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ストーカー潰し

・・・ある日の夜。
飯田の携帯に電話がかかってきた。
ピーピーピーピーピーピーピーピーピー
文ではわかりにくいだろうが着信音は「恋のダンスサイト」である。
手にとって見るが番号は「非通知」となっている。
「誰だろ。真里がイタ電してきたのかな・・・。」
収録が終わり帰ってきた直後だったのでもう無視して寝ようとしていたが、とりあえず
とってみる。
「もしもし?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「もしもし?誰?真里?なっち?」
「カ、カオリン??俺だよ、俺。こないだ握手した・・・・。」
突然聞こえてきた男の声に飯田は驚き、そして何かを察したように電話を切る。
「う、うわ〜。何?今のストーカーかな。どうしよう、恐いよ。恐い・・。」
ぴーぴーぴーぴーぴーぴーぴーぴーぴー
「わっ!まただ・・。出ないでおこ・・・。」
音は止まり留守番電話サービスセンターにつながれた。
「よかった・・・。」
ぷるるるるるるるるるるるる
「うわっ!?」
しかし今度は置き電話の音が鳴りFAXの紙が動き出した。
「え〜。ちょっと、ヤダ。何で自宅の番号まで知ってるの?」
FAXの内容はこうだった。

「カオリンへ 僕はカオリンが好きです。ほかの馬鹿なファンとは違います。
この前、僕が握手会のときおなかが痛くなっていると、「どうしたの?大丈夫」
と言ってくれましたね。僕のことを好きになってくれて嬉しいです。
今度カオリンの家に遊びにいきます。たのしみだなぁ。 」

「い、嫌・・・。裕ちゃん、和田さん。恐いよ・・・・。助け・・て・・。」
FAXを持つ手が震えている飯田は恐怖でとうとう泣き出す。
「うっ・・・。こんな、い・・や。恐い・・。」
ベットに潜り込みそのまま寝てしまう。
そのころ安倍の家でも同じように携帯電話がなっていた。
安倍の場合はすぐにストーカーの電話と気づき電源を切った。
さすがにモーニング娘の顔にでもなると、そういうことには敏感になるようだ。
急いで置き電話の方も電源を切ったので大事にはいたらなかった。

・・・次の朝
雑誌の取材のために娘は全員集合した。
「昨日さぁ、うちに変な奴から電話きて凄い恐かったんだよ。」
飯田が昨夜のことを矢口に話す。
「うそ?昨日なっちの家にも来たぜ。」
と安倍が割り込む。
「何だろ・・・。恐いよね。」
「矢口そういうのなかった?」
「・・・・・。」
「あれ?矢口?どうしたの、黙り込んじゃって。」
「そうだよ、いつも元気な矢口がおかしいぞ、なっちに話してごらん。」
「んん、あのね、昨日あたしの家に手紙が届いたの・・・。」
「ファンレターじゃなくて?」
「だってそういうのは自宅に直接こないでしょ。」
「えっ!?自宅の住所で届いたの?」
「・・・・・う、うん。」
「内容は?」
「なんかすごいHな言葉が並んでた・・・。」
「うわぁ・・・。それ絶対嫌がらせだべ。」
「うん、お母さんには読まれなかったけど、凄い恐くなって・・。」
その恐怖を思い出して矢口は泣いてしまう。
「ちょっとどうしたの?あれ矢口泣いてんの。」
市井が何気なく入ってくる。
「何かストーカーにねらわれてるらしい。昨日変な手紙が届いたんだって。」
飯田が理由を話すと市井が驚いた様子で話し出す。
「うそ?矢口の家も?あたしのうちの周りにも最近変な奴がうろついてんの。」
「えっ?!ということは娘。内で4人もストーカーにねらわれてるってこと?」
「恐いよ、圭織。」
そう言って矢口が飯田に抱きつく。

雑誌の撮影が終わった保田と後藤がその4人のところによってくる。
「ういっす、終わった終わった。あれどうした?4人とも暗い顔して・・・。」
「あれ、市井ちゃん。もしかしてヤグっちゃん泣いてるの??」
「後藤、圭ちゃん。二人とも昨日の夜、変なこと起こらなかった?」
「あ、そう言えばあるよ!!最近あたし、家の近くで知らない男の人につけられた。」
「私はこないだ家に変な手紙が来た・・・。そのことで今日和田さんに相談しようと思ってその手紙
持ってきてるんだけど・・・。」
「ほんと?いいぞ後藤ナイスタイミング!」
「後藤、それ見せてくれない?私のやつと比べてみるから。」
矢口が手を差し出す。
「うん・・。ちょっと待って鞄に入ってるから今もって来るよ。」
自分たちが乗ってきた車に走っていく。
車に乗り込んで自分の座っていた椅子に近づくと鞄を探し出す。
一番奥でリーダーの中澤が少ない休憩時間の合間を縫って仮眠していた。
中澤の頭の近くに自分の鞄を見つけた後藤は起こさない様にそっと手を伸ばした。
しかし今まで寝ていた中澤が突然体を起こし、後藤を睨んだ。
「あ・・・。ごめんね。起きちゃった・・?」
「何や・・。ごっちんかい・・。どうしたなんか用か?」
「あのね、なんか昨日の夜変な事が起こったらしくって・・。」

「・・・・全員です。」
「えっ・・・。ちょっとどういう事よ。・・まさか、ストーカーか?」
「・・・・はい。」
「で、ごっちんもあったんか?そういう事。」
「あっ、そうそう。この手紙が昨日うちに届いたんです。」
鞄から例の手紙を取り出し中澤に渡す。
「ふぅん・・・・・・・・・・・。うわぁ、何これ絶対ストーカー・・って言うか変態の仕業やで。」
「何が書いてあるの?私まだ読んでなくて・・・。」
「ん、見んほうがええわ。これは見たらあかん。」
二人は車を降りて5人の元へ向かった。後藤は手紙を矢口に渡し、読ませた。
「・・・・・・・。これ私に送ってきた奴とは違う人。字がちょっと違うし。」
というと後藤に手紙を返す。
「そう言えばウチもなんかこんな内容のFAXきたわ。悪戯だと思ってすぐ破り捨てたけど。」
「ってことは今モーニング娘。全員がストーカーに狙われてるんだ。」
「これはあかんな・・。こないだ報道されたばっかりで、マスコミもこういう話題を待ち望んでるはずやし、
あんまり世間に知れたらあかん事や。・・・自分たちで事が大きくなる前に処理せなあかんわ・・・。」
「どうするべ・・・・?裕ちゃん、みんな。」
「とりあえずこの事はうちらだけの秘密にしとこうか・・。自分的にはそういう事は嫌いだけど。」
「後藤今日帰らんでもだいじょぶか?」
「うん。お母さんに電話しとけば大丈夫だと思いますけど・・。」
「市井は?」
「う〜ん。・・全然大丈夫。」
「何やそれ。じゃあ矢口は?」
「・・・・あたしは・・無理。」
「なんでやねんな。アンタどうしたん?いつものハイテンションは。」
「そりゃそうでしょ!!こんな事があった次の日に元気でいられる方がおかしいよ!!
とにかく私はもういやなのっ!!」
一人走って車に乗ってしまう矢口を見ながら中澤は
(矢口って普段は元気なのに、落ち込むとあんなふうになってまうねんな・・・。)
と小さく独り言を言った。

「どうした?裕ちゃん。独り言なんか言って。」
飯田の声にはっと気づき中澤は全員に今夜安倍の家に集まるよう促した
「車でそのままなっちの家にくればいいよ。」
「なんか久々だな、なっちの家いくの・・。広いの??」
「何だべ、紗耶香。馬鹿にすんなよ。・・なんつって、ほんとは凄いせまいよ・・。」
「こら、アンタら。遊びに行くんちゃうねんで。作戦立てにいくんやからな。」
「・・・・っえ?!どういう事?まさか私たちでストーカーを退治すんの???」
「そうや。なんかおかしいか?」
「ううん。いや、そういう事じゃないけどさぁ。やっぱストーカーって言ってもファンの人なんだから・・・。止めといた方がいいと思う
たしかに皆かわいそうだけど、そんなことしたら嫌われちゃうよ。」
「あんたいつまでキャラ守ってんねん。もうそんなこといってる場合や無い所まできてんねんで。」
「・・・分かったがんばるよ。でもなっちはやる気じゃないからね。」
「何でやねん。アンタなぁ、メンバーが困ってんのよ。あんたはもう慣れたみたいなとこあるかもしれへんけど・・・。
矢口や圭織はものすごい恐かったんやからな・・・。」
「そんな、慣れてるなんて・・・。ひどいよ、裕ちゃん、私だって凄い恐かった事あるんだからね・・・。」
「それが分かってるんやったら、やる気だせやっ!!それじゃあアンタ最低のカマトト女になってまうで。」
「・・・・分かった、やればいいんでしょ。」
「とりあえず今日は仕事終わりになっちの家いくで。」
「うん。」

「あの、ドライバーさん。今から安倍なつみの家向かってもらえます?」
「え、何で?このまま直接いっちゃっていいの?」
「ハイ。お願いできますか。」
「OK!!じゃぁ発車するから座って。」
発車したバスの中では矢口以外の六人は全員疲れのためぐったりと眠りこけている。
矢口はただ一人一番前の席でMDを聴きながら肘を突き窓の外を見ていた。
(なんで皆、あんなに元気に喋ったり、のんびり寝てられるんだろ。わかんないよ。)
そう考えていると誰かが自分の隣に座った事に気づく。
「ねぇ、矢口・・。」
「・・・紗耶香。何よ、なんか用?」
「うん。矢口、あんた私たちがストーカーの事全然怖がってないと思ってるでしょう?なんか自分だけが怖いと思ってる。
そうなんでしょ?」
「・・・そ、そんな事無いけど。」
「ううん、絶対そうだよ。私は真里の事なら少しだけ分かってるつもりだから。」
「・・・・。」
「でもね、ほんとは皆怖いんだよ。なっちだってさっき話してたんだけど昔ストーカーに狙われたときの事をまた思い出し始めてるし
圭織だって同じ事。後藤だって14でまだ心は弱いのにあんな手紙送られてきて普通でいられるはずがない。圭ちゃんだって一人
暮らししてて知りもしない男につけられたりしたら怖いに決まってる、裕ちゃんは最年長だしじぶんがこんな事で取り乱したら皆
そろってパニックになる、だからあんなに落ちついてんのよ。」

「・・紗耶香は・・怖くないの?」
「怖いよ。だから真里に守ってほしいんだよ。いつも相談に乗ってくれる真里に・・。私真里のこと好きだから・・、真里がこんなに
落ち込んでるとこっちまで落ち着けなくなっちゃう。だから私と一緒にがんばってくれない??」
「・・・今言ったことほんと?」
「えっ?うん。ほんと・・・だよ。」
「分かった、じゃぁ私も協力するよ・・。」
「ほんと!!!ありがとう真里!」
矢口の頬に軽くキスをした市井は自分が寝てた所に戻っていった。
「さすが紗耶香やな。」
「・・・ぁ。裕ちゃん。起きてたの??」
「今の聞いてたけど矢口より年上だと思っちゃったで・・。」
「聞こえてたか・・・。」
「ごめんな・・。」
「ウフッ。いいよ、あ、もうすぐじゃないの?なっちの家。皆起こそうよ。」
「そやな。・・お〜い、皆おきな!もう着くで。」
そう言ってる間に車が停車する。
「じゃぁ、降りるで。和田さん、皆さんお疲れ様でしたぁ〜。」
全員降りると走り出す車を見送り、とあるマンションに入ろうとする。
「そうだ、圭織もここが家なんだっけ?」
「そうそうだから取りあえずカオリンのうちに荷物置いとけばいいよ。」
飯田にいわれた通りに荷物を飯田の家の玄関に置き一階上の安倍の家に7人は入っていった。
「おじゃましまーす。」
住人である安倍よりも先に後藤が部屋の中に入っていく。
「ただいま〜。」
7人は一番大きいテーブルを囲み腰を下ろした。

。。 「で、裕ちゃんどうするの?うちらでストーカーを退治するなんてけっこう大変だよ。」
「分かってる。分かってんねんけどどうしたらええかウチも分からんねん。」
「取りあえずストーカー退治って事はそれなりに準備が必要でしょ。」
「圭ちゃん、エエこと言う。まず準備や・・・。」
「やっぱりそれぞれのストーカーをここの近くに集まるようにして、家に入る前にボコボコにシメるって言うのはどうすかね。」
市井の発言に一瞬ひく安倍と飯田。
「ということは、私達の家が囮になるってこと??」
「そういうことになるわな・・。何?なっちなんか不満あるんか?」
「いや、だいじょぶだいじょぶ。」
「まず作戦たてんとあかんな・・・。」
と話していると突然飯田の携帯がなる。
「うわっ!びっくりした。圭織、もしかしたらストーカーの悪戯電話かもよ。」
矢口が電話にでるように飯田に指示する。でてみると案の定ストーカーからの電話だった。
「も・・・もしもし。」
「あっ!!カオリン。俺だよ、俺。あのさぁ今度デートしようよ。いいよね。やったぁ。じゃぁ今度カオリンの家いっていろいろ
決めなきゃね。僕の電話番号教えといてあげるね。じゃぁねバイバイ。」
一通り言いたいことをいって電話を切ってしまう。
「なんて言ってたの?」
「なんかデートしたいって言ってた。で、そのことについていろいろ話したいから、近いうちのここに来るって。
あ、あと僕の電話番号教えとくとかいってたけど・・・。。」
「番通されてるよ、多分。見てみ。」
携帯の着信履歴を見てみるとそこには見たこと無い携帯の番号が表示されている。
「やったで、これで圭織を狙うストーカーと連絡取れるようになったわ。いつでもこの家に呼べるようになったところで、準備始めますか。」
「よ〜し頑張ろう。」
まず中澤は安倍と飯田にこの近辺の簡単な地図を書かせた。

市井・矢口ペアにはコンビニで10リットルの水を買ってくるよう指示する。
残った二人は暇になってしまったため地図書きの手伝いをすることにした。
20分後に市井と矢口の二人は大量の水を抱え、あいた手には弁当を持って帰ってきた。
「重ぇぇ。ちょっと裕ちゃんなにに使うの?こんな沢山の水。」
「それは明日のお楽しみ。取りあえずみんなでその買ってきたお弁当食べようや。」
「あ、そうだった。せっかく暖めたんだから早く食べないとね。」
そういうと矢口は人数分の弁当を取り出す。
相当腹が減ってたのか後藤は弁当を真っ先にたいらげる。
「ちょっと、ごっちん食うの早すぎ!」
「私なんかまだ三分の一しか食べてないのに・・。」
「圭ちゃん食べんの遅いね。」
「違うよ真希が食べんの早すぎるんだよ。」
「だ〜ってぇ、おなか減ったんだもん。」
「後藤さんのお腹は何ですか?ブラックホールっすか。」
「あはっ。違うよ〜ん。」
楽しく食事をしていると突然誰かの携帯がなる。
「誰の電話??もしかしたらまた圭織の奴じゃないの?」
「ううん。カオリンのじゃないよ。」
「あ、私のでした。」
後藤が携帯を鞄のポケットから取り出す。
「ちょっと出るの待っとき。・・なっち紙とペン用意してくれるか。」
「うん。・・・はいよ。」
「よし。真希、もし相手が知らない男で怪しい奴やったら今からウチがここに書いたことをうまく喋ってくれるか。」

「うん分かった。じゃあでるよ・・・もしもし。」
「・・・・。」
後藤は受話器を耳から離して小声で中澤に電話の向こうが『ストーカーの男』であることを伝える。
頷いた中澤は紙にこう書いて後藤に見せた。
(何でもいいから適当に話し掛けて)
「もしもし後藤ですが・・・。」
「も・・も・・・もしもし。」
男は興奮のためか息が上がっている。
(相手の電話番号をうまく聞き出して)
「もしもし後藤ですけど誰なの、答えてよ。なんか言ってくれないと困るんだけどなぁ。」
「はぁ、はぁ。真、真希ちゃーん。パンツ何色なの?ねえ、教えてよお教えてよお。」
「えっ・・・。あの・・。」
(なんていってんの?)
後藤は相手に聞こえないように中澤に今言われたことを伝えた。
(取りあえず白って言って)
「し、白・・・です。」
「えぇ、ほんと!僕の予想当たっちゃったね。もしかして僕と真希ちゃんて気が合うかもね・・。」
「そうだね・・・。あの、ところであなたの電話番号教えてくれな・・い?」
「えぇぇぇぇ!!!いいの?いいの?後でかけてくれるんだね。じゃあ教えるよえっとね・・・」
男は不信感を持つこと無く簡単に番号を教えてしまう。
電話をきると後藤は緊張のためか電話を持ってる手が震えて、しまいには落としてしまう。
「ようやったで、真希。ご苦労さん。・・これで2人目や。」
「怖かったよぉぉぉ、裕ちゃん。」
泣いてしまった後藤はすがり付くように中澤に抱き着く。
「よしよし、よう頑張ったな・・。」
後藤の背中に片手を回しもう片方の手で頭をそっと撫でた。

「じゃぁ今日はここに泊まるで。ええやろ、なっち?」
「うんいいけど。雑魚寝だよ。」
「ああ、かまへんそんなもん。」
「じゃぁ布団しかなきゃ。圭ちゃんとごっちん手伝って!」
3人はせまい部屋に何とか布団を敷き詰めた。
「おやすみ〜。」
7人はパズルのように重なり合い一晩を過ごすことにしたがやはり無理があったのか市井と矢口は飯田の家で
寝ることにした。
「じゃぁうちらは圭織の家で寝るから下行くね。」
「アンタら2人きりになったからって変なことすんなや。」
中澤が悪戯っぽく笑う。
「何だよその笑顔〜。変なことしろって言ってるようなもんじゃぁん」
「何、いっとんねん。ほな、お休み。」
2人は階段を降りて飯田に借りた鍵でドアを開ける。
中に入るなり市井はトイレにかけこむ。多分さっきまでずっと我慢していたんだろうそのスピードは
ものすごいものだった。
用を足した市井は矢口と協力して布団をふたつ敷いた。床に就くと矢口が話しだす。
「明日もなっちの家に集まるのかなぁ。」
「うん、多分ね。っていうか作戦結構のときまでずっとだと思うよ・・。」
「なんかやだなぁ。大丈夫かな、やっぱり怖いよ。」