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明日のわたしが見る夢は・・・
- 1 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時23分49秒
- 中澤脱退もの、ていうか脱退後の娘。の話を書きます。
銀でも書いてるんで、良かったらそっちの方もヨロシクお願いします。
- 2 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時25分03秒
- やっぱり裕ちゃんがいなきゃダメなんだ・・・
何度目だろう、こんなことを考えるのは・・・
- 3 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時26分13秒
- 「もう、いい加減にしてよ! よっすぃーにあたしの何がわかんのよ!」
「わかんないよ!ごっちんの考えてることなんか!」
「じゃあほっといてよ!」
「そんなんで片付けられる問題じゃないじゃん! あんな態度で収録に出てさ!
ソロデビューしてやっぱり天狗になってんじゃないの?」
「はっ? 天狗になってるって? 自分が前に出れないからってひがんでんの?」
「ちょっと、今、何て言ったの?」
「あれっ? やっぱり気にしてたんだ〜。 ゴメンね〜、言っちゃた〜」
「アンタってホント、サイテー!!」
「止めなよ、2人とも」
「梨華ちゃんは黙っててよ!」
「・・・よっすぃー・・・」
- 4 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時26分45秒
- まただ・・・。私はリーダーなのに何もできない。ただ遠くで見てるだけ。
『ヤグチ、後は頼んだで』
そう言われたはずなのに・・・、
ホントにサイテーなのは私だ・・・。
- 5 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時27分19秒
- 4月15日のコンサート最終日で、裕ちゃんは脱退し、
私達、モーニング娘。は9人になった。
いつも私達の中心にいた裕ちゃんがいなくなって、私達の心は不安でいっぱいだった。
でも、それとは裏腹にモーニング娘。の活動は順調に進んだ。
そう、最初の内だけは・・・・・・。
- 6 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時28分55秒
- 5月
私達のミュージカル、LOVEセンチュリーが始まった。
連日続いたミュージカル、お客さんは常に満員で大盛況だった。
ミュージカルには裕ちゃんも出演していたので、毎日私たちは裕ちゃんに会った。
裕ちゃんはモーニング娘。とは楽屋が違ったけど、
ほとんどの時間を私達の楽屋で過ごしていたので、10人のモーニング娘。に戻ったみたいで嬉しかった。
それは他のメンバーも同じ様で、仕事で疲れているはずなのに、
ミュージカルの時だけはみんな心の底から笑っているみたいだった。
「なんやー、ヤグチ、9人のモーニング娘。は順調みたいやんかぁ」
「えっ、そんなことないって、裕ちゃんのいなくなった穴を埋めるのは結構タイヘン・・・・・・でもないな」
「なんやとー、ヤグチ、ちょっと出世したからってなー、お仕置きや」
「キャハハハハハ!! 止めろって!! キャハハハハハハ!! セクハラだって!! キャハハハハ!!」
あの頃はまだよかったなぁ・・・。
形は違えど、そこには10人のメンバーがいたんだから・・・。
- 7 名前:SHURA 投稿日:2001年04月15日(日)17時29分59秒
- 6月
ミュージカルが大成功に終わり、娘。は娘。の裕ちゃんは裕ちゃんの仕事に戻った。
その頃からだと思う。私達の周りが狂い始めたのは・・・・・・。
テレビ収録、新曲のレコーディング、キャンペーン、雑誌、ラジオ、各々のユニット活動・・・
私達の忙しさを無視するかの様に仕事は増えていった。
みんなが忙しさと疲れのせいか、楽屋ではあまり口を開かなくなっていき、
徐々に表の顔と裏の顔ができつつあった。
私はこのままではダメだと思い、そのことを裕ちゃんに会って相談しようとした。
でも、裕ちゃんは裕ちゃんで仕事が忙しく、お互いの仕事のスケジュールを合わせるのは不可能に近かった。
結局、その問題は私1人で解決するしかなかったが、私1人ではどうすることもできなかった。
そして、その問題は徐々に表面化し始めた。
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2001年04月21日(土)17時01分55秒
- 続きまってマ〜ス★
- 9 名前:SHURA 投稿日:2001年04月24日(火)22時29分30秒
- そのきっかけとなったのが、ごっちん・よっすぃーのケンカだった。
あれほど仲の良かった2人が毎日の様にケンカを繰り返すようになったのだ。
メンバー同士のケンカなんてこれまでだっていくらでもあった。
でも、この2人のケンカはこれまでのどんなケンカとも違った。
最初はお互いの意見をぶつけあっているだけだった。
でも2人のケンカはそれだけじゃ終わらなかった。
2人のケンカはエスカレートしていき、論争の中でお互いの触れられたくない部分を指摘するようになっていった。
そうしていく内に、始めの問題から外れていき、ただの悪口の言い合いになってしまう。
そして最後には手が出てしまう。
裕ちゃんがいた時は、裕ちゃんの絶対的な一言で全てが丸く治まったのに、
私達、9人の中にはその代わりを務めることができる人間はいなかった。
そんな状況になってしまうと、もともと体力派な2人なだけに、止めることも容易ではなく、
男性マネージャーによって止められることがほとんどだった。
最初の内はメンバー全員で止めていたのだが、
ケンカが繰り返されるうちに、無駄だと悟ったのか、徐々にその人数は減っていった。
悔しいけど、私もその中の1人だった。
他のメンバーのほとんどはそんな2人の姿を見たくないのか、楽屋にほとんど入らず、
待ち時間は各々がバラバラに過ごすことが当たり前のようになっていった。
気付いた時にはモーニング娘。はもうバラバラになりつつあった。
『モーニング娘。不仲説』
昔、そんなことが何かの雑誌に書かれていたっけ、
あの頃はホントに仲が良かったのに・・・。
そんな説が今頃になって現実になるなんて・・・。
やっぱり裕ちゃんがいなくちゃダメなんだ・・・
裕ちゃん、このままじゃモーニング娘。バラバラになっちゃうよ。
だから・・・助けてよ。
- 10 名前:SHURA 投稿日:2001年04月24日(火)22時42分18秒
- >8さん 初レスありがとうございます。
自分としては、銀のほうをメインでやってるんで、気長に待っていてください。
かなりダークな内容になると思いますけど・・・。
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2001年04月25日(水)03時58分05秒
- おお、こっちもおもしろそうな展開。ダークなの期待してます。
どっちも気長に待ってますんで。
- 12 名前:名無し君 投稿日:2001年04月26日(木)10時16分52秒
- 興味深いモノ発見
更新楽しみに待っています
- 13 名前:SHURA 投稿日:2001年04月30日(月)18時38分10秒
- 「アンタ達! ほんっといい加減にしなよ!」
一際大きい声で現実に戻される。ホントは戻りたくないのに・・・。
「アンタ達2人はまだ子供だけど、紛れも無くプロなんだからね、少しはプロ根性ってものがないわけ?」
「カオリは黙ってて!」
「飯田さんには悪いですけど、口出ししないで下さい」
カオリの言葉でも、2人の言い争いは止まらない。始めから分かっているけど・・・。
「・・・とにかく、もうすぐ本番なんだから、準備しなよ」
それを聞いて2人はお互いの顔を見合ったと思うと、すぐに視線をそらして、楽屋を出て行った。
梨華ちゃんもその後を追って、楽屋を出て行き、楽屋には私とカオリだけが残った。
カオリは呆れた表情で3人を見送った後、楽屋の隅に座っている私にゆっくりと近づいてきた。
「ヤグチさぁ、最近どうしちゃったのさぁ、なんか疲れちゃってるみたいだよ?」
「カオリ・・・」
私はリーダーになんて、むいてないんだ。
私なんかよりカオリの方がよっぽどリーダーにむいてるよ。
本当だったら娘。の新リーダーにはカオリがなる予定だったのに・・・。
事務所関係者の人達やつんくさんはカオリを娘。の新しいリーダーにするつもりだったらしい。
でも、その意向を裕ちゃんに伝えた時に、
『娘。の新リーダーはカオリじゃなくてヤグチにしてはもらえませんか?』
と、猛講義をされたらしい。
その一言で娘の新リーダーには私がなることになった。
何でだよ、裕ちゃん
何で私なのさ
- 14 名前:SHURA 投稿日:2001年04月30日(月)18時47分41秒
- >11さん こっちもと言うことは銀の方も読んでくれてるんですか。
嬉しい限りです。
>名無し君さん すごく不定期な更新になると思いますがよかったら読んでやってください。
実はこの後のストーリー何も考えていません。
さて、どうしよう。
- 15 名前:名無し読者 投稿日:2001年05月02日(水)03時47分30秒
- あまりないような話の展開みたいなので、楽しみです。
不定期、承知しました。
矢口、がんばれ。つってもこっからダークになってくのかな。
続き、期待して待ってます。
- 16 名前:名無し読者 投稿日:2001年06月01日(金)00時26分54秒
- スゲー期待してます。ゆっくりでもいいんで放置だけはしないでくださいね。
- 17 名前:SHURA 投稿日:2001年06月02日(土)18時51分30秒
- 放置はしませんよ。
少ない時間を銀のに集中させてたんで書けなかったんです。
今は部活が完全終了して時間ができたから少しずつ書いていきたいと思います。
- 18 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時25分16秒
- 「ヤグチ? ヤグチ?」
「・・・・・・えっ? あっ、なんか疲れちゃってるみたい。こう仕事が多いと遊ぶ時間もないか・・・ら・・・」
少し見とれてしまっていた。あまりにも穏やかなその微笑みに、
会って間もない頃の素人っぽさの残る微笑みじゃなくて、仕事で見せる微笑みでもなくて、
10人だった頃みんなといた時の微笑みでもない。ただ純粋で、ただまっすぐで、でもなんか悲しそう・・・。
ねぇ、カオリ、何でそんな風に笑うことができるの?
「ヤグチも大変だろうけどさ、ガンバって」
カオリ・・・
「モーニング娘。さん、本番10分前なんでスタジオ入ってくださーい」
2人きりの楽屋に番組のADが本番の始まりを告げにきた。
「あっ、はーい、分かりました。ほら、ヤグチ新リーダー、とりあえず今は本番に集中しなきゃ、だよ」
うん、そうだよね、今はカオリの言う通り、何よりも本番に・・・この瞬間に集中しなきゃ。
- 19 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時27分25秒
- 今日はMステの出演日、9人のモーニング娘。としてこの番組に出るのは今年になって始めてだ。
前回は裕ちゃんが・・・
ううん、そのことは考えないようにしよう。今の娘。は9人なんだから、私がリーダーなんだから。
本番の数秒前、メンバーはお互いに何も語ろうとはしない。
ただ、ブツブツと歌詞やダンスの振りのチェックをしている。
そして本番5秒前、4、3,2、・・・
お馴染みのギターフレーズが流れ、タモリさんとアナウンサーの短いトークの後、私達も含めた出演者が順に登場する。
新曲のサビが流れて、登場口に私達が現れる。
3列になって階段を下りるメンバーの手はお互いに握られていて、
何も知らない人が見たら、数ヶ月前のモーニング娘。とほとんど変わらなく見えると思う。
嘘ばっかなのにね・・・
- 20 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時28分19秒
- 「今年、初めての登場です。モーニング娘。〜」
「よろしくお願いしまーす」
座ってのトーク。9人の声が練習でもしてきたみたいに揃う。
「9人になって初めてか、中澤がいないとどう?」
タモリさんの質問が隣に座っている私に振られる。
「えっ、あの〜、やっぱりいつも中心にいた裕ちゃんがいなくなったんで、
そのぶんメンバー1人1人の責任が増えましたね。
でも、それをみんなが自覚してるんで、それによってメンバーそれぞれが成長してますね」
「矢口が新しいリーダーなんだろ、やっぱり大変だろ?」
「あ〜、大変ですけどサブリーダーのカオリとか他のメンバーが支えてくれるんで、
今んところなんとかやっていけてるって感じですかね」
「サブリーダーが飯田か?」
「はい、そうですよ。カオリがサブリーダーでえすよ」
私の隣に座っているカオリが話しに入ってくる。
「飯田、サブリーダーっていってもやることなんて何もないんだろ」
「違いますよ、タモリさん。カオリ的に言うとですね、
リーダーが表向きにメンバーの中心となる人なら、サブリーダーはリーダーを支え、
下からモーニング娘。を創りあげる役割りなんですよ。ある意味、リーダーよりも重要な役割りなんですよ」
「な〜に言ってんのかさっぱり分かんねぇよ」
ははは・・・
客席から乾いた笑い声が聞こえる。
こんな風にトークは私とサブリーダーのカオリを中心に進んでいった。
何言ってんだろ、私。
他メンバーが支えてくれる
どこが
みんな自分のことしか考えてないじゃん
何から何まで嘘ばっかりだよ
もちろん私だって・・・
夏に向けて発売される新曲。
曲調は「真夏の光線」に似た、明るいラブソング。
そのため曲の最中はみんな笑顔を絶やさない。
でも私は知ってる。その笑顔は仕事の為だけに作られたもので、曲が終わったらすぐに絶えるものだということを。
- 21 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時28分53秒
- 本番終了後
楽屋に戻った9人は何も言わずに着替えを始める。
いつもだったらMステの終わった後は、みんな楽屋で今日の反省点とか言い合って、にぎやかだったのに、
今はこの空間を静寂だけが支配している。
やっぱりこのままじゃダメだ。
私がリーダーなんだ。私がやらなきゃ、このままじゃ裕ちゃんに笑われちゃうよ。
この雰囲気を変えるには根源となったあの2人の関係を修復させるしかない。まずはそこから始めなきゃ。
裕ちゃんだったら、きっと2人を話し合わせて2人の関係を修復させるはずだよ。
今日の仕事はこれで終わりだし、話し合わせる時間はたっぷりある。
- 22 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時29分27秒
- 「ねぇ、ごっちん。ちょっと話があるんだけど」
着替えを済ませ楽屋を後にしようとしていたごっちんを呼び止め、声をかけた。
「ゴメン、やぐっちゃん。後藤さ〜、この後用事入ってんだよね〜。
話だったら今度ヒマな時に聞くからさ〜。今日は勘弁してね。じゃ、また明日」
「ちょ、ごっちん!」
私の静止を気にもせずごっちんは楽屋の外の通路を出口に向かって歩いていった。
「矢口さん」
いつもよりも低い声、振り向いた時に見たその瞳は、数ヶ月前だったら愛らしく私に向けられていたのだけれど、
今は私に向けられることは無く、ただ前だけを見つめている。
「あたしとごっちんのことだったら、自分達でなんとかしますから。矢口さんは口を挟まないでください」
「でもさ、よっすぃー、このままじゃ・・・」
「梨華ちゃん、行こ」
よっすぃーは私の言葉を無視して後ろについてきていた石川に声をかける。
「う、うん。でも・・・」
「いいから」
「う、うん」
石川の手を引くようにしてよっすぃーはスタジオから出ていった。
- 23 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時30分34秒
- はは、結局こうだよ。
私に裕ちゃんの代わりなんて最初っから無理だったんだよ。
鼻の奥のあたりがキューっと絞めつけられるような感覚がして、涙が流れてきた。
いやだ。泣きたくなんかない。あの日、裕ちゃんとの最後のステージで泣いた時に決めたんだ。
もう泣かない。って、私はリーダーだから強くなきゃダメだから。って、
泣きたくなんかない。だけど涙は止まらなかった。
無力感
その3文字に押しつぶされそうだった。こんなんじゃ裕ちゃんに会わせる顔がない。
ただ悔しかった。何にも出来ない自分に。裕ちゃんに後を頼まれたのに、約束したのに、それが果たせない自分に。
あの頃が懐かしい。
あの小さな空間に10人がいれば何だってできる気がした。
圭ちゃん、カオリ、なっち、ごっちん、石川、よっすぃーに辻と加護、そして裕ちゃん。
あの頃の10人はどこに行っちゃったんだろ。
何でこうなっちゃったの? いくら考えても分かんないよ。
ねぇ、裕ちゃん。何で辞めちゃったの?
ねぇ、お願いだから・・・助けてよ。
- 24 名前:SHURA 投稿日:2001年06月04日(月)18時40分27秒
- ほんっ・・・とに更新遅くてすみません。
遅いと分かっていながらも、レスに返事を書かかせていただきます。
>15さん あまりないような話。実はそれが書きたかったんです。
矢口はここでは明るいキャラはほとんど出てこないと思いますけど、読んでもらえれば幸いです。
>16さん >スゲ―期待してます。うぅ・・・そんなふうに思われてたなんて、
少しずつ更新ペースを上げていきたいと思うんで、これからもよろしくお願いします。
- 25 名前:16 投稿日:2001年06月05日(火)01時22分53秒
- おぉ、更新されてる!
いやぁ、おもしろいっすわ。期待、してますよ〜
- 26 名前:SHURA 投稿日:2001年06月09日(土)23時11分49秒
- その日の午後10時頃
2人並ぶようにオートロックの入り口を抜けて、通路のすぐそばにあるエレベーターに入る。
目指すその部屋のある階のボタンを押すと、ゆっくりとエレベーターが動き出した。
妙に強いエレベーターの照明に照らされて、あたしは今日のことを思い出していた。
テレビの中では仲のよいモーニング娘。を演じているけど、本当は既に分解寸前なのかもしれない。
それを間近に見ながら結局あたしは何もしなかった。
自分には矢口を信じてるからと言い聞かせてたけど、本当はただ恐かった。
自分を否定されること、今までやってきたことの意味がなくなったしまうこと、
そして、娘。は裕ちゃんがいなくちゃ何もできないこと・・・が。
視線を隣に映す。彼女は真っ黒な帽子を深くかぶっている為に、表情がまったく分からない。
ただでさえ、あの9人の空間にいて疲れているのだ。いつもは口数の多い彼女も最近はすっかり口数が減ってしまった。
偽りのない、輝いていたあの笑顔はもう見ることはできないのかもしれない。
想いを巡らせているうちにエレベーターは目的の階に到着して、小さく到着を知らせる音が鳴る。
ドアが完全に開くのを待ってから、2人は足を進めた。
ココに来るのは久しぶりだったけど、部屋の位置は頭に入ってたから迷わずに目的の部屋の前まで来れた。
インターホンに近いところにいた彼女が自然とボタンを押す。
ピンポーンという音がドアの向こうから鳴り響いて、パタパタと足音が近づいてきた。
ガチャ
やけにゆっくり開くドアが苛立たしい。それほどあたしはこの再会を望んでいたのだと思う。
ドアの陰から見えるトレードマークの金髪は相変わらずキレイで透明感さえ漂わせる。
帰ってきたばかりなのか着ている服は外出用のもののようだ。
メイクはちょっと厚めだけど、その奥のいたずらな笑みはまるでまだあどけない少女の様。
「待ってたで〜。久しぶりやなぁ、カオリになっち」
- 27 名前:SHURA 投稿日:2001年06月09日(土)23時15分51秒
- 短いですけど更新です。
>25さん おもしろいですか。そういう率直な感想って嬉しいですよ。
構想は固まってきたんで、しばらくはなんとかなりそうです。
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月20日(水)03時18分25秒
- 期待しています。がんばって!
- 29 名前:SHURA 投稿日:2001年06月21日(木)21時49分42秒
- 「まぁ、ちょい散らかってるけどそこらへんに座りや。今飲み物持ってくから、
あ〜、何がええ? ウーロン茶、オレンジジュース、一応ビールもあるんやけど・・・」
「なっちはオレンジジュースがいいな。ねぇ、カオリも同じでイイっしょ?」
「うん、同じのでいいよ」
「分かった。今持ってく」
なっちは久しぶりに裕ちゃんに会えたことが嬉しいみたいで、この部屋に入ってからずっと笑顔を崩さない。
あたしも嬉しいことは嬉しいんだけど、
隣のなっちがそんなに素直に喜んでるもんだから、なんか率直に喜べないとこがある。
まぁ、それは今の娘。の状況も手伝ってると思うけど。
「お待た〜」
裕ちゃんは缶ビールを3つ抱えて私達2人がいるリビングに現れた。
「あれ、裕ちゃん、なっちとカオリの分は〜?」
「ほれ、ここにあるやんか」
「ここって・・・、もしかしてビール?」
「そうや。他になんかあるか?」
「ないけど、だってなっちとカオリは未成年だべや」
「そんな堅いこと言わんと、ウチのおごりやと思って、っておごりなんやけど・・・。
まぁそれに8月には2人とも二十歳やろ、少しくらい変わらん変わらん」
そう言いながら裕ちゃんは2つの缶をあたしとなっちそれぞれのところに放り投げた。
そして手元に1本残ったビールを開け、ゴクゴクと一気に口の中に流し込んだ。
「ぷは〜。やっぱ仕事終わった後のビールは最高やわ〜」
それを見たあたしとなっちは互いに顔を見合わせ無言で頷き合うと2人同時にビールを開けた。
- 30 名前:SHURA 投稿日:2001年06月21日(木)21時50分20秒
- 「っていうかさ〜、裕ちゃん、こんなことする為になっちとカオリを呼んだんだべか?」
小1時間程、それぞれの身の周りの話などで盛り上がり、そろそろお互いの話題が尽きてきたころ、なっちが口にした。
完全に酔いが回ってるみたいで言葉に方言が混ざってる。
「あ、それカオリも訊きたかった。わざわざMステ終わる時間見計らってメール送ってきて、
『話があるからなっちと2人で来てくれへんか。あとこのことは他のメンバーには黙っといてな。』
だもん。カオリさぁ、なんかもっと深刻な話かと思ってた」
「・・・・・・・・・・・・」
「あれ? ゆ・・・うちゃん」
裕ちゃんは何にも言わない。いっつもだったら、もっと突っかかってくるのに・・・。
真剣な顔、っていうか真顔で俯いてた。
急に真剣な表情になった裕ちゃんはゆっくりと口を開いた。
「実はな・・・そやねん。2人にどーしても訊きたいことがあったんや」
「えっ、何だべ? なっちに話してみるべさ」
なっちはその裕ちゃんの表情にも気付いてないみたいで、さっきと同じように話しかけてる。
「ここんところ、うまくいってないんやろ? 娘。」
その言葉になっちの表情が一瞬で凍りついた。
裕ちゃんはこのことは知らないはず。正確に言うとメンバーの誰も話していないはずだった。
ヤグチが裕ちゃんと会って相談しようとしてたらしいけど、お互いのスケジュールが合わずダメだったって聞いた。
それ以外誰も裕ちゃんにはコンタクトを取ろうとしたメンバーはあたしの知る限りはいなかった。
それ以前にこんなこと相談できるはずがないけどね。
「そのこと何で知ってるの?」
「そんなもん、テレビのオンエア見れば気付くわ。何年娘。やってた思ってんねん。
そりゃ各メンバーの小さな変化にも気付くっちゅうねん」
裕ちゃんは卒業しても娘を見ててくれたんだ。
ちょっと感動した。アルコールが入ってるせいか少し感情の高ぶりが激しい。
「まぁ今のウチには関係のないことかもしれへんけど、よかったら聞かせてもらえるか?」
メールを見た時に少しは覚悟してたことだ。
今の娘。の状況を打開できるのはやっぱり裕ちゃんしかいないのかもしれない。
あたしにためらいはなかった。
「うん、わかった」
- 31 名前:SHURA 投稿日:2001年06月21日(木)22時02分49秒
- ペース早くするって言った矢先にこんなに間空けて・・・ゴメンナサイ。
なんかここはみんなペースそんなに早くないし、スレの上下も安定してるから、
(いいかな・・・)なんて魔が差してしまいました。
ああ・・・俺、バカ。
>28さん すみませんペース遅くて、
そのぶん頑張るんで、気長に待っててくだされば幸いです。
- 32 名前:28 投稿日:2001年06月22日(金)00時24分46秒
- 気にすることないっすよ。ゆっくりでもいいもの書いてくれれば(w
いいもの、書いてると思いますし。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月22日(金)03時51分09秒
- 私も、更新楽しみに待ってます!
- 34 名前:SHURA 投稿日:2001年06月29日(金)01時01分16秒
- 「お送りした曲は松浦亜弥で『トロピカール恋してーる』でした」
いつも通りのCMが始まり、ブースの中で一息ついた。
新曲の宣伝活動も一段落し、今日は久々に個々の活動のみの日だった。
タンポポの仕事とピンでのラジオ、楽と言えばそうなのかもしれない。
ううん、はっきり言えるよ、つらさなんて微塵も感じないって。
隣にいるしげるを手で抱えて、膝の上に乗せる。
いいよねお前は、何にも知らなくて、つらいことも、泣きたいことも、悲しいことも何にも感じないんだからさ。
何があったってずっと笑っていられる。お前は幸せ者だよ。プーさんに生まれて良かったね。
- 35 名前:SHURA 投稿日:2001年06月29日(金)01時02分07秒
- 『やぐっちゃん、やぐっちゃん』
ヘッドホンから聴こえてくる番組ディレクターさんの声。
「何ですか〜?」
『あのね、この後DVD辻加護だったよね? それ急遽変更になったから』
「あ、はい。で何に変更になったんですか?」
『えっと、ゲスト、ゲストが入ってのトークだから』
は? ゲストとトーク? そんな台本もないのにトークなんてできるわけないじゃん。
「ちょっ、矢口じゃ無理ですよ。そんな、いきなりゲストとトークだなんて」
『大丈夫。やぐっちゃんの知ってる人だから』
「知ってる人?・・・誰ですか?」
『えっと、確か・・・、あ、ゴメンCM開けるから、準備して』
「え、ちょっと!」
その言葉だけを残してディレクターさんはマイクから離れた。
CMが開け、マイクをオンにする。
ゲストって、ホントに誰だろ?
DVD今日もほとんど見てないから好都合っていえば好都合だけど・・・。
「えっと〜、この後はDVD辻加護くんだったんですけど、急遽変更になりました。なんとゲストが来ています。
矢口もついさっき教えられたんですけど、誰が来るのかは教えられてないんですよ。
聞くところによると矢口はその人のこと知ってるらしいんですけど、ぜんっぜん予想がつかないんですよね。
たぶんココのスタッフのことだから何か考えてる気がするんですけど〜・・・・・・。
やっぱり〜、なんかスタッフが向こうで笑ってるんですよ〜」
ヘッドホンには準備ができたとスタッフの声が届いた。
「じゃあ、準備ができたみたいなんで、呼んでみたいと思います。どうぞ〜」
ブースの厚い扉がゆっくり開いてく、
「・・・・・・・・・」
その人の姿を確認した時、私は言葉を失った。
え?
何で?
どうしてだよ?
「ゆ・・・う・・・ちゃん」
- 36 名前:SHURA 投稿日:2001年06月29日(金)01時10分28秒
- もっとちゃんとANN-S聞いてればよかったと思う今日この頃。
つーか、ホントはこの部分の前にオリジナル3人のシーンが延々と続いてたんですけど大幅カットしました。
>>32 そんな「いいもの」だなんてオレには勿体無い言葉です。
>>33 ホントに待たせてすみません。これからは毎週木曜あたりに更新すると思います。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2001年06月30日(土)05時12分43秒
- こっちでも書いてたんですね。
初めて読みましたけど・・・イイ!
- 38 名前:ま〜 投稿日:2001年06月30日(土)21時48分08秒
- >>ペース早くするって言った矢先にこんなに間空けて・・・ゴメンナサイ。
まあマターリ行きましょうや♪
更新が少しくらい遅れても、面白い物が読めればいいんだから。
事実面白いし。期待してます。
- 39 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年07月08日(日)10時27分03秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@金板」↓に紹介します。
http://www.ah.wakwak.com/cgi/hilight.cgi?dir=gold&thp=994402589&ls=25
- 40 名前:SHURA 投稿日:2001年07月09日(月)18時30分39秒
- 「・・・・・・・・・」
その時の私の感情は驚きと言うよりも困惑と言った方が正しかったと思う。
そんな私の心情を知ってか知らずか、裕ちゃんはあの頃と同じ太陽みたいに明るい笑顔。
久しぶりに見る裕ちゃんは、最後に会った時よりもちょっと若く感じた、ホントはもう28のはずなのにね。
その姿にちょっぴり見とれていた私に裕ちゃんは、
「ほら、ヤグチ、喋れ」
と、裕ちゃんは口と手をパクパクさせて伝える。
あ、ヤバッ!
「えっと・・・、今夜のゲストはモーニング娘。元リーダーの裕ちゃん・・・です」
「おいおい、ヤグチ〜、ホンマ危なっかしいな〜」
「え・・・? そっかな?」
「そっかなやあらへんよ。せっかくのゲストなんやからもっと派手に紹介したってや〜」
「派手?」
「そうや〜、裕ちゃんでーす! みたいなカンジにたのむわぁ〜」
「ん、ああ、ゴメン」
「ゴメンやなしにさぁ」
「・・・ゴメン」
「ヤグチ〜・・・」
- 41 名前:SHURA 投稿日:2001年07月09日(月)18時31分33秒
- その後、裕ちゃんは、今度決まったミュージカルのこと、ドラマのこと、
これまでに出たテレビ番組のこと、新曲のこと等、次々と話していく。
その中で、私はうまく言葉が出せなかった。心の動揺とか感情の高ぶりとか、そんなものがあったのかもしれない。
あんなに裕ちゃんにSOS出してたのに、いざとなると何も言えない自分。正直言って、ムカついた。
だけど裕ちゃんはそんな私のこともうまくフォローしつつ、番組を進めていく。
まるでどっちの番組か分かんないくらいだった。
まだまだ私は裕ちゃんみたいにはなれてないってことか・・・。
「どうなんや? 最近のモーニングは?」
「え? どうって・・・」
そんな中、裕ちゃんが話題を娘。に向けた。
それを受けた私はそれまで以上に言葉が詰まる。
いつもの歌番組とかなら「すんごい順調ですよ」みたいに自然に流せるけど、
今目の前にいるのは裕ちゃんだ。娘。のことをずっと相談したかった人だ。
どうする、矢口真里。ホントのこと話す? 今の娘。はメチャクチャだよって言えば少しでも楽になれる?
それとも私は嘘をつく? それも裕ちゃんに。裕ちゃんはもう娘。には関係のない人だからって?
分かんないよ。私はどうすればいい?
- 42 名前:SHURA 投稿日:2001年07月09日(月)18時32分10秒
- 「う、うん。今まで通り順調そのものってカンジ。新曲もけっこういいみたいだし」
最終的に私の口から出た答はこうだった。
嘘・・・ついた、裕ちゃんに、一番嘘つきたくないひとなのに。なにやってんだ、私。
「・・・・・・そっか・・・」
と、一見悲しそうな笑顔を見せる裕ちゃん。なんでそんな顔すんだよ。
「リーダーはどうやねん?」
「それって矢口のこと?」
「そうや」
「えっと、最初は大変だったけど、今は結構慣れてきたと思うよ。
まだ裕ちゃんみたいにはできないけど、カオリとか手伝ってくれるしさ、辻加護もちゃんと言うこと聞いてくれてるし・・・」
バカじゃん、私。
裕ちゃんにまで嘘ついてる。
- 43 名前:SHURA 投稿日:2001年07月09日(月)18時39分35秒
- 前言撤回。
毎週木曜更新はなかったことにしてください。
待たせておいて裏切るという形に、どうしてもなってしまうので。
やっぱりここは不定期&マターリでいきます。
>38さん 地味〜に書いてたんで気付かなかったようですね。
あっちではここのことにはほとんど触れてなかったんで、しょうがないですけど。
>ま〜さん 面白いですか? 最初こういうのが受け入れられるかホント不安だったんで嬉しいです。
お言葉に甘えてマターリいきますけど、これからも読んでいただけたら幸いせです。
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月18日(水)16時20分09秒
- 裕ちゃんが救う方法もあると思いますが矢口が頑張って救うんだ!
- 45 名前:名無しさん 投稿日:2001年07月22日(日)17時45分03秒
- 「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
雄弁な沈黙がブースの中を流れていく。
さっきまで息をつく間もないほど、口を動かしていた裕ちゃんも何も言わなくなってしまった。
あたし・・・、言いたいことなんて、たくさんあったはずなのに。
それでも、いざとなったら口から出るのは嘘ばっか。
ほんの数ヶ月前、あの頃は何でも言い合えたのに・・・。
会えない時間があたしの何かを変えてしまったんだ。
- 46 名前:SHURA 投稿日:2001年07月22日(日)17時47分16秒
- 『☆●▽■□▼!!』
すると突然、ヘッドホンの奥から聞きなれたメロディーが流れてきた。
『やぐっちゃん、喋って喋って』
さらにその奥からディレクターの声、どうやら何も喋らない2人に堪りかねてCMを入れたらしい。
「あ、はい。すみません」
『中澤ちゃんも喋ってね、やぐっちゃんまだ慣れてないとこあるから』
「はい・・・、すんません」
裕ちゃんのその言葉を最後にまた沈黙が訪れる。
正確に言うと、私の耳には絶えずヘッドホンから流れるCMが聴こえているのだけれど、
これが止まってしまえば、何も聴こえない静寂の世界が私を待っているんだ。
ヘッドホンの奥で聴こえる、呆れるくらい渇いた音とは裏腹に、
この空間の空気はやけに冷たくて、口を閉ざさせるには十分な気がした。
- 47 名前:SHURA 投稿日:2001年07月22日(日)17時49分19秒
- 『CM開けまーす』
そしてすぐにヘッドホンからは何も聞こえなくなる。
「・・・・・・」
さっきと変わらず、裕ちゃんは自分から話始める気配はない。
「あ、あのさ・・・、今度の増員さ、もうすぐ決まるみたいなんだけど、どんなコ入ると思う?
ヤグチ的には・・・さ、もう辻加護みたいなのは勘弁して欲しいかな〜・・・って思うんだけ・・・ど」
娘。の話題を振るのは自分的にもイヤだったんだけど、散々引き出しを探した結果見つかったのはこれだけだった。
「・・・・・・」
正面に座ってる裕ちゃんの目には私が映っていた。
でも、その瞳は私の額を通り抜けて私のずっと後ろを見ているように見えた。
その瞳に心の中を全て見透かされてる気がして、思わず顔を逸らしてしまった。
「・・・も、もう、裕ちゃん、何か喋ってよ〜。これじゃ放送事故じゃんか〜」
「あんな、ヤグチ」
「え、何?」
「もう無理すんの止めや」
- 48 名前:SHURA 投稿日:2001年07月22日(日)17時59分38秒
- >44さん 娘。を救うってことですか。
作者もそうしてやりたいんですけど、今は何とも言えないです。
- 49 名前:名無し読者 投稿日:2001年07月26日(木)02時30分30秒
- >>48
無理やりになっちゃうなら救わなくてもいいですよ。萎えるから。
- 50 名前:SHURA 投稿日:2001年07月29日(日)02時49分44秒
- 無理・・・? え? 私がってこと?
予想もしていなかった裕ちゃんの一言、それが再び私の頭の中を混乱させた。
「え? どうゆうこと?」
「せやから、ウチの真似せんでもええってことや」
「言ってる意味が分かんないよ」
「さっきゆうたやろ、『裕ちゃんみたいには――』って、
モーニングのリーダーやからって別にウチの真似事なんてする必要なんてあらへんねん」
そう言う裕ちゃんの瞳は私をジッと見据えていた。
だけれど、その奥に隠された感情は読み取れない。
「そういや、ゆうてなかったな、何でウチがヤグチをリーダーに推薦したか、この際やからゆうとくわ。
ええか、ウチはついこの間までモーニングのリーダーやった。
ウチはウチなりに考えながら、悩みながらリーダーやっとった。
始めは分からんことばっかでな。そんな中でウチは手探りで少しずつリーダーのやり方、っちゅうもん見つけてった。
でもな、それがホンマに正しいわけちゃうと思うねん。
なんちゅうか、とりあえずウチにはウチのやり方があったってことや。
ウチだけやない。カオリやったらカオリの、なっちやったらなっちの、圭ちゃんやったら圭ちゃんのやり方があんねん。
もちろん、他のメンバーにだってそれはあると思うねん。
ヤグチ・・・、ヤグチにやってそれはあんねん。ヤグチだけにしか出来ないやり方っちゅうもんが」
いつしか、私の瞳には裕ちゃんしか映らなくなっていた。
さっきまで見えていた裕ちゃんの後ろの壁も、そこに掛かっていたポスターも、ブースの外のスタッフも全てが消えて見えた。
私の目に映ったのは、私と裕ちゃんしか存在していない真っ白な世界。
そこは静かで、その中に響く裕ちゃんの声だけが妙に冴えて聴こえる、そんな世界だった。
- 51 名前:SHURA 投稿日:2001年07月29日(日)02時58分58秒
- >>49
無理矢理にはしないと思います。
といいますか、実はラストはもう決まってますから(どっちかは言えませんが)。
今のところ、それを変えるつもりはないんで、それに向かって書くだけです。
- 52 名前:49 投稿日:2001年08月09日(木)04時24分26秒
- 安心しました。では、次回更新を楽しみに待ってます。
- 53 名前:SHURA 投稿日:2001年08月12日(日)01時18分38秒
- 「ヤグチやったら新しいモーニングを創れる、もっとすごい、今までになかったモーニングを創っていける思うねん。
せやから、ウチはヤグチにリーダーになってほしかったんよ」
私にしか出来ないことがある。私にか創れない娘。がある。
そんな裕ちゃんの想い、少しも考えたことなかった。
いつも、私じゃダメだ、私じゃダメだ、って否定することしかしてなかった気がする。
何で私なのか、そんなこと考えてもいなかった。
どうしたら裕ちゃんの代わりになれるか、裕ちゃんみたいにやるにはどうしたらいいのか、
今まで、そんなことしか考えていなかったし、そのことだけ考えるようにしてた。
でも、それは違うって、裕ちゃんは一発で否定してくれた。
だけど、それに不快感は微塵もなくて、むしろ心地良さがあった。
- 54 名前:SHURA 投稿日:2001年08月12日(日)01時22分08秒
- 「ウチはな、言いたなかったけど歳のせいもあって、いっつもメンバーから上に見られとった。
なんとか同じ高さで接しよう思たんやけどな、やっぱそういうのは限界っちゅうもんがあんねんな。よ〜分かったわ。
否定せんでもええで、ホンマのことやから。ウチが一番分かってんねん。
んでもな、ヤグチならそれができると思ったんよ。
ううん、ちゃうな、ヤグチはもうそれができとるよ。自然とみんなと同じ高さ、輪の中央におるんよ。
- 55 名前:SHURA 投稿日:2001年08月12日(日)01時22分55秒
- 実はな、ヤグチに次期リーダーに決まったって報告しにいく前にな、ヤグチ以外の9人で話し合ったんよ。
本人に言う前にまず他のメンバーに承認貰お思て。
まぁ、反対されても変える気はなかったんやけど、ウチは何が何でもヤグチにする気やったから。
みんな驚いとったで〜、特にカオリは周りから『次期リーダー』言われてて、
実は結構本人もノリノリやったみたいやから。
あ、これ口止めされてたんや。ヤバ・・・、公共の電波やのに・・・。ハハ、ゴメン、ヤグチ後でカオリに謝っといて。
でもな、みんな納得してくれたで、カオリも『裕ちゃんが決めたんなら、カオリそれでいいと思う』って、
みんなヤグチのこと、新リーダーとして認めるって・・・。
なんかな、それ見たらウチも自分のことちゃうのに感動してしもてな・・・」
- 56 名前:SHURA 投稿日:2001年08月12日(日)01時24分46秒
- さっきとは違う、感情の隠れてる表情じゃない、しいて言えば感情剥き出しの笑み、とでも言うのかな。
無垢な少女みたいな、久しぶりに見る裕ちゃんのその顔はあたしに大事なことを教えてくれた。
過去を振り返るんじゃなくて、将来をいつも見ろって。
言葉にしたわけじゃない、でも言葉にするよりももっと伝わるものがあるんだって知ってたから。
- 57 名前:SHURA 投稿日:2001年08月12日(日)01時29分42秒
- >52さん
更新遅くて申し訳ないです。
ゆっくりですが少しずつ完結に向かってるんで、これからも宜しくお願いします。
- 58 名前:読んでる人 投稿日:2001年08月26日(日)09時43分56秒
- 更新まだですか?
- 59 名前:SHURA 投稿日:2001年08月26日(日)14時33分52秒
- カオリのコーナーに入る直前まで裕ちゃんはゲストとしてラジオに出てくれた。
初めのぎこちなさはもうなくて、いろんなことを話して、そしてたくさん笑った。
なんだか、あの頃・・・まだ10人の心が繋がってた時みたいだった。
明日になればあの空間に戻らなければならないけど、それでも十分に気持ちは楽になっていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去る。
もう11時を過ぎたと言うのに、裕ちゃんはまだ仕事が残ってるらしく、
そのスタジオに向かう為、今回はこれで終わりということになった。
カオリにバトンを引き渡した後、裕ちゃんは席を立った。
「じゃ、ヤグチ、またな」
「うん」
「もうすぐツアー始まるんやろ? 体調管理だけはちゃんとやっとくんやで」
「な〜にお母さんみたいなこと言ってんの」
「なんやて・・・、せっかくの母性本能ムダにさすなや」
「アハハ、そんなのドコにあるんだよ」
「なんやとぉ、るっさいわ」
裕ちゃんはそう言うけど、表情には笑顔が浮かんでる。
いつも近くにあったこの笑顔、ほんの少し前までは当たり前だったのに・・・、次の瞬間からはもう見れないんだ。
そう思ったら、何だか切なくなった。
- 60 名前:SHURA 投稿日:2001年08月26日(日)14時34分33秒
- 「ゆ、裕ちゃん、今度いつ会えるかな?」
「ん、なんやて?」
「あのさ・・・、何か相談したいこととかあるかもしんないからさ、いつか会えるかなぁ・・・って・・・」
「そうやなぁ・・・今はウチも忙しいからいつになるか分からんけど、今度、休み取れたら焼肉でも行こか?」
「うっそ、マジ? もちろん奢り?」
「アホ、そんなことウチが言うかい」
「え〜、ケチくさ〜」
「・・・ったく、しゃあないなぁ、一回だけやからな・・・」
「やった〜、それでこそ裕子だよ」
「何言うとんねんな。じゃ、ウチは行くからな」
そう言って、私に背中を向けた裕ちゃんはブースの出口に向かって進んでいった。
その厚い扉に手を掛けた時、裕ちゃんはゆっくり振り向いた。
まだ何かくだらないことでも言い残したのかな・・・。
そう思った私は、笑顔でそれを迎えようとした。
でも、予想に反して、裕ちゃんの表情は真剣と言うか、今見ていたものとは違う、
そう、さっきここに沈黙が訪れたときと同じようなもの・・・、
その目は私に真っ直ぐ向けられていて、感情は読み取れない。
- 61 名前:SHURA 投稿日:2001年08月26日(日)14時35分04秒
- 「ヤグチ・・・、もしも・・・、もしもやで、モーニングに何かあったとしてもウチはもう何もでけへん。
ウチはもう関係の無い人間やからな。
だから、そん時はヤグチが何とかするんやで。
ウチに出来ることは、背中を押してやることぐらいしかあらへんから・・・」
不思議な感覚だった。
耳から聞こえてくるのとは違う、直接頭の中に飛び込んでくるようなその声。
ここがブースの中だからかな、とも考えたけれど、それも違う。
「う・・・うん・・・」
そう答えると、裕ちゃんは微笑みを浮かべ、目の前の扉を開けた。
視界から消えていくその後姿、それが見えなくなった後もその形を私は目で追っていた。
- 62 名前:SHURA 投稿日:2001年08月26日(日)14時38分09秒
- 更新です。
>58さん
ゴメンナサイ・・・。の一言です。
これからはなんとかペース上がるように心がけます。
- 63 名前:SHURA 投稿日:2001年08月28日(火)01時48分20秒
- 裕ちゃんが次の仕事先に向かった後、この後のコーナーのことを軽く打ち合わせして、わたしは再びブースに入った。
そして、さっきまで裕ちゃんが座っていたその席をぼんやり眺めていた、時間がくるまで、ずっと。
ヤグチやったら新しいモーニングを創れる、か・・・。
その一声だけが、さっきからずっと頭の中で響いていた。
わたしがリーダーになって、4ヶ月と少し、
その間わたしはリーダーとして、頑張ってきたつもりだったけど、裕ちゃんが望むようなリーダーはできていなかったんだ。
わたしは、今まで裕ちゃんが頑張って支えてきただろう娘。を壊さないよう無くさないようにしていたつもりだった。
だから、新しい娘。を創るなんて、そんなこと思ってもみなかった。
だからそれを裕ちゃんに言われた時は、それがどんなことなのか全然分からなかった。
わたしが作る娘。ってどんなんだろ? どうすればいいんだろ? みたいな感じに。
でも、今になってゆっくり考えてみたら、何となく分かる気がした。
別にそんなに深く考えることじゃない。
ありのままのわたしでいいんだ。
わたしが創りたいように創ればいいんだ。
さっきまで、わたしがリーダーになってからついさっきまで肩にのしかかるように重かった『リーダー』の文字。
今はなんだかとても軽く、むしろ愛着が湧いてきているようにも思う。
- 64 名前:SHURA 投稿日:2001年08月28日(火)01時48分50秒
- わたし、やっていけそう。
頑張れそう。
隣にいるしげるを再び膝の上に乗せる。
しげる、わたしさ、頑張れそうな気がしてきた。
さっきまでは娘。に戻るのがずっと怖かったのにさ、今は、早くみんなに会いたいんだ。
なんだか変な感じ。あんなにイヤだったのにね。
ん? 何とか言えよな〜。
『まぁ頑張れよ』
そんなしげるの声が聞こえた気がした。
- 65 名前:SHURA 投稿日:2001年08月28日(火)01時49分46秒
- 更新です。
ふぅ、これでANNSのとこは終わりです。
- 66 名前:もち 投稿日:2001年09月03日(月)23時11分02秒
- 続き待ってます、がんばってください
- 67 名前:読んでる人 投稿日:2001年09月09日(日)10時37分06秒
- 続きまだてすか?
- 68 名前:SHURA 投稿日:2001年09月09日(日)17時15分57秒
『モーニング娘。』様
そう記されたドアの前に、わたしは立っていた。
数ヶ月前まではうるさいくらいにいろんな声が聞こえていたのに、
今では冷たい静寂がドアの隙間から滲み出ているようにすら感じられる。
やっぱり思うのとやるのとでは違う。
いざこのドアの前に立つと、イヤでも足がすくんでしまう。
リーダーという重圧感、周りからの意見、一歩この中に足を踏み入れれば、
いろんなものに押しつぶされていたから。
でも、今日からは違うんだ。
昨日の裕ちゃんの言葉、
『ヤグチやったら新しいモーニング創れる』
周りなんか関係ない、わたしはわたしらしく、だね。
やってみせるから、見ててね裕ちゃん。
- 69 名前:SHURA 投稿日:2001年09月09日(日)17時20分01秒
- >もちさん
待たせてスミマセン。
今週は私生活が色々と混乱してたもので…。
>読んでる人さん
こっちはマターリいくつもりなんで、
気長に待っててください。
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