恋のダンスサイトのダンスレッスン中。夏まゆみ先生の声が響く。
「ハイ、ワンツースリーフォーファイブシックスセブンエイト」
相変わらず後藤はダンスが苦手。
「ハイ、後藤だけ居残り!!!」
一瞬、市井の口元が緩んだ気がした。
他のメンバーは皆先に帰り、後藤と夏先生だけが残ってレッスンをしている。
「違う、そうじゃないって。何回言ったら分かるの!?」
「・・・すみません」
・・・
「ストップ!!やる気あるの!?後藤!!!」
なにやら、いつも以上に厳しい指導である。
終いには涙を浮かべつつレッスンに取り組む。
その様子を別室から覗いているのは、そう市井である。
「うまくやってくれてるようね、センセイも・・・。」
数日前のことだった。
「あのー、夏先生、質問があるんですけど」
「何?市井。」
「・・・こういうのはお好きですか?」
「あんた、突然何するの!!いや、やめて!!」
いつもは厳しい夏先生だったが、本気を出した市井の敵ではない。
簡単に縛り上げられ、深夜のスタジオに幽閉された。
「・・・あんた、こんなことしてどういうつもり!?」
「フフフ、こうなってしまっては誰も助けにきてくれませんよ。」
「警察に突き出してやる!!!」
「出来るかしら?」絶叫する夏先生の口を市井が塞ぐ。
「・・・うっ・・・えっ、そんな・・・・」
夏先生の体を、今までに味わったこともないような快感が襲った。
「いかがかしら、センセイ。私は・・・。」
言葉もない夏先生。
「さて、いつもは厳しいアナタがこんなに淫乱な女だったと、
他のメンバーに言おうかしら?」
「・・・いったい何が目的なのよ」
「ようやく分かっていただけたようね。」
後藤を叱責する声が次第に大きくなっていく。
「この馬鹿、何回やればできるんだい??」
「セ、センセイ、やめてください!!」
「はあ、はあ、このメス豚め!!!」
夏先生の手が後藤の首筋に伸びる。
「いやあ、センセイやめて・・・。」
そこが市井の狙いであった。
自分以外に関係を持ったことのない後藤に経験を積ませ、
より自らの理想に近づけようという計画である。
そのためにはより親しいメンバーではなく、夏先生を手なづける必要があったのだ。
しかし、夏先生が行為に及ぼうとしたとき、後藤は思わぬ行動に出た。
『助けて、あたしにはサーヤ様が・・・』
なんと、夏先生を振り払い、部屋を飛び出していったのだ。
「???」市井は不可解に思い、夏先生に事情を尋ねた。
「どーいうこと?」
「思いのほか、後藤のアナタに対する気持ちは強いってことかしら・・・。」
「ふーん。」心中複雑な市井だが、きわめて平静を装うと、こう言った。
「・・・とにかく、約束は約束だものね。」
こうして、ダンスレッスンのたびに、夏先生をも相手にしなくては
ならなくなってしまった市井であった。
部屋へ帰ると後藤が目を赤くしていた。
「どうしたの??」市井が訊くと顔を隠す後藤。
そして突然、後藤が市井に抱きつく。
普段なら鉄壁の上下関係を保たねばならない所だが、今日ばかりは仕方ない。
市井は、後藤を娘のように優しく抱きしめると、そのままベッドへ誘った。