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シューティング娘。サヤカー敗北を求める5人の死刑囚編

その日の朝、東京の警視庁はある一報に震撼した
「アメリカの脱獄死刑囚が渋谷で目撃された?」
悪魔すら目を背ける連続猟奇殺人を繰り返し、厳戒体制下の死刑囚
専門刑務所を易々と脱獄した堕天使ピロスエ
彼女の目的はなんなのか?

サヤカは対峙する心地よい緊張感に包まれていた
その日、久々に小湊の渋谷の道場を訪れた彼女は
小湊との乱取りに挑もうとしていた。
目の前にいる世界的な名声を誇る実践空手の次期後継者
しかし一度サヤカは彼女を破っている 紙一重で
そんな猛者との対峙が彼女を強くしていった
いざ、立ち会おうとしたその瞬間、

「小港館長代理、客人が、、、」
門下生の声が響いた

異相といっていいかもしれない。
一見すれば彼女はショートカットの美少女だった。
だが、何かが違う。外見と異なる印象に一般人は戸惑う。
背を這うような違和感に
その違和感の答えを知っているものがいる
ごく少数。
彼らは彼女が全身から発しているものをかつて味わった。
おそらくはみずからも似た状態だっただろう
死線を越える闘いの最中だったのだが
そして、その少数がすぐに気付く
ピロスエの発する「気」が自分のものと桁違いであることに

周囲を巻き込みような濃厚な瘴気を発しながら
小湊道場を訪れたピロスエがはじめて声をあげた
「ユウコハイマスカ?」

「ユウコ、、、姉者は今ここにはいない、、、」
一般には殆ど名を知られていない姉の名を口にするピロスエが
現れたことをいぶかしみながら、小湊は答えた。
ユウコ、、、ただ、強さのみを求め、鍛練を重ね
それに狂い、名を変えて栄誉も血族も捨て出奔した姉
サヤカはナツミとユウコの闘いを見たことがある。
果たして自分がそれだけのことができるのか、
体の奥底から震えてくるほどの凄まじい戦いだった
その後、ナツミをサヤカが倒すのだが
果たしてダメージがなければどちらが
今、この場にいない強敵の姿がサヤカの胸に去来した。

「ソウカ、、、ザンネンダナ、ハルバルキタトイウノニ
ソレデハミヤゲヲモラッテイクカ」
「ミヤゲ?」

5人の死刑囚・本上マナミの場合

--アメリカ南部、某刑務所の死刑執行室
医師が今、処刑の終わった死体を検視確認している。
拘束具の上から見えるそのすらっとした長身、優美な肉体
のライン。そして閉じられた容貌は生前の物静かな美貌を
思い起こさせる美しい女性だった。
だが、彼女が犯した酸鼻を極める「罪」を聴いたとき
戦慄を覚えぬものはいない。
10人もの武装した兵士が監視する中、刑は執行された。
医師が聴診器を当てたとき、、、
「ドクン!」とまっているはずの心音が響いた。
死人の目がカっと開き、閃光の早さで銃を持つ兵士にダッシュ
蹴りだけで2人を簡単に撲殺する。
一瞬の出来事に呆然とする一同の前で、紙のように拘束具を
引き千切ると、彼女はーマナミは深い湖のような瞳で呟いた
「いつもそうだ、、、君たちはいつもつまらぬ勝利を
もたらしてくれる」

数分後、駆けつけた警官が見たのは十数人の死体の山
血で壁に書かれた「東へ行く、敗北を知るために」という
文字だった。

5人の死刑囚・くりすてぃーな・りっちー(1)

「 矢口師範は今、留守ですが、、、」
突然、道場会館に現れた白人の小柄な女性に戸惑いながら、
門下生の柴田あゆみは応えた。同期生で後ろにいる
大谷、斎藤も戸惑いを隠せない。
それは突然の来訪者が、日本人でも小柄な部類に入る体躯
と少女のようなアンバランスな魔的な美貌を備えていた事もあった。
だが、小柄な相手を甘く見る事は絶対にない。
それがいかに愚かな事であるかは、この道場の師範がいつも
教えてくれる事だ。横浜華僑街にある、この中国拳法の道場
に幼少から学び、若くして中国4千年の伝統の全てを吸収し
その完成形態と目される矢口真里。

彼女が敗れたという話しを聴いたとき、柴田は我が耳を疑った。
道場で共に学んで10年、型稽古ですら真里に拳を当てた者は
見た事がなかった。
真里は アンダーグラウンドで開催された世界中の
つわものを集めたトーナメントに参加し、準決勝で敗れたという
真里を破り優勝した者の名は市井サヤカ
そして現在 真里はこの横浜の道場にはいない。
負傷の回復もそこそこに、自らを極め直すため旅立った。
若くして田園に隠居した不世出の知己の天才、アスカを尋ねて。

不在の返答を聞いた白人の女性は印象的な大きな瞳を向けて
意外に流暢な日本語で答えた。
「デハメッセージヲ、ノコスヒツヨウガアリマスネ」