カオリンクエスト3
- 1 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月14日(月)10時36分54秒
- >ぼうけんをする
・・・
王様「よくぞ戻った、勇者飯田とその一行よ!辛い旅じゃろうが頑張るのだぞ!
必ず魔王を倒し、世界に平和を取り戻してくれい!!」
- 2 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月14日(月)11時35分52秒
- サイクロプスの元にもどってきた勇者飯田とつじ。
しかし、サイクロプスの様子に変化は無い。
つじ「ねえねえいいらさん、このこはどうにもならないのれすか?
どうにかしてきゅうってあげたいのれす。」
勇者飯田「救ってあげたい、でしょ?でも、圭ちゃんも見張ってて、としか言わなかったし、、」
しばらく見守っていたつじだったが、だんだん飽きてきてしまった。
つじ「そうだ、このこがげんきになるようにおうたをうたってあげるのれす。」
つじは「青のたてごと」をとりだし、かき鳴らし始めた。
♪きあいのはいった〜おんなどおし〜(おいおいおい!)
♪きあいいれて、あすにむーかって〜(おいおいおい!)
すると、サイクロプスの体が急に光を帯びだした!
- 3 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月14日(月)11時41分33秒
- 強烈な光の波動がサイクロプスを包み込む!
光はサイクロプスの元へと徐々に収束し、やがて激しく光り輝いて消えた。
・・・あとには、小柄な女の子が残されていた。
勇者飯田「つじ、あんたすごい!!!」
つじ「よくわからないのれす、ただおうたをうたったらけなんれすけど、、、」
勇者飯田とつじは少女の下に駆け寄った。
つじ「しっかりしてくらさい!!」
勇者飯田「だいじょうぶ、呼吸はしてるみたい。」
目を覚まさない少女を、二人はとりあえず牧城へ連れて行くことにした。
- 4 名前:彩の祠への道 投稿日:2001年05月15日(火)03時08分13秒
- 美帆「おーーーい!あっちゃーーん!!」
信田はナッチーを引きずり、稲葉らがいる方へ戻ってきた。
貴子「あ!」
信田はその場に近づくと、倒れて寝ている石川を見つけた。
美帆「やっぱり勝った?さすがだね。あっちゃん」
貴子「残念。負けちゃってん。」
美帆「えーー?、ほんと?何々?どーやって??」
貴子「うっ、、そっちこそどーなのよ?その子生きてるわけ?」
美帆「それがさ、笑っちゃうんだけど、おなか空かして倒れてるのさ。
私ね、腰をやられて負けちゃったのよ。この子に。この子は弱点だなんて知らなかったとは思うけど。
そして、そっちのごまにもね。」
ごま「(ニコッ)ナッチーも勝ったんだ。さっすが。」
貴子「ほ、、ほんまかいな!?信じられへんなあ、、、ま、お互い様やな。」
美帆「そうだね。残念だけど、あたしゃこれで引退するよ。
あ、ちょっとこの子よろしく」
信田はナッチーをあいぼんの方によこした。
ナッチー「お、、、お腹が鳴るべさ。。」
Д<「ナッチー、かわいそうに。満腹ゲージがゼロ%になって極端に衰弱してるんやな。。」
貴子「そか。。でも、、、うちはまだやるで。まだ自分を諦めるわけにはいかんよってな。」
美帆「はははっ、この解散も、あっちゃんが一番反対してたもんね。頑張ってよ。」
貴子「おうよ。まだまだ、うちは強くなったる。そこにいる石川ちゃんにもリベンジしたいしな。」
ごま「その前にあたしともう一度やろーよー!!」
貴子「あ、ああ、今度な。」
美帆「あら、結局やりあってないの?」
ごま「だって私が着いたらもう終わってるんだもーん。」
- 5 名前:彩の祠への道 投稿日:2001年05月15日(火)03時11分51秒
- Д<「ナッチー、ここには食べるもんは無いんや。これで我慢してや。」
牧草をナッチーの口もとにそっと差し出すあいぼん。
ナッチー「ムグムグ、、」
Д<「凄い、寝ながら食っとる。」
保田「こらあいぼん!そんなもの食べさせたらお腹壊すでしょ!これあげなさい!」
保田はあいぼんに持っていたパンを投げて渡した。
石川「・・・・っ!」
あたりが騒々しくなり、石川は目を覚ました。
石川「あ、、師匠、、あれは、、、美帆さん、、美帆さん!?」
保田「あ、こらまだ動くな!」
保田は突然石川が動き出してちょっと驚いた。
石川「私は、、私は、、、あなたを、、、」
ぐぐぐっ
石川は力なく信田を睨み、なんとか体を起こそうとする。
保田「??、どうしたの??石川、終わったのよ??」
美帆「あ!、ああ、忘れてた。ごめんな。アヤカを殺したってあれ、嘘なんだ。」
石川「!!」
美帆「ほんとごめん。アヤカは再戦を楽しみにしてたよ。」
石川「!?ほ、、ほんとですか??」
美帆「ほんとほんと。ほんとだって。私らは無駄な殺しはしないのよ。
あんたが中々その気になってくれないからさ。言ったの。」
石川「は、、、はぁぁあぁあ。。良かったぁ。。」
石川はよれよれと保田の腕に倒れこんだ。
貴子「なんや、そうやって怒らせたわけか。どーりでなぁ。最初っから切れっ切れやったで。」
- 6 名前:彩の祠への道 投稿日:2001年05月15日(火)03時17分20秒
- 美帆「ところで、回復してくれない?結構立ってるのもしんどいんだけど。」
貴子「ああ、ええよ。うちも力があんまり残って無いんやけど。」
保田「あ、私がやろうか?召還はしたけどそれ以外魔力ほとんど使ってないから、、」
貴子「ん、気を使わんでええ。仲間の事はうちがやる。」
美帆「よろしく頼むよ」
貴子「・・・、・・・・・、ナイチンゲール!!」
ウグイスのような鳥が、稲葉の前に現れた。
ナイチンゲールは透明感のある美しい鳴き声を上げると、白く発光した。
Д<「随分きれいな鳴き声やな。」
石川「え?あれ?鳥?、とり?、トリ??、イヤァアァーー!鳥怖い鳥怖い鳥嫌い!!」
保田「あらあらあら?」
石川「怖い怖い」
石川は保田の手の中で顔をしかめて泣きだした。
ナイチンゲールの光はやがて稲葉と信田を包む。
貴子「あら、石川ちゃん鳥駄目なん?なんやー、最初っからこれだしてたら勝ってたやーん。」
美帆「はははははっ。」
貴子「っと、お終い。ありがと。」
稲葉がそう言うと、ナイチンゲールはチチチチっと鳴いて消えた。
石川「はっ、、消えた。ふー、よかった。。鳥だけは、どーーーしても駄目なんですよぉ。」
貴子「ええ事聞いたで。これで次はうちの勝ちや。あはははっ。」
Д<「キラーーン(そりゃうちもええこと聞いたで。)イヒヒ」
- 7 名前:飯田と辻 投稿日:2001年05月15日(火)03時19分38秒
- 勇者飯田「ところで、この子、裸のまんまじゃねー。どうしよっか?」
つじ「そうなんれすよ。れもじつは、ぜんかいはもっとたいへんなことにれすね、、、」
と言うと辻は顔を赤らめた。
勇者飯田「何、どうしたの?何があったの?」
つじ「い、、いやあ、そんなわけれれすね、
こんなこともあろうかと、ふくをよういしておいたんれす!!」
勇者飯田「おおーー!なんか凄いね。偉い。ドラ○もんみたい!」
つじ「えへへ。。これれす。」
辻は自慢げに服を取り出した。
勇者飯田「って、これって辻の服じゃーーん!!こんなの小さくて誰も着れないよー。」
つじ「えー?(ガーン)、ご、ごめんらさい。。」
勇者飯田「あ、ごめん。んー、、、ま、とりあえず着せてみよっか。」
少女に服を着せる二人。
・・・・・・・
- 8 名前:飯田と辻 投稿日:2001年05月15日(火)03時22分07秒
- 勇者飯田「き、、着れた!?しかもかなりぴったり。」
つじ「おおー。よかったれすね。いいらさん。」
勇者飯田「この子、見かけ以上にちっちゃいねー。まさか辻とサイズがかわんないとは。
サイクロプスの時は私よりでかかったのに。」
??「ン、、」
勇者飯田「あ!?気づいた?、良かった。大丈夫??、ねぇ?」
??「ム、、、ムネガ、、ク、、、苦シイデース。」
勇者飯田「あ、」
ちらっと辻の方を見る飯田。
つじ「・・・・・(ガァーーーーーーーン!!)」
勇者飯田「き、、気にすることないよ辻!!ま、、まだまだ成長期じゃん辻は。ね。」
つじ「いいらさん、、グスン」
勇者飯田「ほらきっと、牛乳でも飲んでればすぐに。。。」
つじ「うっ、、つじは、、ぎうにうきらいれす。。ワーーーン(泣)」
勇者飯田「あ、しまった。そうだった。ごめんね。が、、がんばれーつじー!、レッツジー!
なんちゃってね。。笑ってよー辻ー。ハハハ、、」
引きつって笑う飯田と苦笑いする辻。
- 9 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月16日(水)14時24分42秒
- 少女を背におぶり、牧城へ帰っていく勇者飯田とつじ。
途中、彩の祠への道にたむろする一団と出くわす。
勇者飯田「おーい、圭ちゃーん」
ごま「かおりー!」
貴子「おー、勇者さんや。こっちこっちー。」
つじ「とってもなごんでいるのれす。さっきまでたたかっていたとはおもえないのれす・・・。」
勇者飯田は保田たちから戦いの顛末を聞き、サイクロプスと少女のことを話した。
保田「ウソォ、この子がサイクロプスだったの?」
ごま「あはっ、信じらんな〜い。」
勇者飯田「とりあえず服を着せたんだけど、まだ意識が朦朧としてるみたいで・・・」
保田「そうね、ここで治療するのもなんだし、牧城に戻りましょ。
ほら、石川!立ちなさい!もうだいぶ休んだでしょ!!」
石川「は、はぃぃぃい、、、」
ごま「そうそう、貴子さんと美帆さんも一緒に来る?」
貴子「いやぁ、、ウチらは遠慮しとく」
美帆「一応さっきまで戦ってた敵同士だしね。ま、アタシはもう引退するけど」
貴子「またいつか戦ってや。大魔導士ごまに、『召還士』石川ちゃん・・・」
ごま「今度は負けませんからねーだ。じゃ〜ね〜」
牧城に向かって歩き出す勇者一行と見送る貴子・美帆。
- 10 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月16日(水)15時23分43秒
- 勇者一行を見送った貴子・美帆。
美帆「・・・あっちゃん、勇者さんが背負ってた女の子の顔、見た?」
貴子「もちろん。・・・まさか、あの子がこんなところに・・・」
美帆「ワーダ博士のバカ、取り返しのつかないことを・・・。
あの子ら、どうなるんだろ・・・。頃したくないけど・・・」
貴子「ま、ウチらに勝った連中や。このピンチも何とかするやろ・・・」
四天王がこれほど恐れる少女の正体とは・・・?
- 11 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)00時07分21秒
- 保田「(ほんとに、、まさかこの子とはね。
でも、みんなが変に警戒しちゃうかもしれないし、本人にも何があったのか先に確認したい。
彼女がはっきりと意識を取り戻すまで、もう少しみんなには
この子がココナッツ四天王の一員だったことは黙っておこうかしら。)」
勇者一行の中で、保田だけが前に出会ったことがあった。
かつて銀杏仙人の庵にて戦った相手、ココナッツ四天王のミカである。
保田「(それにしても魔王軍もなりふりかまってない。
負けた者すら、魔獣化して再度私らを襲わせる。
人間を物と勘違いしてるわね。許せないわ。)」
- 12 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)01時40分36秒
- −魔王の城−
魔王つんく「ワーダのヤツ、また何か使うといって出て行ったが、帰りが遅い・・・」
その時、つんくの頭に直接念を送ってきたものがいた。
魔王つんく「誰や!」
??「お久しぶり、魔王さん」
魔王つんく「い、稲葉やないか、、、お前、今更俺に何の用や」
稲葉「アタシだってテレパシーなんか使いたくなかったですわ。コトがコトだけに」
魔王つんく「何だ!何が起こったんや!!」
稲葉「ワーダ博士のヤツ、魔獣化の秘儀をよりによってミカに使ったみたいですわ」
魔王つんく「な、何やて?今何ていうた?」
稲葉「幸い勇者一行に助けられて命だけは助かったようですがね」
魔王つんく「そんな、ウソやろ?ワーダ、余計なことを・・・」
稲葉「ウチらも戦い済んだばかりで、体力残ってないんで、さっさとトンズラしますわ。ほな。」
魔王つんく「ま、待て!稲葉、待てコラ!!」
プツッ ・・・テレパシーは途切れた。
魔王つんく「ワーダのバカ、よりによってミカ様を使うか・・・あのアホ・・・」
- 13 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)01時46分39秒
- 稲葉「ココナッツ四天王のうち、ひとりだけ身分の違う・・・ミカ」
信田「魔界のプリンセスだったっけ?」
稲葉「ミカ自身の能力はさして凄くないけど・・・おお怖い怖い」
信田「さっさとトンズラだね。そういえば美和っちとルルは・・・」
稲葉「あ、忘れてた・・・」
- 14 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)18時16分54秒
- 稲葉「よう、ルル」
ルル「アッチャン!とうしたアルか?」
休憩中の中澤達のもとに稲葉が一人で顔を出した。
稲葉「、、その様子を見ると、アンタは勝ったみたいね。」
ルル「当然アルヨ。
・・・もしかして、アッチャン・・
稲葉「ハハ
美和ちゃんはわからないけど私も美帆さんも惜敗。」
ルル「二人ともすぐ油断するのは悪い癖ネ
・・・・それより、本題は何アルカ?」
稲葉「ボンバー四天王、解散のお知らせよ」
ルル「・・・ワカタ」
稲葉「美和ちゃんのところには美帆さんが行った。
あの人もそのまま行くって」
ルル「そっか、、、」
稲葉「じゃ、私もう行くから。
次会う時もできることならば敵としてではなく」
そう言うと召還士・稲葉貴子はさっそうとグリフォンに飛び乗り、天をかけて行った。
- 15 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)18時17分23秒
- 中澤「・・アンタは、どうするん?」
ルル「私ももう行くヨ。
一度チャイナに帰ろうと思うてるアル。」
中澤「・・・・・・あのっ」
ルル「アンタ、もっとたくさんの優れた人に習うといいアル。
そうすれば技術、才能、経験を兼ね備えた素晴らしい武術家になれるヨ。」
中澤「・・・それは、アンタじゃダメなんか?」
ルル「・・・・」
中澤「アンタと一緒に行って、、、」
矢口「裕子!!」
ルル「それは、単なる甘えダヨ」
中澤「!!」
ルル「強くなったアナタとまた戦いたいネ。
再見!」
そう言うと、ルルは森の奥へと消えていく。
矢口が心配そうに中澤をみつめる。
矢口「裕子ぉ」
中澤「さっき、稲葉さんともうひとり四天王が負けた言うてたよね。」
矢口「うん。
・・そう言えば梨華ちゃんも勝ったんだね。」
中澤「・・・・・・・・・・」
矢口「裕ちゃん?」
中澤「矢口、しばしの別れや」
矢口「えっ!」
中澤「あのパーティーにいても私はなんの役にもたたん。」
矢口「そんなこと・・」
中澤「私自身も他の娘たちに甘えて成長せえへんやろうし。
いい機会や、しばらく私は旅に出る。」
はじめて斬馬刀を握ったあの日。
一文字流を極め、敵はいないと思った日。
実戦に敗れ、自分をごまかしながら酒に溺れた日々。
酔拳を会得し、斬馬刀を親友に託したあの日。
荒くれながら、魔王軍に入ったあの日。
はじめて矢口と出会った日。
再び斬馬刀を握った先日。
そして矢口を守ろうとして敗れてしまった今日。
新たに旅に出るのに、今日程相応しい日はあるだろうか。
- 16 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)18時17分55秒
- 矢口「・・・分かった。
じゃあ矢口も連れてってよ。」
中澤「アカン」
中澤は冷たく言い放ち、そのまま矢口に背を向ける。
それでも矢口はその背中に向かって叫ぶ。
矢口「どうして?
ねえどうしてなの?」
中澤「今の私にはアンタを守りきることができない。」
矢口「いいよ、そんなのいいよ。
守られなくたって、私も戦うもん!」
中澤「アカン言うてるやろ。
現に二人で戦っても勝てなかった。」
矢口「!」
中澤「いつかアンタを守れるようになったら、帰ってくる。」
矢口「・・・・・」
中澤「それまで、アンタは勇者さん達と行き」
矢口「・・・・・うん・・
絶対、絶対戻ってきてね。」
中澤「ああ」
矢口「それまでに、矢口も強くなって、、、
中澤「ああ」
矢口「守られるだけのお姫様なんて、矢口は絶対嫌だから。」
中澤「ああ
また戻ってくる、その日まで、な」
最後まで中澤は矢口のほうを振り向かずに森の中に消えていった。
矢口は完全にいなくなった後も、しばらく立ち尽くし、木々をみつめていた。
涙が止めどなく溢れる。
何度拭っても、何度拭っても。
それでもいつかはこの涙を止まるだろう。
だからといって自分が彼女のことを忘れることは絶対にない。
約束通り、明日から修練に励む。
今日はとりあえず、牧城に戻ってこの傷だらけの体を癒さねば。
矢口「って誰か牧城まで連れてけ〜」
- 17 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)19時44分49秒
- 美帆「ここかな…」
美帆はよっすぃーと小湊が戦った場所へ来ていた。
美帆「っつーか、ここだけ廃墟になってるんだから居て当然か」
更に道を進む。すると…
美帆「…な…っ!」
美帆は突然足を止め、息を呑んだ。
二人の人間が血まみれになって倒れ伏しているのだから、無理はない。
美帆「おいっ、美和!ひとみちゃん!」
返事はない。
美帆「うっそ…。まさか相打ちで両方とも…」
と、美帆が言うや否や、声が下のほうから聞こえてくる。
美和「うぅん…、なんだ、美帆か。大きい声出さないでよ、眠いんだから…」
美帆「へ?」
よっすぃー「…あれ…?もう…朝ですか?」
美帆「…」
美帆は声が出せない。
美和「あぁ…、勝負は引き分けだったよ。だから二人とも寝てたの」
よっすぃー「面白い勝負でしたよ〜」
二人は寝たままの状態で美帆に向かって話す。
美帆「…まぁとにかく、勝負は終わってるわけね。それならいいや」
美和「いいや、って…。実はすっごい痛いんだけどね、この傷」
美帆「とは言ってもここのメンバーじゃあ回復なんてできないし…。あ、そうだ」
美帆は懐を探り、何かを美和に渡す。
美帆「はい、私の使ってる痛み止めの薬。今よりマシなはずだよ」
美和「きっついなぁ…」
それを受け取る美和。
美帆「はい、ひとみちゃんも」
よっすぃー「あ、どうも…」
- 18 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月17日(木)20時01分13秒
- 美帆「…落ち着いた?」
美和「全然」
美帆「そりゃそうか、腰痛の痛み止めなんだから…」
美和「でもさっきよりは少し楽になったよ、ありがと」
よっすぃー「私もさっきよりは楽です」
美帆「そう、お役に立てて嬉しいよ」
よっすぃー「あの、美和さん…」
美和「ん?」
よっすぃー「これから…どうするんですか?」
美和「ああ…。とりあえずボンバーは解散だからね、また旅に出るよ」
よっすぃー「そうですか…」
一瞬空けて、またよっすぃーが話し始める。
よっすぃー「あの…また戦えますよね?」
美和「え?…う〜ん…そうだなぁ…」
美和は少し考えてから、よっすぃーに告げる。
美和「次に会うときまで、誰にも負けてなかったら…相手になるよ。
それまで私も誰にも負けないから。それでOK?」
よっすぃー「…はいっ!」
よっすぃーは満面の笑みを浮かべて応じる。
美帆「それじゃあ、私達は行くから。あんたは一人で戻れる」
よっすぃー「はい。痛み止めの効果がなくなる前に牧城に着きますよ」
美帆「それなら安心だ。じゃあ、またね」
美帆は美和に肩を貸した状態でよっすぃーとは反対の方向へ歩いていく。
その時、美和が振りかえってよっすぃーに向かって言う。
美和「負けるなよっ!バトルマスターよっすぃー!」
よっすぃー「もちろん!」
互いの意志を確認し合い、二人は別れた。
- 19 名前:カントリー娘。に石川梨華 投稿日:2001年05月18日(金)19時42分55秒
- ヨシターケ「牧場の東部がしっちゃかめっちゃかでねえか!
ああ忙しい忙しい」
あさみ「え〜ん、ヨシタ〜ケ様少し休ませて下さいよ〜」
りんね「あっそう言えば梨華ちゃんが手伝ってくれるって」
石川「えっ!私聞いてないよ!」
あさみ「でもアイボンさんが確かにそう言ってましたよ。」
石川「えーアイボーン
私そんなこと聞いてないよ」
Д<「んまあ自然の成りゆきってやつや」
石川「そんなー」
ヨシターケ「したっけ東の林道の整備にいくっしょ」
石川「でも私バトルしたばかりで肉体労働はちょっと・・・」
りんね「じゃあ梨華ちゃんはあさみと一緒に薬草摘みに行ってよ。」
ヨシターケ「初夏にしかできないシーズンの仕事だべ」
石川「それならなんとか・・・」
あさみ「それじゃ行こう!」
Д<「(なんやかんや言うて梨華ちゃんが素直に仕事してくれて助かったわ。
あの狂った梨華ちゃん見た後だと、追求されるのが恐くてたまらん。)」
- 20 名前:カントリー娘。に石川梨華 投稿日:2001年05月18日(金)19時43分41秒
- 石川「薬草摘みってどこ行くの?」
あさみ「ここから馬でけっこう行ったところだよ。」
Д<「日帰りちゃうんか?」
あさみ「ううん、年によっては3日位滞在することもあるんだよ。」
シバタ「その薬草摘みの場所ってもしかしてメモリアル山脈のほうですか?」
あさみ「うんそう」
Д<「なんや知っとんのか?」
シバタ「知ってるもなにも私の出身のメロン谷がある所ですよ。」
石川「じゃあメロン谷に遊びに行こうよ。
マサエちゃんやサイトーさんにも会いたいし。」
Д<「んなことできるん?」
あさみ「薬草摘みにはどちらにしろ知識のある妖精さんのガイドが必要だから、全然OK!」
石川「あっじゃあ私他の人達に言ってきますね。」
そういうと石川はトタトタと廊下をかけていく。
眠っている間にすっかり元気になったらしく、その動きは軽やかだ。
Д<「(いくら機嫌良さそうでもまた指噛み切らんかと思うと恐いわ〜)」
- 21 名前:やすいし 投稿日:2001年05月18日(金)19時44分25秒
- 保田「ん?出かけるの?」
石川「数日で戻りますから。」
保田「ならいいよ。
ヨッスィーも矢口も骨まで折れてて治癒魔法じゃすぐには直らないし。
どちらにしろしばらく動けないしね。」
石川「お師匠様はどうするんですか?」
保田「私はここで待機してるよ。
(ミカのことも気になるし)」
石川「何か言いました?」
保田「ううん、何も。
私も気が向いたらいくからさ、気をつけて行ってらっしゃい」
石川「はい、それじゃ行ってきま〜す」
石川は旅の準備でもするのかあてがわれている自分の部屋のほうへかけていく。
その後ろ姿が純真な少女らしさを漂わしている。
2度の本格的な実戦で少しは大人になったと思っていたら、まだまだ随分幼いようだ。
保田「(それでもあの娘もいくらかは進歩したかな。)」
- 22 名前:ごまりか 投稿日:2001年05月18日(金)19時45分13秒
- 石川「失礼しま〜す」
石川は小さな声でそう言って静かに相部屋に入っていく。
ふだんなら喧噪がたえないこの部屋も、今日はいつになく静かだ。
石川「二人の様子はどうですか?」
部屋ではヨッスィーと矢口がベッドに寝ている。
さすが武道家とでも言うのだろうか、二人とも包帯まみれだ。
明かりをともさずに窓からの光りだけで魔導書を読んでいたごまが石川のほうに顔を向ける。
ごま「あ、梨華ちゃん
二人ともさっき寝付いたとこ。」
石川「そうですか。
あっそうそう、私これからちょっと出かけるんですよ。」
ごま「えっどこに?」
石川「ここの牧場のお手伝いでメモリアル山脈のほうに薬草摘みに」
ごま「そっか」
石川「ごまさんはどうします?
お師匠さまはここに待機してるそうですけど。」
ごま「圭ちゃんは待機か・・・・」
ごまはしばらく思案気に視線を泳がせる。
石川はこのごまが少しだけ苦手だった。
はっきりと聞いたことはないが、自分より若いらしい。
それでも自分の師匠の戦友、ファーストネームで呼び合う仲なのだ。
ごま「私もついていっていい?」
石川「え!?」
ごま「その薬草摘み、私もいっちゃまずいかな?」
石川「ぜっ、全然そんなことないですよ。
大魔導師さんが来てくれたほうがたのもしいです。」
ごま「そう?」
ごまはそう言うと椅子から立ち上がり、おおきく延びをする。
そして石川に向き直ってこう言った。
ごま「前に敬語じゃなくていいって言ったのに、まだ直ってないですぞ」
そう言うとごまは石川の鼻を人さし指でつんと押した。
石川「(うう、やっぱこの人苦手だ〜)」
- 23 名前:ナッチー 投稿日:2001年05月18日(金)22時09分35秒
- 石川がダイニングを通ると、ナッチーが一人で食事を続けていた。
もう2時間以上前にみんな朝飯を食べ終わったはずなのに・・・
石川「ナッチーさんは薬草摘み来ませんか?」
ナッチー「それは食えるのかい?」
石川「お薬になる草をとりにいくんですっっ!」
ナッチー「‥‥‥あんまうまくなさそうだべ。
ナッチーはパース」
石川「そうですか。
それじゃ行ってきますね。」
ナッチー「おう。
ナッチーも腹一杯食ったら行くかもしれないべ。」
石川「・・・・それ、いつですか?」
- 24 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)06時04分13秒
- 飯田が城のテラス(物干し場とも言う)にたたずんでいる。長い髪が風になびいている。
そこにあいぼんと辻が現れた。
つじ「いいらさん!」
勇者飯田「・・・・あ、辻。みんなと一緒に行かなかったんだね。
つじ「なにをやってるんれすか?」
勇者飯田「うん。石をね、見ていたの。さっき外でね、拾ってきたんだけど。。」
飯田は手に持った石を太陽にかざした。
つじ「いし。れすか?」
Д<「でたでた。交信やな。。そんなどこでもあるような石になんの意味があるっちゅうねん??」
勇者飯田「むっ!!、
あいぼん!あのね、どこにでもあるような物なんて、この世には無いよ。
なんの意味も無いことなんて、そんなものも無いよ。」
飯田は真剣な顔で怒った。
つじ「おぉーー」
辻は納得した。あいぼんはあんまり話しを聞いていない。
言い終わると、飯田はまた手に持った石を眺めた。
勇者飯田「(この石は、どこから来て、、どこへ行くのか、、、)」
辻達がいるにもかかわらず、飯田は考えこんでしまう。
Д<「いつもよか大分おかしいで。こうなったらしゃーない、ほっといて行くで、のの。」
つじ「へ、、、へい。」
辻は、あいぼんに袖を引っ張られながら、飯田の顔をもう少し見ていたいと思っていた。
勇者飯田「(裕ちゃんはここから離れて、、これからどこへ行くのか、、、)」
- 25 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)06時06分41秒
- ・・・・・・・・・・・・・・
戦いが終わり、いざ牧場へ帰ろうとしていた時、
勇者飯田「圭ちゃん、この子お願い!」
突然、飯田はおぶっていたミカを保田に預けた。
保田「な、、何、急に!?」
つじ「どうしたんれすか??」
勇者飯田「理由は後で話す!ごめん!!」
飯田は先ほど往復した道を走りだした。
勇者飯田「大切な、、大事なことが起こってる。早く行かないと!早く!速く!」
保田「電波か。ろくでもない事じゃないといいけど。」
またかといった表情で飯田を見送る保田。
・・・・・・・・・・・・
- 26 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)06時14分13秒
- 矢口「誰か牧城まで連れてけ〜!」
矢口の声がする。
勇者飯田「はぁ、はぁ、はぁ、、」
すぐにお互いの視界に入った。
矢口「!!、かおり、、、呼ばれて、飛び出てって随分早い。や、早すぎるか。
どしたの?そんなに急いで」
飯田は、座りこんでいる矢口の側まできた。
勇者飯田「はぁ、はぁ、、、矢口こそどうしたの?泣いてるの??」
矢口「!!、泣いてなんか、、、いないよ。」
矢口は目と鼻をこすった。
その仕草を見て、飯田は一瞬下唇を噛み、悲しそうな表情を浮かべた。
勇者飯田「そっか、わかった。どっちへ行ったの?」
矢口「?、あ、あっち。」
勇者飯田「ありがと。」
飯田はまったく疑いの無い目で一度矢口と目をあわせると、呼吸も整わぬままに再び走り始めた。
矢口「あ、、あ、うん。(わかられ、、、ちゃった??、まだ何にも言ってないのに)」
すぐに、飯田も矢口の視界から消えそうだ。
矢口「ま、まって!かおり!!」
矢口は力の限り大声で叫んだ。飯田が立ち止まり振り返る。
矢口「裕ちゃんを!止めないでよ!!今、決心して旅立ったんだから!!」
- 27 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)16時54分21秒
- 勇者飯田「うん!止めないよ!!」
飯田も負けずに大声で返した。
矢口「は、、、はぁ、、」
矢口は今の大声で力が抜け、飯田は視界から消えた。
矢口「(やっぱ、わかってたんだ。凄いね、かおりは。でも良かった。。
裕子のためには止めない方がいいんだ。)」
矢口は動けないので、飯田が戻るまで寝そべって休むことにする。
矢口「(なんてね、全然よくねーって。止めてよ。止めてよかおりっ!
出来なかった、私のかわりに!!)」
仰向けに寝ながら、矢口はまた涙を流した。それは目を瞑っても溢れてくる。
・・・・・・・・・・・・・・
- 28 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)16時56分31秒
- 飯田は指し示された方向へと走り続けた。
勇者飯田「いた!、裕ちゃん!!」
中澤の背中が見えた。
中澤「!!」
勇者飯田「やっと追いついた。裕ちゃん。」
中澤は振り向かずに動きを止めた。
中澤「な、、、なんや!!かおり、追ってきたんかいな?」
勇者飯田「うん。こっち向いてよ裕ちゃん!」
中澤はゆっくりと振り返った。膝に手をつき、肩で呼吸する飯田が目に入る。
中澤「な、、なんよ、止めたってきかんで。」
中澤は困った表情で言った。
勇者飯田「ううん、矢口が止めたってきかなかったんでしょ、
それならかおりには無理だってわかってる。だから、止めない。」
中澤「そ、そーかぁ、(それはそれで、ちと寂しいで。)」
勇者飯田「はぁ、、はぁ、、」
飯田は地面に座った。
中澤「なら、怒ってるん?みんなに黙ってでてきてしもーて。」
勇者飯田「ん?、んーと、、、そ、そうかも、、、かおりは、怒りたかったのかな?裕ちゃんのこと。」
中澤「はぁ??、なんでうちにきいてんねん。
あんなぁ、なんで追い掛けてんのかもわからずに、追い掛けてきたんか?」
中澤は、ちょっと面白くなってきた。
勇者飯田「うん。ただ、そうするのが当然のような、それでいてとても重要なことのような気がして。」
中澤「はははっ。あんた、相変わらずやな。」
勇者飯田「だから、少し話でも出来れば、それでいいのかもね。座ってよ。そこ。」
飯田は道の反対側にある岩を指差した。
中澤「お?、おぉ。」
中澤はその岩に腰掛けた。
- 29 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)17時01分21秒
- 勇者飯田「じゃ、話の続き、みんなには別れ、言わなくていいの?」
中澤「もし必死で止められても決心は揺らぎはせんけど、別れて旅立つのは、やっぱ辛いねん。」
勇者飯田「そっか。」
中澤「ま、勝手にいなくなってすまんな。」
勇者飯田「いいよ。そのためにかおりは来たようなものだし。みんなにはかおりから言うから。」
中澤「えらいものわかりええな。恩にきるで。」
中澤は少し不思議がった。
勇者飯田「それで、具体的にはこれからどうするの?」
中澤「最短ルートを通って、魔王に借りを返す。つまりぶちのめす。
その後はチャイナ大陸に渡り、今度こそルルに勝つ。
行ける所まで行く。てっぺん目指して。それが目標や。」
中澤はこぶしを握って、気合を入れて見せた。
勇者飯田「そっか。それがどうして、今なの?」
中澤「それはな、、」
一呼吸置く。
中澤「、、うち、、四天王のルルに負けたんや。」
勇者飯田「うん。それは知ってる。指導されてるところ、見たから。」
中澤「そやったんか。なら、わかるやろ。悔しいんや。」
勇者飯田「それで?」
中澤「うっ、、追いこんできよったな。確かにこれじゃ「今」な理由や無いしな。
しゃーない教えたる。あんな、ボンバー四天王が解散する理由、知ってるか?」
勇者飯田「それぞれがやりたいことをやるため。」
中澤「そうやそのとおり。でもな、もう少し意味があんねん。うちらにはもう、時間が無いんや。
みんなで一緒にゆっくり進む、時間がない。」
勇者飯田「!」
・・・・・・・・・・
中澤「1本の武器だって、、、煮詰めれば煮詰めるほど強くなる。可能性は無限なんや!」
ルル「・・・・自分自身は、どうアルか?」
・・・・・・・・・・
- 30 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)17時05分20秒
- 中澤「うちはもう、今年で28や。技は煮詰まっても、いずれ、若いもんにはかなわなくなる。
その間に氏ぬほど鍛えるには、今一人で、一人だけで戦い続けなあかんねん。
今のパーティーの居心地よさに甘えとったらあかんねん。わかったか?」
勇者飯田「なるほどー。わかった。」
中澤「そりゃよかった。ほんまは自分でもう歳だなんて言いたなかったんやけどな。」
勇者飯田「うん。ごめんね。でもこれで大体聞きたい事は聞けたと思う。
あとはちゃんと、みんなには説明しておくよ。」
中澤「ああ、頼むで。んじゃ、そろそろ行くわ。」
中澤は立ちあがった。
勇者飯田「うん。」
飯田はまだ座ったまま、その動作を目で追っていた。
中澤は飯田の表情を見てると、出て行くことを肯定されてるように思えて、不意にまた寂しくなった。
中澤「ほんとに、、止めへんのやな。」
中澤はわざと残念そうに言ってみた。
勇者飯田「ん?んー・・・・・、そうだね。じゃ、一言だけ言おうか。」
中澤「な、なんや?」
自分で振りながら、不意をつかれる中澤。脅かすような口調と表情で飯田は言った。
勇者飯田「裕ちゃん、後悔するかもしれないよ。」
中澤「・・・・・・なんやそんなことかい。。。」
中澤は少し考えこんでから続けた。
中澤「そやな、みんなといて、うちは楽しかった。
比べて一人は、辛いことも多いかもしれん。守ってもらえることはない弱肉強食の世界。
でもな、今のうちに、体が動くうちに、
自分を行ける所まで持ってってやりたい気持ちも本心なんや。
もし同じ様に後悔するとしたら、
やらずに後悔するよりは、やって後悔することを選ぶんや。うちはな。」
勇者飯田「そっか。」
またうつむいて相槌を打つ。
中澤「また「そっか。」かいあんた!」
さっきから質問するだけで食いついて来ない飯田に、中澤は苦笑いした。
- 31 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)17時08分00秒
- 飯田は中澤に笑顔を向けた。
勇者飯田「裕ちゃんらしい、かっこいいよ!!」
中澤「ほんまか?ははっ、」
飯田は立ちあがって中澤に手を差し出した。中澤はすぐに応じ、二人はがっちりと握手した。
中澤「短かったけど、あんたらみんなと旅して、ほんっまに楽しかったで。
ほんまにほんまに、、みんなのこと、よろしくな。まかしたで。勇者さん!」
勇者飯田「うん。まかされた。頑張るよ。精一杯ね。
裕ちゃんも頑張って。かおり達にそう簡単に追い付かれないようにね。」
中澤「ああ。ほな、またな。」
勇者飯田「うん。また。」
二人は手を離した。
お互いを見送らず、すぐに二人は背を向けあい、反対の方向へ歩き出した。
・・・・・・・・・・・・・・
- 32 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)17時12分42秒
- 勇者飯田「ごめん、矢口。ただいま。さ、帰ろうか。」
飯田は矢口を背負った。
しばらく二人は無言のまま牧城への道を進んで行った。
矢口「どうだった?」
矢口は飯田が先に喋ってくれるのを待ち切れ無くなって言った。
勇者飯田「ん?何が??」
矢口「もう、裕子の事に決まってんじゃん。」
勇者飯田「うん。これからの決意を聞いて、感動したよ。頑張れって言ってきた。」
矢口「それだけー?」
勇者飯田「それだけだよ。みんなのことよろしくだってさ。」
矢口「・・・・・・止めなかったの?」
勇者飯田「はぁ?、止めるわけ無いじゃん。矢口が止めるなって言ったんじゃん。」
矢口「う、まあそうだけどさ。」
勇者飯田「止められないよねえ。あんな風に、野望に満ちた目をされたら。」
矢口「意思に満ちたとかそういう言葉使ってよー。」
勇者飯田「ははっ、ごめんごめん。」
数秒間会話が途切れた。
今度は飯田が沈黙を破ることになった。
勇者飯田「ねぇ矢口、本当は止めたかったの?」
矢口「・・・・うん。。駄目だったんだけどね。寂しいから行かないで!なんて言え無くて。。はっ、」
矢口は言ってから、しまったと思った。
ああ、ついうっかり言ってしまった。かっこ悪くて隠していた事。
勇者飯田「・・・・・・・実はかおりもそうなんだ。」
矢口「!!」
矢口にとってはその言葉は意外だった。
気づけば、飯田の背中が少し震えている。
矢口「(泣いてる?かおりが、、、)」
勇者飯田「お互い、、、強がりで、素直じゃないよね。子供のくせに、大人のふりしてさ。」
矢口「うん。」
矢口はそっと頷くと少しだけ強く飯田を抱きしめた。
その後二人は、まったく関係無い会話をして、牧城へと帰った。
- 33 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)17時15分40秒
- ・・・・・・・・・・・・・・
ボーっとする飯田をジーっと眺める辻。
つじ「・・・・・・・」
Д<「た、、楽しいか?のの??」
あいぼんは暇でしょうがない。あくびをしながら言った。
勇者飯田「あ!まだいたの?」
つじ「!!」
Д<「お!、おお喋った!!」
突然飯田が辻達の方に振り向いた。
つじ「そのいしから、なんかわかったんれすか?」
勇者飯田「石、ああ、これ?うん。まだ、よくわかんない。」
Д<「そりゃダメダメやんな。」
勇者飯田「でもね。よく見て、これ、オレンジいろなの。宝石みたいなの。」
飯田は石を辻に見せた。
つじ「おおー。」
勇者飯田「石は全て違う形、違う色をしてるけど、その中でもこれだけ、
自己主張のつよーい奴だったの。
まるで、今、かおりに出会うために光り輝いてたような。。」
つじ「ほ、ほんとれすね。きれいれす。」
勇者飯田「うん。でしょ。だから、これからの旅に一緒に連れていこうかな?って思った。」
飯田は、外の景色を見渡した。
勇者飯田「もう少しでかおり達はこの大地を離れるけど、一つくらい石を持ってっても、
記念になるかなって。せっかく出会ったんだしね。」
Д<「したっけ記念もなんも、ナッチー一人いればこの地の事は、忘れようにも忘れられないべさ。」
物真似をしながらあいぼんが答えた。
勇者飯田「それもそうだね。あははっ」
つじ「くすくすっ」
勇者飯田「んじゃ、もう城の中に入ろっか。寒くなってきたし。」
飯田は石をポケットにしまった。
- 34 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月19日(土)17時16分59秒
- 人は、出会いと別れを繰り返して、痛みを伴いながら成長していく。
きっとどこにでもある出会いは無い。意味の無い別れも無い。
勇者飯田「(そしてかおりは今、勇者として、みんなと出会って、巻きこんで、、、、)」
- 35 名前:野草摘み(ふもとの村) 投稿日:2001年05月19日(土)22時11分08秒
- ごま「ルーラ」
あさみに目を閉じてメモリアル山脈のむもとの村をイメージさせる。
ごまがあさみの額に手をやったかと思ったら、次の瞬間には全員ルーラで飛んでいた。
あさみ「すごーい、馬で一日かかるところなのに」
Д<「しかもスピードもめっちゃ早かったで。」
石川「自分がいったことない所でも行けるんですね」
3人が感嘆の息をもらし、ごまを羨望のまなざしでみつめる。
こういう所業はさすが大魔導師というところだろうか。
ごま「まあ完全に他人と記憶を共有できるわけじゃないけどね。
梨華ちゃんもそのうちできるようになるよ。」
ごまは簡単に言うが、石川はその言葉を鵜のみにすることはできない。
ごまと一緒にいて、(この人は天才なんだ)と思うことが少なからずある。
自分が一生背中を追い続けるであろう大神官の戦友。
自分が自信を持てないのは、彼女へのコンプレックスが原因ではないかと思ったこともある。
あさみ「それじゃいつもお世話になってる宿に荷物をおいたら早速でかけましょう。」
ごま「なんかお腹すいちゃった。」
Д<「牧城で食うたばかりやん。ナッチーみたいなこと言うなや」
ごま「お昼はどこでたべるの〜?」
あさみ「じゃああそこでパンでも買っていきましょう。
晩御飯はここの御主人が自慢の料理をふるってくれますよ。」
ごま「わーい、やったー」
この純粋な笑みをみると、自分のなかの意地汚い心が劣等感で埋めつくされる。
だいたい彼女が修練をしている所などみたことがない。
たまに魔導書を見ているようだが、見ていきなりその魔法が使えるのならなんとも羨ましい限りだ。
Д<「どうしたん?」
石川「えっ」
Д<「なんかさっきからえらい不機嫌みたいやけど・・・」
石川「そんなことないよ。」
アイボンが何故だかとても怯えているので石川は笑顔をみせる。
シバタ「大神官さんがいなくて不安なんだよね、梨華ちゃん」
ごま「大丈夫だよ、私もいるしね。」
‥‥‥今はじめてそのことに気付いた。
そうか、保田がいない所でごまと共に行動するのはおそらくこれがはじめてのことなのだった。
- 36 名前:野草摘み(メロン谷・サイトーの食堂) 投稿日:2001年05月19日(土)22時12分35秒
- メロン谷は精霊達の集合生活帯である。
風火地水の精霊をはじめ、トロール、ゴブリン、フェアリーなど様々な種族の生活帯が混在している。
サイトーの食堂はそんなメロン谷の中央部、もっとも数多くの精霊が行き来する往来にあった。
往来と言っても人形の街のようなものではない。
体はみな人間より小さくとも妖精達の居住空間は意外に広かった。
サイトー「あらいらっしゃい」
シバタ「こんにちはー」
Д<「おじゃまするで」
いくら広いと言っても店に入るのはさすがに迷惑だろうと遠慮して、アイボンとシバタだけが店に入った。
でも全くそんな風ではなく、ここが妖精の住むところだと思えない程広々とした街だった。
先程から街と言っているので語弊があるかもしれないが、あくまでここは森の中。
ただ空間に不思議なしきりがあって、そこがなんとなく食堂になっているのがわかるのだ。
おそらく物質的な壁ではない、何かがここにあるのだろう。
そんなことを考えながらキョロキョロしていると、他の二人はとても落ち着いていて、石川はどこか恥ずかしくなってしまった。
あさみはメロン谷になれているらしく、薬草選別を頼む妖精学術院までの道筋を確認している。
ごまにいたってはしわしわのトロールのお婆さんと世間話までしている。
天気の話しをしているようなのだが、二人とも抽象的な単語しか話さず、精神論があまり得意ではない石川はおいてけぼりをくったような気になっていた。
- 37 名前:野草摘み(メロン谷・サイトーの食堂) 投稿日:2001年05月19日(土)22時12分59秒
- シバタ「ここらへんもあまり変わってないですね。」
サイトー「そうね、顔なじみも最近になってけっこう戻って来たし。」
シバタ「そう言えばマサエちゃん最近来ました?」
マサエとは以前矢口が倒れた時にシバタに手を貸してくれた妖精である。
旅好きらしく、妖精の治癒技能に造詣が深いらしい。
サイトー「マサエならつい最近来たよ。
なんか旅から戻ってきたらしくてね、しばらくはメロン谷にいるって言ってたよ。」
シバタ「ホントですか?
会えたらあいたいなー」
サイトー「そう?じゃ来たら伝えておくわ。」
シバタ「おねがいしますね」
サイトーはふたりに飲み物を出してくれた。
アイボンものんでみたが、妖精の飲みものも悪くはないという感じだった。
サイトー「そう言えばさ、アンタ神殿には行った?」
シバタ「えっ、行ってませんけど。」
Д<「神殿てなあに?」
シバタ「メロン谷の高いところにあるんだけどね、メロン谷の妖精のシンボルになってるの」
サイトー「あの嬢ちゃん連れて一度いってみなよ。
めぐみさんがきっとためになる話しでもしてくれるだろうし。
ああー、でもあの人も最近大変だからなあ」
シバタ「何かあったんですか?」
シバタの問いかけにサイトーは一瞬躊躇し、こう答えた。
サイトー「……んまあ彼女も難しい問題に巻きこまれてるみたいなのよ。」
- 38 名前:薬草摘み(メロン谷の神殿) 投稿日:2001年05月19日(土)22時14分07秒
- 学術院に行ったあさみ、アイボン、ごまと別れて石川とシバタはサイトーに従って神殿に来ていた。
神殿にいくと顔パスで奥の部屋に通される。
シバタも神殿の奥に行くのははじめてらしく、どうやら石川達が来ることをはじめから知っていたようだった。
ムラタ「ようこそ、そろそろ来るころだと思ってたわ」
奥にはひとりの女性が寝そべっていた。
彼女がサイトーの言っていた“めぐみさん”である。
最初ソファに横になっているのかと思っていたら、近づいてみると下半身が蛇のようになっていた。
むこうも石川の視線に気付いたらしく、微笑んでこう言った。
ムラタ「貴方が石川さんね。サイトーさんからお話は聞いてたわ。」
シバタの話しによるとムラタはグランドラミアと言って、神殿を守るラミア族の中でもとりわけ精霊達から信用されている存在らしい。
人間で言う巫女のようなもので、女系種族のラミア族から常にひとり選出されているという。
ムラタ「精霊の力による召還はもっとも人間にとっても負荷のかからない召還なの。
そのかわりあつかいはとても難しい。
正しい知識とチームワークなくしては・・・・・・・」
召還の基礎的な知識すらない石川はムラタの講釈に聞き入る。
ムラタは終始おだやかな口ぶりで精霊の能力について説明している。
その後、ムラタの講釈は2時間近く続いた。
- 39 名前:薬草摘み(メロン谷の神殿) 投稿日:2001年05月19日(土)22時14分36秒
- ムラタ「すっかり長居をさせてしまったわね。」
シバタ「お忙しいでしょうのにお時間を割いていただきありがとうございました。」
ムラタ「いいのよ。これがグランドラミアの本来の仕事なんだから。
そうだ、石川さんにおみやげをあげるわ。」
そう言うとムラタは控えていた別のラミアの指示をだす。
ムラタ「これなんだけどね、召還士の精神的疲労を軽減するためのものなの。」
ムラタが取り出したのはきれいな翠色のオーブをあしらったネックレスだった。
石川「キレイですね」
ムラタ「これを首からさげると・・・」
石川のほうを見たムラタは口を止める。
シバタ「どうしました?」
ムラタ「えっ、いやね。
石川さんが身につけているのは魔導師用のローブみたいなものよねえ。
外見は随分スポーティーだけど。」
石川「あっはい。別に魔導師用ってわけじゃないんですけど、魔力を増強してくれるらしくて。」
ムラタ「そうね。そのスーツ、とてもあなたと波長があってるわ。
それはいいんだけどね、あなたが首にかけているのってもしかしてクロス?」
シバタ「梨華ちゃんは勇者サヤカのパーティーだった大神官さんについている修道士さんなんですよ。」
ムラタ「そう・・・・」
ムラタはすこし憂い気にそう呟いた。
石川「なにか問題あります?」
ムラタ「問題と言うか・・・
そのクロスを外さない限り、このオーブは使えませんよ。」
- 40 名前:薬草摘み(メロン谷の神殿) 投稿日:2001年05月19日(土)22時15分11秒
- 石川「えっ‥‥‥‥」
シバタ「クロスを外すって・・・・」
ムラタ「……本格的に召還士の道を進むのならば、どちらにしろ信仰の道は諦めてもらわないと...」
シバタ「そんなぁ」
石川は絶句してしまう。
神託を受けている大神官と出会って以来、大神官保田にあこがれておしかけ弟子になって以来、神官を目指して修道士となったあの日以来、一度も外したことのないこのクロス。
それを外すなどということは・・・・
ムラタ「別に信仰を止めろというわけではありません。
ただ召還でもっとも神経を集中するのは胸部ですし・・・
あなたの今までの修道士としての経験は無駄にはなりませんよ。」
ムラタの声が耳の遠くで響く。
別に今までの自分を守りたいわけじゃない。
そうじゃないけどこのクロスを外すことはできない。
それは、、、このクロスが大神官保田と自分をつないでいるたった一つの鎖だと思っているから。
おずおずと石川は口を開く。
石川「私、このクロスを外すことは.....」
ムラタ「・・そう。わかったわ。
とりあえずこのオーブは貴方に差し上げます。
もし決心がついたら・・・・」
皆まで言わずにムラタは口をつぐむ。
ムラタが黙って差し出したオーブを、石川は黙って受け取った。
- 41 名前:薬草摘み(メロン谷の神殿) 投稿日:2001年05月19日(土)22時15分39秒
- ムラタ「もう遅いでしょう。
ふもとの村まで気をつけてお帰りなさい。」
石川「あっはい。ルーラで戻るので大丈夫だと思います。」
??「だったらもう少し遅くまでいられるわね。」
突如部屋の奥のトビラから人が出てきた。
石川よりも明らかに年下のラミアの少女。
ムラタ「お客さまにはもう少し丁寧な言葉を使いないさいね。」
ムラタがいつになく厳しい口調で言う。
しかし少女はムラタを無視して話しを始める。
??「この神殿まで来てラミアの竪琴を見ずに帰るのはもったいないわよ。」
石川「ラミアの竪琴って?」
シバタ「えーっとねえ、、、」
シバタの話しによるとラミアの竪琴とはグランドラミアに受け継がれているものらしい。
代々のラミアの髪が弦としてはってあって、それは良い音をだすという。
??「それとも今のグランドラミアは弦を切られるのが恐くて竪琴も公開しないのかしら。」
少女は随分と高圧的な口調でムラタにせまる。
ムラタ「・・そこまで言うならお見せしましょう。」
シバタ「いっ、いいですよ。
そんな竪琴なんて儀式以外でそう見られるものでも・・」
ムラタ「いいんですよ。
さあ、ついていらっしゃい。」
そう言うとムラタは廊下を先に進んでいってしまった。
石川は少女に一礼して、急いでムラタを追った。
- 42 名前:薬草摘み(神殿) 投稿日:2001年05月20日(日)19時43分52秒
- 石川とシバタは神殿の中の特別な部屋に案内された。
うすぐらい部屋の中に幾重にも錠付きのドアがあり、ムラタが手をかざすとひとつひとつ開いていく。
そして最後のドアが開いた後、中には一つの竪琴が保管されていた。
ムラタ「これがラミアの竪琴です。」
シバタ「こんな間近で見れるなんて・・・」
石川「この弦、全部髪の毛なんですよねえ。」
ムラタ「ええ、代々のグランドラミアがその役を受け継いだ時に張っていったものなの。」
石川「それじゃあムラタさんのもあるんですか?」
ムラタ「これがそれよ。」
そう言うとムラタは中央よりすこし右にある弦を弾く。
すると部屋には鋭い音が響きわたる。
シバタ「よろしいんですか?
儀式でもないのに弾かれても」
ムラタ「いいのよ。そう簡単に切れる弦じゃないもの。」
石川「‥‥弦が切れるとどうなるんですか?」
一瞬二人とも驚いた顔つきになったが、すぐにムラタが優しい笑顔でこう答えた。
ムラタ「その時は、次のグランドラミアが就任し、新たなる弦を張ります。」
石川「じゃあその前のグランドラミアは?」
ムラタ「………弦が切れるのは、グランドラミアが死んだ時なんです。」
- 43 名前:薬草摘み(ふもとの村・酒場) 投稿日:2001年05月20日(日)19時44分22秒
- 石川とシバタがルーラでもふもとの村まで戻り、あさみ達と宿屋の食堂に来ていた。
すると偶然にもなつかしい人にであった。
ミチーヨ「久し振りやなー」
ごま「久し振りー」
ミチーヨ「どうした?
ここらへんになんか用か?」
石川「牧場のお仕事のお手伝いで薬草摘みに来たんです。」
ごま「みっちゃんは?」
ミチーヨ「うちか?うちはちょっと仕事でな。」
あさみ「仕事って・・・・居酒屋経営ですか?食料品の卸しですか?」
ミチーヨ「ちゃうちゃう、また別のやつ。
ちょっと傭兵紹介で出張して来てん。」
Д<「そらまた物騒やなあ。」
シバタ「ここらで何か事件でもおこったんですか?」
ミチーヨ「‥‥‥‥まだおこってない、とまあ言うとこうか。」
石川「えー、やだやだ恐ーい。」
あさみ「薬草摘みに支障がないといいけど・・・・」
ごま「何か知ってるんでしょ。教えてくださいよっ」
ミチーヨはごまの怪力でおもいっき前後に揺すぶられる。
ミチーヨ「ぐ、る、じ、い、、、」
ごま「オラオラ吐けったら吐けよ〜♪」
Д<「ちょいまちや。それ以上やると二度と口割らなくなるで。」
アイボンに言われてごまは腕を止める。
ミチーヨ「ケホッ、ケホッ」
あさみ「大丈夫ですか?」
ごま「包み隠さず、さあ言ってみよう!」
ミチーヨ「分かった分かった、言えばいいんでしょ。
メロン谷のとある妖精に用心棒の仲介を頼まれたのよ。」
シバタ「えっ!メロン谷ですか?」
石川「それって人間の?」
ミチーヨ「そうや。詳しくは話せんけど近々あそこで大きくなんかやるらし・・・」
再びミチーヨの肩にごまの手がのり、彼女の首は大きくグラインドする。
ごま「そこのところ詳しく聞きたいな〜」
ミチーヨ「、、、わ、、、わか、った、、から、、、」
Д<「今度はほんまに死相が出てんで。」
・・・・哀れミチーヨ・・・・
- 44 名前:薬草摘み(ふもとの村・酒場) 投稿日:2001年05月21日(月)18時42分42秒
- ミチーヨ「メロン谷のグランドラミアシステムについては知ってる?」
石川「だいたいのことは」
ごま「えー何それ?知らないよ?」
あさみ「私もはっきりとは・・」
‥‥‥‥‥(説明中)‥‥‥‥‥
Д<「ほー、そらまた変わった伝統やな」
ミチーヨ「でね、そのグランドラミアをめぐってあそこが2派に別れてるらしいわ。」
あさみ「あそこって?」
ミチーヨ「メロン谷の政治やってる連中」
シバタ「メロン谷全体の取り決めは各種族の長が寄り合いで決めてるんです。」
ごま「それで人間の用心棒とは物騒ね。」
石川「でも2派って言ってもグランドラミアはムラタさんひとりしかいませんよ。」
石川の問いにミチーヨは一瞬言葉を詰まらせ、シバタに一瞥くれる。
ミチーヨ「それがな、グランドラミアの後継者の明かしは複数にあらわれるらしいんよ。」
石川「明かしって?」
シバタ「ラミア族の中である程度霊力のあるものが触れると緑色の光りを発する色があるそうなんです。」
ごま「なるほど、その光りが発すればとりあえず合格なわけね。」
ミチーヨ「まあそういうこっちゃ。
で、先代のグランドラミアが亡くなった時、その合格者の中から一人選ぶらしい」
石川「でもムラタさんは全然お元気でしたよ。」
石川の言葉に再びミチーヨは口をつぐむ。
そして言葉を選ぶようにしてしゃべろうとしたその時、ごまが先に口を開いた。
ごま「死なないならば殺してしまえ、ってことでしょ。」
- 45 名前:薬草摘み(ふもとの村・酒場) 投稿日:2001年05月21日(月)18時44分21秒
- Д<「なんやいきなり恐い話になってきたなあ。」
ごま「精霊の暗殺に人間の用心棒がからんでくる・・・」
あさみ「つまり内戦勃発じゃないですか!」
ミチーヨ「いや、そこまで物騒なことにはならないんやけどな。」
Д<「なんでや?」
ミチーヨ「その理由はな、ラミアの竪琴にある。」
ごま「なにそれ?」
‥‥‥‥‥(説明中)‥‥‥‥‥
あさみ「グランドラミアさんが亡くなった時に、竪琴の弦もきれるんですね。」
Д<「運命共同体、みたいなもんか?」
ごま「逆に言えばその弦が切られると彼女の命はないわけね。」
ミチーヨ「さすがに巫女さんやから直接kろ
まあそやから他の人間や精霊を巻き込んだ戦いにはならへんで。」
石川「でもっ、もしかしたらムラタさんは死んじゃうんでしょ。」
ミチーヨ「うぇっ、ま、まあな」
シバタ「大丈夫だって梨華ちゃん。
そのためにミチーヨさんが竪琴を守ってくれるひとを仲介してくれたんでしょ。」
ミチーヨ「それがな・・・・・・・・・」
ごま「もしかして、みっちゃん刺客を仲介したんじゃ」
ミチーヨ「そうじゃあらへん。」
あさみ「じゃ問題ないじゃないですか。」
ミチーヨ「それがな、依頼された傭兵のレベルが高くてうちじゃ仲介できへんかってん。
まあうちでできなかったら他の同業者のところでもそう簡単には・・・」
石川「それって・・・」
ごま「早い話、敵が強すぎて誰もその竪琴を守れないってこと?」
ミチーヨ「まあそうやな。」
シバタ「そんな・・・・」
石川がメンバーを見回すと、ごまが自分のほうを見つめていた。
ごまと顔を見合わせ、うなずく。
石川「あさみ%8
- 46 名前:薬草摘み(ふもとの村・酒場) 投稿日:2001年05月21日(月)18時48分19秒
- 石川がメンバーを見回すと、ごまが自分のほうを見つめていた。
ごまと顔を見合わせ、うなずく。
石川「あさみちゃん、薬草摘み一緒にいけないかもしれない。」
Д<「梨華ちゃん!」
ミチーヨ「あんたら、本気で行くんか?」
ごま「人間だろうと精霊だろうと他者が勝手に命を奪っていいわけない。」
ミチーヨ「それならしゃあないな・・・・・
よし、一つ相手の情報を提供したろ。」
ごま「みっちゃん、一つと言わず知ってることは全部教えてよ。」
ミチーヨ「悪いな、私も確かな情報は一つしか知らへんのや。
(元忍者として、不確かな情報なんか流せられへん)」
石川「なんですか?その情報って。」
ミチーヨ「今回相手さんも複数刺客というか傭兵を雇ってるらしいんやけどな、」
ミチーヨはメンバーを一度見回し、ゆっくりと口を開く。
ミチーヨ「噂によるとな、そのうちの一人が元ボンバー四天王らしいんや。」
- 47 名前:薬草摘み(ふもとの村・酒場) 投稿日:2001年05月21日(月)18時49分04秒
- 石川「ボンバー四天王!」
Д<「そらまたえらいのがでてきおったなあ」
あさみ「私疑問に思ってたんですけど、そんなすごい人使ってグランドラミアさんを殺してどうするんですか?」
ごま「そう言えばそうだよねえ」
石川「ムラタさんが亡くなって得する人なんているんですか?」
ミチーヨ「まずはやっぱ次のグランドラミア候補やね。
話しによるとそのお嬢ちゃんのほうから今回の計画が持ち上がったらしいし。」
石川「それって・・・」
シバタ「おそらく今日神殿で会ったあの娘だと思う。」
Д<「でもそいつだけじゃガキのたわごとやろ」
あさみ「もちろん誰かがバックアップしてるんですよね。」
ミチーヨ「それがさっき言ったメロン谷の政治家連中なんや。」
シバタ「まさか酋長がそんなことは・・・」
ミチーヨ「神殿とグランドラミアを敬ってる老齢の酋長達は絶対にそんなことせえへん。
今回の暗殺計画に関わってるのは酋長連と対立しているもの達。
グランドラミアと組んで商業やなんやと重い通りに動かそう思っとる連中や。」
石川「それでムラタさんの暗殺を?」
ミチーヨ「メロン谷は精霊は地元民との交流が他の精霊集落に比べて深い。
彼等の知識や力は人間にとっては稀少価値がでてくる。
当然金が動いて悪どいやつらが暗躍するようになる。」
ごま「その悪いやつって人間?精霊?」
ミチーヨが困った顔をしていると、シバタはタメ息をついて代わりに答えた。
シバタ「どっちもだからタチが悪いの」
- 48 名前:・・・魔界・・・ 投稿日:2001年05月21日(月)19時55分18秒
- *「・・・ハァハァ・・・
・・・一体どれだけの闇を抜けたら・・・
・・・元の世界へ戻れるの?・・・
・・・皆に会いたい・・・
・・・どんなに頑張っても・・・
・・・見えるのは、闇、闇、闇・・・
・・・でも、約束は守るぞ・・・
・・・絶対戻ってやるからね!!!」
- 49 名前:人間界 投稿日:2001年05月21日(月)19時58分47秒
- ごま「・・・。」
石川「どうしたんです。ごまさん?急に黙り込んじゃって。」
ごま「・・・キューン」
一同「???」
- 50 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月22日(火)18時15分10秒
- ミチーヨ「その上今回の計画には魔王軍が一枚噛んどるらしい。」
ごま「また性懲りもなく〜」
ミチーヨ「なんでもあちらさんの刺客のなかに魔王軍から派遣されたのもいるらしい。」
あさみ「元ボンバー四天王の人じゃないんですか?」
石川「でもあの人たちはもう魔王軍じゃないはずだし。」
ごま「今までに私達が戦った敵、あるいは今までに戦ったことのない敵。」
Д<「どっちにしろ強敵やな」
ごま「ってちょっとまって、その敵さんのほうは何人位武道家や魔術師がいるの?」
ミチーヨ「まあ少数精鋭で揃えてるみたいだけど.....」
シバタ「元ボンバー四天王の人で一人」
あさみ「魔王軍の人でもう一人」
石川「それ以上いたら私達だけで相手できませんよね。」
Д<「うちらは何人いるんや?」
ごま「まず私。
で梨華ちゃんとシバタちゃんで一組。
アイボンは計算にいれないとして・・・・」
石川「あさみちゃん戦える?」
あさみ「牧城みたいに動物達がいないと・・・
一応猛獣使いだから動物ならあやつれるけど、あそこには大きい動物はいないから。」
Д<「2組か。絶対的に足りへんな」
ミチーヨ「・・しょうがない。ここは私・・」
ごま「やっぱ牧城に一度戻って応援を呼んだほうがいいよね」
石川「そうですよ」
ミチーヨ「・・せやから、私・・」
ごま「ヨッスィーとやぐっちゃんはまだ戦えないだろうから」
石川「となると勇者さん、お師匠さま、ナッチーさんの誰かを」
ミチーヨ「・・こう見えても、昔は私だって・・」
ごま「こっちにもう戦えるひとはいないもんね。」
石川「そうですよね」
ミチーヨ「・・そう、ですかね・・」
伊賀出身・女忍者平家充代。
幼少から情報収集能力の高さで全国の裏業界に名をはせる。
その後冒険家の時代になり落ちぶれるが、不屈の精神で酒場経営をはじめる。
現在は情報屋、用心棒の仲介、食料品の卸しなど幅広く手掛ける。
しかし彼女の若きしり頃を知るものは少なく、冒険家からは軽く見られている。
彼女の真の実力が発揮される日はいつ来るのか!?
頑張れ落ち武者・ミチーヨ!
- 51 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月23日(水)22時34分52秒
- ミチーヨ「ウチと裕ちゃんの戦い、見てなかったんかい!」
石川「あ。」
ごま「そういえば、、、」
ミチーヨ「(そや!思い出したやろ!!)」
ごま「私、アザラシのときだしだし、あんまりおぼえてないや〜あはぁ」
石川「勇者さんが剣を一振りしただけで、中澤さんをふっ飛ばしちゃったんですよね!
石川、感動しました!!」
ミチーヨ「・・・」
- 52 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月24日(木)18時12分52秒
- 翌朝、石川とごまは牧城にルーラで戻ってきていた。
助っ人を連れに来たのだった。
牧城の前に降り立つと、城の前でナッチーがしこをふんでいた。
石川「ナッチーさん、丁度良かった。
ちょっと助けて・・・」
ナッチーに石川が声をかけようとすると、後ろからごまに口をふさがれた。
ごま「馬で半日かかるところをナッチー連れて往復するつもり!?」
石川「えっでも・・・」
ごま「いいからパスしよ。
とてもじゃないけど連れていけないもん」
牧城の中に入ると、保田が困った顔をして魔法でどこかの文献を読んでいた。
石川「お師匠様」
保田「あっもう帰ってきたの?
1泊しかしてないじゃない。」
ごま「それが大変なことになっちゃって・・・」
石川「‥‥かくかくしかじか‥‥」
保田「う〜ん、悪いけど私は行ってあげられないわ。」
ごま「どうして?」
保田「カオリに厄介なものを押し付けられちゃってね。
どっちにしろあの生半可な勇者さんには処理できなかったろうけど。」
石川「???なんのことですか?」
保田「気にしないでいいわ。
そうそう、それこそあの電波な勇者を連れていきないさいよ。
自分勝手なことしかしないんだから、使わないと損よ。」
保田に言われて外にでると、カオリとつじが林道の整備の手伝いをしていた。
石川「飯田さ〜ん」
飯田「全く君には“他人の時間”ってものがないのか?」
ごま「‥‥かくかくしかじか‥‥」
飯田「えー、面白そう。カオリ行くよ」
石川「(面白そう‥‥‥‥?)」
つじ「ののもいくのれす」
飯田「じゃあカオリは剣をとってくるね。」
つじ「ののもぶきをとってくるのれす」
・・・・・・・
ごま「ねえ、つじちゃんの戦ってる所、梨華ちゃん見たことある?」
石川「武器がなんなのかすら知らないです。」
- 53 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月26日(土)12時43分38秒
- サイトー「そう。今年の雨露祭にはやっぱり動きがあるのね?」
シバタ「ええ」
飯田を連れてメロン谷に戻り、一行はサイトーの食堂に来ていた。
昼時を過ぎたのか店内に妖精の数は少なく、サイトーも食器をふきながら話しをしている。
今日は人間も店内に入っているのだが、飯田の背でも閉塞感を感じない程、高い天井だった。
石川「雨露祭って何?」
シバタ「この季節の恵みの雨を祝って行われる行事なの。」
サイトー「まあ祭りって言ってもドンチャン騒ぎとかじゃなくて、
演奏会とか式典とか結構物静かなものなんだけどね。」
あさみ「雨露祭の前後になると薬草摘みが解禁になるんですよ。」
ごま「動きってのは?」
サイトー「・・・・今回のような計画のこと。
雨露祭は数少ないラミアの竪琴が表に出る行事なの。」
シバタ「だから数十年に1回くらいの頻度でこういう計画がおこるんです。」
サイトー「まあ度々計画される最大の理由は前例があるからなんだけどね。」
石川「前例って?」
ごま「つまり以前にもこういう計画が成功しているから、
お嬢ちゃんの思いつきでも安易に事が進んでる訳でしょ。」
サイトー「そう、自意識だけでグランドラミアの地位に立とうとしてるのよ。
あの子娘、マティーラ亜弥はね。」
- 54 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年05月26日(土)12時44分11秒
- 飯田「マティーラ亜弥って・・・・・」
Д<「例の次期グランドラミア候補ちゅう奴か?」
石川「そのマティーラさんってどういう娘なんですか?」
シバタ「私達一応こないだ会ったんですけど・・・」
サイトー「私は直接会ったわけじゃないけど、知ってることを話そうか。
えーと、確か年齢はそこのお嬢ちゃんとさして変わらずよ」
そう言ってサイトーはつじを指し示す。
サイトー「悪童ではないらしいんだけどね、
自分の価値観やセンスに絶対の自信を持ってる厄介なタイプのお子さまよ」
飯田「私不思議だったんだけど、なんでそんな危ないことをするって分かってるのに捕まえないの?」
シバタ「それは・・・
彼女が計画を実行するわけじゃないし、彼女がからんでる証拠もないからです。」
サイトー「それにいくら彼女から計画を持ち出したって言っても、
彼女は反部族長部会派の精霊にかつがれてるだけだしね。」
ごま「それじゃ計画をたててる悪者達を事前に捕まえちゃえばいいじゃん。」
サイトー「確証が得られるはずがない」
飯田「でもその精霊さんを殺すことになるんでしょ。」
Д<「結果的にはそうなるな」
飯田「それじゃあ計画が実行されたら殺人〜じゃなくて殺精霊容疑で指名手配されるんじゃないの?」
シバタ「あくまでラミアの竪琴が異邦人によって切られて、グランドラミアが倒れただけ。
殺人にはならないんです。」
サイトー「だから闇にまぎれて雇われもん同士の戦いが繰り広げられるの」
- 55 名前:薬草摘み(ふもとの村・酒場) 投稿日:2001年05月28日(月)01時13分53秒
- ごま「そうそう、相手の用心棒について情報が欲しいんだけど、何か知らない?」
シバタ「サイトーさん、最近怪しげな人間を見ませんでした?」
サイトー「怪しげねえ・・・・・・・
でもあんたら一行以外で人間をほとんど見てないと思うな。」
Д<「この食堂商売なりたっとんのか?」
サイトー「うちの店には人間の食べるものなんてないし、
だいたい学術院や妖精ギルドのある中央通り以外に人間がくることはほとんどないもの」
シバタ「そっか・・・」
サイトー「そう言えば昨晩冒険者らしいのを一人見たわね?」
ごま「えっ、どんな人だった?」
サイトー「いかにも旅好きの女性って感じではあったけど、戦う人って雰囲気でもなかった。」
あさみ「でもなんで人間のあまりこないここの店に?」
サイトー「タッグを組んでる妖精がうちの顔なじみだったの。」
シバタ「えー誰ですか?」
サイトー「えっ!アンタ知らないの?
マサエよ、マサエ。」
シバタ「マサエちゃん、昨日来たんですか?」
サイトー「うん。昨日の夕刻にその女の人と来てさ。
『シバタが連絡とりたがってる』って言ったら
『うん、もうすぐ会う予定』って言ってたから、私てっきり・・・・」
シバタ「ええ〜、だって私久しくマサエちゃんに会ってませんよ。」
サイトー「じゃあ私の思い違いだったかなあ・・・・・」
ごま「他にえらく唇に塗りたくってる女の人とか、
チャイナ人の女のひととか見てませんか?」
サイトー「いや、ここのところで見たのはもうそれくらい」
ごま「そうですか・・・」
- 56 名前:薬草摘み(ふもとの村・神殿) 投稿日:2001年05月28日(月)01時14分24秒
- 神殿に行くとムラタが竪琴をひいていた。
例の問題になっている楽器ではなく、別のものだったが。
ムラタ「いらっしゃい。
あら、はじめましての方もたくさんいるのね。」
ムラタは飯田のほうに顔をむけて会釈した。
カオリは交信中だったらしく少しの間ほうけていたので、ごまとののが返答する。
石川「何なさってたんですか?」
ムラタ「雨露祭の練習。
今年はいつもより難しい曲をやるから。」
ごま「演奏するんですか?」
ムラタ「そうなの。
本番は別の楽器を弾くんだけどね。」
カオリ「別の楽器って・・・」
シバタ「ラミアの竪琴ですよね。」
ムラタ「ええ」
ごま「明日の雨露祭のこと、教えていただきたいんですけど」
ごまが本題を切り出す。
ムラタは無言で弦を1度弾き、そして口を開いた。
ムラタ「わかりました。御説明しましょう。」
- 57 名前:薬草摘み(ふもとの村・神殿) 投稿日:2001年05月28日(月)01時14分48秒
- 机の上には雨露祭当日のタイムスケジュール表が広げられている。
ムラタは極めて事務的に説明していく。
ムラタ「人前で竪琴の弦を切ることはできません。
あくまで事故に仕立て上げなければいけないからです。」
ごま「そう考えると、やっぱ輸送中かなあ」
ムラタ「竪琴を神殿から持ち出すこと自体がセレモニーの一貫なのでそれはありません。
まあ慣例からいっても間違いなくこの時間でしょう。」
そう言ってムラタはスケジュール表の終盤を指し示した。
ムラタ「グランドラミアによる演奏後、竪琴はメロン谷の奥にある祠に奉納されます。」
シバタ「それで夜があけて式典があって雨露祭は終了するんです。」
Д<「絶対にその夜の間に敵のほうは来るんやな?」
ムラタ「ええ、間違いないでしょう。
この夜を“試練の夜”と言い、グランドラミアの手元を離れようとも弦がきれなかったのならば、それはメロン谷を守れる力があるということです。」
あさみ「もし弦が切れてしまったら・・・」
ムラタ「力なき守護神は不用となり、次ぎのグランドラミアがまた自らの髪を張るだけです。」
カオリ「そんな、あきらめちゃっていいの!?」
ムラタ「あきらめるもなにも、“試練の夜”の間グランドラミア自身は何もできません。
自分の手元を離れた竪琴が無事であるかは、天のみぞ知る、です。」
ごま「それが“試練の夜”・・・」
- 58 名前:薬草摘み(ふもとの村・神殿) 投稿日:2001年05月28日(月)01時15分12秒
- Д<「んな、そんな遠回しな暗殺が公認されとんの?」
ムラタ「あくまで雇われ仕事人たちは試練のファクターの一つでしかありません。
成功した場合、だれがそれを計画したかは正式には不明となります。」
石川「そんな、命がかかっていることが慣例なんかに・・・」
ムラタ「このメロン谷の有史以来繰り替えされてきた事柄です。」
石川「そんな・・・」
ごま「やっぱりそういう覚悟で、、、」
ムラタ「力なきグランドラミアはその任を解かれる。
竪琴の弦が切られてしまったのならば、それは自らの非力故の死。
事柄の背景に何があろうともグランドラミアにとってすれば全てが運命です。」
つじ「どうすることもできないのれすか?」
ムラタ「私は現実を受け入れることしかできない。」
カオリ「でも悪いのあっちなんでしょう?」
ムラタ「問題は善悪ではありません。
私個人、いやグランドラミアの名を担うものとして、運命のままに事が進むだけです。」
ごま「確かに、言うとおりね」
石川「ごまさん!」
ごま「あなたは何も出来ないのかもしれない。
ただ私達は違う!」
ムラタ「...」
ごま「私達は、貴方を守るために戦うことができる。」
カオリ「‥‥そうだよね」
石川「‥‥チャーミーも及ばずながら力になりたいと思います。」
ムラタは一度皆を見回し、そして答えた。
ムラタ「当日の状況を説明しましょう。
貴女達と長老部会祭事庁の正式な雇用兵として契約もします。」
- 59 名前:薬草摘み(ふもとの村・神殿) 投稿日:2001年05月28日(月)01時15分34秒
- つじ「このおんなのひとはこっちがたすけてやるってのに、
かんしゃのいろがみえないのれす。
ののたちのようなうでききしゅうだんがたすけるとなれば、
なみだをながしてかんしゃすべきなのれす。」
Д<「・・・そんなこともないようやで・・」
アイボンがそう言ってふたりが視線を向けると、ムラタは小さく呟いた。
ムラタ「...私もまだまだ運命に見放されてはいなかったかな...」
- 60 名前:薬草摘み(ふもとの村・神殿) 投稿日:2001年05月28日(月)01時16分01秒
- カオリ「結局のところさ、祠にある竪琴を守ればいいんでしょ。」
Д<「祠の真ん前で迎え撃ったらいいんやないの?」
ムラタ「祠と言っても入り口は広いんです。」
ごま「守るには戦いにくいよね。」
石川「道はどうなんですか?」
ムラタ「基本的に決まったのルート以外では祠にはたどりつけません。
道はそれほど広くないですよ。」
ごま「それじゃ敵もそれぞれのルートに仕事人を送り込んでくるだろうからそこで迎え撃つ!」
石川「それぞれのルートに人を配置して何人たりとも通さないようにしなきゃいけませんね。」
ムラタ「祠に行くためのルートは全部で3つです。
一つは森の中を通っていく道です。」
そう言ってムラタは地図のメロン谷からまっすぐに延びている道を指差す。
ムラタ「二つ目は川沿いの道」
今度指し示したは、メロン谷からは少し遠回りなのだが、川と崖に挟まれた道だ。
ムラタ「最後は尾根伝いに急斜面を駈けおりるという・・・」
ムラタはほこらの背後の山を指し示す。
Д<「マジ?」
シバタ「でもここも確実に降りれるのは1本道なんですよ。」
カオリ「カオリは最後のがいいなー」
Д<「なんで?」
カオリ「バックアタックって気をつけなきゃいけなそうじゃん」
石川「・・・・・」
ごま「私は火を使うから、道が細いと山火事のおそれがあるんで森はパスね。」
石川「それじゃ森が私、川沿いがごまさん、尾根伝いがカオリさんでいいですか?」
カオリ「意義無し」
ごま「いいと思うよ。」
ムラタ「日の出まで守りきって下されば儀式に入るので、私も祠に行けますので。」
石川「それじゃ明日の日の入りから明後日の日の出まで守りきれば」
ごま「うちらの勝ちだね」
- 61 名前:薬草摘み(ごま[川沿いのルート]) 投稿日:2001年05月28日(月)01時17分00秒
- ごま「(奉納を済ませて祠が空になる時間かな・・・)」
雨露祭当日の夕刻、もう日が沈もうかという時刻だ。
日が再び登るまで、これから現れるであろう敵からこのルートを守り切らねばならない。
ごまは暗くなってきたので行灯に火を灯す。
??「えっもしかして・・・」
椅子に腰掛けて待っていると、夕暮れの中から声をかけられた。
ごま「(来た!)」
声の主を凝視する。
するとそこにいたのは・・・
貴子「まさかこんなところで大魔導師さんと再会できるとはね・・・」
元ボンバー四天王・召還士の稲葉貴子、その人であった。
ごま「元ボンバー四天王の刺客ってのは、やっぱりあなたなんだ」
貴子「へえ、そっちのほうは私がくるって知ってたんだ。」
ごま「まあね。
でも私のところに来てくれて良かった。
あなたは一度私の手で倒さなきゃと思ってた。」
貴子「日の出まで時間はたっぷりある。
じっくりと楽しもうじゃない。」
- 62 名前:薬草摘み(ごま[森の中のルート] 投稿日:2001年05月28日(月)01時17分43秒
- 森の中の道幅が細くなっているところ石川達はいた。
火を使うことは厳禁なので、数十メートルにわたってヒカリゴケが蒔いてある。
道が細いとこうおいうところも便利だ。
その光りの回廊の先の方に、ひとつの人影があらわれた。
短髪で遠目からだと男性か女性かは分からない。
??「そこ、通してくれる?」
女性の声、しかもどこか艶やかな印象を覚える。
うつろな目をしている。
石川「そういうわけにはいきません。」
石川は相手を睨み付ける。
相手がどんな攻撃をしてくるのは全くわからない。
風貌は魔術師とも武道家ともつかない。
いかにも“旅人”といった感じ。
彼女はどうやら肩に妖精をのせているらしい。
羽が開いてあることから、シバタと同じフェアリーであると・・・・
シバタ「マサエちゃん!」
マサエ「アユミちゃん……」
なんとその肩にのっていた妖精とは、マサエだったのである。
シバタ「どうして!?
そんな、ムラタさんを・・・・」
マサエ「うちの父親は反部族長部会派に属してるから、父親に言われてね。」
震えるシバタをよそに、マサエはこともなげにあっさりと言い放つ。
マサエ「私のペア、この間の旅先で知り合った人なんだけど・・・」
マサエは普通に友人に紹介するかのように、自分がタッグを組んでいる女性を紹介する。
谷村「谷村有美です。」
艶やかな声の持ち主はそう名乗る。
石川「石川梨華です」
思わず会釈してしまうが、顔をあげると相手は嘲るような笑みを浮かべていた。
シバタ「なんでっ、そんな簡単に悪いことを」
震えながらもようやくシバタが再び口を開く。
マサエ「善悪の基準を自らに置いてしまうのは人間も精霊も同じね。」
シバタ「えっ・・・」
マサエ「さっさと始めましょう。
私達はあなた達を倒して先に進まないといけないの」
- 63 名前:薬草摘み(飯田[尾根伝いのルート] 投稿日:2001年05月28日(月)01時18分24秒
- つじ「こないれすね」
カオリ「つじっ、気を抜いちゃだめっ!」
つじ「らってひがしずんでからもういちじかんくらいたってますよ」
カオリ「何時敵がくるか分からないんだから、神経を研ぎすませておかないと。
ムラタさんの命がかかってるんだからね。
つじも眠くてもねちゃだめだよっ!」
つじ「はいなのれす、いいらさん」
- 64 名前:薬草摘み(祠前) 投稿日:2001年05月28日(月)01時19分10秒
- Д<「しかしここにいて何になるん?」
あさみ「もしどこか防衛ラインが突破されたら時間稼いで他の人を呼んでくる予定なんだけど……」
あさみ「アイボンちゃんは戦えないし、私は動物がいないと話にならないし、、、」
Д<「あの人は・・・」
ミチーヨ「大丈夫やって、いざという時はこのみっちゃんがなんとかしたるで」
Д<「・・・・心配でしゃあない。」
- 65 名前:休息 投稿日:2001年06月02日(土)04時25分10秒
- よっすぃーと矢口は同じ部屋に軟禁されていた。しかし、体の傷も治りかけてうずうずしている。
矢口「あ゛〜あ゛〜!寝てばっかで退屈だよ!!みんなどっか行っちまうしさ。なあよっすぃ〜?」
よっすぃー「・・・・・・」
矢口「寝てんの?、はぁ〜ほんとにつまんない。何やってるんだろうねえおいら。」
いないメンバーが、今どこに行って冒険しているのか、それとも戦っているのか、
気になってしょうがない。参加したくってしょうがない。そういう性分だ。
よっすぃー「・・・・・」
矢口「よっすぃ〜、よっすぃ〜、」
矢口はうなりながら、治りかけな体で無理やりはって、よっすぃーの布団の上に移った。
そこまで行くと寝息が聞こえて来る。あらためて寝ていると認識させられる。
よっすぃー「スーー、スーー、スーー、、、」
矢口「よっすぃ、暇だよ!起きてよー!!」
よっすぃー「スーー、スーー、スーー、、、」
矢口「お〜い!」
よっすぃ〜の安らかという言葉が相応しいような寝顔がそこにある。
矢口「・・・・・・・・」
気がつけば矢口はよっすぃーの体に馬乗りになって、よっすぃーの顔に見入っている。
次第にその寝顔に引き寄せられて、、、
矢口「ん〜、、」
唇を尖らせ近づく矢口。あと3cm、、
矢口「はっ!!、いかんいかん、、何やってるんだ?おいらは。これじゃ裕子とかわんないじゃないか。」
身を起こしてよっすぃーから目をそらした。
「矢口さん?」
矢口「!!」
ドッッッキーーーーーン
- 66 名前:休息 投稿日:2001年06月02日(土)04時27分00秒
- 矢口「よよよよ、、、よっすぃい?(ドキドキドキ)」
半笑いでゆっくりと振り向く矢口。
矢口「おおお、起きてたの?」
よっすぃー「?、・・・・・・その、重くって。」
よっすぃーは、矢口が乗っている腹のあたりを見ながら言った。
矢口「ああ!、あああ、ごめん。ごめんね。あははっ。」
そそくさと自分のベッドに戻る。
よっすぃー「もう、困りますよー。寝てる時に。。」
矢口「いやははは、、何もしてないよ。何も。」
よっすぃー「いきなり上に乗っかってくるなんて。」
矢口「そそ、そーだね。ごめんね。(しまった。)」
よっすぃー「で、」
矢口「!?」
よっすぃー「何をしてたんですか?」
ちょっと意地悪そうによっすぃーが言う。
矢口はその表情を見て、少し悔しくなった。
しかし、逆にその顔を見たおかげで、言いたかった事を思い出した。
- 67 名前:休息 投稿日:2001年06月02日(土)04時29分45秒
- 矢口「あ、、あのね、よっすぃーのさ、顔を見てたんだ。」
よっすぃー「私の、顔ですか?」
不思議そうに首をかしげるよっすぃー。
矢口「ほら。」
それを指差す矢口。
よっすぃー「!?」
ますます矢口の意図がわからない。
矢口「くすくすっ」
いつもとは違い、下を向いて笑いを噛み殺す。
よっすぃー「なんですかー、教えてくださいよお、何かついてます?」
よっすぃーは頭のあたりをくしゃくしゃと手で探ってみた。もちろん何もない。
矢口「ここんとこ、なん日か、一緒の部屋で寝起きして、喋ってて思ったんだけど、」
よっすぃー「?」
矢口「よっすぃー、最近、表情が豊かになったなあって思って。」
よっすぃー「ええー?、そうですかあ?前からこうじゃないですかあ?」
あまりに意外な言葉に驚いく。
矢口「あ、今驚いたでしょ?
ぜーんぜん違うよー。前はね、なんて言うかポーカーフェイスっていうか、、
喜怒哀楽に欠けてるっていうか、それじゃ大げさか。なんだろ、固いような、、、
近寄りがたい気もした。」
よっすぃー「そ、そうですか?うーん??、自分じゃよくわからないですね。」
矢口「今は、、例えばね、
よっすぃーがもし驚いてたら、驚いてるんだなってこっちにもちゃんと伝わってくる。
楽しかったら楽しいってだから安心して喋れるよ。」
よっすぃー「うーん・・・・・・(そう言われると嬉しいような。。)」
矢口「だから、それとのギャップがあるせいか、なんかヒョウキンに見えるくらい。」
また矢口はお腹を抱えて下を向き、笑い声を殺した。
- 68 名前:休息 投稿日:2001年06月02日(土)04時33分38秒
- よっすぃー「・・・・・・、それは、、」
矢口「?!」
矢口は言い過ぎな所まで言ったつもりで、すぐにでもよっすぃーがつっかかってくると思った。
しかし、返って来た優しい声の響きに少し驚いた。
すぐによっすぃーに目をやると、よっすぃーは目を細めて胸に手をあてていた。
よっすぃー「それは、あの子のおかげかな?あの子が入ってくるから。」
矢口「は〜?なんだよそれ〜。誰だよそれ〜??」
意味が分からなくってむっとする。矢口は吉澤のことを知らない。吉澤は呟く様に続けた。
よっすぃー「あの子が持ってた、怒る事や楽しむ事が私の心の穴を埋めてくから。」
矢口「何?誰だれ??よっすぃー、おしえてよー!!」
何故か気になってしょうがない。
よっすぃー「?、ん〜〜、、」
なんだか浮かれて、うっかり話を振ってしまった。よっすぃーは少し目をそらして考えこむ。
よっすぃー「今ならもう、誰に知ってもらっても平気かな?」
矢口「平気平気!」
よっすぃー「矢口さんが(平気なん)じゃないですよ。私がですってば。でも、、、聞きたいですか?」
ニヤッと笑って矢口を見返すよっすぃー。
矢口「聞きたいってば!」
よっすぃー「本当にいいんですかぁ?長いですよ??」
矢口「くどい!」
よっすぃー「ふふふっ。わかりました。今夜は寝かせませんよ。なんちゃって。」
矢口「へーきだよ。どーせ寝てばっかで眠くないし。」
- 69 名前:休息 投稿日:2001年06月02日(土)04時37分41秒
- よっすぃー「これは、この間打ち解けたばっかりの、私の中のもう一人の私の話。」
矢口「おお〜。面白そう。」
じーっとよっすぃーを見つめる矢口。
よっすぃー「私が10才の時に、、、」
矢口「って、そんなにさかのぼるのかよ!」
・・・・・・・・・
- 70 名前:ごまVS稲葉 投稿日:2001年06月05日(火)21時13分53秒
- 貴子「今度はしっかり決着つけんとなぁ」
そう言いながら、貴子は懐から数枚の札を取り出す。
ごま「もちろん。手抜きしないで下さいね」
それに合わせてごまも構える。
貴子「できるか、ボケ。それじゃあ行くで」
貴子とごまは共に詠唱を始めた。
ごま「メラゾーマッ!」
先に技を繰り出したのはごまだった。巨大な火球が貴子を襲う!
だが、次の瞬間…
ゴォッ
ごま「うそぉっ!」
火球は方向を変え、逆にごまを襲う!
ごま「もう一発…メラゾーマッ!」
ごまは逆に向かってきたメラゾーマにもう一発メラゾーマを放ち、相殺した。
貴子「へぇ…驚きやな。あの瞬間にもう一発メラゾーマとは」
ごま「そっちこそ…。さっき一瞬見えたけど、今のは『カーバンクル』ですよね?」
貴子「知ってるんか。確かに今のはカーバンクル、魔法返しの召還法の基本やね」
ごま「…でも魔法と召還で同じ詠唱時間なんてずる〜い!明らかにこっち不利じゃん!」
貴子「ま、これが年季の違いってやつやな。それでそっちはもう終わりか?」
ごま「う〜ん…」
- 71 名前:ごまVS稲葉 投稿日:2001年06月05日(火)21時33分18秒
- ごま「魔法だけが私の武器じゃないですよ!」
ごまは貴子との距離を詰め、殴りかかろうとする!そして…
ガコン。
ごま「…いった〜〜い!!」
ごまは貴子を殴ったものだと思っていたが、実際はそうではなかった。
貴子「召還獣『ゴーレム』の手。そう簡単に砕けるモノやないで」
ごまは改めて貴子との距離を取る。
貴子「ゴーレムとカーバンクルによる召還の鉄壁。これを破れんようじゃお話にならんなぁ」
ごま「む〜…」
考えるごま。
ごま「(確かに…これを破れなきゃ絶対に貴子さんには勝てない。
崩す方法があるとしたら、召還獣も吹き飛ばすくらいの魔法かパンチかな?
やってみた感じだと、ゴーレムの手を壊すのは無理だな。
残りはカーバンクルにも返しきれないほどの大魔法…。でも危険過ぎる。
もう少し様子見だ…」
- 72 名前:石川&シバタvs谷村&マサエ 投稿日:2001年06月07日(木)03時08分20秒
- 谷村「そうしましょう。」
谷村は背中から武器であろう何かを取りだした。
石川「待って!ちょっと待って、もう少し話し合、、、」
石川は谷村の方へ手を伸ばした。その時、
シュン!
石川「!!」
何かが石川の頬をかすめた。
石川「何??、、これ!?」
頬から流れる血を指で確認し、
谷村を良く見ると、大きい「弓」を構えている。
石川「じゃ、さっきのは矢??」
谷村「私は世界を旅してきた。いつどこでだって、敵と出会ってしまったら、
油断は即、氏を招くわ。次ははずさない。そっちも構えたらどう?」
シバタ「とりつくしまは無さそうね。やろう!梨華ちゃん!!」
石川「で、でも、、、マサエちゃんが、、、」
シバタ「いいの。むこうの言い分を今は聞いてる場合じゃない。私達は、、」
石川「そうだね。ムラタさんの命を守るために戦う。」
マサエ「そうして。答なんかきっと、話し合ったって出やしないから。有美さん、お願い。」
谷村は石川に対して体を真横にし、1本の矢を弦にかけると、
キリキリキリ、、、
いったん頭上に持ち上げるようにしてから、肩の位置まで戻す様に矢を引いた。
石川「はっ、、わかりました!!谷村有美さんだけに弓の使い手だったんですね!!」
シバタ「ちょっ、、梨華ちゃん、、、
思いっきりシリアス路線突っ走ってんのに寒いこと言ってないでよ。」
- 73 名前:石川 投稿日:2001年06月07日(木)15時33分23秒
- 石川「戦いたくは無いけど、、、こっちからも行きます!!チャオ〜!!」
石川は吹雪の杖を振った。ヒャダインクラスの冷気が発生し、谷村を襲う。
マサエ「させない!フェアリオーラッ!」
マサエは紫色の光で自分達を包みこんだ。
石川「!!」
冷気はマサエのオーラにまるで吸い込まれる様に消えた。
石川「き、効かないの〜。」
早くも泣きそうになる石川。
シュン!!
オーラの中から矢が飛んでくる。
石川「っ!!」
なんとか反応し避ける。
ザクッ!!
石川「いっ!、、、」
別の矢が石川の肩に刺さった。オーラの内側からキリキリと弦を引く音がする。
シバタ「どんどん来る!梨華ちゃん、隠れよう!!」
石川「うん。」
シュンッ!シュンッ!シュンッ!
肩を押さえながら矢を避け、一時岩陰に避難した。
石川「はぁ、はぁ、、ホイミ」
肩に刺さった矢を抜き、応急処置をする。
シバタ「やっぱり召還でしょ。マサエちゃんのオーラごと吹き飛ばしちゃおう!」
石川「う、、うん。。」
ムラタの言葉が脳裏をよぎった。
石川は、胸のクロスを握り締めた。
シバタ「(紫色のオーラ、、マサエちゃん、あんなことできるなんて、、
でも、マサエちゃんにできるってことは、、私にも、できる??)」
- 74 名前:石川 投稿日:2001年06月08日(金)04時27分14秒
- 谷村「隠れたって無駄なんだけど、、、」
石川の隠れた岩に向かい、弓を構える。しかしすぐに、石川とシバタはそこから出てきた。
石川「まだまだ、私達は逃げも隠れもしません。今度はこっちも本気で行きますよ!」
マサエ「どうしようっていうの?私達の攻守は完璧なんだよ?」
石川「お願いねシバちゃん。」
シバタ「うん。」
石川「いでよシヴァ!!」
マサエ「!?」
谷村「!!」
石川の叫び声にあわせてシバタが美しき氷の聖霊シヴァへと変貌する。
マサエはその姿を見て、言葉がでない。谷村も驚きを隠せない。
谷村「なな、、何あれ?」
マサエ「あ、、あ、、、」
シュウシュウシュウシュウ、、
水蒸気が石川へ集まる。
石川「氷の刃よ!!」
シヴァの羽根の周りに次々とつららのような氷が生成される。
石川「飛んで貫け!!!」
千本の氷の矢が谷村めがけて飛ぶ。
谷村「!!、来たね。マサエちゃん!防御お願い!」
マサエ「あ、危ない!!」
谷村「えっ!?、あっ、、」
マサエはオーラを出しながら谷村の手を引いた。
谷村は倒れる様にそっち側へと避け、そのまま転がった。
ドドドドドド!!
今、谷村がいた所にオーラを突き破った氷の刃が次々に突っ込む。
ザクザクッ!
谷村「ぐっ!」
谷村の背中に激痛が走る。転んだ体を起こしながら、今度は谷村が木の陰に隠れた。
- 75 名前:カオリ(尾根伝いのルート) 投稿日:2001年06月08日(金)18時28分00秒
- カオリ「・・・・・・」
つじ「・・・・・・・」
カオリ「敵さん、来ないねえ」
つじ「こないのれす」
カオリ「・・・・・・」
つじ「・・・・・・・つじはこのままてきがこないようなきがするのれす。」
カオリ「つじ!
“気がする”だけで行動を決めちゃだめ!」
つじ「・・・・・はい、なのれす。」
- 76 名前:石川 投稿日:2001年06月08日(金)21時50分22秒
- 谷村「はぁ、、はぁ、、うっ、、、まさか、マサエちゃんのオーラが効かないなんて、、」
マサエ「妖精の粉!」
マサエが羽ばたくと、あたりに金色の鱗粉が散らばり、谷村の背中の傷を癒した。
マサエ「ごめんなさい。もっと早く反応してれば。。」
谷村「はぁ、、はぁ。ありがとう。マサエちゃんの回復、ほんと効くね。
ま、まともに防ごうとしなかっただけいいよ。ぞっとしないね。」
二人は自分達がいた場所を見た。近くの木が、まるで蜂の巣の様にされている。
そしてその当たり一面が凍りついている。
マサエ「まさかシバちゃんが高位聖霊、シヴァとして覚醒しているとは、、」
谷村「予想外ってわけね。あれはちょっと、、凄いわ。大ピンチだわ。」
そっちこそ!隠れたって無駄ですよ!
石川の声があたりに響く。
マサエ「うん。シヴァちゃんは私の想像以上に凄い子だった。
でも、まだこっちにも手はある。」
谷村「どうするの??」
マサエ「最初の方針、私が防いで有美さんが攻撃っていうのはできなくなっちゃうけど、、」
- 77 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年06月09日(土)10時59分23秒
- 貴子「こっちも攻撃に移るか…」
貴子がそう言うと共に、周囲の温度が上昇する。
ごま「あれは…」
貴子「イフリートッ!」
大きな炎の渦が貴子を囲む!
ごま「それなら…マホカンタッ!」
ごまの周りに青白い壁が生まれる。
ごま「これで魔法返しは完璧だぁ〜!」
貴子に向かって微笑みながら叫ぶごま。
貴子「…アンタ、アホやろ」
ごま「え?」
貴子は自分を取り巻く炎を一気にごまに向かって放つ!
ごま「…あっ!そうだった!」
ゴォォッ!
イフリートの炎がごまに直撃する!
貴子は呆れた顔をしてごまに言う。
貴子「召還には魔法返しが効かないなんて常識やん…」
すると、煙の中からごまの声がする。
ごま「あはは…忘れてましたぁ〜」
ごまは炎が直撃したにも関わらず、平気そうな顔をして立っていた。
貴子「フバーハか…、前回と同じ防御法やな」
ごま「もう少し遅かったら完璧に喰らってましたよ、間に合ってよかった」
貴子「…ふふっ、アンタと戦ってると楽しくてたまらんわ。さあ、次は何を見せてくれる?」
ごま「そんな簡単に言わないでくださいよぉ〜、今のだって苦労したのに…」
- 78 名前:ごまVS稲葉 投稿日:2001年06月09日(土)11時25分13秒
- ごまは次の戦法を考えていた。
ごま「(肉弾戦はゴーレムのせいで無理だから、魔法じゃないと…。
でもカーバンクルに返されるんだよなぁ〜。
あの魔法返しをなんとかしないと…。でもあれマホカンタと一緒だし…。
…マホカンタと一緒…。あっ!)」
ごまはひらめいたような表情をして、構え直した。
貴子「おっ、何か思いついたみたいやな」
貴子も待っていたかのようにごまに向き直る。
ごま「メラゾーマッ!」
ごまの右手に巨大な火球が作られた!
貴子「おいおい、またかい…」
ごま「…を、自分に撃つ!」
ごまはメラゾーマを自分に向かって放った!
貴子「何!?」
そしてそのメラゾーマは貴子に向かっていく!
ごま「一度魔法返しをされた魔法は返せませんよ!」
貴子「なるほど、それなら…イフリートッ!」
貴子は再びイフリートを召還し、その炎をメラゾーマとぶつけ相殺した。
炎が消えると、そこにごまの姿はなかった。
貴子「…ちっ、やっぱり今のは目暗まし…」
ごま「ここだぁ〜っ!メラゾーマッ!」
ごまは貴子の上から飛び降りてきた!その右手は火球に包まれている。
貴子「直接魔法は効かん、カーバンクル!」
貴子の目の前に魔法返しの壁が生成される!
ごま「…と、見せかけてそのままパンチ!」
貴子「なっ!?」
ドガッ!
ごまは炎に包まれた右の拳で貴子を殴りつけた!
ドサッ
貴子はそのまま地面に叩きつけられた。
貴子「いたたた…、たいしたパワーやな。それにしても、面白い戦法や」
ごま「でしょ?右手にメラゾーマを残したまま接近すれば打撃と魔法の二択攻撃」
貴子「…お見事。流石にうちも同時召還はできんからなぁ」
貴子はぱんぱんと服をはたき、立ち上がる。
貴子「さて、続きを楽しもうか」
ごま「はぁーい」
- 79 名前:石川 投稿日:2001年06月09日(土)16時14分58秒
- マサエ「それで、私が・・・・・」
谷村「うん。わかったわ。それじゃ、それぞれの力で勝ちに行きましょう。」
谷村とマサエが石川の前に姿を現した。
石川「もう、降参してください。」
シバタ「そうだよ。マサエちゃん。」
シヴァはシバタに戻っている。
マサエ「もう勝ったと思ってる?甘い甘い。」
谷村「さっきの様にはいかないわ。かかって来なさい。」
谷村は指で「こいこい」とジェスチャーした。
- 80 名前:石川 投稿日:2001年06月09日(土)16時18分07秒
- 石川「そうですか。余裕ですね。では今度こそ、戦う気が起こらなくなるまで見せてあげます。
召還の力を。シバちゃん、、」
シバタが再び巨大化、、
マサエ「今だ!」
マサエはシバタと石川の間に飛んで割りこんだ。
シバタ「!?」
石川「何??、、、あれれ?」
マサエ「ふふふっ、シヴァになれないでしょ?」
石川「何で??エネルギーが、、送れない!?」
マサエ「この召還には精神のシンクロが不可欠。
つまり、そのつながりをたってやればいいってわけ。
忘れた?私がテレパシー得意だってこと?
外部にでっぱった精神の糸に干渉することぐらいわけないよ!」
石川「そ、、そんなっ、、困りますよぉ。」
シバタ「とりゃー!」
ベチ!!
シバタはマサエに思いっきりビンタを食らわせた。
マサエ「あうっ!!」
シバタ「やるね。マサエちゃん。だったらこっちはマサエちゃんをK.O.するまでだよ!」
マサエ「いったーい!!このお!!」
ベケッ!
マサエはシバタに蹴りとばした。
シバタ「あいたっ!!、、つーーー、、こんなふうにやりあうなんて何年振りかな?」
マサエ「ふふっシバちゃん、あの頃はいっつも引きわけだったけど、
今回に限っては私が勝たせてもらうよ。」
妖精二人、スケールのちっちゃい喧嘩を開始。
- 81 名前:石川 投稿日:2001年06月09日(土)16時19分56秒
- 石川「ちょ、、二人とも、、、」
石川は二人の方へ手を伸ばす。
シュンシュン!
そこへ弓が飛んでくる。
谷村「一対一の勝負を邪魔するのは野暮ってものよ。貴方の相手は私。」
石川は手を引っ込め、谷村の方へ向き直った。
石川「こっちも一対一ですか?いいですよ。受けます。」
谷村「そうこなくっちゃ。」
谷村は2本の矢をいっぺんに弓にかけた。
谷村「2本打ち!!」
ビュビュン!!
石川「なんの!フェードアウト!!」
かっかっ!
外れた矢が後ろの木に刺さる。
石川「大胆にゴー!ゴー!ゴー!(私)」
石川は吹雪の杖を3度振った。3つの冷気を飛ばす。
石川「マサエちゃんのオーラで防げませんよ!どうします??」
谷村「ふんっ!3本打ち!!」
谷村は今度は3本の矢を構え、射った。
ズバズバズバ
石川「!!」
矢は冷気を切り裂き、起動を変える。冷気は谷村からそれて宙に消えた。
谷村「甘く見ないでよ。マサエちゃんにやってもらった方が楽だからそうしてただけ。」
石川「や、やりますね。さすが、、魔王軍。」
- 82 名前:石川 投稿日:2001年06月09日(土)16時28分03秒
- 谷村「??、魔王軍??何のことだかわからないけど。」
石川「しらばっくれなくても知っていますよ。魔王軍からの派遣なんですよね?
お金で反部族長部会派に雇われた、、」
谷村「はぁ?ちょっと待ってよ、そんなのと一緒にしないで。私は魔王軍とやらには何の関係も無いわ。」
石川「え?、、じゃあ誰なんですか??あなたは、、」
谷村「さっき言ってたでしょ?旅先でマサエちゃんと知りあった、私は単なる旅人。」
石川「ええ?あれ?人違い??、魔王軍は別の所へ行ってるのかしら??
で、、でも、、それなら何のために反部族長部会に加担なんかしてるんですか?」
谷村「はっきり言って、反部族長部会も何のことかよくわかんないわね。
ただ、私はマサエちゃんに借りがあるのよ。旅先で助けられたっていう。それを返してるだけ。」
石川「そうですかぁ。そんな理由で。。あ、でもだからって、妖精が一人、氏ぬことになるんですよ?!」
谷村「ここに着いた時、いきなり「頃し」なんていう仕事を頼まれた時はちょどうしようかと思ったけど、
私にとっては妖精を殺すのも食料にするためにその辺のウサギをこの弓と矢で狩るのも同じ。
ただ、理由は食べるためではなく、私が頃すに値すると思うからだけど。
助けられた後、ずっと一緒にいながらこっちへ来たんだけど、あの子はとってもいい子よ。
あなた達がどんな理由で戦ってるか知らないけど、私はあの子を信じてる。
涙を流して私に頼んだあの子を。」
谷村には、この町に案内されたその日、血の気の引いた顔色で部屋へ入ってきて、
「本当はこんなこと頼みたくは無いんですが、お金ならいくらでも払いますから、どうか理由は聞かないで、」
と涙を流して頭を下げるマサエの姿を思い出していた。金など受け取らない。と了承したのだった。
石川「そ、、そうですよ!知ってます。いい人です。
私達も、彼女には以前お世話になったんです!
だから尚更、、、私達が敵対しなきゃいけない理由を知りたいじゃないですか!
話し合いたいじゃないですか!!なんで、、」
谷村「そーねえ、、私はよく知らないしねえ。。
でもあの子が、話してる場合じゃないしその気もないって言ってるから、、、」
谷村はまた、弓を構えた。
谷村「戦って勝ってから、いくらでも聞いたらいいんじゃない?」
- 83 名前:飯田と辻 投稿日:2001年06月10日(日)05時32分18秒
- つじ「ん〜〜、、」
辻はうとうとしている。
勇者飯田「!!、辻、出番だよ。来たみたい。」
驚いて飛び起きる辻。
つじ「!!、ろこれすか??てきは??」
ゴシゴシと目をこすっても、それらしき姿は見えない。
勇者飯田「んー、もう来る頃だと、、あっ!」
2匹の獣が崖の上に現れた。
?A「ガフッガフッ、、」
つじ「ひえ〜、、かいじゅうれす!!」
勇者飯田「何あれ?虎??ライオン??」
つじ「ちょっとまってくらさい。めもによるとれすね、、」
パラパラパラ、
つじ「ありました。さあべるたいがーらしいれす。
すばやくうごき、あのきばれかみつきます。」
勇者飯田「えらいよ辻。典型的な肉弾戦タイプってことね。
でも、大丈夫。たぶんカオリの方が強いと思う。」
サーベルタイガーA、Bが現れた。
サーベルタイガーB「グウォオオオ!!」
ガガガガガッ!
1匹が吼えると、2匹は勢い良く崖を走り降り、飯田と辻に向かってくる。
勇者飯田「確実に下れるのは1本道って言ってたけど、むこうにとっては全然意味無いね。」
- 84 名前:飯田と辻 投稿日:2001年06月10日(日)05時36分23秒
- 勇者飯田「行くぞっ!!エイッ!!」
ズバズバッ!
飯田の作り出した衝撃波が崖を下ってくるサーベルタイガーA、Bにヒット。
ガラガラガラ、、ドガッ、ドガッ、、
2匹は崖から足を滑らせ、落ちて地面に激突した。
勇者飯田「ふん。」
つじ「おぉ〜。やったのれす。」
勇者飯田「いい?辻。勇者っていうのはね。強くなきゃいけないんだよ。」
自信に満ちた表情を浮かべる飯田。
つじ「へいっ!つじもがんばって、つよくなるれす。」
その時、倒れた2匹のサーベルタイガーの体が白く発光した。
つじ「??」
勇者飯田「!?、あれ、もしかして回復??」
サーベルタイガーA、Bは立ちあがった。
サーベルタイガーB「グルルルル、、」
つじ「へんれすねえ。めもにはそんなことかいてないれすよ。」
勇者飯田「んもー、役に立たないメモねえ。」
つじ「ごめんらさーい。」
勇者飯田「!?、そういえばこないだもこんな事あったね。」
つじ「あ、さいくろっぷすさんれすね。」
勇者飯田「そうか!ってことは、この子達も、、、もしかして、魔王軍の合成魔獣!?」
サーベルタイガーA、Bは飯田に飛びかかった。
サーベルタイガーB「ガァッ!!」
- 85 名前:魔王軍本拠地 投稿日:2001年06月10日(日)05時44分17秒
- かっかっかっかっ、、、ガチッ、ギィイィイィ、、、
廊下から誰かが入ってくる。
魔王つんく「ワーダか。」
ワーダ博士「ひゃっひゃっひゃ。手はず通り、反部族長部会に力を貸してやりました。」
魔王つんく「で、あの計画が成功することになんや意味でもあるんか?
もちろん、こんなしょーもないはした金のために、わざわざお前が出向いたわけやないんやろ?」
魔王は札束をワーダ博士の方へ放り投げた。
ワーダ博士「ひゃっひゃっ、さすが魔王様。そのとーりでございます。
力を貸しているのは、あそこに疑われずに入り込むための手段でしかありません。
そのためにわざわざワシも、体を久々に人間型にしたんですわ。」
いかにもペテン師といった風貌だが、他に体は作れなかったんだろうか?
魔王つんく「スライム型は特に失敗やったな。。で、何がしたいんや?と聞いてるんや。」
ワーダ博士「それは後でのお楽しみですわ。ひゃっひゃっひゃ。」
ニヤリと笑うワーダ。
魔王つんく「お前なぁ」
ワーダ博士「聞くところによると、酋長側には勇者一味が加担しておるようです。
考えようによっては、きやつらを疲弊させ、一石二鳥になるかもしれませんな。ひゃっひゃ。」
魔王つんく「まあいい。なんでもいいが、、お前、今度こそミスるんやないで。
最近お前が出向いていって、計画が成功した試しが無いで。今度失敗したら、、」
ワーダ博士「うっ、、、昔のことは忘れましたわ。ワシ、たぶん3人目じゃから。」
魔王つんく「くっ、ヲ○ク丸出しなこと言ってないで、とっとといかんか!」
ワーダ博士「ひゃっ、失礼しましたー。」
バタバタと人間型になったワーダは城から去っていった。
ワーダ博士「魔王も気が短いのう。しかし、ネタが古過ぎたかのう??」
魔王「ええい、もうちょっと使える人材は残っておらんのか!」
- 86 名前:カオリとつじ(尾根伝いのルート) 投稿日:2001年06月10日(日)15時47分24秒
- 左右から飛びかかってくるサーベルタイガー。
サーベルタイガーAの腹部をカオリの剣が一閃する。
つじもギリギリでサーベルタイガーBの攻撃をかわし、カオリの後ろに隠れる。
そうしている間にも発光するサーベルタイガーAをカオリは再度斬り付け、今度はサーベルタイガーBと対峙する。
カオリ「倒れてる相手に更に攻撃するのってなんかヤだな」
そうも言ってられずにサーベルタイガーBが牙を向いてくる。
大上段から剣を降りおろすものの、ちょうど体の堅い部分に当たったらしく、そのままカオリに突っ込んでくる。
体を反らせて左サイドからサーベルタイガーBを斬り付けるものの、早くも回復したサーベルタイガーAがまたもカオリの前に立ちはだかる。
カオリ「エンドレスだよ〜」
それでもサーベルタイガーAの一撃をかわし、舞うように腹部に一撃を加える。
一撃加えるたびに飛び散る血がなんともグロテスクだ。
しかも際限なくくり返されるため、斬るほうも参ってしまう。
だんだん嫌になってきて、カオリが受け身の戦い方をはじめたその時だった。
ヒュン!
何かが、暗闇の中を通り過ぎる音がした。
カオリがなんとか視認したところ、それは人影。
そう気付いた時にはすでにその影は祠に向かって走り去っていた。
カオリ「つじ!追って!」
つじ「えっなんなのれすか?」
カオリ「こっちはおとりだったの!
早くあの人を追って!」
つじ「はっ、はいなのれす」
つじがあわてて祠のほうにかけていく。
サーベルタイガーA「グルルルル・・・」
気付けば2匹のサーベルタイガーがこちらを睨み付けている。
カオリ「頑張って、つじ。
コイツラ倒してカオリもすぐに行くからね。」
- 87 名前:カオリ(尾根伝いのルート) 投稿日:2001年06月10日(日)17時23分31秒
- カオリ「そうだ!
一度に二匹倒して、回復してる間に追いかければいいじゃん!」
早速2匹のサーベルタイガーを中距離から衝撃波で攻撃する。
そのうちサーベルタイガーAには避けられてしまうものの、すぐに直接攻撃で打ち倒す。
すぐに二匹は回復しはじめ、その隙につじを追って祠に向かおうとカオリはサーベルタイガーに背を向ける。
しかし振り返ったカオリの前には、行く手を遮るように人影が立ちはだかっていた。
カオリ「誰!?」
???「私は魔王軍隠密部隊……」
カオリ「魔王軍!」
???「シェキドル所属、打止めの真己」
真己の名乗り声に呼応するかのごとく、カオリの背後から猛獣のうなり声がきこえる。
細い道で丁度前後を囲まれる形になった。
タイムアップの日の出は、まだまだ遠い。
- 88 名前:祠前 投稿日:2001年06月10日(日)17時24分03秒
- つじ「はあ、はあ、、、、」
つじが祠の前に辿り着くと、そこではあさみ達と一人の少女が対峙していた。
???「祠は無防備だろうって聞いてたのに・・・・」
Д<「アンタ誰や?」
???「私は魔王軍隠密部隊……」
ミチーヨ「魔王軍!」
???「シェキドル所属、先駆けの衣吹」
つじ「おまえはかこまれているのれす!
おとなしくするのれす!」
衣吹の背後からつじが牽制する。
あさみ「つじちゃん!」
衣吹「また一人来たのね」
どうやら衣吹はつじの気配に気付いていたらしく、振り向きもせずに呟く。
つじが来たところでこちらの面子はアイボン・あさみ・ミチーヨで4人。
敵も隠密で戦闘能力はそれほどであろうから辛うじて戦うことができる。
Д<「多勢に無勢やで。やめたほうがいいんとちゃうか」
ミチーヨ「逃げへんようやったらこっちから行くで」
ミチーヨは衣吹との距離をじりじりと詰めていく。
あさみ「早くしないとこちらも援軍が来ますよ。」
祠の上空ではあさみが呼び集めたらしい鳥達が無気味に飛び交っていた。
衣吹はひとつタメ息をつき、背中の鞘の紐を解いた。
衣吹「私は戦闘無しの予定だったのに・・・
しょうがない。一番槍、この衣吹がお相手しましょう。」
- 89 名前:牧城 投稿日:2001年06月10日(日)20時17分29秒
- ヨッスィー「あれ、保田さん、どうしたんですか?」
大神官の正装であるローブに翡翠のイヤリングをしている保田を見て、ヨッスィーは話しを中断して声をかける。
保田「ちょっとね、調べものがあって出かけてくるから。留守番お願いね。」
矢口「はーい」
保田「それとね、例のあの娘、万が一目がさめるようなことがあったら、睡眠薬でもなんでも使って大人しくさせといて。」
ヨッスィー「・・・う、うん。」
保田の真剣な瞳に直視され、ヨッスィーも威圧されつつ答える。
ナッチー「おおや、どこ行くんかい?」
保田「とりあえず北海道を出るつもりだけど。」
ナッチー「したらばナッチーも連れてって欲しいべ。
たまには出稽古にでないと体が鈍っちまうべさ。」
保田「・・・・しょうがない、いいわよ。」
保田は大きくタメ息をつき、ナッチーの頼みを承諾した。
保田「それじゃあの娘のこと、お願いね。」
そう言って保田は矢口に睡眠薬らしき薬を渡す。」
矢口「OK」
ヨッスィー「行ってらっしゃ〜い」
矢口「ナッチーも気をつけてね」
ナッチー「おうさ」
保田「多分1泊かそこらで帰ってくるから。」
そう言うと保田は何やら道具を使った上でルーラを唱え、普段よりも更に速いスピードでナッチーを連れて飛んでいった。
- 90 名前:ごまvs稲葉 投稿日:2001年06月11日(月)02時59分21秒
- 貴子「で、前回の戦法は、破れるん?」
懐から護符を3枚取りだし、宙へ投げた。
ボボンボン!!
ごま「来た!護符!!」
以前の様に、半透明のライオンの様なケモノがごまを襲う。
ごまと稲葉は同時に詠唱にはいる。
ごま「・・・・・・、・・・・、(ここで焦っちゃダメだ。)」
詠唱を続けながら間合いを取り、ケモノから逃げる。
貴子「・・・・・、・・・・・、(もたもたしとると噛み付かれるで)」
ごま「できたっ!フィンガーフレアボムズ!!」
バシュバシュバシュ!!!ゴォオオ、、
ケモノが消し飛ぶ。
貴子「それやったら前と変らんやろ!!イフリート!その業火の吐息で敵を焼き尽くせ!!」
ズォオオオ
イフリートは大きく息を吸いこむと、
ゴハァアアア!!
ごまに向かって火炎を吐き出した。
ごま「そうでもないよっ!!」
ごまは二つのメラゾーマでその火炎を迎え撃った。
貴子「!!」
ごま「今度はちゃんと、指5本分用意したからね。」
ウ゛ォオォ、ボシュゥ、、、
炎は二人の中心で一瞬大きくなり、消えた。
貴子「なるほど。3発で護符を消して、、」
ごま「えへへっ。同じ戦法にはひっかからないよ。」
貴子「ふんっ、、ほんまにそうか??」
稲葉は再び懐に手を入れた。
ごま「!!」
稲葉は両手に5枚ずつの護符を取りだし、ニヤリと笑った。
- 91 名前:石川vs谷村 投稿日:2001年06月11日(月)03時01分51秒
- シバタとマサエは至近距離での肉弾戦を続けている。
マサエはシバタのほっぺたをつねって引っ張った。
ぐに〜、、
シバタ「ヒデデデ、、あう〜、、、」
シバタはマサエの裏に回りこみ、羽の付け根に噛み付いた。
カプッ!
マサエ「!!、あ゛〜んっ!」
一方、谷村と石川は、遠間からの飛び道具合戦を続けている。
石川「ホイッ!!」
谷村「2本射ち!!」
バシュッズバッ!!
冷気と弓で、互角の相殺合戦である。しかし、
石川「(あーん、なんだか力が入んなくなってきたよ〜。)」
今まで3発撃てた所を同じ詠唱で2発しか撃てない。自然、押されだす。
谷村「(魔力切れかしら?使う魔法の割に尽きるのが早いけど、、)」
石川「(おかしいなー。もう魔力切れなのぉ??)」
谷村がチャンスを察して、だんだんと間合いを詰め始めた。
石川「あ!(そーだ、私、前のバトルで消耗して、
肉体労働断ってまでこっちに来たんだっけ。回復しきって無いんだ、、しまったぁ。)」
谷村「3本射ち!!」
石川「!!、ホイッ!」
スカッ、、ポロッ
5センチくらいの氷が地面に落ちる。
石川「あれ?ホイッ!ホイッ!!ホイッ!!!」
ポロポロ、、ポロッ
- 92 名前:石川vs谷村 投稿日:2001年06月11日(月)03時05分02秒
- 石川「あ、あ、、ホイ!!」
カキーン!
やっと出た1発で1本の矢を落す。
シュン!ザクッ!!
残りの1本をかろうじて避けるが、もう1本が足をかすめる。
石川「いたーいっ。」
石川は思わずしゃがみこむ。
谷村「(これは、、そろそろ、、、、)」
谷村が更に間合いを詰めてくる。
石川「(どうしよ〜、、このままじゃ負けちゃうよ〜、、、)」
傷口に手を当て回復する。残る魔力を考えると、ホイミがやっとだ。
石川「(だめよ。チャーミーはポジティブが取り柄なんだから。なんとか、、なんとか、、)」
石川は立ちあがりながらくるっと後ろを向き、突然走り出した。
谷村「!!」
タッタッタッタ、、
足場の良くない森の中を走る。
谷村「逃げるか。ほっといて回復されるわけには行かないし、追わせてもらうよ。
さて、、これからが楽しい、、、狩りの時間だわ。」
谷村は嬉しそうに目を細め、背を向け走る獲物を見つめる。
石川「はぁ、はぁ、(逃げてるんじゃ無いですよー。
間合いを取って打開策を考えてるんですよー。)」
- 93 名前:ごまvs稲葉 投稿日:2001年06月11日(月)03時09分20秒
- 貴子「さあ、遊びは終わりや!一気にかたをつけるで!!」
両手から10枚の護符を投げると、詠唱に入る。
ごま「レ、、レムオル!!」
ごまは透明化した。
貴子「・・・・・・・、(良く考えついたと言いたい所やけど、無駄や。)」
ガシュガシュ!!
2匹が透明なごまの肩に噛み付いた。
ごま「ぐっ、、あっ」
すぐにレムオルは切れ、ごまは実体化した。暴れて、噛み付いてきた2匹をふり払う。
貴子「・・、(こいつらは目に頼ってるわけやあらへん。生命の鼓動へ向かって行く。)」
ごま「いたた、、やっぱダメ?」
骨は折れていない様だが、肩から多量に出血している。
ごま「こりゃあ、、、あれをやるしかないね。危険だけど。
この辺、大変なことになっちゃうかもしれないけど・・・・・・、ま、いっか。」
ごまもやっと詠唱に入る。
10匹が、我先にとごまへ飛びつく!
貴子「・・・・・、・・・・、(ほらほら、どうするんや??万事休すかい??)」
稲葉の詠唱が終了する。
貴子「これでしまいや!いでよ!リザードマン・レインボー、ガ○ャピンバージョン!!」
例の2速歩行の黄緑色のあれ登場。殺る気満々だ。
続いて、ケモノに飛びかかられ姿の見えないごまが叫ぶ。
ごま「久しぶりにーー!!ドラゴラムッ!!」
貴子「!!!」
- 94 名前:祠前 投稿日:2001年06月13日(水)01時02分12秒
- アイボンの攻撃!
Д<「あんたら本当に影うすいなあ」
衣吹「隠密ですから目立っちゃダメなんですよ。」
衣吹に5のダメージ!
アイボンの攻撃
Д<「あんたのユニット、なにげに平均年齢高いんやな」
衣吹「私、最年少ですから」
衣吹には効いていない。
アイボンの攻撃
Д<「あんたらの新曲、アレンジ最悪やな」
衣吹「アレンジ by つんく♂&7HOUSEなんですけど……」
アイボンに20のダメージ!
Д<「きょ、強敵や・・・」
- 95 名前:祠前 投稿日:2001年06月13日(水)01時02分40秒
- あさみ「今度は私が行きます
鳥よ、彼の者の動きを封じよ!」
・
あさみが高らかに命じたものの、上空を飛び交っている野鳥達は一向に降りて来ない。
※カオリンクエストでのあさみの職業は「道産子」
これはホースショーを任されていない牧場娘のことである。
そのため牧場以外の動物、特に野生の動物はレベルが低いうちはなかなか操れない。
某素浪人小説と混同しないよう、注意されたし。
Д<「………結局アンタ役に立ってへんやん。」
あさみ「ごくたまに言うこときいてくれるんですけど・・・」
- 96 名前:ごまvs稲葉 投稿日:2001年06月13日(水)02時46分24秒
- 貴子「で、、、でかいな。」
ごまは、その両翼を広げると、ゆうに15メートルは越す、巨大なレッドドラゴンへとその姿を変えた。
ごまに群がっていた護符のケモノ達は一瞬で振り落とされ、姿を消した。
ごま「あはっ!前よりおっきくなってるみたい。魔力が上がってる証拠かな?
それにもちろん、おっきいだけじゃないよ!」
貴子「ふんっ!ハッタリやないんかい?その実力、試させてもらうで!ガチャピン!!」
ガチャピンが短い足をフル回転させてごまに近づき、ごまの下に潜り込もうとする。
ごま「トカゲがドラゴンに勝てるわけないじゃん?」
ごまはガチャピンを片手(前足)でつまみ上げた。
ブワッブワッブワッ
ドラゴンのごまは羽ばたいてゆっくりと上昇する。
ポイッ
ガチャピン「あら〜〜〜」
ドゴーーン!!!
ガチャピンをゴーレムに投げつけた。
ゴーレムの腕が砕け散る。ガチャピンは目から☆を出して倒れた。
貴子「ちっ!イフリート!業火の吐息で敵を、、」
ズォオオオ
ごま「そんなのドラゴンブレスにかなうと思う?」
ゴバァア゛ア゛ァアア!!!
ごまは激しい炎を吐いた。
イフリートのブレスをイフリートごと飲み込む。
貴子「カーバンクル!!」
更にごまのブレスはカーバンクルの跳ね返す炎とカーバンクル本体を飲み込む。
貴子「まじ!?」
ゴゴゴ!!!
ごまの炎は地面に達する。
- 97 名前:ごまvs稲葉 投稿日:2001年06月13日(水)02時53分52秒
- 貴子「グリフォン!!」
稲葉は辛うじてグリフォンに乗り、空中へ逃れた。
ごまのブレスは一瞬で地面の岩を溶かし、草木を灰と化し、川の水を干上がらせた。
3メートル下の光景を見て、稲葉はぞっとする。
ごま「どう?」
稲葉はドラゴンと正面に向き合った。
貴子「す、、凄いで。正直、驚いたわ。ドラゴンの、いやあんたの力、これほどやったとは、、」
ごま「やっぱりパワーアップしてるみたい。へっへーっ」
貴子「うちにはその変身をすぐに無効化する術はない。
かと言って、今のうちはまだ先の戦いでの疲労を引きずってるから、
魔法の効力切れを待つわけにもいかん。
ほんまは、さっきのガチャピン召還でとっととかたをつけるつもりやったんや。」
ごま「どうするのー?私の勝ち??」
貴子「くっ、、、そやな。正直悔しいけど、今回はそういうこっちゃ。」
ごま「やりー!」
貴子「うちともあろうもんが二人にも借りを作ってしもうた。
あかんなあ。若いもんにこそ、年季っても見せたらなならんのに。」
ごま「違うよ〜。私とは1対1だよ〜。」
貴子「ははっ、そりゃそうやけど、あんなん見せられた後、敵さんにフォローされても嬉しないなぁ。」
ごま「でも、今日はそっちはベストじゃないんでしょ?」
貴子「ああ、そんなん単なる負け惜しみのいいわけ。こっちも悔しくてつい言っちまっただけや。
気にしなさんな。負けは負け。今日の所はこれで引き下がる。
せやけどええか?絶対にうちはあんたらの前にもう一度立ちはだかったる。忘れんなや!!」
稲葉はグリフォンに乗ったまま飛び立った。
ごま「は〜い!またねー。」
貴子「(しまった。この仕事、成功報酬のみやった。
ほんの軽い気持ちで受けたんやけど、まさか失敗とは。。金が無いで。凹むわほんま。
うちの評価も落ちるな。次の仕事、どないしよ?)」
- 98 名前:ごま 投稿日:2001年06月13日(水)03時04分26秒
- ごま「あーー、すっきりした。」
今はこの戦いの理由よりも、以前に借りを作ってしまった相手に勝ったことに浮かれていた。
ごまはドラゴン化したまま祠の方を向き、飛ぶ。
が、しばらく飛んで、間違いだったとわかった。
ごま「良く考えたら、この姿って消耗激しいじゃん。元に戻ってからルーラで飛べば良かった。」
思ったとたん疲れが出る。
ごま「なんか疲れた。こっちに来てからすぐ、あの人の声が聞こえた気がして、
すっごーくやる気が出て、、、久しぶりに頑張っちゃったよ。
でも、なんだか、、ふわぁ〜ああ、、キュ〜、」
ヒューーーーー
・
ーーーーーン、、
平家「ちょい待った、なんや、変な音が聞こえへんか?
うち、めっちゃ嫌な予感がすんねんけど。。」
- 99 名前:カオリ 投稿日:2001年06月17日(日)09時54分14秒
- サーベルタイガーA「グルルルル・・・」
本当にエンドレスだ。
もういい加減こっちも疲れてきた。
あれからカオリは二匹のサーベルタイガーを交互に斬り続けている。
真己は時折飛び道具を投げてくるだけで、決して自らカオリに向かってくることはない。
ただそれでもサーベルタイガーを斬り付けてカオリが祠に向かおうとすると、その行く手を阻むように対峙してくるのである。
カオリが一瞬で抜こうとしても、隠密である真己のほうが機敏な動きをするため、結局のところ撃ち破る他ない。
しかしカオリが剣をふって真己を追い詰めようとしても、すぐにサーベルタイガーが回復して飛びかかってくる。
そんな戦いがえんえんと続いている。
カオリ「ああっ、もう!」
苛立ちながらもカオリはサーベルタイガーAを側面から斬り捨てる。
そして振り向きざまにサーベルタイガーBもとらえ、二斬で足と首にダメージを与える。
これで本日4度目の真己との対峙となる。
真己「また抜き去るおつもり?
それとも私を追い詰められるかしら?」
カオリ「そこをどきなさい!」
真己「ハハハ・・・そんな馬鹿げたことが・・・・」
そこまで言って真己の言葉が止まる。
視線はカオリではなく、その後ろに向けている。
真己「そこまで言うのなら、いいよ。ついて来な。」
そう言って真己は体を翻し、祠のほうに走り去った。
急な真己の言動に戸惑いつつもカオリが辺りを見回すと、そこには二匹のサーベルタイガーが倒れているだけだった。
カオリ「あれー、なんで君達回復しないの?」
もちろんカオリの問いかけに答えるはずもなく、サーベルタイガーは完全に氏んでいる。
どうやら合成魔獣としての回復能力には限界があったようだ。
カオリ「・・・・・・・・」
改めて見回すと辺りには血の池。
自分の剣には錆び付くほどの血。
そして自分の衣服にも返り血がふりかかっている。
カオリ「・・・・・・・なんか嫌な感じだけど、まあいっか。
それよりつじを助けにいかなきゃ。」
- 100 名前:両国(ナッチー) 投稿日:2001年06月20日(水)22時12分04秒
- ここは両国、元横綱千代の富士の九重部屋である。
今はちょうど系列の部屋の幕内力士が出稽古に来ており、大関千代大海をはじめとした一門の力士達とぶつかりあっている。
ナッチー「あれは寺尾関でねえか」
寺尾関は先場所十両に陥落したばかりだが、福薗部屋の筆頭として部屋を支えるべく出稽古に来ていた。
ナッチー「あの回転の速い突張りは流石だべ
ナッチーも見習うっしょ」
続いてナッチーは横綱武蔵丸をはじめ1横綱3大関を抱える武蔵川部屋に来ていた。
今稽古場の中央には武蔵丸がどっしりと構えており、和歌乃山ら幕内力士が横綱の胸を借りている。
ナッチー「流石は横綱だべ
肱こそかえせねが、あの強力な右はナッチーもモノにしたいべ」
最後にナッチーは先場所優勝の横綱貴乃花をはじめ、平成を代表する相撲部屋・二子山部屋に来ていた。
残念なことに先場所で怪我をした貴乃花こそいないが、稽古場には華のある力士が数多く姿を見せていた。
ナッチー「あの豪快な取り口は・・・やっぱり貴乃浪関だべ」
元大関貴乃浪は大関陥落後もファンの期待に答える豪快な相撲を取り続けている。
今丁度貴乃浪が部屋の若い衆の回しを強引に掴み上げ、放り投げたところだった。
ナッチー「あのつり出しはナッチーも是非とも会得したいところだべ」
- 101 名前:石川編 投稿日:2001年06月22日(金)20時59分51秒
- 石川「はぁ、はぁ…」
必死に走り、谷村の視界から逃れようとする石川。
石川「(何か、何か手段は…)」
ガッ!
石川「!!」
鈍い音がしたかと思うと、次の瞬間石川の目には木に深く突き刺さった矢が映っていた。
谷村「ちっ、外した…」
谷村は次の矢を取り出し、弓を引き絞る。
石川「(まずいっ!)」
石川は再び谷村から逃ようとして駆け出す。
谷村「まだまだっ!」
谷村は続けて矢を放つ!
ガッ!ガッ!
石川「ひいっ!」
石川はそれを避けながら必死に森の奥へと逃げていった。
逃げる石川を見据えながら、再び谷村は微笑んだ。
谷村「(せっかくの狩りなんだし…、もう少し楽しませてもらうよ)」
石川は逃げながら打開策を考えている。
石川「魔力は残ってないし、武器もないし、召還できないし…。どうしよ〜。
こんな時は何をすれば…」
その時ふと、石川の脳裏に昔の記憶がよぎった。
「………わかってないなぁ…」
- 102 名前:石川の過去の話 投稿日:2001年06月22日(金)21時26分04秒
- 修行場らしき場所に、保田と石川が立っている。
保田「わかってないなぁ…」
石川「そんな風に言わないでくださいよ〜」
保田「まったく…、何度もやってるし言ってるのにまだわからないの?」
保田は手のひらを自分の目線の先にある岩に向ける。
保田「ふっ!」
バシュッ!
保田は手のひらから閃光のようなものを繰り出し、岩を砕いた。
保田「生命力を実体のある波動に還元し、標的に放つ。これだけよ」
石川「それが難しいんですよ〜…。生命力を還元だなんて普通にはできませんよー」
保田「世の中には『グランドクロス』とかいう馬鹿げた禁術もあるんだから、これくらいモノにしなさい!
あの手の命に関わるような技じゃないんだから、恐れることじゃないでしょ」
石川「それはわかるんですけど、何で魔法があるのにこの技を?」
保田「そんなこともわからないの?私達のような神官タイプは攻撃魔法に乏しいでしょ?
それに魔力が切れたら一切の攻撃手段が断たれる…。
負けて命を取られるなら、命を削って勝てってことよ」
石川「…でも、難しいですよねぇ…」
保田「つべこべ言わずに練習を続けるっ!」
石川「は、はいぃっ!」
……そして現在。
石川「負けて命取られるなら、命を削って勝て、か…」
石川は杖を強く握り締める。
石川「(あの時は成功しなかったけど…、やるしかない!)」
- 103 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)03時33分31秒
- 石川「んー、でも、、失敗したらどうしよう?」
石川はブンブンと首を振り
石川「だ、、だめよ、チャーミーはいつでもポジティブじゃなきゃ。
頬をペチペチと両手で叩いた。
石川「みんなも戦ってる。しっかりしなきゃ。チャーミーも勝つの。」
石川は足を止め、振りかえった。
谷村「あら?覚悟を決めた?」
谷村もとっさにその位置関係で止まった。
石川は左手に杖、右手に胸のクロスを握っている。
谷村「ってわけじゃなさそうね。どう見ても」
石川「きっとできる!チャーミーは、お師匠様、大神官保田の弟子なんだから!!」
谷村「何やりたいのかしらないけど、先をとらせてもらう。」
谷村が矢を射る。
杖に、既に尽きた魔力を送る。生命力を削る作業である。
石川「(集中して集中して、、)ふー、、ふー、、ふー、、
よし!!」
石川は杖を谷村の方へ差し出した。
石川「ほいっ!!」
叫ぶ声にも気合が入る。
谷村「?」
- 104 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)05時20分05秒
- ザクザクッ!
石川「っ!!?」
何も起こらなかった。
石川に矢がヒットした。脇腹からも新しい血が流れでる。
谷村「は?いったいなんだったの?はったり??」
石川「で、、できなかった。。」
ボソッと呟いた。
石川は痛みに表情も変えず、矢を振り落しながら後ろを向いた。
新しいダメージがあるはずなのに、気にする素振りはない。
谷村「あ、、あの子、、まだ走れるの?根性あるっていうか、なんていうか、、、」
谷村は少しの間、ふらふらと走り去る石川の後ろ姿を眺めた。
谷村「まあいいけど。」
- 105 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)05時24分02秒
- 石川「はっ、はっ、はっ、」
無我夢中で、必死で森の中を走る。
石川「できなかった!!できなかったできなかった!!!やっぱりできなかった!!」
体じゅうが痛いが、そんなことはどうでもいい。
考えたくないけど考えてしまう。
石川「神官の技はできない。シバちゃんがいなくちゃ召還も出来ない。
なんなの?私って、、なんなの?中途半端、、、うっ、ぐすっぐすっ、、」
自分が情けない。涙が止まらない。
石川「みんなは出来るのに。強いのに。私はいつも駄目」
ふと、ごまの顔が頭に浮かぶ。そして彼女は自分を横目に見て笑っている。
「ああそう、梨華ちゃんできないんだ?ふーん。」
頭の中で彼女が囁く。そんなこと本当の彼女が言うはずなんて無いとわかっているのに。
そもそもこれは神官の技、ごまと比べることなど出来はしないのに。
「じゃあ梨華ちゃんってさあ、何が出来るの?」
石川「わ、、私は、、私は、、、」
「いったい何なの?何者なの?何様なの?何しにここにいるの?何で生きてるの?」
石川「私は、、、なんなの?」
答の出無い問が、繰り返される。
石川「何にも出来ない。もう何にもやりたくない。消えちゃいたい!」
- 106 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)05時27分47秒
- ザシュッ!
そこに追い打ちがかかり、現実に戻される。
石川「痛い!」
1本の矢が足をかすめた。
石川「なんで??隠れても隠れても追いかけてくるよ。。もう。。」
谷村「(そろそろあの子も不思議に思ってる頃かしら?
どうして私には、あなたの居場所がわかるのか。)」
石川「もう、、もうやだ。。ぐすん。。
もう負けちゃうよ。氏んじゃうよ。。。ぐすん。。もうやだ。。」
谷村「(この弓、露(あらわ)はただの弓じゃない。
この弓自身が意志をもち、獲物を追う狩人。一度覚えた血の臭いを忘れない。
獲物が今どこにいるのか、この弓が指し示す方向へ、私は矢を射ればいいだけ。)」
ビシュッ!
今度は腕をかすめる。
石川「、、痛いよぅ。
こっちはとっくに魔力切れなのに、いったい何本あるのよ?向こうの矢は」
谷村「(この矢もそう。失速しても、あなたを仕留めるために私の元へ戻ってくる。
弾切れなんか無い。
元々、牽制合戦で同じ程度の能力だった時から、この結果は見えてた。)」
ゆっくりと戻ってくる矢をキャッチする谷村。
谷村「(そしてもうすぐ、この狩の終着点だよ。)」
- 107 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)05時30分41秒
- 谷村「(あの子はやみくもに逃げてるつもりなんだろうけど。
あと、5歩、、2歩、出たね。)」
石川「あ!!」
石川が1歩踏み出すと、突然、木のない不自然に拓けたスペースに出た。
びっしりとあたり一面ヒカリゴケが生えている。
石川「あ、、明るい。まぶしいくらい。。なんだろ、ここ??森の中に、、」
正面に石川の背よりは小さいぐらいの石板が立っている。
石川はその石板のあたりまで近づいた。何か字が掘ってある。
石川「これ、、お墓??」
谷村「ついにここまで来たね。ここは代々のグランドラミアの墓場さ。」
石川「あっ」
振り向くと、このスペースの入り口に谷村がたっている。
谷村「そしてあなたが負ける場所。
私はここにあなたを誘導するように、弓を射っていたのさ。
獲物を追い詰め、狩るために。」
- 108 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)05時33分28秒
- 石川「な、なんで?どういう意味?まだ私は、、」
言いかけて思った。何も出来ない。。
石川「そうだ、もう何も、、、はっ!!」
シュン!
谷村から放たれた1本の矢をなんとか避ける。
石川「はぁ、、はぁ、、(危ない危ない。。とりあえずこの石板に隠れ、、)!?」
何故か足が前に進まない。
石川「あ、あれ??」
気付けば、体全体が重たく感じる。
石川「う、、動けない!?」
矢が服に刺さったわけでもない。
石川「どうして??」
谷村「その石板を見てごらんなさい。」
そこには石川の影がくっきりと映っている。
そして、先ほど避けたものと思われる1本の矢が、自分の影の心臓の位置に突き刺さっている。
石川「こ、これは??」
谷村「それは影縫いの矢、動けないでしょ?影が動けないんだから当然よ。
ま、万能な技じゃないし、強引に破ろうと思えば出来ないこともないけど、
術者タイプの、しかも弱っているあなたには無理でしょうね。」
まったく無警戒の姿勢で、谷村は石川のすぐ側まで近づいてきた。
- 109 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)05時35分52秒
- 谷村「夜中にこの技が使えるのはこの場所だけだったの。
予定通り、あなたは私の罠にはまった。チェックメイトね。
だから言ったでしょ?逃げても無駄だって。」
谷村は石川の顔を覗き込んで嬉しそうに言った。
石川「あ、あ、、」
谷村「じゃ、私の究極奥義でとどめをさしてあげる。」
少し離れると、13本の矢を弦にかけ、弓を上方に向ける。
石川「あんなに打てるのお??あれが全部刺さったら、、、」
谷村「さよなら」
谷村は矢の束から指を離した。瞬時に13本の矢がばらばらに飛んで行く。
それぞれの矢は空中で、石川を上から取り囲むように止まった。
谷村「マイ」
谷村のその声で、矢は石川の方へとくるりと向きを変える。
谷村「プレジャー!!」
全ての矢が一斉に石川を襲う。
石川「あぁん、あぁん!!」
石川は甲高い声を上げながらジタバタと動く。しかし、その場を離れることはできない。
石川「アー、アー、、、もう、、もう、、、、どうなるんですかあ!!!」
目を閉じて叫んだ。
ガガガガガガッッ!!
ほぼ同時に、全弾石川のいた位置に集結する。
谷村「終わった。これでもう確実に回復不能なダメージを受けたはず。」
しかし、その時、
- 110 名前:石川 投稿日:2001年06月24日(日)12時02分47秒
- 谷村「!?」
谷村は目を疑った。
矢は全て石川を縛っていたはずの岩に全弾突き刺さっていた。
そしてその場に石川はいない。
谷村「え?、いったい、、どこに??」
あたりを見回し、探す。
石川は空中に抱え上げられていた。
が、本人はしっかりと目を閉じていて気づいていない。
石川「あれえ?痛くないよ。本当に氏んじゃったのかなあ?
ふわふわ浮いてるような、、、」
??「な〜に言ってんのっ」
石川「??」
??「ア〜ロ〜ハ〜♪」
石川「!!、そ、、その声、、もしかして、」
石川がゆっくりと目を開けると、、、
- 111 名前:石川 投稿日:2001年06月27日(水)04時05分33秒
- ??「アヤカの、突撃人命救助〜!!」
谷村「!、仲間がいたの?」
谷村は素早く墓場から離れ、木の陰に隠れた。
石川「ア、ア、ア、アヤカさーん!!」
アヤカ「ハ〜ア〜イ!石川さん。覚えててもらえて良かった。」
アヤカは空中を飛んで少し移動し、林の中に降りた。
石川「忘れませんよお。
やっぱり生きてらしたんですねえ!!よかったよおお!!」
アヤカ「もー、いつの間に氏んでることになってたのよ??」
石川「〜〜ん」
石川は泣きながらアヤカに抱きついた。
アヤカ「やめてよー。梨華ちゃん。私、甘えられんのそんなに好きじゃないんだから。」
アヤカは照れながら石川を引き離した。
しょうがなく石川は離れ、アヤカの両手を両手で握り締めた。
石川「助けに来てくださったんですね!感激です〜!一人で心細かったんですよお!」
アヤカ「そりゃもう、って本当はもう一度梨華ちゃんと戦おうかと思ってさ。
でも、その前にやることができちゃったけど。」
- 112 名前:石川 投稿日:2001年06月27日(水)04時14分15秒
- 石川「もう、私、駄目かと思ったんですよ。」
石川はうつむいた。
アヤカ「ん?」
石川「私が駄目なのはいつもの事なんですけどー、、、どうしました?」
アヤカが少し首をかしげている。
アヤカ「・・・・・ねえ、ちょっと気になったんだけど、あなたは誰?フーアーユー?」
石川「?、チャーミー石川です。」
アヤカ「だよね。OK.」
石川「???、チャーミーはチャーミーですよ。アイアムチャーミー!」
アヤカ「ん、エクセレント。一人称がチャーミーに戻った。いつもの梨華ちゃんだ。」
アヤカはニコッと笑った。
石川「あ!、いつのまにか自分のこと「私」って、、、またネガティブに、、」
アヤカは声のトーンを下げ、うつむく石川の肩に手を置いた。
アヤカ「梨華ちゃん、落ちこんでないで。
ね、何があったか知らないけど、その服着てる間は、私と戦い、一緒に修行した事や
その服をくれた彩さんの事を忘れちゃだめだよ。」
石川「・・・・・・」
石川はピンク色のチャーミースーツを着てる自分を見渡した。
彩の祠での戦いや修行の日々を鮮明に思い出す。それから、少し遅れて返事をした。
石川「はい。」
そして、もう一度チャーミースーツを見る。
石川「あら?、あ〜あ、森の中走りまわったから、少し汚れちゃったみたいです。」
石川はアヤカと目をあわせ、笑って言った。
アヤカ「ほんとだ〜。」
アヤカも笑って答えた。
また、自分が見えなくなってました。みんなのおかげで、今ある自分です。
一人じゃないんですね。彩さん、チャーミーはまだまだ負けません。ポジティブに頑張ります!
- 113 名前:石川 投稿日:2001年06月27日(水)04時25分28秒
- 石川「あれ、ところでどうやってこの場所までいらしたんですか??」
アヤカ「それはねー、」
石川「?」
アヤカ「その声聞けば10キロ先からでもわかるのよ。」
石川「あ、いいえ、そうじゃなくてですね、、」
アヤカ「って冗談だったんだけど、あっさり流されたよ。相変わらずだねー。」
アヤカは苦笑いした。
石川「?」
アヤカ「本当は、牧城でこの場所を聞いてきたの。ある人にね」
- 114 名前:牧城 投稿日:2001年06月28日(木)01時13分02秒
- 保田が牧場をたつ前
ガタッ、ぎぃいいいい
アヤカ「アヤカの突撃お宅訪問〜!こんにちわ〜!!」
しーーーん、、
アヤカ「あれ、誰もいないのかしら?せっかく訪ねて来たって言うのに。」
広い空間に明かりもついておらず、薄暗くなっている。サービスカウンターにも誰も出ていない。
アヤカ「うーん、、これじゃ流行らないと思うなー。この牧場。誰か。。。あ!、いた。」
フロアのすみに、誰かがこちらに背を向けて立っている。
アヤカ「すいませーん!」
?「・・・・・」
アヤカ「アレ?」
返事が無いので、アヤカはつかつかとそっちへ歩み寄った。
?「・・・・・・うん、、うん。ちょっと、調べたい事があって。」
アヤカ「スイマセエエエン!えくすきゅーずみーー!」
?「うるさいわね!!電話中よ!」
振り返ることも無く叫ばれる。
アヤカ「むっ。」
ガコン!!、ピピー、ピピー、、
?「!!、ちょっとあんた!何すんのよ!」
アヤカ「やっと気付いてくれましたね。ハロー。」
?「人の電話勝手に切っといてハローじゃないわよ!」
アヤカ「だって、気付いてくれないじゃないですか。保田さん」
保田「は?なんで私の名前を、、、あ!!、わかったわ。あんた、アヤカね!」
アヤカ「イェス。よくわかりましたね。やっぱり聞いてたんですか?」
保田「そ。あの子が嬉しそうに喋ってたからね。わかるわよ。」
アヤカ「はい。私もわかりました。石川梨華さんの師匠の保田さんですね。
お会い出来て光栄です。とても素晴らしい方だと聞きました。」
アヤカは手を差し出した。保田もそれに応え、握手をした。
保田「大げさね。」
- 115 名前:牧城 投稿日:2001年06月28日(木)01時19分04秒
- アヤカ「で、誰に電話してたんですか?」
保田「、、お、お母さん。」
アヤカ「えー、うそーん?」
保田「はぁ?どうしてあんたに嘘なんかつかなきゃいけないのよ!
それ以前になんでそんなこと聞かれなきゃいけないのよ!!
(確かに嘘だから余計ムカツクわね)」
アヤカ「機嫌悪ーい。怖い顔しないでくださいよ。」
保田「あ、あんた、人をおちょくってんの?いいかげん切れるわよ?
それに、いきなりなれなれし過ぎるわね。これだからあんた達の国の人間は嫌いなのよ。
で、とっとと話しを進めるわ。何しに来たの?」
アヤカ「あ、はい。私のライバルの梨華ちゃんに会いに来たんです。どうしてます?」
保田「そんなことだろうと思ったわ。でもタイミング悪かったね。
あの子は今、メロン谷で厄介事に首突っ込んでる。だから当分は戻って来ない。残念だったわね。」
アヤカ「メロン谷ですか。オーケーイ。」
保田「じゃ、折角あんたから来てくれたんだからこっちの質問にも答えてもらうわ。
あんた、ココナッツ四天王のリーダーなんでしょ?、実は今、ミカが」
アヤカ「センキュー!お母さんに、電話切ってごめんなさいってお伝えください!」
保田「あ、こら!!ちょっとあんた!人の話を聞きなさい!」
ちょっと目をそらした隙に、アヤカは既に城の外にいた。
アヤカ「しーゆーー」
保田「、、、い、行きやがった。。」
ルーラで飛んで行く姿を見てボーゼンとする保田。
保田「ったく、なんて勝手な。。電話代も返さないし。ムーカーツークー!!」
ガチャ、ピポパペパペ、
保田「あ、アキヒトさん?ごめんなさい。切れちゃって。
じゃ、さっき言ってた通り、今から行くから図書館開けておいてください。」
- 116 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年06月28日(木)21時32分18秒
- シバタ「待って、マサエちゃん!」
祠を守るべく石川とアヤカが墓場を出て森の中の再び1本道に出た丁度その時、村の方向からシバタの声が聴こえて振り向くと、猛スピードでマサエが飛んで来ていた。
石川「わっ」
石川が慌ててマサエを避けると、彼女は谷村の肩の上に乗った。
谷村「ナイスタイミングね」
マサエ「えっ?」
谷村「どうしても、やらなきゃいけない仕事なんでしょ」
そう言って谷村はマサエをみつめる。
気高けなマサエの瞳が一瞬だけゆるむ。
マサエ「うん!」
石川「あっ!祠のほうに逃げる気ですか!」
石川のその言葉に、谷村は不敵な笑みを浮かべる。
谷村「私達の使命は祠までの道をあけること。
私達が祠に向かってもしょうがないわ。」
石川「それって・・・」
谷村「じゃまなコマは全て排除しろってことらしいの。
2人まとめてかかってらっしゃい」
谷村の自信ありげな微笑みに、石川とアヤカは口許をゆがめる。
石川「アヤカさん、すいません」
アヤカ「いいですよ、乗りかかった船ですし」
シバタがスクルトをかけ、対する谷村は早くも弓をひく。
火がついた闘争心に呼応するかのごとく、チャーミースーツがあの時と同じように光りはじめていた。
- 117 名前:祠前 投稿日:2001年06月28日(木)21時51分40秒
- Д<「なんや!」
アイボンが声をあげ、皆いっせいに空を仰ぐ。
すると祠前の一団の上空にレッドドラゴンが飛んでおり、それがこちらに向かって降りてくるではないか。
『キャー』
あたりはテンヤワンヤの大騒ぎ。
ミチーヨ「ギャアアアアァ」
ミチーヨのおたけびが聴こえた次の瞬間、祠の付近の木々をなぎ倒すようにしてドラゴンは地面に衝突した。
Д<「大丈夫か?」
哀れミチーヨはドラゴンの下敷きになったらしく、ドラゴンの下からはみ出た手がピクピクと動いている。
あさみ「私、こんなドラゴン操れませんよ」
Д<「いや、まず第一にこんなドラゴンそこらへんにそういるもんとちゃうで。
そう考えると・・・・これはごまはんやな」
つじ「あれだけのおとをたててしょうとつしたのに、まだねむってるのれす」
結局ミチーヨを救出することを諦めたアイボン達が祠のほうに目を向けると、衣吹が祠の中の竪琴に向かって今まさに刀を大上段から振りおろそうとしているところだった。
Д<「ヤバイ!竪琴の弦を切られる!」
- 118 名前:祠前 投稿日:2001年06月29日(金)21時55分28秒
- その場にいた誰もが弦の切断を確信した。
アイボンは口許をゆがめ、あさみは間に合わないと分かっていながらも足を踏み出し、つじは左こぶしを強く握りしめた。
衣吹「ハアッ!」
口許に笑みを浮かべた衣吹が両手で握った刀を弦に向かって一直線に振りおろす。
……………フィッッ……
刃が弦をとらえ、衣吹が刀に手ごたえを感じその瞬間、ラミアの竪琴は青白く発光した。
皆一瞬目をつむるも、衣吹はそのまま刀を一気に押し下げた。
次の瞬間、目を開いた衣吹は驚愕の表情を浮かべる。
彼女の瞳に映ったのはひん曲がった自らの刀だったのだ。
- 119 名前:祠前 投稿日:2001年06月29日(金)21時55分52秒
- 衣吹「そ・・・そんな・・・・」
唖然とする衣吹。それはその場にいたアイボン達も同じことだった。
竪琴の弦、それも髪ごときに刀がひん曲げられるはずがない。
第一確かに衣吹はほとんど抵抗なく、わずかの手ごたえのみを感じて一閃したのだ。
いったいどうしてこの弦は切れないのだろう・・
??「衣吹、そんなことしても無意味よ」
山の方角から声が聞こえ、皆いっせいに振り向くと、そこには真己が立っていた。
つじ「だれっ!」
Д<「どうやらもう一人魔王軍さんがやってきたようやな」
衣吹「無意味ってどういうことなの?」
真己「話を聞いてなかったの?
私達の任務はあくまで祠までの道を開くこと。
目標達成条件は確かに弦の切断だけど、私達にはそれはできない」
衣吹「えっ……」
真己「弦に触れられるのは緑の光りを持つ者のみ」
つじ「“みどりのひかり”ってなんなのれすか?」
Д<「おそらく >>44 のことやな」
あさみ「ついでに誤字を訂正します。
誤〈緑色の光りを発する色〉→正〈緑色の光りを発する石〉です。」
つじ「なるほどなのれす・・・」
- 120 名前:祠前 投稿日:2001年06月29日(金)21時56分20秒
- 真己「ようやく追いついたようだね」
衣吹と話をしていた真己がふとそう呟き、自らの後方に飛び道具を放った。
…………カキーン……
硬質の音が山裾の道から響いてきて、全員がそちらを見る。
つじ「いいらさんっ!」
見るとカオリが刀を水平に構えて歩いてきていた。
どうやら剣で弾き返したようだ。
カオリ「つじ、大丈夫だった?」
つじ「はいなのれす、いいらさん」
駆け寄るつじを抱きとめるカオリ。
つじ「・・・・・」
抱き着いてきたつじは一瞬カオリの胸の顔を埋めようとするが、イヤイヤな顔をして躊躇している。
カオリ「・・・どうしたの?」
つじ「ちのにおいがするのれす・・・」
そう言われてみれば自分からは獣の血の臭いがしている。
カオリ「やっぱなんか嫌な感じだな‥‥」
- 121 名前:石川 投稿日:2001年07月01日(日)05時42分04秒
- 谷村「(私らが神殿の方へ逃げる?とんでもない。逆さ、
あんた達に祠の方へ回られると困るんだ。
しかし、新しく来た彼女が、あの子(石川)並の力だったとして、
私には同時に2人とも倒す力は残念ながらありはしない。
だからこうなった以上、少しでも挑発してこっちに注意を向け、
時間稼ぎするしかないのさ。事が起こるまでね。)」
シバタ「(もう大分時間が経っている。今ごろ、どこか一つのルートでも開いていれば、
そこから竪琴の弦を切りに向かってるはず。)」
石川「シバちゃん、決着ついたの?」
シバタ「うん。また引き分け。お互い、力を使いきっちゃった。
だから残念だけどもうこれ(スクルト)くらいしか出来ない。
今は召還には耐えられないと思う。
でもそれは向こうも一緒。さっきの紫のオーラや回復はもうほとんど出来ないと思う。
だから普通の魔法で十分だよ。」
石川「でももうどっちみち魔力切れなの。生命力を削るっていうやり方も失敗しちゃったし、
どうしよう??」
アヤカ「それじゃあ私にやらせてくれる?。折角来たんだし、ひと暴れするね。
2人は休んでていいよ。」
石川「あ、でもですね、この辺は火気厳禁なんですよ。山火事になっちゃいますから。」
アヤカ「えええ〜!!それは困ったなあ。。
他の系統も出来ないことはないんだけど、倒すとなると、、」
石川「ほんと、どうしましょう?」
ヒュンヒュン!
- 122 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月01日(日)05時44分54秒
- 喋っていると矢が飛んでくる。とりあえず石川達は間合いをとり、隠れる。
谷村「(祠へ行く気は無さそうね。
こっちが向こうの場所がわかるのはもうわかっているだろうし、
勝負するつもりならすぐに出てくるはず。
焦って追う必要はない。じっくり待って、出て来た所を撃つ。その方が時間も稼げるはず。)」
谷村は、次の矢を構え、そのままじりじりと石川達の場所へ移動する。
石川「あの人こっちの居場所が分かるみたいなんですよ。隠れてても無駄なんです。」
石川はそわそわと当たりを見回す。
シバタ「そうなの?じゃ、早く手を考えないと。。。うーん、、」
アヤカ「そうだ!!やってみたかったことがあるんだ!」
石川「なんですか?」
アヤカ「・・・・・・伝説の極大呪文!」
アヤカはニヤリと笑って言った。
石川「そ、そんなのあるんですか?凄いですねー。アヤカさん。」
アヤカ「違うのよ。二人でやるの。」
石川「ええ?チャーミーそんなのできませんよ。」
アヤカ「ううん、私達ならできる。いや、私達じゃなきゃできない。
極大消滅呪文、その名も、メドローア!!」
石川「おおー。なんかかっこいいですね。でも、何なんですか?それ。2人でやるなんて。」
アヤカ「この術はね、正負の熱エネルギーをスパークさせてあみだす。
つまり、まず最大クラスの炎とそれと全く同等の冷気が必要なの。
その二つを合成すると、触れる物全てを打ち消す究極のエネルギーになるの。
私の炎と梨華ちゃんの冷気なら、きっとできるんじゃないかと前から思ってたの。
昔は、一人で出来るツワモノもいたみたいだけど。」
- 123 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月01日(日)05時46分37秒
- シバタ「なんか凄そうだねえ。」
石川「うん。。」
アヤカ「成功すれば、凄いなんてもんじゃないよ。それはやってみてからのお楽しみ。
ただし、もし正負のエネルギーがつりあわず、合成に失敗してしまったら、
エネルギーが暴走し、自分達が消滅することになるけどね。」
石川「ごくっ、、」
アヤカ「どう?やってみる?」
石川は少し悩んだ。
石川「・・・・・・・やってみます。それで、勝てるのなら!」
アヤカ「・・・・、ファイナルアンサー??」
石川「Yes!ファイナルアンサー。ポ、ポジティブに。」
アヤカ「おーけーおーけー。さすが、いいファイティングスピリッツしてるね。」
石川「あー、でも、もう魔力が空っぽなんですよ。」
アヤカ「あ、そうだったねー。うーんと、そうだ、あれはどうしたの?
私と戦った時に使ってた、なんとか太鼓。」
石川「あ!!」
でんででん、でんでん!!!
石川「朝鮮・・・それは金の金による金のための国・・・」
シバタ「って違うでしょ!!(汗」
石川「あ、久しぶりだったから間違えちゃった。ええっと、
挑戦・・・それは、自分自身と向き合うこと・・・」
石川に少し力が戻った。
石川「魔法1回分くらいですかね。」
アヤカ「上等。じゃ、さっそくやりましょ。」
石川「はい!」
シバタ「ドキドキ、、」
- 124 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月01日(日)05時49分15秒
- アヤカ「ハレーションサマー!」
ゴォオッ
アヤカが両手に炎を出す。
石川「チャオー!!」
シュォオオ、、
石川が両手に冷気を出す。
アヤカ「受けとって。」
アヤカは石川と向き合い、左手の炎を差し出した。
石川「うん。」
石川は右手でそれを受けた。
シュババババババ!!
石川「あっ!あ、つつつ、、」
石川の右手で、激しくはじきあう。
アヤカ「冷気のエネルギーを炎と等しくして!
どっちが強いとどっちが追い出されて暴走する。」
石川「う、、ん。」
シュバババ、、、シュウ、、、
石川の右手にある炎と冷気は、真っ白な光の様な存在となった。
石川「うわぁ、、綺麗、、、」
アヤカ「抑えさえられたみたいね。さすが!、じゃ、私にもちょうだい。」
石川も、左手の冷気をアヤカに渡した。
ババババ、、バシバシバシバシ!!
アヤカ「ぐっ、、」
石川「だ、大丈夫ですか?」
アヤカ「うん。心配しないで。大丈夫。
(梨華ちゃんの冷気、凄い。私も本気でおさえないと、、)」
バババ、、
アヤカ「もう少し、、、よし。」
バシュウ、、
石川「よかった。そちらも大丈夫みたいですね。」
アヤカ「なんとかね。」
- 125 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月01日(日)05時52分34秒
- アヤカ「いよいよ術を作るよ!」
石川「はい!」
アヤカが右手に持ったエネルギーの塊を両手で掴み、上下に引き伸ばす。
バリバリバリ、、
それは徐々に三日月型に姿を変えて行く。
シバタ「す、すごーい!!」
石川「?、それって、もしかして弓?」
アヤカ「ご名答。弓矢には弓矢でお返しってね。さあ梨華ちゃん、矢を!」
石川はピンときて頷いた。エネルギーの塊を両手で左右に引き伸ばす。
バリバリバリ、、
真っ直ぐに伸び、矢となった。
アヤカ「さあ、弓は私が持ってるから、矢をかけて!梨華ちゃん!!」
石川「は、はい!」
谷村は、2人を視界に捉えられる位置まで近づいてきていた。
谷村「あ!あれって、、、まさか!!」
石川「こ、、この力、、、、」
- 126 名前:祠前 投稿日:2001年07月02日(月)20時36分26秒
- カオリが揃ってからも、真己と衣吹は攻撃仕掛けてこようとはしない。
ただ祠の前に立って、こちらをじっと睨ねつけているだけだ。
仲間を待つその様子では、まるであちらが防戦をしているかのようだ。
カオリ「ねえ、なんで竪琴が切られてないの?」
祠前の二人をみつめながら、カオリは3人に尋ねる。
あさみ「どうやらあの二人も弦は切れないらしくて、切れる人が来るのを待ってるみたいなんです。」
カオリ「それで攻撃をしかけて来ないんだ」
Д<「相手さんに応援が来たら、人数的にもあっちが圧倒的に有利になるしな」
カオリ「それってヤバイじゃん」
つじ「ヤバイのれす」
あさみ「一応もう1時間ちょっと守りきればこっちの勝ちなんですけど…………」
あさみが時計を見てそう言う。
そう、確かに日の出になればこちらの勝ちではあるのだが・・・・
カオリ「でもあっちから仕掛けてくるのを待ってたら……」
Д<「あっちは3人以上になるな」
つじ「こっちはまともにたたかえるのはいいらさんのみなのれす。」
あさみ「ごまさんも寝てますし……」
そういってあさみは背後の赤い巨体……もといドラゴラムを使ったごまのほうを見向く。
カオリ「えっ!これってごまなの?」
つじ「でもどうやってもおきないのれす。」
Д<「……そういやもう一人くらいこっちのパーティーにいたような気がせえへんか?」
あさみ「どうでしたかねえ……」
カオリ「最初っから祠前は3人だったじゃん。」
Д<「気のせいやな」
つじ「そうなのれす」
哀れミチーヨ
- 127 名前:祠前 投稿日:2001年07月04日(水)17時22分14秒
- カオリ「さっさといかないと向こうは次が来るんでしょ。
だったらこっちから逝くよ!」
カオリは戦陣をきって真己と衣吹に向かっていく。
衣吹「へへっ、リーダーが奴さんを連れてくるまでに全滅させてやるよ」
真己「衣吹!無茶はしないようにね。
あくまで邪魔物を取り払うのは余裕のある範囲でのオプションなんだから。」
まずは衣吹が前に出てきてカオリを迎え撃つ。
カオリ「カオリだって勇者なんだぞー」
カオリは剣を水平に構えた体勢から、信じられないようなモーションに大上段に剣をふりかざす。
衣吹「ハアッッッ!」
なんとカオリの渾身の一撃を、衣吹はグローブをはめた手で押さえ付けたのだ。
カオリの後方からつじが投げ飛ばした石ころをよけるために、衣吹は剣を外して一歩後退する。
それにしても凄まじい条件反射だ。
戦闘のプロではないのが信じられない程だ。
続いてアイボンが真己に向かっていく。
Д<「あんたの顔キツ過ぎやんか」
真己「それでも衣吹よりは人気あるらしいし」
真己には効いていない。
Д<「あんたセンターって感じでもない」
真己「まあそこらへんはね」
真己の攻撃力が26上がった。
Д<「あんたの顔、まんまTMの嫁やて」
真己「それはどうも」
真己の守備力が34上がった。
Д<「まずい。完全にアゲボンや
なのに自分はサゲボンやし」
つじ「うまいのかうまくないのか、わからないのれす」
あさみ「その上関西便もちょっと変だよね」
- 128 名前:祠前 投稿日:2001年07月06日(金)02時01分44秒
- 2対1の不利な状況だからこそ、戦士タイプの直接攻撃の真価が発揮される。
なにしろ魔法の詠唱時間がないため、敵の攻撃が矢継ぎ早にきてもある程度対応できるのだ。
真己も衣吹も攻撃にはそれほど自信がないらしく、もっぱら防戦一方としている。
ただ防戦と言っても、二人の守りにははっきりとした違いがうかがえる。
衣吹は攻撃を避け、真己は攻撃を受け止めるのだ。
カオリがこのことに気付いたのは、二人と剣を交え始めて数分経った後のことだった。
衣吹は隙あらばカオリの懐に潜り込もうとしているが、基本的に間合いをとっていればこちらの思う方向に動いていってくれる。
真己は後方でフォローはしているが、カオリが斬り付けると姿勢良く構えてふんばりをきかせて受け止めるだけだった。
外見に反し、重くて微動だに真己と軽く流れていく衣吹。
カオリ位の腕を持つものなら簡単に詰むことのできそうなゲームだが、なかなかステップを動かすことができない。
ヨッスィーによってさんざん剣闘術は叩き込まれたが、今までサシの勝負ばかりしていたせいか、カオリはこういった乱戦の詰めが不得意なのだ。
それでもなんとか動かない真己を祠脇の壁まで追い詰める。
飛び道具も使いつつなんとか衣吹も誘導し、まずは衣吹と向き合う。
衣吹もカオリの眼光に何かを察したらしく、真正面から向かっていく。
・・・・スッ・・・
思った通りだ。衣吹はカオリの攻撃をサラッとかわしてきた。
それをよんでいたカオリは振り向きざまに衝撃波を放ち、その身をさらにもう反転させて真己に斬り付けた。
剣を横に構えていた真己も慌てて打ち返そうと構え直すが、カオリは速攻で剣のドまん中を叩き打つ。
そしてそのまま真己へのラッシュに入る。
この戦い、二人のうちどちらかを倒せば、形勢が一方的なものになることは明らかだ。
出の速い衝撃波をなんとかよけきった衣吹も、もはや真己のカットに入ることはできない。
これでまず一人・・・・・
カオリがそう思った矢先の出来事だった。
空から何かが振ってきたように見えた。
カキーンと硬い音と手強い感触がして思わずカオリは身を引く。
そこには剣を構えた少女が真己をかばうようにして立ちはだかっていた。
- 129 名前:祠前 投稿日:2001年07月06日(金)02時02分11秒
- カオリ「誰!?」
???「私は・・・・・
魔王軍隠密部隊シェキドルリーダー、殿(しんがり)のアミ!」
他の二人と同じく頬にペイントを入れた少女は高らかに名乗る。
衣吹「リーダー!」
衣吹もカオリを回りこんでかけつけ、3人が居並ぶ。
真己「悪い、借り作っちまったね」
真己はアミの肩に手をのせる。
真己「・・・・アミ?」
反応のないアミに戸惑って、衣吹と真己はアミの顔を覗き込む。
すると彼女の目はまっすぐにカオリを見据えていた。
カオリを見ると、やはり彼女も真直ぐにアミをみつめている。
衣吹「どうったの?」
真己「アミ?」
二人は心配そうにアミの様子を伺う。
緊迫した雰囲気が辺りをつつむ。
アミとカオリは一言ずつ発したまま、何も言わずに対峙しているのだ。
衣吹も真己もつじもアイボンもあさみも、その様子をじっと見守るほかない。
やがて、カオリのほうから口を開いた。
カオリ「もしかして、あなた・・・・・あゆみちゃん?」
- 130 名前:祠前 投稿日:2001年07月06日(金)02時02分35秒
- こちら遠目に見ているつじ・アイボン・あさみ
つじ「よくわからないけどまたてきがふえたのれす」
あさみ「流石の飯田さんも3人相手じゃきついよね」
Д<「どうにかせんとな」
あさみ「どうにかって?」
つじ「そうだ!
ごまさんをおこすのれす」
Д<「よっしゃ、それでいこ」
あさみ「でもどうやって起こすの?
前に私が頼まれて起こしにいった時、寝ぼけて魔導書掴んで牧城ごと爆破しようとしたんだよ」
Д<「なんかいい方法はないもんかな・・・・」
- 131 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月08日(日)05時14分39秒
- アヤカは谷村がこちらを見ているのに気付いた。
アヤカ「来た!さあ、撃って!」
石川「は、はい。。。」
谷村「光の弓矢!?、間違いない、メドローアだ。なんて危険な魔法を、、、」
マサエ「に、逃げよう!有美さん」
アヤカ「??」
石川がまだ矢から手を離さない。
石川「・・・・・・」
アヤカ「何やってるの?は、早く!!」
ビシ、、ビシ、、、バリバリバリ、、
アヤカ「なんで撃たないの!?、暴走しかかってる!
早くしないと私達が消し飛ぶよ!!」
谷村「くっ、、」
谷村は出来るだけ遠くへと足を動かす。
石川「っ!」
矢が離れた。
アヤカ「!!」
ゴッ!!!
谷村「!」
瞬間、森に一筋の光が走った。
- 132 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月08日(日)05時18分42秒
- 直後に、アヤカと石川の目の前には広く長い道が出来あがっていた。
一瞬にして消滅させられた木々の後には、火の起こる様子も無い。
まるで最初からそこには何も無かったかのようだ。
石川「・・・・・・・」
シバタ「・・・・・・」
アヤカ「す、、、凄い、、、、こんな高威力な魔法見たことない、、」
3人はしばし、その光景に見とれた。
ガサガサガサ、、
道の脇から音がする。
アヤカ「!!、え?、、生きてる?!」
石川「あ!、谷村さん!!、、良かった。」
谷村はたった今出来あがった道の真中まで出てきて、石川達の方を向いた。
シバタ「マサエちゃんも!」
マサエが少し送れて出てきて、谷村の肩に飛び乗った。
谷村「「良かった。」じゃないよ。わざと、はずしたね。」
石川「・・・・・・・」
アヤカ「え?そうなの??」
石川「はい。」
石川はアヤカに対し、すまなそうに頷いた。
アヤカ「・・・・」
石川「だって、、だって、全て消し去ってしまうと思ったんですもの。
マサエちゃんは友達だし、谷村さんだってきっと悪い人じゃ、、、」
アヤカ「う〜ん、、」
谷村「甘い!!」
谷村は石川に向かい、大声で叫んだ。
谷村「力を使い果たした状態で敵に情をかけたらどうなるか、、」
冷徹な表情でゆっくりと弓を構える。
- 133 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月08日(日)05時21分37秒
- アヤカ「くっ」
石川「・・・・」
アヤカはとっさに身構える。石川は既に覚悟が出来ていた。
谷村「なんてね。」
アヤカ「?」
谷村は弓おろし、表情をゆるめた。
谷村「見てみな。この弓、露(あらわ)っていうんだけど、」
石川「?」
谷村は弓を横にして石川達に差し出した。露は谷村の手の中で振動している。
谷村「震えてるのさ。
自分よりよっぽど凶悪な「弓と矢」を見ちゃったからね。
だから今は使いものにならないみたい。
つまり、私にも攻撃する手段は残って無い。」
シバタ「じゃ、また殴り合いの続きでもする?」
マサエ「ううん、もういいよ。ほら、もう日が昇る時間だ。」
シバタがニコッと笑うと、マサエもくすっと笑って答えた。
石川「あっ、、、」
上を見ると、あたりが薄明るくなり始めている。
谷村「ふー、やれやれ。やっと終りね。
今から神殿へ行っても、間に合わないし、お互い何も出来ない。」
シバタ「そうだね。お互い、限界まで戦った。あとは、他のチームがどうなったかだけだ。
運命は、、どう動いたのか。」
- 134 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月08日(日)05時25分21秒
- 谷村「でも私達は神殿へ行くわ。ことのてん末を見届けに。」
石川「あ、それなら私も、、」
ズデッ
石川は動こうとして、何かにつまづいたわけでも無いのにこけた。
石川「あいたたた、、」
シバタ「少し休んで行こうよ。どうせ、急いだって同じだし。
気になるのは分かるけど。」
石川「う、、うん、、、」
石川は残念そうに頷いた。そういえば今日は無茶し続けた。
転んだ拍子に、体中に痛みが戻ってくる。
谷村「あ、そうだ、さっきの魔法、どうしたの?」
石川「それは、アヤカさんが。」
アヤカ「私も使ったのは始めてなんだけど、できたね。」
谷村「そう。一つ言っておくけど、半端な知識でこういうことやってると、
いつか痛い目見るよ。」
谷村は言いながら後ろを向いた。
アヤカ「??」
石川「・・・・・・」
谷村とマサエは神殿の方へ向かい、石川達の前から姿を消した。
アヤカ「ほんとに、行かせちゃっていいの?そもそもあんまり、
って言うか全然事情を知らないんだけどさ。」
シバタ「大丈夫だよ。彼女達が言った通り、もう時間切れだから。」
アヤカ「それはかまわないけど。久しぶりに暴れられたし。
でも、ちょっとくらい事情は説明してね。」
石川とシバタは事情を説明した。
- 135 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月08日(日)05時30分19秒
- 石川「というわけなんですよ。
でもマサエちゃん達の事情はあんまり全然わかんないんですけど。」
アヤカ「んー、いろいろ込み入ってるねえ。正直あんまり聞いててわかんなかったけどさ。」
アヤカは苦笑いした。
石川「ところで、アヤカさんはどうしたんですか?彩さんたちは元気にしてますか。」
アヤカ「それがねー、はぁー、もちろん元気にしてる。」
アヤカが飽きれた表情を浮かべる。
石川「?」
アヤカ「子供が産まれてしばらくたって、彩さん元気に動けるようになって、
自分でなんでも出来るようになったから、
私だんだんいづらくなってさ。だから出て行くことにしたんだ。
いつまでいても良いって言ってくれたんだけどね。
でもやっぱり、親子水入らずの所にこれ以上いられないよねー。あつあつのねー。」
石川「あ、そうだったんですか。みんな元気なんですね。良かったですー。」
アヤカ「うん。」
少し、3人はあの祠での思い出話をしあった。
アヤカ「じゃ、私はそろそろ行くね。」
石川「え、行っちゃうんですか?」
アヤカ「うん。
私、本当はあなたと戦いに来たんだけど、今日は無理になっちゃったし。
それに、さっきの話に興味はあるけど、それに私が割り込むのは今更過ぎるから。
だからしっかり解決して、今度会うときに教えてね。
これからあなたが行く先のどこかで待ってるよ。シーユー!!」
アヤカはルーラで飛んで行った。
シバタ「展開はやっ!」
石川は見えなくなりそうになってから叫んだ。
石川「アヤカさーん!ありがとうございまーす!!ちゃおーーー!!」
- 136 名前:石川&アヤカ&シバタ 投稿日:2001年07月08日(日)05時32分07秒
- アヤカ「(ほんとは時間がもったいないから先に行くんだ。
さっき冷気を受け取った時、ギリギリ無理してあわせたけど、私の炎の方がほんの少し負けてた。
梨華ちゃんは既に限界だったはずなのに。
梨華ちゃんがもし全快だったら、きっと完全に負ける。
少しの間に差が着いちゃったな。その差が埋るまで、再戦は先送りにするよ。)」
アヤカは南へ飛ぶことにした。
アヤカ「(でももし、梨華ちゃんの冷気の限界値にあわせられる炎の使い手がいたなら、
あの魔法の破壊力はいったいどうなってしまうんだろう?)」
- 137 名前:カオリとアミ 投稿日:2001年07月10日(火)02時38分28秒
- 衣吹「何言ってんの?
うちのリーダーは北上アミって名前だよ。」
真己「まああゆみとアミじゃ当たらずも遠からずだけど」
カオリが発した名前を、衣吹と真己が否定する。
それでもなお、カオリはアミに声かける。
カオリ「あゆみちゃん・・・だよね」
アミは無言のままカオリを睨つける。
あたりにはまたすぐに緊迫した空気が流れる。
アミ「私の名は北上アミ」
そして、アミは反芻するように、落ち着いて言葉をつなぐ。
アミ「あゆみなんて名前、聞かないね」
カオリ「だって、、そんな、、、」
アミ「まだ言うか!」
急に声を荒げるので、真己はおどろいて思わずアミの肩に置いていた手を退ける。
カオリ「私、思い出したよ。
あゆ姉は忘れちゃったの?」
アミがゴクリと唾を飲み込むのがわかった。
カオリ「手稲村のこと」
- 138 名前:かおりとあゆみ 投稿日:2001年07月13日(金)05時22分35秒
- アミ「ふ、ふんっ!知らないね。そんな村のこと。」
アミは吐き捨てるように言うと後ろを向き、仲間2人に話かけた。
アミ「あれは私が相手するよ。衣吹と真己は残りを片付けて。」
真己「おーけー。」
衣吹「わかった。」
Д<「うげっ、、」
勇者飯田「嘘!!、あゆみちゃん嘘ついてるよ!、かおりにはわかるんだよ!嘘ついてること。」
今のやりとりも全く耳に入らず、飯田はアミに叫びかける。
アミ「(わからなかったくせに。私を信じたくせに。)」
ボソッと呟きながら、アミは飯田の方に向き直った。
勇者飯田「え?何??」
アミ「うるさい!、知らないって言ってるんだ!行くよ!!」
勇者飯田「そんな!あゆ姉なんでしょ?戦えないよ!!
いったい何があったの?なんで魔王軍にいるの??」
飯田は必死で問いかける。
手稲村にある日、領家あゆみと名乗る一人の少女が越して来た。
かおりはその日、新しい土地で道に迷っているらしきあゆみを見かけ、声をかけた。
そして彼女を家まで送り届けた。それが二人の出会いだった。
あゆみの家はかおりの家からすぐ近くで、歳も近かったこともあり、その後2人は仲良くなった。
いろんなことを喋った。自分のことも。
- 139 名前:かおりとあゆみ 投稿日:2001年07月13日(金)05時27分58秒
- アミが勢いよく飯田に切りかかる。
ギンギンギンッ!!
飯田はそれを受け流す。飯田からは攻める気が感じられない。
しばらくその状態が続く。飯田はあゆみに話かけ続ける。
アミにはそれを無視しているが、飯田の受けを崩すことができない。
アミ「ちっ、、」
アミは舌打ちをすると間合いをとった。
勇者飯田「あ、あゆ姉、、?」
アミは一瞬下を向いて何かを考えてから、飯田と目を合わせた。
アミ「・・・・かおり、あんたとはこんな形で会いたくなかったよ。」
その声は、やはり昔よく聞いた声だ。
勇者飯田「ああ!やっぱり、やっぱりあゆ、」
ほっとしている様子の飯田をよそに、アミは喋りつづける。
アミ「まさか勇者飯田があんただったとはね。勇者になったんだね。
確かあんたの妹の夢だったよね。勇者。」
勇者飯田「うん。でも、、、あ、あの子は、氏んだの。」
アミ「・・・・・・・」
勇者飯田「手稲村が魔王軍によって滅ぼされた日。」
飯田の声のトーンが下がる。
アミ「そう。」
アミは少し目を細め、そっけなく言った。
勇者飯田「でも!、、でもあゆ姉は生きてたんだね!!よかったあ。」
すっかり気を許して感激している様な飯田を見つつ、アミは表情を変えない。
アミ「・・・・・生きてるに決まってるさ。」
勇者飯田「??」
アミ「私は、魔王軍なんだから。」
- 140 名前:かおりとあゆみ 投稿日:2001年07月13日(金)05時31分44秒
- 勇者飯田「!!?」
アミ「まだわからないの?私が隠密、、スパイとしてあの村に潜伏し、
魔王軍の手引きをしたんだよ。」
アミは少し感情的になりながらもはっきりと喋る。
勇者飯田「え、、、え!?」
飯田にはそれでもまだ飲み込めない。
アミ「いい?最初っから全部そのためだったのさ。
あゆみなんて子は、最初からこの世に存在し無かったんだよ。」
飯田「あ、、、」
飯田の頭に思い浮かんだ。
あゆみが、手稲村についてよくかおりにたずねていたこと。
それは、あゆみが早く村に慣れようとしているためだと思っていた。。。
なるべく良くわかるように、出来るだけ詳しく、かおりはあゆみに村について教えた。
自分の話を笑顔で聞いてくれたあゆ姉。
あゆみが来てたった二ヶ月後、村は無くなった。
- 141 名前:祠前(カオリVSアミ) 投稿日:2001年07月13日(金)23時55分48秒
- カオリ「なんで・・・あんなことしたの?」
アミ「それが隠密としての仕事」
カオリ「仕事って・・・
本当にそう思ってる?」
アミはその問いに答えず、握りしめた剣に視線を落としている。
カオリ「答えてよ、あゆみちゃん!」
カオリも必死にくらいつく。
アミ「ウルサイ!
アンタの言ってるあゆみなんて人間、この世に存在しなかったんだよ!」
アミはカオリに見向き、カオリ以上の気迫でそう言い放った。
急に振り返るので髪がおいてけぼりをくったかのように、彼女の顔にまとわりついている。
その髪の間から見えた瞳は見開かれ、狂気すらも帯びていた。
アミ「ハッ!」
アミが一直線にカオリに向かい、二人の剣が硬質の音をたてる。
アミはカオリの斬り付ける力を流すようにし、カオリの真上に体を翻す。
飛び越えての後方撃ちかと思い、カオリが振り向きざまに剣をあたえるが、アミの体はカオリから離れた位置にあった。
アミ「真己、衣吹、予定変更しよう
この女の口を2度と開かれないよう叩きのめしちゃる」
アミは短刀を持った両手を大きく振り上げ、カオリに身構える。
柄を親指で握るようなそのフォームはアミの細い体つきを大きく見せていた。
真己「そうくると思ったよ」
カオリが後方に視線をやると、真己と衣吹がカオリを取り囲むように広がっていた。
先程アミが向かって来たのはこのためかと気付く。
見るとアイボン達はごまの影に隠れている。
衣吹「3人そろったからにはさっきにようにはいかせないよ」
真己「さっきの借りを返す!」
アミ「妹の仇を打ちたいなら、そっちからかかって来な」
カオリ「・・・・ともちゃん・・」
カオリはそう一言呟くと、アミ目掛けて駆け出していた。
- 142 名前:祠前(カオリVSシェキドル) 投稿日:2001年07月13日(金)23時56分57秒
- 文章で表現しきれなかったので図説
アミ
衣吹 真己
勇者飯田
↓交錯↓
衣吹 真己
勇者飯田
アミ
- 143 名前:祠前(カオリVSシェキドル) 投稿日:2001年07月18日(水)02時41分03秒
- いくら戦闘のプロではないといえ、チームワークばっちりの3人で攻められると流石の勇者も苦戦してしまう。
それでも一応戦闘はカオリの攻勢で進む。
バトルマスター直伝の剣闘術は3人に攻撃のスキをほとんど与えない。
真己は足腰を使って真正面からカオリの剣を受ける。
衣吹はステップを切り返してカオリの長剣をギリギリで避ける。
二人とも血の気だっている勇者の敵ではない。
唯一勇者サイドに穴があるとすれば、それはやはりアミなのだろうか。
フォームからして特異だったが、アミの戦闘スタイルは今までに剣を交えたことのないタイプだった。
カオリの一撃を受け止めるような姿勢で構えているのだが、まさに一撃を与えた瞬間に身をかわすのだ。
力を流されたようで一瞬だけカオリも姿勢をぐらつかせてしまう。
しかしそれも一瞬のことで、他の2人にすら攻撃の隙を与えるようなことは無い。
この3人、バラでかかってきたら数秒でカタをつけることができるだろうに。
そう思ってカオリはアミを睨み付ける。
衣吹と真己の攻撃は間合いを意識し過ぎた単純なもので、歴戦を経た勇者は目を閉じてでも避けることができる。
ただこっちが息をきらしてこの冴えない攻撃を受けているのに、3人で闘っているせいかアミは息ひとつきらせていない。
とは言っても他の二人はゼイゼイいいながらカオリを捕らえようとしているのだが。
一気に決着をつけようとしても、いかんせん3人とも守勢を貫いているためにカオリも攻めきることが出来ない。
先程と同じような詰め方を仮想してみるのだが、どうしてもアミという要素が大きく響いてくる。
カオリは冷静にダメージを与える術を模索する。
つじ「1たい3でもいいらさんがこうげきしつづけてるのれす」
Д<「なんや、流石は勇者やな」
あさみ「でも攻撃し続けてるわりには決定打に欠けてますよねえ」
- 144 名前:挿話・矢口とヨッスィー 投稿日:2001年07月18日(水)02時42分15秒
- 矢口「なあヨッスィー」
夜もあと1時間程あけようかという時間に、矢口はトイレから帰ってきたヨッスィーに声をかける。
先程ヨッスィーの過去の話が終わり、既に2時間は経っているだろうか。
寝ていると思っていたのにいきなり声をかけられ、ヨッスィーは一瞬驚いた表情をつくるも、すぐに布団に包まる矢口を見て笑みを浮かべる。
ヨッスィー「なんです?矢口さん」
矢口「ヨッスィーって・・・バトルマスターなんだよね」
ヨッスィー「え、ええ、、、」
そんなことを突然言われても当惑してしまう。
ヨッスィー「どうしたんですか?
急にそんなこと」
矢口「こないだっから思ってたことなんだけどさあ
武道家って無力だよね」
ヨッスィー「え?」
思わず矢口の言葉を聞き返してしまう。
矢口「だからさ、格闘家とか戦士とか、武道家って魔導師と比べて役にたたないんじゃないかって
こっちは直接武器とか拳が届かないと攻撃できないのに、あっちは遠くから攻撃できるし」
ヨッスィー「あー、はい。なるほど」
矢口「四天王戦の時だって矢口と裕子二人がかりでも勝てなかったのに、
ヨッスィーでさえこんなボロボロになったのに、
他の二人はすごい元気ですぐに薬草摘みなんて行っちゃって」
ヨッスィー「ふんふん」
矢口「ヨッスィー位強ければ別だけどさ、
矢口なんてここのパーティーにいたって役立たずなんじゃないかなって思ったんだ」
矢口はうつろな目でそう言って、自分の髪を指にまきつけている。
矢口「ヨッスィーはいて、カオリがいて、
武道家なんてそれだけいれば十分だろうって・・・・」
ヨッスィー「私もバトルマスターの称号を得た人間、
あらゆる武具と、それを使う武道家を見てきました。」
- 145 名前:挿話・矢口とヨッスィー 投稿日:2001年07月18日(水)02時42分45秒
- 矢口「えっ」
今まであいづちを打つだけのヨッスィーが急に語り出したので、矢口は驚いて聞き返す。
ヨッスィーはなおも続ける。
ヨッスィー「バトルマスターと呼ばれるからには、あらゆる武器の使い方を知っています。
剣や槍、楯などの一般的な武具、
斧や鞭などの本来は武器外の凶器、
銃や弓、ブーメランなどの飛び道具、
もちろん矢口さんのように武器なしの格闘術も叩き込まれてます。」
矢口「それは・・・」
ヨッスィー「幼い頃、親からしこまれたものでもありますし、その後会得したものもあります。
島に行った時は石を投げることから始めて、地形戦術も独学で修得しました」
ヨッスィーはそこまで言うと、手を口許に持っていき、ふっと息をつく。
ヨッスィー「前の勇者に出会った頃、私は自分の力しか信じられなくなっていて、
個人技に秀でたものが最強の戦士であると思い込んでいました。」
矢口「違うの?」
ヨッスィー「実戦で1対1の戦闘が行われることなど、そうありません。
強い相手に挑む時は必ず複数人数で行きますし、
同じ実力でも複数で攻めれば圧倒的有利な戦況を作りだせます。
どんなに強い人間でも複数に取り囲まれれば苦戦する。
そのため、人は必ず冒険に同行者を求めます。」
矢口「同行者って・・・」
ヨッスィー「その同行者の集まりが、俗に言うパーティーです」
矢口「でもパーティーってのはさ、
強い者は強い者と連れ立つもんだろ」
ヨッスィー「いくら個人技に秀でてる人間であろうと、
剣士が3人いたところで戦力は3倍にしかなりません」
矢口「どういう、こと、、」
ヨッスィー「ところが一人の剣士、力はそこそこの弓使い、体力の無い神官がパーティーを組めば、
戦力は3倍どころか5倍にも10倍にもなります」
矢口「でも、今のうちらのパーティーには剣士が2人もいるじゃないか
それにナッチーだっている。
いくら色んなジョブの人間がいたほうがよくても、武道家は4人もいらないだろ」
ヨッスィー「矢口さんは・・・・
ウィザードコンプレックスにひどく捕われているようですね」
- 146 名前:挿話・矢口とヨッスィー 投稿日:2001年07月18日(水)02時43分09秒
- 矢口「ウィザード・・・・
何それ?」
ヨッスィー「武道家がよくなる精神状態です。
魔導師の派手な魔法などを間近に見て、自分に自信を持てなくなるんです。」
矢口「矢口は自分が無力だってのは昔からわかってたよ。
でも現に9人のパーティーに4人も武道家はいらないって……」
ヨッスィー「それは大間違いですよ」
ヨッスィーは矢口の顔を直視して、そう強く言い聞かせる。
ヨッスィー「結局のところ神官や魔導師は補助員に過ぎません
実際に敵を斬り付けられる人間が、少なくとも半分は欲しいところです」
矢口「そんなこと言ったって、魔法でやっつければいいじゃないか!」
矢口はどんどん声を荒げていく。
ヨッスィー「さっきも言ったように、戦闘とは複数人数によるものです」
矢口「だから!?」
ヨッスィー「そうカッカしないで
戦闘には全ての仲間と全ての敵、そして地形や体調など様々な要素がからみます。
そんな時に最も必要なのは応用力です」
矢口「応用力ならいっそう魔法使いのほうがあるじゃん
火に水に雷に!」
ヨッスィー「それじゃあ単なるマジシャンですよ
応用力イコール何でもできる、という意味ではありません」
矢口「じゃあ、どういう意味だよ」
ヨッスィー「格闘をやってきた矢口さんなら分かるはず
相手の攻撃を封じることが、戦闘を有利にする要であることが」
矢口「それは・・・」
ヨッスィー「魔法は確かに強い。
広範囲に絶大な威力の衝撃を与えられる。
でも最大のネックはその詠唱時間。
乱戦を闘い抜くのに魔法使いが先頭に立つことはできない」
矢口「そんなこと言ったって、魔法唱えるのなんかほんの数秒‥‥」
矢口はそう言いかけて、自分の言葉を飲み込む。
ヨッスィーの目が、絶対的な狂気をはらんでこちらを見据えていたから。
ヨッスィー「数秒の間に武道家は刃で斬り付け、首を絞めることができるんです」
- 147 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時40分22秒
- 状況は変らない。
あいぼん達はこそこそと隠れながら、、
Д<「あー、じれったい、なんとかならんのかいな?」
つじ「む〜。」
あさみ「どうしよう。何か役にたちたいね。」
つじ「む〜。。」
考えこむ辻。
つじ「そうれす!、やぐちさんのときみたく、
あさみしゃんがてきをあやつるっていうのはろうれすか?」
Д<「ん?、おお!なんや、そないなことできたんかい。早よやってや。」
あさみ「駄目だよ。それはりんねちゃんがいないと。2人の合体技だから。」
つじ「あーっ、、、そうれしたか。ざんねんれす。」
肩を落す辻。あいぼんは少し考えた。
Д<「ん、、、ちょい待ち。がっかりするのは早いで。」
つじ「?」
あいぼんは得意げな顔をしてみせた。
Д<「これならどうや?モシャスッ!!」
ドロン
あいぼんはりんねに化けた。
つじ「ないすあいりあれす。あいぼん」
あさみ「おー、すごーい。そっくり。」
りんね(Д)「ふふん。」
あさみ「あ、でも、ダンスはどうするの?左右対称の動きが不可欠なんだけど。」
りんね(Д)「んげ。そんなん見たこともないわ。」
あさみ「じゃ、今少し教えようか。」
あさみが踊り始める。あいぼんはまじまじと見つめる。
その間、辻が戦いの方へ目を戻していると、
つじ「ああっ!!いいらさん!!」
- 148 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時43分35秒
- りんね(Д)「!?、どないした?」
3人が注目すると、飯田がついに捉えらていた。アミに一撃をあびたところだ。
衣吹、真己が接近し、たたみかけに入る。
りんね(Д)「こ、こりゃ、ぐずぐずしてる暇は無いで。今すぐやるしかない。」
あさみ「え、ダンスは?」
りんね(Д)「そんなもんぶっつけでやったる。なんとかするわ!うちは天才やねん」
あさみ「えー、、、」
辻はこくりと頷いた。
つじ「そうれすね。あいぼんがんばってくらさい。」
あさみ「え?良いの?辻ちゃん?」
つじ「いいれす。あいぼんはすごいんれすよ。」
そう言うと、辻は大声で叫んだ。
つじ「おーーーい!そこのいぶきしゃん!!」
衣吹「!?」
りんね(Д)「こっちむいたで!今や!」
あさみ「う、うんっ!」
あさみがふにゃふにゃと踊りだす。
隣のあいぼんはそれを見様見真似で踊る。
衣吹「?」
あさみ「こーいーが、すーてーきなー、きーせつ、なのねー♪」
つじ「あいぼん、わんてんぽおくれてるれすよ!」
りんね(Д)「わ、わかってる。けど難しいねん。」
衣吹「は?何あれ?」
真己「衣吹っ!何余所見してるんだ!」
真己が苛立って声をかけた。
衣吹「あ、ごめん。」
衣吹は飯田の方へ向き直ってしまった。
- 149 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時47分19秒
- つじ「あー、しまったれす!」
りんね(Д)「おっしゃ!このダンスのこつ、だんだんわかってきたで。」
つじ「おーい!いぶきしゃん!」
辻が再び呼びかける。
衣吹「・・・・」
しかし、衣吹は振り向かない。
りんね(Д)「ちゃうでのの。注意を引くってのはこうするんやで!
衣吹っ!いぶきーーーっ!!シャッフルからハブられて
クレヨ○し○ちゃ○の歌なんか歌わされとるシェキドルの衣吹っっ!!」
あいぼんは大声でわめきたてた。
衣吹「うっ、うるさいなあ。なんなの?なんの文句があるっての??」
つじ「こっちむいたれす!!」
りんね(Д)「かかったな!これを見るんや!」
あさみ「こーいーが、すーてーきなー、きーせつ、のなかー♪」
再び、あいぼんとあさみはふにゃふにゃと踊った。今度はぴったりと息があっている。
衣吹「??、うっ、何??なんか、気持ち悪く、、いや、良く、、」
あさみ「ぐうぜんでもー、うれしいのよだーりーん♪」
衣吹「いっ、、体が!!」
衣吹は体の自由を奪われた。
つじ「やった!」
あさみ「おーけい。もう術中よ。」
りんね(Д)「ふ、ふい〜。しんどー。」
あいぼんは姿を戻し、座りこんだ。
つじ「おつかれさまれす。」
Д<「おー。」
- 150 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時49分20秒
- あさみ「となりの人をやれっ!」
あさみは指を指して衣吹に命令した。
衣吹「!?」
ドカッ!!
衣吹はグローブをはめた手で、飯田を切ろうとする真己を殴りつけた。
真己「げほっ!な、何??突然!!」
衣吹「あ、ご、、ごめん。体が勝手に、、」
と言いながらも今度は剣を振って真己を攻撃する。
真己「うっ、、くっ、、、操られてるっていうの??」
真己は衣吹の攻撃を受けながら、ちらっとレッドドラゴンに隠れている3人を見た。
真己「あ、あの子たちね、、、まったくとんでも無いことしてくれる。。」
勇者飯田「?!」
アミ「??」
飯田とアミもすぐに衣吹が真己に切りかかっているのに気付いた。
2人はあらためて向かいあった。
- 151 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時54分02秒
- 飯田は冷めた表情でアミを見つめる。
アミは、少し哀しそうに目を泳がせている。
勇者飯田「一対一だね。」
アミ「・・・・、そうだね。」
勇者飯田「・・・・・・・」
アミも飯田の目を見つめた。
アミ「本当にそう思ってるかって聞いたね。」
勇者飯田「・・・・うん。」
アミ「思ってるさ。私はね、ずっとあんたの、、私を信じきった目がうざったくて、大っ嫌いだったんだよ。
何故、私はあんたを騙しているのに、そんな目で見られなきゃならないんだ?ってね。」
勇者飯田「・・・・・」
アミ「だから、仕事をするのになんの抵抗も無いどころか、早く裏切りたくてしょうが無かったんだよ。
わかった?そして私がともちゃんを頃したんだ。。。どう?私の事、憎いでしょ??」
勇者飯田「・・・うん。憎いね。」
アミ「じゃあ、私を頃しなさい!!私は、敵であるあんたを頃す!!」
勇者飯田「・・・・・・・うん。そうする。」
カッ!
言うが早いか、飯田は切りかかる。
アミ「うっ!(速い!!)」
カッカッカッ!!
飯田は消耗していはずだ。自分は消耗しないように戦ってきたはずだ。
それでも一対一だと、これほど差があるものなのか、、、衣吹は手が出せない。
勇者飯田「(ともちゃんは氏んだ。この人が頃した。ともちゃんを頃した!!)」
飯田は無我夢中で切りかかる。
アミ「(くっ、重い!、それにフェイントを混ぜつつも正確に急所を狙って来てる。強いよ。。)」
つじ「い、いいらさん、、、」
Д<「おー、めっちゃ押してるなあ。ええ感じやん。」
- 152 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時57分21秒
- しばらくして、
衣吹「っ!!」
真己と衣吹の同士討ちに決着がついた。
真己「はぁ、、はぁ、、、」
衣吹「・・・・・・・」
衣吹は気を失った。
真己「はぁ、、はぁ、、これで、意識が戻れば、あやつりもとける。」
この戦いで受けた真己の傷も深いらしく、激しく呼吸を乱し、よろけている。
Д<「あ!衣吹がやられた!!」
あさみ「そうみたい。」
真己は隠れている3人を睨んだ。
真己「はぁ、、はぁ、、、あんた達、覚悟しなさいよ!!」
Д<「く、来るで!どど、どうする??」
あさみ「も、もう操りには引っかからなそう。」
Д<「それ以前にうちが限界や。。こ、こらのの!逃げるで!!」
あいぼんは辻をぐいと引っ張った。
つじ「んー、、」
辻は飯田とアミの戦いに見入っている。
真己はフラフラとあいぼん達のほうへ近づいてくる。
Д<「こら、ののーっ!」
真己があいぼん達に近づいた。
真己「氏ね!!」
Д<「う、う、うなーー!!」
あさみ「きゃーー!」
「ちょっと待ったあ!!」
- 153 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)07時59分34秒
- 突然あさみ達の後ろから声が。
真己「!?」
真己は驚いて手を止めた。
「や、、やっとう、、うちの、、、、で、出番や、、な。」
Д<「ああっ!ミチーヨはん!!今ごろどうしたんや!?」
ミチーヨは剣を杖にしてやっと立っている。
ミチーヨ「ずっ、、、っと、、いた、、わよ。。。そ、、の下に」
ミチーヨが指刺した先には白いアザラシが1匹転がっていた。
どうやら目がさめるより先に魔法の効力が切れてあざらしのゴマになってしまったらしい。
Д<「そういやそやったな。わすれとったわ。」
あさみ「出番って、大丈夫ですか?あなたもフラフラじゃないですか。」
ミチーヨ「うちをあ、、、甘く見るんやない。これでも、うちは、、」
Д<「ま、本人がああ言ってることだし、やらせてみたらええんちゃう?
たぶん、怪我人同士、ええ勝負になるやろ。」
あいぼんは、あさみと辻の手を引っ張って、さっと平家の後ろへ回った。
ミチーヨ「まだ、言い終わって、、無いんですけど、、」
真己「はぁはぁ、氏に損いはどいてな!!」
真己は平家に切りかかった。
ガキィ
ミチーヨはニヤリと笑い、剣を引きぬき、受け止める。
ミチーヨ「なめんな!二流隠密!!うちは氏にぞこなってからが勝負なんや!」
平家ミチーヨは元忍者。隠密とはそれなりに能力がかぶる。
そして仕事にはプライドを持ってやっていた。(はず)
しかしミチーヨの体からバキバキと音がする。
ミチーヨ「うがっ、、(アバラが3本、、、)」
- 154 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)08時01分14秒
- 飯田は火に飲まれたともの姿を思い出す。
熱いよ!怖いよ!、ともの声が聞こえる。
勇者飯田「(苦しかったよね。ともちゃん!今、仇を討つからね。)」
ガッガガッ
飯田の回転が更に上がる。アミは手がしびれ始める。
Д<「なんや、なんだかんだで何とかなりそうやな。」
つじ「・・・・・・」
辻は眉をしかめて、口を少し尖らせている。
Д<「ん?ほんとにどないした?のの??」
- 155 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)08時02分34秒
- ミチーヨ「ぜぇ、ぜぇ、、、」
ガキーン!
真己「はぁ、、はぁ、、、」
バキーン!
怪我人同士のスピード感の無い戦いが繰り広げられている。
ミチーヨ「ぜぇ、、ぜぇ、、や、やるな!」
ゴキーン!
真己「はぁ、、はぁ、、そ、そっちこそ!!」
ベキーン!
しかし、
バキッ
ミチーヨ「がっ、(肩が、、、)」
ミリッ
ミチーヨ「あ゛っ、、(足が、、)」
メキッ
ミチーヨ「う゛っ、、(腕が、、、)」
真己「これは、、勝てる!、、やっ!!」
ガン!!
真己は上段から剣を振り降ろし、体重を乗せた。
ミチーヨは体を支えきれずにひざまずいた。
真己「とおっ!」
ガン!!!
真己がもう1度剣を振り降ろす。確実に先の一撃より剣が沈む。
真己「ふふっ」
もう1撃か?剣を振りあげる。
- 156 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)08時05分57秒
- 真己「とどめっ!」
しかし、
ボボムッ
その振り下ろそうとした一撃は、一発の衝撃に邪魔をされた。
真己「ぐぁ!、、な、なんだ?」
真己は炎に包まれた。
ミチーヨ「なんや?」
ミチーヨが後ろを後ろを振りかえると、
「あはっ、、どうしたのお?みっちゃん。苦戦してるのお?」
ミチーヨ「あ、あんたなあ。。」
真己ももう限界であった。暴れるうち、火は消えたがその場に倒れた。
ミチーヨ「(苦戦の原因はあんたやっちゅうねん。
しかも美味しい復活でええとこもってこう思ったのに、それも結局あんたかい!)」
ぶつぶつ、、
何故か声に出して言わないミチーヨ
- 157 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)08時08分57秒
- ガキガキ、、
飯田の勢いは衰えない。髪が振り乱れるのも気にせず、一心不乱に切りつける。
すぐに決着がつきそうだ。
アミ「くっ、、」
勇者飯田「(頃してやるっ!!、ともちゃんの受けた苦しみ、お前も味わえ!!)
はっ!!」
ガキンッ!!
飯田はついに、アミの剣を弾いた。
アミ「しまっ、、」
クルクルとアミの剣が宙を舞う。
勇者飯田「氏ねっ!!」
アミ「っ!」
飯田の剣がギラリと光る。アミは目を閉じた。
目を見開いた飯田が、剣を突き刺す。
ズグッ!!
鈍い感触、
勇者飯田「やった!」
飯田の口元に笑みがこぼれる。剣から血が滴り落ちるのが見えた。
「ううっ、、」
唸り声が聞こえた。
ザマアミロ!顔を見せろ!とどめがいるか?
飯田は剣から流れる血をたどりながら、ゆっくりと顔をあげる。
Д<「の、の、、、ののーーー!!」
あいぼんの声が響き渡った。
- 158 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)08時15分22秒
- つじ「ら、らめれす。いい、、らさん。。」
勇者飯田「つ、、?」
剣が刺さっていたのは、両腕を広げて飯田の目の前に立っている辻の肩だった。
あいぼんが駆けつけた。
Д<「ののっ!何やってるんやー、大丈夫か??ののっ!!」
あいぼんは辻を支えた。
勇者飯田「な、、、なんで??」
飯田は辻を見たまま混乱し、硬直した。
Д<「何ぼーっとしてんねん??はよ剣ぬいたってや!!」
あいぼんは飯田を睨み付けて叫んだ。
勇者飯田「あ、、」
ずぐっ、
つじ「うっ、、いたいっ、、」
剣が引きぬかれた。血があふれそうになるが、あいぼんがなんとか傷口を抑える。
飯田の顔面が蒼白となった。やっと自分が辻を刺したことに気づいた。
勇者飯田「つじ!?つじ!?大丈夫??つじ!?」
Д<「話しかけるんやない!」
あいぼんは飯田を一括した。
つじ「い、いいらさん。。。あ、あいぼん、、つ、、つじは、へいきれすよ。」
辻は力なく笑って見せた。
Д<「喋らんでええ!じっとしとり!!
う、、うち、ごまはん呼んで来ますわ。」
あいぼんは心配そうにしながら辻を飯田に任せ、立ちあがった。
勇者飯田「なんでえ??、どうして?、、、どうしてこんなこと??、辻ぃ??」
- 159 名前:祠前 投稿日:2001年07月18日(水)08時22分00秒
- つじ「い、いいらさんは、、いつも、やさしいかられす。」
辻が小声で苦しそうに言った。
勇者飯田「え、なんて?」
つじ「いつも、、やさしいいいらさんが、、いつもみたいじゃなくて、、こわくて、、らから、、、
いいらさん、まえにいってたじゃないれすか。
ゆうしゃはころすためにいるんじゃなくて、たすけるためにいるって。。らから、、、」
勇者飯田「あ、、、かおりが言ったこと、覚えて、、、
ごめんね、ありがとう辻。ありがとう。ごめんね。」
飯田の目から涙があふれた。そして辻を、泣きながら抱きしめた。
辻は、それだけで痛みが少し和らいだ気がした。だんだん意識が遠のきながら。
かおりの復讐心が、大事な大事な辻を傷つけてしまった。
ごめんね。でも、辻が思い出させてくれたよ。
そうだ、かおりは、復讐するために勇者になったわけじゃない。
勇者飯田「ありがとう。」
アミは座りこんだまま考えた。
アミ「(生き、、残っちゃった。頃されてもいいかなんて、考えてたのに。
でも、、、こうなった以上は残ってる仕事をやらなければ。)」
周りを見渡すと、衣吹も真己も立ってはいない。
アミ「(やられた。。。もう時間が無い。あの子を呼ぼう。弦を切るには今しかない。)」
アミは立ちあがり、飯田が見ていない隙に剣を拾って駆け出した。
アミ「(うざったかった。嫌いだった。でも、全部終わってからやっと気付いたんだ。
それが一番、、大事な物だったことを。
もう、、、遅かったけど。
忘れてた、いや、忘れようとしてたのに、、まさか、生きているなんて思わなかった。
ここに来て再会して、驚いたけど嬉しかった。
私は、この仕事を辞める事はできない。でも、私はかおりになら、裁かれてもいいんだ。)」
- 160 名前:祠前→川沿いのルート 投稿日:2001年07月19日(木)00時29分06秒
- Д<「アッ!アイツ逃げよるで」
背後であのこざかしいガキの声が聞こえる。
どうやらかおりが私を追おうとしているようだ。
あさみ「あの人足速〜いぃ」
当たり前だ。
私は魔王軍隠密部隊一の持久力を持っている。
そこいらの人間においつかれるほどトロくちゃやってけない商売だ。
あの娘は勇者、私は隠密。
どう考えてもサシでかなう相手じゃない。
どうせタイムリミットもせまってきていた。
もしカオリを倒せなくても、刺し違えれば弦は切断させられる。
2対1でも刺し違えるのは難しいだろうが、それはしょうがない。
任務のために、私はそう思って行動するほかない。
それは隠密としての宿命。
アミ「!」
川辺に向かう道を歩いていると、道の先に光るものが見えた。
まだ川辺にはでないはずだ。
ということは、、、、
???「片付いた?」
やはりあの娘だったか。
作戦前に何度かあっていたが、今夜の彼女の下半身には、ちゃんとした細い足があった。
アミ「祠の前にあとひとり」
私は彼女の前で立ち止まり、一応の敬礼をする。
部隊長とは言え、隠密は階級に関係なく礼節を重んじるのだ。
???「他の二人は?」
アミ「川沿いは片付いてるだろ
林道からも誰も来てない」
???「そうじゃなくって‥‥」
すぐには彼女の言ってることが分からなかった。
???「あなたの二人のお仲間は?」
アミ「ああ、そうか、、、
もう既に倒れてるよ。氏んだかはわからないけど。」
???「そう・・・・」
それだけ呟くと、彼女は先に祠に向かって走り出した。
私も続いて駆け出す。
しかし数秒もしないうちに彼女は立ち止まって、私に振り向いた。
???「走ってきたんでしょ
少し休まなくって大丈夫?」
極めて事務的に彼女は尋ねる。
隠密は気を使ってもらうような仕事じゃない。
私は口許で笑みをつくり、彼女に追いつく。
アミ「大丈夫
私はタフさならだれにも負けないから」
- 161 名前:祠前 投稿日:2001年07月19日(木)00時29分52秒
- アミが走り去ってしまい、死屍累々の祠前につかのまの安息が訪れる。
Д<「あと何分?」
あさみ「何が」
Д<「日の出まで」
皆消耗激しく、口数は少ない。
あさみ「あと・・・1時間はきってる」
Д<「まだまだ来るやろか」
あさみ「どうだろ」
腕時計から視線を外し、あさみはカオリを見遣る。
カオリは倒れた辻を抱え込むようにして、座っている。
遠目から見てもすごい出血量だ。
止血したほうがいいとはおもうのだが、カオリはつじをぼんやり見ているだけで、なにも処置を施そうとはしない。
しかも他を寄せつけないオーラを漂わせていて、あさみもつじには近づき難くなっている。
Д<「こっち来たってことは、ごまはんは勝ったんやろうか」
あさみ「どうだろ」
Д<「梨華ちゃんどうしてるだろ」
あさみ「梨華ちゃんも、、、負けてないと思う」
その言葉に、アイボンはあさみの顔を見つめる。
Д<「どうしてそう思うん?」
するとあさみはどこか楽しむような表情で、こう言った。
あさみ「なんとなく、かな」
- 162 名前:祠前 投稿日:2001年07月19日(木)00時30分37秒
- カオリ「また来たの?
1対1なら結果は目に見えてるでしょ」
去ったと思ったらすぐに戻って来たアミを睨み、カオリは牽制する。
アミ「弦、切らせてもらいに来たよ」
彼女はただそれだけ言うと、歩みを止めずに祠に向かう。
カオリ「あなたも弦を切れないこと、私は知ってる」
目をあわすことなく、対峙したカオリはそう言い放つ。
アミ「鎌かけるなんて、成長したじゃん」
まるで先程の会話がなかったかのように、アミは言葉を発している。
カオリ「弦は緑の光りを持つ者にしか切れないって聞いた」
カオリがそう言うと、アミの歩みが止まる。
アミ「それなら話は早い」
不敵な笑みとともに、アミがカオリ向かって駆け出してくる。
先程3人に囲まれた時のように、交錯するつもりだろうか。
そうはさせまいとカオリは身を傾けて斜方向から素早く剣を振るう。
しかしアミはさばいて攻撃につなげるでもなく、単純に攻撃を避ける。
不思議に思いつつもカオリが振り向くと、真正面から赤い光が飛び込んで来た。
カオリ「!!」
衝撃をまともにくらい、カオリは一歩後退する。
それでも吹っ飛んだりしないのは、流石は勇者だ。
今の衝撃がアミによるものでないことは明らかだ。
やはり彼女は仲間を連れてきたのか。
カオリ「誰?」
カオリは光の放たれた方向に向かって叫ぶ。
そこに立っていたのは、ベビーフェイスに合わない派手な格好をした一人の少女。
そして彼女はカオリの姿を認め、ゆっくりと口を開く。
???「私はメロン谷在住のA級ラミア、マティーラ亜弥
またの名を、魔王軍フリーランス・閃光の亜弥」
- 163 名前:祠前 投稿日:2001年07月19日(木)01時40分54秒
- 石川が祠前に辿り着いた時、あたりには敵味方何人もの人間が倒れていた。
中にはボロボロになって突っ伏しているミチーヨの姿や、見たことのあるようなゴマアザラシも確認できた。
あさみ「梨華ちゃん!」
石川「あさみちゃん!
どうしたの?この・・・倒れている人たち」
あさみ「みんなここで戦闘して倒れちゃって」
Д<「おおっ梨華ちゃん
丁度良かった。今勇者はんが敵二人に囲まれおって・・・」
アイボンに言われて祠の真ん前を見ると、勇者飯田が祠を背にして戦っている。
相手はずいぶんと軽装の女性とそれ以上に薄着の少女。
Д<「梨華ちゃん、助けに逝ったてや」
石川「う、うん」
アイボンに促されるままにカオリ達に近づこうとしたその時、石川の前にサッと一つの影が姿を現した。
谷村「もう私達が逝っても何もならないわ」
石川「谷村さん!」
Д<「誰やこの姉ちゃん!
今気配感じへんかったで」
谷村「さっきも言ったでしょ
どうせ後20分程でタイムアップよ
既にグランドラミアを先頭に神官達がメロン谷の中枢部を発っている」
Д<「は?」
谷村「神官団が祠に到着した段階で“試練の夜”は終了する。
それまでに弦が切られるか、それを左右することはもう私達にはできない。」
石川「どういうことですか?」
谷村「見てみなさい、あの3人を
疲労困憊の勇者、どうってことない隠密、一見かよわげな少女。
それでも既に力を使い尽くした私達の手の届くレベルじゃない」
石川「そんなの……」
谷村「あの中に杖でも持って飛び込む気?」
そう言って谷村に続いて3人に目を向けると、もはや石川が完全には視認できないようなスピードで、彼女達の戦闘は進んでいた。
谷村「静かに観戦してましょ
私達は手が届かない、運命って奴を」
- 164 名前:祠前 投稿日:2001年07月19日(木)01時41分18秒
- カオリほぼ一方的な攻勢でアミに斬り付ける。
しかしアミはその全ての打撃を避け、受け止め、さばいてくる。
その動きはまだまだ敏捷で、疲れを感じさせない。
そして何より気になっているのは亜弥の動きだ。
とりあえず祠を背にして戦っているが、いつ竪琴に手をかけられるか分からない。
そして何より、カオリの計算を狂わせるように閃光を放ってくるのだ。
閃光の亜弥、という名は伊達じゃないようだ。
目くらましのような暖色の光が、カオリの神経をいたぶる。
視覚への影響は甚だしく、カオリはアミの動きをとめるのに、連撃をしなくてはならない。
そうでもしないとアミの動きを掌握できないのだ。
亜弥の閃光がなければアミなどラッシュをかけてすぐに倒せるのに。
そう思っていると、アミのあまりの速度に打撃をあてられなくなってきた。
まずい、全快の時ならともかく、こうも体力を消耗しているといつもの力が出せない。
時折アミがさばいた後に打撃を加えようとするようになった。
自分より実力下位のはずの少女ふたり。
それなのに、2対1に慣れないカオリはどんどん苦境にたたされていく。
アミの受け止める一撃一撃が重くなってきた。
日の出まであとどれくらいだろうか。
自分の体力の限界を感じつつ、カオリはただそれだけを思っていた。
- 165 名前:挿話・矢口とヨッスィー 投稿日:2001年07月19日(木)01時41分44秒
- ヨッスィー「私達は魔王の打倒を目的としています。
今はまだその準備段階と言ってもいいでしょう。
今後、魔王に挑むようになれば、人数が分散したところで敵に囲まれることもあるはず。
そんな時、魔導師や神官を守るのは、武道家なのです」
矢口「守る?」
ヨッスィー「そう、囲まれた状況で魔法を唱えている余裕はありません。
相手の攻撃を受け、また素早い攻勢で次の攻撃を出させない。
それができる剣士や格闘家が、パーティーの仲間を守らなければなりません。」
矢口「でも、矢口はそんなすごいこと・・・・」
ヨッスィー「武道家にも色々なタイプがあります。
剣士などの万能なタイプ、
槍などを使う防戦重視タイプ、
短刀などを使う素早さを重視するタイプ、
弓使いなどの変則的なタイプ、
そして格闘家のように間合いを重視するタイプ。
あらゆるタイプがいる中で、近距離戦に適しているのは矢口さんのような存在です。
勇者にも魔法使いにも神官にも矢口さんにとってかわることはできない」
ヨッスィーはそう言うと矢口の肩を掴み、顔を向かせる。
矢口「そんな、照れるじゃないかよ・・・」
矢口は目をふせがちにそう呟く。
ヨッスィー「私達戦士の基本のスタイルは騎士であると言われています。」
矢口「騎士?」
ヨッスィー「そうです。
全ての武道家はナイトの心得、つまり守るべきものに命をかけるのが信条です。
武道家の真価が試される時、
それは守るべきものを背にして複数の敵に囲まれた時である。
そう思っていて間違いはないでしょう」
- 166 名前:祠前 投稿日:2001年07月19日(木)03時28分43秒
- Д<「ところで、誰かののを助けてやってほしいねん。」
あいぼんは、飯田によって仰向けに寝かされている辻を指した。
石川「?、、どうしたのお?血が、、、」
Д<「詳しい事は後にするけど、出血が酷いんや。
さっき、ごまが起きたと思って呼びに来たんやけど、またすぐ寝とるし。ったく」
(実はごまは回復魔法も使えるのだ。2のレス47参照。)
石川「それは大変ですねえ。でも回復っていっても、チャーミーももう限界で、、、」
Д<「(ちっ、役に立たんなー。)」
石川「え?」
Д<「なんでもあらへん。あー、でもどうしたらええんやー?ここままじゃののは、、」
あいぼんは頭を抱え込んだ。
あさみ「あ、もうすぐグランドラミアさん達が来るんでしょ?きっと何とかしてくれますよ。」
Д<「おお!、そうやなー。村田はんなら回復くらいわけないやろなあ。。
・・・・せやけど、もうすぐって20分か?
今のののにとったら、それはもうすぐやあらへん。もっと早くなんとか、、」
石川「でもそれ以外思いつかないよ?他に誰も回復できる人いないんだから。」
Д<「・・・・、村田はん達、こっちへ向かってるんやろ?、決めたで。そこまでののを運ぶ。」
あさみ「え、でもそんなこと誰が?」
Д<「うちに決まってるやん。ののを助けるのはうちの役目やねん。」
そう言うやいないや、あいぼんは辻に走りよった。
Д<「待ってろのの。1分でも早く連れてったる。」
ミチーヨ「(誰か、うちのことも少しは心配したって!!)」
- 167 名前:カオリ VS アミ・亜弥 投稿日:2001年07月23日(月)21時43分39秒
- 日の出間近、もうほとんど辺りは明るくなってきている。
単なる目くらましの閃光なら、亜弥は詠唱も構えることもなしに放ってくる。
そのためカオリは光りを避けることもできずに目がチカチカとしてきていた。
最も問題なのは、亜弥が両手を押し出すようにして何やら唱えている時だ。
最初にカオリをおそったような衝撃が鈍くおしよせる。
一瞬ではなく反応してから防ぎきるまでが長いので、どうしてもそこでアミに隙を与えてしまう。
アミが回り込んでくる方向を予測し、そこに衝撃波を放つも、目をつむった状態で攻撃があたるはずもない。
剣が向かってくるギリギリで剣をあてる。
剣がぶつかり、鋭い音がする。
しかし、アミの攻撃はそこで終わりではなかった。
カオリの打ち当てるだけの一撃は流され、その勢いは殺されずにカオリは体のバランスを崩す。
しまった、と思うヒマさえなかった。
アミがここぞとばかりに後方に周りこんでカオリの肩に襲いかかる。
いくら隠密が素早いとはいえ、普通に考えれば勇者の反射に傷を与えることなどかなわないはずだ。
しかしサーベルタイガー以来の連戦に加え、亜弥の閃光によって視覚的な判断能力が激減している状況で、カオリの左肩は自身を守りきることもできず、短刀を突き立てられたのだった。
カオリは左半身に走る激痛を無視し、アミと向きあう余裕もなく右手の剣を振るう。
左ならまだカバーしながら戦うことができる。
とりあえず一撃でアミを避けさせて間合いを取ろう、と。
それはあくまで間合いを取るための強引なぶんまわしに過ぎないはずだった。
少なくとも、カオリはそう思っていた。
- 168 名前:カオリ VS アミ・亜弥 投稿日:2001年07月23日(月)21時44分09秒
- しかしカオリの思惑に反し、アミはカオリの渾身の一撃を直に、それもとてもつもなく受け身の悪い体勢でくらった。
アミの左手にもたれていた剣は剣先を変えることなく、そのままの体勢で持ち主ごと吹っ飛ぶ。
アミは祠の外側の壁に仰向けで叩き付けられた。
多少戸惑いつつもアミを目で追うと、壁に埋もれるかというほど打ちのめされていた。
そして彼女の表情を確認しようとした時、アミと目があった。
まぶたはおりつつも、カオリを捉えて離そうとしないその視線。
ある程度距離をおいてみると、本当に細いことを実感するその体つき。
左手には、カオリの一撃を受けたそのか細い短刀。
そして、頬から滴る血が口紅のように艶やかな光りを帯びている、その唇。
カオリの背筋に走る物凄い悪寒。
恐怖心が先行してしまう。
アミ「‥‥‥‥‥」
アミが何やら呟いたようだが、それはカオリは聞き取ることができなかった。
そのままアミは吐血し、地面に附した。
その瞬間、全ての血の気が全身から退くようで、またカオリの体中が激痛を訴えた。
それは先程短刀を突き立てられた左肩だけではなかった。
そして、アミが無理な姿勢での受け身をとった理由を、ようやくカオリは理解した。
カオリの右肩のだいぶ深い所まで、アミのもう一つの短刀が刺さっていたのだ。
- 169 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年07月25日(水)20時52分39秒
- 激痛のあまりに飯田は右手に持っていた剣を手放す。
勇者飯田「つぅ…っ」
そして飯田はその場に倒れてしまった。
あさみ「勇者さんがっ!」
石川「早く助けに行かないと!」
谷村「待って!」
飯田の元に向かおうとする二人を谷村が制する。
石川「止めないで下さい!」
谷村「魔力の尽きた貴方が行ってもあの子に勝てないことくらいわかるでしょ?」
石川「でも…」
二人が話している間に、亜弥は竪琴の目の前まで歩んでいた。
あさみ「いけない、切られる!」
亜弥「(ありがとう、アミさん。ありがとう、私なんかに協力してくれた皆。)
いま終わらせるから。この弦を切って…)」
亜弥は右手に緑色のオーラを集中させ、その手を高く振り上げた。
- 170 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年07月25日(水)21時06分56秒
- 亜弥「これで終わりっ!」
亜弥は右手を振り下ろす!
しかし、弦が切られることはなかった。
そして亜弥は右手をかばうようにしてその場にうずくまる。
亜弥「うっ…。これは…」
亜弥の右手には小刀が突き刺さっていた。
ミチーヨ「なんとか…当たったみたいやな」
亜弥の腕に刺さっていた小刀は、ミチーヨが投げたものだった。
石川「ミチーヨさん、すっごーい!今まで何もしてなかったのに!」
あさみ「やっぱりやる時は一応やってくれるんですね!」
谷村「私も気付かなかったよ、気配がないっつーか影が薄いっつーか…」
ミチーヨ「(…こいつら…)」
- 171 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年07月25日(水)21時51分22秒
- 亜弥「ぐ…うっ!」
亜弥は力任せに右手の小刀を引き抜く。
亜弥「こんなことで終わらせないっ!」
そう言って再び緑色のオーラを纏わせる。
その時…。
ズガッ!
片膝を付いている亜弥の目の前に一本の剣が突きたてられた。
亜弥は恐る恐る顔を上げる。
そこには先程倒れたはずの飯田が立っていた。
勇者飯田「…あっち…見て…」
亜弥「え?」
そう言われて亜弥は飯田の指を刺した方向を見る。
亜弥「あ…」
亜弥の目の中には、まぶしく朝日が輝いていた。最も望んでいなかった朝日が。
勇者飯田「かおり達の勝ち…かな?」
亜弥「…」
???「どうやら、守りきってくれたみたいですね」
亜弥「…この声は…」
勇者飯田「ムラタ…さん…」
ムラタ「亜弥…。あなたの負けね」
亜弥「…」
亜弥はうつむいたまま何も答えない。
つじ「いいらさんっ!」
勇者飯田「…つじ…?大丈夫だったの?」
つじ「むらたさんがたすけてくれたのれす」
勇者飯田「そう…。よかった…」
そう言ったと同時に、飯田は再び倒れてしまった。
- 172 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年07月25日(水)22時07分54秒
- つじ「いいらさん!?」
ムラタ「動かさないで!」
ムラタは飯田に近づこうとする辻を引き止める。
ムラタ「傷もひどいけど…、何より出血がひどい。まずは治療できる場所へ運ばないと」
Д<「ののの次はこの人かい…」
あさみ「とりあえず運びましょう」
ムラタ「…亜弥、あなたは私に着いてきなさい」
亜弥「…」
???「まてまてまてぇ〜〜〜い!!」
ムラタ「…この声は?」
つじ「…まさか…」
Д<「かもなぁ…」
ワーダ「我こそは魔王軍の誇る大科学者、ワーダなりっ!」
- 173 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年07月25日(水)22時43分44秒
- ムラタ「魔王軍…」
つじ「しつこいのれす」
Д<「よく飽きんなぁ」
ワーダ「ええい、うるさいっ!今回は今までとは違うぞッ!」
Д<「その台詞もありきたりやなぁ」
ワーダ「ふんっ、ガキのたわごとは聞き飽きたわ!わしはそこの亜弥に話があるんじゃっ!」
ワーダは亜弥に向かって指を刺し叫ぶ。
亜弥「…博士…」
ムラタ「亜弥、この男を知ってるの?」
ムラタは亜矢に問い掛ける。
ワーダ「全く、この役立たずめが。お前がグランドラミアになれば、このメロン谷は魔王軍のものとなり
世界の制圧に一歩踏み出すことも夢ではなかったというのに。
わしの考えた計画が台無しじゃ」
亜弥「…そんな…。私がグランドラミアになったらそれ以後の谷の安全は保障するって…!」
ワーダ「おお、そんなことも言ったか…。しかしそんなことはどうでもよい。
世界を我が手に収めるためにも、少々手間を取るがわしが貴様等を始末しよう」
つじ「このひとははんせいしてないれすね」
あさみ「とりあえず根性曲がってる人だってことはわかったな」
ワーダ「ひゃっひゃっひゃ!この人型サイボーグを化したわしを前にそんな口が聞けるかな!?」
ワーダが服を脱ぐと、そこには機械化された体があった。
ワーダ「今回は防水加工もバッチリじゃ!誰にも邪魔はさせん!」
- 174 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)18時53分18秒
- ワーダ「まずは…そこの死にかけの勇者から楽にしてやる!」
そう言ってワーダは飯田に近づこうとする。しかし…
つじ「そうはさせないのれす!」
ワーダの前に辻が立ち塞がる。
ワーダ「お前は…、前もこの勇者と一緒にいたガキじゃな?」
辻は恐怖で震えながらも、その場を動こうとしない。
ワーダ「なら二人まとめて死んでしまえっ!」
ワーダが腕を振り上げる!
Д<「ののーっ!」
石川「勇者様っ!」
ガシッ
ワーダ「…あら?腕が動かん…」
飯田も辻も全く攻撃を受けた様子を見せていない。
Д<「あ、あんたっちゅう人は…」
あさみ「おいしいところで出てきますねぇ」
ワーダは背中の方で制されている自分の腕に目をやる。
ワーダ「…げっ!貴様は!」
その視線の先には、ごまの姿が映っていた。
ごま「ユウキを騙して殺そうとした分の借りは返させてもらうからね?」
- 175 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)19時14分00秒
- ワーダ「ふん、いくら怪力魔導師とは言えサイボーグ化したわしを止められるわけが…」
ワーダは自分の腕を掴んでいるごまの手を振り払おうとする。が、その時…
ベキッ
ワーダ「ん?」
バキ…ベキベキッ
ワーダ「…何じゃとおっ!?」
ごまはワーダの腕を握りつぶしている。
ワーダ「バ…バカな…」
ごま「どりゃあっ!」
ズドォンッ!
ワーダ「ぐえっ」
ごまはワーダの腕を片手で掴んだまま、力任せに地面に叩きつけた!
ワーダ「くっ…。この馬鹿力め」
ごま「こんなもんじゃ終わらせないよ」
ごまは右手に大きな火球を纏わせる。
そして、潰された右手を押さえながらワーダは起き上がる。
ワーダ「ひゃっひゃっひゃ、やってみろ!この体は魔力にも耐性が…」
ごま「そのままパンチ!」
ドガッ!
ワーダ「ぶはぁっ!!」
ワーダはごまの火球を纏った右ストレートを喰らい、勢いよく吹っ飛んだ!
そして勢いの付いたまま岩壁に打ちつけられる!
ワーダ「な…なんつー魔導師じゃ。あんな荒っぽい魔法拳は見たことがない…」
そう口走りながら、ワーダはふと自分の体の異変に気がついた。
ワーダ「…まさか、今の打撃と魔法の同時攻撃による衝撃で魔法耐性機能がなくなった…」
その時、ごまの声がワーダに聞こえた。
ごま「フィンガー・フレア…」
- 176 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)19時30分27秒
- ワーダ「…やばい」
ごま「ボムズ…」
ごまは右の5本の指それぞれにメラゾーマを纏わせた。
しかし、ごまの詠唱は止まらない。
ごま「…ダブルッ!」
ゴォッ!
ごまは左の指五本にもメラゾーマを纏わせた!
ワーダ「…なおさらやばい」
ごま「ちなみにさっきのパンチは、アンタが今まで騙し続けてきた人達の分ね」
ごまは両手をワーダの方へ向ける。
ごま「で、これが…ユウキの分ッ!」
ドドドドドドッ!!
10発のメラゾーマが身動きの取れないワーダを襲う!
ワーダ「ひええええっ!!」
10発全てがワーダに命中し、無数の爆発が起こった。そして、しだいに煙が晴れていく…。
Д<「あーあ、こりゃサイボーグだろうと何だろうと耐えられへんな」
だがあいぼんの予想と裏腹に、ワーダはまだ形を残していた。
ワーダ「はぁ、はぁ…。あと一発でも多かったら即死じゃった。でも、もう助かりそうにも…」
ごま「そしてこれが…、あたしの分っ!」
全員「まだやるのぉ!?」
- 177 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)19時54分44秒
- ごまは自分の身の丈ほどはあろうかと言うほどの火球を作り出す。
メラゾーマと形容するにはあまりにも大きすぎる。
かといって、召還などではないことも分かる。
ごま「禁じられし闇の炎…。大戦以来の大技だよ」
ワーダ「あ、ああ…」
ワーダは恐怖で何も口に出すことができない。
ごま「いくぞ、必殺…!」
Д<「ごまはんごまはん」
ごまがその巨大な火球を放とうとするのをあいぼんが止める。
ごま「なーに?あいぼん」
Д<「いや、そんなでかい炎撃ったらこの山そのものがなくなるんやないかと思って」
ごま「あ、その点は心配いらないよ。この炎は標的のみを焼き尽くすから」
Д<「ほんまに?」
ごま「うん。ただし標的を焼き尽くすまで消えないんだけど」
Д<「あー、それは全然かまへんわ」
ごま「じゃあ撃っていい?」
Д<「撃ってよし」
ごま「それじゃあ、気を取り直して…」
ワーダ「ひえぇ…」
ごま「彼の者を焼き尽くせ、バーニング・クリメイション!」
ごまはその巨大な火球をワーダに向かって放り投げた!
ワーダ「ぎょええええっ!!」
ごまの言った通り、その炎は周りにはまったく燃え移らない。
そして炎が収まった時、そこにワーダの姿はなかった。
Д<「終わりやな」
石川「…凄い…」
ムラタ「驚きねえ。あのお嬢さんにこんな強大な魔力があったなんて」
ごま「梨華ちゃん、辻ちゃん、あいぼん、いつものやろうよ」
石川「あれですか?」
つじ「いいれすよ」
Д<「よっしゃ、いいで」
あさみ「?」
ごま「それじゃあ、せーの…」
4人「ワーダ博士、完全再起不能」
- 178 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)20時20分05秒
- 勇者飯田「…ううん…」
飯田が意識を取り戻す。場所はベッドの上だった。
ごま「大丈夫?」
目を覚ました飯田にごまが声をかける。
ごま「ぐっすり眠ってたね。とりあえず傷は治ってると思うよ」
勇者飯田「ごまが…治してくれたの?」
飯田は立ち上がろうとするが、安定せずにベッドに倒れこんでしまう。
ごま「あ、まだ動かない方がいいよ。まだ貧血気味だろうし」
勇者飯田「うん…」
飯田がベッドに改めて入ると、どこからともなく竪琴の音が聞こえてきた。
勇者飯田「この音…」
ごま「そ、ムラタさんが弾いてる竪琴の音。無事に雨露祭は始まったみたいだね」
勇者飯田「ほかの皆は?」
ごま「あいぼんと辻ちゃんが演奏を聞きに行ってるよ。あさみちゃんは薬草摘み。
梨華ちゃんはどこに行ったのかわかんないけど」
勇者飯田「ふーん…」
その時、二人の居る部屋に誰かが入ってきた。
- 179 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)20時55分34秒
- 勇者飯田「あなたは確か…亜弥さん?」
亜弥「…」
亜弥はしばらく何も言わなかったが、ついに口を開く。
亜弥「…アミさんね…」
勇者飯田「!」
飯田の目の色が変わる。
亜弥「許してあげてほしい。あの人本当はいい人だから…。あなたと戦うことが分かったときも
ずっと気にしてたよ。顔を合わせるのが辛い、って…」
勇者飯田「…」
亜弥「こんなこと言える立場じゃないけど、私から言えるのはこんなことしか…」
勇者飯田「いいよ」
亜弥「えっ?」
勇者飯田「憎しみは痛みしか生まない、争いは何も生み出さない。
でも、失わないために戦った。それはかおりもあゆみちゃんも同じ事だったから」
亜弥「そう…」
亜弥は飯田の意外な返答を目の当たりにし、複雑な表情をしている。
亜弥「あと、そこのあなた…」
そう言ってごまの方を見る亜弥。
亜弥「博士を倒してくれて、嬉しかった。あのパンチ本当に気分がよかったよ。
どうもありがとう」
亜弥はごまに向かって頭を下げる。
ごま「全然OKだよ、あのおっさんは個人的に嫌いだったからね〜」
それを聞くと、亜弥は微笑んで部屋を出て行った。
勇者飯田「…ふぅっ」
飯田は体を起こしていたが、再び倒れこんでしまう。
ごま「もう寝なよ。明日には牧城に帰るからしっかり休んでおいた方がいいよ」
勇者飯田「うん…。お休みなさい」
そして飯田は横になって眠りに付いた。
ごま「じゃ、私も寝るかな…」
そしてごまもあざらし化して眠りに付いた。
- 180 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)21時11分22秒
- 場所はとある森の中。そこには石川とシバタ、谷村とマサエの2組が居た。
石川「で、これからどうするんです?」
谷村「また一人で旅を続けるよ。私は勇者一行にも魔王軍にも興味はないから」
石川「そうですか…」
マサエ「谷村さん、私は連れてってくれないの?」
谷村「こういう放浪の旅はね、故郷のある人間がやるべきじゃないの。
それに私はまだまだ未熟だった。だから、自分を見つめ直すためにも一人で旅に出たいんだ」
マサエ「…わかった、もう止めない。覚悟を決めたからには頑張ってね!」
谷村「分かってる」
そして谷村は森の奥へと足を向ける。
谷村「あ、そうそう…」
谷村は向きを変えずにそのまま石川とシバタに言葉を告げる。
谷村「貴方達、本当にいいコンビだよ。私が今まで見てきたどんな人達よりも…。
お互いを大切にね、お二人さん」
石川「…はいっ!」
シバタ「はーいっ!」
そう言うと、谷村は森の奥へと消えていった。
- 181 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月02日(木)21時54分30秒
- そして朝、全員が支度を終えて村の出口にいる。
亜弥「皆さん、いろいろとお世話になりました。迷惑もかけちゃってすいません」
勇者飯田「気にしないの。こうして何事もなく終わったんだから」
ごま「ところで、あなた結局どうなるの?」
亜弥「ムラタさんが水に流してくれたお陰で、私はこのまま谷に居られます。
ただ、これからはグランドラミアになるための修行の毎日ですけどね」
亜弥は苦笑いしながら言う。
亜弥「ということで、ムラタさんがここに来られなかった分も私がしっかり見送ります」
ふと石川が何かに気付き、手荷物の中からムラタに貰ったオーブを取り出す。
石川「あの…、ムラタさんにこれを返しておいてくれませんか?
私まだこのクロスを外せないし、こんな中途半端な気持ちで持ってるのも…」
亜弥「ああ、それは…。でも、受け取れないな。ムラタさんから言われてるし」
石川「何を…ですか?」
亜弥「たとえ今必要としてなくても、いつか必ずそれを必要とするときが来る。
それにそのオーブはあなたに渡したものだから返すことはない、だって」
石川「…わかりました、それじゃあ持ってます」
ごま「それじゃあ、行こうか?」
勇者飯田「うん」
あさみ「薬草も摘んだし」
Д<「久しぶりの牧城やな」
つじ「れすね」
亜弥「皆さんさようなら〜」
勇者飯田「じゃあね〜」
ごま「牧城に…ル〜ラッ!」
- 182 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時33分12秒
- 保田「そろそろ行くよなっつぁん。」
保田が稽古に混ざっているナッチーに声をかけた。
ナッチー「はいよ。」
ナッチーはドタドタと保田に走り寄った。
保田「どうだった?巨人族の稽古場。」
ナッチー「いやあ、勉強になったべさ。」
保田「それは良かったじゃない。」
保田「ルーラッ」
- 183 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時34分54秒
- 2人は小さな島国の、海に面した建物に到着した。
保田「はぁ。やっと着いた。さすがにヒロシマは遠かったわね。」
ナッチー「たのもー!!」
保田「ちょっとやめてよ、ここにチャイムあるんだから。」
ピンポーン!!
・・・・・
バタバタバタ、、ドガッ!!
扉が勢いよく開き、誰かが飛び出してきた。
??「圭ちゃーん!!」
保田「!!」
ナッチー「?!」
??「いらっしゃい!!」
保田「こんにちは。お久しぶり。お邪魔します。」
保田は駆け寄る青年をさらっと避け、建物の中に入っていった。
ナッチー「!!?、、」
取り残されるナッチーと青年。
ナッチー「・・・・・・」
??「圭ちゃーん、久しぶりに帰ってきたのに冷たいよ。」
抱きしめようとした腕が虚しく空を切り、残念がる青年。
- 184 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時38分14秒
- ナッチー「うーん、なんだベー、、、一体何がどうなってるべ?」
困っていると、ナッチーは青年と目があった。
??「おっと、、こんちわ。この大図書館の管理者の息子、アキヒトじゃ。よろしゅう。」
ナッチー「こ、こんにちは。ナッチーだべ。よろしくだべ。」
アキヒトの爽やかな笑顔に少し赤面しながら、ナッチーはペコリと頭を下げた。
アキヒト「さ、こっちへどうぞ。長旅でお疲れじゃろう。
ちぃとじゃが食べ物も用意してあるんじゃ。」
ナッチー「!!、ご馳走になるべ。」
とりあえず保田を追って中に入る2人。
保田はそのまま図書館の方へ向かったようだ。
ナッチーとアキヒトは隣の管理人室へ入った。そこにはケーキとコーヒーが用意してあった。
アキヒト「どうぞ」
ナッチー「う、美味そうだべ。いただくべさ。」
出されたケーキを機嫌よく食べるナッチー。その様子を見つめるアキヒト。
ナッチー「モグモグ。。なんだべさ?」
アキヒト「あ、いや、・・・・・(こりゃぁ圭ちゃんの分なくなるのぅ。)」
- 185 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時40分19秒
- ナッチーはケーキをほとんどたいらげた。
ナッチー「アキヒトさんと圭ちゃん、一体どういう関係なんだべか?なまら気になるべさ。」
アキヒト「聞きたいかい?」
ナッチー「だべさ。」
アキヒト「もう1年半くらい前かなあ、
ある日、、、それは綺麗な月の出ている晩じゃった。町から帰る途中、、、」
アキヒトは嬉しそうに喋り出した。
アキヒト「かわいい小犬が野犬の群に襲われとったんで。
こりゃぁ見ていらりゃぁせん思うてね、なんとか追っ払って助けてあげたんじゃ。」
ナッチー「おおー。カッコイイべさ。」
アキヒト「それで、もう大丈夫じゃって頭を撫でてたら、
なんと「助けてくれてどうもありがとう」って喋ったんじゃ。
わしが驚いてたら、「どうしてもお礼がしたい」っちゅうから、
つれて帰って飼うことにしたんじゃ。」
ナッチー「良い話だべ。ナッチーわかったっしょ。
その小犬が呪いで姿を変えられた圭ちゃんだったんだべ。」
アキヒト「そうなんで。そん時から自分は元々人間だって言っとったんじゃが、
わしはあんまり信じて無かったんじゃ。
ようわしになついてくれて、膝の上に乗って来たりしてさ、幸せじゃったなあ。」
ナッチー「ほんとに良い話しだべ。」
アキヒト「ところがある日突然、弟子に呼ばれたけぇ行ってくるって言って、
わしの元から姿を消してしもぉたんで。」
ナッチー「運命の別れっしょ。泣けるべさ。」
別に泣いていない、っていうか楽しそうなナッチー。
- 186 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時43分26秒
- アキヒト「ズズ、、」
一息ついてコーヒーをすするアキヒト。
保田「ちょっと、黙って聞いてれば何勝手なこと言ってんのよ!」
アキヒト「ブッ!」
コーヒーをこぼすアキヒト。
ナッチー「あら圭ちゃん、聞いてたんだべか。」
保田「アキヒトさん!あなたねえ、、」
アキヒト「・・・・・・・」
ナッチー「圭ちゃーん、照れることないべさ。ヒヒヒッ。」
保田「なっつぁん!嫌な笑い方しないでよ。
違うんだってば!ほとんど全部逆でしょ!!見栄張るんじゃ無いわよ!」
アキヒト「うっ、、、」
ナッチー「?」
保田「ある日、妖怪おのこ喰いの大群にに襲われて困ってるヤサオトコがいたから、
当時あたしはまだ狛犬だったんだけど、、吼えて追い払ってあげたわけ。
それで、別にいらないって言ってんのに、どーしてもお礼がしたいからうちに来てくれ
って言うから、しょうがなく来てみたらこの大図書館の管理人の息子だったわけよ。
だから、せっかくだから使わせてもらってんの。」
保田は早口でまくしたてた。
ナッチー「あ、あらあ。(ポカーン)」
アキヒト「・・・・・」
保田「ずっとこの家で飼われたっていうのも当然嘘。
あたしはそん時、弟子の石川の世話で忙しかったんだから。
ただ、確かに何度もここには足を運ぶことになったけど。
それはそれだけの資料がここにはあったからで。」
ナッチー「・・・・で、アキヒトさんにすっかり懐いたんだべ。膝の上はあったかかったかい?」
保田「あのねー、なっつぁん!!、違うっていってるのに、あんたどっち信じてるの?
だいたい、膝の上なんか乗れるわけないのよ!
自分で言うのもなんだけど、アキヒトさんよりも巨大で不細工な狛犬だったんだから!
嘘だと思うなら、石川にでも聞いてごらんなさい。」
- 187 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時45分00秒
- ナッチー「?、、でも別に、不細工は膝に乗れ無いこととは関係ないっしょ?」
アキヒト「そうで!不細工なんてとんでもなぁで。あの時からかわいかったんじゃ。圭ちゃんは。
今はすっかり美人って感じじゃが。」
保田「う、うるさいわねー、あんた達、言ってることがずれてるわよ!」
保田は後ろを向いて、図書館の方へ向かった。
ナッチー「ふふふっ、圭ちゃん、美人っていわれて顔が赤くなってたべ。照れてんだべさ。」
アキヒト「かわいいね。」
保田「ったく、つれてくるんじゃなかったわ。」
ナッチー「だべなー。その方が二人っきりでゆっくり出来たっしょ。」
保田「違うっていってるでしょ!」
本棚ヘ戻ってきた。ここからでは会話は聞こえない。
保田「あーあっ、まさかなっつぁんにあげ足とられるなんて、、、どうかしてるわ。」
保田は手元の本をパラパラとめくった。なかなか頭に入ってこない。
保田「あー!もう、あの2人今頃またろくでもない話してないかしら!?気になるわね。」
- 188 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時47分00秒
- ナッチー「圭ちゃんも行っちゃったし。話の続きを聞かせてほしいべさ。
犬だった圭ちゃんがいなくなって、その後どうしたんだべか?」
アキヒト「あ、ああ。それからすぐに一人の美しい女性がここを訪ねて来た。
それが元の姿に戻った圭ちゃんじゃったんじゃ。」
明後日、もとい一昨日の方向を見るアキヒト。
・・・・・・・
そこには美しい女性(アキヒト談)が立っとった。
思わずわしは目のやり場に困りながら聞いたんじゃ。
アキヒト「!??、ど、どちら様で??」
??「こんにちは。」
アキヒト「!!、け、、圭ちゃんか?」
それは、数日前に聞いとったあの声じゃった。
保田「そうです。」
圭ちゃんもちぃとは照れていたと思う。
保田「人間に戻ったから、ちゃんと一度挨拶しようと思って。」
アキヒト「かーーっ、、き、綺麗になったなあ。」
わしゃついまじまじと見なおしてしもぉたよ。
保田「もー、何言ってんのよ!でも、、あ、、、ありがとう。」
アキヒト「お、じゃあ上がって。」
保田「え?いいの?」
アキヒト「いいも何も、今までずっとそうじゃったじゃないか。」
保田「でも私、もう犬じゃなくて人間、、」
アキヒト「ん?なんだって??」
アキヒトはもう中へ入っている。
保田「お、おじゃまします。」
- 189 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時51分48秒
- 保田「私、弟子の石川のおかげで元に戻れたんだ。でもまだ感が戻って無い。
だから少し、時間は無いけど鍛え直そうかと思ってる。その間、、」
アキヒト「ああ、じゃあここにいなよ。その間。」
保田「いいの?本当に、、」
アキヒト「そりゃいいよ。どっちかゆぅたら歓迎するぐらいさ。
さっきもじゃが遠慮するこたぁ無いさ。」
保田「ありがとう。本当に」
アキヒト「で、いつまでここにいられるんだい?」
保田「今日かもしれないし、明日かもしれない。また呼ばれるまで。」
アキヒト「そうかい。わかった。それまではゆっくりするといい。」
それから数日間、わしは楽しかった。
後から考えると、わしにとって、まさに彼女は光じゃった。
・・・・・・・
ナッチー「感動の再会だべ。」
アキヒト「でも幸せな一時は長く続かなかった。
2〜3日で、また出て行ってしまったんじゃ。それ以来さ。」
・・・・・・・
- 190 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)03時57分14秒
- アキヒト「また、いくんじゃな。」
保田「うん。私を必要としている仲間がいるから、行かないと」
アキヒト「ちょっと待って。一つ、聞いていいかい?」
保田「どうしたの?」
アキヒト「いつ、、その旅は終わるんだい?」
彼女は俺の方に振り返った。
以前に魔王と戦う前、これで終わりだと思っていた事を思い出した。
保田「そうね。終わりなんて、、無いのかもしれない。。。」
圭ちゃんはわしから目をそらした。
アキヒト「ほうか。」
保田「でも、終わらせられるとすれば、それは私達の力によってのみだわ。」
今度はこっちをしっかりと見ながら言った。
アキヒト「わしゃあ、圭ちゃんにゃぁ幸せになってほしいんじゃ。じゃけぇ、頑張ってな。」
保田「ありがとう。じゃ、私はこれで行くから。」
アキヒト「おう。わかった。じゃ、気をつけて。」
圭ちゃんは頷き、わしの目の前から姿を消したんじゃ。。
飛び去ってから、ちぃとたって気付いた。
アキヒト「行ってほしくないんじゃ。側にいてほしいんじゃ。。。」
なんで行く前に言えんかったんじゃろう。もう、戻ってこないかもしれんのに。
そしてそう思うた時、わしは光を失い、ここから、空と海が混じっていくんを見とったんじゃ。
アキヒト「わしは、圭ちゃんが好きなんじゃ。」
・・・・・・・
- 191 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)04時01分31秒
- ナッチー「ううっ、、悲しいべさ。ナッチーわかるっしょ。
そして二度と会う事ができなかったんだべ。ううっ、、それは辛かったしょ。
そんな時は食べると癒されるんだべ。」
今度は本当に泣きながら、ケーキの残りを詰め込むナッチー。
アキヒト「い、いや、じゃけえこうして今、久しぶりにおぉてるんじゃが。。」
ナッチー「・・・・、(モグモグモグ、、、)」
注、ナッチーは恋人を失っているのだ。2の288参照。
・・・・・・・
その話が終わり、ナッチーが今度はアキヒトの事を聞いていると、
保田がまた管理人室に入ってきた。
保田「終わったわよ。」
ナッチー「聞いたべさ。いろいろ。ヒヒヒ、」
保田「な、何よ?」
ナッチー「アキヒトさん、職業は絵描きでヌードとかも書くんだそうだべ?」
保田「で、何よ?」
ナッチー「圭ちゃん、書かせたんだべか?(ニヤニヤ」
保田「ばっ、、なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ!」
アキヒト「うーん、頼んじゃぁみたんじゃがねえ。断られちゃったよ。」
ナッチー「あらぁ、圭ちゃーん、固いと嫌われるっしょ。」
保田「別にそんなことで嫌われるならそれでいいわよ!」
ナッチー「はー。冷めてるべなー。。」
保田「そんなことより、もう帰るわよ。」
ナッチー「!!」
アキヒト「あれ、今日は泊っていかないんかい?」
保田「うん。移動にも時間食っちゃったし、そんなにもたもたしてられないから。」
アキヒト「それは残念じゃな。」
- 192 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)04時03分44秒
- ・・・・・・・
アキヒトは2人を玄関先まで送った。
保田「じゃあ、今日はどうもありがとうございました。」
保田は頭を下げた。
ナッチー「ケーキごちそうさまだべ。」
アキヒト「あ、いいんだ。また調べたいものがあったら、
ケーキ食べたかったらいつでもおいで。」
保田「くすくす、、そんなこと言うと後悔するわよ。」
アキヒト「??」
ナッチー「次回のケーキが楽しみだべ。」
アキヒト「そんなことより、今度こそちゃんと言おう。圭ちゃん!」
保田「何?」
アキヒトは目を閉じてスーっと息を吸いこんだ。
アキヒト「俺は圭ちゃん、君が好きなんじゃ。無事に旅が終わったら。ここに住まんか?」
保田の肩に手を起き、はっきりと伝えた。
保田「!」
アキヒト「返事は急がのぉていい。
圭ちゃんさえその気なら、どこからでもすぐにでも来れるんじゃろ?
いつでもここに帰っといで。待っとるよ。」
保田「・・・・・・・はい。」
保田は頷きながら目をそらした。
- 193 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)04時06分28秒
- アキヒトの手が離れると直に顔を上げ、笑顔で後ろに振り返った。
保田「で、何かくれてるのよなっつぁん!!」
ナッチーは木の陰に隠れている。
ナッチー「別れの、き、、キスするかなと思ったべさ。」
保田「しないわよっ!」
アキヒト「え、しないの??」
保田「しないってば!!」
アキヒト「そりゃ残念。」
保田「もう、早く行くよ!」
保田はナッチーの腕を掴んだ。
ナッチー「あら。」
保田「じゃ、また図書館使わせてくださいね。ではまたっ。」
ナッチー「したっけ〜。」
アキヒト「さいならっ。」
保田「ルーラッ!」
- 194 名前:保田&ナッチー@出先 投稿日:2001年08月12日(日)04時08分04秒
- 牧城到着。。
ナッチー「いやー、圭ちゃん焼けるべさ。まさかプロポーズされるとは思わなかったっしょ。」
保田「そこまで行ってないでしょ!ちょっとあんた、、みんなに余計な事言うんじゃないわよ。」
ナッチー「ヒヒヒヒ、、いいネタ仕入れたべさ。」
保田「・・・・・・・」
ナッチー「ところで調べものはちゃんと片付いたのかい?」
保田「まあその辺はばっちり」
ナッチー「そりゃよかったべさ。」
保田「(予想通り、あの子はココナッツ四天王の一人というだけではない。
彼女は、魔界の姫。
でも、果して何故、ココナッツ四天王にいたのか?、ワーダに利用されたのか?、
全ては、本人が起きてから直接訊くしかないわね。)」
- 195 名前:食卓 投稿日:2001年08月12日(日)12時10分27秒
- 勇者飯田「久しぶりにみんな揃っての夕食だねー。」
飯田の仕切りで夕食が始まる。
勇者飯田「今回の戦いも、ほんと、いろいろ大変だったね。
その解決と、よっすぃーと矢口のほぼ全快を祝って、
ついでにかおりとナッチーは誕生日だぁ。」
矢口「よっ!はたちおめでとうっ!!」
つじ「いいらさん、おめれとうなのれす。」
勇者飯田「どもども。」
ナッチー「ふふふっ、大人の女だべ。」
勇者飯田「それじゃ、いつものやつ、みんな揃っていこうか。」
一同「かーんぱいべいべっ!!」
チンッ
- 196 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月12日(日)12時11分40秒
- ・・・・・・
勇者飯田「辻、かおりの1個上げるよ。」
つじ「おいしーれす。おいしーれす。ぱくぱく、もぐもぐ」
勇者飯田「ふふふっ、たんとお食べ。大きくおなり。(ニコニコ」
ごま「あはっ、、ジーツー、良く食べるねえ。」
保田「あんたもね。いい加減にしときなさいよ。太るよほんと。
かおり!、辻が太ったらあんたの責任だからね!」
勇者飯田「いいんだよー。ふふふ(ニコニコ
かおりはねー、辻が嬉しそうに食べてるのを見るのが好きなんだよー。」
保田「あ、あんたねぇ、、、」
勇者飯田「めんこいなー、辻は。」
・・・・・・
- 197 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月12日(日)12時13分53秒
- 矢口「ん?、ナッチー、どうしたの?」
ナッチーはニコニコしている。
ナッチー「実は、おもしろ〜〜いネタを仕入れたんだべさ。矢口、聞きたいかい?」
矢口「えーっ!、、何々??」
0秒で食いつく矢口。
ナッチー「しっ、、矢口、声が大きいっしょ。」
保田「!、・・・・」
矢口「なんだよナッチー、、(ボソボソ」
ナッチー「あのね、、ふふっ、ひひひっ、、圭、圭ちゃんがね」
矢口「うん。」
ナッチー「んふふふふっ、、あのねっ、、、
あーもうおかしくて笑っちまうべさ。、、それがね。図書館でね、、、」
矢口「ちょっとナッチー、、何言ってるかわかんないよ、笑いながら喋んないでよ。
全然伝わってこないじゃん。こっちは面白く無いんだよー。」
ナッチー「す、、すまないべさ。。ぷくく、、」
ナッチーは笑いを噛み殺した。
ナッチー「すー、はー、すー、はー、」
矢口「落ちついた?」
ナッチー「だべさ。ナッチー、圭ちゃんと図書館に行ってきたんだべ。」
矢口「うん。それで?」
ナッチー「したっけ、その図書館にはアキヒトさんていう人がいたっしょ。」
矢口「お、男?」
ナッチー「だべ。そのアキヒトさん実は圭ちゃんの、」
矢口「おぉー!?」
ドキドキする矢口。
その時、
- 198 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月12日(日)12時14分56秒
- ヒュンッ!!
どこかから一個のシュウマイがナッチーの目の前に飛んで来た。
ナッチー「!!」
パクッ!
ナイスキャッチするナッチー。
ナッチー「モグモグモグ、、なんか知らないけどラッキーだべ。」
保田「・・・・・(さっき言ったこと忘れたの?、それあげるから黙ってなさいよ。)」
矢口「!?、ちょっと、それで圭ちゃんのなんだって?」
ナッチー「モグモグ、ちょっと待つっしょ。。。んくっ」
矢口「・・・・」
ナッチー「実はなんと、圭ちゃ、」
またその時、
ヒューンッ!
またしてもナッチーの目の前に、今度はコロッケが。
パクッ!!
矢口「ちょっとナッチー!!」
ナッチー「んー、んまいべさ。モグモグ、、」
幸せそうにコロッケを食べるナッチー、
二つ隣の向かいの席では、保田が黙々と食べている。
ナッチー「まあ焦っちゃだめっしょ。モグモグ、、」
矢口「くっ、、」
保田の方を睨む矢口。無視する保田。
保田「(これでいいかげん気付いたでしょ)」
- 199 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月12日(日)12時16分24秒
- ナッチー「したっけね、圭ちゃんがね」
保田「#(プチッ)」
矢口「・・・」
また、
ヒューン、、
嬉しそうに口をあけて待つナッチー。
ナッチー「(シューマイ、コロッケ、次はなんだベー?)」
丸くて薄くて白い、、
ガキッ
それに噛み付くナッチー。
ナッチー「ガキガキガキ、、な、なんだベー??、食えないっしょ。歯がたたないっしょ。
ガキガキ、??、おかしいべさ」
矢口「・・・・、ナッチー、あんたそれ、皿だよ。。。」
あきれる矢口。
がたっ!
ナッチー「ひっ、、ひっ、、、酷いべさー!!圭ちゃん!!」
ナッチーは立ちあがって保田に訴えた。
ナッチー「皿食わすことないっしょ!」
がたたっ!
保田も立ちあがった。
保田「どっちが酷いのよ!、あんたねー、黙ってなさいって言ったのに。」
一同「・・・・シーーン・・・・」
- 200 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月12日(日)12時19分53秒
- 矢口「・・・・・・(ちょっとコワ、、)」
保田「ったく、言えば良いんでしょ?いえば。」
迫力。
ナッチー「(ぽかーん)」
矢口「(パクパク)」
びびる2人。
保田「アキヒトさんて言うのはね、私が犬だった時にであった人で、
図書館の管理人さんの息子なの。図書館はいつでも使っていいって言ってくれてる、恩人よ。」
矢口「・・・・・」
ナッチー「そ、、それだけかい?」
保田「それだけよ。そうよね?石川。」
石川「あー、アキヒトさんですか?懐かしいですねえ。」
当時(今も)、自分のことに精一杯で保田とアキヒトの関係には気付いていなかった石川。
保田「ってことなのよ。文句ある?」
ナッチーをじろっと睨む保田。
ナッチー「な、、ないべさ。。」
口を尖らすナッチー。
保田は席につくと、また黙って食べ始めた。
矢口「ちょっとナッチー、後でこっそり、、(ボソボソ)」
ナッチー「そのフライくれたら教えるべさ。(ボソボソ)」
矢口「えーー!」
- 201 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年08月12日(日)12時23分10秒
- ・・・・・・・
Д<「りんねはん、ちょっと話があんねんけど。」
りんね「何?」
Д<「さっきニワトリ小屋で餌やったんやけど、柵がぼろっちくて壊れそうやったで。」
石川「?、・・・・・・・」
りんね「うーん、、確かにそうだねー。
そろそろ直さなきゃとは思ってたんだけど、なんだかんだで長持ちしてたからねえ。」
Д<「はよ直さんと、そのうち逃げ出してくるで」
石川「!!、(ドキドキドキドキ、、)」
よっすぃー「ん?、どうしたの梨華ちゃん?」
石川「ト、、トリ、、、」
りんね「うん。じゃ、明日直そうか。あさみちゃんは仕事あるし、梨華ちゃん、、」
ガタガタ、、
大慌てで立ちあがりながらりんねの方を向き、ブンブンと首を振る石川。
りんね「・・・・は無理だったね。」
ほっとして席につきなおす石川。
よっすぃー「あ、そうか鳥が苦手なんだっけ」
石川「う、うん。」
よっすぃー「大丈夫だよ。壊れてもまさかこっちに逃げてくることなんて無いよ。」
石川「そ、そうですよね。」
Д<「うちで良ければ手伝うで。」
りんね「そう?ありがと。じゃ、他の仕事の前にやるから朝6時にね。」
Д<「へーい。」
- 202 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時28分49秒
- 夕食後、部屋に戻る前の廊下。
Д<「どないしたー?元気無いなー。梨華ちゃん」
石川「う、うん。」
Д<「ニワトリ、逃げてこっちくるかもしれんで。梨華ちゃん、ほんまに気いつけてな。」
石川「う、、うん。怖いよぉ。」
石川はもう泣きそうだ。
Д<「ま、明日になったら、うちが直したる。」
石川「よろしくね。お願いね。」
あいぼんの手を取る石川。目が本気だ。
Д<「まかしとき。もし、万が一やで、いざとなったらうちらの部屋に来たらええ」
石川「あ、ありがとうあいぼん」
あいぼんに抱きつく石川。
Д<「ま、、ええねん。ええねん。」
石川の頭を撫でるあいぼん。
- 203 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時31分41秒
- 石川の部屋
石川「あー、怖くて眠れないよー。」
石川は布団に入るとすぐにかけ布団を左に寄せて抱きしめた。
そのまま少しごろごろしていた。いつ眠れるのだろうかと思いながら。
・・・・深夜。
「・・・・・・・ーーっ!!」
どこからともなく音がしたような気がして、
石川「はっ、、、」
石川は突然目が覚めた。シャツが寝汗でびっしょりだ。
石川「はぁはぁはぁ、、、」
マスクが蒸し暑く感じ、口からはずした。
耳をすませても、特に何も聞こえない。
石川「気のせいかなー?コワイヨー。」
つぶやきながら上着を着替え、マスクもつけ、布団に入りなおす。
布団を頭まで被って目を閉じる。
コツコツコツ、、、
石川「なんか、やっぱり音が聞こえるような、、、
ううん、気のせい気のせい、、」
- 204 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時33分44秒
- ゴゲーーー!
石川「!!」
ビクビク。体に電撃が走ったように震えがきた。
バサバサバサ
石川「ひっ!」
石川はうつ伏せになって布団の中に潜りこんだ。
石川「気、気のせいじゃないよぉ」
ゴッゴッゴッゴ、、
石川「やっぱり、逃げちゃってるのかな?
・・・・・・・、、でも大丈夫だよね。まさか入ってこないよね。大丈夫大丈夫。。」
自己暗示をかけて寝ようとする。
ガンガン!!
窓から叩くような音がする。
石川「?」
ガンガン、ガン!!
石川「何よー?け、、蹴ってるの?」
ガンガン!
「ごっごっごっご、、」
石川「何、なんなのー?」
ガンガン!、、バキッ!!
- 205 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時38分00秒
- 窓からひときわ大きい音が響いた。
石川「ひっ!!」
石川は布団から跳ね起き、部屋を飛び出した。
石川「あ、、、」
廊下は暗く、シーンと静まり返っている。
石川「よかった。いない。と、とりあえずあいぼんの部屋に、、」
ガチャ、、
石川「あ、あいぼーん?」
ベッドに近づいてみる。
石川「あの、、あのね、トリがね、、、」
しかし、そこには誰もいなかった。
石川「あ、あれえ?どこいったの?トイレかな??」
ガタガタガタ、、
石川「っ!!」
最初は気付かなかったが、窓が開いていてカーテンがひるがえっている。
石川「なんで開いてるの?もしかして、、、あいぼんもトリに、、
まさかっ、、そんなこと無いよね。大丈夫だよね。」
とにかく、ここにいるのは安全じゃない気がした。
- 206 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時42分14秒
- 石川「じゃ、じゃあよっすぃーさんの部屋に、、」
もう一度廊下に出る。ここからよっすぃーの部屋へは角を曲がらないと行けないのだが、、
バサッバササッ、バサッ、、
石川「い、、いるの?そっちにいるの??」
曲がり角の向こうから音がする。姿は見えない。
バサバサッ、、
しかし音が近づいてくる。
反対方向に走るしか無かった。
石川「あ、ここ、、裏口?、、、どうしよう」
すぐに変な所に追い詰められてしまった。
鳴き声と羽音は徐々に近づいてくる。
石川「ううう、、、えい!」
ガチャッ!ばたん。ドアを開けて外へ。
石川「ふう。」
外は風の音だけが聞こえる。綺麗な星が見える。石川は少し歩いてみた。
あたりはまだ暗い。しかし夜風は落ちつく。
石川「ここまでは追ってこないよね。」
道の端っこに膝を抱えてしゃがんでみた。
石川「あーあっ。部屋に戻りたい。。ぐすっ、、なんでこんなことに、、、」
少し落ちつくと泣けてきた。
石川「なんにも悪い事してないのに。。ぐすっ。」
しかし、
ガサガサガサ、、、
- 207 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時43分38秒
- 背中側の草むらから音が。
石川「あ!、またなの??」
よく考えたら、もしニワトリ小屋が壊れたのなら、
建物の中より外の方が多く飛びまわっているに決まっている。
石川「やだ、、、ど、どうしよう??」
恐怖で後ろを振り向けない。
ゴゲーーゴッゴッゴッゴ!!
石川「!!!」
石川は振り向かないまま、無我夢中で走った。暗闇の中を。
ばっさばっさばっさ!!
石川「!!、トリ!?」
慌ててその音から逃げる。
石川「やだ、やだー。こないだから追いかけられてばっかりだよぉ。」
その時、
「梨華ちゃん!そっちやない、こっちや!!!」
- 208 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時44分51秒
- 石川「あ、あいぼん、助けに来てくれたの!?」
姿は見えないが、声につられてその方向へ走る。
石川「良かった。怖かったんだよぉ。」
「まだ安心したらあかん。」
石川「え?」
グゲーーーゴゴゴ!
石川「こっちにも!?」
バッサバッサ
石川「きゃーーー!!」
「ほら、こっちや梨華ちゃん!」
グゲーゴゴグゲー!!
バサバサバサバサ、、、
石川「いやーーーー!!」
「ちゃうで、こっちや!!」
走り続ける石川。
・・・・・・・
- 209 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時47分08秒
- 石川「ひーーん!もういやー!」
その時、誰かがガシッと石川の腕を掴んだ。
石川「!!」
ぐいっと引っ張られる。
「ここや!こん中にかくれるんや!!」
石川「あいぼん?」
何がなんだかわから無いが、石川はその中に入った。
がちゃ!バン!
鍵がしまった音がする。
石川「た、、、助かった。」
ここはどこだろう?暗くて分からない。
それに、なんだかちょっと狭い。でも狭いぐらいが今は落ちつく。
石川「ふう。よかった。ありがとうあいぼん。」
「・・・・・・」
石川「あいぼん?」
突然、パッとあたりが明るくなった。
石川「!?」
- 210 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時50分44秒
- こっこっこっこ、、こっこっこ、、
バサバサ、バサバサバサバサ、、
石川「・・・・に、わ、、??」
見れば、当たり一面のニワトリニワトリニワトリ、、ここはニワトリ小屋
石川「ひっ、、ひっ、、ひーーーん!!何これ!?何これ?」
逃げ場は、、、無い。
ゴゲー!、グゲーー!ごっごっご、、ゴゲー!!
明かりがついたことによって朝と勘違いし、お祭騒ぎするニワトリ達。
バサバサバサ、ごっごっごっ、、
比例してわたわたとパニクる石川。
石川「ひーん、ひーん!!何これー!?」
がちゃがちゃがちゃ、バンバンバン!!
必死で扉を開けようとするが鍵がしまっていて出られない。
外には、
Д<「○※〆△¥%、、ひーー、おかしぃわほんまーー。ひっかかりよった!!」
うずくまって地面を叩きながら、腹を抱えて爆笑するあいぼん。
石川「あいぼん??」
つじ「・・・・っ、くく、、くすくす、、
そ、、そんなにおっきいこえれわらってたら、みんなおきちゃうよー。あいちゃん。」
腹と口を押さえて笑う辻。
石川「ののちゃん??」
- 211 名前:恐怖話 投稿日:2001年08月12日(日)23時51分54秒
- Д<「計画通りやぁ!!」
石川「!!」
それを聞いてやっと事態を飲みこんだ石川。
石川「ひ、ひ、ひどいよー!あいぼん!だしてぇ、だしてぇえ!!」
がちゃがちゃ、
アニメ声で必死で訴える石川。その時、
Д<「!」
ばささっ!
1匹のニワトリが石川の頭の上に飛びついた。
石川「あ!、あ゛ーんあ゛ーーーーん!!」
頭を押さえて体ごとゆするが、しっかりしがみついて離れない。
石川の頭の上でバランスをとろうとしたニワトリがバタバタと、、、
Д<「ひー、ひー、ひー、π¢@×〒$√、、、似合ってるでー!!」
それを見て余計ツボに入るあいぼん。
つじ「あたまにはねがはえてるみたいれす。んー、んー」
口を押さえるのがしんどくなってきた辻。
石川「あ゛ーーん!!だしてぇ!!」
ニワトリの鳴き声とあいぼんの笑い声と石川の叫び声は、夜の牧場に響き渡っていた。
- 212 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)00時54分41秒
- つじ&Д<視点バージョン
がちゃ、部屋の鍵を閉めながらあいぼんが言う。
Д<「ふっふっふ、のの、ええー事考えたで。」
振り向きもせずに辻が応える。
つじ「・・・んー、またいたずられすかぁ?あいちゃん。
もーいいらさんややすらさんにおこられるのやれすよ。」
Д<「・・・・・むぅー」
辻は伝説の勇者達という本を読んでいる。
どうやら勇者になりたいのは本当らしい。が、辻の持つそれは絵本だ。
Д<「ま、、、まあ聞くんやのの。今回のターゲットは梨華ちゃんや」(ニヤリ)
つじ「やるのれす。がんばいましょー。」
辻はくるっと振り返って目をキラキラ光らせながら、あいぼんの手を握った。
Д<「お、おーおー、えらい切り替え早いなあ。まあええ。ちょっと耳かしてや」
つじは横を向いて、あいぼんの口に耳を近づけた。
Д<「実は梨華ちゃんな、ごにょごにょごにょ、なんや。んでそこで、
ごにょごにょ、最終的にごにょごにょ!!」
つじ「おぉ!すごいれす!さすがあいちゃんれす!!」
Д<「せやろ」(ニヤリ)
つじ「んー、れも、やっぱりおこられるのはいやれすねえ。。。」
Д<「それがな、今回はちっと違うねん。実は切り返しの一手を用意してあんねん!」
つじ「!!」
あいぼんは手で来い来いと合図した。また辻は耳を近づけた。
Д<「ごにょごにょ。な。」
つじ「うんうん。うん。それなららいじょうぶれす。あんしんれす」
・・・・・・・・・・・
- 213 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)00時56分30秒
- 夕食時、、
あいぼんはりんねに話しかけた。
Д<「りんねはん、ちょっと話があんねんけど。」
りんね「何?」
Д<「さっきニワトリ小屋で餌やったんやけど、柵がぼろっちくて壊れそうやったで。」
三つ席が隣の石川がびくっとその話に反応する。
つじ「(くすくすくす)」
下を向いて笑いをかみ殺す辻。
勇者飯田「?」
石川「・・・・・・・・」
りんね「うーん、、確かにそうだねー。
そろそろ直さなきゃとは思ってたんだけど、なんだかんだで長持ちしてたからねえ。」
Д<「はよ直さんと、そのうち逃げ出してくるで」
石川「!!」
その言葉にまた石川が反応している。
Д<「(い、、今笑ったらいかん)」
りんね「うん。じゃ、明日直そうか。あさみちゃんは仕事あるし、梨華ちゃん、、」
ガタガタ、、
大慌てで立ちあがりながらりんねの方を向き、ブンブンと首を振る石川。
りんね「、、は無理だったわね。」
ほっとして席につきなおす石川。
- 214 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)00時58分07秒
- つじ「・・・・・・・っ」
口を手でおさえる辻。
勇者飯田「?、どうしたの辻、気分悪いの?」
つじ「ち、、ちがうのれすらいじょうぶれす。(あいちゃんのいったとおりれす)」
Д<「うちで良ければ手伝うで。」
りんね「そう?ありがと。じゃ、朝6時にね。」
Д<「へーい」
・・・・・・・・
部屋に戻る前の廊下
つじ「いたれすよ。」
石川を指差す辻。
Д<「お。調度一人や。かもや」
あいぼんは後ろから石川に近づき、ドンと背中を叩いた。
Д<「どないしたー?元気無いなー。梨華ちゃん」
石川「う、うん。」
Д<「ニワトリ、逃げてこっちくるかもしれんで。梨華ちゃん、ほんまに気をつけてな。」
石川「う、、うん。怖いよぉ。」
石川はもう泣きそうだ。
Д<「もし、万が一やで、いざとなったらうちらの部屋に来たらええ」
石川「あ、ありがとうあいぼん」
あいぼんに抱きつく石川。ぎゅう。
Д<「ま、、ええねん。ええねん。(やめれー!)」
石川の頭を撫でるあいぼん。目線の先には廊下の角から様子をうかがう辻がいる。
Д<「(ニヤリ)」
つじ「(ないすれす。これれ、りかちゃんのめには、
あいちゃんがてんしのようにうつっているはずれすね)」
- 215 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時00分29秒
- 深夜。
こそこそ、、
あいぼんとつじは外へスタンバっていた。
Д<「おるな。ぐっすり寝とる。やるで。のの。(ニヤリ」
つじ「おーけーれす。あいちゃん。」
コツコツ、、、
あいぼんは木の枝で石川の部屋の窓をつつく。
石川「はっ、、、」
Д<「おお!起きよったで。」
つじ「びんかんれすね。」
石川「・・・・・・」
何やら呟きながら、ごそごそ動いてる。
つじ「れますかね??」
Д<「むむむ、、」
石川「・・・・・・」
どうやら寝なおすようだ。
Д<「まだ足りないみたいやな。」
- 216 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時01分39秒
- コツコツコツ、、、
Д<「弱いかな?、ののは鳴いたれ。」
つじ「へい。「ゴゲーーー」」
石川「!!」
布団の中でビクビクと震えている。
Д<「き、効いてるで。まだまだ!」
あいぼんは手に持ったバスタオルをばたつかせた。
バサバサバサ
石川「ひっ!」
石川は布団の中に潜りこんだ。
Д<「ぷぷ、、」
つじ「んーー。」
面白くってしょうがない。
Д<「部屋から外に出すんや。強めにいくで。」
木の枝で窓を叩く。
ガンガン!!ガン、ガンガン!!
石川「・・・・・・?」
Д<「まだ出えへん。意外としぶといな。」
ガンガン!
辻も続く。
つじ「ごっごっごっご、、」
- 217 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時03分08秒
- 石川はまだ布団に入っている。
Д<「まだかっ!?」
叩く手に力が入る。
ガンガン!、、バキッ!!
Д<「あ!」
つじ「や、やりすぎれすよ。こわれたらろうするんれすか?」
Д<「・・・し、しもた。や、窓にちょっとひび入ってもうた、、、」
つじ「あいちゃーん、、、」
ちょうどその時、石川は部屋を飛び出して走って行った。
Д<「ほ、ほらでた!第2段階や。うちの部屋へ向かうで。」
つじ「へい」
石川が完全に部屋から出たのを確認し、
ガラッ、ガタガタガタ、、
窓を開け、石川の部屋に侵入。後ろからこっそり追いかける二人。
ガチャ、、
石川はあいぼんの部屋へと入っていった。
あいぼんと辻は外から様子を伺う。
石川「あ、あいぼーん?、、あの、、あのね、トリがね、、、」
当然そこには誰もいない。
石川「あ、あれえ?どこいったの?トイレかな??」
- 218 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時05分36秒
- Д<「しないよ。」
つじ「いいや、するのれす。」
ガタガタガタ、、
石川「っ!!」
窓が開いていてカーテンがひるがえっている。
Д<「うろたえとるうろたえとる」
つじ「びびってるれすね。」
石川「なんで開いてるの?もしかして、、、あいぼんもトリに、、
まさかっ、、そんなこと無いよね。大丈夫だよね。」
Д<「ぷくくっ、、トリにって、、うちがニワトリにやられるんかい!!」
つじ「くすくす。わけわかんねーれすね。」
石川がもう一度廊下に出た。
Д<「こっちや。梨華ちゃんならよっすぃーの部屋に向かうはずや。」
角を曲がった先に二人は逃げた。そしてバスタオルをならす。
バサッバササッ、バサッ、、
石川「い、、いるの?そっちにいるの??」
石川からは見えない位置をキープしながら、だんだんと音を強める。
バサバサッ、、
石川は反対方向に走り出した。
つじ「いったのれす。」
バッサバッサ、、
Д<「はぁはぁ、、あー、行ったん?、これ意外と疲れるなあ。」
ひらひらとバスタオルを振って見せるあいぼん。
- 219 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時07分13秒
- 石川「あ、ここ、、裏口?、、、どうしよう」
少しずつ、Д<と辻は石川に近づく。すると、
石川「ううう、、、えい!」
がちゃっ!、石川はドアを開けて外へ。
Д<「出た!」
つじ「やった。」
Д<「完全に術中やで。後は、、、」
・・・・・・・・・・
先刻
あいぼんは手書きの宿舎と厩舎のまわりの見取り図をベッドの上に広げた。
Д<「ののはまずここや。」
指をさす。
つじ「うんうん。」
Д<「うちはここにいる。でな、ののはここ、ここ、ここ、を順に移動しながら鳴くねん。
うちはここからここ、んでここ。」
つじ「なるほどー。わかりました。」
Д<「んで、最終目的地はここや。」
あいぼんは地図を指差し、指をくるくると回した。
・・・・・・・・・・
つじ「わかってるれす。ごーるであうのれす。」
二人はそれぞれ別の方向へ走った。
石川「ふう。」
石川外を少し歩き回った後、腰を降ろした。
石川「ここまでは追ってこないよね。
あーあっ。部屋に戻りたい。。ぐすっ、、なんでこんなことに、、
なんにも悪い事しないのに。」
- 220 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時08分35秒
- つじが草むらを鳴らす。
ガサガサガサ、、、
つじ「(まだまだやすむにははやいれすよ)」
石川「あ!、、やだ、、、ど、どうしよう??」
つじ「ゴゲーーゴッゴッゴッゴ!!」
石川「!!!」
石川は振り向かないまま、走りだした。
つじ「(あいぼん、いったのれす。)」
Д<「ひひひっ、、来た来た。」
ばっさばっさばっさ!!
石川「!!、トリ!?」
慌ててその音から逃げる。
石川「やだ、やだー。」
あいぼんは、急いで石川の先に回り、
Д<「梨華ちゃん!そっちやない、こっちや!!!」
石川「あ、あいぼん、助けに来てくれたの!?」
石川はよれよれとこっちへ向かってくる。
石川「良かった。怖かったんだよぉ。」
Д<「まだ安心したらあかん。」
石川「え?」
- 221 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時09分43秒
- グゲーーーゴゴゴ!
石川「こっちにも!?」
バッサバッサ
石川「きゃーーー!!」
Д<「ほら、こっちや梨華ちゃん!」
グゲーゴゴグゲー!!
バサバサバサバサ、、、
石川「いやーーーー!!」
Д<「ちゃうで、こっちや!!(ニワトリ小屋はな!)」
・・・・・・・
石川「ひーーん!もういやー!」
あいぼんは石川の腕を掴んで、
石川「!!」
ぐいっと引っ張る。
Д<「ここや!こん中にかくれるんや!!」
石川「あいぼん?」
Д<「うりゃ!(仕上げや!)」
がちゃ!バン!
石川をニワトリ小屋に押しこみ鍵をしめた。
石川「た、、、助かった。。。ふう。よかった。ありがとうあいぼん。」
Д<「・・・・・・(よっしゃ!ええでのの!今や!!)」
石川「あいぼん?」
- 222 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時10分28秒
- つじ「(すいっちおんれす。)」
電灯のスイッチを入れる辻。パッとあたりが明るくなる。
石川「!?」
こっこっこっこ、、こっこっこ、、
バサバサ、バサバサバサバサ、、
石川「・・・・に、わ、、??」
あたり一面のニワトリニワトリニワトリ、、
石川「ひっ、、ひっ、、ひーーーん!!」
Д<「イェーーイ!!」
つじ「いぇーい!!」
二人揃ってガッツポーズを決め、さらにハイタッチする辻とあいぼん。
ゴゲー!、グゲーー!ごっごっご、、ゴゲー!!
明かりがついたことによって朝と勘違いし、お祭騒ぎするニワトリ達。
バサバサバサ、ごっごっごっ、、
比例してわたわたとパニクる石川。
石川「ひーん、ひーん!!何これー!?」
がちゃがちゃがちゃ、バンバンバン!!
石川は必死で扉を開けようとしている。出られるわけが無い。
Д<「○※〆△¥%、、ひーー、おかしぃわほんまーー。ひっかかりよった!!」
うずくまって地面を叩きながら、腹を抱えて爆笑するあいぼん
石川「あいぼん??」
つじ「・・・・っ、くく、、くすくす、、
そ、、、そんなにおっきいこえれわらってたら、みんなおきちゃうよー。あいぼん。」
腹と口を押さえて笑う辻
石川「ののちゃん??」
- 223 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時11分08秒
- Д<「計画通りやぁ!!」
石川「!!」
それを聞いてやっと事態を飲みこんだ石川。
石川「ひ、ひ、ひどいよー!あいぼん!だしてぇ、だしてぇえ!!」
がちゃがちゃ、
アニメ声で必死で訴える石川。その時、
ばささっ!
1匹のニワトリが石川の頭の上に飛びついた。
石川「あ!、あ゛ーんあ゛ーーーーん!!」
頭を押さえて体ごとゆするが、しっかりしがみついて離れない。
石川の頭の上でバランスをとろうとしたニワトリがバタバタと、、、
Д<「ひー、ひー、ひー、π¢@×〒$√、、、似合ってるでー!!」
余計つぼに入り、だんだん苦しくなってきたあいぼん。
羽音用に持っていたバスタオルをバッサバッサと振りまわした。
つじ「あたまにはねがはえてるみたいれす。んー、んー」
辻も手で口を押さえるのがしんどくなってきた。
石川「あ゛ーーん!!だしてぇ!!」
つじ&Д<「γ*Θ#・・・・」
- 224 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時12分23秒
- その時、急に二人のあたりが暗くなった。
Д<「!!!」
影が二人を覆ったからだ。
つじ「はっ、」
Д<「(しまった。)」
保田「あーんたたち!!、いい加減にしなさい!!」
そこには鬼、、、もとい保田が立っていた。
保田「まったく、うるさいから眠れないと思って来てみれば。。」
保田は手際良くニワトリ小屋の鍵を開けると、気絶寸前の石川に声をかけた。
保田「おーい、石川、開けたよ。おきろー。」
石川「あー、あー、ひーーーん」
石川はこけそうになりながら小屋を出ると、わたわたと厩舎の外まで走って出て行った。
保田「ほんっっっっとに、、、まっっったく、、」
しゃがみこむあいぼんと辻の前に『鬼』は仁王立ちになった。
保田「あんた達って子は!!、、」
Д<「(落ちつくんや。)」
呼吸を整えるあいぼん
保田「また人のトラウマ増やすような、たちの悪いいたずらして!」
Д<「(今や!奥の手や!!)」
つじ「(あいちゃん、いまれす!えんぎりょくれす!!)」
Д<「ち、、違うんです。保田さん。」
- 225 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時14分44秒
- 保田「?、何よ」
泣きそうな顔で
Д<「うっ、、うちらも、ほんまはやりたなかったんやけどな、
梨華ちゃんにちょっとでも鳥嫌いを直して欲しかってん。
ほら、これから鳥系のモンスターに襲われたら困るやないですか。
だから、、だから、、、」
目をそらして目がしらを押さえるあいぼん
Д<「ほんま、堪忍な。梨華ちゃん。。」
シーンと静まるその場。
つじ「(やった!)、、そ、、そうなんれす。ごめいわくおかけしてすいませんれした。」
辻も横でペコリと頭を下げた。
保田「・・・・・・・」
石川「そ、そうだったの。あいぼん、わざわざ私のために。。。
ありがとう。。ぐすっ」
厩舎の入り口の陰から中を覗きながら、涙ぐむ石川。
- 226 名前:いたずら 投稿日:2001年08月14日(火)01時18分24秒
- 保田「嘘ね。」←冷めた目で
つじ&Д<「(ギク)」←目をそらしたまま
保田「あんたも一々騙されんじゃないよ。」
石川の方を向いて一言。
石川「は、、はぃいい。」
すごすごと入り口の裏側に隠れる石川
Д<「んな、な、なんで嘘ってわかんねん??」
保田「ほらやっぱり。」
Д<「あ、しもた!」
つじ「(あ、あいちゃん、まぬけれす。)」
Д<「ほんま、なんでばれたんやろ?なあのの?」
辻を見るあいぼん。
保田「ばれないわけないでしょ!こっち向きなさい!!」
Д<「演技は完璧やったのに」
保田「あんたの場合それ以前の問題でしょ!!
問題はそんなことじゃないの!わかってる?
今日という今日は覚悟しなさいよ!!」
つじ&Д<「「はい」」
保田「ガミガミガミガミガミ、、、」
つじ「(こわいのれすこわいのれす。とくにかおがこわいのれす)」
Д<「(あー、、はよおわらんかな、、だるいわー)」
保田「ちょっとあんた達!!特にあいぼん!!話聞いてるの?!」
つじ&Д<「「はいーー」」(タイミング良く、背筋を伸ばしながら)
保田「ちゃんと聞きなさいよ。ガミガミガミガミガミ、、」
つじ「(もうねむいのれす、れもあくびれきないれすつらいのれす)」
眠くて涙が出てくる辻。
Д<「(しんどいわー。ほんまに、、明日6時起きは無理やな、、、)」
・・・・・・・
- 227 名前:翌朝の牧城 朝刊記事その1 投稿日:2001年08月17日(金)21時34分01秒
- ヨシターケ「りんね、新聞取ってきてけ〜」
呪われた街ダーマ=サイタ
以前、魔王軍の襲撃を受け現在再建中のダーマ=サイタをまたも
不幸が襲った。街の住人が忽然と姿を消してしまったのだ。街の至
る所に銃器類や刀剣の類が散乱していることから、魔物の襲撃の可
能性も考えられるが、遺体はおろか血痕すら見当たらず、原因は不
明である。
- 228 名前:朝刊記事その2 投稿日:2001年08月17日(金)21時37分17秒
- 古代遺跡発見か
およそ800年前、突然歴史から姿を消したアッサヤヌ帝国のものと
思われる遺跡が発見された。地中に巨大な建造物らしきものが埋没し
ているとのこと。早急な調査が期待されるがそれはしばらく先のこ
とになるだろう(遺跡の発見場所はダーマ=サイタ郊外。現在ダーマ
=サイタは立ち入りが禁止されているため)。
- 229 名前:朝刊おまけ 投稿日:2001年08月17日(金)21時38分41秒
- ミチーヨの酒場新店舗完成!みんなきてや〜
- 230 名前:ある朝の風景 投稿日:2001年08月20日(月)04時26分14秒
- よっすぃーが目覚めてロビーへ向かうと保田が新聞に目を通していた。
よっすぃー「おはよ〜」
保田「あら、おはよう。もう平気なの?」
よっすぃー「うん、大神官様のおかげでね。」
保田「あんな怪我数日で治るなんて、一体どんな体してんのよ。」
よっすぃー「うふふ〜ひみつだよ〜」
保田「んー・・・あんた、かわいくなったわね。」
よっすぃー「え、保田さんこそキレイになりましたよ。恋でもしてるんですか?」
照れながら言葉を返すよっすぃー。
保田「やっ、そそそんなコトないわよ変なコトいわないでよもー」
早口になる保田。
よっすぃー「あっ、図星でした?」
д<「・・・ボソッ(んなこたぁーない)」
- 231 名前:新聞の記事についてその1 投稿日:2001年08月20日(月)04時28分56秒
- よっすぃー「え〜と何ですか?これ?」
保田「のろわれたまち、よ。」
よっすぃー「・・・私もっと頭いいです。」
д<「・・・ボソッ(んなこたぁーない)」
保田「冗談よ、冗談。」
よっすぃー「それにしてもずいぶん物騒な事件ですね。」
保田「魔王軍の仕業かしらね。でもそれにしてはずいぶん手の込んだことするわね。」
よっすぃー「頃さないでさらっていったってことですか?」
保田「さらうだけなら全員を連れて行くことはないのに・・・
それに一度襲った街をもう一度襲うってのはちょっと理解できないわ。」
よっすぃー「武器の使用の形跡がありますから、何かと戦ったのは間違いでしょう。
それにしても氏体も血痕もないなんて・・・」
- 232 名前:新聞の記事についてその2 投稿日:2001年08月20日(月)04時31分45秒
- 保田「歴史の空白、アッサヤヌか。」
よっすぃー「あ〜それ知ってますよ。その年代の文献には強大な帝国の存在が
記されているけど、肝心の首都が見つかっていない、ですよね。」
保田「あら、よっすぃー歴史得意だったかしら?」
よっすぃー「アッサヤヌはちょっとね。」
保田「建造物ごと地中に埋まっていたとはね。見つからないはずだわ。」
よっすぃー「(行ってみたいな〜)」
保田「でも場所が場所なだけに、発掘作業はまだ出来そうもないし・・・
この遺跡、事件と関係あるのかしら、まさかね。」
- 233 名前:新聞の記事についてその3 投稿日:2001年08月20日(月)04時33分05秒
- 保田「みっちゃんまた新しい店つくったんだ。」
よっすぃー「場所はどこですか?」
保田「ダーマ=サイタからそんなに遠い場所じゃないみたい。」
- 234 名前:朝食後のミーティングにて 投稿日:2001年08月27日(月)06時28分41秒
- 勇者飯田「次の目的地を決めよう!」
д<「なんかテンションたかいなー」
ごま「zzz」
д<「こっちは相変わらずテンションひくいなー」
ナッチー「もぐもぐ・・・がっがっ」
辻「あろえよーぐると、おかわりれす。」
д<「のの、あんたはやめとき。」
3人ほど話し合いに参加してないが、
保田「その前に」
保田が口を開く。
保田「皆に言っておきたいことがあるの。」
ナッチー「(ピタッ)・・・なーんだ圭ちゃん、やっぱり・・・」
バシッ、パタッ
保田「当身。」
ナッチー「・・・・・」
д<「食って寝たら牛になるで」
- 235 名前:朝食後のミーティングにて 投稿日:2001年08月27日(月)06時32分35秒
- 保田「サイクロプスにされてた子のことなんだけど・・・
あの子・・・一緒に連れて行こうと思うの。」
一同「!」
矢口「えっ、どーして?ってあの子意識は戻ったの?」
保田「ええ。それに一緒に行こうって言ったのはあの子自身よ。」
勇者飯田「でも何で一緒に行きたいの?わけは聞いたの?」
保田「それは・・・」
朝食前のこと
ミカの部屋へ様子を見に来た保田
保田「おはよう、眠り姫。」
ミカ「・・・・・・」
ガバッ!
保田「起きたばっかりだっていうのにずいぶん元気ね。」
ベッドから飛び起きたミカは構えをとって保田を睨む。
保田「落ち着いて。あなたと戦うつもりはないわ。」
保田は平静を装っているが、胸の鼓動は高まっている。
- 236 名前:ミカと保田 投稿日:2001年08月27日(月)06時34分26秒
- しばらくの沈黙の後、ミカは構えを解いて話し始めた。
ミカ「ソウデスネ、キキタイコトモアリマスカラ。」
保田「座って話しましょ。」
保田はここが牧城であること、ミカがサイクロプスにされていたこと、
飯田と辻が彼女を助けたこと、そして今まで眠っていたこと等を話した。
保田「他に訊きたいことはある?」
ミカ「・・・ドウシテ タスケテクレタデスカ?」
保田「誰かを助けるのに理由は必要無いわ。」
ミカ「・・・・・・」
保田「でも、その質問は私よりも飯田と辻に聞いてみなさい。」
ミカ「・・・イエス。」
保田「じゃあ今度は私が訊く番ね。」
保田は軽く深呼吸して問いかけた。
保田「あなたはどうしてこちら側にいるのかしら?お姫様。」
- 237 名前:ミカと保田その2 投稿日:2001年08月27日(月)06時36分51秒
- 保田の言葉がミカの表情を強張らせる。保田にも緊張が走る。
保田「こちら側と魔界とを移動するには『穴』が要るはず。『穴』はどうやって開けたの?」
しかし保田の問いかけに、ミカは前を見据えたまま応じない。
保田「いつこちら側へ来たの?」
ミカ「・・・・・・」
保田「2年前?」
ミカは頷くとようやく口を開いた。
ミカ「ワタシハ マダ ツヨイチカラヲ モッテマセン。ダカラフカンゼンナ
『アナ』デモ コチラヘ クルコトデキマシタ。」
保田「(そう、やっぱりあの時に)こちら側に来たのは何か目的があるわよね?」
ミカ「ソーリー。イマハ、ナニモイエマセン。ナニモキカナイデクダサイ。」
保田「そうはいかないわ(さやかの為にも)。お願い、話して。」
ミカ「・・・・・・ゴメンナサイ、イエマセン。」
保田「・・・そう。」
立ちあがって部屋を出ようとする保田をミカが呼び止める。
ミカ「オネガイアリマス。ワタシモ タビニ ツレテイッテクダサイ。」
- 238 名前:ミカと保田 その3 投稿日:2001年08月29日(水)20時09分14秒
- 保田「(・・・なんですって?)」
保田は耳を疑った。
ミカ「ムリナ オネガイナノハ ワカッテマス。ツレテイッテクダサイ。」
保田「あ、あなた魔王軍なのよ?それ以前に魔界のプリンセスなのよ?
自分の言ってることがわかってるの?」
ミカ「ホンキデス。」
二人はじっと互いの目を見る。何秒かの時間がとても長く感じられる。
ミカ「ワタシニハ サガシモノガアリマス。トモダチト モウヒトツ・・・」
ミカは目をそらし下を向いたが、再び保田の目を見て話し始めた。
ミカ「・・・ワタシノキオクデス。2ネンマエヨリマエノ キオクアリマセン。」
保田「!!」
ミカ「ジブンガ プリンセスダト イウコト イワレテモ オボエテナイデス。」
あまりに予想外なミカの言葉に、保田は驚きそして悩んだ。
保田「(どういうこと?こちら側に来る前に記憶を消されたの?)」
ミカ「ミナサントイッショニ タビシタラ サガシモノミツカルキガシマス。」
保田「(魔界、魔王、さやか・・・鍵になるのはきっとこの子・・・
危険はあるかも知れないけど、一緒に来るのは好都合かも・・・)」
- 239 名前:ミカと保田 その4 投稿日:2001年08月29日(水)20時10分44秒
- しばらく考え込んでいた保田だったが、やがて口を開いた。
保田「・・・自分がプリンセスだって知ってたのは?」
ミカ「マオウノ テシタカラ キキダシマシタ。」
保田「友達というのは?」
ミカ「カノジョハ2ネンマエカラ ズットイッショダッタ トモダチデス。
カノジョハ サイキン ユクエフメイニ ナッテシマイマシタ。」
保田「理由はそれで全部?」
ミカ「・・・マオウグンハ イゴコチワルイデス。ココナッツノミンナ イナクテ・・・」
またしても意外な答え。
保田「・・・私ひとりじゃ決められないわ。皆に聞いてみないと。」
ミカ「ホントデスカ!?」
保田「皆が反対したらダメだからね(まぁ誰も反対しないと思うけど)。」
ミカ「サンクス。」
保田「でも条件があるわ。」
ミカ「?」
保田「身分を隠すこと。魔界のプリンセスだなんて絶対ばれないようにね。」
ミカ「・・・イエス。」
保田「それから、ココナッツ四天王っていうのもね。」
保田は部屋を出ようとして、ふと振りかえりミカに言葉を掛けた。
保田「もしあなたが敵だとわかっていても飯田はあなたを助けたでしょうね。」
- 240 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 241 名前:挿話・隠密の十字架 投稿日:2001年09月04日(火)01時53分55秒
- 「単独部隊か・・・」
真巳がつぶやいた言葉に、私は背筋を凍らせる。
そのまま彼女を睨みつけると、私を蔑むように笑っていた。
「何?その憮然とした表情は」
私は奥歯を噛み締めつつ、再び窓の外を見つめる。
ここは名も無い小さな入り江。
今は使われていないらしい古い小屋に、私と真巳は泊っている。
そう、ここにはもう衣吹の姿は無い。
作戦の失敗の責任を取らされたのは、リーダーの私ではなく、先鋒の衣吹だった。
彼女が優秀であれば達成できた任務だと、誰が胸を張って言えるのか。
単独部隊隊長だなんて聞こえはいいが、そんなの捨て駒も同然だ。
それなのに、アイツは、アイツは、、、
「仲間の辞令なんかでいちいち頭抱えてたら、隠密なんてやってらんないんじゃない?」
真巳は私を煽るかのごとくそう言うと、九の一御用達の軽い煙草に火をつけた。
「薬や火薬で簡単に人の命を奪える隠密が、別れくらいでセンチメンタルってのもないでしょ」
確かに、真巳の言う通りだ。
そうは思うのだが、心のどこかではそれを否定したがっている自分がいる。
海が、真巳が配属される以前のシェキドルを思い出させてしまう。
- 242 名前:挿話・隠密の十字架 投稿日:2001年09月04日(火)01時54分16秒
- 自分は隠密にむいていないのではないか。
あの娘と、カオリと剣を交わして以来、そんな青い葛藤が心の中で渦巻く。
仕事に対するスタンスの持ち様など、幼児の頃から叩き込まれてきたはずなのに。
子供は罪を理解できない。
時には残酷な罪を犯す。
しかし何より残酷なのは、大人になりかけたある時点で、犯した罪の重さに気づいてしまうことだ。
私と彼女は一つしか年が違わない。
彼女に向けた私の微笑みは、決して作り物ではない。
諜報員としての秘密を隠していたと言っても、はじめての大きな任務に心躍っていたに過ぎない。
初めて買物メモを持たされた少女のような、あどけないだけの私。
隠密として育てられた以上、全ての業を罪と受けようなどとは、いささかも思っていない。
そうではなく、最大の罪は無知にあるのではないか、と。
すなわち、自分の手引きでひとつの村が火の海に呑み込まれようとは・・・
「沙紀姉、今夜中に合流できるって」
真巳の声で急に現実に引き戻される。
「……そう」
ただそれだけしか返せなかった。
真巳は訝しげな瞳で私を見つめていた。
- 243 名前:挿話・隠密の十字架 投稿日:2001年09月04日(火)01時54分45秒
- 沙紀姉は隠密部隊トップシークレタリーとして、去年の終わりごろからか事務に回っていた。
魔王軍の全てのエージェントにとって、最も身近な目標と言える。
その沙紀姉が現場に戻ってくる。
しかも監察官として、うちの部隊に。
しかし、彼女と同じ仕事ができることに期待で胸を膨らませるほど、私たちに余裕は無い。
ここまで仕事に切迫したのは、過失に気づいたあの日以来だろうか。
あれから幾つもの仕事をこなし、結果的に何人かの命を奪ってきた。
それでも罪に気づかなかったあの指令だけは、今も過失として忘れずに心の奥に納めている。
あの夜以来、封印した本名とともに。
火が大蛇のようにうねっていた、あの光景を忘れないため、名乗り続けているアミという名前。
「今夜って、それじゃ移動は明日の晩?」
「いや、着いたらすぐに出るから、寝ずに待ってろって」
「うわ」
「あの人スパルタだから」
そう言うと、真巳はしかめっ面のまま笑って見せた。
「次の町はどこだっけ」
そう言って私は地図を広げる。
向かう先は漠然と南。
しばらくは治安維持と称して、退屈に田舎町への圧力かけをして回らねばならない。
それでも、隠密として生きなければいけない我が運命。
いつか再び、彼女と剣を交えるために。
- 244 名前:再びミーティング 投稿日:2001年09月04日(火)08時16分28秒
- 保田「それは・・・彼女に記憶がないから。手掛かりを見つけるために。
記憶が無くなった後一緒にいた友達を探すために。」
辻「かわいそうれす。」
飯田「困っている人を放っておくわけにはいかないよ。」
矢口「・・・・・・」
よっすぃー「でも、私達と共に旅をすることは彼女を危険に巻き込むことになりませんか?」
保田「(ココナッツ四天王の一人だった、って言えば話は早いんだけど・・・)
私もそう思ったわ。でも『危険は覚悟の上だ、私も戦える』って言うから。」
よっすぃー「・・・では、どの程度の強さか確かめてみましょう。保田さん、
彼女は格闘と魔法のどちらを得意とするんですか?」
保田「素手での格闘らしいわ。」
よっすぃー「では矢口さん、明日にでも手合わせしてみましょう。」
矢口「え、矢口が・・・?」
勇者飯田「ねえ、そんなことしないでさ、連れてってあげようよ。」
よっすぃー「飯田さん、私達の旅の行き着く先には魔王がいます。時には刺客が襲ってきます。
だから彼女が戦えるのかどうか、確かめる必要があると思います。」
勇者飯田「ん〜〜〜」
よっすぃー「これは彼女の命に関わる問題ですよ。」
勇者飯田「・・・わかった。そうしよっか。」
よっすぃー「どちらも病み上がりですから明日ということにしますが、矢口さんはいいですか?」
矢口「うん、やってみる。」
保田「他に問題はない?」
よっすぃー「私はないです。」
石川「わたしも・・・」
д<&辻「ないです(れす)。」
ごま&ナッチー「zzz」
矢口「・・・」
- 245 名前:再びミーティング 投稿日:2001年09月04日(火)08時20分23秒
- 保田「じゃあこれで解散・・・」
勇者飯田「あ〜〜!」
д<「なっ、なんやねんな!」
勇者飯田「次の目的地決めてないよ!」
保田「それなら、あの人がまた新しい酒場作ったから、あいさつついでにそこに行きましょう」
ごま「情報収集の基本は酒場だよね。」
д<「お、いつの間に」
よっすぃー「(ごっちん、それ私が言おうとしたのに・・・)」
石川「(よっすぃーさん・・・)」
辻「えと・・・のののめもによるとオキナワアイランドへいくよていがあったれすね。」
д<「皆忘れとるな。まぁ南へは向かうみたいやなぁ。オキナワは後でええやろ。」
- 246 名前:矢口VSミカその1 投稿日:2001年09月04日(火)08時29分29秒
- 翌日の昼 一行は牧城の草原に集まっていた。
よっすぃー「えーとこれはミカさんの力の程を見るための手合わせです。
勝敗の結果を見るものではありません。ですから、ミカさんの
力量がわかったところで終了します。いいですね?」
矢口「うん。」
ミカ「(コクッ)」
保田「(矢口には悪いけど結果は見えてるわね)」
勇者飯田「ほんとにやっちゃうんだ。」
辻「(ドキドキ・・・)」
ごま「zzz」
д<「この人はこればっかりやなぁ。」
よっすぃー「それでは・・・始めっ!」
矢口の回想 前日
矢口「ねぇよっすぃー、なんで矢口なの?」
よっすぃー「餅は餅屋、ですよ。ミカって子が素手による格闘タイプですから、
その力量を量るには同じ戦闘スタイルの矢口さんが適任なんですよ。」
矢口「矢口で大丈夫かなぁ?」
よっすぃー「だぁいじょうぶです。矢口さんは自分で思ってる以上に強いですよ。」
- 247 名前:矢口VSミカその2 投稿日:2001年09月04日(火)08時32分08秒
- 始めの合図で飛び出していったのは矢口だった。
矢口「いくよ!はっ!」
左足を軸に後回し蹴りを繰り出すが、ミカは体を反らしてかわす。
ミカ「(マワリオワッテ コチラヲ ムイタトコロデ ミギストレートヲ オミマイシテアゲマス)」
しかし矢口は回転を止めずそのまましゃがみこんで蹴りを放つ。
ミカ「(スイメンゲリ!カワセナイ!)」
後回し蹴りが終ったところで反撃しようとしていたミカは水面蹴りをかわせず・・・
ドンッ!!
矢口「(倒れない!?)」
矢口はとっさに距離を取る。ミカの脚は青白いオーラに包まれている。
ミカ「ダマサレマシタ。サイショノケリハ フェイントダッタノデスネ。」
矢口「(あれはオーラ!)・・・今のは自信あったのになー。」
ミカ「ナミノ アイテナラ アレデ オシマイデシタネ。」
- 248 名前:昨夜の矢口の特訓 投稿日:2001年09月04日(火)08時35分03秒
- 矢口「(裕ちゃんがいなくなって接近戦の出来る人数が少なくなった。矢口がもっと強くならないと。
体力ゲージがなくなってからしか役に立てないんじゃ、この先皆に迷惑が掛かっちゃう。
普段から氣を使って戦えるようにならないと。)」
矢口は立ったまま目を閉じ、オーラを身にまとう。髪が逆立つほどのオーラが放出されている。
矢口「はぁはぁはぁ・・・ダメ、まだうまくコントロール出来ない。氣がたくさん出過ぎちゃう。
まずは拳だけに氣を集めてみよう。」
再び集中してオーラを拳に集めようとする。が、拳から肩までオーラが放出されている。
矢口「ふぅ、もう、す、こ、し」
オーラの集まる部分は肩から二の腕、肘と範囲を徐々に狭めていく。
矢口「うーん、もう限界だぁー!」
息を切らしてその場に座り込む矢口。
矢口「(よっすぃーはバトルマスターですごく強いし、後藤は大魔道で怪力だし、保田さんは
後方支援だけじゃなく戦えるし、かおりはどんどん強くなってるし、石川とナッチーは
ボンバー四天王に勝っちゃうのに、矢口は二人掛かりでボンバー四天王一人に
負けちゃうなんて。はぁ、こんな矢口って・・・)」
そこまで考えて矢口はすくっと立ち上がりブンブンと頭を振る。
矢口「(なんでこんなにネガティヴしてるんだ!石川じゃあるまいし!
こんなんじゃ裕ちゃんに笑われちゃう!)」
この夜遅くまで矢口の特訓は続いた。
- 249 名前:矢口VSミカその3 投稿日:2001年09月04日(火)08時37分56秒
- ミカ「デハ コンドハ コチラカライキマス」
ミカは両手にオーラをまとって構えた。そして一気に矢口の懐へ飛び込んで右ボディブローを放つ。
ドン!
矢口「クッ!(速い!痛っ!)」
矢口は両腕でボディブローをガードするがミカは続けざまその上から左手で掌底を放つ。
ミカ「(ソレデハ フセゲマセンヨ)ハッ!」
矢口「(え?)」
矢口は何が起こっているのか一瞬わからなかった。
ズザザザザ!
ミカの掌底は矢口を吹き飛ばし矢口は地面に叩き付けられる。
保田「ねぇよっすぃー。」
よっすぃー「はい?」
保田「もういいんじゃない?」
よっすぃー「いえ、もう少し続けます。」
保田「もう彼女の力はわかったんじゃない?」
よっすぃー「ええ。彼女の力はかなりのものですね。」
保田「そこまでわかってるならどうして・・・」
よっすぃー「矢口さんのためです。矢口さんならこの戦いでなにか掴めるかもしれません。」
- 250 名前:転章・酒場と冒険者 投稿日:2001年09月05日(水)04時11分38秒
- ここはダーマ=サイタからそう遠くない距離にあるCクラスシティ・バナナソーカ。
何度となく建築と解体が繰り返された昔ながらの繁華街に、その店はあった。
「んじゃあこの用紙に太枠欄全部に記入して」
カウンターに立つスレンダーな女性は、この店の店主・ミチーヨ。
幾度となく天災その他で店を壊されつづけながらも、くじけることなく働き続け、取り扱い業務を増やし、店舗数を徐々に拡大している根性実業家である。
この店は今週オープンしたばかりの彼女の新しい店舗なのだ。
「これでいいですか?」
渡されたカーボン紙の用紙に何やら書き込んでいるのは、小さな体に大きな荷物を背負った少女。
その出立ちからして、酒を飲みに来た地元民などではない。
おそらくは、酒場の傭兵紹介業務を頼ってきた、腕覚えの冒険者。
- 251 名前:転章・酒場と冒険者 投稿日:2001年09月05日(水)04時12分02秒
- 「はいはい、名前もジョブもオッケー、と
・・・あら、あなた随分と若いのね」
ミチーヨは彼女の書きこんだプロフィールを見て、動かしていたペンを止める。
「あ、保護者印とか必要ですか?」
少女は心配そうに尋ねる。
「そんなこと言ってられる商売じゃないの、分かってるでしょ」
そう言ってミチーヨは眉をひそめて笑みをつくる。
「よかった、そんなの言われても用意できないから」
「家出少女かなんか?」
ミチーヨは再びペンを走らせながら尋ねると、彼女は苦笑いとともに答えた。
「まあ似たようなもんです」
「そう・・・」
ミチーヨは雇用登録の際にも素性を突っ込んだりはしない。
重要なのは実績と実力だからだ。
それに彼女は一般的な冒険者と同じ額の所持金を持っている。
「それじゃ簡単な実力テストをやるから、表へ出てくれる?」
「テストって手合わせですよね?」
「そう、だけど」
「どんな人とやるんですか?」
言葉だけだと怖気づいているようにも聞こえたが、少女の瞳は確かな期待に輝いていた。
どうやら戦うことに楽しみを見出し始めた年頃らしい。
「そうね・・・
それじゃあ特別に私が相手になろうかしら」
- 252 名前:矢口VSミカその4 投稿日:2001年09月05日(水)04時46分45秒
- 矢口「はぁはぁ・・・(この子、強い。このままじゃ一方的にやられちゃうよ。
まだ未完成だけどアレを使おう。)」
ミカはよっすぃーの方を向いたが、よっすぃーは拳を握りその腕を胸の前で交差させる。
まだ続けろという合図だった。
ミカ「(モウ チカラハ シメシタツモリナノニ・・・マダツヅケル?)」
ミカは視線を矢口に戻すと、様子がさっきまでと変わっていることに気付いた。
矢口「んんん〜!はぁっ!」
ミカ「(コノヒトモ『氣』ヲツカエルデスカ!デモ フアンテイデスネ。)」
両腕にまとった矢口のオーラは炎のように揺らめいている。
矢口「はぁはぁ・・・(まだ安定出来ないな・・・早く勝負を決めなきゃ)」
矢口の負けたくないという気持ちが、この戦いの目的を忘れさせていた。
ミカ「(・・・クル!)」
矢口は飛び上がって上からパンチを打ち下ろす。ミカはガードの態勢を取っているが、
矢口はかまわずパンチを連打する。
ミカ「(サッキトハ コウゲキノオモサガ ダンチガイデス。ウケノ タイセイデハ フリデス。)」
ミカは一歩退いて距離を置くが、矢口はすぐに距離を詰めにかかる。
矢口「(一気に決める!)えいっ!」
しかし矢口の渾身の右ストレートはミカの左腕に弾かれ、矢口の体が流れる。
ミカ「(オワリデス。)」
オーラをまとったミカの右手が矢口のみぞおちを直撃する。吹き飛ばされ、矢口は気を失った・・・
・・・はずだった。
ミカ「(サスガニ モウオワリデショウ。)」
矢口「・・・・・・」
うつ伏せに倒れた矢口の手が拳を握る。そして膝を突いて起き上がる。
ミカ「(ナントイウ トウソウホンノウ!マダ オキアガレルナンテ・・・)」
矢口は膝を突いたまま右腕を胸の前で構え、さっきまでとは比べ物にならない程のオーラを放ち始めた。
ミカ「(コレハ・・・!)」
そして辺りは眩い光に包まれた・・・
- 253 名前:矢口VSミカその5 投稿日:2001年09月05日(水)04時49分50秒
- 勇者飯田「眩しい・・・」
辻「めがちかちかするれす。」
石川「明日が見えない・・・」
д<「ドサクサに紛れてなにぬかしとんねん。」
ナッチー「なっ、なにごとだべさ?」
ごま「ふぇぇ、もう朝ぁ?」
д<「おはようさん。」
光が収まり目が慣れるとよっすぃーが矢口を抱えていた。ミカは全身をオーラに包み防御態勢のままだった。
そして矢口のいた地点を中心に地面が放射状に焼け焦げていた。
保田「(凄い・・・あれはグランドクロス並の破壊力があるはず・・・止めて正解ね、よっすぃー。
今の矢口には危険過ぎる技だわ。命を落としかねない・・・)」
矢口は意識を失っている。
よっすぃー「ここまでです。」
ミカ「・・・ハイ。アノワタシハ・・・」
よっすぃー「ミカさん強いですね。これからもよろしくお願いします。」
ミカ「イッショニ タビデキルデスネ?センキュー!」
石川「あー!私のよっすぃーさんに・・・!」
ゴン!
保田「いつからあんたのになったのよ!バカ言ってないでさっさと矢口の手当てして来なさい!」
石川「(ひーん)はいぃ」
よっすぃー「あ、あのミカさん、抱きつくのは構わないのですが、矢口さんの手当てをしないと・・・」
ミカ「ノープロブレム!ワタシニマカセナサーイ!」
ミカは矢口の額に手を当て氣を送り込む。矢口の体は青白く淡い光に包まれ、傷が消えて行く。
矢口「う、うん・・・よっすぃー?」
よっすぃー「お疲れ様です、矢口さん。」
矢口「あれ?どうなったの?」
よっすぃー「オーラの出し過ぎで矢口さん、危なかったんですよ。だから矢口さんが技を出す前に
気を失ってもらいました。」
- 254 名前:矢口VSミカその6 投稿日:2001年09月05日(水)04時56分15秒
- 皆の目が眩んでいた時
ミカ「(コレハ・・・!)」
この技をかわせないと判断したミカはオーラで全身を包んで防御態勢を取る。
保田「これまずくない!?」
保田がそう言った時既によっすぃーは保田の隣にはいなかった。
よっすぃーは矢口に当身をいれてすぐさま矢口ごとその場を飛び退く。
行き場を失ったオーラはその場で凄まじい光を放ち拡散した。
よっすぃー「ここまでです。」
戦闘後
矢口「・・・二回目に吹っ飛ばされたとこまでしか覚えてないや。」
よっすぃー「その後は意識がない様子でした。矢口さんは氣を大量に放出する技を出そうと
していましたが、氣のコントロールがあまり上手く出来ていないようでしたから
止めさせてもらいました。あれを出していたら命がなかったかもしれません。」
矢口「・・・ごめん、よっすぃー。迷惑かけちゃったね。」
よっすぃー「謝るのは私の方です。もっと早く止めていれば、矢口さんを危険な目に合わすことはなかったのに。」
矢口「(ありがとう、よっすぃー)・・・よいしょ・・・っと」
パタッ
立ち上がろうとして倒れる矢口
ミカ「マダタッテハ イケマセン。ワタシノ氣デ キズハ ナオシマシタガ、ヤグチサンノ
カラダニ氣ハ ノコッテイマセン。ウゴケル カラダデハ アリマセン。」
矢口「あ、体どこも痛くない。ありがと・・・」
そう言うと矢口は眠りについた。
石川「矢口さ〜ん、だいじょうぶですかぁ?」
よっすぃーとミカは人差し指を口に当てて、シーッとする。
石川「(あーん、せっかく来たのに〜)」
よっすぃー「さぁ、行きましょう。」
石川「(いいなぁ〜お姫様だっこ。)」
よっすぃーは矢口を抱えて歩き出した。
- 255 名前:挿話・パートナーの掟 投稿日:2001年09月06日(木)01時54分31秒
- 「ねえユウキ」
「ん?」
彼は運ばれてきたサラダを口いっぱいに頬張りながら、皿から顔を上げて私に見向いた。
「これからどうしよっか」
私がグラスを傾けながらそう呟くと、彼はは急いで口の中のものを飲みこみ、水で流し込む。
「食い扶持なら今まで通り賞金稼ぎでも傭兵でも曲芸でもやってきゃいいんじゃないの?」
だめだ、この男と食事中にちゃんとした会話はできない。
私はため息をひとつ、ほとんど食い滅ぼされた皿をつつく。
「そうじゃなくってさ、旅の目的、みたいなもんよ」
私はオリーブをさしたフォークを指先で揺らす。
彼はしばし眉をひそめた後、フォークを置いてゆっくりと口を開いた。
「俺のほうの目的は知ってんだろ」
そう不機嫌そうに言い放つところはいかにも勝手な男の言い分で、私は再度小さくため息をついた。
お姉さんが話にからむといつもこうだ。
最近よく思うことがある。
なんでこんなヤツと組んでるんだろうって。
まあユウキは呑気だけど腕はそこそこで、タラシだけど顔はまあ良くて、、、
いやそういうことでなく、私にはもっと可能性があるのじゃないかと思ってしまう時があるのだ。
- 256 名前:挿話・パートナーの掟 投稿日:2001年09月06日(木)01時55分00秒
- 私だって酒場評価Aランクのライトソーサレス。
補助系を中心にだいたいの簡易魔法は修め、ある程度の武道をも心得た者だけが名乗れるエリートのはしくれだ。
そりゃ酒場依頼でも最高ランクに近い報酬はもらえるけど、それだってたかがしれてる。
お金のことを別にしても、普通こんな特定の冒険者と風来の冒険なんてしない。
ユウキだってそこいらの冒険者の中でも腕の立つほうではあると思う。
だけどこのまま彼と二人きりで冒険しつづけることに、はたして意味があるだろうか。
別に兄弟でも恋人でも幼馴染みですらないのに。
そういえば、最近行く先々で宿屋の主人がダブルベッドの部屋を用意しようとする。
毎度私が顔を赤らめて否定するのを、ユウキは楽しんでいるようにも思える。
確かに彼と酒場に入って他の女の視線を浴びるのは気分がいいけど、ドリンクを取った次の瞬間には隣の女を口説き始めてるってのはどうにかならないものか。
女関係だけじゃない。
武器屋で何時間も人を待たせるのは、いい加減やめてほしい。
そのくせ私が魔術師協会にでも行こうものなら、退屈だと連呼し続ける。
気分次第で山道を好んで登って行くし、お祭り野郎だから御囃子の音を聞いただけでもう走りだしてる。
- 257 名前:挿話・パートナーの掟 投稿日:2001年09月06日(木)01時55分30秒
- 「おかげで夏場なんか夏祭りのある町をめぐることになったんだから」
ふと気付けば、ここの酒場で顔馴染みになったアーチャーだかウッドティルだかの女の子に、ユウキに対するグチをぶちまけていた。
「ほんと、なんでこんな男と二人っきりでパーティーなんか組んでんだろ。」
「好きだからじゃないの?」
彼女はお酒で赤らめた頬をグラスにあてながら、そう呟いた。
「バッ、バカ言わないでよ
私があんな、、、」
私が妙に慌てたせいか、周りの席の連中がこちらを振り向く。
私は苦々しく目をふせながら、小声で話を続ける。
「そんなわけないじゃない」
「そうなの?」
彼女は酔っているのか、事も無げにそう言う。
冒険者は職業柄、若いうちから酒を覚える。
「アイツの節操無さを見りゃ、それくらい分かるでしょ」
「えー、だって普通同世代の男女二人っきりのパーティーだったら、ほぼ間違いなく夜もパートナーでしょ」
ダメだ。コイツ完全に酔ってる。
「だから言ってるのよ
恋人でも無いヤツとなんでパーティーなんぞ組んでんだって」
「それはだって好きだからでしょ」
「あのねー、何度も言ってるように・・・」
- 258 名前:挿話・パートナーの掟 投稿日:2001年09月06日(木)01時55分53秒
- その時、向こうの席で男連中とダベっていたユウキが、こちらのテーブルにやってきた。
「おい、次の仕事決まったぞ」
「は?」
「ここのおやっさんの娘の家庭教師」
突然の内容に、私は耳を疑う。
「あんたが勉強教えんの?」
「バカ、ちげーよ
だからライトソーサー志望なんだってよ」
なるほど、確かに分の良さそうな仕事だ。しかし、、
「えっじゃあ何?
あんた私だけに働かせるつもりなの?」
「んなわけねーだろ
お前がその仕事やってる間は俺もバウンサーかなんかやってるよ」
「ああ、そう」
そうさらりと言われては、はあとしか言いようがない。
「お前置いて先行こうなんて思っちゃいねえよ」
そう言ってユウキは私に硬貨を何枚かよこした。
どうやら奥のビリヤードで勝ったらしい。
「別にいきたいなら一人で行ってもいいのよ」
先ほどの会話のせいか、私は少しつっけんどんな口調になってしまった。
するとユウキは私の顎を指で持ち上げ、至近距離で口を開く。
「つれないことを言うなよな
俺の相棒はお前だけだよ」
席の向こうで、弓女がにやけている。
私は自分の頬がはっきりと染まるのがわかった。
- 259 名前:転章・木漏れ日の事務所 投稿日:2001年09月07日(金)07時13分00秒
- ここは人間との交流に積極的なことで有名な、妖精達の集団居住区・メロン谷。
その中枢部の一角に、他とは違う石造りの建物がある。
交流センターと呼ばれるその建物は、妖精に関わる人間のための総合案内所である。
谷の自然区域に足を踏み入れた者に対応する、言わば大使館のようなものであろうか。
この交流センターは谷の行政によって管理されていて、各部族から1・2名の妖精が交代で勤務している。
今そのカウンターには煌びやかな髪が特徴の、ラミア族の少女が座っている。
彼女の名はマティーラ亜弥。
ラミア族はこの谷の宗教・祭事を司る部族で、彼女は特例としてこのセンターに派遣されている。
実は彼女は部族の中でも高位能力者で、祭事に関わる特殊な能力を持つのだが、種々の事情で今は力を封印されている。
とはいえ彼女は普通のラミアの水準以上の能力値を維持し、ラミア族が元来高位種族であることも相まって、着任早々から交流センターのインフォメーションチーフにおさまっている。
- 260 名前:転章・木漏れ日の事務所 投稿日:2001年09月07日(金)07時13分24秒
- そんな彼女のもとに、ここ数日で顔なじみになったひとりの人間の少女が、書類を持ってやって来た。
「おはよう、亜弥ちゃん」
彼女はおだやか笑みでそう言うと、亜弥に一枚の紙を見せた。
「修学課程修了証明書・・・
じゃあテスト合格したんだ」
「うん、おかげさまで」
「おめでと、あさ美ちゃん」
あさ美と呼ばれた少女の表情には、柔らかい印象の笑みが湛えられていた。
メロン谷では数年前から地元住民を中心に、妖精に関するレクチャー会を開いている。
妖精の種別、住める環境、様々な能力、医療、その他様々なことを若い世代の人間に教え、妖精に関する良識者を増やすことを目的としている。
あさ美が持ってきたのは、そのレクチャースクールの卒業証書のようなものである。
「で、我が交流センターに何用かな、紺野君?」
亜弥がわざとらしくうやうやしい口調で言うと、あさ美も同じように返す。
「チーフはご存知でしょう
フェアリーハンドラーの認定証を頂きに参りまして・・・」
- 261 名前:転章・木漏れ日の事務所 投稿日:2001年09月07日(金)07時13分43秒
- フェアリーハンドラー
それは妖精に関する正しい知識をもった妖精使いにのみ送られる、格式ある称号。
単なる妖精マニアなどとは違い、妖精側からの認定資格なので、人間社会での信用度は高い。
今までは相互間の交流に努めた人間にのみ送られる栄典のようなものだったのだが、彼女はレクチャースクール制度での認定第一号となる。
妖精使いの能力は多岐に渡る。
魔術とは違う自然の封印術や、神術とはまた別の治癒能力など、その能力の多くは戦闘以外で発揮できる。
特にダンジョンガイドの能力は重宝され、自然の中でなら滅多に道に迷うことは無い。
また専門ではない戦闘でも、ベル持った風水師よろしく自然を味方につけた地形攻撃ができ、特に沼地などでは高い戦闘能力を持つことになる。
他にも環境学や児童心理学等の学問にだって通じているし、妖精はもちろんのこと、召還術に関する若干の知識も持っている。
これらの能力から、妖精使いはあらゆる特殊な事態(インパスが効かない封印・神官に癒せない特殊な毒・アイテムの鑑定・ダンジョンの道案内・その他妖精関係色々)でその力が発揮される。
ただ逆に言えば、特殊な事態にならなければまず用の無いジョブではあるのだが。
- 262 名前:転章・木漏れ日の事務所 投稿日:2001年09月07日(金)07時14分01秒
- 「で、これからどうするの?」
「どうするって?」
「冒険に出るとか研究者になるとか・・」
「あー、あんまり考えてないなあ」
あさ美はしっとりとした声で、眠たげに肘をつく。
「ならさ、パーティーに入って旅に出る気ない?」
「旅?」
突拍子も無い亜弥の言葉に、あさ美は思わず聞き返す。
「だからさ、剣士とか魔法使いとかいるパーティーの冒険についていくの」
「冒険かあ……」
あまり興味のないような口ぶりで、あさ美は呟く。
「ちょうどいいパーティーを知ってるの
召還師で妖精と組んでる人がいて、ちょっと普通のパーティーとは違う感じなんだけど」
「その人達、強い?」
「メチャ強い」
亜弥がそういうのなら、かなりの手練なのだろう。
「ねっねっ、興味湧いたでしょ
まだ道内にいるはずだしさ、行ってみなよ」
まるで自分のことのようにはしゃぐ亜弥を見て、あさ美も好奇心がわいてきた。
「そう、、だね、
うん、早速行ってみるよ」
礼を言って、あさ美は亜弥に微笑む。
「その人達にね、私もお世話になったことがあるの。いい人達だよ。
ムラタさんに推薦状でも書いてもらえば、本当に連れてってもらえるかもよ」
そう言いながら亜弥は認定書の必要事項欄を確認し、満足そうに判を押した。
- 263 名前:魔界 投稿日:2001年09月08日(土)00時30分57秒
- ???「なんか…本当に戻れるのかなぁ…。戻れるアテもないし…」
闇の中、一人でうつむいている少女。
???「でも、約束したんだ…。諦めるもんか」
少女は歩き出す。
???「でも…一向にこの闇を抜けられない。一体…どうしたら…」
その時、少女の耳に何者かの声が聞こえてくる。
『随分と困ってるみたいだな』
???「…今の声は…」
『その約束とやらのために、ここから出たいと思わないか?』
???「…悪いけど、あんたの言うことを聞く気はない。たとえここから出られるとしても」
少女は声を無視して歩いて行く。
『…そう自分に嘘をつくな。お前の目を見ればわかる、
約束というもの以上にお前には人間界に戻る理由がある』
少女は足を止める。
???「どういうこと?」
『話を聞く気になったか?」
???「別に。ちょっと気になること言われたからそれを聞きたいだけ」
そう言いながら、少女はその場に座り込む。
???「じゃあ、聞かせてよ。魔界を統べる大魔王、ヤマザキさん」
『いいだろう。聞かせてやる、勇者さやか』
- 264 名前:魔界、山崎&市井 投稿日:2001年09月08日(土)00時32分47秒
- さやか「私が人間界に戻りたいと思っている他の理由っていうのは?」
『私の口から言わなくてもわかるだろうに』
さやか「いちいちムカつくなぁ、言ってみてよ」
勇者さやか、と呼ばれた少女は声の主をせかす。
『…お前は人間界に戻ると言っているわけだろう』
さやか「さっきから言ってるじゃん」
『だが…人間界には新たに「真なる勇者」が現れている』
その言葉を聞いた途端、さやかの表情が強張る。
『もちろん知っていることだろう?お前は以前人間界に居る仲間の心に声を送ったくらいだからな』
さやか「(…あれは、困ったごまの声が聞こえてきて…。それに答えたら、繋がることが出来た…。
弟を助けたい、そんなごまの声が聞こえてきたから…)」
『そんなことは関係ない。ただお前に言えるのは、新たな「真なる勇者」の居る人間界に戻ろうとしている』
さやか「…それに何の関係が…」
『まだこちらに言わせる気か?聞いたことはあるはずだ、2対の勇者の剣の話くらいは』
- 265 名前:魔界、山崎&市井 投稿日:2001年09月08日(土)00時33分32秒
- さやか「…あ、ああ、知ってるよ。でもそんな作り話…」
『戯言を。2対の勇者の剣の伝説は作り話などではない。
それは数年の間勇者だったお前なら理解している』
さやか「…」
さやかはうつむいたまま、何も答えない。
『2対の勇者の剣は共に存在することを許さない。それは真なる勇者が常に1人しか生まれないことと同じだ。
2対の勇者の剣が、真なる勇者が出会ったとき…、どちらかがその存在を許されなくなる。
本来は真なる勇者が息絶えた時に、新たな真なる勇者にその資格が継承される。だが…
お前は人間界から姿を消したに過ぎなかった。だから人間界には新たに真なる勇者が誕生した』
さやか「結局…何が言いたいわけ?」
『お前は人間界に戻り、約束を果たすと言っている。2対の勇者の剣の伝説を知っていながらな。
それだけでお前の本当の理由は分かる。ただ、争いを楽しみたいのだろう?』
さやか「…!」
『約束など、こじつけに過ぎない。それを理由に避けることの出来ない争いに身を投じようとしている」
さやか「…」
『その表情からすると…、完全に図星のようだな。お前の背中の魔剣もそう言っている』
さやか「魔剣っていう呼び方はやめてよ、気に入ってないんだから」
『そうか、悪かったな。私の中では勇者の聖剣、勇者の魔剣という呼び方で2対を区別しているのだが』
さやか「その区別は正しいんだけど、なんか魔剣って言われるのが気に入らないの」
『確かに形が多少違うだけで、聖剣も魔剣も属性を持っているわけではないからな。
勇者の継承を容易にするために「神」とかいう存在が2対の勇者の剣を生み出したのだろう』
さやか「そんな知恵袋はいいから、あんたの話を続けてよ」
『…ふん』
- 266 名前:魔界、山崎&市井 投稿日:2001年09月08日(土)00時34分27秒
- 『さて、念のためもう一度言わせてもらうが…私の力で人間界に戻る気はないか?』
さやか「…さっき言った通り、変わらないよ」
『別にお前を洗脳しようなどとは企んでいない。ただ純粋に、お前を人間界に解放する」
さやか「…あんたは私の敵だよ?ヘタをしたら再び魔界に戻ってきて、あんたを頃すかもしれない」
『お前が勇者の聖剣を継承した真なる勇者を頃せれば、の話だな』
さやか「…縁起でもない」
『これは私にとっては都合のいい話だ。そして、お前にとっても望んだ話であるはず。
どちらを選ぶもお前次第。答えが出たら、私に言え』
さやか「…」
- 267 名前:人間界、魔王城 投稿日:2001年09月08日(土)00時35分04秒
- 場所は魔王の城。魔王つんくが頭を抱えている。
魔王つんく「あかんなぁ、人材が足らん…。またオーディションでもやるべきやろかなぁ…」
いつものように、悩んでいた。
その時、つんくに声が聞こえてくる。
『人材に…困っているのか?』
魔王つんく「この声は…大魔王様!?」
『覚えていたか、記憶力は衰えていないようだな』
魔王つんく「そんな、大魔王様の声を忘れるだなんて…」
『それはそうと、良い人材があるのだが…。貰ってくれるか?」
魔王つんく「そ…それならよろこんで!大魔王様のよこして下さる人材なら!…って、あれ?」
『なんだ?』
魔王つんく「いや…、魔界から人間界への門を潜るのは、いかに大魔王様の力添えがあると言えど
普通以上の魔族には不可能では…」
『誰が魔族と言った。魔界から人間界への門は人間なら抜けられる。
人間界から魔界へ魔族が戻れるようにな』
魔王「それじゃあ…大魔王様のよこして下さる人材と言うのは…」
『来たな』
ズガァァァァァン!!
突如、つんくの目の前に大きな落雷が炸裂した!
つんく「うっ…、これは?」
『そこに現れた奴が、私のくれてやった人材だよ』
次第に煙が晴れていき、その姿が見えてくる…。
- 268 名前:魔王城 投稿日:2001年09月08日(土)00時35分53秒
- 魔王つんく「!!!!!!」
つんくは煙の中から現れた少女の姿を見て、声が出せなかった。
???「う〜ん、やっぱこっちの方が空気がいいなぁ」
魔王つんく「な…なんでお前が居るんや…」
『そいつが私の送る最高級の人材だ。そいつを超える者は魔界にもそう居るものではない』
魔王「で…でも、こいつは、ゆ、勇者…」
『勇者さやか…。お前としては恐ろしいものだが、味方になればこれほど頼もしいものはあるまい?』
さやか「ちょっとさぁ…」
魔王「!」
魔王はついさやかの一言一言に緊張感を抱いてしまう。
さやか「別にあんたらの味方になったわけじゃないよ、これは魔界でも言ったことだけど。
私は純粋に人間界に戻ってきたんだからね」
『わかっている。自由に動くがいいさ』
さやか「そ。…それじゃあちょっと散歩してくるね」
さやかは少しも表情を変えることなく、魔王の城を後にした。
魔王つんく「…何故、奴を…?」
『断っておくが、洗脳などはしていない。私はただ奴を魔界から人間界に送っただけだ』
魔王つんく「しかし、それではただ敵を増やすだけやないですか!奴は元勇者なんですよ!?」
『…お前は知らないのか、勇者の伝説の全てを』
魔王つんく「へっ…?」
『私はここで失礼する。後はお前がどうにかしろ』
魔王「え…ちょっと待って下さいよ!なんやワケわからんですよ!大魔王様〜!」
勇者さやか、人間界に再び降臨。
- 269 名前:プッチペンダント 投稿日:2001年09月08日(土)04時45分19秒
- 剣に勇者と認められた人間が再び地に舞い降りた瞬間、共鳴するかのように光を放つと言われる三つの宝玉。
それらを下げ飾りにあしらった三つのアクセサリーは、その持ち主を剣の持ち主の元へと集わせる。
すなわち、それは勇者の戦友である証。
プッチペンダント
それは語り継がれる伝説に、欠かすことのできない重要なアイテム
- 270 名前:牧城 投稿日:2001年09月08日(土)04時46分19秒
- 「うわっ」
片耳だけのイヤリングが、一瞬だけ淡い明かりを照らしだした。
そのイヤリングの持ち主、一国のバトルマスターと呼ばれた少女は、その現象に目を見開いた。
「今なんかピカって光ったね」
矢口の言葉に、よっすぃーは気持ちを落ちつかせる。
考えてもみろ、勇者はすでに地上に存在しているじゃないか。
「そうですね。
何かの光を反射したのかな?」
特に気にするそぶりも見せず、よっすぃーはイヤリングに手をあてた。
「それにしても、さっきのよっすぃーさん、格好良かったですっ」
石川が言うさっきとは、ミカと戦っていた矢口を助けた時のことを指している。
「流石はバトルマスターって感じでした」
「命を守るのが武道家の役目ですから」
「ああ、ナイトの心得、ってヤツ?」
数日前にしてくれた話を思いだし、矢口は口にだす。
「何ですか、それ?」
「あのね、全ての武道家がもってる心構えなんだって」
「へー」
石川は矢口の説明に感心したように呟く。
「全ての、というのは少し違いますね」
「え?」
思わぬよっすぃーの声に、矢口は振り向く。
「あくまで武道を志した者のみに言えることです。
ですから盗賊や暗殺者、それに、、、勇者などは例外となります。」
- 271 名前:牧城 投稿日:2001年09月08日(土)04時46分41秒
- 「どういう、ことですか?」
「勇者こそ人の命を守るもんじゃないの?」
目を真一文字に閉じたよっすぃーの様子をうかがうように、石川と矢口はおそるおそる尋ねる。
「勇者とは勇ましき者を指す言葉。
騎士道とは無縁の存在です。
勇者と呼ばれる者の多くは、案外酒場に集う荒くれ者や、世間を知らないガキだったりするもんです」
静かに、厳しい口調で述べるよっすぃーに、二人は息をのむ。
それに気付いたのか、彼女はゆっくりと表情を和らげる。
「でもさ、中にはナイトの心得ってのを持った勇者もいるんだろ」
「そうそう、騎士さんなんかが悪者をやっつけることもあるわけですし」
「いえ」
よっすぃーは一定のトーンで一言そう言うと、目を閉じる。
「勇敢な騎士は勇者と呼ばれずに英雄と呼ばれます。
勇者と呼ばれる者がロードであろうはずがありません」
そこまで言いきると、今度はゆっくりと目を開く。
「騎士は安易に守るべきものを変えたりしない。
でも勇者は違う。時には自分の欲求を第一にもってくる。
それは飯田さんに関しても同じこと。
・・・そして、全ての勇者に言えること。」
- 272 名前:牧城 投稿日:2001年09月08日(土)04時47分00秒
- 自分の胸元のネックレスが光を帯びたことに、大神官・保田圭は気付かなかった。
それでも真向かいにいた彼女、大魔導師の足元が光ったのは、確かに認識した。
彼女のアンクレットが放つ光に、一瞬ある考えが頭の中を通り過ぎ、すぐさま思考回路がそれを否定する。
しかし、その彼女はそうは思わなかったらしい。
ごまは保田とは逆に、保田の胸元の光から、やはり同じ考えを導き出した。
勇者飯田の存在や、かの人間がおかれているはずの立場など無視して、何かが彼女を駆り立てた。
ガタッ……
突然ごまが立ちあがったので、保田はその理由を察して否定の言葉をかけようとする。
しかし、その次の瞬間のことだった。
廊下から、りんねがリビングに顔をだしたのだ。
「保田さんにお客さんですよー」
- 273 名前:牧城 投稿日:2001年09月09日(日)02時14分55秒
- 「あっ!ちょっと待って」
りんねの言葉を聞いてすぐさま走り去ったごまを追いかけ、保田も玄関に向かう。
まさか、そんなことはないだろうと思う。
しかし、彼女が私の胸元を見ていたということは、私のペンダントも光っていたということで……
偶然だろうか。いや、でも・・
そんなことは有り得ないと思っていたから、今日まで魔界を探っていたのだ。
偶然であるに決まってるのだが、どうしても否定しきれない可能性が頭の中を支配する。
様々な感情が入り混じる中、先行するのは不安感。
「ごと・・」
玄関にたどりつき、ごまの肩越しに客の顔を確認する。
そして、とりあえず不安は解消される。
ごまと対峙していたのは、見覚えの薄い少女だったから。
- 274 名前:牧城 投稿日:2001年09月09日(日)02時15分21秒
- 保田「紺野あさ美さん、14歳
妖精使いって・・・ずいぶんと珍しい職業ね」
牧城の広いダイニングの一方に保田とごま、他方に紺野が腰掛けている。
保田「・・・なるほど
それでうちのパーティーを紹介されて・・」
成績証明書、フェアリーハンドラーの認定証、それにムラタからの推薦状。
うちのパーティーにここまで身元のはっきりした人間がいるだろうか。
保田「書類は十分過ぎるほどね」
ごま「それじゃあとは実力見せてもらおうか」
愛想のない口調でそう言うと、ごまは席を立ち上がる。
表へ出ろということか。
あさ美「実力って・・・」
ごま「私に傷一つでもつけられたら合格にしてあげる」
保田「ちょっとちょっと、何勝手なこと言ってるの?」
明らさまにごまの様子がおかしいので、慌てて保田が注意する。
保田「どうしたの?
あんたなんかおかしいよ」
ごま「・・・そんなことないって」
ごまはそれだけ言うと、ローブを羽織って建物の外に出た。
- 275 名前:牧城 投稿日:2001年09月09日(日)02時15分42秒
- 戸惑いつつもあさ美が外に出てくると、ごまは何やら呪文を詠唱しだす。
どうやらメラ系の呪文らしく、彼女の手には火の玉がやどる。
ところが、あさ美は身構えることさえしない。
保田「ちょっと、何やってんのよ、アンタ!」
ごまの手加減なしの構えに、保田は慌てて声をあげるが、ごまは聞いていない。
攻撃魔法のプロフェッショナルであるごまと、まともにやり合ってダメージを与えるなんて、無茶な話だ。
そんなこと、自分だってできるかどうかわからない。
その上、あさ美という彼女は、戦闘のプロではないのだ。
下手したら、身の安全は保証できない。
あさ美「あのぉ、私、妖精使いなんですけど・・・」
ごま「だから?」
あさみの声のトーンと“妖精使い”という言葉に、多少のいらつきを覚えながらも、ごまは両手いっぱいに火球を巨大化させる。
あさ美「えーと、その、、」
ごま「なんか調子狂うなー
防御しようとするとか、対抗呪文唱えるとか、そういうのないの?」
あさ美「いや、魔導師じゃないのでそういうことは・・・」
ごま「じゃあ何でもいいから、自分のできることすれば
さっさとしないとこっちから行くよ」
あさ美「じゃあ・・・
それじゃ、できることやってみますね」
- 276 名前:牧城 投稿日:2001年09月09日(日)02時16分06秒
- あさ美「イフリータ・キッス」
ごまはすぐには何がおこったのか分からなかった。
彼女がその技の効果に気づいたのは、目の端にちらつくものを感じてから。
何かと思い見向くと、そこにあったのは先ほどの何倍にも巨大化した火球。
ごまは慌てて火を収めようとすると、呪文と途切れさせただけで簡単に火球は消えた。
どうやら自分の魔法に補助効果をもたらしただけらしい。
合成魔法ならともかく、そこいらの補助魔法でもここまではいかない。
保田「すごいじゃない!どうやったの?」
あさ美「炎の精霊さんの力を借りたんです。
人の住居のそばだから、割りとたくさん集まってくれて・・」
ごま「これが、妖精使いの力…」
驚嘆といった表情で、ごまは呟く。
保田「何言ってるの?
フェアリーハンドラーの能力は戦闘だけにとどまらないわよ。
私たちが今見たのは、彼女の能力のほんの一部」
保田は満足そうに笑みを浮かべる。
あさ美「あの、テストは合格ですか?」
おどついたままであさ美が尋ねるので、保田はごまのほうに視線を向けさせる。
ごまは目を閉じてうつむき、そしてあさ美に向き直った。
ごま「・・・ええ。よろしくね、あさ美ちゃん」
- 277 名前:おつかい 投稿日:2001年09月09日(日)05時48分07秒
- 辻とあいぼんとミカはムロランシティに来ていた。近々南へ向けて出発するので、
船のチケットを購入する為に辻とд<がおつかいを頼まれたのだが、
道中何かと不安がある二人なのでミカも一緒に来ていた。
連絡船受付「いらっしゃいませ。」
辻「ぇとぉ、じゅうにんぶんのちけっとをくらさい。」
連絡船受付「祭りですか?」
辻&д<&ミカ「???」
連絡船受付「いえ、何でもないです・・・十人分ですね、こちらになります。」
д<「もう雪とか降らんかな?」
連絡船受付「大丈夫だと思いますよ。」
д<「さよか。」
連絡船受付「ありがとうございました。」
д<「ちょっとお店見てから帰ろか。」
辻「おかいものれす。」
ミカ「レッツゴーショッピング!」
少し歩くと大きめのショッピングセンターが。
辻「さんかい、れすとらん・・・さんかいにいくれす。」
д<「お、エレベータ―がある・・・ええこと考えた。よし、行くで。」
- 278 名前:おつかい 投稿日:2001年09月09日(日)05時51分56秒
- エレベーターの中でポーズを決めて立つ辻とд<。
д<「当店をご利用いただき、ありがとうございます。」
辻「ごらいます。」
д<「ご利用階数を、お申し付けくださいませ。」
辻「くらさいませ。」
ミカ「カワイイー!ジャア、3カイ レストランマデ オネガイシマス。」
д<「かしこまりました。ところでミカ様は牛乳がお好きだとお伺いしたのですが。」
ミカ「ダイスキデスヨ。」
д<「私達どうも牛乳は苦手でございます。」
辻「にがてれごらいます。」
д<「おかげで私達、小っちゃいままでございます。」
辻「ちっちゃいままれごらいます。」
ミカ「ミルク スキダケド ツジチャンタチト オナジクライダヨ。」
д<「はぁ〜、牛乳も飲めて強くて羨ましい限りでございます。」
辻「うらやましいかぎりれごらいます。」
д<「お待たせしました、三階レストランでございます。」
辻「ごらいます。」
- 279 名前:おつかい 投稿日:2001年09月09日(日)05時53分26秒
- 辻「ふるーつぱふぇおいしそうれす。」
д<「みやげにべーグルでも買っていこか。」
?「うう」
ミカ「タイヘン!ダレカ タオレテル!」
?「うーん」
д<「どっどないした!?」
?「お腹が・・・」
д<「い、痛いんか?」
?「減って・・・」
д<「・・・」
?「動けない・・・か、かに・・・かに・・・ぶくぶく」
д<「あっ、泡吹きおった!のの急いで蟹食わせてやらんと!」
辻「て、てんちょーさーん!!」
- 280 名前:おつかい 投稿日:2001年09月09日(日)05時54分00秒
- д<「ほっ、ほら蟹やで!」
?「か、かに?・・・ズ、ズワーイ・・・もぐもぐ」
- 281 名前:おつかい 投稿日:2001年09月09日(日)06時58分32秒
- ?「あー助かった。ありがとうお嬢ちゃん達。」
д<「あんたどないしたん?行き倒れやんか。」
?「いやー旅しながら商売してたんだけど、最近売上なくて金なくて。」
辻「ののもおなかすいたらうごけないのれす。」
ミカ「ドゥユーハヴマニー?」
辻&д<「??」
ミカ「ア、オカネモッテマスカ?」
?「持って無いから行き倒れちゃったのよね。お礼と言っては何だがこれをあげようか。」
そう言って見せたのは対になった二つのペンダント。ハートをギザギザに分けた形になっている。
?「これを持っている人同士は心が通じるのよ。」
辻「!それほしいれすほしいれすほしいれす!」
д<「お、おう、ええで。」
?「じゃ、そっちのお嬢ちゃんにはこのカチューシャ、もう一人にはこのバンダナだ!」
カチューシャは鮮やかなグリーン、バンダナはどこかの国の国旗をあしらった物だ。
辻「あいぼんかわいいのれす。」
д<「ミカちゃんもバンダナ似合っとるで。」
?「ところでお嬢ちゃん達は今日は遊びに来たの?」
辻「ののたちはゆうしゃさまとたびしてるれすよ。」
д<「今日はおつかいや。」
- 282 名前:おつかい 投稿日:2001年09月09日(日)07時00分53秒
- ?「ふーん・・・」
彼女は辻とд<を見ながら話を続けた。
?「お嬢ちゃん達、戦闘はあまり得意じゃないみたいだね。」
д<「うっ、痛いトコつくなぁ。」
?「そんな戦闘の苦手なお嬢ちゃん達にはあるものを教えてあげよう。」
辻「それはおいしいれすか?」
?「そうじゃなくて・・・まぁいいか。自己紹介しよう、私は夏まゆみ。
旅の商人は仮の姿。人は私のことを謎の振り付け師と呼ぶ。」
д<「自分で正体ばらしたら謎やあらへんで。」
夏に50のダメージ!
д<「ん?今のは軽いツッコミのはずやったのに、ずいぶん効いとるな。」
夏「わ、我が生涯に一片の悔い無し・・・」
辻「たいへんれす!たったまま きをうしなっているのれす!」
д<「助けたって、ミカちゃん!」
ミカ「ウェイクアップ、ナツサン!」
ミカは氣で夏を回復させた。
夏「はっ!そう、私は謎の振り付け師。」
д<「(どういうわけか言霊がいつも以上に冴えとるわ。今度は黙っとこう。)」
夏「戦闘で役に立つ振り付けを教えてあげよう。はい、ワンツースリーフォーワンツースリーフォー・・・」
三人は強引にレッスンを受けさせられ・・・
辻「えーらいやっちゃえーらいやっちゃ・・・・」
д<「ウッ、ハー・・・」
ミカ「かっかっ・・・(ナンデワタシマデ・・・)」
日が暮れるまで三人のレッスンは続いたという。
- 283 名前:外伝・東洋紀行〜天の章〜 投稿日:2001年09月10日(月)01時48分41秒
- ここはチャイナ大陸の東方200kmに浮かぶ島、フォルモサ島。
そのメトロからすこし外れた港町に、異邦人とおぼしき一人の女性が立ち尽くしていた。
「なんでなんやろー」
彼女の名は裕子ナカザー
斬馬刀術や酔拳に通じ、魔王軍チームリーダーの経験も持つ、腕覚えの武者である。
とある武術家に大敗を喫したのを期に、それまで所属していたパーティーを脱した彼女は、己を鍛えなおすために、愛刀ひとつ持って祖国を出たのだが・・・
「ルルを追ってチャイナ大陸に来たつもりやったんやけど・・」
・・どうやら間違えて、途中のフォルモサ島で船を降りてしまったらしい。
しかし彼女にはここがどこなのか皆目見当がつかない。
言葉も分からなければ現地通貨の持ち合わせもない。
その上、間の悪いことに小雨まで降りだしてた。
「雨か・・・
なんや早くもセンチメンタルなってまうな」
屋根や金がなくともどうにかなる。
しかし言葉が通じないのにはいささか困ってしまう。
- 284 名前:外伝・東洋紀行〜天の章〜 投稿日:2001年09月10日(月)01時49分04秒
- 「♪くぉぬかー雨降るー 御堂筋ー」
突然の日本語に、ナカザーは思わず振り向く。
するとそこには一人の女性が傘もささず歩いて来ていた。
「あのっ」
慌ててナカザーは声をかける。
「ハイ?」
女性はどうやらこの島の人間らしく、日本語のネイティブスピーカーではないらしい。
よく見ると、どこかで見かけたような顔。
御堂筋・・そういえば、若い頃過ごしたあの都市で・・・
「もっもしかして欧楊ふぃふぃ先生ですか?」
ナカザーが動揺しつつも尋ねると、彼女は日本語を理解したのか、ゆっくりと微笑んだ後、口を開いた。
「ソウヤケド、ナンヤコマットンノ?」
これがその後ナカザーの斬馬刀術に多大な影響を与えることとなる、現代東洋棍術の母と呼ばれる欧楊ふぃふぃとの出会いである。
- 285 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)04時04分04秒
- あさ美のテスト終了後
保田「ああ!しまった!」
ごま「どうしたの?」
保田「乗船券、、」
ごま「あ!」
あさ美「?、どうしたんですか??」
保田「そろそろ船に乗って次の島へ移動するんだけど、
その券を買ってるはずなんだけど、10枚しか頼んでないの。」
ごま「つまり一人分足りないってこと。どうしよ、、」
あさ美「そんな!、頑張りますから連れて行ってください!」
保田「連れてかないとは言ってないけど、、今からルーラで3人の所に飛んで間に合うかな?」
遠くから
「おーい!帰ったで!」「たらいまれす」
保田「あちゃ、間に合わなかった。」
つじ「あい。あしたごごよじしゅっぱつれす。」
保田にチケット10枚を渡す辻。
ミカ「ジャストジュウニンブン、ギリッギリ、アキガアッタンデスヨ!ラッキーデス!」
オーバーリアクションで喜ぶミカ。対称的に顔をしかめるごまと保田。
Д<「あぁ?、あんた誰やねん?」
あさ美「!!」
あさ美を見るなり、とりあえず因縁つけるあいぼん。
- 286 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)05時43分25秒
- 夕方、
すっかり仲良くなった、辻、あいぼん、そしてミカ。ミカの部屋で遊ぶ辻とあいぼん。
ミカ「ウフフ、フタリトモ、チッチャクテカワイイデスネー。」
つじ「てへ。」
Д<「ちっちゃいったって、自分も似たようなもんやで!」
ミカ「エー!?」
つじ「そうれすねぇ。」
ミカ「ドウミテモ、ワタシノホウガオオキイデスヨー。」
つじ「うーん、ろっちのほうがたかいれすかね?」
Д<「よっしゃ!背比べではっきりさせよ」
ミカ「イイヨー。」
背中をあわせるあいぼんとミカ。横から背伸びして二人の頭のてっぺんを見る辻。
つじ「ん、、」
Д<「どや?」
つじ「みかしゃんのほうがちょっぴりたかいれすね。」
ミカ「イエーイ!」
Д<「くっ、こんなんで勝ってもどんぐりの、、」
つじ「こんろはののとくらべるのれす!」
あいぼんが言い終わる前に、辻はあいぼんの背中に自分の背中を押し当てた。
ミカ「ハーイ、ミカガハカルヨ!」
Д<「ほんまはちっさい方が勝ちや。ちっさい方がかわいいねん。(なんちって、ののにはまだ負けんで!)」
つじ「ちいさいと、おみせれおまけしてもらえてとくれすね。(れも、あいぼんよりはおとななのれすよ!)」
ミカ「ンーー、、」
Д<「ん!」
つじ「ん!」
ぐっと背筋を伸ばす二人。
- 287 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)05時45分15秒
- ミカ「ウーンワカンナイナー、、オナジグライダヨ。」
Д<「はっきりせ!」
つじ「はっきりしてくらさい!」
絶妙にはもる二人。
ミカ「ウッ・・・・、チョ、チョットマッテー。ソノヘンニ、イタカナンカナイカナ??」
Д<「はよー。胸はるのも意外としんどい。」
つじ「つかれてきたれす。」
長く感じる1分経過。
ミカ「アッタヨー。コレデ」
どっから出したのか板を二人の頭の上に乗せるミカ。
つじ「むっ、(これれ、ろっちのほうがおとなか、、)」
Д<「むむっ、、(どっちのほうがガキか、、)」
ミカがゆっくり板から手を離す。
つじ&Д<「(きまる!)」
その時その外
矢口「なんかこの部屋、やけに賑やかだな」
がちゃっ!
矢口「おーい!何やってんの!?」
背中あわせのまま矢口の方を向く辻とあいぼん。
つじ&Д<「あ!」
ミカ「ア!」
矢口「あ!」
ガランガランガラン、
板が滑り落ちて、、、
4人の間に奇妙な空気が流れた。
- 288 名前:いいらさん 投稿日:2001年09月18日(火)03時30分06秒
- あさみ「晩御飯できましたよー」
辻「あーい、いまいくのれす。」
д<「腹減ったわ、今日は変なオバハンに散々踊らされたからな。」
ミカ「オナカペコペコー。」
矢口「オイラ今日はつかれたよ〜。」
一人夕暮れを眺める勇者飯田。
д<「メシやで…聞こえてへんか。」
辻「(ゆうひがうつくしさをひきたてているのれす…いいらさん)」
矢口「先、行ってるよ〜。」
辻「いいらさーん。」
勇者飯田「なーに、辻?」
辻「たんじょーびぷれぜんとれす、てへ。」
そう言って夏にもらったペンダントを渡す辻。
勇者飯田「誕生日過ぎちゃったからもういいのに…辻はやさしいね。
…これって辻とおそろい?ありがと、辻。」
辻「(ののといいらさんのこころはいつれもひとつれすよ、いいらさん。)」
- 289 名前:魔王城 投稿日:2001年09月18日(火)03時34分08秒
- 魔王つんく「ああ〜どないしよ〜あいつは人間界に戻って来よるし、
頼りになる手下は居れへんし、どないしよ〜」
魔王の間に女性とは思えぬ程、背の高い女性が入ってきた。
??「魔王様、そんなに慌てふためいていてはみっともありませんよ。」
魔王つんく「お、おぅ?なんやおまえか。なんかあったんか?」
??「ええ、魔法研究部門から気になる報告を受けたので調べ物をしていたのですが…
ずっと中断していた例の計画を一気に終わらせることが出来るかもしれません。」
魔王つんく「ほんまか!?」
??「盲点でした。もっと早く気付くべきだったのですが…」
魔王つんく「いや、終わるんやったらなんでもええわ。それとあの娘の様子はどうや?」
??「相変わらずこちらの言うことを聞くつもりはないようです。洗脳するより他はないかと。」
魔王つんく「まぁ、しゃあないな。」
??「これから私は調査に向かいます。洗脳は彼にまかせますので…」
魔王つんく「期待しとるで。」
背の高い女性は魔王の間を立ち去る。
魔王つんく「素子は相変わらずデカいなぁ…ところでどこ行くんやろ?まぁええわ。
あの計画さえ終われば…くくく…」
- 290 名前:魔王城 投稿日:2001年09月18日(火)03時37分15秒
- ガシャッガシャッ…
魔王つんく「なんやねんな?この音?」
ガシャッガシャッ…
魔王つんく「近づいてくる…」
ガシャッピタッ
魔王つんく「部屋の前で止まりよった…まさか…」
ガチャリ…ギィィ…
魔王つんく「ひっ、かんにんしてぇな!」
???「ひゃっひゃっひゃっひゃっ…魔王様どうしたのです?」
魔王つんく「?…ワーダ!?氏んだんやなかったのか!?」
ワーダ「ええ、本体は氏にましたよ。私はワーダをモデルに造られた最高傑作
アンドロイド、ワーダN−T1ワックスなのだぁ!容姿から性格まで
本人に忠実に造られております、ひゃっひゃっひゃっひゃっ……」
魔王つんく「容姿まで忠実に再現することはないやろ…」
ワーダ「因みに私をマザーモデルとして、戦闘能力を向上させたモデルも開発済みです、
ひゃっひゃっひゃっひゃっ……」
魔王つんく「…そいつはご苦労…」
ワーダ「勇者一行め、よくも頃してくれよったな。目にもの見せてくれるわ。」
魔王つんく「やたらに流暢なしゃべりやな…ん?すると洗脳の担当はおまえか?
今度はしっかり頼むで。」
ワーダ「ご安心を。私、本人に忠実に造られておりますので…」
魔王つんく「それが余計心配や。」
- 291 名前:牧城 投稿日:2001年09月18日(火)05時54分22秒
- 夕食後
保田「あれ?子供達はどうしたの?もう寝たの?いつもならもっと騒いでるのに。」」
よっすぃー「なんか矢口さんの部屋に集まってましたよ。」
矢口の部屋
矢口「・・・・というわけでね、」
つじ「ぼそぼそ(あいぼん、なんれすかねこのあつまりは、、)」
Д<「ボソ(しらん。。)」
矢口「おいら達は、小さい事をいかに戦術に有効利用するか、考えるべきなのよ。
って聞いてる!?あんた達?」
つじ「へい。」
ミカ「キイテマース。」
Д<「だいたい。」
矢口「んー、ま、いいけどさ、何か意見ある?」
つじ「あい!」
挙手する辻。
矢口「はい辻さん。」
つじ「ののはれすね。ゆうしゃになろうかとおもうのれす。」
矢口「ほーほー。それで?」
つじ「というわけれれすね、、、」
ごそごそと何かを探す辻。
つじ「やぐちさん、つじとしょうぶするのれす!」
突然立ち上がってひのきの棒を構える辻。
矢口「は?、ちょっと、、いきなり何なの??議題とまっったく関係無いしっ!」
つじ「てっとりばやく、いちばんよわい、やぐちさんからやっつけてつよくなるのれす!」
矢口「ちょっ、、なんて事言うのこの子は!!」
- 292 名前:牧城 投稿日:2001年09月18日(火)05時58分57秒
- つじ「へっへっへー。しってるのれす。のののめもによると、やぐちさんが、いちばんよわいのれす。」
矢口「そういう問題じゃないだろ。おいらが子供なぐってどうすんだよ!?」
つじ「むっ、ころもよばわりしないれくらさい!しょうぶするのれす!!
なっちーしゃんともみかしゃんともしょうぶしたの、しってるのれすよ!」
矢口「ええー。ちょっとー、、ミカちゃんも何か言ってよ。」
ミカの方を向き、泣きつく矢口。
ミカ「オー、ソーデスネー、アイテシテアゲタライインジャナイデスカー?」
矢口「えぇー。ミカちゃんまでぇ、、」
つじ「えい!」
べけっ!!
矢口の後頭部にひのきの棒がヒット。
矢口「あたっ!!」
つじ「やったのれす!!」
矢口「あいたたたた、、」
頭を抱える矢口。
Д<「おお!きいとるで!」
矢口「何すんだよぉ。そんなのでいきなり後ろから殴られたら痛いに決まってるだろぉ!いててて」
つじ「ふふん。ゆらんするかられすよ。」
矢口「ったく、もーしょうがないなー。じゃあ明日の昼間にでも外で、っておい!」
ブオンブオン!!
矢口の部屋で思う存分武器を振り回す辻。わたわたとよける矢口。
矢口「だからやめろっつの!!おいらの部屋で暴れるなっ!」
Д<「ええでー!のの!やれやれー!!」
矢口「そこっ!煽るな!!」
隣の部屋
ドン!バタン!ガン!!
保田「もー、、何やってるのよ?うるさくて眠れないじゃないっ。」
- 293 名前:牧城 投稿日:2001年09月19日(水)00時14分46秒
- ごま「いつもお疲れ様」
ねぎらいの言葉とともに、調理場へごまが入ってくる。
あさみ「あっ、ごまさん。
ごはんならまだですよ」
ごま「ううん、そうじゃないの」
そう言ってごまは笑顔を湛えた表情で、あさみを見つめる。
りんね「珍しいこともあるもんだ
寝てなくていいの?」
ごま「うん、ちょっとあなた達に用があってね」
あさみ「私達に?」
ごま「そう、あなたたち二人に
ねえ、何だと思う?」
りんね「う〜ん、そうだなー」
手を顎に持っていき、思案気な表情でりんねは天井を見上げる。
ごま「何も思い出さない?」
あさみ「思い出す?」
ごま「そう、昔のこと、少し思い出してみて・・・」
りんね「昔のこと・・・」
ごま「降参?」
りんね「うん」
あさみ「答えなんですか?」
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=iida&thp=965747046&st=12&to=12&nofirst=yes
りんね「・・・」
あさみ「・・・」
ごま「・・・・」
…………(途中色々光ったりしてますが、中略)…………
その日は晩御飯ができるのがたいそう遅く、ナッチーの顔に死相がでていたとさ。
- 294 名前:牧城 投稿日:2001年09月19日(水)06時01分36秒
- 翌日、昼頃
保田「石川、あんたさ、もうしばらくここに残っててくれる?」
石川「え?なんでですか?」
保田「実はね、乗船券が一枚足りないのよ。」
石川「ええー!?」
保田「その間またここで働いて、ちょっと稼いどいて。話はつけてあるから。」
りんね「よろしくね。梨華ちゃん。」
あさみ「また一緒に働こう。」
石川「・・・・・」
むくれる石川。
保田「大丈夫だって。次に落ちつく場所が決まったら、すぐルーラで向かえに来るから。」
Д<「!」
- 295 名前:牧城 投稿日:2001年09月20日(木)04時59分35秒
- Д<「・・・・・ちゅうわけなんやけど。」
矢口「置き去りかよ!!(三村風)」
つじ「それは、いくらりかしゃんれも、かわいそうれすね。」
Д<「なんとかならんかな?」
矢口「んー、、、おう!そういう事ならおいらに任せな!」
バタン。ガキッ
突然、一人で部屋に入り、内鍵を閉める矢口。
つじ&Д<「?」
ドカッ!!、
部屋の中から音が。
つじ&Д<「??」
バキバキバキ、チュイーーーン、ガガガガリガリガリ、
カーンカーンカーンカーンカッ
「あうっ!いったぁぁい!!・・・いたぁい。もー。。。」
カーンカーン、シャッシャッシャッ、ゴシゴシゴシゴシ、、、
Д<「・・・」
つじ「・・・・」
30分後。
矢口「できたっ!!」
がちゃっ、
矢口「はぁはぁ。。」
満身創痍の矢口が木屑にまみれて出てきた。
- 296 名前:牧城 投稿日:2001年09月20日(木)05時03分28秒
- 矢口「じゃーーーん!!」
シーツを被せた製作物を部屋から出す矢口。
つじ「なんれすか?それは」
矢口「ふっふっふ。昨日、辻が暴れて壊したおいらの部屋の机とベッド、破れた布団が、、、、
なんとこれに生まれ変わりましたっ!!」
バッ!
シーツをめくると、
Д<「??、なんやそれ?単なるスーツケースやん。」
矢口「そう。一見すると単なるスーツケース。ところがどっこい!」
がちゃっ、
ケースをあける矢口。
つじ&Д<「??」
矢口「中は快適空感。ここはくつろぎ別世界〜♪」
と言っても布団と枕?が置かれているだけだ。
Д<「で、これどないすんの?」
矢口「なあんと、これは人に悟られずに人を運ぶためのアイテムだぁ!!」
つじ「おぉー!」
Д<「って密航すんのかい!!」
矢口「まあそうともいう。君らにもおいらのナイスな作戦は伝わったみたいだね。」
Д<「しかしこれ、えらい小さいなあ。こんなのに一体誰が入れんねん?」
矢口「ん?、ほら見てよ、すっぽり。」
入ってみせる矢口。
Д<「!」
矢口「きゃははっ。」
ぎぃぃ
自慢げに内側からケースを閉める矢口。
バタン。。。
- 297 名前:牧城 投稿日:2001年09月20日(木)05時05分07秒
- Д<「で、もう一度きくけど、誰がそこに入って海渡んねん?」
矢口「・・・・」
つじ「・・・・」
流れる沈黙。
・・・・・
がたっ!
つじ「っ!!」
ケースから飛び出す矢口。びっくりする辻。
矢口「しまった!急いでたから、おいらのサイズにあわせて作ってしまったー!!
これじゃあおいらしか入れないー!!」
つじ「あほれすね。」
矢口「あああ、、辻に言われたくない。。」
頭を抱えて悶絶する矢口。
Д<「お疲れさん。じゃ、快適な海の旅を。」
矢口の肩を叩くあいぼん。もう片手で親指を立て、グッドラックのジェスチャー。
矢口「いやだぁ!こんな真っ暗で狭い所に何時間も入るなんて、、こわいよぉ!!」
Д<「やっぱり。んじゃ、これは使えないから捨てて、、」
矢口「うっ、せっかく作ったのに捨てるのは嫌だなあ。あいぼん入ってよー!
あんまり大きさ変らないんだから。」
Д<「絶対いやや。」
あいぼんから隣に目を移す矢口。
つじ「いやれす。」
ぷいと目をそらす辻。
- 298 名前:牧城 投稿日:2001年09月20日(木)05時10分09秒
- 矢口「でも、じゃあどうしようか?もう時間もあんまり無いし、、、」
3人「うーん。」
考えること5分。
Д<「!!」
矢口「?、なんか思いついたの?」
Д<「あれ!」
矢口&つじ「あ!」
3人の目線の先には昼寝している1匹の動物。
・・・・・・・
矢口「いい?、そーっとだよ。。せーのっ!」
ドサッ
矢口「おお。入った。ギリギリ。」
つじ「いつものひとのさいずらったら、はいってないれすね。」
矢口「うん。いいかな?こんなんで。」
Д<「ええんちゃう?」
つじ「れすね。」
矢口「さよなら〜」
ぎぃぃ、バタン。
Д<「あ、でもこれ、引きずって運んだら振動で起きるんちゃうん?」
矢口「大丈夫。実は布団の下にはベッドから取り出したスプリングが仕込んであって、
ショックを1/100(当社比)にまで吸収するようになってて、見た目よりとっても快適だから。」
Д<「ほー。芸が細かいなー。」
つじ「いがいなさいのうれすね。」
矢口「キャハハッまかせなさーい。メカニック矢口と呼んで。」
Д<「メカニックと言うよりは日曜大工やけどな。それっておっさんやーん。」
矢口「あいたっ!いたたた、、、おっさんかよっ!キャハハハ」
矢口に24のダメージ。
- 299 名前:牧城 投稿日:2001年09月20日(木)05時11分24秒
- 数分後。
ゴマ「zzz・・・ん・・(そろそろ行く時間かな?)」
うっすらと目を覚ますと、
暗い。真っ暗だ。
ゴマ「(あれ?夜だっけ?そっか。出発は明日だ。良く寝ないと。。)・・・・zzzzz」
(注、昼寝の途中だった事を寝ボケて忘れている)
もうすぐ出発。。
- 300 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)01時38分22秒
- 保田「・・というわけで、今度からパーティーに加わった紺野あさ美さんです」
あさ美「みなさん、はじめまして」
夕食の席で、保田があさ美のことを正式に紹介する。
保田「彼女はフェアリーハンドラーなのよ」
よっすぃー「・・というと、妖精使いの類かな?」
のの「ようせいさん、、、れすか?」
飯田「それって魔法使い?それとも戦士?」
保田「彼女の専門は戦闘じゃないの」
飯田「は?」
保田「えーとだから、、、」
神官や魔術師であれば、アカデミーなりなんなりで各分野の概要を教えられている。
しかし、ソーサラー以外にこの手の説明するのはなかなかに難しい。
よもやイデア論から論述するわけにもいくまい。
ごま「妖精とか自然関係の面倒くさいことを色々やってくれるの」
あさ美「そうですね、まさにその通りです」
少し簡潔過ぎるよう保田は感じたが、まあ本人が肯定したのだから気にすることはないか。
- 301 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)01時39分05秒
- 保田「だから石川は結構お世話になると思うけど」
石川「あっはい
えーと、私、チャーミー石川です
あのですね、私は神学生なんですが・・・」
あさ美「あなたのお名前は?」
石川「へ?」
しゃべってる途中に名乗ったばかりの名前を尋ねられ、梨華は当惑してしまう。
石川「えーと私の名前は……」
あさ美「石川さんでしょ」
間髪入れずにさらりと言われ、梨華はようやく状況を理解した。
シバタ「ファルターフェアリーのシバタアユミです」
あさ美「そんなことないって」
そう一言ずつ交わして彼女達は微笑むが、梨華には冗談なのかなんなのか、全く理解できない。
思わずごまのほうを確認すると、彼女もシバタに柔らかい笑みを向けていた。
- 302 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)01時39分42秒
- つじ「りかちゃんいがいには、あんまりかんけいなさそうなのれす」
Д<「戦闘も不自由なんやろ
そんなんなら足手まといなんとちゃうか」
どこぞの小姑よろしく、あいぼんがあさ美をいびろうとする。
ごま「その件に関しては、私がチェック済みだから・・」
飯田「え?」
保田「今日の昼にね、ごまと手合わせしてもらったの」
よっすぃー「まじ?」
ごまの実力を知っている人間として、そのこと自体に驚いてしまう。
Д<「・・そやかて梨華ちゃん専門のカウンセラーなんやろ・・」
意外にも保田やごまがフォローするもんだから、あいぼんは多少どもり気味にそう言う。
あさ美はゆっくりとあいぼんのほうに視線を向け、その瞳の奥深さに一同息を飲む。
あいぼんに向けたまなざしを保ったまま、あさ美はゆったりと口を開いた。
あさ美「あなたも、、、私の専門範囲よ」
- 303 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)01時40分25秒
- ナッチー「どういうことかい?」
のの「はぐれあいぼんはようせいさんらったのですか?」
意外なあさ美の言葉に、思わず声があがる。
あさ美「あなたはトランスフォーマーでしょ」
Д<「な、なにわけのわからん言葉使い・・」
あさ美「…なぎさ…」
Д<「!」
一瞬だが、確かにあいぼんが言葉に詰まる。
保田「トランスフォーマーってっと・・」
あさ美「エンチャントピクシーの一種で、変身能力のある妖精のこと」
飯田「エンチャント・・何それ?」
あさ美「人を化かすために人と同じ大きさになったイタズラ好きのピクシー
リフレクションメイズのかがみ、ダズルセントのあてな、そして・・・」
Д<「ヤメっ!」
突然のあいぼんの叫びに、場が静まり返る。
怒声とも悲鳴ともつかない、その声に。
あいぼんはゆっくりと席を立ち上がり、ドアのほうに歩き出す。
静まり返った室内を数歩歩き、ドアの前で彼女は一瞬立ち止まって、吐き捨てるように言い残す。
Д<「うちは、、、あんたが好きになれへんわ」
- 304 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)01時41分26秒
- 残されたダイニングを沈黙が重たく押しつぶす。
・・・カチャ・・
最初にその沈黙を破ったのは、ごまのスプーンの音だった。
そのまま、ズズっとごまはスープをすする。
保田「ともかく、みんなよろしくね」
飯田「うんっ!」
ナッチー「おうさ」
こうして場の空気は再び流れ出す。
誰一人としてあいぼんに何か言う者はいなかった。
ののには、それがとてつもなく悲しいことに思えた。
それが出発を翌日に控えた、前日の夕食の席での出来事だった。
- 305 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)02時55分39秒
- ごま「ちょっといい?」
Д<「!」
先に部屋に戻っていたあいぼんのもとに、ごまがやってきた。
Д<「なんやようか?」
あからさまに警戒したその態度に、ごまは顎全体でため息をつく。
ごま「さっきのこと」
Д<「あの女の言ってたことなら…」
ごま「矢口達と一緒になって、私をスーツケースにつっこんだでしょ」
Д<「・・は?」
彼女が口にした台詞は、あいぼんの予想していたものとは違うものだった。
ごま「いくら私だって、午前中から昼ねしてりゃ夕飯には起きるって」
それは・・
ちゃんと睡眠とってる人間が、いくらなんでも5時間も昼寝してるとは思わなかったから…
Д<「そんなん、うちは知らんで
あのチビどもに言ってえな」
そっぽを向いてそういうあいぼんに、ごまは無理やり自分のほうを向かせる。
振り向いた瞬間に目が合ってしまい、当然それは外せるわけがない。
あいぼんも思わず顔を強張らせ、次のごまの一言を待つ。
いつも眠たげな彼女の瞳は、時に自分の全てを否定されてるように感じてしまう。
ごま「・・・」
- 306 名前:牧城 投稿日:2001年09月22日(土)02時56分23秒
- 結局、ごまは何も言わずに部屋を出て行った。
彼女の出て行ったドアを、あいぼんは口惜しげに見つめる。
しばし後、そのドアからつじが入ってきた。
彼女の心配そうな表情を見ることなく、あいぼんは噛み締めるように言葉を呟く。
Д<「今晩中に、もいちどやったるで」
つじ「……なにを……れすか?」
Д<「そんなん決まってる」
そういうと、あいぼんはゆっくりと一つ息を吸い込む。
Д<「あの万年睡眠不足女、何度でもスーツケースに放り込んだる」
- 307 名前:電波名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)09時13分13秒
- >きろくする
・・・
おつかれさまでした。りせっとぼたんをおしたままでんげんをおきりください。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=iida&thp=1001117288&ls=25
- 308 名前:"The Kaorim Quest" 投稿日:2001年09月22日(土)15時34分56秒
- Present party members
the elected warrior KAORI IIDA
the arch-priest KEI YASUDA
the great sorceress MAKI GOTO (Goma)
the battle-master HITOMI YOSHIZAWA(Yossy)
sumo-wrestler/rainy maker NATSUMI ABE (Natchy)
marshallarts fighter MARI YAGUCHI
priest/summoner RIKA ISHIKAWA(Charmy)
minstrel NOZOMI TSUJI
fairy handler ASAMI KONNO
transformer AIBOM
- 309 名前:追加訂正 投稿日:2001年09月29日(土)03時56分27秒
- (ラスト、時間が少しおかしいので追加。夕食時、紺野紹介の前あたりに入ります)
3時前、>>285でつじが明日出発と言ったのは、実は明後日だったことがわかった。
矢口「えーっ、そうだったの?」
保田「そ。チケット確認したら。ということで明日ね。」
つじ「ごめんらさーい。」
矢口「はぁ?もう準備しちゃったよ!どうすんだよー??
ごまもスーツケースに突っ込んじゃったしー。」
つじ「うっ、うっ、、ひーん。。」
矢口「泣くなよー!これじゃ矢口が悪者みたいだろっ!」
勇者飯田「あらあら、、いいんだよ、辻。たまには間違っても。」
つじ「うっ、うっ、、いいらさーん。」
飯田の後ろに隠れる辻。
矢口「あー、甘やかすなよかおりっ!」
保田「ま、今回のことは、渡された時よく確認しなかった私も悪いしね。」
- 310 名前:さよならカオリンクエスト3 投稿日:2001年09月29日(土)03時59分02秒
- 出発の朝、飯田と辻の二人がテラスで外を眺めている。
勇者飯田「ここでこうして眺めるのも最後。スレが変わって、ホッカイドーともお別れだよ。」
つじ「・・・いろんなことがあったれすね。」
勇者飯田「・・・・・」
ここに来て、牧城の二人と仲良くなって、ココナッツやボンバー四天王達と戦って、
修行して、故郷の記憶を取り戻して、メロン谷で戦って、、
勇者飯田「そうだね。」
そう言って辻のほうを見ると、
ジジ、ジジジ、、
急に視界がぶれる。
勇者飯田「うっ、、あれ?(ノイズ??)」
ジジ、、ジッ、
辻の顔がかすみ、重なって誰かの顔が、、
「行ってらっしゃい。頑張ってね。お姉ちゃん。」
勇者飯田「あっ!!、(と、ともちゃん、、、?)」
はっとして目をこすると、、
つじ「?」
そこには辻がきょとんとしている。
勇者飯田「あ、、、」
つじ「??、こうしんれすか?」
飯田は、一呼吸おいた後、にこっと笑って答える。
勇者飯田「うん。大事な交信。」
つじ「・・・」
そう言いきられても少し困ってしまうのだが。
勇者飯田「つじっ、次のスレでも、頑張っていこうね。」
つじ「へ、、へいっ!!」
- 311 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
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