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みちよの秘密日記

7月某日 天気:晴れ。
今日、朝っぱらから家に宅配便が届いた。送り主を見ると保田圭とある。
圭ちゃんが何故アタシに宅配便など送ってくるのだろう?しかもこの宅配便
は、異様な程大きい。人間でも入りそうな大きさだ。
恐る恐る箱を開けてみる。ガムテープがしっかりと貼ってある為、開けるのに
少し苦労した。
「きゅ〜ん…」
中から出てきたのはなんとアザラシだった。首には『ごま』と書かれた首輪をつ
けている。
アザラシは突然の環境の変化に驚いているようで、小さくなって部屋の隅に
転がっていった。

7月某日 天気:晴れ
とりあえず、圭ちゃんに電話をしてみる。
『ああ、アレ?ウチじゃ飼えなくなっちゃったから。で、みっちゃんなら飼ってくれ
 るかなって思ってさ』
だそうだ。
要するに、このアザラシは圭ちゃんに捨てられたのだ。まだアタシに怯えている
アザラシを見ると、なんだか可哀相になってくる。
仕方がないので、アタシはこのアザラシを飼う事にした。今ウチにペットはいな
いし、1人暮しだ。問題はないだろう。


7月某日 天気:晴れ
アザラシはまだアタシに怯えているようだ。部屋の片隅にうずくまったまま、こち
らの様子をチラチラと警戒している。
ふと、圭ちゃんから送られてきた宅配便の箱を覗くと一枚のメモが入っていた。
「ごまの飼育方法
 1:食事は1日3回(朝・昼・晩)みっちゃんと同じものをあげれば良い
 2:スイカが好物なのでたまにあげてね。(あげすぎには注意)
 3:ノドの下を撫でると喜ぶから、機嫌が悪い時は撫でてあげて
 4:ボールで遊ぶのが好き。1日1回は遊んであげる事
 5:1週間に2、3回は身体も洗ってあげて。ノミとかついちゃうから
                          以上、後はよろしくね 圭」
とりあえずアタシは、このメモをファイルに綴じた。

7月某日 天気:雨
アザラシは次第にこの環境に慣れてきたらしく、部屋の中を興味津々と言う
様子でうろうろし始めた。
でもアタシにはまだ少し警戒しているようで、御飯をあげてもアタシの前では
食べようとはしない。
暇つぶしにボールを投げてみる。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!」
必死になってボールにじゃれついているアザラシはかわいい。今日は夕方まで
アザラシとボールで遊んだ。

7月某日 天気:晴れ
今日はアザラシの身体を洗ってあげる事にした。
「きゅ〜ん、きゅ〜ん!!」
やはり水が好きなようで、風呂場の中を大喜びで転がりまわっている。
「きゅ〜……」
はしゃぎすぎて、風呂場の壁に頭をぶつけた。少しマヌケなアザラシだ。これ
からはこう言う事のないよう、しっかり見ていてあげなくてはいけない。

7月某日 天気:曇り
アザラシは時折アタシの足元に近寄ってくるようになった。どうやら、アタシが
自分に危害を加えるような人物ではないと言う事がようやく分かってきたらし
い。
「きゅ〜!!」
ボーっとしていたら、足元をうろうろしていたアザラシを踏んでしまった。
アザラシは転がるようにアタシから離れていってしまった。折角懐き始めてきた
のに、また一からやり直しだ。
壁に擦り寄ってこちらを警戒しているアザラシに向かってアタシはゴメンと謝った。

7月某日 天気:晴れ
アザラシは、部屋の中をうろうろしていて、時折ソファーなんかをガジガジかじ
っていた。
でも、アタシの姿を確認するとさっと壁の方へ逃げていく。
やはりこの間踏んづけてしまったのが原因らしい。
なんとかしなければいけないと思い、スーパーに行きスイカを買ってきてアザラ
シにあげてみる。
「きゅ〜ん!きゅきゅきゅ〜ん!!」
アザラシは美味しそうにスイカを食べ始めた。さっきまでアタシを警戒していた
姿がウソみたいだ。
これから、冷蔵庫には常にスイカを入れておこうと思う。

7月某日 天気:晴れ
夜1人でお酒飲んでいると、珍しくアザラシがアタシに擦り寄ってきた。
「きゅ〜ん」
どうやらお酒を飲んでみたいらしい。アザラシはお酒など飲むのだろうか?と思
いながらも、試しに一口飲ませてみる。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!」
どうやらおいしいらしい。こんなアザラシは初めてみた。そう言えば、アザラシが
アタシにこんな風に寄ってくるのは初めてだ。
とりあえずアタシは、アザラシの餌付けに成功した。

7月某日 天気:雨
アザラシは大分アタシに懐いてきたらしく、アタシの後ろをチョコチョコとくっつい
て歩くようになった。
正直言ってかわいいと思う。
ソファーの上で眠っているアザラシにアタシはそっと「ごま」と呼びかけてみる。
「きゅ〜ん?」
ごまはパチッと目を開けると、アタシの方を振り向いた。目がまだ眠そうだ。
アタシが何でもないよ、と言う感じで背中を撫でると、ごまはまた眠り出した。
本当によく寝るアザラシだ。

7月某日 天気:晴れ
最近、仕事から帰るとごまが玄関まで出迎えてくれる。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!きゅ…きゅ〜ん!?」
時々勢いをつけ過ぎて玄関から飛び出してしまう事もある。でも、出迎えてく
れるのはやはりうれしい。
今夜はご褒美に身体でも洗ってあげよう。

7月某日 天気:晴れ
ごまが風邪を引いた。夏風邪はタチが悪いので心配だ。
「きゅ〜!きゅ〜!」
お医者さんを呼んで注射を打ってもらう。注射が恐いらしく、ごまは必死の抵
抗を見せたが治療の為だ、仕方がない。アタシはごまの身体をしっかりと押さ
え付けた。
「きゅ〜…きゅ〜…」
熱にうなされている。苦しそうだ。明日にはよくなっていて欲しい。

7月某日 天気:曇り
ごまの熱はまだひかない。食欲もほとんどないらしく、好物のスイカにも手をつ
けない。
「きゅ〜ん…」
アタシの姿が少しでも見えなくなると、ごまはアタシを呼ぶ。病気の時と言うの
は心細いものだ。
今日は仕事がある。ごまの鳴き声に後ろ髪をひかれながらも、アタシは仕事
に向かった。
「きゅ〜ん…、きゅ〜ん…」
仕事中、ごまの声が聞こえたような気がした。

7月某日 天気:晴れ
ごまが全快した。元気に部屋中を転がっている。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!!」
今までのうっぷんを晴らすかのようにスイカを食べている。今日1日で丸一個
のスイカを食べてしまった。
「きゅ〜…、きゅ〜…」
食べ過ぎでお腹が痛くなったようだ。圭ちゃんのメモに、スイカのあげすぎに注
意と書いてあった事を思い出した。

7月某日 天気:雨
今日、裕ちゃんが遊びに来た。ごまと大喜びで遊んでいる。
「きゅ〜ん!きゅきゅきゅ〜ん!」
裕ちゃんの投げたボールを必死で拾いに行く。楽しそうだ。
アタシに懐くのには時間がかかったのに、裕ちゃんにはもう懐いている。
少し、裕ちゃんに嫉妬した。

7月某日 天気:晴れ
「きゅ〜…」
夜中にふと目を覚ますと、ごまがアタシのベッドの下で鳴いている。
「きゅ〜ん、きゅ〜ん…」
眠れないらしい。寂しそうな目でアタシを見つめている。
やはり、寝る前に怪談話をしたのがまずかったようだ。すっかり怯えてしまって
いる。
ごまは意外と恐がりだ。
仕方がないので、今夜はごまと一緒に寝る。
少し狭いが、寝る前に怪談話などしてしまったアタシが悪いのだ。これからは
気をつけよう。

7月某日 天気:晴れ
ごまの為に、ビニール製のプールを買った。
「きゅ〜!きゅ〜!きゅ〜ん!!」
プールの中で飛び跳ねている。どうやら気に入ったようだ。
「きゅ〜ん…」
水鉄砲をかけると嫌がったので、ぞうさんジョウロで頭から水をかけてみる。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!!」
狭いプールの中をバシャバシャと転がっている。
おかげでアタシまでずぶ濡れになってしまった。でも、ごまが喜んでくれて良かっ
た。

7月某日 天気:曇り
今日、初めてごまを怒った。
アタシのお気に入りの時計を壊してしまったのだ。
「きゅ〜…」
ごまは怯えているのか、部屋の隅の方でチラチラとアタシの様子を伺いながら
小さくなっている。
「きゅ〜、きゅ〜…」
アタシはごまと目が合うと、すぐに目をそらした。あの時計は友人からもらった
大切なものだ。いくらごまでも簡単に許すわけにはいかない。
その日、ごまは一度もアタシに近寄らなかった。

中澤「ごまちゃんまた来たで〜☆」
ごま「きゅきゅ〜ん、きゅ〜ん」
平家「裕ちゃん!かわいがるんもいいけど、スイカあげすぎんといてやー。
   裕ちゃんが来るといつもスイカあげすぎてお腹壊すんやから・・・」
中澤「わかぁてるって、ごまちゃんはスイカいつもやる中澤おねーちゃんとみっちゃんどっちが好きなんや?☆」
ごま「きゅ〜〜?・・・・」
     (少し考えた後、平家の方に走り寄るごま)
平家「みてみ〜裕ちゃん。ごまちゃんは人間の中身が分かるんや!ねーごまちゃん☆」
ごま「きゅ〜ん!!」
中澤「人間の中身って・・・わたしは動物にも否定されとんのかい・・・」

7月某日 天気:晴れ
今日もごまはアタシには近寄らない。
怯えたような顔で、ずっと部屋の隅にうずくまっている。食事もとっていない。
「きゅっ!!」
アタシが近づくと、ごまは身体を強張らせた。また怒られると思ったのだろう。
そんなごまを見ていると、時計くらいの事で怒ってしまった自分が恥ずかしくな
った。
ゴメンね、ごま。もう怒ってないよ。アタシはそっとごまを抱きしめた。
「きゅ〜?」
ごまは不思議そうな顔でアタシを見ている。
今夜はごまと一緒に寝よう。怒ってしまったお詫びだ。

7月某日 天気:晴れ
天気が良かったので、ごまを連れて公園に行った。
「きゅ〜……」
ブランコに乗せたら、バランスがとれずに落ちてしまった。
「きゅきゅきゅ〜〜ん!!」
滑り台は気に入ったようだ。何度も何度も滑りたがる。そのたびにアタシは、
ごまを抱えて滑り台に登る。
腰と腕が痛い。帰りにサロンパスを買って帰ろう。

7月某日 天気:晴れ
家のベランダにノラ猫が来た。よく来る猫なので、冷蔵庫の中にあったスイカ
をあげる。
「きゅ〜!!」
ごまがいきなりアタシに体当たりをしてきた。ノラ猫は、ごまに驚いて逃げてし
まった。
「きゅ〜…、きゅ〜…!」
ごまを叱ると、寂しそうな顔でアタシに擦り寄ってきた。
どうやら自分の事もかまって欲しかったらしい。ごまはヤキモチ焼きだ。

矢口「平家さんおじゃましまーす。。きゃ〜〜、かわいぃぃぃぃ」
ごま「きゅ〜?」
平家「今日は矢口ちゃんを連れてきたで。ごま、可愛がってもらいいや」
 (ごま、ビニールのプールに走る)
平家「矢口ちゃん、ごまはプールで遊びたいみたいやから」
ごま「きゅ〜!きゅ〜ん!!」
矢口「ごまちゃん待って〜」
 (ごまと矢口で水をパシャパシャ遊ぶ)
ごま「きゅ〜!!!!!」
 (ごま、突然平家のところに走り寄る)
平家「どうしたん?!!ごま!そんなに怖がって??」
ごま「きゅ!きゅ〜ん!!きゅ〜ん!」
平家「あ・・・矢口ちゃん、水で化粧落ちてるで・・・」

7月某日 天気:雨
最近、ごまはテレビに夢中だ。
アンパンマンがお気に入りらしい。でも、中身を理解しているのだろうか?単
においしそうだから見ているだけなのかなと思う。
「きゅ〜!きゅ〜!!」
アンパンマンの時間になると、いつもごまはアタシを呼ぶ。自分でテレビをつけ
る事ができないのが、ごまの欠点だ。

7月某日 天気:晴れ
「きゅ〜〜〜ん!!!」
ごまがベランダから落ちた。洗濯物を干していたので、ごまにまで目がいかな
かったのだ。
急いでお医者さんに連れていく。
「きゅ〜…、きゅ〜…」
ごまの鳴き声がだんだん小さくなっていく。顔色も悪い。
ごま!死なないで!

7月某日 天気:晴れ
ごまの緊急手術が始まった。
「きゅ〜…」
ごまの苦しそうな鳴き声が頭の中に響いている。
なんで、もっとごまの事をしっかり見ていてあげなかったのだろう。
ごまに触りたい。撫でてあげたい。ギュッと抱きしめてあげたい。
アタシにできるのは、ただ祈る事だけだった。

7月某日 天気:晴れ
ごまの手術が終わった。
全身を強く打ってはいたものの、命には別状がないそうだ。
ごまはまだ麻酔が効いていて、よく眠っている。
アタシはごまの顔にそっと触れる。
温かい。
ごまは寂しがり屋だ。ごまが目を覚ますまで、今夜はずっと傍にいよう。

7月某日 天気:晴れ
ごまは順調に回復している。もう、じっとしているのもイヤなようだ。
「きゅ〜ん!きゅ、きゅ…きゅ〜〜!!」
ベッドから落ちた。もう少しケガをしていると言う事を自覚して欲しい。
「きゅ〜…」
アタシが病室を出ようとすると、ごまはアタシを引きとめる。
可哀相だけど、アタシにも仕事がある。明日はスイカを持ってこよう。

7月某日 天気:曇り
裕ちゃんがごまのお見舞いに来た。何を考えているのか日本酒持参だ。
「きゅ〜!きゅ〜ん!!」
病室でお酒なんか飲んでいいのだろうか?ごまはともかく、裕ちゃんはまったく
気にはしていない様子だ。
そう言えば、圭ちゃんにもごまの入院を連絡したのだが、お見舞いに来る気
配はまったくない。
前の飼い主なのに、どうしてだろう?

中澤「みっちゃん、ごまの看病で最近飲んでへんやろ?持ってきたでー」
平家「裕ちゃん!!ちょっと場所考えてよ!いくら私と裕ちゃんの中でもそれはキれるでー!!」
ごま「きゅ〜ん・・・」
中澤「ほらほら、ごまはみっちゃんのこと心配してる見たいやで、堅いこと言わずに、な?」
ごま「きゅ〜ん!!!!」
中澤「なんやごまも飲みたいんか?」
ごま「きゅきゅ〜ん!!」
平家「・・・もーしょうがあらへんや。ごまも裕ちゃんもちょっとだけやぞ」
 (三人で飲む、くい)
ごま「きゅ?」
平家「何これ裕ちゃん?めちゃくちゃまずいで・・・」
中澤「いやな・・・来る途中で少し自分で飲んでしまって、付け足すために
   病院のエチルアルコール混ぜたんやが・・・ダメか?」

7月某日 天気:晴れ
ごまが退院した。
「きゅ〜!きゅ〜!!」
久々の我が家に喜んでいる。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!!」
ケガが直ったばかりなのだ、ソファーの上で飛び跳ねようとするのだけは必死で
阻止した。
やはり、ごまがいる家がアタシの家だ。そう思う。

7月某日 天気:雨
圭ちゃんにごまが退院した事を報告する。
『へー、退院したんだ。良かったじゃん』
妙にそっけない。圭ちゃんはごまをあまりかわいがっていなかったのだろうか?
「きゅ〜?」
アタシはごまをそっと抱き上げた。大丈夫、アタシはごまを捨てたりしないから。

7月某日 天気:晴れ
ごまと一緒にお風呂に入る。
「きゅ〜…、きゅ〜ん…」
湯船に入れてみたが、やはりお湯は嫌いなようだ。
仕方がないので、洗い場で遊ばせておく。
「きゅ〜……」
シャワーのホースが首に絡まっている。やはり、ごまから目を離すのは危険だ。

7月某日 天気:晴れ
今日はごまと散歩に出かけた。土手の方に行ってみる。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!!」
ごまは土手を転がり落ちて遊んでいる。
「きゅ〜…」
落ちる事はできても、自分で登ってくる事はできないようだ。
アタシはごまを抱えて土手を何10回も往復した。
そろそろお灸でも始めようかと思う。

7月某日 天気:曇り
裕ちゃんに連れられて圭ちゃんが遊びに来た。
「きゅ〜…」
ごまは圭ちゃんに近づこうとしない。何故だろう?圭ちゃんも必要以上ごまに
接しようとはしない。
裕ちゃんだけはいつも通りだ。ごまと圭ちゃんの様子を気にもしていない。
2人が帰った後、ごまはなんだか元気がなかった。

7月某日 天気:雨
「きゅ〜、きゅ〜」
最近、ごまはアタシのベッドによく潜り込んでくる。1人で寝るのを嫌がるのだ。
「きゅ〜ん…」
狭いベッドの中で、アタシに身体を摺り寄せてくる。
今までも寂しがり屋だったが、ここまでひどくはなかった。
アタシは、ワケも分からずただ、ごまを抱きしめてあげるだけだった。

7月某日 天気:晴れ
ちょっとした遊び心で、ごまにアザラシのぬいぐるみを買って来た。
「きゅ〜?」
ごまは不思議そうな顔でアザラシのぬいぐるみを遠くから眺めている。
アタシはぬいぐるみをごまに近づけてみる。
「きゅ〜!きゅ〜!!」
ごまは恐がってぬいぐるみから逃げていった。やはりごまは恐がりだ。

7月某日 天気:晴れ
「きゅ〜!きゅきゅきゅ〜!!」
早朝、アタシはごまの鳴き声で目を覚ました。
不審に思ってごまを見ると、ごまはアザラシのぬいぐるみと闘っている。
朝っぱらから何をしているのだろう。
「きゅ〜〜〜〜!!」
アザラシのぬいぐるみを倒したらしいごまは、満足気に雄たけびをあげていた。

7月某日 天気:晴れ
実家の父が突然家にやってきた。しかも見合い話を持って。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!」
父は、最初ごまに驚いていたが楽しそうに遊んでいる。こんな一面もあったの
かと少し驚いた。
このまま見合いの件を忘れて帰ってくれないだろうか、心からそう思う。

7月某日 天気:晴れ
いつのまにか、父の膝の上がごまの指定席となっている。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!」
ごまも父に懐いているようだ。アタシにはなかなか懐かなかったくせに、少し父
に嫉妬する。
「きゅ〜!!!」
父がタバコに火をつけようとした瞬間、突然ごまは転がるように父から離れて
いった。
アタシも父も、なにが起こったのかまったく分からない。
ごまは、部屋の隅で小さくなって震えていた。

7月某日 天気:曇り
結局父は、見合い写真だけを置いて帰っていった。
「きゅ〜…」
ごまは不安気な様子でアタシの足元をうろうろしている。
アタシはそっとごまを抱き上げた。ごまはギュッとアタシに擦り寄ってくる。
「きゅ〜…、きゅ〜…」
大丈夫だよ、ごま。何があってもアタシが守ってあげるから。

7月某日 天気:晴れ
この間の事が気になるので、圭ちゃんに電話をしてみる。
『動物って火とか恐がるじゃん?それじゃないの?』
どうも納得がいかない。
ごまは相変わらず元気がない。部屋の隅をうろうろしている事が多くなった。
圭ちゃんは何かを隠している。アタシは直感的にそう思った。

7月某日 天気:晴れ
ごまに元気を出してもらおうと思い、久しぶりに身体を洗ってあげる。
「きゅ〜ん!」
ごまはご機嫌だ。そんなごまを見ていると、アタシもうれしくなる。
ふと見ると、ごまの首輪がもう擦り切れかけている。新しいのを買ってあげよう
かな?
「きゅ〜?」
ごまの首輪を外した時、アタシは自分の目を疑った。
ごまの首には、タバコの火を押しつけたような、そんな火傷の跡がついていた。

7月某日 天気:晴れ
アタシは全てを理解した。
何故、ごまが圭ちゃんに近づかなかったのか。何故、ごまがあんなにもタバコ
の火を恐がったのか。
「きゅ〜ん?」
ごまは不思議そうな顔でアタシを見上げている。
アタシはごまをギュッと抱きしめた。
ゴメンね、ごま。何にも気付いてあげられなくて。ゴメンね、ごま。ゴメンね…。

7月某日 天気:晴れ
圭ちゃんに電話をする。
『昔の事だよ。あたしも悪いと思ったから、みっちゃんにごまを渡したんだよ?』
圭ちゃんのあまりの言い方にアタシはカチンときた。まるで何も悪いとは思って
いないような、そんな感じだ。
「きゅ〜…?」
もういい。圭ちゃんなんか、もうどうでもいい。

7月某日 天気:晴れ
裕ちゃんが遊びに来た。
圭ちゃんも仕事や何やらでいろいろ悩んでいたらしい。そんな事を話してくれ
た。
でも、いくら悩みがあったからと言って、ごまに当たるのは許せない。
「きゅ〜、きゅ〜」
ごまは裕ちゃんが持ってきたたれぱんだのぬいぐるみと遊んでいる。楽しそうだ。どうやらアザラシは敵だと思っても、たれぱんだは仲間だと思っているらしい。

7月某日 天気:晴れ
裕ちゃんが帰った後、アタシはずっと考えていた。
こんなごまに向かって、あんなひどい事ができるのだろうか?どうしようもない
悩みを抱えていたら、アタシもごまに圭ちゃんと同じような事をしてしまうのだろ
うか?
そんな事は考えたくない!
「きゅ〜?」
アタシはごまを抱き寄せた。
ごま、アタシは絶対そんな事しないから。アタシは絶対に、しないから。

7月某日:天気曇り
最近、仕事が思うようにいかない。
「きゅ〜ん?きゅきゅきゅ〜ん?」
ごまがアタシに擦り寄ってくる。アタシが疲れているのが分かるみたいだ。
ごまを見ると、嫌な事が全部忘れられる。
今夜はごまと一緒に寝よう。少し暑そうだが、きっと心地よく眠りにつく事がで
きるだろう。

7月某日 天気:雨
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!!」
雨の日退屈なのだろう。ごまはアタシと遊びたがっている。
「きゅ〜!きゅきゅ〜!!」
ゴメン、ごま。今日はそう言う気分じゃない。
アタシはごまを無視して、1日中ソファーに横になっていた。

7月某日 天気:雨
どうも最近疲れがたまっている。
「きゅ〜ん!!」
お願い、ごま。少し静かにしてて。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!」
仕方がない、ごまと遊ぼう。思えば最近ほとんどごまにかまってあげていなかっ
た気がする。
「きゅきゅきゅ〜ん!!」
アタシの投げたボールに必死で齧りついている。やはりごまはカワイイ。

7月某日 天気:晴れ
朝起きると、身体がだるい。熱があるようだ。
「きゅ〜ん!きゅ〜ん!!」
ごまは久しぶりにプールで遊びたいようだ。ビニールのプールを必死でアタシの方に引っ張ってきている。
ごまには悪いけど、今日はとてもそんな元気はない。早くクスリを飲んで寝たい。
「きゅきゅきゅ〜ん!きゅ〜ん!」
ごまはアタシの足元をうろうろと回っている。どうしても遊んで欲しいようだ。ごま、もういい加減にして!
「きゅ〜!!」
…アタシは最低だ。アタシは今日、初めてごまを殴ってしまった。

7月某日 天気:晴れ
熱はもうない。だが、最悪な朝だ。
「きゅ〜…」
ごまは部屋の隅にうずくまっていて、アタシに気付いても決してアタシの方を見
ようとはしない。
アタシは何と言う事をしてしまったのだろうか。これでは圭ちゃんと同じではな
いか。
「きゅ〜ん…、きゅ〜ん…」
ごめんなさい、ごま。ごめんなさい…。

7月某日 天気:晴れ
ごまはアタシを見ようとはしない。相変わらず部屋の隅にうずくまっていて、食
事もとろうとしない。
アタシはそっとごまに近づいた。
「きゅっ!?」
ごまは怯えたような目でアタシを見ると、そのまま身を固くした。もう抵抗する
事を諦めたような、そんな感じだった。アタシは、何も言えずにごまから離れ
た。

7月某日 天気:曇り
夜中、アタシはそっとごまに近づいた。ごまはよく眠っているようだ。
「きゅ〜…、きゅっ!?」
アタシの気配に気付いたごまは、慌ててアタシから逃げようとした。
「きゅ〜!きゅ〜!!」
アタシは、逃げようとするごまを捕まえると、そのままギュッと抱きしめた。
アタシの腕の中で、ごまの身体が震えているのが分かった。

7月某日 天気:曇り
ごま、ごめんなさい。ごま、ごめんなさい。
ごまの身体をキツク抱きしめたまま、アタシは何度も何度も謝った。自然に涙
があふれ出てくる。
「きゅ〜?」
アタシが泣いている事に気付いたごまは、不思議そうな顔でアタシを見つめた。
ごま、ごめんなさい。ごま、ごめんなさい。アタシはごまに謝り続ける。
「きゅ〜ん」
ごまはアタシの顔に擦り寄ってきた。まるでアタシの涙を拭こうとでもしているか
のように。

7月某日 天気:曇り
「きゅ〜、きゅ〜ん?」
隣に寝ているごまを、アタシはそっと抱きしめた。ごまの体温が心地良い。
「きゅ〜」
アタシの腕の中で、ごまは半分眠りながらもアタシの方を振り向いた。
「きゅきゅ?きゅ〜」
ごま、ゴメンね。そして、ありがとう。

7月某日 天気:晴れ
天気が良かったので、ごまと散歩に出かける。
「きゅ〜!!きゅ〜!!」
ごまがドブにはまった。やはりごまは少しマヌケだ。
「きゅきゅきゅ〜ん!!」
公園の水道で、ごまの身体を洗ってあげる。水が気持ちいいのか、ごまは大
はしゃぎだ。
ごまがウチに来て良かった。アタシとごまはずっと一緒だ。これからも、ずっと…。

「『アタシはごまとずっと一緒だ。これからも、ずっと…』…っと」
「平家さぁん、何書いてるんですかぁ?」
突然掛けられた声に、アタシは驚いて後ろを振り向いた。目の前には、何故
か後藤が立っている。
「ご、後藤!?なんでここにおんねん!!か、鍵かかってたやろ!?」
声がうわずってしまった。アタシは慌てて日記を閉じる。
「あはっ、こないだ勝手に合鍵作っちゃいましたぁ。つーか何書いてるんです
 か?見せてくださいよぉ〜」
「ア、アカン!なんでもないんや…、ホンマに…。あっ!後藤!アカンて!!!」
非力なアタシが後藤の怪力に敵うワケがない。日記は、あっさりと後藤の手
に渡った。
「今日、朝っぱらから家に宅配便が届いた。送り主を見ると保田圭とある…
 って何コレ?」
アタシは何も言う事はできない。もうおしまいだ。こんなモノを見られたら今ま
でアタシが築き上げてきたもの全てが一瞬にして失われるだろう。後藤は無
表情で、日記を読み進めている。

…この後の事は、あまり語りたくはない。
アタシは心の中で誓った。もう2度と、こんなモノは書くまい…と。

「みちよの秘密日記」   完