某テレビスタジオ--------
テレビ収録中のモーニング娘。
今日は何かとハードスケジュールでこれが最後の仕事であった。
恋のダンスサイトの収録。
市井はこの日、足の調子が悪くこの時すでに感覚がなくなりはじめていた。
・・・よろっ
とたんに市井は床に倒れ込んだ。転んでしまったのだ。
「大丈夫ですか?」スタッフなどメンバーもろもろが駆け寄る。
市井が答える「あ、大丈夫ですよぉ、どうもすみませんでしたぁ・・・」
と、市井が辺りを見回すと、目に入ってきたのは
疲れて今にも倒れそうな後藤。
マラソンの練習で後藤の体も限界だった。
「たてる?」とスタッフに聞かれ
「あ、はい」と市井が答えた。しかしまたよろめいてしまった。
倒れ込んだのは、後藤の足下。疲れ果てた後藤の顔が市井を見下ろした。
「真希、手を貸してくれないか?」小声で訪ねる。
しかし、後藤は「すみません、サーヤ様、私も倒れそうなんです」
と拒んだ。市井はちょっと腹を立たせながらも理性を押さえた。
後藤の疲れが市井にもわかっていたからだ。
後藤は今日は何に関しても一所懸命に取りかかっていたからだ。
「中断しましょうか・・・」
和田Mとスタッフが話し合う。結局中断となり、明日以降撮影となった。
楽屋に戻ったモー娘。メンバーの顔は疲労困憊であった。
後藤は楽屋に戻った拍子にソファーに座り、爆睡してしまった。
何分か遅れて女性スタッフの手を借り、楽屋に戻った市井。
楽屋についた市井の目には悔しさで涙がうっすらと浮かんでいた。
「さやかー、だいじょぶ?」とメンバーが訪ねると
「あ、、、、うん、、、だいじょぶ!」と強がって見せた。
なおも爆睡している後藤の横に座り、ふぅっとため息をつく。
市井と後藤を残し、メンバーは帰路へついた。
「おい、真希、いつまで寝てるんだよ、帰るぞ」
「ん・・・あ、、、サーヤさ、、、寝ちゃったんですか?私」
「バカ。いいから早く着替えろよ、、あ、真希、ちょっとつき合え」
「あ、はい」
残っていたスタッフが
「病院へは行かなくて良いの?」と訪ねると
「今から後藤と一緒に行こうとしてたトコロです」
・・・
そして後藤の肩を借り、市井たちは某病院へと足を運ぶこととなった。
--------某病院
辺りは夜に満ちていた
・・・「どうやら膝に炎症があったらしい」
あまりにハードな仕事の毎日だったからだ。
「入院しますか?」と医者が訪ねると
「明日も仕事があるのでみんなに迷惑をかけるわけいきません」
と市井は答えた。しかし後藤は気を使い
「メンバーだって心配してたから一日ぐらい休んだって平気ですよ!
休んだほうがいいですよぉ!」と市井にささやいた。
「バカヤロウ。オマエじゃないんだよ。そんな甘えてられっかよ」
「でも・・・」「いいよ、帰るよ」
痛み止めの飲み薬と湿布をもらった市井は後藤といっしょに
タクシーを拾い、帰路についた。
「サーヤ様、今日は私、泊まりますよ」
「ん?あ、ああ、、、別にいいけど・・・。オマエから言い出すなんて、ちょっとビックリしたよ」
「え・・・?い、、いや看病ですよ看病!」
市井宅についたのは10分後であった。
カバンからおもむろに鍵を取り出し、ドアをあけた。
足の痛みが表情から伺えた。
市井宅に入るとなにやら、香水の甘い匂いがした。
部屋はキャラ的には想像のつかない、かわいくレイアウトされた部屋であった。
「あー、はらへった。後藤、何かあるか?」
「ピスタチオ・・・なら・・・」
「・・・ふーん・・・」
後藤が部屋を見渡すと背丈ぐらいの長さの鏡があり
その前に青いギターがおいてある。すでにキズだらけ。
市井は一人、日々練習を重ねていた。
「弁当でも買ってこいよ?近くにコンピニあるから」
「あ、はい!」
後藤はいやな顔一つせずむしろうれしそうに弁当を買いに出かけた。
バタン・・・玄関が閉まる。
「うっ・・・」
激痛が足に走る。いままで後藤の前では我慢していたが
彼女の足には先ほどから激痛が走っていた。
「うう・・・」
脂汗が出る。
「ヤバイよ・・・。痛い・・・。痛いよ・・・。」
彼女の目にうっすらと涙が。今日二回目だ。
となぜかしばらくしない内に後藤が家へと帰ってきた。
しかし、後藤の様子がおかしい。
涙目であった。外で何があったのか・・・。
「おそわれそうに・・・なっちゃいましたぁ。。。」
後藤の膝はガクガクにふるえていた。
しかし後藤は市井の変化に気付いていない。
「こっちに追っかけてきたんです・・・。もしかしたらここに入ったこと気付かれたかも」
市井の返事がない。
「サーヤ、、、様?」
市井は足の激痛に耐えきれず意識を失ってしまった。
「サーヤ様!!」
後藤はよりいっそう不安になった。変質者のこと、そして市井のことで。
「ええ・・・?」
後藤の眼にうっすらと涙が浮かぶ。何がなんだかわからない。
・・・とその時。
ドンドン!ドンドン!!
ドアをたたく音が部屋の中に響いた。
後藤は震え上がった。
なんとも荒々しいドアの叩き方。。。
なんと、鍵がかかってない。
後藤は焦った。鍵を閉めなきゃ、とっさにそう思った。しかし・・・。
ガチャッ!
後藤が見たモノ・・・。それはさっきの変質者だった。
後藤は混乱し、泣き叫んだ。
「はぁ・・・。あれ?どっかでみたことあるなぁ、この娘・・・」
一人かと思っていた男は2人、3人と部屋に入ってきた。
「ああ、こいつゴトーマキじゃない!?あとイチイがいるぜ!!」
「ひょーっ!生で見たよ!!ワクワクすんな??」
後藤はうすうす危険に気付いていた。
「や・・・や・・・め・・・こないで・・・。」
もはや涙声で声が出ない。
「ほー!そそるな!イチイはあとで、最初にこいつだ」
「おう!あー、ラッキー!モー娘。なんて・・・カハハ!!」
「おい、やれ!!!」
男たちが近寄る。後藤は抵抗する。しかし、力が入らない。手と足をもたれ、寝室へと運ばれた。
バン・・・ベットに投げ捨てられた後藤。
「・・・脱がせろ」
「キャ・・・うっ・・・」
男はおもいっきり後藤の口元にキスをする。声が出ない・・・。
後藤の眼からボロボロと涙がこぼれた。
一枚、二枚と脱がされ、下着に到着した。
「ああ・・・。これがモー娘。か・・・。我慢できねえ!」
下着を脱がされる後藤。泣きすぎでひきつっていた。
・・・市井が目を覚ます。
「うう・・・痛い・・・」
と、市井は寝室から聞こえる声を不審に思う。
「後藤・・・?」
異変に気付く。なにやら男の声も混ざっている。
「ごと・・・くっ・・・」
足が痛くてたまらない。しかし市井は歯を食いしばる。
青いギターを片手に持ち、ギターに話しかけた。
「守ってね・・・」
キズだらけのギターを持ち、寝室へと入室した。
ガチャ・・・
寝室には
真希に殴りかかる男がいた
泣き叫ぶ真希がいた
「おい・・・」
市井ばボソリとつぶやいた。
怒りは頂点へと達し、これっぽっち不安はなくなっていた。
「おいおい、市井が来たぜ!オレもらったよ!」
男が笑いながら言う。
「ささ、市井、こっちきて気持ちよくナローゼ?」
市井は拳を握る。
「おい、真希をはなせ・・・」
後藤はもう男と一つになる直前であった。なんとも酷い図であった。
「はぁはぁ・・・いくよ、、、真希ちゃぁん・・・」
「てめぇ・・・。ぶち殺してやるよ・・・」
市井が眼を鋭くして言う。そして、後藤達の方へ走っていく。足の痛みも感じない。
次の瞬間、
「バキッッ」
市井はもっとも後藤に近かった男の頭にギターをたたきつけた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
あたりは血でいっぱいになった。
「後藤、服着ろ。急げ」
「・・・(コクリ)」
後藤は恐怖に耐えながら、うなずいた。
「このアマァァァッッッ!!!」
パァァァァン・・・・・・
いやな音が響く。誰もが予想しなかった音・・・。そして予想したくなかった音。
---------銃声であった。
「がっ・・・」
市井の肩を銃が打ち抜いた。
「げほっげほっ・・・、、、うぅ・・・。ッ・・・げほげほ・・・」
市井の意識が遠のく。
「何撃ってるんだよ!!バカじゃねーのか?」
「あ・・・あああ・・・」
男達も混乱していた。
「お、おい、逃げるぞ、と、とりあえず、そいつも背負っていけ!」
というと男たちはさっき殴られた男を背負って逃げようとした。
市井が力をふりしぼり、血のついたギターをにぎり立ち上がった。
「ぜ・・・絶対許さない・・・」
再度ギターを振り上げる、そして男の頭上に----------
しかし
パァァン!!
「・・・」
-------------市井の腹を銃は撃った
それと同時にギターは男の頭を殴り、男達は血を流したままにげた。
「いやぁぁぁ!!サーヤさまぁぁぁ!!!!」
服を着終えた後藤は足をふるわせたまま、市井へと近づいた。
「あ・・・後藤・・・けがは・・・ないの・・・?」
後藤が答えた
「びょ・・・病院・・・病院・・・」
「おい・・・落ち着けって・・・私は・・・大丈夫・・・だか・・・ら」
後藤は号泣した。そして市井をかつぎ、病院へと歩いた。
いつもは強い市井-----------
しかしこの時はとても軽かった。
それぞれの思い-----------------------------
「・・・真希の・・・背中・・・こんな暖かかったんだ・・・」
「サーヤ様・・・こんな小さくて、軽かったなんて・・・」
「はぁ・・・真、真希・・・お花見でも行きたいな・・・」
「はい、行きましょう!二人で行きましょう?」
「あー、早く行きたいなぁ・・・ふぅ・・・。」
後藤はあふれる涙が抑えられなかった。
「真希・・・う・・・私って・・・こんな弱かったんだ・・・ね・・・」
「強いですよ。とっても強いです・・・!」
「なぁ・・・真希・・・私がいなくなっても・・・大丈夫か?」
「・・・え・・・?」
「大丈夫・・・か・・・?」
「そんな・・・うえっ、ヒックヒック・・・」
「泣くなって・・・ごめんな・・・ごめんな・・・」
「ヒックヒック・・・」
「でもな・・・もう・・・ゲホゲホっ・・・やばい・・・かもな・・・」
「えっ・・・ヒックヒック・・・サーヤ様・・・?」
「うっ・・・。そ、そうだ・・・。私がいなくなったら・・・悲しんでくれるか?」
「うえっうえっ・・・ヒックヒック・・・うわぁーん・・・」
「・・・泣くなよ・・・泣くなよ・・・うう・・・泣かないでよぉ・・・」
市井は熱い涙をこぼした------------
「ヒックヒック・・・サーヤ様ぁー・・・ワーン・・・」
「うえっ・・・うえっ・・・真希ぃ・・・」
「グスッグスっ・・・」
---------時は歩む。運命の時が来た
「ゲホゲホっっ・・・。うっ・・・」
市井は大量に吐血し、後藤の背中から崩れ落ちた。
「サーヤ様・・・?いや、いやです・・・いやいやいや・・・」
「はぁはぁはぁ・・・もう・・・無理だ・・・ごめん真希・・・」
「いやぁ、いやいやいや・・・・」
「ふふ・・・オマエなら・・・大丈夫・・・一人でも」
「だ・・・め・・・です・・・ヒックヒック」
市井は後藤の頬に軽くキッスをした。
「・・・もう・・・大丈夫だな・・・」
後藤は号泣した。そして市井も号泣、、、。
「サーヤ様ぁ!!」
「バカ・・・最・・・後ぐらい・・・さやかで・・・いいよ・・・」
「ヒックヒック!さやかぁ!死なないでよぉぉぉ!!!」
「ふふ・・・あり・・・がとう・・・さよなら・・・真希・・・」
「サ・・・サーヤ・・・さ・・・」
「うぅぅ・・・ぅぅぅぅ・・・ぅぅぅぅぅ・・・」
--------------その日は満月がきれいな日で
--------------彼女達の頭上には夜に輝くの桜の木が一本
満開であった--------------------------------------
数ヶ月後
モーニング娘。のニューシングルのダンスレッスン。
後藤「あぁー、全然だめだぁ・・・」
「後藤!またダメだね!また特訓しなきゃねぇ・・・」
聞き覚えのある声。市井だ。
振り返ると彼女がニコっと笑う。
まばたきをするとその姿はなかった
後藤は涙をこらえダンスの練習を続けた。
【完】