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悦びに咲く花

「、、、どう? 抱いてHOLD ON MEの振りはこんな感じかな?」
「んーー(ポーズを取ってみる)こんな風でいいですか?」
「ま、今はそんなもんね。コンサートまで未だ間があるから、
先を急ぐ事はないわ。」
「はーい、どうも ありがとうございました、市井さん」
「(髪を撫ぜ上げながら)金髪で髪が傷まない?」
「んー 、今の所はそんなに気にならないです。
えへへ、、、ん!? んぅぅぅぅぅ」
レッスン室の隅で長いキスを交わす二人
「市井さん、いきなり、、、」
「真希ちゃん 嫌?」「えぇ、そ、(しばらくためらって)
そんなこと、、、ないですけど、、、誰か人が来たら、、、」
「足音でわかるわよ。心配性ね。胸がどきどきしてるわよ」
「あぁ、、」「私より大きいみたい、、、くやしいわ、、、」
「そ、そんなことないです、、、はぁ、、」
紗耶香の手が後藤のトレーナーの下に滑り込み、胸をゆっくりと
まさぐりはじめた。

あのとき、初めてのコンサートを控えてダンスを全部覚えなきゃ
いけなくて、毎日毎日レッスンばかりの日でした。
オフの日も家で自主練やったんです。そんななか、
初めてのコンサートが間近にせまったある日、
先生の都合でレッスンを3日ぐらい受けられない日があったんです。
家で自分で練習してたんだけど、なんか自身がなくて、、、
いつも お世話になっている市井さんに電話して相談してみました。
そしたら市井さん、「今から後藤の家にへたれの踊り、見に行ってやるよ」
って例の高ビーな口調で行って、夕方やってきました。
 その日はほかの家族が法事で出払ってて、あたしだけ練習のため残って
たんです。え、なにか期待してたんじゃないですって?
やだー、そんなことないですよー。ほんと、コンサート前で不安で不安で
しょうがなかったんだから、、、、

でも、、、たしかに、、、メンバーの目を盗んで キスしたり、
抱き合ったり、、、今から思うとおままごとみたいですけど、、、
そのぬくもり、、あたし嫌いじゃなかったんです。
 なんとなく市井さんが迫ってくるのを待ってる気分もなかったわけじゃ
なかったし、、、もしかしたら、心の奥底で なにか起こることを、
そして、、、ああなることを望んでたのかもしれない。

「うぃーっす!」市井さんがはじめて実家にきてくれました。

「うでの上げ方がちがーう」でこぴん。
「お前そこさっき間違えたばっかだろうが!」パチ!平手打ち!
「お前、ホントとろいな。もっとリズムに乗れよ」髪を捕まれて
壁に打ち付けられました。
「いい加減にしろ! このボケ!」ついに切れた市井さんがあたしの
おなかに目一杯蹴りを入れてきました。
 あたしはベットにふっとびそのままうずくまりました。
 こみ上げくる胃液を押さえ込みながら悔しさと恐怖で涙が出てきました。
どうして、どうして、家族がいない日に、いくら本番直前だからって
こんな悪魔みたいな人を家に呼んだんだろう、
あたしってなんてばかなんだろう、、、
情けないけど、こみ上げてくる涙を抑えきれず あたし、大泣きし
はじめてしまいました。

しばらく静かな部屋に私の泣き声だけが響いていました。
「ごめんね」えぇ?
「ごめんね」あたしは耳を疑いました。でもそれは確かに市井さんの
声だったのです。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をあげると、
そこには穏やかに微笑む市井さんの顔がありました。
さっきまでの鬼の形相が嘘だったように。
「ごめんね、痛かった、そんなにマキに痛い思いをさせるつもりじゃ
なかったの、あたし、やりすぎたみたい、ごめんね」
 理性があたしにストップをかけようとします。
だけど、市井さんの菩薩のような微笑みに私は吸い込まれていきました。
「ごめんね、マキにうまくなってほしかったから、手加減するの忘れちゃった。
ごめんね、あたしのこと 嫌いになったでしょう?でも、これだけは
信じて欲しいの マキのこと嫌いでこんなことしたんじゃないの。本当よ
おねがい、あたしのこときらいにならないで。マキにきらわれたら、 私、、、」
 「そ、そんなこと、ないでしゅ、、、、私、、、市井さんに感謝してます」
 涙声のあたしに「ほんと!お世辞でもうれしいわ」
 「お、お世辞じゃないでしゅ、ほんとうに、、、」
魅入られたように市井さんを見つめる私に、ゆっくりと市井さんの腕が
伸びてきました。理性が発する警戒信号が胸の動悸と重なって消えていきます。
市井さんと唇を合わせ、口に入り込んだ舌に自分の身を任せました。
母親の母乳を貪るように、市井さんの唾液を飲み込んでいきます。

ベットに倒れ込むと、市井さんが耳元で囁きました。
「ねえ、、、、マキの一番大切なもの もらってもいい?」

すぐに意味を察したあたしは、とまどいながら小さな声で
「はい、、、」と頷きました。
 そのときのサーヤ様の嬉しそうな顔は今でもはっきりと覚えています。
唇の淫らな血のような赤い色まで

こうして私は悪魔に身体を心を魂を 全てを捧げました。 悦びとともに、、、