「え? "この3人組" のセンターですか? それは市井紗耶香しかいないでしょー。」
「真希がいないとね、 "この3人組" は成立しませんよー。」
インタヴューで、圭はそう答えるとニッコリと笑った。
"この3人組" を支配しているのは、圭である。
これは極々当たり前のことで、それ故に皆が忘れやすい事なのだが、
真の"黒幕"とは、最前列からは見えない所にいるものである。
表面上は、何をしてるのか分からないようなポジションにいるヤツが実は黒幕であった、
というのは別段珍しい話では無い。
そして、"この3人組" の場合もその法則は当てはまっていた。
センターに紗耶香が立ち、若さで真希がアピールする。
あるものは彼女を笑うかもしれない。
何故アイツがいるの?
意味あるの?
しかし、支配者は圭である。
これは3人組の中ではまぎれも無い事実であった
逆らうことは許されない。 もし逆らえば、その時は─。
──────────
真希が、ある"大型アイドルグループ"に参加することになった年、
それは、その"アイドルグループ"が世間への知名度を一気に高めた年だった。
大ヒット曲に恵まれ(或いは、それは仕組まれていたのかもしれないが、それは不問としておこう)、
そこで中心的役割を与えられた真希は、一躍シンデレラガールとなった。
ある評論家はたいそうに幸運の女神と呼んでもいた。
紗耶香は、真希の"教育係"になった。
その模様の一部はTVで大々的に放送されたため、紗耶香の人気・知名度は上昇した。
一部の心無いファンは「(真希を)利用した」等とこき下ろしたもんだったが、多くの人はそれを喜んだ。
そんなある日。
TV番組のスタジオ。
そして本番収録中。
「紗耶香、圭、そして真希の3人でユニットを作る」
突然、発表される"大事件"。
どうやら視聴者はそのリアクションが見たいらしい。
いっつもそう。 もう慣れたけどね。
まっ、がんばります、とかって適当に言っときゃいいんでしょ?
真希は顔に出さないようにしていた。
表情に出やすいから。
モニターの中のプロデューサーが続けて指令を出す。
「そして3人でね、ミニ合宿をしてもらいたい」
「1泊2日でミニ合宿? 変なの。」
収録後、2人きりになった楽屋で、真希は紗耶香に本心を語った。
確かに1泊2日で出来ることなんてたかが知れてる。
「なんで、こんな事させようと思ったんですかね?」
「TV的におもしろいから、じゃないの?」
「ビデオとかに撮られるんですかね?」
「ハハハッ、あんたの合宿の時も撮られてたんだよ?」
つまらない笑い話。
でも、楽しいな─
「でさ…」
紗耶香が次の一言を言いかけたその瞬間、楽屋に圭が入ってきた。
紗耶香の表情が少し曇った。
真希にはわからなかったのだが。
椅子に座り、2人に背を向けたまま、圭は話し始めた。
「この合宿ね…」
真希が逆に尋ねる。
「どー思います? この合宿って。」
「これね、実は私からお願いしたの。」
「え? ホントですか?」
「うん。」
「なんでですかー? 合宿って意味ありますー?」
「やっぱ3人の結束とか高めたいし、それに…」
「それに…?」
圭は振りかえると、紗耶香の方を見ながら言った。
「真希がまだ知らない、紗耶香のことも教えてあげたいしね。」
圭はうっすらと笑った。
紗耶香の表情が先程より曇った。
これもまた真希にはわからなかったのだが。
真希は、圭と紗耶香がどのような関係なのかということについて、
せいぜい追加メンバーで同期、ということぐらいしか知らなかった。
「でしょうね。 だって誰にも教えてないもの。」
もし圭に聞いたなら、きっとそう答えるだろう。
「でしょうね。 だって誰にも教えたくないもの。」
もし紗耶香に聞いたなら、きっとそう答えるだろう。
──────────
ミニ合宿には、あるマンションの一室が与えられた。
「あれ、カメラついてますよぉ。」
部屋のいたる所に、その模様を一部始終録画するためのカメラがセットされている。
「あっ、あそこにも〜」
「気楽なもんね、真希は。
プライバシーの侵害、とかって考えないの?」
「なんですかぁ、それ〜」
「全部で何ヶ所あるの?」
「4ヶ所って聞いたけど」
「3つしか見つからないですけどぉ〜」
「まぁいいじゃない。 さっ、早く練習しよう。」
「今日はここまでにしておこうか」
「疲れました〜」
「布団敷いて」
「おなかすいた〜」
「ちょっと、アンタ座ってないで、手伝いなさいよ」
「はいぃ〜」
「冷蔵庫に何入ってるの?」
「あんまり」
「ハンバーガー食べたいです〜」
「無いよ」
「ラーメンは?」
「無ーい」
「シャワー、誰から浴びます?」
「真希、先に行っていいよ」
「え? いいんですか?」
「いいよー」
「それじゃ、お先に失礼しまーす」
真希がバスルームに消える。
1分後。
「紗耶香」
圭が後ろから抱き付いてきた。
「えっ、あっ、な」
紗耶香がまだ状況を飲みこめてないうちから、圭はその手を紗耶香の秘部にのばす。
「ぃやっ…」
ジャージの上から、強くその部分を擦りつける。
「待っ、ちょっ、真希が出てき、たら、ぁ…」
「なァに?」
圭は耳元で小さく答える。
「私に逆らうの? 逆らえるの?」
多めの吐息が耳にかかる。
「いゃ、耳はだめェ…」
遠くでシャワーの音が聞こえる。
「真希はまだ出てこないよ、ねっ」
「だって、こんな所で…」
紗耶香の言葉を最後まで聞かずに、圭はTシャツの中に手を入れる。
まだシャワーを浴びてない紗耶香の身体は、ベタついていた。
「ココ」
圭が触った所は、15歳の少女が持つ小さな丘の頂上だった。
「ココでしょ?」
摘まみ上げるには小さ過ぎる彼女の乳首。
人差し指で押してみる。
「ひっ」
親指で弾いてみる。
「くっ」
中指で撫でてみる。
「んっ」
一々、可愛いリアクションを見せる紗耶香に、圭も我慢できなくなったらしい。
「フフっ」
ところで、シャワーを浴び終えるのには(個人差もあるが)たいして時間もかからない。
まして、先輩二人を差し置いて入っている場合、これにかける時間はいつもよりも短くなるだろう。
「早く出なきゃ…」
いつもの倍の早さで、シャワーを浴び終える。
タオルで頭を拭きながらドアを開ける。
キッチンの所で、圭と紗耶香がキスをしていた。
「ぇ…?」
5秒間ただその様子を眺めていた真希は、
5秒後に、慌ててバスルームに戻った。
『うそーっ、マジでぇ?』
話には聞いた事があった。
そういう事をする女性がいるっていうコト。
でも、実際に目の前にいたとは…。
軽いショックを受けると同時に、強烈な好奇心も芽生えた。
「み、見たい…」
数秒間悩んだ末に出た答えは、この場合ほとんどの人が選択するであろう方であった。
そーっと、ドアを開ける。 バレないように。
キッチンの方を見てみる。
が、二人はいなかった。
「なんで?」
『まいったなぁ… これじゃ出るに出られないよぉ〜』
2人は布団の上にいた。
圭は手際よくジャージを脱がし、下半身だけを裸にする。
突起した蕾を、優しく、次に激しく、また優しく舐め上げる。
「ひぃぅぅんっ」
言葉にできないような声で紗耶香が鳴く。
「気持ちいいの…ねぇ?」
言葉をかける圭は、紗耶香の恍惚の表情がたまらなく気に入ったらしい。
くちゅっぐちゅっ、と必要以上に音を出して舐める。
「…ぅんっ!」
ゆっくりと、中に入る。
「いっ」
きゅーっと、紗耶香が自身の蜜液と共に圭の指を圧迫する。
「フフっ。 気持ちいいんでしょ?」
そういうと、人差し指に続いて中指も入れる。
「くぅっん」
鳴き声を聞いてご満悦の圭は、その指を紗耶香の内壁に沿ってゆっくりと動かす。
「すごぉぃ…ねぇ、紗耶香?」
紗耶香の大量の蜜に漬けられる圭の指。
素早く引きぬくと、それを紗耶香の目の前に持っていく。
「ほら…見える? こんなにベトベト…」
「いゃぁん」
紗耶香は圭の指を手で覆う。
が、それを交わして、圭はその指を己の口の中に運んだ。
「紗耶香の味がするよ…ね」
馬乗りになる。
そして左手で紗耶香の両手を押さえておくと、右手を紗耶香の顔へと近づける。
「ねぇ…これが紗耶香の…だよ」
「いゃっ」
「見える? こんなにいっぱい…紗耶香」
「やぁ〜」
「紗耶香の臭い。 嗅いでみて、ホラ」
「ぅぅん、やぁ」
「紗耶香の味。 味わってみてよ」
「ゃぁ〜ん」
首を振って拒否の態度を見せる紗耶香であったが、圭は半ば強引にその指を紗耶香の中に突っ込んだ。
「おぇっ」
一瞬苦しそうな声を出すが、すぐに慣れる。 圭は知っていた。
「ねぇ…ぺろぺろしてみてよ…」
この状態で拒否なんてできるわけが無い。
紗耶香は、仕方なく、己を味わった。
拙い舌使い。 独特の臭いが鼻につく。
「…ぅんっ」
溢れる唾液を飲み込むたびに、紗耶香の頭の中は白くなっていくのだった。
圭は、左手を紗耶香の下腹部へと移し、今度は左手の指2本で紗耶香を玩ぶ。
ぬちゅっぐちゅっ…。
体を通して下の方から聞こえる音に紗耶香は聞き入っていた。
「ふぅ…ん」
少し動かしただけで、こんなに。
「見てよ紗耶香。 あなたの汁がこんなに…」
「や〜ん」
半分泣きそうな紗耶香の顔。
圭は口から指を抜き出すと、そっと口づけた。
「紗耶香…」
一言そう言うと、再び右手で紗耶香の秘部に入っていく。
「ぃあん!」
今度は初めから全開で。
「いゃっ、いゃっ、とめ…」
圭はただひたすら、指を前後に動かした。
「だめだよ、止めて…だめだめだめだ」
ぐちゃっぐちゃっ、と変な音だけが頭の中に響く。
「やっ、だめっ、おか、しく、なっ、ちゃ」
「いいよ、おかしくなっていいよ…」
「やぁ、だぁ、よぉぉぉぉ」
圭はただひたすらに…。 んっ?
「やっ、とめて、おねがい、ほんとにだめぇっ」
圭が顔を上げると、壁から顔を出している真希と目があった。
『怒られる。 絶対に怒られる』
瞬間、真希はそう思った。
ところが、圭は何事も無かったかのように再び指を前後に動かし始めた。
その動きに合わせて紗耶香が鳴く。
そして、顔を上げたまま一言こう言った。
「ねぇ…ここでやめていい?」
真希ははっとした。
この人は、なんて人なんだろう。
私を試してる。
でもここで二人の間に入っていけるわけが無い。
どうしよう─。
壁に頭を引っ込めた真希が次に聞いた言葉は紗耶香からのものだった。
「いじわるぅ…」
真希が隠れたのを確認した圭は、一旦指を引き抜き、腕を2・3回振ると、
「さ。そろそろ仕上げよ」
と添い寝をするような格好で身を寄せて、そっと口づけて、そして突き刺した。
「きゅぅっ…!」
入り口は狭く、中は広い紗耶香の壷の中で、
圭の二本の指は確実に一点を、責めて、責めて、責め続けた。
「あぁぁあぁぁあぁぁあ」
圭は紗耶香を見つめながら、ただ指を動かした。
「だめ、だめ、だめ、だめ」
その拒否は受け入れられない。
「も、だめだよ、おかしくなる…」
左手も使う。
キュッと小さな豆を突く。
「だめ、おかし、だめだめだめぇっ!」
つまむ。
「ひぃやっ!」
そして、耳元で囁く。
「我慢しなくていいんだよ…?」
!?
「もぉいゃあぁぁっっっ!」
どこから声を出してるんだ? と言わんばかりの声に、真希は全身鳥肌である。
真横で聞いた圭も、目をまん丸にして驚いている。
しかし、それを発した本人は半分意識が飛んでいたので、それを覚えてはいなかったのであった。
とりあえず大きな息の塊を一つ吐いた圭は、紗耶香に毛布を1枚かけてやる。
「…先にシャワー浴びてくるね。」
頷くのに精一杯の紗耶香。
全てのパワーを使い果たしたかのようであった。
圭がバスルームへ向かう途中には、当然だが真希がいた。
何も言えずにモジモジしている真希。
「ねぇ…」
ヒッ! 慌てて姿勢を正した。
何言われるんだろう…
怒られるよね。 あんなの見ちゃったんだから…
圭は、まだ紗耶香の汁がついた指を真希の頬につけるとこう言った。
「あんたも…したい?」
その指をゆっくりと下に下ろしていく。
胸の所で止めて、小さな円を書く。
この非常識な状況に対処する術を真希は持っていなかった。
「やめて下さい!」
意外な反応を見せた真希。
「あらら、怒られちゃった」
そう言うと、圭は素直に手を引っ込めた。
「まぁいぃや」
ほっと息をついた真希に、改めてバスルームに向かおうとする圭が。
「あ、そうそう。 忘れてた」
と話しかける。
「な、何…?」
もう泣きそうである。
「ま、まだ何か…?」
「この部屋ってビデオついてるじゃん」
「え?」
「忘れてたの? 気楽なもんね」
「そうだった…」
「でさ、さっきのも録画されてるんだよね」
「うそ!?」
「嘘なワケ無いじゃん」
「だってあの部屋にはカメラは…」
「言ったでしょ。 カメラは4つあるって」
「えぇっ? それじゃ…」
「後で探してごらん」
「じゃ、映されてるのがわかってて、あの部屋で…?」
「フフっ」
「なんで?」
「なんでって? それは…」
「…いいじゃない、そんなこと。」
言いかけて、やめる。
言えないですよ、そんなこと。
圭は真希の頭をポンと叩くと、バスルームに入っていった。
…さっき頭洗ったばっかりなのに、等と考える余裕はその時の真希には無かった。
真希は紗耶香に声をかけようかどうか迷っていた。
『どうしよう…下手に出ていっても気まずいしなぁ…
でも、ここにず〜っと居てもおかしいしなぁ…
あー、どうしよう』
もじもじすること5分。
「あんた、何やってんの?」
「え?」
圭がもう出てきていた。
「はっやー」
「アンタが遅いんだよ」
「いやー、ハハハ」
「ハハハ、じゃないよ。
紗耶香ー、空いたよー」
『なんでこの人はあんなことの後に、こんなに淡々としてるんだろう?
う〜ん、なんで?』
夜中、真希は目を覚ました。
「…ん。」
あれ〜、まだ夜じゃん。
昨日早かったせいかな?
身体を起こしてみると、向こうの部屋が明るい。
「あれ?」
横を見ると、圭が寝ている。
「紗耶香さん…」
行ってみよう。
「あれ? 真希じゃん。
どーした?」
「あ、紗耶香さんこそ」
「んー、なんかね。
目が覚めちゃって」
「あ、アタシもです」
「気が合うねェ」
「ハハッ」
家に居るつもりで冷蔵庫を開ける。
ゲ。 ホントに何も無いじゃん。
「ホントに何も入って無いでしょ」
「ホントですね」
ヤバい。 会話が続かない。
無理に会話しようとすると…。
「紗耶香さ〜ん」
「ん?」
「寝ないんですか?」
「アンタは?」
「ん〜、なんか眠れなくて」
「アタシもだよ」
「…」
こんな調子である。
『まいったなぁ… もう寝ようか』
真希が席を立ちかけると、紗耶香が急に話し始めた。
「アタシね…」
というより独り言のようだ。
「アタシね、絶対売れたいんだ。
有名になって、いっぱいいろんなことしたいんだ…」
「紗耶香さん…」
「だから、さ」
「?」
「がんばろっ!」
「…はい!」
真希はもうすっかりさっきのことは忘れていた。
頭の中は紗耶香のことでいっぱいである。
「練習しませんか?」
「え? 今から?」
「眠いですか?」
「うーん… やろうか」
「はい!」
「疲れた〜」
「アンタがやりたいっていったんでしょうが」
「はいぃ〜」
「でもアタシも限界」
「もうやめましょうよ〜」
「う〜ん」
「ねぇ〜 紗耶香さ〜ん」
「そぅだねぇ。 んじゃここまでにしとこっか」
「はいぃ」
「さ、寝よ寝よ」
「さーやーかーさん!」
「ん?」
──────────
次の日。
窓の外から入る心地良い日の光りで、紗耶香は目を覚ました。
「…ん」
起きあがってからしばらくは、ただぼーっとしていたのだが、
しばらくすると自然と顔がにやけてくる。
「真希ったら…」
横で寝ている真希を見て、余計に顔がにやけている紗耶香であった。
昨日、突然のキス。
「一緒にがんばりましょぉねっ!」だって。
またかわいいんだ。 ふにぃっ、と笑った顔が特にね。
「アンタとだったらがんばれそうだよ、アタシも」
頭を一つなでて、布団から出る。
朝から気合いが入る。
「さぁて、今日もがんばっていきますかっ!」
その時、ダイニングから声が。
「…おやおや」
圭ちゃんだ…。
「朝からずいぶんとお元気ですねェ、紗耶香さん」
「おはよう、紗耶香」
「ん、おはよう…」
「ねぇ、紗耶香」
「ん?」
「昨日の夜さ…」
「あ、うるさかった? ごめんね」
「そうじゃなくて」
「なに?」
「昨日さ、真希とキスしてたでしょ?」
「…え?」
バレてる!? ってゆーか、…ん?
「なんで知ってるの?」
圭が天井の隅の方を指差す。
「アレ」
「カメラ…」
そうか、コレ撮られてたんだ…!
えっ、ヤバいよ。 ヤバいよ、マジ。
…ってアレ? でも、アレ? なんで?
「なんで見られるの?
そんなわけないじゃん。
ってゆーか、それってスタッフの人しか見られないんじゃないの?
そんなの、おかしいよ、ねぇ」
必要以上に舌がまわる。
アタシ、なんでこんなに必死なんだろ?
「おかしくないよ」
圭は当然のように答えた。
「言ったでしょ?
この合宿は私がお願いしたものだって」
「はァっ? わけわかんないよ」
紗耶香は思わず怒鳴ってしまった。
それを受けて、圭もテーブルを叩いて立ちあがった。
「と・に・か・く」
ゆっくりと紗耶香の方に歩きながら、喋る。
「紗耶香の行動はすべてお見通しなの」
圭が指差したカメラを見つめながら、1人納得のいかない紗耶香は
独り言のようにブツブツと呟いていた。
「そんなのおかしいじゃん。
ってゆーか、なんで?
おかしいよ、ねぇ!」
「いいの!」
いつのまにか、圭が目の前までやってきていた。
「あっ」
紗耶香は、その声で我に返った。
先程の大声とはうってかわって、圭は両手で紗耶香の髪をかきあげながら耳元で小さく囁いた。
「私からは逃げられないの…わかってるでしょ?」
そのままそっと耳に息を吹き掛ける。
「ひやッ」
圭はその舌でわざと音を立てながら愛撫する。
紗耶香の耳いっぱいに柔らくて生温い感覚が広がって、広がっていた。
「みみ…ダ、メ、耳は…んっ」
紗耶香のその懇願は、意外にもあっさりと受け入れられた。
圭はそれを予め見越していたのか、即座に代替案を提示する。
「ダメなの? それじゃあねェ…」
耳打ち。
「えっ?」
何? 朝から?
「はやく」
「えっ、ちょっ、マジで?
起きたばっかりだよ? ねぇ」
アセる紗耶香。
そんな紗耶香がかわいくて仕方ない様子の圭。
「朝だからいいんでしょ。 さ、早く」
─真希はまだ寝ている。
朝っぱらから、圭は積極的だった。
「ほら、早く脱ぎなさいよ」
急かされて、脱ぐ。
「早く入って。 シャワーの温度、調節しといてね」
「う、うん…」
何をそんなに急いでいるんだろう?
「でもまだ浴びちゃダメよ。 私が入るまで待っててね」
…寒い。
あれから1分、いやもう2分位?
寒いよ、寒いよっ。
も〜っ、早くしてよぉ…。
「あ〜〜ッ!」
もう限界。
「…入っちゃおうかな?
…入ってもいいよね?
…入っちゃえ!」
…入っちゃいました。
あったか〜い(にっこり)
「お・ま・た・せ〜…って、あっれ〜?」
「あっ、圭ちゃん…」
「紗耶香さ〜ん、また約束破りましたね〜?」
「困るんだよね〜、そう何度も約束を破られるとさァ」
「そんな…」
「何?」
「ってゆーか、寒かったんだもん…」
「でも、待っててって言ったじゃない」
「じゃあなんですぐに来てくれないのよ!」
「…おやおや、今度は逆ギレですかい?」
「ムカつく」
「あ、そう言うこという娘には…」
「何よ」
「おトイレ行かせてあげない」
「えっ?」
そういえば、朝起きてからまだトイレに行ってない。
しかも寒い所に2分(くらい?)放置プレイだったし─。
そう考えると、何故か急に尿意が迫ってきた。
こういうものは、気にすれば余計に気になるもので、何故かもう我慢できないところまで来てしまっていた。
「ダメっ、トイレ」
ユニットバスなので、バスタブから出ればそこはトイレである。
トイレなのだが。
「ダメって言ったでしょ?」
圭は右手にビデオカメラを持っていた。
「撮るよ」
「ビデオに撮るよ」
「へぇっ?」
「戻りなって」
「ヤダっ、もう我慢できないもん」
「おしっこしてるトコ、撮るよ。 それでもいいの?」
「え〜っ!?」
「カメラの前でおしっこできるの? あぁ、恥ずかしぃ」
「…バカ」
「フフっ」
圭はもう既に衣服を全て脱いでいた。
カメラを便座の上に置いて、それからバスタブの中に入ってきた。
「少し狭いよ」
「いいじゃん、大丈夫だよ」
「それよりトイレ行かせて。 もう我慢できないっ」
「ダーメ」
「いじわる言わないで、ねぇッ!」
「カメラ置いてあるからダメ。 濡れちゃうもん」
「置いたの、圭ちゃんでしょ…」
「そうだ!」
圭はフフっといつもの笑い方をした後、とてもいいことを思いついたかのように言った。
「ここでしちゃいなよ」
「えぇっ?」
「ほら、早く」
「ちょっと、マジで言ってんの?」
「誰も見てないしさ」
「圭ちゃん、見てるじゃん」
「いいからっ」
そう言うと、圭は右手で紗耶香の尿道のあたりを刺激する。
「あっ…」
尿道まわりには娘にとって最も敏感な部分もあるわけで、当然この辺も刺激される事になるのであった。
圭は、中指で割れ目に沿って小刻みに揺らす。
「やんっ」
紗耶香が上擦った声を出す。
シャワーのせいで若干上がった体温がそうさせるのか、いつもより鼓動が激しい。
圭はその中指で引っ掛けるようにして割れ目を広げ、隣の人差し指でより奥の方を刺激する。
「いやっ、指入れないで」
「嫌? だって、クリちゃんこんなにおっきくなってるよ」
「いやっ、違うもん」
「違わないよ…」
圭はまた耳を責める。
「み、耳はぁ…」
頭の中いっぱいに広がる圭の舌の音。 ぐちゅっ、くちゅっ、ぐちゅぅっ…。
「やぁん…」
下半身の感覚が麻痺してる。
もう我慢できないよぉ…。
「そろそろ出なきゃ…だね」
そう言うと、圭は突然人差し指と中指を奥深くまで入れ、グッと限界まで広げた。
「いっ、たぁ!」
そして左手にシャワーを取ると、それを紗耶香の口にあてがい、そこから流れ出る温水を流し込んだ。
「ふごぉっ?」
圭は言う。
「おしっこ。 したいでしょ?」
再び感じ始めた尿意は、紗耶香に容赦なく襲いかかってきた。
「ふがっ」
「いいってば、我慢してないで。 早くしちゃいなよ」
紗耶香は首を振る。 精一杯の抵抗。
「がぼっ、ぐはぁっ」
しかしながら、そのような状況下で我慢できても、それは高々数秒でしかなかった。
「あ…っ」
とうとう最後には、股間から熱い液体を滴らせてしまう紗耶香であった。
一度流れ出したら、もはや本人にもその流れを止めることは出来ない。
「いやぁん、紗耶香ったらお漏らしぃ?」
わざとらしく圭が尋ねる。
紗耶香はそれに答える事も無く、しなやかな足をつたって排水溝に吸い込まれていくその黄色い流れを、
ただ黙って見つめることしかできなかった。
「紗耶香…カワイイ!」
ぎゅぅっ、と抱きしめる。
「圭ちゃん…」
紗耶香にはそれを振りほどく事は出来なかった─。
──────────
「…うゎっ」
真希の目はモニターにくぎづけであった。
視線の先では、紗耶香が股間を弄られている。
布団の中からは、布の擦れる音が微かに聞こえてくる。
なにやら毛布の真ん中の方が、もそもそと動いていた…。
先程の空白の2分間、圭は何をしていたのか?
実はただ紗耶香を放置していたのでは無かったのだ。
結果的に、これが原因で紗耶香は更なる辱めを受ける事になるのだが、圭の真の狙いはそこには無かった。
──────────
紗耶香がバスルームで待っている間、圭は寝室でビデオのモニターを設置していた。
昨日の夜、2人が練習している間に予め準備をしておいたので、1分もあれば十分だ。
用意が出来た所で、全然起きる様子のない真希を叩き起こす。
「真希!」
「……」
「ねぇ起きなって。 朝だよ」
「…ぅ」
「あ・さ!」
「…ヤダ」
「はぁ? 何言ってんの、早く起きなよ!」
「…ぶぅ」
「TVつけておくから。
それ見てなさい。 アタシ、シャワー浴びてくるから」
「ぁ、いってらっさい…」
そう言うと、圭は部屋から出ていった。
真希が枕から顔を上げると、目の前に3インチの小さなモニターがあった。
「…なにこれ?」
昨日はこんなのなかったじゃん。
TVならもっと大きいのが向こうにあったよね。
ってゆーか、眠い…。
「まぁいぃや」
そう言うと、真希は再び布団に顔を埋めた。
「おしっこしてるトコ、撮るよ。」
「にゃっ?!」
真希は慌てて顔を上げた。
「カメラの前でおしっこできるの? あぁ、恥ずかしぃ」
カメラ!?
この声は…圭ちゃん?
辺りを見回す…が、誰もいない。
夢? いや、夢じゃない。
確かに声が聞こえた。
「じゃあ…何?」
「フフっ」
その声は、前にある小さなモニターから聞こえてきていた。
「さ、紗耶香さん…?」
顔はハッキリとは見えないが、時折聞こえる微かな喘ぎ声に、真希は聞き覚えがあった。
「これ…どこ?」
狭い所で紗耶香が女の人と抱きあっている。
もう1人の人は紗耶香の影に隠れていて、ほとんど映っていない。
「でも…なんか見たことあるような、無いような」
その時、モニターの中から決定打となる発言が。
「置いたの、圭ちゃんでしょ…」
「え?」
今、紗耶香さんは『圭ちゃん』って言ったよね?
だとしたら…これ、バスルーム!?
…そう、圭がバスルームに持って来ていたカメラは、実はあの時作動していたのである。
そして、その様子は寝室のモニターを通じて真希に中継されていたのであった。
モニターの中で紗耶香は、真希が見ているとも知らずに、厭らしい声を放ち続けていた。
「いやっ、指入れないで」
「嫌? だって、クリちゃんこんなにおっきくなってるよ」
「いやっ、違うもん」
『紗耶香さん…えっちだ』
目の前で、圭が紗耶香の割れ目をなぞり上げている。
真希は、ほんのちょっとだけ、それを真似してみた。
彼女の女の部分が急に熱を持ち始め、ムズムズと疼きを始める。
真希の右手は自然に股間に宛がわれ、まるで何かを求めるようにズボンの上から、ソコを強く揉み始めた。
『す、ごい、なにこ、れ…?』
真希は「おしっこしたくなるような変なカンジ」に包まれた。
─皆さんも経験が無いだろうか?
初めて自慰行為を試みた時のことである。
何が言いたいのかというと、
始めての自慰は気持ち良かったか? といえば実はそうでもなくて、
各人なりが様々な試行錯誤の末に、
各人なりの手法を用いて、
各人なりの性的快感を得るようになっていくのである。
要するに自慰行為の初心者にとって、
性的欲求と、それによって得られる快感量は比例し得ない
ということなのだ─。
そして真希にとっても、それは今日が初めてのことなのであった。
先程から見よう見真似で、圭が紗耶香にしているような感じで、自身の割れ目に沿って指を這わせている。
なんともむず痒いような、それでいて切なくなるような、不思議な感じ。
『う〜ん…』
「あぁっ!」
モニターの前では紗耶香が先程よりもより大胆に身を捩じらせている。
「紗耶香さん…」
『どうすれば気持ちよくなれるの? 私も紗耶香さんと一緒に気持ち良くなりたい』
気持ちばかりが焦る。
思わず力いっぱい、右手で性器全体を握ってみる。
「いたっ」
…痛いだけだった。
「ふぇぇん、紗耶香さぁん…」
「ってゆーか、わかんないよぉ〜」
苛立つ。
「圭ちゃぁん、どーやってやってんのぉ?」
3インチのモニターではよく見えない。
「あ〜っ!」
……。
「やめた」
そう言うと、真希は毛布を頭からかぶった。
毛布の中で、目を瞑る。
外から、僅かだが声が漏れてくる。
聞きたくなくても、聞こえてくる、その紗耶香の声。
鼻から吸い、口からゆっくり息を吐く。
頭を真っ白にして、自分に正直になろう。
「…私も気持ち良くなりたい」
思いきって、ズボンを膝まで下ろしてみる。
本能の赴くまま、ソコに指を当て動かしてみる。
「んっ」
真希は、少しずつやり方を改良していた。
最初は指を伸ばしたまま、割れ目を擦るような動きだったのだが、今度は指で鉤を作ってみてそこで引っ掛けるような感じにしていた。
「ふゃ!」
突然、過去に無かった快楽点。
快楽点の発生源たるその小さな"核"の存在は、小学校六年の時に保健の時間に習ったかもしれないが、
そんなものは今真希の頭にはなかったし、そんな事はどうでもいい事だ。
今現在大切なことは、"そこを指で刺激してやると気持ちいい"という事実だけである。」
『なにここ! かなりいい感じなんだけど…』
その時、思わず口元から涎が零れ落ちそうになった。
「やべぇ」
慌てて啜り上げる。
じゅるっと生々しい音が布団の中いっぱいに響き渡った。
「フフっ」
真希は思わず笑ってしまった。
「これじゃAV女優みたいじゃん」
なりたてのAV女優は、その覚え始めのいけない遊びに夢中になっていた。
苦悶のような、それでいて恍惚の表情を浮かべながら。
「なぁんか…」
心の中から、そして身体の底から、何か熱いものが溢れだしてくる。
「もぅとまんないよぉぉ」
先程見つけた快楽点を、右手で作った鉤で引っ掛けて、そこを親指で押してみる。
「うんっ」
気がつくと割れ目からは、何かネバネバとした、熱いものが溶け出してきた。
「ベトベトするぅ」
それをちょっとだけ指で掬って、目の前にもってくる。
「…?」
臭いをかいで見る。
「ぅへっ」
鼻をつく僅かな刺激臭が、なんか、なんともいえない。
「ん〜…」
指を見つめて3秒。
真希はその唇から僅かに舌を出して、ちょっとだけ舐めてみた。
「びゃっ! しょっぱぁ…」
人間の体液は、しょっぱくてあたりまえである。
「…大人の味だね」
真希は、自身の蜜の味をそう定義した。
真希は、甘美の世界に片足を突っ込んでいた。
が、いかんせんテクニック不足である。
どっぷりと浸かるにはもう一つ、そう、"ネタ"がない。
「もっと…えっちしたいよぉ…」
真希が惚けていると、外からまた声が聞こえてきた。
「気持ちいいの?」
「…ぅん…」
「何? ちゃんと言わないとやめちゃうよ」
「やぁっ」
「言いなさい」
「うぅん…」
「早く! ねぇっ」
「……気持ちいぃの」
紗耶香と圭の会話である。
「あっ、そうか!」
真希は思わず声を出してしまった。
紗耶香さんの事考えたら、もっと気持ちよくなれるかも。
じゃあ、この手は私の手じゃなくて紗耶香さんの手! のつもり。
そして、その"紗耶香の手"を真希の割れ目に沿わせる。
「紗耶香さぁぅぅん…」
という訳で、ここから"真希の頭の中"では、紗耶香と2人っきりの世界になる。
──────────
朝の光の中。
2人は何故か、裸なのです。
もちろんそれは、想像の世界だからなんだけど。
真希の隣で微笑んでいるのは、紗耶香さん。
「真希の胸って、かわいいんだねぇ」
そんなこと言いながら、私のふくらみかけの胸を包みこむように撫でてくれる。
「そんなことないですよぉ〜。 だって、全然小さいし」
「でもこれからでしょ? もっと大きくなるって」
指先が、敏感な先端の上を遊んでるみたい。
くすぐったいような、何て言うか… 何だろ?
「こう何て言うのかさぁ、ぎゅ〜っとしてみたくなるんだよねぇ」
緩く撫でているだけじゃ物足りなくなったのか、だんだんと揉む力が強くなってくる。
「あぁ…っ」
思わず、声が出ちゃった。
「真希ったら、いやらしいんだ」
からかう、紗耶香さん。
「そんなこと…」
「そんなこと、何?」
「だって… アタシ、こんな姿、見られてるし…」
「ふーん。 どうりでさっきから顔が真っ赤なワケだ」
指先を動かしながら、紗耶香さんが言った。
「でも、なんかここ、硬くなってるじゃん、ねぇ。 気持ちいい?」
「うん…いい…」
「どこが気持ちいいの?」
なんだか、足の間が(むずむず)してきたよ…。
「ねぇ、どこよぉ?」
「やだ、恥ずかしいよぉ…」
「あ〜、わかったよ〜」
太腿を指先でなぞり上げる。
「こっちの方でしょ?」
「ぃやん…」
1つ息を吐く度、さっきの甘い感覚が、ある部分目掛けてどんどん押し寄せてくる。
「ここでしょ? 触って欲しいのは」
紗耶香さんの指が、ゆっくりと、どんどん熱くなっている部分に向かってくる。
「ん…んっ」
「ここ?」
指で触られた"そこ"が、(ひくっ)と震えている。
「紗耶香さぁん、そこ、もっとぉ…」
(くちゅっ)と、湿ったような音が響く。
熱が、込み上がって来る。
「もっと、どうして欲しいの?」
「いじわるぅ…」
焦らす、紗耶香さん。
わざと私に恥ずかしい言葉を言わせようとする。
「言わなきゃわかんないよ。 ねぇ、教えて」
指先を、強引に"そこ"に忍びこませる。
「ねぇ… こうして欲しいんでしょ?」
「はぁ…っ」
紗耶香さんの指先で、私から溢れる蜜でぬかるんだ部分をなぞる。
「真希はえっちだねぇ〜。 身体は正直だもん」
「やぁん、違うよぉ」
私のの"そこ"は、もはや(とろっとろ)に溶けていた。
そこから流れ出したものを、紗耶香さんは指先に絡め取る。
「ほらね? やぁらしぃんだ〜」
「やぁだぁ〜っ」
そうは言っていても、"そこ"を、まるで円を書くように撫でられている内に、
なにか痺れるような気持ち良さが、身体の底から背筋を沿って脳の天辺まで這い上がって来る。
「やぁっ、もっ…おかしく、なっちゃうよぉ…っ」
『もっと気持ちよくなりたいよ』
そんな私の欲望を、紗耶香さんは、そのまま全て、その指で叶えてくれる。
指の動きに合わせて、厭らしく腰も揺れる。
「真希ってすごくいやらしいんだね」
「やぁ、そ… う〜ん…」
もしかして、変態だと思われてるのかな?
でも、紗耶香さんが触ってくれるのなら、何と思われてもかまわないよ…?
「真希、すっごくかわいいよ…」
紗耶香の両手が"そこ"に滑り込む。
「もっとえっちな姿を見せて…?」
片方で尖った核を、もう一方は蜜の溢るる泉の中に探り入る。
「紗耶香さぁん…っ!」
紗耶香さんの指先を、熱く焼けている私の中が少しずつ飲み込んでいく。
指が、内で擦れるたび、甘い痺れがくる。
「ぁう…ぅ…ふぅ…」
言葉にならない言葉が、宙をさ迷う。
「アツっ!」
紗耶香さんの指が、私の中で不意に、跳ねた。
「真希の中、すごくアツいよ…」
私… どうなっちゃうんだろう?
「こんなに入っちゃうんだね…」
紗耶香さんの指が、私の一番奥のオクまで入ってきた。
(くちゅっ、くちゅっ)と湿った音が、頭の中に直接入ってくる。
「真希の中、すっ…すっごくキツいよ…っ!」
私が、私の中で、(きゅっ、きゅっ)と鳴いている。
それは女の本能なのか、真希の中に始めて入ってきた紗耶香さんの指を、
まるで何かと間違えているかのように、強く吸い上げている。
「あっ…しゃぁかさぁ…んっ!」
紗耶香さんの指は、何度も何度も何度も、私の中を擦りあげている。
それと一緒に核芽も転がしてくる。
疼きが癒され、背中は反り上がり、足の指は伸びきっている。
「気持ちいい?」
「…っ…いぃ、いぃ…っ!」
そう、気持ちいい。
気持ち良すぎて、このままじゃ、おかしくなっちゃうよ。
「ダメ! もうわかん、な、く、なっちゃ…うっ…!」
「……」
「紗耶香さ…ん?」
ずーっと無言で、でも鋭く指を動かしながら、こっちを見ている紗耶香さんと目線があった。
こんな恥ずかしいカッコ、紗耶香さんに見られてるの…?
「いゃ、見ちゃや… 見ちゃダメぇぇっ!」
そして、死んじゃいそうになるくらい熱く鋭い"何か"が、私の中で弾け飛んだのです…。
──────────
「フフっ…」
「!」
声が、した。
「やっぱり…ね」
それは、私の声では無い。
「予想通りで、ちょっとつまんないかも」
それは、紗耶香さんの声でも無い。
「圭ちゃん…」
それは、圭の声であった。
促されて、きつく閉じた目を、そっと開けてみる。
「えっ…?」
驚きで、空気が止まった。
「う…そ?」
目の前に、何故かカメラがある。
「すけべな真希、撮っちゃったよ」
「え…っ!?」
始めて、自分を慰めた姿。
それをビデオに撮られてたなんて…。
「う…っそぉ…」
そんな茫然自失の真希に。
「それにしてもさァ…」
圭がトドメを刺す。
「アンタって、結構大胆なんだねェ〜」
そして気付く、今の自分の姿。
誰もいない部屋で、乳房も局部もむき出しにして、広げた足の間に手を突っ込んでいる猥らな姿。
「!!!」
声にならない叫び声。
「ぜ〜んぶ、撮っちゃいました。 ごちそうさま♪」
「いやっ、やめて! 消して! そんな…やめてよ、圭ちゃん。 お願い!」
圭に縋り付く。 泣いて、願い出る。 しかし…
「嫌よ」
即答。
「なんで? やめてよ、そんなこと!」
「だって、消しちゃったら、撮った意味が無いじゃない」
「……」
力無く崩れる真希。
「そ、んな…」
「でもさァ…」
その横で、1人悦にいる圭。
「これは使えそうね、かなり」
真希の顔を見ながら、笑っている。
「いや…」
動く事も、そして目を背ける事も出来ずにいた真希であった。
「それよりさ…」
先程とは打って変わって、圭はいつも通りのトーンで話し掛けてきた。
「サッサと服着ちゃいなよ」
真希にはまだ、顔を上げる力も無い。
が、さすがというべきか、圭はその辺は心得ていた。
「紗耶香、来ちゃうよ?」
「!」
「裸、見られちゃうよ? 恥ずかしいねェ〜」
「い、いや…」
「"ここで何してたの?" なぁんて聞かれちゃうかも。 フフっ…」
「そ…そんなの、絶対イヤ…」
「ほらほらほら、は〜や〜く〜し〜ろ〜。 アハハハっ」
完全にからかわれてる。
しかし、そんな事に気づく余裕が無いほどに、真希はパニックしていた。
「じゃ、布団上げといてね。 アタシら、ご飯作ってるから」
パニック中の真希には、返事など出来ない。
慌てて、服を整える真希。
「さっ、朝ごはんでも作りますか〜? じゃぁねぇ」
鼻歌交じりで、圭が部屋から出ていった。
「ぁ…」
一人残された部屋で、暫くの間、真希はただ呆然と突っ立っていた。
──────────
朝食。
そんなに豪華でない食事が、目の前に並んでいる。
「あー、ハラへった〜」
所詮女しかいない部屋、会話もこのレベルである。
「さっさと食べちゃいましょ。 んじゃ、いただきまーす」
「……」
「……」
「なんか、このゴハンおかゆみたーい。 なんかベチャベチャだわ」
「……」
「……」
「あ、ドレッシングある?」
「…はい」
「ん、どーも」
「……」
「……」
「あー? かけすぎたかも! 絶対、塩分取り過ぎ! ねぇ?」
「……」
「……」
「ま、いいけど。 (モグ)…しょっぱ!」
「……」
「……」
さっきから喋っていたのは、圭だけであった。
紗耶香も真希も、己を毒牙にかけた相手とのお喋りを愉しむほどの心的余裕は無かったのだ。
「なーんか、つまんないよねー。 アタシだけじゃん、しゃべってるの」
辱めを受けた二人の娘。
『紗耶香さん…』
真希は、紗耶香を見ていた。
紗耶香は俯いていて、黙々と食べていた。
『真希…』
紗耶香は、真希の視線に気付いていた。
しかし、顔を上げて、それを合わせる勇気は無かった。
「あー、食べたっ」
圭が茶碗を置く。
「さてと…」
「圭ちゃん!」
真希が、勇気を出した。
「な、なによ、急に」
「さ、さっきのビデオなんだけどさァ…」
(ガタっ)。 椅子の音。
「?」
2人、その方に顔を向ける。
「どうしたの?」
「紗耶香…さん?」
紗耶香が震えている。
「い、いゃ…」
「えっ? ちょっ…どうしたんですか?」
「いやぁっ!」
叫び、紗耶香は奥の部屋に逃げ込んでしまった。
「ぇ…なんで?」
「あーぁ。 アンタが急にあんなこと言うから…」
「え?」
「あのねぇ…」
圭は溜息をついて、そして話し始めた。
「あの娘はね、アンタがビデオに撮られた事は知らないの」
「……」
「なのによ? あんなこと言ったら、あの娘、自分が撮られたビデオだと思うじゃない」
「じ、ぶん、の…?」
圭が、首を小さく振る。
そして、やっと呟く。
「あの娘のビデオは、いくつもあるわ…」
「ぃ…?」
「そしてそれは、本人も承知の上…」
「しょ…!?」
「この合宿がそのためのものだってことも…」
「……」
「真希?」
「ぁ…」
「アンタさ…ねぇ、なんでこんな世界に入って来ちゃったのよ?」
圭は、その口元は笑っていたが、表情はこわばったままだった。
「あ…あの…」
「なんでこんなことしてるのか、って聞きたいんでしょ?」
「ぁ…」
「聞かない方がいい」
「え?」
「アタシ達ね… 芸能人って言えば聞こえはいいけど、結局人としては見られていないのよ」
「人として見られてな…い?」
その衝撃的発言の真意を、真希は今だハッキリとは掴んでいなかった。
「ま、座んな」
圭が、椅子に座る。
「ちょっとだけ、話してあげる。 ちょっとだけ、ね」
──────────
「アタシ達がこのグループに入る時ね、ホントは5人入るはずだったの」
目の前に、ミネラルウォーター。
「でも入ったのは3人だけ」
軽く、口をつける。
「何でだと思う?」
「え? 何でって、えっと、う〜ん…」
「…わかんない?」
「え? えっと、その、あ、うん…」
言い難そうにしてる真希に、小さく笑って、圭が続ける。
「ま、その程度の事ってどこにでもあることだし。 いいんだけど」
その表情に感情は無い。
「はぁ…」
「でもね…あの娘、不器用なのよ。 すごく…」
「……」
「結局、若過ぎたんだと思う。 "開き直る"っていう術を持って無かったんでしょうね」
「そ、それって…、あの…、あ…、んーと…」
真希の頭の中に、いろんな絵が(ぐるぐる)と渦巻いていて、それらをまとめ、言葉にしようとしても、上手くいかない。
そんな困惑した真希の表情の意味も、圭はわかっていた。
「ハイ! この話はコレでおしまい! ね?」
「え?」
圭の表情は、朝に部屋で見せた、冷たい顔に戻っていた。
「アンタはアタシ達とは違うの。 アタシ達とは…ね」
突きつけられた現実の重さは、若すぎる真希ですら(なんとなくではあったが)理解できた。
しかし、ならばこそ、どうしても聞いておきたい事がある。
「圭ちゃん…」
「ん?」
「アタシと… アタシとみんなってどっか違うのかな?」
よく考えてみたら、そんなこと考えたこと無かった。
今だからこそ、考えたい。
「アンタは、アタシ達には無いものを持ってる」
圭が呟いている。
「でも、それって、アタシも紗耶香もそうであるはずなんだけどさ…」
それは、むしろ自分に言い聞かせる様にすら見える。
「……」
真希はそれ以上聞く事が出来なかった。
ふと、紗耶香が入ってしまった奥の部屋に目をやる。
「!?」
いやな予感。
何か物凄くいやな予感がした。
「紗耶香さん!」
慌てて、部屋に向かう真希。
「えっ、なに? どうしたの?」
それに驚く圭。
『いや… 紗耶香さん…!』
戸に手をかけ、一気に引く。
「!!」
紗耶香がうずくまっている。
「う…ぅん」
「紗耶香さん!」
駆け寄る。
「いやっ、すごい熱…」
ちょっと肌に触れただけなのに、その異変がわかる。
「紗耶香!」
後ろで、圭もそれを見て驚いている。
「早く! 救急車!」
真希が叫んだ。
「……」
が、圭は固まったままだ。
「ねぇ、圭ちゃんってば! 何やってんの、早く!」
首を振る。
「ダメ…」
「圭ちゃん!?」
「ダメよ、救急車なんて呼べない」
「なんで? 紗耶香さん、死んじゃうよ! ねぇ!」
「マネージャーを呼ぶわ」
「ねぇ! 圭ちゃんってば!」
呼びとめる真希を無視して、圭は出ていってしまった。
「紗耶香さぁん…」
紗耶香を懐に抱いたまま、真希がまた泣いている。
「あ…頭、冷やさなきゃ…」
今ごろ、やっと気付く。
「ちょっと、待っててくださいね…」
「えぇ、そうです。 紗耶香が…。 えぇ…」
圭が、電話をしている。
どうやら、119では無さそうだ。
やはり、先ほど言ってた通り、相手はマネージャーなのだろう。
「とにかく、すぐ来てください。 他の人には…。 はい。 じゃ…」
その横を、真希が通りすぎる。
「あと10分くらいで来るわ」
タオルを水に濡らしている真希に、圭が話し掛ける。
「とりあえず、横にしておいて。 あとはマネージャーに任せましょ」
それを聞いて、真希が遂に怒った。
「何でそんなに冷たいの?」
「何が?」
「ひどいよ! なんで…紗耶香さんがかわいそうじゃない!」
「かわいそう?」
「だって、だって…すごい熱。 あれじゃ死んじゃうよ!」
「あんなのじゃ死なないよ」
「あんなの? ひどいよ! ひどい…」
半狂乱の真希に、圭が歩み寄る。
「この騒ぎ、あんまり公にはしたくないの」
「な…なんで? 今、そんなこと言ってる状況?」
「アタシ達の… なんていうか、いろんな関係上ね」
「何それ? わかんないよ、そんなの!」
真希は、まだ収まらない。 しかし…
「そりゃ、わかんないよね…」
圭が、苦笑している。
「え…っ?」
圭の意外なリアクションに、真希もそれ以降の追及を躊躇してしまった。
「残念ながらね、世の中って理屈じゃ通らない事もあるのよ」
「ど、どういうこと…?」
「でも、大丈夫。 心配しなくても、紗耶香は死なないわ」
「……」
──────────
玄関。
「それじゃ、あとはよろしく」
マネージャーが紗耶香を連れて行こうとしている。
「荷物をまとめておいて。 2時間後に迎えに来るから」
事務的な会話しかない。
「……」
マネージャーに背負われた紗耶香は、目を開けていない。
それを見ていた真希。
「ァ…アタシ…」
「ん?」
「アタシも行きます!」
「はァ?」
「だって心配だし、それに…」
圭が、手を振ってそれを遮った。
「ダメよ」
「えっ?」
「アンタが行ったってどうにかなるもんでもないじゃない」
「そりゃ…そうだけど…」
「じゃ、あとはよろしく」
(ガチャリ)。
こうして、事務的な会話が終了した。
「さ、帰るよ。 アンタも早く支度して」
「圭ちゃん…」
「何?」
「なんで? なんで、そんなに冷たいの?」
「冷たい?」
「ひどいよ…みんな友達じゃ無いの?」
「友達? みんなが?」
それを聞いて、鼻で笑った。
「これはね、仕事よ。 ビジネス」
「ビジネス?」
「そう、ビジネス。
そして紗耶香は仕事仲間。 友達とかそういうのとはまた違うものよ」
「……」
「アタシの今回の仕事は、紗耶香のビデオを撮って帰ること。
ノルマは果たした。 だから後は興味無いわ」
「そ、そんな…」
「ま、アンタの分まで撮れるとは思ってなかったけどね。
コイツは、いざって時の切り札にさせてもらうよ」
「け、圭ちゃんは…」
「ん?」
「そんなことしてて、辛くない?」
「辛い? 辛い、ねぇ…」
真希は、また泣いていた。
それを見ていた、圭。
つい、本音を漏らしてしまう。
「アタシもずいぶん汚れちゃったんだね…」
「(ぐしゅ)…えっ?」
「アンタ見てたら余計にそう思うわ」
「……」
小さく、圭が話し始める。
「アタシと紗耶香ね… 前にある"お誘い"を断ったの」
「お誘い?」
「だから、これはその罰ゲームってトコかな?」
「罰ゲーム…?」
「でも、あんな奴らに紗耶香を汚させるくらいなら…
ねぇ? そう思わない?」
「あんな、って…誰ですか?」
真希の素朴な疑問。
「えっ?」
圭が、慌てて、首を振る。
「あーっと。 余計なこと喋り過ぎちゃったね」
「どういうことなんですか? 紗耶香さんに、何が…?」
「ま、それもビジネスってことよ」
「ビジネス…?」
「でも、今日のビデオで"お釣り"が来るわ。
紗耶香人気に火がつくことになるでしょうね」
「……」
「それに比べて、アタシは… アタシは映らずのまま…」
「……」
「……」
「…?」
圭の声が、止まった。
「圭ちゃん?」
顔を上げる。
圭が、泣いている。
何で泣いているんだろう。
何を悔いているんだろう。
後悔なんて、そんなもの、とうの昔に捨てたのに。
それもこれもみんなビジネスなんだって、自分の中で割りきってたはずなのに。
「そう、アタシはいつまでも映らずの…」
──────────
後日、TVでは、その合宿の様子の一部が放送された。
そのビデオを見ながら、真希は内心驚いていた。
えっ? 全然違うじゃん…。
なんで、こんなことになってるの?
とにかく事実と異なっている点がいくつもあるのだ。
圭が仕組んだ様々なトラップについて、全く触れられていなかったのは、まぁ当然ではあるが、
紗耶香が倒れた事ですら、美談として扱われていた。
そして、1番驚いたことは、横の2人とも、まるでこのビデオで流された事だけが真実である様に振る舞っている事であった。
「いやー、大変でしたよー。 ホントに」
横で、紗耶香が司会と話をしている。
「ま、これも仕事ですからね」
圭が、合いの手。
仕事…。 仕事って、いったい何なんだろう?
今日も、私達は働きつづける。
それぞれの"仕事"をこなす為に。
(了)