中澤 裕子(26):楽器店「パラダイス」経営 朝美女子校卒業生
卒業後、楽器店を経営。朝美女子校生の溜まり場になっている。
本人は楽器ができない。元ヤンキーだったのでその辺の事情は詳しい。
『朝美愛覇天』の人間と仲がいい。
安倍 なつみ(18):朝美女子高校3年 陸上部
『朝美愛覇天』のメンバー。気が弱いビビリ屋だが、陸上部所属なので
足が強い。けんかの実力もそこそこ。しかしすぐ怪我するので結構運が悪い。
飯田 圭織(18):朝美女子高校3年 軽音部
『朝美愛覇天』のメンバー。メンバーの仲で一番恐い雰囲気を持っている。
軽音部では矢口、保田とバンドを組んでいる。担当は(G.)
腕力が強いが本人は平和大好きなのでけんかは好きじゃない。
矢口 真里(17):朝美女子高校2年 軽音部
『朝美愛覇天』のメンバー。小柄でメンバー一素早い、また口も悪い。
普段からコギャルの格好をしていて、しゃべり方もギャル風。
飯田とはバンドの仲間なので非常に仲がよい。軽音部ではボーカルを担当
している。『朝美愛覇天』では情報屋としての一面も持っている。
保田 圭(19):楽器店「パラダイス」のバイト
『朝美愛覇天』のメンバー。普段はあまりしゃべらないがメンバー内では
よくしゃべる。頭が良く、とても冷静。市井がメンバーに入るまでは愛覇天のリーダーだった。
市井 紗耶香(16):朝美女子高校1年 剣道部
転校生だが入学3日で暴力事件を発生させるが、学校関係者に一切ばれずに
生活していた。その実力を買われ『朝美愛覇天』のメンバーとなり後にリーダーになる。
常に竹刀を携帯している。けんかの実力は相当なもの。
朝美町に一人暮らしをしている。実家は大富豪で母親の過保護が嫌で
この街に家出してきた。
後藤 真希(14):朝美第二中学2年 剣道部
『朝美愛覇天』に入りたがっている不良少女。
市井と仲良くなって、毎日のようにくっついて行動している。
実は市井に恋愛感情をいだいている。離ればなれに育てられた兄がいる
― プロローグ ―
とある街 「朝美町」、とても平和で何事ないような街である。しかしこの街には二つの大きなヤンキーチームが
存在する。『朝美愛覇天』と『朝美魁月』である。この2チームがいるかぎりこの街に平和は戻ることはなかった…。
そしてこの街に一人の少女が来ることで、この街にさまざまな事件が起こる。
2月18日のある晴れた朝・・・。
中澤裕子は早朝から店の前を掃除していた。
そこへ一人の見た目普通の少女がその前を通り過ぎていった。
「何や、見掛けん子やな。あんな子朝美町におったかしら?」
そんな独り言をこぼし、少女を目で追っていた。
「あっ、そう言えば真里がいってたな。今日朝美女子に転校生が来るって。その子か…。」
といい掃除を続けた。
転校少女
・・・午前8時、朝美女子高校に生徒が来始めた。そのうちに教室もにぎわい始める。
「おはよう、なっち今日転校生来るって話し聞いた?」
挨拶もせずに飯田が安倍に話しかける。
「えっ?でもそれ1年生でしょ、あんまりうちらには関係ないんじゃない?」
「そりゃそうだけど、・・・。でもちょっと気になんない?だってこんな時期に転校生
なんてあんまりいないでしょ。」
「あぁ、そうだね。あっ、真里がなんか知ってるんじゃないの?あの子いろんな情報あるから。」
そう安倍が言うと、飯田は鞄から携帯電話を取り出した。
「じゃぁ電話してみようか。……もしもし真里?、今日転校生来るらしいけどなんか知らない?」
≪うん、さっき聞いたんだけど、1年生らしいよ、前の街を家出してこの街まで来たらしいんだって。
名前は・・・、確か市井、何とかだったと思う。≫
電話の向こうで甲高い声が響く。
「ふぅん、ってゆうかあんたその情報何処で聞きつけてんの?」
飯田が不思議そうに聞く。
≪さっき友達からだよ。じゃぁね。≫
電話を切るなり飯田は、
「やっぱりあの子いろいろ知ってたよ。あのね、名前は市井。やっぱり一年生らしい。
なんか家出してこの街まできたらしいよ。」
「え〜。なんか恐いね。」
「何が?別に恐いことないっしょ。」
8時半の始業ベルが鳴ると、どのクラスにも先生たちの足跡カが近づく。1−Bでは生徒のほとんどが
転校生のうわさで持ちきりだった。その事ではなしが盛り上がり騒がしくなった教室。
そこへ、がらっという音と共に先生が入ってきたそして教卓につくなり
「今日は君たちに新しい仲間を紹介するぞ。さ、入ってきて!」
と言った。
静かに教室へ入ってきた少女は教卓までたどり着くとその持っていた竹刀袋とかばんを置き
「市井紗耶香です、どうぞよろしく。」と挨拶をする。
「よろしくめ宏!!」「一位って何だ人気投票か??こんのやろう!」「ウルセェ!!そんなくだらねぇ駄洒落言ってんじゃねぇよ。」
「うんこっ!!」「なんだそりゃっっ!!」「ここが1−Bだよ。」「分かってるよっ!!そんな当たり前のこと言うな!」
騒ぎ出したクラスの人間を尻目に先生は市井に「とりあえずそこに座って。」
と指示し、教室を出ていった。市井はそそくさとその席に着いた。
「よろしく市井さん。私鈴木って言います。」
「う、うん。よろしくお願いします。」突然声をかけられた市井は怪訝な表情で答えを返した。
そんな会話をしていると突然ドアの近くで大声が響いた。
「市井って子どこぉ?ちょっと出てきてよ。」
休み時間で暇になった、安倍と飯田が1−Bを訪問してきたのだ。
「私ですけど、なんか用すか?」
気の強い感じのしゃべり方に安倍は、少し驚いた表情で続けた。
「あの・・。ちょっと気になって来たんだけど、あなただったんだね転校生って。」
「へぇ。結構可愛いじゃん。」
飯田が市井の顔を見ていった。
「用が無いんだったら帰ったほうが良いんじゃないですか?もうすぐ授業も始まるし・・。」
「あ、ほんとだ。なっち、帰ろ。」
「う、うん。それじゃぁ」2人は教室へ帰った。
午後2時半・・・
今日は授業は終了し、飯田と安倍は速攻で「パラダイス」へ向かった。
「裕ちゃ〜ん。こんちわ〜。」と安倍が大声で呼ぶと店長の中澤が奥の倉庫で商品の整理をしながら返事をした。
するとレジの番をしていたバイトの保田 圭が声をかけてきた。
「なっちスタジオに矢口が来てるよ。」
「ありがとう、圭ちゃん。行こう圭織。」
奥のスタジオでは矢口がドラムを叩いて遊んでいた。
「お〜っす。矢口元気か!!」
その大声に気づき矢口は喋り始めた。
「圭織たち、今日転校生見てきたの??」
「見た見た、可愛かったよ。矢口とは大違いだったね。」
飯田が冗談交じりに言う。
「でもすごい気の強い感じがしたよね。」
と安倍が続けた・・。
市井は校門のところで3人ほどのこっちをにらんでいる連中に気づいた。
徐々に自分たちに近づいてくる市井に
「あんた転校生だろ。ちょっと来なよ。」と声をかけた。
「何すか?よるとこあるから早く帰りたいんですけど。」
とちょっと引いた感じで答える。
「いいからついて来なっ!!!」
これは逃げられないと感じた市井はいわれるままに後をついていった。
ついたところは朝美公園だった。
「あの、何でこんなとこまで連れてくるんすか?」
というと赤髪の一人が振り向くなり市井の頬を殴った。
「うっ!」
よろめいて血を拭う市井は続けて右腕に蹴りを受けた。思い切りその場に倒れる。
その市井に赤髪は「うちの学校に来たよそもんはこうされるんだよっ!!
倒れ込んだ市井に三人はしばらく殴る蹴るを繰り返した。
「調子に乗ってるとこうなるって言うのよく覚えときな。」といいながら続けた。
「うくっ、ぐぁっ!ふぅぅ。うはぁっ!!」と泣きながら叫ぶ市井。
と、そこへ朝美第二中の不良中学生後藤真希が通りかかった。
剣道部帰りの彼女はその後の予定も無くフラフラしていたのだ。
「あれ、あのブレザー朝美女子校の人だ。あっ!!なんか人がやられてる。朝美愛覇天の人かも、助けなきゃ。」
というと、走って公園に入りその場所まで入って行った。
「何やってるんですか?こんな所で。」と3人に声をかける。
市井への攻撃を止めた3人組みは後藤の方をにらんだ。後藤は一瞬引いてしまったが
「そういう馬鹿な事あんまりやんないほうが良いんじゃないすか?」
だんだん気が遠くなっていた市井もその声に気づき、後藤と目を合わせる。
その攻撃がとまった瞬間市井は竹刀袋をとりその中身を取り出した。そして素早く起き上がり、竹刀を構えた。
標的を市井から後藤に変えた3人はまず後藤の両腕をつかんだ。そして赤い髪の女は「あんたまだ中学生でしょ。
じゃあこんなことされてないでしょ。」と言い後藤のスカートの裾をつかんだ。
そして徐々にそのスカートを上に持ち上げていった。
「い、嫌っ!!止めてください。恥ずかしいよぉ。」
といやがる後藤の声も無視して赤髪は続けた。
「ほ〜ら。もう見えちゃうよぉ・・・。」
その瞬間赤髪は頭に大きな衝撃を感じた。そして頭からは赤い血が滴り落ちてきた。
「う、うあぁぁぁ。イテェよぉぉぉ。」とその場にうずくまる。
市井だった。市井は今日に限って木刀を持っていたのだ。そしてうずくまっている赤髪にさらにもう一降り木刀を振った。
「がっ!!」といって赤髪は気を失った。
後藤の腕を押さえていた金髪と長身は放心状態だったがまずは
「うわぁぁ!」と金髪が市井に殴り掛かった。
しかし市井は軽くよけて金髪の後ろに回ったそして金髪の背中に思い切り蹴りを入れた。
「ぎゃぁっ!!」と叫ぶとその場に倒れてしまう。
「すごい、一発で気絶させちゃった。」と後藤が驚愕の表情で言う。
すると後藤の横にいた長身は後藤の首をつかみ「おい、転校生!!この中坊殺られたくなかったらそこに手をつきな!!」
という。すでに気絶していた金髪を眺めていた市井は長身に目をむけて言う。
「は??勝手に殺せば。そんな子あたし知らないし。」
しかしこれはすでに後藤の実力を見抜いていた一意の作戦だった。その事を素早く察知した後藤は、長身の横腹に手を回し
くすぐった。「うわっ!」と後藤の首に回った手を思わず退ける。その瞬間振り向き長身の鼻を一発殴った。
「ぎゃぁ」と後ろによろめく長身に向かって市井は木刀で一撃した。
そのまま倒れる長身。
「さっき私に言った言葉そのままあんたに返してやるよ。同じ目に合いたくなかったらこんな古臭いこと止めた方がいいよ。」
と吐き捨てて飛んでいったかばんと竹刀袋を拾い歩き出した。
「ありがとう。あなたがいなかったら私やられてたよ。じゃぁね。」と後藤にお礼をする。
後藤と後藤
次の日・・・。学校は休日で『愛覇天』のメンバーはパラダイスに集合していた。
「ねぇ、なっち聞いた?昨日のグランドであった事件。」
「うん聞いた聞いた。なんかうちの学校の人3人が1人の子に大怪我させられたってやつでしょ。」
「3人とも即病院送りらしいよ。」
といつものさわがしい3人組みが雑談を繰りひろげている。そんななか店では一人の少女がベースギターをみていた。
腕と頭に雑な巻き方で包帯をしていた。頬には湿布そはり右手には竹刀袋を持っていた。
中澤がその少女に声をかけた。「なぁ、あんたどうしたん?その頭と腕。」
中澤は初めて来店する人間には大抵声をかけていた。元々話好きな性格だったのかその少女は微笑みながら答えを返した。
「アハハ、昨日ちょっと怪我しちゃって…。」と頭を軽く叩く
すると中澤ははっと何か気づいた様に聞く.
「あっ、あんたもしかして昨日の事件起こした女の子??」
「え〜、もうそんなにあの事広まっちゃってるんですか?」
そこへ保田に用があったのか安倍がゆっくり歩いてくる。
「圭ちゃ〜、あっ、あなた市井さんじゃない??どうしたのこんなとこに来て。」
「あんた、こんな所ってどういう事よ。」と中澤が突っ込む。
「あっ、どうも。確か3年生の人ですよね。」
「なっちよう聞きや・・。この子すごいねんで。実はなぁ・・・」
中澤が言いかけると「や〜、ちょっと止めてくださいよ。」と市井が急いでとめる。
「いいじゃん聞かしてよ。裕ちゃん市井さんが何なの?」と後から来た矢口が言う。
「あのなぁ、この子昨日の事件の子なんやって。やられた方じゃなくてやった方」
とばらしてしまう。
「えぇ〜。ほんとなの??」驚愕の表情で安倍が市井に聞く。「は、はぁ。一応そうすけど・・・。」
「まじぃ〜。すげぇー。こんな細い子なのにねぇ。」
「ほんなら愛覇天に入ってもらえばええやんけ。結構いい戦力になる思うで・・・。」
中澤の提案にメンバーはみな頷く。
「そうだよ入ってくれると嬉しいんだよね、どう一緒にやってくれない?」
と安倍が念を押して聞く。
「う〜ん。わ、分かりました。あっ名前は市井紗耶香って言います。今日からよろしく。」
「うん、よろしく。じゃぁ私の名前は安倍なつみ、なっちって呼んでください。この大きいのが飯田圭織、
そんでちっちゃいほうが矢口真里。そんでそこのレジの人も一応メンバーで保田圭。」
「一応って、なっち。失礼な。紗耶香ちゃんよろしくね。」
「あれ、あの子はメンバーじゃないんすか??あの朝美二中の子。
あの子私を助けてくれたんでここのメンバーの人かと思ったんですけど。」
そう聞かれると安倍は面倒くさそうに答える。
「あぁ、あの子はただ入りたがってるだけ、一応愛覇天のメンバーは中学生禁止なんだ」
「そうなんですか、でもあの子かなり実力ありますよ。」
というが安倍はもう聞いていなかった。
「ほな、これからもよろしくな紗耶香。」
そのころあの赤髪3人組は病院で自分たちの所属する「朝美魁月」のメンバーに電話していた。
「もしもし後藤さんですか?私ですが、市井紗耶香殺し失敗したっす。すみません。」
≪もういいんです、そんな事。その割には3人で行っておいて簡単に負けてしまうとは少し驚いてますよ。≫
「それは・・。っそうだ、あの時一人邪魔が入ったんです。」≪ほう、それは?≫
「もしかすると後藤さんの妹かもしれません。ジャージに後藤と刺繍がありました。
≪それは確実な情報か?≫「分かりません。しかしおそらく事実でしょう。」
≪分かった。いろいろ報告してくれてすまない。それじゃぁゆっくり休んでくれ。≫
「すいません。」