「・・・」
市井「・・・なんてね。治すよ。がんばるよ!」
後藤「・・・がんばってね・・・」
後藤はまた涙ぐんだ。
医者「うーん、あんまり病状は変わってないね・・・」
市井「・・・」
診察中。あまり回復していない様子。
市井「先生・・・」
医者「気にするな。すぐによくなるさ。」
市井「はい・・・」
夜。
市井は眠れずにいた。
市井「一日中暗いから、寝てるのかどうかわからないよ・・・
・・・もしかしたらもう寝ててここは夢の中なのかもしれない。」
市井の毎日は憂鬱であった。
憂鬱な毎日が過ぎていく。
ベットから体を起こすのはトイレ、飯の時のみ。
飯も人の手を借りる。
自分の姿に泣きたくもなる、が
泣けない。泣きたいのに泣けない。
泣いても良いのに、泣けない・・・。
市井「・・・風呂に入りたい・・・
・・・仕事がしたい・・・
・・・みんなと話したい・・・
・・・みんなの姿をみたい・・・」
市井の「生きる」という願望は
日々薄れていった。
市井「なんか・・・記憶も日々、薄れていくカンジがする・・・」
市井の目の病状はいっこうによくならない。
市井に治す気力は・・・ほぼ消えていた。
市井「もう・・・いいよね。がんばったもん、私」
市井は何かブツブツと独り言を言うと立ち上がった。
そして手探りに部屋を出た。
市井「・・・」
何も言わず、壁を頼りに歩く。
市井「・・・今の私ってみじめだな・・・」
階段にたどり着く。
上り階段というのを確認した後、市井はゆっくり上っていった。
どんどん階段を上る。
そこへ、忙しそうな医者が通る。
医者「君。どこへ行くんだい?」
市井「先生?あ・・・ち、ちょっとトイレへ」
医者「え?でも君の病室は2階だったはず・・・」
市井「あ・・・あの、、、あ、掃除中だったんです。」
医者「大丈夫か?私がついていこうか・・・」
市井「いいんです。すぐ戻ってきます。」
医者「そうか・・・でも次の階で誰かに手を借りなさい」
市井「わかりました。」
市井「(先生、いままでありがとう。)」
後藤「市井ちゃーん!!調子は・・・あれ・・・」
そのころ後藤が病室に見舞いに来ていた。市井の姿はない。
市井は今、「現実」という暗闇に押しつぶされる寸前であった。
8階・・・。屋上である。
市井はなんとか、ドアを開け、屋上に出た。
市井「ふぅ・・・気持ちいいな、外は久しぶりだからね・・・」
市井はまっすぐ進んでいった。
後藤「あのー、先生、市井ちゃん知りませんか?」
医者「ああ、紗耶香ちゃんなら上のトイレに行くとか、言ってたよ。
ここの階のトイレ、掃除してなかった?紗耶香ちゃんがそういってたけど。」
後藤「掃除・・・?してませんでした。」
医者「あれ??」
後藤「・・・まさか・・・」
医者「・・・ん?どうした?」
後藤「あ、なんでもないです。」
そういうと後藤は見舞いの花をベッドの上に置き、階段へ走っていった。
市井はまっすぐ、まっすぐとりつかれたように歩く。
しばらく歩くと、手すりに当たる。
市井「・・・楽になりたい・・・光がほしい・・・」
市井は少し考えたあと手すりをつかみ、足をかけた。
後藤「はぁ・・・!はぁ・・・!」
全速力で階段を駆け上る。
後藤「あの時の・・・弱音が・・・本気だったら・・・」
屋上でたどり着く。
ものすごい勢いでドアを開ける。
後藤「市井ちゃん!!!!」
市井は手すりを越えた足場にたっていた。
市井「・・・ご、後藤・・・??」
後藤「な、、、何やってるの・・・?市井ちゃん・・・?」
後藤は市井の姿にひどくショックを受けた。
後藤「ねぇ・・・なんで!?どうして!??」
市井「もう・・・いいの、暗闇なんてもういやなの!!!」
後藤「で、死ぬの!?」
市井「うん、死んだらきっと目が見えるようになるもの!」
後藤「それは違うよ!!目が見えたってどうせまた暗闇だよ!??」
市井「でも、もういやなの!!」
後藤「・・・ねぇ、、、なんで、、、」
後藤が泣き始める。
市井「どうせ後藤なんかにさ、私の気持ちなんてわからないものね。」
後藤は市井をキッとにらみつけ
「わかるわけないじゃん!!!!だから応援してるんじゃん!!!」
市井「・・・」
後藤は立ち上がると市井へ近づき
「いいよ・・・。私も死んであげる。あの世で市井ちゃんの杖になってあげるよ」
と泣きながらつぶやいた。
市井[ちょっと・・・後藤がなんで・・・?」
後藤「だからぁ!市井ちゃんが好きだからじゃん!!」
市井「・・・」
後藤「・・・ねぇ、あとは市井ちゃん次第なんだよ?」
市井「・・・」
後藤「・・・」
市井「もう、これ以上メンバーに迷惑かけるわけにはいかないの・・・」
後藤「・・・」
市井「私が死んだってさ、モー娘。はモー娘。だから」
後藤「市井ちゃんがいないモー娘。なんて・・・考えられないよ」
市井「・・・。でもね・・・。光がほしい・・・。光がほしい・・・」
後藤「モー娘。という光はもうどうでもいいの!?」
後藤が市井に涙でかすれた声でどなりつけた。
市井「・・・どうでもいいわけじゃないんだよ。でも見えないの・・・」
後藤「それは見ようとしてないだけだよ!!」
市井「・・・。」
後藤「私も同じ状態になればさ・・・。不安じゃなくなるかもね・・・」
後藤はバッグの中からペンをとりだした。
後藤「ねぇ・・・私、市井ちゃんが大好きなんだ。私、市井ちゃんのためなら失明だってできるよ?」
市井「・・・。ねぇ・・・。後藤・・・。何やってるの?」
後藤はペンシルの先を自分の目に向けていた。
市井「後藤??ねぇ、何してるの??」
後藤「・・・。」
市井「ちょ・・・。ちょっと・・・」
市井は手探りで手すりを見つけ、またのぼって、屋上に降りた。
後藤「・・・。ふぅ・・・。っ・・・。」
息をのむ後藤。大粒の涙があふれている。
市井「・・・どこ?後藤・・・。返事してよ・・・。何してるのよ?」
市井はうろたえた。
後藤「・・・」
後藤は覚悟を決めた。市井のことを考えると、こんなことは序の口だった。
市井「やめて!!!!オネガイ・・・返事して・・・後藤・・・
私・・・怖いの・・・」
------------市井はその場にペタンを座り込み、声を上げて泣き始めた。
後藤「・・・市井・・・ちゃん・・・?」
後藤は市井が泣くのを初めてみた。
後藤「市井ちゃん・・・ごめんね・・・」
市井「ック・・・。グスっ・・・」
後藤は市井の座っている場所に走り、抱きしめた。
市井「後藤・・・。後藤・・・。なにしてんのよー」
市井はさっきより大きな声で泣き始めた。
後藤「・・・こっちが泣きたいよ・・・」
後藤も大泣きした。
市井に負けないくらい大きな声で。
その夜・・・。
市井はまた悪夢を見た。
市井「また・・・暗闇なんだ・・・」
前の悪夢と同じような世界。真っ暗であった。
「紗耶香・・・。どう??現実でも、夢の中でも暗闇って言うのは?」
市井「・・・。」
「もうねぇ、あなたには暗闇しか見えないのよ。誰も助けてはくれないわ」
市井「・・・」
「・・・もう死ぬ?あなたの望んだことだもんね。」
市井「・・・私は・・・死ぬことなんでもう望まないから・・・」
「・・・ふーん・・・。」
市井「私は・・・光を取り戻すわ・・・」
「・・・孤独なのよ??あなたは一人で立ち向かうのよ?」
後藤「・・・・・・一人なんかじゃないよ・・・?」
暗闇の中にポツリと小さな光が見える。後藤真希であった。
市井「後藤・・・」
後藤「私は市井ちゃんの味方だよ。」
市井「・・・」
後藤「私は市井ちゃんの光になりたいんだ。」
市井「・・・。」
「・・・。光?もう、遅いわ。もう紗耶香には光は見えないの。」
市井「みえるよ・・・」
後藤「・・・」
市井「光が見えるよ・・・。後藤の温度の光がいるよ・・・」
後藤「もう・・・大丈夫よ」
朝。市井は朝の光を感じる。
後藤にあってから一週間が経っていた。
市井「まぶしい・・・」
しかし、目は開けられない。
診察。
医者「目の中はきれいなんだよ。あとは本人の意思かね」
市井「はい・・・。」
市井の一週間の間の回復ぶりは医者もただただ驚くばかりであった。
市井「目を開けよう・・・。」
市井は目を開けることを決意した。
市井「くっ・・・。」
しかし、恐怖心が先行して目が開かない。
市井「・・・。開けなきゃ・・・」
しかし、何度やっても無理であった。
市井「・・・これじゃだめなのよ・・・」
後藤「市井ちゃーん!!元気ぃー?」
病室に後藤の声が響く。市井の生命の源が最後となる看病に来た。
市井「後藤・・・。」
後藤「・・・何してんの?」
市井「・・・目、開けるの。」
後藤「え?マジで??超うれしいんだけど!?」
市井「いやさー、・・・あかないんだよね。」
後藤「・・・え?」
市井「怖くてあかないんだ・・・」
後藤「怖い・・・?どうして・・・?」
市井「いつ、目に何がとんでくるかわからないんだよ?」
市井は極度の恐怖症に侵されていた。
市井「私は・・・孤独だからさ・・・。不安でしょうがないんだ。」
後藤はニコっと笑い、市井の頬をさわり
「私がいるでしょ?」
といって、市井の手をギュっと握った。
市井「・・・ありがとう・・・。私、やってみるね」
後藤「・・・うん。」
市井はゆっくり目を開ける・・・。
しかし・・・。
市井「・・・だめかも・・・」
後藤「・・・。大丈夫。まだ時間はあるよ」
市井「・・・まだ不安なの・・・。後藤、隣に来て・・・」
後藤「じゃあ・・・。」
後藤は市井をギュっと抱きしめ、次の瞬間、唇にキスをした。
市井「っ・・・」
--------------瞬間であった。市井の目には
キラキラと輝く太陽の光、そして光がもう一つ、キラキラと輝いていた------------
市井「明日、退院・・・か」
市井の目は完治し、けがをしたとは思えないほどきれいになっていた。
市井「しっかし、後藤のヤツは私にチューなんかしてどういうつもりかしら・・・」
唇を指でこする。複雑な気持ちであった。
市井「まぁ、あんときはびっくりして目が開いちゃったってカンジだったけど」
同じ病室の人と話す市井。久しぶりに笑みがこぼれた。
看護婦「市井さーん、なんかね、うちの子がさ、サインをくれっていってるのよ・・・」
看護婦が黒いペンと色紙を持ってきた。
市井「いいっすよー」
市井はニッコリ笑うと色紙とペンを受け取り、サラサラとサインを書いた。
看護婦「ありがとねー」
看護婦は笑みを浮かべながら去っていった。
市井「・・・。初仕事、か?」
市井には充実感があった。
看護婦「市井さん、手紙が渡されたんだけど」
さっきと違う看護婦が市井に手紙を渡しに来た。
市井「誰からっすか?」
看護婦「さぁ、、、。なんかわかんないのよ、受付に置いてあったの」
市井「・・・へぇ・・・。」
ファンには知らされていない病院。いったいだれが?
市井は手紙を開けると、声を出して読み上げた。
「市井紗耶香様へ」
市井紗耶香さん、退院おめでとうごさいます!
市井さんが失明するかもっていう事実を知ったときは正直言って涙がでました。
そのきれいな瞳が失われるなんて、私も市井さんくらい、悲しかったでしょう。
でも、私は何もできないし。なんか私まで光を無くしたカンジだった。
市井さんが私の教育係になり、いままで市井さんに教えてもらったこと。
何にしても、とても私のタメになる事でした。
私にとって市井さんは手の届かない光でもあります。
近いようで遠い存在のようなカンジがします。
私は馬鹿だし、ダンスも下手。でも市井さんは私を支えてくれました。
今度は私が、と思ったのですが、やっぱり私、頭悪いから何もできませんでした。
ゴメンナサイ。
でも、私は頭悪いなりに今日から市井さんをもっと尊敬していこうと思います。
市井さんがなんといっても私のトモダチであり私の光ですから。
P.S.市井さんの唇は暖かかった。なんて(笑)
ファーストキス?んなわけないか。
ではまた。
後藤真希
市井「・・・。ホント頭悪い文章だよ・・・」
文章は消しゴムで消したあとがいっぱいあった。
市井「あんたが・・・私の光だよ・・・馬鹿・・・」
市井は目から滴を垂らす。
----------数ヶ月後
市井「後藤ー!メシ食いに行こう!」
後藤「あーい!」
中澤「もう焼き肉屋はやめときや?(笑)」
市井「マック!」
後藤「うん!」
市井紗耶香と後藤真希という光は今日も輝いていた
完