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歌舞伎町の女王

「林檎ちゃん、出番でーす」
「・・・あいよ」
タバコをもみ消しながら部屋へ向かう林檎
『あたしがこの町に流れ着いて半年いろんな男に抱かれ
そして今日も違う男に抱かれる でもあたしが売るのは自分だけで
同情なんか、まして愛なんか決して欲していない』

「新入りのなつみです、よろしくお願いします」
『・・・やれやれ、こんなあどけない娘がこんな街にとはね』
緊張気味のなつみにタバコを勧める林檎
「ま、三日もすりゃ慣れるよ、こんな掃き溜め」
答えないなつみ

「ちょっとちょっとなつみちゃーん。困るよー、
言われた通りやってくんなきゃー。お金欲しいんでしょ?」
泣きじゃくるなつみ
やはりこの娘に掃き溜めの風は冷たい
セヴンスターを燻らせながら嘲笑の目で見る林檎
『やっぱりお嬢ちゃんには無理なんだよ ママのおっぱいでも吸いに帰りな』
仕事帰り朝方の歌舞伎町
林檎の後を追うなつみ
「お嬢ちゃん、早く帰らねえとママが心配してるぜ」
「あたしには帰るところなんてないの」
「ついてきても駄目さ」
「あなた優しくしてくれたもの」
「・・・フッ」吸いかけのタバコを投げ捨てる林檎
「ついてきな」

朝方にもかかわらず閉め切った薄暗い部屋
「とりあえず荷物置いて、シャワーを浴びてきな」
「・・・あたし着替えを持ってない」
「・・ったく、とりあえずあたしのを着なよ」

タバコを燻らす林檎
『ったく、調子が狂っちまった』
浴室から出るなつみ
サイズの合わない下着
「はははは、あたしのじゃ胸が大きすぎたかい?
お嬢ちゃん、ほんとに小さいな!?」
むっとするなつみ
「そんなこといわなくたっていいっしょ」
「お嬢ちゃん、生まれは?」
「北海道」
「どうして、この街に?」
「わからない、いつのまにか気づいてみたら」
『騙されて身包み剥がされたか』
多少の同情を注ぐ林檎
「寝てねえんだろ?ベッドひとつしかないけど、
とりあえず寝ろよ」

同じベッドに入った林檎となつみ
震えているなつみの身体
「あんた、男は?」
答えないなつみ
『どうやらおぼこだね』
そっとなつみの胸に手をやる林檎
鼓動を早めるなつみ
そっと唇を重ねるとタバコの匂いがした
林檎の舌がなつみの首筋から胸を舐め回す
小さな吐息を漏らすなつみ
少しずつ揉みしだく手を強くする林檎
下半身に手が伸びる
目を閉じるなつみ

しだいに汗ばんでくるなつみの身体の柔らかさを感じる林檎
ついにその手がもっとも敏感な部分に伸びる
それほど人にいじられたことのない部分に手をやられ
なつみの心の中は羞恥心と罪悪感、禁を破る快楽が渦巻いていた
なつみの身体の微妙な変化を感じて舌の動きを変える林檎
それに応じてなつみも微妙に身体を震わす
その動きは次第に激しさを増していく

「今度はあたしの番だよ」
なつみを促す林檎
不慣れな手つきで林檎の豊満な胸を鷲掴むなつみ
そしてお互いに舌を動かしあう
二人が果てるまで続いたその行為は
なつみにとっての新しい門出

果てた後ベッドの隅に腰掛けて煙を吐き出す林檎
「お嬢ちゃん、あの店続けるのかい」
「他にすることもないし」
「やめときな。あたしみたいになっちまうぜ」
「あなたみたいになら、なりたいな」
「けっ。何もわからねえ小娘が」吐き捨てる林檎
押黙るなつみ
「ま、ここにいる分にゃあたしは文句もない。
自分のメシ代くらいは稼いで来な。」

『愛?このあたしが?』
無邪気な小娘を、掃き溜めから救ってやりたいと思った
『らしくねえな』
苦笑いする林檎

また今日も店で薄汚い男どもに抱かれ
疲れた身体を吹きすさぶ風にさらし家路につく

「おかえりなさい、林檎さん」
とりあえず家に住まわせているなつみ
帰るなりなつみを抱き寄せる林檎
タバコの匂いを口に移しそのままベッドへ流れ込む朝方の秘め事

愛?違う!癒し?違う!同情?違う!
なつみの優しさを認めたくない林檎
素直に林檎の優しさを認めるなつみ
抱くたびに柔らかいなつみの肢体

「今日も、優しかったですね」微笑むなつみ
「けっ、そんなことねえよ」悪態をつく林檎

幸せなんて欲した覚えはない
あたしは自分を売って生きていく
なつみの身体はそんなことを忘れさせてくれる
幸せ?これが?・・・だとしたらあたしもずいぶん丸くなったもんさ

・・・なつみの笑顔は、あたしには似つかわしくない・・・

「林檎ちゃん、調べといたよ。でもこんなの何に使うの」
「ありがと、店長。今は内緒」

いつものようにドアを開けなつみを抱きしめる
長いキスをしながら急に目の色を変える林檎
「これ以上ここに居させるわけにはいかない」
「何で?」「うっとおしいんだよ、稼ぎもねえ癖に」
「・・・お願い」
「駄目だ。お前の家、調べさせてもらったよ。
北海道ではちょいと名の知れた名家らしいじゃねえか。」
答えないなつみ
「ちゃんと変える場所がある奴を居させるわけにはいかないね」
「帰りたくないの」
自分から話し出すなつみ

「愛なんて、感じたことなかった。
うちに居てもずっと『勉強しろ』しか言わないで、
娘に関心も持たなかった両親。毎日メイドが作る愛情のない料理。
一人で過ごす広い屋敷。もう、真っ平」
「それすらない環境のやつはどうすんだよ。お前は恵まれてるほうだよ」
「それがすぐに失われるとしたら?」
「何だよ」
「結婚させられるんだって。会ったこともない相手と」
政略結婚の道具と言うことらしい
地元の有力者の息子に捧げられる運命を思うと同情せざるを得なかった
しかし林檎は手を緩めない
「それで、お前は家出してきたと。んで、これからどうすんだよ。
あたしはこれ以上助けてやれねえよ。自分で何でもして食っていけるのかよ。
結局人に頼らねえと何にもできねえんじゃねえのか?」
「でも今は愛があるもの」
「馬鹿。この部屋の何処に愛があるんだよ」
「林檎さんは認めないかもしれない。
でも、あたしを本気で責めてくれるのは本当の愛よ」

「なんだよ、こうされるのが愛だとでも言うのか?オラ」
なつみを裸に剥いて辱める林檎
両手を後ろ手に縛られ、目隠しをされるなつみ
「舐めてみろよ」股間を顔にあてがわれ、舐めさせられるなつみ
「ご褒美だよ」指をなつみの深い場所に差し込む林檎
「自分で、欲しいっていってみろよ」
「お願いです、下さい」「もっと大きな声で」「下さいぃぃ!!」
「ほらよ」「はぅ、ううぅ」悶えるなつみ
「どうだ、こんなにされてもまだ愛してるとか言えるのかよ」
「ううぅ、愛してますぅ、愛してくださいぃ」
「ほら、こんなに濡れてるじゃねえか」
「いやぁ、恥ずかしい、でも嬉しい」

どんなに荒々しく責めても、なつみからこぼれる愛の雫は変わらなかった
それは愛に飢えた少女が心の底から流す優しさの涙
林檎も根負けした いつしか責めに快感を覚える自分がいた

タバコをくわえながらなつみの目隠しを解く
「痛かったか?」多少の気遣いを見せる
「ううん、嬉しかった・・・」心底喜びの表情を見せるなつみ
『こいつ、変わっちまった』呆れつつものめり込んでいく林檎
『これも愛なのかも知れねえな』笑いながらタバコを吹かす

次の朝いつものようにドアを開けた
いつもと変わらない薄暗い部屋
なつみだけが、そこにいなかった
『何でだよ?』街じゅうを探し回る林檎

テーブルの上にはメモがあった
『林檎さん 本当にありがとう アナタのおかげで
あたしは本当の愛を 知れたような気がする
これから出会う男を 愛せるような気がする
さようなら』

タバコを吹かしながら考える
『愛って何なんだよ?』
そして今日も あたしは身も知らぬ男に抱かれる
決して同情を ましてや愛なんか欲することなく