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〜最速娘。伝説誕生〜”フォーミュラー・娘。”

1 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月09日(日)02時00分58秒
はじめまして。フィンランド人とのクオーターでダメ学生のものです。
いつもROMってばかりではなんなので、少しは貢献しないと、思って書きます。

日本を舞台にしたレースものです。後藤真希・吉澤ひとみ・安部なつみ・石川梨華あたりがメインです。
先の展開次第では、ほかに活躍するかもしれませんが。あと、モーニング娘。としては出てきません。
途中まですでに書いてありますけど、長くなりそうです。気力が続かないかもしれません(泣)。
わからないところがある場合や、つまらない場合など、ありましたらカキコしてください。
できる範囲で対応していくつもりです。
2 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
3 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月09日(日)02時21分56秒
あぁ、さっそく間違えてしまった…
4 名前:プロローグ 投稿日:2001年12月09日(日)02時24分02秒
プロローグ

娘。達が激闘を演じる舞台が、
今年も幕を切って落とされようとしていた。
頂点を極め、新たなる伝説に挑む娘。…
失われた栄誉をもとめ、雪辱を誓う娘。…
自らの限界へと挑む、新しき風を吹かす娘。…
再び、激闘の世界へ舞い戻った娘。…
決戦の時、来る…
5 名前:プロローグ-01 投稿日:2001年12月09日(日)02時27分41秒
 全日本フォーミュラー・ニッポン女子選手権、通称”F・娘。”
いまや国内で1・2を争う人気のレースである。

 フォーミュラー・娘。は女性のモータースポーツ人口増加をうけて、
人材の育成と興業としての成立を目的とはじめられた。創始者は元ドライバーで
レーシングチームの監督に転進していた寺田光男。寺田が自身のチームを
一時休止してまで立ち上げたこのF・娘。シリーズ、発表した当初は冷たい目で見られ、
誹謗中傷も浴びた。曰く、レベルが保てるのか、曰く、色物だろ、などなど。
たしかに1年目の開幕戦はエントリーが5台、シリーズと言っても
鈴鹿・富士・鈴鹿の全3戦という寂しい状況だった。
最終戦は3台増加して8台のエントリーとなり、レースのほうもある程度のレベルに達して、
そこそこの成果をあげた。結果は経験で頭ひとつ抜けていた中澤裕子が鈴鹿で2勝して
初代チャンピオンの座についた。
6 名前:プロローグ-02 投稿日:2001年12月09日(日)02時28分26秒
 そして、2年目のシーズンは全5戦でエントリーも増加と成長は続いた。
さらに、あるテレビ番組で取材され放送されたことによって
世間での認知度が高まるという追い風が吹いた。寺田の手腕も評価されるべきだろう。
メディアとのタイアップや協賛企業への売り込みも成功し、人気は高まって行った。
それにともなってレースのレベルも向上していった。
最終戦鈴鹿の中継は深夜枠では脅威的な数字を叩き出すほどだった。

 3年目である昨年は全7戦のシリーズとなり、エントリーも20台前後を集めるまでになった。
前半戦までは毎回勝者が違うという拮抗した闘いとなった。
同点トップで前半を折り返した2人…前年チャンピオンの安倍と、
昨年の中盤から参戦した若手の後藤…のマッチレースになると思われたが、
安倍はそこから失速、後藤も自滅でポイントを落としてタイトルの行方は混沌とするが、
結局波に乗った後藤が連勝してタイトルを決めたのだった。
7 名前:プロローグ-03 投稿日:2001年12月09日(日)02時29分48秒
 マシンにも触れなくてはならない。F・娘。のレギュレーションは
基本的に国内トップフォーミュラーのF・ニッポンと同じである。
すなわち、排気量3リットルで9000rpmの回転制限のエンジン…事実上無限ホンダの
MF308のワンメイク…と、F3000に準拠した車両規定…こちらはレイナード・ローラ・Gフォースの
3社から選択…という本格的なものである。そのほか、レース中に最低1回のタイヤ交換の義務付けなど、
細かいところまでほとんど同じである。ただし、レースの走行距離が少し短いのと、
年間の開催数が3戦少ない7戦というところが大きな違いだ。
もちろん、参戦資格が女性だけというのが最大の違いである事は言うまでも無い。
8 名前:開幕戦・鈴鹿-01 投稿日:2001年12月09日(日)02時34分29秒
初春とはいえまだまだ肌寒い3月の下旬、全日本フォーミュラー・ニッポン女子選手権、
通称”F・娘。”の開幕戦が三重県の鈴鹿サーキットで行われようとしていた。

 シーズン開幕前最大の話題は、”日本一速い娘。”の異名を取っていた中澤裕子の引退であろう。
「娘。たちの将来、ひいては日本のモータースポーツのために、私は決断しました。」
記者会見でそれだけ語り退場した中澤には、引退を惜しむ声が絶えなかった。
日本の女子モータスポーツ界を引っ張ってきた中澤がフォーミュラー・娘。から引退し後進に道を譲る
…勇気ある決断は多方面から大いに評価された。その中澤は自ら監督となってチームを運営してシリーズに参戦し、
またF・娘。以外のGTなどは自ら走るという。まだまだ中澤の活躍は見ることができるのだ。
9 名前:開幕戦・鈴鹿-02 投稿日:2001年12月09日(日)02時36分20秒
 今シーズンのF・娘。は、前年度のチャンピオン後藤真希を中心に争いが繰り広げられることは確実だった。
昨年、初優勝をあげて勢いに乗った後藤は最終的に7戦3勝という成績を収めた。
しかし、チャンピオンこそ獲得したものの精神的に脆い部分を見せていた。
今年はさらなる成長と、他のカテゴリーにへのステップアップが期待されていた。
その後藤は、昨年と同じチーム・フィラから参戦。昨年はチームタイトルも獲得したフィラは
ルーキーの高橋愛を加入させ2台体制だ。
 一方、2年前のチャンピオンである安倍なつみは昨年のスランプを払拭すべく
チーム・ナカザワに移籍、雪辱を誓っていた。中澤も安倍に集中すべく1台体制で参戦。
経験豊富で速さもある安倍が調子を取り戻せば、チャンピオンは難しくないと目されていた。
もちろん安倍本人もそのつもりだ。
 後藤と安倍、この二人にベテランの飯田圭織や矢口真里、若さあふれる走りを見せた加護亜依や辻希美、
さらなる飛躍が期待される石川梨華や吉澤ひとみなど、どんなドライバーが絡んでいき、
そして打ち負かすのか、そんな話が飛び交う開幕前であった。
10 名前:開幕戦・鈴鹿-03 投稿日:2001年12月09日(日)02時36分51秒
 グリッドに目を移すと、ポールポジション(PP)は前日の予選一番手であるチームEE JUMPの
ソニンが獲得していた。EE JUMPが使うGフォース社製のシャシは他のチームが使っていないため、
それゆえにデータが少なくテストがさらに重要になってくる。
しかし、チームメイトのユウキが起こした不祥事による謹慎のため、ソニンが一人でテストをこなさなければならず、
過酷なオフを送ってきた。それだけに、PP獲得は努力が報われた格好であり、表情は明るかった。
ソニンの隣、二番グリッドには若手の石川梨華がついていた。
石川と吉澤ひとみが所属するチーム・ゴナツヨは昨年ローラシャシに苦労し良い成績をあげられなかったが、
レイナードに変更してはじめてのレース、吉澤ひとみも5番手を確保して予選では速さを見せていた。
後方2列目にはチャンピオンの有力候補、安倍なつみと後藤真希はそれぞれ3、4番手のグリッドを獲得していた。
 12チームから合計19台がエントリーした今シーズンのF・娘。それぞれの思惑を胸に、各車がグリッドに並んでいた。
11 名前:開幕戦・鈴鹿-04 投稿日:2001年12月09日(日)02時39分14秒
 後藤はグリッドに着いたクルマのコクピットに、早々と身を沈めヘルメットを被っていた。
バイザー越しにうかがうことは難しいが後藤の表情は曇っていた。順位はともかくタイムが悪くて焦っていたのだ。
シーズンオフのテストで記録したタイムが出なかったのだ。無論、テストの時と今回の予選では状況が違うので
単純に比較できないが、他チームではオフのテストより良いタイムを刻んでいるところ
…EE JUMPとゴナツヨなど…もあり、後藤としては納得いかないのだった。
しかし、弱気になっていたわけではなかった。朝の練習走行で好感触のセッティングを見つけていた。
それに、チャンピオンのプライドがあきらめることを許さないのだ。
「絶対、絶対負けない…」
後藤の目がヘルメットの中で、徐々に鋭い光を増していった。
12 名前:開幕戦・鈴鹿-05 投稿日:2001年12月09日(日)02時41分43秒
 いまにも泣き出しそうな天候の中、F・娘。の開幕戦鈴鹿のスタートが刻々と近づいていた。
グリッドからメカニック達がはなれ、パレードラップがPPのソニンを先頭にスタートした。
このときのチーム監督の頭は天候のことでいっぱいだった。天気予報ではスタートから一時間以内の降水確率が
90%となっていたが、いまのところ一滴の雨も降っておらず、当然全車晴れ用のスリックタイヤでスタートしていた。
だか、細かいクルマのセッティングに関しては雨を予想したセッティングに変更しているドライバーも何人かいた。
13 名前:開幕戦・鈴鹿-06 投稿日:2001年12月09日(日)02時42分27秒

 全車が無事にパレードラップを終え、再びメインストレートに戻ってきた。きれいに順列を保ち、
グリッドに次々と着くクルマたち。後方で安全確認の終了を示すグリーンフラッグが振られて、
すべてのドライバーががシグナルに注目する。緊張の一瞬。レッドシグナルが灯り、
一瞬の間をおいてグリーンに変わる。それと同時に全員がスタートを切る。スタートできないクルマもなく、
きれいなスタートが切られる。絶好のスタートを決めたのは5番グリッドからのスタートの吉澤ひとみだった。
それをこちらも良いスタートを切った後藤が追う。ひとみと後藤に間を抜かれたフロントローの2台
…ソニンと石川…はスタートに失敗し、順位を下げることになる。
鈴鹿のストレートから1コーナーまでは長い。少しでも良いポジションを得るためにそれぞれが針路を変え、
また後方のクルマをブロックしながら、1コーナーへと突っ込んでいく。
幸い、全車がアクシデントなく1周目の1コーナーをクリアしていた。
14 名前:開幕戦・鈴鹿-05 投稿日:2001年12月09日(日)11時02分51秒
 オープニングラップを制したのは、スタートの4台抜きでトップに立った吉澤ひとみ。
ひとみはヘルメットの中で冷静になっていた。スタート前のグリッドでは自分でもわかるくらい
激しい動悸に襲われていた。スタートできないと思うほどだったが、
自分でも驚くほど抜群のスタートを決めたとたん、緊張がとけて楽になっていた。
後藤と同じく精神的な面を指摘されるひとみだったが、逃げることだけに集中しろ、
と無線から飛ぶゲキを素直に受け止めることができるようなったのは、成長した証拠なのかもしれない。
 一方、後藤も良いスタートを決め、落ち着きを取り戻しつつあった。もともと、
圧倒的なスピードでレースをコントロールして勝つタイプのドライバーである。
2位は上がったことは思惑どうりだった。さらに、後方には安倍、石川、ソニンと続いていた。
15 名前:開幕戦・鈴鹿-07 投稿日:2001年12月09日(日)11時04分48秒
 波乱は早くも2周目に起きた。いきなり、大粒の雨がコースを濡らし始めたのだ。
最初の犠牲者は、スタートの遅れを取り戻そうと前方の石川に迫っていたソニンだった。
高速コーナーの130R出口でスピンアウト、そのままリアからタイヤバリアに突っ込んでしまう。
リア周りを壊してその場でリタイヤ、予選の好調を決勝につなげられず、ソニンはコクピットでうなだれていた。
 ソニンのクラッシュをうけて、イエローフラッグが提示、セイフティカーが導入される。
追い越し禁止となるためにタイムロスの少ないこのタイミングで、義務付けられているタイヤ交換を済ますべく、
そして降り出した雨に対応したレインタイヤにチェンジすべく、各チームのピットが騒がしくなる。
16 名前:開幕戦・鈴鹿-09 投稿日:2001年12月09日(日)11時06分18秒
ここでどのレインタイヤを選択するかに各チームとも頭を悩ませていた。
後藤の乗るフィラを始め大半のチームは雨は軽いと判断し、3種類あるレインタイヤのうち、
一番軽いインターミディエイトを選択した。一方、チーム・ナカザワはすぐに回復しないと予測、
中間のレインタイヤを安倍に装着させた。そのほか、予選で下位に沈み、
今も隊列の後方に位置していた飯田圭織と矢口真里はなんと引き続きスリックを選択。
天候回復を予測してのギャンブルだった。また、ピット作業時の混乱もあった。
さすがにトップチームは落ち着いて無難に作業をこなすが、チーム・カントリーでは
ピットとドライバーのコミニュケーションがうまくいかず、2台が同時にピットイン、
後から来たあさみがりんねの作業が終わるまで待機させられるというハプニングが発生していた。
17 名前:開幕戦・鈴鹿-10 投稿日:2001年12月09日(日)11時07分17秒
 吉澤、安倍、後藤、石川、加護の順で迎えた6周目、シケイン手前のピットロードにセイフティカーが引っ込む。
これで7周目からレースは再開だ。しかし、空を見上げて中澤は後悔していた。
予想よりも雨脚が弱まっていたのだ。ホームストレートを駆け抜けるクルマの様子をから、
それは確信となった。クルマのはねあげる水はほとんどなく、路面はどんどん乾いているのがわかった。
「しまった!間違えたな」
と言ってみても状況が改善されるわけではない。吉澤からは徐々にはなされ、
後藤からは詰められる格好の安倍。クルマは安倍の必死の操作を受けてぎりぎりの動きを見せている。
しかし、それでもタイヤの差を埋めるのは難しかった。中澤には安倍のつらさが痛いほどわかった。
 だが、そんな安倍を救うように、アクシデントが発生する。まだ水の残る裏ストレートで
スリックの飯田がスピン、そこに辻が絡んでコース上でストップしたのだ。さらに、
ほぼ同時にあさみと小川がヘアピンで接触して停止する。これを見てレッドフラッグが提示される。
レースは中断され2ヒート制で争われることになったのだ。まさに、波乱の続く開幕戦である。
18 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月09日(日)11時18分14秒
とりあえず、はじめに思ってたところまでアップしました。
アップして冷静に見てみると、なんかダメダメですな(泣
いきなり間違えたところはアップするし、番号の順番は間違えるしで、
なんか、はじめからやり直したい気分。

ま、めげずにちまちま書いていくので、よろしかったらお付き合い願いします(ペコ
19 名前:tamtam 投稿日:2001年12月12日(水)00時36分00秒
いやぁ〜っ、モータースポーツ好きなんで、こういうの好きっす。
これからもがんばって書いてください。
20 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月13日(木)01時21分30秒
>>19
をぉ、レスがついてる…
読む人いないと思ってたけど、やっぱり反応あるとうれしいやね。

とりあえず、明日の晩に更新予定っす。
21 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月13日(木)19時12分04秒
期待してます
22 名前:開幕戦・鈴鹿-11 投稿日:2001年12月13日(木)22時32分08秒
 中澤はピットに戻ってきた安倍をいちばんに出迎えた。一言、あやまるために。
安倍は大丈夫、といって首を振った。安倍の目に自信が戻ってきているのを中澤は見逃さなかった。
「だいじょうぶ、なっちはやるで!」
それだけをスタッフに言うと、それ以上余分な言葉をかけるのをやめた。

 順位こそ3位だが、後藤は自分がノれているのに気付いていた。
スタートを決めたのに加え、クルマの動きが完璧になっていたからだ。
後藤はスタッフに問題ないからそのまま、とだけ告げた。
23 名前:開幕戦・鈴鹿-12 投稿日:2001年12月13日(木)22時34分27秒
 再スタートの準備が進み、グリッドにクルマが並びつつあった。
2ヒート目を先頭でスタートするひとみは、再び緊張していた。体がこわばっているのが自分でもわかった。
なにしろ、はじめての首位走行のうえに、イエローからの再スタートをも経験していた。
走っているときは思わなかったが、落ち着くとここまでの自分の調子のよさに驚き、緊張していた。
深呼吸を繰り返してリラックスしようとするが、効果がない。
走っているときには感じなかった後方からのプレッシャーを受けていた。
思い切って後方を振りかえってみた。
自分の直後に尊敬する安倍がいる。
かなわない速さを持つ後藤がいる。
矢口や平家といった、自分があこがれてコース上でかなわなかった先輩もいる。
その状況に震えがが出そうだった。ふと、親友の石川と目が合う。
ひとみは少しでも気が楽になればと思い、石川に向かってゆっくりと歩き出した。
24 名前:開幕戦・鈴鹿-13 投稿日:2001年12月13日(木)22時36分46秒
「よっすぃ〜、すごじゃない!速いよ」
「はは、まぐれだよ」
石川は笑顔でひとみに話しかけてきた。
以前からの知りあいで、F・娘。に同じチームで同時にデビューしてからは休日いっしょに遊びに出かけるほど仲が良い石川と吉澤。
また、昨年はレースでも同年デビューの加護や辻ほどに目立てずに、同じ悩みを持っていた。
「りかちゃんも調子良さそうじゃない」
そう言い返して、ひとみは緊張が少しづつ解けていくのを感じていた。
お互いの健闘を誓って微笑みあい、グリッドに戻る頃には、ひとみはすこしリラックスしていた。
25 名前:開幕戦・鈴鹿-13 投稿日:2001年12月13日(木)22時38分11秒
「よっすぃ〜、すごじゃない!速いよ」
「はは、まぐれだよ」
石川は笑顔でひとみに話しかけてきた。
以前からの知りあいで、F・娘。に同じチームで同時にデビューしてからは休日いっしょに遊びに出かけるほど仲が良い石川と吉澤。
また、昨年はレースでも同年デビューの加護や辻ほどに目立てずに、同じ悩みを持っていた。
「りかちゃんも調子良さそうじゃない」
そう言い返して、ひとみは緊張が少しづつ解けていくのを感じていた。
お互いの健闘を誓って微笑みあい、グリッドに戻る頃には、ひとみはすこしリラックスしていた。
26 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月13日(木)22時40分05秒
ありゃ、間違えて2重投稿してもうた…
スマソ…
27 名前:開幕戦・鈴鹿-14 投稿日:2001年12月13日(木)22時57分59秒
 2ヒート制になったこのレース、最終結果は2ヒート目の結果で決まる。
1ヒート目の結果はというと、再スタートの順位のみに影響する。
リードしていたドライバーにとっては前半の努力が失われる格好になるが、後方のドライバーにはチャンスが広がる。
当然、全車の間隔が詰まるために、見る方としては面白くなるわけだ。
この部分は、各ヒートの合計タイムで争うF1と違う。これが、後に大きな波乱を演出することになるが、それはまた後の事。
28 名前:開幕戦・鈴鹿-14 投稿日:2001年12月13日(木)22時58分51秒
 1ヒート目の順位でローリングスタートする2ヒート目。
ひとみを先頭とするドライバー達は集中を高めていた。すでに6台がリタイヤしていた。
天候は回復し、路面は一部ウエットな部分もあったが、全車がスリックタイヤを選択していたため、条件は一緒であった。
セイフティカーがピットロードに戻り、先頭の吉澤がホームストレートにさしかかってスタートとなる。
全車が一列になってストレートを疾走する。
1コーナーで前車をパスしたのは安倍だった。
少しスタートに失敗した後藤に並びかけ、ブレーキを遅らせて抜く。
後藤はミラーでインに安倍が入ったの見て、無理をしなかった。
大丈夫、レースはまだまだ続くのだから、と後藤は冷静さを保っていた。
29 名前:開幕戦・鈴鹿-16 投稿日:2001年12月13日(木)23時00分14秒
 スタートを無難に決めたひとみは、レースをリードしていた。
無線で安倍が2位に上がったのを知ったが、気にしなかった。
どちらでもいい、自分で逃げきるんだ、と言いきかせ、差を広げるべく、ペースを上げていた。
4位の石川以下はひとみらのペースに着いて行けず、少しずつ遅れていく。

 レースは後半に入り、優勝争いは先頭を走る吉澤ひとみと、少し後方から追う安倍なつみと後藤真希に絞られていた。
後藤と4位石川の差は10秒以上になり、さらに開きつつあった。
30 名前:開幕戦・鈴鹿-17 投稿日:2001年12月13日(木)23時00分49秒
「やばいなぁ」 
中澤はモニターを見ながらつぶやいた。
トップグループの3台はほぼ同じペースで走行していたが、いちばん余裕がないのが安倍のクルマだった。
吉澤はコンスタントにタイムを刻んでいたのに対し、安倍のタイムはばらつきが大きくなり始めていたことからも明らかだ。
だが、ピットからは無線で声をかけることぐらいしかできない。
中澤はもどかしい思いでモニターを見つづけていた。
「…自分で走ってたほうが気がラクや」
中澤はポツリとつぶやいた。
31 名前:開幕戦・鈴鹿-18 投稿日:2001年12月13日(木)23時01分59秒
 もうひとり、その状況を理解している人物がいた。前方の2台を見ながら走っていた後藤である。
後藤としては安倍とバトルして吉澤を逃がすよりは、しばらく様子をみて終盤に勝負をかけるつもりだった。
しかし、安倍が吉澤についていけないならば、後藤も安倍の前に出てついていく必要があった。
後藤としてはまだ余裕があり、安倍や吉澤に置いて行かれるつもりはない。
しかし、安倍は軽めのウイングでストレート重視、一方後藤はウイングを増やしてコーナー重視という違うセッティングにしていた。
つまり、後藤がコーナーで差を詰めてもストレートで安倍に逃げられる、という難しい状況が予想された。それを打ち破る方法は、ひとつしかなかった。
32 名前:開幕戦・鈴鹿-19 投稿日:2001年12月13日(木)23時03分28秒
 一方、吉澤も序盤と状況が違ってきていた。ガソリンが減って序盤とバランスが変わっていたのだ。
具体的にはブレーキに大きく変化が出ていた。単独で走行している分には問題はないが、他車が近づいた時に強いられる鋭いブレーキングで、クルマが不安定になるのだった。
すでに周回遅れを処理するときにバランスを崩してスピンしかけて、冷や汗をかいていた。
ガソリンの減少は他のクルマも同じに起こる事だが、ひとみの場合、前後のブレーキバランスを調整するバルブが詰まっていたため、変化がひどく出て修正も効かなかった。
このトラブルはレース後に確認されるが、それは後の祭りである。
このまま、単独で逃げきりたい…ひとみは少しずつ焦っていた。
33 名前:開幕戦・鈴鹿-20 投稿日:2001年12月13日(木)23時04分53秒
 安倍は後藤の猛攻を何とかしのいでいた。
お互いのセッティングの違いや後藤の余裕はミラーから感じとっていたし、自分が不利なのも理解していた。それでも、譲らない。自分のプライドにかけて。
チーム、そして自分を認めてくれている中澤のためにも全力で走っていた。
 予想どうりとはいえ、後藤は安倍の攻略にてこずっていた。
簡単に抜かせてくれないよな、と思いつつミラーに映るようにずらしたラインを取りプレッシャーをかける。
もっとも、安倍ほどのドライバーがそんなものに簡単に負けないのはわかっていた。
しかし、できることは何でもやる…それがこの世界で成功するために必要なことなのだ。
「よっすぃも、苦労してるのか…」
前を見て、吉澤との距離が予想以上に離れていないことに気がついた。
チャンスがまだ残っているのを確信して、後藤は安倍とのバトルに終止符を打つべく、動き出した。
34 名前:開幕戦・鈴鹿-21 投稿日:2001年12月13日(木)23時06分29秒
 鈴鹿で最高速を記録する裏ストレート。後藤はここでは今まで必要以上に安倍の後方に近づかなかった。
だが、行くと決めたこの周回、ぴったりと真後ろに付いた。後藤は安倍のクルマのスリップストリームを感じ、奥歯を食いしばった。
そのまま130Rを抜ける。後藤の今までと違う動きに、安倍は疑いを持っていた。
この動きは、…まさか、と。後藤も安倍の動きを見て、疑いを持った事を察した。
だが、それは計算済みだった。たとえ後藤の意図がバレようと抜く自信があったし、抜くつもりだった。
 130Rを立ちあがり、シケインへ一直線に加速していく。ここでも後藤は安倍の真後ろに付けていた。
安倍は、疑いを確信に変えていた。いままでしかけなかったシケインで一気に勝負を決めるつもりだな、と。
後藤らしいな、と思いつつも対策も考えていた。
「シケイン1個目の飛びこみで来るだろう…右か左…どっち?」
安倍はそこまで確信していた。視界にシケインがどんどん近づき、決めなくてはならない。
後藤はまだ真後ろだが、相手が動いてからでは間に合わない。安倍は決断した。
35 名前:開幕戦・鈴鹿-22 投稿日:2001年12月13日(木)23時08分47秒
 動揺をみせない安倍に、後藤は手の内を完全に読まれているような錯覚をおぼえた。
しかし、やらなければならない。シケインが近づく。
ギリギリまで安倍の真後ろにつけて、ひとつ目のシケインのイン側…右側に切りこむ、と後藤は決めていた。
後藤がここまでシケインでしかけなったのは、自信があり、最後の切り札としていたからだ。
スタートから感触が良く、自由にシケインを攻められるクルマだとわかっていたからこそ、手の内を明かしたくなかったのだ。
36 名前:開幕戦・鈴鹿-23 投稿日:2001年12月13日(木)23時09分41秒
「来るで」
中澤はそれだけ言ってモニターを注視していた。中澤もまた、後藤がしかけるのがわかっていた。
なにもできずもどかしいのは変わらないが、やたらと両の拳に力が入っていた。
 軽く右にカーブしながらシケインへ続くコースを疾走する2台。
リアウイングの翼端板から水蒸気の筋を引いていた。2台ともブレーキングポイントを限界まで奥にとっていた。
それは中澤が無理と感じるほど奥だった。観客がざわめき、2台に注目が集まる。
ブレーキディスクが赤く焼けるのがハッキリと見えた。そして、同時にシケインに切りこむ。
安倍はインをブロックするラインを取っていた。だが、さらに内側、ほとんど縁石の上に後藤のクルマが侵入していた。限界ギリギリのターンインだった。
安倍と並んだままシケインに突入した後藤。ここまで来て引くわけにはいかない。
2台の距離は5cmもないほど接近している。そして、2個目のシケインの切り返し。お互いに譲らない。
距離はさらに狭くなったように見えた。後藤のクルマがほんのわずかに、後ろだった。
37 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月13日(木)23時53分00秒
更新しました。
まだ開幕戦です。でも、ここがこのレース最大の見所かな。

あと、エントリーリストとかも考えてあるんだけど、どうしようかな…

>>21
期待してもらってありがとうです。
完走目指してちまちまとかいていくんで、気長にお願いしますね。
38 名前:開幕戦・鈴鹿-24 投稿日:2001年12月15日(土)15時49分41秒
 並んでシケインを脱出する安倍と後藤の2台。その差はタイヤひとつ分くらい後藤の方が後ろに位置だった。
白熱の接近戦に観客は手に汗握っていた。しかし、実際の勝負はすでにここで決着していた。
シケインに続く最終コーナー、このコーナーのイン側を取った後藤が前に出られることを、安倍は良くわかっていたのだ。
強引に防ぐこともできた。しかし、それはプライドが許さなかったし、お互いに信頼しあってるからこそ、ここまで正々堂々と勝負してきたのだ。
 最終コーナーでインからスルスルッと前に出る後藤のクルマ。
スタンドから歓声があふれる。そのままメインストレートに向かって加速する2台。
だが、今度は安倍のチャンスである。
ホームストレートでスリップに入り、ブレーキングから1コーナーの飛びこみで前へ…定石である。
もちろん、後藤もそれくらいわかっている。
スタンドが、ピットが、サーキット全体が息を飲んで注目していた。
39 名前:開幕戦・鈴鹿-25 投稿日:2001年12月15日(土)15時51分00秒
「無理やな…」
中澤はあきらめたようにつぶやいた。
最終コーナーで理想のラインを取れなかったた安倍は、加速がわずかに遅れていたのだ。
その分、後藤のスリップに入っている時間も短くなる。
ドップラー効果を効かせながら当事者の2台がエキゾースト・ノートを響かせてピットの前を通過する。
ストレートでなんどか針路を変えて、スリップに入らせまいとする後藤。それにあわせて懸命に後ろにつく安倍。
傍目には充分勝負できそうな間隔だったが、中澤からは1コーナーで飛びこむにはわずかに届かない差に見えた。
もちろん、クルマの差も考慮して、だ。それを知ってか知らずか、後藤はインに余裕のあるラインで1コーナーへ進入していく。
安倍も、最後の抵抗ととばかりクルマのノーズをインへ向ける。が、飛びこむほどの勢いは無かった。
そのまま、2コーナーからS字へと、後藤はカミソリのような鋭さでクルマを走らせていた。
早くも安倍は差を付けられつつあった。
40 名前:開幕戦・鈴鹿-26 投稿日:2001年12月15日(土)15時53分29秒
 後藤がシケインで安倍のインを刺しているころ、トップを走るひとみは無線で残り周回数の確認をとっていた。
ちらっと見たミラーから後藤が安倍を抜いたのを知って、そうか安倍さんが抜かれたか…、とつぶやく。
ここまで自分の走りに集中していたために、後ろの状況に気をくばっていなかった。
だから安倍がつらそうに、後藤が余裕をもって走っていたこと気付いていなかったし、気にもしていなかった。
それに、自分のクルマの挙動に余裕が無くなってきていたこともあった。
ブレーキの問題がさらに深刻になり、特にヘアピンとシケインではかなり気をつかう必要があった。
もう一度ミラーを確認する。ひとみは残り少ない周回を逃げ切るべく、右のつま先にさらに力を込めた。
ゴールまで、残り4周。
41 名前:開幕戦・鈴鹿-27 投稿日:2001年12月15日(土)15時54分29秒
 安倍を抜いた後藤は、吉澤のテールを見てさらにペースを上げていた。
残り周回数が少ないのだ。安倍とのバトルでエキサイトしていた後藤は今までのように相手の走りを観察していなかった。
勝つ自信が全身から沸いてきていて、ただがむしゃらに走っていたのだ。
 観客がざわめく。後藤がキレた走りで吉澤を追っていたからだ。完全に後藤の勢いが勝っていた。
追い抜くのは時間の問題だった。それが、ゴールまでに間に合うかどうかは別としてだが。
しかし、後藤は脅威的なファステストラップを刻みながら吉澤に追いつく。
勝負すべくスリップに入ったのは残り2周となった裏ストレートだった。
ひとみはスリップに入られたのを感じ、針路を変える。後藤は少しだけ修正して、スリップを活かそうとする。
勝負は130Rだ…後藤は絶対に吉澤のインに飛びこむつもりだった。
42 名前:開幕戦・鈴鹿-28 投稿日:2001年12月15日(土)15時55分33秒
 だが、勝負はあっけなくついた。130Rの進入で、吉澤がスピンしたのだ。
「あ”〜」
歓声と溜息が混じったような声がスタンドから漏れる。吉澤のクルマはアウト側にスピンしながらコースアウトした。
その脇を後藤が抜けていく。幸いにバリアにあたらず損傷が無かった吉澤のクルマは、よろよろとコース上に戻り、スピンターンしてコースに復帰する。
すでに安倍にも抜かれ3位での復帰である。
その間に後藤は最終コーナーを抜けてメインストレートへさしかかっていた。
これで残り1周、ファイナルラップだ。
43 名前:開幕戦・鈴鹿-29 投稿日:2001年12月15日(土)15時58分29秒
「ちくしょー!」
ひとみはヘルメットの中で叫んでいた。無線でピットに聞えていることを忘れているかのような叫びが、ひとみの心情を表していた。
ひとみは悔しかった。わかっていたのに、ミラーに映った後藤のクルマが見えたとたん、動揺してしまった。
それで、右足だけでなく全身が言う事を聞かなくなり、正確なブレーキができなくなったのだ。
ブレーキに不調をかかえているひとみのクルマは簡単にスピンした。回転する視界の中に、後藤のクルマが走り抜けるのが入ってくる。
「あ、抜かれた」
そんな言葉が心に浮かんできて、ふっとからだが自由になる。
それから、必死でクルマを立て直してコースに復帰する。
シケインをぬけて前に安倍のクルマが見えたとき、悔しさが込み上げてきた。
そして、こらえきれずに叫んでしまったのだ。叫んでから急に恥ずかしくなったが、もう遅かった。
それでも、エンジンを止めなかったことと、クルマが壊れなかったこと、そして大きく順位を落とさなかったのは幸運だった
44 名前:開幕戦・鈴鹿-30 投稿日:2001年12月15日(土)15時59分24秒
 ファイナルラップには順位の変動は無く、そのままゴールを向かえた。
ウイニングランを終えてパルクフェルメにクルマを止めた後藤は、さっと降りると軽く手を振っただけで、この結果が当然、とでも言うように歩き去ってゆく。
遅れて入ってきた安倍と吉澤はゆっくりとクルマを降りると、お互いの健闘をたたえて抱きあう。
悔しさは残っていたものの、ひとみにとっては初めての3位。当然、初めての表彰台だ。
そのまま3人は階段を上り、ポディウムに向かった。

 表彰台には後藤を真中に安倍と吉澤が上がった。内心は悔しかったが、素直に喜ぶひとみ。
こぼれんばかりの笑顔でトロフィーを受け取る安倍。そして本人は喜んで笑っているつもりなのに、どこか無愛想で薄い笑みの後藤。
三者三様の表情でシャンパンをかけ合い、最後に3人で肩を組んでの記念写真で表彰式が締められた。
45 名前:開幕戦・鈴鹿-31 投稿日:2001年12月15日(土)16時01分37秒
 ポディウムから帰る途中、安倍は吉澤に右手を差し出しながら言った。
「おつかれ。いい走りだったべ」
安倍は、吉澤のクルマの変調に気が付いていたが、あえて触れなかった。
ひとみは手を出そうとするも、右手がシャンパンのボトルでふさがっている事に気付いて慌てて持ちかえる。
「悔しいっすよ。でも、自信が持てそうです!」
「そっかぁ。なっちも負けないよ」
前を行く後藤が振りかえって言う。
「なんであんなところで回っちゃったの?」
スピンのことだ。ひとみの表情が少し曇り、隠していた悔しさがにじむ。
「飛ばしすぎたんだ」
ポツリとつぶやく。それだけ言って、ひとみは先に歩き出した。
安倍はひとみの表情が変わったのに気が付いたが、その理由を知らなかった。
46 名前:F・娘。第1戦 鈴鹿サーキット 決勝RESULT 投稿日:2001年12月15日(土)16時03分35秒
F・娘。第1戦 鈴鹿サーキット 決勝RESULT
Pos. No. DRIVER    LAP  TIME(2nd Part) BEST
1   #1 後藤真希  25(8+17) 33'36.547    1'47.631
2   #19 安倍なつみ 25(8+17)   +6.314    1'48.537
3   #5 吉澤ひとみ 25(8+17)  +20.367 1'47.892
4   #55 矢口真里  25(8+17) +1'05.982    1'48.997
5   #5 石川梨華  25(8+17) +1'13.022    1'49.015
6   #7 加護亜依  25(8+17) +1'15.921    1'48.759
MAJOR RETIREMENT:#9 ソニン(LAP1)
FASTEST LAP:#1 後藤真希 1'47.631(2nd Part 15/17) 195.97km/h

DRIVER'S POINT
Pos. No. DRIVER    POINT
1   #1 後藤真希  10
2   #19 安倍なつみ  6
3   #5 吉澤ひとみ  4
4   #55 矢口真里   3
5   #5 石川梨華   2
6   #7 加護亜依   1
47 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月15日(土)16時10分13秒
更新しました。
開幕戦が無事に終わりました。
リザルト載せたんですけど、ぐちゃぐちゃで見づらいや…
鬱だ…あとで作り直しておこう。

エントリーリストはチーム名が思いつかないんで保留です(笑
48 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)03時45分15秒
F1じゃなくてFポンつーのが渋い。
ああ、そういえばここ2〜3年F1見てねえなあ・・・。

楽しみにしてるんでがんばってくらさい。
49 名前:F・娘。第1戦 鈴鹿サーキット 決勝RESULT 訂正版 投稿日:2001年12月16日(日)11時07分44秒
F・娘。第1戦 鈴鹿サーキット 決勝RESULT
Pos. No. DRIVER   LAP TIME(2nd Part) BEST
1   #1  後藤真希  25(8+17) 33'36.547 1'47.631
2   #19 安倍なつみ 25(8+17)   +6.314 1'48.537
3   #6  吉澤ひとみ 25(8+17)  +20.367 1'47.892
4   #55 矢口真里  25(8+17) +1'05.982 1'48.997
5   #5  石川梨華  25(8+17) +1'13.022 1'49.015
6   #7  加護亜依  25(8+17) +1'15.921 1'48.759
MAJOR RETIREMENT:#9 ソニン(LAP1)
FASTEST LAP:#1 後藤真希 1'47.631(2nd Part 15/17) 195.97km/h

DRIVER'S POINT
Pos. No. DRIVER    POINT
1   #1  後藤真希 10
2   #19 安倍なつみ 6
3   #6  吉澤ひとみ 4
4   #55 矢口真里 3
5   #5  石川梨華 2
6   #7  加護亜依 1
50 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月16日(日)11時15分46秒
作り直したリザルトを載せました。
…ってあんまり変わってないね。だれか、並べ方知ってたら教えてください。
html使わんといかんのかな?

あと、よっすぃ〜のゼッケンがいしかわっちとだぶってたので訂正。
よっしぃ〜→6、いしかわっち→5、です。
…てこれも誰も気にしてないだろうな。うん。

>>48
渋い、楽しみ、なんて言われてうれしいねぇ。
個人的には、最近のF1はFポンよりつまらないと思う。
やっぱり、夏場に派手に壊れるフェラーリがいないと、ねぇ(笑)。
51 名前:F・娘。第1戦 鈴鹿サーキット 決勝RESULT レイアウト訂正版 投稿日:2001年12月17日(月)20時09分36秒
F・娘。第1戦 鈴鹿サーキット 決勝RESULT
Pos. No.  DRIVER   LAP      TIME(2nd Part)  BEST
1   #1  後藤真希  25(8+17)  33'36.547     1'47.631
2   #19 安倍なつみ 25(8+17)    +6.314     1'48.537
3   #6  吉澤ひとみ 25(8+17)   +20.367     1'47.892
4   #55 矢口真里  25(8+17)  +1'05.982     1'48.997
5   #5  石川梨華  25(8+17)  +1'13.022     1'49.015
6   #7  加護亜依  25(8+17)  +1'15.921     1'48.759
※MAJOR RETIREMENT:#9 ソニン(LAP1)
※FASTEST LAP:#1 後藤真希 1'47.631(2nd Part 15/17) 195.97km/h

DRIVER'S POINT
Pos. No.  DRIVER    POINT
1   #1  後藤真希    10
2   #19 安倍なつみ   6
3   #6  吉澤ひとみ   4
4   #55 矢口真里    3
5   #5  石川梨華    2
6   #7  加護亜依    1
52 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月17日(月)21時08分58秒
アドバイスもらって作り直したのを載せました。
どぉ、見やすいでしょ。
え、どっちでもいいって…まぁ、そう言わずに(笑

話の方は今日か明日に更新予定です。

53 名前:サイドストーリー01 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月18日(火)23時30分07秒
 開幕戦の終わった翌週、ひとみは石川の家に遊びに行っていた。
仲の良い二人がいっしょに過ごすのは珍しい事ではなかった。
特にレースウィークともなると、チームが同じ事もありほとんどいっしょに行動していた。
「表彰台おめでと〜ひとみちゃん」
「梨華ちゃんもポイントゲットできてよかったね」
石川の第2ヒートは出入りの激しいものだった。後方から追い上げる矢口に抜かれ、さらに加護・辻との三つ巴のバトルとなる。
最終的にはなんとか2台をおさえて5位でゴールし、入賞2ポイント獲得という結果だった。
「いやぁ、まだまだ」
と言いながらも表情はまんざらでもなさそうだ。
昨年はリタイアこそ無かったものの、入賞は5位1回6位3回の計5ポイントという結果に終わった石川。
もっともひとみも4位1回5位1回で同じく5ポイント、残りはリタイヤという悲惨さだったから、お互い様である。チームはよく2人の契約を続行したものだ。
54 名前:サイドストーリー02 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月18日(火)23時34分49秒
「梨華ちゃん、始まるよ」
「うーん、もうちょっと」
テレビの前で寝ころんだままのひとみに、台所でミルクティーを入れている梨華が答える。
今日は、開幕前に2人が出演したテレビ番組の放送される日だった。
午後9時になると同時に、番組が始まる。
何とか間に合った梨華が、ミルクティーを差し出しながらつぶやく。
「やっぱりテレビってちょうどの時間に始まってほしいよねぇ。最近は56分とか54分とか中途半端に始まるのが多いでしょ」
聞いてもいないのにしゃべる梨華。ひとみはうんうんと軽く頷く。
オープニング。そして、いくつかのコーナーとCMを挟んで、今度はコントのコーナーになる。2人の出演した場面だ。
55 名前:サイドストーリー03 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月19日(水)00時11分41秒
 教室のセット、並んで座ってる学生役。その中にセーラー服の梨華と学生服姿のひとみが前の方に座っている。
それを見ただけで笑い出す2人。わかっていても、テレビを通して客観的に見るとまた面白い。
遅刻してくるノリさん扮するノリ子。その一言、一挙動に笑う2人。
タカさん扮する保毛尾田保毛男が入ってきて、ホームルームが始まる。場はさらに盛り上がる。
2人の笑いも大きくなる。
「あははは、梨華ちゃんおかしい」
「ひとみちゃんこそ、うふふ、なんでそうなの」
教室コントは終盤にさしかかる。言い争いをしているひとみとノリさんが向かいあう。
『キライなんだよ、おまえなんか!』
ひとみがノリさんを殴る。効果音とともに画面が切り替わって大袈裟に鼻血を流したノリさんが大映しになる。
『わたしだって、キライよ!』
ノリさんがひとみを殴り返す。同じように効果音が入り、鼻血を流したマヌケなひとみ顔が大映しに。
「わはははは」
「ふふふふふ」
2人の笑いは止まらない。
そして、最後に梨華にカメラがズームする。この先の展開を知っていて笑うひとみ。
むしろ、わかっているから笑ってしまうのかもしれない。
梨華は思い出して少し表情を曇らせる。
56 名前:サイドストーリー04 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月19日(水)00時13分01秒
 カメラのズームのタイミングと合わせるように、ピアノ線で吊られたニワトリのはく製が梨華の前に落ちてくる。
はじけるように飛び上がり、逃げまどい、スタジオの隅まで逃げる梨華。
このときはスタジオは大爆笑。タカさんなんか素になって笑い転げている。
テレビの前のひとみも大笑い。梨華もなんとか苦笑いする。それを横目で見てひとみは笑い過ぎた、と反省する。
梨華のニワトリ嫌いの理由を知っているひとみは、笑い飛ばせるところがすごいな、と思う。
もし自分に同じ事が起きたなら、こうやってコントのネタにできるかどうかすら、自信がなかったからだ。
57 名前:サイドストーリー05 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)00時36分56秒
 それは、昨年の夏のことだった。ツインリンクもてぎで行われているFポンとF・娘。の合同走行会に2人は参加していた。
今ひとつ調子に乗れないひとみと梨華のチームは、テストで開発を進めるのが急務だった。
すでに初日のメニューは終了していて、2日目は新しい空力パーツを梨華が、ひとみがサスペンションを、と大まかに分担されていた。
サーキットでサーキットを訪れたとき、ラジオやテレビの出番は少なくない。
全日本選手権を戦うチームとはいえ、F1ほどに機材やスタッフに余裕があるわけではない。
そのため、セッティング変更などで待ち時間が多いときもあるからだ。
このときも、ひとみと梨華は2人でラジオの前で暇つぶしをしていた。
『…次のニュースです。今日、下都賀郡茂木町○−××の町道でトラックが横転しました。負傷者はありませんでしたしたが、トラックの積み荷のニワトリ30羽が逃げ出しました。付近の住民は…』
サーキットは人里離れた山の中にある事が多いため、このようにニュースにローカル色が強く出てきて面白い。
2人は苦笑しながら顔を見合わせていた。この後に起きることも知らずに。
58 名前:サイドストーリー05 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)00時38分28秒
 作業が終了してひとみはクルマへと向かう。梨華の方はまだ作業が残っているようだ。
ピットを後にする。1周して、セッティングがまるで良くなっていない事に気が付く。
「リアのスタビライザーを強くしてって言ったのに…ぜんぜん変わってないよ…」
この時のひとみはF・娘。ではまだノーポイントで、完走すら果たしていない、いわばひよっこ扱いであった。
そのためメカニックの信頼を勝ち取っておらず、希望通りのセッティングをしてもらえないときもあった。
この状況はこの年の第6戦でひとみが4位を獲得するまで変わらず、苦戦を強いられることになる。
閑話休題。もう一度セッティングを変更してもらうために、無線でピットへ帰ることを伝えるひとみ。
すでにペースを落とし、後続車には譲りながらコースを走っていた。
59 名前:サイドストーリー07 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)00時40分49秒
コース後半のV字コーナーを抜けるひとみ。その後方からは見慣れたクルマが近づいてきていた。梨華のクルマである。
この先は短いストレート、ヘアピンカーブと続き、このコース最長かつ最高速を記録するダウンヒルストレートと続く。
ひとみはダウンヒルストレートの事を考え、ヘアピン手前で梨華を前に出すべくさらに減速した。
そして、ラインを外して手を挙げて合図する。梨華も、わかった、と手を挙げるのがミラーに映る。
ヘアピン手前でひとみを抜く梨華。かなり攻めているようで、スピードが出ている。
そのとき、コースサイドにある白いものに気が付くひとみ。
「え、なに?…ニワトリ!?」
そう思った直後のことだった。
60 名前:サイドストーリー08 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)00時47分37秒
 何かが衝突する音と、ぐしゃりとトマトがつぶれるような音がした。
そして、ひとみのヘルメットのバイザーに降りかかる赤い液体。
さらに、タイヤのスキール音が響く。ひとみを抜いたばかりの梨華のクルマがスピンしながらコースアウトしていた。
事態が良くつかめないひとみ。コースサイドからオフィシャルがあわてて駆けてくるのが見えた。
その様子から尋常でないものを感じ、ひとみはクルマを止める。バイサーを上げた時、ひとみの視界には戦慄の光景が飛び込んできた。
コクピット周辺が真っ赤に染まった梨華のクルマ。ヘルメットは力無くうなだれていて、体は微動だにしない。
「梨華ちゃん…」
61 名前:サイドストーリー09 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)00時49分35秒
 最悪の状況を想像して、あわてて自分のハーネスを外すが、うまくいかない。指が、手が、そして体が震えている。
なんとかコクピットから抜け出し、クルマの方へ駆け寄るひとみ。砂利に足を取られそうになる。
「り、りかぁっ!」
揺り動かそうと手を掛けるも、オフィシャルに止められる。
梨華のヘルメットは深紅に染まり、小さい肉片がいくつも付着している。
それを見て吐き気を覚え、その場に座り込むひとみ。
ドクターが到着して応急手当が始まり、赤旗が提示されてセッションが中断される。
ひとみは、目の前のことを現実としてとらえられずにいた。
62 名前:サイドストーリー10 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)00時58分32秒
 チームは早々にテストを切り上げたため、ひとみは梨華の病院へ直行した。
医師からは命に別状は無く、軽い脳しんとうと鞭打ち程度だと聞いて、ようやく落ち着くことができたひとみ。
それでも心配でずっと梨華の手を握っていた。
 梨華が目を覚ましたのは夜になってからだった。
「…れ、ひとみちゃん…?」
「り、梨華ちゃん!大丈夫!?」
「え、どーしたの?そんなに慌てて…」
梨華はまだ頭がぼーっとしているようだった。
そのときの状況を話すひとみ。それを聞いて、だんだんと思い出す梨華。
表情が次第に強張っていく。
「よ、かったよ。ぐすっ、梨華ちゃんが無事で…」
「泣かないで、ひとみちゃん」
泣き出すひとみ。梨華が無事だったという安堵からか、緊張がぷっつりと切れてしまったようだ。
ひとみを抱き寄せる梨華。梨華も熱いものがこみ上げてきた。
ここまで心配してくれる友人がいるんだ、と。
63 名前:サイドストーリー11 〜彼女がアレを嫌いな理由〜 投稿日:2001年12月20日(木)01時00分22秒
 梨華は翌日、無事に退院となった。
怪我もほとんどなく、またクルマの被害もなく、事故としてはそれほど大袈裟なことにはならなかった。
事故の原因となったサーキット側は、安全管理の不備を指摘されて責任者が処分された。
しかし、そんな事後処理は当事者達にはどうでも良かった。
ただ、事故のすごさを伝えるヘルメットを見てからは、幸運に感謝するしか無かった。
なぜなら、梨華のヘルメットには、ニワトリのくちばしが深々と食い込んでいたからだ。
これがバイザーを直撃していたら、それを突き破りその奥の眼球を直撃したであろうことは、容易に想像できた。

 それ以来、2人はより親密になった。お互いを信頼し尊敬し合う良好な関係に。
成績も上向きになり、チームの雰囲気も良くなった。2人はお互いの事を一喜一憂し、濃密な時間が流れる。
2人はこの関係がずっと続くと思っていた。
しかし、モータースポーツの世界ではチームメイトが最大の敵になり得ることを、このときの2人はまだ知らなかった。
64 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月21日(金)10時50分50秒
なんか、読者を置き去りにしてるような気がする今日この頃。
みなさんだいじょうぶですか〜?
わからん用語とか、変な表現があったらばしばし指摘してくらはい。

では、第2戦もてぎをどうぞ。
65 名前:第2戦・もてぎ-01 投稿日:2001年12月21日(金)10時52分43秒
 4月の下旬にしては暖かい日差しの中、F・娘。第2戦が栃木県のツインリンクもてぎで開かれていた。
PPは開幕戦優勝の勢いをそのままに後藤が、2番手はこちらも前戦で好走した吉澤が獲得していた。
以下3位に飯田圭織、4位は保田圭、5位には矢口真里とベテラン勢が続く。
ルーキーの高橋愛をはさんで7位に石川梨華、さらにチーム・ブリンコの2人加護亜依、辻希美が続く。
そして、前戦で2位を獲得した安倍なつみはなんと9番手に沈んでいた。
66 名前:第2戦・もてぎ-02 投稿日:2001年12月21日(金)10時53分13秒
 スタート前のグリッドで、中澤は苛立っていた。予選では安倍の要求にチームがまったく応えられなかったからだ。
予選初日の金曜は朝からのトラブルを解消できず、2日目の土曜はコミニュケーションのミスでセッティングを決めるのに大きく遠回りしてしまった。
それは予選9位という結果にしっかりとあらわれてしまった。
「いや〜ほかのクルマがこんなに前にいるのはひさしぶりだべ〜」
そう言って茶化して雰囲気を和ませようとしていたが、なつみの目は笑っていなかった。中澤の目にはそれが痛々しく映った。
「これじゃ昨年のスランプと同じやないか…なんとかなっちの努力に応えてやらなければあかんな」
中澤は自分の力不足を感じていた。
67 名前:第2戦・もてぎ-03 投稿日:2001年12月21日(金)10時54分48秒
 前戦で表彰台に上ったからか、ひとみは自分が変化しているのを感じていた。
具体的に表現するのは難しかったが、あえていうと冷静になれるようになったのだった。
ドライビングしている自分を一歩引いて見るような感覚を感じていた。
そして、それを感じているときは良いタイムが出ていた。
そのおかげか、いつも緊張するスタート前のグリッドでも不思議とリラックスしていた。
68 名前:第2戦・もてぎ-04 投稿日:2001年12月21日(金)10時56分45秒
 今回は出場停止中のユウキに代わってミカがドライブ、1台増えた20台が出場していた。
パレードラップを終えて、グリッドに戻ってくる選手達。
1台、辻のクルマがトラブルでピットスタートになったほかは無事にスタートを待っていた。
天気予報は快晴、白熱のバトルが予想される。ドライバーがシグナルに集中して、エンジン音が高鳴る。
スタンドも息を潜めてスタートの一瞬を見守っていた。
69 名前:第2戦・もてぎ-05 投稿日:2001年12月21日(金)21時59分35秒
 シグナルがグリーンに変わった瞬間、全車が一斉にスタートする。
吉澤は好スタートを決めてトップで1コーナーに進入していく。後藤も吉澤にかわされたものの遅れずに2位だ。
問題はその後方にあった。3番手の飯田がスタートをミス、ストールしかけて大幅に遅れたのだ。
このため、後方の各車は飯田を避けるために針路変更を強いられ、集団は混乱の渦に巻き込まれたまま1コーナーに進入することになった。
結果、キレイにスタートを決めて抜けだした先頭集団から遅れて後方は大混乱となっていた。
各車接近した混戦では接触も発生していた。1コーナーと連なる2コーナーではアウトから進入したあさみがグラベルに押しだされる。
もてぎのコースは前半がつづら折りとでも言うべきレイアウトになっている。
そのため、コーナーごとに集団が密集することになった。
70 名前:第2戦・もてぎ-05 投稿日:2001年12月21日(金)22時02分18秒
 9番手スタートの安倍も、混乱の影響で12番手付近まで下がって5コーナーに進入しようとしていた。
コーナー手前でブレーキをかけた安倍は、後方から追突する音が聞えて、そちらの方のミラーに視線を移そうとした。
その瞬間、コーナーのイン側、安倍の右側の斜め上に白いクルマが飛んできた。
すでにフロントウイングと左の前タイヤが無くなっていたそれは、ヘルメットをかすめクルマを押しだしつつ、安倍を飛び越して行った。
強烈な衝撃に耐えながら、安倍は周りの状況を見る。
右のポンツーンとフロントサスが直撃を受けてひどくこわれていた。レースを続行するのは無理なダメージだ。
それだけではない。
安倍のクルマはコントロールを失い、アウト側に位置していた平家を巻き込んでグラベルへ一直線に進んでいた。
「最悪の状況だべ…」
安倍は、無意識のうちに平家と飛んできたドライバーの無事を祈っていた。
71 名前:第2戦・もてぎ-07 投稿日:2001年12月21日(金)22時04分06秒
「…そんなぁ」
中澤が力無く言った。モニターの映像にチームスタッフ全員が脱力していた。
レースは続行され、残骸と化した3台のクルマはグラベルにポツリと取り残されていた。
安倍がすばやくハーネスを外し、コクピットから降りるところが映った。
「よかった〜」
どこからともなく聞える安堵の声。とりあえず安倍の身体は無事のようだ。
まだコクピットに残る平家ともう一人に気遣いながら歩いていくところは、いかにも安倍らしかった。
「うわぁ…」
スタッフの声にそちらを振り向く中澤。
そこには、安倍車に搭載された車載カメラがとらえた、事故の瞬間の映像が流れていた。もう一度スローモーションが流れる。
映像には安倍のヘルメットのわずか数センチはなれたところをかすめる白いクルマがはっきり映っていた。
もしヘルメットに当たっていたら、たとえ鍛えて太くなっている安倍の首でも耐えられなかっただろう。
中澤は後悔とも安堵ともつかない溜息をついた。
72 名前:第2戦・もてぎ-08 投稿日:2001年12月21日(金)22時05分48秒
 後方の混乱をよそに抜けだしたのは、スタートを決めた吉澤と、それに続く後藤、少しあいて保田と高橋が続く。
しかし、保田のペースは上がらず、前2台には離されていく。
その後ろの高橋は抜きにかかるものの、ルーキーが老練な保田を相手にしては難しいことだった。
保田も後ろを押さえる走りに切り替えたために、さらにペースが落ちて離される格好になる。
そのため、高橋の後方にも他のクルマが近づいてきていた。
この3位集団は中盤に控えるタイヤ交換で順位が入れ替わりそうだった。
 一方、首位を争う2台は一進一退の攻防を続けていた。
吉澤が引き離すと、後藤が詰める。後藤が差を縮めると吉澤が離す。
その差は1秒を上回ることはなかった。後藤と吉澤は2台で交互にファステストラップを更新していた。
中盤を迎えて、優勝争いは早くもこの2人に絞られた格好だ。
73 名前:第2戦・もてぎ-09 投稿日:2001年12月21日(金)22時16分27秒
 コースサイドに出てヘルメットを脱ぐ安倍。
平家とアクシデントの原因となったドライバーが口論しながら歩いてくるのが見えた。
安倍を飛び越して行った白い車体にはゼッケン21が書かれていた。
ゼッケン21は…ルーキーの紺野あさ美か、と思い出す。しかし、顔は浮かぶが経歴などは思い出せなかった。
どちらにしても関西弁でまくしたてる平家に反論できていないところをみると、とても経験があるようにみえなかった。
うつむきがちなバイザーの奥の目が光っているのが見え、平家の言葉とヘルメットの奥の表情が容易に想像できた。
2人は安倍の近くのタイヤバリアを乗り越えてコースサイドへ出た。
コースのほうからエキゾーストが近づいてきた。集団が一周してきたのだろう。
それをやり過ごしてから、安倍は2人の間へ割って入った。
「ほれ、なっちも言ってやりぃや!」
なつみより先に,ヘルメットを脱いだ平家が先に言ってきた。相当頭に来ているようだ。それはわからなくもなかった。
平家の置かれている境遇を考えるとなおさら、だ。
74 名前:第2戦・もてぎ-09 投稿日:2001年12月21日(金)22時43分33秒
 コースサイドに出てヘルメットを脱ぐ安倍。
平家とアクシデントの原因となったドライバーが口論しながら歩いてくるのが見えた。
安倍を飛び越して行った白い車体にはゼッケン21が書かれていた。
ゼッケン21は…ルーキーの紺野あさ美か、と思い出す。しかし、顔は浮かぶが経歴などは思い出せなかった。
どちらにしても関西弁でまくしたてる平家に反論できていないところをみると、とても経験があるようにみえなかった。
うつむきがちなバイザーの奥の目が光っているのが見え、平家の言葉とヘルメットの奥の表情が容易に想像できた。
2人は安倍の近くのタイヤバリアを乗り越えてコースサイドへ出た。
コースのほうからエキゾーストが近づいてきた。集団が一周してきたのだろう。
それをやり過ごしてから、安倍は2人の間へ割って入った。
「ほれ、なっちも言ってやりぃや!」
なつみより先に,ヘルメットを脱いだ平家が先に言ってきた。相当頭に来ているようだ。それはわからなくもなかった。
平家の置かれている境遇を考えるとなおさら、だ。
75 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月22日(土)23時00分47秒
はっ…誰かレスかと思ったら、自分の誤操作による2重カキコ…鬱だ。
こんな私を慰めてくれるレスぼしゅー。
いや、レス無くても勝手に続けるがな(笑

ということで、第2戦もてぎの続きをどうぞ。
76 名前:第2戦・もてぎ-10 投稿日:2001年12月22日(土)23時03分12秒
「紺野さん…だっけ。怪我が無くてよかったね。」
平家がなにか言いたそうにしていたが、さえぎって言葉を続ける。
「私達はお互いを信頼してレースをしているの。だから、今回の事はアクシデント。避けられないことだった。そうでしょ、みっちゃん」
平家は一瞬ハッと息を飲み、そ、そやねとあわてて相槌をうって先に歩き出した。
安倍も歩き出すが、振りかえると紺野は立ち止まったままだ。
メットも脱がずうつむいて、小さく肩を震わせながら、地面に小さなしみを落としている紺野に、安倍はどした?と声をかける。
「あ、あの…ありがとうございます…」
「ちがうべ。本当のことを言っただけさ」
言いながら安倍は手を握ろうとした。が、紺野はいきなり抱き付いてきた。
ヘルメットの突撃を顔に受けてしまう。いまや声を上げて泣いている紺野の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「紺野さん、痛いってば」
「ぐす…ご、ごめんんさい…でも、ひっく…うれしいです、さっきみたいに言ってもらって…」
77 名前:第2戦・もてぎ-11 投稿日:2001年12月22日(土)23時05分50秒
安倍は抱き返しながら言う。
「本当のことだよ。なっち、リタイヤしたのは悔しいべさ。でも紺野さんをうらむことはしないさ。」
「…」
「言ったっしょ、お互いを信じてるって。みっちゃんだってカッとなって言っただけ。だから、これはアクシデント。それだけ、ね。」
紺野の身体から力が抜けていく。涙は安倍のレーシングスーツをぬらしていた。
しばらくそのままで泣きやむのを待つ。頃合を見て身体をそっと離し、子供に話し掛けるように顔を覗きこむ。
「早くチームに帰って無事の報告と、スタッフに謝りなさい、ね」
「はい、そうします」
少し元気を取り戻し、ゆっくり歩き出す紺野。それを見て、昔の自分を思い出し苦笑する安倍。
しかし、今回のレース内容を思うと、心が重くなってきた。
78 名前:第2戦・もてぎ-12 投稿日:2001年12月22日(土)23時10分29秒
 ひとみは奇妙な感覚に陥っていた。身体が妙にリラックスして、時間の流れがゆっくりに感じていた。
予選で感じた変化がさらに進んだ感じで、すべての操作に余裕ができていた。
ミラーに映る後藤のクルマを見てもあわてなかった。そして、ドライビングがとても楽しく感じていた。
このときの吉澤は知る由もなかったが、この感覚は…程度の差はあるが…後藤や安倍、中澤、それだけでなくアイルトン・セナやミカ・ハッキネンといったトップドライバーが感じていたものと同じだった。
79 名前:第2戦・もてぎ-13 投稿日:2001年12月22日(土)23時15分06秒
 ピットサインが出る。吉澤のチームがタイヤ交換に動き出した。
それを見た後藤のチームも準備をはじめる。
同じタイミングでタイヤ交換を行い、あわよくば逆転しようという作戦だった。
ピットロードに連なって入る2台。時速60キロの速度制限がもどかしい。
ロリポップを持ったスタッフがピットの位置を示し、誘導する。
2台はそれぞれのピットにきれいに収まり、すぐに作業が始まる。
エアツールの音を響かせてスタッフが素早く作業が終わらせ、エンストもせずにタイヤスモークを上げながら発進する2台。
モニターのタイムカウントは後藤の作業のほうが僅差で速いことを示していた。
出口に近いピットという条件も重なり、後藤が吉澤の前に割り込むことに成功する。
チーム・フィラの戦略がまさに成功した瞬間だった。2台が入るときは逆の順でピットアウトして行く。
 ピット作業で吉澤を逆転した後藤は、早くもペースを上げて引き離しにかかった。
ここで一気に差を広げて決めてしまうつもりだった。
その思惑ににはまってしまうかのように、吉澤のペースが上がらない。少しずつだが差が広がっていく。
80 名前:第2戦・もてぎ-14 投稿日:2001年12月22日(土)23時18分52秒
 ひとみはピットで逆転されたときに、気持ちの糸が切れてしまっていた。
また後藤に抜かれた、また後藤に負ける…との思いが頭の中をぐるぐるめぐり、とても集中できなかった。
さっきまでの感覚もどっかに吹き飛び、クルマをコントロールするのに精一杯でつらくなっていた。
ピットからペースアップの指示が飛ぶ。
後藤に離されるな!と無線からゲキが飛び、意味を理解しても、身体が付いてきてくれないのだ。
歯をくいしばってドライブし、タイムを維持するのにやっとだった。
 しかし、後藤と吉澤の差が3秒を超えたあたりからタイム差が開かなくなった。後藤のペースが上がっていかない。
3秒といえば、充分ではないが、様子を見て逃げきることはできる差だ。
小さくならなくなった先行車を見ながら、これもピットの戦略なのだろうか?とひとみは思っていた。
81 名前:第2戦・もてぎ-15 投稿日:2001年12月23日(日)21時34分40秒
 否、後藤は何らかの理由でペースを落としていたのだ。
理由は中継のモニターに映っていた。
後部から白煙を薄く引きながら走る後藤のクルマがズームインされる。
フィラのピットが騒がしくなる。
白煙は少しづつ濃くなっていき、後藤のエンジン音に異音が混じりだす。
ピットがあきらめの雰囲気に満ち、監督がかぶりを振りながら無線を話す。
どうやらトラブルは深刻なようだ。
82 名前:第2戦・もてぎ-16 投稿日:2001年12月23日(日)21時38分26秒
 後藤はピット作業の前ごろから、エンジンの変調を感じていた。
エンジンの回転が妙に軽く上がり、パワーが少ないのだ。
なにかがおかしい、と思いピットに連絡するも、はっきりとした返答が帰ってこなかった。
後藤のカンは鋭い。このとき、エンジンは最後までもたないと感じていた。
水温の警告灯が点灯するのを見て、後藤はそれを確信した。
ミラーに白煙が映るころには、ピットから頻繁に指示が来るようになる。
ペースを落とせとか、前の周回遅れに近づくな、などと。
だが、後藤にはそれが無駄だと思っていた。
エンジンの音に異常をはっきりと感じた次の周、後藤は自分の判断でピットへ戻った。
すでに加速が鈍るほどエンジンは痛んでいた。
準備ができていなかったが、かまわずピットにクルマを入れる後藤。
その態度はあきらかに憤っていた。
そのご機嫌をとるかのように、あわてて作業するピットクルーたちがモニターに中継されていた。
83 名前:第2戦・もてぎ-17 投稿日:2001年12月23日(日)21時48分30秒
 吉澤は自分の目と耳を疑った。
ピットサインに”#1 GOTO OUT””P1”の文字が表示され、そしてピットからの無線でも後藤のリタイヤ…すなわちひとみの首位浮上を知らせていた。
「…えっ、リタイア…」
にわかには信じられないひとみは、なんども無線で確認をとった。
返事を聞くたびに体に力が抜け、さらにタイムが出なくなる。
後方とは大差があったが、どんどん縮まる。
追いかけるのはタイヤ交換の作戦で保田と高橋の前に出た矢口だった。
ピットで必死の計算が行われ、状況のシミュレーションが行われる。
ひとみは必死でドライブしていた。
84 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月24日(月)04時41分17秒
波乱が続きますな。
後藤はpole to winを飾ると思われたのに…
まだ、吉澤では(自粛

F1中継しか見ない、にわかファンの戯言でした。
85 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月24日(月)14時49分19秒
>>84
レスどうもです。
白熱してもらえて、うれしいですな。
そうですか、まだ吉澤では…ですか(笑。
まぁ、期待しててください。しなくてもいいけど(笑。

あと、物語内でも平行して行われてることになってるフォーミュラーニッポンですが、
知ってるとは思いますが↓こちらを参考にしてくださいな。
http://www.f-nippon.co.jp/
まぁ、いまはオフシーズンなので面白くないですが(笑

話の更新の方は、今晩する予定です。
86 名前:第2戦・もてぎ-18 投稿日:2001年12月24日(月)22時58分57秒
周回ごとに詰まっていく後続との差。ラップタイムでは2秒近くひとみの方が遅い。
しかし、後続には追いつくには残り周回数が少なすぎた。
残り5周、差は15秒以上。1周3秒以内ならば逃げ切れる計算だ。
ピットから激励を受け、何とかリードを保ち逃げ切りに成功するひとみ。
ファイナルラップはほとんど夢の中の出来事だった。

2位はタイヤ交換のタイミングで前に出た矢口。
3位には、高橋を終始押さえきった保田が入った。
高橋はファステストを刻みながらも保田を抜けず、焦ったラストラップのシケインでミス。
そこを詰めていた石川に4位を獲得する。
高橋は5位に終わったが、ファステストラップも記録。
速さでアピールして、今年のルーキーの中では頭ひとつ抜け出た格好だ。
87 名前:第2戦・もてぎ-19 投稿日:2001年12月24日(月)23時02分15秒
チェッカードフラッグを受けても、実感がわかないひとみ。
後方からの矢口と保田が、手を挙げてひとみを祝福する。
無線からも歓喜のメッセージが流れてくる。
スタンドの歓声が、ひとみのクルマに合わせて波のように流れていく。
なんとなく雰囲気に押されて、大袈裟にガッツポーズを作るひとみ。
それに応えて、歓声が大きくなる。
見れば、スタンドにはひとみやひとみのチームのフラッグが激しく振られている。
なぜだか、目頭がじんときて、熱いものが頬をつたっていた。
88 名前:第2戦・もてぎ-20 投稿日:2001年12月24日(月)23時06分10秒
「イエ〜イィ!」
表彰台に上るころには、ひとみは事の次第を理解しつつあった。
うれしさが全身から沸き上がってくる。
涙も吹き飛ばし、表彰台のてっぺんで飛びはねる。
保田があきれたようにひとみを見る。
いつの間にか厚底に履き替えた矢口は、まるで自分の事のように喜んでいた(もちろん、自信の2位も喜んでいた)。
シャンパンファイトで2人のベテランに手荒に祝福される、逃げ回るひとみ。
眼下にはチームスタッフと、チームメイトの石川が初優勝を祝って大騒ぎしていた。
そう、ひとみはもちろん、チーム・ゴナツヨにとってもはじめての優勝なのだ。
スタッフに向けてシャンパンを噴出させるひとみ。逃げまどうスタッフ。
これ以上無い最高の笑顔が表彰台で輝いていた。
89 名前: F・娘。第2戦 ツインリンクもてぎ 決勝RESULT 投稿日:2001年12月24日(月)23時11分04秒
F・娘。第2戦 ツインリンクもてぎ 決勝RESULT
Pos. No.  DRIVER   LAP  TIME    BEST
1   #6  吉澤ひとみ 35  59'06.917  1'36.870
2   #55 矢口真里  35    +3.660   1'36.971
3   #11 保田圭    35    +5.377   1'37.682
4   #5  石川梨華  35    +6.902   1'37.312
5   #2  高橋愛    35    +8.182   1'36.690
6   #14 稲葉貴子  35   +18.121  1'37.597
※MAJOR RETIREMENT:#19 安倍なつみ(LAP 0)
                #1  後藤真希(LAP 30)
※FASTEST LAP:#2 高橋愛 1'36.690(32/35) 178.77km/h

※エントリー変更 第2戦から、EE JUMP #10がユウキからミカ・トッドに

DRIVER'S POINT
Pos. No.  DRIVER    POINT
1   #6  吉澤ひとみ 14
2   #1  後藤真希  10
3   #55 矢口真里   7
4   #19 安倍なつみ  6
5   #5  石川梨華   5
6   #11 保田圭     4
90 名前:サイドストーリーII-01 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月28日(金)19時05分37秒
第2戦の終わった数日後、某県某町の名だたる峠にて…

R32スカイラインGT-Rを駆る、地元では有数の走り屋である男は、今起きている事を理解できないでいた。
男のGT-Rの後ろには、青いS15シルビアがぴったりとついて走っていた。
それだけで驚きなのに、その格下の相手は始終GT-Rを追いまわしていたのだ。
91 名前:サイドストーリーII-02 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月28日(金)21時34分22秒
事の始まりは、男がシルビアを無理やり抜いたところから始まった。
キレイなライトチューンで仕上げてあるな、とは男がシルビアを観察した感想だった。
往々にして、コネとか親の金でチューンしたのだろう。
このボンボンが、と少しムカついてインカットしながらパワーと4WDシステムを活かして強引に抜く。
だが、そこから男の思惑は外れる。
簡単に離せるはずなのに、いつまでたってもミラーから消えないのだ。
事の重大さに次第に気が付いてくる。
相手は、この峠を庭のように把握している男よりも鋭い突っ込みを見せていた。
男の走りはライン取りやアクセルとブレーキがまとまっていて、評価できるレベルにあった。
92 名前:サイドストーリーII-03 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月28日(金)21時49分35秒
が、シルビアの走りはそれを数段上回るものだった。
ハンドル操作を必要最小限に押さえ、アクセルをなるべく長く開けるいう基本をとことん付き詰めたドライビングは、決して迫力があるわけでも、派手でもなかった。
しかし、現実にこうやって男が追い詰められているのは、相手がまぎれも無く速い証拠。
男としては、自分のクルマがあきらかに格上…チューンで400馬力までアップしたエンジン、サスにロールケージ、ブレーキ、タイヤなど、相当手をいれていた…なのに、抜かれないまでも追いまわされている事実をどうしても信じられないでいた。
それは、自分のテクニックの無さを認める事と等しいからだ。
しかし、現実はさらに厳しい事実を突き付けるのを、男はまだ知らないでいた。
93 名前:サイドストーリーII-04 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月28日(金)23時10分50秒
「くぅ〜!!!」
男は叫ぶ。信じられねぇ、とも。
男の常識では来るはずがないコーナーで、シルビアはそのインに躊躇無く飛び込んできた。
そして、相当のスピード差で抜き去っていく。
そのままラインから外れていることを気にせず、次のコーナーに向けて切り返すシルビア。
ドリフトアングルが一発で決まり、ほとんどカウンター無しで突っ込んでいく。
「マジかよ…こんな走りができたら、商売ができるぜ…」
電光石火の如くコーナーをクリアしていくシルビアに、男は恐ろしさを感じていた。
だから、ドライバーが金髪の流麗な美人だったとか、まるでプロドライバーのようなカラフルなヘルメットを被っていたとか、
乗っているのが二人だったとか、そんなことはまるで気づいていなかった。
94 名前:サイドストーリーII-05 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月28日(金)23時16分58秒
「今晩ヒマ?ヒマだったらウチにつきあわへん?」
突然の中澤からの電話に驚いた安倍だったが、待ち合わせ場所ではもっと驚くことになる。
「へへ、やっぱり走らんと気が休まらなくてなぁ」
ショップのデモカーであるハデなS15シルビアと、レースと同じ装備を身につけた中澤を見たとき、
安倍は正直、そのまま帰ろうと思った。
契約破棄という脅しに負けた安倍を嫌々助手席に乗り込ませ、中澤はクルマを走らせた。一路、峠に向けてである。
とりあえずゆっくり峠を流して走っていたが、しばらくするとかなりチューンしてありそうなGT-Rに抜かれる。
すると、待ってましたとばかりに攻める中澤。安倍は中澤のドライビングを観察する。
中澤の走りはあいかわらず鋭くて、抜群にうまい。
まるでベテランのタクシー運転手のように、落ち着いてすべての動作をこなしていた。
運転しているところだけ切り取って見たら、とても峠でGT-Rを追いつめているようには見えないだろう。
まだまだフォーミュラーカー乗れるよ、裕ちゃん、とエールを送る。
と同時に、この人を敵にまわしたくないな、とも思う。
95 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月29日(土)00時50分10秒
え〜頭○字Dのような緊迫したシーン中で申し訳ないですが、
ごく一部で、エントリーリストを希望する声(と解釈した)があったので、
掲載したいと思います。

これで誰が参加してるかわかると思いますが、細かいつっこみは勘弁で(汗

96 名前:F・娘。エントリーリスト 投稿日:2001年12月29日(土)00時55分50秒
エントリーリスト
チーム名(シャシ/エンジンチューナー)
#ゼッケンNo.:ドライバー名

フィラ(レイナード/ガクトスポーツ)
#1:後藤真希
#2:高橋愛

フラット・アウト(ローラ/ガクトスポーツ)
#3:平家みちよ

ゴナツヨ(レイナード/加納自動車)
#5:石川梨華
#6:吉澤ひとみ

ブリンコ(レイナード/オカムラエンジン)
#7:加護亜依
#8:辻希美

EE JUMP(Gフォース/ガクトスポーツ)
#9:ソニン
#10:ユウキ(もちろん♀。謹慎中…免停)
第2戦からミカ・トッドに変更

トミーズ(レイナード/加納自動車)
#11:保田圭
#12:新垣里沙

ケン・マツウラ(レイナード/オカムラエンジン)
#14:稲葉貴子
#15:小川真琴

ナカザワ(レイナード/加納自動車)
#19:安倍なつみ

レッドポイント(レイナード/オカムラエンジン)
#21:紺野あさ美

シノダ M−1(レイナード/オカムラエンジン)
#36:信田美帆

タンポポ(レイナード/ガクトスポーツ)
#55:矢口真里
#56:飯田圭織

カントリー(ローラ/加納自動車)
#63:りんね
#64:あさみ
97 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月29日(土)15時21分35秒
なんか・・・サイドストリーに引き込まれてる俺って(w
ほんとイニシャル・・・みたい。
中澤カッコイイ!
チーム名・・・中澤より・・・NAKAZAWAのほうがいくないっすか?

98 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月29日(土)22時01分09秒
>>97
ふふふ…見事に私の術中にハマったな、なんちゃって(笑)
まぁ、どこで楽しもうと読者の勝手ですから、文句はありませんて。

レース中ってメンバー同士を絡ませづらいので、
サイドストーリーで補完できれば、という計画なのですが。

チーム名ですが、ええとこついてくるねぇ。
全部カタカナで統一したかったので”ナカザワ”とかなのですが、…EE JUMPが入ってるじゃん(泣
(本当は、全部つづりまで考えるのが面倒くさかったのさ)

まぁ、小川の名前とかも間違ってて鬱なんで、そのうちってことで勘弁してちょ。

お話の方は、今晩にも更新予定です。
99 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2001年12月30日(日)01時21分03秒
さて、上でそのうちなんて書いていきながら、エントリーリストの更新です。

えぇ、つづり考えたり調べましたよ。
それだけじゃなくて修正かけたり、ネタの仕込みもしましたよ。
ということで、100はエントリーリスト記念ですな。
100 名前:F・娘。エントリーリスト 正規版 投稿日:2001年12月30日(日)01時22分24秒
エントリーリスト

チーム名(シャシ/エンジンチューナー)
#ゼッケンNo.:ドライバー名

FILA(REYNARD/Gackt-SPORTS)
#1:後藤真希
#2:高橋愛

FLAT-OUT(LOLA/Gackt-SPORTS)
#3:平家みちよ

5-NATUYO(REYNARD/加納自動車)
#5:石川梨華
#6:吉澤ひとみ

BRINCO!(REYNARD/OKAMURA TECH)
#7:加護亜依
#8:辻希美

EE JUMP(G-FORCE/Gackt-SPORTS)
#9:ソニン
#10:ユウキ(もちろん♀。謹慎中…免停)
第2戦からミカ・トッドに変更

TOMY'S(REYNARD/加納自動車)
#11:保田圭
#12:新垣里沙

KEN MATSURA(REYNARD/OKAMURA TECH)
#14:松浦亜弥
#15:小川麻琴

NAKAZAWA(REYNARD/加納自動車)
#19:安倍なつみ

RedPoint(REYNARD/OKAMURA TECH)
#21:紺野あさ美

SHINODA M-1(REYNARD/Gackt-SPORTS)
#36:稲葉貴子

TANPOPO(REYNARD/OKAMURA TECH)
#55:矢口真里
#56:飯田圭織

COUNTRY(LOLA/加納自動車)
#63:りんね
#64:あさみ
101 名前:サイドストーリーII-06 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月30日(日)01時23分58秒
それにしても、安倍は中澤の真意を図りかねていた。
何か意図があることは確かなのだが…。
「峠走ると、やっぱり思い出すねぇ」
中澤が言う。あいかわらずGT-Rを追いかけながらだ。
「そうだね。なっち久しぶりなんだ」
「なっちも走ってみる?代わるで」
「いいよ。走り屋に負けたらヤだもん」

二人は、4年前のことを思い出していた。
そう、F・娘。のドライバーとして選出された5人に、寺田代表が突きつけた難問。
"峠で走り屋を200台負かしてこい"
そのとき、誰もが絶句した。無理だ、と。
102 名前:サイドストーリーII-07 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月30日(日)01時24分55秒
「やる前からあきらめてどないすんねん。お前ら曲がりなりにもプロやろ。こっちだって中途半端なレースはできへんのや」
一喝する寺田。
まだ、海の物とも山の物ともつかないF・娘。だったが、寺田の熱意は彼女らに十分に伝わった。
それに応えるべく、彼女たちは懸命に走った。それぞれが全力を尽くした。
中澤は職を辞め、石黒は学校を退学した。飯田は参戦していたF3をあきらめた。
日夜走りこみ、お互いに研究しあった。
もちろん負けたこともあったが、勝ち数が増えるに従って勝率も上がっていく。
最後の200台目に勝ったとき、彼女たちは泣き崩れた。辛い体験だった。
しかし、それは無駄ではなかった。少なくとも、今ではいい思い出になっている。
103 名前:サイドストーリーII-08 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月30日(日)16時58分05秒
いい思い出だった。
だからこそ、あれからなつみは峠に走りに来ていなかった。
寺田に、みんなに認めてもらった自分がいるから。負けるのが怖いから。
「けどなぁ、おかしいで、なっち」
中澤は心を見透かしたように言う。
「去年見ててな、なんでもっと周りに文句いわへんのかなってな」
「そんな…」
「なっちは自分で抱えすぎなんや。こないだのもてぎだって予選うまくいかなかったのを、結局自分の責任として抱えこんどるやろ」
GT-Rが突っ込みに失敗する。ソフトに、しかししっかりと減速して追突を避ける中澤。
104 名前:サイドストーリーII-08 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月30日(日)16時59分44秒
「事故の時の話も聞いたで、みっちゃんから。まぁ、話つけたこと自体は悪くないねんけどな」
2台はコーナーを抜けて緩い登りの直線にさしかかる。
直線ではパワーと4WDシステムでシルビアを寄せ付けないはずのGT-R。
しかし、2台の差は広がらない。シルビアのコーナー脱出速度が速いのだ。
「でも、あのアクシデントも自分が全部悪いと思ってるんやろ?それはちゃうで」
言いながら次のコーナーに進入する。絶妙なコントロール、修正はほとんどない。
「もうなっちほどだったら、どこが悪いのかわかってるはずや。それを全部自分で背負い込む必要はないやろ」
タイトコーナーをクリアすべく、サイドブレーキを引く。タイヤのスキール音が響く。
「もっとな、走ることを始めた頃のように…そ、峠で200台負かした時みたいにな、自分のために走らなきゃダメなんや」
確かに、中澤の言う通りだった。
最近のなつみはチームのため、スポンサーのために、波風を立てないように自分を追い込んでいた。
それは、チャンピオンを獲得した後から特に、だった。
105 名前:サイドストーリーII-10 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月30日(日)17時02分15秒
タイトルを獲得した直後のシーズンオフ、安倍は取材やプロモーション活動に明け暮れていた。
人気絶頂のF・娘。のチャンピオンは各所で引っ張りだこだった。
だから、トレーニングとテストがおろそかになってしまった。
開幕前の初めてのテストでシートに身体を納めようとしたとき、なつみは絶望的な気分におそわれた。
シートに身体が入らなかったのだ。トレーニングを怠った身体はゆるみきり、わずか3ヶ月で大きく変化していたのだ。
シートは作り直せばいい。しかし、スタミナを取り戻すのは容易ではなかった。

開幕戦は優勝したものの、中盤戦以降は後半に体力がきついレースが続く。
そのため、結果が伴わず、無理な走りをしてしまう。するとクルマが壊れる。
それを取り戻そうと、さらに無理をする。さらなるトラブルを招く…。
明らかに悪循環に陥っていた。
安倍は、その流れを分かっていた。しかし、それから抜け出せないでいた。
自分を壊さないと、自分の大本を変えないと抜け出せないからだ。

自分はこの仕事に向いていないのかな、とすら思っていた。
106 名前:サイドストーリーII-11 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2001年12月30日(日)17時04分32秒
そして、中澤もまた気がついていた。
だから、悪循環を断ち切ろうとして、安倍を変えようとしてチームに誘ったのだった。
安倍のドライビングはほぼ最高のレベルに達していたし、経験も十分。
年齢的にも脂の乗り切ったいちばんの時期だった。

そのなつみから迷いを取り除き最高の走りを引き出すべく、そして自分を超えていってほしいと願う中澤。
自分の存在意義に疑問を感じ、疑心暗鬼のうちにチャンスを逃した悔しい過去。
安倍をそれと同じ目には遭わせたくなかった。
それなのに、前回のもてぎでの不甲斐なさ…
「自分で速く走るのは難しい。しかし人を速く走らせるのはもっと難しい」
誰かの言葉を思い出す中澤。自分の力不足を痛感していた。
107 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月30日(日)19時04分33秒
中澤ガンバ!!
なっちガンバ!!
GTーR男に見せ付けろ!!(w
車じゃない・・・テクを(w
108 名前:サイドストーリーII-12 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2002年01月02日(水)01時15分14秒
GT-Rがコーナーの侵入でふらつく。少しタイトな中速の左コーナーで普通は抜くポイントではない。
しかし、左コーナーが甘いのに気が付いていた中澤はここぞとばかりにインに突っ込む。
スペースはギリギリ1台分ぐらいしかないが、操作に迷いはない。
シルビアの動きに気が付いたGT-Rのドライバーが驚愕の表情をする。
ガードレールとの隙間は5センチを切っているし、シルビアのテールとGT-Rとの間隔も広くはない。
イン側の茂みにフロントをかすらせながら、タイヤのグリップ限界をギリギリでコーナーをクリア。
そのスピード差は大きい。すぐさまミラーのGT-Rがすぐに小さくなる。
アスファルトのうねりを読んで修正を加えつつ、次のコーナーへ切り返す。
理想のラインからは外れているが、立て直しながらクルマの向きを変える。
助手席の安倍も驚くほどのテクニックを見せる中澤。
ふと、4年前も中澤のドライビングに驚いたことを思い出す安倍。
そこから連鎖的にその頃のことを思い出していた。

そう、あれは辛かったけど、楽しかった…
とっても楽しかった…。
109 名前:サイドストーリーII-13 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2002年01月02日(水)01時23分12秒
駐車場で座席を代わり、Uターンしたシルビアは同じように鋭く峠を攻める。
それに反応したインプレッサが追いかける。
クロムイエローが目に眩しく、いかにも峠の主といった雰囲気だ。
ターボの過給音が響く。エンジン周りのはライトチューンのシルビアとは段違いのパワーが出ているだろう。
このインプも地元の有力な走り屋なのだろう。見学してるギャラリーが歓声を上げて盛り上がる。
だが、このあとにインプを待ち受ける現実を予測していた人は、誰もいなかった。
110 名前:サイドストーリーII-14 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2002年01月02日(水)01時24分25秒
「そや、大事なこと忘れとった」
ヘルメットを安倍に貸した中澤が、助手席から話しかけてきた。
「ちょっと、もーなんでこんな時に話しかけるべさ!」
わりと本気で怒っている安倍。気にせず続ける中澤。
「ウチのチームな、エントリー1台増やそうと思ってるんやけど」
「え、なになに?」
インプはいったん前に出た(安倍が抜かせたのだが)ものの、シルビアを振り切れないでいた。
「寺田さんに説得されてな、1台エントリーで余裕あるチームは他に無いって言うし」
「だーかーらー、よくわかんないって」
「はたけさんとこからスポンサー紹介されたし、ほとんど決めてるんやけど、やっぱなっちにちゃんと話しておこうと思ってな」
「この状況のどこがちゃんとなんだべ!」
111 名前:サイドストーリーII-15 〜蒼いスポーツカーの女〜 投稿日:2002年01月02日(水)01時26分19秒
インプの走りは早くも破綻し始めていた。軽くノーズを見せて、さらに威嚇する安倍。
「まあねぇ、機材の関係で次の次…美祢くらいになる予定やけど」
「だから〜誰なのさ、ドライバーは!」
安倍は焦れながら言う。サイドを引いてすぐに戻す。車体はシャープに旋回する。
「噂くらい聞いてるやろ、復帰の話を」
「え、まさか…ホントに?」
「そや。本当に復帰や」
突っ込みすぎで姿勢を崩したインプ。シルビアは冷静にアウトから抜く。
焦ったインプは、ラフなアクセルワークでスピンする。
派手なタイヤスモークをあげて回るインプレッサを、ちらっとミラーで確認する安倍。
「やるなぁなっちも。大人気ないやんか〜」
笑う中澤に、つられて笑顔になるなつみ。いつしか中澤の術中にはまっていたようだ。
「ありがとう裕ちゃん…なっちはまだまだ走れそうだよ…走る喜びを感じられるから…」
安倍は体に沸き上がる感情を感じていた。
同時に、復帰するドライバーのことも気になっていた。
112 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月02日(水)01時35分38秒
あけまして、おめでとうございます。

これでサイドストーリーIIは終了です。

この後、お話は第3戦富士へと続きます。
ことしも、よろしかったらどうぞおつきあいください。

>>107
レスどーもです。
なっちも中澤も、へなちょこ男に負けるよーなドライビングはしません。
抜群のテクニックで圧勝(笑
113 名前:第3戦・富士-01 投稿日:2002年01月05日(土)17時28分50秒
 F・娘。第3戦は、富士スピードウエイで開催される。
6月の初旬、梅雨入りはまだだが、空は曇り。
暑くもなく寒くもないこの天気はクルマにもドライバーにもちょうど良い。
 元女子バレーボール日本代表だった長身のリポーターが、グリッドの前の方からインタビューを取って行く。
「吉澤選手、初めてのPPおめでとうございます。レースに向けて一言」
「そうっすね、スタート失敗しないようにって思ってます。その先はレースの展開次第で」
前戦もてぎで初優勝、現在ポイントランキング首位でもある吉澤ひとみが、初の予選1位でPPを獲得していた。
「続いて予選2位の後藤選手、どうですか?」
「まーね、このところスタートでよっしぃに先に行かれてるから、負けないようにしたいなーと」
「3番手の安倍選手、前戦は残念でしたね」
「3位からのスタートだったら混乱も無いっしよ。富士は好きだから勝ちに行くべ」
もてぎでリタイヤした2台、後藤真希と安倍なつみが吉澤に続く。
114 名前:第3戦・富士-02 投稿日:2002年01月05日(土)17時51分21秒
さらにインタビューはその後方のグリッドへ続く。
「昨年の富士で優勝した飯田選手は4番手ですね。意気込みを」
「今日天気良くないでしょ、カオリ富士で富士山が見えないのはイヤなの。なんかね富士に来た気がしないでしょ。でもねカオリはね…」
止まらない言葉を困惑した表情をしながらもやり過ごし、5番手のグリッドに向かうリポーター。
その先にはハゲしい厚底を履いたドライバーがはしゃぎ回っていた。
カメラに映らないようにドラインビングシューズを隠すチームスタッフに気が付くが、打ち合わせ通り無視。
「矢口は小さいから、高速サーキットの富士は有利なのさ!空気抵抗が小さいからね。キャハハ」
厚底を履いていても、彼女はレポーターよりまだかなり小さかった。
その後方の6番グリッドに向かおうとすると、デイレクターから放送席に返せと指示。
まだ時間があるのに何で?とグリッドを振り返えるリポーター。
視線の先では、よく似た背格好のドライバーが2人、追いかけっこをしていた。
7番グリッドではインタービューと聞いて石川がそわそわしながら待ち受けていたのだが、テレビクルーは気がつかないふりをして引き上げていった。
115 名前:第3戦・富士-03 投稿日:2002年01月05日(土)17時59分12秒
 スタートの時間が近づいていた。
クルマに取り付いていたスタッフや打ち合わせをしていた監督などが離れていく。
パレードラップのスタート時刻となる。が、1台スタートできない。
オフィシャルが動けないマシンをピットレーンに押してくる。
このクルマは全車スタートしてからのピットスタートだ。

そして動けないのは、なんとPPの吉澤ひとみだった。
116 名前:第3戦・富士-04 投稿日:2002年01月05日(土)18時57分50秒
レースは無情にも進行していく。
吉澤のマシンに取り付き、チェックを始めるチームスタッフ達。
どうやら、エンジンがかからないようだ。
ピットからグリッドまでは自走するため、スタートを待つわずかな間になにかが起きたのだ。
ましてや、前日予選トップタイムを記録したクルマそのものだから、根の深い問題はでは無いはず。
グリッドを失ったのは痛いが、スタートはできる、とスタッフは考えて作業を進める。

その一方で、パレードラップを終えた各車がグリッドに付きつつあった。
ピットレーンで作業している吉澤を見つける安倍。そして、まっすぐ前を見つめている吉澤に感心した。
安倍は以前に同じような状況になったことがある。
何とか獲得した2位グリッド、しかしマシントラブルでピットからのスタートになってしまった。
その後、レースにまったく集中できず、散々な結果に終わった。
そのときの自分に比べると、ひとみはしっかり集中している。
強いなぁ、と吉澤を警戒する安倍。
そして、安倍は深呼吸して集中を高める。先日の峠で感じた喜びが身体に沸き上がっていた。
117 名前:第3戦・富士-05 投稿日:2002年01月06日(日)00時50分41秒
実質的にPPとなった後藤を先頭に、スタートを迎える。
シグナルがレッドからグリーンに変わる。
タイヤスモークを上げながらロケットスタートを決める安倍。
その傍らで、後藤は完全にスタートに失敗していた。
前戦もてぎのと同じような状況になる。
しかし、後方の混乱はそのときほどでなく、接触無くストレートと1コーナーをこなしていく。
118 名前:第3戦・富士-05 投稿日:2002年01月06日(日)00時54分07秒
後藤は完全にスタートを失敗して、順位を15番手辺りまで下げ1コーナーを通過していた。
ここまで2戦、後藤のスタートはどれも悪くなかったが、すべてそれ以上の好スタートを決めた吉澤に負けていた。
そして、インタビューにも答えたようにそれを意識していた。
だから、吉澤のいないグリッドを見て後藤は拍子抜けしていた。そう来るかヨ、と。
それが影響したのかもしれない。有利になったはずの後藤だが、クラッチミートをミスる。
クルマは少し動いてから、止まってしまう。
「やば〜!」
衝突に備えて身を固くする後藤。
だが、幸運の女神は後藤を見放していなかった。
後続は1台も接触しなかったうえ、エンジンも完全に止まっていなかったのだ。
順位を大幅に落としたが、何とかスタートを切る。
動けただけラッキーだよ、と思う後藤の目はいつかのように鋭く光っていた。
119 名前:第3戦・富士-07 投稿日:2002年01月06日(日)00時55分52秒
オープニングラップを制する安倍。
だが、後方には矢口がぴったりつけている。
そして、1コーナーの飛び込みで前に出る矢口。
負けじとラインをクロスさせる安倍。だが、矢口が守りきる。
2台の後ろには飯田、石川、そしてスタートでジャンプアップした高橋愛が虎視眈々と上位を狙っていた。
この後方も含め、先頭は長い集団となっていた。
120 名前:第3戦・富士-08 投稿日:2002年01月07日(月)00時18分37秒
一方、スタートで大幅に順位を落とした後藤は完全にキレていた。
開幕戦鈴鹿で見せたような鬼神迫る走り。
剃刀のような鋭いラインで、タイムを削ぎ落としていく。たちまち、前走車に追いつく。
最終コーナーからスリップに入り、ストレートでスパっと抜く。
その走りに、歓声が一段と響く。
一分の迷いも見せない鋭い走りこそが後藤本来の持ち味だ。
ただ、本来は先頭でぶっちぎるときに見られたものだった。
しかし、今は後方で追い上げているところ。
そう、これは後藤の精神的成長を示していた。
121 名前:第3戦・富士-09 投稿日:2002年01月07日(月)00時25分08秒
歓声のあがるストレートに並行しているピットレーン。
そこに吉澤ひとみが唯一台、取り残されていた。
リアカウルを外しエンジンまわりでさまざまなチェックを行うスタッフ。
しかし、どうしてもエンジンがかからない。
なんどもスターターモータでクランクをまわすが、爆発が起きない。点火していないようだ。
電気系と燃料系が疑われてチェックを繰り返すが問題点は見つからない。
焦るスタッフ。一方でずっと正面を見つづけてるひとみ。時間だけが過ぎていく。

そして、先頭が6周目を消化するころ、ひとみはゆっくりとクルマを降りた。
がっくりと肩を落とすスタッフ。やりきれない。
一方、ひとみは精一杯気丈にふるまっているように見えた。肩も落とさず、正面を見て歩き出していた。

しかし、ヘルメットの下の表情は、悔しさに歪んでいるに違いなかった。
122 名前:第3戦・富士-10 投稿日:2002年01月08日(火)00時03分42秒
前戦の優勝者で、ポイントリーダーが脱落するという波乱の中、レースは着々と進んでいた。
先頭は2周目にトップに立った矢口真里がそのままキープ。
安倍が離されず続き、飯田、石川、高橋、辻までが集団として連なっていた。
その後方、7位集団には加護、ソニン、保田が猛烈なバトルを展開していた。

そして、スタートで大きく遅れた後藤は、なんとすでに6台を抜きで10位までアップ。
さらにペースを上げて7位集団に追いつこうとしていた。
当然、ファステストを刻みながら、である。
123 名前:第3戦・富士-11 投稿日:2002年01月09日(水)19時33分11秒
レースは中盤にさしかかり、各車ともタイヤ交換を迎えようとしていた。
「うーむ…矢口といっしょにピットに呼ぼうか、いや様子見たほうがええかな…」
中澤はどのタイミングで安倍を呼び寄せるか、悩んでいた。
タイヤ交換のピットインタイミングは、どのチームも頭を悩ます問題だ。

レース中のタイヤ交換が義務付けらたのは、レースの演出を狙った部分が大きい。
ピットインの戦略の立て方次第で順位の変動が起きるからだ。
それは、F1で戦略が結果に大きな影響を与えていることからも明らかだ。
F・娘。ではF1と違い給油こそ許されていないが、それでもピット戦略の影響は大きい。
124 名前:第3戦・富士-12 投稿日:2002年01月09日(水)19時35分42秒
今日のレースはクリーンで、セイフティカーは出なそうだった。
セイフティカーが出ている間は、隊列を組んでの一定速度・追い越し禁止のペース走行になる。
そのときはすぐにピットに呼び寄せればよい。タイムロスを少なくすることが出来る。
が、そうで無いときはいろいろ考えなくてはならない。
現在の周りの状況や、交換後に入るであろう周辺の状況などだ。
一般的に、遅い車に引っかかってタイムが伸び悩んでいるならば、早めに呼んだ方がよい。
また、前が空いていてドライバーも気持ちよくタイムを出しているならば、先送りだ。
ただ、交換後に入るであろうポジション…タイヤ交換で遅れる約30秒ほど後方…の状況も関係してくる。
もし、そこに遅いクルマがいたり熾烈な争いをしている集団がいるならば、避けたほうが良いのは明らかだ。
125 名前:第3戦・富士-13 投稿日:2002年01月09日(水)19時37分32秒
さらに、マシンの状況もある。
タイヤの消耗や損傷があるなら、もちろん換えてやったほうが良い。
それだけでなく、ハンドリングの改善を訴えているなら、そのために空気圧を変更したタイヤに交換する場合もある。
それらの場合はできるだけ早いほうがいいのはいうまでもない。
ほかにも他チームのピットタイミングとの関連など、タインミングの要素は無数にある。
そのすべてを満たすタイミングというのは非常に限られてくるし、無いかもしれない。
よってある程度は妥協する事になるのだが、最終的な決定は監督が行うのが一般的である。
ここがチーム、そして監督の腕の見せ所となる。
決まれば順位を上げることができるし、失敗すれば下位に沈むかもしれない。
中澤でなくても、頭を悩ます問題だ。
126 名前:第3戦・富士-14 投稿日:2002年01月09日(水)19時40分05秒
はじめに動いたのは、飯田圭織と石川梨華。2台が連なってピットイン。
速度制限ももどかしく、ピットへ滑りこむ。
ジャッキアップされ、エアツールの音が響く。
石川のチーム、ゴナツヨはスタートできなかった吉澤の分を取り返そうと必死だった。
一方、飯田のチーム、タンポポは右リアの作業がわずかに遅れる。
これで石川と飯田が入れ替わって、コースに復帰していく。
127 名前:第3戦・富士-15 投稿日:2002年01月09日(水)21時25分48秒
続いたのは先頭の矢口だった。ここがレース折り返しの20周目。
迅速に進む作業。スタッフが作業終了と同時に手を上げる。
そのタイミングにあわせてジャッキが下ろされる。
が、矢口が焦ったのか、クラッチミートのタイミングが合わない。
エンストする矢口のクルマに、あわてるスタッフ。
悪い事に、スターターの準備を怠っていた。
これで矢口は優勝戦線から一歩後退する。

それだけでなく、矢口がコースに復帰した場所も悪かった。
前戦もてぎのアクシデントで別の意味でルーキーの中から一歩抜け出した、紺野あさ美の後方になってしまう。
周回遅れで無いので抜かせてくれるわけでもなく、かといってタイムが良くない紺野の後方で大幅に遅れる。
当然、石川と飯田はこの前方にいた。
128 名前:第3戦・富士-16 投稿日:2002年01月09日(水)21時27分07秒
 ピットでの争いも激しいが、コース上でも激しいバトルが繰り広げられていた。
中心は当然、後藤真希だった。
加護、ソニン、保田の集団に追いつくと、すぐに追いまわす格好に。
そして、富士での定石であるストレート〜1コーナーで追い抜きをかける。
保田はきっちりとインを閉めていたが、後藤は臆せずアウトから抜きにかかる。
進入速度も、ブレーキングも後藤が勝る。が、意地を張る保田。
このまま接触すればアウト側がの後藤が不利なのをわかっているからだ。
しかし、後藤はそのさらに上をいく。滑るクルマを強引に押さえこんで前に出る。
こらえきれなくなった保田が寄せ、フロントウイングの翼端板が後藤の前輪に触れる。
が、それは最後のあがきだった。乱れる保田。
その間に後藤が完全に前に出る。保田もなんとか立て直す。
これで、後藤は9位に浮上だ。
129 名前:第3戦・富士-17 投稿日:2002年01月09日(水)21時37分19秒
続いての餌食はソニンと加護だった。
この2台は何度か順位を入れ替える激しいバトルをしていた。
だが、後藤はおかまいなし。
最終コーナーから2台のスリップに付くと、そのままストレートに。
このとき、加護は1コーナーでソニンの前を狙って、スリップに入っていた。
しかし、その後方を後藤がぴったりしたい!とでもいわんばかりに付けていた。
2台分のスリップを受けた後藤のマシンは、完全に速度で勝っていた。
1コーナー手前でソニンのインを取るべく並びかける加護。
だが、そのさらに内側から後藤が突っ込む。
「きょえ〜」「すげー」
スタンドが興奮でざわめく。なんと、3台は横に並んで1コーナーに飛びこんだのだ。
速度に勝る後藤がコンパクトなラインで1コーナーをクリアする。
限界ギリギリ、いや限界を越えているかもしれない脅威のコーナリングだ。
そして、すこしラインがはらんだ加護が続く。
2台同時にオーバーテイクされ、戦意喪失したかのようなソニンは何とかついていった。
130 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)00時58分27秒
一気に読ませてもらったけど、セナプロ全盛期の頃からモータースポーツにはまってた俺っちには結構ツボだね。
そっか、作者氏にはフィンランド人の血が入っているのか、じゃあハッキネンの休養は残念だね(冗談だよ)。
ハッキネンとシューマッハーのマカオGPも思い出すなあ。
って、爺くさいな俺。
あ、そうそう、ドライバー事故死だけは勘弁してよ。
あのサンマリノをリアルタイムで知ってる俺っちにはそんなシーンは耐えられんのよ。
ときどき覗きにくるから頑張って続けてちょ。

うーん、久しぶりに「F」が読みたくなったなあ・・・
131 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月10日(木)22時35分51秒
>>130
ツボにはまったようで、喜んでもらえて光栄です。
私もセナプロの最後らへんからはまったクチです。
雨のブラジルGPにハァハァしたなぁ(笑

個人的にはアゴ帝王より金髪の泣き虫の方が好きなので、休養は残念です。
まぁ、同郷のミカ・サロとライコネンに頑張ってほしいなと(笑。

サンマリノは私もリアルタイムで見てたから、事故死はもちろん怪我人も出さない方針です。
安心して読んでください。

「F」かぁ…知ってるけど読んだことないや。今度探してみよ。

頑張ってちびちび続けるので、飽きずにつきあってくださいな(ペコ
132 名前:第3戦・富士-18 投稿日:2002年01月11日(金)02時01分32秒
「はぁ…」
ピットの中澤は後藤の走りを見て呆然とするだけだった。
恐ろしい…ウチらはこんなの相手に走っとたんか、と思う。
後藤はこれで7位。ポイント獲得の6位まであと1台だ。
スタートで大きく遅れた後藤を、今日はポイントが取れるかどうかだなと予想していた中澤。
中澤だけでなく、大方はそう予想していた。だが、それは大外れのようだ。
後藤の勢いは衰えず、タイム的にも十分可能性は出てきたからだ。
133 名前:第3戦・富士-19 投稿日:2002年01月11日(金)02時14分40秒
「安倍、入りま〜す」
スタッフの声に我に返る中澤。先頭集団の中では遅いタイミングでタイヤ交換に向かう安倍。
だが、これを狙っていたチームがいる。前戦でも好ピットワークを見せた後藤と高橋のチーム、フィラだ。
チーム・フィラは安倍のピットタイミングだけをうかがい、高橋のピットインを遅らせていた。
そして、チーム・ナカザワが動いたこの周、同時に作業させる。
前のもてぎで後藤が吉澤を逆転したのと同じ作戦だ。
134 名前:第3戦・富士-20 投稿日:2002年01月11日(金)02時16分59秒
安倍、高橋の順でピットロードを走ってくる2台。緊張の走る両ピット。
スッとピットに収まる両車。間髪を置かず作業が始まる。
両チームとも猛練習を積んだであろう、手慣れた動きで作業が行われる。
しかし、チーム・フィラの動きの方が少しだけ統率が取れているように感じられた。
そしてわずかの差で早くピットアウトしたのは、高橋。
チーム・ナカザワの作業も素早かったが、フィラよりわずかに遅かったのも事実だ。
中澤の頭痛のタネがまたひとつ増えてしまった。
135 名前:第3戦・富士-21 投稿日:2002年01月11日(金)17時46分56秒
続いて後藤のピットインも超が付くほど素早く済ませるチーム・フィラ。
相変わらずいい仕事をするチームだ。これで後藤が先頭集団から遅れていた辻の前に出る。
ついに入賞圏内まで順位を上げてきた。しかも、まだ勢いが衰えない。

残り周回が10周となった時点で、ついに後藤は先頭集団に追いつく。
高橋を先頭に、安倍、石川、飯田、そして後藤の順。この5台が7秒の間に連なっていた。
しかし、誰もが前に出るには決め手を欠いているようだった。
どのクルマもタイムが変わらず、離されはしないが追いつきもしない状況なのだ。
安倍にしても、ルーキーながら初めてトップを走る高橋の予想外の速さに抜きあぐねていた。
だが、追いついた後藤だけは勢いが違った。
136 名前:第3戦・富士-22 投稿日:2002年01月11日(金)18時04分26秒
後藤はこのまま終わるつもりはなかった。
今日のレースは、スタートを失敗した時点で失ったも同じだった。
しかし、順位を落としただけでレースを失った訳ではない。これで後藤は開き直る。
行けるところまでとことんやってやるぜ!と。
同じように最終コーナーでスリップに入り、ストレートで前を行く飯田にアタックする後藤。
”ロボ”との異名をとる飯田。機械のように正確な走りを連続するところからきている。
しかし、一度調子を崩すとはちゃめちゃになってしまうという面をもっていた。
面白いことに、その時の方が速い場合もあるのだが。
137 名前:第3戦・富士-23 投稿日:2002年01月11日(金)18時06分53秒
飯田のヘルメットが動く。ミラーを見て悪い癖が出たのだろうか。
1コーナーで並び、そのままコーナーにする進入する後藤と飯田。インを取ったのは後藤だ。
しかし、オーバースピードでアウトにふくらむ後藤。譲らず同じようにふくらむ飯田。
冷静なドライバーならば、ここでラインをクロスさせコーナー出口で抜き返すのが普通。
しかし、暴走した飯田はムキになって張り合う。
飯田の左前後輪が、縁石を越えてダートに落ち、砂煙をあげる。
絡む寸前まで接近している2台。後藤が強引に前に出る。
暴走する飯田に、キレた後藤が勝った瞬間だった。
138 名前:第3戦・富士-24 投稿日:2002年01月12日(土)19時30分15秒
「高橋、次の周ピットだ!」
「へっ?」
無線からの指示に戸惑う高橋愛。
メインポストに、ペナルティを示す黒旗とともにゼッケン2が示されていた。
ルーキーの劇的な初優勝が現実味を帯びてきた矢先の黒旗。
ゼッケン2…高橋のこと…の違反行為に対して10秒のペナルティストップを命じる。
これがレースの審判団の結論であり、決定事項であった。罪状はピットレーンのスピード違反。
タイヤ交換のピットアウト時に制限速度60キロを7キロ超過していたのだ。
139 名前:第3戦・富士-25 投稿日:2002年01月12日(土)19時34分08秒
現代のレーシングマシンでは、ピットレーン用のスピードリミッターの装備は常識である。
当然、F・娘。で使われている各社のシャシにも装備されている。
そのため、メーターを見て速度調節していた未装備の頃と比べると、簡単・確実に制限速度ギリギリで走ることができる。
しかし、それでもスピードオーバーは無くならない。
なぜなら、リミッターが壊れることと、ドライバーが作動させ忘れる時があるからだ。
チーム・フィラのそれは…レイナード社のシャシ全部がそうだが…ステアリング上のボタンを押しているときに作動する。
つまり、ピットロードではリミッターのボタンを押しっぱなしにしてなければならない。
もちろん、高橋はそれを知っているし、実際にボタンを押していた。
が、高橋はピット作業で順位が入れ替わったことに少し興奮していた。
そして、ピットアウトの時に速度制限区間を出る少し前にボタンを離してしまう。
自分でも気が付かないほどの小さなミス。
だが、ルーキーの払う代償は大きかった。
140 名前:第3戦・富士-26 投稿日:2002年01月12日(土)19時37分23秒
とぼとぼとピットロードを戻ってくる高橋のマシン。
チームはもしものエンジンストールのためスターターを準備していた。
ピットエリアに静止する高橋のクルマ。オフィシャルが10秒をカウントする。
高橋にとってはとても長い10秒だ。オフィシャルの手があがり、クルマをスタートさせる。

が、集中の糸が切れているのか、スタートに失敗してエンジンストール。
詰めていたスタッフが迅速にエンジンを再始動させ、最小限のロスタイムで送りだす。
保険のはずのスターターが皮肉にも役立ってしまった。
このとき、高橋は完全に舞い上がって、冷静さを失っていた。
ここでもスピードオーバー。今度はボタンを押すことを完全に忘れていた。
もう一度ゼッケン2に黒旗が提示されるのに時間はかからなかった。
141 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月13日(日)18時42分18秒
ピットロードは、120km制限じゃ・・・。
142 名前:141 投稿日:2002年01月13日(日)18時48分20秒
すいません、私の間違いでした。
今季よりピットロードの制限速度変更
2000年より、ピットロードの制限速度を従来ウォームアップ走行時で80km/hが60km/hに、
決勝時で120km/hが80km/hに下げられることになった。
なお、モナコは決勝でも制限速度60km/hのままである。
http://www.f1-page.com/news/news01.html
143 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月13日(日)21時43分02秒
>>144
>>7にあるとうり、このレースはフォーミュラーニッポン(以下Fポン)と同じ規定で行われています。
で、Fポンのピットロード制限速度は60km/hなのです、確か。
なので、このレースも60km/h制限で書いております。

出典は…手元のFポン総集編'01(フジテレビで放送されたもの)です。
…が、今見直してるけど、どこだか忘れてもた(汗
Web上のオフィシャルサイトとかさぐったけどその辺の記述なくて困ったね。

納得が行かなかったら80km/hに読み替えてください。

こういうつっこみレスも歓迎っす。どうもでし>141
144 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月13日(日)21時57分12秒
で、Fポンのオフィシャルサイト見てて気が付いたのだけど、
>>16で、3種類って言ってる雨用タイヤ、2種類なのね(下参照)。
http://www.f-nippon.co.jp/jreport/tire01.html
まぁ、大半が浅溝、なっちは深溝をチョイス、正解は浅溝ってことで。

あと、>>143で参考にした総集編、'01じゃなくて'00の間違えです。
…どっちでもええけどね。(笑
145 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月13日(日)22時26分54秒
>>143は141氏に向けたスレの間違えです。
144なんて未来のスレに書けるわけないでしょ(笑>自分

ということで、これから更新だす。
146 名前:第3戦・富士-27 投稿日:2002年01月13日(日)22時31分50秒
ルーキーの些細なミスで首位に立った安倍なつみ。
そして後方には石川梨華がつけていたが、ペースが上がらない。
石川のクルマはトランスミッションに不調をかかえていた。
シフトチェンジが異様に堅くなるというトラブル。
シーケンシャル形式のミッションはシフトレバーを前後させてギアチェンジをおこなう。
その操作感は、普通ならそれこそスィッチ並なのだが、今では鉄の棒を曲げようとするほど堅い。
スタート直後から手応えがちょっとおかしかったが、ここまで悪化するとは思っていなかった。
しかし、どうしようもない。
歯をくいしばってシフトチェンジする梨華。
手は痛み、しびれていた。
おそらくグローブの下の掌はすりむけているに違いない。
その影響は走りにあらわれていた。
スムーズな走りを身上とするとする梨華だが、加減速がぎこちなく、コーナリングも乱れる。
もちろん、そんな状況でタイムが上がるはずもない。安倍からは離され、後藤からは詰められていた。
147 名前:第3戦・富士-28 投稿日:2002年01月13日(日)22時34分42秒
残り周回、わずかに3周。後藤は完全に石川を捕らえていた。
シフトチェンジの乱れにも気がついていた後藤は、余裕をもって追い詰めていた。
ヘルメットの中では笑みさえ浮かべていたほどだ。
舞台はここでもストレート。
石川はやはりシフトアップのタイミングが遅れているようで、直線の伸びが少し足りない。
最終コーナーからスリップに入った後藤は1コーナーの手前で石川のインに並ぶ。
そして、ターンインで簡単に前へ出る後藤。これでついに2位浮上である。
残り2周、安倍を捕らえるべくさらにマシンにムチをいれる後藤だった。

一方、石川も無理はしなかった。3位に落ちたものの自己最高位。
手堅いレースをするところも、梨華の身上である。
満足はできないが、マシンの状況を考えると上出来であろう。
148 名前:第3戦・富士-30 投稿日:2002年01月13日(日)22時43分47秒
昨年の開幕戦以来、1年以上ものあいだ優勝から遠ざかっている安倍。
思うように走れない苦しみ。速さを失ったチャンピオンの辛さ。
自信を失い、走ることの喜びさえ失いかけたシーズンオフ。
第2戦のもてぎでは予選の低迷から、決勝でアクシデントに巻き込まれた。
それでも、テストではそこそこのタイムを出していたし、開幕戦は久々の2位を獲得していた。
調子は上向きと言えるかもしれないが、やはり勝利は別格だ。

復活の狼煙となる優勝への最後の刺客は、後藤真希。
今日の後藤はノっている。それは誰もが認める事実。
しかし、安倍も負けるわけにはいかない。
元チャンピオンとして。
そして、再び栄光を手にするために。
149 名前:第3戦・富士-31 投稿日:2002年01月13日(日)22時49分33秒
100R、ヘアピン、ダンロップコーナーと後藤の猛攻が始まる。
絶妙のライン取りでガードする安倍。
それに、安倍のクルマの動きも悪くない。
ガソリンが減ってくるにつれてマシンの動きが良くなってきている。
最終コーナーは安倍のほうが速いくらいだ。
そのため、スリップ・ストリームを十分に活かせない後藤。
ストレートを通過。コントロールラインを横切ってラストラップ、最後のチャンスだ。
後藤の狙いは、もちろん1コーナー。
並んで進入していく、2台。
150 名前:第3戦・富士-32 投稿日:2002年01月14日(月)01時33分04秒
これがラストラップ。このレースの1コーナーはこれが最後。
2台の前方はクリア、周回遅れに引っかかる事は無さそうだ。
安倍はここを守りきれば逃げ切れると考え、後藤としてはここで決めたかった。
後藤の戦法は、安倍にはわかっていた。
もっとも、ここまで何度もそのシーンをミラーで見てきたためだが。
わずかにリードしている安倍がイン寄りのラインへ変更。イン側の後藤はさらにインへ逃げる。
しかし、接触するほど寄せたわけではない。後藤も安倍を押し出そうとは思っていない。
早めのブレーキングから、1コーナーへクイックに切り込む安倍。
後藤のラインを封じるため作戦だ。前に出られない後藤。
そしてサイド・バイ・サイドから前に出たのは安倍。守り切った。
後藤もぴったり付ける。スキがあればどこでも攻めるという、意志表示。
当然、スキを見せない安倍。当然、がっちりと守る。
コースを疾走する2台。ヘアピンでは接触寸前のテール・トゥ・ノーズ。

勝負は最終コーナーからコントロールラインまでのあいだに凝縮された。
151 名前:第3戦・富士-33 投稿日:2002年01月16日(水)01時19分42秒
富士スピードウエイの最終コーナー。
ゆるい曲線を描きながら長いストレートに連なっているため、最終コーナーの脱出が最高速に大きく影響する。
コーナーで抜けなくても、ストレートのスピード勝負に持ち込めばコントロールライン寸前の逆転もできる。
まさに、最後の最後まで勝敗がわからない。

後藤は絶対に抜くつもりだった。
1コーナーで前に出られなかったのは痛かったが、まだ1回だけチャンスは残されている。
「絶対、絶対前に出る!」

エキゾーストを響かせて駆けて行く2台。安倍のスリップに入る後藤。
それを嫌がり、インにクルマを振りながらコーナーを脱出して行く安倍。
後藤はさらにイン側のラインをとり、加速していく。
縦に並んでいた2台が、徐々に隣り合わせになる。
152 名前:第3戦・富士-34 投稿日:2002年01月16日(水)01時22分27秒
安倍も、抜かれるつもりはない。ここまできて勝利を譲る気には当然ない。
後藤が最終コーナーで仕掛けてくるのはわかっていた。
逆の立場なら、自分も同じ事をするに違いないから。
しかし、今出来ることはただアクセルを開けて、後藤より先にゴールを切ること。
「譲らないよ!」

ホームストレート。コントロールラインが目前に迫る。
横並びの2台がほぼ同時にラインを横切る。
一瞬の出来事。観客も、ピットもわからない。
「勝ったかぁ?…」
中澤も自分の目に自信を持てなかった。
153 名前:第3戦・富士-35 投稿日:2002年01月16日(水)01時26分05秒
2人はわかっていた。
安倍が人さし指を天に突き上げる。
その安倍を一瞥する後藤。
オーロラビジョンが、そして場内放送が、安倍が僅差で逃げきった事を伝える。
スタンドが一瞬の沈黙の後に、大きくざわめく。
「「なっち〜!」」
フラッグが振られ、なっちコールが起こる。

「おぉおぉぉぉ…」
中澤が急に上を向く。悔しいのではない。涙が流れてきたからだ。
勝てるドライバーに、勝てるクルマ、そして最高のスタッフ。
中澤は勝つつもりでチームを創ったし、勝てるはずだった。
しかし、こうやって初優勝のウイニングランを見ていると、やはり感慨深いものがある。
ここまでの苦労が脳裏に浮かんでは消えて行く。そう、すべてはこの時のために。
これが厳しい闘いの小さな第一歩だということをわかっていても、だ。
154 名前:第3戦・富士-36 投稿日:2002年01月16日(水)01時30分51秒
安倍の体を、純粋に走りの喜びが駆け回っていた。
いつのまにか忘れていた感覚、それは勝利の味。
思い出すのは、3年前のここ富士スピードウェイ。安倍の初優勝だ。
今回と同様、飛びだした安倍を中澤が追いかけるという展開。そのときも僅差の勝負だった。
そう、あの時と同じ初優勝。これは新しい安倍なつみの初優勝なんだ。
歓声に手を振りながらそう思っていた。

そして、及ばなかった後藤も、自分の走りには満足していた。
スタンドに手を振る。そして、安倍に祝福を送る。
今日の後藤は完璧だった。もちろん、スタート失敗を除いて。
後方、痛む手を根性で乗り切った石川が初の3位チェッカーを受けていた。
ピットレーンのスタッフへ軽くガッツポーズ。
だが、スタッフには見えなかった。グローブに血がにじんでいるところまでは。
155 名前:第3戦・富士-37 投稿日:2002年01月16日(水)01時33分17秒
駐車場のクルマの中でラジオを付けてレースの様子を聴いていたひとみ。
敗軍の将、多くを語らず。リタイヤしたドライバーも多くは語らない。
たしかに、予選までは完璧だった。しかし、レースはスタートすらできなかった。
「これもレース…」
ひとみはつぶやいてクルマを発進させ、いまだ歓声に包まれるサーキットを後にした。
156 名前:第3戦・富士-38 投稿日:2002年01月16日(水)01時37分27秒
表彰式。安倍がトロフィーを受け取ると、ふたたびなっちコールが起こる。
目を細めてこぼれそうな笑顔を振りまく安倍。勝利は別格。これで流れを引き寄せたい。
2位、後藤も歓声に笑顔で手を振る。
負けて悔い無し。今日のもうひとりの主役。脅威的な追い上げはライバルを震撼させた。
石川、自身初の表彰台。甲高いアニメ声でファンに応じる。
しかし、注目は2人に注がれている。メインをとれなくてあわてる石川。
それでもファンはそんなところもきちんと見ている。
中澤にチーム優勝のトロフィーが渡される。見なれないサングラスは、きっと涙を隠すため。

ふと、後藤と中澤が目を合わせてうなずく。なにか企んでいると周囲が感じる。
「いくで〜、ほれ!」
「ほら、なっち!」
「あっ、やめて〜」
安倍が叫ぶ。後藤と中澤に肩車されているのだ。それでも笑顔は変わらずにはしゃいでいる。
それをうらやましそうに見上げる石川だった。
157 名前:F・娘。第3戦 富士スピードウェイ 決勝RESULT 投稿日:2002年01月16日(水)02時09分35秒
F・娘。第3戦 富士スピードウェイ 決勝RESULT
Pos. No. DRIVER     LAP  TIME    BEST
1   #19 安倍なつみ 40   53'34.917  1'18.711
2   #1  後藤真希  40     + 0.208   1'18.502
3   #5  石川梨華  40    +15.933  1'18.986  
4   #56 飯田圭織  40    +18.342  1'18.842
5   #11 保田圭    40    +35.121  1'19.232
6   #55 矢口真里  40    +57.052  1'18.820
MAJOR RETIREMENT:#6 吉澤ひとみ(LAP 0)
FASTEST LAP:#1 後藤真希 1'18.502(26/40) 201.778km/h

DRIVER'S POINT
Pos. No. DRIVER     POINT
1   #1  後藤真希  16
1   #19 安倍なつみ 16
3   #6  吉澤ひとみ 14
4   #5  石川梨華   9
5   #55 矢口真里   8
6   #11 保田圭     6
158 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月16日(水)02時34分00秒
第3戦・富士まで終了しました。
この先、Rd.4美祢、Rd.5もてぎ、Rd.6富士、最終戦・鈴鹿の予定です。
その間にサイドストーリーも挟んでいくつもりですが、
気力の問題などありますので、更新が不定期になるかも…
まぁ、投げないように頑張ります。なんだかんだいっても書いてるときは面白いので。
…読んでる方は苦痛かもしれんがな(笑。

それから、個人的な都合により2月初旬まで更新はストップいたします。
まぁ、学生さんにこの時期ありがちなテストですわ、はい。
ぼちぼちとのぞいてレスの反応はすると思うので、
ご意見ご希望、苦情に指摘などなどなにかあったら遠慮なく書いてくださいな。

ではでは。
159 名前:130 投稿日:2002年01月16日(水)22時43分32秒
あと4戦か・・・結構長編になりそうだね。
期待してるんで、頑張って最後まで書ききってちょ。
あと試験は頑張った方がいい、うん。
俺っちみたいに留年すると結構大変。
160 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月18日(金)19時14分19秒
>130
うん、頑張る!ありがとね。
…でも、もう留年してたりするんだな(爆。
ふたを開けてみれば、テスト日程は散らばってるので、
大々的に言わなくてもよかったな、なんちゃって。
161 名前:みか・にねん 投稿日:2002年01月20日(日)23時24分06秒
 从#~∀~#从 <なっち、パソコンでなに見てるの?
 (●´ー`●) <モンテカルロラリーの速報だべ。シトロエンのローブが優勝だってさ。
 从#~∀~#从 <そうか、WRCはもう開幕かぁ。大変やなぁ。
 (●´ー`●) <…でさ裕ちゃん、ローブって誰?
 从#~∀~#从 <ローブは去年始まったスーパー1600の初代チャンピオンになった若手や。
          で、ご褒美に今年からシトロエンワークス入りしたんや。
 (●´ー`●) <なるほど。
          2位以下はマキネン、サインツ、C.マクレー、グロンホルム、ソルベルグだね。
 从#~∀~#从 <シトロエンのクサーラが速かったんやな。でも他のクサーラは?
 (●´ー`●) <第1レグにエンジントラブルで2台リタイアしたみたいだべ。
          まるでいつかのインプレッサみたいだべ。
162 名前:みか・にねん 投稿日:2002年01月20日(日)23時25分00秒
 从#~∀~#从 <インプレッサで思い出したんやけど、555がスバルのスポンサーに復帰したんやってな。
 (●´ー`●) <知らなかったべ。画像は…ホントにスリーファイブロゴが描かれているべ。
          青いマキネンは違和感があるべ。それに赤いデルクールもなんか変だし。
 从#~∀~#从 <なっちはラリーだとどこが好きなん?
 (●´ー`●) <メーカーというかクルマはランサーが好き。ドライバーは、サインツかな。
 从#~∀~#从 <私はね、カンクネンとかの北欧系ドライバーが好き。メーカーは…今は無きトヨタが良かった。
 (●´ー`●) <そうなんだ…ちゅーかこれ全部、作者の好みだべ(笑)。
163 名前:みか・にねん 投稿日:2002年01月20日(日)23時26分12秒
 (●´ー`●) <ところで、裕ちゃんて今どこで走ってるの?峠じゃなくて。
 从#~∀~#从 <それ、ここで言っていいのかな?
 (●´ー`●) <いいんじゃない?どうせ困るのは作者なんだろうし(笑)
 从#~∀~#从 <じゃぁ告白や(笑)。GT選手権でカオリとコンビ組んでスープラ乗ってるで。
 (●´ー`●) <ふーん。なっちはF・娘。一本だから知らなかったべ。
 从#~∀~#从 <なっちはGTとか他のレース出ていないの?
 (●´ー`●) <F・娘。を速く走るんでせいいっぱいだべさ。裕ちゃんはどうなの?
 从#~∀~#从 <まぁ、F・娘。やめてから仕事に広がりが出てな、たくさん声かけられるで。
          こないだはタイに行って来たしな(笑。
 (●´ー`●) <それ違うでしょ(笑)。で、なんか違うの走るの?
 从#~∀~#从 <それがな…どうも砂漠を走ることになりそうなんや。
 (●´ー`●) <じゃぁ、”中澤裕子の秘境ゴビ砂漠哀愁横断記”とか?(笑)
164 名前:みか・にねん 投稿日:2002年01月20日(日)23時28分20秒
 从#~∀~#从 <ちがうわ!こないだ増岡さんが念願の優勝を果たした、感動のパリダカや。
 (●´ー`●) <なーんだ。でもそれって作者が裕ちゃんをもっと出したくてやってるんでしょ。
 从#~∀~#从 <そうらしいな。でも結構進んでるらしいで。もともと作者はラリーの方が好きやし。
 (●´ー`●) <じゃぁ問題ないよ。書いて更新すればいいじゃない。
 从#~∀~#从 <それがな、どこに入れるかが問題なんや。
          なにしろレースの間、全部サイドストーリーのネタで埋まってるのよ。
 (●´ー`●) <ということは、シーズンが終わってからかなの?
 从#~∀~#从 <かなぁ…。まぁ、流れ無視して入れるか、スレを他に立てるか、ってのもあるしな。
 (●´ー`●) <でもさ、だれかパリダカ、いやラリー全般に興味ある人ってここにいるの?
 从#~∀~#从 <さぁ…あんまりいるとは思えへんけどな…
 (●´ー`●) <ダメじゃん(笑。
165 名前:みか・にねん 投稿日:2002年01月24日(木)00時13分38秒
(  ^▽^)<ねえよっすぃ、私たち何でここにいるのかしら?
( 0^〜^)<なんかね、作者が現実逃避してるんだってさ。
(  ^▽^)<そうなんだ。ポジティブポジティブ!
( 0^〜^)<はは…そ、そうだね。
(  ^▽^)<どうしたのよっしぃ?どうして落ち込んでるの?
( 0^〜^)<うん、私の設定と矛盾するところができちゃって悩んでるの。
(  ;^▽^)<…人間って、悲しいね(目薬泣
       ほら、お姉さんに話してごらん!。
( 0^〜^)<梨華ちゃんじゃ頼り甲斐がないな…まぁいいか。
       吉澤は箱車を運転しないのに、>>155でクルマに乗ってるのよ。
(  ^▽^)<いいじゃないそのくらい。気にしない気にしない!
       大体何で箱車を運転しないの?
( 0^〜^)<それはね…
从#~∀~#从<なっち、ローブがペナルティかもやって
(●´ー`●)<だね、裕ちゃん。そしたらマキネンが優勝だね
( 0^〜^)<あ、あの…
从#~∀~#从<あれ、よっさんどうしたん?
( 0^〜^)<いや、べ、べつに…(砂漠から帰ってくるなこのババァ!)
166 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月27日(日)00時02分33秒
今日は気分がいいので更新!
本当は日付が変わる前にカキコしたかったけど…
まぁ、ええわ(笑

あと、メール欄でぼちぼち書いてたけど、
基本はsage進行で行きますのでよろしくです。
167 名前:サイドストーリーIII-01 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時16分22秒
「さぁ後藤真希、マカオGP制覇へあとわずかとなりました!」
アナウンサーが叫ぶ。2台のマシンが連なって走っている。
2台の間隔は異常なほど近い。ストレートに入る2台。差はさらに縮まる。
後ろのクルマはスリップ・ストリームに入っている。
そして、素早く右に針路変更する。前のマシンもそれをブロックする。

すべては、一瞬のことだった。

フロントウイングが、飛ぶ。
リアウイングの破片も、飛び散る。

2台が絡んだ。
大きくバランスを崩したのは、後ろのマシン。
コンクリートウォールにヒットして、フロントサスが壊れる。
そして、マシンが力無くコースサイドに止まる。

前を走っていたマシンは、リアウイングを失いながらも走りつづける。
最終コーナーをゆっくりとクリアして、チェッカーを受ける。

アナウンサーの声がない。
ただ、クラッシュしたマシンを呆然と眺めるドライバーだけが映されていた。
168 名前:サイドストーリーIII-02 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時19分22秒
マカオF3グランプリ。
その名の通り、中国はマカオの市街地コースで行われるF3のレースである。
F3はF3000やF1などへのステップアップのためのカテゴリーとして位置付けられている。
そのため、基本的には各国の選手権レベルまでしか開催されていない。
例外としては年に何戦かある国際大会、ここでは世界各国のF3ドライバーが集まって戦う。
その中でいちばん有名なのは、歴史と伝統、テクニカルなコース、そして偉大な先達を記すマカオGPである。
1983年に行われた第1回のウィナーであるアイルトン・セナをはじめとして、
シューマッハ兄弟、ミカ・ハッキネンなどここを通過して世界へはばたいたドライバーは多い。

そう、マカオGPはF3の世界一決定戦であり、世界への登龍門なのだ。
169 名前:サイドストーリーIII-03 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時27分26秒
マカオGPには例年各国のF3チャンピオンはもちろん、有力選手が世界一を狙って参戦する。
もちろん、今回も例外ではない。
フィンランド出身のマーイ・クラキネンはイギリス選手権チャンピオン。伸びのある走りが特徴的だ。
フランス選手権チャンピオンのヒカル・ウタダッシュは、アメリカでキャリアを始めた異色のフレンチ。
いつもハデな服装のイタリアン、アユン・ハマサキロッシはドイツ選手権チャンピオンだ。
そして日本からは期待の新星、後藤真希が参戦。
後藤の今シーズンは、混戦のF・娘。で初勝利を含む3勝をあげてタイトルを獲得していた。
格上のカテゴリーとなるF・娘。のチャンピオンとして、速さを見せられるか。

この4人が優勝候補だが、そのほかにも全日本F3選手権を制した松浦亜弥など多くの実力者がエントリー。
総勢26名の勝利に飢えた若者が、今年もマカオに集う。
170 名前:サイドストーリーIII-04 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時32分34秒
本国イタリアではモデルとしても活躍し、若者の一部でカリスマ的存在になっているハマサキロッシ。
アニマルプリントを多用したファッションはファンの間では流行していた。
そしてそれと同じくらい注目されているのが、その発言である。
舌足らずの声でぶっきらぼうに話すが、内容は過激なものが多い。
クラキネンを田舎者、ウタダッシュをファザコンと言い切る毒舌は、マスコミに重宝されていた。
マカオGPのエントリーリストにその名前が並んだことにより、マスコミはさらに盛り上がっていた。
いちはやくマカオ入りしたハマサキロッシはそんなマスコミに対して得意の攻撃を開始する。
田舎者のクラキネンにはカジノでスらないようにと、
両親とともにマカオに乗り込んだウタダッシュには家族旅行じゃないんだよ、と一通り攻撃する。
最後にレポーターが、いちばん警戒していないドライバーは誰?と質問する。
ハマサキロッシは待ってましたと、笑いながら応える。
171 名前:サイドストーリーIII-05 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時34分21秒
「それはね、後藤真希。いまさらF3乗るなんてもーいいよ。これで遅かったらF・娘。とかいう選手権のレベルの低さを暴露するだけなのにさ」
格上カテゴリーのチャンピオンを軽視するこの発言は、マスコミにとってその日一番の収穫だった。

この話が後藤の耳に入ったのはマカオに発つ2日前のこと。
しかも、伝言ゲームよろしく話に尾ヒレ背ビレがついてかなり誇張されていた。
これにはいつもは温厚な後藤も、さすがに怒った。
自分のへの悪口だったら、それほど気にはしない後藤。
しかし、F・娘。全体をバカにしたことを許せなかった。
友人でありライバルである仲間を、そしてF・娘。を愛している後藤にとって、
それはとても許せることではなかった。
それでも荒れたり怒鳴り散らすわけではなく、ふつふつと静かに闘志を燃やしていく後藤。
ハマサキロッシだけには負けない、と。
172 名前:サイドストーリーIII-06 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時36分18秒
木曜日に朝にマカオ入りした後藤。
金曜日から早くも予選1日目が始まるので、あまり余裕がない。
本当はもっと早く移動したかったのだが、イベントなどの諸事情が日程を圧迫していた。
さすがに日本から近いマカオ、移動時間も短ければ時差も少なくてすむ。
そのため体調を大きく崩すことはなかったが、かといってベストでもなかった。
さらに、出発前夜に起きた突然の出来事も影響して、後藤の精神状態は良くなかった。
173 名前:サイドストーリーIII-07 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時37分38秒
難攻不落と表現されるほど難しいとされるマカオの市街地コース。
市街地コース特有の難しさもあるが、独特のコースレイアウトが難易度を高めている。
コースは山側のコーナーが連続するテクニカルセクションと、
直線で構成される海側の高速セクションのからなる。
性格がまったく異なるこの2つのセクションがほぼ同じ比率で存在するため、マシンのセッティングが難しいのだ。
山側のコーナー重視でウイングを立ててダウンフォースを稼ぐか、
海側のストレートの速さを狙いウイングを減らすか、
そしてその中間を狙ったセッティングにするか、だ。
しかも、レース戦略、マシンの特性やドライバーの好みなどに左右されるため、どれが正解とは簡単に言えないのだ。
どちらにしてもドライバーとチームに実力が求められることには変わり無い。
それだけ、このコースで勝つ事の意味が大きいのだ。
174 名前:サイドストーリーIII-08 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時40分07秒
昼食は適当に外で済まし、コースの下見を兼ねて歩き回る後藤。
下見をしながら、頭の中でシミュレーションをする。
すぐに、人々が口にするこのコースの難しさを実感する。
狭い道幅はコーナーでさらに絞られていて、過去のレースでも接触が多いことを思い出す。
元が一般道なので、カント(バンク)がついていないコーナーは走りづらい。
途中、ハマサキロッシとすれ違う。お互いに目も合わせない。
警戒していないと言っておきながら、後藤の事を意識しているのは、明らかだった。
175 名前:サイドストーリーIII-09 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時41分26秒
ホテルに戻った後藤を襲ったのは、強烈な腹痛と発熱だった。
昼食で食べたサラダが、おそらく原因。注意していたつもりだが、油断があった。
予定していた取材をキャンセルして、ホテルの部屋にこもる後藤。
トイレが近くて集中できず、イメージトレーニングもはかどらない。
そのうえ、身体も休まらないし、食欲も無い。レース前としては最悪の状況。
ドクターに薬を処方してもらうが、ドーピング検査にかからない物しか使えないため、いまひとつ効果がない。
結局、朝方に落ち着くまで、後藤は耐えるしかなかった。
176 名前:サイドストーリーIII-10 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時42分49秒
迎えた予選初日の金曜日。青白い顔でマシンに乗り込む後藤。
体調は最悪。身体は熱っぽく、全身がだるくて重たい。
だが決勝が明後日で、まだ時間があるだけ幸運なのかもしれない。
陰りのある後藤の表情と対象的に、天気も良いし街も華やかだ。
しかし、結果は散々なもの。午前の練習走行、午後の予選1回目とも作業は進まない。
最後のアタックでなんとか13番手のタイムを出すのが精一杯だった。

リザルトを見て苛立つ後藤。
順位も悪いが、最大の屈辱はハマサキロッシに負けたこと。
体調が悪いのは自分の責任もあるし、勝負の舞台では言い訳にならない。
「この悔しさ、倍にして返してやる…」
177 名前:サイドストーリーIII-11 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時45分19秒
この日も取材やイベントをキャンセルしてホテルで休む後藤。かなり回復したとはいえ、まだ熱っぽい。
それでも食欲が出てきて、ルームサービスを注文する。
身体も軽くなって、今朝方のだるさは抜けていた。
食事を終えて過去のマカオGPのVTRを見ていると、日本の中澤から電話がかかってきた。
『見たでぇ。どうしたんや?』
「ははっ、はずかしいな」
中澤はテレビ中継のゲスト解説として土曜にマカオ入りする予定なのだ。
『いやな、中継見てたけど、めっちゃ調子悪そうやんか』
「食べ物に当たっちゃって…いやぁ、大変だったよ」
『大変だったよ、じゃないわ。顔は真っ青でマシンコントロールもめちゃくちゃで、見てるほうがつらいわ』
「大丈夫。もう良くなったからさ。明日はポール獲るよ」
『ええんか、そんな大風呂敷広げて?まぁ、真希は勝つ気でマカオ出てるんだろうからなぁ』
「う、うん。そうだよ」
まさか、ハマサキロッシに勝てればいい、なんて口が裂けても言えなかった。
『それよか、話を聞いた?』
「え、なにを?」
中澤の口調が変わる。なにか大きなニュースでもあるのだろうか。
178 名前:サイドストーリーIII-12 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時48分25秒
『ウィリアムズが後藤にテストをさせたいってニュースが流れたんやけど』
「聞いてないよ〜」
マカオに出場しているドライバー達は才能あふれる若手ばかりである。
そこに将来のスターを求めてF1チームが接触してくることは少なくない。
現に、ハマサキロッシは来期のフェラーリのテストドライバーに決定済み。
クラキネンはザウバーと契約を結んで翌シーズンのF1デビューが決まっている。
そのほか噂のレベルでは、ウタダッシュがルノーかトヨタ、松浦とアロウズなど、多数に及ぶ。
後藤もアロウズとミナルディからオファーをもらっているが、下位チームに興味はなかった。

しかし、ウィリアムズといえば話は別だ。
F1で数多くのタイトルを獲得し、常に上位に位置している有力チームだから。
そのうえ、近年では大胆な若手ドライバーの起用が注目されている。
過去にはジェンソン・バトンやファン・モントーヤといった若手を採用し、しかも話題だけでなく好成績も上げている。
そのウィリアムズが接触してきたということは、後藤が注目されている証拠でもある。
179 名前:サイドストーリーIII-13 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時55分29秒
「でもさ、後藤は本当に聞いてないよ」
『まだ正式なオファーじゃないんやろ。でも多分マネージャーは知ってるで』
中澤の情報は後藤の事務所から直接聞き出したもので、情報というより真実だった。
しかし、後藤の気持ちを確かめるために切り出した話であり、真実は伝えなかった。
『もし、本当にウィリアムズから乗ってみないかと言われたら、ごっちんはどうするつもりなんや』
「そしたらもちろん乗るよ。できればF1に出たいし」
『そっか。だったら明日以降は頑張るんやな。フランク・ウィリアムズさんがレース見てるで』
それとなく奮起させる中澤。
実際、ウィリアムズからのオファーはマカオの結果を見て正式に決めるというものだった。
だがこの情報を後藤にあえて伝えないのは、中澤の判断だった。
無用なプレッシャーをかけずにいつも通り伸び伸びと走れるように、という心遣いからだった。
180 名前:サイドストーリーIII-14 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時56分44秒
「なんかさー、それって後藤がいつも頑張って無いみたいじゃん」
『だっていつも手を抜いてるやろ〜』
2人は電話口ごしに笑い合う。
「そんなことないって」
『まぁ、あんたの速さやったらライバル蹴散らして豪快に決められるやろ』
「うん。楽勝とは行かないだろうけど、勝つよ」
『じゃ、マカオでな〜』

後藤の体調を心配した中澤だったが、いつもと変わらない様子に安堵する。
これならええ結果出すで、真希は。中澤は決勝の解説が楽しみになってきた。
181 名前:サイドストーリーIII-15 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)01時58分18秒
予選2日目、土曜日。
天候は昨日と変わらない快晴。街はさらに活気づいている。
年に1回のお祭りを思いっきり楽しもうと盛り上がっているのだ。
「いいよなぁ…」
欧米ではレースが文化として根付いている。
極端な話、どんなクルマが走ろうが誰が勝とうが関係無いのだ。
人々にとってはそこでレースが行われて、疾走するクルマに興奮できればいいのだ。
ここマカオも以前はポルトガル領だったためにそうした気質が残っている。
このあたり、日本国内のレースを取り巻く状況とは大きく違う。
マカオのように閉鎖した公道でレースなんて、日本じゃ絶対に無理だ。
182 名前:サイドストーリーIII-16 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時00分25秒
午前中の練習走行で別人のような走りを見せる後藤。
後藤本来の、見ている人を引き付けるキレの鋭い走りが戻っていた。
体力が回復したことにより、本来の力を発揮できるようになっただけなのだが。
本人もコースの見え方が金曜と違うことに驚く。
「そっか、昨日はこんなに余裕無かったんだ…」
同じコースを走ってるはずなのに、コースが広くなったように感じるのだ。
当然タイムも向上する。昨日の自己ベストはあっさり更新。
トップに遜色無いタイムで、最終的には3番手のタイムで練習走行を終える。
因縁のハマサキロッシは後藤の直後で4番手。溜飲を下げる後藤だが、勝負はこれからだ。
183 名前:サイドストーリーIII-17 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時02分00秒
午後の予選2回目。
全車が少しでも良いポジションを狙い、全開でアタックする。
はじめにトップタイムを出したのは松浦亜弥。

が、直後にいきなり赤旗中断。気だけが焦るドライバーがクラッシュしたのだ。
約20分の中断の後、予選が再開。
が、しばらくは数台が散発的にアタックを行う穏やかな展開。
ハマサキロッシをはじめ上位陣は様子見に入っていた。

松浦のトップタイムが更新されないまま時間が過ぎる。
この予選セッションの残り時間が半分を切った。
貧乏くじを引くようだが、後藤はコースに出る決意をする。

ピットでは後藤のアタックに注目が集まっていた。
タイムによってコースの状況を判断できるからだ。
184 名前:サイドストーリーIII-18 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時03分51秒
コントロールラインを横切る。
タイムが表示される。後藤が自己ベストを更新して順位を5位に上げる。
それを見て各チームが動き出す。まだほとんどアタックしていないクラキネンがコースイン。
松浦、ウタダッシュもマシンに乗りこみエンジンを始動させる。

後藤はそのままアタックを続けていた。
完璧な集中を見せる後藤。ピットが、観客がそのキレのある走りに興奮する。
S字を直線のように駆け抜ける。邪魔な先行車はいなかった。
最終コーナーをキレイに、スパッと回るマシン。そのままコントロールラインを切る。
そのタイムは…松浦のタイムを上回った!
遅れてきた本命、後藤がマカオで初めてリーダーボードのトップに名を刻む。
185 名前:サイドストーリーIII-19 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時05分00秒
コースはアタックに入ったマシンに埋め尽くされる。
各車がタイムを更新してポジションを上げていく。
もちろんタイム更新のラッシュを後藤も予想していた。
ウイングに微調整を加えて再びアタックへ、出撃。

コース上はではクラキネン、後藤、松浦、ハマサキロッシ、ウタダッシュの順でアタック。
残り時間は5分少々。あと1回か2回しかチャンスは無い。
前の周に最終コーナーでミスしたクラキネンが今度は決める。ベストでトップへ踊り出る。
後藤が自己ベストを叩き出すも、クラキネン、ハマサキロッシに次ぐ3番手。
松浦のアタックは山側セクションのミスで不発に終わる。
ハマサキロッシはわずかに自己ベスト更新するが、順位は変わらず。
続くウタダッシュはハマサキロッシを上回る2番手のタイムを出す。
186 名前:サイドストーリーIII-20 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時06分48秒
タイムが頻繁に更新される。予選が長く感じられる。中継では見応えがあるだろう。
だが、それももうすぐ終わる。残りは1分を切り、各車これが最後のアタック。
現在トップで、さらにタイムを刻んでPPを確実にしたいクラキネン。
が、自己ベストに届かないタイムでラストアタックを終える。
続いて後藤が最終コーナーをまわって最後のアタックを決めようとしていた。
アクセル全開でコントロールラインを横切る。
タイムは、自己ベストを更新していた。が、クラキネンにおよばずポジションは2位。
続くのは松浦。が、こちらは自己ベストの更新はならず。

注目のハマサキロッシが最終コーナーにさしかかる。この周、ここまで最速タイムを刻んでいる。
速い。最終コーナーさえ決めれば、ハマサキロッシがポールだ。
187 名前:サイドストーリーIII-21 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時08分29秒
不意に中継の画面が切り替わる。クラッシュしたマシンと、提示される赤旗。
場所は、最終コーナー出口だった。
ハマサキロッシが画面に映る。スピードを落として破片を避けている。
手を突きだして、アピールしながら。
その後ろに、ウタダッシュが同じようにして最終コーナーをクリアするところも映されていた。

ピット全体がざわめく。観客も困惑している。
残り時間が30秒を切っていたセッションは、赤旗で終了となる。
そして、ハマサキロッシの最後のアタックは幻のものとなる。

苛立つハマサキロッシ。だが抗議は受け入れられない。
もっとも、被害者は1人でない。ラストアタックを果たせなかったのはほかにウタダッシュを含めて4人。
だが、救済措置はない。これがルールなのだ。

予選結果は、ポールポジションはクラキネン、2番手に後藤真希というフロントロウ。
ラストアタックを果たせなかったハマサキロッシとウタダッシュが3、4番手と続く。
松浦亜弥は終了直前にハルカ・マクイガワに抜かれて6番手でスタートを迎えることに。
188 名前:サイドストーリーIII-22 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時10分15秒
決勝前夜、中澤やフリーのジャーナリスト達と取材をかねた夕食をレストランで取る後藤。
木曜の事が頭をよぎる。生ものには手を着けられない。
雑談から始まり、話題は後藤のF1テストのことに移る。
「ウィリアムズか。テストはいいけど契約はしないほうが良いと思うよ、ボクは」
口数の多いレポーターが上気してしゃべる。
「なんでや?ええと思うけど」
この席で一番呑んでいる中澤が反論する。まだ酔ってはいない。
「あそこはドライバーの扱いが良くないよ。チャンピオンを平気で追い出すぐらいだし」
「何となくわかるな、それは。でも、チャンスは逃さないべきじゃないかな」
日本で一番有名なF1ジャーナリストが静かに言う。
一方で当事者は目の前の料理を休まず食べながら、ふ〜んと聞き流していた。
意見は2つに割れていた。
ひとつは、ウィリアムズやマクラーレンなどの有力なチームとテストドライバー契約すること。
もうひとつは、下位チームのレギュラードライバーになってF1シリーズを戦うこと。
189 名前:サイドストーリーIII-23 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時11分24秒
後藤はまだ来シーズンの事は決めていなかった。
遅いと言えば遅いが、選択肢が多いとう理由もあった。
もちろん目標はF1だが、そう簡単に入り込めるほどこの世界はラクではない。
ミナルディやアロウズからのオファーにしても持ち込み資金を要求されている。
それも、今のスポンサーだけでは足りないほどの額を。
一番無難なのはF・娘。に継続参戦すること。2年連続チャンピオンになれば評価も上がる。
だが、いつまでも国内でくすぶっているつもりは無い。
かといって国際F3000はレベルが低く魅力を感じていなかった。
なにしろ、現代の有力ドライバーはそこを飛び越えるのが常識となっているからだ。

後藤としては確実にF1へ進みたかった。
だからこそ、は最高のアピールになるマカオGPの勝利、それだけに集中していた。


話の方は後藤を置き去りにして大いに脱線していた。
「ちょっと聞いてるの?もう知らんわぁ!」
なぜかF1チームの監督になれと祭り上げられた中澤を中心に気分良く騒ぐ。
中澤がF・娘。からの引退を決意していることを、誰もが知らずに。
190 名前:サイドストーリーIII-24 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時13分28秒
決戦の日。
天気は薄曇り、気温も上がらない。
朝のウオームアップでは各車決勝に向けたセッティングを試す。
予選ではタイムを狙い折衷的なセッティングで走った後藤。
決勝は山側重視のセッティングを希望する。
コーナーで攻められなきゃつまらなくてレースなんか出来ないよ、とは後藤の言い分。
後藤の意見が通り、最終的なセッティング調整が進められていた。

このセッションのトップタイムは予選8位に終わったヤイコネン。
松浦、クラキネン、マクイガワ、後藤、ハマサキロッシ、というタイム順。
しかし、タイム差は小さい。誰かが抜け出ているわけではない。
191 名前:サイドストーリーIII-25 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時15分50秒
マカオGPの決勝は2パート制で行われる。
15周のレースを2回行い、その合計タイムで順位を決定するのだ。
このあたり、第1パートのタイムは総合結果に合算されないF・娘。と違うところである。
(もっとも、世界的には合算制のほうが主流だが。)
また、土曜日までの予選で決定したグリッドは第1パートのスタート順である。
そして、第2パートのグリッドは第1パートの結果順になるのだ。

グリッドに色とりどりのマシンが並ぶ。
F1と違い、ローカルなスポンサーが多いため見慣れないロゴが目を引く。
このあたりが、いかにもマカオGPらしい。
192 名前:サイドストーリーIII-26 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時19分48秒
ハマサキロッシは鮮やかなイエローにペイントされたマシンに乗り込む。
スポンサーのB&Hというタバコメーカーの色である。
本当は金色が正しいのだが、テレビ写りを考慮して金色に近い黄色になった。
斜め前方の後藤をにらむハマサキロッシ。
予選は不本意な形で終わってしまった。しかし、決勝が本番。
こっちは激しいドイツF3でしのぎを削ってきたんだ。レースで決着をつけてやるさ。
ヒョウ柄にペイントされたヘルメットの奥で、不敵に笑う。

後藤もマシンに乗り込む。
白に紺のストライプとロゴは、F・娘。と同じデザイン。
もっとも、同じスポンサーだからなのだが。
2位グリッドの真っ正面には誰もいない。斜め前にPPのクラキネンがいるだけだ。
深呼吸して、集中を高める。スタートで前に出るイメージを浮かべる。
193 名前:サイドストーリーIII-27 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時24分07秒
フォーメーションラップを全車が無事に終え、ホームストレートに戻ってくる。
ブルーのマシンに乗るクラキネンがゆっくりとグリッドに戻る。
続いて、後藤、ハマサキロッシ、そしてウタダッシュと順に制止する。
最後尾のマシンが整列を終えるまで、エンジンが咆吼あげる。
勝利に飢えた若き野獣の首輪が解き放たれる瞬間が、間もなくやってくる
整列が終わり、シグナルに注目が集まる。一瞬の静寂。そして、グリーンシグナル。
194 名前:サイドストーリーIII-28 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時27分03秒
白煙が上がり、エンジンが高鳴る。
好スタートを決めたのはPPのクラキネン。
ウタダッシュ、ハマサキロッシが並んで続く。
後藤は少し遅れた。マクイガワと松浦に並ばれる。
スタート直後は緩い右と左と続く高速の海側区間。
ここは2台を押さえて少し前に出る後藤。
だが、懸案のリスボアコーナーが近づく。ほぼ90度右に折れる低速コーナー。
クラッシュが頻発する場所だ。そこでレースを終わりにするのだけは避けたい。
ミラーを見る。右後方からマクイガワ、真後ろに松浦。
来るな、と思った後藤は無理をしない。マクイガワにインを明け渡す。
だが衝撃。松浦のフロントウイングが後藤のリアタイヤに触れた。
一瞬、覚悟する。が、マシンは乱れない。
軽い衝撃だ。損傷はないと判断する。

後藤は無事にリスボアコーナーをクリア。しかし順位は5位に下げてしまった。
195 名前:サイドストーリーIII-29 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時28分28秒
「ありゃ、いかんなぁ」
中澤は解説の立場も忘れて言う。
2人分のスペースしかないブースにアナウンサーと解説者、そして中澤が無理に座っていた。
解説者は昨晩いっしょに呑んだ相手。酒臭い2人にアナウンサーが困惑していた。
「後藤ですが、スタート良くなかったですね」
「そうですね。リスボアでも抜かれて、ちょっと失敗ですね」
アナウンサーと解説が言う。
後藤のスタートの技量は可もなく不可もなしといったところ。
無難に決めるときが多いが、気負いすぎると失敗することが多い。
もっとも、それを帳消しにするほどの速さを持っているのだが。
「まぁ、まだ序盤やし、第2ヒートもあるから、大丈夫」
本心を言う中澤。今回の中澤はむしろ偏った解説を期待されていた。
196 名前:サイドストーリーIII-30 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時30分44秒
リスボアを抜けた後は、テクニカルな山側区間。
ここでは後藤が速い。マクイガワに迫る。が、抜くまでには至らない。
そのままヘアピンで狙うも、マクイガワはブロックしてくる。
ヘアピンを抜けると再び海側の高速セクション。
直線で離されないようにしなくては、後藤に勝機はない。

前を行くクラキネンもリードを築く速さは持っていない。
最終コーナーの進入、ハマサキロッシがウタダッシュをかわす。
先頭の3台の速さは拮抗しているようだ。

PPのクラキネンがオープニングラップを制する。
後方も僅差で続く。ハマサキロッシ、ウタダッシュと、下馬評通りのメンツだ。
マクイガワの後ろには後藤と松浦という二人の初挑戦組が続く。
197 名前:サイドストーリーIII-31 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時32分42秒
しかし、2周目のリスボアコーナーでアクシデントが起きる。
同時に進入した2台が譲らず絡む。後方のマシンもよけきれない。
たちまち6台が巻き込まれて大きな事故になる。これで赤旗中断となる。

中断の後に再びグリッドにつくマシン達。アクシデントの影響で出走できない選手もいる。
が、前の方は変化なし。後藤のグリッドが後方になったくらいだ。
再スタートはローリングスタートで行われる。
198 名前:サイドストーリーIII-32 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年01月27日(日)02時33分35秒
マクイガワの後ろについてフォーメーションラップをこなす後藤。
グリーンのマシンにスポンサーロゴが映える。マクイガワのスポンサーであるお茶の会社だ。
後藤は飲んだことがあるが、どうしてもここのお茶をおいしいと思えなかった。
その前のウタダッシュのマシンは携帯電話会社のブラック基調のカラーリング。
日本でもサービス展開しているが、音質が悪いので後藤は嫌いだった。
さらにその前、ハマサキロッシは目に鮮やかなイエローのマシン。
ノーズにヒョウの顔面が描かれているが、そのセンスは理解しかねる。
そして、先頭はフィンランドウォッカのロゴに彩られているクラキネン。
野暮ったいブルーはフィンランド国旗をモチーフにしているらしい。

後藤の前にいるのは、先頭から青、黄色、黒、緑の4台。
スタートの直後がチャンスではあるが、一気に4台の前に出るのは不可能に近い。
しかし、やらなければならない。後藤は、覚悟を決めた。
199 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月27日(日)05時08分09秒
長くとも読み応えがあるから(・∀・)イイ!!
と、作者さんの愚痴にレスする。
200 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年01月30日(水)21時31分57秒
>>199
お世辞でもそう言われると心強いですな。

学業の方は一段落したので、土曜か日曜に更新したいと思います。
そのときは、頑張ってマカオGP編を終わらせられたらいいなぁ、と思ってます。
201 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年02月10日(日)20時03分48秒
おぉ、ついに復帰したのね〜

202 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年02月10日(日)20時05分30秒
ホントに書ける!!

これからお出かけなので、帰ってきたらマカオGPの続きアップしますわ。
203 名前:サイドストーリーIII-33 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時23分19秒
整列したまま加速して最終コーナーを回って行く隊列。
スタートに備え、各車の間隔は小さくなる。
奥歯をグッとをかみしめて、加速する後藤。
「行ける!」
後藤にはラインがはっきり見えた。
各車コントロールラインを過ぎて、再スタートが切られる。
後藤のダッシュが素晴らしい。絶妙のタイミングで抜きにかかる。
マクイガワを左から、そして返す刀で右からウタダッシュを抜く。
鮮やかな、絵に描いたようなオーバーテイクが決まる。
「ええでごっちん!行けや!」
中澤が、中継だということを忘れて叫んだ。
204 名前:サイドストーリーIII-34 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時25分22秒
後藤に迷いはなかった。続くリスボアの進入、ハマサキロッシのインを突く。
ハマサキロッシ、予想外の展開に驚く。それでもインを閉めようとする。
あきらめない後藤。フロントタイヤがハマサキロッシのサイドポンツーンに触れる。
後藤は至って冷静。押し出すつもりは全く無かった。
軽く触れたのに構わず、強引に割り込んで並ぶ。
動揺するハマサキロッシは完全に虚をつかれていた。わずかな抵抗しか出来ない。
インを取られたハマサキロッシは、このコーナーから後藤の後ろ姿を拝むことに。

勢いをそのままに、山側セクションでクラキネンを追いつめる後藤。
そして、クラキネンを最終コーナーで抜き去る。
ついに、後藤がトップに立つ。
205 名前:サイドストーリーIII-35 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時26分17秒
後藤の集中力は切れない。
そこから素晴らしい走りを見せる。
前方に他車がいないときの後藤は強烈に速い。
先頭に出てリードを広げるのは、後藤の必勝パターンである。
逆に、混戦になると今ひとつ強みが出ないという克服課題もある。

「すごいですよ!1秒も速い」
ラップタイムを見てアナウンサーが驚く。
後藤が刻んだファステストラップは、後続を突き放す速いタイム。
それも、一発ではない。安定して速いのだ。
みるみるうちに後藤のリードが広がっていく。1周ごとにほぼ1秒ずつ広がっていく。
勢いも衰えない。走りは鋭さを増していく。
「まさに”カミソリ後藤”ですね」
解説者が落ち着いた口調で、古いあだ名を言う。
後藤がレーシングカートに乗っていた頃についたものだ。
しかし使い古されてはいるが、間違っていない。
むしろ、当時よりもふさわしいかもしれない。
206 名前:サイドストーリーIII-36 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時29分55秒
15周の第1ヒートは、終盤に入っていた。
先頭は後藤真希。再スタート直後に先頭に立ってからは猛ダッシュ。
一時8秒まで広がった差も、後半は後続のペースアップもあり5秒まで縮まっていた。
しかし、5秒という差は勝つのには充分であった。
後半以降は余裕を持ってレースをコントロールする後藤。
危なげない走りでゴールへ向かって走っていた。

一方、後続は後藤を追えずに混戦気味だった。
クラキネンを先頭にハマサキロッシ、ウタダッシュ、マクイガワ、松浦が続く。
しかし、マクイガワが最終コーナーでクラッシュ、それを避けた松浦はスピンしてポジションを落とす。
ハマサキロッシはクラキネンの攻略に手こずり、前に出たのは残り3周のところ。
ウタダッシュも前をうかがうが、クラキネンがゴールまで守りきる。
207 名前:サイドストーリーIII-37 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時31分07秒
第1ヒートで優勝したのは独走の後藤真希。
ゴールを駆け抜けるも、笑顔やガッツポーズは出ない。
まだ喜べない。第2ヒートが残っているからだ。
後藤から遅れること約5秒、2位にはハマサキロッシ。
3位クラキネン、4位ウタダッシュが僅差で続く。
さらに少し離れて5位はヤイコネン。
このあたりまでが、総合優勝の可能性を残すポジション。

マクイガワはクラッシュでリタイヤ、松浦は追い上げるもトップから大きく遅れた15位。
予選の快走で期待されたこの2人は、残念な結果に終わった。

どちらにしても、後藤の5秒というリードは大きい。
圧倒的に有利な展開なのだ。
208 名前:サイドストーリーIII-38 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時40分20秒
興奮して放送席から後藤のピットへ駆け出す中澤。
「ごっちん!やるやないか〜」
後藤に抱きつく中澤。
「やめてよ〜。レースはまだ終わってないんだからね」
中澤よりも冷静な後藤。
マカオGPに、そしてハマサキロッシに勝つことに集中していた。

インターバルをおいて再びグリッドに並ぶマシン。
第1ヒートの結果順に、後藤、ハマサキロッシ、クラキネン、ウタダッシュと並ぶ。
事実上の決勝となる第2ヒートのスタートが迫っていた。
後藤は第1ヒートの5秒リードが効いて、先頭でゴールする必要はなかった。
5秒以上前に他のクルマがいない状態でゴールまで走りきれば、総合優勝なのだ。
今日の後藤の調子からすると、難しいことではないと思われた。
209 名前:サイドストーリーIII-39 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時52分08秒
フォーメーションラップが行われる。
各車がゆっくりとコースをまわり、再びホームストレートに戻ってくる。
順にグリッドに静止する。先頭はもちろん後藤。スタートで先頭を守りたい。展開が楽になる。
ハマサキロッシら後続はここで前に出たい。第1ヒートのように後藤を逃がしたくない
それぞれの思惑が、グリッド上で交差する。
泣いても笑ってもこれで決着。ただひとつしかない栄光へ向けてマシンが吠える。
シグナルが灯り、再び戦闘が開始される。
210 名前:サイドストーリーIII-40 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時55分54秒
好スタートを決めたフロントロウの2台。
後藤とハマサキロッシの伸びがいい。
グリッド位置が前方なだけ後藤が少し有利か。しかし、ハマサキロッシも並びかける。
ハマサキロッシのセッティングは高速の山側区間を重視していた。
そのため、山側狙いの後藤よりもストレートが伸びるのだ。
第1コーナーまでの海側区間で後藤をかわして前に出る作戦を立てていた。

一方、後藤はリスボアのインを警戒していた。
第1ヒートで自分がハマサキロッシをかわしたのと同じパターンを想像していたのだ。
しかし、その読みは外れる。
リスボア手前の、緩い左で並びかけるハマサキロッシ。
後藤はクルマを寄せて牽制するも、守りきれない。
接触を避けた後藤。ここでマシンを壊してレースを失いたくない。

そして、ハマサキロッシが、後藤の前に出た。
211 名前:サイドストーリーIII-41 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)02時56分43秒
リスボアを回る2台。
ハマサキロッシの後方には後藤がぴったりつけていた。
たとえハマサキロッシが前に出ようと、5秒以内についていけば後藤は勝てる。
それは後藤もわかっていた。だからついていく走りに切り替える。
少なくとも、ここまでは理性で走りを制御していた。

「差が開きませんね」
アナウンサーが不審げに言う。
「そうですね、ハマサキロッシのペースが上がりませんね」
第1ヒートの自分のラップタイムに及ばないハマサキロッシ。
後藤もそれにおつきあいしてる。一時は離れた後続も詰めてきていた。
「ハマサキロッシは後藤との差を広げなければならないのですが…」
「ええ、第1ヒートで遅れた分…5秒ですか…それだけタイム差を付けなければならないのですが」
「でも、後藤はこのままついていけばいいんですよね?」
「そうです。5秒以上離されなければ勝てますから」
「かまわん、ごっちん抜いちまえや!」
中澤が割り込み、他の二人が笑みをこぼす。
しかし、中澤の言葉はハマサキロッシの計画を突き崩すいちばんの突破法だったのだ。
212 名前:サイドストーリーIII-42 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時01分16秒
ハマサキロッシは後藤を5秒以上離さなければならないことを、もちろん理解していた
そのうえで、あえてペースを上げていなかった。

第1ヒートの速さを見て、純粋に速さでは勝てないと判断したハマサキロッシ。
そこで考えたのが、後藤の集中力を削ぎミスを誘う作戦。
後藤の前に出て、わざとペースを上げない。
そのときにハマサキロッシの前にいる誰かがペースを上げて逃げれば、後藤は焦るはず。
これが、ベストの状況。
現実はそうもいかない。自分の前に誰もいないかもしれない。
だが、ハマサキロッシはそれも計算済み。
ドライバーという人種は誰かの後ろを走ることが嫌いだ。若くて血気盛んなドライバーならば特に、だ。
後ろについている状態で後藤は落ち着いていられないだろう、と読んだ。
だから、こうして後藤が淡々と後ろを走ってくれているのは、ハマサキロッシにとって好都合だった。
もしも、早いうちに後藤が強引に抜きにかかったならば、展開は変わったかもしれない。
213 名前:サイドストーリーIII-43 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時02分40秒
後藤は今の状況を理解して、受け入れているつもりだった。
他人の後ろを淡々と走るのは好きではない。だが、それが確実な勝利への方法。
無理はしない。絶対にゴールするのだ!、と頭では理解していた。
しかし、後藤の血が騒ぐ。なんかたんない、なんかたんない。
コースを限界近くまで攻めるときに感じる、胸のすくような快感が足りない。
丁々発止、火花が散るようなバトルがもたらす達成感が足りない。
もっと速く走りたい、もっともっと自由に走りたいと。
後藤は第1ヒートで自らが作ったリードに縛られて、葛藤していた。

レースは淡々と進む。
ペースが上がらないハマサキロッシに、ついて行くだけの後藤。
クラキネン、ウタダッシュら3位以下の後続も後藤に迫る。
ミラーに映るようになった後続集団に、後藤の心はさらに乱れる。
214 名前:サイドストーリーIII-44 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時04分12秒
残り5周、レースが動く。
3位の座を巡ってその前から小競り合いをしていたウタダッシュとクラキネン。
山側重視のセッティングを施したウタダッシュがリスボアの飛び込みで前に出る。
クラキネンは海側向けのセッティング。焦らずに譲っておく。
そして、最高速を生かしてストレートで抜き返す。
翌周のリスボア。ウタダッシュは再び抜きにかかる。
今度はインを閉めるクラキネン、譲らない。2台は接触してバランスを崩す。
ウォールに軽くヒットするクラキネン、スピンしかけるウタダッシュ。
バトルの度が過ぎたようだ。2台は先頭からは遅れるが、まだ3位争いは続く。
しかし、これで総合優勝の可能性はほとんどなくなった。

そして、ハマサキロッシも動く。
今までは後藤のミスを待つ消極的作戦だった。
が、残り周回数が少なくなった今、勝利をもぎ取るには自分から動かなければならない。
意を決して、鞭を入れるハマサキロッシ。
残り周回数を考えると逆転は難しいが、可能性が無いわけでない。
そして、後藤を攪乱させて、ミスを誘うという意味もあった。
215 名前:サイドストーリーIII-45 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時05分09秒
ペースアップするハマサキロッシ。
ミラーに映る後藤も離されていない。
2台とも、先ほどよりも1周あたり1秒近く速いラップ。
予選と同じくらい、攻めている。
インをギリギリまで攻め込むハマサキロッシ、後藤も鋭いターンインで応酬。
先ほどまでの様相とは一変して、レースに緊迫感が満ちる。
観客が大きな歓声をあげ、中継席も盛り上がる。
「すごい!白煙を上げてブレーキングする後藤!」
「後藤、離れてません。これでいいです」
「行けや、ごっちん〜」
「ハマサキロッシがまたペースをあげました。この周も速いです…後藤も負けじと速い!」
「両者ともかなり攻めてますね。後藤は焦る必要ないのですが」
「そうです。後藤は5秒のアドバンテージを持っています。無理する必要はありません!」
「でも、第2ヒートも先頭でゴールして優勝を決めて欲しいですよね。ファンとしては」
216 名前:サイドストーリーIII-46 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時06分37秒
まさに、アナウンサーと解説者の通りだった。
後藤はハマサキロッシの作戦に完全にハマっていた。
この場面、後藤は無理に付いて行かなくてもよかった。
ハマサキロッシとの差を5秒以内にコントロールしていればよかったのだ。
しかし、本能を押さえていた理性が、ここでついに吹き飛んでいた。
後藤のドライバーとしての本能が暴れていた。
ハマサキロッシの発言が頭を巡る。
このアマ、目にモノ見せてやるぜ!ヘルメットの中でつぶやく後藤。
ハマサキロッシを、追い回す。

一方、ハマサキロッシは至って冷静だった。
ここまで、単にスローペースで走ってきたのではない。
タイヤを温存して終盤に備えていたのは当然。ミラーで後藤のドライビングを観察していた。
もちろん、後藤が山側重視のセッティングなのも、わかっていた。
ストレートスピードはハマサキロッシの方が速いから、直線では抜かれない。
コーナーを要所要所できっちり押さえれば、守りきれる。
そして、もしそれがうまくいかなくとも…。
ハマサキロッシは微笑を浮かべていた。
217 名前:サイドストーリーIII-47 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時08分14秒
ラップタイムでは上回るものの、ハマサキロッシを抜けない後藤。
ハマサキロッシが勝負所をきっちり押さえているためだ。
ここに来て、金曜の体調不良でコースの走り込みが少ないことが影響していた。
予選アタックなどラップタイムを刻むためのレコードラインは完璧に把握しているが、
ラインを外すオーバーテイクポイントは完全でなかった。
何しろ後藤は今回がマカオ初挑戦である。加えて金曜日の体調不良。
コースを習熟する時間が足りず、自然とオーバーテイクポイントを絞らざる負えなかった。
レコードラインからはずれた路面のうねりなど、後藤が知らない部分が残っていた。
さらに、レースの進行による路面のタイヤかすなどがラインを外すことを邪魔する。
一度インに飛び込んで足下をすくわれて挙動を乱すと、それ以降慎重になる後藤。
それに対して、ハマサキロッシなど他の上位陣は昨年に続く2回目。
この点でも後藤は不利だった。
「後藤、少し焦れてるんでしょうか?」
「さっきからコーナーでインをうかがっているんですが、飛び込めないんですよね」
218 名前:サイドストーリーIII-48 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時10分10秒
後藤のレースキャリアはカートから始まった。
家庭の事情で休日は近くの親戚に預けられることが多かった。
ある日、親戚に連れられて行ったのがレンタルカート場だった。
従兄弟が楽しそうに走行を重ねる中、少女はひとりコースサイドで眺めていた。
そこに寄っていき、話しかける親戚の叔父。
そして、大きなヘルメットと手に軍手、本当は禁止のスカート姿。
少女は叔父に説得されて嫌々ながらカートに乗り込んだ。
「いい?これ踏むとスピードが出て、怖かったらこっち踏むんだよ。大丈夫、ジェットコースターみたいに面白いって」
それだけ言われてコースインすると、一番はじめのコーナーを全開でつっこむ。
当然、くるくる回ってコースを飛び出した。
これが後藤真希の初体験である。
219 名前:サイドストーリーIII-49 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時11分58秒
が、すぐに才能の片鱗を見せる後藤。
他人の後ろについて走り方を覚えると、その日のベストタイムをあっさり塗り替える。
何回かスピンを繰り返したが、それは足がペダルに届かなかっただけ。
その日はレコード更新の記念品を持って帰った。
それ以降、後藤は叔父に頼んで何度となくカート場に連れていってもらう。
初めは渋っていた叔父と母親だったが、カートに乗っているときの明るい表情には逆らえなかった。
たちまち、そのサーキットでは敵がいなくなる後藤。
大のオトナが簡単に引き離される。誰も追いつけない。
それどころか、前を走るマシンは片っ端から抜きにかかった。
単純に、速く走りたい。ただ、それだけ。
スピードの虜となり、マシンを限界まで操ることに喜びを覚えていた。
他人を引き離して独走する勝ちパターンは身に付いたのはこの頃かもしれない。

これだけ派手にしていれば目に付くのも当然。
各地から挑戦者が挑んでくるようになる。そして、それを幾度となく跳ね返す後藤。
サーキットの支配人が後藤の支援を約束するのもその頃。
そうして、さらなるモータースポーツの世界へと羽ばたく。
220 名前:サイドストーリーIII-50 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時12分47秒
残り2周。
ハマサキロッシと後藤はいまだに離れない。
2台はハイペースで連なってコントロールラインを横切る。
ハマサキロッシも余裕が無くなってきていた。
ミラーで見る限り、落ち着きのない動きは後藤が動揺しているのは疑いなかった。
しかし、結果的にはハマサキロッシが予想した様な動きは見せていない。
焦っての単独スピンか、強引な飛び込みによる接触。それらを望んでいるのに。
このままでは、このままでは後藤に栄光を持ち去られる。
ハマサキロッシにはフェラーリとの密約があった。
”マカオGPで優勝すれば、翌々シーズンのレギュラードライバーを確約する”
フェラーリと契約を交わすときに含まれた一文。
長い下積みからここまで這い上がってきたハマサキロッシ。
頂点を極める。ただ、それだけのためにここまで走ってきた。
テストドライバーで満足するほど落ち着いてはいないのだ。

こうなったら、最終手段。
見てろよ。バイザーの奥でほくそ笑むハマサキロッシ。
追いつめられたイタリアンは禁断の果実を手にする決断を下す。
それが、悪魔との取り引きだと知りながらも。
221 名前:サイドストーリーIII-51 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時14分07秒
状況は圧倒的に後藤が有利。だが、後藤もまた、追いつめられていた。
前走車へ接近しすぎたために水温は上昇傾向にあったし、
タイヤかすを拾った足周りは異常振動を起こしていた。
それだけでない。レース展開へのフラストレーションが、そしてハマサキロッシへの憎悪が冷静な判断力を奪っていた。
だからハマサキロッシの黒い思惑を感じ取ることも、出来なかった。

最終コーナーを立ち上がり、ラストラップに突入する2台。
ペースはわずかに落ちていた。
「佐藤琢磨に続く日本人によるマカオGP制覇まで、あと1周となった後藤真希!」
「きっちり、確実に決めて欲しいですね」
「うぅ〜真希〜」
中澤は、泣き出す寸前だった。
222 名前:サイドストーリーIII-52 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時17分57秒
ハマサキロッシは再びペースを落としていた。
それも今度は隙を残したライン取りで後藤をさそっていた。
その罠に気づかずに詰める後藤。
リスボアコーナーでインに飛び込むも届かない。
フロントをロックさせて白煙を上げながらコーナーをクリアする後藤。
「まだいくかぁ後藤!」
苦笑するアナウンサー。
「大人気ないですね。やっぱり、先頭でゴールしたいんでしょう」
解説者も苦笑気味に答える。

ミラーに映るブレーキスモークを見て、ハマサキロッシは大声で笑いそうになった。
いや、あまりにも思惑通りに事が進むので実際に笑っていた。
山側区間を抜ける。最後のヘアピンでも突っ込もうとする後藤。
だが、路面の汚れを気にして抜くまでに至らない。
ヘアピンを過ぎると、3本のストレートを二つの直角右コーナーで繋いだ海側区間だけ。
「後藤真希!マカオGP制覇はもう、もう確実と言ってもいいでしょう!」
妙に興奮してしゃべるアナウンサー。
勝負事は最後の最後、決着がつくまでわからない。
だがこの時、レースを見ている誰もが後藤の勝利を確信していたといってもいい。
それほど後藤が有利な状況だったのだ。
223 名前:サイドストーリーIII-53 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時20分39秒
その瞬間を、映画のスローモーションのように後藤ははっきりと覚えている。
コーナーをひとつ抜け、最終コーナーへと続くストレートに入る。
ハマサキロッシはコーナーでミスしたのか、脱出速度が乗っていない。
ためらわず詰めて、さらに抜こうとする。
次の、そして最後の最終コーナーのインを取りたい。だから右、と決める。
少し左にマシンを寄せて、すぐに右に切り返す。
後藤のフロントウイングが、ハマサキロッシのリアタイヤに並ぶ。
その時、ハマサキロッシの視線をミラー越しに感じて、ハッとする後藤。
目が合う後藤とハマサキロッシ。そして、その意図を感じて戦慄が走る。
ハマサキロッシがハンドルを切るのと、後藤がアクセルを戻すのが同時だった。
リアタイヤが、フロントウイングを跳ね上げる。
衝撃を受けるマシンを押さえ込もうとする後藤。
だが、フロントのダウンフォースを失ったマシンをコントロールできない。
吹き飛んだ後藤のウイングが、ハマサキロッシのリアウイングを破壊する。
右から白い壁が迫り、左を黄色い破片がかすめた。
そして、後藤の目に映っていたのはそこまでだった。
なぜなら、ウォールに激突する衝撃に耐えるため目をつぶったから。
224 名前:サイドストーリーIII-54 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時22分20秒
「はぁ…あたし、なにやってるんだろ」
無意識のうちにコクピットを出て、コースサイドに脱出した後藤。
しばらくは、何が起きたのか理解できないでいた。
フロントサスがひしゃげたマシンと、コースにあふれる歓喜のコントラストがたまらなく胸を締めつけた。
ため息をひとつつくと、悔しさがどんどん湧いてきて涙がにじんできた。
バイザーが曇るが、ヘルメットを脱ぎたくない。
奥歯をギッとかみしめて耐えようとするが、涙は止まらない。
やがて、歓声の波がこちらに向かってきた。その中心にはリアウイングの無いマシンが。
一瞬、ハマサキロッシと目が合う。が、どちらもすぐに視線を逸らす。
疲労が全身を襲う。後藤はその場にへなへなと座り込んだ。

「真希!真希!大丈夫?」
乗ってきたスクーターの後席から飛び降りて、後藤の元へ駆け寄る中澤。
中澤の顔を見た後藤は、ついにこらえきれずに声を上げて泣き出す。
「よしよし。しゃーないなぁもう」
その胸で小さくなった後藤を暖かく受け止める。
その姿は、驚異的なスピードでマカオGPを制する寸前だったドライバーとは思えないほどだった。
225 名前:サイドストーリーIII-55 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時24分43秒
帰国した後藤を出迎えたのは、予想以上に冷たいマスコミだった。
空港で無遠慮に突きつけられるマイクをかき分けて進む後藤。
メディアは後藤のことを、精神面が弱いだの、追突する危険なドライバーなどと大いに批判した。
勝てなかったことも、醜態を晒したのも事実。
だが、はじめてのマカオで快走し、ファステストラップを記録したのも事実。
しかし、そのことは専門誌で少し触れられているだけだった。
226 名前:サイドストーリーIII-56 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時25分32秒
そして、なによりハマサキロッシに”ぶつけられて”レースを失ったことも、事実だった。
しかし、コース上での出来事とは時として正しく理解されない。
大きなタイトルが関わったり、政治的な力が働いたときは特に、だ。
アイルトン・セナとアラン・プロストが鈴鹿で起こした騒動しかり。
今回も、勝てば官軍とはこのこととばかりに事態は進む。
ハマサキロッシは相変わらずだった。
後藤のことを追突する危険はドライバーと叩くのはもちろん、レース中に何度も危険を感じていたと告白する。
たしかに、リスボアで接触したが危険ではなかった。だが、それは後藤だけが知る真実。
世の中の真実は、ハマサキロッシによって作られていると言っても過言ではなかった。
そして、タイミングよくフェラーリのお家騒動が勃発。
イギリス人のセカンドドライバーが解雇され、急転直下ハマサキロッシが格上げされることに。
もちろんこの騒動が仕組まれたものだと気づいたものは、少なくなかった。
227 名前:サイドストーリーIII-57 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時27分02秒
数日後、中澤は後藤の親が経営する店を訪ねていた。
日本酒をあおる中澤。後藤もおつきあい程度に杯を傾けていた。
場が落ち着いたところで、中澤はウィリアムズからオファーと、それを隠していたことを話して詫びた。
そして、そのオファーが先日キャンセルされたことも伝えた。
「ふーん。そうだったんだ…」
後藤の反応は素っ気なかった。
「すまんなぁ、ごっちん」
「いいんだよ裕ちゃん。知ってても結果は変わらなかったよ」
「そっか。で、どうするん?来シーズンは。早いところ決めないとあかんちゃうの」
街は師走特有の、浮き足だった雰囲気に包まれていた。
しかし後藤の周りだけはいつものようにゆっくりと時間が流れている、そんな気がした。
「うん。もう一回日本でやり直そうと思って。まだごとーも青いということがよくわかりました!」
おどける後藤。しかし、またどこか痛々しい。
228 名前:サイドストーリーIII-58 〜後藤真希、マカオに見参〜 投稿日:2002年02月11日(月)03時28分55秒
「今まで、速ければいいと思ってた。そりゃ速くなければダメなんだけど、同時に強くなきゃいけないってね、実感したよ」
お猪口をグィっとあおる後藤。中澤は相槌を打つだけ。
「だから、今度は強いごとーを見せます〜。だから裕ちゃんもお手柔らかにね」
「ウチは負けへんで〜。だってもう走らへんもん」
中澤はまだ引退発表をしていなかった。設立準備中のチーム・ナカザワの関係者以外では口外するのはこれが初めて。
「そーなの?」
「そうやで。ウチにもいろいろ思うところがあってなぁ…ってしんみりするなや。せっかくの酒がまずくなるで〜」
「じゃ、裕ちゃんの新しい門出を祝ってかんぱ〜いぃ」
「乾杯!」

こうして、新旧のチャンピオンの決意を包んだ夜は更けていくのだった。
229 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月12日(火)03時03分36秒
永かった、長かったけど(・∀・)イイ!!(世辞でなく
それにしても
ハマサキロッシ、コロ(自粛

結果より高みに向かうと…
230 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年02月16日(土)01時57分36秒
本当は今晩更新しようと思っていたんだけど…できなくてすみません。
明日できるようにがんばろっと。

>>229
レスどうもです。
ハマサキロッシは、スタンドで座ってる観客に
暴言を吐くことでも有名なドライバー、って設定です(笑
231 名前:第4戦・美祢-01 投稿日:2002年02月17日(日)01時32分51秒
シリーズは早くも折り返し。山口県のセントラルパーク・MINEが第4戦の舞台。
今回はレース前に2つのニュースが飛び込んできた。。
まずは、チーム・カントリーが念願のシャシ変更を行うことが発表された。

F・娘。そしてFポンのシャシを供給している3社は、いずれもイギリスの会社。
新興で少数派のGフォースは別にして、近年はローラとレイナードがシェアを2分していた。
しかし、レギュレーション改正でともに完全新設計となった昨年型には大きな性能の差があった。
それは、解説者をして、”ママチャリとマウンテンバイク”と言わしめるほどの差。
開幕戦から表彰台を独占するレイナードシャシ。ローラユーザーは6位入賞さえ困難だった。
が、絶え間ない改良で終盤にはほぼ互角に走れるように。最高位は吉澤が3位争いの末に獲得した4位。
しかし、ローラ社が失った信頼は最後まで取り戻せなかった。
当然のように、今シーズンはレイナードに切り替えるチームが続出することに。
232 名前:第4戦・美祢-02 投稿日:2002年02月17日(日)01時35分13秒
その中で残ったローラ勢は、チーム・カントリーの2台とチーム・フラットアウトの1台、計3台のみ。
前者は契約の問題で、後者は予算の関係で変更ができなかったのだ。
しかし、カントリーの契約が6月末で解除となるのを受けてレイナードへ変更。
これでやっと、同じ舞台で戦うことができるようになったチーム・カントリー。
田中チームオーナー兼監督の力の入れようもすさまじく、寺田と交渉して特別措置を受ける。
それはレイナードシャシに慣れたドライバーをレンタルしてのテスト、という異例の措置。
ここで選ばれたのが、チーム・ゴナツヨの石川梨華。
レイナードの経験こそ浅いが、レースでの粘り強さとセッティング能力は高く評価されていた。
十勝サーキットまで馳せ参じてりんねとあさみを軽く凌駕した石川、面目躍如を果たす。

そして、もうひとつ大きなニュースがチームを駆けめぐっていた。
233 名前:第4戦・美祢-03 投稿日:2002年02月19日(火)00時53分36秒
それは、市井紗耶香の復帰だった。

突如として発表された復帰の事実。
それを伝えたのは、FAXに書かれた数行の文章のみ。
発表を疑う関係者も出て来て、ちょっとした騒ぎにまでなる。
そして、迎えたレースウイークの初日。
人々の疑問を吹き飛ばし、ファンの期待に応えるかのように現れる市井。
中澤とともにピットの前でマスコミの写真撮影に応じる。
チーム・ナカザワから安倍のチームメイトとして参戦する市井、ゼッケンは20。
市井は以前よりも大人びた精悍な表情。身体もシェイプされており体力の問題はなさそうだ。
カメラマンの要望にひとつひとつ笑顔で応えていく市井。おだやかな雰囲気で撮影は進んでいく。
234 名前:第4戦・美祢-04 投稿日:2002年02月19日(火)00時55分08秒
初年度の最終戦から参加した、いわゆる”2期メン”と呼ばれる3人のドライバー。
保田圭、矢口真里がそれに該当する。
しかし、2期メンにはもうひとり、ひときわ注目を集めていたドライバーがいた。
それが、市井紗耶香である。
3人の中ではもっとも頼りなく、ドライビングも繊細すぎた。
しかし、実戦に揉まれるとめきめきと力を付けて、2期メンの中で頭ひとつ抜けた存在に。
そして途中加入した期待の新人、後藤真希をチームメイトとして迎えると、才能はさらに開花する。
後藤加入後のわずか5戦で、2人の同時入賞は1-2フィニッシュ1回を含む4回。
市井の教育係としての資質も評価され、同時に市井も輝きを増していった。
抜群のコンビネーションを見せる2人に他チームはお手上げ状態だった。
235 名前:第4戦・美祢-05 投稿日:2002年02月19日(火)00時56分49秒
しかし、それは長く続かない。
昨年の第2戦・富士、市井−後藤で1-2フィニッシュを飾った後の発表。
”市井紗耶香は先のレースをもってF・娘。シリーズを脱退する”
絶好調での脱退発表。ポイントランキングでも首位。なのに…関係者は悔やむ。
後藤は、人目もはばからず泣いた。いつもは喜怒哀楽が少ない後藤がである。
脱退の理由は、興味を持ったレーシングマシンの開発・研究の方面へ転身するため、だった。
しかし、真相は契約不履行や不祥事などではないのかと様々な噂が飛び交った。
ともあれ市井紗耶香が次のレースから走らないことは変わらない事実。
ポイントリーダーがいなくなったその後のシリーズは、混戦になる。
脱退直後の第3戦で初優勝を決めた後藤は、市井の幻影を追いかけるようにがむしゃらに走っていた。
その速さは圧倒的。しかし、自分のパターンを崩した場合にはミスを連発。
そんな両刃の走りを見せながらも、最終戦でも優勝した後藤がタイトルを獲得した。
「市井ちゃんのおかげで獲れたチャンピオンです!」
これが、シーズン終了後の表彰式での後藤の言葉だった。
その裏で、今年は市井と後藤のシーズンだったよと関係者が苦笑した。
236 名前:第4戦・美祢-06 投稿日:2002年02月19日(火)00時58分16秒
おだやかな雰囲気で進んだ撮影から一転、セッションに入るとピットは緊張に包まれていた。
それはゼッケン1と20のクルマが生み出していた。
20の一挙一動に、マークするように動くゼッケン1。その動きは、偶然には見えなかった。
しかし20のドライバーは動じない。さすがに監督の中澤は苛立っていたが。
むしろマークしている1のほうが余裕がなかった。何かに迫られている…そんな感じだ。
その表情はとても昨年のチャンピオンに見えない、ゼッケン1の後藤真希だった。

予選も同じ状況が続く。市井と同じタイミングでコースインする後藤。
市井は意に介せず走行、アタックしてタイムを出す。その走りは以前のようにか細いものでない。
少し大胆になった走りに中にも繊細で丁寧なコントロールを垣間見せる。派手さはないが確実に速い。
その後方から、後藤も続いてアタック。
しかし後藤のクルマは2日間を通じて動きに安定感がない。
予選中にセッション中断の原因となるスピン1回を含む5回のミス。最悪の状態だった。
237 名前:第4戦・美祢-07 投稿日:2002年02月20日(水)11時10分37秒
日曜日、決勝レースのスタートを前にして各車グリッドに並ぶ。
PPを獲得したのは前戦富士で優勝したランキングトップの安倍。ほぼ1年ぶりのPPは復活の兆しか。
隣り合わせの2番手には前回富士で初PPながらスタートできなかった悲劇のヒロイン、吉澤ひとみ。
3番手には復帰で話題を集めた市井紗耶香が入る。いきなりの予選でこの順位は評価できる。
美祢で優勝している矢口真里、中低速コースの美祢を得意とする加護亜依、辻希美と続く。
Gフォースシャシに苦しむミカが7番手。富士で初表彰台を達成した石川は8番手だ。
怒涛の追い上げを見せた富士から一転、不可解な行動と多くのスピンを見せた後藤は9番手に沈む。
決勝ではどうであろうか。
238 名前:第4戦・美祢-08 投稿日:2002年02月20日(水)11時13分11秒
毎年、なにかが起きると言われる美祢のレース。
Fポンでは日本人ドライバーがなかなか勝てなかったり、ルーキーが初優勝したりと様々なドラマが起きてきた。
F・娘。では昨年が美祢での初開催。
昨年はリタイヤやアクシデントが多発した荒れたレースになり、混乱を乗り切った矢口真里が自身の初優勝を決めた。
今年も昨年と同様の快晴。天気予報は梅雨明け直後の猛暑、それも今年一番の気温を報じていた。
その予想通り日差しは強く、路面温度もじりじりと上昇していた。マシン、ドライバーともに厳しいだろう。
フォーメーションラップをこなした各車がグリッドに戻りスタートを待つ。
だが、シグナルが点灯する前に16番手の紺野がエンジンストール、もう一度仕切り直しにになる。
早くも荒れる予感。慌ただしく準備が進められ、ふたたびフォーメーションラップが開始される。
239 名前:第4戦・美祢-09 投稿日:2002年02月20日(水)11時15分32秒
再びグリッドに並ぶ選手たち。スタート遅延の原因となった紺野は最後尾に並んでいた。
高鳴るエンジン音、注目が集まるシグナル。
PPの安倍が、2位グリッドの吉澤が、そして全車が一斉にスタート。1コーナーへ向けて飛んで行く。
ダッシュを決めたフロントローの2台。吉澤が一度前に出るが、コーナー進入で安倍が奪い返す。
後方では少し遅れた矢口がアウトから無理なラインで突っ込むが、イン側の石川、辻も譲らない。
行き場を無くした矢口はダートに片輪を落としながらコーナーをクリアして、順位はさらに落ちる。

このところ良いスタートを切れなかった後藤は、久々の好スタートを決めていた。
スタートダッシュで石川と辻、遅れた矢口を抜き去り、コーナーでは加護をインから料理。
早くも市井、ミカに続く5番手に浮上だ。さすがにチャンピオンの貫禄、勝負強い。
オープニングラップは安倍、吉澤、市井、最終コーナーで入れ替わった後藤とミカ、加護の順。
だが、各車の差は小さい。まだまだレースの展開は予想できなかった。
240 名前:第4戦・美祢-10 投稿日:2002年02月21日(木)23時58分41秒
動きは後方から起きた。
始まりは、些細なアクシデントから。
5周目に12位争いをしていた飯田圭織とりんねが第2ヘアピンで接触する。
が、2台はスピンしてコース上に止まったためにセイフティカー導入となる。
そうなると、開幕戦同様、各車このタイミングでタイヤ交換を済まそうとする。
セイフティカーが出ている間のピットインがタイムロスが小さい。それはどのチームも承知している。
ここで真っ先にピットに入ったのは石川梨華。
5周目の終わり、コースに出るセイフティカーと入れ替わるようにピットイン。
ほかのクルマは作業の準備ができていないためピット入り口をスルー。次の周でピットインせざる負えない。
一方、石川は無難に作業終えてコースへ復帰。見かけ上は最後尾だが、実質的には首位だ。
次の周から各車がピットインをする中、ストレートを駆けぬける石川。
ピットインが落ち着いた時、石川の前にいるのはセイフティカーだけとなる。
そう、トップだ。
241 名前:第4戦・美祢-11 投稿日:2002年02月22日(金)00時04分42秒
絶好のタイミングでピットインした石川。
しかし、これは偶然の結果だった。
このレース、調子が上がらない石川はスタートでも出遅れてしまう。
そのまま後方のカントリーのあさみとバトルを始める。皮肉にも自分が十勝で手ほどきした相手。
理不尽さを感じなからもあさみと競っているうちにミス。スピンして最後尾付近まで順位を下げてしまう。
しかもこのスピンでタイヤも痛めてしまい、ピットに交換を要求する。
普通ならこれで上位進出は絶望的なのだが、この日の石川には運があった。
タイミング良く飯田とりんねのアクシデントが発生、セイフティカーが導入となる。
要求したピットインが偶然にもセイフティカーのタイミングと重なったのである。
その結果、石川は労せずして首位へ浮上する。
本人も予想外な展開に戸惑うほどであった。
242 名前:第4戦・美祢-11 投稿日:2002年02月22日(金)00時07分46秒
8周目にセイフティカーが引っ込み、ローリングスタートで9周目からレース再開。
ペースラップの間に全車がタイヤ交換を完了していた。
先頭から石川、安倍、吉澤、市井、後藤、辻が入賞圏内の順位。
だが、これまでの差は無くなっている。それぞれ、チャンスは広がる。
再スタートをを大切にしたいのはみんな同じ。前のクルマの動きに集中する。
コントロールラインを横切って、再スタート。
石川が好スタートを決め、集団は縦に長くなる。大きな順位変動は無い。
そのまま逃げる石川と僅差で追う安倍。吉澤は1コーナーの飛びこみで市井にかわされた。
後藤も辻に抜かれて後退する。後方の集団は乱れたまま第1ヘアピンに突入、新垣里沙が押し出される
243 名前:第4戦・美祢-13 投稿日:2002年02月22日(金)00時13分11秒
灼熱の太陽がドライバーの体力を消耗させ、マシンを蝕んでいく。
7位に上がっていたミカが派手に白煙を上げてエンジンブロー。
同じGフォースシャシで、同じチームのソニンも、ほどなくエンジンが壊れる。
シャシの根本的な問題か、チームでのセッティングミスの可能性も考えられる。
矢口にはギアトラブル。3速と4速を失って力無くピットへ帰ってくる。
ホームストレートでは保田がスローダウン。コクピットから電気系がショートして出火したのだ。
さらに、小川麻琴もエンジンから薄い白煙を引いてストップ。
予選で低迷していた高橋もタイヤの磨耗と暑さが重なりミスを連発、最後はグラベルに沈んだ。
そのほかにもトラブルに耐えながら騙し騙し走っているクルマも少なくなかった。
244 名前:第4戦・美祢-14 投稿日:2002年02月22日(金)00時14分59秒
市井にかわされてからはタイムの上がらない吉澤。
後方からはペースの上がらない辻を抜き返した後藤が迫る。
サバイバルとなったこのレース、吉澤もトラブルと戦いながら走っていた。
ハンドリングが定まらず、アンダーステアが強い。
それに、ブレーキペダルの感触がおかしくてどうしても突っ込みが鈍くなってしまう。
ショックユニットとブレーキフルードがオーバーヒートしていた。
それにしても、前戦富士ではスタートできなかった吉澤に、石川にはミッショントラブル。
昨年までずっとローラを使っていたチームとはいえ、トラブルが多すぎる。
頼むよっ!と叫びなからマシンをコントロールする吉澤。
チームのミスで失うタイムを、ドライバーがコース上で取り返すのはかなり難しい。
逆にドライバーが必死で削ったタイムを、チームの些細なミスで簡単に失ってしまう。
このあたり、モータースポーツがチームの総合戦でもあるところだ。
245 名前:第4戦・美祢-15 投稿日:2002年02月22日(金)00時17分03秒
9位という後方のスタートながら5位まで追い上げた後藤。
だが、後藤もまたマシンの不調に悩まされていた。
前のダウンフォースが不足していて、ダンパーのセッティングも合っていなかった。
コーナーで踊るようにアウトへ逃げるマシンを押さえ込みつつ、走る。
もっともこれはトラブルではなく、セッティング不良によるもの。
その元を正せば、練習走行や予選でメニューをすべてこなせなかったため。
自業自得といえばそれまで。しかし後藤はあきらめずに攻めつづける。
「どうしても、どうしても紗耶香には負けられない…」
後藤はそれしか考えていなかった。
最終コーナーで吉澤の背後に迫り、1コーナーの飛びこみで前に出る後藤。
オーバーランしかかるも、なんとか抑えこむ。
「どうしても、どうしても紗耶香には負けられない…」
後藤の意識が、ゼッケン20に集中する。
246 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月23日(土)02時37分38秒
焦る後藤…
市井の心情がまだ見えぬところがコワヒ。
247 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年02月26日(火)21時54分49秒
個人的なゴタゴタや、参加してた企画とか、
よーやく一段落したので、やっとこさ更新です。

>>264
市井の心情かぁ…あんまり描写してないかも(笑
てきとーに想像してちょーだい…ってダメだよな。
248 名前:第4戦・美祢-16 投稿日:2002年02月26日(火)21時56分19秒
昨年の11月中旬。F・娘。最終戦で優勝、チャンピオンを決定した数週間後のこと。
マカオ行きの準備をしていた後藤の部屋で電話が鳴る。
誰だろこんな夜遅く。マカオに来る裕ちゃんかマネージャーだろうな、と何気なく受話器を取る。
「真希…か」
ハッとする後藤。忘れるはずもない、あの声。
受話器の向こうは、市井紗耶香だった。予想していなかった相手からの電話に戸惑う。
最後のレース、サーキットでまたねと言って別れてから連絡すら取れなくなった相手。
「あっ…どしたの?」
込み上げて来る様々な感情を押さえこんで、穏やかに話す。言いたい事はたくさんあった。
当時、市井の脱退に関する噂は後藤の耳にも届いていた。
噂が本当か嘘なのか、後藤は考えないことにしていた。
そして、それは今も同じ
249 名前:第4戦・美祢-17 投稿日:2002年02月26日(火)21時59分54秒
しばらく沈黙が続く。軽口だったはずの市井が寡黙なのは違和感があった。
「後藤、タイトルおめでとう」
ぼそ、っと市井が言った。しかし、会話が続かない。
後藤も雰囲気を感じて口を開くことができない。時間だけが流れる。
「いちーちゃん…」
意を決して一言を発するが、続かない。
後藤は感情に押しつぶされそうになりながらも、市井の違和感を感じ取っていた。
市井が口を開く。
「マカオ行くんだってな」
「…うん」
何か異様な雰囲気にのまれ、言葉が出てこない。
「せいぜい、世界の広さを実感してくるんだな」
え、なにそれ。後藤は言葉を飲み込む。市井の声が酷く冷たく、残忍に感じられた。
「真希は速いけど、それだけなんだよ。まあ、頑張るんだな」
そのまま、余韻を残したまま切れる回線。
唐突な出来事に何もできず、ただ心乱される後藤。

そして、マカオGPは皮肉にも市井の言葉通りに終わる。
250 名前:第4戦・美祢-18 投稿日:2002年02月26日(火)22時02分05秒
市井と後藤の距離が狭まる。観客も2人の接近に盛り上がる。
マシンの不調もかまわずにハイペースで走る後藤。
その後藤を挑発するかのように、余裕ある走りを続ける市井。
次第に間隔がつまり、テールトゥノーズの状態からバトルになる。
コーナーでインを狙うが、攻めきれない後藤。
一方で市井は後藤に隙を見せない。それも守りの走りでなく、受け流すように。
市井は後藤に追われている感じがなく、マイペースで走っているかのようだ。
連なって走る2台だが、そのラインは微妙に異なる。
ブレーキを送らせてタイムを稼ぐ突っ込み重視の後藤。
対して、繊細なアクセルコントロールでコーナリングスピードを上げていく市井。
コーナーに直線的に突っ込む後藤が入り口でつめるも、脱出速度に勝る市井が出口で引き離す。
お互いの走りを知り尽くしているからこそ続くマッチレースが展開されていた。
251 名前:第4戦・美祢-19 投稿日:2002年02月26日(火)22時06分41秒
モニターを見つめる中澤。
中盤を迎えたところで、安倍が2位、市井が3位という好位置はチームとしては申し分ない状況だ。
監督としては1位である石川との差を詰めつつある安倍に注目していた。
が、それ以上に市井と市井に迫る後藤の動きが心配でたまらなかった。
後藤と市井の間になにかの因縁…少なくとも後藤は因縁だと思っている…があるのは誰もが気付いている。
それが接近している2人の間に何の影響もおよぼさないとは考えられない。
市井に近づいた後藤の走りが生き返ってきたのが、それを如実に物語っている。
中澤が恐れているのはそれがエスカレートすること。
アクシデントという最悪の結末に終わりかねないからだ。
無線のマイクを意識する中澤。しかし、言葉が見つからない。
中澤とて、市井の真意をはっきりと知っているわけではないから。
「はぁ…どないすればええねん…」
ため息をつく中澤。まだまだ青い監督であった
252 名前:第4戦・美祢-20 投稿日:2002年02月26日(火)22時08分22秒
首位争いも動きが出てきた。
先頭を走る石川と、その後を追う安倍の間隔が縮まってきていたのだ。。
安倍がコンスタントにラップタイムを並べるのに対して、タイムのばらつきが大きい石川。
追う立場の安倍は優位に。石川をとらえるべく集中が高まるり、自然とペースも上がる。

石川は疲労で集中が途切れはじめていた。
それに加えて前戦で痛めた手のひらも再び痛む。
もともとスタミナ不足の石川。わかっていながら、思うようにならない自分を呪う。
「安倍さんのような強靱な肉体が私にもあれば、ここでトップの座を守りきれるのに…」
ミラーに映る安倍のマシンを見てつぶやく石川、ネガティブモードに入っていた。
253 名前:第4戦・美祢-21 投稿日:2002年02月27日(水)01時04分50秒
予選時から石川の動きがよくなかったのを覚えていた安倍。
そのため石川が絶妙のピットタイミングで前に出たときも焦らずに追走していた。
石川の走りが鈍るのを百戦錬磨の安倍が見逃すはずがない。
バックストレッチから第2コーナーへの飛び込みで石川がミス、インにつけない。
狙いすましたように、そこへ飛び込む安倍。
アンダーステアでアウトに流れる石川の内側を、安倍がすり抜けていく。
完全に勢いが違う。石川を引き離しに掛かる安倍。
監督の中澤はモニタを見て、よっしゃ!と叫ぶ。
254 名前:第4戦・美祢-22 投稿日:2002年02月27日(水)01時11分25秒
が、物事はそうそう思った通りにならない。
石川はとの差は思った以上に広がらない。
安倍のテールを見て離されまいと決心した石川、ポジティブを連呼しながら追っていた。
引き離せない安倍も少し動揺が走ったのか、シケインで思わずミス。
2・3周ほど前から出ていたブレーキの不調も影響して、スピンアウトしてしまう。
さらに、つめていた石川も安倍を避けきれないでコースアウトする。
グラベルに放り出された2台、安倍は少し動いたもののスタック。
一方の石川は何とか止まらずにグラベルを抜け出して、コースへ復帰する。
首位争いは思わぬ結末を迎えて、優勝の二文字は2人の間をすり抜けていった。

中澤はぬか喜びに終わる。
255 名前:第4戦・美祢-23 投稿日:2002年02月28日(木)19時38分19秒
コースに何とか復帰し、グラベルをまき散らしながら走る石川の脇を抜ける2台。
3位争いをしていた市井と後藤だった。
終盤を迎えたレース、市井が4人目のレースリーダーになる。
市井を追うのは後藤。間隔は小さいが状況は市井有利に傾いている。
その後方、石川は3位のポジションでコースに復帰していた。
後方の4位吉澤との間隔も大きく、マシンの損傷もなくて3位のポジションを守るのは容易か。
吉澤に迫るのは辻希美。美祢のような低速コースを得意とする辻はなんとか吉澤をつかまえたい。
しかし残り周回数を考えると辻のペースでは微妙なところだ。
後方では、納得行くセッティングが決まったとレース前に語っていた松浦亜弥が好タイムを連発していた。
ファステストラップで加護亜依をパスして入賞圏内の6位に浮上。さらに前方の辻を追う。
昨年のマカオGPで好走を見せ、期待の大型新人とうたわれた松浦がようやく本領を発揮したのだ。
256 名前:第4戦・美祢-24 投稿日:2002年02月28日(木)19時39分54秒
市井とチームメイトだった頃を思い出す。
感覚でマシンを仕上げていく後藤に、セッティングの重要性を教えたのが市井だった。
それからは安定して速さを発揮できるようになる後藤。
市井もまた後藤のアグレッシブなドライビングに影響されスタイルを変化させる。
同時に友人としてもサーキット内外で親交を深めて行く2人。
お互いが向上していくのをはっきりと感じていた。
とても濃くて、充実した時間が流れていたあの頃。

後藤にとってはかけがえの無い、あの頃。
しかし電話の向こうの市井は、それをすべてを否定した。
確かに市井の言う通りになったマカオGP。その言葉は正しかった。
でもさ、そんな言い方することないじゃんか…。
今も乱されたままの後藤の心。
だからこそ、ここで決着をつけなければならなかった。
257 名前:第4戦・美祢-25 投稿日:2002年02月28日(木)19時41分45秒
市井の背後を追う後藤。
チームメイトだった頃、後藤は市井にほとんど勝てなかった。
予選タイムやファステストラップでは勝っても、レースでは気が付くと市井が前にいた。
市井がレースの流れをつかみ、勝負所をおさえていることを理解するのはかなり後のこと。
ひたすら速く、だた速く走ることを信条としている後藤とは対極のスタイル。
後ろについた直後は絶対に抜くつもりで走っていた。
それも、あえて力で強引に決着を付けるつもりで。
それが市井に対する礼儀であり、仕返しだった。

が、ここに来て迷う後藤。
市井の言葉が蘇る。
”速いけど、それだけなんだよ”
重なるように、マカオでの出来事がフラッシュバックする。
飛び散る破片、コントロールを失うマシン。そして屈辱。
そして速いだけでなく、強いドライバーになろうと決意した。
でも、本当に強いドライバーはここでどうするの?
抜きにかかるの?それとも、2位のポジションを守るべき?
混乱する後藤。
残り周回が、少なくなっていく。
258 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月01日(金)02時18分06秒
観客としては熱い攻防を観たいが
後藤の決断は?結末は如何に……
259 名前:第4戦・美祢-26 投稿日:2002年03月02日(土)23時31分04秒
松浦がグリーンにマシンを止める。派手に白煙を上げていた。
辻を抜いたのも束の間、エンジンが悲鳴を上げたのだ。
ゴールまで残りあと7周でのエンジンブロー。クルマを離れた松浦が悔しそうに歩き出す。

後藤が決断したのは、同じ頃。
行けるところまで全力で行ってやるさ。
どんな状況でも自分の力を出し切るべし、それが結論。
今回のマシンは完璧ではない。しかし、まだまだ攻め込む余裕は残っている。
見れば、終盤に入った市井もつらそうな挙動をしている。
「見てろよ、いちーちゃん。後藤の強さ見せてあげるからね!」
ストレートで市井の背後のスリップに入る後藤。
それを見て盛り上がる観客席。レースは最後の山場を迎えつつあった。
インに飛び込もうとする後藤。それをブロックする市井。
お互いのマシンのスライドが止まらない。タイヤの消耗も激しい。
第1ヘアピンで市井がミス。インに後藤が飛び込むも前には出られない。
続く第2ヘアピンの進入も後藤が突っ込むも、市井は何とか守りきる。
260 名前:第4戦・美祢-27 投稿日:2002年03月02日(土)23時50分24秒
中澤は手を強く握りしめてモニタに見入っていた。
もちろん、市井と後藤の優勝争いである。
安倍はリタイヤしてしまったが、かわって市井が先頭に立っている。
チームとしては被害が最も小さいパターンだ。市井が逃げ切れれば、だが。
長いブランクで市井にレース勘が戻っていないのではと心配していた中澤。
が、後藤と互角以上のバトルを展開している今、それは杞憂だったようだ。
後藤がタイヤをロックさせて、白煙を上げながらヘアピンに突っ込む。
市井はラインをクロスさせて、スライドを押さえ込みつつ出口でなんとか抜き返す。
「ほんま、心臓に悪いわ…自分で走ってた頃がなつかしいで…」
2台のわずかな動きにいちいち騒ぐ中澤。
金髪の1年生監督は心労でひっくり返りそうになっていた。
261 名前:第4戦・美祢-28 投稿日:2002年03月02日(土)23時52分18秒
ホームストレートを通過して残り4周となる2台。
1コーナー、スリップを使えた後藤が速度に勝り進入で並びかける。
それだけならここまでもあった。
違うのは、ここまでとは逆のアウトから抜きにかかったこと。
動かない状況を打破するために後藤が思い切った。
対して、市井は今までと同じニュートラルなライン取りを崩さない。
ブレーキングからターンインを、セオリーを無視したラインでこなす後藤。
外側に流れる車体を押さえ込みつつ、市井と完全に並ぶ。
が、後藤を意識した市井も同じようにマシンがアウトに流れていた。
急激に接近する2台。中澤に緊張が走る。
262 名前:第4戦・美祢-29 投稿日:2002年03月02日(土)23時55分48秒
なんとかこらえる2台。接触寸前でスライドが止まる。
中澤がため息をつく。2台エントリー初戦で全滅したら幸先が悪い。
2台はレコードラインから大きく外れて1コーナーを立ち上がる。
が、バトルはまだ続く。2台は並んだままで、市井がわずかにリードしている。
バックストレッチを駆ける2台。後藤が位置を入れ替え次のコーナーのイン側を狙う。
続く第2コーナーは25Rと曲率がきつい低速コーナー、しかも下り。
どうしたって速度は落ちるからブレーキングが得意な後藤には有利と言える。
加えて道幅が広くないためラインをクロスさせづらく、これも市井には不利。
自分が有利なのを感じ取った後藤、自信を持ってインに飛び込む。
クリッピングポイントへ一直線に向かうラインで進入する。
ブレーキをこらえてコーナー奥まで突っ込む。視界の脇を流れていく黒いゼッケン20。
ついに市井、ここを守りきれない。
コーナー出口でも市井を押さえる後藤。そのまま、続く第3コーナーへ飛び込む。
263 名前:第4戦・美祢-30 投稿日:2002年03月02日(土)23時59分10秒
やられてもうた…。それが中澤の正直な感想。
金曜・土曜と後藤の走りはよくなかった。それはレース序盤まで同じ。
それを見て後藤はこのレースでマークしなくててもいいとしたほど。
が、市井に近づくにつれて走りを修正してきた後藤。
それが意識したものなのか、無意識の中の本能でなされたものかは定かではない。
どちらにしろ、中澤のチームは後藤の餌食になった事実は変わらない。
脱力する中澤。疲労が色濃い。来週からスポンサー回りが控えている事を思うと、気が重い。

だから、白いゼッケン1がよろよろとピットロードに入ってきても、すぐに理解できなかった。
ピットウォールにいる中澤の後ろを走り抜けて、後藤のピット前に止まる。
「…へ?なんでごっちんがここを?」
怒濤の急展開に、中澤でさえ事態を把握できないでいた。
264 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月03日(日)16時37分13秒
なんだ?なんだ?気になる〜!!

ムリってのは分かってるが・・・中澤も走らせて欲スィ〜(w
265 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月03日(日)17時25分36秒
今日のF1見ました?
266 名前:第4戦・美祢-31 投稿日:2002年03月03日(日)22時59分25秒
市井を抜き去った後の後藤は、引き離せはないものの首位を守っていた。
残り周回数は3周、後藤の勝利はほぼ確定か。誰もがそう思ったときだった。
シケインを抜ける後藤のマシンが不自然にふらつく。
必死にマシンを立て直す後藤。が、クルマ自体が傾いでいる。
右リアタイヤに異変、エアが大量に抜けるスローパンクチャーだった。
市井、石川に抜かれながらなんとかピットにたどりつく後藤。
ピットワークに定評あるフィラのピットクルーが、今回も素早くタイヤ交換を済ませる。
コースに戻った後藤の前を、加護が駆け抜ける。
後藤、なんとかポイント圏内の6位で復帰することができた。
思わぬ展開にスタンドは騒然となる。
267 名前:第4戦・美祢-32 投稿日:2002年03月03日(日)23時03分50秒
出走21台のうち完走10台という過酷なサバイバルレースになった第4戦。
その中で生き残り、そして先頭でチェッカーフラッグを受けたのは、市井紗耶香。
再び激闘の渦の中へ戻ってきた市井、自ら勝利で復帰を祝う。
スタンドの声援が盛り上がる中、ウイニングランをゆっくりと行う。
紗耶香コールが響きフラッグが打ち振られる。ファンは市井の復活をずっと待っていたのだ。

2位には石川梨華。マシンは決まらなかったが、運に恵まれて望外の順位だ。
吉澤ひとみは3位でゴール。今回は光るところはなかったが、ポイントではトップに。
辻希美、加護亜依のやんちゃコンビは仲良く4位と5位で入賞する。
そして後藤はなんとか6位に滑り込んで1ポイントを獲得。
終盤のパンクが無ければ優勝していただろう。しかし、これもレース。
パルクフェルメにマシンを止めた後藤は、予想以上に明るい表情だった。
268 名前:第4戦・美祢-33 投稿日:2002年03月03日(日)23時16分41秒
表彰台に上って、大袈裟に両手を振る市井。
ちょっとわざとらしくて、かっこわるいところは以前の市井そのまま。
それを見たファンがヒートアップして、騒ぎだす。
あわててなだめる市井。それでも、市井の一挙一動にファンが騒ぐ。
吉澤、石川とトロフィーが手渡される。
ともに疲れ切って、なんとか走りきった安堵感に浸っていた。
そして市井。この日最大の声援の中、トロフィーを受け取る。
中澤も手を叩いて祝福する。チーム2勝目のトロフィーは、笑顔で。
269 名前:第4戦・美祢-34 投稿日:2002年03月03日(日)23時23分50秒
表彰式の喧噪の中、後藤は市井のモーターホームの中にいた。
後藤がチーム・ナカザワのピット裏へ回ると、スタッフが案内してくれたのだ。
おそらく、中澤が後藤の行動を予想して気を利かせたのだろう。
裕ちゃんらしいや、とつぶやきながら汗を拭いドリンクを飲む。
エアコンは動き出したばかりで、まだ暑さを追い払えない。
レーシングスーツの上半分を脱ぎ、腰に巻いて縛る。
それでも足りずに、その下の耐火服を脱ぎ、タンクトップ一枚になるとようやく涼しくなる。
部屋の空気は暑苦しいが、気持ちは晴れやかだった。
マカオの時のように重苦しくなかった。

市井とのバトル中は沸き上がる感覚に興奮していた後藤。
そっか、まったくクリーンなバトルだったんだよね。
一回も接触したり、押し出そうとはしなかったものね。
いちーちゃん、後藤を憎んでないのかなぁ…。
ドリンクを飲みながらぼーっと思いをめぐらす。
大切な人との再会する緊張を、覆い隠すように。
270 名前:第4戦・美祢-35 投稿日:2002年03月03日(日)23時26分42秒
市井のファンで外が騒がしくなる。戻ってきたようだ。
スタッフが市井を守るようにしてモーターホームへ誘導する。
市井が扉を開ける。目を輝かせ、立ち上がる後藤。
「いちーちゃん…」
「真希…」
お互いにきちんと向き合うのは、最後のレース以来これが初めて。
コース上でクルマを介した時を除いて、だが。
永遠とも思われる沈黙。が、重く苦しい沈黙ではない。
喜びをかみしめて爆発させる寸前の、歓喜の沈黙。
そして、市井が微笑みながら口を開く。
「いやぁ〜、後藤強くなったね。市井はまいったよ〜」
駆け寄り、抱き合う2人。
前と変わらない、しかし少しだけ距離が遠くなった市井がそこにいた。
後藤は、笑顔のまま泣き出した。
271 名前:F・娘。第4戦 CP MINE サーキット 決勝RESULT 投稿日:2002年03月03日(日)23時33分35秒
F・娘。第4戦 CP MINE サーキット 決勝RESULT
Pos. No.   DRIVER   LAP  TIME    BEST
1   #20 市井紗耶香 48  1:04'03.917  1'17.084
2   #5  石川梨華   48    + 9.008   1'16.901
3   #6  吉澤ひとみ  48    +27.353  1'17.128  
4   #8  辻希美     48    +36.441  1'16.983
5   #7  加護亜依   48    +40.112  1'17.211
6   #1  後藤真希   48   +1'14.162  1'17.103
※MAJOR RETIREMENT:#19 安倍なつみ(LAP 35)
 #14 松浦亜弥 (LAP 42)
※FASTEST LAP:#14 松浦亜弥 1'16.563(31/42) 153.199km/h
※#21がエンジンストールの為、当初のレース距離を1ラップ減の48周レースとなった。
※エントリー追加 第4戦から、NAKAZAWA #20に市井紗耶香

DRIVER'S POINT
Pos. No.  DRIVER     POINT
1   #6  吉澤ひとみ  18
2   #1  後藤真希   17
3   #19 安倍なつみ  16
4   #5  石川梨華   15
5   #20 市井紗耶香  10
6   #55 矢口真里    8
272 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年03月03日(日)23時37分10秒
264 名前 : 名無し読者 投稿日 : 2002年03月03日(日)16時37分13秒
なんだ?なんだ?気になる〜!!

ムリってのは分かってるが・・・中澤も走らせて欲スィ〜(w
265 名前 : 名無しさん 投稿日 : 2002年03月03日(日)17時25分36秒
今日のF1見ました?
273 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年03月03日(日)23時51分35秒
…上の272は完全に私のミスによるカキコです(泣
まぁ、自分のスレだしいいや。

美祢のレースまで終了しました。
まだスレサイズに余裕ありそうですが、次回からはスレに移行したいと思います。
後ほど、こちらでも報告しますのでよろしくです。

>>264
姐さんも走らせるつもりはもちろんあるんですよ。実は姐さん好きだし(笑。
中澤メインの話も書いてて、そこそこ進んでいたのですが…。
片山右京がテレビでパリダカの話してて、それ聞いちゃったら書けなくなっちゃいました。(笑

そんなわけで、姐さんの活躍はもうちょっと待っててください。

>>265
見ましたとも。
トヨタVSミナルディに興奮してました。
…セリカの頃からのトヨタファンなもので(笑

始めは、F1開幕までにこの話を終わらせようと思っていたのですが…
まぁ、そういう日もあるよね(笑。

ということで、これからもよろしくです


274 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年03月06日(水)23時56分21秒
新スレ立てました。アドは↓です。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=gold&thp=1015426332&ls=25

あちらはサイドストーリーIVから開始です。
お話は、みっちゃんの光と影…そんな感じかな。
275 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年03月12日(火)16時21分53秒
…アレなんですかね、シーズン始まったからこんな空想話見向きもされないのかなぁ、
とつぶやいてみる。
276 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年04月12日(金)11時20分43秒
他の作品を参考にして、ショートカット作ってみました。
これで少しは読みやすくなるかな?
…元々読みにくいってのは知ってるけどさ(汗

>>4-7  プロローグ(というか解説)

>>100  エントリーリスト(開幕戦)

>>8-51  開幕戦・鈴鹿

>>53-63  サイドストーリーI 〜彼女がアレを嫌いな理由〜

>>65-89  第2戦・もてぎ

>>90-111  サイドストーリーII 〜蒼いスポーツカーの女〜

>>113-157  第3戦・富士

>>167-228  サイドストーリーIII 〜後藤真希、マカオに見参〜

>>231-271  第4戦・美祢

>>161-165  …おまけで姐さんとなっち、いしよしの雑談
↑見なくていいよこれは。消し去りたい(泣

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