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☆『娘。ロワイヤル』☆
- 1 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時52分18秒
- 〜プロローグ・・・
それは、ある日突然訪れた。
ある山奥の、ある山荘・・・。
そこは、広く大きな・・・一体、何の目的の為に建てられたものなのか。
敷地面積、建坪共に、一つの山荘としての大きさを凌駕していた。
そう・・・俗称で言えば”東京ドーム5つ分”
正確に言えば、敷地面積が”なんたらドーム5つ分”であり、
建坪に関しては、その1/3程度だったが、それでも一つの建造物としては
異常な広さを持っていた。
そこに集められた人数、実に”13人”。
かつて”モーニング娘。”を名乗ったもの”3名”と
今も尚、”モーニング娘。”として芸能界を突っ走る”10名”。
彼女たちは、ある時目を覚ますと”そこ”にいた・・・。
-
【”娘。ロワイヤル”(モーニング娘。Neon Genesis Project)参加者名簿】
1.安倍 なつみ (natsumi abe) /現役=スタート地点:使用人の部屋(南館3F)
2.飯田 圭織 (kaori iida) /現役=スタート地点:キッチン(本館1F)
3.中澤 裕子 (yuko nakazawa) /現役=スタート地点:書斎2(南館2F)
4.福田 明日香 (asuka hukuda) /OG=スタート地点:地下倉庫(本館 B1F)
5.石黒 彩 (aya ishiguro) /OG=スタート地点:主寝室(本館3F)
6.矢口 真里 (mari yaguchi) /現役=スタート地点:2階倉庫(南館2F)
7.保田 圭 (kei yasuda) /現役=スタート地点:物置小屋(庭)
8.市井 紗耶香 (sayaka ichii) /OG=スタート地点:ガレージ(庭)
9.後藤 真希 (maki goto) /現役=スタート地点:衣装部屋(「本館1F)
10.吉澤 ひとみ (hitomi yoshizawa)/現役=書斎1(南館1F)
11.石川 梨華 (rika ishikawa) /現役=スタート地点:屋上(南館屋上)
12.加護 亜依 (ai kago) /現役=スタート地点:子供(娯楽)部屋(本館2F)
13.辻 希美 (nozomi tsuji) /現役=スタート地点:ボイラー室(南館 B1F)
- 2 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時53分36秒
- ◆『安倍なつみの場合』◆
寒い・・・。
昨日、仕事が終ってから家に帰り、あまりの寒さに”エアコン”を付けっぱなしで寝たはずなのに。
壊れちゃったのかなぁ・・・。ぶるぅぅぅ。それにしても寒い。
寒さに無理矢理起こされるように目を覚ました彼女の目に入ったものは
いつもと違う天井、壁、窓・・・。
「・・・・・・どこ・・・?ここ・・・。」
彼女は、いつも寝る時に抱いている”抱き枕”を、ベット全体に手を這わせ
慌てるように探した。
「・・・・・・ない。」
あるはずもなかった。
- 3 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時53分48秒
- そう、ここは明らかに彼女の部屋ではなく、もちろん家でもなかった。
何が起こったのか、わけがわからない状態の彼女は
毛布をぐっとつかむと、ベットの隅っこのほうで、足を抱え込むように小さく座り込んだ。
まだ、頭の中は寝ぼけていたし、混乱もしていた。
(ここは、私の家じゃない。うん・・・それは解ったわ。ただ・・・何処なの?ここは・・・)
彼女は、改めて部屋の中を見渡した。
全体的にむき出しコンクリートの壁、広さは・・・8畳くらいだろうか。
家具は何も置いていなくて、かなり殺風景な感じだった。
唯一、家具と呼べそうなベットも、とても堅くて、まるで囚人が寝るような汚い金属製の
パイプベット。そこにはたった一枚の毛布と、これまた堅い枕。
当然、いつものふわふわした”掛け布団””抱き枕”はなかった。
(これじゃまるで牢獄・・・・・・だべ?)
自分で想像して、背筋がぞっとした。
そう、今の世の中、自分が拉致されることなんてのは珍しくもない。
最近は、自分達の周りを”ストーカー”がウロウロしているし、しかもこの間
”梨華”が盗聴事件にあったばかりだった。
「こ・・・こ・・・殺され・・・」
眠気がさめて、自分の思考がはっきりしてくると共に、恐怖は増大していった。
(とにかく、とにかく逃げ出さなきゃ・・・逃げ出さなきゃ・・・)
彼女はそう思うと、くるまっていた毛布から体を起こし、ベットから飛び出した。
「・・・・・・・・・!!?」
体の異常に気が付いた。
ベットから飛び出した彼女の体は、紙の人形のように”へなぁ”っと、床に崩れ落ちたのだ。
「膝が・・・膝が立たない・・・よ・・・」
床に這いつくばった彼女は、また極度の睡魔に襲われた。
何か、鼻につく匂い・・・睡眠ガスだ。
「・・・誰なの・・・こんな・・・こと・・・」
ゆっくりと閉じられていく彼女の瞳に映っていたのは
壁から吹き付けられる”カーキ色”の煙と、冷たいコンクリートの床だった。
そのまま彼女は、また深い眠りの中へと落ちていった・・・。
- 4 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時54分12秒
- ◆『辻 希美の場合』◆
彼女は夢を見ていた・・・。
「ひつじがいっぴき・・・ひつじがにひき・・・ひつじがさんびき・・・ひつじが・・・よんだっけ?つぎ?・・・」
彼女の周りを、無数のひつじが飛び交っている。
そのなかに埋もれた彼女は幸せそうに、そのひつじを数えていた。
だが、そのうちそのひつじ達は、彼女に向かって、脅えるように、そして泣きすがるようになき始めた・・・。
「めぇぇぇぇぇぇぇ・・・!めぇぇぇぇめぇめぇぇぇ・・・!」
不思議に思った彼女は、そのひつじ達の後ろに目をやると、
にわかに信じ難い光景があった。
- 5 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時54分39秒
- 飯田圭織と石黒彩が”サブマシンガン”と”ショットガン”でひつじを狩っているのだ。
「・・・・!!」
その銃弾で次々とひつじは倒れていき、だんだんとその足は彼女の方へと近づいてきた。
彼女は恐怖と驚きで身動きが取れなかった。
一面真っ白だったひつじの群れは、いつしか真っ赤な絨毯と化し、
その広がった水面の上に座り込んだ彼女に2人の銃口が向けられた。
「・・・やめて・・・やめてくら・・さい・・・」
涙でにじんだ視界の向こう側に映った2人の顔は、なぜか笑っているようにも見え
声を発しようとしても、もう震えた泣き声しかでなかった。
ぱららららららららら・・・・
どん!どん!どん!
どこか冷たい銃声と共に、彼女の体は熱くなっていった。
自分の腹部、肩、脚部から飛び散る鮮やかな”赤いシャワー”を顔面に受けながら
彼女の意識はどんどんと薄らいでいった・・・。
(死んじゃうのかな・・・わたし・・・一度でいいから、ちゃんと”のぞみ”って言ってみたかったなぁ・・・)
- 6 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時55分02秒
- ・・・・・・・ぴちゃん。
「・・・・!?」
顔に落ちた滴に、驚くように目が覚めた。
「ゆめ・・・・・・らったの・・・・?・・・そうらよれ・・・・」
ほっとしたのもつかの間、直後、えも言えぬ違和感に襲われた。
彼女は目を覚ました自分の周りを見渡した。
見たことのない場所・・・しかも部屋じゃない。
そこら中から吹き出る蒸気、むっとした湿気、妙な生暖かさ・・・。
自分の額にさっと手をやると、暑さのせいか、夢のせいか、汗でぐっしょりになっていた。
「どこらの・・・?ここ・・・」
悪夢から目を覚まして、また更に理解し難い現実。
もう彼女は正常に事態を把握することは出来なくなっていた。
ただ混乱する自分の思考に突き動かされるまま、周りをキョロキョロ見回し
また、いつしかその美しい瞳から涙があふれていた。
そして、無意識に叫び声をも発していた・・・・。
「おかぁさ〜〜〜んっ!おとうさぁ〜〜〜〜んっ!ののは、ののは、どうしたれすか〜〜〜〜!!
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
その声は、彼女のいる”ボイラー室”一体に広がったが
誰の言葉が返って来ることはなかった。
でも彼女はひたすらに泣き叫び続けた。
「なに〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!なんれすか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
わかんないれすよ〜〜〜〜ひくっ〜うぐっ!あ〜んっ!!」
やはり、誰の声も返っては来なかったが、”ぷしゅっ”という何かを噴き出すような音が
一瞬したかと思うと、そこに充満した空気を吸って
彼女は再び深い眠りへとついていった・・・。
「おか・・・・さん・・お・・・とう・・さ・・・ん・・・・・ひくっ、うっぐ・・・」
- 7 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時55分32秒
- ◆『市井 さやかの場合』◆
彼女はもう、目を覚ましていた。
暗く寒いガレージの中ではあったが、彼女持ち前の冷静さと度胸の強さのせいか
今の状態を、的確に判断しようとしていた。
- 8 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時56分01秒
- 実は、彼女はこうなることを知っていたのだ。
すでに”モーニング娘。”を脱退し、日夜個人で”勉強”に勤しんでいる彼女が
業界内の場所に足を踏み入れることは珍しくなかった。
それは、表も裏も含めて・・・。
そんなある日、彼女はある噂を耳にした。
”モーニング娘。NEON GENESIS PROJECT”
これまで幾度となくメンバー交代を繰り返してきた彼女たちであったが
それも今や、”飽和状態”にある、と判断した業界上層部が考案したプロジェクトだ。
詳細についてまでは、その噂で知ることは出来なかったが、
その対象者が、”現メンバー”と”元メンバー”の全員であることは聞いていた。
しかし、それが本当だとは、正直な所信じてはいなかったのだが・・・。
とにかく今は、その”まさか”が現実になろうとしていた。
彼女は思った。あの噂によれば、近くに他のメンバーもいるはずだ。
自分は、まだ脱退したばかりだし、みんな顔見知りだから、すぐ見つけられるだろう。
- 9 名前:娘狂 投稿日:2000年12月27日(水)08時56分28秒
- その時、遠くの方からかすかに泣き声のような物が聞こえてきた。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・あ〜ん・・・・・」
ちょっと鼻にかかった、したったらずな声・・・新メンバーの・・・辻!?
これから、もし”プロジェクト”が実行されるとしたら、何が起こるかは解らないが
確かにある今の異常な状況。とてもみんな正々堂々と楽しく、なんてことが
実行されるとは思えない。
出来るだけ、誰かと早く合流した方がいいに決まっている。
しかも、12歳(いや、今はもう13歳か)のメンバーもいるはずなのだ。
責任感の強い彼女は、じっとはしていられなかった。
(少なくとも、辻(と思われる)は近くにいる。早く一緒にいてやらなきゃ・・・!)
そう思うが早いか、彼女はそのガレージを飛び出そうとした。
「・・・・・・・・!!?」
扉から出ようとした彼女は、ノブに手をかけて、一瞬言葉を失った。
さっきまで開いていた扉が閉まっていて、しかも外側から鍵までかかっている。
(・・・遠隔操作・・・!?)
今の瞬間まで、この扉が開いていたことは間違いなかった。しかし、今鍵までかかっていて
外に出る事が出来なくなってしまったのだ。
どこからか操作されていることは間違いないだろう。
彼女は悔しそうに地面を爪先で思いっきり蹴ると、目の前の扉を憎らしい目で睨みつけた。
(もう・・・始まっている・・・・)
怒りと、不安とが混ざり合って、心が混乱しそうになっていた。
が、今はそんな時ではない。とにかく、出来るだけ多くの人と合流しなければ・・・。
−”ぷしゅっ”
頭の中を整理しようと考えている彼女を、例の”カーキ色”のガスが襲った。
その空気に包まれてしまった彼女もまた、その場に”へたっ”と倒れ込んでしまった。
「・・・みんな・・・無事・・かな・・・・?」
遠のく意識の中、必死に考えを巡らせたが、もうその考えがまとまることはなかった。
そして、再び深い眠りについた・・・。
【プロジェクト開始まで後わずか/残り13人】
- 10 名前:名無し 投稿日:2000年12月31日(日)10時06分36秒
- 続きが楽しみ
- 11 名前:娘狂 投稿日:2001年01月09日(火)12時26分18秒
- 第1章:序盤戦
◆『市井紗耶香の場合 (2)』◆
- 12 名前:娘狂 投稿日:2001年01月09日(火)12時26分46秒
- 「う・・・う・・・〜ん・・・」
紗耶香はまだ少しぼやけている頭を振りながら、今まで寝そべっていた床から起き上がった。
・・・寒い。
まだ夜は明けていない様で、やはり周りには誰もいない。
とにかく、誰かと合流しなければ・・・
体を起こして目の前にある扉に手をかけようとした時、一瞬紗耶香の頭を
さっき聞いた悲鳴がよぎった。
そうだ、さっき自分が倒れる直前に聞いた悲鳴・・・、あれは多分メンバーの悲鳴・・・
しかし、どちらの方向から聞こえてきたのかは全く思い出せなかった。
とにかくここを出よう、動かなければ・・・紗耶香は思った。
- 13 名前:娘狂 投稿日:2001年01月09日(火)12時27分13秒
- 扉を出ようとした正にその時、何とも聞き心地の悪い声が
闇夜の空にこだました・・・。
「娘。諸君!お目覚めは如何かな?」
男の声・・・?いや、何か変声機を通したような、いかにも不愉快な響きだった。
「君たちにはこれから21世紀を迎えたモーニング娘。として相応しいメンバー編成を組んでもらう。
君たち13名は過去、そして現在モーニング娘。として動いてもらっていたが、
今や、君たちのような存在では生き残ることは困難であると判断した。
そこでだ。」
紗耶香はじっとその声に耳を傾けていた。
やけに切なくなびく森の風が顔に冷たくあたる・・・。
- 14 名前:娘狂 投稿日:2001年01月09日(火)12時27分53秒
- 「今よりもより強い、そして個性的なキャラクター性を、自らの体験により養ってもらおうと思う。
どのように・・・というのは特に規制はない。
君たちそれぞれが、それぞれのやり方でここの脱出方法を考えてくれれば良い。
ただし、ここを脱出できなかったものは・・・アウト・・・だ。
すなわち、機密保持の為に、次生まれ変わるまで眠っていてもらうことになる。」
・・・死・・・か・・・。
こんな非現実的な事柄を、すんなり受け入れられたのは
紗耶香の人生環境のせいだろうか。
「死」というものがそれほど非日常に感じなかった。
「13名が協力してここを脱出する方法を考えることも可だが・・・それは13名それぞれの考えが
一致すればの話し。
楽しいゲームを期待する。是非、21世紀のモーニング娘。に相応しい人間に・・・。」
- 15 名前:娘狂 投稿日:2001年01月09日(火)12時29分08秒
- こいつは何を言っているんだろうか。
とにかく合流することが可能であれば、ここの脱出を考えることに全員が納得するはずだ。
何といっても、脱出できなかった時には「死」なんだから・・・。
「そう、後一つ言っておくが・・・私はここにはいない。
探し出してどうかしようなんて事は考えない方がいいだろう。
君たちの何人かは吸っているとは思うが、こちらからの遠隔操作で君たちを色々することができる。
まぁ、それも試練の一つとして乗越えてくれたまえ。
では、健闘を祈る・・・ガッピ!」
言葉の最後に何か変な音がしたが・・・きっと自動消滅するテープか何かだろう。
なんて古典的な・・・相当な悪趣味ヤロウだ、ちくしょう。
とにかく誰かと合流することが先だ。
出来れば・・・圭ちゃん、裕ちゃんあたり・・・。
でも、こんな状況だ。新メンバーでも誰でも構わない。
出来るだけ多く集まれれば、いいアイデアが出るかもしれない。
今は、希望的観測でも構わない。とにかく、合流だ。
紗耶香はガレージの扉を出ると、真っ暗に広がる森の中へと走っていった。
- 16 名前:娘狂 投稿日:2001年01月09日(火)12時31分54秒
- 【プロジェクト始動/残り13人】
- 17 名前:偽娘狂 投稿日:2001年01月10日(水)08時42分23秒
- 紗耶香には長生きしてほしいな、
ところで娘狂さんの一推しは誰?
- 18 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)07時56分35秒
- >>17
それを言ってしまうと・・・
ネタばれになりそうなんで、今はチョイ待ちで。
- 19 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)07時58分25秒
- ◆『石黒 彩の場合』◆
〜本館3階
シンヤ…シンヤ…シンヤ…
彩は走っていた。あの放送を聞くないなや精いっぱい。
私はもう、モーニング娘。に興味はないし、復帰する気もない。
それが死を賭けたゲームに参加するなんてばかげている。
一刻も早くここを抜け出して、シンヤの元へ…。
彩は3階にいた。
廊下に飛び出した彩は、階段を見つけるととにかく下へ下へ駆けていった。
外に、外に出れば…それが彩の考えだった。
そもそも建物の中にいれば脱出できるわけもなく
外に出れば何かあるだろうという考えだった。
- 20 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)07時58分49秒
- なぜこんな事に…
私はシンヤと結婚して子供を生み
”服飾”の勉強をしながら幸せな生活を送るはずだった。
そして将来は、自分を幸せへと導いてくれたモーニング娘。の
衣装を作り、裕ちゃんたちの笑顔をみて
また自分も微笑んでいるはずだった。
なのに……なぜ…。
- 21 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)07時59分17秒
- 1階にまで降りてきた彩は、廊下の先に見えた木製の扉へと走った。
とにかく外へ…。
その扉の真鍮製のノブへ手を伸ばしたとき、一瞬彩の手が止まった。
”この扉触れるべからず。触れれば死(笑)”
……『(笑)』!?
ふざけている。まるでふざけている。
出口を目の前にしてたたずむ弱者をあざ笑うような…。
むかつく悪魔の笑みがそこに浮かぶかのような…。
- 22 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)07時59分32秒
- 彩は迷った。
ここを開けるべきか、別の扉を探すべきか…。
しかし答えは簡単だった。
とにかく人から試されるような、人からなめられるような行為を
一番に忌み嫌う彩は、もうその扉のノブを握っていた。
ドン!
- 23 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)07時59分57秒
- 鈍い音が彩の鼓膜を刺激した。
彩の目の前は真っ白になり、まるで風に飛ばされる紙くずのように
体は中に浮いていた…。
熱い…体が熱い…
頭がぼぉ〜っとする……
- 24 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)08時00分24秒
- シンヤ…シンヤ…私どうしたの……?
―ははは…、あやっぺぇ。全身真っ赤じゃないか…
え…?真っ赤……?
―木製のピアスかい?ははは…なにも全身につけるこたぁないじゃないか…
木製なんて…私そんな趣味は……ない…のに。
彩は自分の手のひら、腕をやっと開く目で凝視した。
そこににわかに信じがたい、そしてある程度感じていたものが
飛び込んできた。
そう、爆発とともに飛んだ”木”の破片が、彩の体全身に刺さっていたのだ。
痛い、痛い…助けてシンヤ……
- 25 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)08時00分52秒
- 「あ、あ、…あ…マイクテスト。え〜今早速、トラップにひっかかった人がいます。」
例の声だ。あの変声機を通したようなむかつく声。
「さっき説明し忘れましたが…ここにはいくつかのトラップがあります。
みんな注意するように。
しかも今のところは、せっかく忠告文が貼ってあったのにぃ。」
その放送はそこで止まった。
でも、もう彩にはそんなことはどうでも良かった。
とにかくこの痛みから逃れたい。そしてシンヤの元へ帰りたい。
もう、それだけだった。
- 26 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)08時01分19秒
- 爆発で立ち込めた煙の向こうにかすかに人の影が見えた。
……だれ?ううん、だれでもいい、たすけて……
「あやっぺ…?」
その煙の向こうから聞こえたのは、”後藤真希”の声だった。
「後藤……後藤なの…?」
彩はすがるような声で煙の向こうの影に声をかけた。
「たすけて…後藤…私……シンヤのところに行かなきゃ…」
もうすぐにでも途切れてしまいそうな声で、必死に声をあげた。
- 27 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)08時02分10秒
- 「へぇ〜、トラップに引っかかるとこんなんになっちゃうんだぁ」
あまりに意外な明るい、そして冷たい後藤の声が彩の耳へと届いた。
カツカツと後藤の歩み寄る足音が聞こえたかと思うと
彩の頭に衝撃が走った。
ゴスッ
「シン……ャ…」
その後、呼吸が止まり、もう目を覚ますことはなかった…
「ごめんねぇ、あやっぺ。」
立ち込める煙と血の臭いの中の後藤スマイルだった…
- 28 名前:娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)08時03分18秒
- 【石黒 彩:アウト/残り12人】
- 29 名前:偽娘狂 投稿日:2001年01月13日(土)18時16分18秒
- 石黒推しぢゃないってことね?娘狂さん?
- 30 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)14時03分43秒
- >>29
そうですね、とりあえずは。
でも、偽娘狂さんからしか書込みが無いのも
さみしいなぁ。
みんな読んでくれてるのかな。
- 31 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時23分42秒
- ◆『中澤 裕子・石川 梨華の場合』◆
中澤は目覚めると、書斎らしき部屋にいた。
あの放送を聞いた後、中澤は真っ先にメンバーのことが心配になった。
「みんなどこにおるんやろ・・・大丈夫かいな」
中澤はとりあえず身の周りにあった本という本を調べた。
まず、今自分達が一体どこにいるのか、まずそこから調べなければ・・・。
しかし、時間はかけられない。
何といっても今さっき一人がトラップにかかったというのだから。
―― だれなんやろか・・・
急がないととんでもないことになる。
中澤は直感的にそう思っていた。
そんな中、部屋の角の方に不自然におかれた本に気付いた。
―― ・・・なんや?あれ・・・。
- 32 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時24分27秒
- 中澤はそれとなく、その”不自然な本”に手を伸ばしたが
その手は直ぐに止まった。
―― ”トラップ”・・・・・・!
頭にそれがよぎった。
そう、明らかに妖しい。
他の本はすべてきちんと整理されて並んでんのに
この一冊だけがこんな部屋の角にぽつんとおいてあるんや・・・。
明らかに妖しいで・・・・・・。
さっきの放送を聞いた限りでは、不自然なものに安易に手ェ伸ばすんは
あまりに危険や。
中澤はその本のことは諦め本棚に並んだ本を引き続き調べようとした、その時・・・
- 33 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時24分55秒
- ガチャッ
背にしたドアが開く音がした。
中澤の中に緊張が走る。
「中澤さん!」
緊張の抜けるような声が届いた。
石川だ・・・・・・。
「なんや、石川かいな。おどろかせんといてぇよ」
「あ、ごめんなさい・・・私・・・・・・」
石川は恐縮したように下を向いてしまった。
- 34 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時25分20秒
- 「まぁええわ。それより無事で良かったわ、なぁ」
「ええ・・・まぁ」
石川は不安そうに部屋の周りを見渡すと、ぽつりと口にした。
「なに・・・やってるんですか?」
「あぁ、あんな、こんないっぱい本あるやんか。
だからなんか脱出のヒントみたいなんないかな思うてな・・・」
「あ〜、そうなんですか・・・、で、見つかりました?何か。」
「いや・・・な〜んも。なぁ石川ぁ、悪いんやけど一緒に探してくれへん?」
「あ、はい。」
- 35 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時25分55秒
- 石川が本棚の方に近づこうとした時、例の妖しい本に目をとめた。
「中澤さん・・・あれぇ・・・なんですか?」
その指された指の先をみて中澤は言った。
「あかんあかん。あれは。
見てみぃ、見るからに妖しいやろが。
石川、さっきの放送聞いとらんかったんか?
ありゃ、絶対トラップや。うん、間違いない」
- 36 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時26分06秒
- その言葉を聞いた時、石川のの顔は曇った。
ここに来るまでの石川の心理状態から、そんな言葉は理解できなかった。
目覚めた時、闇夜の屋上で一人ぼっちだった恐怖から始まり
あの変な男(と思われる)の放送を耳にして真っ暗な館の中を
今まで独りぼっちでさまよっていたのだ。
恐かった・・・石川は・・・。
ここにいる事実もそうだったが、自分を変えてくれたモーニング娘。から
外れてしまうことに、自分の存在を否定されしまうことが恐かった。
どうしてもモーニング娘。としてこれからもやっていきたい。
そんな思いはきっと人一倍強かった。
- 37 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時26分50秒
- 「どうしたん?石川。
ぼぉ〜と立っとらんと、はよ手伝ってぇな」
中澤は石川に背を向けてひたすら本棚をかき回していた。
「フフフ・・・」
と、突然石川が笑い出した。
「ど、どうしたん?石川。
今ボケられても、突っ込む余裕なんてないで・・・っておい!」
- 38 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時27分15秒
- 振り返った中澤の目に飛び込んできたのは、コルトマシンガンを構えた石川の姿だった。
もう石川の目は据わっている・・・。
「な、なに持ってんねん!?ま、まさか本物・・・」
「えぇ・・・、屋上に落ちてたの・・・これ・・・フフフ」
「な、な、なんのつもりや。撃つんか?わいを・・・
なんでやねん!」
「だって・・・だって・・・中澤さんがいけないんですよ・・・・・・」
「なんのことやねん!お前、たいがいにしとかんと、ほんま怒るで・・・!・・・・・・!!」
ズバババババババ・・・
- 39 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時27分42秒
- 中澤が石川の方へ歩み寄った時、数発の銃声が鳴り響いた。
天井にマシンガンの銃弾が叩き込まれる。
中澤はその場にへなへなっと力なく座り込んでしまった。
「動かないで!近づかないでぇ!大きな声を上げないでぇぇ!」
そう叫ぶとまた天井に向かって銃弾を数発撃ち込んだ。
- 40 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時28分21秒
- 「・・・・・・わかった、わかったから。そうか混乱してるんやな。
とりあえず落ちつこ、な?」
半分腰が向けたような状態で、中澤は必死に石川に呼びかけた。
「何が?何がわかるんですか・・・。
ねぇ!何が解るって言うんですか!」
ズバババババババババババ・・・・・・!
また更に、今度は横の壁の方に発砲した。
石川の顔は混乱と涙で、もうくしゃくしゃだった。
あのプリンセスのような微笑みを生み出していた唇は
まるで黒魔道士のようにひきつっていた。
- 41 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時28分49秒
- 「まぁ、興奮すんなや・・・石川・・・。
何が、何がお前をそうさせるん?
わいがここで死ねば、幸せにでもなるっちゅうんか?」
「・・・私・・・モーニング娘。続けたいけど・・・いや、続けなきゃいけないけど・・・
もう、中澤さんとは・・・中澤さんとはやりたくないんです!
だから・・・だから・・・ぐしゅ」
「・・・・・・・・!」
- 42 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時29分07秒
- 中澤は驚愕した・・・。
自分が一番モーニング娘。を愛してる。
そしてメンバー全員を愛してると自負していたその心は
はかなくも15歳の言葉ですべて否定されてしまったのだ。
石川も震えていた。
自分が自分でも恐かった。
高校生になったらいろんな事が待っているんだと
胸を躍らせていた時が、とても遠い日に思えた。
ここで引き金を引いたら、もう石川梨華ではいられなくなってしまうであろう。
でも・・・そんな理性はもう、石川の中にはなかった。
- 43 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時29分29秒
- 「わかった・・・じゃあそうすればええよ。
自分の大好きなメンバーに殺されるんやったら・・・本望や、な?」
「・カチャ」
「ま、結婚の一つくらいはしたかったけどなぁ・・・やっぱ・・・
結婚てどんな感じなんやろ・・・・・・しあわせなんかな・・・たのしいんやろか・・・きも・・・!」
ズバババババババババババ・・・・・・!
(きもちええんやろか・・・・・・なぁ・・・石川・・・)
- 44 名前:娘狂 投稿日:2001年01月14日(日)16時30分15秒
- 部屋中に薬莢のにおいが充満していく・・・そして血の匂いも・・・
「うっうっっ・・・わたし・・・わたし・・・」
石川は膝から床にたおれこみ、泣き続けた・・・
――― 梨華ちゃん・・・・・・!
その一部始終を開きかけの扉から見守っていたなっちは、石川に気付かれぬ様
廊下の影へと走り去っていった・・・
【中澤 裕子 アウト/残り 11人】
- 45 名前:偽娘狂 投稿日:2001年01月15日(月)11時17分24秒
- マジ!?
現メン殺すなんて…。
そんで、そんで続きは?
- 46 名前:名無しちゃむ 投稿日:2001年01月15日(月)12時56分39秒
- ちゃんと読んでます。続き期待。
- 47 名前:娘狂 投稿日:2001年01月15日(月)13時15分41秒
- >>45-46
ありがとうございます。
続き頑張ります!
- 48 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時50分58秒
- ◆『矢口 真里の場合』◆
…?なんだろう……?
向こうのほうで何か大きな音がした…まるで銃声のような…
…銃声…!?
まさか、ねぇ?
矢口は物置のようなところの中にいた。
出入り口と思われる引き戸は、外側から何かで
つっかえがしてあるらしく、思い切りひっぱっても
開かなかった。
- 49 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時51分17秒
- 誰かが…(裕ちゃんが、よすぃーが)来てくれるはずだ。
矢口はそう信じ、その中でじっとしていた。
裕ちゃんどうしてるんだろうなぁ…
何とか連絡とれないかな…
そう思い悩みながら、なにげなくポケットに
手を伸ばした。
……そうだ、携帯!
矢口は慌ててポケットを探り”携帯”を探した。
たしか…右のポケットに……
………あった!
- 50 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時51分50秒
- ストラップのジャラジャラついた携帯を引っ張り出すと
すぐに”裕ちゃん”の番号を検索した。
そこですかさず”通話ボタン”を押す。
矢口の胸が高鳴る…
turrrrr……turrrrr……
かかった……!
出て、裕ちゃん!早く…裕ちゃん……!
……プッ
「もしもし?」
(裕ちゃん…!)
「もしもし!矢口だよ!や・ぐ・ちっ!裕ちゃん?どこにいるの?」
- 51 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時52分12秒
- 「矢口さん……?」
(え?誰……?)
「矢口さんですか?もしもし?」
「…誰?裕ちゃんは…?ねぇ!誰?」
矢口は思わぬ相手にやや混乱していた。
座っていた体を立ち上がらせ、思わずあたりを右往左往しだした。
- 52 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時52分43秒
- 「石川です。石川梨華。」
「梨華ちゃん?梨華ちゃんなの?」
「ええ…そうですけど」
「裕ちゃんは?これ裕ちゃんの携帯だよね?」
「そうですよ」
「裕ちゃんは?裕ちゃんはどうしたの?」
「……さぁ…?」
石川特有の、いかにも白々しい答えに
矢口はやや切れ気味に問いただした。
「さあって!じゃあこの携帯は?」
「落ち着いてくださいよ、矢口さん。ここに落ちてたんです」
「……」
- 53 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時53分12秒
- 「ところで矢口さんはどこにいるんですか?
一緒にいたほうが、石川はいいと思うんですけど」
「…ごめん。矢口は…どこっていわれても困るんだけど…
なんか物置みたいなところ。
外からつっかえ棒がしてあるみたいで出られないんだ」
「閉じ込められてるんですか?」
「うん……そうとも言うかも」
「わかりました、今からすぐ探しに行きます。
途中で誰か見つけたら連絡しますね。
矢口さんもそこから出られたら連絡してください。ね?」
「わかった…裕ちゃん見つけたらすぐ連絡してね」
「………はい……すぐに」
「………?」
石川のないげない間が気になった。
それに気のせいかもしれないが、口調もいつもより冷たく感じた。
- 54 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時53分24秒
- 「じゃ、切りますね、矢口さん」
「うん。」
………Pi
何だろうこの胸騒ぎは…なんかすごく嫌な予感がする。
早く誰かに会いたい。
・・・裕ちゃん・・・裕ちゃん・・・
- 55 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)08時54分21秒
- 【午前4時30分/残り11人】
- 56 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)13時20分34秒
- ◆『矢口 真里の場合(2)』◆
チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ・・・・・・・
静寂の中、腕時計の音だけが部屋の中に響いていた。
時刻は午前5時30分・・・。
石川との電話を切った後、1時間が経過していた。
まだかな・・・みんなどうしてるのかな・・・
裕ちゃんはどうしてるだろう・・・。
辻や加護も心配だ。
そう言えば紗耶香もいるんだっけ・・・・・・。
矢口は孤独な時間の中、様々な考えを巡らせていた。
- 57 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)13時21分00秒
- 「モーニング娘。Neon Genesis Project」
私達の行き詰まった個性を、局地的な状況下において覚醒させる・・・
そういう事なのかな・・・?
あの訳の分からない男(らしい)声は
「皆さんで脱出して下さい」って言ってた・・・。
ここを抜けられた場合・・・新生モーニング娘。として再デビュー。
また、トップアイドルとしての立場を約束される・・・か。
そう・・・でも、あやっぺや紗耶香、明日香もいるんだよね・・・たしか・・・。
どうするんだろう・・・仮にここを出たとしても
彼女たちにはもう、モーニング娘。として活動する意志はないはず・・・なんだけど・・・。
- 58 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)13時21分18秒
- それに、脱出するっていっても、ここがそもそもどこなのかがわかんない。
しかも私は、今いるところからも出られないし・・・。
・・・出られない・・・・・・って
出られなかった場合は・・・”アウト”だったはず・・・。
って事は、もしこのプロジェクトから誰かが脱出したとして
私がその時まだここから出られなかったとしたら・・・・・・
いや・・・まったく何を考えているんだ・・・私は・・・
メンバー達が私がいない状態で、脱出してしまうわけがない。
・・・しないはずだ・・・・・・そう・・・しない・・・はずだ・・・はず・・・。
- 59 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)13時21分33秒
- ―― なんだろう・・・この不安感は・・・
矢口は得も言えぬ心理状態に吐きそうになった。
これが・・・人を、仲間を疑うってこと・・・・・・!?
「うぅ・・・うぇっ!」
・・・・・・気持ち悪い・・・・・・よぉ。
口の中いっぱいに、すっぱい匂いが充満した・・・。
- 60 名前:娘狂 投稿日:2001年01月19日(金)13時22分14秒
- なにを・・・何をやっているんだろ・・・私は・・・
あまりにも静かな空間に、まだ尚、時計の針の音だけが
響き続けていた・・・。
【午前5時30分/残り11人】
- 61 名前:娘狂 投稿日:2001年01月20日(土)08時53分15秒
- ◆『石川 梨華の場合』◆
矢口と時を同じくして、石川も一人、部屋の中で考えていた。
あの中澤の変わり果てた姿の前で・・・。
- 62 名前:娘狂 投稿日:2001年01月20日(土)08時53分37秒
- 非現実的な状況と、非現実的な目の前の光景。
整理がつかない自分の心理状態。
マシンガンを握った石川梨華に、血を流してもう口を利かない中澤裕子。
立ち込める血の匂いと、あまりに静かなこの部屋・・・。
未だ石川の心理状態は混乱したままだった。
いや・・・混乱とは違うのかもしれない。
もうすでに、石川の中の何かが切れてしまっていて、
日常的思考は働かなくなっていた・・・。
- 63 名前:娘狂 投稿日:2001年01月20日(土)08時54分00秒
- 私は人を殺した・・・殺した・・・殺した・・・殺した・・・
私もきっと誰かに殺される・・・殺される・・・殺される・・・殺される・・・
私は死にたくない・・・死にたくない・・・死にたくない・・・死にたくない・・・
そんな思いがうごめく中、石川はさっきのトラップと思わしき本に
目をとめた・・・。
石川は何気なくその本に近づき手に取った。
そこに恐怖はなかった。
そう、もはや今の石川にとって恐怖はなかった。
- 64 名前:娘狂 投稿日:2001年01月20日(土)08時54分28秒
- もしあったとすれば、今誰かと出会うことだろう・・・。
- 65 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時21分42秒
- その本を手に取り中を見てみると、1ページ目にはこうあった・・・
――「この本を拾った、ラッキーで勇気ある君へ」
………?
石川は興味に引かれるままに、ページをめくった。
- 66 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時22分03秒
- ――「ここに、プロジェクト開催地の概要を記そう。
是非、脱出の参考にして頂きたい。」
- 67 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時22分18秒
- ”脱出……!”
やったわ。脱出の方法がわかるかもしれない…フフフ。
石川はどきどきしながらまたページをめくる。
- 68 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時22分34秒
- ――「ここは某県の樹海の中。約562平方キロメートルの雑木林。
その中に建つ一軒の館に数人の参加者を収監。
また、館周辺に数人を放置。」
――「さらにそこを、高さ10mの塀に囲まれている。(トラップあり)」
- 69 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時23分02秒
- …ご丁寧に”トラップ”のことまで書かれているわ…フフ。
さらに石川はページをめくった。
- 70 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時23分20秒
- ――「以上。健闘を祈る。」
………終わり…か。
その後のページはすべて白紙だった。
- 71 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時23分52秒
- でも、要するにここは壁に囲まれた空間の中で、その壁を越えた時点で
脱出となる、ということだけはわかったわ。
あとはどうやってその壁を越えるか、と
誰と…脱出するか……ね……フフフ…フフ。
中澤の死により、もうすでに石川は後戻りができなくなっていた。
これはもう生き残りをかけた真剣勝負なのだ…
そして、自分が殺したように、きっと自分は誰かに殺される…そうに違いない。
やられる前にやらなくては……
そういった考えが石川の頭の中を支配していった……。
【午前6時00分/残り11人】
- 72 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時24分16秒
- ◆『後藤 真希の場合』◆
後藤は、本館の屋上ににいた。
暗かった闇夜に昇ろうとしている朝日を、柵に腰掛けながら見ていた。
きれいだなぁ……ちょっとまぶしいけど。
目を細めながら、じっと朝日のほうを見つめていた。
後藤の顔が、全身が光に照らされ、まるで天使の如き輝きを、
その心地よさから思わず上がる唇は、まさに天使の微笑み…のようだった。
- 73 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時24分36秒
- どうしよっかなぁ…わたし。
あやっぺも死んじゃッたし、なんか、脱出って言われても
よくわかんないしぃ…。
そぅとぅ……やなかんじぃ。
- 74 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時24分51秒
- …くぅ〜ん……おなかすいたなぁ…
あぁ、そう言えば昨日の夜から何にも食べてないや。
仕事が終わって家に帰って、疲れてたから
そのまま寝ちゃッたんだよなぁ…
はぁ…なんか食べれば良かったぁ。
まさかこんなところに来ると思わないもんねぇ。
- 75 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時25分14秒
- ぐっと両手を頭上へ伸ばし、思いっきり背伸びをして
大きく息を吐いた。
朝特有の冷たい風が頬にあたる…。
後藤は石黒が死んだ光景を思い浮かべていた。
あの爆発に飛ばされた、紙のようにもろい身体、
血まみれで、虫の息の吐きながら小さくつぶやく声……。
- 76 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時25分37秒
- 人って…もろいんだなぁ……
………クク…ククク…
なぜか妙な笑いがこみ上げてきた。
自分でもわからない、そんな妙な笑い。
- 77 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時25分52秒
- 「後藤さん?」
- 78 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時26分09秒
- その時、後ろから突然に呼びかける声がした。
聞きなれない声だ。
後藤は首だけちょっと振り返ると、屋上の入り口の前に
小さな身体の女の子が見えた。
……福田明日香だ。
- 79 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時26分27秒
- 「あ……」
後藤は気のない声を発すると、また視線を空へと戻した。
- 80 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時26分43秒
- 「後藤さんでしょ!私、福田、福田明日香!」
「知ってるよ…。昔、モーニング娘。だった人でしょ?」
「そう、よかったぁ。誰かに会いたかった。すごく怖くて…」
- 81 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時27分04秒
- 明日香の不安そうな声を、後藤は冷たい声で返した。
「あなたはどうするの?ここ脱出したら、モーニング娘。に
戻ることになると思うんだけどぉ」
「……え?えぇ……」
「戻るの?」
「……それは………わからない…わ」
- 82 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時27分22秒
- 明日香はうつむき、自分が脱退したときのことを思い出した。
あのみんなの涙、ラストライブの歓声、全国からの応援のファンレター…
どれも自分の新しい門出を祝ってくれたものばかりだった。
- 83 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時27分41秒
- 「わかんないんだぁ…。実はね私もわかんないんだぁ」
「ご、後藤さんも…?」
意外な発言に、思わず明日香は視線を後藤のほうへと戻した。
- 84 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時28分01秒
- 「あのね、今モーニング娘。でやっててぇ、来る日も来る日も
仕事仕事って…なんかメンドくさくて…」
「…え?……でも、念願のモーニング娘。じゃ…」
「う〜ん、なぁんか違うんだよねぇ…。もともとモーニング娘。なんて
どうでも良かったし…入る前も入ってからも。
でね、いつも思ってたんだぁ。
どうせガッコ行くのもつまんないし、なんか仕事してれば
みんな誉めてくれるし、周りはチヤホヤしてくれるし……
これならなんとなくいいかなぁって。
他に面白そうなことってなかったし……」
「…………」
- 85 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時28分21秒
- 明日香は少し面を食らった。いや、かなり…。
あの人気絶頂のモーニング娘。にオーディションで合格し
(しかも、その時からどうでも良かったと思っていたのに)
今では、そのモーニング娘。の中心をはる存在になっているのに
そんな風に思ってるなんて…。
確かに、トップを突っ走るアイドルの辛さ、プレッシャー、虚空感は
明日香も知っているつもりだったが……。
- 86 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時28分39秒
- ――― ビュッ……!
その時、突風が吹き、
なにか後藤の手元で紙のようなものが揺れるのが見えた。
- 87 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時28分55秒
- 「でもね、後藤…楽しそうなこと見つけたんだ…」
「楽しそうな……こと?」
「うん。ちょっと見てみる?こっち来て…まっすぐね…アハッ」
「……うん」
明日香は言われるがままに前へ……
まっすぐ後藤のほうへと歩き始めた。
- 88 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時29分15秒
- ――― ガタッ!
「キャッ!」
明日香の脚が一瞬、宙に浮いた。
何か急に身体が軽くなった感じを受けたかと思うと
その場から、ふっと明日香の姿は消えた……。
- 89 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時29分30秒
- ―― 床が抜けた……の?
そう、床が抜けたのだ。なんとも古典的なトラップ…
- 90 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時29分43秒
- ―― ぐしゃっ!
鈍い音が遠くのほうで響くのが聞こえた。
手を滑らせて、生肉を床に落としたような…そんな鈍い音……
- 91 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時30分00秒
- 「あはははは、気をつけなきゃぁ…あの放送聞いてなかったの…?」
後藤が手に握っていたものは、紙はこの館内の”トラップMAP”だった。
どこにトラップがあるのかが記された紙…。
- 92 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時30分45秒
- 「後藤ね、さっき気がついたんだぁ。
人が死ぬとこ見るのって楽しいなぁって、あはははは」
後藤は依然として、空に目を向けたまま明日香が落ちたほうには
全く目を向けなかった。
- 93 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)08時31分12秒
- 「でもぉ、これって殺人じゃないよねぇ?
だって、後藤殺してないんだもん、あははははは」
早朝の空いっぱいに広がった、やけに赤い朝焼けに
乾いた笑いが響いた……
【福田 明日香アウト/残り10人】
- 94 名前:名無し苺魔界 投稿日:2001年01月21日(日)13時56分22秒
- 後藤ってやっぱりこんな役なのね(涙
- 95 名前:娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)14時19分55秒
- >>94
申し訳ないです・・・
でも、今後の展開には期待して下さいね(願
- 96 名前:偽娘狂 投稿日:2001年01月21日(日)22時25分03秒
- ゴマキヲタを敵にまわすと怖いゾ…。
- 97 名前:娘狂 投稿日:2001年01月22日(月)08時49分08秒
- 続きは、小説→赤板 に移転しました。↓
http://www.ah.wakwak.com/cgi-bin/sbox/~yosk/hilight.cgi?dir=red&thp=980120706
なので、今後はそちらの方で書いていきますので
宜しくお願いします。
>>96
……うぅぅ!(怯
まじっすか?でも、そんなつもりは全然ないんですが…。
- 98 名前:偽娘協 投稿日:2001年01月22日(月)16時38分36秒
- ごまを悪く言うやつがいるのか?・・
- 99 名前:娘狂 投稿日:2001年01月22日(月)17時42分55秒
- >>98
いえいえ、ここにそんな方はいらっしゃいませんよ〜(困
- 100 名前:娘狂 投稿日:2001年01月24日(水)09時05分59秒
- 移転しましたので、ちょうど100にて
ここのスレッドは終了と致します。
移転先↓
>>97
Converted by dat2html.pl 1.0